4
封じられた辛み

#封神武侠界


 宝貝。
 仙術によって生み出された、天地を揺るがしかねない超強力な兵器である。
 その威力は、作った本人ですら制御することが出来ないとんでもない物になる可能性がある、非常に不安定な物らしい。
「そんな、破壊した際の周囲への影響が危険すぎて封印するしかなかった代物がオブリビオンに盗まれてしまった……というのが今回の案件です」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言って問題の宝貝の写真を表示させた。
「こちらがその宝貝『巳の刻』です」
 「禁」の札が貼られたその壺はこれといった特徴が見当たらない。ならば問題の本体は中にある物体であろうことは容易に想像がついた。
「この宝貝は液体状で、裸眼で直視すれば涙が止まらず、皮膚に付着すれば火傷を引き起こしてしまう代物だそうです。……当然口に入れば、凄まじい地獄が待ち受けているでしょう。あ、『でしょう』というのは味見をした剛の者が現地にいないからです。死なないからといって喜んで苦しむ道に行きたくはなかったんだと思います」
 不老不死の仙人達でも怯む代物、影響を与えるのは人体に対してのみではない。
 湖に一滴でも落とせば中で泳いでいた生物は皆息絶えて水面に浮かび上がり、草地に落とせば一帯がみるみるうちに枯れていくだけでなく勝手に火がついてしまうという。
 故に軽々しく破壊するわけにもいかず、多くの仙人達が入れ替わりで警護していたのだという。
 しかしそこにオブリビオンの軍勢が到来し、必死の抵抗虚しく巳の刻は奪われてしまったそうだ。
「敵の首領格であるのは『赤顔大王』と呼ばれている巨人です」
 装備を含め、全身が真っ赤に染め上げたその男は恐るべき剛力を誇り、道を阻む物が堅固な城門や建造物であろうと、容易く叩き潰す。
 そんな彼が巳の刻を部下に任せ、なぜ仙界で暴れ続けているのかといえば……ぐちゃぐちゃに叩き潰した仙人を踊り食おうとしているようなのだ。
「人魚伝説みたく、仙人の肉を食えば不老不死になるとでも思っているのかは不明ですが……とにかくまずは彼を叩き潰す必要がございます。ただ、そうすると巳の刻を持って逃げた部下がより遠くに逃げてしまうという問題があります」
 しかも逃げたのはよりにもよって入り組んだ門前町。いくら相手が急いで逃げているとはいえ、その姿を運良く一発で見つけるのは難しいであろう。
 しかし仙界には仙気溜まりという物があり、それを利用することで一気に追いつくことが出来るという。
「どれだけ危険であろうと、宝貝には仙気と呼ばれる物が非常に強く込められております。門前町自体も常に仙界の近くにある故にそれなりの仙気を持っているため、着地点がブレてしまうらしく、グリモアみたく巳の刻のある場所に直接転移させることは出来ないそうですが、その付近に転移することまでなら可能だそうです」
 だが仙気溜まりを扱えるのはその地に長く住み、勝手が分かっている仙人のみ。赤顔大王が大暴れしている現状で助力を乞うことは極めて難しい。
 どうであろうと、赤顔大王を倒さないことには話は始まらないのだ。
「相手がこの巳の刻を何に使おうとしているかは不明ですが、ロクなことにならないことは容易に想像が出来ます。皆様、どうか封神武侠界の未来を守るためご協力お願いいたします」


平岡祐樹
 石川には香辛料を祀る神社があるそうですよ。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 何ヶ月ぶりかの激辛シナリオです。でも食うことは基本ありません、ヤッタネ(?)。

 宝貝「巳の刻」は猟兵達がユーベルコードで上手く破壊できるなら破壊してしまった方が良いですが、何の考えもなしに破壊すれば周囲の環境を壊滅させる超危険な存在です。取り扱いにはご注意ください。

 また、今シナリオに参加したとしてもMSからアイテム「巳の刻」が支給されることはございません。ですが、まつわる品を作ることは禁じておりません。その点を了承した上でのご参加よろしくお願いいたします。
94




第1章 ボス戦 『赤顔大王』

POW   :    破頭地落砕
レベル×1tまでの対象の【頭部】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    赤顔王軍
自身の【身体の赤い部分のいずれか】を代償に、1〜12体の【分身体】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    赤死撃
【錘の振り下ろし】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に赤い毒池を作り出し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
二升・亜乃
使用技能:見切り・空中浮遊・功夫・衝撃波・鎧無視攻撃

ふふん、図体ばかりでかい君の攻撃なんか、僕に当たりやしないよ。

UC《天人飛翔》により、元々常人より軽い体重を更に軽くする。
そして後は多少身を避けるだけで、あとは攻撃の風圧で身体が勝手に避けてくれるって寸法だね。
毒池に関しては浮いていれば大丈夫。

まぁ、こんだけ体重が軽いと攻撃に重さが乗らないのが欠点だけどね。

軽口を叩きつつ避けたついでに懐に入り、闘気を込めた掌底に乗せて衝撃波を敵の身体に打ち込むよ。
この攻撃には身体がどんだけ硬かろうと無意味だよ。

これが、僕の風羽拳、だよ。

アドリブ・共闘歓迎。



「ははははは、どれだけ骨が折れようと肉が潰れようと死ねないというのは苦しいなぁ!」
 赤顔大王が笑うその周辺には、人の形を保つのがやっとの仙人達が呻き声を上げながら転がっていた。赤顔大王の言う通り、人であれば間違いなく死に至る重傷にも関わらず生き続けていられるのは長年の修行の賜物といったところか。
 だがその特性も赤顔大王にとっては別の意味に捉えられていた。
「これなら、腹の中に入って溶かされて出した後も、そこから再生してまた食えるってことか! クソまみれだった、っていうのを除けばなぁ!」
 そう言って身近に倒れていた仙人の体を手っ取り早く持ち上げ、背を逸らして丸呑みしようとする。
 しかしその体は手から離れ、口内の舌に触れる前に消えた。
「あーあー、下品なこと言ってるねぇ」
 仙人の体を抱きかかえた二升・亜乃(風に舞う羽の如く・f32678)がひらりと灯籠の上に着地する。食事の邪魔をされた赤顔大王は素早く振り返り、亜乃を睨みつけた。
「おやおや、まだ死に損ないが残っていたか。しかもまあ、柔らかそうな女子じゃないか」
「本当に柔らかいかどうか、試してみれば?」
「いわれなくとも、なぁ!」
 転移したかのように一瞬で距離を詰めてきた赤顔大王の持つ巨大な錘が振り下ろされ、灯籠を粉々にする。
 灯籠のあった場所から大量の赤い水が噴き出すのを眺めながら亜乃は空中で鼻で笑ってみせた。
「ふふん、図体ばかりでかい君の攻撃なんか、僕に当たりやしないよ」
「笑止!」
 挑発に乗せられ、赤顔大王は錘を振るい続ける。だが亜乃の体はその風圧に乗せられているかのようにひらりひらりと尽く避けていった。
 それもそのはず、羽衣人は人間の10分の1の体重しか持たない上にそこからさらに軽くなれ、風に乗って飛ぶことの出来る種族なのである。
 代わりにその軽さゆえに、攻撃に重さが乗らないため威力が損なわれるのが欠点だが、そこはご愛嬌といったところか。
「くそっ、ひらひらひらひら小癪な! そろそろ反撃でもしてみたらどうだ!」
「あー、そうだね」
 これだけ顔を真っ赤にさせて追いかけてくれる分には、毒池に足を突っ込まずに済むのでむしろありがたい。だが言われた通りこのまま避け続けるのもつまらない。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
 軽口を叩きつつ避けたついでに懐に入り、闘気を込めた掌底に乗せた衝撃波を赤顔大王の身体に打ち込む。
 自分の身体どれだけ軽かろうと、相手の身体がどれだけ硬かろうと鎧通しを元に考案された一撃の前には無意味。
「う、ぐほっ……!?」
 動き疲れたことと鳩尾に入った強烈な一撃によって膝をついた赤顔大王に向け、亜乃はキメ顔で告げた。
「これが、僕の『風羽拳』、だよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

昔の仙人は、そんな危険な代物何に使うつもりだったんだろう……
まあそんなこと今は考えるべきじゃないよね!
勿論邪魔させてもらうよ、オブリビオン!

貴方は力自慢みたいだけど、私も力はかなり強いよ!
掴みや殴打は【野生の勘】と【戦闘知識】を使って【見切り】かいくぐりつつ【切り込む】。
腱とかの脚部で耐久力の低い場所に【怪力】乗せた斬撃を放って体勢を崩させるよ。
崩れたなら顎にUC食らわして上体かち上げ、空いたボディに【二回攻撃】でもう一発コークスクリューを叩き込んであげる!
「頭が砕けるのはそっちだよ!」



 辛い料理はそもそも薬味や香辛料と元来強い味を持つ肉などの食材とのバランスを取ろうとした結果、生まれたといわれている。
 そこから転じて山間部で湿っぽい場所では塩が入手しにくくカビも生じやすいという土地柄もあり料理の長期保存を理由として用いられ、暑い地方では食べた時に生じた汗が蒸発した時に、体温が下がり涼しく感じられるため重宝されたという経緯もあるようだ。
 だが料理に入れるための食材に、裸眼で直視すれば涙が止まらず、皮膚に付着すれば火傷を引き起こし、一滴で湖を死地に転じさせ、草地を火の海に変えるような代物はどう考えても必要ではない。
「昔の仙人は、そんな危険な代物何に使うつもりだったんだろう……まあそんなこと今は考えるべきじゃないよね!」
 純粋な疑問を頭の中から切り離し、気を取り直したクトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)は赤い毒池があちこちに出来上がった仙界に降り立った。
「何を企んでいるかは知らないけど勿論邪魔させてもらうよ、オブリビオン! 貴方は力自慢みたいだけど、私も力はかなり強いよ!」
 大声の宣戦布告に赤顔大王が立ち上がり、先程内臓にダメージを与えられたとは思えないほどの動きを見せて一気にその距離を詰めてくる。
「威勢は良いな、娘。その余裕もどこまで続くかな!」
 そして流れるような手つきでクトゥルティアの顔面を掴もうと手を伸ばした。
 しかしこれまでの戦いで磨き上げられた野生の勘と戦闘知識を使って見切ったクトゥルティアはその下をかいくぐりつつ外へ抜け出し、腱に向けて力を乗せた斬撃を叩き込む。
「砕ぐうっ!?」
 突っ込むために伸びた状態の、耐久力の低い部位はあっさりと切れ、その激痛によって赤顔大王の体勢が崩れる。だが赤顔大王は諦めずに振り返りざまに手を伸ばして肩を掴もうとする。
 しかしその時にはすでにクトゥルティアは振り返り切っていた。
「頭が砕けるのはそっちだよ!」
 大剣を握り締めた右腕の下から生え出す、サイキックエナジーで作った第三の大腕がガラ空きとなった顎を捉える。それによって容易く浮かび上がった赤顔大王に向けて反対側から飛び出した四本目の腕が突き出される。
『これでノックダウンだ!!』
 肩、肘、手首全てが連動し捻りこまれた一撃は胸部を捉え、一瞬の静止の後に奥にある山肌にまで叩き飛ばした。
 かなりの距離があるにもかかわらず、赤顔大王の体が岩壁にめり込む。そして自然に落ちた後には赤顔大王の痕がくっきりと残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

厳・範
アドリブ歓迎。

人間形態での参戦。
わしとて仙人。同胞の危機と聞けば、わしは動く。わしの性質はそういうものだ。
不愉快なのもあるにはある。その行為、悪趣味であろうが。
現皇帝・司馬炎殿が対抗できる者を自ら探すのも、よくわかるというものだ。

攻撃は見切りを活用して避ける。
毒池は、風火輪で浮遊しているからな、大丈夫だろう。

UC【雷公天絶陣】で攻撃を。固かろうと、雷による感電だけはどうにもできまい。痺れるがいい。
感電したら、接近して焦熱鎗で鎧などの隙間に突き刺し、焼却する。



「有名な場所の者がこの体たらくとはな……司馬炎殿が対抗できる者を自ら探すのも、よくわかるというものだ」
 砂を踏みしめる音に、倒れ伏していた仙人が痙攣しながら頭を動かすと呆れた目で見下ろす厳・範(老當益壮・f32809)の姿を見つけた。その姿は普段の瑞獣ではない、二足の人間の姿であった。
「だがそれにしてもここまでの実力差か……慢心して修行を怠っていたのではないか?」
「あ、あなたは、巳の刻の危険度を知らぬから、そんなことが言えるのだ……」
「それはあやつらが元から持っていたわけではなかろう。守れなかったから盾にされた。それにあやつは巳の刻を持たずとも貴殿等を叩きのめせている。……違うか?」
 言い訳を真っ向から叩き潰す指摘に、仙人は二の句を告げることが出来ない。
「だがわしとて仙人。同胞の危機と聞けば、わしは動く。わしの性質はそういうものだ」
 しかし範は焦熱鎗を軽く振るとその脇を通り過ぎて赤顔大王へ歩み寄り始めた。
「あとあやつが不愉快なのもある。叩き潰した仙人を踊り食い? その行為、悪趣味であろうが」
 どこからともなく飛んできた風火輪の上に飛び乗った範は一気に赤顔大王との距離を縮めていく。
 全身を駆け回る痛みに唸り声をあげながら、膝立ちになった赤顔大王は錘を範に向けて叩きつけにかかる。
 しかし風火輪は風に舞う木の葉のようにひらりとその一撃を避けてみせた。
「痛みのあまり攻撃が雑になっておるぞ。その程度ではわしは捉えられぬぞ」
 そう言って急上昇しながら範はカウボーイの投げ縄のように雷公鞭を振り回す。するとそこから生じた電撃が雷のように降り注いでいく。
 それらは全てこの場で最も大きい者……赤顔大王の体を貫いた。ただ巨大である故か、赤顔大王は感電死することなく激痛に対する大声を上げ続ける。
「固かろうと、雷による感電だけはどうにもできまい。痺れるがいい」
 だが、別に死ななくても動きさえ防げればそれでいい。
 攻撃に意識が回っていれば回っているほど防御行動への反応は鈍くなってしまう。その時にあの一発が振り下ろされれば、地面に転がるここの仙人たちと同じ道をたどってしまうだろう。
「あれだけ言っておいて無残にやられてしまえば、何を言われるかたまったものではないからな」
 含み笑いを浮かべながら急降下した範は赤顔大王の首と鎧の隙間に槍の穂先を突き刺していく。雷はすでに地面に流れきったのか、手に痺れは襲ってこない。
「貴殿、赤顔大王といったか。せっかくだ、もっと赤くなるがよい」
 そう呟くと同時に槍から炎が噴き出し、血が流れる傷を神経ごと焼き切っていく。
 煩わしい絶叫が口から吐き出される中、感覚を失った左手から巨大な錘が滑り落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「戦闘!闘争なら敗けないぞ!」
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回り『セクシィアップ・ガディスプリンセス
』と『がディスプリンセス・セイクリッド』で♥ビーム/弾の攻撃をしつつ『神代世界の天空神』で敵の攻撃を空間飛翔して避け敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化させます!

『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化させて隙を見て『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』+『ガディスプリンセス・アクティブ』で拳/髪の毛/蛇尾脚で攻撃を仕掛けます!
怪我をしたら『エデンズ・アップル』で“林檎”を食べます。



 度重なる猛攻によるストレスからか赤顔大王の顔からボロボロと髭や眉毛といった毛が落ち始める。
 しかしそれらは一気に膨れ上がると人の形を取り、赤顔大王とうり二つの見た目となった。
「おっ、一気に増えたね! 戦闘! 闘争なら敗けないぞ!」
 そんな圧巻かつ絶望的な光景にティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は笑みを漏らす。
『レディースの能力を今こそ見せる刻だよ!』
 ティファーナの呼びかけに応じ、空からたくさんの天使たちが舞い降り、思い思いの武器を構える。そして赤顔大王達も雄たけびを上げながら天使たちに襲い掛かった。
『天空神の庇護と加護と祝福の威光に黄昏る』
 ティファーナの背後から放たれる光を浴びた赤顔大王の錘が地面を砕く。しかしそこから赤い毒の水は噴き出さず、真上に避けた天使は邪魔されることなく全力の魔法を解き放つ。
 一方では天使の頭を鷲掴みにして地面に叩きつけようとしていたが、宙に突然現れた輪にくぐられあっさり逃げられる。苛立ち気味に輪を殴ったところで待ち構えているのは残りの天使たちによる一斉攻撃であった。
「ほらほらほらほら、捕まえてごらん!」
 ティファーナも跳ねるように空中を駆けて赤顔大王をコケにしつつ、眼下に向けてハートポーズからの弾幕を仕掛けていく。地面を走ることしか出来ない赤顔大王達は避けれず、顔面の前で腕を交差させて耐えることしか出来ない。
 自ら視界を塞ぐ悪手に、ティファーナは生み出した輪をくぐってすぐそばに転移する。
『こればボク達の“超神武闘必殺技”!勇気と正義と神業で窮地を好機に!』
 そして宙返りからのかかと落としの要領で蛇尾脚を振り下ろし、防御する腕ごと押し潰した。
 だが赤顔大王は鼻から血を噴き出しつつ、血走った目で手を伸ばし、ティファーナを捕まえる。
 そしてそのまま引き寄せてもう一方の手で顔面を掴もうとした。しかしティファーナの長い髪が硬質化し、その目に突き刺さった。
 視界を奪う激痛に赤顔大王は両目を押さえる過程で、ティファーナの体を宙に放り投げる。
「頭にこだわりすぎだよー、あのまま叩きつければよかったのに」
 空中で体勢を整えたティファーナは肩を竦めながらどこからともなく取り出したリンゴを齧った。

成功 🔵​🔵​🔴​

堆沙坑・娘娘
この地のために尽力していたという仙人を踊り食いにしようとは…やはり悪漢は生かしておく意味を見い出せませんね。

私の頭部を掴んでくるということはそれだけ私に接近するということ。
ならば私からもUCを発動し、敵に踏み込みパイルバンカーによる【貫通攻撃】をその腕部に叩き込んであげましょう。
そして闘気により敵の腕を操り、その自慢の怪力で自分の頭部を思い切り掴んで振り回させてあげましょうか。
その腕にそれだけの力が残っていればですが。力が残っていなくても片手で自分の顔を抑えさせるだけでかなり行動を阻害できるでしょう。
そしてできた隙をついてUCに関係なくパイルバンカーに闘気を集中させての貫通攻撃でトドメです。



 五体満足のコピーと猟兵達による乱戦の中、片腕片足が不自由になったオリジナルの赤顔大王はしかめ面を浮かべながらも動き出していた。それは単純に逃げるためか、仙人を食べてその力を我が身に取り込んで傷を塞ごうとしたのか。
「この地のために尽力していたという仙人を踊り食いにしようとは……やはり悪漢は生かしておく意味を見い出せませんね」
 だがどんな理由があろうと動いて良い理由にはならない。その向かう先を塞ぐように、パイルバンカーを構えた堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)が立った。
「そこを、どけぇい!」
 赤顔大王はまだ満足に動く右腕を娘娘に向かって伸ばす。しかし足が半分動かない以上、その踏み込みは甘い。
『貫く。』
 それが自分の頭を掴む前に、娘娘は神速の踏み込みからパイルバンカーを突き出された右の掌へカウンター気味に叩き込む。衝突の瞬間赤い血と橙色の闘気が散り、赤顔大王は右手を引っ込めて若干蹲った。
「ちょうど都合良く近づけましたね。そのまま元々真っ赤な顔をさらに増してみてはいかがですか?」
 パイルバンカーを引きながら呟かれた娘娘の問いかけに応じるかのように、赤顔大王は右手で自分の顔を掴み、そのまま握り潰そうと力を込めながら前後に振り回し始めた。
「ぬ、ううううん!?」
 自分の意志ではない自分の行動に混乱し、目を見開く赤顔大王の顔は娘娘のつぶやき通りに赤くなる。しかし娘娘の思っていたなり方ではなかったようで、不満そうに首を傾げていた。
「流石巨人。自分の馬鹿力でも砕けないくらい硬い頭蓋骨をお持ちなのですね」
 メシメシと骨が軋む音と、困惑と苦悶が入り混じった唸り声が響き渡る中、見せつけるようにパイルバンカーを装填し終えた娘娘はゆっくりと歩み寄り、赤顔大王の鼻先に突き付ける。すると狙いをつけやすくするためか、赤顔大王はその場で静止した。
「では、私が代わりに割ってあげましょう」
 片足の腱を切られた赤顔大王は走って逃げることも出来ず、払い飛ばそうとしても右手は握る手を緩めず、それを離す方法もない。
 完全に万事休すな状況に陥った赤顔大王はただせめてもの抵抗のつもりなのか命乞いもせず、目を見開いて杭の鋭い先端を睨みつけていた。
「おしまいです」
 その言葉と同時に水風船のように赤顔大王の頭が弾け、娘娘は真顔で頬についた返り血を拭い取った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『雑然としている場所』

POW   :    ●『気合や根性で障害物を蹴散らしたり、武器にしたりする』

SPD   :    ●『身のこなしや軽業で障害物を躱したり、隙間を縫うように抜けていく』

WIZ   :    ●『知恵や工夫を働かし、敵を障害物へ追い詰める』

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

 オリジナルが死んだことにより、コピー達も空気が抜けたように萎み、元の毛へと戻っていく。仙界の平和は一応取り戻されたが、問題は人界に降りてしまった赤顔大王の配下と、それが持ち出している「巳の刻」である。
「皆様、我々を救っていただきありがとうございます……。これから仙気溜まりを使って皆様を敵の近くにお送りいたします。ですが、現地には一般の方もおりますし、一滴零れた瞬間にその地が不毛の地となります故、どうか、よろしくお願いいたします……」
 縋りつくようなか細い声で、ここの代表であるという仙人はボロ雑巾のようになった体を引きずりながら頭を下げた。
厳・範
もちろんだ、取り返してくる。
ところで、行く前にひとつ聞く。配下の特徴は覚えているか?それだけでも見つけやすさはかわるからな。
覚えていないのなら、まあ『巳の刻』の仙気を辿ろう。
…その身体は辛かろうて。せいぜい養生しろ。

さて、門前町ということは、追跡の仕方も考えると人間形態のままが都合良さそうだな。
【使令法:蝴蝶】で配下の索敵・情報収集を行う。ある程度は仙気を辿ればよいだろうが、ここは仙界近くの門前町。手は多めにうっておくがいいだろう。
見つけたのならば、風火輪を利用して上からの追跡を行う。一度見つけたのなら、そう簡単には見逃しはせんよ。

もちろん、他の猟兵との情報共有は積極的に行おう。



「もちろんだ、取り返してくる。ところで」
 範は仙気溜まりに片足を踏み入れる前に振り返り、険しい視線を向ける。
「行く前にひとつ聞く。配下の特徴は覚えているか? それだけでも見つけやすさはかわるからな」
「相手は黒い布切れを羽織った僵尸だった。ただ、護符が外れていた」
 それは魂を封じた護符を身に着けることで死後も自我を保ち続ける者達。その体から護符が外れていたということは。
「そうか、どうやらあれに無理矢理従わされているというわけではないようだな」
「奴は硬質化した肉体で我々の技を再現し、打倒してきた……。お前達もあれを余裕で倒せたからといって図に乗るんじゃないぞ」
「黙りな……ぐっ」
「師範!?」
 先程口答えをしてきた仙人が代表者との話に割って入る。僵尸との戦いさえなければ赤顔大王にも後れを取らなかった、と言いたげな気配に代表者は一喝しようとしたが、その瞬間に体に走った激痛に前かがみになる。補助をするためにボロボロの弟子たちが集うのを見て、範は息を吐いた。
「……その身体は辛かろうて。せいぜい養生しろ」
 そして今度こそ仙気溜まりに入ると視界は一転し、人通りの多い道から一本外れた路地に立っていた。
「この付近にいるのか」
 見回した限り、壺を抱えた僵尸の姿は無い。やはり門前町の仙気による座標のずれは大きいらしい。
『契約によりて、来い』
 範が空に手を伸ばすと小さな蝴蝶が様々な方角の空から舞い降りてくる。
「大きな壺を抱え、護符のない黒い布切れを羽織った僵尸を探してくれ」
 ある程度は仙気を辿ればよいだろうが、ここは仙界近くの門前町。手は多めに打っておくべきである。範の指示を受けた蝴蝶達はひらひらと方々に散っていった。
「さて、わしはこの周りを探してみるとするか」
 蝶達には最悪の事態に備え、遠くからの捜索をお願いしている。範は露天商などに紛れている可能性を恐れ、最寄りの大通りへと足を向けた。
 そうして壺や飲食店の屋台を重点的に見ていき、強引に串焼きを買わされたりする中、一匹の蝴蝶が耳元におもむろに寄ってくる。そしてその羽ばたきに範は口角を上げた。
「見つかったか、でかした」
 口の中の肉を飲み込んだ範は風火輪を取り出すと人気のない路地裏に向けて豪快に投げ、その平らな面に飛び乗って宙に出る。
「一度見つけたのなら、そう簡単には見逃しはせんよ」
 空に舞う範の視線はただ一点を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
※アドリブ歓迎

「ゴチャワチャしている場所だなぁ〜…」
と思わず口にしながら、それでも目の前の“困難”に胸を踊らせてワクワクしています。
『スカイステッパー』を駆使して迅速かつ素速く動き回りながら避け切れない障害物を警戒して『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して、『神代世界の天空神』で空間飛翔して必要なら『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化し巨岩や壊して問題無さそうな障害物は『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』や『ガディス・ブースト・マキシマム』『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で❤ビーム/❤弾や拳/翼羽根/蛇尾脚を駆使して乗り越えて行きます!



「わー、ずいじゅうさまだ! はじめてみた!」
「だっこしてー」
「いいですよー、ほりゃぶんぶーん!」
「きゃー!」
「こら、忙しいお方なんだから邪魔しないの。構ってもらってごめんなさいね」
「いえいえ、そんなことありませんよー、じゃあね!」
 半人半獣というのは一般市民たちには物珍しい存在だったのか一度街に出た瞬間に、ティファーナは子供たちに寄ってたかられた。
 だがジムとプロレスで鍛え上げられたエンタメ精神で応対し続け、騒ぎに気づいた親の来訪によってこれといった騒動に発展させることなく解放された。
「それにしても、ゴチャワチャしている場所だなぁ〜……」
 一息ついたティファーナは改めて辺りを見回す。茣蓙を敷いて商品を売っていたり道が舗装されてなくて土晒しになっている所はサムライエンパイアの城下町に近しかったが、あちこちで蒸し料理の湯気が出ていたり売り込む人の大声が響き渡っていたりと商人だけでなく客側も大声を出している光景に思わずそんな印象を抱いた。
「さて、ボクも早く犯人捜しに加わらないと!」
 我に返ったティファーナは持ち前の跳躍力で空に飛び出していく。子供達には転移直後に捕まったので逃げられなかったが、本来ならこうやってすぐに捜索に加われたはずなのだ。
「レディースさん達もお願いね! この遅れ、どんどん取り戻していかないと!」
 そう従属神達に指示を出しながらもティファーナは輪を取り出し、すでに遠方へ行った従属神の元へ転移していく。
 ただ飛んだ先に聞いた見た目の人物の姿は見当たらなかった。しかし一方である点にも気づいた。
「見た感じ、僵尸が逃げるために障害を作った感じはなーいっかなー……」
 おそらく門前町で騒ぎを起こせば、そこに人が集まって、それを聞きつけた追手たちが早めにきてしまうという判断があったのかもしれない。ただ障害物を壊すための大技を出さなくて済むというのは体力のキープにはなるのでそこまでマイナスになるわけではないので別にいいのだが。
 そんな中、一匹の蝴蝶がティファーナ達の元に飛んできて、その場に留まり出す。
 何かを知らせたいかのような仕草だが、ティファーナに虫の言葉は分からない。そこで、虫の言葉が分かる従属神が間に入って通訳を務めることになった。
 そこで知らされたのは問題の僵尸とみられる集団の居場所。荷台などは使わず、ぞろぞろと中心にいる壺を抱えた者を守るかのように山道へ通ずる方向へ進んでいるという。
「あ、ありがとう! なんで伝えてくれたのかはわからないけど!」
 待ちわびていた情報にティファーナは最も近くにいる従属神の元へ飛べる門を開く。蝴蝶が範の配下だと分かったのは、全てが終わった後であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

堆沙坑・娘娘
あなたが頭を下げる必要はありません。盗人どもの頭を地に叩きつけてくるので安心して待っていてください。

さて、仙人には大口を叩いてしまいましたが私のパイルバンカー神仙拳には中々相性の悪いオーダーです。
とりあえず今回の敵に有効な杭を召喚するとして…この杭、先端がスポンジになっていますね…まあ気休めにはなるでしょう。

先端のスポンジ部分に闘気を集中させた杭を敵に叩き込み、闘気のみ敵の体を貫かせる【貫通攻撃】。パイルバンカーを炸裂させるよりは衝撃が発生しないはず。そして敵が「巳の刻」を取りこぼしたら地面に落ちる前にキャッチします。

「巳の刻」を確保したら通常の杭でトドメを刺します。
永遠に地に倒れ伏せていろ。



 青白い顔をした黒衣の僵尸達がぞろぞろと軍隊のように、無言で粛々と変わらぬ足取りで上り坂を進んでいく。
 すれ違う者は不審がりながら見ていたが、呼び止める者はいなかった。不気味な風貌に関わらない方が賢明だと思ったのである。
 だが「そんな者達」に用事がある者はその進路を塞ぐように佇んでいた。
「お待ちしておりましたよ」
 ガシャン、と金属音をたてたパイルバンカーを真上に構える娘娘の姿に僵尸達が一斉に足を止める。
「その大事そうに抱えている壺が例の『巳の刻』なのでしょう。取り戻させていただきます」
 闘気を集中させた杭が轟音と共に放たれ、集団の先頭にいた僵尸の頭を弾く。
「永遠に地に倒れ伏せていろ」
 弾かれた杭が音を立てて地面に転がる中、90度近くまで折れた背中を勢いよく戻した僵尸は杭をおもむろに拾い上げて凹んだ頭部に沿わせる。そして手を離した瞬間に元の形に戻った肉が杭を弾き飛ばした。
 娘娘は両腕を交差させてそれを受け止める。闘気が込められてない上に元々の先端がスポンジ部分になっていた故に大した傷はつかなかった。
 僵尸は追撃をしかけようと背中にしょっていた武器をすかさず抜く。しかしその武器は抜いたそばから手から零れ落ち、地面に転がった。先程の闘気により脳が狂わされ、あらゆる戦闘を拒否するようになってしまったのだ。だが護符を失った僵尸には理解できないようで、拾おうとしては落としを繰り返していた。
「なるほど、こういうことでしたか……」
 一方で娘娘は杭が当たった部位を擦りながら、ばらばらと武器を構えだす僵尸を睨みつける。同じような見た目の僵尸を叩き潰した時は、跳ね返す前に肉体を焼失させたためこのような性質を持っているとは知らなかったのだ。
 前回は炎を宿した杭だったのに、今回は殺傷力が明らかに足りてない杭が出てきたことに疑問は持っていた。ただ出てきたとしても叩き込めば巳の刻もただではすまないことは想像できていたから使うことは到底出来なかったが。
 そんな中、巳の刻を持っていた僵尸がそれをおもむろに地面に置き、仲間と同じように武器を構えだす。どうやら相手に逃げる気は無いようだが、同時に巳の刻を武器として使う気はないようである。
 ばら撒くだけで周囲の環境を壊滅的にさせる物体を使ってこないのはありがたいことだが、足元に置かれればうっかり蹴飛ばして巳の刻をひっくり返されることも考えられる。あの場所に置かれるのは非常にありがたくない。
「さて、どうしましょうかね」
 あなたが頭を下げる必要はありません。盗人どもの頭を地に叩きつけてくるので安心して待っていてください、と転移する前に代表者に見栄を切ってきただけに、体勢を立て直すために撤退するわけにはいかない。
 娘娘は人間のように長く息を吐くと、新たな杭をパイルバンカーに装填した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『僵尸兵士』

POW   :    僵尸兵器
【生前に愛用していた武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    僵尸鏡体
【硬質化した肉体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、硬質化した肉体から何度でも発動できる。
WIZ   :    僵尸連携陣
敵より【仲間の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

 邪魔立てする者は消すべきだと考えているのか、僵尸が一斉に周りに集まり出した猟兵達に襲い掛かる。方々に散った後には巳の刻が入った壺がポツンと取り残されていた。「守れ」という指示は赤顔大王から出ていなかったのだろうか、それとも何らかの意図があるのか。
 ただ分かるのは、僵尸を吹っ飛ばして直撃させたり、流れ弾が当たったり、無差別攻撃をしたり、故意に壊したりしない限り、中身が辺りを侵すことはないだろう。
 この山を、その麓に広がる門前町を、ひいてはこの宝貝を作ってしまった仙人の名誉を守るための戦いが始まろうとしていた。
厳・範
…置いておくのか、『巳の刻』。まあ、今からやろうとすることを考えれば、そちらの方が助かるが。取り返すと言い切った以上、壊すわけにもいかんしな。
事前に聞いておいてよかった。
何のために奪ったかは知らんが、返してもらうぞ。

【声焔】にて、僵尸のみを焼く。そら、武器を持ったままだと、塞げぬであろう?
僵尸への延焼は消さぬ。そのまま燃えていろ。
また、攻撃を見切り避ける際には、できるだけ『巳の刻』から離れるようにして動こう。本性の速度ゆえ、そこは加減してだな。

…しかし、『巳の刻』を作り出した仙人は、何を考えていたのだ…?



「……置いておくのか、『巳の刻』」
 風火輪から飛び降り、僵尸達の背後についた範は目を細くし、戸惑いをみせる。
 てっきり窮地に陥れば切り札たるそれを使ってくるか、それを持つ1人だけが逃げ出して他の者達が全力で妨害してくるかと思っていた故に僵尸の行動には意外な点しかなかった。
「今からやろうとすることを考えれば、そちらの方が助かるが」
 取り返すと言い切った以上、壊すわけにもいけない。自分から手放してくれたのはこちらにとっては好都合でしかなかった。
「何のために奪ったかは知らんが、返してもらうぞ」
 そう呟いた途端、範の人間としての姿が音を立てて崩れていく。
 顔が前に伸びて龍のような形になると、白かった体毛が総じて鮮やかな黒へ染まっていく。 前屈みになっていく体からは牛の尾と馬の蹄が生え、手だった物が前脚となって地面に着いた頃には鹿のような姿になった。
 そして額から一本の角が生えると、本性を露わにした黒い麒麟は金の瞳を爛々と輝かせて僵尸達を睨みつけた。
「わしが『瑞獣たる意味を教えよう』」
 その瞬間、範に背を向けていた僵尸達の体が炎に包まれ出す。燃え盛る僵尸は踊るかのようにその場で暴れ出した。しかしその身から炎が範に飛んでくる気配はない。
「そら、武器を持ったままだと、塞げぬであろう? 事前に聞いておいてよかった」
 武器を持っているからか、声を発せないからか、僵尸が仙人に行った模倣能力を使えない理由は定かではない。ただ範が決めつけの挑発をすると、それに乗せられたのか身についた炎を消さずに一部の僵尸達がこちらに突っ込んできた。
 その動きに合わせて範は四つに増えた脚でゆっくりと後退りをし始めた。
 徹底的に舐めているような動きにあっという間に追いついた僵尸達はそれぞれの得物を振るっていく。しかし範は「わざと」相手の得物が当たらないギリギリを選んで避けていった。
 今の範は本気になれば一瞬で遥か彼方にまで駆けていける。
 だが今やるべきなのは僵尸の足止めではなく、巳の刻の奪取。遠方に行くことで自分から僵尸達の意識が離れるのはよろしくない。
 故に優れた動体視力を用いて、僵尸に「偶然避けられた」「次は当たるかもしれない」と思わせることが重要視したのだ。
 そしてその思惑にまんまと乗ってしまった僵尸達はどんどん巳の刻から離され、最初密集していた塊は疎らな個へ変わってしまった。
 柄が焼け落ち、燃え残った刃が地面に落ちていく。そして素手になった僵尸の足の筋肉が燃え尽きたことで露わになった骨が自重で折れてその場に崩れ落ちた。
「そのまま何も出来ず燃えていろ」
 そうなってもなお手を使ってにじり寄ろうとする僵尸に冷たい視線を送り、範はさらに火の勢いを増させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
なんともやりづらい…。
しかし、連中の動きを見るに、この場で積極的に巳の刻をばら撒くつもりはなさそうだというのが救いでしょうか。
住民たちに逃げるように叫び、戦闘を開始します。

敵の死角に潜り込み【貫通攻撃】。今度は殺す気の杭です。吹き飛ばすのではなく貫き殺し、余計な動きをさせません。数を活かされるのは厄介ですが、死角からの攻撃を躱せるなら躱してみなさい。
敵の意識をつく奇襲という形でなるべく静かに制圧していきます。暗殺者紛いの戦いを目指すイメージです。

結局目的がなんだったのか分かりませんが、目標を手に入れたにも関わらず我欲に走った頭目が愚かで助かりました。
仙人たちが身を削り耐えたからこその勝利です。



「皆さん、この僵尸はオブリビオンです! すぐに距離を取ってください!」
 娘娘の大声に、周囲で足を止めていた野次馬達が慌てて方々へ逃げ出していく。急に動き出した人波にも放り出された荷物にも一切目もくれず、僵尸達はまっすぐ娘娘を始めとする猟兵達へ襲い掛かってきた。
 まるで甘味を前にした蟻のように群がる僵尸達の大槌や薙刀の一撃が娘娘に向けて振るわれるが、それらは全て地面や木の幹を叩く。
 山道の脇にある大木が音を立てて巳の刻の置かれた場所とは関係のない方向へと倒れていく中、狙われた当人はどこにいったかといえば、武器を振り回したことでガラ空きとなった僵尸の脇のすぐ横に滑り込んでいた。
『貫く。』
 先程と同じように娘娘が僵尸の頭部へ杭を打ち込む。しかし打ち込むのはスポンジ製ではなく、鋭利な金属製だ。吹き飛ばすためではなく貫き殺すための一撃は僵尸の頭を肩ごと四散させた。
 すでに死人である僵尸には心臓部でなく、指示系統が詰まった頭を砕くのが最適解。さっき闘気を流し込まれたことで武器を持てなくなったことから裏付けは済んでいる。
 どれだけ一撃が強力であろうと動きが俊敏であろうと、この場にいるあらゆる僵尸の死角に潜り込み、まるで暗殺者かのように一体一体を確実に屠っていく娘娘の姿を捉えきれなければ何の意味もない。
 そしてすぐ隣にいた者の頭が割れて倒れ伏していくその様子は攻勢を弱めさせるには充分であった。
 だが先程の攻撃から相手が杭を飛ばしてくることは僵尸達も分かっている。同じ杭ならば当たる前に弾き飛ばせば良いとでも思ったのかその場に留まって武器を振り回し始めた。
「なんともやりづらい……」
 娘娘は苦虫を嚙み潰したかのような表情を浮かべながら火薬を炸裂させ、どこを見ているか分からない僵尸の頭へ杭を打ち込む。どれだけ暴れようと、明確な隙を見せてくれたらこちらの物なのである。
「結局目的がなんだったのか分かりませんが、目標を手に入れたにも関わらず我欲に走った頭目が愚かで助かりました」
 相手の動きを見ているに、この場で積極的に巳の刻をばら撒くつもりも猟兵以外の人物に襲い掛かる気もなさそうだというのは救いであった。
 もしこの僵尸達と赤顔大王が同行していたら情勢が不利だと察した頭の指示で徹底抗戦から逃走に切り替えられ、非常に面倒くさいことになっていたかもしれないと思いつつ、娘娘は装填した新たな杭に闘気を込めながら、僵尸の武器から発せられる風切り音が絶え間なく聞こえる戦場を歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「僵尸だってプロレスなら勝負になる(ハズ)さ!」
『スカイステッパー』で素速く迅速に動き回りながら『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃で牽制兼攻撃を仕掛け『神代世界の天空神』で敵の攻撃を空間飛翔して避け敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化させます。
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディス・ブースト・マキシマム』で♥ビーム/♥弾で攻撃し『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』+『ガディスプリンセス・アクティブ』で拳/髪の毛/蛇尾脚で攻撃を仕掛けます!



「僵尸だってプロレスなら勝負になるさ!」
 そう叫びながら、ティファーナは牽制がてら空中からハート形のビームを眼下の僵尸達目掛けて降り注がせる。それを浴びた僵尸はティファーナと同じポーズを取ると、全く同じようなビームを放ってきた。
 数がたくさんいるとはいえ避けることは大して難しくはない。しかし可憐で壮美なティファーナがやるならともかく、死臭漂う黒衣の坊主のおっさん達が無言でやるその姿は見栄えが非常によろしくなかった。
 ティファーナから遅れて集まってきた従属神群が嫌悪からの吐き気を催す中、転移したティファーナは見習い太陽神としての力を顕現させる。
『天空神の庇護と加護と祝福の威光に黄昏る』
 ティファーナの全身から放たれた光を浴びた僵尸達の手からビームが途絶える。しかし僵尸達は大して慌てることなく、粛々と地面に転がしていた得物を再び手に取り出した。
『勇気! 正義! 神愛! 神様パワーを爆発だ!』
 そこへすかさずティファーナは従属神群と共に再びハートの雨あられを浴びせていく。すると今回も僵尸達は武器を手放し、ポーズを取って対抗しようとしてくる。しかし何時までたってもハート型に構えた手から新たなビームは放たれなかった。
「よいやっさー!」
 ビームを出すことだけに集中し、隙だらけになった僵尸の首元に向けて飛び込んだティファーナは十字に交差させた腕を叩きつける。
 上半身は子供のようでも全長327.6cmを誇る巨体から放たれた一撃を筋骨隆々のレスラーでない僵尸が耐えられるわけがなく、容易く地面になぎ倒された。
 それでティファーナは攻勢を緩めることなく、潰されながらもあがく僵尸の脇に両腕を通すと腰周りを抱え込んでそのまま勢いよく上体を後方に反らす。
 衝撃を緩めるための腕を伸ばすことが出来なかった僵尸の頭に全ての力がかかり、首の骨が折れる音が響いたと同時に暴れていた四肢の動きが止まった。
「うえー……オブリビオン相手とは言え、やっぱりプロレス技でこうなるのはやっぱりやだなー……」
 プロレスはあくまでエンターテインメントであり、人を殺すための技術ではない。死人が出るのは事故が起きてしまった時のみだ。ゆえにティファーナは眉間に皺を寄せながら体を起こした。
 周囲にいた僵尸達はビームを出すことを諦めたのか、コピーするカラクリが解けたのか再び武器を持ち上げようとする。その前にティファーナはすかさず蛇尾脚を振り回して僵尸の手足ごと武器を薙ぎ払った。
 吹っ飛んだ武器は宙を舞い、崖下に落ちていく。得物を失いながらも立ち上がれた僵尸達は空になった手を彷徨わせつつ猟兵達に近づいていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

水鏡・怜悧(サポート)
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
NG:エロ・恋愛
「纏めて喰ってやるぜ」「ヒャハハハハ」
行動優先順は1.NPC含む他者の救助、2.攻撃。ホントは敵を喰う方を優先してェんだけど、ロキが煩せェからな。
UDCを纏って獣人風の格好で戦うぜ。速度と勘を生かして攻撃を避けつつ、接近して爪で切り裂くか噛みついて喰うのが得意だ。UC使った遠距離攻撃もするが、銃はちょっと苦手だ。牽制に使ったりはするけどな。
技術的なヤツとか、善悪論とかは苦手だし、興味もねェ。楽しく殺して喰えれば満足だ。喜怒哀楽は激しい方だが人として生きた経験は短けェからな。価値観とか常識は知らねェよ。まァヤバイときはロキが止めるだろ。



「纏めて喰ってやるぜ……って言いたいところなんだがな」
 普段なら赤い瞳を爛々と輝かせているはずの水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の一人格、アノンは眉間に皺を寄せて唸り声を上げていた。
「なんでも食う雑食じゃねぇんだぞオレだって……」
 目の前で腕を伸ばし、無言を貫く僵尸の肉は見るからに硬そうで臭いも酷い。食べようと思えば食べれるが、積極的に食べたくなる品ではない。そもそも札が剥がれた僵尸は生き物と言って良い物か。
『ですが、援護を要請されたからにはしっかり仕事をしなければなりませんよ?』
「分かってる、黙ってろ」
 ブレスレットから聞こえる煽りにも似た指摘にぶっきらぼうに答えたアノンの体を玉虫色に鈍く光る黒い液体金属が包みこんでいく。
「情けなく踊りやがれ」
 僵尸に向け、アノンはハンドガンの銃口を向ける。放たれた魔弾はその足元に当たると弱い電流へと形を変え、動きを封じていく。
 そこに向けて飛び込んだアノンはハンドガンごと飲み込んだ液体金属が形どる巨大な爪を振り下ろす。すでに腐り落ちたのか、目が無くなっていた頭は血を流さぬまま勢いよく下り坂を転がり落ちていった。
「血も出さねぇのか。つくづくつまらねぇ相手だぜ」
 痙攣もせず力なく崩れ落ちた僵尸にそう吐き捨てたアノンは後ろから迫ってきていた別の僵尸の得物を振り返りもせず受け止める。
「不意打ちでも狙ったつもりか? お前らみたいなくっさい奴に出来るわけねぇだろうが」
『やるならちゃんと風呂に入って体を清めてから。汚れだけじゃなくて肉も落ちてしまうかもしれませんがね』
 狼のような形になった頭部をしかめながら得物を握り潰したアノンに重ねるようにブレスレットが反応する。武器を失った僵尸は柄だけになったそれで悪あがきを仕掛けてきたが、アノンは振り向きざまにその頭部を抉り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

リン・ベルナット(サポート)
 「ヒーロー参上!悪党は覚悟してね!」


方針
仲間と協力できる時は協力するよ!

冒険の場合は考えるより行動するよ!なせばなる!

日常の時も体を動かせるような事をしたいね。

戦闘の時は身体能力を生かしてアクティブに戦うよ!
敵の攻撃はダッシュしたりジャンプで回避するか、バトンロッドを使った武器受けでの防御で対処するね。

ユーベルコードは敵によって適時使い分けて戦うよ!
集団戦なら纏めてドーン!って感じで戦うし、ボス戦なら強力な一撃をドカン!と叩き込んだりするね!

NG
犯罪とか他人が嫌がる行為はしないよ。ヒーロー的にも絶対にNGだもんね。後、公序良俗に反するようなこともNGだよ。



「うわ、なんか転がってきた!?」
 上っている坂から転がってきた何者かの頭をリン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)は驚きながら飛び避ける。音からも分かっているが、この先で戦闘が起きていることは間違いないようだ。
「ヒーロー参上! 悪党は覚悟してね!」
 流れる汗を拭わぬまま、リンはバトンロッドを最大まで伸ばすと豪快なフォームからそれを投じる。
 斜面でその姿が見つけられなかった僵尸の頭にそれが突き立つと駆け上がってきたリンはそれを引っこ抜く。その勢いに押されて倒された僵尸を踏みつけつつリンは僵尸の集団に突っ込んでいった。
『まとめて片付けちゃうよ!』
 リンはトワリングの要領でバトンロッドを振り回し、運悪くその範囲に入ってしまった僵尸達を薙ぎ払う。しかし僵尸達もやられっぱなしのまま終わらずに、全く同じように薙刀や槍を回しだした。
「おっと、おっとおっとおっと!?」
 自分と全く同じ演技めいた舞踏に驚くリンに向けて、僵尸達は負けず劣らずの加速力で詰め寄ると得物をぶつけて何とかリンの手からバトンを落とそうと試み出す。
「うう、私がずっと頑張ってきたのをこんな簡単にコピーしないでよぉ!」
 リンは演技の邪魔をされながらもバトンを逆回転させたり体を捻って避けたりして対処していくが、自分と積み重ねてきた物と全く同じ動きを変な臭いを漂わせるおじさんが目の前で簡単にやってくる現状に心が削られていく。
 しかしそれは僵尸の持つ年季の入った武器も同じだったようで、激しい動きと衝撃にずっと晒された結果、十何回目の妨害でへし折れた。
「こんの、ヤロー!」
 相手の攻勢が止んだのを感じ、リンは防戦一方から攻撃に切り替える。まるで荒れ狂った波のような猛攻を僵尸はリンのように避けることも受け止めることも出来ず、あっという間に叩きのめされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

さっき(二章)は出遅れちゃったけど、なんとか間に合った!
遅れてごめんね皆、参戦するよ!

あの壷に当てたら大惨事、そこには気を付けつつ、速攻で片付けるよ!
【野生の勘】で動きを【見切り】、攻撃は【戦闘知識】で回避しつつ、隙が見えた時点でUCを叩き込むよ。
銀陽、まだ私を認めてないのはわかるけど、今は力を貸して!
仕留めきれなかったなら、近づいて【怪力】のせた剣戟で止めを指すよ!



 最初から見つかった時点で形勢が不利に傾いたのだとようやく理解したのか、一体の僵尸が猟兵から背を向けて巳の刻へと駆け寄っていく。
 だがその体は明後日の方から飛んできた真空波によって吹っ飛ばされ、地面に転がされた。
「なんとか間に合った! 遅れてごめん!」
 真空波が飛んできた先を見れば、山の斜面を滑り降りながら、体のあちこちに葉や枝をつけながらクトゥルティアが現れる。
 戦場に突然割って入ってきたクトゥルティアに猟兵や僵尸達の視線が集まる中、当の本人は地面に直置きされた壺に集中していた。
「えっと……あそこか」
 あの壺こそ件の当てたら大惨事待ったなしな「巳の刻」であろう。
 先程の僵尸の動きから見るに全員ではないが逃げに走った物がいた以上、壺の状態を気を付けつつ、速攻で片付ける必要がある。
「銀陽、まだ私を認めてないのはわかるけど、今は力を貸して!」
 真価を中々発揮しようとない父の形見の気紛れな刀に呼びかけつつ、クトゥルティアは方々から飛びかかってくる僵尸の攻撃を読んで避けの体勢を取る。
 しかし僵尸達はなぜか優れている反射神経を用いて強引に攻撃の軌道を変えたり、同時に別々の方向から攻撃を仕掛けることで何とか当てようとしてくる。その結果としてクトゥルティアは間一髪の所で避けていく羽目になった。
『ジャックポットッ!!』
 そんな中でもクトゥルティアは焦らず居合斬りの要領で抜くと、そこから発された真空波が周囲にいた僵尸達を薙ぎ払う。
 しかしその一撃を正面から食らったはずの体も武器も真っ二つにはならず、僵尸達はフラフラと立ち上がった。
 クトゥルティアのように致命傷になるところを咄嗟に避けたのではない。次元を切断したはずの斬撃の威力が足りず、吹き飛ばすことしか出来なかったのである。
 まだ銀陽に認められてないこと、自分流にアレンジ出来たにも関わらず父のような剣戟を見せられないことに歯噛みしつつ、クトゥルティアは懲りずに襲いかかってくる気満々の僵尸達に向き直る。
「私の実力はまだまだみたいだけど……」
 立場を交代し、逆に突っ込んできたクトゥルティアに向けて薙刀を振り上げて威嚇する僵尸の体を銀陽の刀身で押し切る。
「必死に鍛えてきたこの力は、裏切らない!」
 へし折られた僵尸が薙刀を軸にして真っ二つになってクトゥルティアの前に倒れ伏す。
 しかし模倣するどころではない威力を目の当たりにしてもなお、僵尸達はわらわらとクトゥルティアに襲いかかってきた。
「いいよ! 全員銀陽のサビにしてあげる!」
 味方からも敵からも侮られている、という卑屈な考えを吹っ切るべく、クトゥルティアは大声で叫んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

キャロル・キャロライン
遅くなりました

それにしても、僵尸ですか
魂を護符に封じることで死後も生き続ける方々と聞いていましたが、オブリビオンになっているということは死後に再び死んだということなのでしょうね。なんとも美しくない者達です
貴方達のような存在はこの美しい世界にふさわしくありません
神の力をもって抹消いたします

さすがに護符を表には出していませんか
ならば、あの方がなされているようにその頭を狙いましょう
敵の攻撃は《神衣》で防ぎながら、浄化の力を込めた《神弓》で射貫いていきます

敵を討伐できたならば、後は『巳の刻』
あのようなものはこの世界に不要です
私の力が通じるのか、試しましょう

《神牢》に封じた後に、UCを用います



「それにしても、僵尸ですか」
 神の祝福を受けて不死となったキャロル・キャロライン(聖騎士・f27877)にとって、目の前の存在は仲間意識を覚えるはずである。
「オブリビオンになっているということは死後に再び死んだということなのでしょうね。なんとも美しくない者達です」
 しかし二度目の死を迎え、人に仇なす存在となった者達には嫌悪しか感じられなかった。
「貴方達のような存在はこの美しい世界にふさわしくありません。神の力をもって抹消いたします……ですが、まずはまぎれから無くさせていただきますか」
 その言葉と同時に地面から生えた白銀の柵が複雑に絡み合い、巳の刻を封じる檻へと変貌し僵尸達の魔の手を遮る。
 後顧の憂いを絶ったキャロルに向け、僵尸達は自らの得物を振るう。それらを身体を覆う神聖な力で逸らしながら、キャロルはその表面を冷静に眺めていた。
「さすがに護符を表には出していませんか」
 魂を護符に封じることで死後も生き続ける僵尸。その護符を狙えたら、と思ったが見た限り表面にもボロボロの黒衣の隙間にもその影は見当たらない。
 そもそも護符を失ったら死に直すという僵尸、初めから無いと割り切った方が楽か。
「ならばあの方がなされているようにその頭、狙わせていただきます」
 キャロルはマジックのように一瞬で矢を番えた弓を構えると、ほぼ零距離から次々に撃ち込む。
 避けようとすることすら出来ずに額で受けた僵尸達の頭はまるで風船のように破裂し、その場に小さな肉塊を撒き散らして倒れた。
「さて、それでは……」
 僵尸が周囲にいなくなったことを確認したキャロルは神牢に覆われた巳の刻へと狙いを絞り出す。
 そして他の猟兵達の視線が間に合う前に弦を離す。高速で放たれた万物を抹消する力は壺に直撃すると、中の液体ごとこの世から消失させた。
「……この程度の相手に良いようにやられているようでは、今回無事に取り戻した所で同じことを繰り返すでしょう。今回はどこかに持っていくことが目的のようでしたが、次もそうだとは限りません」
 取り返したら消さずに持ち帰るべきだったと憤慨する猟兵達に向け、キャロルは据わった目で反論する。
 猟兵達の前でほぼ手も足も出せなかった僵尸達にやられた仙人達が他のオブリビオン相手なら善戦出来た、この敗戦をバネに急激に成長するとは到底思えない。
 もし相手が人界に降りた瞬間にあの壺を割っていたら、発覚が遅れて猟兵達が来る前に目的を達成させられていたら、その時に困るのは何の罪も関係もない一般市民であるからこそ。
「あのようなものはこの世界に不要です」
 世界を清く正しい物にするべく動くキャロルは信念を曲げることは出来ない。
「さあ、報告に参りましょう」
 一方的に話を打ち切ったキャロルは白いマントを翻し、仙界への入口へ足を向けるのであった。

 かつての師範が自らの欲を満たすためだけに作った埒外の宝貝が失われたことに、目に見えぬ重圧と仕事が減ったことに仙人達は身分の差関係なく歓喜の声を上げた。
 その姿を見てある者は満足気に、ある者は複雑な感情を抱き、またある者は全くの興味も示さないが……ひとまずこの地域の平和を守れたことには安堵するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月13日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#封神武侠界


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト