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メイド喫茶を守れ! ~敵は女の恨みと人手不足

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 ゆっくり、ゆっくりと、黄昏時の路地裏の中でそれは形を成した。見た目は白無垢を纏った狐耳の花嫁。されど猟兵が見ればひと目でわかるであろう、その存在が過去から滲み出した者、影朧であることに。

「嗚呼、臭う、臭うぞ……会いとうも無いのに見つけてしまったではないか」

 くんくん、と顔をとある方向へ向ける花嫁。周辺の建物が邪魔だと、ふわりと浮かび上がって。空から確認したその方角にあるものは、メイド喫茶であった。
 距離がかなりある。ましてやその間に様々な建物があるにもかかわらず、因縁の臭いを嗅ぎつける程に嗅覚が効くようになったのは、きっと憑いた狐のおかげだろう。
 そう、狐。愛する男に裏切られて、傷心の末に自殺した後に。それでも恨みを忘れられず、その恨みに惹かれて憑いた狐の嫁入りの怪奇。
 この力は、男に復讐するがためのもの。ならばこそ。
「見つけたからには……捨て置くわけにはいかぬ」
 再び路地裏に舞い降りて。花嫁は己が持つ力を発現させる。周囲に炎が生み出され、それに釣られるようにして、骸の海で従えた眷属がぼこりぼこりと生れ出る。
「ふふ、ふふふふ……さぁ、積年の恨み、晴らすとしようか」
 眷属『ルールー』を引き連れて、『狐憑ノ花嫁』は因縁の相手がいるメイド喫茶へと進む。

 今は誰そ彼時。今と昔、現実と不思議が交差する、逢魔が時。


「いつもすまないね。集まってくれてありがとうだ」
 椎宮・司(裏長屋の剣小町・f05659)がグリモアベースの一角で話を始めた。もちろん彼女が見たという予知の内容を、だ。

「サクラミラージュに行って欲しい。とあるメイド喫茶が花嫁の影朧に襲われるんだよ」
 今、帝都で流行りの大正メイド喫茶。ここが今日の黄昏時に襲われるとのこと。狙いはこのメイド喫茶のオーナーだ。
「どうやら、因縁の相手……なんだが、もちろん直接因縁があるわけじゃあない」
 花嫁が本当に殺したいほど恨んでいるのは、オーナーの遠い遠い先祖に当たる男性だ。

 ひどい話だが、その男。婚儀の日当日に花嫁を裏切りの如く捨てて、別の女と逃げたらしい。そのショックで傷心……まではよかったが、周囲に対する外聞もあって、花嫁は自殺してしまった。そして今に至る。

 話だけ見るなら、どう考えても向こうが被害者だ。オーナーがその逃げた相手との子供から連なる子孫とかだったら八つ当たりされても、筋違いとは言い難いすらある。
 だが、それでも。
「こちらにも筋がある。過去が今を食い荒らしちゃいけないってことサ」
 過去から生まれる影朧が、今を生きる人を邪魔してはいけないのだ。
 だからこそ、この事件は猟兵たちの手で解決して欲しい。


「てなわけで、今回のお仕事は、オーナーさん含めてそのメイド喫茶を守ることだ」
 今からサクラミラージュに赴けば、おそらく昼前。件の襲撃時間は黄昏時だ。まだまだ時間がある。
「だからといって先んじて手を打とうとしないでおくれよ?」
 予知は絶対ではない。予知に至るまでの時間や場所などが想定されている状況から大きく外れていった場合、予知そのものが外れることがある。
「だから、お前さんたちにはメイド喫茶でのんびり待っていて欲しい……と言いたかったんだが」
 そこまで言って、司はそっと目を逸らす。
「実はもうひとつ問題があってね。比較的大ピンチのやつだ」
 そこでひと呼吸置いて、司が告げる。
「今日に限って、メイドさんたちが全員風邪でお休みしてるんだなコレが」
 さっき地理とかを偵察してきたらそうなってたらしい。
 これがどういうことかというと、メイド喫茶が臨時休業しかねない事態だということだ。
「そうなると、だ。黄昏時にオーナーがメイド喫茶に居ない」
 ということは、花嫁の影朧はメイド喫茶に向かわない。つまり、予知の状況が再現できない、イコール予知が外れてヤバい。

 しかしこの状況を打破する方法がたったひとつある……!

「メイド喫茶を開店営業させるんだ、お前さんたちで!」
 つまり、本日限定のアルバイトである。メイドとして接客を行ったり、調理担当として料理を作ったり、裏方として雑用を行ったり。そしてお客としてもお店に行って盛り立ててほしい。とにかく今日も大正メイド喫茶を開店させてあげてほしいのだ。
「それでようやく予知の軌道に乗るってわけさね」


 話を纏めよう。
 まずサクラミラージュに行って、大正メイド喫茶のお手伝いをする。メイド、調理担当、雑用。それからお客。いずれかの立場でメイド喫茶の今日の営業を支えてあげてほしい。
 そのまま黄昏時になると、影朧が襲撃してくる。これをお店の外で迎え撃ち、オーナーとメイド喫茶を守ってほしい。
「あたいもメイド服を着れればよかったんだが……すまないねえ」
 ちゃっかり逃げたグリモア猟兵だが、確かに事件が解決するまで前線に出れない宿命なのだ。仮にもしメイド服を着た司を見たいという奇特な方がいたら申し出てほしい。ご褒美があるかもしれない?

「お前さんたちなら、メイド喫茶も影朧退治もバッチリサ。それじゃ頼んだよ」
 そう言って司は猟兵たちをサクラミラージュに転送させるのであった。


るちる
 こんにちはとかこんばんはとか、るちるです。いつもお世話になってます。
 ちょっと初心に戻って、シンプルな依頼を。サクラミラージュで影朧退治です。
 今回はのんびりと運用していきたいと思っています。

 シナリオの補足です。
 1章は日常、メイド喫茶のお手伝いとなります。
 名目上は、『今日、特別営業ナリ』
 そのため、メイドだけじゃなくて執事がいても問題無し。なお、男女も問いませんので、男のメイドがいてもいいし、女の執事がいてもオッケーです。
 料理も普段に無いメニュー(つまり皆さんが思いついた料理)を出しても問題無しです。普段はどんなメニューが出てるかというと、鉄板メニューが出ていたと思ってください。
 裏方仕事も大切です。お掃除、片付け、レジなどなど。
 どれかが欠けるとダメということはないので、好きなお仕事を手伝ってくださいな。

 2章以降は戦闘になります。ルールー⇒花嫁の順に戦闘です。戦闘場所や状況は章の開始時にまた追記します。

 オーナーさんは基本的に表に出てこない裏方さんですが、用があれば手伝ってくれます。活発な雰囲気の女性です。

 その他記載のない設定は好きに設定してもらって大丈夫です。特にメイド喫茶の中とか。

 同行者がいる場合はお名前の指名か、【】タグで指定してください。
 1章のみの参加や途中からの参加も大歓迎です。

 それでは皆さんの参加をお待ちしています。
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第1章 日常 『大正メイド喫茶を救え!』

POW   :    メイドとして接客を行う

SPD   :    調理担当として料理を作る

WIZ   :    裏方として雑用を行う

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

疋田・菊月
あらら、店員さんが風邪を召されたと
これは同じ給仕として捨て置けませんね
カミオさん、手助けしますよ!
我々は常に孤軍奮闘。なぁに、一人で三人分くらい働けばいいんですよ
とはいえ、普通のお店に黒い鳥はアレなので、カミオさんはちょっとお店の周りを見張っててください

さて、私の方の戦場ですが、メイドさんって何するんでしょうかね
とりあえず、奉仕の精神あふれる戦斗服たる給仕服の潜在能力を引き出しましょう!
さあさ、現役給仕の底力をお見せしますよー
お料理も給仕も、足りないところを補い他の猟兵さんをさり気なくフォローです
はーい、いらっしゃ……え、お帰りなさいませ?
もえもえきゅん?
はぇ~ハイカラですねー、えへへ




 グリモア猟兵に言われて転送されてきた先は、帝都で今流行りの大正メイド喫茶。
 そこは今日、営業停止の危機に追い込まれていた。メイドさんたちが全員お休みなのである!
「あらら、店員さんが風邪を召されたと。これは同じ給仕として捨て置けませんね」
 と駆けつけてくれたのは疋田・菊月(人造術士九号・f22519)ことお菊さんである。
「カミオさん、手助けしますよ!」
 と意気込んできたものの、カミオさんは名古屋訛りのクロウタドリ(の姿をした悪魔)である。さすがにお店の中には入れない。
「カミオさんはちょっとお店の周りを見張っててください」
 お菊さんの指示を受けてメイド喫茶の屋根の上で佇むカミオさんはまるで風見鶏のよう。
 そしてお菊さんは意気揚々とメイド喫茶に乗り込む。
「我々は常に孤軍奮闘。なぁに、一人で三人分くらい働けばいいんですよ」
 さすがスーパー給仕さんである。

 そんなわけでお菊さん採用。メイド服に着替えてお店に出る。
「さて……」
 店の中を見渡してお菊さんは自信満々で呟く。
「メイドさんって何するんでしょうかね」
 まさかのそこから?
 しかし、彼女はその程度は怯まない。というか動じてなかった。
「とりあえず、奉仕の精神あふれる戦闘服たる給仕服の潜在能力を引き出しましょう!」
 【オール・ワークス】発動! お菊さんを奉仕のオーラが包み込む(雰囲気)。
「……!!」
 このオーラ(雰囲気)だけでメイド喫茶は大丈夫なような気がしてくるオーナーさん。実際、仕事に入ったお菊さんは手が回らないところをさり気なくフォローしてくれている。滞りがちだったお仕事がスムーズに流れ出す。
「さあさ、現役給仕の底力をお見せしますよー」
 というお菊さんの言葉に偽りなしである。

 そこへお店に訪れるお客さん。
「はーい、いらっしゃ……」
「え?」
「……え、お帰りなさいませ?」
 何故か挨拶でお客さんから指摘を受けるお菊さん。拘りの強いお客様のようです。そんなわけで言い直すお菊さんに満足げなお客様。
 ご注文はオムライスでした。
「え? 魔法? もえもえきゅん?」
 そこでも追加のご注文(?)がありまして。言われるがままにポーズを取って可愛く首を傾げて、メイド必殺(?)のもえもえきゅんを炸裂させるお菊さん。

 こうかは ばつぐんだ!

 とっても満足げなお客様を見て。
「はぇ~ハイカラですねー、えへへ」
 こちらも満足げなお菊さんでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

紅葉・智華
【妹(f12932)も来てしまった】

※アドリブ・連携歓迎
(口調:変装前(素)→変装後(メイド))

方針:POW

――そんな形で予知外れるとか、一大事じゃんか……!

という訳で、【選択UC】(防具初期技能・演技)でウィッグにメイド衣装(胸に詰め物)に着替えて、メイドとして勤務すると致します。

裏方の人数が足りなければ、其方をやれる位には手先は起用ですし、その辺りは臨機応変に勤務すると致しますよ。

「――って、華織ィィィ!!」
とりあえず、その【演技】の邪魔をする妹は申し訳ないけど出禁にしようそうしよう。
(まあ、家族に見られたくない、というのも自然な従業員の姿だろうしこれれはこれで)


紅葉・華織
【お姉ちゃん(f12932)の臭いがしたので】
※アドリブ・連携歓迎

方針:客

こういうのってサクラも必要でしょ。華織知ってる。店が賑わってる事も大事だもんね。閑古鳥が鳴いちゃあ多分、予知もずれちゃうだろうしネ!
――というか、お姉ちゃんの臭いが……そこだぁ!(金髪メイドに扮した姉に突貫する)
「お姉ちゃんのメイド姿! メイド姿もいいよ! でもウィッグと詰め物はなくていいよ! ありのままのお姉ちゃんこそが至高なんだから!! ハァハァ!」(息を荒げながら姉に迫る)

(暫くして)
なんで華織が出禁なのさ。(当たり前)
御留守番(店の近くで待機)しとこ……。(寂しげに)



●紅葉狂想曲?
「なんで華織が出禁なのさ」
 件の大正メイド喫茶の前で体育座りしながらしくしくと泣いているのは紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)。
「御留守番しとこ……」
 後ろ髪が引かれる思いを立ち切り、寂しげにお店の近くで待機を決める華織さん。

 いったい、彼女に何が起こったというのか。

 そんな彼女のメイド喫茶事件を振り返ってみよう。

●切欠

 ――そんな形で予知外れるとか、一大事じゃんか……!

 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)はその想いを抱えてメイド喫茶のドアを叩く……開く!
 【電脳魔術【即着】】のおかげで今の彼女の演技力は最高に高まっている。なおウィッグにメイド衣装は今日の彼女の戦闘服である(胸には詰め物が入っています)。
「では、メイドとして勤務すると致しましょう」
 そうして智華はメイドさんに生まれ変わった(?)のである。

 元々手先は器用なほうだ。裏方もホールも臨機応変に対応できる程度にはスーパーメイドな智華。彼女のおかげもあってメイド喫茶の営業は回転が良くなってきた……そんな時に悲劇は起こったのだ。

 カラランッ。

「いらっしゃ……!?」
 お客さんの気配を感じてお出迎えの声をあげかけて。
 智華は素早く裏方へ、自然にそそくさと下がろうとした。

 だが しかし 回り込まれた。

「お姉ちゃんの臭いが……そこだぁ!」
「ごっふぁぁ?!」
 さっき入ってきたお客さんが一切の躊躇なく、また一切の迷いなく智華目掛けて突貫してきてタックル……じゃない、抱きついた。
 そう、来訪者は妹の華織だったのである。
 智華が態勢を立て直す前に、華織の猛攻(?)開始。
「お姉ちゃんのメイド姿! メイド姿もいいよ! でもウィッグと詰め物はなくていいよ! ありのままのお姉ちゃんこそが至高なんだから!! ハァハァ!」
「――って、華織ィィィ!!」
 息を荒げながら姉に迫る、っていうかもう迫っている華織。

 何が起こっているのか。
 智華は戦闘中に冷静さを保つ手段としてキャラ作り(語尾)をしている。そして華織には不評である。今回もその辺りの琴線に触れたのではなかろうか。
 対して華織は、不慮のこととはいえ、離れていた3年間もの空白によって、智華に対してはドのつくシスコンかつヤンデレになっている。

 それがこの地獄である。

「……!」
 とりあえず、メイドの演技の邪魔をされるわけにはいかない。華織をべしっとはたき落す智華。
(申し訳ないけど出禁にしようそうしよう)
 そう心に決めて、くるり踵を返す智華。
 それを察したのか、華織は慌てて姉に訴える。
「こういうのってサクラも必要でしょ。華織知ってる。店が賑わってる事も大事だもんね。閑古鳥が鳴いちゃあ多分、予知もずれちゃうだろうしネ!」
 それっぽい理由を告げて居座ろうとする作戦!
 しかし、智華の決意は固かった……!

 そして冒頭に繋がったのである。

 まあ、家族に見られたくない、というのも自然な従業員の姿だろうしネ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンネ・プラネッタ
●プレイング
ついに僕もメイド服に袖を通す日がやってきた! 可愛いからきっと似合うはず!

ミニスカメイド姿で接客に従事しよう。お客さんの噂話には積極的に聞き耳を立てる。僕はシスター探偵だからね。殺人事件とか誘拐事件とか、探偵が必要ぽい話題ならさりげなくにじり寄って行くよ。
あとは失礼にならない範囲でオーナーの家系の話でも聞いておこうか。もしかしたら影朧の正体が掴めるかもしれないからね。

酔っ払いやしつこいナンパ男のようなタチの悪い客が来たらさりげなく警告しよう。メイド喫茶らしくケチャップでオムライスにメッセージを書いて贈るよ。
「失せろ」




 その日、リンネ・プラネッタ(ロザリオの名探偵・f22933)は運命(?)と邂逅した。
「ついに僕もメイド服に袖を通す日がやってきた!」
 リンネはシスターである。そんな彼女がメイド服を手に取ることは、自身が得意とするコスプレ魔法ではあっても、仕事ではなかったのかもしれない。
「可愛いからきっと似合うはず!」
 その自信はどこから出てくるのか。いや、そのスタイルを見たら当然だった。
 そんなわけで自信満々にメイド喫茶のドアを叩くリンネ。
 ところでシスター、普段からちょっと際どくないですか?


 バッチリ採用なリンネはミニスカメイドをチョイスした! 僕っ子ミニスカメイドの爆誕である。
「おかえりなさいませー!」
 と快活にお客様をお出迎えするリンネの評判は上々。常連客の緊張も解れてきたところで、口も滑ろうというものだ。
「そう言えば聞いたかい? 二つ隣の区画にある塚を壊すって」
「ああ、あの曰く付きの? オーナーさん必死に反対してたのに、数には勝てなかったか」
「ねえねえ、それって何の話?」
 噂話の影にリンネあり。するりと会話に入り込む。その仕草があまりにも自然で、そしてメイドっぽくなかったので、お客さんは思わず苦笑する。
「お嬢さん、メイドじゃないのかい?」
「それは仮初の姿。僕はシスター探偵だからね」
 探偵が必要ぽい話題ならさりげなくにじり寄って行くのが彼女のポリシーである。

 その後。
「オーナー、聞きたいことがあるんだけど」
 その噂話ををネタにリンネがオーナーに話しかけた。
「なかなか耳聡いね」
 微苦笑しながらも、隠すことでもないのかオーナーは教えてくれる。

 曰く、あの塚は昔、悪霊になりかけていた女の霊を鎮めるものであった、と。それを建てたのがオーナーのご先祖さま。
「何でも、同じ目にあった女の、哀れな結末を嘆いてのこと、らしいよ?」
「それって……」
「流石に詳しい話は伝わってないんだけどね」
 肩を竦めるオーナー。得られる情報はここまでか、と踵を返そうとするリンネに、オーナーはぽむっと手を叩く。
「あ、ちなみに我が家は女系だから。代々女主人が切り盛りしてきたの」
 今話せることはここまで、と言われ、リンネはホールに戻るのであった。

 そこでリンネが見たのは、先程の上品な客から打って変った客層であった。簡単に言うと、ちとガラが悪い。
 既にリンネの話は聞き及んでいるのか、にやにやした顔で話しかけてくるお客。
「こんなシスターが目の前にいたら何も話入ってこないだろう?」
 明らかに性的な目でリンネをじろじろ見る輩であった。お祭りしていると時折変なのが紛れ込むのが世の常なのか。
 にっこり笑ってリンネ。ご注文のオムライスにケチャップでメッセージを書いて贈る。
『失せろ』
「……アッハイ」
 その単語とリンネの笑顔のプレッシャーに思わず身を竦ませるガラの悪い客層一同であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
【砦】
人格:ロキ

八重さんも朔良さんも良く似合ってますね。接客はお任せして私は厨房を担当します
味覚が無いので味見はできませんが、レシピ通りに作ることならできます
「私が厨房にいる間は決して中を見ないでくださいね」
オーナーにレシピを借りつつお願いし、お客様からも見えないように気を付けながら調理を開始。UDCの液体金属を触手のように操り、複数の作業を同時にこなします。火力調整は火属性の触手で行いましょう
八重さんの味見に安堵の微笑みを浮かべ作業を再開

賄いは余りものからロコモコ丼を作りましょう
「オーナーも一緒にいかがですか?」
店の外に注意を払いつつ、しばし歓談と参りましょう
護衛に信頼関係は大切ですからね


御桜・八重
【砦】

一度メイド服って着てみたかったんだよね♪
よし、これお借りしまーす。
うーん、フリルが可愛いよね~

接客マニュアルによれば、お客様がいらしたら
『お帰りなさいませ、ご主人様(お嬢様)』
って言うんだって。
朔良さん、一緒にやってみようよ♪

接客用とは言えニコニコしてる朔良さん、
メイド服もよく似合ってて可愛い♪
厨房でのクールな顔とのギャップがまた萌えるねー

「さて、わたしも頑張らな、わわっ!」
ちょっとしたドジは愛嬌のうち。気にしない気にしない…

「桜ケーキ、オーダー入りまーす!」
厨房ではロキさんが調理中。
触手からクリームを乗せたスプーンを受け取ってパクリ。
む!むむむっ!(ぴかー!)
これは賄いも楽しみだなあ♪


黒柳・朔良
【砦】
呼び方:名前呼び捨て

メイド喫茶、というのはUDCアースにもあるが、随分と雰囲気が違うな
郷に入っては郷に従えともいう
ここはサクラミラージュ式のメイド喫茶のメイドとして給仕をするとしよう

選択UCでこの店のメイド服そっくりの衣装と小物を用意
そして店に立つ八重や他のメイドの様子を真似てみて、同じように見えるように演技する
八重のドジもさり気なくフォロー出来ればいいな

怜悧の賄いが出来たら一度厨房に下がる
仲間の前ではさすがに演技はしないが、フロアから呼ばれれば演技のスイッチが入るだろうな
普段と違いすぎるって?
これくらいこなせなければ自らを『影』であると名乗りはしないさ

演技時:接客用笑顔で丁寧な店員



●降り立って
 グリモア猟兵の話を聞いて、サクラミラージュに降り立った【砦】の3人。
 黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)、御桜・八重(桜巫女・f23090)、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)が件の大正メイド喫茶の前に立つ。

「メイド喫茶、というのはUDCアースにもあるが、随分と雰囲気が違うな」
 と朔良が言えば。
「一度メイド服って着てみたかったんだよね♪」
 と八重は興味津々。
 その後ろを怜悧……今はロキというべきか。彼が物静かに付き添っている。

「郷に入っては郷に従えともいう。ここはサクラミラージュ式のメイド喫茶のメイドとして給仕をするとしよう」
 と言う朔良を先頭に、3人は大正メイド喫茶のドアをくぐったのである。

●更衣室
 そしてバッチリ採用の3人はまず更衣室に向かう(もちろん、男性と女性で分かれます)

 部屋に備えられていたメイド服……はさておいて。
「ふむ。どうだろう?」
「おおー!」
 ぱちぱちぱち、と八重の拍手。
 ユーベルコード【紛い物の偽装】でこのお店のメイド服そっくりの衣装と小物を作り出す朔良。その精度たるや、ほぼ同じといってもいいくらいである。主を影から守らんとする一族の成せる業か。
 その一方、八重は並んでいるメイド服を選り取り見取りしていた。
「うーん、うーん」
 悩み悩んで、最終的に手に取ったのは。
「よし、これお借りしまーす。うーん、フリルが可愛いよね~」
 くるりと回ればフリルがふわっと踊る、愛らしいメイド服でした。

 八重と朔良が更衣室から出たところで、ロキも出てきた。
「八重さんも朔良さんも良く似合ってますね」
 こちらもエプロン姿だが、接客用というよりは完全に料理人のそれである。
「接客はお任せして私は厨房を担当します」
 こうして3人は戦場(?)に赴いたのである。

●ホール
 1日限りのアルバイトとはいえ、基礎は大事である。
 ホールに出る前に接客マニュアルに目を通す八重。
「お客様がいらしたら『お帰りなさいませ、ご主人様(お嬢様)』って言うんだって」
 そう言って隣に佇んでいる朔良に話しかける。朔良は朔良でぼーっと立っているように見せかけて、店内のメイドの動きや仕草をチェックしていた。
「朔良さん、一緒にやってみようよ♪」
「え、ああ」
 というわけで、八重に促されるようにして、お出迎えの挨拶をする朔良。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「わー♪」
 接客用笑顔で丁寧な店員という今日の演技。そして先のチェックも相まって、これまた熟練のメイドかというほどの精度を出す朔良。
 接客用とは言え、ニコニコしている朔良は、普段の彼女を知る者からすればレア物といってもいいかもしれない。そこに思わず歓声をあげる八重。
「メイド服もよく似合ってて可愛い♪」

 そんなわけで練習を終えていざ実践!

「さて、わたしも頑張らな、わわっ!」
 さっそく(?)躓く八重。あわや転倒っていうところを朔良の手が抱き抱える。
「気を付けてな」
 『八重のドジもさり気なくフォロー出来ればいいな』とか朔良が思っていたのは秘密。そんな朔良は八重を立たせてホールへ向かう。
「ちょっとしたドジは愛嬌のうち。気にしない気にしない」
 気を取り直して八重も朔良の後を追いかけるのであった。

●厨房
 厨房ではロキが奮闘していた。
(味覚が無いので味見はできませんが、レシピ通りに作ることならできます)
 と厨房の中へ入る。
「私が厨房にいる間は決して中を見ないでくださいね」
「お、おう?」
 それはそれで他の料理人をどうするのかという話なのだが、まあ今ちょうど買い出しに出かけているし。ロキの言葉に頷きを返すオーナー。
 そしてロキはオーナーにレシピを借りて、お客様からも見えないように気を付けながら調理を開始。
「お願いします」
 と声をかけるのは自身が纏う黒く玉虫色に光る液体金属。それを触手のように操り、さながら何本もの手を作り出す。
(これで複数の作業を同時にこなすことができます)
 火力調整は火属性の触手で行う予定。こうして厨房は高速回転の体制が整ったのである。

●賄い?
「桜ケーキ、オーダー入りまーす!」
 注文を取ってきた八重が厨房に駆け込んできて元気に注文を伝える。
 厨房の中ではロキが忙しく調理を続けている。もちろん彼の呼んだ触手たちも。
「八重さん、味見してくれませんか?」
 ロキの言葉に触手の1体がクリームを乗せたスプーンを差し出す。それを受け取った八重は躊躇うことなくパクリ。
「む! むむむっ!」
 なんか『ぴかー!』って後光が差した感じである。その様子に安堵の微笑を浮かべるロキは作業を再開。
「これは賄いも楽しみだなあ♪」

 そんなこんな休憩タイムが訪れる。ロキの賄いタイムとも言う。

(賄いは余りものからロコモコ丼を作りましょう)
 とロキが作ったロコモコ丼が休憩室の3人の前に並んでいる。
 朔良も『接客用笑顔で丁寧な店員』から普段通りのクールな彼女に戻っている。
「厨房でのクールな顔とのギャップがまた萌えるねー」
 その様子に八重さんご満悦。普段と違い過ぎるほどであるが、これこそが彼女の持ち味。
「これくらいこなせなければ自らを『影』であると名乗りはしないさ」
 と告げる朔良。
 そこに通りかかったオーナー(朔良、接客モードに速攻切り替え)
「ああ、いや、そこの物取りに来ただけだから」
 と休憩室の中を歩くオーナーに。
「オーナーも一緒にいかがですか?」
 実はオーナーの分も作っていたというロキである。
「ん~~……ま、少しならいいか。美味しそうだしね」
 そう言ってオーナーも3人の輪の中に入る。

 そしてしばし歓談。少なくとも有事の際には頼ってもらえるだけの信頼は得られているようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
メイドの皆様…季節の変わり目ですから、体調を崩されたのでしょうか。
でも、予知が変わるのはいけませんね。守れなくなってしまいます!
この世界出身の文豪として、職業描写の参考になりそうですし…メイドに挑戦しますね!

おかえりなさいませ、ご主人様…ですよね!
本日限定の『梨パフェ』などいかがでしょう?
ふふ、探偵でもありますから、メニューはもちろん、お客様の顔を覚えるの、得意です。
注文間違えはしませんよ!

※なお、たまに覚える以外の鉄板ドジ(例:メニュー運んでてこける)します。
「ひゃ~~~!?」


黒木・摩那
風邪で従業員が全員休みって、これも影朧の祟りなんですかね?

真偽はともかく、確かに普通にピンチですね。これは。
メイドのバイトに応募させていただきます。

推しの料理は「甘辛パンケーキ」!
パンケーキにアイスと唐辛子をトッピングした優れもの。
しかも、唐辛子はお好みに合わせて、量を調整できるんです。
パンケーキとアイスの上に真っ赤な唐辛子は色的にも映えますよ。

今なら、特別セレクトのさらに強力な唐辛子も用意できます。

是非ともチャレンジしてみてください。



●二人は出会う
 グリモア猟兵から聞いた話を胸に置きながら、ここはサクラミラージュ。

「風邪で従業員が全員休みって、これも影朧の祟りなんですかね?」
 転送場所が少し離れた位置だったため、件の大正メイド喫茶に向かう道すがら、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は考えを纏めていた。もしかしたら影響があるのかもしれない。
(真偽はともかく)
 そこも気になるが、まずはメイド喫茶である。
「確かに普通にピンチですね。これは」
 メイド喫茶なのにメイドがいないっていうね。
 バイトに応募すべく、摩那は少し足早にメイド喫茶に向かうのであった。

「メイドの皆様……季節の変わり目ですから、体調を崩されたのでしょうか」
 メイド喫茶なのにメイドがいなくなる事態。この憂慮すべき事態に憂いの表情を浮かべているのはスリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)であった。自愛して欲しいと思いつつ、まずは。
「でも、予知が変わるのはいけませんね。守れなくなってしまいます!」
 このサクラミラージュ出身の文豪としては捨て置くことはできない。
(職業描写の参考になりそうですし……)
 そう、見方によっては美味しい機会のかもしれない。
「メイドに挑戦しますね!」
 と意気込んでメイド喫茶に向かうスリジエ。

 そんな二人が大正メイド喫茶の前でばったり会ったのである。

●二人はメイド!
 もちろんバイト採用は二人とも合格でして。

 ストレートの長い黒髪を揺らしながら眼鏡着用の摩那は、メイド服というアイテムを身につけてなお普段の知的なイメージを漂わせ。
 こちらは愛らしいピンクの髪をふた房長く揺らしつつ、普段の和装からメイド服に着替えたスリジエ。普段の落ち着いた雰囲気に加え、ちょっと違う快活な雰囲気すら漂っている。
 さぁどちらが好み……あ、そういう番組じゃなかったですねごめんなさい。

 というわけで接客開始である。
 入口でお客様をお出迎えするスリジエ。 
「おかえりなさいませ、ご主人様……ですよね!」
 礼儀正しく、されど親しく。スリジエの笑顔にお客さんもご満悦である。
「本日限定の『梨パフェ』などいかがでしょう?」
 スリジエの柔和な笑顔で勧められたら断るなどという選択肢はあるだろうか、いや無い。ちらっと胸元に視線がいったのはおそらく普段の服装では目立たない部分がメイド服なのでけふんけふん。
 それはともかく。
(ふふ、探偵でもありますから、メニューはもちろん、お客様の顔を覚えるの、得意です)
 と意外なところで才能の流用&活躍させるスリジエ。もちろん注文間違えなど発生すらしない。
 意気揚々と注文を告げにバックヤードに戻ろうとした彼女が。
「ひゃ~~~!?」
 すてーんと転んだのは、決して演技では無かったとだけお伝えしておこう。これがギャップ萌えってやつですね大好きです。

 さて、こちらも慌ただしくホール内を歩いている摩那。メニューを運び、注文を取り、さりげなく推しを布教していく。
「推しの料理は『甘辛パンケーキ』!」
 時には辛さで依頼も乗り切る摩那さんならではの、流石の推しであった。
「パンケーキにアイスと唐辛子をトッピングした優れもの。しかも、唐辛子はお好みに合わせて、量を調整できるんです。パンケーキとアイスの上に真っ赤な唐辛子は色的にも映えますよ」
 好きなのでプレゼンもすらすらっと出てくる。というか、もしかして貴女がメニュー開発しました?
「今なら、特別セレクトのさらに強力な唐辛子も用意できます」
 そしてここでより辛い方を用意するのが摩那クオリティである。調味料ポーチ(中身は真っ赤)を持ち歩いているのは伊達では無い。
「是非ともチャレンジしてみてください」
 とここまでは完璧なのだが、問題はメイド喫茶に来てまで辛さチャレンジする人がいるのだろうか……いや、いた!!
「こんな美人メイドさんにここまでオススメされたら、な……!」
 そんな言葉を皮切りに『甘辛パンケーキ』の注文殺到である。ちなみに冷たい甘さと刺激的な辛さのアンマッチ具合が意外に好評だったそうな。

 時折、お互いのお客さんをチェンジしながら、ホールの対応を行っていくスリジエと摩那の二人。この日の売り上げは梨パフェと甘辛パンケーキが3分の1を占めたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルメス・トリスメギストス
「ふむ、人手不足のメイド喫茶ですか。
これは執事として放ってはおけませんね」

普段の執事服姿でメイド喫茶の手伝いを申し出ましょう。
接客から料理まで、私にできないことはありません。

「御主人様、お嬢様の皆様。
それではこれより、簡単なショーをお見せいたしましょう」

目の前には活きの良い魚。
それを空中に放り投げ、『銀のナイフ』を使い【執事格闘術】で捌きましょう。
執事三千年の歴史の中で生み出された執事格闘術。
ナイフ一本で魚を捌く技は基礎中の基礎です。

そして捌いた魚をシャリに載せ、寿司を握っていきます。

「執事たるもの、御主人様、お嬢様がたのためなら、寿司くらい握れて当然です。
存分にご堪能くださいませ」


雪華・風月
七代に渡ってのとはよく言いますが
実際の子孫からしたら、まぁいい迷惑ですよね…
影朧の気持ちも少しわかりますが…


まぁ、その前に別の危機ですね
はい、雪華・風月微力ではありますが力添えさせて頂きます

はい、こういう装いも可愛いですね…
女中の仕事をしてる様は家で見てたので、厨房の担当が足りなければそちらを、あまり凝った物は作れませんが喫茶であればそこまでの腕も必要とされませんしね【料理】

厨房が十分であれば接客の方を頑張らせて頂きます
はい、礼儀作法には自信があります故【礼儀作法】


全てが終わった時、剣の道を考えていましたが…こういった商いというのも悪くはないですね…




 そして、件の大正メイド喫茶に、最後に駆けつけてくれたのはヘルメス・トリスメギストス(戦う執事・f09488)と雪華・風月(若輩侍少女・f22820)であった。
「ふむ、人手不足のメイド喫茶ですか。これは執事として放ってはおけませんね」
 モノクルの位置を直しながらヘルメスが呟く。どこからどう見ても執事というヘルメスにとって、この事態はゆゆしきものであろう。ところで何故掌に何かパワーを集約されているのですか? え、戦う? 確かにメイド喫茶は戦場である。

 そんな様子のヘルメスを見ながら、今回の予知の元となった影朧のことを思い出す風月。
「七代に渡ってのとはよく言いますが……実際の子孫からしたら、まぁいい迷惑ですよね……」
 恨みつらみに呪いっていうのは本当に厄介である。『影朧の気持ちも少しわかりますが……』と思うものの、風月は口にはせず。しかし視線はグリモア猟兵から聞いた影朧が現われるであろう方角へ。今時点でも何やら不穏な気配を感じなくはない。
「まぁ、その前に別の危機ですね」
 改めて前を向き直り、ぐっと気合を入れる風月。
「雪華・風月、微力ではありますが力添えさせて頂きます」
 そう言ってメイド喫茶のドアを叩く風月。
「接客から料理まで、私にできないことはありません」
 ヘルメスという男、執事の仕事は何でもこなす万能タイプである。すなわち、メイド喫茶とて彼にとっては日常茶飯事。
 そんなわけで普段の執事服姿でメイド喫茶の手伝いを申し出たヘルメスなのでした。


 というわけでお着替え(風月だけ)。
 侍少女は今日ばかりのメイドに生まれ変わったのである!

 メイド服に着替えた風月は鏡の前でくるりと回って。その動きに合わせてスカートのフリルがふわっと舞う。
「はい、こういう装いも可愛いですね……」
 普段の、剣の道に沿った装いもそれはそれで良いものだが。服装とはまた違う雰囲気に思わず笑みがこぼれる風月。
 更衣室を出ると、同じタイミング採用のヘルメスが待ってくれていた。
「接客、厨房。どちらでも良いとのことです」
 この時間はほどよく接客も厨房も人手が足りているようだ。顔を見合わせ、お互いの服装を見て。
「では私は厨房へ」
「わたしは接客に回りますね」
 ヘルメスと風月が言葉を交わし、いざ各々の戦場(?)へ向かうのであった。


 そこは癒しの戦場(?)であった。既に出ていた先輩(といって先に来た猟兵さんたち)に混ざって風月もお仕事開始!

 かららんっ。

「いらっしゃ……間違えました。お帰りなさいませ」
 礼儀正しいがゆえに条件反射で、お客さんにそう言っちゃう風月さん。しかし、その仕草すら愛らしい。メイド服でプラス加点入りますよ。今日はそんなうっかりすらも人々の癒しになるようです。

 その頃、厨房で奮闘、っていうかいつも通りに料理をこなしていく執事ヘルメス。こういうさりげない感じの執事の方が裏方回るとすごいっていう良い例である。

「パンケーキ、注文をいただきました」
「承知いたしました」
 オーダーを伝えに来た風月に、ヘルメスが顔を向けての返事。その間も手は止まっていない!?
 しかし、風月の手元に出てきたパンケーキはばっちりパンケーキなのでした。


「ふむ」
 厨房が落ち着いてきた。客足が落ちてきたのだろうか。そう思ってホールの様子を見に来たヘルメス。
 どうもそんなことはなく、雰囲気的に落ち着いているようだ。
 こちらに向かってくる風月もほっとひと息ついている様子。
「雪華様、交代をお願いしても?」
「え? はい、わかりました?」
 ヘルメスからの唐突な申し出に首を傾げながらも了承する風月。厨房とホールのチェンジである。

(女中の仕事をしてる様は家で見てたので)
 あまり凝った物は作れないが、全般的に見れば問題ないはず、と風月は厨房をがんばる所存。料理の腕も悪くは無いのだから。

 で、ホールに出た執事が何をやろうとしたかである。
「御主人様、お嬢様の皆様」
 唐突に誰に相談することもなく、壇上というか前というか、目立つところに立つヘルメス。
「それではこれより、簡単なショーをお見せいたしましょう」
 ホール内にあまねく広がる『?』マーク。オーナーも首傾げてるんだから本当に唐突らしい。
 しかし、それでいて準備は万端なのだから、この男最初から仕込んでいたのかもしれない。

 そんなわけで。

 ヘルメスの目の前には活きの良い魚。
「……」
 無言でそれを空中に放り投げ、『銀のナイフ』を使い、【執事格闘術】が発動する。
「……!!」
 厨房から覗いていた風月もびっくり。
 しゅばばばばっと何かが煌めき、直後、テーブルの皿の上にすとととんっと捌かれた魚がきれいに並んだのである。
 なお、銀のナイフって食卓用のナイフであってそういう風に使うナイフではない。
「執事三千年の歴史の中で生み出された執事格闘術。ナイフ一本で魚を捌く技は基礎中の基礎です」
 むしろ執事格闘術が何なのか、という問いは優しいお客からは出なかった。猟兵? まあこれくらいは日常茶飯事ですし。

 さて、ショーはこれで終わりではない。
 いつの間にかテーブルの上に置いてあるのは米びつ。中にはご飯……否、これは酢飯だ?!
 それを片手に取り、もう片方の手で捌いた魚を手に取り、手元でくっと合わせる。
 それは……寿司の握り方であった。
「執事たるもの、御主人様、お嬢様がたのためなら、寿司くらい握れて当然です。存分にご堪能くださいませ」
 この人いつか『えるふでしつじですからー』とか言いそうな勢いですよね。
 しかし、メイド喫茶で寿司が出て来るとは……さすが執事は万能、いや違う。ちょっとずれてる気がする。
「美味しいです!」
 風月さん太鼓判押しました。


 そんなこんなで大正メイド喫茶の本日の特別営業は無事、いや、盛況に終わった。
 どれもこれも猟兵たちの尽力によるものである。
「まぁ当然ですね」
 私はまだ変身を3回残しているばりにのたまうヘルメス。たぶん変身は無くとも、力は残している気がする。
 そして風月はメイド服を脱いで、ふぅとひと息。手にしたメイド服をじっと見つめる。
(全てが終わった時、剣の道を考えていましたが……)
 思い起こすのは今日いちにちの濃厚な経験。それは楽しくもあり、ちょっと慌ただしくもあったが。
(こういった商いというのも悪くはないですね……)
 そう思いながら、今日の感謝をこめてメイド服をぎゅっと抱きしめる風月であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ルールー』

POW   :    るーるるーるるーるるー
単純で重い【シャベル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    るーるるるーるる
【死者の国の王の力】を籠めた【シャベル】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【猟兵としての在り方】のみを攻撃する。
WIZ   :    るるるるるるる
戦場全体に、【骸骨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オーナー語る
 アルバイトの最中、あるいはバイトが終わってから。猟兵たちの働きに応じて大正メイド喫茶のオーナーは色々と話してくれた。
 曰く。
 元々、オーナーの一族はこの場所に旅籠を構えていたらしい。どういう理由かは廃れてしまったが、代々一族の長は女性と決まっており、それが代々続いている。
 旅籠から演芸場やメイド喫茶など形態は変わっても、『人々が休み、癒される場』をこの地に提供し続けてきたのがオーナーの一族なのである。

 しかし女であるがゆえに侮られることもあったそうだ。例えば多いのが結婚詐欺。大昔にもご先祖がその憂目にあったらしい。
 子供まで出来てあわや婚姻、という段階までいったものの、訝しんだ一族の身内が男の素性を調べ上げ、追いだすことでどうにか難は逃れた。とはいえ、子供に罪は無いので、そのまま跡取りとなり、一族はさらに繁栄する。
「で、その時分にあの慰霊碑が立ったみたいよ?」
 どうやらその男に騙されて自殺した女性が悪霊になったそうで。縁もゆかりもない人ではあるが、同じ男に騙されたという一点のみでご先祖は慰霊碑を建てたらしい。
 それも区画開発の波に押し切られてどうやら壊されることになったそうだが。

●逢魔が時
 黄昏時は誰そ彼時。隣にいる者の顔すらわからなくなるがゆえに、魔が忍び寄る時刻。
「嗚呼、臭う、臭う。ここか、ここだな?」
 予知の通り、『狐憑ノ花嫁』が現われた。すれ違っても影朧とはわからないこの時刻だからこそ、狐憑ノ花嫁は街を通り抜け、件の大正メイド喫茶まで辿り着く。
「ふ、ふふ、見つけた、見つけたぞ」
 これから起こるであろう愉悦の時間を想像して花嫁は笑う。その手に乗っているのは、稲荷神社でよく見る赤い鳥居の手のひらサイズ。花嫁はそれを通してメイド喫茶を『視る』。

 鳥居とは結界であり、一種の門である。鳥居から先は神域(境内)、鳥居から手前は人々が住む俗界と世界を分ける境目。逆に言えば、『鳥居の先は現世(うつしよ)では無い』のである。
 鳥居越しに花嫁が視たことでメイド喫茶のみに発動する結界。それは外界を隔て、メイド喫茶の周辺を地獄の入口へと変えてしまう。
 それこそは花嫁の眷属『ルールー』の生まれた場所。こここそが彼女たちの拠点であった。
「さあ、まずはその屋敷、繁栄の証を壊してやろう。我が恨み、受け取れ」
 花嫁の周囲に次々と生まれるルールー。手にしたスコップでメイド喫茶を外から破壊しようと歩き出す。

 その時。中から猟兵たちが飛び出してきた。そう、この時のためにメイド(一部、執事と料理人)になっていたのだから。

「邪魔立てするか。ならば、汝等から地獄の贄としてやろう」
 花嫁に命じられるがままに、ルールーたちが猟兵へと襲い掛かる。

 武器を構えて戦闘態勢に入る猟兵たち。
 まずはこのルールーたちをどうにかしないといけないようだ。この場が例えルールーのホームグラウンドになっていたとて、攻撃すれば倒せる。そしてルールーが出現するにあたって結界から供給される力にも限度があるため、倒し続ければ勝てる。

 どのような作戦を取るかは猟兵たちに託されている。
 さあ、ここからは猟兵としての任務の開始である!


※補足
次々と湧き出てくるルールーですが、1体1体は倒せば消えます。湧き出る数や回数はランダムですが、1人の猟兵が対処しきれない数は沸きません。
一般人およびオーナーはメイド喫茶の中にいれば安全です。広域に攻撃する場合はメイド喫茶を巻き込まないようにしてください。
スリジエ・シエルリュンヌ
…何だか、影朧さんとその慰霊碑作った代の方ですれ違っているような…。
慰霊碑壊すのもどうなんですか…行政…。

はっ、それよりもルールーです!
ここを壊させるわけにもいきませんし。文豪探偵、推して参ります!

迷路を展開される前に、このUC【桜火乱舞】で包囲殲滅します!
この炎剣は延焼しませんし、追尾する相手はルールーのみで、建物には被害が及びませんから!
万が一、迷路になってしまったら、探偵能力フル活用しつつ攻略。実は私、純前衛の近接型なので、マヒ攻撃つきキセルで叩きますね!

※職業描写の参考ネタは貯まったようです。


雪華・風月
無事に予知の通りになったようですね
いえ、影朧が現れたのを喜ぶのもあれですか…
一先ず眷属を蹴散らし店を守りましょう


雪解雫を抜き、四刃相応で迎え撃ちます

シャベルを受け流し『カウンター』にて斬る
専守防衛な玄武の型にて店を守りながら戦う
もしくは
集団に『切り込み』、一撃離脱
率先として数を減らしに行く白虎の型にてお相手を


雪解雫は退魔刀【破魔】にて、黄泉の存在であるなら効果もありましょう


疋田・菊月
おやおや、さっそく来ましたよ。
招かれざるお客さんですねー。
カミオさん、近くにやってくる敵から教えてくださいな。
お店の近くなので、あーんまり無茶はできませんが、まぁ、そんな時のためのサイドアームというものです。
USP-SPでパカパカ撃っちゃいますよー。
はーい、他のお客様のご迷惑になってしまいますのでー、あの世におかえりくださいましねー
わわわ、数が増えてきましたねー。
スピードを上げちゃいますよー。

うーん、猟兵としての在り方……
お店の邪魔をされるのを排除するのが、今はお仕事ですね。
というわけで、早業とクイックドロウを駆使して拳銃で戦います。



●少し前~メイド喫茶内
 今日の営業が終わろうとしているのんびりタイム。

 オーナーさんを囲んでいるのは、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)、雪華・風月(若輩侍少女・f22820)、疋田・菊月(人造術士九号・f22519)の3人であった。

 オーナーの話を聞き終えたスリジエは『うーん』と頭を悩ませていた。ちなみに職業描写の参考ネタは貯まったようです。
(……何だか、影朧さんとその慰霊碑作った代の方ですれ違っているような……)
 この決定的な違和感。これこそが猟兵が介入しなかった場合の、本当の悲劇の要因かもしれない。それは花嫁に問い質すしかあるまい。
 そしてスリジエは思わず小声で零す。
「慰霊碑壊すのもどうなんですか……行政……」
「はっはっは」
 スリジエの疑問も最もだとオーナーが笑う。いや、微苦笑か。
「ま、小さなものだし、知ってる者じゃなけりゃただの邪魔な石かもね?」
 それでもどこかに移設するという手があるのだが。そうならなかったのは時代の流れということなのだろうか。
 『この先を知っている』猟兵からすると笑い事じゃないのだが、それはそれで伝えるわけにもいかず。
「何でそんな話に興味があるかは知らないけど、ま、そんなとこだよ」
 オーナーがそう話を纏めた瞬間。

 ずずずっ。

 と。何も変わっていないのに、『どこかに引き込まれた感覚』が皆を襲う。
「はっ!」
 その感覚に敵の襲来を感知したスリジエが慌てて顔を上げる。
 そして不思議と感じる違和感に、菊月と風月が視線を外へ遣った。
「おやおや、さっそく来ましたよ。招かれざるお客さんですねー」
 ぶっちゃけ外にいるのは気概をくわえようとする気満々の影朧なのだが、菊月はお客様対応と変わらない雰囲気で立ち上がる。
「無事に予知の通りになったようですね。いえ、影朧が現れたのを喜ぶのもあれですか……」
 それに倣って風月も椅子から立ち上がり……いつの間にやら手にあるのは白い柄に青い鞘の愛刀『雪解雫』であった。
「一先ず眷属を蹴散らし店を守りましょう」
 風月の言葉に、菊月が出口へ向かう。
「え? え? あんたたち一体……」
「オーナーさんはここに居てください。私たちに任せて、大丈夫ですから」
 困惑するオーナーにスリジエがそっとそう言い添えるのであった。

●現在~メイド喫茶前
 メイド喫茶を飛び出したスリジエ、風月、菊月の3人。そのまま正面から向かってくる『ルールー』たちに向けて、足を止めることなく駆ける。
 対して動揺もせず、スコップを構えたままぞろぞろ押し寄せてくるルールーたち。
「ここを壊させるわけにもいきませんし。文豪探偵、推して参ります!」
 スリジエの声に応じて生み出されるは、数多の桜の花びらの形をした炎剣たち。それが彼女の意志に従って、幾何学模様を描いて複雑に飛翔し、回避する間すら与えず、ルールーたちを斬り燃やしていく。
(この炎剣なら延焼しませんし、追尾する相手はルールーのみで、建物には被害が及びませんから!)
 ユーベルコード【桜火乱舞】の名の通り、スリジエの周囲を桜の仄火が乱れ舞う。

 それでもまだ、ルールーは湧いてくる。
「いまだ未熟な身なれど……雪華・風月、参ります」
 青き鞘から抜き放った雪解雫を構えて、風月が告げる。
「【白虎の型】!」
 声に応じて解き放たれるのは【四刃相応】の力。直後、風月の爪先が地を蹴る。素早く、ルールーの懐に踏み込み、一閃。返す刀で隣のルールーを斬りながらその場を離脱する風月。振り下ろされたルールーのシャベルは空を切るばかり。
(切り込み、一撃離脱にて)
 ルールーの数を減らしに行く作戦。それは功を奏してルールーの進軍速度を鈍らせる。

「カミオさん、近くにやってくる敵から教えてくださいな」
 3人の内、後方に位置したまま、銃を構える菊月。その頭上には風見鶏……ちがう、風見烏(と見せかけた風見悪魔)をしていたカミオさんが戻ってきている。
(お店の近くなので、あーんまり無茶はできませんが)
 構えているのは『USP-SP』。すなわち『そんな時のためのサイドアーム』である。
「パカパカ撃っちゃいますのでー!」
 という菊月の声にカミオさんの鳴き声が響く。
 スリジエ、風月の攻撃を迂回してきたルールーたちに対して、菊月の乱れ撃ちが炸裂する。
「はーい、他のお客様のご迷惑になってしまいますのでー、あの世におかえりくださいましねー」
 口調とは裏腹に、激しくルールーたちを撃ち抜いていくのであった。


 猟兵攻勢のまま戦況が続くと思われた次の瞬間。
「「「るるるるるるる」」」
 今まで沈黙のままシャベルを振るっていたルールーが鳴いた。いや、これは歌っているのか。
「しまった!」
 スリジエの【桜火乱舞】が狙うも間に合わず、戦場を包み込む骸骨で出来た迷路。せり出してきた壁に桜の仄火は遮られる。
(こうなったら……)
 謎あるところに探偵あり。迷宮なんてなんのその!
 これまでに得た探偵能力をフル活用して、迷宮そのものを攻略しようとするスリジエ。意外といろんな耐性があるスリジエさんである。

 そして菊月。迷宮が出来たがためにこれまで確保できていた射線が遮られる。
「これはー……あれ、カミオさんともはぐれちゃいましたか」
 きょろきょろ見渡すも自分の周囲にいるのはルールーだけだ。USP-SPを乱射して倒していくも、壁によって死角となった角度からの攻撃は避けきれない。
「うっ……」
 シャベルの一撃が菊月の肉体では無く、『猟兵としての在り方』を攻撃する。
 そこで菊月は『ん?』となった。
(うーん、猟兵としての在り方……)
 それをどう定義するのかは菊月自身に委ねられるわけでして。むー、と悩んでいた菊月はこの場に応じた答えを出す。
「お店の邪魔をされるのを排除するのが、今はお仕事ですね」
 では先の攻撃でそれが削がれたかと言われれば……否。お菊さんの矜持はその程度では崩れない。
「というわけで」
 素早く弾倉を入れ替えたUSP-SPをクイックドロウ。
「引き続き、排除しますねー」
 今度は目にも止まらぬ早業で的確にスナイプしていく菊月。

「……っ」
 突如現れた骸骨の壁に動揺する風月。
「るーるるるーるる」
 その隙を狙われ、ルールーのシャベルの一撃が風月を捉える。……が、隙あれば狙われるのは戦場の常。ならばこそ型がある。
「【玄武の型】!」
 変幻自在な【四刃相応】。先陣を切る型から受けの型に変化した風月の構え。それがシャベルを受け流し、返す刀でカウンターを叩き込む。
「玄武の型は専守防衛なれば」
 足を止めて『守りながら戦うこと』も可能だ。
(雪解雫は退魔刀……黄泉の存在であるなら効果もありましょう!)
 刃に宿る破魔の力を震わせ、風月は一閃の元、ルールーを斬り捨てていく。

 そしてスリジエが迷宮の出口に辿り着く!
 そこにいたのは迷宮を作り出していたルールーたち数人。
「実は私、純前衛の近接型なので!」
 叫びながら、マヒ攻撃つきキセルでルールーたちを引っ叩くスリジエ。それによってルールーの動きが止まる。迷宮が消えていく。
「今です!」
「承知!」
「了解しましたー!」
 スリジエの声に、風月、菊月の声が続き、3人の周辺にいるルールーたちは一掃されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

紅葉・智華
【妹(f12932)と】
口調:素
※アドリブ・連携歓迎

「――色々あったけど、ここからが本番、(電脳間魔術で普段の格好に【早着替え】して)……さあ、いくよ華織!」
『刹那』を片手に、敵の攻撃の間合いやタイミングを計って【見切り】(第六感)、向こうの攻撃の隙に【カウンター】となるように数発撃ち込む(2回攻撃)。
見た所、スコップが得物に見える以上、場合によってはそこを狙う事で攻撃を止める事も考える(援護射撃,時間稼ぎ,スナイパー)。
「華織には手を出させない……!」


紅葉・華織
【お姉ちゃん(f12932)と】
※アドリブ・連携歓迎

「やっと来たネ……とっとと片付けてお姉ちゃんのメイド姿の記念撮影をするんだから……!!」
ここまでずっと店の外で待機させられて、もう我慢の限界! お姉ちゃん成分も枯渇してきているし、早く倒さないと!

得物を見る限りに、俊敏な動きではなさそう。攻撃を【第六感】で【見切り】、愛刀の『月華』(鎧無視攻撃)で斬り伏せるのは難しくない。数が多かろうと、一つ一つを手早く確実に潰すよ!




 先陣を切ってメイド喫茶を飛び出した猟兵たちに数瞬の後。
 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)もまたメイド喫茶の左翼で『ルールー』と対峙していた。
 智華は電脳間魔術にて普段の格好に早着替え。
「――色々あったけど、ここからが本番……さあ、いくよ華織!」
 声を掛けられた妹の紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)はいつの間にやら智華の側におりまして。姉の姿を視認した瞬間、店の側からしゅたっと現われた(?)ことは想像に難くない。
「やっと来たネ……とっとと片付けてお姉ちゃんのメイド姿の記念撮影をするんだから……!!」
 ここまでずっと店の外で待機させられて、もう我慢の限界である。それにお姉ちゃん成分も枯渇してきている。
「早く倒さないと!」
 特定の人物や現象からしか得られない癒しがあることは既に証明されている事実である(?)。

 対してルールーたちも何事も無いかのように押し寄せてきた。
(得物を見る限りに、俊敏な動きではなさそう)
 お姉ちゃん欲はひとまず横に置いておいて。愛刀の『妖刀【月華】』を構える華織。ルールーが攻撃態勢になる前に、華織の鎧を無視した鋭い一撃が斬り伏せていく。
「数が多かろうと、一つ一つを手早く確実に潰すよ!」

 智華はマスケット銃の形をした『04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】』を片手に地を蹴る。
 先にルールーに攻撃をさせ、そのタイミングを見切って回避しつつ。その最中に刹那を使ったカウンターで数発を的確に撃ち込んでいく。
(見た所、スコップが得物に見える)
 し、実際、攻撃はすべてシャベルによって行われている。敵に近接して攻撃を行っている華織に迫るルールーを見て智華は次の行動を決める。
「ならば!」
 刹那の銃口をシャベルに向ける智華。直後、吐き出された銃弾がルールーのシャベルを弾き飛ばす。
「るー……!」
 あわあわしながらシャベルを拾いに行くルールー。これがないと行動できないらしい?
 時間稼ぎには十分、態勢を立て直すには十分だ。
「華織には手を出させない……!」

 そんなルールーたちもやられっぱなしではない。
「るーるるるーるる」
 声をあげながら、死者の国の王の力を籠めたシャベルの一撃を振り下ろすルールーたち。その強烈な反撃に対して、智華と華織は。

(――見えた)
 捉えた動きをインプットとして、智華の【虚構の神脳】は未来を演算、最適な行動を導き出す。
 するりとシャベルの一撃をかわし、智華のカウンターの銃撃がルールーを吹っ飛ばす。

 対して、華織は。
「……!?」
 ぞわり、と感じた悪寒。【天性の超直感】が告げる。『絶対に食らってはいけない』と。ルールーの一撃を大げさなまでに大きく飛び退いて回避し、智華の前で着地する華織。
「どうしたの?」
「食らったら、お姉ちゃんが死ぬ気がした!」
「全然意味がわからないんだけど」
 そう、ルールーの一撃は『猟兵としての在り方』のみを破壊する一撃。ということはだ、切欠が切欠だけに、華織のドのつくシスコンかつヤンデレにダメージが当たってもおかしくない。というか当たりそう。
 それを本能的に全力回避したのはきっと補充できたお姉ちゃん成分のおかげであろう。

 ともあれ、ルールーのシャベル攻撃は二人を捉えるほどの精度は無いらしい。
「これで決める! いくよ華織!」
「オッケー! お姉ちゃん!」
 智華と華織。二人のコンビネーションがルールーたちを薙ぎ倒していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒木・摩那
さて、いよいよ出ましたね(パンケーキもぐもぐ)。

過去の因縁に囚われて、逆恨みで喫茶店を壊そうだなんて言語道断。
ひとり残らず成敗です。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
スマートグラスで相手の配置を観察【情報収集】。
ヨーヨーの軌道を計算し【念動力】で微調整しながら、ルールー達のシャベルを【なぎ払い】【武器落とし】からの【念動力】で回収します。
そして、手ぶらになったところを続いて【衝撃波】付きのヨーヨーで【なぎ払い】ます。
これらをUC【蒼鷹烈風】で強化したうえで行います。

喫茶店には傷ひとつ付けさせませんよ!




 猟兵たち優勢で進む、対『ルールー』戦。メイド喫茶の周辺に出現したルールーたちは確実に倒されていく。
 しかし、その大半は花嫁の周辺から現れる個体であって……猟兵たちとメイド喫茶の間に湧く個体が現れ始めたのだ。それは花嫁の恨みの手が徐々にメイド喫茶へ近付いていることの証左に他ならない。
 猟兵の誰もが、自身の眼前のルールーに気を取られ、対処が出来ていない。
「るーるるるーるる」
 メイド喫茶にその在り方を問うシャベルの一撃が振り下ろされる……その時。

 ばんっ、と入り口のドアが開き。

 同時に中から飛翔する何か。それは正面に向かって直線的に飛びながら、普通ではありえない角度で曲がり、シャベルを振り返っていたルールーを吹っ飛ばした。
 飛翔した物体の正体は、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の『超可変ヨーヨー『エクリプス』』。
「さて、いよいよ出ましたね」
 手元にエクリプスを引き戻しながらドアから現れた摩那……は甘辛パンケーキをもぐもぐしていました。推しですし推し!
 しかし戦況はパンケーキを待ってくれない。
「過去の因縁に囚われて、逆恨みで喫茶店を壊そうだなんて言語道断。ひとり残らず成敗です」
 もぐもぐしていたパンケーキをこくんと飲みこんで。
 摩那はエクリプスを構えて戦闘態勢に入るのであった。


 ピッ、と。誰にも聞こえないくらい小さな起動音。それは摩那の『スマートグラス『ガリレオ』コプロセッサ』が起動した音。眼鏡という形を介して情報収集、解析されていくルールーの配置、そして湧き出るタイミング。
 不規則に見えるそれらも細かくデータを紐解いていけば。
「捉えました」
 スマートグラスを通じて示される軌道。それは普通のヨーヨーでは到底あり得ない軌道と速度を求められたものであった。
 それを見て摩那は不敵に笑う。
「励起。昇圧、目標を確認……加速開始」
 【蒼鷹烈風】の発動と同時に再び右手から飛翔するエクリプス。その鋭さ、精度、そして威力は通常の3倍。目で追い切れるか、という速度で飛翔するエクリプスを摩那の念動力が巧みに操る。
 くんっとエクリプスの軌道が変わる。急激な方向転換によってエクリプスがルールーの視界から、ふっと消える。そのまま続けて、ワイヤーが折れ曲がりながら軌道を複雑に変えつつ、ルールーの死角から襲い掛かる!
 狙うはルールーたちが持つシャベル。カカカカンッと軽快な音を立てて彼女らの手からシャベルを叩き落としていく。
「るー!? るーるー!!」
 攻撃を中止して慌てて拾いに行こうとするルールー。その慌てぶりは尋常じゃない。
「おや?」
 それを見て摩那が空いている左手をかざす。そこから放たれる念動力で地に落ちたシャベルがひゅーんと遠のき。
「るー!」
 涙目で慌てて追いかけるルールーを尻目に、一気に引き寄せて回収する摩那。
「るー!!」
 もはや遊ばれているのかというくらい鮮やかに釣られるルールーたち。摩那に向かってシャベルを追いかけてくる……無防備なまま。
 そこを逃す摩那では無い。
「ていっ!」
 手元に戻していたエクリプスを三度放つ。今度は衝撃波を纏わせて、エクリプスが風の弾丸と化す。シャベルに釣られて真横一直線に並んだルールーたちを横薙ぎに薙ぎ倒していくエクリプス。その衝撃でルールーが宙に舞う。
「喫茶店には傷ひとつ付けさせませんよ!」
 摩那の宣言に、地に伏せたルールーはシャベルに向かってよろよろと手を伸ばして。
「るー……」
 ぱたりと力尽きたのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

リンネ・プラネッタ
ヘルメスさんとコンビで(初対面)

出たな、影朧! 主の名の下に君たちをあるべき場所に導こう!

【マジカルタイプライター】を使用。聖なる弾丸で影朧たちを撃ち抜こう!

暴れていたらなんかイケメン執事が近くの壁に激突。シスターらしく膝をついたイケメンに手を差し伸べる。なんかナンパされたので名前を名乗ろう。

「その通り!僕はシスター探偵リンネ! 主に仕える敬虔なシスターさ!」
イケメン執事に傅かれるのは悪い気はしないね!眼鏡だし。

ヘルメスさんと一緒にユーベルコードで影朧たちをやっつけていこう。

※恋はしていません。とりあえず好感は持った程度です。


ヘルメス・トリスメギストス
リンネお嬢様と

「シャベルを持ったお嬢様方。こちらは御主人様とお嬢様方がくつろぐためのメイド喫茶です。
お引取りいただきましょう」

モノクルをかけなおし、白手袋を嵌め【執事格闘術】の構えを取りますが……

「かはっ……」

シャベルによる一撃を受け、執事としての在り方にダメージを受けてしまいます。
猟兵である以前に執事であることが災いしましたか……

「貴女は……リンネお嬢様!?」

膝を付いた私の前に現れたのは、天使のようなリンネお嬢様。

「どうやらリンネお嬢様のためにも負けるわけにはいかないようですね!
執事パワーフルチャージです!」

リンネお嬢様の攻撃に合わせ、コンビネーション攻撃で素手でシャベルを粉砕していきます。



●バトラー・ミーツ・シスター(ただし戦闘中)
 メイド喫茶裏手。いわゆる通用口の前に立ち、『ルールー』を退けていたのはヘルメス・トリスメギストス(戦う執事・f09488)であった。戦力の大多数が正面に回っているとはいえ、『周辺から湧き出る』以上、裏口も攻撃にさらされるは必定。
「シャベルを持ったお嬢様方。こちらは御主人様とお嬢様方がくつろぐためのメイド喫茶です。お引取りいただきましょう」
 モノクルを掛け直し、白手袋を嵌め、本気モード。【執事格闘術】の構えを取って応じるヘルメス。
 しかし一瞬の隙を突かれ。
「るーるるるーるる」
「くっ……」
 シャベルに籠められた『執事としての在り方』を砕くシャベルの一撃によってダメージを負う。その攻撃は効果覿面。【執事格闘術】の力が抜け、構えを取ることすらできない。
「……猟兵である以前に執事であることが災いしましたか……」
 ろくに身動きが取れないヘルメスに、ルールーの更なるシャベルアタックが炸裂する!
 その攻撃に吹っ飛ばされるヘルメス。
「かはっ……」
 通用口横の壁に叩き付けられるヘルメス。

 その時、メイド喫茶の中から駆け出してきた影があった!

「出たな、影朧! 主の名の下に君たちをあるべき場所に導こう!」
 颯爽と現れたシスター服。その実、探偵。影朧に対して十字と啖呵を切るリンネ・プラネッタ(ロザリオの名探偵・f22933)であった。

●リンネ視点
 せっかくのメイド服を破らせるわけにいかない。似合ってたし。それに何より彼女はシスター探偵だった。それを忘れてはいけない。
 そんなわけで着替えていた分、出遅れたのだが、そのおかげで裏手の騒がしさに気付くことが出来た。
 急行して、通用口のドアをばんっと開きながら。
「出たな、影朧! 主の名の下に君たちをあるべき場所に導こう!」
 宣言とともに臨戦態勢に入ろうとしたリンネの視界の片隅を吹っ飛ぶ何か。
「ん?!」
 通用口の真横の壁にイケメン執事が吹っ飛ばされてきて激突したのだ。壁に体を預けながらずるりと崩れ落ちるイケメン執事。
 傷ついた者に手を差し伸べずしてシスター探偵が名乗れるだろうか? それは否である。
「君、大丈夫かい?」
 手を差し伸べながら微笑みかけるリンネ。
「貴女は……リンネお嬢様!?」
 イケメン執事が驚愕しながら視線をあげる。
「その通り! 僕はシスター探偵リンネ! 主に仕える敬虔なシスターさ!」
 長い流れるような髪をかきあげながらリンネが名乗りあげたのである。

●ヘルメス傅く
「その通り!僕はシスター探偵リンネ! 主に仕える敬虔なシスターさ!」

 傷つき、執事としての在り方すらダメージを受けて。膝をつき、立ち上がる力を失ったヘルメスに差し出される手。色白の、柔らかな。それでいて掴んだものをすくってくれるかのごとき。

 ――それはさながら天使が舞い降りたようでした。

 その手を取ってしまったのは思わず、と言ってもいい。それは『誰かのために在る』という執事の本能にして、遵守すべき誇り。そしてその手を取ったということは、ヘルメスがリンネに仕えるということに他ならない(令呪による仮契約的な)。

 握る手から流れ込んでくる力(※イメージです)。

「どうやらリンネお嬢様のためにも負けるわけにはいかないようですね! 執事パワーフルチャージです!」
 リンネの手を頼りに立ちあがるヘルメス。

 そう、戦う執事はここに戦う力を取り戻したのである!!

●シスター・ミーツ・バトラー(ただし恋は無い)
 そうしてリンネとヘルメスが並び立つ。
(イケメン執事に傅かれるのは悪い気はしないね! 眼鏡だし)
 とかリンネが思っていたのは本当に秘密である。ちなみに『なんかナンパされたので』とも思っていることはさらに秘密だ! しかしイケメンなので以下略。

「一緒にユーベルコードで影朧たちをやっつけていこう」
「承知いたしました」
 シャベルを構えるルールーたち。そこへ素早く飛び込んだヘルメスは【執事格闘術】による素手の一撃でシャベルを粉砕していく。本格的執事の姿を取り戻していた。
 態勢が崩れたルールーたちへ、リンネが『マジカルタイプライター』を構える。それは弾の入っていないトンプソン機関銃。
「神聖なる一撃(ディバイン・ストライク)!」
 ユーベルコード【神聖なる一撃】。彼女の持つ破魔の力が普段の10倍に膨れ上がり……その力を籠めたオーラの弾丸がマジカルタイプライターの中に形成されていく。
「さあ、懺悔の時間だ! この魂を在るべき所に導きます!」
 リンネが祈りを捧げ、銃口から放たれた聖なる弾丸がルールーたちを次々と撃ち抜いていく。

 こうして喫茶裏手の激闘をヘルメスとリンネのコンビが制したのである。

 ちなみに今更ですが、二人は初対面です。
 恋? あるかな? お互い好感は持ったかも、です。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御桜・八重
【砦】

「お店は壊させない!」
メイド服のままオーラを纏って駆け出すと、
桜色の尾を引いて地を駆ける箒星となって、
ルールーたちを当たる端から吹き飛ばす!
「桜彗星、いざ突貫!」

飛んで行ったルールーは
朔良さんとロキさんが片付けてくれるから、
わたしはお店に近づけないことに専念。
店外をグルグル回って桜色のバリアになる!

シャベルの一撃は重い分軌道が読みやすい。
見切れる攻撃は躱して、躱せない時は護りのオーラを厚くする。
二人が任せてくれたんだから、止まるわけには行かないね!

あらかた片付いたら花嫁に声をかける。
裏切られた恨みはわからなくもないけど、
ぶつける相手が違うよ!
八つ当たりなら、わたしたちが相手になる!


黒柳・朔良
【砦】
呼び方:名前呼び捨て

早速敵のお出ましか
八重がまとめて敵を飛ばしてくれるらしいな
ならば、私はその付近の場所で待機していよう

数は多いとはいえ、対処しきれないほどではない
選択UCの影人形も、敵の数に応じた数が出てきてくる
倒すのが無理そうだったら怜悧の方に放り投げるだけでも問題ない
どうやら纏めて引き潰してくれるようだからな

シャベルの一撃は喰らわないに越したことはない
影人形たちに紛れながら、私自身もルールーに攻撃していこう
シャベルで狙われた場合はすぐさま飛び退く
残念だったな、それは残像…もとい影人形だ


水鏡・怜悧
【砦】
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ

結界を張れるほど近づいたなら、声くらいは届くでしょうか。
「オーナーの一族は女系だそうで。先祖は自身も結婚詐欺にあいながら、同じ境遇の貴女を慰霊したのですよ。それを理解しての復讐ですか?」
私の言葉が何処まで届くかはわかりませんが、何も言わないよりはマシと思いましょう。

「八重さん、任せました。信じていますよ」
喫茶店の守りを託し、敵の多い方へ移動。指定UCにて全身をUDCに変え、触手付きの大きなミキサーを象ります。周辺の敵を触手で掴み、回転刃で切断しましょう。朔良さんの投げた敵も触手でキャッチ。
シャベルを避けるほど素早くはありませんが、液体金属なので元に戻ります。




 次々と湧いて出てくる『ルールー』。しかしその勢いにも陰りが出てくる。
 対象メイド喫茶の右手側、右翼に当たる位置を守っていた【砦】の3人、御桜・八重(桜巫女・f23090)、黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)はそのことを確信してお互いに頷き合う。

 しかし、いまだ全周囲にルールーが沸いているのもまた事実。
「また敵のお出ましか」
 再び湧いたルールーに朔良が呟く。量は減ったが、湧いて出る範囲が広い。おそらくは花嫁がメイド喫茶に近づいてきて、力の及ぶ範囲が増えたのだ。
 まずはこれを押し留める必要がある。それを察知した八重が、お店のメイド服のまま(気に入っていたのでこのまま戦ってました)、桜色のオーラを纏う。
「お店は壊させない!」
 そのまま地を蹴って駆け出す八重。桜色のオーラが尾を引いて、その姿はさながら桜色の彗星のごとく。
「桜彗星、いざ突貫!」
 その名も【桜彗星】。猛烈な突進によってメイド喫茶を取り囲もうとしたルールーたちを吹き飛ばす。
「八重がまとめて敵を飛ばしてくれるらしいな」
「八重さん、任せました。信じていますよ」
「まっかせてー!」
 朔良と怜悧――今の人格はロキだが、に応援を受けて、桜彗星の勢いと威力が倍増する。当たる端からルールーを吹き飛ばしていく八重。
(このまま店外をグルグル回って桜色のバリアになる!)
 飛んでいったルールーは朔良とロキが片付けてくれる。ならば八重がやるべきは『お店に近付けないことに専念すること』だ。
 突っ込んでくる彗星にルールーたちもただやられているわけではない。直線的な動きに合わせて、シャベルを全力でバットスイングしてくるルールーたち。
 単純で重い一撃……ゆえに軌道は読みやすい!
 すっと足捌き、軌道を変えてストライクゾーンから身を翻す八重。それでも避けきれない一撃は。
「ていっ!」
 インパクトの瞬間に合わせて桜色のオーラを集中、護りを厚くして弾き返す。
「二人が任せてくれたんだから、止まるわけには行かないね!」

 八重の作戦通り、ルールーが軒並み吹き飛ばされてくる。
 それを見越して付近に待機していた朔良。降ってくる数はかなり膨大だが。
「とはいえ、対処しきれないほどではない」
 朔良の声に応じて、周辺の影から影人形たちが現れる。ユーベルコード【影人形:殲滅する者】によって現われたその数、『ルールーの数に応じた人数』。であるなら、いかに膨大だろうと問題は無い。
「さあ、狩りの時間だ」
 その言葉を合図に、影人形たちがルールーたちへ殺到した。

 迫りくる影人形たち。その疾風のごとき動きにルールーたちは対処できず。それから逃れようとも、その先には影人形たちに紛れて攻撃を繰り出してくる朔良がいる。瞬く間に骸の海へ強制送還されるルールーたち。
 しかし彼女らもやられっぱなしではない。
「るーるるーるるーるるー」
 何とか着地したルールーがシャベルを振りかぶる。目標はすぐ側にいた朔良。
「るー!」
 ぶん、と単純に重い一撃が振り下ろされる。シャベルの先端が朔良を捉える……!
「残念だったな、それは残像……もとい影人形だ」
 その声はルールーの側面、少し離れた位置から。と同時にルールーが朔良の攻撃で崩れ落ちた。
 大振りな一撃をわざわざ食らうこともない。朔良本人はすぐさま飛び退いて、その位置に影人形を配置したのだ。
「……」
 ふ、とひと息ついてから。朔良は再び影人形たちの中へその身を潜ませる。

 吹っ飛ばされてくるルールーの数はやはり膨大で、朔良の捉えることができる半径を越えて、なお存在する。
 八重にメイド喫茶の守りを託したロキは素早くその地点へ移動する。その身を【侵蝕し融合する狂気】で『UDC-黒く玉虫色に光る液体金属』へ変異させつつ、大量に降ってくるルールーに身構え。
 液体金属の身が象るは、触手付きの大きなミキサー。自身と、そして纏った触手を回転させ、すべてを切り刻む竜巻となったところでルールーたちへ突撃する。

 周辺に存在するルールーを掴み、そのまま回転刃まで引きずり込み、切断。
 時折、朔良のほうから投げ込まれてくるルールーも触手でキャッチ。朔良は朔良で『どうやら纏めて引き潰してくれるようだからな』とか思っているらしい。
「るーるるーるるーるるー!」
 回転刃をすり抜けたルールーのシャベルの一撃がロキに直撃する。どうやら回避するほどの素早さはないようだ。しかし液体金属ゆえに『単純で重いだけなら』そのダメージを逃がすことができる。波打つ身体がシャベルの一撃をやり過ごし。
「残念でしたね」
 再び回転する刃と化した触手がルールーを切り刻む。


 目に見えてルールーの数が減ってきた。
 その数に隠れていた花嫁の姿が見える。少しずつこちらに近付いてきている様だ。

 態勢を整えるべく、桜色の突貫を中断した八重が花嫁を振り向く。
「裏切られた恨みはわからなくもないけど、ぶつける相手が違うよ!」
 それに次いで、人の身に戻ったロキが語りかける。
「オーナーの一族は女系だそうで。先祖は自身も結婚詐欺にあいながら、同じ境遇の貴女を慰霊したのですよ。それを理解しての復讐ですか?」
 この言葉が何処まで届くかはわからないが。
(何も言わないよりはマシと思いましょう)
 そう思いながら語りかけた言葉。

 その言葉に……花嫁はニタァと笑みを浮かべる。
「知らぬ、他人の営みなど。この世から彼奴の痕跡を消す事こそが我が復讐だ」
 そして花嫁は八重を向く。ぶつかりあう視線。
「相手も間違っておらぬ。彼奴の臭いがするのならそれを消す。恨むならその血を引いた宿命を、我が再びこの世に現われた不条理を恨め」
 清々しいほど間違っている道理は、影朧ならではか。
 ならばと八重がぐっと拳を握る。
「八つ当たりなら、わたしたちが相手になる!」
「そういうことだ」
 八重の言葉に賛同するように、朔良が側に立つ。
 その言葉に、花嫁が嗤う。
「ならば……我が眷属、滅ぼしてみせよ!!」
 花嫁の言葉を受けて、大量に湧くルールー。されどこれが最後の力だと、そこにいる誰もが感じた。
「後少しのようです」
「わかった!」
「蹴散らすとしよう」
 ロキの言葉に、八重と朔良が頷く。

 不条理を振り撒く花嫁との決戦は、すぐそこに迫っている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『狐憑ノ花嫁』

POW   :    男魂焼却ノ炎
レベル×1個の【【性別:男】の対象では回避・防御不可能】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    胡媚影朧伝
【九つの狐尾】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、九つの狐尾から何度でも発動できる。
WIZ   :    復讐の女狐
【九つの狐尾を持つ、巨大な狐】に変形し、自身の【九つの狐尾の一つ】を代償に、自身の【【性別:男】の対象に対する攻撃力・防御力】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●縁は怨となりて、魂はコンと堕ちる

 ――皆が言う。『アイツは悪い男だった』と。
 ――皆が慰める。『お前には運が無かった』と。
 ――そして皆が責める。無言の視線で『莫迦な女』と。

 それが及ぶのが我が身のみ、否、申し訳ないが共に住む両親までで収まれば、我も耐え抜いたであろう。しかし、その儚い望みはあっけなく砕かれ、親族知人まで我のせいで辱めを受けることになった。

 人の口に戸は立てられぬ。尾びれ背びれがついて広まり続ける噂。それは『家系を紡いで行く』ことを目的とした人の世ではあまりにもむごく、鋭く、人の目には見えない魂を切り刻んでいく。

 時代が悪かったのだろう。環境が悪かったのだろう。たまたま人の悪口くらいしか娯楽がなかったのだろう。

 ――ならば。

 我がこの身に起こった事を恨み、この世にある彼奴めの痕跡を消し去ろうとして何の不条理がある?

 それこそ、『運が無かった』のだ。何故ならこの身は既に死んだ身。過去の揺蕩う海にしか存在しなかったモノがこの世に現われたのだから。
 そうだ、我は『悪い女』だ。ゆえに思うがまま、この世を蹂躙する。彼奴めがやっていたことと何ら変わらぬ。
 『莫迦な女』を嘲笑うがいい。それが為に汝らの子孫はその莫迦な女に喰われるのだ。

 我は怨の顕現なれば。ヒトの身では抗うことはできても、異を唱えることはできまい。それが通じたが最後、汝らは『騙すこと』を、『怨みを生み出すこと』を肯定してしまうのだから。

 ゆえに我の存在意義を揺るがすモノ。それは人の身に収まらぬ、生命の埒外にある……猟兵。
 されど相容れることはあり得ぬ。この手が止まる理由にはなり得ぬ。我らの宿命は戦うのみ。

 貴様らにこの怨みを晴らすことができるものなら、やってみるがいい。この怨みある限り、桜の癒しは届かぬと知れ。

 いまだ異界の中にある大正メイド喫茶。しかし周辺に湧いていたルールーは既に数えるほどしかおらず、また新たに湧いてくる気配はない。それを知ってか知らずか、ルールーたちは猟兵たちを遠巻きにして囲むのみとなった。
 その輪の中を進み出てくる女……否、影朧がひとり。
 猟兵たちが相対するのは、『狐憑ノ花嫁』。青白い炎を漂わせ、白無垢を纏うその姿は淑やかに見えるが、しかしその目とその内は激情に燃えている。
 すなわち、復讐である。
雪華・風月
貴方に起こった出来事には同情します。その男性への恨みも当然でしょう
しかし、今回のことは別…
確かに血を引いてはいますが同じ被害者でもあり、縁もゆかりもない貴方の為に慰霊碑を立てた方の子孫…

その恩を仇で返すと言うなら…帝都桜學府所属、雪華・風月
その怨念を断ち切りましょう(霞の構え)

雪解雫にて、放たれた炎の軌道を『見切り』打ち消します
手数が足りなければ鞘も使い、変則二刀流にて【武器受け】

敵の動きを見、隙ができれば踏み込み距離を詰めます【切り込み】
この刃にて恨みに染まった魂を断つ!



これで悪縁も断ち、次の生は良き出会いがありますようにと思いも籠めて(収刀)


疋田・菊月
大昔の因縁、それはもう大変な目に遭われたことなのでしょう。
若輩者の給仕めには想像も及びません。
そして時間を経ても晴れぬ恨みを、今更忘れろなどというのも虫の良いお話です。
ただ、それを今に持ってこられても困っちゃいますので、切り替えていきましょう。
忘れなくったっていいんですよ。
不幸なことは、未来を良くするための戒めにするんですよ
貴女が仮に生まれ変わったとして、同じように不幸になったら嫌じゃないですか
だから、良くすることの為に不幸を覚えておきましょう

じゃあ、はるちゃん。型式九九、特製弾倉を出してくださいな。
制圧射撃で相手を固めちゃいますよー。
後は皆さんで、煮るなり焼くなりです。えへへ。



●月は風と菊の言葉となりて
 『狐憑ノ花嫁』の前に真っ先に進み出たのは雪華・風月(若輩侍少女・f22820)と疋田・菊月(人造術士九号・f22519)であった。

「大昔の因縁、それはもう大変な目に遭われたことなのでしょう」
 給仕服姿の菊月が手を胸にやりながら告げる。その敵意の無い様子に、花嫁も思わず足を止める。
「若輩者の給仕めには想像も及びません。そして……時間を経ても晴れぬ恨みを、今更忘れろなどというのも虫の良いお話です」
「……ほう」
 目を閉じ、過去に思いを馳せる菊月に対して花嫁はそう返して。
「ただ、それを今に持ってこられても困っちゃいますので」
 しかし、菊月の次の言葉はその流れを止めるもの。
 菊月の言葉を受けて風月も言葉を紡ぐ。
「貴方に起こった出来事には同情します。その男性への恨みも当然でしょう」
 まっすぐ花嫁を見据えながら、しかし、風月は『肯定』しない。
 例え、例えそうだとしても、『今回のことは別』だ。ましてや花嫁が狙う相手は、確かに男の子孫ではあるが、男そのものではなく。
(同じ被害者でもあり、縁もゆかりもない貴方の為に慰霊碑を立てた方の子孫……)
 その筋の違いを看過するわけにはいかない。
「恩を仇で返すと言うなら……帝都桜學府所属、雪華・風月、その怨念を断ち切りましょう!」
「クク、押しつけられた恩は偽善というのだ」
 風月の言葉に嘲笑うようにして答える花嫁。立場が違えば受け取り方も違う。風月と花嫁、どちらも間違っていないがゆえにお互いの主張はぶつかるしかない。
 最早言葉による説得は届かぬ。そう判断した風月は愛刀『雪解雫』を抜き、霞の構えを取る。
「ということで、切り替えていきましょう」
 成り行きを見守っていた菊月も改めて武器を構える。先にも言った通り、過去を現在に持ってこられては困るのだ。
「では……男の前に貴様らを喰らうとしよう」
 花嫁の周囲に出現する青白い狐火。それをきっかけに、両者の戦闘が始まった。

●菊が咲き、風が舞う
 風月が地を駆ける。花嫁との間には少し距離がある。その間を援護するべく、菊月は足を止めたまま『USP-SP』で制圧射撃!
「忘れなくったっていいんですよ。不幸なことは、未来を良くするための戒めにするんですよ」
 合わせて言葉を重ねることを忘れない。花嫁の存在は否定されるべきものではないと。
「ならば、その戒めとされた自身はどうする?」
 制圧射撃を数歩下がりながらかわし、花嫁は静かに怒りを返す。教訓、過去の事例、言い伝え。後の者に対しての益になることであっても、その事例とされた者の不幸はどうすればいいのか、と。
 だが、菊月は首を小さく横に振る。
「貴女が仮に生まれ変わったとして、同じように不幸になったら嫌じゃないですか」
「……!」
 菊月の言葉に、一瞬花嫁の動きが止まる。
 その隙に、風月が横から間合いを詰めることに成功する。
「ちっ」
 視界に入ってきた風月に対して、花嫁が狐火をまき散らす。
「なんの!」
 迎撃を見込んでいた風月は、霞の構えを解き、刃にて円を描くように飛んできた狐火を打ち払う。退魔の力を秘めた刃が狐火を掻き消していく。
 狐火を振り払い、すかさず霞の構えに戻る風月は、さらに踏み込み。構えから鋭く刺突の一撃! しかし花嫁は尻尾で以て受けとめる。
「お話途中ですよ」
 動きが止まった花嫁に、菊月を距離を詰めてくる。その様子に花嫁は注意を向けざるを得ない。そこへ言葉を重ねる菊月。
「だから、良くすることの為に不幸を覚えておきましょう」
 貴女の為にも。

「じゃあ、はるちゃん。型式九九、特製弾倉を出してくださいな」
 菊月の声に反応したのは『自動随伴輜重機『はる』』ちゃん。速度をあげながら菊月に追従し、彼女の声に応じて『型式九九K』を手渡す。中に入っているのは『特製弾倉』
「ていっ!」
 射程距離は十分。狙い撃つわけではなく、ただ姿勢を安定させるために足を止める。そこから再びの制圧射撃。【スペシャルホットロード】で増強された斉射が花嫁を捉える。
「くっ」
 風月がいるために思うように動けない花嫁は、菊月の射撃を九つの狐尾で受け止める。狐尾が秘めるユーベルコードをコピーする力。それで以て菊月に攻撃を返そうとするも。
「えぇいっ! 面妖な!!」
 それを解き放つ対象を、銃を花嫁は持たない。力が顕現しようとしてそのまま霧散していく。
 その間にも菊月の放った特殊弾の効果が花嫁を絡め取る、否、固めていく。特製弾倉はその場に敵を固着させる弾だったのだ。
「後は皆さんで、煮るなり焼くなりです。えへへ」
 笑みを浮かべながら銃口を下げる菊月。

 動きを制限された花嫁に、風月は一度距離を取って構え。
「この刃にて恨みに染まった魂を断つ!」
 再度踏み込みによる斬り込み。それは【刃邪剣正】による一閃。霊力を籠めた雪解雫による一撃が、花嫁の妄執とも言える怨みを斬り裂く。
「ぎ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 花嫁の口から迸る絶叫。それは歪みが少し消えた音。

 そのまま花嫁の横を駆け抜け、花嫁に背を向けたまま。悪縁を断つ刃を一度だけ振りおろし、そのまま鞘に納める風月。
(次の生は良き出会いがありますように)
 その想いを籠めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紅葉・智華
【妹(f12932)と】

※アドリブ・連携歓迎
口調:素

「――理由が何であれ。人を襲う時点で見逃す訳にはいかない」
運がなかった。私だってそうだ。運が良ければ今も普通の人間だったかもしれない。――でも、受け入れるしかない。捌け口に、第三者を選ぶのは、あってはならない。

華織の【援護射撃】に徹する。狙撃用ライフルの『唯射』を【目立たない】所で構えて、【選択UC】による狙撃(スナイパー)。着弾時の衝撃での硬直を狙い華織が自由に動けるよう【時間稼ぎ】を行う。

「――迷わず、逝け」
せめて。もし奇跡があるのなら。今度は人を恨みまない結果でありますように。


紅葉・華織
【お姉ちゃん(f12932)と】
※アドリブ・連携歓迎

――人様に迷惑をかける。なら、斬っていいって事ダヨネ?

お姉ちゃんも倒そうとしている。そして、ここは戦場だ。理由はそれだけあれば十分。オブリビオンは、屠るもの。

お姉ちゃんが援護してくれているのを利用して、【ダッシュ】で接敵。

敵の動きを観察しながら、攻撃を【見切り】(第六感)つつ、避け切れないものは、秘鞘『月煌』でガード(盾受け)。そうしてより近くで敵を観察しながら、隙を見つけて『月華』(鎧無視攻撃)での【カウンター】を狙う。

「――申し訳ないケド、ここで終わりだよ、キツネサン?」




 風月による一閃。それは『狐憑ノ花嫁』にダメージを与えると共に、花嫁が持っていた鳥居を真っ二つに斬り裂いていた。
 途端に解かれる結界。あの世からこの世へ戻ってくる大正メイド喫茶。
 それはサクラミラージュの日常の真っただ中に、この戦闘が戻ってくることに他ならない。

 一般人の悲鳴が上がる中、猟兵たちは咄嗟に行動に移る。今の立ち位置から周囲の一般人を逃す、あるいはルールーから守る。素早く役割分担をする中で、花嫁に攻撃を加えるべく、行動したのは紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)と紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)の姉妹。

 結界が解かれたことで一度後方に下がろうとしていた花嫁を、しかし智華は見逃さない。
「――理由が何であれ。人を襲う時点で見逃す訳にはいかない」
 花嫁の言葉を聞いて、智華は小さく、しかし意志強く呟く。

 ――運がなかった。私だってそうだ。運が良ければ今も普通の人間だったかもしれない。
 ――でも、受け入れるしかない。
 ――捌け口に、第三者を選ぶのは、あってはならない。

 突如の行方不明。そして不本意かつ唐突な改造手術によって人生そのものが変わってしまった智華の、身上から零れ出るその言葉は何よりも強く、そして固い。

 そんな姉を遠目で確認しながら、華織は口元に笑みを浮かべる。

 ――人様に迷惑をかける。なら、斬っていいって事ダヨネ?

 そう言外に告げて。

 ――オブリビオンは、屠るもの。

 お姉ちゃんも倒そうとしている。そして、ここは戦場だ。理由はそれだけあれば十分。

 視線で意思疎通を行った二人が花嫁に向けて攻勢を仕掛けた。


(援護に徹する……!)
 智華が選んだのはメイド喫茶から離れた建物の影。奇しくも華織が周辺警護と潜んでいた場所である。そこで『Y1-SAW[M's/2]超長射程アサルトウェポン改【唯射】』、改造した狙撃用の超長射程アサルトウェポンである唯射を構えて、放つ一射は必中の弾丸。
「――逃さない」
 【支配者の弾丸】が花嫁に直撃して、その衝撃で動きを止める。すばやく薬莢を排出して次弾装填。再度の【支配者の弾丸】で花嫁の行動を確実に封じていく智華。
(――華織、今!)
 心の中で叫ぶのは、妹への声無き合図。

 それは届かぬとも、伝わる。

 遠距離からの狙撃。しかも人混みや周辺の騒々しさで位置が把握できない場所からの。度重なる狙撃に花嫁は激昂する。
「貴様ぁぁぁっ!!」
 智華の放つ弾丸に対して、花嫁が九つの狐尾を持つ、巨大な狐に変化する。しかし狙撃者は女。巨大な狐は弾丸を受け止めるにとどまり、その本質たる強化は行えていない。

 身体が大きくなれば死角も増える。
(――今!)
 姉が作った隙を逃さず、ダッシュで接近する華織。
「甘いわ!」
 しかし、足音に気付いた花嫁が華織に炎を放つ。視認していないがゆえにとても雑に。
「これなら……!」
 放たれた炎は、華織が男であれば執拗に追いまわし、防御すらさせない極悪な代物。しかし、華織も女である。

 そこにあるのはただの狐火だ。

 その軌道を見切ってかわし、接近する道すがら掠めるような狐火は『秘鞘【月煌】』でガードして。それを支えるのは【赤枝流武術【熟機】】。熟練の業が華織を無傷で花嫁の元へ送り届ける。
 完全に死角に潜り込んだ華織は、鞘から『妖刀【月華】』をすらりと引き抜く。
「――申し訳ないケド、ここで終わりだよ、キツネサン?」
 流れるように、そして踏み込みの勢いを利用したカウンターの一撃。それは花嫁の体に深く、鋭く食い込む。
「――迷わず、逝け」
 同時に智華も再度弾丸を放つ。
 智華と華織の同時攻撃に絶叫する花嫁。その絶叫に智華は一縷の望みを投げかける。

 ――せめて。もし奇跡があるのなら。今度は人を恨みまない結果でありますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
ルールーも片づけました。
残るはひとり、あなただけです(ビシッ)

過去は過去。
昔にいろいろあったことについては同情もしますが、
今はもう時代は未来なんです。

因縁も断ち切る時が来ました。
恨みはありませんが、退治させてもらいます。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーで狐の尻尾を絡めとったところでUC【獅子剛力】を発動し、
尻尾が抜けるぐらいに大地に向かって、びったんびったんにします。

炎に巻かれても……熱くない!
狐火って不思議です。




 紅葉姉妹の必殺の一撃。それを躱す余裕など『狐憑ノ花嫁』には無く。多大なダメージに巨大狐の変化が解ける。その際に巻き起こる魔力の渦、否、煙幕といったほうがいいか。
 それに紛れて、戦場を離脱しようとする花嫁。
「逃がしませんよ」
 しかし、それを退路へ回り込んだ黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が制する。
「ルールーも片づけました。残るはひとり、あなただけです」
 ビシッと一切の躊躇なく、花嫁を指差す摩那。

 摩那とて無情ではない。この花嫁の身上に起こったことは把握している。
(昔にいろいろあったことについては同情もします)
 が、過去は過去だ。そして。
「今はもう、時代は未来なんです」
 過去から現在、そして未来へと時は繋がっているものの、あらゆることを未来に持ち込んでいいわけではない。
「因縁も断ち切る時が来ました。恨みはありませんが、退治させてもらいます」
 そう言って、『超可変ヨーヨー『エクリプス』』を構える摩那。
「その口上。ならば我も避けるわけにはいくまい」
 にたりと笑った花嫁は狐の尻尾を震わせる。同情では無く、お互いの信条の衝突ならば、花嫁も逃げるわけにはいかない。

 花嫁の背後から九尾が伸び、摩那に襲い掛かる。それを摩那は見切り、かわし。
「……ここです!」
 そして捉えた。手から素早く飛翔したエクリプスが狐尾を数本くるくるっと絡め取る。
「……っ!」
 ぐっ、と手元のワイヤーを引いて手応えは十分。エクリプスのワイヤーもそんなに簡単に切れる代物ではない。
「接地、反転。アンカー作動……力場解放!」
 即座に【獅子剛力】を発動する摩那。ワイヤーを引っ張って花嫁を文字通り釣り上げ、そのまま力任せに地面に叩き付ける!
「はぁっ!」
 間髪を入れずに地面から引っこ抜き、叩き付け。尻尾が抜けるぐらいに大地に向かって、びったんびったんする摩那。
「がぁぁぁぁっ! おのれぇぇぇ!!」
 痛いのか屈辱なのか判断のつかない叫びをあげて。花嫁が青白く燃え盛る狐火を放つ。それはワイヤーを逆に辿り、摩那を確実に捉え、そして包み込む!
「……っ! …………あれ?」
 炎に巻かれてダメージを覚悟した摩那が首を傾げる。いや、確かにダメージはあったが、見た目ほどの威力が無い。というか。
「熱くない! 狐火って不思議です」
「ち、いっ……!!」
 ひとしきり感心しながらもびったんびったんを止めていない摩那。その様子に舌打ちする花嫁。狐火の特性が図らずも裏目に出たことが花嫁の心中に覚悟を決めさせる。
「これで、フィニッシュです!」
 殊更大きく降り上げて地面に直下型で叩きつける摩那。
「が……っ!」
 花嫁らしかぬ悲鳴をあげて崩れ落ちそうになった花嫁は咄嗟に自身の尻尾を掻き切る。ぶちっと嫌な音がして。
「あっ」
 トカゲの尻尾切りならぬ狐の尻尾切り。そして瞬く間に姿を消す花嫁。
 摩那の手元に残ったのは3本の狐の尻尾。それもまた摩那の手で骸の海に還されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンネ・プラネッタ
●臨時執事のヘルメスさんと

とりあえず魔法少女衣装に早着替え。

ヘルメスさんが時間を稼いでくれている間にボクはホゥリィパワーをチャージ!限界までユーベルコードに集中するよ!

ヘルメスさんが倒れたらユーベルコードを発射!

ありがとうヘルメスさん! 今こそあの影朧をあるべき場所に還そう!

マジカル・リンネアロー!

「最期までキザな人だったわね......」
※ヘルメスさんが死んだと思ったまま帰宅し、シャワーを浴びながらしんみり。


ヘルメス・トリスメギストス
リンネお嬢様と

「影朧のお嬢様……
私には窺い知ることもできませんが、さぞやお辛い過去を経験されてきたのでしょう……」

ならば、執事である私ができるのは唯一つ!
お嬢様の無念の心を癒やして差し上げることのみです!

「お嬢様、どうぞこちらをお飲みになっておくつろぎください」

執事三千年の歴史を持つ【執事給仕術】で、影朧のお嬢様に紅茶を差し出します。(狐に噛まれて頭から血を流しつつ

疲労しようと、血が足りなくなろうと、執事としての意地で立ち続けます。

「では、リンネお嬢様、後はお願いしました……よ……」

時間を稼ぐようにというご指示は完遂いたしました。
あとはリンネお嬢様にお任せしましょう……(がくっ




「はぁ、はぁ」
 苦し紛れに自身の尾を引きちぎり、そして煙に巻くかのようにその場を逃げ出して。それは狐の本能だ。危険からは咄嗟に逃げるという獣の本能。
 しかし、『狐憑ノ花嫁』の目はいまだ目標を失っていない。

 呼吸を整え、態勢を整え。そして改めて攻める。
 何、また結界を張ればルールーは呼び出せる。消耗戦となればこちらの有利だ。

「ふふ、そうだ。出会い頭に大きな獣と行き当っただけのこと。この身が動けば何ら問題ない」
 冷静さを取り戻した花嫁は、しかし自分で切ったがゆえに再生しない尻尾の跡を見る。相手も消耗しているが、こちらも確実にダメージを負っている。着実にいかねば。

「影朧のお嬢様……」
「……!」
 届いた声に花嫁が振り向く。そこにいたのはヘルメス・トリスメギストス(戦う執事・f09488)、そしてその主(臨時)であるリンネ・プラネッタ(ロザリオの名探偵・f22933)。
「私には窺い知ることもできませんが、さぞやお辛い過去を経験されてきたのでしょう……」
 ヘルメスの言葉に、唐突な苛立ちを感じた花嫁は露骨に舌打ちする。八つ当たりである。
「なるほど。何があっても我の前に立ち塞がるというのだな?」
 ゆらりと花嫁の体が揺れる。それは狐が戦闘態勢に入ったことを示す。
「今から着替えます! マジカル・リンカーネーション!」
 とリンネはとりあえず魔法少女衣装に早着替え。シスター探偵魔法少女verが颯爽と現れた!
 そしてヘルメスは告げる。
「ならば、執事である私ができるのは唯一つ! お嬢様の無念の心を癒やして差し上げることのみです!」
「やれるものならやってみよ!」
 そう言って花嫁は六つの狐尾を持つ、巨大な狐へと変化した。


 そのまま花嫁は1本の尾を犠牲にして強化する。それは自身の【性別:男】の対象に対する攻撃力・防御力を強化するもの。
「…………」
 その様子を見て、リンネがこの戦い(メイド喫茶の中から今まで)を思い返す。性別・男……は二人しかいなかった。しかもひとりは後方支援型である。
 狐の前に立つような男はヘルメスしかいなかった。

 つまり、このユーベルコードは対ヘルメス特化! ……そんなわけあるかい。

「お嬢様、どうぞこちらをお飲みになっておくつろぎください」
 対してヘルメスは執事の矜持で以てお嬢様に対応する。その手が差し出すのは紅茶。執事三千年の歴史を持つ【執事給仕術】で以てサーブされた一級品である。

「そのようなハイカラな飲み物は好かん(がぶっ)」
「ぐはっ」

 一蹴される紅茶。そして噛みつかれるヘルメスの頭。このユーベルコード、最大の弱点は対象の好みに命中しないと癒せないということである。しかし執事は諦めない!
「お嬢様。何事も最初は新しくハイカラなもの。挑戦することが肝要かと存じます」
「やかましい」
 ヘルメスの言葉にがじがじ頭を噛む花嫁。なお、ユーベルコードによって強化されている巨大狐がじがじである。
 そしてユーベルコードの代償として、ヘルメスに疲労がたまっていく。しかし、その様子は微塵も見せない。
(執事たるもの、主に疲労を見せるなど)
 ふっ、と口元に笑みを浮かべながら、改めて紅茶をサーブするヘルメス。なお、ビジュアルとしては頭から血がだらだら出まくっています。
(疲労しようと、血が足りなくなろうと、執事としての意地で立ち続けます……!)
 ヘルメスのその生き様をしかと目に焼き付けよ。

 とかなんとかヘルメスが執事的な戦いをしている間。
「…………」
 リンネはホゥリィパワーをチャージ! していた(見た目は詠唱である)。
「限界までユーベルコードに集中するよ!」
 と事前に作戦は伝えてある。
 ユーベルコード【祈りの弓】は詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する。ヘルメスの稼いでくれた時間イコール破壊力になるのだ。それを知ってのヘルメスの作戦である。ほんとか?
 この喜劇……じゃなかった貴重な時間をリンネはユーベルコードにこめているのだ。

 その時は不意に訪れた。
「む、ぅ……」
 がくりと膝をつくヘルメス。ダメージでも疲労でもなく、血の流し過ぎである。
「では、リンネお嬢様、後はお願いしました……よ……」
 『時間を稼ぐように』というリンネからの指示は完遂した。
(あとはリンネお嬢様にお任せしましょう……)
 ぱたり、と倒れるヘルメス。
「ありがとうヘルメスさん! 今こそあの影朧をあるべき場所に還そう!」
 ヘルメスの遺志(?)を受けて、リンネが高らかに宣言する。
「マジカル・リンネアロー!!!!」
 解き放たれる聖属性の光の矢。それが花嫁(とヘルメス)を飲みこんでいく。
「ギャァァァァァァア!!」
 直撃し、獣の絶叫をあげて爆散(?)する花嫁。

 光が消えた後、その場所に残っているのはリンネだけであった。

●全てが終わった後のこと(リンネ)
 事件が解決した後、リンネは自宅に戻ってきた。暗い部屋の電気をつけて、静かに浴室へと向かう。
 シャワーの、水滴が跳ねる音だけが響く。
「最期までキザな人だったわね……」
 今日の、ヘルメスの戦い方を思い出しながら、しんみりとぽつり呟くリンネ。
 それはヘルメスに対する哀悼だったのかもしれない。

 しかし。その頃、ヘルメスは(文字数が足りなくなりました)。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒柳・朔良
【砦】
呼び方:呼び捨て

女の怨みというのは恐ろしいものだというのは、いつの世も同じなのだな
しかしそれだからといって関係ない人間を巻き込むのは筋違いというもの
彼女にとっては自信を貶めた男の子孫であると思っているオーナーを狙うのは当然と思っているかもしれないが、それこそただの憂さ晴らしの八つ当たりに他ならない

ああ、だが私の言いたいことはすべて八重が言ってくれるか
ならば説得は八重と怜悧に任せて、私は引き続き選択UCの影人形達と共に彼女の眷属であるルールーを彼女に近づけさせないように壁となろう
もちろん、時折花嫁の様子を伺いながらだがな


御桜・八重
【砦】

恨みを晴らしたいだけなら、
自分は正しい、世の中がおかしいと声高に叫ぶはず。
でも、あの人は『悪い女』『莫迦な女』と自分を蔑んでいた。
あの人は、泣いているんだ。

「真っ向勝負っ!」

正面から全力で攻撃を受ける。
二刀で、オーラの護りで。
一歩も引かずに恨みの炎を全て受け止める!

自分の恋のせいで、みんなが辛い目に遭った。
哀しくて、悔しくて。
全部消して、無かったことにしたかった。

でも。
好きだったんだよね。
幸せだったんだよね。
その気持ちだけは、本当だったんだよね。

「あなたは、莫迦な女なんかじゃない!」

オブリビオンの本能がその思いを歪めるのなら、
彼女が本当の気持ちに気づいた瞬間を逃さず、
邪気を断ち切る!


水鏡・怜悧
【砦】
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ

逆恨みと理解しての行動であれば、私から言うことはありませんね。悪人であり恨まれる立場の私は、彼女を否定も非難も出来ません
「本懐を果たさせるわけにはいきませんが。せめて、覚えておきますよ。悪意で人生を歪められた人が居たことも、好奇によって堕ちた名誉があったことも」
八重さんが説得するのであれば、微力ながらサポートいたします
指定UCを発動。全力で暴れるのであれば、理性は邪魔なときもあるでしょう。憎悪も悔恨も憤懣も、素直に吐き出せる程度には弱っていただきます
死角からの攻撃ですから、効果は薄くとも若干の足止めにもなるでしょう
防御は最低限とし、彼女の在り方を見守ります




 冗談のようなリンネの攻撃。しかし威力だけは半端なかった。その攻撃を、咄嗟に掻き切った狐の尾3本を盾にして、どうにかやり過ごすことが出来た『狐憑ノ花嫁』。しかしそのダメージはもはや隠しきれない。体勢を立て直すなどと言っている状態では無くなっていた。

 ――このままでは、死ぬ。

 それは明確に見えてきた自身の結末。まさか猟兵がここまでの数で待ち構えているとは。ここまで強力に復讐を阻むとは。

 ――ならば。ならばこそ!

 かの血筋に一矢だけでも叩き込まねば。
 真っ白だった白無垢も、破れ、ちぎれ、そして白さえも黒ずんできても。

 花嫁は復讐の刃を振り上げる。


 メイド喫茶の前で残党と言っていいほどの数まで減ったルールーたちをほぼ撃退した水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)、御桜・八重(桜巫女・f23090)、黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)の3人。

「そろそろ終わり……」
「……いや」
 怜悧――今の人格はロキの口から零れた言葉を朔良が制止する。
「来た」
 八重の言葉の先に居たのは、ズタボロになりながらも再びメイド喫茶の前に姿を現わした花嫁。否、もはやその姿は花嫁と言えるだろうか? 復讐の女狐の本性がそこにあった。

 それを見据えながら身構える朔良。
(女の怨みというのは恐ろしいものだというのは、いつの世も同じなのだな)
 冷静に目の前のことを判断して。
 しかし、だからといって関係ない人間を巻き込むのは筋違いというものだ。それは朔良じゃなくても、誰だってそう思う。
 花嫁は、自身を貶めた男の血を引くオーナーを狙うのは当然と思っているかもしれないが、それこそ……。
「ただの憂さ晴らしの八つ当たりに他ならない」
「逆恨みと理解しての行動であれば、私から言うことはありませんね」
 朔良の言葉にロキもまた頷きを返す。
(悪人であり恨まれる立場の私は、彼女を否定も非難も出来ません)
 とは口には出さないものの。
「本懐を果たさせるわけにはいきませんが。せめて、覚えておきますよ」
 ロキもまた戦闘態勢に入る。このまま花嫁を近づけさせるわけにはいかない。
「悪意で人生を歪められた人が居たことも、好奇によって堕ちた名誉があったことも」
 それは猟兵と影朧の間にある、決定的な決別。

 しかし、その中でひとり、八重だけが首を横に振る。
「恨みを晴らしたいだけなら、自分は正しい、世の中がおかしいと声高に叫ぶはず」
 八重の言葉に朔良とロキが彼女を振り返る。
「でも、あの人は『悪い女』『莫迦な女』と自分を蔑んでいた。……あの人は、泣いているんだ」
 他人の言葉であってもその言葉を受け入れたからには。それは花嫁自身の言葉でもある。

「さぁこれで終わりだ……全て、全て去ね」
 そう言って花嫁が巨大な狐の姿、文字通りの復讐の女狐に変化する。最早残りの尾は2本まで減り、しかしその1本をさらに代償として喰い尽くす。3人の内、性別:男はロキのみ。しかし、それでも構わぬと己の身を削り、吼える花嫁。

 少し感じていた違和感、それを言い表したと直感した。その八重の言葉を耳にした朔良は口元にわずかに笑みを浮かべる。
(ならば説得は任せよう)
 自身はその場を調えるのみ。いまだ残るルールー、そして花嫁が怒り狂って放つ狐火から八重を守る。
「さあ、行こう。『影』(私)の『人形』(写し身)達よ」」
 ユーベルコード【影人形:殲滅する者】によって再び生み出された影人形たちが戦場に入り乱れる。しかし、その人形たちは確実に八重を守る壁を作り、道を作り出す。
 朔良もその中に入りながら、八重と花嫁の様子を窺うのだ。

 ロキが【思考拘束】を発動する。亜空間へ繋がる裂け目から『UDC-黒く玉虫色に光る液体金属』が放たれる。それは死角から花嫁を襲い、怪力による拘束により対象の動きを一時的に封じる。
(若干の足止めにもなるでしょう)
 花嫁の動きを絡め取った液体金属。
(全力で暴れるのであれば、理性は邪魔なときもあるでしょう)
 ゆえにこのユーベルコードは適切に効果を成す。憎悪も悔恨も憤懣も吐き出せる程度に弱れば。
 ロキもまた花嫁の在り方を見守るのだ。

 舞台は調った。

 朔良と八重が見守る中。
「真っ向勝負っ!」
 愛刀の『陽刀・桜花爛漫』『闇刀・宵闇血桜』を両手に構えて、真正面から八重が駆ける。
「舐めるなっ!!」
 拘束されていようとその怨みは尽きぬ。男の魂を燃やし尽くす炎が狐の口から放たれるが。
「くぅっ!!」
 八重はそれを全力で受け止める。刃に纏うは桜色のオーラ。交差した二刀が炎を押し留め、一歩も引かずに恨みの炎を振り払う!

 ――自分の恋のせいで、みんなが辛い目に遭った。
 ――哀しくて、悔しくて。
 ――全部消して、無かったことにしたかった。

「――でも」
 八重が花嫁の懐に踏み込む。
「好きだったんだよね」
「……!」
 八重の言葉に逡巡する花嫁。
「幸せだったんだよね。その気持ちだけは、本当だったんだよね」
「う、うるさいうるさいうるさい!!」
 その言葉は花嫁の『心』を突く刃。その心はまだ復讐に捕われていない純粋な気持ちで存在して、それを刃は奮起させる。
 オブリビオンの本能がその思いを歪めるのなら、その邪気を断ち斬るのみ!
「あなたは、莫迦な女なんかじゃない!」
 花嫁が純粋なその気持ちに気付いた瞬間に放つ、八重の霊力を込めた二刀による一撃。八重の叫びと魂を乗せた渾身の一撃が、花嫁の肉体を傷つけず、確実にオブリビオンの悪意のみを一刀両断したのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
やはり、微妙にすれ違って…。
でも、ここで止めないといけませんね!

このメイド喫茶のオーナー…。その先祖は、あなたを本当に悼んだ方。悪意ではなく、慈しみを持った方。
それもありますから、あなたに過ちを犯させるわけにはいきません!

【桜火乱舞】での攻撃を。私は女ですから、相手のUCは意味をなさない。
でもそれは、手を抜くことを意味しない!
私は全力であたります。キセルでのマヒ攻撃も加えましょう。

こうなっても、私はあなたの転生を望みます。
そう、転生して…今度こそ、あなたの道を堂々と進む。笑った人たちを笑い返すように。




 【砦】の3人による猛攻。そして八重の魂を乗せた一撃によって、『狐憑ノ花嫁』は狐変化の力さえ霧散させる。その根底にある狐の力もまたひび割れて力を失いかけている。
 もはや戦う力もなく、しかしその足はいまだメイド喫茶に向かっている。

 その様子をずっと観察していたスリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は、その状況と情報から推理を導き出す。
(やはり、微妙にすれ違って……)
 件の男、オーナー、そして花嫁の身の上。それらのすれ違いさえ直せれば、事は簡単なのだが、花嫁の怨みがそれをさせてくれない。
(でも、ここで止めないといけませんね!)
 ここで推理の役目は終えて。
 スリジエもまた花嫁の前に立ち塞がる。


 ボロボロになった花嫁衣裳と足を引きずりながら、腕を押さえながらそれでもメイド喫茶に向かう花嫁。
「このメイド喫茶のオーナー……その先祖は、あなたを本当に悼んだ方」
 目の前に立ち塞がったスリジエに、花嫁はいまだ力強く視線を投げかける。
「それは何度も聞いた。だが」
「悪意ではなく、慈しみを持った方。それもありますから、あなたに過ちを犯させるわけにはいきません!」
「……!」
 『過ち』という言葉に、花嫁の動きが一瞬止まる。
 しかし、すぐさま最後の力を振り絞って、その身を巨大な狐の姿へと変じる。復讐の女狐は既にその尾を1本とまで減らし……その1本すら今代償として喰い潰す!
 強化された狐の力。しかし。
(私は女ですから、相手のUCは意味をなさない)
 しかし、しかしだ。
「でもそれは、手を抜くことを意味しない! 私は全力であたります!」
「くるがいい!!」
 狐が吼える。それに応じるようにして、スリジエが【桜火乱舞】を放つ。
「ここに、私の力を!」
 スリジエの声に応じて、周囲に現われる桜の花びらの形をした炎剣。幾何学模様を描き複雑に飛翔しながら花嫁を包囲する。
「小賢しい!」
 降り注ぐ炎剣の攻撃を振り払い、耐える花嫁。
「手加減は無し、と言いました!」
 その声は花嫁の『真下』から。いつの間にか懐に飛び込んでいたスリジエのキセルによる鋭い殴打。そこに乗せられたマヒ効果が一時花嫁の動きを縛る。
「おのれぇぇぇ!!」
 振り払う腕が固まったことで、炎剣の攻撃をまともに受ける花嫁。千に至ろうかという数の炎の剣が花嫁に降り注ぎ……。

 そして戦いは終わった。


 地面に倒れ伏す、人の姿に戻った花嫁。もはや立ち上がる力すらない。
 その前にスリジエが歩み出る。
「……こうなっても、私はあなたの転生を望みます」
「なんだと……?」
「そう、転生して……今度こそ、あなたの道を堂々と進む。笑った人たちを笑い返すように」
「…………」
 スリジエの言葉を黙って聞いている花嫁。返事は無い。無いが。
「……お人好し共め」
 花嫁がぽつりと呟いた。
 直後、花嫁の輪郭が崩れていく。憑いていた狐も力を使い果たし、もはや影朧の身を維持することは叶わぬ。
 しかし、花嫁の身がいずれの地に向かうか。それは花嫁が決めるもの。

 ――悪意に晒されすぎて、善意を見出すことを諦めていたのかも知れぬ。

 花嫁はここに至って、古き自身の身の上を顧みる。猟兵たちの言葉を聞き、己の身の今を振り返る。
 数多の悪意の中で、もう思い出せないけれども、花嫁の一家を助けようとした善意があったのかもしれない。それは『この戦い』での猟兵のように、ずっと目の前にあったのに受け入れることが出来なかったのかもしれない。

 過去の身は果て、しかし影朧の身ももはや維持できない。再び蘇るための悪意は散ろうとしている。それは紛れも無く猟兵たちのこれまでの戦果だ。
 決して悪意は力で砕けるものではないけれども。戦いを通じて昇華された気持ちも少なからずあるだろう。

 花嫁の目の前にいるスリジエは桜の精。このまま彼女の言葉を完全に受け入れてしまえば、それは『癒し』となり、いずれ転生することも可能だろう。

 ――だが、それはしてやらぬ。

 それは単なる花嫁の意地であった。ここまで戦ってきた猟兵の前では『転生してあげない』という、本当に、笑ってしまうほど子供っぽい理由。
「さらばだ」
 ざぁっ、と風が舞う。花嫁の輪郭が崩れ、無数の桜の花びらとなって飛んでいく。

 それは決して転生を約束したモノではないけれども。少なくとも『桜の癒しが届く』ことを示した、このお話の終着点の姿。

「……また」
 桜舞い散るメイド喫茶の前で、スリジエは微笑むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月17日


挿絵イラスト