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天犬絶刀~心、刃に沈む

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #『刀狩』 #妖剣士

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●サムライエンパイア、忍犬の里
 ……これはどういうことだ?
 九郎よ、刀羅よ、死刃よ?
 なぜ、動かない?
 なぜ、眠っているのだ?
 我らは共に忍犬として主に忠義を誓った仲であろう。
 死す時はその躯を見せないと約束したはずだ!
 ……立て!
 立ってくれ!?

 ……そうだ?
 主は? 主は無事なのか!?
 幼き頃より、我と共に生き、共に育ち、共に忍びとなった我が主よ。
 元服を機に、我に刀を授けてくれた主よ。
 無事であろうか?

 走ろう――急ぐのだ!!

 我らだけでない、他の主も何故死んでいる?
 なぜ、誰も生きていない。
 まさか、まさか、まさか!

 ……我がやったのか!?

 やがて、一頭の犬は動かぬ一人の躯に鼻を近づけると、悲しき遠吠えを一つ上げた。
 魂は消え、そして鬼が生まれる。

●グリモアベース
「猟書家『刀狩』そいつが今回の事件の黒幕だよ」
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は不機嫌そうに、タイプライターのキーを叩く。
「奴が妖剣士の持つ呪われた武器に憑依することで、親しきものを皆殺しにさせ、そして持ち主は自らの罪の意識と絶望から鬼となる――その鬼を増やすのが猟書家の目的だ」
 レバーを叩くとベルが鳴り、紙が一枚出力される。
 それは、とある忍びの里の概要。
 犬を使う、忍犬使いの隠れ里。
「鬼となったのは、ここで一番の実力を持つ忍犬――犬だ。だが、狼が人を殺せるように、訓練された犬が呪われた武器を持てば、虚を突き、村一つ全滅させることは可能だ」
 そこまで言い終わるとグリモア猟兵は立ち上がり、タイプライターのレバーを再び倒す。
「まずは忍犬を正気に戻す。咥えている刀を落とせば元に戻るが、鍛えられた犬の忍び……外見も含めて実力は相当だ。だが、そうすれば猟書家は正体を現す。あとはそいつ――刀狩を倒すだけだ」
 開かれたゲートの向こうを見る、探偵屋の目は何故か曇っていた。

「……忍犬は主と共に育ち、主の元服を機に刀を授かり、そして主と共に死ぬ。その意義を失った犬はどうなるんだろうなあ?」


みなさわ
 刀ある世界にモフモフなんてものはない。
 こんにちは、みなさわです。
 今回はある一匹の犬の話を。

●戦場
 犬の忍び『忍犬』とその使い手の里だったところです。
 命は一つだけしか残りませんでした。

●鬼
 幼き頃より修行を受けた一匹の忍犬。
 全てを失った今、鬼と化しました。
 咥えている刀を落とせば正気に戻ります。

●刀狩
 猟書家の一人で、鬼を増やしクルセイダーに献上するためにこの隠れ里を狙いました。
 決戦の際は鬼となった犬と共に戦うことでプレイングボーナスが与えられます。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『くろまろわんこ』

POW   :    あそんであそんで
【投げて遊んでもらうための枝】が命中した対象に対し、高威力高命中の【あそんでくれるひとみつけたアタック】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    もふもふぱわーあっぷ
全身を【もふもふの毛並】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    どうしてあそんでくれないの?
【遊んでほしいというせつない鳴き声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮賀・蓮也です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●妖犬士無常

 そこは人、知らざる土地。
 人は草として生き、集落に集う犬すらも草とした。
 それこそが忍、それこそが忍犬。
 だが、人々は報いを受けた。
 生きる物を武器とした報いを。

 ……果たしてそうだろうか?

 今、ここには一頭の犬がいる。
 墨染の衣は鉄の臭いのする錆に汚れ、唸る口蓋より、涎をこぼす。

 村も同じようなものであった。
 生者誰一人なく、犬も全て肉となった。
 漂うのは血と死の風。
 滑るのは赤の溜まり。

 鬼はそこに居る。
 全てを背負って。
 鬼はそこに立つ。
 小さき背中に闇を抱えて。

 刃を咥えて、そこに立つ。
月舘・夜彦
【華禱】
……伝わる
憤怒が、悲嘆が、無念が、絶望が
小さな肉体から痛い程に
それでも、救わねばなりません

私も生き物を従えており、私が死なない限り生き続ける
他人からすれば終わらぬ戦いに身を投じさせていると思われましょう
ですが同じ志を持ち、共に戦う道を自ら選んだ
その想いを、誰が否定できようか

過ちは消えない、死しても失ったものは戻らない

お前が奪ってしまう、切っ掛けを作った者は誰だ
自ら手を下さず、お前に奪わせた者は誰だ
お前の誇りを、穢した者は誰だ
……奴こそ、お前の討つべき相手

攻撃は武器受けにて防御、倫太郎達と連携して包囲
見切りにて動きを読み、僅かな隙を見極める
破魔と浄化の力を込めた抜刀術『断ち風』


篝・倫太郎
【華禱】
こういうのは好かねぇ
親しきものを『殺させて』なんて
正気で居られるはずもねぇだろ

夜彦に告げた言葉に烈も反応するもんだから
小さく笑って

ちゃんと正気に戻してやらなきゃな
手伝ってくれよ、烈――

忍犬が射程内にいる事を確認して拘束術使用
鎖での先制攻撃と同時に拘束
拘束したのと同時にダッシュで接近
ダッシュに合わせて烈には死角を取っての陽動を指示
忍犬が咥えた刃に気を付けてな!

俺は破魔と衝撃波を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
投げられた枝は華焔刀で弾く

俺と夜彦、俺と烈、夜彦と烈
そこにある繋がりが、喪わなくていいものを喪った
たった一つこの地に残されてしまった命に響けばいい



●孤哮、今はただ独り

「……伝わる」
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の顔に刻まれるのは慚愧の相。
「憤怒が、悲嘆が、無念が、絶望が」
 一節毎に区切る言葉は重く。
「小さな肉体から痛い程に……それでも、救わねばなりません」
 その手に握るものは重い。
「ああ」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が首肯した。
「こういうのは好かねぇ」
 彼の言葉もまた――
「親しきものを『殺させて』なんて、正気で居られるはずもねぇだろ?」
 思いが漏れている。
 二人の言葉に牡狼も従い、戦う姿勢を見せた。
 狼の名は烈。
 牡狼のその姿を見て、倫太郎の顔に笑みが浮かぶ。
「夜彦の言葉に反応してるぜ」
「これは……仕方がありません」
 首を振る刃に手を振り、盾は先に一歩歩む。
「ちゃんと正気に戻してやらなきゃな。手伝ってくれよ、烈――」
 牡狼は主に従い、共に進んだ。

「私も生き物を従えており、私が死なない限り生き続ける」
 忍犬の前に立つのは夜彦。
「他人からすれば終わらぬ戦いに身を投じさせていると思われましょう」
 唸り声響く中、ただ男はその場に立つ。
「ですが同じ志を持ち、共に戦う道を自ら選んだ。その想いを、誰が否定できようか」
 伝えることがあり、そして――やるべきことがあるのだから。
 見えない鎖が鬼を拘束したのはほぼ同時だった。

 拘束術

 その鎖は災いを縛り、犬を縛る。
「忍犬が咥えた刃に気を付けてな!」
 烈が吠え、鬼の意識をそらした機を読んで倫太郎が薙刀片手に忍犬に迫る。
「グァウウウウウウウ……」
 唸り声と共に、忍犬が鎖を一部引きちぎる。
 枝が飛んだ。
 盾たる者が華焔刀の銘を持つ薙刀で受け止めれば、その意識の隙間を縫って、鬼が咥えた刀が迫る。
 霞のように倫太郎の姿が消え、妖刀が空を切る――残像。
 そこへ叩き込まれる薙ぎ払いの一撃。
 衝撃が戒めを引きちぎり、忍犬を血生臭い大地へと転がす。
「過ちは消えない、死しても失ったものは戻らない」
 次は刃たる者の番。

 ――お前が奪ってしまう、切っ掛けを作った者は誰だ。
 霞瑞刀 [ 嵐 ]を握る手に力がこもる。
 ――自ら手を下さず、お前に奪わせた者は誰だ。
 滑った土を踏むのは怒り。
 ――お前の誇りを、穢した者は誰だ。
 抜かれるのは破魔。
「……奴こそ、お前の討つべき相手」

 抜刀術『断ち風』

「俺と夜彦、俺と烈、夜彦と烈」
 夜彦の抜刀術が忍犬の身体ではなく心を断つ、鬼を断つ。
「そこにある繋がりが、喪わなくていいものを喪った」
 けれど、犬は立つ。
「たった一つこの地に残されてしまった命に響けばいい」
 ――響いた。
 だが鬼は独り歩く。
 その道は修羅か羅刹か。
 歩む足は止まらないが、振り向く時と切っ掛けは今、作られた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミネルバ・レストー
犬でも猫でも、訓練積めば立派な戦闘要員よ
侮ってかかれば死ぬわ、それはよく知ってる
だから行くわよ忍びの犬、あなたにも誇りはあるでしょう

恐らくは小さな体躯と種族特性、そして積み重ねた鍛錬を活かした
俊敏な動きで翻弄して来るでしょうね
ならば「多重詠唱」と「高速詠唱」の合わせ技で対応しましょうか
【逃れ得ぬ氷結世界】の超速発動、氷柱で何とか迎撃したいけど
それでも全弾ヒットは望まないわ、回避された分は
「地形の利用」で次への仕込みに回すわね

一見攻撃が思うように当たらない風に「演技」してあげる
さすがに油断するでしょ、そこに強化した地形に乗って待つわ
鬼さんこちら――相討ち覚悟で思い切り横っ面をぶん殴ってあげる!


杼糸・絡新婦
・・・色々けったくそ悪い、
それでもなあ、せめて一矢報いさせたらなあかんやろ、
そのために、まずは戻させる。

鋼糸で【フェイント】をいれ攻撃。
張り巡らせるように【罠使い】で拘束、行動阻害しつつ、
加えた刀を狙い【部位破壊】及び、離せせるよう務める。
向こうからの攻撃を【見切り】で回避しつつ、
タイミングを図り脱力して受け止める、
または他の猟兵への攻撃を【かばう】ことで受け止め
オペラツィオン・マカブル発動。

主さん達の事忘れるつもりか、違うやろ。
主と共にて言うんやったらまだ、お役目果たしておらんわ



●魔犬、その叫びは痛み

「……色々けったくそ悪い」
 杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)がいつも見せる笑顔を今、その時だけ止めた。
「それでもなあ、せめて一矢報いさせたらなあかんやろ」
「そうね」
 ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)が傍らに立ち、同意した。
「でも、そのためには」
 ミネルバ=ネリーの言葉に絡新婦が頷く。
「まずは戻させる」

 犬でも猫でも、訓練積めば立派な戦闘要員。
 侮ってかかれば死ぬことだってある。
 ネリーはそれを知っているからこそ。
「行くわよ忍びの犬、あなたにも誇りはあるでしょう」
 鬼となった忍犬の誇りへと訴えかけた。
 そして誇りを揺らされた犬は――跳んだ。
「来たわね」
 予想通りとこおりのむすめは理解したが、それにしても速い。
 小さな体躯と種族特性、そして積み重ねた鍛錬、そこから発揮されるのは彼女の予想通り、翻弄するかのように自らの姿を右、左と舞わせ、そして一撃を撃ち込む。
 だが、ネリーも対策を講じている。
 多重詠唱そして高速詠唱。
 複数の詠唱が術式の定理を完成させ、そして世界を変える。

 逃れ得ぬ氷結世界

 次々とそそり立つ氷柱が鬼の軌道を塞ぎ、人と犬との間に壁を作る。
 直後、空気が震えた。
 氷が切断され、ネリーのコートを飾るファーが雪のように舞い、そしてこおりのむすめは消える。
 次は蜘蛛が糸を張るのだから……。

 鬼の動きが止まる、いや縛られる。
 張り巡らされた鋼糸の牢獄。
 そこへ――狩衣を纏った人形が右腕を振り下ろす。
 狙うは刀、全ての事の始まり。

 金属が震える音が響き、絡新婦の指に通した糸からも振動が伝わる。
 咄嗟、頭を動かした犬の刃とからくり人形サイギョウの腕がぶつかりあい、そして忍犬はその毛を膨らませる。
 まるで膨張したように大きくなった鬼は力づくで鋼糸を引きちぎり、人形の頭を踏んで蜘蛛へと襲い掛かる。
「遅いわね」
 そこへ――ネリーが振るう細身の杖が犬の鼻っ柱を叩いた。
「すまへんのう」
「来るわよ」
 礼を述べる絡新婦にこおりのむすめが警告する。

 もし、犬がただの犬なら、それは遊んでほしいとせがむ叫びであったろう。
 だが、その相手は最早おらず、残ったのは自身。
 そして、心砕かれた今、それは――全てを壊す鳴き声となった。

 氷柱が粉雪のように崩壊し、鋼の糸が切断される。
 高周波振動――それが鳴き声が生み出す破壊力の秘密。
 ネリーが前に出て庇おうとするのを、絡新婦が制し、前に出る。
「あなたさんは動かない方がいいやろ?」
「……分かってるのね」
 少女の言葉に男は頷き、そして繰り糸を指に搦めた。
 鳴き声――高周波振動が迫る刹那。
 蜘蛛は全ての力を抜き、受け止め。
 そして、振動は鬼を襲う。

 オペラツィオン・マカブル
 自らを糸のない人形の如く脱力することで、振動は糸を通し、そしてサイギョウがそのまま返す。
 忍犬が自らの鳴き声で動きを止められる中、ネリーが走る。
「主さん達の事忘れるつもりか、違うやろ」
 蜘蛛の言葉が鬼を捕らえる、糸のように。
「主と共にて言うんやったらまだ、お役目果たしておらんわ」
 蜘蛛の糸が揺れる、鬼の奥に潜む犬の心へ響かせるために。
 そしてネリーの平手が犬の頬を叩いた。
 目を覚ませとばかりに。

 全てを失ったはずなのに。
 何もないはずなのに。
 鬼の何かが揺れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

逢坂・理彦
忍犬か…鍛えられてはいるしきっと忠義も厚いんだろうね。正気に戻った時の衝撃はきっと…。
憎むべきは猟書家だ。
けれどすでに己が力で全てを殺してしまった苦痛は如何程のものか。
本当に惨い…。

だがその刀を奪い『刀狩り』を呼ばせてもらうよ。これ以上の悲劇を君が産まないためにも。

UC【禊祓祝詞】
その咥えた刀が妖刀ならば【破魔】と【祈り】を込めて相手になろう。
退魔刀・翠月を手に【早業】【なぎ払い】で咥えた刀を狙う。
敵攻撃は【戦闘知識】【第六感】で【見切り】


木常野・都月
……そうか。
お前も自分の大切な人を亡くしたんだな。
しかも自分の手で…。
俺がこの犬の立場なら…殺して欲しいと思う。

思う事は沢山あるけれど、今は仕事の時間だ。
殺してやる訳にはいかない。
任務だから。
しかも犬。
犬に追われる立場だった俺からすると油断できない相手だ。
同情している場合じゃないよな。

犬をしびれさせたい。
可能なら気絶させたい。

UC【雷の足止め】を使用、犬の動きを止めたい。

雷の精霊様の[属性攻撃、気絶攻撃、カウンター]で上手く気絶してくれればいいんだけど。

動けなくなったり、気絶してくれたら、刀を離してくれるかな。

どうしても離さないなら、雷の精霊様に頼んで、磁石の反発みたいに、刀を弾いて貰いたい。



●刀、それは呪いにして絆

「……そうか」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は犬へと視線を向けた。
「お前も自分の大切な人を亡くしたんだな。しかも自分の手で……」
 自分なら、殺してほしいと願うだろう。
 だが、今は仕事の時間だ。
 例え、どんな無常が待ち受けようと生かさねばならない。
 そこに同情は無かった。

「忍犬か……鍛えられてはいるしきっと忠義も厚いんだろうね」
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は今、こちらへ向かって歩む鬼を見た。
「正気に戻った時の衝撃はきっと……」
 それ以上の言葉を述べず、寸暇の俯きの後。
「憎むべきは猟書家だ」
 覚悟を決める。
「けれどすでに己が力で全てを殺してしまった苦痛は如何程のものか」
 その非道さに痛みが止まらない。
 だが、進まねばならない。
「これ以上の悲劇を君が産まないためにも」
 鬼を犬へと戻すために。

 都月が掌を忍犬へと向ける。

 雷の足止め

 雷の精霊を介した高圧電流が、犬の動きを止める。
 ――このまま気絶してほしい。
 若い狐は願ったが、その姿を射抜く何かに気づいた。
 鬼だ。
 鬼が見ているのだ、決して貴様の思い通りにさせないと、憎しみを以って、憤怒を以って。
 だが、都月とて猟兵、このままでは終わらない。
 高圧電流によって磁力を帯びた刀を精霊の力によって奪おうとする。
 しかし、それは怒りを買うことになった。

 嘶き。

 悲しげに、そして憤るなにかが狐が聞き取れる波となって、若い狐を揺らした。
 脳と臓物を揺らされ、都月はその場に膝をつく。
 そこへ、理彦が飛び込んだ。

「諸々禍事罪穢を払へ給ひ清め給ふと申す事の由を天つ神地の神八百万神々等共に聞食せと畏み畏み白す」
 退魔刀・翠月を手に捧げる祝詞は破魔の剣、呪詛払いの剣、祈りの剣。

 禊祓祝詞

 祝詞を捧げし刃輝けば、忍犬咥えし妖刀に真っ向からぶつかる。
 閃光が辺りを包んだ。
 けれど、犬は刃を落とすことは無く。
 逆にその力によって追った負傷すら、自らの怒りとばかりに毛を逆立て、狐の守護者の退魔刀を押し返した。

「……気づくのが遅れてしまった」
 理彦が失念したとばかりに、悔恨の表情を浮かべる。
「どういうこと?」
 頭の中を揺らされた感覚から立ち直り、都月が問う。
「あの刀は確かに妖刀だけれども……主が元服を機に授かった刀。つまりは……」
「唯一の絆」
 二人の狐が見つめる中、忍犬は拠り所たる刀を離さずに咆哮を上げた。

 妖刀にして絆。
 だからこそ――鬼を解き放つ綻びはそこにある。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン


(『死して屍拾う物無し』…騎士とは似て非なるこの世界の侍や忍の誇りと思考回路。そして訓練されても言葉が通じるのか。懸念は尽きませんが…)

格納銃器を展開しUCを周囲の骸の傍の里の建物へ発砲
灰も残さず焼却し火力示唆
銃口を骸ヘ向け

貴方の不始末を引き受けるのです
感謝されてもよいのでは?

襲い掛かる忍犬と近接戦闘
数合打ち合い妖刀の威力と獣特有の挙動を●情報収集

間合いとタイミング●見切り咥えた妖刀●怪力で●盾受け
盾で威力を殺し片腕に刃食い込ませ抜けぬよう拘束

肩部銃器展開、骸に照準

選びなさい!
刀を取るか、彼らを取るか!
己の罪業直視せず荒れ狂う…それが貴方の忠ですか!

残った腕で殴り、あわよくば骸の方向へ飛ばし



●惨火、炎の中で

 閃光が山なりに飛び、里のあばら屋に落ちると、飛散した炎が屋敷から社、そして骸までもを呑み込んでいく。

 超高温化学燃焼弾頭

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が放った物の正体。

 『死して屍拾う物無し』
 ――騎士とは似て非なるこの世界の侍や忍の誇りと思考回路。そして訓練されても言葉が通じるのか?

 トリテレイアの懸念は解消されてはいないが……。
「貴方の不始末を引き受けるのです、感謝されてもよいのでは?」
 今は為すべきことをするだけ。
 鬼へと問いかけた騎士は敢えて汚れ役に徹し、骸へと展開した右腕の銃器を向ける。
 その腕に木の枝がぶつかった直後、音もなく銃身は消え、そして金属の筒が地面に刺さった。
「……」
 身体を反転させ、戦機は剣を抜き、盾を構える。
 視界の先には忍犬一匹、木の枝に意識を落とした瞬間に銃身を切り落とし、背後を取った忍びの生き残り。
 誰も何も言わなかった。
 ただ、脚が、肢が、地を蹴った。

 鍔迫り合いの音は鳴らない。
 互いの刃を一方はプログラムとスラスターによる機動変化で、もう一方は獣特有の反射神経と仕込まれた殺人技法で、避け、そして狙う。
 俊敏の差を躯体だからできる動作で、体格の差を人以上の感覚器と呪いで、互いに補い、しのぎを削る。
 数合の交わりの末、一体と一匹は距離を取る。
 癖、動き、特徴、全てを知り尽くしたからこそ、後は一手で決まると悟る故。
 騎士が大盾を構え走る。
 何かがトリテレイアの視界に入り、センサーはそれを拾う。
 木の枝――先に腕の銃器を切り飛ばした時と同じ。
 認識の隙間をついて『それ』は来る。
 だから、騎士は盾を構えなおした。
 直後、金属が擦れるような嫌な音が響き渡った。

 左肩の装甲が展開されず、強制排出を以って、代わりとする。
 既に腕は肘まで切り裂かれ、盾は破片となった。
 剥き出しのフレームから伸びる銃口が向くのは炭となった骸一つ。
「選びなさい!」
 スピーカーから発せられるのは。
「刀を取るか、彼らを取るか!」
 トリテレイアの真実。
「己の罪業直視せず荒れ狂う……それが貴方の忠ですか!」
 剣を握った腕が鬼へ叩き込まれ、続いて左肩の銃は鉛を放つ。

 火薬は破裂する音が響き、直後、トリテレイアの肩が爆発し、腕は土に転がった。
 だが騎士に悔いはない。
 骸を庇い、弾丸を受ける忍犬の忠を見たのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
気高き魂を絶望に叩き落し、鬼とする……か。
私も幼い頃に似たような目に遭いかけたけれど、一歩間違えたらこうなっていたのかしら。
ともあれ……この子はまだ引き返せる。
なら、目を覚まさせてあげないとね。

わんことは真っ向から堂々と対峙
忍びの技を仕込まれた犬なら、恐らく機動力は雲泥の差
であれば追いかけず、向こうから仕掛けてきたところを捉える
多少の傷は気にせず受け止め、『怪力』で強引に捕縛を狙う
その上で【破邪入魂拳】発動
わんこの横っ面を鬼の拳で思いっきり殴り、『咥えている刀(わるいもの)』だけを攻撃して取り落とさせる

お前の刃を向けるべき先は、私達じゃないわ。
目を覚ましなさい。仇の手先になりたいの?


御桜・八重
ぎり、と血が出るほどに歯を食いしばる。
隠れ里を皆殺しにした力は、主さんとの絆の裏返し。
刀狩は許しちゃおけないけれど、
今はあの子の心を救わなきゃ!

里一番となるほどの忍犬なんだから、
主さんとの間には強い強い絆があったはず。
あの子が自分を襲った時、主さんは何を思ったのかな…

忍犬の前に躍り出て、二刀で攻撃を捌きながら声をかける。
「思い出して、主さんの最期を!」
あの子自身には刃を振るわない。無傷じゃすまないだろうけど、
主さんもあの子には刃を向けなかっただろうから。
「主さんの言葉を、主さんとの思い出を、思い出して!」

あの子の心が動いたら咥えた刀を【強制改心刀】で一閃。
再び支配しようとする刀狩の邪気を絶つ!



●言葉、刃響かせ

 歯を食いしばる音が風に流れ、御桜・八重(桜巫女・f23090)の唇から紅が零れた。
 そんな硬くなっていた肩に白い手が置かれる。
 八重が視線を向けるとそこに居たのは荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
「気高き魂を絶望に叩き落し、鬼とする……か」
 零した視界の先には、命なき里の姿。

 ――そこへ至る力は主との絆が生み出し、そして刀狩に使われた。
 猟書家は許せない。
 けれど、救うべきものは目の前に。
 八重が刀を二振り、両手に持つ。

「私も幼い頃に似たような目に遭いかけたけれど、一歩間違えたらこうなっていたのかしら」
 つかさが握った拳から音が鳴る。
 過去を振り返り、今を見つめる心境は彼女自身のもの。
「ともあれ……この子はまだ引き返せる」
 意識を現在に戻し、桜の巫女を見れば返ってくるのは頷き。
「なら、目を覚まさせてあげないとね」
 羅刹の女は徒手にて、鬼へと向き直った。

 桜の花弁が風に舞うような軽やかさで八重が跳ぶ、それは備え。
 視界に入るのは一撃を狙い跳ねる犬。
 距離を詰め、鍔迫り合う事でお互いの得物の威力を殺す。
 着地、駆け出すのは同時、届くのは一寸、鬼の刃。
 咄嗟、桜の巫女が両刀を構えれば、身を飛び込ませるような忍犬の一撃が伝わり、敢えて後ろに転がる。
 距離を取らねば、返す刀で足を切られる。
 その判断は正しく、地に脚を付けた忍犬の刀が低い軌道で空を切っていた。
「里一番となるほどの忍犬なんだから、主さんとの間には強い強い絆があったはず」
 八重が呟く、視線の先にはその絆を切った鬼。
 あの子が自分を襲った時、主さんは何を思ったのかな……。
 頭によぎる想いに瞬きの数が増える。
 心が揺れる。
「思い出して、主さんの最期を!」
「そうよ、このままでいいの? お前」
 桜の巫女の言葉を継ぐように羅刹が言を紡ぐ。

 歩むは正道、進むは真っ向正面、その正中は揺らぐことなく、歩み止めれば――金剛羅刹。
 飛び掛かる鬼へつかさは待ち受け、そして刃を打ち払う。
 犬が跳ねた。
 自ら飛んだわけではない、羅刹の剛が打ち払う勢いを以って忍犬を大地に叩きつけたのだ。
 鬼が走り、距離を取る。
 身体能力に差があるなら、技で補うしかない。
 忍犬は地に転がっている枝を刀で跳ね上げると峰で叩き、つかさへ飛ばす。
 一方の羅刹は意に介さず、その枝を顔面に受けた。
 それだけでいい、その一瞬で距離を詰めれば――一撃が当たる。

 拳闘の話をしよう。
 素手で始まったボクシングはグローブの導入とともに怪我が減り、そして――死者を増やした。
 グローブというクッションが打撃の質を変え、浸透する衝撃が身体を破壊したのだ。
 話を今に戻そう。
 訓練された犬が全速力で走り、体重を乗せた肉球のある前肢の一撃を叩き込めばどうなるか……。
 答えは必然、鎧すら透す一撃はつかさの体液を通し波紋のように浸透し、内臓を脳を揺らし、血管を破壊する。
 だが、羅刹の女もそれを待っていた。
 眼から、耳から、血を流し、力で犬の肢を掴めば拳を握る。
「お前の刃を向けるべき先は、私達じゃないわ」

 破邪

「目を覚ましなさい」

 入魂拳

 鬼と呼ばれた羅刹の拳が鬼となった犬に叩き込まれ、そして獣は二度三度、地を跳ねる。
「仇の手先になりたいの?」
 それでも忍犬は立ち上がることを止めない。
 揺れる心が止めることを求めるが、咥えた刃の咎が、それを許さない。
「主さんの言葉を」
 だから。
「主さんとの思い出を!」
 桜の巫女は刃を振るう。
「思い出して!」
 咎を削がんとするために。

 強制改心刀

 犬が咥えし妖刀に叩き込まれた一撃。
 衝撃が脳へ伝わり、鬼の認識を狂わせる。

 我は……我は……

 ――駄目だ!

 我は最早、外道。
 使命なき命の殺めは悪鬼畜生の行い。
 戻れない、戻れないのだ。

 鬼の面は砕けつつある。
 だが、咎を背負いし者が前を向くには、まだ必要なのだ。
 魂の天秤を揺らす言葉が!
 想いが!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
残ったのは、忠犬一匹だけ
遅かった……どうしようもねえことはわかってた
だがそれでも、後悔せずにはいられない
……これ以上、この世界の傷を増やさない為に。
戻ってきてもらうぜ、最後の戦士

頃合いは、それなりに疲労が溜まった時だ
セット、『Nighty night』
少しの間、夢を見ているといい
まだ何も奪われてなかった時のことを、思い出すといい
そして、火を灯すんだ
それを奪った奴に、報いを受けさせてやるって意志の火をな
眠ってる間に、危ない刀は取り上げておくよ

お目覚めかい?
奪われたものを取り戻すには、もう遅いが
怒りは燻ってるんじゃねーか?
だったら盛大な仇討ちといこうぜ
奴の首を食い千切って、手向けにしてやろうや


矢来・夕立
▼方針
・UCによる行動阻害
・下緒・式紙を用いての捕縛

生き方も主も選べない草の命がひとつきり。
更には口すら利けない身空で、おまえはよくやりました。
…良い子ですね。もう少しだけ頑張りましょう。

【紙技・紙鳴】。咆哮を相殺、隙を作る。
刀の回収には下緒と式紙を使いましょう。接敵の際に妖刀に結わえておきます。

刀を握る力が弱まったところで、こう、引っ張るんですよ。
「叩き落とす」というよりは「絡めとる」とか「引き剥がす」に近いですね。
牙を折ってしまう虞は少ないはずです。
あらぬ方向に吹き飛んでも回収できますし。

とは言いましたが、刀の強奪は他の方に任せても構いません。
目晦ましだけでも十分効果はあるでしょう。



●夢幻、自由となりて

「残ったのは、忠犬一匹だけ」
 冬の気配、それは暦とヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)。
「遅かった……どうしようもねえことはわかってた。だがそれでも、後悔せずにはいられない」
 氷の中に灯す火をミラーシェードで隠し、ヴィクティムは鬼へと向き直る。
「……これ以上、この世界の傷を増やさない為に」
 これ以上、誰かが帰る場所が傷つかないように。
「戻ってきてもらうぜ、最後の戦士」
 冬の戦士はここに立つ。

「生き方も主も選べない草の命がひとつきり」
 冬の背中から、影一つ。
「更には口すら利けない身空で、おまえはよくやりました」
 矢来・夕立(影・f14904)の言葉がいつもより柔らかいのは何故だろう。
「……良い子ですね。もう少しだけ頑張りましょう」
 気づく者は居ても、知る者は居ない。
 忍犬はただ睨む。
 咎を捨てられない同士、理由はどうあれ、それ以上の言葉は無粋だった。

「あいつは疲労が溜まっている――頃合いだ」
「つまり隙を作れと?」
 端役の言葉に影が問う。
 何度か仕事をしている分、自然と手管と役割は決まってくる。
「分かってるじゃないかチューマ。一秒で充分だ、意識をトバしてくれ」
「時間足りるんですか?」
 ヴィクティムの言葉に応えるように千代紙を折り、そして広げる。
「いや、余る」
 ミラーシェード越しに浮かべた笑み。
 分かってましたと答える代わりに千代紙風船が飛んだ。

 鬼が鳴く。
 それは心の叫びか、それとも忍びとして最後まで欺くためか、だが、分かるのはその叫びが高周波に振動する事だった。
 その波へと風船が飛び、直後、閃光と雷鳴が全てを打ち消した。

 紙技・紙鳴

 耳を潰し、感覚を失調させる千代の式紙。
 それは忍犬の鳴き声を打ち消し、閃光が意識を一時的に失調させる。
 そこへ――プログラムという細いナイフが突き刺さった。
「――セット」

 Sleep Code『Nighty night』

 犬の眼が空を見て、瞼が静かに沈んでいく。
「少しの間、夢を見ているといい」
 ヴィクティムがユーベルコートを紡ぎ、そして言葉が夢を紡ぐ。
「まだ何も奪われてなかった時のことを、思い出すといい」
 それは安らぎ。

 まだ、子犬だった時
 主と共に修行に励んだ時
 試練を乗り越え、元服を迎えた時
 全て、全てが懐かしく、愛おしく、そして

 ――取り戻せない。

 夕立が投げる下緒、蝙蝠の式が器用に受け止め、それを妖刀に結わえる。
 刀が奪われそうになる感触に歯を食いしばり、絡めとるように刀を引く式紙に対し、忍びは首を振り、蝙蝠を振り回して地面に叩き伏せる。
「それでいいのか?」
 振る舞いに対してヴィクティムは問う。
「火を灯す時だぜ」
 今、忍犬が為すべきことを。
「それを奪った奴に、報いを受けさせてやるって意志の火をな」

 ――ッ

 返答は聞こえない叫びであった。
「お目覚めかい?」
 夢は終わった。
「奪われたものを取り戻すには、もう遅いが怒りは燻ってるんじゃねーか?」
 ならば立ち上がる時だ。
「だったら盛大な仇討ちといこうぜ」
 ヴィクティム・ウィンターミュートが示す道。
「奴の首を食い千切って、手向けにしてやろうや」
 それを忍びは――拒み、首を振った。
 忍びが故に、生き方が故に。

「まだ咎を背負い、修羅に落ちることで、自らをおわらせるのですか?」
 夕立がしゃがみ込み、犬と同じ高さに視線を合わせる。
「おまえは自由になりました、望まなくとも。それは別の不自由を背負う事。おまえは……どうしますか?」
 影は問う。
「誰かに自由を委ねるか、不自由を背負い、自らの自由に生きるか、後はおまえが決めることです……ですが」
 何かを言おうとして夕立は頭を振った。
「いえ、これ以上は必要ないでしょう。おまえが『草』であるのなら」
 背を向け、影はその場を離れる。
「とりあえずだ」
 端役は頭を掻く。
「ここに居るやつらはお前の死を望んじゃいねえ、それを忘れるな」
 そして、遅れて場を離れた。

 そうか、我は自由なのか……。

 鬼は剥がれた。
 そこには忍びが一匹。
 あとは生き方を決める一歩を誰かが示すのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
△【援の腕】発動
問いは『あなたの名前を教えて下さい』

刀狩が呪われた武器に憑依しているのなら、浄化は難しくても
力を弱めて刀を落としやすくする

容易く近づけないなら、
タイミングはこちらへ襲ってきた時
急所をはずせればいい。
そのまま犬を抱きしめて接触して浄化します

……私も、私のせいで世一と冴が亡くなり、弥彦がいなくなった時、一緒に消えてしまいたかった

でもここで自分が消えてしまえば
何もかもが消えてしまうんです。
笑いかけてくれたこと、大切にしてくれたこと、何もかもが

あなたは鬼ではありません。
主に立派に育てられた
主を大切に思い、主に大切にされた
名を持つ忍犬です。
どんなに痛くても辛くてもそれは忘れないで下さい



●忍びよ、汝が名は

「あなたの名前を教えて下さい」
 両腕を広げ、浄化の光で忍びを照らしつつ桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は問いかけた。

 援の腕

 答えを得るまで、光は妖刀を照らし、そして忍犬を照らす。

「……私も、私のせいで世一と冴が亡くなり、弥彦がいなくなった時、一緒に消えてしまいたかった」
 犬は刀を構え、そして距離を詰める。
 それは鬼となったからではない。
 自らの咎を認めるため。
 そして、自らを縛る妖刀の呪いを破るため。
「でもここで自分が消えてしまえば、何もかもが消えてしまうんです」
 カイもそれが分かっていたからこそ……
「笑いかけてくれたこと、大切にしてくれたこと、何もかもが」
 刃を受け止めた。

 鮮血が足元を汚し、土に紅が染みこんでいく。
「あなたは鬼ではありません」
 刀と忍び
「主に立派に育てられた」
 全てを抱きとめ
「主を大切に思い、主に大切にされた」
 人形のヤドリガミは生き方を語る。
「名を持つ忍犬です」

 そうだ、我の名は――

「……そうですか、貴方の名は」
 ゆっくりと頷く忍び一匹。
 その口には刀は無く。
 カイの胸に刺さる刃は、傍らの繰り人形が引き抜き、犬がそれを受け取る。
「天」
 妖刀からは呪いが消え、現れるは刃を顕現する妖怪――刀狩。
 膝をつくヤドリガミへと忍犬が近寄り、そして呪いを失い、忍犬の証としての刀を再び咥える。

 そうだ。
 我の名は天。
 空を示す、一文字。
 名付けた主はもういないが、せめて名に恥じぬ生き方をしよう。

 忍びは刃を構え、そしてカイもその傍らへと立った。
「手伝いますよ」
 滅んだ里を知る者が一匹。
 一度、全てを失った男はその背中を見て、ただほほ笑んだ。

 彼は失った。
 だが、全てが消えることはもう無いのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『刀狩』

POW   :    刀龍変性
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【己が喰らい続けた武具が変じた鱗 】で覆われる。
SPD   :    妖刀転生
自身の【体の一部 】を【独りでに動く妖刀の群れ】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ   :    修羅道堕とし
自身の【背の刃の羽 】から【見た者を幻惑する妖刀】を放出し、戦場内全ての【遠距離攻撃】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヴァーリ・マニャーキンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●天犬絶刀

 竜が吠える。
「忌まわしきは猟兵か! 犬と言えど鬼の一角、豊臣の鼎となるには不足なきものを……」
 竜の名は刀狩。
 豊臣秀吉の部下にして、民より武器を取り上げ、刃を喰らいし妖怪。
 そして今はオウガフォーミュラー、クルセイダーが臣の一体。
「それを……それを……許さぬ!」

 ――許さぬのは我の方だ妖よ!

 忍びが吠えた。
 名は天。
 影に生きる草にして、せめて名は天翔けるようにと願われた忍犬。

 貴様らの思惑は分からぬが、命を玩具にする所業、我らが仕えるに値せず。
 我らが走り、そして死ぬのは、戦場のみ。
 非道の行い、ここに報いを受けるが良い!

 犬が振り返った。

 ――人よ、礼を言う。
 そして、乞わん。
 汝らがあれを倒すなら、我が刃を使わんことを。
 汝らの使命がここで終わるなら、我が戦いを見守らんことを。
 全ては任せる。
 我が名は『天』
 忍びが『犬』にして、魔を『絶』つ『刀』也!

 天は猟書家へと向かい刃を構えた。
 猟兵よ、後は心赴くままに、為すべきことを――為せ!
木常野・都月
犬…いや天か。
天が俺より難しい言葉を使ってる。…俺よりも賢い?
いや、今はそうじゃない。

天は強い犬だな。
個人的に天に協力したい。
俺が出来るかわからないけど、可能なら最後は天にトドメをさして貰いたい。

天に[オーラ防御]をかけたい。
天に向けられた刃は、雷の精霊様に頼んで、弾き返して貰いたい。

UC【精霊召喚】で精霊様には敵に縋り付いて、妨害や攻撃をして貰いたい。

敵の妖刀の群れは[属性攻撃、カウンター]で対処したい。

必要があればダガーとエレメンタルダガーに持ち替えたい。

天の命の時間は天のものだ。
天の好きにしたらいい。

ただ、天にも、何か生きる目的が出来ればいいな。
俺がじいさんから猟兵を勧められたように。


逢坂・理彦
彼は立派な「忍犬」だ。
それを利用しようなどと言うのが間違いだった。
さぁ、君が望むなら手を貸そう。
俺は仇討ちを否定しない。すでに俺も果たしたね。

一応俺も妖刀使いだ妖刀に多少は耐性はあるだろうが…【呪詛耐性】【狂気耐性】あたりを意識して…さて今回は妖刀使いらしく妖刀を使っていこうか。
UC【血吸いの朱月】で修正を覚えた朱月をさらに【早業】で使用。
【戦闘知識】による【見切り】や【武器落とし】で敵攻撃から身を守る。



●今、生きるものは

「犬……いや天か」
 木常野・都月が忍犬を視界に収めて、呟いた。
「天が俺より難しい言葉を使ってる……俺よりも賢い? いや、今はそうじゃない」
 慌ててかぶりを振る。
 そう、今、為すべきは忍びの向こうの妖を倒すことなのだから。
「彼は立派な『忍犬』だ」
 続くように逢坂・理彦は口を開き、そして、それ以上の言葉を呑み込んだ。
「さぁ、君が望むなら手を貸そう」
 一呼吸、間をおいて心を落ち着かせれば、龍へと視線を向けて呼びかける。
「俺は仇討ちを否定しない。すでに俺も果たしたね」
 既に役目を終えたものは次なるものへの道を示すという仕事があるのだから。
 その言葉に天は頷き、そして走った。

 ――天は強い犬だな。
 忍犬と共に走りながら、都月は忍びの持つ心に触れ、そして犬の悲願をかなえたいと願う。
 天を守るように精霊の衣が犬を包み、そして忍犬は毛を膨らませ、速度を上げる。
 刀狩の身体より妖刀が複数顕現し、降らせるのは刃の雨。
 そこに現れるは精霊の群れ。

 精霊召喚

 精霊が壁を作り、刃を、刀を、その身で受け止め、絡みつかせ、軌道を逸らす。
 その中を理彦と天は駆け抜けた。

「一応俺も妖刀使いだ」
 守護者たる狐が刀を抜く。
「妖刀に多少は耐性はあるだろうが……」
 銘は朱月丸。
 聞こえ、伝わるものがあるとすれば、それは『妖刀』の文字二つ。
 刀が血を吸えば、妖の動きを覚え、癖を見抜き、そして龍の隙を見つける。
 そこへ理彦の技量が重なれば、剣速は一手、二手と上回り、逆に叩き込むのは妖刀乱舞の雨霰。

 血吸いの朱月

 血を覚えた朱月丸の鋭い一撃が刀狩の体勢を崩し、その腹に天が噛みついた。
「ただ、天にも、何か生きる目的が出来ればいいな」
 都月が忍びが噛みつく様を見て呟いた。
 響くのは唸り声、そして螺旋が如き回転。
「俺がじいさんから猟兵を勧められたように」
 その祈りが届くかは分からない。
 だが、今は果たすべきことを果たしてほしい。
 想いを背負い、犬は全身を使って噛みちぎる。
 妖の鱗は剥げ、猟書家の叫びが響く中、その肉が破られた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
腕が一本無くなろうとも戦い続けられるが故のウォーマシン
お気遣いは無用ですよ
…伝わっておりますでしょうか

(損傷腕部完全パージ、重心変化を自己●ハッキングで補正しつつ機械馬と合体)

さあ、私の背へ!

大地●踏みつけ疾走
合体で●限界突破した●怪力出力でランスを鈍器として振るい強襲

刃通じぬ鱗の鎧であろうとも、衝撃までは防げぬものです
…貴方はご存知でしたね

里の者達は私達がお引き受けしましょう…あのような乱暴な方法で無く
どうか、貴方の道をお進みください

龍の体躯全体の動きをセンサーで●情報収集
●見切った攻撃を機動力で跳躍し回避

天様!

投じた小枝で注意逸れた隙付き●推力移動で突貫
鱗の鎧叩き割り、妖刀の一閃に繋げ



●想い、貫いて

 妖の咆哮が響き渡る。
 逆鱗に触れた龍のように。
 その姿を鋼のような鱗に覆うはまさに鋼鉄の龍とも呼べる存在であった。
 故に、忍びは刀を抜き、隙を伺う。
 重い鉄が落ちる音と、響き渡る蹄の嘶きを耳にしたのはその時だった。

「腕が一本無くなろうとも戦い続けられるが故のウォーマシン」
 天が視線を上げると、そこに立つのはトリテレイア・ゼロナイン。
 その姿は騎士というよりは鋼の半人にして半獣。
「お気遣いは無用ですよ」
 破壊された腕は、合体した機械白馬のパーツが補っている。
「……伝わっておりますでしょうか」
 馬の頭を模った左肩へ一度視線を移してから、戦機は忍びを見る。

 ――伝わっている、からくりの。

「さあ、私の背へ!」
 それ以上の言葉はいらなかった。

 鋼の蹄鉄が錆びついた大地にめり込み、土の反発が力となって人馬を加速させる。
 その背中に立つのは天。
 咎を背負いし、想いを背負い、仇を討たんとする草が一匹。
 そして、それを背負うのはブローディアの騎士。

 機械騎士は愛馬と共に――想いと共に

 全体重を乗せたトリテレイアの馬上槍がその怪力を以って龍へと叩き込まれ、金属の悲鳴が野に響いた。
「里の者達は私達がお引き受けしましょう……あのような乱暴な方法で無く」
 刀狩が爪を振るう。
 三指の鉤爪、それを人馬が跳躍しスラスターを噴射した。
「どうか、貴方の道をお進みください」

 ――しかと心得た。

 木の枝が投げられる。
 それ自体はただの枝。
 しかし、視界にそれを認識しただけで、意識はせずとも、意図が分かっていても――隙が出来る。
「天様!」
 そこへ飛び込むは忍びの抜刀。
 機械人馬の推力を加算したそれは――鱗すら。

 断つ!!

 妖の悲鳴上がる中、犬と人馬は大地を削りつつ着地し、苦悶する刀狩の姿を目に焼き付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ…!空き巣しか能の無いクルセイダーのカス配下がよくもまぁ吠える
それに比べてこいつ──『天』の生き様は嫌いじゃねえ
誇り高く生きるこいつに比べたらよォ…テメェのような惨めな空き巣は『地』──正に『天』と『地』の差じゃあねえか なぁ?

さぁ行こうぜ──Void Link Start
虚ろの加護よ、俺達に昏い力を与えたまえ
一気に接近し、二刀に分離したナイフでインファイト
あれだけ挑発しちゃこいつは怒り心頭のはずさ
攻撃は直線的になるだろう…その隙を突いて、ナイフに虚無を忍ばせる
経験も、技術も、知啓も、忠誠心も、自尊心も──過去ごと削ぎ落す
良く狙えよ『天』
お前の覚悟を証明する為に、奴の首を落としてみせな!


杼糸・絡新婦
真の姿開放。
ざまあと言うにはまだ早い、
天が龍を堕とすところを見とらんからなあ。

ユーベルスコード『唐獅子招来』使用
【フェイント】を入れ攻撃しつつ、
妖刀の群となった体の一部を【部位破壊】していく。
【挑発】や【パフォーマンス】でこちらに意識をむけることで
天や他猟兵へのスキを作り出し、
天の攻撃が敵に届くよう仕向ける。
敵からの攻撃は【見切り】【野生の勘】で回避や
鋼糸で相殺・防御を行う。

鬼を起こしたこと、後悔しいや。



●覚悟、その胸に

「馬鹿な……」
 猟書家、刀狩は呻くことしかできなかった。
 猟兵だけでなく、鬼でなくなった、犬畜生風情にまで傷つけられるとは……。
 元から秘めていたのか、それとも――いや、今は奴らを殺し、新たな鬼を探すのみ。
 幸いにも過去の存在たる自分にはこれまで食べた妖刀の記憶があった。

「ハッ……! 空き巣しか能の無いクルセイダーのカス配下がよくもまぁ吠える」
 対するヴィクティム・ウィンターミュートの言葉はやけに熱い。
「それに比べてこいつ──『天』の生き様は嫌いじゃねえ」
 勿論、生来の気性もあるが、それすらも利用するもう一つの自分がそこに居た。
「誇り高く生きるこいつに比べたらよォ……テメェのような惨めな空き巣は『地』──正に『天』と『地』の差じゃあねえか」
 その機微に気づいた忍びも自ら胸を張り、ヴィクティムは心の中で笑った。
「なぁ?」
 ドローしたカードが何か気づいているか猟書家?

 その横で杼糸・絡新婦の口が裂け、皮膚が裂け、顔から覗くのは翠の何か、が複数。

 ――真の姿

 蜘蛛を思わせるその姿は龍よりも異形であり、畏怖すら覚えるほど。
 けれど絡新婦は妖へと嘲りを見せることは無い。
 まだ早いからだ。
 忍犬が龍を堕とす、その時に、蜘蛛は嗤うだろう。
 二人の動きに対して、刀狩は無数の妖刀を作り上げ、空に舞わせた。

「さぁ行こうぜ──Void Link Start」
 ――虚ろの加護よ、俺達に昏い力を与えたまえ。
 願いは聞き遂げられ、短剣は二つの刃と化す。
 同時に絡新婦は唐獅子を呼び、その背に飛び乗った。
 小さき復讐者が四肢で大地を蹴った時、三者三様に猟兵達は龍へ迫り、そして妖は刀を降らせる。
「ほな行こうか、しし丸君」
 先手は獅子に乗った蜘蛛。
「鬼を起こしたこと、後悔しいや」
 人は鬼というであろう、人は土蜘蛛というであろう、かつて忍びが繰りし人形はカミが宿り、今は異形となり――妖を討つ。

 唐獅子招来

 しし丸と呼ばれし、唐獅子が舞う。
 その視界をふさぐのは妖刀の群れ。
 だが、所詮は器物。
 そして無数に生み出すという事はそれを繰り出すことへ意識を向けなくてはいけない。
 その隙間に――鋼糸は通る。
 銀の光が煌めく時、刀の群れは糸にからめとられ、そして唐獅子の道を作る。
 咆哮、そして爪の一撃。
 それは妖が刀に変えた身体の一部、つまりは鱗がない部位を切り裂き、龍をのけ反らせる。
 そして、ヴィクティムは自らの身を捧げるように敵の懐へ、飛び込んだ。

 端役の周りに刀が突き刺さる。
 彼を射抜くためでも縫い留めるためでもない。
 幻惑するため。
 だが、ナイフを振るえば幻は切り裂かれん。

 Forbidden Code『Void Vow』

 振るわれるは虚無、かつての骸の海と呼ばれたものの残滓。
 過去は海に変えるが如く、虚無は幻を切り裂いた。
「思った通りだ」
 目の前の龍にヴィクティムは笑った。
 徹底的な挑発。
 天を鬼と為すことが出来なかった猟書家の心は揺らぎやすく、そして端役が仕込みすら見抜けない。
 その妖へと虚無の刃が差し込まれる。
「ぬがぁ!? 私が……消えていく?」
 虚無は削る。
 経験も、技術も、知啓も、忠誠心も、自尊心も。
「良く狙えよ天」
 ヴィクティムの視線は空へ。
「お前の覚悟を証明する為に、奴の首を落としてみせな!」

 龍の首へと螺旋の如き風が舞い、鱗を、肉を、また一つ、忍びは噛みちぎった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
天、か。
素敵な願いの籠った、いい名前ね。
それじゃ、あの子の……天のためにも。
私の身体、存分に使って頂戴。

この惨劇の犠牲となった里の者達の霊に呼びかけ、【心魂剣】発動
彼らを纏めて私の身体に憑依させ、「桜花幻朧」を芯として意思と心と魂の力を練り上げた光の剣を作り出し、天と共に戦う
この術の本質は、私の身体を介すことで生者と死者の意思疎通を図ること……いわば「口寄せ」
彼らの能力を私という器に宿せば、天との連携も上手く取れるはず

……とまあ、そんなものは建前で。
本音は彼らの無念を、天と共に晴らさせてあげたかっただけ。
そして叶うならば……仇を討った後、安らかに別れの時を過ごす事を願うわ。



●去り行く者と共に

「天、か」
 刀狩の肉を噛みちぎり地面に吐き捨てた忍びの耳に、荒谷・つかさの言葉が響く。
「素敵な願いの籠った、いい名前ね」

 ――そう言われるだけで主も報われる。

「それじゃ、あの子の……天のためにも」
 忍犬の仕草に頷くつかさ。
 彼女が構えるのは桜花幻朧、霊的な導き示す木の一振り。
「私の身体、存分に使って頂戴」
 望むのは既に去り行く者――死者の魂。

 心魂剣

 それは無辜の人々。
 この村で生まれ、この村で育ち、そして戦野で死ぬか、ここに戻って死ぬか……そんな生き方の中にささやかな幸せを望んだ者達。
 そして忍びが殺めた全ての命。
 彼らの姿を見た天は頭を伏せる。
 操られていたとはいえ、不忠を働き、不義を働き、そして、壊してしまったもの。
 だが、その中の一人が忍びの頭を撫で、そしてほほ笑む。
 見上げた犬にはそれだけで充分であった。

「いくわよ」
 羅刹の女が一言、口を開けば。
 魂は光となりて、木刀に集い刃と化す。
 忍犬は木の枝を咥えて、駆け出すと先陣を切って走り出した。

 ――本音を言うと、彼らの無念を、天と共に晴らさせてあげたかっただけ。

 木の枝が舞い、鱗で身を守る龍の意識が刹那、乱れる。

 ――そして叶うならば……仇を討った後、安らかに別れの時を過ごす事を願うわ。

 忍びの前肢が衝撃を浸透させ、猟書家の身体を内部から破壊し、空舞うその身を揺らがせる。
 つかさは想いを口にせず、ただ光となった魂達と共に、その刃を振り下ろした。

 願いが叶わんことを、ただ祈って。

 過去を削り取られた刀狩に防ぐ術はなく、その腹を切り裂かれ、天翔ける龍は大地へと叩きつけられて土煙を舞わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
此度の非道、天殿を救うだけでは終わりに非ず
その罪、死して償うがいい

――御覚悟を

夜叉を発動
刃には鎧無視と鎧砕きを付与
駆け出して接近し、2回攻撃を重視して攻撃
倫太郎の攻撃の後に続いて同じ所へ早業の一撃して確実に攻撃を与える
敵の攻撃は単純なものであれば跳躍を活かして残像による回避
武具に変えた鱗の数が多い場合は武器受けにて防御
カウンターの武器落としで叩き斬る

得るも失うも、生きている上での道理
理解していようとも、失った者にしか知らぬ痛みを、誰が理解してくれようか

刀狩よ、お前には解らないだろう
お前が踏み躙ったものの尊さも、重さも
そして……その末に刃を捨てぬ者の強さを

天殿……今一度、我等と共に


篝・倫太郎
【華禱】
天の覚悟に烈が応えるように遠く遠く吠える
望みがどうであれ、『アレ』は許せねぇ

真の姿を解放し始神界帰使用
代償にするのは野生の勘
封印を解除した時点で
鎧砕きと鎧無視攻撃を乗せた華焔刀でのなぎ払いで先制攻撃
刃先を返しでフェイントを入れつつ2回攻撃

以降は夜彦とタイミングを合わせて仕掛け
破魔や生命力吸収を乗せて
可能な限り夜彦が狙うのと同じ部位を部位破壊で攻撃

夜彦が夜叉になる程の憤り
忍び達の矜持を踏みにじられた天の憤り

奪われた矜持を取り戻せ、天
力なら幾らでも貸してやる

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぎ武器受けからのカウンター
夜彦と天への攻撃はオーラ防御を纏ってかばう事で対処



●例えその身、人でなかろうと

 金の瞳に光を宿らせ牡狼が吠えた。
「望みがどうであれ、『アレ』は許せねぇ」
「――そうだな」
 篝・倫太郎の言葉に月舘・夜彦も同意した。
 気のせいではないだろう、その言葉に滾る怒りは。
「此度の非道、天殿を救うだけでは終わりに非ず」
 夜禱を片手に夜彦の瞳は刀狩へ。
「その罪、死して償うがいい」
 澱み、穢れたそれを喰らい、カミは――
「――御覚悟を」
 鬼神となる。

 唯一無二はそれを夜叉と呼んだ。

 一方で倫太郎の姿も変わる。
 髪は伸び、角が目立ち、そして紋様が首から頬へと走る――その名は羅刹紋[禍狩]

 始神界帰

 羅刹が武器の封印を解き、今、カミへと至らん。
 烈に応えるかのように天が吠えた時、二人と二匹は龍へと走り出した。

 妖が羽ばたく。
 地に叩きつけられた屈辱を力に変え、鱗に身を覆い。
 その牙と鉤爪と刀を生み出すことにより、邪魔者を消し去らんとした。

 カミが走る。
 鎧を砕き、貫くであろう華焔刀の薙ぎ払い。
 ユーベルコードによって編まれた鱗を切り裂くには技は届かずとも神力がそれを凌駕し、肉を裂く。
 刃先を返し、切り上げれば舞った鱗が倫太郎の頬を傷つけた。

 夜叉が駆ける。
 刀をその手に同じく鎧を断ち、刺し貫く一撃を鬼が膂力で。
 斬るに至るのは唯一無二が刻みこんだ傷痕、そこへ再び刃を突き立てれば夜彦もまた、鱗に顔を傷つける。
 咆哮を上げて、龍が鉤爪を振るった。
 だが、爪が捕らえるのは残像。
 二人は遠く離れた間合いに跳び、そしてまた、懐へと飛び込んだ。

「得るも失うも、生きている上での道理」
 剣と盾、夜叉とカミ、二人に攻撃が鱗を割り、肉を裂く中、夜彦は口を開く。
「理解していようとも、失った者にしか知らぬ痛みを、誰が理解してくれようか」
 叫ばずとも、声を大にしなくとも、言葉は強い。
「刀狩よ、お前には解らないだろう。お前が踏み躙ったものの尊さも、重さも」
 朱炎が舞い、銀月が夜天に光る。
「そして……その末に刃を捨てぬ者の強さを」
 唯一無二たる二つの銀光、それが妖をたじろがせる。
「天殿……今一度、我等と共に」
 二つの影が二人の間を縫って走った。

 ――夜彦が夜叉になる程の憤り。
 忍び達の矜持を踏みにじられた天の憤り。
 倫太郎にはそれは痛いほどに分かる。
 だから……。
「奪われた矜持を取り戻せ、天。力なら幾らでも貸してやる」
 二人の間を走った犬狼、烈と天に思いを託し、加護を宿す。
 二つの影が一つになった時、木の枝が飛び、刀狩の意識を逸らした。
 されど、妖も技に慣れたのかすぐに意識を獣に向ける。
 だが、そこに居るのは牡狼。
 視界外から衝撃が走り、忍びが咥えた刃が刀狩の鱗を散らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミネルバ・レストー
……とんだ身勝手ね、反吐が出るわ
ワンちゃん、あなたの怒りは正当なものよ
だから、わたしはあなたの味方をしましょう
あなたの刃があいつに届くよう、手を貸してあげる

わたしの手札のほとんどは遠距離攻撃、すぐ見切られるでしょうね
でも、それで構わない
何も知らない顔をした「演技」で【戦女神の眼光】をぶっ放すわ
全部が全部刀狩に向かうと思うかしら? ふふ、残念
「地形の利用」を施した氷柱はね
忍犬が刀狩へと向かうための足場となって地面へと突き刺さるの

わたしの攻撃は通らなくても、忍犬の刃はどうかしら?
怒り、憎しみ、いろんな感情を乗せた肉薄した一撃を
あなたは――あんたは、責任もって喰らうべきよ!
何ならそのまま死になさい!


御桜・八重
【POW】

忍びと忍犬は一心同体。
双方の影となりて虚々実々に刃を奮う。
「って、漫画で読んだよ!」
天に熱弁し、協力を頼みます。

天は主の、里の仇を討つため。
わたしは、これ以上の悲劇を防ぐため。
「一緒に戦おうっ!」

天の忍犬としての力を借りるね。
死角から繰り出される素早い動きには
刀狩も注意を引かれるはず。
花疾風の襷を締め、
天が作ってくれた隙に全速で突撃!
鱗の武具を初撃で弾き、続く神速の八連撃を
その周囲の武具に叩き込む!
吹き飛ばされた武具の隙間目がけて、
「天、行っけーっ!」
九連撃目を叩き込め、天っ!

天はこんなに賢くて強いんだもん。
猟兵に覚醒出来たらいいんだけどな。
もし、その日が来たら、また一緒に戦おうね♪



●人と、ともに

 忍びと忍犬は一心同体。
 双方の影となりて虚々実々に刃を奮う。

「って、漫画で読んだよ!」
 御桜・八重の言葉に忍びは首を傾げた。

 ――漫画……とは?

「それにしても……とんだ身勝手ね、反吐が出るわ」
 そんな空気の中でもミネルバ・レストーは妖を睨むのを忘れない。
 むしろその冷えた言葉が冷静さを、そして八重の言葉が活力をもたらしていく。

 ――なるほど、これが人か。

「ワンちゃん、あなたの怒りは正当なものよ」
 人という者を改めて知る天に対し、ミネルバ=ネリーがしゃがみ視線を合わせる。
「だから、わたしはあなたの味方をしましょう」
 無機質に見えた氷の瞳が優しく見えるのは何故だろう。
「あなたの刃があいつに届くよう、手を貸してあげる」
「そう! 天は主の、里の仇を討つため」
 続くように桜の巫女が為すべきことを思い出させてくれる。
「わたしは、これ以上の悲劇を防ぐため」
 そうだ、これ以上の悲劇は要らない、我だけで沢山なのだ。
「一緒に戦おうっ!」

 ――承知!

 桜なびく中、少女達と忍犬は龍へと駆け出した。

 こおりのむすめに付き従うのはアブソリュート・ウィッチ。
 絶対零度の魔女の名を持つ雪氷の結晶は主の意に沿って吹雪を巻き起こす。
「――愚策!」
 妖が叫ぶと飛翔する妖刀達が炎の竜巻と化して、吹雪を呑み込めば、一瞬にして姿は消え、ネリーの目の前に刃が迫る。
 竜巻は幻、その間に飛翔するは刀一振り。
 だが、それは氷の柱が遮った。
「こおり降れ降れ、すべてを砕け」

 戦女神の眼光

 凍れる柱の雨が辺り一面に降り注ぐ――が。
「やはり愚策」
 刀狩が言葉を紡ぐ。
 ユーベルコードの相性が悪いのだ。
 いくら、氷柱を降らせても妖刀の幻が無効化し直撃には至らない。
「そう思った……ふふ、残念」
「何がおかしい?」
 こおりのむすめの笑みを不思議に思った猟書家が問う。
「全部が全部、あんたを狙っていたと思った?」
 ネリーが解を示した時、八重と天が氷を足場に一気に距離を詰めた。

 こおりのむすめが積み上げた氷の足場を桜の巫女と忍犬が駆けあがる。
 桜色の襷紐よりオーラをたなびかせ、八重は今、疾風となる!
「……させぬ!」

 ――それはこちらの台詞よ。

 鱗で硬化させた尾で薙ぎ払おうとした刀狩に対し、忍びは木の枝を投げる。
 妖が視界に移る「それ」を見て、すぐに忍犬へと意識を向けた。
 間に合った。
 猟書家が勝利を確信し、尻尾を振るったとき、疾風がそれを打ち払った。
 そう――八重である。
「いざ吹き荒れん」

 花嵐!!

 壱、弐、参、肆!
 螺旋のように駆け上がる四連の嵐が龍の尾を切り裂き。
 伍、陸、漆、捌!
 さらに四連の嵐が左肩の鱗へ穿たれる。
「天、行っけーっ!」
 玖!
 忍犬の刃が刀狩の左脇に刺さった。

「わたしの攻撃は通らなくても、忍犬の刃はどうかしら?」
 刃を咥えた犬から鳴き声が聞こえる。
「怒り、憎しみ、いろんな感情を乗せた肉薄した一撃を、あなたは――あんたは、責任もって喰らうべきよ!」
 それは高周波振動を伴う技。
「何ならそのまま死になさい!」
 それが周囲に伝播せず、刀を透して内部へ浸透すれば――刀を喰らう事で硬さを増した龍の肩が振動に耐え切れず粉砕される。

 ――天はこんなに賢くて強いんだもん、猟兵に覚醒出来たらいいんだけどな。

 八重が着地する犬の背中を見て、思う。

 ――もし、その日が来たら、また一緒に戦おうね♪

 けれど、それは叶う事はない。
 忍びもまた、これからの道を決めていたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
武器は食べる物ではなく揮うものです。
まあ竜に剣術は難しいか。オレもそう上手くはありませんが。

遠距離戦を挑む気は固よりない。
鱗がどんな武具であれ全部が刃でもないなら足場です。

主な脅威は妖刀でしょうが、どうなるにしろ当たる気はしませんね。
オレは、どんな人間よりこの脇指との付き合いの方が長いんですよ。
使い手のいない刀がどう動くかなんて考えるまでもなく理解できる。
こいつにも、オレにも。
【神業・絶刀】。
王道を心得ずに邪道を通ることはできません。
これが人間の剣です。

草の犬は、これからどうするんでしょうね。
どこかへゆくのか、無人の里を守るのか。それなら不毛すぎて哀れなんでたまに見に来てやってもいいですよ。


桜雨・カイ
もう大丈夫ですね、
分かりました全てを終わらせましょう
この決着はあなたの刀でつけてください
あなたが授けられた、主との絆である刀で
私も全力で手伝います!

【想撚糸】発動
撚糸で動きを封じつつ、結界で強化を相殺して
天さんの攻撃のサポートにまわります。
どんなに暴れて逃れようとしてもこれも絆の証、思いが続くかぎり決して切れることはありません。
どうか行ってください!

終わったら、里の皆さんや忍犬の仲間を葬ってあげましょう
天さん、色々な思いはあるでしょうが
それでも……
もし辛かったら今だけでも泣いていいんですよ。



●過去を斬り払わん

「もう大丈夫ですね、分かりました全てを終わらせましょう」
 片肢を失い荒れ狂う刀狩。
 それを目にしながら桜雨・カイは忍びへと語りかけた。
「この決着はあなたの刀でつけてください」
 カイの言葉に天は視線をヤドリガミへと向ける。
「あなたが授けられた、主との絆である刀で」
「武器は食べる物ではなく揮うものです」
 続くように矢来・夕立が脇差を抜いた。
「まあ竜に剣術は難しいか。オレもそう上手くはありませんが」
 それが意味するのは真の一刀。
「私も全力で手伝います! さあ!」
 カイに促され、忍犬が走ると、夕立がそれに続いた。

 人形の心が、想いが、過去が、くべられ、そして糸として掬い上げられる。

 想撚糸

 念を寄り合わせた糸、それがさらに念を拾い、太く、そして縦横無尽に広がる。
 羅刹の女が呼んだ魂、それが糸となって撚糸となって、そして――龍を捕らえた。
「どんなに暴れて逃れようとしてもこれも絆の証、思いが続くかぎり決して切れることはありません」
 ヤドリガミには確証があった。
 これまでの想い、一匹の犬が背負った咎、そして怒り。
 自らが失い、探し求めているからこそ、その重さを知り、その糸を繰ることが出来る。
「どうか行ってください!」
 応える言葉はない、けれどカイには二つの背中を見れば全てが伝わった。
 それでもう充分だった。

 妖刀の群れが降り注ぐ。
 だが、それは最早当たらぬ。
 猟書家が深手を負ったからか――いや違う!
「オレは、どんな人間よりこの脇差との付き合いの方が長いんですよ」
 無形から八相、夕立の構えが変わる。
「使い手のいない刀がどう動くかなんて考えるまでもなく理解できる」
 忍びの体毛が膨れ上がり、力を溜める。
「こいつにも、オレにも」
 そう、忍達には主なき刃の動きなど、見切る必要もなく。
 自由を得た刃はただ、歩くだけで至るのだ――妖の懐へ。
「己、おのれ、オノレェ!!」
 怨嗟が響き、牙を剥く龍。

 ――天剣

 忍犬が跳び

 ――絶刀

 影が一歩踏み込む。

 音は無かった、いや――
 胴と首を断たれた猟書家が三つに分かれて、大地に転がった音が響き渡った。
「王道を心得ずに邪道を通ることはできません」
 夕立が刀を納めた。
「これが人間の剣です」
 呼応するように天も刀を納め、そして遠吠えを上げた。
 猟兵には響き、空には伝わる、けれど聞くべきものはもう聞くことが出来ない犬の叫びが木霊した。
 いつまでも、いつまでも。

「草の犬は、これからどうするんでしょうね」
 夕立の視線には戦機とカイが人々を埋葬し、羅刹の女が見守る中、それに付き従う犬の姿。
「どこかへゆくのか、無人の里を守るのか」
 だが、答えは違った。

「天さん、色々な思いはあるでしょうが、それでも……」
 全てが終わった後、ヤドリガミは慎重に言葉を選び、天へと呼びかける。
 この里のただ一匹の生き残りに。
「もし辛かったら今だけでも泣いていいんですよ」
 だが、忍びは首を振り、影はそれを見て立ち上がり、その場から去った。

 ――無用。

 忍犬の心は決まっていた。

 ――この刃、主なき今、振るうは、牙無き人のため。

 自由であることは別の不自由を背負う事。
 ならば悲劇を食い止めるべく、草として生きる不自由を背負おう。

 ――我は戦おう、この大地に肢を着けて。妖を討ち、強敵に対し、貴殿達が間に合う様に。

 過去は斬り払われ、人と犬は今を歩き、そして未来へと進む。
 去り行く犬の姿は森の中へと消えていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月05日
宿敵 『刀狩』 を撃破!


挿絵イラスト