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猟書家の侵略~雪中の首塚を狙いし狩人

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #獣狩りのアルヴィナ #化身忍者 #風魔小太郎 #魔軍転生

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●サムライエンパイア・伊賀国
 ――四方を雪深い山々に囲まれ、ひっそりと佇む忍者砦「百地砦」の周囲にて。

「よーし、ここでちょっと待ってね」
 目の前にずらりと並んだ、和装に白きヘルメットという異形の集団を前に。
 青きヴェールと青と白の祭服のような衣装を身に着けた女性が、天を仰ぎながら叫ぶ。

 ――発動せよ、超・魔軍転生!!
 ――憑装せよ、魔軍将『風魔小太郎』!!

 女性の高らかな詠唱と共に、周囲に膨大な量の魂が舞い始め、やがて魂のひとつひとつが白きヘルメットの呪術兵器に吸い込まれると、自我が稀薄な瞳に新たな意思が宿る。
 やがて、顔をあげた異形の口から、老獪な男の声が漏れ出した。
「ほう……ここは伊賀者の砦ですか」
「ああ、そうだよ! ちょっと手伝ってくれないかな?」
「ええ、相手が伊賀者となれば、風魔の者としては不足はありません」
 慇懃無礼にお辞儀をする異形から漂う気配は、手練れの忍者のそれ。
 どこか満足そうにうなずいた女性は、目の前の小ぢんまりとした砦に目をやった。
「さあ、あの砦の忍者を蹴散らして、匿われている首塚の一族の首をあげるよ!!」

 ――魔空島原城の守りを破れるような輩は、全部狩り尽くすからね?

 蒼のヴェールを被った『獣狩りのアルヴィナ』の名を持つ女は、右手のパイルバンカーを砦に向けつつ、来たる闘争に目をぎらつかせニヤリと笑う。
 ――それは、戦乱に飢える者が浮かべる嗤いだった。

●グリモアベース
「あー、まあ……そういう手を打つ猟書家がいてもおかしくはねぇか」
 グリモアベースの片隅で。
 グリモア猟兵森宮・陽太が右手で頭を書きながら呟く言の葉を耳にした猟兵達が、まばらに集まり始めたの見て、陽太は徐に話し始める。
「集まったなら単刀直入に行くぜ。サムライエンパイアの伊賀国にある『百地砦』と言う名の忍者砦を襲撃している幹部猟書家『獣狩りのアルヴィナ』を蹴散らしてほしいんだが、頼めるか?」
 頭を下げる陽太に、猟兵達はそれぞれの思いを胸に頷いた。

「新たに現れた幹部猟書家『獣狩りのアルヴィナ』の目的は『首塚の一族』の根絶だ」
 かつて第六天魔王討伐に貢献した「首塚の一族」が持つ呪詛は、日ノ本の上空を遷ろう「魔空島原城」の強固な守りを打ち破ることができる。
 それ故にオブリビオンの標的にされ易い「首塚の一族」は、江戸幕府の保護のもと、様々な隠れ家に匿われている。
 今回向かう百地砦も、隠れ家のひとつなのだが……。
「その百地砦が、アルヴィナ率いる魔神兵鬼『シュラ』の軍団に襲撃されている……狙いは間違いなく首塚の一族の暗殺だな」
 襲撃を察知した砦内の化身忍者たちも応戦しているが、オブリビオンの軍団相手に長くは耐えられない。
 ――ゆえに、まず猟兵達が行うのは、『シュラ』の軍団の撃破。
 だが、見た目に騙されんじゃねえ、と陽太は警告する。
「魔神兵鬼『シュラ』には、『超・魔軍転生』で大量に複製され召喚された魔軍将が一、百面鬼『風魔小太郎』が憑依している……装備としてだから憑装だが」
 風魔忍軍の長を憑装しパワーアップしたシュラの軍団は、剣技だけでなく忍術も使う厄介な存在へと変貌している。
「厄介な相手だが、百地砦の化身忍者たちなら、相手の手口も少しは見破れるはずだ。流派は違えど、忍者であることに変わりはねえからな」
 忍者の手口を知り尽くした化身忍者とともに軍団をある程度殲滅したら、アルヴィナ自ら猟兵との戦いを望み、その姿を猟兵の前に晒すだろう。
 アルヴィナ自身が新鮮な闘争を求めるバトルジャンキーであり、己が手で叩き潰すことを望むからだが……一時的に首塚の一族から気が逸れる分、猟兵側には好都合だ。
「相手が闘争を望むなら乗ってやるだけだ。遠慮なく叩き潰してやれ!!」
 陽太の煽動に、猟兵達は拳を突きあげ応えていた。

「猟書家たちも次々と新たな輩が現れているがよ、やることは今までと変わらねえ。だから頼んだぜ」
 陽太に託された猟兵達は、彼の愛用の二槍で描き出されたゲートを潜り、百地砦へ赴いた。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 サムライエンパイアにて暗躍中の『幹部猟書家』達のうち、「首塚の一族」を狩り尽くそうと目論む幹部猟書家「獣狩りのアルヴィナ」の撃破をお願いします。

●本シナリオの構造
 集団戦→ボス戦の【2章構造】です。

 第1章は魔軍将が憑依した「魔神兵鬼『シュラ』」との集団戦です。
 彼らは憑装した魔軍将の力で、手練れの剣技だけでなく忍術も使用する、厄介な相手へと変貌しております。

 第2章は「幹部猟書家『獣狩りのアルヴィナ』」とのボス戦です。
 猟書家の力が制限されるらしく、アルヴィナは魔軍将を憑装しておりません。
 アルヴィナを撃破すれば、残ったシュラの一団は憑装が解けて烏合の衆と化すため、掃討は容易です。

●本シナリオにおけるプレイングボーナス
【化身忍者と協力して戦う】と、プレイングボーナスが付与されます。
 化身忍者たちは猟兵ほど強くはありませんが、忍者の手口に詳しいです。
 もし敵に突然忍術を使用されても、化身忍者たちが前兆を見破り妨害してくれることでしょう。

●プレイング受付開始日時について
 第1章、第2章ともに、冒頭に導入文を追加した後、受付開始。
 プレイングの受付締め切りは、マスターページ及びTwitterにて告知致します。

●【重要】プレイングの採用について
 本シナリオは戦争シナリオに準じた扱いをさせていただきますので、【プレイングの全採用は保証できません】。
 できるだけ採用させていただく予定ではいますが、執筆時間の確保が困難になった場合は、プレイングに問題がなくてもお返しさせていただくことがございますこと、予めご了承願います。

 諸般の事情により、次回集計(1/29)までの完結を目指しますので、サポートプレイングはお預かりする都度、採用を検討致します。

 全章通しての参加も、気になる章のみの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『魔神兵鬼『シュラ』』

POW   :    剣刃一閃・奪命
【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    剣刃一矢・報復
敵を【近接斬撃武器による突き】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ   :    剣刃一弾・止水
対象のユーベルコードに対し【近接斬撃武器による弾き】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サムライエンパイア・百地砦
 猟兵達が転送されたのは、一面の雪景色の中にひっそりと佇む忍者砦『百地砦』の内部。
 猟兵達の突然の登場に驚く百地砦の化身忍者たちに、事情を説明し天下自在符を見せて信頼を得た後、猟兵たちは砦の外に目をやった。

「さあ、伊賀者どもよ、そして匿われている者よ。大人しく刀を捨て、その命を差し出すが良い」
 老獪な声と共に砦を包囲するよう迫るのは、頭部を白いヘルメットのようなもので覆い、血塗られた刀を携えし異形。
 彼らこそが、数多の戦場に介入し、卓越した剣術で数多の血と魂を強奪し、時に猟兵たちをも苦しめてきた、魔神兵鬼『シュラ』だ。
 しかも彼らは、憑装した『風魔小太郎』の力で、剣術だけでなく忍びの技も身につけている。
 如何なる隠し玉を持ち合わせるのか、予想もつかないが。
「風魔か……流派は異なれど、我らにもその手口は多少見当がつくかもしれぬ」
 いつの間にか、化身忍者たちも忍者刀を抜き、手裏剣を構え、応戦体勢を取っている。 
「いずれ追い返さねばならぬ敵なのだ。我々も貴殿らと共に戦おう」
 油断なく異形の集団を睨む化身忍者たちに、猟兵達はひとつ頷いて得物を手に取り、砦外に駆け出した。

 ――この砦にて匿われている、「首塚の一族」を守る為に。

※マスターより補足
 魔神兵鬼『シュラ』は、憑装した魔軍将の力で、剣術と同時に忍術をも扱いますが、同時に汚い手段を躊躇なく実行に移します。
 本シナリオにおいては、忍術の行使は【魔神兵鬼『シュラ』のユーベルコードの発動と同時に、スキルによる追加攻撃が実行される】という扱いとします。
 各ユーベルコードに対応する追加攻撃は、以下の通りです。

 POW:近接斬撃武器に、肉体を蝕む猛毒が塗られている(マヒ攻撃、毒使い)
 SPD:突きと同時に、無数の忍者手裏剣を投げつける(投擲、乱れ撃ち)
 WIZ:相殺すると同時に、口から顔面に眠り薬を浴びせる(ブレス攻撃、気絶攻撃)

 追加攻撃は、百地砦の化身忍者たちと共闘することで、事前に見破って警告してくれたり、追加攻撃そのものを妨害してくれたります。結果としてユーベルコードのみに対応すればよくなるため、プレイングボーナスの対象となります。
 一方、あえて化身忍者たちの力を借りず、追加攻撃もご自身で対処されても大丈夫です。どうぞ、御心のままに行動してください。
 その他、化身忍者たちに取ってほしい行動がございましたら、プレイングに記してください。

 ちなみに、憑装した魔軍将『風魔小太郎』と会話することもできますが、おそらく有益な情報は得られないでしょう。

 ――それでは、最善の戦いを。
舞塚・バサラ
【SPD】
死しても務めより逃れ得ぬのは忍の定めに御座るか
ともあれ、罰裁羅忍群残党が一人舞塚・罰裁羅
助太刀仕る

伊賀の各々方
彼奴等はかの風魔小太郎の技術を身に着けた次第
ならば一つの技に即座の次が飛ぶ事必定
一手目の技は此方で凌ぐ故、二手目の妨害をお頼み申す
なに、そこさえ止まるならば…(陽術:不知火刀発動。相手の突きを【見切り】、分身で受ける)
手数は某らの方が上で御座る

本物の風魔小太郎と違い攻撃可能な腕足は4本
故に攻撃の手数は本物より減る筈
なので基本はUCの分身による数の暴力で押しつつ、動きを見て一体一体を狩るで御座る(見切り、投擲、残像、暗殺、早業)
UCの代償は味方である分身への攻撃にて支払う次第



●定めに殉ずる風魔忍を討つ
「死しても務めより逃れ得ぬのは、忍びの定めに御座るか」
「超・魔軍転生」によって召喚された魔軍将かつ風魔忍軍の長こと『風魔小太郎』の魂を憑装させた異形の侍集団を眺めつつ、妖と悪党狩りを生業とする忍び、舞塚・バサラ(變亡する陰陽・f00034)が呟く言の葉は、ちらほら舞う雪に紛れ、誰の耳にも届かない。
 バサラはひとつ息をつくと、百地砦の化身忍者の長らしきものに居住まいを正し、一礼。
「罰裁羅忍軍残党が一人舞塚・罰裁羅、助太刀仕る」
「かたじけない、恩に着る」
 バサラは化身忍者たちと共に、百地砦にじわじわと迫る魔神兵鬼『シュラ』の一団を観察。
 木々に隠れつつ足音を立てぬよう移動するシュラの一団に、バサラは違和感を覚えた。
「足運びが武士のそれではござらぬな」
 気付いた化身忍者からの指摘に、左様、とバサラは一つ頷く。
「伊賀の各々方、彼奴等はかの風魔小太郎の技術を身に着けた次第」
「成程」
 風魔の名を出されても、瞬きひとつせず首肯する化身忍者たち。
「ならば、一つの技に即座の次が飛ぶこと必定」
「あり得ぬ話ではないか」
「左様。一手目の技は此方で凌ぐ故、二手目の妨害をお頼み申す」
「委細承知……皆、聞いたな」
 バサラの頼みに、化身忍者たちは諒承の意を表すよう、頷いた。

「外法の者どもよ……問答は無用。焼き滅ぶがいい」
 バサラは陽術刀:不知火火車から漏れ出た地獄の陽炎を地に落とし、88体もの分身を生成。
 そのまま分身と共に砦外に身を躍らせ、シュラの一団に接近する。
「伊賀忍……否、猟兵か!」
 風魔小太郎の魂を宿す呪術兵器の一団は、バサラとその分身たちの姿を認めるや否や、紅に染まる刀身を突き出し、迎撃。
 刃を避けきれず心の臓を貫かれた分身は、直後に炎と化し消滅したが、呪術兵器たるシュラたちは炎に怯むことなく、刃を突き出した姿勢のまま大量の忍者手裏剣を生成し、投げつける。
 六腕の本物の風魔小太郎に比べれば腕足の数は劣るが、術で生成しそのまま投げつければ腕足の不足は十分補える。
「はっ!!」
 小太郎の声で発せられた気合とともに、無数の忍者手裏剣がバサラたちの全身に雨あられと降り注ぐかと思われた、その時。
「今だ、放て!!」
 化身忍者たちがシュラの四肢や顔面に苦無を投げつけ、忍者手裏剣の嵐を妨害した。
 苦無が四肢に刺さったシュラたちが生成した忍者手裏剣は、投げられることなくバラバラと地面に落下した。
 それでも苦無を避け術を維持したシュラたちが放った忍者手裏剣の嵐が、バサラたちの四肢や心の臓を穿たんと荒れ狂うが、バサラは慌てない。
「なに、そこさえ止まるならば……手数は某らの方が上で御座る」
 バサラの分身たちが一斉に輝くと、目にも止まらぬ忍者刀の九連撃の暴風が忍者手裏剣の嵐をかき消し、驚き足を止めたシュラたちを次々と斬り伏せていった。
「あの者を狙え!」
 唯一輝かなかったバサラを本体と見たか、再度シュラの刀がバサラの心の臓を狙い鋭く突き出されるが、バサラは素早く身を翻しそれを避け。
「バサラ殿!」
 突きと同時に忍者手裏剣が現れることを見抜いた化身忍者が、咄嗟に煙玉を投げつけ、煙幕で妨害。
 シュラが立ち込めた煙に一瞬足を止めたその隙に、バサラと分身の1体は素早くシュラの背後に回り込む。
 バサラに先んじて分身が死角から斬りかかるが。
「甘いわ!」
 気配を察したシュラが素早く身体を捻りながら刀を振り下ろし、分身を斬り伏せた。
 斬り伏せられた分身はその場で頽れるが、バサラは構わず踏み込み、陽術刀で分身ごとシュラを斬り上げた。

 ――斬ッッッ!!

 斬り上げられた分身は、陽炎の如く揺らめきながら消滅し。
「馬鹿な……分身、ごと……」
 胴を逆袈裟に斬り上げられたシュラは、どう、と音を立てながら地に倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

名張・辿
忍者同士の集団戦かぁ、コソ泥上がりにゃちょっくら目まぐるしいかもしれないねぇ

仲間の化身忍者にこの砦の弱点となり得そうな所を聞いて、こっそりと移動、
着けば【穴倉の監視所】を発動、守りを補う出城の形で廃砦を召喚するよ
ま、事が済んだら消えるんで、大目に見てくださいな、鼠どもも見てくれはともかく、仕事は真面目ですんで

召喚した鼠は基本、周囲の仲間の化身忍者の援護や壁役を担当させようかね
受け入れてもらえるようなら何人かに指揮下に預けちまおう
戦いの相手の挙動について観察できたら化身忍者に報告、有用な推測を得て、仲間内で共有できるように知らせて回ろうか

後は周囲で負傷者の救出活動をしたり、応急処置して回ろうかね



●鼠遣われは隠となりて忍びを救う
「忍者同士の集団戦かぁ」
 コソ泥上がりにゃちょっくら目まぐるしいかもしれないねぇ、とぼやく名張・辿(鼠遣われ・f04894)の姿は、見るからに渡世人。
 場違いな場に来たと思われたのだろうか、化身忍者たちが訝しむような目つきで辿を睨んでくるが、辿は天下自在符を突き付けた。
「敵じゃないよ」
「これは……失礼しました」
 辿が猟兵と知り態度を改めた化身忍者たちに、辿はさっそく質問。
「この砦の弱いところ、ってどこかねぇ」
 化身忍者が指差したのは、砦の東側。
 その先には雪深い山がそびえ立ち、天然の要塞の役割を果たしている。
 この季節、山を越えて砦まで進軍するのは困難を極める。
 ――ただし、それは他の忍びや武士たちに限っての話。
(「魑魅魍魎にとっては、いくら高い山だろうが関係ないねぇ……」)
 猟書家はともかく、呪術兵器ならば寒さも雪も意に介さず山を越え、奇襲をかけるだろう。
 こそりと砦の東側に移動した辿は、適当な印を組み、呪を紡ぐ。
「盟友の眠りの監視者達よ、今一度、我らの領域に旗を立てよ」
 呪が完成するとともに、急所となりえる砦の東側に、守りを補う出城のように半ば廃墟となった小さな砦が君臨。
 廃墟の扉が開き、砦内に人間……のようなものがぞろぞろと姿を見せた。
「うわああああああ!?」
「ね、鼠の幽霊!?」
 出城から現れたのは、武装した人間大の二足歩行する鼠の幽霊が390体。
 数々の魑魅魍魎を目にしてきた化身忍者たちも、さすがに度肝を抜かれていた。
 中には反射的に手裏剣を投げ、しかし幽体ゆえにすり抜けたのを見て腰を抜かす者もいた。
 化身忍者たちの反応を見て、辿は頬を指でかきつつ、嗜める。
「ま、事が済んだら消えるんで、大目に見て下さいな。鼠どもも見てくれはともかく、仕事は真面目ですんで」
 本当か? と言いたげな化身忍者たちの視線が、辿に突き刺さっていた。

 数分後。
 戦場には、大真面目に化身忍者たちを助ける鼠たちの姿があった。

 シュラと切り結ぶ化身忍者を見かければ、自前の爪牙と不衛生で錆び付いた粗雑な武器で背後からシュラを奇襲し、地に沈め。
 化身忍者の背後から血塗られた刀を振り下ろさんとするシュラを見れば、壁のように割り込んで爪牙で受け止める。
「鼠どもめ……」
 シュラに憑装している風魔小太郎の呻き声が、そこかしこから響く。
 鼠たちの乱入により、なかなか化身忍者を討ち取れずにいたからだ。
 一方、辿は戦場を駆け巡り、鼠たちと交戦するシュラたちの挙動を観察しながら、傷を負ったりなぜか無傷で昏倒している化身忍者たちを救出。
 砦内へ連れ帰って応急処置を施しながら化身忍者たちを観察した辿は、彼らの顔面を濡らす液体の存在に気づき、手近な化身忍者に報告した。
「奴さんら、口から薬を吹きつけることがあるようだなぁ」
 近づいて浴びた日にゃ、何が起こるのかねぇ……とぼやく辿に、化身忍者たちが納得したかのように頷いた。
「おそらく眠り薬だろう。情報、感謝する」

 化身忍者たちも鼠を受け入れ始めたか、少しずつ鼠と連携し始める。
 辿から齎された情報をもとに、極力シュラと切り結ばないよう距離を保ちつつ、鼠の壁を利用して死角に回り込んで手裏剣を投げ、背後から忍者刀で首を掻っ切り、1体ずつ確実に仕留めてゆく。
 シュラたちも化身忍者の壁として立ちはだかる鼠を優先して斬り払い始めた。
「不潔な鼠ども……疾く去れ!」
 シュラたちが鼠の粗雑な武器を刀で弾きながら顔面に眠り薬を吹きつけ、無力化しようとするが、幽霊である鼠たちは薬では眠らない。
 憑装している風魔小太郎が一瞬だけ言葉を失い、シュラの動きが止まった隙に、鼠たちは自前の爪牙でシュラの顔面と四肢を叩き、砕いた。

 鼠たちが化身忍者たちの盾や矛となり、確実に砦にとっての脅威を排除し続けるとともに、辿の救助活動でかなりの数の化身忍者の命が救われていた。
 ――戦況は、徐々に百地砦側に有利になりつつある。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
国家転覆?…もう戦国は終わったろ
郷は明かせないけどオレも降魔の忍びの端くれ、名は赭
加勢させてくれない?

相手は剣士か
ならオレらは遠目から攻める?
伊賀者と連携
常に敵位置把握【情報収集/地形の利用】
身を隠し火薬、飛び道具でじりじり攻撃
つーてもアレには手練れの忍が憑いてるって
じき手の内も読まれるし直接斬らなきゃ終わらねー
オレが隙見て飛び込む
警戒するけど
伊賀さん方は敵の不意の手を教えて欲しい
UCは現地や背景に馴染む鳥達
四方より金属音や風切音、足音を模した囀りで敵に突進撹乱
攻撃力無の鳥に手裏剣と自身も紛れさせ【念動力で投擲/忍び足】で背後取る位置に接近
眠り薬を躱せば首後ろや手首を狙い斬る【暗殺】

アドリブ可



●戦国の世に戻さぬために
「国家転覆? ……もう戦国は終わったろ」
 オウガ・フォーミュラ「クルセイダー」の狙いを思い返すような鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)の呟きは、百地砦の化身忍者たちの耳には入らない。
「郷は明かせないけど、オレも降魔の忍びの端くれ。名は赭」
 出自が隠れ里ゆえ、あえて伏せて名乗ったトーゴを、しかし化身忍者たちは特に疑わず受け入れる。
 ――トーゴの動きに、同じ忍びの匂いを感じ取ったのだろう。
「赭殿とお呼びするほうが良いか?」
「トーゴでいいよ。加勢させてくれない?」
「トーゴ殿のような天下自在符を持つ者たちの助太刀は有難い。頼む」
 頼んだのは此方なのに、逆に化身忍者たちから頭を下げられ、トーゴはバツが悪そうに頬を指1本でかいていた。

 遠目にシュラの一団を確認したトーゴは、口中で言の葉を転がす。
「……相手は剣士か」
 ざっと見たところ、得物は血塗られた刀のみ。
「なら、オレらは遠目から攻める?」
「刀で弾いた後眠り薬を吹きつけてくる故、その方が良いかもしれぬな」
 化身忍者がトーゴに齎した情報は、先ほど別の猟兵が確かめた情報。
 頷いたトーゴは、編布の外套を深くかぶりつつ木々に身を隠し、移動。
 同じように移動した化身忍者たちと連携しながら、トーゴは火薬を顔面に投げ、クナイや手裏剣で四肢を狙う。
 狙い通り、シュラたちは顔面で爆発した火薬に怯み、クナイや手裏剣に四肢を穿たれていたが、トーゴは決して油断しない。
 なぜなら……。
「つーてもアレには手練れの忍が憑いてるって……」
「風魔忍の棟梁……風魔小太郎だな」
「ああ、じき手の内も読まれる」
 トーゴの言通り、化身忍者たちの太刀筋や投げ筋は徐々にシュラたちに読まれ始める。
 無理やり斬り結ぼうと突撃した化身忍者のひとりが、至近距離から眠り薬を吹きつけられて昏倒した後、止めを刺されていた。
 ……これでは、埒が明かない。
「直接斬らなきゃおわらねー。オレが隙見て飛び込む」
「トーゴ殿、無理はせぬようにな」
「警戒するけど、伊賀さん方は敵の不意の手を教えてほしい」
「あいわかった」
 トーゴは何かを呼び寄せるように、手をひらひらとさせ始める。
「彩織り、音の羽、沙謡の鳥……喚び掛けにお応えありがとよ」
 トーゴの呼び寄せに応じ現れたのは、雪景色に溶け込むシマエナガや、木々に馴染む雀など、92匹の音真似の巧みな鳥たち。
「頼んだぜ」
 トーゴの手で四方八方に放たれた鳥たちは、戦場で奏でられるであろう音を真似し、囀り始めた。
 それは剣戟の音であったり、風切り音であったり、足音であったり。
 雪景色の中で、鳥が真似する音と化身忍者たちが奏でる音が奇妙に融合し、増幅され響き渡る。
「む……?」
 風切り音や足音が四方八方から響き渡るのを耳にしたシュラが、足を止めた。
 これがシュラだけだったら、音に惑わされることなく目的のみを遂行し、化身忍者の首を掻っ切ったはず。
 ……音を気にしたのは、憑装されている風魔小太郎だった。
(「手数が増えたか……?」)
 数々の戦場の音の意味に囚われたシュラの紅き瞳に、あるものが映る。
 それは、真正面から額を狙い飛ぶ忍者手裏剣。
「くっ……!!」
 鳥たちの声真似に紛れるように放たれた手裏剣を血塗られた刀で叩き落としつつ、シュラが眠り薬を正面に吹き付けようとした、その時。

 ――ザシュッ!!

「ぐ、は……!!」
 一瞬無警戒になった背後から突然首の付け根を掻っ切られたシュラは、眠り薬を吐き出しながら前へよろめく。
 かろうじて足を踏ん張りながら身を翻したシュラの目に映ったのは――背後から一太刀浴びせたトーゴの姿だった。
 彼が手にした七葉隠の号を持つ透明な忍者刀の分かたれた一振りの刃は、シュラの血で濡れている。
 ――鳥たちの音真似の囀りは、背後に回り忍び寄ったトーゴの気配をも完全にかき消していた。
「戦乱の世には戻させないよ」
「まだ終わら……っ!」
 無理に振り下ろされようとしたシュラの刀を、トーゴは素早く七葉隠を閃かせ手首を斬り、地に落とす。
 そしてそのまま、返す刀で心の臓を一気に貫き、命脈を断った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
また新たな猟書家ですか
安倍や豊臣達となれば風魔も利用されるのは自然
いずれにせよ、まだ首塚の者達が助けられるのならば戦うのみ

現地に到着時、化身忍者達には援護を要請
剣術には私も覚えがありますが忍術は詳しくありません
扱う忍術を教えて貰う、または忍術発動の際に敵に妨害を頼みましょう

付近の敵に向かって駆け出し、早業の抜刀術『陣風』
2回攻撃となぎ払いを併せて複数の敵を巻き込むように仕掛ける
駆け出す際の妨害も想定し投擲は武器落としと残像にて対処
抜刀術後は討ち損ねた敵の追撃、終えたら更に付近の敵を狙う

視力と見切りにて動きを読み、武器受けの防御または残像による回避
負傷と毒には耐性と継戦能力にて攻撃の手は緩めない



●無数に舞う銀は魔軍将を翻弄す
「また新たな猟書家ですか」
 やや呆れがちに月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の口から紡がれた言の葉の意味を、百地砦の化身忍者たちが知ることは、おそらくない。
 だが、一方で猟書家たちに厄介な共通点があることもまた、夜彦は承知している。
 ――すなわち、過去の魔軍将を召喚し、利用していることを。
「安部や豊臣達となれば、風魔も利用されるのは自然、でしょうか」
 オウガ・フォーミュラ「クルセイダー」は、豊臣の血縁の者。
 彼が侵略蔵書を以て行使する能力「超・魔軍転生」は、かつてエンパイアウォーで猟兵たちを苦しめた魔軍将の魂を召喚する、外法。
 夜彦はこれまで、数々の魔軍将が憑装したオブリビオンや、いち猟書家だった頃のクルセイダーと何度も刃を交えてきている。
 だから、百地砦に迫る魔神兵鬼「シュラ」に、魔軍将が一、風魔小太郎が憑装されていると聞いても、驚くことはない。
「いずれにせよ、まだ首塚の者達が助けられるのならば、戦うのみ」
 日ノ本の上空を遷ろう魔空島原城を叩き落とすために必要な一族を、魔に殺めさせぬ。
 夜彦は、愛用の刀を手にする右手を、ぐっと握りしめていた。

 夜彦は剣術に覚えはあるが、忍術には詳しくない。
 それを正直に化身忍者に打ち明け援護を要請したところ、化身忍者たちは快く引き受けてくれた。
「夜彦殿、奴らの血塗られた刀に注意を払っておくほうが良いかもしれぬ」
 忍びの勘だが、と確証なさげに付け加える化身忍者たちだが、夜彦にとっては貴重な情報だ。

「行きます」
 夜彦は砦外に飛び出した化身忍者より先んじてシュラの一団に切り込み、集団の真っ只中で納刀状態の夜禱を一気に抜き放つ。
「全て、斬り捨てるのみ」
 決意と共に、横薙ぎに居合の一閃。
 返す刀でさらに一閃。
 二閃を皮切りに周囲を無数の斬撃が舞い、四方八方から夜彦を斬り刻もうと接近したシュラを、銀の斬撃の嵐がバラバラにする。
「無謀な剣士もいたものよ」
 斬撃から逃れ、しかし夜彦を嘲笑うシュラ……否、風魔小太郎の手がわずかに動き、いつの間にか手にしていた手裏剣が投げられる。
 ほぼ前兆なく投げられたそれに、夜彦は気づかない。
「夜彦殿!!」
 しかし、シュラの動きを察した化身忍者のひとりが手裏剣を投げ、妨害した。
 手裏剣同士が音を立てて衝突し、双方地に落ちる音で、夜彦も気づく。
「援護感謝する!」
 夜彦の礼を遮るように投げられた二投目は、夜彦自身が顔面に翳した刀で防ぎ、地に落とす。
 しかし、手裏剣を囮にシュラは一気に夜彦との間を詰め、血塗られた刀を逆袈裟に斬り上げた。
 胴を両断せんと狙ったその刀は、奇妙な輝きを帯びている。
 鈍くもあり透明でもあり、人のいのちそのものでもあり禍々しくもあるその輝きの何が奇妙なのかは、夜彦には説明できないのだが。
 ――奴らの血塗られた刀に注意を払っておくほうが良いかもしれぬ。
 化身忍者たちの忠告が、夜彦の脳裏をよぎった。
 その意味を考えるより早く、夜彦は夜禱を振り下ろし、血塗られた刃を防ぐ。
 ――ギィンッ!
 甲高い金属音を立て噛み合った刃と刃から地面に滴り落ちる血は雪を溶かし、その下で春を待つ雑草を……枯らす。
(「あの刃には毒が塗られていましたか!」)
 もし、そのまま斬られていたら、夜彦はやがて毒で動けなくなっていたはず。
 毒への耐性はあるとはいえ、忍者が使う未知の毒故、どこまで耐えられるかは未知数。
 ――化身忍者たちの忠告は、同じ忍びゆえの勘だったのだが。
 図らずとも証明された今、血塗られた刃に掠ることすら許されないだろう。
 夜彦は残像で刀を避けながら、無数の斬撃で深手を負ったシュラを優先し、斬り捨ててゆく。
 時折襲い掛かる別のシュラの刀の太刀筋を見切り、時に夜禱で受け止め。
 決して手を緩めることなく、次々とシュラを斬り捨て、その数を減らしていった。

 夜彦と化身忍者たちの奮戦により、徐々に道は切り開かれつつある。
 ――猟書家に手が届くまで、あと少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

百地砦。かの百地三太夫ゆかりだっけ?まあ、信長の城を地に堕とした首塚の一族は狙われやすいんだろうね。

実はアタシ達家族は忍者との戦闘経験が少ない。ぜひ化身忍者の助けを借りたい。あの厄介な搦め手を何とかすればアタシ達が上手くやるさ。

まず【オーラ防御】を展開してから【目立たない】【忍び足】【戦闘知識】で敵の集団の背後を取る。上手く背後を取れたら【二回攻撃】【範囲攻撃】を併せた【気合い】を入れた竜牙で薙ぎ払う。敵の攻撃は【残像】【見切り】で回避、回避しきれなかったら【カウンター】で【衝撃波】を入れる。さあ、前座はとっとと退場しな!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

まあ、前の戦で、首塚の一族は安土城を地に堕として戦の趨勢を決めましたし、本拠の護りを崩す力は危険なんでしょう・・・こちらとしては敵の事情は知った事ではありませんが。

実は私達家族は忍者との戦いには慣れてません。ぜひ化身忍者の皆様の力を借りたく。

搦め手さえ何とかなれば、敵の攻撃は防いで見せます!!トリニティエンハンスで防御力を上げ【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【受け流し】で敵の攻撃はなるべく引き受けます。攻撃出来る余裕が出来たら、【二回攻撃】【衝撃波】【範囲攻撃】で攻撃しますよ。さあ、道を空けて貰いましょうか!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

どんな城の護りも打ち破り、落とす能力。彼の猟書家に取っては危険なんでしょうね。でも思う通りにはさせません。

僕達家族は忍者との戦には不慣れで。ぜひ化身忍者の方の力を借りたく。厄介な追加攻撃さえ対処出来れば、僕達が何とかしましょう。

動き回る敵に上手く仕掛けられるのは賭けですが・・・【高速詠唱】で【範囲攻撃】化した【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を敵集団に展開。月光の狩人と共に【誘導弾】で追撃します。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。僕達が駆けつけたからにはこの里の蹂躙は許しません!!



●忍びの砦に現れし家族は、忍びの技を見聞す
 ――サムライエンパイアにはたくさんの思い出があるから、壊させない。
【真宮家】の3人は、その想いを胸に、雪深き百地砦を訪れていた。
「百地砦……かの百地三太夫ゆかりだっけ?」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)が出したその名にピンとこないのか、揃って首を傾げる化身忍者たち。
 それを見た神城・瞬(清光の月・f06558)が、咄嗟にフォローに入った。
「母さん、ここの忍びの方々には、おそらく百地丹波守のほうが通じるかと……」
「左様。ここは伊賀流上忍であった百地丹波守の砦……正確には跡地だが」
「ああ、なるほど」
 瞬のフォローを受けた化身忍者の説明に、納得いったかのように頷く響。
 化身忍者たちにとって、架空の人物とされる「百地三太夫」はピンとこないが、そのモデル(?)とされている百地丹波守を良く知るのは、ある種必然だったのかもしれない。
 仮にもし、サムライエンパイアの何処かにその名を持つ者がいたとしたら、現状ではオブリビオンとして蘇った「百地三太夫」である可能性が高いだろう。

 百地砦内の建造物は、天正伊賀の乱の際に焼き払われたらしく、当時を偲ぶ建物は跡形も残っていない。
 一方、四方を山に囲まれた砦の周辺は伊賀忍の修行の場としては最適な地形のようで、現在でも修行の拠点として利用されている。
 守りは易く、攻めるは難い地形にそびえ立つ砦を修行の場とする化身忍者をつけて重要人物を匿うのは、ある意味理にかなっている。
 ……だが、さすがに侵略蔵書「ぱらいそ預言書」を持つ猟書家相手では分が悪かったのだろう。
「上様の乳母……斎藤・福様に連なる一族とはいえ、空に浮く城を地に引きずりおろす恐るべき呪詛を持つ一族……ううむ」
「まあ、信長の城を地に堕とした首塚の一族は狙われやすいんだろうね」
 唸る化身忍者たちに、響が頭をかきながら呟き、瞬と奏が揃って頷く。
「前の戦で、首塚の一族は安土城を地に墜として戦の趨勢を決めましたし、本拠の護りを崩す力は危険なんでしょう」
「どんな城の護りも打ち破り、落とす能力。彼の猟書家に取っては危険なんでしょうね」
 魔空島原城の守りが破られるのを恐れているのは、何処かでこの戦いを見ているはずの猟書家か。
 ……あるいは、オウガ・フォーミュラ「クルセイダー」その人か。
 いずれにせよ、日ノ本各地に分散して匿われている一族のひとりに暗殺の為の手駒を差し向けてきた以上、クルセイダーに「首塚の一族」が恐れられているのは、確かと見て良いのかもしれない。
「でも思う通りにはさせません」
「ええ、こちらとしては敵の事情は知った事ではありません」
「然り。相手の事情など知らぬ。我々は災いを祓うのみ」
 瞬と奏の力強い言の葉に、化身忍者も同意するかのように頷いていた。

 響たちは改めて、百地砦の周囲を見渡す。
 ひときわ険しい山々がそびえ立ち、一方で最も守りが薄いと見ていた砦の東側には、妙な廃墟が出城の役割を果たすように陣取っていた。
 化身忍者たちに聞いたところ、別の猟兵が怪しげな術(ユーベルコード)で構築したものらしい。
 ならば今は、出城の無い残る三方向から迫るシュラたちを撃破すべきだろう。
 その中でも瞬たちが最も危険と見たのは……一段土地が低い、伊賀盆地に通じる西側。
 西側に打って出るその前に、真宮家にはやることがあった。
 ――すなわち、化身忍者たちへの協力要請。
「僕達家族は忍者との戦いには不慣れで、ぜひ化身忍者の方々の力を借りたく」
「ああ、実はアタシ達家族は忍者との戦闘経験が少ない。ぜひ助けを借りたい」
 サムライエンパイアでの戦闘経験は豊富な真宮家の3人だが、実は忍者との交戦経験はあまりない。
 特に響と奏は、罠があれば解除を試みるより「はまって踏み潰す」ことが多いため、搦め手で攻められると対応しきれないこともある。
 それを自覚している響と奏は素直に頭を下げ、化身忍者たちに助力を請うた。
「あの厄介な搦め手を何とかすればアタシ達が上手くやるさ」
「ええ、厄介な追加攻撃さえ対処できれば、僕たちが何とかしましょう」
「その言葉が心強い。では……」
 瞬の言もあり、頼もしそうな視線を真宮家に向ける化身忍者たちが、瞬たちに伝えた搦め手は、3つ。
 ――血塗られた刀で突いた直後に、大量の手裏剣を投げつけられる術。
 ――至近距離から刀で得物を払われ、眠り薬を顔面に吹き付ける術。
 ――そして、最後のひとつが……刀に猛毒を塗布する術。
「どれも厄介ですね……」
 提示された搦め手がいずれも至近距離からの不意を突く性質であることに気づき、呻く瞬。
 時に暗殺の任を担うに相応しい忍術を不意に発動された場合、対応は厳しいことは容易に予測がつく。
 しかし、至近距離での戦闘を余儀なくされる以上、対策は考えねばなるまい。
 残り少ない時間を、響と奏、瞬の3人は、対策を考えることに費やしていた。

●紅と翠、銀の雪は呪術兵器を圧倒する
「行きます!」
 迫りくるシュラの集団を見て、化身忍者と共に飛び出したのは、奏。
 搦め手は正直苦手だが、逆に言えば搦め手さえカバーしてもらえれば対処できる。
 火と氷、風の三属性をエレメンタル・シールドに宿し、雪を確りと踏みしめどしりと構える奏に、先んじたシュラの血塗られた刀が、奇妙な鈍い光を帯びながら奏に振り下ろされる。
「その太刀筋なら!」
 奏は化身忍者からの情報を自分なりに分析し、太刀筋をよく観察してエレメンタル・シールドの角度を調整し、シールドの表面を滑らせるようにしながら刀を受け流す。
 シールドを覆う薄緑のオーラが血塗られた刀の奇妙な光を絡め取り、シールドを大きく斬り裂く直前でその威力を大きく減じながら刃を逸らした。
 結果として、シールドを一気に切断しかねない程の一撃はシールドの表面に浅い傷を作るにとどまるが、振り抜かれた刀から奇妙な光と共に何らかの液体が滴り落ち、雪を融かした。
 液体が雪の下に隠れていた雑草に触れると、瞬く間に雑草が枯れていく。
「毒が!?」
「然り! その刀には毒が塗られてござる!!」
 枯れた雑草を化身忍者たちも視認したか、奏に向けた警告は瞬の耳にも入っていた。
「それなら、僕が近づけさせないようにします」
 瞬が六花の杖を素早く翳し、小声かつ早口で何か唱えると、瞬の周囲の空気が不可視の針を大量に含んだ刺々しい結界へと変化し、半球状に展開される。
 咄嗟に刀を翳し、刺々しい結界から顔面を守ったシュラたちは、そのまま刀で空気を斬り払い、さらに無数の手裏剣を滝のように浴びせようとする。
 忍術で召喚した手裏剣が、シュラの目の前に実体化しかけるが。
「ぐ……っ、腕が……痺れ……」
 呻き声と共にシュラたちはだらりと刀を下ろし、実体化しかけた手裏剣は虚空へと霧散した。
 瞬が展開した結界には、触れた相手に麻痺毒を送り込む術式が組み込まれている。
 刀を翳した程度では術式を防ぐことは、できない。
「僕達が駆けつけたからにはこの里の蹂躙は許しません!!」
「覚悟してください!」
 麻痺毒で動きが鈍くなったシュラは、奏のシルフィード・セイバーから放たれる衝撃波で、次々と地に沈められていく。
 動き回る相手には分が悪いと思っていたが、上手くいったようだ。

「手練れの猟兵のようだが、いつまでも持つとは思わぬことだ」
「!?」
 瞬の結界の影響を免れたシュラが、奏の不意を突くように現れる。
 そのまま三重の魔力とオーラの守りを破り、奏に猛毒を塗布した刀を振り下ろそうとした、その時。
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!」
 突然、シュラの背後から浴びせられたのは、女傑の一喝。
 耳元で一喝され、一瞬怯んだシュラの背中を、周囲の雪すら融かす灼熱が炙り。
 ――ズバアッ!!
 灼熱に怯んだシュラの背中を、赤熱の刃物が大きく斬り裂いた。
「ぐ……っ!!」
 仮面の下で、くぐもった呻き声をあげる、シュラ。
 シュラ自身は痛みを気にしないが、憑装している風魔小太郎は痛みを感じるのだろう。
 背中全体が炎で炙られ、火傷で引き攣るような痛みに襲われ、呻くシュラ……否、風魔小太郎。
 それでもなお、身を翻しながら刀を振り上げるのは、使命を果たすべきとの執念だろうか。
 振り向きざまに刀を振り上げつつ一瞬だけ見えた、ブレイズランスを振り下ろし切った響の脳天を叩き潰しながら二枚おろしにするように、全力で刀を振り下ろす、シュラ。
 だが、刀に触れた響は、紅き陽炎となって霧散した。
「幻影か!?」
「汚い手を使うのであれば、遠慮はいらないね! さあ、前座はとっとと退場しな!!」
 紅きオーラを炎に見立て、残像を生み出すことで頭からの唐竹割りを避けた響が、刀を振り下ろし切り大きな隙を晒すシュラの仮面目がけて、再度ブレイズランスを突き出す。
 灼熱の穂先はシュラの仮面を易々と貫き、その命を刈り取った。

 残ったシュラたちには、瞬が召喚した狩猟鷲の群れと麻痺毒を含めた誘導弾、そして奏と響の新緑と赤熱の衝撃波が襲い掛かる。
 気が付けば、ほとんどのシュラたちが掃討されていた。

●狩人の登場
 随分数を減らしはしたものの、散発的に押し寄せるシュラたちを、猟兵達が手練れの業で退け続けた、その時。
「妙に砦の制圧に手間取ると思ったら、猟兵たちがいるのかあ」
 砦の西側から響いた女性の声が耳に入ると、シュラたちが道を開けるようにさっと退く。
「ふうん……でもこれは、ボクの養分になってくれる相手が増えたかな?」
 シュラたちが作った道を、嬉しそうにつぶやきながら歩いて猟兵達の前に姿を見せたのは、青みがかった紫のヴェールを被った僧服の女性。
 女性――猟書家『獣狩りのアルヴィナ』は、鼻歌を歌いながら、右腕に備えた巨大な金属製の杭を猟兵に向けた。

 ――紫の瞳は、血沸き肉躍る戦への期待に満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『獣狩りのアルヴィナ』

POW   :    零距離、取ったよぉ!
【瞬時に間合いを詰めて、パイルバンカー】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    躱せるものなら躱してみなよ!
【対猟兵用クレイモア地雷】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    キミも料理してあげようか?
戦闘中に食べた【調理済みの肉】の量と質に応じて【身体能力強化と自動回復能力を得て】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟書家は戦を僭称した狩りを望む
「あーあ、ここまで抵抗されちゃ、いつまでたっても『首塚の一族』は狩れないじゃないか」
 僧服を身に纏い、凡そその装束に不釣り合いなパイルバンカーを猟兵達に向けている猟書家『獣狩りのアルヴィナ』は、しかし軽く首をひねっていた。
「うーん……風魔小太郎はボクには力を貸してくれないかあ」
 魔神兵鬼『シュラ』に憑装していた魔軍将は、アルヴィナの力を制約せぬよう憑装しないようだ。
「ま、まずは猟兵達を養分にしようっと」
 楽しませてくれるよね? と無邪気に同意を求めるアルヴィナだが、猟兵がそれに同意してやる理由はおそらくないだろう。
 ――猟兵達が全滅すれば、化身忍者と『首塚の一族』も彼女の養分にされるから。
「あ、君たちは手出ししないでよ? 彼らはボクの養分だからさ」
 アルヴィナの陽気な命令に、生き残った魔神兵器『シュラ』たちは控えるように1歩引く。どうやらこの戦いを邪魔するつもりはないようだ。

 一方、百地砦の化身忍者たちは、シュラを牽制するように一歩引く。
「……彼の面妖な女子は、貴殿らに任せるしかあるまい。頼む」
 圧倒的な力量差を感じ取ったか、化身忍者たちは表立って斬り結ぶつもりはないようだが。
 彼らの信頼を勝ち得た以上、煙玉や手裏剣による支援程度なら、アルヴィナの妨害をするように行ってくれるだろう。

 さあ、猟兵たちよ。
 目の前に現れた猟書家は、アリスラビリンスから来訪した好戦的な戦闘中毒者『獣狩りのアルヴィナ』。
 オウガ・フォーミュラ「クルセイダー」への反撃の機会を摘み取ろうとする彼女の首級をあげ、『首塚の一族』の命運を守り切れ。

 ――健闘を、祈る。

※マスターより補足
 第2章は猟書家『獣狩りのアルヴィナ』との純戦です。
 1章で生き残った魔神兵鬼『シュラ』たちは、アルヴィナの命を請け控えておりますので、猟兵を妨害することはありません。
 また、猟兵を無視してアルヴィナが『首塚の一族』を狙うこともございませんので、全力を以て相手してください。

 百地砦の化身忍者たちは、遠巻きにアルヴィナとの戦いを見守っておりますが、猟兵から要請があれば、煙玉と手裏剣による支援攻撃を行ってくれます。
 支援攻撃が必要な場合、もしくはほかの助力が必要な場合は、その旨プレイングに記入をお願いします。

 ――それでは、戦を望む狩人との最善の戦いを。
名張・辿
おっかないねぇ。ま、獣狩りなんて言うけど、俺の連れだって獣ばかりじゃないよ

【人恋しい共存不可存在】を使用、高機動と毒風の刃で嫌がらせしようかね

クレイモアに対しては風の刃で破壊したり爆発する前に通りすぎたりして対応、
土埃があがるようなら、それに紛れて忍び足で近寄って奇襲も試みる

クレイモアを投げる瞬間に風の刃で迎撃を狙ったり、
同じタイミングで逆にパイルバンカーを狙ったり、
風の刃での攻撃を警戒されたら敵の頭上に容器に入れた毒薬をなげてそれを狙ったり、
一気に詰め寄ってすれ違い際に持ち物をかすめ取ろうとしてみたり、
それらをフェイント交えて不規則に繰り返してみよう

さて、こんな戦闘も楽しめるかね、お嬢さん



●獣狩りが鼠を狩ること能わず
「あんな不潔な鼠たちを手懐けて、許しがたいオジさんだよ」
 許すならこの手で貫いて爆破してやりたいよ……と怒りを露わにしながら名張・辿に詰め寄る『獣狩りのアルヴィナ』。
「おっかないねぇ……」
 先程、鼠を従えてシュラたちを翻弄した辿は、好戦的な猟書家の登場に軽く諸手を挙げながらおどけるが、シュラたちを苦しめた鼠たちは既に姿を消している。
「鼠たちは何処へ行ったんだよ!?」
「さあね」
 声を荒げるアルヴィナに、すっとぼける辿。
 実は砦東側の出城に戻り、不意討ちに備え警戒をしているのだが、アルヴィナに教えてやる必要はないし、万が一教えたら先に砦内を狙いかねない。
「ま、獣狩りなんていうけど、俺の連れだって獣ばかりじゃないよ」
 今からそれを見せてあげるよ、と小さく呟き、見えぬ球を掴むように左手の指を丸めながら、囁く。
「来やれ、寂しがり屋の旧き友よ、今少し共に在れ……」
 囁きと共に己が寿命を削りながら召喚したのは、太古の意志持つ疫病。
 限りなく漆黒に近い紫色をした、毒素と呪詛を帯びた意志持つ疫病を身に纏いつつ、漆黒の髑髏のような形状をとった「それ」を、辿は左手で握り、どこかいとおしそうに眺めつつ、ぽつりと呟く。
「……まあ、多少は付き合うよ」
 孤独と友の死、何れか一方しか選べぬ己への呪いを籠めた言の葉は、アルヴィナの耳には届かない。

「オジさんだけなら都合いいよ。まとめて引っ掛かって吹っ飛んじゃえ!」
 アルヴィナが徐に取り出し、辿に投げつけたのは、対猟兵用クレイモア。
 サムライエンパイアに存在せぬ対人地雷は、本来は地面に設置し、センサーに障害物が反応すれば起爆するもの。
 だが、獣狩りが使えば、それは地に設置せずとも、センサーに反応した猟兵を無差別に狩りだし、爆殺する凶悪な武器へとなり得る。
 しかし……。
「おっと、そいつを爆発させるわけにはいかないねえ」
 辿は鉤のついた短剣・鼠剣を素早く振り抜き、風の刃を無数に生み出し、四方八方に撃ち出す。
 風の刃は、アルヴィナが投げつけたクレイモアを爆発させずに斬り刻み、全て無力化した。
「やるぅ」
 ひゅぅ、と口笛ひとつ鳴らしながら、アルヴィナが突然パイルバンカーを辿の腹に突き出すが。
「おっとっと」
 辿の纏う呪詛の風の刃がパイルバンカーの杭を絡め取り、勢いを殺しながら杭先を逸らした。
 ちっ、と舌打ちしながら、バックステップで後退するアルヴィナ。
「その風が邪魔だなあ、ボクも病気になっちゃうじゃないか」
 近づくだけで疫病を齎す呪詛を含む毒風に気づいたのだろう。
 風の刃に巻き込まれぬ様、距離を取ったアルヴィナの頭上に突然現れたのは……謎の容器。
「え?」
 いつの間にか辿が投げつけたその容器の中に入っているのは……毒々しい色の液体。
「さて、こんな戦闘も楽しめるかね、お嬢さん……あーらよっと」
 鼠剣を一閃し、辿が生み出した風の刃は、謎の容器のみを的確に斬り裂き、中の毒薬をアルヴィナの頭上から浴びせかけた。
「わっちゃっちゃっちゃ!!」
 毒の雨を浴びたアルヴィナが慌てている間に、辿は高速移動で一気に間を詰め、胸元の十字架を盗み取ろうと手を伸ばす。
 だが、寸前で察したか、辿の手はアルヴィナの左手で払い退けられた。
「オジさん、何狙っているんだよ!」
 怒るアルヴィナの左手に握られていたのは、先ほど辿が盗もうとした十字架。
(「ふむ……十字架を奪われることに過剰反応したのかねぇ」)
 それがクルセイダーへの忠誠の証なのか否かは、今はわからないけど。
「……やっぱりオジさんも鼠だよ」
「ま、鼠遣われだからねえ」
 怒りを籠めて辿を睨みつけるアルヴィナの視線を、辿は頭を掻きながら受け流していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
この世界での猟書家は特定の種族等に恨みを抱いていたり
人々への洗脳といった目的があるようですが
貴女は首塚の一族を狙ってはいるものの純粋に戦いを求めている様子
ならば、猟兵である私達が御相手致しましょう

視力、情報収集にて戦いながら武器の特性を確認
敵からの攻撃は回避を優先、見切りから動きを読み残像にて回避
敵に隙が出来るまでは接近し過ぎず、ある程度距離を保ちながら
抜刀術『神風』の2回攻撃、併せ武器落としと鎧砕きを使用
敵の武器にも刃が届くように攻撃を仕掛ける

地雷に警戒、敵が放った際には跳んで後退しながら
早業の抜刀術『神風』にて応戦して離れる
負傷は激痛耐性にて継戦能力にて攻撃の手は休めず攻撃を繰り返す



●神速の斬撃は地雷すら斬り裂き
 猟書家出現の一報を聞きつけ、駆け付けた月舘・夜彦が見たのは、毒々しい色に染まった僧服を身に着けた猟書家『獣狩りのアルヴィナ』。
 おそらく、先に相手した猟兵が、毒薬でも蒔いたのだろうか。
「全く、鼠のようにずるがしこいオジさんだったよ!」
 頬を膨らませ、しかし瞳に宿した剣呑な光を隠すことのないアルヴィナを見て、夜彦は己が記憶をたどっていた。
(「……この世界での猟書家は、特定の種族等に恨みを抱いていたり、人々への洗脳といった目的があるようです」)
 現在、数名の猟書家がサムライエンパイアで暗躍しているが、いずれも何らかの目的を持った上でオウガ・フォーミュラ『クルセイダー』の為に動いている点は共通している。
 目の前に現れた猟書家『獣狩りのアルヴィナ』も、魔空島原城を叩き落とす呪詛を持つ『首塚の一族』を根絶やしにしようと目論んでいることは確かなのだが、それにしては妙に『首塚の一族』に対する執着が薄い気がした。
 気になった夜彦は、声に出して指定する。
「貴女は首塚の一族を狙ってはいるものの、純粋に戦いを求めている様子」
「ボクは養分になってくれそうな強い人を探しているだけだよ?」
 アルヴィナは、夜彦の指摘を否定するどころか肯定し、大仰に舌なめずりをしている。
 狩るべき獲物に向ける視線は、百地砦ではなく、夜彦のみに向けられていた。
 どうやら、猟兵達が相手をする限りは、猟兵達を出し抜いて首塚の一族を狩ることはないようだ。
 彼女が求めるのは、最高の狩りと最高の戦であり、オウガ・フォーミュラ「クルセイダー」の目的を果たすのは、二の次なのだろう。
 ――ならば、今は全力で相手するのみ。
「ならば、猟兵である私達が御相手致しましょう」
「お侍さんが獲物になってくれるなら、嬉しいなあ」
 腰に履いた夜禱の柄に手をかける夜彦に、アルヴィナは狩人の目を向けていた。

 夜彦は目を凝らしながらアルヴィナの行動を観察し、右手に装着されているパイルバンカーの特性を見極めようとする。
「そらよっと!!」
 掛け声と共に勢いよく突き出されるパイルバンカーを、夜彦は突き出される軌道を見切りつつ、残像を囮にしながら回避。
 パイルバンカーそのものがアルヴィナの身体に不釣り合いな程大きいからか、見切りは然程難しくないが、鋭い杭を立て続けに突き出すその動きに隙は無い。
 守りを崩せるほどの隙が生じるまで待ち受けることにした夜彦からの攻めがないと判断したか。
「お侍さんが来ないなら、ボクから行っちゃうよ?」
 アルヴィナが対猟兵に特化された大量のクレイモアを取り出し、地面にばら撒く。
 だが、夜彦はクレイモアに触れぬ様地を蹴り後退しながら、いったん夜禱を鞘に納め。
「是は空さえも斬り裂く刃也」
 言の葉と共に素早く抜刀し、雪上を撫でるように一気に振り抜いた。

 ――斬ッ!!

 神速で振り上げられた夜禱から放たれた二振りの見えない斬撃は、軌道上とその周囲の雪を舞い上げ、隠れていた対猟兵用クレイモアを露わにする。
 戦を求める猟書家への静かな怒りに、無意識に斬撃に熱が籠ったか。
 クレイモアのセンサーが斬撃に籠められた熱に反応し、次々と爆発した。

 ――ドンドンドンドン!!
 ――ドドドドドドドドド!!

 地鳴りと聞き間違えん勢いで立て続けにクレイモアが爆発する音が響き、爆風が地を大きく抉り、大量の土埃と石が舞い上がる。
「ケホッ、ゴホッ……!!」
 爆炎と煙で喉を焼かれたか、派手に咳き込むアルヴィナ。
 だが、咳き込む音を耳にした夜彦は、音を頼りにアルヴィナの居場所を予測、三度見えない斬撃を飛ばす。
「なっ!?」
 驚きながらも、パイルバンカーを盾に斬撃を防ぐ、アルヴィナ。
 濃い爆煙に遮られ、アルヴィナから夜彦の姿を見ることはできない。
 しかし、夜彦からも同様に、アルヴィナの姿は見えないはず。
 なのに見えない斬撃は煙を突き抜けて正確にアルヴィナを襲い、パイルバンカーの表面を浅く削っていた。
「なんでだよ!?」
 夜彦が居場所を把握したトリックに気づかぬアルヴィナを、隙が生じたと判断し夜彦が放った見えない斬撃が再度襲う。
 それはパイルバンカーを覆う装甲をさらに深く削り、大きな傷跡を残していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
元気なお嬢さんだねえ。バトルジャンキーか。アタシもその類だから在り様自体は否定しないが、人を養分扱いかい。まあ、こういう無分別な子は叩きのめす方がいい。(化身忍者に向かって)援護、頼めるかい?

アタシは囮だ。子供達は後で追い付いてくるだろう。炎の戦乙女を発動、相手の攻撃が当たらない30cm以上の距離を保って【ダッシュ】で【残像】を作って目の前を駆け回ってやるか。攻撃が届かない距離でうろついてる相手がいると怒ってアタシの方に近付いてくるだろう。そこが狙いだ。【オーラ防御】【見切り】で攻撃を凌いで、【カウンター】で【気合い】【怪力】を込めた【グラップル】で殴り飛ばしてやるよ!!



●戦狂いはふたりの戦乙女に炙られて
「やれやれ、元気なお嬢さんだねえ」
 紫の瞳に隠し切れぬ戦狂いの光を見出した真宮・響は、大きくため息ひとつ。
「バトルジャンキーか、アタシもその類だからありよう自体は否定しないが」
「あー、オバさ……お姉さんもその類? 嬉しいな!」
「でも人を養分扱いかい」
 響の瞳が一瞬鋭く冷たく細められ、同類を見つけてはしゃぐアルヴィナを睨みつけた。
「何? 弱い連中を養分扱いして何が悪いのさ」
 ――ボクは狩人だよ?
 ――弱い奴を狩るのが生業だよ?
 そう、悪びれもなく言い切るアルヴィナに、響の嫌悪感が一気に高まり。
「こういう無分別な子は叩きのめす方がいいんだよ!」
 怒りが沸点に達したか、響は子供たちを置き去りにして駆け出す。
 後ろから子供たちが響を呼び止める声が聞こえるが、あえて無視した。
 なお、その直前に何気なく化身忍者に合図を送り、援護を要請していたことを付記しておく。

 響は走りながら己が魔力を籠めた魔法石を取り出し、天に掲げる。
「さあ、行くよ、燃え盛る炎の如く!!」
 響の力ある言葉とともに、魔法石内の魔力が実体化し、赤熱した槍を持ち光の鎧を纏った戦乙女が召喚される。
 並び立った戦乙女と連携しながら、響は赤熱させたブレイズランスを突き出しつつ適切な距離を保ち、赤きオーラを陽炎の如く揺らめかせながら、アルヴィナの目の前を駆け回る。
 アルヴィナも響を追うが、パイルバンカーが最大限の威力を発揮する距離に、響も戦乙女も決して踏み込もうとしない。
 アルヴィナの表情が、徐々に苛立ちに染まり始めた。
「お姉……オバさん、真面目にやる気あるの!?」
 距離を取って駆け回る響を追おうとして、アルヴィナがパイルバンカーを突き出しながら一気に距離を詰めようとした、その時。
 ――ザクザクザクッ!!
 突如、足元の雪が大きく崩され、シャーベット状になったそれがアルヴィナの足に絡みつく。
 シャーベットに足を取られ、転倒しそうになるのをぐっとこらえつつ、ふと砦のほうを見たアルヴィナの視界に入ったのは、無数の手裏剣を投げた後、即座に撤退する化身忍者の姿。
「あー、徳川の忍者たちが邪魔だなあ」
「そりゃどうも」
 投げやり気味に礼を述べる間も、戦乙女と連携しながら赤熱の槍で翻弄し続ける、響。
 ふたりの戦乙女の連携は、アルヴィナがふたりから目を離すことを許さず、化身忍者に手を出すことも許さない。
 響や戦乙女に一突き浴びせられず、さらに徳川の忍にも手を出せず、フラストレーションが一気に高まる、アルヴィナ。
「ああもう、オバさんも邪魔だって!!」
 アルヴィナは一瞬だけパイルバンカーの杭だけ伸ばし、ブレイズランスを手にする響の両手を突く。
「……っ!」
 至近距離でないため、両手に大穴を開ける程の威力はないが、突然杭で突かれ、怯む響。
 その隙にアルヴィナは一気に至近距離に飛び込み、パイルバンカーをいったん退いた後、今度は響の腹に突き出す。
 先端の鋭い杭が、きらりと光を反射した。
「くっ!」
「零距離、取ったよぉ!!」
 反射した光が目くらましとなり目を閉じた響に、アルヴィナの執念が籠ったパイルバンカーが勢いよく突き出される。
 しかし、突き出された杭に貫かれた響は、炎の陽炎となり瞬時に霧散した。
「え!?」
 パイルバンカーを突き出した姿勢のまま、硬直するアルヴィナ。
(「いつの間に残像にすり替わったんだ!?」)
 アルヴィナが混乱する間に、残像を残して左手側に回った響は、ブレイズランスを雪中に捨て、両の拳を握り込む。
 紅のオーラを纏った両の拳は、響の怒りで赤熱しているかのように揺らめいていた。
「これ以上のオイタは許さないよ!」
 響は気合と全身全霊の力が籠った赤熱した拳で、アルヴィナの胴を力いっぱい殴りつけた。

 ――ゴガッ!!

 鈍い音とともに吹き飛ばされたアルヴィナは、雪原を転がりながらも立ち上がる。
「痛いじゃないか!!」
 アルヴィナは思わず響に悪態をつくものの、じわじわと胴から響く鈍い痛みからくる足のふらつきは隠せずにいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・奏
瞬兄さん(f06558)と力を併せて戦います。

なんか物騒な事いうお姉さんがいます・・・このままだと私達も獲物にされてしまいます。あ、母さんがダッシュで行ってしまいました・・・追いかけましょう、兄さん!!

駆けだす前に【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固めて置いたおかげで地雷の爆発に倒れずに済みましたが、何度も爆発を喰らう訳にはいかないので、即急に勝負を付けます!!兄さんの結界展開に併せて彗星の剣を発動、【二回攻撃】も併せて態勢崩しを狙いますよ!!パイルバンカーとか地雷とか物騒な人ですね!?サムライエンパイアには居てはいけないと思うので、とっとと退場して貰いましょうか!!


神城・瞬
義妹の奏(f03210)と力を併せて戦います。

あ、母さんが行ってしまいました・・・まあ、似たような気質の敵が目の前にいると気が早りますか・・・(化身忍者に)母があんな状態なので、サポート、お願いできますか?

【オーラ防御】を展開しますが、流石に地雷の一撃は喰らうはずですので、危機感を感じて即急に【高速詠唱】で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を敵に向かって展開。これ以上地雷を起爆されたら堪りませんので、月光の狩人と【誘導弾】【吹き飛ばし】で徹底的に敵の邪魔。戦いが好きなのは構いませんが、他人を巻き込むのは頂けませんので!!



●きょうだいの連携は猟書家を翻弄し
 ――少しだけ、時は遡る。

「なんか物騒な事を言うお姉さんがいます……」
 猟書家『獣狩りのアルヴィナ』の姿を見た真宮・奏の呟きは、呆れが半分入っている。
 しかし、戦への期待に満ちた鋭き眼光を向けられると、なぜか奏の全身に寒気が走った。
 ――それはまるで、蛇に睨まれた蛙のよう。
 そもそも狩人たる猟書家にとって、奏たち猟兵はオウガ・フォーミュラ「クルセイダー」を殺めんとする絶対的な敵。
 たとえ戦への興味が勝っていても、肝心の目的までは忘れていない。
 おそらく、猟兵が全滅すれば、その勢いで一気に百地砦を攻め滅ぼすだろう。
 そう容易に予測させられるほどの戦意を受けた奏の背筋をつたう冷や汗が、軽い恐怖を呼び覚ました。
「このままだと私たちも獲物にされてしまいま……え?」
 つい弱音を吐きそうになったその時、目に入ったのは。
 ――怒りに駆られ、ダッシュで駆けてゆく、奏の母の姿。
「……あ、母さんがダッシュで行ってしまいました……」
 気が逸ったのか、それとも最初から子供たちに後を託すつもりだったのか。
 いずれにせよ、先行した母を見て、恐怖を忘れて目を点にする奏。
 その横では、神城・瞬が肩を落としながら大きくため息をついていた。
「……まあ、似たような気質の敵が目の前にいると気が逸りますか……」
 直情な母の性格はよく理解しているとはいえ、子を置いて真っ先に飛び出すとは思っておらず。
 瞬が再びついた溜息は、世界最深の海溝よりも尚深いそれ。
 ……しかし、傍らにいる奏も、母譲りの直情な一面を持つ。
 何より、独断専行した母を放っておくことなど、できるだろうか。
「追いかけましょう、兄さん!」
「ええ、ですがその前に……母があんな状態なので、サポート、お願いできますか」
 奏の呼びかけに気を取り直した瞬は、化身忍者達に支援を要請する。
 化身忍者も一つ頷き了承の意を示したところで、ところで、と口を開いた。
「お主らの母は確かに直情な女子であるように見受けるが……あまり気にせんでも良いかもしれぬぞ?」
「え?」
 意外な化身忍者からの言葉に、思わず間抜けな声を上げる瞬。
 化身忍者が指差した先に2人そろって目を向けると、適度に距離を取りパイルバンカーを避けながら、戦乙女とともにアルヴィナを翻弄する母の姿があった。
「本当に直情で愚鈍なら、あのような翻弄する戦い方はすまい?」
「た、確かに……」
 ごもっとな指摘に、納得する瞬。
 子供以上に母は単独での場数を踏んでいるゆえ、直情的な行動でも目的や危険は忘れていない、ということなのだろう。
「おそらくお主らが自由に動けるよう、囮を買って出たつもりなのだろうなぁ」
「なるほど」
「なあに、お主らはお主らの母の期待に応えれば良いのじゃよ」
「ありがとうございます、肝に銘じておきます」
 軽く瞬の肩を叩き宥める化身忍者たちに、瞬はひとつ深呼吸して冷静さを取り戻していた。
 ……結局、母のサポートはいつもやっていることなのだから。

 母が退くのに合わせ、駆け出した奏と瞬。
 しかし、駆け出した先には、先の猟兵たちに向けて仕掛けられた、対猟兵用クレイモアが埋まっていた。
 ――ピッ。
 センサーが反応する、ごく小さな音が奏の足元から聞こえ。
 ――ドゴオオオオオオオオン!!
 奏の面前で、地を揺らす程の大爆発が起こった。
「きゃっ!!」
 地面が揺れる中、咄嗟にエレメンタル・シールドを構え、爆風を必死に受け流す、奏。事前に防御を固めていなければ、容易に吹っ飛ばされていたかもしれない。
 後ろを追う瞬も、銀のオーラを前面に展開し、爆風を凌ぐ。
 その甲斐あり、2人とも目立つ傷は負っていない。
「驚きました……でも何度も爆発を喰らうわけにはいきません!」
「ええ、放っておいて良いわけもありません」
 守りを固められたからか、ふたりとも手や顔面に軽い火傷を負った程度で済んだが、どこにクレイモアが埋まっているか分からない以上、速攻で決着をつけなければならない。
 瞬は素早く刺々しさを含む銀の結界をアルヴィナの周囲に展開し、アルヴィナを包み込むようにじりじりと狭めていく。
 正直、これ以上クレイモアが砦のそばで起爆すると、今度こそ砦の土台が崩壊しかねない。
 そのためには、一刻も早く猟書家を撃退する必要があった。

 必死に駆けつつ、奇跡的にクレイモアを避けてアルヴィナに接敵した奏と瞬は、接敵と同時に奏がエレメンタル・シールドで先制のシールドバッシュ。
「まったく、パイルバンカーとか地雷とか物騒な人ですね!?」
「だってこれ、アリスラビリンス産だしね!」
 シールドバッシュを避けたアルヴィナの陽気な一言に、一瞬首を傾げる、奏。
 そもそも、アリスラビリンスにあるかどうかも不明なパイルバンカーやクレイモアを、目の前の猟書家はどうやって生み出したのだろう?
 しばし考え、奏が導き出した結論は。
「……想像から生み出した兵器!?」
「そういうことさ! だからこういう使い方もできるんだよ!!」
 アルヴィナは懐から何らかのスイッチを取り出し、天に掲げ。
 ――カチッ!
 大げさな動作でスイッチを押すと。
 ――ドゴオオオン!!
 再び奏の背後からクレイモアが爆発した音が響いた。
 本来、ブービートラップとして使用されるクレイモアに、手動で爆発させる機構は組み込まれていない。
 だが、雪中に埋め込まれ、時折アルヴィナがばら撒くこのクレイモアは、アルヴィナがアリスラビリンスで想像により創造した爆発物ゆえ、猟兵のみを選別し反応、爆発させるセンサー以外にも、手動で起爆させる機構がついていても不思議ではないのかもしれない。
 そしてそれは、右腕に装着されているパイルバンカーも同じ。
 そもそもパイルバンカー自体、ロボット用の武器であり、明らかに人が装着する武器ではないように瞬には思えるのだが……想像の賜物である以上はロボットも人も関係ないのだろう。
(「何とも厄介ですね……!」)
 近代兵器を使いこなす猟書家に内心舌打ちする瞬だが、それでもアルヴィナに好き勝手されるのは見逃せない。
「戦いは好きなのは構いませんが、他人を巻き込むのはいただけませんので!」
 瞬は召喚した額に【1】と刻印された97羽の狩猟鷲と、麻痺毒で編み上げた誘導弾を立て続けに撃ち出し、徹底的にアルヴィナに対猟兵用クレイモアを投げられぬ様妨害し続ける。
「ああもう、鳥が邪魔だよ!」
 それでも一瞬の隙にアルヴィナが懐に手を入れクレイモアを取り出そうとすると、化身忍者からと思しき棒手裏剣が手首を穿ち、それを許さない。
「しつこい忍者たちだね!?」
 手を振り棒手裏剣を落としたアルヴィナだが、ふと寒気……否、熱気を感じ、周囲を見渡す。
 それは、瞬の結界の外側をぐるりと囲むように展開された、97本の赤熱の剣……ブレイズセイバーの複製。
「かわさないでくださいね? 行きますよ~!!」
 ブレイズセイバーの複製を展開したらしき奏の合図で、赤熱した剣が一斉にアルヴィナに殺到。赤熱した刀身が次々とアルヴィナの全身を焼き、切り裂いていく。
「あっちっちっち!」
 無数の傷口を炎で炙られたかのような痛みに悶絶しながらも、なお対猟兵クレイモアを取り出そうとするアルヴィナの手が、突然凍り付いた。
 ――否、麻痺したかのように動かなくなった。
 複製されたブレイズセイバーに気を取られている間に、アルヴィナの身体は麻痺毒に侵されていたのだ。
「これ、は……っ!?」
「さあ、獲物はそこですよ!! 容赦は不要です!!」
 好機とみて、瞬は97匹の狩猟鷲を一気に殺到させ、アルヴィナの全身をひたすら啄ませる。
「うわあああ、痛い痛い!! 狩られるのはボクじゃない!!」
「サムライエンパイアには居てはいけないと思うので、とっとと退場して貰いましょうか!!」
 全身を激しくつつかれる痛みに耐え兼ね、雪原に身を投げ出したアルヴィナに追い打ちをかけるように奏の操るブレイズセイバーが殺到し、さらに激しく斬り刻んだ。

 きょうだいによる怒涛の攻めは、確実に猟書家の余裕を奪い、負傷を蓄積させていた。
 ――あと一歩で、撃退できそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
物騒な連中の頭がお嬢さんだったなんてね
まそいつらに負けず劣らずアンタも剣呑そ
羅刹のオレもわりと荒事好きだが
油断ならねーアンタとじゃ楽しむ余地は無さそーだ

>羅刹達
敵UCが無差別攻撃なので前以てそっと忠告
な…あの嬢ちゃん恐らく化け物並だ
オレの降魔術を合図に一旦散開
アイツの視線外まで退いといて

UCで強化
代償の殺戮の呪縛は呑まれない程度活用し敵とは話さない
クナイ一本を咥え
手に七葉隠の分割の一振り
地雷は【情報収集/野生の勘/罠使い】駆使し避け
敵武器の切っ先を躱し【追跡/視力】
七葉隠で刺突と斬り付けながら接近
真横を【スライディング】ですれ違いざま咥えたクナイを手にし横腹を掻き切る【暗殺/串刺し】

アドリブ可



●魔を降ろせし忍は引導を渡し
 猟書家『獣狩りのアルヴィナ』の姿を目にした鹿村・トーゴは、少し意外そうな表情を浮かべていた。
「物騒な連中の頭がお嬢さんだったなんてね」
 しかし獣を狙う剣呑な目つきに気づき、トーゴはすぐに気を引き締め、控えるシュラの一団を指差す。
「ま、そいつらに負けず劣らず、アンタも剣呑そ」
 羅刹であるトーゴも、割と荒事は好きだし楽しみたいが、相手は猟書家。
 既に他の猟兵の攻撃で相当ダメージが蓄積しているとはいえ、決して油断できぬ相手であることは、トーゴも十二分に承知している。
「油断ならねーアンタとじゃ、楽しむ余地は無さそーだ」
「ボクはまだ楽しむつもりだけどね?」
 アイタタタ……と痺れが残る左手を振りながら、アルヴィナは油断なくパイルバンカーをトーゴに向けていた。

「あの女子、我々の知らぬ面妖な業ばかり使いよる……」
 見たことのない武具に呻く化身忍者に、トーゴがそっと小声で告げる。
「な……あの嬢ちゃん、おそらく化け物並みだ」
「ああ……その目に宿る貪欲さは計り知れぬ」
「じゃ、オレの降魔術を合図にいったん散開してくれ。アイツの視線外まで退いといて」
 化身忍者たちと連携したほうが有利に事を勧められるのは承知で、トーゴは他の猟兵達との戦いぶりを見た上で助力要請は危険だと判断していた。
 特に見境なくばら撒く対猟兵用クレイモアは、罠としても爆弾としても利用できるため、砦ごと「首塚の一族」を吹き飛ばしかねない。
 ――だからこそ、安全圏まで退いてもらい、ひとりで決着をつける。
「トーゴ殿、ひとりで大丈夫か?」
「オレは大丈夫だからさ、な?」
 心配する化身忍者を安心させるように、トーゴは軽く化身忍者の肩を叩いていた。

 印を組み3種の魔を降ろしたトーゴの肉体は、徐々に超強化される。
 一方、トーゴの思考は殺戮に呪縛され、瞳すら殺戮を求める光でぎらつき始めていたが、完全に呑まれぬ程度に抑え込み、利用する。
 トーゴの降魔術を目にした化身忍者たちが散開するのを視界の片隅に捉えつつ、トーゴはクナイを1本口にくわえ、手に七葉隠を七分割した一振りを手にし、吶喊。
 雪中に埋まるクレイモアが向ける冷徹なセンサーを、トーゴは野生の勘と罠使いゆえの知識で在処を察し、感知範囲に踏み込まぬよう軽やかに跳ねながら避ける。
「全くしつこいねえ!?」
 アルヴィナが突き出すパイルバンカーの杭の先を、トーゴはギリギリ見切って躱し、七葉隠を突き出して左腕を切り裂き。
 痛みに怯んだアルヴィナが左腕を引っ込めたところで、すかさずトーゴは七葉隠を跳ね上げ、肩口を大きく斬り裂いた。
「くっ……!!」
 トーゴの怒涛の攻めにアルヴィナが大きくバランスを崩した瞬間、トーゴは七葉隠を逆手に持ち替えつつ身体を大きく倒し、スライディングしながらアルヴィナの懐に飛び込む。
 逆手に持ち替えられた七葉隠の刃は、アルヴィナに向けられていない。
「そんな持ち方で……っ!」
 ボクを斬り裂けないよ、とトーゴに告げようとしたアルヴィナの口が、止まった。

 ――ズバアッ!!

「…………っ!!」
 左わき腹を襲う激痛と灼熱感に、大きく顔を顰めるアルヴィナ。
 目に入ったトーゴが口に加えたクナイからは……血が滴っている。
 ――アルヴィナの左わき腹を大きく抉ったのは、七葉隠ではなく、クナイ。
 トーゴがすれ違いざまに与えた強烈な一撃は、アルヴィナの僧服だけでなく、その下の皮膚も深々と斬り裂いていた。
 痛みに顔を顰めつつアルヴィナが左手で傷口を抑えるが、指の隙間から血がポタポタとこぼれ落ち、雪原を紅に染めていく。
「あっはっは……まいったね」
 よろめきながら、パイルバンカーの重さに引きずられるように雪原に倒れ込む、アルヴィナ。
 ……左わき腹の傷は、間違いなく致命傷だった。
 降魔を解除しながら駆け寄るトーゴを、アルヴィナは素直に称賛する。
「……うん、今はアンタたちの勝ち」
「そっか」
「ま、縁が残っている以上、また別のボクがここを襲いに来るかもしれないけどね?」

 ――じゃ、バイバイ。

 戦を求めた猟書家は、不吉な言の葉を残しながらも。
 まるで友に別れを告げるように血に塗れた手を振り、そのまま消滅した。

 アルヴィナの撃破を確認したトーゴは、ゆっくりと百地砦の方角に手を振る。
 砦内の化身忍者が手を振り返してきたところを見ると、どうやら「首塚の一族」は無事のようだ。

 かくして猟兵たちは、猟書家の魔の手から「首塚の一族」を守り切り、猟書家が一『獣狩りのアルヴィナ』を討ち取った。
 ――『獣狩りのアルヴィナ』撃破。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月25日
宿敵 『獣狩りのアルヴィナ』 を撃破!


挿絵イラスト