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悪魔は息絶え、勇者は還らず

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●めでたしめでたし
「馬鹿な、この私が、こんな連中にぃぃぃ!!」
 ヴァンパイアの圧政が続いた村。
 飢え、傷つき、立ち向かうことすら諦めてしまった人々。
 故に、猟兵達は剣を手にしたのだ。

 恐ろしき怪物の海を切り開き、強大な力を持つヴァンパイアを打ち倒す。
 決して楽な戦いでは無かった。
 けれども、人々の心に希望をもたらさんとする猟兵達は、遂に成し遂げた。

 きっと、あの村には、これからも多くの困難が待ち受けるだろう。
 解放を喜ぶには、あまりに多くを失った。
 それでも、絶望を振りまくオブリビオンは去ったのだ。
 さあ、希望を胸に、未来へ踏み出す時が来た!

●終わるための物語
「ええ、皆様もご存じの通り、それにはちょっと足りないものがあるんですよね。ですので……」

「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:ダークセイヴァーにて、オブリビオンの出現が確認されました」
 シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。

「まずは、先の予知でヴァンパイアに立ち向かってくださったことに感謝を」
 新たなオブリビオンが現れる兆候もなく、村は順調に復興の道を歩んでいますと、猟兵が救った村の現状を伝える。

 件の村は、つい最近までヴァンパイアの圧政に苦しめられていた村だ。
 立ち向かった勇敢な若者たちは殺され、今日を生きていくこともままならない重税を課せられ、滅びようとしていた村。
 けれど、猟兵達の活躍により、ヴァンパイアは討伐された。
 領主の城に蓄えられていた財や食糧によって、村人たちの暮らしも大きく改善している。

「ですが、前回の戦いに参加してくださった方は知っているでしょうけど」
 ありませんでしたよね、遺体も、遺品も、何一つ。

 財宝はあった。
 食糧はあった。
 けれど。

 故郷の為に、オブリビオンに立ち向かった、勇者たち。
 彼らが生きてきたその証は、何一つ領主城には残っていなかった。

「緊急性のある問題ではありませんでしたが、なんとも奇妙なことです。骨の一つたりとも見つからないのは、異常ですよね」
 確かに村に平和は戻った。
 けれど、愛する者を失った悲しみは、そう簡単に癒えるものでは無い。
 村はずれには、入る者を待ち続ける墓所が無数に存在している。

「ええ、ええ。絶望は去りました。けれど、あの村の悲劇は、まだ終わってはいないのです」
 言葉を紡ぎながら、語り手は自らが手に持つグリモアから、1体のオブリビオンの姿を空中に映し出す。

「『往生集め』エルシーク。村から少し離れた霊廟を住みかとするオブリビオンです。コレを予知した時に、思わぬものも移りまして」
 投影される映像が、霊廟の中のものに切り替わる。

 果てが見えぬほど、長い通路。
 侵入者を阻むため、床に、壁に、天井に仕掛けられた、悪意に満ちた罠の数々。
 エルシークの配下だろうか、死してなお蠢く、髑髏の兵士たち。
 そして。

 映像を見ていた猟兵の一人が、髑髏兵の手に持つ剣を見て声を上げた。

 あれは、息子を弔ってやりたいと涙を流した老人が持っていたものと、同じではないか。

「ええ、その通り。件のオブリビオン、死者の遺体や遺品を蒐集するという奇妙な行動を取っておりまして。その息子さん以外にも、複数の遺体、遺品がこの霊廟に運び込まれている事が確認されました」
 今回の目的は、もうお分かりですよね?とグリモア猟兵が問いかければ、猟兵達も力強い頷きで答える。

 そこにオブリビオンがいるならば、戦い、打倒するのが猟兵の務めである。
 その上、今なお嘆き悲しむ者がその地にいるのであれば、足踏みをしている暇などない!

「乗り掛かった舟、という奴ですね。せっかく救われた村です、そこにケチをつける者がいるならば。ええ、皆様の出番でしょう」

 そう締めくくった直後に、グリモアがひときわ強く輝けば、彼らの姿はその場から消え去っていた。


北辰
 悪者は退治され、怯える日々が去っても、どうしようもなく失ったものはあります。
 OPの閲覧ありがとうございます、北辰です。

 今回の舞台はダークセイヴァー。
 既に死した者の安寧の為、今を生きる者の救いの為に、死体泥棒討伐のお時間です。

 1章の、3種ステータスの行動がふわっとしているので補足を。

 何時作られたか、誰に作られたかも分からない霊廟。
 今や、オブリビオン達の住みかとなってしまいました。
 非常に大きく、オブリビオンの下へ向かうのに時間がかかりますし、道中には、侵入者を拒むためのトラップ、ボスの使い魔である雑兵の巡回などもあります。
 慎重にトラップを解除し、巡回を掻い潜りながら進んでも良し、派手に暴れながら進んでくださっても構いません。
 屋内ですが、戦い、動き回るためのスペースは十分あるとお考え下さい。
 もちろん、壁や天井を利用した動きもできたらカッコいいですね。
 お互い都合のいい解釈で行きましょう。

 なお、念のため補足しますが、冒頭のヴァンパイア退治はシナリオ化されてはおりません。
 今回参加する皆様は、ヴァンパイアのことなど全く知らなくても問題ありませんし、逆に熱い死闘を繰り広げたことにしてくださっても構いません。

 無理のない範囲でしたら、意気投合したおっさんと、息子さんを取り戻す約束をしてもいいですし、兄を想う美少女と良い感じになってても大丈夫です。
 その美少女はリプレイに出てこないという覚悟だけはお持ちください。

 長々と語りましたが、話の構造としては単純なオブリビオンの根城攻めです。

 ぜひとも、この後日談を終わらせるために、皆様のお力をお貸しくださいませ。
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第1章 冒険 『霊廟』

POW   :    大胆に進む

SPD   :    慎重に進む

WIZ   :    冷静に対処する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空雷・闘真
珍しく闘真は憤っていた。
別に正義漢を気取るつもりでも、嘆き悲しむ村人達に同情しているわけでもない。

村を救う為に立ち向かっていった若者達。
圧倒的強者に反抗する気概を持った彼らを、闘真は高く評価していた。
そんな勇者達を弄ぶオブリビオンに対して、闘真が嫌悪感を覚えるのは必定とも言えた。

「信念なき者が、信念ある者を侮辱することは許さねぇ」

闘真は【影の追跡者の召喚】を使い、影を霊廟内に潜入させる。
罠や雑兵の配置を把握し次第、闘真は【宇宙バイク】に【騎乗】して、霊廟に突撃する算段だった。

戦場で生き残る為に、情報は必要不可欠。
どれだけ怒っていても、その絶対条件を闘真が忘れることはなかった。


ラスベルト・ロスローリエン
吸血鬼の相手も難儀だったというのに次は墓荒らしときたか。
この世界は死せる者の尊厳を汚す悪趣味な輩が多いらしい……憤りを抑え難いね。

◇WIZ 自由描写・連携歓迎◇
とは言え、僕も迂闊に振舞い死者の仲間入りをする訳にはいかない。
木乃伊取りが木乃伊になる……遠き砂塵の国の格言を肝に銘じよう。
右手の“翠緑の追想”に光を灯し霊廟の道を慎重に進むよ。
床に潜む罠は“界境の銀糸”を用い【地形の利用】で壁や天井に這わせた蔦を伝って避けたい。
天井や壁に仕掛けられた飛び道具の類も左手の“瞑捜の御手”から放つ【念動力】で打ち払う。

『勇者の死はそれに相応しき弔いを以て遇するべきだ……彼らの無言の帰りを待つ者達の為にも』



●憤り
「吸血鬼の相手も難儀だったというのに、次は墓荒らしときたか」
 たいまつがまばらに掲げられているだけの、薄暗い霊廟の入り口。
 その闇を、手に持った杖の水晶から放たれる光で切り裂きながら、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が静かに呟く。

 死者の尊厳を汚す行いへの憤りは確かにある。
 けれど、この先は何処からオブリビオンが現れるか分からない敵地である。
 木乃伊取りが木乃伊になるとは、遠き砂塵の国の格言だったか。
 冷静さを欠いて、件の『蒐集品』の仲間入りをするつもりはない。
 若きエルフは、義心に燃えながらも、慎重に歩みを進めていた。

 そして、ラスベルトが冷静さを保てる理由がもう一つ。

「許せねぇ。ああ、許せねぇな……」
 ラスベルトとは対照的に、自身の怒りを隠そうともせずに、霊廟を進む巨漢。
 空雷・闘真(伝説の古武術、空雷流の継承者・f06727)は、彼にとっては珍しく、強い憤りを感じていた。

 闘真は、己が目的の為に、多くの命を戦場で奪ってきた。
 いまさら、正義漢を気取るつもりなどない。
 闘真は、強者を求め、強者と向き合い、勝利してきた紛れもない強者である。
 村で嘆き悲しむ者たちへの同情など、彼の思考には存在しない。
 闘真は、自身と同じ強者にのみ敬意を払う男である。
 そして、強者とは、必ずしも戦いに勝利し続ける者だけを指す言葉ではない。

 確かに彼らは負けたのだろう。故郷を救うために立ち上がり、その悲願を遂げることのないまま、その命を落としたのだろう。
 そしてきっと、そうなるだろうと分かっていて、その勇者たちはオブリビオンに立ち向かったのだろう。

 ならば彼らは強者である。
 圧倒的強者に反抗する気概を持った彼らもまた、敬意を表するべき強者である。
 だからこそ。

「信念なき者が、信念ある者を侮辱することは許さねぇ」
 彼らの戦いを汚し、弄ぶオブリビオンに感じるのは、嫌悪のみである。
 怒りにその表情を歪めながら、彼は小柄なエルフと霊廟を進んでいった。

 ある程度進んだところで、前を進んでいた闘真が静かに腕を上げ、ラスベルトの歩みを止める。
 罠があるのだ。

 怒りに震える闘真は、それでも情報の重要性を忘れる事は無かった。
 数多の戦場を生き抜いてきた彼には、既に身体に染みついたことでもある。
 だからこそ、【影の追跡者の召喚】を用いて、罠の少ない箇所や、監視の穴となる通路を探る斥候を放っていた。
 事実、ここまで2人は、大した障害に出会うこともなく、悠々と敵地を歩いてきたのだった。
 しかし。

「……なるほど、床に落とし穴、壁には矢の刺さった跡、天井も色が変だね、吊り天井かな?」
 罠のある個所を的確に見切りながら、ラスベルトは思考を始める。
 ここを通るのは少し骨が折れそうだ。
 けれど、別の道を探そう、などと言うつもりはない。
 小柄な自分が、まさしく見上げなければならないこの男は、歴戦の猟兵である。
 彼が調べて、この場所にたどり着いたのならば、此処がもっとも『マシ』なのだろう。

「床はバイクで越える、矢の半分は叩き落す。残りと天井は任せた」
 闘真がぶっきらぼうにそう言えば、返事も聞かずに乗ってきた宇宙バイクの調整を始める。
 聞く者によっては傲慢にも取られるであろう物言いだが、これでいいのだ。
 強さを求め、強者を求める彼の目は多くの戦士を見てきた。
 だから分かる。年下にしか見えないこの魔術師も、紛れもない強者であると。
 それが伝わったのだろうか、ラスベルトも苦笑しながらも、自身の手を開き、その魔力を整えていく。

 霊廟の中を、バイクに乗り込んだ2人が駆け抜ける。
 振動を感知した落とし穴が作動し、その錆びついた剣山を見せつけるが、宙を駆ける2人には関係無い。

 それと同時に、壁から突如放たれる矢の雨が、2人を挟み込むように襲う。
 右方から迫る矢を、片手でバイクを操る闘真が、銃火器から放つ弾丸で叩き落していく。
 左方から襲い来る矢を念動力で薙ぎ払うのは、ラスベルトの役目だ。

 そして、殺意に満ちた雨を潜り抜けた2人をめがけて、轟音を響かせながら天井が落ちてくる。

 けれど、ラスベルトが放った銀の蔦に絡めとられ、勢いを失ったそれが床に接する頃には、バイクは既に通り過ぎた後だった。

「ふう、最初の難所は通れたね」
 バイクから降りながら、ラスベルトが呟く。
 まだまだ先は長いが、戦いは始まったばかり。
 勇者の死はそれに相応しき弔いを以て遇するべきだ。
 なにより、彼らには、今なおその帰りを待つ者たちと故郷があるのだ。

 それがどんなに尊いことなのか、ラスベルトはよく知っている。
 瞳の奥に、すべてを飲み込んだあの炎の残り火を燻らせながら、彼は先を行く闘真の背中を追うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。あの吸血鬼退治の依頼は記憶に新しい
奴を倒した後、遺体も遺品も無かったから城中を探索したら、
隠れて傷を癒していた吸血鬼を地下の隠し部屋で見つけて
残っていた猟兵で第二ラウンドが始まったんだっけ…

事前に【常夜の鍵】を複数の小石や装備類に刻み、防具を改造
第六感を強化し些細な存在感を見切る呪詛を付与

迷宮内は暗視を頼りに目立たないように冷静に進む
雑兵は小石に刻んだ【常夜の鍵】の中に入ってやり過ごし、
罠の場合は消音の魔力を溜めた小石を投擲
その後【常夜の鍵】で罠の先に転移して通過する

…私達の目的は『往生集め』エルシークのみ
遺体や遺品をあまり傷付けない為にも、
どうしても必要な時以外は消耗は避けて進もう


シキ・ジルモント
◆SPD
アドリブ歓迎
(※件のヴァンパイア退治に参加、遺体や遺品を持ち帰れなかった事を密かに悔やんでいた)

遺体も遺品も持ち去られていたとはな
ヴァインパイアのオブリビオンというのは、どうしてこうも悪趣味な奴ばかりなのか…
まぁいい、今度こそ「彼等」を連れ戻させてもらう

罠を警戒し慎重に進む
多少薄暗くても視力(『暗視』)と聴力(『聞き耳』)を頼りに罠を探し、回避を試みる
罠の回避は『地形の利用』も考え、床にある罠は壁を蹴って足場にする事で飛び越える

雑兵の巡回をいち早く発見する為『聞き耳』を立てつつ進む
発見したら騒がれる前に『クイックドロウ』で構え、ユーベルコードで片付ける
増援を呼ばれでもしたら面倒だからな



●万事順調
「遺体も遺品も、持ち去られていたとはな」
 オブリビオンというのは、どうしてこうも悪趣味な奴ばかりなのか。
 薄暗い霊廟を慎重に進みながら、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)がぽつりと呟く。

 シキは、先のヴァンパイアとの戦いにも参加していた猟兵の一人だ。
 戦いの果てに悪しき吸血鬼を倒しはしたが、犠牲となった者を見つけてやることはできなかった。
 猟兵の役目としては、オブリビオンを倒しただけでも十分だろう。
 けれど、自分は、あの村の者たちの絶望を晴らしてみせると約束したのだ。
 ならば、この先に居るオブリビオンを倒し、今度こそ「彼等」を連れ戻すことまでが自分の仕事である。
 予知を聞き、再びこの世界を訪れたシキは、やり残しを終わらせるために、神経を研ぎ澄ませて霊廟の通路を進んでいく。

「しかし、この事件も長い。例のヴァンパイアだけでもしぶとかったのに」
 そんなシキと共に霊廟の罠を攻略しているのが、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)である。
 彼女もまた、件のヴァンパイア討伐に参加していた。
 ダークセイヴァーにおいて、多くのオブリビオンを打ち倒してきている彼女だが、あの吸血鬼は記憶に新しい。

 なにせ、リーヴァルディ達が戦闘後に生き残りや遺体を見つけられないか城内を探していたら、倒されたフリをしていた吸血鬼と出会い、第二ラウンドが始まってしまったのだから。
 あの時は苦労させられた。
 というのも、オブリビオンは倒したと思い込んでいたものだから、既に帰ってしまっていた猟兵もいたのだ。
 手負いの相手であっても、まったく油断のできない激闘であった。

 そうして苦労して救った村だからこそ、最後まで付き合ってやりたい気にもなる。
 その障害となるエルシークを目指す彼女の意欲も、シキと同じく高いものであった。

 2人は、霊廟の中に侵入した猟兵達の中でも、特にスムーズに攻略できた部類だろう。
 夜目が利く2人は薄暗い通路の中であっても罠を見落とすことは無かったし、単純なものならば、解除の必要すらなく、壁や天井を利用しながら飛び越えてみせた。

 時には、決して通さないという意思を示すように、辺り一面に罠が仕掛けられた箇所も存在していた。
 そんな時に役に立ったのが、リーヴァルディが有するユーベルコード、【常夜の鍵(ブラッドゲート)】であった。
 リーヴァルディが、その少女然とした外見からは予想もできない力で小石を投げれば、それは音もなく罠の向こうへと落ちていく。

「……開け、常夜の門」
 主たる彼女の命に従い、手元の小石に刻まれた魔法陣が鈍く輝き、常夜の世界への門となる。
 常夜を橋に、魔法陣から魔法陣への転移を可能にするのが、彼女のユーベルコードの力だ。
 この力を用いて、点から点への移動をすることにより、2人は霊廟の罠を突破してきたのだ。

 しかし、幾度目かの転移をしたところで、別の障害が立ちはだかる。
 これまでとは違い、いくらか幅の狭い通路。
 その先の暗闇に、槍を持った2体の髑髏兵が立っているのだ。
 明らかに見張り役。
 少し様子を見たところで、休息のために此処を離れるなど、期待できないだろう。

「……どうしよう、まだ気づかれてはいないけど」
「倒そうとすれば、それなりの音は響くだろうな」
 所詮は雑兵、倒すこと自体は造作もない。
 けれど、その為に近づいていけばあちらも気づくし、遠くから撃ち抜こうにも、銃声は響く。
 その音で増援が来てしまったら、流石に面倒だ。

 しばらく考え込む2人だったが、此処で猟兵としての経験が、ある解にたどり着く。
 向こうは2人居るが、此方も2人居るのだ。

「なあ、さっき投げた小石に使っていた消音の魔術、俺の弾丸にかけることはできるか?」
「……ねえ、その腰の銃で、此処から2体とも撃ち抜ける?」
 2人が同時に問いかけたなら、その返事もまた同じく。

「「簡単だ」」

 無骨なハンドガンを両手で構えたシキが、ゆっくりと息を整える。
 【ブルズアイ・エイム】。シキが得意とする、狙撃の構えだ。
 リーヴァルディに魔術をかけてもらった弾丸は2つきり。
 本命がまだ先にいる以上、無駄な消耗は控えるべきであるし、そもそも、3発目を使う気など毛頭ない。

 標的を見据えたシキの呼吸が、ゆっくり、深く落ち着いたものに変わっていく。
 そして遂に、シキが息を止めたその直後。

 無音の弾丸に頸椎を砕かれた2人の死者が崩れ落ち。
 その不本意な2度目の生から、解放されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メタ・フレン
死体泥棒とは、悪趣味なことこの上ないですね。
こういう胸糞悪い輩は、とっとと退治しておかないと。

アイテム【地縛鎖】と技能【情報収集】で、霊廟の構造、罠の種類と配置、雑兵の巡回経路等を把握します(もし他に猟兵がいたら、この情報を共有したいですね)。
ついでに【地縛鎖】で吸い上げた魔力を【エレクトロレギオン】で召喚した100体の機械兵器に与えて、一気に侵攻させます。
機械兵器にはわざと罠に掛からせて罠潰しをさせてもいいし、雑兵を攻撃させてもいいですね。
いずれにせよ100体も侵攻させれば、罠も雑兵もそれなりに減って敵側も動揺する筈。
その隙を狙って、わたし自身も霊廟に潜り込みます!


紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
さよならを取り返しに来たのでっすよー!
歌いますよー! 騒ぎますよー! ステージを落としますよー! 罠なんて台無しでっすよー!
ですが先に台無しにしてきたのはそちらなのでしてー!
めでたしめでたしにはただいまもおかえりなさいもさよならも足りませんのでーっ!
引っきつけますよー☆
藍ちゃんくんの魅力と存在感でー!
冷静はどこいったでっすかー?
藍ちゃんくん、冷静に囮する気満々なのでっすよー!
皆さん一緒に殴り込みということになろうものなら、それはそれでショータイムっですけどねー!
あ、藍ちゃんくんのステージの上は罠なんてないので、足場として皆々様渡っていってくれてオッケーっでっすよー!


仇死原・アンナ
生者と死者の魂の安らぎの為に
オブリビオンを倒さないとね…

他の同行者と協力をして慎重に進む


「静なる霊廟を脅かすような奴等は斬り捨てる…!」
[目立たない]ように霊廟を進み、雑兵の目を掻い潜りつつ
隙をついて妖刀を振るい[鎧無視攻撃][残像]で雑兵達を仕留める

「こんな罠まで仕掛けてるなんて…」
トラップには【絶望の福音】で回避するつもり
念の為、[呪詛耐性][オーラ防御][火炎耐性]も使用しておくよ

「遺体に霊廟まで自分のモノにしようとするなんて浅ましい奴だ…生かしてはおけないね…」

静かに怒りつつ薄暗い霊廟を見回す

アドリブ等、絡みOKです



●奪還のパレード
「こんな罠まで仕掛けてるなんて……」
 真上から降り注いだ毒液を、オーラを纏った錆色の大剣で打ち払いながら、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)がどこかけだるげに呟く。
 霊廟に侵入してからというもの、罠だの雑兵だので、何度も進む足を止められている。
 消耗するほどでもないが、本命がずっと奥に潜んでいる以上、先を急ぎたいのが正直なところだ。

「ああいう胸糞悪い輩は、とっとと退治しておきたいんですけどね」
 少し疲れた顔で、メタ・フレン(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f03345)がアンナに同調する。
 彼女の持つ地縛鎖の力で霊廟の構造や、罠の有無、雑兵の配置など、様々な情報が手に入っている。
 けれど、先に進むにつれて、どうしても躱せない障害が増えてきている。
 完全にではないだろうが、オブリビオン側も、自らの根城に侵入者が入り込んでいることに気づき始めているのだろうか。

 そんなことを考えている内に、また鎖に反応が。
 この通路を曲がった先の広間に、多くの髑髏兵がいるようだ。
 どうしよう、この数を突破するのはちょっと面倒だ。
 そんなことを考えていたメタの肩を、ちょんちょん、とつつく指が。

「ねえねえねえ。敵君がいるんですよね? 結構大変そうなんですよね?」
 ならそろそろ、私さんの出番じゃないですか?

 敵地においてなお、ニマニマと楽しそうに笑う少女……のようにしかみえない、女装をした美少年。
 紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)が、ようやく自分の力を見せる時が来たと、期待の眼差しでメタを見つめてくる。

 そもそも、こんな地味で静かな潜入はガラじゃない。
 一人で囮役をしようとしたところをメタに捕まえられなかったら、とっくに大はしゃぎで霊廟を駆け回っていたであろう彼である。
 同行する仲間に迷惑をかけるのも本意でないと、ここまで静かにしていたが、そろそろ限界が近いというのもある。
 もうちょっとしたら、意味もなく叫んで駆けだしそうな気迫が彼にはあった。

 確かに、慎重に歩みを進めるのにも限界がある。どこかで、リスクは背負うべきなのだろう。
 どうします? というメタの目線がアンナに向けられる。
 成り行きでこの3人で潜入してから、意思決定はアンナに委ねられていたのだ。
 それは、単純に彼女が最年長であるからか、それとも、物静かな長身の美女に、子供2人が頼りがいを感じていたからなのか。
 理由は3人にしか分からないが、ここで重要なことは一つ。

「……えっと、ごー?」
「ひゃっほう! 姐さん話がわかるぅ!」
 このぼんやりしたお姉さんは、割と勢いに流されることがあるということだ。

 霊廟の中ほど、多くの髑髏兵がたむろする広間。
 エルシークが潜む最深部に行くまでの、最短ルートであるこの場所は、だからこそ多くの兵と罠に塞がれていた。
 故に先行した猟兵はここを避けたし、オブリビオン側も、わざわざここを強行突破しようとする者が現れるとは思っていなかった。
 もっとも、意思なき髑髏兵には、どれも関係のない思惑であったが。

 ふと、松明で照らされるだけの広間が明るくなった気がする。
 異変に気付いた髑髏兵たちが辺りを見渡し、その後天井に目を向ければ。

 なんか、煌びやかで、でっかいのが降ってきた。

「ステージがお望みですかー? それとも、藍ちゃんくんをお望みでっすかー!? 今回は、豪華ゲストをお招きして、大増量でいきますでっすよー!!」
「【藍ちゃんくんオンステーッジ!(ワァァァルドッ! イズ! アァァイチャンックゥゥゥゥゥッン!!)】」
 死者に支配された霊廟の悍ましき雰囲気をあざ笑うかのように、騒々しい進軍が始まる。

 センターは譲らないとばかりに駆け出す藍ちゃんくんの後ろには、いきなり死者の城から、パフォーマーたちの舞台に変化した風景にも動じないアンナが続く。
 そして、更にその後ろ。

「なるほど、これがダンピールの戦い方なのですね」
 明らかに間違った知識を吸収する0歳児。
 メタが、自らのユーベルコード、【エレクトロレギオン】で呼び出した総勢100体の機械兵器を率いて駆け抜ける。

 ただでさえ、藍ちゃんくんの大質量攻撃で既に壊滅状態の所に、機械兵器による数の暴力。
 本来は罠をわざと踏ませようと思っていたが、この煌びやかなステージにそんなものは存在しない。
 なら、すべての戦力をこの雑兵共にぶつけてもいいだろう。
 ちょっと可哀そうにすら思える勢いで、髑髏兵が蹴散らされていく。

「歌いますよー! 騒ぎますよー! さよならをっ取り返しに来たのでっすよー!」
 それでも、数体の髑髏兵がすり抜けて、侵入者へと襲い掛かってくる。
 大声を出し、明らかに悪目立ちする藍ちゃんくん目掛けて、複数の槍が迫る。

「おっと、危ない」
「ありがとうでっすよー!」
 その槍を、大剣が、刀が、拷問器具が阻んでいく。
 数を減らした髑髏兵の奇襲ごとき、アンナの【絶望の福音】から逃れられはしない。
 もはやこの場違いな行進は止まらない。3人は、次々に髑髏兵を蹴散らし霊廟を駆け抜ける。

「ところで、此処、お墓みたいなものなんですよね? こんな大騒ぎしていていいのでしょうか……」
「多分、ダメじゃないかと思うよ」
 メタの不安を、アンナがバッサリと切り捨てる。
 霊廟とは、死者が安らかに眠るためのものだ。
 オブリビオンに支配されているとはいえ、そのことに変わりはない。
 けれど。

「ですが、先に台無しにしてきたのはあちらなのでしてー!」
 だからこそ自分たちが来た。
 勇者も、霊廟も、めでたしめでたしも。
 無粋なオブリビオンが奪ったすべてのものを取り返すために、自分たちは来たのだ。
 奇妙な言動を繰り返す藍ちゃんくんも、そのことにだけは決してブレない。

 故に、死者を冒涜するオブリビオンに静かな怒りを燃やしていたアンナは、少しだけその頬を緩め。
 故に、何も知らないからこそ、生まれ持った善性により戦うことを決めたメタは、真っすぐに駆ける先の闇を見据え。
 騒々しいパレードは、オブリビオンの支配する闇を、静寂を切り裂きながら、その喉元へと迫っていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

三原・凛花
私だって、亡霊とは言え、子供達と再会出来たからこれまで生きてこれた。
死んでも愛する人の元へ帰れないって…辛いよね。
せめてちゃんと別れを告げさせてあげたい。


【聖霊受肉】で、罠と巡回に対抗していくよ。

罠に関しては、スライム型の『聖霊』を先行させて、わざと罠にかからせて罠潰しをしていくよ。
『聖霊』は『負の感情を啜る』、つまり悪意にも敏感。
罠なんてものは、言ってみれば悪意の塊。
『聖霊』にとっては、ご馳走も同然だからね。

巡回に関しては、雑兵そっくりの『聖霊』でやり過ごすよ。
私はそいつに捕まった振りをするね。


最期の別れの機会すら奪うなんて許せない。
必ず死者を取り戻して、最期の再会をさせてみせるから。


満月・双葉
せっかく救われたのなら、ね。
嘆く命に悦びを。

【WIZ】
如何なる時も冷静に
地形は素早く把握し、地形利用で効率的に事を成します。
平時は視力、闇では暗視を用いて進みましょう。
聞き耳をたて、第六感や野生の勘も用い危険探知は欠かさずに
何よりも他の猟兵と連携出来るならば情報などやり取りしつつ情報収集し、罠の有無などは印を残して後から来る猟兵にも分かりやすく出来たら良いですね。
忍び足で目立たぬ動きを心掛け見張りなど居る場合は見つからぬように進み、ダッシュや早業で素早く移動していきます。どうしても見つかりそう、避けて通れない、等は騙し討ちで対処します。
逃げる時にはダッシュで…逃げ足には自信アリですよ。


芥辺・有
(先のオブリビオン討伐のあと、入るもののない墓所を何とはなしに眺めていたようで)
遺品か。……そうだね。
無いよりは、あるべきなんだろう。区切りをつけるためにも。
……何か一つくらいあったっていいだろ。前に進むためのよすが、ってやつ。

慎重に霊廟の中を進むよ。
進みながら罠が発動した痕跡があるか、とかも見とくか。罠の見極めの役に立つかもしれないしね。
あとは第六感というか、嫌な気配がするところは特に周囲を警戒しておくよ。

巡回には極力見つからないように気を付ける。面倒くさいし。
万が一行く先にいるようなら壁の裏あたりで息を潜めて。隙が出来たようなら背後から刺すなり蹴飛ばすなり何なりして始末しとくよ。



●生きるために必要なもの
 侵入者がいるぞ。猟兵が来たぞ。
 我らの城に入り込んだ、不届きものを捕らえねば。
 そう思考しながら、通路を進む髑髏兵の空っぽの眼窩が、あるものを見つける。

 猟兵だ。
 ぐったりと目を閉じた3人の猟兵が、髑髏兵に担がれて運ばれている。
 やはり、猟兵の間にも実力の差というものがあるのだろうか。
 そんなことを考えながら、手柄を上げた同胞とすれ違った足が、ふと止まる。

 戦って捕らえたのなら、身体が綺麗すぎではないか。

 そう気づき、振り返った髑髏兵の目の前に、虹色の薔薇が迫ってきて。

「この辺りが限界かな。エルシークに近づくほど、髑髏兵が賢くなってきている」
「ちょっと危なかったですよね、今の」
 自分を担いでいた髑髏兵から降りながら、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)が発した言葉に、【虹薔薇の静踊】で髑髏兵を仕留めた満月・双葉(星のカケラ・f01681)が同意する。

 言葉を投げ合う彼女たちの隣で、それまで足となってきた髑髏兵の形が崩れ、白い光となって3人目の少女へと引き寄せられていく。

「……帰ってこなくていいのに」
 諦観に染まった瞳でそれを受け入れる三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)が、ぽつりとつぶやく。

 【聖霊受肉】。
 凛花がその身に宿すUDC、通称『聖霊』に肉体を与え、呼び出すユーベルコードである。
 これに、髑髏兵の姿をとらせ、自分たちを運ばせることで、この3人は霊廟の深部への潜入を果たしていた。

 『聖霊』は、本来ならば、オブリビオンのフリをして3人もの人間を運ぶなどという、器用な真似ができる存在ではない。
 けれど、この霊廟では話が別だ。
 死者に対する悲しみを詰め込み、その眠りを妨げる侵入者に対する殺意に満ちた罠であふれるこの場所は、負の感情を食らう『聖霊』にとってはその力を何倍にも増す最高の舞台だった。

「まあ、ここまで来られたなら、あと一息だ。こっから先は自分の足を使おう」
 その言葉と共に、有が先陣を切って歩き出す。
 それに、凛花、双葉と続いていく。

 別にそういう取り決めがあったわけではない。
 けれど、暗い霊廟を進むなら、3人の中でもっとも聴覚に優れた有が適任であったし、後ろからの奇襲を警戒する上では、視線を向けるだけで敵を攻撃できる双葉が最後尾につくのが、一番都合がいい。
 誰が言うでもなく、敵地における最適な陣形で、猟兵達は霊廟を進んでいく。

「それにしても、結構壊れている罠も多いね」
「作られてから、かなりの年月が経っていますから……というだけでもなさそうですね」
 通る道に、定期的に丸の印をつける双葉が、凛花の呟きに答える。
 埃を被った矢の隣に、真新しい鎖に繋がれたギロチンが突き刺さっている。
 霊廟に元々作られていた罠の他に、オブリビオンが用意した罠も混ざっているのだろう。
 もっとも、先んじて潜入を果たした猟兵に攻略されている物も多いのだが。

「……ところで、罠の無い道にも印をつけるんだ?」
「勿論、むしろ、こっちの方が重要ですらありますよ」
「ヴァンパイア討伐に参加した人で、後から来る人もいるかもしれないしね」
 双葉の返事に、有が補足する。
 危険な道を警告するのも重要だが、猟兵達に必要なのは、エルシークの下へたどり着くための、安全な道なのだ。

 先のオブリビオン退治に触れながら、有は村で見た空っぽの墓を思い出す。
 誰かを失ったものには、何かが必要だ。
 それは、別れの言葉でも、遺す物でも、なんでもいい。
 生きるために、前へ進むために、よすがとなる何かが必要なのだ。

 私は失ったから、それでも生きていくためのモノを与えられたから。
 有は、それを知っている。

 そして、そんな何かの大切さを知るのは、有だけではない。
 暗闇の中で、虹の輝きで辺りを見渡す双葉も、白く、小さな何かを大切な宝物のように抱える凛花も、よく知っていることだ。
 だからこそ、わずかな情報を頼りに敵地に侵入する、この過酷な戦いに参加したのだ。

 3人が進む深部に、もう罠はほとんど残っていない。
 侵入者が、ここまでたどり着くわけはないという慢心ゆえだろうか。
 けれど、それ以上に、通路を塞ぐ髑髏兵の数は増えてきていた。

「どうしましょうか、また僕が蹴散らします?」
「お前もう何度もソレ使ってるだろ、ちょっとは休め」
 様子を窺う曲がり角に隠れながら、眼鏡を外そうとした双葉を止めて、有がその手袋につけてある鋼糸を伸ばし始める。
 それを、髑髏兵の背後に巡らせていくのは、凛花の呼び出した、スライム型の『聖霊』の役目だ。
 闇に紛れるその黒に、見張りの兵は気づかない。

 仕掛けが終われば、後は簡単なこと。
 有が一気に右手を振り上げれば、引き寄せられる鋼糸が髑髏兵たちの足を掬い、体勢を崩す。
 そこに、天井からスライムが襲い掛かれば、もはや髑髏兵にできることはない。
 べき、ぼき、と。
 嫌な音を立てながら、その身体をゆっくりと粉砕していく。

「……全身壊さなくても、あいつ等、頭壊せば大人しくならない?」
「そうだったね、やりすぎちゃったかも」
 有の指摘に、薄く微笑みながら返す凛花。

 その胸中に渦巻くのは怒りだ。
 死ぬのは仕方ない。
 自分には与えられないものだからこそ、凛花は死そのものを否定はしない。
 問題なのは、その死者が、愛する者の下へ帰れないということだ。
 そのことだけは、許せない。
 別れを奪うエルシークを、凛花は決して許せないのだ。

 その怒りを知ってか知らずか、双葉が小さなため息を一つ。
 消耗を抑える為に、自分を引っ込めたのではないのか。

 自らを『冷たいヤツ』と称する双葉は、オブリビオンの非道を理解した上で、その冷静さを保っている。
 村人たちの嘆きは、所詮双葉には他人事である。
 他人事だ。
 他人事だからこそ、双葉は怒りも悲しみも切り離してこの霊廟に来たのだ。
 死者を思い嘆くのも、これから取り返す者としっかり別れを告げるのも村人たちだ。
 自分は、ただその手助けをしてやればいい。

 『冷たいヤツ』は、そんな思考と共に、霊廟の最深部へと足を進める。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『スケルトン』

POW   :    錆びた剣閃
【手に持った武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    バラバラ分解攻撃
自身が装備する【自分自身のパーツ(骨)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    骸骨の群れ
自身が戦闘で瀕死になると【新たに複数体のスケルトン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●小手調べ
 猟兵達が、霊廟内で合流していく。
 どうやら、いくつもの道に枝分かれした霊廟の内部は、やがてまた一つの道に繋がっているらしい。

 こんなことなら、全員で同じ道を行ってもよかったなと誰かが話しながら、進むその先に待っていたのは。

 大きな広間。
 死者を慰めるために作られた複数の彫像が壁に飾られ、通路よりもはるかに多い松明が、それを照らす。
 彫像の足元である広間の端には、数えきれないほどの棺桶が置かれている。
 その先の通路は地下へと降りる階段となっていて、その前にはローブを纏ったオブリビオン。

 エルシークだ。

 その姿を見つけた猟兵達が攻撃を放つその前に、エルシークがぱちんと指を鳴らす。
 すると、広間の壁がせり上がり、エルシークの姿と、先への道を隠してしまう。
 遠ざかる気配、早くこの壁を壊して、奴を追わねば。

 かたかた。
 かたかた。

 もっともそれは、棺桶から這い出してきた、これまでの雑兵とは比べ物にならない邪気を纏った死者。
 スケルトンの群れを、再び眠らせてからになるだろうが。
満月・双葉
命ではないものがウロウロと。

他の猟兵との連携を重視
地形を把握し死角を利用、援護射撃で撹乱して敵を掃討しやすい環境を作ります

忍び足や目立たぬ動きで騙し討ち、早業による残像、多彩な攻撃で翻弄していきます
桜姫から衝撃波で薙ぎ払い、大鎌への変形で吸血し、生命力を吸収する2回攻撃を放ちます
パパ直筆の御札からは恐怖を与える呪詛、同士討ちを誘発する催眠術
薔薇の涙を投擲し傷口を抉り
大根で串刺し
スナイパーを用いお兄ちゃんの銃で遠くからまたはゼロ距離で射撃

敵の攻撃は第六感や野生の勘で見切り、見切れないものは盾受けや武器受け、オーラ防御で防ぎましょう。
敵を盾にして別の敵の攻撃を受け、防御も数減らしに役立てましょう


リーヴァルディ・カーライル
…ん。姿は捉えた。決して逃がしはしない…
死を冒涜する者に訪れるものが何か、教えてあげる

前線は他の猟兵に任せ後方から【限定解放・血の教義】を発動
改造した防具で、精霊の存在感を第六感を駆使して見切り、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収させて、彼らを誘惑し魔力を溜める

闇の精霊、死の精霊…。死の眠りを妨げる者に裁きを…

…大技を仕掛ける。巻き込まれないように、注意して…!

死体を操る呪詛のみを食らう“闇の雷”を両手で発動(2回攻撃)
呪いを追跡して傷口を抉り、再召喚された敵ごとなぎ払う

広域攻撃呪法。対象、スケルトン
食い千切れ、闇の雷…!

…ん。もう眠りを妨げるものは無い
弔いは全て終わってからになるけど、安らかに…


仇死原・アンナ
骸骨の群れ…まるで死の舞踏を思わせる光景ね
だがお前達と踊るつもりはないし、まして勝たせるつもりもない!

他の同行者と共闘
[怪力]で鉄塊剣を振るって敵群を[なぎ払い]蹴散らしていくつもり

敵からの攻撃は[呪詛耐性]に[武器受け]と[見切り]で回避予定

「ここがお前達の火葬場だ!我が身の炎で骨の髄まで燃やし尽くす!」

バラバラになったり新たな敵を召喚してきたら
【ブレイズフレイム】を使用して敵群を火達磨にして滅却する

「どうか…誰にもその眠りを邪魔されないように、心安らかに眠れ…」
燃え尽きて灰となった敵の残骸を見つめながら魂の安息を願う

アドリブ・絡みOK



●前哨戦
 スケルトンの群れが、次々と棺桶から這い出てくる。
 大広間の中ほどまで進んでいた猟兵達は、エルシークの呼び出した壁を背に、迎撃の体勢を取る。

「……ん。エルシークの姿は捉えた」
 故に、此処で逃げられても問題はない。
 徹底的に追い詰めて、死を冒涜する者に訪れるものが何か、教えてやるまでだ。
 そんな思考と共に、リーヴァルディが目を閉じ、霊廟に眠る精霊たちへと呼びかける。

「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 もちろん、周りをスケルトンに囲まれた敵地においては、非常に危険な行動である。
 けれど、リーヴァルディは一人ではない。

「命ではないものが、ウロウロと」
「骸骨の群れ…まるで死の舞踏を思わせる光景ね」
 迫りくるスケルトンの軍勢を、赤黒い剣を大鎌に変形させていく双葉と、乙女のレリーフが印象的な、錆色の大剣を振りかぶったアンナが迎え撃つ。
 魔術の力による衝撃波を用いた双葉の大鎌、身体から噴き出す炎で加速するアンナの大剣、その二つを正面から受けたスケルトンたちが、その身を砕かれながらなぎ払われていく。

 示し合わせたかのようにスケルトンに肉薄した2人は、しかし、その後は対照的な行動を取る。
 ブレイズキャリバーとしての身体能力、これまで鍛え上げてきた怪力をもって、スケルトンの剣を正面から受け止めるアンナに対して、双葉は数歩下がったところから、投擲による援護を行う。

 父から受け継いだ呪詛を帯びた呪符、兄との思い出が詰まった本、大根。
 アンナの後ろに回り込もうとしていたスケルトンは、呪詛により思考を乱され味方に剣を振るい、あるいは本に背骨を砕かれ、大根を頭から生やして沈黙する。

「……アンタ、もっと強そうな武器なかったの?」
「何を言うんです。こんなに凶悪な武器、そうそうお目にかかれませんよ」
「……そう」
 双葉の共闘相手が、目を閉じ集中し続けるリーヴァルディと、処刑人としてストイックに剣を振るうアンナであったのは幸運だった。
 大根でオブリビオンを屠るその姿を、『そう』で流してくれる者は、猟兵の中でも限られるのだから。

 とはいえ、双葉の援護は優秀そのものだ。
 各種投擲や、マスケット銃による射撃により、スケルトンの逃げ場を奪っていく。
 この上、視線で発動させるユーベルコード、【虹薔薇の静踊】も加わって、たった一人でスケルトンの移動を誘導していく。
 数では圧倒的有利を誇るスケルトンでも、密集させられては、思うように動けない。
 そして、敵がひと塊になったなら。

「ここがお前達の火葬場だ!我が身の炎で骨の髄まで燃やし尽くす!」
 アンナの身体から噴き出す【ブレイズフレイム】が、スケルトンたちの骨だけの身体を焼き尽くし、灰にする。
 多少の損傷ならば動き続け、身体を砕かれたならその破片を起点に新たな同胞を作り出すスケルトンも、ここまで身体を破壊されれば復活のしようがない。

「……流石に、ここまでやればもう動かないか」
「とはいえ、まだまだ残っている相手にこれを繰り返すのは大変ですよ。エルシークだって追わねばいけません」
 双葉の言葉通り、これは前哨戦だ。
 エルシークを討つためにも、余力を残す必要がある。
 もっとも、だからこそこの2人は積極的に前に出て戦い。

「……ありがと、準備できたよ」
 だからこそリーヴァルディは、忌むべき己の力を解放してまで、精霊のマナをその身に宿す。

 【限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)】。
 リーヴァルディが扱うユーベルコードの中でも、特に使い道が多く、そして特に扱いの難しいユーベルコードである。
 単純に、制御が困難なのだ。下手に使えば、自分や味方をも飲み込んで暴走する、危険なユーベルコードだ。
 けれど今なら。双葉とアンナが作ってくれた時間で、集中と詠唱を終えた今なら。
 彼女の身体に宿った魔力は、主の望みを叶えるための形をとる。

「広域攻撃呪法。対象、スケルトン。食い千切れ、闇の雷……!」
 リーヴァルディの両手から放たれる黒い稲妻が、スケルトンの軍勢を飲み込んでいく。
 けれど、スケルトンに、感電で焼ける肉はもう存在しない。
 彼らは、雷を受けた後も、何事もなかったように進軍を開始して。

 その身体を動かす悪意の呪詛だけを焼かれた死者は、たった今死んだことを思い出したように崩れ落ち、沈黙した。

「どうか……誰にもその眠りを邪魔されないように……」
「……ん。弔いは全て終わってからになるけど、安らかに……」
 哀れな兵士たちを弔ってやる時間はない。
 まだ、スケルトンたちは残っているし、元凶たるエルシークとの戦いも残っている。

「…………」
 だけど、一瞬だけ言葉をかけた2人を、寡黙に戦いを続ける双葉が咎めることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
…いいだろう、まずスケルトンを倒して奴の支配から解放する
どうせこれもどこぞから持ってきた遺体だろうからな
元凶はその後だ、首を洗って待っていろ

遠距離から攻撃し続けるには飛んでくる骨が邪魔だな
棺桶を『地形を利用』し遮蔽物として使い、敵を観察して骨での攻撃が緩んだ隙に接近を試みる
骨と剣の軌道を『見切り』、ユーベルコードも発動して回避しつつ接近

十分接近したら『零距離射撃』で『2回攻撃』を仕掛ける
狙うのは頭部から頸。ここまで接近すれば狙い易く、命中すればダメージも大きいはず
攻撃後は囲まれる前に『逃げ足』を活かして離脱、再び接近し攻撃を繰り返す
味方への包囲も警戒、危険なら『援護射撃』で敵を妨害する


紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
増えますかー? 増えちゃうのでっすかー? 増えちゃいますかー!
お客様が増えるのは大歓迎でっすよー?
骨さん、骨さん、骨さんたちは眠りたい骨さんですかー?
歌うのは鎮魂歌に葬送歌に憐れみの讃歌!
お骨さんたちにも馴染みのあるこの世界の祈りの歌から、猟兵の皆様の世界の歌まで!

死者に生者に安らぎをとは、その通りだと思いますのでー!
猟兵の皆さんの心にも響くよう、奪われた亡骸さんたちにも届くよう、澄んだ声で歌うのですよ?
藍ちゃんくん、騒がしいダンピールですが!
歌もお洋服も派手なの以外も大好きですので!
ここはひとつ静かに、されど荘厳な、そんな矛盾するかのごとき歌を響き渡らせるのです!


芥辺・有
勿体ぶって逃げてくれたもんだけど、むざむざ逃がすわけにはいかないな。
……そのためにも。悪いけど、お前らにはまた不帰の客となってもらおうか。

……うんざりする数だね。
先制攻撃で手近な一体に弾丸をぶちこんで。
そうしたら一気に骨の群れに駆けて近づこう。そして勢いを活かして回し蹴りで蹴り飛ばす。
蹴りの衝撃波とか、杭を振り回した範囲攻撃である程度まとめて相手取りながら戦えるといいんだけど。
隙ができた奴がいたなら二回攻撃で畳み掛けて倒すようにしようか。

敵の攻撃については、多少の傷は気にしないよ。ただ、やばそうな攻撃を第六感で感じ取ったなら他の敵を盾にすることで回避しようか。



●亡き者たちの為に
 猟兵達の戦いは続く。
 確実にその数を減らし、けれどもまだ確かな脅威として迫りくるスケルトンの軍勢を見つめ、シキは小さなため息をつく。

 エルシークを追う為に背後の壁を破壊するにしても、まずはスケルトンを倒して、その支配から解放する必要があるだろう。
 今やオブリビオンとなってしまった兵士たちも、元々はどこかから連れてこられた遺体であろうことは、容易に想像がつく。
 実利の面でも、感情の面でも、スケルトンは決して無視できない存在だ。

「元凶はその後だ、首を洗って待っていろ」
 背後の壁を振り返る事は無く、それでも確かな決意を込めて呟いたシキが、眼前の敵へと駆け出していく。

 自身の骨を飛ばし、襲い来るスケルトンに対し、彼らが眠っていた棺桶を盾にしながら距離を詰めていくシキの背後では、相も変わらず歯を輝かせて笑うダンピールが1人。

「骨さん、骨さん、骨さんたちは――眠りたい骨さんですかー?」
 ならば、歌うべきものは決まっている。
 鎮魂歌に葬送歌、死者の為の憐れみの讃歌!
 藍が、『藍ちゃんくん』たる魂を構え、静かに歌い始める。

 彼は、自他ともに認める騒がしいダンピールである。
 けれど別に、そうじゃないものが嫌いなわけでは無いのだ。
 死者に安らぎ大いに結構、生者にも合わせてこの歌を届けよう。
 静かに、荘厳に、矛盾に満ちた歌を歌いあげよう。
 眠りゆく死者の為に優しく、それでも、攫われた勇者たちにすらも届くような、大きな声で!

 聞き覚えが無い歌で、だけどどこか懐かしい。
 奇妙な歌だなと思いながら、敵に接近した有が、あいさつ代わりとばかりに銃弾を撃ち込み、目の前の頭蓋を破壊する。
 崩れ落ちるスケルトンを通り過ぎて、有が一気に死体の軍勢へと駆け出す。
 当然、スケルトンたちはノコノコと近づく猟兵に容赦などしない。
 自らを分解して作り出す骨の弾丸が、一斉に有へと迫る。
 左手に握る杭を振るい、致命傷になり得るだろう攻撃を的確に見極め叩き落す有の白い肌に、少しずつ赤い傷が走っていく。
 けれど、問題はない、もう十分に距離は詰めた。

 走る勢いはそのままに、有が飛び上がり、スケルトンの軍勢へ回し蹴りを叩き込む。
 斜めに、スケルトンを半ば踏みつぶすように放たれた蹴撃は、その餌食となった者の上半身を粉砕してなお止まらず、衝撃波を伴い骨の群れを吹き飛ばす。

 スケルトンの殆どが体勢を崩した好機に、少しずつ距離を詰めていたシキも一気に接近する。
 十分に近づいたなら、その手に握る白銀のハンドガンが重い音を響かせながらスケルトンの頭部を正確に破壊していく。
 しかし、この距離は本来、銃を扱うシキの間合いではない。
 決して深追いはせずに、【ワイルドセンス】を働かせながら、スケルトンの反撃の剣を躱し、再び距離をとる。

 銃のリロードを行いながら、シキの思考は加速していく。
 ユーベルコードですらない有の蹴りが一撃でスケルトンを粉砕し、命中率と威力の両立の為に、危険な接近戦を行う自身には、傷一つもありはしない。
 目の前のスケルトンが弱いわけではない。
 1対1で負ける相手では断じてないが、最深部に待ち伏せていたこのオブリビオン達は、道中の髑髏兵とは比べ物にならない質と量である。

 ちらりと、一瞬だけ背後で歌う藍に目を向ける。
 歌声によって、他者に力を与える【サウンド・オブ・パワー】。
 歌に共感した者にしか効果を発揮しないという制約はあるが、共通の敵に立ち向かうことの多い猟兵の間では、成立しない方が珍しいユーベルコードだ。

 けれど、奪われた亡骸を思い歌う藍の声は、それだけには留まらない。
 シキも、有も、あの村を襲ったヴァンパイアに立ち向かった。
 油断の許さぬ死闘の中で、力を振り絞り戦った。

 それでも、家族を返してやることができなかった、あの村の人々の顔をこの目で見たのだ。

 藍の歌声は、戦場の全てに響き、猟兵達に力を与える。
 その中でも、より深く共感し、より強い力を与えられていたのが、シキと有であった。

「さて、あの羊頭、勿体ぶって逃げてくれたもんだけど、むざむざ逃がすわけにはいかないな」
「ああ、こいつ等に、何時までも時間をかけるのも問題だろう」
 ヒットアンドアウェイ。
 再びスケルトンから距離をとった有とシキが声を掛け合う後ろで、藍が歌いながらも、器用に頷き同意する。

 だからこそ、もう一度仕掛けようじゃないか。
 そんな思いと共に、有がまた駆け出せば、先ほどの焼き直しのようにスケルトンたちの骨が襲い来る。
 いや、同じではない。
 生半可な攻撃ではこの猟兵は倒れないと学習したスケルトンたちが、自らの崩壊も顧みずに、はるかに大量の骨で攻め立てる。

 けれど、同じでないのはこちらも同じ。
 有が防ぎきれない骨のことごとくを、シキの的確な援護射撃が撃ち落としていく。

 そうしてスケルトンたちの下までたどり着いた有が、高く跳躍し、スケルトンの軍勢の中心へと飛び込んでいき。

「いや、助かったよ。自分で傷をつけるのは、結構手間なんだ」
 先ほど負った傷から飛び出していく赤い杭、【列列椿(ツラツラツバキ)】。
 赤く鋭い杭の雨が降り注いだ後に有が着地すれば、スケルトンたちはもはや、原型を留めてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空雷・闘真
「あくまで己の手を汚すことなく、死人共を差し向けるだけとは…どこまでも見下げ果てた奴だ」

闘真はため息を付きながら【宇宙バイク】に【騎乗】し、右手に【バトルアックス】、左手に【アサルトウェポン】を持つ。
そして【影の追跡者の召喚】で出した影を、己の頭上3M程の高さに配置した。
こうすることで上空からも戦場を見ることが出来るようにし、より敵の攻撃を【見切り】やすくしようという算段なのだ。

ゾーン状態_人は極限まで集中力が高まると、自分や周囲の様子を俯瞰の位置から眺めることが出来るという。
【影の追跡者の召喚】を応用することで、闘真はそのゾーン状態を疑似的に再現することを試みていた。


メタ・フレン
いつまでも悪趣味な輩の操り人形にさせはしません。
取って置きの秘策で、スケルトン達を成仏させてあげますよ。

まず【おびき寄せ】で、スケルトン達を出来るだけ多くわたしのところへ集めます。
ある程度集まったら、【バトルキャラクターズ】で、RPGとかの僧侶や聖職者のキャラを20人出して合体させ、最強のアンデッドキラーを作り出します。
そしてそのアンデッドキラーに特大の浄化魔法をぶっ放させて、スケルトン達を完全に浄化させます。

「迷わず成仏してください!来世はゲームキャラなんかおススメですよ!」



●願われるのは
「いつまでも悪趣味な輩の操り人形にさせはしません」
 戦いにより荒れ果てた広間の中で、メタがスケルトンを見つめながら言葉を放つ。
 もはやスケルトンたちも、軍勢とすら呼べないまでに数を減らしつつあるが、だから、残りを捨て置くなどと言う考えはメタにはない。
 後顧の憂いを断つために、エルシークに弄ばれる哀れな死者を眠らせる為に。
 メタはゲームデバイスを構え、己がユーベルコードを呼び出すための準備に入る。

 そんなメタに敵を寄せ付けぬよう、バイクにまたがり戦場を駆けるのが闘真だ。
 右手に巨大斧、左手には銃火器を構え、ここですべてを薙ぎ払おうと言わんばかりの暴威をもって、バーバリアンはスケルトンを蹴散らしていく。

「あくまで己の手を汚すことなく、死人共を差し向けるだけとは……」
 どこまでも見下げ果てたエルシークの所業に、未だ尽きぬ怒りを燃やす闘真。
 しかし、その激情とは裏腹に、的確にメタへ攻撃を向ける敵に銃弾を叩き込み、バイクの勢いを斧に乗せて哀れな骨の群れを両断していく。

 両手で別々の武器を扱いながら、ハンドルすら持たずに体重移動のみでバイクを操り、スケルトンの群れを切り裂いていくその業は、猟兵の基準からしても異様なレベルを誇る。
 その秘密は、闘真が使うユーベルコード、【影の追跡者の召喚】にある。
 闘真が呼び出した影の追跡者は、特別高い戦闘力を有する存在ではない。
 けれど、召喚者と五感を共有するというこの影を自身の上空に配することにより、闘真は疑似的に、自身の周囲全てを見渡す驚異的な認識力を得ていたのだ。

 ゾーン状態という言葉がある。
 世界によっては、フロー、無我の境地とも表現されるこの状態は、明確な目的意識、経験則による直感的な思考、極度の集中などにより自身の能力を十全に発揮できることを指すことが多い。
 闘真がユーベルコードの使用により狙ったのは、このゾーン状態の疑似的な再現である。

 当然だが、認識の範囲が広がったからといって、それがそのまま強さに繋がるという単純な話ではない。
 けれど、彼ならば。
 強さとは何かを問い続け、強者を求め続け、最強への扉を叩き続ける彼ならば。
 修練と死闘の果てに、幾度となくその境地を垣間見た闘真ならば、短時間の間、よく知るそれを再現するのは容易い事だった。

 戦い続ける闘真の背後で、メタの準備が完了する。
 自身の狙いのためには、どうしてもスケルトンに近づき、気を引く必要があった。
 その危険な試みを、闘真の協力を持って成功させたメタのデバイスが、その画面を明暗させていく。

 System start-up
 Standby
 『Cleric』
 『Exorcist』
 『Priestess』
 『Bishop』
 『Paladin』
 All Green

「――さあ、行ってください、【バトルキャラクターズ】!!」
 メタのユーベルコードにより、ゲームデバイスから飛び出していく聖職者のキャラクター達が、そのまま光の粒子となって一つになっていく。
 やがて光は人の形を持って、メタの隣へ静かに降り立つ。

 豪奢なローブ、身の丈を越える、十字の先端を持った杖。
 額に20の数字を刻まれた、凛々しい聖職者の姿。
 メタが呼び出せる、最強のアンデッドキラーの姿がそこにはあった。

「闘真さん、特大魔法、いきますよ!」
 メタの警告を聞いた闘真が、突如現れたゲームキャラクターを一瞥し、そのまま戦いを続行する。
 巻き添えを心配する必要は無い。
 あれは、生きる者に危害を加える力を持たない存在だ。

 ただ、眠れぬ死者の安息を願われた存在が、その手に持つ杖を掲げ、光を集める。
 メタの願いを叶える為、ただオブリビオンとして倒すのではない、哀れな犠牲者として眠らせる為の浄化の術を構築していく。

「迷わず成仏してください! 来世はゲームキャラなんかおススメですよ!」
 メタの声と共に放たれた光が、広間に大きく十字を刻む。
 誰もがその眩さに目を逸らし、視界を取り戻した時には、歪んだ強さから解放された人の屍が、灰となって崩れ落ちていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラスベルト・ロスローリエン
墓暴きで従えた躯を楯に自らは遁走とはね。
大した墓所の主もいたものだ。

◇WIZ 自由描写・連携歓迎◇
“翠緑の追想”を頭上高く掲げ霊廟に灯る松明の灯を燃え盛らせ【高速詠唱】で《神秘の焔》を紡ぐ。
廟内に漂う風に火を乗せ【属性攻撃】【全力魔法】で白炎の烈風を巻き起こし骸骨兵達を火葬に伏す。
『よこしまなる傀儡の糸を焼き払おう……己が魂の在るべき安寧の地へと還るが良い』
白炎を自在に操り躯が蘇らぬよう灰になるまで焼き尽くそう。
仲間に助勢をする時は【援護射撃】で一陣の炎風を差し向け支援する。

ひと段落ついたら僕も【念動力】で壁の除去を手伝うよ。
灰と化した屍に黙礼を捧げ今は先を急ぐとしよう――君達の弔いは必ず。


デブラ・ヘックシュバイン
チッ。相変わらず暗ァくてジメジメしてやがって、嫌ンなるぜ。
クソむかつくヴァンパイアを倒したと思ったらコレだ…

っと、口が悪くなっちゃったっすね。
古巣にゃあ良い思い出が無いもんで、ついつい。

さて、敵は数を恃みに迫る軍勢っす。
こう言う相手は1体ずつ確実に減らさないとキリがない、という事でー。
1体1体、念入りに撃ち抜いて回るっす。
手足の関節ごとにぶち込めばバラバラになるでしょうたぶんね!

それでも止まらないならスコップで念入りに粉砕するしかないっすかねー。
ああ、敵の攻撃は全部受けとくっす。
回避にゃ自信ないし、ここで受けた傷は無駄にならないっすからね。

さあ、我慢比べと行こうじゃねェか!!


三原・凛花
安らかに眠ることすら許されず、使い捨ての道具にさせられる…
こういうのって、見てられないんだよね。
せめてわたしの子供達のお友達になってあげて。
この子達は遊んでくれるのなら、相手がどんな存在であろうと気にしないから(ギュッと手の中の小さな髑髏を抱く)。

【水子召喚】で子供達を呼んで、【生命力吸収】と合わせてスケルトン達の魄(肉体を司る陰の霊気)を取り込ませるね。
この手の死霊術は、大抵遺体に残留した魄を操ることで動かしている。
となれば、魄そのものを奪ってしまえば、彼らもまた安らかな眠りに付ける筈。

死者を冒涜し、意のままに弄ぶ。
ある意味…わたしのやってることもエルシークと変わらないのかもね。



●苦悩を引き連れ、今は止まらず
「チッ。相変わらず暗ァくてジメジメしてやがって、嫌ンなるぜ。クソむかつくヴァンパイアを倒したと思ったらコレだ……」
 スケルトンも、もうほとんど残っていない。
 だからこそ、この霊廟の陰鬱な雰囲気がまた気になってくる。

 けれど、そういった理由で口が悪くなるのは、一種の緩みか。
 まだエルシークも残っているのだと自身を叱咤し、デブラ・ヘックシュバイン(捨てがまれず・f03111)が己の獲物を握りしめる。
 その身体には、既に大小の傷が無数に走っている。
 回避を得手としていない自分が、無理に無傷に拘ればかえって致命傷を受ける恐れもあるし、今回共に霊廟に乗り込んだ仲間は、自分よりはるかに打たれ弱い者も多い。

 なにより、傷を負ったなら負ったで、それを利用した切り札も用意してあるのだ。
 さあ、我慢比べを続けよう!
 戦友の鉄臭い形見を意識しながら、死にぞこないの軍人が、スケルトンの身体を砕いていく。

「それにしても、大した墓所の主もいたものだ」
 そんな頼れる前衛に当てぬように気を使いながら、白炎を操るラスベルトが皮肉気に呟く。
 ユーベルコード、【神秘の焔】。
 霊廟に灯る松明の灯と、霊廟に吹く風で白炎の烈風を作り出したラスベルトは、これまで多くのスケルトンを火葬に伏してきた。
 だが、哀れな死者を、その魂の在るべき安寧の地へと還す為に生み出された炎は、ここに来てその制御が難しくなってきていた。
 長時間使いすぎたということもあるし、スケルトンの数が減ってくるにつれて、味方を巻き込まないように敵のみを狙うのが困難になってきていたのだ。

 とはいえ、既に存在していた松明や風を利用していた分、ラスベルトにかかっている負担は比較的軽微だ。
 もう少しで、この死者たちを眠らせてやれる。
 その、優しい焦りが裏目に出たのか。

「……ッ!?」
 炎の明るさに紛れたスケルトンが、間近に迫ってきていた。
 前に出ているデブラも間に合わないだろう、せめて、少しでも受ける傷を減らそうとしたラスベルトが、腰の長剣を抜こうとしたところで。

 スケルトンが、急に力を失ったように崩れ落ちた。

「……駄目よ。その子はとても眠たいみたいだから、次のお友達を探しましょう」
 手の中の小さな髑髏に語りかけながら、凛花がラスベルトへと歩み寄る。

「坊や、大丈夫?」
「え、ええ。ありがとう……」
 エルフとしては非常に若いラスベルトの、半分も生きていないような風貌。
 けれど、その昏い瞳に見つめられたラスベルトは、不思議とそれを訂正する気にはなれない。

「彼らも、もうほとんど残ってはいないけど、キチンと皆眠らせてあげないとね」
 ラスベルトの無事を確認した凛花は、再びスケルトンを見据え、身にまとう霊たちを差し向ける。
 【水子召喚】というユーベルコードで呼び出される、生まれることの無かった命。
 その中には、死してなお、凛花の生きる理由、あるいは、死ねない理由となった者も混ざっている。
 だからこそ、凛花はこの霊たちの望みをよく理解している。

 凛花の水子たちが、スケルトンへと纏わりつけば、その骸を動かしていた魄に遊んでもらおうと、骨の身体から引きはがしていく。
 自らを動かす力を奪われたスケルトンが、次々に力尽き、倒れていく。

 生を望み、友を望む水子たちは、多くの場面で悪霊と呼ばれる存在だろう。
 けれど、この時、死してなお道具として使われる死者を眠りの中へ連れ行く霊たちは、間違いなく一つの救いの形であった。



「さて、スケルトン達の相手は終わったけれど」
「改めてみると、結構大きいっすね、この壁」
 戦いの後で、ラスベルトとデブラが壁の前で思案する。
 エルシークを追う為には、どうにかしてこの壁を破壊しなければならないだろう。

「うーん、お兄さん、バリアー的なものって出せます?
「バリアー? まあ、簡単なものなら出せるけど……?」
 ラスベルトの返答を聞いたデブラが、ニヤリと笑う。
 それならば、話が早い。

「なら、豪快に砕いちまいましょうか、そいつが一番早いっすよ!」
「え」
 そう言うと同時に、自らの持つすべての武器を構えたデブラが、ユーベルコードを使う準備に入る。
 【フルバースト・マキシマム】。自身の全火力を撃ち込む単純な暴力が、次々に壁に叩きつけられ、その分厚い障壁に穴を穿っていく。

 慌てたのはラスベルトだ。
 間一髪間に合った念動力のバリアーがなければ、発生した粉塵でまともな呼吸は出来ず、場合によってはがれきに潰されていただろう。

「ちょ、ちょっと! 攻撃するにしても、もうちょっと離れた方が良かっただろう!?」
「いやぁ、そうすると火力が分散して時間がかかりますし」
 それに、道は拓けたっすよ。

 そう言って笑うデブラの視線の先では、大きな穴が空いた壁から、地下へと降りる階段が見えていた。

「まったく……けど、時間が惜しいのも確かだ。先を急ごうか」
 そう呟いたラスベルトが、先ほどまで自分たちが戦っていた広間を振り返り、黙礼を捧げる。
 あの哀れな死者たちを、この場に放っておくことに、ある種の罪悪感はある。
 弔いは必ず。だから、もう少しだけ待っていて欲しいと、無言の謝罪を込めながら礼を終えたラスベルトが、階段を降りていく。

 その姿を見た凛花が、静かに考える。
 死者を冒涜し、意のままに弄ぶエルシーク。
 その在り方と、自分に違いはあるのかと。

 その想いを押し殺して、凛花も先を急ぐ。
 時間は、誰かの苦悩の為に止まってはくれない。
 ここで足を止めれば、エルシークに弄ばれ、使い捨てにされる死者は増えていくだろう。

 自分が正しいのかはわからない。
 けれど、安らかに眠るべき魂を、使い捨ての道具にするエルシークの所業を許すわけにはいかない。
 その、唯一確かだと信じる思いと共に、凛花は地下へと降りていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『往生集め『エルシーク』』

POW   :    賢者の双腕
見えない【魔力で作られた一対の腕】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    蒐集の成果
自身が装備する【英雄の使っていた剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    幽暗の虫螻
【虫型使い魔】の霊を召喚する。これは【強靭な顎】や【猛毒の針】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルディー・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●下衆
 猟兵が階段を降りた先。
 そこには、死者が歩く霊廟にあってなお、異様な光景が広がっていた。

 広々とした部屋に敷かれた、質の良い絨毯。
 細かな細工が施された燭台の蝋燭が、日の差さぬ屋外よりも明るく室内を照らす。
 豪華な調度品が並び、テーブルの上には、ダークセイヴァーにおいて滅多に見られない、贅の限りを尽くした料理が並ぶ。
 長いテーブルの向こうで座るエルシークがいなければ、幻覚かなにかと勘違いしたかもしれない。

 なんだこれは。何故こんな物があるのか。
 困惑する猟兵達を見つめるエルシークが立ち上がり、その疑問に答えるように言葉を放つ。

「――素晴らしいっ! 見事な戦いだった! 感動したよ、私はっ!!」
 獣の骨を被るエルシークの顔から、その心を知るのは難しい。
 けれど、手を打ち鳴らし、しゃがれた声で猟兵を褒め称える姿に喜びの感情を見出すのは、難しくは無いだろう。

「いやぁ、いつか見たこともないような英雄が来た時の為に、歓迎の準備を怠らなくて本当によかった」
 この子牛のソテー、我ながら上手く作れたと思うんだ。
 まるで、親しい友人を迎えるように、エルシークが言葉を続ける。

「色々話を聞かせてほしいな。君たちがどうやって生きてきて、なんのために戦ってきたのか」
 そう言って、着席を促すエルシークの言葉に従う猟兵はいない。

 村人の遺体は何処だ。
 困惑を振り切り、霊廟に来た目的を果たすべく、猟兵が問いかける。

「ああ、地下のアレが欲しいの? 困ったなぁ、別に手放しても惜しくは無いんけど」
 君たちに渡したら、村の人たちに返しちゃうでしょ?

「それじゃあ駄目だよ! 死んだ奴なんてどうでもいいけど、ここで返しちゃったら、私は明日から、どうやって彼らの悲しみを見つめればいいんだ!」
「彼らの顔を見たんだろう!? 大切な人を亡くして、けれど、心の何処かで、生きてるかもしれないなんて妄想を捨てきれない、あの美しい顔を!」

「英雄が死ぬからいいんだ! 死んでなお、その死を信じさせてくれない英雄に遺された彼らだからいいんだよ!」
 そこまで叫んで、エルシークは気づく。
 先ほどまで戸惑っていた猟兵の顔に、怒りが宿り始めたことに。

「あちゃあ、お話してくれる気分じゃなさそうだね。色々聞きたかったのにな、誰と生きるのか、誰と戦うのか」
 君たちを想って美しい顔を見せてくれる、誰かの話を聞きたかったのに。

 心から残念そうに呟く醜悪な蒐集者が、呼び出した霊と共に、猟兵達へと襲い掛かる。
空雷・闘真
闘真は仲間達をエルシークの攻撃から【かばう】ことを決意する。

「俺を想って美しい顔を見せてくれる奴だと?なら一人取って置きの奴を知ってるぜ」

闘真の狙いは仲間達を守ることではなく、攻撃を受け続けることで自分が瀕死になること。
【戦場の亡霊】_かつて闘真が戦場で殺した敵兵の亡霊を、地獄から呼び寄せる為に。
亡霊を呼び寄せる餌は、瀕死に喘ぐ闘真の血と死の臭い。
己を殺した怨敵が無様にのたうつ様を、亡霊は何よりも心待ちにしているのだ。

「エルシーク……お前も俺の【戦場の亡霊】にしてやる」

凶暴で残忍な笑みを浮かべ、闘真はエルシークの顔を一瞥する。

「俺への憎悪と怨念に歪むお前の顔、さぞ美しいだろうぜ」


シキ・ジルモント
◆SPD
それが遺体を持ち去り遺された者の悲しみを煽った理由か
…救いようのない下衆だな

剣の飛んでくる軌道を『見切り』撃ち落とし、家具や柱等の『地形の利用』も駆使して回避し敵に接近する
フック付きワイヤーで調度品を引き寄せて盾にしてもいい
接近したら『零距離射撃』の間合いでユーベルコードを発動

攻撃後は離脱、とみせかけて『フェイント』をかけ再度攻撃
フェイント動作中に手早く弾倉を交換、再度ユーベルコードをぶち込む(『2回攻撃』)
ダメージも『覚悟』の上、回避より攻撃を当てる事を重視
絶望を晴らすという村人との約束を果たす為にも、死して尚オブリビオンに翻弄される英雄達を救う為にも
奴をここで滅ぼせるなら安いものだ



●肉切骨断
「それが遺体を持ち去り、遺された者の悲しみを煽った理由か……救いようのない下衆だな」
 飛来する剣を睨みながら、明確な軽蔑を込めて、シキはその手に握った引き金を引く。
 エルシークとしても挨拶代わりだったのだろうか、単純な軌道で向かってきた刃は、その軌道のことごとくを見切られ、空中で撃ち砕かれる。

「ふむ、結構結構。此処まで乗り込んできた人たちだ、これくらいは防いでもらわないとね」
 対するエルシークも、猟兵達の侮蔑の言葉を受けてなお、上位者気取りで次の行動に移る。

 どこからともなく現れる、様々な虫の形をした霊の群れ。
 時にはエルシークの目となり、時にはエルシークの武器となる、忠実な使い魔たちだ。
 岩すら砕く強靭な顎、掠るだけでも身体の自由を奪う毒針は、猟兵の身であっても脅威となる。

 だからこそ、シキは努めて冷静に対処する。
 宙を飛ぶ蜻蛉の羽根を的確に撃ち抜き、特別な改造を施したフック付きワイヤーを片手で操り、引き寄せた壁の絵画で蜘蛛を叩き潰す。
 敵は明らかに、魔術師の力を持ったオブリビオンだ。
 ならば、零距離からすべての弾丸を叩き込んでやろうじゃないか。
 そう戦術を組み立てながら、跳ばされてきた剣を蹴り上げた椅子で防ぐシキの耳がピンと立つ。

 何かが迫ってきている。
 人狼としての知覚能力で、己に迫る危機を悟ったシキを挟み込むように揺らぐ空間。
 堕ちた賢者の不可視の腕が、新たな蒐集品を作るために迫っていた。

「……ふん。奇襲にしても、随分とずさんなやり口だ」
 轟音と共に振るわれる斧が片方をかき消し、もう片方から迫っていた爪は、割り込んだ男の腕を切りつけるだけに終わった。

 シキを庇った闘真に、不可視の術で不意を打とうとしたエルシークに対する非難は無い。
 あるのは、ただの落胆だ。
 命の奪い合いをする以上、騙し討ちなど、される方が愚かなだけである。
 けれど、エルシークのそれは、真正面からの攻撃で引き付けた相手を側面から襲う、あまりにも単純すぎるもの。
 それは、エルシークが、安全な場所から弱者の嘆きを覗き見るだけであったことを。
 自分の手で戦ったことなど、ほとんどない存在であることを、千の言葉よりも雄弁に闘真に伝えていた。
 だからこそ、闘真は戦い方を変えることにした。

「なあ、エルシーク。俺を想って美しい顔を見せてくれる奴だがな? 一人、取って置きの奴を知ってるぜ」
「へえ? それは是非とも気になるねぇ」
 ずさんと評されたエルシークが、僅かな苛立ちを滲ませながら、言葉を返す。
 その姿に、一層の小物らしさを覚えながら、闘真はあえて、飛び交う剣を素手で受け止める。
 こんな奴に、自分の拳はもったいない。

「ッ! 何をッ!?」
「まあ、見てろよ」
 驚いたのはシキだ。
 先ほど自身を庇った斧を振るえばいいものを、わざわざ素手で止めるなど、ワザと傷つきにいっているような物だ。
 あろうことか、闘真は残ったもう片方の手でも、飛翔する毒虫の針を、自分から手のひらに刺すようにして止めてしまった。

「おや、これはあっけない。毒が回って動けなくなる前に、その取って置きを教えて欲しいんだけどなぁ」
「教えるだけなんて、ケチな事は言わねぇよ。すぐに会わせてやるさ」
 闘真の言葉に、エルシークが疑問を投げかける前に、それは現れた。

 それは、1人の亡霊だった。
 正確に言えば、1人になるまで融け合い、ユーベルコードとしての力を得るに至った亡霊。
 【戦場の亡霊】。かつて闘真と戦い、敗れ、命を落としていった者の寄せ集め。
 毒を受け、血を流し、死に近づき始めた闘真を嗤うべく骸の海から這い出る、憎悪と怨念の塊だ。
 今度こそ、この男の死を見られるのだろうか。
 歪んだ敗者の笑みは、醜悪としか言えない、凄惨な物だ。

「どうだ、良い顔をしているだろう。エルシーク……お前も俺の【戦場の亡霊】にしてやる」
「俺への憎悪と怨念に歪むお前の顔、さぞ美しいだろうぜ」
 凶暴で残忍な笑みを浮かべる闘真に対し、エルシークの苛立ちが加速する。
 あろうことかこの男は、自分が死んで、あのような醜い怨念の一部になると言っているのだ。
 なるほど、こいつは外れだ。さっさと殺して、死体はスケルトンにでも変えてしまおう。

「いいでしょう、まずは貴方から死にゃっ」
 無礼な相手に対する死刑宣告を言い終わる前に、亡霊に殴られたエルシークが無様に吹き飛ぶ。
 闘真のユーベルコードにより呼び出される亡霊は、現世に留まるための楔である闘真には手が出せない。
 敗れたとはいえ、戦場を渡り歩いた戦士の集合体である亡霊の拳を見切れる目を、エルシークは持っていなかったのだ。

 ここで、エルシークは完全に激昂する。
 人間の分際で、コレクションの分際で手を出してくるなど許しがたい!
 ゆえに、他を見落とすのだ。

 エルシークの意識が完全に闘真に向かった瞬間を、シキは見逃さない。
 一気に距離を詰める人狼が、エルシークが体勢を立て直す前に、その銃口を突きつける。

「あっちばかり見てるなよ、ほら、全弾くれてやる」
 一瞬で無数の銃弾を叩き込む神速の射撃、【フルバースト・ショット】。
 まともに食らったエルシークの被る獣の骨が、大きくひび割れる。

「くそ、くそ! どいつもこいつも! 私を誰だと思っている!」
「さっき言ったじゃないか、ただの下衆だろう」
 怒りのままに爪を振るうエルシークから、シキが素早く距離をとる。
 射出したワイヤーは躱されるが、空になった弾倉を交換できる隙ができれば問題はない。
 否、シキの覚悟は、それだけでは終わらない。

 ワイヤーの先端についたフックは、エルシークの背後の壁に突き刺さった。
 それを巻き取れば、後方に飛び下がるはずだったシキの身体が、空中を滑るように再びエルシークへと接近する。
 追い打ちとばかりに放たれていた剣も、勢いがつく前では、シキの身体の表面を切り裂くだけに終わる。

「ああ、言い間違えはあったな。今度こそ、全弾だ」
 再び放たれた【フルバースト・ショット】が、今度はエルシークの腹に叩きつけられ、その身体を大きく吹き飛ばす。
 シキの身体にも大小の傷が走るが、自身が戦う理由を、果たすべき約束と救済を思えば、軽いものだ。

「……お前、どの面下げて俺に驚いたんだ」
「この面だ。毒まで受ける奴と一緒にするんじゃない」
 お互いに負傷しながらも、軽口をたたき合う男たち。
 戦いの始まりは、酷く一方的な物であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
僕を想って美しい顔を見せてくれる人は居ません
そういう生き方をして来ましたから

先ずは地形の利用で戦場を把握です

攻撃は、第六感や野生の勘も用いて見切り、避けられないものは盾受けや武器受け、オーラ防御で防ぐ
毒耐性もあるので毒にも強いですよ

残像すら見せる早業と忍び足と目立たぬ動きで翻弄する
攻撃は多彩で悪質
桜姫でなぎ払い、吹き飛ばす
スナイパーですので銃で遠くから打てますし零距離射撃も得意です
御札の呪詛で恐怖を与えたり、催眠術で自傷させたり目潰ししたり
大根で鎧砕きし更に傷口を抉ったり
馬の置物を投擲して気絶攻撃を放ったり


冥界の女王の怒りで行動を制限したらお姉ちゃんを利用ですよ

他の猟兵との連携重視
アドリブ歓迎


メタ・フレン
悪趣味もここまでいくと、一周回って感心しますよ。
流石にこれ以上は付き合い切れないんで、大技で一気に仕留めちゃいますね。

【エレクトロレギオン】で機械兵器を105体召喚!
【暗号作成】で、ロボットが合体する為のソースコードをプログラミングします。
そして合体ソースコードを実行!
105体の機械兵器を合体させて巨大ロボにします!

で、これまた【暗号作成】でロボの動作スクリプトを組んで、それで動かしてみようかなと。
とりあえず一気にエルシークに近付いてプチって踏み潰すプログラムでも作りますかね。



●一人ぼっち
「ああ、もう、好き勝手暴れやがって! いいよ、君たちが遺す人は、君たちが死んだ後にゆっくり探すさ!」
 吹き飛ばされたエルシークが、悪態を吐きながら再び虫を繰り出してくる。
 一度死んでいるオブリビオンだけあって、まだまだ元気そうだ。
 エルシーク自体は戦闘が不得手でも、使い魔である虫の霊はまた別。
 感情無き狩人の群れは、ただ主の命を果たすべく、猟兵達へと飛び掛かる。

 そんな虫たちの鋭利な顎を、的確に剣で受け止めながら、双葉はぼんやりと考える。
 自分がいつか戦いの中で力尽き、骸の海に沈んでいった後、嘆き、悲しむ人はいるのだろうかと。
 居ないのだろうな、という結論が出るのに時間はかからなかった。
 家族も、師も、イチイチ自分の死で大げさに悲しむような者はいないだろう。

「僕を想って美しい顔を見せてくれる人は居ません。そういう生き方をして来ましたから」
「それを決めるのは君じゃあないさ。人と人の出会いは、子供が自分で決めた生き方だけで決まるほど、単純なものじゃない」
 そんなことも分からないのかい、と言いたげな声色が神経を逆なでる。
 さっき盛大に吹っ飛ばされていたくせに、随分と大物ぶった口を利く。
 自分がどういう奴かなど、こいつは何も知らないだろうに。

 いけない、これも一つの挑発だろう。
 双葉は、一瞬だけの苛立ちを――あるいは、何故か脳裏を過った、今の『家』の珈琲の香りを――振り払うように、目の前の虫を切り裂き、エルシーク目掛けて銃の引き金を引く。
 別の虫に防がれた。
 やはり正面からでは駄目だ。他の猟兵と歩調を合わせねば……。

「耳を貸しちゃ駄目ですよ。いやはや、悪趣味もここまでいくと、一周回って感心します」
 そんな双葉の背中をポンと叩き、メタが声をかける。
 エルシークへの警戒を保ちつつ、双葉が振り向けば、にへらと柔和な笑みを浮かべる少女の姿。

 その背後には、105体の機械兵器。

「いや、多くないですか、それ……」
「そうでしょうか? アレのおしゃべりに付き合うのも嫌なので、一気に手加減なしで行こうと思うのですが」
 そう言うメタの背後では、【エレクトロレギオン】で呼び出された機械たちが、次々に変形していく。
 腕へ、足へ、胴体へ。
 その姿を変じ、組み合わさり、一つの形を作る機械たち。

 機械兵器は、一つ一つの力では、エルシークはおろか、呼び出される使い魔にすら勝てないだろう。
 ならば、勝てる姿になればいい。
 幼い心で素直な解にたどり着くメタは、その幼さに反して、それを実現させる程度には、プログラムに慣れ親しんでいた。

 エルシークが、変形合体の間に手を出してこなかったのも幸いした。
 ちょっと前に、盛大に顔面をぶん殴られた彼である。
 メタだけなら、機械兵器が完全に合体する前に襲い掛かっただろうが、横で剣を持つ双葉に近づけるほど、彼の肝は座ってない。

「さあ、進軍しなさい、巨大ロボ!」
 鉄の巨人が、エルシークを踏みつぶすべく進軍を始める。
 当然、エルシークとて素直に近づけさせる気などない。
 放たれた魔術の腕が、巨大ロボのパーツを破壊していく。

 いける、パーツ単位の脆さが変わったわけじゃない。
 自分の剣と虫たちならば、近づく前に破壊できる。
 ……一緒に駆けてくる、もう1人さえいなければ!

 剣を振るい、呪詛を撒きながら、双葉がエルシークに近づいていく。
 早い。けれど、それ以上に巧いのだ。
 体がブレて見えるほどの足さばきで虫を躱したと思えば、急にゆっくりとしたスピードでエルシークの剣を打ち払う。
 ならば躱せない攻撃をすればいいと虫が毒液を吹きかけようとも、鋼鉄の巨人の影に隠れてしまう。
 気化した毒を吸い込めば多少は動きが鈍りそうなものを、元気に壁まで利用して此方に飛び掛かる。

「まずい、虫共、私を守れ!! あ、あれ?」
 たまらずエルシークが情けない声で助けを求めるも、忠実な虫は戻ってこない。
 ふと、迫りくる双葉の更に後方、メタの作り上げたロボの足元に目を向ける。

 巨大な足に踏みつぶされたしもべの残骸が、無数に転がっていた。

「く、く、くそ! こうなったら取って置きだよ!」
 大物はお前だけが呼べるわけではない。
 そう叫ぶかのように、エルシークが最後の虫を呼び出す。
 通常のそれより、はるかに鋭利な角、はるかに大きな体躯。
 主の性根を表すように、残忍な甲虫の形をした使い魔が、双葉へと突進していく。

「……本人に使いたかったのですが、仕方ないですね」
 足を止めた双葉が、残念そうに眼鏡を外して、甲虫を睨みつける。
 途端に、甲虫の足もまた止まる。
 エルシークが怒鳴りつけようと、双葉に近づこうとはしない。
 けれど、それでは足りない、自我の薄い虫が相手なら、『重ねる』必要があるか。

「ああ、本当に仕方ない……力を貸して」
 ――お姉ちゃん。
 その双葉の呼びかけに応えるように、彼女と同じ色をした羽根を持つ、オラトリオの霊がそっと降り立つ。
 彼女がフルートを奏で始めれば、甲虫の動揺はさらに大きくなり、双葉の方へと高速で飛んでいく。

 【冥界の女王の怒り(アンガーオブペルセポネ)】。
 【死した片割れ(ミツキカナ)】。

 2つのユーベルコードに心を乱された使い魔は、我を忘れて、敵をすり抜けその後方へ。
 ただ、此処から逃げ出したい。
 そんな最後の使い魔を、巨人の拳が出迎えて。

「さて、覚悟は良いですか?」
 メタの声が、響く轟音が、エルシークに突き付ける。
 己がしもべ、そのすべてを失った現実を。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

紫・藍
…………(お喋り大好き藍ちゃんくんなのでっすがー! おんどれさんにはくれてやる言葉はないというやつでっしてー! パントマイムやジェスチャーで挑発しつつも、藍ちゃんくんは黙りますよー? 押し黙りますよー? するとなんということでしょー! ブラックホールが発生しちゃうのでっす! 怖いでっすねー! ええ、ええ、ええ、ええ。飛んできた剣の複製を吸い寄せちゃうのも良いですが。複製は複製でして。エルシークが装備しているオリジナルや、この部屋とかにある交換用の英雄剣たちを! スナイプしますよ誘導弾です! きっと剣たちも悪党に使われるよりも主の元へと逝きたいでしょうから! 誠心誠意、消滅させちゃうのでっす!)


芥辺・有
お前に利く口もない。
……そのツラ叩き割るだけだ。

淡々と、怒りを滲ませることもなく。軽蔑の眼差しは瞬き一つで押し留めて。
ただ目の前の敵を屠り、村によすがを帰すことだけを心に留めながら。……余計なことを考える暇は無いだろ?

ひとところに留まらず、奴の周りを動きながら攻撃をしていこうか。
派手に銃や蹴りの攻撃を仕掛けつつ、その傍らでひっそりと見えにくいほどの細さの鋼糸を奴の回りに張り巡らせて。
気もつかぬ間に身動きを取れなくさせられたなら上等かな。

そうそう、攻撃を仕掛ける合間に咎力封じも潜ませて、全部ぶち当てられるようにしたいところだね。

ああ、お前がそれを使うなよ。


三原・凛花
【水子召喚】を使いたかったけど、生憎あの子達もあなたを仲間にしたくないって。
だから【愛し子召喚】で、【生き人形】2体に息子と娘を憑依させて戦わせるよ。
きっとこの子達なら…私を想って「美しい顔」を見せてくれるだろうね。
そんな愛し子達を戦う道具にする私と、死者を弄ぶあなた。
どちらが真の下衆なんだろうね。

息子は【傷口をえぐる】【生命力吸収】で戦い、私や他の猟兵を【かばう】。
娘は【誘惑】で敵を【おびき寄せ】、【フェイント】で敵の隙を誘う。

これで概ね安定すると思うけど、もし私が傷付いたら…
その時は娘が強化した私の【呪詛】を敵にぶつけるよ。
私達の全てが籠められた全力の【呪詛】を噛みしめさせてあげる。




 戦いは、間違いなく猟兵達の有利に進んでいる。
 使い魔たる虫の霊、そのすべてを失ったエルシークは、自身の蒐集の成果である、英雄たちの遺品である剣を複製し、まさしく剣山と呼ぶべき配置で、猟兵達への警戒を強める。

 その剣山に相対するのは、2人の美しい少年少女。
 霊廟に侵入した猟兵に、このような姿の者はいなかった。
 それもそのはず、この2人、実際には2体の人形である子供たちは、凛花の操る生き人形だ。
 【愛し子召喚】と名付けられたユーベルコードで呼び寄せられた2つの魂。
 死してなお、母である凛花に寄り添う子供たちの依り代となった人形が、剣を構えるエルシークを睨みつける。

「んー? スケルトン達にはもっと大量の霊をけしかけていたと思うのだけど、息切れしちゃったのかなぁ?」
「そうでもないんだけどね。この子達以外は、あなたと遊ぶのが嫌みたい……この子達にしたって、私が呼ぶから仕方なく来てくれるのよ」
 あなたの表現で言うのなら、この子達が私を想って「美しい顔」を見せてくれる人。

 凛花が最後に付け加えた言葉に、ひび割れた骨の向こうの、エルシークの目の色が変わる。
 彼が如何に醜悪な蒐集者であろうとも、死者の嘆きなどそうそうお目にかかれる物ではないのだろう。
 ゆえに、彼女はあえて語ってみせた。生身の猟兵よりも、既に死した我が子達に執着される方が、戦いも楽になる筈だ。

 そこまで考えて、凛花は己に対する侮蔑の念を強める。
 母を恋しがって、骸の海から舞い戻る我が子に対する扱いがこれとは、目の前のオブリビオンに、負けず劣らずの外道だろうに。
 子供たちは、それでもいいと言うのだろうか。それとも、母とすら呼んでもらえないのだろうか。
 ユーベルコードの力を借りても、親子の間にある、生と死の境界を越えることはできない。
 そんなことはとうに分かっているのに、自分の行いは間違っていると思っているのに、この子達の姿を求めて、今もまた呼んでしまった。

 だからこそ。
 今この場において、いくら自身を蔑もうとも、エルシークに対する凛花の戦意は揺らがない。
 死者の意思など、生きる者にとっては、想像するしかないものだ。
 けれど、怒りは。
 死者に対する生者の、狂おしいほどに強烈な執着を、決して忘れられない悲嘆を、そのすべての根源となる愛情を弄ぶオブリビオンへの怒りは、決して揺らぐものでは無い。

 母の怒りを映し出すように苛烈に戦う人形たちと並び立つのは、有と藍の2人。
 霊廟での戦いも佳境に入り、2人の眼差しも真剣そのものだ。
 2人とも、エルシークと言葉を交わす気などない。
 ストイックに勝利を求める有はもちろん、藍までもが、口を閉ざして戦いに集中している。

「……! ……!? …………!!!」
 なお藍に関しては、口を開かないなら手を動かせと言わんばかりに、パントマイムで、ハンドサインで、しきりにエルシークを挑発している。
 何も言ってない筈なのに、視覚情報だけでうるさい。

「さ、さっきからお前は! 言いたいことがあるなら口を開けばいいだろう!!」
「…………!」
 自らの口を指さし、エルシークを指さし、何かを投げ捨てるようなしぐさ。
 こんな奴にくれてやる言葉など、藍は一つも持ってはいない。

 声や音を中心に戦う藍にとって、この行動は賢くは無いのだろう。
 前衛となる凛花の息子人形がいなければ、エルシークの剣に切り裂かれていたかもしれない。
 それでも藍は口を閉ざす。
 それがユーベルコードの発動条件だから? そんなもの、大した話ではない。
 大切なことは、自分が自分を誇れるかだ。
 愚かであろうと、効率的でなかろうと、自分がそうすべきだと思うからするのだ。
 【藍ちゃんくんが黙るだなんて世界の終焉なのでは!?(ワールドエンド・サアイレンス)】。
 人1人が黙るだけで、世界が終わる筈もないと誰もが言うのだろう。
 けれど、藍の世界は藍のもの。自分の行いで何が起こるかなんて、自分の意思で決めてしまえばいいのだ!

 ぽっかりと、藍の周囲に黒点が生じる。
 光すら飲み込む疑似ブラックホールは、エルシークの剣を次々と吸い込み始める。
 凛花の人形に気を取られて、剣の操作がおざなりになっていたことも手伝って、エルシークが少しづつ集めてきた蒐集品のレプリカが、黒に集められ、ひしゃげ、潰れていく。

 攻め手を奪われ始め、それでもエルシークは慌てない。
 しょせんは魔術で作り上げたレプリカ。自分が持つ蒐集品であるオリジナルがある限り、いくらでも補充ができるのだ。
 交換用の蒐集品は惜しいが、懐にある1本があればいい。まだ立て直しはきくのだ。
 落ち着いて、一人ずつ始末していけばいい。
 まずは、素敵な人形を持つ少女だろうか。その次は、さっきから鬱陶しいダンピールを黙らせてしまおう。

 あれ、オラトリオは何してるんだ?

「助かったよ、派手に立ち回ってくれたから、随分とやりやすかった」
 あくまでその言葉は、共に戦う仲間たちへ。
 外道のオブリビオンにかける言葉は存在しない。

 有の存在にエルシークの意識が向いたのは、彼女の鋼糸が、エルシークの身体を縛り上げた直後だった。

「はあああぁぁぁ!? いつ、何時からこんなものが!?」
 戦いが始まったその時から、少しずつ張り巡らせていた。
 なんてことをわざわざ教えてやるほど、有は優しくはない。
 派手な蹴りも、銃撃も、すべては本命を隠すため。
 道中で使っていた鋼糸は、エルシークに見られていた可能性もあった。
 だからこそ、スケルトンとの戦いで、手傷を負ってでも派手な肉弾戦をしてみせたのだ。

 エルシークとの戦いが始まるその前から有が仕掛けていた情報戦に、エルシークは初めから敗北していた。
 有を、直接攻撃するしかない、排除の優先度が低い猟兵だと錯覚していた。
 そのツケは、有が呼び出した3種の拘束具、【咎力封じ】によって支払われるだろう。

「く、くそ、離せ! 離せぇ!!」
 アレを受けてはいけない、エルシークのオブリビオンとしての本能が、警鐘を鳴らす。
 最初に殺すべきだったのはこのオラトリオだ、こいつが、こいつさえいなければ、またコレクションを増やして攻めに転じられる。

 有に向けられる剣の群れ。
 大きく数を減らし、けれど人1人を殺すのならば、まだ十分な量がある。
 もはや猶予はない、最短で、最速で串刺しにしなければいけないのだ。

 拘束具の狙いを定める有へ飛来する剣の群れ。
 凛花の生き人形たちが庇い、逸らし、藍のブラックホールが高速で襲い、食い荒らそうとも、僅かにそれをすり抜けた剣が迫りくる。
 いける、殺せる。
 エルシークがそう確信した直後、役目を終えた生き人形が、唐突に崩れ落ち。
 有に突き刺さる直前の剣は、ぴたりと空中で静止した。

 呪詛、というものがこの世の中には存在する。
 怨み、妬み、殺意に悪意。負の感情で作られるそれは、命を呪い、様々な悪影響を及ぼす。
 けれどそれは、あくまで生きる者を呪う術。物理的な干渉を行うには、不向きな代物だ。
 しかし、凛花が今使ったそれは、彼女1人の力で作られるものでは無い。
 先ほどまで生き人形を操作していた娘、現世に留まるための楔であった凛花が行動を起こしたゆえに、骸の海へと舞い戻っていった我が子の力を借りた、2人分の呪詛であるのだ。

 あくまで、これは呪詛。
 きっと、剣を止めるよりも、エルシークを直接呪う方が、確実だっただろう。
 凛花がそれを有を助ける為に使ったのは、単純な状況判断か。
 それとも、とうに死した我が子の力を、何かを傷つけるより、誰かを助ける為に使ってやりたかった、親の愛情か。
 それを知るのは凛花だけ、あるいは、彼女自身にすら分からない事なのかもしれない。

 重要な事は、エルシークが有を殺すことに失敗したことと。

「ぎいっ! あ、ああ。力が、私の蒐集品が!!」
 エルシークを縛り上げた拘束具により、彼の支配から解放された英雄たちの剣が、急速に錆つき、朽ち果て、ようやく主の元へと逝けるということだ。

 もがくエルシークを見る有が、一つだけ言うべきことがあったことを思い出す。
 チラと、藍にも目を向けるが、彼は徹底して口を閉ざしたままだ。
 ならば自分が言うしかないだろう、これを言うべき人達は、みな骸の海で眠っているのだから。

「――ああ、お前がそれを使うなよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。話だけなんて遠慮する必要はない、エルシーク
折角だもの。私たちの力と意志、その身をもって知りなさい

改造した防具の呪詛を維持
強化した第六感で精霊の存在感を感知し鼓舞する

敵の行動を見切り攻撃を回避して隙を伺い【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)

…さあ、覚悟は良い?
お前の存在を、この世界から消してあげる

吸血鬼化した生命力を吸収させて精霊を誘惑
大鎌に“世界の外に過去を排出する闇”の力を溜め維持
反動で傷口を抉られながら怪力を瞬発力に変えて接近し大鎌をなぎ払い
“闇の奔流”を放ち敵を世界の外側に放逐する

…ん。満足した?…もう聞こえないか

後は【常夜の鍵】で遺体や遺品を回収して回り、村で弔ってもらう


仇死原・アンナ
…もはや何も言うまい
遺体を取り返す、そして貴様には消えてもらう
武器を構え、敵を静かに見定める

同行者と共闘する

「今に死ぬのは貴様のほうだ、そしてその薄汚い口を二度と開くな」
[怪力][2回攻撃][傷口をえぐる][鎧無視攻撃]を使用、鉄塊剣と妖刀を振るい攻撃

敵からの攻撃は[呪詛耐性][オーラ防御][見切り]で回避、防御予定

「地獄の炎で燃やし、さらにズタズタに切り裂いてやる…!」
敵が使い魔を召喚してきたら【火車八つ裂きの刑】を使い、敵も使い魔もズタズタに焼き裂いてやろう

無事戦闘が終わったら、村に戻った後で奪還した遺体を丁寧に埋葬してあげよう
安らかに眠れますようにと願いながら

アドリブ、絡み等OKです


ラスベルト・ロスローリエン
確かに勇者の死は物悲しくも人々の心を打つ。
しかし彼らとて誰かの親、子、伴侶、兄弟姉妹だった……
君が醜悪な夢想を楽しむ為の都合良い『英雄』では断じてない。

◇WIZ 自由描写・連携歓迎◇
四大の精に【高速詠唱】で喚び掛け《万色の箭》を織り成す。
“エゼルオール”を振るい「疾風」「巨岩」「流水」「火焔」の矢で使い魔ごと薙ぎ払う。
不可視の腕や奪われた剣は【見切り】で避けるか四大の矢で相殺。
蒐集者を追い詰めたら【属性攻撃】と【全力魔法】で終幕の一矢を放つ。
『君は誰にも悼まれず過去の波間に消え往くのみだ――さようなら』

せめて霊廟を掃き清め遺品を村に持ち帰ろう。
彼らの亡骸が家族と再会するその時まで力添えしたい。



●幕引き
 剣も、虫も失った。
 霊廟を支配した死者の王に仕えるものは、もう何も残っていない。
 それでも、彼はオブリビオンである。
 死に満ちた霊廟を作り上げたその双腕は、確かに残っているのだ。

「くそっ、くそっ、くそっ! もうコレクションなんて知ったことか、一人残らず殺してやる!!」
「あら、話以外にも色々と教えてあげようと思ったのに。それに、私たちは最初からそのつもり。お前の存在を、この世界から消してあげる」
 激昂するエルシークに対し、リーヴァルディの声は冷ややかだ。
 今更その気になったところで、ようやくこちらと同じ戦意を得たまで。
 そしてそれは、戦況を覆すには遅すぎる。

「ああ、今に死ぬのは貴様のほうだ、そしてその薄汚い口を二度と開くな」
 大剣を構えるアンナとしても、思うことは同じだ。
 元々見下げ果てた下衆であったが、これまでの振る舞いは無様でしかない。
 自分の身より噴き出す炎で、今こそ引導を渡してやろう。

 両手に剣と刀を携えた炎獄の執行人が、この戦いを、いや、ヴァンパイアが現れた時から、今なお終わらない悲劇の幕を引くべく駆け出す。
 迎え撃つのは、エルシークに唯一残された、そして、彼がオブリビオンとなるその前から使い続けた、不可視の魔術。

「舐めるな、舐めるなよ猟兵共! 私こそは『往生集め』エルシーク! この夜の世界で、悲劇を集め語り継ぐ者! 物語でしかないお前らが、調子に乗るんじゃあない!!」
 あるいは、彼が上位者気取りで油断せず、最初からこの不可視の腕を完全に開放していたなら、この状況は無かったかもしれない。

 見えないというのは、それだけで驚異的だ。
 【絶望の福音】に導かれ、オーラを纏う武器を振るうアンナであっても、ギリギリまで見切る事のできない双腕を防ぎきるのは至難である。
 加えて、これまで猟兵達の遮蔽物となっていた調度品たちも牙を剥く。
 不可視の力で持ち上げられ、猟兵達へと投げつけられる家具や蝋燭。
 剣や虫を操ってた時に比べれば、不格好な攻撃ではあるが、周囲全てが敵の弾丸となる状況下で、リーヴァルディの集中も乱される。
 徹底的に追い詰められた窮地の中で、エルシークはようやく、スケルトンを統べるその力を十全に発揮し始めていた。

 その戦いの中で、ラスベルトは先のエルシークの叫びを振り返る。
 エルシークは、人を物語と呼んだ。
 確かに勇者の死は物悲しくも人々の心を打つ。
 その戦いは、生は、死は、人々の心に時には希望を、時には嘆きを届けるだろう。
 人は確かに、物語に描かれた誰かを通して夢を見る。

 しかし、彼らとて誰かの親、子、伴侶、兄弟姉妹だった。
 英雄にも夢はあったのだ。
 想いがあり、願いがあり、愛があり、意思があり、その人生を駆け抜けたのだろう。
 ならば、それを知る者には敬意が必要だ。
 物語に夢を見るのなら、そこに生きていた誰かへの、敬意が必要だろう。

 夢想、空想、浪漫。
 エルシークが抱く感情は、そのすべてが理解不能のものでもないだろう。
 だからこそ、ラスベルトは否定しなければならない。
 確かにこの世界に生きていた彼らは、醜悪な夢想を楽しむ為の都合良い『英雄』では断じてないのだ。

「この手に構えるは森羅の大弓。番えたるは万象織り成す四大の矢。言の葉の弦をいざ引き絞り、常闇穿つ黎明の嚆矢とせん」
 ラスベルトがワンドを振るう。
 銘はエゼルオール、もはや一人きりになってしまった森人の夢を継ぐための杖。
 その力を持って、ラスベルトが呼び出す【万色の箭】。
 疾風と流水、そして火焔。3つの力を帯びた魔力の矢が、辺り一面を薙ぎ払っていく。
 されど、エルシークとて魔術は専門分野だ。
 的確に予兆を見切り、安全な距離を保っていく。

「なんとまあ無駄な破壊を。やはり猟兵といえど、この程度なのかなぁ?」
 挑発するような声を無視して、ラスベルトが再び矢を、今度は水の力だけを持ったものを放っていく。

「だから、無駄なことを……!?」
 気分よく言葉を続けようとしたエルシークが、すんでの所でアンナの大剣を躱す。
 何故、さっきまでコイツは、不可視の攻撃を凌ぐのに手いっぱいだったはずだ。

 動揺するエルシークが、ふと肌寒さを覚える。
 さっきから、ラスベルトが風に乗せた炎や水をまき散らすものだから、温度の変化が激しいのだ。
 室内だというのに、敵が見えぬほどではないが、霧も出始めて……。

「っ! お前、こっちが狙いだったか!」
「もう少し早く気づければ、止められたかもしれないのにね」
 ラスベルトがばら撒いた水は、熱せられ、風に飛ばされ拡散し、再び冷やされたとなったことで霧となった。
 問題は、その霧が、不可視の双腕を浮かび上がらせてしまっていること!

 ここで、エルシークは最大の強みを失った。
 戦士の技量など持たないエルシークでは、もはやアンナを足止めし続けることができない。
 そして、アンナの攻撃を捌くことに意識を集中すれば、当然他がおろそかになる。

 【限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)】。
 スケルトンに使われたリーヴァルディのユーベルコードの脅威を、エルシークは正しく認識していた。
 だからこそ、あのダンピールにそれを使わせないことに気を配ったのだ。
 けれど、もはや不可視は破られた。
 霧を吹き飛ばし、リーヴァルディの妨害に移ろうにも、目の前の執行人は、此方の油断を見逃さず、この首を跳ね飛ばすだろう。

 せめて。
 せめて、目の前のアンナがいなければ。
 ラスベルトが、霧を出すなどというこざかしい真似をしなければ。
 リーヴァルディという、脅威の大魔術を使う者がいなければ。

 猟兵なんて者たちが、我が目の前に現れなければ!

「……さあ、覚悟は良い?」
 エルシークの嘆きをよそに、準備を完了させたリーヴァルディが、そのすべてを大鎌に込めて接近してくる。
 反動で自らもボロボロになるのもお構いなしに、エルシーク目掛けて集めた闇を叩きつける。

「ぐううっ! こ、これは、これは、まさか!?」
 リーヴァルディが、己が持つ力すべてで呼び寄せた闇がエルシークにまとわりつく。
 彼はこれを知っている。

 これは、世界の外側に繋がるものだ。
 自らを、この世界から押し流すものだ。
 退屈極まりない、骸の海へと還すためのものだ!

「い、嫌だ、あそこに帰るのは嫌だ! あんな何もない、誰の嘆きも感じられない場所に帰るのは!!」
 この期に及んで、エルシークは足掻き続ける。
 自らを引きずり込む闇に、その全力で抗っているのだ。
 だけど。

「そう、これじゃ足りないの」
 無駄な足掻きの報いは、【火車八つ裂きの刑】である。
 闇に抵抗するのに精いっぱいのエルシークは、ゆっくりと近づいてくるアンナを止める術を持たない。

「ま、待て、話をしよう、頼む、待って……!」
「もう、いいよ。地獄の炎で燃やし、さらにズタズタに切り裂いてやる……!」
 大剣に宿る地獄の炎。
 その灼熱に焼かれながら、その胴体を両断されたエルシークは、遂に力尽き、骸の海へと帰っていった。


●おわり/つづく
 霊廟に眠っていた遺体は、多くは無かった。
 生者の嘆きのために、死者を使い捨てにしていたエルシークだ。
 その蒐集品の管理も、あまり気を使ったものでは無かった。

 けれど、それでも取り返したものはある。
 利用価値があったのだろうか、死者が使っていた武器や防具なら、それなりの数を見つけることができた。
 それを、リーヴァルディの【常夜の鍵(ブラッドゲート)】を利用して持ち帰った猟兵達を出迎えたのは、深い嘆きと大きな嗚咽だった。
 村に住む誰もが、ようやく帰ってきた勇者たちの身体に縋りつき、遺したものを抱きしめ、わんわんと泣き続ける。

 それでいいのだと、ラスベルトは村人たちを優し気に見守る。
 ようやく、彼らは泣けたのだ。
 理不尽に奪われた大切な人に再開し、ようやく彼らは別れを告げることができる。
 彼らの悲劇は、今、終わるのだ。

 周りの猟兵達も、泣く村人たちを静かに見守る。
 分かっているのだ、彼らが前に進むために、この悲しみが必要だという事を。

 村はずれの墓地には、少数の村人たちと、アンナとリーヴァルディの姿。
 損傷が激しかった遺体は既に弔われ、遺された者は、墓前で最期の別れを告げる。

「……きっとこの村は、これからも大変だよね」
「だろうね。沢山の人が、死んでしまったから」
 リーヴァルディの呟きに、アンナが答える。
 オブリビオンに支配されたダークセイヴァーにおいて、多くの勇敢な若者を失ったこの村には、きっと様々な困難が待っているのだろう。
 倒しても倒しても、オブリビオンは骸の海から帰ってきて、死んだ者はそのままだ。

 けれど、だからこそこの戦いが必要だった。
 苦難に満ちた世界の中で、この村が希望を目指し、進むために。
 足を止めざるを得なかった者たちが、安らかに眠り続けられるように。

 墓前で死者の安寧を願うアンナに、リーヴァルディが声をかける。
 この世界には、いや、他の世界にだって、まだ猟兵の救いが必要な場所は無数にあるのだ。

 次の戦いが待っている。
 2人は、村で待つ仲間の下へと、その足を動かし始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト