大祓百鬼夜行④〜親分の目が届く限り
●さあ表に出るんだにゃ!
「にゃふふふふ。このマヨイガにまでよう足を運びなすったにゃ?」
襖をぱぁん、と派手に開けて。
四つの尾を揺らしながら、大妖怪は訪れた猟兵へ視線を飛ばす。
彼女は強大な虞を纏う大妖怪。
一言一言に圧力が掛かる。
「さあ、猟兵さん達――儂の縄張りに入り込んだ分の落とし前、付けて頂きましょう!」
号令懐刀に手をかける動作。周囲の空気が一気に張り詰める。
まるで動いた瞬間、八つ裂きに遭うのではないかと幻視するほどの虞が空間を覆っていく。埋め尽くす、逃走イコール死だと知れ。
「……そんなに縮こまってないで、ちゃんと武器を構えるにゃ!」
ゴクリと生唾を飲む猟兵たちに、『東方親分』の激が飛ぶ。
討つかも知れぬ、その事を畏れるな。
認知しろ、感じろ――大妖怪の虞を浴びて、認識を改めよ。
「彼奴はバケモン、儂のパワーを持ってしても立ちゆかないにゃ。しかし、しかし――そんな東方親分、この『山本五郎左衛門』にすら畏れている場合ではないのにゃ!」
声を上げよ、妖怪軍団。
此処にいると大いに叫べ。
百鬼夜行を進むモノたちに、存在で示せ――必ず手が、刃の先が届くように。
「覚悟が出来た猟兵さんから掛かってくるにゃ!」
どんと構える親分気質。
胸を借りにさあ来いと威圧を乗せて、威風において威圧する。
「猟兵さん、それでは殺らせていただきます!」
彼女の背後。開け放たれた襖の向こうに蠢く影は闇の色。
大量の"妖怪軍団"が蠢くようにその時を待つ。戦うのは世界のためでは在るが、コレは全て"親分のため"だと自分をごまかすような気配を垂れ流しながら――。
●東方親分
「"山本五郎左衛門"が堂々と待ち構えているのだけど。貴方はどうする?」
空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・f00684)の呼び掛けは決戦に挑む者たちへの挑戦だ。
「骸魂の影響を完全に抑え込んでいるから、彼女は彼女。自分の意志でああして立ち塞がるの」
持ち前のカリスマ性を特化した「威風形態」での彼女の前に猟兵たちは立つ。
親分の妖怪軍団が、その背後に控え命令を下されるのを待機している。
「そう。彼女はたったひとりではないの。呼びかけに応え、貴方に対して相応な軍勢と共に襲ってくる」
猟兵が挑むと決めた能力。それに対応した軍勢がずらりと並ぶことだろう。
選べるほど、彼女には人望がある。
妖怪を束ねる力がある。
「……でも、彼女は配下の妖怪にも、優しい人だから。喚び出した配下の命の危機が迫るなら必ず"かばう"ように立ち回るようなの」
身を挺して、もしくは攻撃を反らせないなら足技で蹴り飛ばしてでも。
配下はあくまで、普通の妖怪に属する。付き従う律儀な者たちなのだ。
自分以外を殺させまいと"東方親分"は立ち回ろうとするだろう。
「その、これは個人的なお願いなのだけれど、骸魂を祓うだけに留めてほしいの。でもあ安心して、全力で戦って、気絶まで持ち込むなら立派な喧嘩だわ!」
この戦いは決戦、必要な戦いだ。
戦わなければならない。逃げては、ならない。
「現代と幽世、二つの世界を護るために彼女だって身体を張っているのだもの。私達だって期待に答えなくちゃ!」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
これは戦争依頼に属する【一章で完結する】依頼となります。
こちらは、カリスマ特化型「威風形態」の方のシナリオとなります。
(暴力特化型で「暴獣形態」の真の姿を表す方、ではありません)
プレイングボーナスは、親分と妖怪軍団の両方と戦い、誰も殺さないようにする。
妖怪軍団は、選ばれたユーベルコードに対応した軍勢が殺到します。
OP上でも明記している通り、このシナリオ上では山本五郎左衛門は、妖怪軍団の誰かが討伐や死傷しそうな怪我を受けそうな場合は、身を挺して防ごうとします。
かばう技能が300、とか思ってもらえるといいです。
なんか凄く、かばう為に動きます。
ちなみに、の彼女のメインで扱う武器は刀です。
全員採用は行えない場合がある為、プレイングに問題が無くても採用を行えない場合が存在します。ご留意いただけますと、幸いです。
第1章 ボス戦
『東方親分『山本五郎左衛門』威風形態』
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POW : どろん衆きませい!
レベル×1体の【東方妖怪のどろんバケラー 】を召喚する。[東方妖怪のどろんバケラー ]は【化術(ばけじゅつ)】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 獄卒衆きませい!
対象への質問と共に、【マヨヒガ(屋敷)のあちこち 】から【東方妖怪の地獄の獄卒軍団】を召喚する。満足な答えを得るまで、東方妖怪の地獄の獄卒軍団は対象を【嘘つきに対して威力増加する鬼棍棒】で攻撃する。
WIZ : 悪霊衆きませい!
自身が装備する【号令懐刀(ごうれいふところがたな) 】から【東方妖怪の悪霊軍団】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【妖怪憑依】の状態異常を与える。
👑11
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エドゥアルト・ルーデル
猫耳尻尾親分語尾にゃ…イイネ!写真いい?
これぐらい日常茶飯事で今更畏れも感じないが…懸念がある、戦場に大量に召喚するとアレが来ますぞ
早速出て来た【どろんバケラー】がドンドン一つに固められてるでござるな
びっくり顔も可愛い山本氏よ聞くがいい、これは【物理演算の神】がお戯れになられているでござる!処理重いからネ
バケラーの大群が神の作品に!なお体の制御を奪われただけで命には直ちに影響はないですぞ
多分
でもこのままだとハジケが足りないでござるね
塊めがけて拙者ちゃんドロップキック!するとどうなる!物理法則が乱れた世界故に勢いよく、四方八方バラバラに弾け散弾めいて山本氏を襲う!
まあ拙者も弾け飛ぶが仕方ないネ!
●現代において猫耳尻尾とニャにおける考察
「ええ!?猫耳尻尾親分語尾にゃ……イイネ!写真いい?」
誰より先に躍り出た謎のおっさん、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)は怖い物知らずだった。
いや、正しくは畏れ知らずというべきだろう。
大妖怪、山本五郎左衛門の堂々たる姿を見てアニメ好きが爆発しすぎた言葉を口走ったのだから。
アニメや漫画なら、直ぐにポーズ違うのフィギュアが並びだす姿。
ストラップサイズから、等身大まで様々な造形師が張り切る姿だと断見してもいい。世の造形師なら3日徹夜しても最高の出来のフィギュアを作り上げるはず!
『写真?ノーセンキューにゃ!』
「ええ?幾ら積んだらオーケーなんです?……はっ、まさかアニメの主役を勝ち取るまで!?」
エドゥアルトの想像力はすごい勢いで驀進する。
これぐらい日常茶飯事に住んでいる男を甘く見てはいけなかった。
山本五郎左衛門は何か奇妙な生き物を見ている錯覚に囚われたようで、頭を振り号令を掛ける。
『そも、儂大妖怪なんニャよ!?もっと虞を浴びて、怯むなりするニャ!』
おっとエドゥアルト選手、これは東方親分のお怒り(呆れ)に触れたぞ!
『どろん衆、此処にきませい!』
襖をスパンと開けて、向こうから現れたのはどれもコレもが人形で。
東方親分よりも尾の数が二本ほど少ない猫又妖怪の群れだった。
『にゃー!』
『にゃにゃー!』
化け猫どろんバケラーたちは一様に、化術を駆使して"怖そうな強面の猫又妖怪"に変身したつもりでいた。
山本の持ち前のレベルのぶんもある。
大層な数に、エドゥアルトは囲まれた。フゥウウ、シャァアアと威嚇する声が響く。猫の群れの中に飛び込んでしまったかのような気分にも襲われる。
『皆の衆、同時多発ではなく完全巨大の一個体にて、殺しの極意を魅せるにゃ!』
『にゃー!』
連携した化術を駆使して、エドゥアルトよりも巨大な獣姿の妖猫がずしん、と並び始め様はもう壮観だ。
――おお、どんどん一つに固められてるでござるな!
「びっくり顔も可愛い山本氏よ、素敵可愛いお耳を少々こちらに拝借!」
『なんニャ?儂らを見てようやく恐れおののく気になったのかにゃ?』
ぱたっ、と耳を揺らした山本に軽くときめきつつも、猫の殺到を一時的に食い止める。
「その化術、本当に真にわざにござるか?いいや断じて否と拙者いってしまうね!妖怪ではない、そうこれは神!!これは、神の仕業ですぞー!!!」
怒涛の勢いで喋るのはオタクのソレだが、発動するのは神の遊び。
戯れの一環だ。エドゥアルトの前で、指さされたどろんバケラーたちは物理演算の神の前に狂わされる。
実際に、それを目にしたものはいないだろう。
その事象こそが大災害。それから、大騒ぎを起こす神の為せる技。
『んニャァ!?み、皆の衆、どうしたニャ?』
刀を抜いて、おかしな挙動をし始めた仲間の元へ山本は慌てて掛ける。
何かがおかしい、尻尾の先がそう告げたのでだ。
「ほうらよおく見ておいてくださいまし!お戯れは此処にあり!描画処理速度がガックガクでござる」
――こうも数がいたら、処理速度にも甚大な被害っしょ。
エドゥアルトの狙いは、殺す殺されるのそれではなく。
全体の総数に大きな乱れを生じさせたことだ。
例え立派な牙と爪、妖術を駆使した戦術があッたとしても"動けなければ意味はない"!
「ほうらほうら、御覧なさい!これぞバケラーの大群が神の作品となった最高の日ですぞ!」
――ほら、パソコンとかの"F5"連打みたいなものですよ!
「身体の制御こそ神に遊ばれておりますが、命には直ちに影響はないですぞ」
――多分。
『……ただちに、ニャ?ほーうほーう?おぬし儂の刀で首をすこんと落とされたいわけじゃニャ?』
すぅうと刃を向ける美女の顔は、とても見事な笑顔であったと後にエドゥアルトは語る。
「御冗談を。このままでは弾けが足りないとは拙者すごくおもいますが」
がびがびと、電脳魔術士の術中に嵌った妖怪たちは思うように動けない。
その様子が、大変惜しいと男は思ったのだ。面白みという意味で、使わずにはいられなかった、
「とぅ!」
突然走り出すエドゥアルト、飛び上がりそして蹴飛ばしたのは!
今しがた塊にされた妖怪のソレ。
「今作の実写仮面なライダーでもこの飛び方みますっけ?まあいいや、拙者ちゃん渾身のドロップキックを喰らうのですゾ!」
外部刺激により物理法則が乱れれれば、塊はどうなると思う?
勢い良く、四方八方にバラバラに元の個体サイズへ戻されて飛び散るのだ!
何体合体が起こっていたかはエドゥアルトにもよく分からない。
『うぐぅ!?』
即席散弾銃の乱反射を、山本は打ち払えない。どれもこれも、生きる仲間のそれであったからだ。
着地地点を素早く見切り、どれもを速度無視で救おうとすると相応に体に負荷をかけるもの。
かばうという本質が、彼女に過労という言葉を与えたのである。
『……うにャ?』
エドゥアルト自身も弾け飛ぶ妖怪の中に紛れ込んでしまって、改めて向き直る頃にはどこかへ埋もれてしまっていた。は今のは何だったのかという気持ちが溢れる一方、なんて破天荒な攻撃を……そう思わずにはいられない山本だった。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
イイぜ、いい加減、殺すな何だとウンザリしてたんだ
全力で殺し合ってやる
(くれぐれも本当に殺してはいけませんよ)
(わーってるよ、イチイチ水差すなっての)
UDC液体金属とケルベロスを纏い、5mほどの黒い狼のような姿になる
氷を纏う前爪、重力を掴む後ろ爪、雷纏う尻尾、全身の毛皮は炎
「全員で喋るなウルセェ聴き取れねェ」
聞こえた質問には素直に答える
「犬でも狼でも妖怪でもねェ」「殺しに来たっつってんだろーが」
雑魚は殺気で恐怖を与えマヒさせる
相手にする余力も無ェ
狙いは親分1人のみ
相手の攻撃を勘で躱し、相手を前爪で踏みつけ宙返り
重力を操り空中を蹴りつけ、体当たりしてから尻尾で殴るぜ
カイム・クローバー
良いねぇ!これが親分の貫禄ってヤツかい?
ハハッ!最高じゃねぇか!さぁ、アンタらが倒す相手の一人――猟兵は此処に居るぜ!(手を広げて大声出して軍勢に聞こえるよう【悪目立ち】)
俺へ質問があるんだろ?良いぜ、嘘偽りなく答えてやるよ。
二丁銃を構えて、軍勢に対しての【覚悟】を決める。俺が定める覚悟は殺す覚悟じゃねぇ。一人の妖怪も殺さない覚悟だ!
銃弾を【クイックドロウ】で撃ちながら、地獄の極卒の骸魂を祓っていく。弾丸は【早業】で交換。"かばう"はさせねぇよ。する必要もねぇさ。
UCで集団を薙ぎ払い、散々暴れた挙句、銃弾を一発、山本五郎左衛門へと。
軍勢の波を潜り抜けて、銃弾一発、ぶち込んだ。【挑発】代わりさ。
●嘘なんてクソ食らえだ!
「イイぜ、いい加減殺すだ何だとウンザリしてたんだ」
赤い目を普段以上に光らせて水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は身を低く睨む。殺しに来るんなら殺してやりゃあいいだろ。返り討ちは人の特権だ。
自己犠牲上等の死にたがりだってんなら、お望み通り殺せばいい。
――くれぐれも本当に殺してはいけませんよ!
表面に浮き出ているアノンを注意する、別の人格の声が頭に響く。
表出人格を変えず声を届けるための腕輪が緑色がキラリと輝いていた。
――わーってるよ、いちいち水指すなっての。
誰も殺さないようにする。説明を受けたときにも言われた。
ロキにもまた、アノンが嫌気が指すほど大量に言われた。
――わかってる。
でも苛立ちに似た気分を焚き付けたのはお前らだ。
――加減を間違えても知らねぇからな。
『ウンザリ。血気盛んな猟兵さんニャンじゃなあ、儂らの相手にさあなるものか?』
「――しっかし、良いねぇ!」
ひゅう、と別の方から口笛が鳴った。カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は東方親分"山本五郎左衛門"の覚悟を評価する。
――これが親分の貫禄ってヤツかい?
「――ッハハ!最高じゃねぇか!仲間を守り、自分も含めて俺らを本気で殺しに掛かるだなんて!」
仲間想いで、故郷を守りたい気持ちを肌で感じてしまうじゃないか。
『これまた、山本五郎左衛門が揉め事を仲裁しているだけともいうにゃ?本来ならば喧嘩はご法度!喧嘩両成敗に処したいところにゃ』
老体に鞭打ってやらずに済むならば、それに越したことはないのだが。
彼女は四つの尾を揺らして、本心かわからないことを言う。
『じゃから大妖怪たる儂が独り、孤軍奮闘する必要はないのにゃ。若い衆に任せても良かろう』
指をパチン、と鳴らす。ざわざわと蠢く気配は、呼ばれたものだとマヨイガのあちこちから飛び出そうとする。
『獄卒衆きませい!堂々たる姿勢を猟兵さん達に見せるのにゃ!』
色んな隙間から、地獄の獄卒がぬぅうと現れる。
牛頭、馬頭。他にも鹿や虎、獅子や猪。獣の頭部を持ち、筋骨隆々な大型な者たちだ。どの手にも、身長に追いつくサイズの鬼棍棒を所持していて、呼吸が荒い――。
地獄の獄卒として審判を下すべきは猟兵と彼ら全てが弁えて、覚悟の上で現れているのだから。
「さぁ、アンタらが倒す相手の一人――猟兵は此処に居るぜ!」
手を広げ、大声を出して軍勢を喚ぶ。挑発的態度で、あえて目立つように魅せるのだ。何処へ散るではない。大声を出す、"猟兵(ひょうてき)"を狙いに来い。
カイムの目論見通り、マヨイガから溢れ出してくる軍勢はどれもこれもがカイムに狙いを定めていた。
「熱心に見つめんなよ。俺へ質問があるんだろ?良いぜ、嘘偽り無く答えてやるよ」
『汝、我らが敵か?』
『汝、我らが試練を超えるべきものか?』
「どっちもイエスだ。今は立場上敵で、乗り越えていくべきものだと思う!」
二丁拳銃を素早く構え、軍勢の数がぞろぞろと増え続けていく様を壮観の一言で片付けた。
どれもこれもが山本を支持し、軍勢の一つとして存在する。
――どんだけ顔広いんだこの親分。
――殺意はどいつもこいつも高いと来た。
『汝の覚悟は、此処に示せるものか?』
「ん?覚悟ならとっくに装填済みさ、俺が定める覚悟ってのはお前ら全員鏖なんかじゃねえ。――この場における誰一人。妖怪の誰もを殺さない覚悟だ!」
――試練として、殺すを求めちゃいないんだろ?
言うが速いか二丁拳銃をクイックドロウにて、同時ではなく交互に放つ。
地獄の獄卒共にも骸魂が取り憑くものがあってはコトだ、カイムには見当はつけられない。
「この場に立つ資格があるのは、俺の一手を躱せる奴だけさ」
骸魂の影響から、散弾を当ててやることで百鬼夜行の軍勢から離脱させる。
――ただの妖怪へと戻れば、お前らは俺の敵ではない。
弾丸の交換もまた、手慣れたモノ。
『ただただ軍勢を浪費させるために喚んだと思うたかニャ!儂の身なりならば紛れ込むは容易なことにゃ!』
戦場の中において銃使いの致命的弱点はリロード……そのタイミングを付かれることだ。
「堂々出陣、お疲れ様だ。しかし"かばう"はさせねぇよ?その必要もねぇさ」
山本が剣を抜いている。だがカイムはお構いなしだ。
「この試練の受講代につけてくれよ、弾丸は。こうして俺らは超えてくんだ!」
広範囲に狙いを定め敵性を有するモノめがけ、集団を薙ぎ払うように集中射撃を行って。ぎゃあとかぐう、とか悲鳴を狂詩曲代わりに聞いたのもつかの間。散々暴れた挙げ句、怒った表情で飛び込んできた山本が狙撃手に向けるのは"渾身の虞"。浴びせかけられて、軍勢の波を鎮圧したカイムはそれでも銃弾一発をぶち込んだ!
ひょい、と躱されるのは構わない。
――俺たちは怯むような戦いはしないぜ。
挑発代わりに、その弾を贈っておく。受け取り方は親分の理解度によるが。
「……おいおいそっちだけじゃねえ、オレにも来いよ」
大量の地獄の軍勢、こちらはカイムからは見えずだった向こう側。
素早く乗り込むのは"暴食の王"ケルベロス。オブリビオンマシンだ。
その丈、標準的な5メートルを搭載し、しかし登場者の意思を反映し人型とは異なった。四足を地に付ける、黒い狼のような姿を取っていたのである。
氷を纏う冷たき前足。重力を掴む後ろ足。
雷纏う尻尾から、全身の黒い毛皮のようなものは全てが炎。
それから、黒く玉虫色に光る液体金属を表面上に表わして、普段の怜悧の状態が再現される。
『禍々しく攻撃的。実に実に殺意が高い!犬か、いやはたまた妖怪か……?』
『我らを殺す殺し屋なのではないか?』
『問おう、それで我らが故郷を救う気か?』
アノンに向けられた質問は、お前こそが魔性の手先ではないのか。
百鬼夜行に与していて、我らを滅ぼす任を遣わされたものではないか。
牛頭や馬頭どれもが嘘ではないかの証明を求める。
まずは質疑から。それが山本に協力する軍勢の地獄における教示である。
口々に質問を浴びせかけながら、物理にモノを言わせる彼らは鬼棍棒をオブリビオンマシンへ振るってきた。
がきん、と硬い音。爆ぜる金属音。
体毛の炎に絡め取られ、炎に寄る手傷を追うものまでいる。問おう問い続けよう。
「全員で喋るなウルセェ聴き取れねェ」
満足する答えを聞き届けるまで。山本が攻撃を辞めるよう指示を出すまで彼らはやめない。
「犬でも狼でも、妖怪でもねェ!チッ、数だけにモノを言わせやがって!オレは殺し屋でもねぇわ!ただ殺しに来たっつってんだろーが!」
吠え猛る声を殺気に載せて、ごおう、と殺しの虞で周囲を圧倒した。
恐怖を与える声色に、すこしでもアノンへ虞を抱くなら、身を竦めて動けなくなるだろう。
――お前らこそ、死にたくないんだろ。
――じゃあ黙って木偶の坊にでもなってろ!
『気配の使い方、実に見事。殺さず無力化されるとはあちらでも容易く蹴散らされておったし、若い衆もまだまだ……にゃ!』
揺れる尾が、地獄の軍勢に手を出す可能性を考慮して山本が動き誰よりも前に進み出る。
「オレにも全部の雑魚を壊し尽くす余力はねェんでね!」
進み出てきた山本の、素早い一線をケルベロスはひらりと躱す。
小柄ながら殺しの技に長けた冴えた一撃だったと、アノンは内心感心を示した。
飛び退いたところから、素早く氷の前足を伸ばし踏みつけて宙へ身を投げる。
『だから儂ひとりをか!』
両腕が氷に侵食されて、わずかに大妖怪が怯んだ。あの程度で潰せる彼女ではない。それを見越して巨大な体躯ながら、身軽な宙返りを披露して。
重力を繰る後ろ足で空中を蹴りつけて、方向転換を加速させる。
――オレの狙いは!どの足での追加攻撃でもねえ!
そのまま体を丸めたケルベロスで思い切り衝突し、遅れた一撃……長い尾に寄る激しい雷撃が山本へ直撃した。
『にゃふああああ~~~!?』
下肢の毛並みと尻尾が、雷を受けてすごい勢いで逆立ったのをアノンは見た。
全く死ぬようすを見せない大妖怪の、間抜けな様をただ鼻で笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
まあ今回の百鬼夜行はあなたの発案だとは聞きました。それなりの【覚悟】があってのことでしょうね。
よほど今回のフォーミュラに思い入れがあるんでしょうね――ま、それは正気に戻った後で聞きましょう。
というわけで早速覚えたばかりの新UCでFPSの兵士を召喚(属性は「対オブリビオン(あくまで憑依した骸魂のみを始末するという目的で
)」)、【一斉発射】といきましょうか――ああ、一応戦闘不能状態にとどめておきますよ(【属性攻撃・2回攻撃・制圧射撃】)。
※アドリブ・連携歓迎
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
キャバリアには乗らず魔銃のレプリカを持って出撃
覚悟はとうに出来ている
もう一度殺せるものなら殺してみろ、俺も全力で行く
かなり痛いだろうが我慢してくれよ
POWで判定
孔雀輪で【空中駆動】【空中浮遊】を使い移動
リンクアイと右目とリンクし【視力】【暗視】で【情報収集】【偵察】を行い不意打ちを防いで敵の位置を確認
敵の攻撃は風の【結界術】や【オーラ防御】で防いだり、【見切り】で避ける
多少なら【覚悟】と【気合い】で受ける
飛び回りながら指定UCで攻撃
魔銃のレプリカから義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】、黄の災い:感電【マヒ攻撃】の弱めた力を付与した弾丸を広範囲に放ち戦闘不能状態にするのが狙い
●鎮圧せよ
すぅう。息を整えて、背を伸ばし衣服の汚れを払い除け、身を正す。
東方親分"山本五郎左衛門"の姿は、戦うと決めた覚悟に満ちていた。
何度でも、どこまでも。猟兵の相手をする覚悟に。
『どうにゃ?虞を少しでも感じるかにゃ、猟兵さん?』
「まあ今回の百鬼夜行……これはあなたの発案だと聞きました。よほどの覚悟なのだと、理解します」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)にも彼女たち、妖怪の決意は"ゲーム"のそれではないと分かる。
残基のない、誰かを救うためのギリギリの戦い。
「わたしたちに見えないオブリビオン・フォーミュラー……忘れ去られた究極妖怪への認知はそれほどに重要なのでしょう?」
骸魂の元凶。その存在は大親分にそう例えられる。
現実世界で忘れ去られた他の妖怪との差こそないが、しかし――持っていた強大な力が問題なのだ。
忘れ去られてはいけなかった。誰からも認知されなくなってはいけなかった。
骸のまま彷徨うだけならまだ良かったが、蘇ってしまえば話は異なる。
『喜んで滅びを迎えたがる者なぞおらぬじゃろう?儂らとてそうにゃ!』
「――ま、それは正気に戻った後で聞きましょう」
「いや……、東方親分は、あれで恐らく正気だ。逆に力を操っている。普段通りよりもっと強い力を身に着けて」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はシャルロッテの認識を正そうと試みる。
誤認は危険だ。油断をして、相手にしてはいけない。
キャバリアには乗らず、キャバリアの武装――銀の魔銃のレプリカをその手に携える。同様の銃だ、本物より多少劣るがそこまで気になるものではない。
「こちらも覚悟はとうに出来ている」
自分の首元を、逆手の親指で右から左へ。
「刎ねるなら此処で頼む。デッドマンな俺をもう一度殺せるものなら、殺してみろ」
挑発としても皮肉としても効きすぎる言葉を選び、ルイスは全力で挑むと告げるのだ。刀という牙を突き立てて、派手にはねてみせろ、と。
「多少痛いだろうが我慢してくれよ」
『どちらの認識でも、儂らは構わぬよ。堂々挑み、殺さんとするだけにゃ!』
すぱん。山本の言葉を合図にマヨイガから勢い良く東方妖怪が溢れ出てくる。
ずるりずるりと身を捩る、大小様々の色とりどりな蛇の群れ。
山奥や忘れ去られた場所に祭り上げられたことのある蛇神。
どろんバケラーたちは牙を剥き、化け術に特化した姿で大口を上げて突有無を言わさず突っ込んでくる。
「認識に多少の誤差があってもやることはあまり変わらないでしょう?憶えたばかりの新しい技を試すうってつけの機会です!さあ、このキャラクターで、強くてニューゲームと行きましょう!」
シャルロッテと同等の経験を有したFPSの兵士がずらりと並ぶ。
任意で付与された属性は"対オブリビオン"。敵対するのはあくまで骸魂のみ。
――オブリビオン化は、骸魂を呑み込んだり呑み込まれたりしたからでしょう?
――ならば、その憑依状態を解くことがこの問題、この場所での覚悟の示し方となるでしょう。
「属性不可完了、総勢100体の軍勢をわたしはあなたに向けましょう。さあ銃撃戦の幕開けです!」
シャルロッテが手をすううとあげて、降ろした瞬間。
兵士たちは区域:マヨイガ鎮圧を目標に銃撃を始める。敵性個体は全て蛇だ。標的は身をよじりすぐ逃げ、接敵を行うもの。油断はできない、近づけてもいけない。
「撃ち込むことをやめては兵士の恥ですよ!」
激励の言葉を親しげに飛ばす指揮官、その傍らでルイスもまた、鎮圧に動く。
足に取り付けたるは風火輪。ただ、ルイスのそれは孔雀が眼が変化したもので――いや、単なる飾りであるはずがない。
摩訶不思議の事象を起こすメガリスだ。
空中駆動を可能とする輪は、空中歩行を可能とする風を扱うものである。
つまりは、ルイスに阻まれる道はない。
リンクアイ――術者と視界を共有できるその力を右目と繋ぐ。
見極めに特化した視力において、ルイスの右目が見た視界は、妖怪軍団の後方。
山本の視界。彼らの背中を見守る彼女は、当然"かばう"為にどの妖怪のことも見ている。見ているために一番後方でどんと構えていなければならない。
「――本当に、気軽に動く気がないのか。俺らを殺したいのか、持ってる力だけを示してほしいのか、わかりにくい」
短く悪態を付いたルイスの敵の位置把握は済む。
不意打ちに、飛び上がる個体ですら山本は気配で察知し、顔を、まあるい瞳を向けている。
『シャァアアアアア!!』
牙を向けるバケラー共の一斉攻撃は、結界術にオーラを乗せた防御で見切り、壁で阻む感覚で避ける。
ぶつかった者達は当然、怯みはしても逃げはしない。
――ただの獣ではないか。
「この場でさえ百鬼夜行をする必要はあるまい
「バラバラな単体威嚇射撃は今すぐやめて下さい。いいですか同時です!さあ、一斉に……放て!」
兵士たちの銃撃総攻撃。パパパパパパと軽い音が跳ねる一方で、打ち込まれているのは武器を持たぬ妖怪軍団。
山本の血相を変えた様子は、怯えた仔猫のようだった。
『わわわ、無慈悲かにゃ!?』
「いいえ?これは拠点制圧ゲームでしょう?あなた方に殺意だけが有りすぎる。わたしの目的は殲滅ではないです。一応、戦闘不能状態に留めているはずですよ」
『……うにゃ?』
打ち込まれた弾丸が、打ち砕いているのは骸魂。
蛇に化けたどろんバケラーがばたりと斃れて行く様子に、血の一滴も確認できない。
昏倒はしている。いきても、いる。
『……ほおう?成程、手練だにゃあ?』
「手練は一人いれば十分か?殺しの虞は浅いな」
飛び回りながら、ルイスは見極めを続けている。
蛇が気合で飛び跳ね切れない限界高度から、メガリスと魔銃のリンクを強固なものとする。
「メガリスとのリンク形成、強化行程完了」
エンチャントバースト、展開。
銃に込める弾丸は、義眼の藍が司る災い――"圧壊"。
それから黃の災い――"感電"。何方も合わせ、融合させた特別弾。
「いいか、相手が百鬼夜行の群れならば――俺たちは、一騎当千だ」
付与した属性を弱めた力として付与し、広範囲にルイスもまた、ばらまく。
シャルロッテの銃撃よりも更に広範囲。
それも、麻痺した骸魂が沈黙する、制圧の部類だった。ばたばた斃れる者は多い。ルイスの手に掛かったものはピクピクと痙攣している始末。
『殺してはいないと!』
すべての沈黙を確認したルイスの首に、刃を向けた山本がにやりと笑った。
『……お見事!ああ、殺して蹴散らす首にはどちらももったいないにゃ~』
山本の攻撃は刀ではなく、不意打ちの蹴りで返された。
空中からルイスは叩き落される。
『死ぬほどいたーい攻撃をしたつもりにゃ、どーだ参ったかにゃ!』
儂の軍勢はまだまだいるぞ。大妖怪はそんな余裕で告げているようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
疎忘・萃請
からりと笑う彼女に
さあ、やりあおう、なんて声をかけ
そちらが百鬼を率いるならば
アタシも百鬼を呼ぶだけよ
そら出てこい
萃まれ、集え、吾が名の元に
妖怪に妖怪をぶつけ
アタシは山本の親分と本気でやりあうだけ
相手はあやかし
ヒトの子ではないから一本下駄をぶつけるように脱ぎ捨てる
ぺたぺたと床を踏み締め肉薄
その懐刀にアタシの懐刀をぶつけよう
嗚呼、なんて畏れだろうか
流石に気分が高揚する
鋭い爪を山本の親分へと立てる
ふふ、これではアタシも猫のようだな?
鬼の怪力で明食鎖を振り回し、ぶち当てる
アタシはお前をとても気に入ったよ
次は共に戦おう
●二つの百鬼夜行が雁首を揃えたならば
「さあ、やりあおう」
掛ける声はからからと、東方親分"山本五郎左衛門"のもとへ。
疎忘・萃請(忘れ鬼・f24649)の声も合わせて、どちらの声も、からからと。
愉快に笑うその声は、どちらもが、愉快に転がる鈴か賽の目のよう。
『その気持ち大事にするにゃ、さあ……悪霊衆、此処へきませい!』
懐刀の刃を光らせ、号令の一声を掛ける。
すると、するすると東方妖怪の悪霊軍団がぞろぞろと、百鬼夜行の群れに乗じて溢れてくる。
「そちらが百鬼を率いるならば、アタシも百鬼を喚ぶだけよ」
東方妖怪たちの軍団は、鬼が中心の者共ばかり。
「そら出てこい、萃まれ、集え、吾が名の元に」
片や、手遊ぶように忘れられた妖怪の霊を並べ合わせて百鬼と百鬼が顔を合わせる。萃請の喚ばうは天狗の群れ、高下駄の音もまた、からからと鬼に敵対して音を弾ませた。
「妖怪は妖怪にぶつける、それもまた百鬼夜行というもの」
『ほおう猟兵さんはそういうクチかにゃ』
「アタシは山本の親分と本気でやり合える、その方がお望みだろう?」
『鬼の軍勢と天狗ので軍勢!その総大将として挑むと言うんだにゃ?』
では掛かれ!
2つの号令は同時に下され、軍勢は激しくぶつかり合う。
両軍勢のぎゃあぎゃあ、と叫ぶ声は、まるで背景のように遠くなる。
山本の軍勢は殺そうとするだろうが、萃請の軍勢はどうだろう。
「そちらはあやかし、ヒトのような顔をして、ヒトの子では無いだろう?」
朱塗りの鬼掩蔽。一本下駄を、ゆらりと揺らして、からころり。
驚くものでないとの理解をぶつけるように脱ぎ捨てて。
『そちらもまたヒトではないな、猟兵さんッ!』
懐刀で、下駄を撃ち落とし。二撃目のもう片方を撃ち落とした時、山本が見たものは。一歩遅い萃請の近くに肉薄した光景だ。
ペタペタと肌して床を踏みしめて、けんけんぱあと飛ぶように、萃請は飛び肉薄していたのだ。
『……くぅっ!"鬼"か、お主!』
「正解」
懐刀にも懐刀を。
突撃してきた弾丸のように切迫した空気を生み出したものを。
山本は猫の速さで見切り受けていた、何たる俊敏。なんたるものぞ。
ひょい、と直ぐに飛び退いた両者が包む空気は、萃請を筆頭にのらりくらり。
『悪い鬼とは思いませぬが、儂にも知らぬ鬼なれば。否、猟兵さんに何ら変わりはありませぬ!』
殺意を乗せた畏れを両肩に。揺れる気配を鬼火のように漂わせる山本へ、萃請は愉快なものを見る。
「嗚呼、なんて畏れだろうか」
――流石に気分が高揚する。
『儂の虞に慄いたかにゃ?』
「笑止」
次の切り結びには、懐刀を持たぬ手――鋭い爪で、山本の親分の喉を掴まんと手をのばす。
『にゃぁっはっはぁ~!笑いが止まらぬとはこのことニャ!』
笑いが止まらぬとはこの事。首を折ろうとするのは鬼の所業。
「ん?……ふふふ、まるでこれではアタシも猫のようだな?」
猫又相手に、猫のような鋭い爪を。
なんだ。これは。
「此処で一つ鬼らしい部分も見せようか」
じゃらりと冷たい鉛の音を引く。先程から、いいや。ずっとその場にあった明食鎖にようやく意味を持たせる。
怪力で持ち上げて、ぶん、ぶん、と勢いをつける。
「アタシはお前をとても気に入ったよ」
『そいつはどうもにゃ、でもそれは激しく痛そうニャンじゃけど……?』
「分銅鎖だ、かなり重い。非力な猫なら潰れるなあ」
ぶぅん。最後に勢いをつけて、投げつけたそれは両軍が争う妖怪の方へ向けられた。山本は自軍の妖怪をかばうのだ。そう聞いた。
大将として、相手の軍勢に手を出さぬとは。鬼としても何も申した憶えはない。
『うにゃああ!?』
全力ダッシュの山本は案の定軍勢への投擲を庇った。
どごお、と厭な音がやや遠く離れた場所に立つ、萃請の耳にも入るほど。
手応えは合った。臓器の一つは奪えただろうか。
「次は共に戦おう。同じ目標に、同じ敵に轡を並べて」
大成功
🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
殺さずは不得手だがな。
貴殿を捨て置いて逃げる気も毛頭無い。
手持ちありったけの短剣を【投擲】。
普段は【誘導弾】用のみに使う【念動力】を集中し周囲に滞空待機、
敵UCの悪霊軍団が迫るのを見計らいその場で回転振り、UC【映す心断ち割る呪剣】発動。此方を見る限り残らず対象範疇、全員気絶させる。
自身は東方親分に【覇気】を込め【大声】張り【言いくるめ】、一対一の【決闘】に持ち込むべく【挑発】。
来い。サシで勝負だ、山本五郎左衛門!
眠りこけた手下の影に隠れるようなら諸共【なぎ払い】ぞ!
どう反応しようが【ダッシュ】で接敵し【2回攻撃】。
一撃目で号令懐刀を【武器落とし】、返す刀は直接当てずUCで気絶させにかかる。
●河童の川流れ(物理)
――殺さずは、不得手だがな。
青く燃える鉛を内側に抱き、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は思考する。
殲滅するではなく、ただ殺さずで倒せと。
コレは戦争ではあるが、幽世の妖怪たちが行う命がけの強行作戦でもあると。
「戦いは戦い。身を置く限りは、戦わねばならない。貴殿を此処に捨て置き逃げる気も毛頭無い」
せめて戦い、その意向に順する動きでしめさねば。
東方親分"山本五郎左衛門"は大きく胸を張り、ルパートの姿を見守る。
『ではどうする?猟兵さん、儂は此処へ来たお主らを逃さないにゃ』
「こうする」
ブラックスミスの短刀をずらりと空中に放り投げ、その総数を空中に対空させる。
ピタリと空中に縫い止める事になったのは念動力。
これは本来、誘導弾代わりに遣うもの。しかし、使い方を変えれば、それは放つ攻撃の残数となる。
「これは全て、自分の一部。ありったけを出して入るが……」
『それは本当に全てであるとは答えぬと。にゃあ~……そういう戦い方もありだにゃ!』
腰に下げた刀ではなく、懐から小さき刀を取り出す。
『そちらがその気ならば、こちらもまた数攻めにて失礼つかまつる!――悪霊衆きませい!』
短い刀が虞に覆われて、濃い紫のオーラに覆われたかと思うと、飛び出してくるのはカッパの群れだ。
東方妖怪、それも悪霊の軍団が、ルパートに向かって差し向けられる。
どれも性根の腐った悪戯ガッパ。短刀代わりに投げてくるのは鋼鉄のキュウリ。
カッパの皿もまた、武器として扱う凶器の軍団であった。
「悪霊軍団とはよく言ったもの、確かに正気ではない」
――だが、倒すだけに止めろと。
迫る様子を見計らい、その場で回転振り――!
「だが、映す心断ち割る呪剣において、それは特に問題ともならない!」
UCが発動する。カッパの群れはその対空した短刀を目にしていた事で、異変に見舞われる。
カッパの群れがばったばったと気絶の呪いに堕ちたのだ。
ああ哀れ。カッパの群れは誰ひとりとして、鎧を傷つけることすら出来ぬまま。
全員が対象範疇になったがために気を逸してしまった。
『んおぉ!?』
「さあ、こちらだ向こうではない!」
大声を張り上げて、青を更にゴウと燃やすのだ。
熱く、激しく、猛る鬼が様相で。
「来い、サシで勝負だ、山本五郎左衛門!」
短刀ではない剣を抜け、そして敵として殺しの技を見せてみよ。
一対一に誘い込む挑発に、彼女は簡単に乗ってきた。
『呼ばれて拒絶を示していたら、親分を名乗れないにゃ!』
鋭い爪でありながら、剣を抜き。部下が倒れた様に安否の気配を向けながら、鎧の姿を探す。
山本は少し目を放した間にルパートの姿を見失っていたのだ。
眠りこけて山となったカッパの影に隠れ、ルパート気合の一閃!
ブラックスミスの短剣ではなく。黄金魔剣ルパートの重き攻撃だ。
カッパ諸共薙ぎ払い、進み出てきたルパートはそのままダッシュにて迫る!
「では何を名乗る!大妖怪か?それでは示しは全く着かぬが!」
かきぃん。号令懐刀をふっとばし、山本が得意の得物に手を伸ばしたその僅かな隙を返す刃にて狙った。
斬るではない。攻撃として刃が来ると"二度目の攻撃にて、認識させた"。
当然迎え撃つならば、刃を見るのだ。
『儂は儂。老体は名乗る名を失ったら、隠居してごろごろにゃんとするだけにゃ……!』
生きていればの話だけれど、と言う山本だが、意識を断ち、気絶させる呪いにおいて。抗うものの、抵抗を虚しくバタリと倒れ込む様を鎧は確かに見届けた。
――例え、僅かな時間稼ぎにしかならぬとも。
――戦う者を見据え続ける度量は、確かに肝が座っている……!
大成功
🔵🔵🔵
ハルア・ガーラント
●WIZ
仲間を庇うなら命の大事さは解っている筈なのに
上に立つ者の責務と思っているんでしょうか
された方は責任を感じて辛いだけ
翼を使い[空中戦]を交え〈パニッシャー〉と〈銀曜銃〉の二丁拳銃で狙うのは配下の妖怪達
パニッシャーの反動を〈咎人の鎖〉で抑えつつ
ギリギリ庇える位置にいる妖怪を狙います
彼女の攻撃がわたしに届きそうだと[第六感]が伝えてきたら[オーラを厚く纏い防御]
悪霊軍団が出現したらこちらもUC発動
執行官さんの聖盾で攻撃を防ぎながらふたり[浄化]の力を込めた散弾銃形態で一気に殲滅を図ります
より光と力を纏わせ一網打尽を図る銃撃を放ち、それから庇おうとした敵の横っ腹に執行官さんの銃の一撃を!
●妖と魔に光は刺して
「仲間を庇うなら、命の大事さは十分以上に解っている筈でしょう……っ」
ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)の声に、パタッ、と耳を揺らした東方親分"山本五郎左衛門"。ゆらゆらと四つの尾は不規則に揺れていた。
『解っておるから、こうして立つ!儂の命一つでなんとかなるなら巻き込もうとは思うたりせんにゃ!』
山本は苦虫を噛み潰したような顔をする。
抑え込んでいるとは言え骸魂の分まで合わせた虞の使い方は本意ではない。
二つの故郷を救うを優先に敷いた為だ――本意では、ないのだ。
「上に立つ者の責務と思っているんでしょうが……わたし、あえて言いますね」
大きな翼を広げ、ハルアは空を制する。
同じくらいの身長で、感じる責務の重さを長命ゆえの貫禄で。
視線で。覚悟で。同じ目の高さのままでは、決して痛手を突けないだろう、大妖怪へ向けて。
世界の狭間か引き抜くように狙撃銃"パニッシャー"へと手の中に喚び収めて、銀曜銃も合わせ二丁の銃を向けることで"間違っている"と天使は叫ぶ。
引き金を引く事は避けられない。山本の目が届く限り、身を退く事は求められていない。逃げ出し背を向けようものなら、山本が繰り出すのは――鋭利な爪だろう。
猟兵を信じ、此処で構えた彼女にとってそれこそが裏切り行為――。
「庇われた方は、ただ責任を感じて"辛い"だけなんですよ!」
『皆も承諾のうえにゃ、猟兵さん!我らが覚悟は、一蓮托生!』
山本が掲げた号令懐刀からごおう、と飛び出す虞の乱舞。
妖力の塊といってもいい。風のようで、重くて、郷愁を吹かせる力が悪霊の軍勢を呼び寄せる。
マヨイガから飛び出すではなく懐刀という世界の隙間から、飛び出してきたのは。
『ぅ"う"う"うう』
赤や青、ギラつく灼熱の業火に身を燃やす地獄の番犬。
正しくは阿と吽の名を刻む狛犬の成れの果て、犬神の群れだった。
酷似した姿の二体ずつ。どれもが激しく炎を燃やし、があがあと叫び吠えて、ハルアを脅す。
前方に躍り出た個体を踏み鋭く飛び跳ねて、空を制するハルアにその牙を届かせんと獣は駆ける。
「いいえ、一蓮托生だとしても。堂々ひとりで立ち回ることも出来た筈」
大口を開けた獣の群れに近距離における、銀曜銃の煌めきを。
魔弾における指定色を、ハルアは意識していなかったが此処は幽世におけるマヨイガ。どことなく閉鎖的で、道を示すは親分の号令一つ。
あかりは薄く、輝ける明日を見るものは多くも示される道はない。
だからこその、光の精霊が"輝ける白や銀"で軌跡を描くのだ。輝きは此処にあり。星のように、輝ける"妖怪"を見てそれでも戦う者の証明を残すために。
『猟兵さんは認識しなければならんのにゃ、我らが群れた先に"忘却の向こうへ消失している彼奴"を!』
山本が身を低く、群れの向こう側から駆けてくる。
損害を最小に、抜いた刀を用いて全てを守り猟兵を殺す牙とするため。
斃されるだけの戦いに持ち込ませないために。
「認識ならば!きっときっと、出来ますから!」
沢山の願いが、沢山の声が誰かに必ず届くから。
パニッシャーでの狙撃を連続敢行を決断し、即時行動に移るハルア。
反動はなるべく、咎人の鎖の補佐で抑えつつ、獣の群れに襲われる哀れな天使をする時間は無い。
近場の敵ではなく。山本がギリギリで庇える位置の妖怪の、的確に足を撃つ。
『虞よ、畏れ、見て聞け、必ず!それが儂の願いでもあるのにゃ!』
「……!」
かきぃん。銃撃を弾いた刃の音。獣の背を足場に、飛べぬ翼を持たぬ大妖怪は空へ身を投げていた。
鋭い風ごと切り裂くように繰り出される一閃。
ハルアはこれを、二つの銃をクロスさせて、打ち込まれる可能性のある箇所を受けて止める。
オーラの防御は銃に込めて、強化した。銃弾を弾く器用さを持ってしても容易く壊せる武器ではない。
受けて、そして思い切り弾き飛ばす!
「其処までがわたしの間合いです。それ以上の接近は何人たりとも受付ませんからね!」
間合いに滞在できる此度許可された者はひとり。
黒の羽を僅かに散らして突然現れた黒翼の執行官だけだ。
いつの間にか現れた存在に、ざわめきが広がる。
『怯むにゃ!殺しの技を、殺す目標を、意志を曲げるンにゃない!』
厳しい声を飛ばす山本の声に意識を戦いに戻す妖怪の群れはハルアには哀れに映る。全力で戦っている。でも、何かが、悲しい戦いに思うのだ――。
「――」
手を翳す執行官に合わせ聖盾が発生し、魔を司る群れの攻撃は届かなくなる。
純粋な光と闇の戦争だ。ふたり同時に浄化の力を込めた、散弾銃を群れに派手に浴びせかけて、殲滅行動へと移る。
「悪霊の皆さんは、今すぐいるべき場所に戻りなさい!」
来た場所へ。現れた場所へ。喚ばれる前の居るべき場所へ。
光の弾幕が犬神達に浴びせかかり、それでも尚、山本は抵抗するように妖怪衆をかばいに走る!
『させるかにゃ……にゃああっ!?』
一際大型個体を庇うため、地を激しく蹴った山本の体が銃撃を庇うことは出来なかった。それどころか、庇おうとした瞬間を狙った涼しい顔をした執行官の剣銃による単純な刺突を、躱しきれず受けるなどと――。
大成功
🔵🔵🔵
九十九折・在か
【狩人】
しへへ
ケンカ?
死ぬほどだぁいすき
でもザイオン
これはタダのケンカなんかじゃねぇ
サイコーに楽しくてハデなケンカになる
あっちが命を懸けるなら
こっちも命を懸けなきゃ釣り合わねぇ!
……ん?タダの意味が違う?
☆戦闘
ロクのUC『響徊』で創られた森を
導きに従って山本の下へ
……ザイオンの森は深くて濃ゆくて生き生きしてて
なんだか懐かしいな
山本と相対したらUC『森の王』発動
雷纏いし巨大ヘラジカとなり
威風堂々名乗り上げ
「任された!
行くぜ、妖怪の王!
私はこの森、この緑、この命達の王!
もはや言葉は必要ない!
いざいざ参る!!」
以降、雷で軍団を無力化しつつ
脚で踏付け
角で薙払い
*アドリブ大歓迎
ロク・ザイオン
【狩人】
縄張り争いなら、逃げた方が負けでケリがつく。
殺し合うことまで、森は求めない。
……ただの喧嘩は得意かい、在か。
ただってのは……えっと
…………うん。それでいいよ。
────ああァァアアア!!!
(「響徊」
【大声】の届く先全てを迷いの森に変え
大軍勢を惑わせてしまおう
【目立たない】よう【地形利用】
森に紛れて軍勢から隠れながら、この群れの主の元まで在かを導く)
今からここは在かの森だ。
向こうの長、任せた。
(在かの電撃を森中の梢を伝わらせ伝播
全員纏めて感電させれば無力化できるだろうか)
●王の行進
ぼたたた。
不意打ちで小さくとも風穴を開けた脇腹を抑えた"東方親分"の姿。
口に溜まった不要の血を適当に吐いて、山本五郎左衛門の大一番に打って出る。
『(そうだ、もう少し――儂は頑張れる、――――!)』
じゃりぃと音を立てる四肢に力を込めて、新たな靴音に耳を揺らした。
「縄張り争いっつったな」
『言ったとも。それに此処は儂の領域!東方親分に、"二言無し"にゃああああ~!』
くわっ、と畏れを膨大に垂れ流し、威圧する様。
ロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)はそれこそ、獣のそれだと思った。人を愛しすぎて、妖怪を愛しすぎて。長命であるがゆえにどちらもをなんとか護る為に自分を殺そうとする。住処(世界)と仔(妖怪)どちらも護る為に、自分を殺す母猫はああいう顔をする。
「縄張り争いなら、逃げた方が負けでケリがつく」
――森は。殺し合うことまで、求めない。
「……ただの喧嘩は得意かい、在か」
しへへえ。声を掛けられた九十九折・在か(デッドガールのゴッドハンド・f24757)は口角を自分で引き上げて。
歪な笑いで笑っていた。生き生きと爛々と。輝く緑をギラつかせて。
「ケンカ?死ぬほどだぁいすき。でもザイオン、これはタダのケンカなんかじゃねぇ」
はっ。牙を向き、激しく笑い出すのだから、山本は敵対者に相応しいと背筋を伸ばす。
「ただっていうのは……えっと」
「だって御覧よ、あの殺気これはサイコーに楽シくてハデなケンカになる!」
『楽しいがお望みならば、儂も死合いに全力を投じるだけにゃ!言うた事を覆すのは無しニャよ、でないと――』
号令懐刀を猟兵二人の足元付近へ投擲し、手を離れ地に刺さった時点で邪悪な煙を吹き上げる。
畏れ。虞よ。軍団における悪霊の悪食どもが手を何処までも伸ばすのだ。姿を忘れられて、朧気な気配だけをさっきに乗せて。歪な黒き鬼となり、四方八方に飛び出して山本の前にずらりと顕れて立ち塞がる。
悪霊にして、実態を持つ――悪夢群衆。
百鬼夜行に飲まれ埋もれて、あの世往き。
『悪霊衆は既に集まりきった!さあさあ此処へどろん衆も此処へ!』
すぱん、すぱんと襖扉を無理やり開き、飛び出してくる。狸や狐の尾を持つ標準的などろんバケラー。
どろんはっぱを頭に乗せて、悪霊衆との連携が始まる。
集まり聞こえる言葉は叫びでも、雄叫びでもなんでも無い。
単純な力として妖力をまとめ上げた"化術"の具現化だ。もくもくと虞を纏った冷気まみれの妖怪煙が視界いっぱいに上がっていく。
「あっちが命を懸けるなら!こっちだってぇ、命を懸けなきゃ釣り合わねぇ!!」
あぁ見てるだけですんごい樂しい。
胸を顔を掻きむしりたくなるような衝動。
抑えても抑えても、止まらない。
「……ん?あ、れ?タダの意味が違う?」
そんな行動をする在かへ、ロクが返せたのは。
「…………ううん。大丈夫。それでいいよ」
訂正を兼ねた説得を丸ごと放棄した気分だけ。
始まる軍勢の乱闘に、誰が火蓋を切るか。
「────ああァァアアア!!!」
響徊を告げる遠吠えだった。
大声で、叫ぶ声が響き渡り、ロクだけが正しき抜ける道を知る深き森が鬱蒼と茂った。
戦場の中に、ぽつんと紛れ込まされたマヨイガと大煙を吹き上げる妖怪の束と、ポロポロと戦場に出てきた姿のまま取り残された群れ。
『怯むにゃ!我らが故郷の姿とは違おうと、戦場を風景を変えられようと!我らが目指す事柄に変更点は全くないのにゃ!』
敵として、彼女らはかならず来るぞ。
山本の指示を聞きながら、妖怪煙の中から顔を覗かせる高められた化術により発生した超巨大がしゃ髑髏。
ガシャガシャと骨を鳴らし、ガクガクと顎を鳴らす。
ムカデのような体の骨身をカサカサ揺らして。
手当たりしだいに手を付いて。ぶぉんと突風を巻き起こし、薙ぎ払って破壊を繰り返す凶悪な暴力。
「ああ惑っている。当然だ。この光景を目にしたものなどいない」
素早く身を引いたロクと、狩人に導かれる在か。
目立たないように息を殺し、勝手を知る森だからこそ地形を大いに利用するロク。
「……ザイオンの森は、深くて濃ゆくて生き生きだ」
「うん。縄張りだから」
――なんだか、懐かしいな。
緑の目を細める在かに、ロクは手招きする。
木々の向こうにがしゃ髑髏が大暴れするさまが。
ふっとばした木々を、軍団化術漏れした妖怪たちがなにか淡々と並べている。何かを築こうというのだろうか。
「正面から全てを相手にする必要は、ない。けど、あれは」
「ザイオン、考えたらだめ。あれは家を立てる顔してる」
枠組みを作る係と、指示通りに組み立てる係。がしゃ髑髏はさながら資源調達係として動いている。戦いはどうしたのか。
『見失うとはどういうことにゃ!はやく、探し出しだすにゃ皆の衆!』
探し出す事を頭において、手持ち無沙汰な連中が時間の無駄をなくすようにログハウスを立てる気だ。
なんだあれは。森に紛れた猟兵二人が顔を見合わせる。
少し放っておいても良いんじゃないかという気分にもならなくもない。
「……見守るのは森人として有りだけど、今はちょっと」
「命のやり取りからは遠すぎるなあ!」
小声でヒソヒソ。見守っていたのは少しの間だけだ。深呼吸をする時間程度。林に紛れ、軍勢の眼を掻い潜るように進みぐるぅりと迂回する形で群れを喚び出した"主"ただ一人の元へ。
――ただ、在かを行くべき場所へ導くために。
「見える……?」
「見えた」
森番に導かれ、山本の背後へと回り切る。揺れる尾が四つ。
間違うはずはない。あれこそ東方親分だ。
「親分に、"別の王"の前に在ることを示してくるよ」
「今からここは、在かの森だ。向こうの長、任せた」
任されたァ――!その言葉をキッカケに、体内電気フルバーストだ。
魂の衝動を糧に回り放出する動力装置が音を立てて生み出す雷に、充てられて。デッドマンの姿はぐぐぐと身の丈を巨大化させていく。始終ばっちばっちと音を立てながら大きな大きな角を生やし、四足の獣の姿へと。
ヘラジカ。そう呼ばれる、――森の王。
雷纏いし巨大なヘラジカは軽やかに、こーんこーんと掛けて大声を威風堂々名乗りあげる。呼吸音をいち早く聞きつけたのか、親分の耳がぐるんと直ぐにこちらを向いた。
「行くぜ、妖怪の王!私はこの森の、この緑の、この生命たちの王なれば!」
かっこかっこと駆ける足は力強く、角を山本へ向けて頭を下げて突進していく。
雷が爆ぜる。ばっちばちと、此処に敵ありと知らせ笛のように高い音を跳ね上げて。
『王……皆の衆、手を伸ばせにゃ!』
「もはや言葉は必要ない、いざいざいざいざ!参る
!!!!」
張り上げた大声に立ちふさがったのは、山本――の前に躍り出たがしゃ髑髏の巨腕。
大きな角で突進する在かの走りが止まる事は全く無く。
飛べるべく立ちふさがった者共は、放たれる雷をモロに浴びることになり、痺れて動けぬ状態へ持ち込まれてしまう。
ロクが森に教え囁き導いたから在かの電撃はより森中の梢を伝い伝播していった。全員まとめで感電地獄。ああ、なんて阿鼻叫喚の状態だ。痺れて声も出ないとは!
親分が庇うまでもない。なにしろ巨大な脚で踏みつけれ攻撃を、か細い両手の長い爪と。
振り抜くまでに間合いのない、刀でなんとかしなければ――。
巨大なヘラジカの放ち続ける雷撃に、毛並みをちりちりと焦がされた山本はイチかバチかで身をひねロうとして――。
追っていた怪我を庇い、一瞬の隙が生み出される。
バックステップで跳ねたヘラジカの、角が傷口に向かって薙ぎ払われて。みぎゃああ!と見た目相応な悲鳴を上げて大妖怪は吹っ飛んだ。
可愛い幕切れと思っただろう?妖怪と行う百鬼夜行というものの、終幕というのはわりとあっという間の出来事で霧散する。
ユーベルコードの連携が解けて、ばらばらと妖怪たちが元の姿で周囲へ転がった。
『たはぁ~~~~~!』
降参!ギブアップにゃ!からからと大笑いする大親分は激しい一撃に、呑み込んだ骸魂を手放して、消滅を見届けてから笑い始める。
誰も死んでいない。
誰も殺されていない。
多少の流血はご愛嬌。庇いきれずになんど弾かれたことか。
大怪我くらいなら、唾つけとけばなんとかなるにゃ、生きてれば!
『猟兵さん達……思っていたよりも断然強くて殺し損ねたにゃ~』
ケンカに血が流れるのはよくあることぞ。カラカラり。
全力を尽くした親分の威光がぷつんと切れて、すかー、と寝息が聞こえ始まるまで。そう長い時間はかからなかった。
ああ、彼女はやっぱり、――猫だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵