羅針盤戦争〜Sweet Sweet Destroy
●不死という名の病
増える。殖える。何時までも――望まざるにも関わらず。
ほの暗さを湛える海は、突如として茶色の液体――チョコレートへと化す。
広大なチョコレートの海から、とぷり、とぷりと豪奢な姫君が現れ出る。
それは瞬く間に甘く香り立つような海面を埋め尽くしていく。
『『増殖する私の残滓達』よ、カルロスを助けなさい。竜王たる私を娶い姫君とした、あの男を、死なせる訳にはいきません』
声が響く。おんなじ姿をした『姫君』たちは、際限なく増えていく。
此れは、あくまでも利害関係。想いなどとは程遠い。
だから、命を賭しても何ら問題は、ない。
増えよ。殖えよ。何処までも――たとえその身が脆くとも、宿した力でもって、行く手を阻む者どもを蹴散らしてしまえ!
●砂糖菓子の姫君たち
「死ぬのが怖いのは当たり前だけど、死にたくても死ねない方がもっと怖いわよね」
六花のグリモアをふよふよさせながら、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は戦火のただ中にあるグリードオーシャンのとある海域をビジョンに映し出す。
そこには、本来あるべき海水が、まるっと全部チョコレートに変貌したという信じがたい光景が広がっていた。
「ウソみたいでしょ? でもコレ本当なのよ。いきなり海がチョコレートになって、そこから何百……ううん、何千と出てくるの」
――七大海嘯『桜花』メロディア・グリードと同等の力を持つ、分身が。
その名を『増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)』。肉体こそチョコレートやキャンディでできてるから耐久力こそ低いけれど、とミネルバは淡々と説明をする。
「攻撃力はね、分身一体一体全部が全部、七大海嘯本体と同格なの」
数にモノを言わせて、こっちを圧倒してくるつもりなの。でも、黙ってやられるわたしたちじゃないわよね? と、ミネルバはようやく不敵な笑みを見せた。
「攻撃で殲滅される前に、全滅させればいいのよ――できるわよね?」
可能な限り多くの分身体を倒して、倒して、倒し尽くす。やられる前にやれ、である。
そういうの好きなひと、多いでしょ? なんてくすくす笑いながら、問題の海域に迫る鉄甲船へと続くゲートを開くミネルバ。
「そういうゲーム、あるわよね。気持ちよく戦ってきて頂戴」
油断だけはしないでね、そう言ってミネルバは手を振り猟兵たちを見送った。
かやぬま
うおおおおお! 『桜花』発見でございますか!
と聞きつけましてこっそり参上、かやぬまです。
今回も少数採用で恐れ入りますが、よろしくお願い致します。
●プレイングボーナス
『一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す』
●戦場
チョコレートと化した海域ギリギリまで、鉄甲船が皆様をお運びします。
敵である『増殖する私の残滓達』は、チョコレートの海が広がっている範囲から際限なく湧いてきますので、それらよりも先手を取って無s……失礼、たくさんの個体を蹴散らす工夫をして頂ければと思います。
オープニングで予知をお伝えしました通り、敵の特徴は『強いが脆い』という点に尽きますので、技能やユーベルコードを駆使して最善を尽くして下さいませ。
●プレイング受付期間
恐れ入りますが、公開即受付ではございません。
受付期間はタグでお知らせしますので、都度ご確認の上お越し下されば幸いです。
(幕間は投稿しません、期日中の受付とさせて頂きます)
●ご注意
再送なし、書ける範囲での採用&早期完結で承らせて下さいませ。
プレイングに問題がなくとも、泣く泣く流してしまう可能性も有り得ます。
なるべく頑張りますが、力及ばずの際は何卒ご容赦下さい……!
それと、できればMSページの記載事項にもお目通し願えれば幸いです。
ではでは、甘い甘い戦場にてお目にかかりましょう!
第1章 集団戦
『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』
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POW : スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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鵜飼・章
◎
ひとを好きになるってどんな気持ち?
きみカルロスさんの事が好きなんでしょう
【読心術】なんか使わなくてもわかるよ
素敵だね
僕はそこまで何かに一生懸命になれないや
毒入りキャンディは味見もしたいし
一ついただいておこうかな
【毒耐性】があるからある程度は耐えられると思う
大量摂取を避けるためにゆっくり味わいながら
UC【裏・三千世界】で攻撃
鴉達には極力味方を狙わないように言い聞かせておく
あの女の人の方が多分おいしいよ
お砂糖とスパイスで出来ているんだって
僕自身は何だかんだで読心術を用いつつ
【早業/逃げ足】で攻撃を避ける事に集中する
元が同一個体なら動き方も似ているだろう
…はあ
皆きみぐらい分かりやすければいいのにな
●愛あればこそ、この海がある
あらかじめ聞かされていたとはいえ、実際「チョコレートと化した海」というものを目の当たりにすると、誰だって多少なりとも気圧されるものではなかろうか。
チョコレートへと変じた海域ギリギリにまで迫り錨を降ろした鉄甲船の舳先に立って、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)はまるで己を待ち受けていたかのように湧き出てくる女たちの姿を、薄く笑って眺めた。
「ひとを好きになるって、どんな気持ち?」
何と。これから刃を交えようという間柄で、この台詞。
これには「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」も一斉に瞠目した。
『まあ、突然何を』
『私に、そのようなことを問うなど』
残滓たちの声が、さざめくように響く。けれど章は、意に介さず言葉を続けた。
「きみカルロスさんの事が好きなんでしょう、読心術なんか使わなくてもわかるよ」
『――ッ!!』
『いいえ、いいえ。此れはあくまでも利害の一致で』
別にあの男のためを想ってなど、という声まで飛んでくるものだから、ますます章は確信する。何なら「ツンデレかな?」とまで思ってしまう。
実際、その気になれば卓越した読心術で残滓たちにまで染み渡る『想い』を見通すことだってできただろう。
けれど、章は敢えてそれをしなかった――するまでもなかったから。
その感情を『理解』はしていたけれど、『実感』には未だ至らぬから、問うた。
「素敵だね」
率直な感想を口にする章。誰かのためにこうして戦場に身を晒す覚悟をした、その事実だけでも十分に――美しいものとは言えまいか。
「僕は」
まるで照れ隠しのように投げつけられた飴玉を、視線一つ送ることなくキャッチ。
そのまま、それは毒入りだとあらかじめ聞かされていながら、躊躇なく口の中へ。
「そこまで何かに一生懸命になれないや」
ころり、ころころ。
口の中で溶け出すキャンディは甘く、しかし確実に舌を痺れさせていく。
折角この身には毒に対する耐性があるのだから、味見だってしたいお年頃。
大量摂取を避けるために、ひとつをゆっくりと味わいながら残滓たちを見る。
『嘘……確かに、毒を入れたのに』
『平然としているわ……どうなっているの!?』
ざわめく残滓たちは、まったく同じ顔を見合わせてうろたえている。
それを好機とみた章は、バッと豪奢なコートを翻して愛読書でもある図鑑「自然数の集合」を手にし、迷わずお目当てのページを開いた。
「さあ、美しい朝が来る――【裏・三千世界(サンゼンセカイリバース)】」
それは、黄昏か黎明か。術者が言うのだから後者であろうが――とにもかくにも、美しかった。
かの有名な都々逸では殺される存在であった鴉が、図鑑の写真から具現化するように次々と生まれ出ずる。
心を持たず、ただ凶暴な人喰い鴉たるそれは群れをなし、どこからついばんでくれようかと上空を旋回する。
「こっちより、あの女の人の方が多分おいしいよ」
ころころと、口内で毒入りキャンディを転がしながら章が平然と告げる。
「お砂糖とスパイスで出来ているんだって」
『……!!』
『な、なんて人! 私達は食べ物ではなくてよ!?』
人喰い鴉たちの凝視を受けて、思わず震え上がる残滓たち。
己を待ち受ける未来など、考えるまでもなく恐ろしいから。
「人、か」
――きみには、そう見えるのかい?
問いの代わりにひとつ笑んで、がりと奥歯でキャンディを噛み砕く章。
もう十分味わったから――二個目は要らないよ。そう言わんばかりに章は反撃のキャンディを驚くべき逃げ足でひょいひょい避けていく。
(「元が同一個体だから、動き方も似ていて助かるよ」)
だいたい、読めた。あとは避けるだけの、簡単なお仕事。
攻撃は全て容赦のない鴉たちのくちばしに任せればいい。
「……はあ」
突っつかれ、ついばまれ、次々とその形を崩していく残滓たちを見て、章は呟く。
「皆、きみぐらい分かりやすければいいのにな」
人というのはとかく面倒で、だからこそ分かりやすいのは好ましい。
砂糖菓子が甘いものと約束されているくらいに、分かりやすいのが。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
◎
チョコレート…美味しそうな匂い…
そういえば、去年の今頃、チョコレートの祭りがあったような。
確か…バレン…なんとか。
楽しい祭りを楽しむためにも、しっかりコンキスタドールは倒さないと。
[野生の勘、第六感]で敵がいる辺り一帯にUC【狐火】でどんどん燃やしていこう。
ついでに風の精霊様の[属性攻撃、範囲攻撃]で、追撃も。
少しでも多く敵を倒せば、こちらの被害は少なくなるだろうから。
敵の攻撃が来た場合は、[高速詠唱、カウンター]でチョコレートを溶かしてしまおう。
運よく手に入ったチョコレートはパクリ。
今年も美味しいチョコレート食べたいな。
早く任務を終えてチョコレートの祭りを楽しまなきゃ!
三上・チモシー
◎
わあっ、本当に海がチョコレートだ!
すごーい、甘くていい匂い!
これって、食べても大丈夫なのかな……
小腹すいたなぁ
ライ麦ちゃんもチョコ食べたいよねー?
巨大熱帯魚のライ麦ちゃん(ナマズ)に乗って、敵がよく見える位置まで空中を移動
【熱湯注意】で届く範囲全部の敵を熱湯と、熱湯を放った際に発生した衝撃波で攻撃!
敵が接近してきたなら、ライ麦ちゃんの高速泳法で距離をとり、熱湯攻撃
お菓子の敵はみんな溶けちゃえー!
……チョコはお持ち帰りできるかなぁ
●誰が冷暗所保管して大切にすると言った?
海がまぎれもなくチョコレートと化したということは。
外見だけではなく、味や匂いだってそれに相応しいものに変わったのではないか?
誰だってそう思うし、実際木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)や三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)はくんくんと鼻を鳴らしていた。
「わあっ、本当に海がチョコレートだ!」
「チョコレート……美味しそうな匂い……」
「すごーい、甘くていい匂い!」
そう、漂ってくる甘い香りは誤魔化しようがない。二人は思わず船の先頭から揃って身を乗り出す。
都月はふと、この『匂い』に記憶を刺激される。
(「そういえば、去年の今頃、チョコレートの祭りがあったような」)
何と言ったろうか? 確か、バレン……なんとか。ちょっと、そこら辺が曖昧だった。
ともあれ、人の世では毎年この時期に祭りがあることは間違いない。
(「楽しい祭りを楽しむためにも、しっかりコンキスタドールは倒さないと」)
首をひと振り、都月は気を引き締めてチョコレートの海を見据えた。
一方のチモシーは、手を伸ばせば届いてしまうのではないかという距離まであるチョコレートの海を瞳に映して、こう呟いた。
「これって、食べても大丈夫なのかな……」
小腹、すいたなぁ。
まだ、戦ってないけど。
チモシーはいつの間にか隣に控えたレッドテールキャット、その名も「ライ麦ちゃん」に向かってさも当然の如く話し掛けた。
「ライ麦ちゃんも、チョコ食べたいよねー?」
ぴちぴち。ライ麦ちゃんが身をよじるのは多分きっと同意のモーション。
「うん! じゃあ、食べに……じゃなかった、やっつけに行こう!」
そんなチモシーの声を合図にして、ライ麦ちゃんが甲板の上でみるみる大きくなる!
巨大熱帯魚と化したピンクのライ麦ちゃんに華麗に飛び乗ると、チモシーはチョコレートの海の上へと飛び出していった。
突如海上へと進み出たチモシーと巨大熱帯魚の姿に、都月は思わず仰天した。
「え!? ええ!? 大丈夫なのか……!? いや、援護するんだっ」
ただ見送ることしかできない訳ではない、己には出来ることが山ほどある。
そう気を取り直した都月は、すぐに湧き出てきた残滓たち目掛けて両手を突き出した。
「全部、燃えてしまえ――【狐火】!!」
『きゃあー!』
『何て乱暴な殿方なの、私達に火気は厳禁でしてよ!?』
悲鳴を上げながら、残滓たちが湧き出る先から次々と熱で溶かされ海へと還っていく。
恐ろしいまでに研ぎ澄まされた都月の勘が、もはや未来予知の域で残滓たちの発生場所を事前に察知し、攻撃をされる前に狐火で屠っていくのだ。すごい。
「くっ、数が多い……風の精霊様!」
炎は、適度な風を受けるとその勢いを増す。
その要領で、風を受けた狐火はさらに燃え広がり、広範囲の残滓たちを巻き込んだ。
少しでも多くの敵を倒せば、こちらの被害は少なくなるだろうとの都月の目論見通り。
『嗚呼、溶けてしまいますわ……』
『私が壁になります、その隙に!』
おおっと、ここに来て残滓たちが連携プレイを見せようとしている!
都月の狐火が届く前に、どろりとした「融解体」に変化した個体が前に出る。はじめから溶けているからか、狐火の効きが今ひとつに思えた、その時だった。
「わ、わ、わ!」
融解体を壁にした別の残滓が、見目麗しき薔薇の花弁のチョコレート片を飛ばしてきた。
慌てて狐火を操り次々と溶かす中、口を開けば食べられそうな欠片が――。
(「待てよ、これって確か、毒入りって話じゃ」)
あーんと口を開けてパクリと食べようとした都月は、すんでの所で思いとどまる。
毒耐性の技能がよほど高くなければ、ちょっとヤバい案件でしたね!
都月との攻防を繰り広げる残滓たちが生まれてくるチョコレートの海の上空を、ライ麦ちゃんに乗ってふわふわ移動するチモシー。
だいたいの敵を一望できる場所に陣取って、取り出したるは――南部鉄瓶。
注ぎ口からはすでに湯気が出ていて、中身は明らかに熱湯だと分かるのに、何とチモシーはそれを素手で持っている。ヤドリガミの無限の可能性を感じる……!
「そーれ、熱湯ざばー!!」
『きゃあーーーー!!?』
『ち、血も涙もない攻撃ですわー!?』
天高くから、まるでカップ焼きそばにまんべんなくお湯を注ぐかのような念の入りようで、チモシーはライ麦ちゃんを巧みに操ってぐるんぐるんと熱湯を注いで回る――!
『あっあっ、お湯がはねて私にまで……!』
『聞いたことがあります……此れは、凶悪なる自機中心型マップ兵器!』
「えっ、そんな大げさなユーベルコードだったのこれ」
阿鼻叫喚の有様に陥った残滓たちの様子に、熱湯を注ぐ手を止めることなく、しかし怪訝そうにチモシーが呟く。
それでもこれだけ山ほど数が居るのだから、一体くらいはガッツを見せてチモシーへと一矢報いようと手を伸ばしてくるものだってある。
「おっと、ライ麦ちゃん!」
巨大なボディをくねらせて、ライ麦ちゃんの高速泳法が唸る。
間合いを取って敵の思惑から逃れたところで、さらに熱湯の追撃をぶちかます。
「お菓子の敵は、みんな溶けちゃえー!!」
『いけません、いけません!』
『何なら私の本体にかけてあげて下さい、無限増殖が止まるかも知れません!』
「……本体を売り飛ばす発言をしてるぞ……?」
狐火を操りながら自らも残滓たちの対処をしていた都月が、思わずツッコミを入れた。
「……チョコは、お持ち帰りできるかなぁ」
「攻撃で飛んで来るのには毒が入ってるから……海をすくうしかなさそうだ」
チモシーがライ麦ちゃんを撫でながら問えば、都月がううむと唸る。
でも、今年も美味しいチョコレートを食べたいのは事実。
「早く任務を終えて、チョコレートの祭りを楽しもう!」
そう、この依頼をさっさと片付ければ、まっとうなチョコレートが待っているのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エル・クーゴー
◎
●SPD
躯体番号L-95
当機は面制圧火力の展開に高い適性を発揮します
・『ロングレンジ・ファイアワークス・ドライブ』発動
・展開武装は『L95式ブラスター』を選択し【リミッター解除】
・「射程距離9,216mの熱線」をビーッと射出(レーザー射撃+焼却)
・その一本のレーザーを――射出したまま「銃口を横に振る」!
・ここに半径9,216mを薙ぎ払うエル・クーゴー過去史上最大面制圧火力を展開し【蹂躙】する!
・ブラスターに掛かる負荷は強化改修【武器改造+メカニック】による【継戦能力】で欺瞞
・より効率的に敵群を薙げる射線を【瞬間思考力】で見出す
・あとうちのドローンの『マネギ』が毒入りキャンディをもぐもぐ食べる
ヘスティア・イクテュス
◎
あっちを見てもチョコ、こっちを見てもチョコ…
流石に季節とはいえ多すぎじゃない?これ倒す前に回収すれば普通に残るかしら?
回避タイプとして速度低下はキツイんだけど…
プチヘス達を召喚しティターニアで『空中戦』(飛べないなら数cm浮いた感じで!)
全員背中合わせになり回転、そしてミスティルテインやブラスター銃によるビームの雨あられ!【集団戦術・弾幕・乱れ打ち】
耐久があれならまぁ、集団で範囲で撃てば近づかれる前に撃ち抜けるわね
わたしを相手にするならもうちょっと硬い身体で来るべきだったわね!宝石とか金銀とか!!
●量で攻めるか、質で攻めるか
「あっちを見てもチョコ、こっちを見てもチョコ……」
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、どこまでも広がるチョコレートの海に思わずため息を吐く。
「流石に、季節とはいえ多すぎじゃない?」
そう、何事にも限度というものがある。むせ返るような甘い匂いに気圧されそうになりながら、それでもヘスティアはこう思った。
(「これ、倒す前に回収すれば普通に残るかしら?」)
何だ何だ、商売でもしようというのか。コンキスタドールから生まれたものですから、多分ろくなもんじゃないですよ!
舳先で茶色の海面を眺めていたヘスティアのやや後ろで、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は自身を含めた兵装各種の最終点検に余念がない。
「躯体番号L-95、当機は面制圧火力の展開に高い適性を発揮します」
顔の上半分近くを覆うバイザーが時折明滅するけれど、基本的に自我が希薄なド無表情でこのようなシステムメッセージめいた言葉を発するエルは至って平常運転。
同席しているヘスティアはヘスティアで、生まれや育ちの兼ね合いでエルのようなタイプにも慣れたものなのか、平然と振り返ってエルに手を振りながら問うた。
「そっち、もう少し準備かかるかしら? 一足お先に攻め込んじゃうけど」
「当機の出撃準備完了まで、推定五分前後を要します」
エルが答えながら、わずかに頷く。先に行け――そういうことだ。
ならばとヘスティアはたんっと船首を蹴って宙に身を躍らせ、次の瞬間ジェットパック「ティターニア」を起動。推力で絶妙に飛行と取られない程度の浮遊をしてみせた。
「いらっしゃい、【プチヘス部隊】! ……うーん、やっぱりすごい複雑だわ……」
呼び声と共にヘスティアの周りをいっせいに取り囲むのは、お腹に「1」の刻印がなされた二頭身デフォルメロボ。元になったのはもちろん、ヘスティア自身。
左右に五十体ずつ、計百体にも及ぶプチヘス部隊は、背にミニプラズマジェットを背負い、ブラスター銃を手に構えていた。
(「回避タイプとして、速度低下はキツいんだけど……」)
毒入りキャンディを楽しめと言われて、はいそうですか分かりましたと言えるものはそうそう居ない。
敵の思惑に乗るしかないのか――そう歯ぎしりをした時、ヘスティアの脳裏をある閃きがよぎっていった。
「プチヘス、ゴー!!」
「エッッ、アッッ」
手近なプチヘスを一体むんずと掴み、飛来するキャンディ目掛けてぶん投げた!
――もごっ。
ああ、なんということでしょう。咄嗟に口をあんぐり開けてしまったプチヘスのお口に、毒入りキャンディがジャストイン。
「ふ、ふふ……食べたわよ? 楽しませてもらってるわよ? これでいいわよね?」
『……今、無理矢理食べさせましたね?』
『何という鬼畜の所業なのでしょう……』
(「……、……!」)
悪魔に魂を売った人がする表情で、ヘスティアがシュッシュと素早く左右に動きながら残滓たちに言ってのける。
それに至極まっとうな反応で返す残滓たちと、ぶくぶく泡を吹くプチヘス。
残り九十九体のプチヘスは二人組を作って抱き合い震え上がっていた。奇数なので一体あぶれるのだが、その子は果敢にもブラスター銃で油断している残滓たちのうち一体を撃ち抜いた。
(「アナタノギセイ、ムダニハシナイ」)
そんなプチヘスに続かんと、ペアになったプチヘスは背中合わせになる。
チョコレートの海域をまんべんなく狙えるように浮遊しながら各自展開、ヘスティア本体共々位置につくと――ミスティルティンとブラスター銃による回転乱射の始まりだ!
『ああっ、近代兵器を持ち出すなんて!』
「耐久があれならまぁ、集団で範囲で撃てば近づかれる前に撃ち抜けるでしょ」
次々と砕けてチョコレートの海へと帰っていく残滓たちに、優雅に輪舞曲を踊るようにミスティルティンをぶっ放すヘスティアが言い放つ。
「わたしを相手にするなら、もうちょっと硬い身体で来るべきだったわね!」
具体的に言えば、宝石とか金銀とか、後に残って嬉しいものであれと。
「警告、戦闘空域からの即時撤収を進言します」
その時、確かにヘスティアはエルから己へと向けられた声を聞いた。
「……っ!」
理由を問うている暇も惜しいと、プチヘス共々すぐさま鉄甲船へと引き返す。
タンッと甲板に着地したヘスティアが見たものは、エル専用の携行型固定砲台「L95式アームドフォート」に据え付けられた「L95式ブラスター」の姿だった。
己が物量で仕掛けた熱線攻撃を、単騎で成そうというのか?
チョコレートの海からは、再び姫君の残滓が湧いて出て来ている。
エルは一切動じることなく、ブラスターの照準を覗き込んだ。
「狙撃モードに移行、リミッターを解除」
あくまでもシステマチックに進む工程には、一切の計算ミスが入り込む余地もない。
周辺の地形や環境の情報は、既に電脳魔術で解析済み。目視確認のみに頼らない、万全のデータ収集だ。
――【ロングレンジ・ファイアワークス・ドライブ】、発射。
聞いて驚け、ただのブラスターと侮るなかれ。超常の力において射出されたレーザーは、射程距離なんと「9,216m」!
それがビーーーーーーーーッと、まるでチョコレートの海を割るように走り抜け、ジュワッと射線上に存在していた残滓たちを一片も残らず消し去ってしまった。
(「負荷、甚大ながら計算の範疇。事前に施した強化改修にて、継戦可能と判断します」)
機械に根性論は基本的には通用しない。なればこその、適切な対応である。
たとえ欺瞞であろうとも――この一時さえ保ってくれればそれでいいのだ。
エルはブラスターが明らかに熱を持っているのを感知しながら、なお射出を止めない。
(「……」)
より効率的に敵群を薙げる射線を、瞬時に見出した。
――一度左に振って、思いきり右へ!
『……ッ!!』
『……、……』
それは、あまりにも一方的で圧倒的な『蹂躙』であったから。
残滓たちは誰一人として断末魔さえ上げることを許されずに。
考えてみて欲しい、半径9,216mをただ一人の力でもって焼き払うというこの行為を。
――エル・クーゴー過去史上最大面制圧火力、まっこと恐るべしである。チョコレートの海域だって相当の広さであったのに、たとえるならぺんぺん草ひとつ残らぬ有様だ。
「うわぉ……派手にやったわね」
ヘスティアがおっかなびっくり近付きながら、一時の静寂に包まれたチョコレートの海を見て、ふと疑問に感じたことを素直にエルに尋ねてみた。
「それにしても、どうやって速度低下のペナルティを回避したの?」
レーザーの射出をようやく止めたエルが、ふぅと息を吐きながら答える。
「あれを」
「あっ!」
視線を送った先には、ウイングキャ……いや間違えました、ぽっちゃりボディの白い猫型ドローン『マネギ』が、平然と毒入りキャンディをもぐもぐしている姿があった。
「やっぱり、ああするわよねぇ……」
「うちのドローンは、いい仕事をします」
チョコレートの海は、しばし凪ぐ。
再びの襲撃には、まだ時間が掛かるだろう。だってあれだけ蹂躙されたんだから!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御桜・八重
◎
むせかえるようなチョコの匂い。
でも、なんでだろう。
どこか、ビターな感じがする…
「ん、おっけー!」
新装備のオーラを噴出して海に浮かぶ桜ぽっくり。
海面に降り立って具合いを確かめると、
敵の群れに向かってスピードスケートのごとく走り出す!
「…来た!」
メロディアが生み出す毒入りキャンディ。
ちょっと口には出来ないけど、こんな楽しみ方はどうかな?
【花筏】を発動。複製した八重桜を、キャンディに向かって放つ!
「当ったりー!」
えへへ、縁日の射撃は得意なんだ♪
うまくすり抜けたら群れの中心で高速スピン。
「いーっけーーっ!」
遠心力が限界に達した瞬間、オーラの刃を生やした髪飾りを全方位に放つ!
これぞ必殺「桜花火!」
桜雨・カイ
◎
まるであれのようですね……えぇと チョコふょんでぅ
普通に食べたら美味しいんでしょうけど…そんなことを考えている場合ではないですね
残滓達を倒しつつ、同時に具現化も送らせないと。
鉄甲船一カ所に集中されると手に負えないので
【天狗靴】でチョコの海に触れないようにかけまわり
ある程度数を分散させます。
さあこっちです!
別の場所に引き寄せたら【花嵐】発動
【属性攻撃】で火の属性を追加した花びらを舞い散らします
当たらなくても熱をもった花びらが海におちれば、残滓達を溶かして具現化を少しでも伸ばせるかもしれません
あとは全滅させるまでUCをふるい続けます
●甘くほろ苦い海を駆けよ
チョコレートの海は再び波打ちはじめ、波乱の予感を見せつけてくる。
鉄甲船の上からそれを見守る御桜・八重(桜巫女・f23090)と桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、油断なく身構えながらもこんなことを考えていた。
(「むせかえるようなチョコの匂い」)
(「まるであれのようですね……えぇと、チョコふぉんでゅ」)
だんだん波が大きくなるチョコレートの海を見据える眼差しは二人とも真剣そのもの。
先に八重が、まるで独り言のように口を開いた。
「でも、なんでだろう。どこか、ビターな感じがする……」
スイートかビターか問われれば、これなビターの方だ。ただ甘くない、ほろ苦い味。
「普通に食べたら美味しいんでしょうけど……そんなことを考えている場合ではないですね」
単純に味の話をしている訳ではないと知りながら、敢えてそこには触れずにカイが返しながら、スッと取り出したのは「天狗靴」なる装備品だった。
それを見た八重が、あっと声を上げて自らも新兵器「桜ぽっくり」を掲げてみせた。
「これは……似たようなことを考えていらっしゃる?」
ちょっと悪戯っぽく八重が問えば、カイははにかむように笑んで準備を始める。
「残滓達を倒しつつ、同時に具現化も遅らせないと」
靴を履き替えて、トントンとつま先を突いてしっかり足に馴染ませれば、準備は万端。
「この鉄甲船一ヶ所に集中されると手に負えないので、この天狗靴で――」
「ん、おっけー!」
見れば、一足先にチョコの海の上にオーラの力で浮かんで、まさにカイ自身がやろうとしていたことを実践する八重の姿があった。
八重の「桜ぽっくり」はオーラで、カイの「天狗靴」は力場の発生でと、仕組みは微妙に違うが『海面に触れずに移動できる』という点では同じこと。
「うん、進水式は無事成功、って感じ!」
「何よりです――では私も」
舳先から身を躍らせると、着水寸前のところで靴より力場が発生してカイの身体を見事チョコレートの海の上にとどまらせてくれる。
具合を確かめた二人は、一度顔を見合わせて頷き合うと、二手に分かれて駆け出した。
元より一人でも縦横無尽に駆け巡って、残滓たちを分散させようと考えていたカイ。
ここで八重という思惑を同じくする仲間を得て、より作戦をスムーズに遂行することができていた。
「さあ、こっちです!」
『無粋な人、土足で踏み入ってくるなんて』
『相応のおもてなしをしなくてはならないかしら』
残滓たちは揃って、突撃と離脱を繰り返すカイを追って陣形を乱していく。
ただでさえ数にモノを言わせただけの存在なのに、優位な立ち位置さえ崩されたらどうなるか? その答えは、もう間もなく出ることとなる。
(「……そろそろ、頃合いでしょうか」)
鉄甲船からは十分に引き離した、考えもなしに己を追ってきた残滓たちを見てカイは取り出した糸編符を指にありったけ挟み、それを思い切り宙へと投げ放つ。
「さあ、今こそ舞い散る時です――【花嵐】!」
――ごうっ!!
広範囲に撒かれた符が、弾けるように無数の桜の花弁へと変じる。それは燃える炎を纏って、残滓たちへと降り注いだ。
『嗚呼、いけません、此れでは――』
『何ということでしょう、花弁を見舞うのは私たちの方だというのに!』
これが普通の桜吹雪であれば、美しく愛でて浴びるように立ち尽くすことも出来たろう。
けれど、これは紛れもなく熱を持った危険な花弁。振り払おうにも、触れた先から身が溶けていくのだからたまらない。
残滓たちに直接当たらなかった花弁も、チョコレートの海面に触れた瞬間間接的に残滓たちを溶かし、再びの具現化を封じ込める効果まで発揮するのだ。
(「いい感じ、ですね。では、この調子で」)
何度でも炎の花弁を回せる覚悟を宿した瞳で、カイは甘ったるい海を見据えた。
カイとは別の方向に向かって、こちらは残滓たちが密集しているところに敢えて突っ込んでいく形で、八重はスピードスケートのごとく駆けていく。
『いらっしゃい、歓迎します』
『どうぞ、楽しんでいって下さい』
くすくす、くすくす。笑い声が残響のように耳を打つ。
顔をしかめた八重は、残滓たちが手に取ったモノを確かに見た。
(「……来た!」)
間違いない、残滓たちが生み出し、共に楽しまねば鈍化をもたらすという、毒入りキャンディだ。
まるで八重を試すかのように、危険なキャンディを眺めて笑う残滓たち。
(「ちょっと口には出来ないけど……」)
けれど八重だって負けてはいない、不敵に笑い返して髪飾りに手を添えた。
「こんな楽しみ方はどうかな? 【花筏】、行くよっ!」
ポケットを叩くとビスケットが、ではないけれど。ユーベルコヲドの発動により、髪飾り「八重桜」が複製されて八重の手に握られる。
それを手裏剣よろしくキャンディ目掛けて鋭く放てば――。
『きゃ……ッ!』
「当ったりー!」
『な、何てこと』
残滓たちが手に乗せていた毒入りキャンディ、そのうち一つを狙い違わず複製した八重桜で砕いてみせたのだ。
『……この手ごと砕けば良かったのに、情けを掛けましたか?』
険しい顔になる残滓たちに、八重はあくまでも笑顔で返す。
「えへへ、縁日の射撃は得意なんだ♪」
『……成程、そういうことですか』
――キャンディを、楽しむ。
これでは確かに、八重の動きを鈍らせることは叶わない。残滓たちも、これにはたまらず苦笑いを浮かべた。
「やっぱり、ビターな感じがすると思ったんだ」
そんな残滓たちの合間を縫って、八重は優雅に華麗にビターチョコの海の上を滑って、やがて残滓たちが集う中心へとたどり着いた。
両手を思いっきり広げて、八重はフィギュアスケートのように高速でのスピンを始める。
回って、回って、遠心力が限界に達した瞬間を逃さず。
「いーーーっ、けーーーっ!!」
複製した髪飾りは、先程放った一つだけだと誰が言ったか?
八重のユーベルコヲドをもってすれば、全方位攻撃が可能なほどに複製ができる。
しかもそれが、すべてオーラの刃を生やして放たれたとしたら?
悲鳴を上げる間もなく、次々と残滓たちが砕かれ、チョコレートの海へと還っていく。
「これぞ必殺『桜花火』!」
ビシッと決めポーズで新しい必殺技を披露した桜の巫女は、また一歩強くなっていく。
――戦況は極めて有利、順調である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
スピーリ・ウルプタス
やる前にやられてみたい、という心地も致しますが
流石にこの肉体、一撃で木っ端微塵にされたらばお楽しみも何も感じるヒマなさそうですね!
というわけで真面目に先手必勝といきましょう
UC発動
チョコレートやキャンディであられるご様子
全力で打ち溶かして参りましょう!
距離を常に保って戦うも、間合いに詰められたらば咄嗟に本体鎖面で防御
ッッごふ…!
お、恐ろしい破壊力ですね…ッ素敵です!ゲッフゴフ…(←相当ダメージ)
これはもう一発でも受けましたら本体が無事では無さそうなので、ええ少々残念ですが、頑張って回避にも努めます!
決してこの身疎かにしているわけでは無いんです
私、輝かしい未来を信じて生きてますので(微笑み)
リオネル・エコーズ
◎
小さい頃はお菓子の森や湖って夢だったんだけどなぁ
…うん
小さい時にこれ見てたら、大泣きして夢にまで見ちゃったかも
見たのが猟兵になってからで良かった…!
ちょっとは驚いたよ
ちょっとは
でも負けない自信しかない
数の暴力なら俺も得意
チョコレートやキャンディを砕くのは正直勿体ないけどね
UCで喚んだ流星を大盤振る舞いしちゃおう
全力魔法籠めた流星の軌道をぐんっと曲げて横からお見舞い
腰とか足の辺りを狙って撃ち抜いたら
そのまま翔けれるところまで
相手が脆いなら
一つの流星で大量に粉々作戦もいけると思うんだよね
見える範囲をしっかり捉えて
流星一つ一つを無駄にしないよう撃ち抜いてこ
蹴散らしてしまえ?
残念
それやるのは俺達の方
●被虐の流儀と流星の秘技
リオネル・エコーズ(燦歌・f04185)が、もしもまだ幼かった時分に『海が一面チョコレートになった』という話を聞いたら、一体どんな反応をしただろうか?
もちろん実際にそんなことは『ありえない』のだから、それこそ砂糖でコーティングをされたかのような甘い御伽話として、キラキラの世界を夢見るに違いない。
そう、夢と現実とは、残酷なまでに違うのだと――こんな形で、思い知ることになろうとは。
(「小さい頃は、お菓子の森や湖って、夢だったんだけどなぁ」)
リオネルは眼鏡越しにオールドオーキッドの瞳を細めて、苦笑いをする他なく。
「……うん、小さい時にこれ見てたら、大泣きして夢にまで見ちゃったかも」
そう、夢は夢でも――悪夢に他ならない。
常ならば好ましいはずの甘い匂いが、眉根を寄せてしまうほどの甘ったるさとなり。
とぷんと波打つチョコレートの海からは、次から次へと全く同じ姿をした『姫君』たちが際限なく湧き出てくる。
「見たのが猟兵になってからで、良かった……!」
ネモフィラが咲く長い髪をひとつ揺らして、リオネルは心の底からそう告げた。
倒せども倒せども、まだ湧いてくる残滓たち。
それら一体一体は脆く、しかし攻撃力は恐ろしく強い――という。
なれば『やられる前にやれ』を掲げて挑めとは言うけれど。
「やる前にやられてみたい、という心地も致しますが……」
たまに居るのだ、スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)のような例外的な思考を抱くものが。
いやいや、決してそれ自体は悪いことではない。問題は、当人も自覚していた。
「しかし流石にこの肉体、一撃で木っ端微塵にされたらば――」
いくらヤドリガミが本体さえ無事なら云々とはいえ、ドM的にはちょっと違うのだ。
「お楽しみも何も、感じるヒマがなさそうですね!!」
そう、死なない程度に! モノには限度というものがあって! ギリギリのラインを攻めてこそ!!
「……そろそろ始めてもいいかな?」
「ええ、真面目に先手必勝といきましょう」
夜明けをカタチにしたかのようなオラトリオが笑んで問えば、緊縛されし禁書の変態紳士が爽やかに返す。
「チョコレートやキャンディであられるご様子、ならば全力で打ち溶かして参りましょう!」
スピーリの声を合図に、じゃらららら! と八十を超える鎖が――何と、灼熱を纏って幾何学模様を描き、多数の残滓たちを包囲したではないか。
『くっ……鎖に熱を!?』
『完全に包囲されています……何ということ』
残滓たちが悔しげに呻きながら次々と溶けて海へと還るさまを、遠距離攻撃であるのに任せて甲板から確認していたスピーリは、どこかで落ち着かなさを感じてしまう。
これでいい、このまま圧倒すれば、任務は無事完了だ。
けれど、本当に『これでいい』のか? 己の裡で、葛藤が確かにあった。
(「ああ、私がこのような一方的に嬲るような戦いを
……?」)
まったくの無意識だった。己の足が舳先に向かって進んでいたのに、スピーリは本当に気付いていなかった。
「――っ!!」
身を晒せば、間合いを詰めてくる輩もいるだろう。
スピーリは咄嗟に本体の鎖面でチョコレートの花弁を防ぎ、そして――。
「ッッ、ごふ
……!!」
「変態さん!」
リオネルがスピーリを名前で呼ばなかったのは、多分きっとちゃんと自己紹介をしていなかったからとかそういう理由だと思われる。
きっと悪気はなかったし、事実だから異議の申し立てもできないし、しないだろう。
さておき、防御したとて痛いものは痛い。絶妙な激痛が――スピーリにとっては、最高の快感となって身体中を駆け抜けた。
「お、恐ろしい破壊力ですね……ッ! 素敵です! ゲッフ、ゴフ……」
「かなり崖っぷちに立たされるレベルのダメージだね……?」
うわあすごい、それで気持ちよくなれるんだという純粋な感心でもってリオネルが問う。
「これはもう一発でも受けましたら本体が無事では無さそうなので……」
筋金入りのドMさんは、限界をちゃんと把握している。
「ええ、少々残念ですが……頑張って回避にも努めます!!」
(「うわあ、本当に残念そうだ」)
タッとバックステップで再び間合いを取るスピーリを、生温かい視線で見送って、今度はリオネルが力を存分に振るう番であった。
「ちょっとは驚いたよ、ちょっとは」
手にしたのは、星宙に近い天空から色を注がれたかのような青の魔鍵。
「でも――負けない自信しかない」
とん、と一つ甲板を叩くのが合図。
こんなおっかない光景を幼かりし日に見ずに済んだ幸運。
「数の暴力なら、俺も得意」
いつか見た七彩の光は忘れじの流星となりて。
「【極光の星(メテオール・ライン)】――チョコレートやキャンディを砕くのは正直勿体ないけどね」
喚ばれた流星は、文字通りの大盤振る舞いで、チョコレートの海いっぱいに降り注ぐ!
『嗚呼、星が……墜ちて』
『大丈夫です、数はこちらが上回って――ッ!!?』
残滓たちは、愚直にも星がまっすぐ落ちてくるものかと思ったろう。
だが実際はどうだ、リオネルが指揮棒を振るうかのごとく魔鍵をかざすのに合わせて、全力の魔法を籠められた流星一つ一つがその軌道をぐんっと『曲げた』のだ。
どうして、天より降り注ぎしものが足やら腰やらを撃ち抜いて、そのまま別の残滓を狙い翔け続けるなどと想像出来ようか。
「相手が脆いなら、一つの流星で大量に粉々作戦もいけると思うんだよね」
いくら七彩の流星を四百に迫る数まで放てるとしても、一つにつき一体では非効率だ。
それこそ相手が何千、何万と湧いてくるというのなら、見える範囲をしっかり捉えて、流星一つ一つを無駄にしないように撃ち抜くのが最適解というものだ。
ばりん、がしゃん。
ぱきん、とぷり。ぶくぶく。
星は、もはや落ちるというより敵陣で荒れ狂う存在と化していた。
縦横無尽に、その魔力と推力を失うまで砂糖菓子の姫君を砕いていく。
青の魔鍵を握り直し、リオネルは整った顔で不敵に笑んでみせた。
「『蹴散らしてしまえ』? 残念、それやるのは――俺達の方」
――ねえ、変態さん?
リオネルがスピーリの方を見れば、めっちゃ頑張ってチョコレートの花弁を回避していた。どうやら、二撃目は本当に喰らわないようにしているらしい。
「決してこの身疎かにしているわけでは無いんです」
めっちゃ仰け反って攻撃を躱し、すぐさま元に戻って。
「私、輝かしい未来を信じて生きてますので」
――微笑みだけなら、完璧な紳士であったという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霑国・永一
◎
うわーお、この辺全部チョコかぁ。身体はキャンディで出来ていて、血潮はチョコ。こんなんで私を食べてとか言われてもドン引きだろうなぁ。
とはいえこんなでもお菓子のように甘い相手じゃあないし、頑張るかぁ。
狂気の奪熱を使うとしよう。この能力を発動状態なら銃を撃ちまくったり、ダガーを振り抜いたり、ここに来る前に拾っておいた石ころとかばらまいたりして、チョコの海や実体化した残滓達を纏めて熱を盗んで凍らせられるからねぇ。見た目以上に一度に凍る範囲も広いからうってつけだろうさ。
数が増えてきて凍らすのも時間掛かりそうになるごとに封印解除して行くよ。加減などしてたら何食わされるか分かったもんじゃないし。
ティオレンシア・シーディア
◎
うっ、わぁ…
いくら見た目が良くてもこれだけ無茶苦茶な数だと…なんというか、アレねぇ…
一体頭は脆いって話だし、必要なのは威力より数と範囲よねぇ。
ゴールドシーンにお願いしてラグ(浄化)とエオロー(結界)で〇毒耐性のオーラ防御を展開。
攻撃範囲に入り次第●黙殺を展開して片っ端から○範囲攻撃バラまいて潰してきましょうか。攻撃性能は同じって話だし、そもそも攻撃を受けること自体悪手よねぇ。
使う魔術文字はイサ(氷)。相手はチョコやキャンディ、融けて攻撃を軽減するんなら冷やして固めちゃえば攻撃通るでしょ。
射撃とグレネードの〇投擲も併用しつつ、最大限効率的に○蹂躙しちゃいましょうか。
●冷暗所保存にも限度というものが
「うわーお」
「うっ、わぁ……」
鉄甲船の上からチョコレートの海を見た霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が、感嘆というよりはむしろドン引きに近い声を上げた。
「身体はキャンディで出来ていて、血潮はチョコ。こんなんで『私を食べて』とか言われても、ドン引きだろうなぁ」
海域一帯をチョコレートに変貌させてしまうまでの力とあらば、確かに固有結界相当のものと言えるだろうけれど、それで誰かが幸せになるかと言えば、答えは否だろう。
そう言いつつも永一は別段あからさまな嫌悪感などを表に出す訳でもなく、あくまでも常の飄々とした薄い笑みを崩さずに、何かを手の中で弄んでいた。
海面を埋め付くさんばかりの勢いで湧き出てくる「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」に、ティオレンシアも思わず複雑な心境になる。
海面から漂う甘ったるいまでのチョコレートの香りは、己の極甘ロリボイスをも上回るほどの破壊力であると認めざるを得ず――何より。
「いくら見た目が良くてもこれだけ無茶苦茶な数だと……なんというか、アレねぇ……」
確かに、豪奢なドレスが良く似合う貴婦人の姿だけなら素直に美しいと言えたかも知れない。けれど際限なく増えた末に同じ顔がずらりと並ぶさまは、アレとしか言えない。
永一が手の中にあったものをおもむろに高く投げ、再びキャッチする。
「――とはいえ、こんなでもお菓子のように甘い相手じゃあないし」
ティオレンシアにだけ見えるように手を開き、見せたものは何の変哲もない石ころ。
「ま、頑張るかぁ」
「……ここ、海の上よぉ? どこで拾ってきたんだか」
永一の『素性』をその仕草ひとつで察したティオレンシアが、ため息を吐いた。
魔道の才能は絶無――故に力あるものに『お願い』する。
ティオレンシアの相棒とも言える「ゴールドシーン」は、祈りに応え、願いを叶える。
――さあ、此度は何を願う?
「一体頭は脆いって話だし、必要なのは威力より数と範囲よねぇ」
『二人だけで、何が出来ると言うのです』
『遊びはお終いにしましょう、圧倒して差し上げます』
残滓たちが口を開けば、一言一言が嫌に響くようで耳障りだ。
そして何より、飛ばしてくる毒入りチョコの花弁が厄介極まりない。
「……ゴールドシーン」
シトリンが埋め込まれたペンが中空を走り、古の魔術文字を力あるものとして刻む。
浄化のラグと結界のエオロー、二つの文字がひときわ強く輝いたかと思うと、次の瞬間にはティオレンシアを毒から守る堅固な防御障壁となる!
――がん! がん、がんっ!
オーラの障壁に阻まれた毒の花弁が、激しい音を立てて砕け散る。
花弁がさらに散って、文字通りチョコレートの礫のただ中を突き進むように、ティオレンシアは再び鉱物生命体たるペンを走らせた。
「さぁ、ぶっ放しちゃいましょうか――【黙殺(デザイア)】で、ねぇ」
融解体と化して、受ける攻撃を緩和しようと目論む残滓たちを見据えるティオレンシアの糸目に迷いはない。
ひゅっ、と上から下へ縦一本にペンを走らせる。
それだけで完成する魔術文字――それはイサ、氷の元素。
「攻撃性能は同じって話だし、そもそも攻撃を受けること自体悪手よねぇ」
『忌々しい……ですが、何時までその加護が続くか見物です』
言葉の応酬と、砕けて粉微塵と舞うチョコレートの花弁。
フィクサーの女は動じることなく、描いた文字が輝くのを見た。
「身体はチョコやキャンディで出来ている、だっけ? 解けて攻撃を軽減するんなら」
チョコレートの海を、残滓たちの頭上を、千に及ばんとする氷の矢――氷柱が覆う!
「冷やして固めちゃえば、攻撃通るでしょ」
『く……ッ!』
ティオレンシアの言葉を合図に、おびただしい数の氷柱がチョコレートの海を貫き、着水する先から次々と凍らせていく。
「ああ、やっぱり凍らせるのもアリだったねぇ」
良かった良かった、と言いながら永一もゆったりとした足取りで進み出る。
そして――先程から弄んでいた石ころを、猛然と残滓たち目掛けて投げた。
『石つぶてだなんて野蛮な……えっ!?』
咄嗟に腕で防ごうとした残滓たちの一体に石ころが触れた瞬間、腕が、砕けた。
『一体、何が』
「答える義理はないねぇ、どうせ対価は毒入りキャンディとかなんだろうし」
――その超常こそ【盗み凍る狂気の奪熱(スチールフリーズ)】。
普段愛用しているダガーはもちろん、隠し持っている銃だって、素手だって、何なら先程投げた石ころでさえ『盗み取る』という行為のための道具にできる。
ダガーは刺さればそこから深々と、銃をぶっ放せば撃ち抜いた対象すべてを。
素手ならそれこそ好きなように、石ころなら予想だにせぬ方法として。
今、このユーベルコードを発動している間、永一は常識を超えた『熱を盗む力』で、ティオレンシアと同じように凍結でもって砂糖菓子の姫君たちを打ち砕くのだ。
「なるほど、そういう」
視線は敵から外さずに、言葉だけで感心の言葉を贈るティオレンシア。
「まだ増えるとは厄介だねぇ、ちょっと寿命削るとするかぁ」
へらりと平然とした口調で言い放つ永一の眼鏡が一瞬光ったのは気のせいか、瞬時にただならぬ気配を纏って凍結の強度を増していく。
「ずいぶんカジュアルに寿命削るのねぇ……ま、自己責任だからいいけど」
それじゃ、とティオレンシアが愛銃「オブシディアン」に手を添えながら、グレネードをぽーいと冷え固まった残滓たちめがけて放る。
『……!!』
銃撃、破片の炸裂、降り注ぐ九百近くの刃、そして振り抜かれるダガーに……うーんいつ見てもアイテム欄の説明が説明になってそうでなってない永一さん! とにかく銃!
毒入りキャンディを供して、楽しまないなら鈍化させてやろうと思っていたのに、それどころか冷え固められて自分たちがままならない状況に襲いかかる蹂躙劇。
これにはたまらず、残滓たちも砕けたままチョコレートの海に還っていくばかり。
「最大限効率的な蹂躙って、気持ちいいわねぇ……」
「加減なんてしてたら、何食わされるか分かったもんじゃないし」
持てる力を存分に発揮し、ちょっと寿命を削ってみたりもした。
その結果は――最上と言えるものであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
【竜鬼】
ひかるさんを怪力でお姫様抱っこして、自分の翼で上空へ。
此処は異常気象で島間の飛行が阻害されるので、高度低めに、空中浮遊も併用。
飛行がダメなら水上歩行で海上を移動。
ひかるさんの鼓舞に「はい、頑張ります!」と気合入れてUC発動。
960本の十倍サイズの流水剣の複製を展開。
蒼炎の属性攻撃を纏わせ、ひかるさんの行動と連携して広範囲のスイート・メロディアを面で焼き、且つ斬り刻む。
防御面では結界術で周囲に対毒結界を展開。
第六感・見切りで相手の攻撃を詠み、空中戦能力で回避できるように。
更にフローティングビームシールドで盾受けできるようにし、ひかるさんごとオーラ防御を纏って、いつでもかばえるようにする。
荒谷・ひかる
【竜鬼】
リューさんに抱かれ、飛行してもらうことで水上戦闘に対応
わたしからもしっかり抱きついて落ちないよう気を付けます
接敵前に「わたし達の愛の炎で焼き尽くしちゃいましょう」と囁き、頬にキスして「鼓舞」
戦闘はリューさんのコードに合わせ【本気の炎の精霊さん】を発動、970本の炎の槍を展開
炎の槍は着弾地点を穿ち、その場で爆発し周辺を巻き込んで燃え広がる
リューさんの蒼炎の剣と役割を補い合うように飛ばし、広範囲を焼き尽くします
敵の攻撃に対しては炎の槍を20本程残しておく
毒チョコを即座に迎撃し焼却できるよう、付近に随伴させる
迎撃を掻い潜ってきたものはリューさんに対応をお任せ
●この愛の前に勝てるものはあるか
グリードオーシャンという世界は、異常気象によっていくつか猟兵たちの行動に制限がかけられている。
その内のひとつが「飛行」だ。此度の戦争では翼あるものと見なした時点で苛烈な攻撃をしかけてくる強敵もいるのは事実だが、果たしてこの場ではどうか。
「飛行がダメなら、水上歩行で移動しますが……」
リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)が、何とも礼儀正しくむせかえる甘さのチョコレートの海をちょこっと覗き込みながら問えば。
『高度を低めに、空中浮遊というていでしたら別に構いません』
などという、割と大らかな答えが残滓たちから返ってきたからちょっと目を見開く。
けれど相手がいいと言うなら遠慮は要らぬと、携えてきた作戦を実行することにしたリューインは赤い竜翼を広げて片膝をついた。
「ひかるさん、さあ!」
「はい、リューさん!」
リューインの膝の上にすぽっと収まりながら、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)が愛しい人の首に両手を回してしっかり捕まる。
それを確かめると、リューインは驚くべき膂力と蹴り上げるように力を入れた足の勢いで、一気にひかるをお姫様抱っこしたまま控えめにチョコレートの海の上に飛んだ。
『……見せつけろまでとは、言いませんでしたが』
残滓たちがこめかみのあたりをビキビキ言わせていたかどうかはちょっと見えなかったが、それがどうしたと言わんばかりにひかるがそっとリューインに囁く。
「わたし達の愛の炎で、焼き尽くしちゃいましょう?」
そうして頬にキス一つ、けれどもそれは何物にも代えがたい至高の『鼓舞』である。
リューインは一度はにかみ笑って、すぐに凜とした表情で残滓たちを見据えた。
「――はい、頑張ります!」
『見せつけろとは……言いませんでしたよ
……!!』
ええ、ええ、言ってないからこそやったんですとも!
低空飛行とはいえ、上から見下ろすと想像以上にチョコレートと化した海域が広いということが良く分かった。
そこを一面埋め尽くす「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」と来れば、生半可な攻撃では殲滅することなで不可能であろう。
けれど心配は無用というもの、リューインとひかるはこの海域にただおデートに来ただけではないのだ。
「ひかるさん、行きます!」
「わかりました、合わせます!」
声は掛け合う、けれど本当はそれさえ不要なのかも知れず。
あまりにも息が合った、見事なユーベルコードの発動であった。
リューインの【奔流斬舞(ホンリュウザンブ)】により複製された流水剣が、九百七十。
それは極限の十倍まで大きくなり、幾何学模様を描いてチョコレートの海いっぱいを包囲する。
流水剣の一本一本が蒼炎を纏って天を覆うさまは、残滓たちも思わず見上げるほどに――神秘的でさえあった。
そこへひかるの【本気の炎の精霊さん】が重なる。奇しくもリューインの剣と同じ九百七十の――こちらは赤熱する炎の槍が、蒼と交互になるかのごとく展開される。
『……此れ、は』
あまりにも、美しかった。
美しいものを素直に美しいと思うがゆえに、残滓たちはしばし動きを止めた。
「ひかるさん、焼き尽くしましょう……僕たちの、愛で」
「リューさん……!」
蒼の炎刃と赤熱の槍が、その言葉を合図として一斉にチョコレートの海へと降り注ぐ。
赤は着弾地点を穿ち、その場で爆発し、周囲をも巻き込んで燃え広がる。
蒼は面で焼き尽くし、逃すものあればその刃で斬り刻んで追撃し、倒す。
『く……ぅ……!』
あまりにも、美しくも残酷で、一方的な蹂躙。
せめて一矢を報いようと、溶けゆく身で攻撃を緩和し少しでも存えようとした残滓たちが毒入りチョコレートの花弁を放つ。
その攻撃力ならば本体に匹敵すると言われるだけはあり、すさまじい勢いで飛来する花弁に上空のリューインとひかるは、果たしてどう対処するのか。
リューインの藍の瞳が瞬き、次の瞬間には幾何学模様を描く対毒の結界が生じた。
自分たちが宙に浮いているとあらば、攻撃の軌道はおのずと読めてくる。そこへ直感めいた見切りの能力が加われば、空中での戦はリューインに圧倒的な分があるというもの。
そもそもヤバい攻撃は喰らわぬに限ると回避に徹しつつ、ひかるにも気を配るのを忘れない。
「炎の槍を二十本ばかり、残しておきました」
そこに居るのは恋する乙女とは別の顔をしたひかる。
敵対するものには一切の容赦をしない、猟兵の少女。
毒入りチョコレート何するものぞと、即座に迎撃して炭も残さず焼却してみせた。
すべてを焼き切れないとしても――リューインが手を打ってあった。
周囲を滞空する「フローティング・ビームシールド」が鉄壁の守りで決して攻撃を通さない!
「ひかるさんは、僕が守ります」
言葉の通りに、オーラの障壁で抱きかかえた瑠璃と紅石の契りの娘をかばい通す。
「わたしたちは、絶対に負けませんよ」
油断なく炎の槍を繰りながら、ひかるもまた決然と言い放つ。
――己を偽らない純然たる愛が、どうして負けることがあろうというのか!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
甘いもの好きには素晴らしい光景なのかねぇ、これも
見渡す限りチョコレートなんざ、俺にとっちゃ毒沼にしか見えんよ
んで、出来るだけ多くを倒せと…オーダーは了解した
やり方はいくらでもあるが…『消す』のがベストだな
俺の半径100m以内には絶対に、誰も近づくなよ
『色々』と吹っ飛ばしちまうもんだからさ…頼むぜ
さて、そんじゃあチョコレートの海にダイブするか
ウー、後でシャワーを浴びたくなるぜ
──誰も居ねえな?よし…デリートコマンドを実行
アクティベート……『Void』
半径100m以内のあらゆるものは…『消滅』する
後はただ繰り返す…範囲指定をしては消して、範囲指定をしては消して
そうしたらいつの間にか殲滅できてるのさ
●甘い悪夢にさよならを
チョコレートの海は、何度凪を見たことだろう。
それは多少なりとも間を開けると、再び「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」――その名の通り、際限なく増えて回る残滓たちが、甘くむせかえるような匂いを立てて茶色の海から生まれ出てきていた。
ああ、それらを何度『殺した』だろうか。
ここに至るまで、何人の猟兵たちが死力を尽くしてそれらを屠ってきただろうか。
――そろそろ、飽いたのではないか?
――いや、そもそも飽いているのではないか?
ならば、これで終わりにしよう。
再構築の速度が目に見えて遅くなった残滓たちの前に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)が立ちはだかった。
「甘いもの好きには素晴らしい光景なのかねぇ、これも」
とぷり、と緩く波打つチョコレートからは、甘ったるい匂いしかしない。
「見渡す限りチョコレートなんざ、俺にとっちゃ毒沼にしか見えんよ」
あるいは誰かから歓迎されたやも知れぬ可能性は否定せず、しかしヴィクティムは粛々と己が成すべきことに集中する。
『通しません、此処は……決して』
一人が口を開けば、残滓たち全員の言葉のように嫌な残響が起こるものだから、ヴィクティムは少しばかり顔をしかめて一度首を振った。
そうして甲板の上で、よく通る声でこう告げた。
「俺の半径百メートル以内には絶対に、誰も近づくなよ」
猟兵たちはもちろん、鉄甲船の乗組員もすべて。例外はない。甲板から退避し、船内で良いと言うまで待機していて欲しいと。
「『色々』と、吹っ飛ばしちまうもんだからさ……頼むぜ」
ヴィクティムに考えがあってのこととすぐさま理解して、猟兵たちも乗組員も全員速やかに船内へと下がっていく。
そうして、本当に『自分一人』になったことを確認して――ヴィクティムは改めて確認をした。
(「出来るだけ多くを倒せと……オーダーは了解した」)
やり方は正直に言えばいくらでもある。あるが――ベストは『消す』ことに限る。
手段は既に確立している、あとは実行するのみ。
ヴィクティムは迷わず舳先へと立ち、下を見る。
「さて、そんじゃあチョコレートの海にダイブするか」
たんっ、と軽やかに身を躍らせれば、すぐに身体の自由を奪われるようなどろついた感覚に襲われた。
チョコレートの海に本当に身を浸すなど、恐らくは後にも先にもこれきりだろう。
――いや、これきりであってもらいたい。
(「ウー、後でシャワーを浴びたくなるぜ」)
『自分から飛び込んでくるなんて、愚かな』
毒入りキャンディで歓迎をしようとする残滓たちは、何も知らない。
(「誰も居ねえな? よし……デリートコマンドを実行」)
自分たちが、どんな末路を辿ることになるのか。
そも、自分たちが終の時を迎えることになるとは。
――アクティベート……『Void』。
登録名称、【Vanish Program『Void』(バニッシュプログラムヴォイド)】。
ヴィクティムの視界に――電脳デバイスに認識された半径百一メートル内に居る残滓たちを含めた『あらゆるもの』が、『消滅』した。
『……な、何
……!?』
『消えた、私達が……跡形もなく……』
ぼっかりと広がる虚無からは、もはや何も生まれない。チョコレートの海もなく、再構築のされようがないのだ。
その事実を、残滓たちがどう捉えるかはヴィクティムが今回引き受けた仕事の中には含まれない。
ただ、残されたチョコレートの海へと粛々と歩を進め、範囲指定をしては――消して。
残りがあれば効率良く消せるように移動して――物質をデータ化して、消滅させる。
「下手に残しとくと面倒だろ? なら、有無を言わさず消しちまえば良い」
これは、作業だ。
まるで絵を描くように。書類を作成するように。
すべてを『消滅』させるという目的に向けて、淡々とプログラムを走らせる。
「そうしたら、いつの間にか殲滅できてるのさ」
チョコレートの海はもはや無く。
ならば――本来あるべき青い海こそがそこには戻ってくるのだ。
「……海水は海水でベタつくんだよな」
やっぱさっさと帰ってシャワー浴びよう。
そう決意するヴィクティムにより、この海域での戦いには決着がついたのだった。
大成功
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