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嗤え、敗残者の王よ~ラインラント自治領緊急防衛戦

#クロムキャバリア #防衛戦 #ラインラント自治領 #戦争モノ


「――諸君、状況は最悪だ。まさしくクソの様な惨状だ。忌々しいかもしれないが、まずは前提条件を整理するとしよう」
 薄暗い部屋の片隅で、空になった弾薬箱に腰かけながら男はそう口火を切った。痩せぎすで、体格は決して良いとは言えない。だが眼鏡の奥に見える瞳は爛々と輝いており、どこか抑圧された熱量を感じさせる。男は聴衆の反応を待たずに、先を続けてゆく。
「我が愛すべき祖国、ラインラント。外交権とプラントから産出される物資を献上する事により、大国に従う自治領としてささやかな独立を保ってきた……だが、それはついこの間までの話だ」
 男は肩を竦めながら眼鏡の位置を直す。口元に浮かぶのは皮肉気な苦笑。だがそこに確かな喜色が滲んでいるのは、果たして気のせいだろうか。
「ひと月ほど前から大国側がどこぞと戦争を始めたらしい。それに伴い、物資の要求量が俄かに増大し始めた。そのまま首を縦に振れば、わが国民に餓死者が続出しかねない程の、だ」
 飢餓の輸出、というものなのだろう。従属する者がしばしば直面する悲哀で在り苦悩。だが、理不尽に対し唯々諾々と頭を垂れ続けるほど国家という構造体は大人しい存在ではない。例えそれが小国であろうとも、である。
「要求を呑めばすぐさま滅亡、という訳ではないがね。それでも国力の弱体化は免れない。なれば戦争による大国側の混乱と疲弊に乗じ、こちらも牙を剥かんという動きが出たのも当然の流れだろう。横から不意を打ち、勝てずとも一撃を与え、力を以て地位と待遇を向上させる。詰まり、譲歩を引き出す戦いだ」
 その行動自体は理に適っていると言って良い。相手は戦争中なのだ、属国の反乱など長引かせたくないに決まっている。足りぬ戦力を割いて無理に鎮圧するよりも、ある程度の譲歩をしてしまった方が結果的に手間が掛からない……そう思わせれば、目的は半ば達成である。
 早期講和を狙った短期決戦は、正しく乾坤一擲の反抗と言って良い。だが残念ながら、危難に際してそう簡単に一致団結できるほど人間は賢くなかった。
「戦争は飽くまで外交の一手段に過ぎない。侵攻と防衛にどれだけの戦力を割き、失敗した場合のリスクヘッジをどう備え、誰が功を得るのか……軍も政治も、上層部連中は保身と欲目で折角の作戦を滅茶苦茶にしてしまった」
 結果、自治領の命運をかけた反抗作戦は失敗。戦力の大部分を喪失し、かつ大国側の怒りを買う結果となったのだ。こうしている間にも、嚇怒を抱いた大部隊が自治領へと迫って来ている。彼らは譲歩ではなく、愚か者を徹底的に叩くことによって統制を計る事を選んだのだ。
「先の作戦によって、私より上の高級将校は軒並み戦死、政治家連中の大半は敗戦後の粛清裁判を恐れて雲隠れ。つまり、今のラインラントに残った人間は、一般市民を除けば三種類に大別される」
 一つ目は無能。機を見るに敏な連中から置き去りにされ、あるいは愚直な愛国心で土地にしがみついた、ピンキリ揃いの政治屋たち。
 二つ目は敗者。先の反抗作戦に従事し、散々に打ち破られた敗残兵の集団。彼らが留まっているのは何てことはない、自力で動けないというだけだ。
 三つ目は狂人。勝敗の有無よりも戦えるかどうかにのみ主眼を置いた戦争狂。枷と鎖を担っていた上層部が軒並み死に絶えた結果、彼らを縛る者はない。
 であるならば、目の前の男をその三つに振り分けようとする場合――。
「嗚呼、なんて……最高の状況だと思わんかね、諸君」
 間違いなく、狂人だった。
「晴れて私がこの国のトップという訳だ。これでもう、我々の戦争を邪魔する者は居なくなった。確かに我が軍は壊滅状態、死に体と言って良い。だが……あと一撃、叩き込んでやれる程度の戦力は残されている。それなら十分だ、それだけで十二分だ」
 男は弾薬箱を蹴って立ち上がり、拳を振り上げる。彼の前に居るのは全て落伍者だ。既に勝敗など眼中にない愚か者共の群れだ。それらを満足げに見渡して、男は頷く。
「ラインラント自治領統治者代行、ミヒャエル・ハイネマン中佐の名において命ずる。さぁ、諸君」
 ――戦争を始めよう。
 そうして、敗残者の王は愉しげに嗤うのであった。


「……という訳で戦争の時間だ」
 グリモアベースに集った面々を見渡すと、ユエイン・リュンコイスは早速そう口火を切った。どういう訳だと目線で問いかけられ、人形少女は説明を始める。
「今回向かって貰うのは鉄騎と小国家犇めくクロムキャバリア。ラインラント自治領と呼ばれる小勢力を襲う部隊を撃退して貰いたいのだけれど……経緯が少しばかり特殊でね?」
 その名称通り、ラインラント自治領は大国の庇護下へ入る事によって、献財と引き換えに存続を保ち続けてきた勢力である。保有するプラントが小規模の為、戦うよりも頭を垂れた方が結果的に守れるモノが多かったのだ。自由はないがある程度の安寧が約束された従属の平穏……だが、それも最早過去の話となった。
「大国側がどこかと戦争を始めたらしくてね。物資や金銭の徴収が苛烈になった代わりに、自治領側への統制が僅かながらに乱れた。それを機に、自分たちの待遇向上を目論んで反抗を企てたらしいのだけれど……結果は惨敗。それどころか、事態は更に悪化したみたいだ」
 貴重な戦力は尽くが壊滅し、首脳陣は責任争いもそこそこにさっさと国外逃亡。一方の大国側も格下に歯向かわれたままでは面子が立たない。早々にラインラント側を制圧すべく、鎮圧部隊を送り込んで一切合切を叩き潰してしまおうと考えている様なのだ。
「それだけならまぁ、国と国との攻防だからね。ボクらの介入する理由は無いのだけれど、問題はその鎮圧部隊がオブリビオンマシンによって構成されているという点だ」
 どうやら大国の起こした戦争とやらも、オブリビオンマシンが少なからず影響しているらしい。軍と政治の中枢がどれほど汚染されているかまでは分からないが、どうやら相当強引な動きで国内を纏め上げてきたとの噂もある。そのせいか、此度の制圧作戦にも疑念や不信感を抱いている兵士も多い。
「そこで皆には自治領側の残存戦力と協力して防衛戦を展開しつつ、鎮圧部隊の撃退を頼みたい。撃破した敵兵士を首尾よく捕虜に出来れば、作戦に疑問を持つ仲間を説得して此方側へ引き込めるかもしれないね……問題は寧ろ、自治領側にあるかもしれないよ」
 懸念点は二つ。まず一点目は、自治領側の戦力が先の反抗作戦によって大幅に弱体化している事。だがこれは、猟兵たちの助力によってある程度は埋められる。問題の二つ目は、それを率いる人物に在る。
「ミヒャエル・ハイネマン中佐。現状における自治領側のトップで在り、防衛戦を取り仕切る指揮官だ。能力的には優秀な人物なんだが、性格に些か以上の問題があってね……これに関しては言葉で説明しても伝わり難いし、実際に会って貰った方が分かりやすいかな」
 ともあれ、説明は以上だ。ユエインはグリモアを起動させつつ、猟兵たちへ向き直る。
「敵や味方が何であれ、やるべきことは変わらない。それじゃあ、頼んだよ?」
 そう話を締めくくると、人形少女は仲間たちを送り出すのであった。


月見月
 どうも皆さま、月見月で御座います。
 此度の舞台は待ちに待ったクロムキャバリア、劣勢状況からの防衛戦となります。
 キマリにキマった戦争狂たちと一緒に戦場を駆け抜けましょう。
 OPが長い、という場合は下記を読んで頂ければ内容は把握出来ます。
 それでは以下補足です。

●最終勝利条件
 鎮圧部隊の撃退。

●ラインラント自治領
 大国の庇護下へ入る事によって存続してきた小勢力。宗主国である大国が戦争を始めた事により浮足立ったのを好機と捉え、反抗を企てるも失敗。逆に鎮圧部隊を差し向けられ、窮地に立たされる。主戦力は壊滅状態、首脳陣も早々に逃亡しているなど、末期も末期な状態です。

●ミヒャエル・ハイネマン
 階級は中佐。軍部と政治の上層部が軒並み消えた事を幸いに自治領内を掌握。絶望的な防衛戦を嬉々として行おうとしてるおじさん。一応味方です。
 凄腕の傭兵である猟兵には非常に好意的で、協力を申し出れば一も二も無く受け入れてくれるでしょう。もしキャバリアを持っていなければ、借り受ける事も可能です。

●大国側鎮圧部隊
 自治領制圧の為に派遣されてきた戦力です。数、質ともに自治領側を凌駕しています。格下である自治領に歯向かわれたという事実に怒りを抱く者が大半ですが、本国の強引な戦争方針に不信感を抱く兵士も少なからず居ます。
 彼らを第一章で捕虜にすることが出来れば、第二章では説得要員として敵の勢いを減じさせてくれるでしょう。

●キャバリアの貸与について
 もしキャバリア戦をしたいのにキャバリアが無い場合、自治領側の機体を借り受けることが出来ます。機種は大国側と同じ『サイクロプス』ですが、最新のF型ではなく一つ前のC型のため性能が若干劣ります。

●プレイング受付につきまして
 第一章の断章投下と共に告知いたします。

 それではどうぞよろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『MRCA87F-サイクロプス』

POW   :    エンドレス・バタリオン
自身が戦闘で瀕死になると【同型機で編成された一個小隊 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    ヴァリエーション・ツイン
【白兵戦仕様のS型と砲撃戦用改修機のK型 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    エアリアル・アタック
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【所属する編隊 】から【統制同時射撃】を放つ。

イラスト:tel

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※マスターより
 断章投下及びプレイング受付告知は3日(水)夜を予定しております。
 どうぞ宜しくお願い致します。
※訂正
 3日(水)→2日(水)です。
●荒野に轟くは独眼の緑翼
「やぁやぁやぁ、よく来てくれた猟兵諸君。私がこの自治領を預かるミヒャエル・ハイネマン中佐だ。この様な状況にも関わらず出向いてくれるとは、非常に喜ばしい。仲良く出来そうで安心したよ……本当に、だ」
 転送された後、ラインラント自治領側と接触した猟兵たちはミヒャエル・ハイネマンの元へと通されていた。痩せぎすの男は大仰な仕草で出迎えると、握手を求めて手を差し出してくる。それを握り返すと、眼鏡の奥で瞳がぎらりと輝いた。そこに満ちるのは喜色と興奮、そしてほんの微かな闘争心。事前に説明を受けていたものの、こうして直接顔を合わせるとやはり一筋縄ではいかない人物だという事が良く分かる。
 彼の表情には一切の怯えや緊張が浮かんでいなかった。あと数刻もすれば祖国諸共滅び去るやもしれぬと言うのに、ハイネマンは飽くまでもリビングで寛ぐかの如き気楽さを保ち続けている。なるほど、狂人と言う評は言い得て妙なのかもしれなかった。
「さて、今は一分一秒が金よりもなお貴重だ。来て貰った直ぐで申し訳ないが、事情は移動しながら説明しよう。さぁ、着いて来てくれ給え。貸与するキャバリアの紹介がてら、我が軍の戦力を見て貰おうか」
 そう告げられた猟兵たちは移動する間、暗惨たる実情を目の当たりにする事となる。事情自体は事前説明で聞いたのと相違はなかったが、やはり百聞は一見に如かず。廊下の脇には痛みに呻く負傷兵や遺体を収めていると思しき袋が所狭しと並べられており、かつて受けた被害の大きさを物語っていた。

「……嘆かわしい事だ。無為無策によって徒に兵を損耗させるなど。彼らも出来ることなら、のびのびと戦争をしたかったはずだろうに」
 そんなハイネマンのズレた独白を聞き流しつつ、程なくして猟兵たちは格納庫へと辿り着く。敬礼をしてくる整備員や兵士たちの奥に直立するのは、暗緑色のカラーリングが目を惹くキャバリアである。
「MRCA87C-サイクロプス。我々の主力キャバリアだ。古い機体だが限定的な飛行能力を有し、耐久性に秀でる。主武装はブルパップ式ライフル、鉈型実体ソード、腰部ラック収納の多目的グレネード。何とか掻き集められた我々の残存兵力は一個増強大隊四十八機だ」
 それだけ聞くと十分な戦力のように思えるが、よくよく見れば部品を継ぎ接ぎされた箇所がちらほらと散見する。損傷した機体に応急処置を施し、なんとか頭数を揃えたのだろう。加えて、ハイネマンの口から気が滅入るような情報が告げられた。
「対する鎮圧部隊は同じサイクロプスが最低でも一個連隊規模、しかも機種は最新のF型。加えて、より高性能機で固めた本隊も後詰めで控えているという……故に、戦力差は二倍や三倍程度では済むまいよ」
 たった一部隊が、自軍の残存戦力を容易く凌駕する。通常であれば降伏も視野に入れるべき差だが、ハイネマンは寧ろ面白がるように笑みを浮かべていた。心躍ると言うのも勿論あるだろうが、彼はそんな相手に付け入る隙を見出していたのである。
「そう不安がらないでくれ給え。こんな崖っぷちの我々にも二つ、優位点が存在するのだから。一つ目は、相手はまず間違いなく戦術行動を取らぬという事だ」
 戦術や作戦とは、弱者が戦力差を覆す為の手段である。裏を返せば極論、強者に小手先の手妻は必要ない。質を伴った数をただ真正面からぶつけるだけで勝てるのだ。故にこそ、劣勢側にも立ち回れる余地が生まれる。
「そして二つ目の優位点は……猟兵諸君の存在だ。君たちの出現は彼らの想定外だろう。少なからず混乱を生じさせ、浮足立たせることが出来るはず。無論、実力についても大いに期待しているがね」
 それらを踏まえた上で、ハイネマンは己の作戦を語り始めた。

 内容としては自治領側戦力の増強大隊が敵正面より相対し、遅滞戦闘を行いつつ敵を誘引。側面など相手の意識外から猟兵が強襲するというものである。奇策と言うには余りにも真っ当で、小細工と評するには単純と言えるだろう。しかし、それは肩を竦めるハイネマンも承知の上らしかった。
「凝った策を講じたくとも、手持ちの戦力がそれを許してくれないのだよ。ただでさえ少ない戦力を分散し、各個撃破される愚を犯したくはない。という訳で、諸君らには敵へ一撃加える役目を任せたい……出来れば、我々が磨り潰される前に」
 無論、私と一緒に泥臭く殴り合うのが好きならそれも大歓迎だ。そう言ってハイネマンは説明を締めくくった。察するに、彼はこうして上に立つ以前は窮屈な待遇に甘んじていたのだろう。それ故に、あまり猟兵たちの行動に枷を嵌めたくないという気持ちがあるのかもしれない。
「そうそう。せめてもの餞別という訳ではないが、払い下げと言う名目で大国側より購入させられた試作兵装が大量にある。性能は保証しないが、種類は豊富だ。使いたいモノが在れば自由に持ち出してくれ給え」
 そう言ってハイネマンが指し示す方向には、雑多なキャバリア用武器が積み上げられた一角が見える。試作品と言えば聞こえは良いが、どれも性能が極端であったり保守部品に乏しく整備もままならぬ欠陥品だ。しかし、この戦場限りの使い捨てと考えれば悪くはないだろう。

「それと最後に、もし戦闘不能になった敵兵が居たら丁重に保護してくれ給え。我々は文明人ゆえ、野蛮な振る舞いは御免被る。戦争とて紳士的に殺し合うのがマナーだ」
 人道的なのかそうでないのか分からぬ注意を発した途端、格納庫内にアラートが鳴り響く。遂に敵部隊が自治領へと辿り着いたのである。ひりついた笑みを浮かべて各々の機体へ乗り込む兵士たちを横目に、ハイネマンもまたくつくつと嗤い声を上げていた。
「さて、お喋りの時間はここまでのようだ。諸君らにも出撃して貰おう。月並みな言葉だが、武運を祈るよ……もし最後まで生き残れたら、秘蔵のボトルを馳走しよう」
 そうしてハイネマンと猟兵たちもまた機体に乗り込み、あるいは己が力を頼みとして生身のまま出撃してゆく。前哨戦に現れるは暗緑の独眼鉄騎。質、量ともにこちらを凌駕する圧倒的な暴威である。果たして、最後まで生き残れるのは如何ほどか。

 ――斯くして、ラインラント自治領緊急防衛戦の火蓋が切って落とされるのであった。

※マスターより
 プレイング受付は4日(金)朝8:30~となります。
 第一章は迎撃戦です。戦場は自治領周辺に広がる荒野。機動に不自由がない程度に開けている一方、大岩や亀裂などの利用可能な障害物も点在しています。
 ハイネマン率いる増強大隊は敵と真正面から対峙し、囮として遅滞戦闘に努めています。横から敵部隊を叩くのも、共に真っ向から殴り合うのも自由です。
 自前のキャバリアが無い場合は『サイクロプス』を借り受ける事も可能ですが、生身で挑むのも歓迎です。ハイネマンもにっこり笑顔を浮かべるでしょう。
 本章で敵兵を捕虜に出来れば、二章で説得による敵戦力の減少を行うことが出来ます。逆に殺害してしまうと、怒りによって戦闘力が増加する危険があります。
 それではどうぞよろしくお願い致します。
ヴィリー・フランツ
WIZ(アドリブ連携歓迎)
目的:囮部隊に同行し遅滞戦闘を行う 理由・心情:HAHAHA!!大したウォーマッド(戦争狂)だ、その機体じゃ囮は荷が重いだろ?俺も付き合ってやらぁ!
手段:テンペスト社製ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ、増加装甲を着けた重量級拠点防衛型の本領発揮だ、囮と共に上半身を晒せる高さの岩場に布陣、シールドを構えりゃUC【迎撃態勢完了】だ。
攻撃は左肩の電磁速射砲と右手の無反動砲、制圧射撃でその場に釘付けにすりゃ側面の猟兵が叩き易くなるってもんだ。
飛行形態か?残念だがピラニアミサイルで纏めて餌食だぜ、フォイア!
コアには当てねぇから感謝するんだな!
予備弾薬も用意してるぜ、どんどん来やがれ!



●号砲よ、開戦を知らしめよ
『敵部隊を補足! 大隊規模の接近を確認するも、敵数なおも増大中!』
 出撃した自治領側戦力は、早々に敵影を捉える事に成功していた。視認可能な距離にこちらと同型のキャバリアが群れを成している様子が窺える。予想通り相手は堂々と行軍しており、端から隠密行動を取る気などないらしい。
『ふむ、やはり真正面から来たか。我々は囮だが、かと言って手は抜けんな。侮られる分には結構だが、下手に勘繰られると猟兵諸君の存在が露呈しかねない。真実相討ち覚悟で挑むべきだろう』
「……HAHAHA!! 大したウォーマッド(戦争狂)だ、嫌いじゃないぜ。ただ、その旧式機体じゃ派手な囮は荷が重いだろ? 生憎、こっちも動き回るのは得意じゃなくてな」
 受けに回っていては早晩ジリ貧である。ならば先手を打たんとするハイネマンへ、不敵な口調の通信が入った。その声の主はヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)。言葉通り、彼の駆るテンペスト社製キャバリア『ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』は機動力と引き換えに重武装を付与された機体である。増加装甲に覆われたシルエットは物々しく、装備した電磁速射砲や無反動砲、ミサイルユニットによって城塞じみた印象を受けるだろう。
「話を聞く限り、最初が肝心なんだろう? だったら俺も付き合ってやらぁ!」
『なるほど、こいつは素晴らしい。では、開戦の号砲は貴君に任せるとしよう。各機、攻撃タイミングは猟兵殿に揃えろ。くれぐれも出遅れないように』
 強力な援軍にハイネマンの声音にも喜色が滲む。囮部隊はヴィリーを筆頭に障害物を利用した迎撃陣形を組み上げると、それぞれの得物を構えて照準を合わせてゆく。
「こういう撃ち合いこそ重量級拠点防衛型の本領発揮だ。制圧射撃でその場に釘付けにすりゃ側面の猟兵が叩き易くなるってもんだしな、よそ見をする余裕なんざ与えるかよ! 全員準備は良いな? それじゃあ……」
 攻撃開始だ! その号令と同時に重砲群が一斉に火を噴いた。大気を切り裂く甲高い音が響いたかと思うや、前方一帯が敵のキャバリアごと吹き飛ばされる。濛々と立ち込める土煙に混じり、鉄の破片が散らばってゆく。手応えは確かにあった、が。
「撃破三、大破四。残りは小破……耐久性に秀でるってのは嘘じゃないらしいな。気を付けろ、反撃が来るぞ!」
 ヴィリーの警告と同時に、土煙を突き破って強烈な銃撃が囮部隊へと襲い掛かる。徐々に明瞭となる視界には、スクラップと化した僚機を尻目に散開する敵部隊の姿があった。
『チッ、先を取られたか。だが、数は此方が上だ。馬鹿正直に付き合う必要も無い』
『小隊ごとに散開して狙いを分散させろ。その隙に敵直上より叩く』
 どうやら部隊を分けてこちらが投射できる火力密度を低下させつつ、砲の仰角外である真上から強襲するつもりらしい。無反動砲で敵機を吹き飛ばしながら、傭兵は離陸し始める集団へと視線を走らせる。
「飛行形態か? 残念だが、ピラニアミサイルで纏めて餌食だぜ……フォイア!」
『馬鹿な、貴様らの保有兵装に対空兵器など無かったはず……!?』
 そうして瞬時に相手の位置情報を読み取るや、立て続けにミサイルを発射した。サイクロプスの飛行能力は飽くまでも速やかな戦力展開を主眼としたものであり、空戦へ柔軟に対応できるレベルではない。故に、肉食魚の名を冠する追尾弾を振り切れる性能などなく……。
『っ、おのれぇ……!』
 呆気なく、暗緑の鉄騎は翼をもがれて撃墜されるのであった。爆散する機体から操縦者が排出されるのを確認しながらも、ヴィリーは慢心する事無く次弾の装填を進めてゆく。
「コアには当てねぇから感謝するんだな! 予備弾薬もたっぷりと用意してるぜ、どんどん来やがれ! 気を抜いてると纏めて吹き飛ばすぞ!」
 そうして威勢の良い言葉で敵の注意を惹きながら、傭兵は苛烈さを増す攻撃と真っ向から渡り合ってゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋月・透乃
ハイネマン中佐、話通りに戦闘好きの狂人みたいで気が合いそうだね。状況の把握なんかもちゃんとできているみたいだし、味方としてもとりあえず安心できそうだね。
敵戦力もでかいし、こりゃ楽しい戦いになりそうだね!

私は生身で出撃して真正面から戦うよ!
RX推進戦鎚九六式の推進機を利用した高速移動で敵へ接近し、武装や推進機等を狙った怪力まかせの攻撃をしてから一旦離れる、といったヒット&アウェイの戦い方でいくよ!
敵の攻撃は避けたり昂気抗辛梁で耐えたりしよう。できることなら攻撃で私のことを驚異と思わせてから昂気抗辛梁で複数の敵からの攻撃を引き受けたいね。



●小さくも力強き者よ、巨兵を屠れ
「おお~……遂に始まったみたいだね。キャバリア同士の戦闘はやっぱり派手だなぁ」
 ポリポリと人参を齧りつつ、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は戦場の様子を遠巻きに眺めていた。五メートル級の鉄騎がぶつかり合う光景は中々に豪快だが、よくよく観察すると緻密な連携や意思疎通が見て取れる。指揮官の良し悪しは兵卒の動きを見れば分かるというものだ。
「ハイネマン中佐、話通りに戦闘好きの狂人みたいで気が合いそうだね。状況の把握なんかもちゃんとできているみたいだし、味方としてもとりあえず安心できそうかな。無能な友軍は有能な敵以上に厄介だし」
 人参の最後の一欠けらを口へ放り込むと、透乃は傍らに置いてあった得物へと手を伸ばす。それはキャバリア用の巨大なロケットハンマーだった。しかし、彼女の周囲に鉄騎の姿は見当たらない。代わりに、その柄の下端部だけが人間用のサイズへと調整されているのが分かる。それが意味するところは、即ち……。
「敵戦力もでかいし、こりゃ楽しい戦いになりそうだね! それじゃあ、思いっきり暴れるとしようか!」
 巨鎚を扱う者は透乃自身に他ならないという事だ。少女は苦も無く鉄柱の如き得物を持ち上げると、先端後部に備え付けられた推進装置を起動させた。戦鎚は排気焔を吐きながら徐々に出力を上昇させてゆく。
「よーし、いっけぇぇっ!」
 そしてスロットルを上げた瞬間、戦鎚は使い手ごと浮き上がるや地面すれすれを飛翔し始めた。そのまま急速に戦場へと接近する透乃に対し、流石に相手も気付いたのだろう。側面を警戒していた一機が、アイセンサーを駆動させながらライフルを差し向けてくる。
『なんだ、ハンマーが一人でに接近してくる……? いや、石突の部分に生体反応だと!?』
「おお、軍人さんだけあって状況の把握が早いね。でも、流石に対応は遅れ気味かな。それならこのまま……せぇのぉっ!」
 透乃は相手がトリガーを引くよりも先に距離を詰めるや、地面へ踏み込んだ足を軸としてそのまま一回転。遠心力を乗せると同時に狙いを定め、強烈な殴打を相手の左脚へと叩き込んだ。その一撃は動力パイプごと脚部を破壊し、バランスを崩した敵機は堪らず転倒する。追撃には拘泥せず直ぐさま離脱を計るものの、僚機の異常を察知した敵部隊が瞬時に援護へと回り始めた。
『キャバリア用の兵装を生身で扱うとは、馬鹿らしいほどの筋力だな』
『しかし、所詮は頭数不足を補う苦肉の策だろう。無謀の代価を払わせてやれ』
 一個小隊規模の弾幕射撃。しかもそれがキャバリアによるものであれば、人間にとっては爆撃に等しい。透乃は巧みに戦鎚を操って直撃弾は躱すものの、衝撃の余波や吹き飛ばされた岩石によってじわじわとダメージが蓄積されてゆく。
(まずは囮部隊への圧力を減らさないと。あっちが先に潰れたら奇襲も何もないからね……!)
 自治領部隊が耐えれば耐えるほど敵は撃破しようと躍起になり、その分だけ猟兵側の攻撃機会が増える。故に出来る限り敵の注意を惹くべく透乃は立ち回るのだが、それは更なる銃撃を受ける事と同義で在り。
『ちょこまかと……そこだっ!』
「っ!? 回避は困難……耐え抜かないとやばいこのスリル! たまらないね!」
 統制された攻撃によって進路を潰された瞬間、一斉射が少女へと降り注いだ。地面が吹き飛ばされ、大量の土砂が舞い散る。人間は無論、これではキャバリアとて耐え切れぬだろう。これで終わりだと相手が判断し、囮部隊を攻めるべく視線を切った……瞬間。
「――昂気抗辛梁。気合があれば、これくらいへっちゃらだってね!」
『な、ぁ!? 出鱈目にもほどが……!』
 土煙を吹き散らしながら、透乃の振るった戦鎚が敵部隊を纏めて薙ぎ払った。装甲板がひしゃげ、一個小隊が纏めて戦闘不能となる。だが少女もまた無事では済まず、土埃にはうっすらと血が滲む。
「よし、まだいけるね。さぁて、次の相手はどこかな?」
 しかし発する声音は寧ろ意気軒高としており、継戦に支障は無さそうである。そうして透乃は新たな敵を求めて戦鎚を吹かすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティー・アラベリア
【同波長組】
指揮統制用の人格でお仕事をするのは久しぶりですね
同波長……ふふっ、確かにそうかもしれません

味方陣地上空を飛行しつつ魔導波探信儀を起動し、地形と敵の位置情報を把握
指揮通信機構を使用して諸元を味方砲兵にも提供しつつ、UCと92式の砲撃によって敵突撃を破砕致します
砲撃によって敵が乱れた頃合いで忍さんに合図し側面から敵を強襲
敵の動きを共有し、突撃を誘導しながら混乱を最大化
陣形の乱れが著しくなったタイミングで佳奈恵さんにご登場いただき、敵の隊列を完全に瓦解させましょう
後は探信儀の情報を基に二人の戦闘管制と援護砲撃を実施
最後は中佐にお願いして正面戦力を用いた逆撃を実施し、お仕事完了です


小和泉・佳奈恵
【同波長組】
いや同波長て。ぼくは真人間、ぼくは真人間……
よし、あの二人に飲み込まれんごと気をつけよう。あ、ハイネマン中佐にも要注意、やね。

亀裂に機体を隠して機を待つよ。
センチネルの装甲は紙っぺらやからね。正面からキャバリア戦なんてとてもじゃないけどするもんじゃなか。
ティー君の準備砲撃が終わる……まだ出るときじゃない。
忍さんの突撃……まだ、もう少し。
二人の攻撃で敵が崩れたなら、肩部から射出した機動錨で機体を垂直上昇させて亀裂の外に飛び出させる!
そのままブーストジャンプの連発で敵機を撹乱してアンカーを突き刺し、引きずって亀裂に嵌めて機体の動きを封じる!
目の前の敵を制圧したら生存者を確保するよ。


貴司・忍
アドリブ絡み歓迎
【同波長組】
迎撃戦、荒野、大軍勢
良いねいいねぇこういうのを待ってたぜ!
特攻部隊開天組にはお似合いの戦場だ
よっしゃ逝こうぜご同類!!

戦場から少し離れた所の、適当な大岩に腰掛け砲撃を待つ
ティーの砲撃に合わせコード発動
全速力で側面を取りに行く
道中柘榴のミサイルをありったけばらまき
それを囮に側面から突入
噴進装置を全開に、大岩から大ジャンプ、推力移動
指示出してそうな奴に最大加速で特攻を仕掛ける!
あとは忍が目立たないよう敵陣で暴れまわる
サーチライトで目つぶし
機関砲をばらまきつつ敵機に接近
脚部衝角を突き刺して拘束
彼岸花(鉄腕)の怪力でコクピット周りの装甲を引っぺがして無力化だ



●耕し、切り込み、蹂躙す
「迎撃戦、荒野、大軍勢……良いねいいねぇこういうのを待ってたぜ! 特攻部隊開天組にはお似合いの戦場だ、心が躍るってもんよ! よっしゃ逝こうぜ、同波長のご同類!!」
「同波長……ふふっ、確かにそうかもしれませんね。指揮統制用の人格でお仕事をするのは久しぶりですし、ボクも楽しむとしましょうか」
 先んじて交戦を始めた仲間たちの様子を少し離れた場所で観察しながら貴司・忍(開天組、特攻隊長・f30325)は不敵に声を上げ、一方のティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)は嫋やかに微笑む。男勝りな少女傭兵と少年には見えぬ奉仕人形、方向性のベクトルこそ違えども、両者ともこれから身を投じる戦いへの期待感が滲んでいた。一方、一纏めにされるのは心外だと眉根を顰めるのは小和泉・佳奈恵(贋者・f29715)である。
「いやいや、同波長て。これは飽くまでも猟兵兼警備業の一環であって、ぼくは真人間、ぼくは真人間……よし、あの二人に飲み込まれんごと気をつけよう」
 あ、ハイネマン中佐にも要注意、やね。そう独り言ちながら自分だけはまともであると言い聞かせるも、共に行動している時点で十分にご同類だろう。とは言え、ストッパー役が居れば他の二人も早々無茶はすまい。そういう意味ではある種バランスが良いと言えた。
「ま、アタシらも無為無策で突っ込むつもりはねぇよ。ゴチャマンにだってやり方があるしな。という訳で先陣は任せるぜ、ティー?」
「ええ。皆さんが動きやすくなる様、戦場を掃き清めて参りましょう。それでは、しばしお待ちを……」
 傭兵が視線を向けると、人形はメイド服のスカートを持ち上げて会釈を返す。そのまま脚部に内蔵された機動機構を起動させてふわりと浮かび上がるや、戦場へ向けて飛び去ってゆくのであった。それを見送りながら、佳奈恵は踵を返す。
「これで暫らくは待機かな。でもそう時間も掛からないだろうから、すぐ動けるようにしとかんとね」
 そうして背後を振り返った少女たちの前には、灰紫と深緑の鉄騎が佇んでいるのであった。

『左翼、押されているぞ! こっちにゃ予備兵力なんざ無いんだ、死守しろ!』
『各員は残弾を確認ッ! 心許ない場合には後退して再分配を受けておけ!』
 ティーが戦場上空へ到着すると、予想通り戦況は混迷を極めていた。大国側は猟兵の妨害に遭いながらもじわじわと圧力を強めており、一方の自治領側も囮の役目を果たさんと被害を度外視で抗戦を続けている。それはさながら、スケール感のみが増大した二次大戦と言った有様だ。
「敵味方入り乱れて、といった有様ですね。殲禍炎剣で衛星を上げる事もままならない現状ですし、無理もありませんか……なれば、ボクが皆様の眼となりましょう」
 これも俯瞰的な視点の欠如による全体図の把握が出来ていないせいだろう。なればとティーは魔導波探信儀を起動させ、敵味方の位置や地形状態を手早く収集してゆく。幸いIFFコードは事前に共有済みの為、そう手間も掛からなかった。
「中佐殿、ボクが収集した情報を共有致します。代わりにと言っては恐縮ですが、K型の皆様をお借りしても?」
『はははっ、勿論だとも。ただ、こちらの財布も底が見えている。貰った情報に釣り合わぬやもしれぬが、そこはご寛恕願おう』
 自身を軸として友軍へデータをリンクしつつ、人形はハイネマンより砲撃機二個小隊分を自らの指揮下へと加える。十全な砲撃は兎にも角にも頭数が肝だが、贅沢は言っていられない。その分は命中精度を上げれば良いだけの話だ。
「この戦場が古き大戦染みているというのであれば、それに倣いましょう。陸戦とは砲兵が耕し、歩兵が占領するものですからね」
 上空では魔杖を構えたティーの周囲へ魔力が収束してゆき、幾つもの魔導弾を形成。地上ではK型が情報を元に肩部砲塔の仰角を調整してゆく。そうして全員の準備が整ったと見るや、人形は号令を下す。
「それでは……ご来場の皆々様、爆轟と狂乱の戦場音楽をとくとお楽しみあれ!」
 瞬間、直線と曲射という二種類の機動を描いて、魔導弾と砲撃が敵陣へと降り注いだ。タイムラグの少ない直射は狙い通りに敵を貫き撃破するも、弧を描く砲撃に対して敵は瞬時に対応してくる。
『砲撃なぞ先ほど散々に受けているからな、何度も同じ手は食わん。対空射撃で砲弾を撃ち落とせ』
『なるほど、あの空を飛んでいるヤツが観測要員か。一部は上がって叩き落してやれ』
 着弾前に砲弾を狙い撃つその動きは、さながらC-RAMか。人間なら兎も角、キャバリアであればその役割は十分に果たせるだろう。また目敏くティーを発見した者たちが肩部飛行翼を展開し離陸、鬱陶しい眼を叩くべく高度を上げてゆく。
 だが……それこそが正に猟兵側の狙いだった。
「さて、敵地上戦力の密度が下がりました。頃合いで御座いましょう」
「おうともさ! そらそらそら、開天組のお通りだ! 死にたくなけりゃ道を空けろッ!」
 砲撃が為されたとあれば、次に歩兵が切り込みを行うのが道理。此度はその任を忍のキャバリア『六号開天』が担うべく突撃を開始する。砲撃に加えて一部が空へと上がっている今ならば、絶好の好機だ。銃弾の代わりに小型ミサイルを吐き出すガトリングガン『柘榴』による牽制射で敵を蹴散らしながら、臆することなく一気に加速し吶喊する。
「こういう場合、下っ端を幾ら潰したってキリがねぇ。なら、狙う相手はひとつしかねぇよなぁっ!」
 ミサイルの爆煙に紛れて敵中へ踏み込むや、傭兵は手近な大岩を踏み台にして勢いよく跳躍。推進機の勢いを利用して滑空しながら、さっと眼下へ視線を走らせる。敵機に外見上の差異はない。だが相手の挙動から連携の中心に居る個体を見つけ出すと、頭上より強襲を仕掛けた。
「お前が指揮官だな! とくと御覧じろ、これが恐れ知らずの開天組だっ!!」
『っ、小勢にも目敏い者は居るらしい。良いだろう、来いっ!』
 猛然と掴み掛かってくる忍の六号開天に対し、指揮官機も鉈型実体ソードを抜き放ち応戦する。振り上げられた刃を左腕鉄槌に食い込ませながらも、傭兵は知った事かと落下重量を活かしてそのまま強引に押し切った。密着状態となれば思う様に得物も振れまい。条件は忍とて同じだが、当然ながら手は用意してある。
「安心しろ、殺しはしないさ。暫くは寝ていて貰うがなっ!」
 胸部肩部に備え付けられた四門の重機関銃が火を噴き、敵機に風穴を開けてゆく。指揮官は堪らず脱出したものの、これで暫くは命令系統が碌に機能しないだろう。しかし、己が上官をやられて黙っているほど、軍は面子を軽んじてはいない。
『大隊長が撃破された!? 指揮権を暫定的に各中隊長機へ移行、各隊の判断で戦闘を継続せよ!』
『我々はこの襲撃者を討つ。絶対に生かして還すなッ!』
 S型やK型を含む指揮官麾下の部隊が忍を瞬く間に取り囲む。無数の銃口に取り囲まれてもなお傭兵に臆する様子はないが、流石にこれだけの数に攻撃されれば無事では済むまい。そう――。
「だ、そうだが……佳奈恵はどう思う?」
「いや、それは勘弁願いたいかな。センチネルの装甲は紙っぺらやからね。正面からキャバリア戦なんて、とてもじゃないけどするもんじゃなか」
 忍単騎であれば、の話だが。敵味方の頭上に影が差す。ハッと上へ視線を走らせるや、そこに見えしは深緑のキャバリア。第三の矢としてこの瞬間まで待ち続けてきた佳奈恵のType-01J『センチネル』である。その両肩からはしゅるしゅると巻き上げられるワイヤーが見て取れた。
 彼女は秘かに地面に走る亀裂内部へ身を潜めていたのだ。そうしてティーの準備砲撃が終わってもまだ機ではないと断じ、忍の吶喊時も焦る気持ちを抑えてチャンスを窺い……果たして、いまこの瞬間に姿を見せたのである。
「という訳で、少し絡め手を使わせて貰うとよ。この勢いなら複数纏めてもいけそうやね?」
 佳奈恵は腰部推進機を吹かせて角度を調整すると、巻き上げたばかりのワイヤーアンカーを再度射出する。狙いは忍を取り囲む敵機だ。警備員は敵の装甲板を穿ってがっちりとアンカーを固定するや、飛び出した勢いそのままに相手を二機纏めて引きずり倒した。
『うおっ!? なんだ、何をするつもりだ!』
「迷惑な侵入者はご退場願うって相場が決まっとるよ? 丁度いい場所もあるし、利用しない手は無かとね」
 咄嗟に敵機もライフルで応戦するものの、右へ左へ揺さぶられては狙いも定まらない。牽引されていた敵兵士が次に感じたのは、一瞬の浮遊感と落下の衝撃。自らの機体が地面を走る亀裂な中へ叩き落されたと気づいた時にはもう遅い。狭く深い間隙は身動きを封じ、無理に出ようとすれば機体の損傷は免れないだろう。
「最低限の兵装は破壊させて貰うけど、操縦席に居た方が安全やと思うよ? まだまだ連れてくるつもりだしね」
 そうして二十ミリガトリングガンで両手足を手早く破壊すると、佳奈恵は踵を返して戦場へと舞い戻る。だがほんの数分の間に、戦況は大きく様変わりしていた。
「前方に三、右側面に二、左に四……後方から隙を窺っている機体は此方で処理しておきますので、どうかご安心を」
「はっ、助かるぜティー! これで心置きなくやりあえるってもんだ!」
 意気揚々と暴れ回る忍に加え、先ほどまで空へと上がった敵部隊に追いかけられていたティーもまた戦線へ復帰を果たしていた。ちらりと遠方を見れば、煙を上げる機体が点々と荒野に散らばっている。上手く撃破する事に成功したのだろう。更には時折、彼の指示によるものと思しき支援砲撃も降り注ぐ。
『K型は砲弾迎撃に専念しろ! コイツの相手をするにはS型の運動性しかない!』
『F型は引き続き観測員とワイヤー使いを狙え。単騎で当たるな、数の優位を活かせ!』
 だが相手の抵抗も未だ激しい。それに対し、忍はサーチライトによる目潰しを織り交ぜながら挑み掛かってくるS型へ接近、脚部を思い切り振り上げた。
「白兵戦は何も得物ばかりを使うのが能じゃねぇ。やっぱり、手足を使ってこそが華だろ!」
 膝から伸びる鋭利な衝角で相手を串刺しにするや、左腕に備え付けられたアームを伸ばして操縦席回りの装甲を引き剥がす。呆気に取られるパイロットを、佳奈恵がセンチネルのマニピュレーターを使って摘まみ出し捕縛してゆく。
「相手の数もだいぶ減っとるね。そろそろ頃合いやなかと?」
「ですね……中佐殿。守りに回るのも楽しいでしょうが、偶には打って出るのも一興かと。皆様の士気にも関わりますしね?」
 猟兵たちの働きにより、敵部隊の連携も大きく崩れている。このままずるずると続けるよりも一度完全に押し切ってしまった方が良いだろう。ティーの提案に対し、返答は満足そうな声色を帯びていた。
『なるほど、「最後の決は我が任務」という訳か。お膳立てして貰って済まないね。それじゃあ諸君、みんな揃って突撃といこう。きっと楽しいぞ?』
 それまで堅固に守りを固めていた自治領側が打って出ると、瞬く間に戦況は此方側へと傾いてゆく。散々に打ちのめされた鬱憤も相まって、増強大隊の働きも中々のものだ。暫しの後、戦場には破壊されたキャバリアの山が生まれるのであった。
『諸君らの働きで、敵の第一波はこれにて撃破できた。しかし、まだまだ後続が接近しつつある。済まないがもうひと踏ん張りして貰おう』
「おう、望むところだぜ!」
 ハイネマンのちっとも申し訳ないと思って無さそうな言葉に、忍もまた威勢の良い返事を返す。遠方を見やれば、着陸する無数の暗緑が見て取れる。猟兵と大隊はひと時の勝利を言祝ぎながらも、更なる戦いへと身を投じてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セフィリカ・ランブレイ
状況的に私の愛機、スプレンディアの出番はない
性能高くても、稼動6分で再出撃にメンテ丸2日じゃね

サイクロプスを借りる
更にメカニック技術を総動員して改造!
装甲を更に強化、緊急時用のブースターを増設
広範囲に攻撃できる試作兵装を多数積んだ、フルアーマー式の完成だ!

私は囮部隊に
足は遅いけど攻撃範囲の広いコイツなら気を引くのにバッチリだからね
逃げ足も確保はした。使わないのが1番だけど

【フォースマシン総突撃】
手持ちの魔導ゴーレムも総動員、派手に立ち回る!

『ハイネマンって男。私は好かないわ。共通の敵がなくなった時、何かしでかしそうでね』
シェル姉…相棒の魔剣がぼやく

…ノーコメ!
今はこの場を乗り切ろっか!



●鉄騎、鉄量を以て蹂躙す
「状況的を見る限り戦況は持久戦になるでしょうね……となると、私の愛機、スプレンディアの出番はない。幾ら性能が高くても、稼動六分で再出撃のメンテに丸二日じゃ流石に、ね?」
 戦闘開始から暫しの時間が過ぎ、敵の第一陣を撃破した頃。セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)の姿は未だ自治領側の格納庫に在った。彼女のキャバリアである紫水晶の戦姫『スプレンディア』は性能こそ隔絶しているものの、稼働時間と整備性にかなりの難がある。短期決戦ならいざ知らず、迫り来る敵を延々と迎え撃つには余りにも不向きだ。
 であればと、彼女は自治領側よりサイクロプスを借り受ける事にしたのだが、性能は悪くはないが正直言って満足からは程遠い。その為、蒼剣姫は整備兵の協力を得て急ピッチで機体の改造を進めていたのである。
「こっちは概ね仕上げられたわね。そちらの進捗はどうかしら?」
「問題ない、いま終わった所だ。しかし……オーダー通りにやったとはいえ、扱いきれるのか?」
 工具片手に作業をしていたセフィリカの問い掛けに、整備兵もまた完了報告を上げてくる。とは言え、その言葉尻は些か疑念が滲んでいた。だがそれも無理はないだろう。ベースとなるC型の全身に装甲を追加し、各部に緊急機動用のブースターを増設。榴弾式バズーカや近接防御用ショットガン、使い捨てのミサイルコンテナをしこたま積み込んだその姿は原型機と比較して異形と評して良い。しかし一方、蒼剣姫は非常に満足げだ。
「こういったフルアーマー式改造ってちょっとわくわくしないかしら? それに、実用性も担保してくれているでしょう?」
「まぁ、そこはな。ただ重量増加で関節部への負担が大きくなっている。余り無茶はするなよ?」
「オーケー。だけど、そう言っていられる余裕があるかどうか……ともあれ、それじゃあ行きましょうか!」
 整備兵に感謝を述べつつ、セフィリカは機体へ乗り込むとすぐさま出撃してゆく。操縦桿越しに機体の帯びる重々しさを感じながら、一路戦場を目指すのであった。

『敵の第二陣と接敵! っ、さっきよりも数が多い!?』
『第一陣は露払い役だったのだろうさ。気張れよ諸君、ここからが本番だぞ?』
 重武装型が戦場へ辿り着いたのと、自治領部隊が敵と交戦を開始したのはほぼ同時であった。先遣部隊が壊滅したのは相手も当然把握している。油断が消え、代わりに怒りを滾らせた敵の攻勢は苛烈だ。その真っただ中へ、セフィリカは機体を飛び込ませた。
「足は遅いけど、攻撃範囲の広いコイツなら気を引くのにバッチリだからね。逃げ足も確保はした……まぁ、使わないのが一番だけど」
 榴弾式バズーカで戦線へ強引に穴を空け、その間隙へ機体を滑り込ませるやミサイルと散弾銃の斉射によって敵の勢いを減じさせる。そうして生まれた空間へと、蒼剣姫は魔力を流し込んでゆく。
「遅参の非は働きで代えさせてもらうわ。数ならこっちだって負けちゃいないわよ!」
 瞬間、起動した無数の魔方陣から現れたのは大量の人型兵器たち。キャバリアではない、セフィリカが作り上げたゴーレムである。それらは使役者の意に従い、一斉に敵陣へと殺到し始めた。
『ははは、どういう原理かは分からんが無人機とは素晴らしい。生き残れたら是非とも教えを請いたいものだ』
(……ハイネマンって男。私は好かないわ。今は良いだろけど、共通の敵がなくなった時に何か大事をしでかしそうでね)
 無線を通じて喝采するハイネマンの声が届くも、操縦席に持ち込んでいた魔剣はぼそりと不信を零す。意志ある武具は、どうやら戦争狂の秘めた危うさを感じ取ったようだ。
(んーー……そこはノーコメで! 取り敢えず、今はこの場を乗り切ろっか!)
 乱世の英雄、平時の邪魔者。そんな例は幾らでもある。だがまずはいまこの戦いを乗り越えねば、戦後も何もないのだ。と……その時。
『貴様がこれらの操り手かっ!』
 K型の支援を受けたS型が包囲網を強引に突破、長短二振りの刃を手に襲い掛かってきた。白兵戦機だけあって軽快な機動力で瞬く間に距離を詰めると、操縦席目掛け得物を振りかぶり……。
「っと! 合って良かったわね、追加ブースター!」
 緊急稼働させた推進機によって機体をずらし、敵の狙いを逸らすことに成功する。返す刀で散弾銃を差し向けるや、そのまま発射。無数の弾痕と共に相手を無力化させた。
「さぁて、弾はまだまだあるからね。どんどん掛かってきなさい!」
 最前線で立つ異形の重装型。その威容は敵に畏怖を、味方に頼もしさを与えてくれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルジール・エグマリヌ
新しい玩具(キャバリア)を試したかったんだ
闘争という遊びを楽しむのなら
ぜひ私も混ぜておくれ

カスパールに搭乗すれば
二進法の死神へと変身
さあ、鋼鐵の蹄で戦場を駆けようか

先ずは弓で敵の脚部を撃ち抜いて足止めを
その隙に肉薄すれば敵機体を引っ掴んで
コンピューターウイルスを流し込んであげよう
キャバリアに何処まで効くか分からないけど
システムを狂わせることが出来たら僥倖かな
捕虜の扱いは勿論、丁重に

変身の残り時間が少なく成ったら
広範囲に複数本の弓矢を放ち、敵を纏めて足止め
序に戦闘狂の諸君に通信しよう
やあ、縫い留めた獲物は君達にあげる
あとは紳士的に牙を折ってあげると良い

私は少し眠る
秘蔵のボトル、楽しみだな――



●蹄鉄の調べと共に、鳴弦を爪弾け
「この新しい玩具(キャバリア)を試したかったんだ。闘争という遊びを楽しむのなら、参加者は多い方が盛り上がるだろう? 是非、私も混ぜておくれ」
 小高い丘の上で待機するキャバリア、その操縦席内部で甘やかな紫煙が静かに揺らめく。短くなった煙草を揉み消しながら、ヴィルジール・エグマリヌ(アルデバランの死神・f13490)は眼下で繰り広げられる闘争を興味深げに見下ろしていた。囮役である自治領大隊と協力した猟兵たちによって、大国側の鎮圧部隊は浮足立っている。早々に反抗勢力を掃討するか、見え隠れする不確定戦力の把握に努めるか。暫くすれば統制を取り戻すだろうが、むざむざそれを待つ義理も無い。
「立ち直るよりも先に、君たちの世界を書き換えるのも一興だろうね」
 青年が操縦桿を握った瞬間、ぞわりとした感覚が全身へと走る。機体を通して流れ込んでくるのは、零と一によって構成された悪魔の魂だ。異形への変貌を示すかのように白目は漆黒に染め上げられ、それを隠すようにヴィルジールはフードを目深に降ろした。
「……さあ。それじゃあ、鋼鐵の蹄で戦場を駆けようか」
 同時に彼の駆る鉄騎『Caspar』もまた目を覚ます。総身に纏った装甲板は青藍色に染め上げられ、己が受け継ぎし艦を示す『CdC』の銘が刻まれている。キャバリアとしては珍しい四つ足の脚部に手にした大弓が相まって、その姿は弓騎士然としていた。乗り手の意に従い、キャバリアは丘を駆け下りながら悠然と戦場へ突入してゆく。
『新たな敵影接近……全く次から次へと、今度は騎士気取りか。S型は前へ出ろ、K型は援護に回れ。敵は単騎だ、足を止めて討ち取るぞ!』
 吶喊するヴィルジールへ応じたのは異なる機種同士で編成された部隊だった。肩部にキャノン砲を備え付けたK型が牽制射を開始すると同時に、機動力に長けた白兵戦仕様のS型が肉薄してくる。その中間でライフルを構えるF型は遊撃手と言った所だろう。
「砲撃手を放置したままでは横槍を入れられかねない。まずはあちらを大人しくさせるとしよう。近づいて来る相手はその後でも問題ないかな」
 一定間隔で降り注ぐ砲撃を回避しながら、鉄騎は些かも速度を減じさせることなく手にした弓で応射を放つ。当然K型も避けようとするが、砲弾と違いこちらは軌道に変化をつけられる。着弾直前で僅かに曲がった矢は脚部を貫き、機動力を奪っていった。
『人だろうとキャバリアだろうと、コイツが騎兵に覿面なのは変わるまい!』
 だが一方、その間に距離を詰めたS型が間髪入れずに挑み掛かってきた。手にした得物は大型目標を想定した長大な槍。その穂先はまっすぐ弓騎士へと吸い込まれてゆき……。
「……済まないが、こちらは三次元的な動きの方が得意でね?」
 しかして、本物の騎馬さながらの跳躍によっていなされた。これも宇宙空間での生活によって育まれた感覚の賜物と言えるだろう。そうして今度は逆に相手の懐へと飛び込むや、ガシリと頭部を鷲掴みにする。だが、破壊が目的ではない。
「さて、このままコンピューターウイルスを流し込んであげよう。キャバリアに何処まで効くか分からないけど、そう大きな差もなさそうだ。システムを狂わせることが出来たら僥倖かな? 捕虜の扱いは勿論、丁重に」
 二進法の死神、その権能によるハッキングである。果たして、電子的病原体は防火壁を貫きS型を強制停止させた。慌てて飛び出してくる敵操縦者を傷つけぬよう捕縛しながら、ヴィルジールはバッテリー残量へ目を走らせる。
「技術力の差はあれど、軍規格相手では消耗が激しいね……それなら」
 継戦可能時間が残り少ないと知った瞬間、青年は鉄騎を手繰り四方八方へ矢を放つ。それらが残ったF型は元より、他の機体も纏めて地面へ縫い留めた事を確認すると、おもむろにハイネマンへと通信回線を開いた。
「やあ、こちらは粗方無力化に成功した。縫い留めた獲物は君達にあげるから、あとは紳士的に牙を折ってあげると良い」
『ほう、それは重畳だ。任せ給え、速やかにご招待するとしよう』
 自治領側が敵兵士の捕縛に動く様子を見届けつつ、ヴィルジールはくるりと踵を返した。異能の反動がもうそろそろやって来る頃合いだ。暫し、戦場を離脱せねばなるまい。
「それでは、私は少し眠るとしよう。ああ、それにしても……」
 秘蔵のボトル、楽しみだな――。機体を安全な場所へと退避させたのち、青年はそんな期待感と共に静かに目を閉じるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
これは信頼できる
戦争は自由に、愉しくやりたいでござるよねわかるマン

負傷兵と大破した機体を全部持ってきてくれ!命を吹き込んでやる!
これらをまとめてヒールグ…特殊な【パンジャンで爆破】するとアラ不思議!怪我は全て消え去り機体は新品同然に!詳しくは企業秘密ですぞ
人員と機体は中佐殿が使うと良いでござるよ

20人ほど借りて正面の殴り愛へ参加ですぞ、機体はいらない
地形に潜んでからの単騎突撃!こいつは良い、どっちを向いても敵ばかりだ!
メインカメラ、グレネード、翔んでる奴はブースターに銃弾をくれて大人しくさせ、機体と捕虜を隠れていた部下に鹵獲させますぞ
大破してようが拙者がこの場で雑に直すので問題無いでござるよ


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
※絡み連携アドリブ大歓迎
※愛機『ナインス・ライン』で参戦

アタシも傭兵として狂った戦局や兵士は多く見たけど
中佐は結構キメた方のウォーモンガーだよね
ま、そーゆーのキライじゃないけど♪

あ、一応闇医者だからソッチも要請あればやるよ
中佐も極上の一瓶くれるまで死なせないんで宜しく♡
…一応オトナだからね

さて、まず前衛叩いて捕虜確保しないと…
オペレーション2番【ファンタズマ・スフィア】起動
『状態異常力』重視の制御パターンでPPを拡散
【ジャミング】と光学【迷彩】の合わせ技で側面へ潜伏

ビームマシンガン(の単発式ライフルモード)と
大型対物ライフルで敵機の手足を確実にもいでいくよ
…死人出して無駄に煽るのは避けたいしね



●銃火突撃のみが華ならず
「……これは信頼できる。戦争は自由に、愉しくやりたいでござるよねわかるマン。どんだけ頑張っても『騙して悪いが』と言われる事もある傭兵稼業、ネジが外れていようがこういう御仁の方がやりやすいですしな」
「確かに、アタシも傭兵として狂った戦局や兵士は多く見たけど、中佐は結構キメた方のウォーモンガーだよね。ま、そーゆーのキライじゃないけど♪ 狂っているなりに筋は通してくれそうだし」
 悪魔っぽい表情を浮かべるエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)の言葉に、ころころと笑うリーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)。だが交わす言葉とは裏腹に、両者の姿は戦線後方に在った。だが何も、サボタージュを決め込もうなどと言う訳ではない。
「衛生兵、トリアージはこっちで済ませた。今は戦線に穴を空けられないんだ、パイロットを優先して頼む!」
「破壊された敵機から使えそうな部品を持ってこい! 元々の品質はこっちより上だからな、多少破損していようが構わん!」
 混迷した現場を時に『野戦病院』と評するが、傭兵たちの立つ場所は正にそれそのもの。此処は治療所兼仮設修理場である。血の滲む包帯を巻かれて呻く怪我人や、煙を上げながら擱座する機体がそこら中に犇めく様は後方とて戦場の一部であると如実に物語っていた。
「……ま、ある種見慣れた光景でござるなぁ。哀しいけど、やっぱりこれ戦争なのよね」
「ただ、今回はこっちが明らかに劣勢側。一応闇とは言え医者だから、打って出る前に少しばかりお手伝いしておこうか。兵士は勿論、中佐も極上の一瓶くれるまで死なせるつもりはないからね?」
 二人がこうして足を向けていたのは、ある意味で傭兵らしい考えに基づいての事だ。後ろがパンクして総崩れなど御免被る。前方の敵だけでなく、退路や安全地帯と言った背面にも気を配らねば生き残れない。と、そこで黒髭は傍らの仲間へ訝し気に視線を向けた。
「一にも二にも、戦いは数ですからなぁ……と言うか、お酒を飲める年齢ござるか?」
「……一応、オトナだからね?」
「成程、いわゆる合法ロげぶほぉっ!?」
 何やら胡乱な単語を口走ろうとしたものの、リーゼロッテに脛を蹴り上げられてエドゥアルトは悶絶する。それを尻目に治療所へ向かう闇医者を見送りながら、黒髭はさてと周囲を見渡した。
「さてさて、拙者も動くとするでござるか。あちらはまだ助かる方を見て貰うとして、某は『黒』判定の連中を受け持ちますぞ……へい、そこのブラザー! 手遅れの負傷兵と大破した機体を全部持ってきてくれ! 死体に命を吹き込んでやる!」
「いったい何を……と聞く時間も惜しいか。分かった、少し待っていてくれ!」
 呼びかけられた兵士は一瞬躊躇うものの、議論の時間が惜しいと猟兵の求めに頷く。果たして五分も経たぬうちに、エドゥアルトの周囲には負傷者の乗せた担架やキャバリアを曳く牽引車が集結する。だが、いったいこの傭兵が如何にして彼らを救うのか、想像できる者は居ないらしかった。
「なぁ、言われた通りにはしたが、この後はどうするつもりなんだ?」
「HAHAHA、どうするって決まっているでござるよ……こうするのさ! あそれ、ポチっとな」
 兵士の問い掛けに対して、黒髭は懐から取り出した謎のボタンを押す事で返答とした。瞬間、何処からともなく飛び込んで来た自走式爆雷が中心部で爆発。周囲一帯へ虹色の煙を撒き散らしてゆく。乱心としか思えぬ所業に、思わず兵士が猟兵の首を締め上げる。
「おい、何考えてやがるんだアンタ!?」
「いや大丈夫だから! これはただのヒールグ……特殊な薬品だから! マジで回復するんでござるよマジで! これで怪我は全て消え去り、機体は新品同然に!」
「そんな訳ある、か……って、嘘だろ?」
 当初は信じていなかった兵士だったが、煙が晴れた後の光景を見て思わず二の句を告げなくなった。エドゥアルトの言葉通り兵士から傷が、機体から損傷が綺麗さっぱり消えていたのである。何事かと駆け付けたリーゼロッテも、事情を察して溜息を吐く。
「闇医者のアタシが言うのもなんだけど……事前説明って大事よ?」
「いやはや、時間が惜しかったござる故。それに詳しい内容は企業秘密ですぞ。ともあれ、これで問題は解決という訳で……」
 いっちょ、反撃と行こうじゃねぇか。起き上がった兵士たちを前にして、傭兵はそう不敵に笑みを浮かべるのであった。

「右翼は押され、中央は崩れかけ、撤退は不可能。つまり、状況は最高だな。こいつは良い、どっちを向いても敵ばかりだ!」
『テンション上げるのは良いけど、そっちは生身なんだからあんまり無茶しないでね? アタシも援護するけど、死んだら流石に手の施しようがないからさ』
 そうして暫しの後、エドゥアルトとリーゼロッテは復帰した兵士たちを率いて前線まで移動していた。黒髭は二十名ほどの部下を連れて地面の窪みに隠れており、そこから離れた岩の上には重量級キャバリア『ナインス・ライン』に搭乗した闇医者が陣取っている。折角治した兵士や装備を、またすぐ後方送りにするなど非効率的だ。故に、彼らは待ち伏せからの奇襲によって被害を抑えつつ敵戦力を削らんと目論んでいた。
『さて、まず前衛叩いて捕虜確保しないと……オペレーション2番【ファンタズマ・スフィア】を起動し、PPの拡散を開始。ジャミング及び光学迷彩を展開』
 リーゼロッテが愛機の主機出力を上昇させると、緑に輝く粒子が機体表面を覆いながら周辺へと拡散してゆく。それと同時に、じわりと溶ける様に機体が掻き消えた。特殊な力場によるステルス能力だ。その輝きを遠巻きに眺めていたエドゥアルトが、恐る恐るといった様子で尋ねる。
「……それ、人体に影響はあるでござるか?」
『え、このキラキラは無毒だよ。だって、アタシが平気だもん』
「いやそれ操縦席で守られているからでは……っと、おいでなすったな」
 さっと視線を向けると、上空を飛行する編隊が見えた。遅れて地上を駆ける部隊の姿も捕捉する。天地の二方向から三次元的に攻め立てようという心づもりなのだろう。だが、そうは問屋が卸さぬというもの。
『地上部隊はまだ距離があるから、射程的にアタシが狙うよ。上空は任せられる?』
「もちろんですぞ! メインカメラにグレネード、翔んでる奴はブースターと弱点はよりどりみどりでござる!」
『性格は兎も角、腕前は信用しているからね。それじゃあ、始めるよ!』
 リーゼロッテの構えた大型対物ライフルと、エドゥアルトの自動小銃が火を噴いたのはほぼ同時。弾丸は敵機の関節部へ吸い込まれるや、強烈な運動エネルギーによって手足をもぎ取り擱座させた。また上空の機体もセンサーを潰され為す術もなく墜落してゆく。だが、両者とも隠密には特に気を配っている。相手はこちらの姿を発見できていないらしく、右往左往するだけだ。
『命は取らずに機体だけを壊す。傭兵としちゃ温いかもしれないけど……死人を出して無駄に煽るのは避けたいしね』
 漏れ出た独白は傭兵としての損得勘定か、それとも医療に携わる者としての視点からか。そんな仲間の内心を知ってか知らずか、黒髭の意気揚々とした声が通信機越しに響く。
「捕虜については拙者の部下を捕縛に向かわせますから大丈夫ですぞ。機体に関しても大破してようがこの場で雑に直しますゆえ!」
「頼もしいんだがそうでないんだか。ともあれ、無駄は出ないのは良い事かな?」
 そうして傭兵たちは照準器越しに敵を狙いちながら、着実に戦果を重ねてゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ダビング・レコーズ
猟兵は人類種同士の抗争に介入するべきではない
ユーベルコードとグリモア
二つの戦術と各個人に依存した力
文明の脅威以外に行使するには直接的な戦力以外の意味でも危険過ぎる
故に当機が破壊するのは鎮圧部隊では無くオブリビオンだ
メインシステム、戦闘モード起動
こちらアークレイズ
出撃します

敵部隊の側面より強襲を試みる
アークレイズをソリッドステート形態に変形
VTOLとして運用し広範囲に渡る対地攻撃を行う
高度は極低空を維持しメタルレインを連続発射
威力は劣るものの搭乗者兵保護の必要がある状況下では有利に働く
増援が出現しても戦術に変更は無し
捕捉は速力で振り切り攻撃を継続
小銃程度の攻撃はEMフィールドで防護し無視



●見誤るな、己に課された役割を
『……猟兵は人類種同士の抗争に介入するべきではない。少なくとも、当機は自らの立ち位置をそう判断する』
 序盤のぶつかり合いを過ぎ、戦闘はジリジリと細かな優位を奪い合う拮抗戦の様相を呈し始めている。停滞気味の状況を打破すべく横合いから機を窺いながら、ダビング・レコーズ(RS01・f12341)は此度の任務に対しそんな思考を巡らせていた。
『ユーベルコードとグリモア……二つの戦術と各個人に依存した力。文明の脅威以外に行使するには直接的な戦力以外の意味でも危険過ぎる。善意によって為した事さえ、何を引き起こすか見当もつかないのだから』
 戦機の懸念は至極尤もなものだ。現実を自由に改変する異能は時として不可逆的な汚染や死者の復活すらも実現させる。後者に関しても言うに及ばず、異なる世界同士を繋げる影響は如何なる電算機であっても予測し切れるものではない。それらが個々人の良識によってのみ運用されるというのは、ある種狂気の沙汰である。
『故に……当機が破壊するのは鎮圧部隊では無くオブリビオンだ。同じ異能を使用する、真逆の存在。それに対してのみ力を振るう限り、影響は最小限に抑えられる筈』
 その唯一の例外こそ過去からの脅威に他ならない。毒を以て毒を制するではないが、対象さえ見誤らなければ問題はないはずだ。それに裏を返せば、不要な命を奪わずに済むという事にも繋がるだろう。
『メインシステム、戦闘モード起動……こちら機体識別コード『アークレイズ』。オブリビオンマシン撃滅の為、出撃します』
 鋼を包む鋼、起動する白銀の巨兵。コアユニットと化したダビングの意に応じて立ち上がるは、背部に搭載されたスラスターが目を惹くキャバリアだ。発せられた命令に従い出力を引き上げると、機体は一気に最高速度まで加速。地面から足を離すと同時に、航空機形態へと変形した。
『っ、急速に接近する機体を確認……待て、なんだこの速さは!?』
『航空機だと。殲禍炎剣を避けるため低空機動を強いられるというのに、よくやるものだ』
 咄嗟に銃口を頭上へと向け、敵部隊は対空弾幕を構築する。それを持ち前の速力で振り切りながら、ダビングは相手の能力を分析してゆく。
(敵機の反応は当機の速度に対応し切っていない。一方、部隊単位での射撃による命中確率は軽視できず。着弾時の威力とEMフィールドの耐久限界を試算……対地攻撃に支障はないと判断)
 戦機は鋭角的な機動で機首を切り返すと、再び敵上空を目指す。先程よりも低速だが、代わりに電磁障壁を展開しながらの飛行である。これならば小銃程度の火力は凌ぎ切ることが可能だ。そうして敵部隊を射程圏内へ捉えるや否や、ダビングはウェポンユニットのハッチを開く。
『……攻撃目標自動捕捉。メタルレイン、連続発射』
 瞬間、夥しい数のミサイルが内部より解き放たれた。それは幾条もの白い軌跡を曳きながら地上へと降り注ぎ、狙い誤ることなく敵機へと着弾してゆく。立て続けに爆発が巻き起こるが、意外にも相手はどれも原形を留めている。
『機体中破、なれども火器管制系に異常あり! 止む終えん、機体を破棄する!』
『こちらも脚部に損傷! 固定砲台程度にはなれるが、良い的でしかないぞ!?』
 だが、かといって戦えるかと言えばそうでもないらしい。早々に乗機へ見切りをつけた操縦者たちが脱出しているのが確認できる。威力だけならより強力な装備も勿論あるが、今はこの程よい威力こそが必要だった。
(メタルレインは威力に劣るものの、搭乗者兵保護の必要がある状況下では有利に働く。命中精度も良好なため、捕虜を捕縛しに来る友軍を巻き込む危険もない)
 有言実行、ダビングは飽くまでもオブリビオンマシンの破壊だけを狙い続けている。そして、その選択は予定通りの結果を叩きだしていた。敵もまた増援を呼びつつ白銀の機体を撃墜せんと弾丸をばら撒き続けるも、電磁障壁を破るには程遠い。
『残弾数、未だ余裕あり。このまま攻撃を継続する』
 そうしてダビングが繰り返し敵上空を旋回しながら、ミサイルの雨を降らせ続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

獅堂・優希
キャバリア戦もいいけど~今回はこのままで行こ~。マキナトルーパーにへんし~ん!移動用にサイドカーとか借りられるかな~?
キャバリアよりも~私は小さいから~物陰にいれば~見つかりにくいよね~?
敵の一番前の子を~フルパワーでこっそり狙い撃ちだよ~。腰のあたりを狙えば当たりやすいし~動きも止められる……かな?
一発撃ったら急いで移動だよ~同じ場所にいると見つかっちゃうもんね~。
新しい場所に隠れたら~敵が近づいてくるまで待って~来たらまた一発どーん!
何発撃てるかわからないけど~エネルギー切れまでそんな感じでがんばろ~。ガス欠になったら素直に帰るのもいいけど~他の子の移動を手伝うのもいいよね~。



●鎧と銃弾の理論は変わることなく
「う~ん……キャバリア戦もカッコいいけど~、今回はこのままで行こ~。それじゃあ、マキナトルーパーにへんし~ん!」
 硝煙立ち登り、鉄と鋼がぶつかり合う泥沼の戦場。緊迫と緊張が満ちるその場所で、しかして獅堂・優希(すやすやライオン・f30694)の口調は常と変わる様子はなかった。間延びした緩い口調でぽんと一つ手を打つと、彼女は己が武具を呼び寄せる。一瞬燐光が全身を包み込んだと思うや、少女の姿は黒を基調とした鎧装に包まれていた。
「キャバリアよりも~私は小さいから~、物陰にいれば~見つかりにくいよね~? あとは移動用にサイドカーとか借りられると助かるかな~? 持っては行けるけど~運べるものがあれば便利だよねぇ~」
 加えて、外部接続式の武装もまた出現していた。無論携行する事は可能ではあるが、元が宇宙空間での運用を前提とした装備だ。重量やサイズを始めとして、重力下での使用にはやや難がある。手近に居た兵士へ試しに尋ねてみると、運よく修理を終えたばかりの二輪車が空いていた。手早くサイドカーを取り付けて貰うと、武装を積み込んだ優希はそれに跨り戦場へと飛び出してゆく。
「場所は~……あそこが良いかなぁ~?」
 敵の目を盗みながら暫しタイヤを走らせると、丁度いい具合に下草が生い茂る一角が視界に飛び込んで来た。少女は停めたバイクに草を被せて隠蔽すると、プラズマ小銃を構えながら寝そべる。幸い前線からそう距離も離れておらず、照準器を覗けば機影を捉えることが出来た。
「敵の一番前の子を~フルパワーでこっそり狙い撃ちだよ~。腰のあたりを狙えば当たりやすいし~動きも止められる……かな? 操縦席に当てないよう気をつけなきゃね~」
 人間サイズの武器で巨大なキャバリアを撃破できるかと問われれば、答えはイエスだ。火器は僅かな改良で意外と威力を上げられるものだが、敵機を覆う装甲板はそうもいかない。防御力欲しさに装甲厚を上げれば、その分機動力は損なわれる。鎧と銃弾の競い合いはいつだって後者に軍配があがるもの、それが科学力に秀でたスペースシップワールド製であれば猶更だ。
「それじゃあ、狙いを定めて~……いま!」
 トリガーを引いた瞬間、放たれた熱線がキャバリアの腰部を貫いた。下半身の操作系統が寸断されたのか、ぐらりと機体が崩れ落ちてゆく。だが、攻撃された方向は察知出来たのだろう。被弾機がこちらを指差した途端、他の機体が一斉にライフルを掃射しながらグレネードを投擲してくる。
(正確な居場所は見つかっていないようだけど~あんまりいい気分はしないよね~?)
 着弾した銃弾が地面を吹き飛ばし、グレネードの爆発が大地を揺らす。居場所自体は把握出来ていないらしいが、辺り一帯を塗りつぶす様に攻撃が叩き込まれる。それはさながら爆撃か砲撃の様だ。全身を強固な鎧装に包み込んでいるとは言え、直撃すればただでは済むまい。
 だが幸いにも運が味方したようだ。十分な攻撃を叩き込んだと見るや、敵部隊は踵を返してその場を去り始める。完全に注意が離れた事を確認すると、優希は土埃を払いながら身を起こした。
「いまのはちょっと危なかったね~……ともあれ急いで移動だよ~。いつまでも同じ場所にいると今度こそ見つかっちゃうもんね~」
 二輪車も目立った損傷は無く、稼働に問題はない。そうして鎧装騎兵は狙撃ポイントを点々としながら、一機一機確実に敵キャバリアを無力化していった。だが、二桁を越えて暫くした辺りでスコアが止まってしまう。理由は単純、エネルギー切れだ。彼女の装備はどれも外部から動力を供給する形式で在り、鎧装本体のエネルギーが底を尽けば使用不可能となる。
「ガス欠かぁ~……素直に帰るのもいいけど~、他の子の移動を手伝うのもいいよね~。囮くらいなら大丈夫かな~?」
 戦闘はまだまだ続くはず。帰還しても補給を行っても良いが、恐らくは猫の手も借りたい状況だろう。ならば、今できる事をするのも一手か。優希は敵の注意を惹くべく、二輪車へと跨り今度は打って変わって自らの姿を晒してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動

◆心情
戦争狂か。まあ良い、無秩序に暴力をまき散らさんのであればオブリビオンよりはましだ
オレの仕事を果たすとしよう

◆キャバリアは使用せず生身で行動
敵が飛行したタイミングを狙いUCを使用、眠り属性の雲を生成しパイロットを眠らせ地面に墜落させます(属性攻撃、全力魔法等を併用
空調がついていようが酸素ボンベを積んではいまい。パイロットが気絶すればキャバリアとて木偶に過ぎん
落下の衝撃で爆発されると困るな、姿を見せて囮となり、残像やロープワークで回避しながら敵を地表へ引き付け高度を下げさせよう

墜落したキャバリアの鹵獲とパイロットの捕縛はハイネマン達に任せる
報酬は、せいぜいうまい酒を貰おうか



●死よ、永久の眠りは不要なり
「……戦争狂、か。その在り様に幾分か危うさを感じぬわけではないが、まあ良い。無秩序に暴力をまき散らさんのであればオブリビオンよりはましだ」
 苛烈さを増す戦場を眺めながら、ローブを纏った人影がひっそりと佇んでいる。その相貌は暗く伺い知れないが、ただ燃えるような瞳だけが爛々と浮かび上がっていた。ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)は戦争狂について巡らせていた思考を一旦断ち切り、不意に視線を上げる。その先に見えるのは、編隊を組んだ暗緑色の点。
「またぞろ敵の増援か。戦力の逐次投入は愚策と言う話だが、やられる側としてはたまったものではない……であれば、オレも仕事を果たすとしよう」
 カツリと、ディスターブは手にした杖の石突で地面を突く。二匹の蛇が絡み合う意匠が施された、古めかしい魔杖。魔術師はなにやらぶつぶつと単語を繰りながら、魔力を注ぎ込む。すると杖の先端で鎌首をもたげていた蛇が口を開き、口腔より薄い靄の様な物を吐き出し始める。ややもすれば風に吹き散らされてしまいそう心許なさとは裏腹に、それは徐々に密度を増しながら上空へと広がっていった。
「一息でも吸い込んだものを眠りへ誘う雲だ。通常の航空機であれば意味は無いだろうが、この世界には殲禍炎剣があるのだろう? 空調がついていようが、高度も碌に出せぬ環境ならば酸素ボンベなぞ積んではいまい」
 加えて、『サイクロプス』に付与された飛行能力は飽くまでも限定的な物。本格的な空戦を主眼とはしておらず、専ら今回の様な素早い戦線輸送を目的としている。である以上、その気密性にはそこまで高いとは言えないはずだ。
「パイロットが気絶すればキャバリアとて木偶に過ぎん。計器も読み取れぬ状況ならば、如何な力量を持つとてただ墜ちるのみ……ふむ、とは言え落下の衝撃で爆発されると困るな。死なれては今後の戦闘に差し障る」
 カクリと首を傾げて思案するディスターブは、ならばと空を飛ぶ編隊の進路上へと足を向ける。それは即ち、自らの身を晒すという事に他ならない。杖先からは現在進行形で雲が吹き上がり続けている為、見つけられない方がおかしいだろう。
「敢えて姿を見せて囮となり、高度を下げさせるとするか。攻撃を受けるだろうがそこはそれ、幾らでもやり様はある……このようにな」
 魔術師は誰に聞かせるでもなくそう独り言ちると、手近な岩へロープを巻き付けせて飛び上がった。瞬間、先ほどまで彼の居た地面が吹き飛んだ。魔術師の姿を見つけた敵編隊が地上攻撃を開始したのである。
『くっ、なんだこの煙は……BC兵器か何かか!? 意識が保てん!』
『あの男が発生源だ、墜落する前に潰せっ!』
 しかし一方で催眠効果はしっかりと聞いているらしい。機体の挙動はふらふらと怪しく、狙いも碌に定まっていなかった。加えてディスターブの出で立ちや残像を利用したデコイなども相まって、相手にとってはまさに悪夢としか言えない状況である。
「これは下手に手を出せば逆に危なさそうだ。まぁいい、そう時間も掛からんだろう。このまま待っていれば全ては終わる。安心しろ、此度の眠りは死による永久のものではないのだからな」
 果たして、制御を失ったサイクロプスは次々と落下するや、大地を削り取りながら滑走した後に動きを止めた。試しに手近な一機へと近づき外部からコックピットハッチを開放すると、意識を失った操縦者の姿を確認できる。
「生命に別条なし、落下の衝撃で目覚める様子も皆無。捕縛と鹵獲についてはハイネマンたちに任せれば問題ないだろう……報酬としては、そうだな」
 ――せいぜいうまい酒を貰おうか。くつりと、喉奥で小さく嗤いながら。ディスターブはローブを翻し、次なる敵を求めその場を去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

西院鬼・織久
戦場だと言うのに敵を狩っても殺せないとは面倒な
血肉を啜れぬ戦は餓えてしまいます

だが我等が血肉もまた怨念滾らす糧なれば、我等が血を流すに足る死線を望むとしよう

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ周囲の状況を把握し敵行動を予測

先制攻撃+ダッシュで接近
串刺し+貫通攻撃で槍伝いにUCを流し込み傷口をえぐり、怨念の炎(呪詛+焼却)の継続ダメージで装甲を損耗
敵機に乗り上げ武装や手足の関節部をなぎ払いで切断

敵攻撃のタイミングと軌道を見切り回避し外れた攻撃が他の敵機を巻き込むよう立ち回る

瀕死寸前の破壊で留めるが敵UCが発動し数が増えても同じように対処
傷は各種耐性と精神系技能で無視、攻撃の手を止めない


メアリーズ・エリゴス
ミヒャエル・ハイネマン中佐、私とはちょっとズレてますが、似たような狂人で仲良く出来そうな方ですね
それに、あぁ!大軍が来るということは沢山壊(アイ)せるということですね!殺(アイ)するのは避けなければいけないのが少々不満ですが、それを差し引いても素晴らしいです!
そんな戦場を頂けたことに感謝しますね、中佐

念動力式ビット?なんでこんなものがあるか分かりませんがお借りしますね
うふふ、高ぶって我慢できませんので【オーバードーズ】しちゃいますね
きひっ!ひひっ!さぁ正面突撃ですよぉぉ!
生体CPUとしてロートガルの性能を存分に発揮してビットもあって何時も以上のビームの嵐で敵機を壊(アイ)していきますよぉぉぉ!



●狂乱と戦乱を愉しみ、されど命は傷つけず
「ミヒャエル・ハイネマン中佐……私とはちょっとズレてますが、似たような狂人で仲良く出来そうな方ですね。ただただ純粋に闘争を愉しもうとしている。自分が死ぬ危険についても、ゲームに負けた程度としか考えておりませんわね、きっと」
 焦げ付いた嫌な匂いが充満し、大地には幾つもの砲弾痕が穿たれ、怒号と銃声が鼓膜を震わせる戦場。その中に在って、メアリーズ・エリゴス(生体CPU・f30579)は飽くまでも愉し気な笑みを浮かべていた。口調こそ丁寧だが、言葉の端々には熱に浮かされた様な感情が混じる。
「それに、あぁ! 大軍が来るということは沢山壊(アイ)せるということですね! 殺(アイ)するのは避けなければいけないのが少々不満ですが、それを差し引いても素晴らしいです!」
「アイだなんだというのは良く理解出来ませんが、確かに戦場だと言うのに敵を狩っても殺せないとは面倒な。作戦上必要とは言え、血肉を啜れぬ戦は餓えてしまいます」
 傍らで感極まる仲間の言葉に相槌を打ちつつ、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は腕を組みながら眉根を顰める。彼もまたメアリーズほど表立ってはいないが、その裡に殺意と狂気を秘めし者だ。口調の差異はあれど、話している内容自体にそう相違はなかった。
「だが……我等が血肉もまた怨念滾らす糧なれば、我等が血を流すに足る死線を望むとしよう。生温い戦では満足できぬが故にな」
「良い具合にドロドロになっていますし、その心配は大丈夫そうですけどね。ふ、ふふ……そんな戦場を頂けたことに感謝しますね、中佐」
 ともあれ、此処からは言葉でなく剣弾を以て語らう時間である。織久は己が身と呪われし武具を頼みとし、メアリーズは真紅の試作重キャバリア『ロートガルド』へと乗り込み、最前線目掛けて飛び出してゆくのであった。

『……幾ら何でも時間が掛かり過ぎだ。このままでは後続の本隊に笑われるぞ』
『自治領側の戦力だけならどうとでもなるが、傭兵連中が曲者だな。どいつもこいつも厄介極まりない。だが、所詮は個人の武勇。戦争は一も二も数が重要だ』
 地面に走った巨大な亀裂、その内部に二個小隊ほどのキャバリアが身を潜めていた。この地形を天然の塹壕として利用し、ハイネマン率いる防衛部隊へ圧力を掛けていたのである。しかし、彼らの想定としては圧倒的戦力を以て反逆者を叩き潰すだけだったのだ。この様な膠着状態は不本意極まりないのだろう。
『なぁに、最悪は「アレ」が詰めている。戦術的勝利を幾ら重ねようが、戦略的には既に……ガッ、ザザザ』
『うん、おいどうした。通信感度が……っ!?』
 愚痴混じりの会話を交わしながら砲撃や銃撃を放っていた敵部隊であったが、不意に通信が途切れた。何事かとそちらへアイカメラを向けた瞬間、穴だらけになった僚機と虚空に浮かぶ無数の小型機械が飛び込んでくる。
『なんでこんなものがあるか分かりませんが、使って良いと言うのであればお借りしますね。さぁ、巣穴から出てきてくださいな?』
「待て、ビットだと!? 不味いっ!」
 それがオールレンジ攻撃を可能とする遠隔操作兵器だと気づいた瞬間、敵部隊は一斉に亀裂から飛び出した。ビットは小さく素早い上に、狭い空間内で戦えば同士討ちの危険が高い。故に広い場所へ出るのは正しい判断だが、それは差し詰めブラッド・スポーツ。巣穴から狩り立てられた獲物はただ狩られる運命にある。
『うふふ、出てきましたか。私も昂ってもう我慢できませんので、オーバードーズしちゃいますね……きひっ! ひひっ! さぁ正面突撃ですよぉぉっ!』
 オープンチャンネルで飛び込んでくるのは明らかに常軌を逸した女の声。薬物の過剰摂取により、強制的に超感覚と念動力を限界まで解放したメアリーズである。彼女は重量級の機体をブースターで巧みに操りながら、無数のビットを引き連れて吶喊してゆく。因みに念動式ビット群が払い下げられた理由は単純明快、扱える者が居なかった為だ。そういう意味では、彼女は正に適任と言えた。
『今日は自前の武装に加えてビットもありますからね、何時も以上のビームの嵐で皆さまを壊(アイ)していきますよぉぉぉ!』
『光学兵器搭載機か、厄介な……K型は弾種を散弾に変更、ビットの撃墜を最優先だ! 各機、グレネードを投擲して弾幕を張れ! 接近戦になれば火力の大半を封じられるはずだ!』
 だが、相手も正規の訓練を受けた軍人だ。瞬時に対応策を組み立て実行に移してきた。K型が散弾をばら撒きつつビットを牽制し、その隙に各機が手榴弾を投擲。爆煙で視界を遮りながら、接近戦に持ち込むべくブースターを吹かして吶喊し始めた……瞬間。
「……良い動きだ、ある種模範的ともいえる。故にその分、読みやすい事この上なかったぞ」
 煙を突き破り、人影が飛び込んで来た。それは敵の動きを観察していた織久である。彼は赤黒い槍を振りかぶりながら跳躍し、敵の機先を制すべく操縦席付近の装甲板へと繰り出してゆく。彼我の相対速度も相まって、凄まじい衝撃と共に穂先は鋼を穿ち貫いた。当然、青年本人にも反動が返ってくるものの、生まれ持った頑強さで痛みに耐え切る。
『なんだ、今度は生身の人間だと!?』
「……我等が怨念尽きる事なし。消えぬ黒炎に焼かれ、ただ燃え落ちるが良い」
 だが、それだけであれば機体の行動に支障はなかった。問題は槍の穂先より注ぎ込まれる怨念と殺意の焔。それらは内部へと浸透するや、伝達系統を介して全身を蝕んでゆく。振り払おうと身を捩ろうとするもそれすら儘ならず、さりとて誤射を恐れて仲間が手を出すことも出来ない。
『クソ、このままじゃ操縦席まで炎が回ってくる!? 止むを得ん、脱出する!』
 堪らずパイロットは脱出装置を作動させ機体を放棄する。敵の無力化を確認し得物を引き抜きながらも、織久の表情は少しばかり不満げであった。
「みすみす敵を見逃すというのは、やはりもどかしいものだな。まぁ良い、その分は数をこなすことで晴らすとしよう」
『悠長なことを! 脱出したならばもう手加減する必要もないぞ!』
 敵部隊は織久を取り囲むや、破壊された機体ごとライフルでハチの巣にし始める。直撃は愚か、掠めただけでも人間をバラバラにしかねない程の大質量。しかし、青年はその軌道を見切って避けながら、悠々と手近な一体へ躍りかかった。
「ふむ、とは言え一体一体を個別に処理するのは些か手間だな。ならば、そちらの武装を利用するとしよう」
 彼はライフルを構える腕の関節部へ槍を突き立てるや、幾つかのケーブルや接合部を破壊する。すると射撃の反動に耐え切れなくなったマニピュレーターが、トリガーを引いたままあらぬ方向へと銃口を向けてしまう。その先に居るのは当然、部隊の僚機だ。
『がぁああっ! よせ同士討ちだ、射撃を止めろ!』
『で、伝達系が破壊された! こっちからの制御が効かないんだ!?』
 こうなってしまえばあとは刈り取るのみ。織久は損傷の浅い機体を優先して破壊し、沈黙させてゆく。
『畜生、たかが一兵卒如きに……舐めるなよッ!』
 業を煮やした一機がむざむざやられるくらいならと、自爆覚悟でグレネードを取り出しピンを抜こうとする……が。
『残念、一人だけ楽になろうだなんて許しませんよぉぉっ!』
 握った爆薬ごと、大威力のレーザービームで腕部が吹き飛ばされた。自身へ向かってきた者らを蹂躙し終えたメアリーズによる狙撃である。決死の一手を潰された機体は、そのまま織久によって破壊され呆気なく沈黙。時間にすれば十分弱、それだけの時間で二個小隊は壊滅していた。
『あーあ、これでおしまいですねぇ……』
「なに、まだまだ増援は続いている。相手には事欠かんだろう」
 嘆息する少女を宥める様、青年は遠方を指し示す。そこには未だに戦闘を繰り広げる敵部隊の姿がある。二人はまだまだ暴れ足りないと、そちらへ急行してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春乃・結希
キャバリアに乗るのは、あなたが初めてなんです
よろしくね。一緒に、頑張ろうね

ミヒャエルさん達が引き付けてくれているなら
敵部隊の混乱を狙って、横からの強襲を狙います
以前、桜學府の学徒さん達にそうして貰ったように

銃なんて使っても当たらないし、難しい操作もわからない
でもこの装備なら、いつもの私と一緒みたいに動かせるかなって

加速特化換装『かげろう』
前面に【オーラ防御】を展開し、超加速からの斬艦刀による一撃【重量攻撃】
そのまま離脱して距離を取り、再度突撃を繰り返す
ううん、まだ足りない…あなたならもっと速く飛べるはずです
それがあなたの唯一の、そして最強の武器なんだから
まだ動くよね。もう一撃、行こう



●ただ、その一刀に全てを賭/駆けよ
『はぁ……あれがキャバリアでの戦闘ですか。こう、やっぱり人間同士のそれとはスケール感が違いますね』
 スペースシップワールドの宇宙戦艦、UDCアースやアポカリプスヘルの機甲兵器とはまた違った趣が、この世界の鉄騎には存在する。人型であるが故の利点、機械故の異形さを両立させた戦いに、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は思わず息を呑む。だがこれから彼女も同じ土俵に立ち、あの戦場へと飛び込んでゆくのだ。
『キャバリアに乗るのは、あなたが初めてなんです。どうかよろしくね。不慣れなところもあるかもしれないけど……一緒に、頑張ろうね』
 普段握り締めている愛剣に変わり、いま彼女の掌の中に納まっているのは硬質な操縦桿。常の剣戟戦とは違い、少女の姿はキャバリアの操縦席内に在った。搭乗する機体は丸みを帯びた黒い装甲板で形成されているが、それよりも目を惹くのは携えられた巨大な刀。キャバリアどころか、巨大な艦船すらも両断する特注品の斬艦刀である。逆に銃火器の類は一切見当たらず、清々しいまでに白兵戦へ特化した仕様だ。
『銃なんて使っても当たらないし、難しい操作もわからない……でもこの装備なら、いつもの私と一緒みたいに動かせるかなって。うん、やることはどのみち変わらんやけんね』
 よくよく見れば脚部はそれそのものが推進機となっており、機体に秘められた加速性能が窺い知れる。生身の結希も蒸気脚甲による踏み込みと、黒剣による斬撃を主戦法だ。そういう意味では、そこまでギャップを感じる心配も無いのだろう。
『ミヒャエルさん達が引き付けてくれているなら、有難くそれを利用させて貰おうかな。敵も大分混乱しているし、接近自体もそれほど難しくはないはず……以前、桜學府の学徒さん達にそうして貰ったように』
 脳裏に浮かぶのは、學徒兵たちと共に鉄十字の亡霊を迎え撃った事件。あれは生身同士での戦いだったが、その際の経験はしっかりと彼女の血肉になっている。故にあとはただ、結希の心構え次第だ。
『それじゃあ……いこうか、【かげろう】』
 レバーを握り締め、エンジンペダルを踏み込んだ瞬間、ぐんとシートに身体が押し付けられる。この機体に求められた要素は加速と斬撃、その二つのみ。機体や搭乗者への負荷は考慮されていないという、特攻機染みた設計思想だ。血の巡りが鈍くなる感覚を覚えつつも、少女はモニターや計器へ目を走らせて自機や周囲の状況把握に努めてゆく。
(車や飛行機なんかとは、また違う感触……流石にまだちょっと、慣れないかな)
『高速接近中の機影を捕捉、キャバリアの奇襲だ! 接敵まであと約二十秒!』
(っ、ぼうっとしている暇はないですね……!)
 オープンチャンネルで飛び込んでくる敵の叫びにハッと意識を切り替えると、結希はレバーとペダルを手繰って機体を小刻みにスライドさせる。瞬間、猛烈な弾幕射撃を襲い掛かってきた。余りの速度に狙いが定まっていないのか直撃弾こそないものの、弾丸が装甲を掠める度に不快な衝撃が全身に伝わってくる。
『狙いが、まだ……でも、まずは一撃ッ!』
 それでも怖れを無視して突き進み、彼我の距離がゼロとなった瞬間に得物を振りかぶった。しかし不慣れな操作故か軌道は若干ブレており、相手を掠めるに留まる。だが速度と質量を合わせた一撃はなおも強力で在り、余りの衝撃に敵機はバラバラになって吹き飛んだ。
『すれ違っただけなのになんて威力だッ!?』
(ううん、まだ足りない…あなたならもっと速く飛べるはずです。もっと鮮やかに断てるはずです。それこそあなたが持つ唯一の、そして最強の武器なんだから)
 驚愕に敵兵は叫ぶものの、結希は己が戦果に満足などしていなかった。まだだ、まだ己が鉄騎の実力はこんなものではない。それを引き出す為に、少女は機体を大きく旋廻させながら再び突入軌道へと侵入してゆく。
(まだ動くよね。なら……もう一撃、行こう)
 ペダルを踏み込むと、慣性によって固定ベルトが身体に食い込んだ。レバーを倒すと、いよいよ血流が阻害され視界が霞み始める。だがもっとだ。更に先へと行かねば、この機体を駆る意味がない。
『なんだこの速度は!? 人間が耐えきれるレベルじゃない、自殺する気か!』
『違いますよ、寧ろ逆です。これは私が……ううん』
 先程とは比べ物にならぬ速度を載せ、巨刃が煌めく。咄嗟に構えた盾も、振るう鉈剣も、機体その物の装甲すらも無視して。
『私たちがもっと前へ進む為の、一撃です』
 天地一閃。一刀の元に敵機を両断するや、黒鉄の剣機はそのまま戦場を駆け抜けてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルイン・トゥーガン
アドリブ絡み歓迎

ふざけんじゃないよ!なんでアタシが『また』敗軍に属さにゃならないのさね!
それに文明人、野蛮な振る舞い、紳士的に殺し合い、ね。非道な作戦に従事してたアタシへの皮肉かい?
チッ!文句言っても仕方ないね。それに禁止されてるNBC(ニュークリア・バイオ・ケミカル)兵器を使えって言って来ないだけ故郷よりはマシかねぇ?

ビームスナイパーライフルか、こいつを借りていくよ。って、動力と冷却装置が外部据え置きかい!
キャバリアに固定砲台になれとか馬鹿かい?
使えるだけ使って捨てるしかないねっ
飛行する編隊の指揮官機の頭部を【スナイプ・ショット】で撃ち抜いていくさね
そうやって士官クラスを狙い撃ちにしていくよ


朱皇・ラヴィニア
成程――多勢に無勢
寡兵ながら国の為に立ち上がったという訳なんだ
……そういう事にしておこう
それじゃあ機体を借りるよ
兵は無くとも兵器はある
どうせなら手数が多い方がいいでしょ?

砲撃兵装のC型を一機借り受けて
リモートで起動したシュラウゼルとブラディエルで即席の分隊を構築
三機いれば敵と同数、これで戦線を抑えるよ

エルの323で牽制し
ゼルの147で切り込み
ボクのC型の砲撃で各個撃破だ
パターンはレポートから再演算すれば短縮出来る
伊達に戦争の記憶を収めちゃあいないよ

連携を破綻させれば切込む隙が出来る筈
自走砲を転用した大型砲ならK型にも届くだろう
S型をゼルで抑えて飛び込ませたエルで本命を潰す
勿論、死なない程度にね



●多勢に無勢を嘆く暇もなく
『ふざけんじゃないよ! なんでアタシが「また」敗軍に属さにゃならないのさね! それに文明人、野蛮な振る舞い、紳士的に殺し合い、ね。非道な作戦に従事してたアタシへの皮肉かい? 戦う前から神経が逆なでされるよ、全く!』
 此度の作戦指揮を執るハイネマンに対し、猟兵側の印象は様々と言って良い。ある種純粋ともいえる闘争心に共感する者、備えた能力だけは評価する者、人格面に危惧を抱く者。だがその中でもルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)の見せた反応はとりわけ激しかった。しかし、それも無理のない話だ。敗戦によって境遇が一変した元軍人としては、どうしても思うところが出てきてしまう。
『成程――けれども、傍から見ればどうだろう。多勢に無勢、寡兵ながら国の為に立ち上がったという形だしね。額面だけ受け取れば、英雄と言って差し支えない……うん、そういう事にしておこう』
 悪態を吐く仲間を宥めながらも、朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)もまたハイネマンを完全に信頼している様子ではなかった。救国云々よりも『劣勢側の方が戦う敵に困らなさそうだ』程度の切っ掛けで起ったのだろうなと予想しつつも、今は理由よりも行動である。感情では納得できずとも理性では理解しているのか、ルインは舌打ちと共にかぶりを振った。
『チッ! 今さら文句言っても仕方ないね。それに禁止されてるNBC兵器を使えって言って来ないだけ故郷よりはマシかねぇ? 少なくとも、尻で椅子を磨いている類ではなさそうだ』
『まぁ、それはそれで戦死した時の影響が大きそうだけど……多分、それも承知の上なんだろうね。ともあれ、そうさせない為にボクたちも出ようか』
 彼女たちの駆る機体はそれぞれ量産型のキャバリア。ルインは自前の水陸両用機『ウォッグ』へ搭乗し、一方のラヴィニアは自治領から砲撃兵装一式と共にサイクロプスC型を借り受けていた。だがそれに加えて更に二機、真紅と鈍灰の機体が付き従っている。
 真紅の機体は『ブラディエル』、鈍灰の巨人は『シュラウゼル』。どちらもラヴィニアの持ち込んだ機体であり、現在は彼女の遠隔操作による無人機として戦力化されていた。
『兵は無くとも兵器はある。どうせなら手数が多い方がいいでしょ? これで即席の小隊が完成だね』
『尤も、兵器の質もピンキリだけどね。見なよ、ビームスナイパーライフルだってのに、動力と冷却装置が外部据え置きとか正気かい! キャバリアに足を捨てて固定砲台になれとか馬鹿かね? 仕方ない、使えるだけ使って捨てるしかないねっ』
 他方ではルインが自治領側より借り受けた兵装の確認を行っていたのだが、中々に厄介な代物のようである。まぁ、有用であればわざわざ払い下げなどしないだろう。それこそ、銃身が焼けつくまで撃ち続けるくらいしか使い道がない。こんな物でも利用せねばならないのがもの哀しい限りだ。
『さって、と。早速試し撃ちの相手が来たようだね。上から見下ろされるのも癪だし、さっさと叩き墜としてやろうじゃないかい』
 と、その時、レーダーに感があった。計器が示す方角を見れば、編隊を組んで飛翔する敵部隊が視認できる。相手もこちらを捕捉したのか、進路を変更し猟兵たち目掛けて一直線に向かってきた。
『接敵まで時間が無さそうだけど、狙いはどうする?』
『こういう時は指揮官狙いって相場が決まっているのさ。頭さえ潰せば、あとはどうとでもなるさね』
『了解。代わりに、相手が地上に降りてきたら前衛はボクたちが受け持つよ』
 射程の関係上、イニシアチブは此方が握っている。だが相手の速度的にも撃てて一発が精々。しかしルインはヴォックの三指マニピュレーターを巧みに操り、仰角と共に狙いを定めてゆく。そうして、相手の回避軌道も計算に入れた上で、トリガーボタンを押し込んだ。
『ブルズアイ……はん、この程度は軽いもんさね。安心しな、主翼を吹っ飛ばしただけだよ。テンパらなきゃ、死なずに着陸できるはずさ。さて、問題は残りか。さっきも言った通り、冷却に難があるからね。次を撃つにはちょいと時間を貰うよ』
 蒼空を貫く光条は、狙い違わず敵の指揮官機と思しき機体を撃ち抜いた。右主翼ごと肩部を撃ち抜かれた機体はぐらりとバランスを崩しながら、地面へと落下してゆく。一方、残った部下たちは第二射を恐れて散開しながら、そのまま地上攻撃を敢行してきた。
『エル、323で牽制を頼むよ。砲撃だと精度も弾速も心許ないからね』
 頭上より降り注ぐ弾雨を小刻みに吹かせたバーニアで回避しながら、ラヴィニアは指示を下す。真紅機はブルパップ式に改造された電磁速射砲を構えると、短間隔で三点射ずつ砲弾を放ってゆく。動いている目標に当てるのは至難の業だ。弾薬も無限にある訳ではない。ならば、今は攻撃を妨害する程度に留めて置くので十二分。
 攻撃が不発に終わったと見るや、編隊は滑空しつつ地上へと着地する。敵の数はざっとみてこちらの二倍程度か。砲撃機のK型や、長剣や槍で武装したS型の姿も混じっている。
『旧式が二、見慣れぬ機体が二……くれぐれも油断するなよ。連中、何をしてくるか分からんからな』
『来ないのかな? なら、先手は貰うよ。エル、ゼル!』
 ジリと様子を窺う相手に、ならばとラヴィニアが仕掛けた。先程と同様に真紅機が牽制射を放ちつつ、その援護を受けて鈍灰機が吶喊する。その手に握られしは、一振りの片手剣。
『火力はこちらが上だが、近づかれると面倒だ。相互にカバーしつつ引き撃ちで削り取れ!』
 馬鹿正直に切り結ぶつもりはないと、敵部隊は弾幕を張りつつ距離を詰められぬようジリジリと後退してゆく。しかし、鈍色の巨人機はキャバリアという分類であるものの、その中身の大半は生体によって構成されている。屈み、跳ね、捻り、時には転がり。どうしても避けられぬ場合は装甲の厚い箇所で受けながら、敵の懐まで辿り着く。
『その技量は認めよう。だが、間合いに入ったところでなぁっ!』
 巨人機が得物を振りかぶった瞬間、槍を手にしたS型がインターセプトに入った。長大なリーチを生かしながら、彼我距離を詰めさせぬよう堅実に立ち回ってくる。
『貰ったっ!』
 そうして巨人機の得物を跳ね上げると、S型はトドメの刺突を繰り出した。経験に裏打ちされた、必殺の一撃……だが。
『生憎とそれは予想の範囲内だ。ボクだって伊達に戦争の記憶を収めちゃあいないよ?』
『なっ、切っ先が伸びてっ!?』
 それが届く前に巨人機の手にした片手剣が刀身を伸ばし、逆にS型を貫いた。剣型近接格闘兵装『ロストオウス』。その真骨頂は斥力発生装置とナノマシンによる変幻自在の形状変更である。返す刀で両腕部をばっさり断ち切られては、もうまともに戦えまい。
『連携が破綻すれば隙が出来る筈。ゼルはそのまま追撃を継続、エルはF型を狙って。ボクはこいつでK型を墜とすよ』
 連携と言う点では猟兵たちの方が一枚上手だったらしい。僅かに開けた射線を頼りに、ラヴィニアは自走砲を転用した大型砲を抱えると砲弾を放つ。弧を描いて飛翔したソレは敵陣後方へ食らいつくや、K型の肩部砲撃ユニットへと着弾し粉砕する。
『さぁ、残るはF型だけだ。このまま掃討と行こうか。勿論、死なない程度にね』
『もう終わった気でいるとはなぁっ!』
 だが、敵も両機への指示をC型が出していると流石に気づいたらしい。巨人機と真紅機の足止めを抜けた一機がラヴィニア目掛けて突撃してくる。流石に一対一での勝負は性能差的に分が悪い。
『なに、こっちはまだまだ次が残ってんだよ。サクサク行かなきゃ、日が暮れちまうっての!』
 そう、一対一で在れば、だが。リチャージを終えたルインの狙撃によって脚部が溶断され、敵機は勢いよく地面へと衝突する。それでもまだ藻掻いていたものの、ウォッグの鉄爪によって完全に沈黙させられた。
『しっかし、冷却装置が無いと連射性に難があるね。正式採用されない訳だよ』
『まぁ、それも踏まえて上手く使っていくしかないかな』
 言葉を交わし合いながら、撤退の様子を見せる敵へと二人は視線を向ける。再出撃されても面倒だと、猟兵たちは完全に討ち果たすべく戦闘を続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
ボクの初陣でこんなピンチとかヤバイじゃないか!?
ちょっと死ぬ気で神の力を魅せてやるしかあるまい……!

・事前準備
UC【冥神の病機】を戦場で使用する事を事前に伝え、UCに対するワクチンプログラムを味方に配布する

敵が編隊を組んで接敵してきたらUC一瞬だけ使用して電子機器を停止、わずかに行動不能にさせて隙を作る
その隙をついて味方に攻撃してもらう
飛翔速度が速いほど敵も自滅する可能性があるかも

また、「呪詛」を使って敵の搭乗者を苦しめて操縦不能にさせて降伏勧告
降伏しなければ呪殺し、降伏すれば受け入れて捕虜にする



●戦場における神とは
 戦闘開始より既に短くない時間が経過している。猟兵たちの協力によって鎮圧部隊側の機体は既に五十機を超える数が破壊されており、戦況は折り返しに入ったと言って良い……そう、折り返しだ。裏方としてリカバリーに入っている者も居るとはいえ、自治領側の戦力もジリジリと磨り減っている。半分と聞いて『もう』と評するべきか、『まだ』と嘆くべきか。兎に角確かなことは、戦場は未だ混迷の極みに在ると言うことだけだった
『困っていると聞いて来てはみたけれど……ボクの初陣でこんなピンチとかヤバイじゃないか!? これはちょっと死ぬ気で神の力を魅せてやるしかあるまい……!』
 そしてそんな惨状を前に、ムシカ・ガンダルヴァ(世界の終焉に降臨せし第四の冥神(見習い)・f30907)は到着早々悲壮な表情を浮かべていた。彼女は人ならざる神として永き時を生きてきたが、本格的な荒事は今回が初。しかもそれが鉄と鋼が潰し合うクロムキャバリアとあっては面食らうのも無理はないだろう。神の威光だなんだと説こうとしても、兵士にとっての神とは砲兵、即ち有無を言わさぬ火力である。認めて貰うには相応の働きが必要だ。
「と、兎に角、まずは下準備が必要だね。考え無しに使ったら被害が尋常じゃないし、あんまり長く発動させたら……神だから死にはしないけど、丸一日は動けなくなりそうだし」
 そう言うと、ムシカは背後に待機させていたキャバリア『鉄鼠君初號機』へと乗り込む。その外観は銘の通りネズミを模した形状をしており、機体サイズも平均と比べて大分小柄だ。しかし、この機体の真骨頂は正面切っての殴り合いではない。
『ああ~っと、ハイネマン……殿? ちょっと話が在るのだが、聞いて貰えまいか?』
『ほう、何かね? 少しばかり慌ただしいが、面白い策であれば大歓迎だ』
 ハイネマンへ通信を開くと、返答がすぐさま返ってくる。銃声や爆発音がひっきりなしに聞こえてくるが、寧ろ相手の声音には充足感すら浮かんでいた。そんな怪しげな雰囲気に一瞬気圧されかけるも、なんとか神としての威厳を維持しつつ先を続ける。
『ぅう……ごほん。面白いかは分からぬが、渡しておかねばならぬものがある。少しばかり危険だが、そちらにとっても利になる内容のはずだ』
『危険! 結構、まことに結構。リスクなくリターンなぞありはしないからな!』
 物言いはアレだが、肯定である事に違いはない。ムシカは微妙な表情を浮かべつつ、データパッケージを転送する。それは或るウィルスから機体を守るワクチンプログラムだった。内容を確認し、ハイネマンは神が何をしようとしているのか察したらしい。
『なるほど? これは随分と剣呑だな』
『話が早くて助かる。持続時間は短いが、そのぶん効果も強力だ。隙が生じ次第、反撃に移ると良い』
『了解した……では、そちらも幸運を』
 そうして打ち合わせを終えて通信が切られると、ムシカは深々とため息を吐く。人間を見て来た回数はそれこそ星の数だが、ああいう煮詰まった魂はそう見ない。メッキが剥がれなかっただけ上出来だろう。尤も、幾分か見透かされた感もありはしたが。
『神に幸運をだなんて、もしかして皮肉なのかな……ともあれ、これで準備は整った。それじゃあ、始めようか』
 そう言って、ムシカは戦場へ姿を見せた敵編隊へと視線を向けた。彼女も機体も、ネズミをモチーフとしているのは決して伊達や酔狂ではない。この小さき存在は様々な意味を内包した象徴だ。その中でも最も有名な寓意とは――。
『我は疫病の冥神なるぞ。野火の如く広まる死を手繰るものぞ。定命なる者よ……我に平伏せ!』
 疫病とそれに伴う死。その権能は鋼を通すことによって、電子の病原菌へと変貌する。鉄鼠より放たれた零と一の災いは、それに対する備えをしていない者を次々と蝕んでゆく。
『……? なんだ、機体の挙動がおかしい。計器の数値が正常値を示していないぞ!』
『指示したとおりに機体が動かん!? なんなんだ此れはっ!』
 時間にして僅か数秒。二桁にも満たぬ時間である関わらず、敵機の電子機器はズタズタに破壊されていた。時間を置けば相手も冷静さを取り戻して体勢を立て直すだろうが、そのような隙を与える気などない。
『たかが兵器の一種を神などと。真の神なる威を知るが良い!』
 電子に載せた呪いの魔力。それらが相手の根源的な本能を委縮させ、より深い混乱へと叩き込んでゆく。大半の敵機はそのまま落下して戦闘不能となり、何とか抵抗を試みた者も反撃に出たハイネマンたちに討ち取られていった。
『……はぁぁ、上手く言って良かった』
 ともあれ、これで敵の一部を無力化出来た。その戦果を噛み締めながら、ムシカは安堵する様に息を吐くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペイン・フィン
連係OK
(可能ならフレンド優先)

……修羅道、だね
その道を行くのは、個々人の自由
されど、気をつけて
道連れまでが、その道を望むとは限らない

人ならざる道を行くモノは、人ではないことを意識しないと、道半ばに倒れるからね

さて
自分は、そうだね
正面から、いこう

コードを使用
"名無しの禍惧枝"の力を解放
相手が、どれだけ大きかろうとも
それに見合うだけの力を振るえば、なんとかなる、かも
それに、正面で遅延する方にも、戦力は欲しいだろうし、ね

コード使用の怨念は、周囲の軍人の不安や恐怖を喰らおうか
食べ過ぎると、それはそれで危ないけども
ありすぎても困るものだから、ね



●旗手が導くは勝利か、地獄か
『そろそろ終盤戦だな……キミ、我が方の残存戦力は?』
『戦闘開始当初の八掛けと言った所ですね。一個中隊弱が食われました。ただ、後方支援に回った猟兵殿のお陰で敵を含め死者が出ていない事だけが不幸中の幸いです』
 空になった弾倉を替えながら、ハイネマンと部下は戦況を確認していた。開幕当初は苛烈だった敵の勢いも、時間の経過と共にゆっくりとではあるが衰えが見え始めている。代わりに自治領側も着実に戦力がすり減っているのだが、ハイネマンの声音は飽くまでも明るい。
『……本当に良い意味で誤算だな。これならば次に待ち受ける本隊との戦闘も、十分な戦力を以て当たることが出来る』
「今だ迫る敵を前にして、考えるのは、更に次の闘争について……先を見据えると言えば、聞こえは良いけれど。正しく修羅道、だね」
 そんな会話に第三者の言葉が割って入った。声の主は漏れ聞こえる通信に耳を傾けていたペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)だ。指潰しは仮面越しに、戦争狂は機体のアイカメラを通じて、互いの姿を視界へと収める。
「その道を行くのは、個々人の自由……闘争を、傷つけあう事を求めるのは、確かに人の性かもしれない。されど、気をつけて。道連れまでが、その道を望むとは限らないから」
 ――人ならざる道を行くモノは、人ではないことを意識しないと。早晩道半ばに倒れるからね。
 ペインの言葉には額面以上の寓意が含まれている。ハイネマンもそれを感じ取れぬ男ではないだろうが、相手は肩を竦めてお道化た様に苦笑を浮かべた。
『その物言いはまるで、私が人ではないかの様だ。飽くまでも、軍人という「人間」のつもりなのだがね』
「………………」
 男の言葉はどこまでも空虚で寒々しい。ペインは敢えて言葉を返さなかったものの、それに不快感を示す様子もなかった。そんなどこか緊張感の張りつめた対話は、敵機接近の警告アラートによって断ち切られる。ハイネマンはライフルを構え直しながら、話題を切り替える様に言葉を紡いでゆく。
『我々がどうであれ、敵は待ってはくれないらしい。こちらは相も変わらず足止めだが、キミはどうするのかね?』
「自分は、そうだね。それなら……正面から、いこう。この戦場は、良くも悪くも相性が合い過ぎるから」
『……よろしい。それではささやかではあるが、援護させて貰おう』
 隊伍を組んだキャバリアによる一斉射撃。耳をつんざく銃声に背を押されながら、青年は最前線目掛けて飛び出してゆく。その手に握られしは、羽を思わせる一振りの骨。
(さあ、頼んだ、よ……相手が、どれだけ大きかろうとも、それに見合うだけの力を振るえば、なんとかなる、だろうから)
 その点に関しては、同じように生身で挑み掛かり戦果を挙げている者も複数存在している。加えてペイン自身が告げた様に、戦場と言う環境が彼の特性とこれ以上ないほど合致していた。
(食べ過ぎると、それはそれで危ないけども……ありすぎても困るものだから、ね。長期戦になるだろうし、後で帳尻も合わせられると、良いんだけれど)
 数・質共に、戦場ほど怨念渦巻く場所も早々ないだろう。とは言え、今回は死者が出ぬよう全員が細心の注意を払っている。汲み上げる先と言えば軍人の恐怖や不安なのだが……感じられるのは敵ばかりで味方が極端に少ない。それはハイネマンがそれだけ部下を纏め上げているという事を示しているものの、差異が大き過ぎていっそ不気味ですらあった。
(まるで熱病のよう、だね。先頭を行く旗手が導くは、勝利の栄光か、果て無き地獄か……)
 ビキリ、と枝骨が変容してゆく。より大きく、より鋭く、より複雑に。それを手にして跳躍すると、ペインは目についた機体へと飛び掛かる。咄嗟に相手が振り払おうとするよりも先に、枝を敵の装甲へと突き立てた。
「飢えし翼、喰らいし枝、切り裂くは禍の刃……うん、これなら行けそうだね」
『おのれ、またしてもっ!』
 撃破された両機の仇を討たんと、巨剣を片手に切りかかってくるS型。その刃を傾けた骨枝で受け流しながら、青年はちらりと己が得物へ視線を向けた。
「誰も彼も……きっと、餓え渇いて、いるんだろうね」
 そのまま敵の刃を足掛かりに肉薄。頭部センサーを貫いて沈黙させると、続いてこちらへ砲口を向けるK型へと向き直る。ペインは何がしかの感情を裡に秘めたまま、淡々と敵を屠ってゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オル・フィラ
紳士的に殺し合うのがマナー、ですか
…行きましょう、クロライト
私達の性能を確かめるには丁度良い戦場です

自治領側の被害は抑えてあげたいですし、敵の側面から【泥流弾】を撃ち込み続けましょう
狙うのは武装や脚部に限定、ちゃんと生け捕れるように気を付けます
戦況を見て、劣勢な味方がいれば一時的に前に出て敵の注意を引き付けたいです
クロライトの機動性と私の技量でどこまで動けるか試してみます
他のキャバリアの機動も見て、役立ちそうなものは真似して出来るようにしたいですね

…この状況、長期戦になる感じでしょうか
お弁当と飲物を持ってきた方が良かったかもしれません


吉備・狐珀
殺し合いに紳士的も何も…、と今はそんなことを言っている場合ではありませんね

あれが飛翔してくれば危険というのは機械に疎くともわかります
なので先制攻撃を仕掛けるとしましょうか
UC【協心戮力】使用
ウカと月代の二つの風属性攻撃を合わせて起こすのは竜巻
風圧で相手の攻撃を鈍らせ、風で舞い上がった砂埃で視界を塞ぐ
倒せなくとも能力差を埋める手助けになれば御の字

目的はこの戦争に疑問や迷いを持つ者のあぶり出し
迷いは隙を作り、その隙は些細な攻撃でも簡単に足元をすくわれる

負傷した敵兵を救護し治療しつつ、この戦争を終わらせるための協力を申し出る
力で強引に捩じ伏せた統治に本当の幸はないことは貴方達がよくご存知でしょう?



●戦場とて通す仁義もまた在りて
「紳士的に殺し合うのがマナー、ですか。随分と矛盾している様にも思えますが……指揮官ともなれば、何か普通と異なる作法などを体得しているのでしょうか」
「そう、でしょうか。ですが殺し合いに紳士的も何も……と、今はそんなことを言っている場合ではありませんね」
 戦場の端に身を隠しつつ、言葉を交わし合う少女が二人。オル・フィラ(Rusalka・f27718)と吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)はハイネマンの発した言葉に首を傾げているが、それも無理ならざることである。大国側の鎮圧部隊が息切れし始めているとは言え、戦況は泥沼だ。猟兵側の尽力で敵味方共に死者は出ていないが、それでも相応に血は流れている。いったいこれのどこが紳士的だと言うのか。
『そうですね………行きましょう、クロライト。自治領側を助けるのに加え、私達の性能を確かめるにも丁度良い戦場です』
 だが、言葉の定義に疑問を抱いたところで始まらない。オルは傍らに駐機していた深緑色のキャバリアへと乗り込む。オブシディアンMk2をオルに合わせて改修した機体『クロライト』である。実戦投入は今回が初であり未知数な部分も多いが、調整自体は入念に済ませてある。
 一方の狐珀は生身のままであるが、その装いは戦場に合わせてかいつもの巫女服姿ではなく、軍服を思わせるものを纏っていた。戦場は砲弾痕などが無数に点在する荒野、動きやすいに越したことは無いだろう。
『こちらとしては自治領側の被害を抑えてあげたいですし、敵の側面から攻撃を仕掛けるつもりです。戦況を見て、もし劣勢に陥れば一時的に前へ出て相手の注意を引き付けたいとも思いますが……』
「なるほど。ですが、今もなお敵部隊の増援が空より来ている状況です。あれが飛翔してくれば危険というのは機械に疎くともわかります。なので、まずはそちらへ先制攻撃を仕掛けるとしましょうか……少しお時間を頂けますか?」
 オルの行動内容を聞いた狐珀は、暫し思案した後に自らの友を呼び出した。黒き狐と白き仔龍。視線を向けてくる二匹をしっかりと見つめ返しながら、狐像の乙女は空を飛び回る敵影を視界へと捉える。
「ウカと月代、二つの風を束ねて巻き起こすは竜巻。空を飛ぶ以上、大気の影響からは逃れられません。風圧で相手の攻撃を鈍らせ、風で舞い上がった砂埃で視界を塞ぐ……倒せなくとも、能力差を埋める手助けになれば御の字です」
 友から借り受けた魔力を混ぜ合わせ、束ね、一つの大きな力へと変じさせてゆく。それは赤茶けた砂を舞い上げ、渦を巻きながら高く高く舞い上がり、遥か天上へと至る。
「二つの力は一つの力に。我のもとに集いて、敵を惑わす幕となれ」
 斯くして生み出されしは巨大な風の柱。空を舞う鉄騎を翻弄するのは元より、これでは地上の機体とて見通しが利かなくなるだろう。流石にこの状況で飛行を継続するのは危険と判断したのか、編隊は次々と地面を目指し高度を下げてゆくのが見えた。出来ればバランスを崩して墜落でもしてくれれば儲けものだったが、これでも結果としては十二分である。
「これで空からの攻撃を心配する必要は無いでしょう。地上戦においても身を隠す一助となってくれるはずです。こちらの視界も若干狭まってしまうのが難点ですが……」
『その点については心配無用、こちらの腕でカバーします。それにしても風ですか。この場所だけで属性が渋滞を起こしそうですね』
 オルは仲間の支援に感謝を述べながら、機体に伏せの姿勢を取らせつつ得物を構えた。普段使用している拳銃とは対照的な、長射程を誇る実体弾狙撃銃『エンハンスドライフルカノン』。彼女の操る異能が当たればほぼ確実に対象を破壊できる特性上、命中精度に特化した調整が施されている。これならば、風の影響も最小限に留められるだろう。
『対象を捕捉。彼我距離、風速、高低差を踏まえ、弾道を予測。狙うのは武装や脚部に限定すること……大丈夫、ちゃんと生け捕れるように気を付けます』
 操縦席の内部では、オルが愛銃を握り締めていた。握把の部分からケーブルが伸びており、火器管制を司る計器と接続されている。操縦者の手にした拳銃とキャバリアの装備するライフル、その二つを連動させているのだ。これならば乗り始めたばかりの機体でも、常と同じ感覚で射撃できる。
『水霊術式、起動……射撃開始』
 そうしてトリガーを押し込んだ瞬間、火薬が炸裂し弾丸が発射される。銃身を通る僅かな間に水と土の魔力を付与されたそれは、狙い違わず目標の大腿部へ着弾するやぼわりと爆ぜた。火薬によるものではない。泥流と化した銃弾がその圧力によって内部構造を破壊したのだ。
『これは、狙撃か!? 周辺警戒を密にしろ! クソ、射手は何処だ。この風では見つけられんぞ』
『発砲音、射撃時の発火と煙、それらを使って位置を割り出せ。センサーの感度を最大まで引き上げろ』
 相手は円陣を組みつつ、怪しいと思った所へ射撃を叩き込んでゆく。対するオルは不規則に間隔を空けながら二射、三射と狙撃を続けるも、いつでも移動できるように意識を半分そちらへと傾ける。
(正規の軍人だけあって、対処が早い。位置を特定されるのも時間の問題ですね……っ!?)
 それから数発を放ったところで、敵部隊が一斉にこちらを向いた。褐色の少女が咄嗟に機体を立ち上がらせて前へ飛び出すと同時に、相手もまたこちらへと殺到してくる。
(すぐ傍には生身の味方も居ますからね。近づかれるのは不味い。それにそろそろ、クロライトの機動性と私の技量でどこまで動けるか試してみたかったところです)
 狐珀は竜巻の維持に注力しており、身動きが取れない。だがそれも理由ではあるが、同時に自分たちの限界を推し量ると言う狙いもまたあった。オルは敵と接敵するや、狙撃銃を槍の様に操りつつ機動力を生かして立ち回ってゆく。
『狙撃銃で接近戦だと……舐めおって!』
『いえ。侮るどころか、寧ろ学ばせて頂く気持ちですよ』
 躍りかかってくるS型をいなしつつ、砲口を向けてくるK型を射撃で無力化。そのまま手早くリロードを行いつつ、次なる機を窺う。そうして着実に敵の数を減らしてゆくものの、未だ多勢に無勢。あわや直撃かと言う場面も時たま発生する、が。
「風の流れと強弱を操れば……軌道を逸らせることぐらいは可能です!」
 そこは狐珀のカバーにより難を逃れてゆく。そうして風、水、土、詰まるは周囲の環境を味方につけた二人は、暫しの後に敵を全て打ち倒すのであった。

「……この状況、やはり長期戦になる感じでしょうか。となると、お弁当と飲物を持ってきた方が良かったかもしれません」
「お願いすれば軍用のレーションを手配して貰えるかもしれませんよ?」
「ふむ。個人的には握り飯が最上ですが、贅沢も言っていられませんね……」
 その後、二人の姿はと言うと戦線の後方に在った。治療所や補給整備場もあるが、彼女らの目指す先は捕縛した捕虜の収容所である。それは次の戦いに彼らの協力が不可欠だと言う狐珀の考えからだった。
(目的はこの戦争に疑問や迷いを持つ者のあぶり出し。迷いは隙を作り、その隙は些細な攻撃でも簡単に足元を掬われる。疲弊したこちらが無傷の増援と渡り合う為には、その僅かな優位こそが重要となるでしょうから)
 収容所へ足を踏み入れると、そこには幾人もの男たちが居た。不殺を心掛けていたとはいえ皆大なり小なり怪我を負っており、衛生兵たちの手当てを受けている。狐珀も一言断りを入れると、自らも捕虜の治療へと加わってゆく。
「なぁ、嬢ちゃんよ。ここの連中はなんだかちぐはぐと思わないか。戦争狂に従ってるかと思えば、敵である俺たちを殺さない上に丁寧な治療までしてくれるんだぜ」
「私は……そうは思いません。あなた方はこの戦争を終わらせる為の協力者だと考えていますから」
 治療を受けている捕虜が皮肉交じりに愚痴をこぼすが、少女は手を動かしつつ首を振った。どういう事かと訝し気な相手を真っすぐに見つめながら、狐珀は先を続ける。
「力で強引に捩じ伏せた統治に本当の幸がないことは、貴方達がよくご存知でしょう? 私たちよりも間近でその現場を見ているはずなのですから」
「……まぁ、確かに、否定はしがたい。上に思わんところが、無い訳でもない、な」
 意外にも捕虜の反応は穏当なものだった。元々不信を抱いていたのだろうが、それに加えて不殺や治療を受けたという事実が彼らの認識を大きく動かしたのだろう。そこでふと、ハイネマンの言葉を思い起こす。
(戦いは全力でも、終われば敬意を以て手を差し伸べる……なるほど、紳士的とは言い得て妙な表現でしたね)
 そうして小さくクスリと笑みを浮かべながら、狐珀は暫し治療と対話に集中してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

勘解由小路・津雲
連携歓迎
ここがクロムキャバリアか。初めての世界だが……見知った顔もいたような?
そしてどこに行っても戦狂いはいるのだな(苦笑)。まあ敵でないだけよいとしようかね

さて、俺には戦車があるので武器だけ借りようか。主砲はともかく、ガトリングはキャバリア相手にはちと心もとない
宇宙用の兵装はここでは運用しにくいしな。なに、式神を憑けて動かすから、くっついていればいい

戦闘は後鬼に任せ、おれは敵兵の回収に向かおうか。と、後鬼が囲まれているな。あれはさすがに厳しいか
だが準備はしておいた。オン、大将軍、来臨守護!
方位神の加護により、通常ではあり得ぬ機動性を付与する新しい術式だ。複数のキャバリア相手でも遅れはとるまい



●宙を翔け、地にて穿ち断つ
「ここがクロムキャバリアか、随分と硝煙の匂いが濃いな。全体的な気質はアポカリプスヘルと近しいか。ともあれ初めての世界だが……見知った顔もいたような?」
 何よりも強く感じるのは銃声混じりの喧騒と鼻につく火薬の煙。人型であるが故に、現代の機甲戦とはまた異なる様相を呈する戦場。それらを一瞥しながら、勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は興味深げに目を細めた。ふと視界の端で何やら人影を認めた気もしたが、それも高速で動き回るキャバリアの向こう側へと紛れてしまう。
「ふむ、気のせいか? もしも同じ戦場にいるのであれば、いずれ合流も出来よう。そして……どこに行っても戦狂いはいるのだな。まあ、敵でないだけよいとしようかね。戦時の味方と限れば、寧ろ頼もしい部類だろう」
 気持ちを切り替えつつ、津雲は苦笑を浮かべながらまずは格納庫へと足を向けた。生憎とキャバリアの持ち合わせはないものの、それに代わる存在ならば従えている。即ち、『後鬼』と名付けられた二脚戦車だ。とは言え、すぐに前線へ向かうという訳にはいかない。
「宇宙用の兵装はここじゃ運用しにくいしな。それに主砲はともかく、ガトリングはキャバリア相手にはちと心もとない。此度もより有効な武器が在ればよいのだが」
 つい先日購入した機銃付き推進ユニットは飽くまでも宇宙用だ。元より地上戦用の二脚機ではあるが、それでもキャバリアが相手となると些かの火力不足感は否めない。その為、陰陽師は戦場へ赴く前にまずはそれを解決しようと考えていたのである。手近な整備兵に事情を話すと、それならばと幾つか武装を引っ張り出してきてくれた。
「考え方としちゃ、武装が固定式の小型キャバリアってとこか。となると、足回りを鈍らせる方向はナシだ。それらを踏まえたら……うん、コイツだな」
 整備兵が提案してくれたのはキャバリア用のグラビティガン。重力球を放つ方式で在れば、弾薬の持ち運びや弾切れの心配は無くなるだろう。しかし何故これが試作止まりなのか津雲が尋ねると、整備兵は肩を竦めた。
「なんでも、操作が煩雑で扱いにくかったらしい。多機能であれば良いって訳じゃない好例だ」
「なに、それなら問題ないな。式神を憑けて動かすから、極論くっついてさえいればいい。済まないが手早く作業を頼む」
「あいよ。ああ、それとオマケに他の合いそうな武装もつけといてやるよ」
 幸い、取り付け作業自体はそう時間も掛からずに終了する。そうして陰陽師もまた、戦場へと赴くのであった。
 
「さて、と。そも、戦い自体がもう終盤戦か。徐々に掃討戦に移っている様だし、おれは無力化された敵兵の回収に向かうとするか」
 そうして戦場へと足を踏み入れた時、戦闘は既に散発的となっていた。このままならそう時間を置かずに勝敗は決するだろう。であればと、津雲は後鬼に周辺警戒を任せつつ自らは捕虜の確保へと専念し始める。取り敢えず誰か残っていないかと、擱座した機体へ近づいた……瞬間。
『かかったな。ノコノコと近づいて来た己の迂闊さを悔やむが良い!』
「っと、死んだふりをしていたのか。これはまた古典的だな!」
 残骸を振り払い、鉄騎がアンブッシュを仕掛けて来た。数は三機であり、不運にも陰陽師を取り囲む形である。咄嗟に二脚機が重力銃を放ちながら敵を引き剥がすも、状況的不利は否めない。
「後鬼が囲まれた、か。あれはさすがに厳しいな。だが、準備はしておいた……オン、大将軍、来臨守護!」
 しかし、此処は何が起こるか分からぬ戦場。であれば万が一に対する備えなど一つ二つ隠し持っているものだ。津雲が九字を切るや、俄かに二脚機の機動が加速し始める。
「方位神の加護により、通常ではあり得ぬ機動性を付与する新しい術式だ。複数のキャバリア相手でも遅れはとるまい。それにこの速度ならば『オマケ』とやらも活きるだろう」
 その運動性はS型すらも凌駕しており、主砲と重力銃を織り交ぜて敵を削り取っている。相手もそれに業を煮やしたのか、被弾覚悟で挑み掛かってきた……が。
『見た限り白兵戦の武装はないッ! 接近戦に持ち込め、ば……ッ!?』
 ばっさりと、両脚部を横一文字に断ち切られて崩れ落ちる。見れば、二脚機の左右には一対二振り曲刃が伸びていた。それは使い手が居なかったビームサイズの転用品。強化された機動力ならば、これで白兵戦とて行えるのだ。
「ふむ、中々上手く噛み合ったな。ともあれ、これにて終わりだ」
 呆気に取られる敵をそのまま撃破する後鬼。津雲はその戦果に満足そうな笑みを浮かべると、気を取り直して操縦者の捕縛へと向かうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファン・ティンタン
【SPD】紅蓮軌道
自由共闘歓迎

……以前、あなたの様な軍人を叩いたことがあった
くれぐれも、周囲を道連れる死神にだけはなりなさんな

【求煉鬼道】
やっと、手を貸してくれるね、『求煉』
文字通り、主の右腕だったあなた
心配はないけれど……寝起きだ、少し慣らすといいよ

余っているサイクロプスのパーツをもらい受け、求煉で繋ぎ合わせる
今まで人の右腕しか模ったことのなかったあなただ、人型になって闘う術を覚えていくといい

……とは言ったけれど
オウガメタルのあなたなら、闘えぬはずもなしか
液体金属の柔軟性と、その密度で【蹂躙】する【重量攻撃】
彼らの思う“機兵”戦想定の常識ではまず対応できまい

ああ、くれぐれも人は殺めぬようにね



●求煉の腕(かいな)よ、混迷を制し凪と為さん
『ふむ……風当たりが弱まって来たな。開戦当初と比べ、なんとも穏やかなものじゃないか』
 戦争というものに精通しているが故からだろうか。ハイネマンは戦場の変化を敏感に感じ取っていた。敵の圧力が明らかに落ちている。事実、これまでひっきりなしに飛来していた編隊がいまは頭上の何処にも見当たらない。それが意味する所は一つ、敵の戦力が払底し始めたのだ。
『良いぞ、実に良い傾向だ。消耗した戦力も予想より遥かに少ない。これならば、本隊との戦闘も愉しめそうだな』
「愉しめる、か……以前、あなたの様な軍人を叩いたことがあったよ。指揮官に率いられた、鉄十字の亡霊。彼は敵を求めて彷徨い出て、貴方は身を置くべき場所を見つけた。どちらが良いかは、分からないけれど」
 残存戦力を愉快気に確かめる男の鼓膜へ、冷ややかな言葉が滑り込む。ふと視線を向けると、左側のみ開かれた紅瞳で見つめてくるファン・ティンタン(天津華・f07547)の姿があった。白き刃の脳裏に過ぎるのは、桜舞う中で刃を交えた斧槍使いの指揮官について。
「くれぐれも、周囲を道連れる死神にだけはなりなさんな。死ぬ時は独りで、だ」
『……先ほども似た様な事を言われたよ。それに返す言葉を生憎と持ち合わせてはいないがね。ただ一つ、分かるとすれば』
 その軍人はきっと幸福であっただろうさ。その言葉を最後として、ハイネマンは会話を打ち切って前線へと歩み出てゆく。残る敵を叩くべく反撃に転じる心算なのだろう。その後姿を溜息と共に見送りながら、ファンは自らの手元へと視線を落とす。
「今はまだ、他人の事情に首を突っ込むだけの余力はない、か。こちらも久方ぶりの戦場だろうしね……そうでしょう?」
 掌の中に在ったのは、右腕用の義骸。全体が光沢感のある鈍色の金属で構成されており、光の加減で時たま緋色の色合いが混じる。だが何よりも異質なのは、時折その表面が液体の如く波打つこと――まるで生きているかのように、だ。
『やっと、手を貸してくれるね、「求煉」。文字通り、主の右腕だったあなた。心配はないけれど……寝起きだ、少し慣らすといいよ』
 懐かし気に目を細めながら表層を撫ぜるも、反応は鈍い。そんなつれない態度に苦笑を浮かべながら、少女はキャバリアの予備部品が残された整備スペースへと義骸を放った。
『今まで人の右腕しか模ったことのなかったあなただ、人型になって闘う術を覚えていくといい。摩耗し、破損し、短期間で取り換えられる存在でも、何がしかの記憶はあるだろうさ』
 果たして、それは液体の如く溶け広がると部品を取り込み瞬く間に人型を形作る。操縦席へ身を収めれば、内部の配置はどれも古馴染みの様にしっくりときた。姿がどの様なものになろうとも、同輩で在る事に変わりはない。ファンは操縦桿を握って指示を下す。
『と、いう訳で。本番はこの後の様だし、今は精々肩慣らしをするとしよう』
 その途端、鉄騎は流体金属ならではの滑らかさで駆け出すや、一直線に前線を目指し始めた。そうして数分もしないうちに、モニター越しに敵機の姿が視界に飛び込んでくる。
『クソッ、また新手か! 本隊到着まで時間を稼げ、持ちこたえろ!』
 相手はF、S、K型が各一機の三機編成。攻勢に見切りをつけ、時間稼ぎへ移行しているらしい。まずK型が肩部キャノンを放ってくるが、求煉は着弾前に砲弾を流体金属で絡め取り無力化した。呆気に取られる敵の隙を突いてそのままS型へと躍りかかるや、見た目以上の密度と重量を伴う拳で殴りつけ沈黙させる。
(……さっきはああ言ったけれど。オウガメタルのあなたなら、闘えぬはずもなしか。それに加えて相性も良かった。彼らの思う“機兵”戦想定の常識では、まず求煉の動きに対応できまい)
 ブランクを感じさせぬ戦闘力にファンは舌を巻く。硬柔自在の特性で瞬く間に敵を沈黙させてゆく同輩に感心しつつ、大丈夫だとは思いながらも注意を促す。
『ああ、くれぐれも人は殺めぬようにね? 指揮官殿は紳士的にとのオーダーだ』
 操縦桿を通して微かな肯定が返ってくるも、その時点で既に眼前の敵は全滅していた。無論、操縦者は無事である。その手際の良さに、白き刃は苦笑交じりに肩を竦めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※(ロシナンテⅣ搭乗
自機●ハッキング直結操縦でFCS等をサイクロプスの武装用に調整
サブアームにC型の盾、両手にライフルと鉈握り遅滞戦闘へ)

(中佐のあの目、未来でなく別の物を見据えていた…
人も居らず、落とし処を造る為の戦いとはいえ…内政干渉の域でも懸念が)

いえ、今は…
突撃し出鼻を挫きます、接敵まで援護を!

試作兵装の単発榴弾砲使い捨て爆風で●目潰し
即座に突撃
センサーでの●情報収集と瞬間思考力で彼我の配置●見切り射線制限
再使用考えぬライフル乱れ撃ちや鉈で速やかに破壊
撃破機体の腰部手榴弾含む武装強奪し戦闘続行
ロックも機体のワイヤーアンカーでハッキングし解除

長期戦です
人型の利点と弊害…活用させて頂きます


キョウ・キリノ
【生身参戦】
このような状況こそ、俺みたいな男が剣を振るうに相応しいだろう…斬機一刀の極意、見せてやる。

障害物は多く、敵は大部隊、ならば生身にて斬獲するに好都合な戦場。

「敵を視認…斬る」
俺は敵部隊の横合いから【切り込み】をかける。
視認した敵機の配置と機動を【瞬間思考力】で【見切り】【抜即斬】を敢行、関節部を狙って全機の四肢を瞬時に【切断】し機体を戦闘不能に追い込んでそのまま斬り抜けて障害物に身を隠す。

「このヒリつく肌触り、これぞ戦場だな」

瞬時、障害物で身を隠した後にすぐさま再び抜即斬、撹乱と斬獲の繰り返しこの流れで俺の担当する場を制圧する。

【アドリブ歓迎】



●剣閃轟砲、ただ一時でも勝利に変わらず
「このような状況こそ、俺みたいな男が剣を振るうに相応しいだろう。些か数が減じているが、抗戦の意志はあるようだ。ならば……斬機一刀の極意、見せてやる」
 艶やかな黒髪を乾いた風になびかせて、キョウ・キリノ(斬機一刀・f30324)は鋭い視線で戦場を一瞥していた。自治領側部隊と連携した猟兵たちにより、敵の先遣隊はほぼ壊滅状態となっている。だが相手は僅かに残った戦力をかき集め、徹底抗戦を行うつもりらしい。時間さえ稼げればより高性能機で構成された本隊がやってくるのだ、悪い選択肢ではない。なればこそ、キョウは彼らを斬り甲斐のある敵だと断じていた。
(中佐のあの目、未来でなく全く別の物を見据えていたように思えます。付き従う部下は精強なれども寡兵。上に立つはずの指導者も居らず、落とし処を造る為の戦いとはいえ……これでは、余りにも)
 一方、その横では痩せ馬の名を冠した機体と自らを接続したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が、電子頭脳内で思考を巡らせていた。その対象は『戦争狂』について。此度の戦い、視点を少し傾けてみればハイネマンは救国の英雄と言って良い。猟兵の助力があったとはいえ、寡兵を以て大軍による攻勢を凌ぎつつあるのだ。まだ前哨戦ではあるものの、それは確かに称賛されるべき手腕だろう。だが……鋼騎士にはどうしても、その行きつく果てが『平穏』であるとは思えなかったのである。
(しかし、我々猟兵は飽くまで遍歴の身。この国の住人でない以上、軽率に口出しを行うのは無責任と言えるでしょう。ですが、内政干渉の域であると理解した上でも懸念が……)
「……どうやら、相手もただ磨り潰される気はないらしい。このタイミングで動くという事は、恐らく決死の兵だ。別の事に意識を取られていると足元を掬われるぞ」
 深みに沈んでゆく思索を断ち切ったのは、キョウの鋭い警句だった。ハッとトリテレイアが意識をセンサー類へ向けると、一塊の集団となって迫り来る敵部隊の反応がある。剣鬼の言葉通り、ジリジリと削り墜とされるくらいなら僅かでも局所的な優位を取ろうと言う目論見なのだろう。
『そう、ですね。心此処に在らずなど、刃を交わす相手への侮辱でしょうから。相容れぬ者同士とは言え、全力で応ずるのが礼儀……故に、まずは私が突撃し敵の出鼻を挫きます!』
 そう宣言すると同時に、トリテレイアは地面を蹴り上げて吶喊を開始する。彼の駆る機体は操り手と同じく、分厚い装甲で全身を覆った重量級キャバリアだ。堅牢さとそれを十全に活かす為の運動性は突出しているものの、機動力は平均レベル。それを埋めるために、彼は自治領側から借り受けた兵装で自機に更なる強化を施していた。
『サブアームに増設したC型の盾で攻撃を防ぎつつ、単発式榴弾砲を使い捨てと割り切って使用……敵へのダメージは無くても構いません。爆煙で接敵までの時間を稼げれば十分です!』
 敵部隊の一斉射撃に対して、トリテレイアは肩部後方より伸びる副腕にマウントしたサイクロプス用シールドを展開。銃弾の雨を強引に掻い潜りながら相手の足元目掛けて榴弾を発射し、濃密な土煙を巻き上げる。それに紛れて距離を詰めつつ残弾の無くなった武装を投棄、代わりにライフルと鉈型実体ソードを両手に構えた。
『っ、こちらの視界を潰して距離を詰めたか。手練れだぞ、気を抜くなっ! 相手の狙いは十中八九切り込んでの乱戦だ、同士討ちしないよう白兵戦に切り替えろ!』
『敵ながらその判断は見事であると言えましょう。しかしこちらも騎士の端くれを名乗る以上、太刀合いで後れを取る訳には参りません!』
 トリテレイアは土煙を破りながら姿を見せると、手にした鉈剣を大上段より振り下ろす。咄嗟に相手も斬撃を繰り出すが、ここで機体性能の差が表れた。鋼騎士のキャバリアは硬く、それ故に重い。位置エネルギーを載せた一撃は相手の得物ごと腕部を断ち切るや、そのまま機体胸部へとめり込む。
『む、突き刺さって抜けませんか。であれば強盗騎士の様で少しばかり複雑ですが、別の武器を拝借するとしましょう』
 トリテレイアは躊躇なく鉈剣を手放すと、代わりに無力化した敵機の腰部にマウントされているグレネードへ手を伸ばした。火器管制によるロックもワイヤーアンカーを通したハッキングで手早く解除し、次なる武器を手に入れる。
『騎士を謳うならば、それに相応しい武器で相手をしてやろう。尤も、ライフルと爆弾で打ち合えるとは思えんがなぁっ!』
 だが白兵戦用の武器を失ったと見るや、斧槍を手にしたS型が踏み込んで来た。装甲の薄い関節部を狙い、鋭い角度の突きが繰り出される……が。
「――ほう。であれば、この斬機丸なら不足はないだろう。障害物は多く、敵は減じてもなお大部隊。生身にて斬獲するに好都合な戦場と言える。キャバリア相手に単身挑むのだ、よもや文句もあるまい」
 両者の間へ、旋風を伴って漆黒の人影が現れた。鍛え上げた肉体と体に染み込ませた技術、その二つによって為される武技『縮地』。一瞬にして最前線へと辿り着いたキョウは、鞘に納められたままの太刀へ手を伸ばす。
「敵を視認……斬る」
 指先が柄に触れた瞬間、剣閃が煌めいた。それは電光石火の抜き打ち。如何に機械の反応速度が優れているとは言え、それに命令を下すのは人間だ。操縦者が認識できぬほどの速さで攻め掛かれば、鉄騎も単なる固い巻藁に過ぎない。
「まずは、一つ」
『馬、鹿な……こっちは五メートルを超える鋼鉄製の兵器だぞ!?』
 キンッ、と。キョウが納刀し短くも甲高い音を響かせると、一拍の間をおいて巨大な人型が瓦解した。足首、膝、股関節、手首、肘、肩部……四肢の各関節部がバラバラと崩れ落ち、支えを失った胴部がごろりと地面に転がる。瞬き一つするかしないかと言う僅かな間に、剣鬼は相手の脆弱部へと刃を走らせたのだ。
「ふむ、これならばまだ行けるな。だが、少しばかり位置取りが悪い。誘い込みは任せられるか?」
『ええ、勿論です。そもそもが長期戦前提でしたので、多少の損傷も織り込み済みです。人型の利点と弊害……せいぜい活用させて頂くとしましょう』
 トリテレイアはグレネードを投擲して剣鬼が離脱する隙を作りつつ、今度はS型が残した斧槍を手に取った。囮や壁役は彼の得意とするところである。ライフルの乱れ撃ちや長柄によるリーチ差を活かしながら、鋼騎士は敵部隊が自分を取り囲むように誘導してゆく。
「……このヒリつく肌触り、これぞまさしく戦場だな。こちらが不殺を前提としていようが、相手に事情を斟酌する義理など無い。命の遣り取りである事に変わりはしない、か」
 蒼白の騎士と暗緑の敵機が入り乱れ、銃弾や大質量の武具が火花を散らす。そんな嵐の如き戦場へ視線を向けながらも、キョウの口元には薄く笑みが浮かぶ。そうして敵の位置が最適な形になった、その刹那を見計らい。
「抜き、即、斬……! 斬れる相手は何も、一度に一人とは限らんぞ?」
 戦闘の中心へと躍り出た剣鬼は、得物を鞘走らせた。ひゅうと風が吹き荒れ、一瞬の静寂が戦場に降りる。次の瞬間、猟兵たちを囲んでいた敵機全てが積み木を崩す様にスクラップと化す。その場に立っているのはトリテレイアとキョウの二人のみ。銃声一つ上がらず、呆気ないほど静かなものだった。
「これで全滅、か? この場のみならず、戦場全体でもだ」
『の、様ですね。後続の本隊もそう間を置かず現れるでしょうが……それでも、勝ちは勝ちですから』
 囮を務めていた自治領部隊もまた、自分たちの勝利を理解し始めたのだろう。遠くから祝砲混じりの喝采が聞こえてくる。鋼騎士の言う通り、まだ前哨戦を凌ぎ切ったに過ぎない。しかし、当初はそれすらも分の悪い望みだったのだ。彼らの喜びもむべなるかな。
『さて、我々も帰投するとしましょう。これからの動きについて、一度打ち合わせる必要がありそうです』
「了解した。さて、次はいったい何が斬れるのだろうな……」
 そうして二人は今しがた倒した敵を捕縛しつつ、後退してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ナイトゴースト』

POW   :    パラライズバレット
命中した【RSキャバリアライフル】の【特殊弾】が【エネルギー伝達阻害装置】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    ゴーストミラー
【両肩のシールド】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、両肩のシールドから何度でも発動できる。
WIZ   :    装甲破砕杭
対象の攻撃を軽減する【電磁装甲モード】に変身しつつ、【手持ち式パイルバンカー】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:カス

👑11
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※マスターより
第二章断章及びプレイン受付の告知は9日(水)夜を予定しております。
引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
●宵闇の亡霊、鋼の廃墟に彷徨いて
『さて……まずは前哨戦終了といった所か。現時点での損害報告を』
『はっ! 人員に関しては若干の負傷者を出したものの、猟兵殿の治療により即時の戦線復帰が可能となる見込みです。また機体については四割が大破以上となりましたが、代わりに敵軍のF型を鹵獲することに成功しています。それらを踏まえれば、装備的には寧ろプラスかと』
 戦闘後の僅かな小康状態。それを利用して猟兵を含めた戦力を取り纏めると、ハイネマンは残存戦力の確認を行い始めた。部下の報告通り、無傷とはいかないまでも自治領側の戦力は大部分が健在である。加えて、大国側の使用していたサイクロプスF型が大量に鹵獲されており、戦闘による損傷や共食い整備による部品取りなどを踏まえたとしても、なお部隊へ行き渡らせるだけの機数が確保できていた。状況としてはかなり良いと言っていい。
『結構、結構。実に喜ばしいことだ。正直に言って、当初想定していた最善は我々の全滅と引き換えにした撃退だからな。まさしく、猟兵諸君のお陰と言える。まだ気は抜けないが、礼を言わせて貰おう』
 ハイネマンの言葉は不穏な内容を含んでいるものの、それでもそこに込められた賞賛に偽りはないようであった。部下たちも声を上げて心強い助っ人を称えた後、彼らは次に向けて意識を切り替える。まず言及するのは、先ほど捕らえた敵部隊について。
『捕縛した捕虜たちについては既に簡単な聞き取り調査を済ませている。諸君らのエスコートが気に入ってくれたのか、態度は極めて協力的だ。これならば、説得人員として活用可能だろう』
『現在、彼ら用の通信機を手配中です。尤も暗号や符牒などを使い、説得に偽装して情報を流される恐れもありますので、監視の人員も抽出しないと――』
 そうして、今後の動きについて擦り合わせを進めていた……その矢先。報告を行っていた部下の通信が途切れると同時に、その機体が音もなく傾いてゆく。蓄積した戦闘ダメージによる故障かと一瞬訝しむも、その懸念は瞬時に否定される。装甲を貫通して突き立っていたのは、特殊な形状の弾丸。しかしサイクロプスは勿論、猟兵が使用している弾薬とも違う規格だ。で、あるならば。
『ほう……予想よりも早かったな。操縦者の腕か、機体性能か、或いはその両方か』
 弾丸が飛来したと思しき方向へ視線を向けた瞬間、じわりと虚空に漆黒が滲み出る。浮かび上がるように姿を見せたのは、くすんだ黒色の装甲を持つキャバリア。サイクロプスと違いすらりとしたそのシルエットは、洗練された設計思想を感じさせた。
『大国側の高級主力量産機、ハイローミックスにおけるハイ。情報規制が敷かれていた為に正式な型番は不明だが、ペットネームならば伝わっている。曰く、ナイトゴースト。噂ではステルス機だと聞いていたが、なんとも厄介そうではないか』
『……ミヒャエル・ハイネマンだな? 我らが国家へ反旗を翻す愚挙に留まらず、同胞らのこと如くを鏖殺せし狂人。その配下、協力者を問わず、同じ運命を辿るものと知れ』
『鏖殺……? ああ、なるほど。「そういうこと」になっているのかね』
 敵の部隊長からと思しき通信を聞いてハイネマンは疑問符を浮かべるものの、すぐさま合点がいったように声を上げる。憎き反逆者が不殺を貫いて戦友を捕らえているなど、鎮圧部隊を率いる指揮官からしたら都合が悪い。故に戦意を煽る狙いも含めて、先遣隊は全員が無惨に殺されたと真逆の情報を伝えたのだろう……つまりはプロパガンダだ。
 相手の状況と機体性能、彼我の立ち位置を瞬時に脳内で取り纏めると、ハイネマンは秘匿通信で次の動きについて指示を飛ばしてきた。
『諸君、ここは一旦後退するぞ。自治領の外延部は工業地帯になっており、人員や重要資材は全て疎開済みだ。そこに敵を誘引し戦闘を行う。詰まるところ、市街地戦だ』
 市街地戦を行うメリットは二つ。まず、相手はステルス機だ。このような開けた場所では警戒の目が追い付かず、どこから襲い来るかも分からぬ敵に嬲り殺しにされてしまう。その点、建物が入り組んだ工業地帯であれば相手の侵攻経路を限定しながら戦うことが出来る。そして二つ目の利点は、捕虜について。
『工業地帯には防災無線などの放送設備がある。それを利用すれば、相手に捕虜の位置を気取られずに説得を行うことが可能だ。なぁ、諸君。敵の中にはプロパガンダではなく、上から真実を教えられている者も一定数存在するだろう。彼らの役目は何だと思う?』
 指揮官は敵によって先遣隊が全滅したと告げていた。しかし実際は生きていて、自分たちに戦いを止めるよう言葉を掛けてくる。その際に生まれる疑念はこれまで抱いていた不信と結びつき、士気を崩壊させかねない。であれば、それに備えて火消しに回る者が必要だ。
『味方が先に聞いてしまえば、敵の策略だと言って有無を言わさず抹殺。もし先に見つければ、我々の仕業ということにして口を封じる……死人に口なしだ。どのみち、やることは変わらんだろう』
 個ではなく、群としての目的達成を優先する。良い悪いではなく、軍隊とはそういう存在だ。しかし、だからと言って目の前で繰り広げられる所業を見過ごす訳にはいかない。
『相手の指揮官はなかなか悪辣なようだ……尤も、私が言えた義理ではないがね』
 皮肉気な感想を残しながら、ハイネマンは機体を反転。全部隊へ後退を命じながら、工業地帯へと姿を紛れ込ませてゆく。ここからは先は、先程とはまた違った法則が支配する戦場となる。それにいち早く順応し、相手の裏をかけるが勝敗を分けるだろう。

 虚空に潜む宵闇の亡霊。戦友へ投げ掛けられる戦いへの疑問。戦争狂に率いられし最終戦力たる増強大隊。そして、市街地戦へと場を移す猟兵たち。
 混迷を増す戦場において、趨勢を制するは四者のいずれとなるのか。
 先行きはまだ――誰の目にも、見通せない。

※マスターより
 プレイング受付は11日(金)朝8:30~となります。
 第二章は市街地戦となります。工場施設や配管などによって入り組んでおり、行動範囲が制限されております。ただし、軽量機や生身の人間であれば建物の上を行動することも可能でしょう。
 2章では『1章で捕らえた捕虜の説得』を利用する場合、プレイングにボーナスがつきます。先遣隊は全員殺害されたと相手は考えている為、捕虜の説得で動揺させたり戦意を失わせたりする事ができます。ただし、乱暴な扱いをすると逆に相手の怒りを買って効果がなくなりますので、紳士的な対応をお願いします。また、一部の敵兵は真実を知った上で行動しており、説得が通じない場合があるためご注意ください。
 もちろん、捕虜云々を抜きにして真っ向から対ステルス戦闘を敢行しても大歓迎です。
 それではどうぞよろしくお願い致します。
ダビング・レコーズ
当機が搭載するAIの仕様では重層的な心理推察力が求められる戦術への対処は極めて困難
直接の戦闘行動による対処に専念する

敵は光学迷彩の不可視モード搭載型か
先制主導権は敵側にあるものとせざるを得ない
視界外から攻撃を受ける事を前提にEMフィールドを常時展開
被弾方向より敵位置を推定する
建造物に遮蔽されたこの戦域では移動可能な範囲は必然的に限定される
所在方向さえ判別できれば速力で追い詰められる
ベルリオーズの牽制射を放ちながら最大加速で突進
フィールドを纏った状態で機体を直接衝突させる
特殊弾もフィールドで防いでしまえば問題無い
体勢を崩した所をルナライトと切断翼で切り刻む



●亡霊殺すは鋼の戦理
『相手が有利な地形へ逃げ込むのをむざむざ見過ごす道理もない』
『背を見せた敵など格好の獲物だ。加えて相手は数頼みの旧式機、早々に討ち果たせ』
 ハイネマンの指示を受け、工業地帯へと後退してゆく猟兵と増強大隊の面々。しかし、相手とて木偶人形ではない。戦場において最も敵を倒しやすいタイミングは追撃戦である。無秩序な潰走であれ、規律だった撤退であれ、それは変わらない。退く側にとっては最も危険な、そして狩る側にとっては絶好の機会。
(……当機が搭載するAIの仕様では、重層的な心理推察力が求められる戦術への対処は極めて困難。かつ、地の利は在れど友軍がそれを活かす為の準備時間が圧倒的に不足している。ならば、当機の果たすべき役割に変更はない)
 だが、それに待ったを掛けた存在があった。白銀のキャバリアと己を合一化させたダビングである。彼は仲間たちが工業地帯に展開し切るまでの時間を稼ぐべく、殿軍を買って出たのだ。戦機の機体は莫大な推力に物を言わせた高機動戦に特化しており、その関係上こうした工場地帯の隘路とは相性が悪い。加えて機械ゆえに、捕虜の説得を利用して感情の機微も探るのもまた不得手。そうした条件を鑑みた結果、荒野と工場地帯の境目を己が戦場と判断したのである。
『当機の任務はオブリビオンマシンの破壊。それと同時に友軍の展開が完了するまでの時間を稼ぐため、直接の戦闘行動による対処に専念する』
『単騎で時間稼ぎか。だが、侮りはすまい。不可視なる多勢、その恐ろしさを電子基板に焼き付けて貰おう』
 工業地帯に入ってすぐ、比較的直線かつ道幅の広い搬入道路上へ陣取ったダビングに対し、亡霊たちは遠巻きに様子を窺いながら姿を虚空へと沈めてゆく。時間は自治領側に利するものと理解しながらも、相手は慌てて攻めるような真似はしなかった。数と不可視、自らの優位を存分に生かし確実にダビングを撃破するつもりなのだろう。
(敵は光学迷彩の不可視モード搭載型か。加えて、操縦者の技量も先の先遣隊よりも上で在ると判断する……先制主導権は敵側にあるものとせざるを得ない)
 相手のステルス機能は透明化に加え、レーダー波の乱反射や排熱・雑音の抑制なども含まれる。つまり、五感を機械に頼るダビングとの相性は最悪に近い。先手を打つことがほぼ不可能と判断するや、彼は自機の全周に電磁障壁を展開した。
(先制攻撃が望めぬのであれば、狙うべきはカウンター。被弾方向より敵位置を推定する)
 主幹道路は広いものの、当然左右に枝分かれしている。迂回した敵がどこから現れるかも分からぬ以上、後の先を取るより他に勝機はない。左にリニアアサルトライフル、右手にプラズマブレードを構えながら、戦機はじりと相手の出方を窺い続け……。
 ――ジッ、ィイッ!
『……四時の方向、距離六百。敵機を視認した』
 焦げつくような異音と共に、装甲に衝撃が走った。それは音も無く放たれた敵の特殊弾が、電磁障壁を突き破って装甲を穿った証である。機体の発する警告を受け流しながら振り返ると、ライフルを構えた敵機が確認できた。攻撃の瞬間までは不可視化を維持できないのだろう。だが相手はじわりと姿を消しつつあり、このままでは取り逃がしてしまう。
『ストームルーラーのエネルギー伝達に障害を確認。なれど、推力低下値は許容の範囲内……現状でも捕捉は可能と判断する』
 だが、ダビングに焦りはなかった。彼は稼働可能なブースターを点火、一気に速度を上げつつライフルによる牽制射を浴びせ始める。
『馬鹿な、確かに推進装置へ命中したはず。元々の出力が並外れているという事かっ!』
『射撃火力の予想最大威力を計算、EMフィールドを前方へ集中。このまま吶喊を行う』
 戦機の速度に離脱は困難だと判断するや、相手は即座に射撃戦へと切り替えた。しかし、ライフルの火力は既に対策済み。出力を上げた電磁障壁で弾き返すと、ダビングはそのまま敵機へと突撃する。勢い余って工場設備へめり込み藻掻く亡霊を見下ろしながら、彼は機体をくるりと回転させた。
『ブレードフェザー展開。反転離脱と同時に、ルナライトと合わせた斬撃により無力化する』
 機体が身を翻すと共に振るわれしは青月と噴炎の双刃。バラバラになった敵機を尻目にダビングが離脱するや、彼が一瞬前まで居た空間を無数の弾丸が虚しく貫いていった。一瞬でも反応が遅れていたら、蜂の巣になっていただろう。
『まずは撃破一。このまま遅滞誘引しつつ、敵機への攻撃を継続する』
 そうして戦機は時間を稼ぎつつも、着実に戦果を重ねてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動

◆方針:SPD
マルクの嗅覚で敵を捜索
捕虜による説得放送で揺さぶりをかけつつUCを使用
質問内容は「お前は彼ら――先遣隊に仇なすものか?」
鬼火の反応で捕虜への害意を識別
あえてUCを敵にコピーさせる事で『鬼火に焼かれる=嘘を吐いた』という事実を共有
鬼火に焼かれた機体があればそれも説得材料にする
「今の炎をコピーしたならわかるな。あの機体の操縦者は嘘をついた、お前たちの同胞を殺す気でいたのだ!」
敵兵の中に捕虜の生存を知る者がいる事、隠蔽の為に捕虜を殺そうとしていた事を突き付け、戦意を挫きます
「次に捨て駒になるのはお前達だ。それでも戦う気があるか?」
もし戦闘になったら見切りと全力魔法で対応



●魔なる舌鋒、偽りの亡霊を炙り出す
「……ふむ。どうやら最低限の準備は終えられたか。では、まずは敵が来るのを待つとしよう。なに、マルクの嗅覚ならば見落とすこともあるまい」
 戦機が遅滞戦闘を繰り広げている頃、ディスターブは工場の屋上から付近一帯を睥睨していた。下では有線ケーブルの束を抱えて走り回る兵士や、スピーカーの調整を行う工兵の姿が見える。取り急ぎこの区画だけであるものの、彼らの働きによって捕虜による説得を行う下準備が完了したのだ。後は敵機が接近次第、放送を流すだけだがそのタイミングが難しい。早すぎれば火消し役が迂回を目論むだろうし、遅ければ戦闘の余波で放送設備が破壊されてしまう。しかし、魔術師に不安げな様子はなかった。その理由は、彼の傍らへ行儀よく鎮座する一頭の狼だ。
(機影、駆動音、排熱。そこまでは対策もしていようが、匂いにまでは気が回るまい。ステルス機はレーダー波吸収用に特殊な塗料で装甲を覆うという。敵特有の匂いなど、接近を知るにはいい目印だがな……っと)
 ディスターブが思索に耽っていると、狼が立ちあがり眉間に皺を寄せる。使い魔の視線を辿っても何の変哲もない風景しか見えないが、それは何よりも明確なサインだ。
(なるほど、来たか。タイミングとしては丁度いい、流し始めろ)
 魔術師がハンドサインで指示を出すや、下で待機していた兵士が無線に何事かを告げる。するとノイズ交じりではあるものの、聞き取るに十分な音質で放送が流れ始めた。
『我が友軍に告げる。こちらは先遣隊第七中隊所属、シュタイン少尉である。良識ある同胞よ、暫し私の話に耳を傾けて欲しい……我々が何の為に戦うのかについてだ』
『っ!? これは……馬鹿な、生きていたのか!』
 軍隊に置いて上下の関係が絶対な様に、肩を並べる戦友同士の紐帯は極めて固い。故に自治領側への報復に燃える中、死んだと思っていた仲間が生存していた上に軍上層部への疑問を投げ掛ける。安堵、疑念、混乱。それらが綯い交ぜになった感情のせいだろうか、相手は機体の不可視化を解除してしまう。姿を見せた総数は一個小隊計四機だ。
『待て、相手はあの「戦争狂」率いる部隊だぞ。我らを動揺させる為の欺瞞工作なのでは』
『いや、俺はシュタインとは同期だから分かる。声も話し方もヤツで間違いない!』
『ならば、脅迫して無理矢理従わせている可能性も……』
 流石に諸手を振って喜ぶ者はおらず、誰も彼も半信半疑と言った様子である。なればと、ディスターブは姿を見せつつ眼下の敵へと問いを投げ掛けた。
「同胞の言葉が信じられぬか。オレたちの罠と疑うか。ならば問おう。お前は彼ら――先遣隊に仇なすものか?」
『っ!? 放送に気を取られて気付けなんだか……異なる事を、何故我らが同胞に仇為さねばならん! それは貴様らであろうが!』
 相手がハッと頭上を仰ぎ見れば、降り注ぐは青白い魔なる焔。それは機体に纏わりつくと、ジリジリと装甲表面を焼いてゆく。しかし、反駁の声と共にそれはあっさりと消えてしまう。敵機は肩部特殊装置を介してその術理を疑似的に模倣するや、返す刀で魔術師へと叩き返す。だが彼も慌てることなく、小さく首を振る事でそれを消し去った。
「こちらの答えも否だ。その証拠に炎が消えただろう? お前たちとて、今の遣り取りで原理は理解できたはず……その上で、だ」
 一見すれば双方ともにダメージを与えられぬ、無意味な攻防。しかし、ディスターブが或る対象を指差した瞬間、その真意が浮き彫りとなる。節くれ立った指の先に居たのは、未だ炎上する機体。幸か不幸か、その意味を理解できるだけの頭脳が敵にはあった。
『待て、この炎は欺瞞に反応して燃え上がる。なら、これは……!』
「そう、あの機体の操縦者は嘘をついた。即ち生存を知った上で、お前たちの同胞を殺す気でいたのだ!」
 これがただ言われただけならば否定も出来よう。だが実際に自分で使用し、法則を理解してしまった今ならば話は別だ。じわりと、それまで魔術師に向けられていた敵意が炎上する機体の主へと移ってゆく。
『ま、待て!? これは敵の離間工作だ、この様な世迷い事で祖国に叛逆する気か!』
「どちらの言を信じるかは任せよう。だが、次の捨て駒になるのは確実にお前達だ……それでも戦う気があるか、偽りを語る国の為に?」
 その一言が決定的だった。立て続けに響いた発砲音により、炎上機体は無力化される。操縦席を撃たなかったのはせめてもの情けか。斯くして魔術師は術一つと言葉のみで、敵部隊を投降させる事に成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
※絡み連携アドリブ大歓迎
※愛機『ナインス・ライン』で参戦

まず捕虜達に丁寧な【医術】提供
アタシの本業だしガチ説得も欲しいからね
代金は中佐とっておきの一本で立替♡

さて、ステルス機への心理戦か
ここは6号【フェザー】の出番かな
背部コンテナが変形したカタパルトを両肩に接続
F1、F2、発進っ

軽量小型の無人機に施設屋上を移動させるよ
そして捕虜のマイク音声をスピーカー出力
カメラ入力もアタシの電脳経由で捕虜に提示
彼らの説得をアシストしてね

アタシ自身は火消し役への【スナイパー】担当
レーダー(フェザー&自機)の微かな違和感や弾道ログを統合
口封じの動きを割り出し対物ライフルで四肢を狙い撃ち
命は獲らずに、淑女らしくね♪


キョウ・キリノ
【生身参戦】
市街戦か…俺には有利な戦況だ。

俺の今の雇い主であるドクター(リーゼロッテ/f30386)も戦場にいる様だ、先行した彼女が行う作戦に乗るのも悪くない…。

感情で戦うのは悪くない、だが感情を抱えたまま剣を執れば…負ける。

俺は【覚醒】で能力をブーストし建物の上を駆け、ドクターが流した捕虜の説得などに動揺した機体を【瞬間思考力】で見極め【切り込み】片端から太刀にて機体の四肢を【切断】、効率良く無力化してゆく。

鋼を通していても、俺には見える。

更には敵機の発する【殺気】から真実を知り行動している敵機を【見切り】攻撃を【受け流し】てから一気に飛び込んで【薙ぎ払い】両断、斬り伏せる。

【アドリブ歓迎】


メアリーズ・エリゴス
きひっ!追加で生体CPU用薬物を摂取して【オーバードーズ】しっぱなしですよぉ!
念動式ビットはまだ持ちますね?なら引き続き使いましょう
市街戦ですが、あえて目立つように高層建築物の上にロートガルを立たせますよ。高い建物の上に真っ赤な機体、さぞ目立ちますね
幾らステルスでも殺気は隠してくれませんねぇ?薬物でサイキッカーの超感覚で私を狙う殺気を捉えてみせますよ
うふふ、ひひっ!邪気が来ましたねぇぇぇ!殺気から位置の特定と先読みしてビットと高所からのロングビームライフルでの狙撃でステルス機から逆に先手を取ってのお株を奪うファーストルックファーストキルをやっちゃいますよぉぉぉ!
実際には殺(アイ)せないですけど



●説きて降し、斬り撃ちて払うべし
(さてさて、捕虜説得は実際に効果が出た、と……となれば、こっちも本腰入れなきゃか。そもそもアタシの本業だし、ガチ説得も欲しいからね)
 魔術師による戦果はすぐさま猟兵と大隊へ共有された。効果があるだろうと確信していようとも、実際に結果が出てくるまでは安心できぬもの。それが為されたとあらば、いよいよ以てこの戦術に注力する必要が出てくる。リーゼロッテが捕虜たちの詰める収容施設に足を向けていたのは、それを受けての事である。
(治療を行うことのメリットは二つ。最低限以上の待遇を保証する事によって、こちらの心証を良化させること。もう一つは、説得の際に万が一傷が痛まれたら内容に対して不信感を抱かれる。その危険を排すること……ま、アタシに打ってつけの役目だね)
 幾ら不殺を心掛けたとて、双方ともに全力で戦闘を行っているのだ。大小に限らず、捕虜たちは怪我を負っていた。彼らは闇医者の手によって治療されるや、方々の放送所へと送り出されてゆく。これならば、工業地帯全域で放送を流す事も難しくないだろう。
「っと、こんなものか。さて、裏方の次は最前線とか、仕事が多いったらありゃしないね。この代金は中佐とっておきの一本で立替♡」
 頭数は確保できたと見るや、リーゼロッテは施設の横に駐機していた機体へと乗り込んでゆく。彼女が背部にマウントされたコンテナへ指示を出すと、それは一対二基のカタパルトへと変形する。
 ――接続元不明の……ザザッ。システムに深刻な障害、ガガ、直ちに使用を……。
『や、それアタシだし。んじゃ6号「フェザー」、F1とF2を発進。オペレーション開始して?』
 射出機を通って飛翔したのは、可変機能を持った小型無人キャバリアが二機。つまりはステルスと双璧を成す戦争技術の主流、ドローンだ。機関砲や実体盾、ミサイルで武装しており、威力偵察に適任だろう。
『今回はどちらかと言えば、説得放送の出力機という役割の方が強いけどね……おや、早速来たようだけれど、これは』
 そうして工場群の屋上へと配置した無人機を介して様子を窺っていたのだが、リーゼロッテは中継された情報を見て眉根を顰めた。ステルスを解いた敵機が、それも単独で行動していたのである。マシントラブルか、それとも隊伍より逸れたか。しかしそれにしても、動きに焦りが見られない。
(なるほど……恐らくだけど、アレが火消し役だね?)
 そこから闇医者はある結論を導き出す。不可視の優位があっても、隠れ潜む敵を見つけ出すのは骨が折れるはずだ。故に、敢えて一機のみ先行させて攻撃を誘い、位置を割り出し次第ステルス中の本隊が叩く……と言うのが表向きの理由。
(でもそれだけだと、危険が大き過ぎて誰もやりたがらない。けど、あれが火消し役なら話は別……捕虜や放送設備を先んじて発見し、それを潰せるというメリットが生まれる)
 しかし、それを見抜いたところで迂闊に手が出せなかった。下手に攻撃をすれば本隊の警戒を高め、かと言って放置すれば配置した無人機を気取られかねない。さてどうしたものかと思案している……と。
「お困りの様だな、ドクター。雇い主が悩んでいるとあらば、刃を振るのもやぶさかではない。そちらの作戦を活用するためにも、ここは任せて貰おう」
 反対側の建物、その屋上にいつのまにか漆黒の人影が佇んでいた。それは斬機刀を手にしたキョウである。両者の関係は傭兵と雇い主、故に見知った機体を見つけて駆け付けてきたのだろう。状況を一目見て、何をすべきかを察したらしい。
『キョウか。そう言うのならお願いしようかな。オーダーがあるとすれば、上手く相手を苦戦させてくれると助かるね。増援を呼べば倒せる、そう思えるラインでだ』
「成程、敵本隊の誘引が第一優先か。相分かった、その役目を果たして見せよう」
 正式な指示を受け、剣鬼はばさりと長い髪を掻き上げる。何も気取っている訳ではない。己自身に染み込ませた、意識を切り替える為のトリガーだ。スゥと、その行為を契機として脳内の雑念が取り払われてゆく。思考が明瞭になると同時に、外界の変化へ瞬時に対応できる反射神経が研ぎ澄まされる。
(感情で戦うのは悪くない。そう言ったものは窮地においてなお立ち上がる力になる。だが、感情を抱えたまま剣を執れば……負ける)
 キョウが感情を侮る事など決してない。此度の戦術は戦友の情という感情その物の上に成り立っているのだから。しかし裏を返せば、相手はその感情ゆえに動揺し、脆弱さを露呈してしまう。だからこそ、必要なものは――如何なる状況でも揺らがぬ芯。彼にとっては鋼すら断つ斬機の理である。
「適度な苦戦を、との命令だ……ならば、まずは腕の一つを落とすとしよう」
 敵機が真下に来た瞬間を見計らい、剣鬼は屋上より身を躍らせる。落下によって位置エネルギーを速度へと変換しながら、彼は鞘より刃を抜き放つ。落下物警報を受けた相手が上を見上げた所で、もう遅い。
『っ、伏兵か!? しかし、この機体の情報は秘匿されている。サイクロプスの様になど……!』
「情報欺瞞とステルス機能、それらを十全に施しているが故の自身なのだろう。だが鋼を通していても、俺には見える」
 亡霊は独眼と比べて、より洗練された設計が為されている。関節部や装甲の強度など比べ物にならない。故に初撃を防ぎ、返す刀で反撃を叩き込もうと考えていたのだろう。だが、その目論見は虚しくも外れる事となった。
 ――斬ッ!
 亡霊の左腕が、半ばより寸断され宙を舞う。関節部を、ではない。強固な鋼鉄で覆われていた前腕部をばっさりと断ち切ったのだ。一拍の間をおいて地面に転がったマニピュレーターが立てた轟音により、ようやく我に返った兵士が無線機へと叫ぶ。
『ぞ、増援を求む! 敵はキャバリアならずともそれに相当する戦力なり!』
『ダメージ情報をこちらにも回せ。敵戦力を分析し、機体のコンディションを調整し対応する』
 支援要請を受け、待機していた亡霊たちが剣鬼を血霧に変えるべく一斉にライフルのトリガーを引き始めた。相手は先の攻防から得た情報を元に、機体の出力を上昇させている。対して、銃口が向いている角度を見極め、超反射能力によって肌一枚を隔てて通り過ぎる弾丸を避けてゆくキョウ。相手は仲間を助けるべく、彼のすぐ傍まで踏み込んで来ている。それは即ち、スピーカーの音がと届く範囲に侵入した事も意味していた。
『お膳立てご苦労様だよ。それじゃあ、放送を始めようか!』
 その機を逃す闇医者ではない。捕虜たちへ合図を送るや、無人機が抱えていたスピーカーより説得の言葉が大音量で流れ始めた。加えて声真似の疑いも潰すべく、壁面投影による映像までも流れ始める。
『俺は第二小隊所属のリヒター曹長だ。我々は軍人であり、上の命令に従う義務を負う。だが同時に、疑問を呈する権利もまた持ち合わせている。なればこそ戦友に問う。此度の鎮圧戦に不自然な点はないのかと……――』
『なッ!? あれは正しく、先遣隊の隊員だぞ!』
『映像を合成……? いや、そんな物を用意する時間など無かった。ならば、本物?』
 それにより、一瞬にして敵部隊は大混乱に陥った。キョウの言葉通り、戦闘に余計な感情を持ち込んだ代償として彼らの動きは明らかに精彩を欠き始める。それでもなお、身体に染み込ませた技術を使って戦闘を続行しただけでも、彼らの力量は褒められるべきだろう。
『敵の策略に乗せられてどうする! 戦わねば、どのみち我らは全滅だぞ!』
 隻腕となった火消し役がそれでも統制を計ろうと、仲間たちをどやしつける。混乱している最中に外部から指示されれば、人は従ってしまいがちなもの。それが軍人ならば猶更だ。一部が剣鬼を相手に足止めを行いつつ、残りが放送を流す無人機へと照準を合わせ……。
『きひっ! 野戦の次は市街地戦、休む暇もありませんねぇ? 長丁場になりそうですし、もう一発キメておきますよぉぉぉっ!』
 手にした得物が撃ち抜かれ、爆散した。キョウは勿論、リーゼロッテによるものではない。咄嗟に周囲へと視線を走らせた敵兵士が見たものは、工場の上に仁王立つ巨大な機影。周囲に無数のビットを引き連れしはメアリーズの駆るロートガルであった。敵の武装を破壊したのも、密かに先行させていた無人誘導兵器の働きである。
「メアリーズか。そちらも来ていたのだな」
『ええ。私も気付いたのはついさっきですが、仲間外れなんて寂しいですわよぉ?』
 剣鬼と生体演算人は、二人とも闇医者率いる非合法機動医療艇『ファルマコン』の所属である。特に示し合わせて此度の戦いに参加したわけではないが、それでも肩を並べるなら初対面の相手より知己の方が連携しやすい。
『ふ、ふふ。隠密性重視のあちらからすれば、こんな目立つ機体色なんて自殺行為でしょうね。でも、それで良いのです。嫌が応にでも視界に入れば、意識せざるを得ない。幾らステルスでも殺気は隠してくれませんしねぇ?』
 メアリーズは機体のブースターを吹かすと、工場の屋根を蹴って跳躍する。元々重量級の機体を支えるだけの耐久性が無かった建築物は、その余波によって崩れ落ちてゆく。だがこれも必要な犠牲、コラテラル・ダメージというもの。既に彼女は敵の位置を情報としてではなく、自らの感覚によって補足していた。
『うふふ、ひひっ! 邪気が来ましたねぇぇぇ! 例え逃げ隠れしようとも無駄ですよぉぉぉ!』
『っ、コイツ……言動は普通じゃないが、対ステルス戦の勘所を抑えているだとッ!』
 ビットを三次元的に運用した立体的な射撃網。それは弾幕と言うよりも檻と評すべだろう。縦横無尽に放たれる光条は敵の動きを阻害するだけでなく、仮に姿を消して見せた所で攻撃を避ける隙間すらもない。故に、被弾によって自ずと位置がバレるという次第である。そうして相手の動きを確実に止めた所で、本命が放たれた。
『ステルス機から逆に先手を取ってお株を奪う、ファーストルックファーストキルをやっちゃいますよぉぉぉ! そのまま堕ちてしまいなさいっ!』
 宇宙戦艦の艦砲技術を用いた長射程ビームライフル。火力と命中精度を両立されたそれを避ける術は愚か、防ぐ手立てとて亡霊は持ち合わせていなかった。極大の光線が斜め上方より大気を引き裂くや、敵機の半身がどろりと溶け落ちる。しかし、操縦席だけは巧みに避けているのは流石の技量と言えるだろう。
『実際には殺(アイ)せないのは、少々欲求不満が溜まりますわねぇ。捕虜の方々にご協力頂く為、仕方がない面はありますが……』
 前哨戦での不殺が捕虜の数を確保する為であれば、今回の不殺は協力を得続ける為の意味合いが強い。彼等とて同胞を救うために説得を行っているのだ。むざむざ殺害して信頼を損なえば不利益にしかならない。その点は熱に浮かされた思考でも理解しているものの、やはりメアリーズとしては不満そうである。
『お、のれぇええっ! 我らの狙いを尽く邪魔しおって!』
 だが、もし仮に例外が居るとすればこの火消し役だろう。隻腕にも関わらず、ライフルを乱射し徹底抗戦の構えを見せている。少女はこの兵士だけが、些かばかりも殺気を鈍らせていないことを感じ取っていた。捕虜にとっても、自らを抹殺しようとした敵でしかない。
『あなたなら、殺(アイ)しても問題ありませんわねぇぇぇっ!』
『ち、ぃぃいいっ!』
 敵機は咄嗟に得物を放り捨て、装甲破砕杭へと手を伸ばす。生存を捨て、相討ち覚悟で少しでも敵へダメージを与えんとするつもりか。下手に生き残って情報が洩れる危険を危惧したのかもしれない。そうして、嬉々として襲い来るメアリーズへ真っ向から挑み掛かる……。
『はい、どっちもそこまでだよ。死人に口なしなのはそちらも同じだからね。アンタには生きて洗いざらい情報を吐いてもらう必要があるんだからさ』
 寸前、立て続けに放たれた弾丸によって亡霊の残る三肢が吹き飛ばされた。達磨となった敵機が地面に転がり、それによりメアリーズの攻撃もまた空振る。攻撃の主はリーゼロッテ。彼女は説得放送の効果が十分に発揮されたと見るや、自らもまた攻撃へと加わったのだ。
『……理屈が分かるとはいえ、やはり不完全燃焼感がありますわね』
『なに、それなら次に期待だね。指揮官とやらなら、存分にやれるだろうさ』
 嘆息する様に呟くメアリーズを、リーゼロッテは苦笑を浮かべつつ宥める。また、キョウも足止めに回っていた敵機を切り伏せ終えたらしい。キンッと、得物を鞘に納める音が響いた。
「どうやら、一先ずこの区画に来た相手はこれで全ての様だな。尤も、姿が見えぬゆえ正確な敵数が把握できていない。まだまだ来ると見るべきだろう」
 だが、それならそれで望むところである。三人は陣形を整え直しながら、次なる接触に向けて戦意を研ぎ澄ますのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

春乃・結希
市街地戦には不向きなので
キャバリアを降りてセフィ姉(f00633)と合流

物陰に身を隠しつつ進み、敵を探す
突っ込むしか能のない私は、セフィ姉の頭脳が頼りです

あっ、いましたよ!どうしますっ?
声をひそめつつ指示を仰ぎます
はー…なるほどです…うんうん…天才か?

『wanderer』の踏み込みを翼の羽搏きに乗せて
速度を乗せた『with』で装甲を弾き飛ばす
硬っ…たい…!でも、まだセフィ姉がいる!

流石ですセフィ姉っ!これは2人の…ううん、4人の共同作業ですねっ

国同士の戦いなんて、どっちが正しいとかわからないし、どっちが勝ってもどうでも良いけど
とりあえず今はラインライトを守るのが仕事だから
報酬はたくさん貰おっと


セフィリカ・ランブレイ
春乃ちゃんと(f24164)
避難済みの場所でも、人が戻るのを考えると派手過ぎるのも、ね
戦争被害は少ない方がいいに決まってる

相手は迷彩機能を持ってる、待ちの戦術じゃだめ
キャバリアから降りて攻めよう!

【虚影の燐虫】を展開
周囲にバラまいて索敵と、相手の反応を誘って逆に不意打ち!

敵はシールドも電磁装甲も厄介だけど、電磁装甲は常時展開できるわけじゃない、不意打ちで起動前に叩く!
対生身の角度じゃ肩のシールドも十全に機能しない
足を狙ってコカす!春乃ちゃんの一撃を信じてる!

姿勢が崩れれば後はこっちのもの!
剣が恋人と姉のヤベー奴コンビのお通りだ!

『その括りどうなのよ』
シェル姉…相棒の魔剣のボヤキは知らない!



●双剣、亡霊を断ち伏せん
『まさか、セフィ姉が参戦しているとは思いませんでしたねぇ……』
『こっちだって春乃ちゃんを見つけた時は驚いたわよ。ともあれ、こうして一緒になれたのは幸いだったわね』
 別の区画で同じ旅団所属の猟兵同士が連携して戦闘を行っていたころ。奇しくも、結希とセフィリカもまた合流を果たしていた。戦闘に適した場所を探して移動しながら、二人は出会えたことを互いに祝し合う。単騎で挑むよりも遥かに心強いが、かと言って喜んでばかりも居られない。
『通常の戦闘なら兎も角、やっぱりキャバリアサイズだと手狭かしら。避難済みの場所でも、人が戻るのを考えると派手にやり過ぎるのも、ね。戦争被害は少ない方がいいに決まってるから』
 工業地帯ゆえ資材や製品を運搬する主幹道路こそ幅が広いものの、それ以外は細い道ばかり。行き止まりも多いとあって、動きやすいとは到底言えない。無理に動けば、戦闘の余波で施設へ被害が出る事は明らかだ。必要な物は既に疎開済みとは言え、それは少々忍びなかった。
『加えて相手は迷彩機能を持ってる、待ちの戦術じゃだめ……良し、キャバリアから降りて攻めよう! 生身で敵の弱点をピンポイントに攻撃すれば、多少はマシになるだろうし……キャバリア戦の初陣に水を差すようだけど、付き合って貰える?』
『ええ、勿論です! 戦術眼については信頼していますから。それに「with」も少しは活躍させてあげないと拗ねちゃいそうですし、ね?』
 そうと決まれば話は早かった。セフィリカは提案を快諾した結希共々、キャバリアを建築物の影へと隠しつつ操縦席より飛び出してゆく。彼女たちの手にはそれぞれ蒼と黒の大剣が握られていた。ただ使い手に身を委ねる黒き刃とは対照的に、意志ある魔剣は主へと疑問を呈する。
『それで、このあとはどうするのよ? 敵の姿が見えないという点は解決していないようだけれど』
「それについてはこうするつもりよ……じゃ、目一杯輝いてよろしくねっ!」
 問い掛けに対する答えとして示されたのは、無数の蝶の群れ。正確には脈動する様に燐光を放つ蝶型小型マシン群である。見た目とは裏腹にその動きは素早く、総数はおよそ百に届くか届かないか程度。それらは使役者の指示に従い、方々へと散ってゆく。
「これで、敵の居場所が分かるんですか?」
「と言うよりも、向こうからやって来るという形かしらね。戦いにおいて真っ先に狙われるのは目立つ英雄じゃない。斥候や観測を始めとした情報収集を担う者よ」
 戦争における要素として、兵の数や装備の質と同等かそれ以上に重要視されているのが情報である。そうした情報の収集や伝達役などは、見つけ次第率先して狙われる役回りだ。それらを統合し、指示を下す指揮所など格好の標的である。翻ってみるに、この光景は敵にとってどう見えるのか。
「ああ、なるほど。この蝶って、形状こそあれですけどドローンか何かの様に見えますよね。情報を持ち帰らせまいとこれを攻撃すれば、そこから位置が割り出せますし……」
「目敏い者なら、帰還する蝶の後をつけて中枢を叩こうとするはずよ。尤も、こちらとしては寧ろそれが本命だけどね」
 と、いう訳である。そうして暫し待っていると、二人は微かに地面が振動しているのに気付いた。キャバリアに乗っていたら他の雑音に紛れてしまう程度の違和感。さっとその震源に視線を向けると、蝶の輝きが不自然に歪んでいる一角が見える。よくよく目を凝らせば、それは人型をしている様に思えた。
「あっ、あれは……いましたよ! でも、どうしますっ?」
「敵はシールドも電磁装甲も厄介だけど、後者は常時展開できるわけじゃない。なら、不意打ちで起動前に叩く! 対生身の角度じゃキャバリア戦を想定した肩のシールドも十全に機能しないから、具体的には足を狙ってコカす!」
「はー、なるほどです。うんうん、分かり易くてかつ効果的……よもや天才か?」
 セフィリアの戦術は彼我のサイズ差を主軸とした戦法で在り、シンプルながらも手堅い一手である。問題があるとすれば、全高五メートルを誇る鉄の塊と渡り合えるだけの戦力をどうするかであるが、その点に不安は無い。剣姫は信頼の籠った瞳で旅人を見やる。
「直接切り結ぶことについては……春乃ちゃんの一撃を信じてるから!」
「ええ、任せて下さい! 突っ込むしか能がないですけど、それだけなら誰にも負けませんから!」
 友が己ならば出来ると信じてくれたのだ。ならば、それに応えねば磨いた武名が泣くというもの。先陣を任された結希は敵の動きを見極めつつ、何時でも飛び出せるように前傾姿勢を取る。するとその背にじわりと炎が滲み出るや、瞬く間に一対の翼を形作る。自己暗示による真の姿の限定解放。無論、強引な強化は代償を生み、全身に焼けつくような疼痛が広がってゆく。だが、それすらも課せられた想いでねじ伏せる。
(大きいものは、幾度も斬ってきた。でも、今度のは総身を鋼で覆った巨人。戦う為だけに理詰めで組み上げられた兵器……斬れる? ううん、斬るんだ)
 ――何故ならば、私たちは『強い』のだから。
 敵機が二人の隠れている路地の前へ足を踏み出した瞬間、結希は猛然と飛び出した。背中の炎翼をひと打ちし、更には蒸気脚甲によるブーストを加えた神速の踏み込み。それらを載せた吶喊は敵機の反応速度を容易く上回る。
『敵機接近? だが何も見え……いや、下か!』
「気付いたところで、もう遅いです……!」
 速度を載せた大剣の一閃。それは強烈な手応えと共に脛部分を覆う装甲へと食い込み……止まる。装甲板と内部機構、二重の鋼鉄が必殺の斬撃を受け止めたのだ。人間であれば一触両断と言えど、キャバリア相手ではそうもいかない。
(硬っ、たい……!? でも、まだ! セフィ姉へ繋げる為にも……ッ!)
 だが、そこではいそうですかと退いてしまっては先陣を切った意味がない。彼女は路面舗装を踏み砕かんばかりに軸足へ力を入れるや、減じた速度を回転力へと変換する。そのまま体の捻りを加えながら、全身の力を刃へと注ぎ込み……。
『なッ!? 脚部が、おおおおっ!』
 敵機の足首を盛大に跳ね飛ばした。こうなってしまえば立ってはいられず、ぐらりと身体を傾がせる。咄嗟に工場の壁面へ手を伸ばして支えにしようとするも、キャバリアの重量を受け止める耐久性などあるはずもない。虚しく崩れ落ちる瓦礫と共に、亡霊は無様に地面へと倒れこんだ。
「体勢が崩れました! セフィ姉、今です!」
「体勢を崩すだけでも御の字だったのに、まさか両断するとはね。でも、こうなれば後はこっちのもの! 剣が恋人と姉のヤベー奴コンビのお通りだ!」
『その括りはどうなのよ……』
 横へ飛び退って結希が道を空け、入れ替わる様にセフィリアが二の太刀を振るう。振るわれる魔剣は小さくぼやきを入れるものの、その切れ味には些かの翳り無し。装甲の薄い関節部を狙って刃を振るえば、瞬く間に敵の操縦系統が寸断されてゆく。数分もすれば、機体に掛かった瓦礫を退かすことも出来ないレベルにまで亡霊は無力化されるのであった。
「ふぅ……まだ一機とは言え、ざっとこんなものね」
「流石ですセフィ姉っ! これは二人の…ううん、四人の共同作業ですねっ!」
 額に伝う汗を拭いつつ息を吐くセフィリアを、駆け寄ってきた結希が労う。たかが一機、されど一機。生身の人間に仲間が討ち果たされたとあっては、相手も慎重に動かざるを得なくなるだろう。そういう意味では確かな意味のある戦果である。
 結希は機能停止した機体を見下ろしつつ、愛剣を鞘へと納めてゆく。
「……国同士の戦いなんて、どっちが正しいとかわからないし、正直どっちが勝ってもどうでも良いけど。とりあえず今はラインラントを守るのが仕事だから。うん、報酬はたくさん貰おっと」
「そうねぇ。結構な数の猟兵も集まっているみたいだし、ケチケチせずに吐き出して貰わないとね! ……っと、どうやら次が来たみたいよ」
 ともあれ、戦闘はまだ続いている。敵機の接近を感知したセフィリアの言葉に頷きながら、結希もまた工場の中へと姿を紛れ込ませてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

西院鬼・織久
疑念を抱けば思考が鈍り、安堵を抱けば刃が鈍る
悉くを喰らう為なら利用しましょう

血肉を喰らえぬ分は数を狩らねば

【行動】POW
滲み出る怨念の炎(殺意+呪詛+生命吸収)を隠さず捕虜に先遣隊諸共喰らわれたくなければ説得するよう言っておく

可能なら事前に市街地の地図と敵機の性能を記憶。五感と第六感+野生の勘で状況と敵配置や行動を予測

先制攻撃+UCでセンサーを爆破、影面+怪力で敵機まで自身を引き寄せ串刺し、怨念の炎を流し込み内部機構を焼き傷口を抉る
そのまま敵機に乗り上げ早業の二回攻撃で損傷個所をなぎ払い切断

敵攻撃を残像+フェイントや他の敵機に飛び移る事で回避
傷は各種耐性と精神系技能で堪え決して動きを止めない



●狩り立てしは鬼か亡霊か
「疑念を抱けば思考が鈍り、安堵を抱けば刃が鈍る……少しばかり迂遠な手段ですが、悉くを喰らう為なら利用しましょう。血肉を喰らえぬ分は数を狩らねばなりませんから」
 既に戦闘を開始して暫しの時間が経過している。遠くから聞こえる戦闘音、そして通信を行う兵士により、他区画での戦闘詳細が徐々に共有され始めていた。懸案事項であった捕虜説得が効果を発揮している事を確認し、織久は満足げに頷く。
「恐らく、敵部隊間で説得の情報は出回っていないはず。ステルス機の特性に加え、自分たちに不利な情報をわざわざ広める理由もありません」
 無線封鎖を代表とするように、遠距離通信は常に傍受の危険と隣り合わせである。隠密性を旨とする亡霊であれば、極力連絡を取り合わない様にするだろう。加えて、何処かから先遣隊生存の情報が流布すれば、その時点で戦闘が停止しかねない。そう言った事情により、基本的に各地での戦闘情報は敵の間で共有はされてないはずだ。
「そういう訳で、不審な行動をすることなく説得に専念する事です。自分たち同様、戦友が怨念の炎に喰らわれる光景など見たくはないでしょう?」
「負けた側としちゃ反論の余地がないな。そっちの実力は把握している。こちらも仲間が無駄な怪我をしないよう、精々気張らせて貰うさ」
 そうして周辺地形を頭へ叩き込みながら、織久は捕虜たちへ念を押しておく。万が一にでも彼らが裏切れば、前線に立つ猟兵がまず真っ先に危険に晒されるからだ。尤も、捕虜たちも仲間が無駄に傷つくのは本意ではないのだろう。その心配は杞憂となるはずだ。
「一応、信用はしよう。では……行くぞ」
 となれば、後は刃を振るうのみ。織久は放送所から飛び出すや、敵機が侵攻してくると思しき経路へと陣取った。敵は不可視ではあるが、それをどうにかする為の鍵が捕虜による説得である。
(姿は隠せようと、この世から本当に消えた訳ではあるまい。確かに其処へ存在する以上、気付けぬ道理も無し)
 果たして、青年が感じたのは微かな風の変化であった。何か大きなモノが動き、大気が搔き乱される。意志を伴った作為的な変化だ。
(来たか……頃合いだな、流し始めろ)
 敵の存在を看破すると同時に、織久は手を振って合図を出す。するとあちこちに敷設されたスピーカーより大音量で放送が流れ始めた。
『あー、聞こえているか。こっちは先遣隊第十五小隊だ。代表して、小隊長のケンドリックスが話させて貰う。単刀直入に言うが騙されてたんだ。アンタらも、そして俺たちもな』
『っ!? ケンドリックスだと、本物なのか? 俺だ、ワイズマンだ! 生きていたのか!』
『貴様ッ、迂闊過ぎるぞ! 罠に決まっているだろう、こんなもの!』
 効果はまさに覿面と言って良かった。見知った者が居たのか、亡霊の一機が透明化を解いて姿を見せる。続けてそれを制止しようとした機体が現れるのを皮切りに、残りの僚機もその周囲へと浮かび上がってゆく。数は一個小隊四機。そのうち三機は動揺したように周囲へと銃口を向け、残る一機が仲間をどやしつけている。恐らく、あれが火消し役なのだろう。
「詰まり、奴を抑え込めば他も一網打尽に出来るという訳か。また透明化されても面倒だ……何人たりとも、死の影より逃れる事能わず」
 そうと分かれば躊躇は不要。青年はビルの影伝いに己の影を伸ばすや、火消し役の機影と繋ぎ合わせる。瞬間、それらは一本の巨大な腕と化して相手を引っ掴むと、織久の元へと敵機を引きずり寄せてゆく。
『ほれ見た事か、やはり敵の罠……!?』
「それは否定しないが、同時に貴様自身らの掘った墓穴でもある」
 火消し役はライフルを乱射して牽制するも、引きずられた状態では狙いなどつけようがない。青年は敵機を引き寄せる速度も利用して赤黒い槍を突き立てる。こうなれば、後はもう先ほどの戦闘の焼き直しだ。相手は内部機構を焼き尽くされ、操縦系統がズタズタに破壊されてゆく。
「ただ、それだけでは芸がない。降伏を迫るにしろ、分かりやすい象徴が必要だからな」
 一度穂先を引き抜き、手首を返して神速の二連撃を損傷個所へと叩き込む。立て続けの衝撃には流石に耐え切れなかったのか、敵機は上半身を真一文字に寸断されて機能停止した。
「さて。俺としては仲間の忠告を素直に聞いた方が良いと思うのだが、どうする?」
『……非常に複雑だが、こちらも同意見だ』
 倒れ伏した織久がそう告げると、敵部隊は暫し顔を見合わせた後に武装を解除する。そうして彼は、一機の破壊と引き換えに三機を降伏させることに成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
降伏した以上は無辜にして神が守護せし民草。
民草を殺めるなど言語道断!

捕虜に説得をしてもらいつつ、UC【ガネーシャストラ】の詠唱を開始。
他の猟兵やキャバリアに捕虜を守ってもらいたい。
説得が出来た敵はそのまま放置し、説得に応じずに(真実を知った上で)攻撃してくる敵にUCを解放。
「呪詛」で強化し、即効性の重篤な疫病を発症させて行動不能に陥らせる。
電磁装甲でも疫病の発症は防げない(と思う)。


この者達は既に冥神たる我の民草也(この人達は捕虜だよ!)
無辜なる民草を傷付けんとする者に冥神の裁きが下される(捕虜を攻撃するとか罪深いよ!)
汝等も我が民草となるが良い(降伏してね!)


トリテレイア・ゼロナイン
(1章で温存した自機の武装で)

ステルス…SSWで私の手足と耳目として改修されたロシナンテⅣの馬頭の角が伊達で無いことが証明出来ますね
あの質量で移動時の振動を隠す事など不可能
マルチセンサー●情報収集●スナイパー知識で動向は●見切れます

…お陰で上半身が吹き飛んだ後は頭を抱えましたが…
量産型で部品調達が容易とはいえ…

『火消し』への対処に
放送機器の破壊等、迷い無き挙動から●瞬間思考力で●見切り●推力移動で突撃
口封じ●かばって阻止
自機●ハッキング直結●操縦で実現するUCの『立ち回り』で弾丸を紙一重で躱し、混乱し攻撃する敵含め一気に無力化

職務に忠実であった貴方方には、此方の正当性の生き証人となって頂きます



●法を敷くは鼠の神、法を守らせるは騎士
『降伏した以上は無辜にして神が守護せし民草。そして民草を殺めるなど言語道断! そも、只人の間にも降伏者の取り扱いについて約定が存在するはず……それすら守れぬとは、あの男を戦争狂と謗る資格もなし!』
 捕虜や兵士たちが放送所で準備を進める様子を横目で見ながら、ムシカは操縦席内で憤懣やるかたないといった様子で眉間に皺を寄せていた。彼女からすれば投降とは自分の庇護下に入る事と同義、即ち自らが守り導くべき民衆である。それに手を出されるというのは面白くはないのだろう。
『確かに、その憤りには同意致します。刃を置いた者を弑するなど、騎士としての矜持が許しません。幾ら武人の偽りは嘘でなく武略であると言えども、通すべき最低限の筋はあるはずですから』
 その横ではトリテレイアもまた、多少の差異はあれど同様の想いを抱いていた。軍人と騎士と言うものは些か以上に相性が悪い。目的のため群れとしてあらゆる手段を尽くす兵士と、不利を承知で個としての矜持を貫く騎士。鋼騎士が忌々しそうに首を振るのも無理はない……尤も、それは半ば自分に向けられたものでもあるが。軍の兵器として造られた躯体と騎士道を学習した思考回路がコンフリクトを起こすなど、彼にとっては日常茶飯事である。
『さて、兎にも角にもまずは敵機の補足が第一です。ステルス迷彩が厄介ではありますが……SSWで私の手足兼耳目として改修されたロシナンテⅣ、その馬頭の角が伊達で無いことが証明出来ますね』
 ムシカのキャバリアが鼠をモチーフにしているのであれば、トリテレイアの機体は差し詰め騎馬である。兜を被った馬を思わせる頭部に眼をやれば、頭頂部から刃の如き角が一本伸びていた。伊達や酔狂も過分に入っているが、これは単なる飾りではない。ブレード式のセンサーアンテナである。
『静穏性も考慮はしておりましょうが、あの質量では移動時の振動を隠す事など不可能。これならば接近も感知できましょう……まぁ、頼り過ぎたお陰で上半身が吹き飛んだ後は頭を抱えましたが。量産型で部品調達が容易とはいえ、こちらの懐も無限ではないのです』
 乗機のセンサー類をそのまま己の五感に出来るのは機械故の強みである。鋼騎士はぼやきを零しつつも、ほんの僅かな兆候も逃すまいと全リソースを索敵へと割いてゆく。その結果、敵と思しき痕跡を感知するも彼がそれを喜ぶ様子はなかった。寧ろ、飛び込んで来た通信は警告と言って良い。
『これは!? 敵部隊を捕捉しましたが、既にこちらを取り囲んでいます! 申し訳ありません、すぐに回避起動をッ!』
 それを受けて咄嗟に機体を巡らせるも、ほぼ同時に複数方向から音もなく弾丸が襲い掛かってきた。鼠神は軽量機故の俊敏さで、鋼騎士は重量級らしい装甲強度でそれを凌ぐも、敵の手は止まらない。
『ちぃっ! 相手の方が一枚上手であったか……ぐぅっ!?』
 ムシカはすぐ傍の空間から、滲み出る様に姿を見せる亡霊を視界に捉えていた。相手の手に握られた破砕杭が繰り出されるや、凄まじい衝撃と共にモニターがアラートを吐き出す。見ると、脚部を深々と鉄杭が穿っていた。
『ムシカ様、大丈夫ですか!?』
『脚部を貫かれただけだ、問題ない! だが、柔軟な機動は難しいだろう……故に我は固定砲台に徹する。汝は捕虜の護衛を!』
『承知いたしました。先手こそ奪われましたが、こと護りに置いてこれ以上の遅れはとりません!』
 ムシカは移動が困難と見るや己を攻撃役と割り切り、前衛を仲間へと任せた。幸いトリテレイアはその手の分野に特化した猟兵だ、問題はないはず。彼女は飛び出してゆく仲間を見送りつつ、素早く放送所への通信回線を開くと説得開始の指示を出す。
『皆の者、説得を始めよ! あの様子では完全に止まらないやもしれぬが、迷い程度ならば引き出せよう! いまは汝らが頼りなのだ!』
『オーケイ。このままぶつかったら、確実に死人が出る。そんなのはこっちだって御免だからな!』
 彼らも合図を待っていたのだろう、スピーカーから切羽詰まった声が響き始める。それを受けて、確かに敵の動きが鈍り始めた……が、予想よりも効きが悪い。しかも、全く何も感じていない訳ではなさそうにも関わらずだ。その理由を、直接交戦するトリテレイアは朧気ながらに感じ取る。
(聴音を切っている訳ではない。つまり、聞こえた上で戦闘を継続しているという事……成程、督戦の真似事ですか!)
 他の場所の『火消し役』は飽くまで己の存在を秘していたが、どうやらこの部隊は違うらしい。後々の処罰か、何らかの交換条件か、それとも欺瞞情報か。なんにせよ、無理やり他の隊員を戦わせることに成功したようだ。
(最優先は火消し役の討伐。となるとまずは相手を炙り出さねばなりませんが、中々に骨が折れそうですね!)
 四方八方から銃弾が放たれ、迂闊に踏み込ませようものなら鉄杭の一撃が待ち受ける。その上、捕虜や仲間を守りながら火消し役を見つけるのは至難の業だ。しかし、それでも為さねばこちらが敗れてしまう。
『肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事。その繰り返しの他は……騎士として、危地に踏み入る覚悟です。今が正にその時なれば!』
 躊躇えば瞬時に食い破られる。故に、鋼騎士は敢えて成否の予測確率を無視して前へと踏み込んだ。片足を軸とし、隠し腕も全て動員した全方位同時攻撃。それはただ照準した後に、射撃と斬撃を繰り返し叩き込むだけの単純な動作である。しかし、それだけで良い。基本を突き詰めれば、自ずと勝利への道は開かれると彼は知っていた。
『っ、どいつもこいつも、たかが放送如きに惑わされおって!』
 被弾し大なり小なり損傷を受ける者が多い中、攻撃を避けた或る一機だけは別の動きをしていた。それは目の前の敵を倒す為ではなく、何かを探しているように見える。恐らく、あれが火消し役に違いない。その機体はケーブルが幾本も伸びている建物を視界に捉えるや、銃口をそちらへと差し向ける。
『そも、この程度の街を潰すなど「アレ」だけで事足りる。我らの目的は、裏切り者の炙り出しよ!』
 その機体がトリガーを引くのとトリテレイアが射線を遮るのでは、前者の方が圧倒的に速い。しかし、鋼騎士に焦りはなかった。既に彼の仲間は不心得者へ裁きを下す準備を済ませていたのだから。
『アウム・ガナパタイェー・ナマハ……民草の指導者であられるお方に帰依いたします。御方が見守るべき者たちに災いを齎す者へ、瞳に成り代わりて罰を与えんッ!』
 両掌を合わせ、瞑想と共に象頭の神へ捧げる祝詞を紡ぎ続けてきた鼠神。その瞳が開かれた瞬間、彼女の座す鉄騎もまた双眸を輝かせた。瞬間、そこから放たれた薄紫色の閃光が一直線に火消し役の機体へと吸い込まれてゆく。光条に籠められた疫病と言う特性は、その神威を敵機体の急速な腐食と言う形で発現させた。それはある意味、爆発や炎上と言った派手な現象以上に恐怖を煽るものだろう。
 しかし、それでも敵は止まらない。腐蝕へ抵抗する様に電磁装甲を発動、辛うじて無事な片腕で攻撃を続行しようと試みる。
『何が、神かッ! 戦場にそんなものが介在する、余地など!』
『ほう、本当にそう思うのか? ならば、神の力を思い知るが良い……自らの身にとくとな』
 だが、その抵抗は無意味であるとムシカは初めから知っていた。無機物にすら効果を及ぼす疫災が、どうして人間に無害だと言えようか。機体を瞬く間に蝕んだ病毒は操縦席へと到達するや、火消し役の兵士を筆舌に尽くしがたい苦しみの中へと叩き墜とす。熱に浮かされているのに、どうしようもなく身体が寒い。視界は霞み、関節が痛み、呼吸もままならず、汗が噴き出してくる。死なずとも指一本動かせぬ、そんなラインを見極めた鼠神によって火消し役は人機共々無力化されるのであった。
『この者達は既に冥神たる我の民草也。無辜なる民草を傷付けんとする者には、示した通り疾く冥神の裁きが下される。これを恐れるならば、汝等も我が民草となるが良い』
 残った敵部隊へそう厳かに告げるムシカ。尚、これを彼女の素に翻訳し直すと、『この人達は捕虜だよ! 捕虜を攻撃するとか罪深いよ! だから降伏してね!』という意味になる。そんな仲間の真意に苦笑を浮かべつつ、鋼騎士も言葉を紡ぐ。
『我々もこれ以上手荒な真似をするつもりはありません。職務に忠実であった貴方がたには、此方の正当性の生き証人となって頂きます』
『……分かった。我々も投降しよう』
 硬柔織り交ぜた警告に加え、捕虜たちの説得も効いたのだろう。残存部隊は大人しく武装を解除し、キャバリアを停止させる。こうして鋼騎士と鼠神は流血を最小限に抑えつつ、戦闘を終わらせることに成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
おおう、味方は狂人、敵は目的のために味方を騙すとこいつは愉快な戦場だね!
引き続き生身で飛び込んで更に愉快にしていくぞー!

持ってきた物を一気に食べて【沢山食べよう!】を発動させておくよ。
やること自体は単純に地形の入り組みと生身の小ささを利用して身を隠し、敵が来たら高速飛行で一気に近づいて攻撃を叩き込んでまた隠れる。こんな感じでいくよ!
飛行はできるだけ地面スレスレの低空飛行で気づかれにくくするよ。
敵のステルス性は生身なら特に影響は無いんじゃないかな。
そして説得はしないよ!それくらいで動揺するような敵は面白くはないからね!



●理性を食み、狂気すらも呑み干さん
「おおう、味方は狂人、敵は目的のために仲間を騙すとこいつは愉快な戦場だね! 正直危なっかしさではどっちもどっちな気がするけど、嘘をつかない分まだこっちの方がマシかな?」
 『正気にて戦争はならず』とはよく言ったものであると、透乃は物陰から周囲の様子を窺いながらしみじみと考えていた。自治領側を率いるハイネマンは優秀であるものの、自分どころか部下の命すら掛け金にして戦争を愉しむ手合いである。
 さりとて、大国側の指揮官も真っ当な軍人だとは言い難い。戦場に置いて上下どころか左右の関係にまで不信が生まれれば、群としての強みなど一瞬で崩壊してしまう。それに比べれば、部下を纏め上げているハイネマンの方がまだマシだろう。しかし、相手がそのデメリットを理解していないという事は考えにくかった。
「……となると、仮に反抗されても問題ないと言えるだけの『何か』が在るのかな? まぁ、それについては後でいいや。遠くのお偉いさんより、今は目の前の亡霊をどうにかしなきゃだね」
 その点に関しては敵部隊を叩いていれば自ずと分かる事だろう。少女は取り急ぎ周りに不審な兆候が無い事だけを確認するや、物陰へと首を引っ込ませる。彼女が視線を足元へ落とすと、そこには膨らんだズタ袋が一つあった。口を開いて中身を確認すれば人参や骨付き肉、三角形のおにぎりがぎっちりと詰まっている。
「と、その前に……まずは腹ごしらえをしよう! お腹が満たされていれば空も飛べるはずだね!」
 透乃はおもむろに袋の中へ手を突っ込むや、中身を次々と胃袋に収めてゆく。一食分と言うにはかなりの量があるものの、彼女にとってはこれが適量なのだ。そうして瞬く間に袋の中身を空にするや、ポンポンと調子を確かめるようにお腹を叩いた。
「さて、と。それじゃあ引き続き生身で飛び込んで、更に愉快にしていくぞー!」
 食後の腹ごなしだとばかりに少女は手近な建物へ飛び移ると、各所を走るパイプや電線を伝って移動し始める。捕虜による説得は端から眼中にない。彼女風に言うのであれば、その程度で動揺する敵など『面白くない』からだ。
「相手はステルス機だって話だけど、生身なら特に関係ないんじゃないかな? あれって、センサーとかを想定しているって話だったような」
 彼女の考察はある意味正鵠を射ていた。ステルスとは基本的に機械を騙すことに主眼が置かれており、生身は飽くまでもついでである事が多い。極論、操縦者が視認しているのに機械は其処に何も居ないと判断する、等と言うホラー染みた場合とて在り得るのだ。故に……。
「あ、居た居た。もしかしなくても、あれがそうだよね? なら、先手必勝だよ!」
 透乃は虚空に浮かぶ半透明な機影を見つける事に成功する。挙動を見る限り、こちらにはまだ気づいていないらしい。少女は巨大な戦鎚と円匙を取り出すや、工場の壁面を蹴って勢いよく飛び出した。
『接近警報!? 馬鹿な、いきなり反応が現れて……!』
「さっきよりも硬そうだけ、どぉっ!」
 敵機が地面すれすれを滑るように飛ぶ猟兵の姿を見つけた時、既に透乃の己の間合いへと相手を捉えていた。振り上げられた戦鎚は強かに両脚部の接合部を叩き潰すと、亡霊の歩行能力を一撃で奪い去る。
『伏兵か! だが敵は小兵一人、掠らせるだけでも十二分だ!』
「果たして、それはどうかな?」
 ペアを組んでいたのか、姿を見せた別の機体が少女を挽肉に変えんとライフルを乱射してきた。だが透乃は慌てることなく円匙を繰り出すや、なんと先端の曲面部で弾丸を掬い上げたのである。呆気に取られる敵の前で、まるで野球でもするかのように彼女は戦鎚を振りかぶり……。
『馬鹿な、弾一発でどれほどの速度、どれだけの重量があると思って……!?』
「そんなのを人に向けたら危ないでしょ! ほら、お返しするから受け止めてよね!」
 文字通り、特殊弾を叩き返した。弾丸は装甲にめり込むやエネルギー伝達を阻害し、二機目の亡霊も無力化してしまう。崩れ落ちる敵を尻目に、透乃は踵を返して再び工場の隙間へと身体をねじ込んでゆく。
「まずは二機かな。でも、まだまだ敵は残ってるよね? よーし、この調子でどんどん行くよ!」
 そうして少女は新たな獲物を探すべく、工業地帯を駆け抜けてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィルジール・エグマリヌ
カスパールに引き続き搭乗
説得は捕虜たちに任せて
私は火消しに回る機体の相手を

でも、見分けがつかないな
デュラハンたちを戦場に招こう

彼らは私の嫌悪感で動く
そして私は、同胞殺しに嫌悪感を抱いている
だから彼らに捕虜殺しを企む機体を追わせよう

デュラハンを追い掛ければ
対象の許に辿り着けるかな
「私が追い付くまで、足止め宜しくね」
雷を纏う斬撃で敵機の電磁装甲を狂わせ
動きを止めさせたい

追い付き次第カスパールから弓を放つ
最大出力で重たい一撃をお見舞いしてあげよう
勿論、いのちは奪わないよ

他の機体には手を出さない
あの機体は捕虜を害そうとしていたんだ
つまり、私は彼らの恩人
その事実を無視するほど
君たちは野蛮じゃないだろう?



●弓騎士と共に、駆けろや真の亡霊よ
『一兵士が得られる情報は僅かであり、見える視点もまた低い。現場が最善だと信じた行動も、大局的に見ればマイナスになる場合も多いだろう。故に、兵士は命令に従う義務がある。それを否定はしない』
『だが疑問を持つ事は、意見を述べる事は我々に与えられた権利でもある。その権利を侵し、同胞を切り捨てる事にどんな戦略的意味があるのか。どうか考えて欲しい』
 怒鳴るでもなく、演説振るわけでもなく。ただ切々とした問い掛けの声が、罅割れがちなスピーカーに乗って流れてくる。それに耳を傾けながら、目を覚ましていたヴィルジールは僅かに残る睡魔を払いつつ操縦桿を握り直していた。
『この調子で在れば、偽りの情報に従う兵士たちの蒙を啓いてくれるだろうね。となると、障害になるのはやはり火消し役かな。こうした事態も想定済みだろうし、放っておけば口八丁で仲間を言いくるめてしまいそうだ』
 放送の中にはきっと、聞き馴染んだ声も混じっているはずだ。如何に訓練された兵士とて、それを耳にして平静を保てるとは思えない。だがこうした状況を初めから想定していた火消し役ならば、何かしらの手を打っていると見るべきだろう。
『騙された者を傷つけるのは忍びない。出来れば裏切り者だけを討つのが最善だろうね……でも、正直見分けがつかないな。であれば、デュラハンたちを招くとしよう』
 だが、敵は全て同型機な上にステルス機能を持っている。視覚情報から火消し役を割り出すのは困難だ。なればと、ヴィルジールは小さく指を鳴らす。すると説得の放送に混じって、重なり合う金属音が響き始めた。それは無数の蹄鉄がコンクリート舗装と擦れ合う音に他ならない。そうして弓騎士の元へと馳せ参じたのは、首無き騎士の軍勢。
『彼らは私の嫌悪感で動く。そして私は、同胞殺しに嫌悪感を抱いている……なら、後は簡単な話だ。彼らの先導に従えば、火消し役の許へ辿り着けるだろうね』
 敵の迷彩欺瞞が通じるのは、飽くまでも人の眼やセンサー類に対してのみ。たまさか、霊的な護りを備えている訳でもあるまい。そんな予測を裏付けるように、死騎士たちは馬首を巡らせると入り組んだ道を駆け出し始める。迷いのない動きに頼もしさを覚えながら、青年もまた弓騎士を駆動させてその後を追ってゆく。
『彼らが戦いを挑む相手こそ、この弓で討つべき者に他ならない。私が追い付くまで、どうか足止め宜しくね?』
 顔が無いゆえに、死騎士の感情を伺い知ることは出来ない、なれど、肯定を示した事だけは理解できた。彼らはぐんとスピードを上げ、先へ先へと突き進んでゆく。幾つもの曲がり角を越え、その後姿を捉え続ける事が難しくなってきた頃……。
 ――カァンッ、と。
 硬い物同士がぶつかり合う音が少し離れたところから響いた。それを皮切りに、同じような音が立て続けに聞こえてくる。発砲音ではない。流れ弾が工場建屋へ着弾した音か。それが意味するところは一つだけだ。
『……どうやら、接敵したようだね。さて、敵の数は如何ほどかな』
 ヴィルジールが音の源へ辿り着くと、亡霊と死騎士が入り乱れて戦闘を行っている最中だった。死騎士は或る一機にのみ襲い掛かっており、他の機体は両者の戦いにどう割って入るべきか迷っている様子である。狙うべき目標はこれ以上ないほどに明白だった。
『なんだこいつら、私だけを狙って!? まさか、情報がどこからか……!』
 敵機は電磁装甲を発動させ死騎士を弾き飛ばそうとするも、却ってそれが仇となった。雷光を纏った刃を死騎士が振るえば、電流同士が絡み合い装甲表面へと過負荷を掛けてゆく。高電圧に耐え切れなくなったのか、徐々に亡霊の動きが鈍り始める。
『姿は暴かれ、足も止まり。これなら外す心配もない。最大出力で重たい一撃をお見舞いしてあげよう……勿論、いのちは奪わないよ?』
 青年は流れるような滑らかさで弓を引き、そのまま鋭矢を放つ。大気を貫いて飛翔するそれは亡霊の肩部へと吸い込まれるや、その衝撃力を以て関節部を貫いた。威力の余波は腕のみならず、脚部すらも軋ませ歪めてゆく。これで戦闘能力は失われたと見て良いだろう。
 弓騎士は得物を降ろすと、その様子を見守っていた残りの兵士たちへと声を掛ける。
『さて、と。薄々察しているかもしれないけど、あの機体は捕虜を害そうとしていたんだ。つまり、私は彼らの恩人。その事実を無視するほど、君たちは野蛮じゃないだろう?』
『……信頼は出来ない。が、信用はしよう。我々は武装を解除し、そちらに投降する。それで良いな?』
『オーケイ。その慎重さは寧ろ好ましいよ』
 微笑を浮かべつつヴィルジールは踵を返す。場合によっては彼らも説得要員に加えることが出来るだろう。弓騎士は亡霊と死騎士を従えながら、元来た道を駆け戻るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティー・アラベリア
【同波長組】
お次は市街戦ですか。それはそれは……とっても楽しそうですね♪
色々と……本当に色々と我慢して救った捕虜の皆様ですから、息災な事を姿をお仲間に伝えて差し上げましょう。

熱光学迷彩を展開し、ビルや細い路地を巡り都市内を隠密移動
指揮通信機構を使用して佳奈恵さんからの情報を受け取りながら、ボク自身も斥候となり敵の位置情報を収集
情報を統合して忍さんに伝達いたしましょう
戦意を喪失していただけるならよし、まだ戦い足りない方は……ふふっ、お仕置きですね♪
ビル影や屋上から機体に取り付き、零式でコクピットからパイロットを摘まみ出し、UCを使用して機体の駆動系をボクの魔力で同化
傀儡として同士討ちさせましょう


貴司・忍
【同波長組】
まったくもって気に入らねぇ
佳奈枝の姐さん、あんたやっぱり同波長だぜ気が合うじゃねぇか
そんじゃ、聞かせたくないなら無理にでも聞かせてやるか…ぶん殴ってでもよ!!

ティーと姐さんからの情報をもとに市街地を猛【ダッシュ】
探査ブレードの感度を全開にすればウロチョロしようとした奴は【索敵】できるだろ
…で、ハイネマン中佐、市街地の被害は、簡便な?
あっちがステルスならこっちは【怪力】で壁を突き破って常識外のルートで肉薄する
壁に向かって弾撃つなんて考えんわな普通!!
コード発動、チェーンソーぶっさしての【ハッキング】で捕虜の情報や彼らの声を聞かせてやるよ
聞き分けの無いやつ?…そのまま削って無力化ぁ!


小和泉・佳奈恵
【同波長組】
ハイネマン中佐、信用ならん悪人やけど軍人としては有能みたいやね。
確かにこっちがどれだけ捕虜の言葉ば伝えたけんって信用させない手段はある、か。
気に入らんね。
そういう連中は中佐のお友達とやりたい同士で遊んどけば良かったい。

戦術はシンプルに高所を陣取って戦域を走査。捕捉した敵の位置情報を逐次ティー君に中継してもらう。
ティー君経由で忍さんには説得に駆け回って貰って――ぼくは敵機の中から"督戦隊"を選ってマーキングしておこう。
こいつらは忍さんに相手させるわけにはいかんね。ぼくとティー君で仕留めよう。索敵が終わり次第噴射跳躍と射出錨を使って忍び寄って近接旋回刃で手足を刈る。継戦能力は残さんよ。



●味方を穿つ者、敵に説きし者
「お次は市街戦ですか。それはそれは……とっても楽しそうですね♪ いつどこから敵が現れるか分からないのはスリル満点でございますから」
『ハイネマン中佐……正直言って信用ならん悪人やけど、軍人としては有能みたいやね。数と質に劣ると見るや、勝利の後だろうと地の利を取れる場所へ退ける判断は中々下せるもんやなかと』
 遠くから微かに響いてくる銃声は、既に各所で戦闘が開始されていることを示していた。それに耳を傾けながらクスリと笑みを浮かべるティーとは対照的に、佳奈恵は複雑そうな表情を浮かべている。『勝って兜の緒を締めよ』とはよく言うが、人間誰しも勢いづいている間は先へ進みたがるものだ。それを抑えて後退を選べる判断力は評価に値する。確かに人格面は些か以上にマイナス要素だと言えるが、此度はそれを差し引いた上でもあの『戦争狂』の方がマシと断言できるだろう。
『説得の放送……確かにこっちがどれだけ捕虜の言葉ば伝えたけんって、信用させない手段はある、か。気に入らんね。そういう連中は中佐のお友達とやりたい同士で遊んどけば良かったい』
『ああ、まったくもって気に入らねぇな。嘘と騙しに裏切りなんざ、女々しいったらありゃしねぇ。佳奈枝の姐さん、あんたやっぱり同波長だぜ。つくづく気が合うじゃねぇか』
 善意以上の思惑があるとはいえ、最低限の仁義を通した自治領側。片や身内すらも騙し、戦友を切り捨てんとする鎮圧部隊。どちらが道理を弁えているかなど一目瞭然である。理解は出来ても納得しがたい手段に嘆息する警備員の言葉に、忍は不敵な笑みを浮かべつつ同意を示す。傭兵少女も性分柄、そう言った戦術は余り好みではないようだ。仲間も同じ想いである事が分かって嬉しいのだろう。
『そんじゃ、聞かせたくないなら無理にでも聞かせてやるか……胡散臭い火消し役なんて野郎をぶん殴ってでもよ!!』
「色々と……本当に色々と我慢して救った捕虜の皆様ですから、息災な事をお仲間に伝えて差し上げましょう。そうでなくては、こちらも身を粉にして働いた甲斐が無いがありませんからね?」
 ともあれ、敵の作戦に穴があると言うのであればそれを突かぬ理由はない。徹底的に欠点を突き、相手の狙いを完膚なきまでに打ち崩すのみ。待機状態にしていた愛機の出力を上げてゆく忍の横では、ティーがメイド服の上から熱光学迷彩を展開してゆく。仲間たちが戦闘準備を整えたことを確認すると、佳奈恵もまた乗機を立ち上がらせる。
『それじゃあ……招かれざる侵入者には、さっさとご退場願うけんね』
 そうして三人はそれぞれに割り振られた役目を果たすべく、行動を開始するのであった。

『センサー切り替え、良し……少なくとも、この戦場で邪神やらなにやらが出てくる心配は無さそうやね。なら、思う存分本来の性能を発揮できるけん』
 高さが有りかつ比較的頑丈そうな建物を見つけると、佳奈恵はセンチネルの肩部ワイヤーを使って機体を屋上部へと引き上げた。ミシリと足元が僅かに軋みを上げるが、幸いにも崩壊するような様子はない。警備員はセンサー類を操作して感度を上げると、索敵範囲を広げてゆく。
 対邪神戦闘を想定した本機は情報を『知り過ぎない』ため、普段は意図的に索敵能力が抑えられている。だがそうした制限を取り払えば、通常時よりも正確かつ広範囲に電子の目を広げる事が出来るのだ。
『精度確保の為に急な動きは出来んくなるけど、そこは仕方がなかとね。代わりに照準に補正も入るけん……とは言え、ステルス相手やと骨が折れそうやね』
 相手が通常のキャバリアであれば、これで十分だっただろう。しかし、此度の相手は隠密性特化型の機体だ。如何にセンサーの感度を上げたとしても広域探査には限界がある。しかし、大まかな場所さえ把握出来れば取り急ぎは十二分だった。
『んー、北北東の方角に反応が複数……南東にも感じるけどそれよりは少なそうやね。彼我距離はどっちも一キロ弱。位置関係的に本隊と斥候役やないかな?』
 警備員の役割は差し詰め司令塔か。彼女が敵の潜んでいそうな場所へ目星さえ付けられればこっちのもの。後はその情報を受けた偵察役が現場へと急行し、詳細を確認するのである。
「承知いたしました。それでは少しばかりお待ちを。ボクが一駆けして確かめてまいります故……」
 そして、その役目を買って出たのはティーであった。姿が見えない敵の裏を掻くには、こちらも相手以上の隠密性が必要となる。その点、唯一生身である奉仕人形はうってつけと言えるだろう。彼は熱によって躯体表層の大気を搔き乱し、光の屈折を利用して自らの姿を視認困難な状態へと変化させていた。念には念を入れて建物の影に身隠しながら入り組んだ道を進み、まずは本隊側へと接触する。
「電子的だけでなく、通常の視覚からも姿を隠し通せるほどの技術力は素直にお見事と言えましょう。ですが、それは飽くまでも物理現象の範囲内……魔術的な方面に関しては無防備同然ですね」
 相手は飽くまでも鋼鉄と電子によって構成された量産品。サイキックキャバリアなどであれば話はまた別だろうが、生憎と神秘に対する備えは無いらしい。奉仕人形が髪飾りより魔導波を放つと、操縦席内部の生命反応をあっさりと割り出すことに成功する。このまま攻勢を仕掛けても良いが、まだもう一方の反応を確かめて居ないため、まずはそちらの調査を優先する事にした。加えて、切り込み役は残る仲間の仕事でもある。
「さて、微弱な反応があったのは此処から南東……敵の戦力次第ではどちらを叩くか相談しなければなりませんね。場合によっては手分けする必要もございますでしょうし」
 収集した情報を共有しつつ、ティーは再び移動を開始する。どちらか片方を叩いている間に、残るもう一方から殴り掛かられる危険は避けたい。となれば、奇襲の利を以て同時に戦端を開くのも一手だろう。そうなれば必然、奉仕人形が少数を受け持つ事になる。自らが刃を交えるやもしれぬ相手はどのような様子かと、彼がそっと様子を窺うと……。
「おや、これはこれは……中佐殿ではありませんか。こんなところで出会うとは奇遇ですね。IFFを切ってまで、一体何を?」
『ふむ、猟兵殿か。なに、簡単な事だよ。何分人手が足りなくてね、捕虜の護衛に駆り出されているのさ。工業地帯は広く複雑で、こうでもしなければ全域をカバーしきれん。少しでも気配を消そうと通信を切っていたのだが、いきなり撃たれなくて安心したよ』
 其処に居たのは黒き亡霊ではなく、暗緑の独眼機が二機。それは敵ではなく、ハイネマンと副官のペアであった。事情を聴いたところ、捕虜への奇襲を警戒して護衛に当たっていたとの事である。何故か若干がっかりしたような雰囲気を滲ませながらも、ティーはある意味で都合が良いと思考を切り替えてゆく。
「なるほど。という事は、足元の小屋に詰めているのは捕虜の方々ですか?」
『ああ、その通り。設備の準備に時間が掛かっていて、まだ放送を流せる状態ではないがね』
 説得前に捕虜たちを殺されては敵わないと、ハイネマンは苦笑と共に肩を竦めた。詰まり、彼らの出番はまだ先という事だ。ならば気兼ねする必要もないだろう。
「でしたら、ますます丁度良いですね。中佐殿、可能であれば少し彼らからお話を聞かせて頂きたいのですが」
『構わんよ、いまさら協力を拒む者も居るまい』
 ティーの申し出は快く受け入れられ、彼は出番を待つ捕虜たちと手早く言葉を交わしてゆく。この後に待つ展開を考えれば、生の声はあればあるほど良い。時間にして数分かそこらだが、十分な量が集まったと見るや奉仕人形は通信を放つ。
「敵の位置情報に加え、音声データも確保できました。これで準備は完了と言って良いでしょう。となれば、後は……」
『アタシの出番って訳だな! いやー、待ちくたびれたぜ! ま、その分は暴れさせて貰おうか!』
 仲間の呼びかけに対し、待ってましたと言わんばかりの勢いで応じたのは忍だ。警備員が敵を捕捉し、奉仕人形が詳細を確かめ、そして傭兵が切り込み無力化する。この三位一体こそが猟兵たちの組み上げた戦術であった。
『……と言う訳で、ハイネマン中佐。その、市街地の被害は、ちょいと勘弁な?』
 アイドリング状態にしていた愛機を戦闘出力へと切り替えつつ、しかして忍の言葉尻は若干気後れしたように萎んでゆく。必要であるとは言え、その国を守る軍人の前で荒っぽい手段を取ろうと言うのだ。幾ら気が強い少女でも気が引けるのだろう。だが一方の軍人は興味深そうに呵々と嗤い声をあげる。
『ははは、国が無くなれば工業も何もない。コラテラル・ダメージ、必要な犠牲というものだ。気兼ねせず、存分にやると良い。その方が私も愉しいしな』
『お、おお、そうか? いよっし! それじゃあお墨付きが出た所で、いっちょやってやるぜッ!』
 ならば遠慮は無用と、忍は六号開天を全力で疾駆させ始めた。狭い道を走り抜けながら頭部ブレードの感度を全開にし、受け取っていた情報との現在位置の齟齬を埋めてゆく。しかし、彼女が移動しているのは敵が居る場所より数本通りを挟んだ裏道だ。このままではすれ違う形となってしまう、が。
『よっし、ここら辺で良いだろう。そっちがステルスで視界から消えるってんなら、こっちは常識の外から突っ込んでやらぁ! 壁に向かって弾撃つなんて考えんわな普通!!』
 傭兵は掘削用チェーンソーと巨大な鉄槌腕を振りかぶるや、なんと建物の壁を打ち壊し始めたのである。通りと垂直に交差する形で奇襲を仕掛けようという狙いだ。だが、時間を掛けてしまえば音で感づかれてしまう。その前に辿り着くべく、忍は鉄筋コンクリート製の建築物を瞬く間に瓦礫の山へと変え、そして。
『うん? なんだ、妙な音が近づいてきて……』
『おらおらおらぁ、開天組のお通りだ! 度肝を抜いて驚きやがれッ!』
 最後の建物を突き破ると同時に、不運にも目の前に居た亡霊へと掴みかかった。他の敵機から狙い撃たれぬよう咄嗟に相手を盾代わりに掲げながら、回転する丸鋸を敵胴体部へとめり込ませてゆく。
『貴様、我が同胞を! よもや戦争狂の一派らしく、殺一警百でも気取るつもりかッ!』
『ある意味、似た様なものかもしれないな。だが安心して良いぜ、必要なのは機体であって操縦者の命を奪うつもりはないからよ!』
 そうして敵の操縦系統を司るケーブルを切断すると同時に、忍はその断面から内部電算機能へとハッキングを仕掛けてゆく。しかし、目的は破壊ではなく掌握。通信系統を乗っ取るや強引に部隊間通信を開放させ、瞬時にあるデータを流し込む。その内容は勿論、ティーが捕虜より聞き出した言葉の数々である。
『聞いてくれ、戦友よ。俺たちはまだ生きている。殺されてなんかいない! だからほんの少しで良い、冷静になってくれ!』
『上には上の理屈があり、それは必ずしも間違っていないかもしれない。だが仲間である我々すら騙し、無理矢理に憎しみを煽る者たちの為に命を懸けるべきか。どうか考えて欲しい』
 操縦席内に響き渡る生の声と映像。なまじ味方機からの通信で在るため、遮断することも出来ない。それらによって齎される衝撃は極めて強烈であり、聞かされる内容は同じでも現れる反応はバラバラであった。
『な、なんだこれは!? 誰も彼も、見知った顔ばかりじゃないか……!』
『待て、これは敵がわざわざ流しているものだぞ! 額面通りに信じてどうする!』
『だが、先遣隊が消息を絶ってからまだそう時間が経っていない。欺瞞情報を作る余裕があったとは到底……』
 戦友の生存に衝撃を受ける者、端から罠であると断じる者、何を信じればよいか分からず右往左往する者。だがぱっと見の概算ではあるが、敵の半数はすぐに動けぬと見て良いだろう。時間を置けば冷静さを取り戻す可能性がある以上、ここは一気に畳みかけるべきだ。
『ほぉう、聞き分けの無いやつも居るみたいだな。気骨があるというべきか、はたまた頭が固いだけか。良いぜ、そのまま削って無力化してやらぁ!』
『ほざけ、傭兵風情が! そんなものは所詮、正面切って勝てないが故の小細工だろう!』
『言ったなテメェ! 吐いた唾を吞むんじゃねぇぞ!』
 売り言葉に買い言葉、こうなってしまえばあとは乱戦である。浴びせかけられる弾丸を捌きながら、忍は丸鋸を巧みに操り敵部隊を圧倒してゆく。一方、それとは別の動きをする者も存在した。
『察するに、捕縛された愚か者はまだ近くに居るな? 早々に始末してしまえば、まだ混乱を鎮める事も……』
「あら、何処に行くつもりでしょうか? まだ戦い足りないのであれば、お仕置きがてらにボクがお相手致しましょう」
 火消し役と思しき者の前に立ち塞がったのは一機の亡霊。操縦席のハッチは開放されており、無人にも関わらず一人でに動いていた。種明かしをすれば、人工精霊を使って操縦系を浸食同化したティーによる遠隔操作だ。同型機同士の対決とくれば、物を言うのは操縦者の技量となる。
『遠隔操縦ならば、どうしてもラグが出るだろう。ほんの僅かな差だろうが、戦場ではそれが往々にして勝敗を分けるのだ!』
 互いにライフルでの牽制を交わしつつジリジリと距離を詰め、手足の届く間合いへ入った瞬間に銃器を投棄。電磁装甲を纏いながら、破砕杭による白兵戦へと移行する。実力伯仲と言って良かったが、相手も正規の軍人だ。徐々に奉仕人形を押し始め、ここぞというタイミングで必殺の一撃を繰り出した……。
『これで、終わりだっ!』
『うん、その通りやね。これでお終い……あなたの負けで、やけど』
 のに、一瞬先んじて。火消し役の四肢がバラバラに寸断された。それは相手の視覚外から忍び寄っていた佳奈恵による早業である。彼女は索敵を終えるや否や、自らも現場へと急行。敵の動きから"督戦隊"に目星をつけつつ、攻撃の機を窺っていたのだ。
『こいつの相手は説得役の忍さんにさせる訳にはいかんね。ぼくとティー君で仕留めさせてもろたよ。注意を惹いてくれて助かったけんね』
『こちらこそ、中々に楽しむことが出来ました……さて、忍さん側も終わった様ですね』
 警備員と奉仕人形が互いの健闘を称え合う一方、傭兵側の戦いも決着がついていた。散らばる敵機の残骸と投降者を見渡し、忍は満足そうに頷く。
『よっし! これにて制圧完了だな! いやー、暴れた暴れた!』
 念の為ざっと周囲を走査しても、敵の気配は感じられない。この区画の浸透戦力は完全に掃討できたと言っても良いだろう。三人は己が戦果を確かめながら、投降者を引き渡すべくハイネマンの元へと足を向けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

朱皇・ラヴィニア
説得が必要だったら……乗ってもらおうか?
自身はゼルに
捕虜はブラディエルの背部コクピットに乗せ、戦場へ

工業地帯なら誘爆に気をつけ、配管や外壁を盾に進もう
666のフィードバックを最大に
ゼルの肉体――感覚系をチューニングして
ステルスで近付く敵を可能な限り察知しよう

敵襲を感じたら147を最大展張
盾代わりにして攻撃を『喰らう』
敵の攻撃手段を覚えたら、反撃開始だ

捕虜に呼びかけて貰い敵兵の思考を阻害
その隙に147を変形し射撃形態へ
パラライズバレット、使わせてもらう!
狙いは四肢、エネルギー伝達阻害装置が働けば
ステルス機能も停止するだろう
そのまま323で畳みかけ戦闘力を奪い
コクピットをこじ開けパイロットを救出だ



●百聞は一見に如かずとは言うもので
「うーん……捕虜や放送設備を守りながらになると、機体性能的にサイクロプスのままじゃちょっと厳しいかもね。それにここら辺も、まだ準備が整い切っていないようだし」
 工場の間を反響しながら、遠方より木霊の様なざわめきが聞こえてくる。他の区画で流されている説得放送なのだろう。一方、ラヴィニアの居る一帯は静かなものであった。手近な兵士から聞くところによれば、放送関係の設備も疎開してしまったらしく機材の設置に手間取っているらしい。
「ただ、こうしてまごついている間にも敵は来るかもしれない。少しでも早く説得が必要だったら……そうだね。いっそのこと乗ってもらおうか?」
 彼女は一旦独眼機より降りると、手持無沙汰な捕虜たちの元へと足を向けた。監視役の兵士へ事情を話して何名か捕虜を見繕って貰うと、ラヴィニアはその中から階級が最も高い者を選ぶ。クルツと名乗った壮年の兵士を真紅機の背部コックピットへと乗せるや、自身もまた鈍灰機の中へ身を滑り込ませてゆく。
『放送の準備が間に合わないから、捕虜に機体をまるごと一機与えて説得させる、と。理屈は分かるが、随分と思い切ったことをするな』
『心配はしていないけど、変な気はくれぐれも起こさないようにね? メインの操縦系統は遠隔操作でボクが掌握しているから、下手にいじると逆に危ないよ』
『オーケイ、こっちは手じゃなくて口にだけ集中するとしよう』
 少女の狙いは御覧の通り、捕虜を直接前線へと連れていき、生の声を届ける事にあった。使い潰す様な気は更々ないが、敵も仲間が乗る機体をわざわざ狙うまい。仮に仕掛けて来たのであれば、十中八九それが火消し役だろう。
 誘爆の危険を常に警戒しながら、入り組んだ配管や外壁を遮蔽物にしつつ工業地帯を進んでゆく。鈍灰の機体と己を繋ぐ神経系インターフェースに意識を集中させつつ、生体特有の細やかな感覚を共有。不可視の気配を感じ取らんと警戒に努めていた。
(とは言え、まず確実に先手は取られるだろうね。重要なのは攻撃を察知してから如何に速く反応出来るか……頼むよ、ゼル)
 音や視覚だけではない。肌を撫ぜる風の僅かな変化すら、手掛かりとなるはず。そうしてジリジリとした焦燥感と共に動き続け、そして。
 ――パシュッ。
(っ、来た!)
 ほんの微かな空気が破裂する音。大気が高速で飛翔する何かに乱された事を感じ取った瞬間、ラヴィニアはそちらへと機体を向けていた。視界に飛び込んでくるはエネルギー伝達を阻害する特殊弾。彼女はそれが着弾する直前に剣型格闘兵装を展開、弾頭を絡め取り『捕食』した。
『チッ、勘の鋭い奴だ。だが、すぐに二射目を叩き込んで……』
 さっと視線を走らせると、攻撃動作を行った事によって姿を浮かび上がらせた敵機が見て取れた。周囲には同じく射撃体勢を取る他の機体も居る。流石に立て続けに撃ち込まれては凌ぎきれない。少女は瞬時に真紅機へと通信を開く。
『残念だけど、そうはいかないよ。クルツさん、説得を始めて!』
『良いだろう。こちらも仲間と戦いたくは無いからな』
 指示を受けるや、オープンチャンネルでクルトが呼びかけを始めた。敵部隊も突如として飛び込んで来た仲間の声に驚いたのか、次弾が飛んでくる気配はない。相手の逡巡を感じ取ると、ラヴィニアはカウンタースナイプを狙うべく得物を構える。
『パラライズバレット、使わせてもらう! エネルギー伝達が止まれば、ステルス状態に戻れなくなるだろうからね!』
 ナノマシンは喰らった弾丸を再現するや、次々と敵機を撃ち抜いてゆく。亡霊が機能停止に陥る中、或る一機だけはこちら目掛けて飛び込んで来た。迷いのない動き、恐らくはあれが火消し役か。
『おのれ、この裏切り者がぁああっ!』
『再現機能がもうすぐ切れる、か。でも、近づいて来たのなら!』
 破砕杭を手に躍りかかって来る亡霊に対し、ラヴィニアはブルパップ式の電磁速射砲を構えるやトリガーを引く。刹那、至近距離より放たれた弾幕射撃によって敵機は瞬く間に蜂の巣と化した。ぐしゃりと崩れ落ちる機体を抱き留めると、外部からコックピットハッチを強引にこじ開ける。幸い、操縦者は気絶していたものの命に別状はなさそうだ。
『キミは機体の頑丈さに感謝するべきだろうね。さて、残りのパイロットも確保するとしよう。手伝ってくれるかい?』
『ああ、勿論だ』
 そうしてラヴィニアは捕虜と共に、他の機体からも操縦者を無事回収する事に成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルイン・トゥーガン
アドリブ絡み歓迎

ステルス機相手じゃ、この動力と冷却装置が外部据え置きの狙撃銃は使えないねぇ
捨て置いて放送施設の護衛に行くかね
説得が上手くいけば督戦やってる連中だけが相手になるだろうしね
放送施設護ってて、敵の初撃を喰らっちまうね
だが、特殊弾が突き刺さったウォッグ型潜水装備をパージして中から無傷のアマランサス・マリーネが出てくるよ
ハッ!引っかかったね、わざわざウォッグに偽装した甲斐があったよ
弾道計算で敵がいる辺りに肩部中型ミサイルポッドから煙幕装填ミサイルぶっ放すよ
煙幕の中で動けば位置はバレバレさね!ビームアサルトライフルとサブアーム保持のサブマシンガンの3門で煙幕内の敵全機撃ち抜くよ!



●欺瞞と偽装、相撃ちて
『ステルス機相手じゃ、この動力と冷却装置が外部据え置きの狙撃銃は使えないねぇ。こういう時に物を言うのは反応の速さだってのに、コイツの仕様はその真逆をいってる。残念だけど、捨て置くしかないかね』
 投げ捨てる、と言うよりはそっと立てかける様に。周囲に敵の気配が無いことを確認しつつ、ルインは荒野での戦いで使用していた光線狙撃銃を工場同士の隙間へ隠すように置いた。性能に難こそあったが、役には立ってくれたのだ。過去故に人を容易くは信じられねど、だからこそ器物を粗末に扱う気にはなれなかったのだろう。
『さて、敵さんも……正確には督戦をやってる連中も、そろそろこっちの手妻に気付く頃合いだろうさね。なら、次の手はおのずと見えてくるってもんだよ』
 彼女は機体の集音機能をオンにしつつ、慎重に入り組んだ道を進み始める。他の区画同様、この一帯も既に説得放送が流され始めており、そこかしこで兵士たちの切実な叫びが木霊していた。
『……君たちの中に裏切り者が居る。こう言ってしまうと。単なる離間工作に思えるかもしれない。だが、そもそも我々が死んだと教えたの誰だ? まず初めに偽りを述べたのは? その意味をよく考えて欲しい。我々は仲間同士で戦うべきではないはずだ』
 音の発生源であるスピーカーと、そこから伸びる無数のケーブル。ルインがそれらに沿って暫し歩を進めると、工場の片隅に建てられたプレハブ小屋へと辿り着いた。工場内用の設備を急遽転用したのだろう。その傍らには警備役と思しきサイクロプスが佇んでいる。彼らは傭兵の機体を見つけ一瞬武器を構えかけるものの、味方であると気づくや銃口を下げた。
『これは猟兵殿、いかがされました?』
『なに、アタシも此処の護衛に加わろうと思ってね。捕虜に被害が出ちゃ、説得も及び腰になるかもしれない。この放送が頼みの綱なんだ、万が一は避けたいんだよ』
 ルインの目的、それは言葉通り放送所と捕虜たちの護衛である。彼女はプレハブ小屋を背で庇う様に仁王立つと、ぐるりとアイカメラを巡らせてゆく。
(今のアタシみたいに、ケーブルを辿りさえすれば放送所なんざすぐに見つけられる。先手は取られると見た方が良いね。いや、もしかしたらもう既に……)
 ジリとした緊張が神経を灼き、メインモニターを視線が舐める。来るか、来ないのか。そんないつ分からぬとも知れぬ瞬間を待ち続けた、その果てに――。
 ――カァンッ!
『……初弾、命中。要注意目標の無力化を確認』
 銃声は無く、機体を揺らす衝撃で撃たれた事を初めて知る。不可視状態からの遠距離狙撃だ。ぼそりと微かな通信が入ると同時に、コンソールから異常を知らせる警告が鳴り響くも、ルインに焦りの色はなかった。
『っ、おいでなすったね! 予想通り先手を取った様だけど、安心するにゃまだ早いよ!』
 特殊弾が突き立った角度やダメージの度合いから彼我の距離と方角を割り出すや、傭兵は素早く或るコマンドを入力する。瞬間、彼女の機体各所を覆っていた潜水用の追加装備がパージされてゆく。その中から現れたのは、先程とは打って変わって身軽そうなキャバリアだ。
『増加装甲……いや、機種の偽装!? 誘い出されたという訳か!』
『ハッ、その通り! まんまと引っかかってくれたね、わざわざウォッグに偽装した甲斐があったよ! こっからは「アマランサス・マリーネ」の本領発揮さ!』
 これこそ彼女の狙いであった。サイクロプスは元より、ウォッグも亡霊と比べてそこまで高性能機とは言えない。故に此方を侮り仕掛けて来た相手を、逆に狩り取ってやろうと待ち構えていたのである。離脱を試みる敵に先んじて肩部中型ミサイルポッドから煙幕装填ミサイルを斉射するや、周囲一帯が煙に包まれてゆく。こうなってしまえば、如何に見えずとも煙の乱れで敵の位置を把握することが出来た。
『っ、先に放送施設を狙うべきだったか……!』
『そうさせない為に一芝居打ったからね。戦場にゃ「待った」も「もしも」もありゃしないよ!』
 ルインは敵を捕捉するや、主腕に構えたビームアサルトライフルと三本の副腕で保持するサブマシンガンを一斉に撃ち放った。一個小隊規模に匹敵する弾幕を受け、さしもの亡霊も無数の風穴を空けて沈黙する。操縦席だけが無傷のままだ。
『お見事な腕前ですね。助力できず、申し訳なく……』
『いいさ、アレが囮の可能性もあったしね。アンタらは捕虜を守る事だけ考えてな』
 申し訳なさそうな自治領兵士に、傭兵は気にするなと返す。そうして彼女は身軽になった機体の調子を確かめながら、忍び寄る敵を撃破してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペイン・フィン
頼れる仲間が、大勢いる
なら、今回自分は、留守番に回ろうか

留守番中は、捕虜の人たちと少し交渉
と言っても、基本的に、ただの雑談になると思う

まずは、自分の本体である指潰しを用意して……
あ、怖がらなくて良いよ
これは、拷問具ではあるけど、貴方たちに使うためのものでは無いから
本当、だよ

嘘ついているわけじゃ、ないけど
まあ、警戒されるのは仕方ない、かな

こっそりとコードを使用
この戦争で発生している怨念を、負の心を
喰らい、宿し、そしてそれらから解放する

……ああ、敵が来た、みたい?
でも、大丈夫
貴方たちは、自分が、守る
すでに刃を置いた貴方たちが、それに晒される不条理なんて
自分が、そして仲間達が、許さないから、ね



●護る事とは至上の攻勢なり
「頼れる仲間が、大勢いる。なら、今回自分は、留守番に回ろうか。投降してきた兵士も、増えているし、ね……それに、きっと彼らが、この市街地戦の鍵を、握るだろうから」
 市街地へと猟兵たちが後退してから、既に短くない時間が経過していた。それに伴い各所から敵部隊との交戦報告も入ってきていたが、どの戦場も比較的優勢に戦いを進められている様子である。それならばと、ペインが足を向けたのは捕虜たちが詰めている放送所。他の放送施設よりも大規模な其処は先遣部隊の兵士たちだけでなく、市街地戦を通して投降してきた本隊用の収容所も兼ねていたのである。
『今回投入された戦力は、はっきり言って過剰であった。示威行為と言えば聞こえは良いだろう。しかし「アレ」の存在を思えば、別の意図があったと判断せざるを得ない!』
『我々先遣隊の言葉を疑うのであれば、それでも良い。しかし、本隊に属する者たちもまた武器を置き、戦いを止めている。これの意味する所が分からぬ訳ではないはずだ』
 既に大音量で説得の放送が流されており、いつ来るやもしれぬ敵部隊を警戒して自治領軍側のキャバリアが周囲を固めていた。その足元を通り抜けながら、赤髪の青年は放送所の中へと入ってゆく。
 内部では説得文を読み上げている者の他に、再会を喜ぶ先遣隊と本隊の兵士たちの姿が散見できた。彼らはペインの姿を認めると、ある者は姿勢を正し、またある者は興味深げな視線を向けてくる。幸いにも、それらから敵意や憎悪は感じられない。助けられた事は元より、戦闘に従事する者として強者への敬意を抱いているからだろう。
「さて、と……ちょっと、いいかな。少し、話をしたいの、だけど」
「ええ、どうぞ猟兵殿。こちらも今は捕虜の身分ゆえ、どうしても手持無沙汰ですからね」
 その証拠に、手近な者へ声を掛けると快く応じてくれた。暫し話を聞いてみれば、やはり彼らの大半は大国側上層部の戦争方針に違和感を抱いていたらしい。軍人としての義務感と同胞を殺されたという怒りから辛うじて従っていたものの、教えられていた情報が嘘だと分かった瞬間、それらが一気に不信へ反転したのだろう。
「今にして思えば、上層部の連中は遠からずこうなると予想していたのかもしれませんね」
「うん? ……それは、いったい、どうして?」
「敗北を喫した手前でこう言うのもなんですが、戦力自体は先遣隊だけで過剰すぎるくらいだったんです。本隊に加えて『アレ』まで持ち出すなど、部下の離反を予期していたとしか……って、猟兵殿? それはなんですか?」
 忌々しそうにそう吐き捨てる兵士だったが、途中で言葉尻が疑問形に変わる。彼の視線は、青年が掌で玩んでいる器具へと吸い寄せられていた。
「指潰しと言えば、知らなくても用途は分かる、かな。あ、怖がらなくて良いよ。これは、拷問具ではあるけど、貴方たちに使うためのものでは、無いから……本当、だよ?」
 安心させるように小首を傾げるものの、何やら重要そうな話題を口にした矢先のことである。言葉を額面通りに受け取る方が難しいというものだ。引き攣った笑みと共に兵士たちはそれとなく距離を取る。この様子だと、今は込み入った話をしない方が得策だろう。
(嘘ついているわけじゃ、ないけど……まあ、警戒されるのは仕方ない、かな。それに、まだ完全に心の整理が、ついている訳では、なさそうだしね)
 今も尚続く戦闘に対する憂慮、火消し役と言う裏切り者への怒り、そして上層部に向けられた苛立ち。そう言った蟠りはすぐさま消えるものではない。ペインはそれら胸中に燻ぶる負の感情を手繰り寄せ咀嚼しながら、同時に捕虜たちへと護りを与えてゆく。敵部隊に対し優勢を維持するためにも、彼らを害される可能性は出来る限り潰しておきたかった。
「取り急ぎ、これで問題ない、かな……おや?」
「っ、遂に来たか。サイクロプスでは、ナイトゴーストの相手は厳しいぞ」
 と、その時。放送所の直ぐ近くで爆発が起こったと思うや、立て続けに外から発砲音が聞こえ始める。恐らく、説得放送の発生源を割り出した敵部隊が仕掛けて来たのだろう。騒然とし始める捕虜たちに対し、ペインは静かな、だがそれでいて良く通る声で呼びかける。
「敵が来た、みたい、だね。でも、大丈夫。貴方たちは、自分が、守る。すでに刃を置いた貴方たちが、それに晒される不条理なんて……自分が、そして何よりも仲間達が、許さないだろうから、ね」
 ――だから、大丈夫。
 建物内部から外の様子を伺い知ることは出来ない。だが青年はある種の確信を以て、そう断言する。彼の瞳には確かに、敵へと挑む仲間の姿が映っているのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファン・ティンタン
【WIZ】騒乱
アドリブ連携可

ん、この感じは……
後方は、任せて大丈夫か
求煉はいったん休んでおいで

戦場にて、やられると存外堪えることがあってね
殺せない相手におちょくられるのはどうかな?

【愉快な音楽隊】
攻撃性の無い騒霊達を亡霊共にけしかける
ステルス?
ああ、物を透過し、街区いっぱいに溢れ飛び回る無邪気な彼らを欺けるようなら、どうぞ?
さあ、その耳元で、じゃんじゃん騒いでくるといい
【集団戦術】の根幹たる意思の統一を掻き乱しておいで
ついでだ、ポルターガイスト
隠れ鬼達がどこに居るか、“私達”にも分かりやすく、教えてくれないかな?
是非、一緒に遊びたいからね

要所で奇襲、【継戦能力】を欠くべく敵機関節部の【切断】を



●戦場に響き渡れ、ネジの外れた行進曲よ
「……やれやれ、放送所を見つけた直後にこれとはね。運が良いんだか悪いんだか」
 比較的規模の大きい放送所、その周りでは流される説得放送を塗り潰す様に幾つもの銃声が響き渡っていた。十中八九、敵部隊による襲撃だろう。護衛のサイクロプスも周囲へ牽制射を行っている様だが、敵のステルス機能に加えて放送所を守りながらでは些か以上に分が悪い。
 そんな場に居合わせたファンは周囲を見渡して、さてどうしたかと首を傾げていた。だが背後へと視線を向けた時、おやと何かに気付く。
「ん、この感じは……後方は、任せて大丈夫か。背後を心配しなくて良いのは助かるよ。丁度いい、求煉はいったん休んでおいで。久々の戦場なんだし、無理は禁物だよ?」
 後方に感じる慣れ親しんだ気配。それだけで全てを察すると、白刀はそれまで人型を形作っていた求煉を元の義骸状態へと戻した。引き続きキャバリア戦を行うのも悪くは無かったが、後背の憂いが消えたことにより別の一手が浮かんできたのである。
「顔を合わせれば真剣勝負、どちらかが斃れる殺し合い……そんな戦場にて、やられると存外堪えることがあってね。殺せない相手に好き勝手おちょくられるのはどうかな?」
 そこかしこで着弾の土煙が巻き上がる中、ファンは皮肉気な笑みを浮かべながら手を振る。すると、小さく半透明な影が無数に現れた。それは様々な楽器を持った精霊や小人たち。彼らは戦場の騒乱など何処吹く風とばかりに、手にしたラッパや太鼓を好き勝手にかき鳴らしていた。
「ややもすれば不真面目だと怒られそうだけど、今はこれくらいのユルさが必要だからね。余りもたついていると放送所は兎も角、自治領側の戦力に被害が出そうだし……さぁ、行っておいで。パレードの時間だよ」
 ――It's Showtime。そうして送り出された音楽隊は入り組んだ工場や道を意にも介さず、それらをすり抜けながら方々へと散ってゆく。彼らに戦闘力はない。ただ賑やかなだけだ。しかし、その演奏によって齎された変化は決して小さくはなかった。
『な、なんだコイツら!? 装甲をすり抜けて、中に、中にッ!』
『おい、其処をどけ! モニターが見えんぞ! それになんだ、この喧しさは!? これじゃあ通信が聞き取れない!』
 端的に言うのであれば大混乱である。確かに音楽隊は操縦者を直接害さないが、だからと言っていきなり現れて騒音を撒き散らせば、それだけで十分に効果を発揮するのだ。手で振り払おうにも、伸ばした指先は虚しく透過するのみ。慌てふためく相手を眺めながら、ファンは愉快そうに口の端を歪める。
「ステルスが自慢なんだって? ああ、物を透過し、街区いっぱいに溢れ飛び回る無邪気な彼らを欺けるようなら、是非どうぞ? さあ、みんな。彼らの耳元で、じゃんじゃん騒いであげるといい。連携も何もないだろうさ……さて、と」
 なまじ暴れ回ったせいかステルス機能の効果も減衰し、敵の姿は半透明ながらも把握する事が出来るようになっていた。これならば性能差も何もない。後は自治領のサイクロプスたちでも無力化できるだろう。となると、他に懸念すべき点はただ一つ。
「ついでだ、ポルターガイスト。隠れ鬼達がどこに居るか、“私達”にも分かりやすく、教えてくれないかな? 随分と『愉快』な趣向を凝らしてくれたお礼だ。是非、一緒に遊びたいからね」
 そう問いかけると音楽隊はある一点を指し示した。それは部隊からやや離れた位置でのたうち回っている一機の亡霊。あれが火消し役なのだろう。察するに、単独行動で良からぬ事を企んでいたといった所か。
『お、のれぇぇ。この様な児戯で、良くも我々の崇高な任務を……!』
「国と国の関係がどうなろうと、正直どうでも良いんだけどね? 単純に巫山戯た所業が気に食わない。だから、こっちもおちょくらせて貰っただけだよ……と言う訳で」
 電磁装甲を起動させ、火消し役は破砕鉄杭を手に襲い掛かってくる。狙いも何もないが、互いの質量差に物を言わせて焼き潰そうという魂胆らしい。確かに掠めるだけでも致命打となるが、白き刀に焦りの色は無かった。彼女は近未来的な保護具より刃を鞘走らせるや、真っ向から相手を迎え撃ち……。
「――遊びは終わりだよ」
 刹那の交差を以て四肢を切り飛ばし、一瞬にして敵を無力化してしまう。小さく息を吐きつつ得物を納刀して振り返ると、既に他の亡霊も鎮圧されていた。斯くして、ファンは無傷のまま放送所を守り抜くことに成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

吉備・狐珀
死人に口なし…
確かに死んでいては話すことは不可能です
ですがここで生きていると知ったらどうされるつもりなのでしょうか

UC【鎮魂の祓い】使用
魂迎鳥を奏で祖国に疑問や不満を抱きながら忠誠心との狭間にゆれる敵兵に
祖国のために命を懸けて戦う価値があるのか問う
忠誠を誓った貴方の国は、闘争心を煽るために生死も確かめず、救出を試みることなく
貴方たちを死者として扱い利用していますが本望ですか?

ただの戦闘狂やそれも承知の上というのなら魂迎鳥の旋律も問いにも何も感じることはないでしょう
残念ですがその時は催眠をかけしばらく眠ってもらいます

ウカ、月代、敵兵を説得している間、衝撃波で新手を迎え撃ち時間稼ぎをお願いしますね



●奉ずる忠か、結びし情か
 戦闘開始から既に短くない時間が経過し、工業地帯での戦闘は収束に向かいつつあった。それまで説得の放送と同じくらい鳴り響いていた戦闘音も、徐々にではあるが疎らに聞こえる程度になっている。だが裏を返せば、継戦の意思を持った敵部隊がまだ残っているという事に他ならない。
「死人に口なし。確かに死んでいては話すことは不可能です。その遺志はただ、推し量ることしか出来ません。ですが、ここで生きていると知ったらどうされるつもりなのでしょうか……或いは、耳にしてもなお信じられないとしたら」
 そんな喧騒に耳を澄ませながら、狐珀は複雑そうな表情を浮かべていた。未だ事実を知らずに偽りの怒りに突き動かされているのか、それとも真実を知った上で止まれぬ理由があるのか。欺瞞、疑念、憎怒、焦燥。理由が何であれ、これ以上の戦闘が誰のためにもならない事は明白だ。
「いま必要なのはきっと、砲煙弾雨ではなく言の葉のはずです。幸い、放送設備のお陰で音を届けるには格好の状況……声の流れに乗って、いつもより遠くまで飛ばせるはずでしょうから」
 土台、いつ不意を打たれるかも分からぬ戦場で、真偽不明な説得放送を信じろという方が難しい。なれば、それに対し冷静に耳を傾けられる状況を整えるのが先決だ。狐珀は白磁に桜色の色薬で彩られた笛を取り出し、そっと唇をつける。吹き込まれる吐息は陶器製の鳥を震わせながら、調べの翼となって工場の間へと羽ばたいてゆく。
 通常であれば、音色の届く範囲は限られている。しかし、あちこちで響く説得放送が狐像の少女が紡ぎ出した魂迎鳥を遠くへ、より遠くへと運んでくれた。
「これは……そうですか。あちらに居るのですね?」
 微かではあるが、邪心を祓い浄めた手応えがあった。狐珀はその感触を頼りとし、か細い糸を手繰る様に入り組んだ道を進んでゆく。果たして、彼女が辿り着いた先では亡霊機たちが姿を隠しもせず、ただ茫洋と佇んでいた。張り詰めていた緊張の糸がぷっつりと切れ、一時的に放心状態になっているのだろう。
「……告げます。祖国に疑問や不満を抱きながら、忠誠心との狭間に揺れる兵士たちへと」
 そんな彼等へゆっくりと、要求を押し付けるのではなく切々と説く様に、少女は声を掛けた。くるりとアイカメラが向けられるも、彼女は怯まずに言葉を続ける。
「祖国の為に命を捧げる。それは確かに美徳と言えるでしょう。貴方たちの挺身を否定するつもりはありません。ですが忠誠を誓ったはずの国は、闘争心を煽るために生死も確かめず、救出を試みることなく、貴方たちの戦友を死者として扱い利用しています」
 狐珀が指し示す先には、今もなお説得の言葉を流し続けるスピーカーがあった。顔の見えない機械越しではある。敵からすれば罠の疑いも否めない。しかしどうか、そこに籠められた想いを汲み取って欲しいと、少女は問いかける。
「上の命令に従うべきかどうか、判断するのは彼らの無事を確かめてからでも遅くはないはずです。無駄な血を流さない為にも、どうか武器を置いて頂けませんか?」
『……こちらを懐柔する策としては些か迂遠に過ぎる、か。手段問わずの戦場で在ろうとも、我々の前に身を晒した事実を軽んじるのは仁義にもとろう』
 そう話を締めくくる猟兵に対し、兵士も納得したわけではないが理解は示してくれた。ライフルや破砕鉄杭といった武装を解除し、彼らは一先ず従う姿勢を見せる。それに思わず安堵の笑みを浮かべた……その瞬間であった。
『腑抜け共が……敵や惰弱者の言葉なぞに騙されおって!』
 ある一機が手放し掛けた銃器を握り直し、弾丸を放ってきたのだ。恐らくあれが火消し役だろう。ギリギリのタイミングまで襲撃の機を窺っていたのか。しかし、それは狐珀としても想定済みの展開であった。
「火消し役が居るであろうことは、薄々感づいていました。貴方だけ、魂迎鳥の旋律が響いていませんでしたから……ウカ、月代、お願いします!」
 主の指示に応じ、瞬時に姿を見せたのは黒狐と白龍。彼らは咄嗟に衝撃波を放つや、弾丸の勢いを相殺しながら軌道を逸らす。その隙に狐珀は再び笛を口づけると、鋭い高音を奏でてゆく。それはするりと装甲の隙間へと入り込むと、操縦席に居たパイロットの耳朶を打つ。心を安んずる調べではなく、意識を刈り取る音色によって火消し役は一瞬にして意識を失った。
「暫くは眠って頂きます。処遇についてはハイネマン殿にお任せすれば問題ないでしょう」
 一瞬哀し気な表情を浮かべるも、狐珀はすぐに気を引き締め直す。今は一刻も早く、投降者たちを捕虜と会わせてあげるべきだ。彼女は無数の亡霊と共に、手近な放送所を目指して歩き始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィリー・フランツ
※近接戦闘に備え鉈型実体ソードとブルパップ式ライフルを携帯
心情:(舌打ち)思ったよりも高性能量産機が出たな、だがこれさえ凌げば後は痺れを切らした親玉のオブリビオンマシンを叩けばゲームセットだぜ!

手段:ライフルと鉈は装甲板にあるハードポイントにぶら下げておく。
敵はセンサーに感知しにくいステルス機…捕虜の放送で動揺したとしても強敵だな。古臭い手だが俺が囮になって攻撃を誘い、被弾箇所から攻撃地点を割り出して対処するか。
無反動砲の一発目には【EMP弾頭】を装填、効果範囲は半径86m、一個小隊程度は無力化出来るだろう。
相手が近接戦を仕掛けて来たら、無反動砲を捨てシールドで対処、鉈型ソードで反撃を試みるぜ


勘解由小路・津雲
やはり仲間も来ていたか。
そして市街戦、しかしこれは、下手をすると後鬼の機動力を活かせないかもしれないな。上手く誘い込まなければ。

【作戦】
まず、敵にあえて捕虜の位置をつかませるとしよう。もちろんそれは囮、実際にいるのは式神で作った木偶というわけだ。
そして周囲には霊符を貼っておき、お出迎えの準備だ。敵がひっかかれば、【八陣の迷宮】を展開。
式神を憑依させている後鬼や、あるいは人間でも霊力があれば目視できるだろうが、キャバリアのセンサーで結界が捉えられるかな?

攻撃を軽減できる電磁装甲とやらも、後鬼の火力を集中すれば。反撃のパイルバンカー?
悪いな、そこにも「壁」があるんだ。



●盲目たる兵(つわもの)に見える者など無く
 戦闘開始より数刻。徐々に陽は傾きを増しており、工場群の影も長く伸びつつある。侵入してきた敵部隊も順調に投降してきているものの、それでも継戦意志を揺らがせぬ部隊もまだまだ残っていた。そんな敵の情報へ耳を傾けながら、ヴィリーは内心小さく舌を打つ。
(チッ……思ったよりも高性能量産機が出たな。だが、敵の数はもうそんなに残っちゃいないはず。つまりこれさえ凌げば、後は痺れを切らした親玉のオブリビオンマシンを叩いてゲームセットだぜ!)
 敵指揮官の駆るキャバリアの情報は未だ茫洋としているが、捕虜たちの言葉の端々から強力な機体である事は察することが出来た。出来れば次の戦いを見据えて損耗は最低限に留めておきたいものの、余力を残せるほど状況はまだ楽観視できるものではない。
『敵はセンサーに感知しにくいステルス機……捕虜の放送で動揺したとしても強敵だな。まず確実に先手は取られると見た方が良いだろう。となると古臭い手だが、俺が囮になって攻撃を誘って、そっからカウンターを狙うしかないか』
 手にしていたライフルや実体剣を装甲表面のハードポイントへマウントしつつ、傭兵はそう独り言ちる。ヴィリーの機体であれば、その大火力を以て敵を炙り出すことも可能ではある。
 しかし、此処は自治領側の工業地帯。むやみやたらに砲弾を撃ち込むのは流石に憚られた。故に彼は自ら敢えて身を晒し、敵の攻撃から位置を割り出そうと考えたのだ。だが、これは被弾前提の戦術。彼の言葉尻には若干の皮肉が滲んでいた……が。
「やはり仲間も来ていたか。合流も一手だが、皆であれば問題はないだろう。それよりも、だ……どうやらお困りの様子だな。袖振り合うも他生の縁、良ければ助太刀しよう」
 横合いから声を掛けられた。そちらへメインカメラを差し向けると、二脚機を引き連れた津雲の姿が見える。傭兵は陰陽師の纏う装束から何を得手としているのかをおおよそ
察し、ヒュウと小さく口笛を吹く。
『見た所、得意分野はオカルト系か? 丁度いい、こっちの奥の手は機械相手だと良くも悪くも相性が合い過ぎてな。後ろのマシンがちょいと不安だが、その申し出は有難いぜ』
「奥の手……ああ、なるほどな。であれば心配無用だ。後鬼は宿した式神で駆動するから、マシントラブルにもある程度は対応できる。問題なかろう」
 津雲もまたヴィリーのキャバリアが纏う武装を見て、彼が何を狙っているのかを理解したのだろう。陰陽師はふむと顎を撫ぜながら、手早く作戦を練り上げてゆく。
「となると、敵は一か所に纏めておきたいところだな。市街戦ゆえ、そちらは元より下手をすると後鬼の機動力も活かせないかもしれない。上手く誘い込まなければ……尤も、連中の食いつきそうな『餌』ならば目星がついている」
 津雲は袂より霊符の束を取り出すや、周囲へ向けて放ち始めた。工場の壁面や路面に張り付くものや、何やら複雑に折り込まれるものなど、術者の指示に応じて複雑に形を変えてゆく。瞬く間に霊的な陣地が構築されていく様に、ヴィリーは思わず舌を巻く。
「さて、こんなところだろう。敵が不可視と言うのであれば、こちらは霊的な布陣で迎え撃とうか。たまさか、呪術的機能を備えてはおるまい」
『ほう、こいつは良い。それじゃあいっちょ、連中を騙くらかしてやるとしますか!』
 そうして二人は細々とした部分を詰めつつ、虎視眈々と敵を待ち受けるのであった。

『危険を犯してまで無線封鎖を解除してみたが……どうだ、他の連中からの応答は』
『駄目だ、返って来ない。感度が悪いのか、それとも既に投降済みか。全く、上の危惧した通りだな。情けない売国奴どもめ』
 工業地帯を亡霊が一個小隊、周囲を警戒しつつ移動していた。会話内容的に全員が火消し役なのだろう。恐らくは元居た部隊から抜け出し、事情を知る者同士で合流したといったところか。言葉の端々には敵以上に、武器を置いた味方への恨み節が滲んでいる。
『……ッ、全機停止。前方に捕虜集団と護衛のキャバリアを視認。連中、ノコノコ歩いてやがる』
『見た所、護衛は砲撃戦用の機体か? ならばステルスを維持したまま接近し、そのまま白兵戦に持ち込んで潰すぞ。裏切り者はそのあとでじっくりと、だ』
 彼らの視線の先には密集して動き回る捕虜たちと、その傍に佇む重武装型のキャバリアの姿があった。捕虜の移送か、説得の準備か。何であれ、火消し役たちにとってはどちらも唾棄すべき敵だ。小隊はステルスを維持したまま、ゆっくりと忍び寄り、そして……。
「……残念だが、見えぬ存在を調伏するのは俺たち陰陽師の通常業務でな。操縦者の霊力を探れば、そちらの動きは筒抜けだ。さぁ、逃しはせんぞ?」
 津雲の皮肉気な言葉と共にそれまで捕虜だと思っていたモノ――人の形に折られていた霊符がばらりと解け、周囲に仕込まれていた霊力と共鳴。一瞬にして、敵を封じ込める結界が出現する。敵も咄嗟に後退を試みるものの、まるで見えない壁があるかの如く、ある地点を境に通り抜ける事が出来なくなっていた。
「やはり、キャバリアのセンサーでは結界を捉えられなかったようだな。科学技術に特化した相手だとやり易くていい。いつもこうであれば楽なのだが」
『馬鹿な、罠だと……嵌められたか!?』
『ええい、こうなればステルス機能の意味はない! 電磁装甲を起動、白兵戦に移れ!』
 だが、敵も正規の軍人である。奇襲の利が失われたと見るや、瞬時に攻勢へと打って出た。狙うは一番の脅威と思しき重武装型キャバリア。ブースターを吹かせながら吶喊してくる亡霊に対し、操縦席内のヴィリーは短くなった煙草をもみ消しながらほくそ笑む。
『こうも予想通りに動いてくれると、なんだか愉しくなってくるな。弾種選択、EMP弾頭。特別仕様の弾だ、外れんじゃねぇぞ!』
 傭兵が構えしは一門の無反動砲。モニター上で揺れるターゲットロックが固定された瞬間、トリガーを押し込んだ。瞬間、発射された弾丸が一直線に飛翔してゆく。だが、その軌道は敵のやや上へと伸びていた。これでは直撃することなどあり得ない。
『ははは、火器管制の照準が狂っている様だなッ!』
『いいや、調子が狂うのはそっちの方だぜ!』
 敵の嘲笑にヴィリーが叫び返した瞬間、敵の頭上で弾頭が炸裂した。瞬間、強烈な電磁波が放射状に撒き散らされる。それらは亡霊機の防護機能を貫通し、電子系統へ甚大な損傷を与えてゆく。
 これこそが傭兵と陰陽師の策であった。霊符を用いた囮で敵を誘引。ステルスの効果が薄い津雲が敵機を発見し次第、結界を起動。相手が逃げられなくなった所で、ヴィリーが電磁パルス弾頭を確実に叩き込む……という寸法である。それらは期待通りの効果を発揮し、敵を一網打尽にすることに成功していた。
『な、システム障害だと! き、機体の制御が効かん!』
「さて、こうなれば機動力も何もない。自慢の電磁装甲とて機能不全を起こしている様だしな……後鬼、頼んだぞ?」
 津雲の指示を受けて二脚機が飛び出すや、主砲と重力銃の連続射撃で敵の四肢を破壊してゆく。式神による霊力操作のお陰で、後鬼は電磁波の影響を無視する事が出来るのである。操縦席を残し、敵機は瞬く間に無力されていった。
『ナイトゴーストを、我らが最新機を、舐めるなぁああっ!』
 しかし、位置の関係上EMPの被害が少なかった機体もあったのだろう。一機がぎこちない動きながらも、破砕鉄杭を手にヴィリーへと躍りかかった。繰り出される鋼鉄の杭を前に、傭兵も咄嗟に鉈型実体ソードを抜き放つ。だが、紙一重の差で敵の方が早い。火薬を炸裂させ、勢いよく鉄杭が射出され――。
「……悪いな、そこにも『壁』があるんだ。残念だが、届かせはすまいよ」
 ガキン、と。硬質な音を響かせて杭先が停止する。こういった場合に備えて、津雲は仲間の前にも障壁結界を展開しておいたのだ。予想外の事態で呆気に取られる亡霊の頭上へと、ヴィリーの握る得物が振り上げられた。
『そういう訳だ。つまり、此処に踏み込んで来た時点でもう詰んでたんだよ、アンタらは』
『そん、なぁ……!?』
 そのまま叩き込まれた鉈剣は亡霊の頭部ユニットを割断し、胴体半ばまでめり込んでゆく。痙攣する様に四肢が藻掻いていたものの、刃を引き抜くと同時にそれも停止した。もう戦場に立っているのは、ヴィリーの『ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』と津雲の『後鬼』のみ。亡霊は全て、二人の手によって沈黙させられていた。
『周囲に敵の反応は無し……これで終わり、かね?』
「のようだな。即席の連携とは言え、上手くいったようで何よりだ」
 傭兵と陰陽師の二人はほっと一息つきながら、互いの労をねぎらい合う。そうして倒した敵を回収すべく、もう一仕事始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
他国と戦争して、そこまでやって失敗したら遠からず大国も潰れそうでござるな!
いや~乱世乱世!ここは陰謀と暴力渦巻くパーラダイス!

消えようが実体が消える訳では無いでござる
十字路で待ち伏せ、ビル間に見え難いピアノ線を張り、道路上には【流体金属】君を少々
拙者は全身を【ドット絵】に変換してビルの上で待機

ピアノ線が切れた瞬間に流体金属君を絡みつかせコクピット内部へ潜りパイロットを拘束、適当に機体を暴れさせますぞ!
拙者は拘束なり対処しようとした別の機にビルから飛びつき隙間から機体内部に、更に電子媒体の体を回路に潜り込ませて制御を【ハッキング】
残った敵を【特殊弾】で黙らせて一丁上がりでござる
機体ゲットだぜ!


オル・フィラ
策略の応酬、プロパガンダ、戦場になる工業地帯
…最適解は、一体どこにあるんでしょうか

とにかく、真実を知って行動している敵が厄介なのは分かりました
優先して排除すべきですが見分ける必要がありますね
味方を排除可能な位置を取っているでしょうし、私達に対する思考が違えば動きも変わってくるはずです
建物の間を走り回り、事情を知らない方の敵を誘引しつつ、離れた優先目標を【泥流弾】で狙っていきましょう
引き続き武装や脚部のみを狙い、私が敵を、敵が敵を殺さないように注意です

敵の主力機と私のクロライト、性能を比べるのに丁度良さそうです
キャバリアでの市街地戦がどのようなものかについても、ここで学ばせてもらいます



●ピュロスの勝利に意味はあるか
 既に工業地帯での戦闘は収束へと向かいつつあった。辺りに響く説得の放送は相変わらずだが、これまでそれに混じっていた戦闘音はもう疎らにしか聞こえない。とは言え、一帯の安全を完全に確かめるまで油断は禁物である。
『策略の応酬、プロパガンダ、戦場になる工業地帯……最適解は、一体どこにあるんでしょうか。同胞を切り捨てても得る勝利、義務に背いてまで選ぶ紐帯の情。どちらも、正しいと言えば正しいのでしょうけれど』
 周辺を警戒しつつも、乗機の操縦席へ収まったオルはそんな取り留めのない思考を巡らせていた。戦術的にどう立ち回るべきか、戦略的には何が正しいのか。今は自治領側の援軍として立ってはいるが、大国側とて歪められてはいるものの彼らなりの理屈が在るはず。しかし、今の彼女にはそれを見通せるだけの知識や経験が足りていなかった。そんな、混然とした考えに眉根を顰める少女へと……。
「他国と戦争して、そこまでやって失敗したら遠からず大国も潰れそうでござるな! 多方面作戦とか、始めたは良いけどジリ貧になる筆頭ですぞ。いや~乱世乱世! ここは陰謀と暴力渦巻くパーラダイス!」
 控えめに言って、より頭の悪そうな声が掛けられた。足元を見やれば、いつの間にか姿を見せていたルーデルがお道化た様に肩を竦めている。恐らく、通信越しにオルの独白を耳にしたのだろうか。
「人間、三人集まれば派閥が生まれるものでござるからなぁ。拙者もほら、推しとか担当とかでしばしば揉めるでござるし。ま、傭兵なら金払いと生き残る事だけ考えれば問題ナッシング! もっと気楽に行った方が良いですぞ?」
『そういうものでしょうか?』
「そういうもんでござるよ~。拙者なんぞこんな風に、ほら」
 そう言って黒髭はくるりと身を翻すと、全身がレトロなドット調へと変化。気の抜けた効果音と共に工場の壁面をジャンプしていった。最早、気楽とかそういうレベルではない。だが、一兵卒としての心構えとしてはある意味真理ではある。
「ま、ともあれやるべき事はやらねばならぬのが下っ端の哀しさでして。しぶとい連中にはさっさとご退場願うでござるよ」
『ええ、そうですね。考えるのは後で幾らでも出来ますから。それに敵の主力機と私のクロライト、性能を比べるのに丁度良さそうです。キャバリアでの市街地戦がどのようなものかについても、ここで学ばせてもらいます』
 ルーデルの言葉で幾分か緊張が和らいだのか、少女は戦闘へと思考を切り替えてゆく。荒野での初実践に加え、市街地での対ステルス戦闘。更にこちらが優勢と来れば、経験を積む場としてはこれ以上ないシチュエーションである。なればと、ルーデルもまた不敵な笑みを浮かべた。
「なら、拙者も一肌脱ぐでござるよ。市街地戦なんて、歩兵にとっては格好の狩場でござるからな。敵にしろ味方にしろ、歩兵の動きを覚えておいて損はないですぞ?」
 そうして二人は互いの戦力や技能を共有し合って手早く作戦を組み立てると、残る敵を一掃すべく行動を開始するのであった。

『こちら第九小隊。友軍、応答せよ。繰り返す、こちら第九小隊……クソっ、繋がらない!』
『他は全てやられたと見るべきだろう。十中八九、この放送で士気を砕かれたか。正直、俺たちも無事を確かめられるのであれば、そうしたいが……』
 工場の間を走る隘路を、亡霊の一個小隊が円陣を組んで警戒しつつ進んでいた。無線機にがなり立てるも、返ってくる声はない。彼らも薄々は察しているのだ、既に残っているのは自分たちだけだと。そして、放送の内容についても真実なのだろうと。だがそれでも、彼等には投降を選べぬ理由があった。
『……くれぐれも変な気は起こすなよ。我々の背後にはまだ「アレ」が控えている。寝返ろうが何をしようが、最終的には一切合切諸共が火の海に沈むのだ。貴様らとて、故郷に残した者も居るだろう?』
 それは火消し役の存在である。もはや無知を装う必要は無いと正体を明かし、他の隊員を脅迫して無理矢理従わせているのだ。火消し役は不承不承といった仲間に銃口を突きつけながら、先行させるように追い立ててゆく。と、そんな時に。
『敵部隊を発見しました。多少、予想とは違いますが……なるほど、あれが優先目標でしょうか』
 小隊の進路上に緑色のキャバリアが姿を見せた。オルの駆る『クロライト』である。彼女は敵の気配を感じ取るや否や、挑発するように短く牽制射を放つ。咄嗟に小隊も応射するが、既にオルは機体を反転させて後退し始めていた。
『何をしている、追え! 数は此方の方が上だ、貴様らの責務を果たせ!』
『くっ……!』
 火消し役の命令を受けて、三機の亡霊が追撃を開始する。ここまでは猟兵側の想定通りと言えた。
(私達に対する思考が違えば動きも変わってくると踏みましたが、その通りになりましたね。丁度いい具合に分断出来ましたし、このまま引き付けておきましょう)
 少女は時たま振り返って射撃を行いながらも、基本的には回避と逃走を優先していた。追跡側も猟兵の背後目掛けて弾丸を浴びせてはいるものの、どうしても違和感がぬぐい切れない様子である。
『なんだ、何を狙っている? ただ逃げている訳ではあるまい。まさか……』
 疑念を抱いたものの、足を止めれば火消し役に見咎められかねない。故にただ前へ、ひたすら前へと駆け抜け、深緑色の機体を追う。そうして曲がり角を抜け、ビルとビルの間へと差し掛かった、その瞬間。
 ――ブツンっ。
 機体の脚部が、張り詰めた糸か何かを断ち切った感触が操縦桿越しに伝わってきた。視線を前に向ければ、それまで逃走していたオルも足を止めてこちらへ視線を向けている。そこから導き出される答えは一つしかない。
『やはり……誘い込まれたかっ!?』
「ピンポーン、大正解! 回答者には流体金属君をプレゼント! ちょっと癇癪気質だけど仲良くしてね! ……てか、男のスライム塗れなんて何処に需要があるのでござるかね?」
 頭上からは待ち伏せしていたルーデルの声が上がり、そして足元では地面に偽装していた流体金属が音もなく亡霊たちを絡め取り始めた。鉛色の粘体は隙間から操縦席へと侵入するや、パイロットを拘束し操作系統を次々と乗っ取ってゆく。
『が、あ……体が、勝手に……!?』
「いやまぁ、話を聞く限り自主的に協力頂ける気配もあったではござるが……建前でも、無理矢理操られたって事実は重要でござるよね?」
 ルーデルも敵兵が火消し役へ不満を抱いていたのは感じていたが、同時に協力できぬ理由がある事も察していた。故に少々荒っぽくはあるものの、これも彼なりの配慮なのだろう。と、そんな混迷さを増す戦場へと遅れて追従していた火消し役も姿を見せる。
『むざむざ罠に嵌められたか、愚か者共が! 良いだろう、捕虜となるくらいであればこの手で引導を……!』
「おおっと、そうは問屋が卸さぬで御座る! 液体金属君、援護はよろしく頼みますぞ!」
 仲間ごと撃ち抜かんとライフルを構える火消し役の機体へと、ビルの上よりドット状のルーデルが飛び掛かった。彼は一ドット程度の薄さを利用して装甲の隙間へ潜り込むと、ケーブル類を介して直接ハッキングによる電子攻撃を開始してゆく。該当箇所を撃ち抜こうと火消し役も試みるが、液体金属の支配下に置かれた亡霊たちが攻撃を行って支援し、そんな隙を与えない。
『馬鹿な、どいつもこいつも、命令をこなせぬ者ばかり……ッ!』
『それはあなたも同じではありませんか? そちらの作戦行動はここまでです。安心してください、これ以上は誰も殺させません。私が敵を、そして敵が敵を害する事も』
 システムが障害を引き起こし、モニターに映る映像や文字が全てドット調となり。ろくに動けなくなった敵機へと、オルはトドメの一撃を叩き込んだ。四肢へ吸い込まれた弾丸は濁流を溢れ立たせ、内部より機構を粉々に吹き飛ばしていった。宣言通りコックピットだけは無事な為、命に別状はないだろう。
「ぺっぺっ! まさか拙者までびしょ濡れになるとは……ルーデルの眼を以てしても見抜けなかったでござる!」
『……まぁ、無事なようで何よりです。周囲に敵影もありませんし、これで本当に終わりでしょうね』
 攻撃の余波で傭兵も巻き添えを喰らっていたが、こちらも別段問題ないようである。念のためオルがセンサーで周囲を走査するが不審な影は無し。通信に耳を傾けてみても、敵と交戦している部隊は聞こえてこない。工業地帯における戦闘は、これにて本当に終結したといって良いだろう。
『残るはこの部隊を率いてきた指揮官機……つまりは、オブリビオンマシンだけですか』
 オルはそう言って、工業地帯の外縁部へと視線を向ける。
 果たして――そこには巨大な『何か』の影が、うっすらと見えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『Fortress』

POW   :    要塞からの火力支援
【背部に背負った多連装ミサイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同じく背部に背負った主砲】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    要塞への接近阻止
【足の間】から【重機関銃の乱射】を放ち、【弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    要塞による掃討
【両腕のグレネードランチャー】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。

イラスト:右ねじ

👑11
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※マスターより
三章断章とプレイング受付告知は23日(水)夜を目途に投下予定です。
引き続きどうぞよろしくお願い致します。
●赤金の城塞、鳴動す
『……大隊の損耗率、僅少。猟兵殿の被害、極めて軽微。捕虜の死傷者に至ってはゼロ。控えめに言っても、我らの完勝と称して差し支えないかと』
『うむ、結構。誠に結構。喜ばしいことじゃあないか。工業地帯への被害もあるが、寧ろそちらに関しても予想より少ないほどだ』
 工業地帯での戦闘が集結した後、各地に散っていた部隊は再集結を果たし、各所の被害を取り纏めていた。その結果はほぼ無傷の勝利と言って良い。無論、機体の破損や負傷などはあるものの、どれも十分にリカバリー可能なレベルだ。まさかの連続勝利に、自治領側の兵士たちは蓄積した疲労も忘れて喝采を上げる。
 しかし、そこで猟兵たちの顔に疑問符が浮かんだ。地の利を得たとは言え、敵はサイクロプス以上の高性能機だった。にも拘らず、損耗が先ほどよりも低いとはいったいどういう事なのか。それに対し、ハイネマンは自明の理だと肩を竦める。
『先遣隊との戦闘において、彼らはただ一心に我々を殲滅しようとしていた。その熱量は敵ながら天晴と言う他ない。だが、今回はそれに加えて「捕虜の抹殺」という別の目的が混じっていた……つまり、だ。闘争に対する純度が下がってしまったという訳だよ』
 それが正しいかどうかは判断し難いが、少なくとも戦争狂によっては言い切るに足る理由なのだろう。彼は補給を済ませると、再び自治領外縁部へと進路を向ける。
『やれやれ……だがそう考えた場合、もしかすると存外尻切れトンボで終わるやもしれんぞ、諸君?』
 深々と嘆息するハイネマンとは裏腹に、荒野へと飛び出した猟兵たちと自治領軍と出迎えたのは……規格外と呼べるほど巨大なキャバリアで在った。

 赤鉄色の装甲に包まれた機体は高さ、重量共に通常のキャバリアの数倍近くあるだろう。キャバリアの平均的な全高でさえおおよそ五メートルなのだ。通常の人間サイズと比較すれば、小さな山が動いているに等しい。重々しい地鳴りを響かせて進むその巨躯のあちこちには、ハリネズミの如き機銃砲塔やミサイルコンテナが備え付けられている。
『なんだ、あの武装の数……巡洋艦でも地上に持ってきたってのか!?』
『それに鈍重かと思えばそうでもない。サイズ感で分かり難いが、下手をすればありゃサイクロプスより数段速いぞ……!』
 加えて、動きも決して遅い訳ではなかった。勿論、高機動型のキャバリアと比べれば見劣りするだろう。だが、出力に物を言わせてあれだけの質量が動き回れば、それだけで一つの脅威だ。掠りでもすれば、鎧袖一触という言葉の意味を身を以て知る事になる。
 だが、それ以上に目を惹くのは背部後方から機首前方へと突き出した、長大な砲塔。列車砲も斯くやと言うそれは、決して伊達や飾りなどではないはず。もしも、あれが何処かのタイミングで火を噴いていたら、戦況は大きく変わっていたかもしれない。
『ああ、あれならば分かるぞ。示威行動がてら、何度かこちらにも来たからな。奴は戦略級超大型キャバリア「フォートレス」……機体その物が一つの拠点となり得る、文字通りの城塞。単騎で一個師団に匹敵するバケモノだ』
 ハイネマンの言葉に誇張が混じっていないことは、一目見れば分かる。しかしなぜ、今の今まで動かなかったのか。不気味さを抱きつつ様子を窺っていた猟兵たちへ、オープンチャンネルで通信が入った。
『私は本鎮圧部隊を率いる指揮官、ゴロプ・シュテーゲルである。我が部下たちではなく貴様らが姿を見せたとは……「予想通り」とは言え、腹立たしいものがあるな』
 敵の指揮官、ゴロプの物言いに少なくない者が眉を顰めた。今の発言を信じるのであれば、相手は部下の敗北を初めから予期していたことになる。それは一体、どういうことなのか。その理由を明らかにするようにハイネマンが代表して口火を切った。
『やぁ、久しぶりだよゴロプ大佐。最近顔を会わせなかったが、元気にしていたかね』
『貴様も相変わらずだな、ハイネマン。一つ訂正しておこう。今の私は少将だ。二度と間違えるな』
『これは失敬、ゴロプ少将……さて。先の「予想通り」という言葉が意味するのは、部下から離反者が出た事についてだろう?』
 相手の怒気など何処吹く風とばかりに受け流すと、戦争狂は本題を切り出す。ゴロプと名乗った指揮官は問いに対し無言を貫くが、こうした場合それは肯定を意味していた。
『元より、戦争の為に無茶をしていたせいで兵士たちの不満や不信は高まる一方だった。しかし、一度始めた戦争はそう容易くは止められず、かといって末端を宥める時間も余裕もない。だから……いっそ処分してしまおうと考えたのだろう、この鎮圧にかこつけてね?』
『……人聞きが悪いな。そんな証拠なぞ何処に在る?』
『その城塞機に決まってるだろう。猟兵諸君の助力を考慮に入れなければ、我々を鎮圧するのにソイツは過剰すぎる。一日動かすだけでも金と物資を馬鹿食いする兵器を持ち出したのも、離反した部下を諸共に消し去るため。違うかね?』
 つまりは、そういう事だ。大国側が自らの手で忠誠心の低い兵士たちを処断すれば、増々不満が高まるのみ。故に鎮圧作戦を利用して部下を選別にかけ、不適格と判断した者は戦死という形で抹殺するつもりだったのである。そういう意味では、自治領の反乱とハイネマンの『戦争狂』という風聞は打ってつけだったのだろう。
『忌々しいが、その通り。国家に従う軍人たる者、身命を賭して奉ずるが義務にして当然。それが真の愛国者だ。なのにやれ権利だの、疑問を抱くなど……烏滸がましいにも程があるッ!』
 返ってきた反応は傲慢以外の何物でもない。だが、指揮官は己の言葉が正しいと信じて疑っていないようだ。これがオブリビオンマシンによる思想改変か、はたまた素なのかまでは分からない。ただ一つ明らかなのは、目の前の相手は間違いなく『敵』であるという点のみ。

『故に、私が直々に裏切り者たちへ然るべき裁きを下そうと言うのだ。貴様とて嬉しいだろう? 闘争の相手としてこのフォートレス以上の武威はないのだからな!』
『なるほど、そうか。全く、何たることか。ああ、こいつはなんて――』
 対して、ハイネマンはまた喜色満面の笑みでこの事態を歓迎するのか。この後の反応が容易く予想できてしまい、猟兵たちは辟易とした苦笑を浮かべかけ……。
『――詰まらない事をしたものだ。全く以て興ざめだ』
『…………は?』
 深々と嘆息するハイネマンの言葉に、思わず目を剥いた。それは相手も同じだったようで、間の抜けた声が上がる。そんな反応を意にも介さず、戦争狂いは心底落胆した様に続けてゆく。
『裏切り者の炙り出し? 真の愛国者の選別? つまらんつまらん、実につまらんよ。政治ごっこなら会議室でやって欲しいものだ。互いの全力を尽くし、命を徒花と散らす。それが愉しいんだろう? だのに、そんな無粋な混ぜ物をしないでくれ給えよ』
『な、んだと……!?』
 気色ばむゴロプを放置して、ハイネマンは猟兵たちへと向き直る。
『そういう訳だ。少々拍子抜けだが、これにて最後。あの勘違い男に一つ教育してやろう……戦場とは戦争をする場所だとな』
 諸君ならば、出来るだろう? その言葉尻に浮かぶのは確かな信頼感。人格面に問題はあろう。人間としては狂っていよう。だが……闘争と言う一点に置いて、この男はただただ純粋だった。それだけは信じるに値するだろう。

 さぁ、猟兵たちよ。此処が正真正銘の最終決戦だ。
 赤鉄の城塞機を迎え撃ち、どうかこの緊急防衛戦の幕を引いてくれ。
 
※マスターより
 プレイング受付は28日(月)朝8:30~開始致します。
 再送無しでの完結を目指しますが、場合によってはお願いをする可能性もございます。その際には恐縮ですがご協力頂けますと幸いです。
 第三章はボス戦となります。戦場は第一章と同じく荒野、相手は高火力、重装甲、かつ一定程度の機動力も確保している強敵です。本章はこれまでの様なギミックは無く、小細工無しの真っ向勝負となります。
 それではどうぞよろしくお願い致します。
ヴィリー・フランツ
(アド・連携OK)POW
心情:ダーハッハッハッ!中佐、あの機体を前にして啖呵まで切るとは大したもんだ、アンタの事を心底気に入ったぜ!

手段:フォートレス型と言えど要はスペースシップワールドの対艦戦術と変わらねぇ。
ブースターとスラスターを全開、推力移動によるジグザグに回避機動をしつつ接近、懐に飛び込んだら左右どちらかに回り込み砲塔を破壊し搭載弾薬の誘爆を狙う。
ミサイルは接近時に使用、本体に向けて発射し爆煙でカメラを覆い隠す。
機関砲塔は至近距離からのレールガンとライフルの射撃で貫通させる。
無反動砲には【完全被甲弾】を装填、狙うは機体上部の大型ミサイルランチャー、特製の155mm徹甲弾を食らいやがれ!



●砲火を掻い潜り、笑え傭兵
『ダーハッハッハッ! ハイネマン中佐、あの機体を前にして啖呵まで切るとは大したもんだ、アンタの事を心底気に入ったぜ! なら、こっちも本気で行かなきゃな!』
 高火力、重装甲、そして決して低くはない機動力。攻守走揃った敵を前に、ヴィリーは呵々と嗤い声をあげる。戦争狂についての評価は猟兵の間でも賛否別れるものの、彼の場合はプラスの方向に振り切れたらしい。出力を上げて大重量の機動を強引に加速させつつ、傭兵は眼前に聳える城塞機をモニター越しに睨む。
『フォートレス型と言えど、要はスペースシップワールドの対艦戦術と変わらねぇ。遠距離からちまちま攻撃しても埒が明かないだろうからな……だったら、接近して「とっておき」をぶち込んでやるぜ!』
 加速用のブースターと姿勢制御用のスラスター。その二つを巧みに操りながら、ヴィリーは決して軽くはない愛機を吶喊させ始める。だが無論、それを見逃す敵指揮官ではない。
『先駆けは貴様か……なるほど、重装型のキャバリアとは都合がいい。我がフォートレスの力を知らしめる生贄としてはなぁっ!』
『はっ、粋がるなよ! こっちはソイツみたいデカブツを相手取るのが日常茶飯事だったんだからな!』
『口だけならばどうとでも言えるッ!』
 相手もまた大きく弧を描く様に機体をスライドさせつつ、背部に背負ったミサイルコンテナのハッチを開く。瞬間、そこから夥しい数の誘導弾が吐き出され始めた。絨毯爆撃か、はたまた砲兵集団による対地砲撃か。その一発一発だけでも相当な威力にも関わらず、これらは飽くまで牽制に過ぎない。その事実に小さく舌打ちをしつつ、ヴィリーもまた機体を鋭角に機動させ、僅かでも弾幕密度の薄い場所へと身をねじ込ませてゆく。
(戦略級の分類は伊達じゃないってか!?  でも、こっちだって無暗に突っ込んでいる訳じゃないんだぜ……!)
 爆発の余波で乗機が左右に激しく揺さぶられ、重力慣性によってミシリと身体がシートに押し付けられる。だが、傭兵は取り乱すことなく己の狙いを果たすべく行動を進めてゆく。目指すは敵機側面に乱立する機銃砲塔群。幾ら防御されているとは言え、装甲の厚みは機体本体より確実に薄い。加えて、中には当然ながら可燃物が満載されている。
『ミサイルにはミサイルってな、吹き飛べ!』
『機甲兵器にミサイルか。堅実な手だ、悪くないだろう。だが……生憎、このフォートレスはただの兵器ではない!』
 肩部八連装ミサイルを一斉射し、瞬時にカラとなったポッドをパージ。だが、相手の反応速度も然るものだ。向かってくるミサイルを機銃の掃射で次々と叩き墜としてゆく。濛々と充満する濃密な爆煙。しかして、この対応まで含めてヴィリーの想定内であった。
『……そう来ると思ってたぜ。こんだけ炎と煙が厚くちゃ、こっちの姿なんざみえねぇよなぁっ!』
 ミサイルは飽くまでも囮だ。敢えて敵に迎撃させることにより、煙と炎の熱で敵のセンサー類を無効化しつつ、攻撃の方向から狙うべき相手の位置を割り出したのだ。スッと流れるような動作で電磁投射砲とライフルを構えるや、瞬時に発砲。機銃砲塔の一つを撃ち抜き、内部の弾薬類へと引火させ誘爆を引き起こした。
『無い知恵を絞って良くやったものだ。だが、危険を冒して得た戦果が機銃砲塔一つはとはな。小さくとも傷は傷、その代価は貴様の命で支払って貰おう』
 通常のキャバリアであれば爆散してもおかしくはないが、敵のサイズがサイズである。僅かにぐらりと揺らめいたものの、強引に推進機を吹かせて機体を反転させた。下限一杯にまで仰角を下げられた主砲が、ヴィリーの『ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』を射線上へと捉える。
『この一撃を防ぐ事は不可能……これで終わりだ』
『はっ、もう勝った気でいやがる。こう言うのはな、攻撃する瞬間が一番脆いって決まってんだよ。さぁ、特製の155mm徹甲弾をとくと食らいやがれッ!』
 敵が主砲を放つのに、ほんのコンマ一秒先んじて。小火器を投棄し無反動砲へと得物を持ち替えた傭兵は、内部に装填されていた砲弾を解き放った。それは遅れて発射された敵弾と薄皮一枚を隔てて交錯し、互いにそれぞれの目標へと向かう。敵弾は重装機の左半身を食い千切る様に抉り取り、衝撃の余波で遠くへと吹き飛ばす。一方、ヴィリーの放った一撃は主砲の砲身を掠め、その背部に満載されたミサイルコンテナへと吸い込まれた。
『っ!? 貴様、端からこれが狙いかっ!』
『その通りさ。機体が持つか正直博打だったが……あの啖呵に応えるにゃ、このくらいしなきゃな。それにどうやら、賭けは俺の勝ちらしいぜ!』
 瞬間、背部コンテナが派手に爆発。上から下へ押し潰す様に衝撃が広がった。全て破壊した訳ではないが、それでも痛手である事に違いはない。歯噛みする指揮官を尻目に、ヴィリーは残った稼働可能なブースターを吹かせつつ戦域から離脱してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
神々でもこんな戦争狂はいないよ……うえぇ
さ、最後の戦い(多分)だし頑張ろう……!

UC【冥神の祭壇】で巨大鼠の髑髏柱を召喚し、敵の戦闘能力を疫病の呪詛で腐敗・劣化させて弱体化
特にグレネードランチャーの部分に集中させ、ちょっとした衝撃でグレネードが爆発するようにさせる
その後、『マントラ・チャクラム』を投擲し、腐敗・劣化した箇所を斬り裂く
可能ならグレネードランチャーを狙い、劣化したグレネードを発射前に爆破させる事で大ダメージを狙う
チャクラム自体にも疫病の「呪詛」を付与する事で敵をより腐敗・劣化させていく


汝は既に冥府へ足を踏み入れた
なれば死の裁きを受けよ
冥神の威光に怯えよ



●恐れるは神でなく、畏怖させしは人でなく
『神々でもこんな戦争狂はいないよ、少なくとも手段であって目的ではないし……うえぇぇ。敵でない分、まだマシなのかなぁ。き、きっと最後の戦いだし頑張ろう……うん!』
 ハイネマンの啖呵に呵々大笑しながら吶喊していった傭兵とは裏腹に、続くムシカはげんなりした表情を浮かべていた。神々とて戦神、闘神と称される存在は確かに居る。だが彼らはそれ相応の道理と格というものを備えているものだ。自治領指揮官の様な節操無しなど、そうは思いつかない。
 ともあれ、この緊急防衛線はこれにて最終局面。終戦後にハイネマンが高確率で何かやらかす気がしないでもないが、それでも一区切りには違いない。鼠神は意識を切り替えつつ、遠方で煙を噴き上げる敵機を見やる。
(見た目上は派手に見えるが、飽くまで表層の兵装が一部破壊されたのみ。本体への損耗は極めて軽微だろうね……人の手で建造されたモノとは言え、そう易々と壊れるようにも見えない。なら、長期戦を見据えるのが安全かな)
『なんだ、そちらの機体は来ないのか。まぁ、この威容に畏怖を覚えるのは分かるがな……フォートレスは鈍重な砲撃機という訳でもないぞ?』
 様子を窺う猟兵を、相手は臆していると判断したのだろう。ゴロプは土煙を上げながら機体を前進させ、両腕と一体化した砲口を向けてくる。そこから間断なく放たれしは無数の榴弾だ。次々と地面が吹き飛ぶ中、鼠神は乗機を小刻みに動き回らせ攻撃を回避してゆく。元々彼女の機体が小型である事も相まって、それはさながら戦象と鼠の勝負と形容できる光景。しかし、ムシカの胸中に渦巻くのは怯えと対極に位置する感情だった。
『……我が臆しただと? そんなガラクタを畏怖しただと? 付け上がるなよ、人間。それはお前たちが抱くべきモノだ』
 煌々と燃え上がるは嚇怒の念。神とは敬い奉られる存在であり、人間こそが恐れ仕えるべき側である。それが入れ替わる事など在り得ない。少女のカタチを取った神性は敵指揮官の思い上がりを許すつもりはなかった。
『我は鼠の冥神なるぞ。骸の山を築き、遥か千里の果てまでも疾く病を振りまく、死と病の現象ぞ。我を崇め称えよ、さもなくば皆すべからく斃れ伏すが良い!』
『神だと? 戦場で最も無価値な言葉をよくぺら回せるものだ。そんなモノ、今さら恐れる私では……む?』
 ムシカの言葉を嘲笑っていたゴロプだったが、そこで戦場の変化に気付いた。赤茶けた地面を突き破りながら、次々と乱立してゆく無数の建造物。カメラに捉えられた其れは、巨大な鼠の骨で構築された柱である。髑髏柱は城塞機を囲い込む様に聳え立つや、毒々しい色の瘴気と共に呪詛を垂れ流してゆく。
『なんだ、この薄気味悪い柱は。こんなものでフォートレスの動きを封じるつもりか、馬鹿らしい。纏めて吹き飛ばしてくれよう』
 軍人とはある意味で究極のリアリストだ。指揮官は動じることなく先程と同じように両腕の砲門を突き出し、操縦桿の発射トリガーを押し込み、そして……。
『……愚かな。既に此処は我が神域と化した。ただの鉄塊が無事である訳が無かろう?』
 榴弾が発射された直後、想定よりも遥かに早く起爆。至近距離で炸裂した爆発により、城塞機が炎に包まれた。何事かと機体を横へスライドさせつつ、指揮官は忌々し気に歯噛みする。
『榴弾の早爆……なるほど、この霧は化学兵器か何かか。砲弾へ対して直接干渉し、こちらの攻撃を防ぐつもりなのだろう?』
『そちらの解釈などどうでも良い。汝は既に冥府へ足を踏み入れた。なれば死の裁きを受けよ。冥神の威光に怯えよ』
『ほざけっ! たかが榴弾を使えなくしたところでこちらの優位は揺るがん!』
 猟兵の言葉を一蹴しつつ、指揮官は機銃掃射で髑髏柱を打ち壊しながら機体を鼠神目掛けて吶喊させる。彼我の質量差を活かし、轢き潰そうという魂胆だろう。腐蝕を齎す呪詛とは言え、これだけの鉄量を瞬時に崩壊させることは難しい。しかし、ムシカは望むところだと真っ向から城塞機を迎え撃つ。
『窮鼠猫を噛む、とはよく言うが。我が牙は一噛みで貴様を討つに足るぞ』
 敵と接触する寸前、鉄鼠の運動性を活かして跳躍。転がって衝撃を殺しながら敵機を駆け登るや、相手の右腕目掛けて円環刃を投擲する。それすらも病毒を宿した刃は装甲を腐食させつつ切り裂くと、装填済みの榴弾を誘爆させた。爆風を背に受けつつ、長居は無用とムシカは敵の身体より飛び降りてゆく。
『ちょこまかと、鼠風情が……!』
『出来れば完全に破壊したかったが、存外に頑丈だったらしい。だがこの損傷は後々から効いてこよう。その瞬間を精々怯えて待つことだ』
 完全な破壊は果たせなかったが、砲口は歪んでいる。耐久性に射撃精度の低下は免れないだろう。追撃の機銃掃射を危なげなく避けながら、ムシカはそう不吉な予言と共に戦場から離脱してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ダビング・レコーズ
戦闘で得る価値は戦略目的の正当性のみ
感情の有無では無い
が、人にはそれが必要なのでしょう
当機には存在しない認識の形ですが

質量・耐久・火力の差を覆すには機動戦闘による一点突破以外に選択肢は無い
ソリッドステート形態で極低空より接近
ミサイルをベルリオーズの弾幕で迎撃
EMフィールドで破片と爆風を防御
敵機直前でストームルーラーをパージし囮としミサイルの誘導を引き付けさせる
そしてキャバリア形態に変形しエアブレーキで急制動
要塞ユニットに直接取り付きミサイルランチャーまで駆け上る
無数の誘導弾と隣接する大口径砲の弾倉
これらの連鎖爆発を狙う
ルナライトを刺突後プラズマキャノンを発射し更に月光奔流破を起動
「砕け散れ」



●白銀の風、赤鉄の城塞を穿つ
『戦闘で得る価値は戦略目的の正当性のみ。それに付随する諸感情の有無では無い……が、きっと人にはそれが必要なのでしょう。当機には存在しない認識の形ですが』
 先陣を切った仲間たちの戦闘を観察しながら、ダビングはそう誰に聞かせるでもなく独り言ちた。ハイネマンの狂気、ゴロプが求める愛国心、猟兵たちの両者に対する印象。そのどれもが、作戦目標の達成と言う観点から言えば枝葉末節と言っても良い。だが、二重の意味で『道理は感情の上に座す』ものである。感情よりも道理が優先されるのは当然だが、その当然の道理を支えているのも個々人が抱く感情だ。
『それが時として予測以上の数値を叩き出すこともあれば、致命的な蟻の一穴となる場合もある。敵対者のそれがどちらなのか……交戦を以て判定するとしましょう』
 そうしてダビングは己と一体化した鉄騎の調子を確かめる。弾薬、推進剤、エネルギーの残量は十二分、故に取れる選択肢は多い。戦機は数秒それらを吟味した後に決断を下した。
『……質量・耐久・火力の差を覆すには、機動戦闘による一点突破以外に選択肢は無い。幸い、こちらの作戦行動を阻害する制約は既に消え去った。現在の状況は当機の持つ速度を十全に発揮する条件が整っていると断言できる』
 緒戦は迎撃戦と言う関係上、足回りを活かすのは難しかった。次の市街地戦も戦場が工業地帯という事で言わずもがな。だがそういった要素が無くなった今、ダビングの駆る『アークレイズ』を縛る枷は存在しない。彼は機体の速度を上げつつ、進路を赤鉄の城塞へと取る。
『まずは敵の弾幕を掻い潜り、有効打が届く射程圏内への到達を優先する。アークレイズ、ソリッドステート形態へと移行』
 ――これより、交戦を開始する。
 十分な加速が得られた瞬間、機体を空戦形態へと変形。地面を擦らんばかりの超低高度で城塞機へと襲い掛かった。対する敵は機銃砲群による弾幕を展開しながら、背部コンテナからミサイルを放ち始める。
『航空機か。確かに有効であると認めるが、果たしてこの濃密な火線を突破できるかな』
『当機の性能であれば十分に可能だと判断する。EMフィールド展開、ベルリオーズによる迎撃を開始』
 無数の機銃弾が電磁障壁を揺らがせ、着弾寸前で撃ち抜いたミサイルの爆炎が機体を焦がす。多少の損害は必要経費と割り切り、ダビングは速度に任せて敵との距離を詰める事だけを優先してゆく。
『ふん、確かに言うだけのことはある。だが、たかが単騎ではなぁっ!』
 機銃掃射による進路の制限、撃ち落としすら織り込んだミサイルの乱打。城塞機はそれらによって戦機の進路を狭めるや、唯一の進行経路を塗り潰す様に主砲の射線を合わせた。瞬間、大気を震わせながら巨大な砲弾が発射される。直進したら木端微塵、避けても撃墜。最悪の二択へ追い詰められたダビングの姿が、砲弾の影と重なり――。
『ふはははは! なんとも呆気ないものだな!』
 蒼空に赤々とした華が咲き誇る。舞い散る残骸に混じるのは、煤けた白銀色の装甲片。明らかな撃墜の証拠に高笑いを上げつつ、指揮官が次の犠牲者を求めて機体を反転させようとした、その時。
『……敵戦略級大型キャバリアへの接触に成功。これより攻撃地点へと向かう』
『なっ!?』
 在り得ないはずの通信が飛び込み、ゴロプは驚愕に目を剥いた。さっとカメラで周りを走査すれば、城塞機脚部に取り付く白銀の機体が飛び込んでくる。幾分か損傷を負っているものの、戦闘に支障をきたすレベルではない。
『馬鹿な、確かにいま撃ち落としたはず……そうか、デコイっ!』
 種明かしをすれば簡単な話だ。直撃の寸前、ダビングは乗機を人型へ再度変形させて空気抵抗を増大。それによる減速を行いつつ、背部ブースターユニットをパージする事によって囮としたのである。結果、本体は最小限のダメージで窮地を脱することが出来た。常人であれば恐慌状態に陥る様な場面だが、機械であれば動じることは無い。
『当機の変化へ瞬時に気づくとは敵ながら評価に値する。だが、分かった所でもう遅い』
 戦機はそのまま敵の装甲板を駆け上がるや、砲身の根元へと躍りかかる。其処に在るのはミサイルポットと主砲の弾薬が収められた給弾装置。彼の狙いは最初からこの一点だったのだ。
『如何に防護されていようとも、脆弱部位である事に変わりはない。プラズマリアクター、バーストドライブ……砕け散れ』
 青月の光刃を突き立てて装甲を溶断しつつ、空いた隙間へとプラズマキャノンを叩き込む。それは強烈な熱と電磁波を伴った光の奔流。内部システムをズタズタに破壊しながら弾薬へと到着した瞬間、凄まじい轟音と共に爆発が巻き起こった。
『お、のれぇえええっ!』
『想定目標を達成。一度撤退し、再攻撃のタイミングを窺う』
 血を吐くような絶叫に耳を傾けることなく、ダビングは爆風を加速に利用しつつ城塞機より飛び降りる。彼はそのまま距離を取りながら敵の損傷を冷静に分析し、仲間たちへと共有してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
最高速まで加速するため、距離を取った後方からセフィ姉(f00633)達を眺める
スプレンディア、動いてるの初めて見ましたけど
あんな大きいロボの動き止めるとか、ほんとに凄い…!

セフィ姉がハイネマンはやべーやつやって言ってたし、私もそう思うけど…
ここまで来て辞めたなんて出来んよね
セフィ姉が私を信じてくれるなら、絶対に応える
お願い『かげろう』…私をあそこまで連れて行って
檻の隙間を見切り飛び込む

…ありがとう、あなたは凄く速いよ
それと、ごめんね…やっぱり私、withと飛びたい…!
キャバリアをパージし、UC発動
95mの恋人の一撃に賭ける【怪力】【鎧無視攻撃】

withと私に、斬れないものなんて、ない!


セフィリカ・ランブレイ
春乃ちゃんと(f24164)

故郷は、周りを呑み込み大きくなった国
ゴロプ少将はロクデナシで行き過ぎだが、似た考えの奴は、国にも幾人かいた
戦争は命の価値が歪める
尊さを認め散る美しさ知るハイネマンもまた頷けないけど

今はデカブツに集中!
切り札のスプレンディア、行こう!

桁外れの高機動高火力を代償に、稼働6分出撃後の総点検必須という業を背負った決戦機

あの図体で相当動く!なら、足を止める!

【神薙ノ導・檻神】
より深くシェル姉…相棒の魔剣と同調、髪が蒼へ
消費魔力は急激に増大し、制限時間への時が加速する

でも問題ない。春乃ちゃんが決める!

刃の軌跡は空間に残留し、無限に敵を切り刻む
蒼き刃の軌跡が、敵を捉える檻となる!



●我らが剣よ、此処に最強の名を示せ
『機銃砲塔三基が使用不能。背部ミサイルポッドの二割を喪失。右腕グレネード発射機構、精度低下。予想外だな、このフォートレスが僅かとは言え損傷を負うなど。だが、本体の機能はほぼ無傷……戦闘に何ら支障はない。すぐさま貴様らを滅ぼし、裏切り者も葬ってくれよう』
 濛々と煙を噴き上げつつも、操縦者たるゴロプに焦りの色はない。事実、兵装の幾分かは破壊されたものの、城塞機その物に対する損傷は軽微に留まっている。彼の傲慢さはそうした事実に裏打ちされてのことだ。そんな相手の姿を、セフィリカは複雑そうな表情を浮かべながらモニター越しに見つめていた。
(私の故郷は、周りを呑み込み大きくなった国。ゴロプ少将はロクデナシで行き過ぎだけど、似た考えの奴は幾人かいた。異なる相手を服従させるには強権が必要で、その忠誠が真実か献身を以て確かめる……戦争は確実に、命の価値が歪めてしまう)
 政軍関係は国家の両輪。その手綱を握る難しさを蒼剣姫は身を以て知っていた。彼女の故国もまた、王たる父が倒れたことにより軍部による小競り合いが絶えていない。かと言って、此方側の指揮官たる戦争狂が良いかと問われれば返答に困る。
(覚悟の尊さを認め、戦場に散る美しさ知るハイネマンもまた頷けないけどね。そもそも、この戦いが終わってもあの人が大人しくなる様には思えない……抑え込める上が居れば良いのだろうけど、軒並み亡くなるか逃げ出しているみたいだし。他人事じゃないわね、ほんと)
『……思考に耽るのも良いけれど、そう悠長にしていられないわよ? 相手さん、どうやら動き出したみたいね』
 思考に耽る妹へ意志ある魔剣が警句を飛ばす。ハッと視線を向ければ、ゆっくりと相手が移動を開始しているところであった。恐らく、自治領を蹂躙するつもりなのだろう。今は後々の憂いよりも目先の脅威をどうにかするのが先決だ。セフィリカは小さく息を吐くと、意識を切り替える。
「分かったわ、シェル姉。今はデカブツに集中! 此処まで温存してきたのも、こんな事態を考えてのことだしね……切り札のスプレンディア、行こう!」
 此処で遂に、彼女は己が愛機を起動させることに決めた。紫水晶で形作られた流麗なるキャバリア『スプレンディア』。絶大な戦闘力と引き換えに、稼働時間が僅か六分と言う超短期決戦用機体。出撃後の総点検に丸二日掛かるという正真正銘の鬼札をこの瞬間に切ったのである。
 此処からは文字通り時間との勝負だ。操縦席へと納まったセフィリカが主機動力炉に火を点し、機体の隅々にまで魔力を行き渡らせてゆく。己の感覚と乗機が一つなった瞬間、彼女は瞬時にトップスピードまで加速しながら吶喊を開始した。
『接近警報……速いっ! だが、こちらが見た目通りの鈍重さだと思わないで貰おう』
 城塞機も猟兵の接近に気付くや、機体を後退させつつ猛烈な弾幕射撃を展開する。一発一発の威力はそれなりだが、数が尋常ではない。セフィリカの進路上を弾丸で満たす程の濃密さだ。攻撃が命中する度に、僅かずつではあるが勢いが殺されてしまう。速度は依然猟兵側が優勢だが、塵も積もれば何とやら。このまま逃げ回りつつ時間を稼がれては、先にこちらがリミットである六分を迎える可能性が高い。
『相手はあの図体にも関わらず相当動く……なら、足を止める! 泣いても笑っても、私が動ける時間は決まってるしね。だったら、出し惜しみなんてしてられない! シェル姉!』
『災い転じて何とやら。あの時の事は私的にも痛恨の極みだったけれど、こうしてしっかりと経験になっているのを見ると何が幸いするか分からないわね?』
 セフィリカの呼びかけに、操縦席内に持ち込まれていた蒼き魔剣が応えた。苦笑するような声音と共に発された魔力が、操縦桿を握る使い手のそれと混ざり合う。両者の結びつきが深まるのを示す様に、少女の髪色が金から刃と同じ蒼色へと染め上げられてゆく。そうした変化は機体にすらも波及し、紫水晶の色合いもまた蒼玉を思わせる輝きへと変じていった。
『っ! やっぱり、消耗が激しいわね……お陰で残りの稼働時間が更に短くなったみたい。なら、一秒たりとも無駄になんてしないんだからっ!』
 全身から力が吸い上げられてゆく感覚に顔を顰めつつ、セフィリカは機体をクルリと急旋回させる。その手に握られしは一振りの剣。陽光を反射する刃は、透き通るような蒼翠色の結晶で構成されていた。
『そんな小さな刃でこのフォートレスへ挑むつもりか、笑止!』
『お生憎さま、私の狙いはそっちの足を止める事よ!』
 蒼剣姫が振るう剣閃、その軌道は城塞機の正中線からやや外れていた。解き放たれた斬撃は敵機の脚部履帯や腕部関節など、動きを阻害するような箇所に集中して叩き込まれてゆく。確かに脅威ではある。だが、それのみでは致命打になり得ない。
『はははっ、斬撃でどう私の動きを止めると……っ!?』
『気付いた様ね? ……刃の軌跡は空間に残留し、無限に敵を切り刻む。蒼き刃の軌跡が、城塞を捕らえる檻となる!』
 斬撃が、消えない。まるで固定されたように、否、まさしく斬撃が虚空に浮かび続けているのだ。それらは威力を保ったまま、城塞機の動きを封じ続けている。驚愕に目を剥くゴロプだが、一方で紫水晶の機体は急速に色が褪せ始めていた。稼働時間が尽きたのだ。
『ふ、ふふっ。確かに予想外だが、そちらもどうやら限界らしいな』
『ええ、そうみたいね。でも、問題ないわ。だって……』
 ――春乃ちゃんが決める!
 崩れ落ちる機体と、其処へ向けられる無数の砲口。その遥か遠方にて……。
『スプレンディア、動いてるの初めて見ましたけど……あんな大きいロボの動き止めるとか、ほんとに凄い! よぅし、私たちも負けてられんけんね!』
 漆黒の剣機が既に加速を開始していた。長大な斬艦刀を手にした加速性能特化型キャバリア『かげろう』に搭乗する結希は、事前に蒼剣姫と交わしていた遣り取りを脳内で思い起こす。
(セフィ姉がハイネマンはやべー奴やって言ってたし、私もそう思うけど……ここまで来てはい辞めた、なんて出来んよね。それにセフィ姉が私を信じてくれるなら、絶対に応える!)
 何よりも信頼できる友が、自分になら任せられると言ってくれたのだ。であれば、何を疑うことが在ろう。全身がゆっくりと押し潰される不快感を覚えながら、猛烈な勢いで後ろへと流れてゆく背景をモニター越しに見やる。
(お願い『かげろう』……どうか、私をあそこまで連れて行って)
 城塞機側もこの乱入者の存在を察知したのだろう。それまで紫水晶機へ向けていた砲塔を慌てて結希の方へと向けるや、迎撃を行い始めた。だが生憎と、この機体には急制動を行える機能など無い。ただ前へ、ひたすら前へ突き進む。出来る事はそれだけだ。断続的に機体が揺れるのは、恐らく敵の命中弾によるものだろう。その度にモニター上を警告が走り、損傷を知らせる通知が鳴り響く。
 元より加速性能と引き換えに、他のスペックを犠牲にしたキャバリアである。本来であれば、それだけでバラバラに分解してもおかしくはない。だが剣機は些かも速度を減じさせることなく、敵の元へとひた駆けてゆく。
(……ありがとう。やっぱり、あなたは凄く速いよ。こんなになっても、私の願いに応えてくれて。それなのに……ごめんね)
 そっと、結希は愛おしげに操縦桿をひと撫でする。労わる様に、慈しむ様に優しく指を這わせた後――その手は、傍らに立てかけられていた黒き大剣を握り締めた。
(やっぱり私、withと飛びたい……! この手で今度こそ断ち切りたい!)
 それはある種の未練。先程の亡霊に勝ちはしたが、それでも一瞬刃を止められた。それが僅かな棘となって心に刺さり続けていたのだ。自分たちの『強さ』はこんなものではない。その証明を果たす為に、旅人は愛剣による決着を望んでいたのである。
 此度が初陣となる機体への感謝と申し訳なさ。それらを纏めて飲み込みながら、結希は機体をパージした。解ける様に分解する鉄騎の内部より、それまで稼いだ速度を纏った旅人が飛び出してゆく。
『っ、この機体に生身で、だとぉ……! どこまでも、舐め腐りおってぇぇ!』
 出迎えたのは人の身で応ずるには余りにも過剰な弾丸の嵐。だが、バラバラになった部品がまるで操縦者の道を開くかの様に機銃弾とぶつかり合い、攻撃を相殺してくれた。そこに言外の意志を受け取った旅人は、真正面より敵を見据える。
「セフィ姉、かげろう……そしてwith。うん、行こう!」
 託された想いを掌へと籠め、少女は刃を振り上げる。黒剣はそれに応え瞬時に質量を増大させたかと思うや、百メートルに届かんばかりのサイズへと巨大化した。
『な、んだと……!?』
「セフィ姉の剣じゃ足りないって、さっき言いましたよね? なら、これはどうですか。ええ、そうです。withと私に……」
 ――斬れないものなんて、ない!
 何よりも固き意思と共に巨剣が振るわれる。咄嗟に敵も機体を横へスライドさせるも、刃が届く方が一瞬速い。刃は敵の左肩部へと吸い込まれるや、そのまま装甲を両断。更にはその下に突き出た脚部ユニットごと機銃砲塔を斬り飛ばした。地面へ刀身が深々とめり込む様子からも、その威力が伺い知れよう。
『っ、これは貴様らへの認識を改める必要があるな……!』
 城塞機はそう吐き捨てながら、意外にも距離を取る事を選択した。好機を前にしても、危うきには退く。ハイネマン同様、思想は兎も角判断力は階級相応という事だろう。それを見送りながら、結希は深々と息を吐く。
「はぁ……斬れたねぇ、with」
 元に戻った愛剣を眺めながら、旅人は小さく微笑む。遠くを見やれば、蒼剣姫がキャバリアの上で手を振っているのが見える。結希は手を振り返しながら、仲間の元へと足を向けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ディスターブ・オフィディアン
●第一人格で行動
●心情
「今回ばかりはハイネマンに同意だな。あいつはまるで玩具を見せびらかす子供だ」

●行動
まあ、あれだけ巨大なら的にはちょうど良い
UCにより星属性の流星を発生させ、隕石の直撃による機体の破壊を狙うぞ
空から落下する以上、殲禍炎剣の砲撃は受けるだろうが、直径5m・速度20km/s・重量60tの鉄の塊、いわば超大口径の砲弾だ。破片だけでも無傷とは行くまい

着弾までに移動されてもつまらんな、真の姿を開放し巨竜に変身し気を引こう
炎で属性攻撃、見切りで回避、と戦いながら逃げ足で隕石の落下地点まで敵の機体を誘導しよう
本命を隠しての騙し討ちだ
「パイロットが悪かったな。オレとの闘争など100年早い」



●地の城塞、天に焔黒の竜在りて
「……些か複雑だが、今回ばかりはハイネマンに同意だな。あいつはまるで玩具を見せびらかす子供だ。煌びやかな凶器は人心を集めるには良いだろうが、自分まで心酔している時点で語るに落ちるというものだ」
 城塞機の性能を誇り、それを誇示する様に立ち回る敵指揮官。そんな在り様をディスターブは端的にそう切って捨てた。あのキャバリアが強力であるという点は認めよう。しかし、美辞麗句は他人に聞かせるべきもの。それを少将の位に位置する者が信じ込むなど、本末転倒と言う他なかった。
「まあ、敵の思考が硬化している分にはこちらの利になる。それにあれだけ巨大なら的にはちょうど良い。どれ、一つ自慢の機体とやらを試してやろう」
 兵装が幾分か喪失しているものの、城塞機本体の損傷は未だにそこまで大きくない。ならば、そろそろそちらへ手を付けても良い頃合いだ。魔術師は杖を頭上へと掲げ、空に向けて魔力を拡散させてゆく。
「人間は得手して自然現象に敵わぬと言いはするがな。自然の術理を操ってこそ、魔術師というものだ。とは言え着弾までにラグは生じる上、殲禍炎剣による干渉も免れまい」
 一見すると、空には何の変化も起きていないように思える。だがディスターブには別の何かが見えているのだろう。彼は小さく頷いた後、降ろした視線を再び城塞機へと戻す。どうやら、先の交戦で一部とはいえ装甲を斬り飛ばされたのがよほど堪えているのだろう。足を止めることなく動き回りながら、周囲へ派手に機銃弾や榴弾をばら撒いていた。
「ふむ……着弾までに移動されてもつまらんな。これまではどちらかと言えば正面切っての戦闘は避けてきたのだし、最後くらい派手に立ち回るのも一興か」
 ボコリと、ローブの下に隠された肉体が蠕動する。布越しに何かが蠢く気配を感じると同時に、身体を構成する質量が俄かに増大してゆく。数瞬の後、その場に佇んでいたのは枯木の様な魔術師ではなかった。剣を抱き、周囲に八つの大連珠を従え、焔を纏う漆黒の竜。これこそがディスターブの第一人格、その真の姿である。
「これならば無視することも出来まい。では、行くとしようか」
 黒竜は翼を一打ちすると、巨躯を空へと浮かび上がらせてゆく。砲口と共に火球の一つでも吐いてやれば、城塞機の注意が自身へ集中する様子を如実に感じられた。
『神に生身の剣士、そして次はドラゴンか。全く、時代を間違えていると思わないか?』
「時代に合わんと言うならば、そちらの機体などその筆頭だろう。オブリビオンマシンは過去の異物ゆえにな」
『旧式機と侮るか、化け物めが!』
 黒竜の言葉を真に理解したのかどうか。やや噛み合わぬ遣り取りを交わしながら、城塞と竜は榴弾と焔を互いに放ち始める。威力は同レベルだが、攻撃間隔は流石に相手方に分があった。狙いがやや甘いものの、榴弾の爆発範囲は広い。城塞機は間髪入れぬ連続砲撃により猟兵を圧倒し、ジリジリと後退させてゆく。
『ははは、どうだ! これが我が国の持つ技術の結晶。たかが蜥蜴如きでは太刀打ちできまい!』
「言うだけあって火力は申し分ないな。ああ、十分に確かめさせて貰った。であれば次は……耐久力を調べるとしよう」
 そう言うや否や、ディスターブは身を翻してその場から離脱する。ゴロプはそれに乗せられることなく、何を仕掛けて来る気だと思わず身構えた、瞬間。
 ――カッ、と。頭上で何かが煌めいた。
『なんだ、あれは。もしや殲禍炎剣が起動したのか? ははは、それは残念と言う他ないな。頼みの綱は撃ち落とされてしまった様だぞ』
「なに、それすら織り込み済みだ。ほら、よく見てみろ……ああ、いや。もう手遅れだな」
 嘲笑う指揮官に、黒竜は小さく肩を竦めた。何を言っているのかと眉を顰めた瞬間、城塞機からやや離れた場所の地面が勢い良く吹き飛ぶ。思わず言われたとおりにカメラのピントを合わせてみれば、其処に見えたのは無数の岩塊。空から降る岩石を、一般的にはこう形容する。そう……。
「隕石、だ。直径5m・速度20km/s・重量60tの鉄の塊、いわば超大口径の砲弾だ。如何な殲禍炎剣と言えども、蒸発ではなく粉砕がせいぜいだろう。位置エネルギーをこれだけの速度へ変換しているのだ、破片だけでも無傷とは行くまい」
 そう言い終わった瞬間、無数の岩塊が地表目掛けて降り注いてゆく。ディスターブが初めに行った術式、それこそがこの隕石の招来であったのだ。彼は自身の派手な見た目を隠れ蓑として、敵をこの落着地点まで誘導していたのである。
『この程度であれば、機銃や榴弾の掃射によって撃ち落として……!?』
「無駄だ。秒速20キロとは時速換算で72000キロ、マッハなら50を優に超える。その速度に反応出来る兵器など、少なくともこの世界の技術では作り得ない。ああ、だがそれ以上に……」
 ――パイロットが悪かったな。オレとの闘争など100年早い。そんな無慈悲な宣告と共に、比較的巨大な破片が城塞機の装甲を薄紙の如く貫いてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【ファルマコン】(3人)
※絡み連携アドリブ歓迎
※愛機で参戦

少将さん、アンタ何期待してたの?
純粋に戦を求めるのがウォーモンガー
腹芸ついでの戦が不満で当然だよ
でも戦狂い故に手駒は最大限活かす…
皮肉だね

さ、お仕事っ
『フェザー』は捕虜負傷者の護衛に回して
オペレーション1番【アサルト・ヒート】起動

あの巨体で機動力が「中の上程度」なら
超重量の負荷自体は解決しきれてない筈
脚周りを痛めつければ…

超高速機動しつつ股間の接続部に【一斉発射】
『インパクト・ボルト』や『ウインド・ミル』も駆使っ

メアリーズさん、アイツを存分にアイしてあげなよっ
アタシは後退完了、キョウさん自慢の一刀お願いっ
中佐、酒と報酬はたんまり頂戴ね♡


キョウ・キリノ
【ファルマコン】
【専用キャバリア『斬月』搭乗】

なるほど、アレが大将首か…大したデカブツだ。
なれば我が愛刀のみでは足らぬ、巨大な斬艦刀を担ぐ斬月に乗りてお相手しよう。

メアリーズ(f30579)が動きを止め、ドクター(f30386)が翻弄するなら、俺はその生まれた隙に切り込んで最大の一撃を叩き込む。

2人の動きと敵の反応を【瞬間思考力】で完全に【見切る】事で機を見出して【切り込み】をかける。
最小限の動きで迎撃を【受け流し】ながら巨体の懐まで肉薄して渾身の【蜻蛉】一閃【薙ぎ払い】にてデカブツを【切断】叩っ斬る。

任された!斬機一刀の真髄、とくと見よ!

【アドリブ大歓迎】


メアリーズ・エリゴス
【ファルマコン】
御託は結構ですが、私はその城塞機を壊(アイ)せればそれでいいんですよ
きひっ!ひひっ!あぁ!その大型機を破壊(アイ)したら、どれだけの快楽(アイ)を感じられるでしょうか!
うふふ!これが私の殺意(アイ)ですよぉぉ!【サイキックプレッシャー】で心身を押し潰す物理的な力を持ったプレッシャーを放ちますよぉぉぉ!
この愛を受けきれないなら、戦場に出るべきではなかったですねぇぇ!
あら、私だけを見てていいんですか?余所見したら斬られてしまいますよ?
もっとも、私から目を逸らしてもダメですけどね!ロートガルの火力を舐めないでくださいねぇぇぇ!
胸部メガビーム砲とロングビームライフルを撃っちゃんですよ!



●三者三様の城崩し
 天より墜ちた岩塊片が、赤鉄の城塞機を貫いた。余りの衝撃に濛々と土煙が巻き上げられ、余波が突風となって周囲に広がってゆく。通常のキャバリアであれば、部隊丸ごと消滅してもおかしくはない威力。しかし、城塞機はゆっくりと噴煙の中よりその巨躯を進み出させる。
『ふ、ふはははは! 耐えた、耐えたぞ! 本体の直撃ならば兎も角、殲禍炎剣によって砕けた破片程度であれば恐れるに足らん! 無傷とはいかんが、戦闘に支障はない!』
 城塞機は機体後方の推進基部、その一部が噛み千切られた様に抉り取られていた。断面部よりバチバチと電流が迸っているが、まだ他の部分でリカバー可能な範疇なのだろう。未だ些かも動きを鈍らせぬ様子の敵機を前に、キョウはスッと目を細める。
「なるほど、アレが大将首か……隕石の直撃を受けても動くとは、大したデカブツだ。なれば我が愛刀のみでは足らぬ。強大な獲物にはそれ相応の得物を、巨大な斬艦刀を担ぐ『斬月』に乗りてお相手しよう」
 剣鬼が踵を返すと、そこには黒い騎士甲冑を思わせるキャバリアが佇んでいた。かつて所属していた軍によって開発された高性能機『斬月』。あれだけの巨躯を断つには、この機体が携える巨刃が最適であろう。
 そしてそんな機体の左右へと、共に戦場を駆ける仲間たちが並び立つ。リーゼロッテが搭乗する重量級改造キャバリア『ナインス・ライン』、メアリーズの駆る真紅の試作重キャバリア『ロートガル』。どれも各搭乗者用に最適化された、一騎当千の鉄騎である。
『さーて、ある意味ここからが本番かな。「フェザー」は万が一に備えて捕虜や負傷者の警備に回して……後先考えなくて良いなら、こっちも少しばかり無茶をしようか?』
 リーゼロッテは先程の市街地戦で使用していた無人キャバリア『フェザー』を後方へと向かわせつつ、自機のリミッターを解除。内蔵された各種ブースターの出力を引き上げてゆく。全身に浮かび上がる緑色の燐光が、その内に秘められた暴威の一端を示している様に思えた。
『きひ、ひひっ! まだ仕掛けないのですの? 正直、早く壊(アイ)して差し上げたくて堪らないのですけれど』
 また、他方では戦端が開かれる瞬間をメアリーズが今か今かと待ちかねていた。不殺だなんだと制約が多かった戦場に置いて、城塞機は彼女にとって最もアイし甲斐のある獲物なのだろう。これまでの戦闘で過剰摂取した薬物の効果も相まって、フラストレーションは限界近くにまで高まっている様子だった。
『全員で一斉に、ってのも悪くないけどさ。折角三人で挑むんだし、連携の一つもやってみたくてね。大丈夫、待たせる分は思い切り暴れさせてあげるよ。キョウもそれでいい?』
『承知した、ドクター。雇い主の意向ならば従おう。それに悪い内容ではなさそうだ』
 三人は手早く通信を交わし合い、各々の役割と戦術をすり合わせる。そうして、まず先陣を切ったのはリーゼロッテだった。彼女は停止状態から即座にトップスピードまで加速しながら、城塞機目掛けて吶喊してゆく。その速度は優にマッハ6を超える。音速越えによるソニックブームを撒き散らしながら、闇医者は敵機の周囲をぐるりと旋回しつつ様子を窺う。
『今度もまたぞろ高速機か。全く、ハイネマンも厄介な連中を抱き込んだものだ。そんなに派手な戦争を望んでいたとはな。だと言うのに、このフォートレスを愚弄しおって』
 忌々しそうに歯ぎしりする敵指揮官の映像通信がモニター越しに飛び込んでくる。だが、リーゼロッテからすればそんな怒りなど的外れでしかなかった。
『少将さん、アンタ何に期待してたの? 聞く限り、お互いに全くの初対面って訳じゃないんでしょ。純粋に戦を求めるのがウォーモンガー、腹芸ついでの戦に不満を抱くのは当然だよ。でも、戦狂い故に手駒は最大限活かす……離反した部下を利用されるなんて、皮肉だね』
『それらを踏まえた上でなお、戦略級の名は伊達ではないっ!』
 お喋りは此処までだとばかりに通信が断ち切られると、それと入れ替わりに濃密な弾幕が展開され始める。高速機相手にいきなり大技を繰り出しても弾の無駄だ。手数でジワジワと損傷を蓄積させ、足の止まった瞬間に本命を叩き込む。派手さはないが、堅実な一手と言えた。
(確かに大きさの割に速い。多分、推進機能は履帯だけじゃないね。ホバーか、磁力か。でもどのみち、あの巨体で機動力が「中の上程度」なら超重量の負荷自体は解決しきれてない筈。だったら、脚周りを痛めつければ……)
 速度任せの直進だけではなく、急旋回や上昇下降すらも織り交ぜた鋭角機動によって敵の照準を振り切ってゆく。強烈なGによって内臓が掻き回される不快感を覚えながらも、リーゼロッテは相手の機体特性を冷静に分析する。狙うべきは相手の足回り。機動兵器は文字通り動き回るが故に脅威足り得るのだ。足の使えぬキャバリアなぞ単なる棺桶に過ぎない。
『ちまちま脚部を攻撃しても効果は薄い……なら、狙うは負荷の集中しやすいあそこか! 「インパクト・ボルト」、「ウインド・ミル」も行って! 出し惜しみは無しだよ!』
 闇医者が素早くコンソールに指を走らせるや、機体から大小様々な無人兵器が飛び出してくる。機関砲を備えた回転鋸群、双発仕様のヘリドローンが一瞬にして展開されるや、敵の火線を分散させるべく一斉に襲い掛かってゆく。
『この程度、何するものか! この機体は単騎で敵拠点や都市を攻め落とす為に造られたのだぞ。足りん、足りんわぁっ!』
 だが敵の火力もまた伊達ではない。分散してもなお苛烈な機銃掃射によって、次々と無人兵器たちが叩き墜とされる。しかし、それらによって僅かながら迎撃密度の薄い箇所が出来たのもまた事実。
『ちょっとどころか、まだまだ危なそうだけど……まあ、やるんなら本気でやろうか! そのほうが愉しいってのが、こっちの指揮官の流儀だしね!』
 リーゼロッテは機体を反転させるや、姿勢を低くしながら吶喊。被弾しながらもまるでスライディングするかの様に敵の真下へ滑り込むと、左右の脚部を接続している股関節部分へ攻撃を叩き込んだ。瞬間、それまで縦横無尽に動き回っていた城塞機の速度が目に見えて落ち始める。
『っ、脚部に損傷!? 接続部の負荷が増大、適切な重量バランスを再計算するまでに約三百秒……完了まで、通常の機動が取れんだと!』
『ほい、これにてお仕事完了っと! メアリーズさん、アイツを存分にアイしてあげなよっ! アタシは後退するから、キョウさんは自慢の一刀お願いっ! あ、あと中佐は酒と報酬をたんまり頂戴ね♡』
 自分の役目は果たしたと、リーゼロッテは一転して戦場から離脱を試みる。そうはさせじとその背へ照準を合わせた城塞機へ、次いで襲い掛かったのはメアリーズであった。
『先程からお喋りが激しいですわね。御託は結構ですが、私はその城塞機を壊(アイ)せればそれでいいんですよぉぉぉ!』
『今度は狂人か……この、戦争狂の同類がっ!』
 まだ距離があるにも関わらず、放たれる胸部メガビーム砲とロングビームライフルは的確に装甲を焼いてゆく。城塞機は照準を新手の重キャバリアへと向け直しながら、両腕部の砲口も突き出す。当たらずとも良い、熱と煙によって光学兵器の射線を歪ませようという魂胆だろう。
『きひっ! ひひっ! あぁ、待ちに待ったこの瞬間! その大型機を破壊(アイ)したら、どれだけの快楽(アイ)を感じられるでしょうかっ! うふふ! これがッ、私のッ、殺意(アイ)ですよぉぉぉぉッ!』
 ならば、別の方法を以て相手を責め苛むだけの話だ。薬物の過剰摂取によって強制的に引き出された念動力が、機体を介する事によって増幅。精神どころか、物質にすら干渉し得るほどの出力となった感応波が周囲へと撒き散らされてゆく。ビリビリと大気が振動し、身動きの取れぬ城塞機を小刻みに震わせる。
『物理的にも作用する、私のプレッシャー……この愛を受けきれないなら、戦場になんて出るべきではなかったですねぇぇ!』
『舐めるなよ! ただのキャバリアならば問題なかろうが、この城塞機の出力は尋常ではないのだ!』
 しかし、城塞機は持ち前の大出力に任せて強引に各兵装を稼働させる。金属同士が擦れ合う不快な音を上げつつも全兵装の砲口をメアリーズへと差し向け、絶大な火力を叩き込むべく射撃トリガーへ指を掛ける――が。
『……あら、私だけを見てていいんですか? 折角全方位に攻撃が出来ると言うのに、余所見したら斬られてしまいますよ?』
『何を……っ、接近警報!? しまった、伏兵か!』
 それを押し込む寸前、城塞機の操縦席内にアラートが鳴り響いた。ハッと視線を巡らせれば、コンソール上には至近距離まで踏み込んでいる機影が一つ。咄嗟に両腕の榴弾砲をメアリーズへ叩き込みつつそちらへアイカメラを向けると、漆黒のキャバリアが今まさに剣を振り上げた所であった。
『ドクターが動きを止め、メアリーズが翻弄するなら、俺はその生まれた隙に切り込んで最大の一撃を叩き込む……作戦が上手く運ぶに越したことは無いが、些か拍子抜けだな』
 斬艦刀を構えつつ、操縦席でそう呟くキョウ。三人の作戦、それは機動力に富む闇医者と生体CPUが遊撃しつつ敵の足を止め、そこを狙って剣鬼が白兵戦を仕掛けるというものであった。とは言え、戦場では何が起こるか分からない。驕りも慢心も無く、彼は巨大なる刃を振り下ろす。
『まずは一閃……!』
『く、させるかぁあああっ!』
 切っ先が触れる寸前、城塞機は推進機を吹かしながら大きく身を捩らせると、その場で機体を回転させた。機銃掃射を全周囲に撒き散らして機先を潰しつつ、装甲を傾斜させて斬撃を受け止める。
『むっ……流石は城塞と称するだけのことはあるか』
 相手はガキリと刃を食い込ませたまま、遠心力によって斬艦刀ごとキョウのキャバリアを強引に投げ飛ばす。剣鬼はそれにも動じず危なげなく機体を制御し着地させるも、すかさずそこへ無数の機銃が叩き込まれて身動きを封じられる。
『たかが、たかが三機にこのフォートレスが翻弄されるなど! クソっ、足さえ使えればまだやりようがあるものを!』
『それが分かっていながら、私から目を逸らしている時点でダメですけどね! ロートガルの火力を舐めないでくださいねぇぇぇ!』
 だが、間髪入れずにそこへ割って入ったのはメアリーズだ。先の榴弾を受けて装甲の一部が粉砕されているものの、それを意に介した様子もなくビームライフルを短間隔で斉射。狙い誤ることなく射撃を加えていた機銃砲塔を撃ち抜き、キョウへの圧力を減じさせてゆく。
『重量バランスの計算完了まで、残り三十秒……それさえ凌げば、こちらの勝ちだ! 危険を冒す必要は無い、ただ近づけさせなければそれでッ!』
 射角の取れる機銃砲塔を総動員して弾幕を形成しつつ、左右の腕部重砲を交互に発射して絶え間なく砲撃を加えてゆく。幾分か兵装を失ったとしても、その火力は突出している。空間全てを破壊で満たす猛反撃に、投影面積の大きいロートガルドは相性が悪い。一方、キョウは肩に斬艦刀を担ぎながら姿勢を低くしていた。身を隠しているのでない、それは前方へと駆け出すためのフォームだ。
『どうやら時間は余りないらしい。此処で決める、援護は頼めるか』
『くふ、ふふふっ。ええ、勿論。その代わりに、最高の一撃を見せて下さいね?』
『任された、善処しよう……行くぞ』
 瞬間、漆黒のキャバリアが勢いよく飛び出し、真紅の重試作機が二条の光線によってそれを支援する。降り注ぐ榴弾を着弾前に撃ち抜き、絶え間なく襲い来る機銃弾を装甲で受け流しながら、ただひたすらに前へ、前へ。瞬く間にモニター画面が敵機の姿で埋め尽くされてゆく。
『あと、五秒……間に、合えぇっ!』
『させん。斬機一刀の真髄、とくと見よっ! チェェェストォォォォ!』
 苛立たし気に主機動力を吹かす城塞機と、その懐へと踏み込み艦を断つ剣を構える剣鬼。あらゆる護りを一切合切両断せし剛の一閃が、今度こそ振り下ろされ――。
『お、ぉぉおおおおおッ!?』
 城塞機の前部装甲を深々と斬り裂いた。それと同時に敵機は背後へ向けて急発進し、速やかに後退。地面目掛けて主砲を叩き込む。直撃狙いではなく、攻撃の衝撃と巻き上げた土砂によって仕切り直しを計ろうとしたのだろう。
 咄嗟に機体を飛び退かせたキョウは、手応えを確かめる様に手元へと視線を落とした。そんな仲間へ、後退して戦闘を見守っていたリーゼロッテが声を掛ける。
『お疲れ様だね。どうだった、戦果の程は』
『確かに装甲を斬ることは出来た。だが、ほんの一瞬だけ時間が足りなかったらしい。心臓部へ刃を届かせる前に後退され、僅かに届かなかった』
 剣鬼としては勝負に勝って、試合には引き分けたと言ったところか。しかし、トータル的に見れば猟兵たちの勝ちである事は変わらない。
『そっか。ま、それでも働きとしては上々かな。こんだけ派手に立ち回ったんだし、中佐も文句は言わないって。メアリーズはどう?』
『私としては概ね満足ですわね。勿論、行こうと思えばまだまだやれますよぉ?』
 生体CPUの乗機も幾分か損傷を負っているが、まだまだ継戦に問題は無さそうである。三人があの城塞機に与えた損傷としては決して低くはない。徐々にではあるが、相手を追い詰める事に成功している。彼らは離脱した敵を更に狩り立てるべく、追撃へと移行してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
この場の戦はこれで終わりですか、物足りません

我等が血肉もまた怨念滾らす糧なれば
身命賭して死合うに相応しい獲物であれ

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ戦闘知識も活かして攻撃の前兆を察知し弾道を読む

先制攻撃+ダッシュ、敵ミサイルの弾道を見切りUCで空中で爆発させながら接近
敵が影面の射程に入ったら影面を足場にジャンプし乗り上げる

攻撃を見切り弾丸を切断、またはUCで迎撃しながら関節部や武装の接続部を串刺し、UCを流し込み内部を爆破
怨念の炎(焼却+呪詛+生命力吸収)の継続ダメージで徐々に浸食しながらなぎ払い+切断、または怪力で破壊
操縦者に怨念の炎が届くか武装を失い戦闘不能になるまで続ける



●求むるは満ち足りし闘争を
「この場の戦はこれで終わりですか。激しさや苛烈さは確かにありましたが……正直に言えば物足りません。血肉ではなく油や鋼のみが撒き散らされる戦場など、文字通りの不完全燃焼です」
 戦場を巨大な鋼鉄が縦横無尽に駆け回る。弾丸や砲弾が飛び交い、爆炎が地面を吹き飛ばす戦場に在って、それでもなお織久の表情は冴え冴えとしたものであった。青年の扱う異能は死せる者らの流血と想念を燃料とする業である。故に不殺を旨とし、主なる武器がキャバリアであるこの戦場には些か相性が悪かったのだろう。
「まぁ、彼の御仁がこのまま大人しくしているとも思えません。其れに関してはまた次の機会に期待するとして……我等が血肉もまた怨念滾らす糧なれば。赤鉄の城塞よ、身命賭して死合うに相応しい獲物であれ」
 であれば、自らが血を流すに足り得る闘争を求めるのみ。ゴロプ少将の駆るフォートレスは度重なる戦闘を経ても尚、未だ健在。兵装の喪失や多少の損傷は受けているものの、それと引き換えに当初の慢心や油断が消えつつある。多少の期待は出来るだろう。
「直撃は当然、至近弾を受けるだけでも致命は必至。加えて敵は見上げるばかりの巨躯……取り付いたとしても有効打を与えられるかどうか。だがどうであれ、やってみなければ分かるまい」
 懸念を口にしながらも、織久の口元に浮かぶのは酷薄な微笑。彼は全身に蠢く闇を纏わせつつ、右手に赤黒い槍、左手に髪と血をより合わせた糸を手にする。そのまま青年は地を蹴るや、未だ周囲へ攻撃をばら撒き続ける城塞機目掛けて駆け出した。
『次は生身……キャバリアを利用すらしない、完全な生身、だとぉ! どこまで私を愚弄すれば気が済むのだ、貴様らは! そんなに死に急ぎたければ望み通りにしてやろう!』
 猟兵の姿を認めた指揮官はいよいよ以て怒髪天を突く勢いである。この世界における最強の武力とは当然キャバリアだ。その中でも最強を自負する城塞機に生身で挑む事自体が、相手にとっては何よりの侮辱なのだろう。
 城塞機は怒りのまま背部コンテナを開くや、夥しい数のミサイルを吐き出し始めた。常人相手には過剰すぎる火力だが、そうでもしなければ気が納まらないのか。しかし、織久は相手の激情など意にも介していなかった。
(攻撃は誘導式だが、そもそもが熱を感知して追尾する方式……キャバリアの排熱と比べれば、我等程度の体温など誤差にもならん。となれば、後は如何にして追いつくか)
 次々と地面へ着弾し、周囲一帯に爆炎と熱風を撒き散らすミサイル群。直撃するものは槍にて薙ぎ払い、そうでないものは軌道と威力範囲を見切りながらひた駆ける。だが人間の脚力とキャバリアの機動、その差は如何とも埋めがたい。とは言え、余り時間を掛けていてもジリ貧だ。
(戦場は開けた荒野、先の市街地の様に影を生む障害物は見当たらない。で、あるならば)
 織久は彼我の距離と位置を一瞥して把握するや、自身の後方に着弾したミサイルの爆風を利用して加速。右手に握りしめていた槍を全身の筋肉を使い投擲した。その一投は辛うじて敵の脚部装甲板へと食い込み、突き立つことに成功する。
『なんだ、槍? そんなもので何になる!』
「いや、これで良い。槍の石突をよく見てみろ」
 そう言われてカメラのピントを合わせれば、槍の後端部にうっすらと伸びる一本の線。それは織久の左手へと繋がっている。その正体は左手に巻き付けた髪糸だ。城塞機と青年を繋ぐ、か細い線。当然、それには微かではあるが影が付随しており……。
「さぁ……今度は貴様が蹂躙される番だ」
 そこを伝った漆黒の腕ががっちりと装甲を掴むや、術者を強引に城塞機まで引き寄せた。取り付いてしまえばあとはこっちのものだ。織久は敵の装甲板を駆け上がって手近な関節部を見つけるや、隙間より漆黒の影を流し込む。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず……サイズ差も考え物だな。そちらに我等を攻撃する手立てはあるまい」
 影で出来た腕が内部構造を触れるを幸いと引き千切り、槍の穂先より溢れ出た怨念の炎が城塞機を侵食する。人間一人が壊せる範囲はそこまで広く無いものの、燎原の火の如く破壊範囲が急速に広がってゆく。
『そうでもないぞ……こうした使い方は想定外ではあるがなぁっ!』
 だが城塞機は思い切り機体を回転させ、遠心力にて猟兵を振り落とそうとする。その程度であればまだ耐えられたが、畳みかける様に至近距離に設置されていた機銃砲塔が火を噴いた。射角的に直撃はしない。しかし対キャバリアを想定した銃撃は余波も凄まじく、遠心力も相まって強引に織久を引き剥がしてしまう。
「くっ……操縦席へと到達するか、無力化するまで持っていきたかったが。いや、だからこそ死合う相手としては相応しい、か」
 轢き潰されては堪らぬと、青年は一旦後退して距離を取る。狙いを完全に果たせこそしなかったものの、彼の相貌には未だ闘争心が滲み出ているのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オル・フィラ
倒すべき敵が分かれば、もう充分です
今回も生き残りましょうね、クロライト

正面から撃ち込んでも装甲を貫通できそうにないですし、弾幕を躱しつつ敵の弱点を探ります
あの大きな脚の駆動部とか、当てられれば壊せるんじゃないかと思うんです
牽制として敵の頭部付近や兵装に撃ち込みながら脚部を目指し突撃
そのまま間を通り抜ける際に駆動部を狙い【泥流弾】を撃ちます
効果があれば良し、なければ再度突撃して他の箇所を狙ってみましょう
真下から撃たれる想定もして全部装甲が厚い、なんてことはないと思いたいです

…キャバリアでの作戦時間が長くなると、色々辛いですね
パイロットスーツというんでしたっけ、今度は用意しないとです


緋月・透乃
おおー、でかいのがでてきたねぇ。でもまあもっとでかい帝竜とかとも戦ってきたし、これくらいならいけるね!
私は全力だしてくれるなら動機とかどうでもいいし、これは楽しい戦いになりそうだね!

とにかく何とか接近しないといけないね。
敵に向かってまっすぐ猛ダッシュ、ミサイルを撃たれたらRX推進戦鎚九六式で更に加速!
大きさの差で多分上空からくるので、突然の加速で私の後ろにミサイルを着弾させる狙いだね。
そして爆風も利用してもっと加速して一気に間合いを詰めるよ!直撃しなければ私なら気合で耐えられる!
あとは勢いを殺さずに罷迅滅追昇をぶち込むだけだね!

私なりの戦闘狂の戦いをみせつけるぞー!



●超重量の砦をかち上げろ
『政治的背景も思想信条も、正直に言って興味はありません。倒すべき敵が分かれば、もう充分です。今回も生き残りましょうね、クロライト?』
 ゴロプ少将が、そして大国側がどの様な意図を以て此度の鎮圧作戦を企図したのか。最早そんな事は、オルにとってそれほど意味のある情報ではなかった。重要なのは敵を倒し、そして生き残る事、ただそれだけだ。彼女がこれまでの戦闘に耐え抜いてくれた愛機へそっと声を掛ける傍らでは、意気揚々とした声が上がる。
「おおー、でかいのがでてきたねぇ。でもまあもっとでかい帝竜とかとも戦ってきたし、これくらいならいけるね! 私としても全力をだしてくれるなら動機とかどうでもいいし、これは楽しい戦いになりそうだね!」
 巨大な戦鎚に腰掛けて城塞機の威容に感嘆の声を上げながら、透乃がクロライトへと笑みを向けてくる。彼女もまた複雑な事情など関係ないのだろう。求めるのは全力の戦いというただ一点のみ。
「ともあれ、まずは接近しなくちゃ始まらないね。とは言っても、私にそんな難しい事なんて出来ないけど。敵に向かって猛ダッシュするだけだよ!」
『しかし、仮に接近出来ても有効打を叩き籠めねば意味がありません。あの大きな脚の駆動部とか、当てられれば壊せるんじゃないかと思うんですが……』
「うーん、それならまずは其処を狙ってみようか! 駄目なら駄目で手はあるしね!」
 そうと決まれば、後は戦闘あるのみだ。得物を地面から引き剥がす透乃に先んじて、クロライトが大地を蹴って吶喊する。それに気づいた城塞機は大きく弧を描く様に旋回しながら、機銃掃射による弾幕を形成し始めた。これまでの戦闘の結果、機銃砲塔群にも僅かながらに死角が生じている。恐らくはそれをカバーする為だろう。しかし減ったとはいえ、元の数が尋常ではない。それも飽くまでも気休め程度、だ。
(馬鹿正直に目標を狙っても、相手に意図を悟られるだけ。飽くまでも牽制、通れば御の字程度ですが……さて、どうでしょう)
 装甲が傾斜している胸部全面や厚みのある前腕部でバイタルパートを庇いつつ、オルはライフルの照準を敵の頭部へと定める。単射で素早く弾丸を放ち、それらは狙い通りの場所へと吸い込まれてゆく……が。
『なんだ、センサー類に対する狙撃か? 良くもまぁ、狙い難い箇所へ器用に当てるものだ。しかし残念ながら、その努力は徒労に過ぎん』
 弾丸はあえなく弾かれてしまう。重要部位だけに、それなり以上の防護が施されているのだろう。しかし故障の可能性を嫌ったのか、敵は身動ぎをしつつ回避を優先し始めた。
「お、これは今がチャンスかな? それじゃあ、一気に間合いを詰めるよ! とは言え、そう甘くは無いだろうけど、ねっ!」
『キャバリア用の兵装を担いだ、女……? ええい、近づけさせてなるものか!』
 一時的とは言え、攻撃の勢いが減じたのだ。今が好機とばかりに透乃もまた城塞機めけて速度を上げてゆく。しかし、相手は先程も生身の猟兵によって手痛い被害を受けたばかりである。そんな苦い経験も相まってか、ゴロプは機銃掃射による牽制もそこそこに、背部のミサイルコンテナのハッチを開いた。噴煙を上げて次々と飛び出した誘導弾は、弾道を描きながら透乃目掛けて殺到する。直撃すれば粉微塵、避けても近ければ爆風に焼かれてしまうだろう。
「おお、やっぱり大きさに差があるからそう来るよね! こういうのは、ギリギリまで引き付けて……いまっ!」
 しかし、少女に臆する様子はない。寧ろ面白がるように迫り来る弾頭を見据えるや、着弾直前までタイミングを計り……最適の機を以て戦鎚の推進機能を起動させた。猛烈な蒸気を噴き上げながらグンと加速すると、着弾スレスレでミサイル群を回避してゆく。更には背後より吹き付ける爆風すらも追い風とし、更なる加速の一助と為す。
「よーっし、大成功! ちょっと熱風で火傷したけど、直撃さえしなければ気合で耐えられる! あと少しだし、一気に走り抜けるよ!」
『どいつも、こいつも……っ!』
 こうも鮮やかに凌がれては相手のプライドもズタズタである。増々躍起になってミサイルを降り注がせ、意地でも透乃を吹き飛ばさんと固執してゆく。しかしそれは同時に、オルに対する牽制が疎かになる事も意味していた。
(相手の注意があちらに集中している……好機ですね。両脚部の隙間であれば、射線も通らないはず)
 オルは仲間と同じように弾幕を掻い潜るや、城塞機の懐へと飛び込む。場所は敵機の前部下方、丁度H型になっている脚部の凹部である。彼女は装甲表面へ銃口を押し当てると、躊躇なく引き金を絞る。弾丸は勿論泥流弾(マッド・フロウ)。これまで、大抵の敵はこの一撃で撃破出来ていたのだが……。
『っ!? 装甲が厚過ぎて威力が内部機構にまで伝わらない……!』
『この機体を見れば、誰しもが脚部を弱点だと思うだろう。我々とてそうなのだ。である以上、堅牢に設計するのは当然に決まっている。残念だったな』
 効果はあった。装甲表面は内圧で崩壊し、亀裂が走る。だが、そこまでだ。泥流弾は内部へ到達すれば弾丸を基点に一切合切をズタズタにしてしまうが、そもそも弾丸自体が到達できなければその威力は半減してしまう。
 異常に気付いた城塞機は意識をオルへと戻すや、素早く身を退いて機銃群の照準を合わせる。至近距離から発砲されれば、数瞬の内に削り殺されることは明白。砲塔を潰すべきか、避けるべき、判断に迷う傭兵の眼前で。
「……ふーん、なるほどね。でもさ、裏を返せばそれだけ攻められたくない場所って事でしょ。だったら、簡単に諦められないよね!」
 聳え立つ鋼の砦が、ガクンとつんのめった。それは両者の間へ割って入った透乃によるものだ。爆風の加速すらも利用した戦鎚突進。如何な生身とて、その威力はキャバリアのそれと遜色ない。
『お、おおお!?』
「くたばれ、消え去れ、あの世の果てまで飛んでいけー! 私なりの戦闘狂の戦いをみせつけるぞー! 罷迅滅追昇!!」
 戦鎚は戦鎚、それ以外の何物でもない。加速は飽くまでもこれを叩き込む為の副次的効果に過ぎないのである。そうして少女は体勢を崩した相手の下方より、速度を破壊力へと変換した重打を打ち上げた。その威力は驚嘆の一言で在り、なんと総重量数十トンを数える城塞機が……浮いた。僅かではある。だが確かに地面から浮き上がったのだ。
「落ちてきた時の衝撃も凄まじそうだからね、逃げる時間も考えればそんなに余裕はないよ!」
『っ、お気遣い感謝します!』
 躊躇い、迷えば仲間すらも危険に晒す。オルは焦らず、しかして素早く敵の下方部へと視線を走らせる。知識はなくとも、積み上げてきた経験によって脆弱部を炙り出せると彼女は確信していた。
(真下から撃たれる想定もして全部の装甲が厚い、なんてことはないはず。実際、戦車なども正面装甲は厚い一方、上部と下部は薄いと聞きます。履帯か、それに類する箇所を撃ち抜ければ、或いは……!)
 どうやら城塞機の推進方式はメインとなる無限軌道と加速用のブースター、それに加えて重量軽減用のエアクッションを併用して採用しているらしい。だが、この短い時間でその全てを機能停止へと追い込むのは不可能だ。であれば、狙うべきは。
(履帯やブースターだけで、あの機体の機動力を支え切れるとは思えません……目標はエアクッション装置っ!)
 オルは照準を空気の取り込み口と思しき場所へ合わせるや、愛銃のトリガーを引く。放たれた弾丸の着弾を確認するのもそこそこに、彼女は透乃を拾い上げつつ踵を返した。既に城塞機は落下し始めている。もたもたしていれば諸共に押し潰されかねない。
「わっとと、これ大丈夫かな!?」
『クロライトの運動性であれば間に合うはずです、多分!』
 釣り天上の如く迫り来る大質量に、オルは機体をスライディングさせる様に滑らせ……間一髪、敵の下方より脱する事に成功する。だがホッとする間もなく、地面へ衝突した城塞機が引き起こす振動と強烈な突風により二人は更に遠方へと吹き飛ばされた。
「あたたた……自分でやっておいてなんだけど、何とも凄まじいね。そっちは大丈夫?」
『無理をさせたせいか、操縦系統に異常が見られますね。脚部にも大分負荷が掛かりました。戦闘を続行できるか、少しばかり怪しい所です。ところで相手の損傷はどうでしょうか?』
 全身に着いた砂埃を払う透乃と、機体の状態をチェックするオル。二人が城塞機へ視線を向けると、ゆっくりと土煙が晴れてゆく。上半身に変わりはない。だが一方で、脚部は接地面が大きく歪み、時折不快な金属音を響かせていた。どうやらエアクッション装置を破壊した影響は存外に大きかったらしい。すぐさま動けぬという訳ではないだろうが、機動力の低下は免れないだろう。
『う、かはっ……まさか、この様な、事が……!?』
 そして、機体を揺さぶられて搭乗者が無事である訳も無し。平面方向と上には気を配っていようとも、下方からの攻撃は当然ながら想定外なのだろう。漏れ聞こえる通信から、ゴロプ自身のダメージも軽くはないと察せられた。
「搭乗者保護、ですか……確かに私もキャバリアでの作戦時間が長くなると、色々辛いですしね。パイロットスーツというんでしたっけ、今度は用意しないとですね」
 そうして苦悶する相手の様子を眺めつつ、オルはふとそんな感想を抱くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
(闘争の為の闘争求むこの方も電脳が痛い存在ですが)
命懸ける者の覚悟軽んじ背を撃つ将…精神汚染でなくば騎士として許し難いですね
中佐殿、あの要塞機の望遠画像を用意出来ますか

『城攻め』をする箇所を見つけたいもので

主砲の範囲避けミサイルを銃器の●乱れ撃ちスナイパー武器落とし
相対速度合わせ接近
背部コンテナの煙幕手榴弾を●投擲目潰し
機体捨てUC背負いワイヤーアンカーの●ロープワークで飛び移り

●限界突破怪力でメンテハッチ破壊し内部へ侵入
直結●ハッキングで構造情報収集

そちらに赴き鉄拳制裁…は高望みですか
ゴロプ少将、操縦席の強度は十分ですか?

動力部へ向けUC発射
適正範囲威力に調整
遠隔爆破
(地形の利用、破壊工作)



●城攻めに勝る誉れ無し
『命を懸ける者の覚悟を軽んじ、安全な後方より背を撃つ将……精神汚染でなくば騎士として許し難いですね。あの御仁もある意味で被害者とは言え、言動から察するにどうやらそればかりが原因とも思えませんので』
 そう独り言ちながら、トリテレイアは悩まし気に首を振る。このクロムキャバリアは元より戦乱の絶えぬ世界だ。元々抱いていた思想が増幅させられたのか、それとも過去からの侵略兵器によって一から植え付けられたのか、それは分からない。だが現実問題としてこういった軍事行動にまで発展しているのだ、どちらにせよ憂慮すべき事態ではある。
 ……ちなみに大前提として、『闘争の為の闘争を求む戦争狂も電脳が痛い存在である』と言う但し書きが勿論つくが。汚染無しでこれなのだ、万が一オブリビオンマシンに取り込まれた場合など予想もしたくなかった。ともあれ、今は味方である事に変わりはない。鋼騎士は思考を切り替え、支援に徹しているハイネマンへと通信回線を開く。
『中佐殿、済みませんがあの要塞機の望遠画像を用意出来ますか。ああも動き回られては、おちおち詳細を調べる余裕もありません。交戦済みの仲間からも情報が共有されていますが、それでもより精度を上げておければなと』
『ふむ? 観測班が何枚か確保しているから、それを送ろう。しかし、それをどうするつもりかね』
 要望に対する反応は素早く、鋼騎士の記録領域へ十枚ほどの画像データが転送されてくる。様々な角度から撮影されたそれらを精査しながら、彼は戦争狂の問い掛けに応えた。
『いえ、戦争前の情報収集はしてし過ぎることはありませんからね。念には念を入れて、『城攻め』をする箇所を見つけたいもので』
 防壁、虎口、城門、隧道。要塞の名を冠する以上、攻めるべき場所は幾らでも思いつく。トリテレイアは暫し取るべき行動を吟味した後、戦場へと飛び出してゆくのであった。

『ちぃっ! 脚部エアクッション装置、出力が四割減。下半部フレームの負荷が警告域にまで上昇。トータルの機動力低下率は……クソ、よくもやってくれおって!』
 ゴロプは口の端を伝う鮮血を乱暴に拭いながら、機体の制御と状態チェックを同時に進めていた。多少の損傷程度なら織り込み済みであったが、幾ら何でもこれは許容範囲外である。だが、彼を苛立たせる要因はもう一つあった。それは城塞機にぴったりと張り付くように追従してくる一機のキャバリア。
『こうも容易くミサイルを撃ち落とすとはな。本来であれば、一斉射すら過剰だと言うのに!』
『全てこちらを目標として向かってくるのであれば、自ずと軌道は読めるというものです。とは言え、油断できない火力である事に変わりはありませんが』
 出撃したトリテレイアは降り注ぐミサイルを迎撃しながら、敵機へ猛然と迫っていた。副腕を小刻みに動かし、機械特有の正確さで誘導弾を捌き続ける。かれこれ、この遣り取りを十分以上続けているのだ。彼は相手の苛立ちが頂点に到達したと見るや、背部コンテナへとマニピュレーターを伸ばす。
『頃合いでしょう……では、そろそろ仕掛けさせて頂きます!』
 投擲されたのは数個の円筒状物体。それは互いの中間地点へ差し掛かるや、内部より勢いよく白煙を吐き出した。煙幕弾による目潰しである。鋼騎士はそれに乗じて機体から身を乗り出すと、ワイヤーアンカーを射出。敵上半身へ引っ掛けた瞬間、機体を乗り捨てて飛び移った。
『またぞろ取り付いて来たか! だが、似た様な考えの者とは既に交戦している。さっさと振り落として……!』
「出来るとお思いですか? そちらは先程よりも速力が低下している様に見えますが。さて、外部接続口は……此処ですね」
 城塞機は大きく身を振るも、その勢いは以前と比べて幾分か遅い。トリテレイアは苦も無く装甲表面を探るや、小さな端末口を見つけ出す。有線接続を介して手早く制御系統を掌握すると、なんとメンテナンスハッチをこじ開けて内部への侵入を果たした。
 彼が先ほどハイネマンに望遠画像を求めた理由。それこそ、この隠蔽された出入り口を見つけ出す為だったのだ。
『な、あ……馬鹿な、よもや侵入を許すなどっ!?』
「そちらに赴き鉄拳制裁……は、幾ら何でも高望みでしょう。ところでゴロプ少将、操縦席の強度は十分ですか? 脱出装置が働くのであれば、それはそれで良いのですが」
 そう告げつつ、鋼騎士は事前に予測しておいた内部構造と照らし合わせ、ある方向へ向けて持ち込んでいた武装を内部壁へと宛がう。それは小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置及び起爆制御装置……端的に行ってしまえば、ドリル付きの爆弾である。
『騎士の武器どころか兵器ですらないのですが……使える以上は利用しない手はありません。好意ゆえとは言え、極めて複雑ですが』
 心なしか沈んだ声を漏らしつつ、トリテレイアは装置を作動させた。ゴリゴリと内部機構を削り取りながら突き進むドリルを見届けると、彼は踵を返して敵機内部より離脱。待機させていた機体へと乗り込み距離を取る。
『なんだ、何をした!? 異常発生地点が、移動している……? いや、この方向は、まさか!』
『ええ、お察しの通りです。こちらの狙いは機体の要となる動力炉。設計上、複数配置をして被弾リスクを分散しているようですが、それでも出力低下は免れません。威力の調整はしましたが、どうかお覚悟を!』
『おい、待て、やめ……っ!?』
 種明かしをすると同時に、トリテレイアは相手の制止を無視して削岩弾を起爆させた。
 瞬間、城塞機内部から焔が溢れ出し、内側から装甲を吹き飛ばす。一部分とは言え、それでも無視できない範囲が破壊されてゆく。途端に、ガクンとつんのめる様に城塞機の動きが鈍りだした。
『……この代償は高くつくぞ、戦争狂いの叛逆者ども』
 どろり、と。通信を介して怨嗟の声が響く。それは機体の損傷と反比例するかのように、その昏さを増してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
拙者もただのデカブツ相手はつまらんでござるな
ま、この世界の拙者はただの傭兵だしィ?ただ戦うだけでござるが

ハイネマン中佐に質問、あの機体の司令部って頭らへんでござるか?それとも胴体?
それだけ聞いたらさっとツールに【コンソールコマンド】を打ちこみ【UAV】の速度を3倍に
今からこれの上に乗るんだよ、柱を投げて飛び乗るが如く

UAVを飛ばして【弾幕】を引きつけながら接近!弾幕薄いよ、何やってんの!早く撃ち落とさないと殲禍炎剣来ちゃうぞーがんばえー
直上まで来たらHALO降下(ただの飛び降り)だ!エントリィィィィ!!
機体に取り付いたら司令部ら辺に向けて強襲!制圧!

やっぱやり合うならエース機の相手がいいネ!



●空挺降下は歩兵の華なれば
「おーおー、派手にやっておりますなー。交戦想定が対キャバリアに偏重させ過ぎているせいか、取り付かれたら為す術がないみたいでござるね。まぁ、到達するまでが難易度ルナティックなんで気休めにもならんでござるけど」
 ルーデルは小さく口笛を吹きながら、飄々とした様子で戦場を眺めていた。視線の先では城塞機が炎交じりの煙を濛々と噴き上がらせながら、苛立たし気に身動ぎしているのが見える。先に交戦していた猟兵が相手に取り付くや内部へと侵入、動力炉を爆破したのだ。
「さてさて、とは言え拙者もただのデカブツ相手はつまらんでござるなぁ。ま、『この世界』の拙者はただの傭兵だしィ? ただ戦うだけでござるが……あれ、てかさっきオウガメタルを使ってるお仲間居なかった? 拙者の気のせい???」
 一見するとふざけている言動は、余裕と積み上げてきた経験の裏返しだ。取り留めのない疑問を口にしながら、黒髭は猟兵の援護に徹しているハイネマンへと声を掛けた。
「ヘイ、中佐。あの機体の司令部って、足なんて飾りみたいなマシンみたく頭らへんでござるか? それともコアブロック式に胴体?」
『君が何を言っているのか分かりかねるが、恐らくゴロプが居るのは胴体部だろう。頭部はセンサー類が詰まっている上、突出している分狙われ易いからな。しかし、重要だけあって分厚い装甲の奥の奥に仕舞い込まれているはずだがね?』
「いーや、それだけ聞ければ十分ですぞ。となればお次は脚の準備ござるな、っと!」
 パチリとルーデルが指を鳴らせば、現れ出たるは自立稼働型の無人機である。彼は腕に装着された端末へ特殊なコードを入力してゆき、UAVに施された各種リミッターやロックを解除していった。それにより出力は上昇し、生半可な戦闘機にも劣らぬ機動力と速度を得るが出来るのだ……各所から噴き出す蒸気やら白煙やらを気にしなければ、だが。
『……で、それをどうするのかね?』
「決まってる。今からこれの上に乗るんだよ、柱を投げて飛び乗るが如くな! ドトンパも真っ青なスピードなら捕捉されないはず、多分!」
『ははは、そいつは面白い! うむ、撃墜されたら骨くらいは拾ってあげよう』
 そんな頭の悪い会話を交わしつつ、UAVに飛び乗った黒髭はハイネマンの見送りを受けて飛び出してゆく。当然、接近する物体を感知した城塞機は濃密な弾幕射撃によってそれを迎え撃つ。
『先の爆発で出力低下……動力回路の再設定で思う様に動けん。だが、それで与しやすいと思わんことだ!』
「わははは、こんなもんでブライトさんが満足するか! ほらほら弾幕薄いよ、何やってんの! 早く撃ち落とさないと殲禍炎剣来ちゃうぞー、がんばえー!」
『叩き墜とした後、入念に轢き潰してくれる!』
 口では敵を煽りつつも、傭兵の操作は的確である。しかし巧みに直撃弾を避けてゆく一方で、接近するにつれ射撃から着弾までの間隔は当然短くなる。徐々に弾丸が掠める回数が増えてゆき、そしてとうとう……。
『よし、取ったぞ!』
 推進部に直撃弾が命中してしまう。ぐらりと急速に体勢を崩す無人兵器にゴロプは快哉を叫ぶが、ルーデルの表情に焦りの色はない。
「ここまで近づけばこっちのもんでござる! 大漁が拙者を待っているのさ、エントリィィィィ!!」
 彼はそのまま宙空へ身を踊らせるや、HALO降下(と言う名の自由落下)を敢行する。すぐ真横を通り過ぎる弾丸にちょっとだけ涙を零しつつも、傭兵は見事な五点着地で敵装甲表面へと降り立った。
「さーて、こっからが歩兵の本領でござる。最後の決は我が任務、ってなぁ!」
 ルーデルは揺れる足場を物ともせず敵機胸部へと駆け登ると、搭乗口と思しき場所へ取り付いた。緊急時用のハッチ強制解放機能をハッキングで無理矢理起動させると、躊躇なくその中へと飛び込む。牽制がてらに射撃を加えながら突き進むと、全球状の操縦席、そしてその中心に座する壮年の軍人を発見する。
「ようやく顔を拝めたなぁ! だががっかりだ、こういう場合は操縦者が『実は美少女だった』というお約束があって然るべきですぞ!」
「何を訳の分からん事をごちゃごちゃと!」
 相手も応戦のため拳銃を引き抜き、戦闘は一転して室内戦の様相を呈し始める。だが飽くまで操縦メインのゴロプと歩兵専門のルーデル、地力の差は明白だ。操縦機材の損傷を厭うた指揮官は、忌々し気に強化ガラスで覆われたボタンを叩き押す。
「ちょっと待つでござる、もしやそれは自爆スイッチというヤツでは!?」
「いいや、それはまた別にある。これは万が一のための脱出装置。座席の一部が飛び出す仕組みでな……丁度貴様が立っている辺りが勢いよく排出されるのだ!」
 あっと驚いた時には時すでに遅し。ルーデルの足元がバネ仕掛けの如く上へ押し上げられたかと思うや、猛烈なスピードで狭い通路を抜けて機体外へと放り投げられる。辛うじて稼働していたUAVを呼び寄せて難を逃れるものの、城塞機は既に猛然と後退し始めていた。
「まっさか、あんな手を使って来るとは……やっぱやり合うならエース機の相手がいいネ!」
 操縦席の制圧と言う主目的は達せられなかったが、代わりに設備へ損傷を与えらている。それで一先ず良しとしつつ、ルーデルもまた自陣地へと帰投するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱皇・ラヴィニア
あまり共感したい類ではないけれど、
今だけは同じ意見かな
戦場に政治を持ち出すな――言うとおりだ
ここで終わらそう。行くよゼル
機体を肉体改造、耐久性をチューニングして出撃だ

ヘイロゥで低空を推力飛行し接近
グレネードで狙われたらあえて受ける――ブラディエルがね
遠隔操作しなければ着弾タイミングを見切り分離くらい出来る
ゴメンよ、後で必ず回収するから
ブラディエルが受けた爆炎と共に片翼で空へ舞い上がり
それに紛れて上空からシュラウゼルのみで接近
敵艦に取付いたら147を刺突剣に変形
貫通攻撃で装甲に穴を開け本命が届く様に
そのまま両腕を十字に重ね、生体荷電粒子砲を解放
悪いがお喋りしている暇はないんだ……落ちてもらうよ!



●三位一体、目指す目標は同じにて
 度重なる交戦を経て、城塞機は着実に追い詰められていた。機体や兵装に対する損傷は勿論、操縦席にまで踏み込んだという事実は大きい。与えたダメージ以上に、相手の心に『また侵入を許すのでは』という懸念を残したのは後々にまで効いてくるはずだ。
『これが全て、自らの身から出た錆だと彼が認められるかどうか。ハイネマン中佐はどちらかと言えばあまり共感したい類ではないけれど、今だけは同じ意見かな。戦場に政治を持ち出すな――言うとおりだ』
 ここまでに至る一つ一つが、ゴロプを中心とする大国側の行動が齎した結果である。認めるにはやや複雑ではあるが、ラヴィニアとしても戦争狂の言葉に一定の理を見出していた。ほんの少しでも歩み寄る姿勢を見せてさえいれば、防衛戦の推移は今と全く違うものになっていたのだろうから。
『まぁ、敵の失策自体は喜ぶべきものなのだろうけどね。ともあれ、長引かせて得をすることもないだろう。ここで終わらそう。行くよゼル』
 そう言って、ラヴィニアは市街地戦から引き続き鈍灰機へと搭乗していた。敵の放つ火力を警戒し、事前に乗機へ耐久性を中心とした肉体改造を施している。これも半機半躰であるジャイアントキャバリア独自の強みだ。その傍らには無人状態の真紅機もまた付き従っていた。
『ヘイロゥ展開。殲禍炎剣に捕捉されるのは怖いからね、出来る限り低空を飛ぶとしようか』
 彼女は反重力装置を起動させると、中心より半月状に分かれたソレをキャバリアの背へと装着。音もなく機体を浮遊させてゆく。そのまま地面を擦らんばかりの低空飛行で、紅白二機の鉄騎は城塞機への接近を開始した。
『今度はキャバリアが二機か。機銃による弾幕で牽制……いや、それでは足りん! 榴弾の火力で圧し潰してくれる!』
 先程手数で攻めた結果、結局接近を許したことが未だに尾を引いているのだろう。ゴロプは両腕の重砲を構えるや、立て続けに砲撃。時限信管を調整し、中空で炸裂させ空間を爆風で満たさんとしてきた。
(最上は二機ともに辿り着くことだけど、あの爆破範囲だと纏めて撃墜されかねない。その場合は、申し訳ないけれど……っ!?)
 機体を巧みに操って直撃を避けつつも、接近するにつれ爆発の密度も高まってゆく。僅かな安全空間を見切りながら着実に進んでゆくが、それこそが相手の狙いであった。すぐ近くで爆発した榴弾の爆煙を抜けた直後、既に次なる砲弾が眼前へと迫り来る光景が視界に飛び込んでくる。
『回避も迎撃も間に合うまい! ノコノコと固まって移動していたのが運の尽きだ、そのまま纏めて吹き飛べ!』
 ゴロプの無慈悲な宣告と共に、榴弾が炸裂する。果たして、濛々と広がる爆煙の中より、真紅のキャバリアが地面へと落下してゆく。その様子にほくそ笑みながらも、ゴロプは決して警戒を解かなかった。敵はもう一機居た筈だと攻撃地点をジッと睨む……が、煙が晴れたその場所に鈍灰機の姿は影も形も見受けられない。
『なんだ、爆発に耐え切れず粉微塵となったか? いや、そう甘くはあるまい。となれば……上か!』
 ハッと頭上へ視線を向ければ、蒼空に片翼の影。太陽を背にしたラヴィニアが急降下を仕掛けていたのである。太陽光の直視により、一時的にではあるがアイカメラが白く染め上げられ、照準が無効化されてゆく。
(ゴメンよ、エル。後で必ず回収するから、今は待ってて。すぐにこれを片付けるから!)
 種明かしをすればそう難しい話ではない。榴弾が起爆する直前、真紅機が砲弾へ覆い被さる事によって被害を最小限に抑え込んだのである。当然ながらダメージによって戦闘不能になるものの、そのお陰でラヴィニアは敵機へ取り付くことに成功したのだ。
『「ロストオウス」、刺突形態へと変形。内部へのダメージは一先ず後回しだ。まずは装甲に穴を空けて突き崩す!』
 彼女は城塞機腰部の装甲に集中して、高密度に収束させたナノマシン型近接兵装を突き立てる。幾つもの刺突痕が穿たれ装甲強度が落ちた頃合いを見計らうや、鈍灰機の両腕を交差させた。
『っ、上半身と下半身の接続部を狙うつもりか! 待て、貴様に私を責める資格が何処に在る! 自らの為に僚機を使い捨てた事を棚に上げる心算か!』
『同じに見えると言うのであれば、もうそれで良い。こっちはさっさとエルを迎えに行きたくてね、悪いがお喋りしている暇はないんだ……落ちてもらうよ!』
 敵の弄する言葉を斬って捨てながら、ラヴィニアは生体電流を増幅させた荷電粒子砲を放つ。それは脆くなった装甲を溶解させ、内部のフレームや制御機構を蹂躙していった。戦果としては上々だと判断するや、彼女は城塞機より飛び降りて距離を取る。向かう先は勿論、墜落した真紅機の元。
『一方的に切り捨てるのと、納得づくで身を挺する事。その違いが分からないから、こうも追い詰められているんだよ』
 倒れた仲間の状態を確かめながら、操縦席で少女はそう小さく呟くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルイン・トゥーガン
アドリブ絡み歓迎

チッ、デカブツ相手とは面倒だねぇ!
だが、まぁ仮にも少将に戦争を教育するってのは面白いねぇ?
お偉いさんをぶっ潰すのは楽しそうだよっ

さぁ海兵隊と特務隊仕込みの戦争を教えてやるさね!
少将は【ゲリラ戦】を経験したことあるかい?なければ教えてやるよ!
対キャバリア歩兵用バズーカや地雷なんかで武装したゲリラ部隊で罠を張るさね
アタシがグレネードを避けながら機動性の差で翻弄しつつ攻撃して予定ポイントまで誘導するよ
罠にかけて動きを一時でも止めさせたら、一度組み付いてビームサーベルでメンテナンスハッチかなんかを破壊して中に爆弾装備のゲリラ兵を侵入させるよ
はっ!デカブツは中から制圧するに限るさね!



●大物殺しは泥臭く
『チッ、デカブツ相手とは面倒だねぇ! こんだけ攻撃してるってのにまだ落ちやしない……だがまぁ、仮にも少将に戦争を教育するってのは面白いねぇ? ふんぞり返ったお偉いさんをぶっ潰すのは楽しそうだよっ!』
 半壊状態の城塞機を前に、ルインの口ぶりには愉快そうな感情がありありと滲み出ていた。しかし、彼女の来歴を考えれば無理ならざる反応だろう。散々汚れ仕事を押し付けられて最後には蜥蜴の尻尾切り、一方の上層部は安全なところでほくそ笑む。そんな仕打ちを受ければ、こうもなろうというものである。
『さて、それならどうしてくれようか。知っての通りこの世界の花形はキャバリア乗りだ。なら、丁度いい。折角だ、海兵隊と特務隊仕込みの「泥臭い」戦争を教えてやるさね!』
 ボシュウと一つ信号弾を打ち上げれば、どこからともなく姿を見せるは無数の兵士たち。だが正規兵ではない。統一感のない装束と雑多な武装。いわゆるゲリラと呼ばれる兵種である。正面切っての戦闘力は軍人に劣るものの、何でもありの殺し合いであれば彼らの右に出る者は居ない。
『少将殿はゲリラ戦を経験したことあるかい? なければ嫌と言うほど教えてやるよ! お代は勿論、アンタの命さね!』
『その様な雑務など末端の兵がこなすべき仕事だ。しかし、対処法を知らぬ訳ではないぞ? コソコソと動き回る鼠は、大火力を以て炙り出すに限る!』
 ルインの号令一下で周辺へゲリラ兵が散らばるのと、城塞機が榴弾を放ったのはほぼ同時。甲高い音と共に地面が吹き飛ばされ、舞い上げられたゲリラ兵が宙を舞う。しかし、その程度で彼らの動きが止まることは無い。幾ら潰しても何処からともなく現れる数と底知れなさがゲリラの真骨頂。彼らは着々と大物殺しの為の下準備を進めてゆく。
『ええい! たかが歩兵、それも有象無象のゲリラ如きにこのフォートレスを攻略できるものか!』
『はっ、全く聞き飽きた台詞だよ。現場を知らないお綺麗な軍人の物言いだ。だったら恐れずに攻めてくると良いさ、口先だけじゃないんだろ!』
『ほざけぇっ!』
 飽くまでも見下した態度を崩さぬゴロプに対し、ルインは挑発の言葉混じりに攻撃を仕掛けてゆく。赤紫に紺を差した鮮やかなキャバリアは、背部と四肢に備え付けられたブースターで荒野を縦横無尽に駆け回る。そうして榴弾を回避しつつ、隙を見てビームアサルトライフルの短連射を叩き込む。
『どうした、その程度の攻撃では装甲表面を軽く焼くだけだ。余りにも貧弱だぞ、貴様もゲリラもな!』
『へぇ、そうかい。なら……コイツはどうだい?』
 ルインは後退して城塞機を引き連れつつ、ある場所で大きく跳躍した。それに気を取られたゴロプは照準を上へ上げつつそのまま直進し……下から突き上げるような衝撃に襲われた。
『っ! なんだこれは、爆発か!? おのれ、いつの間に……!』
『対キャバリア用爆弾をしこたま埋めた地雷原さね! アンタ、足回りの調子が良くないんだろう? 勿論、これで終わりじゃあないよ!』
 先に攻撃を仕掛けた猟兵たちによって、脚部重量を支えるエアクッションの機能が半減させられている。通常であれば問題ないはずの罠が、無限軌道とブースターに頼る現状では覿面に効いたのだ。加えて、更に畳みかける様に四方八方からバズーカが叩き込まれた。威力的には微々たるものだが、それらは敵のセンサー類を優先して破壊してゆく。
『何もわざわざ分厚い外側からの攻撃に拘る必要は無いさね。こうして一瞬でも足を止めさえすれば……!』
 そうして城塞機の動きが鈍った所で、ルインは敵本隊へと取り付いた。両手首に内蔵されているビームソードを起動させるや、他の猟兵によって暴き出されていたメンテナンスハッチへと突き立てる。四角を描く様にハッチごと装甲をくり貫くと、ロープを地面へと垂らしゲリラ兵を内部へと招き入れてゆく。
『貴様、まさか……!? 止めろ! さっさと離れろ、有象無象共が!』
『戦闘中にやめろと言われて、素直に頷く馬鹿が何処に居るんだい! こういうデカブツは中から制圧するに限るさね!』
 猟兵の意図を悟ったゴロプが城塞機をその場で旋回させるも、組み付いたルインは意地でも離さない。そうして侵入していた兵士たちが作業を終えて脱出してきたのを確認してから、ようやく装甲板を蹴って離脱した。全員が安全な距離まで離れたことを確認してから、傭兵は火器管制のスイッチを押す。
『はっ、精々派手に吹き飛びな!』
 瞬間、ゲリラたちによって仕掛けられた爆弾が一斉に起爆。無数のパイプやケーブルを焼き尽くし、荒れ狂う衝撃によって装甲板を内側から破壊してゆく。炎と煙が晴れた後にはまるで柘榴の如く無惨にめくれ上がった装甲板と、痛々しい傷跡を思わせる損傷部が剥き出しになっていた。
 そんな己の戦果と高級将校の鼻を明かしてやったという事実に、ルインは晴れ晴れとした笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルジール・エグマリヌ
ハイネマンは芯から
闘争の信奉者なのだね
善悪は兎も角、楽しそうな姿は良いな
私も、もう少し遊んで行こう

力と大きさを誇示されると
未知の力で悪戯したくなるよね
可愛いストラス、おいで
宝石みたいにキラキラの飴をあげる

いいかい、狙うのはあの大型機
カスパールから弓を連続で放ち
私がアレを牽制しておくから
その隙にお前もアレの真上へと
煌めく流星を降らせておくれ
お前が招いた流星群はきっと
アレの固い表層を凹ませる位は出来るだろう

グレネードランチャーは
軌道を見切って避けて
可能ならストラスが呼んだ流星に
撃ち落として貰いたいところ

あとは体勢を崩さないよう気をつけるよ
操縦棍は確りと握り締めて
衝撃は激痛耐性で堪えて見せよう



●地に城塞、天に輝石
『ハイネマンは芯から闘争の信奉者なのだね。善悪は兎も角、楽しそうな姿は良いな。賭けも勝負も、愉しみあってこそのものだろう。であれば私も、もう少し遊んで行くとしようか』
 長きに渡る防衛戦もいよいよ終盤。弓騎士の操縦席でハイネマンが開戦前に発した言葉を思い起こしながら、ヴィルジールは薄く微笑む。賭けし代価は金貨か命、待ち受けるは破滅と栄華の二者択一。愚かしいと理解していながらも、そこに妖しい魅力を感じるが故に人はのめり込んでゆくのだろう。であれば、そこに踏み込むのもまた一興か。
『それにしても、ああも力と大きさを誇示されると未知の力で悪戯したくなるよね? あの巨躯に見合うモノとなると……そうだね。可愛いストラス、おいで。宝石みたいにキラキラの飴をあげる。足りなければ、中佐殿からもねだると良いさ』
 そう青年が告げると、ふわりと音もなく一羽の鳥が弓騎士の周囲を舞い始めた。一見すればただの梟にしか見えぬが、その頭上には優美な王冠が輝きを放つ。これこそ大王の位階を冠する悪魔『ストラス』である。梟は騎士の肩に留まると、カメラのレンズ越しに召喚者へと視線を投げかけてきた。
『いいかい? 狙うのはあの大型機。カスパールから弓を連続で放って私がアレを牽制しておくから、その隙にお前もアレの真上へと煌めく流星を降らせておくれ。お前が招いた流星群はきっと、アレの固い表層を凹ませる位は出来るだろう』
 梟はホウと小さく一つ鳴き、遥かな天を仰ぎ見る。クルリクルリと首を巡らせれば、その相貌に浮かびしは疑問の色。天には業火の剣が張り巡らされている。その横槍は当然あるだろう。加えて、他の猟兵が既に似た様な手を使っていた。それでも良いのかと問う悪魔に、青年は小さな微笑を返した。
『それも織り込み済みだよ。何事も一度使ってお終いという訳ではないさ。逆に手札を敢えて見せるが故に、戸惑いを呼ぶことだってある。さぁ、それでは先方のお手並み拝見と行こうか』
 応ずるように声を上げ、梟は空へと翼を広げ。弓騎士は四脚にて駆け出し始めながら、手にした弓を引き絞る。瞬間、山なりの軌道を描いて矢が放たれた。落下の速度を載せた鏃は、甲高い音を立てて敵の装甲へと突き立つ。
『ゲリラの次は騎士崩れ……いつからハイネマンは見世物小屋の座長に成り下がったッ!』
『見せるのではなく魅せるのが生業である事は否定しないけれどね。さて、ストラスの準備が整うまで、暫し私と遊んでもらおうか』
 直射と曲射、二つの軌道を織り交ぜて矢を放つヴィルジールに対し、ゴロプはグレネードによる砲撃を以て応えた。青年は巨躯を射抜く点を必要とし、指揮官は動き回る敵を塗り潰す面による攻撃を求めたのだ。
 城塞機の機能が十全であれば、より濃密かつ苛烈な攻撃で一切合切を吹き飛ばすことが出来ただろう。しかし、半壊一歩手前の状態では動き回る目標を捉える事も難しい。一方の弓騎士も決定打となる火力を持ち合わせてはいないものの、そこは煌びやかなる大王へと一任している。
『ちぃぃいいっ!』
 そんな膠着状態に業を煮やしたのか、相手は砲身の冷却を半ば無視して強引な連射を敢行してきた。先程までとは比べ物にならぬ砲撃は、今度こそ弓騎士を呑み込んだかに見えた……が。
『残念だが、時間切れだ。狙いを誤たる事など無いだろうけど、威力が威力だからね。体勢を崩さぬよう、操縦棍はしっかりと握っておこう』
『これは……またか、またなのか! 殲禍炎剣が恐ろしくないのか、貴様らはッ!?』
 天に煌めく緋色の光条。そしてそれに一拍遅れて降り注ぐ、夥しい数の礫。殲禍炎剣によって打ち砕かれた流星群が、赤熱した石の雨と化して城塞機へと襲い掛かったのである。散弾の如きそれらは榴弾を木っ端微塵にするだけには飽き足らず、事前の宣言通り敵の装甲板を無惨にへこませてゆく。一方のヴィルジールは巧みに愛機を操って、流れ弾一つ掠めさせることなく回避していった。
『っ、こちらも回避を……二度目は耐えられん!』
 此処で以前受けた手痛い一撃が尾を引いた。再び超々高度からの一撃を喰らっては堪らないと、城塞機は流星群の落下地点から離れるべく慌てて機首を巡らせる。だが、それは弓騎士への警戒を解くことを意味しており。
『派手な演出で意識を集め、トドメの一手は時間を掛けず一瞬で。賭けも勝負も、そこは変わらないさ』
 弓騎士の放った一矢が敵機の頭部を射抜き、センサー類を鮮やかな手並みを以て粉砕するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
【路地裏】

……意見、近い感じ、かな
それが、命をかけた戦いなら、まだ、理解できるけど……
選別とか、そういうのに使うのって
"その子"が、可愛そうに思えてくるよ
……ああ、それとも
目的はなんであれ、"殺せ"れば、何でも良いのかな?

行動前に、ファンに、自分の上着を渡しておくよ
兄姉やバベルは、言うこと聞くか不明だし、仮面は外せないから、ね

相手の攻撃は、まあ、そのまま受けようか
恐怖を与えるとかで、ある程度、注目を惹きつけられれば、尚良し

コードを使用
攻撃全部受け止めて
呼び出すのは毒湯"煉獄夜叉"
虚空から、敵の機関銃を溶かす毒を流そうか
弾幕も、銃も、ついでに足も
とろとろになるまで、じっくり溶かしてしまおうか


勘解由小路・津雲
【路地裏】4名
古今東西の例を見るに、強すぎる抑圧は自らの寿命を縮める役にしかたたないと思うがな。
まあ自ら破滅の道をゆくものに、わざわざ助言してやるいわれもないか

【戦闘】
【式神賦活】を使用。せっかく新調した近接武器だが、あれに近づくのは辞めておこうか。
狐珀が足止めしてくれている間に、【玄武の錫杖】の力を借りて最大出力で主砲の精霊銃を発射。冷気の魔弾をお見舞いしよう。

それでもあの機体に致命傷を与えられるとは思わないが、なに、そこまでキンキンに冷えれば、ペインの毒液もよく貼りつくことだろうよ。

あとは、ファンの【援護射撃】にミサイルでも撃ち落としておくか。もっとも、あの動きなら必要ないかもしれんがな。


ファン・ティンタン
【POW】原初闘争
【路地裏】

あなた達はいつもこうだ
身に余るモノを振りかざし、さも己の力の如く語る
闘争したいなら殴り合いなよ
それこそ、純粋でしょう?

【真の姿】【混成合掌】
求煉、私の右腕じゃ不服だろうけれど、やるよ
自らが姿を解き、主の影を成す
鈍色を右腕に、背には漆黒を負い
過ぎし日の記憶を此処に

城を崩すのに城で挑む必要はない
いつだって、人の造りし物を壊すのは人だ

飛び跳ね、時に白黒の焔で焼き払い、人を狙うには過ぎた兵器を掻い潜る

―――ちげーよ、あたしがやり合いたいのはオマエじゃねー
狙うは、大将首だ
なぁ出てこいッ!
デカすぎる椅子から切り出して、その面ぶん殴ってやるよ!



……、っと
少し、記憶に浸り過ぎたかな


吉備・狐珀
【路地裏】

戦死したことにしなければ処罰もできないほど人徳がない、ということですか
正直、本当に戦死したのかと疑われそうですが

ウケ、敵の襲撃に備え私達の周りに結界を
全てを抑え込むのは骨が折れるでしょうがお願いします

巨体の割に動きが速いのは厄介
先制攻撃を仕掛け足止めさせて頂くとしましょうか
真の姿になりてUC【青蓮蛍雪】使用
ウカ、その宝玉で私の霊力の強化を
青き焔で凍結させ、その機動力と砲撃を封印する
ほんの一時でいい
私には信頼する強き仲間がいる
彼らが貴方に攻撃を仕掛ける時間稼ぎになればいい

凍結がとけたあとも
破浄の明弓で矢を連射し注意をひきつけ援護に徹する
ファン殿達の邪魔はさせませんよっ



●戦場へ赴く無数の者よ、使い潰されし数多の物よ
 バチリと、城塞機の頭部で電流混じりの焔が爆ぜる。センサー類の集中する箇所を破壊され情報収集機能が制限されたのか、散発的な牽制射を放ちながらも相手の動きは鈍い。しかし、あの巨躯で索敵手段が一つしか無いという事は在り得まい。そう時間も掛からずにサブシステムへと切り替えて戦闘を再開するはずだ。
 そんな束の間の小康状態の中、四つの人影がその威容を遠巻きに観察していた。この最終局面にて遂に合流を果たした【路地裏野良同盟】の面々である。
「古今東西の例を見るに、強すぎる抑圧は自らの寿命を縮める役にしかたたないと思うがな。情治のみでは無論腐敗の温床と化すが、さりとて末端の意を組めぬ政に先はない。まあ自ら破滅の道をゆくものに、わざわざ助言してやるいわれもないか」
「寧ろ、戦死したことにしなければ処罰もできないほど上の者に人徳がない、ということですか。正直、それはそれで本当に戦死したのかと疑われそうですが……それすら気付けぬ程に、余裕が失われているという事でしょう」
 眉を顰める津雲の言葉に、狐珀もまた悩まし気に首を振る。大国側にも彼らなりの論理が在るのだろうが、傍目から見れば悪手に愚策を重ねている様にしか見えなかった。オブリビオンマシンによる思想汚染の影響だとしても、ここまで捻じ曲がるのであればそれ相応の下地があったとも考えられる。どのみち、大国が過去形で語られる様になるまで、そう時間は掛からないかもしれない。
「ハイネマンと……意見、近い感じ、かな。それが、命をかけた戦いなら、まだ、理解できるけど……本来の目的とは違う、選別とか、そういうのに使うのって、"その子"が、可愛そうに思えてくるよ」
 その横では目を細めて城塞機を観察していたペインが、者ではなく物としての視点からそう呟きを漏らす。彼らヤドリガミと違って、戦争に使われる兵器は総じて短命だ。破壊、損失、故障が前提の量産品。ワンオフ機であろうと四半世紀も経たぬうちに性能を後発に追い抜かれ、良くて博物館行き、悪ければ鋳潰されて鉄屑へと逆戻り。そんな悲哀を彼は感じていたのだろう。されども、今の鉄騎から感じられるのは乗り手と同じ血に濡れた闘争本能のみ。
「……ああ、それとも。目的はなんであれ、"殺せ"れば、何でも良いのかな? もう既に、過去からの脅威と、成り果てた。であれば、それこそが造られた"役割"に、他ならなくて……」
「それでも、物は飽くまでもモノに過ぎない。包丁が食材を切るか、人を斬るかは使い手次第だと言うのに……まったく、あなた達はいつもこうだ。身に余るモノを振りかざし、さも己の力の如く語る。まるで玩具を与えられた幼子だよ」
 青年の独白に対し、荒々しい言葉を返したのはファン。彼女は常々、自らが誰かに使われべき器物だというスタンスを崩したことは無かった。それ故に、キャバリアの機能を己自身の力とはき違えている相手の姿に苛立ちを覚えたのだろう。或いは、物に使われる者という構図が受け入れがたかったか。
「……闘争したいなら殴り合いなよ。それこそ、純粋でしょう? モニター越し、マニピュレーターを通した闘争だなんて、あの戦争狂風に言えば『無粋』に過ぎる」
「なるほど、正面切ってのタイマンがご希望、と。ならば、ヤツの足を止める必要があるな。だが、あれだけのデカブツだ。穴、綱、力……さてさて、何が良いかね?」
 白き刀の激情に津雲は微苦笑を浮かべつつも、小さく頭を掻く。それが要望と在らば、少しばかり知恵を回すのもやぶさかではない。そんな仲間の様子に気付いたのか、狐珀もまた小さく頷く。
「見た限り、この周辺はどちらかと言えば乾燥地帯です。砂塵や荒れ地に対する対策はしておりましょうが、その逆ならば手薄いはず。まずは私と津雲殿で……」
 各々の能力と特性など、今更確かめる必要も無い。時間が余りない状況にも関わらず、ならばと頭を付き合わせた二人は一計を案じる事に成功した。そうして手早く情報共有と打ち合わせを終えるや、四人は各々の役割を果たすべく行動を開始する。
「……あ、そう言えば。万が一もあると思うから、これを渡しておくよ」
 と、そんな時。ふと思い出したようにペインは上着を脱ぐと、想い人の肩へそっと掛けた。これから行う作戦に不安はないが、『組み合わせ』が悪ければ愉快な事にはならない。それを鑑みての事である。
「嫌ってはいないと、思うけど。兄姉やバベルは、言うこと聞くか不明だし、仮面は外せないから……ね?」
「うん……ありがとう。多分、ちょっと荒っぽくなるだろうから。出来る限り、無事に返すようにするよ」
 そうして、二人もまた別れる。四人に不安の色は無かった。如何な巨躯、どれほどの強敵を前にしても……負ける未来など、微塵も感じられなかったが故に。
 彼らの視線の先では、システムの最適化を終えた城塞機が再び動き始めようとしているのであった。

「さて、まずは私からですね。ここで躓けば、他の皆さんにまで影響が及んでしまう……責任重大という訳です。ウケ、全てを抑え込むのは骨が折れるでしょうが、どうかお願いしますね?」
 そうして、まず先鋒を買って出たのは狐珀である。彼女が足元に付き従う白狐をそっとひと撫でしてやれば、コンと一声鳴いて小さくも強固な結界を展開してゆく。最初の目標を達成するまで、狐像の少女は術式に専念する必要があった。故に、護りはこの従獣が頼み。白狐の双肩に掛かる責任もまた重大なのである。
「巨体の割に動きが速いのは厄介。幾らか減じているとは言え、それでもまだまだ人の脚力を優に超えます。まずは先制攻撃を仕掛け、足止めさせて頂くとしましょうか」
 そうして少女は自らの相貌を狐面で覆い隠し、神楽鈴を持ちて舞を踏む。鈴が鳴りては冷焔が一つ、大地を踏めば狐火二つ。更にはそれに合わせて跳ねる黒狐の宝玉が輝けば、蒼炎が三つ――と。身を振るうたびに冷たき熱は増えてゆき、最終的にその数は九十余りにまで増えていった。
「言の葉のもとに魂等出で候……さぁ、それでは始めましょうか?」
 準備が整ったとあらば、後は挑むのみ。術者の意に従った狐火は、青白い火の粉を散らしながら城塞機へと殺到してゆく。狙うは足回り、完全に動きを止めずとも良い。一瞬、ただそれだけで次へと繋がるのだ。しかし、敵も当然ながら乗機に発生した異常に気付かぬ程愚かではない。
『なんだ、凍結警報だと? こんな乾燥した場所では考えられん。となると、またぞろハイネマンの手の者か……何をしたかは知らんが、馬鹿め。こんなもの、早々に溶かしてくれるわ!』
 城塞機は常に脚部履帯と加速用のバーニアを稼働させて凍結防止に努めながら、周囲へ向けて榴弾をばら撒き始めた。爆炎の熱で氷を溶かしつつ、下手人を吹き飛ばそうという魂胆なのだろう。
 撒き散らされる衝撃と熱が狐珀へと襲い掛かるも、彼女は一刻も早く凍結を完了させるべく術式に全神経を集中させている。下手に動き回ることは出来ない。故にこそ、白き霊狐が全身全霊を賭した結界を以てそれらを全て受け止めてゆく。
「ウケ、もう少しだけ耐えてください! ほんの、一時でいい……! 誰も信じられぬそちらと違って、私には信頼する強き仲間がいる。彼らが貴方に攻撃を仕掛ける時間稼ぎになれば、それで十分です!」
 拮抗していた溶解と凍結のバランスが、徐々に後者へと傾き始めた。じりじりと、赤鉄の装甲板に霜が纏わりついてゆく。しかし、グルンと罅割れた敵の頭部センサーが狐珀を射抜いた。このタイミングで相手が猟兵の位置を割り出したのだ。
『……ほぉう、其処に居たのか。妙な技を使いおって』
『っ! あと、もう少しなのに……!』
 城塞機が両腕の重砲を差し向けてくる。如何に強固な護りとて、あの直撃を受ければただでは済むまい。凍結完了まで残り十数秒。だが、無慈悲にも必殺の暴威を内包した榴弾は少女目掛けて放たれ……。
「……オン、八将神、来臨守護、急急如律令! 近づくのは止めておこうかとも思ったが、これくらいならば問題は無かろう。後鬼、新調した近接武器の切れ味を見せてやるが良い!」
 着弾するよりも前に、それは中空で切って落とされた。予定よりも早いタイミングで起爆した榴弾の爆煙より、勢いよく飛び出してくるのは二脚機の姿。機を窺っていた津雲が仲間の窮地を見るや、瞬時に急行させたのである。
 八将神が一柱を降ろした後鬼は左右に展開したビームサイズで榴弾を迎撃した後、その爆発的に強化された機動力で荒野を走り抜けてゆく。そして、それによって稼がれた時間により、狐珀の術が遂に城塞機を捕らえた。
『ちぃっ、榴弾の熱が途切れたことで凍結が進んだか! しかし、この程度であれば……!』
 ガキリと、つんのめる様にして城塞機が急停止する。だがゴロプの言葉通り、これもそう長くは持たない。すかさず少女は陰陽師へと叫ぶ。
「津雲殿、余り長くは抑え込めません! ですから……っ!」
「相分かった! さぁ、駄目押しで行くぞ!」
 それを受けた津雲は、後鬼に搭載された精霊銃の照準を城塞機へと合わせる。普段は錫杖と化している玄き亀の助力も得て、既に砲身内部には十分すぎる魔力が蓄積されていた。敵が動き出すよりも先に、彼は主砲発射の命を下す。
「貴様にとっては直ぐに溶け消えるものであろうとも、二人掛かりで在ればより強固な冰と化す。さぁ、冷気の魔弾をお見舞いしよう!」
 そうして、最大出力で解き放たれた真白き弾丸が城塞機の脚部へと命中するや、内部まで浸透していた狐珀の狐火と結合。一瞬にして氷塊へと変じ、がっちりと動きを封じていった。しかしくどいようだが、相手の大きさが大きさだ。一射のみでは到底足りぬ。津雲は大きく弧を描く様に城塞機の周囲を旋回させながら、後鬼による砲撃を継続してゆく。
『おのれちょこまかと……これでは主腕の重砲では射角が取り切れん! 止む終えん、機銃による追尾に切り替えろ!』
 重砲では追いきれぬと判断し、ゴロプは攻撃手段を機体各所に搭載された機銃砲塔へと変更した。途端に雨あられと降り注ぐ弾丸によって、瞬く間に地面へ無数の弾痕が穿たれる。
(後鬼がキャバリアよりも小さい無人機かつ、式神による駆動でこれほど助かったと思うことは無い……もしそうでなければ、スクラップへ逆戻りしかねんな)
 如何に能力が底上げされていようとも、無傷で済むほど生温い弾幕ではない。既に幾つか命中弾を受けているものの、電気ではなく式神による霊力操作のため大事には至っていなかった。そのまま精霊銃による砲撃を継続させ、念入りに相手を氷漬けにしてゆく。
『先の小娘はこの為の下準備という訳か……だが、それでどうする? 動きを止めた所で、貴様らにこのフォートレスを討つだけの火力があるようには思えんが』
「おいおい、焦るなよ。こっちだって、これだけでソイツに致命傷を与えられるなんて思っちゃいない。だが、ここまでキンキンに冷えれば……ペインの毒液もよく貼りつくことだろうよ」
 さぁ、最後の仕上げは頼んだぞ?
 陰陽師の意図が読み取れず、訝し気な表情を浮かべるゴロプ。だが、その真意は直ぐに理解するところとなる。センサー上に表示される小さな光点。それは人間サイズの物体が急速に接近しつつあることを示していた。
『これは、徒歩で接近する歩兵? 待て、未だに機銃による弾幕掃射は継続しているのだぞ。幾ら動けぬとは言え、これを止められぬ訳が……』
「確かに、ただの人間なら、そうだろうね……でも、自分はちょっと、普通じゃない、よ?」
 モニターに映るのは赤髪の青年。彼は大地を蹴り、岩を足場に跳躍し、転倒ギリギリまで身を低くして城塞機目掛けて突き進む。ゴロプもまたペインを血霧に変えるべく火線を集中させるも、猟兵は苦も無くそれを掻い潜る。言葉通り、それは到底常人には成し得ぬ動きだ。
『じゅ、銃身が焼けついても構わん! 連射速度を上げろ、奴を近づけさせるな!』
 このままでは埒が明かぬと、城塞機は火器管制リミッターを解除。銃身寿命と引き換えに倍近く跳ね上がった連射速度により、今度こそ指潰しの歩みを止めんと試みる。それに対し順次対応しながらも、ペインは短く思考を巡らせてゆく。
(距離的には、もう、十分詰められた……でも、もう一押し、欲しいよね?)
 そんな結論に至ると、なんと彼は無造作に歩みを止めてしまった。戦場に置いて足の止まった目標ほど狙いやすいものはない。瞬時に自動照準が青年を捉えるや、猛烈な勢いで弾丸を浴びせかけてゆく。余りの数に地面すら耕され、濛々と赤茶けた土煙が充満し視界を遮る。
『は、ははっ! やった、やったぞ! 如何に貴様が強靭だろうと、対キャバリア用徹甲弾を耐えきれることは不可能だ!』
「…………そう、その通り。それが普通で、当たり前。だからこそ、そんな現実を覆せるから」
 ――自分は猟兵(イェーガー)なんだ。
 煙が晴れた時、そこにあったのは赤黒い肉片ではなく無傷のまま佇むペインの姿であった。荒れ果てているのは大地のみ、青年から見て取れる変化らしい変化は多少土埃で煤けた程度か。
『あ……あり得ん。何なのだ、いったいハイネマンの奴は、何を招き入れたのだ!?』
 与えた原因と引き起こされた結果、その間に生じた明らかな齟齬を前にゴロプは絶叫する。だが、これが異能に依って齎されたものだとわざわざ告げてやる義理も無し。ペインはそのまま残りの距離を詰めるや、虚空へ向けて手を差し伸べた。すると、何処からともなく現れた竹筒が掌の内へと納まる。
「上げてから、落とす。予想以上に、効いたみたいだね……それじゃあ、手早く済ませるとしよう。弾幕も、銃も、ついでに足も。とろとろになるまで、じっくり溶かしてしまおうか……凍らせてじわじわとも、良いかもしれないね」
 栓を抜いて中の毒湯を振りまけば、それらは機銃砲塔を覆う防楯を溶かし始めた。しゅうしゅうと煙を立てて穴が開き、内部機構や弾薬の給弾システムを侵し腐食させる。試しに脚部へと注いでみれば、津雲と狐珀が浸透させた冷気と反応。毒々しい色の霜となって装甲へと張り付いてゆく。液体時と比べて速攻性には劣るものの、持続性に関しては此方の方が良いかもしれない。
 ともあれ、城塞機は完全にその場へと縫い留められた。これにお膳立ては終了だ。
「それじゃあ……ファン。思う存分、決めると良い、よ」
 そうして青年が視線を向けた、その先では――。
「……本来の主と共に戦場を駆けさせて上げられなくて済まないね。同時に、私の我儘に付き合ってくれて感謝を。それに求煉。私の右腕じゃ不服だろうけれど、やるよ」
 白き少女が、赤茶けた大地に佇んでいた。彼女の周囲には緋銀色の義骸や指潰しの上着など、仲間たちが預けた無数の物品が集積されている。それらは一人でに浮き上がると、少女の元へと寄り集まり始めた。
「――モノ共此処に出会え、我らは異なるも近しきモノなり」
 そして白き少女もまた人のカタチから、本来の姿へと己を戻す。一振りの白き刃を中心として数多の器物たちが混ざり合い、溶け合い、再び人の形を形成し始める。
「自らが姿を解き、かつて見た主の影を成す。鈍色を右腕に、背には漆黒を負い、過ぎし日の記憶を此処に。例えそれが摸倣であり、いつかの残響だとしても。この記憶に偽りはなく……」
 普段は白色の髪に黒の房が一つ入るのみだったのが、反転。短く切り揃えられた黒髪の中へ、斑に白が混じる。背格好はほぼ同じであるが、顔立ちはやや負けん気が強そうで。白の上衣に緋の袴、右手には鋼の義腕を嵌め、背に黒羽の外套を纏いて降り立つは、飄々とした乙女の姿。彼女が白き少女と同一人物であると示すのは、未だ閉じられ続ける右瞳のみ。
 そうして変容を終えた啄木鳥は、じっと一つだけの瞳で城塞機を見据える。
「……城を崩すのに、何もわざわざ城で挑む必要はない。いつだって、人の造りし物を壊すのは人だ。だからこそ、この姿が必要だった」
 そう小さく呟きを漏らしながら、彼女は地を蹴った。普段と些か体の勝手が違うも、行動に問題はない。幾度、その手に握られ振るわれたのか。刃身一体、全て我が事として把握済みである。一方、接近警報によってハッと我に返ったゴロプもまた、新たな闖入者の存在を知覚した。
『また、新手だと! くぅぅぅ、腕部重砲は追従性能が劣悪、機銃砲塔群は現在無力化中……ならばもう、これしかなかろうがッ!』
 それがベストではなく、もはやそれしか残っていないという有様。だが選んだ兵装とて、強力である事に変わりなし。城塞機の背部コンテナハッチが次々と開くや、その内部より無数のミサイルが吐き出され始めた。頭上より飛来するミサイルは機銃よりも強力で、榴弾よりも追尾性に優れる。しかし、それらを前にしても少女は揺らぐことはない。
(こんなもの、ダ■■レ■連中に比べれば可愛いものだよ。まぁあれもあれで、キャバリアとはまた別物ではあったけれど)
 鋼に覆われた右腕を振るうや、その表面に黒白の焔が湧き上がる。それらを束ねて頭上へ向けて展開すれば、地獄の炎に呑まれたミサイル群が次々と自爆してゆく。パラパラと舞い落ちる鉄屑を振り払いながら前へ、ただひたすらに前を目指して突き進む。
『これすらも……だったらなぁぁああああッッ!』
 ミサイルすら効かぬとあらば、もはや手は一つ。城塞機は下限一杯にまで主砲の仰角を下げるや、最大最強の火力を以て進撃を止めようと試みる。その砲身を睨みつけ、少女もまた吐き捨てる様に啖呵を切った。
「―――ちげーよ、あたしがやり合いたいのはオマエじゃねー。どんだけデカかろうが強かろうが、お呼びじゃねぇんだよっ!」
 放たれた小型バスほどもある砲弾。音速を優に超えて迫り来るそれに対し、少女は躊躇う事無く跳躍した。回転する砲弾へ一瞬だけ足を着け、その遠心力を吸収。地面へ着弾したそれの爆風すらも追い風として、城塞機本体の懐へと吶喊する。こうなればもう、行く手を塞ぐものは何もない。
『な、あぁ……!』
「あたしの狙いは、端っから大将首だけだ。なぁ出てこいッ! デカすぎる椅子から切り出して、その面ぶん殴ってやるよッ!!」
 少女は右腕の義骸、その拳を思い切り握り締めるや、焔を纏った渾身の右ストレートを叩き込む。それは装甲板へ拳の跡を深々と刻みこみ、城塞機を黒白の焔による業火の柱で飲み込んでゆく。あと一撃、それで敵指揮官を引きずり出せると踏み、コックピットハッチへと手を伸ばす……が。
『っ、脚部の凍結が……よし退避、退避だ! 全力で後退しろ!』
「あ、てめぇ、待ちやが……うわっ!?」
 その熱によって脚部を覆っていた氷が蒸発してしまっていた。相手は機動力を取り戻したと見るや否や、全力で後退を開始。猟兵たちから距離を取るべく離脱してゆく。その衝撃で少女は機体より引き剥がされるも、呆けてはいられない。ただでは転ばぬとばかりに、置き土産代わりのミサイル付きだ。
「ファン殿、大丈夫ですか! ミサイルはこちらで受け持ちますので、どうか後退を!」
「やれやれ、行きは良い良い帰りは怖い、と。念のため警戒していて良かったな」
 あわや至近弾を喰らうかと言う直前で、飛び込んで来た弓矢と冷凍弾がそれを叩き墜とす。万が一に備えて待機していた狐珀と津雲による援護射撃である。彼らのお陰で辛くも難を逃れることは出来たものの、城塞機は既に射程圏外へと逃げおおせてしまっていた。遠のく機影を見送りながら、器物との結合を解いたファンは深々と息を吐く。
「ふぅ……いまのはちょっとヒヤッとしたね。少しばかり、記憶に浸り過ぎたかな」
「お疲れ様。何はともあれ、無事なようでなにより、だよ?」
 そんな白き少女を気遣う様にペインが駆け寄ってくる。ファンは肩にかけていた青年の上着を少しばかり名残惜しそうに脱ぐと、感謝を述べつつ手渡した。
「ん……これ、返すよ。被弾らしい被弾もしなかったし、無事なはずさ」
「ううん。もし、傷ついていたとしても、ファンが無事なら、それで良いから」
 青年のそんな言葉に、ファンはふっと肩の力を抜いて微笑を浮かべる。とその時、異能を行使した影響だろうか。ふと或る記憶が脳裏に浮かび上がった。
(ああ、そう言えば。明日は丁度、主の――)
 誕生日だったな、などと思い起こしながら。白き刃は指潰しの青年を伴って、無事だったかと声を掛けてくれる陰陽師と狐像の少女へと手を振り返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小和泉・佳奈恵
【同波長組】
あれが敵の決戦兵器……
悔しかけど、ぼくの機体にあれを打破出来る武器はなか。
できることは多くない。その多くない選択肢から最良を掴まんと、あの機体には勝てん!

あれも人間が操る兵器なら、中の人間が急所になるはず。
水棺からの思念転写を最大出力で放射、パイロットの脳に直接幻像をプロジェクションする。
見せるのはセンチネルの複製。単機では脅威になり得ないと敵もわかるやろうけど、大隊、連隊規模なら?
味方の居らん方から逐次幻影を投入、火力をそっちに誘引しつつ敵の機動を抑制するよ。
幻影の数が多い分、水棺の演算能力をそっちに回すからその間機体は地面の亀裂にでも隠しておこう。
みんな、後は任せた!


貴司・忍
【同波長組】
へぇへぇなるほど
やべぇな、彼我の戦力差がきついどころじゃないんだが…
極めて個人的にあれの中身を全力でシメねぇと気がすまん
すまねぇ二人とも、ちょっとお膳立て頼むわ

後方で待機、エンジン暖めとく
ティーが敵を痺れさせるまでに、探査ブレードで敵のコクピット位置を割り出す
ティーの攻撃が始まった所でコード発動
距離を稼いだ分だけ更に加速、弾幕をすり抜け、機体を突っ込ませる
要塞兵器が相手とありゃあ開天組がやることは一つだ
量産型の強み、肉弾特攻!
全長5mの質量兵器【六号開天】を食らいやがれ!
んでできれば機体突っ込ませて食い込ませた後にコクピット開き、あたしも生身で奴にロケランぶっこむ吹き飛べおらぁ!


ティー・アラベリア
【同波長組】
アハハッ!要塞型キャバリアと戦うのは何時もながら楽しいですね♪
今回は佳奈恵さんと忍さんもいることですし、搦め手を使う事に致しましょう

佳奈恵さんの攪乱で生じる敵の混乱に乗じて、別方向から熱光学迷彩を展開しながら接近
敵の懐に飛び込んだタイミングでUCを発動し、魔導炉を全力稼働
魔力属性変換機構で魔力に電磁属性を付与し、不意を打つ形で92式の全力砲撃を実施
所謂EMP攻撃ですね☆
強烈な電磁パルスで敵の電子系統を破壊し、その隙に戦闘機動機構で直上に遷移
今度は炎属性の魔力を込めた砲撃で機銃の銃身を融解、弾薬を誘爆させつつ、純魔力の90式の全力射撃で敵の装甲を破砕致します♪
汚い花火になぁれ☆



●高らかに歌え、勝利の凱歌を
『へぇへぇなるほど、単騎で国を落とす戦略級のデカブツねぇ。うん、こいつぁやべぇな。正直言って、彼我の戦力差がきついどころじゃないんだが……』
『あれが敵の決戦兵器……悔しかけど、ぼくの機体にあれを打破出来る武器はなか。できることは多くない。やけん、その多くない選択肢から最良を掴まんと、あの機体には絶対に勝てん!』
 既に十を軽く超える戦闘を経て、未だ城塞は落ちず。取り付けられた武装は少なくない数が機能を喪失し、装甲はあちこちが無残に打ち砕かれ、超重量を支える脚部は歪み、内蔵動力炉も複数が破壊され……それでもなお、この規格外キャバリアは稼働し続けている。その威容を前にさしもの忍も瞠目し、佳奈恵は自らの持つ手札を再確認しながら取れる手を模索し始めてゆく……一方で。
「アハハッ! 要塞型キャバリアと戦うのは何時もながら楽しいですね♪ 先陣を切ってくれた皆様のお陰で突破口は幾つか見えていますし、さてどこから挑むとしましょうか?」
 相変わらずと言うべきか、ティーだけはころころとした笑みを浮かべていた。虚勢ではなく、真実愉しんでいる様子が言葉尻から滲み出ている。それを聞いた警備員と傭兵は顔を見合わせつつ、思わず苦笑を浮かべてしまう。
『ティ、ティー君はほんと変わらんけんね……まぁ、ガチガチに緊張するより良かと思うよ』
『はっ! でも確かに、相手のデカさにビビるなんざアタシらしくもねぇわな! それによくよく考えれば、極めて個人的にあれの中身を全力でシメねぇと気がすまん。すまねぇ二人とも、ちょっとお膳立て頼むわ!』
 だが、それにより張り詰めていた精神が良い具合にほぐれたのだろう。佳奈恵の肩から過度な力みが抜け、忍は彼女本来の負けん気を取り戻す。そうしてどうあの巨体を攻略すべきかと三人で言葉を交わし合う中、奉仕人形はこれならばどうかとある提案を口にした。
「そうですね、真正面から真っ向勝負も面白いですが……今回は佳奈恵さんと忍さんもいることですし、少しばかり搦め手を使う事に致しましょう」
 そう悪戯っぽく微笑を浮かべながら、彼はそっと城塞機へと視線を流すのであった。

『あれも人間が操る兵器なら、中の人間が急所になるはず……どれだけ機械が優秀でも、最終的に判断を下し操作するのはパイロットやけん。その制約からは逃れられんはず』
 そうしてまず先んじて動いたのは先の市街地戦と同様、佳奈恵の駆る『センチネル』であった。先程も言っていた通り、彼女の持つ純粋な打撃火力では敵機の護りを貫通する事は難しい。だが、それ以外ならば話は変わってくる。彼女が電脳の演算リソースを注いでいるのは『クヴェレの水棺』と称される統合戦域管制・人員防護システムだ。
『水棺からの思念転写を最大出力で放射。敵パイロットの脳を目標として、直接幻像のプロジェクションを開始……複製対象はセンチネルを選択。数は出来る限り、最低でも連隊規模!』
 それは対邪神用の精神干渉フィルタリング機能も備えている。本来であれば外界から齎される呪詛や狂気を防ぐ為の装置だが、指向性を反転させてやれば他者の精神へと働きかける事も可能なのだ。先のサイクロプスやナイトゴーストを見るに、大国側は魔術や神秘方面の技術が発達していない。故にフォートレスも同様と踏んでの一手だったのが、果たしてその結果は……。
『なんだ、今更になって有象無象がぞろぞろと。フォートレスが手負いとみて、勝負を決めにでも来たか。舐めるなよ……この機体は本来、この様な一体多数にこそ本領を発揮するのだッ!』
 効果覿面だった。城塞機は雄たけびを上げながら、榴弾や機銃弾を何もない大地へと降り注がせてゆく。傍から見れば間抜けな光景だが、ゴロプの主観意識には殺到してくる連隊規模のセンチネルが見えているはずだ。陽動には大軍をこそ当てるべし。佳奈恵は作戦が上手くいったと安堵しつつも、減じても尚圧倒的な暴威に内心舌を巻く。
(単機では脅威になり得ないと敵もわかるやろうけど、やっぱり数を増やしたら食いついたけんね……これがティー君や忍ちゃんに向けられなくて、本当に良かったい。幻影が多いぶん水棺の稼働に専念せんといけんし、一先ずはこのまま待機やね)
 流れ弾に当たっては堪らないと乗機を亀裂の中へと隠しつつ、警備員は仲間へと通信を飛ばしてゆく。
『敵の注意は完全に逸れたけん! みんな、後は任せた!』
「ええ、陽動ありがとうございます。それでは……参りましょうか」
 それを受け、次にティーが動き出す。彼は万が一に備えて熱光学迷彩を展開しつつも、悠々とした足取りで城塞機へと近づいてゆく。砲口がこちらを向いていないとは言え、現在進行形で無数の鉄量が飛び交い大地を鳴動させている。にも拘らず、奉仕人形はまるでピクニックにでも出かけるような穏やかさだ。これから為すことを考えれば、差し詰めモロッコの恐怖か。ある意味、三人の中で彼が最も『キテいる』と言えるかもしれない。
「そうなる様に仕組んだとはいえ、些か以上に拍子抜けですね。とは言え、これ以降は嫌が応にも騒々しくなるでしょうけれど♪」
 そう言うや、ティーは脚部浮遊ユニットを起動させてふわりと浮き上がり、動き回る城塞機へと飛び乗る。彼は最適な位置を見定めて装甲を駆け登ると、己の胸へと手を当てた。
「現実すら捻じ曲げる悪夢の後には、全身が痺れる程の刺激を……甘く蕩ける魔力を、どうかたっぷりとご賞味あれ!」
 瞬間、魔導炉のリミッターがカットされ、瞬間的に膨大な量の魔力が溢れ出す。奉仕人形は魔力属性変換機構によって無色透明な奔流へ電磁属性を付与。手にした92式火力投射型魔杖を用いて指向性を与える事により、城塞機の中央部で強烈な電磁放射を行ったのである。
『システム障害……!? 馬鹿な、何時の間に取り付かれていた! クソッ、機体が思うように動かん! サブシステムへ切り替えつつメインサーバーを再起動、復旧を急げ!』
 それは一般的にEMPと呼称される攻撃を遥かに超えており、如何に強固な対策防護をしていても防ぎきれるものではなかった。各所から稼働状態を表す明かりが消えてゆき、目に見えて城塞機の動きが鈍ってゆく。
「さてさて、彼方も此方も時間が無いのは一緒ですからね。手早くきっちり片付けてしまいましょうか」
 しかし、これだけの大規模攻撃を行使してティーも無事という訳にはいかない。魔力の過剰供給によって、限界を迎えた後は一時的な休眠状態へと陥ってしまうのだ。今の一撃に費やしたのがおよそ二十秒強。予測稼働可能時間は……約一分。
 それを無駄にはすまいと、彼は敵の直上目掛けて飛翔。真下で四苦八苦している相手へと、手にした魔杖の砲口を向ける。
「歯抜けで欠けているのは気持ちが悪いですしね……いっそ、全部綺麗さっぱり潰してしまいましょう♪」
 ――汚い花火になぁれ☆
 そう言うや否や、奉仕人形は当たるを幸いに超高温の砲撃を撃ち降ろし始め、次々と機銃砲塔を焼き払ってゆく。内部弾薬が誘爆する衝撃にとうとう耐え切れなくなっているのか、砲塔が吹き飛ぶたびに周囲の装甲板がバラバラと崩壊していった。
『なんだ、様子がおかしい……この大軍は、まさかデコイか!? は、ははっ! よくも謀ってくれたなぁぁぁあああああっ!』
 だがここに来てようやく、ゴロプも己の異常に気付いたのだろう。嚇怒の絶叫を以て、辛うじて稼働可能な腕部重砲を頭上へと向けてきた。当たれば粉々になる事は必至だが、回避は十分に可能だ。ティーは上昇して射程圏内から離脱しようする、が。
「あ、ら? これはちょっと、不味い、ですね……!」
 限界が近づいているせいか、思う様に躯体が動かない。それどころか僅かずつではあるが高度が低下している。非常にまずい事態だと頭では理解しながらも、身体は命令を受け付けてくれなかった。そうして敵の砲撃が放たれる……寸前。
『だらっしゃぁあああっ! アタシの仲間に何しようとしてんだテメェッ!』
 ガォオン、と。甲高い衝撃音と共に城塞機が横へとズレた。そのせいで狙いがずれ、辛くもティーは直撃から逃れる事に成功する。何事かとそちらへカメラを向けた敵指揮官が見たのは、脚部装甲へ半ば機体をめり込ませた紫灰色のキャバリア。それは勿論、忍が搭乗した六号開天だ。
『ふぅー、間に合って良かったぜ! エンジンを暖めておいた甲斐があったな!』
 敵の動きが完全に止まるまで、忍は乗機をアイドリング状態にしたままずっと遠方で待機していたのである。彼女はティーが仕掛けた直後、機体を発進させて加速を開始。仲間が窮地に陥ったと見るや、躊躇う事無く捨て身同然で助けに入ったのだ。
『こっから先はアタシの出番だ! 佳奈恵、ティーを頼む!』
『任せて! さぁ、こっちへ!』
 幻影が見破られたとあっては、これ以上水棺を起動させておく理由はない。プロジェクションを停止させた佳奈恵もまた戦場へと急行しており、昏睡状態へ陥る寸前のティーをマニピュレーターでそっと受け止めながら離脱する。
「すみません、詰め切れませんでしたね……残念です」
『ううん、気にせんでも大丈夫とよ。後は忍ちゃんが絶対に決めてくれるけん。目が覚める頃にはきっと終わってると思うから』
 そうして目を閉じる奉仕人形へ声を掛けつつ、警備員は後方へとカメラを向ける。その先では大小二機のキャバリアが真っ向からぶつかり合いを繰り広げているのであった。

『仲間の為に危険を冒すとは、何たる未熟! 戦場では非情になり切れぬ者から斃れるものだ。現に奴は仕留められなかったものの、今ので再起動までの時間を大きく稼げた。結果的に敵へ塩を送ったのだよ、貴様は!』
『べらべらべらと、男のくせに鬱陶しい! ああそうだ、アタシが気に食わねぇのはな、アンタのその仲間を仲間とすら思わねぇ態度だ!』
 徐々にではあるが敵のシステムが復旧し、各部の兵装が息を吹き返しつつある。機銃弾幕が空を覆い、榴弾の華が咲き、ミサイルの雨が降り注ぐ。忍は持ち前の機動力でそれをいなしながら、通信機越しに吼えていた。
『殺し合いなんだ、綺麗ごとだけじゃあ済まねぇ。止む終えない犠牲ってのは勿論あるだろうさ。だがな、ゴミの様に使い潰してあまつえさえテメェの手で消し去るだぁ? 認められるかよ、そんなもんッ!』
 貴司忍という傭兵少女が頻繁に口にする開天組。それは彼女が自らの故国を守らんと、不良仲間たちと共に立ち上げた愚連隊の事である。言動こそ粗雑なものの、幾度もの危機を跳ね返した腕っこきの特殊攻撃部隊。その快進撃を支えた原動力こそ、隊員同士の何よりも固い紐帯によるところが大きい。
 それだけに、ゴロプのやり口だけは絶対に受け入れることが出来なかったのだろう。
『ハイネマンだってはっきり言ってロクデナシさ。だがな、少なくともアイツは自分の命を部下と一緒に張っていた。だけどテメェはそれすらせずに、最後まで高みの見物を決め込んだ! 上に立つ器じゃねぇんだよ、エセ少将!』
『はっ、はははは。随分な物言いだな、口喧嘩ではやはり女に分があるようだ。だがここは戦場だ。戦場とは闘争をする場所なのだろう? であればどうする。この許せぬ私をいったいどうするッ!』
 火力勝負ではどう足掻いても相手に分がある。ならば、猟兵側が勝っている要素とはなんだ? そんなもの、決まっている。
『……要塞兵器が相手とありゃあ開天組がやることは一つだ。量産型の強み、肉弾特攻! それしかねぇだろ!』
 後ろ暗い手段を取ってこなかったという自負、そしてそこから生まれる一切の曇りなき覚悟。忍は操縦桿を思い切り握り締めるや、小細工無しの正面突撃を仕掛けてゆく。銃弾が装甲を穿ち、爆風が全身を焼き、衝撃がコックピット内の少女を打ち据える。だが、減速しない。それどころか、攻撃を受けてなお更に加速する。そうして、瞬く間に彼我の距離がゼロとなり……。
『全長5mの質量兵器【六号開天】を食らいやがれぇぇぇぇぇええええ!』
 キャバリアそのものが弾丸と化して、城塞機へと激突した。その余りの衝撃に敵意全体が後ろへと後退し、威力の余波で更に機体フレームが歪んでゆく。当然、敵味方共に操縦者へのダメージも甚大である。
『お、のれ……!?』
『まだだ、開天! 根性見せろっ!』
 故に、ここで覚悟の差が生きてくる。痛みにゴロプが呻く一方、忍は握りしめたままのレバーを操作し、火器管制トリガーを引いた。至近距離から猛烈な勢いで胸部重機関砲の弾丸を打ち込みながら、鉄槌腕と回転鋸でコクピットハッチを強引にこじ開けてゆく。
(操縦席の位置は突撃前に情報収集している! それに電子ロックだのパスワードだのは、先にカチこんだお仲間のお陰で解除済み! 後は……!)
 ベキリと隔壁を引き剥がしてみれば、中に居たのは表情を憤怒に染め上げた壮年の軍人。だが、そこで負荷が限界に達した開天が機能を停止してしまう。ほくそ笑みながら拳銃を構えるゴロプに対して、忍はと言うと。
「端っからなぁ……アタシはコイツをぶち込む為に来てんだよッ!」
「なっ、それは!? や、やめろぉぉぉおおおっ!」
 コックピットハッチを蹴り飛ばし、肩に担ぎしはロケットランチャー。この土壇場に来て、遂に火力の差が逆転したのだ。咄嗟に発砲した指揮官の銃撃が肩を貫くが、最早その程度では止められぬ。傭兵少女はトリガーを押し込み、そして。

 ――赤鉄の城塞、その内部から焔が膨れ上がった。それまで積み重ねられたダメージが決壊したかの如く各所で連鎖的に爆発が生じ、瞬く間に崩壊してゆく。忍が愛機へと舞い戻りハッチを締めた瞬間、強烈な爆発が巻き起こり機体ごと吹き飛ばされた。
 そして、それが最後。巨大なる鉄の塊は紅蓮の中へと跡形もなく消えてゆくのであった。

「かぁ~、痛ってぇ……少しばかり無茶し過ぎたな、こりゃ」
「ほらほら、じっとして。動いたら治療できんよ?」
「いやぁ、やっぱり同波長でしたね、ボクたち♪」
 戦闘終了後、合流した三人は互いの無事を確認し合っていた。打ち身や生傷が全身に刻まれている忍を治療している佳奈恵の傍では、仲間の暴れっぷりを聞かされたティーがケラケラと笑っている。彼らの後ろへと視線を向ければ、巨大なクレーターと化した爆心地が見えた。
「あのゴロプ少将……やっぱり、巻き込まれて死んでしもたんかね?」
「あー……最期に関しては確認していないからな。まぁ、そうなって然るべき相手ではあるけれども」
 疑問を呈する警備員の問い掛けに眉根を顰める傭兵少女。相手も軍人だ。オブリビオンマシンの汚染があったとはいえ、戦場に出てきた以上斃れるのはお互い様だ。だがそれはそれとして微妙な気持ちになっている中、ハイネマンが歩み寄ってきた。
「さて、まずは感謝を。お疲れ様だった、猟兵諸君。よもやあの規格外の化け物へトドメを刺したのが生身の傭兵とは、正に痛快の極みだ。で、ゴロプ少将についてだが……生きていたよ。無論、無事ではないがね?」
 予想外の報告に目を剥く猟兵たち。なんでも、ロケットランチャーの爆風に押し出され、緊急時用の脱出通路から押し出されて難を逃れたらしい。全身に火傷を負っているものの、適切に治療すれば死ぬ恐れはないとのことだ。敵を排除するために起動させていた脱出装置が命を救うとは、つくづく悪運が強い男だとハイネマンは肩を竦めた。
「という訳で、此度の緊急防衛戦はこれにて終結だ。正直、やるべき事後処理が山積みなんだが、まずは諸君らへの支払いを済ませないとな。秘蔵のボトルに加えて、諸君らに奢りたいという兵士がごまんといる。暫くはタダ酒には困らんよ」
「そういえばボクたち、まだお酒が飲めない年齢なのですが……」
「はっはっは、ならば甘味なり装飾品なり要求すると良い。なんでも望んだ物を寄越してくれようさ……さぁ、胸を張り給え。勝利の凱旋と洒落込むとしよう」
 そうしてハイネマンと猟兵たちは連れ立って自治領へと足を向ける。儀仗兵の如く路を守る傷だらけのキャバリアに包帯の目立つ兵士たち、オブリビオンマシンの影響から脱した大国の捕虜。彼らの上げる大歓声に迎えられながら、戦士たちは帰還を果たした。

 此処は戦乱渦巻きしクロムキャバリア。痛手を被った大国側の反撃か、箍の外れた戦争狂の暴走か、はたまた全く予期せぬ第三勢力の介入か。原因は分からずとも、そう遠くない内に再び戦いの火種は燃え上がるだろう。
 だが、今だけは。この瞬間だけは勝利の美酒と束の間の平和を言祝ぐべきだ。
 それこそが勝者の、生き残った者に与えられるべき報酬なのだから。
 斯くして猟兵たちはハイネマンの用意した報酬を受け取ると、次の戦場を求めてラインラント自治領を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月31日


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#クロムキャバリア
#防衛戦
#ラインラント自治領
#戦争モノ


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト