アポカリプス・バウト・オブ・ザ・ヘル
「死ねぇぇえええッ!!」
「アバーッ!!」
斧を振り下ろした女性の一撃が、フライパンを握る青年の額をカチ割った!
何たる凄惨な殺人現場か!
だが次の瞬間、斧を持った女性は背後から中年女性の拳銃の一発で撃たれて絶命!
「ンアーッ!?」
「あはは……! やっぱり拳銃は強いねぇ! これさえあれば、優勝間違いなしさね!」
中年女性は目に付いた周囲の人物を次々と射殺!
彼女に一体何があったというのだろうか!?
その光景を愉悦に満ちた笑みを浮かべながらヴィオラを弾く美青年――オブリビオンの首領(レイダー)が眺めていた。
「おや、当たり武器を引いたようだねぇ? だが慢心は死を招くと肝に銘じたまえ」
「うるさいよ! あたしが勝ったら奪った食料、資材、あたしの家族ッ! 全部返してもらうからねッ!? それまでは死ねないッ! 優勝ついでにあんたもぶっ殺すッ!」
中年女性がリロードを行い、シャベルで襲いかかってくる老翁に向かって銃口を向ける。
「おら死ねよジジイが!」
トリガーを引いた途端、拳銃が暴発!
どうやら整備不良の粗悪品の拳銃のようだ。
顔面血まみれで倒れ込む中年女性に、老翁のシャベルが振り下ろされた!
中年女性の頭部の中身が飛び散る!
オブリビオンはただただ、優雅にヴィオラを奏で続けていた……。
「うう~、なんて悪趣味なオブリビオンなんだろうねっ!?」
察知したアポカリプスヘルの予知の内容に怒り心頭の蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は、集まってくれた猟兵達に、今回の任務を説明した。
「アポカリプスヘルのオブリビオンの中に、最近『アポカリプス・バウト』っていう殺戮試合大会を主催する奴らが現れたよっ! 主催は近隣の拠点(ベース)から、食料・資材・住民を略奪して、それらを『賞品』にしているんだよっ!」
……ここだけでもロクでもないイベントだって理解できる。
だがこれは序の口。
本題は、予知で観た殺戮の光景だ。
「当然、奪われたモノを奪還しようと多くの人々が集まってくる。その人達に『試合』という形式で殺し合いをさせているんだよっ! 生き残った最後の1人に全ての『賞品』を贈呈するって言う甘い話を持ち掛けて!」
つまり奪われた人々は、自分たちの取り返したいものの為に、他者を殺さなくてはなならないのか……。
「だから、みんなもこの『試合』に参加して勝ち抜くことで、主催のオブリビオンを引きずり出して撃破してほしいんだよっ! でも、猟兵以外の参加者達は殺しちゃ駄目だからねっ? 死んでるように気絶させる程度に留めてあげてねっ? あとこれ、イベントのルールだよっ!」
一般参加者達を無力化し、主催のオブリビオンを倒す。まさに一石二鳥の任務である。
でもいきなり首領を攻撃すればいいのでは?
レモンはこの問いに眉尻を下げる。
「それがね……? 首領の奏でるヴィオラは洗脳効果があるっぽい? 『試合』のルールに沿って戦わないと、『賞品』の人質達が自死したり肉の壁になって首領を守るから、それは避けるべきだよっ! あと予知の変動も誘発するかも?」
……止むを得ない。まずは『試合』に勝って、主催者をリングに引きずり出そう。
「そういうことだよっ! それじゃあ、みんな、今回もビシッと決めてきてねっ! こうした事件をこつこつ解決していけば、いずれそれが人類の再建に繋がるかもしれないよっ!」
レモンのグリモアがアポカリプスヘルへと猟兵を転移させてゆく。
血で血を洗うサバイバル・バウトで待ち受けるのは、果たして……?
七転 十五起
マッポーの世界で、欲望や義憤に駆られて死を急ぐ者達を救って下さい。
なぎてんはねおきです。
今回のシナリオはサツバツ系アクション満載のバトルシナリオでございます。
戦わなければ生き残れません!
第一章で地獄のアポカリプス・バウトに参戦していただきます。
以下のルールが存在します。ご確認願います。
●外部からの武器の持ち込みと使用を禁止、主催側から指定された武器のみを使用。
『整備不良のリボルバー式拳銃(銃弾30発付き)』
『焦げたフライパン』
『使い込まれたシャベル』
『マスターキー(斧)』
『鋭利なコンバットナイフ』
『メリケンサック』
以上、6種類から選びます。
プレイング内で何を使用するか指定して下さい。
一般人は抽選で武器を選んでますが、猟兵はなんやかんやで偶然引き当てた体で描写しますので、敢えて不得意な武器を選んでみても面白いでしょう。
なお、暗黙の了解で【武器の持ち込み自体は隠し通せるならば可能】です。
故に第二章以降は自前の武器で戦えますので、ご安心を。
一般人は猟兵よりも弱いので、殺さないように気絶に留めてください。
ただ一般人は本気で猟兵達を全力で殺しにくるで、対処法はプレイングに明記を。
第二章は集団戦。勝ち上がった猟兵達を待ち受ける敵とは?
第三章で、ようやく主催者の首領との決戦に持ち込めます。
主催者を撃破すれば、奪還された物資は全て元の拠点へ変換されます。
アポカリプスヘルの人類再建のためにも、皆様のご協力をお待ちしております!
第1章 冒険
『アポカリプス・バウトに参戦せよ!』
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POW : 近接格闘でライバルを蹴散らす!
SPD : 素早い動きで翻弄して無双する!
WIZ : 大火力の魔法を放ってなぎ倒す!
👑11
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エメラ・アーヴェスピア
本当に悪趣味な事ね…出来ればこんな事を起こさせないのが一番なのだけれど…
…問題なく解決する為には一度相手のルールに乗らないといけない…本当に嫌になるわ
…まぁルールには乗るけれど抜け道は使わせてもらうわ
『出撃の時だ我が精兵達よ』
一体一体に人間に偽装する為の衣服を着せ、腕にスタンガンを内蔵させて出場させるわ
あとは各機、位置を共有しながら効率的に戦場を回り参加者を気絶させていくわよ
武器は何でもいいし、ここにある武器なら私の兵士に傷をつけるのは難しい筈
…私は参加せず、その間に情報収集に暗躍させてもらうわ
さぁ、猟兵の仕事を始めましょう
…衣服を沢山用意するのが、地味に大変だったわ…
※アドリブ・絡み歓迎
荒野のど真ん中に巨大な天幕が貼られた場所が簡易闘技場となっていた。
オブリビオンの主催者は、ヴィオラを鳴り響かせると、集まった参加者達へ高らかに宣言した。
「さあ、諸君。勝てば『賞品』総取り、負ければすべてを失って死ぬアポカリプス・バウトへようこそ。早速、命懸けの闘争を繰り広げようではないか! ……その前に、この『試合』では私が指定した武器で戦ってもらうことになっている。武器の選出はくじ引きだ。今から奴隷を諸君の元へ遣わすので、箱の中の石に書かれた番号を確認したまえ」
オブリビオンが差し向けたのは、襤褸を纏った少女だ。その足首には鉄枷と球が鎖で繋がっている。彼女もまた『賞品』のひとつなのだろう。
奴隷の少女が次々と参加者へ番号が書かれた石の入った箱を差し出す。
参加者達とオブリビオンが箱へ視線が集中したのを頃合いとみたのか、金髪の小柄な女性がおもむろに人の輪から外れて身を潜めた。
猟兵のエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)、その人であった。
「本当に悪趣味な事ね……出来ればこんな事を起こさせないのが一番なのだけれど……」
眉間にシワを寄せるエメラ。
それだけオブリビオンの跳梁跋扈を許しているのが、このアポカリプスヘル世界の現状なのだ。
「しかも、問題なく解決する為には、一度相手のルールに乗らないといけない……本当に嫌になるわ……」
心底毛嫌いする素振りをエメラは見せながら、背負っていた大型のボストンバッグを地面におろし、ファスナーを開いた。
中には大量の衣服……しかもちょっとくたびれ、薄汚れた感じのものばかり入っていた。
「……まぁルールには乗るけれど、抜け道は使わせてもらうわ。さぁ出番よ、『出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー
)』……!」
エメラはユーベルコードで魔導蒸気兵達を79体呼び出すと、彼らにボストンバックの中身を手渡した。
「まずはこれに着替えなさい。各機、左腕はスタンガンアタッチメントを装着。それを衣服で隠しなさい。人間のフリをして、アポカリプス・バウトへ参戦し、一般人の不殺傷かつ無力化を命じるわ」
魔導蒸気兵達は命じられたまま衣服を着替え、スタンガンを長袖の衣服で隠した。
顔はタオルや手拭いでほっかむりをすれば、金属で出来た頭部がすっぽり覆われ、ぱっと見は人間と変わらぬ見た目へと変わったのだ。
「さあ、いきなさい。各機、程よく散開して一般人を気絶させるのよ。79体文の洋服代とコーデ、すごく苦労したわ……ちゃんと成果を出して頂戴ね?」
ブゥゥウウン……と内部動力機関が唸ると、魔導蒸気兵達は武器のくじ引きの列に加わってゆく。
エメラはというと、岩陰から主催者のデータを集積するため、バウト自体には直接参加しないことにしているのだ。
「……やはり、あのヴィオラが主催者のユーベルコードの核なのかしら? 猟兵でも本気を出されたら洗脳されかねないわ……」
主催者が奏でるヴィオラの音色の中に、エメラはなにか違和感を覚えていた。
聞いているだけで、怒りや闘争心が湧き上がるような、そんな音色を発し続けているオブリビオン。
「機械兵を送り込んだのは、あながち正解だったかもしれないわね……」
感情に左右されない蒸気兵は、今回のような戦場ではかなり効力を発揮しやすい。
一方、紛れ込んた大量の機械兵達は、斧やシャベル、フライパンにメリケンサックなど拳銃以外の武器をセミコンプしていた。
主催者のオブリビオンが声を張った。
「制限時間は無制限。8つのグループで最終的に1人だけ生き残れば『予選突破』だ。では、精々足掻いて殺し合いたまえ!」
その声が合図となり、各グループで生命の取り合いが始まった。
「うおおおっ! そこだァッ!!」
ガタイのいい中年男性がコンバットナイフを機械兵に突き立てる!
だが、金属表皮の機械兵に刃が通らず、カウンターのフライパンが中年男性の頭頂部に激突!
左腕から発せられた高圧電流がフライパンを介して伝播すれば、あっという間に中年男性は白目を剥いて昏倒してしまった。
別の場所では機械兵が少女の持つ拳銃から鉛玉を浴びせられていた。
「なんで!? 拳銃で撃ったのにどうして斃れないの!?」
錯乱する少女の鳩尾に、メリケンサックの機械拳がめり込んだ。
そのまま電気ショックを浴びて失神してしまう少女。
『58番、あなたは撃たれたから脱落するフリをしなさい。その女の子の隣で地面に転がっておけばいいわ。オブリビオンに怪しまれたら元も子もないもの』
エメラの指遠隔令に、58番と呼称された機体がうずくまり、そのまま前のめりになって倒れた。
機械といえども、迫真の演技であった。
この後も、一般人達を次々と昏倒させてゆきながら、上手い具合に機械兵達もやられたフリをしてその場に倒れ伏してゆく。
そうして、最後の機械兵1体が残り、このグループはエメラの操る機械兵が予選を突破したのだった。
成功
🔵🔵🔴
マヤ・ウェストウッド
「弱者が強者に搾り取られ、さらに力を持つヤツがそのうま味を啜る。やはりこの世界は、病んでいる」
・かつてマヤは医学を志していた。そもそも、解放軍に入隊したのも銀河帝国を"世界の病理"と看做して"治療"する為であった
・医学に基づいた観察眼は手足の筋肉の動きから敵の挙動を予測し、最短距離で急所に叩き込む突破口を見出す
・武器はフライパンを選択。解放軍仕込みの暗殺技術と相まって、一般人の攻撃をよくいなす
・しかし決め手は右眼。義眼に仕込んだ重力子加速装置から放たれる謎の作用力。非殺傷レベルで高重力地帯を形成し、敵を抑えつける
「安心しな、助けに来たよ。もう誰にも奪わせやしない。だから……今はちょっと寝てな」
隻眼の女キマイラことマヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)は、目の前で繰り広げられるアポカリプス・バウトの凄惨な光景に目を細めていた。
「弱者が強者に搾り取られ、さらに力を持つヤツがそのうま味を啜る。やはりこの世界は、病んでいる」
そう独りごちると、くじで引き当てたフライパンを握り締めて駆け出してゆく。
「こっち来んなァッ!?」
半狂乱で拳銃の引き金を何度も弾く青年!
だが、素人のエイムでは元解放軍――スペースシップワールドにて銀河帝国と鉛玉の贈答会を行った身であるマヤを捉えることは出来ない。
「手元だけで銃を撃とうとするな。脇を締めて両足をふんばれ。顎を上げるな、射線が上に向くだろ。ただまぁ……銃の反動に全身が持っていかれないだけの体幹の強さは褒めてやる」
銃弾をかわしながら、青年へ銃の撃ち方をレクチャーするマヤ。
「ごちゃごちゃうるせーよッ!!」
青年は怒りと畏怖がごっちゃになった感情のまま、空の薬莢を地面にばら撒く。
リロード!
その瞬間をマヤは見逃さなかった。
「待て。その銃、整備不良で暴発するぞ。没収だ」
素早く青年へ肉薄したマヤは、青年の懐へ潜り込み、フライパンで彼の腕を強打!
ゴリッと骨が軋む音が響けば、涙を流しながら青年は拳銃を手から地面に零した。
そのままマヤは耳元で何かを囁やくと、青年の側頭部にフライパンの側面をぶつけた。
こめかみ直撃!
そのまま意識を手放した青年を戦場の外へそっと転がしたマヤは、すぐさま他の一般人の暴走を止めに掛かる。
「ごきげんよう、お嬢さん。随分とご機嫌の様子だが、何か良い事でもあったのかい?」
「ふざけてるの!? 最悪の気分だわ!!」
メリケンサックで殴りかかってくる若い女性の拳を、マヤは軽くスウェーしてあしらってゆく。
その間、マヤは女性に語り掛けた。
「アタシはかつて医学を志していた。お嬢さんは知らなかっただろうが、この世界の外には全く違う理の世界が36個も浮かんでいるそうだ。その中のひとつ、無限の宇宙が広がる世界では、かつて全宇宙を支配する銀河帝国が存在した」
「一体何を話しているの!?」
大振りの左フックをバックステップで華麗に回避したマヤは、そのまま言葉を継いだ。
「アタシは解放軍に身を置き、銀河帝国の連中と戦った。そもそも、解放軍に入隊したのも、銀河帝国を“世界の病理”と看做して“治療”する為だったのさ」
「だから、さっきからなんなのよ!?」
「この世界のこの状況、誰が診たって病んでる上に腐ってやがる。だから、アタシが治しに来てやったのさ」
「……え?」
女性が思考を巡らせる前に、マヤのフライパンの縁が、女性の前髪を掠めた。
途端、女性の身体が見えない手に押し潰されたかのごとく、地面に叩き付けられてしまったではないか!
「ゲはッ!? か、身体が……動、かな
……!?」
「やめときな。……アンタの命までは取らないさ」
マヤの義眼の瞳孔が見開いている。
その真の性能は、小型の重力子加速装置であり、瞳孔から超重力力場を目の前に形成することで、女性の身体を謎の作用力で抑えつけているのだ。
これぞユーベルコード『魔矢眼・重圧モード(マヤ・ガン・サプレッサーモード)』である。
女性は肺まで圧迫された状態であり、このままの状況が続けば酸欠で窒息しかねない!
だから、気絶する寸前までに威力を留めたマヤは、女性の耳元で――先程の青年と同じ言葉を囁いてみせた。
「安心しな、助けに来たよ。もう誰にも奪わせやしない。だから……今はちょっと寝てな」
「嗚呼……! あなたは、もし、や、救世主さま
……!?」
「そんな大層なもんじゃないさ。アタシは……ただの闇医者だ」
ゴツンッとフライパンの底で女性の頭を軽く小突いてみせるマヤ。
その実、義眼から発せられる超重力で女性の肺を圧迫して空気を押し出し、酸欠による失神を誘発させたのだった。
女性は安堵の表情を浮かべたまま、その場で気絶していった。
「さて……他の馬鹿共も止めるとするか。ほら、待て!」
マヤの掛け声が響く度に、一般人はその場で飼い犬のように地面へ伏せてゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
髪塚・鍬丸
任務了解、だ
戦場を舞台と勘違いしている輩を教育すればいいんだな
どんな武器だろうと、力加減次第で傷一つ付けずに敵を無力化出来る
何ら問題は無い…って、拳銃が当たったか…
忍にとって銃は最後の武器、これで手加減は流石に無茶か
無茶を通すが忍法さ
【求蓋の外法】
「整備不良の拳銃で敵を無力化する技を極めた未来の自分」の可能性を召喚
「頼む、俺」『承知。任せよ、我』
極めた【早業】で全弾丸の弾頭を手裏剣の刃で切り落とす
更なる【早業】で装填
【見切り】で攻撃を喰らわぬ様立ち回り、迫り来る人々に連なる【早業】で耳元に拳銃を伸ばし空砲を激発
気絶させるには耳元で爆竹一つ鳴らすだけでいい
【マヒ攻撃】だ。脳への衝撃で無力化しよう
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は忍者である。
忍者は受領した任務を完遂するために行動を起こすのだ。
「任務了解、だ。戦場を舞台と勘違いしている輩を教育すればいいんだな」
髪塚は早速、アポカリプス・バウトのルールを熟読すると、武器を得るためにくじ引きに挑んだ。
「どんな武器だろうと、力加減次第で傷一つ付けずに敵を無力化出来る。俺にはそのノウハウがある。何ら問題は無い……」
自信たっぷりに箱の中の石を掴んで引き上げる。
石には数字の『4』が書かれていた。
「このグループで『4』を引いた参加者諸君、おめでとう! 君たちには、この拳銃をプレゼントしよう!」
主催者のオブリビオンが抽選結果を発表するやいなや、髪塚の表情に陰りが出る。
「って、拳銃が当たったか……。忍にとって銃は最後の武器、これで手加減は流石に無茶か……」
ううむ、と低く唸って考え込む髪塚だったが、その脳裏にある秘策が思い浮かんだ。
「そうだ、俺は忍者だ。そして、無茶を通すが忍法さ」
すると髪塚は、素早く九字を唱えながら印を幾度も結んでゆく。
「臨む兵 闘う者 皆 陣列べて前を行く」
想像するは、『整備不良の拳銃で敵を無力化する技を極めた未来の自分』の可能性。
ユーベルコード『求蓋の外法』は、髪塚の可能性が具現化・召喚させて自分の身体を操らせる効果を持つ。
「……というわけだ。頼む、俺」
『承知。任せよ、我』
現れた未来の自分に状況説明を行った後、その身体の操作権限を髪塚は未来の自分に託した。
すると、いきなり支給された銃弾30発の弾頭を、オブリビオンの目の届かない死角で手裏剣の刃で次々と削ぎ落としてゆくではないか!
なんという早業!
オブリビオンが違和感に気が付いた時には、髪塚の細工は全て完了しているのだ!
『では、参る!』
未来の自分が一般人同士の乱戦の隙間を掻い潜り、次々と空砲を乱射!
空砲なのでもちろん殺していない。
だが、衝撃波と爆音は、銃口を至近距離で向けられた人々には効果覿面だ。
「気絶させるには耳元で爆竹一つ鳴らすだけでいい。人体は繊細だからな」
これは、即興の小型スタングレネード!
銃を向けられるという恐怖と、耳元で炸裂する銃声に、一般人達は腰を抜かすどころか気絶していた。
「防ぎきれない脳への衝撃で無力化させよう。大丈夫だ、ここは俺達に任せてぐっすり寝ていろ」
何度目かの炸裂音が鳴り響くと、他の一般人達は次々と昏倒していった。
「この予選グループは俺の勝ちだな。首を洗って待ってろ、勘違い野郎?」
髪塚と主催者のオブリビオンの視線がバチバチとぶつかり、火花を散らし合っていた。
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
猟兵やってると、この手の殺し合いを楽しむ奴を見かけるけど、未だに理解できない。
何が楽しいんだ?
とりあえず、一般人を殺したように見えるように、気絶させればいいんだよな?
武器は…これ…シャベル?
確か土掘る道具じゃなかったか?
本当は持ち前のダガーに近い、ナイフが良かったんだけど。
まあでも、大きさはダガーに近いし、何より身軽に動けるか。
あとはポケットに入ってる精霊の石に、服の上から手を当てて、こっそり風の精霊様にお願いを。
少し空気抵抗を減らして貰って、早く動けるようお願いしたい。
相手に素早く近づいて[気絶攻撃]をしたい。
スコップの取っ手部分で峰打ちすればいいかな。
怪我させたくないし、最低限に留めたい。
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は眉間にシワを寄せ、仏頂面でくじ引きをしていた。
(猟兵やってると、この手の殺し合いを楽しむ奴を見かけるけど、未だに理解できない。何が楽しいんだ?)
木常野は元は野生の狐として生活していたためか、サディズム……他者への加虐嗜好を理解出来ない。考えてもよく分からなかったので、まずは目の前の任務に木常野は集中することにした。
(とりあえず、一般人を殺したように見えるように、気絶させればいいんだよな? えっと、2番?)
「2板を引いた諸君には、このシャベルを進呈しよう!」
主催者のオブリビオンがシャベルを掲げて参加者達へ告げた。
「武器は……これ……シャベル? 確か、土を掘る道具じゃなかったか? 本当は持ち前のダガーに近い、ナイフが良かったんだけど」
奴隷の少女からシャベルを受け取った木常野。
それを野球のバットのようにブンブンッと素振りしてみる。
「というか、俺の知ってるシャベルじゃないぞ。これ、スコップじゃないのか?」
「ふぅむ、参加者諸君の中で戸惑いがあるようだから、私からウンチクをひとつ語ってあげよう」
オブリビオンはシャベルを手に取ると、金具部分の上部を指差した。
「ここが平行で足を掛けられるものが『シャベル』だ。そしてここの部分が曲線の部分が『スコップ』である。だが、大きいほうが『シャベル』で、小さい方が『スコップ』という区分をする場合もあるし、ブレード部分が剣状に先が尖っているものを『シャベル』で、そうでない真四角のものを『スコップ』と呼ぶ場合もある。だが、この場では『先が剣状』で『足が掛けられる』これを“シャベル”と定義する」
「ええと……シャベルって難しいんだな……というか妙に詳しいな、あのオブリビオン?」
木常野はナイフのように手元で小回りがきく武器を欲していたが、結局、長さ1.2m程のシャベルを引き当ててしまい、困惑している。
「でもエレメンタルスタッフと同じ感覚だな。なら普段通りに身軽に動けるか」
物は考えようだ。ダガーではないが、いつもの杖だと思えば戸惑いも消える。
そして、遂に木常野のグループが戦闘を開始!
響き渡る銃声、怒号と金属音があちら此方から響く。
「早く皆を止めないと。風の精霊様、お願いします……!」
ポケットの中に忍ばせておいた精霊の石を衣服越しに触れて祈りを捧げる。
すると、木常野の精霊力が増幅し、彼の身体を空気の対流で包み込む。
これで空気抵抗を減らし、身のこなしが素早くなった。
木常野はまず、目の前で殴り合う大人の間に割って入る。
「頼む、無駄な殺し合いはやめてくれ」
シャベルのブレード部分を盾の代用にして、両者の武器を受け止めた木常野。
だが、戦闘を邪魔された大人2人は、木常野を排除すべく襲い掛かってくる。
「邪魔すんな! 俺達の拠点の食料を取り返さなくちゃならねぇんだ!」
「俺の妹があそこに居るんだ! 邪魔するなら、お前から殺してやるッ!」
目を血走らせて殴りかかってくる2人の大人達。
木常野は冷静に身構えると、シャベルの取手部分を勢いよく前へ突き出した!
取手部分が片方の大人の鼻柱に激突!
「あンぎゃッ!?」
男は鼻血を吹き出しながら昏倒!
だがもうひとりの男が真上からダガーを振り下ろさんと力を込めている!
「死ねえぇっ!」
「風の精霊様、俺を守って下さい」
ビュオォッと木常野の身体から一陣の突風が吹き荒れ、男に吹き付けられた!
巻き上げられた砂が目に入り、男はナイフを振り下げ損ねてしまう。
「うゲェッ!? ペッペッペッ!!」
砂を吐く男の懐へ、木常野が素早く潜り込む。
「ちょっと寝ててくれ」
木常野の放ったフルスイングのシャベルの柄が男の腹に直撃!
「かハッ――!?」
肺の空気を強制的に吐き出された男が白目を剥く。
そのまま意識を手放して失神してしまった。
「よし、このままどんどん気絶させて……ん?」
木常野の野生の勘が、自身のみの危険を察知!
ほぼ同時に銃声が轟く!
すぐさましゃがんだその頭上に、鉛玉の軌道が走っていった。
「チッ! 勘のいい奴だぜ!」
「拳銃か。他人へ向けて撃つなんて危ないじゃないか」
木常野はすかさず拳銃を持った男へ飛び掛かると、シャベルを横薙ぎに一振り!
シャベルの取手が男のこめかみへキレイに入った!
「ひギャンッ!?」
一撃で気絶した男の安否を確認した木常野。
「よかった、ちゃんと生きてる。他の一般人達も怪我させたくないし、最低限に留めたいな」
木常野はその後も戦場を駆け抜けてゆき、シャベル一本で一般人達を薙ぎ倒してゆくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ルード・シリウス
使用武器:『焦げたフライパン』
攻撃手段としてはフライパンで顔面目掛けてフルスイング。無論殺さない程度に加減はするが、一撃で昏倒させるくらいは狙う
因みに、攻撃する際は焦げた部分についてあれこれ呟きながら、或いは訪ねながら。ふざけてる様に見せて真面目に戦う
殺しに来る一般人の攻撃に対しては、攻撃の瞬間を見切って残像を置きながらの最小限の動きで回避。武器によっては空いた方の手で受け止める
この焦げた部分だが…肉でも炭化させたのか?肉だとしたら、余程強火で焼いたんだろう
嗚呼、ふざけてないぞ。これでも大真面目だ。美味い肉を食うなら、調理器具もちゃんとしたものを使うべきだからな。それは戦場で使う武器も同じだ
「なぁ……その斧で俺の頭をカチ割ろうっていうならやめておけ」
ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は焦げたフライパン片手に、マスターキー(斧)を掲げる初老の男性と対峙していた。
その口元は半笑い、如何にも相手を小馬鹿にするような態度を見せながら斜に構えるルード。
「てめぇが斧を振り上げた瞬間、俺はてめぇの顔面をこのフライパンの底でスマッシュしてやるぜ」
「ハッ! 虚仮威しも大概にしろ! ハズレ武器のフライパンを引いた雑魚に、何を言われようが響いてこないな!?」
「そうか……警告はしたからな……?」
ルードは首や肩をニ、三度捻って筋肉を解す。
いつもの魔剣は“今はまだ”使えない。
しかも手加減をしなければならないため、使う筋肉が微妙に普段と異なる。
(やれやれだな……眼の前の相手の力量すら測れねぇのか……)
いきり立つ初老の男性の無謀さに、内心ルードは呆れ返っていた。
だからこそ、ルードは敢えて隙を見せて男性の攻撃を誘った。
先程の発言も、相手の油断を誘うためにわざと行っていた。
ルードは歴戦の猟兵であり、大魔王だろうが帝竜だろうが関係なく喰い破ってきた戦士だ。格下が相手とはいえ、戦闘に一切の妥協をせずに真面目にアポカリプス・バウトに取り組んでいるのだ。
だが、そんな思惑など知る由もない初老の男性は、まんまとルードの誘いに乗っかってしまった。
「隙だらけだな!? ほら、そこだァッ!!」
勝ち誇った口調で斧を振り下ろす男性。
しかし、斧がルードの頭蓋骨へ到達するよりも前に、男性の鼻柱がフライパンの底に激突していた。
ぐぉわぁんッと鈍い金属音が戦場に鳴り響く!
「言ったはずだ、警告はした、とな……? って、聞いてねぇか」
前歯が折れて鼻血を垂れ流しながら気絶する男性を、ルードは雑に蹴飛ばす。
他の戦闘に巻き込まれないようにするための、彼なりの配慮だ。
だが一難去ってまた一難。
今度はシャベルを振り回す女性が襲ってきた。
「フライパンが武器……? つまり弱いってことよね?」
「おいおい……てめぇも武器で俺の戦力を見誤るのかよ」
ルードの失望の言葉に、女性は涙目で訴えた。
「なによっ? だって拳銃で狙われたりナイフで刺されるよりは、フライパンは安心度が桁違いじゃない!?」
「それが過信だと、なんで分からねぇんだ……?」
ルードはもはや同情せざるを得ない。
確かに、彼らは大事なものを『賞品』にされて、必死に取り返そうとしている。
今、彼らは冷静な判断が出来ないだろうし、見誤りもするだろう。
故に、ルードの胸のうちにひとつの考えが過る。
(俺が主催者をぶっ殺して、こいつらの大切なものを全て返してやればいい……。俺にも居場所や仲間が出来て、今ならその大切さが理解できるからな……)
参加者達の必死さや悲痛な願いをルードは飲み込むと、女性に向かって言葉を投げ掛けた。
「ところで、このフライパンの底を見てくれないか? この焦げた部分だが……肉でも炭化させたのか? 肉だとしたら、余程強火で焼いたんだろう。一体、何の肉なんだ? 牛か? 豚か? 鶏か? 考えてみたら気にならないか?」
「はぁ?」
女性はルードの発言に耳を疑った。
「あんた……いきなり何を言ってるの?」
「嗚呼、ふざけてないぞ。これでも大真面目だ。美味い肉を食うなら、調理器具もちゃんとしたものを使うべきだからな」
ルードの肉体が地を爆ぜる!
「――それは戦場で使う武器も同じだ」
弾丸めいた速度で、女性の目の前まで肉薄したルードは、そのままフライパンをフルスイング!
だが女性もカウンターのシャベル攻撃!
「いやあァァーッ!!」
再び響く金属音!
「……手を使っちゃいけねぇなんて、俺は聞いてねぇぜ。遠慮なく使うとするか」
「嘘ぉ……? シャベルを、掴んで防御、した……?」
おでこをフライパンの底で殴打された女性が目を回して昏倒!
ルードはシャベルを空いた手で掴んで、攻撃を受け止めていたのだ。
「このシャベルは没収だ……。武器を奪っちゃいけねぇとも聞いてねぇからな……」
かくして、ルードはフライパンで一般人を殴打して気絶させながら、次々と武器を回収してゆき、さながら弁慶のごとく武器まみれになりながらグループ優勝を果たしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
黒木・摩那
またオブリビオンが悪趣味なものを作り出したようです。
アポカリプス・バウトとか、ローマ剣闘士もドン引きですよ。
ともかくこのままにすれば、オブリビオンの愉悦のために死体の山ができてしまいます。
なんとしても阻止しなくては。
まずは武器選びです。
……これは普段使いの武器とは系統が全然違いますね。
ここは基本に戻って、メリケンサックでいきましょう。
試合になったら、一般人の攻撃はスマートグラスのセンサーと【第六感】で回避します。
弾は【念動力】で軌道を逸らします。
こちらの攻撃はメリケンサックにUC【サイキックブラスト】を乗せて、市民を落としていきます。
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)もまた、アポカリプス・バウトに参戦する傭兵のひとりである。
「またオブリビオンが悪趣味なものを作り出したようです。アポカリプス・バウトとか、ローマ剣闘士もドン引きですよ」
小声で独りごちると、武器のくじ引きのために長蛇の列に加わった。
(ともかくこのままにすれば、オブリビオンの愉悦のために死体の山ができてしまいます。なんとしても阻止しなくては)
強い決意を胸に宿して臨んだくじ引き。
(まずは武器選びですが……これは普段使いの武器とは系統が全然違いますね)
リストアップされた武器の種類に戸惑いを隠せない黒木。
黒木が掴んだ石には、1番と書かれていた。
そして、主催者から1番がメリケンサックに該当すると伝達された。
「なるほど。なら、ここは基本に戻って、メリケンサックでいきましょう」
黒木はメリケンサックを握りしめると、その両腕にサイキックエナジーを漲らせてゆく。
そして、試合開始の時が来た。
「スマートグラスのセンサー、正常稼働よし。むっ!?」
背後から迫る殺気を第六感で気取った黒木は、すぐさまサイドステップからのノールックカウンター!
ナイフを持った少年の鳩尾に拳が叩き込まれた瞬間、ビリリッと彼の全身に高圧電流が流れた!
「はい、ちょっと寝てて下さい。しばらくは死んだように身体が動きませんから、おとなしく目を閉じて死んだフリをしてください」
黒木は殴打の瞬間、ユーベルコード『サイキックブラスト』を掌から放出し、感電させて相手を麻痺させたのだ。
その後も襲い掛かってくる一般人達の行動を、スマートグラスのセンサーで素早く解析・演算することで、より効率的に戦場を駆け抜けてゆく黒木。
彼女の後ろには、一般人達が感電してトヨス・ウオ・マルシェのマグロめいてゴロゴロと地面へ転がっていった。
そんな黒木へ向けられる拳銃の銃口!
数回のマズルフラッシュ!
初速376m/sの銃弾の雨が空気を螺旋状に裂きながら黒木へ殺到する!
だが、黒木は射線上から逃れようとせず、銃弾を睨み付けるだけだ。
「私のサイキック能力を侮らないで下さい」
むんっと黒木が念じると、空間に揺らぎが生じる。
黒木が発生させた念動力が周囲の空気を震わせて居るのだ。
この空気の波が強い抵抗力となり、弾丸の軌道が尽く左右へ逸れてゆく!
「安心して下さい。あなたの大切なものは、私達猟兵が取り返してみせますから」
拳銃をに握った一般人の懐に潜り込んだ黒木がそう小声で囁いた後、掌から放たれた高圧電流でまたもや地面に一般人を転がしていった。
成功
🔵🔵🔴
フィランサ・ロセウス
ああ……私が正義の猟兵でなかったなら、
とてもとても“好き”な催しだったのに、残念だわ
ご心配なく、勿論一般人の参加者は死なせないように善処します
支給される武器はどれも魅力的だけど、
手加減する事を考えたら「メリケンサック」辺りを引き当てたいわね
医療や戦闘の知識を元に、なるべく安全に急所を突いて昏倒させたり、
首を折ったように見せて締め落とす
特に射程と殺傷力が段違いな上、暴発のリスクまである拳銃が一番危ないわね
これを持っている人を最優先で倒しましょう
撃たれる前に懐に潜り込み、早業で銃を持つ手を部位破壊
上手く無力化できたら、そのまま眠ってもらうわ
やりすぎ?
死ぬのに比べれば手が砕けるくらい安いものでしょ?
アポカリプス・バウトの詳細を聞いたフィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)は、自分の立場に歯痒い思いを抱いていた。
「ああ……私が正義の猟兵でなかったなら、とてもとても“好き”な催しだったのに、残念だわ」
好悪問わずフィランサの心を揺らす対象は“好き”という感情で表現し、その対象を破壊することが彼女の愛情表現。つまり、猟兵でなければ、フィランサは“好き”の嵐を荒野にぶちまけるところであった。
だが、犯した罪を減免される事と引き換えに、フィランサは猟兵活動に協力しているため、今回は己の感情をグッと堪えることにした。
(ご心配なく、勿論一般人の参加者は死なせないように善処します)
そう心のなかで呟くフィランサ。
彼女がくじ引きで手に入れたのは、メリケンサックであった。
「支給される武器はどれも魅力的だけど、手加減する事を考えたら、これが一番手頃ですね」
早速、第7グループの戦闘が開始すると、フィランサは持ち前の敏捷性を活かした早業で手近な一般人を次々と殴り抜いてゆく。
一見、粗雑に拳で殴っているようにもみえるが、その実、フィランサの医療や戦闘の知識を元に、なるべく安全に急所を突いて昏倒させたり、時には組み付いて首を折ったように見せて締め落としているのだ。
だが、そんな彼女のこめかみの横をすり抜けてゆく凶弾に、フィランサは思わず真横へ飛び退いた。
「居ましたね……射程と殺傷力が段違いな上、暴発のリスクまである拳銃。あれが一番危ないわね」
銃を握っているのは、小太りの男性であった。
「さらわれた娘を取り返すためだ……! お嬢ちゃん、死んでくれぇっ!」
呼吸を荒げて、目を血走らせながら拳銃を握る男性。
「待って、そんな強烈な“好意”を向けられたら、私……!」
うつろなフィランサの笑顔が、徐々に気色に満ちてゆく。
「――あなたのこと……“好き”になっちゃいそうっ!」
フィランサは自分の指を弾いて鳴らすと、瞬時に男性の目の前まで高速で詰め寄る!
これは……ユーベルコード!
フィランサは『クロックアップ・スピード』を発動させ、高速戦闘モードに変身したのだ。
「ああ、でも一般人は“好き”になったら駄目なんだっけ? はぁ……つまんない」
溜息混じりに、フィランサは拳を男性の手の指へ振り下ろした。
コキリ、と小気味いい音を立てながら、男性の右の指の第二関節が砕け散った!
「あァアあぁーッ!?」
一瞬の出来事に男性の理解力は追い付かず、ただただ指先に走る激痛に割れを失うばかり。拳銃は男性の指先から零れ落ちると、そのまま大地へ転がっていった。
「やりすぎ? いいえ、死ぬのに比べれば、手が砕けるくらい安いものでしょ?」
そのままフィランサの裏拳が男性のこめかみを強打すれば、一瞬で男性は意識を手放してしまう。
「さて、他にも拳銃を所持している一般人が居るようですね。早いところ寝かし付けて、拳銃を回収しないとですね」
フィランの姿が再び忽然と消えた。
次の瞬間、戦場のあちらこちらで苦痛の悲鳴が上がり、大地に寝転がる一般人が増えてゆくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
随分とまあ悪趣味だこと。どこの世界でもこの手の連中は湧くのねぇ。
気分悪いし、きっちり叩き潰しましょ。
そうねぇ…得物は「スコップ」にしようかしら。
…え?リボルバー?たしかにあたしの普段の得物だけど。
整備不良でいつ暴発するかわからないんじゃ、弾抜いて鈍器にするぐらいしか使い道無いじゃない。ならまだリーチあるほうがマシよぉ。
●要殺で警戒しつつ〇目立たないように立ち回って○気絶攻撃で各個撃破してきましょ。
○目潰し・投擲・グラップル、手立てはいくらでもあるもの。
雑な得物の路地裏喧嘩なら、あたしそこそこ覚えあるのよぉ?
元とはいえスラムドッグ、舐めないでちょうだいな。
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は愛銃オブシディアンのホルスターを、ギャルソン服の内側に隠したまま、支給されたシャベルを持って身構えていた。
「これ、『スコップ』……よねぇ? 間違いなく『スコップ』だわぁ」
……呼称に地域差があるため、ここはティオレンシアの呼称する『スコップ』で統一する。
「それにしても、随分とまあ悪趣味だこと。どこの世界でもこの手の連中は湧くのねぇ。気分悪いし、きっちり叩き潰しましょ」
彼女は細い糸目を更に細めて肩を竦めながら、斧を振り上げて飛び掛かってきた少女の急襲をひらりとかわしてみせた。
「いきなりあたしを狙うなんてぇ、お嬢ちゃん、運が無いわねぇ?」
「なによ、あんたの手にあるものは武器ですらないじゃない!」
鬼気迫る表情で、斧をブンブンと振り回す少女。
だがその所作は戦闘経験のない素人そのものだ。
ティオレンシアのような歴戦の猟兵ならば、回避することなど造作もない。
「お嬢ちゃん、相手の得物が武器じゃないからって、自分が優位に立てるなんて思ったら大間違いよぉ?」
斧の刃を、スコップのブレードで弾き返す。
金属同士が激突し、けたたましい音と火花が散った。
「スコップが武器じゃないですって? それこそ勘違いよぉ?」
ティオレンシアはそのままスコップの先端で、少女の鳩尾を軽く突き飛ばした。
鋭利な先端が少女の腹にめりこめば、彼女は途端に嗚咽を漏らして蹲ってしまう。
「突けば槍、払えば刀、殴れば棍棒、受け止めれば盾にもなって、もちろん穴を掘って罠すら張れる……こんな優れた“武器”は他にはないわよぉ?」
「くそ……っ!! 早く殺しなさいよ……っ!?」
少女は敗北を悟り、ティオレンシアへ首を差し出す。
だが、ティオレンシアはそれを拒んだ。
「それは駄目よぉ。今回は殺さないように言われてるから、おとなしく気絶しててくれないかしらぁ? それにあたし、本来の得物は拳銃だし……」
「待って、じゃあ、なんでそんなに強いの……?」
「はい、おしゃべりが過ぎると主催者に怪しまれちゃうから、おやすみなさぁい?」
「げフッ
……!?」
少女はティオレンシアに首投げをされ、全身を強打して失神してしまった。
「そうねぇ? たしかにリボルバーはあたしの普段の得物だけど。整備不良でいつ暴発するかわからないんじゃ、弾抜いて鈍器にするぐらいしか使い道無いじゃない。ならまだリーチあるほうがマシよぉ」
そう独りごちると、ティオレンシアはすぐに自身の気配を消した。
別の参加者からナイフで斬り付けられそうになたからだ。
「あたし、こう見えて結構用心深いの。不意討ちなんて通じると思わないでねぇ?」
途端、彼女の視力・聴力・第六感・反応速度が爆発的に強化される。
ユーベルコード『要殺(サスペクト)』の効果だ。
斬り付けてきた青年の動きを、強化された視力で確認し、次の攻撃の動作を第六感で見切り、そこへ先んじてスコップによる咄嗟の一撃をティオレンシアは繰り出した。
「あギャッ!?」
背中越しに肺をを強打され、呼吸を阻害された青年がたたらを踏む。
すぐさまティオレンシアは青年の足をスコップで払い薙いで仰向けに転倒させると、そのまま取手で青年の腹部を強打した!
「かは……ッ!!」
腹の中の空気も強制排出された青年は、とうとう酸欠で伸びてしまった。
「雑な得物の路地裏喧嘩なら、あたしそこそこ覚えあるのよぉ? 目潰しに投擲にグラップル、手立てはいくらでもあるもの。元とはいえスラムドッグ、舐めないでちょうだいな」
瞬く間に2人目を撃破したティオレンシア。
その後も彼女の快進撃は止むことはなく、結果、見事に不殺を貫き通したまま全員を無力化かつ気絶させることに成功したのだった。
成功
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第2章 集団戦
『改造屍人『インテグラルアーム』』
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POW : 暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD : マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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8つの予選グループを勝ち登ってきたのは、全員が猟兵であった。
主催者のオブリビオンは、予選に猟兵がまじり込んでいるのは薄々勘付いてはいたが、敢えて泳がせていたのだ。
「やはり一般人には猟兵相手は荷が重いようだねぇ。だが、ここからが本戦の開始ということを忘れてもらっては困るよ、猟兵諸君?」
主催者が合図を送ると、奴隷達はテントの奥にある鉄格子の檻の扉を開けた。
そこからヌゥ……と這い出てきたのは、様々な死体が結合したかのような筋組織を持つ巨大なゾンビの群れであった。
「紹介しよう。アポカリプス・ヘル本戦の対戦相手、改造屍人『インテグラルアーム』達だ。オブリビオンストームで崩壊した研究組織から脱走した個体を参考にして、私自らこの試合でくたばった者たちの死体を繋ぎ合わせて作ってみたんだが、なかなかよく出来ていると思わないか?」
何たる悪逆非道の行いか!
これはアポカリプス・バウトの被害者の尊厳を踏みにじる行為である!
もし、一般人が勝ち上がっていた場合、粗末な武器でこんな怪物達を相手取らなければならなかったのだろう。
つまり、この主催者は最初から参加者に勝たせるつもりはなかったという事だ。
だが、猟兵達は隠し持っていた武器をすぐさま装備すると、瞬時に臨戦態勢へ移行する。オブリビオンを殺すことに長けている猟兵たちならば、主催者の思惑をひっくり返すことだって出来るだろう。
「案の定、武器を隠し持っていたか。良かろう、私の『作品』で、諸君の悲鳴の旋律を奏でてみせよう!」
主催者が怪物達を猟兵にけしかけた!
こうなった以上、怪物達を倒して『本戦』を勝ち抜くほかない!
本来の武器を取り、生ける屍達を再び殺して魂を弔え、猟兵達!
マヤ・ウェストウッド
「エリクサ、調剤して。成分は××××(明記すると色々ヤバいやつ)」
・LX-R インテリジェント・ピルケースにゾウ用の麻酔薬、組織再生を抑える成分、筋肉を過剰に弛緩させる成分など闇医者らしくエグい薬剤の処方を依頼
・調剤された薬を喋る拳銃Xキャリバーに飲ませ、毒入り弾頭の精製をコマンド。任意の口径が撃てるのは、Xキャリバーたる所以
・無数の触手を繰り出す前に[先制攻撃]で敵の懐へ[ダッシュ]で肉薄し、逆に触手の届かなそうな肩か背中に[騎乗]してUC発動。[クイックドロウ]で毒銃が悪態と火を吐きまくる
・からみつく触手はソウルランセットで"外科的処置"だ
「救ってやるさ。それがアタシの本業だからね……」
マヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)は静かに怒りの炎を心に灯していた。
「お前がこの事件の“がん細胞”だっていうのは、嫌というほど解ったよ」
主催者を一瞥したマヤは、すぐさまインテグラルアーム達から距離を取った。
「救ってやるさ。それがアタシの本業だからね……」
タチバナ製作所製フローレンス緊急医療パックから、LX-R インテリジェント・ピルケース――通称エリクサへコマンドを口頭で伝達するマヤ。
「エリクサ、調剤して。筋弛緩剤のテトロドトキシンと臭化パンクロニウム、それらをヒトの致死量の6倍で。それとエトルフィンとサイトカイン阻害薬もありったけブチ込んで」
『警告。対象が調剤された薬品を服用した場合、数分で呼吸困難及び細胞組織の破壊、並びにアナフィラキシーが発生します。よろしいですか?』
エリクサの警告は当然だ。
劇薬のオンパレード調合は、まさに闇医者らしいと言うべきか。
だが、マヤが即答する。
「構わないから早くやってくれ。……アイツらを救うためだ」
『コマンド受領。調剤を開始します。しばらくお待ち下さい』
エリクサの調剤が完成するまで、マヤは襲い掛かる無数の触手から逃げの一手を決め込む。
「その絡みつく触手……戴けないね。その“患部”は“外科的処置”で切除させてもらおうか」
悪しき心をも切除する手術刀ことソウル・ランセットを振るい、次々と触手の束を切り捨てる!
だが、切っても切っても触手は驚異的な再生力を発揮して復元する。
「Grururururuuuuuu……!」
なかなか捕まらないマヤに、インテグラルアーム達が苛立ち、唸り声を漏らす。
『調剤が完了しました。どうぞ、お受け取り下さい』
と、ここでエリクサから対改造屍人用の毒薬が完成。
すると、マヤは腰のホルスターから知性ある拳銃であるXキャリバーを抜いた。
「起きろ、仕事の時間だ、Xキャリバー」
『んだよ、俺様ちゃんが折角気分良くお昼寝満喫してたのによッ?』
「知ったことか。とにかくコイツをグッと飲みな」
劇薬の錠剤をチャンバーに突っ込もうとするマヤ。
だがXキャリバーがこれを拒否。
『やめろッ! そりゃエリクサの錠剤じゃねぇーかッ! あいつの作る薬はゲロマズなんだ、勘弁してくれッ!』
「拳銃が味なんて解らないだろう? ほらさっさと飲み込みな」
『待て待て待てッ! それ絶対ヤバい調合薬だろッ!? さっき筋弛緩剤とかアナフィラキシーとか聞こえたぜッ!? つまりは毒薬じゃねぇーか!』
「……へぇ? お昼寝していた割には随分と耳ざといようだね?」
『ギックゥ……ッ!?』
拳銃の温度がこころなしかヒンヤリしている。
マヤは相棒が怯んだ隙に、毒薬を無理矢理に銃身へ突っ込んだ。
『ぎゃあああッ! オエエェェェーッ!?』
嗚咽を漏らす拳銃。
だがすぐに様子がおかしくなる。
『フウゥゥゥ~、何だコイツは……あぁ~やべぇ、高まるゥ~ッ』
Xキャリバー、どうやら飲み込んだ毒薬でハイになってしまったようだ。
マヤは構わずコッキングを行うと、相棒へ告げる。
「なにキマッてんのさ? トリップするのは全部終わってからだ」
『あぁ~、ハイハイ。やりゃあイイんだろッ?』
投げやりに応えるXキャリバー、毒薬を元に猛毒弾頭を生成、弾倉に装填を完了させた。
『おらよッ! 外すんじゃねーゾ、マスター様!』
「相変わらず口が悪いこった……」
マヤはすぐさま大地を蹴って弾丸の如く前方へ駆け出してゆく。
インテグラルアーム達はマヤを今度こそ捕らえようと、無数の触手を方々から張り巡らせてゆく。
だが、その触手が届く前に、マヤが敵群のうちの1体の懐へ肉薄!
そのまま巨体の肩の上に飛び乗り、触手を回避しつつ同士討ちを誘発させた!
「さて、これよりオペを始めようか」
背中に回り込んだマヤは、敵の後頭部へ銃口を向けた。
「Xキャリバー、もっと口径を大きく。これじゃあ小さすぎる」
『んだと? 俺様ちゃんがタマナシの萎びた小口径だっつーのかッ? ふざけんな、おい見てろよマスター様? 俺様ちゃんのイカしたマグナム級のヘビーバレルを見せてやるぜッ!』
ブチギレながら拳銃がその形を変えてゆく。
なんと、拳銃からリボルバー式グレネードランチャーへ早変わり!
銃弾も擲弾になり、威力が増強!
『どうだ!? 逞しい俺様ちゃんの姿はッ! あ゛ァッ!?』
これにマヤの口元がニヤリと釣り上がる。
「よーし、いい子だ。任意の口径が撃てるのがアンタの強みだからね」
『ああ、そうさッ! さぁて、ブッ放すぜ!』
至近距離からマヤがトリガーを弾くと、砲口から猛毒擲弾が射出された。
敵の後頭部へ直撃すると、頭蓋骨を貫通して頭部が爆発!
残る首から下が薬効により激しく痙攣しながら大地へ突っ伏し、そのまま2度目の死を迎えていった。
「……げえッ! 決めゼリフ言う前にやっちまった!」
あちゃーっと眉間を抑えるマヤ。
彼女のユーベルコードのひとつ『超獣技法・八射鴉(チョウジュウギホウ・ヤシャガラス)』は、超絶高速のクイックドロウである。
「だが、威力はお墨付きだと判った。それじゃ……」
マヤは屍人達へ慈愛の眼差しと砲口を向けながら告げた。
「おくすりの時間だ。まとめておとなしくネンネしな……!」
今度こそ決め台詞を言えたマヤは、容赦なく猛毒擲弾を屍人の群れへブッ放してゆけば、直撃した敵達は立ちどころに昏倒して生命活動を停止させるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
ダメだ。
俺は、この主催者を、全くこれっぽっちも理解できない。
この主催者は、オブリビオンになる前からこうだったのかな。
何にしても、心置きなく倒せる相手だ。
でも…その前に、犠牲者で造られた人達を倒さないと。
死体だから、もう心はココにないけれど、体は生きた人の想いが一番強いものだろうから。
こんな風に考えるようになったのも、妖狐なって、つい最近。
人は少しずつ変わるものなんだな。
UC【狐火】を火力全開、一気に燃やしたい。
敵の攻撃は、[高速詠唱]と、風の精霊様の[カウンター]で対処したい。
傘を開いてクルクル回すと雨が弾け飛ぶような感じで、空気をクルクル回して粘液を防ぎたい。
エメラ・アーヴェスピア
…私の場合、正確には機械兵なのだけど
勘違いしてくれているのなら好都合、私は裏で行動させてもらいましょう
貴方の醜悪な作品は、私の作品が相手をするわ
まず事前に残った兵を元に残りの機体を5機だけ除いて合体よ
装備は重盾と銃剣のついた長銃の重騎士スタイル
積極的に前衛で【盾受け】、【かばう】事で同僚さん達の援護に
勿論隙があるなら銃撃や剣で攻撃…合体した兵なら猟兵にも劣らない力を発揮するわ
それと召喚する事がUCだから、兵自体には封印は無意味よ
私は裏で主催者に対する【情報収集】…うまくいけば奇襲できそうだし、ね
それと残りの5機で秘密裏に一般人の安全を確保よ…念の為だから余り気にしないで頂戴
※アドリブ・絡み歓迎
黒木・摩那
あら、猟兵だとバレてましたか。
ならばもう演技はいりませんね。
素手で戦うのは慣れてないんですよ。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
触手をヨーヨーの外周の刃で【なぎ払い】つつ、
ヨーヨーを絡ませたところで、UC【獅子剛力】を発動。
巨大化した改造屍人を駒に、他の屍人たちにぶつけていきます。
やっぱり使い慣れた武器はよいです。
手にしっくりくるわー
改造屍人『インテグラルアーム』達は続々と檻から放たれる。
「まだまだ私の『作品』の在庫はたくさんあるのだよ。さあ、ゆけ!」
主催者のヴィオラが奏でられると、その音色に操られるように屍人達が咆哮を上げる!
「GUGYAAAAAAAAAAAA!」
「……酷いな。殺した人達の身体を勝手にいじるなんて」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は表情を強張らせながらエレメンタルロッドを握り締めた。
その隣で安堵の表情を浮かべるのは黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)だ。
「あら、猟兵だとバレてましたか。ならばもう演技はいりませんね。素手で戦うのは慣れてないんですよ」
メリケンサックを放り投げ、超可変ヨーヨー『エクリプス』を取り出す。
「それでは、ここからは遠慮せず大暴れしちゃいましょうか。妖狐さん、援護をお願いしますね」
「わかった。俺、頑張るぞ」
木常野の身体を包む精霊力に炎の気が宿る。
「俺は、あの主催者を、全くこれっぽっちも理解できない。あの主催者は、オブリビオンになる前からこうだったのかな」
黒木に問い掛ける木常野。
これに黒木は肩を竦める。
「さあ、どうでしょうか。いずれにせよ、目の前のゾンビを倒さないと始まりせんからね」
「……うん、そうだよな。犠牲者で造られた人達を倒さないと。死体だから、もう心はココにないけれど、体は生きた人の想いが一番強いものだろうから」
木常野の心の底からじわじわとこみ上げてくる感情――義憤に、彼自身は後押しされる。野生の狐として暮らしていたことには認知できなかった感情に戸惑いながらも、今はこの感情が正しいと木常野は確信を持つことが出来た。
(こんな風に考えるようになったのも、妖狐なって、つい最近。人は――俺は、少しずつ変わるものなんだな)
屍人達が間合いを見定めるように触手を蠢かせる。
黒木はもうひとり……機械兵に語り掛ける。
「どこのウォーマシンさんか存じ上げませんが、そろそろ始めましょう!」
左肩に『75』と刻まれた機械兵は無言で頷くと、抱えている銃剣の銃口を屍人へ向けた。
途端、けたたましく連続で轟く銃撃音とともにマズルフラッシュが瞬く!
それが開戦の合図となり、両陣営は一気に雪崩込んで乱戦へと発展していった。
「……始まったようね」
闘技場の裏手に回り込んでいるエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、ユーベルコード『出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー)』で召喚した機械兵5体を引き連れながら、主催者の『弱点』を探っていた。
「……私の場合、正確には機械兵なのだけど。勘違いしてくれているのなら好都合、私は裏で行動させてもらいましょう」
エメラは召喚した機械兵の大部分を合体強化させて、闘技場で生き残ったような演出を見せていたのだ。
「貴方の醜悪な作品は、私の作品が相手をするわ」
幸い、主催者はまだエメラの存在に気が付いていない。
この隙に囚われている人質くらいは見つけ出して解放したいところだ。
「……あら? あれは?」
岩陰から顔を半分出して覗き込めば、やけに簡易テントが密集している場所を発見する。
闘技場から500mほど離れた岩陰の間に潜ませているかのように立ち並ぶテントは、如何にも怪しい雰囲気だ。暫し観察を続けると、先程から奴隷の少女達がテントの中に出入りしているではないか。
「ビンゴね。あの中に人質が居るはずよ」
機械兵に哨戒をさせながら、エメラはゆっくりとテントへ接近してゆく……。
「風の精霊様、疾風の障壁を俺達に授け下さい!」
木常野が杖を振るえば、風の精霊の加護によって強烈な追い風が発生!
更に風を螺旋状に撹拌することで遠心力を発生させる。
こうすることで浴びせられる麻痺毒の粘液を突風の壁が押し返して、逆に屍人達へ浴びせ返してゆく。
「ありがとうございます、妖狐さん!」
「敵が毒を浴びて動きが鈍った。今のうちだ!」
「もちろんです、って、ちょっと大きくなってませんか?」
麻痺毒を浴びた屍人達の体格が徐々に大きくなってゆく!
主催者は誇らしげに宣言した。
「ははははっ! 彼らは第二形態に進化できるのさ! 身長は元の3倍だ!」
「でかいですね。でも、これで狙いを定める必要がなくなりました」
ギュインギュインとヨーヨーを振り回す黒木。
そのヨーヨーから刃が出現する!
「それでは、解体ショーを始めましょうか!」
高速回転する刃が、動きが鈍った屍人達の肉体を斬り刻みながら薙ぎ払う!
「大きいとどこを狙っても攻撃が当たりますね!」
「油断するな、来るぞ!」
動ける屍人達の巨大な触手や拳の一撃が押し寄せてくるが、その度に木常野の風圧のバリアが弾き返して攻撃を寄せ付けない。
そこへエメラの機械兵が黙々と鉛玉を屍人達の額を撃ち抜いて殺害してゆく。機械兵の持つ大盾も巨大触手の打ち付けからガードしてゆくのに役立っていた。
「ふむ、簡単に殺されるようでは面白みがない。だが、これでどうかね?」
ヴィオラの旋律の種類が変わる。
すると、巨大化していない屍人達の腕から無数の触手が解き放たれた!
「その触手はユーベルコードを封じる力を持っているのだ。縛られたが最後、ご自慢の奥の手は封じられてしまうぞ?」
「な……っ!? 風に飛ばされないように地を這って伸びてくるぞ!?」
木常野の風圧バリア対策をしてきた屍人達の触手が黒木と木常野に伸びてゆく!
だが、その無数の職種を機械兵が身を挺して庇った!
機械兵に突き飛ばされて黒木が地面に転がってゆく!
「ウォーマシンさん!?」
締め上げられる機械兵に唖然とする黒木。
次第に機械兵の身体が幻のように気配が薄くなり、そのまま消失してしまった。
「そんな……っ?」
目の前で消え去った機械兵を見た黒木は奥歯を噛みしめる。
「よくもやってくれましたね!?」
黒木はヨーヨーを手近な屍人へ向けて放り投げる!
「接地、反転。アンカー作動!」
ヨーヨーから飛び出した刃が巨大屍人の肉体に深々と突き刺さる。
黒木は糸を手繰り寄せて、そのまま屍人の全身を捕縛してしまう。
「……力場解放! 獅子剛力(ラ・フォルス)!」
振り回した巨大屍人の身体を回転させて解き放てば、巨大な駒めいた巨大質量が地上の屍人達を尽く轢き潰してゆく!
「妖狐さん、一気にやっちゃってください!」
「わかった」
木常野の全身のオーラが真紅に燃え上がる。
生成した81個の狐火が次々と融合してゆき、太陽めいたひとつの超巨大な火球を作り上げてゆく。
「さようなら、燃えてしまえ」
杖を巨大屍人とその足元の屍人達へ向けて突き付けると、大火球は浄化の炎となって屍肉を焼き焦がし、吹き飛ばしていった!
「ぐ、ぐぬぬ……! まぁ、いい! 猟兵ひとりを殺してやったぞ!」
主催者は悲喜こもごもの複雑な表情を浮かべていると、木常野の義憤の眼差しと目があった。
「ようやくわかったぞ。お前は“百舌鳥(モズ)”だな?」
木常野は炎の精霊力を漲らせて言葉を継ぐ。
「俺が森で初めて百舌鳥を見た時、奴は獲物のトカゲを枝に挿してクチバシで突っついて遊んでたんだ。その時はなんでそんな事をするのか分からなかった。獲物なんだから早く食べればいい、なんて、その時は俺も考えていたけど。……でも、お前を見てやっと判ったんだ……」
妖狐の青年の瞳には、明らかな殺意と激怒が漲っていた。
「お前は他人が苦しんでいるのを見るのが大好きなんだ。百舌鳥と一緒だ、相手が悶え苦しめば苦しむほど嬉しいんだ。わざと怖がらせて、いたぶって。絶望を思い知らせて殺す。狐の俺はあの時、枝に刺さったトカゲを助けるべきだったんだ。許さない……絶対にお前を許さないぞ……!」
「お仲間が倒れたんです、その償いはその身で支払ってもらいますよ?」
黒木もヨーヨーでトリックを決めながら主催者へ告げたのだった。
その頃、エメラはというと……?
「早く逃げて。足枷と鉄球は機械兵が引き千切ってあげるから」
「ありがとう、お姉ちゃん……!」
「助かりました、どうかご無事で……!」
老若男女、大勢の奴隷達をテントから解放してゆくエメラ。
流石に物資を運び出すまでの時間はないと考え、人質だけの解放に留めるしかなかった。
「……合体させた機械兵がやられた!? そんな、馬鹿な……」
エメラは消失してしまった機械兵に気が付いて顔をしかめた。
彼女が勘違いしていたのは、ユーベルコードを封じるという現象が『召喚行為のみに有効』と思っていたことだろう。
屍人達の触手が『ユーベルコードが引き起こした現象そのものを封じる効果』を持つのだとすれば、それは召喚物である機械兵にも効果が及ぶ。
故に無数の触手に捕らわれた強化機械兵は無効化されて無に帰した。
封印系ユーベルコードと召喚系ユーベルコードの相性は最悪だったのだ。
だが、むしろそれが主催者の慢心を喚起し、他の猟兵の闘志を燃え上がらせたので、結果オーライであった。
「想定外の事態が起きたけど、結果は上々。あとは狙撃ポイントを探索して、主催者のマヌケ面を吹き飛ばすだけね」
テントに捕らわれていた奴隷達を全て解放し、機械兵の護送を付けた上で引き上げさせたエメラは、次の行動へ移る……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
髪塚・鍬丸
ここからが本番。
御下命如何にしても果たすべし。
対峙した屍人に対し「猟兵、髪塚鍬丸……推して参る」と開戦を告げる。
挨拶は大切だ。古文書にも記されている。
きっちり供養してやろう。搦め手(SPD)ではなく敢えて正面(POW)から攻める。
巨体と触手での攻撃を忍者刀で【武器受け】し、【早業】による【ダッシュ】で一気に間合いを詰める。
敵の至近に潜り込んだら【神風の術】発動。自身を中心に破邪の竜巻を巻き起こし【破魔】の【範囲攻撃】。
邪な力を消滅させる神風。本来攻撃を打ち消す防御の技だが、相手を巻き込む様に使えば敵を消滅させる攻撃手段ともなるのだ。
魂が残っているか分からないが、その邪悪な肉塊を浄化してやろう。
フィランサ・ロセウス
(予選で倒した相手からちゃっかり失敬していたシャベルや斧、ナイフ等を武器『D.I.Y.』として装備)
みんなを無理矢理戦わせてたのは、こんなものを作るためだったのね!許せない!
……とでも言えば喜んでくれるのかしら?
ごめんね?遠慮なく壊(あい)せるのは嬉しいけれど、
私、“抜け殻”にはあまり興味がないの
UCを発動して残像が見える程のスピードで撹乱、
更に敵を盾にするように動き回ることで同士討ちを誘うわ
並行して相手の動きを観察して情報収集、
弱点となる部位を見つけてそこに一撃叩き込んであげる!
ふふっ……こんな粗末な武器だって、充分に誰かを殺(あい)す事はできるのよ!
さあ、さあ、素敵な悲鳴を聞かせてね❤
ルード・シリウス
先の戦いで使ったフライパンを墓標代わりに足元に立ててから、ゆっくりとした歩みで敵陣へ。敵陣へ近づいてきたら、神喰と無愧を構える
攻撃の軌道とタイミングを見切って残像を囮に回避し、攻撃を只管凌ぎ続けた後に【黒獣爪牙】で一体でも多く巻き込む形で攻撃。その後、生き残った個体を二刀で一体ずつ斬り捨てていく
…なぁ、悲鳴の旋律奏でる前に壊れたぞ。造形も今一つだし、強度は語るまでもねぇ。何よりセンスが無さすぎだ。まぁ、どんなに良い道具も使い手が見合わなければ、ただの持ち腐れにしかならんが
嗚呼、あとあのフライパンだが…あれ、お前の墓標だ
正直、お前には勿体なさすぎるくらいだがな…
ティオレンシア・シーディア
わぁおグロテスク。あんなのに捕まったら18禁待ったなしねぇ。…確実に後ろにGがつくけど。
にしても、やっぱりまともに勝たせる気なんてなかったのねぇ。正直知ってた。
巨大化はするのは別にいいのよねぇ。的が大きくなる分狙いやすくなるし。相応に強化されるだろうパワーについては――「何もさせなければいい」だけよぉ?
○クイックドロウからファニングによる●重殺六点バースト一閃。
刻むルーンはイング『成果』・ラド『連結』・ティール『勝利』・ヤラ『結実』・シゲル『達成』――そして、ハガル『破壊』。
その御自慢のゾンビ共、ドラゴンの顔面より頑丈なのかしらぁ?
言ったでしょ?あたし、本来の得物はリボルバー(この子)だって。
同時点、別の地点では4人の猟兵達が屍人達と対峙していた。
「ここからが本番。御下命、如何にしても果たすべし」
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は両手を胸元で合わせて両かかとを付けて揃えると、恭しく屍人達へ一礼した。
「ドーモ。猟兵、髪塚鍬丸……推して参る」
挨拶、それは古文書にも記された由緒正しきシノビの戦闘開幕儀礼行為!
これを行うことでシノビは己の覚悟を完了させ、目の前の敵を容赦なくサツバツかつキリステできるのだ。
フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)はハート型の瞳孔をカッと開きながら悲痛な表情を浮かべる。
「みんなを無理矢理戦わせてたのは、こんなものを作るためだったのね! 許せない!」
だが、そう言い放った瞬間にフィランサは殺る気ゲージ減少、肩を落としてしまう。
「……とでも言えば喜んでくれるのかしら? 今の、正義の猟兵ぽいでしょ?」
その手や背中には、先程の予選で気絶させた参加者から奪い取ったシャベルや斧、ナイフが装備されているではないか。
それすなわちD.I.Y. (Deadly Items for You)――なん変哲もない工具や日用品でも、猟兵であるフィランサが扱えば立派な凶器へと早変わりするのだ。
「ごめんね? 遠慮なく壊(あい)せるのは嬉しいけれど、私、“抜け殻”にはあまり興味がないの」
「同感だな……木偶人形に俺達の相手が務まるとは思えないが?」
ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は持っていたフライパンの取手を地面に深々と突き刺した。
主催者はルードの奇妙な行動に首を傾げる。
「キミ、一体、何の真似だね?」
「決まってるだろう、これは墓標だ」
「はははっ! 屍人達の墓標のつもりか? 彼らも浮かばれないな、墓標がフライパンひとつだなんて!」
愉快そうに腹を抱える主催者へルードは呆れたと言わんばかりに憐憫の眼差しを向けるだけだ。
そんな中、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は迫りくる筋繊維剥き出しの屍人達の姿に眉尻を下げていた。
「わぁおグロテスク。あんなのに捕まったら18禁待ったなしねぇ。……確実に後ろにGがつくけど」
ティオレンシア本来の『相棒』である愛銃オブシディアンに素早くルーン弾6発を装填して安全装置を解除する。
「にしても、やっぱりまともに勝たせる気なんてなかったのねぇ。正直知ってた」
彼女もまたお約束どおりの展開に、皮肉を語尾に込めて言い放った。
髪塚は櫛状の刃を備えた科学忍者刀『錣(しころ)』を鞘から抜き払った。
「では……きっちり供養してやろう」
彼の言葉を皮切りに、猟兵達が一斉に屍人達へ詰め寄っていった。
「搦め手ではなく敢えて正面から攻める……!」
巨大化を始める屍人達へ、髪塚を筆頭にルードとティオレンシアの3名が駆け寄る。
一方フィランサは指を鳴らし、早々にユーベルコード『クロックアップ・スピード』で高速戦闘モードに変身。残像が見えるほどの超スピードで闘技場を駆け回り始めた。
「ほら、こっちこっち! 鬼さんこちら!」
すれ違いざまに屍人の膝を斧で叩き割ったり、シャベルで突き刺したりしながら動きを鈍らせ、最後は放たれた触手を他の弱った屍人の肉体を盾にしてしまうフィランサ。
「残念でした! ほらほら! もっと本気で殺(あい)してよ!」
同士討ちを引き起こされ、屍人達は統率を欠いて大混乱に陥る。
それを好機と観た他の3名が猛攻を仕掛ける。
「巨大化はするのは別にいいのよねぇ。的が大きくなる分狙いやすくなるし。相応に強化されるだろうパワーについては――『何もさせなければいい』だけよぉ?」
ティオレンシアは愛銃を構えたかと思えば、巨大触手が叩き付けられる前に神速ファニングショットを披露!
「透かし晦まし掻き乱し、最中に本命を忍ばせる――あたし、そういうのは得意なのよぉ?」
クイックドロウのユーベルコード『重殺(エクステンド)』六点バースト!
すぐさま空の薬莢を捨ててリロード!
そのまま『重殺』六点バースト再発動!
「刻むルーンはイング『成果』・ラド『連結』・ティール『勝利』・ヤラ『結実』・シゲル『達成』――そして、効果が極大化する六発目はハガル『破壊』」
3回目の『重殺』六点バーストが火を噴くと、ティオレンシアの目の前の屍人の上半身がいきなり爆散した!
「どうやら、御自慢のゾンビ共、ドラゴンの面の皮より頑丈ではなかったみたいねぇ?」
1秒の間に3体をオーバーキルしたティオレンシアは、弾を惜しまずにドバドバと神速ファニングショットで屍人達を絶命させてゆく。
その横を髪塚がすり抜けて前線に躍り出る。
「巨大なだけの触手の薙ぎ払いなど、忍者には通用しないと教えてやろう」
髪塚は巨大化した屍人達が四方八方から叩き付ける触手を跳躍と忍者刀のパリング防御でいなしてゆく。そして一体の触手の上に飛び乗ると、そのまま猛ダッシュで頭部へ駆け寄る!
「これでどうだ?」
放たれる手裏剣が巨大屍人の眼球を破壊!
別方向からはルードが暴食剣『神喰』と呪詛剣『無愧』の二振りを縦横無尽に振るい倒し、屍肉と血液の道を作り上げていた。
「図体がでかいだけだな。思考パターンも単調。第一、触手は食い破れば再生までのラグが生じる。その間に……」
髪塚が飛び乗った屍人へ向かって飛び付いたルード、両腕から2つの魔剣を振り下ろして敵の頭を叩き潰した!
「こうやって頭を潰せば殺せる。これで俺達の悲鳴を奏でるだと? ふざけているのか?」
若干怒りすら言葉に滲ませながら、ルードは髪塚へ向かって叫んだ。
「おい、面倒だ……一気に片付けるぞ」
「奇遇だな。今からユーベルコードで此処ら一帯を吹き飛ばすつもりだった」
「なら俺に合わせろ。半径79mは俺の領域だからな」
「委細承知」
ルードと髪塚は背中合わせになって、互いのユーベルコードを発動させる。
髪塚は己の内に眠る破邪の力を解放!
「……神成る風よ、荒れ」
ルードは魔剣を地面に突き刺すと、貪欲なまでの飢餓を渇望する。
「お前ら、運が悪かったな……!」
闘技場を破魔の嵐と縦横無尽に走る黒い斬撃が吹き荒れ、迸る!
「忍法……神風の術!」
「喰らい尽くせ、黒獣爪牙(くろいぬのそうが)ッ!」
屍人達は浄化され、斬り刻まれ、立ち上る嵐の中に飲まれて塵ひとつ残さず消滅していった!
「締めは任せて!」
討ち漏らしへ向かってフィランサが駆け抜ける!
仲間が打倒していった屍人達の破壊具合から、弱点を見抜いた彼女は、フライパン片手に頭部をグシャグシャと潰してゆく。
フライパンが砕けたら斧、シャベルと武器を切り替え、超高速で個別撃破を遂行する。
「ふふっ……こんな粗末な武器だって、充分に誰かを殺(あい)す事はできるのよ! さあ、さあ、素敵な悲鳴を聞かせてね❤」
『GUGYAAAAAAAAAAAA!!!』
赤黒い血液を全身に浴びながら、フィランサはフルスイングでシャベルを横薙ぎに振るう。
目の前の屍人のこめかみから上が吹き飛ばして絶命させたのだ。
だがその背後に、起き上がった巨大屍人が触手を伸ばそうとしている!
「それはさせないわぁ」
ティオレンシアの『重殺』が屍人の顎から上を爆散させ、今度こそ沈黙させたのだった。
「言ったでしょ? あたし、本来の得物は『リボルバー(この子)』だって」
主催者へ見せつけるように愛銃を掲げるティオレンシア。
「なんだと……!? 屍人達が全滅……ッ?」
驚愕する主催者へ、ルードが辛辣に言葉をぶつけてゆく。
「……なぁ、悲鳴の旋律を奏でる前に壊れたぞ。造形も今一つだし、強度は語るまでもねぇ。何よりセンスが無さすぎだ。まぁ、どんなに良い道具も使い手が見合わなければ、ただの持ち腐れにしかならんが」
「黙れッ! くそッ!! よくもアポカリプス・バウトをめちゃくちゃにしてくれたな! そのフライパンの墓標を、私自らお前達自身のものに変えてやる!」
怒り心頭の主催者が遂に闘技場へと下りてくる。
そこへルードが『追い打ち』を仕掛ける。
「嗚呼、あと、あのフライパンだが……あれ、お前の墓標だ。正直、お前には勿体なさすぎるくらい立派な代物だがな……」
「きぃぃさぁぁまぁぁぁあーっ!!」
美丈夫が顔面崩壊させて怒鳴り散らす!
遂に猟兵達は主催者を戦場へ引きずり出すことに成功した!
いよいよ最後の決戦が始まる!
大成功
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第3章 ボス戦
『『戦乱へと誘う者』エーリッヒ・ロート』
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POW : 「さあ、この狂騒を君自身も楽しんでくれたまえ。」
【脳に直接響く、ヴィオラによる狂気の旋律】を披露した指定の全対象に【奏者以外を無差別に死傷したいという狂乱の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD : 「君が抵抗するならば、どちらにせよ彼らは死ぬ。」
戦闘力のない、レベル×1体の【催眠音波とナノマシンで洗脳された一般人】を召喚する。応援や助言、技能「【かばう】【捨て身の一撃】【奉仕】【恩返し】」を使った支援をしてくれる。
WIZ : 「さて…、こう言う趣向はどうだろうか?」
自身の装備武器を無数の【洗脳効果のある『万色の罌粟』】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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「フゥー……! 流石の私も少々頭に血が昇ってしまうよ、この状況は!」
演奏するチェロの音色が激しさを増す。
主催者の今の心境を代弁しているかの如き音色が戦場に響く。
「この『戦乱へと誘う者』エーリッヒ・ロートが…点ここまで愚弄されるとはね? 流石は猟兵だ、褒めてやろう……!」
深呼吸をして口調が落ち着きを取り戻す代わりに、手元の演奏は一層の激しさを増してゆく。
「だが、既にキミ達は私の術中にハマってるのさ! 見たまえ!」
戦場の周囲には、今まで倒した一般参加者の一部が、夢遊病のように彷徨っているではないか!
「催眠音楽と事前に仕込んだナノマシンによって、彼らは私の傀儡に成り下がった! 私の奏でる演奏ひとつで、彼らの生殺与奪が決まるのだ! やろうと思えば、遠くにいる奴隷たちをこの場に召喚することも可能だ。それにこの音楽は、キミたちの精神にも影響する……。果たして、それほどまでの戦闘力を誇るキミ達の破壊衝動を抑え込めるかな? くくくく……っ!」
一部の猟兵の破壊衝動が増幅され、無差別殺戮への欲求が高まり始める。
猟兵達は肉体面・精神面、そして戦術面での高度な戦闘を要求されるのだった!
マヤ・ウェストウッド
「坊や、"痛み"って、知ってるかい……」
・敢えて煽動に乗り、真の姿を晒して暴れ回る
・というのは半分演技。UCを「拳を介した膨大な霊力の印加」として捉えるならば傷ついた味方に拳が当たれば治療が見込めるし、敵の傀儡にされた対象は霊力の過剰な流し込みで精神を制御する要因を打ち消したり灼き切ったり出来るかもしれない
・ただし敵には怒りに任せて生命力を"流し込む"ので、エーリッヒ自身は感覚が暴走して緻密な戦闘行動を阻害できるかも。例えば感度が数千倍化していつもより痛みが長ーく、鋭ーーく……
・本当に術に掛かると元も子もないので[狂気耐性]と[呪詛耐性]でカバー
「お前が侮った"生命の証"を実感するがいいさ」
木常野・都月
俺の狐の聴力が裏目に…。
ああもう、俺、こいつ大嫌いだ!
一般人や味方には攻撃したくない。
だからと言って、敵に手を出すと相手の思う壺だ。
破壊衝動は[呪詛耐性]あたりで抑えたい。
我慢出来そうにないなら、最悪の場合は、自分の足あたりをダガーで突き立てて[激痛耐性]で耐えたい。
一般人や味方をやるよりマシだろう。
後は手早く音を止めないと。
音があると攻撃し辛い。
風の精霊様にお願いして、敵の楽器の音…音波を遮断したい。
音さえ止めれば、俺も一般人も催眠から解放されるはず。
UC【黒の狐火】に精気全乗せで敵を攻撃したい。
あんただけは絶対許さないぞ!
余力があるなら、[属性攻撃、全力魔法]で追撃もしたい。
エメラ・アーヴェスピア
…なるほど、そのタイプだったのね…それは誤算だわ
それでも機体自体は私が制作した物…送還されたとみるわ
同僚さん達も、と言うのも誤算ではあるのだけれど…この状況、使えるわね
洗脳手段が多い…私が対処できるのは二つかしら
ナノマシンは指令に対して動くなら受信機能はある筈、裏で【ハッキング】して抑えましょうか
そして音の方は…再装填(リロード)『出撃の時だ我が精兵達よ』
先程と同じ機体と装備を召喚、潜ませつつ時期を見て楽器を狙撃し突入よ
死んだ筈の猟兵が戻ってくる…相当な混乱を引き起こせるのではないかしら
しかもあの洗脳の方法なら恐らく精兵には効かない、前衛で盾となりつつ反撃の起点となりなさい
※アドリブ・絡み歓迎
黒木・摩那
ぐぐぐっ。
既に術中にはまっていたとは。
ただのうるさい賑やかしではなかったということですね。
脳に直接響いてくるのが厄介ですが、なんとかしないと、勝手に暴れてしまいそうです。
まずは守りを固めます。
音は波ですから、空気の流れを遮ります。
ヨーヨー『エクリプス』にUC【トリニティ・エンハンス】で【風の魔力】を付与します【属性攻撃】。
そして、ヨーヨーを自分の周りで螺旋回転させることで空気のバリアを作ります。
さらに秘蔵コレクションから特性唐辛子をひと噛みして【気合】を入れて、催眠を断ち切ります。
脱出できたら反撃開始。ヨーヨーで【武器落し】して、ヴィオラを弾き飛ばし、さらに【衝撃波】を籠めてお返しします。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
これまた芸のないテンプレな行動ねぇ。もう少し捻りとか工夫とかなかったのかしらぁ?
…そこそこ効果的なのがちょっと腹立つけど。
直接脳に響くんじゃ耳塞いでもダメかぁ。なんとか演奏を止めさせないとねぇ。
ウル(不屈)とエオロー(結界)で○狂気耐性のオーラ防御を展開、ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。上からスタングレネード雨霰と降らせて●圧殺してやりましょ。
チェロもヴィオラも演奏するためには両手を使わなきゃいけないわよねぇ?閃光はともかく、意識のトぶレベルの大音量。至近距離で喰らって、まともに演奏していられるかしらぁ?
これならとりあえず参加者に死人は出ないし。…たぶん。
ルード・シリウス
敵のヴィオラによる催眠音楽は狂気耐性で対抗。更に蓬莱の実を喰らって、その力を強化
既に身を焼く程の狂気に身を置いてる側だからこそ狂気を知る。だからこそ、狂気には狂気を、己自身の更なる狂気を以て潰す
その後、闇斬に持ち替えながらダッシュで一気に接近し、早業からの【絶刀】の一撃を叩き込む
嗚呼…お前は二つ過ちを犯した。一つは、『俺達』のソレに安易に触れた事…。もう一つは、自ら戦場に足を踏み入れた事だ。
まだ気付かないか?踏み入れた時点で、お前は主催者ではなく参加者へと成り下がった…俺達と同じな。
それと、破壊衝動は抑え込むものじゃねぇ、解放し同時に支配するものだ
髪塚・鍬丸
御下命如何にしても果たすべし…とは言え人々への慈悲は前提
一般人を「夜刀神」「土蜘蛛」に仕込んだ綱と網を操り【捕縛】
彼らの動きを拘束し仲間を援護
隙を狙ってボスに手裏剣を打つ
数が多く、人々を巻き込む恐れがあれば打つ手を止める
つくづく厄介な野郎だ
【不動金縛りの術】
自身をルクソン…光速で動く存在に変化、全てが停止した世界にエントリー
貴様なら光速にも反応出来るのかもしれん。だが一般人はどうかな
【早業】で人の壁をすり抜けボスに接敵
ルクソンが光速で動けるのは質量を持たないから。故に本来攻撃力も持たない
だが理をねじ曲げるのが忍術。今の俺は云わば「質量を持った幻影」
光速の斬撃を叩き込む
貴様は必ず殺す。慈悲は無い
フィランサ・ロセウス
「ああ、何だかもう私……誰でもいいから壊(あい)したいの♥」
脳に響く旋律に屈し、衝動のままに手近な味方に襲い掛かっている様に
装いつつ密かにエーリッヒを射程に収め、誤射のフリをして【早業】の【だまし討ち】!
(実は「エーリッヒ・ロートを壊したい」という欲求が勝って【呪詛耐性】及び【狂気耐性】となり、催眠の進行を遅らせているのだ!)
さすがの私も長くは持たないかも
その前に対象を選べないように【目潰し】、
更にヴィオラとそれを奏でる手を【部位破壊】して、もう演奏できないようにしてあげないとね!
そうしたら仕上げにUCを打ち込んで、素敵な悲鳴(うた)を歌ってもらおうかしら♥
戦場に鳴り響く騒乱の旋律が猟兵達を苦しめる。
「はははっ! そうだ、互いに殺し合え! この狂騒を君達自身も楽しんでくれたまえ!」
アポカリプス・バウト主催者である『戦乱へと誘う者』エーリッヒ・ロートは、チェロを掻き鳴らしながら愉悦に満ちた嬌笑を湛える。
その楽器の一部が『万色の罌粟』の花弁へと変わる。
この花弁にも催眠効果があり、触れたり観ているだけで精神を蝕まれてゆくのだ。
徐々に湧き上がる破壊衝動と殺戮衝動を抑え込もうと、猟兵達は必死に堪えていた。
「チッ……こいつは、まずいね……」
マヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)は犬耳をピンと大きく立たせながら、その姿を徐々に変化させてゆく。
猟兵は生命の埒外の存在であり、普段の姿はいわば仮の姿と言える。
マヤは『真の姿』をさらけ出す程の攻撃衝動に突き動かされているのだ。
極彩色の花弁と洗脳音楽に、彼女の正気度がどんどん削られてゆく。
そして、もうひとり、影響を深く受けている猟兵がいた。
「俺の狐の聴力が裏目に……。ああもう、俺、こいつ大嫌いだ!」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の狐耳もまた、エーリッヒの演奏を人一倍聞き取ってしまっている。
更に、木常野は敵の加虐嗜好を理解したがゆえに、今まさに怒り心頭であった。
そこへ他者への攻撃衝動を刺激されたのだから、気が狂いそうなほどに木常野は苦しんでいた。
「いやだ! 一般人や味方には攻撃したくない! でもあいつを攻撃したいのに、頭の中でそれを拒否する俺がいて! やめろ! やめてくれ!」
狐耳を両手で抑えて体を大きく前後に揺らす木常野。
そんな彼を落ち着かせようと、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が歩み寄る。
「しっかりして下さい! 怒りに飲まれちゃ駄目です!」
「うわああああっ! 来るなぁぁーっ!!」
半錯乱状態の木常野、その手にはダガーが握られている!
風鳴り音とともに刃が空を裂く!
だが、振り下ろされたダガーを黒木は素早く飛び退いて回避した。
「ぐぐぐっ。なんて強力な精神干渉なんでしょうか。既に術中にはまっていたとは……! あの主催者、ただのうるさい賑やかしではなかったということですね」
黒木が睨み付ける先には、エーリッヒが優雅にチェロを奏で続けている。
その周囲を取り囲むように、予選で気絶させたはずの一般人達がゾンビのように徘徊を続けている。
「脳に直接響いてくるのが厄介ですが、なんとかしないと、私まで勝手に暴れてしまいそうです。一般人の方々も、私達の出方ひとつで命を奪われかねません……!」
「ホント、これまた芸のないテンプレな行動ねぇ。もう少し捻りとか工夫とかなかったのかしらぁ? ……そこそこ効果的なのがちょっと腹立つけど」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)も奥歯を噛み締めながら、他者への攻撃衝動をギリギリのところで抑え込んでいた。
その中で髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は『八門』と呼ばれるシノビのポテンシャルをフルに活性化させ、洗脳からただひとり影響を受けずに行動出来ていた。
「どうやら日頃の鍛錬の成果が発揮されたようだ。さすが『ノーカラテ、ノーニンポー』……! 肉体と精神に刻まれた忍の極意は伊達ではない」
コトワザを口にした髪塚は、主催者の肉壁になっている一般人の救助を行うべく、戦場を駆け抜け始めた。
「おや? まともに動けるやつが居るなんて驚きだ!」
エーリッヒは髪塚が戦場を跳ね回る姿に口角を上げた。
「だが、この一般人の壁を超えて私に攻撃を届かせることが出来るかね?」
「やれるさ、この手裏剣で――」
髪塚がオーバースロウ気味に手裏剣を振りかぶったその時、一般人が手裏剣の射線へと押し寄せてくるではないか!
これでは手裏剣が一般人の首を刎ね飛ばしてしまう!
「くそ、つくづく厄介な野郎だ。御下命如何にしても果たすべし……とは言え、人々への慈悲は前提だからな」
「くくくっ! 正義の味方は制約が多くて大変だね?」
小馬鹿にする態度で髪塚を挑発するエーリッヒ。
だが髪塚は諦めない。
「必ずその眉間を俺の手裏剣で叩き割ってやる……」
髪塚は暴れまわる一部の猟兵の妨害を危惧して、一度後方へ退避してゆく。
それを見守るのはルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)だ。
彼は猟兵の誰よりも強い破壊衝動と飢餓感を背負い込む人物である。
そんな彼が、騒乱の旋律の中に身を置くと、一体どうなってしまうか?
ルードは目の前の球体に己の手刀を突っ込んだ。
吹き上がる赤黒い液体が飛沫となってルードの顔に飛び散った。
「……蓬莱の実を食べる時、傍から見たら、完全に人間の頭をかち割っているようにしか見えねぇよな……」
そう呟くと、ルードは真っ二つに割いた蓬莱の実――群竜大陸から持ち込んだ『人間の頭部ほどの脈打つ果実』に齧り付いた。
まさかの『もぐもぐタイム』を満喫しているルードであった。
そこへ突っ込んでくるのは、半暴走状態に陥っているフィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)だ。
「なにこれ頭の中に“好き”が直接響いてきちゃう! ああ、何だかもう私……誰でもいいから壊(あい)したいの♥」
予選で拾った斧をぐるぐるぶん回しながらルードに接近してくる!
ルードは怪訝な表情でフィランサを睨み付ける。
「おい、食事中くらいゆっくりさせてくれ……」
「えー? 少しくらい私を構って♪ だって『好き』なんだもの!」
斧を振り上げるフィランサに、ルードは冷静に半分に割った蓬莱の実を投げ付けた。
「お・ね・が・い♥ えいっ!」
フィランサ、容赦なく斧を正面へ振り下ろす!
投げられた実の半分が斧にカチ割られて1/4の欠片に!
それらをルードはキャッチすると、フィランサの腹をぞんざいに蹴っ飛ばして離れるように促す。そして再び彼は食事を再開した。
「……嗚呼、これは独り言だが」
ルードは蹴っ飛ばしたフィランサに、背中を向けたまま告げた。
「……『その調子だ、うまくやれ』。いいな……?」
「……ふーん、やるじゃん?」
フィランサは一瞬、口元が緩んでしまう。
(私が半分“演技”しているの、見抜いちゃってたんだね?)
彼女にとって、湧き上がる攻撃衝動は『好意』とイコールである。
『殺戮(あい)』を信条とするフィランサにとって、いっそこのまま湧き上がる衝動に身を任せたいところだが。
(生憎、一般人よりも『好き』な相手が目の前にいるんだもの、ちゃんと『気持ちを伝える』ように頑張らないと♪)
実は『エーリッヒ・ロートを壊(あい)したい』という欲求が勝ったフィランサは、敵のユーベルコードの耐性を獲得、催眠の進行を遅らせているのだ!
だが、一直線にエーリッヒへ向かうのが愚の骨頂であり、一般人への危険が及ぶ愚行だということをフィランサは自覚している。
ゆえに、半分は趣味、半分は作戦ということで、彼女は『操られたフリ』をして暴れつつ、徐々にエーリッヒとの間合いを詰めている最中だったのだ。
対して、エーリッヒはルードの奇行に愕然としていた。
「何故だ? 何故、君は私の催眠音楽が通じない!?」
「……黙れ、食事中だと言ってるだろうが」
ルードは2度も食事を中断させられて機嫌が悪くなっている。
だが、敢えてエーリッヒの質問に答えてやることにした。
「既に身を焼く程の狂気に身を置いてる側だからこそ狂気を知る。だからこそ、狂気には狂気を、己自身の更なる狂気を以て潰す」
「なんだって? この私の旋律を超える狂気をその身に宿してなお、君は平常心を保っていられるのか
……!?」
愕然とするエーリッヒに、ルードは最後通牒を突き付けた。
「お前は人質を盾にただ演奏するだけの腰抜けだ……。俺が蓬莱の実を完食したその時が、お前の最期だ。安心しろ、しっかりフライパンの下に埋めてやる」
蓬莱の実自体がルードのポテンシャルを底上げしているのだが、そこまでエーリッヒに言う必要はないと内心、ルードが呟いた。
その頃、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、上空に飛ばした魔導蒸気ドローンの映像をサイバーコンタクトに転送して戦況を確認していた。
「……なるほど、先程の触手はそのタイプだったのね……それは誤算だわ。それでも機体自体は私が制作した物……送還されたとみるわ。同僚さん達も、と言うのも誤算ではあるのだけれど……この状況、使えるわね」
エーリッヒはエメラの存在を完全に気付いていない。
だからこそ、彼女自身がエーリッヒの攻撃の影響を受けないまま、一方的に戦術を展開できるのは大きな強みである。
「洗脳手段が多い……私が対処できるのは二つかしら」
エメラは上空の魔導蒸気ドローンへコマンドを送信。
「ナノマシンは指令に対して動くなら受信機能はある筈、裏でハッキングとジャミングで催眠の効果を削いでみましょうか」
空から妨害電波とハッキングコードをドローンから放出させたエメラは、特製ハッキングツールとブローチに装着している宝石型の空間投影入出力装置付超高度コンピューター『エメラルドユニット』にて超高速演算を開始。
それと同時に、再び機械兵を召喚してみせる。
「再装填(リロード)、『出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー)』。死んだ筈の猟兵が戻ってくる……相当な混乱を引き起こせるのではないかしら」
総勢81体の機械兵は、気付かれないように周囲に潜伏しながら、徐々にエーリッヒの包囲網を狭めてゆくのだった。
「ドラァッ!」
マヤのスタンガンめいた拳が、一般人の大胸筋へ突き刺さる!
「グワーッ感電!」
一般人は全身を痙攣させながらその場で昏倒!
先程からマヤは目についた一般人をひたすら殴り飛ばしているのだ!
おお! 彼女は狂ってしまったのか!
「おい、止めるんだ!」
そこへ割って入る髪塚、一般人の保護を優先する。
「夜刀神、土蜘蛛! これで動きを止める!」
暴れまわる一般人に絡みつく粘着性の単分子繊維の投網と高強度ワイヤー!
「よし、そのままこっちへ来るんだ!」
「グウゥゥーッ!!」
まるで狂犬病の野犬が如く暴れまわる一般人達を、髪塚は指先のワイヤーひとつで黙らせてしまう。
身体の動きを制限され、操作された一般人達は、そのまま網に絡め取られて簀巻きになってゆく。
髪塚はこれを何度か繰り返し、エーリッヒの自決命令を阻止してゆく。
そうすれば、次第に肉壁は取り除かれ、エーリッヒまでの攻撃の射線が通るようになってゆく。
だがマヤは未だに一般人を殴り飛ばしている!
「だからやめろって!」
髪塚はマヤの動きを止めようと投網とワイヤーを射出!
しかし、なんとマヤは素早くこれを回避!
「グワーッ!」
代わりに一般人が拘束されて団子状態になってしまった。
「何だって!? 正気を失っていたら、前後不覚で命中するはずだが……?」
回避された事を訝しがる髪塚の前に、マヤが縮地めいて肉薄!
そのまま髪塚の胸元に拳を突き立てる!
「……本当に、アタシが正気を失っていると思うかい?」
「ッ!?」
髪塚の全身に電流が迸る!
その場で膝をつく髪塚を尻目に、マヤが向かうのは木常野の元だ。
「来るな! 俺は誰も殺したくない! あいつさえ、あいつさえ死ねば!!」
催眠に必死に抗う木常野は、己の肩や腕をダガーで斬り刻んで正気をなんとか保っていた。
直接脳へ響く演奏は、空気の壁を作っても完全に遮断することが出来なかった。
故に怒りに飲み込まれ、完全に破れを失いかけている木常野。
「凄く俺、怒ってて、どうしたらいいか分からない位怒ってて! 理性忘れて喉元食い千切ってやりたい位怒ってて! 殺したい! あいつを絶対に殺してやりたい!」
「へえ……この短期間に随分と感情豊かになったじゃないか、狐の坊や?」
フラリ、とマヤが木常野の前に立ちはだかる。
恐慌状態の木常野は、マヤへダガーを突き付けて後退りする。
「来るな! 今の俺は誰かを殺しかねないぞ!」
「知ってるさ。だから、アタシが治してやるよ」
ダンッと大地を蹴り込み、態勢を低くして木常野の懐へ飛び込むマヤ!
反射的に木常野はダガーをマヤの背中へ振り下ろした!
「超獣技法、大猩猩(ごりら)ノ型……ハートに一発、ビートをかますッ!」
独特な呼吸法から放たれる紫電迸る霊力拳が、木常野の身体をたやすく後ろへ吹っ飛ばした!
「かハッ!? ゲホッゲホッ!?」
肺を強打され、全身に電流が走った木常野が思わずむせる。
だが、次の瞬間、木常野に変化が生じていた。
「……あれ? なんか、体の中の熱が引いてゆく。俺の頭がスッキリしてゆくぞ?」
「ようやく冷静になったかい?」
マヤは木常野に手を差し伸べる。思わず木常野はその手を握ると、前へ引き寄せられて起き上がった。
「これがアタシのユーベルコード……『超獣技法・前胸部巧打(ビーストアーツ・デフィブリレイト・フィスト)』さ。殴った相手を治療して、一時的に肉体改造を行って強化することが出来る。狐の坊やはアタシに殴られたことで、一時的に催眠を受け付けない体になったわけだ」
「そうか、助けられたのか……俺、怒りをまだ制御出来ないみたいなんだ……」
落胆する木常野に、マヤが語り掛ける。
「その怒り自体は間違っちゃいないさ。ただ、狐の坊やは感情に振り回されちまっただけ。だがもう大丈夫だ。アタシに付いてきな。『正しく怒る』方法、教えてやろう」
マヤはそのままエーリッヒに向かって駆け出してゆく。
「待ってくれ、えっと、……先生!」
木常野もマヤの後ろを必死になって喰らいつくように駆け出していった。
「いや、その、辻ヒールが拳だとか、普通思いませんよね?」
通りすがりのマヤにぶん殴られた黒木もまた、催眠への耐性を獲得していた。
そしてエメラの暗躍により、一般人の催眠も弱まり、自力で逃げ出す者も現れ始めた。
だが、それでも演奏を止めない限り、今だ催眠に囚われたままの一般人への被害は止まらない。
「相手は音を使うのですから、空気の流れを変えて音を遮断しましょう」
マヤは超可変ヨーヨー『エクリプス』を振り回すと、ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』で自己強化、特にヨーヨーへ風の魔力を宿し、回転による暴風めいた空気の渦を発生させた。
「ヨーヨーを自分の周りで螺旋回転させることで空気のバリアを作ります! 更にこれで完全に催眠から脱却してみせます!」
マヤが取り出したのは、秘蔵の調味料ポーチ。なお、中身は全て真っ赤で超激辛である。
その中から特殊な唐辛子を口の中に生のまま放り込んで噛み砕けば、頭の芯へマグマが吹き出すかのような錯覚に見舞われる!
「ん~ッ! これですよ、これ! 美味しいですね!」
目を輝かせるマヤは、すっかり他者への攻撃衝動が霧消していた。
「見ているだけで胃が痛いわぁ……!」
ティオレンシアはふらつく頭を抑えながら、各特殊弾の準備に勤しんでいた。
「風の流れだけじゃ、直接脳に響くんじゃ耳塞いでもダメかぁ。なんとか演奏を止めさせないとねぇ?」
空気の流れを変えるだけでは不十分だと感じたティオレンシアは、ルーンを己の腕に書き記す。
「ウル(不屈)とエオロー(結界)でオーラ障壁を展開、そして、ミッドナイトレース、出番よぉ?」
所有者の声に応えて飛び出してきたのは、バイク型UFO!
そのまま颯爽と座席に乗り移ると、ティオレンシアは天高くテイクオフ!
「チェロもヴィオラも演奏するためには両手を使わなきゃいけないわよねぇ?」
ニコニコと微笑みながら、先程から準備していた大量のスタングレネードを、エーリッヒの周囲目掛けて一気に投下!
「安心していいわよぉ、よっぽど運が悪くなければたぶん死にはしないから。……死には、ね?」
これぞ、ティオレンシアの十八番のひとつ、ユーベルコード『圧殺(アレスト)』!
無抵抗のエーリッヒの眼前で、幾多の閃光が瞬いた!
そして腹の底に響く爆発音が重なり合い、周囲に空気を大きく揺るがす!
「ぎゃあああァーッ!?」
至近距離で全方から炸裂したスタングレネードの中心地にいたエーリッヒはひとたまりもない!
「耳が! 目が! 何も聞こえない、何も見えないじゃないか!!」
「みんなぁ、今のうちに仕留めちゃいましょ?」
巻き添えを食らった肉壁要員の一般人はその場で昏倒!
そこへ目にも留まらぬ早業で突っ込んでくる“光”があった。
「殴られたら生まれ変わったみたいに身体が軽い……!」
マヤに殴られて肉体改造を施された髪塚だ!
『不動金縛りの術! 俺は今、全てが停止した世界にエントリーしている。目と耳が潰れたお前なら普通に斬りかかってもいいだろうが、念には念を入れて叩き斬る!』
倒れ伏す一般人達の間を縫い、一瞬でエーリッヒに肉薄する髪塚!
「光速で動く存在、すなわちルクソンが光速で動けるのは質量を持たないからだ。故に本来攻撃力も持たない。だが理をねじ曲げるのが忍術。今の俺は云わば『質量を持った幻影』だ」
素早く印を何度も結ぶと、彼の手中に衝撃波が発生!
「言ったはずだ、その眉間を手裏剣で叩き割ると」
衝撃波が手中で圧縮され、ジャイロ回転を起こして逆巻く!
これは……忍法『風魔手裏剣』!
「貴様は必ず殺す。慈悲は無い! イイィヤアァァーッ!!」
裂帛の気合の声とともに放たれた衝撃波の刃は、超音速で回転しながらエーリッヒの額を直撃!
「ぎゃあッ!?」
光速で投げ付けられた風魔手裏剣が、エーリッヒの額を抉り、そのまま頭頂部の骨を掘削していった!
飛び散る脳漿と血液に、エーリッヒがパニックになる!
「私に何が起きた!? 止せ! 人質がどうなってもいいのかっ?」
「というか、楽器がなければ……」
「そんなの関係ないよわよね♥」
黒木は衝撃波と共にヨーヨーをヴィオラへ放ち、フィランサは弦を握る右腕をシャベルのブレードで叩き折った!
「うがあぁーッ!? あぁッ! 私の、ヴィオラが! 腕がぁ!」
「あらぁ? もう目が見えるようになったのねぇ?」
ティオレンシアは愛銃オブシディアンのトリガーを引き絞り、銃弾でエーリッヒの左肩を破壊!
それでも半壊して吹っ飛ばされたヴィオラへ這いずりよるエーリッヒ。その執念は異様の一言だ。
「私の……ヴィオラぁ……!」
「そのヴィオラがどうかしたのかしら?」
「……へ?」
エーリッヒが顔を上げれば、金髪翠眼の蒸気魔導の申し子が、81体の機械兵を引き連れて登場!
「お前、誰だよ!? いつから居たっ? って、なんで殺した奴らがこんなに沢山!?」
エーリッヒが絶望の表情を浮かべた。
エメラは肩を竦めて答える。
「失礼ね、私は機械兵達に戦ってもらっている間、最初から裏で暗躍させてもらった猟兵よ。もう大勢が決したようだから、私自ら出向いてあげたわ。そうそう、テントに押し込んでた奴隷たちは解放したわ。物資もさっき、機械兵が別の場所へ運搬しておいたから、もうあなたには何も残されてないけど……このヴィオラ、相当あなたにとって大事なのね?」
「……ッ!」
エーリッヒは懇願するように何度も首を縦に振る。
それを見たエメラは、機械兵達に命じた。
「総員、構え筒。目標、糞の塊。……発砲(ファイア)!」
瞬くマズルフラッシュ!
機械兵の一斉掃射が、半壊したヴィオラを完膚なきまでに粉砕!
ついでにエーリッヒも巻き添えにして撃ち抜いた!
「あっ! あ、ああぁぁぁぁぁーっ
!?!?」
絶叫しながら愕然とするエーリッヒ!
だが猟兵は容赦せず、最後のトドメを刺すべく動く。
「お前が侮った“生命の証”を実感するがいいさ」
霊拳をバチバチと帯電させるマヤは、寝転がるエーリッヒの頭頂部を思いっきり殴り付ける!
「おごッ!?」
大地にクレーターが出来るほどの拳圧で殴られるエーリッヒ。
瀕死状態で絞り出すように言葉を紡ぐ。
「なんて……奴らだ……! ひきょ、う、だぞ……! 瀕死の、あい、てを……寄って集って、タコ殴りとか……よっぽども、君たちの方、が……悪役、じゃない、か……!」
「おやおや、クレームかい? だがその言い分ももっともだ」
マヤは溜息をひとつ吐く。
「猟兵が弱った敵を嬲り殺すなんて噂が、この世界で立つのは良くないだろうね……だから」
エーリッヒを指差すマヤはこう言葉を継いだ。
「一度、全部『治してやった』さ。これで卑怯じゃない上に悪いう噂も立つ心配もない。ただ、アタシとしたことが、“うっかり”怒りに任せて生命力を『流し込み過ぎた』ようでね? 今、お前自身の感覚が暴走して、感度が数千倍化しちまったはずだ。つまり、いつもより、痛みが長ーく、鋭ーーく……死ぬ間際まで続くだろうね」
「……ッ!?」
感覚だけ暴走しているエーリッヒは、肉体を思うように動かすことが出来ない!
「というわけで、あとは頼んだよ? 狐の坊や?」
「ああ……判った、先生」
木常野は自身の拳にユーベルコード『黒の狐火』を纏わせていた
「俺は、初めて百舌鳥を見た時のように、見殺しになんてしない。俺は今、百舌鳥の行いを理解できてなかった、自分にも怒ってるんだ。だから、こいつだけは、逃したらダメだ。絶対に倒さないと。そうじゃないと、俺が俺自身を許せない。今度は、百舌鳥の時みたいに、見逃したらダメだ。だから……」
燃え盛る拳を振りかぶる木常野。
「全力でいく。当たったらすごく痛いぞ?」
木常野は無理矢理にエーリッヒを立ち上がらせると、そのままガラ空きの顎を全体重を乗せて殴りぬいた!
吹っ飛ばされ、燃え盛る黒炎がエーリッヒの身体!
「今度は私の番! もう我慢できない! はやく素敵な悲鳴(うた)を歌ってもらおうかしら♥」
フィランサは巨大な注射針をどこからともなく出現させると、素早くエーリッヒの背後へ周り込んで、まだ延焼していない背中へ巨大な注射針を突き刺した!
「苦しいのは最初だけ……あなたもきっとハッピーになれるよ❤」
「ア、ァァァアアァアアアァ………♪」
ユーベルコード『甘美なる毒(トクシクス・カリターテ)』!
ジャイアントシリンジの中の薬液が注入されてゆくと、上ずった奇声を上げながら全身を痙攣させるエーリッヒ!
「ナースのお嬢ちゃん、ちょっと離れてな?」
そこへマヤがXキャリバーの銃口を掲げて唐突な発砲!
『おらよッ! 俺様ちゃんからのプレゼント! ゾンビ共にぶち撒けた、天国(じごく)行きのお薬の在庫処分だぜッ!』
猛毒、更にINッ!
全身の皮膚がただれ始めたエーリッヒに対して、ルードは獲物を自身の血を含ませたブラックダイヤの刀身を持つ太刀へと持ち替えた。
「嗚呼……お前は二つ過ちを犯した。一つは、『俺達』のソレに安易に触れた事……。もう一つは、自ら戦場に足を踏み入れた事だ。踏み入れた時点で、お前は“主催者”ではなく“参加者”へと成り下がった……俺達と同じな」
呪刀『闇斬』を持って、一瞬でエーリッヒの脇を素通りしてゆくルード。
「絶刀――」
瞬間、わずか鍔鳴り音が荒野に響いたかと思えば、ヒトの形がたちまち細切れになっていた。
「咬喰斬獲(コウショクザンカク)……血肉と魂を咬み喰らう餓狼の牙の如く、放つは獲物を斬獲せし暴食の剣技……」
振り返るルードは、大地に薄汚く撒き散らかした肉片と成り果てた外道へ向けて告げた。
「それと、破壊衝動は抑え込むものじゃねぇ、解放し、同時に支配するものだ……っと、フライパンの下に奴の死体を埋めるのを忘れていたが、まぁ……いいか」
アポカリプスヘルの風が一陣吹けば、オブリビオンの肉片は跡形もなく風化してゆくのだった。
「ありがとう、ちっちゃいお姉ちゃん!」
「ちっちゃいは余計よ? ほら、お父さんが待ってるわ」
エメラは解放した奴隷たちと家族を引き合わせ、物資を機械兵達に運搬させていた。
「……まぁ、他の同僚さんが派手に暴れてくれたから、私は終始、戦闘よりも裏方に徹してた気がするわ。けど……」
笑顔でエメラに手をふる幼い少女と、その手を引く父親の歓喜の涙を見て、彼女の口角が自然と吊り上がる。
「悪い気はしないわね? ふふ……っ」
荒野に沈む太陽を眺め、エメラは背伸びをする。
滅んだ文明の荒野に日が沈む。
だがそれは、新たな夜明けの予兆でもあるのだ。
エメラは暮れゆく空を背にして、自身の拠点へと戻ってゆくのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年06月11日
宿敵
『『戦乱へと誘う者』エーリッヒ・ロート』
を撃破!
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