邪拳遊戯~死道(作者 みなさわ
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●邪拳殿
 コツコツとコンクリートに刻む足音を踏みしめるたびに。
 我は我でありたいと願った。

「ほう……仕上がりは万全のようだな」
 老齢のアライグマを思わせる風体の怪人が笑みを浮かべる。
「はい……師父の拳、とうとう形にいたしました」
 大きく、奇妙な被り面を被った拳士が掌に拳を当て、頭を垂れる。
 その背後では訓練用の木人が粉微塵に粉砕されていた。
 無残に転がる木人に怪人――ロンダリングラクーンの顔に笑みが浮かび、そして邪拳殿に声が轟いた。

「時は来た!」

 猟書家の言葉に、全身に湯呑を乗せた者がその身を跳ね、浮かび上がった椀を音もなく机に並べ。プールに浮かぶ葉の上にたたずむ拳士が水の上を歩く。
 集まった怪人――大頭頭ズは師の前に膝を着き、言葉を待った。
「我が修行を納めし、邪拳士達よ。とうとうお主らの出番だ」
 それは待望の言葉であり。
「これより、キマイラフューチャーにて行動を開始する」
 死道への始まりであった。

●キマイラフューチャー・ミュータントカンフーストリート
「殺ァッ!」
「ぐあぁあああああっ!!」

 勝負は一瞬だった、ヒーローマスクを被り面我一体を成し遂げた正義の心は邪拳によって砕かれ、土を舐める。

「力なき正義は無力と言ったものだが、どうやらそれは真実……いや」
 指先を赤に染めた大頭頭ズの目の前には腹を抑え、立ち上がる仮面が一人。
「なるほど、これが折れない正義の心。では――」
 邪拳士の指が自らの面を撫で、唇と頬に紅を差す。
「我々も命をかけよう。エモの道よりはずれし、この大頭頭ズ。ここに花咲く道があるのなら、たとえ死に至っても文句はなし。故に――」
 構える拳はやけに重い。
「首を刎ねられても見苦しくないよう、死化粧に彩って、死道を渡らん」

●グリモアベース
「グリモアが呼んでいる! 今が拳で語る時であると!」
 グリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)が左手に浮かぶ紋章を輝かせ、猟兵達へと呼びかけた。
「今回は、猟書家によって邪拳士に仕立て上げられた怪人がヒーローマスクを狙っている。奴ら、彼らの折れない正義の心に目を付けて、それを叩きのめすつもりだ」
 目の前で正拳突きの構えを見せてグリモア猟兵は説明を続ける。
「怪人の名前は大頭頭ズ。拳法をユーベルコードに昇華した集団な上に邪拳を習得し、強さは半端ねえ。だからこっちも――一対一で立ち向かう」
 少年が握った拳を開けば、その目は緊張と、
「こいつらを倒せば、猟書家にぶち当たる。気を付けろ、こっちも達人だからな。そして……」
 そしてもの悲しさを湛えていた。
「多分、この怪人たちはキマイラフューチャーに馴染めなかったんだろう。だから……いや、これ以上は相手に聞いてくれ」
 グリモア猟兵の左手が輝き、ゲートが開かれる。

「それじゃ、みんな頑張って。彼らの道をここで終わらせるんだ」


みなさわ
 それは只、不器用な者の歌。
 こんにちは、みなさわです。
 今回は握った拳で掴めなかったものを探す、一対一の闘いを。

●ご注意
 最初の集団戦は一対一のバトルになります。
 シナリオのテイストとしては拳と拳で語る心情シナリオ方面なので、プレイングは自分の戦い方、攻め方、守り方に力を入れてくださると幸いです。

●戦場
 ここはキマイラフューチャーで、場所はカンフーストリート。
 コンコン叩けば、出てくるじゃろ?

●あらかじめのお話
 過去、同様のシナリオを書いた経験から言って、字数が多くなりがちです。
 申し訳ありませんが、10名様を上限にお話を書きたいと思います。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『大頭頭ズ』

POW ●x形拳
【様々な生物や機械、自然現象等を模した拳法】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●i極拳
【健康体操のようにも見える連続した攻撃動作】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ ●n卦掌
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【大地の中を走る気の流れの噴出点(龍穴)】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●邪拳遊戯~舞台

「……来たか」
 ミュータントカンフーストリートの中心に立つ怪人が笑みを漏らさず、面越しに口を開く。
 それは強者を求める、狂の笑。
「待ちわびたぞ、猟兵。今度は――終わりを見せてくれるだろうな」
 居並ぶ邪拳士の一人が一歩前に出て、問う。
 まるで以前に約束を果たせなかったかのように。
「貴様らと戦うにはこの場所は狭い。故に……」
 大頭頭ズ達が跳躍し、キマイラフューチャーに立つビルの屋上へ着地する。
「「ここを戦いの場とさせてもらう!」」

 コンコン!

 コンクリートを叩けば現れるのは四角いリング。
 怪人達がそれに続くと、次々と現れる闘場の数々。
 公園の砂場は土俵となり、和風建築物からは板張りの道場。
 茶室からは畳。
 そしてストリートは……何も変わらない。
 なぜなら、それ自体が戦うにふさわしい場所なのだから。

「我々はここで待っている。安心しろ、お前達が場所を選ばなくても、自然と相応しいところで、誰かが待っている――我々とはそういう者じゃないのか?」
 そこに笑いは無く、むしろ信頼とプライドが響き渡る。

「さあ、来るが良い。邪拳を身につけし我らの道の終わりを見せてくれ!」

 繰り返そう、戦う場所、相手を選ぶ必要はなさそうだ。
 自らに相応しい場所に自らに相応しいであろう邪拳士が待っているであろうから。

 彼らの名は大頭頭ズ。
 面を被れど、正義から道を外れ、本流からも外れた、ただの拳鬼。
荒谷・つかさ
……ふうん。
面白そうね、一つお相手願えるかしら?

正々堂々、正面から挑む
半身で重心を落とし、どっしりと構え、すり足で的確に躱して捌いていく
変わった事はせず、どこまでも基本に忠実に
強いて言うなら、鍛錬の末に獲得した「怪力」であらゆる場面で力負けしない程度

敵がコードで仕掛けてくるなら、それに合わせて【破界拳】をぶつける
森羅万象を模した変幻自在の拳で仕掛けてくるのであれば
私はそれら総てを……「世界」を砕く拳で相手をするまで
善悪にも正邪にも囚われない、純粋なる「力」
ただひたすらに「拳の向こう側」を目指した拳、味わって行きなさい

勝負前後の礼も忘れずに行う
武闘家としての礼儀は、相手が邪拳士であろうと尽くすわ


●街道一閃

「……ふうん」
 荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は興味深そうに前に出る。
 ここはミュータントカンフーストリート。
 全ての始まりの地。
「面白そうね、一つお相手願えるかしら?」
「無論」
 大頭頭も一歩歩み、互いの射程距離へと踏み込んでいく。
「断る理由、一切無し」
 誰に倣うともなく、猟兵と怪人の足がそろい、頭を垂れ、礼を交わす。
「参る」
「応」
 邪拳と羅刹が交わすのは言葉、次には拳。
 最初の闘いが始まった。

 互いに半身、膝は柔らかく、重心は下へ。
 身体を半身ずらすのは攻撃を受ける面積を減らし、捻転を溜めるため。
 重心を下に落とすのは転倒を防ぐため。
 そして、膝を柔らかく脱力するのは、あらゆる動作に対処、対応するため。
 摺り足で距離を詰めるつかさに対し、大頭頭は腰の高さへと足を蹴り上げる。
 勿論、これは技の始まり。
 相手を牽制し、自分の間合いを作り、踏み込みの一歩へ繋げる蹴歩。
 蹴り足が下ろされ大地へ踏み込まれると同側の拳が疾る。
 体重の乗った順の突き、縦拳。
 羅刹の歩幅が大きくなり、左手が弧を描くと、怪人の拳は打ち落とされ、猟兵が短く踏み込む。
 同時に腰が回転、捻りが解放され、短い軌道の鉤突きが臓腑を狙って放たれる。

 ――ゴッ。

 衣擦れに続き、鈍くぶつかる音。
 邪拳士の肩がつかさの肩を押し、体当たりで技を封じたのだ。
 怪人は一歩、さらに踏み込み。羅刹は一歩、下がった足で大地を蹴り返し、互いに腕を振るう。
 つかさの裏拳が後頭部へ、大頭頭の前腕が背中へ、強く撃ち込まれ、互いの威に脳が、臓腑が、揺れる。

 仰け反り、屈む様に二人の拳士はたたらを踏み。
 深い呼吸の後、改めて構えた。

「酒より深い酔い、久しぶりの感覚にして恐るべき強打」
「褒めても……何も……出ないわよ」
 揺れる頭を立て直す大頭頭に対し、深く空気を吸って言葉を返すつかさ。
 時間稼ぎ――いや違う。
 熟練を要する技を使う機を伺っているのだ。
「象形という拳がある」
 邪拳士の腕が柔らかく円を描く。
「動物を模した動きによって敵を撃つ拳――だが、今は全てを内包し、森羅万象を体現する――故に!」
 怪人の頭が揺れ、姿は虚ろに。

「x形拳、車輪形!」

 一度屈んでから、短く跳躍、回転から振り下ろされるのは体重と重力の乗った振り下ろしの裏拳。
 上下動により、視線を幻惑し、背中を見せることで拳の軌道を消した、絶対命中の拳!
 対する羅刹は右足を一歩踏み込むと同時に半身を切り替え、捻りを足から腰、肩、そして拳へと伝達させる。

 ――破界!

 つかさが正拳を撃ち。
 直後、大頭頭がその背後に着地した。
「我が拳」
 羅刹の後ろで
「ただひたすらに拳の向こう側へ」
「……見事」
 怪人が大地へと倒れ伏した。

 既にこと切れ、死道を歩いた男へと、つかさが近づく。
 かすったのか、こめかみから紅いものが流れるのに気づけば、指に取り、唇に塗った。
 邪拳の使い手であろうとも、武闘家としての礼儀だけは忘れたくなかったのだから。
 戦化粧に彩った姿で、猟兵は骸に頭を垂れた。
大成功 🔵🔵🔵

月白・雪音
この世界においては拳の業もあるいは遊戯の一部。
貴方がその拳に込めた念いが満たされるものでは無かったのでしょう。


UCを発動、残像にて間合いを詰め、怪力、2回攻撃で拳打を叩き込み、
見切り、野生の勘、カウンターにて敵の全攻撃に対して反撃を入れる
往なし切れなかった攻撃は激痛耐性、継戦能力にて耐え、
相手の攻撃全てに正面から対応

武とはただ殺すのみの業に在らず。
力に呑まれず心を凪に保つ『心の在り様』こそ武の神髄。


…されど、相容れぬ道を辿れど、確かに貴方の拳には『命』が宿っておりました。
そうですね、この世界風に言うのならば。


――実に、『エモい』拳でありました。

部位破壊で面を破壊し、最後は礼儀作法にて素顔に礼を


●二つの思い、交叉して

「この世界においては拳の業もあるいは遊戯の一部」
 月白・雪音(月輪氷華・f29413)が板張りの道場へ足を進めると重さで床が鳴った。
「貴方がその拳に込めた念いが満たされるものでは無かったのでしょう」
「おおむね、その通りだ」
 大頭頭が彼女の言葉を肯定し、何気なく道場内を歩く。
「だが、違う世界でも満たされはしなかったろう。故に邪拳と相成った」
 歩みに音は無く、道に輩は居ない。
「参ろう」
 怪人の言葉に
「……はい」
 今日は雪音が応えた。

 先手は雪音。
 虚ろに姿が揺れると間合いを詰めて力強い拳を繰り出す。

 拳武

 複数の技能を錬磨した結果生み出される、技術の極み。
 相対するのは健康体操を思わせる套路から放たれる攻撃的な連打。
 太極を発展させ、無限――infinityへと繋がる大頭頭の拳こそが

 i極拳

 複数の技術を形にした一撃と、磨き上げられた大きな動作から生み出される明勁が今――同時に頭を打ちぬいた!
 間髪入れずに二合、打ち合う!
 互いの足は一歩も引かず、さりとて間合いは狭い。
 猟兵が発条を伝達した強打を振るえば、怪人からはコンパクトな動作から放たれる暗勁が打ち込まれ、二つの五臓六腑が揺れる。
 相打ちが……繰り返された。
 邪拳の速度を虎が見切り、雪音の力を大頭頭の連撃が削り取る。
 力量拮抗故の正面からのぶつかり合い。

「武とはただ殺すのみの業に在らず」
「矛を止めると言いたいか!」
 猟兵の言葉に怪人が吠える。
「力に呑まれず心を凪に保つ『心の在り様』こそ武の神髄」
「だが、この世で凪に生きた我らはただ息をするのみだった!」
 雪音が語る武を大頭頭は否定した。
 キマイラ達が生きる世の中を、滅びし人の末裔にしてオブリビオンの怪人だからこそ知るのだ。
 満たされなかった苦しみを。
 決して混じらない想いが今、渾身の拳を以って交差する。

 決着が……着いた。

「……されど、相容れぬ道を辿れど、確かに貴方の拳には『命』が宿っておりました」
 虎の縦拳が被り面を砕き。
「そうですね、この世界風に言うのならば――実に、『エモい』拳でありました」
 その向こうに見えるキマイラへと告げる。
 だが、言葉は返ってこない。
 ヒーローマスクの本体がマスクであるように大頭頭の本体も被り面なのだから。

 されど、想いは届くであろう。
 拳で交わり、死道を歩くに充分な路銀を邪拳士は得たのだから。

 砕けた面に頭を下げ、雪音は怪人に取り込まれ、既にこと切れた骸の瞳を閉じた。
成功 🔵🔵🔴

御桜・八重
例え世界のムードに合わなかったとしても、
捨て鉢になる理由にはならないよ。
不器用に強さを求めたその手を、わたしは離さない。
それが拳であっても。

「この勝負、ネットで流してもいいかな?」
承諾してくれたらお礼を言って中継用のスマホを設置。
見た目はああでもその実力は本物。
命がけのこの勝負、理解してくれる人はきっといるよ。

「参る!」
気合いを入れて全力突撃。
嵐の様な攻撃を見切り、ダメージ覚悟で懐に飛び込む。
いざ、神速の八連撃…!

小兵の一撃はどうしても軽い。
受け切られれば待っているのは強力な反撃。

それが狙い。

体を捻って掠める様に躱し、強烈な踏み込みで回転を加速。
全力で二刀を振り抜く!

あの歓声、聞こえてるかな…


●燦然たる終わりの歩み

「この勝負、ネットで流してもいいかな?」
 御桜・八重(桜巫女・f23090)がスマホ片手に問いかける。
「構わんよ、見られて困るものでもない」
 大頭頭の溜息に込められたのは諦観か、それともこの世界の流儀に倣った娘への失望か。
 だが、人気のないライブハウスにスマホを設置する八重の瞳に邪拳士は違うものを見る。
「……人は武骨な拳より、華やかであろうお主の舞を見ると思うぞ」
「いいや」
 怪人の言葉に桜の巫女は首を振った。
「そんなことは無いよ、そんなことは無い」
「そう言い切るなら」
 大頭頭が一歩足を踏み出し、後ろ足に荷重を乗せる。
「実力を持って証明して見せろ」
 その言葉に八重は二刀を抜くことで答えとした。
「参る」

 桜が舞う。
 気合一番、真正面からの突撃。
 八重の動きに合わせるように邪拳士の捻った腕が刀を持つ少女の腕を下げ、水月へ一撃。
 直後、花が風に攫われるように八重は側背へと回り陽刀を振るう。
 巨大な頭が霞と消えると足元を疾走するは大頭頭の足払い。
 桜の巫女が跳び、怪人の頭に足を乗せると踏みぬくように蹴り、間合いを作る。

 ――例え世界のムードに合わなかったとしても、捨て鉢になる理由にはならないよ

 声にならない想いを気合の叫びに乗せて、少女は袈裟に刀を振るう。
 邪拳士が身を捻り、距離を詰めたところで、すかさず闇刀の刺突。
 だが、身を屈めた大頭頭の両腕が円を描くと、軌道は逸らされ、がら空きの正面に一撃が叩き込まれる。

 x形拳、馬形。

 馬が後肢で立ち上がる姿を模した両の拳が小柄な八重を吹き飛ばす。
 二度、三度、床を踏み、蹴り抜くように踏ん張りせき込みつつも、少女は歯を食いしばり落ちていこうとした頭を無理矢理上げた。
 視線の先には止めの一撃を叩き込まんと、シンプルかつ強力な拳を叩き込まんとする大頭頭が居た。

 ――不器用に強さを求めたその手を、わたしは離さない。
  それが――

「何もつかめない拳であっても!」
 さっきの一撃で息は出来ない、今の叫びが精一杯。
 身体が悲鳴を上げる中、八重が小柄な身を捻り一撃を避けると全体重を踏み込みに込めてさらに速度を乗せる。

 花――旋風!

 速さを回転に変えて振り抜くは二刀の胴薙ぎ。
 倒れたのは大頭頭であった。

「あの歓声、聞こえてるかな……」
 その場に膝を着く八重。スマホ越しに聞こえるのは人々の感情。
 どよめき、叫び、驚き、そして歓声。
「聞こえている」
 邪拳士の声に振り向けば、そこには物言わぬ骸が一つ。

 握った拳とて、もし振るうのを止めれば綿毛くらいは乗る。
 そのために少女は伸ばした腕を掴み。
 怪人は死道に花を咲かすため、綿毛を握って道へ足を伸ばした。
大成功 🔵🔵🔵

枯井戸・マックス

「やけにシリアスしてくれるじゃないの……いやその覚悟、茶化すのは不作法だな。来いよ。相手になるぜ」(仮面を額に被り直す)
正面からの殴り合いはスタイルじゃねえが、今は乗ってやる
キマフュの民でありながら奴の心に差す影
それを解きほぐすのもマスターの仕事だ
本来なら珈琲でも差し出したいとこなんだがな

◇UC
大頭頭の話を聞いて心を軽くしてやりたいというお節介で、敢えて苦手な肉弾戦を行い自身を強化
足運びのフェイントと第六感で致命傷は避けながら、じっくり聞こうじゃないか
十分力が溜まったらサモンズアイの短距離ワープで捨て身の肉薄
渾身の力を込めて一撃必殺を狙った拳を打ち込む

「思い切りの良さでは紙一重、俺の勝ちだ」


●死道、仮面の向こうに

 ――本来なら珈琲でも差し出したいとこなんだがな。

 枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)が仮面を片手にたたずむのはムエタイレストランのリングの上。
 人が食事と戦いを楽しむ場に喫茶店のマスターが立つのは何の因果か。
「やけにシリアスしてくれるじゃないの……いやその覚悟、茶化すのは不作法だな」
 ……おそらくは自分でなければできない闘いがあるのだろう。
「来いよ。相手になるぜ」
 それを悟ると、仮面を被り、ヒーローマスクたる身となる。
 その姿にコーナーで様子を見ていた大頭頭――被り面の怪人もリングの中央へと足を進めた。

「じっくり聞こうじゃないか、死道とやらを」
 マックスが拳を握り、距離を詰める。
「ならば聞くがいい」
 その眼前に巨大な面が迫り。
「我らが選んだ道を」
 掌庭が仮面の戦士の顎を揺らした。

「戦争、全てはそれが引鉄だった!」
 語る話の名はバトルオブフラワーズ。
 腹を打ちぬくのは縦拳。
「戦い終わり、死ねたらよかったものの、我らは生き残った!」
 それは敗残たる者の歩んだ道。
 顎を跳ね上げるは膝。
「抗おうと考えた者もいたが、ドン・フリーダム亡き世に居場所などなかった!」
 ただ息をするだけの道。
 追い打ちの拳を、マックスはギリギリのタイミングで交わし、ジグザグに足を運んで距離を保つ。
「そんな生き方に何がある! 何が満たされる! 笑わせてくれる! オブリビオンたる怪人の欲すら受け止められないこの世界を!」
 キマイラフューチャーに馴染めない不器用な者達の仮初の生。
 故に愚直に進む足取りは仮面と被り面の間合いを無くし。
「だからこそ、邪拳に手を染めた。今度こそ歩むために!」
 終わりへの道――死道へ!
 全てを込めた旋風の如き蹴りがマックスのこめかみを揺らし、衝撃を吸収するはずのキャンバスが反動で仮面の依り代を二度、三度とバウンドさせる。
「……なら」
 けれど、ここは終わりではない。
「それを解きほぐすのもマスターの仕事だ」
 ロープを掴み立ち上がるのはヒーローマスク。
 ロンダリングラクーンが倒すべきものと評した者の姿。

「その身で何ができる!」
 両腕を正面にて揃え、邪拳士は間合いを詰める。
 大技など要らない、錬磨に錬磨を重ねた技に感情を叩き込むが勝利必勝。
「なにって……勝つんだよ」
 飄々と答えつつもおぼつかない足取りでマックスが歩めば、その姿は消え。
 そして衝撃が怪人の腹へと撃ち込まれた!

 ジャスティス・ペイン

 自らの生き方を貫き、不利な肉弾戦を敢えて選ぶことで増す、身体能力。
 それを、限定的なワープによって勝ち取った間合いで叩き込めば、戦いに優れた邪拳士であろうとも、敗北は必然。
「思い切りの良さでは紙一重、俺の勝ちだ」
 マックスの言葉に、かすかに聞こえる笑い声。
「感謝する……ありがとう、話を聞いてくれて」
 直後、響き渡るのは大頭頭がリングに倒れる音。

「……」
 仮面に隠されたマックスの表情を伺い知ることは出来ない。
 だが、邪拳に捧げた被り面に差す影は晴れたであろう。
 怪人は最後に息をするだけの生き方から解放されたのだから。
成功 🔵🔵🔴

ミネルバ・レストー
首を刎ねられても構わない、ですって?
……その覚悟、気に入ったわ
なら久しぶりに、わたしもあの日の「覚悟」を思い出そうじゃない

場所は任せるわ、どこだっていいもの
そして敵は拳法使い、攻撃の間合いや威力、回数は
受けてみないとわからないと来たわ
なら、初撃は敢えて氷のオーラ防御で受けましょう
防ぎ切れればよし、抜かれたらそれはそれ
どのみちその一撃で「見切り」、次はないわ

ここまでを徹底的に機械的に、一切の感情を排して行う
それで【こおりのむすめ】の威力を引き上げるの
冷気を込めた平手打ちか、氷の矢を放つ

今のわたしはあなたと同じ「死んだら終わり」
だから死に物狂いよ、負けないためには手段を選ばない
悪く思わないで頂戴ね


●例え、五色を失っても

 ――首を刎ねられても構わない。

 その言葉がミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)の何かを刺激した。
 アバターとして形を作り、猟兵として再起動し、人の愛を知った彼女のこころを動かした『もの』の名は。
「……その覚悟、気に入ったわ」

 ――覚悟

「なら久しぶりに、わたしもあの日の『覚悟』を思い出そうじゃない」
「覚悟?」
 ネリーの言葉に大頭頭が問い返す。
「その左手、帰る場所があるのだろう? なのにそこまでする意味は?」
「決まってるでしょう」
 左手の薬指に注がれる視線に気づいた少女は笑みを浮かべる。
「あなたと同じよ」
 それは何かを誤魔化す笑いだった。

 闘いが始まり、周囲から色が消えた。
 赤や黄色、緑に紫。
 床に、空に、灯りに、人に、
 全てが色を失い、残るのは氷が輝く薄い青。
 氷のオーラを障壁に飛び込むネリーに対し、邪拳士は掌でオーラに触れ、その上に掌底の一撃を重ねた。

「x形拳、打鐘形」

 威がオーラに響き、太鼓の幕が如く振幅すれば衝撃となって少女の全身を揺らした。
「猟兵がオーラを防御とするのは知っていた」
 残心。
 怪人は構えを解かず、膝を着き頭を垂れるネリーへと告げる。
「ならば、それを利用した技もあるというものだ」
 一歩、二歩と、歩みを進め、拳を握る大頭頭。
 だが、その歩みは風を切り裂くような平手打ちによって止められた。
「それが……どうしたの」
 瞳、耳、鼻、文字通り孔という孔から血を零したネリーが平手を振るった手で血を拭う。
「来なさいよ……常勝不敗の女神の覚悟、見せてあげる」

 こおりのむすめ

 強烈な冷気の一撃と共に失うのは人間らしさ。
 怒り、悲しみ、喜び、愛。
 何を失ったのだろう。
 分からない。
 だけど……引き返せない。

「今のわたしはあなたと同じ『死んだら終わり』」
 人間らしさをこのまま失っていけば、想いすら消え、残るのはミネルバ・レストーという記号。
 誰かの事を笑えないと頭によぎった直後、叩き込まれた拳にネリーの脳が揺れ、仕返しに怪人の頭を揺らす。
「だから死に物狂いよ、負けないためには手段を選ばない」
 掌を突き出し、猟兵が氷の矢を放つと邪拳士の膝が凍り付く。
 ネリーは躊躇いもなく凍結した『それ』を砕き。
「悪く思わないで頂戴ね」
 倒れゆく大頭頭の顔面を掴み、零距離で氷の矢を撃ち込んだ!

「……なぜそこまでした」
 仰向けに倒れ、床を赤く染め、怪人は問う。
「分かんないわよ」
 色が戻った世界、目尻に残った血の跡を拭い、ネリーはつれなく答えた。
「ただ、私がそうしたかっただけ」
 それが一番大事だと信じたいから。
 その佇まいに何かを悟った邪拳士は意識を手放し、死道への道を進んでいった。。
大成功 🔵🔵🔵

ユーフィ・バウム
世界に馴染めなかった邪拳よ
蛮人なれど、戦いで培ったこの拳でお相手しましょう。

戦い方は、【怪力】を生かした【暴力】の打撃か、
掴んで膝を入れる、あるいは投げる【グラップル】で攻める

守りでは天性の【野生の勘】に身につけた【戦闘知識】を生かし、
相手の攻撃の致命の一撃を避け、【激痛耐性】で耐え、
【カウンター】の打撃を入れる

攻めきれない、もしくは押し込まれると判断した時は【衝撃波】で
【吹き飛ばし】、仕切り直した後【挑発】で相手の攻撃を誘う
どうしました、私はまだ元気ですよっ

迫る敵の攻撃を【見切り】、全開の【オーラ防御】で
耐え抜いた後で、めいっぱい【力溜め】た、
必殺の拳、《トランスバスター》で決着を狙います!


●五感を超え六へ繋げる拳

「世界に馴染めなかった邪拳よ」
 誰も居ない海岸にて、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は砂浜を歩む。
「蛮人なれど、戦いで培ったこの拳でお相手しましょう」
 寄せては引き返す波を見つめていた大頭頭は巨大な頭をユーフィに向け、応える。
「蛮人なら、この場所には来ないさ。さあ、やろうか」
 怪人が構え、そして言葉を紡ぐ。
「その拳に相応しきもの、死道の土産として携えさせてもらう!」
 足音は波音に消え、二つの影が動き、時が始まった。

 猟兵が構えるのはストライカースタイル。
 アップライトで拳は軽く握り、対応力を高めるため重心は高い。
 対する怪人が構えるのは三体式。
 低い重心、半身の姿勢はやや後ろ寄り。
 姿勢の違いは技の違い。
 体重の乗せ方、身体を動かすプロセス。
 求める物への道は一つではない。
 だからこそ、人は――戦うのだ。

 強打と単式、互いに振るうはシンプルにして破壊力充分。
 ユーフィの拳を大頭頭が避け、怪人の一撃を蛮人がいなす。
 流れを変えるために猟兵がグラップリングから膝へ持ち込めば、砂浜に強い踏み込みと共に邪拳士が肩がぶつけ、間合いを開く。
 そのわずかな射程距離の中で繰り出される拳打と象形拳。
 このままでは千日手になる。だからこそ――互いに衝撃波を撃ち込んだ。
 空気が割れ、烈風渦巻き、そして離れる二人。
「どうしました、私はまだ元気ですよっ」
「誘うな」
 ユーフィの挑発に大頭頭が笑った。
「乗ってしまいたくなる」
 拳を交わしたからこそ、軽口も出る。
 もう分かっているのだ。
 次が決着だと。

 一歩、二歩、猟兵と怪人の距離が縮まり、拳が疾る!

 後の先を狙うはユーフィ。
 オーラを纏ったピーカブーで一撃に耐える。
 先の後を狙うは大頭頭。
 防御を貫く、勁力を乗せた空拳が蛮人の耳元へ打ちぬかれる。
 瞬間、反対の耳から血が流れ、ユーフィの身体がぐらつく。

「x形拳、音速形――耳元で発生した衝撃波がお前の脳を壊す」

 揺れる視野、酔いに似た身体が浮かぶ感触。
 蛮人の意志とは裏腹に奪われる身体のコントロールを
「行きます!」
 ――ほんのわずかだけ繋ぐ!
 一瞬の見切り、拳の本質を見抜いていたからこそ、打ち込める残された一発。
 無駄には出来ないその技に全てを込めてユーフィは振り抜く。

 トランスバスター!

 強打。
 元からの怪力に溜めに溜めた力が爆発し、邪拳士の顎を下から上へと貫いた!

 倒れる音が二つ。
 だが、立ち上がるのは一人。
「……」
 先に道を歩く大頭頭に対する言葉は必要なかった。
 ユーフィ・バウムとの闘いが全ての言葉なのだから。
成功 🔵🔵🔴

トリテレイア・ゼロナイン

(ある意味での私と彼らの類似点
平和に邪拳の居場所は無く、齎された『めでたしめでたし』の先に騎士の、戦機の出番はあらず。それでも…)

私はトリテレイア、騎士足らんと歩むモノ

ですがこの世界の安寧の為、『全力』を持って相対させて頂きます

いざ…!

肩部と腕部格納銃器乱れ撃ち
銃器破損を代償に変幻自在の動きを情報収集

(背の剣と盾抜き放ち)
勝負はここからです!

剣盾で拳を凌ぎ反撃しつつUCの為の見切り精度向上

防御と同時に剣を手放し視線誘導

頭部格納銃器を展開
騙し討ち

…射線読んで躱し迫る相手へ脚部スラスター推力移動で敢えて踏み込み

邪道だとしても…私は!

超重フレーム前腕部伸縮機構作動
リーチ伸ばす貫手の鉄爪繰り出し


●七夜、夢見た時を経て

 既視感の拭えない決闘場の廊下を騎士が歩く。

 ――ある意味での私と彼らの類似点。

 騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が思考する。

 平和に邪拳の居場所は無く、齎された『めでたしめでたし』の先に騎士の、戦機の出番はあらず。それでも……

 今、自分と邪拳士が居るのは理由があっての事だろう。
 だから――

「私はトリテレイア、騎士足らんと歩むモノ」
 騎士は名乗り。
「――知っている」
 邪拳士は答えた。

「――!?」
 聞き覚えのある大頭頭の言葉にトリテレイアは驚きの色を隠せない。
 その怪人は片腕を失っていたのだから。

「久しいな」
「……生きておられたので」
 邪拳士と戦機が間合いを探るために円を描くように歩く。
「結局、俺は戦争も生き残り、この有様だ」
 かつての闘いにて騎士を倒した拳鬼は、片腕の無い自分の姿を見て哂う。
「だから――約束を果たしに来た。邪拳士となって」
「分かってはおりましたが……貴方も不器用な方ですね」
 短く長い時が二人の間を通過した。
「ですがこの世界の安寧の為、『全力』を持って相対させて頂きます」
 トリテレイアが告げると、大頭頭は唯一残った右腕を騎士へ向けた。
「ならば、俺も全力を以って――最後の時を過ごそう」
 言葉の重み、その意味を理解しない騎士ではない。
 だからこそ――
「いざ……!」
 戦いに臨む言葉は重く。
「――いざ!」
 それに応える怪人の言葉は歓喜に満ちていた。

 中国拳法から発展させた邪拳独特の運足にて、拳鬼が距離を詰める。
 戦機は躊躇いもなく、隠し武器たる腕と肩の銃火器を展開し、全ての弾丸を撃ち込む。
「――っ!?」
「俺は考えた、どうすれば次は腕を失わないか」
 騎士の驚愕をよそに近づくは大頭頭。
 弾丸は弧を描くよう振り回す掌で叩き落されていた。
「答えは邪拳にあった――弾丸より硬い腕であればいいと」
 歩幅が変わり、拳が疾る。
 直後、金属のひしゃげる音とともに、トリテレイアの銃火器全てが破壊された。
「そして弾丸より強くなればいい――これぞx形拳、戦車形」
 戦機の装甲すら容易く砕く拳に、騎士は一歩、二歩、距離を取り背中に括りつけた剣と盾を構えた。
「ですが……勝負はここからです!」
「ああ、これからだ!」

 大頭頭の拳を盾で受け流し、トリテレイアが剣を振るう。
 深い踏み込みと共に、巨大な被り面による頭突きが振り上げた剣を止め、重心を上にとかち上げる。
 そこへしなるような蹴り。
 咄嗟、騎士は自らの体格を利用し、広い背中で自らぶつかっていく。
 威力を殺された蹴りが止まり、脚が止まり、視線が互いへと止まった。
「――今です」
 猟兵の頭部が展開、隠し銃器が火を吹く。
「甘い!」
 怪人の頭部が揺れ、銃弾を逸らすと流れるように踏み込み、掌を叩きこむ――虎形!
 反射的にかざした盾が砕け、剣が跳ね跳び、そこに居るのは武器を失って、勁の威力に二歩、三歩と後退する騎士一人。
「――終わりだ」
 止めを刺さんとばかりに邪拳士が踏み出す。
「ええ」
 騎士の言葉が拳鬼の耳を揺らした時。
「これで終わりです!」
 衝撃が怪人の腹に響く。
 視線を落とした大頭頭が見たのは貫手。
 だが、拳が届くには遠い。
「邪道だとしても……私は!」
 けれど前腕部伸縮機能が遠すぎる間合いを潰していた。
 それこそがトリテレイアの狙い。

 機械騎士の傀儡舞!

 吸気の音が決闘場に響き、直後、戦機のスラスターが踏み込みを加速される。
 前腕部伸縮機構最大作動!
 さらに伸びた貫手がブーストされた踏み込みによって加速し、大頭頭の腹を貫いき決闘場の壁へと叩きつけた!
 鋼鉄の腕が引き抜かれ、騎士の鎧が赤に染まる中、邪拳士は倒れ伏し、土を舐めた。

「七夜……いや、それ以上に夢を見た」
「はい」
 天を仰ぐ怪人に戦機は一言答える。
「貴様と再び相まみえることを」
「はい」
 飾り気のない言葉が拳鬼の耳には心地よい。
「騎士よ……あり……が……」
「……はい」
 死する邪拳士の言葉が戦機のメモリーに刻まれた。
 男は終わりを望み、騎士はそれに応えた。

 ――一年と八か月の末に。
大成功 🔵🔵🔵

ロータス・プンダリーカ
にゃんと邪悪な拳氣…!
しかし、悪しき拳は拳に非ず
我が肉球拳の名に賭けて、邪拳は滅さねばなるまい、にゃ

或陀把の決闘死威が一、貴様等に引導を渡しに来たにゃ!
まずは敢えて相手の攻撃を誘い
何という速さ…! だが!

お前が戦っていたのはボクの残像だにゃ
初手はなかなか痛烈だったけど、その先は見切った
己の拳に痛みを感じなくなったお前には、それが当たったかどうかすら解るまい!

刮目せよ! 我が奥義を!
氣を高め纏うと高速飛翔で相手の懐へ飛び込み
初手の大きい面への蹴り上げで敵が一瞬怯んだ時こそ勝機!
乱舞攻撃食らわせて一気に叩きのめすにゃ

お前は強かった…しかし、その悲しい拳は間違った強さだった
一からやり直すと良いにゃ


●八双、拳の痛みは

 邪拳士と言えど、怪人と言えど、その内面は人それぞれ。
 武に全てを捧げた者、再戦に望みをかけた者もいれば、自らの拳を思うがままに振るう者もいる。
 そして、それを倒す決闘者もそこに――。

「にゃんと邪悪な拳氣……!」
 ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)が口元に鮭トバを咥え、複数のビルから蜘蛛の巣状に張り巡らされた鎖の上を歩く。
「さよう、これが邪拳の力」
 被り面の奥に邪悪なる光を灯し、鎖の中心に立つのは大頭頭。
「全てを喰らい尽くす、偉大なる秘伝」
「しかし!」
 ロータスの指が怪人を差し、その虹彩は戦いに備え拡大する。
「悪しき拳は拳に非ず」
 鮭トバを食べ終わると、猫は柔らかく膝を曲げ、構えた――これぞ本当の猫足立ち。
「我が肉球拳の名に賭けて、邪拳は滅さねばなるまい、にゃ」
 猟兵の立ち振る舞いに熟練の動きを感じた邪拳士の氣が張り詰めていく。
「貴様、ただのキマイラでは無いな」
「いかにも」
 拳鬼の言葉に答える者、その名は
「或陀把の決闘死威が一、貴様等に引導を渡しに来たにゃ!」
 ――決闘死威。
「師父から聞いたことがある。世界には怨を返す、決闘者の一族が居ると」
 大頭頭がロータスの口上を聴き、過去の言葉を聞き、そして笑う。
「面白い。ならば我が邪拳にて、恩返しなどという言葉を葬ろう――貴様の死をもってな」
 邪拳士が構えた。
「この闘夢歩乱渡が貴様の墓場だ!」
 戦いの場に死道の花を添えるため。

 ――闘夢歩乱渡。

 元は暇を持て余した、キマイラ達がビルとビルの間に鎖を渡し、歩いたのが始まりとされる。
 やがてエクストリームを求めた人々は鎖上でのバトルを思い立ち、鎖は自然と蜘蛛の巣を描くこととなった。
 闘者は蜘蛛に囚われし、虫の如く。
 闘う者の夢を捕らえ、足元を乱すそのステージに人はその名を与えた。

(キマイラアーカイブス刊、マーベラスエクストリームより抜粋)

 そんな、夢を貪る欲望の空に大頭頭が舞う。
「猫といえど、鎖の上を自由に歩けはしまい! だが私は違う!」
 不安定な足場を物ともせずに舞う動きは無限の極み。

「i! 極!! 拳!!!」

 跳び蹴りから始まり、腹への裏拳、顎をカチ上げる蹴り、鎖がピン! と張るほどの踏み込みからの縦拳、そして旋風の如き回し蹴り。
 文字通り風に攫われるかのように、ロータスの身が吹き飛び、消えていく。
「勝った!!」
「何という速さ……! だが!」
 歓喜の叫びを発する邪拳士の背中から、強くも哀しい声が聞こえた。
 振り向いた先には決闘死威が立っていた。

「馬鹿……な!?」
 驚愕する大頭頭。
 それをよそに音もなく歩く、ロータス。
「お前が戦っていたのはボクの残像だにゃ」
 猟兵が進めば、怪人は退がる。
 最早勝負は決まっていた。
「初手はなかなか痛烈だったけど、その先は見切った」
 跳躍。短いリーチを補うため、猫は飛び込む。
「己の拳に痛みを感じなくなったお前には、それが当たったかどうかすら解るまい!」
「ぬ……ぬかせぇ!!」
 飛び込みにカウンターを合わせるかのように拳を振るう怪人。
 だが邪拳は空を切り、その足元を決闘死威が――飛ぶ!

 奥義・猫虎乱舞!

 飛翔からのロータスの蹴り上げが大頭頭に空を仰がせる。
 顎が上がり、むき出しの腹に叩き込まれる肉球の連打。
 足場の不利は飛行すれば問題はなく、そして肉球というクッションは拳の威を怪人の身液を通して浸透させる。
「これで……終わりにゃ!!」
 全身を使ったオーバースロー気味の掌底が拳鬼の顎を揺らす!
 意識のラインを断ち切られた大頭頭は揺れるように鎖から落ち、大地へと消えていった。

「お前は強かった……しかし、その悲しい拳は間違った強さだった」
 故に決闘者は死道へと導く。
「生まれ変わって、一からやり直すと良いにゃ」
 輪廻の環が今度こそ、正しき道を歩ませることを祈って。
 ここに怨は終わり、恩返しの種族は闘いの場に背を向けた。
成功 🔵🔵🔴

ジャック・スペード


こういう趣向は嫌いじゃないな
お前たちの希通り
最期を華やかに彩ってやろう

武器も盾も使わない
此の身ひとつでリングに降り立つ

力量の見極めは慎重に
先ずは護りに徹しよう
飛んで来る拳は怪力でグラップル
殴り合いは美学に反する
俺の拳は護りの為にあるからな

受け止めた衝撃で拳が壊れ
導線が溢れようと、電気が散ろうと問題ない
此の足さえ在れば戦える

受け止めた拳は掴んだ侭、離さない
Dorotheaに電気を纏わせ
至近距離から重たい蹴りを入れる迄は

敵の姿勢が崩れたら、即座に鋼鉄の蹄を発動
靴に纏わせた電気は収めて
急所へ渾身の蹴りを叩き込もう

無骨な此の躰は矢張り
淑女と踊るよりも、お前達と踊る方が
よほど性に合っているらしい


●求道者の挽歌

「こういう趣向は嫌いじゃないな」
 リングに上がったジャック・スペード(J♠️・f16475)がスポットライトが照らされる中、キャンバス中央へと足を向ける。
「お前たちの希み通り、最期を華やかに彩ってやろう」
「礼は言わん」
 被り面の対戦者が応えた。
「何故なら、貴様のオイルで彩られるかもしれんからな」
 軽口に嘲りはない。
 何故なら、待ち望んでいた『相手』が目の前にいるのだから。
 ゴングは要らなかった。
 もう、時間は始まっているのだから。
 まったく同じタイミングで、二人は動いた。

 力量を見極めるため、体格差を利用しじりじりとプレッシャーを掛けていくジャック。
 対する大頭頭は敢えて飛び込み一撃を狙う。
 森羅万象を体現するx形拳、そこへ代入される答えこそは基本にして始まり。

 ――劈拳!

 戦機の腕を抑え、意識が一瞬でも腕に向くわずかの隙へと撃ち込まれる掌底。
 勁力が伝達された一撃を、ジャックはその大きな掌で受け止めた。
 金属がへし折れる悲鳴。
 拳を受け止めた手首は消え、機械油が飛び散り、ちぎれた導線が火花を散らす。
 だが、戦いは終わっていない。
 次へ繋げる一撃を邪拳士が放とうとした時、その拳をジャックの残った腕が掴んだ。
「殴り合いは美学に反する」
 握る力は強く、怪人が振り払う事は能わず。
「俺の拳は護りの為にあるからな」
「ならば、護りの切り札を切る前に――貴様を倒そう」
 戦機の意図を見抜き、拳鬼は咆哮した。

 拳!
 掌!
 蹴!
 貫!
 刀!

 あらゆる技がジャックの装甲を破壊し、機械たる身を露わにする。
 それでも猟兵の足が折れることは無い。
 怪人が邪拳士となったように、かつての戦争人形は英雄となり、猟兵となり、ここに立っているのだから。
「――終わりだな」
「――ああ」
 手向けの言葉と共に剥き出しの動力機構へ貫手を繰り出す大頭頭。
 彼の言葉に頷いたジャックは掴んだ腕を引き、邪拳士の荷重を片膝へ傾ける。
 重いローキックが叩き込まれ、閃光が膝から拳鬼の全身へ走った。
 電撃を纏わせた膝への蹴り。
 体重の乗った一撃が怪人の膝を壊し、紫電が立て直しを封じる。
 蹴り足をリングに着地させると戦機の足首が回り、鋼が今、振るわれる!

 ――鋼鐵の蹄!

 鋭い蹴りが吸い込まれるように大頭頭の被り面に叩き込まれ、怪人の命と共に粉砕された。

「無骨な此の躰は矢張り」
 死者を覆うキャンバスは要らなかった。
「淑女と踊るよりも、お前達と踊る方がよほど性に合っているらしい」
 死道を歩く者に必要なのは拳を交わしたものが残す言葉と記憶だけなのだから。
成功 🔵🔵🔴


第2章 ボス戦 『ロンダリングラクーン』

POW ●洗熊拳・濁流の型
【怪人拳法「洗熊拳」】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD ●洗熊拳・清流の型
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【突き出した掌】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ ●洗浄魔術「怒螺無式」
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【水】属性の【魔法の大渦】を、レベル✕5mの直線上に放つ。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠京奈院・伏籠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●邪拳遊戯~真の始まり

 それは
 あれは
 かれは

 ――そいつは

 そこに現れた。
「彼奴らは……死道を歩いたか。これであ奴らの生き方はロンダリングされた」

『一対一』で。

「まずは礼を言わせてもらおう。あ奴らの生き方と死に方に付き合ってくれて」
 そこで、猟兵の様子に気づいたのか、アライグマの猟書家は笑みを浮かべる。
「我は猟書家だぞ? 貴様は何度、我らと戦った? そして今、どれくらいの時間が経った?」
 邪拳士ロンダリングラクーンはゆっくりと猟兵の前に歩み寄る。
「短かったか? 長かったか? それとも初めてここに来たのか? どちらにしても我が多方面に一体ずつ現れているという『事実』を確かめることは出来ない」
 そして、彼は目の前に立ち
「事象は複数の視点から見ることで実証されるのだから、だが貴様らは一対一の闘いを選んだ。濁流の秘儀に囚われているのだよ、最早」

 ――構えた。

「続きといこう、第六の戦士よ。ヒーローマスクを上回る折れない心、我はそれを望み、疲弊した貴様らを倒すことで、弟子達の道すら踏みにじる――故に邪拳は遊戯と化す」

 そこに立つのは一人の拳士の前に一人の猟書家。

「邪拳遊戯はここに始まる」
 それは世界を踏みにじる存在。
 君は一人でそれを打ち倒さねばならないのだ。
ジャック・スペード


初めまして
そして、左様なら
壊れるのはお前の方だ

壊れた腕にRosaspinaを嵌め
此の身に屑鉄の王を宿し
モノアイの異形と化せば
蒼き稲妻を纏い戦場を駆ける

疲弊した敵を倒すだけだと?
そう遠慮しなくて良い
これで同じだ
存分にやり合おう

電池が切れる迄の決着目指し
脱力する暇が無いほどの連撃を
鈎の義腕から繰り出して行こう
守りは捨てる、好きに壊せば良い

脱力された時は、稲妻を纏った鈎を突き刺し
電流で無理やり躰を硬直させたい
隙を作れたら此の脚で
思い切りラクーンを蹴り飛ばす

お前の弟子たちは
死に場所を見つけられたんだろうが

嘗て仕えた国は滅び
殉じることが出来なかった近衛兵に
死に場所などあるものか

だから、オレは壊れない


●邪拳遊戯~アンブレイカブルハート

「初めまして。そして、左様なら」
 ジャック・スペードが壊れた腕に蔦薔薇の意匠と剣の紋章に彩られた、銀の鈎を嵌める。
「壊れるのはお前の方だ」
 鈎となった腕を掲げると蒼い稲妻がジャックを打ち、彼は魂を纏った。

 君臨せしは屑鉄の王

「疲弊した敵を倒すだけだと?」
 骸魂をその身に宿した姿は最早
「そう遠慮しなくて良い」
 オブリビオン。
「これで同じだ、存分にやり合おう」
「同じか――その姿、彼奴らに共感したか?」
 ロンダリングラクーンが笑う。
「違うな」
 モノアイが猟書家を見下ろし、そして屑鉄の王は否定する。
「必要だったからだ」
 紫電たなびかせ、戦機が動けば、拳鬼も跳ねるように距離を詰めた。

 その巨躯から信じられない速さは電気を費やすが故。
 速さと重さが乗った鈎に対し、ラクーンは自らの肉体を特性を生かし、横ではなく縦に動いた。
 つまり鈎の腕にしがみつき、その腕から跳ねて回転。遠心力の乗った踵がジャックを襲い、その頭部装甲をへこませる。
 だが戦機が一歩踏み込めば、彼の質量が猟書家を弾き飛ばす。けれど拳鬼は空中で体勢を整え音もなく着地する。
 そこへ再び鈎が一閃!
 キャンバスが大きく切り裂かれた。
「洗熊拳、二鎗式」
 ほぼ同時だった、槍の如く鋭い貫手が屑鉄の王の腹を貫き、続いて手刀が膝の駆動系を切断した。
 だが、ジャックは止まらない。
 折れ曲がりそうな膝から荷重を抜き、まだ動く足に全体重を掛けると飛び掛かるような不器用な突進から鈎を薙ぐ。
「……ふむ」
 プレッシャーからか距離感を誤ったロンダリングラクーンは切り裂かれた腹を
見下ろし、舌なめずりを見せた。
「面白い。その力、もらい受けよう」

 まず、構えを捨てた。
 すなわち無形。
 次に跳ねるような動きを止め、ゆっくりと歩み始める。
 すなわち正中。
 鈎を躱す動きは流れる水の如く。
 すなわち流水。

 ジャックはラクーンの意図に気づいていた。
 ――待っているのだ。
 自らの攻撃を受け止めるタイミングを。
 焦りが攻撃を単調にさせ、そして、攻めに隙が生まれるその時を……。
 そして機を見抜いた猟書家の掌が鉤爪を抑える。
「獲った」
「捕らえた」
 ロンダリングラクーンとジャック・スペードの声が重なった。

 放電!

 戦機とて、敵のユーベルコードの前に無策で居るわけがなかった。
「お前の弟子たちは死に場所を見つけられたんだろうが」
 迸る雷のパトスが筋肉を収縮させ、ラクーンの動きを止める。
「嘗て仕えた国は滅び、殉じることが出来なかった近衛兵に死に場所などあるものか」
 それは生きる者の道。
 人の心と恩義に報いるために死に場所を捨てた男の、わずかな吐露。
「だから、オレは」
 風が――唸りをあげた。
 重爆の蹴りがロンダリングラクーンを頭部を吹き飛ばし、その身を二度、三度とバウンドさせた。
「壊れ……ない」
 同時に膝を着くジャック。
 既に電力は失われ、残るは意識のみ。

 だが、決着はついた。
 生きる道――生道を歩く者は次の闘いに備え、意識の紐を切り離す。
 壊れざる者――アンブレイカブルの道に終わりは無いのだから……。
苦戦 🔵🔴🔴

トリテレイア・ゼロナイン
あの隻腕の拳鬼に、新たな拳を授けたこと
まずは礼を言わせて頂きたく

そして、その遊戯…阻ませて頂きます

銃無く、盾砕け
振るうは握る剣と伸びる両の腕
蛇の如く操縦するワイヤーアンカー水晶体を槍の如く尖らせ、体躯の差活かし潜り込まんとするを牽制

…やはり正道の騎士とは程遠い
ですが、これが私の騎士道なれば
ご容赦頂きたい

触手の槍など呑まんとする濁流捉え剣で迎え打ち
(瞬間思考力、見切り、武器受け、怪力)
刀身、柄、拳、腕
砕け散ってでも勢い殺し

自己ハッキング即時修正で己の体幹制御維持
残る腕も砕けよとばかりに放つは鉄拳

(あの男が己が道を駆け、私が世の安寧を望んだのならば)

安寧阻む邪拳、騎士として打ち倒し駆けるのみ!


●邪拳遊戯~正道に果て

 決闘場を二人の男が歩く。
「あの隻腕の拳鬼に、新たな拳を授けたこと。まずは礼を言わせて頂きたく」
 戦機の名はトリテレイア・ゼロナイン。
 時代に取り残された男の一人。
「礼は要らん」
 拳鬼の名はロンダリングラクーン。
「彼奴には死に場所を与えてやったにすぎん。我が大望の前にな」
 過去より時代を奪い取りに来た猟書家の一人。
「ならば、遠慮なく」
 騎士が残った武器である剣を構える。
「その遊戯……阻ませて頂きます」
「来い――貴様にも死道を歩んでもらおう」
 ラクーンが構え、そして音もなく間合いを詰めた。

 水晶が煌めき、槍の穂先を模してロンダリングラクーンを襲う。
「アライグマがなぜ、そう呼ばれているか知っているか?」
 水晶はワイヤーアンカーの先端にして鋭い刃、それを猟書家な難なく受け捌く。
「それは食べ物を洗うような仕草から取られた」
「ええ、ですが実際は手の感覚で物を感じ取っている」
 距離を詰めたトリテレイアが剣を振り下ろせば、跳ねるように拳鬼が舞う。
「つまりは空気の鼓動を聴きとれる」
 着地、同時に戦機の肩の装甲が破壊され、駆動系が露出する。
「すなわち、こういう事だ」
「だとしても!」
 なおもトリテレイアは剣を振るう。
 その身、傷つき、武器を失っていても。
 騎士として、猟兵として、阻まねばならぬ野望が目の前にある限り。
 戦機は名乗るのだ――ブローディアの別名を。

 乾いた音が鳴り、砕かれた水晶体が空に舞う。
「無残な有様だな」
 猟書家の目の前に立つのは、ワイヤーアンカーを引きちぎられ、装甲は最早飾りにすぎず、血の代わりに油脂を流す、鋼鉄の騎士。
「我もいささか、熱に浮かれすぎた……貴様が意志を貫く故に」
 ロンダリングラクーンが腰を落とし、拳を握る。
 狙うは一撃の拳。
 トリテレイア・ゼロナインが不安定な挙動を過剰なジャイロ駆動で制し、剣を構える。
 狙うは  。
 ただそれだけのために、距離を詰める。
 合わせるかのように猟書家が踏み込み、吸い込まれるように拳と騎士の剣がぶつかり合う。
 甲高い音が響き、刃が舞う。
 折れた剣が大地に突き刺さったと同時に金属のひしゃげる嫌な音が響いた。
「洗熊拳・濁流の型……濁った流れは全てを視えなくさせる」
 手首までめり込んだ拳を引き抜こうとロンダリングラクーンが力を入れる。
 そこへ――
「……やはり正道の騎士とは程遠い」
 引きちぎられたワイヤーだったものと、機能を殆ど成していない腕が絡みついた。
「ですが、これが私の騎士道なれば、ご容赦頂きたい」
 稼働時間は残り僅か、崩れゆく体幹は自己をハッキングすることで立て直す。
 稼働時間はさらに減少していく。

 ――あの男が己が道を駆け、私が世の安寧を望んだのならば。

 頭によぎるのは、かつて自らを倒し、そして待っていた男。
 報いる技はただ一つ。
「安寧阻む邪拳、騎士として打ち倒し駆けるのみ!」

 機械騎士の最終手段!

 自壊必至の鉄拳がロンダリングラグーンを貫いた。
「何を言っている……」
 拳砕け、腕が折れ、倒れゆくトリテレイアのセンサーが聞き取るは猟書家の言葉。
「その生き方こそがまさに……正道」
 質量を失い、塵となって消えていく拳鬼を見送り、戦機もまた黒き海に倒れた。
苦戦 🔵🔴🔴

月白・雪音
…拳を遊戯と為し踏み躙る。確かに、それは彼らにとって信を否定されるに等しい行為なのでしょう。
されど、武において拳の技など小手先の業。

拳が使い手にとって、見る者にとって、ただ壊すのみでない遊戯となるならそれも良し。それは一つの善き在り方と私は考えます。

…ですが、貴方の『遊戯』が人を、世界を…、今を、ただ徒に殺めるものなれば。

――今此処にて、貴方を討たせて頂きます。


UC発動、残像の速度にて怪力、2回攻撃、グラップルにてダメージを重ね、
返される技には更に見切り、野生の勘、カウンターにて反撃
返し技の挙動を覚えれば、部位破壊にて腕部の破壊を狙う

我が業を返すと云うならば。
今この場にて、先の己を上回るまで。


●邪拳遊戯~上回るは己

「……拳を遊戯と為し踏み躙る」
 月白・雪音の言葉に揺れるものなく、静かな湖面の様。
「確かに、それは彼らにとって信を否定されるに等しい行為なのでしょう」
 雪音と猟書家の足が動き
「されど、武において拳の技など小手先の業」
 互いの視線が交錯する。
「ほう……否定されると思ったが」
 ロンダリングラクーンが笑う。
「拳が使い手にとって、見る者にとって、ただ壊すのみでない遊戯となるならそれも良し。それは一つの善き在り方と私は考えます」
「貴様の拳は広いのだな。果て無き雪原の如く」
 月輪氷華の拳を評するラクーン。
「……ですが、貴方の『遊戯』が人を、世界を……、今を、ただ徒に殺めるものなれば」
 しかし気配が変わったことに気づき、拳鬼は拳を握る。
「――今此処にて、貴方を討たせて頂きます」
「よかろう」
 雪音の言葉に、ラクーンは只、是と答えた。

 先手は月氷の拳。
 自らの技量を高めるその技の名は――

 拳武

 錬磨された闘いの技量は最早ユーベルコード。
 撃ち込まれるは残像を伴い、膂力を以って組み付く連撃。
 だが、それは……
「技術は重ねる物じゃない、使いこなすものだ」
 ロンダリングラクーンにとっても好機。
 打ち込まれた技に宙を舞うと、返すのは突き出した掌にて頭を掴み、膝蹴りからの足払いへの流れるような動き。
「洗熊拳・清流の型」
 見切ることは難しかった。

 どんなに熟達した技能でも、組合わせ方で変わる。
 ただ使うのと、目的をもって組み立てを考えるとでは、差は必至。
 そして、それができるのが拳鬼たる者。

 けれど、勝負がそこで決まることは無い。
 何故なら雪音自身が負けを認めていないのだから。
 それ以前に、彼女は決めていた――己を超えることを。
 だから猟兵は立ち、再び拳を握った。

 互いに組み合えば、相手を操作し合う。
 膂力で押しきろうとすれば、力で制し、受け流す。
 放たれる連撃はほぼ同時、軌道は逸らされ、威力は殺される。
 姿は虚ろと消え、残像を囮に二人は動く。

 闘いの流れは拮抗。

 己を超える決意が本来の技量差を埋め、接戦を繰り返す。
 だが、このままでは決め手に欠ける方が負け。
 そして、切り札を持つのがロンダリングラクーン。

 洗熊拳、然示導

 これはユーベルコードではない、戦術の一つ。
 闘いの流れを掌握し、そして隙を作り出す智の拳。
 導かれるように雪音の拳が空を切り、その脇へめがけて猟書家は一撃を叩き込まんとした。
 鈍い音が響き、ロンダリングラクーンの拳は月氷の肘と膝に挟まれていた。

 部位破壊

「我が業を返すと云うならば」
 自らの拳を模倣されているからこそ、自らの癖を知り、挙動を知る。
 己を超えたものが出来る一手。
 雪音もまた決め手の技を持っていた。
「今この場にて、先の己を上回るまで」
 直後、ラクーンの頭を揺らす強打の一撃。
 勝負は決まり、後に続くように月氷の拳士はその場に膝を着いた。

「柄にもない闘い方をした……」
 先に倒れたロンダリングラクーンが天を仰ぐ。
 その身体は質量を失うが如く塵と消えていく。
「これが折れぬ心……やはり、必要なものは貴様らが持っているというのならば……」
 それ以上の言葉は無かった。
 拳鬼は最早ただの過去となったのだから。

「次もまた打ち倒しましょう」
 骸すら残さない相手に対し、雪音が立ち上がりそして告げる。
「さらに高めた己を以って」
大成功 🔵🔵🔵

ユーフィ・バウム
何やら難しいことを仰っているようですが、
私の頭では理解できないと思われます
ただ、この拳と体でお応えしましょう!

【勇気】と【覚悟】をもって。

風の【属性攻撃】を拳に宿し、
【鎧砕き】のねじり込む打撃を繰り出して戦います
小兵とて老兵とて侮りません
自分もまた、常に大きな相手を打倒してきたのですから

相手からの攻撃は
培った【戦闘知識】【野生の勘】を生かして
【見切り】、【オーラ防御】で凌ぎつつの
【カウンター】の打撃で返す
回避しきるのではなく、耐えて殴り、蹴ります

自身の肉体が悲鳴を上げようと、【限界突破】し、
胴でも肩でも尻でも、頭でも――叩き込める部位に
ありったけのオーラを込め、
《トランスクラッシュ》の一撃を!


●邪拳遊戯~限界の向こう側

「何やら難しいことを仰っているようですが、私の頭では理解できないと思われます」
 ユーフィ・バウムが力強く言い放ち。
「ただ、この拳と体でお応えしましょう!」
 構える。
「……」
 猟書家、ロンダリングラクーンは少々の沈黙の後、口を開く。
「最初の闘いで疲れているお前達なら倒すのは楽だろうから、ここで倒す」
 出来るだけ噛み砕いた言葉で。
「分かりました!」
 ユーフィは力強く答え。
「やはり、この拳と体でお応えしましょう!」
 そして構える。
「まあいいか……そういう闘いとてあるさ」
 拳鬼は笑い、自らも構えた。

 先に跳ぶのはロンダリングラクーン。
 獣特有の脚力から一気に間合いを詰めると、飛び込みの縦拳。
 対するユーフィはオーラで強化した腕で受け止めると、真っ向からの一撃。
 風を纏ったその拳の危うさに気づいたラクーンが身を翻すと、地に手をついての蹴り上げを放つ。
 敢えて猟兵はそれを受け止めると衝撃に耐えつつも腕を振るい、猟書家を吹き飛ばす。
 すぐに受身を取るラクーン、体勢を立て直せばたたらを踏む蛮人の顔面に膝を叩き込み、仕返しとばかりに猟兵は掌にて拳鬼を捕まえ、嵐の如き勢いで地面に叩きつけた。
 そこへ追い打ちの蹴り。
 咄嗟にロンダリングラクーンがガードして距離を保てば、互いに位置取りをするために円を描くように歩く。
「打ち合いを望むか」
「難しいことは……苦手です」
 ラクーンの言葉にユーフィが答える、互いに息が荒い。
「ならば肉を切らせて骨を断ちます」
「悪くない、貴様らしいよ!」
 蛮人の言葉に拳鬼が吠え、拳の打ち合いが始まった。

 自ら動いて翻弄し、倒す方法もあった。
 だが、ロンダリングラクーンがそれを選ばないのは、待ち受けて相打ち覚悟で戦う相手には分が悪いからだ。
 ならば正面から殴り合い、技巧を駆使して防御を崩す方が確実に勝てる。
 一方でユーフィもこのスタイル以外は選べなかった。
 風を纏い、防御を貫く拳をもってすれば威力は足りる。
 だが、当てられなければ意味がない。
 さすればカウンター、相打ち必至の殴り合いが勝機を見出す唯一の方法。
 だからこそ二人は足を止めて、拳を、蹴りを繰り出し続けた。

「貫槍!」
 猟書家の鋭い前蹴りが水月の貫き、蛮人の頭を下げさせる。
 その真下にロンダリングラクーンは居た。

 洗熊拳・濁流の型!

 至近距離からの頭部への蹴り上げ。
 仰け反るようにユーフィの脳が揺れ、神経の伝達が狂い、膝が笑う。
 勝負は決まった……はずだった。

「めいっぱい……」
 両手を組み合わせるのは蛮人の拳。
 勇気と覚悟、それのみが意志を繋ぎ、そして――限界を超える!
「叩き込みます!!」

 トランスクラッシュ!

 風と闘気を纏った両拳を倒れ込みながら振り下ろす。
 至近距離からの必殺の一撃を放った拳鬼が体勢を戻そうとするが間に合わず。
 後頭部に一撃を叩き込まれる。

 砂浜に盛大な砂の柱が――舞った。

「あなた……」
 足に力が入らず、その場に座り込んだユーフィが問いかける。
「うそ、ついてますね」
「……」
 その言葉にロンダリングラクーンは
「……さあな」
 答えを濁し。
「それはお前が知っているはずだ」
 ただ、そう言い残し、そして先に逝った。
成功 🔵🔵🔴

ロータス・プンダリーカ
……!!(相手の気迫に一歩後退り)
成る程、あいつらの師だけあるにゃ

お前は自分の弟子を捨て駒にしたってのかにゃ!
邪拳とは言え、拳に生きて散った彼等の為にも、貴様は許さにゃい
清白蓮華(プンダリーカ)の家名にかけて、濁ったその拳を砕く

貴様が濁流ならボクは清流を見せてくれるにゃ
高める己の気と共に周囲に纏うは清き水の流れ
地を蹴ればジェット水流の様に相手に突撃
命を賭けて子孫を残さんと遡上する鮭の如く
衝突から拳を交え、蹴りを放ち

その小さき身体で今までどれだけの相手と戦ってきたのにゃ?
しかし、自分と同じサイズの相手と拳を交えた事は?

答えがどうであれ
ボクはボクの正義を貫き、悪には決して屈さず拳を振るうのみにゃ


●邪拳遊戯~天を貫くは

 鎖が鳴る音が足から伝わった。
「……ッ!!」
 ロンダリングラクーンが歩を進めると、本能的にロータス・プンダリーカの足が退がった。
「成る程、あいつらの師だけあるにゃ……けれど!」
 だがロータスは、それ以上引き下がることは無い。
 殺意に逆らうかのように決闘死威が足を踏み込めば、ビルに張り巡らされた鎖が揺れ、二人の身が跳んだ。

 ロータスの拳がラクーンを倒すべく繰り出される。
 そうしなくてはいけない理由があるのだから。
「お前は自分の弟子を捨て駒にしたってのかにゃ!」
「如何にも」
 否定の言葉は無かった。
 鎖が暴れるように音を立てる。
 それは二人の動きの余波を受け、暴れる金属の悲鳴。
「邪拳とは言え、拳に生きて散った彼等の為にも、貴様は許さにゃい」
「なら、どうする?」
 拳鬼は歯をむき出しにして笑う。
 そうする理由があるのだから。

 プンダリーカ
「清 白 蓮 華の家名にかけて、濁ったその拳を砕く!」
「砕いてみろ、その怨返しの拳でなぁ!」

 互いの拳と掌がぶつかり合い、そして何かに気づいたロータスが距離を取る。
「……どうした?」
 ロンダリングラクーンが問う。
「お前……嘘をついているにゃ」
「だとしたら?」
 決闘死威の言葉をはぐらかすは猟書家の笑い。
「その背負っていこうとする罪業ごと、ボクは打ち砕く」
 それに対して、ロータスは掌を、肉球を向ける。
「それが、恩を返す種族――決闘死威なのだから」
「だったら!」
 拳鬼が吠える。
「この悪党一人、お前の技で打ち砕けぇ!!」
 一撃を決めんとし、拳を握り、そして走った。

 それはまさに濁流。
 全てを呑み込むような激しい運足。
 俊敏な獣とは思えない踏み込みに鎖が揺れ、ロータスへと迫る。
「貴様が濁流なら!」
 猟兵が走る。
 全てを受け止めるような、綺麗な運足。
 獣の足取りに揺れる鎖は無い。
「ボクは清流を見せてくれるにゃ」

 ――その心のように。

 風と殺意を纏いし猟書家の突撃と、水と恩を背負いし決闘死威の疾走。
 距離はあっという間に縮まり、先に放たれるは――
「洗熊拳・濁流の型!」
 ロンダリングラクーンの拳。
 けれど、その一撃は空を切る。
「その小さき身体で今までどれだけの相手と戦ってきたのにゃ?」
 しゃがみ込むはロータス・プンダリーカ。
 前に倒れるようにして両手で足場の鎖を掴み、鉄棒の要領で回転、そして勢いを乗せて叩き込むのは
「しかし、自分と同じサイズの相手と拳を交えた事は?」
 自らの矜持と邪拳士が師に対して持つ心――すなわち恩。

 天鮭神昇!

 鮭が水流を纏いながら勢い良く滝を登るかの如く、跳ね上げた蹴りが拳鬼の顎を捕らえ、空に舞わせた。
「知っていたのか」
 着地する力もなくそのまま落下しながら、ラクーンは呟く。
「お前が悪党として弟子達の道を踏みにじれば、彼らは悪にならない」
 視線が交錯する中、恩返しの種族は独り言のように答えた。
「だが、答えがどうであれ」
 そしてロータスは背を向ける。
「ボクはボクの正義を貫き、悪には決して屈さず拳を振るうのみにゃ」
「……見事」

 最後の言葉は地面への激突音にかき消された。
成功 🔵🔵🔴

御桜・八重
あの人たちの命はこの身に刻まれている。
鈍く痛む痣に手を当てる。
「踏みにじらせや、しないよ」

拳筋を見切り、大頭頭戦を凌ぐ剣速で猟書家に迫る。
隙をついて至近距離からの【桜彗星】!
直撃出来ればよし、受けられても体勢が崩れれば
そのまま急所に連撃を…!

大技が躱されたり受けきられたりすれば大きな隙になる。
相手は強敵。隙を見せればカウンターが来る!

でも、先刻の戦いでわたしは成長した。

急所に集中したオーラの守りで濁流の型を受け流し、
勢いを殺さずそのまま背中に滑り込む。
【桜彗星】を発動、強烈な踏み込みで
肩から渾身の体当たりを打ち込む!

威力を倍加してくれたのは、
転移前に通くんがかけてくれた言葉。
応援、ありがとね♪


●邪拳遊戯~彗星は一人であらず

 御桜・八重の手が鈍く痛む痣に触れる。
 それは刻まれた命の証、だから。
「踏みにじらせや、しないよ」
「いや」
 猟書家が頭を振る。
「踏みにじる」
 アライグマのその瞳。
 そこに翳る何かを八重は感じ取る。
 だから二刀を握る手に力がこもった。
「改めて……参る」

 速度はほぼ同じ。
 互いに小兵なれば、待つ必要は無く。拳が重かろうと、刃はそれを寸断し。刀の長さは、手技の幅が受け止める。
 跳び上がり、視界を幻惑し蹴りと叩き込まんとしたラクーンに対して、刀を振り上げ打ち落とすのは八重。
 対空迎撃の一撃に靴底を合わせて、身を回転させるのは拳鬼。
 軌道を変えた猟書家の拳に対し、逆手に刀を持ち変えた桜の巫女が握りをぶつけて威を殺し、互いに片腕を弾いた。

 一歩。

 地に足を付けている分、八重が先を取る。
 桜色のオーラを身にまとい、踏み込んだ一歩から地を蹴って叩き込むのは桜彗星。
 至近距離からの体当たりにロンダリングラクーンの身が飛び、すぐさま体勢を立て直す。
 そこへめがけて、猟兵は刺突二連の追い打ち。
 だが獣の哄笑が響き、拳鬼の掌が刃を打ち払った。
「分かりやすい、分かりやすいぞ!」
 真っ直ぐさ故か、それとも戦いの常道故か、どちらにしても老獪さと経験が急所を狙う連撃の太刀筋を見抜いていた。
 実力差――いや、相性の問題だ。
 だからこそ、桜吹雪の勢いは濁流に流されていく。
「終わりだ!」
 なおも首筋へと振るった八重の刀を受け流し、拳が握られると濁流が猟兵を呑み込まんとした。

 刀を打ち払ったことで、必要な間合いが出来た。
 後は30センチというコンパクトな距離で荷重を拳に乗せる。
 流れるように身体が動くことで放たれる拳こそが邪拳――

 洗熊拳・濁流の型!

「させない!」
 桜の巫女は刀を捨てる。
 邪拳士との戦いが糧となった、自由になった両の掌に桜のオーラを纏わせ、打ち払われた腕で円を描くようにして流された軌道を修正。
 万全の構えにて濁流の拳にオーラを合わせる!
 伸びた拳に対抗せず、障壁を滑らせれば、自らが猟書家の腕を軌道にすれ違う様に背中へと回り込んだ。
 桜色の尾がたなびく中、八重が踏み込みが床を鳴らす!

 ――桜!

 叩き込むのは肩。
 自身を弾丸そのものとする。

 ――彗!!

 だが、桜の巫女は一人では戦っていなかった。
 帰りを待つグリモア猟兵が!

 ――星!!!

 拳を交わし、人々の歓声を耳に死の道を歩んだ者がいる!
 生きる者のために死して道を歩む者、今を守るために遠くの世界への道を作る者。
 その想いを星として桜彗星はロンダリングラクーンの秘めた心ごと背中から吹き飛ばし、ライブハウスの壁に叩きつけた。
 それが相手の想いを受け止めても為すべきことと気づいていたから。

 ずっと動き続けた故に、酸素が足りない。
 猟書家が塵となって消えていく中、深呼吸を重ねた御桜・八重がようやく口にしたのは――

「ありがとね」

 未来を歩むために手助けしてくれた者への礼の言葉であった。
大成功 🔵🔵🔵

ミネルバ・レストー
やめてよね、あなたに礼を言われる覚えはないわ
それと、御託はいいからさっさと構えなさい
わたしが猟兵であなたが猟書家なら、ただの敵同士でしかないんだもの

あいつを上回るには、少しでも早くこちらが打って出ること
詠唱で威力を上げる暇もやらない、こっちは睨むだけでいい
【戦女神の眼光】で氷柱の雨をくれてやるわ
発動の速さと命中率の高さが取り柄で、威力はちょっとアレだけど
「多重詠唱」と「継戦能力」の組み合わせで連発してやりましょう

詠唱の邪魔はしてるつもりだけど、それでも反撃は来るでしょうね
氷柱の「一斉射撃」で大渦を凍らせるチャレンジをしましょうか
水の属性なら、氷の属性のわたしが凍らせて止めることだってできるはず


●邪拳遊戯~閃光、倒しつくすまで

「やめてよね」
 ミネルバ・レストーが言い放つ。
「あなたに礼を言われる覚えはないわ」
 コートのポケットに手を入れたまま、ネリーは話を続けた。
「それと、御託はいいからさっさと構えなさい」
 けれど、その場から動くことは無い。
「わたしが猟兵であなたが猟書家なら、ただの敵同士でしかないんだもの」
 既に戦いは始まっていると告げるかのように、相手の出方を待っていた。
「そうだな……」
 ロンダリングラクーンが笑う。
「それくらいが、我には一番やりやすい」
 楽しそうに応えると腰を落とし、拳を握った。

 先に動いたのは猟書家であった。
 だが、先に当てたのは猟兵であった。

 戦女神の眼光!

 視線を向けた対象に無数の氷柱を降り注ぐユーベルコード。
「くっ……」
 さしもの拳鬼も拳が届かねば、違う手を選ばねばならない。
 ラクーンが口を開いた直後、そこへさらに氷柱が降り注ぎ、詠唱の隙すら奪い取った。
「威力を上げる隙なんて、あげないわ」
 氷柱降り注ぐ中、こおりのむすめは告げる。
「私は見るだけでいい、威力もいらない、ただ、このまま削り続けるの……卑怯とは言わないわよね?」
「無論」
 この状況下で笑みを見せるロンダリングラクーン。
「貴様が削り殺すか、我が一撃で倒すか……勝負!」

 氷柱がなおも降り注ぐ。
 銃火器ならば、引鉄を引くタイミングで距離を詰められた。
 詠唱なら、息を吸うタイミングで拳を撃ち込めた。
 しかし視線には、そのタイミングは無い。
 だからこそ、ラクーンは速く動くことで照準を逸らし、自らが技を練りだす時間を作り出す。
 一歩、横に跳び、一文字言葉を紡ぐ。
 氷柱が降り注ぎ、傷つきながらも走る。
 じりじりとネリーが拳鬼を削るが、倒すには時間がかかるだろう。
 だが、選択肢に間違いはない。
 一発の為に時間を作れば、そこに敵が飛び込むのだから。
 しかし、天秤は猟書家へと傾いた。 
 詠唱が完成したのだ。
 長き呪文によって威力が乗せられた魔法の大渦がこおりのむすめを襲った。

 洗浄魔術『怒螺無式』

 全ての呑み込まんとした渦。
 それを目の前にしてネリーは――笑った。
「水なら……凍るよね」
 金色の瞳が見開かれると、氷柱が一斉に渦へと降り注ぐ。
 何本かは弾かれ、呑み込まれるが、低くなりつつある水温を補うには螺旋回転の運動エネルギーのみ。
 やがて、渦はその勢いを止め、氷となって大地へと落ちた。
 ガラスが割れるような音が響き、氷が光を反射して空間が煌めく。
 その中でも猟兵は視線を逸らすことが無かった。

「あんたが何をしたかったか、本当は何をしたかったか、分からないけれど」
 氷柱がロンダリングラクーンを貫き、その半身を引き裂いてもネリーは視線をそらすことが無かった。
「それでも、わたしはあなたを倒すわ」
 それが戦う者の務めなのだから。
成功 🔵🔵🔴

荒谷・つかさ
礼なんて要らないわ。
私は私のやりたいようにしただけだもの。
例えそれが結果的に、あんたの狙い通りだったとしても、ね。
……邪拳遊戯。面白いわ、乗らせてもらおうじゃないの。

先に引き続き、基本に忠実な型で以て対応
ただし迂闊に攻め込まず、受けと捌きに重点を置いてじっくりと戦う
狙いは相手の必殺拳が叩き込まれるその一瞬
突き出され伸びきったその拳を「怪力」で受けて掴み【鬼神鉄爪牙・握凄破】発動、握り潰す
それで怯ませたら今度は頭を掴み、追撃で握り潰してトドメを刺す

「拳(グー)」の弱点は「掌(パー)」。
「邪拳遊戯(ジャンケンあそび)」なら、そのくらい常識でしょう?

今回も、相手の思惑がどうあれ前後の礼は忘れずに行う


●邪拳遊戯~勝利を掴むのは

 街道に立つのはロンダリングラクーン。
 猟書家が告げる言葉に対し、荒谷・つかさの答えは
「礼なんて要らないわ」
 怒りも何もなく、ただ自然に世間話をするよう。
 そして手を柔らかく握り。
「私は私のやりたいようにしただけだもの」
 半身に構えた。
「ほう……」
 つかさの言葉に、ラクーンは珍しそうな目で羅刹を見る。
「例え、それが結果的に、あんたの狙い通りだったとしても、ね」
「貴様は……こちら側に近い様だな」
 猟書家の言葉に笑みを返すのは猟兵。
「どうかしら? どちらにしても」
 力強く大地を踏みしめ挑発する。
「……邪拳遊戯。面白いわ、乗らせてもらおうじゃないの」
「ならば……」
 猟書家の足が大地から離れた。
「ここに遊戯を始めよう」
 武道に必要な礼は要らなかった。
 既に互いに敬意を持っていれば、闘うのが相手にとって最大限の礼儀だと二人とも知っていたのだから。

 前転と共に振り下ろされるラクーンの踵を身を翻してよけるのはつかさ。
 流れるように足を払い、猟書家の転倒を狙えば、拳鬼は大地に手を着き、腕の発条で蹴り上げを放つ。
 一歩下がって、羅刹が避けると、追い打ちをかけるが如くロンダリングラクーンの拳と蹴りが空中から叩き込まれる。
 腰を落とし、受けに専念するつかさ。
 鈍くぶつかる音が響き、拳鬼が着地すると両者は再び間合いを探り始めた。

「どうにも、簡単にはさせてくれないようだな?」
 フットワークを刻みつつ、ロンダリングラクーンが笑う。
「あたりまえじゃない」
 摺り足で距離を詰め、荒谷・つかさが笑う。
「この道が楽だなんて最初から思っていないでしょ?」
「くっ……クハハハハハハッ!」
 笑った、嗤った、拳の鬼が笑った。
「そうだ、我々は結局死道に生きるしかなかった、彼奴等も我らも……だが!」
 フットワークが止まり、ラクーンが腰を落とす。
「そうしてでも求める折れない心こそが、邪拳を究極とする……故に」
 疾走、飛び込むのは拳鬼。
 動きは全てを呑み込む濁流の拳。
 叩き込むのは――

 洗熊拳・濁流の型!

「貴様も死道に至れぇ!」
「――ふん!」
 ロンダリングラクーン渾身の拳をつかさは左の掌一つで受け止め、そして――潰した。

 鬼神鉄爪牙

「拳、すなわちグーの弱点は掌――パー!」

 握凄破!

「邪拳遊戯――ジャンケン遊びなら、そのくらい常識でしょう?」
 拳を潰され、腕を引き込まれた拳鬼の顔を羅刹の右掌が襲った。
「ふん……洒落が効いているな。だが」
 悪くない――そう言い終わる前に、猟書家の頭は砕かれ、質量を失った過去は塵と消えた。

「死道――道に至るか」
 闘いが終わり、消えていったものへ改めてつかさは頭を下げた。
「私はまだまだかしら」
 世界の根源に迫る拳を振るっても、道は終わることはないだろう。
 それは生きる者の道なのだから。
 故に先に逝ったものに敬意を払い、猟兵は生の道――正道を歩いて行った。
成功 🔵🔵🔴

最終結果:成功

完成日2021年01月16日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴