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怒れる国のアリス

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ホワイトアルバム #アリス適合者


●燃える不思議の国
 森が燃えていた。
 大地が干上がり、小川は煮え立ち、空は赤く焼け焦げた。
 獣は住みかを奪われて、小鳥は囀ることさえできず、喋る草花は焼き払われ、お菓子の家は見るも無残に溶け落ちる。
 それは、まさしく地獄そのもの。そして、地獄の中心に佇むのは、焔を纏った剣を掲げる一人の少女。
「許さない……許さない……なにもかも……」
 夢の国を悪夢の国へと変えてしまったのは、彼女に他ならなかった。彼女はあらゆる存在を、憤怒の炎で焼き尽くす。弱く、守られるだけだった自分を否定するために。自らに過酷な運命を強いた、この世界そのものに怒りをぶつけるために。
「全て……燃えてしまえ……」
 己の内に秘めたる忌まわしき記録。扉に辿り着くことなしに、それを解放してしまった一人の少女は、その日アリスからオウガへと堕ちた。

●怒れるアリス
「アリスラビリンスで、猟書家に動きがあったみたいね。あ、でも、実際に暴れているのは、猟書家じゃなくてオウガになった元アリスなんだけど」
 そのオウガを倒す……のではなく、助けるのが今回の仕事だ。そう言って、パトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)が猟兵達に告げたのは、猟書家『ホワイトアルバム』が絡んだ事件について。
「もう、知っている人も多いとは思うけど……この猟書家は、アリスの中に在る『忌むべき記憶』を無理やり引っ張り出して、オウガに変えちゃうっていうヤバいやつよ」
 そんなホワイトアルバムに目を付けられたのが、エミールという少女だった。どうやら、彼女は複数のアリスと一緒に行動していたらしいのだが、気が付けば仲間達は次々に邪悪なオウガ達の餌食となって、生き残ったのは自分だけだったらしい。
「自分を守って誰かが次々死んじゃうのを見るとか、それだけでもトラウマものよね。おまけに、その光景がエミールの思い出したくない記憶と重なっちゃったみたいで……ホワイトアルバムにダメ押し食らって、完全に心が折れちゃったみたい」
 自分が酷い目に遭うのも、自分を守って誰かが次々と死ぬのも、アリスラビリンスの世界そのものが悪いのだ。だから、そんな世界は壊してしまえと……そんな、やり場のない怒りをぶつけようとした結果、エミールは『七罪』の『憤怒』に憑依された恐るべきオウガとなってしまった。
「憤怒のアリスになったエミールは、燃える剣ブン回して暴れているわ。不思議の国、大炎上待ったなしって感じ? 本当は、10歳くらいの女の子なんだけど……オウガになったせいで、JKくらいの体格まで成長して、パワーも見た目以上なスーパーガールになっているから、気をつけないと痛い目に遭うわよ」
 一応、多少の良心は残っているのか、猟兵との勝負で汚い手を使ったり、逃亡したりすすことはないようだ。戦いは、あくまで正々堂々と行うようだが……しかし、仮にその戦いに勝ったとしても、それだけではエミールを元には戻せない。
「彼女を励ましたり、気持ちを理解したりしてあげないと、エミールは元に戻らないかもしれないのよね~。彼女が何を怖がっているのかは、私にも分からなかったけど……まあ、とりあえず何に激オコなのかだけでも分かってあげれば、後は勢いでなんとかなるっしょ!」
 なんとも後先不安な言葉で締めくくるパトリシアだったが、彼女の言っていることも、また事実。エミールの記憶を直に覗いたのはホワイトアルバムだけなので、彼女の『忌むべき記憶』が具体的になんなのかは、前後の事情から想像するしかないのだから。
 とにもかくにも、これ以上は不思議な国を炎上させるわけにもいかない。そう言って、パトリシアは猟兵達を、アリスラビリンスへと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 このシナリオは、猟書家シナリオになります。
 二部構成で完結するシナリオなので、参加される方はご注意ください。

●第一章
 『七罪』憤怒のアリスとの戦いになります。
 普通に倒してもシナリオ自体は失敗になりませんが、エミールを助けたい場合は、彼女を励ましたり気持ちを汲んであげたりして、心を通じさせる必要があります。
 心を通じさせることに成功すると、プレイングボーナスが得られます。

●第二章
 猟書家『ホワイトアルバム』との戦いになります。
 第一章でエミールの救出に成功していた場合、彼女も一緒に戦ってくれるかもしれません。
 その場合、彼女と一緒に戦うと、プレイングボーナスが得られます。

●エミール・シェラザード(アリス適合者のバロックメイカー)
 ホワイトアルバムの策略で、『憤怒のアリス』と化してしまった少女です。
 気弱な性格で直接戦闘も得意ではなく、彼女を守るために多くのアリスがオウガの餌食になってしまいました。
 その経験と、彼女がアリスラビリンスへ来る前の『忌むべき記憶』には、どこか重なるところがあるようですが……。
 なお、戦闘になると彼女もユーベルコードを使用できますが、種族及びジョブの基本的なユーベルコード以外は、使用することができません。
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第1章 ボス戦 『『七罪』憤怒のアリス』

POW   :    憤怒に染まる真実の剣/ヴォーパルソード
【無敵の鎧と真実の剣を持つ最強の騎士姫 】に変身し、武器「【あらゆる防御を無効化するヴォーパルソード】」の威力増強と、【憤怒の魔焔と魔力を操り、想像の天翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    憤怒を宿す勇者
全身を【全てを焼き尽くす憤怒の焔と真実の剣の力 】で覆い、自身の【世界への怒りと他のアリス達を守る強い意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    真なるアリス
無敵の【困難に打ち勝ち希望に満ちた無垢な自分 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
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クロエ・アスティン
まずはエミール様に落ち着てもらわなければなりませんね。

エミール様の攻撃を耐えに耐え、限界まで暴れてもらうであります!
【無敵城塞】で耐えながら、防御をすり抜けてくるヴォーパルソードのダメージは「激痛耐性」で我慢しながらエミール様に声を掛けます。
エミール様が何に怯え、何に怒っているかは自分には分からないであります。
けど、それを受け止めてあげることならできるでありますよ!

※アドリブや連携も大歓迎



●世界を焼く少女
 不思議の国へ一歩足を踏み入れると、そこは灼熱の業火が荒れ狂う地獄と化していた。
 焼け焦げた森の木々からは未だ黒い煙が立ち上り、沸き立つ川には命を奪われた魚が白い腹を曝け出して死んでいる。喋る草花は物言わぬ消し炭と化し、住処を奪われた不思議な生き物達も、既に姿を消していた。
 灼熱地獄。そう形容するに相応しい世界の中心に、巨大な剣を持ち佇むのは一人の少女。己が理想とする完璧なアリスの姿でありながら、アリスを食らわねば生きられない、醜悪なオウガでもある存在。
「まずは、エミール様に落ち着てもらわなければなりませんね」
 まともに話をしようにも、それさえも難しいと察し、クロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)は敢えてエミールの前に無防備を晒す。
「猟兵!? ……でも、私の邪魔をするならば……」
 突然、武器さえ構えずに現れたクロエの姿に、さすがのエミールも動揺したようだった。怒りに身を任せてオウガへ堕ちた身とはいえ、その内に秘めたる高潔さは、決して失われていないからだ。
 戦う意思のない者を、一方的に攻撃する。怒りの感情に憑依されたエミールも、さすがにそれは憚られたようだが……しかし、次にクロエが放った言葉によって、彼女の顔に微妙な変化が現れた。
「エミール様が何に怯え、何に怒っているかは自分には分からないであります。けど、それを受け止めてあげることならできるでありますよ!」
「……っ!?」
 理由は分からないが、痛みを受け止めることはできると、クロエは言った。ならば、それが果たして嘘か誠か。証明させてもらおうとエミールは剣を抜き。
「そう……。だったら……本当に受け止められるのか、あなたの身体で試してあげる!」
 間合いを一気に詰めると、まずは力に任せてクロエに剣を振り降ろす。だが、その剣はクロエの身体に命中こそしたものの、まるで鋼鉄にでも当たったかの如く、甲高い金属音を立てて弾かれた。
「そんなものでありますか、エミール様の怒りは? もっと、本気でぶつけるでありますよ!」
 直立不動のまま、クロエは叫んだ。聖騎士の得意技、無敵城塞。この状態のクロエには、純粋な攻撃の大半が通用しない。
「なるほど……どうやら、手加減は必要ないみたいね」
 このまま斬り付けても埒が明かないと察したのか、エミールも自らの力を解放した。瞬間、彼女の身体を鎧が包み、手にした剣が焔を纏い、背中からは燃え盛る火炎が噴き出して、それは飛翔するための翼となり。
「誰かに守られるだけの苦しみ……そんなもの、あなたのような強い人に、分かるはずがないわ!!」
 空高く飛び上がると、その勢いを利用して、燃え盛る剣をクロエに叩きつける。今度も弾かれると思われたが、しかし剣は灼熱の業火と共に、クロエの身体を容易に斬り裂いた。
「……っ! くぅ……」
 なまじ、動けないことが災いして、クロエは直撃をもらってしまった。痛みに耐えるための術は持っていたが、それでも肉体へのダメージがなくなるわけではない。意識を保つことは可能でも、間違いなく体力は奪われる。
「この世界に来てからも……来る前も……私は守られるだけだった! だから、力を手に入れたのよ! もう、誰にも守られる必要のない力を! 私を不幸な目に遭わせた者に……世界に……復讐してやるための力を!!」
 そのために、自らがオウガとなろうとも、修羅となって世界を焼く。それこそが、今の自分の望みだと。世界に対する怒りだと。剣を振るう度に叫びながら、最後にエミールは大きく腰溜めに剣を構え。
「嫌い……嫌いよ! 私達の運命を狂わせた、こんな世界……滅んでしまえばいいんだわ!!」
 今までになく激しい勢いの炎と共に、横薙ぎに刃を振り抜いた。それは剣の圧力だけで空気を振るわせ、クロエを吹き飛ばすのに十分であり。
「世界への恨み……それが、エミール様の本音なのでありますか!?」
 焼け野原の果てに吹き飛ばされながらも、クロエは最後までエミールに尋ねた。その答えは聞くことができなかったものの、エミールからの追撃はない。少なくとも、怒りの感情を発散させることで、少しは彼女の精神を落ち着かせることができたと思いたかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジーク・エヴァン
…そうか
君も大切な人達に守られ、そして失ったのか

…彼女の炎を見てると思い出す
故郷を滅ぼされた時、俺だけでもと守ってくれた家族や故郷の人達のことを…

君が本当に許せないのは世界じゃない
弱いままの自分だろう?
だから自分ごとこの世界を焼いてもう誰も傷付かないようにするつもりなんだろ?

俺も同じだ
俺も、皆を守れるくらい強くなりたいと願った

…だから俺が、君が自分自身を炎で焼き付くす前に
君の憤怒の炎を全て受け止めてみせる!

最強の騎士姫に変身した彼女に対し、俺も【滅竜戦装】で正面から彼女と戦う
鎧を無視する呪詛の黒炎を纏ったグラムで斬り結び、彼女の剣や炎を彼女の怒りごと正面から受け止めカウンターを叩き込む!



●本当に焼きたかったもの
 大切な誰かに守られるばかりで、自分では誰も助けられない。そんな経験が積み重なり、絶望からオウガへと転じたエミールの姿に、ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)はどこか既視感を抱かずにはいられなかった。
「……そうか。君も大切な人達に守られ、そして失ったのか」
 彼女を見ていると思い出す。自分もまた、故郷をオブリビオンに滅ぼされた際、多くの人達に助けられたことを。我が身を顧みずジークのことを守り、そして散って行った家族や故郷の人々を。
 あの時の自分は、無力な少年に過ぎなかった。元傭兵に保護されたことで、猟兵として生きる道を見つけることができたが、もしもあのまま誰にも助けられることなく、地獄と化した故郷に取り残されてしまったとしたら。
 目の前の少女は、自分が辿り着いたかもしれないもう一つの可能性。だからこそ、ここで放っておくことは許されない。彼女を見捨て、オウガとして討伐してしまうことは、自分の心に嘘を吐くと同時に、自分のために命を懸けてくれた故郷の人々も裏切ることになる。
「あなたも猟兵……私を止めに来たのね。だったら、もう何も言うことはないわ」
 燃え盛る剣を抜き放ち、エミールは戦うための姿に変身した。彼女の理想とする最強の騎士姫。無敵の鎧を身に纏い、あらゆる敵を穿つ剣を握り、どんな困難であろうと立ち向かって行けるだけの強さを持った存在に。
 彼女は本気だ。ならば、こちらも本気を出さねば、それは失礼に値するというもの。
「来たれ。怒りを剣に、決意を鎧に、希望を盾とし、我は滅竜の英雄とならん…… 人剣一体! ジークフリートッ!」
 ジークもまた剣を掲げ、漆黒の鎧を纏った滅竜騎士へと姿を変えた。黒竜の翼を生やしたその姿は、一見して悪魔を思わせるも、彼がエミールを救いたいという気持ちは本物だ。
 互いに正面から激突する二人の騎士。無敵の剣と剣が交差し、激しい火花を散らす。今のジークは竜でさえも屠ることのできる力を持っているが、同じく無敵の騎士姫と化したエミールもまた、彼のパワーに追従するだけの力と技を振るってくる。
「……さすがに、やるわね。でも、あなた達のやり方じゃ、全てのアリスを救えない。本当にアリスを救いたいなら……アリスなんて存在を生み出す、この世界を壊してしまう他にないのよ!」
 その身を幾度貫かれ、斬り裂かれようと、エミールは何ら意に介さずジークへと向かってきた。さすがは、無敵の騎士姫というだけある。しかし、攻撃が殆ど通用していないにも関わらず、ジークの瞳には未だ諦めの二文字は浮かんでいない。
「君が本当に許せないのは世界じゃない! 弱いままの自分だろう? だから自分ごとこの世界を焼いて、もう誰も傷付かないようにするつもりなんだろ?」
「なっ……! そ、そんな……ことは……!?」
 互いに剣をぶつけ合ったまま、ジークが問いかけた。その言葉に、一瞬だけだがエミールの力が弱まるのを、ジークは見逃さなかった。
「俺も同じだ。俺も、皆を守れるくらい強くなりたいと願った。……だから俺が、君が自分自身を炎で焼き付くす前に、君の憤怒の炎を全て受け止めてみせる!」
 続け様に放たれたエミールの攻撃に合わせ、ジークは黒き炎を纏った魔剣で彼女の攻撃を薙ぎ払う。今までのエミールであれば、そんな攻撃を食らったところで、決して怯むこともなかったのだが。
「……っ! そ、そんな……!?」
 無敵の鎧が一瞬にして崩れ落ち、エミールの身体を黒炎が覆った。その身を炎に焼かれながら、エミールは燃え盛る火炎の先に、自分が本当に焼き払いたかったものを見た。
(「あぁ……燃える……私が……みんな……」)
 エミールが憤怒の炎で燃やしたかったもの。それは他でもない、彼女自身だ。非力で弱く、誰かに守られることしかできず、多くの者を犠牲にした上で、自分だけのうのうと生き残ってしまった情けない少女。
 エミールにとって、アリスラビリンスに来てからの記憶は、そんな辛いものばかりだった。そして、彼女は元の世界にいた時もまた、同じような境遇にあった。
(「ごめんなさい……みんな……。私の……私のせいで……」)
 心の折れた今のエミールからは、無敵の力は失われていた。纏わりつく黒炎を払うことさえもできないまま、彼女は漆黒の焔に抱かれ、苦悩の涙を流すだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マールシア・マーフィー
灰になった世界で君が見たいものってなんだい?

この世界の理不尽さは聞いてるよ
君達アリスが翻弄され続けてるのもね
でもさ、君の友達のアリス達がなんで君を守ったのか、考えたことはあるかい?
こんな世界だけど、君に生きてほしいと願ってくれた人達がいたんだよ
君は、その人達の想いまで焼き尽くすつもりなの?

想像から無敵の自分を生み出してきた
それが君の理想の姿

でも理想のままじゃ駄目だ
君が変わらないと駄目だ

世界を変えるのは難しい
だからこそ人は苦しくてもまずは自分から変えようとするんだ
そうじゃなきゃ、世界を変えられないからね

それを妨げ、目の前を覆う君の憤怒の炎は、僕が払ってあげるよ!
(UCで炎ごとアリスを吹き飛ばす)



●変わる世界
 世界に弄ばれた理不尽さに怒り、その身をオウガに堕としたエミール。
 だが、彼女が本当に焼きたいものは、他でもない自分自身だった。どこまでも弱く、常に誰かに守られて、他者を犠牲にしてしか生きられない。そんな自分と、そして自分を翻弄した世界の全てを恨み、彼女は怒りの業火で全てを焼き尽くしてしまおうと暴れ回った。
 だが、その怒りの行き着く先が破滅でしかないことを、マールシア・マーフィー(海と自由を愛する海のエルフの少女・f27297)は知っていた。そして、その破滅を他でもないエミール自身が望みながらも、それを止めねばならないことも。
「灰になった世界で、君が見たいものってなんだい?」
 憤怒のアリスと化したエミールに、マールシアは尋ねた。全てを焼いた後、残るのは灰色一色の殺風景な焼け野原。だが、いくら世界を焼いたところで、自分自身からは決して逃げられない。
「この世界の理不尽さは聞いてるよ。君達アリスが翻弄され続けてるのもね。でもさ……君の友達のアリス達がなんで君を守ったのか、考えたことはあるかい?」
 それは、こんな世界であっても、エミールに生きていて欲しいと願った人がいる証。この世界を、そして罪なき不思議な生き物達をも焼き払ってしまうのは、エミール自身に託された願いさえも焼き尽くしてしまうのと同じなのだ。
「う、うるさいわね! 私は……私は、全てを焼くって決めたのよ! 私も……この世界も……全部、全部大っ嫌い!!」
 震えるエミールは、再び自らの身体を鎧で覆う。だが、想像より創造せし無敵の自分も、今の彼女には仮初の虚構にしか過ぎないものだ。
 既に彼女は、自分の中の強さを信じられなくなっていた。姿形は保てても、それは既に無敵ではない。ただ、強がる自分を隠すための殻として、理想の姿を利用しているにだけだ。
「それが君の理想の姿……。でも、理想のままじゃ駄目だ。君が変わらないと駄目だ!」
 絶望するには、まだ早い。世界を変える方法はあると、マールシアはエミールに告げる。
 確かに世界を変えるのは難しいが、それは他人を変えようとしているからだ。誰かを強引に変えようとすれば、必ずそこに擦れ違いが生じ、新たな争いの火種となる。
 だから、人は苦しくても、まずは自分を変えようとするのだ。自分が変われば、世界も変わる。全く同じ世界であっても、視点が変われば物事は違って見えるはず。
「それを妨げ、目の前を覆う君の憤怒の炎は、僕が払ってあげるよ!」
「う……うわぁぁぁぁっ!!」
 だから、全力でぶつかってこい。そう告げるマールシアに、エミールは怒りに任せて焔の剣を携え突撃して来た。構えも踏み込みも、まるで素人。どれだけ肉体を理想に近づけたところで、今のエミールは自分さえ信じられず、殻に閉じこもっている哀れな少女に過ぎない。
 そんな彼女の攻撃など、捌くのは容易なことだった。いや、今のマールシアにとっては、捌く必要さえないものだった。
「大海を統べし海王よ。我が祈りに応え、天地を呑み込むその息吹きを、ここに顕現させたまえ」
 周囲に転がる石や屑鉄。それら全てを巨大な水竜巻へと変え、マールシアはエミールに叩きつける。竜巻は怒れる少女を真正面から飲み込み、憤怒の炎さえも鎮火させる勢いで、そのまま押し流して行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中村・裕美
副人格のシルヴァーナで参戦
「世界を焼き尽くさんとする憤怒の炎、懐かしいですわね。知り合いに似ていて見過ごす気にはなれないので、止めさせてもらいますわ」
ナイフ二刀で戦います

相手の攻撃は【残像】が残る様なステップで回避
「この世界を焼き払っても、本当の解決にはならないことに、もう気づいているのではなくて?」
「焼き払うべきは理不尽。それが出来るような力を得ているのに、勿体ないですわね」
など言葉で揺さぶりをかけて【精神攻撃】自分に攻撃を向けさせ、相手の攻撃にカウンター気味にUCを当てて剣を【切断】、そのまま組み伏せる
「ご覧なさい、あの空を。貴方はさっきまであそこを翔けていたのですわよ」
と、自分なりに説得



●抗うべき相手
 自分は何に怒っているのだろう。
 自分が本当に焼きたかったものは何だったのだろう。
 それが分かった今、エミールがオウガである意味はなくなった。だが、怒りの理由と矛先を理解したところで、エミールの心がそれを受け入れるかどうかは、また別の話だった。
「うぅ……私は……」
 既に満身創痍な状態ながらも、オウガと化したエミールはゆっくりと立ち上がる。
 この姿は、自分が理想とした強いアリスの姿。だから、ここで倒れることは許されない。どれだけ逃げても自分からは逃げられないのだから、今さら何かを変えることなどできはしない。
 それは既に、屁理屈に等しい怒りだったかもしれない。しかし、憤怒の権化でもある今のエミールにとって、怒りの力を失ってしまうことは、即ち自らのアイデンティティの崩壊をも意味していた。
「私は……全てを焼き尽くす! こんな自分を……弱い自分を作った世界だって……!!」
 もはや、彼女の内に秘めたる怒りは、殆ど八つ当たりも同然な代物に変わっていた。傍から見れば、それは滑稽な姿だったかもしれない。それでも、彼女が辿った経緯から考えれば、それは決して嘲笑して良いものでもなければ、頭ごなしに否定することもできないものだと、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は……否、彼女の副人格であるシルヴァーナは知っていた。
「世界を焼き尽くさんとする憤怒の炎、懐かしいですわね。知り合いに似ていて見過ごす気にはなれないので、止めさせてもらいますわ」
 怒りのままに暴れ回るエミールを止めるべく、シルヴァーナは二振りのナイフを抜いた。元より、彼女自身を必要以上に傷つけるつもりはない。だが、あの無骨な大剣だけは、なんとかしなければ面倒だ。
「もう……放っておいてよ! 私なんかに、構わないで!!」
 シルヴァーナの心配も余所に、エミールは凄まじいスピードで飛翔しながら焔を宿した剣を振るった。もはや、今の彼女に冷静な判断を求めるのは不可能。それでもシルヴァーナは諦めず、華麗なステップでエミールの攻撃をかわして行く。
「この世界を焼き払っても、本当の解決にはならないことに、もう気づいているのではなくて?」
 本当に焼きたかったものは何か。その答えは、もうエミールの中で出ているはず。
「焼き払うべきは理不尽。それが出来るような力を得ているのに、勿体ないですわね」
 抗うべき相手は運命。変わるべき存在なのは自分自身。そのことを、今まで戦って来た……否、戦いに付き合ってくれた猟兵達も、エミールに教えてくれたはず。
「だから……もう、怒りの焔に身を焦がすのはお止めなさい。その怒りを力に変えてぶつけるべき相手は、他にいるはずでしょう?」
 真正面から叩きつけられた大剣の一撃に、シルヴァーナはナイフを交差して重ねる。質量では圧倒的にエミールの大剣が上回っていたが、重要なのは武器の重さなどではない。
「……え?」
 無敵と信じて疑わなかった焔の剣。それが、まるで豆腐の如くスッパリと切断されたことで、エミールは思わず足を止めた。
 あらゆる防御を貫く矛を以てすれば、無敵の盾さえも穿てるだろう。では、最強の矛と矛が互いにぶつかりあった場合……勝利するのは、より想いの強い方に他ならない。
「ご覧なさい、あの空を。貴方はさっきまであそこを翔けていたのですわよ」
 茫然と立ち尽くすエミールを組み伏せ、シルヴァーナは空を指差した。橙色に焦げた空は、しかしどこまでも広大で、そこを己の力で駆けていたという事実は、エミールが敗北しても変わらない。
 理不尽に対して怒り、抗おうとする意思があるのなら、その力を多くのアリスを掬うために使って欲しい。それこそが、エミールに託された仲間達の想い。彼女が生き残った真の意味。
「あ……あぁ……私は……私は……」
 突然、エミールの身体から炎が噴き出し、彼女の全身を包み込んだ。咄嗟に離れたシルヴァーナだったが、その間にもエミールの身体は炎に包まれ燃えて行く。
 やがて、全ての炎が消え去った時、そこにいたのは最強のアリスを模したオウガではなく、簡素な衣服を身に纏った小さな一人の少女であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ホワイトアルバム』

POW   :    デリシャス・アリス
戦闘中に食べた【少女の肉】の量と質に応じて【自身の侵略蔵書の記述が増え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    イマジナリィ・アリス
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【虚像のアリス】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    イミテイション・アリス
戦闘力が増加する【「アリス」】、飛翔力が増加する【「アリス」】、驚かせ力が増加する【「アリス」】のいずれかに変身する。
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●心の鎧
 憤怒の焔を拭い去り、エミールは再びアリスとして、この世界に戻ってきた。
 だが、それで事件は終わらない。むしろ、ここからが本番だ。
「……あらあら、どうやら失敗してしまったみたいね」
 小さな笑い声と共に現れたのは、巨大な本を持った一人の少女。アリスではない。猟書家、ホワイトアルバムだ。
「でも、折角だから、あなたの存在は私の本に記録しておいてあげる。大人しく私に食べられて……侵略蔵書の記述の一部になりなさい」
 最後の最後まで、ホワイトアルバムはエミールのことを獲物としてしか見ていないようだった。彼女の内に秘めたる忌むべき記憶。それが何なのかは未だに不明のままだが、ここでエミールをホワイトアルバムに奪われれば、今までの苦労が水の泡だ。
「うふふ……あなた、怖いのね。どれだけ虚勢を張って、どれだけ想像から最強の存在を創造しても、それはあなたの弱さを隠す偽りの鎧にしか過ぎないわ」
 そんな鎧を纏ったところで、心の弱さまでは隠せない。だから、諦めて侵略蔵書の一部になれとホワイトアルバムは囁く。彼女の野望を阻止するためにも、アリスとして帰還したエミールと共に、過酷なる運命に抗うのだ!

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●アリスとの共闘
 この章では、オウガからアリスに戻ったエミールと一緒に戦うことも可能です。
 ただし、彼女が使用できるユーベルコードは、アリス適合者とバロックメイカーの使用する基本的なものだけです。
 そもそもの戦いにも慣れていないようなので、上手く協力するか、あるいはフォローしてあげましょう。
 彼女と上手く協力し合って戦った場合は、プレイングボーナスが得られます。
マールシア・マーフィー
書家を名乗る癖に感情の機微も分からないなんて三流だね、ホワイトアルバム

確かに彼女は鎧をしていた怖がりな女の子さ
でも今は託された想いに気付いて彼女は成長した
そして僕らもいる
負ける筈ないさ

相手はエミールを食べようとしてくるかもだからドリトルにエミールを騎乗させ、ロッドも貸そう
杖が君の戦う力を助けてくれるよ
ドリトル、彼女を頼むよ
君の第六感を信じてる

それとエミール、迷路を作れる?
僕らと奴を迷路に閉じ込めるんだ

狭い場所は僕の魔法の得意分野さ
(様々な属性の魔法シャボンを多重詠唱してばら撒いて通路を埋め尽くし、爆撃シャボンの罠も設置)

行き止まりに追い込んで選択UC発動
海王様、思い切りお願いします!

アドリブ○


クロエ・アスティン
これ以上、エミール様を辛い目には合わせないであります!
真の姿を開放して、戦乙女姿になってエミール様を守りながら戦います!

「盾受け」でエミール様を狙う攻撃をかばいながら、「シールドバッシュ」で吹き飛ばして距離を離します。
その隙にエミール様に【ガラスのラビリンス】で迷路を作ってもらいます。
迷路は出口が長い直線になったものにしてもらい、出口でホワイトアルバムが出てくるのを待ち構えます!
「全力魔法」で唱えておいた【戦乙女の戦槍】を叩き込んでやります!
これなら逃げ場はないであります!!

※アドリブや連携も大歓迎



●反撃の時
 己の目的を果たすため、ついに自ら姿を現したホワイトアルバム。彼女は怯えるエミールを食らわんと迫るが、しかしそう簡単に食わせて堪るものか。
「これ以上、エミール様を辛い目には合わせないであります!」
 戦乙女の姿となったクロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)が、咄嗟に割り込んでホワイトアルバムの攻撃を受け止めた。いかに強大な力を持つ猟書家とはいえ、ユーベルコードを用いない攻撃であれば、本気を出したクロエに受けられないはずもなく。
「書家を名乗る癖に、感情の機微も分からないなんて三流だね、ホワイトアルバム」
 クロエに代わり、マールシア・マーフィー(海と自由を愛する海のエルフの少女・f27297)がホワイトアルバムに告げた。
 もう、これ以上は猟書家の好きになどさせない。マールシアは相棒のシロイルカにエミールを跨らせると、自分の使っていた杖も貸し与え。
「杖が君の戦う力を助けてくれるよ。ドリトル、彼女を頼むよ」
 改めて、共に戦おうと語り掛けた。その言葉に小さく頷くエミールだったが、ホワイトアルバムはなおもエミールを食らうべく、彼女のことを挑発する。
「うふふ……そんな武器を貸してもらって、本当に強くなったつもりかしら? 自分の力で戦えない人が、私に勝てるはずがないわ」
 あくまで、エミールの心を圧し折り、そこを食らうつもりなのだろう。しかし、そんなことはさせないと、今度はクロエが盾を構えたまま突進し。
「今であります、エミール様! 迷宮を!!」
「え……? あ……は、はい!!」
 咄嗟に振られて少しばかり困惑したエミールだったが、それでも彼女は必死に迷宮を作り出す。直接戦闘は苦手だが、それでもこの程度のユーベルコードであれば、自在に操ることはできるのだ。
「よし! そのまま、僕らと奴を迷路に閉じ込めるんだ!」
 そう、マールシアが叫んだところで、彼女とエミール、そしてホワイトアルバムは、強靭な壁を持つガラスの迷宮へと閉じ込められた。

●海王の裁き、断罪の戦乙女
 一度でも嵌ってしまったが最後、力技で抜け出すのは難しいガラスの迷宮。ホワイトアルバムとて例外ではなく、なんとか知恵を絞って脱出を試みるが、しかし道中に撒かれたマールシアのシャボン玉がそれを妨害する。
「くっ……! また、この泡が……きゃぁっ!!」
 触れただけで爆発する、シャボン玉爆弾だ。こんなものが浮遊する通路を迂闊に進めば、連鎖爆発に飲み込まれ、あっという間に黒焦げだ。
 さすがのホワイトアルバムも、それは避けたかったのか、シャボン玉を避けて迂回を始めた。もっとも、それこそがマールシアの狙いでもあり、ホワイトアルバムはいつしか行き止まりへと追い込まれ。
「さあ、覚悟はいいかな? 海王様、思い切りお願いします!」
 マールシアの気配に気づいて、振り返った時にはもう遅い。ホワイトアルバムの眼前に現れたのは巨大な海蛇。マールシアの全魔力を代償に召喚された、まさしく大海を統べし海の王!
「えぇっ! い、いつの間に……んぶぅぅぅっ!!」
 ホワイトアルバムが何かをするよりも先に、彼女の身体を海蛇が作り出した巨大な水流が押し流して行く。奇しくも、その先は迷宮の出口。そして、そんな出口で待ち構えているのは、光の槍を持ったクロエであり。
「計算通りであります! 光よ! 女神に仇名す者を貫く槍となれ! ――ヴァルキリーズジャベリン!」
「そ、そんな! この私が……こうも簡単に翻弄されるなんて!!」
 信じられない。そんな様子で目を見開いたホワイトアルバムへ、無数の光の槍が殺到して串刺しにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

中村・裕美
「虚勢も突き通せば、立派な力ですわ。偽りの鎧? ならば本物たり得るところまで鍛えればいいんですもの」
エミールをバックアップしつつ戦う
「エミール、貴方の弱さは貴方の力となりますわ。どうか、手を貸してくださいまし」
エミールにリアライズバロックを出してもらい、脱力の暇を与えないよう手数を増やして畳み込む

「裕美、力を貸してくださいまし。わたくし、支援は得意ではないですので」
「……面倒な」
UCで主人格の裕美を召喚し、電脳魔術の【ハッキング】【防具改造】【武器改造】でエミールのレギオンを強化
向こうがUCを使おうとしてもシルヴァーナが出てくる虚像のアリスを【切断】して潰す
「弱さも認めれば力となりますわ」



●恐怖を恐怖で駆逐せよ
 ガラスの迷宮から叩き出され、おまけに串刺しにされてしまったホワイトアルバム。
 普通なら、この時点で確実に即死である。しかし、それでも容易に死なないのは、彼女が恐るべき力を持った猟書家であるが故。
「やってくれたわね……。でも、この程度で私に勝った気にならないで欲しいわ」
 その身に纏ったエプロンドレスを鮮血に染めながらも、ホワイトアルバムはあくまでエミールに狙いを定めて迫ってきた。
 その様は可愛らしいアリスから一転して、まるでホラー映画に登場するモンスターのようだ。血塗れ少女に肉を食わせろとせがまれるなど、できればお目にかかりたくない光景なわけで。
「……ひっ! い、いや……来ないで!!」
 案の定、エミールは怯えた表情で、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)の後ろに隠れてしまった。
「ほら、それがあなたの本性よ。心の壁で、いくら私を惑わせようとしたところで、結局のところは臆病な弱虫に過ぎないの」
 血に塗れたままの姿で、ホワイトアルバムはエミールを嘲笑する。だが、そんな彼女の言葉を真正面から遮って、裕美は……否、シルヴァーナは微動だにせず言い返した。
「虚勢も突き通せば、立派な力ですわ。偽りの鎧? ならば、本物たり得るところまで鍛えればいいんですもの」
 そのための術が、自分にはある。だから、力を貸して欲しいと、シルヴァーナはエミールの手を優しく握り。
「エミール、貴方の弱さは貴方の力となりますわ。どうか、手を貸してくださいまし」
「え……? は、はい!」
 自分に何ができるのか。それさえ分からぬままに、エミールは返事をした。
 ガラスの迷宮に閉じ込める作戦は、もう使えない。ならば、残された手段は、ただ一つ。己の忌むべき記憶を力に変え、自身に恐怖を与えた存在に、精神の怪物を嗾けるのだ。
『オ……ォォォ……』
『アァ……ウァァ……』
 呻くような声を上げ、エミールの背後から不気味な影が現れた。バロックレギオン。バロックメイカーとして覚醒したアリスだけが使うことのできる、己の心に生じた些細な猜疑心や恐怖心を具現化する超能力。
「あら、そんな化け物を心に潜ませていたの? それがあなたの本性……私と同じ、他人を食べなければ生きていけない存在なのね」
 迫り来るバロックレギオンを前にしても、ホワイトアルバムはエミールを嘲笑することを止めなかった。そのまま自身の巨象を生み出し、それを使ってバロックレギオンを吸収せんとするが……しかし、そこはシルヴァーナがさせなかった。
「少し、口を閉じていただきましょうか? あなたの罵詈雑言は、聞いているだけで虫唾が走りますわ」
 巨象がナイフで斬り裂かれ、バロックレギオン達は一直線にホワイトアルバムへと向かって行く。このまま放っておいても勢いに任せて蹂躙しそうだったが、シルヴァーナはそこへ更なるダメ押しを加えることにした。
「裕美、力を貸してくださいまし。わたくし、支援は得意ではないですので」
「……面倒な」
 主人格の裕美をユーベルコードで召喚し、彼女の電脳魔術を以てバロックレギオンを強化する。素手で襲いかかるだけの怪物に、裕美特性の武器と防具を纏わせれば、猟兵よりも劣るエミールのバロックレギオンであったとしても、ホワイトアルバムへ致命傷を負わせられる。
「こ、この……! 数だけ多くたって……こんな……きゃぁぁぁぁっ!!」
 巨大な本で防ごうとするも、数の暴力には抗えず。ついには防御を崩されて、ホワイトアルバムは暴徒と化したバロックレギオンの海に沈んだ。
「残念でしたわね。弱さも認めれば力となりますわ」
 蹂躙されるホワイトアルバムを、今度はシルヴァーナが笑う番だった。今は弱くとも、ほんの少しのきっかけさえあれば、エミールはまだまだ強くなれるのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジーク・エヴァン
お前は舐めすぎだ、ホワイトアルバム

彼女には自分の無力を呪う程の過去がある
でもだからこそ、胸に信念の炎を灯せば彼女は「本物」になれる!

(炎の宝玉をエミールにも握らせ)

エミール、炎は全てを燃やす力だ
でも正しい想いで心の炎を燃やせれば、闇を照らし新しい自分を示してくれる

エミール、今君が焼きたいのはなんだい?
君は、どうなりたい?

(ジークとエミールに応えるように宝玉が輝きジークの【灼竜勇装】発動)

お前の本じゃ書ききれないさ
ここからは、彼女の、俺達の物語だ!

どんなアリスに変わろうと無駄だ
燃え尽きろ、猟書家!
(エミールを抱えて空中機動で接近、二人で灼竜剣を握り、振るう(焼却、切断、限界突破))

連携・アド ○



●焔の紡ぐ物語
 哀れな獲物とエミールを嘲笑っていたホワイトアルバムだったが、気が付けば彼女はエミールの力の前に、徐々に追い詰められつつあった。
「お前は舐めすぎだ、ホワイトアルバム。彼女には自分の無力を呪う程の過去がある
。でも、だからこそ、胸に信念の炎を灯せば彼女は『本物』になれる!」
 炎の宝玉をエミールに握らせ、ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)は声高に叫んだ。未だ、エミール自身の中に宿るトラウマは癒えていないのかもしれないが、それでも今の彼女には、十分に運命へ抗うだけの力があると。
「エミール、炎は全てを燃やす力だ。でも、正しい想いで心の炎を燃やせれば、闇を照らし新しい自分を示してくれる」
 それは決して恐れるものでもなければ、恥じるべきものでもない。先程までは、自らを業火で焼き尽くしたいと願っていたエミール。しかし、今の彼女の中にあるものが異なることを、ジークは既に気づいている。
「エミール、今君が焼きたいのはなんだい? 君は、どうなりたい?」
「わ、私は……」
 ジークの問いかけに、エミールは一瞬だけ言葉を切った。どれだけ力があると諭されても、やはり怖いのだろう。今まで、戦いの大半を他のアリスに任せてしまい、その結果、誰かを犠牲にすることで生き延びてしまった者としては。
「わ、私は……もう、誰にも死んで欲しくない! 私を守ってくれた、皆の気持ちを無駄にしたくない!!」
 だが、それでもエミールは、最後の最後で己を鼓舞して震え立たせた。それは、力無き少女による精一杯の抵抗。もっとも、勝利を掴むのに必要な鍵は、たったそれだけで十分だ。
(「よし……これなら行けるぞ!」)
 エミールの想いに応えるかの如く、宝玉が光り輝くのをジークは見逃さなかった。今の彼女なら、共に猟書家を討つことができるはず。ならば、もはや出し惜しみをする必要など何処にもない。
「炎の理を秘めし宝珠よ! 黒き魔剣と白き聖剣を原初の炎の中で一つにし、我が信念に応え、竜を灼く炎纏いし新たな紅蓮の竜殺しの剣となれ!」
 詠唱と共に、ジークは紅き炎王の鎧と、白き輝きを誇る盾の軍勢を身に纏う。それだけでなく、燃える竜翼を背中から生やし、果ては聖剣と魔剣を宝珠の力で一つに合わせ、紅蓮の灼竜剣へと転化させ。
「そ、そんな……。この力……こんなものを、あの子が持っているはずが……」
 エミールを抱えて飛翔するジークの姿を、ホワイトアルバムは驚愕して見上げるだけだった。あの、守られるだけだった非力な少女が、猟兵の使う宝珠に認められたというのか。
「お前の本じゃ書ききれないさ。ここからは、彼女の、俺達の物語だ!」
 忌むべき過去も、乗り越えるべき宿命も、全て焼き尽くし進み続ける。その先に未来があるのだと信じ続ける限り、人は絶望に負けなどしない。
「行くぞ、エミール。合わせられるかい?」
「や、やってみる! 私だって……」
 灼竜剣に二人の手が重なり、刃を覆う焔が一層に激しく燃え上がった。今までに食らったアリスの姿の中から、現状を打破すべきものを探すホワイトアルバムだったが、そんなものが都合よく見つかるはずもなく。
「どんなアリスに変わろうと無駄だ! 燃え尽きろ、猟書家!」
「ひっ……! そ、そんな……ぁぁぁぁぁっ!!」
 ジークとエミール。二人の振り下ろした灼竜剣が、邪悪なる猟書家を一刀の下に斬り捨てる。後に残されたのは、黒く焼け焦げた大地のみ。焔の軌跡だけが爪痕として残され、ホワイトアルバムの肉体は、欠片も残さず焼き尽くされた。
「……終わったね。大丈夫だったかい?」
「はい……。本当に……本当に、ありがとうございました!」
 最後に、頭を大きく下げて、エミールは猟兵達に礼を述べた。
 この先も、彼女を待っているのは、危険な冒険の数々だろう。だが、どんな危険に遭遇しようと、どれほど絶望的な光景が広がっていようと、彼女はもう自分から逃げることはないはずだ。
 逃れられないもの、それは自分。ならば、それを焼き尽くすのではなく、しっかりと弱さと向き合った上で、己の糧に変えるだけの何かを見つけられたはずだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月23日


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#アリスラビリンス
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#猟書家の侵攻
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#アリス適合者


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雛菊・璃奈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライカ・リコリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト