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眠れぬ街の夢ネズミ

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #マロリー・ドラッケン #ケットシー #災魔の卵


●それは眠れぬ『物語』
 そこは、アルダワ世界の『猫の国』。ケットシー達の国のとある工房は、今日も活気に満ちていた。
「みんニャ! お仕事終了の時間ニャ!」
「お疲れ様ニャ~!」
 日もまだ高い時間、蒸気機械の工房から漏れるは明るい声。定時できっちり仕事を終えたケットシー達に、上司らしい猫の声がかかる。
「今日も早くご飯を食べて、早く寝るニャ! 健康な生活には早寝早起きなのニャ!」
「はーいニャ!」
 ぞろぞろ従業員達が出てくる出入り口の横には、ピカピカに磨き上げられた石碑がある。『眠れる恩を、ここに記す』そう刻まれた大切な石碑が。
 それにふらふらと近付く、少女の影。彼女は魔女帽子を被った頭を重たそうにゆっくり振って、元気に帰っていくケットシー達の流れに逆らうようにやってきた。
「早寝早起きなんて無理ですよ、ブラックですよ……。本は夜に読んだ方が集中できるんですから……」
「いや、それはマロちゃんの生活が不摂生なんだと思うがなぁ?」
 ぶつぶつ呟く少女に、言葉をかけたのは彼女が握る杖だ。さらにはふわりと漂う本が石碑へ近付き、ページについた口を開く。
「これがここの『恩人記念碑』だな。読んでみろよマロちゃん! ここのケットシーが早起きなのにも、どうやら『物語』があるようだぜ?」
「『物語』ですか!?」
 本――侵略蔵書の声に、少女の瞳が輝く。先程までのおどおどした様子とは打って変わって、這いつくばるように恩人記念碑へ視線を近付け、ものすごい速度で刻まれた文字を読み上げていく。

 ――石碑に刻まれた『物語』。
 この工房の工房長は、かつて蒸気機械の開発に熱中するあまり眠り方を忘れてしまいました。仕事の効率は落ち、工房全体の活気もなくなり。困っていたところに――差し伸べられた救いの手があったのです。
 彼は、眠れない工房長の傍にずっといて、優しく体を撫でてくれました。温かい飲み物をくれました。『自分がこうしているのが好きなんだ』と言って、ぎゅっと抱きしめてもくれました。
 やがて工房長は安心して眠ることができるようになり、開発も順調に。
 工房長は、そしてこの工房は、恩を決して忘れることなく、規則正しい生活を送り二度と不眠症にならないよう、この出来事を感謝の気持ちと共にここに刻みます――。

 食い入るように文字を追っていた少女が、ため息を零す。それは、感嘆。そして興奮の吐息だ。
「ああ……素敵です、猫さんの苦悩、そこへ訪れる救いっ! 私、この『物語』が欲しいっ!」
「ゲシシ、止まんねぇなマロちゃん! いいぜいいぜ、ここでその『卵』よ!」
「はいっ! 災魔の卵を使います! これで、眠れぬ猫さんの物語を、ここに再びっ……!」
 爛々と瞳を輝かせた少女が、手にした『災魔の卵』を記念碑に埋め込む。すると石碑は輝き出して、そこからポンポンと、生まれ飛び出すは災魔の群れ――。
 ふわふわ、ポンポン、ころころ転げて。
『チュウ?』
 か細く鳴く声、ぱちぱちと眠たげな瞳。
 彼女の前に無数に転がるのは、夜空色溢れるポット抱えた眠りネズミで。
「ニャー! ネズミがいっぱいニャー!」
 周囲から沸き上がるケットシーの声、我先にと舞い戻ってくる従業員達。
「……あれ?」
 少女――マロリー・ドラッケンは、猫達の想定外の反応に首を傾げるのだった。

●猫もネズミも眠れない
「ケットシーさんの街に眠りネズミさんを放つなんて! そんな……あまりにもひどくありませんか……!?」
 集まる猟兵達へ、今にも泣きそうな瞳を向けて。視得た事件を語るアリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)は、これは猟書家の一人が起こす事件なのだと続けた。
「幹部『マロリー・ドラッケン』。彼女はどうやら、猫の国にある『恩人記念碑』に目を付けたようです。ケットシーさんは一度受けた恩を決して忘れず大切にする種族。そのために、恩を記す記念碑がこの国の至る所にあるのですが……その内の一つが、彼女の手により災魔化してしまいます」
 現れた災魔の群れは、記念碑に記された恩とは逆のことを行うらしい。今回の記念碑は、不眠症のケットシーを眠れるよう導いた恩人のことが記されているので――。
「つまり、ケットシーさん達が眠れないよう、睡眠を妨害する災魔が現れました」
 そこで一つ、大きな大きなため息。うぅ、と声を漏らしたアリアは、今回はちょっと災魔の皆様もお可哀そうなんですと紡いで。
「生み出された災魔は、眠りネズミさんと言いまして……。いつも眠そうにしている、もふもふっとした大人しいネズミさんで、とってもお可愛らしいんです……!」
 言葉に熱が篭もっているように感じられるのは、恐らく猟兵達の気のせいではない。この眠りネズミは、本来ならば然程害をなすような存在ではない。せいぜい、大量発生してそのもふもふの質量が弊害となるくらいだ。大切に抱えるポットの中身である『夜糖蜜』は飲むと望む夢が見られると言われているし、毛や羽などは全て良い眠りをもたらす素材となる。――そう、『眠りを妨害する』とは、対極にある存在なのだ。
「そして……ええ、ネズミさん、なんです。ケットシーさんの街に、ネズミさんの群れ、ですよ……?」
 アリアが語る、現場の状況はこうだ。
 生み出された眠りネズミ達は、『ケットシー達を眠らせない』ために行動している。うとうとするケットシーがいれば、背後から忍び寄り尻尾をかぷり噛んで起こしたり。あちこちの物を落っことして、大きな音を立てたり。
 そうして眠れないケットシー達は、つい猫の本能的なもので『眠りネズミ達を狙っている』。眠れないストレスの中、ちょろちょろするネズミがいれば追いかけたくなる――全員ではないが、そんなケットシーも中にはいるわけで。
 この二つが、重なった結果。
「ケットシーさんも、眠りネズミさんも、どうやらもう丸二日ほど寝ていないようなんです……!」
 眠らせない側も、眠れなくされている側も。互いに一睡もできず、ゆっくりゆっくり衰弱する。こんな悲劇があっていいものですか、そう語るアリアは猟兵達へ懇願の瞳を向けた。
「お願いです、ケットシーさんも眠りネズミさんも助けるために……どうか猫の国へ向かってください!」
 眠りネズミを撃破できれば、マロリー・ドラッケンも姿を現すだろう。記念碑を元に戻すためには彼女も倒す必要があると、告げた白花の少女は手の中のグリモアを起動する。
「ああ、それから。記念碑から生まれる災魔は、そこに記された恩人と同じものを好むようです。眠りネズミさんの場合、『抱き締めたり、抱き締められたり』が好きだそうなので――」
 ぎゅぎゅっと、もふもふを堪能できる特典付き。そう語るアリアはそれはそれは羨ましそうな表情を浮かべながら、猟兵達を送り出すのだった。


真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●お願い
 プレイングの受付につきましては、マスターページの「お知らせ」ならびにTwitterにて都度ご案内します。
 期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。

●シナリオの流れ
 第1章:集団戦(眠りネズミ)
 第2章:ボス戦(マロリー・ドラッケン)
 当シナリオは2章構成です。

●第1章について
 猫の国の街中、工房前の広場での戦闘です。広さは十分にあり、戦闘に支障となるものはありません。
 眠りネズミさんをもふもふしたり、戦ったりします。
 『抱き締めたり抱き締められたり』が好きという特性があるため、活用すると弱体化します。具体的には眠気に負けて寝落ちます。
 会話は不可能、少しの意思疎通なら可能ですが、説得はできません。
 弱い敵なのでバッタバッタ倒していくというより、モフモフを堪能したり倒すことに躊躇したりと楽しんでいただいた方が採用率が上がります。
 現地ケットシーと異なり、猟兵に対しては種族問わず警戒しません。
 寝不足のケットシーも周囲にいますが、戦闘の邪魔にならないよううまく隠れてくれます。記念碑を建てた工房長のケットシーもいますが、オープニング以上の情報は話してくれません。
 また、眠りネズミからとれる素材は安眠のために使えるため、事件後ケットシーが使えるよう気を付けて戦うと喜ばれるかもしれません。(リプレイ中の描写はありません)

●第2章について
 眠りネズミを倒すと、同じ戦場にマロリー・ドラッケンが現れます。
 詳細は、第2章公開時の冒頭文にてお伝えします。純戦です。
 マロリー・ドラッケンとは会話可能ですが、情報を聞き出すことはできません。

●その他
 ・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『眠りネズミ』

POW   :    おやすみなさい、よいゆめを
全身を【ねむねむふわふわおやすみモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    みんないっしょに、ねむりましょ
【ふわふわのしっぽ】から【ふんわりとつつみこむもふもふのいちげき】を放ち、【今すぐこの場で眠りたい気持ち】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    きらきらひかる、こうもりさん
対象のユーベルコードに対し【吐息からキラキラ光る小さなコウモリたち】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
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●眠りを運ぶ『物語』
 猟兵達が降り立った『猫の国』は、すでに大変な騒ぎになっていた。
「ニャー!? 尻尾を噛まれたニャ! 痛いニャ!」
「こっちにネズミ発見ニャ! 捕まえてやるニャ!」
『ちゅちゅう!?』
 あっちでバタバタ、こっちでバタバタ。
 かと思えば至る所に寝落ちしそうな猫とネズミがいて、それらがまた起こされて騒ぎを起こして――。
 眠気がピークの、ケットシーと眠りネズミ。
 彼らの追って追われての大混乱は、客観的に見れば微笑ましいもの、なのだけれど――ゆっくりゆっくり破滅へ向かうものなのも、猟兵達にはわかる。
 この混乱を解決するためには、眠りネズミを何とかする必要がある。石碑に記された恩人と同じように、抱き締め癒して眠らせれば、きっと容易に倒せるだろう。
 そう、これは再びこの地に眠りを運ぶための『物語』。だから、思い切りもふもふしたって誰にも咎められないのだ。 
真宮・響
【真宮家】で参加

働き者のケットシーに眠りネズミを放り込むと。猫にネズミとは痛いところを突く。よく眠るのは覚えがあるが、このままにはしておけないね。

(高速で眠りねずみの方へダッシュしていく奏を見て苦笑しつつ)眠りネズミなのに眠れないのは可哀想だ。二匹程眠りネズミを抱っこして撫でてあげよう。子供達が眠れない時もこうしてやったけ。【歌唱】で子守唄を歌ってやるかね。何回か眠りネズミには会ったが、相変わらず気の抜ける子だねえ・・・(眠りに落ちたネズミに微笑みつつ)・・・倒すのには胸が痛くなるが、これも仕事だ。炎の拳でポコッと殴って骸の海に送ろうか。


真宮・奏
【真宮家】で参加

眠れないのは物凄く辛いです・・・ケットシーさんも眠りネズミさんも可哀想です・・・この状況を仕組んだ猟書家は後でボコるとして、まずはこの惨状をなんとかしな・・・(眠りネズミの群れに飛び込んで行く)

あ~・・・もふもふの眠りネズミは堪らないです~幸せ。(次々に眠りネズミを抱っこしてギュー!!)このまま抱っこしていたいですが、このネズミさんは災魔なんですよね・・・目を瞑って思いっきり信念の拳でポコッ。ああ、心苦しいです・・・ネズミさん、貴方達を利用した猟書家は必ず倒しますからね!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

(目の前の惨状に溜息)ケットシーに眠りネズミを当てますか・・・黒幕は相当ひねくれ者と見ました。眠りは重要なものです。このままではケットシーも眠りネズミも余りにも哀れです。何とかしましょうか。

眠りネズミには何度か会いましたが、相変わらずふわふわですね。一匹抱き上げて撫でながら抱きしめてもふもふを満喫。おや、寝てしまいましたね。まあ、二日間寝ていないそうですし。・・・この寝顔を見ると倒すのは可哀想な気がしますが、仕事ですし。一思いに氷晶の槍で貫きます。この状況を起した黒幕は必ず倒しますので、せめて、安らかに。




 眠れぬ猫達、ネズミ達。彼らが駆け回る中へやってきて、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は眉を寄せた。
「働き者のケットシーに眠りネズミを放り込むと。猫にネズミとは痛いところを突く」
 感心したように言葉漏らせば、その後ろをついて歩いていた神城・瞬(清光の月・f06558)はため息をついて。
「ケットシーに眠りネズミを当てますか……黒幕は相当ひねくれ者と見ました」
 オッドアイの瞳で、周囲をゆっくりと観察する。黒幕――マロリー・ドラッケンの姿はないけれど、恐らくどこかからこの惨状を眺めているのだろう。
 瞬の隣で、同じく周囲に視線巡らせるのは真宮・奏(絢爛の星・f03210)だ。しかし、その様子は義兄とは異なる。胸の前で組んだ手にはきゅっと力が篭もり、紫の瞳からは今にも涙が零れ落ちそう。
「眠れないのは物凄く辛いです……ケットシーさんも眠りネズミさんも可哀想です……」
 ああ、あそこのケットシーはやっと眠れそう……なのにほら、眠りネズミが狙っている。けれどその眠りネズミも、重たい瞼を懸命に持ち上げながら健気にも自分の仕事を全うしようとしているのだ。
 純粋で真っ直ぐな少女にとって、この光景は胸が痛いものだった。その想いを汲み取って、瞬はひとつ頷き奏のために道を開けた。
「眠りは重要なものです。このままではケットシーも眠りネズミも余りにも哀れです。何とかしましょうか」
 こくこくと頷きながら、奏は瞬の前へと進み出る。
「この状況を仕組んだ猟書家は後でボコるとして、まずはこの惨状をなんとかしな……」
 惨状を、解決する――そのために何をすべきか考えていた少女は、しかし目の前の光景に釘付けになった。
 ふわん。ゆったり動くは眠りネズミの尻尾。そのもふもふは思わず触りたくなってしまう魅惑のもので、引き寄せられ飛び込んでしまったのも仕方のないこと。
『ちゅー!?』
 突然現れた少女に、眠りネズミは驚きじたじた逃げようとする。けれどそれをそっと撫でて、抱き上げて、優しく優しく両腕で包み込めば、小さな生き物はうつらうつら。
『ちゅぅ……』
「あ~……もふもふの眠りネズミは堪らないです~幸せ」
 蕩けるような声を漏らして、ふかふか毛並みに顔を埋めて。奏では一体一体の感触をしっかりと堪能しながら、次々に眠りネズミを抱き締めて眠りの中へと落としていく。
 ここまで、一瞬。もふもふに目のない娘の素早い動きに苦笑して、響は後に続こうと近くの眠りネズミへ近付いた。
『ちゅう……?』
 うとうと、瞳をぱちぱち。眠気と戦うネズミは、響を前に逃げるつもりもないらしい。
「眠りネズミなのに眠れないのは可哀想だ」
 言葉を紡ぎ、そっと手を伸ばして。一体、二体とひょいと抱き上げれば、ふかふか毛並みの頭を撫でて、ゆうらりゆうらり揺らしてやる。
 懐かしい、この動き。
(「子供達が眠れない時もこうしてやったけ」)
 奏と瞬。二人を抱いて揺らしたあの頃よりは、眠りネズミの方が遥かに軽いけれど。眠れず力の入った体が少しずつ解れていくこの感覚も、確かに覚えのあるもので。
 温かな記憶に微笑みながら、響は子守唄を口ずさむ。優しく響く、澄んだ歌声。それは小さなもふもふ達の心を落ち着かせて、ゆったりとした呼吸を誘って――やがて、二体の眠りネズミは導かれるまま寝息を立て始めた。
「何回か眠りネズミには会ったが、相変わらず気の抜ける子だねえ……」
 すうすうと、規則正しく聞こえる吐息と、幸せそうな寝顔。それを眺める響もまた、綻んだ表情で笑うのだった。
 瞬もまた、己の役目を果たそうと丸まる眠りネズミに近付いていく。
『ちゅ……ちゅう……』
 気配にぴくんと顔上げて、鼻をひくひく、瞳はぱちぱち。様子を伺うもふもふネズミに微笑みそっと抱き上げれば、ふああと欠伸の零れる音。
「眠りネズミには何度か会いましたが、相変わらずふわふわですね」
 柔らかくふわふわの毛並み、生き物特有の暖かさ。その心地よさを満喫する瞬だったが、心地よいのは彼だけではないようで。
「おや、寝てしまいましたね。まあ、二日間寝ていないそうですし」
 やがてすうすう、聞こえる寝息。やっと訪れた安眠に浸るその寝顔は、とても穏やかで愛らしい、けれど――。
(「……この寝顔を見ると倒すのは可哀想な気がしますが」)
 さらりと金の髪かき上げ視線巡らせれば、響と目が合った。無言の頷き。義母も、恐らく同じ気持ちだ。
 ――これも、仕事。真宮一家は、オブリビオンを討つ猟兵なのだから。
 杖を手に取れば、先端に嵌められた紅い石が輝く。眠るネズミをそっと地に横たえ杖向ければ、凍れる力が集まって。
 射出される氷晶の槍は、動かぬ眠りネズミを貫き大地へ縫い止める。それ見た響も、ネズミを抱いた手へと力を集中させて。
 胸の中の二匹へ、炎の拳をポコッと当てる。加減した攻撃だったが、それだけで眠りネズミは掻き消え骸の海へと還っていった。
 ――そう、愛らしくても、災魔なのだ。骸の海へ還れば、きっとここより穏やかに眠れるから。
「このまま抱っこしていたいですが、このネズミさんは災魔なんですよね……」
 零れるため息は、奏のもの。わかっている、その覚悟を持ってここに来た。母も義兄も彼女のタイミングを待ってくれている――だからこそ、奏は今決断する。
 信念を、その拳に。集めた力を放つよう、けれど極力痛くないようにと、優しさ篭めて振り上げて。コツンと額に拳当てれば、掻き消える眠りネズミ。目覚めぬままの小さきものは、痛みも感じず還れただろうか。
「ああ、心苦しいです……」
 触れ合ううちに愛しさは増して、なおさら胸が痛む。けれど変わらぬ信念胸に周囲の眠りネズミをポコポコ叩く奏に、瞬も協力して凍れる槍を撃ち出していく。
「ネズミさん、貴方達を利用した猟書家は必ず倒しますからね!!」
「この状況を起した黒幕は必ず倒しますので、せめて、安らかに」
 優しさと、力と、約束を胸に。そうして眠れぬ『物語』を終わらせようと奮闘する二人の子供を見て、響は穏やかに微笑みながら次の一体を抱き上げ眠らせ拳を揮うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サーラ・ビアンコ
【またたび】

眠りネズミ……ネズミか。
追いかけたくなる気持ちははわかってしまうのじゃ。
さて、どうやって退治したものか……ぎゅっとすると大人しくなると。
ててーっと追いかけて捕まえたら試してみるのじゃ。ぎゅーっとして……ねむ……。
こ、これは危険、危険なのじゃ。だとしても抗えぬ……むにゃ。
ポットの中身も気になるのう。望む夢……今だと皆でふかふかお昼寝とかかもしれんのう。
ん?ロータスも眠いなら寝てしまえば良いのじゃ。

暫くはそのまま心地よい眠りを堪能させてもらうのじゃ。
ああ、一応退治も頑張るのじゃ。
Onda dell'ago di luce
尻尾の毛を飛ばして攻撃するのじゃ。


ロータス・プンダリーカ
【またたび】

故郷の一大事と聞いて
ほわぁ…ネズミさんがいっぱいにゃ…!
は、現地猫達と同じ反応してしまいましたにゃ

寝不足なのは大変にゃ
猫は寝る事がお仕事の一つですにゃ
ネズミ如きに屈する訳にはいかんのにゃ

…しかし見事なふわもこにゃ
ボクも毛並みには自信あるけどなかなかやるにゃ…!
ああ、サーラさんまだ寝ないで下さいにゃ!

ここは本来の使い方とは異なるけど、とUC使用
猫の癒し魔法で幻影の猫達がモフモフゴロゴロ
今日ばかりは猫族とネズミ族は和解させて貰いますにゃ
お互いのモフフワで気持ち良くて昇天する事請け合いですにゃ

……って、ボクも眠くなってきましたにゃ……
ZZZ……ボスが出てきたら必ず起きますにゃよ……




 眠たそうに瞳をぱちぱち、それでも追いかけっこを繰り返す猫とネズミ達。
 あちらにも、こちらにも。転がる同族と眠りネズミを見て、ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)は瞳を輝かせた。
「ほわぁ……ネズミさんがいっぱいにゃ……!」
 ケットシーとしては、やはりこれは魅惑的な光景なのだろう。しかし現地のケットシーと同じ反応をしていてはいけないと、思い直したロータスは自身の頬をその手の肉球でぺちぺち叩いて。
「寝不足なのは大変にゃ。猫は寝る事がお仕事の一つですにゃ。ネズミ如きに屈する訳にはいかんのにゃ」
 キリッと決意を言葉にする。その隣では、ラグドールのサーラ・ビアンコ(La fanciulla del gatto・f27059)も興味深げに眠りネズミを見つめていた。
「眠りネズミ……ネズミか。追いかけたくなる気持ちはわかってしまうのじゃ」
 ちょろちょろと、走るネズミを見つければサーラのふさふさ金尻尾がぱたりぱたり。物陰見つけて眠ろうとする背中に、彼女はそっと近付いていく。
(「さて、どうやって退治したものか……ぎゅっとすると大人しくなると」)
 ならばまずは捕まえなければ。物音立てぬ狩人の歩みで、静かに接近し、素早く跳躍。むんずと敵の尻尾を掴めば、驚いた眠りネズミが悲鳴上げる。
『ちゅちゅうー!?』
 じたじた、何とかすり抜けようとするネズミだけれどそれを逃すサーラではない。後ろの足で尻尾をふみふみ、両の前足を広げ眠りネズミを抱き締める。
「ぎゅーっとして……ねむ……」
 眠りネズミを下に、上から抱き着く体勢。それはまるで、雲の上のようにふかふかもふもふ、暖かくて気持ちいい。
「こ、これは危険、危険なのじゃ。だとしても抗えぬ……むにゃ」
『ちゅぅ……』
 うつらうつらするのは、眠りネズミも一緒。サーラは抱き締めた眠りネズミと共にその睡魔に身を委ねようとしたが――。
「ああ、サーラさんまだ寝ないで下さいにゃ!」
 ロータスの声が、彼女を引き戻す。むにゃり、寝ぼけ眼を向ければ、団長であるケットシーは別の眠りネズミを懸命に抱き締めているところで。その顔にもやはりどこか眠気ゆえの気怠さが見えて、サーラはふああと欠伸一つ。
「ん? ロータスも眠いなら寝てしまえば良いのじゃ」
「そういうわけにはいきませんにゃ」
 ロータスにとって、『猫の国』は大事な故郷。その一大事と聞けば使命感の方が勝るから、彼は事態の解決のため張り切っていた。
「……しかし見事なふわもこにゃ。ボクも毛並みには自信あるけどなかなかやるにゃ……!」
 ――零れる言葉は興奮気味に、毛並みをもふもふしているのはご愛敬。
 そんなロータス見て、サーラの方はマイペースに抱き締め眠らせたネズミのポットから夜糖蜜を拝借して一口ぺろり。
「望む夢……今だと皆でふかふかお昼寝とかかもしれんのう」
 そんなことを呟きながら、大きく伸びしてうたた寝の体勢になる。
 ふとロータスが周囲を見れば、まだまだたくさんの眠りネズミが、ケットシーが、あちこちで寝落ちそうになっている。
 ここはユーベルコードで一気に解決するのがよさそうだ――本来の使い方とは、異なるのだけれど。
 ぱっと両腕を広げたロータスは、その手に力を集めて『猫の癒し魔法』を発動する。
「みんな、元気出しますにゃ!」
 言葉と共に、ぽんぽんと現れるは幻影の猫達。それらは眠りネズミもケットシーも区別なく近付き、モフモフゴロゴロ、抱き着くことで疲弊した彼らを癒していく。
「今日ばかりは猫族とネズミ族は和解させて貰いますにゃ」
 ロータスの告げる通り、混乱していた場はユーベルコードを受けてたちまち沈黙した。幻影の猫に抱き締められた眠りネズミは皆が眠りにつき、邪魔する者がいなくなったケットシー達もうとうと――ようやっと、安らかな眠りについて。
 寝不足だった者達が皆眠った中、雨のように飛んで降るのは金色の毛針。眠りネズミだけを狙い、正確に射抜いて骸の海へと還していくのは――未だごろり寝転がる、サーラが放つユーベルコード。
「ああ、一応退治も頑張るのじゃ」
 ぱたり、ぱたりと、ゆるやかに振る尻尾から放たれるのは鋭い針。そうして全ての眠りネズミが退治されていく様を見て、安堵したロータスもここで大きく欠伸して。
「……って、ボクも眠くなってきましたにゃ……。……ボスが出てきたら必ず起きますにゃよ……」
 ころりん、現地のケットシーが眠る陽だまりに転がり一緒にすやすや。
 ――少しの後、ロータスが起きた時には傍には眠るサーラと、現地のケットシーが用意してくれたらしい毛布があったのだという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マロリー・ドラッケン』

POW   :    インテリジェンス・イービル・ワンド
【手にした「喋る杖」が勝手に魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    リアライズ・パニック
自身が【恐怖】を感じると、レベル×1体の【モンスター化した書物の登場人物】が召喚される。モンスター化した書物の登場人物は恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    ダブル・マロリー
【眼鏡を外した別人格のマロリー】の霊を召喚する。これは【勝手に放つ魔法】や【杖でのぶん殴り】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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●猟書家『マロリー・ドラッケン』
 猟兵達が眠りネズミを討伐し、ケットシー達が眠りにつく頃。奇妙な杖を手にした少女が、その場へふらふらとやってきた。
「はわわ……なんでケットシーさんがみんな寝てるんですか? 眠りネズミさんはどこへ!?」
「こりゃやばいぜマロちゃん、あそこにいる猟兵共の仕業だ!」
 バクバクと動く、杖の口。喋る杖の言葉を受けて、マロリー・ドラッケンは顔を上げ――猟兵達の姿を認めると、涙を浮かべて慌て始める。
「ふえっ!? 私の『物語』を、もう妨害しに来たんですか!? ど、どうしよう、わたし、戦うことなんにも考えて……」
「ゲシシ、安心しろってマロちゃん! こんな時こそこのインテリジェンス・イービル・ワンド様の出番だろ?」
「ケヒヒ、そういうことだ! 別人格のマロちゃんだって、とっくに準備万端だしなァ?」
「えっ! ええっ!?」
 狼狽するばかりの少女を置き去りに、盛り上がる杖と侵略蔵書達。一見すると、マロリー・ドラッケンその人自身は無害なように見えるけれど――相手は猟書家幹部なのだ、全力で戦わなければ勝利を掴み取ることはできないだろう。
 少女の同意を得るより先に、インテリジェンス・イービル・ワンドが光り輝き魔法の力を収束させていく。敵の好きにはさせられない。猟兵達もただちに態勢を整えると、猟書家の少女へ攻撃加えるために動き出すのだった。
真宮・響
【真宮家】で参加

人の迷惑も考えろこの愉快犯!!眠りネズミさんを実質苦しめていた奴に眠りネズミは一生理解出来ないだろうね。全く。まあ、興味が尖り過ぎた末とも言えるのでこれ以上被害が広がる前になんとかしようか。

無差別攻撃が厄介だねえ。とりあえず【オーラ防御】でダメージを軽減、多少の傷は構わずに【ダッシュ】で強引に敵に接近する。無差別攻撃は元を潰した方が早い!!接近出来たら【戦闘知識】で敵の隙を見つけ、【怪力】【グラップル】【体勢を崩す】で足払いを掛け、追撃で【気合い】を入れて炎の拳を入れる!!物語を知りたいなら元を歪めちゃ本末転倒だろう!!迷惑だからとっとと骸の海に還りな!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

自分の知識欲でケットシーさんと眠りネズミさんを苦しめるとは・・・興味を追求するのは人それぞれですが、多大な被害を齎したのは看過できません。貴方の物語はここで終わりです。

母さんが多少強引な戦法を取るので、カバー役は私が引き受けましょう。トリニティエンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固め、【かばう】でなるべく敵の攻撃は引き受けます。必要であれば【衝撃波】で牽制して母さんの攻撃をサポート。母さんの攻撃が当たったら【シールドバッシュ】で追い打ち!!自分勝手な理由で人に迷惑を掛けるのは許しませんよ!!骸の海で反省しなさい!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

このお嬢さん、自分の知識欲を満たす為には人がどんなに苦しもうと構わないタイプですか。どうやら自分が強大な悪事を仕出かした事か自覚がない様子。このタイプは厄介ですね。止めましょう。

まず【オーラ防御】を展開。【高速詠唱】で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を展開。更に【武器落とし】を併せた【誘導弾】で追撃し、敵の進撃を迎撃する形で氷晶の矢で攻撃。自分勝手な理由で他人に迷惑を掛けるのは許せません。この世界は貴方の物語の収蔵庫ではありませんので。退場願います!!




 インテリジェンス・イービル・ワンドが魔法の力を収束させ始めた時、最初に駆け出したのは響だった。
「人の迷惑も考えろこの愉快犯!!」
 凛とした声を響かせながら、オーラの守りを固めて。その一喝に身を竦めたマロリーは、ふるふると首を振って弱気に答える。
「そんな、愉快犯だなんて……私はただ『物語』が欲しかっただけなのに! どうして眠りネズミさんの邪魔をしたんですか!」
 非難の響き持つ声に合わせるように、杖から放たれる魔法弾。マロリーの意志とは関係なしの攻撃が無差別に周囲を襲うのを見て、響は呆れるような表情を浮かべた。
「眠りネズミを実質苦しめていた奴に、眠りネズミは一生理解出来ないだろうね。全く」
 こちらの方が、余程事態を理解できている――胸中で呟きながら身を屈めれば、彼女の前に躍り出る少女が一人。
「自分の知識欲でケットシーさんと眠りネズミさんを苦しめるとは……興味を追求するのは人それぞれですが、多大な被害を齎したのは看過できません」
 貴方の物語はここで終わりです――言葉紡ぎながら、奏は炎、水、風の魔法の力を纏って自身の防御力を引き上げる。強引な戦法を取りがちな母、カバー役は自分が引き受けようと。
 身を盾にし、受け止め切れぬ魔法弾には衝撃波放って相殺して。娘の背中を頼もしく思いながら、響は横をすり抜け戦場を駆ける。
(「無差別攻撃は元を潰した方が早い!!」)
 残りの弾が頬を掠めたって、彼女の足は止まらない。最速で敵に近付くには、多少の強引さが必要だから。
「はわわ、来ないでください~!」
 悲鳴を上げるマロリーと、彼女を護ろうとしてか次の光弾を放つ杖。気弱そうに見えるマロリーだがやはり猟書家幹部だ、操る魔法は強力で。これは厄介なタイプの相手だと、後方の瞬は眉を寄せる。
(「このお嬢さん、自分の知識欲を満たす為には人がどんなに苦しもうと構わないタイプですか」)
 彼の家族の言葉も全く響いていない――それは、自分が強大な悪事をしでかした自覚がないからだろう。自覚がないということは、反省もない。ここで止めなければならないと、決意固めた瞬はオーラと結界を周囲に展開して攻撃の準備をする。
 その瞬間だった。突然、彼の前に人の姿したものが現れて、手にした杖を揮ってきたのだ。
「っ――!」
 咄嗟に掲げる、黒き杖がその一撃を防いだ。彼の周囲は結界術のテリトリー、その効果受けた相手が僅かに後退する。
「フフフ、貴方は考えるタイプなのね? 後ろでぼうっとしているだけかと思ったら」
 言葉紡ぐ相手を見れば、それは眼鏡を外したマロリーだった。瞬は知っている、これはマロリーの別人格を模した霊だ。これを追い払わなければ、本体に攻撃は届かない。
 フッと一息、杖に力篭めて。一発、放つ魔法の弾は敵の杖に当たる。動きを止める霊、この隙に更に畳み掛けようと。
「さて、これを見切れますか?」
 くるり、杖を操り生み出すは氷晶の矢。無数に放つそれは霊体マロリーを撃ち抜き、その奥の本体にまで飛んでいく。
「自分勝手な理由で他人に迷惑を掛けるのは許せません。この世界は貴方の物語の収蔵庫ではありませんので。退場願います!!」
 凛と張り上げた声は、氷晶の如く鋭くて。接近する響に気を取られていたマロリーは、彼の攻撃までは避けきれずその矢に足を貫かれた。
「あああっ! 痛いです! こんな、寄ってたかってなんてずるい!」
 思わず足を庇うよう、屈むマロリー。響にとっては攻撃のチャンス、跳躍した彼女は拳を振り上げ、猟書家を狙う。
「物語を知りたいなら元を歪めちゃ本末転倒だろう!! 迷惑だからとっとと骸の海に還りな!!」
 叫びと共に、繰り出す一撃。灼熱の拳は見事腹部へとめり込んで、呻くマロリーは後方へと飛ばされた。
 真宮一家の攻撃は、これだけではない。衝撃に転がる少女の向こうに待ち受けるのは奏、彼女は精霊の盾を構え、真っ直ぐマロリーへと突進して。
「自分勝手な理由で人に迷惑を掛けるのは許しませんよ!! 骸の海で反省しなさい!!」
 言葉と共に、ぶつけるは盾の衝撃。全身でそれを喰らったマロリーは悲鳴を漏らし、眼鏡がパキリと音を立てて砕けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「大きな戦争が終わった世界に、再び戦争を起こそうとする存在は見逃すわけにはいきません。完全に邪魔をさせてもらいます。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『マロリー・ドラッケン』と召喚された者を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


アリス・スノウライト
アドリブ・連携歓迎

戦うのはとってもひさしぶりね、腕が鳴るのだわ!

さあ、グリ!一緒に戦いましょう!
【天翔けるグリフォン】でおおきなグリフォンを呼び出して、突進してびっくりさせるわ
相手の召喚した敵をこちらに追跡させて、
他のひとに攻撃が向かないように注意しながら、飛び回って撹乱!
隙を見て突進攻撃も忘れずに!

トランプ兵さんたちを呼び出して、マロリーに直接攻撃させるわ。
もしトランプ兵たちが一撃でやられたり、不利になりそうだったら
合体させて戦力強化して、攻撃するわ!
みんな、がんばって!




 猟兵達の攻撃受けて、地へと伏せたマロリー・ドラッケン。割れた眼鏡越しの瞳に涙浮かべる少女へ、彼女の杖が声を掛ける。
「おいおいマロちゃん、耐えてくれよ! ここでやられちまったら『物語』を知る機会もなくなるぜ!?」
「! 『物語』は、渡せません……!」
 彼女に響く言葉を把握しているところは、さすがと言うべきか。インテリジェンス・イービル・ワンドの激励に立ち上がるマロリーだが、体勢を整えるより先に無数の煌めきが空より飛来する。
「我、求めるは、冷たき力」
 凛と響く声に応えて、猟書家へと奔るは氷属性帯びた魔法の矢。狼狽するマロリーの体から、別人格の霊が現れ魔法弾で相殺狙ってくるけれど――術者が意のままに操る矢は、それを華麗に躱してマロリーの霊と本体とを纏めて撃ち抜いた。
「くっ……! まずいわね」
 ユーベルコードに掻き消える半身、眼鏡なき別人格が顔を上げる。その先に佇むは、黒いポニーテールをなびかせたウィザード――火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)だ。
「大きな戦争が終わった世界に、再び戦争を起こそうとする存在は見逃すわけにはいきません。完全に邪魔をさせてもらいます」
 真っ直ぐに、猟書家の少女を見つめて。明は指先を敵へ向けて高速の詠唱を始める。
 させるものか、とひと飛びに接近する別人格のマロリーが勢いそのまま杖を振り下ろすけれど、確かに捉えたはずの明の体は何の手応えもなくて。
「残念、それは残像です」
 掻き消える明の残像、本体は――後方に。再び放つ氷の矢達は、空中で二つに軌道分かれて別人格と本体へと降り注いだ。
「ううううっ!」
 霊体は消滅、本体は凍てつく矢に撃ち抜かれ。ふらつく体を杖で支えるマロリーのそのマントに、侵略蔵書達が噛み付き引っ張る。
「マロちゃん、後退だ! 次がくるぜ!」
「ふええ、次……?」
 本達の言葉に視線巡らせた猟書家は見つける、もう一人の猟兵の姿を。黒のロリータワンピースを風に躍らせ、白いふわふわ髪を広げて。
「戦うのはとってもひさしぶりね、腕が鳴るのだわ!」
 明るい声を響かせたアリス・スノウライト(0/1 rabbit・f00713)は、天を仰いで両手を広げる。紡ぐ言葉は呼び声に、幻獣を誘うユーベルコード。
「さあ、グリ! 一緒に戦いましょう!」
 応えて空より飛来するのは、真っ白なグリフォン。傍に降り立つ大きな体にふわり飛び乗って、アリスはマロリーを指差した。
 一声上げて、空を駆けるグリフォン。大きな翼で羽ばたけば、猟書家との距離詰めるのも一瞬で。その突進に、杖持つ少女はたまらず地を転がった。
「うう、怖いです~! 助けて……っ!」
 衝撃と痛みで混乱したのか、声を零して杖振るマロリー。するとその先からは、ポンポンッと猫らしき生物が現れる。――ただし、モンスター化した姿で。
「グリ、逃げて! さあさ、こちらへいらっしゃい!」
 グリフォンの上から呼びかけるアリスの声に、モンスター猫達は一斉に駆け出す。高く跳躍すれば白い翼に爪立てられそうになるけれど、空行くグリフォンは軌道を変えて躱して、更に突進で反撃する。
 敵の攻撃を引き付けながらもマロリーを見れば、猟書家の少女はさらにモンスターを増やそうと杖を構えていた。けれど彼女の相手はアリスだけではない、空にきらり光るのは、三度目の明の攻撃で。
「――っ!」
 無数の凍れる矢が、マロリーを襲う。その衝撃にグリフォン追うモンスター猫も全て掻き消えたから、アリスは地へと飛び下り次のユーベルコードを発動した。
「わたしは女王さまじゃないけれど……トランプ兵たち、やっちゃって!」
 言葉と共にひらり掌前へ出せば、召喚されるトランプ兵。整列、行進、重なれば強くなり、彼らはマロリーへと襲い掛かった。
「ふえええっ!」
「みんな、がんばって!」
 アリスの激励を受けて、トランプ兵達は手にした武器を揮う。その攻撃は苛烈で、囲まれた猟書家の少女は悲鳴を上げる――けれど、よろめきながらも立ち上がる。
 幹部と言うだけのことはあるのか、怖がりながらも逃げようとする様子はない。彼女を骸の海へと還すには、もう少し攻撃を重ねる必要があるようだ。
「少しでも、ダメージを与えて次の方に」
 明のつぶやきに、アリスがうなずく。二人はマロリーが反撃の体勢取るのを注意深く観察しながら、後方に跳んで距離取るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロータス・プンダリーカ
【またたび】

お前がみんなに悪さした奴ですにゃ?
ボク達ケットシーの物語はボク達のモノですにゃ!
勝手に奪おうなんて許せませんにゃ!(ぷんすこ)

ボクとサーラさんのサイズに恐怖覚えるんだとしたら、この人ビビリすぎにも程があるにゃーっ!
どれだけ召喚生物来た所で無駄だにゃ
我がニャン=カタは集団で襲ってくる相手に真価を発揮するにゃ
無駄なく避けながら至近距離より銃で撃ち、拳(ねこぱんち)を喰らわせて叩き落とすにゃ!
相手がビビりまくってると、こっちは全然怖くないもんにゃね…好都合にゃけど

サーラさんは援護頼みますにゃ!
合間縫ってマロリー本体に攻撃
その杖へし折ってくれるにゃ
お前も骸の海に帰って風呂入って寝ろにゃ!


サーラ・ビアンコ
【またたび】

他人の物語を手に入れても、それは所詮他人の物。
何かを得る事等出来ないじゃろうに。
真面目に働いているケットシー達に迷惑をかけるのは許せんのじゃ。

本人は……随分と怯えておるようじゃが、あの杖が厄介そうじゃの。
何を召喚されたところで、やることは変わらんのじゃ。
Fiamma luminosa bianca
全て燃やしてしまうのじゃ。妾の力を纏いし白い炎、止められはせんぞ!
ロータスが近距離から攻めるなら妾は一歩引いたところから補佐をするとしよう。
ひょい、と尻尾の動きで炎を動かして、ロータスが動きやすいように敵の動きを牽制するのじゃ。
我らが本気になればこんなものよ、無駄な抵抗は止めるのじゃ。




 マロリー・ドラッケンは、すっかり疲弊していた。杖にすがり付きなんとか立っているけれど――あれはもう、逃げずに立ち向かってくるのではなく逃げる体力すらない状態だろう。
 そんな戦場へ、ぴょんと飛び込んでくるのは二匹の猫。ロータスとサーラ、お昼寝からすっきり目覚めて気力も体力も満タンだ。
「お前がみんなに悪さした奴ですにゃ?」
 耳をぴくぴく、ロータスがマロリーへと声掛ける。その金色の瞳は、闘志に燃えていた。
「ボク達ケットシーの物語はボク達のモノですにゃ! 勝手に奪おうなんて許せませんにゃ!」
 しゅっしゅと拳を空中に繰り出しながら、高らかに告げる。その横に悠々と座るサーラもまた、金尻尾をぱたりと揺らしながらマロリー見て頷いた。
(「他人の物語を手に入れても、それは所詮他人の物。何かを得る事等出来ないじゃろうに」)
 マロリーの行う寓集にどんな意味があるのか、サーラは疑問に思う。しかし何より、眠れず駆け回っていたこの街の住人のことを思って、大きな青い瞳は猟書家の少女をじっと見つめた。
「真面目に働いているケットシー達に迷惑をかけるのは許せんのじゃ」
 言葉と共に、ぱたりぱたりと揺れる尻尾。その堂々たる姿に気圧されたのか、マロリーは杖を引きずり後退り。
「ふえええっ……この猫さん達怖いんですけど! 来ないで下さい~!」
 割れた眼鏡の奥の瞳は涙に潤み、小さく体を震わせて。怯えるマロリーが無我夢中で杖振る様を見て、ロータスは思わず呆れ顔だ。
「ボクとサーラさんのサイズに恐怖覚えるんだとしたら、この人ビビリすぎにも程があるにゃーっ!」
 そう、ケットシーと賢い動物、二匹の背丈はマロリーの膝より下なのだ。冷静に考えればとても恐怖を覚えるような相手ではないのだが、それほど敵は疲弊しているのだろうか。
 しかし、弱っていようと繰り出す魔法は強力で。ぽんぽんと生み出されるのはモンスター化した凶暴な猫、その群れが一斉にロータスへと襲い掛かる。
「どれだけ召喚生物来た所で無駄だにゃ」
 鋭い爪を向けて飛び掛かる、一匹の攻撃をひらりと躱し。ロータスは軽やかに着地すると、ユーベルコードを発動する。
「我がニャン=カタの真髄、とくと見るが良いにゃ!」
 獲物を逃して体勢崩したモンスター猫へ、流れるように銃弾を一発。そこへ飛び込んでくる一体が見えれば、着地点を予測して肉球パンチを繰り出す。
 ロータスの『ニャン=カタ』は、集団で襲ってくる相手に真価を発揮する。全く無駄のない動きで無数の敵の攻撃を躱し、即反撃に転じる。動きの予測や恐怖を払拭することによって、さらにスピードアップすることもできるのだが――。
「相手がビビりまくってると、こっちは全然怖くないもんにゃね……好都合にゃけど」
 ぽそり呟く通り、怯えるマロリーを前にすれば最高速度で動くことも難しくなかった。畳み掛ける敵の攻撃を避けきり、けれどそれだけでは勝利できないこともわかっているから。
「サーラさんは援護頼みますにゃ!」
「ああ、請け負った」
 声掛ければ、ラグドールの娘はこくりと頷いた。ロータスの横をすり抜けて、彼女はマロリーへの攻撃が通る場所へと位置取って。何を召喚されたところでやることは変わらないと、冷静な瞳を敵へと向ける。
「本人は……随分と怯えておるようじゃが、あの杖が厄介そうじゃの」
 ひょい、と金の尻尾を持ち上げれば、それが合図。サーラのユーベルコード『Fiamma luminosa bianca』はキラキラ輝く白き炎を生み出して、モンスター猫を飲み込んでいく。
「妾の力を纏いし白い炎、止められはせんぞ!」
 凛と響く声、操る炎はモンスター猫を消し去り、さらにマロリーへと伸びていく。輝き、燃えて、その炎は熱く熱く。
「はわわっ……!」
 慌てたマロリーが、杖を突き出す。しかし守りを固めようと口開いたインテリジェンス・イービル・ワンドは――次の瞬間、飛び込んできたロータスの拳によってへし折られた。
「ゲー!? やられた! マロちゃん後は自分で何とかしろよっ!」
「ふえええっ!?」
 力失い沈黙する杖と、動揺する主。そこへ、白き炎が到達する。
「我らが本気になればこんなものよ、無駄な抵抗は止めるのじゃ」
「お前も骸の海に帰って風呂入って寝ろにゃ!」
 淡々と告げるサーラの隣で、ふんすと鼻息荒いロータス。ユーベルコードの炎はロータスを避け、マロリーだけを包み込む。
「はわっ……!」
 猟書家の最後の声は、短く途切れた。激しく燃え上がる白は容赦なくマロリーを焼き、その身も杖も、侵略蔵書も残さない。

 ――かくして、この街に現れた猟書家は打ち倒された。混乱していたケットシー達もやがて眠りから目覚め、猟兵達の手助けを知るだろう。
 そうして、街にはまたひとつ恩人記念碑が増えるのだ。
 感謝の想い残す記念碑、後にここを訪れた者は、石碑に刻まれた文字を読むだろう。
 『再び眠れる恩を、ここに記す』――と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月18日


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#災魔の卵


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト