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おいしいごはんがカタストロフ

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●その日、味が消えた。
 小高い山の頂にあるお堂。その中から慟哭が響く。
「ああ、そうだとも。不死たる我が死するはずがない……!」
 轟々と燃え盛る釜の中、箸の突き立つ山盛りごはんのお椀を前に炎の鳳が吼えた。黒縁の額に飾られた白黒の写真には、フェニックスの姿。そう、炎猛るフェニックスは幽世に辿り着いた時には骸魂と化していた。
「幽世でなら美味しいご飯が食べれると思ったのに、この仕打ち――ッ!」
 供養とばかりに仏壇に供えられた白飯と水を前に怒りを露わにお供え物をしに来た巫女を睨む。

 示さねばなるまい。我が不死である事を。
 正さねばなるまい。我に山盛りご飯を供える事を。

 骸魂が竜神の少女を包み、取り込んだ。竜神の神力をも己が力としてフェニックスドラゴンとなった身体から、灼け付く光が迸る。其の光が通り過ぎた後には。
「ばあさんや、今日のごはんは塩の味しかしないのぅ。」
「何を言いますかじいさんや……おやほんまに。」
 フェニックスドラゴンの『なんで自分だけ白米だけなんだ』という思いが、他の全ての美味しい食卓を妬む心が、等しく食事から美味を奪って味気ない塩味へと変じさせる。
 あらゆる食べ物から味が消え去り、カクリヨファンタズムはただ塩の味のみが残る塩味の世界と化していた。

 たちまち起こる食卓カタストロフの中、想いを同じくする骸魂が集まり始めていた。
「ヒヒン! 馬っぽいから草食ってろと言われた気がして幾星霜、やっと私たちの想いが届いたのですね!」
 骸魂『麒麟』である。ウマでもキリンでも草食べてりゃよくね? と言われている気がしてきた彼らもまた、美味しい食卓を嫉む者たちであった。
「ですが私たちも美味しいニンジンが食べてみたかった!」
 されど今は草もニンジンも等しく塩味である。万物の差別をなくすフェニックスドラゴンの起こしたカタストロフこそ彼らにとっては救いであったのだろうか。

●グリモアベースにて
「皆さん、カクリヨファンタズムでカタストロフです。」
 アルトリンデ・エーデルシュタインが開口一番、そう告げた。脚を止めた猟兵にアルトリンデが説明を続ける。
「カタストロフのよく起こる世界のようですが、今回は塩味以外の味が消えてしまったようです。」
 聖典のグリモアの頁を繰り、アルトリンデが予知したオブリビオンを示す。
「事件の元凶は『フェニックスドラゴン』。竜神の少女を取り込んでいますが、倒せば骸魂と分離させて助ける事ができるはずです。」
 妖怪は頑丈なので手加減は必要ない。また、カタストロフの起きている幽世では他にも骸魂が飛び交い、妖怪を飲み込んでオブリビオンとなっている。数は多いが強くはない。猟兵ならば突破する事ができるだろう。

「妖怪の皆さんの美味しい食事の為にも、一刻も早く解決してあげてください。」
 そう言葉を括り聖典のグリモアを閉じようとしたアルトリンデの手が止まる。
「あ、事件の起こったお山の麓に美味しいご飯屋さんがあるそうですよ。味を取り戻したら立ち寄ってみてはいかがですか?」
 聖典に記された予知を伝え、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。


こげとら
 しばらくぶりです、こげとらです。
 今回は、カクリヨファンタズムで美味しいご飯を取り戻すお話です。

 オブリビオンは美味しい食事が食べれなかった事に大変怒っており、幽世の妖怪たちも同じ目に合うべきだとカタストロフを起こしました。
 このままでは塩味過多な食事が続き、人によってはスイーツ禁断症状なども出る恐れもある為、早急な解決が望まれています。

 第一章、『麒麟』との集団戦。
 第二章、『フェニックスドラゴン』とのボス戦。
 第三章、『思い出や追憶を料理にする飯屋』でご飯を食べる。
 という流れになります。

 第一章は山の頂上に在るお堂目指して、緩やかな斜面を登りながらの戦闘となります。木がまばらに生えている程度ですので見晴らしは良いです。その分、オブリビオンの集団からも見つかりやすい状況となっています。

 第二章はだだっ広いお堂の中での戦闘となります。真ん中に炎の燃える大きな釜がある以外は障害物はありません。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『麒麟』

POW   :    カラミティリベンジ
全身を【災厄のオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    因果麒麟光
【身体を包むオーラ】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、身体を包むオーラから何度でも発動できる。
WIZ   :    キリンサンダー
【角を天にかざして招来した落雷】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を災いの雷で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セレシェイラ・フロレセール
これはひどい食卓カタストロフ
おいしいご飯もおかずも甘いお菓子もみんな塩味しかしないなんて、なんたる絶望
でももう大丈夫、わたしが来たよ

わたしも器物だった頃はこんなにご飯がおいしいものだなんて知らなかった
ところで麒麟って草、人参以外なに食べるの?
なにを、食べてみたいの?
そこのキミ、良かったらわたしに教えてくれるかな
まあ、今なにを出しても塩味しかしないことにちゃんと気づいてる?

雷攻撃は空飛ぶ箒に乗って空中で回避だ
箒に乗って空飛ぶの楽しいなー
どう転んでも救いがない麒麟さんたちには桜の魔法を詠んであげよう
わたしの『慰め』の桜、優しく花開け
彼等の望む食をせめて想像の中だけでも楽しませて、その魂を慰めよう



 味を失ったカクリヨファンタズム。どれだけ美味しく料理しようとも、そのすべてが塩味の世界。骸魂が飛び交うカタストロフ、どこからか響くは妖怪たちのしょっぱさに喘ぐ声か。セレシェイラ・フロレセールが目にしたのはそんな惨状であった。

「これはひどい食卓カタストロフ。
 おいしいご飯もおかずも甘いお菓子もみんな塩味しかしないなんて、なんたる絶望。」

 食という身近な楽しみが失われれば、まして塩味の食事を食べ続けなければならないとしたら、妖怪たちの心の負担は相当だろう。

「でももう大丈夫、わたしが来たよ。」

 おいしさを取り戻すための戦いが始まった。セレシェイラの行く手に麒麟の群れが立塞がる。その鋭い眼光は『ニンゲンだけ美味しいモノ食べるのはずるいですよ!』と語っていた。ならば麒麟たちが真に求める物を、思い至らせねばなるまい。

「わたしも器物だった頃はこんなにご飯がおいしいものだなんて知らなかった。」

 見て知って知識を持ったとて、ご飯の美味しさは味わった事のない者には十全には伝えにくいもの。セレシェイラの言葉に麒麟たちが嘶く。
 この者、おいしいご飯を食べている者か――!
 であれば常に草を、今となってはしょっぱい草を食べている麒麟にとっては羨ま……いや、阻むべき敵。高まる災いの気配の怖気ずく事無くセレシェイラは問うた。

「ところで麒麟って草、人参以外なに食べるの?
 なにを、食べてみたいの?
 そこのキミ、良かったらわたしに教えてくれるかな。」

 その問いに、麒麟の動きが止まる。おいしいご飯の外見、匂い、そしてかつて見た食べた者の表情から美味へ思いを馳せる麒麟。思い描くは――。
「ニンジンのグラッセ!」
「フライドポテト!」
「それらを添えてプレートに座する、かの料理……即ち!」
「「「ハンバァァーーグッ!!」」」
 聞かれなかった麒麟も思わず叫んでいた。溢れる肉汁、圧倒的な香りを思い出し昂る気持ちが迸る。もっとも食べた事のある麒麟はいないのだが。盛り上がる麒麟たちに向け、セレシェイラが現実を突きつけた。

「まあ、今なにを出しても塩味しかしないことにちゃんと気づいてる?」

 麒麟たちの思い描いた光景が、白く塩となって崩れてゆく。カタストロフが打ち砕いたハンバーグの幻想に思い至った麒麟たちの慟哭が天を衝く。驟雨の如く打ち付ける雷が地を打ち、災いを広げていった。空飛ぶ箒に乗ったセレシェイラが雷光の中をひらりひらりと楽し気に舞う。

「どう転んでも救いがない麒麟さんたちには桜の魔法を詠んであげよう。」

 【桜詠(レゾナンス)】により桜が数多の剣となって飛翔する。災い呼ぶ雷の中に在ってなお桜吹雪の如く舞い飛ぶ魔法剣が、慟哭する麒麟を取り囲み、貫いた。

「わたしの『慰め』の桜、優しく花開け。」

 荒ぶる力が静められ、麒麟たちが消えてゆく。彼らが幽世で最後に噛み締めた光景は。
「これは紛れもなくハンバーグ! ヒヒーン!!」
 セレシェイラの【桜詠】が紡ぐ慰めの中、麒麟は確かにおいしいご飯を味わった。想像の情景であろうと、その味は麒麟たちを満たし、骸の海へと還していったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
依頼の内容を聞いて、鞄に食べ物を用意してから現場に向かう
現地ではこれも塩味になってしまうだろうけれど、食事を羨ましく思っていたのが可哀想で食事をあげたいなあという善意と、カタストロフのせいで味わえないなんて可哀想だね?というちょっぴりの悪意を胸に持っていくんだ

麒麟と遭遇したら、鞄から人参を出して投げる
鞄のほとんどの中身は人参だけど、これでも数足りるかな?
(善意と悪意を敵に伝えるかはおまかせ)
プレゼントを渡し終わったら戦闘開始

UC伴星・強欲の両鎌槍を発動
これだけの数の武器を体から作りだしたらどれだけ疲労するか、把握しておきたいんだ(疲労はほぼ無しです)
ふふ…突く、斬る、好きな方法で倒してあげるよ



 カタストロフの元凶の居る山に着いたサンディ・ノックスは、鞄に用意してきた物を確かめた。鞄の中のほとんどは人参が詰まっている。

「これも塩味になってしまうだろうけれど。」

 それでも食べ物を鞄に詰めてきたのはサンディの胸にある、食事を羨ましく思っていたのが可哀想で食事をあげたいなあという善意だけではない。

「折角の人参、カタストロフのせいで味わえないなんて可哀想だね?」

 サンディはちょっぴりの悪意を含ませて、鞄から人参を取り出した。見晴らしのいい斜面、既に多くの麒麟がサンディを見つけて取り囲む。そのうちの一体が、目ざとくサンディの持つ人参を見つけて声をあげた。
「ヒヒン! もしや、その手に在るのはニンジンなのでは!?」
 途端、目の色が変わる麒麟たち。食卓の差を妬み、カタストロフに加担した彼らとて夢にまで見た人参への想いが変わる事はない。麒麟の視線に応え、サンディが笑みと共に言葉をかける。

「そんなに人参が欲しいなら、あげるよ。」

 サンディが鞄から取り出した人参を麒麟たちへと放っていく。その様に、我先にと麒麟が群がってきた。
「ヒヒーン! こんなにニンジンが!」
「もしやここは桃源郷なのでは?」
「つまりニンジン郷ですね。ヒヒン!」
 めいめい勝手にしゃべりながらもしっかりと人参を確保する麒麟たち。サンディの鞄の中身が少なくなってくる頃には、集まった麒麟たち全員にニンジンが行き渡っていた。

「数が足りて良かったよ。プレゼント、良く味わってね。」

 サンディは変わらぬ笑みを浮かべていた。その先の結末も予測できたが故に。
「草にはない重量感! これがニンジン!」
「では、いただきます! 歯ごたえ良し、うま……しょっぱーーーい!?」
 それは間違う事無く塩味だった。食感こそいつも食べている草と違えど、味は塩。カタストロフで塩味の世界と化した幽世では、麒麟たちの夢がかなう事はないのだ。噛み締めた塩味の人参の衝撃が麒麟たちを襲う。動きを止めた麒麟の群れに、サンディは【伴星・強欲の両鎌槍(バンセイ・グラトニー)】を発動させた。周囲を漆黒の十字槍が飛ぶ。

「これだけの数の武器を体から作りだしたらどれだけ疲労するか、把握しておきたいんだ。」

 現れた十字槍、その数780本。それだけの数を現出させながらもサンディの声音に疲労は見えない。そしてその数の槍が包囲し、飛び交えば麒麟たちに逃げ場などなく。

「ふふ……突く、斬る、好きな方法で倒してあげるよ。」

 麒麟たちが我に返った時には、その身は漆黒の閃舞がその身を裂いていた。
「ヒヒーン! 現実は、夢見たニンジンのように甘くはなかった……!」
 十字槍が消えた後には、サンディの周囲に集まってきていた麒麟たちは一体残らず討ち取られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
ヒャッハー!新世界だぁ!たまんねぇ!
この車どころか機械の機の字もない郷愁的ド田舎感!
のんびり走りながら景色を楽しむには絶好のシチュエーションだぜぇ!
こりゃゆったりドライブを楽しむためにも、
全速でカタストロフを片づけなきゃなぁ!

ホイ【空中走行モード】オン!
麒麟さんだか象さんだか知らねぇが、
推進装置全開で空から突撃して轢き潰してやんぜ!
コピー能力?知るか!
質量で勝るオレが押し負ける道理はねぇ!
質量×速度の暴力的威力を思い知らせてやらぁ!
つーかそもそもテメェら機械の使い方とか知らねぇだろうが!
首を長くしてから出直してきやがれこのジラフの出来損ないどもが!



 山の斜面を一台の車が走る。ウォーマシンの宇宙空間対応型・普通乗用車である。

「ヒャッハー! 新世界だぁ! たまんねぇ!
 この車どころか機械の機の字もない郷愁的ド田舎感!
 のんびり走りながら景色を楽しむには絶好のシチュエーションだぜぇ!」

 道は舗装されてこそいないが、よく整えられている。見れば山裾に広がるのどかな景色が目を楽しませてくれるだろう……カタストロフさえ収まれば。今は曇天の下、骸魂が飛び交い、麒麟が跳ねている。

「こりゃゆったりドライブを楽しむためにも、全速でカタストロフを片づけなきゃなぁ!」

 景色を台無しにする麒麟が群がってくる只中へ、普通乗用車はスピードを上げて突き進んだ。

「ホイ【空中走行モード】オン!
 麒麟さんだか象さんだか知らねぇが、推進装置全開で空から突撃して轢き潰してやんぜ!」

 その車体から推進装置が展開され【空中走行モード(クウチュウソウコウモード)】になった普通乗用車。タイヤが地面を離れ、さらに加速する普通乗用車が空を翔ける。スピードを緩める様子もなく突っ込んでくる車に麒麟たちは慌てて散開した。
「バカな!? 歩行者優先のハズでは!?」
「でも馬は軽車両扱いですよね。ヒヒーン!」
 されど麒麟たちもただ黙って轢かれる訳ではない。【因果麒麟光】のオーラを纏い、自らも速度を上げる軽車両にならんと迎え撃つ。速度を乗せた普通乗用車の突撃と麒麟のオーラが激しくぶつかった。

「質量で勝るオレが押し負ける道理はねぇ!
 質量×速度の暴力的威力を思い知らせてやらぁ!」

 そして普通乗用車は麒麟を轢き潰して駆け抜けていった。玉突きよろしく跳ね飛ばされた麒麟が他の麒麟を巻き込んで吹き飛ぶ。
「ヒヒーン! 速度が足りませんでしたかーー!」
 元より質量でも硬さでも負けていた麒麟。だが、直撃を免れた数体が写し取った普通乗用車のユーベルコードを展開する。麒麟の背に推進装置が現れた。
「これで速度は互角ですよ! たぶんですが!」
 イキる麒麟だが、その意に反して推進装置はうんともすんとも言わない。

「つーかそもそもテメェら機械の使い方とか知らねぇだろうが!」

 普通乗用車の言葉に麒麟が愕然とする。
「言われてみれば、たしかに!」
 ただ重しを増やしただけに終わった麒麟たちへと再び普通乗用車が突っ込んでゆく。

「首を長くしてから出直してきやがれこのジラフの出来損ないどもが!」

 普通乗用車が駆け抜けた後、爆発する推進装置を背負ったまま麒麟たちは骸の海へと還されていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルステラ・セレスティアラ
『おいしい』と思えることはとても素敵なこと
塩味しかしない世界とは…
味があるって大切なことなんだね
この世界のみんな待っててね、『おいしい』を復活させてみせるから

麒麟さんも色々なものを食べてみたいよね
今食べれるのは塩味しかしない草だけなんて…

でもごめんね
私は貴方たちを還すことしか出来ない
光の雨で痛みも苦しみもなく還してあげる
だから、おやすみなさい
せめて貴方たちが優しい夢を見れるように祈るから



 あちらこちらから塩味の食事に嘆く声が聞こえる。食のカタストロフが起こった幽世に着いたメルステラ・セレスティアラが目にしたのは、そんな惨状だった。

「『おいしい』と思えることはとても素敵なこと。
 塩味しかしない世界とは……
 味があるって大切なことなんだね。」

 本来、おいしいご飯は誰もが享受できる身近な楽しみ、幸せ。味を失った世界の様子にメルステラは改めてそう思った。

「この世界のみんな待っててね、『おいしい』を復活させてみせるから。」

 メルステラの姿を見つけ、麒麟が群れてやってくる。まずはここを突破せねば元凶に辿り着く事は出来ない。今は美味しい食卓を嫉むモノ、されどそれはおいしいご飯に憧れたが故に。

「麒麟さんも色々なものを食べてみたいよね。
 今食べれるのは塩味しかしない草だけなんて……」

 骸魂となっても麒麟たちが抱く想いにメルステラが言の葉を零す。集まってきた麒麟たちは、ある者は角を誇示するように天に掲げ、またある者は塩味の道草を食っていた。
「ヒヒーン! 皆平等の食生活を打ち砕くというのなら、ここは通しませんよ!」
「全部塩味とか、ちょっとやっちゃったかなと思いますが、そこは其れ!」
 その心に涙の味(塩味)が沁み込んでいようとも、麒麟たちにはメルステラを通すつもりはないようだ。おいしいご飯が食べたかったろう麒麟を前に、メルステラは己が力を向ける。

「でもごめんね。
 私は貴方たちを還すことしか出来ない。」

 麒麟たちが災いの雷を招来しようとする中、メルステラが発動した【エレメンタル・ファンタジア】により光の雨が降り注ぐ。一拍遅れて地に突き立つ雷、麒麟たちの慟哭を映すかのような災いをも光は優しく解かし流していった。麒麟たちを痛みも苦しみもなく還す、メルステラの想いのままに。

「だから、おやすみなさい。
 せめて貴方たちが優しい夢を見れるように祈るから。」

 麒麟の身体が薄れてゆき、やがて骸の海へと還されてゆく。いかなる苦痛もなく、ただ安らかに消えてゆく麒麟たち。
「やっぱり塩味だけの世界はダメですね!」
「草よりも味のバリエーションがないですので!」
 最後まで騒がしく消えていった麒麟は何処か楽しげな様子すらあった。その夢は、きっと幸せな物だったのだろう。光の雨は妬みも嫉みも洗い流してゆき、雨の止む頃にはメルステラの周囲に骸魂の姿はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

料理が塩味しかない世界・・・何だこの悪夢のような世界。アタシは良く子供達にご飯作ってあげるが、塩味しかないのはねえ。何だが苦しんでるのがいるみたいなので、何とかするか。全く瑞獣である麒麟も形無しだねえ。

地上にいると面倒な事になるので、赫灼の騎士で空に舞い上がり、【オーラ防御】【見切り】【残像】で攻撃を凌ぎながら、【怪力】【串刺し】【槍投げ】【衝撃波】で上空から攻撃。可哀想だからついでに饅頭でも投げてやろうか。アタシの手作りだ。・・・塩味だが。


真宮・奏
【真宮家】で参加

うう、物凄いカタストロフ・・・幾らでも食べられる私には生死に関わる危機です。食べ物が全部塩味・・・耐えられません!!尊い瑞獣の麒麟さんが痛ましい姿に・・・すぐ助けてあげますからね!!

地面にいると厄介な事になりそうですので、蒼の戦乙女で空へ。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で攻撃を凌ぎながら上空から【二回攻撃】【属性攻撃】【衝撃波】で攻撃します。何か可哀想なので、手作りのミックスサンドを投げてみます。いろんな具を入れたつもりなんですが、もれなく塩味なんですね・・・悪夢です。


神城・瞬
【真宮家】で参加

まあ、ある意味凄い威力のカタストロフですよね。僕も母さんが作ってくれるご飯が塩味しかしないのは遠慮したいです。甘味も好きですし・・・そこの麒麟さんは瑞獣の名も台無しですね。色々暗いオーラが漂ってます。

地上にいれば雷が飛んでくるようなので、月読の騎士で上空へ。飛び回りながら【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【吹き飛ばし】で攻撃。何か哀れなので、カレー味おにぎりも投げてみます。とはいえ、塩味なんですよね・・・反応に困りますよね。これ。



「 料理が塩味しかない世界……何だこの悪夢のような世界。」

 骸魂飛び交う空の下、真宮・響の目に映った幽世はのどかな風景とは程遠い物。その隣では真宮・奏が幽世の惨状に戦慄いていた。

「うう、物凄いカタストロフ……幾らでも食べられる私には生死に関わる危機です。食べ物が全部塩味……耐えられません!!」

 美味しさのない食事に何の楽しみがあろうか。其れがよく食べる者なら尚の事。奏でにとってはまさに世界の終わり、正しくカタストロフによる終焉の世界である。二人の様子に神城・瞬も頷き、改めて幽世を襲うカタストロフを見やった。

「まあ、ある意味凄い威力のカタストロフですよね。僕も母さんが作ってくれるご飯が塩味しかしないのは遠慮したいです。甘味も好きですし……」

 味は単においしいだけではない。作り手の想いと共に温かい思い出を作っていく。其れすらも塩味となっては味気ないというものだろう。瞬の言葉に響は笑みを浮かべた。

「アタシは良く子供達にご飯作ってあげるが、塩味しかないのはねえ。何だが苦しんでるのがいるみたいなので、何とかするか。全く瑞獣である麒麟も形無しだねえ。」

 遠目に、こちらへ向かってくる麒麟の姿が見える。纏うオーラは禍々しく揺れ、その角が災いの雷を呼ぶ。そこに瑞獣の面影はなかった。

「そこの麒麟さんは瑞獣の名も台無しですね。色々暗いオーラが漂ってます。」
「尊い瑞獣の麒麟さんが痛ましい姿に……すぐ助けてあげますからね!!」

 瞬と奏も麒麟を迎え撃つべく構えた。が、見る間に麒麟の数が増えてくる。この一帯の麒麟がすべて集まって来たのではと思える数。なぜこれほどまでに集まって来たのか。
「おいしいごはんを作ってくれると聞いて! ヒヒーン!」
「さあ、遠慮なくニンジンを調理してくれていいのですよ!」
「他にも甘味とか、甘味とか! 甘味とか!!」
「しょっぱい草はもう飽きましたので!!」
 口々に猛る麒麟。響たちの会話から料理ができる者が居ると思った麒麟たちが殺到してきたのだ。その姿に尊さも威厳もなく、ただおいしさに餓えた獣が居るだけだった。麒麟たちが一斉にご飯コールと共に角を天に突きあげる。

「地上にいれば雷が飛んでくるようですね。」
「地面にいると厄介な事になりそうです!」
「それは面倒な事になりそうだね。」

 たちまち曇る空の様子に麒麟が雷を呼んでいると判断した三人はすぐさま行動に移った。

「護るべきものは必ず護る!! それがアタシの信念だ!!」

 響は【赫灼の騎士(カクシャクノキシ)】により赤を基調にした銃士服を纏った銃士に変じてマントを翻して飛び。

「さあ、希望を持って、未来を切り拓こう!!」

 奏は【蒼の戦乙女(アオノヴァルキリー)】により豪華絢爛な青いドレス姿の背に広がる水色の翼を羽ばたかせ。

「我が身は大切な者を護る為にある!!」

 瞬は【月読の騎士(ツクヨミノキシ)】により月読の紋が入った銀の鎧を着た騎士に変じて純白の翼で舞い上がる。麒麟の呼ぶキリンサンダーが地を打ち据えた時には既に、三人の姿は空中に在った。
「ヒヒーン! 空を飛ぼうとも数の暴力で圧すまでです!」
「キリンサンダー!!」
 地を覆う災いの雷を踏み、麒麟たちが再び落雷を招く。降り注ぐ雷が響と奏のオーラに阻まれ、その隙に瞬が六花と月虹、二つの杖から誘導弾を放つ。着弾し炸裂する弾が麒麟たちを吹き飛ばし、その爆発が目を眩ませた。落雷の雨がまばらになり、その合間を残像残して舞う響がブレイズランスを投じて串刺しにしてゆく。なおも止まぬ雷を奏がブレイズセイバーで払い、返す刃から放つ衝撃波で薙ぎ払った。それでも麒麟たちは止まらない。ご飯を貰えるかもという希望がある限り。あまりに必死な麒麟に、響、奏、瞬の三人の思いは一致した。

 何か、可哀想だ、と。

「可哀想だからついでに饅頭でも投げてやろうか。アタシの手作りだ。」
「私は手作りのミックスサンドを。」
「僕もカレー味おにぎりを投げてみます。」

 攻撃の乱れ飛ぶ中、投げ入れられる食事。それは地獄に垂れる蜘蛛糸の如き救いに見え、麒麟たちが群がった。
「親方! 空からごはんが!」
「あれは私の……ぐはっ!」
 多くが攻撃に倒れ、僅かな麒麟が落とされた食事を口にする。だが、それは当然ながら……。

「……塩味だが。」
「いろんな具を入れたつもりなんですが、もれなく塩味なんですね……悪夢です。」

 甘くない饅頭、塩の味のミックスサンド。どれも見た目からは程遠いしょっぱさ。だが、それらを口にした麒麟はまだよかったのだろう。

「カレー味おにぎりも塩味なんですよね……反応に困りますよね。これ。」

 瞬の投じたおにぎりを口にした麒麟は何と思えばいいのだろうか。塩味のカレー味おにぎり、塩味のおにぎりと何が違うというのだろうか。
「……香りが、カレーっぽい気が!」
 その言葉を最後に麒麟は衝撃波の中に消えていった。おにぎりの真相は闇の中である。投じた食事におびき寄せられ、三人の攻撃に沈む麒麟の群れ。みるみるその数を減らしてゆき、やがて麒麟たちの姿は見えなくなっていた。もはや猟兵たちの行く手を阻む骸魂は、いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 轟々と燃える炎のように、骸魂『フェニックスドラゴン』の心は猛っていた。眼前には白飯、突き立つは箸。それは亡き者への供え、されど少女を飲み込んだ今の自分は死者に非ず。
「ならば、我が食卓に並ぶはお供え物に非ずッ!」
 だが何を食べても塩の味しかしない。かなしい。
「嗚呼、何故に我が想いは届かぬのか――ッ!!」
 思い返すはデパートの洋食屋の窓に張り付いて眺めたご馳走の数々。食卓を囲む人々の笑顔。幾度、その中に入りたいと願った事か。幽世へ来てまで、その願いは叶わぬというのなら――。

 おいしいごはんなど、なくなれば良い。

 希望無き意志が、世界の味を焼き尽くしたのだ。轟然と猛る炎はお堂をも燃やし、フェニックスドラゴンの居る広間はさながら炎獄のようだった。
 燃え盛る憎しみの炎がある限り、幽世に味が戻る事はない。今、おいしいごはんを取り戻す最後の戦いが始まろうとしていた。
メルステラ・セレスティアラ
貴方もただ美味しいごはんが食べたかっただけなのに、ね
貴方の慟哭が熱となって痛いくらいに伝わってくる
貴方の絶望の大きさに愕然とする
私では貴方の渇きを癒すことは出来ない

広がる熱から身を守るために【全力魔法】で自身の回りに防御の魔法陣を紡ぎましょう
【多重詠唱】で効果を重ね、魔法陣を強固なものにしましょう
灼熱の焔はどうしても過去の理不尽さを思い出す
けれど、私はもう迷わないと決めたの

防御の魔法陣を展開しながら相手の出方を見るわ
相手の攻撃の瞬間に防御のために使った【全力魔法】を攻撃用へと転換
水の竜巻を放ち、憎しみの炎を全て飲み込みましょう

この件が終わったら、巫女さんにお供え用のごはんについて提言してみます



 猛る炎がお堂を燃やし、天を朱に染めている。フェニックスドラゴンの慟哭のまま、朽ちる事なく盛る業火にメルステラ・セレスティアラは息をのんだ。

「貴方もただ美味しいごはんが食べたかっただけなのに、ね。」

 当たり前に享受されるおいしさが、当たり前に与えられない者も居る。なればこその嘆き、行き場のない怒りなのだろう。フェニックスドラゴンの慟哭がメルステラに熱となって痛いほど伝わってくる。肌に刺すような灼炎の光、炎獄もかくやというほどの熱量はいったいどれほどの絶望をくべたというのか。

「私では貴方の渇きを癒すことは出来ない。」

 カタストロフを起こすほどの絶望の大きさにメルステラは愕然とする。荒ぶる骸魂を鎮めるためにも骸の海へと還さなくてはならない。メルステラの全力で紡ぐ魔法陣が広がる熱をメルステラの周囲から押し返して退ける。揺らぐ炎の向こう、紡がれた魔法の力を感じ取りフェニックスドラゴンがこちらを見た。
「猟兵が来たか! ならば貴様らも塩味のごはんに絶望すると良い!!」
 赤く光る少女の目においしいごはんを享受する者への敵意を浮かべ、纏う不死鳥の翼が大きく広がる。一層強まる炎の熱をメルステラが重ねて展開する魔法陣が遮った。
 灼熱の焔はメルステラに過去の理不尽さを思い出させる。かつて見た焔と、目の前に広がる炎は同じ情景か。だとしても、いや、そうであるならば尚の事。

「けれど、私はもう迷わないと決めたの。」

 この炎にまかれる訳にはいかないのだ。フェニックスドラゴンの炎から不死鳥の尾が放たれる。周囲の熱量が炎の羽となってメルステラを焼き尽くさんと飛翔した。自らに襲い来る炎の羽を前に、メルステラは重ねて展開していた防御の魔方陣を力へと転換する。炎の羽が周囲の熱量を束ねているのならば、今この時はフェニックスドラゴンの周囲の熱波は弱まっているのだ。ならば、攻めるのは今をおいて他にない。

「憎しみの炎を全て飲み込みましょう。」

 防御から攻勢へ、力を転換したメルステラの放つ【エレメンタル・ファンタジア】が水の竜巻となって炎を飲み込む。幾本の羽に分けられた炎が宙を舞う津波が如き水流に抗えるわけもなく散らされ、奔流がフェニックスドラゴンをも飲み込んだ。
「馬鹿な! 我が炎がこのような……ッ!!」
 それは驕りか、空腹故か。フェニックスドラゴンは水の竜巻に吹き飛ばされていった。水に洗い流されるように消える炎の熱にメルステラは骸魂となったフェニックスの慟哭を思い、心に決めた。

「この件が終わったら、巫女さんにお供え用のごはんについて提言してみます。」

 例え死してもおいしいごはんが食べれるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
冷えた白飯って、不味くて栄養無くて食べてると虚しい気分になるからな。
旨い飯なんていらねぇって思うその気持ち、オレもよくわかるぜ…

なんて言うとでも思ったか【瞬速展開カタパルト】ドーン!
冷や飯食ってる程度で同情を誘えるわけねぇだろうが!
オレなんざ飯どころか無味無臭の液体燃料しか飲めねぇんだぞ!
マトモに飯を食える分際で贅沢ぬかすんじゃねぇこのフェド公が!
謝れ!味覚の死んだデッドマンや胃袋すらない愉快な仲間に謝れ!

謝ってる隙にもいっちょ【瞬速展開カタパルト】ドーン!
テメェみたいな業突く張りは、
フェニックス・レイを浴びて灼熱を帯びた、
このバーニングセダンの車体で地獄に突き落とされるのがお似合いだオラァ!



 ずぶ濡れになったフェニックスドラゴンが呻く。
「くッ、このまま塩味の冷や飯喰らいで終わるものか……ッ!!」
 そこへエンジン音と共に現れたのは宇宙空間対応型・普通乗用車だ。

「冷えた白飯って、不味くて栄養無くて食べてると虚しい気分になるからな。
 旨い飯なんていらねぇって思うその気持ち、オレもよくわかるぜ……」

 その共感はフェニックスドラゴンに一筋の光明たり得たか。まさかこちらに付く猟兵が……などと思ったフェニックスドラゴンへと普通乗用車が車体を向ける。

「なんて言うとでも思ったか【瞬速展開カタパルト】ドーン!」
「ぬぐぉッ!?」

 普通乗用車が【瞬速展開カタパルト(シュンソクテンカイカタパルト)】で自分自身を発車し、はねられたフェニックスドラゴンが潰れた声をあげて吹っ飛んだ。まさに泣きっ面にハチ、冷や飯にセダン。

「冷や飯食ってる程度で同情を誘えるわけねぇだろうが!」

 エンジンをフルスロットルにするが如き剣幕の普通乗用車。だが、フェニックスドラゴンとて黙っている訳ではない。
「何をッ、我が慟哭の何が分かると……」
 その言葉を一際大きいエンジン音が遮った。

「オレなんざ飯どころか無味無臭の液体燃料しか飲めねぇんだぞ!
 マトモに飯を食える分際で贅沢ぬかすんじゃねぇこのフェド公が!
 謝れ! 味覚の死んだデッドマンや胃袋すらない愉快な仲間に謝れ!」

 普通乗用車怒涛の口勢にフェニックスドラゴンがたじろぐ。勢いのまま一度圧されれば立て直す事は困難だ。この場に居ないデッドマンや愉快な仲間にまで話が広がり、なんとなく悪い事しているのは分かっていたフェニックスドラゴンが謝る。

「な、なんだかよく分からんが、すまぬ……」
「謝ってる隙にもいっちょ【瞬速展開カタパルト】ドーン!」
「ぶふぁッ!?」

 再び普通乗用車に轢かれるフェニックスドラゴン。二度も轢かれたフェニックスドラゴン、だが不死鳥の名は伊達ではない。
「他人の事などもはや知らんッ! 我が慟哭の炎を受けるがいいッ!!」
 放たれるフェニックス・レイに真っ向から突っ込む普通乗用車。灼熱の光線が車体を赤く熱する。

「テメェみたいな業突く張りは、フェニックス・レイを浴びて灼熱を帯びた、このバーニングセダンの車体で地獄に突き落とされるのがお似合いだオラァ!」

 フェニックス・レイを裂き、怒涛の勢いで突き進む赤熱した普通乗用車がフェニックスドラゴンにぶち当たる。鈍い音を立てて三度轢かれたフェニックスドラゴンを残し、セダンは走り去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
麒麟はあまりに単純…じゃないや、純粋だったのでからかってしまったんだけど
食べられない悲しみに同情しているのは本当

鞄の中身、2個入れてきたハンバーガーを出して敵に問う
このカタストロフは止められないの?
これは君のために持ってきたんだけど、塩味だと悲しいじゃないか

止められるなら、少女の体を取り返すために結局戦うことになるけれど食事中は静かに見守る
なんなら一緒に食べる(敵が望むなら塩味でも一緒に食べる)
止められないなら残念だけど戦うしかないね

敵の動きを【見切り】、黒剣での攻撃を命中させる
敵のUCに対してはUC伴星・暴食の大剣発動
左手で体から大剣を引き抜き【投擲】してUC妨害
妨害後は黒剣での戦闘を継続



 燃え盛るお堂を前にして、サンディ・ノックスは人参がなくなり大分軽くなった鞄の中身を確かめた。

「麒麟はあまりに単純……じゃないや、純粋だったのでからかってしまったんだけど。」

 詰まっていた人参、それに飛びついた麒麟の姿を思い返す。つい、からかったとはいえサンディが食べられない悲しみに同情しているのは本心からだ。お堂の中を進み、サンディはその悲しみを抱く今回の事件の元凶を見つけた。
「ぐ、はッ……よもや猟兵がここまでとは……」
 既に幾度かの交戦の後なのだろう、身を起こそうとしていたフェニックスドラゴンは消耗しているように見えた。まだ相手が戦闘態勢ではない今なら、話をする事も出来る。そう判断したサンディは鞄からハンバーガーを取り出した。

「このカタストロフは止められないの?」

 問うたサンディをフェニックスドラゴンの視線が射貫く。この世界のどこに、カタストロフを止める理由があるのか、と。

「これは君のために持ってきたんだけど、塩味だと悲しいじゃないか。」

 だからサンディは示した。この世界にも、君が居たいと思う理由がある、と。差し出されたハンバーガーはUDCアースにでも行けばどこででも食べられるような物。だがそれ故に、そのハンバーガーは骸魂となったフェニックスの郷愁を呼び起こす。
 嗚呼……幾度、それを想い。幾度、それに焦がれたか。
 フェニックスドラゴンの妬み、憎しみを胸に湧き起こった想いが抑え込む。サンディの手からハンバーガーを受け取ったフェニックスドラゴンは静かに告げた。
「感情は、決して消す事は出来ぬ。ましてそれが魂を蝕む激情なれば。」
 フェニックスドラゴンがハンバーガーの包みを開ける。幻視するはかつて触れる事叶わなかった光景。
「されどお前の思いは受け取ろう。その間であれば激情とて抑えられようし、な。」
 だから共に食べろとハンバーガーを分けようとするフェニックスドラゴンを制し、サンディは鞄からハンバーガーをもう一つ取り出した。カタストロフが止められない以上、戦うしかない。だが、今、共にハンバーガーを共に食べる時間は決して無意味ではないはずだ。

「塩辛いね。」
「……ああ。」

 会話も少なく、食事を終えた二人はどちらともなく立ち上がり、向かい合う。既にフェニックスドラゴンの身体には滾る激情のような炎が纏わりついていた。羽撃く炎翼の横薙ぎを潜り、サンディが死角から手にした黒剣を突き込む。躱しきれず火の粉が散り、返しとばかりに振われた巫女の掌底がサンディを打ち飛ばした。距離が離れた隙にフェニックスドラゴンの炎が広がる。
 不死鳥の尾が来る。そう見切ると同時にサンディが左手で身体から漆黒の大剣を引き抜き、投げ放った。【伴星・暴食の大剣(バンセイ・グリード)】より生み出された剣がフェニックスドラゴンに突き立ち、炎の羽が霧散し。フェニックスドラゴンが剣を引き抜き、顔を向けた時には既にサンディは間近まで迫っていた。

「カタストロフを止めて、その体は返してもらうよ。」

 黒剣の一閃がフェニックスドラゴンを斬り飛ばす。転がったフェニックスドラゴンの身体が壁にぶつかり、燃え落ちた柱がサンディとの間を隔てる。
 フェニックスドラゴンの受けた傷はすでに多く、思い起こしたかつての望みに己が激情が揺らぐのを感じていた。そして、オブリビオンとなった己がある限りこの世界は救われないという事も。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

えっと、骸魂ってのは既に死んでいて、それが妖怪に憑りついているって解釈でいいかい?美味しい物食べたい気持ちは良く分るんだが、罪無き女の子取り込んでる時点でこの世界の生者ではない。八つ当たりはやめて欲しいねえ。お仕置きしてやるか。

敵の攻撃に素直に当たる気は無い。【目立たない】【忍び足】で敵の背後に回り込み、背後を取ったら【オーラ防御】【見切り】【残像】で敵の攻撃を凌いでから【二回攻撃】で飛竜閃を使う。追撃で【怪力】【グラップル】で蹴り飛ばそうかね。さあ、この世の美味しいものは生きている者達のものだ。さっさと退場しな!1


真宮・奏
【真宮家】で参加

美味しいご飯食べないと辛いですよね。お気持ち凄く良く分ります。でも死んでいる方が言っても説得力ないと思うのです。だって、竜神の娘さんを取り込んで存在を保っているんですよね?私情で申し訳ないんですが、この世界に美味しいご飯を取り戻す為、討伐させて頂きます!!

敵が素早い射撃を撃ってくるならこちらも射撃で対抗します。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で攻撃を凌ぎ、【二回攻撃】で彗星の剣を使います。更に【衝撃波】で追撃します。お腹が満たせないと、大変ですよね。来世は美味しいご飯が沢山食べれるように祈ります・・・


神城・瞬
【真宮家】で参加

えっと、竜神の娘さんを取り込んで存在を保ってて、本体の不死鳥は死んでいるって解釈でいいですか?他人を犠牲にして不死を気取るなど烏滸がましい。元々、貴方のような存在が普通の食卓に混ざれる訳ないですよね。

敵の攻撃は素早く、手数が多いので、【多重詠唱】【魔力溜め】した【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】で牽制して、裂帛の束縛で動きを縛りましょう。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎますね。さあ、美味しいご飯を返してもらいましょうか!!



 燃え崩れてゆくお堂から影が一つ、立ち上がる。周囲を焼く炎をすら己が翼と一体としてフェニックスドラゴンは終の相手となる猟兵たちへと向いた。その姿を認め、真宮・奏はフェニックスドラゴンの慟哭には理解を示す。

「美味しいご飯食べないと辛いですよね。お気持ち凄く良く分ります。」

 だがそれは相手が生者であったのなら、だ。死して骸魂となりフェニックスドラゴンへと変じた相手に奏ははっきりと告げる。

「でも死んでいる方が言っても説得力ないと思うのです。だって、竜神の娘さんを取り込んで存在を保っているんですよね?」
「えっと、骸魂ってのは既に死んでいて、それが妖怪に憑りついているって解釈でいいかい?」
「えっと、竜神の娘さんを取り込んで存在を保ってて、本体の不死鳥は死んでいるって解釈でいいですか?」

 奏の言葉に真宮・響と神城・瞬が事態を確認するように口にする。彼らの言うように、フェニックスはすでに死して今は生者である竜神の少女を飲み込んでその力で在るだけだ。

「美味しい物食べたい気持ちは良く分るんだが、罪無き女の子取り込んでる時点でこの世界の生者ではない。八つ当たりはやめて欲しいねえ。お仕置きしてやるか。」
「他人を犠牲にして不死を気取るなど烏滸がましい。元々、貴方のような存在が普通の食卓に混ざれる訳ないですよね。」
「私情で申し訳ないんですが、この世界に美味しいご飯を取り戻す為、討伐させて頂きます!!」

 おいしいごはんを食べたい気持ちは分かる響と奏、偽りの不死を看破する瞬、されど三人共に思いは同じ。今を生きる者のおいしいごはんを取り戻す為、骸魂を在るべき所へと還すのだ。
「やってみるがいい、出来るものならなッ!!」
 傲然たる言葉と共にフェニックスドラゴンがフェニックス・レイを放つ。

「させません!」

 瞬刻の間に貫く灼熱の光線を奏がオーラによる防御に合わせ剣と盾で受け止めた。熱波が吹き荒れ、視界を歪める。奏の防御の後ろから、瞬が多重詠唱し溜めた魔力を解き放つ。目を眩ます弾丸が続けざまに放たれるフェニックス・レイを裂いて飛び、フェニックスドラゴンの身を貫いた。
「く、ふッ……まだまだッ!」
 フェニックスドラゴンは倒れはしない。だが、攻撃の手が止まった隙に奏の【彗星の剣(スイセイノケン)】が二度、放たれていた。

「かわさないでくださいね? 行きますよ~!!」

 奏の振う剣、ブレイズセイバーが複製されて宙を舞う。瞬も【裂帛の束縛(レッパクノソクバク)】を合わせて放った。

「動きを縛らせて貰います!! 覚悟!!」

 アイヴィーの蔓、ヤドリギの枝、藤の蔓が複製された剣の合間を縫い、束縛すべき対象へと伸びる。フェニックスドラゴンは二人のユーベルコードへの対処に追われるだろう。ひっそりと忍び消えた響を気取らせまいと剣と枝、蔦が激しく舞う。
「数で圧そうなどとッ!」
 フェニックス・レイが剣閃の如くなぎ払われ、幾本かの剣が弾かれるも全てを落とすには至らない。そしてついに、フェニックスドラゴンの身を瞬の操るアイヴィーの蔦が捕える。フェニックスドラゴンの指先から力が失われていく。それでも剣を撃ち落とすべく放った灼熱の光線に先ほどまでの輝きはなかった。

「さあ、美味しいご飯を返してもらいましょうか!!」

 瞬の這わせた藤の蔦が絡みつく。それでも足掻くフェニックスドラゴンへと奏のブレイズセイバーの複製が飛び貫いた。
「我が不死が、この程度でッ!!」
 纏う炎も既に翳りが見え始め、それでもなおも吼えるフェニックスドラゴン。激昂していた骸魂が、背後から振るわれる光刃に気づいたのはその身が裂かれた時だった。

「さあ、この世の美味しいものは生きている者達のものだ。さっさと退場しな!!」

 背後へと忍び寄った響が袈裟懸けに放つ【飛竜閃(ヒリュウセン)】が二度、フェニックスドラゴンの身体を斬り裂く。不意をつかれながらもフェニックスドラゴンが響へと向ける手に灯る灼熱の輝き。放たれた渾身のフェニックス・レイが響の纏うオーラとぶつかる。オーラが軋み、このままでは貫かれるかと響が感じたその時。フェニックスドラゴンを、意識の外から飛んだヤドリギの枝が貫いた。霧散する灼光の中、響がフェニックスドラゴンを蹴り飛ばす。その先から飛び来る奏のブレイズセイバーの複製を躱す術はなく。
「我が、不死……我が想いは、此処までだと……ッ!!」
 貫く剣が炎を吹き散らし、フェニックスの骸魂を骸の海へと還してゆく。

「お腹が満たせないと、大変ですよね。来世は美味しいご飯が沢山食べれるように祈ります……」

 奏の祈りを届けるように曇天の切れ間から光が射し込む。転がっている竜神の少女には、おいしいごはんを渇望した不死鳥の魂の面影は既にない。飛び交っていた骸魂も消え、カタストロフから救われた幽世には味が戻ってきていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『失われた飯を求めて』

POW   :    陰りの見え始めた比較的最近の料理を食べる

SPD   :    そんなのあったなぁ、という懐かしい料理を食べる

WIZ   :    本当に誰も覚えていない、もしくはマイナー過ぎる料理を食べる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 転がっていた竜神の少女が目を覚ます。パチパチと瞬きして顔をあげるとカタストロフを止めた猟兵たちの姿。
「皆様が味を取り戻してくれたのですね! ありがとうございます!!」
 少女はお礼にと山の麓の飯屋に案内するという。
「親戚のおじいちゃんとおばあちゃんがやってるんですけど、『思い出の味』を料理にしてくれると評判なんですよ!」

 その頃、山の麓の飯屋では。
「じいさんや、今度のごはんはどうかねぇ?」
「おお、ちゃんと味がする! しかし、はて。これは何度目のごはんじゃったかのう?」
「おう、じいさん。やってるかい?」
 飯屋を開いていた老夫婦も味が戻ったことを喜んでいた。カタストロフが終わり、味が戻ったこの店に、塩味しか食べられなかった妖怪たちが集まってくる。
「ようし、今日はハレの日じゃ! 皆、好きなだけ食べるとええ!」
 気前のいい店主のじいさんの言葉に湧く店内。そこへ店の入り口から竜神の少女が顔を出した。
「おじいちゃん、猟兵さんを連れてきたよ!」

 老夫婦が営むこの飯屋では『思い出の味』『思いえがいた料理』を食べれるという。食べてみたい料理を頼むもよし、今は食べれない料理にするもよし。料理を摘みながら他の妖怪や助けた少女と話すのもいいだろう。
 お代は結構。おいしいごはんを食べる幸せな気持ちが店に溢れれば、それが老夫婦には最高の報酬なのだから。

 さあ、おいしいごはんを食べよう。
メルステラ・セレスティアラ
あの竜神の子大丈夫なの?
念のため痛いところや怪我してないかを聞いてみましょう
大丈夫みたいね、良かった
安心したらお腹すいてきちゃったね

いざ『何が食べたい?』と聞かれても、あれもこれも食べたいのになかなか決められない現実
お恥ずかしいことに、幽世に辿り着いてからひとつの場所に引きこもり気味だったもので、こういうごはん屋さんに来たことがないの

良かったら貴方のおすすめを教えて?
おいしくてお腹いっぱいになって幸せになれるようなごはんが食べたいわ
そうしたら、一緒に食べましょう
みなさんのお話も聞きながら、楽しく食事をしましょう

『おいしい』って、味はもちろんのこと、楽しく食事をすることも『おいしい』に繋がるのね



 活気あふれる飯屋へ竜神の少女が猟兵たちを案内する。
「好きな席に座ってくださいね! あ、おしぼりとか持ってきます!」
 元気に動き回っている竜神の少女も少し前までは骸魂に飲み込まれていた身。メルステラ・セレスティアラは少女が見た目は大丈夫そうでも何処かしら痛めているのではと念のために戻ってきた少女に声をかけた。

「大丈夫なの? 痛いところとか怪我していない?」
「はい、大丈夫です! 竜神は頑丈ですので!」

 グッとこぶしを握って元気アピールをする少女。本当に痛いところなどはないらしい。少女の様子にメルステラは懸念が消え、胸をなでおろした。

「大丈夫みたいね、良かった。
 安心したらお腹すいてきちゃったね。」
「はい! 何が食べたいですか?」

 笑顔で返す竜神の少女の問いかけにメルステラは食べたいものを思い浮かべる。だが、浮かんできたイメージは形となる前に消え、また別のイメージが浮かんで。いざ『何が食べたい?』と聞かれても、あれもこれも食べたいのになかなか決められない現実。

「お恥ずかしいことに、幽世に辿り着いてからひとつの場所に引きこもり気味だったもので、こういうごはん屋さんに来たことがないの。」
「あっ、そうだったんですか?」
「ええ。だから、良かったら貴方のおすすめを教えて?
 おいしくてお腹いっぱいになって幸せになれるようなごはんが食べたいわ。」

 そうしたら、一緒に食べましょう、とメルステラは少女に微笑みかける。それならばと少女がおじいさんに注文したのが。
「サンドイッチです! いろんな味が楽しめるし、皆でわいわい食べるならコレかなって。」
 タマゴにレタス、ハム、ツナマヨといった定番から、カツや旬の野菜、フルーツなど様々なサンドイッチが彩りも鮮やかに並んだ。

「ありがとう。では、いただきましょうか。」
「はい! いただきまーす!」

 思い思いのサンドイッチをそれぞれ摘まみ、二人の会話も弾む。日々の何気ない世間話や幽世の事、先ほどのカタストロフの事など様々に、他愛のない、それ故に互いに楽しむ会話。交わす言葉と共に口にする味にメルステラはなるほどと思う。

 『おいしい』って、味はもちろんのこと、楽しく食事をすることも『おいしい』に繋がるのね。

 おいしいごはんは皆を笑顔にする。それは楽しい食卓があってこそなのだろう。あちこちから聞こえてくる楽しげな話し声も、それぞれのおいしい思い出として味と共に胸に残るのだ。メルステラは皆の話を聞きながら、楽しく食事を続ける。
 この幽世での楽しい食事は、きっとおいしいごはんの思い出となるだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

大したことはしてないよ。手作りのご飯が大好きな娘や息子の気持ちを考えると、美味しいご飯を取り戻すのは大事だと思ったからね。

あ、そこの爺さん、ご飯を作ってくれるのかい?そうだねえ、さんまの塩焼きに焼き鳥、頼めるかい?旦那と野営で食べた思い出の味だし。

うん、美味しい。爺さん、いい料理の腕してるじゃないか。美味しいご飯は皆を元気にさせる。(美味しそうに食べている奏と瞬を見て微笑み)取り戻せてよかった、と改めて思うよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

竜神の娘さん、お体には支障ないようで良かったです。あ、ご飯食べていいんですか?喜んで!!

今回は肉食べたい気分なのでトンカツとメンチカツとハンバーグで!!本当はまだ食べれるんですが、作るの大変なので流石に控えます。(出て来た食事に目をキラキラ)美味しそう!!頂きます!!

うん、こういう美味しいご飯なら幾らでも食べれます!!美味しいご飯の味が無くなるのは嘆かわしいこと。ご飯は元気の元ですし!!あ、ご飯おかわりです~!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

竜神の娘さん、無事で良かったです。親戚の方のお店も無事に開けるようで。ご飯、食べていいんですか?じゃあ、遠慮なく。

僕はカツ丼とけんちん汁、お願い出来ますか?あんな敵でしたので、しっかりしたものを食べたくて。食べ盛りなんです。こんな外見ですけど。

うん、作り手の気持ちが込められていて美味しいカツ丼です。(けんちん汁を飲んでひと息)皆で美味しいご飯を食べる時間は先へ進む糧になります。取り戻せて良かった、と心から想います。



 賑やかな店内、テーブルの一つに席を取った真宮家の真宮・響、真宮・奏、神城・瞬の三人の所へは竜神の少女が改めてお礼を言いに来ていた。

「皆様のおかげで無事にお店も再開できました! ありがとうございます!」
「大したことはしてないよ。手作りのご飯が大好きな娘や息子の気持ちを考えると、美味しいご飯を取り戻すのは大事だと思ったからね。」

 響と元気に会話をする少女の姿に、骸魂に飲まれていた時の影響は見られない。その様子に少女の体を案じていた奏と瞬の表情も和らぐ。

「竜神の娘さん、お体には支障ないようで良かったです。」
「竜神の娘さん、無事で良かったです。親戚の方のお店も無事に開けるようで。」
「はい、もう大丈夫ですよ! お店の味も元通りです! ぜひ、何か食べてみてくださいね!」

 おじいさんも奥の厨房から顔をだし、ありがとうとにこやかに感謝を伝える。お礼に何か食べていってくれという言葉に奏の顔に笑みが咲いた。

「あ、ご飯食べていいんですか? 喜んで!!」
「ご飯、食べていいんですか? じゃあ、遠慮なく。」

 お腹の空いていた瞬も一緒に食べたいものを思い浮かべる。その二人の様子を優しく見ていた響も厨房のおじいさんに声をかけた。

「あ、そこの爺さん、ご飯を作ってくれるのかい? そうだねえ、さんまの塩焼きに焼き鳥、頼めるかい? 旦那と野営で食べた思い出の味だし。」
「今回は肉食べたい気分なのでトンカツとメンチカツとハンバーグで!!」
「僕はカツ丼とけんちん汁、お願い出来ますか? あんな敵でしたので、しっかりしたものを食べたくて。」

 軽めな響の注文に対して奏と瞬はガッツリと。細身ながらも食べ盛りな瞬は戦闘の後という事もあり。人一倍食べる奏は、本当はまだ食べれるんですが、作るの大変なので、と厨房に無理ない程度に控えて。
 思い思いに食べたい料理を伝える三人に、あいよ、と答えておじいさんが戻った厨房からはおいしそうな匂いが漂ってくる。その匂いは響の思い出に重なった。そう、野営の時も食事を作る時はこんなおいしそうな匂いが……。
「はい、お待たせしました!」
 響たちの前に少女が料理を並べる。色褪せない思い出からそのまま取り出されたようなおいしいごはんを前に三人はいただきますと箸をとった。

「美味しそう!! 頂きます!!」

 出てきた食事に目をキラキラさせた奏が肉料理を口に運ぶ。サクッとしたカツの衣の下から肉の旨味がじゅわっと広がる。ハンバーグも肉汁とソースが絡み合っておいしいハーモニーを奏でていた。肉の味を一緒に口に入れる白飯が一層引き立てる。

「うん、こういう美味しいご飯なら幾らでも食べれます!!」

 笑顔でご飯を食べ進める奏の横で、瞬もカツ丼を味わっていた。

「うん、作り手の気持ちが込められていて美味しいカツ丼です。」

 とろりとした卵がカツの衣に沁み込み、出汁の風味と共に肉の味をいっそう美味しくする。濃いめの味付けのカツと卵をごはんと共にかきこめばいくらでも食べられそうだ。口に残る味をけんちん汁と共に飲んで一息。

「皆で美味しいご飯を食べる時間は先へ進む糧になります。取り戻せて良かった、と心から想います。」
「美味しいご飯の味が無くなるのは嘆かわしいこと。ご飯は元気の元ですし!! あ、ご飯おかわりです~!!」

 再びカツ丼を食べる瞬の横では奏がごはんのお椀を空にしていた。二人ともまだまだ食べられそうだ。食べ盛りな二人を見ながら響も焼き鳥を一口。香ばしい鶏肉の味わいが広がる。タレも塩も鶏肉の味わいを引き立たせる程度に、濃すぎず丁度いい。焼き魚もパリッとした皮を箸で開けばふっくらとした身がおいしそうな湯気を立てていて。

「うん、美味しい。爺さん、いい料理の腕してるじゃないか。美味しいご飯は皆を元気にさせる。」

 おいしそうにご飯を食べる奏と瞬を見て響は微笑み、料理に箸を伸ばす。思い出の味を噛み締めながら、今ある家族を前にして。

「取り戻せてよかった、と改めて思うよ。」

 真宮家の皆で食べる食事は、やはりおいしい。言葉にせずともご飯を食べる笑顔は、そう語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
思い出の味って俺だけが知っている料理でも食べられるってこと?
…もしそうならお願いしたいものがあるんだ

薄く焼いたパンにトマトソースを塗り、チーズを乗せて香草を散らしたもの
ピザと呼べるのかも悩ましい、でも俺にとって一番大切な思い出の食べ物
兄さんが俺に作ってくれた物なのだけれど、貧しい故郷でこれらの材料を集めるのは非常に大変だったと思う
もう帰るわけにはいかない故郷を思い出すと…寂しいのかな、この気持ち

指を組んでいただきますと挨拶してから食べる

ピザ(仮)は独り占めして
他に食べていいものがあればいただきつつ竜神の少女と話したい
なぜフェニックスにお供え物をしていたの?
彼女とフェニックスの関係を聞いてみたい



 あちこちのテーブルからおいしそうな匂いが漂う。出されている料理も様々で、中にはどんな味かも想像がつかない物もあった。雑然と賑わう店を見て、サンディ・ノックスはここに案内した少女の言葉を思い返していた。
 『思い出の味』を料理にしてくれると評判なんですよ!
 調理器具はおろか、調理法すら定かでない料理すら出す飯屋。ならば、もはや口にする事も叶わない料理とて、もしかしたら。

「思い出の味って俺だけが知っている料理でも食べられるってこと?
 ……もしそうならお願いしたいものがあるんだ。」

 サンディの注文を聞き、おじいさんは頷いて厨房へと入る。やがて運ばれてきた物は。
「お待たせしました! ピザ……ですよね?」
 薄く焼いたパンにトマトソースを塗り、チーズを乗せて香草を散らしたもの。ピザというにはあまりに質素な料理をサンディは受け取る。懐かしい香りと共に浮かぶはかつての情景。小首をかしげた少女に礼を言うサンディが浮かべる笑みにかつての面影はあるだろうか。

「ピザと呼べるのかも悩ましい、でも俺にとって一番大切な思い出の食べ物なんだ。」

 サンディの兄が彼に作ってくれたこの料理。貧しい故郷でこれらの材料を集めるのは非常に大変だっただろうと思う。

「いただきます。」

 指を組んで食前の挨拶をしてピザ(仮)を手にとった。口にすれば薄いパンの歯触り、とろけるチーズの味わいがトマトの程よい酸味と合わさって広がる。噛むたびに鼻腔にぬける香りに、サンディはもう帰るわけにはいかない故郷を思い出す。

 ……寂しいのかな、この気持ち。

 口に出さぬ思いごとピザを飲み込み、竜神の少女に声をかける。同じテーブルでフライドポテトを摘まんでいた少女がよければご一緒にと薦めたポテトを摘み、サンディは聞きたかった事を質問した。

「なぜフェニックスにお供え物をしていたの?」
「そんなに深い事情は無いのですけど……」

 竜神の少女が話すには、もともと幽世に辿り着けずに消えてしまった妖怪の慰霊の為のお堂だったという。中にはフェニックスのように不死や転生の逸話を持つ者も居るので、お供え物をする慣わしなのだとか。まさかお供え物にキレる骸魂が居るとは思わなかったので、山盛りご飯だったらしい。
「今度からは日替わり定食になるそうです。」
 そういって笑う竜神の少女は骸魂に飲み込まれる経験をしても尚、お堂のお供え物は自分が運びたいと言う。おいしいごはんがあれば、きっと骸魂も幸せな気分になるだろうから、と。
 その話にサンディはピザ(仮)を独り占めして食べながら頷く。今は遠い思い出であっても、このおいしさは呼び起してくれたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
ごはんの時間だー
途中で抜けちゃってごめんね
麒麟さんとフェニックスさんには手を合わせておくね
キミたちの分までわたしがおいしいごはんをいただくから任せてね

幽世のおいしいごはん屋さん!
なに食べようかなっ
メニュー見てるだけでも楽しい
和・洋・中全部のオススメお願いします!
ヤトリガミだから全部食べられるよ、えへん
デザートもつけてね☆

んー幸せー
ごはんがおいしいのは世界が平和な証
今日もおいしいごはんが食べられることは即ち幸せの証明!
お店のお客さんからのオススメももらって、ご機嫌で箸を進めるよ
おいしいごはんをありがとう



「ごはんの時間だー」

 セレシェイラ・フロレセールが竜神の少女に案内された飯屋はどこか懐かしい雰囲気のある昔ながらの日本の家屋だった。入り口を潜ればおいしそうな匂いと賑やかな声が店内を満たし、おいしいごはんへの期待も膨らもうというものだ。それだけにおいしいごはんに辿り着けなかった麒麟とフェニックスの事がセレシェイラの頭をよぎる。

「キミたちの分までわたしがおいしいごはんをいただくから任せてね。」

 途中で抜けていたとしても、麒麟やフェニックスの抱いたおいしいごはんへの思いはセレシェイラの胸に。ならば思いっきりおいしいごはんを食べ、楽しむ事が供養にもなろう。
「いらっしゃいませ! お好きな席にどうぞ!」
 笑顔で迎える竜神の少女に促されるまま席に座り、メニューを手にとった。

「幽世のおいしいごはん屋さん!
 なに食べようかなっ」

 胸に期待を膨らませ、セレシェイラがメニューをめくる。さほど厚くはないメニュー表だが思い浮かぶ料理が次々記され、めくってもめくっても尽きる事はない。色とりどりに記されゆくメニューを楽しげに眺め、セレシェイラはおじいさんとおばあさんに注文をした。

「和・洋・中全部のオススメお願いします!」

 そんなに食べられるのかい、と問う老夫婦にセレシェイラは笑顔を浮かべ。

「ヤトリガミだから全部食べられるよ、えへん。
 デザートもつけてね☆」

 そして運ばれてきた料理がセレシェイラのテーブルを埋めた。釜飯に和え物、刺身の盛り合わせに天ぷらの盛り合わせ。天津飯に餃子、油淋鶏とエビチリ。さらにはステーキにポテト、サラダに様々なバゲット。味噌汁やスープも加わってまさに和洋中オススメセットである。食後にはあんみつや杏仁豆腐、ケーキといったデザートも待ち構えている。

「んー幸せー」

 どの料理もおいしさもさることながら、どこか懐かしい感じがする。初めて食べる料理も優しい味わいで、それぞれの国の料亭で味わうような感覚になる品々だった。

「ごはんがおいしいのは世界が平和な証。
 今日もおいしいごはんが食べられることは即ち幸せの証明!」

 笑顔で食べ進めるセレシェイラに周りの客も笑顔で話しかけてくる。
「お、イイ食べっぷりだな嬢ちゃん! これも美味いから食ってみろよ!」
「私オススメの人参ケーキもいかがですか!」
 ワイワイとお互いのオススメを交換したりしながら楽しい食事が盛り上がっていった。セレシェイラも貰ったオススメ料理にも箸を進め、ご機嫌で食べている。やっぱり、ご飯は塩味だけでは味気ない。店に溢れる笑顔に囲まれ、セレシェイラも笑顔で食べながら改めて感じた。

 おいしいごはんをありがとう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
さて、せっかくだしフェニ野郎の祀られてる仏壇でも拝んでやるとするかね。
車のオレには手を合わせることも線香をあげることもできやしねぇが、
心の中で祈ってやることくらいはできる。
敵として争いあった身分だが、せめて来世での幸福を祈らせてもらうぜ…
あと報告だけど、さっき無味無臭の液体燃料っつったけどありゃ嘘だった。
成分解析してみたら、人が飲む前に3回吐くくらいには味も臭いもクソだったわ。

…んん~?それを思うとなんかもう一回轢き飛ばしたくなってくるなぁ?
マジに不死鳥なら過去の存在としてじゃなくとも普通に復活できそうだし、
ここらで復活してもう一回轢かせてくれねぇもんかなぁ?
なぁ?来世って今じゃね?



 麓の飯屋がおいしいごはんで盛り上がっている頃。お山のお堂の前に1台の車がやってきた。宇宙空間対応型・普通乗用車である。

「さて、せっかくだしフェニ野郎の祀られてる仏壇でも拝んでやるとするかね。」

 どういう理屈か焼けて崩れていたお堂は、カタストロフがなくなると同時に元に戻っていた。入り口から入り、普通乗用車の進むお堂の中は綺麗なものだ。やがて見えて来るは慰霊の為に飾られた白黒の写真。

「車のオレには手を合わせることも線香をあげることもできやしねぇが、心の中で祈ってやることくらいはできる。」

 線香も供え物も無くとも供養はできる。アイドリングの音と共に普通乗用車はフェニックスドラゴンの冥福を祈った。敵として争い合った身分なれど、せめて来世での幸福を、と。

「あと報告だけど、さっき無味無臭の液体燃料っつったけどありゃ嘘だった。
 成分解析してみたら、人が飲む前に3回吐くくらいには味も臭いもクソだったわ。」

 独白のような普通乗用車の言葉。それは塩味の世界の方が良かったのか、或いはそれでも良いんだと今は亡き骸魂に語る為か。思い返せばフェニックスの激怒した白飯の方がマシなのではなかろうか。

「……んん~? それを思うとなんかもう一回轢き飛ばしたくなってくるなぁ?」

 語れどもあの炎が見える事はなく、普通乗用車はUターンしてお堂を出る道を戻ってゆく。

「マジに不死鳥なら過去の存在としてじゃなくとも普通に復活できそうだし、ここらで復活してもう一回轢かせてくれねぇもんかなぁ?」

 何を益体のない事を、と言う者も居るかもしれない。だが普通乗用車には予感があった。何の根拠もない思いを巡らせながらお堂の出口、陽の光に眩む外へと向かう。

「なぁ? 来世って今じゃね?」

 誰にともなく言葉を投げ、普通乗用車がエンジンをふかして外へと飛び出し――。
「よし、我はおいしいごはんを食べに……ぶべぁッ!?」
 タイヤが地面ではないモノを轢き飛ばす感覚。外に出た普通乗用車の見上げる幽世の青空に、炎のような赤い羽根が舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月03日


挿絵イラスト