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食材とレシピ本は現地調達です!

#アルダワ魔法学園



 ただいまより、調理実習を開始する!


「まあ待て待て待て、帰るんじゃない」
 踵を返した猟兵達を押し止めて、イェロ・メク(夢の屍櫃・f00993)が資料を出す。
 そこにはデカデカと『調理実習』の文字があった。
「とりあえず話を聞いてくれ」
 遊びに来た訳じゃないんだぞ、と言いたげな猟兵の顔を見ながら、イェロ当人も微妙な表情をしていた。
 ひとまず、資料に目を通すとしよう。
 アルダワ魔法学園。
 蒸気と魔法が発達したこの世界には、蒸気機械と魔法で創造された究極の地下迷宮『アルダワ』が存在し、この世界に降りかかる災魔――即ち、オブリビオンをその地下迷宮に封印した。その後、人々は迷宮の上にアルダワ魔法学園を設立し、迷宮から染み出る災い達と戦う学生の育成を始めたという。
 学園、学生というからには学び舎なのだ。
 そして、学び舎というからには学ぶものがあり、その一環として家庭科なるものも存在する。
 そう、食材の知識や料理の仕方、果てには必須栄養素云々も学ぶのである。
「地下迷宮には、それこそ食材になりそうな魔物もいてな。中々に味が良いらしい」
 それは実に学園内でも評判になり、先生に直談判した生徒もいたほどだ。
 曰く、実戦訓練と調理実習を絡める事で、より興味を深められるとか。
 そして、なんかそれらしい言い分で先生を言いくるめる事に成功した。つまり、授業として成立させてしまったのだ。
 以来、地下迷宮に現れる、通称『蜜ぷに』をぼこぼこのぼこに伸して蜜を回収し、調理実習が行われていた。
 幸いにも蜜ぷにはそう強くもなく、生徒達が連携すれば簡単に倒せる敵である。
 しかし、近年の凶暴化による余波からか、この蜜ぷにが群生する地下迷宮のとある層にも影響が出ていた。
 なんと蜜ぷにが大量発生しているのだ。
 ぽよんぽよん。ぷるぷる。ぽよーん。
 まあなんと可愛らしい!
 ――などと言ってる間に蜜ぷにの蜜に埋もれてご臨終なんて自体が起こりうる。というかそんな予知を見た。
「そこで、君達の番だ」
 そこで、とは。
「増えすぎたのならば、こちらの人数も増やせばいい」
 とても単純思考である。
 つまり増えすぎた食材であるぷにぷにを倒して蜜を確保し、食材としてほしいようだ。猟兵達の他、学園の生徒達も参加するが、基本的には猟兵は猟兵同士で連携して貰う事になる。
「2,3人程度で固まって行動してもらうよ。なにせ調理実習なのでね」
 謎理論を述べるイェロも最早投げやりになっているが気にしてはいけない。
 ともあれ、調理実習は複数人で行うものなのでグループを作って行動する事になる。一人で参加したとて、その場で何人か固まって貰う事になるが、どうしても一人が良いという場合には融通も利くのでやりたい事をやればいいだろう。生徒の中にも、今日はこれがいいから一人でやるなんていう我の強い人間もいるようだ。
「それから、君達には蜜を確保して貰った後、レシピ本を確保して貰う事になる」
 学校側で用意するものなのでは?
 そんな真っ当な疑問が飛んできたが、イェロは華麗にスルーした。
「蜜ぷにの層を奥に進むと、書庫に繋がる通路があってな。その奥に学園に伝わる美味しい料理のレシピ本が並んでいるらしい」
 詳しくはその場に行ってみないと分からないが、料理に関する本が大量に収められているとの事だ。
 レシピ本の入手は、蜜ぷにを倒すときに出来たグループで参加しても、個々に分かれて再編しても構わない。その場その場で臨機応変に対応する事になる。
 だが、その部屋には番人が存在する。
「その番人、オブリビオンなんだが……現段階では、他の災魔の抑止力になっているから、今回は討伐しなくて良い」
 そのオブリビオンを討伐する事で蔵書が溢れ出すという。溢れた本は全て災魔であり、猟兵と生徒一丸となっても今は苦労するだろう。ひとまずは保留、という事だ。いずれは討伐する事になる。
 番人は本を大切に大切に扱っている。それが災魔だろうが、普通の本だろうが、関係ない。貴重な本が失われぬよう、書架に籠り見守っている。
 その番人が住まう部屋から、レシピ本を借りてくるのだ。
 出来るのか? と、当然の疑問にイェロはひとつ頷いてみせた。可能だが、条件があると続けた。
「レシピ本を持ち出すには、その番人に認められないといけなくてね」
 つまり、レシピ本をどういう用途で使うのかを番人に宣言しなくてはならない。
 レシピ本の用途なんて決まってるのでは……なんていう疑問はもっともだ。
「どういう料理を作るか、説明してあげてくれ」
 言葉による飯テロ行為を許容した。
 宣言なしに持ち出したその時は、番人と勝負になるだろう。討伐まではしなくてもいいが、とりあえずぼこぼこに伸したら泣いて諦めてくれる。宣言がめんどくさい場合には実力行使に出るのもありだ。
 猟兵達がする事は、蜜ぷにをぼこぼこにして蜜を確保し、書架に進んでレシピ本を入手し、番人に飯テロをする事で、あるいはボコボコにする事で、持ち出し許可を得る。
 その後、ようやく始まる調理実習を完遂するまでが今回の依頼である。
「調理実習とは名ばかりでな。楽しんできてくれ」

 イチから始める調理実習。はじまりはじまり。


驟雨
 驟雨(シュウウ)と申します。
 蜜ぷにちゃん、かわいい。(ただし食べる)


 世界 :アルダワ魔法学園。
 分類 :冒険/日常。
 難易度:EASY(失敗はほぼしません)

●第一章について
 蜜ぷにちゃんが大量発生しているのでとにかくぼこぼこにして蜜を確保しましょう。
 それはもう沢山いるので、持ち帰り用の蜜を確保したって怒られません。
 とにかく無双できます。

●第二章について
 判定はふんわりフレーバーとして捉えてください。
 本を雑に扱うとおしおきされたり、飯テロ効果が高すぎると番人の体力が減ったり、オブリビオンの本を持ち出そうとするとヤギに突っ込まれたりします。

●全体を通して
 この依頼はかなりゆるふわ~な感じの依頼です。
 判定に囚われず、自由にプレイングを書いて頂ければ幸いです。

●ご注意
 同行者がいる場合は名前とIDをご記載ください。名前は呼び名でも構いません。
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第1章 集団戦 『蜜ぷに』

POW   :    イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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「それではいってらっしゃい」
 空に描かれたアルダワ魔法学園の文字が光ると同時、猟兵達はぽーいとその世界に放り出されていた。
 ある者はちゃんとその足で、ある者はバランスを崩して尻もちをついて、ある者はぶにっと何かを踏んだ。
「ぷいー!!」
 そして、何かは元気よく鳴いた。
 小さな白い花を体にくっつけて、噂の蜜ぷにが猟兵の足元に伸びている。重たいよーとでも言いたげにぷいぷい言っていた。
 足を退けるとすたこらさっさと蜜ぷにはぽよんぽよんと跳ねて逃げていく。
 その姿を追いかけた猟兵達が目にしたのは――。
「わあ……」
 思わずぽかんと口を開けてしまう程の大量の蜜ぷにだった。
 虹のようにカラフルなスライムの塊が、それはもう視界一杯に埋め尽くされている。あっちを見てもこっちを見ても、蜜ぷに蜜ぷに蜜ぷにぷにぷに……。
 学園の庭園のような、広い空間で自由気ままに過ごす蜜ぷに達にあまり警戒心はない。調理実習の度にぼこぼこにされてる筈なのだが、それ以上に繁殖しているせいなのだろうか。急に襲ってくるような事はなさそうだ。
「あ、来ましたね。いらっしゃいませ、猟兵さん!」
 ぱたぱたと駆け寄ってくる女性はアルダワ魔法学園の先生なのだろう。猟兵達の前へ来ると、礼の言葉と共に今日の日程を説明する。
「蜜ぷにちゃん、倒すととろっと崩れるので、気になる方は中の蜜を掬ってくださいね」
 衛生面を心配する猟兵もいたが、どうやら問題はなさそうだ。勿論、まるっとそのまま使っても心配ない。
「せんせー、早くー!」
「はいはい、今行きますよ」
 今日は宜しくお願いしますね、と言い添えた女性は頭を下げると待機していた学園生の所へと戻っていった。ほどなく、生徒達は各々自由に蜜ぷにの確保に赴く。
 ――さて、猟兵達も負けてはいられない。いざ、蜜ぷにの楽園へ!
エンティ・シェア
可愛らしいぷにぷにをボコって蜜を集めるなんて君に向いてるんじゃないか、なんて…同居人を人でなしみたいに言いやがって
まぁいいわ、確かに「俺」向きだな。オルタナティブ・ダブルで召喚、補佐を頼むかね。俺含めた他の猟兵が動きやすいようにうろうろしていてもらおう。やっぱ囮役がいいかね。あ、余裕あるなら直接殴らせよう。技で増えるタイプだし、数減らしてく

俺自身も頑張るかね、蜜集めで流血沙汰は心象的に嫌だし、獣奏器で殴る
高い音の出る鈴が組み込まれた杖だからな、ファンシーな敵にはまぁぴったりだろ。そーら蜜置いてけー

俺は料理とかややこしいの苦手だから、集めた分は他の奴に託す…ってのもありかね。うんまぁ、任せるわ


エレアリーゼ・ローエンシュタイン
蜜ぷに!凄いわ、この子達食べられるのね!
お砂糖みたいに甘いのかしら
果物みたいに甘酸っぱいの?
どんなお味か楽しみだわ

【魔女の晩餐会】で、おっっきなミキサーを呼び出すの
小さめの子達を吸い込んだり、飛び掛かってきた子を受け止めたり
いっぱいいっぱい詰め込んだら、そのままぎゅわーん!と混ぜちゃうの!
そうしたら、ほら、もうお料理にだって使えそうだわ

蜜ぷにのシロップ、少し瓶に詰めてお土産に頂くの
エルの世界(UDCアース)には無いものだもの
どんなお料理にしようかしら
ああ、今からとってもワクワクするわ!


華切・ウカ
蜜ぷにちゃんときいて……!(しゅたたん)

あっ、あっ……蜜ぷにちゃん尊い!(顔を両手で覆い)
ウカは戦わなくてもいいです? 皆さんの近くで蜜ぷにちゃんとふれあ……あっ、だめですよね、そうですよね。
でも、でもちょっとだけちょっとだけ。

蜜ぷにちゃん……ぷにちゃ、ぷにちゃん……(つんつん)
ウカの心はいつもあなたでいっぱいなのです……このままウカとどこかへ逃避行……
あっ、ここに住めばいつでも幸せなのでは?
ぷにちゃんにかこまれたせいかつ……
でも、でも倒される姿もまた目にしなければいけないしうっかりなんてことも……

ううう、やはり相容れない存在…
ウカもこの苦しみを乗り越えます…えいっ!
あっ、ぷにちゃ……儚い…


レイブル・クライツァ
蜜ぷにちゃん達は、どうしてそんなに増殖スピードが速いのかしら……
時には甘味、時には薬の材料として優秀過ぎて、完璧過ぎるのよ。
埋もれた経験のある猟兵の方を見かけたりしている位だものね。
レシピ本を求めてたり、料理の際の手際とか参考にしたいから
ぷに達と戯れるターンの内に、他の方を全力ウォッチングIN蜜ぷにを添えてみたいなノリでいくわ。出来れば蜜ぷには撫でたい。撫でたい
でも視界の妨げになるなら諦めてぽこっと優しく(当社比)退治して回収するわ。
只、ストーカーにならない程度、これ大事。
手際の良さとか、ちょっとの呟きとか聞いておきたいかな、とか思ってるの。
いざバレンタインに向けて準備してるけれど、困ってて…




 ぽよんぽよん。ぷるぷる。ぷいー。
 自由気ままに跳ねたり転がったり蜜ぷに達はフリーダムだ。ひとたびその群れに足を踏み入れれば注目の的となるが、近寄ってきたり遠ざかったりはそれぞれである。
「あっ、あっ……蜜ぷにちゃん尊い……」
 足元に寄ってきて「だれー?」と見上げる蜜ぷにちゃんを見た華切・ウカ(空鋏・f07517)はぷるぷると身体を震わせる。火照った頬を隠すように顔を両手で覆うと、その場にふらふら座り込んだ。
 ぽよぽよと寄ってきた蜜ぷには一匹だけではない。気が付けばウカの周りを囲むように蜜ぷにちゃんの輪が出来ていた。ちらりと指の間から様子を窺ってみれば、まんまる蜜ぷにが隙間から覗いてくる。
「ううっ、ウカは戦わなくてもいいです? ダメです?」
「……お任せしてしまっても良い気はするわ」
 その隣、そうっとウカの周りに集まっていた蜜ぷにに手を伸ばすのはレイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)だ。
 指先が蜜ぷにに触れると、その見た目に違わず弾力がありつつも柔らかいぷにぷにした感触を返す。そのまま二度三度ぷにぷにと突いてみるが、敵意のないレイブルに対して蜜ぷにはされるがままにぽよんと揺れていた。
 表情に大きな変化はないが、レイブルの視線はついつい蜜ぷににいってしまう。
 見つめてくるつぶらな瞳からようやく目を逸らし顔をあげた先、やる気に満ちた仲間達が見える。
「彼女たちがたくさん集めてくれそうだもの」
 手は変わらず蜜ぷにをぷにぷにしたまま、きりっとレイブルが見据える先にはエレアリーゼ・ローエンシュタイン(花芽・f01792)とエンティ・シェア(欠片・f00526)がいた。
「すごい、すごいわ! 蜜ぷに! この子たち、食べられるのね!」
 きらきらと目を輝かせて、エレアリーゼは蜜ぷにの群れへと突撃する。
「お砂糖みたいなのかしら? それとも、果物みたいに甘酸っぱいの? 楽しみだわ!」
 赤い蜜ぷにを抱き上げれば、高い高いをするようにぽよんと持ち上げて。かと思えば、横に並んでいた青い蜜ぷにを手元に抱き寄せて。
 エレアリーゼの勢いに負けて蜜ぷに達はおろおろと行ったり来たりを繰り返している。その内の一匹がぷよぷよと跳ねた先、エンティにぶつかってまたぽよんと転がった。
「君に向いてるんじゃないか、なんて……同居人を人でなしみたいに言いやがって」
 目を回す蜜ぷにを抱え上げたエンティはじっと見詰めた後に、ニイと口の端をあげた。
「まぁいいわ。確かに『俺』向きだからな」
 ぞわりと立つ殺気に気付いてか、手の中で目を回していた蜜ぷにがぴょっと跳ねあがる。逃げ出そうともがくが、ぽよぽよとただ手のひらを押し返すだけでエンティはびくともしない。絶体絶命である。
「ああ、今からとってもワクワクするわ! ――あなたはどれがお似合いかしら!」
 抱き上げた蜜ぷに達をぽーんと空高く投げれば、エレアリーゼは召喚の言葉を口にする。わーと高く高く投げられた蜜ぷに達が落ちてきて、透明な筒の中にそのまま落下し、ぽよんとその身体を潰れさせた。
「ぷい?」
 ぽんと元のまんまるの形に戻った蜜ぷには、目の前にかかる透明なフィルターに身体を傾ける。首を傾げる感覚に近い。ぐるりと周りを見渡しても鮮明にはならない。
「ぷいー!」
 その時、上から赤い蜜ぷにが降ってきた。エンティが手に持っていた蜜ぷにを投げたのだ。
 ぽよぽよと積み重なる蜜ぷに達はいま、エレアリーゼが召喚した、それはそれはとても大きなミキサーの中にいた。
「いっぱいいっぱい詰め込んだら、それはもういっぱいシロップがとれるのね!」
 ぽんぽんとミキサーに吸い込まれて積み上がる蜜ぷに達はぎゅうぎゅうになったままどこか諦めの表情になっている。ちなみに四つ並んでも消えることはない。
「流石に多すぎないか?」
 ぽんぽんと吸い込まれていく蜜ぷにを眺めながらエンティが首を傾げる。
 エンティが召喚したもう一人の自分が囮役を務める事で、遠くにいた蜜ぷに達もミキサーの中に入れる事に成功していた。鬼ごっこだーとぽよぽよ跳ねていたらいつの間にかミキサーの中にインだ。
「ま、いいか。そうら、蜜置いてけー」
 リンと鈴の音を鳴らしながら、エンティ自身もまたゴルフの要領で蜜ぷにをホールインワンしていた。獣奏器の使い方を確実に間違っているが気にしてはいけない。
 ぽんぽんと宙を舞う蜜ぷに達はそれぞれぷいーとかぷきゅーとか気の抜けた鳴き声を出してミキサーの中へ吸い込まれていった。獣奏器で殴った跡は凹んでいたが、ミキサーの中に着地するとぽよんと戻る。
 そんな二人の様子を蜜ぷに越しに観察していたレイブルが成程、と小さく呟いた。
 他にも学園の生徒達や猟兵達が蜜ぷに相手に奮闘している。それぞれの人達の癖や呟きをレイブルはしっかりとウォッチングしていた。 
 近く、誰しもの身に一大イベントが迫っている。そう、バレンタインだ。
「参考に出来る事、あると良いのだけれど……」
 呟きながら、手は蜜ぷにを撫でる、撫でる。撫で待ちの蜜ぷにもいるのだが、レイブルの視線は仲間達へと向けられていた。
「ぷにちゃんにかこまれたせいかつ……」
 一方で、ぽんぽんとミキサーに吸い込まれていく蜜ぷにからウカがそっと目を逸らした。
「現実はままならないのです……」
 蜜ぷにちゃんに心奪われていたウカが震えた声で零す。蜜ぷにの楽園で暮らす日々を想像して幸せに満ちていたが、眼前に広がる光景は優しくない。
 半ば蜜ぷにに埋もれながら、ウカは一匹の蜜ぷにちゃんを掬い上げる。
「ぷい?」
 どうしたの、とでも言いたげな蜜ぷにと数秒見つめ合い、ウカは決意を抱く。こんな可愛い見た目をしていても、蜜ぷにちゃんは災魔の一種なのだ。
「ウカもこの苦しみを乗り越えます……えいっ!」
 ぽこん。ぷきゅー。
「ぷにちゃ……儚い……」
 とろんと崩れていく蜜ぷにちゃんをどことなく潤んだ双眸で見つめ、ウカはきゅっと拳を作った。
 様子を見守っていたレイブルが目元を緩め、蜜になったぷにちゃんを匙で掬う。甘味にも、薬にもなる蜜ぷにだ。このままにしておくよりも、使ってあげた方が報われるだろう。
「よく頑張りました記念、ね」
 蜜が詰まった瓶をウカへ差し出しレイブルが微笑む。太陽をそのまま落としたかのように、とろりと輝く琥珀色が眩しい。
 特製のミキサーから小分けにした蜜の瓶を手に、エレアリーゼがほこほこと満足そうに戻ってくる。エレアリーゼの手には、調理実習用の他にお土産用の蜜もあった。今から、この蜜を使った料理を作る日が楽しみだ。
「ね、美味しく頂きましょ?」
「作るのは任せたいけどな」
 たくさんの蜜の確保に協力したエンティも合流して、四人はまだまだ蜜ぷにが残る、蜜ぷにたちの楽園を後にする。
 次なる目的地は魔法の書架だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュシカ・シュテーイン
絲さん(f00433)とぉ、ご一緒ですねぇ

調理レベル:★☆☆☆☆
(元世界では調理経験無し)

料理は初心者ですのでぇ、私は絲さんのアシスタントですかねぇ
蜂蜜ですかぁ、いいですねぇ、甘いんでしょうねぇ、何だか楽しみになってきましたよぉ
ではではぁ、絲さんよろしくお願いしますよぉ

絲さんに纏めていただいたぁ、ぷにを私が倒すという役割でいきましょうかぁ
予め用意していたルーンを刻んだ石のぉ、爆破の法石を複数ばら撒いて攻撃しますよぉ
魔力量を調整して熱量抑えめで衝撃を強くしたのでぇ、蜜が焦げることは避けられますかねぇ

わぁわぁ、確かにキュートですねぇ、可愛いですねぇ
……お店で飼ったらお客さん増えたりしませんかねぇ


赫・絲
リュシカさん(f00717)と一緒!

調理レベル:★★☆☆☆
(レシピを見ればがんばれる)

とりあえずまずは材料からねー。
蜂蜜みたいな感じならお土産の分も持って帰ろっかな。
作るより食べる方が得意だけど、甘いモノ作れるかもって考えると俄然やる気出るよー。
がんばろーねリュシカさん!

属性付与で雷を巡らせた糸で蜜ぷにを痺れさせ捕らえると、糸を操り一ヶ所に纏める

ほら、まとめてやっつけたら蜜いっぱい出ないかなーと思って。
あと強そうなヤツも蜜多く出そうだから、おでこに大きい数字が書いてある蜜ぷには積極的に捕まえるね!

にしてもこうやって集めると可愛いねー。
思わず写真を一枚ぱちり。

よーし、あとはリュシカさん、お願い!




「絲さん、こちらですよぉ」
「はーい!」
 ぽーんぽーんと跳ねたり転がったりする蜜ぷにたちを前に、赫・絲(赤い糸・f00433)が糸を伸ばす。触るとびりりとする細い糸が触れると、途端に蜜ぷにたちはびょんと跳ねて動かなくなった。
 次から次へと痺れさせていく絲の手際を眺めながら、リュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)は持ち込んだ石をばらまく。ルーンが刻まれたその石は、ただの石ではない。リュシカの商品でもある『法石』だ。
 甘いものに釣られた二人はぽんぽんと蜜ぷに達を法石の輪の中に入れていく。これから採れる蜜がたまらなく美味しいというのだからやる気も出るというもの。
 痺れさせた蜜ぷに達をいとの導きでリュシカの元へとまとめていくと、カラフルな蜜ぷにのおやまが出来上がっていた。
「こうやって集めると可愛いねー」
 ぽーん、とまた一匹蜜ぷにを投げ込んだ絲の言葉に、リュシカもうんうん頷く。
「確かにキュートですねぇ、可愛いですねぇ」
 思わず指先でつついてみれば、ぽよぽよとした感触を返す。ダメになるクッション――もとい、ダメになる蜜ぷにだ。癖になる。ぷにぷに。
「……お店で飼ったらお客さん増えたりしませんかねぇ」
 じーーーっと見つめた先にいた水色の蜜ぷには積み上がった仲間たちのおやまを見上げていたが、リュシカの視線に気付いてぽよぽよと寄ってくる。
 なんだなんだーと見上げてくる蜜ぷにを抱き上げ――。
「ぷいー!?」
 そのままフードの中に入れ込んだ。お持ち帰り準備、完了!
 そんなやりとりには気付かず、絲はスマホのカメラで写真をぱしゃり。まだまだ動き出しそうにない蜜ぷに達を前に、インスタ映えを気にするように何度か撮りなおしていた。
 そのカメラの画面を横切る、おでこに13と書かれた蜜ぷに。
「あ! 強そうなヤツ!」
 いそいそとスマホを仕舞えば糸を繰る。油断しまくっていた13の赤い蜜ぷには、糸が絡むと「ぷきゅー!」と声をあげてじたばた。
「むむ。ちょっとは強いみたいだねー」
 雷を巡らせた糸を絡ませただけではまだまだ元気な様子。ちょこっときゅっとしてみれば、またも不思議な声をあげてくたりと蕩けた。崩れてしまう前に、えいとリュシカの方へと投げる。
 そろそろたくさんだ。絲がリュシカの所へ戻ると、最後の仕上げに取り掛かる。
「ではではぁ、いきますねぇ」
 リュシカが石をひとつ投げ込み、その衝撃で爆発させるとばら撒いた法石が誘爆して次々と爆発していった。
 ぷきゅー! ぷー! ぷいー!
「……リュシカさん?」
「あらあらぁ、ばれちゃいましたねぇ」
 爆心地の声以外に、真横からぷいぷいと鳴く存在に気が付く絲。絲がフードをつつくと助け舟が来たとでも言うかの如く蜜ぷには暴れた。ぽよぽよと跳ねる。
 こっそりお持ち帰り出来ないかと策謀したリュシカであったが、こうも暴れられてはたまらない。
 ぽーんとフードから飛び出した蜜ぷにを見送り、蜜を回収すれば、二人は次なる目的地へ向かう。
 そう、お料理レベルが底辺に近いリュシカと絲は、これがなければ始まらないのだ。
 ――その名も、レシピ本!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアン・ウロパラクト
なんだい。このグミだかゼリーみたいなやつはスライムとは違うのかねぇ。
ともかく食材になるってんなら大歓迎だけどな!
…まぁどうせなら肉になる奴が良かったけどさ。

とはいえこいつらどうやって処理すんのかね?
道具を出してはみるが…容器に入れて火かけるとか。
切るとか押し潰すとかか、一通り試すのも悪くないか。

しかし、こんだけいるなら摘み食いだって大丈夫だろ。
何か言ってくるようなら毒味だって言っとくさ。
蜜ってことなら菓子には合うだろうし、…肉にも使えるんじゃないかね?
ほら、柔らかくなりそうだしソースにも使えるし。
あー、肉食いてぇなーってぼやいてるよ。


リリヤ・ベル
ひとりです。
ひとりでおつかいするのです。
でも、ご一緒するのも歓迎です。調理実習ですもの。
けっして心細いわけではないのです。

……うぅ。かわいい。かわいいです。
いえ、かわいさにたましいをうばわれてはなりません。
愛らしくはありますが、あれも魔物なのです。
まけません。がんばります。

ポコポコたたくと、飛び散ってしまうでしょうか。
おいしくいただくなら、たくさん採れた方がよいのです。
【ジャッジメント・クルセイド】で、ジュッとしましょう。

あまいものはおいしい。
おおくても困ることはありません。きっと。
……すこし、お土産にしてもよいでしょうか。
抜け駆けして美味しいものをいただくのは、ちょっとだけ気が引けるのです。




 きょろきょろと落ち着きなく辺りを見回す少女がひとり。心なしかしょんぼりとした空気を感じたのか、蜜ぷにがぽよぽよ近寄ってきて慰めるようにぷいぷいと鳴いた。
「なんだい、このグミだかゼリーみたいなやつはスライムとは違うのかねぇ」
 声が聞こえたリリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)がはっと顔をあげると、足元で鳴く蜜ぷにを摘まむ女がひとり。キアン・ウロパラクト(フーディアン・f01189)その人だ。
「アンタも猟兵? なら一緒に行こうじゃないか!」
 調理実習は複数人。調達段階も複数人で、との話を聞いていたキアンは摘まみあげた蜜ぷにをリリヤに差し出しながら気楽に誘う。
 キアンの朗らかさに誘われるように、リリヤはこくりと頷いた。やりい、と上機嫌に揺れる尻尾の後に続いて、リリヤも蜜ぷにの群れに近付く。
「こいつら、どうやって処理すんのかね?」
 食材になるというのだから興味津々にキアンは蜜ぷにを指先で突く。ぽよんぽよんと突かれる度に揺れる蜜ぷにはやめてーと言わんがばかりにぷきゅーと鳴いた。
 まるっこくて愛らしい災魔たち。色とりどりの蜜ぷにがそこかしこにいる空間は、魔物であるという事を除けば随分な楽園に見えた。
「……うぅ。かわいい。かわいいです……」
 調理方法をあれこれ考えるキアンの傍ら、リリヤは突かれて揺れる蜜ぷにのかわいらしさにきゅんと心を揺さぶられる。
 つぶらな瞳に、どこか間の抜けた表情。色合いもパステルで可愛らしく、特段襲い掛かってくる様子もない。
 くらくらと揺れながらも、リリヤはひとり決意する。愛らしくはあっても、魔物なのだと思い直す。
 ふるふると頭を振って、息を吸った。
「えと。ねつをくわえてみても、よいかもしれません」
「成程な! 叩いたら散っちまうかね」
 あれやこれやと試してみて、結局キアンは容器に蜜ぷにを入れ込んで火にかける方法をとった。
 これなら手伝えるとばかりに、リリヤも天から光を降らせて蜜ぷにをジュッと焼く。
「ほら、アンタもどうだい?」
 とろりと崩れた蜜ぷに達はきらきらと艶やかな蜜へと変貌する。小分けにした瓶から指先で蜜を掬ったキアンは、戸惑うリリヤを気にすることなく味見した。舌の上に広がる甘さは花の蜜独特の味で、なんとも癖になりそうだ。
「ん~、いいねえこれ。柔らかくしたり、ソースにしたり、肉にも使えそうじゃないか!」
 マイペースに蜜を摘まみ食いするキアンに釣られ、リリヤもそうっと一口。蕩ける甘さに思わずため息が出てしまうほどだ。
「……すこし、おみやげにしてもよいでしょうか」
「おう、入れ物ならあるぞ」
 快諾を得れば、リリヤはいそいそと匙で掬って小瓶に詰める。思い浮かべるのはあの大きな背中。ひとり抜け駆けするのは、ちょっとだけ気が引けた。
「どうせなら肉になる奴が良かったなあ」
「キアンさまは、おにくがすきなのですか?」
 たくさんの蜜の瓶を抱え、二人は揃って先へ進む。蜜だけでなく、今日の本題はお菓子なのだ。その為の本は歩む先。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミラン・ローズブレイド
(ファーラ様に、はちみつとも呼ばれてるからには、蜜ぷになるものの蜜も摂取しておかなくては……)
心が痛まないわけではないが…、まぁ、さくっと倒させていただこう。
ご一緒する方には挨拶を
「ミランと言います、今回は宜しくお願い致しますね」
そうだな…こういう戦いは初めてなんだ
皆の邪魔にならぬよう、出来るだけ皆から離れず、戦っている者の補助となるように動くのがいいかな
鈴蘭の嵐で蜜ぷにを攻撃しつつ、……出来れば、蜜ぷには料理だけじゃなく持って帰りたいので、まぁ、多めに倒させていただく
ファーラ様のために新しい料理も覚えたいし、申し訳ないが俺の糧になっていただくよ
「すまない、でも大切に使わせていただくよ」


烏鷺・エリカ
アドリブお好きなよーに

…あっは、かぁわいい
蜜ぷにちゃんかぁ。僕これ飼いたいなー
死霊術士に召喚される気ない?
なぁんてナンパしたくなっちゃう

でも今は、ぼこぼこにしないと…だったよね?
可哀想だけどお蜜は欲しいし
ごめんねぇ、でも手は緩めてあーげない

【アリスと不思議な国民達】使用
呼び出す少女は僕の「アリス」
今日の動物「兎さん」もおいで
ふたりは時計の針の剣で攻撃するよ
唄うマザーグースは『呪詛』
ちくっと効いてくれたらいいね

僕は攻撃受けないように
あのこ達の攻撃の回避は頑張ろっか
こーゆーとき『野生の勘』もちょっとは頼れるかな

鞭と一緒に必要なのは…すこしの飴?
ふふ、せめて『祈り』をあげるね
あまぁい蜜をちょうだいな




「ミランと言います。今回は宜しくお願い致しますね」
 ぺこりとお辞儀したミラン・ローズブレイド(羽風・f10316)は挨拶もそこそこに、蜜ぷにたちの群れを見た。
「よろしくねぇ。……にしても、蜜ぷにちゃんかぁ。僕これ、飼いたいなー」
 スタスタと早足で蜜ぷにに近付けば、烏鷺・エリカ(Alice・f00613)は群れている蜜ぷにの中の一匹を摘まみ上げる。
「きみ、死霊術士に召喚される気ない?」
 それはつまり、一度骸の海にいけと言っているようなものなのだが。
 勿論、蜜ぷににそんな口説き文句の意味が通じるわけもなく、エリカの手の中で「ぷきゅ?」と首……身体を傾げるだけだ。
「あっは、かぁわいい」
 にこにこと整った顔でエリカが笑顔を作る。
「でも今は、ぼこぼこにしないと……だったよね?」
 側にいたミランに同意を求め顔を向ければ、エリカに向かってミランも頷く。
 どこか不穏な気配を蜜ぷにはぴこーんと感じた。
 愉快な鳴き声をあげてエリカの手の上から逃げようと跳ねるが、それを許すエリカでもない。
「ごめんねぇ、可哀想だけどお蜜は欲しいんだよね」
「心が痛まない訳ではないが……恨むなら運の悪さを恨んでくれ」
 蜜ぷにか跳ねるよりも高く、エリカがぽーんと蜜ぷにを上に投げる。ぷきゅううううと悲鳴のような鳴き声が聞こえるがお構いなしとだ。
「おいで、僕のアリス。それと――兎さん」
 ちくたく、ちくたく、音がなる。
 それは突然訪れた。スカートをふわりと揺らした少女と、道化のような服を着た兎。瞬きの間にエリカの傍に佇んでいる。
 落ちてくる蜜ぷにを狙い、少女が時計の針のような剣を向ける。必死の抵抗とばかりに蜜ぷには落下の軌道を体の形を変えることで逸らしてみせた。
 その時、鈴蘭の花びらが舞った。
 ミランが操る花弁は蜜ぷにの体を縛り、自由を奪う。決死に抗っていた蜜ぷにはもはや絶対絶命だ。ぷいーと最期の咆哮をあげてその体に針を通した。
 ミランが鈴蘭の花びらを駆使して補佐し、エリカの少女と兎がばったばったと蜜ぷに針でを串刺しにしていく。
 手伝う側で、崩れた蜜ぷにが足元にあれば、ミランはちらりとそれを見た。
(「ファーラ様に、はちみつと呼ばれているからには、蜜ぷになるものの蜜も摂取しておかなくては……」)
 ちらりとエリカを見やれば、まだまだ余裕はありそうだ。蜜ぷにたちは逃げ惑うばかりで、突撃してくる勇猛なぷには少ない。
 鈴蘭の花びらで補佐する手は止めないまま、ミランは指先で蜜を掬う。味見とばかりに一口含めば、広がる独特の甘みは花の蜜特有のものだ。蜂蜜とはまた違う甘さがある。
「ミランくん、まだいるかい?」
 何匹か仕留めたらしいエリカに問われ、ミランは頷く。折角ならたくさん持ち帰って新しい料理を開拓していきたいところ。
「はぁい。じゃ、あまぁい蜜をちょうだいな」
 蜜の詰まった瓶を積み重ねていた少女と兎が再び時計の針を手に駆け出した。ぴゅーっと逃げる蜜ぷにをミランが花びらで掬う。
「すまない、でも大切に使わせていただくよ」
 そうして、大量の蜜を得た三人と一匹は次なる目的地を目指す。その手に、あふれんばかりの蜜の瓶を抱えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マハティ・キースリング
じゃあこのぷにちゃんの花は私達が接収するからね
元帝国軍人に情けなど無い、人道に反した躊躇なき略奪が可能だ

バシッと奪ってヘイトを稼ぎつつ
大砲でばしーんばしーんとフルスイングして減らして行こう

それから潰されたり、群れの濁流に飲み込まれたり
あとは流れでお願いします
人物の不運特性を活用し、ボコボコにしてください

アドリブご自由に


ソラスティベル・グラスラン
ふっふっふ……聞きました、聞きましたよ!
迷宮の甘美な宝、蜜ぷにの群れが現れたと!!

ああ、なんと甘美な光景……!
甘い良い香りのする彼らのことは良く知っていますとも!
勇気の源、愛してやまない彼らの蜜!何を隠そう大好物!
美味なるスイーツの素を求め、いざ勇猛に参りますッ!!

…な、なんで逃げるんですか!
勇気と気合と根性が足りませんよっ!?
仕方ありません、ぷにぷにと言えどこの体たらくは喝を入れてあげねば…
迷惑千万!【北の大地激怒】!!
ふふふ、見ましたか蜜ぷにさんたちよ。勇気があれば何でもできるのです!
……あれ?

蜜は用意した柄杓と瓶(沢山)で回収します!

グループは誰でもよいです!一人でも勇気ある行軍です!




「ふっふっふ……聞きました、聞きましたよ!」
 不敵な笑い声がした。両手に腰を当て、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)はきらんと瞳を輝かせる。
「迷宮の甘美な宝、蜜ぷにの群れが現れたと!」
 ソラスティベルの眼前に広がるのは、どこを見ても蜜ぷに、蜜ぷに、蜜ぷに……。
 そう、カラフルでまんまるな蜜ぷに達の楽園だ。
 そしてこの楽園、ソラスティベルにとってもそのまま楽園のようである。なんせ、ソラスティベルにとって蜜ぷには生きていくのに欠かせないと言っても過言ではないほどの大好物なのだ!
 辺りに漂う甘い蜜の香りはソラスティベルの空腹を誘う。早くも涎が出そうだが、まずはこの甘美なスイーツの元を倒さなければならない。
 はしゃぐソラスティベルの隣、マハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)は軽い準備運動を終えて背筋を伸ばした。
「じゃあ、このぷにちゃんの花は私達が接収するからね」
 元帝国軍人たるマハティに遠慮や手加減はない。いくら見目が可愛かろうと、人道に反した躊躇いなき略奪に抵抗などありはしないのだ。なにより、眼前の蜜ぷには災魔の一種であり、蹂躙する事は人道に反する事にはならない。どこに躊躇う必要があろうか。
「いざ、美味なるスイーツの素を求め、勇猛に参ります……!」
 じゃきんと大砲を構えるマハティと、ぐっと拳を作り力を込めるソラスティベル。
 二人とも力任せにぎったんばったんと戦うつもりだ。やる気満々の闘志を感じ、蜜ぷにたちの間に衝撃が走る。
 あいつら、やばいぷに……!
 びびびっと共通認識が走れば、蜜ぷにたちはぴゅーっと立ち所に散り散りになる。
「あっ! な、なんで逃げるんですか! 勇気と気合と根性が足りませんよっ!?」
 そんなぷにたちを追いかけるソラスティベル。わーわーと鬼ごっこをする一人とぷにたちの傍ら、マハティは溢れる蜜ぷにたちを大砲でフルスイングで吹っ飛ばしていた。額に伝う汗が眩しい。
「ふう……造作もないな」
 きらんと星になるぷにちゃんを見送るマハティだが、迫る危機はすぐそこまで来ていた。
「迷惑千万! ぷにぷにと言えど、敵前逃亡は喝ですよ!」
 ピョーンと空高く跳ねたソラスティベルの拳が着地と同時に地面を穿つ。フロア全体が揺れるような地震が起こり、楽園に穴を開けた。
「ふふふ、見ましたか蜜ぷにさんたちよ。勇気があれば何でも……あれ?」
 しかし、ぷにたちの姿はそこにない。大振りの一撃を察した蜜ぷにたちは、全員一斉に方向転換して雪崩れていた。
 ――そう、マハティの方へ。
 また一匹ホームランに伏したマハティは近付く群れに気付かない。
「ぎゃあ! マハティさん、よけてえー!」
「えっ?」
 しかし遅い。
「ぷいー!」「ぷきゅう!」「ぷぷぷーー!」
 ドドドドと迫る蜜ぷにたち。まるで津波のように蜜ぷにたちの壁がマハティに迫り――。
「まっ、」
 待つはずもなく、呑み込んだ。
「うう、大丈夫です?」
「も、問題ない」
 数分後、全身蜜まみれのマハティと、しっかりちゃっかり大好物の蜜を確保しているソラスティベルの姿が書庫への道にあったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クレム・クラウベル
確保されたので終(f00289)と同行
アルダワで調理と聞くとどうにも嫌な記憶が過るんだが……
いや、今日はあいつもいないし大丈夫だろう
ああ、少し前に闇鍋がな……いや、忘れてくれ
一先ず素材集めか。あれこれ考えなくて良いのは楽だ
蜜なら多くあっても使いみちに困らない
いくらか土産にするか

倒せば良い、とは言え材料に使うもの
然程気にするものでもないのだろうが
気分的にジャッジメント・クルセイドを中心に
獅子越しに味とか分かるものなのか?それ

しかしなんというか…気の抜ける見た目だな
油断して埋もれないでくれよ
……言ってる傍から埋もれてないか
連れが居て良かったな
危うく蜜で溺死なんて笑える死因で晒されるところだったぞ


静海・終
2人一組になって~という幻聴が聞こえたので即刻クレム/f03413を確保
トラウマなどございません、何もありません
おや、クレムは調理に何かあったのでございます?
素材はあれですねえ…紅茶に入れるのもいいかもしれませんね

吹っ飛ばしても問題なく食べられるのでしょう
…私、獅子で食べたら美味しいのでしょうか…
腕を獅子に変えてツンツン…つまみ食い
…おい…しい…??

あはは、そんな間抜けなこといたしませんよ~
しかしぷにぷに良い感じにほの温かく気持ちよいですよ
あぁ~っと、ぷにぷにに埋もれ消えていく
そこからクレムに引き上げられて生還
…侮り難しぷにぷに
さて、量はこれくらいで、もう食べられたいぷにぷにはいませんかね?




 二人一組になって~! はあーい!
 そんなやりとりを誰もが幼少の頃に経験したことがあるだろう。少なくとも、この学園生はある筈だ。
 そして、齢二十五にして在りし日のトラウマに抉られたかのように、静海・終(剥れた鱗・f00289)は体の良い相方を捕まえた。クレム・クラウベル(paidir・f03413)その人だ。
 きょろきょろと落ち尽きないクレムの様子を見れば、終は不思議そうにクレムを見やる。
「どうかいたしましたか?」
「いや、なに、嫌な記憶が……いや、なんでもない……」
 どこかで見た背中を再び見る事はなさそうで、クレムはひとまずほっと一安心。
「ともあれ、一先ず素材集めか。目の前にいるのは楽だな」
「探す必要もないですし、今から些か楽しみですねえ」
 花の蜜からなる蜜ぷに達の蜜は、由来がどうあれ美味しいもの。お菓子作りは勿論のこと、一匙紅茶にいれたりパンに塗ったりと用途は多岐に渡る。土産用に多めにとっても困らないだろう。
 蜜ぷにの群れに近付けば、珍客に蜜ぷに達はぽよぽよと跳ねまわる。
 そこへ遠慮容赦なく光の矢を振り下ろしたクレムは、じゅっと焼ける蜜ぷにが蕩ける様子を眺めていた。案外、簡単に崩れるらしい。
「なんというか、気の抜ける見た目だな」
「ですねえ」
 終もまた、逃げ惑う青い蜜ぷにを捉えれば、――ぴこんと思い付きひとつ。
「……味は分かるのか、それ」
 クレムの視線の先、腕を獅子の頭に変えた終がもごもごと蜜ぷにを齧っていた。獅子の牙が蜜ぷにの張りのある体に突き刺さりぷちっと弾ける。
「ぷきゅー!」
 じたばた暴れた蜜ぷにであったが、顎の強い獅子に勝てるはずもない。その内とろりと崩れて煌めく蜜が獅子の口内に広がった。
「ふうむ。そうですねえ……。……おい、しい……?」
 なんとなく体がほっこりと温まる感じはするが、味蕾は獅子のものなのでようくは分からない。多分、きっと、恐らく、おいしい。そんな気がする。
 あまりに抵抗のない蜜ぷにを前に、いまいち緊張出来ない二人はぽこぽこと蜜ぷにを光で焼いたり獅子で食べたりしていった。
 繰り返すにつれ緊張の糸は更にゆるゆるになるが、相手はこれでも災魔なのだ。
 ふわあ、と欠伸のような声がすれば、クレムは振り返り終を見る。
「おい、油断して埋もれ……てるな……」
 時すでに遅し。
「そんな間抜けなこと~、あぁ~」
 なんて言いながら、終の体は半分ぐらい蜜ぷにの群れに呑まれていた。ダメになるソファが如く、ダメになる蜜ぷにの群れは大層心地良い。
 足掻く気の無い終の、とりあえず無事に生えてる腕をクレムが引っ張りあげて現実へと連れ戻す。
「蜜で溺死なんて、笑える死因すぎるぞ?」
「侮り難しぷにぷに、でございますねえ」
 どこか名残惜しそうに蜜ぷにを群れを眺め、終が軽く肩を竦めて応えた。
 傍ら、せっせと集めていた蜜はいつの間にか膨大で、お土産含めても充分だろう。
「ほら、行くぞ」
 また埋もれては堪らないとばかりにそのままクレムが終の腕を引く。目指す先はレシピ本の詰まる書庫だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ライブラリーマスター・シャルロット』

POW   :    おしおきディクショナリー
単純で重い【鋼で強化された分厚い辞典の角】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ふたりの夢の王子様
自身が戦闘で瀕死になると【白馬に乗った王子様】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    やぎさんゆうびん
【大量の子ヤギ】の霊を召喚する。これは【噛みつき】や【タックル】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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 書庫への道を進み、猟兵達の前に開けた空間が広がる。
「わあ……!」
 それは思わず歓声をあげてしまう程に広大で、近くの本棚を見れば数多くのレシピ本が並んでいるのが見て取れた。
 例えば、黄金比に基づいた最高に美味しいお菓子の作り方、とか。
 例えば、あらゆるものを美味しく仕立て上げる調味料の作り方、とか。
 例えば、伝説のアルダワ魔法学園シェフ協賛の主食菜食レシピ本、とか。
 そこにはありとあらゆる料理に関する本が収められていた。蜜ぷにの蜜を使う、という前提がある今回でなければ、それこそ興味のあるレシピはそこかしこに散見していることだろう。
 辿り着いた猟兵達が本棚に釣られていく背後、通路を塞ぐようにしてその人は現れた。
「むむ、むむむむ! お料理図書館に来る人はどなたです!」
 しゅたーん、と小気味のいい音を出して着地したのはピンクの髪を左右に括り上げた可愛らしい少女だ。ふわりと揺れた大きな羽根飾りに、夜空のような青色のローブを纏っている。
 どうやら先ほど蜜を乱獲していた学園生ではないようだ。
「ここから本を持ち出したくば、このあたしに許可をとりなさーい!」
 ぷんぷんと頬を膨らませて、人差し指をピンと立てたピンクの髪の少女は声をあげる。それから両手を腰にあて、猟兵達を見上げるようにふんすと仁王立ちした。
 そういえば、番人がいると言っていたような。この少女がきっとそうなのだろう。
 ここからレシピ本を持ち出すには、この少女の許可がいる。グリモア猟兵の言によれば、番人に認められれば容易く持ち出すことが可能になる筈だ。
「勝手に持ち出す悪い子は、おしおきですよ!」
 ぽぽぽぽーん、と子ヤギを召喚しながら、少女は猟兵達の前に立ちはだかる。学園へと戻る通路を塞がれては、少女と相対する他ない。
 召喚された子ヤギたちは少女の元を離れて猟兵の傍へと近付いた。どうやら敵意はないようだ。司書兼お目付け役なのだろう。欲しい本が見つからなければ、子ヤギに尋ねてみると良い。
 まずは目的の本を探して、――さて、どうしようか?
エンティ・シェア
戦う必要がないなら、私が努めよう
とはいえ誇れるのは口だけだ。頑張って言いくるめようね、私

可愛らしい子ヤギ殿と戯れながらのんびりと探そうか
もうひとりの私にも手伝わせよう。ついでだ、他の猟兵の手足にもお成り

やぁ番人殿、こちらの本をお借りしたいのだが宜しいかね
ちなみに私は料理初心者なのだが、これを御覧頂きたい。初心者向け蜜ぷにお菓子本。これは素晴らしい。とても懇切丁寧に書かれている。これなら私にも出来るだろう。良ければ番人殿の食べたいものを選んで頂きたい。初めての料理になるだろうからね、出来た暁には本の返却と一緒に味見をしてくれると頼もしい
如何だろうか。楽しいおやつタイムのためにご助力願えないかい?


レイブル・クライツァ
番人も、可愛いなんて聞いてない(一句)
倒さなくて済むのはありがたいわ。本に囲まれる生活が羨ましい限りだけれどもね。
探す際は、図や分量が曖昧な表現ではなく、測ればある程度形に出来そうなレシピであることを最優先で欲しいと主張。
ほら、お菓子作りは特に分量と手順通りに作らないと
折角手間をかけたのに、生チョコが何故かグニグニのグミになったりするのよ。
そんな失礼な物を出せる筈が無いし
…子ヤギさん
おもてなしから始めるお茶会オススメお菓子レシピってコンセプトで載っている本は無いかしら?
招き方が自然と雰囲気に馴染めるようにってしたいのよ。
後、撫でさせて欲しいのだけれど駄目、かしら。
もふもふが愛らし過ぎて撫でたい




 先ほどとは打って変わって穏やかな印象を受けるエンティは、擦り寄ってくる子ヤギを撫でながら本を探す。お料理初心者でも出来るレシピはそこかしこに散見しており、より取り見取りという贅沢な状況だ。
 もうひとりの自分を召喚しながら、エンティは撫でる子ヤギに視線を合わせる。
「初心者向けのお菓子本を探しているのだが、見付けられるかい?」
 果たして、言葉を理解できるのかは定かではないが、子ヤギはぷるぷると身体を震わせた後、細い足をどこかへ進めた。
 どうやら案内してくれるらしい。
 子ヤギの後をのんびりとついて行きながら、エンティはもうひとりの自分の行先を目で辿る。その先には見た顔があった。
「……レイブル嬢?」
 立ち尽くすレイブルの姿を訝し気に眺めれば、エンティは声をかけてみる。
 帰ってきた応えは予想外のものだった。
「番人も 可愛いなんて 聞いてない」
「――はい?」
 ふるふると握りしめた拳はそのままに、レイブルは子ヤギに指示を出すピンク髪の少女を見つめていた。それはもう一句詠めてしまうぐらいに。
 束ねたピンクのツインテールをぽよぽよと揺らし、少女は通路の前から動かぬ範囲であくせくと本を集めている。一冊、二冊、十冊、どんどんと積み重ねればおでこの汗をぬぐって一息。カタカタと揺れる本は災魔の一種だろう。少女の手に掛かれば大人しいものだ。
 そして手に取った本のページをぺらりとめくる。文字を辿る目はきらきらと輝き、読書を楽しんでいる事が傍からも見て取れた。
 純なる少女だ。言ってしまえば、本の虫。
 エンティの疑問の眼差しをものともせずにレイブルは少女の一挙一動を見守っていた。ひとつひとつが可愛らしい。はあと思わずため息を吐いた所で、もう一度名前を呼ばれてはっと我に返る。
「本を探さなくても良いのかい?」
「ええ、……いえ、探すわ。ありがとう」
 しかしレイブルの視線は子ヤギへと向く。
「子ヤギ殿、こちらのご案内も頼むよ」
 軽く肩を竦めたエンティが足元の子ヤギへと声をかければ、んめぇえと高い鳴き声が返る。ふんすとやる気を見せた子ヤギがレイブルを見た。
 案内してくれると知れば、レイブルはこれ幸いにと探している本の詳細を告げる。
 招き方が自然と雰囲気と馴染めるような、ナチュラルなおもてなしのやり方から始まり、お茶会にお勧めお菓子のレシピが載っているような、お手頃の本。
 それと、とレイブルはもうひとつ付け足して。
「撫でさせて欲しいのだけれど駄目、かしら」
 はきはきとした口調はレシピの説明よりも饒舌で、確固たる意志を感じさせた。
 なお返答はんめええという声だけだったが、ドヤ顔だったのでオーケーということにした。もふもふ。
「折角手間をかけたのに、生チョコが何故かグニグニのグミになったりするのよ」
「それはなんとも不思議だねえ……」
 エンティとレイブルの二人は揃って子ヤギの案内を受ける。この本、この本、と子ヤギが示したものは確かに要望に敵っていた。
「さて、頑張って言いくるめようね」
 折角見つけたところで持ち出せなければ意味がない。
「むむむっ、何用ですか!」
「やぁ番人殿、こちらの本をお借りしたいのだが宜しいかね」
 エンティが見せた本は、『初心者向け蜜ぷにお菓子本~入門編~』。ぱらぱらとすでに見た限りでは、とても丁寧で入門を語るだけあって誰にでも出来そうな内容だった。
「これなら私にも出来るだろう。良ければ、番人殿の食べたいものを選んで頂きたい」
 ぺらりとカヌレのページを開いたままの本を差し出すと、番人の少女はきらきらと目を輝かせる。
「あたしも食べられるです? 一緒に食べるですー!」
 この番人、ちょろすぎる。
 気付けば番人と一緒になってレシピ本を眺めながら、これがいいあれがいいなんてお喋りタイム。ご助力願えないかい、とトークに混ぜ込めばいとも簡単に許可を得たのであった。
 口八丁をエンティに任せたレイブルは、その横でもふもふもふもふと子ヤギを堪能していたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クレム・クラウベル
引き続き終(f00289)と本探し
……好きなのか?ヤギ

蜜を使った料理と言うとやはり甘味だろうか
無難にプリン辺りを中心にするか
目当ての本を見つければ番人と交渉
力で捻じ伏せるのも面倒くさい、穏便にやろう

番人の前に先程採取した蜜の瓶を示し
これを使った菓子を作るのにレシピを借りたい
例えばこの蜜をふんだんに使ったプリン
それはもうふわっふわでとろぷるだ
スプーンでつつけばしなやかにぷるぷる揺れるし
薄い卵色に蜜の黄金が映えて見目にも美味しい
そのようなプリンを作りたい
……さて、そういう訳で許可頂けるだろうか?

そちらは和菓子、というやつか
あぁそうだな。完成した暁には返却ついでにおすそ分けしよう
レンタル料代わりだ


静海・終
クレム/f03413と
ヤギ~貴方様は和菓子の本など知っておられます?
しゃがんで鼻先を擽りながら訊ねてみる
うん? いえ、もふもふを好むだけでございますよぉ
私もお嬢さんをぼっこぼこにする趣味はございませんので許可を得ましょう

おや、クレムもぷるぷるなのですね
私はですねえ、水信玄餅など作ってみようかと思っております
こちらの見た目の不思議なお菓子
水のように透明でつやつや
突けば弾けて水が跳ねそうかと思えば
弾力があってとってもぷにぷに
そこにきな粉とこちらの蜜をかければ
とっても甘くておいしい物ができると思うのでございます
お嬢さんにも是非食べていただきたい!
良ければこちらの本を貸し出していただけますでしょうか?




 クレムの眼前には、終がいた。
「ヤギ~貴方様は和菓子の本など知っておられます~?」
 漫画ならそう、にへえとでも音がついていそうなぐらいに頬を緩めて子ヤギの鼻先を擽ってる、終がいた。
「……ヤギ、好きなのか?」
 恐る恐ると出した声はかろうじて終に届く。下手に踏んだら爆発しそうな地雷原を歩くが如きの緊張感がそこにはあった。
 が。
「うん? いえ、もふもふを好むだけでございますよぉ」
 朗らかな応えが返ってきて、クレムはほっと息を吐く。これで急にヤギスイッチなど入られては困るのだ。これから本を取りに行こうというのに。
 さて、終に遊ばれて機嫌を良くした子ヤギはるんるんとスキップ調子に本棚を練り歩く。
「んめぇえ~」
「おや、ここでございますか? どれどれ……」
「ああ、これはいい」
 そうして見つけたシリーズ系の本二冊を手に持ち、クレムと終の二人は少女とご対面した。
 まずは子ヤギが一歩出る。この子ヤギ、どうやら終に可愛がられた為か、めえめえと二人を援護するように鳴いている。
 ――鳴いているの、だが。
「やーちゃん。なにゆってるのか、あたし分かんないよ?」
 こてんと首を傾げたピンク髪の少女には効果が無い。しょんぼりと戻ってくる子ヤギの代わりに、ずずいと前に出るのはクレムだ。
 本日、手荒い仕事は休業日。その手に抱くはレシピ本のみ。いざ、尋常に勝負!
「まずはこれを見てくれるか」
 見せたものは、花の蜜がたっぷり詰まった瓶だ。
「ぷにちゃんの蜜!」
 流石番人、話が早い。
 同意を示すように頷いたクレムが、続いてレシピ本を少女へ見せた。ぱらぱらとページをめくれば手を止める。
「これを使った菓子を作りたくてな。例えば、このプリン」
 子ヤギが導い先にあった、『スイーツの達人~洋菓子編~』のページにはプリンの写真が載ってある。
 きらきらと日の光を反射して輝いているようにも見える、ぷるっぷるのプリン。写真だというのに、その見た目から極上の味を想像出来てしまうだろう。思わずこくりと唾を呑みこんでしまう程だ。
「スプーンでつつけば、しなやかにぷるぷる揺れるし」
「ふわっふわで、とろぷる……!」
「薄い卵色に蜜の黄金が映えて、見目にも美味しいだろうな」
「ふわああ……!」
 蜜とレシピ本を交互に見やり、少女は今にもお腹が鳴りそうに腹を撫でる。きゅっと閉じた目は傍から見ても我慢しているのがようく分かった。
「それと――」
「――私の話も、聞いていただきましょう」
 プリンの世界に旅立ちかけていた少女を引き戻すのは、終の声。
「クレムのぷるぷるも良いのですが、こちらも中々美味しゅうございますよ?」
 そう言って示したのは『スイーツの達人~和菓子編~』に記載の水信玄餅のページだ。
「わあ、ふしぎなお菓子!」
 ぱちぱちと目を瞬かせて見やるそのページは、確かに見慣れない透明のまんまるが載っていた。
 水の様につやつやで、ちょいと楊枝で突いてやればぷるんと揺れる。そこへきな粉と蜜ぷにの蜜をとろうりかけてやれば、それはもうとっておきのご馳走だ。
「とっても甘くておいしいものができると思うのでございますが……」
 レシピ本がないと、ねえ。クレムと終が目を合わせ、困ったなあとこれ見よがしに少女へ悩ませてみる。
「わあん、あたしも食べたいのです! それが条件ですう!」
 すっかりお腹ぺこぺこになった少女が交換条件を提示する。
「勿論、お嬢さんにも是非」
「そうだな。レンタル料代わりだ。返却ついでにお裾分けに来るとしよう」
「わあい!」
 そんなこんなで、無事に貸し出し完了となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュシカ・シュテーイン
ふむむぅ、お持ち帰りは出来ませんかぁ
はいぃ、このまま頑張りましょうぅ、絲さんぅ(f00433)

マフィンぅ、でしょうかぁ?
なんだか幸せそうな響きですねぇ、素敵ですねぇ。

甘くてふわふわぁ、さくっとしっとりぃ……
それに苺にチョコぉ……はぁ、わわぁ、なんだか聞いているだけでもう幸せになっちゃいそうですよぉ

そういえば、バレンタインとやらも近いみたいですねぇ
意中の男性にあまぁいお菓子をプレゼントして思いを伝えるなんてぇ、ロマンチックですねぇ、素敵ですねぇ
ふふぅ、私もちょっとお菓子作りのお勉強ぅ、張り切りたくなっちゃいますよぉ

ということですのでぇ、よろしければぁ、お料理のレシピ本をお借りしたいのですよぉ


赫・絲
蜜ぷにそのものは持って帰れなかったけど蜜も手に入ったし、レシピ本借りに行こう!
次も一緒にがんばろーね、リュシカさん(f00717)!

蜜ぷにの真ん丸な身体見てたら
ぷっくり膨らんだマフィン食べたくなっちゃった

焼きたては甘くてふわふわ、ちょっと時間をおけば外はさくっと、中はしっとりにもなるマフィン
カラフルな蜜ぷにみたいに、ピンクの苺、黄色のプレーン、茶色のチョコ味なんて作り分けたら、可愛いし色んな味も楽しめる!
リュシカさんも作ってお店で配ったら、お客さんばんばん来るかもだよ!

それにもうすぐバレンタインだもん
美味しいの作れるようになりたいじゃない
キミも女の子ならわかるでしょ?

ね、レシピ本貸して!




 ててーんと二人の前に立ちはだかる少女は、絲が持つレシピ本を見てぱっと表情を明るくさせた。
「お目が高いのです! 女の子ご用達のご本です!」
「わ、あなたも読んだことあるの?」
「はいです!」
 それなら話は早いとばかり、絲はぱらぱらと本をめくる。
 リュシカと絲の二人が探し当てたのは、『カワイイ💛スイーツコレクション』だ。それこそパーティやプレゼント用の可愛らしいスイーツから、お花の飾り切りのやり方まで何でも載っている。
「蜜ぷにのまんまるな身体見てたら、マフィンが食べたくなっちゃったんだよねー」
「素敵ですよねぇ、なんだか幸せそうな響きですよねぇ」
 番人の少女を真ん中に挟み、リュシカと絲はきゃっきゃと女子会を始める。目的のページに辿り着くまでも、カラフルでカワイイスイーツが盛りだくさんでついつい寄り道してしまいそうだ。
 開いたページはプレーンのマフィン。そこから発展して、デコレーションで可愛らしくアレンジされたマフィンの作り方なども載っていた。
「甘くてふわふわぁ、さくっとしっとりぃ……」
「これ、カラフルな蜜ぷにみたいにしてみたらどうかな?」
 ピンクの苺。黄色のプレーン。茶色のチョコ。オレンジにブルーベリー、他にも沢山フルーツを混ぜ込んでみたら、より取り見取りのカラフルなマフィンの出来上がり。アレンジの方法はレシピにも載っているようだ。
「リュシカさんも作ってお店で配ったら、お客さんばんばん来るかもだよ!」
 法石をちょこっとデコレーションに使ってみてさー、と想像を膨らませる絲の言葉に、リュシカも法石マフィンを思い浮かべる。チョコチップの代わりにルーンを刻んだ少し大きめのチョコを入れてみれば、あるいは。なんて。
 ぱらぱらとページを進めてみれば、チョコペンで顔を書いてみたり、デコレーションシュガーを振りかけてみたり、色を変える以外にも可愛らしく仕立て上げる方法がずらりと記載されていた。こちらも参考になるだろう。
「わわぁ、なんだか見ているだけでもう幸せになっちゃいそうですよぉ」
 早く早くと急かす少女に釣られ、リュシカがレシピ本のページをめくる。実際に作ってみたらしい数々のマフィンの写真が並んでいた。
 その中には、ラッピング済みのものもあり、ふとリュシカがあっと声を零す。
「そういえばぁ、バレンタインとやらも近いみたいですねぇ」
「そうそう。だから美味しいの、作れるようになりたいじゃない」
 ぱらぱらとまたページを戻して作り方の手順を見る絲に対し、リュシカはほわほわと夢うつつ。ロマンチックですねぇ、素敵ですねぇ、となにやら妄想の世界に旅立っていた。
 そんなリュシカの様子に気付いた絲は、リュシカさーんと名前を呼んで現実に引き戻す。それでも、ふわふわした気分になってしまうのも分かってしまう。
 だって。
「キミも女の子ならわかるでしょ?」
 あまぁいスイーツに満たされた、どっきどきのバレンタイン。
 恋する乙女がせいいっぱい考えて、悩んで、頑張って、意中の相手に贈り物を渡して想いを伝える。
「えへへ……あたしも、わかるです!」
 本の中で知ってる物語。渡す相手はいないけれど、本の虫の少女だって乙女なのだ。
「ふふぅ、私もちょっとお菓子作りのお勉強ぅ、張り切りたくなっちゃいますよぉ」
「と、いうことで!」
 ――レシピ本、貸して!
 ――レシピ本、お借りしたいのですよぉ。
 言葉は違えど揃った絲とリュシカの声に、少女はぱちぱちと瞬くと、何度も何度も頷いた。
「ハッピーバレンタインに向けて、なのです!」
 少女のエールをその背に受けて!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミラン・ローズブレイド
これは出来れば全部読みたいところだったね
「初めまして、俺の名前はミランといいます。
今回はこの…蜜を使った料理を作りたくてここにきました。
残念ながら、あまり詳しくなくて。
出来れば本を借りたいのだけれど、いいでしょうか?」
ファーラ様のためにも、ここは確実にレシピ本を手にいれたいし、真摯に伝えるよ
「蜜を使ったケーキののったレシピ本か……それか、肉を軟らかくするために使うんじゃなくて、鶏の甘辛煮、みたいな蜜そのものを使ったレシピ本を探しているんですけれど…」
あったりしないだろうか?
そうだな、ケーキならパンデピスあたりは作ってみたいかもしれない。
名前だけ知っていて、作り方はちょっとわからないのだけれどね




 見渡す限り、本、本、本。
 ミランの眼前に広がる光景はまさにエデンだ。
 ふらふらとつい無意識に本棚に進みかけたミランの視界の端に、ふわりとピンク色が揺れた。そこではっと我に返る。
 そう、今日はレシピ本を借りに来たのだ。そして、あのピンク色の少女に許可を得なければならない。
 こほんと咳払いひとつ、ミランは何事もなかったかのように少女へと近付いた。
「あや、あたしに用事です?」
「初めまして、俺の名前はミランといいます」
「はいです! あたしはシャルロットです!」
 どうやらかなり好意的な様子。このお料理図書館に来た経緯を話せば、番人――シャルロットもうんうんと素直に相槌を打つ。
「それで、出来れば本を借りたいのだけれど、」
「いいです!」
 ミランの言葉を遮って、食い気味に少女が答えた。面食らったミランはむしろ「いいの……?」と返してしまうほどに早かった。
「どんなお料理がよいですー?」
「ええと、蜜を使ったケーキの載った本とか、蜜そのものを使った料理の本とか」
「それなら、めーちゃんが案内してくれるです! めーちゃん、よろしくなのです」
「んめええ~」
 いってらっしゃーい、と送り出す少女に見送られ、ミランは子ヤギと共に本棚へ向かう。言葉は通じるのだろうか。そんな不安を抱きながらも声をかけてみれば。
「パン・デピスって……きみ、知ってるのかな?」
 ぴたり。
 子ヤギの足が止まって、ミランも思わず足を止める。そうして間もなく、子ヤギが走り出した。呆気にとられたミランも後を追い、辿り着いたその先で。
「わあ……そう、これだよ」
 子ヤギが咥え差し出したレシピ本は、フランス語でタイトルが書かれた本だ。最初は面食らったものの、開いてみればご丁寧に翻訳してある。
「ありがとう、子ヤギさん」
「めえ~」
 ふふんと胸を張った子ヤギは、得意げに本棚の案内役を務めて回る。欲しい本はあらかた見つかりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エレアリーゼ・ローエンシュタイン
迷宮に、こんなに素敵な場所があったのね!
ああ、いつまでも居たいくらいだわ

司書さん、司書さん、このお菓子の本を借りたいの
あったかいお菓子を作りたいのよ
パフェと迷ったのだけど、まだまだ寒い季節だものね

パンケーキなんてどうかしら?
そのまま蜜ぷにシロップをかけてもおいしそうだけれど、もう少し手を加えてみるの
蜜ぷにシロップとちょっぴりのバターを
甘くて香ばしい香りがするまで、お鍋でじっくりと煮詰めて
そうだわ、リンゴも入れましょう!
リンゴの蜜ぷにキャラメリゼ! ふかふかのパンケーキに添えて、
アイスだって乗せちゃうの
甘くてあったかくてほろ苦くて、冷たいアイスはほんのりとろけて
ね、きっと幸せなおやつになるわ!




 とん、とん、と思わずスキップしてしまうような。
 ふふんと軽やかに鼻歌も出てしまうような。
「ああ、いつまでも居たいくらいだわ」
 お菓子が好きで、料理が好きで、そんなエレアリーゼにとってレシピ本は自分の好きをより広げてくれる大切なアイテムだ。
 手に取るもの全てが料理本。こんな幸せな場所があって良いのだろうか?
「司書さん、司書さん、このお菓子の本を借りたいの」
「はいです! どれですかー?」
 はい、と少女に差し出したのは『ふわふわぱんけえき 特別号』と書かれたレシピ本。学園で人気のパンケーキのお店を営むシェフが監修したレシピ本のようだ。
「パフェと迷ったのだけど、まだまだ寒い季節だものね」
 ぱらぱらとページをめくり、エレアリーゼは紙面いっぱいに写ったパンケーキの写真を見せた。
「蜜ぷにシロップをそのままかけてもおいしそうだけれど、もう少し手を加えてみるの」
「すると、どうなるです……?」
「蜜ぷにシロップとちょっぴりのバター。お鍋でじっくり、甘くて香ばしい香りがするまで煮詰めて……」
 口頭で説明する話を聞いているだけでも、ぐうとお腹が鳴ってしまいそうだ。具体的な想像図が付きやすいからこそ、そんなはずはないのにあまぁい香りが漂ってくる気さえしてくる。
「そうだわ、リンゴも入れましょう!」
 ふわふわにするコツも、甘いパンケーキの作り方も、エレアリーゼは知っている。そこに、この本で得られたエッセンスと、自身の経験からくるアレンジを加えれば、それはもう素敵なパンケーキが出来るに違いなかった。
「ね、アイスも乗せちゃおっか」
「はわわ、美味しそうなのです!」
 エレアリーゼプロデュース、ふかふかの美味しいパンケーキ、林檎の蜜ぷにキャラメリゼ添え。幸せな一時のお供にもう充分!
「おねーさん、あたしも食べたいです~」
 くうくうとお腹を鳴らして訴える少女に、エレアリーゼは嬉しそうに笑いかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キアン・ウロパラクト
リリヤ(f10892)と一緒に行動するよ

しかしレシピ本ねぇ。
アタシが料理する時は使わないんだよな、
切って味付けて焼けば終わりみたいにさ。
ほらそこに丁度良く焼けそうなヤギが…
ってこいつら幽霊かよ!

肉にならないなら仕方なし、
リリヤは何か作りたいやつあるか?
…ホットケーキだな、それなら菓子の本を探すか。
確か材料混ぜた生地をフライパンで焼いて、
片面焼けたらもう片面ってな。
皿に盛ったら採ってきた蜜をたっぷりかけたら、
バターでものせたら完成ってか。
たまにはのんびり3時のおやつってのも悪くはないさ。

ところでホットケーキってのは強火で良かったか?
本がなきゃ分からないもんで、一冊寄越しちゃくれないかね?


リリヤ・ベル
■キアンさま(f01189)と、ごいっしょに

キアンさまのおりょうりは、わいるどなのですね。
そざいのあじ……。
……はっ。ヤギさんはだめです。だめなのです。

えとえと。あまりむつかしいものはつくれない、ので。
蜜をたくさん入れた、ふんわりホットケーキはどうでしょう。
キアンさまの手順には、たくさん頷きます。
バター……。バターはすてきです。つよいです。
できあがったホットケーキの香りは、しあわせの香りなのです。
おにくではないのはざんねんですけれど、
キアンさまがお菓子もお好きでしたらよかった。
はい。おやつ、がんばってつくります。

そのためにも、やさしいレシピのご本を探して、ぱたぱた。
番人さん、いかがでしょう。




 パンケーキを選ぶ人たちがここにも。
「おにくではないのはざんねんですけれど……」
「なあに、たまにはのんびり3時のおやつってのも悪くはないさ」
 しゃがんでリリヤにも見えるようにレシピ本を開いたキアンは、これなんかどうだと獣の手で器用にページをめくった。
 肉でないなら仕方なし、とキアンがリリヤに尋ねた結果、甘くてふわふわなホットケーキに辿り着いたのである。
 あんまりむつかしいものは作れない。それでも、作りたいと想うこころはある。
 うんうんと悩んだリリヤは、ぱっと頭を過ったふわふわのスイーツを口にした。それが、パンケーキだ。
 たっぷりの蜜をいれて、丁寧に一枚一枚焼いていく。そうして最後にバターの塊をぽとりと落とし、パンケーキの熱でゆっくり溶かしていくのだ。とろりと零れる透明のバターが甘々のパンケーキに絡んで、舌の上で素敵なハーモニーを繰り広げる。
「えーと、確か材料混ぜた生地を焼いて、片面焼けたらもう片面ってなやつだよな」
 手に取った『パンケーキ大全』のとあるページの手順を爪先で辿り、キアンがふむふむと頷いた。リリヤもキアンが辿る手順にこくこく頭を縦に振って同意を示す。
 この本があれば、普段はあまり料理をしない人間でも充分にパンケーキが作れるだろう。
「しっかし、レシピ本ねぇ。アタシが料理する時は使わないんだよな」
「そうなのですか?」
 おうよ、とリリヤの相槌に返したキアンがレシピ本をリリヤに渡して身振り手振りで普段の様子を説明した。
 と言っても。
「切って、味付けて、焼く!」
 三段論法もびっくりな語数だ。
「キアンさまのおりょうりは、わいるどなのですね」
 いやもっと料理らしくしろよ! なんていう無粋なツッコミをリリヤがするはずもなく。ぱちぱちと目を瞬かせてキアンを見上げていた。そざいのあじをたいせつにするおかたなのですね、ととても前向きな解釈である。
 その時、とことこと司書代わりの子ヤギが二人に近付いてきた。まるで注文を取りに来た店員のように、お決まりですかーなんてひとつ鳴く。
「そうそう、こいつみたいに丁度良く焼けそうなヤギとか……」
 すっかり司書の存在など忘れていたキアンはむんずと子ヤギの首元を掴んで。
「……はっ。ヤギさんはだめです。だめなのです」
 思わず成程と頷いてしまいそうになったリリヤが慌てて止める。
 そこへ再びの来訪だ。
「ぎーちゃんは食べちゃだめです!」
 声に二人が振り返れば、腰に手を当てて仁王立ちする少女の姿が。キアンに掴まれたままの子ヤギがめえめえと鳴いて訴え、そのすぐ後にぼふんと姿を眩ませた。番人が呼びだした子ヤギは食べられないようである。煙を巻いて再び現れた子ヤギは少女の傍でぷるぷると震えていた。
 機嫌を損ねてしまっただろうかとあわあわ慌てるリリヤの傍ら、キアンは丁度良いとマイペースに少女へと貸し出し許可を求めて。
「ばんにんさん、いかがでしょう?」
 それをフォローするようにリリヤが言い添えれば、少女もすっかり気を良くして首を縦に振ったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

烏鷺・エリカ
ぷにちゃん蜜を使った料理だったよね
蜜ならやっぱり甘ーいお菓子にするのがいいかな~
とゆーわけで子ヤギくんたち
お菓子のレシピ本のところまで連れてってよ

ところで
料理…ってどうやって作るの?
故郷では壁叩いたら出来合いが出てきたからさ
わっかんないんだよね
包丁とまな板が武器と盾で
食材と戦って勝てば料理ドロップするんだっけ?

…違う?
道具の使い方から覚えた方がいいのかなー、僕
はじめてのりょうり、って感じの易しい本も探しとこ

それで、この番人ちゃん
すんなりお通しはしてくれないんだね?
説得でどーにかできないかしら

僕の作ったお菓子で良ければ
あとでお裾分けしてあげる
それじゃ手を打ってはくれないかな
…出来は保証しないけど




「蜜ならやっぱり、あまーいお菓子にするのがいいかな~」
 ぷらぷらと本棚の間を往くエリカは足元に子ヤギを連れ、お菓子のレシピ本が詰まった本棚を行ったり来たりしていた。
 一匹の子ヤギの案内に従ってレシピ本を見ているうちに、違う子ヤギがエリカにこっちに来てーとアピールするのだ。わらわらとエリカの周りに屯する子ヤギたちはそれぞれ自分が一番と思うレシピ本を推してきた。
「ありがとー。――ところで、料理……ってどうやって作るの?」
「「んめぇええ!?」」
 今日いち息が揃った。
 周りにいた子ヤギたちの動きがぴたりと止まり、感情を窺い辛い瞳がじーーーっとエリカに向けられている。
「……そんなに驚く?」
 子ヤギが頷く。
 キマイラフューチャーでは壁をコンコンと叩けば料理が出てくるのだ。しかし、アルダワ魔法学園にそのような便利な壁は存在しない。
「包丁とまな板が武器と盾でー」
 そこまで言って、速攻子ヤギたちに否定される。めえめえと鳴いて訴える子ヤギもいれば、こりゃもう手遅れだと首を振る子ヤギもいた。
 ここまで子ヤギに全否定される経験もなかなかない。
「うーん、それなら、はじめてのりょうりって感じの本も欲しいな」
 エリカのその言葉に待ってましたとばかりに子ヤギが一斉に散る。ぽつんと残されたエリカが首を傾げれば、ほぼほぼ同時に皆一様に戻ってきた。
 その口には凡そ道具を使った事も無いような人も簡単に料理が出来るような、お料理入門に相応しいレシピ本が咥えられている。
 そしてその子ヤギの群れに紛れて、ピンクの髪の少女の姿。
「ありゃ? 君が、番人ちゃん?」
「はいです! やーちゃんたちがめえめえしてるので来てみたです」
 まさか向こうから来てくれるとは。
 手に積み上げられたレシピ本は、一人で借りるには多すぎる。どうしようかと悩んだエリカはちらりと少女を見やった。
「たくさんはだめです!」
 さいですか。
「んー、僕の作ったお菓子で良ければあとでお裾分けしてあげる」
 出来は保証できないけれど。
 その一言は食い気味に放たれた少女の言葉にかき消された。
「どうぞです!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『アルダワ的調理実習』

POW   :    レシピなんて見なくても気合いと間隔で料理できるさ!

SPD   :    料理もスピードがいのちだよね!

WIZ   :    料理は科学だ。正確に計量して料理する、

👑5
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「はい、お疲れさまでした!」
 ぱちんと手を叩いた先生が、調理実習室にでかでかと掲げられた黒板にイイ音を立ててチョークで文字を書いていく。
 猟兵達は広い教室のひとつに案内された。それはクラスひとつ分を収容してもまだまだ有り余るほどの広さで、どうしてこんなに広いのかと目を疑う程である。猟兵達がいくら入っても余裕がありそうだ。
 調理実習と言えば、普通は作るものも定まっているもの。しかし、この先生の授業はなんと――自由。
「お題は『蜜ぷに』ちゃんだけど、料理してたら何でもいいわよ」
 なんと大らかな先生だろうか。
 とある猟兵が材料は、道具は、と質問を投げかける。蜜ぷにの蜜だけでは作れるものも作れないが、そこは想定済みだ。
「材料も道具も何でもあるわよ。なんたって隣が食堂だからね」
 凡そ使うであろう食材は勿論の事、ちょっと変わった食材も隣の食堂へ向かえば問題なく確保出来る事だろう。
 何を作るか、どうやって作るかにおいて、不自由はしなさそうだ。
 片付けの都合上、違うものを作る事になっても同じ調理場に配置される事もあるが、作りたいものをわざわざ変える必要もない。共通の部分だけシェアして作れば良いだろう。
「そうそう! 途中参加も勿論歓迎よ。お仲間さんに来たそうな人がいたらお誘いしてあげてね」
 というのもこの先生、蜜を採っても採っても蜜ぷにが減らない所為でついつい採りすぎてしまったらしい。
 まるでシャンパンタワーの様に積み上がった、蜜ぷにちゃんの蜜入り瓶が照明に照らされてきらきらと眩しい。
「あ、ちなみにレシピ本はいくつかあるから、持ってない人は言ってね」
 なんでレシピ本を取りに行かせたんだ?
 思わずぽろっと零れた言葉は、にっこり微笑んだ先生の目で黙殺される。
「それじゃ、始めましょうか!」
リュシカ・シュテーイン
うふふ、とっても良い方でしたねぇ
さてさてぇ、ここからが本番で絲さん(f00433)とぉ、お菓子を作りますよぉ
いっぱい作っちゃいましょうねっぇ

おぉ、お料理って開拓することは魔術と一緒なんですねぇ
もし元の世界に帰ったらぁ、彼女にはお礼の言葉をぉ……おっとぉ、今はレシピを見てしっかりとお料理ですねぇ

絲さんの作る手順をアシスタントのように手伝いながらぁ、私も手を動かしますよぉ
うふふぅ、手先はこれでも器用な方なのでぇ、こういったでこれーしょんぅ、と言うらしい作業は得意なんですよぉ

わあぁ、とっても素敵に仕上がりましたねぇ……!
はいぃ、レシピ本を貸していただいたぁ、お礼に食べていただきましょうぅ


赫・絲
よーっしいよいよお菓子作りだよ、リュシカさん(f00717)!
蜜ぷにの蜜はいっぱいあるし、がんがん作ってみよー!

昔何度もちょっとアレンジーとか言って
膨らまないケーキとか……甘すぎるクッキーとか……黒コゲの物体とかさ……作ったから……
今日はちゃんとさっき借りたレシピ本に沿って作るよー!

二人で一手順ずつ確認しながらカラフルな蜜ぷにマフィン作り
ベース生地を少しずつ分けて、このチョコのはリュシカさんにお任せ!
綺麗に焼けたらチョコペンで顔描いたり、砂糖でハート模様を描いたり

透明な袋に入れてリボンを結んでラッピングの練習も完了!
そうだ、これさっきのあの子にも持っていこう!
きっと喜んでくれるんじゃないかな




 蜜ぷにの蜜、準備よーし!
 秘密のレシピ本、準備よーし!
「さてさてぇ、ここからが本番ですねぇ」
「蜜はいっぱいあるし、がんがん作ってみよー!」
 えいえいおー、と気合十分はリュシカと絲。二人は学園から支給されたふりっふりのエプロンを着て、調理場に立っていた。
「ちょっとアレンジー、とか言ってるとすんごいものが出来上がっちゃって」
 シャカシャカ、ホイッパーで卵と蜜、溶かしたバターに少量の塩を入れて混ぜる混ぜる。
 気合の声を出しながら絲がベース生地を混ぜる隣、リュシカはレシピ本の手順を指先で追っていた。
「なるほどぉ、お料理って魔術と一緒なんですねぇ」
 絲の言葉をどう解釈したか、ほんわか述べるリュシカが冷蔵庫へと向かう。並んでいる牛乳のパックをひとつ手に取れば、絲が混ぜるボウルを覗いて待機した。
 コンビネーションはばっちりだ。基本は絲が進めながら、アシスタントのようにリュシカが動く。時折手が止まるのは、料理に慣れない二人だから。レシピ本を確認する時間は仕方がない。
 本に乗っていない材料は端に退けて、ベース生地は準備完了!
「これはイチゴで、これはプレーン! それでそれで、これはリュシカさんにおーまかせ!」
「うふふぅ、頑張りますよぉ」
 ひとつひとつ丁寧に、――それでもたくさんあるから、少しずつ大雑把に、可愛いアリス調の紙カップに生地を流し込んでいく。 
 ふんわり鮮やかなピンク色。明るくあたたかなオレンジ色。よく見るいつもの黄色に、その甘さを想像できるチョコの色。
 焼く前からカラフルなマフィンのもとを、二人でせーのでオーブンに入れる。黒い硝子越しに見えるマフィンの完成を心待ちにしながら、二人はちょっとだけ休憩時間。
「――で、そこのマスター何て言ったと思う? ここはあんたが来るとこじゃないぜ、って!」
「まぁまぁ、絲さんぅ、どこに迷い込んだのですかぁ?」
「どこだったかな、最後に一杯なら――あ、」
 チン。
 すっかり話し込んでいた絲とリュシカの耳に届いたのはマフィンが出来上がった音。
 いそいそその扉を開いてみれば、ふっくらほこほこ美味しいマフィンがお披露目だ。外はさくさく、中はふんわり。ひとつ二人で分け合えば、甘い味がふわりと広がる。
「リュシカさん、これとかどう?」
「私も出来ましたよぉ」
 少しぶきっちょな猫の顔が描かれたマフィンは絲のお手製。対してリュシカのデコレーションは随分と整っていてプロもビックリの仕上がりだ。
「こういう作業は得意なんですよぉ」
 ふふんと心なしかドヤ顔である。
 たくさんあるマフィンにどんなデコレーションをしようか? あれやこれやと数を作れば、カラフルだけではない、ひとつひとつがお手製でオンリーワンのマフィンの完成だ。
 袋に入れて、リボンで結べば練習とプレゼント兼ねれて一石二鳥。
「これ、さっきのあの子にも持っていこう!」
「はいぃ、レシピ本を貸していただいたぁ、お礼に食べていただきましょうぅ」
 調理台に並ぶとりどりのマフィンを眺め、ぱちりと視線が合った二人は、いえいとぱちりハイタッチ。上手にお料理できました!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイブル・クライツァ
蜜ぷにタワー、此処まで集まると凄いわ
本は選ぶまでの出来事が、必要な癒し要素だったからノープロブレム

私が作りたいのはマカロン
前の学園のお茶会時、目で見て楽しめるからやっぱり良いなって
…生チョコの件は、小さい頃の話だから今は大丈夫よ?
オーブンは予熱セット、粉類はしっかり篩いにかけ準備。
卵白と、普通だとグラニュー糖だけれど蜜ぷにの蜜だから、固さを確認しつつ泡立てるわ。
食用色素を使わずとも、蜜ぷに色があるならそれを生かして
ボウルに押し付ける様にして気泡抜き。混ぜムラは天敵よ?
後は焼き加減に気を付けて、必要に応じて蒸気抜きに開け閉めをして
…凄く気が抜けなくて真剣にしてたわ。占領し過ぎてなかったかしら?


華切・ウカ
はああ……背徳……
蜜ぷにちゃんの蜜入り瓶のタワーが、まぶしい…!!
あのかわいい蜜ぷにちゃんの蜜をおいしくいただく背徳に、今日もウカは負けてしまうのです
おいしい。罪深い、おいしい……(ちょっとだけ味見しつつ)

そう、ゼリーにしたりパンケーキにしたり!
そしてウカは思ったのです……ぷりんの上に、みつをたらしてたべるのはいかがなものかと…!
ということでぷりんに挑戦。
材料ちゃんとはかってレシピ本通りに。
多少の失敗は御愛嬌なのです!

できあがったら蜜を……
黄金色のぷりんに蜜ぷにちゃんの蜜色が……ふわああ
いただきます…!

…おいしい……!背徳…!
ウカはまた新しい扉をあけてしまったのです…
たくさんできたらお裾分けも




 きらきらと輝かしい蜜ぷにちゃんの蜜入り瓶タワーを眺め、レイブルとウカはそっと嘆息する。こうまでたっぷり並んでいるといっそ壮観だ。
 その景色の手前、ウカは蜜ぷに瓶の蓋をきゅっと捻る。
「少しだけ……蜜ぷにちゃんが悪いのです……ウカは悪くないのです……」
 とろうり黄金色に光る蜜に匙を入れればひと掬い。眩しい糸が匙から垂れて、ぷつりと切れた。ほんのり色付く透き通った泉が匙の中で揺れる。
 それを、ぱくり。一口で頬張れば、溢れるのは甘い甘い蜜の味。
「はああ、背徳……」
 ほっぺたが蕩けてしまいそう。ウカがひとり昇天しかけているのを、レイブルは少し羨ましそうに見ていた。後できっとつまみ食いしよう。
 同じ調理場のレイブルとウカは、それぞれマカロンとプリンを作ることに。測りは最初に一緒に使って、アレンジ要素になる蜜ぷにの蜜だけはほんの少し慎重に――まずは、一口。
「あまい……」
「罪深い……」
 レイブルとウカ、二人揃って蜜ぷにちゃんを楽しむのでした。
 下準備が終わればいよいよ本格的にクッキングスタート!
 以前に見た、学園のお茶会に添えられたカラフルなマカロン。見た目の華やかさは、やはりお茶会では大事なのだ。目で見て、舌で感じて、楽しめる。
 小さい頃の二の舞にはもうなるまい。ホイッパーを時折持ち上げながらレイブルは固さを確認して、ムラなく満遍なく混ざるように工夫する。その手つきはすっかり慣れたものだ。
 物は試しと色の違う蜜ぷにの蜜を別々に混ぜてみれば、きちんとそのままの色が生地につく。色素を使う必要はなさそうだ。自然で柔らかいパステルカラー。
 ぺたぺたと形を整えて台に乗せていけば完成図も想像に易い。マーブル模様に広がるマカロンは何だか可愛らしい。
「……作ってる時から可愛らしいのは、ずるいんじゃないかしら」
「わ。ほんとです……!」
 正面から声が聞こえてレイブルははっと顔をあげる。目の前には少し散らかった調理場と、ボウルを抱えホイッパーをぐーで握るウカの姿があった。
 プリンづくりに挑戦したウカではあったが、レシピ通りにしてみるものの効率のいい作業方法なんていうのはレシピ本にも書いていない。わたわた手間取りながら、なんとか形にしようと頑張っていた。
 どうにかこうにか均等に混ぜ終わり、後は蒸すだけという所で、ぱっと視界に華やかな水玉が見えたのだ。
「まかろん、ウカも食べていいです? ウカのぷりんもお裾分けなのです!」
「ええ、勿論。たくさんあるから、一緒に食べましょう」
 持ち帰る分もあるけれど、幸せの分け合いっこも悪くない。
 オーブンにマカロンを入れれば、レイブルはクリーム作りに取り掛かる。マカロンに挟むためのクリームではあるが、ウカのプリンにも合いそうだ。
「ウカさん、あまり入れすぎると溢れてしまわないかしら?」
「わわっ、はいです!」
 耐熱容器にウカがとろりとプリン色の生地を流し込めば、鍋に並べて入れて蓋をする。
 ――互いに一山越えてしまえば、完成まであっという間だ。
 お皿に乗せた黄金色のプリンの上に色付いた蜜ぷにちゃんの蜜をかければ、ウカの目の前に楽園が広がった。
「いただきます……!」
 レイブルからお裾分けしてもらったクリームも添えて、ウカが一口、ぱくり。
「……! おいしい……! 背徳……!」
 ぺかーん。ウカの目の前に新しい扉が開いた。
 最後の仕上げに取り掛かるレイブルにもお裾分けと、ウカが匙にプリンをひと掬い。
「レイブルさんも、どうぞなのです!」
「あら、ありがとう」
 しあわせ蜜ぷにちゃんタイムは、まだまだ始まったばかり。カラフルなマカロンで彩って、黄金色のプリンも添えれば、素敵な時間の出来上がり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

烏鷺・エリカ
借りてきた本もあることだし
僕でも料理できるはず
それでもわかんなくなったら
せんせーや周りの猟兵さんに聞こう

初心者でも作れそうな蜜入りクッキーを手本に
危なげしかない手つきだけど
どーにか作業は進められそう
レシピさまさまだ

えっと、卵と薄力粉と…お砂糖を混ぜるんだって
お砂糖は知ってるよ
使うと甘くなるんだっけ

でもどうせならもーっと甘くできない?
その方が美味しいと思うしさ~
ほら、ゲームの回復アイテムに
上位互換があるみたいに
えーと、ひょっとしてこの塩ってやつが…

…なんだろ、心なしか
さっきのヤギさん達の悲しい鳴き声が蘇るような
やっぱり書いてある通りにしとこっか…
うん、頼るべきは自分の勘よりレシピだね
僕学んだよ


エンティ・シェア
ふーむ。これも私が務めるべきか。彼らには細かい仕事は不向きだからね
さてさて番人殿に美味しいお菓子を食べさせてあげられるよう、頑張ろうか

適当にページを捲って作業工程が少なそうなものを選ぶよ
あまり細かいと飽きそうだもの
材料くらいはきちんと計ろう。事前準備は大事だからね
後はレシピ通りレシピ通り
うん、まぁ…初心者らしい出来だよ。見た目くらいはまともだし、味見もしているよ。大丈夫食べれる食べれる
期待値が高いとがっかりする程度だ

自分のは程々で切り上げて、同じ調理場の開いた容器の片付けなどを請け負おうか
散らかっていると作業がし辛いだろう?
任せておきたまえ。整理整頓は嫌いじゃない
はは、得意とも言わないがね




 借りてきた本に、周りの人達。料理が分からないエリカにも、こんな環境があればきっと料理が出来る筈。
 同じ調理場になったエンティがふむとレシピ本と調理器具を見下ろしている。
「これも私が務めるべきか……」
 本日二回目の出勤である。細かい作業を必要とする事もある調理に、俺も僕も向いてない。
 どのお菓子にしようかとエンティがページを捲れば、初心者向け、時短の文字が見えて思わず目を通す。
 ミルクゼリー、と書いてあった。白いぷるぷるしたゼリーの写真が載っている。牛乳ベースのシンプルなゼリーのようで、主にジャムやソースをかけて一緒に食べるもののよう。
 飽き性が発症しない程度に簡単で、美味しく食べられそうだ。早速計量に取り掛かる――が。
「うーん、どーにか作業は進められそう」
 同卓のエリカはしかめっ面。レシピに書いてある材料を揃えるだけでも一苦労だ。
「エンティくん、薄力粉って分かる?」
「ああ、これだろう? 私も手伝うかい」
 ものの十数分で終わりそうなミルクゼリーだ。最初こそエンティも自分の料理に手を付けるが、終われば整理整頓に材料出しぐらいは出来るようになる。
「助かるよぉ。僕、料理はしたことがなくってね」
 トントンと叩けば食べられるものが出てくる世界は、確かに料理の機会が減る。
「お砂糖……お砂糖は知ってるよ。使うと甘くなるやつ」
「ああ。だが今日はこの蜜を使うといい」
 エンティが示したのは蜜ぷに由来の天然花の蜜。おすすめ通りに、砂糖の代わりに蜜を入れればくるくるボウルの中でかき混ぜる。
 エリカがようやく生地作りに入った所で、エンティはもう完成が間近に迫っていた。今回のミルクゼリーのレシピは牛乳の温度を調整してかなり時短してあるのだ。即冷蔵庫に入れて冷やし、固まればそのまま完成である。
 こちらも砂糖の代わりに蜜ぷにの蜜を使用している。そのせいか、ミルクというには白くなく、蜜ぷにの色でほんの少し色付いていた。だが、それだけである。初心者らしく、飾り気は少ない。無難に美味しい、といったところか。
 さて、エンティは自分の使った道具を片付ければちらりとエリカを窺い見る。ただでさえ料理が初めてだというのに、散らかった場所では余計に作業が滞る事だろう。そこで、自分の出番だ。
 ささっと片付け、ぱぱっとスペースを作ってやる。エリカが開いて置きっぱなしのレシピ本をチラ見すれば、そこから必要な物も分かってきた。陰の支援者である。
 そんなエンティを気にする余裕もなく、エリカはうんうんと頭を悩ませる。出来上がった生地をほんの少し千切って口に運び(よいこは真似しちゃいけないよ!)首を斜めに傾けた。
「どうせならもーっと甘くできない? その方が美味しいと思うしさ~」
 エンティが整えた調味料の陳列棚を、遠慮なくカタカタと荒らすエリカはとあるアイテムに辿り着く。
 ――そう、塩だ。
 その時、んめぇ……と何処からともなく悲し気な子ヤギの鳴き声が聞こえた気がした。
 実際エンティが驚きのあまり入った扉を振り返る勢いだが、子ヤギの姿はそこにない。
「……エリカ、塩は甘いのではなくしょっぱい、かな」
 こほんとひとつ、アシスタントに徹していたエンティが言及すると、脳裏に浮かぶ子ヤギの声も悲しげだしとエリカは素直に塩を戻す。
「やっぱり、書いてある通りにしとこっか……僕、学んだよ」
 もーっと甘くするのは諦めて、レシピ本通りに生地を完成させれば丸を作って平らに潰す。片抜きなんていうものもあるが、どうにも真ん中から破れるので諦めた。
 それにしても、初めての料理でこうまでスムーズに行くのはなかなかのものである。エンティのフォローが効いているのだろう。初心者はそう、使う器具がどれなのかも初めは分からないものだ。
「ありがとうねえ。なんとか出来そうだよ」
「任せておきたまえ」
 ちなみにオーブンの予熱もエンティがそっと押したとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアン・ウロパラクト
リリヤ(f10892)と一緒に作ってくな

ん…?蜜がたんまりあって、本もここにあるときた。
えーと…。オッケー分かった
とりあえず作ればいいんだな!

んでパンケーキの材料が粉に卵に牛乳に蜜と、
横に書いてあるのが分量ってやつか。
何なに、大さじ…CC…グラム…?
よし、リリヤ。準備は任せた!焼くのは任せろ!

火加減は弱めで、
気泡がいくつか出た辺りでひっくり返すってか。
フライ返し使って、だいたいこんなもんかねーとくるり。
上手く焼けたら皿に置いて、
生地のある限り作ってくよ。

トッピングはそうだな、
盛れるだけ盛ってもいいんじゃないか?
迷うなら全部のせた方が後悔しないだろ!

しかし隣が食堂か、帰りに寄ってもいいかもな。


リリヤ・ベル
■キアンさま(f01189)と、ごいっしょに

はい。ホットケーキをつくるのです。
えいえい、おー。

レシピをよく見ながら、材料を用意しましょう。
えとえと。はい。お任せを。
準備はたいせつ。ちゃあんと計ってそろえます。

火をつかうのは、ちょっとだけこわいので。
キアンさまのおとなりで様子をうかがいます。
くるくるときつねいろが重なっていくのは、魔法のよう。

キアンさま、キアンさま。
トッピングはどうしましょう。
フルーツ、クリーム、チョコレート。
バターと蜜ぷにちゃんのシロップもすてき。
んん。なやましい。

!!
ぜんぶもり……!
たいへんぜいたく。
ではでは、おもいきりよくいきましょう。

かわいくしたら、いただきます。ね。




「んー?」
 手にした蜜以外にも、教卓の上にはたんまり蜜が乗っかっている。
 手にしたレシピ本以外にも、その隣には何冊かレシピ本が並んでいる。
 頭にクエスチョンマークを浮かべたキアンは、何かを閃いたのかぽんっと手を叩いた。
「オッケー分かった、とりあえず作ればいいんだな!」
 一体何が分かったのだろうか。
「はい。ホットケーキをつくるのです」
 よいしょと踏み台にあがればリリヤの視界も広がる。これなら作業も進めやすいだろう。えいえい、おー。気合も入る。
 パンケーキを作る予定の二人は、ひとまず材料の確認から入る。
「何なに、大さじ……に?」
 材料の項目を指先で辿るキアンが、またもはてなマークを浮かべて動作を止めた。目の前にCCやグラムといった記述が浮かび上がるような幻覚に襲われる。
「……よし、リリヤ。準備は任せた!」
「えとえと。はい。おまかせを」
 キアンが材料を読み上げ、リリヤがとたとた動き回り計量する。準備は念入りに、しっかり。
 そうして用意した材料を、今度はボウルに入れてホイッパーでかき混ぜる。キアンが大雑把にかき混ぜて、リリヤが最後に生地の固さをチェックした。
 火を使うのはキアンの仕事だ。着火した瞬間にリリヤがぴくりと反応するが、横にいるキアンが大層しゃんとしているものだから、リリヤも釣られて背筋を伸ばす。
「気泡がいくつか出たあたりでひっくり返す――っと、こんなもんかねー」
 ぷつぷつと表面に泡が浮いてくる様子を見て、フライ返しでくるりと反転。ぺちん、と良い音を立ててひっくり返ったパンケーキは綺麗なきつねいろ。両面焼けたらお皿にぽい。
 一枚焼けてしまえば後はその繰り返しだ。生地がなくなるまでキアンが慣れた手捌きでパンケーキを積み重ねていく。
 次々ときつねいろに焼けては重なっていくパンケーキは、まるで魔法を見ているみたいだ。料理は魔法と誰かが言っていたけれど、あながち間違いではないのかもしれない。
「キアンさま、キアンさま。トッピングはどうしましょう」
 最後の一枚をぺふりと積み上げ、リリヤとキアンの目の前にはパンケーキタワーがふたつ。今からこれを食べるのだが、こんな贅沢許されるのだろうか……否、許されてしまうのだ!
 つやつやと瑞々しいカットフルーツに、ふんわりまろやかなホイップクリーム。熱で溶かしたとろとろのチョコレートに、バターと蜜ぷにちゃんのシロップ。 
 調理の片手間に準備したそれらを前に、リリヤがむむむと唸ってみれば。
「そうだなー、……盛れるだけ盛るっていうのはどうだ?」
 迷うなら全部乗せた方が後悔しないだろ、とキアンはずんずん乗せていく。
 完成! とキアンのパンケーキを見やれば、リリヤも思わずぱちぱちと瞬きをしてしまう。
「ぜんぶもり……! たいへんぜいたくです、ね」
 ぐっと拳を作ったリリヤもキアンを真似て思い切りよくパンケーキを飾り立てていく。みるみるうちに素朴だったパンケーキは豪奢なごちそうになっていった。
「それじゃあ、せーので!」
「「いただきます」」
 ぱちんと両手を合わせて早速一口。さくりとナイフを入れればパンケーキはすんなりと切れ、一口大のそれをトッピングと共に口に放れば、とろける蜜ぷに産の蜜の味が口の中で広がりまさに極楽!
 蜜ぷにから作ったものだから、シロップと喧嘩する事もなく、そこにフルーツのまた違う甘さも絡みあって甘い美味しいのオンパレード。
 パンケーキを運ぶ手は止まらない。調理実習のご褒美は、美味しく出来たお料理なのだと相場が決まっている。
「しっかし隣が食堂か。帰りに寄ってもいいかもな」
 そんなほっぺたも落ちるスイーツを味わいながら、キアンはお肉に気持ちを馳せていた。
「キアンさまは、やっぱりおにくなのですね」
 ぽろっと零れたキアンの言葉に、リリヤは学園に来た当初の緊張も忘れくすくすと楽しそうに笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

静海・終
【WIZ】
クレム/f03413と
おやあ、これはとても乱獲しましたねえ
それでもなお居なくならない蜜ぷに…生態系が気になります

私も料理ぐらいは少々しますがお菓子作りはやりませんからねえ
お嬢さんに持って行く約束もありますし
美味しいものをご用意いたしましょう

レシピ通りに材料を合わせて溶かし冷やし固める
かき氷シロップなどで着色し蜜ぷにを真似たような
カラフルな水信玄餅を作る
ふむ、なかなか愛らしい
クレムのは…むむ、流石に火を入れる料理は香りが素晴らしい…
…クレムークレムー、私の分ありますー?
やった、じゃあ後でいただきますね

出来上がったものは番人のお嬢さんにもお裾分け
ついでに子ヤギも撫でて埋もれておきましょう


クレム・クラウベル
【WIZ】
今回も終(f00289)と
……持ち帰って尚、余りそうな量の蜜だな
高々と積み上がったそれを見上げてぽつりと

料理の経験が全くないとは言わないものの
特別上手いと言えるレベルでもない
無難にレシピ本に従う

丁寧に卵黄と砂糖を混ぜ合わせて
各種材料を混ぜて出来た生地を漉し
レシピにならってオーブンで焼く
多めに作っておいて一つは後ほど本の番人に
ああ。数は余りそうだから
1つなり2つなり後で食べれば良い
蜜も余ってるし、紅茶も淹れておくか
そちらのはカラフルだな
色とりどりの蜜ぷに餅は中々可愛らしい

十分冷えて完成したら番人へお裾分け
お前、本当好きだなそれ
埋もれる終に肩を竦めつつ
自分のプリンを味見して一息
……甘い




 積み上がる蜜ぷにタワーは、学園生と猟兵がいくつか持っていったとしてもまだまだ世界最高峰の山のように積み上がっている。
「……持ち帰って尚、余りそうな量の蜜だな」
「ですねえ。それでもなお居なくならない蜜ぷに……」
 ここまでくると、蜜ぷにの生態が気になってくる。じろじろと終が蜜ぷに瓶を眺め出すのをクレムが諫め、二人は調理台へと向かう。放っておいたらいつまでも始まらなさそうだ。
 さて、二人は作るものも違えば方向性も違う。一方は和で、一方は洋だ。冷やして固める水信玄餅と、オーブンで焼くプリンとでは調理場を競合しないので、その点は良いだろう。
「クレムは料理の経験、ございますか?」
「全くない訳ではないが……上手いとも言えないな」
「私も似たようなものでございますねえ」
 しかし、料理をしたことがあるというのはアドバンテージだ。どこかの卓では塩を間違えて入れて阿鼻叫喚となっていた。
 子ヤギと少女のいるお料理図書館へお裾分けも踏まえ、きちんとレシピ本に従う事にしよう。
 予熱の設定をするクレムの横、蹴らない位置で終はレシピに倣い材料を混ぜ合わせる。今回は砂糖の代わりに蜜ぷにの蜜を使うのだが、この蜜、僅かに元の蜜ぷにの色がついていた。
「ふむ、これなら蜜ぷにっぽくなりそうでございますねえ」
 そのままの色を使えるものはそのままに、もう少し色づけたいものはカキ氷シロップで着色して、カラフルな水信玄餅を作っていく。目でもちょんと付けてやれば、それこそスモールスケールの蜜ぷにのようだ。
 丸型のカップにそれぞれ流し込み、冷蔵庫で熱を取る。固まるまでは手持無沙汰だ。
 調理場へ戻れば、ふわりと甘い香りが漂ってくる。
「やや、クレムのは……流石、火を入れる料理は香りが素晴らしい……」
 ひょこりとクレムの肩越しに覗けば、黒い硝子越しに赤い光が灯っているのが見えた。
 クレムが作るはプリンだ。卵黄と砂糖、他に諸々混ぜ合わせ、出来た生地を幾度か漉して耐熱容器に流し込む。丁寧に混ぜ合わせたそれは、一様に不透明な黄金色に輝いて完成が待ち遠しい。
 多めに生地を用意すれば、図書館の番人にあげる分も確保できる。余った蜜は、焼ける合間に用意できそうな紅茶にでも入れて楽しむのも良いだろう。
 ミルクを取りにとクレムが冷蔵庫を開ければ、終の水信玄餅が目に入る。透明なぷるぷるは、それぞれ仄かに色付いてなかなか可愛らしい出来だ。
「そちらのはカラフルだな。中々、子供が喜びそうだ」
「ええ、ええ。……ところで、クレムー?」
 いい大人の男が上目遣いというのもいかがなものか。戻ってきたクレムを終はちらちらと見やり、両手を合わせてにっこりと笑ってみせた。
「私の分、ありますー?」
 少女がしたならば、それはきっと可愛らしいおねだりだったのだろうが。呆れたようにクレムは溜息を吐き、やれやれと肯定を返せば、まるで子のように終は喜ぶのであった。
 ――さて、数時間後。
 紅茶で一服済ませ、完成品を手に実習室を後にしたクレムと終は先ほどの図書館へと足を運んでいた。
 出来上がった水信玄餅とプリンを手渡せば、少女の目はキラキラと輝く。
「わあい! ありがとうなのですー!」
 実習室から拝借したスプーンもクレムから受け取り、はぐはぐと頬張る少女の横で、終は召喚して貰った子ヤギに埋もれる。
「んふふ、やはりここは極楽でございますねえ」
「お前、本当好きだなそれ」
 自由人に振り回され慣れてるのか、どこかこなれた様子でクレムが肩を竦める。うまいか、と少女の横に座って問いかけてみれば。
「おいしーです! はい、どーぞなのです!」
 少女から一口、プリンのお裾分け。
 作ったのは自分なのだから、ここで食べる必要もないのだが。
「……甘いな」
 にこにこする少女に押し負け、差し出された匙を一口。無難ながら上手に出来ている。
 そんな様子を両手に子ヤギ状態の終がにまにまと眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
エル(f01792)に同行

とっておきのパンケーキ、そんな魔法みたいな言葉を聞くだけでわくわくしてくるね。
そんなオレは勿論甘いものは大好きです、楽しみにしているよ

さあて、見てるだけもあれだし手伝おうかな。ううん、出来れば力の必要な作業とか面倒なのは引き受けてあげたい…ちらっちらっ(自己アピール)

ふんふん、キャラメリゼ作りだね、喜んで!
何十年か振りに造ると結構忘れてるなぁ…焦がさないようにしないとね

え、食べて良いの?あんまり手伝ってないのに優しいなあ…!
そうしたら遠慮なく…うん、ふわとろで美味しいよ
折角だからエルも食べてご覧よ、ほら、あーんして?(くすりと笑いながら蜜の滴るパンケーキを差し出し)


エレアリーゼ・ローエンシュタイン
ヴォルフ(f09192)と

とっておきのパンケーキだもの
エルだけで食べちゃうのは寂しいって思ったの!
あ、ヴォルフは甘いものは好きかしら…
エルくんはお菓子も好きだけど、男の人は甘いもの苦手な人も多いって聞いたわ

ふふ、じゃあとっても重要なものをお任せしていいかしら
今日の主役の蜜ぷにシロップ
林檎と一緒にお鍋で煮詰めてキャラメリゼにして欲しいの!

エルはパンケーキを作るわね
生地にも蜜を入れて、ふわふわに焼き上がるように

やっぱり、まずはヴォルフに一番に食べて欲しいわ
えへへ…やっぱり美味しいって言って貰えると嬉しい
だからエルは、お料理が好きなのよ
(差し出された一口には目を輝かせ、頬張れば頰を抑えて幸せそうに)




 美味しいは独り占めするには勿体ない。
 友達と、家族と、恋人と、――だいすきな誰かと、分け合う方が美味しいに決まってる。
「ねえヴォルフ、甘いものは好きかしら?」
「勿論、だから楽しみにしているよ?」
 エレアリーゼからお誘いを受けた、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)はぱちりとウインクをして服越しに笑ってみせる。
 とっておきのパンケーキ。
 ヴォルフガングが話を貰えば、そんな単語が出てきて二つ返事でついてきた。まるで魔法だ。そんな、とっておきをくれると言うのだから、心も躍るというもの。
 良かった、とほっと胸を撫でおろすエレアリーゼは早速パンケーキ作りに取り掛かる。
「男の人は甘い物苦手な人も多いって、エルくんから聞いたの」
 カシャカシャとホイッパーでパンケーキのもとを混ぜながら、エレアリーゼはどのくらい甘いのが良い? とヴォルフガングに問いかける。甘さ控えめパンケーキだって、甘々たっぷりパンケーキだって、エレアリーゼにはお手の物。
 問いかけには答えながら、ヴォルフガングはそわそわエレアリーゼの周りをうろつく。ちらち、ちらり。エレアリーゼを見ては、こほんとひとつ咳払い。
「さあて、見てるだけもあれだし、手伝おうかな。力仕事とか、面倒なのとか……引き受けて、あげたいな……?」
 ちらっちらっ。
 こうも露骨なアピールに気が付けば、エレアリーゼの頬も緩むというもの。それじゃあね、とぴんと立てた人差し指を口元にあててにっこり笑う。
「ヴォルフには、とっても重要なものをお任せしていいかしら」
 一旦ボウルを置いて、代わりに手にしたのは蜜ぷにシロップ。本日の主役だ。
「林檎と一緒にお鍋で煮詰めて、キャラメリゼにして欲しいの!」
 はい、と蜜ぷにシロップ詰めの瓶を渡せば、ヴォルフガングはまじまじとその透き通るシロップを見る。
「ふんふん、キャラメリゼ作りだね、喜んで!」
 これはとても重要だ、と張り切るヴォルフガングのもっふりした尾が心なしかふらふら揺れる。
 とろりと鍋に落として林檎も入れれば、鍋の前でスタンバイ。焦がしてしまわないようにと気を配るのはいつぶりだろうか。もうずっと昔の記憶を掘り出しながら、ヴォルフガングは鍋を見張る。
 その隣でエレアリーゼはパンケーキ作りだ。生地にもたっぷり蜜をいれて、ふんわりほこほこ焼き上がるように気を付けて。
 厚さ数センチはあろうかというパンケーキは、食べた時のふかふか感を見るからに想像できそうだ。
 一枚、二枚、焼き上げれば、ヴォルフガングのキャラメリゼも甘くて香ばしい匂いに変わる。ふたつを組み合わせれば、とっておきパンケーキの出来上がり!
「やっぱり、まずはヴォルフに一番に食べて欲しいわ」
「え、食べて良いの? あんまり手伝ってないのに優しいなあ……!」
 ふわりと広がる甘い香りは、食欲をそそらせる。どうぞどうぞとエレアリーゼに勧められれば、遠慮なくとヴォルフガングが一口大に切って口へ。
「……うん、ふわとろで美味しいよ」
 はくりと口へ運んでから、ゆっくり咀嚼し呑みこんで。漸く感想を零せば、もう一切れをすぐにフォークに刺してみる。
「ほら、あーんして?」
 こんな美味しいもの、独り占めするのは勿体ない。そのために、ふたりここにいるのだから。
 くすりと笑いながら蜜の滴るパンケーキをヴォルフガングが差し出せば、エレアリーゼは目を輝かせて頬張って。
「んー、美味しい!」
 甘くてふわふわで、幸せ。それに、ヴォルフも美味しいって言ってくれたから。だから、お料理は止められない。
 幸せそうなエレアリーゼを見やれば、ヴォルフガングも満足げに微笑んだ。


 ざわざわと賑わう実習室。あるいは、少女のいるお料理図書館。
 たくさんの猟兵が集い、たくさんの美味しいものが、あるいは少し失敗したお料理が出来上がり、幸せな空間が出来上がる。
 お腹いっぱい満たされて、本日の調理実習はこれにて閉幕。
「次があれば、またお呼びしますね!」
 アルダワ魔法学園の迷宮には、まだまだ謎が沢山だ。きっと、またいつか、訪れる日が来るだろう。
 それまで――ほんの少しだけ、お別れを。
 猟兵達の手に、蜜ぷにの蜜やとっておきスイーツを残して、一日は終わりを告げたのだ。めでたし、めでたし!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月31日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト