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サイドキック ブルース

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #カーネル・スコルピオ #スピリットヒーロー #ディテクティブ・ウィッチ #キャロル #アシュラレディ

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●ヒーローズアース、イン ア ドリーム
 鉄パイプを振り下ろす音と鈍く何かを叩く音が地下室に響く。
「ポップコーンを食べるかい?」
 人の頭で行うゴルフトレーニングを終えて、ハットを模したバーレルから零れた菓子を口に含み、オブリビオンは足元に伏したヒーローを蹴り上げ、仰向けにさせた。
「なぁ、     ?」
「ふざけるな」
 問いかけ怒りを込めて答えるのはドミノマスクにトレンチコートのスピリットヒーロー。
「今の私はディテクティブ・ウィッチよ」
「そうかい?」
 ウィッチの言葉に対してヴィランはつまらないとばかりにその顔面を蹴り飛ばす。
「まあ、どっちにしてもお前は死ぬんだ。バイバイ、サイドキック。バイバイ――」
 ヒーローが何かを叫んでいる。
 オブリビオンそれを無視して時限爆弾のスイッチをセットした。
 あの時のように。

「…………」
 その様子を六腕の女が長煙管片手に見つめ、そして消えた。

●グリモアベース
「時は来た! 今、君達の助けが必要とグリモアが俺にささやきかけている!」
 何かおかしい台詞とは裏腹にグリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)の表情は硬い。
「猟書家の事は知ってるよな? 奴らがまた動き出した、今度はスピリットヒーローを狙ってきたんだ!」

 少年が話すのは『ジャスティス・ウォー』が残した傷痕を利用し、トラウマを持ったヒーローの力を暴走させるオブリビオンの野望にして、かつて猟書家が望んだ怪物『スナーク』の具現化。

「この作戦を行っていた猟書家はもう倒されているが、その意志を継いだ奴が居る。そいつがヒーローに悪夢を見せて力を暴走させようとしているんだ――けど、そこにチャンスがある」
 グリモア猟兵の視線が皆を見る。
「今なら、眠っているヒーローに触れることで悪夢の世界へ潜入することが出来る。ヒーローの名はディテクティブ・ウィッチ。ジャスティス・ウォーの頃はあるヒーローのサイドキックをしていた、彼女が見ている悪夢もその時の物だ」
 少年のグリモアが輝けば、病室への道が開かれる。
「最初はトラウマの原因となったヴィランが襲ってくる。でも気を付けて、奴はヒーローの恐怖心を力に変えて強化されている。このままでは勝てない……だから!」

 握った拳は勝利への道しるべ。

「夢の中にいるディテクティブ・ウィッチにトラウマと向き合う勇気を与えて、共に戦う――そこに勝利のカギはある! それじゃ……行ってきて!」
 見送るグリモア猟兵の目にあるのは信頼――それだけであった。


みなさわ
 大きな戦いは人に傷痕を残し、それを過去は狙う。
 こんにちはみなさわです。
 今回は過去のトラウマに苦しむスピリットヒーローとの共同戦線のお話となります。

●舞台
 夢の中。
 空気のよどんだ地下室のようなところ。
 ジャスティス・ウォーの時に罠に嵌り、暴行を受け、爆弾で殺されかけたヒーローの過去を連想させる場所となっています。

●ディテクティブ・ウィッチ
 かつて、あるヒーローのサイドキック(相棒)でしたが、今はディテクティブ・ウィッチを名乗って独り立ちしています。
 元サイドキックというレッテルに悩みながらも「一人のヒーロー」として戦っていたところを悪夢に囚われました。

●プレイングボーナス
『スピリットヒーローにトラウマを克服させる、もしくは共に戦う』
 となります。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『ドクター・サイコ』

POW   :    マッドネス・フュージョン
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の発明した犯罪機械】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    サイコ・ギロチン
【自動で対象を追う13個の空飛ぶギロチン刃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    クリミナル・エクスペリエンス
自身からレベルm半径内の無機物を【犯罪用の発明品】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ジャスティス・ウォー ナイトメア

 ――A.D.1999

「まあ、どっちにしてもお前は死ぬんだ。バイバイ、サイドキック。バイバイ、ゼンガール」
 油の切れた蝶番が嫌な音を立て、そして扉は閉められた。
「くっ……ドクター・サイコ。ふざけないでよ」
 拘束をジュツで解き、這うようにして私は歩く。
 頭がぼやけたかと思ったら、シンバルを耳元で鳴らされた様にノイズが走り、痛い。
 足にも力が入らず、高度なゼン――ユーベルコードが使えない。
「私はゼンガール……あのトレンチコートのサイドキックにして、ゼンの使い手……よ」
 ドアノブに手をかけるが、何かが引っかかる……ああ、鍵をかけられたようね。
 どうしようと部屋を見回した時、ダイナマイトに繋がれた時計が目に入った。

 10、9、8、7……

 ――考えるのはもう止そう。
 やがて視界は暗くなり……

 次に目を開いた時、視界に入ったのは宝石の身体を持つ自称火星人の姿と赤い夜空。

「……ここは? ローマン」
「君が捕えられていたところから数キロというところだな。あと数秒で爆発に巻き込まれるところだった」
 私の問いに火星人――マーズ・ローマンが答える。
 遠くより消防のサイレンが鳴り響き、赤い空の根元へと走っていく。
「   は? サイコはどうしたの?」
「サイコはヴィジランテが追っている、殺さなければいいのだが。そして   は……キャプテン・ストライクとの決着を着けに行った」
 ローマンは冗談が下手。だから、嘘でないと分かった。
 そう……嘘でないと。
「ゼンガール?」
「やめて、ローマン。もうその名前は卒業よ」
 皆が呼んでいた名前が今はとても煩わしく感じた。
「私はキャロル――足手まといのサイドキックはもう死んだのよ」

 そう、あの爆発で死んだのだ。
 足を引っ張りたくない。
 独りでも戦っていける。
 そのためのパワーだってある。

 けれど……あの時と同じような『此処』で何故、奴に勝てないの?
 強くなったのに……。

 ――A.D.2021

「何故、お前はゼンガールと呼ぶの! 私は……私は……ディテクティブ・ウィッチ!」
 もうあの頃の私は居ない!
 恐怖で歯を噛みそうになりつつも、錫杖を支えに立ち上がる。
「もうサイドキックなんかじゃない!」
「何を言っているんだい、ハニー」
 視線の先、振り向いたドクター・サイコが笑った。
「お前はゼンガールだ。そのトレンチコートだって、ヤツのマネゴトだろ?」
 爆風が私を吹き飛ばす。
 そうだった、前も爆弾を仕掛けてたんだ。
「くっ……」
 立ち上がりたい……でも立ち上がれない!
「今度こそ、バイバイだな」
 リボルバーの銃口が視界に入る。
 こんな時、助けてくれた『彼』はもう居ない。
 私が拒んだから。
 クライング・ジェネシスとの戦いで消えてしまったから。
 戻って来たと思ったら、何かを追って姿を消してしまったから。

 もう、助けは来ない。
 撃鉄を起こす音が私に覚悟を決めさせた。
菫宮・奏莉
ヒーローさんといえば、勇者にも通じるところがありますですよね。
これはもう仲間ですよね。
そして仲間のピンチには駆けつけるのが、勇者というものなのですよ!

え?トラウマですか?
ヒーローだって心は人間、いえ、普通の人より繊細な心をもっているものです。
トラウマのひとつやふたつ、あっておかしくないのですよ。

でも!
それを克服して愛と勇気を見せるのがヒーローさんや勇者と思うですよ!
さぁ、いまこそみんなで乗り越えるとき、なのです!
(かっこよくポーズを決めようとしてコケる)

……(咳払いでなかったことにして)

心を利用しようとする悪者さんには、わたしの運をお裾分けなのです。
爆弾とか持っていると、危ないと思うのですよ?


ミネルバ・レストー
いいじゃないの、助けてもらったって
あなたは十分に主役よ、自分の人生の主役
過去を無理に否定しない方がいいわ、そういうの泥沼だから

助けるとか力を貸すとか、恩着せがましい物言いは避けて
……そうね、魔女同士仲良くしましょ? ってところかしら
手を差し伸べて、応えてくれたらしっかり「手をつなぐ」
気休めにでもなればいいんだけど

大丈夫、あなたは負けてなんかない
今度こそ勝つのよ、一緒に勝ちましょう
いかにも過去から見苦しく湧いて出たクソ野郎だこと
あのおめでたい頭をふっとばしてやれば気持ちよさそうじゃない?

……なんて後押しで、気力を取り戻してくれるといいわね
邪魔をするなら【戦女神の眼光】のひと睨みで氷柱の雨あられよ



●ザ プロタガニスト オブ ライフ

「いいじゃないの、助けてもらったって」
 ディテクティブ・ウィッチとドクター・サイコを遮るように氷柱が降り注ぐ。
 氷が水蒸気となり煙のようにたなびく中、歩くのはミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)。
「あなたは十分に主役よ、自分の人生の主役」
「人生の主役……?」
 ネリーの言葉にウィッチは顔を上げる。
「過去を無理に否定しない方がいいわ、そういうの泥沼だから」
「そうね、そうしたいところだけど」
 ヒーローが振り向いた先には――
「おーっとっとっと、とんだ邪魔がはいったなあ。ゼンガール?」
 過去の妄執、オブリビオン。
「過去がそうさせてくれないの」
 トレンチコートのヒーローが独鈷杵を構えた時、影が飛び込みドクター・サイコは松葉杖で殴られた。

「ヒーローさんといえば、勇者にも通じるところがありますですよね。これはもう仲間ですよね?」
 菫宮・奏莉(血まみれ勇者・f32133)がさらにもう一撃、オブリビオンを殴打し、ウィッチへと問いかけた。
「ねえ?」
「わたしに聞かないでくれる?」
 キャロルの呼びかけに対し、こおりのむすめは即座にノーを返した。
 一方、物語は続く。
「そして仲間のピンチには駆けつけるのが、勇者というものなのですよ!」
 勇者の攻撃にこれは不味いとドクター・サイコは距離を取る。
「状況は把握しています! ヒーローだって心は人間、いえ、普通の人より繊細な心をもっているものです」
 その間に奏莉は改めてウィッチへと呼び掛けた。
「トラウマのひとつやふたつ、あっておかしくないのですよ」
「色々と調べたのかしら……いや、この状況なら仕方ないわね」
 肩を竦めつつトレンチコートのヒーローは状況を受け入れる。
 猟兵の存在がそれを裏付けるのだから。
「でも!」
 さらに力強く勇者は言葉を続けた。
「それを克服して愛と勇気を見せるのがヒーローさんや勇者と思うですよ! さぁ、いまこそみんなで乗り越えるとき、なのです!」
 そしてポーズを決めようとして……こけた。
「難しいわね」
 その様子に困ったように笑いを浮かべるのはヒーロー。
「ねえ、死にかかったことはあるかしら? 頭を鉄パイプで殴られたことは? ……痛かったわ」
 転んだ奏莉を助け起こし、ウィッチは続けた。
「だからね、そういう物ってずっと刻まれちゃうの。愛と勇気を見せることは出来るけど、刻まれたものを埋めることは出来ないわ」
 柔らかな拒絶。
 答えは勇者たる少女自身が示している。
 彼女が一人の人間であるからこそ、トラウマは刻まれるのだ。
 それはヒーローであっても乗り越えるのは容易ではない。
 だから、ネリーは言葉でなく行動で示した。

 ――手をつなぐことで。

「大丈夫、あなたは負けてなんかない」
 冷たい掌の向こうから伝わる温もりが、それを真実と教えてくれる。
「今度こそ勝つのよ、一緒に勝ちましょう」
「……」
「それにしても、いかにも過去から見苦しく湧いて出たクソ野郎だこと」
「そうね」
「あのおめでたい頭をふっとばしてやれば気持ちよさそうじゃない?」
「良いわね、じゃあさっきのお嬢さんの言葉を借りるわ――愛と勇気で」
 互いの会話は短くとも、伝わることは伝わった。
 ネリーは奏莉へと頷くと三人の乙女はそれぞれ構えた。
 逆襲の一歩目が始まる!

「ガールズトークは終わったかい? じゃあ……付き合ってくれよ」
 ドクター・サイコが消火器を拾う。
 勿論、ただの道具ではないユーベルコードが変えるのだ、猛毒の噴霧器へ。
 ピンを抜き、レバーを握れば……何も起きなかった。
「Why?」
「おすそ分けです!」
 オブリビオンの呟きに対して勇者の剣と称した松葉杖が殴打という答えを返す。

 Devil's luck Sharing
 悪運を分けてあげましょう

 奏莉という少女は不幸を呼ぶ娘だ。
 立ち上がれば頭をぶつけ、走っても歩いてもコケる。掴まろうとすれば手を滑らせ切り傷擦り傷当たり前。
 その不幸がもし、誰かに押しつけられるとしたら……?
 相手は当然、決まっていた。

 Icicle Rain
 戦女神の眼光

 ネリーの視線がオブリビオンに注げば、降ってくるのは無数の氷柱。
 呪いの言葉を吐きながら、ドクター・サイコが逃げ惑った所へ
「わたし、ゴルフ苦手なのよね」
 ディテクティブ・ウィッチの振るった錫杖が飛び、ハードに顔面へとヒットした。

「まあ……少しはすっきりしたわ」
 顔を抑えて転がるオブリビオンを見て、ヒーローを深く息を吐いた。

 まずは最初の一歩。
 手を取ったのは二人の少女。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

織部・樒
ザフェルさん(f10233)と行動
アドリブ歓迎

サイドキック、つまり相棒の事ですね
私は彼の相棒ですが、それを誇りに思っています
が、貴女はそうではないのでしょうか

敵UCには護法で対処
ザフェルさん側も同様に防御メインを指示
余裕があればボスへも攻撃
力負けしそうなら護法を合体、数を揃えた方がよければ【式神使い】にて
凌ぎます
間に合わないなら己の錫杖構え【ジャストガード】【見切り】【武器受け】
【オーラ防御】

貴女はサイドキックという言葉に囚われているのではありませんか
ヒーローとは役割ではなくその行いに依るものと考えます
サイドキックと呼ばれようとも、貴女の行いは立派なヒーローだと思いますよ


ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘
悪夢を利用して人のトラウマに付け込むか。嫌な精神攻撃だな
寝る時は安眠を約束されたいもんだぜ

ディテクティブ・ウィッチは元サイドキックということだが、
何故それをレッテルに感じるのか分からねぇな
サイドキックやれるだけの力があるならヒーローと同じだろ
そもそもサイドキックって言葉は、”相棒”って意味だろ?
一緒に行動してたヒーローも、そう思ってたんじゃねぇか
お前さんは一人でも戦おうとする、強いヤツみたいだからな

戦闘は敵へ攻撃を優先。敵攻撃は樒の護法で防いで貰う
頼んだぜ、相棒!!

あとそのトレンチ、似合ってるぜ
トレンチを着るヒーローはみんな強いんだな



●サイドキック オア バディ

 転がるように地下室を走り回り、ドクター・サイコは仕掛けのボタンに手をかける。
「とんだ援軍って訳だ。あの時と同じようにまた助けられるって訳だな」
「……ふざけないで」
 オブリビオンの言葉に苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるのはディテクティブ・ウィッチ。
 その姿がサイコの嗜虐心を刺激した。
「だから、お前は言われるのさ――」
「悪夢を利用して人のトラウマに付け込むか。嫌な精神攻撃だな」
 ヴィランの口撃を遮るのはザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)。
「寝る時は安眠を約束されたいもんだぜ」
「まるで、わたしが悪夢を見ているようね?」
 ザフェルの軽口に応じるヒーローの問い。
 それに答えるのは別の声。
「その通りです」
 織部・樒(九鼎大呂・f10234)が傍らに立つ。
「貴女は今、オブリビオンによって悪夢に囚われています」
「なるほど道理で……シチュエーションの再現性が高すぎると思ったわ」
 樒の言葉にウィッチが返す。
「じゃあ、アレも夢?」
「残念、本物だよ、ハニー!」
 ヒーローに指さされたドクター・サイコが笑い、仕掛けのボタンを押した。

「護法! 頼みます」
 飛翔する13個のギロチンの刃。
 対するは樒の召喚する童子。

 Summon・Goho-Doji
 召 喚・護法-童子

 八十と五の神霊が数に物を言わせてギロチンを食い止めると、続けざまに呼ばれるのは85体の幻影竜。
「我が鈍色の竜よ!」

 Gluttony gray
 貪る――鈍色竜

「ひでえもんだ! 限度ってもんを知らねえのかよ!」
 悪態をつきつつ、ドクター・サイコは竜から逃げ惑う。
 そして、竜の使い手と天目茶碗のヤドリガミはヒーローへと向き直る時を得た。

「わからねえことがある」
「具体的にはどのあたりかしら?」
 ザフェルが問いかけ、ウィッチが問い返す。
「サイドキックやれるだけの力があるならヒーローと同じだろ? 何故それをレッテルに感じるんだ? そもそもサイドキックって言葉は、“相棒”って意味だろ?」
「私は彼の相棒ですが、それを誇りに思っています」
 言葉を補う様に樒も口を開く。
「が、貴女はそうではないのでしょうか?」
 その言葉に元サイドキックは首を振る。
「一緒に行動してたヒーローも、そう思ってたんじゃねぇか、お前さんは一人でも戦おうとする、強いヤツみたいだからな」
 ザフェルが言葉を投げかけ。
「貴女はサイドキックという言葉に囚われているのではありませんか?」
 樒が問う。
「ヒーローとは役割ではなくその行いに依るものと考えます。サイドキックと呼ばれようとも、貴女の行いは立派なヒーローだと思いますよ」
「違う……違うのよ」
 ディテクティブ・ウィッチは悲しそうに笑った。

      buddy
「貴方達は相棒同士。でも私は――」
 深く息を吐き、呼吸を整え、そして口を開く。
「Sidekick、『ヒーロー』の相棒なの」
 自分は『ヒーロー』を形作る一つの要素にすぎないことを。

「どんなに頑張っても。例え一人で戦っても、見ているのは私ではなくて、その向こうにいる存在……それがとても辛かった」
 竜に追われるオブリビオンを見つけながら、かつてのサイドキックは独白を続けた。
「あの時もそう、誰も私を見てくれないから、先走って罠に嵌って。そして――彼は助けにこなかった。だから決めたの」
 コートを羽織りなおすディテクティブ・ウィッチ。
「私は独りになろうと――つまらない意地だけど、そうしないと私も依存しちゃうから。そのレッテルに」
「そうでしたか……外套を着替える年になられたと言うことですね?」
 樒がトレンチコーチになぞらえれば、ヒーローは頷く。
「分かった……でも、大丈夫だ」
 ザフェルはウィッチの言葉を受けた上で断言した。
「何せ、そのトレンチ似合っているからな。トレンチを着るヒーローはみんな強いんだな」
「でも、ゼンしか取り柄ないのよね?」
 竜の使い手の言葉にトレンチコートのヒーローは肩をすくめた。
 その様子をヤドリガミは見て微笑んだ。

 自慢の相棒の言葉が縺れた糸を解きほぐしているのをこの目で見て、そして感じ取ったのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒木・摩那
じゃーん。猟兵です。

ここで倒れてしまったら、あなたの嫌いなサイドキックでゼンガールのままですよ。
目の前のサイコをぶっ倒して、ディテクティブ・ウィッチ、ここにありと、世間に見せつけましょうよ。
そのための助力はお任せください。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーの軌道を【念動力】で操作して、回避困難にしつつ、
ドクター・サイコをヨーヨーで捕まえます。
そして、UC【サイキックブラスト】で電撃を叩き込みます。

これで動きが止まったら、ウィッチにバトンタッチ。
どーん、と攻撃を決めてもらいます。


黒城・魅夜
小さく非力なサイドキック
本当にあなたは足手まといです
……他の誰にとってではありませんよ
あなた自身にとってあなたが足手まといなのです
あなたの戦う決意も覚悟もすべて茶番に化してしまうその諦めこそがね

自分がこの戦場にいることの意味を思ってください
あなたは今
いるだけの価値と存在意義があるからこそ、ここにいるのです
コートがその人の真似ならばその想いも受け継いでいる証
かつて負けた?
結構ではありませんか、リベンジできるということですもの
さあ共に戦いましょう

爆弾とは好都合
閃光で私の影が濃くなるだけの話
Dウィッチ、あなたをオーラで守ります
一瞬で構いません、時間を稼いでください
私の影があの道化を包み込む時間をね



●サイドキック ゼンガール

 憧れだったのか、それとも流されての事だったのか。
 事故によって両親を失ったわたしはその裏にある真実を知りたかった。
 幸いにも魔術師だった父の影響で学んでいたゼンが役に立った。
 裏で介入していたヴィランを探し出し、真相を暴こうとした時、『彼』に出会った。

 彼の指導は厳しいものであったが、満ち溢れるものであった。学業との両立は厳しかったけれど……。

 やがて、わたしはゼンガールとして『彼』のサイドキックとなり、そして……今は彼の真似事のようにトレンチコートを着ている。

「小さく非力なサイドキック」
「そう、わたしは小さく非力なサイドキック……って、突然何よ?」
 思索にふけっていたところに言葉を挟まれて、ウィッチはつい口を開いてしまった。
「本当にあなたは足手まといです……他の誰にとってではありませんよ」
「本質は違うと言いたそうね?」
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)の言葉を裏をヒーローは感じ取る。困ったことにそういう事には慣れていた。
「あなた自身にとってあなたが足手まといなのです」
「ジャパニーズの例えは今一歩分かりにくいわ、答えを頂戴」
 だからこそ魅夜に対しても続きを促す。
「あなたの戦う決意も覚悟もすべて茶番に化してしまうその諦めこそがね」
「ひどい言われよう」
 悪夢を纏いし者の言葉にウィッチは肩をすくめた。
「じゃーん。そこで猟兵の登場です」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が言葉を挟めたのはその時だった。

「ここで倒れてしまったら、あなたの嫌いなサイドキックでゼンガールのままですよ」
「貴女もストレートね」
 摩那の言葉にヒーローは苦笑を返す。
 彼方の能力者の雰囲気が、言葉の強さを和らげ空気を変えていく。
「目の前のサイコをぶっ倒して、ディテクティブ・ウィッチ、ここにありと、世間に見せつけましょうよ」
「やり方もストレートすぎない?」
「そのための助力はお任せください」
 力強く拳を握る摩那に対し、ウィッチは笑みをこぼすしかなかった。

「自分がこの戦場にいることの意味を思ってください」
 雰囲気が柔らかくなってきたからこそ、魅夜がヒーローの心へ促していく。
「あなたは今、いるだけの価値と存在意義があるからこそ、ここにいるのです」
「私の価値?」
 呟く言葉に咎人殺しが頷いた。
「コートがその人の真似ならばその想いも受け継いでいる証」
 視線はヒーローの羽織っているトレンチコートへ。
「かつて負けた? 結構ではありませんか、リベンジできるということですもの」
 そしてドクター・サイコへと睨みを利かす。
「さあ共に戦いましょう」
「最終的にはそう行きつくのね……良いわ」
 ディテクティブ・ウィッチもサイコを睨む。
「やってやろうじゃない」
 その言葉に二人の猟兵は頷いた。

 ギロチンが落ちる中、猟兵とヒーローが駆け抜ける。
「言ってはみたものの……結構ハードね」
「大丈夫です!」
 ディテクティブ・ウィッチの呟きに対して満面の笑みで応える摩那。
「人数が多い分、絞り切れないはずです」
「フゥム……面倒だな」
 ポケットに手を突っ込んで様子を見守っていたドクター・サイコが眉をゆがめる。
「やっぱり、爆弾だな」
 振り上げた右手にはダイナマイトの束。
「じゃあ、吹き飛んで♪」
 楽し気にオブリビオンが爆弾を投げた時。
「爆弾とは好都合」
 魅夜の呟きと共にオーラが壁となって猟兵達を包んだ。

 爆風と閃光が辺りを覆う中、影が走る。
「閃光で私の影が濃くなるだけの話」
 それはユーベルコード、名は――

 Shadowy gate 
 闇に溺れよ影へと沈め
 Inane end
 せめて末期は舞う如く

 影がドクター・サイコを縛り付ける。
「これはチャンス!」
 即座に摩那が反応し、ヨーヨーでオブリビオンを縛りつければ迸るのは――

 Psychic Blast
 サイキックブラスト

 掌から走る高圧電流がさらにサイコの動きを封じた。
「今です!」
 彼方の世界の能力者の言葉にヒーローが舞う。
「爆弾は飽き飽きなのよね」
 オブリビオンの顔面にウィッチのブーツが叩き込まれた。

 流れは傾き、サイドキックのレッテルは剥がれていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミハエラ・ジェシンスカ
ディテクティブ、か
成程。アイツめ、今度はどこを彷徨っているのやら

キャロルと敵との間に割り込むように介入
以降、立ち直るまでは間の立ち位置を維持
……また『政府』の守護者か?
随分と数が出回っている事だ

体格の上ではこちらが不利か
敵の攻撃を【受け流し】て【態勢を崩す】
【当意即妙】の【カウンター】を返してやろう
銃器や爆発物はキャロルに向かわないよう
【武器受け】で切り払うか【念動力】で逸らす

強くなる事と独りで戦える事は同義ではあるまい
ましてや恐怖とは強き者の足元をも容易に掬うものだ
だからこそ、私やヴィランどもは有用に扱うんだがな

まったく、お前達は独りで抱え込みすぎる
師弟でそんなところまで似なくても良いだろう



●ロンリーファイト オブ アーツ

「チィッ……やってくれる! 今日は余計なゲストが多いな」
「こういう時はそうね……『日頃の行いって』やつかしら」
 戦いが有利に進み、ウィッチにもヴィランの皮肉を軽口で返す余裕が出来ていた。
「そうかい、なら、こいつで殺されろよ」
 だが、その雰囲気すら打ち消す鋼鉄の巨人が室内を支配する。
 ヴィランとそしてヒーローが敵となった時の備え。
 その名を対能力者兵装ガバメント・オブ・ガーディアン。
「……また『政府』の守護者か?」
 暗闇より声が響く。
「随分と数が出回っている事だ」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)の皮肉にヒーローが代わりに答えた。
「あの時は大変だったわ」
 肩を竦めるのは師匠の流儀か。
「ヴィランにコントロールを丸々奪われちゃったもの、一苦労も良いところよ」
「ほう……では、昔話を聞くのはこれくらいにして」
 ミハエラの視線は鋼鉄の守護者へ。
「ガラクタを片付けようか」

「それにしてもディテクティブ、か」
 振り下ろされるヴィランの鉄槌を交わし、間合いを探りつつ邪剣の騎士は呟いた。
「成程。アイツめ、今度はどこを彷徨っているのやら」
「わたしも聞きたいわね。知ってる?」
 ウィッチが独鈷杵を投げるとミサイルよろしくガーディアンに撃ち込まれるがひるむ様子もない。
「知らん」
 ミハエラが吐き捨てる。
 彼女の目の前には突進する巨人が居た。

「下がってろ」
「大丈夫?」
 邪剣の騎士の言葉にトレンチコートのヒーローが気を掛ける。
「問題ない」
 一歩、二歩、三歩と進めば、あっという間にガーディアンの懐、ドクター・サイコの射程。
「ところで、強くなる事と独りで戦える事は同義ではあるまい」
 フレームだけの細い躯体が音もなく舞う。
「ましてや恐怖とは強き者の足元をも容易に掬うものだ」
 振るわれたフォールンセイバーが巨人の拳をいなし、勢いを反らし方向をずらす。
 戦機へ叩き込まれようとしたパンチはたちまち方向性を失わせ、ガーディアンに下手なダンスを踊らせた。
「だからこそ、私やヴィランどもは有用に扱うんだがな」
 そして、もうひと振りの刃がガーディアンの駆動システムへと疾る!

 パリィ
 当意

 ――&

 リポスト
 即妙

「まったく、お前達は独りで抱え込みすぎる」
 崩れていく鋼鉄の巨人の目の前にミハエラは呟く。
「師弟でそんなところまで似なくても良いだろう」
 視線を向ければ、トレンチコートのヒーローはバツの悪そうな表情を浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月
妖狐に、人になって1年半経ったけど、やっぱり人は難しいな。

強いとか、弱いとか、呼び方とか…それ、拘る必要あるのか?
そこに意味を見出そうとするのは、人の習性なのか?

強さも弱さも、全部まとめて、あなたは、ディテクティブ・ウイッチなんだろう?

今ある自分、その全てで戦う事。
それが、野生…生きる事だと俺は思う。
あなたは、どうありたいんだ?

[野生の勘、第六感]で敵と操作されてる無機物の状況を[情報収集]しよう。

飛んでくる無機物にはUC【狐火】と[属性攻撃]の[カウンター]で[援護射撃]で迎撃しつつ、ディテクティブ・ウィッチさんの攻撃のフォローに入ろう。

倒すのは、ディテクティブ・ウィッチ、あなただ。


荒谷・つかさ
(間に割って入り銃弾を「怪力」の筋肉で受け止めつつ)
何故勝てないか、簡単な話よ。
貴女はあいつに負けて苦手意識を持ち、自信を無くした、ただそれだけのこと。
貴女が何者に成ろうと、それをなんとかしない限り勝てるはずがないわ。
だから私、「ラクシャーサー」が一時的に取り除いてあげる。
さあ、受け取りなさい!

【頒布版・超★筋肉黙示録】発動
脳筋書籍をヒーローに渡し、脳筋精神を授けて難しい事を考えられなくする
どんな敵だろうと、身体を鍛えて筋肉で殴れば倒せると言い聞かせ、説得
筋肉は無敵、筋肉は最強、故に恐れるものなど何もない
敵のデカブツは共に「怪力」でボコボコに殴って壊す

ちょっとは自信、ついたかしら?



●パワー オブ ライフ

 破壊された残骸からドクター・サイコが這い出て来る。
「クソッタレ! なんだアレは! タキオン一刀流かよ!?」
 悪態と共にヴィランはウィッチへとリボルバーを向けた。
 引鉄が引かれ、弾丸が吐き出された直後、それは力瘤――上腕二頭筋で弾かれた。
「何故勝てないか、簡単な話よ」
 その肉体は小さかった。
「貴女はあいつに負けて苦手意識を持ち、自信を無くした、ただそれだけのこと」
 しかしその言葉はシンプルでその筋肉の如く揺るぎないものだった。
「貴女が何者に成ろうと、それをなんとかしない限り勝てるはずがないわ」
 そこに立つのは羅刹。
「だから私、『ラクシャーサー』が一時的に取り除いてあげる」
 名は荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
「さあ、受け取りなさい!」
 彼女こそ筋肉の使徒。
「待って!?」
 ディテクティブ・ウィッチは両掌で差し出された本を制した。

「強いとか、弱いとか、呼び方とか……それ、拘る必要あるのか?」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)にとっては人の感情という物はまだ理解できないもの。
 そこに意味を見出そうとするのは、人の習性なのか? と、思考として考えることは有れど、それを理解するには未だ遠いか、もしくは隔たりがあるのか……。
「強さも弱さも、全部まとめて、あなたは、ディテクティブ・ウイッチなんだろう?」
 けれど獣ゆえに本質を突くことがある。
「今ある自分、その全てで戦う事。それが、野生…生きる事だと俺は思う」
「今ある全て……それが私……」
 繰り返す様に呟くトレンチコートのヒーロー。
「あなたは、どうありたいんだ?」
 再び都月が問う。
 ディテクティブ・ウィッチは意を決すると、つかさの差し出す本を手に取った。

「おいおいおい、読書の時間なんてありはしねえぞ」
 壊れたはずの巨人が身を起こし、それに乗り込んだサイコがハンドルを握る。
「面倒くせえ、火炎放射でみんなバーベキューしようぜ!」
 復活した巨人――ガバメント・オブ・ガーディアンの右腕から炎がほとばしる。
「読んだ? なら次は分かるわね?」
 つかさの言葉にウィッチは頷き、巫女と魔女は両手を広げ、そして胸元で手を叩いだ。

 ――柏手!

 それは神に祈る動作。だが、怪力が備わった者が行われれば膂力によって空気が追い出され、掌に真空を生み出す御業へと変わる。
 二つの真空破が炎を切り裂き、断裂した領域へと注がれる空気が荒れ狂う渦となり、猟兵とヒーローを焼き尽くさんとした悪意を霧散させた。
「な、なななな……なんで?」
「分からないなら教えてあげる」
 うろたえるドクター・サイコへ、つかさが告げる。

 Power!!
「筋肉よ!」

 Hyper Muscle Apocalypse
 頒布版・超★筋肉黙示録

 人に力を与えるその本は、引き換えに物事を筋肉で解決させる。
 だから、ラクサーシャーとウィッチが次に選ぶ行動は決まっていた。
 全力でぶん殴る!!
 尋常ならざるパワーで撃ち込まれた二つの衝撃にガーディアンが揺れ、そこへ都月の炎が襲う。

 Fox Fire
 狐 火

 大量の狐火が追い打ちをかけるように降り注ぎ、巨人は膝を着く。
「倒すのは、ディテクティブ・ウィッチ、あなただ」
「OK!」
 狐の言葉にヒーローが応える。

「ちょっとは自信、ついたかしら?」
 トレンチコートのヒーローがガーディアンの頭を吹き飛ばす様子を見守りながら、つかさは呟いた。
 それは疑問形ではあったが、強い確信があった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

羽堤・夏
噂は聞いてるよディテクティブ・ウィッチ
皆の日常を守るヒーロー
あたしは防人、一緒に戦えて光栄だ…ひとまず、あいつぶん殴る!

コード発動
犯罪機械を【怪力】でぶん殴り太陽で焼き尽くす
爆弾があるならそれもぶん殴って爆発する前に【焼却】
…いや、消滅させてやる
こういうやつの最適な対処法は確か…真正面からこじ開ける!
最小限の被害で最大限の破壊力を、だっけか。
太陽の温度、舐めるなよ!

あー、ところでウィッチさん?先輩?
あたし、見ての通り殴るしか能がないんでちょっと手を貸してもらえます?
立ち上がれないなら、あたしの手で良ければ貸しますんで。
怖かったことも辛かったことも
全部背負って、まずはあのにやけ面をぶん殴ろうぜ!


御桜・八重
彼女の前に躍り出て、気合いでサイコの攻撃を払いのける!
サイコをけん制しつつ、彼女に声をかける。

「ねえ、あなたの名前は?」
ヒーロー名を口にするだろうけど、かぶりを振って。
「ううん、あなたの本当の名前」

巨大化したサイコ相手に一歩も怯まない。
キャロルを庇って護り続ける。

小さな体で、なんでそんなに戦えるのか?
怖くないのかって?

怖くないわけじゃないよ。
でも、わたしは戦うって決めたから。
救けを求めた手を掴む、そして離さないって決めたから。

名前で強くなるわけじゃない。
ゼンガールも、ディテクティブ・ウイッチも関係ない。
最後まであきらめないって、あなたが覚悟しなきゃ。

彼女に、手を伸ばす。
「ね、キャロル!」



●ホワット イズ ユア ネーム

 ガーディアンの頭部をサッカーボールよろしく蹴っ飛ばすディテクティブ・ウィッチ。
 だが、ドクター・サイコはまだ戦う意志を失っていない。
 状況はまだ有利。その証拠にこっちにはまだ秘密兵器がある。
 勝利の余韻に浸っているヒーローの隙を突き、オブリビオンは殺人除雪機のキーを捻った。

「――!?」
 エンジン音に気づき視線を動かすヒーロー。
「死ねよやー!!」
 ヴィランは叫びと共にアクセルを踏む。
 除雪車の前部分にある巨大ロータリーが回転して、ウィッチをミンチにしようとした、その時。
「ホウキング!」
 御桜・八重(桜巫女・f23090)のまたがった竹箒から発射されるオーラの弾丸が殺人除雪車の前進を食い止め、その隙を突き、八重はウィッチを回収し飛行する。
「ねえ、あなたの名前は?」
 サイコの除雪車から逃げつつ、桜の巫女は後ろに跨るヒーローへ問いかけた。
「ウィッチ、ディテクティブ・ウィッチ」
 彼女の言葉に八重は被りを振る。
「ううん、あなたの本当の名前」
 その言葉にヒーローは幾度か瞬きをしたのち、改めて名乗った。
「キャロル……キャロル・チャン。それがわたしの名前よ」

 距離を取り、八重とキャロルが床に降りる。
 ここは夢の世界。
 出口は無く、地下室が無限に続くのみ。
「大きいわね」
 迫りくる殺人機械を目にしてウィッチが呟く。
「貴女は怖くない? 私はそうね……恐怖を認識するのもゼンと教わってるから大丈夫だけど」
「怖くないわけじゃないよ」
 右に退魔刀、左に妖刀を握り桜の巫女は答える。
「でも、わたしは戦うって決めたから。救けを求めた手を掴む、そして離さないって決めたから!」
「そうさ、だからあたしも戦うんだ」
 闇より別の声が響いた。
 そして殺人除雪車の前に少女が躍り出ると、回転するロータリーを殴って、その前進を食い止めた。

「噂は聞いてるよディテクティブ・ウィッチ。皆の日常を守るヒーロー」
 少女の名前は羽堤・夏(防人たる向日葵娘・f19610)。
「あたしは防人、一緒に戦えて光栄だ……ひとまず、あいつぶん殴る!」
「もう殴ってるじゃない?」
 ウィッチの言葉に夏は「あれ?」と呟き、自分の拳を見た。
「たはは……ところで、ウィッチさん先輩?」
 改めて防人の少女が問いかける。
「あたし、見ての通り殴るしか能がないんでちょっと手を貸してもらえます?」
 それは共闘の申し出。
「立ち上がれないなら、あたしの手で良ければ貸しますんで」
 差し出す手は小さくも熱い。
「怖かったことも辛かったことも、全部背負って、まずはあのにやけ面をぶん殴ろうぜ!」
「ゼンガールも、ディテクティブ・ウイッチも関係ない」
 夏の言葉に八重が続く。
「名前で強くなるわけじゃない――最後まであきらめないって、あなたが覚悟しなきゃ」
 そして差し出されるもう一つの手。
「ね、キャロル!」
「あのね……」
 キャロルが手を伸ばし二人の手を握る。
「こうなると両手が塞がっちゃうわよ」
 悪戯っぽく笑った後、トレンチコートのヒーローは錫杖を構えた。
「じゃあ、行きましょう。ここからはガールズパーティよ」

 最初に動いたのは八重。
 突進する殺人除雪車に対して刀をぶつけると、それを軸に回転。
 桜が舞うが如き剣舞がドクター・サイコの機械へと向けられ刃が刻まれる。

 Hana Arashi
 花  嵐

 神速の八連撃が、除雪車の装甲を切り刻み、操縦システムを破壊させ、下手くそなダンスを踊らせる。
「良い感じ!」
 そこへ夏が拳を叩き込む!

 Arise――Sunshine
 アライズ・サンシャイン

 防人の少女の拳が生み出す極小の太陽。
 それがガソリンに引火し、殺人除雪車は爆発する。
「ねえ、ちょっと!」
 燃え盛る犯罪機械を前に、キャロルは口を開いた。
「わたしの出番は?」
 その言葉に二人の少女は、ちょっとバツが悪そうに目を逸らすのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

グレイス・リリィ
色男かと思ったら、成程
ちょっとお話しましょうか、傷だらけの魔女さん

あなたが追っていた背中はね、私も同じなのよ
覚えているかしら、ラスベガスの宇宙大戦争
私はそこで彼と出会って、レッドウィングの名前を貰ったわ
相変わらずどこで何をしてるのかは知らないけど
でも、残してくれたものはしっかりとこの胸にあるわ
あなたもそうでしょう?
そして、こんな時でもきっと言うわ
“それじゃあレッスンだ。用意はいいか?”
思い出せた? 大事な事を

弾いた弦で奴は既に恐怖に囚われている
有象無象は次元ごと断ち切った
つまらない手品は仕舞いよ
それにしても……五月蠅いわね
排水溝に頭突っ込んでやろうかしら、アレ
ねえ。今なら成すがままよ、レディ?


トリテレイア・ゼロナイン
剣盾近接戦闘でサイコのロボを足止めしつつ

ディテクティブ・ウィッチ様ですね
助太刀に参りました

いえ、貴女には戦い以外の事をして頂きます

ゼンガールはあの爆発で死んだと貴女は言う
ですが
『ここ』には仕掛けられた爆弾があり、貴女/彼女は生きています

危地にある人を救う…ヒーロー/御伽の騎士とはそのような存在だと私は考えます

(サイコの遠隔操作のスイッチを武器落とししたりハッキングで妨害と同時、凍結●世界知識解凍し●破壊工作知識限界突破)

爆弾解体の心強い味方はご用意いたしますが、主体は貴女です
ここは夢…つまり貴女の心
その爆弾に真に触れられるのも貴女だけなのですから

さあ、嘗ての彼女を救えるヒーローとしての証明を



●ルック アット ザ バック

 燃え盛る殺人除雪車。それを背に人影が歩みだす。
「よぉ……ゼンガール」
「お生憎様」
 ドクター・サイコの言葉に皮肉を返すキャロル。
「今の私はディテクティブ・ウィッチよ」
「そうかい」
 自慢のハットのポップコーンは焦げ付き、一張羅はボロボロ。
「じゃあ、今度はウィッチが死にな!」
 けれど、殺意が消えることは無い。
 二人の間に時限爆弾を抱いたテディが転がった。

「色男かと思ったら、成程」
 そんな張り詰めたシチュエーションの中、歩み寄るのはグレイス・リリィ(レッドウィング・f21749)。
「ちょっとお話しましょうか、傷だらけの魔女さん」
 爆弾をヴィランに向けて蹴っ飛ばし、グレイスはウィッチの方を向く。
「あなたが追っていた背中はね、私も同じなのよ」
 猟兵がヒーローへと話しかけるのは、ある男の話。
「覚えているかしら、ラスベガスの宇宙大戦争」
「ええ。貴女、結構大変な目にあったのよね」
 二人が思い出すのはラスベガスを襲ったオブリビオン。
「私はそこで彼と出会って、レッドウィングの名前を貰ったわ」
 猟兵とヒーローと人々が戦った一日。
「相変わらずどこで何をしてるのかは知らないけど。でも、残してくれたものはしっかりとこの胸にあるわ」
 同じ日を共有し、同じ男の背中を見たからこそ、レッドウィングは伝えるべき言葉があると信じていた。
「あなたもそうでしょう?」
 彼は自分をヒーローにしてくれたのだから。
 ならば、次は自分が彼女にヒーローを思い出させる時。
「そして、こんな時でもきっと言うわ“それじゃあレッスンだ。用意はいいか?”――思い出せた? 大事な事を」
「懐かしいわね」
 トレンチコートのヒーローは笑みを見せる。
「どんな敵の前でも彼はそんな風だったわ」
 だが、昔話は終わる。
 再び、ぬいぐるみが転がり、そして同時にもう一体――サイコの操る鋼鉄のガーディアンが襲ってきた。
「そうはさせません」
 直後、ガーディアンより一回り小さい戦機が大盾を叩き込み、巨人を吹き飛ばした。

「ディテクティブ・ウィッチ様ですね、助太刀に参りました」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が頭を垂れ、告げる。
「ありがとう。とりあえずはあのデカブツを倒すのを手伝えばいいの?」
「いえ、貴女には戦い以外の事をして頂きます」
 錫杖に構えるヒーローに対し、トリテレイアは転がっている爆弾を指さした。

「ゼンガールはあの爆発で死んだと貴女は嘗て申し上げました」
 時限装置のタイマーが時を刻む中、騎士は言葉を紡ぐ。
「ですが」
 それは――
「『ここ』には仕掛けられた爆弾があり、貴女/彼女は生きています」
 過去へ向き合う示唆。
「危地にある人を救う……ヒーロー/御伽の騎士とはそのような存在だと私は考えます」
「つまり、救うべきは私」
 ウィッチの言葉にトリテレイアは深く頷いた。
「爆弾解体の心強い味方はご用意いたしますが、主体は貴女です」
 ヒーローの周りを妖精が飛び交う。

 Steal Fairies・Type――Gremlin
 自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ

 破壊工作と精密な動作に秀でた機械妖精が爆弾のカバーを外す。
「ここは夢……つまり貴女の心、その爆弾に真に触れられるのも貴女だけなのですから」
「これがわたしの心……」
 ディテクティブ・ウィッチの呟きに騎士は望む。
「さあ、嘗ての彼女を救えるヒーローとしての証明を」
 ヒーローたる時を。

 この爆弾は恐怖の象徴だった。
 この爆弾は決別の形だった。
 この爆弾は――私の心!

 ゼンガール、キャロル、ディテクティブ・ウィッチと名を変え、一人のヒーローとして歩んできた女が、過去を振り返り、そして未来を進むために爆弾へ近づく。
 タイマーは時を刻み、残り僅か。
 けれど、関係なかった。
 猟兵という存在が自分を導いてくれたのだから。
 ディテクティブ・ウィッチ、本名、キャロル・チャンはゆっくりと爆弾の停止スイッチへと指を伸ばした。
 タイマーは止まり、そして時限爆弾は存在意義を失って消えていく。
 過去は終わり、一人のヒーローは再び歩みだす。

「つまらない手品は仕舞いよ」
 ヒーローの歩みが始まったと同時であった。
 グレイスの次元振動がガーディアンを襲い、その装甲をブリキへと変えてしまう。

 Destroid Disaster
 聖唱・討魔・穿皇刃

 そこへトリテレイアの一刀が振りぬけられれば、最後の巨人は砕け散り、尻餅をつくようにドクター・サイコが逃げ惑う。
「なんなんだよ! なんなんだよ! お前達はぁ!?」
「それにしても……五月蠅いわね」
 うんざりした表情でサイコから視線を離し、グレイスはウィッチへと向き直る。
「排水溝に頭突っ込んでやろうかしら、アレ」
「良いんじゃないかしら?」
 レッドウィングの言葉にヒーローは同意した。
「ねえ。今なら成すがままよ、レディ?」
 だからこそ、グレイスは最後の時を委ね。
「分かったわ」
 キャロルはそれに応えた。
 指先が星を描くとスピリットヒーローの掌に魔法陣が形成される。
「――グッバイ、サイコ」
 ブラストが一閃すると、オブリビオンは消え、悪夢は終わった。

 安堵の息を洩らすディテクティブ・ウィッチ。
 拍手が鳴り響いたのはその時だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『アシュラレディ』

POW   :    阿修羅旋風
予め【六本の腕に持った刃物を振り回す】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ブレイドストーム
自身が装備する【愛用の刃物たち】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    シックス・ディフェンス
対象のユーベルコードに対し【六本の刃物による連続斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サイドキック ブルース

 パチパチパチパチ……

「おめでとう、ディテクティブ・ウィッチ。アンタは自分を受け入れたようだね」
 六腕の女、アシュラレディと知られるヴィランは二腕で奏でる拍手を止め、もう一つの腕に持った長煙管を唇へ持っていく。
「ああ、ツマンネエ。何度も見たハッピーエンドってやつだ……なぁ?」
 煙を肺へ送り、吐き出すその目は泥のように濁り
「なぁ? 自分ってヤツを得た気分はどうだい? アタシには分かんねぇんだ。戦神アシュラの殺戮衝動ってヤツで出来たカタマリだからね」
 そして殺意で輝いていた。
「なぁ? 教えてくれよ? 戦神サマが死んでも、生きてるアタシに」
 問いかけは誰に。
「なぁ? 教えてくれよ? 戦神サマが死んでもなお、戦いたがっているアタシが、今、居る、意味を?」
 問いかけは自分に。
「少なくとも、カーネル・スコルピオはアタシに暇つぶしの何かを教えてくれて死んだ」
 そこに居るのは戦神アシュラの殺戮衝動の実体化。
 もう一人の――サイドキック。
「それがオジャンになった今、アンタ達を殺した後の『これから』くらいは知りてえさ」
 ドクター・サイコの残した悪趣味な除雪車が突然電力を取り戻し、ラジオからミュージックが流れる。
 それはブルース。

「なぁ、アタシはなんでココにいるんだい?」

 Sidekick Blues
 残された者の歌
ザフェル・エジェデルハ
引き続き樒(f10234)と共闘

なんでココにいる、か。こっちが聞きてぇぐらいだぜ
それだけの殺戮衝動を抱えて、聞く必要があるとは思えねぇな

敵の動きを【情報収集】し、【武器受け】【オーラ防御】で
攻撃を回避、【怪力】を戦斧に乗せてグラウンドクラッシャーを撃ち込む
敵が体勢を崩したり、樒の攻撃で気を逸らした隙があれば見逃さず、
立て続けに撃ち込む

なお、複製された武器の攻撃がこちらにも及ぶ場合は、
【第六感】で感じとりながら【武器受け】【オーラ防御】で回避する

悪いが骸の海に帰ってもらうぜ
ハッピーエンドはお好みじゃないようだが、それを望んでるヤツは多いからな
ここにいた理由はカーネル・スコルピオにでも聞いてくれ


織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動
アドリブ歓迎

本体が滅びて尚残る殺人衝動の具現化…といったところでしょうか
貴女の言う『これから』は、恐らく永遠に来ないと思いますよ

大神さまを呼び、撹乱をメインに行動
敵は恐らく何処かしらに誘導するように操作するのでしょうが
それに乗せられたように見せかけつつ近寄り奇襲気味に
本体への攻撃を狙います
大神さまが避けられなそうなら【式神使い】や武器使用にて
【ジャストガード】【見切り】【武器受け】【オーラ防御】にて凌ぎます
可能ならザフェルさんへの攻撃準備の妨害、というか隙を作らせるなど出来れば

貴女が終わった後の『これから』は向かった先でアシュラさんにお聞きください



●マサカー インパルス

 地下室を歩むのは六腕に刀剣を構えた女。
 対するは白磁のように白い肌の青年と焼けた浅黒い肌の男。
「なんでココにいる、か。こっちが聞きてぇぐらいだぜ」
 ――なぁ、アタシはなんでココにいるんだい?
 浅黒い肌の男、ザフェル・エジェデルハは心偽りなく、問いに対して答えを返した。
「それだけの殺戮衝動を抱えて、聞く必要があるとは思えねぇな」
「聞くだけ無駄ってヤツ……だったってぇことか? でも、悪くねえ答えだ」
 レディは歯をむき出しにして笑う。
「本体が滅びて尚残る殺人衝動の具現化……といったところでしょうか」
 白磁の肌を持つ、織部・樒が状況を分析し、言葉にする。
「貴女の言う『これから』は、恐らく永遠に来ないと思いますよ」
 そして婉曲に告げる死の宣告に対し。
「ハン! その手の台詞は聞き飽きたよ」
 アシュラは鼻で笑う。
「で、これ以上の何かを持ってねえなら――終わりだ、死にな」
 元より解は期待していなかった。
 だから、真正面からのNOには正面から答える。

 The massacre impulse
 殺戮衝動の具現化らしく。

 風を切り刃を振りまわす音が聞こえる。
 やみくもに剣を振るうほど、酔ってはいない。
 殺す機会を探し、緻密に刃を突き立てる、そこに居るのはそういうユーベルコードを使いこなすオブリビオンだ。
 だからこそ、ザフェルもその機を探し当てるため、アシュラレディを『視る』
 筋肉の動き、呼吸、視線、そして殺意。
 全てを情報として練り上げ、竜の使い手は機を見切り、走る。
 オブリビオンも同時に動いていた。

 片手袈裟一刀!

 先手はアシュラレディ。
 だが、既にザフェルの手は動いていた。
 オーラをコーティングした長柄の戦斧での打ち落とし、破壊力あるヴィランの刃は軌道を逸らされ空を切り、逆に弧を描くように斧を持ち直した男は一歩踏み込み振り下ろす。

 GroundCrusher
 単純で重い一撃を!

 咄嗟、オブリビオンが二刀を重ねて受けとめる。
 だが、威力に負けて膝を着いたところでザフェルは離れ、代わりに白金色の狼が疾走する。
 操るのは樒。
 招来せしは神の御使い。

 Summon Okami
 大 神 招 来

 4メートルに近づく体長の獣に、アシュラレディは舌打ちを禁じえない。
 瞬時に錬成された大量の刀剣が弾幕が如き雨を降らせ、狼の動きを止めにかかる。
 けれど、白金色の獣はとどまることも攻撃を受けることもせず、側背を突こうと回り込む。
「しつこいね」
 ヴィランが呟き、複数の剣を放射状に集わせると手裏剣が如く飛ばし、樒を追尾させる。
 その一瞬を狙う者がいた――ザフェルだ。

「悪いが骸の海に帰ってもらうぜ」
 振りぬかれる戦斧の一撃。
 勿論、ユーベルコードたる単純で重い一撃!
 咄嗟、複製した刃で盾を作るが竜の使い手は刀剣ごとアシュラレディを吹き飛ばした。

「ハッピーエンドはお好みじゃないようだが、それを望んでるヤツは多いからな」
「そして、貴女が終わった後の『これから』は向かった先でアシュラさんにお聞きください」
 ザフェルの言葉に樒が続く。
「……フン」
 二、三歩たたらを踏み、よろめきオブリビオンは立ち上がる。
「カハッ……戦神サマは死んで、アタシはここ。死んじまえば、元の殺人衝動になっちまうだけだろうさ」
「だろうな」
 せき込むアシュラレディの言葉を竜の使い手が肯定する。
「だったら消える前に、ここに居る理由はカーネル・スコルピオにでも聞いてくれ」
「理由は知ってるさ」
 吐いた血で彩った唇をヴィランが動かした。
「奴は暇つぶしと酒をくれた。アタシが居る理由を探す機会をくれた」
 そして口元から零れる血を拭う。
「だから、アイツの仕事をやるのさ。アタシがアタシであるのを知るために」

 オブリビオンの決意に二人の猟兵は武器を持つ手から力が抜けることは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
わたしは『戦神さま』を知りませんが、
あなたがここにいるということは、生きてほしいということだと思うのです。
自分を受け入れて、衝動を克服して生きていくのがいいと思うのですよ。

もしわたしたちを倒せたとしても、
あなたがそれに勝たなければ、同じことを繰り返すだけだと思うのです。

わたしたちではなく、自分の衝動に勝ってほしいと思いますですし、
そのお手伝いなら、喜んでさせていただきますのですが……どうでしょうか?

受け入れてもらえるのなら、もちろんそのためのお手伝いは全力でさせて頂くのです!
それが無理そうなら……残念ですけど、戦うしかないですね。
【禁足結界】で足止めをして、松葉杖の一撃、受けていただくのです!


黒木・摩那
随分と哲学的な問いをするんですね。
きっと考え続ければ、いい答えが出ると思いますよ(棒)。

アドバイスをするならば、そういうことを考えるのは現状に不満がある場合だそうです。日々満足してる人はそういうことは考えないものなんですよ。

つまりは戦神と一緒に滅びたかったということでしょうか。
そういうことならば、私達がお手伝い致しましょう。

相手が手数で勝るならば、こちらは速度で対抗します。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
刃物を【第六感】や【受け流し】で避けつつも、
機を見てUC【月光幻影】で一気に相手の懐に飛び込んで、【重量攻撃】を込めた重い一撃を食らわせます。



●アイム ア アシュラ・レディ

「随分と哲学的な問いをするんですね。きっと考え続ければ、いい答えが出ると思いますよ」
「随分、感情がこもってないじゃねえか、嘘はいけないな姉ちゃん」
 黒木・摩那の言葉にアシュラ・レディは笑って返した。
「まあ、アタシも期待はしてなかったからね」
「一応、アドバイスをするならば、そういうことを考えるのは現状に不満がある場合だそうです。日々満足してる人はそういうことは考えないものなんですよ」
 答えが返ってくるものとは思わなかったオブリビオンが目を丸くする。
「つまりは戦神と一緒に滅びたかったということでしょうか。そういうことならば、私達がお手伝い致しましょう」
「あー……」
 続いた摩那の言葉に、何かを返そうとしてレディは首を振る。
「いや、面白い解だ。だから希望に沿った殺し方、してやるよ」
 引き絞った弓から放たれる矢のようにヴィランは飛び掛かった。

「わたしは『戦神さま』を知りませんが」
 彼方の能力者が魔法剣で打ち払い、そして菫宮・奏莉が言葉と松葉杖でアシュラレディの前進を制する。
「あなたがここにいるということは、生きてほしいということだと思うのです」
「ハン!? 戦神サマがそれを望むかネエ!」
 松葉杖を打ち払い近づけばアシュラの眼前に刃一つ。
 刃の名は緋月絢爛、振るうのは摩那。

 Psychic mirage
 月 光 幻 影

 短距離テレポートから繰り出される剣にヴィランは剣を薙ぎ。そして切り裂いた空を満たす様に複数の刀を錬成する。
 飛び出す刃を彼方の能力者は転移することで避け、小さき勇者は傷つきながらも後退することで距離と時間が出来た。
 猟兵とオブリビオンを遮るのは血だまり一つ。
「もしわたしたちを倒せたとしても、あなたがそれに勝たなければ、同じことを繰り返すだけだと思うのです」
 そして技の代わりに飛ぶ言葉のナイフは奏莉の剣。
「わたしたちではなく、自分の衝動に勝ってほしいと思いますですし、そのお手伝いなら、喜んでさせていただきますのですが……どうでしょうか」
 それは提案。
 それは希望。
 光輝くそれは眩く、温かく。
「自分を受け入れて、衝動を克服して生きていくのがいいと思うのですよ」
「いや……だめだ」
 そして闇に生きる者には焼けるほどに熱すぎた。

 I'm a Ashuralady.
「アタシはアシュラレディだ」

「戦いを望み、幾多の者を斬ってきた」
 構える剣は輝かず、鈍く光る。
「この衝動はアタシ自身だ。だから――コレから目を逸らしたらアタシでなくなるのさ」
 六腕が舞い、六つの刀剣が踊る。
「嬢ちゃん達には悪いが、殺すよ。それがアタシのアタシたる、最大限の礼だ」
 剣呑な言葉の奥に、秘めた感情に名をつけるのは無粋。
 だから、オブリビオンはコンクリートの床を蹴って駆け出し――勇者が残した血だまりがアシュラレディの脚へと絡んだ。
「――!?」
 

 Restriction Zone
 禁 足 結 界

 血液を代償にした呪いのユーベルコード。
 それが戒めの原因にして。
「残念ですけど、戦うしかないですね!」
 敗北への道筋!
 横薙ぎに振るわれた松葉杖に側頭部を打ちぬかれ、ヴィランの身体が揺れる。
 そこへ――摩那が魔法剣を袈裟に振り下ろした。
 重たい一撃にアシュラの剣が折れ、衝撃がオブリビオンの骨を砕く。

 二度、三度とバウンドするアシュラレディ。
「フン……面白れえ。やっぱりこっちがアタシらしいか」
 笑っているはずなのに、泣いているように見えたのは気のせいだろうか?
 二人の猟兵が今、それを知る術はなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御桜・八重
「泣いて、いるの?」
涙はないけど。口調は静かだけど。
「自分が何者かわからないのは、辛いよね…」

でも、彼女は自問している。
もう、彼女は戦神アシュラの付属物じゃない。

残された者は、自分自身の足で歩き出すしかない。
アシュラレディを、泣いたままにしたくない。

「キャロル…ううん、ディテクティブ・ウイッチ。手伝ってくれる?」
ちょっと無茶ぶりを彼女にお願い。
サイドキックを卒業した彼女なら、わかってくれる。
「あの人を、足止めして」

ウイッチが作った隙をついて懐に飛び込み【強制改心刀】を発動。
戦神アシュラに縛りつける、彼女自身の呪縛を斬る。
「復讐の女神じゃなく、純粋な殺意としてあなたを倒す。
ここからが本番だよ!」


ミネルバ・レストー
悪いけど
他人に教えてもらわなきゃわかんないなら、その程度ってことよ
わたしはやさしくなんかないから、考えることさえしない
あんたに割くリソースがそもそももったいないわ

……なんていうのは、意地悪がすぎるかしら
刃物を振り回す時間を利用して【六花奏填・氷槍六連】を発動
動きが見破りやすくなった所を利用して「見切り」、槍を叩き込む
その激情だけを打ち砕く六花の槍よ、頭を冷やしなさいな

あなた、コロシアムとかある世界に行くといいのかもね
でなきゃダークヒーロー路線もアリかしら?
元が滅んでも生きてるってことは、あんたも独立した存在なんでしょ
中の人がいなくなったわたしだって、元気に生きてるんだから

なんていう、言いくるめ



●ウェイクアップ タイム

「泣いて、いるの?」

 I'm crying.
「泣いちゃいないさ」

 御桜・八重の問いをアシュラレディは表面上は否定した。
「自分が何者かわからないのは、辛いよね……」

  I'm a Ashuralady!
「アンタに何が分かるってんだ!?」
 オブリビオンが激高する。
 けれど、八重が下がることは無い。
 自分のように残された者は自分の足で歩くしかなく。
 それに――
「泣いたままにしたくない」
 決意の言葉と共に戦いを見守っていたトレンチコートのヒーローへと呼び掛ける。
「キャロル……ううん、ディテクティブ・ウイッチ。手伝ってくれる?」
「ええ、勿論」
 答えはすぐに返ってきた。桜の巫女の望みと自分の役割が分かっているから。
「あの人を、足止めして」
「分かったわ。でも、もう一人、一枚噛みたいって」
 ディテクティブ・ウィッチは頷き、そして傍らにいるもう一人の少女へと視線を向ける。
「ネリーちゃん……」
「今のアイツは沸騰したケトルのようなものよ、一度キンキンに冷やさないとね」
 ミネルバ・レストーが細身の杖で肩を叩きながらウィンク一つ、友人へと返した。

「悪いけど、他人に教えてもらわなきゃわかんないなら、その程度ってことよ」
 ミネルバ=ネリーが前に出る。
 付き従う様にウィッチが続き、チャンスを探す。
「わたしはやさしくなんかないから、考えることさえしない、あんたに割くリソースがそもそももったいないわ」
「そうかい」
 せき込み、剣を握った拳に朱を垂らしつつ、アシュラレディは答える。
「なら、アタシも最小限のリソースで殺してやるよ」
 刀一つ、六腕の内、一本の腕のみを動かし、ヴィランは機を狙う。
 それは効率よい戦果を得るため、振るう針のような太刀筋。
 言葉通り最小限の力で殺しにかかったのだ。
「……なんていうのは、意地悪がすぎるかしら」
「――!?」
 ネリーの言葉に気づくのは刃を解き放った直後。
 刀がこおりのむすめの喉元を切り裂く刹那を六本の氷の槍が制し、そしてオブリビオンを吹き飛ばした。

 Snow Reload・Icelance Six
 六花 奏填・氷槍――六連

 激情を射抜く、不殺のユーベルコード。
「今よ、ウィッチ!」
「悪いわね、ちょっと付き合ってくれる」
 ネリーの言葉に応えたキャロルが嵐を呼び、猟兵とアシュラレディを巻き込んだ。

「あなた、コロシアムとかある世界に行くといいのかもね」
「昔はそんな場所で仕事したもんさ」
 荒れ狂う暴風の中、ネリーとアシュラが言葉を交わす。
「でなきゃダークヒーロー路線もアリかしら?」
「それも悪くないねえ。罪業を背負って戦うシックスエッジ」
 軽口を離す余裕にアシュラを駆り立てる激情が消えたことを感じ取りこおりのむすめは提案する。
「元が滅んでも生きてるってことは、あんたも独立した存在なんでしょ。中の人がいなくなったわたしだって、元気に生きてるんだから」
「そうさ……独立したアタシ、だから」
 レディは剣を握る。
「アタシが生きてる意味を知りたい」
 殺戮への欲求――今、ある自分の感情に従い、アシュラレディは刃を振り下ろした。
 金属音が烈風の中に響き、そしてかき消された。

「当然か、邪魔が入るのはねえ」
 剣を受け止めた八重の姿を見てヴィランは呟いた。
 桜の巫女の歯に、膝に、力が入り、そして力は解放される。
 跳ね上げられたオブリビオンの剣は嵐の中に消え去り、流れるように陽刀・桜花爛漫が疾る!

 wake up time
 強制 改心刀

 八重が振るう心の刃が嵐を、アシュラレディの心に荒れ狂う戦神アシュラの呪縛を、斬る!
「復讐の女神じゃなく、純粋な殺意としてあなたを倒す」
 二刀を構えて猟兵が叫ぶ。
「ここからが本番だよ!」
「そうだな――ああ、そうだ!」
 ヴィランが笑った。
「踊ろうぜ――ガールスカウト達!」
 ガールスカウト――ヒーローを皮肉る言葉を選んだのはアシュラレディとしての礼と矜持。
 荒れ狂うヴィランの剣と猟兵の技がぶつかり、そして離れた。

「……『彼』が猟兵を信じるわけだわ」
 戦いの行く末を見守りながら、ディテクティブ・ウィッチは呟いた。
「うらやましいわね、ほんの少しだけ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グレイス・リリィ
はあ……全く
誰も彼もこじらせてるわね
あなたがココにいる意味なんて無いわよ
例えオブリビオンでなかったとしても……あのね
衝動のままに動けなくなった時点で
あなたはもう、あなたが望んだ自分じゃないのよ
それでもカウンセリングを受けたいなら、他を当りなさい
ただ……せめて、その存在を認める事くらい出来るわ
踊りましょ、レディ?

黄金のオーラを纏い飛翔
挑発し刃物を振り回させて
地形を利用しそれを防げる場所を探る
それが分かれば、後は魔晶の鋼で制圧射撃
追い込んで、振れなくなった所を捨て身で蹴り飛ばす

どう? 生きてる実感ある?
こっちもタダでは済まないでしょう
二の太刀をオーラ防御で武器受けし咄嗟の反撃
切り札の黒でブン殴るわ


木常野・都月
あなたも、生まれた事に意味を探してるのか。

少なくとも、俺から見れば、貴女は俺より人に近いと思う。
今在る事実の理由を考えてるんだから。

俺は妖狐か狐か、自分でも分からない。
だけど、今在る俺が全てだし、きっとこれからも……俺が何者かわかる日がきたとしても、きっと俺が俺なんだ。

真の姿で挑みたい。これが今在る俺の全てだから。

[野生の感、第六感]で敵の動きを[情報収集]しながら立ち回ろう。
相手は接近戦が得意なはず。
不用意に近寄らなければ問題ないはずだ。

UC【精霊の矢】を雷の精霊様で撃っていこう。
相手の武器は金属…だろうから。シビシビするはず。

必要に応じて[カウンター、高速詠唱、属性攻撃]で応戦しよう。



●ダンス ウィズ ワンズ オウン パーソン

 阿修羅の猛襲が終わり、ヴィランは一息つく。
「次はどいつだ? みんな斬ってやるぜ」
 その目からは険は消え、あるのは鋭い殺意。
 純粋なる殺戮衝動、それを我と任じ、そして生き方を探すストレンジャー。
「はあ……全く」
 グレイス・リリィがこめかみを指先で叩いて、深く息を吐いた。
「誰も彼もこじらせてるわね、あなたがココにいる意味なんて無いわよ」
 グレイスの言葉にアシュラレディは眉を動かす。
「例えオブリビオンでなかったとしても……あのね、衝動のままに動けなくなった時点であなたはもう、あなたが望んだ自分じゃないのよ」
「アタシはもうアタシではない……面白いな、じゃあアタシは誰なんだろうな? キリング・ジェーン・ドゥかい?」
「誰、それ?」
「アサシンズを抜け出した、ヒーローさ。三度殺し損ねた」
 キャッチボールが続く。
 まるでヒーローとヴィランのように。
「まあいいわ、ただ……せめて、その存在を認める事くらい出来るわ」
 いや、ヒーローとヴィランなのだ。
「踊りましょ、レディ?」
 片やヒーローより名を与えられし者。
「足を踏むなよ、刺してやるぜ」
 片や神より別れ、悪として振舞った者。
 ラジオから流れるナンバーはブルースからダンスミュージックへと変わる。

「あなたも、生まれた事に意味を探してるのか」
 上がりつつある殺意のテンション。
 その中を歩き、言葉を紡ぐのは木常野・都月。
「少なくとも、俺から見れば、貴女は俺より人に近いと思う。今在る事実の理由を考えてるんだから」
「そうだな、マン・フォックス」
 獣の言葉を肯定するアシュラ、狐男呼ばわりしたのはその獣性を認めているからであろう。
「俺は妖狐か狐か、自分でも分からない」
 鼓動が高鳴り、髪が伸びる。
「だけど、今在る俺が全てだし、きっとこれからも……俺が何者かわかる日がきたとしても、きっと俺が俺なんだ」

 ――真の姿。

 今出せる、都月の全て。
「分かってるじゃねえか」
 男の姿に女が笑った。
「自分が自分であるって知ってるなら、迷うことはねえさ。安心しな。何のために生まれたか分からねえアタシだが、フォックスハントと解体は手馴れてる」
 それは賛辞。
 戦闘狂たる自分に全力へぶつかろうとするものへの礼儀。

 Right Stuff
 正しい資質に対する、戦士の返礼。

 ――Thank you.
「ぶっ殺してやる」

 ダンスが始まった。

 まずはグレイスの身体が黄金に輝く。
 音速を超える飛翔、そした放たれる拳。
 アシュラが笑う。
 ダンスに合わせたかのように身を逸らせ、カウンターでレッドウィングの顎を蹴り抜こうと振り上げる。
 螺旋を描くようなバレルロールによってグレイスが回避し、空を切ったヴィランの足は勢いを殺さずに後転、振り向きざまに剣が飛ぶ。
「危ないわね」
「見慣れてるからな」
 剣呑なガールズトーク。
 猟兵は地下室を飛行し、ドクター・サイコの残した犯罪機械の残骸を縫うように移動しオブリビオンはそれを飛び越える。
「今度はこっちの番だな」
 アシュラレディの剣が舞う。
 六腕の剣舞は見抜かれやすいが、全てを断つ、旋風が如き鬼神剣。
 ……だが!
「チィ……ハメられたか!」
 ヴィランが毒づいた。
 瓦礫の如き犯罪機械に囲まれた狭いフィールドは旋風が如き舞を阻害する。
 そこへ――
「どう? 生きてる実感ある?」
 グレイスの連装対空砲が火を吹いた。

 圧倒的制圧射撃!

 しかし、それも布石の一つに過ぎない。
「今よ」
 レッドウィングの言葉に黒の狐が応えた。
「精霊様!」

 Elemental Arrow
 精 霊 の 矢

 500本の雷撃――サンダーボルトが矢という形をとり、暴力となってアシュラレディを襲う。
「しゃらくさい!」
 対するヴィランも六腕全ての刀剣を以って刃を撃ち落とす。
 感電? 知ったことか!
 この手が動くまで全てを斬り落とさん。
 だが、その気概すら凌駕するのが都月。
「これが今在る俺の全て!」
 自らの全ては獣の咆哮となりて、矢音を響かせアシュラを呑み込んだ。

 転がるのはオブリビオン、全ての刀剣を失い、錬成するには腕が動かない。
 そこへ迫る黄金の光。

 ――Super・Justice
 スーパー・ジャスティス

 赤き翼が舞い、捨て身の蹴りがアシュラレディの顎を打ちぬいた!

「カァッ……懐かしい味だ」
 口元から零れる血を舐めてオブリビオンは笑う。
「踊ろうぜ、ダンスは始まったばかりだ!」

 生き方を探すタップダンスはまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

羽堤・夏
生きる意味も生き残っちまった意味もあたしが知るもんか
でもまぁ、勝手な想像だけど…
あんたがここにいるのはきっと、あんたがもっと戦いたいからじゃないの?
なんにせよ
ひとまずあたしはぶん殴る!

あたしができる限り防ぐ
でかいの撃てるように準備してもらえるようウィッチ先輩に頼んでみます
…じゃないと、巻き込みそうなんで。

コード発動
太陽を身に纏い刃の嵐に突っ込む
超高温で剣を溶かす【カウンター】
あたしを狙わない剣は光球で撃ち溶かし溶けた鉄を殴り返し、突破すれば高温を拳に凝縮してぶん殴る
無理矢理にでも隙を作って…でっかい一撃頼みます!
…あたしが生きてるのは、誰かのいつもを守るためだと、あたしは勝手に決めてるよ


荒谷・つかさ
とんだ腑抜けになったものね、アシュラレディ。
貴女が今居る意味なんて、ある訳無いでしょう。
そんなもの、所詮は刻み込まれた軌跡を見た人々による後付けなのだから。
悩んでる暇があるなら、戦って刻み込みなさい。
それが本能的、衝動的なものであれ……貴女、「そうしたい」んでしょ?

大悪魔斬【暁】を抜き、霞の構えで【荒谷流剣術・真伝『零』】発動
「雷」の属性を宿し、雷撃と速度増加の効果を得る
例えどれほど得物が多くとも、我が剣は隙間さえあれば如何なる守りをも掻い潜り突き刺さる
雷撃を放ちつつ、心臓狙いの一突きで一気に決める

ごめんなさいね、ウィッチ。
『ラクシャーサー』として、『アシュラ』が腑抜けてるのは許せなかったの。



●ジ エンド オブ ザ バトル

 久々の鉄の味。
 生きている理由を殺戮と戦いが全てと言うなら嘘となるが、今はその向こう側を見てみたい。
 その為なら幾万の死と戦いの道、修羅道だって歩むさ。
 アタシはアシュラレディなのだから。

「吹っ切れた?」
「ああ」
 荒谷・つかさの言葉にレディは是と答えた。
「最初はとんだ腑抜けになったものと思ったけれど……心配いらないわね」
「そうだな、けれど一応聞いておこうか――アタシはなんでココにいるんだい?」
 杞憂におわったのかつかさの表情には柔らかさとその奥底に秘める鋼鉄の何かが見えた。
 だからこそ、アシュラは問うのだ。
 自らが立つ理由を。
「貴女が今居る意味なんて、ある訳無いでしょう」
 羅刹の女――ラクサーシャーは真理の一つを述べた。
「そんなもの、所詮は刻み込まれた軌跡を見た人々による後付けなのだから」
「そういえば忘れてたな」
 何かを思い出し、アシュラレディは笑った。
「アタシはオブリビオン、過去の記憶、ニュースペーパーのインクの重さ……ああ、くそくらえ」
 毒づく言葉は何か楽しそう。
「悩んでる暇があるなら、戦って刻み込みなさい」
 つかさが刀を抜く。
「それが本能的、衝動的なものであれ……貴女、『そうしたい』んでしょ?」
「そうだ! 生きる意味も生き残っちまった意味もあたしが知るもんか」
 羽堤・夏が言葉を継ぐ。
「でもまぁ、勝手な想像だけど……あんたがここにいるのはきっと、あんたがもっと戦いたいからじゃないの?」
「アタシだってオンオフは区別つけてるぜ、仕事で斬って、プライベートで殺す」
「説得力無いじゃん!」
 アシュラの軽口に夏が困ったように声を上げた。
「なんにせよ、ひとまずあたしはぶん殴る!」
「じゃあアタシは」
 防人の言葉に応えるように。
「オマエ達を殺してあげる」
 ヴィランは心のままに殺意を告げ、剣を錬成した。

「あたしができる限り防ぐよ!」
 二十八の刃に向かって駆け出すのは夏。
「ウィッチさんはでかいやつを、つかささんはその後を頼む!」
 二人に後を託し、防人は――太陽となる。

 Heat――On!!
 バーニングメルト

「フードプロセッサーの肉になりな!」
 ヴィランが叫び、刃が襲う。
「でぇえい!!」
 その剣へと拳を合わせれば、夏が纏った超高温フィールドによって剣は溶け、消えてゆく。
「……なっ!?」
 驚愕、その一瞬が隙となった。
 命を削るそのフィールドは周囲の空気すら歪め超高速移動を可能にする。
 間合いが……詰められた!
「チィーッ!!」
 舌打ちと共に修羅の太刀が振り下ろされる。
 だが、刃は空を切り、防人はその懐へと飛び込み、アシュラレディを拘束する。
「今ぁ!!」
「――まかせて!」
 叫びに応えてディテクティブ・ウィッチがジュツを放つ。
「SomosunーZapper!」
 撃ち込まれたブラストはアシュラの身を焼かず、その魂を揺らす。
「……あたしが生きてるのは、誰かのいつもを守るためだと、あたしは勝手に決めてるよ」
 精神波に揺れるオブリビオンに夏が告げ、そして離れる。
 アシュラレディが揺れる海から抜け出し魂が覚醒する。
 だが、遅い――雷霆の如き刃はもう迫っていた。

「ごめんなさいね、ウィッチ」
 霞を思わせる構えから放たれるのは荒谷流剣術・真伝。

 Infinity
 『零』

「『ラクシャーサー』として、『アシュラ』が腑抜けてるのは許せなかったの」
「ああ、そりゃ……手間ぁ、かけさせたね」
 だが、つかさの言葉に応えたのは正面に居る阿修羅だった。

「致命傷ね」
「致命傷だな」
 ラクサーシャーの言葉にアシュラレディが頷く。
 刀は胸元を貫き、肺腑を壊し、質量を繋ぎとめる過去を穿つ。
「腑抜けたバチだ、仕方ねえ」
 ヴィランが羅刹の女を突き飛ばし、刺さった刀を引き抜く。
 おびただしい紅が床を染めた。

「……これで終わり?」
「いいや、終わらねえ」
 つかさが問えば、レディは笑う。
「アタシはアシュラレディだ。オブリビオンとしてここに居て、ヴィランとして終わる」
 ようやく道筋を見つけた女が歩き出す。
 ウィッチは何も語らず、それを見守り。
「最後まで……決めろよ、アシュラ」
 夏は声をかけた。
 その言葉にヴィランは顔を向け、肩を竦めた。

「オブリビオンにかける言葉としちゃ可笑しくないかねえ……まあ、感謝しとくよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私含め多くを悩ませる問いです

ゼンでは確か…
(世界知識解凍前に魔女に)そう、不立文字

ですが助言はいたします
迷子を見たら己も迷っていても声を掛ける
御伽の騎士とはそういうものですので

そもそも
その六刃でなく精神干渉を選んだ貴女は
かの女神の衝動より己が存在への探求が勝っているのでしょう

御伽の国で出会ったトレンチコートが似合う御仁の受け売りですが

自分が何者かを知るための旅を

誰もが続けているそうです

騎士道を問い続ける旅人の頼りない言葉ですが
その『迷い』…『模索』こそが貴女が貴女を生きている証

例え同じ結論に達したとしても
戦しか知らぬ女神より
貴女は美しいと、私が保障いたしますよ

旋風…生きた証を真正面から迎え打ち


ミハエラ・ジェシンスカ
随分と可愛らしい事を言うじゃないか、レディ
私も貴様もただ戦う為だけの存在だろう
意味なぞ求めるのは私達の役割ではあるまい

と言っていられれば楽だったんだがな
帝国が滅び、戦神が滅び
私達のようなモノが自ら戦う意味を問わねばならんとは
なんとも酷な話だとは思わないか

敵の攻撃を【見切り】
展開した隠し腕による【騙し討ち】
これで斬られる程度ならそれまで
だが、いつぞや見せたこの邪剣
覚えていたのなら見事と言おう

悪心回路(アイテム)起動
【リミッター解除】【過剰供給】
真っ向から斬り伏せてやる

戦いとは独りでするものではあるまい
己が大敵(アークエネミー)が存在する限り戦いは続く
ヒーローとヴィランとはそういうものだろう?



●Sidekick Blues

「待たせたね」
 女が言った。
「構いません、騎士はレディを待つものですから」
 騎士が答えた。
「終わりはアンタかい?」
「残念ですが違います。私は貴女の道を照らす役回りです」
 アシュラレディの問いへトリテレイア・ゼロナインは否と告げた。

「貴女の問いは私含め多くを悩ませるものです。ゼンでは確か…そう、不立文字」
 トリテレイアは言葉に囚われてはいけないと暗に告げる。
「その結果が、このザマだ」
 ヴィランが苦笑する。
「ですが助言はいたします。迷子を見たら己も迷っていても声を掛ける、御伽の騎士とはそういうものですので」
「フン……Right Stuffってやつか」
 騎士の言葉に正しさを見抜いた修羅は言葉を促した。
「そもそも、その六刃でなく精神干渉を選んだ貴女はかの女神の衝動より己が存在への探求が勝っているのでしょう」
 戦機の言葉は牧師の講話を思わせ。
「御伽の国で出会ったトレンチコートが似合う御仁の受け売りですが、自分が何者かを知るための旅を誰もが続けているそうです」
「あの男はどこにでも顔を出すな」
 トレンチコートという単語にアシュラレディの顔が歪む。
「騎士道を問い続ける旅人の頼りない言葉ですが、その『迷い』……『模索』こそが貴女が貴女を生きている証」
 トリテレイアが剣を抜き、盾を構える。
「例え同じ結論に達したとしても、戦しか知らぬ女神より、貴女は美しいと、私が保障いたしますよ」
「アタシはね」
 アシュラも六腕に刀剣を持ち、舞う様に剣を振るう。
「イイオトコは殺さないと気が済まないんだ」
「困りますね」
 騎士は答え。
「ああ、困るねえ」
 女は答えた。
 もう、二人とも踏み込んでいた。

 Oath of Machine――Knights.
 機械人形は守護騎士たらんと希う

 正眼より振り下ろされた戦機の剣はオブリビオンの左腕全てを斬り落とした。

「よお」
 片腕を失い、歩く修羅にもう一人の戦機が声をかけた。
「よぉ」
 ミハエラ・ジェシンスカを真似るようにアシュラレディが口を開く。
「随分と可愛らしい事を言ったじゃないか、レディ」
「そりゃあ、レディだからねえ」
 戦機が皮肉れば修羅が軽口を叩く。
「私も貴様もただ戦う為だけの存在だろう、意味なぞ求めるのは私達の役割ではあるまい」
 ミハエラが告げ、そして肩を竦めた。
「……と言っていられれば楽だったんだがな」
 そして背を向け、舞台役者のように歩きながら邪剣の騎士が語る。
「帝国が滅び、戦神が滅び。私達のようなモノが自ら戦う意味を問わねばならんとはなんとも酷な話だとは思わないか?」
「ああ、おかげでアタシはもう虫の息だ」
「それにしては良く喋る」
 戦機の再びの皮肉に修羅が笑みを返す。
「始めようぜ、もう死にそうだ」
 待ちきれないとばかりに三腕のオブリビオンが刀剣を捨て、刀一振りを構えると――刃が消え、空気が震える音が響いた。
「――!?」
「昔の男の技だ、光よりも速い」

 先に動いたのはアシュラレディ。
 ミハエラは見えない刃をその身のこなしと経験から予測し、フォールンセイバーで受け止める。
 直後、戦機の肩部装甲が展開すれば、邪剣が一振り、レディの喉を突かんと襲い掛かる。
 それを受け止めるようにヴィランの刀が動き、そして刃が触れる前に猟兵の隠し腕が飛んだ。
「二度も同じ目に遭いやしねえさ――どうよ、借りもんのタキオン一刀流は」
「いつぞや見せたこの邪剣」
 ミハエラが笑った。
「覚えていたのなら見事と言おう」
 嘲笑ではなく、戦の妙技に。
「ならば、私も見せなくてはならんな」
 戦機が悪心回路を起動させ、リミッターを外す。
「残された者の行く先を」
 邪剣は消え、騎士は影となった。

 Overdose
 過剰供給

 超光速に立ち向かうは、六腕を上回る六倍の戦技。
 二人の間で世界が止まる。

「戦いとは独りでするものではあるまい」

 その中でアシュラの刀をフォールンセイバーが一振り、見える刃より先に疾る見えざる本身を打ち落とす。

  Archenemy
「己が大敵が存在する限り戦いは続く」

 超光速の一刀は視覚を上回る、光明を切り裂く剣。
 戦機ゆえに、それを見抜き。
 戦機ゆえに、人外の理で破る。

「ヒーローとヴィランとはそういうものだろう?」

 もう一振りの赤黒い理力剣が振り抜かれ、アシュラレディの胴が寸断された。
 ダンスミュージックが終わった。

「なあ……煙草、くれねえか?」
 上半身だけのオブリビオンの言葉にトリテレイアは長煙管を拾い、ディテクティブ・ウィッチが火をつける。
「ああ……悪くねえ」
 煙を吐き、アシュラレディが呟く。
「そんな感傷的なこと言うな」
 その姿を見下ろし、ミハエラが嗤う。
「どうせ、また出てくるんだろう」
「……ああ」
 その言葉にヴィランが意地悪そうに答えた。
「アタシはアシュラレディだ」
 ラジオから流れるのは再びブルース。
「またお前達を殺しにいくぜ」
 今度は残された者の歌ではない。

 Sidekick Blues
 戦う者達の歌

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月12日


挿絵イラスト