迷宮災厄戦㉕〜459.67
●アリスラビリンス:凍結世界
蒼氷がすべてを染めていた。
空気すらも凍てついた絶対零度の世界に、君臨するのは少年ひとり。
「……サー・ジャバウォック。滅ぼされたか」
書架の王は書のすべてを識る。侵略蔵書を通じて、最強の猟書家の滅びを識った。
六番目の猟兵たち。どうやら彼らは、『こちら』を選択したらしい。
「この世界を見捨てるつもりなのか、あるいは――どちらであろうと、構うまい」
少年の背中に生えた氷の翼が、パキパキと音を立てて広がる。
散り舞うはダイアモンドダスト。蒼氷の鏡面に赤い瞳が映り込む。
「刻限は来た。戦いを始めるとしよう」
次の瞬間、すべての氷がひび割れ――そして、砕け散った。
●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「あくまで個人的な意見を述べさせてもらうならば」
呪われた禁書を封じる使命を代々受け継いできた賢者は、うっそりと言った。
「ワガハイは、誰よりも此奴こそが見逃せぬ。……書架の王、ブックドミネーター。
オウガ・オリジンの能力増大は気になるところだが、今はさておくとしよう」
その言葉はすなわち、懸念を捨てねばこの敵には勝てないという意味なのだろう。
書架の王はまさしく、猟書家たちの王……君臨する力を持つ存在なのだから。
「時間凍結能力は言わずもがな、徒手空拳の戦力も決して油断ならぬ相手である。
蒼氷から復活されるオブリビオンも、間違いなく最悪の敵が出てくるのであろうな」
かつ、敵はあらゆる攻撃に先んじる。どんなユーベルコードであろうとも。
書を司る者の知識量はすなわち無限にどこまでも近いことを意味し、
敵対者にとって最悪のオブリビオンを召喚する力は苦闘を意味し、
なによりも時間凍結能力は、回避・防御不可能と絶対治癒を意味する。
そもそも相手は全力を出していない節がある。これほどの能力ですら。
「間隙があるとすれば、そこであろう。彼奴は我々を半ば試すつもりのようだ。
まるで竜のように傲慢な男だ。……ならば、驕慢の代価を支払わせてやるのみ」
あるいはその姿勢すらも、こちらを誘うための罠なのかもしれない。
打破するには同じ奇跡の力、ユーベルコードを用いるほかにないだろう。
「彼奴が逃げ延び雲隠れしたとなれば、A&Wにおける今後の戦いは熾烈なものとなろう。
ここで確実に彼奴を叩く意味は、間違いなく大きい。どうか、彼奴を倒してくれ」
ムルヘルベルは祈りめいて言った。祈る他ない己の立場に歯噛みしながら。
「……オヌシらの健闘と生還を祈る」
もはや送る言葉すらも見当たらぬ。聞き慣れた言葉は口惜しげだった。
そしてグリモアの光が猟兵たちを包み込む。死闘の舞台へ誘うために。
唐揚げ
これどうやって倒すんですかね? 宇治金時です。
そんなわけで猟書家ブックドミネーター戦、やっていきましょう。
極めて強力な敵ですが、みなさんならなんとか出来ます。多分。
本シナリオはできる限りのお客様をご案内できるように頑張ります。
が、全採用を確約するものではございませんので、その点ご承知おきください。
プレイングは『2020/08/17 13:59前後』まで受付予定です。
氷を溶かすぐらいの熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『猟書家『ブックドミネーター』』
|
POW : 「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
●業務連絡:リプレイ執筆上の注記
当方の運営する対強敵シナリオだと割と毎度のことですが、
本作では大成功でも割とダメージ表現があったりなかったりします。
ダメージを喰らいつつなんやかや頑張って反撃を叩き込む!
……みたいなノリがお好きな方にはおすすめかもしれません。
(被弾演出は出来るだけ避けてほしい、という方はその旨ご記入頂ければ、
それに沿って執筆いたします。判定結果で被弾やむ無しの場合は流します)
須藤・莉亜
「こりゃまたヤバそうな敵さんだねぇ…。」
でも、血の味は期待できそうだ。
先ずは敵さんの殺気を感じ取り動きを見切りながら、僕は二振りの大鎌で、悪魔の見えざる手は奇剣とLadyで一緒に攻撃。
一応、今の状態でも生命力は奪えるし、体力の足しにしとこう。
でも、すぐに回復されるんだよねぇ。
んなら、白啜を召喚し、敵さんの聴覚を僕の聴覚と同調させる事にしようか。
敵さんじゃなければ聞き取れないなら、僕の聴覚と一緒になった状態は回復できないんじゃないかな?
んでもって、敵さんの視覚と触覚をぐちゃぐちゃにしてあげよう。
それで隙が出来れば、全力で吸血する。…いや、白啜に血を抜かれるから今のうちに吸っときたいんだよ。
●止まりし時を引き裂いて
「――あれ?」
須藤・莉亜は、自分が斃れていることに気付いた。
感覚がない。そして視界に、細い少年の足が入っている。
……見上げれば、そこには冷然と己を見下ろす書架の王がいた。
「いまの一撃で死なないか。大したものだ、吸血鬼の子よ」
書架の王は、少年めいたその相貌にそぐわぬ冷たい声で呟く。
だが瞳はどこまでも酷薄。敵対者に対する敬意などかけらも持ち合わせない。
路傍の石でも見下すような眼差し。そこで莉亜は、ようやく疑問を抱いた。
(なんで僕、倒れてるんだ?)
そこで遅れたように、すさまじい激痛が全身を電撃めいて走った。
ブラックアウトしていた記憶が蘇り、脳内映像が走馬灯のように遡る。
対峙する自分。そして武器を構え戦いを挑み――そう、挑んだ。
万全の体勢で間合いを詰め、鎌を振り上げた。首を穫れるはずだった。
そして次の瞬間、テレビのチャンネルを切り替えるようにこの視点になっていた。
書架の王が身動ぎした瞬間すら見えなかった。――見えなかった?
(ああ。"時間を凍結する"って、そういうことなのか)
敵は時間を止め、その間に自分を攻撃した。そして、こうして倒れている。
それならば辻褄は合う。莉亜は淡々とその事実を受け入れた。悔しさはない。
あるのは納得と理解。そして――"ならば殺せる"という確信だった。
(時間凍結も無限じゃないわけだ。でなきゃ、僕はもう死んでる)
然り。倒れ伏しているとはいえ、まだ莉亜のいのちはつながっている。
あちらとしては処刑打撃のつもりだったのだろう。肋骨が持っていかれたか。
こふ、と気がついたように血を吐く。臓器がいくつかやられている。
……それでもまだ、生きている。書架の王は目を細めた。
「"私の時間凍結には限りがある。だから、倒せるはずだ"と思っているな」
少年は言った。
「事実その通りだ。猟兵よ。さすがは生命の祝福者、"殺す程度では殺せない"な」
ゆえに、と声がした。時計を弄んでいた手が刀のように絞られた。
「確実に首を刎ねよう。さらばだ、六番目の猟兵よ」
そして書架の王は秘められし呪文を唱え、時間を凍結させた。
すべてが氷めいて蒼く染まる。何者も踏み入ることの出来る絶対零度の世界。
ここでは書架の王がすべてを支配する。首を狙って手刀を振り上げ――。
「……!?」
"莉亜が自分を見返した"瞬間、書架の王は反射的に飛び退っていた。
時間が動き出す。ぶしゃり、と白く細い足首から鮮血が吹き出した。
「あーあ。アキレス腱を断つつもりだったんだけどなあ」
莉亜が立ち上がる。ぺっ、と黒ずんだ血を吐き捨てる。傷は癒えていた。
「でもおかげで傷が治ったや。次はその血をもらおうかな」
「……なるほど」
書架の王は違和感に気付いた。二重に声が聞こえているような奇妙な感覚。
「私の聴覚を奪った――いや、同調した、か? そして"凍結能力の庇護下に入った"」
「ご明察。それにこういうことだって出来るんだよ」
「!!」
ぐらりと、書架の王の視界が揺らいだ。全身を蛭が這うような違和感。
それが悪魔の手によるものだと気付いた時、書架の王は手刀を振るっていた。
手応えあり。こちらも鎌で肩を裂かれた。そして互いに回復する。
「……ああ、期待通り。やっぱり君の血は美味しいね」
ちろりと莉亜が唇を舐める。書架の王は冷然とした目つきで敵を睨んだ。
「……時間凍結なくして私はお前を殺せない。だが」
「僕も君を殺せない。回復されちゃうしね」
それでも、"この場に釘付けにする"ことは出来る。
書架の王は、終わらぬ闘争に半ば強制的に付き合わされる形だ。
少年は嘆息し構えた。莉亜もまた、前傾姿勢で武器を構える。
「たっぷりと味わわせてよ。君の血の味を」
「お前にも付き合ってもらうぞ、猟兵。終わらぬ地獄に」
かくして凍りついた世界のなかで、鬼と竜とがぶつかりあった。
けして決着のつかぬ、それゆえに負けることも勝つこともない戦い。
それは、猟兵を迎え撃たねばならぬ書架の王にとって大きな消耗を意味する。
止まりし時を引き裂いて、鬼の爪は竜の襟首を掴んでみせたのだ!
成功
🔵🔵🔴
ミツハ・カイナ
カイム(f08018)と
わぁ、マトモにやり合いたくねぇオーラぷんぷんだなぁ
やる気なカイムに全部任せて…と思ったけど負けてらんねぇよな
それじゃ、挨拶代わりに派手に行こうぜ!
先制攻撃で『雹双』から氷結の弾丸放ちこちらの手の内見せ
ったく、やりにくい相手呼び出すとかなぁ…!!
氷弾を乱れ打ちで防戦装いつつ
カイムと視線交わし、誰に物言ってやがる!そっちこそ遅れんじゃねぇぞ!
スイッチ直前に通常弾で弾幕張り
カイムのオブリビオン相手に氷の属性攻撃に呪詛のオマケまで付けた呪殺弾による二回攻撃
カイムと揃ってブックドミネーターに銃口向け
そういうの俺得意、今度勝負すっか?まずはここを仕留めてさ
声揃え――チェックメイト
カイム・クローバー
ミツハ(f19350)と共に。
よう、アンタがオリジンのUC盗人連中の王サマか。
良いね、最高だ。楽しもうぜ、ミツハ。
銃口を向けて、銃弾に有利なオブリビオンを召喚させる。俺に有利な相手なら銃弾+紫雷に強いオブリビオンってトコか?ミツハのトコのは銃弾+氷結に強いってのが定石だろう。
なら、背中合わせで互いの奴を撃ち合えば、俺達の銃弾は通りそうだぜ。
まさか此処に来て合わせられない、なんて言わねぇよな、ミツハ?
ミツハのオブリビオンを【二回攻撃】+紫雷の【属性攻撃】で撃ち抜いて、銃口を王サマに向ける。
(ミツハに向けて)チェスをしたことは?
なら、こういう時、なんて言えば良いか分かるだろ?
──チェックメイト。
●ツインバレット・アイスブレーカー
蒼く燃え上がる邪神の刃が幾何学的模様を描き、ミツハ・カイナを追う。
氷結の弾丸が半獣半人の体を穿つ……だが、青い炎がそれを燃やしてしまった。
「おいおいマジかよ……ッ!?」
「ミツハ!!」
カイム・クローバーは叫び、振り返ろうとした――が、それを敵が許さない。
腐汁滴る巨拳がカイムを襲う。カイムは舌打ちし、紫雷の銃弾で迎撃。
弾丸は拳を貫くが、常に再生と腐敗を続ける肉は稲妻を"喰って"しまう!
「……大丈夫だぜカイム。この程度で斃れるかよ」
邪神の刃によって肩口を貫かれたミツハは、剣を抜き放り捨てて笑った。
それが痩せ我慢であることは言うまでもない。書架の王は氷の上に座し、無言。
「弾丸をも灼ききる邪神……ね。こりゃたしかに、相性が悪ぃわ」
ミツハは痛みに顔を顰めつつ、目の前にそびえる半獣半人の邪神を睨んだ。
様々な諱で知られる邪神のアヴァター、強大な力の一部を結実させたもの。
上半身が持つ四つの腕にそれぞれ異なる邪神の武器が生まれた。
頭部のあるべき場所には青い炎が篝火めいて燃え上がる。それが不気味だ。
「……まったく、どうせ喚び出すなら美女のほうが嬉しいんだがね」
対してカイムと戦うのは、全身から腐汁と膿を垂れ流す邪悪不潔なる巨人。
裂けた口は陰気な笑みに歪み、黄ばんだ眼がにたにたとカイムを見下ろしている。
こちらもまた邪神に類する存在なのか、厄介なのはその再生能力にあった。
斬ろうが、撃とうが、稲妻で焼こうが、たちどころに回復してしまうのである。
「病院に行って消毒してきてもらったらどうだ? その図体じゃ無理だろうがな!」
BLAMBLAMBLAM!! カイムは牽制の魔弾を撃ち込む。敵はものともしない!
嫌悪感を催す裂けた嗤笑を浮かべたまま、暴走特急めいて突撃してくる!
本音を言えば、ミツハの援護に回りたいところ。だがそうもいかぬ。
チャンスの時まで敵を惹きつける――さもなくば、作戦は成立しないからだ。
何よりも腹立たしいのは、あそこで高みの見物を決める書架の王の存在……!
――互いに召喚されたオブリビオンを、最適なタイミングで撃つ。
好相性(こちらにとっては悪相性だが)の敵が召喚されるという、
敵のユーベルコード特性を逆手に取った作戦、それ自体は上出来だった。
問題は、書架の王の召喚するオブリビオンの基礎的な戦闘力である。
それは彼らがひとりで相対するには、あまりに荷が重い強敵だったのだ。
(こりゃあやべぇな。オリジンはこいつより上とか、嘘だろ?)
ミツハは物憂げに見物する書架の王を横目に、心のなかで舌打ちした。
だが、斃れるわけにはいかない。この程度は越えねばならぬ障害なのだから。
なによりも、己に背中を預けると豪語したあの男の信頼にも応えるために。
「負けてらんねぇんだよ、こっちは!!」
ミツハは吠えた。その全身を貫かんと、邪神の刃が全方位より襲いかかる!
ミツハは――逆に、飛び込んだ。弾丸による迎撃を諦めたのだ。
半獣半人の邪神は巨体を屈め、狙いすましたように突進を仕掛ける。
致命的だ。次の瞬間には、あの四臂が構えた刃が己をバラバラに裂くだろう。
(死ににきたわけじゃねえ。生き残って、勝つためにきたんだよ!!)
死中に活あり。ミツハは、斬撃の交錯する瞬間を半ば勘で予測した。
そこに、弾丸を挟み込む。たとえ邪神は氷漬けに出来なくとも!
「――ほう」
高みの見物を決めていた書架の王は、一瞬の反撃を見抜き、吐息を漏らした。
見よ。ミツハの身体をバラバラに切り裂くと見えた邪神の刃は、
交錯した瞬間に凍りついた弾丸により、噛み合った鋏めいてぎしりと止まった!
「カイム! 遅れんじゃねえぞ!!」
「――いいね、最高だ。そうこなくっちゃあな!」
その時カイムは、腐った巨人のすさまじい速度の連撃を躱し続けていた。
撒き散らされる膿腫と腐汁は、それ自体が致命的な毒を持った副産物である。
そして自己破壊すらも恐れぬ速度の拳撃は、喰らった相手を血の霧に変える。
絶対に受けてはならぬ致命的打撃の嵐。避けきったのは男の底意地か。
あるいはカイムもまた、背中を預けた男の信頼に応えようとしたか!
カイムは敵の拳撃による衝撃を活かし、後ろにスライディングした。
その頭上を、邪神の胸部を踏み台にムーンサルトしたミツハが横切る。
「「――チェックメイトだ!!」」
紫雷の弾丸は腐肉の巨人ではなく、青き火を燃やす邪神に。
氷結の弾丸は半獣の邪神ではなく、腐敗と再生の冒涜者に。
交錯した弾丸は、互いの難敵を貫き……そして、四散せしめた!
「……見くびりすぎていたか」
書架の王は静かに呟いた。目の前にかざした腕からは、血がしとどに溢れる。
ふたりが互いの敵を穿いた瞬間、己を狙って放たれた弾丸を防いたのだ。
書架の王は、あのオブリビオンどもで決着がつくと考えていた。
しかし敵はその予測を上回り、さらに油断なく攻撃を仕掛けてきたのである。
傷口から溢れる血がぱきぱきと凍りつき、塞がる。そして立ち上がった。
背中合わせに立つ伊達男たちは、合わせて四丁の銃を王へと向ける。
「さて、第二ラウンドといこうじゃねえか。盗人の王サマよ」
「派手に行こうぜ。あんただって、遊びたくなっただろ?」
「……いいだろう」
書架の王は殺意を放射する。それは、対等な敵と認めたものへの敬意か。
ミツハとカイムは満身創痍で不敵に笑い、そして同時にトリガを引いた!
BLAMBLAMBLAMBLAM!! 流れ弾で氷が砕け、きらきらと舞い散る。
ダイヤモンドダストに混ざるのは、攻撃を避けきれぬ書架の王の血だ!
「猟兵の底力、見せてやるよ!」
「さあ、ショータイムだぜ!!」
弾丸の雨を突き進みながら、書架の王は淡々と考えた。
(――私はここで死ぬな。一度と言わず、おそらく何度でも)
それは強者がゆえの、どこまでも合理的で、そしてある意味公平な計算結果。
敵対者はそれだけの力を持つ。揺るぎない答えは王ですら覆せない。
弾丸が氷を砕く。超然と構える王に、致命の一撃を届けるがために!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
淵守・竜二郎
じゃあ守ろう
生命を燃やす、世界を動かす、定めし時の秒針を、燃やして殴って刻ませよう!
やあこんにちは!
無限に知ってる停止の君を
無駄に知らない駆動の僕が殴りに来ました!
魔竜卿の剣は持ってないんですか? やったあそれじゃ皆で囲んでフクロでタコ殴りですね!
僕の拳は片手で足りる数だけど、きみを打撃する力はたくさん居ますから!
でも今は
ええ今は
こちらは淵守、拳竜ベニバナ
死んでもお相手願いましょう、絶対零度の蒼き竜
という感じでタイマン殴り合いを誘います
キミは知識で強くなるんですかすごいなあ
ボクは正義で強くなるんですよすごいよね
什麼生!正義ってなんですか?説破!いまキミと打ち合っているこの拳です!
はい論破ー!!
●生命はいずれ尽きるからこそ
「やあこんにちは!」
「…………」
「……あっ、もしかしてこういうノリダメでした!?」
「……好きにするといい。君の気が済んだならば殺す」
淵守・竜二郎は困ったように頭をかきながら、書架の王の一挙一動を睨む。
――隙がない。おそらく、自分では有効打を与えられるかどうか。
きっと死ぬかもしれない。だが、"それだけだ"。
「無限に知ってる停滞の君を、無駄に知らない躍動の僕が殴りに来ました」
腰を落とし、拳を握る。その手の中に三つの誓いを握り込む。
生命を燃やし、
世界を動かし、
定めし時の秒針を刻ませる。
背後に顔のない竜の幻影が生まれ、そして力あるヴィジョンとなった。
「こちらは淵守、拳竜ベニバナ。死んでもお相手願いますよ、絶対零度の"蒼き竜"」
「…………」
ぴくり、と書架の王――否、ブックドミネーターの眉が動いた。
「私を竜と呼ぶか。はたして君が竜の残滓だからか、あるいは」
右手を伸ばす。指先を青い氷が覆い、ぱきぱきと手甲めいて凍りついていく。
「いずれにしても――少し、痛い目を見てもらおう」
「わざわざ言うの性格悪いですねえ! まあそのくら」
言葉が途切れる。竜二郎はごうごうと風が唸っている音を聞いた。
横っ面を殴られた自分が地面と平行に吹っ飛んでいると気付いたのは、
追いついたブックドミネーターが、二撃目を鼻っ面に叩き込んだときだった。
――ばぎゃんっ!!
「ぶっへぇ!!」
盛大に鼻血を撒き散らし、砕け散った氷の中に倒れ込む竜二郎。
鼻骨が砕けたな、とぼんやり思いながら、虫のように無様に転がる。
直後ついさっきまで頭部が遭った場所が、ストンプで盛大に砕け散った。
「ベニバ――」
サッカーボールキックが腹部を叩いた。肋骨が砕けて臓器に刺さる。
口から面白いぐらいの量の血が吹き出した。別の氷に激突して、砕け散る。
「どうやら君の生命はここで停止するようだ。六番目の猟兵よ」
「……いやあ、そうでもないみたいですよ」
ブックドミネーターはわずかに瞠目した。竜二郎が立ち上がったからだ。
しかも、笑っている。今の腹部打撃で内臓が破裂しているはずなのに。
「キミは知識で強くなる。でも、ボクは正義で強くなるんですよ。すごいでしょう」
「ユーベルコードの効果というだけでは説明がつかないな。そのタフネスは」
「そりゃそうです! 僕死ぬ気で我慢してますんで!!」
拳を握り、構える。心臓ごと貫く手刀がゼロ距離で放たれた。
――拳で挟み込む。ブックドミネーターは目を見開いた。竜二郎は笑った。
「そもさん!! 正義ってなんですか!?」
力あるヴィジョンが拳打を放つ。ブックドミネーターは手刀を引き戻すと、
掌で拳をいなす。逸らされた拳圧が砕けた氷片を舞わせ、きらきらと輝いた。
「説破!! キミと撃ち合っているこの! 拳です!!」
「ならばもう、これで使いようがないな」
顔面を殴り飛ばすと見えた拳は寸前で凍りついた。まとわりつく蒼の氷。
ブックドミネーターの足が煌めいた。首を刎ねる処刑打撃。
竜二郎は自らの拳で殴り返した。あっけなく拳が砕けて血が噴き出す。
血は幻影の拳に付着する。しゅうしゅうと音を立てて、蒼の氷は融解した。
「気に食わないんですよ」
砕けた拳を握る。血がぶしゃりと溢れる。
「時間を止めて生命を蘇らせて、知識があるのに何も救わずただ壊す。
やり方がわかれば解決できることなんていくらでもあるじゃないですか。
なのにキミはそうしない。むしろそれを叩き潰す。はっきり言って嫌いです」
「言葉を交わす必要を感じな」
言葉が途切れる。ブックドミネーターはごうごうと風が唸っている音を聞いた。
真正面から殴られた自分が地面と平行に吹っ飛んでいると気付いたのは、
背中が氷の塊にぶつかり、がらがらと砕けた氷が降り掛かってきたときだった。
「僕らは世界を守るために死にました。死にながら世界を壊すキミは認めない。
忘れてしまった同胞と、忘れられぬ人々のために、僕はキミを絶対に倒します」
ブックドミネーターは混乱した。何もかもが理解できなかった。
理不尽の塊がそこにいる。砕けた拳を握って、致命傷を帯びて笑っている。
「……お前は、なんだ」
「キミがこの世で一番苦手なモノですよ」
声は、草原を吹き抜ける風のように爽快に。
氷はいつか融けるものだ。燃え盛る生命の力は、春風を思わせた。
成功
🔵🔵🔴
御狐・稲見之守
[SPD]
ゾクリ、この感じは――あの、『女』。
霊符の[結界術]を幾重にも張り召喚されるであろう奴の先制攻撃に備える。幻術、狐火、呪詛、精気啜りか、あの『女』なら、恐らく――。
……これはこれは、こんな処で出会うとは。『傾国の白仙狐』、我が姉上よ。そこの小僧の式神にでも成り果てたか。しかし、ふふっこの『女』の使い方なぞ三千大千世界の誰が知るものか。
[UC呪力解放][化術]で真姿を取りあの『女』に相対す。[呪詛耐性]を以てその代償を抑え込み、持てる術の全てを以てあの『女』を殺す。ハハハ、まったく厄介な『女』を呼んでくれたもんであるなァ!!
この『女』を八裂きにした暁にはお前の番だ小僧。礼をしてやる。
●悪夢のごとき現実
あれは、スペースシップワールドの戦争でのことだったか。
悪夢を見せる忌々しい装置で垣間見せられた、幻影の姉との殺し合い。
あれは今でも夢に見るほどに愉快で、爽快で、痛快で、最悪だった。
だが此度は違う――"そのもの"が、目の前に現れたのである。
「!!」
御狐・稲見之守は虫の知らせを感じた瞬間、過剰なまでの結界を重ねた。
稲見之守が守勢に回ることは滅多にない。全力全開と成ればなおさらだ。
だが叩き込まれた攻撃――単純な狐火による爆裂は、その結界を灼ききった。
「ぐ
……!!」
稲見之守のこめかみを脂汗が伝う。反動に逆らわず後退した。
焼け焦げた霊符が灰となって雪華のように散る。もうもうと立ち込める蒸気。
その中から現れたのは、忘れるはずのないあの女本人だった。
『――噫。微睡みを妨げられたと思えば、これはまあ異なことよ』
白い髪の化け物は凍りついた世界を見渡し、あくび混じりに微笑む。
『知らぬ世界、知らぬ場所、知らぬ空気。――だが』
蠱惑的で怖気が立つほど邪悪な双眸が、愉悦混じりに稲見之守を睨む。
『眼の前には見知った小娘と来た。死んでみるものよなあ』
きゅうと弧を描いた目元はあまりにも邪悪で、声には喜悦が宿る。
いつかの悪夢で見たものは、己が生み出したものでないと悟るには十分。
オブリビオンとは"そういうもの"だ。ましてや、この女狐ときたのならば。
「……これはこれは、こんなところで出会うとは。まったく愉快なものよな」
稲見之守はヘドロめいて濁った瞳で睨み返す。口元には笑み。
憎悪、殺意、喜悦、郷愁、敬愛、後悔、憤怒、悲嘆、侮蔑。
あらゆる感情をキャンパスにぶちまけたかのような歪んだ笑みだ。
「わが姉上よ。そこな小僧の式神にでも成り果てたか。まったく無様よな!」
『――あふ』
稲見之守の滴るような罵倒を、白狐は眠たげに欠伸して聞き流した。
『眠たいことを囀る前に、さっさと首を取りに来てみよ。それとも怖いかや、ん?』
優しげな姉の笑み。それを消し飛ばすように、狐火がほとばしった。
「血を分けたきょうだいでありながら、憎みあい怨みあい殺し合う。醜いな」
玉座めいて設えた氷の上で、書架の王は心底どうでもよさそうに呟いた。
猟兵は敵だ。それもけして油断ならぬ敵。見下していたのを認めざるを得まい。
ゆえにリスクは極力取り除く。手を出さぬまま、最悪の敵で殺すのみ。
喚び出した宿敵はまさしく最悪であった。あれはもう死んだも同然である。
「『ハハハ! ハハハハハ! ハ・ハ・ハ・ハ・ハ!!』」
黒と白が陰陽図めいて混ざり合う。響くのは鏡合わせの狂笑。
「まったく、厄介な"女"を喚んでくれたもんであるなァ!!」
『姉に対して減らず口! 姿を偽り誤魔化し強がり無様無様無様無様!!』
百の狐火が生まれた。ひとつひとつが人を殺すには十分すぎる威力だ。
炎は矢に変じ、蒼い氷を融かしながら全方位より襲いかかる。
『かつてのように額づいてみせよ! どうか御慈悲をと哭いて咽び泣け!!
お前はどうあがこうと妾には勝てぬわ! 多少雑魚を喰らった程度で神気取りか!?』
「――姉上よ」
襲来した狐火は嘘のように霧散した。稲見之守は冷たい瞳。
「"多少雑魚を喰らった程度で"と言うたな?」
『なんだその目は。お前がどれだけ雑魚を喰らおうが――』
「所詮は死人か。ああ、まったく無様よ」
稲見之守は耳まで裂けんばかりに嘲笑った。瞳が邪悪に煌めく。
「ならば味わわせてくれよう。我が術、我が法、我が魂のすべてを!!」
『――ぐ!?』
白狐は血を吐いた。稲見之守を睨む。見えざる呪詛が臓腑を灼いたのだ。
いまや見上げるのは白狐のほうで、稲見之守のほうが見下す側だ。
そして血の涙が流れそうなほどに見開かれた瞳は、書架の王を睨みつけた。
「その次はお前だ、小僧。礼をしてやる
……!!」
「――出来るならば、やってみるといい」
「ほざけッ!!」
『それはこちらの台詞よォ!!』
狐火が獣の形を得てほとばしる! 稲見之守はそれを引き裂いた!
白と黒の喰らいあいは続く。氷の王はただ醒めた目でそれを見ていた。
喰らうことでしか愛を表現できぬ獣への、憐憫を籠めて。
成功
🔵🔵🔴
白斑・物九郎
●POW
ワイルドハント、白斑物九郎
俺めのコトは砂嵐の王と呼べ
書架の王を狩りに来た
●対先制
・距離を挟んで相対、素手で来ると言うならば敵の飛翔/突貫を誘う
・【野生の勘】を集中、敵先制を【怪力】を込め操る魔鍵で受け流すよう取り回す(武器受け+なぎ払い)
●反撃
・敵戦速を先の体感から踏まえ(情報収集)、敵攻撃を真っ向【武器受け】
・最接近次第【ヒートドライブ(属性攻撃)】
・同時【野生の勘】を【限界突破】して傾注
・質量あるものとして遍在するという時間という概念を悟らん
・凍結された時間の氷結晶を――灼く!
・同時、氷に停止を強いられていた時間に「熱」を与え加速を強いる
・ドミネーターを覆う時間の概念を【蹂躙】せん
●459.6『6』
「……六番目の猟兵」
あちこちに火傷を負った書架の王は、苦痛を押し殺しながら呟いた。
「"この私"を滅ぼすほどの力を持つか。この調子ではオリジンも――」
独り言は途切れた。少年の姿をした王は、目の前に現れた青年を睨む。
金色の瞳を爛々と輝かせ、その青年――白斑・物九郎は、笑みを見せた。
「ずいぶんな姿じゃねえスか。王ってのは見下すモンでしょうによ」
物九郎はこうやるのだと手本を見せるように、腕組して見下す。
「――俺めはワイルドハントの猟団長、白斑・物九郎。書架の王を狩りに来た」
「人の国へやってきて、あれこれ好き勝手を言うものだ、六番目の猟兵よ」
書架の王は冷然と見返した。そこに怒りや侮蔑はない。
「俺めのコトは砂嵐の王と呼べ」
「相応しい名だ。砂塵の蜃気楼として消える君には」
相対距離10メートル。書架の王の全身を、蒼氷の結晶が鎧めいて覆った。
対して物九郎の装備は巨大な魔鍵がひとつ。それを剣のように肩に担ぐ。
書架の王は冷静に彼我の戦力差を計った。……御せぬ敵ではない。
基礎的なスペックはこちらが上。それは徒手空拳であろうと同じことだ。
だがあの自信満々ぶり、おそらくは一点突破で活路を見出すタイプと見た。
反撃のチャンスを与えれば、そこからこじ開けられるか。油断ならぬ敵だ。
(一撃で殺せれば苦労はしないが――)
殺意が凝縮し、両者の間の空気がぐにゃりと歪んだ。空気が、張り詰める。
(……ああ。こりゃ俺めも死ぬかもしれねえっすわ)
対して物九郎は、漠然とした死の予感をおおらかに受け入れていた。
あれは"出来る"手合いだ。もはや慢心や油断の類も存在しない。
すべては初撃で決まる。それを凌げればよし、凌げなければ終わりだ。
(わかりやすくていいスわ。さあ、いつでも来まさ)
一秒が一時間にも感じられるような極限の緊張。こめかみを汗が伝う。
そして汗が顎に伝わり――ぽたりと垂れて、凍りついた床にぴちょんと跳ねた!
(――来た
!!!!)
予備動作などなし。視覚情報が脳に到達するよりも、書架の王は疾い。
まさしく時間を停めたようだ。だが、その能力は"まだ"使っていまい。
見てから動作するにはあまりに疾い。そもそも"最初からそのつもりもない"。
頭部狙いで繰り出された手刀――魔鍵が受け止める。鋼じみた轟音!!
「――!」
「……ッッッ!!」
物九郎の身体は大きく後退する。両足を踏みしめるが止まらない。
下駄の歯と氷とが軋み摩擦熱で煙を起こす。書架の王は跳んでいた。
だが、防いだ。防いだ! 野生の勘に従いかざした魔鍵が手刀を弾いていた!
(戦速は反射不可能。なら先読みするだけっスわ!!!)
物九郎は察知を放棄した。来るべき攻撃をすべて勘と経験で予測する。
そして魔鍵や掌を『置く』。一手でも読み違えれば彼は死ぬだろう。
敵もそれを読んでいる。読まれていることを読んだ上で裏をかく。
高速のドッグファイトじみた格闘戦が始まった。だが物九郎は、追従している。
――否、先んじている! なぜだ、敵が纏うは時すらも凍りつかせる結晶!
その答えは物九郎の左腕にある。空気を灼く熱、それが氷を融解せしめたか!
だがただの熱であれは融けまい。ならばなぜ? 理由は物九郎の大悟にこそ。
「"時間とは質量を持つ物質であり、それを消費することで時は前に進んでいる"」
「!!」
物九郎が呟いたのは、いつからか誰かが唱えるようになった世界の根源法則。
骸の海にたゆたう世界に寝そべるルールであり、つまりは時間の正体である。
「よーやく理解できたっスわ。てめぇの支配してるモノがなんなのか!!」
「時間そのものを加速させているというのか
……!?」
なんという強引な理屈だ。時間加速能力と言うならまだわかる。
だがこの小僧は、概念そのものを『熱する』ことで加速を強いている!
氷を融かしているのではない、『凍りついた時間』そのものを融かしているのだ!
「――これが、六番目の猟兵の力か」
音速の打撃交錯の果て、書架の王は力なく呟いた。その声音にはある種の敬服。
書を支配し、時間を支配する己が識らぬものを、この小僧はなしてみせた。
ならば、負けだ。いっそ清清しいほどに心は晴れ渡っていた。
「お前さん、強かったっスわ」
物九郎の左腕が霞む。
「――けど此処にあるべき王は、俺めだけで十分でさ!!!」
凍れる時が再動する。融点、華氏459.66度。
絶対零度のコンマゼロひとつ前、不適で不遜で不条理な熱はそれをもたらした。
炎の拳が書架の王の頭部を捉える。音もなく、断末魔すらもなく。
少年の身体は消し飛んで、余波が遥か彼方までを融かし尽くし駆け抜けた。
円く融けた壁の向こうは、嫌味なくらいに晴れ渡る空だった。
大成功
🔵🔵🔵
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆行動
辿り着きましたよ、ブックドミネーター
訳知り顔が気に入りません、一発殴らせなさい!
全身を覆って居るのに自身は格闘戦を挑めると言うことは
任意に選択しているのでしょう
ならば積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄まし念動力を以て私も空を飛び
重要な臓器はその位置をずらした上で即死だけは避けましょう
人の身に擬態するのは慣れたもの、敢えて攻撃を誘導してでも、です
第一波を凌いだならば反撃開始です
すれ違いざまに【黄衣の王命】による神風を放ち王命を告げます
此度は『汝、留まるなかれ』
私は脳内麻薬を過剰分泌させて心身共に準備万端
時と生命は流れるもの、貴方の好きにはさせません
※他猟兵との連携、アドリブ歓迎
シャルロッテ・ヴェイロン
(敵のUC発動後の姿を見て)
あれが、「書架の王」の実力の一端…!
まだ攻撃前だというのに、こちらが押されてる!?でもあの時、昨日の自分を超えたからには…!
目標特定、データ解析――間に合わない!?
(【(各種)耐性・オーラ防御】で耐えようとするが、ダメージ甚大!)
(もうだめかと思ったその時、懐の髑髏を通じて無数の「アリス」の声が)
――あぁ、そうでしたね。この世界も、他の世界も、救わなければいけませんでしたね。
ならば【覚悟】と【勇気】を込めて、【破魔】の【ATTACK COMMAND】を【限界突破】で放ちましょうか!
※アドリブ・連携・ダメージ表現歓迎
カタリナ・エスペランサ
サー・ジャバウォック以上の難敵か!
望むところだ、見事討ち果たしてみせようじゃないか!
アタシの手札は色々あるけど、戦術の基盤にあるのはスピードだ
それを封じるとすれば打ってくる手は拘束狙いが考えられるかな
まず《先制攻撃+咄嗟の一撃》の要領で《ものを隠す+属性攻撃+範囲攻撃》、幻惑の雷光を《衝撃波》に乗せて姿を晦まし《時間稼ぎ》
後は《第六感+戦闘知識》の《見切り》と《空中戦》技術で凌ぎつつ《情報収集+学習力》で反撃の糸口を掴む
ダメージは《気合い・継戦能力》で耐えて【失楽の呪姫】発動
魔神の魂の励起で自己再生と強化、終焉の概念で万象を侵蝕する劫火を纏い攻防を兼ねさせ、あらゆる守護を貫く黒雷を叩き込もう
●最強のさらに上
「……なるほどね。たしかに"スピードで比肩し、拘束が出来る相手"か」
目の前に召喚された"それ"を睨みつけ、カタリナ・エスペランサは呻いた。
書架の王が召喚した、カタリナを封殺するための最適なオブリビオン。
それは――ほかならぬ、書架の王そのものだった。
「私はすでに滅ぼされたらしい。つまり召喚が成立する」
『そして私の知る限り、私自身以上に君と好相性なものは居ないだろう』
本体と分身――という表現にはやや語弊があるが――はともに氷結晶を纏い、
本体は黒玻璃・ミコとシャルロッテ・ヴェイロンへ、分身はカタリナへ挑んだ。
「し、しかも同時に動くんですか!? くっ!」
「その訳知り顔、必ず殴り飛ばしてやります……!」
シャルロッテはオーラ防御で、ミコは念動力で空へ逃れようとする。
だが、全知に等しい書の力で強化された王の速度と力は、あまりに疾く重い。
本体の攻撃は逃れようとしたミコの脇腹を裂き、シャルロッテを吹き飛ばした!
一方分身とカタリナ……こちらもまた、敵に軍配が上がったようだ。
カタリナが姿を暗ませようとするよりも一瞬疾く、迅雷じみた速度の手刀が到達。
ミコと同じく飛翔しようとしていたカタリナは、きりもみ落下し地面を転がる!
「ぐ……っ!!」
ごろごろと地面を転がり、カタリナはかろうじて立ち上がった。
直後、彼女が一瞬前まで頭を置いていた場所にずしん!! と足が突き刺さる。
冷然とした分身の瞳がカタリナを見下ろし、そして抉るような連撃。
空中戦に移ることが出来ない……! 完全にアドバンテージを潰された!
「データ解析が間に合わない……!」
「どうしました書架の王、私はまだ生きていますよ! さあ来なさい!!」
「――よく吠える魔女だ。不定形とてダメージは無効化出来まいに」
(擬態はお見通しですか、これだから全知を誇るような敵は!)
本体はあえてミコの挑発に乗り、恐るべき速度の乱打を全身に叩き込んだ。
それは単純な格闘戦としても速度・破壊力ともに無視できぬレベルだが、
なによりも危険なのは凍結氷結晶による影響――つまり、局所的な時間凍結。
もしも氷で覆われてしまえば、獲物は二度と動けぬ氷像に変わる。
単なる氷結攻撃よりも遥かに危険な打撃。それがすさまじい速度で来るのだ。
ミコがブラックタールでなければ、そして類稀な戦闘センスがなければ。
彼女は頭部か心臓を破壊ないし凍結させられ、すでに死んでいる。
「しぶといな。それでこそ生命の祝福者か」
「――ッッ!!」
手刀がミコの腹部を穿いた。臓器はあらかじめ"避難"を終えている。
書架の王は腕を引き抜き、反撃を警戒してミコを蹴り飛ばした。
シャルロッテが背後から攻撃しようとしたその時、冷然とした瞳が見返す。
(読まれ――!!)
言葉を吐き出す間もなく、サイドキック・肘・裏拳の三連続打撃が衝突。
オーラ防御の障壁をあっけなく氷結破砕し、打撃威力がシャルロッテに浸透。
少女は地面と平行に吹き飛ばされ、氷の塊に激突してもんどり打った。
「……やはり、私本体と同等の戦闘力を持つには足りないか」
書架の王は分身とカタリナの攻防を一瞥し、端的に分析した。
こちらも分身がやや有利。カタリナは防戦一方で傷ばかりが増えていく。
しかし、致命傷には届かない。カタリナの必死の見切りが効いた形か。
(……攻撃速度は、おおよそ把握できた。あとは、一瞬の隙さえあれば)
ミコは串刺しにされた傷をかりそめに塞ぎながら、苦労して立ち上がる。
一瞬。心身を整え脳内麻薬の過剰分泌によって全神経を研ぎ澄ませてなお、
そのコンマ数秒を掴むのがはてしなく遠い。それがなおさら癪に障る。
だが、勝てる。勝たねばならぬ。時と生命は流れ行くものゆえに。
「あなたの好きにはさせませんよ、ブックドミネーター……!」
「ならば君から死ぬべきだな、極黒の魔女よ」
凄烈な殺気がミコを圧する。ミコは全神経を練り上げて構えを取った。
(――もう、ダメなんだろうか)
氷の塊に激突したシャルロッテは、朦朧とする意識のなかで思った。
昨日の自分を越え、ついに辿り着いた氷結世界。対峙までの道のりがすでに過酷。
そしてようやく到達したら、こんなあっさりと決着がつくというのか。
だが、敵は強い。シャルロッテは、立ち上がろうとすることも出来ず……。
「…………いいえ」
シャルロッテは、這うように四肢を突き立て、ぐぐぐ、と立ち上がった。
ミコに襲いかかろうとしていた書架の王は、少女のほうを見返す。
「この世界も、他の世界も、救わなければいけないんです。わたしは」
「……猟兵としての義務感か」
「違います――わたしは。いいえ、わたし"たち"は!!」
シャルロッテは敵を睨みつけた。懐の髑髏から怨念が湧き出す。
それは、足掻くことすら出来ずに散ったアリスたちの慚愧の声。
この世界はあまりにも理不尽で、無慈悲で、酷薄で、そして不気味だ。
けれども己は、この世界で力を得た。アリスの力を。
抵抗すら出来ずに散っていった、同じ境遇の"仲間"たちのためにも。
「あなた"ごとき"の前で、挫けるわけにはいかないんです
……!!」
書架の王は目を細める。シャルロッテの挑発が効いたか? 否。
「……魂が肉体を凌駕するがごとき意志の力。やはり厄介だな、六番目の猟兵」
「そうです、教えてあげますよ! "AliceCV"の底力!!」
攻撃用プログラムの実行? いいや、そんな時間も暇もありはしない。
ならばせめて、この身ひとつで思い知らせてやろうではないか。
王を僭称し君臨する蒼き竜に、足掻き続けたアリスの力を!
「その隙! もらいましたよッ!!」
同時にミコも襲いかかった。書架の王は極めて冷徹に行動を吟味する。
まずはシャルロッテを殺す。地を蹴り低空飛行、向かってくる少女を迎撃した。
鎖骨から腰までを叩き割る貫手。必殺の一撃は、しかし躱されていた!?
「何?」
「喰らえ
……!!」
破壊と滅殺の意思を籠めた電脳プログラムが、掌打によって叩き込まれる!
爆裂した電脳エネルギーが、書架の王を包む氷結晶の鎧を破砕させた!
(なぜ避けられた? 私の攻撃を、あの少女が避けられる理由はないはず)
否。考えろ。相手は六番目の猟兵。世界と生命に祝福されしモノども。
意思の力で一瞬ごとに成長することすら、奴らにとっては不可能ではない!
時間凍結をせねば。もはや徒手空拳でじゃれあっている暇はない。
書架の王は時間を凍らせようとした。そこに、呪われた神風が訪れた。
「――汝、留まるなかれ」
(制約の強制だと……!)
狙い済ませた一瞬の王命。それは噴き出す鮮血という形で結実した。
書架の王はたたらを踏む。"止まるな"という命令はあまりにシンプルで簡単だ。
だからこそ効いた。すれ違い飛び越えていくミコの会心の笑み!
「我が分身よ――!」
ならば招来したる我が半身に殺させる。力不足だが囮にはなろう。
一瞬前であれば、召喚された分身はその命令に従ったはずだった。
だがその時、カタリナはぎらりと目を輝かせ、反撃の一撃を叩き込んでいた!
「神は嫌いだ。だが、王と驕ってふんぞり返る輩はもっと嫌いだね!!」
全身の亀裂じみた裂傷を劫火によって焼灼し、黒き雷をつま先に集束させる。
そして、分身体の頭部に痛烈なソバット! 研ぎ澄ませた一撃である!
かりそめの強化で得たほとんどの力を籠めた一撃は、氷結晶すらも穿いた。
分身体は一撃で滅殺される。本体ですら、その一撃は防ぎきれなかったろう。
「アタシたちはこれから世界を救うのでね! キミは所詮、前座さ!」
「言ったでしょう? "訳知り顔を一発殴る"と。まあ殴るより痛いでしょうが」
「……オウガにも、あなたにも。もう、誰も殺させたりしませんよ」
カタリナ、ミコ、そしてシャルロッテの強い眼差しが王を射竦める。
もはや書架の王は、君臨し睥睨し見下すモノではない。
跪き、傷つき、敵対者を睨みあげる一体のオブリビオンに過ぎぬ……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
鞍馬・景正
ワン嬢(f00710)と。
懸念はありますが、対峙した以上は斬るのみ。
御意、ワン嬢。
◆
己にとって手強い敵を喚ぶ力。
さだめし私の剣を封じるような相手が姿を見せるでしょうか。
さればワン嬢の相手は私が、私の敵はワン嬢にお任せします。
もし一騎で私とワン嬢を纏めて屠る心算なら、片方が召喚敵を食い止め、片方が猟書家を攻めさせて頂く。
此方の戦法は【一騎怒濤】にて愛馬に【騎乗】し、疾走で翻弄しながら【怪力】込めた馬上剣を。
召喚敵を足止めする際は守勢に徹し、ワン嬢を狙わせぬよう牽制を主眼に。
猟書家と対峙する際は馬体ごと体当たりさせる勢いで全力の一撃を。
必要とあれば捨て身で拘束し、ワン嬢の攻めの布石となりましょう。
ワン・シャウレン
鞍馬(f02972)と
実質の黒幕よな
仕留められても尚裏はありそうじゃが
一番嫌な結果を持って帰らせんとの
頼むぞ鞍馬
召喚で対策するなら鞍馬に斬
わしに打に強い手合いでも呼び出すかと思うが対策はシンプル
相手取る敵を交換し速攻を狙う
もし合わせて一体呼ぶならその分対策度は下がろう
その時は片方がいなし片方が本体を攻める
格闘、狙えれば打・関節技問わず部位破壊も
召喚存在はある程度無力化すれば十分
本命は猟書家への格闘戦
滾るの
その知識の徒手空拳、どんな技が拝めようか
そして如何な知識を持とうとあ奴の、友の拳が通じぬ道理はない
それを示してくれる
また知る限り鞍馬の剣も振らば止めれはせぬ
斬り込む時をこの拳で抉じ開けよう
●"過去"を超えて
「――……これは」
鞍馬・景正は、召喚された"敵"を前にして一瞬呆然としてしまった。
同時にワン・シャウレンもまた、柳眉を顰めて敵を睨む。
赤黒い呪いのオーラを纏い、白・黒・灰の三呪剣を振るうもの。
過去を想起させ、過去を封じ、過去を操るもの。
「…………黒騎士、アンヘル」
「その通り」
書架の王は傷口――先遣の猟兵たちがもたらしたものだ――を抑え、言った。
「君たちふたりを同時に封殺しうる存在――それを骸の海より喚び出した。
私はこの傷を癒やすとしよう。もっとも、それまでに君たちは死ぬかもしれないが」
そして背後の王をかばうように、呪われた騎士はずちゃりと一歩を踏み出す。
ふたりは身構え……しかしワンは、景正の横顔をちらりと伺った。
「どうした、鞍馬よ。いついかなる時でも堂々としたおぬしらしくない顔を」
「……いえ」
景正の脳裏によぎるのは、黒騎士アンヘルとの立ち会いの記憶。
……苦い敗北の記憶。それは、線の細い美青年の顔を苦渋に歪めていた。
だがあれは、とうに踏み越えた過去だ。己はあれからずっと鍛え上げてきた。
なによりもいまは、頼れる仲間がそばにいる。……ならば!
「懸念は捨てました。過去の残骸を、今一度斬るといたしましょう」
「応。頼むぞ鞍馬よ、これは全力で行かねばならなそうじゃからな……!」
ワンも景正も、"どちらかが書架の王を攻める"というプランは放棄した。
仮にどちらかが突破するとしても、目の前の騎士を打破せねば叶わぬ!
黒騎士の目元がにこりと笑みに歪む。直後、三呪剣が同時に襲いかかった!
――黒騎士アンヘル。
スペースシップワールドの戦争において、猟兵たちが最初に相対した強敵。
過去に起因する強大なユーベルコードは、多くの猟兵を苦しめた。
その手で黒騎士を撃破したワンですら、あの戦いの記憶は色濃く残っている。
いわんや、全身に"刻印"を刻まれた景正は、対手にとって格好の獲物。
三色の呪剣を弾いたにもかかわらず、景正の身体にはいくつもの傷が浮かんだ。
"記憶されし傷痕"。他ならぬ黒騎士自身がつけた背中の裂傷。
再び血が噴き出さんとする。強烈な痛みと屈辱が景正の全身を覆った。
……しかし! 景正はためらうことなく、愛馬の腹を蹴り疾駆した!
『何?』
黒騎士の双眸が驚愕に見開かれる。傷を帯びていながら、なんたる速度か!
「貴様が"あれ"そのものなのか、その姿を模倣したモノなのかはどうでもいい」
馬上剣を振り上げる。呪剣を弾いたところから返す刀、横薙ぎ一閃!
黒騎士は両手に戻した呪剣をクロスさせ、この痛烈な一撃を受け止めた。
重い。黒騎士はざりざりと地面を削りながら後退する。……圧されている!?
「私は過去の私とは違う。傷を開いた程度で停められると思うな」
羅刹の本能を剥き出しにし、景正は稲妻じみた勢いで斬撃を仕掛けた。
黒騎士には少なからぬ当惑があった。それは戦いを見物する王も同じだ。
(私の知識では、あれが最適の敵であるはず。なぜだ……?)
「わからいでか、書架の王よ!」
訝しむような眼差しに気付いたワンは、快哉めいて明るく叫んだ。
その間にも彼女は、気圧された黒騎士に超高速の連続打撃を立て続けに放つ。
くるくると刃の嵐めいて回転する呪剣が、ワンを串刺しにしようとする。
それを景正の剣が割り込み、あるいはワン自身がいなし、躱し、退ける。
ともに極限の緊張と連携を重ねた、薄氷を踏むがごとき綱渡りであった。
しかしふたりは生きている。そして強敵を圧倒している。過去よりもなお!
「わしらは一秒ごとに鼓動を刻み、そのたびに学び、経験し、成長しておる。
たとえ強大なる敵であろうと、過去に踏み越えた者などどれほどのものか!!」
黒騎士の恐るべき斬撃! ワンの首と胴を同時に切り裂く二連横薙ぎ斬撃だ!
「その通り……! 停滞し傲然と見下す貴様には、わかるまい」
その斬撃を景正が防ぐ。剣をねじるようにして呪剣を弾き、守りをこじ開ける。
「ワン嬢、一歩先へ。ここは私が押し留めましょう!」
「相わかった、鞍馬よ! ――やはりおぬしは、一騎当千の剣豪よ!」
たたらを踏んだ黒騎士の脇をすり抜け、ワンと景正はともに笑いあった。
景正はすぐに怜悧なる剣鬼の表情を取り戻し、黒騎士を睨みつける。
全身の傷は開かれ、血がしとどに溢れる。……だから? それがどうした。
斬られることを恐れて剣は振れぬ。負けることを恐れて戦いは出来ぬ!
仲間が己の双肩に生命を賭けたというならば! 我が身我が愛馬、止まるはずなし!
「消えよ、亡霊。我らの道を、滅びた過去が遮るな――!」
剛剣一閃! 脇腹を裂く呪剣をものともせぬ、もののふの一太刀!
俊馬の速度を載せた斬撃は黒騎士をばっさりと断ち切り、そして踏みつける。
先に王へ到達したのはワンだ。流れるような連ね流星の打撃! 打撃! 打撃!!
「ちぃ……!」
「いかな知識を持とうと、我が友の拳が通じぬ道理はなし!」
「道理を無理でねじ伏せておいてよく言う。だが……!」
忌々しいが、繰り出されるワンの套路はいずれも完璧であった。
傷の治癒に集中していた書架の王は、これを圧倒することが出来ぬ。
いなし、躱し、それでも防ぎきれず、腹部狙いの縦拳が連続で入った!
「ぐ、かは……ッ!?」
「鞍馬! こじ開けたぞ!!」
「承知――!」
王の眼球に、疾風怒濤の勢いで来たる怒りの剣鬼の姿が見えた。
「受けよ、武士の本領。我が全力の一撃、仕る」
夜闇を祓う暁光めいた斬撃は、ついに王の胸部をばっさりと裂いた。
そして王は知るのだ。己の全知に限りなく近い智慧でも識らぬものを。
猟兵――過去を乗り越え、未来を築くもの。世界に祝福されたる仇敵の強さを!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
浅葱・シアラ
◆フェルト、ケンタと
私は世界を救う騎士
平和な世界へと手を伸ばす、あなたはそれを阻めない!
先制攻撃への対応を
ブックドミネーターはその無限にも近い知識で無限に強化し、こちらが追い付けない飛翔能力で攻撃をしてくることでしょう
素手で攻撃してくるとのことなので、【オーラ防御】で魔法のオーラを【高速詠唱】で何度も展開
極力回避しながらこれで致命傷を防御
我が姫の想いを受けとりました!
「蝶夜華誉」!
姫、貴女は美しい
貴女と、貴女の愛する世界と王子は私が守る!
真の姿になり、人間サイズのヴァルキュリアになる!
私の姫を絶対守る!この想いは無限の知識すら上回る!
想いで強化されたこの剣で、相手をとらえたら一撃で仕留めます!
フェルト・フィルファーデン
◆シア様、ケン様と
やっと平和になったというのに……
それを再び侵すというのなら……許さない!
まずは先制攻撃に対処。
時を止められれば回避は不可能。ならばドレスアーマーの障壁を広域展開!
全員に障壁を付与し、更に騎士人形総出で守りを固めるわ。
【庇うxオーラ防御x盾受けx集団戦術】
さあ、ここから反撃よ。
UCを発動し全魔力を譲渡。対象はシア様とケン様よ。
命は削らない。死なない。無茶は、ちょっとだけ。その上で世界を救う。ええ、何も諦めない!
全力全開、限界ギリギリまで全てを託す!【リミッター解除x限界突破】
回復する間も無く一撃で葬って。……勝つと信じているわ。
あとはお願い、わたしの騎士よ。
そして、わたしの――
ケンタッキー・マクドナルド
◆フェルト、シアラと
……ざけてンのか
折角倒したモン蘇らせやがって
(目の前には「サー・ジャバウォック」、面倒な輩だ)
俺が相手だ糞爺ィ
テメェには腹立ってた所だ
ガリバーで相手する
三回の斬撃はあいつら巻き込まない様にしつつ
砲撃全開放で一撃目
片腕のブラスターで二撃目を相殺
後は捨て身で突っ込む……フリして機体から脱出
悪ィなガリバー、後で直す(捨て身の一撃×庇う)
あァ糞、俺の事なンざほっときゃいいのにあの姫サマ
いいぜお前の代わりだやってやらァ!!
【クリエイター】で十騎士人形を再現
八騎を正面から
老メイドと老執事を背後からぶつけてタマ取る
――ヒトの大事なモンよくもぶっ壊してくれやがったな
これでオトシマエだ
●どんな書にも記されぬ物語
「――フェルトォ!!」
「え?」
ケンタッキー・マクドナルドの叫びが、フェルト・フィルファーデンを救った。
何かがまずい。そう考えて反射的に騎士人形を集合させたことが幸いした。
一瞬にして人形のうち半数以上が吹き飛ぶ。いや、"飛んだ"。もうすでに!
(何? いまのはどういうこと? 何のタイムラグもなく――いえ、まさか)
然り。それをなしたのは、背後に回り込んでいた書架の王である。
奴は時間を凍結させ、そのわずかな間に人形を一蹴していたのだ。
防御に防御を重ねてなお、たった一撃で半数を吹き飛ばす。なんたる戦闘力!
ケンタッキーがその予兆に気付けたのは、彼が遠くに居たからだ。
もしも自由ならばまっさきに助けに行っていただろう――だがそうは行かぬ。
『私の前で余所見ですか。なかなか呑気な方のようだ』
「っくそが!! 邪魔すンじゃねェぞ!!」
召喚されしサー・ジャバウォックの猛攻が、ガリバーを襲う。
巨大化した斬竜剣ヴォーパル・ソードの斬撃は、あまりにも危険だ。
もしもケンタッキーが背中を見せれば、容赦なく真っ二つにされるだろう。
フェルトたちを巻き込まぬためにも、彼は釘付けにならざるを得ない……!
「やはり、一挙両得を欲張るのはよくないな」
書架の王は冷然と呟いた。フェルトはその言葉を訝しみ、そして理解する。
先の時間凍結攻撃は、あちらからすれば"ついで"でしかなかったのだ。
本命は、自分を守ろうとした浅葱・シアラの抹殺。……そして!
「ぐ、うう……!」
「……いまので生きているとは。私が仕留めそこねたか? いや」
激烈な打撃を喰らい氷の壁に叩きつけられたシアラは、血を吐いた。
書架の王は不満げに眉根を寄せる。確実に殺すつもりで放った一撃だった。
それを生き延びたのは、こちらの攻撃を読みきったシアラの技量があらばこそか。
「認めよう、六番目の猟兵。お前たちは」
「シア様から、離れなさいっっっ!!」
「――紛れもなく"この私"を滅ぼすに足る、勇士なのだと」
フェルトは怒りの形相で、残る騎士人形たちを突撃させた。
書架の王がそれを見返す。そして姿が消えた……いや違う、またしても時間凍結!
「二度も三度も、その手は喰わないわ。アナタとて無敵ではないのよ!」
「…………」
だがフェルトもまた、これまでの戦いの経験を生かして敵の攻撃を読んでいた!
騎士人形たちによる吶喊はフェイク。予兆を見た瞬間防御に切り替えていたのだ。
フェルト本体を殺そうと放たれた打撃は、壁のように展開された盾に弾かれる!
「……素手ではこれが限界か。まあいい」
「姫を! 殺させたりはしませんっ!!」
「まだ私と踊りたいようだ。付き合おうか」
戦闘復帰したシアラの攻撃を軽々と受け流す書架の王。視線は騎士たちへ。
フェルトとシアラの左右同時コンビネーションをも、ひとりで対応してみせる。
ケンタッキーは焦れていた。これが戦略的に正しいとわかっていても、だ。
「糞爺ィ、さっさと死にやがれ! テメェは邪魔で仕方ねェぞ!!」
『王の力で復活したこの我が身、そう簡単に捨てるわけがありますまい』
老紳士の姿をした怪物は、はじめて怪物らしいおぞましい笑みを浮かべた。
『私が邪魔だというのであれば、あなたを始末してあげましょう――!!』
ヴォーパル・ソードによる致死的斬撃が襲いかかる! 速度・威力ともに凄絶!
だが、ケンタッキーはにやりと笑った。彼はこれを待っていたのだ……!
「――悪ィなガリバー、あとで直す」
ケンタッキーは砲台と片腕を犠牲にすさまじい速度の二連斬撃を止めた。
斬撃に対抗するためのフルファイアに耐えきれず、あちこちで小爆発が起こる。
「行って来い、ガリバー!!」
そしてベイルアウトしながら、機体をサー・ジャバウォックへ突撃させる!
敵からケンタッキーの姿は見えていない。あちらは捨て身の特攻と捉えるだろう。
そして真っ二つになったガリバーが爆発を起こす。そう、盛大な爆発を。
あらかじめオーバーヒートさせていたエンジン部が引火したのだ!
「何?」
書架の王はこの爆発に気を取られた。そこに間隙がある!
「シア様、ケン様。わたしはもう、何も諦めないわ」
フェルトは閉じていた目を、カッと見開いた。
「生命は削らない。死なない。――無茶はちょっとだけ。そして」
電子の糸を解き放ち、シアラとケンタッキーへと接続する!
「――そしてわたしたちは、生きて世界を救うのよ! 何度でも!!」
フェルトは自らに残された魔力と想いを、シアラとケンタッキーに譲渡。
わずか1分半の強化。これでもう自分は指一本動かせない。
「だからあなたたちも、どうか……わたしの騎士、そして、わたしの……」
言葉は最後まで続かず、フェルトは意識を手放した。
ふわりと自由落下するフェルト。そこに書架の王の手刀が――!
「――させません」
「!!」
まるで電撃じみた速度で割って入ったのは、シアラであった。
しかしさきほどまでの彼女と違うのは、その体のサイズだ。
人間大の大きさとなったシアラの姿は、まさしく戦乙女のそれ!
「あなたは無限の知識で強くなり続けるのでしょう。けれど私は勝ちます。
姫から託されたこの思い。そしてふたりを守ろうという私の思いで!!」
金色の炎が剣のごとくに燃え上がる。書架の王は時間凍結で逃れようとした。
「逃げられるワケ、ねェだろうが」
「……生きていたのか。サー・ジャバウォックを始末しただと
……!?」
然り。書架の王の背後からその動きを抑えたのは、ケンタッキーの人形たち。
八騎はサー・ジャバウォックをまさしく"八つ裂き"にせしめていた。
あの一瞬で。これが、あの妖精の少女がもたらした強化の力だというのか。
いや違う。ただのユーベルコードの効果どうこうの話ではない。これは……!
「ヒトの大事なモン、よくもぶっ壊してくれたじゃねェか」
ケンタッキーはぎらりと書架の王を睨みつけた。
「そしてよくも! ヒトの大事な仲間に! 無茶させやがった!!」
だからこれは、落とし前だ。金色の炎の一撃が、書架の王を捉えた!
「滅びなさい、書架の王! 私たちの思いのもとに――!!」
書架の王は時間を凍結させようとした……けれども時間は止まらなかった。
凍りつく時間をすぐに融かしてしまうほどの、熱い思いがそこにあったから。
敵を倒し、世界を救う。大切な人を守るという、妖精たちの熱き想いが!
そうして書架の王もまた、その全身を炎に飲まれて消え去った――!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
シャルロット・クリスティア
リア(f04685)さんと
術式の即時発動とは、また厄介な……下手な攻撃は回復されるのがオチですね。
地道に削ることは難しい。一撃で致命傷を入れなければ……。
リアさんが布石をする間、こちらで牽制の弾幕を撃ちます。
多少の傷は即座に回復されるでしょう。ただこちらに注意を向ければいい。
さすがに完全無視とまでは行かないでしょうよ。
ついでに『どこを重点的に庇っているか』くらいは見させてもらいます。
そして彼女の手が整い、相手の動きが鈍ったその瞬間。
相手が重点的に庇っていた位置……即ちそれこそが奴の急所。
そこ目掛けて本命の一発を叩き込む!
放っておくと危険そうなんでね。ここで削れるだけ削らせて頂きます!
リア・ファル
シャルちゃん(f00330)と
数多の世界の明日の為に、書架の王、キミに挑む
時間凍結……か、その魔術の粋に対抗する
「ヌァザ、キミならば! リミット解除!」
ヌァザの次元干渉の制限を解放し、時空間に干渉、
敵の詠唱(プロトコル)を解析、電脳魔術ノイズを入れて妨害
(ハッキング、情報収集、時間稼ぎ、学習力、リミッター解除)
時空間を止める術は、キミの専売特許でもないさ
「対干渉となるように、ボクの干渉波をぶつける! ステイシス!」
更にUC【凪の潮騒】で、狙うは、敵の時間凍結の上書き、打ち消し
干渉の瞬間を狙って、『グラヴィティアンカー』で(捕縛)の追撃
これも本命じゃない
シャルちゃん!!
「秒針よ、明日を刻め!」
●止まりし針を打ち砕け
時間凍結。それはまさしく、いかなる防御も回避も許されない最強の術式。
どんな傷もたちどころに回復し、そもそも攻撃前に先制を叩き込まれる。
「ぐ……ッ!!」
魔剣ヌァザの干渉術式をして、書架の王の何気ない一撃はあまりに重すぎた。
前衛を買って出たリア・ファルは大きく吹き飛ばされ、氷が砕け散る!
「疾い――いえ、厳密にはそれも間違い、ということですか」
シャルロット・クリスティアはリアが戦闘復帰する時間を稼ぐために牽制を行う。
計算され尽くした弾幕をばらまき、書架の王に防御を強いるのだ。
たしかに時間凍結は無敵の術式だ。しかしそれは『限られた無敵』である。
もしも敵が(やや語弊のある表現だが)無限に時を凍結させられるのならば、
そもそも自分たちはここに立てていない。とっくに死んでいるはずだ。
今のリアに対する攻撃から考えても、時間を凍結出来るのはごくわずかな間だけ。
シャルロットははじめから、牽制と小手調べのことだけを考えていた。
それが、彼女の生命を救ったというべきだろう。
「……かはっ!?」
シャルロットは、『撃ち込んだはずの銃弾が肩を貫いていること』に気づいた。
……跳弾! あれほどの数の弾幕を把握し、『弾丸に弾丸を当てられた』のか!
書架の王は無傷――ではない。体のあちこちに銃弾を受けている。
しかしそれも、瞬きひとつの間に何事もなかったように回復されてしまった。
「私の能力を測ろうとしているな。さしずめあちらの猟兵は布石役か」
さらに、ふたりの役割すらも見抜かれている。シャルロットは苦渋の表情。
「……ならば、私から殺しますか? もちろん一矢報いさせてもらいますが」
「安い挑発だな。だが実際、その反応からも私の人格を測ろうとしている。
向こう見ずで勇猛な戦士は厄介だが、お前のような手合いも油断はならない」
「…………」
シャルロットは銃を構えたまま動かない。……動けないのだ。
書架の王の冷然とした双眸が、じっとシャルロットを見つめている。
けして油断していない、対等な敵を見定める目……だがどうしようもなく酷薄。
ヒトに、あんな冷たい瞳が出来るはずがない。彼奴もまたオブリビオンなのだ。
そして書架の王の攻撃は、シャルロットではなくリアを選んだ。
再起不能と思われていたリアが、魔剣ヌァザで不意打ちを仕掛けたのである!
「こんな不意打ちが、通じるわけもないか……!」
背後からの斬りかかりに対し、書架の王は振り返らず素手で受け止めた。
バチバチと電光が舞う。頭が巡り、氷のような瞳がリアを見た。
「その剣。電脳魔術の一種か。次元に干渉し術式を起動する……なるほど」
「そうとも! 時空間を止める術は、キミの専売特許でもないさ!」
「それは厄介だ。ならば、お前から殺すとしよう」
「――!?」
リアが片掌で触れようとした瞬間、わずかに疾く王の拳が腹部に突き刺さっていた!
もはや悲鳴も苦悶すらもあげられず、リアはくの字に吹き飛ばされる。
シャルロットはたまらず弾幕を展開。王はその雨の中をすり抜けるように舞う。
吹き飛ばされたリアを追う――そう見えた王は、再びシャルロットを睨んだ。
(そうです。狙いがこちらに来ればいい。二重の囮作戦で布石を待つ!)
シャルロットの弾丸が一瞬であべこべの方角へ吹き飛ばされた、時間凍結。
目の前に"瞬間移動"した書架の王の手が、鉤爪めいてこわばり頭部を狙う。
シャルロットは退かない。むしろそれをチャンスとして、ゼロ距離射撃を叩き込む!
「……む」
腹部を貫く弾丸を受けた書架の王は、その反撃が意外だったらしい。
呻くような、訝しむような声をあげてたたらを踏む。次の瞬間、傷は回復。
「私はあなたを斃すためにここに来たのです。放っておくわけにはいかなそうですから」
シャルロットはさらにトリガを引く。後退はしない!
「私たちを"停め"ようとするならば、一撃で殺すしかありませんよ!」
「――そのとおりさ。その術式、今度こそ打ち消してみせる!!」
「!!」
処刑打撃を放とうとした書架の王は、リアの声に振り返った。
そして互いに相手めがけ掌をかざす。見えざる共鳴波がぶつかりあった!
戦場を取り囲む氷はぴしぴしとひび割れて砕ける。拮抗! 否、リアの狙いは!
「――ステイシス!」
「私の術式を"上書き"しただと
……!?」
逆流した停滞術式は、書架の王の片腕から肩までをひび割れめいて切り裂いた。
傷口から血が吹き出す。距離を取ろうとする両足首に絡みつくアンカー!
「――シャルちゃん!!」
「ええ。逃すつもりはありませんよ、書架の王!」
けして諦めず怯むこともないもの、それは放たれた銃弾だ。
狙撃手は心臓部に狙いを定め、どこまでも冷静にトリガーを引いた。
止まりし針を撃ち砕き、勝利という終幕へと時間を進めるために!
「これが、六番目の猟兵の力か……!」
弾丸はわずかに急所をそれた。否、王が逸らしたのだ。
だが、ダメージは大きい。その証拠に、停滞の王は口から血を吐く。
弾丸は突き抜け、凍れる世界の天蓋を貫いて破砕させた!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
穂結・神楽耶
クロト様/f00472と
・方針
回復にUC封じを当てて隙を作る
穂結:囮、止め
クロト:UC封じ
いいえ。
この世界も、あなたの標的たる世界も。
どちらも零さず守る為に参りました。
あなたが強大な王であろうと、こちらが膝を折る理由にはなりません。
素っ首頂戴いたします。
【朱殷再燃】──
まず凍結世界に破滅の焔をぶちまけます。
徒手空拳なら焔の中を突っ切ってくる必要がありますね?
であれば火傷は免れ得ない。
けれどわたくしを倒さねば焔は消えません。
正々堂々斬り合いましょう?
──なんて、ウソですよ。
全てクロト様に繋げるための囮です。
束縛成り、負傷を残した相手ひとり。斬るのに二秒は要りません。
斬首の時です――燃え尽きろ!
クロト・ラトキエ
神楽耶嬢(f15297)と
高みより他を見下す眼
これは成る程、自負もする、と
…えぇ。あの王座から、墜としましょう
徒手を心得ぬ傭兵なんて居ます?
足運び、体幹。視線、手足胴の振りに、
速度、氷の使用も加味し、見切り
こちとら指一本すら致命傷
己が狙いなら躱し、跳び避け
そうで無くば焔に紛れ…
矢を放ち
ナイフ投擲
鋼糸を張り、或いは巻き、斬り
間断なく攻め立て
…彼方は回復し続ける
此方は疲弊し続ける…
動く度に解けた包帯をも絡め
僅かでも隙を作り、刃を深く
…それすら?
どんな傷とて無意味――
なんて
思う筈無かろう?
刃?
否
端から狙いはUC
――偽式
傷付いた未来、もう拒否などさせない
-459.67を451へ
さあ、
派手に燃えて下さい
●炎と氷の歌
端的に言えば、穂結・神楽耶は破滅の焔をぶちまけることが出来なかった。
彼女が"そうしよう"とした瞬間、胸部に拳が叩き込まれていたからだ。
「か――」
クロト・ラトキエはすぐに動いていた。目的は書架の王のインタラプトだ。
書架の王は仰向けに斃れる神楽耶に、冷徹に処刑打撃を振り下ろそうとする。
冷たい瞳がクロトを見返した。そして、視界から一瞬にして消える。
「見事だ」
声は背後から。クロトは傭兵の直感でその回り込みを読んでいた。
読むしかなかった、と言うほかない。なにせ相手は時を凍らせているのだ。
先の王の言葉は、その先読みへの称賛。クロトは地面を無様に転がる。
そして立ち上がる。脊髄を砕く蹴りは、鋼糸を張ることで阻止していた。
「……神楽耶嬢、ご無事ですか? 今の一撃で終わるほどやわではないですよね」
「……もちろん、です」
返ってきた声は明らかな強がり。だが、それでいい。クロトは眼鏡の位置を直す。
書架の王はこきこきと片手を鳴らしながら、ふたりを見据えた。
「おそらく、お前たちに滅ぼされたこれまでの私も思ったことだろうが。
……六番目の猟兵、易い敵ではないな。侮っていたと言わざるを得ない」
「ならば、あなたの本気を出してみたらいかがですか?」
神楽耶は挑発的に言い、今度こそぽつぽつと焔の種を振りまいた。
刀を構え一歩すり足で前へ。しかし、この焔も挑発もどれほどのものか。
今の切り結び――と呼べるかも怪しいが――で、それはわかった。わかってしまった。
生半可な小細工やブラフでは、この王の僭称者を拐かすことなど出来ない。
(手筈は想定通りに。わたくしが囮を務めます)
ちらりとアイコンタクトを送られれば、クロトはこくりと頷いた。
(おまかせしましょう。あの高みにある眼を地へと引きずり下ろすため)
書架の王は不動。神楽耶はさらに一歩、すり足で間合いを詰める。
一センチ近づくたびに、肌を裂こうかというほど張り詰めた空気がさらに凍る。
脂汗がこめかみから顎を伝う――神楽耶は焔を纏い、一陣の風となった!
「はぁああああっ!!」
焔が燃え上がる。書架の王はやはり不動――否、切っ先が触れる直前で動いた!
「焔に紛れて私を討つというわけか。なるほど考えられた作戦だ」
片腕は切っ先を逸らし、もう片方の指先がクロトの放った矢をつまむ。
二本の指は矢をたやすくねじ切り、刃に沿った掌は再び神楽耶の胸を討った。
さらに腹部へ。神楽耶は血を吐く。仮初の霊体なれど臓器を傷つければ当然だ。
「……この、程度でッ!!」
「ほう」
神楽耶は踏みとどまった! 書架の王は容赦なく三度目の打撃を叩き込む!
そして次いで投擲されたナイフを煩わしげに振り払い、上下に体を両断する蹴りを……!
「いつまでも、そちらのペースに付き合うつもりはありませんよ」
……放たれるはずの回し蹴りは、足首に絡みついた布で戒められていた。
書架の王はぴくりと眉根を寄せる。行動を束縛されたことに対してではない。
今の一撃、そもそも『時間を凍らせた上で放つつもり』だった。
だが、猟兵は動いている。つまり……ユーベルコードを封じられたか!
冷然とした瞳が刃めいて鋭くクロトを睨む。ぱきぱきと布が凍っていく!
「傷ついた未来を、もう拒否などさせない」
布を結びつけたクロトの片腕も凍りついていく。だが男は離さない。
たとえ身をずたずたに切り裂かれたとて、彼は一度捕らえた獲物を逃さない。
「……六番目の猟兵。これほどのものか!」
「いまさら理解しましたか。遅いですよ、書架の王」
書架の王は舌打ちした。半身を凍らされてなお諦めぬとは、この男……!
「受けなさい、破滅の焔。竜すらも断ち切った我が剣、凍れる時も断ち切りましょう!」
そして怨熱をまとった刃が、身動きできぬ書架の王をずしんと切り裂いた!
頸を取るつもりの打ち下ろし……しかし斬首は敵わず。拳で刃を逸らされたか。
「ち……!」
「ここが、あなたの墓標です。燃えつきろ……!」
体の半ばまで食い込んだ剣を、もはや神楽耶は決して離さない。
華氏マイナス459.67度を、華氏451度へと。
凍れる時の狭間をこじ開けて、猟兵たちの必滅の牙がついに王を捕らえた!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
朱酉・逢真
心情)おゥおうスゲェな。こんだけ強ぇってのに、まァだ遊びがあンのかい。ま・ずっとマジメしてっと疲れっからな。童心を忘れンのはいいことだぜ。そォいうハナシじゃねえって?
行動)俺はどこにでもいる。お前さんの外にも、お前さんの中にも。ああそうさ。王さまよ。俺はお前さんの頭の中にいるのさ。外にいる俺を壊したのかい。さぞかし汚染されたこったろう。凍った時間も病み腐り解けてくぜ。だがそれだと遅ぇンで、お前さんの思考の影に入り込んだ俺の番さ。眷族たちをバラまく。こいつらも物質じゃねぇ。いわば思考のノイズさ。頭いいやつほどこれがキクのさ。同時に知識を食い荒らさせよう。鳥獣虫魚健忘痴呆幻覚幻聴譫妄。病を運ぶさ。
●Memento mori
思えば、あまりにもあっけない幕切れではあった。
その男――朱酉・逢真は、ハンドポケットでへらへらと笑っている。
見た瞬間に何か強烈な違和感があった……それを重く見るべきだったのだろう。
だがほかの猟兵によって重傷を負わされた書架の王に、選択肢はなかった。
だから書架の王は、薄気味悪く笑う逢真を、その顔面を一撃で砕いた。
拳で破壊したあと、手刀で正中線を両断。残った体を氷漬けにして破砕。
いかなる再生能力でも復帰不可能なダメージ。完殺したはず――だった。
その呆気なさに違和感を覚えたときには、もう遅かった。
『よぉ、王さま。ひひ。えげつねぇなあ? そんなに憔悴してたのかい』
視界の中の"逢真"が言う。足元を見る。砕けた残骸はもはや消え去っていた。
「お前は、なんだ」
書架の王は言った。視界の中の男は、陰気に、薄気味悪く言う。
『マジメしてっとよくねぇな。最初に聞いときゃいいことも聞きそびれっちまう。
そンで突っ走って、手遅れだって気付いたときにゃあもう終いなわけだ。ひひ』
「お前は、なんだ!」
『――お前さんを還(ころ)すもんだよ。"坊や"』
とたん、書架の王は自我を喪失するような強烈な苦痛を覚えた。
跪くように両膝を突く。脳を内側から引き裂かれるような痛みが奔る。
「……何を、している……!」
『お前さん、"外の俺"を壊したろう? たいした力だ、さぁすが王さまだよ。
――けどな、王さまよ。あいにく俺ぁ、"外"にだって"中"にだっているのさ』
思考の影。自我あるものならば誰もが持つイドという名の井戸の底。
心地よき闇に身を滑らせた神は、くつくつと煮えたぎるように笑った。
『お前さんが滅びるまでのあいだ、うんとたっぷり思考を邪魔してやらぁ。
すべての書の内容なンざ、子供が覚えておくにゃあ重すぎるだろうからな』
「……私の、知識を、喰っている、だと
……!?」
然り。思考の中に放たれた鳥・獣・虫・魚、ありとあらゆる病毒。
それらは"書架の王"という、揺るがぬ最強の個を冒し、そして侵す。
書架の王は苦悶した。それは己のアイデンティティを虫食いにされるようなもの。
書を統べる王は、それゆえに書を喰われることが我慢ならぬ。
『ひひひ! "不変の存在"なんてのはよぉ、どこにでもあってどこにもねえのさ』
耳障りな神の嗤笑が、長い間少年を苦しめ続けた。紙魚のように、長い間。
成功
🔵🔵🔴
ゴロウザエモン・サンモト
【封印の司書隊】
目を瞑って集中し【早業】の【アート】【パフォーマンス】で敵に有効な悪魔を描き召喚。
敵先制攻撃は皆様が防いでくれると信じるのでございます。
それでも攻撃が来てしまった場合、【激痛耐性】【継戦能力】で無理矢理にでも召喚を完遂。
召喚悪魔は敵軍に有効な強力な個体なのでしょうが空手形を使い【覇気】を込めた一喝で敵軍を倒すように命令。
敵召喚オブリビオンも召喚存在。どこまで効くかは賭けでございますが覇気を込め『自分の召喚主に敵対すること』という決まりを敷いてみるのでございます。
書架の王、なにするものぞ!
我は全て魔を統べる魔王!山ン本五郎左衛門である!
という訳で後は皆様よろしくお願い致します!!
アン・カルド
書架の王…僕の魔導書の事も知っているんだろうか。
ま、今気にするべきところじゃあないね、僕たち【封印の司書隊】はそれを倒しに来てるんだから。
僕に有効な…恐らくは肉体強化UCを持った高速戦型オブリビオンだね。
鈍重で召喚だよりな僕だ、召喚すら許さないつもりだろう。
【銀の羽根】を使って防御を固めて、【高速詠唱】で最速での召喚を狙う。
これ以上の策は僕にはない、僕には。
皆が召喚の時間を作ると約束してくれた、僕はそれを信じる。
いくよ、【ライブラの愉快話・脳髄】。
マックス君は受け止めたUCを乱反射する、時間制限付きだけど。
僕の対策で生まれたやつには意味がないだろうが…他はどうかな?
ロラン・ヒュッテンブレナー
【封印の司書隊】
【SPD】
書架の王、今使える全部じゃないと、どうにもできないの
みんな、相手の召喚が来るよ!
【オーラ防御】の【結界術】でみんなを守るの
目晦ましにも対策なの
防ぎながら召喚されたオブリビオンとブックドミネーターの【情報収集】
こっちの召喚ができたら【衝撃波】で隙を作ってUC発動なの
さっきの情報から、それぞれが対抗しやすい相手を伝えるね
あとは声掛け連携して一体ずつ倒すの
みんな、反撃なの
【ダッシュ】【残像】の高速移動で動き回って【全力魔法】【鎧砕き】【衝撃波】の音撃で攻撃なの
防御の高い相手は、ぼくが撃つよ
オブリビオンを倒したら、ブックドミネーターを狙うの
一撃でいいの
勝利に繋がる情報を!
二條・心春
【封印の司書隊】で参加
書架の王……力を合わせて全力で倒しましょう……!
召喚されたオブリビオンは私にとって最悪なもの……ですが、私はひとりではありません。まずは時間稼ぎですね。召喚された敵軍にスタングレネードを投げて「目潰し」を狙います。
後はアンさんとゴロウザエモンさんの召喚まで、「第六感」で察知した攻撃を、属性を付与した槍の「衝撃波」で相殺したり、「武器受け」して皆さんを守りながらしのぎます。
二人が召喚できたら、私も【召喚:大鷲】を使い素早さと鋭い風の刃を活かして敵軍を攻撃です。敵が4体なら、逆にお互い得意な敵もいるはずです。皆さんと連携して殲滅し、そのままブックドミネーターを攻撃します!
●魔を統べるもの
「レディ・ハンプティよ。君に敬意を払い、"それ以外"を喚ぶとしよう」
「……あれは……!」
二條・心春は、書架の王によって召喚された巨大なシルエットを見た。
そして愕然とした。召喚された敵は四体――そこまでは想定通りである。
だが現れたのは、並のオブリビオンではない。否、それどころか……!
「"大魔王"!! 他世界のオブリビオン・フォーミュラも復活させられるのか!」
アン・カルドは声をあげた。然り、現れたるはあの"大魔王"の各形態!
武勇に秀でし獣の第二形態『レオ・レガリス』。
呪詛と魔力の強者、第三形態『セレブラム・オルクス』。
忌まわしき魔女の支配者、第四形態『ラクリマ・セクスアリス』。
そして絶対の裁定を下す第五形態、『モルトゥス・ドミヌス
』……!!
「無論、完全な復活とはいかない。だがお前たちの相手をさせるには十分だ」
書架の王の言葉通り、召喚された各形態の大魔王は強大な魔力を放つ。
レオ・レガリスの強壮なパワーと肉体は、アンにとって致命的だろう。
膨大な魔力持つセレブラム・オルクスはロラン・ヒュッテンブレナーの天敵も同然。
魔女たちの運命操作能力を強引に奪い取ったラクリマ・セクスアリスの力は、
心春がどんな魔王を召喚したとて、必ずや破滅の終焉をもたらすだろう。
そしてモルトゥス・ドミヌス。この中でもっとも真の大魔王に近きもの。
死と絶望の終焉を裁定した強大なる支配者は、ゴロウザエモン・サンモトを睨む!
「いかな魔術を使い、魔法を唱え、魔物を従えたとしても、勝ち目はない。
本来の大魔王には及ばずとも、蒼氷が復活させるものはただの幻影ではないぞ」
「――……で、あったとしても」
目を閉じたまま、ゴロウザエモンは書架の王に言い返した。
「私はもはや、"囚われの魔王"という苦しみから解放されたもの。
ならばここで、王を僭称し王を模倣する者に負けていらいでか!!」
「……そ、そうなの! ぼくらは、勝つためにここへ来たんだ!」
凛としたゴロウザエモンの言葉に、気圧されかけていたロランが同調した。
「本当に、勝つことが出来るんでしょうか……? これほどまでの強大な相手に」
「"やるしかない"さ。さあ、封印の司書隊の力を見せてやろうじゃないか」
不安げな心春の背中を叩き、アンはぎこちなく笑ってみせた。
陰気な魔女の笑みは、勇者のように華々しく陽気なものとは言いがたい。
しかし心春もロランも、勝つためにここへ来た仲間同士なのだ。
不思議と力が湧いてくる。たとえ強大な過去の魔王が相手だとしても。
――魔王。そうとも、魔王ならばこちらにもいるではないか。
模倣された化身などよりも、ずっと気高く頼りになる我らの魔王が!
「書架の王、何するものぞ!」
ゴロウザエモンは叫んだ! そして、眼を見開く!
「我はすべて魔を統べる魔王! 山ン本五郎左衛門である!!」
「……その大言壮語を、後悔しながら死ぬがいい」
書架の王は冷たく言った。そして、化身どもが雪崩を打って襲いかかる……!
まず先鋒めいて吶喊してきたのは、巨大なるもの――レオ・レガリス。
知性体を喰らい尽くすという欲求に何もかもを委ねた獣の王の突撃は、
さながら暴走したトレーラーのごとし……否、破壊力はそれをも超えるだろう。
「正面から来るって、わかってるなら
……!!」
ロランは全身で生成した魔力をありったけ注ぎ込み、巨大な障壁を形成。
飢えたる狼のごときチャージを真正面から受け止める――拮抗、そして炸裂!
「ううううう……っ!! 絶対に、みんなを守る、の
……!!」
障壁はぴしぴしとひび割れ、逆流した魔力がロランの両手にダメージを与えた。
身体は見えない魔力に内側から焼かれ、肌が裂けて血が噴き出す。
レオ・レガリスは獰猛な雄叫びをあげ、障壁そのものに食らいつく!
さらにモルトゥス・ドミヌスの持つ、ユーベルコードすらも奪う両手と、
セレブラム・オルクスが生成した巨大な呪殺弾丸が、同時に叩き込まれ……否!
「ロランさんにばっかり、無理はさせませんっ!!」
KBAM!! 心春が投擲したスタングレネードが、大魔王の化身どもの眼前で炸裂!
強烈な閃光と轟音を撒き散らし、それぞれの精神集中をわずかにかき乱した!
かつてアルダワ世界を蹂躙せんとした強大な大魔王本体であれば、
この程度の妨害は苦にはしなかっただろう。やはり、王の言葉通り不完全なのだ。
しかし、あちらもそれでは終わらない。ラクリマ・セクスアリス!
身に取り込んだ魔女の生命を代償に力を得た黒き邪悪の化身は、
その片腕を破城槌の如き振り上げ、下ろす! 再び下ろす! もう一度叩き下ろす!
「も、もうだめなの! 障壁が保たないの……!」
ロランは血を吐くような声音で言った。同時に、オーラ障壁が破砕!
飢えたレオ・レガリスが、集中するアンとゴロウザエモンに襲いかかる!
「マックスくん!!」
銀の羽根の内側で召喚された巨大脳髄が、その攻撃を受け止めようとする。
だが、間に合わないか!? 心春は考えるより先に跳んでいた!
「絶対に、時間を作ってみせるって! 約束したんですっ!!!」
おお、なんたる無謀! 心春は、槍を手にレオ・レガリスの前に立つ!
暴走特急じみた一撃を真正面から受け止めようというのだ! 当然耐えきれぬ!
しかし吹き飛んだ心春を、ごつごつとした、しかし優しい掌が受け止めた。
「きゃあああ――え?」
氷の塊に激突すると覚悟していた心春は、ぎゅっと閉じていた眼を開く。
彼女を受け止めたのは、大魔王の化身どもよりもなお巨大な妖怪であった。
その身は筋骨逞しく、敵を睨みつける双眸はまるで怒れる神の如し!
「一夜にして百語られる怪異が一話! 我が求めに応え顕現せよ――ダイダラボッチ!!」
国作りの巨人の名を与えられた悪魔=妖怪は、オオオン! と力強く吠える。
そしてレオ・レガリスを、岩のごとく巨大な拳で吹き飛ばした!
「何? 不完全とはいえ、大魔王の形態を一撃でだと
……!?」
これには、高みの見物を決め込んでいた書架の王も怪訝な顔をした。
ゴロウザエモンは胸を張る。そう、魔王のごとく勇ましく!
「言ったはずだ。我は魔を統べる魔王! 偽りの王よ、身の程を知れ!!」
「戯言を……!」
書架の王は残る三体の大魔王化身に、ゴロウザエモンの抹殺を命じた。
しかし、そうはさせぬ。まずセレブラム・オルクスの呪殺弾丸を脳髄が防御!
「さすがだマックスくん! サイズならマックスくんだって負けてないぞ!」
ふふんと揃って胸を張るアン。さらに、脳髄は呪殺弾丸を複製乱射!
呪われた弾丸は、所詮化身たる大魔王の残骸にとっては防ぎようもない。
因果応報とはまさにこのこと。セレブラム・オルクス、己の力により消滅!
「このまま一気に攻めましょう、ロランさん!」
「うん、再生なんてさせないの! 行こう、心春おねえさん!」
ロランは狼のオーラを身に纏い、心春が召喚した大鷲とともに突撃。
破壊した魔女の身体を再生しようとするラクリマ・セクスアリスを滅殺!
残るモルトゥス・ドミヌスが、無敵の両手でふたりを引き裂こうとする……が!
「ダイダラボッチよ! 偽りの大魔王を打ち砕くのだ!!」
オオオオン……!! 大妖怪の拳が、がっぷり手四つで組み付いた!
本物ならばいざしらず、偽りの復活を遂げたモルトゥス・ドミヌスでは耐えられぬ。
圧倒的膂力にねじ伏せられ、裁定者を驕った魔王もまた粉砕滅殺される!
「バカな……!」
これも、あの死神の力か。知識を喰われたがための不足なのか?
ブックドミネーターは頭を抑えて訝しんだ。否、違う。そうではない。
六番目の猟兵! 単独では弱小なれど、連携によって力を発揮するもの!
あらゆる書にも記されぬその力が、生命の力がまた私を滅ぼすのか――!
「皆様、あとはおまかせいたしました! よろしくお願いいたします!!」
ゴロウザエモンの声に応じ、三人は同時に攻撃を繰り出した!
「さあマックスくん、とどめの一撃を叩き込んでやれ!」
「ブックドミネーター――これで、おしまいなの!!」
「書架の王……あなたはひとりで、私には仲間がいる。それが、私たちの違いですっ!!」
大鷲の風の刃、気高き狼の咆哮、そして巨大脳髄による乱撃!
書架の王が時間を凍結するよりも疾く、封印者たちの攻撃がその身を貫いた。
そしてここにまたひとつ、書架の王の滅びのときがやってきたのだ。
王を僭称せしものは、己の傲慢の代価を支払わされたのである……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ヒルデガルト・アオスライセン
オーダーでも訊いて下さるの?ならアフスズルト
大口を叩き現れたら慄きます
彼は知識でしか知らない
使い方も何も、到底御せる者ではない
過去と現最強程度、同時に切り抜けられずこの先は行けない
空元気で奮い立ち、剣礼をして決闘
武器嵐を盾受けと前経験で見切り、凍結世界の乱反射で残像を生み
篭手の爆破と熱剣で払って、低空ダッシュで接近
密着して敵を横槍の盾に
装備破損しても光から防具精製
ここには祈りも龍脈も先達もいない、後何秒生きられるかも判らない
この地獄で私は私の信念を試そう
霊薬で限界突破
邪神の殲滅をUCで記憶
血を贄に焔剣へ浄化を乗せて再現、死力を尽くして一斉攻撃
でもそれも誘き寄せの囮
魔刃にトンネル掘りで奇襲します
●蒼き氷と青き火
"蒼氷復活"は極めて強力なユーベルコードだが、当然限界はある。
それは、召喚したオブリビオンを完全な状態で復活させられるわけではないこと。
現に書架の王は、オブリビオン・フォーミュラすらも復活させている。
ただしそれらは、同じ姿と似た能力を持つ抜け殻、化身とでも言うべきものだ。
が。
「……は?」
ヒルデガルト・アオスライセンは、己の大言壮語を少しだけ呪った。
目の前に現れたあの邪神――すなわち"灰の野を歩むもの"アフスズルトは、
同じ抜け殻めいた欠片ではあった……だが"それでもなお強大"だったからだ。
「お前の希望に応えた形だ。存分に楽しむといい」
復活を果たした書架の王は、冷然たる面持ちでヒルデガルトに言った。
邪神アフスズルト。かつて封印の憂き目に遭っていた、強大なる武の神。
顕現したそれは、砕かれた神の一部とでもいうべき些細なものではある。
といっても、その"些細"は海原を切り分けて湖と呼ぶぐらいのスケールの話。
邪神の化身は半ば暴走状態で青い火を燃え上がらせ、ヒルデガルトに襲いかかる!
凍りついた蒼が、燃え盛る青によって染め上げられていく。
生まれた武器嵐の数は、かつてヒルデガルトが相対したそれのちょうど半分。
さりとて速度・威力・何よりも青い火の脅威は無視できるものではない。
「こんな世界に来てまで! 復習をさせられるって最悪の気分ね!!」
吐き捨てながらも、ヒルデガルトは類稀なセンスで攻撃を見切る。
遠い。邪神の化身はあまりに遠く、その後ろで見物する王はなお遠い。
……だから諦める? そんなのは願い下げだ。己は戦いに来たのだから。
ここに人々の祈りはなく、大いなる龍脈もなく、滅びた神も存在しない。
己は孤独だ。どこまでもひとりぼっちで、寄る辺なく地獄を彷徨う。
避けきれぬ武器の刃が身を裂く。青い火の飛沫が艶やかな肌を焼く。
腿を裂かれ肩を貫かれ、ヒルデガルトはついによろめいて膝を突きかけた。
その時、書架の王が言った。わずかな落胆と侮蔑を交えて。
「――所詮は、その程度か」
「は?」
ヒルデガルトは、さっきと同じような声を発した。
ただしそれは驚愕と畏れからではない。
「いま、なんと言いましたか。"その程度"ですって?」
怒り。そして、誇りを籠めて!
「私は倒れない。倒れたとしても立ち上がってやります。何度でも、何度でも!」
全方位から邪神の武器が来たる。ヒルデガルトは黄金の血を飲み干した。
そうとも、私はここにある。祈りも龍脈も先達の骸がなくとも、私がここにいる。
さながら身を捧ぐ聖女のように、乙女は大きく手を広げて刃を受け入れた。
……そこには、串刺し刑に処された哀れな娘の屍体が出来上がるはずだった。
だが見よ。突き刺さったはずの剣はしかし、黄金の焔に変じて融けていく!
「何?」
「祈りが必要ならば、私自身が私に祈りましょう。
力が必要ならば、私自身の力を引き出しましょう。
骸が必要ならば、私の身体をその代わりとしましょう」
黄金の焔はヒルデガルトの傷を塞ぎ、癒やし、そして身体から抜け落ちる。
少女を包むように燃え上がるそれは、やがて無数の刃に変じた。
ヒルデガルトは身の丈を越えた剣をふたつ鍛造し、それを両手に握る。
残る焔は浮遊する刃へ。ちょうど、邪神がそうしてみせたように。
「安寧の時は過ぎ去り、ここには深き冥闇だけがある。どこまでも昏い闇が。
――驕るな過去ども。私は、背中を丸めて啜り泣いてなどやるものか!!」
黄金の嵐が迸った。突撃せんとする邪神の欠片を、いともたやすく切り裂く!
おお、なんと簡単なものか。その焔は蒼氷をすら融かし王へと迫るのだ。
書架の王は己の身を氷で鎧い迎撃しようとする。致命的打撃が聖女を襲う。
一合の間に十の激突。黄金の双剣が砕け散り、打撃はあちこちの骨を砕いた。
口の端から血をこぼす。粘ついた動脈血を噛みちぎり、ヒルデガルトは吠えた!
「その面を!! 一発蹴り飛ばさないと、気が済まないのよッッッ!!!」
まさしく、"一蹴"。亜音速の速度を載せた前蹴りが、王の横っ面をぶち抜いた。
氷の塊を叩き割りながら、地面と平行にすっ飛んでいく傲慢なる君臨者!
ヒルデガルトは着地も出来ずに地面を転がる。血がしとどに溢れて全身が重い。
「……ざまあみろだわ、クソ野郎」
それでもヒルデガルトの心は、青天の霹靂めいて冴え渡っていた。
どんなときであれ少女は笑う。絶望に、"そんなものか"と中指をくれてやる。
それが、彼女なりの『信念』の在り方なのだ。
成功
🔵🔵🔴
ネグル・ギュネス
【アサルト】
毎度毎度デタラメじみた能力ばかり持ちやがって
だがそんな化け物を打破するのはいつだって人間だ…行くぞ
初撃は真っ向から身体と武器で防御姿勢で抑え込む
とっておきの森のクリスタルを用いて全力魔法、樹木の盾を生成して受ける
こちとらタフが売りだ、多少やられても倒れんよ
そしてそっちがデタラメならば、こっちはカミサマだ!
【降臨昇華・陽炎神楽】を放ち、相手を、地形を焔で焼き尽くす
能力向上の力も乗せて、いくらか癒されようが攻撃を山ほど叩き込んでやる
──と、こうまですれば、治療される前に倒そうとしてると考えちまうだろう
あとは仕上げを御覧じろ
反転した瞬間一気に、焔を宿した剣を捻じ込んで1秒でも早く、倒す!
鳴宮・匡
【アサルト】
――そうだな、嫌な相手だ
“だからこそ”俺にはこいつを殺す理由がある
行こうぜ、二人とも
相手の消耗は、会敵時点ではないものと考え
初手は、全知覚・全経験を以て見切り回避に徹する
ぎりぎりだろうが、あいにくこっちはチームなんでな
ネグルが僅かでも逸らしてくれるのを信じてる
ダメージを重ねながら、相手の動きを観察
僅かな違和感も見逃さないよう心掛ける
治療に掛かるのは恐らく一瞬
発動の瞬間を正しく捉えられるかが鍵になる
ニューロリンクで捉えた違和感は瞬時にヴィクティムに伝わる
あいつの予知したタイミングと合わせれば、ずれないだろう
――反転と同時に“影”を纏い、全力攻勢
次の治癒の間を与える前に息の根を止める
ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】
──こいつは、何かを知っている
嫌な相手だ、単純に強い奴よりも数倍やりにくい
それでも、勝たなくっちゃならない
…っし、気合入れていくぜ
ニューロリンク、スタート
ニューロン【ハッキング】、サイバネ出力オーバーロード
知覚と反射の強化を共有する
初撃は何でくる?素手の可能性が高い
軌道を【見切り】、【早業】で回避の構え
ネグルの抑えもあるだろうから、万が一に備えればいい
後は2人のサポートだ、指示を出しながら仕込みクロスボウ展開
電気ショックによるスタン・ボルトで【マヒ攻撃】
ダメージが積み重なれば、当然回復が来るはずだ
──ここだ、『Dirty Edit』
その治癒はひっくり返り、傷はより開くようになる!
●影を纏いて、影を越え
「……この程度では、相手にもならないか」
書架の王は、倒れ伏す三体の影を冷たく見下ろした。
それは、書架の王が"蒼氷復活"によって召喚したオブリビオンである。
背格好は目の前の敵と酷似……否、ほとんど同一のものと言っていい。
「あいにく、その手はもう他の世界で味わったんだ。通じないよ」
鳴宮・匡は静かに言う。そう、あれはヒーローズアースでのこと。
最強の過去・クライングジェネシスが用いた攻撃――攻撃者の過去再現。
書架の王は、黄金都市プラハの戦いで抹殺されたそれらを喚び出したのである。
チーム・アサルトの極めて綿密な連携を崩すには、それしかないからだ。
「出し物はこれで終わりか? あ? ならさっさと死んでくれよ」
「……何が来たとしても、斬り伏せるのみだ。悪足掻きにしかならんぞ」
ヴィクティム・ウィンターミュートとネグル・ギュネスは鋭く敵を睨む。
書架の王は嘆息した。こきこきと頸を鳴らし、片手を倒れ伏した影どもにかざす。
影どもは蒼い氷となって割れ砕け、その破片は書架の王の周囲を舞った。
光の粒子めいてちらちらと輝く雪花は、純粋な魔力に還元されて消えていく。
書架の王は、斃された影の残留エネルギーを己のものとしたのである。
「認めざるを得ないな。たかがオブリビオンを一体二体復活させても無駄か。
"お前のよく知る魔弾使い"も、"悲しき堕落の聖女"でも、問題にはなるまい」
「……ふざけてんのか? スクィッシー」
「堂々と挑発してくれるじゃねぇか。テメェ」
ヴィクティムとネグルが殺意を強める。書架の王は動じた様子もない。
王はすべての書と、無限に等しき全知を得ている。ゆえに、"識って"いる。
彼らの因縁深き"宿敵"。それはもちろん、目の前の射手にとってもそうだ。
「"だから俺にはこいつを殺す理由がある"」
匡は言った。その瞳には怒りも殺意も憎悪もないが、しかし。
ネグルとヴィクティムにはわかった。匡は、こいつを"確実に殺すつもり"だと。
それはいつものことのようで、いつもよりも強い殺意。決断的な覚悟だ。
「――いいだろう」
言葉なくして同じく感じ取った書架の王は、もはや搦手を捨てた。
「私自ら、お前たちを屠るまでだ」
言葉とともに少年の姿は消えた。そう、前触れも一切何もなく。
――時間凍結! それは絶対の術式、回避も防御も不可能な無敵の力!
凍結された時間のなかでは書架の王だけが自由であり、そして王者である。
そこから繰り出される攻撃を防ぐ術はない。ゆえに敵は確実に死ぬのだ。
書架の王は時間を支配した。そしてまず、この厄介な射手を殺そうとした。
王がそう決めたならば、民草は逆らえぬ。ただ粛々と刑が処されるのみ。
だが。
「……何?」
書架の王は、己の攻撃が阻まれていることに気づいた。
背後に回り込んでの断頭襲撃。ネグルが! 匡の背中を守っている!?
書架の王は反射的に反撃を警戒し飛び離れ、それがいかに愚かなのかを悟った。
反撃などあるわけがない。時間を凍結させた世界では自分こそが支配者だ。
……凍りついた時間が動き出す。ネグルは強烈な衝撃に全身を撃たれた。
背中合わせになる形で匡を守っていた彼は、相棒を巻き込みながら地を滑る。
匡もまた、無様に前のめりにつんのめるようなことになる前に、地を転がった。
「……私のユーベルコードに干渉したわけではないな。どうやった?」
「答えてやる義理はねえが、面白いから教えてやるよ。瓦礫の山の王サマ」
ヴィクティムが皮肉めかして言った。顎を伝う汗は見えないように拭いながら。
「ウチの死神の目はたいそういいのさ。未来予知めいたことが出来るくれえには。
テメェの視線。筋肉の動き。微妙な足さばき……"予測"する材料はいくらもある」
「……なるほど。思考速度でそれを共有、連携するのがお前たちの戦術か」
書架の王は悟った。やはりこいつらは、凍りついた時間を越えたわけではない。
"時間を凍結させた王がどう攻撃するか"を予測し、分析し、そして"先読み"した。
己はそれを越えられなかった。だから、ネグルの防御を貫けなかったのだ。
「行くぜ、ふたりとも」
「応。今度はこちらの番だッ!」
「言われるまでもねえな」
匡の弾丸が反撃を告げた。王は弾丸を回避、そこにネグルが"すでに居る"!
「付き合ってもらうぞ、書架の王ッ!!」
斬撃! 書架の王は掌でこれをいなし、腹部に連続打撃を叩き込む。
三連殴打はたしかに入った。ネグルはくの字に吹き飛……ばない。堪える。
「とっておきの守りがあるんだ。いつまでもやられ役には甘んじれねえな?」
千年を閲した樹木の如き硬い手応え。加えて鋼の気配。王は眉根を寄せる。
ネグルのタフネスよりに何よりも、"この男にかからずらうこと"自体が業腹だ。
回避に徹するヴィクティムと匡を、叩きに行くことが出来ない。
(いいぞネグル、その調子で抑え込め!)
ヴィクティムは思考速度で指示を出しながら、クロスボウを展開。
スタン・ボルトによる牽制を撃ち込む。当然、初撃は王には通じない。
王は二本の指でボルトを挟み放り捨てる。飛来する弾丸を局所的蒼氷で防御。
そこへネグルの前蹴り。同じく蹴り足で相殺……打撃部分が燃え上がった。
「そっちがデタラメならば、こっちはカミサマだ!!」
破邪の焔。王は一瞬にしてその脅威を感知し、逆足でネグルの腹を蹴り、離脱。
燃え散った白い炎はネグルの周囲にわだかまる。彼の力を高める。
王は距離を取ろうとする。背後に匡の弾丸が"回り込んで"いた。比喩である。
匡は書架の王の後退を先読みし射撃していた。王はこれを避けきれない。被弾。
("多分"、3秒後に時間凍結を使ってくる。防御を気をつけとけよ)
("多分"か。なら生命を賭けるには十分だ)
匡がそんな不安定な言い回しをすることはない。滅多には。
その『滅多』が今だ。彼ですら確実視は出来ないほどの相手なのだ。
しかしネグルはそれでいいと思った。読み違えて死ぬならば、そこまでだ。
一秒。ネグルは焔の勢いを借りて接敵、王と苛烈な撃ち合いを始める。
二秒。ヴィクティムはボルトを装填し二連続射撃、王は両手でこれを防御。
三秒。匡はネグルの"周囲に"弾丸をばらまく。撒き餌であり、弾幕だ。
空白があった。
「……ッッッ!!!」
ネグルは己の胸部が破砕するのを感じた。時間凍結! だが彼は生きている!
相棒の言葉を信じ、先の先を得たクロスガードが彼の生命を救った。
ボルト攻撃を防ぎ、弾丸の被弾を警戒した王は、ネグルを"攻撃するしかなかった"。
ネグルが地面と平行に吹き飛ぶ。王はさらに踏み込む……否、棄却する。
執拗なスタンボルト。片腕で受ける。冷たい瞳がヴィクティムを睨んだ。
飛来した弾丸もその片腕で受ける。撃ち込まれたボルトと弾丸は凍りつく。
(来るぞ)
(ああ、此処だ)
ヴィクティムと匡は、凍りついた弾丸とボルトが身体を貫いたのを感じた。
痛覚は強引にねじ伏せる。敵は撃ち込まれたそれらを氷結し投げ返したのだ。
そして傷を癒やした。三度目の時間凍結――しかし、もうそれは"許されない"。
「真実は不変である――なんてのは、都合のいい願望に過ぎねえのさ」
「!!」
王は。王は膝を突いた。愕然と眼を見開く! なぜだ!?
そして即座に理解する。治癒したはずの傷が開いている……!
掲げられた右手。目に見えぬ電脳魔術。治癒と創傷を"入れ替え"る術式!
「小癪な!」
「オオオオオオッ!!」
ネグル! 血を吐きながら焔の剣で床を融かし、王の正中線を裂く!
書架の王はこれを受けた。反撃の殴打が脇腹を砕く。だが停められぬ!
「(匡ォッ!!)」
声はニューロリンクと音波で同時に訪れた。相棒は静かに言った。
「"もう終わってるさ"」
――然り。書架の王が、ネグルを追撃することはなかった。
意識外から挟み込まれた影の魔弾。それを避ける術も、防ぐ余力もない。
「……"この私"では、ここまでか……」
書架の王はそんな言葉を言おうとした。だが影はその前に王を飲み込んだ。
全身が黒く染まって炭化し、砕け散る。残骸は雪花のようにキラキラと散った。
緊張が解け、主観時間が正常に流れる。匡は野太く息を吐いた。
目元から流れる血を拭う。ヴィクティムもまた、ごほごほと血を吐いた。
ノーダメージではない。氷の被弾。オーバードーズと思考共有によるダメージ。
だがそれでも、口元の血を拭い、冬寂のウィザードはタフに笑う。
「"冬はいつか終わりを告げ、氷は融ける"。それが、この世の真実さ」
言葉を示すかのように、周囲の蒼氷はひび割れ、そして砕け散った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャガーノート・ジャック
★レグルス
(ザザッ)
そうだな。ああした口振りは珍しい。
何より試練として立ちはだかるならば乗り越えるのみ。
いつもの事だ。
行こうか、ロク。レグルスを始めるとしよう。
(ザザッ)
初手はロクのカバリングに回る。
貫通性を高めた熱線で敵の行動ルートを狭める様に狙撃。
ロクの機動力と本機の予測力ならば
いくら敵が速くとも一瞬程度捕捉はできよう。
そしてその一瞬で良い。
"OVERLOAD":
起動時間「1秒」
倍率「82倍」
6×82、凡そ平時の本機の500倍に等しい性能を瞬間的に引出す。
――熱線、照射。
(力溜め×スナイパー)
……ギリギリまで敵は削った。
チェックメイトは任せた、相棒。
(――ザ、ザ。)
ロク・ザイオン
★レグルス
珍しく、ムルヘルベルがすごく怒ってたな
…じゃ、多分、すごく、嫌な奴なんだろ。
(「惨喝」で防御力を増す
どんなに速く強くとも
素手で来るならあれは己に触れる
都度傷を治されてしまっても少しずつ
時が重なる刹那、動きの先を【野生の勘】で掴み【早業】で氷の【鎧を砕く】)
(ジャックの一射、あれはまた傷を治そうとするだろう
相棒の全力を無駄にはさせない)
――あああァァアアア!!
(詠唱は零時間でも
肺に息を溜める瞬間はある筈だ
その隙を掴む為に何度も詠唱を繰り返させた
間髪入れず至近距離の全力「惨喝」
耳よ潰れろ【恐怖】に竦め
その首に刃を叩き込み【焼却】する)
…無茶しやがって、って
こういう時に言うんだろ
ジャック。
●華氏マイナス459.67℃
少年めいた賢者は、予知において出来るだけ冷静を保とうとする。
その彼が、ああも怒りを剥き出しにする。
ジャガーノート・ジャックとロク・ザイオンにとっては、
それが何よりも不思議で、そしてだからこそ強敵だと思わされた。
ブックドミネーター、あるいは書架の王。
すべての書の知識を知り、それによって猟書家を束ねる強大な存在。
少年めいた賢者の怒りの理由は、ふたりにとっては予測するしかない。
そしてこうして戦いの場に来た以上、それはもはや『二の次』にすべきことだ。
相対し、戦い、そして彼奴を斃すのも、すべてはふたりの仕事であり、
賭けられる生命もまたふたりのものなのだから。
「……なら、あいつはきっと、すごく嫌な奴なんだ」
《――そうかもしれない。なんであれ立ちはだかるならば、乗り越えるのみ》
それでもふたりは、ふたりなりにその怒りを背負い、対峙する。
強大なる蒼き竜、書架の王、ブックドミネーターは、冷然の瞳で見つめ返した。
「六番目の猟兵。お前たちは、速やかに抹殺せねばなるまい」
少年の声がした瞬間、その姿は一瞬にして消えていた。そして眼前に出現!
《――ロク!》
「!!」
凍りついた指先が蛇めいてくねり、ロクの胸部を貫きにかかった。
ジャックはとっさに熱線を照射、致命的打撃をカバーリングにかかる。
書架の王は打撃を繰り出した腕で熱線を"捻じ曲げ"、視線をジャックへ。
ロクが烙印の刃を振るった瞬間、再びその姿は消えていた!
ただの超スピードというレベルではない。これが時間凍結か!
「――……う、ぐぅるぁああああっ!!」
ロクは吠えた。ジャックが、打撃を受けて吹き飛ばされていた。
狙いを変えジャックを攻撃していたのである。書架の王へ飛びかかる!
「耳障りな声だ。よくもまあそんな喉で生きていられるな」
書架の王はうんざりとした声で言い、肩越しに振り返った。
そしてバックキック。ロクは野生の勘でこれを見切り、刃で受け止めた。
ロクは自然吹き飛ばされる形になる。書架の王は目の前に氷の柱を生み出すと、
それを蹴り飛ばし破砕。巨大な氷の礫としてロクに叩き込んだ!
「ぐ……! 相棒ッ!!」
《――問題ない。ダメージは有るが戦闘は可能だ》
巨大な氷の柱に激突したジャックは、あちこちをスパークさせながら起き上がる。
傷はどのみち直る。痛みもカット出来る。考えるべきは敵の撃滅のみ。
今の交錯でわかったことがある。それは、時間凍結は無敵ではないということ。
無限に時間を止められているならば、ああもとぎれとぎれにする必要はない。
そしてスピードは超速ながら、その微かな予兆を読むことは……出来る!
「鋼の獣と焔の獣。けだものですら六番目の猟兵にはなれるか」
《――本機も、ロクも、人間だ。そして我らは獣ではない》
ジャックは熱線を放つ。書架の王は時間を凍結しこれを回避、反撃を叩き込む。
そしてジャックの胸部を蹴りつけた反動で跳躍し、ロクの不意打ちを迎撃。
烙印の刃を掌でそらすと、喉を狙って手刀を突き刺す。ロク、鎖骨で受け止める。
「……ッッ!!」
鎖骨が折られた。手刀はごきりと体内に抉りこまれる。壮絶な激痛。
「……ぐ、ぁ」
だが、漏らしてやるのは悲鳴などではない。敵対の意思を示す咆哮!
「――あああァァアアア!!」
「ぬ……!」
おぞましき声の惨喝が目前で放たれ、書架の王はその忌まわしさに顔を顰めた。
首に向けて刃が奔る。書架の王は片腕を犠牲にそれを受け止める!
(囮はこちらか? いや、違う。危険なのは間違いなくあの鋼の獣だ)
書架の王は感じていた。ジャックがただならぬ気配を放っているのを。
ゆえにまずあちらから殺す。再び時間を凍結させ、ジャックに処刑打撃を――。
「何?」
放とうとした。
だがその足は、地を踏みしめた瞬間にべきりと折れて砕けたのだ。
なぜ? それは、関節部を熱線で融解されていたからであった。
狙い済ませたスナイプ。だが熱線程度ならば、時間凍結で避けられるはずだ。
……はず、だった。零時間の詠唱にすら先んじたもの。それは。
《――チェックメイトは、任せた、相棒》
ざり、ざりざりざりざり。
一秒だけのオーバーロード。リミッター解除による500倍のクロックアップ。
超・超スピード、超・超出力の熱線放射。
それは凍りついた世界を円く貫くほどに。ジャックのカメラアイが明滅する。
《――レグルスを、教えて、やれ》
「ああ!!」
書架の王の主観時間が鈍化する。最適な対策を書の知識から引き出そうとした。
……だが、存在しない。ここまでひたむきな戦士など過去に例がない。
再び来たる刃を防ぐ術はなく、そもそも女の目に燃える怒りは理解できず。
「お前たちは、なんなのだ)
断末魔の代わりに漏れ出したのは、心からの疑問であった。
驚愕と呆然に歪んだ表情のまま、ブックドミネーターの頸は刎ねられた。
「……無茶、しやがって」
息を切らせたロクは、ふらふらと相棒のもとへ近寄る。
相棒の鎧の関節部から、ブシュウ!! と熱波が溢れる。
外装解除。その下から現れた少年は、困ったような顔で笑った。
「君だって大概じゃないか、ロク」
「……キミのほうが、ずっとだ」
ボロボロの女と精神的に疲弊した少年はそう言って、互いに笑いあった。
円く融けた壁の向こうからは、爽やかな朝日が差し込んでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴