●西印度、ヒマラヤ鉄道
寝台列車が線路を走る中、一台の客車へ男達が潜入する。
雰囲気は独特。
何故なら、彼らはこの地の人間ではないのだから。そして、それ以上に――剣呑であった。
男達は拳銃を片手に目標が居ると思われる個室に近づき、そしてドアを蹴破った。
「……逃げられたか?」
男の一人が舌打ちし、同胞が通信端末を開いた。
彼らの視界には開けっ放しの窓。その向こう側では西印の風景が疾走していた。
「何とか撒いたが、スマートでは無いな」
三つ揃いに赤毛の男が砂漠を歩く。
革靴は砂地に嫌われ、歩くのは一苦労と言った所。
「とは言え、仕事は終わった。後はこれをどうするか……」
戦利品のアタッシュケースは重たく、スラックスのプレスに苦労しないだろう。
『スポンサー』の意向では、この後の行動に関しては自由に判断してよいと告げられている。
「さて対立組織に恩を売るか、元の職場に返り咲くか、それとも――」
かつての敵に売りつけるか。
どちらにしても……。
「器量を試されているな」
思考が唇から漏れて、赤毛の紳士は顔をしかめた。
まずは視界遠くにある辛頭河の大河を超えることを考えよう。
友人の言葉を借りるなら、このままでは干し肉が一人分出来上がることは確実なのだから。
●グリモアベース
「諸君、たまには海外旅行はいかがかな?」
ややおどけた調子で氏家・禄郎(探偵屋・f22632)はタイプライターを打つ手を止めずに語り掛ける。
「いや、本当に海外での任務さ。場所は印度から巴基斯坦へと渡る小さな町。なんなら帝都桜學府の依頼というお題目もつけてあげよう」
探偵屋が投げた封書には確かに桜學府の名前が記載されていた。
「仕事の内容は現地でのスパヰとの接触、及び彼を追跡している『サクラ機関』の現地支部の撃退……内容が搦め手すぎてね、あちらから仕事が回ってきた形だ」
立ち上がり机に広げるのは南亜細亜圏の大陸地図。その西側にグリモア猟兵は印をつけた。
「スパヰのいる町までは補足できた。この季節なのに紫陽花の花畑の傍にある喫茶店で紅茶を飲んでいる。まずは彼に接触する事。幸いにも超弩級戦力の存在は知っている、後は君達の交渉次第ってところだ」
探偵屋に指は印から東へ。
「次に件のサクラ機関の支部を襲撃してくれ。ただ影朧兵器とは言わないが、影朧は仕向けて来る。肉体労働はお手の物だろ?」
説明が終わると、グリモア猟兵の手はタイプライターのレバーを倒し、ゲートを開く。
「世界は帝都によって統一されたとはいえ、現地ではスパヰも敵も、そして君達も外様だ。地元には迷惑かけずに綺麗に仕事をしようじゃないか」
少なくとも楽しい海外旅行は味わえそうにない、それだけはどんな猟兵でも悟ることが出来た。
みなさわ
超弩級戦力、世界ニ出征ス。
こんにちは、みなさわです。
今回は、サクラミラージュにおけるインドからパキスタンを舞台にスパヰアクションと洒落込みましょう。
●舞台
印度から巴基斯坦へと渡る小さな町。
砂漠を超え、インダスの大河の傍で冒険は始まります。
帝都によって統一されているので、現地は基本的には平和です。
●第一章
最初は小さな町の喫茶店。
紫陽花に囲まれたその店内でスパヰと接触し、情報を得るなり、協力を得るなりしてください。
勿論、銃を突きつけるような方法を取ると逃げられます。
●第二章
スパヰからの情報、協力をもとに『サクラ機関』の支部を襲撃します。
機関員は影朧で武装し、襲い掛かってきます。
●第三章
今回の事件の元になった人間との対面です。
勿論、邪魔する影朧はいますので、それを排除し、首謀者をどうするか?
そこは皆様にお任せします。
●スパヰ
赤毛に三つ揃いに青いネクタイの紳士然たるスパヰです。
趣味は紅茶。
職業意識に忠実な男です。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
それでは皆様、よろしくお願いします。
第1章 日常
『紫陽花喫茶でひとときを』
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POW : 食事を楽しむ
SPD : 飲み物を楽しむ
WIZ : 景観を楽しむ
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●オープニングは紅茶と共に。
西印から巴基斯坦、砂漠を超え、辛頭河の大河のほとりに町はある。
かつて帝都が統一を果たしたことで英吉利の支配を脱した土地は、信ずる教えによって住む場所を分かち、時には対立し、時には手を取り合う。
回教圏にあるこの町も変わらない。
王室の支配から脱することを望んだ国と違い、連邦に属することを望んだ国。だが、国という存在は最早無く。影響という名の残滓だけが刻まれている。
あるのはどの大樹に寄り添い、自らを守っていくか。
この町は緩衝地帯にして、火薬庫。
故に、彼はここに潜伏することを選んだ。
季節外れの紫陽花が道を覆い、幻朧桜が空を舞う先にその店はある。
オープンテラスとは聞こえがいいが実際は露店のテーブルと椅子。
「チェックメイト」
三つ揃いを纏った赤毛の男がコールすると対面に居た浅黒い男は両手を上げ、そして席を立った。
「後悔するぞ」
「少なくとも同じ交渉のテーブルに立ってから言ってくれ」
去り際に警告を発した男など目もくれず、ティーカップを傾けて男は答えた。
そして、赤毛の男は君達の誰かに気づく。
「待っていたよ……ああ、黙っていても分かる。君達はこの土地で『違和感がなさすぎるんだ』」
男――スパヰは知識によって超弩級戦力という存在を看破する。
「待望していたとはいえ、今回は厄介だ。だから試させてもらえないか」
赤毛の男がトンと叩くのはチェスボード。
「ただ会話をするだけなのは難しいだろう。だからチェスを交えてという事でいかがかな? 勿論、ただ勝って得られるものは、相応の物しかない」
暗にスパヰはチェスは道具でしかないと宣言した。
「少なくとも今の私は安全ではない」
男が右手を上げると重厚なアタッシュケースが一つ。
「だから出来るだけ状況が改善したいのさ……あさましいだろう? だが私は仕事で死ぬ気は無いんだ、紅茶を飲む予約があるんでね」
そこに居るのは生き残るという事を決めた、男が一人。
書類を調べれば分かるだろう。
かつての名はブルーリボン。
帝都にて猟兵と戦った男は、遠く巴基斯坦にて再び対峙する。
「これはオープニング。チェスでいうなら、この世界の定石だ。真っ直ぐに突き破るか、それとも定石破りを仕掛けるか……お手並みを拝見させてもらおうか?」
荒谷・ひかる
あっ、貴方はいつだかの。
どうもご無沙汰しております(ぺこり)
……じゃなくてっ!?
どどど、どうして貴方がこんなとこでこんなことに!?
(暗に捕まってた筈ではと言いたいらしい)
ちぇす……一応知ってますけど。
うぅ、お手柔らかにオネガイシマス……
(本当にルール知ってる程度レベルの腕前、ぶっちゃけ弱い)
一応接触前に【大地の精霊さん】発動、ブルーリボンさんとさっきまでお話されてた男性を地中潜行状態で追尾してもらい、五感共有で可能な限りの情報収集(素性や行き先、先程の経緯等)をしておく
人々の平和を踏み躙るような案件でなければ、手助けすることはやぶさかではありません。
具体的なお話、聞かせてくださいますか?
●取引という名のグランドフォーク
最初にスパヰの前に立つのは精霊の巫女であった。
「あっ、貴方はいつだかの。どうもご無沙汰しております」
「久しぶりだね。健勝で何より」
「……じゃなくてっ!?」
世間話のように話術に取り込まれる寸前で荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は踏みとどまった。
「どどど、どうして貴方がこんなとこでこんなことに!?」
「政治的取引という奴さ。話すことは話して、かと言って解放するわけにも行かない。そこにどこぞの一声があって、仕事を請け負ったというところだよ」
自らの状況を説明しつつ赤毛の紳士は椅子を指し示す。
「ちぇす……一応知ってますけど」
チェスボードを前に精霊の友は若干の及び腰。
「うぅ、お手柔らかにオネガイシマス……」
「それは君の『腕前次第』」
少なくとも少女相手に手加減する様子は無い様だ。
「人々の平和を踏み躙るような案件でなければ、手助けすることはやぶさかではありません」
スピーディーに進むゲーム、ピースを奪われつつも肝心の番手にひかるは言葉という駒を置く。
「具体的なお話、聞かせてくださいますか?」
「君達は非常に正義感溢れる者達だ、プライベートであれば好感を持つだろう」
スパヰはまず猟兵の迷わずに本題へと入る精神を評価し、その上で。
「だが、これも仕事だ。出来るだけリスクは少なくしたい。君達に最小限の情報を渡すべきか、それとも一蓮托生となるべきか、決めかねている」
現状を話す。
「君の事だ、見えない力で色々と探りを入れたりしているだろう? 例えばさっきの男。彼は今、誰と話している?」
紳士の言葉に精霊の巫女は目を見開く。
「知ってらしたので?」
「いや……」
また一つ、スパヰはピースを奪い取る。
「私に仕掛けてないなら、あちらだと思ってね……で、誰と接触している」
ユーベルコヲドの使用を悟られたひかるが深く息を吐く。
「今は帝都から来られたらしい背広の人と話をしていますね。暑くないんでしょうか?」
「銃を見せるドレスコードは存在しないよ」
少女の質問に答えが返ってくる。
「つまりはもう、追手が来ているってことさ。とりあえず情報提供に感謝しつつ、こちらもカードを切ろう」
紳士はクイーンを奪い取る。
「彼らの目的は対猟兵に対する武装強化、通称『カ号実験』の検証。そして私のはそのために重要な道具をいくつか盗んできた」
「では――」
ひかるの言葉はキングの前に置かれた駒が制した。
「チェックメイト、時間切れだ。他の仲間とこの件を共有してくると良い」
精霊の少女は誠実さと献身を以って、スパヰから現在の状況とそれに至る要因を引き出した。
成功
🔵🔵🔴
秋津・惣次郎
列車を乗り継ぎ遠路遥か、日の本の威光は斯様な異郷まで及ぶか。
--
軍服では人目を引く。ここはひとつ洒落込んでいくとしよう。UCを発動、件のスパヰと会う前に店の周りは固めよう。あくまで目立たぬように。
喫茶か、異国式もまた風情があるなブルーリボン。おすすめを頂こう。
遊んでいる場合か?追われる身上の割に余裕があるようだ。
時に時局を決するのは貴殿の鞄の中身やもな。ただ寄越せと無粋を言うつもりはない。その気になれば東京や横濱にもポストを用意出来よう…貴殿の腕と「忠誠心」ならばな。
無頼の輩を頼りに帝都を敵には回せまい?尤も、今の貴殿に選択の余地はないと思うが如何に。
ここは良い街だ。早々に東京へ帰りたくなる。
●世界という名のマイナーピース
「列車を乗り継ぎ遠路遥か、帝都の威光は斯様な異郷まで及ぶか」
帝都陸軍所属、秋津・惣次郎(憲兵隊中尉・f23978)が額に零れる汗を拭った。
軍服は目立ちすぎる。
故にゆったりとした民族衣装を身に纏い、紫陽花の小路を歩いていく。
「喫茶か、異国式もまた風情があるなブルーリボン」
「世界は帝都によって統一されたのだよ、国という言葉はもう絶えて久しい」
惣次郎の言葉に対し、紳士の返答には棘があった。
「……おすすめを頂こう」
席に座りつつ、憲兵中尉は言葉に潜む刃を見ないことにした。
「遊んでいる場合か?」
ナイトで盤面を支配しつつ惣次郎が問いかけた。
「追われる身上の割に余裕があるようだ」
「君は帝都から外に出たことは無い様だね?」
憲兵の皮肉にスパヰも言葉を返す。
「ここはかつての英吉利連邦圏だ。印度ならともかく、追手もこちらでは派手なことは出来ない」
二人の手元にミントティーが置かれた。
「つまりは君と話をするくらいの余裕はあるという事だ」
赤毛の紳士が茶を口にする。
いつの間にかチェスボードは膠着状態へと陥っていた。
「時に時局を決するのは貴殿の鞄の中身やもな」
状況を脱するため惣次郎は鞄に視線を落とす。
「ただ寄越せと無粋を言うつもりはない。その気になれば東京や横濱にもポストを用意出来よう……貴殿の腕と『忠誠心』ならばな」
スパヰの眉が吊り上がる。
「無頼の輩を頼りに帝都を敵には回せまい? 尤も、今の貴殿に選択の余地はないと思うが如何に?」
「まずは……」
憲兵中尉の言葉を受け、ミントティーを傾けた赤毛の紳士は
「護衛の配置、ありがとう」
皮肉と言う名の刃を突きつける。
「――!?」
護衛というのは勿論諧謔、実際は自分を取り囲むユーベルコヲド。
スパヰの言葉に惣次郎は背筋が凍ったように感じた。
「こんな露天環境に兵を配置する……誰も気づかないと思ったかい? いや、気づかなくても分かるよ『静かすぎるんだ』」
ユーベルコヲドを持たずとも、ユーベルコヲドを知っている。
かつて超弩級戦力と戦ったことがある男が故の判断力。
「その上で、君はポストを提供しつつも半ば強引な手を選んだ」
憲兵中尉の視界に何かが反射した――照準眼鏡の硝子!
「仕事を任せるには不安がありすぎるな」
「――狙撃兵か」
惣次郎の言葉にスパヰが答えることは無い。
代わりに返ってくるのは
「とりあえずは今日はここまでとしよう」
拒絶と
「そして、君の提示してくれたポストに関しては応えられない――おそらくは『消される』のが確実だからだ」
わずかな情報の提示。
「……帝都にも『敵』は居るという事、貴殿はそう申すのだな?」
自らもミントティーを口にする憲兵中尉。
熱いはずの茶が身体を冷やしていく。
「失礼する」
例え超弩級戦力と言えど、軍と猟兵としての戦いから離れれば、自らに為す術はない。
帝都にも力が及ぶ敵。
これだけを糧に、惣次郎は席を立った。
「ここは良い街だ。早々に帝都へ帰りたくなる」
呟いた言葉が苦く感じるのは気のせいだろうか……?
苦戦
🔵🔴🔴
グウェンドリン・グレンジャー
私の、故郷の、歴史と、この世界
ある程度、類似してる、みたい
(チキンティッカに舌鼓を打ちつつ、他の猟兵達がスパヰに接触するのを観察し)
あ、珈琲。ブラック
今、お話、いい?
私、グウェン。グウェンドリン・グレンジャー
別の世界、ロンドン、から、来た
(とてつもなくぶつ切りだが、アクセントや言い回し自体は親譲りのクイーンズイングリッシュである。「クイーン」は違うが)
チェス、自分でやったこと、ない
けど、パパが、やってるのは、よく見た
ぶっつけ本番、初陣の相手、お願いする
(第六感をフル稼働。しかし強くはない。ビギナーズラックは果たしてあるかないか)
サクラ機関……構成員、は、地元民?それとも、余所者?教えて、欲しい
●別世界という名のクイーンズギャンビット
チキンティッカに舌鼓を打ちつつグウェンドリン・グレンジャー(Blue Heaven・f00712)が周囲の動きを観察する。
人は去り、緊張感が溶けたころを見計らって彼女は赤毛の紳士が待つテーブルに座り。
「あ、珈琲。ブラック」
対面にいる相手が何かを言う前に注文を頼んだ。
「今、お話、いい?」
頼んだものが届く前からグウェンは切り込んでいった。
「私、グウェン。グウェンドリン・グレンジャー」
名乗り、そして手元に来た珈琲を手に取る。
「別の世界、ロンドン、から、来た」
異邦の英吉利、その言葉にスパヰの眉が動く。
「なるほど、道理で懐かしいイントネーションだったわけだ」
少女が言葉にしているのはクイーンズイングリッシュ、英語とて土地が違えば色も違う。
故にたどたどしくも記憶を呼び起こすものではあった。
「チェス、自分でやったこと、ない」
白いピースを覗き込みながらグウェンが呟く。
「けど、パパが、やってるのは、よく見た」
そして視線は紳士の方へ。
「ぶっつけ本番、初陣の相手、お願いする」
「かしこまりましたレディ」
少女の言葉にスパヰは礼を以って応えた。
「チェックメイト」
「……やはり、無理」
キングの前に置かれたピースを見て、銀髪の少女が呟いた。
「勘は良いのだろうけれど、チェスは戦術で未来を制限するゲームだからね。まあ、それより……」
駒を並べなおしながら紳士は答え、そして――
「君の話を少しだけ聞こう」
態度を柔らかくする。
「言っただろう、勝ってもそれなりの物しか与えないと。敗者に何も与えないというわけではない」
つまりチェスは会話のきっかけにするアイテムという事だった。
「じゃあ」
頷き、グウェンが口を開く。
「サクラ機関……構成員、は、地元民? それとも、余所者? 教えて、欲しい」
「印度に居るのは帝都から来たの貿易商だ。名はサクラ・イチロウというが……これは偽名だ」
スパヰの言葉はなおも続く。
「その他に彼の下で働いている帝都の臣民、こちらで働いているもの、グルカ傭兵。様々だ……そして誰もが」
男の手が紅茶を口元に運び、そして深く息を吐く。
「君達、超弩級戦力を脅威とみなし排除しようとしている」
空気が少しだけ冷えた。
紳士が手を上げれば、淑女は席を立つ。
全ての情報を望めば、それなりの物を必要とするが、一つに定めれば取引は容易い。
グウェンは敵であろうとする存在を知り、成果として持ち帰った。
成功
🔵🔵🔴
杼糸・絡新婦
どうしたもんかと考えとっても仕方ない、
こんにちはと【コミュ力】で話しかけてみよか。
お互いお仕事ではあるけれど、
のんびりした風景を楽しむ余裕は欲しいわな。
じぶんも紅茶を頂きたいし。
のんびり会話できるなら話しつつ【情報収集】
自己紹介したほうが良いかい?
別に教えて困る情報はない、ただの一般猟兵やけど。
出来るのはお掃除ぐらいよ、
せやけど掃除場所がいまいちわからんから教えて欲しい、
ただそれに見合うお返しが思いうかばんのが問題やな。
あ、飴ちゃんでも食べる?
情報もらえたならお礼は言うておこう、
おおきにな。
●スウィープという名の相互扶助
「こんにちは」
杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)がスパヰに声をかけ、椅子に座る。
その動きに計算されたものか、天性の技術なのか、何かを感じ赤毛の紳士を表情を少しだけ変えた。
「自己紹介したほうが良いかい?」
「ご自由にどうぞ」
絡新婦の問いに、スパヰはバトンを預ける。
その言葉に出された鋼糸のヤドリガミは紅茶を傾けてから、話を切り出すことを選んだ。
「別に教えて困る情報はない、ただの一般猟兵やけど……」
傍らを狩衣を着た狐人の人形が歩く中、絡新婦は言葉を続ける。
「出来るのはお掃除ぐらいよ、せやけど掃除場所がいまいちわからんから教えて欲しい」
「なるほど、掃除場所が見つからないのは仕事上困るね」
まるで世間話に応じるかのように男達は会話を重ねる。
「だとしたら、こちらで紹介しよう」
「ただそれに見合うお返しが思いうかばんのが問題やな」
スパヰの申し出に考え込むのはヤドリガミ。
けれど、その懸念は解消される。
「それは問題ない。こちらとしてはそこの掃除が終わるとしばらく快適に過ごせるからね」
「つまり」
歩き回る狐火と人形を抱えて絡新婦が解を導き出す。
「そちらさんとこちらの利害は一致していると?」
「こちらがその場所になる」
紳士が封筒をテーブルに置くのが答えだった。
「もし急ぐなら車を借りた方が良い」
「おおきにな」
ヤドリガミが情報をその手に取り、礼を述べた。
「あんたさんはどないしますか?」
席を立ち、猟兵は質問する。
「そうだね」
まず一言答えてから、紅茶を傾け
「君達の情報次第では現場を見に行くかもしれない」
「なるほど……また会えること期待しますわ」
絡新婦の言葉にスパヰが唇を動かした。
それが同意なのか拒絶なのかは――この後、明らかになる。
成功
🔵🔵🔴
黒影・兵庫
(「身の安全の保障が欲しいなら桜學府に保護してもらえるように手配が妥当かしら?」と頭の中の教導虫が話しかける)
その場合、軟禁状態になるのは不可避、きっと嫌がるでしょうね。せんせー
(「保護が欲しい、けど束縛はするな?虫が良すぎない?」)
泳がせた方が桜學府に益があることを証明できれば可能かと
(「敵の情報を沢山くれたら身の保障と自由を約束、こんなところか」)
そうですね
あとはサクラ機関と影朧相手に対峙する姿を見せて
信ずるに足る存在かどうかを見極めてもらいましょうか
(UC【脳内教室】発動)
こんにちは!
定石な打ち方しかできませんが俺で良ければ付き合いますよ!
●脳内会話という名のビッグシンク
「こんにちは!」
快活な挨拶は黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)。
「定石な打ち方しかできませんが俺で良ければ付き合いますよ!」
「こちらからチェスを仕向けてきたんだ、断る理由はないよ」
真っ直ぐな姿勢に好感を抱いたのか、スパヰは笑みを浮かべ席へと若者をいざなった。
『身の安全の保障が欲しいなら桜學府に保護してもらえるように手配が妥当かしら?』
――その場合、軟禁状態になるのは不可避、きっと嫌がるでしょうね。せんせー。
脳内に寄生する教導虫が提案し、兵庫がそれに対するリスクを提示する。
『保護が欲しい、けど束縛はするな? 虫が良すぎない?』
――泳がせた方が桜學府に益があることを証明できれば可能かと?
『だとすれば、敵の情報を沢山くれたら身の保障と自由を約束、こんなところか?』
――そうですね。あとはサクラ機関と影朧相手に対峙する姿を見せて、信ずるに足る存在かどうかを見極めてもらいましょうか。
脳内で行われる虫との教室。
チェスピースが、奪い、奪われる中、蟲の青年が思考を交わし合う。
そこへ――。
「答えは決まったかい?」
赤毛の紳士は結論が出たところを見計らい、言葉をかけた。
「こちらとしては敵の情報を沢山くれたら、身の保障と自由を約束します。貴方には俺達がサクラ機関と戦う事によってそれを信じてほしいです!」
「なるほど……悪くない。身の保障と自由は桜學府への手配かな?」
兵庫の提案を聞いたスパヰの質問に蟲の青年は頷きを返す。
「商談成立だな」
目の前に大き目の封筒が放り出され、兵庫がそれを開けた。
「場所とこの一帯を取り仕切るサクラ・イチロウに関しては、他の超弩級戦力に渡している。だから君には『カ号実験』の成果である刀の影朧に関して教えよう。彼らは妖刀の類と言われているものを量産、そして武装することで戦闘力の強化をもくろんでいる。まあ、刀に乗っ取られるという弱点はちょっとよろしくないがね」
「他には?」
青年の問いに紳士は回答する。
「現状では数が少ない、君達が制圧すれば。大体は回収できるはずだ――そのために私は泥棒まがいの仕事をしたのさ」
スパヰはアタッシュケースを持ち上げた。
「こんなところで良いかな?」
只人は時間切れとばかりに猟兵のキングを奪い、そこで会話が終わった。
蟲の青年はスパヰの安全を保障し、スパヰはそれに対し情報を以って応えた。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
正直、再会は望んでおりませんでした
優秀な諜報員たる貴方とは
ですが、縁あった者として
ご壮健でなによりです
(UCで発言真偽や真意見切り試行、相手もプロ、目安程度)
貴方は情報を提供し益を得、その情報得た猟兵に現地支部は叩かれる
『皆』に良き取引です
其方の情報如何で、私達の矛先を変えられることも含めて
例えば、キングでなく他の駒に向かわせる…ですとか
只の邪推です
先の男性に貴方の手腕…根拠はその程度
駒の内訳
現在、そして貴方が望む盤面を教えて頂けますか
私達が望むかどうかは、また別の話ですが
さて…
(チェスの腕:ルールは完璧、定石の知識不足=弱)
…時間稼ぎの為、恥を忍んで電脳のチェスソフトを解凍するべきでしたね…
●盤面という名のチェスゲーム
「違和感がないというのはなかなかすごいものだな」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の姿を見上げ、スパヰが言葉を発した
「正直、再会は望んでおりませんでした。優秀な諜報員たる貴方とは」
「私もだよ、一度敵にした相手と接するのは骨が折れる」
騎士の言葉に赤毛の紳士も正直な感想を返し、トリテレイアのマルチセンサーも嘘偽りがないことを証明する。
「ですが、縁あった者として――ご壮健でなによりです」
「ありがとう、君の方は……こういう場合はどう答えるべきだろうね」
肩を竦め、席へと誘った。
椅子は戦機が座っても壊れそうにないほどに頑丈にしつらえてあった。
「貴方は情報を提供し益を得、その情報得た猟兵に現地支部は叩かれる
『皆』に良き取引です」
ポーンを奪い取られつつもトリテレイアはスパヰの持ち出した『商談』を端的に分析する。
「理解が早くて助かるよ」
ルークを飛び込ませて、戦機の手を封じつつ人は答えた。
「其方の情報如何で、私達の矛先を変えられることも含めて」
だが、ただやられる騎士ではない。
俊敏なナイトの如く、言葉の一撃を見舞った。最も、本人のナイトは今、奪われたが。
「例えば、キングでなく他の駒に向かわせる……ですとか」
「聡明だな」
気が付けば、スパヰのルークは盤面から消えている。
「只の邪推です。先の男性に貴方の手腕……根拠はその程度」
消えたルークは騎士の手に。
「駒の内訳。現在、そして貴方が望む盤面を教えて頂けますか? 私達が望むかどうかは、また別の話ですが」
「……分かった」
騎士の問いに少々の沈黙ののち、赤毛の紳士が答えを返した。
「他の超弩級戦力にも話したが、サクラ機関は『カ号実験』というものを現在、こちらの地で行っている。印度という土地は比較的帝都に寛容で、『王室』のある島に依存しているところだからな」
紅茶を傾けて、まずスパヰは状況を整理し、海外の事情も補足した。
「その関係で私が仕事に動いたのだが、その過程で一つの物を奪取した」
「それは……その鞄の中身という事ですか?」
トリテレイアの問いに赤毛の紳士は頷き、鞄を開ける。
「影朧兵器、ラプラスの魔。複数あるであろう未来の方向性――余地から、最適な未来を含めた結果を提示する影朧を使った電算機だ」
鞄の中には何かがうごめく真空管が特徴的な機械が光を放っていた。
「なるほど、さて……」
騎士はそれ以上の言葉を打ち切る。
「……時間稼ぎの為、恥を忍んで電脳のチェスソフトを解凍するべきでしたね」
チェックメイトされた盤面を前にトリテレイアが自嘲した。
「それは君の流儀ではないだろう」
スパヰは笑みを浮かべ。
「だから、私の流儀に基づいて続きを話す。私の描く盤面は、これをどうするかというところだ。君達に託し、追手を撃退するか。『王室』に売りつけて庇護と返り咲きを狙うか……できれば君達のような流儀に沿いたいものだ」
人は戦機の流儀に敬意を表して情報を提示した。
騎士の選択はおのずと分かるであろう。
大成功
🔵🔵🔵
ミネルバ・レストー
こうしてあなたとご対面が叶うなんて
不思議な気分よ、ブルーリボン
……それとも、あの日の敗北と共にその名は捨てたのかしら?
チェスなら多少は相手できるわ、よければ一局
……ううん、時間が許す限りまでの手でいいわ
キャスリングくらいまでは進められるでしょ?
さて、わたしはあなたから倒すべき敵の情報を聞き出さないといけないの
それはあなたにとっての敵でもあると思うわ、悪い話じゃなくて?
感情を揺らさず、落ち着きをもって終始対応しましょう
ナイトを主戦力にした駒運びを見せつつ、少しでも長く勝負を持たせる
お互いアンパッサンなんていうヘマはしないでしょうし
その最中にこちらからもひとつ情報提供をするわ
「露西亜の蝶は健在よ」
●近況報告という名のキャスリング
「こうしてあなたとご対面が叶うなんて不思議な気分よ、ブルーリボン」
「……君は?」
少女が話しかけた時、空気が涼し気に感じられたのは気のせいか?
「ミネルバ、ミネルバ・レストー」
自らの名を名乗ったミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)はさらに言葉を続ける。
「……それとも、あの日の敗北と共にその名は捨てたのかしら?」
「詳しいな。元々はあの甲冑の名前だ。アレがない以上、私はただのスパヰさ」
肩を竦め、席を差し示す。
「今度は君の番というわけだね、ミズ・ネストー」
「ネリーでいいわ。では良ければ一局……ううん、時間が許す限りまでの手でいいわ」
ネリーが椅子に座り、相手に向き直る。
「キャスリングくらいまでは進められるでしょ?」
「さて、わたしはあなたから倒すべき敵の情報を聞き出さないといけないの」
ナイトを中心に手堅い戦術で攻めていくこおりのむすめに対し、赤毛の紳士は耳を傾けつつピースを動かす。
「それはあなたにとっての敵でもあると思うわ、悪い話じゃなくて?」
「そうだな……悪い話ではない」
ネリーの提案に同意を返し、スパヰは彼女の主力であるナイトを奪い取る。
「――サクラ機関自体は君達がこちらに来る以前から存在を確認している」
組織の名前を聞き、少女の瞳が冷たさを増した。
「元は政府の中の一勢力だったのだろう。それが『猟兵脅威論』というお題目を掲げて急速に力を着けていった。最も今までは君達相手に正面切って戦うという事はしなかったが……」
赤毛の紳士の言葉に対しネリーは長考に見せかけて深く息を吐いた。
「今になって戦える力を着け始めた?」
「そういう事だ。どこからか影朧兵器を持ち出して『カ号実験』と称した戦力増強策を試し、武装する。帝都や欧州、亜米利加を避けて事件と称した紛争が起こりやすい亜細亜圏を選ぶ――用意周到なやり方だよ」
こおりのむすめがダージリンを傾けつつ、相手のビショップを盤面から排除する。
「アンパッサンなんていうヘマはしないようね」
「だから、それをさせるのが、私や君達の仕事さ」
ネリーの言葉に対しスパヰが返し、そして笑う。
「そうさせてもらうわ……あ、そうそう」
何かを思い出すかのように少女が口を開いた。
「露西亜の蝶は健在よ」
「……そうか」
それだけ答え、赤毛の紳士は駒を動かす。
ピースがチェスボードの上を踊る音だけがいつまでも響いていた。
成功
🔵🔵🔴
御桜・八重
郷に入っては郷に従えってね。
現地には回教徒の女性の服装で行きます♪
(キレイー、カワイイーとご満悦)
「ブルーリボンさん、お久しぶりです!」
店に入るや否や、真っ直ぐテーブルに駆け寄って、
ぺこりと一礼。
色々あったことは忘れちゃいないけど、
それでもまだあの夢は潰えてないことを知って、
笑みが隠せない。
…え、わたしがルークみたい、ってチェスの駒?
まっすぐ一直線にしか進めない… ああ、飛車のことかぁ♪
って、人を猪みたいに!
こほん。
駆け引きは苦手だからストレートに。
あなたを追っている組織のこと、
そしてあなたが奪取した物について教えて欲しい。
悪いことをするなら止めるけど、
今は協力を求められるから、素直に嬉しい♪
●単刀直入なルーク&ルーク
「ブルーリボンさん、お久しぶりです!」
丈の長いワンピースとゆったりしたズボン、シャルワーズ・カミーズを身に纏った御桜・八重(桜巫女・f23090)はいつも快活だ。
「やあ、桜のお嬢さん。今日は一段とお美しく」
「えーっ! そうですか!」
年頃の少女なのもあり、やはり着飾るのは楽しいもの。スパヰの言葉にご満悦の様子。
けれど……
「こほん……駆け引きは苦手だからストレートに」
咳払い一つ、空気を取り戻すと改めて問いかける。
「あなたを追っている組織のこと、そしてあなたが奪取した物について教えて欲しい」
「何というか……君はこれだね」
八重の言葉に対する答えは城兵の駒。
「ルークだ」
「……え、わたしがルークみたい、ってチェスの駒?」
シャルワーズ・カミーズを纏った桜の巫女は首をかしげる。
「真っ直ぐに突き進んでいく駒だよ」
「まっすぐ一直線にしか進めない……ああ、飛車のことかぁ♪」
そして八重は気づく。
「って、人をまるで猪みたいに!」
「ああ……これは失礼を」
立ち上がって頭を下げる赤毛の紳士。
「では、礼を失したお詫びにご質問にお答えしましょう」
「ひょっとして、わざとやってません? こう……自分から答えるために」
やはり駆け引きは苦手だ。
スパヰの挙動を見つつ八重は思った。
「他の超弩級戦力にも話しているけれど、私が探りを入れたのは『サクラ機関』――猟兵を脅威とみなし排除しようと考えている一派閥」
スパヰは語り、右手に持ったアタッシュケースを開く。
「そして、これが奴らから拝借したもの。影朧兵器、ラプラスの魔」
「ラプラスの魔?」
何かが蠢く真空管に嫌悪を感じながら八重が問う。
「未来にはいくつもの可能性がある」
赤毛の男が答えるかのように口を開く。
「それを余地と考えて、その中から成功率の高いものを中心にピックアップする電算機……問題点としてこれを使用した人間は徐々に人間性を喪失し影朧になってしまう」
「……ひどい」
過去の戦争が作った非人道な遺産。
それに対し桜の巫女が呟くことしかできない。
「昔はそういう物があったという事さ。いつだって人が怪物なのは変わりない」
赤毛の男がアタッシュケースを閉じる。
「奴らのここでの本拠地は他の猟兵にも伝えてあるし、必要なら教えよう……私から出せるのはこんなところだ」
「ありがとうございます!」
頭を下げる八重、そして。
「前はあなたを止めたけど、今回は協力を求められて嬉しいです♪」
「……スパヰにそんなことを話していいのかい?」
困った表情で男を肩を竦めた。
「さて、これをどうするかは」
桜の巫女が場を外した後、スパヰは一度、視線を鞄に落とし。
「君に聞けばいいのかな?」
そして最後の来訪者へと向けた。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
あらま、聞き覚えある声だと思ったらいつぞやのスパヰさん?とっ捕まえたって聞いたけど元気そうねぇ。商売繁盛そうで何よりだわぁ。
そこまで得意なワケじゃないけれど、一局御指南お願いしようかしらぁ?
…ま、あたしたちが出せるものなんて決まってるけどねぇ。
異界の知識と埒外の戦力…チェス盤の外から平然とキングをブチ抜ける奴がゴロゴロいるってことは、文字通り「身に染みて」知ってるでしょぉ?
だから、あたしが訊きたいのは一つだけ。
――「幾ら出す?」
…え?敵意とか隔意?別にないわよぉ?
「たまたまあの時は敵だった」ってだけの話だもの。この業界じゃよくあることでしょぉ?
それはそれとして交渉に手抜きはしないけど、ね。
●交渉を終わらすチェックメイト
紫陽花の庭園の中に立つスラックスにベスト姿の女性。
視界の先には三つ揃いのスーツ姿の男性。
「あらま、聞き覚えある声だと思ったらいつぞやのスパヰさん?」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の甘い声がオープンテラスに響いた。
「とっ捕まえたって聞いたけど元気そうねぇ。商売繁盛そうで何よりだわぁ」
「政治的取引ってやつさ。おかげで危ない橋を渡ることになったけれどね」
スパヰの言葉にティオレンシアは微笑みを返す、だが閉じられた瞳に見せかけた細い目はかつての敵から
「それじゃ、折角のお誘いだし……一局御指南お願いしようかしらぁ?」
――チェスボードへと向けられた。
「……ま、あたしたちが出せるものなんて決まってるけどねぇ」
開口一番、ティオレンシアはポーンを動かす。
「異界の知識と埒外の戦力……チェス盤の外から平然とキングをブチ抜ける奴がゴロゴロいるってことは、文字通り『身に染みて』知ってるでしょぉ?」
ルールを無視して、相手のキング。その目の前に。
「だから、あたしが訊きたいのは一つだけ」
手に持った駒でピースを弾くと、糸目の女は顔を近づける。
「幾ら出す?」
「幾らほしい?」
崩壊した盤面を眺めながら赤毛の紳士は紅茶を傾けた。
沈黙が場を支配する。
どちらも問い、どちらも答えない。
やがて白旗を振ったのはスパヰの方だった。
「久しぶりに仕事をした気分だよ……」
「わかってたんでしょぉ?」
ティオレンシアは表情を崩さない。
「この業界じゃよくあること。たまたまあの時は敵だったってだけの話だもの」
昨日の敵は今日の味方。決して友ではなく、常に敵ではない。
赤毛の紳士が仕掛けた戦いはまさにそれであり。糸目の女は堂々と盤面に乗り込んでチェックメイトを決めた。
「それはそれとして交渉に手抜きはしないけど、ね」
「手心は加えてくれよ」
スパヰが肩を竦め、アタッシュケースをテーブルに置いた。
「現地への地図はもう他の猟兵に渡しているから、現地までの車の都合。そして影朧兵器、ラプラスの魔。後はまあ『チップ』も弾んでおこう……これでどうかな?」
「随分、太っ腹ねぇ?」
今度はティオレンシアが怪しむ。
「私も試されているのさ。でなきゃ、ここでこんな危険物を持って、紅茶を飲んではいられない――過去の遺物を正しく埋葬出来る者を選ぶ。それがここに居る本当の役目だったのさ」
カップを空にして、赤毛の男は立ち上がる。
「あとは君の決意しだいだ。その鞄を握れば、ビジネスは開始だ。ツアーガイドが案内をしてくれる」
「……信頼できるのかしらぁ?」
女が悪戯っぽい笑みで問いかける。
「それを盗んだ男ほど、詳しい者はいないだろ?」
ツアーガイドを自称したスパヰも同じように笑みを返した。
舞台は変わる。
回教圏から離れ、広大なる印度へと。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『紅き妖刀』
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POW : 人を喰らい、人を斬る
自身の【宿主の生命力】を代償に、【妖刀を装備し、身体能力を強化した宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【達人級の剣術】で戦う。
SPD : 心を喰らう呪い
自身に【忌まわしき呪いのオーラ】をまとい、高速移動と【精神を蝕む呪いの刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 奥義:紅刃十連撃
【宿主を操り、必殺の奥義】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
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●『カ号実験』試製刀、七〇一式
砂漠を超え、猟兵達が向かうは印度。
その中心部、行政と商業の集う区画。
「君達、超弩級戦力の存在は人々から歓迎され、帝都桜學府にとっても無くてはならないものだ」
トラックの板発条は貨物車の足回りとして信用できるが、旅客としての乗り心地は最悪だ。
揺れる車内でスパヰは猟兵へと語る。
「だが、権力を持った大人――まあ、大人としておこう。彼らにとっては危うい刃でもある」
煙草を咥えて、燐寸を持ち、そして赤毛の男はその手を止めた。
ちょっとした灯火で補足、狙撃をされるのを避けたい。
「権力に囚われず、異なる世界からの来訪者にして、強大な影朧を倒し、転生させるもの。行動原理の殆どが脅威に対抗するという使命の元に動く癖に、桜學府や軍にも籍を置く者がいる……君達が集団で動けば世界が変わると見るものは居る」
トラックの揺れが穏やかになる。路面状況が良くなったのだろう――つまりは目的地に近い。
「今の地位に居る者にとっては影朧のように見えるのさ。だから人は過去の遺物や後ろめたい方法を取っても、君達とやり合える武器を求める」
車が止まった。
「会話の時間は終わりだ。分かっているだろうけど、一度盗みに入られた建物だ、警戒は厳重と思ってくれ……ああ、その点に関しては責任は取らない」
スパヰは肩を竦め、荷台から降りた。
視界の先には白い壁が特徴のレンガ造りの邸宅が建っていた。
「抜刀隊、前へ!」
背広の男が叫びつつ、心の中で舌打ちをする。
――やはり超弩級戦力との接触を図ったか。
影朧兵器、アレだけで充分動かせる動機になりうる。
尼婆羅のグルカ傭兵と帝都から連れてきた練達の者に試製刀を与えたが、どうなることか。
どちらにしてもやるしかあるまい。
もう、彼らは『取り込まれた』のだから。
人種も様々な男達。
刀を両手に構える者もいれば、内反り刃が特徴的なナイフと共に構える者もいる。
肌の色も瞳の色も様々な集団。
だが、一つだけ共通点があった。
紅い氣を纏いし、日本刀。
カ号実験試製刀、七〇一式――『紅』
妖刀に取り込まれた男達は氷のような殺意を持って猟兵を迎え撃とうとしていた。
彼らを生かすも殺すも、君達の自由。
スパヰや男達が首まで浸かっている『世界』では、それが常識なのだから。
グウェンドリン・グレンジャー
(スパヰの話を聞いて、目を閉じて。UDCアースの歴史が語る、自分の故郷が行った対外工作を思い出し)
なるほど、超弩級戦力……に、ついての、見方
一理ある
(打刀・鈴鹿御前に手を添えて。周囲を舞い飛ぶ蝶々達が強化するのは、状態異常力)
とりあえず、殺すのは、最小限。手加減できるか、怪しいけど
……よく分からないモノ、取り込まれて、死んで、おしまいは、ちょっと、ね
(無表情のまま、自嘲のように呟く)
刃に乗せる、属性攻撃は、麻痺属性
先制攻撃、早業で、抜刀からの一撃
念動力、で、操作しつつ、遠くの敵へ、ブーメラン、みたく、鈴鹿御前を投げる
手元、返ってくる前に、接近されたら、オーラ防御で、流しつつ、返ってくる刃で攻撃
黒影・兵庫
む?厄介ですねこれは
(「はぁ...人間のすることかしら?嫌になる」と頭の中の教導虫が愚痴る)
難しいですが所持者を傷つけずに無力化しましょう!
(「そう言うと思った...方法は?」)
まず『オーラ防御』でバリアを展開し
攻撃を防ぎながら敵を引き付けます!
その後、UC【誘睡の蝶々】を発動し敵を眠らせるので
せんせーは『念動力』で{皇糸虫}を操作して
影朧兵器を取り上げてください!
(「敵を引きつけるなんて危険じゃない?」)
操られている方々に罪はないですし
何より俺の戦う姿で信ずるに足る存在か見極めていただくのであれば
この程度のリスクは問題ありません!
(「...わかったわ、じゃあやりましょうか」)
はい!せんせー!
●蝶ハ誘ウ
「なるほど、超弩級戦力……に、ついての、見方」
グウェンドリン・グレンジャーがスパヰの言葉を反芻し、UDCアースの歴史を思いを馳せる。
「一理ある」
「む? 厄介ですねこれは」
猟兵という存在に対する情勢を理解するグウェンの傍らで黒影・兵庫が今の状況を把握する。
『はぁ……これが人間のすることかしら? 嫌になる』
兵庫の頭の中で教導虫が愚痴る。
――難しいですが所持者を傷つけずに無力化しましょう!
けれど正しく生きることを指導され、そして正しく生きようとする蟲の青年はあくまで自分を貫く。
『そう言うと思った……方法は?』
頭に寄生する蟲へ兵庫は作戦を提案し、オーラを防壁として纏い前に出た。
『聞いてから言うのもなんだけど、敵を引きつけるなんて危険じゃない?』
正面から敵の斬撃を受け止める兵庫へ寄生主の蟲が警告する。
――操られている方々に罪はないですし。
蟲の青年の周りを何かが舞う。
「何より俺の戦う姿で信ずるに足る存在か見極めていただくのであれば、この程度のリスクは問題ありません!」
『……わかったわ、じゃあやりましょうか』
それは蝶。
眠りに誘う、空舞う花。
「はい! せんせー!」
兵庫と教導蟲、二つの意志が重なった時、蝶は夢という花を咲かす。
ユウスイノチョウチョ
誘睡の蝶々
蝶たちが紅を持った男達の神経に作用し強制的に眠りへ誘う。
勿論、刀もそのまま黙ってはいない。
逆に宿主を操り、逆襲を敢行しようとしたそのタイミングで――糸が飛ぶ。
体長10mの真直にもなる生きた糸、その名を皇糸虫という。
間隙を突き、妖刀に絡みついた糸は教導蟲が操り、紅を遠くへ投げ飛ばす。
宿主を必要とする刀と蟲。
結果を分けたのは宿主と意志を両立し、別々に行動できる能力の差であった。
一方――別の蝶がまた戦場に舞う。
「とりあえず、殺すのは、最小限」
打刀が妖刀とぶつかり合えば、舞うのはやはり蝶。
「手加減できるか、怪しいけど」
紅の刃をかち上げて、空いた胴へ
「……よく分からないモノ、取り込まれて、死んで、おしまいは、ちょっと、ね」
抜き胴を一撃叩き込む。
刃に乗せるのは殺意で無く、ユーベルコヲド。
Butterfly kiss
浅葱斑の接吻
麻痺に特化した一撃は、紅の宿主の神経に作用し、筋肉を支配する。
動けなくなった男の刀を叩き落とすと振り向きざまにグウェンは打刀――鈴鹿御前を投擲。
念動力によって操作された刃は背後から襲い掛かろうとした男へ叩き込まれ、一撃無比の猿叫を遮らせ、そして次の獲物へと飛翔する。
そこへ、もう一人の男が刀を振るう。
「おそい、よ」
差し出された掌が刃の軌道を逸らす。
オーラに守られた手に殺意をずらされた男の視界に映るのは女が刀を握った姿。
遅れて、闇が支配した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御桜・八重
かつてわたしが戦った影朧兵器使いたちは、
何らかの事情を抱えていて、
その手を掴んで救うことが出来たけど…
彼らはわたしたちを殺すために自らを差し出した。
例え影朧の呪縛が解かれても、その殺意は変わらない。
どうしたらいいんだろう…
避けるのが精いっぱいの状況で、
ブルーリボンさんとの会話を思い出す。
あの時、わたしが憤っていたこと…
人を人で無くし影朧に変えてしまう影朧兵器。
目的のために選んだ手段が選んだ人を食い潰す。
願いも、怒りも、殺意も。
それが、許せない。
「殺したいのなら、自分で来い!」
裂帛の気合いで切り込んで敵の斬撃をいなし、
神速の八連撃を刀身に叩き込む!
その刃を折って、真っ向から彼らに向き合うために。
●戸惑イト、決意ト
惑いが心を支配する。
御桜・八重が過去戦ってきた影朧兵器の使い手達は何らかの事情を抱えていて、そして救うことが出来た。
だが、目の前に立つ者達は違う。
カ号実験によって生産された影朧の刃を自分の意志で握り、自らを差し出した。
呪縛が解かれても、その殺意は変わらないのだ。
紅の妖刀と脇差の二刀を振るう青年が少女の命を絶たんと二筋の白刃をきらめかせる。
咄嗟、下駄の歯が大理石の床をけたたましく叩き、八重は距離を取る。
こめかみに流れるものを拭うと冷たい――まるで血が通わないように。
――そうさ仕事なんだよ。
刀を持った若者が迫る中、少女は何かを思い出す。
――昔はそういう物があったという事さ。いつだって人が怪物なのは変わりない。
スパヰの言葉が過去を想起させる。
人を人で無くし影朧に変えてしまう影朧兵器。
影朧そのものを武器とし、人としての何かを失わせるカ号実験。
目的のために選んだ手段が、選んだ人を食い潰す。
願いも、怒りも、殺意も。
それが――桜の巫女には許せなかった。
金属音が響き、紅刃が跳ね上げられる。
「殺したいのなら……自分で来い!」
裂帛の気合と共に八重が走る。
刀を弾かれた男は一歩二歩、たたらを踏み、そして再び襲い掛かる。
刃がぶつかり合い、そして嵐が舞った。
ハナ アラシ
花 嵐
練達の二刀と神速の二刀、紅と桜、影朧と猟兵。
二つがぶつかり合う。
響き渡る鋼の悲鳴。
一、二、三、四、五――六合!
影朧――紅が陽刀・桜花爛漫によって断ち切られ、返しの脇差を七合目に振るった闇刀・宵闇血桜が叩き落す。
そして八合目は――
パァンッ!!
乾いた音が響き、青年が頬を抑えて尻餅を着いた。
平手を叩き込んだ桜の巫女が再び刀を握れば男は両手を上げる。
武器を失ったからではない。
真正面から八重がぶつけた心に、負けたことを青年は理解したからだった。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・ひかる
言ってしまえば、猟兵に対する抑止力を求めている……ということでしょうか。
お気持ちは理解できますけど、そのためにわたし達から目を付けられる技術に手を出すのは本末転倒ですね……
敵の武装はナイフに刀
銃もあるかもしれませんが、いずれにせよ基本的に無機物製のはず
なので【本気の闇の精霊さん】発動
半径101m以内に存在する敵の武装へかかる重力を一万倍化
武器を落とし拾えなくしてしまえば、必殺の奥義も発動できない筈です
後は、一人一人丁寧に精霊銃の雷撃弾を撃ち込んで感電させ、意識を奪い無力化します
無力化できるなら、彼らの命を奪うつもりはありません。
勿論、加減できる相手でなければ……敵を殺す覚悟は、できてます。
ミネルバ・レストー
悪うございましたね、厄介なポジションで
でも、あなたたちだって十分厄介よ? お互いさまってヤツね
始めましょうか、不毛な戦いを
少なくともわたしは、そういうの――得意よ
試製刀が宿主の生命を喰らうのは、まあ自業自得かしら
わたしに接近戦というか剣術の心得はないから、
悪いけどまともには相手しないわよ
まるで困惑するみたいな「演技」をして油断してもらうわね
斬られる「覚悟」でギリギリ「見切り」
勢いあまってよろめいてくれたらコッチのものよ
手にするのは回転式拳銃、【探偵屋】発動
「クイックドロウ」と合わせて「部位破壊」を狙うのは
刀を持った方の手か腕よ、戦意も吹き飛ばしたいわね
ごめんなさいね、でも死ななきゃ安いでしょ?
●互イニ立ツ所
――権力を持った大人にとっては危うい刃である。
突きつけられたのは狭い視野が生み出すであろう現実。
人が自分たらしめるために、卑近であろうとも、保たねばならないもの。
だが争うのは本人ではなく、仕事に生きる者か、熱狂に浮かれる者か、果ては……
「悪うございましたね、厄介なポジションで」
けれどミネルバ・レストーには関係ないことだ。
「でも、あなたたちだって十分厄介よ? お互いさまってヤツね」
悪態はつけども、自分の立つ場所を理解している。
「言ってしまえば、猟兵に対する抑止力を求めている……ということでしょうか」
一方で荒谷・ひかるは理解しようとしていた。
「お気持ちは理解できますけど、そのためにわたし達から目を付けられる技術に手を出すのは本末転倒ですね……」
けれど外法に身を浸すやり方は到底甘受出来ないもの。
ネリーとひかるが互いを見やり、頷く。
「始めましょうか、不毛な戦いを」
告げるのはこおりのむすめ。
「少なくともわたしは、そういうの――得意よ」
戦うために生まれた存在にして、生きるために歩く、今は……人。
「不毛かどうかは」
男達を指揮する背広の男が口を開く。
「我々が決める!」
少なくとも意義を否定される言葉を甘受することは無かった。
意に応え、男達が刀を振り上げ殺到する。
「――!?」
その勢いに圧されたのかネリーの表情に困惑の影がよぎる。
彼女に接近戦の心得は無い。
「チェストォ!」
猿叫と共に振り下ろされる紅の刃。
「……なんてね」
軽く舌を出しつつ、心の中では冷や汗をかく。こおりのむすめは太刀筋の見切りに全力を注ぎ、回避し、そして回転式拳銃をその手に持った。
ディテクティブ エージェンシー
探偵屋は引き金を引く
火薬が炸裂する音が室内を支配し、続いて金属が大理石の床に転がる音が響いた。
「ごめんなさいね」
右手を抑える男に対して、紫煙立ち上る銃口を向けながらネリーは告げた。
「でも死ななきゃ安いでしょ?」
試製刀に自ら取り込まれるのは自業自得。
相手も望んでの事。
だからこそ、こおりのむすめも容赦はしなかった。
内側に沿った刃が特徴的なナイフ。
紅の刀と共に構えるそれは民族のアイデンティティ。
――尼婆羅のグルカ傭兵。
国というものは最早無くなったが、土地に金をもたらす存在。
平和な世界の裏で争いに従事するプロがひかるの前に立つ。
対する精霊の申し子は精霊銃を構え、ゆっくりと動く。
戦素人の自分でも分かる……囲まれていることを。
彼らが機を狙う。
呼吸の隙間、意識という名の緊張の糸がわずかに緩む瞬間。
そういうものを嗅ぎ取って――男達が動き、そして全てが地に伏せた!
ダーク・エレメンタル・オーバードライブ
本気 の 闇 の 精霊さん
一万倍の重さになった武器に引きずられ、グルカ傭兵達は膝を折る。
すぐに武器から手を離す者もいたが、ひかるはそういう人物を優先して精霊銃で撃ち抜いた。
電光が男を射抜き、体内の骨が見えたのは気のせいだろうか?
高電圧の雷撃弾は傭兵の意識を容易く刈り取っていく。
「……」
それでもなお、立ち上がろうとした男へ精霊の申し子は銃を向ける。
「……出来るのか?」
「覚悟はできています」
問われ、答えるひかる。
その目に惑いは無く、だからこそ男達はその場で両手を上げることを選んだ。
彼らの仕事に死ぬことは含まれておらず、覚悟を持っていてもひかるは殺すことを望んでいなかったのだから。
「ねえ」
「はい」
ネリーがひかるへと声をかける。
「甘かったかしら?」
「やらないに越したことはないと思いますよ」
問いに対して答えれば、こおりのむすめも「そうよね」と返す。
例え、望まれないことがあったとしても、それが猟兵。
だからスパヰは彼女達を選んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ま、好むと好まざるとにかかわらず。上に行けば行くほど後ろ暗いこととは無縁じゃいられないしねぇ。「故あればあっさり自分のほうに向く刃」って考えれば、対抗手段の一つくらい持っときたいのはわからないではないけれど。
とりあえず、あの刀どうにかしないとねぇ。お願いねぇ、ゴールドシーン。
●黙殺・妨害で○弾幕を展開、描くのは御馴染み遅延のルーン三種に帝釈天印。宿主が〇捕縛されたんじゃ、御自慢の奥義も形無しよねぇ?
あとは破邪顕正の不動明王印と修羅道救済の十一面観音印でも撃ちこんでぶっ壊しつつ、○気絶攻撃で無力化してきましょ。
トドメ?刺さないわよぉ?
生きててもらったほうが、色々「便利」でしょぉ?お互いに、ね?
杼糸・絡新婦
おや、大歓迎みたやな、
その刀は自分の意志で握ったん?
まあどうあれお互い、仕事をするだけやね。
錬成カミヤドリにて鋼糸・絡新婦をレベル分召喚
絡新婦の糸、切ればいいだけと思いなや。
蜘蛛の巣のように張り巡らせ【罠使い】
絡みつくように【捕縛】したことで、攻撃阻害したり、
捕まえた【敵を盾にする】ことで他の敵からの攻撃を防いだり、
【見切り】で回避しつつ【フェイント】をいれ、
相手の動きを誘導させる。
●知ッテイルカラコソ
戸惑う者もいれば、理解する者もいる。
「おや、大歓迎みたいやな、その刀は自分の意志で握ったん?」
杼糸・絡新婦はまさに後者であった。
「ま、好むと好まざるとにかかわらず。上に行けば行くほど後ろ暗いこととは無縁じゃいられないしねぇ」
ティオレンシア・シーディアも右に同じく。
「故あればあっさり自分のほうに向く刃って考えれば、対抗手段の一つくらい持っときたいのはわからないではないけれど」
立場を理解しているからこそ、リボルバーの撃鉄に親指をかけ左手にはシトリンの付いたペンを持つ。
「まあどうあれお互い、仕事をするだけやね」
「そうねぇ」
糸のヤドリガミの言葉に糸目の女が同意する。
視界の先に居る男達も同じようだった。
「とりあえず、あの刀どうにかしないとねぇ」
「なんか手はあるん?」
ティオレンシアの言葉に絡新婦が問う。
糸目の女は片目を閉じウィンク一つ、指の中で弄んでいたペンを投げる。
「お願いねぇ、ゴールドシーン」
「目、一応開いとったんやね」
ヤドリガミの言葉に糸目の女は笑みだけを返した。
主の意に沿ってペンを模した鉱物生命体――ゴールドシーンが飛ぶ。
飛翔しつつ、刻むのはルーン文字。
『ᚦ』――其は茨の門
『ᚾ』――其は束縛への固定
『ᛁ』――其は停滞の冬
『ई』――武を以て、征さん
そして帝釈天の真言。
紡ぎ出されるのは制圧射撃の嵐。
デザイア・ディスターブ
黙殺・妨害
魔術文字を銃口とした、弾幕が男達の動きを止める中、意を察した絡新婦が嵐の中を走り出す。
彼が紡ぐのは糸。
そう、本体たる鋼糸――錬成!
コウシジョロウグモ
カミヤドリ!
白磁のように白い指から放たれる糸が動きを止められた男達を拘束し、自由を奪う。
どんなに斬れる妖刀と言えど。
どんなに力ある影朧と言えど。
人にはそれを封じる方法がある。
ティオレンシア・シーディアにとっては魔術文字を使った弾幕がそれであり、杼糸・絡新婦にとっては本体の写し身による鋼糸がそれであった。
『हां』――破邪顕正
『क』――修羅道救済
影朧――妖刀に属する試製刀にとって相性の悪い真言がティオレンシアのリオルバーから撃ち込まれ、刀は次々と折れていく。
弾幕から逃げようと振舞えば、絡新婦の糸が邪魔をし、その身を糸目の女の視界へと誘う。
シリンダーから熱を帯びた真鍮が転がり落ち、そして新しい弾が装填される。
鋼の弾丸と糸が織りなす鳴弦の儀は全ての敵を打ち倒すまで続いた。
「で、殺さへんの?」
「トドメ? 刺さないわよぉ?」
丁寧に気絶させた後、糸で縛り上げるヤドリガミの問いに糸目の女が答える。
「生きててもらったほうが、色々「便利」でしょぉ? お互いに、ね?」
「……そやね」
ティオレンシアの言葉に絡新婦はただ同意する。
どこの世界にもある澱んだ何かに足を浸した女の言葉は真実であり、その何かの中を委細構わず闊歩できる男が頷くのは当然。
故に、二人は自らの立ち位置を知り。
知っているからこそ、生き残るための振る舞いを行うのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
剣と盾で攻撃を捌くと同時に怪力で刀圧し折り
機械妖精レーザーで手を撃ち抜き
設計図と材料あれば兵器は制作可能
しかし貴方は現物を盗んだ
過去の遺物、ラプラスの魔…サクラ機関も解析途上
違いますか?
…護衛をどうぞ
何かあれば彼らに
(スパヰの肩に妖精送り、紙片に『モールス』書き打電開始)
帝都の仕事の経歴は二重スパヰ嫌疑と同義
返り咲きの為、王室への忠誠の証は多く欲しい筈
私が目指すのは『気に入らない』兵器の拡大再生産阻止…現物と研究資料処分
商談です
中枢での情報収集と開示
処分への貴方の『全面』協力
対価は幾つかの資料の譲渡
先ずは9割処分
…如何です?
(要の情報譲らず)
…戦機は大人の思惑が生みの親
清廉潔白は難しい物です
●商談ハ、地獄ノ底マデ
盾がぶつかり、刀を弾く。
続いて振るわれた実体剣が重さと切れ味で紅の試製刀を寸断し、傍にいた機械妖精がレーザーで男の腕を射ち抜く。
「設計図と材料あれば兵器は制作可能」
トリテレイア・ゼロナインの発声装置が妙に乱れているように聞こえるのは気のせいだろうか?
「しかし貴方は現物を盗んだ」
戦機の頭部が戦いを眺めていたスパヰへ向き、緑の光が視線となって赤毛の紳士を射抜く。
「過去の遺物、ラプラスの魔……サクラ機関も解析途上。違いますか?」
「正解だよ、サー・トリテレイア」
スパヰの手が鳴らない拍手をした。
「帝都によって統一された際、影朧兵器は闇に葬られた。人道的な面がまず第一だが……ここからは私の私見だ。『栄えある帝都の偉業に汚点があってはならない』 おそらくはそういう理由だろう」
赤毛の紳士はひどくつまらなそうに答える。友人のように口が回らない性質なのがこういう時に恨めしい。
「おかげでカ号実験という車輪の再生産を行い、そのための膨大な計算を行うために骨董品の影朧兵器を引っ張り出す……何というか皮肉も良いところだ」
その時、スパヰの傍らに小さな機械の妖精が降り立つ。
「……護衛をどうぞ、何かあれば彼らに」
騎士の言葉を聞き、妖精へと視線を向ければ、その手には紙片。
そこには見慣れた符号が打ち込まれていた。
『帝都の仕事の経歴は二重スパヰ嫌疑と同義』
符号の通称はトンツー、俗にいうモールス信号。
『返り咲きの為、王室への忠誠の証は多く欲しい筈』
『現状、王室に戻る道は無し、今は帝都との取引にて仕事を行う身』
トリテレイアの推察に対し、赤毛の紳士は妖精の頭を指で小突く。
『私が目指すのは気に入らない兵器の拡大再生産阻止……現物と研究資料処分」
次に送信されたのは戦機の私文。
『商談です』
そして交渉。
『中枢での情報収集と開示、処分への貴方の全面協力』
『リターンは?』
騎士の提示に対し、スパヰが問う。
『対価は幾つかの資料の譲渡、先ずは9割処分』
用意されたものに対し、紳士は考え込む。
『……如何です?』
『資料の譲渡は無用。こちらの任務は影朧兵器の処分と印度におけるカ号実験の妨害』
トリテレイアの問いに答えを打電し
「それに、今はフリーの身だ。情報を抱えるのはリスクが大きい」
改めて口を開いた。
「道を開いてくれ、サー・トリテレイア」
スパヰが望む。
「地獄の底まで案内しよう」
「心得ました」
騎士の大剣がまた振るわれた。
「……戦機は大人の思惑が生みの親」
大理石の床を猟兵達が歩く中、トリテレイアは呟く。
「清廉潔白は難しい物です」
「そうでもないさ」
だが、先を進む赤毛の男は戦機の言葉に別の答えを示す。
「子は親の元を離れるものだ。今の君は君であろうとし、敢えてそういう方法を選んだ。全てを取り除いた純水よりは不純物の混ざった普通の水の方が美味い紅茶を飲める――そういう物だよ」
「なるほど……」
騎士は呟き、押し黙る。
会話の時間が終わったからではない。
「さて、超弩級戦力の諸君。どうやらサクラ・イチロウ氏とのご対面だ」
大理石の床の向こう。
暗闇の中を革靴で歩く音が響いた
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『殺人者』退役軍人』
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POW : 終わらぬ戦争、終わらせぬ戦争~エターナルウォー~
【自身に【戦闘継続(戦闘不能時、異常を無効】【化して全回復する)】×800回を付与する】【。又、【戦闘継続】が消費される度に副効果】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 戦争の亡霊~我ガ大隊ハ今ダ戦争中ナリ~
自身が戦闘で瀕死になると【負傷が全回復する。又、大隊規模の戦友の霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ : アサルトバタリオン~大隊、突撃!突撃!突撃!~
【自身の小銃・銃剣から、自身に敵意】を向けた対象に、【攻撃回数を800回に増やした、弾丸や銃剣】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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●西印ノ間諜
大理石の床は印度の熱気を冷やす。
夜陰の中、冷える空気、現れる気配は――ただの存在。
言うなれば無個性。
眼鏡をかけた中年男性、それがサクラ・イチロウの姿だった。
「サクラさん!」
影朧の抜刀隊をけしかけた背広の男がサクラ・イチロウへと駆け寄る。
「試製刀は駄目でしたか?」
穏やかな口調で部下に問う中年男性。
「奮戦やむなく、全滅の憂き目に」
「それは残念なことですね」
敗戦を惜しむ声。そして聞こえる、小さくくぐもった声。
背広の男がその場に倒れ伏す。
「ラプラスの魔を奪われ、カ号実験は超弩級戦力に制圧される……我々は責任を取らないといけなくなってしまいました。とりあえず貴方は私の一存で、死んでいただき」
血に塗れたナイフを捨て、倒れた部下を一瞥した後、男性は猟兵達を見る。
「君達をどうにかして、私も責任を取らねばなりません……ああ、初めまして」
改めて無個性な中年男性は頭を下げる。
「私の名はサクラ・イチロウ……という事になっています。今回の件の責任者です」
責任者と称した男は、一歩、また一歩と超弩級戦力へと近づく。
重なるように軍靴の音が響いた。
「お聞きの通り、今回の件で私は責任を取らねばなりません。生憎とそちらの紳士のように他からの引き合いはありませんので……かと言って、見逃してもくれませんよね?」
中年男性の傍らに軍服に外套を羽織った影朧が立つ。
「なので実力で排除するしかないでしょう? ああ、私に関してはお気になさらず」
サクラ・イチロウは眼鏡の位置を直し。
サクラ イチロウ ノ カワリハ イクラデモ イル
「幻朧桜の花弁は無数にありますから」
従う様に影朧は小銃を構える。
「……御覧の通りだ。主義主張もあるだろうが、ここのサクラ・イチロウは仕事熱心で責任感も強い」
スパヰが深く息を吐く。
「私も人の事は言えないが……まあ、君達に任せるよ。彼の処遇に関しては私の仕事に入っていないからね。ああ、ちなみに今はフリーだ……仕事の空きがある」
暗に何かを示しつつ、赤毛の紳士は後ろに下がった。
「お話は終わりましたか? では、始めましょうか……主義信条はともかく」
無個性だった眼鏡の奥に始めて色が宿った。
「これが、サクラ・イチロウたる私の生き方だ」
西印にかけての間諜達の物語は終わりに近づきつつある。
それを知らせるかのように影朧は引鉄に力を込めた。
荒谷・ひかる
(倒れた男の様子に目を見開き)
――っ、そこを退いてくださいっ!
【本気の草木の精霊さん】発動
まず即座に自身へ種を投与、植物の外骨格及び薬効成分による耐久・筋力強化を図る
そしてサクラ氏と影朧には目もくれず、背広の男性へ突撃
回収及びコードの種子や胞子による治療を行う
後退時はスタングレネードと花粉煙幕弾を投げて目くらましして安全確保
下がれたならスパヰさんの力も強引に借りつつ応急処置と治療を続行
知識がないとは言わせませんよ?
敵なら場合によっては殺害も躊躇いませんが、今のこの人は要救助者です!
それにサクラ氏程でなくとも「責任を取るべき立場(=恐らく情報持ち)」であるなら、尚更死なせるわけにはいきませんっ!
●生存トハ不自由ノ代償デアル
影朧が引鉄を引くより速く、荒谷・ひかるは駆け出していた。
「――っ、そこを退いてくださいっ!」
プラント・エレメンタル・オーバードライブ
本 気 の草木の精霊さん
二度目の精霊の本気はひかるが時間を欲したから。
それに応え、草木の精霊も彼女に力を与え、植物による外骨格で精霊の娘を保護していく。
強化された姿が影になり、そして消えた。
「……」
苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ軍人のライフルが火を吹く。
弾丸とひかるが交錯し、そして閃光が辺りを覆った。
「スタングレネードと……これは花粉ですね」
クシャミ一つ、サクラ・イチロウはハンカチを取り出して口元を覆い、そして問う。
「狙えますか?」
「無理だ」
影朧が即答した。
「こちらに敵意を向けるならまだしも、別のものを狙われた。負傷者を狙うのは条約に違反する」
「……もう既に戦争は無くなったというのに」
中年男性が溜息をつく。
「ならば、貴様が与えてくれるのだろう? 戦争を」
煙草に火をつけ、影朧は次の相手を狙う。
「助けるのかい?」
スパヰが問いかける。
「手を貸してください! 知識がないとは言わせませんよ?」
「強引だな」
ひかるの言葉に赤毛の紳士は膝を折り、腹を刺された背広姿の男へと近づいた。
「彼を生かせば、確かにある程度の情報を得られるだろう……そして、君と私はサクラ機関と完全に敵対することになる」
スパヰの言葉に精霊の娘の表情が険しくなる。
非常時でなければ見せない表情に男が溜息をついた。
「失礼した。そんな顔を見せないでくれレディ。私の世界にもひとかけらの信頼と義理という物はある。君達に荒事を任せる以上、応えるとも」
ひかるによって埋め込まれた木の精霊の種子によって失われた体液は補われ血管は再び結び付けられる。
そこへ赤毛の紳士の応急処置。
適切な止血とバイタルの管理は背広の男が暗黒に沈むところ掬い上げるには充分であった。
「だけど、君も知っているだろう……私は『生きたい』のだ、だから出来るだけ身軽に立ち回りたかったのだが……仕方がない覚悟を決めるか」
かつてブルーリボンと名乗った男はかすかに笑った。
「今更、何を言っているんですか? それよりも今はこの人を安静にさせないといけません」
ひかるの言葉にスパヰはそうだねと答えた。
一人の男は死の淵から救いあげられた。
一人の男は死の淵から掬い上げた。
そして二人とも代わりに不自由を得た。
生きるとはそういう事なのだ。
大成功
🔵🔵🔵
グウェンドリン・グレンジャー
私……は、この世界、では、降りてきた、異邦人(Foreigner)
でも、影朧、止めるのは、超弩級戦力、としての、義務
こっちの、同郷さん……への、ちょっとした、義理もある、しね
(Glim of Animaに魔力の焔を灯し、降ろすのは故郷の伝説。9日間の女王。急速に、心が冷えてゆく)
薔薇の蔓、念動力……で、動かして、ミスターサクラの、動き、妨害
花をぶつけて、攻撃
向こうは……攻撃や状態異常、強化したなら、オーラ防御
防御強化、したなら、捨て身の一撃で、瞬間火力、強化
第六感、と、瞬間思考力で、タイミング、見計らって、首狙いで斬りつける
……この辺、は、私の、世界……今の時代、でも、ごたごた、してるね
杼糸・絡新婦
一枚を綺麗は花びらとするか、
集ってこその花とするか、それはともかく、
皆様お仕事熱心なのかなんなのか、
まあ、確かに主張はそれぞれやんね、
それがぶつかり合ってるだけで。
召喚していた鋼糸を張り巡らせ
足場として【空中戦】を行い、
【フェイント】を入れ攻撃する事で、
敵のすきを作り出す。
【見切り】でタイミングを見定めつつ、
こちらへ来た攻撃、
または他猟兵への攻撃を【かばう】ことで、
脱力して受け止め、オペラツィオン・マカブルを発動、
排し、返せ、サイギョウ
●其々ノ理由
「一枚を綺麗は花びらとするか、集ってこその花とするか、それはともかく」
杼糸・絡新婦が花を謳う。
「皆様お仕事熱心なのかなんなのか、まあ、確かに主張はそれぞれやんね、それがぶつかり合ってるだけで」
それは間諜という名の花。
美しさがあるとすれば、それは血を啜った結果であろう。
「私……は、この世界、では、降りてきた、異邦人」
グウェンドリン・グレンジャーがランプに焔を灯すと、映るのは輪廻を象徴する三相女神。
「でも、影朧、止めるのは、超弩級戦力、としての、義務」
焔の糧は魔力か、矜持か。
「こっちの、同郷さん……への、ちょっとした、義理もある、しね」
知るのは本人のみであり、どちらにしても戦いは始まる。
サクラ・イチロウの目くばせに応えた影朧がライフルを構えて行進を開始した。
軍人のマーチが止まる。
阻むのは鋼糸。
絡新婦の張り巡らした蜘蛛の糸はヤドリガミを舞わせ、そして影朧を翻弄させる。
その隙に九輪の黒い薔薇が中年男性へと伸びていく。
アルターエゴ・“ジェーングレイ”
Alter ego“Jane Grey”
薔薇を持つのは純白のドレス纏う姫君の姿をした精神顕現体。
だが、サクラ・イチロウを拘束しようとした虚数の戒めは振り下ろされたサーベルによって切断される。
「貴様の相手は私だよ」
軍人が鋭い目でグウェンドリンを射抜いた。
咄嗟、絡新婦の操る人形が道を阻むが、影朧は柄尻で狐面のからくりを弾き飛ばす。
戦を望む男が咆哮し、異邦の英国人はオーラの盾を作り出す。
影朧はそれすら叩き割ろうと騎兵刀を振り上げた。
まずは一人倒す――その意識と人形を排除した油断が隙を生んだ。
軍人の視界に再度飛び込むのは狐面のからくり人形。
吹き飛んだのはあくまでもフェイント。糸繰りで立て直し背後から回り込む様にそれは現れた。
「排し、返せ」
オペラツィオン
人 形 は
「サイギョウ」
マカブル
応える
攻撃を受けた人形がその身の軽さで影朧の太刀筋をいなすと、勢いを利用して強烈な一撃を叩き込む!
戦を望む男の身が揺らいだ。
続くようにグウェンドリンがその身をぶつける。
両手に刀――鈴鹿御前を握って。
捨て身の刃が軍人の頸動脈を切り、鮮血が女を汚した。
「どうでやろか?」
戦を望む男が倒れる中、絡新婦が問う。
「これで……一回、目」
グウェンドリンが服の袖で頬に飛んだ返り血を拭い答える。
言葉の通り、影朧が立ち上がった。
負傷は消え、血に染まったはずの軍服も元の漆黒に戻り、周囲には大体規模の兵士達。
身の危険を察知した二人の猟兵が戦場から後退すると、そこへ銃火の雨が降り注いだ。
「……この辺、は、私の、世界……今の時代、でも、ごたごた、してるね」
銃声響く中、異邦の女が呟く。
「人がいれば争う物さ、私達やあの影朧のように」
スパヰが影から現れるかのように顔を出し、応えた。
それをヤドリガミはマイペースに眺めていた。
戦は続く、人が、影朧が、理由を持つがゆえに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
…勤勉で責任感が強いのは大変結構なんだけど。相手しなきゃならない側としては、ほんっとにめんどくさいのよねぇ、こういう手合い…
やたらめったらしぶとい上に大量の攻撃バラ撒いてくるとかタチ悪いなんてもんじゃないわねぇ。…まあ、殺し続けるしかないんだけど。
ミッドナイトレースに○騎乗してラグ(幻影)と摩利支天印(陽炎)で認識ずらしつつエオロー(結界)で〇オーラ防御の傾斜装甲を展開。数が多くても小銃弾なら走り回ればなんとかなるでしょ。
●蕭殺で刻むのは修羅道救済の十一面観音印、あとは遅延のルーン三種に帝釈天印で徹底的に足引きしましょ。
幾らしぶとかろうが、動きの鈍いタレットなら怖くもなんともないものねぇ。
トリテレイア・ゼロナイン
蘇る影朧とは…
影朧と格納銃器で射撃戦交しつつ刺された男に接近
容体を情報収集、息があれば庇いつつ回収
物陰に隠し(治療手段未所持)
確かに自他への責任感が強い方のようで
他者への強制は兎も角、騎士としては理解出来てしまいます
(取り出したUCの一本をスパヰに投げ渡し)
サクラ・イチロウの確保を
やり方はお任せいたします
これ以降は彼の選択でしょうが
敗戦の責を自死で贖うことは私の眼前では許しません
影朧に接近
怪力で殴り倒し●踏みつけ脚部スラスターのパイルを作動
自重と●串刺しで動きと逃走封じ
目的も無くただ戦いたい…その欲求を私は認める訳にはいかないのです
UCで強化=影朧への身体負担となる悪影響を解除しながら滅多刺し
●歩メ、終ワラセル為ニ
「蘇る影朧とは……」
トリテレイア・ゼロナインが呻く……そう表現するにふさわしい言葉だった。
攻撃や搦め手に特化した影朧は幾多もいたが、生存に特化し蘇ることすら可能とする。
そのような存在は少ない。
そして厄介な存在でもある。
人は戦いで疲労していくが、逆に影朧は回復しつつ蘇るのだから。
「――!?」
彼方へと飛ぶ殺意、咄嗟にトリテレイアが盾を構え、走る。
大盾越しに次々と衝撃が伝わる。
牽制の為に右腕の格納銃器を展開し射撃を開始すれば、盾に伝わる衝撃が消えていく。
「大丈夫ですか?」
「超弩級戦力が着いているから問題ないと言いたいところだが、彼女は負傷者の管理で手いっぱいだ」
騎士が庇った、スパヰと猟兵の少女。
二人は背広の男を物陰へと移動させ、戦機はそのための時間を稼ぐ。
――一方。
「……勤勉で責任感が強いのは大変結構なんだけど。相手しなきゃならない側としては、ほんっとにめんどくさいのよねぇ、こういう手合い……」
「お褒めいただき恐縮です」
ティオレンシア・シーディアの言葉に皮肉を返すのはサクラ・イチロウ。
糸目の女の返答は引鉄に力を込めるだけ。
代わりに受け止めるのは軍人の騎兵刀。
「無駄とは言いませんが、難しいと思いますよ」
中年の男性は影朧の陰より、忠告する。
「この影朧は貴方達との戦いを想定して選びました。強大な力を持った超弩級戦力も戦に狂った不死者には付き合いきれないでしょう――勿論、わずかな例外は居ると思いますが」
サクラ・イチロウの言葉を打ち切るようにティオレンシアの親指がハンマーを弾く。
――サミング
ガンプレイが生み出す高速連射。
だが、それもサーベルが断ち切り、逆に刃と殺意が向けられる。
「やたらめったらしぶとい上に大量の攻撃バラ撒いてくるとかタチ悪いなんてもんじゃないわねぇ」
糸目の女が呟くと爆音は響き、外壁が粉砕された。
「……まあ、殺し続けるしかないんだけど」
ダイナミックにエントリーしてきた宇宙バイク型UFO――ミッドナイトレースに騎乗したティオレンシアは大理石の床をタイヤで切りつけるように、スロットルを解放した。
「これを」
トリテレイアがスパヰに投げ渡すのは一本の短剣。
受け取った男の表情がわずかに歪む。
「サクラ・イチロウの確保を」
武器を渡すのは仕事に必要だから。
「やり方はお任せいたします」
「私はここの勢力の排除をお願いしたが」
赤毛の紳士が見覚えのある短剣を弄ぶ。
「ここまで働かされるとは思ってなかったよ」
「終わった後は彼の選択でしょうが」
かつてブルーリボンだった男を止めた短剣を敢えて手渡すのは、それが最善と信ずるが故。
「敗戦の責を自死で贖うことは私の眼前では許しません」
それが分かっているからこそスパヰは苦笑しつつ、闇へと消えた。
「さて……」
そして騎士の視線は戦を望む男と糸目の女へ。
認められないものの為、鋼鉄の男は戦野へと走った。
「ふふ……ふふ……ふふふふふ」
影朧が笑う。
久しぶりの戦いの興奮。
生まれながらの殺人鬼、命への敬意の無い男、戦争という状況でなくては満たされない欠陥品。
死は終わりでなく、始まりと知った歓喜は拭えない。
だが戦いに酔いしれるのはまだ早い。
バイクにまたがった女を捕らえることが未だ、出来ないからだ。
「――火力が足りないか」
軍人が小銃を構えなおす。
呼応するように彼の周囲に浮かぶのは八百もの小銃と銃剣。
規模は一個大隊、戦争ができる最小単位。
戦を望む男は望むがままに戦争を始め、小銃が従うに鉛を吐き、続いて銃剣がティオレンシアへと降り注いだ。
『ᚿ』――其れは幻影にして
『म』――陽炎の真言也
大隊規模の暴力が襲ったのは、女という名の蜃気楼。
靄のように消えるそれに認識をずらされたと悟った影朧が、間隙を突いて飛び込んでくるミッドナイトレースに向かってライフルの引鉄を引いた。
『ᛉ』――守り給え
結界のルーンが刻まれ、バイクにオーラの装甲が形成されるとぶつかった小銃弾は斜め後方へと弾かれるように飛んでいく。
「避弾経始!?」
戦を望む男が結界の特性に気づき、何度も戦ったかつての鉄の棺桶を思い出して苦虫を噛みつぶす。
疾走するティオレンシア、すれ違いざまにリボルバーの銃口が跳ね上がり、刹那遅れて銃声が響く。
アディション
蕭 殺
『ᚦᚾᛁ』――刻み込まれし遅延の言葉によって
『ई』――武を以て、征するは
『क』――戦修羅への救い
撃ち込んだのは徹底した足引き、機動力の排除。
兵隊は走るのが商売なら、その仕事をできなくすればいい。
棒立ちになった殺人者。
そこへ――戦機の拳が飛んだ。
「目的も無くただ戦いたい」
倒れた影朧を踏み付け、脚部から射出されたパイルバンカーが大理石と縫い付ける。
「……その欲求を私は認める訳にはいかないのです」
「人は争うものだ。平和……戦争の時に幾度も聞いたよ、終わればまた望むというのに」
トリテレイアの言葉に対して戦を望む男が皮肉を返す。
返答は無かった。
代わりに短剣が軍人の胸を貫いた。
ミセリコルデ
慈悲 の 短剣
刃より影朧の体内へ侵入したナノマシンが影朧の不死性という異常――悪影響を除去し、ただの人へと戻す。
勿論、ナノマシンを異物と判断した軍人のユーベルコヲドはそれを無効化する。
だからこそ、戦機はミセリコルデを振り下ろす。
何度でも、何度でも……。
終わりの為に女と騎士は歩む。
始まりを望んだ男の歩みを封じて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒影・兵庫
ここのサクラ・イチロウ?ここの?ってどういう...
(「そこまで。黒影。戦闘準備しなさい。さっきみたいな温いことできないわよ」と頭の中の教導虫が警告する)
あっはい!たしかに!ヤバい雰囲気がビンビンします!
ならば全身全霊を以て打ち倒すまで!
せんせー!お願いします!
(UC【蜂蜜色の奔流親】を発動しオーラ状の教導虫の抜け殻を創造すると黒影を覆うように変形させ『オーラ防御』で敵の攻撃を防ぐ)
せんせーは絶対無敵!アンタがどれ程の想いで責任を果たそうとも
このせんせーのバリアを超えることなんて不可能!
じゃあな!このまま骸の海へ送ってやるよ!
(覆った状態から錐状にオーラが変形し、そのまま敵を貫こうとする)
●穿テ全身全霊ヲ以テ
血に塗れて影朧が立ち上がる。
その顔は疲労の色が見えるが双眸はむしろ輝きを増し、口元は獲物を求めて笑みを浮かべる。
「…………」
サクラ・イチロウはそんな軍人の様子を遠目に見つめていた。
帝都によって統一された印度という異邦。
国という概念は最早無くなって久しいが土地があれば人が住み、そしてそれぞれの生き方がある。
それが争いを呼ぶのなら、この地が実験を行うにふさわしい。
だが、それは最早実現しないだろう。
殺人者は戦いに酔って、やるべきことを見失いつつあるのだから。
ならば、自分も責任を取る方法を考えないとならない……。
中年の男は手に持ったナイフの感触を再び確かめた。
「ここのサクラ・イチロウ?」
黒影・兵庫が疑問を口にする。
「ここの? ってどういう……」
『そこまで。黒影。戦闘準備しなさい。さっきみたいな温いことできないわよ』
疑問を遮るように教導蟲が戦いへと誘う。
純粋な若者たる宿主を混乱させたくないという思いが強いのだろう。
それとも、蜂皇族としての何かがあるのか……それを知るのは脳内の蟲一匹のみ。
――あっはい! たしかに! ヤバい雰囲気がビンビンします!
傷だらけの影朧が出す殺意。
兵庫も難敵と判断し、そして――
――ならば全身全霊を以て打ち倒すまで!
全力での戦闘を選択する。
「せんせー! お願いします!」
想像が創造を生み出す。
兵庫を包み込む蟲状のオーラに危険を感じた影朧がライフルを撃つ。
けれど、弾丸は虚しく弾かれ、代わりに蟲人たるオーラは錐へと変わっていく。
「せんせーは絶対無敵! アンタがどれ程の想いで責任を果たそうとも」
宿主たる若者の視線は軍人の向こうに立つサクラ・イチロウ。
「このせんせーのバリアを超えることなんて不可能!」
そして目の前の殺人者へと視線を向ける。
「じゃあな! このまま骸の海へ送ってやるよ!」
イエローハニー・オーラペアレント
蜂蜜色 の 奔流親
光が影朧を貫き、軍人はまた死を迎えた。
「……」
その様子を、やはりサクラ・イチロウは黙って眺めたままだった。
成功
🔵🔵🔴
ミネルバ・レストー
……どうも、サクラ・イチロウさん
わたしからは、お世話になってますとしか言えないけど
責任にもいろんな取り方があるわよね?
少なくとも、自刃で済むなんて思わないでよね
一人で一騎当千の銃撃だなんてとんでもないわ
こっちも助っ人を喚ばせてもらうわね
【全ては静寂の白へ】でクソダサドラゴンを前に出し
「血湧き肉躍る『戦争』ができるわよ」と「言いくるめ」
ブルーリボン、余裕があるなら追加で何か交渉材料を頂戴な
それくらいはしてくれたっていいでしょう?
影朧はきっちり倒させてもらうけど、あんたまでとは言ってない
主義信条はともかく、まずは軽率に死なないで頂戴
生き恥を晒してもらうわ
あんたにだって、友達の一人もいるでしょうに
御桜・八重
「あったま来た!」
自分のことを『替えが利く人間』だなんて。
自分も人も大事にしないなんて我慢ならない。
サクラ機関のことも聞かなきゃいけないけど、
イチロウさんに一言物申す!
軍人さんの戦闘継続800回は厄介だけど、
801回戦えば倒せるってこと、だよね。
動きを注視し癖を掴み。
体捌きは最小限の動きで。
剣筋は正確に急所を狙い。
第六感をフル活用で。
極力消耗を抑える、
軍人さんは一戦ごとに強くなる。
次第に朦朧としてくるけど、不撓不屈の心が新UCを呼び覚ます!
無意識に真の姿に覚醒し、最後まで戦い切る。
「絶対に、あきらめない!」
イチロウさんに辿り着いて一言。
「桜の花弁に、同じものは一枚たりとて無いんだよ!」(昏倒)
●サクラノ終ワリハ桜ト共ニ
「そろそろ終わりだな」
闇の中、スパヰが呟いた。
利得が全てであり、情は駒の一つに過ぎない世界。
太平の世に隠れた裏黒い世界も超弩級戦力によって変わりつつあることを赤毛の男は悟りつつあった。
「あったま来た!」
御桜・八重が怒る。
『替えの効く人間』
サクラ・イチロウを例えた言葉に。
自分も人も大事にしないその生き方に。
それが桜の巫女には我慢ならなかった。
「で、どうするの?」
ミネルバ・レストーが問いかける。
八重の性格を知っているが故に、彼女自身が何をすべきかを顧みるように促すため。
「イチロウさんに一言物申す!」
「そう。じゃあとりあえずお先に」
桜の巫女の言葉にこおりのむすめは一言答え、そして一歩踏み出した。
「……どうも、サクラ・イチロウさん」
恭しく礼をするのは皮肉を交えて。
「わたしからは、お世話になってますとしか言えないけど、責任にもいろんな取り方があるわよね?」
ネリーが投げた勾玉が、熱の残る印度の地に冬を呼ぶ。
「少なくとも、自刃で済むなんて思わないでよね」
「ネリーちゃん」
「手数が厄介よ、わたしが押しきるから、八重は飛び込んで」
問いかける桜の巫女にこおりのむすめは短く応える。
八重が頷いた時、吹雪を伴って氷嵐竜が現れた。
「さあ、クソダサドラゴン」
それは――
ホワイト・ミュート
全ては静寂の白へ
もたらす使者。
「血湧き肉躍る『戦争』ができるわよ」
ネリーの言葉に益を感じた竜の悪魔は影朧へ向かってブレスを吐く。
対する軍人は八百の銃砲火によって迎え撃った。
「ブルーリボン……ああ、そうなのね」
スパヰに何か仕事を押しつけようとしたこおりのむすめが、闇に紛れる気配に全てを悟る。
だからこそ、攻撃に全てを注ぎ。
「――今よ!」
友に後を託した。
桜の花弁が冬を終わらせ、春を呼ぶ。
「戦闘継続800回は厄介だけど」
身軽さを活かし、八重が疾走する。
「801回戦えば倒せるってこと、だよね」
あっという間に間合いを詰めれば、まずは一回。
左手の妖刀が影朧の喉笛を貫く。
対抗するように殺人者は騎兵刀を抜き、間合いを作る。
敢えて防御に身を注ぎ、猟兵の体力を削る狙い。
けれど下駄が大理石を蹴り、桜の巫女の陽刀は正確に大腿部の血管を切断し、死の淵へと叩き込んだ。二回。
動きを注視し癖を掴み、体捌きは最小限。
正確に急所を狙い、襲ってくる刃は六感全てで感じ取り、避けていく。
だが、それも長く続かない。
息が切れる、酸素が不足し、意識から鮮明さが失われる。
長時間の集中、最小限の動きを心がける俊敏さ。
振るう武器が重くなり、それが運動量を増やしていく。
対する軍人はサーベルを捨て、ライフルに着剣。
槍の間合いで少女を翻弄する。
やがて……形勢は逆転し、八重の太ももに銃剣が突き刺さる。
転がる八重、止めを刺そうと殺人者が刃を向けた時。
「絶対に――」
桜が舞った。
「あきらめない!」
それは長きに渡り、咲き続ける桜の名。
一本の木。
貫く一つの意志。
名は――
イシワリサクラ
石割桜
真の姿へと身を変えた八重の刃が、影朧の首を刎ねる。
けれど攻撃が止まることはない。
一重、二重、三重……八重を超え、八百を超えた時、軍人は戦の中で死んだ。
少女の諦めない気持ちが戦いを望む欲望を断ち切った瞬間であった。
桜の少女が歩く。
腕は刀の重さに負け、刃が大理石を傷つける。
一歩、また一歩とサクラ・イチロウに近づき、そして肺の中の空気を全て吐き出した。
「桜の花弁に、同じものは一枚たりとて無いんだよ!」
全ての力を使い果たし、倒れる八重をネリーが受け止めた。
「影朧はきっちり倒させてもらうけど、あんたまでとは言ってない」
戦いはまだ続く。
「主義信条はともかく、まずは軽率に死なないで頂戴」
自分が自分であるがための戦い。
「お気持ちは理解しますが、生きて消されるのと自ら死ぬのでは評価が違います」
ネリーの言葉を拒絶し、サクラ・イチロウが煙草に火をつけた。
「私とて、帝都の男子です。死ぬなら見栄を張りたい。勝つためならいくらでも泥を啜りますが、負ける時にネクタイを緩めたくない――そういう物なのです」
「そう……」
煙草の煙を吐きながら答える男性の吐露。
真実であろう、そういう者達をこおりのむすめは見てきた。
だが、今は事情が違う。
「わかったわ」
ネリーの言葉とサクラ・イチロウの背に刃が刺さるのは同時であった。
「なに……を……」
「睡眠薬入りのナイフだ、私も以前、体験済みだよ」
サクラ・イチロウの問いに、戦機より渡されたナイフ片手に闇より現れたスパヰが答えた。
「そういう事よ」
薄れゆく意識の中、男が見上げればネリーが告げる。
「生き恥を晒してもらうわ」
それは勝利宣言。
「あんたにだって、友達の一人もいるでしょうに」
「…………」
利得の世界に、情を以て切り込んだ超弩級戦力がチェックメイトを決めた瞬間であった。
「さて……これで万事とは言わないが、私の仕事は終わった。感謝するよ」
いつの間にか入り込んでいた複数の男達がサクラ・イチロウと背広の男を運ぶ中、スパヰは猟兵に謝辞を述べる。
「まあ、これが厄介の始まりかもしれないけどね。サクラ機関がこれからどうするか、君達と戦うのか、違う手段をもって勢力を伸ばすのか分からないけれど……」
改めて煙草を咥え、赤毛の男は燐寸でそれを灯した。
「私から言えるのは一つだ――『一番の怪物は人』だよと」
それは彼の人生訓か?
それとも、影朧兵器やカ号実験などの人が行う所業の事か。
今は答えは分からない。
ただ分かるのは、異邦にて影朧を使った事件が一つ終わったという事――それだけだった。
大成功
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