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甘露の盃

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●滴る雫
 丑三つ時。
 サムライエンパイアのとある藩。創業三百年を誇る銘酒『戒誓』の醸造元である酒蔵、戒道酒造が朝を待ち望んでいた。
 明日祭りが催される。年に一度の祭りは、米どころであるその藩における主要行事だ。酒造りについては藩主が手厚く保護を行っていることもあり、祭りはいつも盛況であった。
 祭りの時は身分に拘らず酒を飲み交わす。皆が楽しめたし、活気づいていた。わざわざ遠方から足を運ぶ客もおり、代金代わりに各地の名産物を持ち込む商人までいる始末。要するにただの祭りではなく、文化交流の機会でもあり、地域興しの行事でもあったのだ。
 しかし、どんなところでも悪は蔓延るもので。
 黎明を迎える前に疾く駆ける影がある。複数。気配を殺して動くそれらは妖魔忍者だ。しかしその暗躍に誰も気づかない。
 切妻造・瓦葺の長大な建物が戒道酒造だ。門構えも立派なものだがそこには見張りはおらぬ。見回りをする下男はいるが、平和慣れした者ばかりだから戦力にはならない。現に、蔵の前で昏倒している下男の姿もあっただろう。
 酒蔵にするりと入り込む様に迷いはない。
 蠢く者どもの定めは殺めること。
 滴り落ちるのは――平和を絶望に染め上げる悪魔のひとしずく。
「おい、何をやっているんだ」
 咎めたのは、偶然様子を見に来ていた杜氏である壮年の男性。その姿を見止めた侵入者に、交渉の余地などあるわけがない。不穏な気配に気付いた時には、もう遅い。
 赤が散る。
 朝は来ない。
 明るい日なんて、来ない。

●甘露の盃
「お米からお酒が造れるだなんて、不思議な感じがいたしますわね」
 ラティファ・サイード(まほろば・f12037)は愉快そうに微笑みを刷いた。世界が異なれば食文化も異なるもので、どこであっても美味しいものは人の心をも豊かにしてくれる。
 さておき、ラティファは集まった猟兵たちに向き直る。
「サムライエンパイアでの事件を予知いたしました。皆様にはとある酒蔵へと向かって頂きます」
 手にした扇をひらり翻し、ラティファが告げたのはとある藩、地元ではちょっと知られた存在である酒蔵。
「戒道酒造という名の、神社に捧げるお神酒も作る由緒正しい酒蔵ですわ。そちらのお酒は誰もを魅了する極上の出来だとか。ですが、それを良く思わない輩がおりますのよ」
 それは、オブリビオンと化した羽邑屋という商人。
 戒道酒造が藩主に気に入られ、藩の有力者となっているのが気に入らないのだ。故に酒蔵に配下を忍ばせ毒を仕込む。そうして祭りを台無しにしようと目論んだのだが、幸か不幸か酒の様子を見に来ていた杜氏がその姿を発見してしまう。当然、オブリビオンは目撃者を見逃しはしない。
「そんなことになればお祭りが地獄絵図となってしまいますし、戒道酒造が、ひいてはその藩の隆盛が潰えてしまいますわ。ですから、皆様にはその目論見を打破して頂きます」
 まず、酒蔵の警固にあたらねばならない。侵入してくる配下もすべてオブリビオンである妖魔忍者だ。酒蔵は広いが猟兵たちが分担すれば返り討ちにすることも容易かろう。夜を徹して戒道酒造を、杜氏や他の下男らも含めた人々を守りきろう。
 そうすれば朝方、しびれを切らした羽邑屋が尻尾を出すに違いない。それを逃さず捉えて、御用――オブリビオンである以上打倒する必要がある。
「皆様の腕前ならば、討伐そのものはさして難しくありませんわ。羽邑屋のたくらみを懲らしめることが出来ましたら、お祭りを楽しむのは如何かしら」
 その祭りを端的に言えば、酒祭り。
 米を使った酒を造っているのは何も戒道酒造だけではない。他の酒蔵も様々な種類の酒を提供し、料理を振る舞ってくれる。賑やかで活気のある祭りだ。皆で楽しい時間を過ごすことが出来たならそれは素敵だろう。
「勿論羽目を外し過ぎるのはご法度ですけれど、喉越し涼やかなものから芳醇なものまで、さまざまな種類があるそうですわ。お酒を嗜まれる方なら、飲み比べをしてみるのも一興だと思いましてよ」
 その酒は、サムライエンパイア特有の製法で醸造されたもので、醸造酒に分類されるいわゆる日本酒だ。米と麹と水を主な原料とする清酒を指す。新酒は勿論、十年熟成した古酒も振舞われるし、他の酒蔵からも提供があるため、きっと気に入る一杯が見つかるに違いない。酒精に弱い者や未成年には、玉露や蜜柑の果実水がお勧めだ。
 肴も豊富だ。寒鰤や寒鯖の刺身、白魚のかき揚げ、炭火で焼いた猪の肉も供されるとか。季節柄野菜はさして豊富ではないが、大根を用いた料理には工夫が凝らされているらしい。
「うふふ。わたくし、サムライエンパイアのお酒は詳しくありませんの。教えてくださる?」
 ラティファはころころと鈴を鳴らすような声で言う。揶揄い交じりのそれにふと、真摯な色が過った。
「美味しい時間を堪能するためにも無粋者を排除してくださいませ。どうぞお怪我のないよう気を付けてくださいましね」
 女は扇を閉じて、艶やかに笑む唇に添えた。


中川沙智
 中川です。
 厳密に言えば江戸時代にそこまで食文化は発展してないと思うのですが、まあいいじゃないですか! って昔誰かが言ってました。

●シナリオ構成について
 第1章:妖魔忍者の殲滅(集団戦)
 第2章:悪徳商人をお縄にする(ボス戦)
 第3章:酒祭りで美味しいお酒とごはん(オブリビオンを全て撃破した場合)
 以上の流れになっています。
 POW/SPD/WIZの行動・判定例には特にこだわらなくて大丈夫です。ご自由にどうぞ。

●第3章について
 酒祭りで美味しく食べ飲みしましょう。詳細は第3章公開時に説明文書を追記します。
 オープニング記載のメニューは勿論、他に食べてみたいものがあれば供されるはずですが、あまりに凝り過ぎたものは出て来ません。ふんわり指定して頂ければ中川のほうでも見繕いますが、カテゴリぐらいは教えてください(新鮮な魚介類、腹持ちがいい炭水化物、などなど)
 公序良俗に反する行為や迷惑行為は禁止です。お酒は二十歳になってから。該当するプレイングは流しますのでご了承ください。
 第3章のみお呼びがあれば、グリモア猟兵のラティファが同席させて頂きますのでお気軽にお声がけください。

●同行者について
 ご一緒する参加者様がいる場合、必ず「プレイング冒頭」に【相手のお名前】と【相手のID】を明記してくださいますようお願いします。
 大勢でご参加の場合は【グループ名】で大丈夫ですので、「プレイング冒頭」にはっきり記載してください。

 では、皆様のご参加を心からお待ちしております。
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第1章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神無月・継葉
【裏人格で行動・SPD】

お酒か…、私の利用している宿にお酒が好きな人たちがいるし、私自身も少しだけ嗜むからな。
それに、この世界だとお神酒とか言って奉納する文化もあるらしいし、それを崩すなら放っては置けんな。

殲滅戦になるならば、私はあまり得意ではないにしろ…。
だが、大体の扱いはわかる、サラインの範囲攻撃を仕掛けつつ、私自身が【ダッシュ】で近寄り、一気に【串刺し】にして、数を確実に減らしていくスタイルで行ってみようか。
まだこのあたりは雑魚のようだし…痕のほうに来るのにも、警戒をしておこう。
現れた瞬間に攻撃されてはかなわんからな。


寧宮・澪
おいしーご飯ー……お酒ー……だめにする、人はー……お仕置き、ですよー……。
眠いけどー……頑張りましょー……。

酒蔵の、天井ー……梁の上辺りに、蔵れつつー……【聞き耳】たてて、忍者の気配、探ってー……
【霞草の舞風】、でー……後ろや、頭上から、【範囲攻撃】、【だまし討ち】、ですよー……。
びっくり、しますかねー……。

忍者逃さないようにー……しっかり、狙いましょー……。

こちらへの、攻撃はー……【見切り】で、避けたり、【オーラ防御】で、軽減をー……お酒や、酒蔵の人に、被害でないように考えてー……。

アドリブ、連携、歓迎ですよー……。


浮世・綾華
折角の極上の酒に毒を仕込む悪い奴は
とっ捕まえてお仕置きしてやらねーとな?

忍者っつーくらいだから
門から堂々とって奴も少ないんじゃね
入口らしい場所は他の猟兵に任せて
俺はよじ登んなきゃはいれなそーな場所を中心に警戒

門外の見回りは黒猫道中を使いつつ
自分は内部の方で息を潜めるようにして
(つか、屋外でもフツーに良い香りすんのな)

敵が見つかれば猫で追跡ししつ
自分は先回りして迎え撃つ準備を

鉄屑ノ鳥籠から出した器具に噛み切った指から一滴垂らす紅
敵を拘束する鎖、鋭く伸びる鉄の棘

――痛がっても、ダーメ
逃がしてやんねーよ

さっすが俺の子猫チャン
良く見っけたネ、えらいえらい

さて、おいしー酒を頂くためだ
もう一働きといこうか


筧・清史郎
酒祭りか、それは楽しみだ
だがその前に、成敗せねばならない輩がいるようだな

他猟兵と手分けし、周囲の警護を
昏倒している下男には「交代の時間だ」と告げてみようか
第六感働かせ、微かな気配や物音も逃さぬよう
人命第一、身を挺してでも杜氏や下男らは護る
既に交戦中の猟兵がいれば助太刀を

戦闘時
敵が複数ならば【空華乱墜】以後【桜華葬閃】
敵が単体ならば【桜華葬閃】使用
開戦時は、敵の攻撃を捌きつつ攻撃回数重視
敵に隙が生じれば、攻撃力重視の一閃を
敵に疲労みえれば、確実に仕留めるべく命中重視の一撃を

忍者刀の一撃はくらわぬよう見切り
残像で躱し、武器受けで防ぎ、カウンターを返そう

「許しがたいその所業、返り討ちにしてくれよう」



●未明の響
 夜も更けて暫く。
 月光が冴え冴えと地に落ちるため、真夜中だというのにやけに明るい日だった。雲が流れていく。遠くで鳥が鳴いた気がした。
 そんな頃合い、戒道酒造に集まる影がある。身を潜める者、杜氏や下男へ呼びかける者、出入口へ詰める者。様々だ。天下自在符を用意した者もいたため、戒道酒造の関係者は猟兵たちの指示に従順に従っている。
 集まった猟兵の誰もが、オブリビオンの狼藉を許すまいとする志を抱えていた。
「酒祭りは楽しみだ。だがその前に、成敗せねばならない輩がいるようだな」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)が神妙に呟いたなら、周囲の猟兵たちも首肯する。
「お酒か……、私の利用している宿にお酒が好きな人たちがいるし、私自身も少しだけ嗜むからな。それに、この世界だとお神酒とか言って奉納する文化もあるんだろう。それを崩すなら放っては置けんな」
 世話になっている旅館を思い描き、毅然とした面差しで神無月・継葉(紅と蒼・f03019)が告げる。追従すうように浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)が笑みを刻んだ。
「ああ。折角の極上の酒に毒を仕込む悪い奴は、とっ捕まえてお仕置きしてやらねーとな?」
「はいー……。おいしーご飯ー……お酒ー……だめにする、人はー……お仕置き、ですよー……」
 間延びした寧宮・澪(澪標・f04690)の声はのんびりと。無表情のままぐっとにぎりこぶし。
「眠いけどー……頑張りましょー……」
 眠いのは仕方ない。夜だし。澪の場合夜に限らないのかもしれないが。えいえいおーと言わんばかりの声に、誰ともなく張り詰めていた緊張を解いて、軽く笑う。肩を強張らせていた何かが四散した心地だった。
「行こう。各々立ち位置は違えど、十分気を付けてくれ」
 清史郎の言葉が合図となった。散会。相手はオブリビオンであるとはいえ忍者だ。真正面から真っ向勝負とはいかないだろう。故にそれぞれがそれぞれの思惑と作戦を傍らに、迎撃の準備に入る。
 恐らく、敵も待ち伏せには気付いているだろう。だからといって後には引けないに違いなかった。明日の祭りを逃せば、戒道酒造や藩の損害の意味も半減するというもの。故に襲撃は今夜必ず実行される。それは猟兵の誰もが肌で感じ取っている事実だった。
 どうにも、長い夜になりそうな予感がした。

 裏人格が表出している継葉、もとい静葉は、殲滅戦に挑むにあたり周囲を注意深く見渡していた。決して得手とする分野ではないが臆するつもりもない。建物の裏手に回り、サラインというドローンと共に警戒にあたる。それなりの人数の猟兵が構えているが、静かだ。
「!」
 だから異変にすぐ気づく。裏手の勝手口に繋がる路から妖魔忍者が一斉に飛び出してきた。きつく前を見据えた静葉が指を鳴らせば、サラインが射撃援護型に換装される。
 降り注ぐ一斉掃射が地を穿つ。
 妖魔忍者らは静葉に気を取られていたため射撃をもろに食らう結果となった。浮足立ったその隙を見過ごさない。静葉が一足飛びで敵に肉薄する。実体剣を腹の前で構え体重を乗せ、一気に妖魔忍者を突き刺した。そのまま抉るように力を籠めて貫通させる。反動を付けて刃を抜けば、芝居の演出かというくらいに夥しい鮮血が散る。他の妖魔忍者が慄いたことが気配で分かる。
 冷静に視線を走らせる。まず一体。着実に数を減らしていく算段の静葉に迷いはない。
「まだこのあたりは雑魚のようだし……後のほうに来るのにも、警戒をしておこう」
 現れた瞬間に攻撃されてはかなわんからな。
 そんな静葉の呟きは闇に呑まれない。油断大敵だと胸裏で噛みしめながら一歩踏み出すと、乾いた冬の土の音がした。

 蔵の内部に視点は移る。
 酒樽を貯蔵している部屋の手前、天井の梁の上に身を潜めていたのは澪だ。静かに、ただ静かに様子を窺っている。耳をそばだてて、妖魔忍者が侵入してくるのを待っていた。少なくとも天井裏から侵入してくるような気配は感じられなかった。であれば、引き戸を見張っていればそのうち姿を現すはず。
 どれくらい待っただろう。ぱちり、澪の眠たげな眼が侵入者の姿を捉えた。戸が開く僅かな音に反応した。
「あー……」
 来ましたねー、という声は誰の耳にも届かない。しばし観察してみるも、複数の妖魔忍者はこちらに気付いていないようだ。
 逃さない。彼奴らが背を見せるその一瞬の隙に、意識を集中させる。ひらり掌を翻す。
 突如として生じたのは、粉雪のような霞草だ。それが次第に霰のように傲然と妖魔忍者たちを襲う。叩きつけ、穿ち、削る。妖魔忍者たちが気付く頃にはもう、粗方体力を削ぎ切った後。
 澪は夜色の猫が舞い降りるように妖魔忍者の眼前に立つ。ここまでくれば後は始末するだけだ。ここで倒してしまえば彼奴らは酒樽まで辿り着かない。
 ならば片付けてしまおうか。
「忙しい夜に、なりそうですねー……」
 ゆるゆると目を細めながら、澪は妖魔忍者からの一撃を見切って躱した。踏み越えるように一歩進み出て、謳う匣から常世までの案内状を差し向けよう。

 忍者というくらいなのだから門から堂々侵入する奴も少ないだろう。
 そう認識した綾華の眼差しはごく冷静な色を湛えている。裏手に回る足取りに迷いはない。敵が外壁をよじ登ってくるくらいのことはありそうだ。
 綾華は屈んで、呼び出した黒猫にしゃべりかける。
「ほら、行っといで」
 可愛らしい黒猫は綾華の指に頬寄せてから、しなやかな動きで門外へ向かった。夜に紛れて見えなくなる。油断なく周囲を見渡している最中、ふわり酒の甘い匂いが漂った気がした。存外外でもいい香りがするものだ。そう口許を綻ばせるも、黒猫が敵を発見したとなれば表情は引き締められる。
 音を立てぬように、しかし大股で闊歩しその場所へと向かう。先回りが叶ったならば綾華は己が指先を噛む。滴る赤を伸べたのは、小さな鳥籠であった。
 血が滲んだ瞬間に変形する。それは捕らえるために在るのではない、狩るために在るのだと示すように。
 丁度外壁から飛び降りようとした妖魔忍者に狙いを定める。鳥籠が馳せた。鎖が拘束し、喉笛を切るために鉄の棘が鋭く伸びる。忍者が怯むももう遅い。
「――痛がっても、ダーメ。逃がしてやんねーよ」
 刺す。事切れる様を、眺めている。
 最期まで見届けたなら綾華は戻って来た黒猫の首元を撫でた。
「さっすが俺の子猫チャン。良く見っけたネ、えらいえらい」
 而して、綾華は剣呑に呟いた。
「さて、おいしー酒を頂くためだ。もう一働きといこうか」

「交代の時間だ」
 昏倒していた下男を揺り動かして目覚めさせる。恐縮して頭を下げてくる下男へ向ける清史郎の眼差しは優しい。下男が退避する間も、その背中をずっと見届けていた。
 静謐なる沈黙。清史郎は澄み渡った水鏡のように、密やかにしっかりと注意を払っている。
 その水面が僅かに震えた。その凶兆を逃さない。一歩引いて振り返れば、徒党を組んで襲い来る妖魔忍者の姿が視界に入った。
 それでも清史郎は慌ても焦りもせず、桜の意匠が施された蒼刀に手を刷く。
 触れたところから桜の花弁が吹き荒れた。波濤のように押し寄せる淡紅のいろ。
 舞い散り、躍る。壮麗で儚い桜吹雪だった。しかしそれは鋼の如き鋭さで妖魔忍者を削っていく。
 ひとひら地に落ちる頃には、斬り刻まれた妖魔忍者が残されるのみ。敵が攻撃に移るまでの僅かな隙を零さずに、清史郎は地を蹴った。
「仕舞いにしよう」
 それは宣告。
 刀身を取り戻した蒼き刀が、一筋の斬閃を奔らせる。妖魔忍者のひとりを瞬く間に斬り伏せた。
 そのあまりの隙のなさに、破れかぶれで妖魔忍者が突貫してくる。清史郎は忍者刀が振り翳された瞬間に敢えて踏み込むことで、勢いを反転させる。
「許しがたいその所業、返り討ちにしてくれよう」
 身を翻した清史郎が斬り結ぶ。肺腑をも絶った手応えが追いついてくる。
 妖魔忍者が崩れ落ちる様を、月だけが見届けている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
アァ……面白そうなのが沢山いるのか。
あーそーぼー

サァ、当たるなよ。耳の良いヤツは耳を塞いでおいた方がいいかもなァ…。
先制攻撃で人狼咆哮。味方に当たらないように注意は促しておく
そこまで悪いヤツじゃないンでねぇ。

自慢の足、素早い足。狼の足は忍者にも負けないサ。
見切りと素早さを生かして攻撃を避ける。
敵サンの攻撃はちゃーんとコノ目に焼き付けておく。
ニンジャって素早いンだよなァ。盗めるモンは盗んでおかないとなァ……。

あとは属性攻撃、二回攻撃を使って牽制。
一人になると危ないもンなァ……味方と協力はしておくサ。
連携ってやつ。


鷲生・嵯泉
オブリビオンと化した事も勿論だが
妬心で他に害を成そうという性根の歪みは放置出来ん
……酒にも少しばかり用がある事だし、な

酒蔵の入り口付近を哨戒して待つとするか
杜氏や下男には出来るだけ近寄らない様に予め話し
酒の質を下げずに済むよう、酒蔵内での注意点も確認しておこう
さて夜は長いが、この気温では流石に眠くはならんな……

戦闘時は酒蔵を荒らさずに済む様に
フェイントを駆使して出来るだけ近接しての剣刃一閃で
膂力に物を言わせて叩き斬る
多少の傷など構わず攻撃する事を優先して前へ出るとしよう

昔、酒に無粋は以ての外と言った男が居たが……
お前達は存在自体が此の世に於いての無粋というものだな
早々に退去するがいい


美星・アイナ
私はまだお酒は飲めない歳だけど
歴史ある銘柄の名に泥を塗る奴らは許せない
此処から先には行かせないよっ!

ペンダントに触れてシフトする人格は
闇を裂く破邪顕正の刃携えた戦姫
『此処から先には、行かせませんよ(ニコッと笑い)』

剣形態の黒剣を構え【2回攻撃】で【なぎ払い】
足元を【スライディング】で掬ったら勢いをつけて【踏みつけ】
鋼糸を首元に巻き付けながら歌うようにユーベルコード詠唱
青玉の矢の【一斉発射】に合わせて黒剣で【傷口をえぐる】様に突き刺し

こんな姑息な真似をした奴は今頃どうしてるかな
夜明けと共にやってくる時どんな顔してるかな

のんびり構えてるのも今のうち、よ(くすくす)

※アドリブ、他猟兵との連携可能


鞍馬・景正
──恥ずかしながら酒には目が無い故、此度の一件は見過し難し。

鞍馬景正、全力で護衛を仕りましょう。

◆準備
事前に杜氏殿へ天下自在符を示し護衛を申し出。
誰も近寄らせぬようにして頂き、憂いなく斬り合える環境にしておきましょう。

◆戦闘
刀を傍らに暗夜に潜み、忍びの気配があれば問答無用で斬り捨てる。

稽古で汗を流し、繚乱する月を盃に写し、玲瓏たる一杯を喫したことはあるか?

有って毒を盛る罰当たりは斬る。
無いというならあの美しき味を知らぬ不幸に同情しつつ斬る。

【暗視】で敵の攻勢を【見切り】、確実に一体ずつ【鞍切】で仕留めて参ろう。

……しかし、酒蔵の中で一滴も飲めぬとは。忍耐の極みを求められる任務ですな。



●月下の轟
 剣戟の音が聞こえる。
 それなりに広い敷地内で既に戦闘が開始されているのだろう。猟兵たちも手分けして警固にあたっている。今この場にいる者たちは、特に入り口付近を哨戒する面々だ。
「かたじけない」
「しばらくの辛抱だ。必ずや事態を平定してくる」
 天下自在符の効果は覿面だった。それでも鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は杜氏に詫びを入れ、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)はおとなしく待機しているように進言する。今宵戒道酒造に残っている人員はすべて、敷地内の片隅にある離れへと避難している。元々火災に備えて作られているそこは堅牢なつくりをしている。閂をかけて息を潜めていれば、妖魔忍者を掃討する間くらいは耐えられるだろう。
 しかし狭いところに押し込めてしまうことは事実だったから、景正の表情が曇るのもむべなるかな。エンジ・カラカ(六月・f06959)が前進を促すように軽く背を叩く。飄々としたエンジの横顔が夜にくっきりと浮かび上がる。
 嵯泉が眉根を寄せて低く呟く。息が少し白い。夜は長いが、この冷え具合では流石に眠くはならなさそうだ。
「オブリビオンと化した事も勿論だが、妬心で他に害を成そうという性根の歪みは放置出来ん。……酒にも少しばかり用がある事だし、な」
 鋭い眼光に少し楽しげな色が宿ったのを見遣って、美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)も頬を綻ばせる。赤い髪が夜風に揺れた。
「うん、そうだね。私はまだお酒は飲めない歳だけど、歴史ある銘柄の名に泥を塗る奴らは許せない」
「ええ──恥ずかしながら酒には目が無い故、此度の一件は見過し難し」
 景正が顎を引く。湛えるのは護るための強い意志。
「鞍馬景正、全力で護衛を仕りましょう」
 それが合図となったかのように、土を踏む音が聞こえた。
 妖魔忍者だ。周囲を警戒する猟兵たちに不意打ちは効かぬと考えたのだろう、やけにあっさりと姿を現した。その分数が多い。ひい、ふう、みい。エンジが指差し数えていく。
「アァ……面白そうなのが沢山いるのか」
 目の奥が笑っていない。剣呑な気配を纏ってエンジは言う。
「あーそーぼー」
「此処から先には行かせないよっ!」
 声を重ねてアイナが言い切った。それは宣戦布告であり、事実の提示でもある。誰ともなく武器を構え夜を駆ける。

「耳の良いヤツは耳を塞いでおいた方がいいかもなァ……仲間の邪魔するほど悪いヤツじゃないンでねぇ」
 そんな風にエンジが視線を流したのは猟兵たちだ。忠告の成果は如何ほどか。
 それもお構いなしに高らかに、響き渡るは激しい咆哮。
 鼓膜を直接破るような叫びだった。まともに食らった妖魔忍者が膝をつく。眩暈で頭を抱えるような覚束なさ。三半規管がやられたのかもしれない。
 それでも他の忍者が地を蹴った。勢いだけで突貫してくる敵を、エンジは落葉の如くにひらり躱す。それでも視線はずっと敵に注いでいた。瞼の裏に焼き付ける。盗めるものはすべて盗むくらいの心意気。
 エンジは報告するするように忍者の耳朶に唇を寄せる。
「自慢の足、素早い足。狼の足は忍者にも負けないサ」
 別れの挨拶。そしてそのまま腕を忍者の背に回す。勢いのまま前のめりになる敵に、肘を叩きこんだ。後頭部に強い衝撃を受けたなら、あっさりと地に伏せる。
「ニンジャって素早いンだよなァ」
 しかし最初にエンジが機動力を損ねたために、参考に出来そうな忍者は残っていない。
 更に襲い来る忍者には容赦なく、二回の多段攻撃で昏倒させた。
「ばらばらで来なきゃよかったのになァ。この通り、ばらばらだから倒される。一人は危ないもンなァ……味方と協力はしておこうなァ」
 その言葉を証明するように、禍断の刃がエンジに向かって来た忍者を背から突き刺す。そう、こんな風に連携しなきゃね。

 嵯泉が刃を引き抜いたら鮮血が噴き出た。
 鉄に似た匂いが鼻を突くが意に介さない。周囲を見渡す。このあたりで戦闘をこなす限り、屋内の酒樽には何の問題も出まい。
 そう理解するからこそ、敵のこれ以上の侵入は許さない。あらかじめ杜氏らに酒の質を下げずに済むよう、酒蔵内での注意点も確認しておいたのだ。
 敵が発見でき次第、速やかに片を付ける。それが己が任務だと正確に把握した。油断はない。
 妖魔忍者が続けざまに襲い掛かってくる。災禍を断つ刃を構え、低く腰を落とす。即座に素早く斬り結べるように。
 疾く。大上段から袈裟懸けに刃を振り下ろした。大きな間合いを有するそれは妖魔忍者に避けられる。
 しかし身を翻した敵の隙を見過ごさない。一歩踏み込む。懐に入ったその瞬間、剣閃が迸った。膂力に物を言わせて力任せに叩き斬る。骨をも断つ一撃。地に倒れ伏す様を冷ややかに眺める。
 他の妖魔忍者も黙っているわけではなかった。
 夜を照らしたのは禍々しい揺らめき宿す鬼火だ。それが一陣、嵯泉に襲い来る。肌の焦げる嫌な匂いがした。が、それで怯むほど軟弱なつもりはなかった。
 一転、最も手近にいる妖魔忍者に肉薄する。前へ。得物の柄に籠める力を強め、そのまま刃を奔らせる。
「昔、酒に無粋は以ての外と言った男が居たが……」
 嵯泉の柘榴の隻眼が夜を見据える。
「お前達は存在自体が此の世に於いての無粋というものだな。早々に退去するがいい」

 アイナはペンダントに触れる。一度瞼を下ろす。移行する人格を思い描く。来る。無限大の鍵を手に、眠る自分を呼び覚ませ。
 目を開けた時には、闇を裂く破邪顕正の刃携えた戦姫が顕現している。
「此処から先には、行かせませんよ」
 くすり、微笑みが夜に溶ける。赤水晶の珠が柄に宿る黒剣、その切先を妖魔忍者に差し向けた。
 馳せる。薙ぐ、払う。二段の剣筋は敵の脇腹を深く抉った。その鋭さに呻く様を一瞥し、続けざまに別の妖魔忍者へと意識を向ける。
 大振りの忍者刀を躱し、アイナはその足元へ滑り込んだ。その動きで体勢を崩しかけた敵へ贈るは、星のスタッズ瞬く一蹴だ。
 さらに攻勢は続く。飛び退く瞬間に鋼糸を首に巻き付けておいた。捉える。手繰り寄せる。射程圏内。
「悲しみの雫達よ、蒼穹に集え! 汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……」
 詠唱は朗々と。剣を突きつけた敵陣へ降り注ぐはサファイアの驟雨。
「さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!」
 抉る。穿つ。叩きつける。青に染まる夜の中で尚、アイナは妖魔忍者の肩口に刃を突き刺した。
 ――こんな姑息な真似をした奴は今頃どうしてるかな。
 ――夜明けと共にやってくる時どんな顔してるかな。
 そんなことを考えるのはちょっぴり意地悪だったかも。
「のんびり構えてるのも今のうち、よ」
 その笑んだ声は、果たして誰かが拾っただろうか。

 この場には巻き込んでしまう誰かは存在しない。いるのは猟兵とオブリビオン、そのどちらかだ。
 景正は獲物の鍔に指をかけ、暗夜に気配を落とし込んだ。派手に戦う猟兵もいる分、景正の存在感は良い意味で希薄になっていく。
 建物の影、曲がり角。そこで身を潜ませていたならば、妖魔忍者が駆けてくる気配を察知した。ぬかりはない。
 ぎりぎりまで待つ。耐える。而して目の前に飛び出してきた瞬間、頸動脈を一気に貫いた。鞍馬の名を戴くそれは月光よりも冴えた一閃を、敵に見舞う。
 恐らく一撃を受けた妖魔忍者はその事実すら判別出来まい。その前に倒れたからだ。地に、赤黒い池が作られていく。
 返事がないのを知っていて、景正は声を紡ぐ。
「稽古で汗を流し、繚乱する月を盃に写し、玲瓏たる一杯を喫したことはあるか?」
 端然たる呟き。戦場に似つかわしくないくらいの静寂が落ちる。
 有って毒を盛る罰当たりは斬る。
 無いというならあの美しき味を知らぬ不幸に同情しつつ斬る。
 ひどく明快単純な摂理を突きつけるようにして、眼前に横たえたのは静謐なる戦意だ。瑠璃色の眸は事実を、現実を見据えるばかり。故に惑いは、ない。
 僅かに視界の隅を揺らした影に、景正は視線を走らせる。逃しはしない。一歩、また一歩。距離を詰めていく。
「……しかし、酒蔵の中で一滴も飲めぬとは。忍耐の極みを求められる任務ですな」
 再び刀が閃くまであと僅か。
 羅刹の男は些か穏やかに、苦く声を零した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
【月夜・玲(f01605)】
月夜さんと参加です


戒道酒造ですか…?
僕は寺育ちなので縁は無かったですね

正直な話。自身の家系図について自分はあまりにも無知なので…
商家の方とは言えど、何かしらの所縁はあるのかもしれませんね

ですが無関係の間柄だとしても、民草の為に惜しみ無く働く。それが僕の、侍帝猟兵としての矜持です
助太刀致しましょう

◆戦闘
気合い、暗視、視力で夜番
目立たない+変装で下男に化け、聞き耳で襲撃を待ち構えます
隠密行動は、忍法瞬断が一番確実ですよね
敢えて受けて立ちましょう

毒耐性、激痛耐性、覚悟を込めたフォースオーラを纏い、オーラ防御で忍者刀を受け止めグラップル
達人の智慧、発動!!
大威徳袖釣込腰!


黒蛇・宵蔭
酒蔵の窮地となれば、参じぬ理由がありませんね。
勿論あとの楽しみが一番重要とは言いませんが。

各個撃破よりも奥へ向かわせぬ足止めを目的に動きます。
数があるならば、建物の造りを利用した戦闘を。やや狭い場所の陰から奇襲を仕掛けます。
忍相手に何処まで通用するかはわかりませんが。
目つぶしで相手の戦力を削ぎ、傷を深め撃破のお手伝いを。
弱っている相手ならば、遠慮無く片付けさせていただきます。

咎力封じは、忍法鬼火を封じることを目標に使用。
基本は鉄錆による武器での対応。
そちらもなかなかセンスのある武器をお持ちですが、その骨は何処まで頑丈なのでしょうね?
さ、鉄錆。到底美酒とは言えませんが、馳走しますよ。


雷陣・通
父ちゃんが言っていたぜ! 仕事の後のビールは最高だってな!
だから、酒は大事なものなんだろう?
それに毒を盛る奴は俺がライトニングにぶっ飛ばす!

【SPD判定】

忍者に対してスカイステッパーと残像を中心に立体的に動き回って翻弄、隙を見てカウンターの二回攻撃で仕留めるぜ。
狙うは腹への正拳から顎をかち上げる掌底のコンボ
正中線二段突き(ライトニングダブルストライク)

敵のアクションに関しては先制攻撃でイマズマカッターや衝撃波(ライトニング波)で牽制して見切って回避。

時にはスライディングで相手の股下をくぐってから空中を蹴って三次元に動くぜ。
小さいからって甘く見るなよ!!


月夜・玲
【戒道・蔵乃祐(f09466)】と参加

え、これ親戚かなんかのあれ?
違うの?まあ苗字が被るなんてあり得る事だしね…
でもこれも一つの縁だよね、こういう縁も楽しい限りだね

まあさておき、無関係な人を困らせちゃダメだけどね

●戦闘
目立たない格好をして敵の襲撃を警戒
忍者が出てきたら戦闘開始
まずは遠距離から戒道さんを援護しながら戦闘
【高速演算】を起動
おなじ斬撃による衝撃波なら、射程と手数の多い私の方が上のはず
『2回攻撃』で連続して衝撃波をおみまいしてあげる
相手の衝撃波は『第六感』で感じて回避若しくは相殺するよ

それじゃあ剣戟による遠距離戦闘を始めようか
私の研究成果で翻弄してあげるから、覚悟しなよ



●静謐の護
「え、これ親戚かなんかのあれ?」
 屋敷の門、看板に書かれた文字を見て瞬いた月夜・玲(頂の探究者・f01605)が問うたなら、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は厳つい面差しで首を捻る。
「戒道酒造ですか…? いえ。僕は寺育ちなので縁は無かったですね」
「違うの? まあ苗字が被るなんてあり得る事だしね……」
 つまり本件の酒蔵と家名が同じなのは偶然の一致。率直に言えば蔵乃祐とて自身の家系図について詳しいわけではない。商家とは言えど、何かしらの所縁はあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
「ですが無関係の間柄だとしても、民草の為に惜しみ無く働く。それが僕の、侍帝猟兵としての矜持です」
 豪壮たる見目に似合わぬ丁寧な口調。そこには確かな意志が感じられる。
「助太刀致しましょう」
「うん。これも一つの縁だよね、こういう縁も楽しい限りだね」
 玲が見据えるのは遠く、既に血戦を開いている一端。猟兵と妖魔忍者との戦いは始まっているのだ。すぐこの近くも剣戟の音が立つだろう。
「まあさておき、無関係な人を困らせちゃダメだけどね」
「仰る通りです」
 傍で黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)が興味深げに顎を引く。深紅の双眸は夜を見通すとばかりに真直ぐだ。
「酒蔵の窮地となれば、参じぬ理由がありませんね。勿論あとの楽しみが一番重要とは言いませんが」
「ああ! 父ちゃんが言っていたぜ! 仕事の後のビールは最高だってな! だから、酒は大事なものなんだろう?」
 更に隣で闊達に意気を高めるは雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)だ。玲や蔵乃祐、宵蔭の物腰が落ち着いているから尚更際立つのだろう、通の明るさはこの場の空気を照らすよう。
「それに毒を盛る奴は俺がライトニングにぶっ飛ばす!」
「ええ、ぶっ飛ばしましょうか」
 揶揄い気味に宵蔭が告げる。猟兵たちの視線の先、蠢く影がある。
 そう、戦いは、始まっているのだ。

 藩主の庇護の元、戒道酒造の隆盛は著しい。門構えが壮麗なだけに、かえってその周囲は身を潜めやすかった。
 事前準備と技能を駆使して下男に成り代わった蔵乃祐は、一見下働きに徹するような見目でないにも関わらず、酒蔵に実に溶け込んでいた。
 その様子をやや離れた場所で玲が見遣る。目立たない格好をして息を潜め、敵の襲撃を慎重に警戒する。
 あくまで何気なく周囲を見渡している風情の蔵乃祐の視界に、僅かにひずみのようなものを感じる。動物の類ではない。隠しきれない殺気を肌で感じる。
 しかし此方からは手を出さない。
 只管に待った。
 妖魔忍者の技のひとつ、忍法瞬断は、接敵しなければ放てないという隠密としては致命的な弱点がある。それを睨んで待ち構える算段だ。聞き耳を立てる。微かな衣擦れの音。来る。もうすぐ来る。
 凡庸な下男の振りをして待ち続けた蔵乃祐の身に、ふと、眼にした者を震わせるような凄みが宿る。
 堅固な身体、金剛の如し。鍛え抜いた体躯で耐える。毒にも激痛にも耐え抜く覚悟を据える。目にも留まらぬ忍者刀の一撃を一歩踏み込んで組み受けた。境目の霊光が爆ぜる。冷静に見定め受け止めたその動きこそに達人の智慧が行き届き、応える形で忍者刀が刃毀れする。
「大威徳袖釣込腰!!」
 明王の名を戴くその技、筋骨隆々の体躯に似合わぬ素早さで釣り上げる。背負う勢いで腰に乗せた後に一気に前へ投げ飛ばした。
 為すが儘の忍者は地に叩きつけられ、鈍い音を立てた。首の骨が折れた音だ。
 その様を見て竦んだ忍者がいたことを、玲の冷静な観察眼は見過ごさない。後方で戦局を見極めていた玲が動いたのは、まさにこの瞬間だった。
 彼奴が蔵乃祐を襲う前に片付けよう。忍者が特殊な気流を身に纏った姿を捉える。
「I.S.T起動。サポートモード、敵行動予測開始」
 演算が開始される。忍者が用いるのは己と似た属性を持つもの。即ち、斬撃による衝撃波という意味では同一。しかし射程と手数の多い自分の方が上のはずだと見積もった。
 照準を定める。
 迷いはない。
 忍者がこちらを認識する前に鎌鼬に似た衝撃が疾走する。それが到達する直前にもう一弾。避ける暇どころか反応する隙も与えずに、速くも深くに斬り裂いた。
「まだいますね」
「ああ、つられて出てきてもらえたなら僥倖だ」
 倒れ伏す忍者を一瞥した蔵乃祐の声に、玲が視線を走らせる。続けざまに忍者を片付けるふたりの姿に、狼狽を隠せない他の忍者が息を呑んでいるのがわかる。
「それじゃあ剣戟による遠距離戦闘を始めようか。私の研究成果で翻弄してあげるから、覚悟しなよ」
 それは宣告。
 逃さない。すべて、狩っていこうじゃないか。

 酒樽が保管されている一室へと急ぐ妖魔忍者の眼を鉄鞭が削ぐ。
 宵蔭による奇襲だ。有刺鉄線を思わせる鞭は血を吸い、真紅に染まり往く。死角から襲い来た一撃の後、視野を奪われたものの叫びが響く。それに忍者らの反応が一瞬遅れた。一瞬だけだが、それだけで十分だった。
 奥に進ませぬよう足止めを意識した動き。酒蔵には基本物陰になるような場所はないし、あってもそれが酒樽だとすればその近辺で戦うわけにもいかない。故に、月明りだけが仄かに差し込む通路にて相対することとなる。
 幾ら忍びが相手とはいえ、こうしてひとたび立ち位置を定めてしまえば、却って返り討ちにするのは容易だ。向かってくる敵へ打ちつけ、絡め捕り、緩く歪曲した刃で首を狩る。
 手枷や猿轡、拘束ロープの投擲こそ完全に捕縛するに至らないが、それは相手の技との相性故のこともあろう。
 ――またひとり。床に転がる骸が増える。弱っている相手を片付けることに躊躇はない。
「そちらもなかなかセンスのある武器をお持ちですが、その骨は何処まで頑丈なのでしょうね?」
 忍者刀を一瞥し、宵蔭は嫣然と告げる。
 絶たれる覚悟はあるか。
 折れる絶望を知っているか。
 あってもいい。なくてもいい。どのみち全て潰える未来しか存在しない。
「さ、鉄錆。到底美酒とは言えませんが、馳走しますよ」 
 血に塗れたそれはより深く赤が滲んでいく。
 それはきっと闇より昏き、深淵に似た色。
 
「チッ、すばしっこいガキだ……!」
 妖魔忍者が苦々しげに吐き捨てるのは、通が軽やかに宙を蹴ったその最中。立体的な動きに残像が滲むも、鬼火はその影すら焼くことが出来ない。
 一気に肉薄すれば忍者が瞠目する様も丸見えだ。腹へ正拳を叩きこむ。
「正中線二段突きッ……!」
 軋んだ音が鳴る間に、そのまま顎を掌底で弾くように突き上げた。衝撃で吹っ飛ばされた忍者はそのまま意識を失う。
 しかしその隙を突いて他の忍者が疾駆する。しかしその前突の勢いを逆手に取り、通は足下へ一気に滑り込む。振り向きざまに忍者刀を突き立てられたところに既に通の姿はない。再び宙を躍るように駆け、背後に回る。手刀で首裏を打てば昏倒した。
 迫り来る追撃には棒手裏剣を射出する。雷電が迸る。その間も常に戦場を走り回り、その動きで敵陣を翻弄し続ける。
 足は止まらない。
 止まっていられないからだ。
「小さいからって甘く見るなよ!!」
 その声は溌溂と響く。
 通は敵に向き直る。そして、武器を上段から振り翳した。
 戦いの夜はまだ長いようだ。明けるまで、今暫く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ツーユウ・ナン
◆神代の昔からこの国の食糧の象徴であった米。その米より醸されし酒は人々の努力と研鑽の賜物であり、神聖な供物じゃ。それを毒で汚し、人を害するなど断じて見過ごせぬわ……。

酒を守り、酒蔵も守る。
可能ならば予め蔵の主に面会し、天下自在符を示して、主や杜氏を始めとする蔵人の避難と、猟兵の配置をしたい。

◆戦闘/UC
・蔵に侵入した敵へ【気合い】と共に練った氣を打ち込み、オーラの鎖で外へ引っ張り出す
「呀ヤーッ!」
・鎖の緩急を操って撹乱し、機を見て引き込み格闘へ【グラップル】【怪力】
・斜にかわし側面から靠撃【吹き飛ばし】【範囲攻撃】
・斬り付けて来たら頂肘【カウンター】
・震脚を響かせ重い突き
「哈ハッ!」


イリス・ウィルター
【イデアール・モラクス:f04845)】
人を妬む気持ちは何処にでもあるもんだ。だが、だからって相手を潰すなんてやっちゃいけないだろうに。
オブリビオンもそうだが、美味しい酒が楽しめなくなるのも寂しくなる。
絶対に守り抜こう、それで、皆で酒を飲むんだ。

相手は忍、なら、こちらも早さを競おう。
バトルアックスは使わずに持っている妖刀を主に使う。
背後はイデアールが守ってくれるから気にしなくてもいい。
着ている物は軽くて早く動くことが出来る分、薄いので出来るだけ相手の攻撃を避け、隙をついて斬る、攻撃を避けるのを繰り返す。
攻撃が当たれば生命力吸引を使用して、相手を弱らせていく。


イデアール・モラクス
イリス(f02397)と共闘

フン、酒の味も分からんオブリビオンが!
イリス、コイツらは生かして価値など無い…皆殺しにするぞ!

・行動
前衛をイリスに任せ、後方から攻撃魔法で圧倒する。
「速さ自慢のようだが…避けきれるかぁ?」
『高速詠唱』『全力魔法』で鏖殺魔剣陣を行使、無数の魔剣を一斉に放ち忍者を駆逐する。
「速さ自慢を殺すにはなぁ、飽和攻撃なんだよ!」
『範囲攻撃』で魔剣を広く展開、避けきれない程の量を殺到させる。
更に命中した魔剣で『串刺し』にして刃に『属性攻撃』で雷属性を纏わせ体内から電撃を通して『傷口を抉る』
「痛いかぁ?苦しいかぁ?死ねば楽になるぞぉ…アーハッハッハ!」


壥・灰色
蔵を守るなら、範囲攻撃や炎の術式は使わない方がいいだろう
任せて欲しい。おれは、周りに被害を出さない戦い方も得意だ
酒蔵の各所を駆け、遊撃を行う

壊鍵、起動

敵は発見次第、有無を言わさず殴打、破壊する
胸の中央にある魔術刻印から、全身の魔術回路へ魔力が回った結果、生まれるのは「衝撃」
それを四肢に宿し、敵を拳打と蹴撃で破壊する
それがおれの基本的な戦闘方法だ
地を蹴る脚から、衝撃を発露
その反作用により十数メートルを高速、二歩で詰め
オーバーキルになるぐらい拳を叩き込む
消えたおれがいきなり目の前に現れたようにでも見えたかもね
意表を突くのは得意なんだ

さあ、どんどんいこう
終わったあとの食事が楽しみだしね


ルヴィリア・ダナード
お酒が堂々と飲めるお祭りをお祭りを…!
こんな素敵なお祭りの大事なお酒を狙うなんて許さないよ。
神様も頂くお酒に毒だなんて!
忍者と云うものを初めて見たけど噂通り姑息なのね。
お仕置きは何が良いかしら?

咎力封じで攻撃力の低下、あわよくばユーベルコードを封じてあげる。
姑息な忍者さんにはお似合いな姿じゃないかな?
手枷、猿轡、拘束ロープ…お好みはどれかな?
危ないユーベルコードを沢山お持ちのようなので何回でも繰り返してぐるぐる巻きにしてあげる。
お酒を狙うようなことがあれば率先して守る。
神様への贈り物、私が守って見せるわ。



●戦局の灯
「蔵を守るなら、範囲攻撃や炎の術式は使わない方がいいだろう」
 見取り図に目を落としながら壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が言う。酒蔵の各所を駆け、遊撃を行うと申し出た。
「任せて欲しい。おれは、周りに被害を出さない戦い方も得意だ」
「わかった。ではそちらは頼む」
「その分殲滅はこちらが受け持ってやる。任せるがいい」
 イリス・ウィルター(刀の技を磨くもの・f02397)が目礼したなら、その隣でイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)が蠱惑的に笑んだ。
 短い打ち合わせを終える。
 それぞれの役目を再認識すれば、あとは身体を動かすだけだ。雪崩れ込む多数を相手取ることが得意な者、周囲への損害を抑え細やかに立ち回ることを得手とする者。適材適所とはよく言ったもので、己が役割を把握すれば自ずと良い結果が導かれる。この場にいる猟兵たちはそのことを熟知している。
 そこへ席を外していたツーユウ・ナン(粋酔たる女用心棒・f04066)が戻って来た。萌黄の双眸をぱちりと瞬いたルヴィリア・ダナード(嘘つきドール・f01782)が問う。
「どうだった?」
「問題ない。ちと狭いところに押し込めているのは面目ないが、あともう少し辛抱してもらおう」
 酒を守り、酒蔵も守る。そう心に決めていたツーユウの表情には幾らか安堵の色も滲んでいただろう。それは避難させていた人々の安否確認が済んだが故。主や杜氏を始めとする蔵人とあらかじめ顔を合わせた時、気遣うツーユウの言葉にほっと息を吐いていた様を思い出す。他に心を配っていた猟兵らと不自然にならない程度に周囲を警戒しているが、酒樽がある一帯からは離れているため問題はなさそうだ。
「神代の昔からこの国の食糧の象徴であった米。その米より醸されし酒は人々の努力と研鑽の賜物であり、神聖な供物じゃ。それを毒で汚し、人を害するなど断じて見過ごせぬわ……」
「お酒が堂々と飲めるお祭りをお祭りを…! こんな素敵なお祭りの大事なお酒を狙うなんて許さないよ。そうそう、神様も頂くお酒に毒だなんて!」
 ツーユウの声は真摯だ。眼の底で怒りに似た熱が沸騰する。続いたルヴィリアもご立腹だ。
「人を妬む気持ちは何処にでもあるもんだ。だが、だからって相手を潰すなんてやっちゃいけないだろうに」
 イリスが思い馳せたのは、妖魔忍者の雇い主である羽邑屋のこと。既にオブリビオンと化しているその存在に、薄ら空虚なものを感じ取ってしまう。
 一度目を伏せ、仲間たちに向き直る。
「オブリビオンもそうだが、美味しい酒が楽しめなくなるのも寂しくなる。絶対に守り抜こう、それで、皆で酒を飲むんだ」
「ああ」
「勿論じゃ」
 灰色とツーユウが首肯を返す。ルヴィリアは憤然と視線を投げる。忍者の影が、ちらり揺れる。
「忍者と云うものと相対するのは初めてだけど噂通り姑息なのね。お仕置きは何が良いかしら?」
 挑むような様相の声。イデアールが迫り来る敵の気配を察し、傲然と言い放つ。
「フン、酒の味も分からんオブリビオンが! イリス、コイツらは生かして価値など無い……皆殺しにするぞ!」

 誰の侵入も許しはしない。酒樽が安置されている一室への道を、ツーユウはその長身で塞ぐ。
 丹田に熱を集中させる。氣を練り上げて拳に纏わせる。突破すべく走り来る妖魔忍者の懐へと叩きつける。打ち抜いた箇所から霊光の鎖がじゃらりと揺れた。そのまま力任せに屋外へと引っ張り出す。
「呀ーッ!」
 碌な反応も出来ず忍者刀だけを構える忍者に、鎖を引き、そして緩ませ撹乱する。強く引きつけられた際にたまらず忍者刀が土に落ちた。
 それは猛攻の兆しに過ぎなかった。地面を力強く踏みつける。肩口を狙い掌底を放つと、鈍く砕ける音がする。
 反撃を試みようとする忍者の斬撃を斜めに躱す。側面に回り、肩に体重を乗せて突進をかます。そのあまりの勢いに、近くの忍者まで巻き込んで吹っ飛ばした。
 まだやれる。
 そう如実に語る熱い眼差し。他方から斬撃による衝撃波が飛んでくる。間一髪で避けたら衣が少しだけ余波で破れる。が、その勢いのまま一気に肉薄し頂肘を顎下に食らわせる。敵は昏倒する。
 ツーユウの気迫に圧されたのだろう。オブリビオンである妖魔忍者らの間にすら、惧れのような何かが宿る。
 しかしそれを見過ごすほど、龍の女は甘くなかった。
 更に強く強く地を踏みしめる。震脚が響く。地面が罅割れるかの如き圧力のまま馳せる。
「哈ッ!」
 重い一撃。また、どうと音を立てて忍者が倒れ伏す。

 喩えれば青と赤。静と動。一見対極に在ると思われるイリスとイデアールだが、だからこそ凸凹が噛み合っているのかもしれない。
「相手は忍、なら、こちらも早さを競おう」
 イリスが構えたのはバトルアックスではなく妖刀。涼やかな刀身に月光が映り込むと、仄かな紅色が煌いた。間合いを測ろうとする妖魔忍者へイリスが投げる視線は只管に怜悧だ。
 背後はイデアールが守ってくれている。心配はいらない。確かな信頼を携えて一歩、前に出る。
 一瞬雲が陰った。月を覆い闇が降り注ぐ。
 切先が下がったその玉響。
 妖魔忍者が轟然と走る。イリスの喉元を刃が抉ろうとする最中、当のイリスは一段深く踏み込んだ。脇下から鋭く斬り上げる。
「まだ終わらないよ」
 敵の血痕から染み渡るようないのちの熱。それを己が体力の糧とする。忍者の攻撃を躱し続けるためにも、生命力の吸引は現状に即していた。
 地を蹴ったイリスが一旦忍者から距離を取ったところで、指を鳴らしたのはイデアールだ。
 俊敏で統率の取れた動きをする妖魔忍者を睥睨し、爪弾くは細やかな詠唱。
「速さ自慢のようだが……避けきれるかぁ?」
 忍者らが気配を察知し逃れようとした時にはもう遅い。
 迸る魔力は宙に数多の魔方陣を施す。広く展開されたそれから射出される幾本もの魔剣。避ける隙間など存在しない。圧倒、殺到――どう言い表すべきか。
 仇なす悉くを串刺しにする末路が眼前に訪れる。
「速さ自慢を殺すにはなぁ、飽和攻撃なんだよ!」
 イデアールの指先が横一文字に薙がれた時、一斉に刃が忍者たちを斬り刻む。真紅が散る。
 貫き、突き刺さったそのままで剣に奔るのは雷光だ。ただ痛めつけるだけでは足りぬとばかりに電撃を届かせた。
 哀れ忍者らは感電し、身体の内部から焼き爛れていく。
「痛いかぁ? 苦しいかぁ? 死ねば楽になるぞぉ……アーハッハッハ!」
 哄笑を背に、イリスは再び地を蹴る。
 残った命の灯火を根絶やしにする時間だ。

 遠く、殺戮の気配がした。夜は明けない。まだ朝は遠い。
 恐らく単純な技の相性のためだろうか。猿轡と高速ロープこそ逃れられたが、妖魔忍者を手枷で後ろ手に縛り上げることに成功する。
 お好みはこれだったんだね? なんて嘯くルヴィリアの面差しには静かな怒りが湛えられていた。
 神から背くものを倒すためだけに作られた機械人形であるルヴィリアにとって、お神酒を損なう悪意を企てていただけで許しがたい。
 すぐに仲間がやってきて、捕えた妖魔忍者らを処分することだろう。そのためにも次々と、何回でも繰り返し捕縛を重ねる。
「これで少なくとも忍者刀は使えないね。姑息な忍者さんにはお似合いな姿じゃないかな?」
 夜はまだ濃紺に沈んだまま。月の光が冴え冴えと、ルヴィリアの淡い銀髪を浮かび上がらせる。
 攻撃ではなく捕縛に専念した女の健闘により、酒を直接狙うような輩はあらかた駆逐出来たはず。
「神様への贈り物、私が守ってみせるわ」
 凛と前を向いて呟いた声は、闇に決して呑まれはしなかった。

「壊鍵、起動」
 それは開幕。序曲に過ぎない。
 胸の真ん中、魔術刻印が迸るは魔力。四肢の隅々にまで至る魔術回路は力そのものを生む。『衝撃』を戴いて敵を拳打と蹴撃で破壊する。それが灰色の戦闘スタイルだと、漲る魔力のひかりこそが知らしめる。
 躊躇はない。
 地面を蹴った足先にまで衝撃が満ちる。
 妖魔忍者と相対した灰色は疾駆する。十数メートルに及ぶ距離を僅か二歩で縮める。真直ぐにぶっ倒す、そう告げんばかりの鋭い眼差しが至近距離まで近づいたことを、恐らく当の忍者は認識してはいまい。
「意表を突くのは得意なんだ」
 忍者が接近を悟った時には、拳がその顔面にめり込んでいただろう。
 怒涛の拳打はいっそ正確な数を刻むパーカッションのよう。そのひとつひとつに確かな意味と重みを乗せる。単純で余計な装飾がないからこそ、只管に抉り穿つ衝撃。
 最後の一撃は鳩尾を捉えた。既に体力の欠片も残らない忍者の残骸が、力なく地に転がった。
 そのあまりの連撃に、僅かに忍者らが吐息を食んだのを知る。しかしそれを灰色は意に介さない。顔色一つ変えずに一歩、また一歩と前に進む。止まることなどない。
「さあ、どんどんいこう。終わったあとの食事が楽しみだしね」
 灰色の髪、襟足のところが夜風に吹かれ、流れた。
 その鈍い耀きは星の色にも似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
※絡み、アドリブ歓迎

祀りは本来
神に捧げる為の祭事

収穫と天候に感謝し
人々の活気や喜びが
神への賛辞となる

其れを個人の瑣少な遺恨や私怨で穢そうとは
藩主のみならず神に対する冒涜ともなるでしょう

読書で夜を徹して縫に怒られる日々ですから
夜勤は得意ですよ

皆と配置を相談し分担
陽動的に見回る者と鳴りを潜める者とで誘き寄せ
事を静かに治めることが叶えば
町の人々を不安にさせずに済むでしょうか?

草踏む音、空気の温度変化等へも
第六感を研ぎ澄まし
猟兵達と目線や合図で密に連携
奇襲は見切り
味方へもオーラ防御

流星の如く符を放ち
数が多ければ
範囲攻撃、二回攻撃を駆使して呪縛

さぁ
間もなく夜明け
黒幕を討ち
明るい朝を
祭りの幕を開けましょう


香神乃・饗
ここが酒蔵っすか、見事な蔵っす!
まだ呑めないっすけど、何年かあとの楽しみに護っておいて損はないっす!

灯りをできるだけ見ない様にして暗がりに目を慣らしておくっす。
人が少ない場所で殺気を隠し地形を利用して隠れて警備につくっす。
地形を利用して目立たない様に剛糸を張り巡らせ、敵がひっかかったら鳴子でも鳴るようにして見張るっす!

敵の攻撃は剛糸で敵をからめとって敵を盾にするっす!
火が蔵に燃え移らない様に鬼火を苦無で打ち落としておくっす!

香神写しで複製した苦無を投げフェイントをかけ
死角から近づいて苦無で暗殺を狙うっす!
数が多いなら剛糸でからめとって動きをとめて援護を待つっす!


境・花世
美酒はどの世界にあっても財産だと思う
舌を蕩かし誘うは地上の楽園――

つまり、良いお酒をだめにする輩は
絶対 許されないってこと

“再葬”

一人でも人手を増やして警備
勘の良さを活かして不穏な気配を察知したら
近くの猟兵仲間に知らせつつ、
扇ひらめかせて範囲攻撃で屠ろうか

血の匂いで蔵を穢したくはないから
花びらで静かに呼吸を塞いであげる
花見酒もいいなあ、まだ少し先だけど
なんて笑いながらも手は緩めずに

戦いの最中も一体に固執せず視野は広く
侵入しそうな敵や一般人を襲う敵を見つけたら
早業で追跡して潰していこう

――ああ、醸されたお酒の、得も言われぬ匂いがする

任せて! 必ず守(って飲んでみせ)るから!


※アドリブ・絡み大歓迎



●対峙の境
 妖魔忍者との交戦も佳境に入っている。
 多くの猟兵が集ったこともあり、そしてその誰もが驕らず敵へと向かったため、着実に戦局は猟兵たちの側へと傾いていく。
 そろそろ、終いにする頃合いか。
「美酒はどの世界にあっても財産だと思う。舌を蕩かし誘うは地上の楽園――」
 陶然と嘯く境・花世(*葬・f11024)は、その右目のみならずかんばせ自体に笑みの花を咲かせる。
「つまり、良いお酒をだめにする輩は、絶対、許されないってこと」
「そうですね。祀りは本来、神に捧げる為の祭事」
 言葉を継いだ都槻・綾(夜宵の森・f01786)は視線を遠くへ投げる。流石にこの期に及んでは妖魔忍者も忍ぶつもりはないらしい。各所で激しい戦いが繰り広げられている最中に於いても、綾の物腰はあくまで柔らかだ。
 流麗なる青磁の双眸細めて思い馳せる。収穫と天候に感謝する人々の活気や喜びこそが、神への賛辞となるもの。
「其れを個人の瑣少な遺恨や私怨で穢そうとは、藩主のみならず神に対する冒涜ともなるでしょう」
 花世も首肯する。その姿を視界の隅に捉えつつ、香神乃・饗(東風・f00169)は蔵を仰ぎ見た。
「近くで見れば尚の事見事な蔵っす!」
 その堂々たる存在感よ。それこそ長い年月をかけて培われたもの。それは単純にその味だけが連綿と繋がれていたわけではなかろう。きっと文化も歓びも、色鮮やかに紡がれ続ける。
「まだ呑めないっすけど、何年かあとの楽しみに護っておいて損はないっす!」
 明るく破顔して、而して饗は戦意を抱えて向き直る。
 花世も綾も饗も、かたちは違えどこの戒道酒造を守ろうと決意を据えることには変わりない。
 さあ、終わりを始めよう。

 夜通し読書に励んでは、黒髪に紅唐着物を纏う少女人形、式神である縫に窘められることは多々あるものだから。
「夜勤は得意ですよ」
「そうなの?」
 軽やかに告げた綾へ、花世が刷いた微笑みは艶やかだ。ふたりは互いに連携を試み、逐次撃破のための共闘戦線を組むこととなる。
「事は静かに済ませましょう」
「ええ、静かに、ね」
 既に各所で乱戦が展開されているこの場で静寂を齎すにも限度があるだろうが、せめて少しでも、この酒蔵の傍に静謐を横たわらせたい。
 綾は耳を澄ませる。肌で戦機を窺おうとする。あるいはもっと別の第六感を駆使してまで、ただ只管に網にかかる哀れな敵を待った。
 一瞬、気配が揺れる。
 即座に符を成す。七星の印を組み奔らせる。奇襲を試みようとしていた忍者の額へひたり貼りついた。瞬く間にその心身の自由を奪う。符を放つ度に身動ぎひとつ取れぬ忍者がひとり、またひとりと増えていく。何も知らぬ傍から見れば奇妙ですらあっただろう。誰もが沈黙に飼い慣らされるような趣だ。
 その様子を窺っていた花世は一歩進み出る。ひらり、指先と指先を合わせて、睫毛を伏せた。
 それは鏡合わせのように。
 薄紅色の右目を持つもうひとりの花世が顕現する。いないはずなのに確かに存在するそれ。いっそ作り物めいた完璧なシンメトリーを示し、杪春を打ち開いてみせる。
 忍者らが突貫してくる様を流し見、二輪の牡丹が楚々と舞う。
 薄紅の彩がひらり、ひらり。典雅な風情で降り注ぐ。その牡丹の花弁は忍者らを包み込むようにして――唐突に散った。
 轟然と躍る花弁は刃を持たぬ。持たぬ分、あらゆる空気たる空気を埋め尽くす。異変を感じたのはある忍者。喉を押さえる。乾いた息の名残りだけが口から洩れた。掻きむしるようにしたところで、碌に呼吸は儘ならぬ。静かに、ただ静かに追い詰めていく。
 断末魔を叫ぶことすら許されずに、次々と膝を折り倒れていく忍者の姿に、綾は満足げに口の端を上げた。
「さぁ、間もなく夜明けです。黒幕を討ち、明るい朝を迎えましょう。祭りの幕を開けましょう」
 対の微笑みが咲く最中、ふと、花世の鼻腔を擽る馨りがあった。醸された酒の、得も言われぬ良い匂いがする。自然と口許は綻んでいく。
「任せて! 必ず守ってみせるから!」
 言葉の裏に重ねて「飲んでみせる」と書いてあったのは、言うまでもない。

 一方裏手の薄暗い箇所にて、饗は警戒にあたっていた。
 あらかじめ暗闇に目を慣らしておいた饗は冷静に戦場を見渡している。裏手の勝手口にあたる箇所、鋼糸を張り敵がかかるのを待つ。それは気の長い仕事だったろう。只管に身を潜めて息を殺す。待ち続ける。
 表門のほうでの戦いがひと段落ついた頃、足音が聞こえた。少しでも生き永らえようとする妖魔忍者が駆けてくる。
「ぐわっ!」
 ものの見事に叫びが上がる。鳴子が音を立てるより前に声が響いたのは、ただの糸ではなく鋼糸という切り裂く武器としての性質が先立った故だ。
 雪崩れるように崩れ落ちる忍者らを見逃しはしない。饗は苦無を構え一気に射出する。更なる悲鳴が重なった。
 それでも前のめりに向かってくる忍者もいた。鬼火を迸らせるも、饗は敢えて蔵から離れ距離を取る。万一燃え広がっては大変だ。
 かろうじて避けきった先、苦無を連射する。腕に腹に貫いて、猶も攻勢は緩まない。
 残る忍者はひとりきり。忍者刀を構え猛然と迫りくる忍者を見据える。写し映す。一つが二つ、二つが四つ、香神に写して数数の――それが数多の刃となる。
 大仰な速射に身を屈めた忍者の眼前、鋭き苦無が打ち据える。
「これでとどめっす!」
 それが終幕の合図だ。眉間を貫通した苦無が落ちると同時、忍者はその身を地面に倒す。

 月が傾き、沈む間際。
「何だこの無様さは!」
 芝居がかった声が夜を震わせる。
 護衛の忍者を引き連れて、姿を現したのは商人然とした男。勘のいい猟兵なら即座に理解しただろう。
 彼奴が此度の襲撃の首謀者たる、羽邑屋を名乗るオブリビオンだ。こうして遅れて登場するということは、きっと既に毒の仕込みが終わった状態の戒道酒造の無残さを見届けようとしたのだろう。悪趣味にも程がある。
「このまま引き下がってはおられん。儂自ら成敗してくれる!」
 それを言うのはこっちの台詞だ、そう思った猟兵もいたに違いない。
 戦いは次の局面を迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『悪徳商人』

POW   :    先生、お願いします!
【オブリビオンの浪人の先生】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    短筒での発砲
【短筒】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    か、金ならいくらでもやる!
【懐】から【黄金の最中】を放ち、【魅了】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●決戦の幕
 羽邑屋は至って余裕を保っていた。
 その風情、隙のなさ。妖魔忍者とは実力が桁違いだと猟兵たちは肌で感じる。冗談染みたオブリビオンではあるが、その強さは折り紙付きというところだろう。
 護衛の忍者もどちらかというとお飾りのようなものなのかもしれない。様式美、というやつだ。従ってそれらは猟兵たちがその気になれば即座にのし倒すことが可能だろう。羽邑屋を倒すことに集中して問題ない筈だ。
 得物は短銃だろうか。抜け目なく周囲を見渡す悪役面は、不遜にも程がある。
「さあ、倒せるものなら倒してみるがいい!」
 それってフラグなのでは――なんて考えた猟兵がいたかどうかは、定かではない。
鞍馬・景正
如何にも悪党らしき面構え――結構、斬る手が捗る。
元より慈悲を呉れてやる心算は無いが。

◆戦闘
浪人の相手を引き受けましょう。
彼奴等もオブリビオンなら、手加減は不要なのは有難い。

ここはやはり【鞍切】の打ちで相手致す。
一足一刀の間合から対峙し、攻めかかってくる瞬間を【見切り】、躱し様に一撃を馳走しよう。

当流の初歩にして奥義。
間合い、呼吸、刃筋のすべてを正確無比に基本のまま繰り出すことで鎧武者の兜から乗馬の鞍まで破断する。それが鞍切なり。

浪人を斬って余勢あれば、羽邑屋にも脇差を抜いての【2回攻撃】を仕掛けるも一興。

毒を盛って多くの人たちまで巻き込もうとした罪、千回切り刻んでも足りんが、まずは挨拶代わり。


鷲生・嵯泉
成敗、だと……?
巫山戯た事を
お前の悪業は既に明白、斬捨御免に値しよう

刃に手を滑らせ血を与え、封じた天魔を呼び覚ます
速さよりも威力重視で刃を叩き込む
生憎と浪人如きの攻撃で足を止める心算は無い
攻撃は見切りと第六感で躱せるだけ躱してやろう
研鑽の差を知るが良い
魅了には破魔と覚悟で抵抗を試みる
……ほう、猟兵を金で懐柔出来るとでも?
愚かな真似をするものだ
そんなものに惑う程度なら、猟兵勤めなどしていない

オブリビオンは見逃さん
人々の憩いと楽しみ、邪魔するものに容赦は要るまい
倒せるものなら、と言ったな
ならば覚悟するが良い、お前は倒されるものと決まっている
自らの撒いた悪業の種に破滅という実が生ったと知れ


オルハ・オランシュ
いかにもワルそうな……ううん、人は見た目で判断するなって先生がいつも言ってる
油断したらきっとやられちゃう
でも大丈夫、何とかなるよ
だって油断なんてしないんだから!
この世界では「成敗いたす」って言えばいいんだっけ?

武器が短銃じゃ、距離を取っても厳しいか
命中率を重視されたら見切りは諦めて【武器受け】
それ以外を重視されたら【見切り】を狙おう
何を重視されるのかは【野生の勘】で何となく察知できるといいな

【カウンター】は私が得意とするところなの
後悔したって、もう遅いよ
フィロ・ガスタで【2回攻撃】
この【早業】を君に躱せるかな?
狙いは先に攻撃した猟兵が攻撃した部位
傷口を広げちゃうね


ツーユウ・ナン
商人ならば人や物に対する敬重の念があってもいいものだが……、どうやらなるべくしてオブリビオンになった様じゃな。その性根、わしが叩き直してやろう。(戦闘態勢に移り、構えた手の関節をコキリと鳴らす)

じりじりと距離を詰めつつ手の内を探る。おそらく汚い手も使うだろう、敵の手勢と戦っても羽邑屋の動きは警戒せねばな。
・牽制の突き、頂肘、間合を詰めての擒拿【グラップル】で崩しや極め
・攻撃には体術【見切り】や氣をまとわせての化勁【オーラ防御】で対処
・反撃を見極めて鉄箸(装備4)による【武器受け】【早業】から攻勢
◆UC
突進から突き上げ【フェイント】、重い震脚と共に渾身の靠撃【力溜め】【鎧無視攻撃】
「哼フン!」



 ――成敗してくれる。
 そんな戯言に眉根を寄せた猟兵がいた。己に正義ありと言わんばかりの言葉に、苦いものが押し寄せてくる。鷲生・嵯泉は吐き捨てるように言った。
「巫山戯た事を。お前の悪業は既に明白、斬捨御免に値しよう」
 鍔に指をかける嵯泉を、羽邑屋は嘲笑うように一瞥する。
「そんな余裕があるのは今のうちだ。後で童の如くに泣き喚いても手遅れだぞ」
「如何にも悪党らしき言い分と面構え――結構、斬る手が捗る。元より慈悲を呉れてやる心算は無いが」
 顎を引いた鞍馬・景正の構えに隙はない。猟兵たちの照準が羽邑屋に定められていることを当の本人が気付かぬはずもないが、くつくつと笑いを噛む羽邑屋には余程自信があるのだろう。幾人もの猟兵に囲まれても、尚。
 蔵に掛けられている戒道酒造の看板に羽邑屋が唾を吐いた。下卑た振る舞いに数人の猟兵が不快感を募らせる。
「この酒蔵など所詮儂の儲けを邪魔するだけの存在よ。腐らせても支障はあるまい? 腐ったものに集る貴様らも同類よ」
「商人ならば人や物に対する敬重の念があってもいいものだが……、どうやらなるべくしてオブリビオンになった様じゃな。その性根、わしが叩き直してやろう」
 燃えるような戦意を湛えたツーユウ・ナンが羽邑屋を見据える。構えた指の関節を鳴らせば、コキリと小気味いい音がした。
 その隣でオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)も羽邑屋へ視線を向けた。
「いかにもワルそうな……ううん、人は見た目で判断するなって先生がいつも言ってる」
 とはいえ、傲慢なまでの威圧感を肌で感じ取っている。羽邑屋が口先だけの存在ではないことを、猟兵の誰もが理解している。油断したらきっとやられちゃう
「でも大丈夫、何とかなるよ。だって油断なんてしないんだから!」
 力強く言い切るオルハへ、嵯泉と景正が同意を籠め首肯する。そう、油断はしない。確実にオブリビオンを滅するという意志こそを矛と成し戦おう。
 先程羽邑屋が呟いた言葉を思い出して、オルハは少しだけ笑みを噛みながら言う。
「この世界では『成敗いたす』って言えばいいんだっけ?」
「ああ、そうじゃ。成敗するのはわしら、成敗されるのがそちのほうよ」
 ツーユウが羽邑屋へ向き直る。地を踏みしめたら僅かに砂埃が舞った。
 声が揃う。
「――成敗いたす!!」
 いざ、参る。
 刀を閃かせたのは嵯泉だ。刃は己が手を滑り、歪みのように滲む血を刀身が吸う。染み入る赤を通じて精神を送り込み、表出させたのは普段封印している天魔鬼神。
 速さではなく、より深く穿つ威力に注力する。嵯泉は上段の構えから一気に斬り込んだ。
 しかし羽邑屋は短筒を翳して受け止める。夜に金属音が響く。火花が奔った。僅かに届かぬのは鍛練の不足ではなく、ありていに言えば運気の運び。身体を傾げて受け流した羽邑屋が声を張った。
「先生、お願いします!」
 月下に差した影が収縮して、人型を成した。
 要請に応え顕現したのは首無しの浪人。オブリビオンと誰もが即座に理解する。くたびれた着物と袴、しかし隆々とした筋肉と爪先や袴を汚す血痕が、何人もの命をそのどす黒い刀で奪って来たのだろうと如実に語る。背に羽邑屋を庇う格好。それなりの手練れだろうと察しはついた。浪人を先に片付けなければ羽邑屋へは手出し出来まい。
 景正が前に進み出た。得物を構える。
「この浪人の相手は引き受けましょう」
 彼奴も羽邑屋と同様にオブリビオンだ。手加減は不要なのは有難い。他の猟兵らもまずは浪人を片付けることに異議はなかった。
「なればわしが出鼻を挫く」
「わかったよ。なら私も援護するよ」
「かたじけない」
 ツーユウとオルハも前に立つ。嵯泉は半歩後ろへ下がり、羽邑屋の動きを見定めていた。闇討ちや不意打ちが如何にも得意そうな輩だ、隙を狙われないよう視野を広く持つ。女性陣に先陣を任せた景正はしたたかに様子を見計らう。
 じりじりと距離を詰める。息遣いすら邪魔に思うほど切迫した空気。
 僅かに刀先を下げたのは浪人。それが誘いだとはすぐに理解した。だが怖気づくようなツーユウではない。
 正拳突き。浪人は鋭いそれを弾いた。しかしその時に生まれた隙を突いて、低く懐に滑り込んだツーユウは肘を鳩尾に叩き込む。
 まともに入った。浪人はたまらず後退したが、すかさず反撃に出る。鎌鼬のような剣閃へ、オルハが真直ぐに立ち向かった。下手に避ければ裂傷が増すと見込んで、三叉槍を突きつけて致命傷を避ける。巻き起こる風で髪が煽られる。
「後悔したって、もう遅いよ」
 カウンターは得意とするところだ。深く踏み込む。早業、としか言いようのない速度で槍で狙うは先程穿たれた鳩尾だ。躱せまい。いや、躱させない。真直ぐ貫いてみせる。更に体重を乗せれば軋む音。
 その間に背後に回ったツーユウが突進する。反射で身構えた浪人を突き上げ、刀を掴む手をしたたかに打った。更に力を溜めた渾身の一撃を、肩を使って叩き込む。
「哼ッ!」
 轟然。浪人が吹っ飛ばされたなら羽邑屋が「何をしている!」と叱咤する声が響いた。意趣返しとばかりに短筒を猟兵たちに向ける。
「甘い!」
 それを見切っていた嵯泉が弾を鍔で受け止め地面に叩き落した。研鑽の差を見せつけるような鮮やかさだ。
 その間にもどうにか立ち上がった浪人が再び斬り結ばんと猛進してくる。
 ツーユウが眼前に翳したのは玉鋼の箸。振り払うような仕草であしらった。体勢を崩し前のめりになった浪人をオルハの三叉槍が狙い撃つ。
 それをぎりぎりで回避した浪人に突き付けられたのは低い声。
「私が出ましょう」
 景正が一気に肉薄する。刃毀れひとつない剛健な打刀が浪人に迫る。
 鞍馬の名にかけて斬り伏せる。矜持が刃に伝わるように月光を弾く。鈍く光る。
「当流の初歩にして奥義」
 間合い、呼吸、刃筋のすべてを正確無比に基本のまま繰り出すことで鎧武者の兜から乗馬の鞍まで破断する。
「それが鞍切なり」
 言葉が先か、切先が先か。
 判別の出来る者はいなかった。浪人は夥しい鮮血を噴出し、崩れ落ちるように倒れた。一刀両断とはこういうことを言うのだろうというお手本のような太刀筋だった。
 短く笑ったのは羽邑屋だった。
「そ、そうか! 金か!? 金が欲しいとでも言うのか!!」
 羽邑屋が懐から取り出したのは黄金の最中。くれてやろうか、とばかりに差し出し、高く投げ放ってみせた。
 戦場にいた誰かの視線が奪われたかもしれない。しかし嵯泉はそれに心を動かさない。
「……ほう、猟兵を金で懐柔出来るとでも? 愚かな真似をするものだ」
 拾われず地に転がった黄金を蹴り飛ばす。柘榴の双眸は、鋭い。
 嵯泉は冗談でも耳にしたかのように一笑に付した。
「そんなものに惑う程度なら、猟兵勤めなどしていない」
 毅然としたその様子に慢心も油断もない。ただ事実を語る真摯さで告げる。
「オブリビオンは見逃さん。人々の憩いと楽しみ、邪魔するものに容赦は要るまい。……倒せるものなら、と言ったな」
 燃え盛る気迫が嵯泉の眼光を灼く。焔の如くに。
「ならば覚悟するが良い、お前は倒されるものと決まっている」
 まるで閻魔の審判の如き声音であった。
 同意の首肯代わりに景正の剣筋が一閃、怯んだ羽邑屋の肩を掠める。
「毒を盛って多くの人たちまで巻き込もうとした罪、千回切り刻んでも足りんが、」
 これはただの挨拶代わり。
 即ちこれから爪弾かれる戦いの序曲に過ぎぬ。
 羽邑屋が奥歯を噛んだ。
 まだ序の口。
 夜明けは未だ、遠いままだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

寧宮・澪
フラグ……ですねー……。
この、天下自在符がー……目に、入らぬかー……って、やったあと、みたいなー……。

実力は、あるみたいですし、サポートをー……。
【謳函】、使用。
悪徳商人倒しますよー……。
オブリビオン、は、綿津見に、沈めましょー……。
美味しいご飯、お酒、待ってますよー……。
【鼓舞】、【勇気】、いっぱい込めてー……謳って、【謳函】ー……。

お金……こまってないですしー……お布団や、美味しいご飯の方がー……いいですねー……。
浪人の、先生やー……短筒、にはー……【見切り】、や、【オーラ防御】でー……軽減、したい、ですよー……。

アドリブ連携、歓迎ですよー……。


黒蛇・宵蔭
まあ、現場に直接赴く悪党の鏡ではありますね……。
けれど残念ながら酒への執着に駆られた猟兵は強いかと。
私のことではありませんよ?

直接対峙するのは苦手なので、相手との距離感を意識し立ち回り、やや離れたところから鎧砕きで相手の守りを弱めたいです。
傷を負っていれば更に傷を狙い、鉄錆に血を吸わせ、自身の体力は維持できたら。
目潰し、できれば命中も下げられるでしょうか?
そして咎力封じによる短銃の無力化を狙います。
他の猟兵さんとも強力しつつ、少しずつ削っていきましょうか。

最中も嫌いじゃないですけどね。
今は辛口な気分でして。


クロウ・タツガミ
【狐の宿】と連携、アドリブ歓迎する

【POW】

援軍に来た、酒を楽しむには少々無粋が過ぎると聞いてな

【三位龍装】を使い、攻撃力を強化して戦闘に挑む

マガホコ、終わったら存分に酒を飲むといい

【戦闘知識】を用いサカホコ(ハルバート)を手に、【怪力】による【2回攻撃】で【串刺し】を狙いつつ戦うつもりだ。敵の攻撃はガンドレットによる【盾受け】で防ぎ、近くの猟兵への攻撃は極力【かばう】つもりだな

【黄金の最中】が見えたら、【力を溜め】レプリカを【投擲】し行動の阻害を試みるつもりだ

無粋と言っている、酒は純粋に飲んで楽しむだけで良い

援護を受け

シズハ、感謝する。女性の酌があるなら早々に終わらせねばな


神無月・継葉
【裏人格で行動・狐の宿団員と連携・SPD】

倒せるものなら倒してみろ、か。
いいだろう、なら倒してやるとしようか。

クロウ・タツガミ氏のサカホコと連携を取ろうか。
引き続き、射撃で牽制しつつサカホコの突撃を【援護射撃】するぞ。
しかし、残念だったな……短筒で銃撃戦を仕掛けてくるようだが、こっちはドローン・サラインも使った範囲攻撃だ。
【二回攻撃】に加えて、この弾幕の嵐だ。
避けられるものならば避けて見せろ…!

酒の楽しみ方はいろいろとあるということだ、これが終わったら、尺位させてもらうぞ、クロウ氏。




「ククッ……はははははッ!」
 如何にも悪者、という風情で羽邑屋が哄笑した。それは己を鼓舞するものであったのかもしれない。
 肩の血を振り払う。未だ余裕だと、知らしめるようなその振る舞い。
「儂がこの程度で討たれるものか。貴様らは随分と儂を舐めているようだな」
 短筒を猟兵たちに突き付けて宣った。
「覚えの悪い輩もいるようだからもう一度言ってやろう。倒せるものなら倒してみるがいい!」
「うーん……フラグ……ですねー……」
 それはもう見事なまでに。
 例えば時代劇で「この天下自在符が目に入らぬか」と突きつけた時みたいだ。そんなふうに寧宮・澪はゆっくりと思考を巡らせる。そんな澪の考えを掬ったように、黒蛇・宵蔭は苦笑してみせた。
「まあ、現場に直接赴く悪党の鏡ではありますね……。けれど残念ながら酒への執着に駆られた猟兵は強いかと」
 私のことではありませんよ? なんて嘯いてみる。そんな冗談めかした言い回しを出来るくらいの余裕を持ったほうがいい、そう思わせるような空気だ。同じ旅館に集う神無月・継葉の元へ馳せ参じたクロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)も、綽々と息を吐いた。
「援軍に来た、酒を楽しむには少々無粋が過ぎると聞いてな」
「助かる。しかし倒せるものなら倒してみろ、なんてよく言ったもんだ。――いいだろう、なら倒してやるとしようか」
 売られた喧嘩は買ってみせよう。継葉、もとい静葉は再びサラインを展開させる。
 目を眇めればそれが合図だ。鉛の雨が降り注いだら地面が細やかに抉られていく。羽邑屋が身を翻す。恐らく続けざまに浪人を呼び出すことは出来ないのだろう、舌打ち交じりで身を引いている。
 ならばそのうちに仕込みを終えておこう。クロウに寄り添うのは対の有翼の蛇――正確に言えば小さな龍だ。黒と白の、這う間にも仄かに霊酒の芳醇な香りが漂う。
「マガホコ、終わったら存分に酒を飲むといい。サカホコ、力を寄越せ」
 黒がクロウに身を添わせ、白はクロウの手の内でハルバートとなる。腹の底に気概を据える。
「はっ!!」
 鋭い踏み込み。掃射から逃れようとする羽邑屋に穿つ一撃は重い。間一髪で羽邑屋が躱すも、ひやりとした表情には「これはまともに食らってはおられん」と書いてある。
 続けざまに斬り、払い、突く。クロウと羽邑屋が対峙する間、澪と宵蔭は視線をかち合わせた。互いに短く頷く。
「オブリビオン、は、綿津見に、沈めましょー……。美味しいご飯、お酒、待ってますよー……」
「ええ。そのための障壁は取り除いてしまいましょう」
 つまり後方支援に努めるという心意気。
 澪は指先で金色の匣を撫でる。ささめゆく調べは澄み渡る。冬の夜空に瞬く星辰のように密やかで、しかし冴えた光を戴くメロディ。
 例えば誰かの背を押したり、誰かを奮い立たせたり。そんな歌であればいい。
「謳って、【謳函】――……」
 鈴が鳴るような清冽さ。接敵しているクロウのみならず、援護に回る静葉や宵蔭までも力を湧き立たせる。
 ならばそれに応えよう。宵蔭は間合いを測りながら思案に耽る。距離を保ちつつ相手の守りを砕くには、どう立ち回るべきだろうか。己も前衛に出ているならともかく、後衛から単純に棘鞭を走らせるだけでは近接しているクロウまで巻き込む可能性がある。
 ならば――懐から取り出したのは宵蔭の血で綴られた霊符。疾駆させた符は、クロウとの戦いに気を取られていた羽邑屋の背に張り付いた。
「何ッ!?」
 羽邑屋が驚愕するのも無理はない。それは護りの顕現だったのだろう、羽織が徐々に蝕まれて朽ちていく。事実クロウが得物を揮うと、先程までは思うように貫けなかった着物を断つことが叶う。一種の防護壁のようなものだったのだ。
「上等だ、なら耐えられるかな? クロウ氏、一度下がれ!」
 飛んだ声に意向を悟ったクロウは今一度薙ぎ切るように鉾槍を払うと、その隙を縫って後ろに跳躍する。
 それを見届けた静葉は剣呑に笑んだ。ひらり指先を突きつける。
「この弾幕の嵐だ。避けられるものならば避けて見せろ……!」
 それが合図。宣言。事実の提示。
 サラインとパルスアサルトライフルの二重奏だ。波濤にも大嵐にも似た銃弾連射の暴力。ここまで広範に穿たれては羽邑屋も回避は叶わない。
「おのれ……!」
 焦ったのだろう、羽邑屋は碌に照準も合わせぬまま短筒から発砲する。下手な何とやら数撃てば、とばかりに放たれる弾丸はしかし存外威力が高いようだ。澪が半身を捩り避けたものの、地にめり込んだ弾丸はごうと音を立てて地を抉り大きな穴を開ける。成程、見目に拠らず妖魔忍者の忍者刀よりは侮れない。
「んー……、なら、撃たせない、ほうが、いいですねー……」
「同感です」
 再度首肯が交わされる。宵蔭が手枷、猿轡、拘束ロープを飛ばす。手枷とロープは外したが、猿轡が羽邑屋の口を塞いでしまった。本来は短筒を封じたかったが。
「んぐぐ……!」
「これなら『先生』も呼べないか」
 静葉が呟く。一時凌ぎではあれど戦力を削げたなら僥倖というもの。深く眉間に皺を寄せた羽邑屋が、黄金の最中を猟兵たちの眼前に叩きつけた。いくらでもやる、そう言いたげに。
 目の前に突き出されて思わず固まってしまった猟兵もいたかもしれない。魅了の技だ、やむを得まい。
 それでも宵蔭は嫣然携え口の端を上げる。
「最中も嫌いじゃないですけどね。今は辛口な気分でして」
 つまりお断りということ。澪もぼんやりと首を傾げる。
「お金……こまってないですしー……お布団や、美味しいご飯の方がー……いいですねー……」
 いっそ長閑な声だった。阻止せずとも踏みとどまる仲間の心強さに、クロウは再びハルバートを振るう。羽邑屋の肩口を刺し突いた。
「無粋と言っている、酒は純粋に飲んで楽しむだけで良い」
「酒の楽しみ方はいろいろとあるということだ」
 誰かを害するものであってはならない。故にこれ以上の狼藉は許さない。そんな意志が籠められた一撃は羽邑屋の肉を穿った。羽邑屋が反撃する前にサラインがその余裕を根こそぎ奪っていく。
 距離を取る。クロウは静葉と肩を並べる。
「シズハ、感謝する」
「まだこれからだ。これが終わったら、酌くらいさせてもらうぞ、クロウ氏」
「女性の酌があるなら早々に終わらせねばな」
 そして互いに臨戦態勢へ戻る。
 漠然としているようで近しい未来。
 そんな楽しみを勝ち取ることが出来るって、心の底からそう思っている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

境・花世
悪いことに手を染めるのって
どういう心境なのかな
羨ましかった? 足りなかった?
称賛が、権力が、お金が?

早業と見切りで攻撃を避けつつ
敵の懐に飛び込む捨て身の攻撃
間近で矢継ぎ早に質問を重ねて
相手の疑問を抱かせよう

――ねえ、手に入れるのが、
こんな暗い夜で良かったの?

そうして顕現する、蠢く触手は
悪者もおいしくぺろりと喰らうはず
あ、散らかさないで、血も零さないで
澄んだお酒が濁ったら困るから

あは、でもわたし今ちょっと機嫌がいいんだ
おいしいお酒が待ってるからね

微笑めば再び襲い掛かるおぞましい群れが
跡形も無く彼の海に連れ去ってくれるだろう
罰というには随分優しい終わり方だと、思うんだ

※アドリブ・絡み大歓迎


壥・灰色
がん、と拳を打ち合わせる
どうせだったら派手にしよう。両手に衝撃を籠め、音高く。遥か森で小鳥が逃げ羽撃くほど強く。威圧を含めてだ

その風情、隙の小ささ。決して油断はするまい。全霊を以て果たし合おう
けれども羽邑屋、申し訳ないがマッハで消え失せてもらう

(ぐううう)

……。言葉は不要だな

(響いた腹の音を誰にも聞かれてない前提で動く)
(聴いてくれるな。聴かれてたらちょっと恥ずかしいから.ホントに。)
(万一聴いてた忍者とかいたら、最速のパンチで首とかを粉砕する)
(センセイとかも現れ次第右ストレートでブッ飛ばす)
(ああわかった認めるよ腹が減ってんだよ、壊鍵、全開!!)

繰り出す拳で、真っ直ぐに羽邑屋を射貫く!


ルヴィリア・ダナード
見るからに悪人っていう顔ね。
今までよく見てきたら嫌いじゃないよ。
きっとあの人にもいい面が…あるだろうか。
よく観察しちゃおう。

ちょっとちょっと!悪徳商人が懐を…ってもしや、金、金なのか!
んん、何か違う?あ、あれはもしや、もしや!
出てきた最中は私、大好きなのでちょっと気をとられるかも。
なんて卑怯な真似を…!
食べ物でヒトの心を揺るがすなんて、私、許しません!
ジャッジメント・クルセイドでお仕置きを。
逃げてもどこまで追いかけてやるわ。
食べ物の恨みは恐ろしいのよ!

ところであの最中は食べれるのかな?美味しいのだろうか…
あいつ、卑怯っぽいしやっぱり、毒入りかな?
私、気になります。


香神乃・饗
美味いものは美味い
その売り上げを奪いたいならそれ以上のものを作れば良いじゃないっすか
安直なんっす、蹴落とし方が

酒を粗末にする罰、受けるがいいっす!

香神写しで苦無を複製し
援護役が少ないなら投げて援護を

剛糸で敵を絡めとり盾にして身を護るっす
短筒の攻撃は苦無で叩きおとすっす!見抜ける気がするっす!
もし撃たれてもかいくぐって近づく覚悟っす!

近づく役が少ないなら苦無を投げてフェイントをかけ死角に入り苦無で暗殺を狙うっす
暗殺が厳しいなら近づいたときに仕掛けてあった剛糸をしめあげ動きをとめるっす
後は誰かに託すっす



 いまだ猿轡が外れず、弁舌を揮えない様子の羽邑屋はやや余裕を失っているようにも思える。それでも未だ動きは鈍くなってはおらず、短筒を器用に振り回す構えに淀みはない。
 片目を閉じて狙い定めるその姿。来る、そう認識する間もなく奔る弾丸。
 威力より命中率を重視したのだろうそれは香神乃・饗の警戒を潜り抜け脇腹を穿った。血が舞う。
「ぐっ!」
「大丈夫!?」
 ルヴィリア・ダナードが顔を覗き込んだ。饗は痛みを堪え、毅然と前を見据えてみせた。
「……大丈夫っす! 苦無で叩き落とせたらって思ったんすけど、そううまくもいかないっすね」
 例えば攻撃力を重視した一撃必殺のそれであれば弾けたかもしれない。しかし羽邑屋はそれなりに練度も髙い。狙い澄まし的確に襲い掛かってくるなら、食らう前提で傷を癒す術を用意するのもひとつの選択だったか。とはいえ今それを考えても詮無きことだ。
 ユーベルコードの効果が切れれば猿轡が取れ、そうすれば新しい浪人の先生を呼び出しかねない。短筒攻撃だけでも脅威なのに、これ以上流れを向こうに引き寄せられるのは避けたいところ。
 ならば今のうちに少しでも羽邑屋の体力を削いでおかねばなるまい。
「……しかし改めて見ても、見るからに悪人っていう顔ね」
 今までその手の類の輩にはたびたび関わって来たから嫌いじゃない。ルヴィリアがなんちゃってとはいえ聖職者の端くれだからだろう。
「きっとあの人にもいい面が……、……、…あるだろうか」
 あるかもしれないし、ないかもしれない。
 観察しちゃおうと眺めるルヴィリアの傍ら、境・花世がゆるりと首を傾げる。
「悪いことに手を染めるのって、どういう心境なのかな」
 羽邑屋は答えない――というより猿轡のせいで喋られない。それをわかっていて尚、花世は言い募る。
「羨ましかった? 足りなかった? 称賛が、権力が、お金が?」
 でもそれって無様だ。
 声に出さずとも、花世の曇る花かんばせがそう言っている。羽邑屋は答えられない、あらゆる意味で。饗は嘆息しながら告げた。
「美味いものは美味い。その売り上げを奪いたいならそれ以上のものを作れば良いじゃないっすか。安直なんっす、蹴落とし方が」
 この場にいる誰もが、存在しないイフを思い描いてもどうしようもないことを理解している。正論は結果を導かない。ただの商人ならいざ知らず、羽邑屋はオブリビオンなのだから。
 鈍く重い、而して靭い音が鳴る。
 壥・灰色が拳を打ち合わせたのだ。湛えるは決意、意志。どうせだったら派手にしよう。
 再び音。衝撃は高らかに。夜の梢から小鳥が驚き羽搏いた。張り詰めた空気に偉容を誇る佇まい。
 灰色の視界の隅に抉れた地面が入る。そしてゆっくりと羽邑屋を見据えた。実力のある相手であることは間違いない。それこそこの場に集った猟兵が力を合わせなければならぬほどには。
「けれども、申し訳ないがマッハで消え失せてもらう」
 全霊を以て果たし合おう。
 染み入るように距離を詰めようとした一歩。
 その瞬間だった。
 ――ぐううう。
 そう、腹の虫が鳴いたのは。
「……。言葉は不要だな」
 ふと不敵な笑みを刷いて、端正な横顔で決めてみても、実はあんまり誤魔化しきれていない。今絶対聞こえた。周囲の猟兵も唖然としている。ツッコミが追いつかない。
 明らかに「えっ今のって……」と困惑顔の妖魔忍者らがひそひそ耳打ちをし合っていたから音速で殴り倒しておいた。これでノーカン。
 何だかものすごく物言いたげな面差しで羽邑屋が眉を寄せる。言葉が出なくてよかったね。少しだけ寿命が延びた。
(ああわかった認めるよ腹が減ってんだよ、壊鍵、全開!!)
 魔術回路が一気に稼働したら雷光が迸った。やる気スイッチが別の方向に入った灰色が目にも留まらぬ速さで羽邑屋の肩口を殴打する。衝撃が響く。潔いほどに真直ぐ穿たれた一撃に羽邑屋の手の動きが鈍る。短筒に添える指が痙攣している。
「え、あっと、続くっす! 酒を粗末にする罰、受けるがいいっす!」
 我を取り戻した饗が手首を捻る。顕現。百の苦無が宙を埋める。
 指を払えば轟然と苦無の連射が羽邑屋を襲う。流石の羽邑屋も避けきれない。眉間に喉笛に膝に突き刺さる。
 忌々しげに苦無を払い落そうとする間際、しなやかに滑り込んだのは花世だ。
「――ねえ、手に入れるのが、こんな暗い夜で良かったの?」
 耳朶を揺らす囁き。
 それは先の問いから連綿と続く言葉たち。恐らく己が行状に疑念を抱かぬからこその悪辣だったのだろうが、そこに僅かにでも歪みを、波紋を広げることが出来たなら。
 水彩紙にたっぷりの水を含ませたインクを垂らすみたいに、疑問が染みになる。
 一度綻ばせれば後は速い。蠢く紫の触手が首をもたげる。羽邑屋を絡め捕り生命力を搾り取る。幾らでも喰らってやろう。
「あ、散らかさないで、血も零さないで」
 言いつける。万一にも気配が及んで、澄んだお酒が濁ったら困るから。
 攻勢は続く。追い打ちをかけるように灰色が鋭い蹴撃を見舞い、饗があらかじめ仕込んでおいた鋼の糸をぐいと引き上げ、猶も短筒を構えようとする羽邑屋の足を縛り上げて牽制する。
 羽邑屋の苦々しさは増すばかり。懐から再度、叩きつけるように黄金の最中を投げ置いた。
 つい反応してしまったのはルヴィリアだ。萌黄の眸に光が宿る。 
「……ってもしや、金、金なのか! んん、何か違う? あ、あれはもしや、もしや!」
 もしやおいしいやつなのでは……!
 最中はルヴィリアの好物だ。なので、つい視線が向いてしまう。かくも食欲というものは素直である。ついじーっと見つめた後、饗の「あのー大丈夫っすか?」と訊いた声で正気に戻った。
「なんて卑怯な真似を……! 食べ物でヒトの心を揺るがすなんて、私、許しません!」
 びしりと指先を突きつけた。天から注ぐ破魔の浄光が羽邑屋の脳天を焼いた。お仕置きはなかなか手厳しい。触手から拳から鋼糸から逃れても、光の裁きは執拗に追い続ける。そのままのド真面目な表情でルヴィリアが疑問を呈す。
「ところであの最中は食べれるのかな? 美味しいのだろうか……あいつ、卑怯っぽいしやっぱり、毒入りかな? 私、気になります」
「えっ気になるところ?」
 先程腹を鳴らしていたくせ灰色がツッコミを入れる。黄金の最中は警戒していた猟兵も多かったが故か、結局本日あまり効果を発揮していない。哀れ。祭りでも甘味が手に入るかもしれないし、と気分を切り替えたなら灰色が拳を振り抜く。豪速の右ストレートが羽邑屋を捉える。
 真直ぐに、射貫く。骨が軋む音がした。
 そして触手は再度締め付けにかかる。襲い掛かるおぞましい群れが、跡形もなく骸の涯てに連れ去ってくれるだろう。
 花世は嫣然と告げる。
「罰というには随分優しい終わり方だと、思うんだ」
 だって欠片も残さずに飲み干してあげられる。
 一度芽を出した疑念は糧となり、謎を食う触手が貪り続ける。これで終わるか、そう誰かが思った頃合い。
 唐突に羽邑屋を戒めていた猿轡が取れた。時間切れだ。猟兵らが気付くも間に合わない。
 荒い息を繕うことなく声を張る。
「先生ッ、お願いします……!」
 最後の力を振り絞るように、羽邑屋は叫んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

戒道・蔵乃祐
【月夜・玲(f01605)】さんと引き続き参加です

成敗ですと?幕府に背き、国を乱す不届きな輩は貴方でしょうに
天下自在符を預かる者として、これ以上の悪行は許しませんよ!


目立たない+忍び足で気配を消して音も無く接近。残像で間合いを幻惑し、ダッシュで距離を詰め。暗殺のマヒ攻撃を悪徳商人が呼び出した浪人の胴体に叩き込みます
灰燼拳・震!

硬直が入ったら即座に2回攻撃で再行動。
グラップルで掴み掛かり、怪力+力溜めの遠心力を加えたジャイアンスイングで振り回し、月夜さんの攻撃に合わせる様に気合いを込め、掩護射撃+投擲+スナイパーで悪徳商人目掛けて浪人を投げ飛ばします
天下御免の大暴れをお見せしましょう!
憤破!!


月夜・玲
【戒道・蔵乃祐(f09466)】
戒道さんと参加

へえ…悪徳商人は口だけって言うのが定番?な気もするけど、本当に強いんだ
なかなかに斬新じゃない…でも最後はお約束に従ってもらうよ
さあ、年貢の納め時だよってね!

《RE》Incarnation、Blue Birdの2振りを抜刀
【I.S.T.起動】を発動しオブリビオンに対して攻撃、手に持った剣以外は邪魔だからパージして身軽になるよ
2刀流による『2回攻撃』を中心に戒道さんと連携して、オブリビオンに対して攻撃を積み重ねていこう

短筒での攻撃は『第六感』に委ねて回避!
回避しきれないなら『オーラ防御』でダメージ軽減

私の攻撃に合わせてね、期待してるよ戒道さん!


雷陣・通
(アドリブ、連携自由だぜ)

【POW判定】

よーし、出たな悪徳商人
ついでに先生も出てきたか
父ちゃんから聞いた事あるぜ
「先生って言われてる浪人は大抵食い詰め者だってな」

まずは先生から相手をしてやる
みんなは商人をぶっ飛ばすんだ

フェイントと二回攻撃を活かした格闘戦で徹底的に意識を足元に向けさせる
狙うはローキックとボディブロー
足と腹を狙って頭への警戒を緩めさせるんだ
フェイントで拳を動かして胴体や足を警戒したらチャンス、そこから『雷刃』で頭から唐竹に斬ってやるぜ
ちなみに雷刃警戒する奴は遠慮なく足を蹴って立てなくさせる
商人も変わんない、同じ方向で行くぜ
あ、鉄砲は全力で残像と見切りで回避で
飛び道具無理だよ!!




 ゆらり、昏い影が人の形を構築する。
 先に出現したのとはやや体格が異なる首無し浪人だ。背格好こそやや小さいが、漲る圧力は同等。得物は太刀か。羽邑屋を庇うように立ち塞がる浪人には鋭い殺気が満ち満ちている。
 しかし戒道・蔵乃祐は臆さない。強面に凄みを滾らせて言う。
「先程『成敗』と言いましたね。幕府に背き、国を乱す不届きな輩は貴方でしょうに」
 疾く駆けるために力を溜める。堂々と啖呵を切った。
「天下自在符を預かる者として、これ以上の悪行は許しませんよ!」
「うッ……!! やかましい!!」
 苦虫を嚙み潰したような羽邑屋。明らかに蔵乃祐が正義の天誅を落としに来た偉丈夫だ。その様子を見届け淡く笑んで、月夜・玲は一歩前に出た。
「さっきから見てたよ。悪徳商人は口だけって言うのが定番? な気もするけど、本当に強いんだ」
 目まぐるしく展開する戦局を見定めているからこそ、その言葉に嘘はない。
 今でこそこうして追い詰めているけれども、これだけの人数の猟兵と渡り合うのだからたいしたものだ。冷静に観察して、指先をくるり回して嘯いた。倒すための力はこの手の中に在る。
「なかなかに斬新じゃない……でも最後はお約束に従ってもらうよ」
 玲は模造神器たる二振りの刃を交差させる。
 それは再誕の為の詩、そして還りつく為の力。他のガジェットをパージすることで軽量化を図る。身軽になったら肩を回してみる。大丈夫、問題ない。
 揺るがない本質だけを身体の中心に据えて。
 不敵に言い放つ。
「さあ、年貢の納め時だよってね!」
「観念しろよ。父ちゃんから聞いた事あるぜ。『先生って言われてる浪人は大抵食い詰め者だ』ってな!」
 玲の威勢に乗る形で雷陣・通も地を蹴った。
 電光石火。残像が霞むくらいの勢いで、狙い定めるは浪人の足許だ。低い体勢で強かな蹴撃を見舞う。
 体勢こそ崩さぬものの、浪人の注意が自然下方へ向けられる。その隙に死角を取った玲が奔走する。高く振り上げた双剣を立て続けに突き立てた。鎖骨を断つが如き一撃に、咄嗟に浪人が反撃しようとする。太刀で左薙ぎを見舞うも、玲は切先を合わせ相殺した。夜に火花が鮮やかに散る。
 ――私の攻撃に合わせてね、期待してるよ戒道さん!
 それは声にならなかったかもしれない。ならなくとも確かに伝わる。視線が重なった刹那、肌で気迫を受け継いだなら、続く動きに迷いはない。
 静かに、ただ静かに蔵乃祐が浪人の背後を取った。気配を完全に消していたその動きを浪人は捉え切れない。間合いすら歪み、距離感が曖昧に沈黙する。
「灰燼拳・震!」
 轟く。
 華やかな技ではない。飾り気もない。ただ鍛え抜かれた拳を胸骨の真中めがけて叩き込む。空気すら罅割れるように震える。事実、浪人は痺れを齎されたように身じろげない。
 硬直した一瞬。だが一瞬で十分だ。
 太刀を構えさせる間も与えず掴みかかる。浪人の両足首を脇の下に挟み込んでから抱え上げた。回転しながら相手を振り回す。
「天下御免の大暴れをお見せしましょう! 憤破!!」
「なッ!?」
 投擲した先は羽邑屋だ。
 彼奴が慌てて後退ろうとするところに声がかかった。
「そんなの許されるなんて、思ってないよね?」
 一足飛びで肉薄していた玲が口の端を上げた。羽邑屋の背に十文字を描き斬る。端的に言えば挟み撃ち、羽邑屋は衝撃を受けたままに前に倒れる。
 そして羽邑屋と浪人は潰れるように衝突する。呻きのような叫びが漏れる。浪人が身を戦慄かせながらも意地だけで立ち上がり、蔵乃祐に相対しようとした。前に踏み込もうとした。
 そう、しようとした。
 月光が遮られる。
 影が落ちる。
 高く跳躍した通が刀を振り翳した。夜に迸る雷光は空を灼くようで、眩いほどに美しい。
「必殺! ライトニングエーッジ!!」
 雷電纏いし刀で背骨を断ち切るが如く、真っ二つに両断する。
 頭があったら断末魔のひとつもあっただろう。それもなく、音を立てて崩れ落ちた。
「ば、馬鹿な……!」
 浪人の血に塗れ愕然とした羽邑屋が顔を真っ青にする。流石に浪人が碌に攻撃に回れず倒されるとは思っていなかったのだろう。
 そこに突き刺さるような、猟兵たちの視線。
 もうすぐ夜が明ける。
 長い夜も、必ず黎明を迎えるのだと、誰もが身をもって知っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

耀く者への羨望でしょうか
迎合して共に光れば良い位の柔軟さと機転と既知を持ち
直向きさで自らを磨けば
賢明で健全でしたのに
誠、浅慮

嘗て人であった貴方は
生きているうちも
醜い姿になった後も
ただ
人の背を追いかけ足を引っ張ることでしか
己を立てられなかったのでしょうか
…悲しいですね

ささやかな憐憫は餞代わりに
然れど祭りを穢し
数多を殺めようとした罪は贖われるべきもの

敵の挙動をよく見
次技や攻撃対象を把握
第六感、見切り、オーラ防御で自他共に回避、援護

流星の符を打ち二回攻撃
捕縛呪で絡め
味方の攻撃を支援

貴方が見たかった明日は
朝陽は
本当は、どんな彩りでしたか?

あえかに笑んで、消滅を見送る
安らかに眠りなさい


イデアール・モラクス
イリス(f02397)と共闘

フン、黒幕のお出ましか…嬲り殺しにしてやる。
全ては…酒の為だ!

・行動
前衛はイリス、私は後衛として彼女が用心棒を押さえた隙に商人を叩く。
UC【ウィザードミサイル】を『全力魔法』と『属性攻撃』で火力と威力を増し『高速詠唱』を用いて連射。
「アーハッハッハ!燃えろ燃えろぉ!」
火に撒かれ逃げ腰となったら妖狐の怨霊ハクを嗾けて噛みつかせて『吸血』し『生命力を奪う』
「喰らってしまえ、ハク!」
更に私も煉獄の大鎌で商人を『串刺し』にして『踏みつけ』、『属性攻撃』で刀身に電撃を通して『傷口を抉る』
「女に踏まれながら逝くんだ、幸せだろ?」

※アドリブ歓迎


筧・清史郎
様式美に則り、配下を従え黒幕の登場か
では、神妙に縛につけ…と言いたいところだが
「その悪しき目論見ごと、叩き斬ってやろう」

戦闘時は
忍者達は【空華乱墜】又は回数重視【桜華葬閃】で蹴散す
手練れの悪徳商人には確実に当てるべく命中重視【桜華葬閃】
終盤隙が生じれば攻撃力重視【桜華葬閃】を
残像を駆使し確りと敵の動きや予備動作を見切り、
扇での武器受けや武器落としも
2回攻撃やカウンター等も使い、積極的に斬り込もう
忍者や現れた浪人はUC他に、範囲攻撃やなぎ払い、衝撃波でも対応
「悪事を働く輩は、この桜吹雪で成敗してくれよう」

戦闘後
「これにて一件落着、と言ったところか」
被害が出る前に防げて何より
酒祭り、とても楽しみだ


イリス・ウィルター
【イデアール・モラクス:f04845)】
短銃が武器か、でも、私はただ斬るのみだ。
イデアール、また、後ろは頼むよ。近づく奴は絶対に切り伏せてやる。
あんたに私たちは倒せるか?

妖刀で戦闘を行う、私の防具は薄いので早く動けるが、防御力がないので出来るだけ攻撃は受けないように「残像」を使用する。
攻撃は後ろにいるイデアールに影響が及ばないように、浪人の先生を足止めし、発砲は刀で防ぐ。
「生命力吸引」を行い、体力を削りながら戦っていく。
羽邑屋には「殺気」をぶつけて怯ませた隙に接近し、切り伏せる。




 包囲は少しずつ狭められる。逃がしはしない。猟兵たちは確かな意思を携えて羽邑屋と相対する。
「チッ……!」
 忌々し気な舌打ち。しかし羽邑屋を取り巻く状況は変わらないのだから、それこそ年貢の納め時というやつだ。
 都槻・綾は青磁色の眼を眇めて羽邑屋を見据える。
 彼奴の向こうに戒道酒造の建物が見える。敷地内の土地や幾らかの植木こそ戦闘により損なわれているところもあるが、建物や設えは無事だ。勿論看板も。日を改めて整えれば、すぐに旧来の姿に戻れるだろう。酒蔵の未来は途切れない。それに比べて、目の前のオブリビオンの存在の昏きことよ。
「耀く者への羨望でしょうか。迎合して共に光れば良い位の柔軟さと機転と既知を持ち、直向きさで自らを磨けば、賢明で健全でしたのに」
 憂い帯びた眼差し。綾の嘆息はゆっくりと冬の空気に滲んでいく。
「誠に、浅慮なことこの上ない」
「五月蠅い! 貴様らに何がわかる!!」
「わかってもらおうなどとは、あんたも思っていないんじゃないのか」
 イリス・ウィルターが仄かに諦観を滲ませながら言う。
 彼奴が短筒の引き金に指をかける様を抜け目なく見遣っている。たとえ飛び道具が相手であったとしても。
「私はただ斬るのみだ。イデアール、また、後ろは頼むよ。そちらに近づいたら絶対に切り伏せてやる」
「フン、当然だろう?」
 後方で嫣然と佇むイデアール・モラクスは、艶やかな黒髪を翻してみせた。寒風に攫われ、揺れ、月の光を弾き耀く。
 ふたりの女が羽邑屋へ視線を送る。
「あんたに私たちは倒せるか?」
「そうさ。存分に足掻いて見せるがいい……嬲り殺しにしてやる。全ては……酒の為だ!」
 明くる日に味わうもののため。そんな単純な摂理はいっそ清々しい。
 筧・清史郎は僅かに微笑み綻ばせ、噛みしめるように囁いた。
「黒幕の暗躍もここまでか。では、神妙に縛につけ……と言いたいところだが」
 それでは足りない。
 だから清史郎の清冽な眼差しに曇りはない。蒼き刃を羽邑屋に向け、毅然と事実を突きつける。
「その悪しき目論見ごと、叩き斬ってやろう」
「くそがァ!!」
 短筒を連射する。妖気の弾丸が翔ける。乾いた音が明るみ帯び始めた霄に響く。
 猟兵たちは直撃を防ぐべく獲物を振るう。綾は芒星瞬く薄紗をはためかせ衝撃をいなし、イリスはくれないに染まる刃で跳ね飛ばす。清史郎は桜咲く扇で叩き落とし、イデアールは触手で絡め捕り食らい尽くした。
 そのまま一気に肉薄したのはイリスだ。間合いを詰め袈裟懸けに斬り払う。浪人がいたなら惹きつける役を請け負うつもりでいた。今もやることは同じだ。遠距離の攻撃手段を持つ敵を黙らせるなら、近接で絶えず斬り結べばいい。涼やかで俊敏な身のこなしで、而してイリスは明白な殺気を放って剣閃を放つ。
 その間にもイデアールは焔を顕現させる。一本、二本――即座に数えることが難しいほどの幾本もの炎の矢。脂汗滲ませる羽邑屋を睥睨し、その整った指先で指し示す。
「アーハッハッハ! 燃えろ燃えろぉ!」
 傲然と笑い飛ばし、繊手を振り下ろしたその瞬間。夜を火炎地獄が蹂躙していく。集中砲火。イリスが一歩退いたのを見計らうように穿ち、刺さる熱情の鏃。燃え盛っては皮膚の焦げる嫌な匂いが漂う。
 尚も猟兵たちは攻勢を緩めない。綾は流星宿した護符を奔らせる。羽邑屋の眉間に留まったその時、無駄のない動きで印を結んだ。淡い光の五芒星がオブリビオンに染みる。
 反撃とばかりに羽邑屋が引き金を引くも、空虚な音を鳴らすばかり。技が封印されたと気づいた羽邑屋の顔貌がますます蒼白になる。
「嘗て人であった貴方は、生きているうちも、醜い姿になった後も。ただ人の背を追いかけ足を引っ張ることでしか、己を立てられなかったのでしょうか」
 それはとても悲しいものだ。綾は、そう思う。
 微かな憐憫を冥府を渡る餞代わりに贈ろう。祭りを穢し、多くの人間を害そうとした罪は贖われるべきだ。
「貴方が見たかった明日は、朝陽は。本当は、どんな彩りでしたか?」
 尋ねる一方で、それに答えが返らぬことを心の底ではわかっていたのかもしれない。
 話が通じる相手であれば、こんな風に対峙することもなかっただろうから。
 清史郎がそこに潜む切なさを攫うように、しなやかな身のこなしで羽邑屋の元へ馳せる。
 意識を集中させる。闇夜に一縷の光を見出すように。真直ぐで濁りない暁に辿り着くために。
「悪事を働く輩は、この桜吹雪で成敗してくれよう」
 咲き誇るは黄泉桜。風雅にして鮮やかなもの。
 絢爛の春に似た永遠の如き一瞬が、交錯する。振り抜いた刀を戻す頃には、羽邑屋の首筋から鮮血が舞った。
 逃げ腰になれど思うように体が動かぬのだろう。羽邑屋の苦悶の叫びへ、傲慢な一瞥を授けてやるのはイデアールだ。
「喰らってしまえ、ハク!」
 しなやかに降り立ったのは妖狐の怨霊。ハクと呼ばれたそれは血が溢れる首元に食らいつく。残さず生気を吸い尽くす。
 その様を満足そうに眺めて、イデアールが手許に生じさせるは身の丈程もある禍々しい大鎌だ。真紅と紫苑の揺らめき翳し、魂ごと断たんと心臓を真直ぐに突き刺した。
 地に縫い付けるほど深く深く。猶もその刃が串刺しにするよう大鎌の柄を踏みつける。
 挙句の果てに指先滑らせて、刀身に伝えるは電撃。
 雷光が轟く。貫く。凄絶なまでに、奪い去る。
「女に踏まれながら逝くんだ、幸せだろ?」
 その声を果たして羽邑屋は聞き届けたか。
 イデアールの言葉が手向けとなる。オブリビオンは事切れる。二度と太陽を拝むことはない。
 長い夜ももう終わる。
 刀を鞘に収め、一息。清史郎はふと表情を緩める。
「これにて一件落着、と言ったところか」
 人的被害が出る前に防げて何よりだ。猟兵たちの表情に安堵が広がっていく。
 薄ら明るみ始めた天は冬特有の澄んだ空気に満ちている。
 明日が来る。明るい日と書く、地続きの未来へ踏み出そう。
「酒祭り、とても楽しみだ」
 清史郎の穏やかな声が、薔薇色に染まり往く黎明に溶けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『特産品や名産品を楽しもう』

POW   :    とにかく食べる、飲む。力仕事を請け負う。

SPD   :    器用に食べる、飲む。特産品や名産品の加工を手伝う。

WIZ   :    賢く食べる、飲む。新しい加工の仕方や楽しみ方の提案。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●喝采の宴
 太陽が昇る頃には、酒祭りの準備が恙無く行われていく。
 会場となるのは戒道酒造が所有する清流庭園だ。特に川辺のあたりは広く開けていて、そこに出店が立ち並ぶ。各所に床几台が設置されているから、そこに腰かけつつ飲食を楽しむことになる。冬とはいえ煮炊きのための火が常にどこかしらでついているし、天気もいい。多少あたたかい格好をしていけば、寒さとて美味しさのスパイスだ。

 一口に酒と言っても多種多様だ。戒道酒造で手掛ける範囲でも生酒・にごり酒・原酒・本醸造・純米酒と多岐に渡る。
 何を飲むか迷ったらとりあえず戒誓を選んでおこう。すっきりと瑞々しい飲み口は、日本酒初心者でも飲みやすいだろう。他の酒蔵もたくさん軒を連ねているから、冷も燗も、ふくよかでしっかりしたものも、華やかに馨り立つものも。何でも楽しめるに違いない。未成年や酒が苦手な者は蜜柑の果実水や緑茶が振舞われるから安心だ。

 肴となるものもより取り見取り。
 ほぐした鮭と胡麻を白米に混ぜ込んで、いくらの醤油漬けを具にして握った親子おにぎりは、茶漬けにしてもまた美味だ。蕪葉の漬物を刻んだものとしらすの混ぜご飯のおにぎりも舌に楽しい。勿論白米も炊き立てを供されるから、酒を飲まない者はそれで腹を満たすことも出来よう。鱚の天ぷらを蕎麦と共に頂くのもまた、酒には合う。ゆり根のかき揚げも捨てがたい。
 八杯豆腐も評判らしい。豆腐を水、酒、醤油で煮た料理であり、元の豆腐や調味料が良いためにシンプルに味わいの深さが感じられる。添えるおろし大根の瑞々しさもまた格別。桜海老と菜の花を卵と出汁で閉じたものも滋味深い。
 鮪から汁も臓腑に染み渡るような味わいだ。具が鮪だけの辛めの味噌汁だ。七味や山椒を加えるとアクセントになる。
 ひじきの白和え、金平牛蒡といった総菜類。山くじら――猪肉と葱を鍋で煮たもの、兎肉の素揚げに塩味をつけたもの、雉肉の串焼きといった肉類もいいものだ。
 その他の料理も探せばいろいろあるだろう。出逢いを求めてそぞろ歩くのも悪くない。

、美味しい時間を楽しむことこそ酒祭りの本懐だ。
 守った平和を噛みしめて、さあ、一杯ひっかけに行くとしようか。
寧宮・澪
わーい……いただき、ますー……。
ご飯、少しお腹に、入れてからー……のんびり、自分のペース、で、飲みましょー……。

(ほろ酔いモード)
おいしーですねー。
百合根のかき揚げに、鱚の天ぷらに、お蕎麦ー。
八杯豆腐は格別ですねー。
ちょっと濃い味付けが、うん、お酒と引き立てあいますー。
揚出し豆腐の梅肉たれも爽やかで。
うふふ、山鯨も兎もいいものですよー。

お酒は、戒誓からいきましょー。
おおー、これはまた、良いお酒ー。
うんうん、すっきり瑞々しい。
おいしいですねー。
味わって飲みましょー。
次はにごり酒、純米酒もいいですねー。
楽しく飲みましょー。

(健啖家なザル。多少は酔う。酔うと饒舌)
(アドリブ絡み歓迎)




 寧宮・澪の眠たげな双眸が、今はちょっぴりきらきら光を宿していた。
「わーい……いただき、ますー……」
 戦いの末に勝ち取った馳走となれば楽しみが逸る。先に少しご飯をおなかにいれるのは空酒を避けるため。のんびり自分のペースで楽しむための方針だ。
 既に僅かに幸せそうに目を細めている、極端な表情変化はないが、普段の澪を知れば「あ、ご機嫌なんだな」と気付くくらいには。
 肴が供されたなら、尚のこと嬉しそうに声がちょっと高くなった。
「おいしーですねー」
 素直な感想。ほろ酔いだとわかる緩やかな微笑みだ。
 百合根のかき揚げは衣のさくっと感と百合根のほくほく感が絶妙だし、鱚の天ぷらを乗せた蕎麦はさらりと食べられるので、すぐなくなってしまった。残念。
「八杯豆腐は格別ですねー。ちょっと濃い味付けが、うん、お酒と引き立てあいますー」
 揚げ出し豆腐の梅肉たれともまた違うふくよかな味。豆腐が美味しいのは、米どころという点を鑑みても、この藩の水が元々良い水質なのだろう。山くじらも兎も満喫しつつ。
 戒誓を喉に落とせばするりとほどける、涼やかな味わい。
 澪のかんばせはまた喜色を湛えた。感激。ほわり頬が綻んだ。
「おおー、これはまた、良いお酒ー。うんうん、すっきり瑞々しい。おいしいですねー」
 美味しいって幸せなことだ。味わって飲もう。そして次はにごり酒、純米酒と挑んでいこう。
 折角のお祭りなのだから、楽しく飲むのが一番だ。
 多少酔いは回れど口数が多くなるくらいで、それ以外は常と変わらぬ長閑な空気を携え、澪の時間はゆっくりと過ぎていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
姦計は潰え、実に大慶至極。
それでは慎んで相伴に預かると致しましょう。


やはりここは戒誓を一献、賜りたく。
それなりに酒は嗜む方ですが、この銘柄は初耳なれば興味深い。
まずは花冷えで頂戴いたしましょう。

『酒は愁いを払う玉箒、労を助け万人と和合す』――定めし、この祭りのそんな空気に相応しい美味かと存ずる。

程良く進んだところで、肴も抓んでいきましょう。
鱚の天ぷらに塩を添えて頂くのも、爽やかな旨味が滲み出て素晴らしい。

飲食を一頻り愉しんだら、庭園と祭りを楽しむ人々を眺めさせて頂きましょう。
――この日のような光景がいつまでも続く為にも、武士として、猟兵として。より精進していかねばなりますまい。




 姦計は潰えた。
 実に大慶至極、そう評していいだろう。
 妖魔忍者の掃討も、羽邑屋の成敗も、今この時間のためと思えば達成感が滲む。
「それでは慎んで相伴に預かると致しましょう」
 そう独り言ちた鞍馬・景正の面差しは穏やかだ。瞑色の髪が冬風にそよぐ。
 まだこの地域では珍しいという切子硝子の盃に、ゆっくりと注がれるは戒誓だ。それなりに酒は嗜む景正だったがこの銘柄は初耳。瑠璃の双眸にゆったりと興味の色が刷かれる。
 花冷えで頂くとしよう。雪冷えよりやや綻んで、春の足音が聞こえてくるようなそれ。口に含む。
 清々しくも涼やかな味わいが口中に広がる。
 吐息は、まだ見ぬ春霞を連れてくるかの如く。感慨は寒空に溶けはしない。
「『酒は愁いを払う玉箒、労を助け万人と和合す』――定めし、この祭りのそんな空気に相応しい美味かと存ずる」
 まさに玲瓏たる一杯。続いて箸を伸ばすは鱚の天ぷら。淡白でいて豊かな味わいが塩で際立つ。爽やかに旨味に惹かれ、つい箸も酒も進むのはやむを得まい。戒誓と共に味わえば尚美味が増す。
 供される滋味に舌鼓を打った後、腹ごなしも兼ねて景正は庭園を巡る。
 歩を進める度、小さな子供がはしゃいで駆けまわったり、どこぞの杜氏と思しき男が同業と佳日を寿ぐ様子とすれ違う。賑やかで、朗らかな祭りの景色。
「――この日のような光景がいつまでも続く為にも、武士として、猟兵として。より精進していかねばなりますまい」
 それは誓いのような決意。
 携えて歩くために、しっかりとこの風景を目に焼き付けておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ツーユウ・ナン
旅の楽しみといえばやはり地酒よ。
(あいさつ代わりに各蔵元の原酒の利き酒を済ませ上機嫌)
酒造りを奨励するだけでなく、祭を催して料理共々振舞うとは徳の高い殿様もあったものじゃ!

冬といえば寒鰤は外せぬのう。
・生酒と刺身
――分厚い鰤の刺身に辛味の効いた大根卸しを乗せ、醤油をつけて口いっぱいに頬張る。もっちりとした歯応えと脂の甘味を存分に味わった所へ生酒を呷れば、その新鮮な風味と酸味が切れ味鋭く脂を洗い流し、後に爽やかさと甘い香りを残すだろう。

・純米酒と鰤カブト焼
燗にした純米酒の芳醇な味わいは、野趣溢れるカブト焼きの美味さを存分に引き立ててくれるに違いない。愛用の鉄箸を器用に操りながら余す所なく堪能。




 ふわり浮くような心地は、酩酊か。それとも祭りの賑やかさにあてられたか。
「旅の楽しみといえばやはり地酒よ」
 ツーユウ・ナンは上機嫌に祭りを往く。ある出店の一角には、原酒の利き酒を楽しめる催しが行われていた。この藩の各蔵元による原酒のみを集められているそれは、ほとんど同じ米と同じ水を用いられているはず。なのにどれも違い、どれも美味い。頬が綻ぶくらいに更に気分は上々だ。
「酒造りを奨励するだけでなく、祭を催して料理共々振舞うとは徳の高い殿様もあったものじゃ!」
 そんなツーユウが相対するは寒鰤料理の数々だ。冬の代名詞ともいえる魚だろう。
 分厚い鰤の刺身に、辛味の効いた大根おろしを乗せ、醤油をつけて遠慮なしに口に入れる。やや弾力がありもっちりとした歯応え、脂のきつすぎないコクと甘さが、ツーユウの口内に広がっていく。そこへ躊躇なく生酒を呷る。瑞々しくフレッシュな味わいの酒は、脂の豊かさを丁寧に洗い流そうとして、なのに見事に調和するのだ。残るはすっきりした余韻と甘い香り。
「これはいい。米だけでなく魚も良いものが獲れるとは、水が本当に良いのじゃろうな」
 眼前の皿に乗せられたカブト焼に、愛用の鉄箸を差し入れたらほろり崩れるようにほぐれる。炭火で焦げた香ばしさとふっくらした滋味が口の中でほどける。
 手を伸ばしたのは生酒ではなく、別に用意した純米酒の燗だ。喉に落とすとカブト焼の野趣が際立ち、豊かな熱が臓腑を染める。
 余すところなく堪能しよう。まだ、踏破する美味は続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
うおおおおおおおおおおおお!
米だー!
飯だー!
鮭だー!
いくらだー!
カブだー!
シラスだー!
キス天だー!

うおお、八杯豆腐もウメエ!
味噌汁も辛めでピリッとしてるし猪や雉もうめーよ!

おっと、行けない!
今日、一緒に戦った人へあいさつに行こう。
「兄ちゃん、姉ちゃん! 今日は一緒に戦ってくれて助かったよ! ありがとう!」

お礼を述べた後は御飯に再びありつくぜ!


戒道・蔵乃祐
【月夜・玲(f01605)】
月夜さんと参加

打ち上げ会ですか
猟兵になって初めてです。こういう催しは
ですが鋭気を養うのも、猟兵には必要なことかもしれませんね


月夜さんお疲れ様。
あー…、実はお酒は飲まないんだよね…

僕はお饅頭があったら頂こうかな
酒蔵なら酒饅頭もあるかもしれない!良いですね!

それと渋くて熱~い緑茶が貰えればもう充分すぎるくらい
どんどん食べられますよ!甘露甘露。😊

うむ。反省会じゃないんだけどさ
思うに僕等、もっと戦略に幅を持たせるべき?かも?
二人共が切った張ったの大立ち回りって…なんだかバランス悪くない?前のめり過ぎない?

不可思議
文化的な生まれの筈だというのに蛮族的思考から抜け出せない…


月夜・玲
【戒道・蔵乃祐(f09466)】
戒道さんと参加

一仕事終えた後の一杯って言うのは良いね
遠慮せずに頂こうか
とりあえず戒誓を片手に肴を物色
親子おにぎりと混ぜご飯おにぎりは外せないね
お味噌汁と八杯豆腐も一緒に付けよう
結構ガッツリ目になっちゃったけどまあいっか
運動したしね、うん

戒道さんは何飲むの?
とりあえず私と違うの飲んでよね…ってお酒は飲まないんだ?
じゃあしょうがないか、私は1人でちょっとずつ利き酒!
お茶でも良いから付き合ってよね

まあ、悪酔いしない程度にはするよ
折角のお祭りだもの、楽しく気持ちよくお酒を味わわなきゃね

戦術かー…確かに色んな戦い方が出来る方が良いんだろうけど
いっそ突撃芸を極めてみる?




「うおおおおおおおおおおおお!」
 立ち並ぶ出店に目を輝かせて、雷陣・通ははしゃいで回る。育ち盛りの少年はいつだってはらぺこだ。
 全部欲張りに制覇したくなっては、趣向を凝らした美味の数々に歓声を上げる。
「米だー! 飯だー! 鮭だー! いくらだー! カブだー! シラスだー! キス天だー!」
 財布の許す範囲で手当たり次第に買い込んで、手近な床几台にどっかと座る。
 わくわくしながらまず箸を伸ばしたのは八杯豆腐。掬うように口に運べば喜色が浮かぶ。大豆由来の甘味が舌に染み渡る。噛みしめるようにぎゅっと目を瞑る。
「うおお、ウメエ!」
 素直で率直な感想が自然と口から転がり出る。押し流すように鮪から汁を喉に落とせば、鮪の旨味が溶けだした味噌のふくよかさが腹をあたたかくしてくれる。野趣に溢れる猪は葱との食感の違いが楽しいし、雉の串焼きに齧り付いたら熱い肉汁で火傷しそうになる。
 何だかんだで皿の上はすべて空。
 食べるにいいだけ食べて一息ついたら、見覚えのある姿が眼前を通りかかったので顔を上げた。器を置いて立ち上がる。おいしい続きはまた後で。
 駆け寄って、溌溂とした笑顔で礼を告げたい。
「兄ちゃん、姉ちゃん! 今日は一緒に戦ってくれて助かったよ! ありがとう!」

「ああいえ、僕らは僕らの為すことをしただけですし」
「うん。それに一緒に戦えて助かったのは私たちも同じだしね」
 声をかけてきた少年にそう告げて、戒道・蔵乃祐と月夜・玲は再び祭りの雑踏に身を委ねる。
 平和な時間。昨夜の激闘が嘘のようだ。まるで事態の収束を寿ぐような祝祭。
「打ち上げ会のようなものですか。猟兵になって初めてです。こういう催しは」
 少し気もそぞろな蔵乃祐の言葉が寒空に溶ける。
「ですが鋭気を養うのも、猟兵には必要なことかもしれませんね」
「そうそう。それに一仕事終えた後の一杯って言うのは良いね。遠慮せずに頂こうか」
 玲が手にした盃には既に戒誓が満たされている。さて肴を物色しよう。
 まず親子おにぎりと混ぜご飯おにぎりは欠かせない。ふたつ並べば色味も対照的で目に楽しい。鮪から汁と八杯豆腐も追加したらなかなかの量。持ちきれないから店の人がお盆を貸してくれた。
 しっかりがっつりしたチョイスになったがまあいいだろう。運動した後だし不可抗力だ。
「戒道さんは何飲むの? とりあえず私と違うの飲んでよね……って」
 ぱちり玲が瞬いた。蔵乃祐が抱えていたのはたくさんの酒饅頭と玉露だった。
「お酒は飲まないんだ?」
「あー……、そう。実はお酒は飲まないんだよね……」
「じゃあしょうがないか、私は一人でちょっとずつ利き酒! お茶でも良いから付き合ってよね」
 盃と湯飲みで乾杯と行こう。かちりと合わせる音が、お疲れ様の声と重なる。
 利き酒の盃に指を伸ばしながら玲がつい噴き出したのは、蔵乃祐が勢い良く酒饅頭を咀嚼し始めたから。
 独特の風味のある酒饅頭に玉露の渋みが絶妙に合う。お茶の熱さが冬風で冷えた身体に染みる。
「どんどん食べられますよ! 甘露甘露」
「すごいね」
 笑い零して玲も酒を喉に落とす。澄んだ透明が、するりと腹に注がれる心地。親子おにぎりを食めば鮭の甘さといくらの塩気がちょうどいい。悪酔いしない程度に満喫する所存だ。
 折角の祭りだ。無粋は排除して、楽しく気持ちよくお酒を味わいたい。
 移り変わる話題は戦いの反省会めいた内容。厳つい顎に指を添えて蔵乃祐が思案顔。
「思うに僕等、もっと戦略に幅を持たせるべき? かも?」
 援護とかバックアップとか、そういう思考が挟まった記憶がなかった。近距離遠距離の差はあれど両者とも弾丸突撃的な戦い方。
「二人共が切った張ったの大立ち回りって……なんだかバランス悪くない? 前のめり過ぎない?」
「戦術かー……確かに色んな戦い方が出来る方が良いんだろうけど。いっそ突撃芸を極めてみる?」
「不可思議。文化的な生まれの筈だというのに蛮族的思考から抜け出せない……」
 玲の提案に蔵乃祐は首を捻った。生前に積んだ徳が前のめり型に偏っていたのか。
 空往く鳥が、呑気な鳴き声を出した。長閑だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

美星・アイナ
ふぅ、酒祭りが無事に開けて良かった
ラティファさんも呼んで皆で宴を楽しみましょうか

親子おにぎりと混ぜご飯のおにぎりをむぐむぐと頬張り
ゆり根のかき揚げをはふはふしながら口にすると緑茶を一啜り

美味しいお酒や飲み物、そして美味しい料理を楽しむ人々の姿
この光景を護る事が出来てよかったなと笑んで

ラティファさん、サムライエンパイアのお酒ってどんな感じ?
まだ私は飲めない歳だけど、両親がお酒好きだから気になるんだ
成人してお酒飲めるようになったら、色々お話したいしね

その時は、ラティファさんとも今日みたいに一緒に盃を交わせたらいいな

これからも宜しくお願いします、の意味込めて乾杯を

アドリブ、他の猟兵との掛け合い可




「ふぅ、酒祭りが無事に開けて良かった」
「皆々様の健闘のおかげですわ。御礼申し上げます、美星様」
 美星・アイナの安堵の息を拾うように、ラティファ・サイード(まほろば・f12037)が笑みを転がす。
 ふたりの床几台に広げられるは親子おにぎりと混ぜご飯のおにぎり、百合根のかき揚げ。ひじきの白和えと蕪の浅漬け、硝子の盃。揃えば少し早い春が訪れたような華やかさだ。
 アイナが百合根のかき揚げを食んだら、口中でほどける熱に火傷しそうになる。はふはふしながら、落ち着いた頃に緑茶をひと啜り。百合根の優しい甘さが茶の渋みで引き立たされる。
 腹のまんなかがあったかくなった心地に、アイナは自然と頬を緩めた。真紅の髪が、冬風にそっと揺れる。
 親子連れが美味携え席を探す様子。商人が自慢の逸品を自信たっぷりに売る姿。漂う湯気にすら旨味が溶けて、焼き物を拵える火が弾けた音が聞こえる。
 感慨深げに、ぽつりと呟いた。
「この光景を護る事が出来てよかったな」
 それは本音の響きに満ちている。ラティファは黄金の瞳をゆるり細める。その手の中の硝子盃に、アイナの興味深げな視線が向く。
「ラティファさん、サムライエンパイアのお酒ってどんな感じ? まだ私は飲めない歳だけど、両親がお酒好きだから気になるんだ」
 成人してお酒が飲めるようになったら、大好きな両親とも一緒に飲み交わしたい。いつかの夢は、夢じゃない。
「うふふ、シンプルなのに奥深くてとても美味しゅうございますわ。頂ける日が来たら是非召し上がってくださいましね」
 素直な問いには率直な回答を。ついでのように未来の仮定を紡いでみたら、そうだ、とアイナが手を叩く。
「成人したらラティファさんとも今日みたいに一緒に盃を交わせたらいいな」
「まあ嬉しい。そんなこと仰って頂けたら、わたくし期待してしまいましてよ?」
 巡った季節の先にそんな時間があればいい。
 これからも宜しくお願いします――そんな言葉を交わすように、湯飲みと盃を重ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

籠目・祷夜
酒盛りと聞けばこないわけにはいかないな
存分に楽しませてもらおう

まずは酒、戒誓をいただこうか
肴は…そうだな…
適当なものを、といいたいがそれでは困るだろうし
新鮮な刺身と、何か腹持ちする炭水化物系を
あとは大根の煮たものに味噌をのせたものがいいな…できるだろうか?

運ばれてきたらまずは酒からいただこう
……うん、うん
すっきりとした飲み口、しかし飲みやすい
どれ肴もいただこう
刺身も大根もうまい
炭水化物も腹にたまる

こうしてゆっくり飲むのも悪くない
新鮮な刺身も久し振りに食べた
やはり一人では食が雑になってしまうな
しかし、美味だった
馳走になった

アドリブ、絡み歓迎




 酒盛りと聞けば籠目・祷夜(マツリカ・f11795)の心も自然と躍る。鋭さ宿す面差しながら、存分に楽しみたいという心意気は携えて往く。
「戒誓をいただこうか」
 まずは酒を振舞う出店で注文。どこか肴を供する勧めはあるかと店主に問えば、三軒先の店を紹介された。そこは種類を限らず、様々な料理を扱う小料理店が経営しているとか。
 その店へ足を運んだ祷夜は品書きを眺めつつ、種類をある程度指定して適当なものをと注文した。
 盆に載せて出てきたのは、鰤と金目鯛の刺身。鮪と塩昆布を胡麻油で炒めたものを具にした五穀米おにぎり。そしてふろふき大根。立ち上る湯気には甘い味噌と、仄かに柚子が薫っている。
 揃ったなら頂くとしよう。まずは酒から。
「……うん、うん。すっきりとした飲み口、しかし飲みやすい」
 確かめるような頷き。ゆっくりと喉に落とせば、瑞々しいすべらかさが涼やかだ。するりと呑めてしまいそう。
「どれ肴もいただこう」
 箸を進める。刺身はしつこくない脂が差す上質で新鮮な味わいだ。五穀米おにぎりはしっかり腹にたまる。ふろふき大根は大根にしっかり味が染みていて、それでいて濃いめの味噌との塩梅もちょうどいい。
 どれもこれもと味わって舌鼓を打つも、ゆっくり嗜むといった風情からは遠くなってしまったことに遅れて気付く。やはり一人では食が雑になってしまうな、そう祷夜は少しだけ困ったようなように眉を下げた。
「しかし、美味だった。馳走になった」
 その言葉を聞き届けた店の下働きの男が、誇らしげに鼻の下を擦った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
……祭りの賑やかさには些か馴染みの悪い身ではあるが……
大事な目的の為、ゆっくり周らせて貰うとしよう

とはいえ余り酒に強い方でもない
闇雲に味を試して周った所で酔って終わりだ
友人への土産を探す手伝い、杜氏に助言を頼むとするか
酒を愛し、関わるもの全てを敬拝していた様な男宛だ
だが樽で頼んで桶で呑む、と言っても
過言ではない呑み方をした阿呆ときている
ああ、量は徳利1つ分で良い
最後は礼を述べて場を後に

さて、幾ら馬鹿とは言っても
もっと寄越せと土の下から這い出てくる事は流石に無いだろうが
その時には、この手で叩き返してやらねばな
思い出す、笑った顔。朽ちた墓
今は遠くなってしまったあの場所へ……――帰ると、しよう




「……祭りの賑やかさには些か馴染みの悪い身ではあるが……」
 鷲生・嵯泉が僅かに苦さを浮かべる。
 大事な目的がある。グリモア猟兵から今回の件を聞いて以降ずっと思い巡らせていたことだ。だから祭りの喧騒を横切る歩行も緩やかだ。
 あまり酒に強いほうではないし、試飲するとしても味を比較する前に酔いが回ってしまうのが関の山だろう。
 故に嵯泉は戒道酒造の出店へと足を運ぶ。嵯泉の姿を見止めた杜氏は夜のやり取りを思い出したのだろう、感謝を湛えて破顔する。友人への土産を探していると告げれば、杜氏は快く承諾してくれた。
「酒を愛し、関わるもの全てを敬拝していた様な男宛だ」
 しかし樽で頼み桶で呑む、と言っても過言ではない呑み方をした男だ。あの阿呆は、と思い返せば、嵯泉のかんばせに苦くもあたたかい何かが去来する。
「ああ、量は徳利一つ分で良い」
 そんな嵯泉の願いに応じ、杜氏は一度奥に引っ込んだ後、ある徳利を取り出してきた。何でも今祭りで主に振舞っているものよりもっと希少な雫酒だとか。藩主等の最上位客にしか献上しないものというそれを、杜氏は供してくれたのだ。
 短くも深く礼を述べ、踵を返す。人込みから外れていく最中、嵯泉が思い描くただ一人の面影。
「さて、幾ら馬鹿とは言っても、もっと寄越せと土の下から這い出てくる事は流石に無いだろうが」
 不思議と口許が綻んだ。もしそうだったとしても。
「その時には、この手で叩き返してやらねばな」
 思い出す。忘れない。
 その笑顔も、朽ちた墓も。冬風が吹き抜け、身体の真中を通過していくような感覚に陥る。
 今は遠くなってしまったあの場所へ。
「……――帰ると、しよう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
大人はいいよねぇ
お酒にはこんなにたくさん種類があるんだもの
自分好みの味を見付けるのも楽しそう!
サムライエンパイアのお酒、先生なら喜んでくれるかも
お土産に何か買っていこうかな

私は蜜柑の果実水をいただくよ
わ、ジュースみたいにフレッシュな味わい!
この世界ではこんなにおいしい飲み物を当然のように飲めちゃうなんて……
羨ましすぎるよね
しばらく休暇を取って滞在しちゃいたいぐらい

味噌汁!サムライエンパイアのソウルフードと名高い食べ物……飲み物?
だよね?これくださいな
初めてだからこそシンプルに、調味料は無しで
なるほど、これが和の味
心が落ち着くような味だね
ふふ
いつの間にか寒さも吹き飛んじゃったよ




「大人はいいよねぇ。お酒にはこんなにたくさん種類があるんだもの」
 オルハ・オランシュはそうぼやきながらもどこか微笑ましげだ。
 勝ち取った平和の先で、和やかに杯を交わし合う人々の姿につい眦が緩む。様々な種類の酒があるだけに、自分好みの味を探しに行くのもきっと楽しい。
 そういえばサムライエンパイアのお酒なら、先生も喜んでくれるかもしれない。お土産に買って帰ろうと密かに決意する傍ら、オルハが購入したのは蜜柑の果実水。冬蜜柑を絞って作られたそれは瑞々しさと甘酸っぱさがぎゅっと濃縮されているようだった。
「すごいフレッシュな味わい!」
 祭りで振舞われているということは、この世界ではごく身近な味なのかもしれない。これを当然のように飲めてしまうことへ淡い羨望が滲む。
「羨ましすぎるよね。しばらく休暇を取って滞在しちゃいたいぐらい」
 つい考えるより言葉がまろび出たら、出店の女主人に微笑まれた。「ここの藩主様は賑やかなのがお好きなのさ。またおいでよ」と商売っ気抜きの誘いが飛んだ。
 表情を綻ばせて、オルハが注文したのは鮪から汁。
「サムライエンパイアのソウルフードと名高い食べ物……飲み物? だよね? これくださいな」
 少し多めに盛り付けてくれたらしい。味噌と鮪の良い香りが、絶妙に混ざって馨り高い湯気となる。初めてだからこそシンプルに調味料は抜きに食べてみよう。
 ゆっくりと器を傾けて口にしたら、広がる豊かさに新緑の双眸が細められた。
「なるほど、これが和の味」
 滋味深く染み渡る。不思議と心が落ち着くような、そんな優しい味がする。
 オルハの口許で微笑みが零れた。
 いつの間にか寒さも吹き飛んじゃったよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
是清(f00473)と共に

よォし酒だ。呑むぞ、是清!
この寒い中の酒は、格別であろうなァ!

折角であるから「戒誓」を。熱燗で頼む。
八杯豆腐を買おう。好きなんだ、野菜だとか豆だとか。
後は是清が買っていないものを幾らか。
……凄まじく買い込んでいるが、幾つか私が持とうか?

では、此度の平和に乾杯!
ふはは、旨そうに呑むなァ。
しかしこの寒さは、気持ちだけではどうにもならんよな!

誓いと戒めの酒であるならば、私には掛ける願も幾らかある。
この世界の愛と希望を示すこと――だが。
ここにはもう、愛も希望もあったな。

酒と飯の随伴が欲しくば、私のことはいつでも呼べ。
友との話が一番の肴だからな。
誘ってくれてありがとうよ。


伍島・是清
ニルズヘッグf01811
※ニルと呼ぶ

暖をとるには酒だ
ニル、酒を呑むぞ

「戒誓」の温度は店主にお任せ
いくらの白飯、ゆり根のかき揚げ、鯵のなめろう、それから
床几に行き着くまで目一杯買う
分けっこしような
荷物もじゃあ、有難く

はい、乾杯
あー美味ェー(笑みはないが幸せそう

御神酒にもなる酒と思うと身も引き締まるような
気持ちだけな(寒さで思い切り猫背)
戒めに誓いとなれば尚更
神に誓う程、大仰なもんはねェが
賑やかで幸せそうな平生を視てると護りたくはなる
…柄でもねェけど
…愛と希望…御前そういうの、よく云えンなァ
でもまァ、解るよ

ニル、俺ね、ひとと喰う飯が好きなンだ
独りが多かったからかな
…付き合ってくれて、有難う




「暖をとるには酒だ。ニル、酒を呑むぞ」
「よォし酒だ。呑むぞ、是清! この寒い中の酒は、格別であろうなァ!」 
 伍島・是清(骸の主・f00473)とニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は戒誓を提供する出店の前で思案顔。
 結局是清は花冷え、ニルズヘッグは熱燗を選んだ。
 手に渡った盆の上は目にも楽しい。
 かたや白飯と茜色に艶めくいくら、揚げたての百合根のかき揚げ、焼き海苔も添えた鯵のなめろう。
 かたや豊かな醤油の馨る八杯豆腐、ふきのとうの天ぷらを乗せた蕎麦、優しい味わいの蕪の漬物。
 量が多いが店から盆を貸してもらえた。分けっこしようなと言葉を交わし、床几台に辿り着いたら広げよう。
「では、此度の平和に乾杯!」
「はい、乾杯。あー美味ェー」
 笑みは浮かばず、表情こそ特に変わらぬ是清。しかしその声に幸せそうな彩が宿っていたから、「ふはは、旨そうに呑むなァ」とニルズヘッグも愉快そうに笑みを刷く。
冬の空気は今だ春には遠い。
「御神酒にもなる酒と思うと身も引き締まるような、……気持ちだけな」
「確かに。この寒さは、気持ちだけではどうにもならんよな!」
 思わず猫背で身を震わせる是清に、吐息を弾ませてニルズヘッグが言う。
 寒風が肌を刺す。
 それでも腹に宿った熱はいつか芽吹くと知っている。
「戒めに誓いとなれば尚更。神に誓う程、大仰なもんはねェが」
 賑やかで幸せそうな平生を視てると護りたくはなる。
「……柄でもねェけど」
 ぽつりと付け足す。
 戒誓の注がれた硝子盃越しに、是清は景色を眺めた。ニルズヘッグが是清の視線の先を見据え、小さく呟く。
「誓いと戒めの酒であるならば、私には掛ける願も幾らかある。この世界の愛と希望を示すこと――だが。ここにはもう、愛も希望もあったな」
 祭りを楽しむ人々。和やかな空気。今ここにある幸い。
 当たり前の物語が続いていけばいいと願う。
「……愛と希望……御前そういうの、よく云えンなァ。でもまァ、解るよ」
 呆れと同意が半々。是清はほんの少しだけ吐息を噛んで、それからはっきりした声で言う。
「ニル、俺ね、ひとと喰う飯が好きなンだ。独りが多かったからかな」
 まろび出る言葉には嘘の色はない。ニルズヘッグの返事も溌溂としている。
「酒と飯の随伴が欲しくば、私のことはいつでも呼べ。友との話が一番の肴だからな」
 視線がかち合えばどちらともなく告げた。
 付き合ってくれて。
 誘ってくれて。
 ――ありがとう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリス・ウィルター
【f04845:イデアール・モラクス】
酒といっても色々あるんだな、イデアールはどれを飲む?
食べ物もこんなにあるのか、これは迷う。
今回は一緒に戦ってくれてありがとう。
静かに飲むのもいいものだな、また飲みたい。

イデアールと参加。
酒を選んで、食べ物を少し離れたところで静かに楽しむ。
食べ物は親子おにぎりの茶漬けと肉類を食べたい。
イデアールの杯にも酒を注いで、自分の分にも注ぐ。
酒には強いほうだからひどくは酔わないはずだ。
戦闘のことやこの酒宴のことを話しながら、時間を過ごす。


イデアール・モラクス
イリス(f02397)としっぽり飲む

クク…オブリビオンを殺した後の一杯は堪らんなぁ、昂りが心地良く酒の味を増してくれる。

・飲み
酒の肴に刺身や塩辛を用意して、イリスと飲もう。
私は純米酒を頂くぞ、甘やかながらさっぱりした口当たりはやはり純米酒ならではだ。
「嗚呼、未だにあのオブリビオンを屠った感触が残っている…やはりヤった後の酒は格別だ」
肴を食い、酒を飲み、殺戮の余韻に浸りながらこの瞬間を堪能して。
「イリスはそういう感覚、ないんだろ?
分かるさ、お前は何だかんだで善に属する…英雄の類だ、私のような根っからの悪とは違う」
だからこそ共にいて面白いのかも知れない。
「いずれまた飲もうぞ、イリス」

※アドリブ歓迎




 どこかしらで料理による湯気が立ち上っている。米酒特有の甘い香りがゆっくりと揺蕩う、晩冬の日。
 流石米どころであり酒どころの藩だ。連なる出店では至る所で酒が売っているし、そのどれもに様々な趣向が凝らされている。
 涼しい眼差しを右へ、左へ。イリス・ウィルターは隣を歩くイデアール・モラクスに問う。
「酒といっても色々あるんだな、イデアールはどれを飲む?」
「私は純米酒を頂くぞ、甘やかながらさっぱりした口当たりはやはり純米酒ならではだ」
「なら私もそれにしようか」
 つられるようにイリアが選べば、イデアールは満足げに妖艶な笑みを浮かべる。そうして二人の盆には青と赤、ふたつの硝子盃が乗ることとなった。
 続いて肴となるものを扱う出店に向かう。
 米の炊けるいい匂いがする。焼き物揚げ物お造りに、饅頭や汁粉等の甘味を扱う店まであるようだ。
「食べ物もこんなにあるのか、これは迷う」
 けれど迷うことすら、イリスは少し楽しげだ。イデアールも抜け目なく品物を見定め、狩人の如くに手早く「早くしろ」なんて戯れにイデアールが急かすから、イリスは慌てて注文を済ます。
 親子おにぎりの茶漬けに兎肉の素揚げに、平目の刺身に烏賊の塩辛。美人が二人だからなどと、鴨と芹の煮付けをサービスされたのは余談となろう。
 静かな川辺の床几台を確保して、さあ戦いで勝ち取った美味を堪能しよう。
「今回は一緒に戦ってくれてありがとう」
「この時間を楽しみにしていたからな。たっぷりと楽しむとしよう」
 イリスがイデアールの盃に酌をすれば、「手酌は無粋というものだぞ」と徳利を奪われ注ぎ返された。満ちる、満ちる、清き酒。
 乾杯をして喉に酒を落とす。
 清々しい香りが鼻腔をついた。互いに喉に落とすたびに臓腑が燻るような熱を帯びる。
「クク……オブリビオンを殺した後の一杯は堪らんなぁ、昂りが心地良く酒の味を増してくれる」
 残る手応え、死の恐怖に染まる顔貌。そんなものを思い出してイデアールはうっとりと微笑む。
 今ですらあの感覚を彷彿とするだけで背筋が歓喜に震える。
「嗚呼、未だにあのオブリビオンを屠った感触が残っている……やはりヤった後の酒は格別だ」
 羽邑屋を踏んだ心地を反芻するように、足先をゆらり揺らしてみて。
 それから僅かな間を挟んで、イデアールは不意に尋ねた。
「イリスはそういう感覚、ないんだろ?」
「え?」
 イリスがぱちり、瞬いた。酒には強いほうだからひどくは酔わない。だから聞き間違えなんかじゃない。
 その返事を待たずして魔女は続ける。
「分かるさ、お前は何だかんだで善に属する……英雄の類だ、私のような根っからの悪とは違う」
 清廉で真直ぐな女。
 妖艶で歪んだ女。
 相反する性質。非対称の存在。自分にないものを相手が持っていると、多分互いが知っている。
 だからこそ共にいて面白いのかも知れない。
 そんなイデアールの胸裏を掬ったように、イリスが囁いた。
「静かに飲むのもいいものだな、また飲みたい」
「ああ。いずれまた飲もうぞ、イリス」
 冬に紡がれた約束は、これからの未来へ続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛砂・煉月
【おうち】

さっちゃん(f01671)は多分絵描いてるから、
相棒の穿白(ハク)と美味しいもの探しに出発!

漬け物にしらすの混ぜご飯、八杯豆腐を持ってきて
さっちゃんの前に並べてから、へらりと
絵は一旦休んで食べよ?
頂きますと、手を合わせて

なんか…さっちゃんのばぁちゃんが作ってた味に、似てる
懐かしいなぁって目を細めて空を仰ぎ
隣を見れば複雑そうな幼馴染の顔
肩に頭をぽすりとすれば撫でられて
解るよってオレが慰めたかったのにホント敵わないや

美味しい時間を楽しむのは
厳しくも優しかったあの人が教えてくれたこと

ね、絵みせて?
オレはただ、さっちゃんが描く世界が好きなだけだから
邪魔しないように隣で愛しげに眺める幸せな時間


小花衣・咲世
【おうち】

レン兄(f00719)迷子になってないといいけど
楽しげに賑わってる風景をスケッチブックに描き込む
今のこのいい雰囲気、残しておきたい

集中していたらいつの間に帰ってきてたレン兄がご飯くれる
ありがとう、緑茶もらう
これなに?ふむふむ…なるほど…
(ご飯までスケッチしようとしてぐぅと鳴るお腹)
…食べてから、描こう
いただきます
厳しかったばあちゃん仕込み、行儀良く手を合わせてからぱくり
素朴な味で、とてもおいしい
もう食べられない味を思い出し俯く
(哀しいような、懐かしいような。なんともいえない気持ちで
無表情だった目が少し、細くなる)
肩に乗る重みに気づいてぽんぽんと軽く撫でてみる

絵?いいけど面白みはないよ




「さっちゃんは多分絵描いてるから、ハク、美味しいもの探しに出発しよ!」
 飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)が身を翻してそう告げたら、穿白と呼ばれた白銀の竜が応えるように鳴いた。
 相棒と一緒に探しに行くは気持ちまであったかくなれるような料理。
 趣向が凝らされたもの、珍しい食材を使ったもの。酒祭りと聞いていたが存外料理も豊富だ。いろんな種類があって悩んだが、結局選んだものは漬物としらすの混ぜご飯のおにぎりと、緩やかに湯気が立ち上る八杯豆腐だ。
 未成年の幼馴染のために緑茶も備える。盆に載せてゆっくりした足取りで、彼女の気配を辿る。誰に聞くわけでなくても、自然と足がそちらに向かう。
 一方、賑わう祭りの遠景を写生していた娘が小さく呟く。
「レン兄、迷子になってないといいけど」
 小花衣・咲世(偲ぶ勿忘花・f01671)の声は冬の空気に溶け入らない。今のこの和やかな雰囲気を、残しておきたい。そう願って只管にスケッチブックに向かい合う。
 描くことに集中していたから、咲世は近づいた気配に気付かない。
 スケッチブックに影が差す。光が遮られたことを悟り、咲世はようやく顔を上げた。へらり笑う煉月がいた。
 咲世の傍に料理が並べられる。人々の祭りを楽しむ気持ちが籠められたような彩をしていた。
「絵は一旦休んで食べよ?」
「ありがとう、とりあえず緑茶もらう。……これなに?」
 咲世が八杯豆腐を指差す。「豆腐を水と酒と醤油で煮た料理だって。素材がいいから美味しいってさ」「ふむふむ……なるほど……」なんて応酬が交わされる。
 ついつい料理すら描きたくなってしまうものの、おなかの虫が鳴いてしまえばそうも言っていられない。ひとまず目の前の料理は目に焼き付けておくとして。
「……食べてから、描こう。いただきます」
「頂きます」
 厳しかった咲世のばあちゃん仕込み。きちんと手を合わせて告げたなら、まずはおにぎりへと手を伸ばす。
 食めば優しい味がした。米そのままの甘みに、僅かな塩気。大地と海のおくりもの。
「素朴な味で、とてもおいしい」
「なんか……さっちゃんのばぁちゃんが作ってた味に、似てる」
 煉月が懐かしいなぁと呟いて、目を細めて空を仰いだ。
 冬の青空は夏よりも少し色素が薄い。そんな気がする。切なさが胸に過って視線を戻せば咲世が俯いていた。
 もう食べられない味。
 近しくて愛おしい味。
 今自分は哀しいのだろうか、懐かしいのだろうか。名前を付けられない感情を持て余す。
 言い表すことなんて出来ない。感情を見せぬ青い瞳が、微かに細くなる。
 複雑な気配を感じ取った煉月が、咲世の肩に頭を預けた。寄り添うように。そうしたら咲世の手が煉月の頭をぽんぽんと撫でる。
(解るよってオレが慰めたかったのにホント敵わないや)
 煉月の眉が下がる。せめてぬくもりくらいは、頭から伝わってくれたらいいのに。
 美味しい時間を楽しむのは、厳しくも優しかったあの人が教えてくれたことだ。
 それを噛みしめて、視線だけを向けて、煉月は咲世に問いかける。
「ね、絵みせて?」
「絵? いいけど面白みはないよ」
「オレはただ、さっちゃんが描く世界が好きなだけだから」
 邪魔しないように隣で愛しげに眺める幸せな時間。
 穿白がふたりの近くで微睡むように、小さな欠伸をしてみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルヴィリア・ダナード
うわー、どれにしようか迷っちゃう!
日本酒って確か度数が高めなんだっけ?
くっ、お酒は好きなんだけどそんなに強くないからなー。
初めて頂くから初心者にも優しいのを下さいな!

そして今日の作戦!
長く、この楽しい雰囲気を楽しむためにも飲むペースはゆっくり、そして美味しいものをいっぱい味わおう。
長く楽しめたのなら潰れたとしても後悔はないわっ。

美味しいものをいっぱいたらふく食べるにはちょっとずつだよね。
まずは何からにしようかなー。
あの天ぷらとか美味しそう!
衣しっかりついてて美味しそう!

いただきまーす!の前に今回も素敵な大地の恵みに感謝を!
ちゃんと祈ってから改めまして。
頂きますと乾杯!




「うわー、どれにしようか迷っちゃう!」
 ルヴィリア・ダナードは目を爛々と輝かせた。様々な料理や酒が並び、その味や彩りも千差万別なのだから、心が浮き立つのも致し方ないところ。
 まずは酒だ。
「確か度数が高めなんだっけ? くっ、お酒は好きなんだけどそんなに強くないからなー」
「お姉さん、ここの酒は初めてかい?」
「そうなんです! 初めて頂くから初心者にも優しいのを下さいな!」
 溌溂と告げたルヴィリアに、対応してくれた下男もにこにこ顔だ。
 それならと勧められたのは戒誓の吟醸酒。戒誓の中でも華やかでフルーティーなものだ。少しりんごのような芳香がすると聞けばルヴィリアも楽しみが増す。
「そして今日の作戦! 長く、この楽しい雰囲気を楽しみたいもんね」
 飲むペースはゆっくり、そして美味しいものをいっぱい味わおう――それがルヴィリアが立てた本日の作戦。折角勝ち取った平和、酒祭りなのだから、満喫しなくてどうするというのか。
「長く楽しめたのなら潰れたとしても後悔はないわっ」
 なかなか前のめりな戦法である。
 美味しいものをいっぱいたらふく食べるためには、少しずつ摘まめるような肴にするのが望ましい。「まずは何からにしようかなー」と、店の前でわくわくしながら選びに選んで。
 目に留まったのは天ぷら屋だ。目の前で揚げたてを供してくれるそれに興味津々。
「あれ美味しそう! 衣しっかりついてて美味しそう!」
 そしてルヴィリアの最終結果。
 盆の上、鱚やふきのとうの天ぷら、百合根のかき揚げが皿に乗る。塩辛や金平牛蒡、ひじきの白和え、いくら醤油漬けなどの小鉢も所狭しと盆を飾る。
 早速頂きますと言いたいところ、ルヴィリアは祈りを捧げる。
「今回も素敵な大地の恵みに感謝を! ……改めまして頂きます!」
 美味しい時間の、はじまりはじまり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
氷鷺(春喰・f09328)と

氷鷺は何にすんの
俺は――辛口の、きれのありそなやつを
好物とかあるんだっけ
尋ねながら肴は旨そうなものを数品選び

開いている場所を見つければ腰掛け
ほらお前もと手招いて
――んじゃ、乾杯と徳利を持ち上げ
ん、美味い
仕事の後の酒は格別だな
ドモドモ、今度は仕事の方も一緒にど?
八杯豆腐を口に
あ、酒と合う

そいや家で飲み食いすることはあっても
氷鷺と外出んのははじめてか
彼奴がいないと喋ることも少ないのに
居心地が悪いわけでもない
酒がすすんで気分が良くなれば
じゃれつく様に肩を抱き
な、お前飲んでるー?(絡み酒)
無理しなくてもいーケド
堪能しとかなきゃ損だぜ
いやいや、まだよゆー
んじゃ、呼ばれよっかな


忍冬・氷鷺
綾華(f01194)と

好物?酒なら生酒を良く飲むぞ
特に甘く濃い口当たりのものが好みでな
…お前とは真逆かもしれん

小さく笑い、言葉を返せば
並ぶ生酒を幾つか選び
招かれるまま彼の隣へ腰を下ろす
一仕事お疲れ様
働いた後の美酒はさぞかし身に染み渡るだろう
労いの言葉をかけつつ、杯をあげ乾杯を

――嗚呼、良い味だな
一口、二口。呷る手は止まらずに
思えば、綾華と二人きりというのも珍しいな
切っ掛けはなんであれと
こうして共にこの場に在れる事を嬉しく思う
改めて礼を…ってお、おい?

突然のすきんしっぷに少し驚き
けれど随分と楽しそうな綾華を見れば、自然と笑顔が零れる

無理はするな。は此方の言葉だな
良ければ、こっちの酒も一口どうだ?




 互いの酒の嗜好が真逆だと気付いたのは、店先で何気なしに酒を注文したその時だ。
「氷鷺は何にすんの。俺は――辛口の、きれのありそなやつを」
「酒なら生酒を良く飲むぞ。特に甘く濃い口当たりのものが好みでな」
 浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)と忍冬・氷鷺(春喰・f09328)は顔を見合わせて短く笑気を零した。互いの盆の上、幾つかの硝子盃に辛口純米酒と甘口生酒が並んだ。
 手近な床几台を確保して、綾華は「ほらお前も」と氷鷺を手招く。
 後は味わうだけとなったところで。
「――んじゃ、乾杯」
「一仕事お疲れ様」
 盃が重なれば硝子が鳴る。
 呷れば真直ぐな滋味と芳醇なまろやかさが、各々の口中に広がっていく。思わず頬が緩むのを止められない。
「ん、美味い。仕事の後の酒は格別だな」
「――嗚呼、良い味だな」
「ドモドモ、今度は仕事の方も一緒にど?」
 何て嘯きながらもう一口。
 鱈の天ぷらに野菜たっぷりの甘酢餡がかけられたもの、千枚漬け、そして八杯豆腐が今日の肴だ。
 八杯豆腐を口に含んだ綾華が「あ、酒と合う」なんて喜色を浮かべ、咀嚼して。美味を誰かと共有する楽しみを贅沢に味わう。
 幾らか酒も料理も満喫した頃、綾華は少しの間を置いた後に言う。
「そいや家で飲み食いすることはあっても、氷鷺と外出んのははじめてか」
「思えば、綾華と二人きりというのも珍しいな」
 今気付いた、とばかりの氷鷺の口吻。
 綾華も口の端を上げた。更に彼奴がいないと喋ることも少ないのに、居心地が悪いわけでもない距離感。
 冬風が互いの間を吹き抜けても、それによって隔たれることはない。
「切っ掛けはなんであれと、こうして共にこの場に在れる事を嬉しく思う」
 硝子盃の底が見えたのを確認して、氷鷺は率直な言葉を口にする。瞬いた綾華が破顔した。眦が少し赤いのは、くすぐったさか、それとも酔いか。
「改めて礼を……ってお、おい?」
 唐突に綾華がじゃれつく様に氷鷺の肩を抱く。今度は氷鷺が瞬く番だ。突然の『すきんしっぷ』に少々驚きが零れるのも無理はない。
「な、お前飲んでるー?」
 ご機嫌に嘯くその様は言わずと知れた絡み酒。酔いだったかもしれない。
 それでもあんまり綾華が楽しそうだから、氷鷺は仄かに微笑みを浮かべた。
「無理しなくてもいーケド、堪能しとかなきゃ損だぜ」
「無理はするな。は此方の言葉だな。良ければ、こっちの酒も一口どうだ?」
「いやいや、まだよゆー。んじゃ、もらっとこうかな」
 祭りの賑わいを傍らに、もう一度乾杯と洒落込もうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
清史郎殿(f00502)と
清史郎殿はお疲れ様じゃよ

ささ、酒の肴も色々ちょいちょいもろてきたんよ
八杯豆腐じゃて、んー、大根おろしとようあうわぁ
桜海老と菜の花の卵とじ…なんでこんな優しい味でうまいんじゃろ
ここで、すっとぬける清酒をきゅっと…んまい
でも喉に残る。良い酒じゃ!次は華やかなのにしよ
おやラティファ、お勧めあったらおしえておくれ
清史郎殿もほれもっと飲むが良い!

ふふ、美味い酒と美味いもんと、楽しいなぁ(にへにへ笑う、超絶よっぱらい)
ふふ、ふふふ。せーしろーどの、せーしろーどの……もー、それもたにんぎょーぎよの、せーちゃんでええ?
もふ?おうおう、ええよ。それにわしのしっぽを堪能するがよい…!


筧・清史郎
嵐吾(f05366)と
一仕事終えた後の酒は格別だな

折角だ、様々な日本酒を飲み比べしたい
「ふむ、これはキレがある。それはすっきり飲みやすかった」
ラティファはどれが好みだ?
俺はふくよかな甘味のこれが気に入ったな

八杯豆腐に、桜海老と菜の花の卵とじ……非常に良いな(ご機嫌
白和え、金平等の惣菜類、肉類も色々摘みつつ
嵐吾の酒はいただこう、そして俺もすすめる
ところで甘味はないのだろうか(甘党

饗(f00169)とも労い合い話を
「任務お疲れ様だ」
「この八杯豆腐は美味だった。饗もどうだ?」

嵐吾の尻尾はやはり気になるな……失礼(もふもふ
では俺も、らんらんと呼ぼう(微笑み
(基本飲んでも変わらないが少しほろ酔い陽気に)


香神乃・饗
【筧師匠f00502】
決戦の時腹を減らしてた人がいれば(壥・灰色)安否を確認
行き倒れてないっすか
あれだけ食べられるならへーきっすね
安心し他所へ

へー酒の水で淹れたお茶っすか
物珍しげに頂き感触を味わう
喉越しっていうんっすか柔らかさが違う気がするっす
酒を造る水って凄いんっすね

サイードさんご案内お疲れさまっす!お陰さまで満喫してるっす!(茶筒掲げ)
筧師匠も討伐お疲れさまっす!お酌するっすか
茶化し

活躍見てたっす!
「成敗してくれよう(声真似)」って、めっちゃんこ格好良かったっす!

師匠、お勧めのご飯あるっすか
美味そうなのが一杯で何を食べていいのか迷子っす
サイードさん含めお勧めを聞く
良いっすね貰ってくるっす!




 美味しいものを食べると腹が満たされるだけでなく、気持ちまで豊かになる。ならばそれを気の置けない相手と楽しみたいと願うのは当然のことだろう。
 終夜・嵐吾(灰青・f05366)は筧・清史郎の前に諸々の料理を並べた。それぞれの器が宝箱みたいに華やいでいる。
「清史郎殿はお疲れ様じゃよ。ささ、酒の肴も色々ちょいちょいもろてきたんよ」
 八杯豆腐に、桜海老と菜の花の卵とじ、白和えに蓮根金平に蕪の漬物に烏賊の塩辛。
 早速飲み始めよう。乾杯を交わしたら、冬の空気に響くささやかな音。
 齎された平和が、何より酒を美味くしてくれる。
「一仕事終えた後の酒は格別だな」
「清史郎殿はお疲れ様じゃよ」
 噛みしめるように酒を味わう清史郎に、嵐吾は労うように笑みを深める。
 今の一杯も良いけれど、様々な種類を味わってみたい。
 そう願った清史郎のため、飲み比べが出来るよう嵐吾が幾つか見繕ってやった。盆の上に並ぶ四種の酒、それが二人分。
「酒だけを味わうのもええんじゃが、肴と合わせるとまた格別」
 例えば、と嵐吾が八杯豆腐に箸を入れる。掬うように口に運んだ。豆腐のまろやかさと大根おろしの瑞々しさの塩梅が良い。
「んー、大根おろしとようあうわぁ」
「どれ……」
 清史郎も追従する。そして嵐吾に勧められるがまま酒を口に運んだ。濃醇でこくのある酒は、豆腐の甘みを包むように際立たせた。
 ぱちり。清史郎が瞬く。ヤドリガミとして長く存在はすれど未知の味わい。続けざまに嵐吾は桜海老と菜の花の卵とじへ移行した。
「……なんでこんな優しい味でうまいんじゃろ」
「……非常に良いな」
 思わず成人男子が頬を緩めてしまうほどの美味。隣の酒へ指が動く。
「ここで、すっとぬける清酒をきゅっと……んまい」
「ああ、すっきり飲みやすい」
 涼やかな清流の如き酒で桜海老が生き生きとするよう。嵐吾はご機嫌だ。
「でも喉に残る。良い酒じゃ! 次は華やかなのにしよ」
 そこで偶然近くを通りがかったラティファへ嵐吾が尋ねる。
「おやラティファ、お勧めあったらおしえておくれ」
「まあ、ハードルが高うございます。終夜様のほうがお詳しいのではなくて?」
 そう言いながらも、「華やかなものならこちらは如何でしょう」と示したのは手に提げた籠。徳利がある。新しい猪口に酒を注ぎ、それを嵐吾に勧めた。一口含めば、爛漫に咲き誇る桜吹雪めいた華やぎが押し寄せた。「ええのう」と合格点を出す。清史郎も問いを向けてみた。
「ラティファはどれが好みだ? 俺はふくよかな甘味のこれが気に入ったな」
「筧様がお好きなものが、わたくしも好きです。……ということにしてもよろしいかしら?」
 なんて冗談めいたやり取りが生じるのもご愛敬。ついでに甘味を所望する清史郎に、女は酒饅頭を勧めてみた。袖の下みたいにそっと引き渡す。交渉成立。
 互いに盃を空け、追加の酒も更に進めて。
 そうやって飲み合ううちに、空気も気安く綻んでいく、見事に酔った嵐吾と表面には出づらくもほろ酔いの清史郎。男二人で楽しげだ。清史郎が嵐吾のふさふさしっぽをもふもふしている。「もふ? おうおう、ええよ。それにわしのしっぽを堪能するがよい……!」とゴーサインが出たので遠慮はない。
 美味い酒と美味い料理と、楽しい空気。にへら笑った嵐吾が宣う。
「ふふ、ふふふ。せーしろーどの、せーしろーどの……もー、それもたにんぎょーぎよの、せーちゃんでええ?」
「では俺も、らんらんと呼ぼう」
 清史郎も朗らかに返答する。
 割と一足飛びだった。酔った勢いって恐ろしい。
 けれど二人が心底楽しそうだから、きっとそれでいいのだろう。
「うふふ。仲睦まじいご様子、見ていてこちらまで嬉しくなりますわね」
 周囲の人間をも寛がせてしまう、あたたかい景色がそこにあった。

 一方その頃。
 そういえば決戦の時腹を減らしていた人は、今頃お腹いっぱい食べているだろうか。行き倒れていないかちょっぴり心配だった。
 でもきっと、彼のことだ。美味しいものを確保して全力で味わっているだろう。
 香神乃・饗はそんなことをぼんやりと考えていた。意識が引き戻される。目の前で、湯飲みに熱い玉露が注がれているところであった。
「へー、酒を造る水と同じもので淹れたお茶なんすね」
 店子に説明を受ける。米どころであり水どころでもあるこの藩ならではなのだろう。包むように持てば冷たい手を融かすよう。喉に落とす。その滑らかさ、柔らかさが常の茶とは全然違った。
「酒を造る水って凄いんっすね」
 物珍しげな饗の湯飲みに、店子が再び茶を満たしてくれた。
 どこかに腰を落ち着けよう。手近な床几台を探す折、見知った姿を見つけて饗は足を向けた。
「サイードさんご案内お疲れさまっす! お陰さまで満喫してるっす!」
「それはようございました。わたくしも嬉しゅうございますわ」
 湯飲み掲げ破顔する饗へ、女はゆるり目を細めた。その近くにいる人物に、饗は表情を輝かせる。
「筧師匠も討伐お疲れさまっす! お酌するっすか」
 清史郎に茶化すように声をかけ、続けて語るは先の戦いでの一幕だ。
「活躍見てたっす! 『成敗してくれよう』って、めっちゃんこ格好良かったっす!」
「面映ゆいな。そちらも任務お疲れ様だ」
 声真似すら披露して賞賛する饗に、清史郎は照れ臭そうに眦を緩めた。
 続けざまに問うたのは、此度の祭りに於ける宝探しの情報だ。
「師匠、お勧めのご飯あるっすか。美味そうなのが一杯で何を食べていいのか迷子っす」
「この八杯豆腐は美味だった。饗もどうだ?」
「香神乃様ならお肉料理もよろしいのでは。この先の出店で売っておりますわ」
「良いっすね貰ってくるっす!」
 聞くが早いか饗が走り出した。
 その勢いは旋風のよう。潔く、真直ぐ、駆け抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
綾(f01786)と

選ぶのは水の如く清冽な生酒
くいと呑めば忽ちご機嫌

わたし? もう二十四だよ?

きみの問いに軽やかに応え
爽涼な味と端麗な馨は
まるで綾みたい、なんて笑おう

肴には熱々の百合根がいい
ほくりとした歯触りと仄かな甘み
で、そこにまたもう一口――

今、わたし、天国を見た!

煌く眸できみにもお裾分け
きれいな唇が綻ぶのを見れば
いっそう美味が際立つようで
くいくいと重ねる杯
緩んだ頬も、右目の牡丹も、
心なしか薄紅を濃くしてゆらゆら

んん、まだ呑める…呑……

唐突にことんと傾いて
きみの肩に寄り掛かっても
酒杯は零さない心意気

綾、と夢うつつに名を呼んで
馥郁たる酒の馨に融けてゆく幸せなここち
きみも今、そうだと、いいな


都槻・綾
f11024/かよさん

あどけない様子を見掛けていた故に
未成年と思っていたひとへ思わず、

…呑めるのです?

齢を聞けば目を瞬いて
純粋で可愛らしい根をお持ちなのだと
ふくふく揺らす肩

乾杯は戒誓にて
百と二十の私にも及ばぬ、三百年の歴史の綴り
継がれてきた技と真摯さを澄んだ香りに想う

零された例えへ礼の一献を差し出し
お裾分けの百合根を
口を開け遠慮なく頂戴

あぁ誠
甘やかで美味

自身の肴は八杯豆腐
素朴な味付け故に素材が生きる

二人で重ねる数多の杯
揺らめく花へ
そろそろ仕舞いにしようかと問うた所で
不意に肩に乗る柔らかさ

どうぞ
心満ちる温かな夢が見られますように

手にした酒杯に映る牡丹色
笑んで飲み干せば
春の彩りが身の裡に沁みるよう




 晩冬に賑わう祭りの片隅、柔らかな春の兆しを覗かせる一角。
 境・花世が手の中で硝子盃を揺らめかせる。
 水の如く清冽な生酒を喉に落とせば、ふわり、華やぐような微笑みが咲いた。
「……呑めるのです?」
 つい都槻・綾がそう問うたのは、彼女のいとけなさ故にまだ成人していないかと思っていたから。
 花世がご機嫌掲げたままで応える。不思議なことを言うね、そう告げるように。
「わたし? もう二十四だよ?」
 軽やかに宣って、「爽涼な味と端麗な馨はまるで綾みたい」と評してはにかんだ。些細な仕草に、純粋で可愛らしい芯根を垣間見た心地になって、綾の肩もふくふくと揺れる。
 綾の盃にも戒誓を満たして、さあ改めて乾杯を。
 ヤドリガミとして百と二十を数えた綾すらも飛び越える、三百年の重さと尊さを、澄んだ香りから感じ取る。真直ぐ涼やかに滴るそれを余すことなく受け止めて、交わす笑みは穏やかに。
 先の喩えの返礼に、綾が花世の盃を満たし直す。ふたりが肴に選んだのは百合根のかき揚げだ。
 箸で割り口に運べば、柔らかな歯ざわりと豊かな甘さが口中で躍った。そこに一口酒を含めば――眸の紅水晶に光が宿る。瞬いて、鮮やかな調和に心が弾む。
「今、わたし、天国を見た!」
 ちょっぴり大仰な言い回し。でも素直なその声音に綾も眦を綻ばせる。
 同じ幸せを分け合いたくて、お裾分けと花世が彼の口許に運んでやる。
「あぁ誠。甘やかで美味」
「でしょ?」
 綾も満足げに唇を綻ばせたら、少しばかり花世は誇らしげだ。
 綾が選んだ八杯豆腐を食んだ時に感じた、素朴な優しいしあわせも、共有することがこんなに嬉しいなんて。
 こうして同じ美味を体験すること自体が、何よりの調味料なのかもしれない。そう思えば箸も進むし盃も重ねられる。
 何杯目だっけ、なんて考えるのも忘れていた。
 幾重にも咲き綻んだ微笑みも右目の牡丹も、僅かばかり薄紅を滲ませる頃合い。
「んん、まだ呑める……呑……」
「ああ。そろそろ仕舞いに――」
 言いかけた言葉は不意に途切れる。冬風にさざめく花が、そっと肩に凭れてきたから。それでも手許の盃は絶妙なバランスを保って、手の中に揺らめくまま。
 ――綾。
 名前は波紋を描くように、ゆったりと。夢と現の境界を辿って、きみの畔へ辿り着く。
 肩に寄せられる優しい重さをあやすように、紡がれる声は和やかに。
「どうぞ、心満ちる温かな夢が見られますように」
 祈りに似た願いを傾ける。
 綾の盃に、麗しき牡丹が映り込む。そっと唇寄せるように含めば、春の爛漫がゆっくりと胸裏まで染みてくる。
 馥郁たる酒の香りに揺蕩うことが許されるなら。
 そのさいわいに、もう少し一緒に浸っていられますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戌吠・左
【犬と鴬】
戦に備えぐっすり眠ろうと思っていたが、
つい気持ちよくてうとうとしていたら全てが終わっていた。
…まあそんなこともある、と泰平のひとときに大欠伸
その拍子に香る匂いに腹が鳴る

大食らい同士だが、これだけで足りるか?
ずどん、どしんと大量の飯を貰い受けつつ
あそこは、と視線を向けるのは低木の枝の上
ちょっとした特等席じゃないか

うぐいすに続き木をよじ登ってはぜえはあ
しかし、人が皆笑顔で美味いものを分け合って。
よい景色だ、と飯をかっ食らいつつぽかぽかな気持ちに
――なっていたのに、早速酔っているんじゃないか、うぐいす
俺はまだ十九、たぶん酒を呑んだら怒られる。
しつこいならお口にまだ熱々のかき揚げを突っ込むぞ


靄願・うぐいす
【犬と鴬】

荒事には参加出来なかったけれど
めでたき人々に紛れ幸せのお裾分けを頂くことは許されますかねぇ
そも、私たちのお席がまだあるかどうか…
両手に目一杯抱えてきたお料理をしれっとわんこ(左さん)に押し付け右往左往
お酒は甘ぁいのを燗、ぬるくならない内に楽しみたいものだけど

わんこの示す方をどちら?と向いてぱあと顔が綻ぶ
成る程ねぇ、とてもよろしい!
ぼんくらさんはそこで少おし待っていてくださいねぇ
ひょいひょい二人のお料理を寒そうな裸の木に運び

折角だからわんこも一口いかがです?
断られるも、真面目ですねぇと唇を尖らせ
ほら、私と大人の階段を昇ってみませんか?
お猪口をぐいぐい押し付け、好い気分にけらけら笑う




 実は戒道酒造を巡る戦いには馳せ参じようと思っていたりいなかったり。
 けれど戌吠・左(苔の咲くまで・f11843)などは、戦に備えひと眠りと思ったところ、うとうとしていたら思いのほかぐっすり眠ってしまい。結局、起きた時にはすべてが片付いていたもので。
「荒事には参加出来なかったけれど、めでたき人々に紛れ幸せのお裾分けを頂くことは許されますかねぇ」
 隣往く靄願・うぐいす(春の秘めごと・f11218)の呑気な呟きに、大欠伸で応えてしまった。その拍子に徳利から薫る甘い酒の気配に、腹が鳴る。まあ勝ち取られた平和はそう覆るものではないのだから、相伴に与らせてもらおう。
 うぐいすは自分たちの席があるか些か心配ではあったものの、祭りに参加する店子も客も揃って歓迎してくれた。いろいろ席もあるから探してみるといいという助言付きだ。故に、両手にめいっぱいのご馳走を左が請け負う形で歩いている。
「大食らい同士だが、これだけで足りるか?」
 何だかんだで軽く頬張れるもの、齧り付けるものを中心に選んでいるな。そんなふうにぼんやり考えながら歩く。酒は燗にしてもらったから冷めないうちに味わいたいところ。川辺の床几台に陣取るのもいいが――。
「……あそこは」
 左の視線が向かった先、「どちら」とうぐいすの眼差しが追いかける。太い節々が目立つ低木が目に入った。あの高さと枝の多さなら、そう思いついたら言葉が先にまろび出る。
「ちょっとした特等席じゃないか」
「成る程ねぇ、とてもよろしい!」
 歓声めいた笑気は同意の表れ。軽やかな足音響かせ、うぐいすがひらり前に出た。見た目に反し運動はそう不得手ではない。
「ぼんくらさんはそこで少おし待っていてくださいねぇ」
 果たして反論する間はあったか否か。最後におにぎりを買った店で風呂敷を融通してもらったことをいいことに、うぐいすはそれを器用に手首に引っかけたなら、ひょいひょいと料理を寒風に晒される裸の樹に運んでいく。後ろからぜえはあ言いながら左が追いかけるように登ってくる。銚子に盃では酒が零れてしまうから、徳利に縄を付けたものを肩に引っかけて。
 低木であろうと目線の高さが変わる。景色も変わる。そしてきっとそれを見る人が受け取る感慨も、少し変わる。
 吹き抜ける冬のつむじ風が髪をかき混ぜていったなら、その向こうに祭りを楽しむ人々の賑わいが見えた。
 枝が太いのでそれなりに料理も広げられそうだ。混ぜご飯のおにぎりを左が食めば、蕪葉の漬物のしゃきっとした食感がする。
 あたたかな風景を見ながら、あたたかな食事を味わう。
 いい景色だ。そんな風に素直に思って、ゆっくりと吐息を解けさせたのに。
「折角だからわんこも一口いかがです?」
「早速酔っているんじゃないか、うぐいす」
 曲がりなりにも左は未成年。流石に飲んだりすれば怒られるに違いない。だから丁重に断りを入れたのだが、うぐいすは「真面目ですねぇ」と唇を尖らせ悪びれない。尚もお猪口を差し出してくる。
「ほら、私と大人の階段を昇ってみませんか?」
 なんて冗談めかして言うものだから、左は盛大に呆れた顔して言ってのける。気安さの発露だ。
「しつこいならお口にまだ熱々のかき揚げを突っ込むぞ」
 けらけらとうぐいすの笑い声が響いたのは、言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒蛇・宵蔭
蓮条・凪紗(f12887)と同行。

庭を肴に一人で、とも思ったのですが。
凪紗さんには馴染み深いのでは?と誘ってみました。
彼の術の話も気になるのですが、この場では無粋ですかね。

なるほど、水が良ければ豆腐も良い。
では評判の八杯豆腐をいただいてみますか。
肉も嫌いではないのですが……凪紗さんのおすすめを伺っても?

……この世界の酒は本当に味わい深い。
見た目は殆ど同じなのに、複雑な差があるのが面白いです。
故郷は少しこちらに似た文化を持っていたのですが、全く違うと――この純度を見ればわかります。

凪紗さんもいける口ならば、色々と比べてみましょう。端から端まで。
因みに私は酔ったことがないので。

アドリブ歓迎です


蓮条・凪紗
黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)と同行

宵蔭のお誘いで来たけど、うん、確かにオレ好み。
実家が神社やもんで、御神酒とか奉納酒とか清酒はよぉ知っとるけど。
酒蔵訪れるのは初めてやね。こら興味深いわ。
お祓い用に少し買うてこ。呪術を知るには正道も知らんとあかんのよ。

水がエエとこは酒も豆腐も旨いはず。
豆腐の料理とか宵蔭は食べたことあるん?と尋ねてみる。
素材がエエから優しい味やろな。
肉料理も気になるところ。他所の世界やと高級食材だったりしはるんよ。
懐かしい自然の恵みに舌鼓。
酒は香りを味わいながら頂く。弱くはないつもり。
多分初めてのお味が多いであろう誘い人の様子を見て楽しむ気満々。




 太平が賑わい、平和が揺蕩う今日という日。
 川辺の庭の佇まいを肴に一人で飲むのも悪くない、とも思ったのだけれど。
「凪紗さんには馴染み深いのでは? と思ったものですから」
「うん、確かにオレ好み」
 黒蛇・宵蔭がさらりと誘いの理由を手向ければ、蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)が喜色浮かべて首肯する。
 凪紗の実家は神社だ。御神酒や奉納酒、清酒の類は馴染み深いものではある。しかし。
「酒蔵訪れるのは初めてやね。こら興味深いわ」
 故に酒造りに携わる人間と関わる機会もあまりないのだろう。祭りの賑わいを、酒を振舞う店子の姿を眺める凪紗の眼差しには興味の色が浮かんでいる。
 並ぶ酒類に視線を走らせ「お祓い用に少し買うてこ。呪術を知るには正道も知らんとあかんのよ」と呟く凪紗の様子を見て、宵蔭は薄く笑みを刷いた。陰陽師でありつつ邪法に触れる凪紗の術に関心がないわけではない。しかしこの場は祝祭だ、陰りとは遠い平和を噛みしめるものだ。無粋かと、ひとまず脇に避けておく。
 奉献酒にも用いられるという清酒を幾らか購入し、ついでに自分たちの分の吟醸酒まで確保しておく。肴になるものも選ばなければ、と考えを巡らせた時、ふと思い出したのはこの藩が米どころであり水どころであるという話。
「水がエエとこは酒も豆腐も旨いはず」
「なるほど、では評判の八杯豆腐をいただいてみますか」
 凪紗の推論に宵蔭が頷き、「豆腐の料理とか宵蔭は食べたことあるん?」と興味のままに投擲する問いを交えつつ、豆腐屋が提携しているという小料理店の出店へと足を運んだ。馨り高い醤油のいい匂いが冬の空気に立ち上る。
 早速購入すれば、素材がいいから優しい味なんだろうと期待ばかりが募っていく。さて、これだけではふたりで摘まむには少々物足りないか。
 凪紗が首を捻りながら言う。
「肉料理も気になるところ。他所の世界やと高級食材だったりしはるんよ」
「肉も嫌いではないのですが……凪紗さんのおすすめを伺っても?」
 宵蔭が唆すように嘯けば、凪紗はしょうがないなと言わんばかりに口の端を上げる。真鴨の炭焼きがあるというので、それを選ぶことにした。
 川の流れがよく見える床几台に腰を下ろし、まずは乾杯といこう。
 唇を濡らすように酒を口に含んだ、宵蔭の真紅の双眸が細められる。
「……この世界の酒は本当に味わい深い」
 先程試飲した純米酒とは玄妙かつ確実な差異があることを知る。見た目は殆ど同じなのに、複雑な違いがあるのが興味深い。
「故郷は少しこちらに似た文化を持っていたのですが、全く違うと――この純度を見ればわかります」
「へえ。その話聞いても?」
 宵蔭の反応を楽しげに見遣り、凪紗も真鴨に箸を伸ばす。野趣に富みつつ懐かしい自然の恵みが舌を楽しませてくれる。
 他愛無い会話を交わしつつ、盃の底が見えれば酌をしよう。
 あるいは飲み比べ用の一揃いを供している店もあったから、それも追加してみるか。
「凪紗さんもいける口ならば、色々と比べてみましょう。端から端まで」
 因みに私は酔ったことがないので。
 さらりと傲然と言ってのける宵蔭に、凪紗はくつりと喉を震わせた。香りごと楽しんでいた酒を飲み干して、不敵に笑んだ。弱くはないつもりだ。
 初めてのお味が多いであろう誘い人の様子を見て、それを肴にしてみようかなんて。意地の悪い胸裏はそっと呑み込んだまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロウ・タツガミ
神無月・継葉(f03019)と連携

【POW】

美味しい酒を飲むために、もう少し動いておくか

【情報収集】をして、【怪力】で力仕事を手伝うつもりだ。一通りの仕事が終わったら、酒宴に参加することにしよう

マガホコ、待望の酒だぞ

【三位龍装】で胃と肝臓の防御力をあげてから酒を飲もとするか

(酒を前に目を輝かせているマガホコの頭を撫でつつ)これで2日酔いの心配も無く、酒が楽しめるというものだ

静葉さんの作ったつまみを食べ、酌を受け酒を楽しむとするか

シズハさん、美味しいおつまみありがとうございます

マガホコも酌を受け、嬉しそうに酒を飲んでいる、こういう日だけが続けば良いと思うのは間違えているのだろうな


神無月・継葉
【SPD・裏人格で行動・クロウと連携】

さて、面倒なのは落としたことだし、やっとゆっくりできそうだな。

だが、まだやることはあるな。
うまい酒にはうまいものが付き物だ。
ここは、なにかいいつまみを作ることに仕様じゃないか。

スッキリとする味の酒だし、油のきついもので口のなかをいじめてやるのがいいかもな。
塩味をきかせた唐揚げ、あとはそうだな…焼き魚なんかも用意しておこう。

さて、あとは私も一仕事しないとな。
クロウ氏、約束の杓をさせてくれ。
もちろん、マガホコにもだ。

お疲れさまだったな、クロウ氏。
ゆっくりと疲れを癒してくれ。




 悪は成敗した。面倒ごとは片付けた。あとはゆっくりと祭りを楽しむだけでいい。
 いいはずなのだが、ふたりに過った考えは少々他の猟兵とは角度を変えていた。
「美味しい酒を飲むために、もう少し動いておくか」
 そう呟いたクロウ・タツガミは、祭りの裏方、酒の運搬や酔客の応対等力仕事の協力を申し出た。この藩を守ってくれた猟兵にそんなことはさせられないと一度は固辞した杜氏たちだが、その真摯な言葉を無碍にするのもかえって失礼だと思ったのだろう。負担のない範囲で仕事を頼み、事あるごとに丁寧な感謝を伝えてくれる。
 賑わう祭りの往来。仕事を終えたクロウが、ひとつの出店に視線を流す。
 裏方で料理に興じている娘がいる。長い青髪を邪魔にならないよう結った神無月・継葉、もとい静葉だ。
 自分で料理を作りたいと申し出た静葉に、戒道酒造が余裕のある出店の厨房を使えるように取り計らってくれた。必要であれば材料も手配すると請け負ってくれたのは、静葉が事件の解決に尽力したからこそ。
「うまい酒にはうまいものが付き物だ。ここは、なにかいいつまみを作ることに仕様じゃないか」
 戒誓に合わせた肴はどんなものがいいだろう。すっきりと瑞々しい飲み口と聞いた。であれば、揚げ物などで口の中を敢えて苛めてやれば、きっとその後に涼やかな酒を堪能することが出来よう。
 そこで静葉は野兎の肉で唐揚げを作ることにした。下味は塩。あとは鰤のかまを融通してもらったし、それを焼いてみたらきっと美味いに違いない。
 合流したクロウと静葉で、出来立ての料理の盆と酒を持って移動する。
 見晴らしのいい床几台を確保したなら、マガホコがするりと顔を覗かせる。
「マガホコ、待望の酒だぞ」
 黒の小龍の目が輝いている。その頭をクロウの無骨な指が撫でた。強化の技を用いて胃と肝臓の防御力を上げるなんて手管は叶うかどうか。
 その様子を微笑ましげに眺めていた静葉が、不意に呟く。
「さて、あとは私も一仕事しないとな」
 銚子を傾け、差し出してみる。
「クロウ氏、約束の杓をさせてくれ。もちろん、マガホコにもだ」
「ありがとうございます」
 羽邑屋と対峙した時交わした約束が、今果たされる。
 乾杯とは杯を乾かすと書くのだから、互いのお猪口に戒誓が満たされたなら、一気に飲み干してしまおう。
「シズハさん、美味しいおつまみもありがとうございます」
 静葉の作った肴は絶品の一言に尽きる。
 先程揚げたばかりの唐揚げは噛みしめるごとに熱い肉汁が迸るし、脂の乗った鰤は口の中でふっくらと解ける。どちらも戒誓と合わせれば絶妙な好相性を発揮した。酒が進む。
 マガホコにも存分に呑ませると約束したから、その眼前にマガホコ用のお猪口が用意されている。満たされた酒に首を突っ込むようにして、それは美味しそうに呑んでいる。
「お疲れさまだったな、クロウ氏。ゆっくりと疲れを癒してくれ」
「はい」
 舌鼓を打ちつつ、クロウはこういう日だけが続けば良いと思うのは間違えているのだろうな、という感傷に蓋をする。それは戦いに身を置いていたクロウだからこそ感じるものなのかもしれない。
 それを見届けて、見ていないふりをして、静葉は淡く微笑む。
 もう一度喉に落とした戒誓は、肺腑に染み込むようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四辻路・よつろ
【バッカス5】
白く透き通った水の様な酒の入った瓶をゆっくり傾けて
並々とお猪口に注いで一気にあおる
はぁ、美味しい、と幸せそうな溜息をつけて
今度は季節の魚が並んだ盛り合わせに手を付けた

無遠慮に横から伸びてくる手に舌打ちをして
お箸を使いなさい、お箸をと文句を言う
――全く、躾のなってない犬ね
その言葉はどちらかと言えば、飼い主へ宛てたもの

何でって…何ででしょうね
私結構好きよ、あの薄汚いバー
気を使わなくて良いし
ギドの言葉にあら失礼ね、ちゃんと使ってるわよと反論しながら
おっかわり〜とお猪口を差し出す
手元の徳利はもう既にカラのようだ


イェルクロルト・レイン
【バッカス】5名
酒が飲めると連れられて
味は分からないけれど、アルコールが焼く喉の熱は心地良い
肴は誰かが旨いやつを選ぶだろう
肉でなく、歯ごたえがあるものがあれば良い

かおりが違うと聞けばすんと鼻を鳴らして
ない味覚の代わりにはなる
味を想像するのは難しいけれど、これなら楽しめる
ひょいと適当に隣人からつまみを取れば口に
魚の刺身を摘まんで齧り喉へ押し込む
罵声は耳を折って聞こえないふり

おれ、これがいい
気にいった香りの酒
両手で猪口を包み込んでふわふわ夢心地
酔えば眠くなるようで、うとうと瞼も落ちかけて
傾く身体をクレムに預け目を閉じる
丁度良い位置にいるのが悪い
ばふりと上着が飛んでくれば、礼もそこそこにもぞもぞ被る


クレム・クラウベル
【バッカス】
早速気持ちよく酔っ払ってるな、ベリンダは
折角の祭りなら存分に飲んで食べるが吉
勧めの戒誓からまず一杯
親子にぎりの茶漬けやゆり根のかき揚げと
見慣れぬものを肴に味わう
酒も食べ物も随分種類が多い
食が豊かなのだな、ここは

こちらに向いたよつろの言葉には肩を竦めて
躾けてどうにかなるなら粗相してないだろうさ
これで勘弁しておいてくれと
雉肉の串焼きを一本よつろの皿に添え

ふと掛かった重みに坏を傾ける手が止まる
……お前、酔うと寝る方か
今にも眠りそうなルトの様子に猪口を回収し
仕方ないなと膝に転がす
こうも騒がしいのによく寝れるな

なんとも酒の席らしい景色というか
……嫌いではないがな
杯にまだ残る酒の香りに目を細め


ベリンダ・レッドマン
【バッカス】
あっはっはっはっはー!!
いいねぇお酒がいっぱい飲めるって!素晴らしいねぇー!
腹がでかい!いや違うな、太っ腹!あっはっは!
※酔うとひたすら楽しくなるタイプ

私はねぇ、炭水化物とお肉が好きだなー!
というわけで親子おにぎりをもぐもぐといただくよ!もぐもぐ!
これ魚肉に魚卵だろう!?
加工された魚肉は食べたことあるけど卵は初めてだなー!
あっはっは!ぷちぷちしてて美味しいねぇ!

いやいや本当に不思議だよねぇ
まーでもあの場所がなければ今日この会もない訳だしね~!ふふふ!

おやおや、あたたかい日和とはいえ
外で寝ちゃうと風邪を引くかもしれないよ!
よければ使うといい、レインくん!(上着を投げて渡す)


ギド・スプートニク
【バッカス】
酒は嗜む程度だが、この世界は食事が旨いのが素晴らしい
あまり羽目を外しすぎるなよ、と釘を差しながら料理に舌鼓
比べるほど、酒も料理もいつもの酒場より旨い

ベリンダは外の食事を食い慣れてはおらぬか
場所にも拠るのだろうが、あの船の食事のレベルは世辞にも高いとは言えぬからな
考えてみれば不思議なものだ
何故我々はあのような場末の酒場で好き好んで酒を飲んでいるのだろうな

なるほど、気を遣わなくて良いのは確かにな
尤も、
お前はもう少し気を遣うべきだがな、とヨツロを見る

狂犬も眠ってしまえば大人しいものだな

*
料理の選択などはお任せしよう
好き嫌いは然程無い故、良きように見繕ってほしい




 その日、祭りの一角で特に賑わっていた席はこちら。
 くるり、くるりら。金の焔みたいな髪を翻した女が笑う。
「あっはっはっはっはー!! いいねぇお酒がいっぱい飲めるって! 素晴らしいねぇー!」
 ナチュラルハイを体現したようなベリンダ・レッドマン(直し屋ファイアーバード・f00619)の上機嫌が響く。猪口にゆらり酒を揺らして、口にして。空になっちゃったと言わんばかりの風情で盃を突き出すは、誰か注いでという意思の表れ。困ったもんねと四辻路・よつろ(Corpse Bride・f01660)が満たしてやった。
「早速気持ちよく酔っ払ってるな、ベリンダは」
 クレム・クラウベル(paidir・f03413)がやれやれと言わんばかりに苦く笑う。それも別に厭な感情は宿らない。子供の戯れを見守るような眼差しだ。
 折角の祭りなのだから楽しまないほうが損というもの。戒誓で唇を湿らせたら、涼やかな清冽が滑り落ちていく心地。
 ため息ひとつ零したのはギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)だ。
「あまり羽目を外しすぎるなよ」
 それが叶わないことを半ば察しながら口にしてしまうことはご愛敬。ギドがその合間に口に運んだのは桜海老と菜の花の卵とじ。食むごとに控えめな甘さと旨味が染み出してくるような味。比べるほど、酒も料理もいつもの酒場より旨い。そう思えてしまう。
 それを見守る形でよつろがイェルクロルト・レイン(叛逆の骸・f00036)へ酌をしてやる。
 琥珀の眸にやや影が落ちる。この藩は酒どころだというが、これがどんなにいい酒なのか、正直イェルクロルトにはわからない。それでも喉を灼く熱は確かに心地いいと素直に思った。
 金平牛蒡は牛蒡が太目に切られているから人参との歯応えの違いが面白い。胡麻油と醤油の香り高さも興味深く、良い香りだなと言うクレムの声に、イェルクロルトがすんと鼻を鳴らしてみせた。ない味覚の代わりだ。味は生憎想像がつかないが、これなら楽しめる。安堵に似た息が細く漏れた。
 その傍ら、よつろはついでに自分の猪口にも手酌する。なみなみと注がれる透明な雫。引っ掴んで一気に飲み干す。「はぁ、美味しい」と幸せ綻ばせるような吐息落として、金目鯛の刺身も同時に味わう。それもまた格別だ。唇がにんまり弧を描く。
 誰もが、同席しているというのに割合互いに好き勝手やりながらも、快いと思える距離感を共有出来る幸福に浸っている。
 それを拾ったようにベリンダは、いっぱい食べて膨らんだようにも思える己が腹を叩いた。
「腹がでかい! いや違うな、太っ腹! あっはっは!」
 愉快気な笑みはからからと。それでも美味しいものは別腹だから今だってどんどん食べる。
 ギドが「まだ食べるのか……?」みたいな顔をしているが気にしない。肉と炭水化物が好きなベリンダは親子おにぎりに齧り付いた。加工された魚肉は食べたことはあれど、魚卵はない。新食感に心も躍る。文化の違いなのだろう。
「これ魚肉に魚卵だろう!? ぷちぷちしてて美味しいねぇ!」
「ベリンダは外の食事を食い慣れてはおらぬか。場所にも拠るのだろうが、あの船の食事のレベルは世辞にも高いとは言えぬからな」
「いやいや本当に不思議だよねぇ。まーでもあの場所がなければ今日この会もない訳だしね~! ふふふ!」
 皆で過ごすスペースシップワールドの第十六区画。巨大宇宙船の片隅とは景色も空気も違う。考えてみれば不思議なものだ、とギドは思う。何故自分たちはあんな場末の酒場で好き好んで酒を飲んでいるのだろう、なんて思索してしまうくらいに。
 それをついつい口に出したら、困惑顔でよつろが眉を寄せる。
「何でって……何ででしょうね。私結構好きよ、あの薄汚いバー。気を使わなくて良いし」
「なるほど、気を遣わなくて良いのは確かにな」
 そこまで続け、一度酒を喉に落として。ギドはふと不遜に宣った。
「尤も、お前はもう少し気を遣うべきだがな」
「あら失礼ね、ちゃんと使ってるわよ」
 気安い応酬。それを微笑ましげに見ていたクレムも、親子おにぎりを茶漬けにしたものを咀嚼する。絶妙な塩気とコクが茶に溶けだすようで、百合根のかき揚げも続けてみたら、ほくほくした熱に旨味の境界線が滲んでいく。
「酒も食べ物も随分種類が多い。食が豊かなのだな、ここは」
「多分藩主様? の方針じゃないかしらね」
 酒造りを推奨し、このような祭りが開催されるような藩だ。サムライエンパイアでも稀有ではなかろうかとよつろは推測する。「そうなんだー」なんて感心した様子のベリンダが感嘆した。ついでに山くじらも食んだ。おいしい。
 そんな折、よつろの皿から兎肉の素揚げをひょいと摘まむ手があった。揚げ衣の香ばしさに興味を持ったイェルクロルトだ。これ見よがしの舌打ちが響く。
「お箸を使いなさい、お箸を。――全く、躾のなってない犬ね」
 その声が向けられたのはイェルクロルト本人というより飼い主ともいうべきクレムの方向。肩を竦める。
「躾けてどうにかなるなら粗相してないだろうさ」
 これで勘弁しておいてくれと眉を下げ、雉肉の串焼きを一本よつろの皿へ進呈する。張本人たるイェルクロルトは素揚げを頬張った後、平目の刺身も拾って口へ。お小言めいた声は、耳をぺたんと折って聞こえないことにしておいた。
「おれ、これがいい」
 どうやら華やぐその香りが気に入ったらしい。イェルクロルトは両手で猪口をゆっくりと宝物みたいに包み込む。不思議だ。腹の底から熱がじんわり染みてきて、それが夢の境界線を朧にする。
 意識までもが遠のくようだ。うつら、うつら。そうするうちにイェルクロルトは当然のようにクレムに凭れて目を閉じた。丁度良い位置にいるのが悪い、そう言いたげに。
 その重さを甘んじて受け止めつつ、猪口を傾けるクレムの手が停止した。
「……お前、酔うと寝る方か」
 このままでは本気に眠りかねない。ルト、と呼びかけ、彼の手からお猪口を回収。その流れで膝に転がした。零れた苦笑に、仕方ないなって書いてある。
「こうも騒がしいのによく寝れるな」
「おやおや、あたたかい日和とはいえ、外で寝ちゃうと風邪を引くかもしれないよ!」
 覗き込んだベリンダが無造作に上着を投げてよこす。
「よければ使うといい、レインくん!」
 その声は果たして聞こえたかどうか。定かではないが、イェルクロルトは礼もそこそこにもそり身動ぎ、上着を被った。「狂犬も眠ってしまえば大人しいものだな」なんて、この仲間たちの中で最年長であるギドが、次の酒を見定めながら嘯いた。
「おっかわり〜」
 よつろが猪口を逆さにするも、一滴だって降ってこない。
 手元の徳利は勿論空。そこらに並んでいる徳利も同様だ。なんとも酒の席らしい景色というか、何というか。ついクレムが眦を綻ばせる。
「……嫌いではないがな」
 猪口の底に薄ら残る酒香に緑眼を細める。その様子を流し見て、ギドももう一度酒を口に運んだ。
 ゆるやかでなだらかで、愉快な時間はもう少し続くみたいだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
笹ヶ根・鐐(f08426)と参加

純粋に祭りとお酒を楽しむつもりでこの地に来ています
乾杯とお猪口を掲げて見せてグイッと一口に飲みます

「たしかにこれは良いですね」

天ぷらは今が旬の鱈を塩でいただきます
鐐が食べるざる蕎麦もおいしそうですし、他の肴もお酒が進みそうですね
彼にお酌をするのも忘れません

「当然でしょう? 宴は始まったばかりです」

鐐の語り口に耳を傾けつつ、お猪口を傾けて、肴を咀嚼する
盃の様子から鐐も手広く楽しんでいるのが良くわかります
彼の言葉に同意しながら再びお酌します

「私のほうこそ。こうした時間は貴重ですから」

ニッコリ微笑んで感謝を伝える
また時間を作って一緒に飲みに来たいものです
良い一日でした


笹ヶ根・鐐
マリス・ステラ(f03202)と。

ふむ。迎撃という点では役に立てず仕舞であったが。
せっかくの祭だ、楽しまねば酒に失礼であろうよ。

蕎麦に鱚天、かきあげを合わせ新酒と共に頂く。
基本にして至高、もはや言うことが無い…!
「いや、これだけで終わるつもりはないからな?」

「猪肉に雉肉か、これまた堪えられんな!」
盃が幾つもあるのは種類毎の合わせを楽しんでいるだけだぞ。
全種制覇とか無茶は考えてないぞ。

「合わせなら樽酒だな、この香と飲みやすさはたまらん。
吟醸の薫りも素晴らしいが、少し独り勝ちしすぎかな…?」
もはやただの飲んべである。

親子にぎりと鮪汁を〆に酔い覚まししつつ。
「付き合いに感謝を。楽しめたなら幸いだ。」




 迎撃という意味では、羽邑屋討伐に参戦出来ずじまいではあったものの。
「せっかくの祭だ、楽しまねば酒に失礼であろうよ」
「ええ、純粋に祭りとお酒を楽しむつもりです」
 互いの猪口に戒誓の新酒を満たし、笹ヶ根・鐐(赫月ノ銀嶺・f08426)とマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が乾杯をした。一気に喉に落とせば、滑らかな清涼感が身体の芯を通過していく。
「たしかにこれは良いですね」
 酒所以の熱が仄かに烟る腹へ、マリスは追撃を試みた。鱈の天ぷらを抹茶塩で頂こう。ほくり、豊かな甘味と旨味の共存に、つい頬が綻んでしまう。
 鱚天と三つ葉と帆立のかき揚げが添えられたざる蕎麦は、やはり水がいいからだろうか。すっきり舌に馴染むのに花咲くような滋味が、箸を止めさせてくれない。
「基本にして至高、もはや言うことが無い……!」
 各世界各地の美味を嗜むのが趣味のような鐐、しかも大の蕎麦好きとあって気分は上々。鐐はついすぐに猪口を空にしてしまい、それを見計らったマリスが酌をする。
 念のため、という風情で鐐は言う。
「いや、これだけで終わるつもりはないからな?」
「当然でしょう? 宴は始まったばかりです」
 つまり戦いはこれからだってやつだ。マリスも寒鰤の刺身に箸を伸ばす。酒との相性がこれまた抜群なものだから、マリスの端正な容貌も緩むばかり。
 柄や素材が異なる猪口が幾つか並んでいるのは、種類の違う酒と料理とのマリアージュを楽しんでいるだけのこと。全種制覇とか無茶は考えていない。多分。きっと。
 肴として食べる猪に雉といった野趣あふるる肉類も堪えられない。鐐が手広く楽しんでいるのが伝わってくるから、マリスも頷いてもう一献。
 満足げに呷った鐐は指先さ迷わせて、次の猪口のひとつを選び取る。舌で転がすように味わって。
「合わせなら樽酒だな、この香と飲みやすさはたまらん。吟醸の薫りも素晴らしいが、少し独り勝ちしすぎかな……?」
 もはやただの酒呑みの戯言。
 どれもこれも宝石箱のように目も舌も歓ばせてくれるから、時間の流れがゆっくりになったらいいとさえ思う。
 〆の親子おにぎりと鮪から汁をも満喫し、噛みしめるような実感籠めて鐐が言う。
「付き合いに感謝を。楽しめたなら幸いだ」
「私のほうこそ。こうした時間は貴重ですから」
 満面の微笑みを浮かべたマリスも首肯する。
 また時間を作って一緒に飲みに来たいものです――そんな気持ちはきっと二人に共通しているから。
 良い一日だった、そう言える今日を大切にしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
酒……いいなあ
まあいいや
めしにしよう


山から雉がいなくなる、ってくらい雉を食べる
猪もだけど
親子おにぎりをもぐもぐ食べながら、くしやきを一口一串のペースで凄まじい勢いで消費していく
たれ焼きもいい。塩もいいね。山椒串もまた痺れる辛さがたまらない
猪と葱の煮たやつもすごくいいな。この残り汁におにぎりを崩し入れると、うん。茶漬けって言うには脂がすごいけど、無限に食べられるね
兎もうまいなあ。素揚げもいいけど、ザクッと衣を付けて揚げてくれないかな、葱と塩と香味油をまぶして、シュワッとサクッと……え、ある? いただきます
累計したら自分の身長を容易に越えるぐらいの皿を積み上げつつ、まだ食べる
……食べ盛りなもので




 ちらり。
 壥・灰色の視線が、すれ違った旅行客が携えていた徳利に流れる。芳しくもふくよかな香りが鼻腔をついた。
「酒……いいなあ」
 そんなことを呟いても、灰色は燦然たる未成年だ。故に酒祭りでありながら酒とは無縁であらねばならぬ。
「まあいいや、めしにしよう」
 悟ったように声を紡いだ。
 床几台に、ホールバイトかと言わんばかりに複数持ちしていた盆を置く。それぞれに料理がたんまり載っている。
 主に雉だ。雉を扱う出店を壊滅させるのかという勢いの串焼きの量。醤油と砂糖を合わせたたれ焼きのもの、岩塩を粗く削った塩味のもの、山椒や七味といった香辛料の類が施されたものまで。しかし、それにしても数が多い。そこそこ広い床几台を独占しているのは元より、何より肉料理屋のすぐそばだ。そういうことだ。
 この藩どころかサムライエンパイア中の山から雉がいなくなるのではというくらい食べる。時折箸休め的に猪にも手を伸ばしたが、肉続きで休みになるのかは定かではない。
 親子おにぎりを傍らに、大きく口を開け串焼きに齧り付き、そのまま一口で平らげる、その繰り返し。
 濃厚な旨味、清冽な後味、痺れるような辛さを順繰りに味わっていく。
 猪と葱の煮付けの具を浚ったのち、残り汁におにぎりを崩し入れてみる。茶漬けにしては独特の脂が濃いけれど、そのくせするりと腹に落ちた。
「兎もうまいなあ。素揚げもいいけど、ザクッと衣を付けて揚げてくれないかな、葱と塩と香味油をまぶして、シュワッとサクッと……え、ある? いただきます」
 灰色が知らず呟いていた言葉を、件の肉料理屋の店子がそっと拾って頷いてくれた。みなまで言うなとばかりに。
 綺麗に空にした皿やら器やらを塔でも建設するのかという勢いで重ねていく。
 そこまで来て、祭りに於ける一種の大道芸か何かかという周囲の客の視線にようやく気付く。
「……食べ盛りなもので」
 端的に言いすぎた。
 店子が次の皿を差し出してくれた。戦いは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・誉
いいなぁ、酒が飲めるヤツは。美味そうだよなー
蜜柑水って、蜜柑ジュースだよなぁ
美味いし不満はないけど、なんか……そう、ズルいんだよ!
まぁ、いいや。飯食おう、飯
米と味噌汁っていうのも捨てがたいけど、なんかこう、いろんなのが喰いたいんだよなー
行儀悪いけど、食べ歩きできそうなものってないかな?
雉肉の串焼き?へぇ、初めて喰うけど、美味いな、これ。もう1本
醤油の香ばしさが後ひくなぁ
他にもなんかないかな?まだまだ食えるぜ!
でも、やっぱり〆は米がいいな
おにぎりにしよ、おにぎり!豪華なやつ!
緑茶飲むと日本人……って思うぜ
腹いっぱい食って食べきれなかったら……大丈夫、持って帰るから
土産でまた食えるって贅沢だよなぁ




 酒に羨ましげな視線を送る未成年がもう一人いた。
「いいなぁ、酒が飲めるヤツは。美味そうだよなー」
 御剣・誉(異世界渡り・f11407)のぼやきは喧騒に呑まれない。手にした瓶には蜜柑の果実水が満ちている。
「蜜柑水って、蜜柑ジュースだよなぁ」
 これはこれで美味しそう。事実美味しいのだろう。
 事実喉に落としてみたなら、蜜柑の瑞々しさと甘酸っぱさがぎゅっと詰まっていた。複雑そうな顔をする。
「美味いし不満はないけど、なんか……そう、ズルいんだよ!」
 多分ここに床があったらダァンと叩いていた。
「まぁ、いいや。飯食おう、飯」
 どこかで誰かが同じようなことを言っていた。あと三年の辛抱を決意して、誉はふらり店先を覗く。
 米の炊ける豊かで甘い香りに、ちらり興味の眼差しを向けてしまう。味噌汁を作っている風景も見えた。米と味噌汁という鉄板の組み合わせも捨てがたいが、出来れば食べ歩き出来るような、軽く頬張れるものが望ましい。
「ん?」
 香ばしい匂いが鼻をついたのはその時だ。
 覗き込む。炭火でいい音を立てて焼かれているのは雉肉だとか。串焼きならよさそうだ。試しに一本買ってみる。
「へぇ、初めて喰うけど、美味いな、これ。もう一本」
 醤油たれの濃厚さに、肉の癖の強さが負けていない。誉の手に新たな串が差し出されたら、やっぱりすぐぺろりと平らげた。
「他にもなんかないかな? まだまだ食えるぜ!」
 見事な食べっぷりを気に入られたらしく、店主が奥の厨房で作ったおにぎりを用意してくれた。何と鮑を柔らかく煮たものが具になっている豪華仕様。ついでに茶を淹れてもらえば、日本人だなって自分でもしみじみ感じてしまった。
 澄み渡る冬の空の下、美味しいものを味わえるさいわいを思う。
「腹いっぱい食って食べきれなかったら……大丈夫、持って帰るから」
 茶をくれた店子の娘に、誉は宣言みたいに言ってのける。そうしたら土産用は別に包んでくれると言い出した。
「土産でまた食えるって贅沢だよなぁ」
 ゆっくり咀嚼するのは、そんな味わい深い時間そのものなのかもしれない。

 晩冬に染みるあたたかさが顕現する、祭りの一幕。
 猟兵たちがこの藩に齎した平和が、豊かに織りなされて、賑わいを増していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月14日


挿絵イラスト