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懺悔録『青年猟奇倶楽部』(作者 西東西
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「『サクラミラージュ』にて。匿った『影朧』の力を『己のユーベルコヲド』のように扱い、偽りの名声を得る民間人が見つかった」
 グリモア猟兵のヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が、集まった猟兵たちの顔を見やり、厳かに続ける。
 掲げ見せたのは、ちかごろ帝都の書店に掲示されている販促用のポスターだった。
 そこには、『世紀の恐怖作家・北枕氏!』『帝都の夜を震撼させる超弩級新作小説をつぎつぎ発表!!』といった宣伝文句が踊っている。
 ――作家の名は、『北枕・格之進(きたまくら・かくのしん)』。
 ポスターに描かれた人物画からは、ベストセラー作家の風格はまるで伺うことはできない。
 シワだらけの書生服に、ぼさぼさの寝癖頭。
 加えて、手入れのされていない無精ひげを生やした、風采(ふうさい)があがらない青年、といった様相だ。
「これまでも作品を発表していたが、ほとんどが陽の目をみることはなかったと聞く」
 ところが。
 最近になって『新作を次々と発表』し、そのどれもが『生々しい描写の猟奇小説』であるというのだ。
 世間では、作風を変えたことで才能が開花したと評判になり、いまや押しも押されぬ『文豪』と言っても過言ではない作家のひとりとなっている。
「不審な点が多いため調べたところ。この男は何らかの手段で『籠絡ラムプ』を入手し、篭絡した影朧の力を己の力として使っていることが判明した」

 ――『籠絡(ろうらく)ラムプ』。
 『幻朧戦線』が密かに市井にばらまいた『影朧兵器』。
 篭絡した影朧はいずれ暴走し、使い手を含めた帝都の人々に多大な被害を及ぼす危険な代物であることがわかっている。
 なお『幻朧戦線』とは、揃いの『黒い鉄の首輪』を付けた一般人(人間)集団を指す。
 以前から何かと帝都を騒がせているが、『大正の世を終わらせる』『戦乱こそが人を進化させる』といった、およそ共感にはほど遠い主張をする血気盛んな者たちである。

「この作家が、どういった経路で『籠絡ラムプ』を入手したかは不明だが、『影朧兵器』を見過ごすわけにはいかない。『サクラミラージュ』に赴き、籠絡ラムプの回収を頼みたい」
 ポスターによると、北枕・格之進は、某日深夜に『幻影城』なる私邸――街はずれの廃屋を買い取り、仕事場として建て直した洋風豪邸。正確な所在は開示されていない。――で、『青年猟奇倶楽部』なる猟奇ファンの集いを行う予定であるという。
 集まりに参加できるのは、『仮面をつけた紳士淑女』のみ。
 互いの素性を明かすことなく、ただただ、己の熱中している『猟奇』を語らうための集いであるという。
 指定された場所に集まれば迎えの車が現れ、屋敷まで案内してくれるという。
「まずは『幻影城』で行われる『青年猟奇倶楽部』に潜りこみ、参加者たちから作家の素性を調査。機をみて、影朧の撃破とラムプの回収。その後の作家の処遇については、任務に赴いた者たちに判断を任せたい」
 「武運を祈る」と言い添えて。
 ヴォルフラムは手のひらにグリモアを掲げ、転送ゲートを開いた。


 帝都の街はずれに、『幻影城』と呼ばれる豪奢な洋風建築が存在している。
 新進気鋭の恐怖作家、北枕・格之進が所有する私邸である。
 その日の深夜、エントランスに次々と黒塗りの車がとまり、客人たちが屋敷へと吸いこまれていった。
 邸宅内の広大なホールには、深夜にも関わらず多くの人間が集まっている。
 それぞれが秘めた『猟奇』について語りあう、ファンの集い。
 ――『青年猟奇倶楽部』。

「僕は最近、『女性の髪』を集めるのに凝っているんです。何でもいいわけんじゃないんですよ。まっすぐで、黒々とした。墨を流したようなうつくしい黒髪じゃなきゃあいけません。――気付かぬうちに、そっとひと房頂戴する。これがたまらないのです」
「わたくしは、ヒトの『眼球』に興味がありますの。ほら、光の当たり方によって、さまざまに色あいが変化しますでしょう? これからの季節、涼をとるために青い瞳を覗いて暮らせたら、きっと素敵だと思いまして。この間、青い眼の少女と知り合いましたのよ」
「ひとの『歯』ほど心惹かれるものはない。死してなお残るそれらをどのように保つかで、まっさらな人間性があらわれる。しかし、好みの美しい歯と出会ったとて、死を待つには長すぎる。いかに手に入れるか。そして、念願果たし手に入れられた時の感動ときたら……!」

 その場を訪れるだれもが『仮面』で目元を隠し、愉し気に歓談を交わして。
 『互いの素性を詮索しない』ことを条件に、今宵も会話は弾む。
 いずれ、主催者である作家が現れる。
 『影朧』を倒し、『籠絡ラムプ』を回収するとしたら、その時だろう。
 それまでは。
 後の処遇を決める時のためにも、仮面の宴に混ざり、作家の素性について調べておくのが良さそうだ――。





第3章 日常 『籠絡ラムプの後始末』

POW本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す
SPD事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)
WIZ偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 戦闘後。
 ホールが静かになったと判じ、ホール内で難を逃れた客人と、ホールの外へ逃げ延びていた客人たちが、おそるおそる様子を見に戻り始めた。
 猟兵たちは手分けをして民間人の無事を確かめると、残された男のもとへと向かう。

 使役していた影朧が消滅したというのに、『文豪』北枕・格之進は、籠絡ラムプを手にしたままあたふたとホール内を這いつくばっていた。
 何をしているのかと猟兵たちが近づけば、影朧が攻撃時に使用していた原稿用紙を拾い集めていたのだ。
「か、か、書き留めないと! 今すぐ書き留めないと! 指先からこう、ほどけるように消えていくあの様。どんな言葉を使えば、哀れさと、儚さを同時に伝えられるだろうか……!」
 わしゃわしゃと髪をかきむしり、懐に持っていた万年筆で何事かを書きなぐっている。
 あまりの字の汚さに、誰ひとりその文字を読めはしない。
「ああ、霧子さんが見せてくれたどんな『猟奇』よりも、彼女自身の『猟奇』の方がずっと美しかった……! 彼女は血みどろが好きだったから、そこは僕とは趣味があわなかったんだよねえ」
 作品を執筆する時は、常にそうなのだろうか。
 ぶつぶつと独り言を言いながら、笑ったり、はにかんだり、困惑したり。
 男は、実に表情豊かな百面相を披露した後。
 己の周りに、猟兵たちと、『青年猟奇倶楽部』の客人たちが取り巻いているのに気付き、「おや」と顔をあげた。
「みなさん、まだいたんですか」
 そうして、猟兵たちを見やるなり、イイコトを思いついた子どものように、無邪気な様子で、言った。
「そうだ! 貴方がた、もう一度霧子さんを殺してください! より確実な描写のために、もう一度、あの様を見たいんです! 霧子さんなら、このラムプで……あれ。霧子さん? 霧子さん?」
 ――おそらく。
 この男は、『籠絡ラムプ』の機能も、猟兵たちが影朧を骸の海へ還したことも、理解できていないのだろう。
 カタカタとオイルランプを振り続ける北枕の前に、槍を手にした羅刹の青年(f23529)が、静かに迫った。
 冷たく光る金の瞳が、ギロリと男を見おろす。
 槍の穂先を、男の首へ突きつけながら。
 青年は、極力、抑えた声で言った。
「……俺の『猟奇対象』になりたくなければ。そのランプを、今すぐ寄越せ」
 脅されて、ようやく。
「ひ、ひええええ!!!」
 青年はひれ伏すように、『籠絡ラムプ』を投げて寄越した。

 犯した罪に相応しい罰を与えるも、正しい道を取り戻させるも、すべては猟兵に一任されている。
 ――残された『北枕・格之進』の処遇を、決めなければならない。
 さて、どうしたものか。


●マスターより
 ・『1章~2章に参加した方』に限り、3章に参加できます。

 ・本シナリオのみの特別措置として。
  【 6月28日(日) 夜20:00まで 】、北枕への質問を受け付けます。
  この期間に頂いたプレイングはすべて失効させ、リプレイ上には残しませんので、
  一文のみや、書きなぐり、箇条書き状態などでも構いません。

  ヒントとして出しても良いと判断した質問を拾い、断章形式で執筆を行います。
  これまでの開示情報だけではプレイングを掛けにくいという場合は、ご活用ください。
  (あくまでヒントのために行うものですので、小説のような文章にはなりません。
   極力描写を省いた、簡単な対話形式を予定しています)


 ・本番のプレイングは、【 7月3日(金) 朝8:31以降 】より受付けます。
  5日(日)昼頃までに締め切り、5日(日)~6日(月)にかけて執筆予定です。

 ・多様な意見が集まる可能性があるため、提案内容がそのままリプレイに反映されるとは限りません。
  とはいえ、ひとりの青年の、その後の人生がかかっています。
  他の方の提案に遠慮することなく、ぜひ想いの丈をプレイングに詰めてください。

 ※上記予定は、状況により変更となる場合があります。
  最新の執筆状況は、マスターページ冒頭をご確認ください。
 
 

 ――北枕の処遇をどうするか。

 頭を捻りはじめた猟兵たちを前に、ペストマスクを被った新聞記者――『青年猟奇倶楽部』の常連を自称し、この事件を独自に追いかけていた男が言った。
「『超弩級戦力』さん方よ。北枕の処遇を決めようにも、情報不足じゃ話にならねえぜ。速記ならオレの特技よ。記録しといてやるから、アレコレ聞いてみちゃどうだい」
 促され、羅刹とヤドリガミの猟兵が進みでた。
 以下は、そのやりとりを記録したものである。

 *

 猟兵「霧子と出会った時の状況は」
 北枕「生活に窮していた時、たまたま古道具屋で手に入れた『オイルランプ』を使ったら出てきた。影朧を操る道具だとは知らなかった」

 猟兵「ランプの出処について、霧子から聞いたことはあるか」
 北枕「聞いたことはない。売れない作家だった自分に、神が与えた特別なランプだと思っていた」

 猟兵「なぜ霧子の誘いに乗ったのか」
 北枕「霧子から誘いがあったわけではない。霧子が生前、文筆家を目指していたと知り、互いに『文豪』を目指そうと意気投合した」

 猟兵「作風が変わってからの作品は、『ほんものの猟奇』に触れて書いているとの噂がある。実際にあなたの前で、霧子が人を殺してみせたのか」
 北枕「霧子が目の前で殺すのを見ていた。『リアリティを追究するためにはモデルが必要』だと霧子が言い、その通りだと思っていた。1人殺したら作品が売れた。2人殺したらもっと売れた。それから、『青年猟奇倶楽部』を企画し、『猟奇』のモデルと、新作のネタを集めることを思いついた」

 猟兵「あなたが手伝ったり、こんなものが見たいと要望したことはあったか」
 北枕「霧子はすべて自分で殺したがったため、手伝ったことはない。これまでに書いた作品のネタは、霧子の好みやアイデアによるもの。自分は文章を書く作業を担当していた」

 猟兵「『ほんものの猟奇』に触れることを、止めようと思わなかったのか」
 北枕「思わなかった。自分と霧子はそれで『文豪』になれた。書けば書くほど、読者たちも喜んでくれた」

 猟兵「今の地位は、自分の実力で得たものではないと自覚しているか」
 北枕「している。自分は書いただけで、アイデアは霧子のものだ」

 猟兵「今まで奪ってきた命に対する罪の意識はあるか」
 北枕「あるといえば、ある。ないといえば、ない。人間は、遅かれ早かれなんらかの理由によって死ぬものだ」

 猟兵「霧子がいなくなったあなたに、『猟奇』を見せてくれる相手はいない。今後、自分の力だけで執筆活動を続けていく意思と自信はあるか」
 北枕「自信はない。しかし、書き続ける。それがモノカキの性(さが)だ」

 猟兵「『霧子』は、あなたにとってどのような存在だったか」
 北枕「『よき理解者』だった。文才などないと言われ続けてきた人生のなかで、唯一、自分の才能を全肯定してくれた女性」

 *

「――ほらよ。これでも見返して、よく考えな」
 おまえさん方の決定も含めて、オレが明日の朝刊の記事を書くんだからよ!
 速記した資料を猟兵たちに配って。
 ペストマスクの男は、ヒヒヒと嗤った。


●マスターより(再掲)
 ・『1章~2章に参加した方』に限り、3章に参加できます。

 ・本番のプレイングは、【 7月3日(金) 朝8:31以降 】より受付けます。
  5日(日)昼頃までに締め切り、5日(日)~6日(月)にかけて執筆予定です。

 ・多様な意見が集まる可能性があるため、提案内容がそのままリプレイに反映されるとは限りません。
  とはいえ、ひとりの青年の、その後の人生がかかっています。
  他の方の提案に遠慮することなく、ぜひ想いの丈をプレイングに詰めてください。

 ※上記予定は、状況により変更となる場合があります。
  最新の執筆状況は、マスターページ冒頭をご確認ください。