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寒いの嫌だけど着膨れしたくないから家にこもってガチャ回

作者：遠藤にんし

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　キマイラフューチャーといえど寒い地方くらいはある。
　吹き荒ぶ雪！　降り積もる雪！　サムイ！
　寒いので人々はおうちにこもってのんびり過ごしている。
　暇だからスマホでゲームもする。ガチャも回す。ゲーム内通貨がなくなるのでコンコンして魔法のカードを出す。
　自堕落ゥ！

　そして彼らは気付かない。
　彼らを引きこもらせるほどの雪が、オブリビオンによる罠であることに……！

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「お気楽なのがキマイラフューチャーの良いとこなんだけどなー」
　さすがによくねえなー、とタハニ・クルツリンガー（乱暴者は乱舞する・f03635）。
　寒いけど着膨れするくらいなら！　と引きこもってスマホゲームに興じる彼らは、ガチャに夢中になるあまり謎の機械をコンコンして魔法のカードとかりんごのカードとかを出してはスマホゲームに突っ込んでいるのだという。
「このスマホゲーが厄介で、実はこれ、あるオブリビオンが作ったものらしいんだ」
　確率の渋いガチャにあふれるのは魅力的でえっちなボーイズ＆ガールズ、渋おじイケおば豪華声優陣。
　このゲームにのめりこませ、キマイラフューチャーの人々を堕落させるというのが今回のオブリビオンの目論見らしい。
　そのために雪もめっちゃ降らせるし吹雪もめっちゃ激しくして彼らをインドアにさせた、とのこと。

「そもそも住人は『寒いけど着膨れするくらいなら外出したくない』ってことで引きこもってるんだ」
　つまり、『暖かい恰好で・着膨れしない』ファッションがあるなら彼らは外出する。
　外出すればスマホゲーに触れる機会は減るだろう。
「ってことで、まずは暖かくてお洒落なコーデを配信すると良さそうだな」
　寒風吹きすさぶ外でも良いし、近所のファッションビルを利用しても良い。
　ネット配信すれば、引きこもる彼らの目にも届くしバズるだろう、とタハニ。

「暖かい恰好があるのにスマホを手放さない奴らはガチャ中毒だな」
　ガチャを回すための資源は本来ならば有限なのに、気付けば彼らの家にあったコンコン機械からは魔法のカードやりんごのカードが無限湧きして無限ガチャが可能となっている。
　このコンコン機械の出所を辿れば、オブリビオンに到達することが出来るだろう。

「オブリビオンを倒せば、やべえ吹雪も収まるだろ」
　やることは多岐に渡るが、最終目的はオブリビオンを倒し、寒すぎる環境をどうにかすることだ。
「じゃ、寒いからカイロ持ってけよ！」
　言うタハニの手元、グリモアはオレンジ色に輝いた。

第1章 冒険 『ファッションチェック、してください！』

POW   :    正統派も新しいチャレンジも良い。豪快で自由な発想のコーディネート。 SPD   :    流行を取り入れたり、洗練された技術が光るコーディネート。 WIZ   :    独自の世界観や、配色や組み合わせを熟知したコーディネート。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　魔法のカードとりんごのカードが無尽蔵――そんな言葉に、アンテロ・ヴィルスカ（白に鎮める・f03396）は不思議と惹かれる。
「しかしオブリビオンの思うままとは頂けない、お洒落してお外で遊ぶといいよ」
　そんなアンテロは着膨れをしないために、内ではなく外へ纏うマフラーと手袋を準備していた。
「わ、可愛い手袋！　これ借りてもいいかしら？」
　アンテロの持ってきた手袋のひとつに目を留めて尋ねるのはハーモニア・ミルクティー（太陽に向かって・f12114）。
　二人は配信を行うためのカメラの前に立ち、まずはハーモニアは口を開く。
「冬といえば、バレンタインにイルミネーションに……素敵なイベントが盛りだくさんじゃない！　家に篭もって過ごすだけだなんて、勿体ないわ！」
　そんなハーモニアはトレンチコートの前を開けて、ふわふわニットとスカートのコーディネイトを見せつける。
　スカートから伸びる脚にはブーツ。冷えがちな足元もバッチリカバーしつつ、冬の流行も押さえている。
　ライラック色のスカートだから、冬なのに色彩が重すぎないのもポイントのひとつ。
　スカートの裾をつまむライラックは視聴者からの投稿に『真冬のスカートは寒くない？』というのを見つけると、「大丈夫よ！」と胸を張り。
「最近は、薄手で保温性に優れたアイテムがたくさんあるんだから！」
「厚着をすれば暖かいというわけではないからね」
　フォローを入れるアンテロも、分厚い鎧は冷たいので今日は着けていない。
　暑さ薄さだけで寒暖は決まるわけでなく、要所を押さえることが重要なのだとアンテロは言う。
　現にアンテロはインナーをタートルネックにすることで首元に風が入り込むことを防いで、更にマフラーを着けることで暖かくしている。
「マフラーなどは巻き方も10通りほどあるし、色柄や素材、サイズも豊富だね」
　言うアンテロの手の中では一本のマフラーが形を変え、様々な結び方に変わる。
　結び方が変わるだけで印象が変わるのに、マフラーを中心にコーディネイトを考えると更にイメージは変わる。
　アンテロ自身はロングチェスターにダブルクロス巻きでクラシックに。落ち着いた服装なのに清廉とした色気もあって、辺りの雪は色の濃い髪や肌をより映えさせる。
「手袋を合わせると更に個性が出て楽しいよ」
「そうそう！」
　うなずくハーモニアも先ほど借りた手袋を見せて、それに、と笑みを浮かべる。
「それに寒そうに見えるのなら、それを逆に利用してしまうのも手じゃないかしら？」
　寒いと言って片思いの相手や恋人にくっついてイチャイチャ――ハーモニア自身も恋をしているからか、そう語る声はうっとりとしている。
「冬はイベントが盛りだくさんよ？　家に篭もってガチャを回しているだなんて、損をしていると思わない？」
　バレンタインやイルミネーションと、冬にはカップルにうってつけのイベントもたくさん。
　外に出て楽しんでほしいと、二人は画面の向こうの視聴者へ笑いかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「寒いのが嫌なら……どう？　一回やっていかない？」
　蠱惑的な表情で誘い掛けるパーム・アンテルシオ（桃色無双・f06758）――ふかふかと尻尾を揺らし、もふもふと誘惑する。
　しかし、残念ながら今回はこのような趣旨では目的を果たせないらしい。
「仕方ないな、何か考えないと」
　とはいえ、マフラーやコート、手袋という定番コーデは出てしまった後。
　どんなコーディネイトが――パームが考えている間に、ミロ・バンドール（ダンピールの咎人殺し・f10015）は超あったかインナーを紹介することに。
　UDCアースにあるのだからキマイラフューチャーにないわけがない、ヒートなテックノロジーを存分に利用したインナー。
　ミロはここで紹介するにあたり、『ＵＤＣＬＯ』という正方形の赤に白抜きフォントのパク、じゃなかったインスパイア架空ブランドをでっち上げ、動画配信をスタート。
　ミロ自身が広告を作ることに明るいわけではないのだが、プロの技術の結晶である本家を応用して、いくつものシーンを切り取った映像を３０秒にまとめたものをミロは公開。
　インナーさえ押さえておけば、動きやすさを優先した薄着であっても問題ないいうのを示すために、動画の中の登場人物はみな薄着。
　ジャケット姿で雪遊び、ニット姿でオープンカフェ……寒がる素振りもなく笑顔のモデルが、あったかインナーのお陰で冬を快適に過ごせるのだと示すかのよう。
　アフィリエイトリンクも貼って用意は万全。そうして映像を流すうち、パームも考えがまとまって画面へと姿を見せる。
「私のオススメは……妖狐コスプレだよ」
　見るからに柔らかそうな耳と尻尾を見せつけるように、パームはそう告げた。
　服は普通に自由に冬服で構わないから、手持ちの服が合わなくなることはない。必要なのはただひとつ、たくさんの付け尻尾だけなのだ。
「寒ければ尻尾を抱けばいいし、肩にかけてもいいし、巻いてもいい。尻尾を増やせば増やすだけ暖かくなるし、妖狐らしくもなる」
　シルエット的には尻尾の分だけ膨れるが……こんなに可愛い着膨れがあるのなら、着膨れしたって構いはしないだろう。

　暖かなインナーで内側から快適に。
　あるいは外側に付け足すことで、着膨れを気にならないように。
　様々なアプローチで、猟兵たちは彼らへとアピールするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 冒険 『コンコン機械とイタズラ者』

POW   :    まずは行動！コンコン機械を使えなくしたり、地道に張り込み犯人を探したりする SPD   :    素早く対処！コンコン機械を修理したり、機械に犯人探しの仕掛けをしたりする WIZ   :    知恵を絞る！住民に注意を呼びかけたり、状況から犯人の推理をしたりする 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　着膨れを克服した人々は外出することも増えた。
　しかし依然として吹雪はやまず、スマホゲーへのガチャも止まらない。

　引きこもってコンコン機械で魔法のカードを作り続ける人々へ声をかけても良いし、外へ出てスマホゲーへの依存心の薄れた人々へ声をかけても良いだろう。
　どこからコンコン機械が現れたのか。
　その出所は、探らなければならない。








「やるしか……やるしかないウホね」
　決意を固めて、ヒバゴン・シルバーバック（ゴリラ型ロボット・f07349）はスマートフォンを置く。
　スマートフォンの画面ではガチャ画面が煌めいている。
　その演出に心惹かれるものはあるのだが……思いつつ、ヒバゴンは辺りに散乱するりんごのカード、およびコンコン機械を見つめる。
　渋いからこそ止まらないガチャに射幸心を煽られてコンコンすればりんごのカードは無限生成。至れり尽くせりの状況に怪しいとは感じていたものの、堕落してしまっていたのだ。
　このままでも――そんな気持ちを抱きもしたヒバゴン。
　しかし、遂に事件として予知されてしまった以上、猟兵としては動かざるを得ないのだ……！
「あ～折角タダで色々もらったのに～！」
　悔しさに唇を噛みしめるヒバゴンは、スマホゲーへの、ガチャへの執着に苦しそう。
「うーん、これは……」
　そんなヒバゴンを見て、葎はスマートフォンをつまみ上げる。
「まず機械を使えなくしてしまおっか」
　格物致知を用いて機械をちょちょいとハッキング、渋いガチャの確率を思い切り引き上げれば、ガチャを引けば高レアキャラがあっという間に出そろった。
「全部コンプ……だと……！？」
　目指していた高みへと到達したヒバゴン――だが、なぜだか寂しそうな表情。
　当たるかどうか分からないというところもガチャの楽しみだが、全キャラコンプしてしまった今となってはガチャを引く楽しみはない。
　そうなると急速にゲームへの関心は薄れ、途端にゲーム内通貨へつぎ込んだりんごのカードの金額が惜しくなってくる。
　葎によって返金も出来ないようになっているため、もう打つ手はない状態だ。
「ごめんなさい犯人さん。ヒバゴンは裏切りますウホ。どうか恨まないでくれウホ……」
　言って、ヒバゴンはゴリラ的＆ウォーマシン的膂力でスマホを一撃破壊。
「気をつけてくださいねー！」
「寒いから風邪をひかないようにね」
　シャルと葎に見送られ、寒風吹きすさぶ外へとヒバゴンは出ていく。
　葎はインターネットに接続して、このスマホゲーのファンが集まる掲示板やＳＮＳへアクセス。ガチャや返金問題にざわめく人々へと、運営へ文句を言いに行くよう書き込んだ。
　その間、シャルはamanecerを呼び出し、スピーカーを通し辺りへ退屈と恐怖の魔法を届けることにした。
　二人の合わせ技によって人々はスマホゲーに早々に飽きて放り出し、運営への抗議のためのちょっとしたオフ会が催されるようになった。

　外へ出れば、人々は思い思いの防寒をしている。
　その中でも、ふわふわもふもふの尻尾をたっぷり付けた妖狐コスプレの者へとパームは声をかける。
「可愛い尻尾だね！」
「でしょ？　このモコモコが最高なのー！」
　外に出ないゲーム好きさん、または怠け者さんより、外に出ている層の方が話しやすそうだというパームの目論見は大当たり。
　きつね尻尾同士ということもあって話は弾み、雑談の中でパームはコンコン機械にまで話題を伸ばす。
「使ってた時に、何か気になる事は無かった？」
「気になることかぁ。そういえば、魔法のカードの会社が全部同じだったような……」
　調べてみると、コンコン機械から出てくる魔法のカードの会社と問題のスマホゲーの会社の住所は同じらしい。
　完全にそこが怪しいので、パームは通りがかった葎とシャル、そしてヒバゴンへと情報を伝える。
「確かに、魔法のカードは同じ会社ウホ」
　殴り壊した機械から出てきた魔法のカードを見比べて、パームの得た情報が正しいという裏付けも取れた。
「運営もプレイヤーが減ったことは気付いているはずですよね」
　シャルの言葉に葎もうなずく。
　運営――オブリビオンとしては、この状況は危機感を煽るものだろう。そこに猟兵が姿を見せれば、戦いとなることは逃れられないこと。
「ふふふ、さっそく行ってみようか」
　パームはそう言って、ふわふわと尻尾を揺らして一歩踏み出す。
　この事件の解決も近いはず――そう信じて、猟兵たちは歩きだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『ムスビ』

POW   :    かみさまの縁結び（物理） 【指名札】が命中した対象を爆破し、更に互いを【運命の赤い糸】で繋ぐ。 SPD   :    燃え上がる恋の炎（物理） レベル×1個の【恋】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。 WIZ   :    恋する乙女は無敵（物理） 全身を【リア充モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　辿り着いた先は、雪の積もる神社だった。
「アンタたち、よくも邪魔してくれたわね！」
　オブリビオン『ムスビ』はお怒りの様子で声を上げ、猟兵たちの攻撃に備えるかのように身構える。
「お陰でスマホゲー事業もコケちゃって台無しよ！　せっかく、スマホゲーとの縁を強固にすることでヒト同士の縁を断ち切ってやろうと思ってたのに！」
　吹き荒ぶ雪が、より激しさを増し。
「こうなったら、お仕置きしてあげるわ――物理的にね！」




「いやあ、八つ当たりはみっともないからよした方がいいんじゃないかなあ？　人の縁なんて簡単に切れないよー？」
　葎は求漿得酒によって左腕を武装に代えてムスビへと接近。
　狙いは瞳。恋の炎燃え上がる中を駆け抜けた葎は顔面へと一撃を喰らわせ、即座に背後へ回る。
「人のご縁……ガチャだけが全てだと思いませんけど」
　ゲーム内にチャットや共闘システムがあるものも多いのだから、ゲームに熱中していても人の縁が切れることはない、とシャル。
「なので貴方を斬りましょう」
　しかし接近するには炎が邪魔すぎる。
　シャルがメリケンサックで地面を殴りつければ、桜吹雪が舞い散った。
　延焼することなく猟兵たちのみを狙う炎へ桜吹雪は凍てつく力を伴って炎を相殺。炎が消えた直後、残された花びらたちはそのまま礫となってムスビの体へと突き刺さった。
　葎の手には彼岸花ノ葬。背後から斬撃を受けたムスビは小さな悲鳴を上げて指名札を指で弾く。
「許せないわ！　アンタたち、私が結んであげる！」
「首、かっ捌かれるのと轢き逃げされるのどっちがいいかな？」
　葎の彼岸花ノ葬の赤い切っ先が触れたかと思えば切断。
　シャルの村雨は指名札を貫いて、更にムスビめがけて刃を叩き込む。
　毒が、麻痺の力がムスビの全身へと回る――斬られてなお追い回してくる指名札はメリケンサックで粉砕、律は残像でかわそうとするが避けきれず、ムスビと赤い糸で繋がれてしまう。
「りっちゃん！」
「厄介だなあ。でも、やりようはあるかな」
　結ばれた糸を辿るように肉薄する葎。
　ムスビが避けようにも、糸で繋がれてしまっていては逃げ切ることは出来ない。葎の斬撃は、先ほどの太刀筋と重なるようにもう一撃加えられて。
「あ、ごっめーん。もう喋れないかー。もうちょい痛い目見とく？」
　そして更に容赦なく串刺しにして、
「リア充爆発しろって言っとけばいい？」
「うわぁりっちゃん大暴れですね……」
　さすが、と思わず見入ってしまいそうになるシャルであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「危うく自分も友だちとの縁を知らず知らず切るところだったとは……見た目に反してなんて恐ろしい奴ウホ！」
　戦慄するヒバゴン。
　一歩間違えればルール無用にして天井無用の課金猟兵となるかもしれなかったのだ。
「今からでも遅くないわ、さあ課金作業に戻りなさい、今すぐ！」
「絶対嫌ウホ！」
「聞き分けの悪い――！」
　燃え上がる炎を受け止めるのはレース用カート。炎に身動きの取れないヒバゴンは二人プレイのためにもう一人の分身を生み出す。
「ふふふ、悪い人が、悪い神様が、悪事を働くとどうなるか」
　パームは笑みを浮かべて、狐を象る桃色の炎を作り出す。
「因果応報。お仕置きされるのはあなただよ。昔話でも、よくある話だよね？」
　ゆらり、パーム自身の尾の狐火の尾が揺れて。
「あなたも炎を扱えるみたいだけど……どっちの炎が強いか、勝負してみる？」
「いいわ、かかってきなさい！」
　合体した巨大な紅蓮には合体した大狐を。
　ちりちりと膚を焼こうとする火の粉のごとき炎には、とびきり小さな狐を。
　入り混じる赤と桃。二色は溶けて消え、何度炎を作り出しても相殺されてしまうことに苛立ってムスビは声を上げる。
「こんなことしても意味ないじゃない！　お仕置きなんて口ばっかりなんだから！」
　炎と炎は打ち消し合うのみで、パームが傷を負うことこそないがそれはムスビも同じ。
「ふふふ……それでいいんだよ。あなたの気を引けるのなら」
「それって――！」
　気付いた時には、既にミロが背後から迫っている。
　断頭台は重い音を立てムスビの頭部と手首を押さえつける。
　慌てて炎の一部をミロへ回すムスビだが、呪詛にも近い強力な愛縁はミロには効かない。炎に炙られ熱を秘めた金属塊によって、ミロはムスビを叩き斬る。
「私たちは、一人で戦ってるんじゃないんだからね」
　依然としてパームは炎をムスビに向け続け、対処しなければ焼き討とうと狙う。
　至近から攻撃を仕掛けるミロへ反撃しようとすれば、ヒバゴンの分身が飛び出してきて妨害。
　ヒバゴン自身はカートの後ろに身を潜め、おもちゃ感のあるＰＰ銃から落花生の弾丸を射出。
「相手が女の子だってヒバゴンは油断しないウホよ！」
　先ほどまでの課金猟兵堕落ゴリラっぷりはどこへやら、勇猛果敢なる雄姿を見せつけるヒバゴン。
　汚名返上とばかりの猛攻――ムスビの勢いよく打ち出した指名札は風を纏って吹雪を巻き起こしながら猟兵へと向かうが、ミロは平然とした表情で攻撃を重ねる。
　動画ＣＭを作るために購入しておいたヒートなテックノロジーあったかインナーのお陰で吹雪に攻撃の手が鈍ることはない。
　靴下や手袋もあるから防寒は完璧、おまけにあったかインナーは薄手なので、着膨れして動きにくくなることもないのだ。
「本当に良くできている」
　感嘆の言葉を呟いて、拘束具を至近から。
　手枷、猿轡、拘束ロープ。それらに縛り上げられたムスビは動くことが出来ず、リア充モードによる無敵も封じられてしまった。
「フフフ、反撃の時間だよ！」
　いっそう巨大な炎をパームが作り出すのを合図に、猟兵たちは一斉にムスビへと飛びかかる――。

　――ムスビの撃破と共に吹き荒れていた風は穏やかになり、雪も勢いは収まった。
　スマホゲーもサービスは終了、これ以上の課金による犠牲者は出ないことだろう。

　しかし、油断してはならない。
　この世に楽しみがある限り、オブリビオンはそれを利用して跋扈するのだから――！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月07日