猟書家~寒い!もふい!元気!
●群竜大陸『絶対零度地帯』
その少女は、奇妙な温かさと柔らかさの中で目覚めた。
ここは……、どこだ?
たしか……、妙な女が現れて。
そうだ……、『群竜大陸で死んでほしい』とそう言った。
ならば……、この雪と氷ばかりの場所は群竜大陸。
それにしても……、自分を囲んでいるこれはなんなのだろう?
これから……、自分は死ぬのか?
ただの……、一言でも発すれば。
そう……、シャルムーン様の加護を失えば。
状況が分かったところで、無力。
クレリックの少女は、ただ静かに最期の時を待つしかなかった――。
●
「フェアリーは身体が小さいので寒さに弱い」
謎の宣言をしながら、毛布の中でフェアリーのグリモア傭兵ネミ・ミミーニーズ(f00595)が震えていた。
様々な世界に侵攻する『猟書家』たち。
アックス&ウィザーズにて、幹部の1人『眠りの森の魔女ターリア』がシャルムーンのクレリックを襲う事件が起こった。
言葉の神『シャルムーン』のクレリックは、死の間際に『破邪の言葉』を放つ。
猟書家はこの『破邪の言葉』で、『天上界の手がかり』を探そうとしている。
「基本の説明はこんなところね。今回の事件については――」
既にクレリックは連れ去られてしまっている。
救出のために向かってもらうのは、『絶対零度地帯』。群竜大陸の中でも、極端に気温の低い極寒の地。そこに踏み込めば、生物は皆冷凍保存されるのだという。
救出に行ったのに凍ってしまっては仕方ない。まずは、該当地点の周囲の氷を砕き、『元気』を出してほしい。
「なんかこー、古の勇者の人たちが残してくれたらしいのよ。『元気』を」
氷の中にアイテムなどがあるわけではない。詳しい原理は不明だが、氷を砕くことで『元気』になれば一定時間凍ることなく活動できるらしい。
「とりあえず『氷を砕く』! 『元気』になる! 元気があればなんとかなるのよ!」
寒さを克服したなら、オブリビオンからクレリックを救出してもらいらい。
現在シャルムーンのクレリックは、人の背丈ほどの大きさの鳥『シマエナさま』が取り囲まれている。
「何というかこー、ふわふわのもこもこの鳥ね。眠りの森の魔女の手下だけあってその力は絶大なのよ! 羽毛布団業界では」
このまま放置するとクレリックは羽毛布団力(うもうふとんちから)でどんどん脱力していって、最後は死に至るらしい。そんなことしなくても寒さで死にそうなものだが、敵の目的はあくまで『破邪の言葉』。それなりの状況で死んでもらわなければならないのだろう。
「そういうわけで、一刻を争う事態なのよ!」
たくさんいるシマエナさまを引き剥がし、クレリックの安全を確保するのだ。
シマエナさまを排除できれば、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』が姿を現す。
「眠ったままでも戦える眠りの魔法のスペシャリストらしいです?」
この不思議な猟書家は、戦闘中でも眠ったまま。
相手の狙いはシャルムーンのクレリック。でも猟兵がいれば、先に猟兵の方を狙ってくる。正面から迎え撃ってこれを撃破してほしい。
「あ、そうだ。シャルムーンのクレリックの女の子なんだけど――」
外見は13~15歳程度の細見の女性。名前を含め詳しいことは不明で、掟により『声を出すこと』を禁じられているのだという。
「だいたいそんな感じよ! とにかく寒いのよ! 寝たら死ぬのよ!」
予知だけでは寒くならないはずだが、ネミは毛布の中から転送の準備をしていた。
背腹かえる
プレイングボーナス(全章共通)……襲われるクレリックを守る。
●ご挨拶
背腹かえるです、よろしくお願いします。
これは幹部シナリオです。このシナリオは2フラグメントで完結し、「猟書家の侵略」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
アックス&ウィザーズ猟書家戦。フラグメントは集団戦、ボス戦。
場所は群竜大陸、『絶対零度地帯』。
めっちゃ寒いです。元気があればなんとかなります。
第1章、集団戦『シマエナさま』。
白いもふもふの鳥類です。
猟兵到着時点でクレリックを取り囲んでもふもふしています。
第2章、ボス戦『眠りの森の魔女ターリア』。
眠りの呪いを操る幹部猟書家です。
群竜大陸の情報はこちら。
『 https://tw6.jp/html/world/event/012war/012_dragonlord.htm 』
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『シマエナさま』
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POW : ひえひえアロー
レベル×5本の【氷】属性の【魔法の矢】を放つ。
SPD : こおりガード
対象のユーベルコードに対し【氷の盾】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : シマエナガ・まきしまむ
【沢山のシマエナガ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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色らしい色のない極寒の地。
その片隅にある小さな窪地でシマエナさまの群れが身体を寄せ合っていた。
ふわふわの羽毛の中心には、1人の少女。
このままではいけないとわかっていても、ここから脱出する術はない。
かといって、ここで生きていく算段があるわけでもない。
出来ることは、祈ることばかり。
神よ……、シャルムーンよ……。
どうか……。
レナ・フォルトゥス
ものすごい寒いわね。
…めったに行くような場所じゃないわね。
フェアリーじゃなくても、これは死ぬわよ、まったく。
【オーラ防御】で【見切り】、周囲を火の精霊の力によって温めている。
凍りついても、加熱して溶かす。「さっさと終わらせておきたいところですわね」
シマエナさま見つけたら、即座に【属性攻撃】【誘導弾】【乱れ打ち】【範囲攻撃】で不意を付く。「モフモフはいいかも知れないけど、状況的に、排除するしかないわね」
そして、攻撃のドサクサにクレリックを保護、そしてシマエナさまから距離を開けたら、一気にUC使用で敵を燃やし尽くす。
「寒いんだから、温まればいいわよ。但し、オブリビオンは燃やすわよ」
アドリブ歓迎
「ものすごい寒いわね」
レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)は、降り立った世界の恐ろしさに驚く。
「……めったに行くような場所じゃないわね」
レナは手の内に炎の精霊を宿す。炎の魔法を得意とするレナではあるが、少々の魔法ででどうにかなるレベルの気候ではない。
「フェアリーじゃなくても、これは死ぬわよ、まったく」
こんな場所に長居するのは得策でないのは明らか。先陣のレナは、予知による曖昧な方角だけを頼りに雪原を進む。
いくらか歩いたところで。白ばかりの風景にぽつんと氷の塊があることに、レナは気付く。妙に透明度の高く、綺麗に整った形、放置されていたはずなのに雪1つ積もることのない、不思議な氷。これが、古代の勇者が残したという『絶対零度地帯』攻略用の装置に違いない。
氷の塊に、レナは炎の矢を叩きつける。甲高い音を立てて氷の塊が割れ、溢れ出した力がレナに流れ込む。不思議な温もりの力で、極寒の風がいくらか和らぐ。
「だいぶマシにはなったけれど、さっさと終わらせておきたいところですわね」
少し軽くなった足取りで、目的の場所へと急ぐ。
それから、目的の場所はすぐに見つかった。何もない雪原の真ん中、人の背丈ほどの高さのシマエナさまが多数集まっている。保護色を加味してもかなり目立つ光景だ。その中心に、人間の姿を確認するレナ。
「モフモフはいいかも知れないけど、状況的に、排除するしかないわね」
レナはギリギリの間合いから【ウィザード・ミサイル】による奇襲を仕掛ける。炎の矢の着弾と共に、盛大な爆発が起こる。
外周のシマエナさまが吹き飛ぶ。命の輝きを失ったシマエナさまが冷気に負け、一瞬のうちに凍り付く。そこでようやく、敵は猟兵の襲撃に振り返る。最初に、警戒を伝える鳴き声。それに続いて、シマエナさまの一部がクレリック包囲陣からレナの迎撃にやってくる。
流石に数が多い。やり過ごしてクレリックの元に辿り着くのはレナ1人では不可能だ。ただそれは、あくまで救助を優先すればの話。全体の数は多いとはいえ、向かってくる敵はレナの炎の矢より少ない。レナは両手に炎を宿し、冷凍焼き鳥候補たちを見据える。
「寒いんだから、温まればいいわよ。但し、オブリビオンは燃やすわよ」
紅蓮の矢が弧を描き、ふわふわと飛ぶ鳥を片っ端から貫いてゆく。
シャルムーンのクレリックは、駆けつけた救援のため、静かに祈りを捧げる――。
大成功
🔵🔵🔵
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎
「さぁ、クレリックさんを助けよう♪」と言って『フェアリーランド』の壺の中から風/火/生命の精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使を呼んで“七色金平糖”を配ってクレリックを防御圏内に確保保護しつつ『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をして、『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避け敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化をします♪
『聖精月天飛翔』で強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻をします☆
『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒し『エレメント・セイント・ティファーナ』で強化します♪
「さぁ、クレリックさんを助けよう♪」
祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)が、雪の舞う空を元気に飛び回る。
ティファーナの纏う服装は、『絶対零度地帯』でなくともとても寒さに耐えられそうに見えない。だが当のティファーナ自身は寒さに全く負けている様子はない。
大丈夫なものは、大丈夫なのだ。古代の勇者の力が宿った氷を砕き、ティファーナが元気に飛び出す。
「精霊、聖霊、英霊、月霊よ……」
シマエナさまの一団に接近し、ティファーナは【フェアリーランド】から精霊たちを呼び出す。しかしここはあらゆる生物が凍り付く極寒の地。呼び出された精霊たちが、余りの低温にティファーナの方を振り返る。
「さあみんな頑張ってください!」
ティファーナは精霊たちに『七色こんぺいとう』を配る。一握りの元気を手に、精霊たちはシマエナさまと絶対零度の風に立ち向かう。だが動きの悪い精霊たちは、シマエナさまの群れに押し負けそうになる。
「たーッ!」
劣勢な精霊の影から、ティファーナが飛び出してシマエナさまに体当たり。会心の一撃で、シマエナさまの1体が雪の上に落ちる。そしてティファーナもそのまま、ふわふわで温かい至福の感触に包まれる。可能ならこのままずっとこうしていたい心地よさ――。
「ふかふか……、ハッ! いけない! みんな!」
我に返って、ティファーナは改めて攻撃の指示を飛ばす。
勢いを取り戻した精霊が、魔法の矢でシマエナさまの群れに風穴を開ける。開いた道の先、ティファーナは捕らわれのクレリックの元へ飛び込む。
「助けに来たよ! 元気出して!」
ティファーナは、クレリックの口にこんぺいとうを放り込む。不安そうだったクレリックの表情が、僅かに綻ぶ。
「それじゃあ――、わー!?」
クレリックを連れ出そうとしたところで、ティファーナは再びシマエナさまのもふもふの中に捕らわれる。
フェアリーの身体より遥かに大きいふわふわでもこものの羽毛の塊。極寒の地であることを忘れるくらい心地よい感触――。
ダメになりそうな主を、精霊が引っ張り出す。
「いけないいけない。思った以上に危険ですね」
仕切り直して、ユーベルコードを構えるティファーナ。
フェアリーと精霊たちを、更に大勢のシマエナさまの群れが囲む。
雪原の攻防はまだまだ続く――。
大成功
🔵🔵🔵
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
さむーい!でも、寒さなんかに負けないぞー☆
うりゃうりゃうりゃーと風を纏わせたレイピアで氷を砕いて『元気』を取り出すよ♪
自分の「元気」と『元気』が合わさって元気100倍だー!
元気になったらシマエナさまかくごーと群れに向かってレイピアを構えてどかーんと突撃!
クレリックの女の子も見つけたけど、えっと、しゃべっちゃダメなんだっけ?
それなら「よろ!」「もう少しがまんしててね!」とノートに書き書きして筆談だ!
女の子の無事を確認したら【妖精の一刺し】でどんどんシマエナさまをやっつけていくね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
「さむーい! でも、寒さなんかに負けないぞー☆」
もこものの冬服を着込んだティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が、元気にレイピアを振り回す。
負けない気持ちがあればどんな困難にだって立ち向かっていけるのだ。これは決して精神的な話ではない。超自然の冷気は自然のものではなく魔法的なものに違いないので精神的な抵抗力を高めることで対処可能だという古代勇者の――。
「うりゃうりゃうりゃー!」
そんな理論はおいておいて。ティエルの愛剣『風鳴りのレイピア』が魔法の氷を砕き、ティエルは溢れんばかりの元気をその身に宿す。
「自分の『元気』と『元気』が合わさって元気100倍だー!」
極寒の世界で、ティエルの元気がもりもりと溢れ出す。背景ではカラフルな☆がたくさん飛び交っている、――ようなきがする。こうなればここはもう『絶対零度地帯』ではなく、ティエルのフィールド。おてんば妖精姫を止められるものはいない!
元気いっぱいのティエナが、シマエナさまの群れに突撃する。いつもの100倍の力を乗せた【妖精の一刺し】で、雪原のど真ん中に特大の爆発が巻き起こる。衝撃で吹き飛ぶシマエナさまの下を抜け、ティエルはクレリックと接触する。
「助けに来たよ! でもえっと、しゃべっちゃダメなんだっけ?」
ティエルはノートを取り出す。声を出すことを禁じられたクレリックに合わせて、筆談を試みる。
「まず、よろ! と……あれ!?」
ノートに元気よく『よろ!』と書こうとした。でも、書けない。ペンのインクが凍り付いてしまっており、ペン先は虚しく走るばかり。
「待ってね! もう少しがまんしててね!」
ティエルの方が筆談する必要はないのだが、何とか筆談しようと頑張ってみる。
ちなみに、ティエルは元気に叫びながら騒いでいるのでノートに書かなくてもクレリックの方は話を全部理解してくれている。クレリックは、大騒ぎしているティエルのノートに手を伸ばす。
「ん? なになに? 大丈夫、元気、出た……。なるほど!」
ノートに浮かび上がったクレリックからのメッセージを受け取り、ティエルが再びレイピアを構える。
先ほど吹き飛んだシマエナさまの群れが、上空からティエルに襲い掛かる。迎え撃つティエルが、真上に飛ぶ。
「いっくぞーーー!! 元気全開だーー☆☆」
氷点下の風を押しのけ。
元気いっぱいの打ち上げ花火が、咲き誇る。
大成功
🔵🔵🔵
アルゲディ・シュタインボック
さ・む・い
分厚いタイツに発熱素材のインナー着込んでカイロも仕込んできたけど…
UDCアースの凄いアゴのオジサンじゃないんだから、元気でどーにかなる訳が…!(杖で氷砕き)
……なったわ(寒さ和らぎ)
で、あの子シマエナさまに囲まれてるけど
見た目はぬくぬくそうだけど違うのよね
セクンダ起きて頂戴。寝たら死ぬわよ
UC発動。火力全開で炎を放ち、向こうの放ったシマエナガと一緒に炙って差し上げるわ
焼き鳥になっちゃいなさい!
炎はそのまま絶やさずに女の子暖めるようにキープ
余計に着込んできたコートを身体に掛けてあげて
大丈夫よ、貴女の女神様が守ってて下さるわ
ぎゅっとハグして体温分け与えて
良く頑張ったわね。もう少しの辛抱よ
「さ・む・い」
アルゲディ・シュタインボック(白金の癒杖・f03929)が、叫ぶ。
アルゲディの姿は、普段の僧衣に見える。だがその下には、分厚いタイツに発熱素材のインナー着込んで、体中のあちこちにカイロも仕込んでいる。
ここまでしても、僅かに出来た服の隙間から入り込む風だけで、死の危険を感じずにはいられない。聞いていた以上に、恐ろしい気候。
「UDCアースの凄いアゴのオジサンじゃないんだから、元気でどーにかなる訳が……!」
杖に魔力を込め、八つ当たり気味に氷を叩き割るアルゲディ。すると、アルゲディは不思議な気配に包み込まれる。先ほどまで感じていた刺すような冷気が、瞬く間に消える。
「……なったわ」
これは凄いアゴのような精神論ではなく。氷の中に呪文を残した呪文を、特定の精神状態の者だけが受け取れる仕組みだろう。
古代の勇者が残した技法を冷静に分析するアルゲディ。まだ少し、顔が寒い。これは、表情も作れということだろうか。
「いや、そこまではいいわね」
アルゲディは顎に添えた手を離し、クレリックの救助へと向かう。
「で、あの子シマエナさまに囲まれてるけど――」
ふわふわの羽毛の中に少女が1人。見た目だけなら心温まる優しい光景だ。実際には、あの状態を続ければ死、やめても死。非常に危険な状態だ。
「セクンダ起きて頂戴。寝たら死ぬわよ」
アルゲディの杖から、光の精霊セクンダが飛び出す。そのまま間髪入れずに、セクンダは十字の炎を連射する。シマエナさまの群れが身体を寄せ合い、炎を防ぐ壁を作る。
「その程度じゃいつもより元気なセクンダは止まらないわ。焼き鳥になっちゃいなさい!」
アルゲディがセクンダが放った【慈悲なる聖炎】を合体させる。特大の十字架が、シマエナさまの壁を飲み込み。中央から順に、浄化の炎がふわふわの鳥を跡形もなく消滅させてゆく。
シマエナさまの壁を突破したところで、アルゲディは十字架を再び分散させる。オブリビオンを消し去る強力すぎる浄化の力が和らぎ、クレリックの少女を慈悲の炎が優しく包む。
「大丈夫よ、貴女の女神様が守ってて下さるわ」
アルゲディは少女にコートを着せ、力強く抱きしめる。偽りの温もりに力を奪われていた少女が、アルゲディを抱きしめ返してくる。冷え切っていた少女の腕に、少しずつ体温が戻る。
「良く頑張ったわね。もう少しの辛抱よ」
少女の震えが、止まる。
それは寒さから解放されたからか、それとも――。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加
・・・凄く寒いね。普通大抵の人は凍え死ぬだろうここ。まあ、炎を扱うアタシは少しマシなんだが・・・問題はシマエナか。もふもふに目がない子がいるからね(シマエナの群れにダッシュしていく奏を見て溜息)
氷関係は先行した奏がなんとかしてくれるだろうからアタシはシマエナの相手をするか。冷気は【オーラ防御】で何とか凌いで、飛んでくる矢は【残像】【見切り】で回避。奏がクレリックの子を保護したら一気にシマエナを赫灼の闘気で薙ぎ払う。保護したクレリックの子はすぐ上着を着せてやろうかね。羽毛が無くなるから凍えるだろうし。もう大丈夫だ。アタシ達が護ってやるから安心しな。
真宮・奏
【真宮家】で参加
なんて凶悪なんでしょう・・・寒さで凍えさせて羽毛で暖めてダウンさせるとは・・・私も羽毛に埋まりたい・・・ではなく、もふもふに殺されるのは可哀想なので、ぜひ助けてあげないと!!
念の為にトリニティエンハンスで防御力を上げ【オーラ防御】【拠点防御】【氷結耐性】で防御を固めてからダッシュ、【属性攻撃】で炎属性を付与した【衝撃波】で氷を破壊、クレリックの方を保護。シマエナの掃討は母さんと瞬兄さんに任せて、クレリックの方の護衛に専念。飛んでくる敵の攻撃からクレリックの方を【かばう】。今貴女の安全を確保しますので、私の傍を離れないでくださいね。
神城・瞬
【真宮家】で参加
フェアリーでなくてもこの寒さはキツいでしょう。こんな土地に1人で放り出すのは許せませんね。そして、ふわもこで包んでそのまま永遠の眠りにつかせると・・・ある意味凶悪なやり方ですね。阻止させて頂きます。
クレリックの保護は奏に一任。僕はシマエナの相手をしましょう。【マヒ攻撃】【目潰し】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃】化して敵集団に展開。更に月下美人の嵐で追撃。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。クレリックの方は無事ですか?僕達が護りますので、何とかこの窮地を切り抜けましょう。
真宮・響(赫灼の炎・f00434)、真宮・奏(絢爛の星・f03210)、神城・瞬(清光の月・f06558)の3人が、氷の塊を砕く。
「……凄く寒いね。普通大抵の人は凍え死ぬだろうここ」
古代の勇者が残した力で動けるようになったとはいえ、この寒さは尋常ではない。響は自分の炎で自身の身体を温めているつもりだが、気休めになっているかさえわからない。
「フェアリーでなくてもこの寒さはキツいでしょう。こんな土地に1人で放り出すのは許せませんね。そして――」
「まあ、炎を扱うアタシは少しマシなんだが……問題はシマエナか」
「ふわもこで包んでそのまま永遠の眠りにつかせると……ある意味凶悪なやり方ですね」
響と瞬は、もう1人の同行者である奏に視線を送る。
「なんて凶悪なんでしょう……寒さで凍えさせて羽毛で暖めてダウンさせるとは……」
『絶対零度地帯』とシマエナさまの恐ろしさを語る他の2人とは、明らかに違う意思がこもった奏の言葉。
「もふもふに殺されるのは可哀想なので、ぜひ助けてあげないと!!」
奏の言葉の前半と後半の間には、妙な間があった。響と瞬は、その『間』については言及しなかった。
「もふもふに目がない子がいるからね」
「……。阻止させて頂きます」
突撃する奏の背を見てため息をつく響。そして、静かに任務を遂行する構えの瞬。
先陣を切るのは奏。【トリニティエンハンス】で守りを固め、シマエナさまの群れに飛び込む。それをフォローするよう、響と瞬が続く。
奏を庇うため、瞬が【月下美人の嵐】で花びらのトンネルを作り出す。仲間が作った道を、奏が駆け抜ける。
シャルムーンのクレリックを奪われてはならない。シマエナさまが、クレリックの元に向かう猟兵へと次々と攻撃を仕掛ける。
そこに――。
「アタシの燃える闘気はアンタらの暴虐を許さない!!」
響の【赫灼の闘気】が炸裂! 迫りくるシマエナさまと氷の矢が、赫灼の闘気で燃え上がる。それでも、焼き鳥になった仲間を乗り越え、シマエナさまの攻撃は止まらない。
「数が多いね! 瞬!」
「花よ舞え!! 我が意志を乗せて!!」
瞬の操る月下美人の花びらが勢いを増し、奏とクレリックに向かうシマエナさまを押し返す。シマエナさまも負けじと、味方を鼓舞する短い鳴き声の連続を響かせる。が、敵の数が多すぎる。防御に専念した瞬の力でさえ、全てのシマエナさまを押し留めることは出来ない。
奏への攻撃を防ぐ瞬の方へ、シマエナさまが殺到する。
「この数の集中攻撃、これは――」
戦場中から瞬へと集まったシマエナさまたち。それは完全なる攻撃の陣形。完全に密集した集団なら、それを潰すには一撃で充分。
瞬の影から響が飛び出す。響の闘気の全力を乗せ、青白く燃える炎の名を冠した槍が吠える。
「1羽たりとも逃がしはしないよ!」
絶対零度の風と花びらの間を、赫灼の闘気が駆け抜ける。シマエナさまが攻撃から逃れようにも、密集した他のシマエナさまに引っかかっているうちに闘気の渦に飲み込まれ。ふわふわの羽毛は塵も残さず消えてゆく――。
響と瞬の援護で敵の群れを駆け抜けた奏が、クレリックの少女へと駆け寄る。
少女を守るよう、最後の最後に一際大きなシマエナさまが立ち塞がる。いや、少女をそのふわふわな羽の下に抱え込んだまま、じっとしている。
「助けるためには……、私もあの中に飛び込まないとダメね!」
死を誘う恐るべきもふもふ。奏は意を決して、その中に身を投げる。
「これは……」
奏の全身を、至福の感触が包み込む。絶妙な反動と、程よい温もり。ここが極寒の地であることを忘れしまうほどの幸福感。シマエナの子はこの至福の中で生まれ、そして育っていくのか。自分もシマエナになりたい。人間をやめて新しい――。
「――ハッ!? いけない!」
奏は、我に返る。響や瞬が戦っているというのに、自分はなんてことを。
正気に戻った奏は、シマエナさまの羽の中で少女に近づき、その身体を抱きしめる。
「今貴女の安全を確保しますので、私の傍を離れないでくださいね」
クレリックの少女を抱き抱え、奏がシマエナさまのもふもふから脱出する。
雛を奪われた親鳥の如く、シマエナさまは怒りを露わにする。
羽を広げ、羽毛を逆立てて威嚇する。精いっぱいの眼力で睨みつけてきているが、奏にはまだ可愛いもふもふに見えている。
シマエナさまの攻撃を、奏はユーベルコードで強化した背中で受け止める。
「そこまでだ」
「ピッ!!」
月下美人の花びらが、シマエナさまの動きを封じる。瞬が手をかざすと、無数の花びらは瞬の手の中で、杖の形態へと戻る。氷の結晶を思わせる杖から魔力が放たれ、シマエナさまを氷の結晶へと封じ込める。
「これで、シマエナさまは最後です。クレリックの方は無事ですか?」
「大丈夫そうだね」
合流した響が、クレリックの少女に上着を羽織らせる。いくらか弱っているように見えるが、体温はある。命の別状はなかろう。
戦闘を終えた猟兵たちが集まり、少女の体温と安全の確保に尽力する。
だが、これで終わりではない。
この騒動を引き起こした猟書家が、まだ――。
大成功
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第2章 ボス戦
『眠りの森の魔女ターリア』
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POW : ようこそ眠りの森へ
戦場全体に、【「眠りの森」 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 醒めざる夢の茨
【棺の中から伸びる「眠りの茨」 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 忘却の眠り
【記憶を一時的に奪う呪詛 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【過去の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
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猟兵たちが、クレリックの少女を確保して一息ついたところ――。
それは、いた。
あらゆるものが凍り付くはずの世界の一点が切り取られ。
棺のようなものが浮いている。
そこから伸びる茨が、黒衣の女性に絡みついている。
その女性から感じる不思議な気配。
そう――。それは、寝ているのだ。
眠り続ける『眠りの森の魔女ターリア』から。
猟兵たちの脳内に直接、言葉が響く。
なぜ、まだ生きているのですか?
『死んで欲しい』と申し上げたはずです。
やはり伝わりにくかったですか?
そうです。必要なのは『破邪の言葉』です。
それがわたしに向かないよう、回りくどい方法を取らなければならないのです。
もうこれ以上わたしの手を煩わせないでください。
次に目覚めることはありません。
おやすみなさい。
もう二度と、誰も、目覚めぬよう――。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎
『フェアリーランド』の壺の中から風/生命の精霊,聖霊,月霊,戦女神,天使,を呼んでミンナと猟兵に“七色金平糖”を配って『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をして、『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪
『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させ、『エレメント・セイント・ティファーナ』でWIZを強化します☆
『聖精月天飛翔』で強化した『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!
「貴女に静寂と平穏と安寧で神様の花園へ還りなさい☆彡」
「きましたねターリアさん! きついお目覚めの一発をプレゼントします!」
祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)が、寒さに負けず元気に腕を振り回す。
ティファーナの【フェアリーランド】から聖霊、月霊、戦女神、天使などが次々と姿を現す。そのそれぞれが魔法の矢を構え、ターリアを取り囲む。
臨戦態勢の敵に睨まれてなお、眠りの魔女は眠ったまま、自分の都合だけを言葉にする。
あなたは『天上界』についてご存じですか?
「知ってたって教えませんよ! 覚悟してください!」
合図と共に、ティファーナの聖霊たちが次々と攻撃を仕掛ける。
面倒ですね。フェアリーの担当はわたしではないのですが。
ターリアが、魔導書を開く。
不思議な力が周囲に広がり、ティファーナの聖霊たちの動きが鈍る。眠りの魔女の呪詛に包まれ、聖霊たちが氷の大地に落ちてゆく。
……、この方々にはわたしの必要とする記憶はないようですね。
記憶を盗み取ると、ターリアは聖霊からティファーナ本人へと狙いを変える。
ティファーナは敵の攻撃に対し、正面から挑む。四方から伸びる茨をすり抜け、聖霊たちを回復するため戦場の中央に飛び込む。
「みんな! 大丈夫!?」
ぐったりとした様子の聖霊たち。ティファーナの呼びかけへの反応は鈍い。十分な回復をするにはそれなりの時間と治療が必要だ。ティファーナ自身が狙われている今はそれだけの隙は見いだせない。
だが、1つわかったことがある。敵がティファーナの聖霊たちから記憶を奪ったのならば、それはティファーナの力が敵の中に流れ込んだの変わらないはず!
ティファーナは回復より、攻撃を選ぶ。向かってくる攻撃を紙一重で躱し、敵の懐へ。
「貴女に静寂と平穏と安寧で神様の花園へ還りなさい☆彡」
小さなティファーナの全体重を乗せたタックルが炸裂。
その衝撃で、ターリアの中で聖霊の力が暴れ回る!
「ぐ……」
口元を歪める眠りの魔女。
その魔女が今、起きているのか寝ているのかはわからない――。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加
寝ながら喋るとは器用な子だね。「死んで欲しい」といって素直に死ぬ奴はいないだろう、全く。破邪の言葉だか何だか知らないが、死は強要するものじゃない。アンタを倒させて貰うよ。
さて、攻撃方法が厄介だね。奏がいきなりいなくなったので前線はアタシが担うしかないか。真紅の騎士団で手数を増やし、【オーラ防御】【残像】【見切り】で攻撃を回避しながら【ダッシュ】。敵の攻撃で真紅の騎士団が消されても、攻撃方法は幾らでもある。【戦闘知識】で敵の隙を見つけ、【気合い】を込めた【怪力】【グラップル】で力の限り殴り飛ばしてやるよ!!
真宮・奏
【真宮家】で参加
いや、いきなり「死んで欲しい」と言われてもですね。死んで欲しい理由は猟書家である貴女の勝手な理由であって、クレリックの方が死ななければならない絶対な理由にならないでしょう。阻止させて頂きますよ。
クレリックの方を護っていたせいか邪魔者と思われたみたいで迷路に閉じ込められてしまいます。念の為、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御態勢を整えて風の妖精騎士を召喚。妖精騎士と共に迷路の突破を狙います。迷路から脱出して、クレリックの方が危なかったら即座に【かばう】。クレリックの方の傍から離れない位置で【二回攻撃】【衝撃波】で攻撃しますよ。
神城・瞬
【真宮家】で参加
いきなり死ぬような寒い所に連れ去ってクレリックの方の意志をまるっきり無視した上で「死んで欲しい」は酷過ぎますね。命は道具では無い故、貴方を倒させて頂きます。お覚悟を。
飛んでくる茨が邪魔ですね。焼き払いましょうか。その前に【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を展開した・・・んですが、敵のUCの影響で記憶がすっぽり抜けて何故ここにいるか首を傾げる事に。まあ、目の前にいる茨に埋もれて眠っていながら攻撃してくる敵が危険だと分かるはずなので、【二回攻撃】で凍てつく炎での攻撃を決行。一応、ダメージ自体は【オーラ防御】で軽減しときますね。
真宮家の3人。真宮・響(赫灼の炎・f00434)、真宮・奏(絢爛の星・f03210)、神城・瞬(清光の月・f06558)が、眠りながら浮かぶ不思議な魔女を囲む。
猟兵……。
こちらの話が通じるとは思えません。
わたしは『死んで欲しい』と申し上げているのです。
「寝ながら喋るとは器用な子だね。『死んで欲しい』といって素直に死ぬ奴はいないだろう、全く」
「いや、いきなり『死んで欲しい』と言われてもですね」
「いきなり死ぬような寒い所に連れ去ってクレリックの方の意志をまるっきり無視した上で『死んで欲しい』は酷過ぎますね」
3人はターリアの身勝手な要求に、それぞれの感想をぶつける。
「破邪の言葉だか何だか知らないが、死は強要するものじゃない。アンタを倒させて貰うよ」
「死んで欲しい理由は猟書家である貴女の勝手な理由であって、クレリックの方が死ななければならない絶対な理由にならないでしょう。阻止させて頂きますよ」
今にも飛び出していきそうな響と奏の後ろで、いつでもフォロー出来るよう瞬が武器を構える。
やはり話が通じていないようですね。
『死』も『破邪の言葉』も重要ではありません。
『天上界への道を開く』ことができるのであれば方法は問いません。
ですがあなたたちに他の方法がないことはわかっています。
ですので『死んで欲しい』、それだけです。
ターリアはまたも、自らの要求のみを発する。その直後、戦場全体に激震が走る。
「危ない!」
敵の狙いに気付いた奏が、クレリックの少女に覆いかぶさる。だが既に時遅く――、奏も少女と一緒に氷の中へと消える。
「奏!」
2人の元へ駆け寄ろうとする響の行く手を、氷の樹海が塞ぐ。
「ま、あの子ならあっちは上手くやるだろう。瞬!」
【凍てつく炎】。瞬の呼び出した呪いの炎が、氷の樹海を焼く。凍てつく炎が凍り付いた茨の速度を上回り、迷宮全体を駆け巡る。
即席の迷宮の奥に魔女の気配を捉え、瞬は魔女を目指して突き進む――。
●
1人迷宮を進んだ瞬は、大きな広間に出る。その空間の中央に、茨に包まれた棺が浮いている。
「命は道具では無い故、貴方を倒させて頂きます。お覚悟を」
魔女を直接攻撃出来るところまで行って――、瞬の動きが止まる。
「……? 僕はなぜここに?」
炎と茨がの中で生まれた呪詛の煙に飲み込まれ、その男は自分が何者であるかも忘れてしまっていた。目の前にいる、茨に抱かれた女は何者か?
「確か、誰かを助けに森に……」
記憶を失って立ち尽くす男に、茨が伸び、頬を撫でる。
「確か……」
王子は森で眠る姫に――。
空っぽの記憶に、不思議な物語が流れ込む。
『眠』、『死』。欠けた記憶の中で、最初に浮かんだのはその2つ。それに、茨に棺。記憶の奥底に浮かんだ光景と、目の前の不吉な存在が重なる。
男は、目の前の相手を敵と判断する。
偽りの優しさで差し出された手を杖で払い、凍てつく炎で目の前の存在を焼く。
せっかくわたしのために死んでいただこうと思ったのですが。
「命は道具では無い故、貴方を倒させて頂きます。お覚悟を」
命を弄ぶ魔女に向け、男は啖呵を切る。それで、思い出した。つい先程も、目の前の相手に挑んだ。そう、奏を助けるために。
記憶が戻りましたか。
やはり普通に殺して予定通りシャルムーンのクレリックを使いましょう。
「させると思うか!」
記憶を取り戻した瞬が、ターリアにユーベルコードを放つ。
●
クレリックの少女を抱いた奏が目を覚ました時、周囲は完全な氷の世界となっていた。凍り付いた茨が複雑に絡み合う出口に見えない迷宮。あんなに恐ろしかった氷の空も、見えなくなってしまうと不安になるものなのだと思い知る。
敵はいない。それもそのはず。相手は、閉じ込めるだけでいいのだ。時間さえ稼げば、あとはこの『絶対零度地帯』が勝手にやってくれるのだ。
物言わぬ少女が、腕の中で震えている。まだ、少女は助かったわけではない。ここは自分がやらなければならないという想いを胸に、迷宮に挑む。
「――で、どうしよう?」
迷宮の中には勇者の残してくれた一刻も早く脱出しなければ、迷宮を巡る絶対零度の風に体温を奪われ――。
「そうか、風が流れて……」
奏は魔法石を手に、【風の妖精騎士】の力を使う。現れた妖精騎士が、2人を風上へと導く。
「あっちだね。いくよ!」
妖精騎士に先導を任せ、少女を抱えた奏が走る。
戻りなさい。天上界への――。
「いい加減しつこいよ! 天上界への入り口くらい自分で切り拓けばいいのに!」
脳内に響く声に、強く反発する奏。
「さっきから死んでほしいとか天上界って言うだけで何もしてないじゃない!」
2人を捉えようと、氷の茨が伸びてくる。先を行く妖精騎士が、氷の壁の前で武器を構える。
「あそこが出口だね。自分で走れる?」
奏での問いに、少女は強く頷く。少女を下ろし、奏の手は風の力が込められた剣を握る。その手に、シャルムーンのクレリックが手を重ね、祈りを捧げる。
「任せて。絶対に、負けない!」
奏と妖精騎士の一撃が、氷の迷宮を粉砕する!
●
奏と瞬が消え、残された響が眠りの魔女と戦い続けていた。
必要なものは確保しました。
もうあたなの相手をする必要はないのです。
何度言えばわかってくれるのですか?
「だったら、話して納得できることを言うんだね!」
武装した【真紅の騎士団】がまた1人、眠りの茨で倒れる。
騎士団の数は既に半分以下にまで減らさせている。しかし歴戦の響は、自ら動こうとしないあの猟書家の癖を掴んできている。
「どうした、さっきから黙って! 人にお願いするなら頭くらい下げたらどうだい!」
最後の騎士団と共に、響が前に出る。
頭を下げるのは対等な関係であるときだけです。
あなた方はただ――。
「そこだ!」
魔女の言葉に、響が割り込む。
あの眠りの魔女は、眠りながら戦う。逆に、起きているときは少し動きが鈍る。ずっと寝ているように見えるあの魔女だが、戦いの中で何度か意識が覚醒しかけていることがあった。それがそう――、言葉を話すときだ。
最後の騎士を蹴って、響が跳ぶ。
「いつまで寝てるんだ! 力の限り殴り飛ばしてやるよ!!」
響の拳骨が、ターリアの顔面を全力で殴り飛ばす!
棺の前で澄ましていた魔女が、口を開く。
「少し、目が覚めました。まったく、話を聞かない人たちは……」
ターリアの意識が覚醒したことで、彼女の造り出した氷の迷宮も崩れる。そして、捕らわれていた者たちが飛び出してくる。
「奏! 瞬! いくよ!」
「はい!」
「合わせます!」
迷宮に捕らわれる前より勢いを増した奏と瞬が、響に続く。
「わたしを起こした程度で――」
落としかけた魔導書を構え直し、眠りの魔女は呼吸を整える。
――あまり調子に乗らないでください。
真宮家の一斉攻撃が、眠りの魔女を再び叩き起こす!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レナ・フォルトゥス
出たわね猟書家。
まったく、寒いところに連れてくるなんて、ドライすぎるわよ。
とはいえ、どうにかしないといけないですね。
ここは、あたしが引き受けるわ。
さて、どうするかですわね。
呪詛…反射呪文・リフレクトシールド!!
【見切り】【浄化】【呪詛耐性】【オーラ防御】【高速詠唱】【属性呪文】【呪殺弾】
その呪詛、全て返してあげるわ。
そして、おまけに、この呪文をたっぷりあげるわ。
UC…ウィザード・ミサイル。
【全力魔法】【焼却】込みで一気に行くわ。
燃えて消えるべきですわ。
「出たわね猟書家。まったく、寒いところに連れてくるなんて、ドライすぎるわよ」
レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)が、涼しい顔で浮かぶターリアを睨む。
あなたは連れてきていませんしその存在は不要です。
相手をするのも面倒ですのでそのまま消えていただけると助かります。
「本当に勝手なことを言うね。あたしも勝手にここに来たんだけれど」
ターリアは計画がうまくいっていないことに、苛立ちを覚えている様子。そこに猟兵の介入。クレリックの少女より先に、ターリアはレナを狙う構えを取る。
呪詛と苛立ちを隠さないターリアの前に、レナが出る。
「ここは、あたしが引き受けるわ」
とはいったものの、どういう流れで行くべきか――?
まったく面倒な方です。
ターリアから広がる見えざる呪詛が、レナに迫る。回避しようにも、どこからくるかもわからない。レナは敵の攻撃を無理に回避するのではなく、反撃と分析の構えで迎え撃つ。
レナに直撃した敵のユーベルコード、記憶を奪う呪詛。要は、一度ターゲットの当てたあと、術者に戻る術だ。術の理論がわかったなら、対処は容易。
「呪詛……反射呪文・リフレクトシールド!!」
レナの記憶を奪って戻る呪詛に、レナの呪殺弾を混ぜ、撃ち返す。
跳ね返ってくる呪詛の危険性を理解しても、ターリア自身に戻ってくるよう自ら仕込んだ術は止まらない。2つの混ざり合った呪詛が、ターリアの記憶を侵食する。
……ッ!
驚き、覚醒しかけた意識を、眠らせる。
ターリアの眠りが妨げられたのは、ほんの一瞬だった。だがそんな一瞬の間でも、レナが魔法を使うには十分。
「そして、おまけに、この呪文をたっぷりあげるわ」
ターリアの目の前から、レナは【ウィザード・ミサイル】を叩き込む。
ターリアの身体を茨が覆う。至近距離から放たれた炎の矢の連撃が、巨大な爆発を巻き起こす。
本当に面倒な。
一度立て直して――。
レナの巻き起こした爆炎に紛れ、離脱しようとするターリア。そこに、レナが喰らいつく。
「逃がさないわよ」
茨で隠れようが、迷宮に逃げ込もうが、レナには敵の居場所がわかる。ターリアの中に残るレナの呪殺弾の気配へ、最後の炎の矢を突きつける。
「燃えて消えるべきですわ」
森羅万象爆裂魔人の全力の魔法が、氷の大地を大きく抉り取る。
大成功
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ティエル・ティエリエル
SPDで判定
わわわっ!戦闘中なのにお昼寝!
それなら、ボクはクレリックの子を助けてから一緒にお昼寝だ!
森の動物くん達を呼んでシマエナさまに負けないモフモフを堪能してもらうよ♪
棺から伸びてくる茨を【スカイステッパー】でぴょんぴょん跳ねながら避けて一気に近づくよ!
ふふーん、ボクの前でお昼寝なんてさせてあげないよ!
レイピアでちくちく刺して起こしちゃうぞ☆
それから、そのアイマスクを外したら眩しくて眠ってられないよね!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
「わわわっ! 戦闘中なのにお昼寝!」
斬新な戦闘スタイルを持つ猟書家に、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が驚く。
ティエルのお昼寝パワーでは、お昼寝しながら戦闘することは出来ない。何よりこんな寒いところでお昼寝したら、そのまま冷凍妖精の出来上がりだ。
「それなら、ボクはクレリックの子を助けてから一緒にお昼寝だ! 森の動物くん達を呼んでシマエナさまに負けないモフモフを堪能してもらうよ♪」
謎の対抗意識を燃やすティエル。
……、……。
お昼寝宣言をしたティエルに、ターリアの返事はない。眠っている、のだろうか?
元気にレイピアを構えるティエルとターリアの間に、沈黙が流れる。
……、私の眠りの魔術を体現したシマエナさま以上の存在はいません。
眠りの魔女が、ティエルのお気軽なお昼寝宣言に食いついた。
クレリックを奪われたことよりも、攻撃を受けたことよりも。眠りに触れたことが、魔女の逆鱗に触れた。
「ふふーん♪ お昼寝パワーなら負けないもんね♪」
眠りの魔女のプライドを、積極的に刺激していくティエル。恐ろしく的確な挑発。もちろん、無自覚だ。
ただの昼寝とわたしの『眠り』は比類し得るものではありません!
ティエルの脳に響くターリアの語気が強まる。そして、眠りの魔女の棺から大量の茨が伸びる、先ほどまでの戦闘とは比べ物にならない勢いで。
「ふふーん、ボクの前でお昼寝なんてさせてあげないよ!」
出鱈目に伸び、周囲を埋め尽くす茨。ティエルは【スカイステッパー】でぴょんぴょんとすり抜けてゆく。
「たー☆」
ティエルのレイピアが魔導書を抱える魔女の腕を、ちくり。小さな一撃を与え、ティエルはすぐさま離脱する。そしてまた近づき、ちくり。
攻撃としては、大したことはない。ただ、何度も繰り返される僅かな刺激が、魔女の眠りを妨害する。
ちょこまかと。
昼寝妖精風情が……!
魔女の怒りを乗せた茨が、爆発的な成長をみせる。大味になった攻撃を冷静に躱し、ティエルが最後の一撃を決めるために突撃する。
そして――。
「ここだー☆」
ティエルはおもむろに、眠りの魔女のアイマスクを捲る!
「あッ!!」
「……ぅ……」
見つめ合う2人。非常に、気まずい空気が流れる。
ティエルはそっと、アイマスクを元に戻す。
ティエルは、何を見たのだろうか?
ただ、その時だけは。眠りの魔女がはっきりと目を覚ましたという――。
大成功
🔵🔵🔵
アルゲディ・シュタインボック
……見てるだけで寒そうな格好の敵なんだけど
寝てるの? 寝たら死ぬわよ?
いや、オブリビオンだから1回死んでるかしら
呪詛はオーラ防御の壁で受け流し
その辺で気絶してるシマエナさま引っ掴んで盾にしてぶん投げ
もふもふの記憶に脳裏を埋め尽くされると良いわ
接近して彼女の埋まる柩からぶち壊すわ
衝撃波込みで杖でぶん殴り
引き籠もってないでそこから出て来なさい箱入り娘
それでもまだ眠っているつもりなら、抜群に目が覚める一撃与えてやるわ
魔女の一撃ならぬ、これをね……!
と後ろに回ってUC発動
杖の石突き使ってぶちかます
流石に起きたかしら? でももう寝る時間ね
貴女が眠るべきは骸の海
さぁ、さっさと還って風呂入って寝ちゃいなさい
「……見てるだけで寒そうな格好の敵なんだけど」
完全武装のアルゲディ・シュタインボック(白金の癒杖・f03929)が、どう見ても薄着な魔女を見て心配する。
『眠りの魔女ターリア』。肩と脚が露出した服。肌を覆っている布も寒さに耐えるような構造にはとても思えない。更に言うのであれば、古代勇者由来の元気を宿したテンションにも見えない。
「寝てるの? 寝たら死ぬわよ? いや、オブリビオンだから1回死んでるかしら」
愚問です。
わたしの『眠り』はあなたの言う下等な『眠り』とは違います。
この程度の外界の変化など――。
「そんなこと聞いてないわよ。寒くないなら寒くないで、そう言えばいいのよ」
――、わざわざ話を合わせてやったというのに!
ターリアの怒りと共に、戦場に呪詛が広がる。アルゲディは気絶したまま残っていたシマエナさまを掴んで、呪詛の中に投げ込む。呪詛の中にふわふわとした幸せな感情が混ざり、ターリアへと跳ね返る。
「引き籠もってないでそこから出て来なさい箱入り娘」
もふもふの記憶に飲み込まれ、動きの止まったターリアをすり抜け、茨で埋め尽くされた棺を杖の強打で叩き割る。
敵を引きずり出しただけではアルゲディの攻めは終わらない。杖の構えを変える。背後から、敵の急所を狙う一撃【刺激的な無花果】を決めるのは、今。
石突きが直撃し、地獄の苦悶が広がる。
――がっ。
「――がっ」
アルゲディの耳と頭の中に、ターリアの呻き声が響き。集中が切れたタイミングで、声が漏れることはあった。念話と肉声が混じるこれは、今まで以上の大きな衝撃だったということだ。
「流石に起きたかしら? でももう寝る時間ね」
よろよろと氷の大地に落ちるターリアを見下ろすアルゲディ。攻撃に使用した杖の石突きを、魔女のスカートの裾で拭う。
剥き出しの手と膝を、絶対零度地帯が容赦なく襲う。このまま放置しても程なくしてターリアは眠りにつくことだろう。だが、『破邪の言葉』に拘った魔女をただで眠らせてやるわけにはいかない。きっちり引導を渡してやろう。
「貴女が眠るべきは骸の海。さぁ、さっさと還って風呂入って寝ちゃいなさい」
杖の石突きに、今度は炎の力を乗せ。氷の大地に突き刺す。大地を覆う氷が砕け、程よい温度のお湯が湧き出てくる。
すっかり目を覚ました魔女の姿が、底の知れない温泉の中に沈み、消えていった――。
「終わったわね」
一息ついたところで、絶対零度の風が猟兵とクレリックの少女を撫でる。
敵を退けても、それ以上の死の危険が残っている。一刻も早くこの大地から少女を脱出させなければならない。
今いるメンバーで、護送に使える力を持つ者は――。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年02月11日
宿敵
『眠りの森の魔女ターリア』
を撃破!
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