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猟書家の侵略~瘴氣屠毒之秋

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #ブラザー・アポストロス #破戒僧 #コルテス #魔軍転生 #腐怪の蟲 #夕狩こあら

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「……薩摩の国の坊津という港町、もう何日も船が出てないの」
 日本三津に挙げられる湾港都市に異変が起きている――。
 廻船が行き交う賑いの街で、ここ数日間、荷の積み下ろしがされていないと難しい顔をするのは、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。
 彼女は柳眉を顰めた儘、言を足して、
「どうやら坊津では、猟書家の幹部であるブラザー・アポストロスが侵略を始めたみたいで、彼は遅効性の洗脳ユーベルコードで町の人を数日かけて洗脳してしまったの」
 柔和な笑みと穩やかな声で語られる説教には、生きる力を奪う能力がある。
 ブラザー・アポストロスは坊津に降り立つなり、港町の人々に「死こそ救済」と説き、仕事の手を辞め、家に籠もり、飯と水を断ち、死の刻を待つように言って回っていたのだ。
 ――何故か。
 町の人々を無力化するのは、己が率いる軍勢の気質の所為だとニコリネは詳述する。
「ブラザー・アポストロスもサムライエンパイアを攻める他の幹部と同様、クルセイダーの秘術『超・魔軍転生』を発動したんだけど、それがコルテスだったみたいで」
「ああ、成る程」
「それなら仕方ない」
 侵略渡来人コルテスの名に、集まった猟兵の何人かが納得する。
 つまり、ブラザー・アポストロスは魔軍将の霊魂を憑装させたオブリビオン軍を以て、坊津を攻略して海上交通に打撃を与え、倒幕を目論むクルセイダーの一助としたい所、手勢がコルテスの圧倒的パワーと同時に「戦下手」の性質をも受け継いでしまった為、予め町の人々を洗脳して無抵抗にさせたのである。
「貧乏クジを引いた本人は、運は無かったけど知恵はあって、人々を巧妙に無気力化して下地を作った訳だけど、町外れで暮らしていた破戒僧には、この洗脳が効かなかった」
 コルテスの戦下手を智略で補った作戦は、それでも完璧ではなかった。
 なんと、港の賑いより離れて山暮らしをしていた破戒僧が居たのだ。
 グリモアの予知が働くより早く、この地で暮らす破戒僧が港の異変に気付いた為、我々猟兵は大軍勢が港に押し寄せるより早く対策を練る事が出来ている。
 ニコリネは「まだ希望はある」と表情を凛々しくして、
「皆には、坊津の地理と風土に詳しい破戒僧さんと一緒に、港に押し寄せるオブリビオン軍団を撃退して欲しいの」
 件の破戒僧には、江戸幕府から与えられた「天下自在符」を見せれば直ぐに協力してくれるだろう。彼ならば坊津の地理を活かした戦い方を教えてくれるに違いない。
 ニコリネは強く頷くと説明を続けて、
「彼の手勢をやっつけたなら、この町の何処かに潜んでいるアポストロスを引き摺り出せる筈よ。彼も十分に強いから気を付けてね!」
 猟書家と戦う時も、破戒僧が知恵を貸してくれるだろう。
 コルテスのように武力で押し込むだけでなく、智略を以て勝利して欲しいと佳脣を引き結んだニコリネは、次にニッコリと口角を持ち上げて、
「サムライエンパイアにテレポートします。外来種は港に持ち込んじゃいけないって、たっぷり教えてあげてね!」
 と、ウインクしてグリモアを召喚した。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、猟書家のひとり『ブラザー・アポストロス』の侵攻を食い止める「エンパイア宗教戦争」シナリオです。

●戦場の情報
 サムライエンパイア、薩摩の港町「坊津」(ぼうのつ)。
 日本三津に挙げられる湾港都市のひとつで、海上交通上の要地として発展しています。
 海と山に囲まれた狭隘の地で、軍勢が攻め込む海は、歌川広重の六十余州名所図会『薩摩坊ノ浦雙剣石』を参考にして頂ければ幸いです。

●シナリオ情報(二章構成です)
 第一章『腐怪の蟲』(集団戦)
 腐敗の瘴気を放ち、大地を頽廃させる魑魅魍魎。
 言葉を発する事はありませんが、顎を鳴らして威嚇します。
 大きさは軽トラック程度です。
 侵略渡来人コルテスの霊魂を憑装した彼等の戦闘能力自体は非常に高いのですが、コルテスの「戦下手」も受け継いでいるので、地形を利用した戦い方をすれば圧勝できるでしょう。

 第二章『ブラザー・アポストロス』(ボス戦)
 温和な笑みを湛える、宣教師風のナイスミドルオブリビオンです。
 既に数日前に坊津へ入港し、遅効性の洗脳ユーベルコードを操って町の人々を洗脳しており、信者となった人々は彼の言葉に従って家に引きこもっています。
 ※アポストロスは憑装していません。

●プレイングボーナス『破戒僧と協力して戦う』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 破戒僧は猟兵ほど強くありませんが、鍛え上げた肉体を武器に戦ってくれる他、この町に地理や風土に詳しく、地形を利用した戦術を考えてくれそうです。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。お二人の関係や呼び方があれば、より踏み込んだ描写をさせて頂きます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『腐怪の蟲』

POW   :    腐敗の瘴気
【腐敗の瘴気 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    粘着糸
【尻尾から発射する粘着糸 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    腐敗の溶解液
【口から発射する腐敗の溶解液 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を腐らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「これは一大事に御座んス……!!」
 港町・坊津で山暮らしする日下部次郎三郎野火郎(くさかべじろうさぶろうのびろう)――いや、今は人々に「野火」と呼ばれる破戒僧は、汐風が運ぶ不穏な空気に下山する足を速めていた。
「可怪しい、可怪しい! あんな化物みたいな船が海にあって同心も与力も動かぬとは、町に何かあったに違いないで御座んス……!!」
 奉行所には数日前に文を投げた。
 而してお上に其が届いたかは判然らないが、今から視察に来たとて遅い。
 何故なら、海は水平線を隠さんばかりガレオン船で満め尽くされており、その船腹から夥多(おびただ)しい数の異形が……荷車より巨きな芋蟲が向かって来ているのだ。
「海の色が……! あの蟲、腐敗の瘴氣を出しているんで御座んスね……!!」
 あの蟲が町に侵入しては一大事だ。
 あれだけの巨躯が群れを成して突貫すれば、家々は粉々に破壊されてしまうだろうし、何より背部より噴き出す瘴氣が町に届けば、其を吸った人々を殺してしまうだろう。
 野火は歯切りしながら云ッて、
「むむむ。拙僧に翼があれば、今すぐ『雙剣石』に飛び渡り、海上から大芋蟲の背を強襲してやるんで御座んスが……」
 上陸を目前にした今がチャンスなのだ。
 坊之浦の雙剣石から雨の如く矢を降らせ、更に海から眞直ぐに上がって来る軍勢を港で迎撃すれば、連中が町に入るより早く大打撃を與える事が叶うが……肝心の軍勢が無い。「……万事休すに御座んス!!」
 無念ッ、と拳を樹木に叩き付ける破戒僧。
 然しギュッと目を瞑る彼の瞼を、刻下、玲瓏なる光が擽った。
月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
 オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
 普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
 独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


睦沢・文音(サポート)
『聴こえますか?私の歌が!』
年齢 14歳 女
外見 147.1cm 黒い瞳 黒髪 色白の肌
特徴 いつも笑顔 柔和な表情 胸が大きい お尻が大きい ネットが好き
口調 清楚(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません

他の猟兵のサポートに回り、事件の解決にあたります
日常パートならば飲食や歌をうたうことをメインに行動します

他の参加者様との連携リプレイ歓迎です
最大の目的は、事件を解決に導くことです
その為なら、ある程度の怪我や些細な失敗はやむを得ないものとします


ラムダ・ツァオ(サポート)
A&Wの遊牧民出の自由人。
見た目からダークエルフと揶揄されることもあるが、当人は特に気にしていない。普段は外套と丸サングラスですっぽりと身体を覆っているが、外套の下はかなり身軽。
なお、見た目は怪しいがわりと気さくな性格。
臨機応変に動くが、完全勝利よりは条件達成を目指す。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.味方の死角にいる敵を優先して片付ける。
2.範囲攻撃を行なえる味方がいなければ範囲攻撃優先。
3.数を減らすため、止めをさせそうな相手を狙っていく。

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。


バン・クロスハート(サポート)
【集団戦!頑張ります!】
「僕の前に立つのなら容赦はしません!」

僕の得物、ダブルセイバーは乱戦でこそ輝く武器です
全て輪切りにしますよ!

【乱戦】
地形を常に走り回りながら敵を切りつけていきます!
僕のコートは動く度に残像のエフェクトを残すので
乱戦のリスクが抑えられます!

使用技能:残像、地形の利用、ダッシュ、逃げ足

【UC】
<ハリケーンパニッシャー>
武器を回転させ続けることで威力を向上する技です!
常にダブルセイバーを廻して敵を攻撃することでどんどんバフをかけながら殲滅します!

<インフィニティクロッサー>
手数や射程が不足している際などはこちらを使用します!
僕のダブルセイバーを複製し、敵にぶつけます!



 サムライエンパイアは四方を海に囲まれた列島から成る島國で、鎖國するまでもなく、海の向こうには何も無い。
 ――詰まり。
 目の前にある船影は全てこの世の物に非ざる――猟書家『ブラザー・アポストロス』が召喚したオブリビオンの大軍勢だ。
 なれば遠慮する事は無かろう。
 魔軍将・コルテスの霊魂を憑装した巨芋蟲が船腹から排出されるより速疾(はや)く、船そのものを始末してしまえば佳いと――上陸を阻止すべくサポートに出た猟兵たちは、『雙剣石』より更に南西に位置する『黒子島』にて、坊津の港町へと向かうガレオン船を迎撃するのだった。

「無抵抗の人々を瘴氣から守らないと……!」
 白銀と燦めく前髪の奥、深緋の麗瞳に凛然を萌す。
 動物や植物に寄り添い、自然を愛する月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)は、誰かと諍うのは苦手だが、無辜の命が無抵抗の裡に殺められるのを見過ごす事は出来ない。
 白磁の繊指をきゅ、と胸元で握り込めた莉愛は、長い睫を持ち上げて視線を上に、上に――明るい蒼穹にも慥かに在る月を仰ぐと、淸澄のソプラノに詠唱した。
「月よ、私を導いて下さい。そしてその力を私に貸して下さい」
 発露顕現、【月下天舞】――!!
 刻下、月の加護を浴びて淸楚な歌姫に變容した莉愛は、『月光の聖銃』を手に飛翔し、風を集めるや最大速度425km/h、玲瓏と輝ける月の光を帯と引いて空を翔る。
「マストを撃てば、自在に進む事は出来なくなる筈……!」
 呼吸を整え、銃口を帆柱に向けて。
 而して彈かれた魔彈は閃爍を帯びて神々しく、命中を得るや禍々しきユーベルコードに支えられる其を浄化した。

 而してぐうらりと傾くガレオン船を沈没(おと)しに掛かるは、莉愛より次手を預ったラムダ・ツァオ(影・f00001)。
「――扨て、仕事、仕事」
 輕妙に囁(つつや)いたのも一瞬の事、彈ッと爪先を蹴るや蒼穹へと飛躍した凄艶は、気付けば汐風に揺れていた外套を脱ぎ、少々露出度が高めな『黒衣』ひとつ。
 其が實に身輕とは、次なる景が示そう。
「よ、っと!」
 一陣の風となったラムダは一息で敵のガレオン船に到達するや、リバース・グリップで握り込めた『黒刃』を疾ッと走らせた。
「一部だけ、ごっそり持って行く。そうすると制禦が利かなくなるよね」
 刹那に閃くは【シーブズ・ギャンビット】――光の反射を抑えた諸刃の短劔が、純白のズック(帆布)の片側だけを次々に切り裂いていく。
 制禦を失った巨船が愈々横倒しになるが、無論、共倒れする彼女ではない。
 サングラスの奥に秘めた射干玉の黒瞳は艶を隠して飄々と、
「――はい、次!」
 外套を脱いで益々身輕になったラムダは、海原に沈む船を目尻の脇に、直ぐさま次の船に飛び移るのだった。

 バン・クロスハート(一×十Χのガーディアン・f23853)が仕掛けたのは、正にこの時――ガレオン船の数隻が強襲を受け、舳先を揺らした時だった。
「慥かガレオン船は荷が多く積める反面、安定性に欠け転覆しやすいとか」
 而して今回の『荷』を、坊津の港に届けてはならぬ。
 目標の形態と地形を一瞬で判断した彼が選択したのは、乱戰でこそ輝くダブルセイバー『VW-ダブルクロッサー』、その複製による遠距離攻撃。
 翠瞳を烱々と闘志を萌したバンは、射程と射角、効果範囲を確認するや発氣し、
「スー君! 間隙なく投げ込みたいので手伝ってください!」
 発動、【インフィニティクロッサー】――ッ!!
 サーバーから具現化する得物は合計71個、それら総てをバラバラに、更に不断に射るには「スー君」こと罰天従者『サイレン・スー』の手(?)も借りねばならぬと、凛然たるテノールが呼び掛ける。
 スー君の尽力もあって、風を切って飛び込む鋭鋩は次々と船腹の片側だけを攻撃したものだから、ガレオン船は前にも進めず、後退も叶わぬまま――虚しく海へと沈んだ。

 ――時に。
 支援を買って出た猟兵が次々と攻撃を仕掛ける中、その英姿を力強い歌声に支援するは睦沢・文音(フォーチュンシュネルギア・f16631)。
「……この歌が港中に、海に、広がりますように――」
 南西より戰ぐ潮風に翡翠の髪状(かんざし)を揺らし、耳元を飾る可憐な小花に眩い光を彈いた文音は、不穏な気配に騒めく胸に手を押し当てつつ、玲瓏の歌声を紡ぐ。
 三度の飯と同等に歌が好きな文音だ。
 仲間の為に、無辜の命の為に。彼女は大好きな歌を高らかに歌おう。
「聽こえますか? 私の歌が――!」
 百花斉放、【殲術再生歌】(リヴァイブソング)――!
 櫻脣を滑り出た佳聲は虹色の五線譜に乗って透徹(すみわた)り、耳を傾けた者に勇気と雄渾を與えていく。
「一人一人が過ごしてきた日常が、今こそ力になる時です……!」
 ――どうか、強大な邪に負けないで。
 美し旋律に運ばれる大瑠璃の囀りは優艶と――戰場を同じくする猟兵らを強靭と堅牢に支えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

白斑・物九郎
●POW



ヘイ、生臭坊主共
おたくらが好んで止まねえのはなんですよ?
肉っスか?
酒ですかよ?
それとも博打かァ?
全部狩り尽くしたら全部揃えて祝宴と洒落込みますでよオラァ!
(野生&暴力のノリが色濃い協調法)


・天下自在符を示し協力要請
・会敵前にレッツ作戦会議

・『L95式サイドアーム』を試射、威力はこんくらいって示す
・あと「91mっていう長さisこんくらい」って説明する
・自身を中心として「これくらいの威力を・これくらいの半径に」任意のタイミングでブチかませるものと表明
・敵進軍予想経路にこちらの地の利、諸々を重ね合わせて、この技の最適な使いどきの指示/合図を求める

・そして【即興劇】をブッぱなし敵性を【蹂躙】



 艶めく濡羽に白い斑を落とす頭天より出づる猫耳一対。
 一瞬、港を徜徉(うろつ)く猫が来たかと目を瞬いた野火は、更に男の腰元に下がる天下自在符に瞠目すると同時、淡然たるテノール・バリトンに視線を持ち上げられた。
「ヘイ、生臭坊主。おたくが好んで止まねえのはなんですよ?」
「ふぁっ!?」
「肉っスか? 酒ですかよ? それとも博打かァ?」
 矢継ぎ早に質問を投げるが、洞察鋭い猫の目は答えを待たず、坊主は肉を好む太鼓腹でなければ酒臭くもなし、茶碗に烱光を結ぶや「チンチロか」と金色の虹彩を絞った。
 御明察傷み入ると苦笑いする間もない。
 野火は肩をむんずと摑まれるや、目尻の際より迸る鏖殺の氣に闘争の炎を煽られ、
「全部狩り尽くしたら全部揃えて祝宴と洒落込みますでよ」
「えっ全部……良いンで御座んスか……!」
「戰(ドンパチ)の前に策戰会議だオラァ!」
「――……ぁぁああああ! うおおおお!!」
 其こそ人を動かす王の稟性にて。
 山暮らしの己を遥かに上回る埒外の野生――白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の澎湃たる闘氣に、僧は防衛本能より狩猟本能を研ぎ澄ませていくのだった。

  †

 坊津の景勝『雙剣石』は最大標高27m。敵のガレオン船の三倍の高さを有する頂から『L95式サイドアーム』なる鐵筒を撃ったなら、巨芋蟲は港に上陸するより先に沈む。
「白斑の兄ィ、今で御座んス!!」
「――俺めのコトは猟団長と呼べ」
 グッと拳を突き上げる野火の隣、夜穹に掛かる冱月の如き冷艶は囁(つつや)いて。
 蓋し闘氣は陽炎の如く――己が背景を揺した幻影細工(モザイク)は魔法陣で組まれた『門』(ゲート)を成し、観音開きの扉を開けるや“セーラー服の少女”を召喚した。
「俺めの獲物はありますでよ。遠慮せず撃ちなさいや、ゆずみそ」
 宙空に浮かぶ『門』に窓よろしく腰掛けた可憐が「全部ですか」と流瞥を注げば、無言の圧が「是」を示すに従い、繊指が銃爪を引いて三つ編みを揺らす。
 銃聲が鏑矢の如く碧落に響き――而して王は動かず。
 借りっぱの銃で、猟団屈指の撃手によって彈かれた鐵鉛は、海上の劔巌よりガレオン船の帆を撃ち、船腹より出づる巨芋蟲を射抜き、瘴氣に代わって血汐を繁噴かせた!
 これには野火が頗る喫驚して、
「!? 空から女の子が……鐵筒を構えて鉛をブチ込むとは如何にッ!?」
 地の利、最適な得物と最適な撃手、そして時の利。
 諸々の利を得て開かれた【即興劇】(インプロヴィゼーション)の奏功を眼下に敷いた物九郎は、端整の脣を薄く開いて、
「――よき」
 と、短く賛辞を滑らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
お助けに参りましたっ!……のび、さん?
(野火さんを二度見)
あっ、ごめんなさい。その……先日よく似た雰囲気の薙刀使いのお侍さんとお会いしたもので。

雑談は程々に作戦会議へ。
なるほど、迎撃に丁度いい場所こそあるものの、行き方と頭数が無いということですね?
それならわたしにお任せくださいっ。

【風と大地と草木の精霊兵団】発動
三つの精霊さんの力を合わせたゴーレム兵団、総勢92体をその場で生成
わたしと野火さんを乗せて迎撃地点へ飛んで移動し、その後ゴーレム兵団は周辺から大岩の類を掘り出しては敵群の上から投下しての爆撃を行います
わたしは精霊銃(光属性のレーザー弾)を使って雙剣石からの狙撃を担当しますね



「奉行所に届けられた件について、お助けに参りましたっ!」
 玲瓏と葩弁を零す睡蓮より花車を暴いた荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は、一瞬、大菩薩峠に来たかと誤認する程、目の前の男にぱちぱちと目を瞬(しばた)いた。
「――……のび、さん? あれ……?」
「うむり、如何にも拙僧は野火に御座んス。如何なされたかな?」
「あっ、ごめんなさい。先日よく似た雰囲気の薙刀使いのお侍さんとお会いしたもので」
「薙刀使いの侍……ふむ、拙僧の親戚に御座んスな!」
「しんせき」
 根ッこの方で繋がっていると云う野火も、ひかるとは初対面という気がせず――。
 お互い通じ合うものを感じた二人は早々に意気投合し、港町の地形やガレオン船の配置等を確認すると、目前に迫る劔呑に策戰を立てる事にした。

  †

「――なるほど、迎撃に丁度いい場所こそあるものの、行き方と頭数が無いということですね? それならわたしにお任せくださいっ」
 手立てはある、と云うひかるに今度は野火が目を瞬く。
 然し其が真實だとは、我が足下をむくむくと隆起させる大地が證左(あかし)して、
「お願い、精霊さんたち! わたしと野火さんを『雙剣石』の頂に運んで!!」
「わわっ……巌の巨人が……大地より次々生まれて来るで御座んス!!」
 風と大地、そして草木の精霊の力を合わせたゴーレムが総勢92体、ずらりと整列し、一部が騎馬を組んで二人を乗せると、風を集めて一気に飛び立ッた!!
「翼はなくても、風の精霊さんに手伝って貰えばひとっ飛びです」
「ふなな……っ、ひかる殿は奇術使いに御座んスかー!?」
 流石は親戚、喫驚が似ていると微咲(えみ)を溢したのも一瞬、飛び移るように頂へと至ったひかるは、精霊銃『Nine Number』を構えつつ指示を――否、“お願い”をする。
「ゴーレムさんは足元の岩を掘り出して投擲し、あの大芋虫の背を強襲してください」
 云えば【風と大地と草木の精霊兵団】(エレメンタル・ソルジャーズ)はコクンと首肯して、ゴリッと石巌を抉ってはポイポイ海へ落とし始めた!
 大岩は落ちて海流を亂し、またガレオン船のマストに衝突(ぶつ)かり、大きく傾いた腹底から吐き出させた巨芋蟲を次々に下敷きにしていく。
 その凄まじい景色にゴクリ生唾を飲んだ野火は、隣するひかるに視線を寄越し、
「して、ひかる殿は……」
「私は――狙撃します!!」
 佳聲に被る銃聲、撃ち放つは光属性のレーザー彈。
 小さな撃手が閃爍を彈いて差し込んだ光条は、次々と巨蟲の背を灼き、坊津の海に血潮を混ぜるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
うむ、絶景かな。(雙剣石を眺めて)
斯様なる名勝、過去に沈めせしめる訳にはいかぬ。
黄昏大隊、出撃である。

現着後、野火へ接触。天下自在符の提示と共に協力を求める。
かの軍勢を迎撃するに適した地勢について教示願おう。
「任せておけ。余は即ち『軍勢』である」

黄昏大隊・蹂躙巨艦発動。
野火よりの情報を基に、降下兵部隊を雙剣石や周辺の迎撃に適した岩場等へ着地させ布陣。
港へも50名程回し、余はそれを率い港で待ち構える。

海上の部隊はそこから所持火器で一斉射撃。
余は陸上の部隊と共に、上陸してきた敵群へ射撃を浴びせ薙ぎ払いにかかる。
上空の艦は、周辺地形を破壊せぬよう照準に注意しつつガレオン戦へ【砲撃】を行わせよう。



 玲瓏と耀ける睡蓮が、一片ひとひら、光の葩弁を溢す。
 名残惜しく靉靆(たなび)く光の帯を解いて顕現れたギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は、月色の麗瞳を巡らせるや感嘆を溢した。
「――うむ、絶景かな」
 蒼穹を貫かんばかりに聳える石嚴の雄壮を気に入ったか、少女の艶帯びた櫻脣は口角を持ち上げて云う。
「斯様なる名勝、過去に沈めさす訳には往かぬ」
 寧ろ沈むは過去の方だと、雙剣石より奥に見えるガレオン船の船団を鋭利(するど)く睨めたギージスレーヴは、烱瞳を目尻へ――破戒僧の野火に注いだ。
「周辺の地勢について教示願おう。……何、奉行所に寄せられた文の件で来たのだ」
「むむ、それは天下自在符! ……然し女将軍、頭数が足りぬで御座んスよ」
「任せておけ。余こそ『軍勢』である」
「軍勢……?」
 勇ましい軍服に身を包むも、宛如(まるで)あえかに咲く花の如き華奢な乙女。
 その繊手に劔が持てようかと野火がぱちくりと目を瞬くと、交睫した次の瞬間、彼女の背負う蒼穹から轟々たる空気の震えが――黒鐵の巨大戰艦が眼路いっぱいに迫ッた!
「――黄昏大隊、出撃である!」
 着艦、【黄昏大隊・蹂躙巨艦】(アーベントロート・ゴットリヒター)――ッ!!
 大口径砲を多数備えた巨大戰艦は、GottRichter(神を裁く者)なる名に相応しき戰力を備え、アサルトライフルとロケットランチャーで武装した兵士達が次々に雙剣石や周囲の岩場に降下するや、紅く赫く飜る戰旗の下に迎撃の布陣を展開していく。
「おおおっ……ひい、ふう……なんという兵士の数に御座んス……!!」
「降下兵部隊は総勢400名。余はその内50名程率いて港で迎えよう」
 兵員も火力も、地の利を活かした策戰も十分とは、間もなく證左(あかし)されよう。
 ガレオン船が巨芋蟲を解き放った瞬間、海上の部隊が一斉射撃を開始し、周囲が目映い閃爍に包まれる中、敵は衝撃を受け取ると同時、初動を楔打たれる。
「撃(て)――ッ!!」
 颯々たる汐風に棚引く戰旗が示すは、全砲解放。
 而して上空に待機した巨艦は全砲口を下に、ガレオン船へと照準を絞れば、間隙許さず彈かれた大砲は精確精緻に帆船に飛び込み、マストや甲板を破壊したッ!
 辛うじて砲煙彈雨を逃れた邪も、港に進路を取るや無数の鐵鉛に迎えられ、腐敗の瘴氣を噴く筈が、血飛沫を噴いて波に揉まれるばかり。
 巨蟲は返り血も浴びせられぬか、ギージスレーヴは美し花顔に淡く艶笑を湛え、
「――他愛も無い」
 と、冱銀の精彩に惨憺を映した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
態々そんなしねぇで
骸の海に還って戻ってくンなっての

ん、今回も防ぐさ……
新年も近いからな

夜彦の天下自在符を見せつつ情報収集
ああ、延サンの身内なのかどうかは俺も気になってた

夜彦が尋ねた内容に重ねて
潮流の癖も聞いとこう
突発で潮の動きが変わるとかそういうのあるなら
その時には声掛けて教えてくれ

出来るだけ風上の雙剣石に位置取って拘束術使用
数いる相手にはこれが一番効く
射程範囲内の総ての敵に鎖での先制攻撃と同時に拘束
拘束しきれないのは吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぎ
瘴気は毒耐性で凌ぐ
以降は攻撃に生命力吸収も乗せてく

一ヶ所に留まり過ぎないよう注意


月舘・夜彦
【華禱】
アポストロスが人々を殺さずに洗脳する理由を考えておりましたが
憑装させるコルテスだけでは戦力として不十分と
倫太郎、今回も防いでみせましょう

野火郎殿、日下部ときて、この口調……もしや延乃進殿の御家族なのでは
これも何かあの縁、助太刀致します

現地の野火郎殿に話し掛けて地形の特徴を聞き、共闘を申し出る
瘴気を放つので段差がある所、風が吹いているのならば風上での戦闘と
極力瘴気を避けるように情報を共有

段差があれば跳び移り、倫太郎の術の併せて早業の二刀流剣舞『襲嵐』
一撃目を確実に与え、浄化の力を付与した嵐を発動
瘴気も祓えたのならば僥倖、そのまま追撃

敵の攻撃は見切りにて瘴気の発動を見極め、跳んで後退



 奉行所からの沙汰は無し――。
 然し『天下自在符』を提げるこの者達こそ光明かと、眼前に顕現(あらわ)れた二人の男に刮目した破戒僧は、更に彼等が口にした者の名によって一気に心を近くした。
「もしや延乃進殿の御家族なのではと思いましたが……やはりそうでしたか」
「うむり。延は分家した親戚に御座んス!」
 日下部なる姓に、野火郎という名。クセの強い語り口。
 而して人相も克似(そっくり)だと喫驚を示す月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の隣、「似すぎ」と目を瞬いた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)も現世の合縁奇縁を感じずにはいられまい。
「……して、延の字は元気で御座ンしたか?」
「ああ、真田に目付けられて死にそうになってた処を、何とかな」
「死!!」
 ――然う、大菩薩峠では真田神十郎を討った。
 此度も猟書家の幹部の一人、ブラザー・アポストロスを討ちに来たのだと説明を足した二人は、坊津の海に詳しい野火に共闘を持ち掛ける。
「慥かに一人じゃ敵わない相手だ。俺達が何とかする」
「これも何かの縁、助太刀致します」
 港町に瘴氣を運ばせない――。
 二人より注がれる意志に溢れた視線を受け取った野火は、己が持てる知識を全て委ねんと口を開くのだった。

  †

「――アポストロスが人々を殺さずに洗脳する理由を考えておりましたが、成程、無力化……憑装させるコルテスだけでは、戰略的に不十分と勘考しての事だったのですね」
 目下、其々の家に引き籠もる人々は、瘴氣が連れる死を待つのみ。
 夜彦は町の閑散たる様子に柳葉の眉を顰めるが、倫太郎は若しか町内が戰場になるなら籠もっていてくれた方が安全かと、靜まり返った家々を眺める。
 硬質の指を耳元へ――花萌葱色の髪に櫛を入れた手を、そのまま項へと滑らせた彼は、少うし首を傾けながら云って、
「俺に言わせてみれば、態々そんなしねぇで、骸の海に還って戻ってくンなっての」
 コルテスの霊魂を汲み上げた男は随分と小細工が効くようだが、コルテスごと還す。
 生ぜし処へ還る万物の理に従わせて遣らんと、琥珀色の眸を煌々と燿わせた倫太郎は、同じく闘志を萌す夜彦と瞥見を交し、スッと通った鼻梁を邪の大船団に向けた。
 耳に届く艶麗のテノール・バリトンに、此度も心は奮い立とう。
「倫太郎、今回も防いでみせましょう」
「ん、今回も防ぐさ……新年も近いからな」
 己も夜彦も、野火も、そして町の人々も。皆々穏やかな正月を迎えるべきだ。
 その為には……と眼下のガレオン船めがけて【拘束術】を、災禍を縛る不可視の鏈索を放った倫太郎は、95m半径内の全ての帆柱に縛めを呉れてやった。
「――孫子曰く、“陣を敷くに高所が好い”ってな! 数いる相手にはこれが一番効く」
 然う。
 野火に周辺の地形を聞いた彼等は、現下、雙剣石の頂に居る。
 巨芋蟲を腹に詰めたガレオン船の三倍の高さを得た此処からなら、縛鎖も投げやすく、更に広い眼路を確保した倫太郎は、広範囲の船を留めるに成功した。
 故に次手を預る夜彦にも不安は無い。
「……今から船腹を開けて蟲を解放した處で、瘴氣は此処まで届きますまい」
 彼等は地形の他に、風向きや潮の流れも把握している。
 瘴氣を逃れんと最善の位置と立ち回りを想定した二人が腐亂に巻き込まれる事は無し、夜彦は紺瑠璃の艶髪を風に遊ばせながら、素早く繊麗の指を二振りの刀の柄へ――二刀流剣舞【襲嵐】を披瀝した。
「振るう刃は、嵐の如く――」
 刀光を暴きたるは、曇り無き我が愛刀『夜禱』と、蒼銀の刃紋を輝かせる霞瑞刀 [嵐]――破魔の霊力を帯びた二刃は風を切り裂いて旋風に、颶風に、軈て波颪となり、海面に凄まじい飛沫を巻き上げながらガレオン船の横ッ腹を強襲した――!!
「重畳!」
「瘴気も祓えたのならば僥倖、畳み掛けます」
 ニッと口角を持ち上げる倫太郎に、涼しげな流瞥(ながしめ)を注ぐ夜彦。
 心を通じ合わせた彼等なれば言は要らぬか、二人は共に雙剣石を飛び渡って敵に照準を絞らせず、今度は角度を變えて追撃に掛かる。
 揃いの烱眼は、船腹より轉び出た巨芋蟲を玲瓏の彩に組み敷いて、
「……港に上がられたら、蟲達の機動力が上がる」
「今は西南西の風につき、港で瘴氣を吹かれては町に一気に広がってしまうでしょう」
「ああ、直に潮も満ちてくる。こいつ等は水際で掃討するのが最善だ」
「コルテスの力を発揮させる前に潰しましょう」
 地の利を獲得した今は其が叶う。
 倫太郎は嶮しい断崖を輕やかに飛び移りつつ、華焔刀[凪]を大きく振り被って斬撃を叩き付け、颯爽たる彼に寄り添うように影を滑らせた夜彦は、神氣を滴らせる二刀を切り払って巨芋蟲にしとど血汐を噴かせた。
 その息の合った連携と波状攻撃には野火も感嘆を溢して、
「うむり。敵将は瘴氣で命を焙るつもりが、自ら焙り出される……失態に御座んスな」
 と、快哉を覚えるばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と。
海面を渡りながら蟲を斬ることは困難ですが。
野火さんの一言で…面白い手を思いつきました。
…今まで試したことはないですが…私自身が矢に。

『真改』の一刀で【『伏雷』】の技を使用します。
多重詠唱と限界突破で身体機能と技威力を底上げ。
底上げした能力を継戦能力で維持し海上へ駆けます。

加速がつけば雙剣石へ飛ぶことも…可能かもしれません。
もし崖に届かなくても一瞬なら水面を踏み台にできるかも。
十分な速度に到達しているなら海面も多少は往けるかと。

加速し続けながら雙剣石の間を壁蹴りして蟲を斬ります。
海面スレスレの方が蟲を斬りやすいでしょうか。
見切りと第六感で察知し斬ろうと思います。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
海上へ墨ねーが出るなら僕は海岸から…だね。
攻撃しながら野火にーちゃんの隣にいるじぇ♪

愛剣を薔薇の花に変える【紅妃舞】でいく!
花弁に破魔の力をかけて鎧砕きの技能も載せる。
封印を解いた限界突破で花の数を水増しするよ。

海の上から突き出た大地の手前に薔薇を展開。
墨ねーの進行の邪魔にならないようにするよ。
念の為に陸の部分にも薔薇を展開させておこう。

数が多いから陸にたどり着く蟲もいそうだねぃ。
薔薇もカバーしきれないかもしれない~♪
その時はよろしくお願いね。野火にーちゃん。
あ。僕を襲って来たら鎧無視の蹴りで一蹴!
UC未使用の蹴りだからそんなに効果ないかも♪



 どれだけ知恵が回っても、常人には成せぬ事の方が多い。
 人里を離れて鍛えた躰も無意味だと、無力な拳を大木に叩き付けた野火は、ザッと葉音を揺らす木陰に光を落したグリモアに視線を繋いだ。
 一片ひとひら、光の葩弁を溢した睡蓮が、中に包んだ影を披瀝(あば)く――。
 名残惜しく帯を引く光を解いて顕現れた浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、喫驚を示す野火に先ずは天下自在符を見せる事にした。
「……あの……奉行所に……投げられた……文の、件で……参りました……」
「ひかえ、ひかえーい! ひかえおろー♪」
 墨の隣、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は徳川の三つ葉葵からひょっこりと花顔を暴くや、嬉々と金絲雀の聲を囀って。
 潮風に小袖を揺らす佳人も、スカートの裾を揺らす可憐も、あえかに咲く花の様だが、彼女達も世界に選ばれた猟兵――超常の異能者だとは今に知れよう。
「アポストロスのおっちゃんをやっつけに来たじょ♪」
「あすぽすとぽすとろす……?」
「港町を……瘴気から……守る……為、に……あの……お知恵を……」
「なんと、あの巨蟲を相手にすると……そんな事が出来るんで御座んスか!!」
 驚愕する野火の前、こっくりと首肯く二輪の花に迷いは無し。
 而して煌々と燦めく麗瞳に覚悟を視た野火は、己が持ち得る情報と知恵の全てを託さんと口を開くのだった。

  †

 海面を渡りながら巨芋蟲を斬るのは難しい。
 しかし「翼があれば」と云った野火の一言で、面白い手が浮かんだ、と――切り揃えの前髪の奥で蘇芳色の佳瞳を燿わせた墨は、玲瓏の彩を遠く『雙剣石』に結んだ。
「……その……私、自身を……矢に……して……疾走れば……」
「んんんんっ!? ご自身を矢に飛ぶんで御座んスか!?」
 今までに試した事は無いが、今こそ試すべきだろう。
 蓋しこの身を預けるに『井上真改』が佳かろうと二尺三寸四分の大刀を抜いた佳人は、祖父から譲り受けたこの刀を以て、繊躯に闘氣を満たしていく。
 丹花の脣は八柱の雷神の名を囁(つつや)いたか、
「八雷の名の元に……我が身を……矢の如く……!」
 閃爍閃電、地擦り一閃【伏雷】――ッ!!
 美し直刃錵の刃文がゆうらと陽炎を帯びたのも一瞬、凛冽と迸発(ほとばし)る神氣に己が肉体を極限まで――否、懸崖を超えた墨は、爪先を蹴るや稲妻となり、巨蟲の満ちる海上を駆ける、翔ける。
「おおおっ、正に矢の如くに御座んス……!!」
 満潮へと向かう海面に眞白の飛沫を彈きながら疾駆した墨は、目にも止まらぬ速疾さで『雙剣石』に至ると、劔の如く聳える石嚴の間をジグザグと縫うように渡りつつ、周辺に蠢く巨芋蟲を次々と斬り伏せたッ!
「……海面……スレスレ、の……方が……斬りやすい……でしょうか……」
 幾太刀浴びせても速度は弱まらず、繊手に握る『井上真改』は漲る紫電に身を燿やかせながら、瘴氣を噴く筈の巨芋蟲に夥多しい鮮血を噴かせていく。
 然し墨は返り血も受け取らずに疾く、迅く――水面を踏み台に岩壁を蹴り、地形を十分に活かした立ち回りで大量の邪蟲を駆逐した。

「うぇ~い♪ 墨ねー、かっこいいー♪」
 十分な速度に到達しているから其が叶うのだと、朱々と繁噴く血飛沫を遠目に確認したロベルタは、逆方向から続々と押し寄せる邪影に烱眼を絞る。
「海上へ墨ねーが出るなら、僕は海岸から……だね!」
 事前に二人が打ち合わせた戰法の二つ目は、港町を背に上陸を阻む水際作戰。
 任されたと胸を叩く少女は義気凛然、同じく身構える野火に透徹の青瞳を投げた。
「野火にーちゃんの言った通りのタイミングで仕掛けるじょ♪」
「うむり。港へと風が戰ぐ今こそ――攻撃の刻(とき)に御座んス!!」
 蟲が吐き出す腐亂の瘴氣は届かず、己の攻撃が広がる今こそ好機。
 坊津の港に流れる風も潮流も知る野火に協力を取り付けたからこそ、ロベルタは存分に力を解放できよう、
「Smontare il corpo...! 幾重にも掛けた魔術式を“分解”するじょー♪」
 絢爛繚亂、【紅妃舞】(ファヴィッラ)――ッ!!
 精霊属性を宿すショートソード型の魔法劔『プリンチペッサ・ロッソ』を無数の薔薇の花と解いたロベルタは、嫋やかに舞い踊る花瓣ひとつひとつに破魔の力を、同時に万物を切り裂く強度を與え、吹き荒ぶ眞紅の嵐に敵軍を迎えた。
「えぇと、海の上から突き出た大地の手前に展開すればいいかな?」
 墨の進行の邪魔にならないように。
 而して一体も抜けさせぬよう、念の為に陸にも薔薇を展開させるは彼女の周到。
 佳脣を滑る科白は輕妙ながら、可憐な少女が薔薇の嵐を精確に精緻に操作できるのは、やはり埒外の能力を有した猟兵だからこそ。
 ロベルタは華奢の躯に秘めた魔力を限界まで引き出して花の数を増し、ダメージを負って尚も進み出る巨芋蟲には、華麗な脚撃を炸裂させた。
「数が多いから、薔薇でも蹴りでもカバーしきれないかもしれない~♪」
「んんん!?」
「その時はよろしくお願いね。野火にーちゃん!」
「随分と輕~く仰るが……がってん、承知に御座んス!!」
 鮮烈なキックに押し返しつつ、莞爾と不穏を云うロベルタが面白かろう。
 野火は少女に小気味佳い笑みを返すと、決して無力ではない拳を握り込めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

軍を率いる身で戦線から離れて隠れているとは情けない。まあ、口は良く回る奴だという事は分かる。まあ、大将が居ない内に配下は蹴散らして置くか。

そこの破戒僧、野火でいいかい?坊之浦の雙剣石はどこだい?ふむ、かなり高い石だね。海上からの攻撃には最適だ。奏と瞬に海からの進撃は任せ、アタシは赤竜飛翔で空に舞い上がって、雙剣石へ。石から【衝撃波】を【範囲攻撃】化して蟲の群れを攻撃。ついでに飛び回って攻撃を降らせて攪乱してやるか。一応【オーラ防御】はしとく。さあ、貧乏クジ引いた腰抜け野郎はどこだ!!洗脳だけしといて自分だけ安全地帯にいるような奴は叩き潰してやるよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

洗脳して妨津の人を無気力したのは成功しても、手駒が無能では。野火さん、貴方だけでも無事で良かったです。既に戦略を考えているのですね。あの蟲を港で食い止める為、知恵をお貸し願えますか。

野火さんに教えていただいた港の防衛に最適な場所にて、トリニティエンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【毒耐性】で防御を固め、敵の群れに飛び込んで【衝撃波】を【範囲攻撃】化して敵を薙ぎ払います。広い範囲の無差別攻撃は元を潰した方が早いので。追撃で【怪力】【グラップル】で蹴っ飛ばします。出て来なさい、卑怯者!!ボコボコにしてあげます!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

港町から船が出ないなど死活問題。風光明媚な海の町が、滅ぼされるなどあってはなりません。野火殿、僕はこの辺の地理に詳しくないゆえ、教えていただけますか。港を見渡せる場所を。

港を見渡せる場所で港の蟲の群れを確認したら、【高速詠唱】【全力魔法】【魔力溜め】で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を出来るだけ広い範囲を【範囲攻撃】化して展開、更に進み過ぎた蟲は【吹き飛ばし】を併せた疾風閃で攻撃。海へとふっ飛ばします。一応【オーラ防御】はしときます。さあ、1人だけ無事とはいかないですよ。大将。今倒しに行きますからね!!



 いくら鍛錬を積んだとはいえ、あれだけの大船団を前に己は餘りに無力だ。
 衆生を救うが己の本懐では無かったかと、握り込めた拳を強く木に叩き付けた野火は、刹那、ザッと枝葉の震える音を擦り抜けた淸澄のソプラノに視線を結んだ。
「野火さん、貴方だけでも無事で良かったです」
「!! 貴殿は……」
「貴方がいなければ、坊津の町は今頃は壊滅していたでしょう」
 穏やかな大瑠璃の聲に慰めるは真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
 未だ喫驚する破戒僧に「三つ葉葵」を――徳川の紋所を印す天下自在符を見せた奏は、彼が奉行所に届けた文の件で来たのだと、丁寧に事情を説明する。
「この土地に明るい野火さんは、既に戰略がお有りと」
「御明察の通りに御座んス。然し『雙剣石』にも行けず、頭数も足りず……」
 奏の聲に遣る瀬無く首(かぶり)を掉る野火には、更に神城・瞬(清光の月・f06558)が真摯に向き合って、
「野火殿、僕達はこの辺の地理に詳しくないので、教えていただけますか」
「地理を……まさかあの大船団と戰うつもりに御座んスか!」
「ええ、港の形状や建屋の配置、風向きや潮の流れも、総て攻略に繋がります」
 多勢に無勢と諦めてはならない。
 異形の怪物も、腐亂の瘴氣も。圧倒的多数の敵を水際で食い止めるに、野火の知恵こそ役立つと説く瞬のオッドアイは、決然たる意志と覚悟に耀いて眩かろう。
 二人の科白に雄渾を得た野火が、『坊之浦の雙剣石』こそ大船団を撹乱するに最適だと云えば、少し離れた所で彼等の遣り取りを聞いていた真宮・響(赫灼の炎・f00434)が、つと秀でた鼻梁を向けて云った。
「そこの破戒僧、野火でいいかい? アンタが言う『雙剣石』ってのはどれだい?」
 この辺りには鵜の島や黒子島、革島の他に、名も無き小島や奇巌が沢山ある。
 優れた視力に景色を拾いつつ、当該の石嚴はどれだと響が額に手掌を翳せば、直ぐにも指に示せるのが野火であろう。
「……あそこの頂に行けたなら、港に来る船団を減らせようものの」
「そうかい、じゃあ行って来るよ」
「うむり。では宜しく頼むで御座ん……スんん!? 行けるんで御座んスか!?」
「行かないと負けるんだろう」
 吃驚(ビックリ)して聲を裏返す野火に対し、響は飄然と語尾を持ち上げて。
 彼女の言に聢と首肯を返す奏も瞬も流石は猟兵と云った處か、世界に選ばれた者達は、世界の理や秩序を亂す者を楔打つべく動き出す。
「負けるのが嫌なら、勝つしかないだろ」
「はいっ、この町を守りきりましょう!」
「必ずやコルテスの霊魂と共に、あの船も、アポストロスも沈めて見せます」
 侍の國に災禍を齎す者を、この國と縁を結んだ真宮家の者達は許さない――。
 斯くして野火より周辺の地理や気候を詳細に聞いた三人は、海上と港に戰場を分けて、巨蟲を載せたガレオン船と対峙する事にした。

  †

「ふむ、かなり高い石だね。海上からの攻撃には最適だ」
 トン、と爪先を付いて響が降り立ったのは『雙剣石』の頂上。
 竜騎士たる彼女は、赤き竜の羽根を背に生やして【赤竜飛翔】――潮風を摑むや空へと舞い上がり、最高速度9,500km/h、マッハ7.6を超える神速を以て目的地に到達する。
 野火が「翼があったなら」と嘆いた事を交睫ひとつでやってのけた響は、眼下に巨蟲の群れを捉えると、竜翼に力強く風を叩いて再び飛翔した。
 鳥瞰を得た彼女なら、大船団の様子も具に知れよう。
「どの船の甲板も見えるが、アポストロスの姿は無し……軍を率いる身で戰線から離れて隠れているとは情けないね」
 口は良く回る奴だという事は分かる。
 武力一辺倒なコルテスを補う戰術も剴切。
 然し完璧では無い、と――澎湃と漲る闘志に合せて赫灼と赤熱する『ブレイズランス』を振り被った響は、その盲点を衝くように一閃した――ッ!
「戰場に大将が居なければどうなるか、思い知らせて遣るよ!」
 目下、弓なりに撓った衝撃波は轟ッと唸りながらガレオン船の帆布を次々に切り裂き、次いで間もなく繰り出た二撃目が巨蟲の背に斬撃を疾走らせる。
『ギチチチチチッッ!!』
 続々と巨蟲が体液を噴く中、別なる個体が顎を慣らして威嚇し、背部より腐敗の瘴氣を噴き出すが、赫々たる闘氣のオーラを纏った響を腐亂させる事は叶うまい。
 赤銅の鎧を纏う竜騎士は、赤い竜翼を羽搏かせながらガレオン船の間を飛び回り、敵軍を撹乱すると同時、何処かに潜んでいるであろうブラザー・アポストロスを煽った。
「さあ、貧乏クジ引いた腰抜け野郎はどこだ!! 洗脳だけしといて、自分だけ安全地帯にいるような奴は叩き潰してやるよ!!」
 烈々たる聲と共に降り注ぐ衝撃波が、眞白の泡沫の代わりに血飛沫を繁噴かせた。

 斯くして響が海上の船団を撹乱する中、奏と瞬は港から巨蟲の迎撃に当たる。
「彼は随分と口が達者なようで、町の人々を次々に洗脳して無気力にさせたようですが、手駒が無能では倒幕など無理でしょう」
 前に進むだけの兵士は、如何に強靭なる霊魂を憑装させたとしても攻略される。
 今が然うであろうと、奏が怖れず大軍団に正対するのは、坊津の地理に詳しい野火より「風の流れ」を聞いたからで――、
「山海に囲繞(かこ)まれたこの地は、風向きが幾度と變わるそうですね」
「うむり。して日が高みに近付く今は、艮(東北)の風が吹き降りるんで御座んス!」
 南西より攻め込む巨蟲に対し、鬼門にあたる北東の風。
 町中に侵入して腐敗の瘴氣を撒き散らす計画の彼等にとっては正に「逆風」な訳だが、港に布陣した奏には瘴氣から身を護る神風となったろう。
「山を降りる風の精霊と、海に漂流う水の精霊、そして母さんから受け継いだ炎の魔力を合わせ、私自身を『盾』に町を護ります!!」
 顕現発露、【トリニティ・エンハンス】――!
 あえかに咲く花のように華奢で繊麗なる奏だが、三属性を一つに防禦力を高めた少女は自身をアイギスの如く、堅牢なる砦となって立ち塞(はだ)かる。
 而して彼女は城壁と動かぬ訳ではなく、上陸せんとする巨蟲の群れに自ら飛び込んで、その先陣を『シルフィード・セイバー』に薙ぎ払ったッ!
「唯でさえ前進するしかない烏合の衆、指揮なく動ける筈がありません」
 瘴氣を風の刃に切り裂き、巨蟲を鋭鋩に斬り捨てる。
 広範囲に及ぶ無差別攻撃は、元を潰した方が早いか――踵を蹴って更に前進した奏は、激痛に怯んだ巨蟲の頤を力の限り蹴っ飛ばし、浮かした個体で後続を押し返した!!
「出て来なさい、卑怯者!! ボコボコにしてあげます!!」
 佳聲が鋭利く澄み渡るが、果して首魁は聽いているや否や。
 美し紫瞳の前には、ひっくり返って足を泳がせる巨蟲の山が積み上がった。

 而して奏が敵軍の上陸を阻むと、足止められた巨蟲の“始末”を預るは瞬。
 港を見渡せる高台に陣取った彼は、奏の怪力キックによって続々と引っ繰り返る巨蟲を確認すると、我が身に宿る厖大な魔力を『六花の杖』に籠め、其の氷の結晶のように透き通る身を輝かせた。
「港町から船が出ないなど死活問題。嘗ての賑いを取り戻す為に、尽力させて頂きます」
 過去より滲出した者達に、現世を蹂躙させてはならない――。
 魔力と共に決然たる意志を籠めれば、『六花の杖』は煌々と光を迸発(ほとばし)って瞬の白皙を燿わせ、刹那、閃爍の結界を港中に広げる。
 広範囲の空間を我が魔力で満たした瞬は、あらゆる事象を“感触”として知覚すると、港に侵入した邪の一切を拒絶(こば)むように、玲瓏を湛える杖を一振りした。
「町の人は勿論、荷の積み下ろしをする港だって腐食してはいけませんから」
 丹花の脣を滑る佳聲は義氣凛然。
 呼び起こすは、衝撃の波動を凝縮した【疾風閃】――!!
「――疾風よ、奔れ!!」
 瞬のテノール・バリトンが送り出した風刃は、敵の巨躯に噛み付くなり重量を浮かし、海の深い所にまで吹ッ飛ばす。
 そして、ザブンッと水柱を立てた巨蟲が再び陸に上がる事は無く――コルテスの霊魂はその儘、波に揉まれて骸の海へと沈むしかあるまい。
 瞬は矢継ぎ早に衝撃波を紡ぎながら姿なき大将を煽り立て、
「さあ、一人だけ無事とはいかないですよ。今、倒しに行きますからね!!」
 と、町の何処かに居るであろうブラザー・アポストロスに殺氣を投げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【勇停】

俺任せかよオイ!
お前、蟲苦手なのか?
じゃァ今から克服しようぜ、なァ(意地悪な笑み
俺の亡き故郷在りしこの世界を護る為なら自然と気合も入る

海が近いなら炎だけじゃァ力不足な可能大だ
海から港へ押し寄せるなら
一か所に集められねェか
今回、俺は試してェコトがある(愛剣撫でて

服のチェーン代償にUC使用
風属性喚び起こすも発動せず
瘴気には環境耐性
が、体を蝕む

(何が足りない
意志?覚悟?
俺自身の”腕”か
悠長に品定めしてるンじゃねェよ)

従えよ、俺にッ!

荒れ狂う竜巻か風の刃で敵味方関係なく八つ裂き
まだ制御不可
体力消耗高め
海水やフィッダの炎を喰らい最大火力で地に堕とす

クソが…
フィッダ避けろ!

(氷?炎以外も操れたのか


フィッダ・ヨクセム
【勇停】

おいアンタ
こッちの男が助けてくれるッてさ
俺様はヤダ、気分下がる

…でけえ蟲なんて脚わさわさしててキモいじャん(巨大蟲嫌い)
囮が必要?なら喜んで
少し派手にやるんで…困るモンがあれば教えてくれ


援護は魔法の万年筆で炎の双剣を描く事で実体化させる
形だけの真似でも存在感で誤魔化すわ
俺様は此処だ!纏めて掛かッてこいやァ!
炎のブレスでもぶち撒けてやれば火の海だ!

瘴気ィ?溶解液ィ?そんなもんどこにあるよ(詠唱無しUC)
在るのはクソ寒い雪と、残念な氷だろ?
(アイツの雪には遠く及ばねえな…未熟だ)
クロウ、キッチリ潰せ!

暴走してもクロウ並に強ぇ風だこと
俺様の氷が制御不足で暴発する頃合いとは、まあピッタリだろう



 大木に叩き付けた拳に、雨滴の如く聲が沁みる。
「――おいアンタ」
 刃の如く鋭利いテノール・バリトンに続く拳を止められた破戒僧・野火は、葉陰に立つ青年に振り向くと、彼はマスクに口元を隠した儘、親指に隣の男を示した。
「諸々困ッてるんだろ。こッちの男が助けてくれるッてさ」
「俺任せかよオイ!」
 彈かれたように柳葉の眉を吊り上げるは杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
 夕赤と青浅葱の麗瞳が揃って流盼(ジロリ)と睨めたなら、玲瓏の彩に噛み付かれたフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)はついと視線を逸らして、
「俺様はヤダ、気分下がる」
「……お前、蟲苦手なのか?」
 噫、聡い耳は感情の變化を機敏に捉えよう。
 クロウを見ずとも其の悪戯な艶笑(えみ)を捉えたフィッダは、宛ら溜息するように、薄く開いた佳脣から低音を滑らせた。
「……でけえ蟲なんて脚わさわさしててキモいじャん」
「じゃァ今から克服しようぜ、なァ」
 克服させて遣るよ、と言を足す佳聲も随分と愉しげだが、慥かに、巨大蟲を近付かせるくらいなら骸の海に沈めた方が愈(マシ)だ。
 加えて「試してェコトがある」と愛劔『玄夜叉・伍輝』を撫でるクロウが如何なる戰法を取るかも気になる處で、
「俺の亡き故郷在りしこの世界を護る為なら、自然と気合も入らァな」
「…………故郷、か」
 フィッダはあらぬ方向に注いでいた烱眼を交睫ひとつして戻すと、坊津の地理と現況に詳しい野火に怜悧な聲を置く。
「少し派手にやる。困るモンがあれば教えてくれ」
 言い終わらぬ裡、爪先は港へと向かっていた。

  †

 海から港へ押し寄せる敵を一か所に集めるに、囮が必要なら喜んで預る。
 本能に近い者こそ光や熱に惹かれよう、とマスクの下で口角を持ち上げたフィッダは、瑠璃(ガラス)の万年筆『irony』に魔力を籠めるや炎の双劔を描き、烈々と灼熱を漲らせる其を手に敵群に正対した。
 マスクを頤へ下げた彼は、肺腑から敵愾心を露わに喊び、
「俺様は此処だ! 纏めて掛かッてこいやァ!」
 得意の炎なれば、存在感は示せよう。
 全身を使って大きく振り下ろされた双刃は、劔身より炎を悪魔の舌と伸ばして広がり、巨蟲の複眼に火の海を見せる。
 研ぎ澄まされた殺氣には、腐怪の蟲も敵意を剥き出しに巨躯を揺すっては瘴氣を噴き、顎を動かしては溶解液を練るが、其が「無機物」である限りフィッダは溶かせまい。
 彼は吃々と竊笑して語尾を持ち上げ、
「腐亂の瘴氣ィ? 腐敗の溶解液ィ? そんなもんどこにあるよ。――在るのはクソ寒い雪と、残念な氷だろ?」
 百花斉放、【不香の花】――。
 刹那に広がる雪氷の世界は、精霊の力を借りた變換術式なのだが、“本家”が紡ぐ雪には遠く及ばぬと小さく苦笑が零れる。
 時に、人語を操らぬ敵に代わって喫驚いたのはクロウ。
(「――氷? 炎以外も操れたのか」)
 魔術の適正が残念だと本人から聽いていたが、綺麗に六花を咲かせるものだと瞠目した彼は、見事だと褒めるより先に投げられた聲に「應」を首肯いた。
「クロウ、キッチリ潰せ!」
「ああ、蟲嫌いに蟲を集め続けさせるほど意地悪じゃねェよ」
 悪態を返しつつ、身に纏うチェーンを手に取ったクロウは、術式解放(オプティカル・オムニス)、【無彩録の奔流】(イマーティア・リアル)――! その連環に秘めたる呪力を黒魔劔に宿し、漆黒の刀身を長く永く、如意自在に伸びて撓る「鋼鞭劔」と變えた。
 一薙ぎすれば、蛇腹と伸びる劔は刃鳴して風を呼び起こす。
 だが然し、鋩は凪の儘――。
「ッ……何が足りない……? ッッ!!」
 意志か? 覚悟か?
 若しか俺自身の“腕”か?
「手前……ッ、悠長に品定めしてるンじゃねェよ……!!」
 而して海より戰ぐ汐風が腐亂の瘴氣を運べば、幾許か耐性のあるクロウも咽喉を灼き、肺腑を喰い破られ、内部より激しい激痛に蝕まれていく。
「従えよ、俺にッ!」
 焦燥と瞋恚が鞭劔を叩いた瞬間、瓢ッと鳴いた音は風に、颯に――軈て荒れ狂う竜巻となって風刃を突き立て、激情の向かう儘に何もかもを八つ裂きにしていく。
 未だ制禦は効かぬか、玄冬の呪いはクロウの魔力を吸い上げて暴走し、巨蟲の肉を刻むのみに足らず、海水を呑み、フィッダが紡いだ炎をも喰らって、戰場一帯を蹂躙した!
「クソが……フィッダ避けろ!」
 クロウは灼けつく咽喉から聲を振り絞るが、辰砂の佳瞳いっぱいに竜巻を映すフィッダは冷靜にして沈着を崩さず。
「……暴走してもクロウ並に強ぇ風だこと」
 皮肉めいた感歎を溢した彼は、その實、炎以外を操ることには未熟な己を自嘲する様に――「頃合いだ」と囁(つつや)く。
 而して“其の通り”であったろう。
 荒れ狂う竜巻は、靜謐を堪えきれずに暴発した氷と共に爆ぜ、周囲一帯に細氷の結晶を、「ダイヤモンドダスト」を叩き付けると、邪の一切を細かく刻み、眞の沈默(しじま)を齎していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
瘴気の澱。見るも無惨坊津八景

穢れを祓い、精進武辺を以て民草を護ることこそが破戒僧の意義!いわんや猟兵の本分なれば
天下泰平。此度は念仏に勝り候う!

これなるは徳川御墨付天下自在符
野火殿!いざいざ参らん!


粘着糸をフェイント+見切りで回避
野火への攻撃は戦輪の投擲で切り裂いてかばう

竜言語・蛟竜招来を使用
火炎放射の焼却で捕縛と瘴気だまりに対抗
腐怪蟲が怯めば念動力+読心術の神通力で合図を送る

蛟竜の背を足場に利用し、双剣石の高所へ駆け上がる早業+クライミング

頂上から野火と共に空中戦+ジャンプで大跳躍
落下速度+重量攻撃の加速で残像を伴う神速抜刀。クイックドロウ+怪力の剛剣で切り込み
腐怪蟲を唐竹割りで両断します



 港に迫る邪の気配に為す術も無し、衆生を救うべく山に籠もって鍛えた躰も無意味と、無力な拳を大木に叩き付けた野火は、葉音を擦り抜ける聲にハッと顔を上げた。
「磯ぎはの網代の海面(うなおもて)も瘴気の澱――見るも無惨坊津八景」
「!! 御仁は……」
 靉靆と棚引く光を解いて顕現(あらわ)れたるも、破戒僧。
 逞しき鼻梁を海へ、瘴氣に烟る水平線に烱眼を注いでいた男は、交睫ひとつ置いて視線を戻すと、精悍なるカヴァリエ・バリトンを滑らせた。
「不戰不殺の縛めを破りたるは、穢れを祓い、精進武辺を以て民草を護らんが為」
 況や猟兵に於いてをや。
 蘇芳色の双眸を煌々と、澎湃と漲る闘志を玲瓏の彩に湛えた男は、その手に三つ葉葵を掲げて見せ、野火が数日前に奉行所へ届けた文の甲斐有った事を示した。
「これなるは徳川御墨付天下自在符。一通の文が坊津に一縷の光明を置き候う」
「……おおお、お上は坊之浦を見捨ててはいなかったんで御座んスね!!」
 ははー、と平伏した野火が次に面貌(おもて)を上げた時、その顔は雄渾に満ちて、
「野火殿! いざいざ参らん!」
「應ッに御座んス!!」
 先征く影を意氣揚々と追った。

  †

 地理に詳しい野火を背に、彼の聲を拾いながら最短距離で港へ至る。
 コルテスの魂を憑装した『腐怪の蟲』は、新たに感知した生者の氣を捕えんと粘着糸を放つが、洞察に優れた瞳は尾を持ち上げる初動を見逃さず、迫る糸を目尻の際に流す。
 無論、躱した銀絲が野火を絡める事は許さない。
「環刃、閃爍(きらめ)いて災禍を断つ!」
 鋭利い発氣によって投げられた戰輪が糸をふつりと断ち、緊張を失った糸が何を捕えるでもなく宙を游ぐ間、真言祕密之呪法が像を結んだ。
『≪無垢にして残虐なる仔竜の巣。我が意に応えて顎門を開け≫』
 佳脣より紡がれるは【竜言語・蛟竜招来】――。
 時に須臾、炎の塒巣から躍り出た蛟竜らが、赫灼の炎を噴いて瘴氣の渦を蹴散らせば、その凄まじき焦熱に怯んだ巨蟲が進む足を躊躇う。
 之を機に足半を蹴って蛟竜の背へ飛び乗った男は、初めて振り返るや手を差し伸べ、
「翼を生やす事は叶わずとも、翼を足場にすることなら――或いは」
「うおお、これで拙僧が行きたかった『雙剣石』に行けるで御座んス……!!」
 而してガシッと手を組んだ二人は、見事に雙剣石の頂へと昇り至り、劔の如き石巖より颯ッと墜下するや巨蟲の群れに鋭鋩を突き付けた!
「――天下泰平。此度は念仏に勝り候う!」
 刃鳴一閃、唐竹割り――ッ!!
 重量に落下速度を乗算した魔刃が巨蟲を両断し、同時に独鈷杵が死の中心点を貫穿し、腐亂の瘴氣を噴く筈の魑魅魍魎にしとど血汐を噴かせる。
 砕波に増して邪血を浴びる男。
 名を戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)。
 野火と共に破魔滅邪の力を振るう破戒僧が其処に在った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
性懲りも無く何度も何度も何度も
クルセイダーとその仲間達は学習能力のないカスの集まりか?


ちょっと手伝ってくれ
なに、複雑な事をさせるつもりはない
金がいくらあるのか数えるくらい簡単なことさ
糸当たらんように、互いに遮蔽で身を隠しとこうぜ

大勢の敵に対するアプローチは大体2つだ
範囲攻撃で消し去るか、各個撃破するかだ

今回は後者でいくぞ?セット、『Welcome』
転移先は当然破戒僧殿だ
飛ばされたそいつは5秒間、瘴気すら出せない
手早く殺しといてくれ
あとは繰り返しだ
一匹ずつ引き摺り出し、何もさせず殺す
戦いですらない、単純な『駆除作業』

テメェらは害虫だ
敬意も、慈悲も、躊躇も、愉悦も存在しない
無意味に死ね、カスどもが



 ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、経験が積み上げる知識は有用な武器と思っており、故に学習能力の無い奴には強い辟易を覚える。
「性懲りも無く何度も何度も何度も……クルセイダーとその仲間達はカスの集まりか?」
 このところ休み無しだ、と零れる溜息は仕事熱心な身を嘆いて。
 ならせめて稼いでやるかと皮肉を置いた彼は、電脳ゴーグルに映した破戒僧に向かって黒鋼の指をチョイチョイ動かすと、逆手に天下自在符を見せながら言った。
「ちょっと手伝ってくれ。――なに、複雑な事をさせるつもりはないさ」
「?? 拙僧にも出来る事に御座んスか」
 其は金がいくらあるのか数えるくらい簡単なこと。
 而して見返りは大きいと、小気味良いウインクで野火を促したヴィクティムは、坊津の港に詳しい彼から遮蔽の多い場所を聞き、二人で身を隠す事にした。

  †

「大勢の敵に対するアプローチは大体二つ。範囲攻撃で消し去るか、各個撃破するかだ」
 経験が證左(あかし)した知識あればこそ、戰術は大別され、適宜に選択される。
 此度は後者が剴切かと、舟屋の陰で野火と目配せを交したヴィクティムは、巨蟲が糸を吐き、頤を鳴らす音を間近にしながら、我が電脳魔術に攻略プログラムを組み上げた。
「セット、Warp Program『Welcome』(ココマデオイデ)――」
 己は影を隠しつつ、眼路は聢と巨蟲を捉える「利」を得た彼は、町へと向かう一個体を「対象」と指定すると、轟然と動く脚も、複眼も、内包したコルテスの霊魂も何もかも、個として有する「時」を5秒間――止めた。
 この粘着糸も瘴氣も出せぬ唯の蟲は、間もなく野火の元に転移され、
「破戒僧殿、殺しといてくれ」
「おおお、成る程……剥製の如き巨蟲なれば、拙僧も始末できるで御座んスよ!」
「あとは繰り返しだ。転送(おくり)り込む順に手早く頼むぜ」
「がってん、承知に御座んス!!」
 一匹ずつ引き摺り出し、何もさせず殺す――。
 其は戰いですらない、単純な『駆除作業』だが、這奴(コイツ)等には似合いの末路に違いない。
 幽闇に隠れた透徹の青瞳は、研ぎ澄まされた刃の如く冷ややかに、野火の独鈷杵が肉を沈んで体液を噴き上げる景を投影(うつ)し続ける。
 薄く開いた佳脣は残酷を囁(つつや)いて、
「テメェらは害虫だ。無意味に死ね、無様に死ね」
 敬意も、慈悲も、躊躇も、愉悦も存在しない。
 向き合う必要が無いのだと、咽喉を擦り抜けたテノール・バリトンは、怜悧(つめた)く、冷徹(つめた)く――寂寥に鳴く虎落笛のようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨナルデ・パズトーリ
坊津というとかなり有力な港であったか
斯様な地を荒らされるのは赦す訳にはいくまいよ
まして奴、コルテスなんぞには絶対にさせる訳には、のう

魔法は原則『高速詠唱』且つ『範囲攻撃』

『地形の利用』の為に破戒僧に周辺の地形、主に海周りを確認
UC即発動
『存在感』を消し『目立たない』様にし『高速泳法』の『水中機動』にて接近
敵船を『結界術』で閉じ込め内部に『無酸素詠唱』で電子レンジの要領で電磁波『属性攻撃』『全力魔法』をぶちかます『先制攻撃』

其の侭水上に飛び出し高速飛行の『空中戦』
敵の動きを『野生の勘』で『見切り』回避しつつ『天候操作』による『神罰』の大嵐を『浄化』の雷鳴『属性攻撃』『全力魔法』を織り交ぜ叩き込む



 水平線を覆い尽くすガレオン船の大船団。
 巨船の船腹より這い出た怪蟲の群れが、次々に紫闇の瘴氣を噴いて船影を烟らせる――目下、坊津は終末の景が迫りつつあったが、精鋭は、猟兵は諦めない。
 美しサイドテールに翡翠の艶を彈く少女も然うだろう。
「坊津というと、かなり有力な港湾であったか……海上の道を断たれては危うかろうし、斯様な地を荒らされるのを赦す訳にはいくまいよ」
 豊かな色彩に満ちた金絲雀の聲。
 主はヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)。
 網代の海面(うなおもて)に広がる腐亂の色を翠玉の麗瞳に映した可憐は、ソプラノを奏でる佳聲を更に滑らせ言を足し、
「――まして奴、コルテスなんぞには絶対にさせる訳には、のう」
 如何な魑魅魍魎に姿を變えようと。
 其の器に忌わしき霊魂を憑装する限り、絶対に、赦さない。
 目下、奉行所に投げられた文の甲斐あった事を三つ葉葵に――即ち天下自在符に示し、坊津の地理と風土に詳しい破壊僧に協力を取り付けた事で地の利は得た。
「海上の地形や港の構造、風向きや潮の流れ……自然を味方につけた利は大きい」
 前に進むだけの巨蟲など怖れるに足らず。
 腐敗の瘴氣が町に届くより先、連中を海底に沈めて遣らんと凛然を萌したヨナルデは、【今は亡き対なす神の残り香】(ナワールケツァルコアトル)――翼ある蛇の力を纏うや鱗に覆われ、背に生やした翼に力強く風を叩いた。
「力を貸して貰うぞ。――共に彼奴を沈める為に」
 雄渾の翼は『雙剣石』までひとっ飛び! その頂より巨蟲の群れを見下ろした凄艶は、間もなく呪法を唱えて結界を展開した。
 其処は慈悲なき鏖殺の領域にて、
「電子レンジの要領で、中身を掻き混ぜて遣ろう」
 丹花の脣が靜かに囁(つつや)いた瞬間、巨蟲が他愛なく破裂する。
 あえかに咲く花のような少女だが、繊麗の躯に秘めた厖大な魔力は無尽蔵に迸発って、大風の颯々たる、怒涛の澎湃たる、凄まじい殺気が巨蟲を“内から”破壊していく。
「――これは神罰よ」
 而して双翼を広げたヨナルデは風を摑んで飛び立ち、ガレオン船の上を帆翔して大嵐を紡ぐと、雲を集めて雷鳴を轟かせ、間もなく稲妻を矢と降らせた。
「船も蟲も。平等(ひと)しく沈むが佳い」
 閃爍――ッ!!
 刻下、蒼穹を裂く霹靂に白皙を白ませたヨナルデは、マストを折った巨船が横倒しに、その下敷きになった巨蟲が無惨に潰される惨景を、玲瓏の彩に組み敷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
元より知れた事ではあるが、外道は何処迄行っても外道
不快に過ぎる愚物、確実に処断してれる
其の為にも先ずは腐れた蟲の処分から、か

御坊、あれ等を滅する為に力を借りたい
海風が吹き上げて来る地点は何処になるかを教えて欲しい
真っ向から迎え撃ち、出来るだけ引き付け上陸阻止を図るとしよう

一体たりとも此れより先へは進ません
――祕神落妖。我が意に応じ顕現せよ
極低温の氷刃の津波で以って、悉くを凍て尽かせ刻んで呉れる
蟲共は元より運び来た船とて残しはしない――津波とは幾度でも寄せるもの
欠片も残さず骸の海へと沈め

嗤えもせん、巫山戯た真似をしてくれる
死に因る救済が在る事を否定はせんが
捻じ曲げられた其れに何の救いも在るものか



 畢竟、外道は何処迄行っても外道。
 幾度と魂魄を輪廻(めぐ)らせようと其の稟性は變わらぬ、と――鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は網代の海を紫闇に染めて迫る大軍団を烱眼に射る。
 黒々と蠢く邪影のひとつひとつが、コルテスの霊魂を憑装した巨蟲。
 その突貫力と毒氣で無気力化した町を蹂躙するとは、宣教師然とした男にしては随分と下策を思い付いた様だが、ならば似合いの末路を歩ませるだけの事。
「現世に有るには不快過ぎる愚物、小細工が知れたからには確実に処断して呉れる。……其の為にも先ずは腐れた蟲の処分から、か」
 交睫ひとつして右眼を眼路の脇へ、此度の異變に気付いた唯一の土地の者である野火を見た嵯泉は、彼が奉行所に投げた文の甲斐あった事を徳川の紋所に――即ち天下自在符に示すと、彼の協力を取り付けた。
「御坊、あれ等を滅する為に力を借りたい」
「うむむ……御仁はあんなに大きな魑魅魍魎と戰うと……正氣に御座んスか!?」
「ああ、海風が吹き上げて来る地点を教えて欲しい」
 眞っ向から迎え撃つ。
 而して巨蟲を引き付け、上陸を阻止する。
 怜悧淡然と云ってのける隻眼の男の、刃の如く研ぎ澄まされた闘志に触れた破戒僧は、その柘榴にも似た緋の精彩に光明を見出し、彼が求める場所へ嚮導するのだった。

  †

 此れより先は一体たりとも進ませぬ。
 潮風に紛れる瘴氣が肺腑を蝕み、汀に寄せる溶解液が靴底を腐亂させるが、身に迫る禍を耐性で凌いだ嵯泉は、邪に濁りつつも慥かにある坊津の自然と精霊に呼び掛けた。
「――祕神落妖。我が意に応じ顕現せよ」
 冷艶のバリトンに應えるは、極低温の氷刃の津波――ッ!!
 刻下、寄せる波の威を増強して唸りを上げた大津波は、更に氷属性を加えて氷の刃に、残酷なまでに凍てる鋭鋩で巨蟲の躯を貫くッ!
「悉く凍て尽くし、寸裂寸断(ズタズタ)に刻んで呉れる」
 蟲共は元より、運び来た船とて残しはしない。
 この國は海の向こうに世界は無く、水平線に広がる巨船は全てこの世の物に非ざる――猟書家ブラザー・アポストロスが召喚した船にて、欠片も残さず骸の海へと沈めよう。
 嵯泉は悪魔と押し寄せる海嘯と氷刃と變えながら、次々に破砕される船を睨み、
「……嗤えもせん、巫山戯た真似をしてくれる。死に因る救済が在る事を否定はせんが、捻じ曲げられた其れに何の救いも在るものか」
 偽りの救済を糾弾する為に。
 断罪の刃を突き立てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
これは鬼獣の巫。相も変わらず……無視ですか。
よし濡姫、奴に悪戯しよう。
『という名の手助けでしょう?若』
■行
野火郎様と言いましたな。私の頭へどうぞ。ほら濡姫も。
【竜神飛翔】で空高く飛び上がり、海全体に落雷による
【範囲攻撃】を仕掛けつつ空中を縦横無尽に飛びます。
あの巫覡ですか?大丈夫です。

かの愛らしい蟲が放つ瘴気は【第六感】で感知しつつ逃れます。
野火郎様と濡姫が瘴気を浴びないよう、全身に【オーラ防御】も
忘れずに。

十分雷が落ちたら、頃合い。空を飛び回る鬼獣(清綱)に
『海に向かって突風を起こせ』と伝えましょう。
彼の風で海を揺るがし、落ちた雷を拡散させ殲滅するのです。

※アドリブ歓迎・不採用可


愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
(巫の装束を纏った男が、呼びかけに応じず飛び立つ)
此の地の人々を護るため、俺は此処に来たが……
人を顧みぬ竜(蛟鬼)が、何故此処に?
■闘
翼を羽ばたかせ、【空中戦】形態に入るが……
竜め、雷を起こすか!

蟲の糸は【残像】を伴う動きで狙いを定めにくくし、
飛んで来たら軌道を【見切り】つつ躱す。
雷は【野生の勘】を巡らせ安全な場所を探知し逃れる。

何、「海に向かって突風を起こせ」?
……成程。これが目的か。不本意だが従おう。
言われた通り上空から神速の【薙鎌】を海目掛けて放ち、
カマイタチによる【範囲攻撃】を仕掛けつつ落ちた雷を
海全体に拡散させる。
あの竜、【神罰】を下したつもりか?

※アドリブ歓迎・不採用可



 玲瓏と燿う睡蓮のグリモアが、一片ひとひら、光の葩弁を溢す。
 名残惜しく靉靆(たなび)く光の帯を解いて顕現れた荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は、何処かで触れた靜謐の神氣に視線を結ぶと、飄然たるバリトンを滑らせた。
「これは鬼獣の巫。転送先を同じくするとは奇遇な」
 お互い随分と不穏な戰場に来たものだと、流盻に映すは紫闇に染まる坊津の海で、目下ガレオン船の大船団に隠された水平線からは、巨蟲が瘴氣を噴きつつ港に迫る。
「……これが宣教師風の男が言う“死の救済”なら、まるで地獄ですな」
「――――」
 蓋し冷艶の聲を聽く愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は、默した儘。
 サムライエンパイアを第二の故郷とし、表向きには山奥の社で巫覡を務める彼にとっては如何な侵略も許せまいか、邪影に射る烱瞳は抜身の刀の如く鋭利い。
 漲る闘氣に巫の装束を揺らした清綱は、蛟鬼の呼び掛けに音を被せるように猛禽の翼を広げると、力強く風を叩いて一気に飛び立った。
 爽涼の風に射干玉の黒髪を揺らした蛟鬼は、片眉を持ち上げて、
「相も變わらず……無視ですか。――よし濡姫、奴に悪戯しよう」
『――という名の手助けでしょう? 若』
 吃々と竊笑する主に言を返すは、蒼蛇『濡姫』。
 彼を幼少より支える従者は、きっと派手な“悪戯”を仕掛けるのだろうと上目見ると、主は【竜神飛翔】――完全なる竜体と變じて浮く。
 精悍の躯に纏う漆黒の竜鱗、尾は泰然と波打って。
 而して變容を遂げても變わらぬ「天下自在符」が、野火が数日前に奉行所に投げた文の甲斐あった事を證左(あかし)しよう。彼は三つ葉葵を掲げて共闘を申し出た。
「扨て、野火郎様と言いましたな。急ぎ『雙剣石』とやらに向かいましょう」
「おおおっ……空よりあの大軍勢を仕留められるとは、感無量に御座んス!」
「さぁどうぞ、私の頭へ。ほら濡姫も」
『はい、参りましょう。若なら直ぐに追いつきます』
 野火と濡姫を乗せて餘りある竜神の力は、最高速度7,600km/h、マッハ6を優に超える神速で飛翔し、あっという間に『雙剣石』の頂へ――大船団を眼下に敷いた。

  †

 ――時に。
 蛟鬼より先に飛び立った清綱は、坊津に至った彼の意図を量りかねていた。
(「俺は此の地の人々を護る為に来たが……人を顧みぬ竜が、何故、此処に……?」)
 蛟鬼は人の皮を被った残虐なる鬼竜だ。
 その麗顔の下、若き竜神は少年のように純粋に残酷で、破滅や災禍を齎す者を容赦なく破壊し尽くす男が、無辜の命を救いに来たとは――俄には信じ難い。
 凡そ腹の底を見せぬ蛟鬼につき、興が乗っただけかもしれないがと思案しつつ、双翼を羽搏かせて大船団の上空に至った清綱は、刹那、我が翼に或る空気の振動を感知した。
 軈て鳴動を結ぶ、その音は――、
「――竜め、雷を起こすか!」
 雷轟閃電――ッ! 海上全体に雷土が降り落ち、蒼い稲妻が天地を結んで檻を成す。
 帆柱を折り、巨蟲を灼く雷槍は、戰場に清綱が居ようがお構いなしに、
「あの巫覡ですか? 大丈夫です」
 腕は確かだと言う通り、蛟鬼は清綱を高く買っていて、素早く滑空して劔巖に避難する猛禽の翼を追った瞳が満足げに細む。
 而して彼も腕は立とう、
「ああ、蟲が愛らしく呼吸して」
 おぞましい魑魅魍魎も他愛ないか、巨蟲が噴き上げる腐亂の瘴氣は潮風を読んで躱し、万一にも野火と濡姫が吸い込まぬよう、見えざる闘氣が腐敗の気配を撥ね退けた。
 蛟鬼が縦横無尽に蒼穹を駆け巡る一方、清綱も風を摑んで自在に飛び回り、
「粘着糸は尻尾を持ち上げる初動を見切れば、軌道が読める」
 自らは残像を伴う神速機動で狙いを定めさせず、敵は一体一体の動きを具に観察して、多勢に無勢の戰況を巧みに切り抜けていた。
 周囲の閃雷が蟲の動きを鈍らせた時が頃合いか、鬼竜から鬼獣に目配せが送られる。
「……何、『海に向かって突風を起こせ』と――?」
 蓋し語尾を持ち上げて直ぐに理解する清綱も妙々たるもの。
「……成程。これが目的か」
 蛟鬼に頤使(つか)われる事には気が乗らないが、これだけの巨蟲の群れを殲滅するに彼が持ち掛けた策戰は至極肯綮に中っており、畢竟、選択肢は絞られる。
「不本意だが従おう」
 希求みのものを呉れて遣る、と放たれるは【薙鎌】――武芸書に記されたカマイタチが今ここに神速の一太刀によって再現・昇華され、吹き荒れる風が海面を打ち、波を斬って海を揺るがす。
 この時、闘氣の波濤に肌膚を震わせた蛟鬼は小さく嗤笑って、
「彼の風で海を揺るがし、落ちた雷を拡散させて殲滅しましょう」
 而して彼の言う通り、清綱を中心に放射状に広がったカマイタチが、天より降り注ぐ雷を戰場全体に広げ、巨船も巨蟲も、平等に残酷に蹴散らしていく――!
 想定した通り、否、それ以上の出来だと、血汐に代わって噴き上がる体液の狂濤を組み敷く蛟鬼には、清綱が帆翔しながら言ちて、
「――あの竜、神罰を下したつもりか?」
 若き竜神の下す罰の手加減の無さに、溜息をひとつ、置くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ブラザー・アポストロス』

POW   :    悔悟せよ、汝罪深き者
対象への質問と共に、【自身の侵略蔵書】から【野心の獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、野心の獣は対象を【引き裂く爪と牙】で攻撃する。
SPD   :    報いを受けよ、愚かなる者
【侵略蔵書の表紙】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、侵略蔵書の表紙から何度でも発動できる。
WIZ   :    来たれ我らが同胞よ
【火縄銃】で武装した【聖戦士】の幽霊をレベル×5体乗せた【ガレオン船】を召喚する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠枢囹院・帷です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 四方を海に囲繞(かこ)まれたサムライエンパイアは、峻嶮な山々に阻まれる陸上より海上の方が遙かに多くの物量を運べる故、海の道を断つは妙計に違いなかった。
 そして、洗脳によって無気力化した町に巨蟲を放ち、「救済」を待つ人々を瘴氣を以て死に連れるは「最も靜かな蹂躙」であったが、宣教の道に隠れた野望を見破った猟兵が、計画を全てブチ壊してしまった。
『――子らよ、其は全て間違っている』
 猟書家の幹部が一人、ブラザー・アポストロスは開口一番に猟兵を否定する。
 一軒の舟屋から姿を現した宣教師風の男は、柔和な微咲(えみ)を湛えた儘、町の人々を洗脳した穏やかなバリトンを紡いで、
『彼等が真に望んでいた“救済”を、子らは断ってしまったのです。彼等は――』
「大嘘に御座んス!」
 刻下、ピシャリと説教を断つは野火。
 賑いを遠ざけつつも人々を愛していた破戒僧は、アポストロスの言を強く否定して、
「このフサフサ坊主が考えている事は倒幕ひとつ! 坊津の民の事など、これっぽっちも考えちゃいないんで御座んスよ!!」
 噫、嗚呼、救済など何一つ書かれていない書物が憎い。
 あれを打ち寄せる波にズブ濡れに――クソ坊主ごとビショビショに濡らしてやらねば、唯だ靜かに死を待つ無辜の命が不憫でかなわぬ。
 時は満潮を迎えつつあり、アポストロスの足元にも波が迫ってきているが、土地の者にあらねば気付く筈もなかろう。
「猟兵どの、お耳を……」
 野火はゴニョゴニョと耳打ちし、あの者を討つ手立てを授けるのだった。
白斑・物九郎
●SPD



――ァ? 満潮だ?
ははぁん、そりゃイイ狩場の情報聞きましたわ
使わねえ手はありませんわな

おう、野火とやら
おたくも乗りなさいや
カッ飛ばせる道、案内して貰いますでよ


・【花屋式機動支援】発動
・陸上でもそこそこの水位でもイケるようなタフなマシンをリクエスト、同乗(悪路走破)

・アポストロス目掛けカッ飛ばす! 突っ込ませる!

・侵略蔵書表紙による「受け」の構えを見たら、ドラテクで蹴立てさせた波濤をブッ掛け怯ません(地形の利用)
・飛沫による悪視界を【野生の勘】で見通しながら、蔵書表紙を掻い潜り【怪力】で取り回す魔鍵で【なぎ払い】、アポストロスのコード使用を施錠せん


ヘイ、ご機嫌ですかよ? “ブラザー”



「白斑の兄ィ、お耳を拝借に御座んス」
「ン、許す」
 ゴニョゴニョ、ゴニョリ。
 ほつほつと雪白を落とす黒い猫耳をピンと立て、野火が話す秘密を聽いた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は、金の烱眼を満月の如く、煌々と玲瓏の彩を放つ。
「――ァ? 満潮だ? ははぁん、そりゃイイ狩場の情報聞きましたわ」
 使わない手は無い、と端整の脣は小気味佳く口角を持ち上げ。
 時に硬質の指は白くて薄い改造スマートフォンを滑ると、異世界だろうと何のその、L95G超次元通信規格によって回線を開き、何やら注文を取り付けた。
 通話中、睫の下に覗く金の佳瞳は流瞥を注いで、
「おう、野火とやら、おたくも乗りなさいや。道を案内して貰いますでよ」
「? 道はばっちりに御座んスが、乗る、とは……?」
 疑問符を浮かべる間も無い。
 野火が首を傾げ、物九郎が終話ボタンを押した次の瞬間、ピッという電子音に被さって4ストローク並列2気筒DOHCバルブエンジンの快音が響く。
 野火が喫驚くより速疾く眼路に飛び込むは、【花屋式機動支援】(ニコリネ・ドライブサポート)――! オーダー通り、高剛性・路面追従性・悪路走破性に優れた“バギー”が砂埃を噴いて顕現れるや、そのフレームにハコ乗りした物九郎は、伸ばした手に野火を摑み、後部座席に座らせた。
「目標、出涸らしの宣教師。エンジンフルスロットル、好きなだけカッ飛ばしなさいや」
 スッと通った鼻梁は進路に向けた儘、ハンドルを握る運転手に追加オーダーする。
 然れば花屋は「そこが佳いのよ」と咲みつつアクセルベタ踏み、野火が示す道を爆速に捺擦(なぞ)ると、旋回方向と逆にステアリングを切ってオーバーステアを誘発し、重量に遠心力を乗算した鐵塊を突ッ込ませた!
『!! 子らよ、全速力の車で人を轢くなど間違っている……ッ!!』
 これに大いに吃驚したアポストロスが、侵略蔵書の表紙を構えて「受け」んとするが、物九郎が狙ったのは正にこの瞬間(とき)。
「――野火の言う通り、その本にゃロクな事が書かれてなさそッスね」
 ブロンズに燿う肌膚に飛沫を浴びつつ、侵略蔵書にはその何倍の潮をブッ掛ける!
 満潮にタイヤを半ばまで浸したバギーが、ドリフトで蹴立てた波濤をしとど浴びせれば書物はズブ濡れに、野望を秘めた緋瞳が餘りの景に時を止めれば、怒涛と撥ね散る飛沫を潜り抜けた『魔鍵』がアポストロスの眼路いっぱいに迫ッた!
「ヘイ、ご機嫌ですかよ? “ブラザー”」
『――ッッ!!』
 潮を彈く魔鍵は轟然と。
 蓋し佳脣を滑るテノール・バリトンは冷艶と。
 濡れた蔵書では二の撃に構えるには遅延く、アポストロスは我が袖を掻い潜って届く冱撃に蔵書を彈かれ、ユーベルコードを“施錠”されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
野火殿の耳打ちに頷いて
……承知致しました

では倫太郎、参ります

視力にて満潮時にも活用できる足場を探す
春暁を呼び出しておき、動物使いにて作戦を指示して上空へ
倫太郎の術を合図に駆け出す
召喚された獣には破魔の力を刃を付与し、なぎ払いにて斬り払う
先ずは獣の対処を優先
爪と牙による攻撃は武器受けにて防御、その後カウンター

全て間違いと、そう仰るのならば証明を
人を想い、救済の手を差し伸べるのならば
坊津の者を想い、戦おうとする者を何故否定をするのか
貴方の方こそ、答えて頂きましょう

途中から獣は倫太郎に任せ、指笛を吹いて春暁に合図をして奇襲
その隙に足場を踏み台にして跳び移り、急接近し早業の抜刀術『瞬月』


篝・倫太郎
【華禱】
野火の耳打ちに夜彦と二人頷いて返す
ありがとな?

往こうぜ、夜彦

拘束術使用
召喚された獣も神父も
射程内に納めたら鎖での攻撃と拘束
確実に拘束出来ずとも行動の阻害が出来ればいい

拘束と同時に接近し
鎧無視攻撃と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
神父の事はほぼ夜彦に任せる形になるけど
その分、夜彦を狙う獣も俺が対処
術を剥がされたら再使用

爪も牙も武器受けを利用しての受け流し
距離を詰められたら
暁想も利用し間合いの不利を出来るだけ解消

波が引く時、砂を攫う
それは一瞬でも動きを阻害する

夜彦なら、その一瞬があれば充分だろ
春暁も居るし、俺の拘束術もある

『死は救済』
そんな寝言は骸の海に還って抜かしてな



 坊津に唯だ一人残された者の無念、齒痒さは佳く理解る。
 磨き上げた腕は及ばず、土地の者ならでは知恵を授けて後事を託さんとする野火には、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が力強く頷いた。
「……承知致しました」
「教えてくれて、ありがとな?」
 助力に報いるべく、雄渾漲る冱刃と強盾が影を揃える。
 秀でた鼻梁をキャソックを纏う悪魔――猟書家『ブラザー・アポストロス』へと向けた二人は、拳をコツンと突き合わせて踏み出た。
「では倫太郎、参ります」
「――往こうぜ、夜彦」
 いつも隣に在る鋭氣に、いつもの聲を置く。
 而して頼り、頼られる信頼の絆に闘志を迸発(ほとばし)らせた男たちは、烱瞳が結ぶ漆黒の邪へ、須臾に爪先を彈いた。

  †

『子等よ悔悟せよ。汝の胸に有る咎を明らかにし、犯した罪を浄いなさい』
 硬質の指が壮麗な表紙を捲り、侵略蔵書に描かれる忌わしき魔獣を召喚する。
 鋭い牙より垂涎し、猛々しく咆哮した黒獅子が打ち寄せる波を蹴立てて飛び掛かれば、その狂気を正面に捉えた倫太郎が颯爽と踏み出た。
「――へえ、腹に抱える野心を見せた訳か」
 成る程醜い訳だと、端整の脣には艶笑(えみ)すら湛えて。
 瘴氣の収まった蒼穹で狗鷲が帆翔する下、倫太郎が間もなく投げ放つは【拘束術】――災禍を縛める不可視の鎖が首輪よろしく黒獅子に巻き付くと同時、もう一方の手より放たれた縛鎖が、アポストロスの手を侵略蔵書ごと雁字搦めにした!
『!! 何を――』
「これで獣は打ち止めだ。なに、何匹も放し飼いするもんじゃねーだろ?」
『ッッ、ッ……!!』
 咄嗟に縄か鎖かと見切ったアポストロスは、己と倫太郎を結ぶであろう射線を黒獅子に噛ませて鎖を断つが、肝心の手元はまさか己の手を噛み砕かせる訳にもいくまい。
 而して左手を拘束された處には曇り無き一刃が――夜彦の愛刀『夜禱』の鋩が肉薄し、ペルグリーナ(上衣)を裂かれた彼は咄嗟に黒獅子を盾と据えるが、より強靭な盾を知る夜彦に怖れは無い。
「――……我が盾に較べれば脆弱(もろ)い」
 夜彦は猛然と牙を剥く魔獣に鞘を噛ませるや、カウンターに夜天の刃を閃かせ、疾ッと繁噴く血潮に四つ脚を退かせた。
 而して血華が瀲灔(ちらちら)と躍る向こうには、湖水の如く透徹る翠瞳が、玲瓏の彩を真直ぐアポストロスに繋いでおり――、
「――『全て間違っている』と、そう仰るのならば証明を」
『証明? 何を……』
「人を想い、救済の手を差し伸べるのならば。坊津の者を想い、戰おうとする者を何故、否定をするのか――貴方の方こそ、答えて頂きましょう」
「ああ、俺も聽かせて貰う。一字一句違えずに野火に伝えるぜ」
 更に殺意に満ちた烱眼を注ぐは倫太郎。
 彼は破魔の神氣を籠めた縛鎖を手繰って魔獣を制禦すると、逆手に握る懐刀『暁想』を深く衝き入れ、至近距離で関節部に刃を沈めたッ!
『ギャウウゥゥッッ!!』
 余程の激痛に心火を灯した黒獅子が牙を剥いて飛び掛かるが、潮が満ちゆく汀にあって二人は石巖を足場に巧みに跳び渡り、瞋恚の爪牙を受けては流し、躱してはカウンターの刃を返す輕妙を見せる。
 地勢に大きく水を開けられた邪獣は、波打ち際に脚を置いた刹那、倫太郎の華焔刀[凪]の刃に捕まり、
「波が引く時、砂を攫う。其は一瞬でも足を、機動を阻害する」
『ォォォオヲヲッッ!!』
 瞬断――ッ!!
 目下、膂力いっぱい振り切った薙刀の美しい刃紋が赫く染まり、魔獣の首を飛ばした。
『ッッ……なんという……!!』
 鬼火となって消える首を追うアポストロスは、然し己もまた白波に劣勢を敷かれているとは思うまいか、海水に濡れるモンクストラップに息を呑む間もなく、視線は上に――、夜彦の指笛に反應した『春暁』が、矢の如く降下して来るのに瞠目した。
『!! あのイヌワシは、最初から子らの……ッ!!』
 気付いた時には遅延(おそ)い。
 目下、アポストロスの眼路いっぱいに迫った茶色の大翼は鋭利い嘴に緋の虹彩を襲い、侵略蔵書ごと括られた左手を以て猛禽を払うも、その隙に追撃が飛び込む。
「夜彦なら一瞬あれば充分。決めて呉れる」
 倫太郎が言う通り、彼は應えよう。
「我が愛刀の一閃、受けてみよ」
 水飛沫に濡れる岩場を慥かな足取りで伝い渡った夜彦は、その機動に勝る神速の抜刀術【瞬月】にて一閃――ッ、風を掠める刃鳴りを連れて斬撃を疾走らせると、アポストロスの靜謐の黒衣にしとど血を浴びせた――!!
『ぜっ唖唖ぁぁあ嗚呼ッッ!!』
 圧倒的劔圧に押し込まれ、激痛を叫喚びながら膝を付いたアポストロスには、倫太郎が琥珀色の烱瞳に組み敷いて、
「……『死は救済』か。そんな寝言は骸の海に還って抜かしてな」
 と、冷たいテノール・バリトンを滑らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

まあ、自ら戦場に出ない軍の大将が何か偉そうな説法言ってもなにも響かない訳だが。アタシも色んな奴と戦ってきたが、コイツが上っ面だけの救いを言ってることは良く分る。

目障りなので、とっとと退場して貰おうか!!

ふむ、足場が悪いか。今飛行中なので、真紅の竜を発動させて、【騎乗】、敵の攻撃を【オーラ防御】でダメージ軽減、【ダッシュ】で敵へ竜をバレルロールして突っ込む。実際の攻撃は【気合い】【怪力】【串刺し】による【槍投げ】と【グラップル】による殴り飛ばしだからコピーできないはずだ。まあ、真紅の竜をコピーされても【戦闘知識】で動きを読み、【衝撃波】で竜から叩き落してやるさ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

んん、偉そうな事言ってますが、貴方の言う救い、本当に人の為になるんですかね?後、1人だけ安全地帯にいた人が言っても説得力ないですね。

足場が悪いですか。では瞬兄さんとタイミングを合わせて、彗星の一撃を発動。瞬兄さんと共同で、空中から徹底的にガレオン船を攻撃しますよ。数撃ちゃ当たるという事でブラザー・アポロトスに攻撃が当たると儲けもの。もちろん、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固め、瞬兄さんに攻撃が飛ぶなら攻撃を放棄して兄さんを【かばう】しますよ。


神城・瞬
【真宮家】で参加

こういう頭脳派は厄介ですね。僕は両親と故郷の人達の死を経験しました。死は終わりで別れです。救いではありません。故に僕は貴方の教義を否定させて頂きます。

奏とタイミングを併せて月読の騎士を発動。空中から【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】をガレオン船の敵に向かって【高速詠唱】【全力魔法】で全力で【範囲攻撃】化、更に【衝撃波】に【武器落とし】【吹き飛ばし】を併せて追撃。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。



 慈しみの彩を湛える猩々緋の麗瞳。
 穩やかに滑り出るバリトンボイス。
 成る程、慎み深い黒のキャソックに身を包む男は、萎んだ心を慰めて呉れそうな友愛に満ちていたが、其が實を伴わぬとは真宮・響(赫灼の炎・f00434)が痛烈に言おう。
「――まあ、自ら戰場に出ない軍の大将が何を言おうが何も響かない訳だが」
 今更、偉そうに説法を垂れて響く筈が無い。
 手勢を悉く殲滅されて其を悔やまず、敗因を見極めず、兵の痛みを分かろうともしない大将が無能とは、数多の戰場を潜り抜けて来た響だからこそ経験則として識っている。
 蒼穹より降り落ちる母の科白を拾った真宮・奏(絢爛の星・f03210)は頷いて、
「……慥かに、一人だけ安全地帯にいた人が言っても説得力ないですよね」
 同時に首を傾げる。
 可憐は雪白の繊指をそっと細頤に添えて疑問符を浮かべ、
「偉そうな事言ってますが、貴方の言う“救い”は本当に人の為になるんですかね?」
 教えとは人々の心を明るく、健やかに――生きる指針となるものと思っていた奏だが、死が眞の救済であるとは、随分と可怪しな事を言うものだ。
 然れば男は、猟書家『ブラザー・アポストロス』はゆるく頭を降って答える。
『……子よ。何が人の為になるかは、人が死を超越した後に結果として齎されるのです。神に祝福されて復活を遂げたなら、人は其のとき初めて“救済”を得ましょう』
 人が生まれながらにして持つ「原罪」が骸の海に浄われなければ。
 オブリビオンとして再び現世に甦生(よみがえ)らなければ。
 人は死を克服せねば救済(すく)われぬ――。
 然う語る男の聲は心の平靜と魂の昂揚を同時に與える強烈な魅力に溢れていたが、其が人心掌握ユーベルコードとは猟兵にしか分かるまい。
「豈夫(まさか)」
 直ぐにも聲を彈くは神城・瞬(清光の月・f06558)。
 何者かに故郷である隠れ里を襲撃され、両親と里の人達を殺された瞬は多くの「死」に触れた経験がある。あれから12年――否應なく死の淵に堕とされた人々がオブリビオンとして復活したなら、彼は魂の冒瀆を感じずにらいられまい。
 薄く佳脣を開いた彼は、嚴然と言を紡いで、
「死は終わりで別れです。救いはありません。僕は貴方の教義を否定させて頂きます」
 靴底を踏み締め、堂々正対する。
 その姿に力強い「是」を添えた響も、決然とした口調でアポストロスに隔絶を置き、
「アタシも色んな奴と戰ってきたが、コイツが上っ面だけの救いを言ってるってのは良く理解る。――オブリビオンとして復活させた者を駒に頤使(つか)いたいってね!」
 求道など倒幕の為の手段。
 畢竟、坊津を陥落(おと)して海上運航を断ち、クルセイダーによる天下布武の一助としたいのだと――眼下の男を睨め据える紫瞳は、抜身の刃の如く鋭利(するど)い。
 一方の奏は、母に較べれば踏んだ場数も少なく、瞬のように壮絶な過去を負った経験もないが、二人に守られたからこそ淸らかに、眞直ぐ育った少女は、アポストロスの底の見えぬ野望を前に不穏を叫ぶ心に従って闘志を萌した。
「……野火さんは、『唯だ靜かに死を待つ無辜の命が不憫でかなわない』と仰いました。ならば私達が野火さんに代わって、人々に代わって抵抗(あらが)うべきです」
 一矢も二矢も報いて遣る。
 罪なき人々を愚弄した代償を負わせる。
 手間を厭う身で無し、存分に戰って遣ろうと雄渾を漲らせた真宮家の三人は、此度は空から攻めるべきと、戰術を共有するのであった。

  †

「目障りな奴は、とっとと退場して貰おうか!!」
 先制したのは、既に蒼穹に在った響。
 先に【赤竜飛翔】で赫灼の竜翼を得ていた彼女は、帆翔によって紅き魔法陣を描くや、【真紅の竜】を喚び召し、雄壮なる大翼を羽搏かせる彼(そ)の背に飛び乗る。
 然れば紅竜に騎乗した竜騎士を仰いだアポストロスは、侵略蔵書を掲げ持ち、
『竜、か……悪魔の使徒を操る者に、報いを受けて貰いましょう』
「やれるものなら、やってみな!!」
 攻撃は「表紙で」受け止めなければコピーは叶わない。
 詰まり、攻撃を「表紙に」当てぬ限り、アポストロスは返報の手段を持たぬと見極めた響の読みは全き至当で、彼女は澎湃と湧き上がる闘志を炎のオーラと纏いながら、竜翼に風を叩いて滑空した。
「本以外を殴り飛ばしてやるよ!!」
『――ッッ!!』
 竜騎士を乗せた竜は、速く、迅く――宛ら赫き槍の如く空気の層を裂いてバレルロールすると、先ずは大きな紅翼をアポストロスの胴に叩き込んで長躯を「く」の字に折らせ、更には縦方向に180℃のUターンを決めてスプリットS! 今度は主たる響自身が背面に『ブレイズランス』を振り下ろした!!
『グッ、嗚呼ッッ!!』
 今度は一轉して背を反らすアポストロス。
 激痛を受け取った男が無様に蹈鞴を踏み、モンクストラップが海水に濡れる。

 而してこの機を逃す子達では無かろう。
「奏、母さんが作ってくれた隙に畳み掛けます」
「はいっ、瞬兄さんにタイミングを合わせます」
 須臾の瞥見で呼吸を揃えた二人は、共に空に攻略を見出して仕掛ける。
「――我が隠れ里の一族に伝わる『月読の紋章』の力を、今ここに!!」
 清冽の聲に秘呪を詠唱した瞬は、月読の紋を刻む銀の鎧に身を包んで【月読の騎士】と成り、背に純白の翼を広げるや碧落へと飛び立った。
『ッッ、クッ……!!』
 アポストロスに翼を追い掛ける手段は無い。
 彼はその代わりガレオン船を湾に召喚すると、火縄銃を携えた聖戰士達に海上から瞬を狙わせたが、白翼を負う銃口は奏が命中を許さない。
「この際、たくさんぶっ飛ばしますよ~!! いっけ~!!」
 星燈爛々、【彗星の一撃】――ッ!
 目下、晴朗なる空には星の光を纏う劔が幾何学模様を描きながら複雑に飛翔して回り、燦然と瞬いては鋭劔に鐵筒を貫いて、火彈の発射を悉く阻む。
 凄撃を繰り出す奏本人は口調も明るく輕やかに、
「数撃ちゃ当たると言いますし、本人に攻撃が当たれば儲けものです!」
 と、半径95m圏内に950本の煌きを游がせ、火縄銃を落として聖戰士を無力化する。
 辛うじて星の劔を逃れた幽霊達も、最高速度475km/hで飛空する瞬を狙い撃つは至難の業であろう。
 瞬はその間に彼等が乗るガレオン船に向かって『月虹の杖』を一振り、己に宿る厖大な魔力を淸かな月光と變えて放ち、月白の一条に巨船を薙ぎ払って転覆させた。
 玲瓏と耀けるオッドアイは、巨船の沈没を見届けるより漆黒の邪を睨めて、
「こういう頭脳派は厄介ですね。これ以上クルセイダーに肩入れさせてはいけません」
 幾度と顕現れるなら、幾度と倒そう。
 力無き者達の心を操る事も、無抵抗の命を屠る事も許さない――。
 強く決意して振り被った精霊杖が煌々と燦めけば、其に合わせて響と奏も強靭を増して烱々と、攻撃を合わせる。
「天下布武の野望は一度潰えました。此度も必ず潰して見せます」
「ああ、織田信長だろうとクルセイダーだろうと、この國を揺るがす奴は許さないよ!」
「ブラザー・アポストロス、貴方こそ死を以て報いなさい!」
 閃爍――ッ!!
 母子三人が揃えた凄撃は、宛如(まるで)空から押し寄せる狂濤の如く大きくうねり、アポストロスに衝突(ぶつ)かるや凄まじい威に長躯を押し流した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
満潮……策はありますが。
うーん、何はともあれ皆さんの命あってこそですし。
全部終わった後にきっちりお片付けする、ということで……

野火さんやゴーレム達に手伝ってもらって、村中の油を集めて樽に詰めて持っていく
それを一斉にアポストロスの方へと転がし、彼の近くへ差し掛かる辺りで【本気の炎の精霊さん】発動
総計920本もの炎の槍、その一部(1割程度)が樽を貫けば、海面を広がる油にたちまち燃え広がって海上は文字通り火の海に
ガレオン船も空飛ぶ船でもない限り、逃げ場はなく燃え尽きるのを待つのみでしょう
アポストロスは待機していた残り全ての炎の槍で貫きます

異端者は火刑に処す……というのは、どこの教義でしたっけ。



 野火は先の戰いを経て、総勢92体のゴーレム達とメチャクチャ友達になっていた。
 而して今、彼はゴーレム達と共に、坊津にある油という油を掻き集めて樽に注ぎ込み、舟屋へと至る勾配に扇状に、とてもいい感じに並べ終える。
 額の汗を拭った野火は、眼下に宣教師風の男を捉えよう。
 男は猟兵を前に何やら喋っており――、
『蟲は殺されてしまいましたが、ガレオン船が無くなった訳ではありません』
 来たれ我等が同胞よ、と突き上げた右手がペルグリーナ(上衣)を飜す。
 キャソックを着た悪魔――猟書家『ブラザー・アポストロス』は、またしても坊津の港に巨船を召喚すると、其に乗り込む聖戰士の火縄銃を一斉に猟兵へ向けた。
『子等よ、貴人方も死の救済を受くべきです。何が救いかは、骸の海を潜れば理解る』
 危うし猟兵――! という時、野火が「合図」を受け取る。
「――扨て、土の巨人の衆! 拙僧と共に一氣に轉がすで御座んスよ!」
 よいやさ、よいやさ、と彼等が押し出したる樽が目指すは、アポストロス。
 ごろりん、ごろりん、と轉がり来る其に男が振り向くより先、「あれです」と繊麗の指に示した少女は、己が傍で待ち構えていた炎の精霊に“お願い”をした。
「焼き尽くしてしまいましょう、炎の精霊さん!」
 花脣を滑る美し大瑠璃の聲――。
 その淸らかな音吐を何より愛する精霊は、願いを聞き入れるや【本気の炎の精霊さん】(フレイム・エレメンタル・オーバードライブ)解放――ッ! 少女の花顔を白ませるほど燃え盛ると、煌々と燿う身を分けて総計920本もの「炎の槍」を創った!!
 幾何学模様を描いて複雑に飛翔する閃爍の下、少女は凛然と樽を見詰めて、
「うーん、何はともあれ皆さんの命あってこそですし……。全部終わった後は、きっちりお片付けする、ということで……!」
 命には代えられぬ、と一部の進路を指に嚮導(みちび)く。
 然れば大体百の束が一斉に樽を貫き、轟ッと爆ぜた炎は火勢盛んに燃えあがると、海面を広がる油を伝って忽ち燃え広がった!!
『ッッ、なんという……!!』
 満潮に迎えられるように油は海へ――文字通り火の海。
 山から海へと吹き降りる風も幸いしたろう、悪魔の舌と燃え広がった炎はガレオン船を飲み下し、火縄銃を構えた聖戰士の幽霊ごと焼き尽くした。
 其はアポストロスも飲み込む程の火勢であったが、少女は彼には特別に、残る炎の槍を全部射掛ける大サービス!!
「異端者は火刑に処す……というのは、どこの教義でしたっけ」
『ッ、ッッ……!!』
 噫、嗚呼、反駁も絶叫も、烈火が空気を鹵掠(うば)って叶わぬ!
 否應なく炎に包まれる男を見守るは、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)――野火と、野火の親戚を「奇術遣い」かと喫驚かせた少女が、灼熱の風に煽られる艶髪に光を彈いていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【勇停】
体力消耗中
汗が滴り息整え
剣に凭れ掛かり

…問題ねェ
俺への気遣いは無用だ
お前はお前の為すべきコトをしろ

(これまでどれ程、玄夜叉に宿る精霊に助けられてたのやら
今は無き力の源
十代目に打ち直して貰ったこの刃には伍属性の力が宿ってるのに
たった一つ解放するだけでこのザマかよ)

軽く歯軋り
未熟さ嘆く前に意識は敵へ

上等だわ
テメェの目論見も
玄夜叉も
捩じ伏せてヤる

親指噛み血舐めてUC使用
フィッダが作った氷の道を通り一気に敵へ接近
質問の解には臨機応変に
制御がマシになった風の刃で獣を八つ裂き
本体へ袈裟斬り

人々を洗脳し傀儡にした外道
吐き気がするぜ
そろそろ幕引きの時間だ

洗脳された人々が再び目覚める様に
揮う力は民の為に


フィッダ・ヨクセム
【勇停】
満潮ねえ?湿気られると凍らせたくなるんだがなあ
おいイケるか、クロウ
笑う足の代わりになッてやろうか?

なんだ元気そうじャねえか
アンタの道は俺様が創る
通った海水上に点々と徐々に侵食して広がる氷の道をな
疾走る道は選ばない海水だろうが、俺様に進めない道はねえ!(水上歩行)
不慣れの氷の魔法を主軸に使うか
コレ自体も長続きはしねェだろうが、構うもんか
良いように使えよ
行きたい場所に届くよう
道標になッてやるからさあ

悔悟ォ?そんなの、毎日認めてるわ!
俺様が独りで選ぶ道はどこかで必ず間違う
……だからァ今は自分が居たい場所にいる
てめえにクロウ以上に俺様の生への飢えを満たせるもんかよ
おい邪魔するな、食い千切るぞ



 息が切れるほど体力を奪っておきながら、尚も縋らせるとは宛如(まるで)女だ。
 いつ俺がお前に惚れたかよと幾許の悪態を吐きつつ、『玄夜叉・伍輝』に凭れ掛かった杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は、飄然と投げられる佳聲に鋭利い流盻を注いだ。
「おいイケるか、クロウ。笑う足の代わりになッてやろうか?」
「……問題ねェ。俺への気遣いは無用だ。お前はお前の為すべきコトをしろ」
「なんだ元気そうじャねえか。こう、抱える位はしてやッたぜ?」
「姫抱きかよオイ!」
 十も年下のフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、随分と丁重な扱いにクロウを揶揄うが、彼は年長者の言う事は聽くものと、素直に「為すべきコト」に掛かる。
「――満潮なら丁度佳い。アンタの道は俺様が創ッて遣るよ」
 足は代わらぬが、道は用意する。
 肌膚を撫でる湿気た風に小気味佳い嫣然(えみ)を湛えたフィッダは、その咲みを漸う貪婪に、澎湃と横溢(あふ)れる殺意に惡しき客の鏖殺を誓うと、【Barika】(ヴァリカ)――身の丈の倍もある「嗤笑う鬣狗(ハイエナ)」へと變容を遂げた。
「俺様に進めない道はねえ! エスコートして遣るよ、クロウ!」
 凍氣を帯びた獣の脚が一歩踏み出るや、海面が一氣に凍結する。
 氷は点々と斑を落とすや、徐々に海水を侵蝕して氷の道を広げ、フィッダが疾走る足跡を描くように白銀の道が引かれる。
 氷属性の魔法は不慣れにて、長続きはしないだろうが、構わない。
 フィッダは聲を置いて海を疾り、
「良いように使えよ。行きたい場所に届くよう――道標になッてやるからさあ」
 必定(きっと)其が己の役儀。
 矛先を嚮導(みちび)く事こそバス停のヤドリガミに相應しいと鬣狗は嗤笑ったか――海面に広がる道を麗瞳に追ったクロウは、自らを叱咤するよう齒切りした。
「――ハ、可憐(しをらし)いこった。たった一つ解放するだけでこのザマかよ」
 これまでどれ程、『玄夜叉』に宿る精霊に助けられてきたのやら。
 今は無き力の根源には、十代目に打ち直して貰った伍属性の力が宿ってるというのに、己の未熟さが暴走を許したとは――不甲斐無い!!
 ギリと奥歯を嚙んだ彼は、然し引き結んだ紅脣の端に好戰的な艶笑を湛えていて――、
「上等だわ。テメェの目論見も、玄夜叉も、捩じ伏せてヤる」
 親指を噛み、鮮血に艶帯びる佳脣を舐める。
 而して咥内に広がる鐵の味に我が身に刻まれる幾年の時を味わったクロウは、獄脈解放(ヘレシュエト・オムニス)――【沸血の業火】(メギドフレイム・ブラッド)! 邪惡を灼く終焉の火燄に、眠れる迅を覚醒(めざめ)させた!!
「――……“道標”があって迷う訳にはいかねェな」
 己が周囲を閃爍と疾走る紫電に麗顔を白ませながら、踵を蹴るや刹那に氷の道を駆けたクロウは、幾許か制禦がマシになった風の刃を繰り出す。
 凍てる道の先、風刃が向かう先に据わる男は、果して――。
『氷の道に風の刃……斯くも殺意に満ちたもので衆生が救われるとお思いですか?』
 子等よ悔悟せよ――!
 微笑を湛えた儘の“キャソックを着た悪魔”――猟書家『ブラザー・アポストロス』は侵略蔵書を披くや質問と同時に黒獅子を使嗾(けしか)ける。
 奴が満足する「餌」を、「解」を與て遣ろうか。
 いや、其を上回る「極上」を呉れて遣ろう。
「――おい邪魔するな、食い千切るぞ」
『ッッ、ギャゥゥウウウウッッッ!!』
 然う、鬣狗(フィッダ)だ。
 野心の獣がクロウへと四つ脚を蹴り出した瞬間、その喉笛に喰らい付いたフィッダは、魔獣を射線から押し出すと同時、夥多しい血量に組み伏せる。
 鋭利い牙は眞紅に染まりつつ大聲で喊んで、
「悔悟ォ? そんなの、毎日認めてるわ!」
 噫、嗚呼、毎日だ!
 真の姿へと昇華したフィッダは、猛牙の間から不器用な冷氣を出して言を足し、
「俺様が独りで選ぶ道はどこかで必ず間違う……だからァ今は自分が居たい場所にいる」
 居たい場所にいる。
 その選択だけは間違っていないと――自ら證左(あかし)すべく、激痛に輾轉(のたう)つ黒獅子を獣の爪牙に八つ裂きにしていく!!
「てめえに、クロウ以上に俺様の生への飢えを満たせるもんかよ!」
『ギェァァアアッッ……――!!』
 強靭なる頤に黒獅子の脊髄を噛み砕いたフィッダの、烱々と燿う蘇芳色の双瞳に怯んだアポストロスは、獣の死と同時に我が身にも訪れる終末に気付くのが遅れたろう。
 ――否。
 畢竟、気付いた處で為す術は無し。
「人々を洗脳し傀儡にした外道。ツラを見るだに吐き気がするぜ」
『ッ、ッッ――!!』
「そろそろ幕引きの時間だ」
 眼路いっぱいに迫るは、漆黒の大魔劔の鋩を向けたクロウ。
 死を待つ人々が再び目覚めるに、洗脳を施した本人の絶叫が剴切とした彼は、揮う力を民の為に、野火や彼等に代わって厖大な劔圧を袈裟に疾走らせる――ッ!
 威を増した『玄夜叉』は旋風を纏いながら懐に飛び込んで、
『――ぜァァ嗚呼アアア唖唖唖ッッ!!』
 而して後。
 断末魔の叫喚(さけ)びが坊津の海に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨナルデ・パズトーリ
敢えて言うならば、じゃ

貴様の存在以上の過ち等存在せぬ!
疾く失せよ外道!

この地は今を生きる人の子等の物!
貴様の様な過去の残骸が干渉して良いものではないわ!

魔法は原則『高速詠唱』かつ『範囲攻撃』
『先制攻撃』で『天候操作』により『地形破壊』級の嵐を風『属性攻撃』『全力魔法』により産み出し『多重詠唱』により更に其の嵐に『マヒ攻撃』も兼ねた氷『属性攻撃』『全力魔法』を混ぜ混む事で猛吹雪に

此は海や地面の凍結によるガレオン封じと吹雪により本を濡らすのを兼ねた物

攻撃は『野生の勘』で『見切り』『残像』を囮に回避
其の侭高速飛行の『空中戦』で肉薄
『怪力』による『鎧無視攻撃』を『破魔』の力を込めた斧でぶちこむ



 目下、翡翠色の麗瞳に映すはキャソックを着た悪魔。
 猟書家『ブラザー・アポストロス』は野望が暴かれた今も偽りの慈愛を唱え、
『道を違えし子等に救済を。死を超越した“我等”が永久の命をお教えしましょう』
 いざや、同胞よ來たれ――!
 ペルグリーナ(上衣)を翻し、右腕を突き上げた男の背に顕現れるガレオン船団を見たヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は、美しきソプラノボイスを冷淡(つめた)く、冷徹(つめた)く――刃の如く研ぎ澄ませた。
「――……敢えて言うならば、じゃ」
 噫、今も無辜の民が靜かに死を待つと思えば、語勢は穩やかではいられまい。
 鴇色に色付いた花脣は、ここに沸々と滾る瞋恚を溢れさせ、
「貴様の存在以上の過ち等存在せぬ! 疾く失せよ外道!」
 と、痛罵するや【第一之太陽再臨】(ナウイオセロトル)――ジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包み、嘗て己に捧げられた血と骨で構成された翼を羽搏かせて飛翔した!
 山から海へと吹き下りる風を摑んで蒼穹へ向かったヨナルデは、ガレオン船の大船団を烱瞳に敷くと同時、甲板から我が翼を火縄銃の筒先に追う聖戰士の霊達を睨め据える。
 佳聲は青き天蓋に淸澄と透徹(すみわた)って、
「この地は現世(いま)を生きる人の子等の物! 貴様の様な過去の残骸が干渉して良いものではないわ!」
 瞋恚を澎湃たる闘志と滾らせる。
 嚇怒を烈々たる魔力と溢れさす。
 黒曜石の鎧に包まれたヨナルデは敵意を露わに、それでいて怜悧に犀利に秘呪を詠唱しており、風を集めるや疾風に――更に熱量を鹵掠(うば)って凍てる嵐と變え、大いなる猛吹雪を坊津一帯に広げた。
「――此は海や地面の凍結によるガレオン船封じ」
 云うや厖大な魔力は耀ける凍氣を叩き付けて海面を凍らせ、ガレオン船の機動を制すると同時、船自体を、戰闘員たる聖戰士たちを凍えさせていく。
 パキ、パキ……と一氣に氷が生成される音が鮮々(なまなま)しかろう。
 その猛威は海上のみならず、汀に居たアポストロスをも巻き込んで、急激に冷えた大気は漆黒の邪に容赦なく氷雪を叩き付けていく。
「――更に猛吹雪は惡しき侵略蔵書を濡らすを兼ねる!」
『な、に……!!』
 蓋し男が息を飲む間も無い。
 侵略蔵書はじっとりと濡れて呪力を失うと同時、強靭を増した『黒曜石の戰斧』に叩き落され、寄せるなり凍る波に捕われるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
間違ってる?鏡に向かって言ってんのか?演技の練習ならもうちょっと上手くやれよ、つまらねぇ


よし、ツーマンセルで行くぞ
俺が隙を作る
満潮の頃合い、奴の足元にも海水は迫るはず
そこを見計らってクロスボウのボルトを打ち込む
電気ショックによる【マヒ攻撃】でスタンさせる、スタン・ボルトさ
海水はよく電気を通すんだぜ
どうなるかなんて、分かるだろ?

さぁ痺れてる間にダウンを取ってくれ
すかさず俺が、頭を掴んでウィルスをぶち込む
ゼロ距離なら防ぎようもないだろ

死は救済だっけ?ならお前を救ってやろう
うつ伏せに倒し、頭を踏みつけて海水に突っ込ませる
良かったじゃねぇか
お前みたいな無知で無駄で無価値なカスが、これで救われるんだろ?



 後ろを見る。
 而してキョトンと目を丸くした野火と視線を結ぶと、交睫を揃えて数回、その後に再び正対して両掌を上に向け、肩を竦めて見せる。
「――“全て間違ってる”? 鏡に向かって言ってんのか?」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は誰に云っているのかと片眉を持ち上げると、鋼鐵の手を飜然(ヒラリ)と振って溜息する。
「演技の練習ならもうちょっと上手くやれよ、つまらねぇ」
 失望の聲に隔絶を置く彼に対し、“キャソックを着た悪魔”は微笑を湛えた儘――。
 此度は坊津を侵略した猟書家『ブラザー・アポストロス』は、ペルグリーナ(上衣)を翻して侵略蔵書を掲げると、港の人々を洗脳した優艶のバリトンを滑らせた。
『子よ、貴方は随分と役者のようですが、その傲慢こそ今に災禍と還りましょう』
 愚者よ、報いを受けよ――!
 如何なる敵意をも應報する侵略蔵書を構えたなら、アポストロスは慥かに絶望の福音を與えられたろうが、其も「表紙」で受け止めたらの話。
「よし、ツーマンセルで行くぞ」
「應ッに御座んス!!」
 事前に示し合わせた通り、今が頃合いかと射線上に並んだ二人は、先ずはヴィクティムが右腕のサイバーデッキ『ヴォイド・チャリオット』よりクロスボウを展開し、足元にボルトを撃ち込む。
「むむっ、迸発(ほとばし)る紫電が滿汐に吸い込まれていくで御座んス!!」
「ああ、海水はよく電気を通すんだぜ。どうなるかなんて、分かるだろ?」
 スタン・ボルト――ッ!!
 会敵時に冗長な話に付き合って遣ったのは演技に非ず、満潮の頃合いを見計らっていた策士は、アポストロスに痛烈な電気ショックを與えると、瑠璃と煌めく烱瞳を投げる。
「さぁ、クソ神父が痺れてる間にダウンを取ってくれ」
 時を止めた相手なら野火でも相手は敵う。
 野火は漁網を投げ込むや絡げ取り、怪力いっぱい引き絞った「獲物」をヴィクティムに差し出すと、狡猾なバディは好機を逸する事なく頭部を摑んで、零距離でウイルスを――Deviant Code『Weakness』(クツウニオボレテシニヤガレ)をブチ込んだッ!!
「――ええと、“死は救済”だっけ? ならお前を救ってやろう」
『ッ、クッッ……アァァ嗚呼……ッッ――!!』
 猛毒、麻痺、凍結、盲目、失聴、出血の身体異常に加え、更に知能低下、攻撃力低下、防御力低下、機動力低下が追い撃ちを掛ける地獄。
 何も見えず、何も聴こえず。鈍くなる身体と、思考――。
 命が徐々に蕩ける恐怖に狂ったアポストロスは、視力も三半規管も鹵掠(うば)われた故に、我が身がうつ伏せに倒されるのも理解ったか判然らない。
 ヴィクティムは真の愚者となった男の頭を踏みつけると、慈悲の聲を降らせ、
「――ああ、良かったじゃねぇか。お前みたいな無知で無駄で無価値なカスが、漸ッと、救われるんだろ?」
 云うや、冷たい海水に突っ込ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
死とは救いではない。報いよ。
細く長くであれ、太く短くであれ。その生を燃やし尽くした先にこそ在るべきものであろう。

引き続き、野火へ此度の戦に関し助言を受け作戦を構築。
その上で、再度黄昏大隊・蹂躙巨艦を発動。降下させた兵は浜を包囲するよう展開。
敵のガレオン船から展開する部隊と、指揮官たるアポストロス。これらを浜から出さぬよう、戦線維持と進攻牽制を旨とし命を下す。
艦からはアポストロス目掛け【砲撃】。

余はヤークト・ドラッヘに【騎乗】し【空中戦】にて飛翔、頭上から搭載武装の【制圧射撃】【砲撃】【誘導弾】を撃ち込むとしよう。
広大とは言えぬ浜にそれ程の兵数、自由に動けまい。
満潮を以て総攻撃を開始する。



 月光の彩を湛える麗瞳は、『エレクトロニシェアウゲ』――知覚した情報を解析するに一切の感情を揺り起こさぬ義眼故に、虚欺と野心に塗り込められた真の姿が視えよう。
「――貴様はキャソックを着た悪魔だ」
 鴇色の佳脣より滑り出る金絲雀の聲。
 佳聲の主はギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)。
 聡き隻眼は慎ましき黒衣に隠れる邪を暴くと、男の緋瞳を炯々たる燿いに射る。
「死とは救いではない。報いよ」
『――報いとは?』
「細く長くであれ、太く短くであれ。その生を燃やし尽した先にこそ在るべきものだ」
『……成る程、素晴らしい。其が全て間違っていると、我が同胞がお教えしましょう』
 慈愛に満ちた微咲(えみ)を湛えた儘、腕を上げてペルグリーナ(上衣)を翻す。
 而して坊津の海にまたもガレオン船を召喚した猟書家『ブラザー・アポストロス』は、此度は聖戰士の幽霊に火縄銃を持たせ、その照準をギージスレーヴに集めさせた。
 無数の銃口を突き付けられた佳人は然し一縷と怯まず。
 少女は戰士らが銃爪を引くより先、宙空に停留する【黄昏大隊・蹂躙巨艦】(アーベントロート・ゴットリヒター)より武装兵士を降下させると、浜を包囲するよう展開した。
「降下兵団、領域に囲繞せし敵勢力の進攻を牽制せよ!」
 少女の雄壮たるソプラノに飜る戰槍旗『アーベントロート・アウストロッテナー』が、巨艦と総勢410名の武装兵士をひとつの生き物の如く操ろう。
 目標は、敵船より兵装を展開する部隊と、指揮官たるアポストロス。
 これらを如何なる場所にも進攻及び退避させてはならぬ。
「――然う、如何な場所にもだ!!」
 命令を澄み渡らせるギージスレーヴが跨るは重機甲戰闘車『ヤークト・ドラッヘ』――全砲開門した戰艦が一斉発射する光条火彈を縫いながら、颯爽と蒼穹を飛翔した鐵騎は、自らも連装電磁砲や速射機銃、誘導ミサイルを惜しみなく撃ち、海上勢力を蹂躙した!
「広大とは言えぬ浜にそれ程の兵数、自由に動けまい」
『ッ、ッッ……空から攻められては、我等に打つ手は……!!』
 否、ギージスレーヴは制空を獲っただけでは無い。
 坊津の地勢に詳しい野火に助言を得て戰術を構築した彼女は、満潮を頃合として総攻撃を開始し、三次元的轟砲彈幕を以て敵を圧倒したッ!
「果して余は“死とは報い”と云ったが、間違っているというなら正してみよ! 抵抗(あらが)ってみよ!」
 凄まじい爆風に美し銀髪を巻き上げながら、ギージスレーヴは煌々と閃爍(きらめ)く銀の瞳に聢と敵指揮官の被彈を認め、
「ブラザー・アポストロス、その生を燃やし尽した先に“解”を見せよ!」
 と、怜悧な凛々しさと堂々たる威風に組み敷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と共闘。
…へぇー。海に落とすのは面白い嫌がらせだねぃ~。
満面の笑みを向けて野火にーちゃんの耳打ちに頷くよ。

思いっきり強化した【錠前】で海に蹴り落とそう!
何度海に落ちても足りないだろうからねぇ~?
鎧防御無視と破魔に重量攻撃を脚に載せた限界突破。
そうした上で更に封印を解き放って蹴撃だ!

墨ねーと野火にーと連携波状攻撃で…突き落す!
連携の順番にもよるけど…なるべく僕が最後になる。
海上への落とし方は連携の仕方で変えよーと思うよ。
真上から踵落し気味にするのもいいし。
お臍の辺りを思い切り蹴って地平線の彼方へ…でも。
海に落ちることは考えない。
もし落ちるよーでも墨ねーがフォローしてくれる。


浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と共闘。
野火さんの作戦(耳打ち)にこくこく頷きます。

三人で連携し僧侶さんを斬り海へ落とします。
限界突破と多重詠唱を籠め底上げした【伏雷】。
前回同様に継戦能力で速度と威力を維持します。
あ。今回使用する愛刀は…『国綱』です。

救済とは…。
その人や状況や環境などに応じて行うもので。
それに適した幾つも方法や手順があるはずだ。
ましてや死を救済に選ぶのは最終手段だろう?
…と私の友人は。ダンピールの友人はいいそうです。

それはともかく連携は他のお二人に合わせます。
ふふふ…v嫌がらせをするのは初めてかもです。
…もう。この季節の海はとても冷たい…のに…。
ロベルタ…さんは…いつも無茶を…。



 野火は本をビショビショに、男をズブ濡れにしてやりたいと云った。
 而して猟兵ならば、彼の義憤を叶えてやる事が出来る。
「あの……それなら……海へ……落とす……というのは……どう、ですか……?」
 波を被せるだけでなく、海に沈める。
 蚊の鳴くような小さな聲は可憐ながら、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は随分と大胆なお仕置きを思い付く。
「……へぇー。それは面白い嫌がらせだねぃ~」
 これを聽いたロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は、パッと花顔を綻ばせるや、次の瞬間にはわるいかおになって墨をつんつん、
「墨ねーもワルよの~」
 と、輕やかな金絲雀の聲に揶揄う。
「……そ、そんな……悪代官……みたいな……」
「お代官さまにはかないませぬ~♪」
 愛らしい二輪の花の戯れに瞳を細めた野火は、己や坊津の民に代わってやっつけてくれるという彼女達に希望の光を見出し、周囲の地勢と満潮の頃合を暗々裏に教えた。
(「直に滿汐で海岸線が近くなるから、その時を狙うで御座んスよ」)
(「……はい……反撃を……許さず……三人、で……波状攻撃……」)
(「墨ねーと野火にーが繋いで、最後に僕がズドン! だじょー♪」)
 墨は真剣にこくこく、ロベルタは莞爾と咲んでヒソヒソ。
 而して策戰を共有した三人は、突き合わせていた鼻梁を邪へ――キャソックを着た悪魔こと猟書家『ブラザー・アポストロス』に揃え、きりりと凛然を萌すのだった。

  †

「あ。……今回は……そう、ですね……『国綱』が……いいかも……しれません……」
 墨が此度抜くは、叔父より譲り受けし二尺二寸九分の大刀『粟田口国綱』。
 天然木黒呂塗の鞘より出でる乱れ刃文は玲瓏と、神氣滴る刀光を暴くや紫電を纏って、己を握る墨ごと凄まじい神威に燿わせていく。
 鴇色に艶めく花脣は、畏み畏み、雷神の名を囁(つつや)いて、
「八雷の名の元に……斬ります……!」
 電光石火、地擦り一閃【伏雷】――ッ!!
 鼻緒を踏むや跫を置き去りに疾駆した墨は、残像すら連れぬ絶影の機動で水際を征き、霹靂を迸発(ほとばし)る刃を振り被る。
『――死の救済に抵抗(あらが)うとは愚かな。なれば我が兄弟よ、救いを知らぬ子らを鐵鉛に貫き、その血を骸の海に潜らせ、我等と同じ真の姿に迎え給え』
 来たれ我らが同胞よ――!!
 須臾、アポストロスは腕を天に掲げてペルグリーナ(上衣)を翻すや、坊津の海に再びガレオン船を召喚し、聖戰士の霊達が構える火縄銃を一斉に撃たせる。
『撃(て)――ッ!!』
 全ての銃口を墨へと集めた指揮官が鋭利く號すが、墨は止まらない。
 佳人は雪白の肌膚一枚に銃彈を掠めながら、搖れる前髪の奥より蘇芳色の麗瞳を眞直ぐアポストロスに注いでおり、繋いだ殺気を手繰るように――白光の刃を振り下したッ!
『ず、ァア……――ッッ!!』
 斬撃は烈々と、聲は變わらず楚々として、
「救済とは……」

 ――その人や状況や環境などに応じて行うもので。
   それに適した幾つも方法や手順があるはずだ。
   ましてや死を救済に選ぶのは最終手段だろう?

「……と、私の友人は……ダンピールの……友人は……いいそう、です……」
「うん♪ いいそう、いいそう! 雰囲気ちょっと似てたじょ♪」
 吃々と竊笑するロベルタに視線が向く處、其は野火が許さない。
 彼は力いっぱい漁網を投げると、宙で大きく広がった網がアポストロスに覆い被さって痩躯を絡め取り、侵略蔵書の表紙も捲れぬほど踏縛(ふんじば)った!
『クッ……』
「ろべるた殿!! 今に御座んス!!」
「りょーかーい♪」
 而して攻撃を継ぐはロベルタ。
 少女は野火がハンマー投げよろしくアポストロスを網ごと投げ飛ばすに併せて跳躍し、【錠前】(セッラトゥーラ)――己が限界を遙かに超越した蹴撃を放ッた!!
「Schiaccia e apri……思いっきり強化したカカト落としだじょー♪」
『ッ、ッッァァアア嗚呼嗚呼!!!』
 其は鐵槌が墜下する程の、彗星が落ちる程の踵落とし!
 輕妙に宙返りした花車から繰り出た蹴撃は強く剛く、海へと投げ出されたアポストロスを垂直に叩き落し、而してザブンと波に揉まれた男は、網に絡まれて為す術も無い。
『ごぶごぶごぶ……!! ……ごぶごぶごぶごぶごぶごぶ!!!』
 七顛八倒(じたばた)しながら海に沈む漆黒の邪には、野火が拳を突き上げて、
「してやったり!! すみ殿、ろべるた殿、上手くいったに御座んスな!!」
「ふふふ……。……嫌がらせを……する……のは……初めて……かも、です……」
「やったじょー! あー……――落ちるよー」
「ろべるた殿!?」
 喝采(やんや)と喜ぶ間も無い。
 アポストロスを海面に叩き落したロベルタが、重力に從って墜下すれば、墨が咄嗟に【伏雷】を発動して彼女を抱き留める。
「……もう。この季節の、海は……とても……冷たい……のに……」
「あっ、墨ねー♪」
「ロベルタ……さんは……いつも……無茶を……」
「えへへ、助けてくれると思ってたじょ♪」
 ふうわり抱えられて冷たい海を逃れたロベルタは、墨をぎゅっと抱き返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
アポストロスよ、死は穢れよ……死は全てを奪う。
悲哀や辛苦だけでない。それを乗り越えた先にある
歓喜をも奪うのだ……
故に死を易々と語る其方を『祓おう』。
■闘
『心切』に破魔の力を与え、戦闘に入る。

問いかけには一切耳を傾けず、攻撃から逃れつつ接近を図る。
獣の動きを【野生の勘】で予測しつつ、仕掛けてくる瞬間に
合わせて【残像】を見せつけ回避を狙う。
それが難しければ、【武器受け】するように刀を振るう。

敵との距離を縮められたら好機……懐まで一気に駆け抜け、
霊力を最大限に込めた【夜見・改】を放ち、その穢れた魂を
【浄化】して進ぜよう。

如何なる者であろうとも、救える魂は救ってみせるさ……

※アドリブ歓迎・不採用可



 虚欺と野心を塗り込めたキャソックを着る猟書家『ブラザー・アポストロス』に対し、神主の装束で対峙した愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が纏う白は眩しく輝かしい。
 瘴氣の晴れた空の下、椋実色の瞳を怜悧に犀利に絞った彼は、佳脣を滑る言を淡々と、決して揺るがぬ音吐に紡いだ。
「アポストロスよ、死は穢れよ……死は全てを奪う」
 其は社に伝わる教えでなく、多くの死を視てきた清綱自身から出る言葉。
 今も町に死を待つ無辜の命があると思えば、語氣は弱まる筈も無く、
「悲哀や辛苦だけでない。それを乗り越えた先にある歓喜をも奪うのだ……」
 自ずと硬質の指は、新たなる刀『心切』へ――。
 すらりと抜かれた一刃は破魔の霊力を注がれて炯々と光を帯びると、鋭利(するど)い鋩をアポストロスへと向けた。
「故に、死を易々と語る其方を『祓おう』――」
『祓う……其が侍の國の救済ですかな』
 慈愛に満ちた微笑に隔絶を置いた男が、瞬刻、侵略蔵書を捲る。
 然れば披見(ひら)かれた頁に描かれる黒獅子が、四つ脚を蹴って躍り出て、主が問いを投げた相手を爪牙に裂かんと飛び掛かる。
 然し、易く答えを與える清綱では無し。
 而て、簡単に餌になる男でも無かろう。
「獣には、獣――」
 彼は大古の叡智を求めるキマイラ一族の出なれば、精悍の躯に宿る野生の勘も鋭敏で、迫り来る爪を肌膚一枚に躱し、或いは残像に牙を代わらせ、目標と決めたアポストロスに離されぬよう前に、前に――距離を詰めた。
『ギャゥゥウウウッッッ!!』
「この獣が其方の野心の顕れなら、尚の事」
 執拗に貪婪に襲い来る強靭な頤には、鞘を噛ませて。
 而して湖水の如く靜かな流盻に別れた清綱は、遂に肉薄したアポストロスを睨めると、【夜見・改】――己が霊力を惜しみなく注いで“非物質化した”心切を振り抜いた!
「秘伝……夜見」
 其は慈悲の奥義【霊剣】の一。
 刹那に閃く一撃は、重厚な鎧を輕々と貫き、穢れた魂を浄い淸める――。
『――ッッ!!』
 幾丈の大瀑布と叩き付けられた斬撃は、アポストロスの胴を剔抉るように喰い込んで、その痩躯を大きく吹き飛ばすや、眞白の泡沫を轉がす汀に叩き付けた!!
 而してザブンと淸冽の波を被った男を、清綱は曇り無き瞳に組み敷いて、
「如何なる者であろうとも、救える魂は救ってみせるさ……」
 と、凪の如きハイ・バリトンを巽風に攫わせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
“救済”ですか……まだまだお子様ですな?神父様。
そんな言葉を口にするのは、“塵”だけでございますぞ。
折角です。この地獄の鬼めが手本をお見せ致しましょう。
■闘
濡姫、野火郎様、可能な限り遠くへ走りなさい。
離れて貰えたらアポストロスの眼前で【嗤う山姫】の如く
不敵な笑みを浮かべ、異様な【殺気】を放ち怯ませます。

気配故、身構えられられたら真似されるかもしれません。
【空中浮遊】しながらすっと【ダッシュ】し、異様な眼差しで
急接近し【恐怖を与える】と同時に猟腕を【グラップル】。
【捕食】するかの如く喉笛に噛み付き攻撃を仕掛けます。

塵は力づくで払うもの。簡単でしょう?

※アドリブ歓迎・UCに巻き込まないようソロ希望



 神力を失ったことを契機(きっかけ)に閻魔王へ下り、地獄の獄卒となった荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は、これまで多くの“塵”を討ち壊してきた。
 中には目の前の男のように、慎み深い黒衣に醜い野心を隠した者も居たろう。
 蛟鬼は死の救済を説く漆黒の邪――猟書家『ブラザー・アポストロス』の福音を吃々とした竊笑に噛み砕くと、浅黄色の笠からチラと烱眼を覗かせた。
「成る程、“救済”ですか……まだまだお子様ですな? 神父様」
 一笑に付す、とは正にこの事。
 彼は薄く開いた佳脣に少うし皓齒を見せると、射干玉の黒彩に映した男に瞳を細めた。
「そんな言葉を口にするのは、“塵”だけでございますぞ」
『塵……?』
 其は世を蝕むもの。“破滅”を齎すちっぽけなもの。
 善悪を問わず、多くの“塵”を始末してきた蛟鬼は、聞き慣れぬ語に鸚鵡返しをした男に正対すると、見えざる闘氣を澎湃と横溢(あふ)れさせた。
「折角です。この地獄の鬼めが手本をお見せ致しましょう」
 時に眼路の脇にあった濡姫と野火は町へと避難した。
『さぁ野火郎様、お早く。若が本気を出します』
「うむ、可能な限り遠くへ……其が荒覇殿の一番の助けになるで御座んス!」
 蒼蛇を抱いてスタコラ走った野火も一應は修行を積んだ身なれば、感覚を研ぎ澄ませた瞬間に視える「圧」――凄まじき威に怖気立ったろう。
 而して蛟鬼を正面に据えたアポストロスも、肌膚にぞわりと触れる気配を感じるが――果して“キャソックを着た悪魔”は柔和な笑みを保ち続けられようか。
「さぁ、篤と視るが宜しい」
 端整の顔に湛えるは、【嗤う山姫】の如き不敵な笑み――。
 アポストロスは識るまいか、山姫は厖大な頁数に記述される『妖怪絵巻』にも描かれた妖怪で、美しき容姿を持ち、妖力で人を死に至らしめるという伝承がある。
『ッ、ッッ……可怪しい、身の竦むような……これは、殺氣……!?』
「扨て、真似できるかどうか」
 殺氣も嗤笑も、物理的なものでは無い為、侵略蔵書の表紙で受け止める事は難しい。
 其に加えて、蛟鬼と結ばれた射線を本で遮ろうにも、空中を素早く移動する彼を捉えるのは至極困難で、逆に地上の一点に据わる己は容易く捕捉されるのが口惜しかろう。
 刹那、蛟鬼は一氣に降下し、急接近するや凍えるようなバリトンを置いて、
「――“塵”は力づくで払うもの。簡単でしょう?」
『ッ……ッッ……――!!』
 怖ろしくて聲が出ないのでは無い。
 喉笛(ふえ)を切られたのだ。
 蛟鬼は膂力いっぱいアポストロスの両腕を摑むと、宛ら山姫が血肉を喰らう如く喉笛に噛み付き、ひゅうと言う音と共に夥多しい血潮を噴かせていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
異郷の坊津は、南蛮の宣教師が度々伝来したと伝わる地
これもまた奇縁か


希死念慮の伝道者

嘗ての侍国。其れ即ち数多の『もののふ』達が血で血を贖う末法の乱世なれど
今を生きる無辜の民に一切の因果無し

安寧の成り立ちを忘れてはならず
しかして君臣豊楽・王道楽土を後世の子々孫々、民草達の末代まで繋げていくために
夷敵討つべし!


天壌無窮即是天下布武を使用し
第六天魔王『織田信長』信玄装を召喚

風林火山【渦巻く炎の刀】を構え
『悔悟せよ、汝罪深き者』を武器受け+ジャストガードで迎撃
重量攻撃+焼却で【野心の獣】を切り伏せ、波間に炸裂した刃の蒸気爆発を目眩ましに

限界突破した怪力のグラップルを、野火と共にアポストロスへ叩き込む



 猟書家『ブラザー・アポストロス』を前にして、野火が奥齒に瞋恚を嚙み締めたなら、もう一人の破戒僧たる戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は固く結んだ佳脣を解く。
「――豈圖らんや恰(あだか)も天の為せるが如き奇縁」
 彼は此処に良く似た異郷の坊津を識っている。
 最南の海門(みなと)には南蛮の宣教師が度々渡来したと伝え聞くが、此度、サムライエンパイアに來たる希死念慮の伝道者は、虚欺と野心に溢れて禍々しい。
 ブロンズの髪を梳る潮風に嗟嘆を混ぜた蔵乃祐は、次いで滑る言を凛然と、
「嘗ての侍國、其れ即ち五濁惡世。数多の『もののふ』達が血で血を贖う末法の世を経て日は浅くも、現世(いま)を生きる無辜の民に一切の因果無し」
 と、嚴めしくも慈悲深く音吐を紡ぐ。
 然しこれを聽いたキャソックの男は、物柔かに頭(かぶり)を振った。
『……素晴らしい、御坊は全て間違っておられる』
 末法の世、つまり終末はこれより來るもの。
 人が生まれながらに持つ「原罪」は、骸の海を潜らずしては浄われぬ――。
 猩々緋の麗瞳は慈しみの彩を湛えながら、穩やかなバリトンに言を継いだ。
『子よ、あなたこそ求道者なら悔悟すべきです』
 目下、ペルグリーナ(上衣)を翻して侵略蔵書を掲げたアポストロスは、書に描かれる野心の獣を暴き出し――猛り狂う四つ脚の黒獅子を使嗾(けしか)けた!
 貪婪な爪牙に蔵乃祐は怯むか。
 否。断じて否。
 拇指球を踏み込め決然と立ち塞(はだ)かった彼は、幾丈の瀑布の如く闘氣を迸ると、【天壌無窮即是天下布武】――他化自在天が化身たる第六天魔王を降臨させた!
『!! こ、れは……ッッ』
 クルセイダーの倒幕に与する者なら、同じ野望を掲げて潰えた者の名は知っていよう。
 其こそ第六天魔王『織田信長』――甲斐の虎・武田信玄を憑装した無双のつわものが、猛然と飛び掛かる黒獅子に鞘を嚙ませるや、鞘より抜きたる刀に烈々と渦巻く焔を纏い、振り被るや一刀両断ッ、燃え滾る燄に血華を混ぜた!
 而して繁噴く血が斑を落とすより先、血霧と變える熱量だ。
 力いっぱい叩き付けられた炎劔は、波間に蒸気を噴かせ、朦々と周囲を烟らせる。
 ぶわりと眼路を覆う蒸気に一切の影を隠されたアポストロスは、刹那、眞白の世界より顕現(あらわ)れた精悍の腕を躱せる筈もなく、強靭な膂力に捕らえられる。
 熱氣に次いで迫った聲はヒヤリと肌膚に触れて――、
「……安寧の成り立ちを忘る可からず。しかして君臣豊楽・王道楽土を後世の子々孫々、民草達の末代まで繋げん」
『ッ、ッッ――!!』
 豁然と開けた視界に映る影は二つ。
 蔵乃祐と野火、阿吽に対を成した二人の破戒僧は揃って剛拳を振り被り、
「夷敵討つべし!」
「攘災に御座んス!!」
 双拳閃(だぶるぱんち)――ッ!
 瞬刻、救世の一撃を喰らったアポストロスは大きく吹き飛び、満潮を迎えた坊津の海にザブンと沈むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
世迷言は其処迄だ
如何な目論見であろうが結末は同じ
成就など成らぬと知るがいい

……そうか、では其れを利用させて貰うとしよう
材料に事欠かずに済むのは何よりの利点
御坊は少しばかり下がられるが良かろう――些か『冷える』ぞ

銃口に視線、位置取りと、向きを読むには易い
起点を計り先読みし、衝撃波で以って攻撃は先制し潰す
――殲遍萬猟、水氣よ凝れ
満潮へと至る潮を元に氷刃へと変え、怪力乗せた斬撃を叩き込んで呉れる
逃げる事も躱す事もさせん
赦されているのは骸の海へと沈む事だけだ

救済を謳った処で捻じ曲がった性根は隠せはしない
過去の残滓が腐らせる未来なぞ決して訪れさせはせん
此の刃は其の為に在り、幾度でも其の首を刎ねてくれる



『げほっ、げほっ……子らよ、まだ死に抵抗(あらが)うのですか……』
 ズブ濡れになった男が、坊津の海より這い出てくる。
 身に纏うキャソックは海水と血を含んで重たかろうが、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は元より虚欺と野心を塗り込めた黒衣なれば、その穢れは余程浄われぬと冷視した儘。
 烱眼を射られた猟書家『ブラザー・アポストロス』は、未だ劣勢を認めず、
『子らよ、貴人方も背負う「原罪」は、骸の海を潜らねば浄われないのです。いつの日かオブリビオンとして復活を遂げた時にこそ、眞の救済が訪れるというのに……』
「噤め。世迷言は其処迄だ」
 尚も惑わそうとする言を、鋭利いバリトンがピシャリと断つ。
 多辯の悪魔に堂々正対した嵯泉は、硬質の指に『秋水』の冱刃を暴くと、隻眼に宿れる丹色の彩を煌々と燿わせた。
「――如何な目論見であろうが至る結末は同じ。未来永劫、成就は成らぬ」
 今こそ其を證左(あかし)する一刀と成ろう。
 嵯泉が神霊の氣の淋漓と滴る鋩をアポストロスに向ける傍ら、野火は密々(コソコソ)と耳打ちして、
(「鷲生殿、今が滿汐に御座んス!」)
(「……そうか、では其れを利用させて貰うとしよう」)
 つと、目尻の際に流盻を注いだ烱瞳が、交睫ひとつして闘氣を滾らせる。
 丹花の脣を擦り抜けた佳聲は、先ず野火を気遣って、
「御坊は少しばかり下がられるが良かろう――些か『冷える』ぞ」
 蓋し慈悲を見せたのは、野火が下がるのを確認した其処まで。
 時は須臾――澎湃と横溢(あふ)れる威を燦爛と、琥珀の髪に黄昏色を彈いた嵯泉は、海上に召喚されたガレオン船から銃彈が届くより速く、爪先を蹴った。
「――殲遍萬猟、水氣よ凝れ」
 材料に事欠かぬは何よりの利点と、生成されるは「凍氣を帯びる氷の楔」。
 満潮へと至る潮を氷の刃に變えた嵯泉は、膂力を絞って一閃――ッ! 凄まじい劔圧に総計475本もの刃を乗せると、回避不能、防禦不可、距離不問の斬撃を叩き込んだ!!
『ッ、ぐッッ!! ぁあ嗚呼!!』
 遅延(おく)れて飛び込む銃彈は然し命中を得ない。
 火縄銃の向きと角度を読んでいた嵯泉は既に着彈点には居らず、颯爽とアポストロスの脇を駆け抜けた風が訣別を置くのみ。
「……救済を謳った処で捻じ曲がった性根は隠せはしない」
 過去の残滓が現世(いま)を腐らせるなど。
 泰平の世が潰える未来など。
 決して認める訳には往かない――。
「此の刃は其の為に在る。幾度と來るなら、幾度でも其の首を刎ねてくれる」
 而して嵯泉は言を違えぬ。
 絶禍の刃、『秋水』は慥かにアポストロスを斬馘(くびき)って、霞と消ゆガレオン船を巽風に押し流し、坊津の景色を取り戻したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月19日
宿敵 『ブラザー・アポストロス』 を撃破!


挿絵イラスト