ひらりひらりと花が舞う。
薄紅色の花びらは、まるで海から現れる何かを覆い隠すかのように降り注いだ。
けれどもそんな花の抵抗をものともせずに、その水を押しのけるようにして走ってくる船がある。
ボロボロのマスト。今にも空中で分解してしまいそうな船体はしかし、禍々しい気配に彩られてどの船よりも力強くその海の中を駆けて行った。
「姉御! 来ますぜ!」
「ああ。戦闘準備!! ふざけた船だけど危ないのは確かだ。油断するんじゃないよ!!」
相対している海賊船から声が上がる。それと同時に、砲撃の音が周囲に響いた。
「あいつ、いい奴だったんだけどなあ……」
「とんだお調子者だったけどな! うまくいきゃ宴会だとか言っときながら……」
「はっ。あいつのことだ。酒でも飲んで挑んだんだろうさ!! まったく……」
海賊たちのぼやくような声もまた、すぐに戦闘の音にかき消されていった……。
「メガリス……っていうんだっけ。グリードオーシャンでメガリスを手に入れた海賊たちは、「メガリスの試練」を部下に受けさせることがあるそうだよ。試練に生き残れば、ユーベルコードに覚醒するんだって」
なんだか変な感じだけれども。と、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はそんな感想を述べながらも、
「けれども、失敗したらしぬどころの騒ぎじゃない。その試練が失敗すると、その海賊は死んでコンキスタドールになってしまうらしいんだ。……そうなったら、もうどうしようもないから、その試練を受けさせた海賊が、責任をもって片付けるのが、海賊の掟、らしいよ」
掟っていうのは法律ってことかな。と、自分なりの解釈でリュカはそう首を傾げながらも、ただ。と彼はつづけた。
「勿論、必ず勝てるとは限らない。特に最近はそのコンキスタドールってのが強大化しているらしくて、逆に倒しきれずに返り討ちになってしまうこともあるみたいなんだ。……それが、今回の話」
そしてそれを助けに行くのが、今回の仕事。と言って、リュカは一つ頷いた。
「と、いうわけで。敵を倒すんだけれども、人命の救助も行ってほしいんだ。まあ、それほど難しい話はないから、あとは現地にいって動いてくれればいい」
敵はそこまで強くはないらしいからね。と、そうリュカは言って。そしてふと思い出したように、
「そういえば、グリードオーシャンって、別の世界から落ちてきた島の集まりなんだって。今回の島は、キマイラフューチャーが元となっているみたいだ。……別に、落ちた当時の人がいるわけじゃないんだけれども」
なんとなく、楽しいことになると思うと。
リュカにしては若干曖昧なことを言って、肩をすくめた。
「……まあ、楽しんできて。戦いが終わったら、少し時間がとれるだろうから。花見ぐらいはできると思う。丁度桜が、綺麗だったよ」
どうか、気を付けて行ってきてね。と。
そういって、リュカは話を締めくくった。
ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
お花見しましょう!!
……と、いうおはなしです。
だいたい全編通して賑やかで明るいお話になると思います。
が、しんみりしたい人を拒んでいるわけではないですので、
つまりいつものように、お好きにどうぞ。
でもとにかく全編花見です。
花見て食べて食べて飲んで飲んで飲んで飲んで食べましょう。
一章:集団戦
二章:ボス戦
三章:日常
毎回詳細はその章の初めに記載しますので、ご確認よろしくお願いします。
それでは、良いお花見を。
第1章 集団戦
『殺戮オウムガイ』
|
POW : 念動衝撃波
見えない【衝撃波】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 賢者の触手
質問と共に【無数の触手】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : オウムガイ粘液
【粘液】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:りょうま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちが到着する、少し前。
「何だあれは!?」
幽霊戦から砲弾が放たれる。砲弾……と呼んで、本当にいいのだろうか。
「無茶苦茶なぐらいでっかいね!! あたりゃ死ぬよ、撃ち落とせ!!」
その砲弾は、大人が丸まっては入れるぐらいの大きさがあった。女の指示に海賊船からも大砲が放たれる。それは素晴らしい腕前で敵の砲弾を真正面から射抜いて……、
「……!」
弾けた。
はじけた瞬間、ぶわっと美しい薄紅色が周囲に広がった。
「何だこれ。桜!? 桜の花びらか??」
桜の花びらがいっぱいに詰まった弾は、砕かれ海賊船へと降り注ぐ。
「なんだぁ? これ。何だか良い匂いがするぞぉ……」
「酒だ! 酒の匂いだ!! あああでも酒じゃねえ!!」
飲めない!! と悶える船員を、女がにらみつける。
「訳が分からないね!! ……あ。いや……」
そうして、はたと。
「そういえば、好きだったねえ。桜と酒……」
なんて、そっと視線を逸らすのであった。
「姉御! 次も来ますぜ。撃ち落としますか!?」
「何言ってんだい。あたりゃ死ぬって言ってるだろ。撃ち落とすよ!!」
どんどん放たれてくる巨大な砲弾。撃ち落とすたびに桜が散る。……そして、
「何だ、なんだ、中に貝のやろうが。貝のやろうが……!!」
「あわわわわ。頭に桜が、頭に桜が生えてきた……!!」
「あれ。おっかしいな。飲んでもないのに酔ってきやがった。おっかしいなあ……」
周囲に大混乱をまき散らした砲撃は、海賊たちが捕まるまで鳴りやむことなく続いていた……。
※マスターより
戦闘中、海賊船より常時砲弾が放たれてきます。
あたるととっても痛いです。
ので、壊してください。
因みに壊さなくても当たったら割れますし着水したら割れます。結局割れます。
そして割れた瞬間に桜の花びらを周囲にまき散らし、様々な効果を猟兵の皆さんに与えます。
例)
1.お酒を一滴も飲んでないのになんだか酔った気分になる(ものすごくお酒に強くても関係ない。だって、飲んでませんから!)
2.なぜか頭に桜の花が生える。みんなで桜の精っぽくになれる(品種にこだわりのある方は指定してください)
3.殺戮オウムガイが入っていて攻撃を仕掛けてくる
4.その他ご自由に遊ぶとよい
だいたいそんな感じ。
あ、酔っぱらいもどきになる方は、酔ったらどうなるのか記載しておいてくださいね。
別にお酒を飲んでるわけではないので、未成年の方もオッケーです。そういう気分になるだけです。
(逆に言うと一滴も飲んでもないのにそういう気分になるという理不尽)
その他もだいたい自分たち以外に迷惑をかけるものでなければ、そして公序良俗に反する行動でなければ、
何でも大丈夫なので、お好きにどうぞ。
つまりは楽しく遊んでほしいと思っている!!
指定がない場合は、だいたい1か2になります。
●その他諸注意
海賊船の皆様はとらわれて幽霊船にしょっ引かれているので、助けるのは次回になります。
船は海上にありますので、接近方法は各自ご自由にどうぞ。泳ごうが水の上を走ろうが空中を飛ぼうがおぬしたちは桜の恐怖から逃れることはできない……。
●プレイング募集期間
3月31日8:31~4月1日22:00まで
ありがたいことに想定以上のプレイングを頂いた場合は、再送の可能性があります。その際はマスターページとツイッターにてご連絡させていただきますのでお手数おかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
薄荷・千夜子
智夢さん(f20354)と
相棒の鷹の彗をUCで巨大化して智夢さんと一緒に騎乗
空から幽霊船に向かって接近しましょう
しっかり掴まっていてくださいね!
『藤巡華簪』から藤の花を伸ばして鞭のように操りながら砲弾を撃ち落としていきます
彗もお手伝いお願いしますね、と砲弾の直撃を避けるように【見切り】で回避しつつ自身の藤鞭と彗の『飛星流克』の【援護射撃】で対応
わっ、桜吹雪!
なんだか雅な……って智夢さん、頭に桜の花が!?
え、私もですか!?
普段は藤の簪だけですけど桜と合わさるとまた印象変わりますね
桜吹雪を海上で空の上から見れるというのも中々ないので素敵な経験ですね
せっかくですから桜と空中散歩楽しみましょう
百鬼・智夢
薄荷さん(f17474)と
彗さんに一緒に乗せてもらい
薄荷さんに両手でぎゅっと掴まりながら接近を試みます
★リアムの力で、善霊さん達にも手伝ってもらいましょうか…
お願い、私達を守って…
撃ち落とすのは薄荷さんにお任せしながら
善霊の【オーラ防御】で死角を守ります
痛いのは、嫌ですもんね…
けれど花吹雪を被るのは避けられなくて
反射的にひゃっと声をあげつつ
あ、でも…ちょっと、綺麗かも…
え、桜…?
薄荷さんの言葉に★鏡を取り出し自分を写して
…はわわ、本当です……あっ、薄荷さんも…
鏡を見せてあげながら
な、なんだかちょっと恥ずかしいですけど…可愛い、ですね
優しくて甘い香りもするし
風流で、楽しいです…(はにかみ
「彗、力を貸して!! さあ、共に幽霊船へ。敵を倒しましょう」
薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)の明るい声に、百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)はほんの少し。控えめに微笑んだ。
「はい……。……あっ」
「?」
「私……空を飛ぶ術を持っていません……」
「ええ。もちろん、私の背中に乗ってくれるでしょう?」
恥ずかし気に目を伏せる智夢に、千夜子は相棒の鷹、彗を示す。おおよそ三メートルほどもある彗は、二人のっても充分であっただろう。
「ほら。彗も待ってるよ。私の背中に、しっかり掴まっていてくださいね!」
「……、は、はい……!」
千夜子の笑顔に、思わず智夢はそう声を上げて。それでは、と二人で鷹の上に乗り込む。身体を挟み込むように乗ると、その背中にぎゅ、と智夢は両手を回してしっかり掴まった。
「それじゃ……いっくよー!!」
ごーごー! と掛け声とともに大空へと飛び立つ彗。
「智夢さん、見えますか!?」
「はい。はっきりと下に、幽霊船が見えます……」
青い空の下、足元を覗き込むようにして智夢は声を上げる。……そして、
「あ……っ。弾が、今こちらに向かって……」
砲台から放たれた巨大な球に、智夢が思わず声を上げた。
「! これは……。大丈夫です。落としますから! 智夢さんは……」
「ええ。リアムの力で、善霊さん達にも手伝ってもらいましょうか……」
その声に即座に千夜子は反応する。さっと千夜子が藤花が美しい簪に意識を向けると、簪の藤の花がするすると鞭のように伸びて行った。
「割ります。気をつけてください!」
「リアム……。お願い、私達を守って……」
藤の花がしなると同時に、智夢が抱いていたテディベアの目が青く輝く。ぐっ。と彗が急降下した。美しいカーブを描いて。真正面からぶち当たろうとした砲弾を回避する。
「彗、お手伝いありがとうございます! そのまま……!」
ざんっ。と二発目を千夜子の藤の花が叩き割った。破片が当たりそうになるのを、
「痛いのは、嫌ですもんね……」
よけきれないところは、智夢がリアムに頼んでオーラの障壁を張ってその衝撃を和らげる。そして……、
「!」
「!?」
砲弾から飛び出したものに、二人は思わず警戒をするも……、
「わっ、桜吹雪!」
「ひゃ……!」
声を上げる千夜子に、驚いて思わずその背にしがみつく智夢。
「あ、あれ……。痛く、ありません……?」
「智夢さん、これ、桜吹雪ですよ!」
「え、桜……? 攻撃ではなくて……?」
千夜子の明るい声に、智夢は顔を上げる。
真っ青な空と、真っ青な海に浮かぶ視界いっぱいの花吹雪に、思わず智夢もまた言葉を失った。
「あ、でも……ちょっと、綺麗かも……」
「そうですよね。なんだか雅な……って智夢さん、頭に桜の花が!?」
「え!?」
千夜子にいわれて、智夢はリアムの持っていた鏡で自分の姿を映し出す。見事に頭からにょきっと桜の枝が出て、そして満開に咲き誇っていた。
「……はわわ、本当です……あっ、薄荷さんも……」
ひらひらと落ちる花びら綺麗だと。智夢の言葉に千夜子も瞬きをする。
「え、私もですか!?」
「はい……」
そっと智夢が鏡を手渡すと、おお。と千夜子は関心したような声を上げる。
「普段は藤の簪だけですけど桜と合わさるとまた印象変わりますね」
実に前向きな返答に、智夢も小さく頷いた。
「な、なんだかちょっと恥ずかしいですけど……可愛い、ですね。優しくて甘い香りもするし……。風流で、楽しいです……」
はにかむように微笑む智夢を、千夜子もまた嬉しそうに見やる。
さて。このまま彗を一直線に船へと突撃させてもいいのだけれども……、
「桜吹雪を海上で空の上から見れるというのも中々ないので素敵な経験ですね……。せっかくですから桜と空中散歩楽しみましょう」
その顔があまりに楽しそうであったので、千夜子はそう声をかけて笑った。はい、と、返ってくる、控えめながらも嬉しそうな声に、千夜子も嬉しげに鷹をゆっくりと花の中旋回させた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
なんという試練…海賊ならではのならわしなのでございましょうか
それをお咎めする事はわたくしには出来かねますが
今回のような事が増加いたしますと
ちょっと考えを改めていただかなくてはいけませんね
Signal of battle、または空中浮遊にて
船に近づきます
砲弾はジャッジメント・クルセイドにて撃ち落としたく
まあ、桜のお花が…
お花に酔ってしまうと、普段より大胆になってしまいそうでございます
特にオウムガイが出た暁には
第六感にて見切り避けつつも
もふもふじゃらいららいりまふぇん!
と呂律も怪しくきつく当たってしまいそうでございます
桜のお花が生えたら、あらあらまあまあ
なんとなく楽しくなってしまいそうでございます
梅千代・匡晨
試練、なぁ…
そらもう己で経験あるとすりゃァ
…もう大昔のことだなと独り言ちて
嗚呼、遠くで弾ける度に桜吹雪のようさなぁ
スンスン。
風に乗って鼻に届く薫りは何とも嗅ぎ慣れたもので
……ハッハ!!
こりゃァまた愉快だなァ、愉快だ
他者との連携も必要ならば厭わずに、
できる限り弾は避けるように試みる
弾が一つ二つはじけオウムガイと対峙する度、
軽快だった足取りも夢心地のように鈍るけれど。
気が付くと口元もにやけてくる
振るう刃に躊躇うことも少なくなっていく。
らァ!!どんどんこいやァ!!!
……はて?
声量が普段よりも数段増している気がせんでもない。
そういやぁ、今年は見物しに行く暇もなかったのう
ぼちぼち、散っちまうんじゃろうか
「なんという試練……。海賊ならではのならわしなのでございましょうか……」
大海原を前に、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は胸の前で手を組んで祈りをささげた。
「それをお咎めする事はわたくしには出来かねますが、今回のような事が増加いたしますと、ちょっと考えを改めていただかなくてはいけませんね……」
「あー……。うん。そう……か?」
真剣な声を、たまたま聴いていた。梅千代・匡晨(溟・f00788)は若干首を傾げる。
「試練、なぁ……。そらもう己で経験あるとすりゃァ……」
匡晨はちょっと考え込む。試練というのならば危険な試練であることに決まっていて。それを潜り抜けてきた自分に思いをはせる。無い方がいいといえば、ないほうがいいだろうか……?
「まあ、……もう大昔のことだな」
と彼女には聞こえないように一人呟くと、不思議そうにベイメリアは匡晨のほうを見た。
「いや、なに。ずいぶんとお嬢さんの思いが強いように見えてなぁ」
「ああ……。だって、悲しいではありませんか。きっと、明るく素敵な方だったでしょに……」
「そうさなぁ。まあ、たぶんきっと、愉快奴だっただろうなぁ」
この状況に、匡晨はそう思わずにはいられない。肩をすくめる匡晨に、ベイメリアも小さく頷いた。
そうして二人は走り出す。ベイメリアは己の姿を真の姿に変え、翼をはばたかせて海中すれすれを走っていく。
「嗚呼、遠くで弾ける度に桜吹雪のようさなぁ!」
匡晨もまたなんかうまいこと砲弾の欠片だったりオウムガイの市街だった李を足場にしながら海を走った。スンスン。と。ケットシーである匡晨は鼻を鳴らす。
「それにしてもこりゃあ……」
「来ますわ。……落としますね」
風に乗って鼻に届く薫りは何とも嗅ぎ慣れただと、匡晨が目を細めたところで、再び砲弾が飛んできた。ベイメリアが指先を向けると、天から落ちてくる光がその弾に直撃してそれを粉砕する。
部わっ。と、舞い落ちる花びらは、やっぱり匡晨の嗅ぎなれたにおいを発している気配がした。
「ああ。また、桜のお花が……。不思議なにおいがいたしますね……」
ベイメリアもほう、と、息をつくように顔を上げる。彼女にとっては身に覚えのない匂いである。
その正体に思い至ったとき、思わず匡晨は笑い声をあげた。
「……ハッハ!! こりゃァまた愉快だなァ、愉快だ」
刀を手に、匡晨は駆ける。なるべく花びらを浴びないように気をつけながらも、どこかご機嫌で一刀のもとにその弾を切り捨てる。
「おお。でてきたなでてきたな」
「はーい。どんどん壊してしまいましょう~」
出てくるオウムガイに、ふわり。と、緩急をつけて匡晨は切り伏せる。若干動きは鈍っているが、口元はどうにも緩んでいて、
「おいおいおかわり、多すぎるだろう」
「うふふ、どんどんやっちゃいましょうねえ……」
どんどん、どんどん。
飛んでくる弾を片っ端からベイメリアが開けていく。普段はもうちょっと慎重なはずだけれども、今日はやけに大胆で前衛的で前のめりだ。
それを後を追いかけるように匡晨が刀を走らせていく。花びらであればかまわないが、貝が入っていたときには容赦はしない。
ためらうことなく刃を振るい続ければ、
「らァ!! どんどんこいやァ!!!」
声量が普段よりも数段増している気がせんでもない。
……はて? と、首を傾げた匡晨ではあるが、
「ひゃ~。どんどんこいやぁ。で、ございますー」
うふふ。と真似するようにベイメリアが攻撃を続けるので、まあいいか。と、思いなおしたりするのである。
今はとてもいい気分だから、きっとこのまま、いけるところまで行くのもいいかもしれない。
……なんて。匡晨が思った。その時、
「……おっと。おい、あんたさ……」
ベイメリアの背中にオウムガイが回り込んでいるのに気づいて、匡晨は声をかける。刀に手をかけた……その時、
「もふもふじゃらいららいりまふぇん!!!」
べしん!
と。ベイメリアはメイスでオウムガイをぶん殴った。
「もふもふ!! もふもふ!! もふもふをだしてください! もふも……」
はた。と、ベイメリアはあらかたオウムガイを撲殺してから手を止めて、じ。と、匡晨を見た。
「……いや、このもふもふ、そう柔らかくはないぞ……?」
言ってみた。それからはっ。と、匡晨は思い出したかのように、
「それにアンタ。頭に何か乗っとるぞ」
「頭に?」
言われてベイメリアは海面に己の姿を映す。波で揺れているし、酔いでぼやけているが、間違いなく頭から、桜の枝が出て花が咲いていた。
「あら。あらあらまあまあ。なんとなく楽しくなってしまいそうでございますね……!」
なんだかすっごい楽しそうである。その様子に匡晨は目を細めて、
「そういやぁ、今年は見物しに行く暇もなかったのう」
なんとなく、呟いてみたらしみじみした。周囲を埋め尽くさんばかりの桜の花に、匡晨は天を見上げて、
「ぼちぼち、散っちまうんじゃろうか」
いい花見になったのう。なんて、冗談めかして笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【楽園】
アドリブ◎
普段ウワバミ
酔:スキンシップ過剰
触手を問答無用で叩き斬り
つれねぇ事言うなよシェフィー
仲良くやろうぜついでに仲間になれよ
なんだかんだと勝手に連携
舞い散る桜に酒の匂い
最高の宴だ!
喉を低くならして笑い
常にはない熱と酩酊感に身を任せ
ヴィヴィを片腕で抱えあげる
さっきは助かったぞ
頬擦りしながら褒め倒す
苦情は聞かずそのままシェフィーの所へ
逃げられない様に腰を引き寄せ
ああ、綺麗な桜だ
よぉく似合うぜマイハニー《俺の獲物》
食べれば甘い味がするのか試してみたくなる
戯れには楽しげに
だがな、ヴィヴィは俺の(仲間)だ
奪われっぱなしの海賊がいるかよ
ヴィヴィと
ついでにキスも返して貰おうかとシェフィーの口塞ぐ
シェフィーネス・ダイアクロイト
【楽園】
アドリブ◎
一人花見しに来た筈が邪魔が
適当に船略奪し接近
酔:キス魔
記憶残る
酔うのは初
今まで酒飲むフリしてた
私は一人で…
全く話にならん(類は友を呼ぶか
貴様もよく吼えるな、似非爺が
矮小に見えるぞ
一時休戦
断固連携せず
砲弾を二丁拳銃で的確に射貫く
触手に嫌悪
質問答え早々に駆逐
…!桜?私もだと(品種は冬桜
(酒の香にしては奇妙
動悸の乱れ、火照る躯…私が泥酔とは無様な)
二人へキス責め(※ギャグ
下品な笑い声は鼻につく
少し黙れ(アリエからステアリングを奪い抱え唇塞ぐ
く、不用意に近付くな痴れ者
其のよく回る舌噛み千切ってやろうか(噛みつくキス
よもや其の歳で初めてでもあるまい?アリエ・イヴ
どれ程誑かしてきたのやら
ヴィヴィアン・ステアリング
【楽園】
エボニー(騎乗用鯱)に乗り、【大海の騎兵】発動。
砲弾を回避しながら高速泳法で先制攻撃をお見舞いするのじゃ!
むむっ、砲弾が船長の方に。
傍にいる陰険眼鏡はどうでも良いが、船長は吾輩が守るのじゃー!
バトルアンカー振り回し砲弾を落とすが……ヒック、なんだか、無性に……アヒャヒャヒャヒャ!!
理由は分からんが楽しくなってきたのじゃ、笑いが止まらんのじゃ!
なんじゃ、船長、吾輩はぬいぐるみじゃないというのに。嬉しいが、苦しいのじゃー!
陰険眼鏡もなんじゃ、擽ったい、ひゃひゃひゃ、気持ち悪いのじゃー!
やめよ、やめよー!(じたばた)
笑い上戸
艶事は全く分からぬお子様
記憶は残る
己の身に降り掛かった災難理解出来ず
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!! 吾輩に乗りこなせぬ海洋生物なぞ居らぬわ!」
珍妙なヴィヴィアン・ステアリング(Steady!・f26342)の叫び声が響いた。そして叫び声と共に相棒の騎乗用鯱に乗って爆走を始めたヴィヴィアンは、真っ青な空の下、ものすごい勢いで周囲に落ちていく砲弾へと駆けていく。ひらりひらりと落ちてこようとする砲弾を回避して、反撃にバトルアンカー振り回し周囲に桜吹雪をまき散らせば、さらにテンションも上がるようでぐぅ、と唸るようにご機嫌に笑って、
「むむっ、砲弾が船長の方に。傍にいる陰険眼鏡はどうでも良いが、船長は吾輩が守るのじゃー!」
ヴィヴィアンを通り越していく砲弾に、ものすごい鋭角カーブを描いて振り返り、ものすごいテンションと勢いで爆走していくヴィヴィアン。
「……」
それを聞いて、陰険眼鏡ことシェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は軽く頭を押さえた。
適当に奪った船で適当に一人で花見に行こうとしていたのに、やつらに見つかったのが運の尽きである。なんといっても……、
「ほれほれまあまあ。つれねぇ事言うなよシェフィー。仲良くやろうぜついでに仲間になれよ」
勝手に人の船に上がり込んできたアリエ・イヴ(人間の海賊・f26383)が馴れ馴れしくシェフィーネスの肩に手をおくので、ぺいっ。とシェフィーネスはそれを払いのける。
「いや、私は一人で……」
「あ? 聞こえねえな!」
ていうかそもそも聞く気がない。シェフィーネスはため息を一つつく。
「…………全く話にならん」
類は友を呼ぶか。とは口の中。行っても聞かないことはとうに分かっているので、この件でそれ以上言い募るのは時間の無駄だとシェフィーネスは割り切った。そんなシェフィーネスを全く気にせず、アリエはご機嫌に天を仰ぐ。
「見ろよ! 舞い散る桜に酒の匂い……最高の宴だ!」
「ヒック、なんだか、無性に……アヒャヒャヒャヒャ!! 理由は分からんが楽しくなってきたのじゃ、笑いが止まらんのじゃ! 船長ー!!」
「待て。この船は私のものだ。貴様もよく吼えるな、似非爺が。矮小に見えるぞ」
鯱に乗ったままぶんぶん手を振るヴィヴィアンにもシェフィーネスは思わず声をかけるが、勿論ヴィヴィアンだって聞いちゃいねえ。でたらめにバトルアンカーをぶん回せば、破壊と同時に花びらが散る。そうして姿を現したのは、
「おっと。おいでなすった。ほら、仲よくしようぜ」
「仲良くするわけがないだろう!」
現れたオウムガイを早々に二丁拳銃で撃ちぬくシェフィーネス。ついでに飛んでくる砲弾を撃ち落とせば、ぶわっと花が舞い落ちて。そして再び現れた敵はその瞬間アリエが鼻歌交じりでたたき落とした。
「ナイス連携」
「してない」
「ぐぬぬぬぬ。二人で仲良くしてるんじゃないのじゃぞぉぉ!! アヒャヒャヒャヒャ!!」
「だからしてないと」
やっぱり二人は聞いちゃいねえって顔をしていたが、言わずにはおれないシェフィーネスだった。
「さーて。こんなもんだろ」
そして。
つかの間静かになった海で、アリエが腰に手を当ててご機嫌で頷いた。
「船長~」
「おー。ヴィヴィ、こっちだ。さっきは助かったぞ」
そういいながらも、アリエはヴィヴィアンを片手で抱き上げる。いつもよりもご機嫌で頬ずりをして、さすがだなんだといつもよりも多量に褒めちぎりまくる。された方もされた方で、ヴィヴィアンはまたおかしげに笑い声をあげながら、
「なんじゃ、船長、吾輩はぬいぐるみじゃないというのに。嬉しいが、苦しいのじゃー!」
でひゃひゃひゃ。とか何とかじたばたしながらもご機嫌である。ヴィヴィアンを抱きかかえたまま、アリエはシェフィーネスのそばによるとそのまま腰を引き寄せて、
「ああ、綺麗な桜だ。よぉく似合うぜマイハニー《俺の獲物》」
「む? ……」
にやにや笑ってべったり引っ付いてくるアリエにシェフィーネスはしばし考えこみ、
「……」
そういえばアリエにもヴィヴィアンにも何だか頭から愉快な桜が生えている……、
「……! 桜? 私もだと……!?」
まったく気づいていなかった。頭の上に咲く冬桜にシェフィーネスは愕然とした声を上げた。アリエは楽しそうに笑っている!
「なるほどこれも敵の攻撃か……。(酒の香にしては奇妙……。動悸の乱れ、火照る躯……私が泥酔とは無様な)」
「何だかわからんが二人とも吾輩を挟んで遊ぶんじゃないー! でなくば、うひゃひゃ……あひゃひゃひゃひゃ」
「少し黙れ」
ええい下品な笑い声が鼻につく。黙れとばかりにシェフィーネスはアリエからヴィヴィアンを奪い取って唇を重ねて黙らせる。
「ひゃー! 陰険眼鏡もなんじゃ、擽ったい、ひゃひゃひゃ、気持ち悪いのじゃー! やめよ、やめよー!」
「おっと。ヴィヴィは俺の(仲間)だ。奪われっぱなしの海賊がいるかよ」
けらけら笑うヴィヴィアンをアリエがひょい、と奪い取る。そのまま、
「ついでにキスも返して貰おうか、シェフィー。食べれば甘い味がするのか試してみたくなるし」
「く、不用意に近付くな痴れ者。其のよく回る舌噛み千切ってやろうか」
お返し。とばかりにキスをするアリエに噛みつくようにシェフィーネスは応える。
「よもや其の歳で初めてでもあるまい? アリエ・イヴ。どれ程誑かしてきたのやら」
「……さあて、どうだろうな?」
シェフィーネスの言葉にアリエは肩をすくめて素知らぬ風で。
重なるようにヴィヴィアンの愉快な笑い声が周囲に響いていた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
綾華兄さんf01194と
うおっ!危ねぇ!!
砲弾見切りグラップル
殴って壊す
綾華兄さん大丈夫か?
うわっ
花弁浴びて
…酒臭ぇ
頭振り
…あれ?
綾華兄さん分身した?
いつの間にそういう技使ったんだ?
首傾げ
おっかしいな
何かふわふわしてるし
※酔って視界がぶれている
…そうだったのか
ってどっちだよ!?
目の前の手をがしっと掴もうと
一人じゃん
笑い
つーかこのイカ?貝?食えんの?
オウムガイ指差し
痛って!
イカがイカった
くっ…ちょう面白ぇ
※笑い上戸。普段は余り笑わない
ちょ駄目だコレ…
早く何とかしねぇと
涙目でUC起動
ほら綾華兄さん!
手を出し飛んで船に辿り着こうと
綾華兄さんこそかっけー
敵倒しつつ
…俺もう酒は飲まねぇ
…ま、程々なら
浮世・綾華
理玖(f22773)と
おわ。花弁やべぇ
酒の香りする
ん、分身?…嗚呼なるほど
――そう、これはオルタナティブダブル
俺、実は多重人格者だったんだよねえ
――なぁんてうそうそ
フツーにひとりだケド?(目の前で手ひらひら
わ。はは、そー言ってるでしょ
美味そうではねーかなぁ
腹壊しそだし食わないでネ、育ち盛り
…ええ、理玖がおかしくなった
ふ。面白いからいっか
理玖飛べんの?かっけーじゃん
っとさんきゅ
でもこれだと戦えんし
よいしょと絡繰ル指で鍵刀重ね浮かせ
乗って浮遊しながら残りの鍵刀で一匹ずつ狙いつつ
粘膜の方にも注意し除けるのが優先
今回も飲んではねえケドな、未成年
いーじゃん可愛かったし
成人したら付き合ってくれるだろ?
「うおっ! 危ねぇ!!」
ものっそでっかい砲弾が理玖のすぐそばを通過して、
慌てて理玖はブラスナックルでその巨大な球を殴りつけた。
びしぃ、と大きな音がしてひびが入る。そのまま砕け散った砲弾に、理玖は慌てて振り返った。
「綾華兄さん大丈夫か?」
「理玖、なんか出てくる……って」
「うわっ」
桜? と、いうと同時に、ばっさーと壊れた砲弾から桜の花びらが大量に降り注いだ。
「おわ。花弁やべぇ。あと酒の香りする。すっげえする」
「……ほんとだ。酒臭ぇ」
思わず数歩後退して直撃を裂けた綾華であったが、理玖はもろにかぶった。頭を軽く押さえて首を振る理玖に、
「どした? 何か変なものでも……」
「……あれ? 綾華兄さん分身した?」
心配そうに声をかけようとした彩華に向かって、胡乱気な顔をして理玖は言うのであった。
「いつの間にそういう技使ったんだ?」
「……ん?」
「だいたいずるいぞ、綾華兄さんだけ増えるなんて。俺は増えないのに」
「いや……。いや、分身……?」
据わった目の理玖をみて、嗚呼、なるほどと彩華は腰に手を当てる。何となく相手の言いたいことが理解できたようで、
「――そう、これはオルタナティブダブル。俺、実は多重人格者だったんだよねえ」
「……!」
……そうだったのか! と、理玖は驚きに目を見開いた!
「――なぁんてうそうそ。フツーにひとりだケド?」
……そうだったのか? と、理玖は首を傾げた。
「……ってどっちだよ!?」
思わずなぜか両方とも納得しそうになった。理玖は慌ててがし、と彩華の手をつかむ。そのまま振る。ぶんぶん振る。振ると分身の手も一緒に振られる。
「あ。一人じゃん」
「わ。はは、そー言ってるでしょ」
「じゃ、俺も一人でいいな」
「うんうん。理玖は一人ここにいてくれたらいーよ」
とてもおかしげに笑う綾華に、うんうん。となぜか納得したかのように理玖は頷く。
「おっ。また来たぜ、砲弾」
「ああ。あれに当たるとこうなるみたいだし、綾華兄さんは下がってるんだな」
「きゃー。理玖ったらかーっこいい」
ま・か・せ・ろ。と。
謎の踊りを踊りながらも砲弾を叩き壊す理玖。任せた。と、ぐッ。と親指を立てる綾華であったが……、
「イカだな」
「おっ。なんだ、ただの貝じゃん」
出てきた敵を外れ扱いして。イカ? 貝? と、二人して顔を見合わせる。
「つーかこのイカ? 貝? 食えんの?」
「美味そうではねーかなぁ。腹壊しそだし食わないでネ、育ち盛り」
こんこん。と、貝の殻を軽くつつく理玖。くぁっ。と、オウムガイが凶悪な瞳を理玖へと向けて、
「痛って! こいつ噛んだ! イカがイカった!!」
衝撃波に小突かれた瞬間、理玖は驚愕の声を上げる。信じられない、みたいな顔をした。その直後……、
「くっ……ちょう面白ぇ。イカがイカったイカが……」
自分で言って自分で受けてバンバンイカの殻をたたいていた。
「……ええ、理玖がおかしくなった。なにアレ、イカが転がっても面白いお年頃?」
「く。イカが転がって如何……ふふふふふ……」
「ふ。面白いからいっか」
「いや、よくねえ。よくねえから……!」
ぼすぼすぼす。爆笑しながらイカの殻を叩き罅を入れていく様はある種シュールである。そんな理玖を生暖かい目で綾華は見つめている。
「や、だって、楽しそう……だし?」
普段は余り笑わない理玖である。人間笑顔のほうがいいよね。なんてさわやかに見守る彩華に、理玖は笑い止まらぬ状態になりながらも、若干涙目になっていた。
「ちょ駄目だコレ……。早く何とかしねぇと」
「ええ。俺は困らないけど?」
「俺が困るんだ!! ほら綾華兄さん! フォームチェンジ!ライジングドラグーン!!」
キラッ☆ と全身を七色に輝く眩い龍のオーラで纏って、理玖は手を差し出す。飛翔して一気に船まで行く算段だ。可哀想にぼすぼす殴られたオウムガイの残骸に視線をやりながらも、
「理玖飛べんの? かっけーじゃん。……っと」
さんきゅ、といいながらも彩華はその手を取って、
「待った。これだと戦えんし……。――コレをこうして、こうな?」
よいしょ。と鍵刀を複製する。浮かせてそれに乗り、一緒に彩華も浮遊して、
「あとのことはこっちに任せて、飛んでる間に酔いさましといたら?」
平気平気。と、複製した残りの鍵刀で戦闘態勢を整えながら彩華が言った。すると、
「……いや。俺だって何とかするし。それにしても綾華兄さんこそかっけーな。…………」
言って。なんかまた笑いだしそうにしてた。
きっとしょうもないギャグを思いついたのであろう。
「………俺もう酒は飲まねぇ」
その後。船に降りる直前に理玖が言うと、
「今回も飲んではねえケドな、未成年」
「じゃあ、俺は永劫酒は飲まねぇ……」
「まあまあ。いーじゃん可愛かったし。成人したら付き合ってくれるだろ?」
そんなこと言わずに。なんて。
笑う彩華に、理玖はほんの少し視線を逸らす。
「……ま、程々なら」
「おつまみにイカも用意するから」
「イカはもういい」
そんな仲のいい会話もあったという……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュジュ・ブランロジエ
【空】
コノさん、なびきさんと
1、ゆるふわ笑い上戸
『』は裏声でメボンゴの台詞
アドリブ歓迎
大砲をメボンゴ波(メボンゴから出る衝撃波)で破壊
そういえばなびきさんにお披露目するの初かも
張り切っていこう!
『メボンゴ波ァッ!』
わー!桜の花弁すごーい!綺麗!
え、コノさんの料理? 食べたい!(答えになってない)
わ~、なんだかふわふわする~
なにこれ楽しい!あははは!
あっ、コノさんに桜が咲いてる~!なびきさんも!くーちゃんにまで!みんな可愛い~!あははは!
『可愛い!わーい、メボンゴもつける~!』
とキャッキャ喜ぶ
お揃いいいな~!
私もお揃いしたーい!
もっと大砲壊せば私にも桜咲くかな?
どんどん壊しちゃうぞー!あははは!
揺歌語・なびき
【空】コノハさん、ジュジュちゃんと
2
あぁ、メボンゴ破ってあんな感じなんだぁ…
と眺めつつ、おれも小型銃で大砲狙い撃ち
【スナイパー】
ひゃあ、盛大に被った!
二人とも大丈夫…じゃないねぇ
ジュジュちゃーん、足元危ないよぉ
前見えてる?それ敵だからね?
泣き上戸や怒り上戸よりかわいいけど
コノハさん酔ってない、流石
お酒使わず料理の香りづけできるなら便利だねぇ
おれも酔ってはいないんだけど…頭?
わ、桜の精ってこんな感じなのかなぁ、と自分の頭に触れつつ
確かにお揃いだねぇ、ふふ、似合ってる
くーちゃんも小さい桜がかわいいねぇ
メボンゴちゃんもつける?(ぷちっとひとつ頭の桜を摘んで
あー他の物は壊しちゃ駄目だよぉ(淡々と射撃
コノハ・ライゼ
【空】ジュジュちゃん、なびきちゃんと
2
あは、さっすが名コンビ
負けてられないネと笑って
【黒影】でくーちゃん呼び出しその爪牙で砲弾壊すわ
撒き散らされる花びらを綺麗ねぇなんて眺めつ
漂う香りに
ね、コレ料理に使えるかしら?と二人を見みたり
……あら。ジュジュちゃんたら笑い上戸ねぇ
ホント、なびきちゃんたら桜咲いてるわぁ……ってオレも!?
慌てて触れれば樹の感触
それにくーちゃんまで頭に桜……!
え……可愛い?似合う?
ちょっと写真写真とスマホ向けたり撮ってと頼んだり
あはは、なびきちゃん違和感仕事してない~
ほろ酔い(?)ジュジュちゃんの頭に桜もめっちゃ可愛いの間違いなしネ
おっけー、たーっくさん壊しちゃお!
「ふっふっふ。どうやらメボンゴの必殺技をなびきさんにお披露目する日が、ついについに来たようだね……」
『メボンゴ、やっちゃうよー!』
ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)がメボンゴをくるくると操って、ぺこりとお辞儀を指せた。丁寧に裏声でメボンゴの音声付きである。
「うん……? そういえば、見たことがなかったよね」
揺歌語・なびき(春怨・f02050)がぱちりと瞬きをして、隣のコノハ・ライゼ(空々・f03130)に目をやると、コノハはなぜかそっと視線をそらした。そんな二人の様子を気にせずに、ジュジュは全くご機嫌で飛んでくる砲弾に目を向けて……、
「うんうん、メボンゴ! 張り切っていこう!」
『メボンゴ波ァッ!』
カッ!
目が光ったか口から吐いたかそれとも両手から出たかその辺はまばゆい光でわからなかったが、ものすごい衝撃波が砲弾を襲う。
ドォン。と派手な音がして固そうな弾が砕け散り、ぶあっと周囲に桜の花が舞い散った。
「あぁ、メボンゴ破ってあんな感じなんだぁ……」
ぽつん。となびきが呟いて。小型銃を構える。
「あは、さっすが名コンビ。負けてられないネ」
コノハもそれ以上の言は避けて、
「じゃ、オレ達も仲の良さ、見せようか。くーちゃん、やっちゃって」
お願い。とコノハが言うと同時に、黒い管狐が走った。対象に応じ大きさと数を変じる黒狐の爪牙は、今回は自然巨大なものになる。巨大な砲弾を鋭い爪が引き裂くと、ばっと舞い散るのは桜の花びら。
「コノハさん、ジュジュさん、上にも!」
次の瞬間、なびきが顔を上げた。小型銃で連続して弾丸を大砲の弾に撃ち込んでいく。何度か撃ち込んだところで、かっ。と弾がひび割れて、桜の花びらが飛び散った。
「ぷっは。なぁにこれ。綺麗ねぇ」
桜の花びらと一口に行っても、砕く弾によって多少の色が変わる。薄紅色に桃色に。壊すたびに乱舞するその花弁が美しくて。コノハが目を細めて空中で花びらをキャッチした。
「ね、コレ料理に使えるかし……」
そう、コノハは言いかけて。
「ひゃあ、盛大に被った! 二人とも大丈夫……じゃないねぇ」
「あはははは! 桜がいっぱい! なにこれ楽しい! あははは!」
なびきもふるふると頭から花びらを落として顔を上げると、目の前にご機嫌のジュジュがいた。メボンゴと一緒にくるくると踊っている。
「え、コノさんの料理? 食べたい! 今すぐ! おーべんとう~・おべんとうの歌~♪」
らららと歌いだすジュジュになびきが一瞬、言葉を失ってから。
「ジュジュちゃーん、足元危ないよぉ。前見えてる? それ敵だからね? あと桜はお酒使わず料理の香りづけできるなら便利だねぇ」
「何をいってるの。こんなにおっきなエスカルゴ!! お弁当に入らないよ! どうしよう!! あはははは」
「……あら。ジュジュちゃんたら笑い上戸ねぇ。ああ、なびきちゃんがそういうなら、挑戦してみようかな」
「コノハさん、微笑ましそうにしてる場合じゃないんだよ??」
「ええ。だーいじょうぶだって」
ジュジュに近寄るオウムガイに、コノハの爪が走る。よろめいたところをなびきが数発撃ちこんで、とどめを刺した。
「コノハさんは酔ってない、流石だね」
「そうネ。酔っぱらってなびきちゃんに迷惑かけるのもそれはそれで楽しそうだったけど……」
一応気をつけているのである。とは口に出さない保護者感。
「それは……ちょっと、その……やめよう。ジュジュちゃんも、泣き上戸や怒り上戸よりかわいいけど……」
収拾つけられる気がしなかった。
「あはははは。わ~、なんだかふわふわする~。あ!! わー! 桜の花弁すごーい! 綺麗!」
「え?? 何? おれも酔ってはいないんだけど……頭?!」
「そうそう。もうちょっと右!!」
ジュジュに言われて、コノハも改めてなびきを見る。なびきは言われるがままにそっと頭に手を触れる。
「ホント、なびきちゃんたら桜咲いてるわぁ……」
「コノさんに桜が咲いてる~! なびきさんも! くーちゃんにまで! みんな可愛い~! あははは!!」
『可愛い!わーい、メボンゴもつける~!』
「ってオレも!? それにくーちゃんまで頭に……!」
けらけら笑うジュジュに言われて、慌ててコノハも頭に手をやった。確かに。なんか枝の感触が、ある。
「わ、桜の精ってこんな感じなのかなぁ」
若干嬉しそうになびきが声を上げる。首を振るとひらひら桜の花が舞い散って、なんだかかわいい。
「あはは、なびきちゃん違和感仕事してない~」
「コノハさんだって。なんだかかわいい感じなっているよ」
「え……可愛い? 似合う? そういわれたらなんだか気になるネ……。ちょっと写真写真」
スマホを取り出して、自撮りしようとしてみたり……、
「ジュジュちゃん。ちょっととってみて、ほら」
「えええ。やーだー。撮るならみんなで撮りたいー。二人ともお揃いいいな~! 私もお揃いしたーい!」
じたばた駄々っ子みたいにするジュジュに、おやとコノハとなびきは顔を見合わせる。
「確かにお揃いだねぇ、ふふ、似合ってる。くーちゃんも小さい桜がかわいいしねぇ……」
なびきは考え込んで、自分の頭に生えた枝を少しタオル。幸いなことに、痛くはなかったので、
「メボンゴちゃんもつける?」
そっとメボンゴのポケットに桜をさした。
「つける!! でも、私もお揃いにするー! もっと大砲壊せば私にも桜咲くかな?」
『やっちゃう? やっちゃう!』
めっちゃ前向きなジュジュの言葉に、コノハはぐ、と親指を立てた。
「ほろ酔い(?)ジュジュちゃんの頭に桜もめっちゃ可愛いの間違いなしネ。おっけー、たーっくさん壊しちゃお!」
「わーい。コノハさんありがとー。大好きー!! どんどん壊しちゃうぞー! あははは!」
メボンゴと共に次々と飛んでくる砲弾にメボンゴ波を向けるジュジュ。ついでに敵を傷つける白薔薇も砲弾に降り注いでいった。
「あー。他の物は壊しちゃ駄目だよぉ」
そんなことを言いながらも、なびきは引き続き銃弾を撃ち込んでいく。らじゃ! と元気な返事に、コノハも天を仰いで、
「んー。桜と薔薇でとっても綺麗。いい天気ネ……」
なんて思わず言ってから、微笑むと、
くーちゃんが爪を翻した。
きっとこれから、綺麗な花がたくさん咲くに違いない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八重垣・菊花
【壁】で参加
砲弾は2と3、アドリブOK
何て言うんやっけ、ああいうの。砲弾の雨あられ?
【貴船】に騎乗、皆の援護射撃をメインに機関銃で応戦
できるだけ人に当たりそうな軌道の砲弾を予測して撃ち込む
人が多すぎて機関銃だと危険であれば高速詠唱によりUC発動
鬼桐さんとサンディさん酔うて?はるみたいやけど大丈夫やろか、めっちゃ貝食べる気やん!
生浦さんは……めっちゃ貝保存しとるー!
あっ桜の木(鬱金桜)生えてる!えっ何色?黄色?ちょっと自撮りしてもええかな!いぇーいなんちゃって桜の精やー!(ある程度片付いたところで自撮り、背後に他の壁メンバーも写っている)
あっ撮ってくれるん?ありがと!ほなうちも三人を撮ろかな
鬼桐・相馬
【壁】
最期まで責任を持つという海賊の掟には賛成だ。
[ヘキサドラゴン]に手綱と鞍をつけサンディを乗せて移動。仲間の近くを飛ぶよう指示、首元を軽く叩き忠告。
俺以外も乗っているんだ、はしゃぎ過ぎるなよ。
海上でUC発動、花見で存分に飲み食いしようと[鼓舞]。砲弾は[ヘヴィクロスボウ]で破壊、敵が出たら再度弩で攻撃。倒した敵は栴のUCに吸い込んで貰おう。
栴の喚んだ死霊は味方だと黒竜に言い含めつつ、サンディの攻撃に追撃した直後ふと違和感に背後を見る。
ん、サンディは酔っているのか?
普段との差に驚く。俺も酔って感情が表に出易くなっている気が。
敵殲滅後は菊花の元へ集まり撮影かな。桜の中無自覚な笑顔で撮影に参加。
サンディ・ノックス
【壁】で参加
メガリスの試練と失敗したときの責任
海賊の掟は初めて聞いたけど少し切ないと感じてしまうな
でもできることしかできないからそれをやるだけ
相馬さんの黒竜に乗せてもらって移動
乗せてくれてありがとうとそっと背を叩く
砲弾は解放・夜陰で破壊していく
貝が出てきても同じく、
ん、食べるつもりなの?
それなら黒水晶に取り込ませないで突き刺すだけにしよう
中身が花びらだけの砲弾もあるんだねえ
戦闘中でも見とれてしまう、綺麗だな
なんだか頭がぼぅっとして…
…もっと敵いないの?
倒し足りないよ
おかわり欲しいなぁ、あはは!
一区切りついたら菊花さんの自撮りに声をかけた栴さんに誘われて
気持ちを抑えていない満面の笑顔で撮影に参加
生浦・栴
【壁】
荒くれ者らしい掟よな
其れで納得しているなら云う事も無い、急ごう
羽根は速度が出ぬが後衛だし良かろう
波に触れぬ程度に低く飛び
弾は風の属性攻撃+高速詠唱で適宜スナイプし進路を確保
攻撃は第六感で避けるかオーラ防御で
時にこの貝は肴になるか?
試しに仲間が倒し大人しくなった貝はUCに保存しロック
充分採れたら衝撃波で広範囲攻撃に切替え掃討
菊のは存外過激で射程に入ると危険な気しかせぬし
ノックスのに至っては迂闊に目の前に死霊共を出せぬ気配だな
鬼桐のと黒竜のは大丈夫そう、か?
落ち着いた頃に菊のの頭と自撮りに気づく
…矢鱈と花が降ると思ったら俺にも咲いているな…
まあ何やら皆が楽し気なので集まって貰おうか
俺が撮ろう
大砲の音が遠くに聞こえてきていた。
「何て言うんやっけ、ああいうの。砲弾の雨あられ? こういったら風情があるけれども雨なんかあられなんかどっちかはっきりしてほしいわあ。そもそも雨っていうたかて季節によって……」
八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)は喋る。とにかく喋る。そんな彼女の言葉を聞いているのかいないのか。聞いていていつものごとく聞き流しているのか。鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)が喉に六芒星の痣を持つ黒竜を召喚して、
「最期まで責任を持つという海賊の掟には賛成だ」
手綱と鞍をつけまたがると、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)のほうに視線を向けた。
「そう……なのかな」
視線にうなずいて。相馬の後ろに乗せてもらいながら、サンディはほんの少し言葉を選ぶ。
「メガリスの試練と失敗したときの責任……。海賊の掟は初めて聞いたけど少し切ないと感じてしまうな。といっても、俺にできることはやっぱり倒すことでしかなくて、できることしかできないからそれをやるだけ……なんだけれど」
残念に思う気持ちはあると。サンディが考えこむように言うので、生浦・栴(calling・f00276)は翼を広げながらも肩をすくめた。
「ま、荒くれ者らしい掟よな。本人たちが其れで納得しているなら云う事も無いし、ノックスのの言った通り他に手があるわけでもない。……急ごう」
「そうやね。あんまりおしゃべりしてたら、日が暮れてまうわ」
お前が言うな、とだれかが思ったかもしれないし、思わなかったかもしれないが、菊花は素知らぬ顔で手のひらサイズのクラゲを出した。胴の部分に菊の花が浮いているそれは、瞬時に巨大化して菊花が座れるサイズになる。
「ほな、いこか」
そうしてそれぞれの方法で、彼らは海の上へと繰り出した。
「俺以外も乗っているんだ、はしゃぎ過ぎるなよ」
相馬がドラゴンの首を軽くたたく。答えるように一声、ドラゴンは鳴いた。
「大丈夫。優しく飛んでもらってるよ」
速度を落として仲間と並び。揺れを減らしてくれるドラゴンに、サンディは少し微笑んでお礼を言うかのようにドラゴンの背をそっと叩く。
「そうか。ならよかった。前方……来るぞ。……常世を彷徨う熾火への渇望、現世へ廻れ」
相馬が高々と声を上げる。
「花見で存分に飲み食いしよう!!」
声を張り上げて言うと、応、と頼もしい声が返ってくる。その声にこたえるかのように、仲間たちに一度だけダメージを無効化する冥府の加護を与えながらも相馬は自分では黒塗りの重弩を撃ち込んだ。
衝撃音がして、砲弾が破壊される。卵の殻でも割るように、砕け散った弾の欠片の中から、ぶわっ。と桜の花びらが舞い落ちた。
「なんやあれ。桜の中に……」
「食べ物と見た!」
それを見た瞬間の、栴の動きは早かった。波に触れぬ程度に低く飛んでいた栴は、砲弾が砕けて中からオウムガイが出てきたその瞬間、
「大人しくして居れ」
即座にprison cell……魔鍵をぶん投げて見事其の急所にぶち当ってとどめを刺した瞬間に保冷庫の中に投げ入れてロックした。すべては一瞬のことであった。きっとオウムガイは何が起こったのかも、理解できなかったであろう。
「どうやらあの砲弾の中から現れるのであろう。狩るぞ」
「って、生浦さん早すぎー! めっちゃ貝保存しとるー!」
そのまま流れるように風の力を砲弾に叩きつける。すべてに貝が入っているわけではないようで、外れであるか。なんて面白くなさそうな声も聞こえてきて、菊花はおかし気に声を上げるのであった。しかし……、
「鬼桐さん、サンディさん!」
二人の前に迫るオウムガイの触手が目に入り、菊花はそれを撃ち落とす。片手で持てるサイズの菊模様が入った小さな黒い機関銃は見事に触手を引きちぎるのと同時に、
「ありがとう」
サンディがちらりとそのオウムガイに視線を向けた。
「……」
言葉には出さない。ただ、念を込める。闇の魔力が込められた、漆黒の水晶がオウムガイに向かって放たれた。
「!」
貝が溶けて、水晶に同化するように消えていく。それをこうほうからながめていて、ふと、栴が、
「……時にこの貝は肴になるか?」
「ええ。生浦さんわかってて捕まえたんやないんですか?」
「いや。抵抗されると捕まえにくくなるであろう。ゆえに……」
とりあえず捕まえてみたらしい。と、至極当然のことのように言いきる栴に、
「ん、もしかして、沢山食べるつもりなの? それなら黒水晶に取り込ませないで突き刺すだけにしようっと」
おお。とサンディが感心したような声を上げて方針を転換した。
「そうであるな。それでは本日の宴会分は捕まえて……」
栴はそう言いながらも、ちらりと周囲を見つめる。
「それにしても全部が敵ではないようであるの。詰まらん」
「ああ……。そういえば、中身が花びらだけの砲弾もあるんだねえ。こんな時でもついつい見とれてしまう、綺麗だな」
「サンディ」
ふわふわと首を巡らせるサンディに、相馬が思わず声をかける。が、サンディはふい、と首を振って。
「なんだか頭がぼぅっとして……」
「あれ。サンディさん、寝てもた……」
菊花が銃を撃って花びらを散らしながら、横目でサンディを見た。相馬も肩越しにサンディの様子をうかがう。サンディは一度、うなだれるように沈黙した後で、
「……もっと敵いないの? 倒し足りないよ!! おかわり欲しいなぁ、あはは!」
「……ん、サンディは酔っているのか?」
その違和感の塊にしか思えないサンディの物言いに、驚いたように相馬はその顔を見た。すぐに酔ったのか、という言葉が出たのは、自分も自分が酔ったと思ったからか。いつもより相馬は自分の感情が表に出ている気がする。
「!? 鬼桐さんとサンディさん酔うて? はるみたいやけど大丈夫やろか、めっちゃ貝食べる気やん!!」
「あはははははは。そう!! いっぱいいっぱい捕まえてね!! 俺、いっぱい食べるから!」
サンディが水晶を離しながらご機嫌に声を上げる。わかったわかった。と栴は頷いた。
(菊のは存外過激で射程に入ると危険な気しかせぬし、ノックスのに至っては迂闊に目の前に死霊共を出せぬ気配だな。鬼桐のと黒竜のは……酔ってるといっても大丈夫そう、か?)
様子を見ながらも、栴はちらりと仲間に視線を走らせる。すぐさま、
「宴会分は回収したぞ。あとは殲滅である」
これ以上戦闘を長引かせるのはおよろしくないと判断して声を上げた。
「了解や。十重に二十重に舞い散る菊花、とくとその目で御覧じろ!」
ざぁっ。と、菊花が己の銃を菊の花びらにかえていく。降り注ぐ花は栴の広範囲にわたる衝撃波とともに、周囲の敵を一斉に蹴散らしていった。
そして。
「あっ桜の木生えてる!!」
あらかた周囲の敵が一掃されたころ、菊花が頭に手をやって大きな声を上げた。
「えっ何色? ねえ何色? 黄色??」
「ええと……うん」
「やああああったー!!! ちょっと自撮りしてもええかな! いぇーいなんちゃって桜の精やー!」
鬱金桜である。サンディの返答に、菊花はものすごくうれしそうな声を上げた。小躍りしながら自撮り写真を数枚とると、
「あ、みんなうってもた……って、生浦さんも花。めっちゃ花ー!」
菊花の声に、栴はうん? と己の頭に手をやる。
「……矢鱈と花が降ると思ったら俺にも咲いているな……。よし。まあ何やら皆が楽し気なので集まって貰おうか」
「うん? 記念撮影なのかな?」
ひらひらと手を振る栴に、サンディが顔を出す。栴は頷く。
「そうだ。俺が撮ろう。ほら、並ぶんだ」
「並ぶ……俺たちもか」
「当たり前であろう」
相馬も顔を出し、促されるままサンディ、菊花、相馬の順番に並ぶ。
「あっ撮ってくれるん? ありがと! ほなうちもあとで三人を撮ろかな」
「ああ、それじゃあ頼む。折角頭から木が生えた記念だからな」
「了解。いっぱいとるでー」
栴の言葉に、三人は声を上げて笑った。
いつもなら、そんな風に笑わないサンディも、相馬も、なんだかご機嫌で。
写真に写ったのは、いつもは満面の笑みなんて浮かべない彼らの屈託のない笑顔と。いつも以上に今日は飛び切り楽しそうな菊花の嬉しそうな顔であった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
ガジェットショータイム
ガジェットエンジン付きのシュネー号だよっ
船に乗ってブロロロ
えーいっ
斧を振り回して砲弾を壊す
わあ、さくらだっ
きれいだねえ
お酒の香りにふわふわ
なんだかすごーくすごーくたのしくなってきた
ふふ
シュネーもたのしい?
のぞき込めばいつもより頭が重い気がして
あれ?なにか乗ってる?
水面覗いて
さくらだっ
つのみたい、ふふふ
しってる、ソメイヨシノっていうんだよ
前におしえてもらったんだ
しゃしんとれたら見せられるのにねえ
ともだちのだいじな花だから、攻撃あたらないようにしないと
わっと
あれ、なんかまっすぐ歩けない
ふふふ
ふねがゆれてるからかなあ
シュネーもふわふわする?
海の上なのに、くもの上みたい
たのしいね
叶・景雪
アドリブ歓迎。難しい漢字は平仮名使用。カタカナはNG。
海だ!
水は苦手だけど、海は特別だよ!波の音をきくとわくわくするよねっ?水れんは苦手だけど…つまり、落ちなければ大じょうぶ(ふんす!
それに、今日はたのもしいあいぼうがいるから(優しく靴をなで)いっしょにがんばろうね、みんと!(空中浮遊とジャンプを駆使して、船に近付こうと挑戦)わっとっと、体せい大事だよ!
あれは…大ほう!?当たったらいたそうだから、直撃しないよう、ぼくの本体の刀できどうをそらせないかためすよ!うまくいって…わ、あぶない!(海に着弾した大砲から距離をとるも桜に囲まれ)
桜のいい香りが…?どこからって…ぼくの頭から!?(墨染の桜が生え
「海だー!!」
叶・景雪(氷刃の・f03754)は海に向かって大きく叫んだ。
「うん、綺麗だねえ」
その叫び声があんまりに大きくて、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)がふふっと笑いながら声をかける。
うん、と景雪は振り返ると、キラキラした目で、
「水は苦手だけど、海は特別だよ! 波の音をきくとわくわくするよねっ?」
「ふふっ。たしかになんだか波がおしゃべりしているみたいで素敵かも。……あ、けれど」
水が苦手との言葉に、オズは一度、瞬きをして。
「だいじょうぶ? 船まで行ける?」
「うん! 水れんは苦手だけど……つまり、落ちなければ大じょうぶ!」
元気に拳を掲げてふんす、と気合を入れる景雪は、兎の耳のような飾りがついた靴を示した。
「そう? よかった。水に落ちそうなときは言ってね、わたしがかけつけるから」
「かけつける?」
水の上をオズも走るのだろうか。不思議そうに景雪が首を傾げると、オズはいたずらっ子のようにふふ、と笑って、
「それ、ガジェットショータイム!」
えいやっ。とガジェットで呼び出したのは、ガジェットエンジン付きの船だった。先頭の特等席に、ちょこんと人形のシュネーを座らせる。
「ほら、シュネー号だよっ」
「わあ……」
どう? って、ちょっと得意げに言うオズに、すごい。と、目をキラキラさせる景雪。船に乗ればブロロロ、とエンジンの音がして、いつでも準備万端出発できそうだ。
「うーん。ぼくには船はないけれども、今日はたのもしいあいぼうがいるから……」
変形する船なんて、ちょっと男の子心を刺激される案件だけれども。今日はちゃんと、海を行く相棒がいる。
「いっしょにがんばろうね、みんと! よーし。おふねさんにまけないよっ」
己の靴を優しく撫でて、走り出す景雪。オズはその言葉にふふ、と微笑んで、
「それじゃあ、シュネー号も出発だよっ!」
エンジン音も高らかに、大海原を走り出した。
海賊船から砲弾が放たれる。
「わ、おおきいのがきたね」
近くで見ると案外大きい。と、オズはちょっとだけ目を丸くしてから、
「えーいっ」
と、斧をぐりんと振り回した。
すっぱり弾は斧の動き通りに真っ二つに割れる。やった。とオズが声を上げようとした瞬間、
ぶわっ。と中から何かが飛び出した。
「わあ」
「あっ。だいじょうぶ?」
何かすごいものが出てきた! と、少し離れたところを走っていた景雪が声を上げると、オズも答えて声を上げる。
「うん。だいじょうぶ。さくらだっ。きれいだねえ」
いい香りもするよ、と、オズは嬉し気に声を上げて、
「……あれ?」
いい香りはするがこれは桜の香りだろうかと。考えた次にはその正体が分かった。
「お酒の香りだ。ふわふわする。なんだかすごーくすごーくたのしくなってきたよ」
「ええ。おさけ?? あれは……大ほう!? じゃ、なかったの!?」
その言葉を聞いて、景雪はびっくりする。お酒は大人の人しか飲んではいけないものだから、自分にはよくないものだ。自分のほうに飛んでくる弾を見やって、
「当たっちゃだめ、当たっちゃだめ……。お酒じゃなくても当たったらいたそうだから、直撃しないように……」
己の本体、刀を使ってその大砲の軌道をそらそうとする。
「うまくいって……わ、あぶない!!」
どーん。と。すぐそばに着弾した弾がはじけた。地面に落ちたそれからぶわっ。と桜の花が周囲に落ちる。その衝撃で、オズの船も大きく揺れた。
「わー。バランス。バランスとらなきゃー」
慌ててオズは船のかじを切る。景雪も何とか転びそうになるのを堪えて、
「わっとっと、体せい大事だよ! 大事……」
それぞれ波を乗り切った。少し波をかぶってしまったシュネーを、オズは覗き込む。
「ふふ、大冒険だね。シュネーもたのしい?」
と、首を傾げたとき、ふとその頭が何だか妙に重たいことに気付いた。
「あれ? なにか乗ってる?」
何だろう。いつもよりもバランス取りが難しいな、って顔をして。オズが頭に触れようとした時、
「桜のいい香りが……? どこから……ぼくの頭から!?」
!? と、ものすごく驚いたような声が聞こえてオズはそちらを見た。景雪が驚いたように水面を覗き込んでいる。その頭には薄墨の桜が生えているのが見えて、オズも一度船を止めて水面を覗き込んだ。
「ほんとだ。さくらだっ。つのみたい、ふふふ」
「どうしよう、ぼくたち桜の精になっちゃったのかな!?」
景雪の驚く声に、ううん、とオズは考え込む。
「わたしはわたしだから、変わってないと思うけれど……」
「あ、そうか。ぼくも複製のぼくを出せるから……」
本体を複製しても、刃から桜が生えているなんてことはない。ほっと息をつく景雪に、良かったねえ。とオズも笑った。
「シュネーにはないんだね。ちょっと残念。……しってる? この桜は、ソメイヨシノっていうんだよ」
改めてオズが確認したところ、シュネーの頭には桜の花が生えてなくて、思わず笑顔でそう声をかけた。
「前におしえてもらったんだ。しゃしんとれたら見せられるのにねえ……」
とはいえそんな場合でもない。そうしている間にも、絶え間なく幽霊船からは攻撃が来ているのだ。
「ともだちのだいじな花だから、攻撃あたらないようにしないと……わっと」
ともかくあの砲弾を進むしかないと。オズはとりあえず迎撃のために立ち上がろうとする。……が、なんだかふわりと、足元の地面が揺れる。
「ふふふ。ふねがゆれてるからかなあ。シュネーもふわふわする?」
おおっと。と、足元がふらつく。ふらつくのになんだかご機嫌で、ふわふわしてそれが妙に……、
「海の上なのに、くもの上みたい。たのしいね」
「!! たのしい……」
ちょっといいな。なんて顔をした景雪は、はっと表情を引き締めて。ぶんぶん首を横に振るのであった。オズはそんな様子を微笑ましげに見ながら、シュネー号を走らせた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラウン・メリー
【OS】
酔うと更に陽気に
確かにびっくり箱のような攻撃だね!
でも、当たらない様に気を付けないとだ!
お揃いっ!えへへ、嬉しいな!
うんうん、俺もわくわくする!
次は何が起こるかな?
目の前がグルグル
それとなんだか良い気分!
ティルもエルルも良い気分?
首を傾げて顔を見て見れば、貝!全然違う!
あはは、間違えちゃった!
わ!俺を食べないで!
わぁ、ティルありがとう!
あれれ、エルルに見えるのにこれは貝!?
わー、俺は美味しくないよ!
ぱたぱた飛び回る
ふふー、少し目が冴えてきた!
桜の花びらに負けないくらい花びらを出して
桜の香り、少しは和らぐかな?
貝もなんとかしないとだね!
花びらを大玉に変身させ
上に乗ってぽこぽこ倒しちゃお!
エール・ホーン
【OS】
お花が飛び出すなんてびっくり箱みたい
ちょっぴりドキドキするね
わあっ、花びら!
きゃっきゃと戯れているとふわふわな気分に
これがほろ酔い?うんうん、何だかとっても楽しい
みんなでお空を飛べるのも、楽しいっ
ボクら、オウムガイさんに似てたのかな?とティルちゃんにこっそり
ふふふふふ…クラウ
がおー、食べちゃうぞっ
なんてねっ。食べないよーっ
友達だもの!
クラウのお花、桜に負けないくらい綺麗だね
ボクが使うのは一角獣座流星群
重視するのは――ティルちゃんやクラウをみて
よし、ボクもっ。手数で敵を圧倒しちゃう作戦だっ
衝撃波には盾で備えを
ティルちゃんやクラウをしっかり攻撃から守るんだ!
それからそのままマヒ攻撃を放出っ
ティル・レーヴェ
【OS】
割れると不思議が飛び出す砲弾とは……
なんとも愉快な攻撃ではないか
のぅ?クラウン殿、エール殿!
割れた砲弾から桜が散れば
髪の花に薄紅が増え
隣を見れば2人もお揃い
いやはや、次は何が起きるかわくわくする
……などと言っては不謹慎じゃろうかの?
翼はためかせ3人揃いで空を行く
それだけでもう心は軽いが
――おぅや、おや
……此れが噂のお酒の香り?
成る程、更にふわりと身が浮くような
包まれるような良き心地に身を任せかけ
嗚呼、クラウン殿、其れは妾では!
彼がパクリとされゆく前に
奏でる歌を衝撃に変え貝を弾こう
繰り広げられる鮮やかな名技の連続は
何やら空中芸のよう
ならば、と纏う衣で手数を増して
妾も連続技と行こうかの?
「割れると不思議が飛び出す砲弾とは……。なんとも愉快な攻撃ではないか」
ふっ。とティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は目を細めた。風が吹いて髪とともに鈴蘭の花が揺れる。
「のぅ? クラウン殿、エール殿!」
そのまま楽しげにティルが言うと、クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)も目を輝かせる。空中でくるりと旋回して、飛んでくる砲弾に狙いを定める。
「確かにびっくり箱のような攻撃だね! でも、当たらない様に気を付けないとだ!」
えいっ。と。
フリチラリアの花びらがその武骨な弾に降り注ぐと、ぱっと一瞬でそれは破裂して桜の花びらへと転じていく。
「わあっ、花びら! お花が飛び出すなんてびっくり箱みたい」
くるりとその花びらを纏うように飛んで、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)がはしゃいだ声を上げる。ちょっぴりドキドキするね、なんて言いながらも、掌で花びらを少し掬った。
「いやはや、次は何が起きるかわくわくする。……などと言っては不謹慎じゃろうかの?」
髪を彩る薄紅たちに、ティルが目を細める。視線を転じればクラウンもエールもお揃いで、なんだかそれが嬉しくて、ほんの少し声が弾んだ。
「うんうん、俺もわくわくする! 次は何が起こるかな? ……って! ほら、次へ行こう!」
クラウンはそう言って、ちらりと自分の髪の毛を見やる。乗ってる花びらが髪飾りのようで、
「えへへ、お揃いっ! 嬉しいな!」
動いたら落ちるのが残念で。けれども嬉しいから駆けださずにはおれなくて。やっぱり走り出したくなるクラウンに、
「あ。待って待ってよー!」
「うん、待ってるよ!」
エールが楽し気に声をかけて、慌ててクラウンは急停車した。それを笑ってティルとエールが追いかける。三人して空を飛べば、ここからだとあちこちに舞い散る桜の花びらがよく見えた。
「あ! あっちだよ。あっちからくるよ!」
「了解じゃ!」
時折飛んでくる砲弾を撃ち落とせば、なんだかさらに心が軽くなっていくような気がして。
「――おぅや、おや。……此れが噂のお酒の香り?」
はて? と首なんて傾げたティルに、うん?? とエールが瞬きをする。
「これがほろ酔い? うんうん、何だかとっても楽しいよ。みんなでお空を飛べるのも、楽しいっ。なんだかふわふわしてきて……ねえ、クラウ?」
「ええ。なあになあに?」
問いかけられて、クラウンが顔を上げる。えーっと、と、ちょっと言葉を探してから、
「何だか俺はね、目の前がグルグルする! それとなんだか良い気分! なんだかね、なんだかね……」
言いながらも、クラウンはふらふらと飛んでいく。あれ? とティルとエールは顔を見合わせる。
「ぐるぐる楽しくてね。とっても幸せだ! ……ねえ、ティルもエルルも良い気分?」
「ああ。ふわりと身が浮くような……包まれるような……。しかし、クラウン殿はどこに行こうと……、……!! 嗚呼、クラウン殿、其れは妾では! 妾では、ない……!」
「あれ。ティル? エルル? 何だか硬くなった……?」
にゅ。
至近距離まで迫ったつぶらな瞳に、クラウンは瞬きを一つした。
なんだかエルルにしては半透明だし、エールにしては大きくて硬い気がするそのつやつやつぶらな目さんは、ふんが、と大きく口を開けて……、
「これ貝! 全然違う!」
はっ。と、クラウンは我に返った。
「させぬよっ!!」
「頼んだよ、ボクの友達! クラウは、あげないから!!」
エールとティルはすかさず反応した。がばちょ、と体を引いたクラウンの間に割り込むように、エールが召喚した美しく巨大な一角獣がその間に立ち塞がった。同時にティルが歌を込めた衝撃でオウムガイを弾き飛ばす。
「あはは、間違えちゃった!」
ありがとうって笑って、倒れるオウムガイから離れるクラウンに、もう一度エールとティルは顔を見合わせる。
「ボクら……、オウムガイさんに似てたのかな?」
こっそりとティルにだけ聞こえるように言うエールに、ティルは瞬きをする。
「それは……。それは」
いかにほろ酔いであったとしても、なんていうか、乙女的にあれである。
「? どうしたんだろ? 二人とも」
「ふふふふふ……。クラウ」
不思議そうに戻ってくるクラウンに、きら、とエールの目が光った。
「がおー、食べちゃうぞっ」
「!?!?!? わ! 俺を食べないで!」
「なんてねっ。食べないよーっ、友達だもの!」
ふふん。と得意げに言うエール。しかし……、
「あれれ、エルルに見えるのにこれは貝!? わー、俺は美味しくないよ! エルル。本物のエルルはどこ!!」
えええ。と声を上げるエール。やっぱりどこか似ているのだろうかとティルと顔を見合わせる。しばらくパタパタと周囲を飛び回っていたクラウンであったが、
「落ち着け。落ち着くのじゃクラウン殿。妾らはここにおる!」
「あ……! わぁ、ティルありがとう!」
ティルが声を上げると、ようやくパタパタとクラウンは二人の元へと戻っていった。
「二人が急にいなくなったから、心配したよ!」
「うん、ボクもクラウのこと心配したよ。何だかごめん、だよね」
とにかく食べられなくてよかったと、再会を喜ぶエールとクラウンを、ティルは微笑ましい目で見ながらも、
「……やっぱり似ているのであろうか? 妾らが……」
ほんのちょっと納得できなさそうな顔をしていたのは、秘密である。
「それじゃあ、貝もなんとかしないとだね!」
改めて。クラウンが首を巡らせる。フリチラリアの花びらたちが、再び今度は確かにオウムガイへと降り注いでいく。
「桜の花びらに負けないくらい花びらを出ししたら……、桜の香り、少しは和らぐかな?」
どんどん降らせていく花びらが、桜を押し流そうとする。それに、
「クラウのお花、桜に負けないくらい綺麗だね。よし、ボクもっ。負けてられないかなっ。手数で敵を圧倒しちゃう作戦だっ!」
負けじとエールも一角獣たちをもっともっと、と召喚した。
「此度は数が多いゆえにな。ならば……妾も連続技と行こうかの?」
合わせるように、ティルも全身を己の力を増幅する聖光と花々で包まれた聖衣で覆う。
「妾が皆の夜明けとなろう――」
エールとクラウンの状態に応じて、戦闘力を増幅させ、ティルもすぅっと唇を開いた。
エールが一角獣に攻撃の指示を与えると同時に、ティルの衝撃波の乗った歌声が周囲に満ちる。
「まだまだ、俺だって負けてない。だろう?」
クラウンもまた、花びらを大玉に永夜と変身させる。そのまま上に乗ってポコポコ叩きつけてとどめを刺していった。
オウムガイだって負けてはいない。くぁっ。と衝撃波を放つ、その姿に、
「ティルちゃんやクラウをしっかり攻撃から守るんだ!」
エールが盾を押し出して其の攻撃を防いだ。
「えい!」
「やった!」
そのまま麻痺の攻撃を放つエール。クラウンが大玉で貝を踏みつけてとどめを刺す。
「よし。このまま急降下、船に接近しようぞ!」
「このまま一直線だね!」
「了解だよっ」
ティルが声をかけて翼をはためかせると、応じる二人の頼もしい声が周囲に響いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エリック・シェパルド
サリアさん(f02638)と行く
こりゃ派手に砲撃してんな
いいな
戦いはこうでなきゃつまらねぇ…と、サリアさんはよろしくな
早速UC発動
『出番だてめぇら!』
『サリアさんは鮫に乗ってくか?…まぁ、冗談だ…えっ』
残ったサメは砲弾を避けながら砲弾をノコギリで壊して貰う
酔っても行動できるが『サメサメ』と笑ってそうだな…
俺は【水上歩行】機能がついたバイクに【騎乗】してサリナさんが落ちたときに救助できるように付いて走る
砲弾は3
砲弾が来ればバイクで【凪ぎ払う】か水の刃で切り刻んでおくぜ(【属性攻撃】)
『くそっ…食える部位が少ねぇ敵だな…サリアさんは大丈…夫じゃねぇな』
次からお嬢と呼ぼう
サリア・カーティス
3選択
エリックさん(f26560)と共闘を。
よろしくお願いしますわね。
まあ、サメに……ありがとうございます。親切な同族の方(初対面&同じ猟兵相手なので礼儀正しく
いつも喚び出している子達では水の中はさすがに……と思っていたのです。
飛んでくる砲弾はサメさんに避けてもらいつつ、当たりそうになれば【怪力】で鉄塊剣を振り回して【なぎ払い】ますわ
……ひっ(砲弾が割れて出てきたオウム貝の触手や粘液に顔が引きつる
……アレを長く直視していたくはありませんわね……ふふ、それならぁ……かけられる前に粘液ごと、ネクロオーブを変化させた【地獄華乱舞】で徹底的に燃 や す わ ァ……!(凶暴化
もうすでに戦端は開かれているらしい。
エリック・シェパルド(人狼のスターライダー・f26560)が目の上あたりに手を当てて、海の上に目をやって、
「こりゃ派手に砲撃してんな……。いいな、戦いはこうでなきゃつまらねぇ……」
そういうと、肩越しに振り返った。
「と、サリアさんはよろしくな」
サリア・カーティス(過去を纏い狂う・f02638)は声をかけられて、うっすらと微笑む。
「ええ。よろしくお願いしますわね。ご一緒してくださり、助かります」
「へへっ。任せておけよな……。ってわけで、早速出番だ、てめぇら!」
と、いうわけで。エリックが鮫を召喚する。それから冗談めかして笑って、
「サリアさんは鮫に乗ってくか?」
「まあ、サメに……」
「……まぁ、冗談だ……」
「ありがとうございます。親切な同族の方」
「……えっ」
「いつも喚び出している子達では水の中はさすがに……と思っていたのです」
礼儀正しく行ったサリアに、びっくりしたのはエリックのほうだ。ただの冗談のつもりであったが、では……と、サリアがしずしずと鮫のほうに向かうので、
「おい。お前だお前。そいつ引っ込めろ、そいつ」
鮫の生やした回転ノコギリを慌てて引っ込めさせた。
「では、お邪魔しますね」
「お、おうっ。それじゃ……」
気を取り直して、出発!
と。
水上歩行機能が付いたバイクにエリックはまたがって。
サリアは鮫の上に腰を下ろして。
二人は大海原へと旅立つのであった。
「来たぜ、サリアさん!」
「はいっ!!」
エリックの言葉にサリアがしっかり鮫につかまる。急速旋回した鮫は、紙一重でその砲弾をかわす。
「キャシャシャシャシャサメサメサメサメサメ」
それを他の鮫たちがノコギリを使って壊していく。ぶわっと舞う桜吹雪を、鮫たちが浴びて気勢を上げているが、ご機嫌そうだし戦闘に支障はなさそうなので、たぶんいいと思う。
「大丈夫か、サリアさん!」
「ええ。サメさんのおかげで!」
「っしゃ! じゃあ……次のが来るぜ!」
砲弾が飛んでくる。エリックのバイクが跳ねた。そのまま体当たりするような勢いで、エリックは砲弾を蹴散らし潰していく。
「それ!」
同時にサリアも鉄塊剣を旋回させ、力任せにそれを切り裂いた……。その時、
「ひ……っ!!」
サリアがオウムガイを直視した。その瞬間、一瞬で顔が引き攣った。
「くそっ……食える部位が少ねぇ敵だな……。あの貝の中から中身を引きずり出して、火で炙るか、貝のまま炙るか、それが問題だ……」
一方のエリックは平気な顔をしてそんな算段をしている。それからふと、さっきまで返事があったサリアに返事がないことに気付いて、ちらりと視線をサリアのほうに向けると……、
「触手……。粘液……。……アレを長く直視していたくはありませんわね……」
俯いて、ポツリと小さな声で呟く。その声が思いのほか暗くて、エリックは瞬きをする。
「お、おい。サリアさんは大丈……」
「ふふ、それならぁ……かけられる前に粘液ごと、徹底的に燃 や す わ ァ……!」
「……夫じゃねぇな。まったく」
ご、ご、ご、ご、ご。と、地の底から這うような声でサリアは言い放つ。エリックは初対面であり、そしてまた同じ猟兵相手なので礼儀正しくしていたが、敵にまで礼儀正しくする必要なんて、全くない。
「ふふ……綺麗でしょお……? さぁさぁ……。さぁさぁ……」
ネクロオーブをサリアは掲げる。それは一瞬にして炎でできた彼岸花の花びらに姿を変えた。
「ぜぇんぶ、燃えちゃいなさぁぃ……!!」
ごう。と、周囲に炎の花弁が乱舞する。貝たちを焼き尽くしていくその姿に、
「……次からお嬢と呼ぼう」
こっちが本当だ。と感じたエリックはそっと視線を外した。楽しげに笑う鮫たちに、サリアの援護を命じて自分もまたバイクを吹かせる。
「……っし、それじゃあ俺たちも……」
いきますか。と。炎の花弁散る中を走り出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天翳・緋雨
【金平糖2号】ルベル君と
UCは【浮雲】を
空中散歩を満喫しつつ移動
さて、砲弾を迎撃すればいいんだよね?
雷撃(属性攻撃)でちょいっと落とそう
……あれ?ルベル君に残像が付いたりワープしたりしてるなあ
ちょっとはっちゃけてるけどいつものルベル君と云えなくもないか
ちょっとやばそうだったらきゅっと締め落とそう(若干酔ってます)
うん、なんだか気分がいいというかテンションが上がるなあ
今なら舞い落ちる花弁を足場にずっと飛んでいられそうだ
何だか新タイプの振り付けが出来そうな気もする!
(若干正気を失くしています)
(けれどアクロバットはお手の物なのでふらついたりもせず)
(気弱な子が若干チョーシこいてます)
※詳細はお任せ
ルベル・ノウフィル
【金平糖2号】緋雨殿と
お任せください、覚えたての鮫魔術で勝負!
UC鮫牙で早業ダッシュ&ジャンプ
僕の墨染も鮫パワーで鋭さを増しております、砲弾をシュパッと斬っていきましょう
中に敵が居る、大変結構!
早く出てきなさい、話は聞きません!とにかく斬るのです斬って斬って斬るのです僕は痛みを恐れぬ捨て身の(酔っている)
敵がどんどん飛んでくる狩放題の催しでございますね、おかげでさっきから心がフワフワしております
ほら、頭に花も咲いて…僕の頭にも花が咲くのですね、いとをかし
緋雨殿、僕はこの花の名をご存知ですか、ピンクという名前なのですよ、あと眠いですね、春ですね、春は暁を覚えませんね
すやすや、
夜はお静かに?
「この瞬間は空がボクの領域さ……」
ふっふっふ。と。天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)が空中を蹴ってさらにジャンプして天を駆けあがれば……、
「お任せください。覚えたての鮫魔術で勝負! でございます!」
ふん。とルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が召喚したのはなんかかっちょいい鮫たちだ。「敵は逃さず、噛み殺す!」をモットーに、キラキラして、バクバクして、なんかすごい強そうな鮫さんたちとともに、ルベルはダッシュとジャンプを繰り返す。
「ふっふっふ。僕の墨染も鮫パワーで鋭さを増しております。今宵の墨染は一味違いますよ……。シュパッと斬って切り伏せましょう!」
なんだか若干テンションおかしいルベルは、墨染……冷たくも哀しい妖気を纏いし黒刀……に、謎の鮫パワーを絡ませて。一刀のもとに飛んでくる砲弾を切り伏せる。
「おや、さっきから桜ばかりでしたが、これは中に敵が居る! 大変結構!」
かっちょいい鮫がオウムガイに襲い掛かり、
同時に躊躇うことなく振り下ろされた墨染めがその貝をたたき割る。
「早く出てきなさい、話は聞きません!」
と、倒しながら叫ぶルベルである。真面目な顔をして声に張りがありいかにも堂々とした迷いのない太刀筋……だが、若干なんというか、怪しい。
「おや、もうしまいですか。だらしない! 今日の僕はとにかく斬って斬って斬るのです! 僕は痛みを恐れぬ捨て身の黒騎士!! さあ、僕はここにいますよ!!」
元気いっぱいで大声で叫ぶものだから、砲撃がぽんぽんルベルのほうへと向かっている。しかしふっ。とルベルはひるむことなく自信満々の笑みを浮かべて、
「ああ。敵がどんどん飛んでくる狩放題の催しでございますね、おかげでさっきから心がフワフワしております。さあ、いざ征かん……!」
「……ちょっとはっちゃけてるけどいつものルベル君と云えなくもない……かな?」
そんなルベルを上空で見ながら、緋雨は雷撃を砲弾に落としていく。花びらが舞い散り緋雨の身も包むが、それはかまうことなく的確に、ルベルが処理できなさそうなものを前もって上から落としていく緋雨である。
「んー……? 砲弾を迎撃すればいいんだよね?」
何度かそうしているうちに、緋雨は首を傾げ始めた。丁度ルベルがうぉぉぉぉ。とか言いながら鮫とともに全速力で海賊船に向かって走り始めたころ合いである。
「……あれ?ルベル君に残像が付いたりワープしたりしてるなあ……」
ねじねじ。
ねじねじ。
何度か目をこすってみる緋雨。
「んー……?」
しかし残像は戻らない。それというのも酔っぱらっているのは緋雨も同じだからだ。
「うーん。なんだかちょっとやばそうだから、きゅっと締め落とそう」
とか何とか。ふわーっと呟いて緋雨はルベルのもとへと降下していく。
「やあルベル君。うん、なんだか気分がいいというかテンションが上がるねえ」
「あ、緋雨殿。見てください。ほら、頭に花も咲いて……僕の頭にも花が咲くのですね、いとをかし」
「お菓子? お菓子よりも今日は舞の気分だね。ほら。今なら舞い落ちる花弁を足場にずっと飛んでいられそうだ」
ひらひらと、まいちるさくらをあしばにくるくるまわる緋雨。その間にも近寄ってくる桜都会はきちんと落としているのだが、どうにも二人の会話は……、
「なるほど。緋雨殿、僕はこの花の名をご存知ですか、ピンクという名前なのですよ、あと眠いですね、春ですね、春は暁を覚えませんね」
「眠りは想像には必要なんだよ。ああ。今日は何だか新タイプの振り付けが出来そうな気もする!」
なんだかかみ合うようで全くかみ合っていなかった。
「ほーぅ……。すやすや、夜はお静かに?」
「ああ。静かな踊りもいいよねたまには」
しかし噛み合っていないことにすら気付かない二人は、変わらず奇妙な会話を繰り広げながら時に雷撃を落とし、時に妖刀を閃かせ、前へ前へと進んでいく。
「うーん。寝ている間に僕のかっこいい鮫さんが幽霊船まで引き上げてくれますように……」
僕の考えたかっこいい鮫たちならきっと大丈夫だろう。
「そうだよね。やっぱり空を駆けてこそのボクの舞だと思うんだ」
こっちはこっちでその調子だが……。なんとか前へ向かって進んでいるので、たどり着くことはできるだろう。きっとたぶん、おそらくは。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大紋・狩人
【仄か】
ああ、海だ!
綺麗で眩しい、
光で一杯だよラピタ。
海世界への感動が飛翔推力、
ラピタを抱えて【灰塗れ】で船へ。
砲弾はカウンターと怪力、灼灰で破壊!
風切り音、
きみの耳なら方向を捉えら、
れ、
(ふへ
けらけら千鳥飛び
気持ちいい
ハッピー笑い上戸!)
ラピタ、なーこれすっごく楽しい!
丸いの壊すと花沢山!
あはは、こしょばいラピタ
(白斑の肌に)ラピタもさ
天の川で、きらきらしてる。
僕らにも一杯咲いてる?
春の花が色々とりどり!
(抱えた腕は揺り籠めく
花塗れの灰髪、すんと嗅ぐ)
きれい、甘い匂い。
海も僕らも花園だなぁ。
ん
めでる、めでさせて
戦場だけど、
少しならいいよな
(とろけそうに笑んで
微睡みあやす)
ラピタ、かーわいい。
ラピタ・カンパネルラ
【仄か】
強い光が見える程度の目暗。
目蓋にそそぐ光の膜は、海が陽を反射する証左
綺麗だね
飛行できるカロン(狩人)に、しがみ付いてく
花撒く砲弾へ【藍焔が哭く】で破壊援護
撃ち漏らしや
しな、
い、
ん
んー
ふふふ!
僕、もう、離れない、かも
(酔い:ハグ魔)
楽しいね!
眩しいってこんな気持ちかなあ
カロンの肌はきめ細かくて気持ちいいなあ
僕なんてざらざらの斑の皮膚だよ、ごめんね
……天の川。
そっか
僕きらきらだったんだ!
君の髪に花いっぱい。あれこれ触って確かめる
ふふふ、カロンも、僕のこと嗅いで、触って。広い花園とひとかかえの花園、たんと、愛でてよ。
揺れる腕と酔気にうとうと
戦場なのにな
いいかなあ
(おろしちゃやだ)(ハグ魔)
「ああ、海だ! 海だよ、海!」
大紋・狩人(遺灰かぶり・f19359)が両手を広げてくるりとその場で一回転した。
「光で一杯だよラピタ。わかる? ねえ、わかるだろうか!」
大げさなくらい声を上げて、狩人はラピタ・カンパネルラ(Dabih・f19451)の顔を覗き込む。そうするとふんわりとラピタは微かに微笑んだ。目蓋にそそぐ光の膜は、海が陽を反射する証左であろう。春だというのに、それは何処か力強さを感じさせる。塩を含んだ風の匂いとともに、普段ではない色をしていた。
「……綺麗だね」
「……!」
そういった。ラピタの声に。狩人が嬉しそうに息をのむ。それから一呼吸置いた後に、
「そうか。それじゃあ……次は船に行こうか」
「ああ。お願いするよ」
こっくりと頷くラピタに、狩人は咳払い。
「うん。じゃあ……踊ろうか、存分に」
えいやと変身するのは御襤褸のドレス姿。片手に鮮血混じりの遺灰ダイヤで想像された刀身を持つ【灼灰】を抱え。もう片方の手にはラピタを抱え上げる。
せいやと大海原に飛び立つと、思いのほか勢いが出た。一直線に青い海に青い空。そうして桜吹雪の散る世界へと二人は飛び立つ。思ってた以上に勢いがあるのは、狩人の樹っと海世界への承継に違いない。……と、自覚するとちょっと恥ずかしいような気がしないでもない。
「カロン。前方から、来るよ」
「了解だ!」
風の音を察知して、狩人は顔を上げる。大海原の遠くに浮かぶ幽霊船が、しきりにあちこちに太鼓でも叩くように砲弾を放っていて。その一部が二人に向かっても飛んできたのだ。
「それ……!」
怪力全力で狩人は灼灰をぶつける。ラピタも負けずに、
「きっとこうしたら、もっと……、早く、自由に」
飛べる気がすると。そんな思いをラピタが滲ませると。その周囲に焦がれる藍焔が出現した。続けざまに放たれる砲弾を自動で追尾し、そのまま攻撃を加えて撃ち落とす。
ぶわっ。と破壊と同時に桜吹雪が散る。
「花だよ、ラピタ。ほら」
「うん。なんだか埋まってしまいそう」
視界すらも遮るような花の嵐。見えなくても全身を撫でるその感触は相当のものであって。
「ちょっと視界が悪いけど、風切り音、きみの耳なら方向を捉えら、れ……」
「うん。撃ち漏らしや、しな、…………い…………」
大丈夫。と言いかけて。
桜の花びらが通り過ぎるころ。
「……………ふへ」
狩人が何だか怪しい笑い声を発した。
「ふへへへへ。あはははは。ラピタ、なーこれすっごく楽しい! 丸いの壊すと花沢山! このさ~くらふぶき~。すごいすごいすごいすごい!」
きれい。なんて狩人ははしゃぐ。飛行状態を維持しながら、右へ、左へ、上へ。下へ。
「ほーらふわふわ。ふわふわ。次のお花はどこだ~」
なんか幸せそうに気持ちよさそうに、しっかりラピタを抱えながらなんか物凄い笑っている。とてもご機嫌そうである。
で、
そんなぐでんぐでんのべろんべろんの蛇行飛行で抱えられていたラピタは……と、いうと。
「ん。……んー………………ふふふ! うふふふふふふふふふふふふ」
こっちもこっちで怪しげな笑い声を発していた。
「ん~。僕、もう、離れない、かも」
ぴたっ。と、しっかり狩人に抱き着いて引っ付くラピタ。
「おお~。おおお~ん。ラ~~~ピ~~~タ~~~~~」
ひゃー。と抱き着かれると嬉しそうに狩人はその場で一回転。ラピタもいつもと違う様子で何やらご機嫌にこくり、こっくりと、頷いて。
「楽しいね!」
「うん、なんだかわからないけれどもすごく楽しい!」
ラピタの言葉に狩人が即座に返す。それだけ手もまた、嬉しい。
「眩しいってこんな気持ちかなあ」
ぎゅーっと抱き着いたまま、ラピタは狩人に頬擦りする。
「カロンの肌はきめ細かくて気持ちいいなあ。う~ん。僕なんてざらざらの斑の皮膚だよ、ごめんね」
「あはは。こしょばいラピタ~。ん~。ラピタもさ、天の川で、きらきらしてる!!」
頬擦りすれば、皮膚の違いを感じてほんの少しラピタは申し訳なさそうにする。しかし即座に、そんな風に返答をする狩人に、ラピタは思わず黙り込んで、
「……天の川」
何か衝撃を受けたような顔をした。
「……そっか。僕きらきらだったんだ!」
「そうだよ!! きらきら。きらきら~」
屈託なく言う狩人に、さらにギューッと楽しげにラピタは狩人に抱き着く。ハッピー笑い上戸とハグ魔の二人は、楽しそうに笑いながらもふらふらと移動を開始する。桜吹雪を突っ切って、再び大海原の上へと戻ってくれば、名残惜しそうに髪に散った桜の花びらを狩人は払いのけようと……して、
「あ! 僕らにもいっぱい咲いてる? ほら、ほら、ラピタ! 春の花が色々とりどり!」
花まみれの己の髪に一度鼻を鳴らして、狩人は声を上げる。どれどれ。と、ラピタは手を伸ばすと、
「ほんとうだ。君の髪に花いっぱい」
「ね。きれい、甘い匂い」
「そうだね。とっても優しい心地がする……」
やわらかい花びらに、嬉しげな声を上げるカロン。それになんとも楽しげに、
「ふふ。海も僕らも花園だなぁ。春だなぁ」
「うん。……ふふふ、カロンも、僕のこと嗅いで、触って。広い花園とひとかかえの花園、たんと、愛でてよ」
強請るように言われると、
「ん。めでる、めでさせて」
狩人は幸せそうに微笑んで。あやすみたいにその髪に優しく触れた。
「……戦場だけど、少しならいいよな」
「うん。……戦場なのにな。いいかなあ……」
いっても多分、二人とも離れるつもりは微塵もなくて。
「あー。もう少しでとーちゃくだなあ……」
「うーん。おろしちゃやだ……」
「あは。ラピタ、かーわいい。おろさなーい」
二人の空の旅は、もう少しばかり続きそうだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【灰】
ワォ。でっかい大砲ー。
アレを撃ち落とす?落とす?
うんうん、それじゃあやろうやろう。
アァ、賢い君行こうカ。
赤い糸に宝石でパチンコみたいに打ち落とそう。
せーの。
うるさい、うるさい
オオカミの耳はとーってもイイ。
派手な音が響いてくーらくら
アァ……?
頭がふさふさする。
二人とも、コレの頭がふさふさ
どうなってる?ふさふさ?
頭に小さな桜の木
……頭が重いなァ。
アレを撃ち落としたらこーんなになる……!
困った困った。
でも、二人も桜を生やせば問題ない
打ち落とせー!
たーくさん打ち落として桜だらけにしよう、そうしよう
二人ともふさふさだなァ……。イイネェー、オシャレー
アァ、面白い面白い
ぱーっと花を咲かせよう!
神埜・常盤
【灰】
コレはまた手荒い歓迎だなァ
おお、お見事だエンジ君
また景気よく割れたねェ……ウン?
頭に綺麗な桜が咲いているよ、きみ
ふふ、こんな間近で花見が出来るとはねェ
古事に倣って酒瓶でも持ってくるべきだったかね
まァ、此の場に居る以上
僕も他人事じゃ無いンだが
何せ大砲は待ってくれないからなァ……
どうせなら鹿の角みたいな立派な桜が生えるといい
頭は重いだろうケド、ほら強そうで格好良いし
僕には飛び道具が無いから
管狐の炎で大砲を燃やし尽くして仕舞おう
さあ九堕、行っておいで
ははは、十雉君は桜が似合うなァ
より一層雅さが増したんじゃないか
しかし世界が薄紅だらけで綺麗だねェ
どんどん撃ち落として
もっと桜の彩に染めて仕舞おう!
宵雛花・十雉
【灰】
うへー、痛えのは勘弁。
こりゃあ撃ち落としてやるしかねェな。
よしエンジ、早速やっちまえ!
おーおー、こりゃあ見事に割れたなァ。
…ん?エンジお前、頭に桜咲いてんぞ。
ははっ、なんかめでてぇなァ!
今度は神埜もか。
様になってるっつーか、アンタに角が生えるとすげぇ洒落て見えんな。
よっ、似合ってるぜ2人とも!
いや、オレもちゃあんと働くぜ?
薙刀を頭の上でぐるぐる回せば炎が現れる。
そいつを砲弾目がけてぶつけてやらァ。
うお、オレの頭にもわさわさ生えてきた。
格好つかねぇが…まあ、お前ら2人が楽しそうで何よりだよ。
しゃあねェ、オレもじゃんじゃん撃ち落として桜だらけにしてやっか。
ぽーん。と砲弾が跳ね。
それがくるくるくるーっとこっちに向かって振ってくるのを、エンジ・カラカ(六月・f06959)は見ていた。
「ワォ。でっかい大砲ー。アレを撃ち落とす? 落とす?」
まるでフリスビーでも飛んでくるかのような気楽な物言いに、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は胡散臭い笑顔を浮かべたまま一歩下がる。
「うへー、ありゃ当たったら痛そうだなァ。こりゃあ撃ち落としてやるしかねェな。痛えのは勘弁。勘弁」
なんて言いながらも、ぴ、と十雉は薙刀を砲弾に向ける。
「よしエンジ、早速やっちまえ!」
自分でする気は、ないらしい。
「うんうん、それじゃあやろうやろう。アァ、賢い君……行こうカ」
が、エンジのほうもそれを全く気にせずに、賢い君の赤い糸を使い、毒をもつ宝石を弾として狙いを定める。
「せーの」
それ、と掛け声を駆けながら飛んでいく軌跡はきれいに珠と正面衝突し、穴を穿つ。そこからひびが入り、バァン。と、砲弾がはじけた。
「おお、お見事だエンジ君。また景気よく割れたねェ……」
「おーおー、こりゃあ見事に割れたなァ」
その様子に天を仰いで、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は目を細める。十雉も感心したような声を上げた。同時に一斉に、美しい桜の花びらが彼らの頭上に飛び散った。
「おや。毒でないといいねぇ。なにせまったくコレはまた手荒い歓迎だなァ」
とはいえ何となく危険でないことは分かっていた。さらさらと落ちてくる花びらに常盤はそんなことを言う。一方むー。とエンジは眉根を寄せて、
「うるさい、うるさい。派手な音が響いてくーらくらするなァ……」
はじける音も、桜の音も。エンジはそのまま耳をふさぐ。オオカミの耳はとーってもイイのさ。なんていうエンジ。
しばらくすると、桜吹雪はおさまった。もういいかな? なんてエンジは手を離した。……そして、
「……アァ……?」
「おや、どうした……」
同じくその桜をやり過ごしていた常盤が、エンジの声に顔を上げる。常盤は一瞬、瞬きをする。その間にも、
「頭がふさふさする」
と、主張するエンジ。頭のあたりに手をやると、何か違和感がある。
「何か乗ってないかァ?」
「ウン? 頭……?」
何かなにかと。しきりにエンジが主張するので十雉もまた、顔を上げる。そのまま思わずぶっ。と噴出した。
「二人とも、コレの頭がふさふさ? どうなってる? ふさふさ? ……なんでそんなに笑う?」
なぜだ。と、怪訝そうな顔がありありと出ていて、十雉はそのままそっぽを向いて笑いを堪えようとする。けれどもこらえきれずに笑いがどうしても漏れる。
「エンジお前、頭に桜咲いてんぞ。桜、桜……っ」
そっちそっち。と震える手でエンジの頭のあたりを示す。その様子にちらりと常盤が目をやって、
「頭に綺麗な桜が咲いているよ、きみ。いや、なかなかこれは……」
「えええええ」
なんということでしょう。言われてエンジは水の上に己の顔を映した。波で朧気にしか見えないが、頭に小さな桜の木が生えている。
「枝。花。……頭が重いなァ」
何だこりゃ。と引っこ抜こうとするも、枝はびくとも動かない。えいえいえい。と枝を引っ張るエンジに、十雉がようやく回復したのか、
「いや、なかなか似合ってるんじゃねぇの。しばらくはそのまま……ぷ……くくく。ははっ、なんかめでてぇなァ! いいじゃねぇか!!」
抜くなよもったいない。なんて他人事だからかそんな主張をする。エンジがちらりと常盤のほうに視線を向けると、
「ふふ、こんな間近で花見が出来るとはねェ。古事に倣って酒瓶でも持ってくるべきだったかね」
なんて、常盤もまたやっぱり面白おかしそうにそんなことを主張するので、
「冗談じゃない。アレを撃ち落としたらこーんなになる……!」
むっ……。としたような顔は作り顔だったが、そんな顔を作って困った。困った。なんてわざとらしく口に出して言ってみる。それから、いいことを思いついた。とばかりににやりと口の端をゆがめて人差し指を立てた。
「でも、二人も桜を生やせば問題ない。そうだろう。そうだろう賢い君」
と、いたずらを思いついたようなその言い方に、常盤が「おや、気づいてしまいましたか」なんてこちらもまたわざとらしい芝居がかった口調で言った。
「あァ。気付いた気付いた。それじゃあ行こうか。行こう行こうっていうよりこっちからくるなァ」
なんて、顔を上げると大砲が飛んでくるこの状態。エンジが言っている間にも、幽霊船からの攻撃は開始されている……ので、
「まァ、此の場に居る以上、僕も他人事じゃ無いンだが。何せ大砲は待ってくれないからなァ……」
腰に手を当てて大げさに常盤は言った。回避するという選択肢も一応ありそうだが、口調とは裏腹に全く引く気はないらしい。
「どうせなら鹿の角みたいな立派な桜が生えるといい。……さあ九堕、行っておいで」
逆にそんなリクエストまで付けて、常盤は管狐を竹筒より解き放つ。火の神の加護を纏う管狐は、今まさにこちらに飛び込んで来ようとする弾に群がって、その外側を燃やしていく。中まで燃やせそうで、燃やさないのはお約束だ。コーティングされた包み紙を溶かしきれば、くす玉のように中から花吹雪が飛び出して、
「ふ……。これはしょうがない。頭は重いケド、ほら強そうで格好良いし」
割と大きめの、立派な桜が付いた鹿の角をはやして常盤はご満悦であった。
「おお。神埜もか。様になってるっつーか、アンタに角が生えるとすげぇ洒落て見えんな」
「まったく。たまにはこういう被り物もいいと思わないかい?」
「ははは。よっ、似合ってるぜ2人とも!」
十雉が囃すように言って、常盤がポーズをとる。
「常盤もふさふさ。立派にふさふさ。もちろん……?」
「ああ、勿論……」
ちら、とエンジが十雉を見る。常盤も十雉に視線をやる。十雉はおかしげに笑って、
「いやいや、オレもちゃあんと働くぜ?」
やりますって。と言いながら、薙刀を十雉は掲げた。天に向かってぐるぐる回転させると、炎がそれに合わせるように現れる。
「綿あめみたいだなァ」
「はは。そいつはうまいこと言ったなァ」
エンジの言葉に十雉は笑って、そのままその炎を砲弾めがけてぶん投げた。
ぱぁん。と弾がはじけて桜が散る。
「うお、オレの頭にもわさわさ生えてきた」
「ははは、十雉君は桜が似合うなァ。より一層雅さが増したんじゃないか」
「そうか? どうにも格好つかねぇが……」
「そんなことないナイ。二人ともふさふさだなァ……。イイネェー、オシャレー」
ぐ。とエンジが親指を立てるので、十雉は肩をすくめる。十雉の頭から生えた長めの桜が、そのたびにわっさわっさ揺れた。
「……まあ、お前ら2人が楽しそうで何よりだよ」
男三人、花に囲まれればそれはそれで趣がある……のかも、しれない。多分。
常盤が目を細める。美しく揺れる己の花に視線を向けて、
「しかし世界が薄紅だらけで綺麗だねェ……」
と、何やら考え込むような沈黙の後で、
「と、いうわけで、どんどん撃ち落としてもっと世界を桜の彩に染めて仕舞おう!」
びしぃ。と海賊船のほうに指を突きつけてそう宣言した。
「さんせーさんせー打ち落とせー! たーくさん打ち落として桜だらけにしよう、そうしよう」
エンジがわーい。と両手を広げて歓声を上げる。何せ桜のもとは山ほど向こうからやってくるので、やってやれないことはない。
「しゃあねェ、オレもじゃんじゃん撃ち落として桜だらけにしてやっか」
仕方がない、なんて十雉は言いながらも、早速薙刀を天に掲げているところでその心内は知れるというもの。幽霊船からの攻撃が祝砲のようだなんて、冗談めかしてそんなことをいえば、
「アァ、面白い面白い。ぱーっと花を咲かせよう!」
エンジが走り出す。周辺の海と、ついでに彼らが桜の花びらでわさわさになるのに、そう長くはかからないだろう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
あ、ソヨゴ肩借りるネ
目視照準射撃
余裕で撃ち落とせる砲弾なんて
くす玉?
それっぽいネ
頭に何か?
スマホをミラー表示で確認
これは桜だネ?!
あわててチェック
バイタルに異常は無し
悪影響は無さそうだけど
ソヨゴは大丈夫?
うわこれはダメっぽい
アルコール反応はないけど酔ってる?
いや僕は人間だネ
抱きつかれて咄嗟に反応できない
これは引っ叩いて目を覚まさせたほうが良い?
でもかわいいからまあいいか
気を緩めて撫で返す
敵に気づくのがわずかに遅れ
いきなりのソヨゴの動きに驚く
これは放って置くと危なそう
ソヨゴ
眠り姫は起きる時間だよ
と口づけする
正気に戻ったかな?
変な行動をとりそうなら先回りして取り押さえる
まだ戻ってないのかな
城島・冬青
【橙翠】
肩ですか?どうぞ(耳を塞ぐ)
お見事!
でも何か降って…桜ですよ
アヤネさん
割ったら花が出るとかくす玉みたいですね
それに良い匂いで凄く良い気分…(酔)
目の前のアヤネさんもいつも以上に綺麗…
その桜の髪飾り、よく似合ってますねぇ
えっ?!生えてるんですか?
アヤネさん桜の精だったのならそう言って下さいよぉ〜
アヤネさんは綺麗!
桜も綺麗で綺麗マシマシ!
にゃはは!素敵ですぅ(抱きつく)
はわ〜アヤネさん良い香りですぅ
ここは天国ですねぇ
変な貝が襲ってきたら
邪魔するなぁ!(衝撃波)
全く不届きな海産物ですね
やだ〜冬青離れない〜
唇に柔らかな感触を感じたら一気に正気に
!
うあああ!
私は…私は…うわーん!(入水しようと)
「あ、ソヨゴ肩借りるネ」
ぽんぽんぽーん。と。
明るい大砲の音が響く中で、おもむろにアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)はそう言った。だいたい何をするかわかっていたので、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)ははーい。と軽い口調で答える。
「肩ですか? どうぞどうぞ」
と言いながらも耳をふさぐ冬青。だいたい何をするのかわかりきっている様子である。うん、とアヤネも銃の狙いを定めるように目視でこちらに向かって飛んでくる弾を確認し、
「それ……!」
「た~まや~」
二人の声が被ったその瞬間、アヤネの弾丸が発射された。
ぽんっ。と見事に明るい音が鳴って、こちらへ向かっていた砲弾が砕け散る。
「お見事!」
ひゃーっ! と冬青が完成を上げた。
「こんなの、今日ソヨゴの朝ご飯を当てるよりも簡単だヨ」
「いや、当てるも何も……って、アヤネさん。でも何か降って……あ、桜ですよ」
二人の頭上より少し上で爆発した玉から、風邪に乗ってさらさらと何かが落ちてくる。わあ。と思わず冬青が手を伸ばして、
「アヤネさん。ほらほら。割ったら花が出るとかくす玉みたいですね」
桜の花びらを両手でつかむ。仕草はロマンチックなのに何となく残念な発言をしながらも振り返る冬青に、
「くす玉? ……ああ。まあ。余裕で撃ち落とせる砲弾なんて、それっぽいネ」
「ふふふっ」
アヤネも、己の髪の上に落ちる花びらを指先ではじく。こういうのも、悪くないねえ。なんて言おうとした……その瞬間。
「……?」
なぜか、冬青がいつもよりも1.2倍ぐらいかわいい顔を作って見せた。
「それに良い匂いで凄く良い気分です。……そう。目の前のアヤネさんも、いつも以上に綺麗で……」
「ソヨゴ?」
なんか変だ。冬青が可愛いのはアヤネにとってはいつものことだが、こんな風に頬を赤らめて目を潤ませる冬青を戦場で見ることは、あまりない。両手を胸の前に組んで、まるで物語のヒロインのようである。
「それに、その桜の髪飾り、よく似合ってますねぇ。アヤネさんの黒い髪によく映えて……」
「たんま! 頭に何か!?」
なんか聞き捨てならないことを言った。そのまま迫ってくる冬青を、思わず手で押しとどめながらもアヤネはスマホを取り出しミラー表示で己の頭部を確認する。
「は!? これは桜だネ?! 生えてるの!? 何なのさ、これは……!」
慌てて自分をチェックするアヤネ。バイタルに異常はないし、悪影響は出ていないという結果である。……ただ、生えている。桜が。頭から。
「えええ。悪影響は無さそうだけど……」
言いながら、ちら。とアヤネは冬青のほうを見る。ソヨゴは大丈夫? と。ちらりと冬青のほうに視線をやるアヤネ。まあ答えは……、
「えっ?! 生えてるんですか? アヤネさん桜の精だったのならそう言って下さいよぉ〜。なにそれすーてーき~」
「……うわこれはダメっぽい」
わかりきっていたことだけれども。
「いや僕は人間だネ」
「まあまあ。そんなこと言わずに。アヤネさんアヤネさん。もっと近くで見ていいですか。お花見ー」
「う、うん。ソヨゴ。……アルコール反応はないけど酔ってる?」
「いえいえ。よってませぇんよぉ~」
うふふふふー。と謎の笑い声を上げる冬青と、ええ。とちょっと困った風に頬を掻くアヤネ。
その間にも冬青はアヤネにギューッと抱き着いて、
「ほら!! こんなに!! アヤネさんは綺麗! 桜も綺麗で綺麗マシマシ!」
などということをのたまい始めた。
「そ、ソヨゴ???」
「にゃはは! 素敵ですぅ。すてきがいっぱいです~」
なんというか、予想外過ぎてとっさに反応できない。
引きはがすべきか。ひっ叩いてでも我に返らせるべきかとアヤネは一瞬迷って、
「……でもかわいいからまあいいか」
やっぱりやめた。よしよし。と其のままアヤネは冬青を撫でると、
「はわ〜アヤネさん良い香りですぅ。ここは天国ですねぇ」
すりすり引っ付いて懐く冬青に、アヤネがソヨゴも素敵だよ。と、返そうとした。……その、瞬間、
「って、邪魔するなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一瞬。
冬青から発せられたと、信じられないような勇ましい声がして、ザっ、と冬青が手を翳した。
そしてその衝撃波は二人に忍び寄ってきたオウムガイにぶち当たり、一瞬でその体をミンチレベルにまで粉砕する。
「全く不届きな海産物ですね。空気の読めない変な貝は滅殺です!!」
ふん!!!
と。鼻息荒い冬青を、アヤネは茫然と見つめていた。いきなりの動きに、ついていけなかったともいう。
「これは……放って置くと危なそうだネ」
「は~い。あ・な・た・の冬青が、どうかしましたか?」
アヤネのつぶやきに、一瞬で可愛さ1.2倍に戻る冬青。アヤネは微笑んでその眼を覗き込む。
「ソヨゴ。眠り姫は起きる時間だよ。……ね?」
「やだ〜冬青離れない〜」
めっちゃいつもとは違う発声機能を使っているような声で、冬青はべたべたとアヤネに引っ付く。ふふ、とアヤネは微笑んで、
「だぁめ。帰ってきて、ソヨゴ」
そうしてそっと、アヤネは冬青の唇に己の唇を重ねた。
「!」
「ほら。正気に戻ったかな? 姫」
はっ。と顔を上げる冬青に、
アヤネはにっこりと微笑みかける。……その、瞬間、
「う……うあああ! 私は……私は……うわーん!!」
「!?」
海に飛び込もうとする冬青の手を慌ててアヤネはつかむ。
「まだ戻ってないのかな」
「えーん。私は。私はなんてことをぉぉぉぉぉ!」
冬青の絶叫が青い空に響く。その後アヤネが「もう一回くらい正気に戻すためにキスをしても許されるのでは?」なんて言うので、全力で否定する冬青がそこにいるのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏑木・寥
少年(雲珠/f22865)と
大体無表情、あと貧弱
ここが海か、何処まで続いてんだ?
麦藁帽をかぶっている
日差し強い
驚くほどいつもの桜吹雪だな
いや、あれよりちょっと強いような…そんで匂い、が……少年?
気付いたら近くにいない
これ……酒の匂いか
なんか頭くらくらしてきた。心なしか頭が重い
あ、居た
と思ったら何だか見慣れぬ生物を連れ、
……いや待て、それはだめだ
とにかくダメ
は?頭?(麦藁帽子で見えない)
それよりなんだっけ、船に移るんだったか
良くわからないまま抱えられて帽子を押さえる
ちょっとまて少年、ちょっと、揺れてるほんと揺れ
落ちる落ちるって!なあ!あ、だめだこれ
…………死ぬかと思った
……良い天気だな……
雨野・雲珠
鏑木さんと/f22508
生真面目→フワッフワに
わあ、なんでしょう…
なんだかたのしくなってきました
でっかい貝にも、わーって寄っていきます
あの桜色のところ(※脳みそ)はなんでしょう?きれい…
あっ、止めないでください鏑木さ…わあ、どうしたんですか?
なんだか頭が豪華ですよ!
きれい(※花)
鏑木さんを抱えて、
【枝絡み】【ロープワーク】で
箱から伸ばした枝を幽霊船のヤードに巻きつけ
伸縮させてびゅーんって移り飛びます。
この間『怪奇!蜘蛛男』を観てから
真似できないかなあって思ってたんです。
キャッキャしながらぶらぶら遊んで
適当なところでしゅたっと着地
…鏑木さん、大丈夫ですか?
背中をさすります。なぜか具合悪そうなので
「ここが海か……。何処まで続いてんだ?」
鏑木・寥(しあわせの売人・f22508)はそう言って、麦わら帽子のつばを傾けた。思いのほか日差しが強く、目がくらむようであった。
すでに戦いは始まっている。あちこちで派手な大砲の音が聞こえたと思えば、ぶわっと花が散っている。その散りように、寥は無表情のまま、
「驚くほどいつもの桜吹雪だな」
どうやら世界は違っても桜の形は違わないようだ。なんて。妙に感慨深げに言いながら、寥は息をつく。
「いや、あれよりちょっと強いような……そんで匂い、が……。……なあ、少年?」
そういって、寥がふと振り返った時。
一緒にいたはずの少年の姿が見えないことに、寥は気づくのであった。
「おーい少年。どこに行った」
「あ。ここですよ~」
少し大きめに声を上げて周囲を見回すと、何やら楽し気な雨野・雲珠(慚愧・f22865)の声が返ってくる。いつもは真面目な雲珠が、やけにご機嫌明るい声をしていた。
「鏑木さん鏑木さん」
「あーん……?」
雲珠は何かを抱えているようで、寥は目を眇める。
「これ、飼っていいですか??」
「!?!? 何言ってんだ、お前……?」
あ、居た。……と思ったら何だか見慣れぬ生物を連れていた。思わず即座に否定の声が出た。パタパタとさらに手まで振った。だというのに雲珠は平然とした顔で、ずるずるとそれを引きずってくる。引きずっている間に半殺しにされたのか、即座に雲珠に攻撃を加えるようではなさそうだが……。
「ええ。けれども何だか可愛いですよ。俺、つい見た瞬間、わーってよってっちゃって」
「……いや待て、それはだめだ」
「なんでですか? ほら、きれいでしょう? この桜色のところ。なんでしょうね。これ。きれい……」
オウムガイの脳みそである。頭にすりすり触れる雲珠に、落ち着け。と寥は両手を広げる。
「とにかくダメ。ダメったらダメ。元あったところに戻してくるんだな」
がし。とそれを掴もうとする寥。てっぺんを掴んでぐりぐりと引っぺがしていく。
「あっ、止めないでください鏑木さ……わあ、どうしたんですか? なんだか頭が豪華ですよ!」
にぎぎぎぎ。と抵抗していた雲珠であったが、ふいにふっと顔を上げると、目に入ってきた姿にぱっと手を離した。どうやらそれで興味が移ってくれたらしい。
「は? 頭?」
ちぇい。とオウムガイにとどめを刺して捨てながら、寥は怪訝そうに帽子越しに頭に触れる。麦わら帽子で隠れていたが、なんだか桜が……いつもより違う。というか、増えている……気がする。
「きれいですね、鏑木さん。いつもよりたくさんきれいです」
尚、頭が。とか、花が。とか。そういう言葉が省略されているのは想像に難くない。ほう。と感動したように言う雲珠に、寥はうーん。とため息をついた。そうしてようやく、この事態の原因に思い至った。
「あー……。あれか。これ……酒の匂いか……」
なんか頭くらくらしてきた。心なしか頭が重いこれはまさしく酔っ払いの症状だ。と、寥は苦い顔をする。
「ああ、なんでしょう……。この世界の桜は、本当に何だか素敵ですね。なんだかたのしくなってきました」
一方雲珠は楽しげに、るんるんともうオウムガイのことなんか忘れてまたふらふら何処かに行ってしまいそうになっているので、がし。と寥はその首根っこを掴んで止めた。
「あー……。それよりなんだっけ、船に移るんだったか」
「あ!!」
そうだった。という声を雲珠が上げたとき、寥は悪い予感に気付くべきだった。
「俺に考えがありますよ!」
「……ああ?」
だが実際。頭痛に悩まされていた寥はそれとは気づかずに顔を上げる。問おうとする前に、すでに雲珠はてきぱきと動き始めていた。
「えーっとですね。海賊船はもうすぐそこですよね。なので~」
まさに歌いだしそうな勢いである。雲珠は箱から伸ばした桜の枝を幽霊船のヤードに巻きつけて、寥を抱える。寥は怪訝そうにしながらも、よくわからないまま帽子を押さえる。
「では、行きますよ」
「!?」
びゅーん!
枝がしなる。物凄い勢いで枝が伸縮していく。
「ぶつかるだろう……!」
「大丈夫です!」
即座に接近する船の側面。ぶつかる、と思った瞬間、グルんとその枝がしなった。振りこのように勢いをつけて、枝が大きくぐるりと回る。
「ちょっとまて少年、ちょっと、揺れてるほんと揺れ……!」
「この間『怪奇!蜘蛛男』を観てから、真似できないかなあって思ってたんです!!」
寥の悲鳴になぜか得意げに雲珠は歓声を上げて、ぐるぐるぐりん。と何度か反動を付けて行く。
「落ちる落ちるって! なあ! ああっ、だめだこれ……!」
「それ!」
最後にひときわ大きく枝をしならせて、雲珠は手を離した。その勢いでくるくるくるんと回転して、しゅた、と甲板に着地する。
そう。すでにここは幽霊船の中。
きりりとした顔をする雲珠。やり切った……! みたいな表情をしている。……している、一方。
「…………死ぬかと思った」
寥がその場にへたり込んでいた。
「あれ? 鏑木さん、大丈夫ですか?」
なぜへたり込んでいるのかわからない。が、とりあえず気分が悪そうなので背中をさする。そんな様子の雲珠に、
「……良い天気だな……」
寥はしみじみと、天を見上げるのであった……。ああ。空がまぶしい……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
華折・黒羽
ユルグさん/f09129
さあ、いざ
海の幸を狩りに
と眸は真剣
縹纏わせた屠を構え刃先を海に浸す
風を冷やしながら
─咲け、氷花織
海水伝い船へ一直線に氷の道掛けて
これでよし
ほら、急いでくださいユルグさん
海の幸は待ってはくれませんよ
自身は空中戦を
花弁浴びない様
斬った瞬間に凍らせ広がらない様にするも
敏感な嗅覚は一瞬の匂いすら嗅ぎ分けてしまう
飲酒の経験は勿論無い
違和感は直ぐ現れ空中で左右にふらふら
とろんと伏した眸で捉えた貝の姿
…刺身
零すが早いか上空から垂直降下
速度増し触覚を一刀両断
ユルグさんの元へと降り立って
刺身、ほかくかんりょー…です
差し出す獲れたて触覚一本
ふわふわふらふら
ドヤ顔浮かべる表情はほんのり朱色に
ユルグ・オルド
f10471/黒羽と
おし、……そーいうのだったっけ?
やる気に満ちた隣を見遣るも
はァい分かってるって
派手な氷路にお見事と口笛ひとつも
急かされたんなら駆けだそう
まァ足場があんのは結構なこって
滑走路宜しく真直ぐに迎え撃ちに
花弁を散らして切って捨て氷の破片も花の様
薫る酒精に、――ああ、狡いな、飲みたくなる
海水ごと酒に変わんないかなとか馳せつつも
目の前に突っ込んでくる影を跳ねて避け
うっわ危ね、なに、
瞬きしつつ驚くと咄嗟に何言ったもんだか
新鮮っていうか食えんのかこれっていうか
よくできマシタ、ッてか酔ってんだろ黒羽
まだ早かったネと、……落っこちんなよ
「さあ、いざ……」
華折・黒羽(掬折・f10471)は、いたって真面目な顔をしていた。
眸は真剣。心はいつだって、戦場なのだ。……そう、
「海の幸を狩りに……!」
迷うことなく言い切った黒羽に、ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)も大きく押し、と、頷いて、
「……そーいうのだったっけ?」
あれ? とそれから思い直して首を傾げるのであった。
ちらりと隣に視線をやると、やる気に満ちた黒羽の顔。
「いいですか。ユルグさん。この世界のことを知るには、この世界の食を知るのが一番の近道です。この世界にしかないものを食べる。それは大事なことですからね」
「……はァい分かってるって」
やる気に満ち満ちた黒羽がそんなことを言っているので、ユルグは肩をすくめてそう答えるにとどめた。……まあ、何せやる気があるのはいいことだろう。
「では、行きますよ」
いうなり、黒羽は黒剣、屠を構えた。いつもと違って、属性付与の呪印を記した符、縹をその刀身に纏わせている。
黒羽はそうして一呼吸、置いて。
「──咲け、氷花織」
刃先を徐に海に浸し、そして氷点下の冷気を放った。
「おお~」
茶化しているのか本気なのかわからないユルグの声。そのままその場所から一気に氷の花が開く。それは海から一直線に、海賊船までの足場を作り上げていった。海が凍るという事態に、黒羽は満足げに、
「これでよし」
と。言うので。ユルグもお見事、とばかりに口笛を吹いた。
「ほら、急いでくださいユルグさん。海の幸は待ってはくれませんよ」
「えええ。なんだかなあ」
なんかすごいことをしているはずなのに、早く学校行きなさいよ、みたいな口調で言われた。
ユルグは笑いながらも、パッと咲きに走り出していた黒羽の後を追う。
「まァ、足場があんのは結構なこって。滑走路みたいだなァ。まあ俺たちは、空は飛ばないケド」
ぼやくように言うが、なんだかんだで楽しげであったという。
目の前を見る空に無粋な砲弾が向かってくる。
「お……っ」
「……」
ユルグが何か言おうとした瞬間、たーん。と黒羽は地面を蹴っていた。
屠の一閃。何人たりともこの食欲は邪魔できない。とでも言いたげな、綺麗で見事な一撃であった。
ぶわっ。と花びらが広がる。それを見た瞬間、黒羽は眉根を寄せて花びらが広がらないように、瞬時にそれらを凍結させた。
見た目はいかに美しくとも、それが毒を孕んだものの可能性があることぐらいは黒羽も知っている。
故にそれらは一瞬の出来事である。それを見てユルグもおー。と目を細めた。
見上げるユルグの目には、薄紅色と氷の破片が花のように混ざり合って、それがきらきら要綱を弾いて、何とも美しい世界を作り出していた。
「――ああ」
そして鼻に届くその香り。
「……狡いな、飲みたくなる」
飲んでもないのにその身の内に訴えかけるような香に、ユルグはふっと唇を湿らせる。ああ。この海の。この海水がまさにすべて。酒に代わってくれないかな。なんて荒唐無稽なことを想像していた……ら。
どんっ。と。
目の前を唐突に何かが降り立った。
「!?」
慌ててユルグは一歩下がる。出なければ衝突していただろう。
「うっわ危ね、なに、え。黒羽? なんで??」
は。と顔を上げるとそこに黒羽の姿がある。どう見ても前方を、進行方向向かって跳んでいた彼が、いかにして後方を走っていたユルグのところへ降り立ったのか。ユルグははっ。とする。
「まさか怪我でも……」
俺がまさに酒池に思いをはせている間に、とんでもないことに。と、思わず顔が青くなる。その鼻先に、黒羽はにゅっ。と何かを突きつけた。
「刺身、ほかくかんりょー……です」
どやー。と。
なんかいつもより幼い表情で笑う黒羽。その顔はほんのり朱色に染まっている。
説明しよう!
黒羽は桜の花が舞い散った瞬間、長年の経験によりその花びらを凍結させ、周囲に花がまき散らされるのを阻止した。
故に花を浴びることはなかったのだが、生来の鋭敏な嗅覚でその匂いをかぎ分けてしまったのだ!
飲酒経験など勿論ない黒羽にとって、その匂いとともに花が放つ独特な酔いは黒羽の全身をめぐり、
あっちへふらふら。こっちへふらふら。さまようこと僅か数秒。
そんな胡乱な状態の黒羽の目に入ったのは、一体のイカ……。もとい。オウムガイの姿であったのだ。
「……刺身」
と。今日は食べること一直線であった黒羽は、勿論そのイカへと一直線に急降下する。
その触手のひとつを叩ききり、切り離せば、戦利品とばかりにユルグのもとへと颯爽と舞い降りたのである。
……みたいなことを、ユルグは真面目に考えた。
多分、間違ってはいない。
ふわふわふらふら。いつもと違う感じで笑いながら触手を差し出す黒羽に、ユルグは瞬きをして経緯を想像するに数秒。
その後、とっさに何を言ったものかと悩むこと数秒。
そもそも新鮮っていうか食えんのかこれっていうか。どうしたものだろうと思うこと数秒。だってまだびちびち動いてるし。
「……よくできマシタ」
結局、悩んだ末にユルグはそう言った。ぽんと黒羽の頭の上に手を置くと、
「そうでしょうそうでしょう」
黒羽は得意げであった。
「ッてか酔ってんだろ黒羽」
「酔っているかもしれませんし、酔っていないかもしれません」
「や、酔ってるんだヨ。それ。……まだ早かったネ」
思わず笑いながらも、ユルグは周囲を見回す。……やっぱりいた。足をとられ手日ちびちしているオウムガイが。
「あ……。刺身、これだけじゃ足りませんよね」
ユルグの視線に、は! て顔をする黒羽。やっぱりなんというべきか、ユルグは悩んだ結果……、
「……落っこちんなよ」
とりあえずユルグはそれだけ言って、そのオウムガイに向き直った……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
色々起きるみたいだけど、さすがに好き好んで直撃喰らいたくないし。●的殺で片っ端から撃ち落としましょ。
…あ、あら?なんか、足元、が、ふらつくわ、ねぇ?頭もちょっと、くらっ、て、ふわふわー、って。きもちいいけど、変らかんじぃ?
…くふ、きひひひっ。なんでらろぉ、たのひくなってきちゃったわぁ。
あは、あははぁ…なんか、ねむくらってきたぁ…
(バケモノじみた酒豪であることが裏目に出た。
この女、あまりにも酒に強すぎて今までそもそも「酩酊」という感覚を経験したことすらなかったのだ)
(酒癖:笑いと眠りのハイブリッド上戸。勝手にテンション上がってけらけら笑って唐突にブレーカー落ちて寝る)
ヴィクトル・サリヴァン
あ、なんか楽しそうな気配がする。
気配を感じたなら行かなきゃ損、何が待ってるかいざ出航ー。
砲弾は銛で弾いたりして回避試みるね(当然破裂)
なーんか楽しい気分になってきたなー。
それじゃもっと楽しくやっちゃうか、とUCで空シャチ達召喚。
砲弾が空にあるうちに体当たりでばーんと壊しまくっちゃおう。
蒼空が薄紅になる位に派手に楽しく。
呑んでもないのに呑んだようないい気分、皆も楽しめー(けらけら)
え、時々オウムガイが出て来てる?
それは困るなー。ダメじゃないか酒のつまみが動いてちゃ。
しかし活きがよいのはぐっど。触手を伸ばしてくるのは空シャチに代わりに受けさせつつ横から銛ぶん投げて仕留めよう。
※アドリブ絡み等お任せ
「あ、なんか楽しそうな気配がする」
そんなことを言って、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は砲弾を銛でつついた。
「色々起きるみたいだけど、さすがに好き好んで直撃喰らいたくないしぃ……」
同時に、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)も狙いすましたかのように、リボルバーを数発、別の砲弾に撃ち込んだ。
ぽーん。と、想定通り弾は弾けて何やらぶわっと桜が飛び散る。
飛び散って飛び散って、そして……、
「……………………あ、あら? なんか、足元、が、ふらつくわ、ねぇ?」
「あれ~? なーんか楽しい気分になってきたなー。こういう時は遊ばなきゃ損損。何が待ってるかいざ出航ー」
もう出港してたけど~。なんて言いながらもヴィクトルはえーい。と天に手を掲げる。
それと同時にバタバタバターっと大量の空シャチが召喚されていった。
「わーい。じゃんじゃんこーい。どんどんこーい。それそれ壊しちゃおうー」
明らかに壊しちゃうっていうかどこか壊れてる感じがするが多分酔いの影響であろう。ティオレンシアはその光景を目を眇めてじ、って見て、
「……くふ、きひひひっ。なんでらろぉ、たのひくなってきちゃったわぁ。わ~。お魚いっぱい。おつまみいっぱ~い」
「ああ。たべないでー。食べないでー。もっともっと楽しくやっちゃおうー」
ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ。と笑うティオレンシア。
今まで酒が強すぎて、酔ったことすらなかったティオレンシアは、初めて味わう酩酊という感覚に、完全に呑まれていた。酒豪だからこそ、酔いとの付き合い方は知らなかったのである。
対するヴィクトルも完全に回っている口調でどんどんどんどんシャチを召喚し、飛んでくる砲弾を撃ち落としていく。もはや桜色の雨が降っている状態で、
「あー。もっともっとみんなも楽しめー」
その桜を見てけらけら笑っているのであった。
「あらぁん……? つまみが来たわよぅ~?」
そんな時、ティオレンシアが胡乱な目で現れたオウムガイを見やった。
「え? それは困るなー。ダメじゃないか酒のつまみが動いてちゃ」
ヴィクトルもそちらに目を向ける。
二人の銃弾と森がオウムガイを貫くのは、同時であった。双方酔っぱらっていてもその辺狂いはない。さっきから空空言っているティオレンシアも、一応敵と味方の区別はついているようだ。……ようだが、
「ふふ。いきがいいのゲットー」
「うぅん。いかにもおいしくなさそうねぇん~」
「それはちょっと、思ってた~。だがあえて挑戦するのも食の道~」
「あらあらそれじゃあ……」
言いかけて、ティオレンシアはけらけら笑って首を傾げる。
「う~~ん? 頭もちょっと、くらっ、て、ふわふわー、って。きもちいいけど、変らかんじぃ? あらし、なにいってたんらっけ……」
「ええと、おうむまきまきのねじねじのことだよ~」
「あは、あははぁ……。そーーーーーぉ。……なんか、ねむくらってきたぁ……」
唐突に。
ばた。と、ティオレンシアは体勢を崩した。
「お~?」
ヴィクトルのシャチが、慌ててクッションとして真下に入る。
まるで毒でもくらったかのような唐突な倒れ方であったが……、
「寝てるー」
ティオレンシアは安らかな寝息を立てていた。どうやら酔うと唐突に寝てしまうタイプらしい。
「いいないいな~。俺もお昼寝しちゃおうかな~」
ティオレンシアをシャチに任せて、ヴィクトルは天を見上げる。青い空に、美しい桜吹雪。
たまにはそんな日が、あってもいいだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
2
珊瑚の角にたくさん桜が咲く
わー!やった、みてみて、櫻!
僕の頭にも、桜が咲いたよ
君の桜枝の角と同じだ
頬を染めて嬉しげに笑って、角に咲いたいっとう愛する花を揺らす
お揃いだね、櫻宵!
さよ?…ぎゃ!?酔ってる!!
お酒はダメだって……もう人前でそんなっ――ん?
(いつもより可愛い感じに甘えてくるな?)
なんだか、尻尾をぶんぶんふって甘えているわんちゃんのよう…だから
つい
お手、
ふふ
かわいい
手に顎を乗せてきた櫻宵を撫でてあげれば
もっと頬を擦り寄せて来る
あ、甘噛みした
むずむずするな
可愛さにニッコリ
寄り添えばもふもふに咲いた角と、満開に咲いている角をつつんと触れる
何だか心にも桜が咲いたかのよう
可愛いなぁ
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
1
きゃ!きゃーー!
リルに桜が咲いてるわぁ!!
かわいい!可愛いわ
ふかふかの桜雲が頭に乗ってるみたいだわ!
お揃いで嬉しいわねぇ
なんてほっこり気分だわ
私の桜も満開ね
うふふふ
ふかふかした気持ちになってきたわ
ほろよい、良い気分
ねぇリル、かまってちょうだい
尾鰭をちょんと摘む
いやかしら?
潤んだ瞳で見つめ小首を傾げる
ふふ
もっと撫でてちょうだい
お手、差し出された掌の上に顎をのせて上目遣い
褒められるのも愛でられるのも嬉しいわねぇ
なんて手に頬を擦り寄せて
掌を綿あめに触れるかのようにやさしく甘噛みして懇願する
リルが嬉しげに尾鰭をはたはたしてるから益々嬉しくなるわ
角を触れ合わせ
桜並木のように咲けばほら
甘やかな春
ぶわっ。と桜の花が舞い落ちる。
桜吹雪が風に流れて消えたころ……、
「わー! やった、みてみて、櫻!!」
リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)の明るい声が響いた。ほらほら、と自分のサンゴの角を示す。
「僕の頭にも、桜が咲いたよ!! 君の桜枝の角と同じだ」
「きゃ! きゃーー! リルに桜が咲いてるわぁ!! かわいい! 可愛いわ!!」
すごいでしょう! とばかりに胸を張るリル。それ以上に誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)もテンション高くはしゃいだ声を上げる。手を伸ばしてそっとリルの角に触れると、かわいらしい桜の花びらが揺れた。
「あら、いい香り。それに、ふかふかの桜雲が頭に乗ってるみたいだわ!」
「うん。……うん」
いつも以上に気持ちが上がる。頬を染めて嬉しげにリルは笑って、角に咲いた鼻を揺らせた。大好きな大好きなその花が、頭に飾られたことがとても嬉しい。
「お揃いだね、櫻宵!」
喜びを抑えきれない。とばかりに笑うリルに、櫻宵も頷いた。
「お揃いで嬉しいわねぇ。なんてほっこり気分だわ。ああ……」
ふふふ。と櫻宵も己の角に指を這わせる。私の桜も満開ね。と、本当にうれしそうに笑うと、
「うふふふ。うふふふふ。……ああ」
ふぅ。と櫻宵は息をつく。なんだか若干艶っぽい息だった、
「ふかふかした気持ちになってきたわ。あぁ……良い気分」
ほろ酔い。と、目を細める櫻宵。ちらりとリルに流し目を送ると、
「ねぇリル、かまってちょうだい」
その尾鰭を、ちょんと摘んだ。その様子に、
「さよ? ……ぎゃ!? 酔ってる!!」
何かいつもと違うと思ったら! 思わず声を上げるリルである。
「もう、お酒はダメだって……」
「えええ。私、ちーっとも飲んでないわよ?」
真実である。が、酔っぱらいであることも真実である。ひたと櫻宵はリルを見つめる。
「いやかしら?」
「もう人前でそんなっ――ん?」
何言ってるんだ。と、いいそうになったリルは、それをかろうじて押しとどめた。
じっと櫻宵を見る。
櫻宵は潤んだ瞳で小首を傾げ、
「ふふ。もっと撫でてちょうだい」
ね?? と、言い募っていた。
「……(いつもより可愛い感じに甘えてくるな?)」
甘え方が、いつもと違う。なんだか尻尾をぶんぶん振って甘えてくるわんこのようなかまってほしさを感じる。
なので、何を言っているんだと、言いかけた言葉をリルは引っ込めた。そしてつい……、
「お手」
リルは手を差し出した。
「わん」
櫻宵はその掌の上に顎をのせた。
ちら。と上目遣いに櫻宵はリルを見る。それがわんこそのもので、何とも可愛くて……、
「……ふふ」
可愛いと、思わずリルは櫻宵を撫でるのであった。
ごろごろと、櫻宵は嬉しげに喉を鳴らす。
「あぁ。褒められるのも愛でられるのも嬉しいわねぇ」
「はいはい」
撫でる手に頬を寄せる櫻宵。そのしぐさも可愛くて、リルは撫でを続行していたが、
「……あ、甘噛みした」
「ええ。今日はわんこですから」
優しくリルの手に噛みつく櫻宵に、リルは笑う。むずむずする。と、いいながら。パタパタ尾びれが揺れているのを、嬉しげに櫻宵も見つめていて、
「……」
「……」
目が合って、互いににっこりと笑った。何だか妙にくすぐったくて、それが楽しくて幸せだな、というのは、言葉に出さなくとも何となくわかった。
寄り添うように、額と額を合わせれば、
満開に咲いた花が、桜並木のように揺れる。
「……何だか、何だか心にも桜が咲いたかのようだ」
「ええ。本当に、春が来たみたい。甘やかな春が」
思わずつぶやいたリルの言葉に、櫻宵がそんなことをいうので、
「……可愛いなぁ」
なんて。
リルもまた、そういって微笑むのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
【荒屋】
緩やかな傘の飛行を護るように
翼広げ、船まで滑空
今迄目にした中で一番広い海
見下ろすのは心地好い
飛来する黒影認めれば
大丈夫だ、冴島
…むしろ俺もあれを割ってみたい
怪力篭めた拳に乗せる衝撃波で殴り付け
烏賊か、貝か――烏賊貝か
どう読んでも変わらぬな
面白いではないか、いざ勝負…、…め?
桜の吹雪く海の上で響いた
まるで保護者めいた叱咤に戸惑いながらも
承知し、離れた所から怨鎖を放つ
これでいいだろうか
ちらと冴島の方を見て
意外な力を見せるいばらには
中々やるなと舌を巻き
しかし力で負けるわけにはゆかぬ
…否、貝に触れに行こうとしたわけでは
咎められぬよう言い訳など
はて酔わせたのは
酒気か、それとも桜であろうか
城野・いばら
【荒屋】
初めての世界、初めてのアリスとのおでかけ
ワクワクでいっぱい
フルリールでお船までいくわ
挿し木をブランコみたいに芽吹かせて、
日傘で類をお船まで運搬
空中散歩、気に入ってもらえるかしら?
ジャハルは鳥さんみたいに飛べるのね
風を駆ける姿は心地良さそう
移動中は手が塞がるから
その間は類におねがい
わぁ、刀でシュンって!
グーでシュって!
二人ともすごいわ
もしバランスを崩しても大丈夫、怪力で受止めるの
初めて嗅ぐお酒の香りに、くしゅん
何だかふわふわ…
楽しくなってきちゃった!
ふふ、弾ける花弁さんこんにちは
悪戯な貝さんは御免なさい
伸ばした茨で二人を守る…え、メなの?
じゃあ怪力と魔法の風籠めた紡錘で吹き飛ばしちゃおう
冴島・類
【荒屋】
随分賑やな花見になりそうだ
ジャハルさんの翼、やっぱかっこ良いなぁ
僕はいばらさんの傘の力をお借りできたら
流石に女子に抱えさせるわけには…え?
負担でない様に、君もかっこいな!
砲弾の軌道を注視
ジャハルさん狙いに気づけば声かけを
ふ、好奇心旺盛だなぁ
こちらに来たのは
短刀から放つ衝撃波で叩き斬り
無防備になるいばらさんを守れるよう
が…溢れた桜
慣れてるはずが酒の香りにくらり
おかしい、な
酔ったら
2人が大層幼く見えて
庇護欲爆発
過保護化
君らがぬるぬるに捕まるなんて駄目!
花びらと戯れるは良いが
触手や粘液は触れたらめっ、ですよ?
うん、良い子!
殻を蹴飛ばし
貝の粘液とかは薙ぎ払い
二人が汚れなければ、うんうん満足気
まばゆい日差しが心地よくて。城野・いばら(茨姫・f20406)は天を仰いでその掌を太陽にかざした。
ふふ、と思わずその唇から笑みが漏れる。
「初めての世界、初めてのアリスとのおでかけ。……ああ、なんて素敵。ワクワクでいっぱい!」
ぽんといばらは白薔薇の日傘を開く。準備万端のお出かけモードで、
「おひさま浴びて元気いっぱい。さぁ、何処までいこうかしら!」
声をかけると同時に、不思議な薔薇の挿し木がすぅっと海に向かって伸びて行った。
「さあ、行きましょう、類。空中散歩、気に入ってもらえるかしら?」
「いや、流石に女子に抱えさせるわけには……え?」
そおれ。とばかりに、いばらはブランコみたいに芽吹かせた挿し木を使って、傘を持った類を運搬する。そうして自分も移動を開始した。
「僕はいばらさんの傘の力をお借りできたらと、思っていたのだけど……。負担でない様に……。というか、君もかっこいな!」
「ふふふ。アリスとのお散歩のためなら、いばらは頑張ってしまうわ」
なんてかわいらしくいばらはウィンクをして、類を運んでいく。そうしていると、頭上からばさりと羽の音がした。
「やあ、これは優雅なお散歩だな、いばら」
「あら、ごきげんよう、ジャハル。ジャハルは鳥さんみたいに飛べるのね。風を駆ける姿は心地良さそう」
頭上を、二人を守るように翼を広げて飛んでいるのはジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)だ。ばさりと羽ばたきを起こし、ジャハルは視線を二人から前方へと向ける。
「ああ……。ここはなかなかに、絶景だ見下ろすのは心地好い」
今迄目にした中で一番広い海だと。感嘆したように言うジャハル。
「まあ、羨ましい」
「でも、ジャハルさんの翼、やっぱかっこ良いなぁ」
思わずあこがれるような声を類が漏らすので、いばらはくすりと微笑んだ。微笑んだ……時、
「あれ……。何か音が……」
「ああ。大砲だな。船から放たれた」
何か音がする。と主張し声をかける類に、確認してあっさりとジャハルがそう声を返す。驚いて類は顔を上げると、
「大丈夫だ、冴島。……むしろ俺もあれを割ってみたい」
むしろ割らせろ。と、飛来する砲弾になんだかわくわくするようなジャハルの声が乗った。それがまるで宝箱を開ける子供のような声だったので、
「ふ、好奇心旺盛だなぁ」
なんて類も思わず笑ってしまう。
そうしている間にも、ぽんぽん放たれてくるその弾に、いばらはほんのちょっと、
「ごめんなさい、類。移動中は手が塞がるから、その間は類におねがい」
ね? なんて可愛く言うので、類も頷いた。
「では……」
「そうだね。随分賑やな花見になりそうだ!」
ジャハルが言うと同時に怪力全力で飛び込んでくるそれを殴りつけ、衝撃波で破壊する。
ついでに類たちのほうに来た砲弾を、類が短刀から衝撃波を放って引き裂いた。
「無防備になるいばらさんを、僕が守るよ」
「ああ……。ありがとう! わぁ、刀でシュンって! グーでシュって! 二人ともすごいわ!! かっこいいわ!!すばらしいわ!」
ひゃあ、といばらが完成を上げる。……いや、まだだ。とジャハルが声を上げた。叩き割ったそこからぶわっと花吹雪が舞い落ちて、ついでにわらわらと何やら怪しげな姿が顔を出したからである。
「あれはなんだ。烏賊か、貝か――烏賊貝か」
うねねねん。と、出てきたオウムガイに怪訝そうにじゃ春は目をやる。たいした強さもなさそうだが、出てきたからには戦う気もあるだろうとジャハルは判断して面白げに唇をゆがめ、
「どう読んでも変わらぬな。……面白いではないか、いざ勝負……」
「めっ!!!!!」
なにか。
物凄い大きな叫び声が聞こえて。
ジャハルは視線を下に下げた。
「……め?」
声を発したのは類であった。
類はくそ真面目な顔でジャハルをにらんでいた。
何だか頭が揺れている。おかしい、な。なんて呟きながらも、類は、
「君らがぬるぬるに捕まるなんて駄目! 花びらと戯れるは良いが、触手や粘液は触れたらめっ、ですよ?」
まるで子供を注意する大人のように、片手を腰に当ててもう片方は拳を掲げて言い放つ。ダメ、絶対!! と。譲れぬ強い意志を感じさせる目で、ぶんぶん手を振り回している。
「……わかった。冴島。もういいからわかった。これでいいだろうか」
何とも言えぬ顔で、ジャハルは鎖せ。と命じる。それとともに地のしずくをオウムガイへと放った。爆発が起こり、オウムガイの身体が破裂する。鎖でつなぐまでもなくその一撃でオウムガイは海に落ちた。
「……」
いいよな? って顔で、ちらとジャハルは類のほうを見ていた。
「うん、良い子!」
にっこり、よくできました。みたいな顔をして笑う類。
どうやら類には、ふたりが子供のように見えているようだ。まるで過保護な保護者そのものである。それは……、
「くしゅん。……あら、何だかふわふわ……? ……ああ……」
おそらく、酔っているのだろうと。いばらは言いかけて、くしゃみをしてやめた。なんでわかったのかというと、
「……ああ。楽しくなってきちゃった!」
自分も、そういうことである。
「ふふ、弾ける花弁さんこんにちは。悪戯な貝さんは御免なさい。さあ、楽しいお話を始めましょう。きっと飛び切り楽しい……」
「あ!! いばらさん! いばらさんも、め!!」
するするすると茨を、二人を守るように伸ばそうとするいばらに、再び類のストップがかかった。
「……え、メなの?」
「そう、めっ」
「まあ。メなら仕方がないわ」
何せメだからね。と、いばらもまた若干怪しいことを言いながらも、
魔法の風籠めた紡錘を、えいえいえいと怪力任せに使用して。近付くオウムガイたちを吹き飛ばしていく。
「……ああ。そちらもなかなかやるな」
そうしてびゅーんとオウムガイたちを吹き飛ばすいばらを上から見ていて、若干うずうずとしたような声をジャハルは上げた。
「ふふふ。乙女は秘密でいっぱいなの」
己の怪力をそのように言ってウインクをするいばら。ジャハルも楽しげに、
「認めるは認める。しかし力で負けるわけにはゆかぬ」
「あら。いばらと勝負がしたいのね?」
「そうだな。今ならばこの烏賊貝と……」
やるか。みたいな顔をジャハルがして。
受けて立つわよ。見たいにいばらが上品に微笑んで。
そんな二人を、ものすごくなにた言いたげな顔で類が見ていた。
「……」
「……否、貝に触れに行こうとしたわけでは……」
ジャハルの視線が泳いでいた。
「めっ」
「……あ、ああ……」
「よろしい」
貝の殻を蹴り飛ばし、二人が汚れなければ満足げに類は頷くのであった。
「……はて酔わせたのは、酒気か、それとも桜であろうか」
「ええ。どちらにしても、不思議なお話ね。不思議なお話は大好きだわ」
ジャハルの言葉にいばらも微笑んで。そうして二人で類を見て、また思わず笑うのであった……。
大成功
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櫟・陽里
おにーさん(リオン/f21392)の指導のもと新ユーベルコード特訓
バイクが沈むから海の世界は無理…なんてボヤきがきっかけ
なんやかんやでライ(2輪)だって水上を翔べる理論を授けられた
理論は分かったけどさぁ…
魔法を使える気がしない不安顔
宇宙育ちで機械が頼り…
は?!キャタピラなんて絶対御免!
ホバー機械の重量分遅くなるのも嫌だし…
やるしかない!
WIZに自信ない分注意深く
恐る恐る着水・前進
フラフラするけど浮いてはいる
砲弾の衝撃だのおにーさんの戦闘の余波だので
転覆しかけたり回避がスレスレだったり
ギャーギャー文句言いながらも段々慣れて安定してくる
本命…うっせーよ黙って見てろ!
集中力を高め敵に向かって走り出す
リオン・リエーブル
陽里さん(f05640)の特訓に付き合っちゃうよ!
行きつけのバーカウンターで拳を握って熱弁
海だとライが走れない?そんな弱気でどうするのさ!
このままじゃ雪上がダメとか砂漠NGとか
ダメなとこばっかり増えたらライかわいそう!
特訓しよう!
猟兵なんだからUCで補助してあげればいいんだって
魔法はダメ?じゃあ物理に頼らないとね
キャタピラ付けて砂漠を走るライ
かっこいいね!(サムズアップ)
よーしじゃあ初陣だ!
おにーさんが援護するからあの砲弾に向かってダッシュだ!
飲酒運転ダメゼッタイ!
ライの後ろに飛び乗ってUCでオウムガイを攻撃
爆煙は桜色
わわっと危ない!粘液回避
そんなフラフラじゃ本命にいいカッコ見せられないぞ!
「陽里さんの特訓に付き合っちゃうよ! いえーい!」
「い、いえーい?」
妙にハイテンションなリオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)。それに押されるように櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)も答えていた。答えながら、どうしてこうなった。と、陽里は思い出していた……。
あれは、そう。リオンの行きつけのバーカウンターだった。
「海だとライが走れない? そんな弱気でどうするのさ!」
ライ、とは、陽里が猟兵の言い値の給料をほぼ注ぎ込んだハイテクバイク。である。雷の様に速く強く在れとしている、無二の相棒であった。
その陽里のバイクに対して、なぜかリオンがものすごい勢いで熱弁をふるっているのである。
「このままじゃ雪上がダメとか砂漠NGとか、ダメなとこばっかり増えたらライかわいそう!」
「あ……ああ?」
きっかけは確か、バイクが沈むから海の世界は無理……なんて陽里がボヤいたことであった。
「猟兵なんだから自分で補助してあげればいいんだって」
「つっても俺は、魔法を使える気がしないから……」
「魔法はダメ? じゃあ物理に頼らないとね」
「物理って。そりゃ確かに、宇宙育ちで機械が頼りだから、物理のほうが信じられるけど……」
「そう。キャタピラ付けて砂漠を走るライ。かっこいいね!」
「は?!」
何を言うと思ったら、よりによってキャタピラだった。そこでようやく、陽里はリオンの言葉を遮った。
「キャタピラなんて絶対御免! ホバー機械の重量分遅くなるのも嫌だし……とにかく、絶対」
絶妙にかっこ悪い。という顔に、そうだよね! と、リオンは笑った。
「と、いうわけで。水上を翔ぶ理論があるんだけれども……」
……と、いう感じである。
「理論は分かったけどさぁ……」
何とも言えない顔を陽里はしていた。本当にできるのかなあ、と言いたげである。しかしリオンはノリノリで、
「よーしじゃあ初陣だ! まあ、ダメだったらキャタピラとか浮き輪とかをつければいいし……」
「……やるしかない!」
不穏なことをいうリオンに、自然と陽里のやる気も無理やり向上していく。
「やる気になってくれて何よりだよ。……さあ、おにーさんが援護するからあの砲弾に向かってダッシュだ!」
「ほんとさあ。ほんとさあ。おにーさんさあ……」
何か言いたげにしながらも、しぶしぶ陽里は全天候・温度差耐久ライダースーツ姿へと変身する。
「兎に角……。走り続ける限り……どこだって行ける! はずだ!! 多分!」
編み出したホバー機能を使って進んでいくバイクは、
信じられないほどにゆっくりだった。
「どうした陽里さん。そんなんじゃ日が暮れちゃうぞー!」
「ちょっと。ちょっと静かにしてくれって……」
自信がないのだ。はじめてつかう技に、陽里は注意深く、恐る恐る。海の上を走っていく。
「……おお」
思わず陽里は声を上げた。フラフラするけど浮いてはいる。
暫く進むと、徐々にスピードが出てくる。そうするとようやく幽霊船にも、敵と認識されるようになってきたのか。二人に向かっても砲撃が放たれる。……が、
「飲酒運転ダメゼッタイ!」
「ぬわっ!?」
リオンが試験管をぶん投げてそれを相殺する。爆風でよろけそうになるのを、陽里がぎりぎりで持ち直したり、
「わわっと危ない! 粘液回避!」
「ぬぉ!?」
現れてきたオウムガイを、同じく爆発させたその振動でひっくり返りそうになるのを何とか陽里は堪えたり、
「はっ。あんなところにこんなものがー!?」
「って、どんなところにどんなものだよ!?」
突然、飛んでくる爆発の破片や桜色の爆炎をぎりぎりのところで回避したり、
騒いだり悪態をついたりしながらも、徐々に陽里の運転はこなれて行った。
「そんなフラフラじゃ本命にいいカッコ見せられないぞ!」
「本命……うっせーよ黙って見てろ!」
最後には、運転しながらオウムガイをライの体当たりで蹴散らすことに成功した陽里に、
「よくやった……これで儂が教えることは何もない……。あ、お礼はいらないよ、お礼は」
いらないよ!! と言いながらちゃっかり手を出すリオンの手をはたく余裕すらあったという。
「それじゃ……このまま幽霊船に突入しようよ!」
手を引っ込めたリオンがそう明るく言うと、
「ああ……。あっという間に、たどり着いてやるぜ!」
なんて言って。そのころには自信満々に、海賊船へ向かってライは突入していった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
千家・菊里
【花宴】
ええ、どうせなら砲弾より特大花見団子の大盤振舞でもしてほしいものですねぇ
さて、あの混沌の嵐の中を泳ぐのもなんですし――UCの狐達に人が乗れるサイズに変化頼み、水上歩行で運んでもらいましょうか
余った子は後方で応援を
戦闘力はないので護ってやってくださいね
砲弾は手分けし処理
俺は※炎属性攻撃霊符放ち、焔の花でも添えましょうか
ふむ、この感覚は…?
酔った事がないので新鮮です
しかしこれは肴が恋しくなりますねぇ
この貝、焼くと美味しくなったりしませんかね?
呑気に笑い貝にも※
おや、砲団子とは敵ながら太腹な
清史郎さんは流石、よく花が映えますねぇ
伊織は…ははは、見事なアンテナが生えましたねぇ
(嬉々として撮影)
筧・清史郎
【花宴】
ゆっくりと花を愛でながら酔うのならまだしも、随分と騒がしいな
特大花見団子…それは食べ応えありそうで良いな(超甘党)
菊里の狐式神に力を貸して貰い移動
UC桜吹雪吹かせ刀の斬撃も合わせ、護りつつ進もう
狐式神さんの応援も心強い(微笑み
桜吹雪を舞わせる事ならば俺の十八番
UC範囲内に入った砲弾を漏れなく処理していこう
UCで処理できぬ分は刀の斬撃で
肴は欲しいところだが、あの貝は美味しそうではないな
確りと見切り、粘液等敵の攻撃は式神に素早く指示し躱そう
割れて花弁舞えば、ひょこり頭上に咲く桜
ほう、伊織とお揃いだな(微笑み
しかし自分の花が見られぬのは残念だ
すまほで写真でも撮っておいて貰おうか(満更でもない
呉羽・伊織
【花宴】
何とも破茶滅茶な様相だなー
花見団子の雨霰もソレはソレで大変ってか、今日も揃って良い食気してんな!
何にせよあの中に飛び込むのは中々骨が…って何か一杯出た!
んじゃまぁ、此処は有り難く大船ならぬ大狐に乗ったつもりで行くか
こんだけ応援されたら頑張るしかない…!
協力して砲弾や貝落とし、式神護りつつ移動
皆と重ね、早業と2回攻撃で矢継早にUC放ち確実に処理
戦闘まで正しく華やかだな!こりゃ壮観…んん?
何コレホントに砲弾から砲団子が出たー!
肴はせめてコッチにしとけ、あの焼貝は腹壊すって!
――え、何?お揃い?(頭天辺に桜がぴょこ)
清史郎は似合ってるってか完璧だケド、俺どーなってる!?
うわー何この記念写真!
賑やかな音が聞こえている。
「ゆっくりと花を愛でながら酔うのならまだしも、随分と騒がしいな……」
賑やか感凄まじいと、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)がぽんぽん飛んでは花弁がまき散らされる光景を見て、そんな感想を口にした。
「ええ、どうせなら砲弾より特大花見団子の大盤振舞でもしてほしいものですねぇ」
そんなところで、ふっと冗談めかして言ったのは千家・菊里(隠逸花・f02716)である。色気より食い気である。花より団子である。
「ああ……。特大花見団子……それは食べ応えありそうで良いな」
その言葉を聞いて、清史郎もどこか遠くに思いをはせるような口ぶりでふっと微笑んだ。その言い方に呉羽・伊織(翳・f03578)も面白そうに肩を震わせた。
「花見団子の雨霰もソレはソレで大変ってか、今日も揃って良い食気してんな!」
いつものことなのだろうか。ひとつ笑い飛ばして、庵は海面から幽霊船のほうに視線を向ける。遠く見えている、あれが目指すべき場所だろうか。
「それにしても、何とも破茶滅茶な様相だなー。何にせよあの中に飛び込むのは中々骨が……」
「まったくで。……さて、さて、あの混沌の嵐の中を泳ぐのもなんですし――」
さて。と伊織が考えこんでいる間に、菊里がさあ、おいでと狐の式神を召喚している。様々な姿に化けることができるのだが、今日はどうやら人が乗れるサイズになるようだ。
「って何か一杯出た!」
「はい。戦闘力はないので護ってやってくださいね。余った子は後方で応援をお願いします」
「……!」
きゅう、とかわいらしい狐さんが伊織を見ていた。
「くっ……。んじゃまぁ、此処は有り難く大船ならぬ大狐に乗ったつもりで行くか。こんだけ応援されたら頑張るしかない……!」
「では、暫くはお願いしよう。狐式神さんの応援も心強い」
清史郎の微笑みに、任せろー。とばかりに狐たちも全力で応援するのであった。
「……来たな」
狐たちに乗って走ること数分後。伊織がそう声を上げた。
彼らもまた、幽霊船の大砲の、射程圏内に入る。
どぉんと豪快な音を立てて飛んでくる塊に、
「桜か……。桜吹雪を舞わせる事ならば俺の十八番。……舞い吹雪け、乱れ桜」
遠目から見てあれが桜を発生させるのは知っていた。桜には桜を、というわけでもないが。清史郎が己の武器を舞い散る桜の花びらへと変える。そのまま変えなかった蒼き刀を構えた。
一刀。舞い散る桜の花びらが弾を破壊して、その下から現れたオウムガイを両断する。
「おっと、お次は右だな!」
そのあとから放たれてくる砲弾に、伊織が式神を守るように手を翳した。闇に染む暗器が目にもとまらぬ速さで走る。矢継ぎ早に二撃目の砲弾に、変幻自在のそれらを突き刺せば、
「……っ、と、今度は花か! 戦闘まで正しく華やかだな!」
ぱあっと舞い散る桜吹雪が落ちてくる。これもまた変幻自在か、なんて、楽しげに伊織が目を細めて天を仰いだ……ところで、
「こりゃ壮観……んん?」
ばさーっと花びらの一部が菊里へと降り注いだ。
「ふむ、この感覚は……?」
「どうした? 何か危ういものでも……?」
「ああ……いえ」
尋ねる清史郎に菊里は首を横に振る。
「おそらくこの状態を、ひとは、酔っているというのでしょう。酔った事がないので新鮮です」
「よったにしてはなんだか冷静だなー」
「性分ですから。しかしこれは肴が恋しくなりますねぇ。おっと……焔の花でも添えましょうか」
言って。ついと菊里は霊符を放った。炎を纏った其れは、弾に当たって爆発する。そうして砕けた球の中から出てきたのは……、
「…………」
オウムガイを、菊里はじ。と、見つめていた。
「……この貝、焼くと美味しくなったりしませんかね?」
「!?」
ぽつりとつぶやかれたところで、伊織は思わず言葉を詰まらせた。
え。なんか、足がうねうねいってるけど。……あれの話だろうか?
ちらりと清史郎をみやる。清史郎は、
「肴は欲しいところだが、あの貝は美味しそうではないな」
なんて、まじめな顔をして真面目に評していた。
「いやいやそれでも。あの手のものは食べてみなければわかりませんよ」
そして菊里も何だか真面目な顔をしていってみていた。
伊織は慌てて暗器を握りなおす。まずはオウムガイにそれを投げつけて毒を流し込む。ついでに祈りながら次に飛んできた砲弾向かって投げつける。割と真剣に真剣に祈った。その結果……、
「何コレホントに砲弾から砲団子が出たー!」
出た。叶った。本当にかなった。なぜか団子が出た。これだけ祈ったのだからきっと食べられる団子であろうと伊織は信じた。即座に伊織は応援狐たちに視線をやる。狐たちも心得たとばかりにさささ。とその団子を回収しに行く。
「肴はせめてコッチにしとけ、あの焼貝は腹壊すって!」
「おや、砲団子とは敵ながら太腹な。うんうん、さすがに花見日和ですねぇ」
嬉しそうな菊里に、清史郎も適度に甘いといいな。なんて微笑んでいる。ちなみに清史郎は極度の甘党であるので、適度、というと、相当、ということになるが、さて。
「……うん?」
さあ、味見でもするか。なんて言い出したところで、清史郎はふと顔を上げた。何だか頭に違和感がある。
「おや。清史郎さんは流石、よく花が映えますねぇ」
「桜……ああこれは、桜か」
頭から、なんかひょっこり桜の花が咲いていた。手探りでそれを清史郎は確認する。確かに桜の花の感触がする。
「ほう、伊織とお揃い、ということだな」
「――え、何? お揃い?」
ぱちり、と瞬きをして、伊織は思わず清史郎を見た。
「!! なんか! なんか頭にある! 清史郎は似合ってるってか完璧だケド、俺どーなってる!?」
伊織が見えるのは清史郎の頭だったので、まじまじと清史郎を見ながら伊織は慌てて自分の頭に手をやる。確かに枝の感触があって……、
「伊織は……ははは、見事なアンテナが生えましたねぇ」
「アンテナ……。アンテナだと!?」
一体どうなっているんだ。と、愕然とする伊織。
「しかし自分の花が見られぬのは残念だ。すまほで写真でも撮っておいて貰おうか」
「お任せください」
結構まんざらでもない清史郎に、すちゃ。と流れるような速さで菊里は撮影準備を始める。
「清史郎!? うわー何この記念写真! アンテナ? アンテナ撮影してどうするんだ?? ちょ、ま……」
「ほら、伊織さん、いいから笑ってください」
「ぽーずもとろうか。折角だから」
菊里の清史郎の言葉に、わけもわからぬままにかっこいいポーズをとる伊織。あとから見返せば……きっといい思い出になるだろう、きっと……。
大成功
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ラビ・リンクス
ロキ25190と
13
身を乗り出し大騒ぎ
ヒェ、マジで水ばっか!
落ちたらどうなんのコレ
ロキとだと一生遭難する事になりそォ…
てかめっちゃ揺れる、ぎもぢわる…
飴美味い…
も一個チョーダイ…
泳げない(多分)俺に逃げ場はねェ
船首で船とロキだけは死守
飛んだり跳ねたり大鎌で出来るだけ叩き割り
あ、高くて届かねーや
ごめんロキ、パス!
しかし結構簡単に割れるじゃん、楽勝楽勝
桜って散っても最後まで綺麗なァ
感動で涙が…
ってギャー!きめェの出てきた!!ァアァ頭に
とって!!ロキィィ!とってえ!!
吃驚した…うェ…飴チョーダイ…
酔ったら人生初の泣き上戸
相手の肩に耳をベタづけめそめそ飴を集り
クリームソーダがいいィ
めそめそ注文をつける
ロキ・バロックヒート
ラビくん(f20888)と
13
船の上
この世界行くのラビくんも初めてなんだね
すごいな海だらけだなぁ
えっ泳げない?
すごいチャレンジャーだねぇ
もし落ちたら一緒に落ちて遭難してあげるよ
しかも船酔い?大丈夫?
ハーブ系の飴とか持って来たよ
背中さすったり介抱しつつ
ラビくんうろちょろしてるのかーわいい
落ちても面白いけど落ちないでね
はいはいパース
影が生き物みたいに動いて叩き落す
桜きれいだねぇ
うわぁ何これ
笑いながら取ってあげる
自分の頭にも引っ付いてるけど
あ、なんかふわふわしてきた
酔っ払ったら笑い絡み上戸
泣いてるラビくんと肩とか組んで歌っちゃうかも
なんで泣いてるのあはは
よしよし耳撫でて慰めて
飴もいいけどソーダ飲む?
「すごいな海だらけだなぁ」
ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)が感心したように声を上げて、船の上からぐるりと周囲を見回す。遠くに島は見えるけれども、それ以外は海、海、海。で。嬉しそうな顔をして、ロキは振り返り声をかける。
「この世界行くのラビくんも初めてなんだね。すごいよね。海……」
言いかけて、押し黙る。ラビ・リンクス(女王の■■・f20888)は船の上から身を乗り出していた。その表情が若干あれであれだった。
「ヒェ、マジで水ばっか! 落ちたらどうなんのコレ。死ぬの。死んじゃうの俺。嫌だよこんなところで死にたくねぇよ」
もうなんか、今にも水で絞られて死にそうな兎みたいな顔をしていた。大きめの船を出してもらっている分、まだましな方なのだけれども、それでも船酔いするラビなのである。海は初めてだから仕方がない。
「ええ。大丈夫だよ。死んだりなんかしないって。海って水だよ。つまりは泳いでまた島なり船なりに戻れば……」
「は!? 泳げない俺に逃げ場はねェ!! 泳いだことないけど俺は泳げねェ! 泳ぐつもりなんてねえ!!」
ものすごい勢いで言い切ったラビ。
「えっ泳げない? 其れなのにここに来たの。すごいチャレンジャーだねぇ。もし落ちたら一緒に落ちて遭難してあげるよ」
「い~や~だ~。ロキとだと一生遭難する事になりそォ……」
「失礼な」
と、いうにとどめたのは若干自覚があったからかもしれない。ロキはそっと視線をそらしたが、それはラビに気付かれなかった。というか、ラビにその余裕はなかった。
「てかめっちゃ揺れる、ぎもぢわる……」
ラビは船から身を乗り出して伸びていた。
「ええ。しかも船酔い? 大丈夫?」
「これが、大丈夫に見えるか……?」
「はいはい。そうだよね。ハーブ系の飴とか持って来たよ。ほら食べて」
「ううー……」
背中をさすられながら、飴を頂くとラビは情けない声を上げる。
「飴美味い……。も一個チョーダイ……」
「うんうん。いっぱいあるから」
はいはい。とロキがかいがいしく世話を焼く。焼いていると……、
どぉん、と。砲撃が放たれる音がした。
「……来たな!」
瞬時に、ラビがシャキッと顔を上げる。おぉー。とロキが感心したような声を上げるのをしり目に、
「船首で船とロキだけは死守する! やらせるわけにいくかよ!」
ばっ。と、勢いよく駆けだした。
放たれる砲弾は多数。ラビはおお鎌をぐるりと旋回させる。
「この……っ!」
船の一番先頭に飛び込んで、鎌を振り回して次から次へ。飛んでくるそれらを自分も飛び上がって素早い動きで割り続ければ、
「あ、高くて届かねーや。ごめんロキ、パス!」
「はいはいパース。ラビくんうろちょろしてるのかーわいい」
「うるせぇそういうこと言うんじゃねー」
「落ちても面白いけど落ちないでね」
「!! うるせぇそういうこと思い出させるんじゃねえ!!」
ここは地面ここは地面。なんか揺れちゃうけど地面。
と、必死で言い聞かせるラビに笑いながら、ロキは影みたいな生き物を動かして、その砲弾を叩きつぶした。
弾をつぶすたびに、ぶわっと薄紅色が広がって、美しい桜の花びらが散る。
風に流されるように自分たちに向かっていく様は、さながら楽園のようでもあった。
「しかし結構簡単に割れるじゃん、楽勝楽勝。桜って散っても最後まで綺麗なァ」
「うん。桜きれいだねぇ」
見事な光景だ。ラビの言葉にロキも同意する。ここまで大量の桜吹雪なんてそうそうみられるものではない。そう思うと……、
「あー。感動で涙が……」
案外。自分って情緒のある存在なのかもしれない。なんてしみじみラビが自分で自分に思いをはせた……ところで、
べちょ。
「……べちょ……?」
なんか頭に引っ付いた。
ラビが頭に手をやると、何やら硬い貝のようなものに触れた。そして……、
「ってギャー! きめェの出てきた!! ァアァ頭に!! 俺の頭に!! とって!! ロキィィ! とってえ!! いーやー! 目が、目があああああ!」
にょろにょろと現れた小型オウムガイは触手を伸ばしてうにうにと帽子のようにラビの頭を占拠しようとしている。触手が目に入りそうになる。涙が出てきた。むろん感動ではない。
「うわぁ何これ」
ロキの頭にも引っ付いていた。ロキが近づいてラビの頭の上にあるオウムガイに目を向けると、
「ひぃぃぃぃ。近寄るな。ちーかーよーるーなー。意外とつぶらな瞳ー!」
「はいはい落ち着いて。落ち着いて。ね?」
めしめしめし。と引きはがされるオウムガイ。そのままぺいぺい、と張り倒されるオウムガイ。
「ほら、もういないよ、大丈夫」
ついでに自分のも処理して、ロキがにこやかに言うと、
「吃驚した……うェ……飴チョーダイ……」
ラビは隅っこのほうで膝を抱えて丸くなっていた。
「ていうか、あんなの、販促だろ。べちょべちょしてるし、うねうねしてるし」
「うんうん」
「ろきぃぃぃぃぃ」
「落ち着いて。ラビ。鼻水出てるから」
「鼻水なんて出てないだろォ」
めそめそラビはロキの肩に耳をベタづける。
「あはははは。出てる出てる。鼻水出てるって」
なんて、ラビとは裏腹にロキはにこにこしていた。
「うーん。なんだかふわふわしてきた?」
「ふわふわ? うぅ……俺はなんだか泣けてきた……」
「なんで泣いてるのあはは。歌っちゃえばいいよ歌おうよー」
酔っぱらって泣くラビと笑うロキ。ご機嫌にロキが肩なんか組んで見たりすると、めそめそしながらラビが飴ー。なんて言う。
「よしよし。飴もいいけどソーダ飲む」
「クリームソーダがいいィ」
笑いながらラビの耳を撫でて落ち着かせるロキに、めそめそしながらもきっちり注文を付けるラビ。可笑しげにロキは笑って鼻歌を歌うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
テオ・イェラキ
ディアナ(f01023)と
ふむ…こうして共に依頼に出かけることになるとはな…
古い知人の義娘であるディアナ
姪っ子というより妹分という認識だが、こうすると何とも感慨深いな
小舟で二人に乗り、まずは海賊船へと近づくぞ
落ち着け、ディアナ
ある程度近づけば、荒波鎮めし平穏の舞を舞おう
戦争で習得したこの舞はこの世界にはぴったりだな
ん?…何か言ったか?ディアナ
戦うために水中へと入れば、大砲の弾がやってくるな
避けても良いが、叩き落とそう
うん……なんだこれは(牛の角の間に一本の桜の枝が生えている)
おい、笑ってないで引き抜いてくれ
ってディアナァ!
こら、寝るんじゃない!
そこいらに着弾した弾から敵が来ているぞ!
起きろぉ!
ディアナ・ロドクルーン
テオ(f00426)と
テオさんは小さい時からの知り合い。お兄さんと言うよりおじ様な感覚
私、泳げないのよ
この船本当に大丈夫?小さくない?揺れているんだけど!!
(がっしりと縁にしがみ付き小さくなっている)
おじ様ったら…意外に舞がお上手なのね
迫りくる大砲の弾は弾き落とす
何?割れた?
あは♪角に綺麗なお花が咲いている、これはいいお花見ね、あはは!
私にも生えている!あははは!
何だろう、飲んでいないのに酔った感が…ねむぃちょっとだけ、寝るわ(スヤァ
おじさま、うるさい
大きな声を出さないで
もう少し寝かせて…あら、敵が来ているの?
うん、大変。一気に目が覚めたわ
寝起きで気分が悪いから、憂さ晴らしをさせてもらうわよ
テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)は小舟をこぎながら、感慨にふけっていた。
「ふむ……こうして共に依頼に出かけることになるとはな……」
古い知人の義娘である彼女は、姪っ子というより妹分という認識であった。
それなりに子供のころからも知っている仲である。あんなに小さかった彼女が大きくなって、一人前になり、依頼に出るなんて……、
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおじさま。今船がぴゅんって。ぴゅんって」
……。
小舟の中で縁にしがみつき小さくなってまさに貝のようなポーズをとっているディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)を、テオは静かに見つめた。
「落ち着け、ディアナ。今のは魚が跳ねただけだ」
静かに。言い含めるように、テオは言う。ディアナとて、普段はもっとクールな大人の女性であるはずだ。見知らぬ他人と乗ったならば、こんな格好はしない。だが、今は話は別だ。小さい時からの知り合いで、お兄さんと言うよりおじ様な感覚のテオの前でそんなことを言っていても始まらない。
「私!! 泳げないのよ」
故にディアナは全力で主張する。
「この船本当に大丈夫? 小さくない? 揺れているんだけど!! ほら! 今も! ちょっと跳ねたし。身体浮いたし!!」
「大丈夫だ。もうすぐ海賊船に接近する。そうなればここから戦闘だぞ、ディアナも戦闘態勢を整えとくんだな」
「一体それのどこが大丈夫なのよ!?」
悲鳴のようなディアナの声も、聞いちゃいねかった。小舟はどんどん海賊船に近付いていく。これ以上近づけば危険だ。というところまで来て、テオは船を止めた。
「さて……」
「……? おじさま……?」
徐に立ち上がるテオ。船が揺れてひぃぃ、としがみつきながらもディアナが恐る恐る顔を上げる。すると、
「蛮族が水中でも動けるところを見せてやろう……」
テオはそう言って、舞を舞い始めた。ハワイ古代部族の精霊の加護を得る事で水中呼吸と水中高速移動が可能な水中モードに体を作り替える伝説の舞……。そう、その名も『荒波鎮めし平穏の舞(フラダンス)』……!
「戦争で習得したこの舞はこの世界にはぴったりだな……」
なんとも真剣でかっこよくフラダンスを舞うテオ。ディアナは船のヘリにしがみついたままであったが、幾分目に生気が戻った顔でその舞を見上げて、
「おじ様ったら……意外に舞がお上手なのね」
「ん? ……何か言ったか? ディアナ」
「いいえ。なにも。少し元気が出た気がするわ。行きましょう」
「ああ!」
どんっ。と、
豪快に音を立ててテオは水の中に飛び込んだ。
それと同時に、大砲の弾もまた至近距離まで近づいてきた二人に向かって放たれる。
「はぁ……!」
水中であることをものともせずに、テオは蛮族に愛用される武骨な巨大斧を振り回した。身の丈ほどもある巨大な獲物がうなる。避けてもいいが、叩き落とすのがやはり蛮族流だろう、と考えたかどうかは兎も角。
真っ二つに弾が割れると、ものすごく派手な音がして周囲の視界が一瞬、桜色に染まった。
「!? ディアナ!! 無事か!」
「え? 何? 割れた?」
毒か何かかと、声を上げるテオに、きょとんとした声のディアナ。船の上から白い刀身のルーンソードを構え、ディアナも目を眇める。ディアナもなんだかんだ言いつつも船の上から一つ、叩き落としたところだった。
「あ。違うよおじさま。これは……」
段々、ディアナの声が小さくなっていく。これは? と、テオが聞き返しながら、
「うん……なんだこれは……?」
角の間に何か一本、生えている。それをテオがつかんでみた、ところで、
「あは♪ 桜よ、桜! 角に綺麗なお花が咲いている、これはいいお花見ね、あはは!」
爆笑するディアナの声が、テオに届いた。桜吹雪が晴れた今。ディアナがテオを見てご機嫌に笑っている。
「!? 桜だと。おい、笑ってないで引き抜いてくれ」
えいえい。とテオはその枝を引っ張るが、ぴったり引っ付いているようでとれはしない。
「えええ。だって可愛い。かーわーいーいー!」
「かわいいじゃないだろう! おまえにも生えてるんだ!」
びしぃ、とディアナを指さすテオ。
「私?」
ディアナもそっと、己の頭に手をやって……、
「私にも生えている! あははは! あはははははははは!!」
「待て。笑い事じゃ……」
「何だろう、飲んでいないのに酔った感が……ねむぃちょっとだけ、寝るわ」
「ってディアナァ! こら、寝るんじゃない!」
スヤァ。と、さっきまであんなに恐れていた小舟にそのまま横になるディアナ。
一瞬で眠りに落ちたらしく、もう飲めない……なんて寝言まで聞こえる始末。
「そこいらに着弾した弾から敵が来ているぞ! 起きろぉ!」
ゆっさゆっさ。
テオは小舟を揺らして声を上げると、ディアナは半眼で目を開いた。
「おじさま、うるさい。大きな声を出さないで。もう少し寝かせて……五分でいいから」
「その五分で、お前は死ぬっ!」
「ええ……」
思わず真面目に言ったテオに、ディアナは目をこすりながら体を起こす。
「あら、敵が来ているの?
「ああ。これで目が覚めだよな?」
「うん、大変。一気に目が覚めたわ。寝起きで気分が悪いから、憂さ晴らしをさせてもらうわよ」
すっくとディアナは立ち上がる。
「一閃一閃また一閃。無慈悲な歌が耳を裂く 高鳴る鼓動に身を任せ 足音高く舞い踊れ……」
刻印を輝かせ、踊るように獲物を握りしめたディアナに、テオはやれやれ、と肩をすくめた。……もう、大丈夫だろう。
「んじゃ、一つ……片付けるか」
テオもまた、斧を握りなおす。
あの貝は焼けばうまいだろうか。なんて考えながらも、二人は戦いを再開するのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鵠石・藤子
八刀丸(f00181)と
木のない所に桜たァ不思議なモンだな
落ちンなよ、ジジイ!
海上を疾走するバイクで接敵
あっオレが運転してっからって先に攻撃してンじゃぁねえ!
構えた太刀で大砲を分断
段々酔っては刀を振り回し
…らめだぞじじー!貝なんろに遅れをとってンのかー
っあは、アハハハ!
桜だ、桜だなはとーまる!
道中眠いと意識を手放しせば
ふわり目を開けて
別人格のトーコ
…八刀丸さん
そのふぁっしょんはお花見日和で良いですね
我々も藤でも咲かせたい物ですが
所詮は空に舞う団子の様な物ですから、狛犬も困ってしまいます(酔ってる)
ところで少々暑く無いですか?(トップスを脱ぎ捨て)
風呂敷を眺めて
…なるほろ
新ふぁっしょんですね?
百地・八刀丸
藤子(f08440)殿と馳せ参じた
花見と聞いたが、これは……
ともあれ、人命がかかっておるのであれば捨て置けまい
藤子殿の乗り物の後ろに立たせて貰おうぞ
さて、数がくるとなれば後ろ腰の小太刀二刀を用いよう
おお、何と面妖な。ワシの頭に桜が咲いておる
これはよい枝垂桜。少々鬱陶しいが、まァ問題なかろう
藤子殿は大丈夫……ではなさそうじゃな
藤子殿、酔っておるのか?
運転は出来るのか?
かなり蛇行しておるようじゃが……!?
お、おお、変わったか。危ないところであった
もう一人の藤子殿、お主は大丈夫そうじゃな?
このまま奴らの船に……何をしておる!?
ええい、うら若き娘が全く!
ワシの風呂敷を巻き付けてやろう。ほれ、動くでない
鵠石・藤子(三千世界の花と鳥・f08440)はにやりと笑った。
愛車のバイクにまたがると、乗りなと乱暴な仕草で後ろを示す。
「木のない所に桜たァ不思議なモンだな。……ほれ」
「まったくだ。花見と聞いたが、これは如何なる……」
藤子の後ろに腰を下ろしたのは、百地・八刀丸(またの名を七刃斎・f00181)である。踏む、と、もうすでにあちこちで爆発して散っている桜の花に目をやって、
「……ともあれ、人命がかかっておるのであれば捨て置けまい。変わった趣向の花見は気になるが、まずは……」
「ああ。ああ。いいから行くぞ。落ちンなよ、ジジイ!」
長くなりそうな八刀丸の言葉を遮って、エンジンを一度ふかして藤子は海の上に突入した。このバイクは会場を走る。派手に水しぶきを上げて、一直線にバイクは幽霊船へと向かってかけていく。
どぉん。と、こちらに気付いたのか、幽霊船からも大砲が放たれた。八刀丸は左右に差した、白鞘の木立を抜き放つ。
「このような単調な動き……わしの敵ではないぞ」
白刃が煌めく。バイクに掠る前に砲弾は叩き伏せられた。ぶわっと現れた花びらに、
「っぷ。すっげえ桜だな!!」
もろに被りながらも、藤子はひるむことなく桜吹雪の中を突っ込んでいった。
第二撃、第三撃と、休むことなく放たれていく砲弾を、八刀丸は苦も無く切り伏せていく。そして、
「む」
ある時唐突に現れた貝も、その次の瞬間で瞬く間に切り伏せていた。
しかしその一瞬の間に、敵からも再び砲撃が放たれている。……だが、
「藤子殿。藤子殿なら大丈夫……」
彼女なら回避可能だろうと、八刀丸が声をかけた……。その、瞬間。
「くっそー!! さっきからオレが運転してっからって先に攻撃してンじゃぁねえ!!」
なぜか藤子から、気合の入った声が発せられた。同時に藤子はハンドルから手を離す。
「せいや!!」
一閃。白銀の刀身に鳥の意匠を持つ妖刀が黒鞘より抜き放たれて、正面から来ていた砲弾を一瞬で真っ二つにした。
「あはははははは。ざまあみろ!!」
「……ではなさそうじゃな」
大きな笑い声を上げる藤子に、思わず八刀丸が呟いた。桜吹雪が二人に降り注ぐ。そうしてそれが収まった……あとに、
「おお、何と面妖な……。ワシの頭に桜が咲いておる」
頭に違和感を感じ、八刀丸は顔を上げた。まるで髪の毛の上に乗るように、綺麗な枝垂桜が八刀丸の頭の上で咲き誇っている。
「これはよい枝垂桜。少々鬱陶しいが、まァ問題なかろう。これでいつでも花見ができるな」
前向きに検討する八刀丸である。花が落ちないように軽くその桜を撫でるような仕草をした……その瞬間、
ぐらぁ。と、乗っていたバイクが傾いた。
「……らめだぞじじー! 貝なんろに遅れをとってンのかー!」
「!?」
先ほどの勢いはどこへやら。グラグラと徐々に体が左右に揺れていくバイク。
「……藤子殿、酔っておるのか? 今のところ貝はおらぬゆえに、操縦に集中……」
「っあは、アハハハ! 桜だ、桜だなはとーまる! 桜がさーいーてーるー!」
「藤子殿!? 後ろを向いてはいかん。運転は出来るのか? かなり蛇行しておるようじゃが……!?」
物凄く珍しく、若干焦った声で八刀丸は声をかける。
「らいじょーぶらいじょうぶ。ふぁ。眠いー」
「やめよ、寝たら死ぬぞ!!」
具体的に言うと転んで海に落ちて溺死である。さすがにその死に方は避けたい。起きろ。と軽く藤子を八刀丸はゆするも、健闘むなしく藤子はゆっくりと目を閉じて……、
「……八刀丸さん。そのふぁっしょんはお花見日和で良いですね」
ぱちり。と、目を開けた藤子に、おお。と八刀丸は息をついた。
「お、おお、変わったか。危ないところであった。もう一人の藤子殿、お主は大丈夫そうじゃな?」
現れたのは別人格のトーコである。藤子は先ほどとは打って変わった穏やかな表情で、やんわりと微笑み、
「ええ。ええ。それはもう」
「それはよかった。このまま奴らの船に……」
「我々も藤でも咲かせたい物ですが……。所詮は空に舞う団子の様な物ですから、狛犬も困ってしまいます」
「は……?」
「ところで少々暑く無いですか?」
「ええい今度は何をしておる!?」
さ。と服に手をかけて脱ぎ捨てる藤子に、慌てて八刀丸は声を上げた。持っていた風呂敷をずぼっ。と藤子の体に巻き付ける。
「うら若き娘が全く! いいから藤子殿はハンドルを握っておれ! ワシの風呂敷を巻き付けてやろう。ほれ、動くでない」
言われたままハンドルを握る統子。その隙に八刀丸はてきぱきと器用に唐草模様の風呂敷を藤子の体に巻き付けていく。
藤子はじっとそれに目を落とす。何とも平気な顔をしているが、その眼の焦点が合っていなかった。つまりは、酔っ払っていた。
「……なるほろ。新ふぁっしょんですね?」
「ああ。ああ。そういうことだ。最近はやりのなうでやんぐなふぁっしょんだ」
なんかもう酔っぱらい相手だと思って八刀丸も適当言っている。おおお~。なんて嬉しそうにする藤子に、
「そら出来た。突入するぞ」
「はい。それでは狛犬もよろしくお願いします」
バイクを狛犬扱いして、二人して海をかける。なんとか、幽霊船まではたどり着けるだろう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『幽霊船』
|
POW : 幽霊船一斉砲撃
【海賊船に搭載された全ての大砲】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 幽霊団の船出
レベル×1体の、【カトラスを装備した右手の甲】に1と刻印された戦闘用【幽霊海賊団員】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 聖エルモの炎
全身を【不気味な紫の光】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
なんやかんやしていたら、夕暮れ時が来て陽が落ちていった。
そのころには、猟兵たちはほぼ全員、幽霊船に移っていた。
かなり大きな船だった。……そして、
陽が落ちたその瞬間。黄昏時が始まる中で……、
カッ!!!!
と、凄まじい光が幽霊船を照らし出したのである。
何かの攻撃かと、猟兵たちが顔を上げると……、
マストが。ボロボロだったはずの海賊船のマストが。
いや、相変わらずマストはボロボロなのであるが。
そのマストに沿うかのように、巨大な巨大な桜の木が、一本立っていた。
マストがその中に埋もれてしまっている。
まばゆい光は、そのマストに無数につるされたまばゆい灯りのせいであった。
イカ漁船か、とだれかが言った。あるいは昼間イカと戦ったからそう思ったのかもしれない。
何せそれは、攻撃ではなさそうだと。慎重に彼らが周囲を見回した。……その、時。
甲板の方からにぎやかな声が聞こえてきていた。
猟兵たちが甲板を除くと、そこは……。
亡霊たちの、宴会場になっていた。
体に矢を受けた亡霊がいた。
体が半分ほどない亡霊がいた。
亡霊とわかるぐらいどれもこれも怪しい姿をしていたが、
彼らはあろうことか、甲板に並んで酒を飲んでいた。
『おぉぃ、料理が足りねぇぞー』
『酒だ酒。酒もってこい!』
亡霊が叫んでいる。なんか主張している。
甲板の上にじかに座って、地面に料理をずらずら並べ、亡霊たちは宴会を楽しんでいた。
料理が並べられ、それを飲み食いする亡霊たち。食べられた料理は消えてなくなり、そしてまたもっともってこい。と叫ぶ声がする。
「……あんたたち、生きてる奴らかい?」
そこに、声がかかった。女の声であった。
とらわれていた、海賊船の船長と、船員たちだった。
とらわれていた……という話であったが、縄をかけられたり、傷を負わされているわけでもなく、亡霊たちと並んで酒を持っている。だがどこか、その顔はうんざりしたような顔をしていた。
「ああ。よかった。生きてた。だったら早いこと手伝ってくれよ。頼むよ」
泣きそうな顔の、いかにも下っ端そうな海賊が言った。とらわれてから半日ほど。もうずーっとここで幽霊の隣で宴会をしているのだと。
手伝うって、何が? と誰かが聞くと、
「勿論、宴会をするのさ。酒を飲んで桜を見るんだ。やつらも朝になれば、気が済んで消えるだろう」
と、いうことらしかった。
彼らは須らく、時代や船は違えど海で散った海賊の亡霊たちだ。一晩飲んで騒げばきも晴れて消えていくだろうと。
だからそれまでの間、亡霊と一緒に宴会をするか、それとも芸があるものは芸をしてみるか……。
『おーい。誰か歌でも歌ってくれねぇかー?』
きっとどちらにせよ、歓迎されるに違いない。
「別に、自分たちだけで飲んでてもいいんだぜ。要は、なんとなく楽しい雰囲気でいりゃいいんだよ」
亡霊の相手をしなくとも、宴会するだけでいいらしい。
何より、その楽しげな雰囲気の中で、バカ騒ぎするのがいいそうだ。
「ああ……。手が空いてたら、厨房のほうをのぞいてみてくれないかい? コックが帰ってこないんだ……」
そして最後に女がそういうので、誰かが厨房を見に行くことにした。
厨房は船の中にあった。
コックたちが忙しげに働いていた。
『お料理お持ちします~。って、まだできてないじゃないですか~!』
『ああ。忙しい忙しい』
給仕係の少女が叫んでいる。三人ほどいる女の子は、どれも首に縄の跡がある亡霊だった。
コックたちは忙しげに働いていた。どれもが胸に傷があったり、目玉がなかったり、そんな亡霊たちだったが、一人だけ人間がいた。猟兵が声をかけると、人間は泣きそうな顔をした。
「料理が、作っても作っても終わらないんだ。手伝ってくれ」
いつまで、と聞くと、たぶん朝まで、という返答が返ってきた。それから慌ててコックは、できるだけでいいから、頼むから、と付け加えた。
材料は、と聞くと、コックは空になったざるを示した。そこに亡霊たちが来て、コンコンコン、と、している。するとたちまち、魚やら野菜やらがざるの中に現れた。そういえばここは元はキマイラヒューチャーだった島だ。材料なら何でも出てくるらしいが、それ以外のものは出てこないらしい。
「料理じゃなくて材料が出てくるってことは、きっと生前みたいに働きたいんだろうなあ。……俺はもう休みたいけど」
肩を落としたコックの背中に、『早くお料理作ってください~』『誰かお酒を運んでください~』と。給仕の声が響いていた。
そして最後に。
誰かは甲板に出た。
宴会場とは反対側ぐらいなら、落ち着いてマストの桜で花見をすることができるだろう。
もちろん船に攻撃を加えることも可能だが、見立てでは、朝まで好きなだけ騒げば勝手に事は済むだろう、とのことである。
船は広い。そして、マストとマストに添えるように生えた桜の木はとても大きい。
望むなら、木に登って、桜の中の花見を行うことも可能である。
……ちょっと、灯りがまぶしいかもしれないが。
君たちはこの夜桜を、好きなように過ごせばいいのだ。
……ただし、二日酔いにはご注意を。
※マスターより
そういうわけで、お好きにどうぞ。
宴会に加わって飲み食いするなり、踊るなり、厨房を使ってオウムガイを料理するなり、必死なコックを助けて料理をするなり、桜の木の中で誰かとのんびりするなり、好きなようになさってください。
どうしても攻撃したい場合は、プレイングをかけてくれたら、なんか考えます。
第一章で受けた桜の効果につきましては、効果が残っていても構いませんし、海賊船に到達するまでにさらに何かを受けたことにしても構いませんし、効果が消えていても構いません。
ただし、なんにせよ効果を受けている場合は自己申告で。何も書いていない場合は消えているものとして描写します。
また、二章から参加の方も、その辺は好きなようにしてください。
あとは……あああれです。未成年の飲酒喫煙は描写しません。ちゃんとジュースもあります。
あとはだいたい、お好きにどうぞ。
プレイング募集期間は、4月の7日8:30より8日22時まで。
それ以外の期間にプレイングを頂いた方は、問答無用で流します。
また、場合によっては再送になる場合もあります。その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを投げていただけたら幸いです。
(それ以降でも、プレイングを投げられる状態であれば受け付けますが、提出タイムに入っていて再送が不可能になる可能性もありますのでご了承ください)
後、前もってこういうプレイング投げるよーって、お知らせの意味で投げてくれるのも嬉しいです。その際は、7日と8日に必ず再送できるスケジュールにしてくださいね(月曜日とかに送られると、火曜日水曜日のプレイング受付中にプレイングを投げることが困難になります。その際は心苦しいのですがそのプレイングは採用できません。泣く泣く流します)。
また、第三章は一応やっぱりちょっと落ち着いた感じですが、朝日登る中徹夜明けの普通の花見になる予定です(何か思いついたら変わるかもしれませんが)。
以上になります。
それでは、良い夜を。
サリア・カーティス
エリックさん(f26560)と
ふふ、地に足がつけられるのならこっちのもの……私とうちの可愛い屍狼で蹂躙して蹴散らし……ッ!(乗り込んだ瞬間待ってましたとばかりにネクロオーブで狼ゾンビを呼び出そうとする
(エリックさんに止められて)
何かしらァ?(とても怖い笑顔
……まあ、宴会されてる普通の海賊の方々を巻き込む訳にもいきませんし……仕方ありませんわね(周りが戦いって感じじゃない空気を読んで渋々だが誘導される
ですが警戒は解きませんわよ。狼耳を立てて【聞き耳】、【第六感】で襲撃などには備えますわ(尻尾をゆっくり揺らしつつ
サクラ……と言うんですのね、この木に咲く花は……初めて見ますわ。
確かに、綺麗ですわね。
エリック・シェパルド
サリアさん(f02638)と行く
『てっきり怪我してる奴がいると思ったんだが…まぁ桜っていうのか?それを楽しませてもらえかね』
軽く警戒しつつ辺り確認
『お嬢も…ってまてまて!今は殲滅じゃなくて落ち着いて桜を見ることだ。だから落ち着け?』
攻撃するお嬢の肩を叩いて落ち着かせるぜ
そんで落ち着いたらまた敵が少ねぇとこに誘導すっか
『奇遇だな、俺も初めて見るぜ。綺麗だな…流石海賊の幽霊を惑わせるだけあるな。』
サリアは、ご機嫌であった!
「ふふ、地に足がつけられるのならこっちのもの……。忌々しいあの足長イカも揺れる大地もないのであれば、、これは好機。私とうちの可愛い屍狼で蹂躙して蹴散らし……ッ!」
どぉん。と。
かっこいいポーズで乗り込むサリアに。
「ってまてまて!お嬢まて。たんまたんまたんま」
こちらは普通に登ってきていたエリックが、慌ててそれを止めた。
「何かしらァ?」
ネクロオーブを持ったまま、ぶぅん、とそれを振ってサリアは笑顔で首を傾げる。若干顔が怖い気がするのは、たぶんにエリックの考えすぎではない。初手でぶっ放す予定だと、エリックはわずかに表情を凍らせながら、
「取りあえずはほら、状況を確認しなきゃいけない。そうだよな?」
「む……。まあ、それは……」
「てっきり怪我してる奴がいると思ったんだが……。なんだか違う感じだな」
まず、船内が明るい。めっちゃ明るい。
ほらほら、とうながすエリックに、そぉっとサリアはその後に続く。ネクロオーブをしっかり握りしめ、いつでも狼ゾンビを呼び出せるように警戒をしていた。その様子に、ざっと状況を把握したエリックが笑う。
「今は殲滅じゃなくて落ち着いて桜を見ることだ。だから落ち着け?」
「そ……そんなことで宜しいのですの?」
桜を見ること。サリアが繰り返すと、桜を見ることです。と、まじめな顔をしてエリックは頷く。
「まぁ桜っていうのか? ……あれ桜って言っていいのか? とにかく、それを楽しませてもらえってことかね」
ほらほら。と。頭上でべかべか光っているまばゆい光と桜の光をエリックは視線で示しながらも、サリアの肩に手を置く。
「そう……ですか。そうなのですわね……」
何だかあちこちでご機嫌の敵には、何やら言いたいこともあるのだが。それをぐっと飲みこんで、サリアも頷いた。
「……まあ、宴会されてる普通の海賊の方々を巻き込む訳にもいきませんし……仕方ありませんわね」
「そーだな。そういうことだ。……じゃ、あっち行こうぜ。ここだとやっぱり、落ち着かねぇだろ」
ほらこっち。と、エリックはサリアの手を引っ張る。もうだいたい、行き場所のめどは立てていた。敵がいなくて、海風が心地よくて、ゆっくりできる静かな場所だ。
サリアは警戒を解かない。狼耳を立てて、襲撃に備えながらきっちりオーブを抱いている。
「何かあってからでは、遅いのですわ」
「ま、それもそうだよな」
エリックも別段、警戒を解いているわけではなかった。
自然、料理もなければ酒もないので、天を見上げることになる。
それには美しい月と桜の花びらが舞っていた。
「サクラ……と言うんですのね、この木に咲く花は……初めて見ますわ」
「へえ。生まれ故郷にはなかったのかい?」
静かなサリアの言葉に、エリックは首を傾げる。サリアは小さく頷いて、
「もしかしたらどこかにあったかもしれませんが、私は見るのが初めてです。ずいぶんと迫力があって……、確かに、綺麗ですわね」
いいものですね。とサリアが言って、それから少し眉根を寄せて、
「ここが敵地でなければもっと落ち着いたのですが……」
「はは」
つけ足された言葉に、同感だとエリックは笑った。
「奇遇だな、俺も初めて見るぜ、桜ってのを。綺麗だな……」
静かに、エリックは頷く。そして目を細めて花を見上げた。
「流石、海賊の幽霊を惑わせるだけあるな」
その花はあまりに明るく、華やかで。二人の世界とはかけ離れた世界を。異国の風の匂いを感じさせるのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイリス・トゥール(サポート)
『私がキミを笑顔にしてみせるとも』
『さぁ行こうか、諸君!』
私は味方をダンスで鼓舞したり、走り回ってテレポートして敵を撹乱したりチャンスメイクを得意とするサポート系というやつさ!
ふざけているようでしっかり周りの状況を見て動いているのは内緒だとも。
人の笑顔が大好きでね、その為なら無茶だってするさ。
人の幸せを踏み躙るような存在には激オコな私だが、それでも普段の調子を失わない冷静さも持っているよ!ははは、つまり熱血クールだね!
公序良俗に反したり善良な人を傷つける行動以外なら、割と何でもノリノリでやるよ!
楽しんでこその人生だからね!
アドリブ・共闘は大歓迎だとも!
誰かの役に立てるなら幸いだ!
「おっと。ダンスは得意だけれども、こんなところで披露をすることになるとは思わなかったよ!」
幽霊船の中。満開の夜桜の下、アイリス・トゥール(ストレイラビット・f20237)は明るくそう言った。美しい髪と兎の耳を揺らして、宴会場に飛び込めば、
『なんだぁ? ずいぶん変わった格好のお嬢さんだ』
『あら。何か始まるのかしら?』
この世界には珍しい姿に給仕の亡霊まで手を止める。特にステージがあるわけではないが、めいめいに座っている亡霊たちの間を踊るようにすり抜ければ、そこがすぐさま彼女のステージになっていく。アイリスはご機嫌に、もう生きてはいない観客たちにウィンクをした。
「そういうこと。私がキミたちを笑顔にしてみせるとも!」
そういいながらも、ひらりひらりとアイリスはダンスを踊る。戦闘をするつもりで来ていたので、今日の踊りは剣は持っていないけれども剣舞に近い。レガリアスシューズの切れ味と、機動力を使って船の端から端まで踊り歩けば、
「さぁ行こうか、諸君!」
一緒に行こう? なんて、給仕の女の子に手を差し出した。
女の子は右手を出そうとして引っ込めた。
彼女も右手に1と刻印された幽霊海賊団員であるのに間違いはない。先ほどぱっと見たときはカトラスの代わりにジョッキを持っていたけれど……、
「うん、人の笑顔が大好きでね、その為なら無茶だってするさ。……さあ、行こう! 人の幸せを踏み躙るような存在には激オコな私だが、ははは、今日はその必要が……あるのかないのかよくわからないからね!!」
この海賊船がオブビリオンである以上、犠牲になった人はいる。それはこの試練を受けた海賊だ。
けれどもこの船のこの状態は、その海賊が望んだものである。
だったら、今この楽しい場所を壊すのは、なんだかアイリスには違う気がしたのだ。
「楽しんでこその人生だからね! 誰かの役に立てるなら幸いだ! さあ行こう!」
女の子の右手をアイリスは取って。そして踊り出す。いいぞー。と周囲から酔っぱらいのはやす声が上がって、
アイリスは大いに笑って、大いに踊って。
賑やかに一晩中、騒ぎ続けた……。
成功
🔵🔵🔴
ラピタ・カンパネルラ
【仄か】
(おいしい匂い、うかれた歌
酔いが尾を引いてあの人この人へハグ魔ーー
からの)
(目の悪い僕
迷子である)
(おーん)
綺麗な男の子を見ませんでしたか
木陰から見上げるあかるさみたいな、優しい灰色の……難しい
彼から貰った燕を頼れば
簡単だろうけど
うん
燕達、一緒にご飯食べようか(燕ぶわわ)(ラピタ、なにか困りごと?)困ってるけどいいよ、じきに助かるからね。
ーー硝子の靴の音
聞き間違えもしない
やあカロン
逢えると思ってた
僕の火が導になるなら
なんて嬉しい事だろうな
遠くても安心だ
けれど
手を繋ぐ
やっぱり離れないでいいや
花火?光の花なら、是非見たい!
ーーね、カロン、燕達と珍しい果物も集めたんだ、後でみんなで食べようね
大紋・狩人
【仄か】
(賑わいとほろ酔いハグ魔が微笑ましく
少し、さびしく
酔い醒ましに席を立つ
花火を上げると聞こえた)
炎と光の花?
あの子も見れるかな
あれ、
ラピタ?
一気に醒める。
危ないことになってないか
幸いの子とはいえ心配で。
否、落ち着け。深呼吸。
目を凝らし
蒼く、清らな炎を探す。
ああ、
一等星、みつけた。
燕たちの護り。
僕が居ない間もそうやって見てあげて。
硝子の踵を鳴らす。
喧噪でも聞こえるよな。
ラピタ、待っててくれて有難う。
きみ、明るいからすぐにわかるな。
……握り返す。
席を立たず、
こうしていればよかったな。
うん。居るよ、傍に。
な、花火が上がるって。
観にいこう。
南国のご馳走と、火の花でお花見か
素敵だな、ああ、勿論!
『海賊が、海で鸚鵡に出会ってさ~♪』
「うーん。この匂いも良い匂い~♪」
『おっと鸚鵡が変身したよ。嬢ちゃん嬢ちゃん、可愛いね~♪』
「うんうん、おひげがいたいよ海賊さん~♪」
どうしてこうなったか全く覚えていないが別にさして覚えている必要もないかもしれない。と。
ラピタは海賊さんに抱きつきながらもそんなことを考え……もせずに、奇妙な歌を歌い続けるのであった。
『こっちもお食べ。そしておじさんのところへおいで~』
「わーい。食べる食べる」
『わっはっは』
「ふっふっふ」
……からの、
「……あれ、ここ、どこなんだい?」
ふ。と。
酔った勢いで兎に角抱きつく。ハグ魔ラピタは唐突に我に返るのであった。
「……」
右を向いても、
「……」
左を向いても、一緒にいたはずの狩人の気配を感じない。
「……」
もちろん、じっとしていてもその姿がわかるはずもなく。
「……(おーん)」
心の中で若干嘆いた後で、ラピタは考えこんだ。……その、瞬間。
ぶわわわわわわわわわ。と。
燕たちが、ラピタの周囲に舞い降りた。それは“黒榛卵”から孵った人語を解する燕で、
「“ラピタ、なにか困りごと!?” “なんでもいって!” “ぼくたちみんなで手伝うさ!”」
ラピタの周りを飛び回り、わさわさ一生懸命話しかける。
燕は彼から贈られたものであるから、頼れば簡単に見つけることはできるのであろうけれど……、
「困ってるけどいいよ、じきに助かるからね」
『おう、どうしたアンタ。迷子か?』
一緒にご飯でも食べる? なんて声を燕にかけているラピタに、幽霊の誰かが声をかける。ラピタは頷く。
「はい。あの、綺麗な男の子を見ませんでしたか」
『きれいな男の子ぉ? それだけだとなあ』
「木陰から見上げるあかるさみたいな、優しい灰色の……難しい……ええと」
綺麗どころなら今日はいっぱいいる。と、亡霊が言うので、ラピタも困る。
とはいえ見た目を詳細にラピタが説明できるわけもなく、
「兎に角……綺麗で。そして優しくて。傍にいれば、ふわっと気持ちが明るくなって。そうして、何より僕にとっては……」
彼がどんなものであるか。ラピタは真剣に、考えて。
そうして思わず真剣に言いつのろうとしたラピタであったが。
ガラスの靴の音に、顔を上げた。
「……やあカロン。逢えると思ってた」
狩人はぼんやりと顔を上げた。
ラピタはまた誰かに抱き着いて、おひげがどうのこうのと言っている。
「……」
自分の両手を見つめて。
ほんの少し、寂しいな、と思うのはわがままだろうか。
賑やかな声を聴きながら、そっと狩人は席を立った。
酔い醒ましのつもりであった。
『何だか今日は気分がいいなァ。よし、いっちょ花火でもあげるか?』
『おお。そいつぁいい。どーんと空に向けてでっかいのでも……』
「……花火?」
『わ。なんだあんた。花火知らねぇのか?』
その耳慣れない言葉に、狩人は亡霊たちの会話に口を挟む。彼らは簡単に花火の説明をしてくれて、それを聞けば、
「炎と光の花? あの子も見れるかな……」
すごくでっかい音がしてきれいなんだ、と亡霊が言うので、
すごく明るくして貰える? なんて問うと、任せろ。と陽気な言葉が返ってきた。
それがなんだか嬉しくて、狩人は唇の端を上げてふ、と振り返り、
「……あれ……。ラピタ?」
そこで、初めて。狩人は傍らにラピタがいないことを思い出し、
一気にその顔から血の気が引いた。
「……」
足早に歩きだす。元居た場所にはラピタはいなかった。
「……」
亡霊たちをかき分けて、探す。
危ないことになってないか。どこかで泣いてやしないか。幸いの子とはいえ、心配する気持ちを止められない。
(……否、落ち着け。深呼吸。落ち着いて……)
それをどうにか鎮めるようにと、狩人は必死に呼吸を繰り返す。わかっていても戸惑う気持ちが強くて、そして、それを何とか、押さえて狩人は目を凝らした。
……そうすれば、見つからないわけなんてない。
蒼く、清らな炎を探す。
「……ああ」
一等星、みつけた。
花火よりも何よりも、強い光を。落ち着けば簡単に、狩人は見つけることができた。
周囲には燕もいる。ちゃんと守ってくれている。
「僕が居ない間もそうやって見てあげて……」胸の奥でそう呼び掛けて、狩人がそちらに行こうとした、時。
「木陰から見上げるあかるさみたいな、優しい灰色の……難しい……ええと」
そんな、ラピタの声が漏れ聞こえていて。
「兎に角……綺麗で。そして優しくて。傍にいれば、ふわっと気持ちが明るくなって。そうして、何より僕にとっては……」
聞こえてる。全部聞こえてるよ、ラピタ。
……もしかして、わかってて言っているのかもしれない。とまで思いながら。
狩人は硝子の踵を鳴らしてラピタのもとに舞い戻った。
この喧騒でも、きっとその音はラピタにも届いたに違いない。
「……やあカロン。逢えると思ってた」
果たして。そんなことを言いながら振り返るラピタの、狩人は軽く咳払いをした。
「ラピタ、待っててくれて有難う。きみ、明るいからすぐにわかるな」
「僕の火が導になるなら、なんて嬉しい事だろうな。遠くても安心だ」
『おお。探し物は見つかったんだな、良かったよかった。アンタの気持ちがふわっと明るくなったなら』
視線を交わす二人に、こっくりこっくり亡霊は驚いて歩いていく。ありがとう。と、ラピタは手を振って、
「……けれど」
その手を降ろすと、そっとラピタは狩人と手を繋いだ。
「やっぱり、離れないでいいや」
「……」
狩人は、手を握り返した。
「ごめん。席を立たず、こうしていればよかったな」
「本当だよ。カロンはもっと僕といっぱい一緒にいてほしいものだね」
「……うん。居るよ、傍に」
あまりに正直なラピタの言葉に、狩人はそう言って。ぎゅっとつないだ手を天に掲げた。
「な、花火が上がるって。観にいこう」
花火? と問うラピタに、狩人は先ほど聞いた説明をする。空に光が上がるのだと。
「ああ。光の花なら、是非見たい!」
そのことばに、ラピタは嬉しそうに笑った。
「ーーね、カロン、燕達と珍しい果物も集めたんだ、後でみんなで食べようね」
「南国のご馳走と、火の花でお花見か……。素敵だな、ああ、勿論!」
きっと今日はリクエスト通り。
飛び切り明るい花火が上がるだろうから。
だから、それを楽しみに。
二人は、空を見上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エール・ホーン
【OS】
桜の効果がほんのり
ほんとだ透けてるっ
そっと手を伸ばして握手…
わ、透けてるけれど握手はできるよっ
みてみて、仲良しー!
亡霊さん達を満足させてあげられればいいんだねっ
そういうことなら任せといてっ
ふふっ、クラウすごいすごいっ
よーし、ボクもとっておきを魅せちゃう
UCで真の姿になったなら
ね、ティルちゃん
乗ってと誘い
ぱかぱか翔けて、クラウのとこまでひとっとび!
――わわ、ティルちゃんもすごいっ
お花の舞台が完成すればくるくる喜びを隠せないっ
勿論!へへ、クラウも乗ってもいいよ?
元の姿に戻ったならステップ踏んで跳ねて飛んで
みんなも一緒に踊ろうっ
大丈夫、慣れてない人はボクがエスコートしちゃうっ
ねっ、楽しいねっ
ティル・レーヴェ
【OS】
ほろ酔いに心も足も軽く
おぅや、おや
刺さりし矢さえも身飾るようで
黄泉の縁へと赴けど斯様に楽しき様ならば
未練も哀しくあるまい、か
ならば共に楽しみゆこう
往く先が花に笑いに満ちゆくように
早めのハロウィンと聞けば言い得て妙で
からころ笑うも
クラウン殿の帽子から現れたお菓子には
拍手も忘れて視線釘づけ
後で食べても良かろうか……?
エール殿のお声にはっと我を取り戻し
お背中に乗っていいのかえ?
嬉しき誘いに、喜んで!
ふわりと背に跨れば、ならば妾も一芸を、と
翼広げて羽根飛ばし
皆の座す甲板にも、と
花を咲かせて見せましょう
ほぅらダンスに似合いの床と成ろう?
ダンスは決して得手ではないが
共にと踊れば心に笑みにと花が咲く
クラウン・メリー
【OS】
桜の効果が残っている
ティル、エルルお花見しよっ!
みんなでお花見したらもっと楽しくなるよね!
亡霊さんを見つめて
頭に矢が刺さってるけど痛くない?触っても平気?(ぺたぺた)
あ、もしかしてわざと刺してるのかな
わわ!あっちは半分透けてる!
早めのハロウィン?俺達も仮装すれば良かったかな?
シルクハットを用意すれば
よーし!芸を披露するよっ!
桜の花びらを出そうとしたらお菓子を出してしまい
あれれ、間違えちゃった!
もちろん!みんなで食べよ!
わわ、凄い凄い!まるでお花畑みたいだ!
エルルに近付いて
触っても良いですか!もふん
次は歌って踊ろ!
ティルとエルルの手を取って歌いながら踊る
亡霊さん達も海賊さん達も一緒にっ!
「ティル、エルルお花見しよっ! みんなでお花見したらもっと楽しくなるよね!」
おー! と、クラウンが拳を掲げて。
「ああ……。もちろん、そうするのじゃ! こんな立派な花があるのなら、見に行かぬわけにはいくまい!」
「うんうんっ。ここから見てもすっごく大きいよねっ。ごーごー!」
ティルとエールも同意して、甲板にむかえば……、
「……あれ?」
そこには、亡霊たちの世界が広がっていた!
「……?」
クラウンは、若干胡乱な顔になった!
「頭に矢が刺さってるけど痛くない? 触っても平気?」
『お、おう? 何じゃ小童……』
躊躇いなく亡霊の頭をぺたぺた触りに行くクラウン。はっ。とクラウンはすごくまじめな顔で、
「あ、もしかしてわざと刺してるのかな。……わわ! あっちは半分透けてる!」
「ほんとだ透けてるっ」
クラウンの言葉にエールが声を上げる。
「通り過ぎちゃう? 通り過ぎちゃうかな??」
どきどき、エールが半透明になっている亡霊に近づいて、そっと手を伸ばせば、
「……」
ちょん、と指先を出すエルルの指先に、ちょん、と亡霊の指先が振れる。
「……!」
そのまま、そーっと手を握ろうとするエール。
亡霊も、その手を握り返した。
「わ、透けてるけれど握手はできるよっ。みてみて、仲良しー!」
ほらほら、と手を上げてぶんぶんと振るエールに、仲良しー! と亡霊のほうも手を上げて降った。どうやら半分すけていて顔がよくわからないけれども、割と若くてノリがよさそうだ。
「おぅや、おや」
そんな二人の様子に、ティルが優しい目で微笑む。
「刺さりし矢さえも身飾るようじゃ。黄泉の縁へと赴けど斯様に楽しき様ならば……」
「黄泉……黄泉?」
ティルが言いかけたとき、はっ。とクラウンは顔を上げる。
「つまり、これは早めのハロウィン? 俺達も仮装すれば良かったかな?!」
「……っ」
わかった!! と、ものすごく自信ありありな顔で主張するクラウンに、ティルは思わず笑みを浮かべる。
『はろいん? まー。そんなもんだろ』
酔っ払いが酔っぱらい相手に適当いったな、亡霊。と、ティルは思ったけれども言わなかった。
そうなのかー。って、楽しげに笑うクラウンに、ティルは、
(なるほど。こうして明るくしていれば、未練も哀しくあるまい、か……)
クラウンは、どうやらまだ酔っていて、本気でそう言っているのであろう。
けれどもあえて、それを否定する必要もないだろうと。ティルがそっとエールを見ると、エールも言いたいことが分かったのだろう。大いに頷いた。
(……ならば共に楽しみゆこう。往く先が花に笑いに満ちゆくように……)
であれば、そう。ティルは思う。やるべきことは一つ……、
「亡霊さん達を満足させてあげられればいいんだねっ。そういうことなら任せといてっ」
その言葉を受け継ぐように、エールが任せろ、とばかりになっていた。そしてそのやる気にクラウンも感化されて……、
「よーし! 仮装はできてないけれど、賑やかさだったら負けないよっ! こんなのだって、できるんだからっ」
ポン、と出されたシルクハット。
「さぁ、楽しいショーが始まるよ!」
せいやとかざすと、美しい桜吹雪が天に舞う……、はずが、
「あれれ、間違えちゃった!」
『おう、いいぞいいぞー』
『今度は酒のつまみを出してくれー!』
降ってきたのはキャンディの雨、お菓子の嵐。クラウンにとっては想定外で、ぱちりと瞬きをするが酔っぱらいどもはそもそも間違いだとも思っていないらしい。今度はあれがいい。今度はこれが欲しい。なんてめいめいに好き勝手なことをいう亡霊たちの中で、ぽかんとティルはその雨嵐を見ていて、
「……はっ」
あ、ちょっと今、お腹が空いたかもしれない。
「……後で食べても良かろうか……?」
そんな場合でもないだろうと、頭ではわかっていながらも。ひょいと手を伸ばして飴を一つ掴んで真面目な顔をして言うティルに、クラウンがにっこちする。
「もちろん! みんなで食べよ!」
「ああ。そうだな。一緒に食べようか……」
その言葉に嬉しそうにいそいそとポケットへ飴をしまうティル。思いはまたお菓子のほうに行っている。その様子が妙に愛らしくて、
「ふふっ、クラウすごいすごいっ。……よーし、ボクもとっておきを魅せちゃう。ボクだって、まけないからね!」
別に勝負をしているわけではないのは重々承知。けれどもエールはえいや、と真の姿を開放する。
「ね、ティルちゃん乗って!」
現れたのは、真っ直ぐな一本角と大きな翼。立派な蹄の幻想的な姿であった。
ティルは美味しいものに思いをはせていたその顔が、はっ。とエールの声でまた我に返って、
「お背中に乗っていいのかえ?」
「うん、もっちろんだよ!」
「では、喜んで!」
じっとエールを見ていたティルだったが、勿論との言葉に嬉しそうに。ひらりと飛ぶようにその背中にまたがる。
「そーれ、クラウのとこまでひとっとび!」
駆ける様におお、とティルは声を上げる。そうすれば何だかティルだって負けていられないような気になって、
「ならば妾も一芸を……。白き羽根よ、祈りを乗せて花と舞え――」
と、背の翼を広げてティルは羽を飛ばした。普段は戦いのために使用する技であるが、今日は味方を治癒し防護する花の魔法陣だけが甲板の上に現れる。
「ほぅらダンスに似合いの床と成ろう?」
「――わわ、ティルちゃんもすごいっ。お花の舞台だよ!」
「わわ、凄い凄い! まるでお花畑みたいだ!」
エールとクラウンが甲板から歓声を上げる。喜びを隠せない様子のエールに、クラウンが両手を広げて、
「エルル、触っても良いですか!」
もふん。ってなんか気合十分にクラウンが言うと、
「勿論! へへ、クラウも乗ってもいいよ?」
「わ、やった……!」
頼もしい声に歓声を上げる。ひとしきり撫でて堪能すれば、
「次は……次は次は、歌って踊ろ!」
まだまだ遊ぼう、とクラウンがティルと元の姿に戻ったエールの手を取った。
「亡霊さん達も海賊さん達も一緒にっ!」
『何だ。わしらもかぁ?』
「そう! みんなも一緒に踊ろうっ。大丈夫、慣れてない人はボクがエスコートしちゃうっ」
『む、むぅ……』
「ダンスは決して得手ではないが……」
亡霊と一緒に若干しり込みするティルに、エールは笑う。
「だいじょうぶだよ、まかせて!」
「ね!」
明るいステップで跳ねて跳んで。得意でなくとも関係ない。
「ねっ、楽しいねっ」
なんて、エールがいい笑顔で笑いかけるので、
「……んむ」
ティルもまた、ぎこちなく踊りながらも笑みを浮かべた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
梅千代・匡晨
こりゃまァ、立派なもんだな……
眩しさの向こうの、帆柱に沿え立つ幹を見上げて
されど釘付けになるのはもちろん
呑めや食えやの騒いで歌う宴の方で
もちろん俺の分もあるんじゃろうなァ!
喜び勇み足で俺も混ぜろやお前らと
亡霊達の輪に飛び込むとしよう
楽しむなら1人より2人
ほれほれ、そこな独り身も
こいこい手招き
可能ならばなるべく絡んでいきたいところ
……絡み酒って言わないで!
宴や祭りはどんな奴らとでも盛り上がれるもんなの!
食べたことがないものも
もちろん好きなものも
選り好みせずに平らげるのが男ってもんよ
厨房に向かった面々が作ったものも混じっとるんかねぇ
……そういや、先刻のでっけェあれは
イカ刺しになったりせんかねぇ…。
叶・景雪
アドリブ歓迎。難しい漢字は平仮名使用。カタカナはNG。
わわっ、このにぎやかさとってもなつかしいかんじ?
若さま達もこんな風にたのしそうにしてたのをおもい出したよ。
これはもう、若さまのお家げい?ていってたのを出すしかないよね(胸ポケットから扇子を取り出しパンと広げてふんす!
あ、ちょうどいい感じだね(聞こえてきた賑やかな音と頭からはらはらと降る桜の花びらに合わせてひとさし舞い)おそまつさまでした!
久かたぶりだったけど、こうやってもり上がるのは楽しいね。
うたや曲をかなでてくれた人にはありがとうの気持ちで手をふるね。
はぁ、ちょっとのどがかわいちゃったな…あまい飲みもので、海ぞくさん達とかんぱーいするね!
「こりゃまァ、立派なもんだな……」
匡晨は空を見上げて、おぉ、と目を細めた。びかびか輝くマストの向こう側に、それを抱くように咲き誇っている桜に目をやる。
「まったく、不思議なこともあったもんだ。それに……」
くるり、と匡晨は視線を船上へと移した。そうしたら、
「わわっ、このにぎやかさとってもなつかしいかんじ?」
おおお。と何やら感動している景雪がいる。
「若さま達もこんな風にたのしそうにしてたのをおもい出したよ。おはなみえんかい。みんな大好きだったなあ」
「おや、アンタもだったのだろう?」
景雪が言っていたのは、エンパイアでの花意味の風景だ。それを感じ取ったのか、匡晨もひげをそよがせてそう尋ねる。
「うんっ」
その言葉を聞いて、よっしゃと匡晨は頷く。
「それじゃあ、ちーと行ってくるか」
「うん? 行く?」
「勿論、呑めや食えやの騒いで歌う宴の方さ!」
いうなり、匡晨は景雪の手を引いて速足で宴会の中へと飛び込んだ。
「やいやい面白れぇことやってるじゃねェか。もちろん俺の分もあるんじゃろうなァ!」
俺も混ぜろやお前らと、匡晨は亡霊達の輪に飛び込んでいく。
『おう、おう。小さいの。小さいのが二人』
『構わんが、勿論お主、やれるんだろうな?』
「勿論だ。俺を誰だと思ってる。ほれほれ、お前さんも、こっちだこっち」
「あ、う、うん……? でもぼくは、お酒がのめないから……」
「まあまあ、そういうんじゃねェよ。だったらジュースを用意してやらあ。宴や祭りはどんな奴らとでも盛り上がるのが一番なの!」
ぐ、と匡晨はご機嫌で酒を煽るので、景雪はうーん。と考えこんだ。もちろん、一緒に過ごすことに異論はない。無いのだけれども……、
「えーっと、なんだっけ。このおはなみにはつきもの、っていうのがないんだよ」
「ああん。つきもの?」
『つきものといえば、あれじゃろう』
『ああ。ああ。タイやヒラメの舞踊りじゃ』
「あ、そっか。ぼくはたいやひらめじゃないけれど、これはもう、若さまのお家げい? ていってたのを出すしかないよね」
足りなかったのは、それだと景雪はポンと手を叩いて。
「あ、ちょうどいい感じだね。それじゃあ、おはなみにもうひとつ花をそえるよ」
ちょうど誰かが演奏しているのか、賑やかな歌が近くで聞こえてきている。景雪は胸ポケットから扇を取り出して、パンと広げた。
「さあさあおたちあい……」
景雪は座る亡霊や匡晨の前に立ち、はらはらと舞い散る桜に合わせてひとさし舞い踊る。
「おう。これはいいもんだ。見事だねェ」
『うむうむ、風情がある。ところで猫の、こっちも食べるがいい』
「おっといただこうか。って。なんだこりゃ……。まあ、食べたことがないものも、もちろん好きなものも、選り好みせずに平らげるのが男ってもんよ」
見たこともない食べ物も、匡晨はご機嫌で食べていく。その間にも景雪は、くるりくるりと……、
「おそまつさまでした!」
最後の最後まで舞が終わると、おお、と拍手が巻き起こった。
『いいぞー。ちっちゃいのー』
「ああ。ああ。なかなか見事だったな」
「えへへっ。ありがとう!」
歌を歌い、曲を奏でえくれていた人に手を振って、景雪は笑う。それから匡晨の隣に戻ってくると、
「はぁ、ちょっとのどがかわいちゃったな……」
「おォ。じゃあ、今度こそジュースだなァ」
「うん、かんぱーい、しよう!」
「ん。そうすっか」
亡霊たちも共にビールを掲げる。景雪だけおいしい葡萄ジュースで、
「かんぱーい!!」
賑やかな乾杯があたりにひときわ大きく響いた。
……尚。
「……そういや、先刻のでっけェあれは、イカ刺しになったりせんかねぇ……」
次々運ばれてくる料理にふとそんなことを考えた匡晨。時々料理を見つめれば……、
「……お、おお」
「どうしたの?」
「いや。お前さん、イカは大丈夫かい?」
「うんっ。……あ、このお料理、おいしいね!」
よく見れば煮物に、焼きイカに、活け造りに。なんか見たことのあるようなあれそれが、並んでいて。
一つ手を付けた景雪が、嬉しそうに声をあげれば。そうだな。と匡晨も頷いてそれを口に運んだ。
どうやら、猟兵たちは料理上手が多いらしい。
「お腹いっぱいで、なんだかたのしいね」
そういって、景雪は上を見た。
「ああ。そうだなァ……」
いい宴だと、匡晨も天を仰いだ。
美しい桜がちらちらと、二人の上にも降り注いだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
テオ・イェラキ
ディアナ(f01023)と
完全に戦闘をする気満々のつもりでいたが、まさかこのような展開になるとはな
はてさて、幽霊とは言え、過労死寸前の料理人たちを放置は出来んな
居酒屋店主の腕によりをかけて、助太刀致そう
すまんなディアナ、俺はこの場を手伝うことにした
お前も手伝ってくれるのか?有難い
うん……大きくなったな、ディアナ
作るのは手の込んだ美味い料理では無い
素早く作れて腹に溜まって美味い、そんな三拍子がそろった料理だ
料理人では無く、居酒屋店主たる俺だからこそ作れるものだな
よぉし、どんどん持って行ってくれ!
ガンガン作るぞ!
そんなことを言っていると、ディアナの様子に気付くぞ
ふっ、お前にも用意してやるからな
ディアナ・ロドクルーン
テオ(f00426)と
うーん、まさか幽霊船での戦いがあると構えていたのにまさかの宴会が。
でも、これで気のすむまで飲んで満足したらいいんでしょ?
勿論、私も手伝うわ
料理を運んだりするくらいならできるから任せて
……おじさま、いつまでも私を小さい子扱いしないで(プンスコ
はーい、どんどん運んで行くわ。
そこの亡霊さん食べる?
とっても美味しいのよ、たくさんあるから遠慮なく食べて
甲板と厨房を行き来して
楽しそうに飲んだり食べたりする亡霊たちを見てるとこっちも楽しくなってきた
誰に聞かれることもないけど歌を口遊めば呼び止められ
そのまま厨房に戻れずに
お腹空いた、後でおじさまのお料理をつまみ食いしようっと。
テオ・イェラキは、こう思った。
「今こそ、居酒屋店主の腕によりをかけて、助太刀致すとき」
と……。
それをきいて、ディアナ・ロドクルーンはこう思った。
「……あ、おじさまが、本気になってるのね……。これは私も、頑張らなきゃ」
と……。
と、いうわけで。
「完全に戦闘をする気満々のつもりでいたが、まさかこのような展開になるとはな」
「うーん、そうね。まさかまさかよ。幽霊船での戦いがあると構えていたのにまさかの宴会が。なんて」
ざ。と即座に料理人らしく衣服をできる限り整えていくテオに、ディアナはテオの本気を感じる。
「はてさて、幽霊とは言え、過労死寸前の料理人たちを放置は出来んな。……すまんなディアナ、俺はこの場を手伝うことにした」
決意をこもった顔でテオがディアナにそう言えば、ディアナも重々しく頷いた。テオの顔を見れば、そういいだすことは分かっていた。
「勿論、私も手伝うわ。料理を運んだりするくらいならできるから任せて」
「おお。お前も手伝ってくれるのか?」
「あったりまえじゃない」
「……かなり、厳しい戦いになると思うぞ」
「わかってるよ。でも、これで気のすむまで飲んで満足したらいいんでしょ? だから、最後まで頑張りましょ」
「……有難い」
大丈夫、と、己の胸を叩くディアナに、テオはしばし黙り込んだ後、
「うん……大きくなったな、ディアナ」
「……おじさま、いつまでも私を小さい子扱いしないで」
頭を撫でようとしてディアナに嫌がられていた。
それはさておき。
テオは厨房で素早くメニューを考える。
「手の込んだ料理は今は必要ないな……。必要とされているのは、素早く作れて腹に溜まって美味い、そんな三拍子がそろった料理だ」
料理人では無く、居酒屋店主たる俺だからこそ作れるものだな。なんて何やら真面目な顔をして考えること数秒。
「……見えた」
これだ! とばかりに、ておはがっしと野菜を掴んだ。
「おじさま、おーじーさーまー! できてる?」
「ああ。そこのを順番に持って行ってくれ」
「うっわ、いい匂い……!」
並べられた皿を端から手に取って、ディアナは甲板へと向かっていく。
「はーい、お料理よ。そこの亡霊さん食べる?」
『おお、それは何だ!?』
『こっちだ、こっちにくれ!』
甲板に上がれば、即座に酔っぱらいたちの声がかかる。
「とっても美味しいのよ、たくさんあるから遠慮なく食べて」
『こっちだ、こっちにもくれ』
『ああ。なんだこれは。辛くて……でも甘くて、酒に合う……』
『む……。何とも羨ましい。こっちにも持ってきてくれ』
「おじさま。全然足りないよ。もっとお料理追加ー」
「よぉし、ガンガン作るぞ! どんどん持って行ってくれ!」
「それと、リクエストもあってー。お酒に合う甘いものが……」
「ああ……。ありがとう。助かります。本当に助かります……」
「泣いている暇があったら手を動かせ。俺は今、本当に、感動しているぞ……!」
作っても作っても、美味しそうに食べられてそれを求められるなんて料理人冥利に尽きると、
泣いているコックに、テオは豪快に笑う。
「はいはい。じゃあこっちも、貰っていくからねー」
見事に積みあがっていく皿をもって、ディアナは再び厨房と甲板の行き来を再開した。
「どーぞ。お料理お持ちしました~」
『おお。よきかなよきかな。どれ、お嬢さん酒を注いでくれんか』
「はーい。いいよ、それくらい」
『おう、こっちも頼む!』
「こっち? こっちってどっち?」
『こっちじゃこっち。お主さっき歌を歌っておっただろう。折角じゃここでひとつ歌え』
「へ? き、聞かれてたのね。でも、厨房に……」
『おう。落ち武者殿。それがいい。どれ、わしが一つ増えでも奏でよう』
『そういえば俺はほら貝を持っているぞ!』
我も我も演奏できると上がる声に、会話の端々で酒を飲んでいる酔っぱらいの気配がする。なんだかそれがあまりに楽しそうで、
「わかったー。じゃあ、一曲だけね!」
『よっ。待ってました!』
多分一曲で済まなさそうだな。と、ディアナは思ったけれども、悪い気はしなかった。
そうして死ぬほど歌って踊って笑ってついでに料理をあーん。と食べさせてあげたりなんてしたところで、ディアナは自分が最初にしていた仕事を思い出した。
「あ~。ただいま~」
それで。てへへ。と笑いながら戻ってきたディアナに、やっぱりまだ料理をしていたテオが肩越しに振り返る。料理は誰かが順次運んでくれたのだろう。運ぶの、ないな……なんて。ちょっと考えていた、ところで、
「ふっ、お前にも用意してやるからな」
何もかも見透かしたように、テオが言うので、ディアナはふふっと笑って肩をすくめた。
「いいのよ。後でおじさまのお料理をつまみ食いするから」
「用意しているといってるじゃないか」
「あら。つまみ食いもまた、乙なものなのよ?」
ふふふん。と、なぜかそこで自慢げになるディアナに、
「じゃあ、この特別料理も運んでもらっていいんだな? ディアナが好きだと思っていたんだが……」
「あ、ちょっと待って、おじさま、いじわる」
にやりと笑うテオ。どうやら、テオのほうが一枚上手のようであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
櫻宵とお揃いの桜を揺らしたまま
わぁすごいね、おばけの船!
おばけがいる……少し怖いので櫻宵の後ろに隠れる
大丈夫と撫でられれば笑みが咲く
美味しいご飯を食べるのもいいし船の桜を観るのもいいな
なんだって君となら
櫻、酔いはもう覚めた?
甘えん坊な櫻もかわいくて、とっても癒されていた
だって僕に甘えてくるなんてあまりないんたもの
覚めてない?
いいよ甘えてきて
なでなでしてあげる
あ!そうだ
夜桜を背景に、歌うよ!
ふふ
僕は歌姫で座長なんだから
こういうのを、らいぶ、っていうんでしょ?
桜吹雪に水泡を揺蕩わせて
大好きな君のため歌う―「望春の歌」
春をうたおう
愛をうたおう
満開に咲き誇るように!
……実は君、酔ってないだろ?
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
あら
桜纏う幽霊船なんて、何だか退廃的で美しいわ
うふふ
ほろ酔い気分のまま、怯える可愛らしい人魚をみやる
大丈夫よ、良い幽霊たちのよう
悪霊だったら私が祓ってあげるわ
柔く撫でてあげればお揃いの桜が揺れて
嬉しくて笑みが零れるわ
酔っ払いのふりをして、猫のように甘えてみせる
可愛らしい笑顔が嬉しいの
擽ったいわ
普段はあまり、甘えられないんだもの
…私、大人だしね……
ああそうね!歌って頂戴!
歌姫様の美しい声が桜に響いて、夜を彩る
なんて素敵なのかしら!!
月夜の人魚、桜に水泡
歌われる恋と愛のなんと美しきこと
私だけの特等席で
楽しませて頂戴な
うふふ
どうかしらね?
なんてウインクひとつ
リルと櫻宵はお揃いの花の乗った頭を揺らしていたが、
「わぁすごいね、おばけの船!」
ひゃっ。とリルのほうはその花を揺らして、櫻宵の後ろに隠れこんだ。
「おばけがいる……」
ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ。
でっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ。
酒を煽ってゲラゲラ笑う亡霊たちは、リルの目には恐ろしく映って。
若干泣きそうなリルに、櫻宵は平然と目を細めた。
「あら。桜纏う幽霊船なんて、何だか退廃的で美しいわ。……うふふ」
櫻宵の後ろでプルプル震えているリルは、ほろ酔い気分の櫻宵にはなんだかとても可愛らしく映る。
「大丈夫よ、良い幽霊たちのよう。……それに、悪霊だったら私が祓ってあげるわ」
「そう……なの?」
「そうよ。私がいれば大丈夫……。そうでしょう?」
優しく櫻宵はリルの頭を撫でる。撫でるとお揃いの桜がかわいらしく揺れる。
「……ん」
撫でられると、徐々にリルも落ち着いてきて。
「うん……。櫻宵と一緒なら、怖くない……」
小さく、笑みを浮かべるリルに。櫻宵からも嬉しそうに、笑みがこぼれた。
「じゃあ、どうしようかな……。美味しいご飯を食べるのもいいし、船の桜を観るのもいいな」
元気を取り戻したリルは、そう言ってやれることを指折り数える。
「なんだって君となら、きっと楽しいよ」
「うーん。そうねえ……」
さあ、何して遊ぼうか。なんて笑うリルに櫻宵はうふふ、うふふと微笑んで。
「私はこうして、あなたと一緒にいるだけでいいのよ?」
ゴロゴロと猫のように甘えこむ。
「櫻、まだ酔ってるの? それとも、酔いはもう覚めた?」
先ほどみたいに酔っぱらい。……みたいなふりをしながら、甘えてくる櫻宵にリルは微笑む。
「あら。バレちゃった。そう。実は私、酔ってないの。ただ甘えん坊な猫さんなの」
その言い方が、酔っぱらいの主張そのものだったので、リルは笑った。
「甘えん坊な櫻もかわいくて、とっても癒されていたんだよ。だって僕に甘えてくるなんてあまりないんたもの。だから……覚めてない? よね?」
「ええ。ええ。リルがそういうのなら、きっとそうなのかもしれないわ」
「もう、何それ。……いいよ甘えてきて。なでなでしてあげる」
訳が分からないよ。なんて言いながらもリルは笑っている。本当のところどっちなのか、どうにもリルには判断がつかない。
そんなかわいらしいリルの笑顔が嬉しくて、櫻宵もまた笑顔になる。
「ああ。擽ったいわ。……でもね、普段はあまり、甘えられないんだもの。……私、大人だしね……」
「大人だって、たまには甘えていいんだよ」
「そうねえ……」
うーん。と、いいながらもそのまま甘えていた櫻宵であったが……、
「あ! そうだ。夜桜を背景に、歌うよ!」
ふいにリルがそう声を上げた。自分に、できること。ぱあっと、櫻宵が表情を輝かせる。
「ああそうね! 歌って頂戴!」
即座に返ってきた明るい返事に、リルも楽し気にうなずく。
「ふふ。僕は歌姫で座長なんだから……。こういうのを、らいぶ、っていうんでしょ?」
と、いうと、リルは櫻宵から数歩離れた。
そのまま両手を広げると、桜吹雪に水泡を揺蕩わせていく。
歌う歌は最初から決まっていた。
大好きな君のため歌う、「望春の歌」だ。
「心に咲く薄紅を風に委ねて散らせよう。麗らかな春を夢見、幾度でも花咲く曙草――常夜、揺蕩い惑いて花咲く私を。どうか君よ、忘れないで……」
柔く優しく暖かく、抱くような蕩ける歌声が周囲に響き渡る。泡と桜の花吹雪が周囲に舞い散っていく。
ああ。と櫻宵は目を見開いてその光景を目に焼き付ける。
「歌姫様の美しい声が桜に響いて、夜を彩る。……ああ。ああ。なんて素敵なのかしら!! なんてすばらしい瞬間なのかしら!」
嬉しそうな櫻宵の声に、リルも歌声に熱が入る。
春をうたおう。
愛をうたおう。
満開に咲き誇るように!
「(月夜の人魚、桜に水泡。……歌われる恋と愛のなんと美しきこと)……私だけの特等席で、楽しませて頂戴な」
ああ。綺麗だと、櫻宵はつぶやいて。
「……実は君、酔ってないだろ?」
ようやく気付いたらしいリルに、
「うふふ、どうかしらね?」
櫻宵はウインクをひとつして、内緒。なんて笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
【荒屋】
…先程までのことは、忘れて下さい
羞恥は誤魔化し、素に戻り
次は宴会
気が済むまで、酌み交わしましょう
亡霊さん達に遠慮なく混ざりに
いばらさんは…お花さんなら
無理せず、お水もあると思うが
一口試してみるかい?
ジャハルさんはいける口とのこと
幾つか試し一番うまいのを…
どうぞ、一献!
海の男達の豪快な飲みっぷり
おっと、樽ごと?
飲み比べには負けるわけには行きませんね(ザル)
ほろ酔いの君を見て、冷たい水あれば
果汁入れ手渡し
一芸をしてみるのも良いか
三人合体技、いきますか?
ジャハルさんに射出してもらったら
宙で回転して、いばらさんの網に着地を目指す
ははっ、桜の花にばらのしろ
絶景かな
夜が明けるまで、笑っていけるなら
ジャハル・アルムリフ
【荒屋】
忘れようと思い浮かべれば焼き付く記憶
…難しいが、努力しよう
静かになった冴島へと頷き
死して尚騒ぎたがるとは
筋金入りの酒好き揃いのようだな
さほど好みも酔いもせぬが
勧められれば断る道理もなし
では、返杯だ
して大丈夫か、いばら
近くの布で仰ぎ風を送りながら
…空気で酔えるとは知らなんだ
程よく亡霊達が盛り上がったところで
…気に召すかは分からぬが
翼で滑空、片腕で支えた冴島を
羽ばたきの勢いに乗せ高く射出す人間大砲
風に渦巻く薄紅の尾を引いて
あとは頼むぞ、いばら
万一落としたら恐らく「め」では済まぬ故
もう一度観たければ
或いは挑戦を望むなら
そこな酒精の強い樽を干した者から叶えよう
桜の花弁を渡し賃に
笑って通る花道を
城野・いばら
【荒屋】
気分は未だ少しふわふわ
あら!今度は海の上でお茶会かしら
いばらはお日様いっぱい浴びたから十分なのよ
お酒を注いだりお皿を引いたりお手伝いを
ね、ね、二人はお酒は飲めるって聞いたから
コックさんから沢山、もらって来たわ
酒樽どーん
これなら亡霊さん達とも一緒に飲めるかなって、ふふふ
飲まずとも、漂う香りと賑わいでほんのりほろ酔い良い気分
頂いたお水と風が心地よくて、少しうつらと
技自慢がはじまれば
いばら達も何か…合体技!
冴島砲にワクワク…キャッチ頑張るわ
不思議な薔薇の挿し木を、
マストに伸ばして葉と花弁でふわふわ網状に仕上げて
フルリールでスタンバイ
ふふ、桜さんも一緒に遊びましょ
ふわふわひらひら、みんなに届け
「……先程までのことは、忘れて下さい」
類は小さくなっていた。
正確に言うと小さくなろうとしていた。
だが、小さくなるにしては少々大きすぎたようだ。
ジャハルはちんまり甲板の上で正座している類から、ちょっと視線を逸らす。
「忘れようと思い浮かべれば焼き付く記憶。……難しいが、努力しよう」
「だいじょうぶよっ。いばらは忘れたわ! まだいばらは少しふわふわしているけれど、とにかく忘れたわっ」
「うう、ありがとう、ジャハルさん、いばらさん……」
優しい言葉にじんわりとした温かさを感じる。
類はいそいそと正座をやめて立ち上がると、ちょっと照れたように笑った。
「それで、次は……」
「あら! 今度は海の上でお茶会かしら」
ようやく周囲に目を向ける余裕ができた。類がちょっと首を傾げて甲板の上宴会場を覗き込む。
「お茶会……まあ、お茶会……かなあ」
「ふん。死して尚騒ぎたがるとは、筋金入りの酒好き揃いのようだな」
「? お茶会ではないの?」
類が言葉を濁し、ジャハルが肩をすくめるので、不思議そうな顔をいばらがする。
「そうだね。これはお茶会っていうより……宴会? お酒を飲んで、歌って踊ったりするんだよ」
「宴会! よくわからないけれども、楽しそうね」
『おー。お嬢ちゃん可愛いねえ。こっちにおいで』
「はーい。おじさまいばらを呼んだかしら」
「めっ。いばらさん、ついて言っちゃめっだから……!」
「……忘れろというその口で、思い出させることを言うのか、お前は……」
ジャハルが頭を抱えたという。
それはさておき。
「さーて。いばらさんの安全も確保したことだし、気が済むまで、酌み交わしましょう」
「さほど好みも酔いもせぬが、勧められれば断る道理もなし」
『おう。じゃんじゃん呑め。お前らももっと呑め。ここにいるなら飲まなきゃ損損』
「ああ。頂いている。……では、返杯だ」
「ふっふっふ。いばらはお日様いっぱい浴びたから十分なのよ。じゃあこのお皿、片づけてくるからね」
「はーい。気を付けて行ってきてねー」
ご機嫌な亡霊たちの酒盛りに混ざる類たち。いばらは皿を引いたりお酒を注いだり、目っと言われない範囲でお手伝いをしていた。……そんなとき、
「ね、ね、二人はお酒は飲めるって聞いたから、コックさんから沢山、もらって来たわ」
ごろごろごろごろごろごろごろごろ。
でっかい酒だるをゴロゴロ転がしながらいばらは戻ってきたのだ。もちろん、中には並々酒が入っている。
「これなら亡霊さん達とも一緒に好きなだけ飲めるかなって、ふふふ」
「おっと、樽ごと?」
『おおっ。お嬢ちゃんまたすごいの持ってきたなあ……!』
『そっちの兄ちゃんたちが多すぎて泣いちゃうんじゃねえか?」
「あ。そういうこというんだ? けど、飲み比べには負けるわけには行きませんね」
やんややんやと盛り上がる海賊たちに、類が何だか自信満々にそんな顔をしている。ざるなので、自信がありますという顔に、ジャハルはさっさと樽の中を開けていた。類はそれに気付いて、
「ジャハルさんはとってもいける口とのこと。幾つか試し一番うまいのを……」
「ん、なんだ。毒見をするつもりか?」
「そういうことかも。うん、これがいちばん美味しい! どうぞ、一献!」
『なんじゃ。一番うまいとはどういうことじゃ。わしらにもよこせ』
『そりゃ可愛い女の子が持ってきてくれたもんが、上手いに決まっているよのぉ』
早速酒に群がる海賊たちでもある。
いばらはそうやって喜んでもらえるのが嬉しくて、ちょっと離れた邪魔にならないところでみんながおいしそうにお酒を飲む様子を見ていた。
別に、飲んだわけではない。でも飲まずとも、漂う香りと賑わいでほんのりほろ酔い良い気分になってくる。
そんな楽しげな喧騒を、どれぐらい瞼の裏側で感じていたのだろうか……、
「いばらさん……お水があったよ。ほら……どうぞ」
僅かにうつらうつらしていたようだ。いばらがうっすらと目を開けると、果汁を入れた水を類は差し出した。
「大丈夫か、いばら。……空気で酔えるとは知らなんだ」
「ん……」
どうやらずいぶん心地よいと思っていたら、ジャハルが布で仰いでくれていたのだろう。
「ありがとう……大丈夫よ」
二人のおかげ。と、お水を受け取りながらもいばらは笑う。
「そうか。では……」
「ああ。なら……」
いばらの様子に、ジャハルと類はすっくと立ちあがった。そうしてすっかり出来上がって、妙な踊りでも始めている亡霊たちに声をかける。
「……気に召すかは分からぬが」
「うん。三人合体技、いきますか?」
「まあ! 技自ね! いばら達もそう……合体技! チャレンジするわ!」
「ならば……」
見よ!
とばかりに、ジャハルは翼を広げて空へと舞い上がった。片手で類を抱えている。
何だなんだと、こちらを見上げる視線が何とも面白い。
「せい!」
いい感じに勢いをつけてジャハルは飛ぶ。そしてそのまま、
「人・間・大・砲!」
「あ~れ~!」
羽ばたきの勢いに乗せ高く射出した。風に渦巻く薄紅の尾を引いていく。類の棒読みな悲鳴が周囲に響いた。
おおお、と歓声が上がる中、類は高々と天まで舞い上がる。そのまま空中でくるりと一回転。
「ひゃー!」
そうして類は……、
「あとは頼むぞ、いばら。万一落としたら恐らく「め」では済まぬ故」
さっとジャハルが、類に当たらないように場所を移動しながら声をかける。
「ええ。冴島砲のキャッチ……頑張るわ! そーれ。今日はたっくさんおひさま浴びて元気いっぱい。さぁ、何処までいこうかしら!」
ひばりの歌うような声とともに。不思議な薔薇の挿し木をマストに伸ばす。そのまま葉と花弁でふわふわ網状に仕上げてて。いばらはネットを作った。
「ははっ、桜の花にばらのしろ!! 絶景かな」
言いながら、類は落ちた。
いばらの網に身を包まれて、ぐにーん。と反動をつけてもう一回飛び上がる。
「ふふ、桜さんも一緒に遊びましょ。ふわふわひらひら、みんなに届け~!」
「もう一度観たければ……。或いは挑戦を望むなら。そこな酒精の強い樽を干した者から叶えよう」
わーいわーい。と遊ぶ類といばらに、ちゃっかり地上に戻ったジャハルが言っている。
『おう。俺も空飛んでみてえなあ……!』
海賊たちは笑いながらそんなことを言って。それじゃあ、なんて酒樽に手を伸ばした。
桜が揺れて、花が散る。
夜が明けるまで、きっとそうして。みんなで楽しく、笑っていることだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【🍯👓】
酔っ払い継続:スキンシップ増
エスタやガイに抱きついて頬ずり
いや~俺の宝が大集合って感じで最高だな
酒がうまい!
おいおい、シェフィーどこ行くんだよ
海賊が獲物を逃がすと思ったか?
鎖で縛られたシェフィーをキャッチ
抱え込みその場に腰を落ち着け
ああ、外で宴会も悪くねぇな
蜂蜜酒で乾杯だ
エスタは下っ端じゃねえぞ
けどエスタが作ってくれるならうまい飯が食えるな
エスタ、あとパンケーキも
5段重ねで頼む
うまい飯にはうまい酒だろう!
シェフィーももっと飲めよ
グイっと杯をおしつけ
自慢の家族を褒められドヤ顔で
けどガイもエスタもやらねぇぞ
抱え込んで主張
奪われたならさっきと同様奪い返す
代わりにお前が俺のになれば解決だろ
エスターテ・アレグレット
【🍯👓】
あー、隠れてたのに捕まってしまった
アリエくん酔っぱらってるし。シェフィくんまでいるし…
面倒だなあ
下っ端って…一応年上なんすけど、まあいいか
はいはい、ガイくんがせっかく魚獲ってきてくれたんなら料理してあげますよ~
ドルチェにパンケーキ了解
レシピ通りなら変な味にはならんはず
手持ちのレシピを参考にアクアパッツァとパンケーキを調理
で、自分用にクリーム、チョコ、蜂蜜増し増しのパンケーキも一緒に調理
…これくらいしないと味わかんないんだよね
相当甘いと思うけど、アリエくんのも同じにしとくか
口にあったみたいでよかったっす
…ん、この子酔うとキス魔になんのか…こわ
えー、僕のことはほっといてくださいよ
ガイ・アンカー
【🍯👓】
アドリブ◎
突撃してきたアリエを受け止め
おう、遅れて悪いな
…ってか、もう出来上がってるな
…おっと
桜に逃げようとするシェフィーネスに結びの鎖を絡まさせる
そう簡単に逃さないぜ
なあ、アリエ?
遠慮なく宴と行こうじゃねえか
…っと、そうだ
エスタ!こいつで美味いもん作ってくれねえか?
来る途中で獲ってた魚数匹渡し
手土産だ
桜の下で酒と美味い飯
はは、格別だな!(※酒豪)
流石だな、とエスタの肩を軽く叩く
って、あーあー…
キスされても動じず
ほー。随分と積極的じゃねえか
面白がりつつも…狩るような眼光を一瞬だけ
まあ、手くらいは貸してやるよ
あー。心配しなくても俺はお前の錨だよ
アリエの頭をぽんぽんと
お、そいつは名案
シェフィーネス・ダイアクロイト
【🍯👓】
桜の精残す(冬桜
朝まで私も宴会場に居ろと
耐えられん
ましてや貴様等が同席
騒々しい
静かに桜愛でようと離脱…出来ず
鎖で縛られ悔し気
(私が背を見せたにしろ此の包囲網侮れん)
莫迦共が
無駄な事を
…魚獲ったのか(豪傑な輩だ)
其処の下っ端(アレグレットへ
私の口に合うような料理を出せ
一夜限りの戯れと割り切る
毒味は他人任せ
魚料理に舌鼓
パンケーキは蜂蜜とバター乗せ行儀よく食す(幼少時の癖
私は一滴も飲ま、!
酒は飲むフリしかしておらず弱い
キス魔に
料理、美味だった
賞賛に値する(顎クイキス
アンカーが船長を慕うのは気が知れんが
手を組むなら貴様とが良い(上辺の言。啄むキス
アリエ・イヴ…貴様未だ足りぬのか
鼻につく奴だ
「エスタ! ガイ!」
アリエが声を上げたとき、エスターテ・アレグレット(巻き込まれる男・f26406)は若干嫌そうな顔をしていた。
「あー……」
隠れていたのに、捕まってしまった。
「アリエくん酔っぱらってるし。シェフィくんまでいるし……。面倒だなあ……」
アリエに抱き着かれて頬擦りをされながらも、エスターテはため息をついている。
一方、
「おう、遅れて悪いな。……ってか、もう出来上がってるな」
ガイはてなれたもので、突撃してきたアリエを平然と受け止めていた。
「いや~俺の宝が大集合って感じで最高だな。酒がうまい!」
そんなエスターテの様子には全く気にせず、アリエはご機嫌である。
そしてその間に……、
(朝まで私も宴会場に居ろと……。耐えられん。ましてや貴様等が同席……騒々しい)
そっとその場を離れようとするシェフィーネス。やってられないとばかりに頭の桜を揺らして、どこか人気のないところにでも退避しようとして……、
「……おっと。シェフィーネス。そう簡単に逃さないぜ」
ガイが結びの鎖を投げつけた。それでくるくるとシェフィーネスを縛り上げる。それからにやりと笑って、
「なあ、アリエ?」
なんていうので、アリエも肩をすくめた。
「おいおい、シェフィーどこ行くんだよ。海賊が獲物を逃がすと思ったか?」
くるくるくるー。とガイがシェフィーネスと鎖を引っ張って引き寄せて、それをアリエガキャッチする。そのまま抱え込んで腰を落ち着けると、
「ああ、外で宴会も悪くねぇな。蜂蜜酒で乾杯だ」
ほれほれ、とばかりに酒を掲げるので、
「……」
ぐぬぬぬぬ、と。シェフィーネスは悔し気にするのであった。
(私が背を見せたにしろ此の包囲網侮れん……)
「そういうことだ。遠慮なく宴と行こうじゃねえか!」
ガイもこれで全く仕事が終わったとばかりに腰を下ろして酒を受け取る。受け取りながら思い出したように、
「……っと、そうだ。エスタ! こいつで美味いもん作ってくれねえか?」
そういいながらも、来る途中で獲ってた魚を数匹、エスターテにポンと手渡す。
「手土産だ」
「えー。僕がやるんっすか? ……とれたてっすね」
渡された肴に、面倒くさい、と言いたげな顔をありありと出しながらも、エスターテは文句を言いながらその魚を受け取る。
「何と……莫迦共が無駄な事を。魚など獲ったのか」
豪傑な輩だ。とまでは口に出さずに、シェフィーネスは睨むようにガイのその魚を軽く見た。
「其処の下っ端。そう、貴様だ。アレグレット。私の口に合うような料理を出せ」
「下っ端って……一応年上なんすけど、まあいいか」
なんかその恰好ですごまれても全然怖くないっすね。とまではエスターテは口に出さなかった。多分、面倒なことになるのはちゃんとわかっていたからだ。
「はいはい、ガイくんがせっかく魚獲ってきてくれたんなら料理してあげますよ~」
呆れたように言うエスターテに、アリエが口を挟む。
「おう。頼んだぞ。……あシェフィー、とエスタは下っ端じゃねえぞ。……けどエスタが作ってくれるならうまい飯が食えるな」
「うぇ?」
「エスタ、あとパンケーキも。5段重ねで頼む」
「……ドルチェにパンケーキ了解」
アリエの言葉にエスターテは引き攣りながらも了承した。了承するのが多分一番、面倒がないということを知っていたからだ。
そして……。
「桜の下で酒と美味い飯……。はは、格別だな!」
ガイの豪快で、楽しそうな声が響いた。がっ。と酒を飲み干して、またついでいく。酒豪はご機嫌で料理に酒にと手を付けて行くので、アリエもご機嫌で、
「ああ! エスタはすごいといっただろう! そして、うまい飯にはうまい酒だろう!」
どや顔で得意げである。その横でシェフィーネスは大人しく料理を貰うことにする。
「(これは一夜限りの戯れだ。そう、戯れ……)……ああ。言われた通り確かにこれはなかなかうまいな……」
そこは認めよう。とものっそぶっちょづらでシェフィーネスは言う。行儀よくパンケーキに蜂蜜とバター乗せ手食べている様子に、ああー。とエスターテは頬を掻いた。
「ああ。さすがだな、エスタ!」
ガイにも肩を叩かれたエスターテ。
「(別に……レシピ通りなら変な味にはならんはず。って手持ちのレシピを参考に作っただけなだよねぇ……。ていうかなんでみんなあれ(パンケーキ)普通な顔して食べてるんだろ……。相当蜂蜜入れたのに。クリームもりもりなのに。チョコタワーなのに。……僕はいいんだよ。これくらいしないと味わかんないんだよね。けれども相当甘いはずなんだよね。アリエくんのも同じにしといたけど。いいの、あれ。本当にいいの……?)……口にあったみたいでよかったっす」
物凄い熟考の末にそう言ったエスターテであったという。
「でも、材料がよかったのもあるっすよ。この魚とか本当に新鮮だったし」
「確かに、これは……」
「アクアパッツァ」
「そう。アクアパッツァとやらも本当によくできている。肴の味がうまいのは認めよう。やるではないか、下っ端たち」
「ふふーん。ガイもエスタも下っ端じゃないがそうだろう。すごいだろう。……けどガイもエスタもやらねぇぞ」
「誰もいるとは言ってないだろう」
「それはそれでなんかあれだな。シェフィーももっと飲めよ」
「は!? どうしてそうなる。私は一滴も飲ま、!」
「……って、あーあー……」
それまで。
彼らのやり取りを眺めてそれで酒を飲んでいたガイが、小さく声を上げた。アリエがシェフィーネスに酒を飲ませると、シェフィーネスの表情がつるりと変わり、
「料理、美味だった。賞賛に値する」
シェフィーネスは隠しているつもりであったが、彼は酒は飲むフリしかしておらず弱買った。そして飲むとキス魔になるのであった。
言葉と共にエスターテにキスをするシェフィーネス。エスターテのほうはというと、
「……ん、この子酔うとキス魔になんのか……こわ。えー、僕のことはほっといてくださいよ」
心底面倒くさそうな顔をしていた。
「貴様もだ。いい手土産を持ってきた」
次はガイがターゲットである。
「ほー。随分と積極的じゃねえか」
面白がるような視線を向けながらも、ガイは肩をすくめる。そんなガイにもシェフィーネスはキスをして、
「アンカーが船長を慕うのは気が知れんが、手を組むなら貴様とが良い」
「まあ、手くらいは貸してやるよ」
ガイのほうは動じることなくそうそつなく返事をするのである。
「……だから、言ってるだろ。二人はやらねぇって」
その様子に、アリエがはいはい撤収、と言わんばかりにエスターテとガイを抱え込む。ガイが笑って、
「あー。心配しなくても俺はお前の錨だよ」
アリエの頭をぽんぽんとと軽くたたいた。シェフィーネスは据わった目で、
「アリエ・イヴ……貴様未だ足りぬのか。鼻につく奴だ」
そんなことをいうので、アリエは肩をすくめた。
「奪われたならさっきと同様奪い返す。代わりにお前が俺のになれば解決だろ」
「お、そいつは名案」
アリエの言葉にガイがあっさりそういって、おかしげに笑う。シェフィーネスの不満げな顔。そしてエスターテは若干ええ……って言いたげな顔をしていた。
「っし、ってわけで祝いだ。まだまだ飲むぜ!」
ご機嫌な声にめいめいが返答をする。
宴はまだまだ、これからだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
筧・清史郎
【花宴】桜樹上へ
ほう、これはまた賑やかだな
ああ菊里、花も団子も目一杯楽しむとしようか
先程は有難う、ご苦労様
そう順に菊里の狐式神さん達をもふもふ撫で労いつつ
御馳走や沢山の甘味に舌鼓を(寧ろ甘味メインな超甘党大食漢
美味な御馳走や甘味に夜桜の景色、そして友と過ごすひとときは贅沢だな
ああ、折角の舞台、存分に心行くまで食べ飲み明かそう(微笑み
誕生祝いも有難う、今年も皆と過ごせて嬉しい
またこれからの1年も、皆と楽しい時を共有できれば幸いだな
美味な酒や甘味を口にすれば、頭上の桜がぱっと綻び咲く
伊織の桜のアンテナも満開で良いな、と揃いの花咲かせにこにこ笑みつつ
写真撮影も勿論喜んで(頭上の桜を気に入っている模様
千家・菊里
【花宴】桜樹上へ
この眩さも今の気分には丁度良いですね
誰もが良い夜明けを迎えられるよう、明るく楽しく花も団子も堪能しましょうか
(大皿に化けた狐達にふよふよ空中浮遊で山盛御馳走を運んで貰いつつ――未だにほろ酔い気味で常以上に緩く笑い)
(化けずにお裾分け待ち狐も若干!)
然し絶景ですねぇ
食べ飲み明かすにはうってつけの舞台――そして、改めて祝杯をあげるにも最高の光景
お誕生日おめでとう御座います、清史郎さん
今宵の様に、華やかで晴れやかな日々を
ええ、これからも是非(上機嫌に笑い)
あ、樹上の花見は勿論、お二方の頭上も本当に楽しいですねぇ
ふふ、話にも頭にも花咲く一時とは実に良い
(またすかさず笑顔満開な写真を!)
呉羽・伊織
【花宴】桜樹上へ
気分的にも視覚的にも凄い明るいな!
この様子ならそりゃもう気分良く朝を迎えられるだろーさ
――いや料理人は大変か!(大皿と狐と大食漢達を眺め)
よしよし、お座り、お手!…って冗談だって無視らないで、オレもちゃんとお礼するから!(狐と遊びつつ、花も団子も同じく目一杯腹一杯に!)
見渡す限りの花に果てない海と空
こうして皆で味わう絶景と宴は格別だよな
ああ、この夜と――友人の誕生日を祝して、今一度乾杯を!
ホントオメデト、清史郎!
この桜の如くに目映く幸い咲き誇る日々を――そーだな、この先も一緒に!
…はっ、満開!?まさか気分と連動…!
また妙な思い出も増えてしまった!
(言いつつも満足&満開な笑みで)
「……なんか……」
伊織は思わず、という感じで呟いた。
「気分的にも視覚的にも凄い明るいな!」
ピカピカしている!! という主張は間違ってはいない。
現にピカピカしていた。マストが。イカ漁船的なあれで。
「ほう、これはまた賑やかだな」
「この眩さも今の気分には丁度良いですね」
続いて木の上に登ってきた清史郎と菊里。三人並んで腰を降ろせば、
「誰もが良い夜明けを迎えられるよう、明るく楽しく花も団子も堪能しましょうか」
「ああ菊里、花も団子も目一杯楽しむとしようか」
割と頼もしいことを言って笑うので、伊織も笑って足元を見やった。
甲板は何やらにぎやかしい。あっちこっちで歌を歌う声、酒を飲む乾杯の音頭が聞こえてきている。
対してこのマストの上はとても静かで。まばゆいが桜に埋もれるようでいて、遠くに聞こえる喧騒も、非常に風情があるのであった。
「この様子ならそりゃもう気分良く朝を迎えられるだろーさ」
ははは。と伊織は笑って清史郎と菊里のほうに目を向ける。目を向けながら……、
「――いや料理人は大変か!」
思わず突っ込んだ。
「何でしょう?」
「いや、なんでしょうっていうか……!」
大皿に化けた狐達にふよふよ空中浮遊で山盛御馳走を運んで来ている。
菊里の式神であった。化けずにお裾分け待ち狐も若干、清史郎の隣に並んでいる。菊里はまだ酔いが残っているのか、若干ご機嫌である。
「ああ。先程は有難う、ご苦労様」
そしてお裾分け待ち狐たちを、清史郎はモフモフしている。もふもふしているが運ばれてきた御馳走には、
「おお。桜餅に柏餅か……。さすが菊里の狐だ。わかっている」
早速手を伸ばしていた。大皿に山ほど盛られた甘味があった。……清史郎の甘味好きをよくわかっている。
「ははは。確かに賢いなあ! よしよし、お座り、お手! ……って冗談だって無視らないで、オレもちゃんとお礼するから!」
その横では伊織が狐にしょうもないことを言って、せいやと団子を奪い取られていた。
そんな二人を、ふふ、と菊里は眺めている。狐は自分の式神であるので、好きかってしている様子がまた面白い。
「然し絶景ですねぇ」
木の上で足をぶらぶらさせながら、菊里は目を細めた。
「ああ。見渡す限りの花に果てない海と空。……こうして皆で味わう絶景と宴は格別だよな」
仕舞には足跡つけられた伊織が、それを気にすることなく団子をつまんで遠い海の先を見やる。
「ああ。美味な御馳走や甘味に夜桜の景色、そして友と過ごすひとときは贅沢だな……。折角の舞台、存分に心行くまで食べ飲み明かそう」
清史郎は微笑むと、勿論、と菊里がすぐに答える。それから……、
「食べ飲み明かすにはうってつけの舞台――そして、改めて祝杯をあげるにも最高の光景」
ふ。と。まるでいたずらをするように一呼吸。菊里は置いて、
「お誕生日おめでとう御座います、清史郎さん」
そういって、にっこり微笑んだ。
「ああ、この夜と――友人の誕生日を祝して、今一度乾杯だ! ホントオメデト、清史郎!」
かんぱーい! と、伊織も豪快に杯を上げると、菊里もそれに即座に応じる。一呼吸おいて、清史郎もそれに倣った。
「誕生祝いも有難う、今年も皆と過ごせて嬉しい」
若干意外だったのか。それともあまりに嬉しかったからか。清史郎は一つ頷いてから、
「またこれからの1年も、皆と楽しい時を共有できれば幸いだな」
そうしてまた微笑むので、菊里は上機嫌に笑った。
「今宵の様に、華やかで晴れやかな日々を……。ええ、これからも是非」
「そーだな! この桜の如くに目映く幸い咲き誇る日々を――この先も一緒に!」
もう一回! とばかりに伊織が杯を掲げるので、
乾杯! と、二人もそれに合わせた。
「あ、樹上の花見は勿論、お二方の頭上も本当に楽しいですねぇ。ふふ、話にも頭にも花咲く一時とは実に良い」
「んん!?」
すかさず菊里はシャッターを押している。どこからか。割と素早かった。
「……はっ、満開!? まさか気分と連動……!」
「知らなかったのか。先ほどから、美味な酒や甘味を口にすれば、頭上の桜がぱっと綻び咲いていたぞ」
えええ。と頭に手をやる伊織に、清史郎が不思議そうな顔で答える。むしろなんで気付かなかったのか。と言いたげな表情に、
「あー……。また妙な思い出も増えてしまった!」
「ふふ。伊織の桜のアンテナも満開で良いな」
清史郎の指摘に、だーっ。と伊織は首を横に振る。頭を抱えたりなんてしながらも、その桜が満開であることが何よりその言葉を表していて、
「ほら、そんなに俯いていないで。もう一枚行きますよ!」
笑顔満開な写真を! と主張する菊里。反射的に顔を上げて笑顔を見せる伊織。
「……って、何枚とるつもりだ?」
「うん? 俺は何枚とってもいいぞ。きっといい思い出になる」
あとで焼き増ししてほしい。なんて言う清史郎は相変わらずゆっくりと微笑んでいる。
「そうですね。こんな景色はめったにありませんから……。ほら、あなたたちも入りましょう」
「!」
伊織の指摘に、狐たちも一緒に収まる。実は自撮り棒なるものがあるのです。一度使ってみたかったのです。なんて言いながら……、
「はい、笑顔! ですよ」
「こーゆーときは、チーズっていうんじゃなかったのか?」
「ちーずか。嫌いではないが、俺はやはり甘いもののほうが……」
シャッターの切れる音がする。
満開の桜とともにうつったのは、やっぱり楽しげな満開の笑顔だっただろう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あ、あらぁ…?あたし、なんで横になってるのかしらぁ…?
砲弾撃ち落としたとこまでは覚えてるんだけど…
(この女、酔うと記憶が丸ごとすこんとトぶタイプであった。実にタチが悪い)
あたしは厨房に回ろうかしらねぇ。これでも冒険者の酒場の店主だもの、○宴会は本職よぉ?
●忙殺で○早着替えしてお○料理するわねぇ。…修羅場は確定だし、ちょっと○気合い入れましょ。
ちんたらやってたら追っつかないわねぇ。時間かかるのやってる間にすぐできる揚げ物とか炒め物とか片っ端からじゃんじゃん出しましょ。
これでもマルチタスクはそこそこ得意なのよぉ?
…運ぶ前に出来の良い奴摘むのは、作ってる人間の特権よねぇ?
エミール・シュテルン
アドリブ歓迎。
人手が足りてない、のかな?
私でも貸せる手がありそうで、安心しました。(ほっ
とはいっても、おいしい紅茶は淹れられますが、
お酒はちょっと…なので、給仕のお手伝いを頑張りますね。
完成したお料理や飲み物を運びます。
もし、キッチンの方達が疲れていらっしゃったら、一息用に
丁寧に紅茶を淹れ…あ、お料理しながら熱い紅茶は難しそうかな?
なら、材料から柑橘系を中心にさっぱりしたフルーツを程よい大きさに切り、アイスティー用のポットに氷と砂糖と一緒に入れますね。
別のティーポットで紅茶を淹れ、先ほどのポットに注いで
フルーツアイスティーの完成です。
朝までまだまだ時間あるので…少しでも疲れが取れたら嬉しいな。
ヴィクトル・サリヴァン
(昼寝からぱちっと目を覚まし)
よーく寝たね…あれ、いかにもな船?
成程、料理がいるのか。沢山食べるんだねー。
厨房は…エライ騒ぎ?
へえ、なら手伝おう。海の仲間たちとして人助けはとっても大事。
…まだ何か酔い残ってるのかなー、まあいいけど。
材料は色々出て来るって事で、さっきのオウムガイをあれこれした料理をまず作る。
貝なら網で焼いてシンプルにレモン一絞りがオススメ、あーでもバター焼きもいいよねーとか言いながら厨房で頑張る。
味付けは大雑把に、そっちのが味が出ていい感じ。
酒飲みには濃い味のがいいのかなーとか工夫考えてみたりもね。
疲れたらUCで代謝上げてもう一頑張り。今日は寝かさないよ。
※アドリブ絡み等お任せ
「あ、あらぁ……? あたし、なんで横になってるのかしらぁ……? 砲弾撃ち落としたとこまでは覚えてるんだけど……」
「よーく寝たね……あれ、いかにもな船?」
はっ。と。ティオレンシアとヴィクトルが同時に目を開けた。
そして互いに互いを見て、あれ……? みたいな顔をしていた。
「何だかよくわかんないけどぉ。変なところに来ちゃったみたいねぇ」
「うん、そう。つまりは……人手が足りてない、のかな?」
全く覚えてない。むしろ覚えていないのは何かこの怪しい船のせいかもしれない。みたいな顔をするティオレンシアに、声がかかる。エミール・シュテルン(一途な・f11025)だ。
「んー? 人手が足りてないって、どういうことー?」
「あ、いえ……」
エミール自身は、ちょっと呟いただけのつもりだったらしいけれども。ヴィクトルから問われて親切に状況を説明した。甲板には幽霊があふれていること。彼らに出す料理がそれを運ぶ人材が足りないことなどだ。
「成程、料理がいるのか。沢山食べるんだねー」
胡乱気ながらも二人は状況把握をする。そうすると二人の決断は早かった。
「あたしは厨房に回ろうかしらねぇ。これでも冒険者の酒場の店主だもの、宴会は本職よぉ?」
「厨房が……エライ騒ぎ? かぁ。なら手伝おう。海の仲間たちとして人助けはとっても大事」
任せて任せて、とやる気を出している二人に、エミールも少しほっとする。
「そうですよね。とても大変そうで……。私でも貸せる手がありそうで、安心しました」
「あらぁ。あなたも料理するのぉ?」
早速厨房へ向かいながらも声をかけるティオレンシアに、エミールは頷く。
「いえ。私はそういうのができなくて。おいしい紅茶は淹れらるのですが……」
「うーん。あの酔っ払いさんたちに紅茶の味がわかるとは思えないねえ」
何せすっごく酔っぱらってたし。と。ヴィクトルが思わず上を見て呟く。
「そう。それにお酒はちょっと……。なので、給仕のお手伝いを頑張りますね」
「おっと。それじゃあ、期待に応えないわけにはいかないなぁ。……まだ何か酔い残ってる気がするけどー。まあいっか」
最後物騒なことをいうヴィクトルに、
「あら。戦場で酔っぱらうなんて、なってないわよぉ」
なんて冗談めかして言う、酔った記憶が全く抜け落ちているティオレンシア。
そんな二人であったが……、
「……流石に、専門家ほどの出来を期待されても困るわよぉ? 依頼を請けた以上、最善は尽くすけれど」
厨房に立ち、早着替えでティオレンシア自身の経営するBar、【黒曜宮】の制服に着替えたティオレンシアは、ピリッとその空気を変えた。
「修羅場は確定だし、ちょっと気合い入れましょ」
「おー。頑張ろう、頑張ろう~。そうだね。材料色々出てくるらしいから、オウムガイをあれこれしてみようかな~」
ざざざざざ。と、職人技で即座に炒め物を始めるティオレンシアに対して、ヴィクトルはマイペースであった。捕獲したオウムガイを網にごろごろ並べていき、気長に料理を始めている。
「これ、持って行って。とりわけ用のスプーンつけるの、忘れないようにねぇ?」
「はいっ」
そして気を抜けば積み上げられそうになっている料理を、エミールがそうなる前に運んでいく。
「こっちもどうぞー。えーっとね。シンプルにレモン一絞りがオススメ、あーでもバター焼きもいいよねー」
「えええっと、こちらはレモンを絞ればよいのですか?」
「うん、そこは頼んだ~。零さないようにねー」
「は、はいっ」
「じゃあ次はバター焼きにしよ」
そしてなんとものんびりしたヴィクトルの創作料理も、いわれた通りレモンを入れてそっとエミールは運んでいく。
「ちんたらやってたら追っつかないわねぇ。こっちの火も借りるわよぉ。ここでじっくりやってる間に、こっちで……」
「キミ、大忙しだねえ」
「ふふ。これでもマルチタスクはそこそこ得意なのよぉ? すっごい人数がいるんだもの。片っ端からじゃんじゃん出しましょ」
「ん」
なんとも楽しそうなティオレンシアに、ヴィクトルもちょっと笑う。こちらはそれほど料理上手ではない。だが、コツコツとやっていけば誰かに届くであろうとは思っている。
「酒飲みには濃い味のがいいのかなー。味付けは大雑把にしてた方が、味が出ていい感じだよねー」
と。創意工夫するのがなんとも楽しそうなヴィクトルであった。
そして……。
「ただいま戻りました。皆様、とても喜んでくれていますよ」
「あらあら。それが何よりうれしいわねぇ」
「うんうん。どのつぼ焼きが一番人気があった~?」
時刻で言うなら深夜二時を回ったころぐらいだ。
亡霊はいい。幽霊で好きに働いているのであろうから。
けれども人間のほうはというと……、
(……私も、何か皆様のお役に立つことができたら……)
もう充分、給仕という仕事で役に立っているのだが。
休みなしで働く二人に、エミールは考えた。
(疲れたときは……そう。丁寧に紅茶を淹れ……あ、お料理しながら熱い紅茶は難しそうかな?)
手を止めればそれだけ仕事が増えるのが修羅場である。エミールはほんのちょっと考えて、合間に柑橘系の材料を取りに行く。さっぱりしたフルーツを程よい大きさに切り、アイスティー用のポットに氷と砂糖と一緒に入れて……、
「紅茶を入れるのは別のティーポットで、これを注いで……」
「うん?」
「どーしたのぉ?」
「はい、お二人に、差し入れです」
フルーツアイスティの完成である。
「朝までまだまだ時間あるので……少しでも疲れが取れたら嬉しいな」
「わ、おいしそうだねえ。ありがとうー」
「あら。笑顔が目に染みるわぁ。ちょっとあなた、こっちいらっしゃい」
「はい?」
ティオレンシアが目配せをする。あなたも、と言われて、エミールとヴィクトルと二人がティオレンシアのほうによると、
「ほら、これ。とっておきよ」
「え、ええ……?」
「一番いいところ、とっておいたの。……運ぶ前に出来の良い奴摘むのは、作ってる人間の特権よねぇ?」
「いいねえ。頂こう頂こう。こんなに頑張っているんだし、ほんの少し食べたって、ばちは当たらないよ」
いたずらを告白するような、ティオレンシアの言葉にヴィクトルがふふん、と笑う。これは共犯者の貌だ。
「ええと……。それでは、私も」
そんな二人の視線に、エミールも小さく、頷いた。
「それじゃ、かんぱーい」
そうしてヴィクトルがアイスティを掲げるので、
「はぁぃ。かんぱい~」
「か、乾杯です!」
二人もまた、アイスティで乾杯するのであった。
……そのあとで、
「……さて、もう一頑張り。今日は寝かさないよ」
何なら電気治療もするよ? なんてヴィクトルは笑うのだが、それはまた、別の話。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
厨房にて、お料理作りのお手伝いを致したく存じます
もし大勢でお手伝いできますようでしたら、
コックさまにはお休みいただいて
ご無理なようでしたら生まれながらの光にて体力回復を
どうか、もう少し、頑張りましょう…?
大皿のパエリアをメインに、ローストビーフ・チキン等
パーティーメニューを続々とお作り致します
パエリアは魚介のものと、鶏ときのこのものをご用意
先程のオウムガイもつぼ焼に致しましょうか
食材は、亡霊の方々にお願いを致します
ぜひどうぞ、手伝ってくださいませ
亡霊の方々の魂の救済になりますれば良いのでございますが…
皆さまもお楽しみいただけますでしょうか
笑顔を見られたなら、わたくしも嬉しくなってしまいますよ
オズ・ケストナー
えんかいっ
コックさん、おてつだいするよ
むずかしい料理はつくれないから
皮むきすればいいかな?
おっけーっ
これをぜんぶむけばいいんだね
ごろごろおいもー
ごつごつしたところははじっこでぐりぐりするー♪
即興で歌いながら
わあ、いいにおいっ
そういえば、コックさんはごはん食べた?
このおなべ借りるねっ
皮をむいてないジャガイモをゆでて
バターと塩をぱらっと
そっちのおなべ、わたしがかきまぜてるから
コックさんはあついうちにどうぞっ
はい、いっぱいゆでたからこれも持っていって
バターだけじゃなくてイカのしおからも、あう?
マヨネーズも?
よーし、あうものいっぱい小皿にいれて
おいもとクラッカーを大皿にどーん
すきなのをつけてもらおうっ
「えんかい……?」
一度、不思議そうにオズは首をかしげて……、
「えんかいっ」
つまりは楽しそうなことだ。と、目を輝かせた。
お手伝いさんはたくさん必要らしい。そう聞いてオズは、厨房へと顔を出す。厨房ではたくさんの幽霊のコックと、猟兵の料理愛好家と、死んだ目をしている人間のコックが腕を振るっていた。
「コックさん、コックさん、おてつだいするよ」
そんな中で、若干目が死んでいるコックにオズは声をかける。今にも過労死しそうな男は、ああ。と頷いた。
「むずかしい料理はつくれないから、皮むきすとかお手伝い出来ればいいんだけれど……」
「助かるよ。それなら……」
「うん、おっけーっ」
と、いうわけで。
オズの目の前には、沢山のジャガイモがごろごろと転がっているのであった。
「まあ、オズさま」
ふんふんふんふーん。と。
ジャガイモの皮むきを始めるオズに、ベイメリアが声をかける。
「あ、ベイメリアっ。ベイメリアも、お料理してるの?」
「ええ。少しでもお助けできればと……」
言っている間にも、ざっざっざっ。と、出来たパエリアをお皿に盛っていくベイメリア。
「わあ、おいしそう」
すごいすごい。と彩り美しく作られていく料理に、ベイメリアも嬉しそうに微笑んだ。
「パーティーメニューは、それほど知らないのですが……。このようなものでも、お喜びいただけるでしょうか」
「もちろんだよっ。だってすっごく、美味しそうだもの!」
「ふふ、ありがとうございます」
そういいながらも、二人とも手は止めない。続いてローストビーフにチキンにと。鳥料理にベイメリアが手をかけるころには、パエリアはさっくり運ばれ影も形もなくなっている。代わりに大量に空になったお皿も戻ってきているので、
「わ。わ。いそがないと、間にあわないねっ」
オズは若干気合を入れなおした。
「ふふ。お手元、気をつけてくださいまし」
「うんっ」
明るい返事に、ベイメリアも頷く。
「ごろごろおいもー。ごつごつしたところははじっこでぐりぐりするー♪」
そうこうしている間に、オズの楽しそうな即興の歌が聞こえてきていた。まあ。わたくしも何か歌った方がいいかしら。なんてベイメリアは一瞬考えたが……、急がなければならないのは彼女も同じで。
「先ほどは魚介にいたしましたが、次は鳥ときのこにいたしましょう。あとは……」
「できたっ。コックさん、ジャガイモ皮むきできたよ~」
「う、う、う、ありがとう。じゃあ、四分の一ぐらいに切ってくれるかな?」
「はーい。はんぶんの半分だねっ」
「あ、なるほど。お手伝いをお願いすればいいのですね。……すみません、オウムガイをつぼ焼に致しますので、どなたかオウムガイをとってきていただけませんか……? その、調理できるサイズのものがいいのですが」
ぜひどうぞ、手伝ってくださいませ。と、亡霊にベイメリアが頼むと、給仕たちが何人か、上の海賊の亡霊たちに声をかけに行った。きっと頼んできてくれるのだろう。と思って、ベイメリアが料理を続行していると……、
『届きましたー』
「!?」
「わー。すっごくいっぱいだ。それに、生きてる!?」
どさー。と。ベイメリアの身長ほどに手のひらサイズのオウムガイが積み上げられた。しかもまだ動いていた。
「……な、何とか致します。なんとか……っ」
きりりとするベイメリアは、本当はちょっと泣きそうであった。
時刻は午前一時を過ぎただろうか。
皮をむいてないジャガイモをゆでて、バターと塩をぱらっと。
「うーん。いいにおいっ」
近くでつぼ焼きの良い匂いがオズの鼻に届いた。「そういえば、コックさんはごはん食べた? まだ? じゃあ、このおなべ借りるねっ」と言って借りていた鍋から、オズは顔を上げる。
「コックさんも、ベイメリアも、ちょっときゅうけい、しない? そっちのおなべ、わたしがかきまぜてるから。それに、ベイメリアのつぼ焼きはわたしがようすを見てるから。ね?」
「まあ……」
「いい……のか?」
「うんっ。かんたんなものだけど、ふたりあついうちにどうぞっ」
そんな。手を止めていいのか。と、戸惑うコックに、
「コックさま、お休みをいただいてくださいまし。こうしてたくさんの方々が、お手伝いに来ているのですから。コックさまはすこし、休憩なさった方がいいですよ。そして、元気になられましたらどうか、もう少し、頑張りましょう……?」
ついでに聖なる光でコックを癒すベイメリア。それでも離れがたそうな彼に、
「では、わたくしも少し休憩して、頂きますね」
「うんっ。あ、あと、いっぱいゆでたから、あとでこれも持っていって」
『かしこまりました~』
オズが二人の分とは別のお皿を示す。それから、
「バターだけじゃなくてイカのしおからも、あう?」
と、ベイメリアに尋ねた。ベイメリアは首を傾げる。食べているのはジャガイモをゆでて、塩とバターを振った非常にシンプルな料理だ。だからこそ、
「そうでございますわね……。チーズも、なかなか……」
「チーズ! おいしそうだね。あとは後は……マヨネーズも?」
休憩なのにベイメリアもついつい真剣に考えこんでしまった。
二人して、お芋の付け合わせに合うものをまとめて皿に盛れば、お芋と一緒に届けてもらう。
「皆さん……喜んでいただけているのでしょうか……」
それが運ばれていったとき、ふっとベイメリアが呟いた。
「亡霊の方々の魂の救済になりますれば良いのでございますが……。それに、皆さまもお楽しみいただけますでしょうか。ここからだと、甲板の様子がわからないのが少しだけ残念に思います。」
「うーん……」
ベイメリアの言葉に、オズは考え込む。……すると、
『すみません~。お料理の追加をお願いします~。皆様美味しい美味しいとお食べになって、足りません』
なんて声が、厨房に聞こえてきていた。
「……ふふ、大丈夫みたい」
「ええ……そうでございますね」
それで、二人は顔を見合わせて笑った。
直接の笑顔は見られていないけれども、ベイメリアはとてもうれしくなって……、
そして、疲れ切ったコックさんは、美味しいジャガイモと癒しの光にすっかり癒されて隅っこのほうで爆睡していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラビ・リンクス
ロキ25190と
酒酔いも船酔いも何とか落ち着き
動いてる方がマシそォとロキを誘い海賊を手伝う
何ソレ運べばいーの?
給仕は得意だから今度こそ楽勝ーと
往復する海賊達から皿や酒瓶を預かり甲板へ
お待たせしましたァ
野菜と魚の甘くない御馳走だぜー
宴会場に踏み込んだ矢先目に入る亡霊の数々に
思わず酒瓶を何本か取り落とし
びゃッ
おぉああぁよく見たら亡霊だらけじゃねーか……
パス!ロキパス!!
思わずロキにバトンタッチ(二度目)
尻尾を巻いて背に隠れ
飲んだモン首の切れ目から出てんじゃん?!
じっくり見てまたビビリ
別にお化けが怖いワケじゃねーケド違うケド
ロキロキ酔ったまた酔った甲板イコ甲板
良い訳を添え花見へと
見慣れた花を愉しみに
ロキ・バロックヒート
ラビくん(f20888)と
酔い?は冷めたけどラビくん面白かったなぁ
手伝ってほしい?どうしようかな
ラビくんはほんと可愛くていい子だね
しょうがないから俺様も手伝っちゃおう
あんまり重くなさそうなの持ってく
だって非力だもん
のんびり宴会場に入ったら悲鳴
ちょっとびっくり
なになにどーしたの
あぁもしかしてお化け苦手?怖い?
お化け苦手な子多いよね
ここでもパス?俺様の背中に隠れても見えてそう
ラビくんあの幽霊お酒飲んでるし
実は幽霊じゃないかもよ?なんて
あははお化けに酔った?
いやぁラビくんの船旅は前途多難だよね
給仕するはずのピザとか食べ物持って来ちゃったし
そのまま花見しながら食べちゃおうよ
櫻はいつどこで見ても綺麗だね
ラビは息をついた。心底ほっとしたような様子であった。
なぜかというと、酒酔いも船酔いも、何とか落ち着き人心地ついたからである。
「あァー……。やっぱりいいな。船は船でも大きい船に限るなァ……」
何せ揺れが小さい。最高である。真面目な顔でうん、うん、と、頷いているラビ。
「んー。酔い? は冷めたけどラビくん面白かったなぁ」
そしてその隣でロキが呑気に、しかし満足げにうんうん、と頷いているので、ラビは軽くロキをにらむような眼で見た。ロキは涼しい顔をしている。いつものことである。
「……さーて」
それじゃあ、行動開始だと。ラビは顔を上げた。
とはいえ何からしようかと。顔をあげながら考えたところで、
『誰か。誰か~』
と、なんだか困ったような声が聞こえてきていた。
「お前、どうしたんだァ」
何やら困った風の少女が右往左往しているので、ラビは声をかける。
いつもならロキが何か言ってくるだろうと思っていたのでが、不思議にもロキは何も言わなかった。にこにこしているだけである。
少女はラビを見てほっとして、給仕係が足りないのだといった。
「へええー。何ソレ運べばいーの?」
『はい。宴会のお料理やお酒を……』
「給仕は得意だから楽勝ー。任せて任せてよォ」
動いてる方がマシそォ。という本音を飲み込んで、ラビはロキのほうへと振り返る。
「手伝ってほしい? どうしようかな」
「まあ、そういうこと言うなよォ。この子も困ってるじゃねぇか」
本音は、とにかく動いていたいというところからなのですが、『まあ……』と嬉しそうに微笑まれれば、それはそれで悪い気はしない。ほらほら。と得意げにロキを促すラビに、ロキは笑った。
「わかった。ラビくんはほんと可愛くていい子だね。しょうがないから俺様も手伝っちゃおう」
「そうかぁ。んじゃ、ロキはそっち……」
「え? いやだよ重そうだもの。そっちの重くなさそうなのがいい。だって俺様非力だもん」
「何をぬけぬけと……」
若干、ラビは呆れたがまあいいか。と思いなおす。
酒便やら皿を預かって、元気に配達を始めた。
「お待たせしましたァ。野菜と魚の甘くない御馳走だぜー」
『おお。こっちだこっち。丁度料理が切れていて』
声を上げると、ひらりと手が上がる。
「……」
その時に、変な予感がした。
『いや、何を言う骨っこ殿。こっちが先じゃ。こっちじゃこっち』
『何を言うか頭のない分際で。貴様のそれがどうやって食べるというのだ!』
『何、なんかしらんが食べれるのだ!』
言い争いを始める二人。
二人どころではなかった。
あちらこちらで避けの酌み交わす声がして、乾杯の音頭がして、歌が聞こえて、踊りを踊って。そしてけんかをして騒いでいる。
それらがすべて、人間ではなかったのだ。
「びゃッ」
ラビの手から酒瓶が数本、零れ落ちた。
ガラスが割れて、派手な音がしている。
『おお。どうしたんじゃ。怪我はないかい?』
『ああー。なんか兎料理が食べてぇなあ……』
「おぉああぁ!!!!!」
「ラビくん??」
この世のものとは思えない悲鳴に、料理を受け取りに厨房へと降りていたロキが慌てて顔を出した。
珍しく驚いたような顔をしているロキに、ラビは飛びつく。
「ここここここここここここ」
「なになにどーしたの。鶏?」
「ここ!! よく見たら亡霊だらけじゃねーか……!!」
泣きそう。もう泣きそう。もしかしたらすでに泣いているかもしれない。
再び涙目になったラビは、ロキに無事だった料理を押し付ける。
「パス! ロキパス!!」
「ここでもパス? あぁもしかしてお化け苦手? 怖い? お化け苦手な子多いよね」
「いや、いやいやいやいやそんな。これは怖いっていうか。戦略的撤退っていうか。適材適所っていうか」
そういいながらも、尻尾を撒いてロキの背中に隠れるラビ。縮こまっている姿に、
『おーい。なんでもいいから料理持って来いー』
「あ、はいはい」
「ちょ、ま、動くなァ。俺から離れるなァ……!」
持っていた料理を運ぼうとするロキに縋りつくように、ラビも隠れながら移動するのであった。
「ラビくんあの幽霊お酒飲んでるし、実は幽霊じゃないかもよ?」
「飲んだモン首の切れ目から出てんじゃん?!」
言われてじっくり見てしまった。ラビは固い口調で棒読みで言う。
「別にお化けが怖いワケじゃねーケド違うケド、ロキロキ酔ったまた酔った甲板イコ甲板」
若干言語が不自由になったが、ロキは分かってくれたようだ。
「あははお化けに酔った? いやぁラビくんの船旅は前途多難だよね」
渡しきれなかったピザや食べ物、飲み物をもって、じゃあ、とロキは踵を返す。
心からほっとしたように、ラビもその後に続いた。
別にお化けが怖いわけでは、決してないけれど。
「このまま花見しながら食べちゃおうよ。櫻はいつどこで見ても綺麗だね」
「ああ。見慣れた花ってのはいいもんだなァ……」
「ところで、さっきのラビがにっこにこで仕事を請け負った女の子も、幽霊だったって気づいてた?」
「……っ、おま、おま……!」
そういうこと言うのはいけないんだぞ。なんて言う、
ラビの悲鳴に似た声が周囲にこだまするのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
【空】ジュジュちゃん、なびきちゃんと
頭の花継続
は、料理が足らない?
このオレが来たからにはそんな文句言わせねぇヨ
さあ二人とも、ウチの味で幽霊共を唸らせてやろうじゃないの
って味見係か!(つっこみ)
まあイイ、こーゆー場では料理はスピード命
コンコン材料見繕って下処理をなびきちゃんにお願いすんね(若干不安)
切ってすぐ出来る和え物や火通りのイイ食材の炒め物、一度に沢山出来て満足感のある揚げ物
他には何がイイかしら……ん、甘いのかぁ
ってソレなびきちゃんが食べたいだけじゃ…
それにジュジュちゃん、上機嫌なのはイイけど味見しかしてねぇし!(突っ込み再び)
ええい、甘いモノちゃんと仕込んどくからあのコ達の面倒見て!!
ジュジュ・ブランロジエ
【空】
コノさん、なびきさんと
笑い上戸続行+頭に桜追加
『』は裏声でメボンゴの台詞
アドリブ歓迎
頭に桜を咲かせお揃いになったのが嬉しくて上機嫌で料理のお手伝い
私は料理苦手だから味見係するね!
すごく美味しい!あっ、これも美味しい!あははは!
『全部美味しいコノちゃズキッチン!』
このキャッチフレーズ素敵じゃない?
美味しくて幸せで楽しいなぁ!あははは!
なびきさんもこれ食べてみて!ね、美味しいよね!
はっ、確かに味見のお手伝いしかしてない!お料理運ぶね!
『メボンゴがお料理運ぶ~』
メボンゴはおてて小さいから小さいお皿の時にね。この大皿は私が……はっ、美味しそう!また味見したくなっちゃう!困ったなぁ!あははは!
揺歌語・なびき
【空】コノハさん、ジュジュちゃんと
頭の花続行
料理手伝い
まぁ普段オムレツか卵焼き作る程度だから
本当に『お手伝い』レベルだけど
材料切るのは大丈夫だよぉ、猫の手猫の手
お酒の席なら味濃い料理がいいのかな
幽霊の味覚とかわかんないけど
メニューはコノハさんにお任せ
意見?えっとねぇ、甘いものがあるといいと思う!
ジュジュちゃんまた味見してる…あっおいしい(誘われもぐもぐ
メボンゴちゃんもお手伝いえらいねぇ
このお皿持っていってくれる?
ジュジュちゃん、足元ほんと気をつけて…(彼女の足元の障害物どかし
ってあーまた味見してる!
ところでコノハさん、おれやっぱり甘いものが足りない気がするな
いや食べたいんじゃなくてね(しれっ
「は、料理が足らない……?」
コノハは花の頭をわさわささせながら、ものすごく頼もしげな顔でこう言った。
「このオレが来たからにはそんな文句言わせねぇヨ」
「きゃー。コノさんかっこいいー!」
『かっこいいー!』
ジュジュと副音声付きのメボンゴが隣からやんややんやと囃したてる。その言葉に気をよくしたコノハは、
「さあ二人とも、ウチの味で幽霊共を唸らせてやろうじゃないの!」
「うん! 私は料理苦手だから味見係するね!」
「うん、沢山食べようねぇ」
「って、二人とも味見係か!」
ビシッ。と突っ込むコノハに、なびきはにっこり笑って、
「勿論冗談だよぉ。……って言っても、まぁ普段オムレツか卵焼き作る程度だから、本当に『お手伝い』レベルだけど」
「ああ。よかったァ。いいよオムレツ。オレは好きだね」
「うんうん。私もメボンゴも頑張るよ!!」
さて。笑いながらもさっさと卵を手に取ったな引きと違い、ジュジュはにこにこしながら一切包丁を握らなかったのはさておき。
……さておき。
コノハはあえて考えないことにした。
「まあイイ、こーゆー場では料理はスピード命……おや、なかなかいい手際」
「うん。猫の手猫の手。材料切るのは大丈夫だよぉ」
食材を見繕って、下処理を順次コノハはなびきに振っていく。
なびきは自分で言うぐらいにはそこそこ料理はできるようで、そこまで素早くはないけれども、着実に丁寧に、コノハの言う用事をこなしていった。
「お酒の席なら味濃い料理がいいのかな。幽霊の味覚とかわかんないけど……」
「うーん。胃に優しい料理とか、作っても仕方がないしねえ」
首を傾げる様子に、コノハも首を傾げながらも手早くなびきが切った食材をフライパンに入れていく。炒め物を作り、合間にあえ物にし。さらには一度に沢山出来て満足感のある揚げ物まで順次準備していく。そうやってあらかた思いつく料理を作り上げれば、
「他には何がイイかしら……」
「細かいメニューはコノハさんにお任せるよォ」
「うーん。でも何かヒントちょうだいヒント
「ヒント? 意見だよね? えっとねぇ、甘いものがあるといいと思う!」
「ん、甘いのかぁ……ってソレなびきちゃんが食べたいだけじゃ……」
でも、いいかもしれないね。なんてコノハが笑う。そういえば甘いものはまだ作ったことがなかったと思い、さて砂糖は……と、周囲を見回した。ところで、
「すごく美味しい!あっ、これも美味しい! あははは!」
『全部美味しいコノちゃズキッチン!』
「すごいすごい。このキャッチフレーズ素敵じゃない?」
何か静かだと思っていた。
静かだと思っていたら唐突にジュジュが爆発した。
「わーい。美味しいの大感謝祭だぁ。美味しくて幸せで楽しいなぁ! あははは!
「ジュジュちゃん……、上機嫌なのはイイけど味見しかしてねぇし! ていうかどんかい、どんかい食べて……!」
すごい。あんなにたくさんあった料理が、こんなことになっている……!
「ああ。ジュジュちゃんまた味見してる……」
「知ってたの!? さてはその顔、なびきちゃん知ってたね!? どうして止めてくれなかったの!」
「なびきさんもこれ食べてみて! ね、美味しいよね!
「うんうん。コノハさんも知ってるんだと思ってた。……あっおいしい」
から揚げ、美味しく上がってます。と、まじめな顔をしているなびきに、コノハはがっくりとうなだれた。
「……」
もう、突っ込み疲れたようだ。
「ええい、甘いモノちゃんと仕込んどくからあのコ達の面倒見て!!」
やけくそのようにコノハが声を上げる。それは面倒を見なければ甘いものはやらないという意味か。となびきは真面目に考える。
「……」
甘いものは大事だ。絶対。
「……メボンゴちゃんもお手伝いえらいねぇ。このお皿持っていってくれる?」
くるり、と徐になびきはジュジュに向き直った。とにかく両手をふさいでしまえばいいんだと思ったなびきは、まずはい、と、料理の皿をのせる。
「はっ、確かに味見のお手伝いしかしてない! お料理運ぶね!」
『メボンゴがお料理運ぶ~』
味見を手伝いというか。と言いたげなコノハの目は、テンション高く酔っぱらったジュジュにはたぶん届かなかっただろう。
「ジュジュちゃん、足元ほんと気をつけて……」
テンション高く、なぜか皿を前にくるくる回るジュジュに、なびきはそっと周囲の障害物を片付けながら、よろしくね。と念を押した。
「メボンゴはおてて小さいから小さいお皿の時にね。この大皿は私が……はっ」
おいしそうな野菜炒めの山に、ジュジュは瞬きをした。
「美味しそう! また味見したくなっちゃう! 困ったなぁ! あははは!」
「ってあーまた味見してる!」
『おいしおいしー!』
味見をしたくなった時にはすでにしていた。
と、まるでこの世の心理のように語るジュジュに、なびきは頭を抱える。
これは使命なのである。コノハから与えられた使命。……使命。これがなければ甘いものが……、
「ところでコノハさん、おれやっぱり甘いものが足りない気がするな」
「!?」
徐にくるりと振り返ったなびききを、ええ。って顔でコノハは見ていた。
「いや食べたいんじゃなくてね。難しいことを考えるのには、糖分が必要なんだ。甘いものが。つまりねえ、この使命は難易度が高くて、先に甘いものでも口に入れないと達成できそうな気がしないんだぁ。わかる?」
『わかるわかる!』
「甘いもの食べて元気いっぱーい!」
『だいじだいじ~』
背後からジュジュ自身の援護射撃を受けて、胸を張るなびきにコノハは頭を抱えた。さっきまで頼もしかった助手は敵に回ってしまった。そんな気分だった。
「……ちょっとだけヨ」
「うん。ちょっとだけで充分だよ」
「そうそう。ちょっとがたくさんで十分だよ!」
『やったー!』
なびき、ジュジュ、メボンゴの嬉しそうな声に、コノハは遠い目をしていた。
多分、ちょっとで済む気がしなかったからであろう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
樽見・仙樹
桜の木に登り枝に抱かれて花見酒
一人でも、誰とでも
ここからですと全体の様子が広く見渡せますし水平線も見えて良い眺めです
―少し眩しいですが
皆が楽しい時間を過ごせるよう見張りも兼ねられますしね
こうして少し離れた所から
人々が賑やかに騒ぐ様子を眺めるのが好きなんです
生きている人もそうでない人も皆楽しそうですね
私は無駄に長く生きていますので
最早この世に居ない知り合いも多いのですが
彼らもまたこのようにどこかで楽しくやっているのかもしれません
海賊の亡霊たちの無礼講とはいえ
度を越した絡みや喧嘩は雰囲気が悪くなりますよね
箍の外れ過ぎた酔っ払いがいたら
【桜の癒やし】で眠って頂きましょう
樽見・仙樹(徒花・f26251)は一人、花見酒を楽しんでいた。
美しい桜であった。
満開の花であった。
「ここからですと全体の様子が広く見渡せますし水平線も見えて良い眺めです」
桜の枝に腰をかけて、プラプラと足を振る。そうするとなんだか桜に埋もれているような気持になる。
――少し眩しいですが。
仙樹はそう、口の中で呟いて苦笑した。
けれども、それはそれでいいかもしれない。この明るさなら、皆が楽しい時間を過ごせるよう見張りも兼ねられるから。
足元では騒がしい人の声が聞こえてきている。
今、仙樹は一人であった。
きっと、甲板に降りたら、誰かしら一緒に飲む相手位見つかるだろう。
騒ぐことなんて、いくらでもできただろう。
けれどもここは……とても、静かで。
「……ふふ」
誰かが躍っている。
誰かが歌っている。
こうして少し離れた所から、人々が賑やかに騒ぐ様子を眺めるのが、仙樹はとても好きだった。
「……生きている人もそうでない人も皆楽しそうですね」
亡霊も、ここまでは上がってこない。
けれどもどこを見ても楽しそうにしている。それがまた仙樹にとっても嬉しい。
仙樹は長く生きているので……、
仙樹に言わせていれば、「無駄に」長く生きていますので。
もはやこの世には、いない知り合いのほうが多いのである。
だから……、
「……彼らもまたこのようにどこかで楽しくやっているのかもしれませんね」
そう思うことは、楽しかったし、嬉しかった。
そんなことを考えながら、仙樹は空を見る。
度を越した絡みや喧嘩があれば仲裁に入るべきだと思っていたが、
どうやらその必要はないようだ。
……いや、たまに。
喧嘩になりそうなこともあったが、その都度誰かがうまくなだめているようであった。
ここにいると、その様子がよく見えた。
「……不思議ですね」
不意にぽつん、とつぶやいた。足元を行く人々は賑やかで、自分にもそんな時代があっただろうかと、仙樹は思い返し……、
「もう忘れてしまいました。昔の事なので」
わからなかったので、軽く首を横に振った。
きっといつか、もしかしたら。
遠い昔に、そんなこともあったのかも、しれない……。
大成功
🔵🔵🔵
浮世・綾華
理玖(f22773)と
理玖は何食いたいの
っても、作れんのは和食メインなんだケドさ
煮魚?でいーの?や、肉が好きなイメージだったんで
成程、そっちは自分で作んのか
唐揚げ。うまいよな。楽しみ楽しみ
じゃ、作りましょ
白身魚を手際よく捌いて盛って飾って
甘いのも好きよ
ふ、理玖は気が利くなあ
さんきゅ
飲む飲む、お酌して?
っし、かんぱーい
だなぁ、ふふ
理玖が気に入ってくれたんなら良かった
っつーか、理玖の唐揚げも美味いよ
こっちは魚?色々揚げたな…
っと、こっちはもしかしてオウムガイ…
あ、でも意外といける、理玖も食え食え
はらり舞う桜に心弾ませて
酒も飯も美味いのは勿論だが
何より理玖が楽しそうなのがいっとう嬉しく思えて
陽向・理玖
綾華兄さんf01194と
しょうがねぇな…
何かちょっとだけ手伝う?
おー綾華兄さんの手料理!
和食か…そりゃあ…嬉しい
折角だし煮魚とか食べたい
煮物好きなんだ
魚新鮮そうだし
俺は唐揚げでも作るかな
肉も魚も唐揚げにして
ついでにオウムガイ…
やっぱ実は食えんの?
大量に揚げて
あと…綾華兄さん甘いもん大丈夫?
フレンチトースト食える?
自分たちの分取り分け
綾華兄さん今度こそ飲む?
注ぎ
俺は葡萄ジュース
気分だけな
乾杯しようと
それにしてもこの桜すげぇな
どうなってんのかよく分かんねぇけど
って旨
綾華兄さんちょう美味い
よかった
表情和らげ唐揚げもぱくつく
宴会って初めてだけど
周りが楽しそうだと…何かいいな
飯美味いし桜綺麗で最高だわ
二人が厨房を訪れたとき、
もういやだぁぁぁぁ。とか。そんな感じの悲鳴が厨房に響いて、
そしてその後静かに包丁の音が聞こえてくるので、なんだか理玖はいたたまれなくなった。
「しょうがねぇな……何かちょっとだけ手伝う?」
ちょっとだけだ。なんて言いながらも、理玖は割とやる気であった。そんな様子に綾華は思わず楽しげに笑う。
「だな。理玖は何食いたいの。……っても、作れんのは和食メインなんだケドさ」
「おー綾華兄さんの手料理! 俺も食べていいんだな!?」
「何言ってンの。むしろ理玖が食べるのがメインじゃねぇの?」
幽霊のほうがおまけ。なんて言う綾華に、おおお、と、本当にうれし気に理玖は考える。答えを出すまで、そう長くはかからなかった。
「和食か……そりゃあ……嬉しい。そうだな。そうだな……折角だし煮魚とか食べたい」
「煮魚?」
出された回答が若干意外だったのか、綾華は瞬きをした。
「煮魚でいーの? や、肉が好きなイメージだったんで」
若い子はきっと、肉とか肉とか肉とか好きだろう。なんて割とざっぱなイメージだったけれども、あながち外れてもないだろう。そんな綾華の顔に、うん、と、理玖はもう一度、魚といった。
「煮物好きなんだ。魚新鮮そうだし。それに、自分では作れないから」
煮物は料理スキルがいる。なんて、まじめな顔をして理玖は自分自身でも料理をするつもりらしい。食材を探しながら、「俺は唐揚げでも作るかな……」なんて呟いているので、
「成程、そっちは自分で作んのか」
綾華は妙に感心した。そういうこと。と理玖もあっさり肯定するが……、
「唐揚げ。うまいよな。楽しみ楽しみ」
「……綾華兄さんに美味しいって言って貰えるように、頑張るよ」
綾華の言葉に、これは頑張らなければいけないな。と理玖は真面目な顔で厨房に立つのであった……。
「じゃ、作りましょ。白身魚を捌いて盛って……」
「肉も魚も唐揚げにして……。こいつどうするかな。とにかくあげればいいよな」
「やっぱり見た目も大事だし、ここは慎重にきれいにしておくのが正解でしょ」
「ついでにオウムガイ……やっぱ実は食えんの? かな。いいや、入れれば。火を通せば食べられるだろ」
「味はこれで整えて……」
「塩とレモンはざっくり盛っておけばいいか。欲しい奴が適当につけるだろ」
何だか非常に性格が出る料理風景であったという。
「あと……綾華兄さん甘いもん大丈夫? フレンチトースト食える?」
「甘いのも好きよ。ふ、理玖は気が利くなあ」
さんきゅ。という綾華に、理玖はうん。と、若干嬉しそうな声を上げて、自分たちの分を取り分けた。……それで完成である。
自分たちの分以外の料理を給仕係に任せて、二人は甲板へと昇った。美しい桜が散る甲板は、すでに出来上がっている亡霊たちがたくさんいて。その中で邪魔にならないところを探して二人は移動する。
「綾華兄さん今度こそ飲む?」
そうして腰を落ち着けるところを見つければ、理玖がさっくり拝借していたお酒を差し出した。綾華は嬉しげにグラスを手に取る。
「飲む飲む、お酌して?」
「ん」
理玖は綾華のグラスにはお酒を、自分のグラスには葡萄ジュースを注いだ。気分だけだけど、乾杯するにはいいだろう、と思ったのである。
「っし、かんぱーい」
「うん、乾杯」
かつん、と明るい聲とともにグラスが合わさる音が響いた。
「それにしてもこの桜すげぇな。どうなってんのかよく分かんねぇけど」
「おー。折角だから、あとで登ってみるとか?」
「いいな。てっぺんまで行ったらきっと景色もよさそうだ……って旨。綾華兄さんちょう美味い」
言いながら、そっと煮魚を口に入れた理玖は目を見開く。綾華はうんうん、て上機嫌に、
「だなぁ、ふふ。理玖が気に入ってくれたんなら良かった」
なんて言いながら、からあげに手を伸ばすので。理玖は思わずその手元をじっと見つめる。
「……っつーか、理玖の唐揚げも美味いよ」
そして、ついでの言葉にほっと息を吐き表情を和らげるのであった。
「よかった」
「うんうん。すごく上手に揚がって……、ああ。こっちは魚? 色々揚げたな……」
肉だと思ったら魚だった。驚いたような綾華の言葉に、理玖は頷いて自分もから揚げに手を伸ばす。
「せっかくだから、いろいろ試してみたんだ」
「っと、こっちはもしかしてオウムガイ……。色々試しすぎだろ」
なんか見慣れた足が出てる。それを見てからりと綾華は笑いながら口に入れた。
「あ、でも意外といける、理玖も食え食え」
ああ。って頷く理玖は楽しそうで。綾華はそれでまた自分も楽しくなるのであった。
「……宴会って初めてだけど、周りが楽しそうだと……何かいいな。飯美味いし桜綺麗で最高だわ」
その視線に気づいたのか、理玖が正直にそう伝える。周りは賑やかで、賑やかすぎて、うるさいし。桜はどんどん散ってくるし。騒がしいけれども、そういうところもいいのだと。
その正直な言葉に、綾華も頷く。
「酒も飯も美味いのは勿論だけど……何より理玖が楽しそうなのがいっとう嬉しい、かな」
「それは、いいすぎ」
あらためて言われると、なんだか照れる。そんな顔をする理玖に、綾華は声を上げて笑った。
賑やかな宴会は、一晩中続くだろう。
けれどもその賑やかさは、二人にとっても何だか心躍る時間であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユルグ・オルド
f10471/黒羽と
海に桜とやァ良いねェ
花を臨んめばご機嫌の声
おー、良かったネ
美味そうじゃんと答えたものの持ち寄った材料は
…食えんのか、思う間にも一つ二つと消えてって
いやァ、うん……あ、割とうまい
花見も何所へやら船員とラムで乾杯
そんでもひとつ知らん亡霊と乾杯
普段なら飛んできそうな小言もないときて
腕相撲始めた面々に野次飛ばしつつ
まァ随分楽しそうに懐いちゃってさァ
効能とはいえ狡くない?
ピースサインに歩み寄り
楽しそうなコトやってンじゃねェの、黒羽
仲間外れは酷いな、肩寄せたんなら一勝負
花のように広がる咲みに機嫌好く杯傾けたんなら
こんな夜も悪かないと溢す杯にもひとひらの
華折・黒羽
ユルグさん/f09129
ふわふわ様子はご機嫌なまま
見てください
コックさんにお願いしたらつまみを作ってくれました
生は駄目だって言われたので刺身は無いんですけど…
足元ふらつかせつつ運ぶイカ料理の数々
材料は勿論先程の─
ぱくりぱくり
バター醤油のイカ焼きも
じゅーしーに揚げられた唐揚げも
絶品ですよ、食べないんですか?
大食い発揮しどんどん口の中
普段の警戒心は何処へやら
気付けば亡霊達とも打ち解けて
腕相撲勝負?
いいですよ、負けません
屈強な海賊相手に本気も本気
負けたらもう一勝負と声あげて
勝ったならユルグさんに向けピースサイン
寄った肩にも向ける笑み咲かせ
いつもの仏頂面は何処かへ消えて
子供の様に無邪気に遊ぶ姿がそこに
「……海に桜とやァ良いねェ」
海に桜が散っていく。花びらが落ちればそれは海面でゆるりと翻る。
風情があるねぇ。なんて、ご機嫌な声で呟けば、
「ユルグさん! ユルグさ~ん」
明るい声が聞こえてユルグは振り返った。
満面の笑みを浮かべて、黒羽がこちらに向かってかけてきていた。
「ほらっ、見てください。コックさんにお願いしたらつまみを作ってくれました!!」
黒羽は本当に子どものようである。いつもの仏頂面とはまるで別人。きらきらした実に子供っぽい笑顔で両手に抱えた料理を盛られた皿を示したかと思えば、
「生は駄目だって言われたので刺身は無いんですけど……」
次にはしゅんとうなだれたりして、何とも普段より1.5倍(ユルグ感覚比)でかわいらしい。多分まだ酔っているのだ。
「おー、良かったネ。美味そうじゃん。刺身がなくても十分……」
と、答えながらもお皿を覗き込んだユルグは数秒、考え込んで、
「……おいしそうだと思うヨ」
ていうか、それ、その材料って、あれであれ? と、いう言葉をかろうじてユルグは飲みこんで。
「よかった。じゃあ、一緒に食べましょう。材料は勿論先程の──」
「待って、ストップ。そこから先は聞かなかったことにしておくねェ」
なんか聞いちゃいけない気がした。と、のちにまじめな顔でユルグは語ったという。
はてさて。これは食べられるのだろうかと。ユルグが真剣に考えている亡霊料理。
であるが黒羽のほうはそんなユルグの葛藤など全くお構いなしに、パクリぱくりと次から次へ。料理に手を伸ばしていく。
「バター醤油のイカ焼きも、じゅーしーに揚げられた唐揚げも。絶品ですよ、食べないんですか?」
「いやァ、うん……」
そんなキラキラした純粋な目で聞かないでおくれ、とはさすがに言いづらい、意を決してユルグは唐揚げを手に取り、えいやと口の中に入れると、
「あ、割とうまい」
「そうでしょう。そうでしょう?」
なぜかそこで黒羽がものすごい得意げな顔をしていた。
『お。兄ちゃん上手そうなの持ってるじゃねぇか』
そんな二人の背中に、声がかかる。
黒羽は振り返る。
「ええ。とっても美味しいですよ。おひとつ食べますか?」
これにはそろそろ酔い黒羽に慣れてきていたユルグも驚いた。
黒羽がにこやかに他人に料理を勧めている!
『おう。お兄ちゃんたちこっちに来なよ。一緒に飲もうぜ』
「あ、いくいくー。いきますともー」
「っと、その唐揚げちょっと待ったー」
おー。と拳をあげて亡霊についていく黒羽を、慌ててユルグは追いかけるのであった……。
そして。
「乾杯!」
『かんぱーい』
ユルグの音頭に、亡霊たちもにぎやかな声が上がる。
「今日の桜に!」
『カンパーイ!』
「うまいイカに!」
『かんぱーーーーい!!』
ラムで乾杯をして、かっ。と飲み干して。
また酒を注げば、別の亡霊と乾杯する。
ああ。なんとご機嫌なことだろうとユルグは思った。
料理は右から左へ溶けるように消えていく。
もはや花見はどこへやら。もう一つ知らない亡霊と乾杯して、
「あー。お小言ないってたまにはいいねェ……」
グイっと飲み干すと一息つくのであった。この一杯のために生きている。もう何杯目かは知らないけれど。
「まあ、たまにはでいいんだけどォ……」
ほんと。たまには。……そう。たまには。
たまには羽目を外すぐらいでちょうどいいのだ。
……ほんの少し物足りないなんて、思ってはいない。
思ってはいない……って、ちらとそのいつものお小言主を目線でちらりと探すと、
「腕相撲勝負? いいですよ、負けません」
どこでそうなったのか。丁度黒羽は腕まくりをしているところであった。
「本気も本気、本気で行きますよ……!」
『おう。その細腕で、やれるもんならやってみな!』
「言いましたね。では勝負……!」
「なんかすっごい楽しそうだなァ。もう」
周囲の亡霊たちがはやし立てる中、腕相撲大会が開催される。
「ふんっ!!」
いつになく気合の入れた掛け声とともに、第一回目の勝者は黒羽に決まったらしい。
「ユルグさん、ユルグさん!!」
嬉しそうにこちらに向かってピースサインをする黒羽に、ユルグは軽く手を振ってこたえた。
「まァ随分楽しそうに懐いちゃってさァ。効能とはいえ狡くない?」
思わず口の中でユルグはそうつぶやく。そうしている間にも順調に黒羽は勝ち進み、どうやら一位になりそうだったので……、
「……楽しそうなコトやってンじゃねェの、黒羽。仲間外れは酷いなー」
なんて言って、がっ。とユルグは黒羽に肩を寄せた。
「はい?」
黒羽は、にこにこと笑っている! ……なので、
「ってわけで、飛び入りの挑戦者だよ。よろしくねェ」
『おおっ。兄ちゃんそのちっこいの、やっちまえ!』
「ユルグさん……負けませんよ」
「おっと。それはこっちの台詞だネ」
笑顔で宣言する黒羽に、ユルグはにやりと笑うのであった。
そして……。
「もう一回。もう一回です、ユルグさん。三回勝負にしましょう!!」
ごねる黒羽がそこにいた。
「うーん。酒が足りないかなァ」
「ええ。ユルグさんー」
ユルグの袖を引いて強請る黒羽に、ユルグは思わず笑う。拗ねたような言葉を選んでいても、黒羽の笑顔はごまかしようがなくて、
「……こんな夜も悪かないネ」
じゃあ、これ呑んでからもう一勝負、と差し出された杯にも。ひとひらの花が落ちて。ユルグはそんなことを言って杯に唇をつけた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルベル・ノウフィル
【金平糖2号】緋雨殿と
宴会?
僕はシュパシュパやってしまいたいのですが
とはいえ朝になって消えるなら良いでしょう
緋雨殿のダンスの出番なのでは?
衣装まで用意があるとは流石でございますね
シラーっとした顔で正座して墨染を鞘からちょっと抜きかけて収めてカチカチ言わせ(無意識である)
定位置から微動だにせず
念動力でお酒を運ぶのを手伝いましょう
人手が足りないなら仕方ありません
緋雨殿は楽しそうですね
ね(妖刀を見つめて)(斬りかかったら怒られるんだろうなと思い)
酔っ払い亡霊が何かの拍子で暗がりに近寄ってきたらシュパッとヤッてしまいましょう
首を狙い悲鳴を上げさせず倒したあとは何もなかったように正座して先程より上機嫌に
天翳・緋雨
【金平糖2号】ルベル君と
いやー酷い目にあったね
ボクはわりかし酔ってもまともだと思うんだけど
……ホントだよ?
ルベル君は配膳のお手伝いっぽいからボクもちょいマジでいこうかなー
多目的スーツに記憶させた衣装もそれなりにあるし、配膳の過程で踊ったりして楽しい空間にしたいな
場が盛り上がってきたら手拍子等も要求していこう
ムーンウォークを取り入れたり
リズミカルなステップを踏んだり
アクロバティックに振舞ったり
エンターティナーとしてがんばる!
(ダンス・演技等)
UCも取り入れたらいろいろな動きができそうなんだよね
あ。バランスは考えてちゃんと零したり落としたりしないようにするよ!?
ルベル君もどうかなー?
楽しく行こうよ
「宴会?」
そう聞いたとき、ルベルは微妙な顔をした。
(僕はシュパシュパやってしまいたいのですが……)
喉元まで出かかった言葉を、口に出さなかったのは。隣にいた緋雨が、なんだかそわそわしていたからである。
「いやー酷い目にあったね」
あはは。と緋雨は軽く頭を掻いていた。かきながら、なんだかあちらこちらから聞こえる宴会のにぎやかな声に、つまりはそわそわしているのである。二回言ったが本当にそわそわしているのである。混ざりたい、という心が滲み出ているようであった、
「ボクはわりかし酔ってもまともだと思うんだけど。……ホントだよ?」
本当だからね? と、二度念を押す緋雨。混ざりたいなあ。混ざりたいなあ。混ざってもいいかな? と、いう雰囲気を醸し出している緋雨に、
(……とはいえ朝になって消えるなら良いでしょう……)
ルベルはひとまずは、そう考えることにして戦うのをやめることにした。代わりに、そうですか。と頷いて、
「……こういう場は、緋雨殿のダンスの出番なのでは?」
と、そんなことを言うと、緋雨はそうなんだ。と、嬉しそうに笑った。
「そうそう。多目的スーツに記憶させた衣装もそれなりにあるし、配膳の過程で踊ったりして楽しい空間にしたいな! ……っていうわけで、ちょっと行ってくる!」
ピュンっ。と、駆け出す緋雨。
「衣装まで用意があるとは流石でございますね」
そういいながらも、ルベルは宴会している集団とは、少し離れた場所に正座をすることにした。
少し待てば、緋雨は気合の入った衣装とともにたくさんの料理をもって戻ってきた。
「ルベル君は配膳のお手伝いっぽいからボクもちょいマジでいこうかなーって」
「配膳の手伝い……まあ、配膳の手伝いはしているのですが」
といっても、念動力で適当にお酒を配布している感じである。シラーっとした顔で正座して墨染を鞘からちょっと抜きかけて収めてカチカチ言わせているのは無意識のうちであった。
「まあ、人手が足りないなら仕方ありません。疲れない程度に働きますよ」
「あはは。ルベル君らしいねえ。ボクは……それ!」
しらっとしているルベルと相対するように、緋雨はご機嫌で酔っぱらいたちの間を歩く。
ムーンウォークを取り入れたり。
リズミカルなステップを踏んだり。
アクロバティックに振舞ったり。
『おー。いいぞいいぞー』
『兄ちゃんこっちにも来てくれよー!』
「はーい。踊り子さんには手を触れないでくださいね~」
ヤジにもしっかり対応しあまつさえ手拍子を要求するような塩梅である。
「緋雨殿」
途中でルベルが念動力を使いながらサポートすると、それすらも演出に取り入れて踊る緋雨。
「うん、エンターティナーとしてがんばる!」
ルベルが声をかけると、ものすごいいい笑顔で緋雨は返事をした。
「この瞬間は空がボクの領域さ……。そおれそれ。空からお料理のおとどけだよ!」
天高く舞い上がり、回転しながらもうまくバランスをとって配っていく緋雨。
「……緋雨殿は楽しそうですね」
軽く、鼻を鳴らして。ルベルは、ね、と、妖刀墨染を見つめるのであった。
(斬りかかったら怒られるんだろうな……)
めっちゃ楽しそうにしているから、お叱りを受けること間違いない。
残念である。とても残念である。
そこで……、ルベルはふらりと立ち上がった。
(あれ、ルベル君どこか行ったかなー?)
ふとさっきまであった念動力サポートがないことに気付いて、緋雨は周囲を見回した。
「(あ、いた……)ルベル君!」
いないと思ったら、どこかに行っていたのだろうか。戻ってきたルベルに、緋雨は声をかける。ルベルは何をしていたのだろうか。平然とした顔で戻ってきて、先ほどの場所に正座しているさまは、いつもより若干機嫌がよさそうであった。
緋雨が手を振ると、ルベルも軽く手を振り返す。
墨染も、なんだかなぜかいつもより、妙にご機嫌な気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
百地・八刀丸
藤子(f08440)殿と
ふむ、料理とは久々じゃな
久々ではあるが、板前業で日銭を稼いでいたこともある
昔取った杵柄と言うやつよ
さて、ではやるとするか
藤子殿は……なるほど、流石に同郷よ
得意料理と言うほどのものではないが、これだけの魚があるとな
一見すると新鮮な魚じゃ、ここはひとつ、刺身で造ろうか
包丁を借りるぞ、綺麗に盛り付けて酒の場を彩ってやろうぞ
ワシの場合、旅の最中に必要だったまでよ
家庭的な料理とはちと違うゆえな……懐かしいものじゃ
それにしても藤子殿、ワシも行儀が良いわけではないが……
いや、今は無粋か。飲めや騒げやの無礼講よな
ある程度作り終えたら、ワシも海上花見と洒落込むとしようかのう
鵠石・藤子
百地・八刀丸(f00181)と
料理のお手伝い、と言うのも久方ぶりです
ぽんとだし巻き玉子を巻いて、一緒に和食を並べていく
お酒に合いそうな物と言うと…魚でも炙りますか?
周囲の海を見渡し、材料には困りませんね、と
八刀丸さんはどのような料理がお得意で?
料理の出来る殿方と言うのは、重宝されるでしょうね
私の里では宴席の支度と言えば女性ばかりでしたよ
ふと並んだ料理を手で摘んで
美味いなこれ、八刀丸!
…ンだよ、オレは食べるの専門なの!
あ、別に作れねーわけじゃねぇからな?
あー、オレは海に詳しくねぇが、海と桜も良いもんだ
ほら花盛りだってのに、鍋だけ見つめてンのもバカバカしいだろ
適当に作って、食べて、遊ぼうぜ、なッ!
「ふむ、料理とは久々じゃな」
そういった、八刀丸は職人の顔をしていた。妙に凄みのある頑固な板前感が前面にマシマシ出ていたが、
「料理のお手伝い、と言うのも久方ぶりです」
と、藤子が髪をまとめてその隣に立つので、一気に絵面が華やいだ気がした。
ともあれ二人自身にそんなことは関係はない。
「さて、ではやるとするか」
「ええ。待ってくださっている方がいるのですから、腕を振るいましょう」
手際よく厨房に立てば、魚を捌き、だし巻き卵をまく。その手際は二人とも驚くほど見事なもので、瞬く間に和食が立ち並んでいった。
「お酒に合いそうな物と言うと……魚でも炙りますか?」
「おお。それはいいな。なれば魚は……」
「そうですね。色々ありすぎますけれど……」
立ち並ぶ魚群に藤子は視線を向ける。材料には困りませんね、と言いながら、決断は手早かった。
「藤子殿……なるほど、流石に同郷よ」
その手際の良さ、そして決断の速さに八刀丸は感心するような声を上げる。制作がうまいのももちろんのこと、何を作るか決めるのが早いというのも、彼女が料理を手慣れているというということの何よりの証拠であった。
「八刀丸さんはどのような料理がお得意で?」
その言葉に、ちらりと視線だけ流しながら藤子が問う。さて。と、八刀丸も魚のあくを掬いながら
「得意料理と言うほどのものではないが、これだけの魚があるとな……。一見すると新鮮な魚じゃ。そうさの、ここはひとつ、刺身で造ろうか」
そういえば作っていなかったな。なんて言いながらも、刺身用の包丁を借りてくる八刀丸。刺身はただ魚を切るようでいて、そうではない技が必要になってくるのを藤子もちゃんと知っている。その切り口の手際の良さ。そして飾り付ける盛り付けのセンスに、感心したように藤子は八刀丸の手元を覗き込んで、
「料理の出来る殿方と言うのは、重宝されるでしょうね。私の里では宴席の支度と言えば女性ばかりでしたよ」
「久々ではあるが、板前業で日銭を稼いでいたこともある。昔取った杵柄と言うやつよ」
「八刀丸さんが板前? それはずいぶん、お店がはやったことでしょう」
きっとおいしいはずだと。ふふ、と上品に微笑む藤子に。八刀丸は明るく笑う。
「ワシの場合、旅の最中に必要だったまでよ。家庭的な料理とはちと違うゆえな……懐かしいものじゃ」
あれや、これや。八刀丸がそんなことを言いながらも、若かりし頃に作った料理を思い出しながら腕を動かしていた……ところで、
ひょい。と、その料理を端から指先でつまむ手があった。
美しい指先は、藤子のものであった。
「美味いなこれ、八刀丸!」
先ほどまでの上品さはどこへやら。刺身をそのまま手でつまめば、次は唐揚げかな。なんてしめしめ、完成品をつまみ食い始める藤子。先ほどまでの品の良さはどこへやら。まるで別人のようだが八刀丸は動じない。
「それにしても藤子殿、ワシも行儀が良いわけではないが……」
素手はいかがなものだろう。素では。と、半眼になる八刀丸に、藤子はフルフル首を横に振る。
「……ンだよ、オレは食べるの専門なの! あ、別に作れねーわけじゃねぇからな?」
「知っておる」
藤子とトーコ。根っこと技術は同じなのだから、できないことはないだろう。……しないだけである。あえてしないだけなのである。
というわけで、何やら言いかけた八刀丸だったが、いう前にそれは飲みこむことにした。
「……いや、今は無粋か。飲めや騒げやの無礼講よな」
どうせ外に出ればお上品など鼻を噛んで捨てるちり紙の如き宴会が繰り広げられているのを八刀丸も知っている。
故に、何とも生暖かい表情で藤子を見る八刀丸に、藤子は鼻の頭を掻いた。
「あー、オレは海に詳しくねぇが、海と桜も良いもんだ。ほら花盛りだってのに、鍋だけ見つめてンのもバカバカしいだろ。適当に作って、食べて、遊ぼうぜ、なッ!」
もういいだろ! と、藤子は八刀丸の手を取った。ふむ、と八刀丸も振り返る。
見返せば、豪快であり絢爛でもある宴会料理や、素朴な家庭料理など、様々な美しい料理がすでに並んでいた。それを片っ端から亡霊たちが持って行っている。
もう、充分働いただろう。
「そうだな。ワシらも海上花見と洒落込むとしようかのう」
「やった!」
じゃあ、これとこれと。と、好物の料理ばかりを選んで持っていこうとする藤子に、八刀丸も酒をいくつか拝借することにする。
さあ、彼らの花見は、始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城島・冬青
【橙翠】
えーと
料理を作ればいいのかな?
ちょっと待ってね…(鞄からエプロンと三角巾を取出し装着)
よし!やるだけやってみましょう!
いやぁいつ料理をするか分からないので持参してるんです
包丁はこれで(脇差の不死蝶を出す)
海だし海産物は豊富ですよね
ブイヤベースとサラダにしましょう
料理技能で魚や貝を調理していきます
アヤネさんやっぱり手つきがいいですね
知ってますが
…!?この貝は…(オウムガイを見つめ)
一章での痴態を思い出し
包丁(脇差)を持つ手が震える
いえ、なんでもないです
あ、そーだ
スープの味見してくれます?
美味しいですか!
やったー!
ココナッツジュースだー!
喉が乾いていたので嬉しいです
えへへ、美味しいですね
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
いざ幽霊船で戦い
って覚悟していたので拍子抜けだネ
なんだこれ?
やるべき事は理解した
ソヨゴどうする?
って聞くまでもなかった
というか
なんでそれが鞄の中に入っているの?
用意良すぎでしょう
女子高生は仮の姿で実はプロのコックなのでは
僕はアシスタントをしよう
ざるをコンコン
野菜に海老
材料はこんな感じかな
あとオウムガイ
オウムガイは貝ではなくてイカの近縁種だネ
ソヨゴが止まったのに気づいて
どうしたの?熱でもある?と
おでこコツンする
スープはデリシャス!
オウムガイを入れたらもっとコクが出るかも
できた料理を振る舞ったら僕らも花見をしよう
ココナッツに穴をあけてストローを二本刺して
大きいから二人で一緒に飲もう
「……なんだこれ?」
アヤネは首をかしげて、手にしていた銃を下ろした。
「いざ幽霊船で戦いを! ……って覚悟していたので拍子抜けだネ」
えー。って顔をするアヤネ。一方で冬青はふむ、とうなずいて、
「えーっと……」
厨房はずいぶんにぎやかだ。
「幽霊船の厨房だっていうから、もっと汚いのを想像してたけれど……。とにかく、料理を作ればいいのかな?」
思っていたよりきれいだったのでほっとする。なんていっていた。とにかく、と冬青は。
「ちょっと待ってね……」
鞄を下ろし、中をがさがさと探った。そうして取り出したのは、エプロンと三角巾だ。
それをすちゃっ。と手早く装着する。
「これでよし! やるだけやってみましょう!」
「え、やるんだ!?」
準備万端パーフェクトです。と。にっこりエプロン姿でポーズを決める冬蒼に、アヤネは思わず瞬きをした。
「ソヨゴどうする? って聞くまでもなかったネ。……というか、なんでそれが鞄の中に入っているの?」
用意良すぎでしょう。と胡乱げにアヤネは冬青のエプロン姿を見る。
「女子高生は仮の姿で実はプロのコックなのでは……」
「いやぁいつ料理をするか分からないので持参してるんです。乙女のたしなみですよ? 家庭科の授業もありますからね!」
えへん。と胸を張る冬青。なるほど、とアヤネは感心したようにうなずく。それで……、
「まあ、女子高生は仮の姿なのは本当ですけれどもね。実は……」
「そう。僕のお嫁さんだものね。なるほどエプロン姿も似合ってるよ、ソヨゴ」
「!?」
猟兵ですし。という言葉をアヤネに取られた。が、冬青は落ち着き払って、そうですね。と答える。
「……兎も角。包丁はこれで」
そのまま刀鍔に蝶の透かし模様が入った脇差を構える冬青。
「おや。ずいぶんと本格的だネ」
「ええ。……海だし海産物は豊富ですよね。ブイヤベースとサラダにしましょう」
さくさくと献立を考える冬青。冷静を装う姿にアヤネはなんだかにこにことしていた。いつものことである。
もうちょっと慌ててくれてもいいのになあ。と思う反面、そんなソヨゴもかわいいなあ。なんて隣で聞こえるように言うアヤネに、冬青は咳払いをする。おっととアヤネはウィンクをして、
「じゃあ、やるべき事は理解した。僕はアシスタントをしよう」
コンコンコン。と。
ざるを軽くコンコンすれば、ぱっと盛られる野菜に海老。
「魚もいっぱいほしいなあ……」
「アヤネさん、たくさん出してもお家で飼えませんからね?」
冗談めかした冬青の言葉にアヤネは笑う。はーい。なんて子供のようにアヤネは返事をして、
「材料はこんな感じかな……」
下ごしらえをしていく。それを横目で冬青は見ている。
「アヤネさんやっぱり手つきがいいですね。知ってますが」
「ソヨゴにおいしいもの作ってあげたいからね」
アヤネも冗談めかしているが、手つきは正確だ。そして、
「あとオウムガイ」
何事もなかったかのように、オウムガイをその列に並べた。
「エビに、おさかなに……。それから、……!?」
順番に料理していった冬青は、は、と手に残る感触に思わず目を見開く。
「この貝は……」
その赤い脳みそを見ていると、先ほどの酔った勢いを思い出す。
「……」
包丁(脇差)を持つ手が震える。
可能ならこのままたたき殺してしまいたい。
いや駄目だ。それでは厨房に被害が出る。
それは料理好き女子高生としては許しがたく……、
「オウムガイは貝ではなくてイカの近縁種だネ」
そんな冬青の葛藤を全く気付いていないのか。平然とアヤネがそんなことを言い冬青の顔を見て、瞬きをした。
「どうしたの? 熱でもある?
「いえ……、なんでもないです
「そう?」
怪訝そうに、アヤネが冬青のおでこに自分のおでこをこつんとする。
「……っ」
それだけで、冬青の顔がまた赤くなった気がした。近いのはダメだ。近すぎる。
「あ、そーだ。スープの味見してくれます?」
悟られてはいけない……。ついと冬青は視線をそらしながらスープを指さすと、アヤネがうんうん、とうなずいてスープをひと救い。
「うん……。デリシャス!」
「美味しいですか! やったー!」
「でも、オウムガイを入れたらもっとコクが出るかも」
「うっ」
やっぱりわかっててからかわれていたらしい。
若干涙目になる冬青に、アヤネは楽しそうに笑う。そうして冬青の手をつかんだ。
「さあ。料理を振る舞ったら僕らも花見をしよう」
「う~~~。は、はい……」
料理を持っていくと、先を争うように手を伸ばされる。あっという間に完売し、おいしいおいしいといわれると。それだけでなんだか冬青はうれしそうで。そんな冬青を見るのがアヤネもうれしかった。
「はい、お疲れさま。大きいから二人で一緒に飲もう」
「わ、ココナッツジュースだー!」
そうして二人も花見の席に腰を落ち着ければ、アヤネはココナッツに穴をあけて、ストローを二本さす。
「喉が乾いていたので嬉しいです」
「ソヨゴ、頑張ってたからね」
「はい。喜んでもらえたようで、良かったです!」
冬青の素直な言葉に、アヤネも笑う。
「えへへ、美味しいですね」
そうやって一緒に飲むジュースが、何よりものごちそうであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
智夢さん(f20354)と
桜吹雪の後にまさか宴会になるとは…と驚きつつもお祭り、宴会楽しいことは大好きなので楽しそうに辺りも見やりながら
智夢さんはこういう雰囲気は苦手でしたか?
でもせっかくでしたら一緒に楽しめるといいのですが…とぱっと思い浮かんだように立ち上がり
皆さんも智夢さんも、この雰囲気が楽しめますよう
『神楽鈴蘭』を構えて【楽器演奏】【ダンス】で鈴の音を響かせながら舞を披露します
せっかくですから、智夢さんの歌も聞きたいですね!
にこにこ微笑んで歌を促し流れる歌声に鈴の音と踊りを合わせながら
彼女もこの場を楽しんでくれますようにと【祈り】も込めて
百鬼・智夢
薄荷さん(f17474)と
宴会…
あ、あんまり賑やかなのには慣れていなくて…
少し、落ち着かないです…
だから、ちょこんと大人しく座りつつ
なるべく目立たないように料理だけ…
え、薄荷さん踊るんですか…?
薄荷さん、華がありますから…きっと喜ばれますね
私も見たいです…薄荷さんの踊り
まさか自分に話が回ってくるとは思わなくて
ほわほわ笑顔で伝えますが…亡霊達に囃し立てられ
ふぇっ、わ、わわ私が歌ですか…!?
で、でも私、あんまり自信が…
ど、どうしましょう薄荷さん〜…
困ったように助けを求めるも結局断りきれず
控えめな声だけれど
透き通るような高い歌声で優しい【歌唱】を
少しでも、盛り上げられるといいのですが…
「桜吹雪の後にまさか宴会になるとは……!」
と、千夜子は若干驚いたような顔をしていた。
とはいえ、宴会ごとや楽しいことは大好きである。
驚きながらも、千夜子はうっきうきであった。楽しそうに鼻歌でも歌いながら、楽しそうに周囲を見やっている。
「あ、あの料理、美味しそうです」
『おう。姉ちゃんひとつ食うか?』
「食べます!」
なんてご機嫌に亡霊の差し出す料理に手を伸ばしたりしている千夜子であったが……、
「宴会……」
ぎゅ。と。
智夢が千夜子の服の袖をつかんで、隠れるようにその背に回り込むようにしてちょこんとおとなしく座っているので、千夜子は智夢に視線を向ける。
「智夢さんはこういう雰囲気は苦手でしたか?」
「あ、あんまり賑やかなのには慣れていなくて……。少し、落ち着かないです……」
こわい。と。いいながらも。「なるべく目立たないように料理だけ……」という智夢。そこで逃げるという選択肢がないところに、千夜子は智夢のまじめさを感じてうーん。とほんの少し、考える。
千夜子は、智夢に無理をさせたいわけではないのだ。
「せっかくでしたら一緒に楽しめるといいのですが……」
「あ、あの、お構いなく……」
「そうだ!!」
気にしないでください、と言いかけた智夢に、千夜子はぱっと立ち上がった。どうやら名案が思い浮かんだようであった。
「皆さんも智夢さんも、この雰囲気が楽しめますよう……。私、踊ります!」
「え、薄荷さん踊るんですか……?」
「はい!」
いうなり、千夜子は鈴蘭の形をした鈴が付いた神楽鈴を構える。踊りも演奏もお手の物だ。即座に美しい鈴の音が、周囲に満ちた。
「薄荷さん、華がありますから……きっと喜ばれますね。私も見たいです……薄荷さんの踊り」
もともと千夜子は巫女である。ゆえにこの手の踊りは体が覚えるほどに踊りこんでいた。おお? と亡霊たちが千夜子に目を向ける。
『何だなんだぁ?』
「せっかくですから、智夢さんの歌も聞きたいですね!」
「!?」
ちょうど、千夜子の舞が始まり、亡霊の注目が彼女に集まり始めたとき。千夜子はそう声をかけた。
「え……。あの、その……」
『おう。その子が歌うするのか?』
『この子がのう……』
「そうですよ。とっても上手なんです!」
「!?」
興味深げに智夢のほうを見る亡霊たち。智夢は笑顔を浮かべてごまかそうとしていたのだが、千夜子の言葉におお、と、どよめきが起きる。
『何と、それは楽しみだ!』
「ふぇっ、わ、わわ私が歌ですか……!? で、でも私、あんまり自信が……」
『まあまあ。そんないけずなこと言わんといて』
「ええっ……。ど、どうしましょう薄荷さん〜……」
さあさあ、と、迫られる智夢は、助けを求めるように千夜子を見る。
しかし千夜子は踊りの間にばっ。と親指を立てるのであった。
そういえば、この事態のきっかけは千夜子であった。
智夢がそれを思い出したかどうかは兎も角。智夢は困ったように視線をさまよわせ、
「じゃ、じゃあ、少しだけでしたら……」
結局断り切れずに、両手を組んで歌い始めた。
控えめな声ではあるが、その歌声は透き通るような高い音色であった。
智夢の歌に合わせて、千夜子が鈴を振り、舞を舞う。優しい歌を。智夢は心を込めて、優しく優しく歌った。
「少しでも、盛り上げられるといいのですが……」
『おお……!』
智夢はドキドキしながら周囲を見回す。亡霊たちが智夢の歌声を聞いて、嬉しそうにあるものは笑っているし、その優しさにしんみりしているものもいた。すばらしいな。という声が聞こえてきて、智夢はほんの少し、照れくさい。
「……もっと……」
喜んでくれる人がいる。
もっと歌える。もっと歌いたい。
智夢の歌は止まることなく続き、
千夜子の舞もまた、それに合わせてずっと続いた。
しんけんに。どうかこの気持ちが届いてほしいと。あくまで優しく歌う智夢に、千夜子は踊りながらそっと視線を送る。
「彼女もこの場を楽しんでくれますように」と。
祈りを込めて、鈴を鳴らした……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
櫟・陽里
おにーさん(リオン/f21392)と宴会盛り上げ隊
はーいバイクパフォーマンス担当のひかりんだよー(棒)
いや何だよひかりんて
バイク騎乗でカッコ良く料理を運べば良いとしか聞いてないけど
おにーさんの事だ、何かある…と身構える
はああ?!そーれ、じゃねえよ!!
ものすごく高ーく宙を舞う料理を追ってバイクで大ジャンプ
例えば甲板に置かれた渡し板や
マストや桜の枝や船の縁なんかをジャンプ台に利用するため
ユーベルコードでコースを作る
FMX風の空中技で料理をキャッチ!
そのまま甲板を走り希望者に料理をお届け
…本当は。理屈がわからん霊的なのは苦手だ
けど次々無茶なコースに飛んでく料理を追ってたら
そんな事考えてる余裕はねえ!
リオン・リエーブル
花見といえば宴会芸!
ひかりん(f05640)&おにーさんの華麗なるショーを見せちゃうよ!
甲板のキッチンでまず炒飯作るね
おにーさん料理は得意なんだ!
パフォーマンス重視で鍋は振るべし米は舞うべし!
強火力で中華鍋を煽るべし!煽るべし!
華麗なる鍋テクを披露しちゃうよ!
こっそり別コンロで回鍋肉や蟹肉炒蛋やなんかもスタンバイ
さてお立会
そこにいるのはスターライダーひかりん!
このパラパラ炒飯を見事!お皿で受け取れたら拍手喝采だよ!
そーれ!(いきなり炒飯宙を舞う)
さあじゃんじゃんいってみよー!
回鍋肉や蟹肉炒蛋なんかも宙を舞う!
打合せ?してないよ?
陽里さんなら全部キャッチできるよね!
すごーい!さすがのバイクテク!
「はいはーい。こちらおにーさんと宴会盛り上げ隊!」
何やら楽し気な宴会の中に飛び込んでいくには、
「バイクパフォーマンス担当のひかりんだよー」
陽里には若干勇気がいった。難易度が高かった。ついでに台詞が棒読みであった。
「……いや何だよひかりんて」
ひかりんは、我に返った!
「ひゅーひゅー! 花見といえば宴会芸! ひかりん&おにーさんの華麗なるショーを見せちゃうよ!」
だが、時すでに遅かった!!
甲板まで出て、リオンはご機嫌でそんなことを大げさな身振りで言う。陽里はもう嫌な予感しかしない。
「それじゃあ、まずは炒飯作るね~。おにーさん料理は得意なんだ!」
『おー。なんでもいいから早く食わせろー』
『そうだそうだ。それよこせー』
「もー。せっかちさん☆」
料理しながらも何やらポーズを決めるリオン。
陽里はバイクに乗ったまま待機である。
陽里はカッコ良く料理を運べば良いとしか聞いていない。
それだけでいいとしか言われていない。
だが……。
「さーて、鍋は振るべし米は舞うべし!」
ばっさーと米を回せるリオン。
「(強火力で中華鍋を)煽るべし! 煽るべし!」
言葉とともに超巨大鍋が美しく宙を舞う。
おいしそうな匂い。そして目を引くパフォーマンス。
(さすがに、「華麗なる鍋テクを披露しちゃうよ!」って、いうだけのことはあるんだな……)
こっそり別コンロで回鍋肉や蟹肉炒蛋やなんかもスタンバイしているリオン。
その手際に感心する。
黙って作ればもっと早いのではないかと疑ってしまう。
いや、きっと早いに違いない。
そしてそれが不可能であることも、陽里にはわかる。
そして……わかる。わかるのだ……。まったく嬉しくもない今までの付き合いから、わかってしまうのだ……。
リオンは今、パフォーマンスましましだが、普通に料理を作っている。だが、
「おにーさんの事だ、何かある……」
地を這うような恐ろしい予感とともに、陽里はそっと身構える。身構えた……その時、
「さてお立会! そこにいるのはスターライダーひかりん! このパラパラ炒飯を見事! お皿で受け取れたら拍手喝采だよ!」
「!? は、はああ?!?!?!?!?!?!」
叫んだ瞬間、陽里にスポットライトがあたった。誰だライトなんてあてたやつ!
「そーれ!」
しかし、現実(リオン)は無常であった。
『おいコラ落とすんじゃねえぞ!』
『飯。お腹空いた。お腹空いた……っ』
「ええい。そーれ、じゃねえよ!!」
悲喜こもごもな亡霊たちの声を聴きながら、陽里は顔を上げる。
「くそ、コースがあるなら走るっきゃねぇ!」
そして、とても、とても高々と宙を舞う料理たちに向かって、陽里は突進していったのだ。
『お、おおー!!』
「っっし!」
「さあ次だ! じゃんじゃんいってみよー! 回鍋肉や蟹肉炒蛋なんかも宙を舞う! おなかをすかせた幽霊さんたちが、食べられるかどうかはスターライダーひかりんにかかっている!」
「はああああああ!? お前、俺と幽霊さんに何かうらみでもあるってのか!?」
「失礼な。ひとさじのいたずら心があるだけだよ!」
その後も。
宙を舞う回鍋肉を。蟹肉炒蛋を。
例えば甲板に置かれた渡し板や、マストや桜の枝や船の縁なんかをジャンプ台に利用すして。
陽里はユーベルコードを駆使してキャッチし続けた。
キャッチしたお料理は即座に亡霊さんのところに受け渡される。
「すごーい! さすがのバイクテク! 頑張れひかりん! おなかをすかせたみんなが待っているよ!」
「って、うるさいわ!!」
思わず突っ込んだ陽里に、リオンはからからと笑った。
「勿論打合せなんてしてないよ? ひかりんなら全部キャッチできるって、僕は信じているんだよ!」
おしゃべりとどまることを知らぬリオンに、陽里はただ飛び回るだけである。
……本音を言うと、陽里は理屈がわからない霊的なのは苦手だった。
けれど、次々無茶なコースに飛んでく料理を追ってたら……。いつの間にか、そんなことは気にする余裕がなくなっていた。
「そう。つまりはこれも僕の愛の……」
「違うかだろ。絶対」
最後まで言わせずに即座に封じる陽里に、リオンはまた楽しそうに、笑った……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨野・雲珠
鏑木さんと/f22508
やや、なにやら人手が足りないご様子。
首に縄をつけたお嬢さんたちに混ざりましょう。
お任せください、俺はパーラーメイド。
謎の状況とはいえ給仕は十八番です、
お酒も料理もじゃんじゃん運びますよ!
そういえば鏑木さんはどこに、
わぁ…馴染んでおられるなあ…
うかうか近づいて、ジュースにつられて隣に座ります。
それにしても、酔いというものが
あんなに楽しい心持ちだとは…
ええ、いくら駄目と言っても
大人が頑なにお酒を飲む理由がわかってしまいました。
三年って結構長くないですか?
と言いつつも、気軽に未来の約束をくださるのは嬉しいです。
約束ですよ、お健やかでいてくださいね。
なるべくでいいので。
鏑木・寥
少年(雲珠/f22865)と
少年は?向こう手伝ってくるって?
それじゃあ俺はちょっと飲んでくるかな
此処ちょっと混ぜてもらっていいか?
安くてうまいお酒は良いお酒
味を確認してから1杯目を一気に飲み干す
さあ、飲もうぜ兄さん方
言っておくが俺はそこそこ強いぞ
……お、少年お疲れさん
お前も一杯どうだ?
おい誰かジュース取って
少し横空けて、「こいこい」と床を叩く
はい乾杯
お前さん大分ふらふらしてたもんなあ
中々いいだろう?お酒ってのも
続きはあと何年後だ?三年?なんだ、もうすぐじゃねえか
……そういや、少年はお酒に強くなるのか弱くなるのか
まあ興味はあるな
じゃあ、生きてたらお互い次はお酒で乾杯ってことで?
「やや、なにやら人手が足りないご様子」
雲珠がきりっ。とそう言って、
「お手伝いしましょう、首に縄をつけたお嬢さんたち。お任せください、俺はパーラーメイド。謎の状況とはいえ給仕は十八番です」
と、女の子たちのお盆をさっと半分持った時、
『まあ、素敵!』
「参りましょう。お酒も料理もじゃんじゃん運びますよ!」
(少年……。幽霊まで落とすとは……恐ろしい子)
元気いっぱいで少女の亡霊たちとともに仕事に繰り出す雲珠に、寥は内心でそんな台詞を頭に浮かべながら、
「少年、向こう手伝ってくるってなら、それじゃあ俺はちょっと飲んでくるぞ」
手を振って甲板のほうに向かっていった。
甲板ではすでにあちこちで座り込んでの宴会が始まっている。
「此処ちょっと混ぜてもらっていいか?」
その中で適当な集団を見つけて、寥は軽く声をかけた。
『おお。まあ、座れ座れ』
『まずは一杯どうだ陸の』
「陸の? ああ。陸のものってことか。ありがたい。邪魔するぞ」
そんなことを言いながら、寥は海賊たちの間に腰を下ろす。海賊たちはどうにも戦いで死んだ集団のようで、あちこちに物騒な傷があったが気持ちのよさそうな笑顔をする幽霊たちであった。
「安くてうまいお酒は良いお酒……っと」
この場合は安いどころかただ酒なので、もっといい部類に入るだろう。寥はちょっと味を確認するように舐めてから、グイっといっぱい目を一気に飲み干す。
「さあ、飲もうぜ兄さん方。言っておくが俺はそこそこ強いぞ」
『ほう』
『ほうほう』
寥の強気な言い方に、海賊たちの目が光った。
『では、わしが勝った時にはその煙草を貰おう』
『俺が勝った時はお主は俺たちの仲間になれ』
「いいだろう。はなから負けるつもりはないからな」
寥の言葉に、海賊たちは大いに笑う。笑いながらも酒に手を取った。……勿論、酒の席であるが、冗談ではないことは誰もが知っていた。
『あなた。あなた。こちらのお料理をお持ちください』
「はい、おまかせください」
両手にうまいこと。器用にたくさんの皿をのせて、雲珠は甲板に出た。
「オウムガイの揚げ物が届きましたよー」
『おう、こっちにくれ!』
『こっちもだ!』
はい、と真面目に返事して運搬に徹する雲珠。それからふと、
「……そういえば鏑木さんはどこに」
労働の喜びに気をとられていて、連れがいたことをいまさらながらに思い出したようであった。
まあ、たぶんこの中にいるんだろうな……と。雲珠は考えていたところに、
「少年、こっちだこっち」
声が聞こえて、雲珠は振り返った。
「わぁ……馴染んでおられるなあ……」
車座になって、海賊たちがグダグダしている。飲みすぎたのだろうか。
その真ん中にご機嫌で、寥は座っていた。
雲珠は最後の揚げ物をもってきて、彼らの真ん中に置くと、
グダグダしていたはずの海賊たちが、おお、飯だ飯だとまた喜び始めた。
「少年、お疲れさん。お前も一杯どうだ?」
そういうわけで、うかうか近付いた雲珠は、仕事がありますから、といいかけて、
「おい誰かジュース取って」
その言葉につられるように寥の隣に行っていた。寥も横を少し空けて、「こいこい」と床を叩く。
『では、これをやろう。こいつは酒ではないが飛び切りうまいぞ』
『何を。こっちのほうがうまいだろう』
海賊たちはなぜか寥に対しては一目置いているようで、先を争ってジュースを持ってきてくれる様子に、何をしていたんだろうか……と、雲珠は胡乱な目を向けた。そんな目に寥は肩をすくめて、
「はい乾杯」
と、グラスを掲げるので、雲珠もそれ以上は追及せずにグラスを合わせた。
海賊たちはそれはもう大いに酔っぱらっているようで、
何やら歌を歌い始める様子を見ながら、雲珠はジュースに口をつける。さわやかなジンジャーの味がおいしい。
「それにしても、酔いというものがあんなに楽しい心持ちだとは……」
「お前さん大分ふらふらしてたもんなあ。……中々いいだろう? お酒ってのも」
そんな海賊たちの様子を見て、そっと息をついた雲珠に、寥はおかしげに笑う。雲珠は素直にうなずいた。
「ええ、いくら駄目と言っても、大人が頑なにお酒を飲む理由がわかってしまいました。大人になったらまたもう一度飲もうと思いますが、なんだか怖いですね」
「そんな風に思えるなら、まあ、大丈夫だろう。続きはあと何年後だ? 三年? ……なんだ、もうすぐじゃねえか」
指折り数える寥に、雲珠は首を傾げる。
「三年って結構長くないですか?」
二十歳になった自分、を想像するけれども、雲珠はうまくできなくて。
三年というと、なんだか遠いもののように感じられた。
じっと雲珠が寥を見ると、寥はおかしげに笑う。
「あっという間だろう。なってみればわかるさ」
「そんなものですかね……」
「なったときには、そう感じたな、俺は」
寥の説明に、なるほど。と感心したような声を雲珠は上げる。
どんな大人になっているか。しばし考えこむような間の後に、
「……そういや、少年はお酒に強くなるのか弱くなるのか。……まあ興味はあるな」
寥はぽつりと言って、己の手の中にある酒に視線を落とした。
「そう……ですね。俺も気になります」
立派になっていますよ。と言えるほども自分に強い自信があるわけではない。
控えめなその感想に、寥は喉の奥で笑った。
「じゃあ、生きてたらお互い次はお酒で乾杯ってことで?」
「そうですね。そうしましょう」
寥の言葉び、雲珠も頷く
どのような大人になっているかは全く分からないけれども、
「……気軽に未来の約束をくださるのは嬉しいです」
しみじみと、寥はそう言って天を仰いだ。
「約束ですよ、お健やかでいてくださいね。なるべくでいいので」
「あいよ。まあ心配せんでも、俺はうまいことやってるだろうな」
三年後っていうと三十路突入してるのか。なんて。寥はおかしげに笑う。
そうして二人は桜を見た。
その時見ている桜は、きっと今の桜とは違うけれど……、
「きっと、三年後も桜はきれいでしょうね」
雲珠に言葉に、違いないと寥は楽しげに笑って酒を煽った……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【灰】
花見ダー。
コレの頭には桜が咲いたまま。
ココにつく前にもっと受けてふさふさが増した。
アァ……イイだろー。おめでたいだろー。
二人の桜はどうなった?
満開ダー!
花がたーくさんあった方がミンナミンナ喜ぶ。
賢い君も楽しくなるなる。
アァ……乾杯しよ。乾杯。
せーの、乾杯ー。
こうやて楽しむのもイイねェ。
花はいくらあっても飽きない。楽しい。
コレは酒も好き、ジャーキーも好き。
ジャーキーが欲しい、あるー?
トキジ偉い。くれくれ。
トキワのはソーセージ。うんうん、交換しようそうしよう。
飲みすぎ注意だケド、誰が一番強いか気になる
二人とも強い?コレはほどほど
今は桜が咲いているカラ弱くなってるカモ
酔ったらあとはヨロシクネェ
神埜・常盤
【灰】
頭に鹿角めいた櫻を咲かせたまま
宴会を楽しませて貰おうか
ふふ、エンジ君は更に華やかに成ったねェ
三人分の桜が集えば春爛漫の夢心地
櫻がふさふさ、花弁ひらひら
目にも鮮やかな眺めで楽しくなるなァ
ウンウン、乾杯、乾杯
いやァ、間近に櫻が咲いてると
また華やかな気分で楽しめて良いねェ
傾ける赤ワインには
肉汁滴るソーセージをマリアージュ
おや、ジャーキーも美味しそうだ
僕の摘みと少し交換しないかね?
肉汁も良いけど、噛み応えが有るのも良いなァ
誰が一番強いか僕も気に成る
折角だし試してみようか
十雉君は笑い上戸なのかね
それは愉快な酒が呑めそうだ
僕は酔うと眠くなる性分なもので……
潰れた時はちゃんと起こしてくれ給えよ
宵雛花・十雉
【灰】
うっし、花見だ宴会だ。
飲むぞ野郎ども。
桜がじゃんじゃか咲いて頭が重てぇが、んなこと気にしてる暇ねぇや。
あいよ、乾杯な。
音頭は頼んだぜ。
乾杯ー!
へへ、そう言うと思って持ってきたぜ。ジャーキー。
たくさんあっから遠慮しねぇで食いな。
お、ソーセージたぁ分かってるねぇ。
噛んだ瞬間肉汁が滲み出んのがいいよな。
オレにもくれ。
酒の強さはオレもそれなりだぁな。
結構いい酔い方すんだぜ? 笑い上戸ってぇのかな。
ちっとうるせぇかもしれねぇが、暴れ出すよかいいだろ?
了解、最後まで残ってりゃあ介抱してやるよ。
代わりにオレが先に潰れた時は頼むぜ、お二人さん。
「花見ダー!」
そいやっ。とエンジがグラスを掲げれば、わっさわっさと花が散る。頭上にある巨大な気からもあるが、エンジの頭に生えた樹がご機嫌に咲き誇っているのだ。
「うっし、花見だ宴会だ。飲むぞ野郎どもっ」
ぐっ。と十雉も親指を立てる。動くたびに桜がじゃんじゃか咲いて頭が重たいし、邪魔くさいしで気になる気がしないでもないがそれでも気にしないことにした。なってしまったものは仕方がないのである。
「ふふ、エンジ君は更に華やかに成ったねェ」
代わりに常盤がそういって微笑んだ。鹿の角のように生えた桜はさわさわと揺れて、
「三人分の桜が集えば春爛漫の夢心地。……そう、櫻がふさふさ、花弁ひらひら」
ひらりん、と首を緩く降れば花吹雪が落ちる状態に、常盤はご満悦である。
「ふさふさ! ひらひら! 二人の桜はどうなった?」
常盤の言葉にエンジがもう一度行って、とばかりに声を上げてから軽く耳を傾ける仕草をする。おおー。と十雉が軽く首を振って。
「あァ。ふさふさで、なんだかご機嫌だなァ」
「いやァ、間近に櫻が咲いてると、また華やかな気分で楽しめて良いねェ」
桜を散らすと、常盤が言葉に乗ってくる。
「そう! ココにつく前にもっと受けてふさふさが増したカラ! アァ……イイだろー。おめでたいだろー。コレの頭には桜が咲いたまま。ずーっとこのままだといいなァ……」
「……いいのか? それ」
「まあまあ、野暮なことは言いっこなしだよ」
思わず素で突っ込んでしまった十雉に、常盤が微笑む。赤ワインを傾けて、それじゃあ、と声を上げた。
「この美味しそうなソーセージが覚める前に、乾杯しようか。目にも鮮やかな眺めで楽しくなるなァ。ウンウン」
「あいよ、乾杯な。音頭は頼んだぜ」
その言葉に、待ってましたと十雉が応じる。それでエンジが、
「アァ……乾杯しよ。乾杯。せーの、乾杯ー」
「乾杯ー!」
「乾杯、乾杯」
「満開ダー!」
「お、おおー??」
エンジの音頭に、十雉と常盤もグラスを掲げる。ついで言われた言葉には、あれ? と少しだけ首を傾げながらも、
グラスが合わさっていい音が立てば、皆してそれを一気に飲み干すのであった。
「ん~。花がたーくさんあった方がミンナミンナ喜ぶ。賢い君も楽しくなるなる~」
ご機嫌、ご機嫌。と、エンジが舞い散る桜の花びらを空中でぱしんと手に取った。
「こうやて楽しむのもイイねェ。花はいくらあっても飽きない。楽しい」
「ふ……。確かに花はきれいだが。やっぱり酒と食べ物があってこそだぜ」
「確かに食事は必要だよ。もちろん、花も大事な要素だけれどね」
ソーセージがうまい。それをつまみながら十雉の様子に同意すると常盤に、エンジはにやりと笑った。
「コレは酒も好き、ジャーキーも好き。ジャーキーが欲しい、あるー?」
「へへ、そう言うと思って持ってきたぜ。ジャーキー。たくさんあっから遠慮しねぇで食いな」
言われていそいそと十雉が、自分の荷物からジャーキーを取り出し二人へと示す。わっ。とエンジが表情を輝かせた。
「トキジ偉い。くれくれ」
「おや、ジャーキーも美味しそうだ。僕の摘みと少し交換しないかね?」
すんすんと鼻を鳴らして迫るエンジに、常盤は冷静に己のソーセージを示す。
「お、ソーセージたぁ分かってるねぇ」
十雉も嬉しげに笑うので、エンジは腰に手を当てて、
「トキワのはソーセージ。うんうん、交換しようそうしよう」
なぜか得意げに言うので、十雉はふきだした。
「エンジは交換できるもの何もないだろ」
「まあまあ。まあまあ。コレのことは気にしないで」
「うん、気にするよ。気にするよ? こんな大きいわんこさん」
「だったらだったら、撫でてもいいぞ、交換ダ」
冗談めかして言うエンジに、常盤は笑ってエンジの頭を撫でた。別にはなからあげるつもりだったので、かまわない。十雉もさっさとソーセージに手を伸ばしていた。
「うん、うまい。噛んだ瞬間肉汁が滲み出んのがいいよな。オレにもくれ。もっとくれ」
「それに慣れると、肉汁も良いけど、噛み応えが有るのも良いなァ、ってなるんだよ」
一方常盤のほうはジャーキーを齧り。
そしてエンジは両方をまんべんなく頂き。
ご満悦であった。
ご満悦でひとしきり空腹を満たした後で、
誰が言い出したのか。最初は何の話だったかは分からないが、
「酒の強さはオレもそれなりだぁな。結構いい酔い方すんだぜ? 笑い上戸ってぇのかな」
そういって、十雉は若干考え込むような間があった。それからにやりと、
「ちっとうるせぇかもしれねぇが、暴れ出すよかいいだろ?」
賑やかなのがいい。といった。その主張がきっかけになったのかもしれない。そして、
「十雉君は笑い上戸なのかね。それは愉快な酒が呑めそうだ。きっとみんなで倒れるほど飲むのも、楽しいだろうねェ」
そう、常盤が言ったので。エンジが瞬きをして、
「飲みすぎ注意だケド、誰が一番強いか気になる。二人とも強い?」
コレはほどほど。と。言いながら問いかけたのだ。
「ああ……。酒は誰が一番強いか僕も気に成る。……折角だし試してみようか」
最後の言葉は何となく声を潜めて、常盤が提案する。
「……確かに、気にならないっていやぁ、嘘になるな……」
十雉は長考ののちに、そう答えた。「やってみるか?」と、小声で問うと、
「ウンウン、いってみようやってみようー」
と、エンジが気楽に答えてドン、と大量の酒を持ってきて三人の間に置いた。
常盤はふっと得意げな顔になる。それから非常に堂々とした顔で、
「僕は酔うと眠くなる性分なもので……。潰れた時はちゃんと起こしてくれ給えよ」
なんてなぜか自信満々に主張するので、おお、とエンジは手を上げた。
「コレもコレも。今は桜が咲いているカラ弱くなってるカモ。酔ったらあとはヨロシクネェ」
最初から勝つ気がなさそうな言い方に、十雉はちょっと笑った。
「了解、最後まで残ってりゃあ介抱してやるよ。代わりにオレが先に潰れた時は頼むぜ、お二人さん」
了解、という返事は常盤とエンジから。そこはかとなく何となく、十雉は自分が残るんだろうなあ、というのをその二人の様子から感じた。かもしれない。
「んじゃ……」
やるか。と。いう十雉に、
「かんぱーい!」
「そうそう、乾杯」
二人の声もまた、重なった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
【壁】
最後くらい、気の済むまで宴会に付き合ってもいい気がするな。
左手にオウムガイ、右手に給仕から受け取ったビール(でかいピッチャーごと)、それを飲みながら仲間と厨房へ。
コックの仕事を手伝うにしても、俺料理できないぞ。
そうだ。オウムガイ、焼けばつまみで出せるんじゃないか?
窯に直で投げ込むか[冥府の槍]の炎で焼こうとする。
炎は炎だ……冥府産だが。
なあ、酒を持ってきてくれないか――何でもいい、大量に。
料理を急かす給仕にそう言い気を逸らせよう。こっちの方が貢献できそうだ、来た傍から酒を飲み干して行く。
栴とサンディは手伝いもいいが飲み食いもしろよ。
菊花は眠くないか?
後でコックを連れ皆で宴会に混ざろう。
サンディ・ノックス
【壁】で参加
オウムガイの踊り食いでもすれば?
と言っても笑い飛ばされそうなくらいご機嫌な亡霊たちだなあ
そうだね、コックが心配だ
貝調理も兼ねて厨房に行こうか
俺も料理できないけど切るくらいなら手伝えるよ
…剣は使い慣れているからね
厨房で自分ができる切る・洗う程度の下ごしらえを手伝う
相馬さんに提案され、栴さんに手招きされて
あれはその場の勢いというか…と言いつつ指を組んでいただきますの挨拶
貝は勿論食べるとして他はどれにしようかな
夜明けの花見、名案だね
厨房の亡霊にせっかくだし花見の思い出を皆で持って逝ったら?と言い
生者のコックもお疲れさまと労い宴会に誘う
宴会では菊花さんが寝てしまっても大丈夫なように横にいる
八重垣・菊花
【壁】アドOK
酔っ払いに正論は通じへんってこのことやな?(亡霊の宴会を眺め)
帰ってこうへんコックさんが心配やねぇ、ちょっと見てこよか
幽霊ってご飯食べれるん…?いやさっき飲み食いしとったもんな
よっしゃパーラーメイドもこなせるうちが、いっちょお料理の手伝いしたろか!
貴船は食材っちゃうよ!?酢の物にされへんように袖に隠れとり(袖中に入れ)
揚げ物煮物刺身に焼き物、やっぱりあの貝も使うん?
こんだけ作ったらええやろ!そろそろ夜が明けるんちゃう? せっかくやし、皆で宴会の方いこか!生きてるコックさんもそうでないコックさんも、夜明けの桜を見ぃへんとかもったいないやろ!ほな行くでー!
ね、眠ないよ!?(うとうと)
生浦・栴
【壁】で
宴もたけなわだな
料理が要るならオウムガイでも提供するか?(鍵を外し幾つか放る
鬼桐のに付き合えずに済まぬ
というかお主、所謂ザルか?
貝を生で喰う気はせぬし厨房に移動しよう
料理は大して出来ぬので姦しい給仕に貝を見せ
美味い調理を尋ね催促の声を止めよう
矢張り焼くか、茹でて酢もや和え物か?
いや其方は喰わぬので(貴船へ手をひらひら)
鬼桐のの炎で網焼きにしようか
ノックスのもよく働くよな
先ほどいっぱい食べると云うたよな?(手招き
菊のの料理は美味そうだが摘み喰うても叱られぬだろうか
夜明けの花見は良さそうだ
良ければそこの料理人も解放されても良かろう
最後の料理と飲み物も一緒に持参し
桜と宴の終わり際を楽しもう
PM9:00ごろ。
「オウムガイの踊り食いでもすれば?」
とりあえずサンディは言うだけ言ってみた。
『おう、そりゃあいいな!』
『おおい誰か、持ってるやつぁ……』
想定通りだった。ご機嫌に笑い飛ばし、あるいは試そうとする亡霊たち。
「宴もたけなわだな。オウムガイが必要だというのなら、提供するが?」
ノってくる亡霊に、栴は鍵を開けて捕獲済みのオウムガイをいくつか放る。おおー! なんて、ご機嫌な声が返ってきた。オウムガイを取り囲んで、あれこれつつきながら何やら話している酔っぱらいたち。
想定通り過ぎて、サンディは微妙な顔をした。
「機嫌な亡霊たちだなあ……」
こう、その通り過ぎて面白くない。みたいな顔をするサンディに、うんうん、と菊花は両手を組んで、何やら訳知り顔で頷いている。
「酔っ払いに正論は通じへんってこのことやな? わかるわぁ。ついでに酒も肴も底なしやん。反則やわ」
ずるい。と、うん、うん、と、頷いて。それから菊花は、ふう、とため息をついた。
「帰ってこうへんコックさんが心配やねぇ、ちょっと見てこよか」
と、頭を掻いて歩きだす。聞く花の言葉に、サンディも頷いて後に続いた。
「そうだね、コックが心配だ、貝調理もしたかったところだし、厨房に行こうか」
「なんだ。もういくのか?」
菊花とサンディの言葉に、相馬が首を傾げる。
「何だ。お主はここに……」
いたいのか? と。栴は聞きかけて言葉を飲み込んだ。
左手に踊り食いだと渡されたオウムガイ。右手に給仕から受け取ったでっかいピッチャーになみなみと注がれたビール。後ろにやいやいとついてきている亡霊たち。
「……ずいぶんと楽しそうであるな」
「ああ。ここの連中は気のいいやつらばかりだ。ところでこいつの踊り食いをしろと言われているのだが……」
「やめい。さすがに腹を壊すぞ」
『何じゃ。生きてる人間はつまらんのう』
『食べんのならそんな手毬に興味ないわい』
「うるさいわい。貝を生で喰う気はせぬし、ほれ、厨房に移動しよう」
「このオウムガイは、俺が預かるね」
言い出しっぺなので。とサンディが相馬からオウムガイを受け取ると、四人はめいめいに移動を始める。
「というか、鬼桐の。鬼桐のはあそこで飲んでいたかったのではないか? 付き合えずに済まぬ」
「いや。端で勝手に呑んでいるからいい。……それにしても、コックの仕事を手伝うにしても、俺料理できないぞ」
「料理できへんのはええんやで。相馬くんがそれでええんやったらな。そやけどそれやったらなおのこと、上で飲んでた方がよかったんちゃうん。……まあ」
そこまで言って、菊花は笑った。
「うちは、みんなでおった方が楽しいけどな」
「ああ。俺もそう思う」
なので、相馬も小さく頷いた。
PM11:50ごろ。
「せやけど、幽霊ってご飯食べれるん……? いやさっき飲み食いしとったもんな。それも尋常でない速さやったな。……よっしゃ。パーラーメイドもこなせるうちが、いっちょお料理の手伝いしたろか!」
厨房についた菊花が、いろいろ考えたのちにそう高らかに宣言したので、
おおおー! と、コックたちの間から歓声が上がった。
「た、た、た、助けてくれるんですかぁ~」
亡霊コックの中で唯一人間だった海賊コックが男泣きしている。菊化はウインクした。
「まかせてや。うちらが来たからには、貴船に乗ったつもりで安心しといて!!」
「は? 貴船……?」
「なんでもないよ。俺も料理できないけど切るくらいなら手伝えるよ。……剣は使い慣れているからね」
そっとサンディが割って入ると、きょとんとしたコックは、よろしくお願いします。と頭を下げた。
『早く次のお料理を~』
『お客様がお待ちです~』
厨房でそんなやりとりをしていると、やってくるのは給仕係の亡霊たち。やれ、姦しいなと栴は、にゅうとその鼻先にオウムガイを突きつける。
「まあ、まあ。このような者があるのだが。主ら上手い調理法を知らぬか?」
『あら~?』
「矢張り焼くか、茹でて酢もや和え物か?」
「はっ!?」
そこで、話を聞いていなかった菊花が目を丸くして栴から貴船をかばうように数歩後ずさる。
「貴船は食材っちゃうよ!? ほらほら、出てきたらあかんで。酢の物にされへんように袖に隠れとり」
「いや其方は喰わぬので。いらん。いらんわ」
若干大げさなリアクションをとる菊花に、栴はひらひらと手を振る。
「あ。ひどーい。貴船はこれでも、絶対美味しいと思うんやで!」
そういわれると、ついつい言い返したくなるのが親心、かもしれない。
「いらんと言っているのである。そうだな。素材の味を生かすならシンプルなほうがいいか……」
ふむ。と、考え込む栴に、ぽんと相馬が手を打った。
「そうだ。オウムガイ、焼けばつまみで出せるんじゃないか?」
「ふむ……?」
『ちょっとこれは大きいので~。火力が足りないかもしれません~』
なるほど? と、相馬の言葉に栴は首を傾げるが、亡霊がそう声をかける。丸焼きにするには案外分厚いらしい。
「そうか。窯に直で投げ込むのが無理なら、この槍で焼いてみよう」
青黒い、冥府の炎に焼かれ続ける黒槍を、相馬は掲げる。
「おお~。確かにこれやったら、よく焼けそうやねえ~」
「炎は炎だ……冥府産だが」
菊花が拍手をするので、相馬は真面目な顔をして頷いた。では、とサンディが申し出る。
「下ごしらえはしておくよ。それくらいしか、俺にはできないから」
「ええ。そんなゆうて、めっちゃ働いてくれてるやん。さっき軽く頼んでた野菜……」
「はい。ここに」
「ぉぅ! 素敵やわ~!」
菊花のお願いはすでに終わっていた! 手を叩く菊花に、サンディは何でもない、みたいな顔をしているので、栴は笑ってしまう。
「ノックスのもよく働くよな。……それではオウムガイは、鬼桐のの炎で網焼きにしようか。頼めるか?」
「ああ。任された」
栴の言葉に相馬が請け負う。一品はそれで決まった。うーん。と菊花は腕を組んで、
「揚げ物煮物刺身に焼き物……。どんどん作ってかなあかんな。やっぱりあの貝も使うん? 焼き以外で? 料理に入れてまう?」
この殻がなかなか堅そうなんや。と菊花がこんこん叩くと、
「じゃあ、俺が割ってみるよ」
斬りでがありそうだ。なんてサンディが腕まくりをしたりして。
それぞれ、忙しい作業が始まった。
AM4:00ごろ。
そして。
「なあ、酒を持ってきてくれないか――何でもいい、大量に。」
料理を急かす給仕にそう言い、相馬は酒を運ばせる。うるさく言われないように、気をそらしているのだ。すでに焼きオウムガイは、外に出す分は完売で、手が空いていたのもあり、
「こっちの方が貢献できそうだ」
とかなんだかんだ言いながら。相馬は次から次へと酒を飲み干していく。
「おっと、栴とサンディは手伝いもいいが飲み食いもしろよ」
そうして軽く言って酒を掲げると、おお? と栴は振り返った。
「そうであるな。ずいぶん長いこと働いていたような気がする……。というかお主、所謂ザルか?」
「さあ、どうだろうな? 少なくともまだまだいけるとは思うぞ」
栴もどうだ。なんて酒を掲げる相馬に、そうであるなあ。なんて栴は少し考える。それから。
「ああ。ほれ、ほれ、ノックスの」
栴がこっそりこっそり、いまだ手伝いをしているサンディに手招きをした。
「先ほどいっぱい食べると云うたよな?」
「え? ええ。言った……っけ? でも、あれはその場の勢いというか……」
栴のにこやかな笑顔に、相馬はそうか、と頷く。
「別にいっぱい食べなくてもいいから、少し休憩したらどうだ」
「そういうことだ。菊のの料理は美味そうだが、摘み喰うても叱られぬだろうか。まあ、たとえ叱られたとしてもいいじゃろう。叱られるのはノックスのじゃ」
「ええ!?」
あっさり言われた言葉に、サンディが目を丸くしている。……が、二人の様子に観念して、サンディは指を組んでいただきます。と、まじめに挨拶をした。
「貝は勿論食べるとして他はどれにしようかな……」
「その辺の煮物がおすすめだぞ」
「いや、そこはガっと揚げ物に手を付けるべきであるな」
「ふー。こんだけ作ったらええやろ! そろそろ夜が明けるんちゃう? せっかくやし……って、何やってるんやー!?」
ふいー。と汗をぬぐうような仕草をして振り返った菊花が見たものは、
清々しいまでに堂々とつまみ食いをする男三人衆の姿であった。
AM5:20ごろ。
気を取り直して……。
「皆で宴会の方いこか! 生きてるコックさんもそうでないコックさんも、夜明けの桜を見ぃへんとかもったいないやろ!」
「え? ええ?」
「ほな行くでー!」
つまみ食いに衝撃を受けた菊花は、ひとしきり料理をほめられて持ち直した。そのまま機嫌を直してコックの腕をとる様子に、なるほど、と相馬は頷く。
「最後くらい、気の済むまで宴会に付き合ってもいい気がするな。皆で行こうか」
「うん。夜明けの花見……、名案だね」
『でも、持ち場を離れるわけには……』
『そうですよ。お仕事がありますから~』
「そんなこと言っても、もう夜明けだよ。夜が明けたらみんないなくなるんだよね? せっかくだし花見の思い出を皆で持って逝ったら?」
どうしよう。みたいな顔をする亡霊たちに、サンディがそう声をかける。
『確かに、そういう思いでもいいかなあ……』
「うん。いいと思うよ。そっちのコックも、お疲れさま」
行こうよ。と、菊花に手を掴まれたコックに声をかけると、コックは頷いた。
「行きましょう。死ぬほど料理をして疲れました」
「ほんまやで。こんだけ働いたんやもん。最後にちょっと、ええもん見たってばち当たれへんよ」
「ああ。夜明けの花見は良さそうだ。……料理人も解放されても良かろううて。料理はほら、もはやたんとある。もう働く必要もないであろう」
ほら。と。栴が出来上がった料理たちを示す。それで、亡霊たちも納得がいったようで、
『そう……ですねぇ~』
『それならちょっくら、花でも見に行くか』
と、ぞろぞろと歩き出した。栴はでは……と料理を手に取る。
「重いものは、俺が運ぼう」
「勿論、俺もね」
相馬もサンディも、それに合わせて飲み物や料理をめいめいに取った。
「ああ。それではあとは……桜と宴の終わり際を楽しもうではないか」
栴がそう言って笑う。
空は白み始め、楽しめる時間はそう長くはないだろうけれども、
『わ~。改めてみると、きれ~ですねぇ』
『うーん。まぶしくて潮風が気持ちいいなあー……』
そんなのびのびとした労働者たちの顔を見ていると、
それは、宴の締めくくりにふさわしいように思われた。
「菊花、眠くないか?」
そんな中、相馬が声をかける。なんだか菊花の足元がふらふらしていた。
「ええ。ね、眠ないよ!? 大丈夫やよ!?」
なぜか意地を張る菊花であるが、それが強がりであることは明らかだ。何だかうとうとしている。……それはそうだろう。夜通しずっと、頑張っていたのだから。
そっと、サンディが菊花の隣にいる。言っても聞かないだろう、とはわかっていたので。ただサンディは隣にいることにした。菊花は何も言わなかったけれども、時々うつら、うつらと、舟をこいでいるようであった。
そんな感じで、夜明けの宴はほんの少し、続いた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『花は宴のためにある』
|
POW : 宴会には飯! 美味しい料理をたらふく食べる。
SPD : 場所取り命! 絶好のポジションを素早く確保。
WIZ : 芸事こそ花! 花を見ながら隠し芸を披露する。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●それから
みんなが、甲板に来ていた。
誰かが連れてきたのだろう。コックの亡霊や、給仕姿の亡霊もいた。
みんなが桜を見つめる中で、陽が昇った。
まばゆい、まばゆい朝日であった。世界に雲一つなかった。
『ああ……』
ため息のような声が聞こえた。
誰が発したのかは、もうわからなかった。
その声を、誰もが確かに聞いたと思った。……その時。
ざぁぁぁぁ。と、船の桜が風に乗ってその花を大量に散らし……、
その花吹雪が収まったとき、船はもう、そこにはなかった。
まるで最初から、何もなかったかのように……。
「!?」
そう、つまりは、
まるで最初から、何もなかったかのように、足場が消え去ったのであった。
「全員、無事かい!?」
「おうよ!」
救助対象だった海賊は、さすがに海賊であった。自分たちで、自分たちの船まで移動して、助かることができた。
猟兵たちは、空を飛んだり、何かに乗ったり。それこそ泳いだり。自分たちで島まで戻ることができたものは自力で戻り、
戻れないものは、海賊たちが回収した。
「この人たちは、あたしたちだけじゃない。あいつと、沢山の船乗りたちの恩人だよ! 全員、間違いなく助けるんだよ!」
と、船長が叫んだという。
そうやって彼らが陸に戻ったときには、陽は完全に登り切っていた。
どこまでもどこまでも続く真っ白い砂浜が、猟兵と生き残った海賊たちを出迎えた。
島民が駆け寄ってきて、彼らの無事の帰還を喜んだ。そして、服が濡れたものは乾かしてくれたり、代わりの服を貸し出してくれたり、宴会疲れの人々には胃に優しい食べ物や飲み物を必要に応じてふるまってくれるようだ。
代えるまでには、まだ少し時間があったので、
「飲み食いは、もう充分かもしれないが、欲しいものは何でも用意する。せめてもの礼だよ、ゆっくりしていっておくれ」
船長がそう言って笑った。
「本当に助かったよ。おかげであいつも、笑い話として逝くことができた。本当に良かった」
もちろん本当に良かったのは、その「あいつ」が試練に打ち勝つことだったけれども。それを船長は言わなかった。
ともあれ、帰るまでの少しの間、この島でゆっくり過ごしていくといいだろう。
いつまでも続く真っ白な砂浜も、
貝を集めて作ったアクセサリーや、海に流れ着いた不思議なものを売っている露店もある。
少し行けば民家が並んでいて、まだ食べる気力があるというのなら、ちょうどいい、そして独特な朝食をふるまってくれるだろう。
それから……。
「……わけのわからないもので死ぬほど働いて疲れたな……」
そんな中、途中で助けてもらったけれども、疲れた。と、コックが主張して、
ふらりふらりと歩き出した。
途中で仮眠をとらせてもらったものの、やはりちゃんと寝たいと彼は言った。
「ここには花がないだろう? 塩で花はみんな死んじまうんだ」
そういいながらも、コックはふらふらと歩いた。
割と歩いた。結構しっかりとした防潮林を抜けて、森を抜けたと思ったら、急に視界が開けた。
そこには、ただ美しい広場があった。
足元は一面にたんぽぽの花が咲き乱れている。まさに埋め尽くさんばかりであった。
そして、あちこちの頭上には桜の花が咲き誇っていた。
「やれやれ。桜はもう勘弁……。ほんと、あんたたちに助けてもらわなきゃ、俺は生きていなかった……」
ありがとう、と言って。そういってコックは桜から離れてタンポポ畑に倒れ伏した。
そのままいびきをかいて眠ってしまった。
あとにはもうなにもない。
たださわやかな風が吹くだけの、花に満ちた広場があった。
※マスターより
三章は、皆さんが島について、落ち着いたぐらいからのスタートです。
フラグメントは参考程度で、好きなことを好きなようにしていただいても構いません。
浜辺、海辺で遊んだり、
近隣の住人と交流したり、
朝市や、それと一緒に出ているお土産物屋さんを覗き込んだり、
はたまた広場でゆっくりしてもいいでしょう。お好きにどうぞ。
もしもあなたが突然海の家で焼きそばを食べたいと主張するならば、焼きそば屋さんができます。
海水浴がしたいならば、なんだか今日は水温がとっても海水浴にいい感じになるでしょう。好きに遊んでください。
なお、第一章の謎の花や謎の酔いっぷりは三章のラストまで続いていても構いませんが、それで終了します。
いつの間にか桜はすべての花を散らして、そしてすうっと消えていくことでしょう。
プレイング募集期間は、4月の14日8:30より15日20時まで(※注意!※一章二章よりも早い〆切になっております!)。
それ以外の期間にプレイングを頂いた方は、問答無用で流します。
また、場合によっては再送になる場合もあります。その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを投げていただけたら幸いです。
(それ以降でも、プレイングを投げられる状態であれば受け付けますが、提出タイムに入っていて再送が不可能になる可能性もありますのでご了承ください)
以上になります。
それでは、良い一日を。
コノハ・ライゼ
【空】ジュジュちゃん、なびきちゃんと
あらぁ、桜散っちゃった
じゃあ桜に負けないアクセでも探しに行きましょ
シーグラスも柔らかな色がイイよねぇ、螺鈿とかもあるかしら
あはは、似合う?とノリノリでカチューシャ着けたり
ティアラ似合う~!と囃し立て
えぇ~ティアラでもイイと思うけどぉ、じゃあこの海色のヘアピンは?
なびちゃんの髪色によく似合う!
うさちゃんのもイイね、ジュジュちゃんもお揃いにしなよ
白の貝殻は二人のイメージにもぴったり!
ふふ、オレは勿論なんだって似合っちゃうヨ
カチューシャもカフスもイイねぇ、ドッチも頂こうかな
そうそ、ちょっと独特なご飯が食べれるって聞いたから行っても……
って二人ともまだ食える訳!?
ジュジュ・ブランロジエ
【空】
コノさん、なびきさんと
アドリブ歓迎
さっきまでふわふわ楽しかったけど今はすっきり楽しい
海アクセ、キラキラしてて綺麗だね
あ、この貝殻とシーグラスのティアラ、なびきさんに似合いそう!
コノさんはこのシーグラスのカチューシャ!
と勝手に見繕って頭に載せてみたり
二人とも綺麗なお顔だからキラキラアクセ似合うよ
『可愛い!』
ティアラはだめ?
似合うのになぁ
わ、素敵なイヤリング!
これくださーい!(即決)
メボンゴには小さな白い貝殻のブレスレットを首につけてペンダントに
うん、丁度良いサイズ
ブローチも可愛いね!
メボンゴとお揃い……!
えへへ、ぴったり?
じゃあこれも頂こうかな!
ご飯!まだまだ食べられるよ!
行こう行こう!
揺歌語・なびき
【空】ジュジュちゃん、コノハさんと
酔いが醒めて何より
おれも桜、散っちゃったみたいだねぇ
アクセかぁ…お土産にいいな
…いやジュジュちゃん、おれ達に見繕うの?
確かにコノハさん美人だし髪色に映えそうだね
わーありがとーじゃなくって!
大の男にティアラは駄目だよ色々世間体とか…ほらほら
真珠と硝子のイヤリング、かわいいよ
きみこそ沢山おしゃれするといいと思うんだよね
ヘアピンなら確かに使える…綺麗だし…(ふむと
あ、コノハさんこのカフスも可愛くない?
メボンゴちゃんも似合ってるねぇ
あ、ジュジュちゃん
貝殻のブローチなら、二人でお揃いじゃない?
イヤリングといい似合う似合う!
働いたしお腹空いちゃうよねぇ
甘いものとか欲しい
「……はっ」
ジュジュは、我に返った!
「さっきまでふわふわ楽しかったけど……、なんだか今はすっきり!」
『楽しい~!』
「あはは。酔いが醒めて何より」
何だか夢を見てたみたい。頭に手をやるジュジュに、なびきは笑う。同じように手をやると、桜は散って散って、そしてすうっと消えていくところであった。
「おれも桜、散っちゃったみたいだねぇ」
「あらぁ、。確かに桜散っちゃった」
ほんの少し名残惜しそうななびきの声に、コノハも同じように手をやって。……それから、
「じゃあ桜に負けないアクセでも探しに行きましょ」
ねっ。と、ウィンクをした。
砂浜近くに広がっている露店たちは、いろいろなものを売っていた。
食べ物や飲み物なんかもあるけれども、何より……、
「海アクセっ! キラキラしてて綺麗だね」
わーい。とジュジュが歓声を上げた。貝殻から作ったアクセサリーが並ぶ店は、三人の目を引いた。
「アクセかぁ……お土産にいいな」
女の子にシリアの人数分とか、飼うのにちょうどいい感じかもしれないねぇ。なんて、なびきがそれのひとつを手に取っている。とっていると……、
「あ、この貝殻とシーグラスのティアラ、なびきさんに似合いそう!」
「……いやジュジュちゃん、おれ達に見繕うの? 大丈夫? まだ酔ってない?」
「そしてコノさんはこのシーグラスのカチューシャ!」
『可愛い!』
メボンゴ音声付きで、ティアラとカチューシャを二人の頭に乗せようとするジュジュである。
「わーありがとーじゃなくって! 大の男にティアラは駄目だよ色々世間体とか……ほらほら」
「男の子だって、お姫様になれるよ!」
「なれるかもしれないけどなっちゃいけないの!」
きらっきらした目をしているジュジュに、思わずなびきはそう突っ込む。
「あはははは。ティアラ似合う~! ほらほらオレも、似合う~?」
一方なびきと違ってコノハはのりっのりである。カチューシャをつけてお姫様っぽくポーズをとるコノハ。
「うん、すごく素敵!! 二人とも綺麗なお顔だからキラキラアクセ似合うよ」
「く……っ。確かにコノハさん美人だし髪色に映えそうだね」
「ふ……っ。惚れちゃだめだよ?」
なんで惚れるんだ、みたいな顔をなびきはしていた。
その顔にまたコノハは楽しげに笑うのであった。
「うーんティアラはだめ? 似合うのになぁ……」
難しい顔をして考えこむコノハ。なびきは若干嫌な予感がする。
「きみこそ沢山おしゃれするといいと思うんだよね。……ほら、これとか。真珠と硝子のイヤリング。かわいいよ」
さりげなくティアラを隅っこのほうに押しやりつつ、なびきはほらほら、とイヤリングコーナーを示す。
「わ、素敵なイヤリング! これくださーい!」
「おっと、早」
即決するジュジュに、なびきはまばら気をした。それで隣からコノハが、
「えぇ~ティアラでもイイと思うけどぉ、じゃあこの海色のヘアピンは? なびちゃんの髪色によく似合う!」
ほら、とヘアピンを見つけて示した。ふむとなびきはそのヘアピンを覗き込む。
「ヘアピンなら確かに使える……綺麗だし……。コノハさんはセンスがいいな……」
「うふふ。お褒め頂き恐悦至極でございマス」
「なら……、あ、コノハさんこのカフスも可愛くない?」
ほら、と代わりになびきが数点か見せたアイテムに、コノハもちょっと考え込む。
「シーグラスも柔らかな色がイイよねぇ、螺鈿とかもあるかしら……ある? あら。じゃあどれにしようかしらね……」
きらりと。真剣な目をしたなびきの隣で、ジュジュはえいえいえい。と何やら選んでいるようであった。
ブレスレットのサイズを慎重に見て。自分の分ではなく……、
「うん、ちょうどいいサイズ……!」
小さな貝殻のブレスレットを、メボンゴの首につけてペンダントにしていたのだ。
割とちょうどいい長さを選ぶのに大変だったので、やってやったぜ……と、ふぅと満足げな息をつくジュジュに、
「メボンゴちゃんも似合ってるねぇ」
それをなびきがのぞき込んだ。
「えへへ、そう? 可愛い?」
自分が褒められるよりも嬉しそうな顔をするジュジュに、なびきはうん。と頷く。……そして、
「あ、ジュジュちゃん。この貝殻のブローチなら、二人でお揃いじゃない?」
「本当。うさちゃんのもイイね、ジュジュちゃんもお揃いにしなよ。白の貝殻は二人のイメージにもぴったり! だから」
これ、となびきが指さしたブローチは、真っ白な貝殻で作られた素朴で可愛い感じのもので、大きいのと小さいのがあった。お揃いでつけるのはちょうどよさそうだ。
「可愛いブローチだね……。メボンゴとお揃い……! えへへ、ぴったり?」
「そうそう。ぴったり」
「じゃあこれも頂こうかな!」
なびきがもう一度頷くので、それもジュジュは即決した。さっそく二人でブローチをつけると、
「おそろい!」
『わ~い!!』
「うんうん、イヤリングといい似合う似合う!」
ポーズをとるジュジュとメボンゴに、なびきは拍手をする。その横で、
「あ、二人とも決まった? ちょっと待っててね。カチューシャもカフスもイイねぇ、ドッチも頂こうかな。あとはこれとこれとこれと……」
「ん、ん、ん、それ全部買うのかい??」
「そーゆーこと。これはお土産で、これは自分とこ用で……」
「カチューシャは自分ところ用に入るんだ?」
「ふふ、オレは勿論なんだって似合っちゃうヨ」
お買い上げしたカチューシャを早速つけて見せるコノハ。まあ、似合ってるけど……って言いながらも、なびきもまた会計を済ませた。そのところで、
「そうそ、ちょっと独特なご飯が食べれるって聞いたから行ってもいい?」
「……うん、食べ物? ああ。そういえば、地元の家庭料理をふるまってくれるらしいってね」
「そうそう。それよ」
ここはひとつ。食べられないにしても見ておかなければ料理人が廃るというものだ。
あわよくばレシピを教えて貰って……なんて考えるコノハに、さっ。と、ジュジュが手を上げた。
「ご飯! まだまだ食べられるよ! 行こう行こう!」
「うん。働いたしお腹空いちゃうよねぇ。甘いものとか欲しい。海を見ながら食べたら、きっとおいしいだろうな」
「って二人ともまだ食える訳!? 見に行くだけのつもりだったんだけど!?」
「ええ。そんなのもったいないよー」
『モッタイナイー!』
「たくさん働いたからね。今日くらい、少し多めに食べても罰は当たらないはずさ」
愕然とするコノハにジュジュ、メボンゴ、コノハと順番に応える。
「おっかしいね。実はオレ、酔ってるのかな……」
一番働いたはずのコノハは、ものすごく納得がいかなさそうに一瞬、深く、深く考え込んだが……、
「ま、いっか。そうなったら二人とも、しっかり味を覚えておいてね。俺はもうあんまり入らないから」
「りょーかい!」
「うんうん、任せてよ」
明るい返答に、コノハはこの件についてはもうそれ以上は考えるのをやめて、歩き出す。二人がそれに、楽しそうに続いた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エミール・シュテルン
アドリブ歓迎。
朝日がとてもまぶしいですね。みなさんも満足できたでしょうか?
桜の花吹雪もとても美しいって…わわっ、僕、海の上での移動手段がないのですが!?!(海へ落下するも身体から力抜きぷかぷかと浮かび)
うぅ、泳ぎは得意ではないので…船等で島を目指す方がいたら、乗せていただけないか頼んでみましょう(眉を下げ
助けていただいた方には、きちんとお礼を。
服が濡れてしまったので、乾かしがてら浜辺で貝拾いを。
色や形が可愛らしい貝を集めてみましょうか。
あとは、シーグラスがあればそれも丁寧に拾い、ハンカチに包んでおきますね。
アクセサリー等作れば、船でお世話になった方達へいつかお礼として渡せるかもしれませんしね。
叶・景雪
アドリブ歓迎。難しい漢字は平仮名使用。カタカナはNG。
さくら、散っちゃったね…あ、ぼくのさくらも…(墨染の桜の花びらを掴まえようと手を伸ばし)
て、わっ、水れんは苦手だって…!落ちなければ大じょうぶ!だから、がんばって、みんとー(体勢を整え足から着地しようとするもぽちゃ)
びしょぬれになっちゃった(ほほをぷっくりするもすぐゆるめ
いさぎよい所は若さまとちょっと似てたし、仕方ないよね!
朝市を見にいこうかなぁ?
刀だったときは食べられなかったけど、あみの上で
しんせんな貝とかお魚さんやいてたべるとおいしいって
若さまが言ってたから…
今日は若さま思い出めぐりするよ!(ふんす!
さいしょは何をたべようかなぁ?(そわ
ああ。とエミールは朝日に目を細めた。
「とても……まぶしいですね。みなさんも満足できたでしょうか?」
と。首を傾げたその、瞬間。
ぶわっとひときわ大きめの風が吹いて、桜が散った。
「ああ。この桜の花吹雪もとても美しいっ……」
エミールがそういいながら、天を仰ぎかけた……その瞬間、
ため息のような声とともに、足元が消失した。
「わわっ!?」
ふわっ。と、体が浮く感覚は一瞬だった。
その後どぼーん。と、水の中へと勢いよく落下する。
「僕、海の上での移動手段がないのですが!?!」
どうしよう。なんとかエミールは体の力を浮いて、浮き上がっていた。とはいえこのままだと、帰ることができなくて……。
一方。
「さくら、散っちゃったね……あ、ぼくのさくらも……」
景雪が墨染の桜の花びらを掴まえようと手を伸ばしたとき。
景雪の足元もまた、無と化していたのであった。
「て、わっ、水れんは苦手だって……!」
ぴゅーっと、重力に従い無情にも落下していく景雪の体。じたばた、としてみてもつかまるものなどありはしない。しかし……、
「落ちなければ大じょうぶ! だから、がんばって、みんとー」
思い出した! 景雪には力強い兎の耳のような飾りがついた靴という味方がいる! これで華麗に水の上にかっこよく着地……、
……できるわけではなかった。
ぽちゃ。と海の中にあえなく落ちる景雪……。態勢を整え足から着地したが、いかんせん、浮かない。
「うう……。びしょぬれになっちゃった」
頬をぷっくりさせる景雪に、エミールは浮かんだまま声をかけた。
「大丈夫ですか? あなた様も、落ちてしまいましたか……」
「うん! 落ちちゃったよー!」
エミールが声をかけると、景雪はふふ、とすぐに表情を緩める。
「びっくりしたよね。でも……いさぎよい所は若さまとちょっと似てたし、仕方ないよね!」
「なるほど、潔い……。確かに潔い消え方でしたね」
跡形もなく消え去るのも、またそれはそれでいいものかもしれない。……大変だったけど。
遠い目をして自分にそう言い聞かせるエミールに、景雪はえいや、と、仰向けからうつぶせに体制を変えた。
「ところで………………およげる?」
どうしよう。と、何やら言いかけて、やめて、景雪はエミールに目で問うので、
「うぅ、泳ぎは得意ではないので……船等で島を目指す方がいたら、乗せていただけないか頼んでみましょう」
と、エミールもまた悲しそうに眉を下げてそう返答する。そう、と、景雪もほんの少し悲しそうな顔になって……、
「あ、ふねだよ!!」
「おお。助かりました!」
小型のボートが二人に向かって近づいてくるのが見えて、二人は手を振った。海賊たちが助けに来てくれたのだ。
「ありがとうございます。助かりました」
「うん、ありがとうっ!!」
救助された二人は二人なりに礼を言って、島まで無事に、送り届けて貰ったのである……。
「これから、どうなさるのですか?」
「ぼくはね、朝市を見にいこうかなぁ?」
「なるほど……。私はまだ服が濡れてしまっているので、乾かしがてら浜辺で貝でも拾おうかと」
「わあ! だったら、すてきな貝を見つけたらおしえてね。ぼくもおいしいもの、持ってくるよ!」
そういって、二人はひとまず別れた。
エミールは、浜辺を歩く。
色や形がかわいらしい貝をメインに集めてみようかと、一つ、二つ。ひろって。
「……おや」
なんだかオウムガイっぽい、小さな小さな貝があった。
「……」
エミールはそっとそれを砂浜に戻した。
楽しい思い出を、海辺に残していきたかったのかもしれない。
代わりに奇麗な海の水を詰め込んだような、シーグラスを拾ってハンカチに包んでおく。
これを先ほどあった彼に見せたら、きっと喜んでもらえるだろう。
それに……、
「アクセサリー等を作れば、船でお世話になった方達へいつかお礼として渡せるかもしれませんしね」
また会えるかどうかなんて、わからないけれども。
そんな風に思うのは、とても楽しいことだった。
景雪は、真剣に、ぱちぱちと網の上で踊るように丸まっていくお魚を見つめていた。
(刀だったときは食べられなかったけど……)
良い匂いに、くぅ、と、お腹が鳴る。
(あみの上で、しんせんな貝とかお魚さんやいてたべるとおいしいって、若さまが言ってたから……)
ふーっと、深呼吸をする。
「今日は若さま思い出めぐりするよ! さいしょは何をたべようかなぁ……?」
気合を入れて、景雪は歩き出す。思い出の中の大事な人が食べていたものを買って、そして、
(いっぱいたべる! あたらしい友達といっしょに!)
おいしいものを持ってくると約束したのだ。
だったら、思い出の美味しいものを、いっぱい持ってくればいい。
友人と食べる料理は美味しいと、若さまも言っていたような気がする。
「だから……とっておきをいっぱい、えらぶんだよっ」
どれにしようかな、と気合を入れて、景雪は歩き出した。
おいしいものをお腹いっぱい。きれいなものを見ながら食べるんだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エリック・シェパルド
サリアさん(f02638)と行く
【POW】
『そうだな…敵に振り回されて少し疲れたが…まっ、その気力は次の戦いまで取っといてくれよ』
って物足りなそうなお嬢を軽く声かける
『落ち着いて花見は悪くねぇな!じゃ、ちょっくら飯持ってくるからここらで待っててくれよ』
桜は初めてだって言ってたから長く見せてやりてぇ…って訳で配膳は任せろ(サクッと選んで持ってくだけ)
『お待たせっと…へへっ、俺もダークセイヴァー生まれだからそわそわしちまうな…だが、無いからこそ覚えとかねぇとな』
『そうだな!力で解決出来ねぇもんもあるって依頼だったが悪くなかったぜ。頼れるバディもいたしな。』
持ってきた飯を勧めながら桜を楽しむぜ
サリア・カーティス
エリックさん(f26560)と。
……本当に何もせずとも消えましたわね……あの幽霊船……これで解決……ということでいいのでしょうか(ちょっと物足りなさを感じているような顔
……敵地ではないこの場所であれば落ち着いてサクラを眺める、というのもできるかもしれませんわ(幽霊船にいた時ほど耳はピンとしていない
……この様に暖かな日差しや花畑はダークセイヴァーでは見かけないので……別の落ち着かなさはあるのですけど。
あぁ、やはりエリックさんも同じ世界出身でしたのね。
今までは思い切り暴れて暴れて解決していましたけど……たまにはこういうのも良いのかも……しれませんわね。たまにはですけども。
サリアは茫然と、浜辺に佇んでいた。
「……本当に何もせずとも消えましたわね……あの幽霊船……」
ただ、美しい海が目の前に広がるだけで。
まるで何事もなかったかのような景色に、サリアは何とも言えない顔をする。
「そうだな…敵に振り回されて少し疲れたが…まっ、その気力は次の戦いまで取っといてくれよ」
その顔に、いいたいことに気付いたのであろう。ポンとエリックはサリアの肩を叩いた。
サリアはひどく所在なさげに、エリックの顔を見た。
「つまりは、これで解決……ということでいいのでしょうか」
「ああ。そういうことだ。……さあて、いこうぜ」
「……どこへ?」
戦いは終わり、倒すべきものは倒された。
それ以上、一体何をするべきことがあるのだとサリアは問う。
そんなサリアに、非常に愉快そうにエリックは笑った。
「勿論、花見へ行くんだ」
ほんの少しばかり、歩いて。
日の当たる、花見によさそうな場所をエリックは選んだ。
「落ち着いて花見は悪くねぇな! じゃ、ちょっくら飯持ってくるからここらで待っててくれよ。配膳は任せろ」
それからさっと立ち上がって、食べ物を探してくるエリックに、
「……」
困ったように、サリアは周囲を見回した。
ひらひらと美しい桜が、彼女の上にも舞い降りた。
海賊船で見た桜と、同じような花であった。
「お待たせっと……。色々食えるものあってよかったな。サリアさん、幽霊船で何も食ってなかっただろう?」
「それは……あなたもでしょう?」
「ま、そーだけどよ。ほれ、食いな食いな。俺はほら、桜は初めてだって言ってたから長く見せてやりてぇ……って、だけなんですー」
焼き魚に、フルーツに。花見にしてはちょっと変わったものも多いけれどもなあ。なんて言いながら、エリックは屈託なく笑う。
「……それは……」
「ん、どーした?」
うん? と、顔を覗き込むエリックに、サリアは小さく頷いた。
「少し……戸惑っているだけですの。……そう、そう……ですわね。……敵地ではないこの場所であれば落ち着いてサクラを眺める、というのもできるかもしれませんわ」
若干、幽霊船の時よりは耳がピンとしていないような気がする。
落ち着いたサリアの言葉に、そっか。と、エリックも嬉しそうであった。
ちらちらと散る花の中、サリアはちょっと、目を細める。
「……この様に暖かな日差しや花畑はダークセイヴァーでは見かけないので……別の落ち着かなさはあるのですけど」
陽の当らない故郷を、サリアは今の景色と重ねてみる。桜が咲く場所も、もしかしたらどこかにあるかもしれないけれど、このような日差しはきっとないだろう。それに……、
「ここは気持ちのいい風が吹いていて。悲しみも、裏切りも、何もかもないように感じますわね」
勿論、そんなことはないだろう。達の悪い海賊も、太刀の悪い人間も、この世界にも、沢山いるだろう。……けれどきっと、
「……へへっ、俺もダークセイヴァー生まれだからそわそわしちまうな……。だが、無いからこそ覚えとかねぇとな。この、明るさに」
「あぁ、やはりエリックさんも同じ世界出身でしたのね」
まぶしいという感覚。世界は明るいのだという発見。果て無く続く大海原。きっときっと、あの世界にないものに、これから二人は出会っていく。
「今までは思い切り暴れて暴れて解決していましたけど……たまにはこういうのも良いのかも……しれませんわね」
「そうだな! 力で解決出来ねぇもんもあるって依頼だったが悪くなかったぜ。頼れるバディもいたしな」
「……たまには、ですけれども。たまには、ですわよ」
なんだかご機嫌そうなエリックに、サリアは片目を瞑る。
「まーまーいいから。魚食えよ」
「はいはい。これでも……楽しんでいますわよ」
惚れ掘れ、と勝ってきた食べ物を進めるエリックに、サリアがほんの少し微笑む。舞い散る桜は本当に美しくて……そして、飛び切り明るい色をしていた。
世界が、まぶしい。それはこの景色だけではなくて、
「そんでもって、桜を楽しもうぜ」
「もう。もちろん、楽しんでいますわよ」
きっと隣に、楽しい人がいるからに違いない……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
コックさんについていったら
わあっ
たんぽぽがいっぱいだ
言ってから口を塞いで
コックさんをそろり
よかった、おこしてない
おつかれさま、コックさん
そっと布かけて離れる
リュカっ
すごいね、たんぽぽっ
あ、そうだ
みてみて、さくらのつの
かっこういい?
その場でくるんと回って
たんぽぽを潰さない場所に座って話す
シュネー号で海をわたってねえ
大砲がぼかーんて
当たらないように斧でばーんってしたら
おさけのにおいがして
すごーくたのしくなって
まっすぐ歩けなくってね
ふわふわして、くもの上にいるみたいだったっ
そのときにつのがはえて
楽しかったこと全部伝えたくて
じゃがバターの話も
コックさんの話もして
コックさんのまねして寝ころぶ
きもちいいね
「わあっ。たんぽぽがいっぱいだ」
てく、てく、てく、と。
コックさんについていった先に広がる景色に、オズは思わず声を上げた。
「……っと。あぶないあぶない」
そうして慌てて口に手を当てて黙る。そ、と視線を向けると、倒れたコックはやっぱり起きる気配はなかった。
「よかった、おこしてない」
そっとしゃがみこんで呼吸確認。
「おつかれさま、コックさん」
さらに布をかけてそう優しい目でオズは言った。……ところで、
「どうしたの、お兄さん。まさか、お兄さんが殺したの?」
「リュカっ。ち、ちがうよっ」
声がかかって、オズはびっくりして振り返る。小さな声で反論するオズに、リュカは面白そうに笑った。
「うん、知ってた」
どうやらからかわれたらしいが、
「そっか、知ってたなら、よかったっ」
その言葉になんだか嬉しくなって。オズは、「起こさないように、いこうっ」とリュカの手を引いた。
「リュカっ。ほら、すごいね、たんぽぽっ」
「うん、すっごい咲いてるね。これだけ咲いてたら持ち帰って珈琲にできるかも」
「珈琲? リュカがいれてくれる?」
「お兄さんがおいしいお茶請けを作ってくれるならね」
「うん、まかせてっ」
やるやるっ。と笑顔のオズに、それからはっ、と思い出したように、
「あ、そうだ。みてみて、さくらのつの! かっこういい?」
その場でくるんとオズは回る。満開のソメイヨシノが、それでちらちらと花びらを散らした。
「あ、うん。それ気になってるんだ。かっこいいし強そう」
「強そう……? 強そうかなあ……」
「え。それで頭突きするんじゃないの?」
「え、しないよ……っ。えーっとね、これはね、これはね……」
タンポポをつぶさない場所に腰を下ろして、
オズは身振り手振り、今日の出来事を語った。
「シュネー号で海をわたってねえ。大砲がぼかーんて。だからだから、当たらないように斧でばーんってしたら、おさけのにおいがして、きがついたらこうなってたんだよ」
ばーん。と両手を広げるオズ。うーん? と首を傾げるリュカ。
「えーっと、つまり?」
「うん。すごーくたのしくなって、まっすぐ歩けなくってね。ふわふわして、くもの上にいるみたいだったっ」
「それって……大丈夫だったの?」
「うん、だいじょうぶ。そのときにつのがはえて、こんなになったっ」
撫でる? とオズが頭を下げるので、撫でる。とリュカは桜の枝とついでにオズの頭も撫でてみる。ふふ、とオズは笑って、
「それからね。ゆうれいせんにいってね、さっきのコックさんに会ってね……」
それからそれから。と。
オズは語る。
楽しかったこと全部伝えたくて。
今日会ったことどれもこれも、共有したくて。
「……そういえば、俺にはないの、じゃがバター」
「はっ。たいへんだっ」
また今度ね、なんて話もして。
いよいよ話が尽きたら、コックさんのまねをして、オズはタンポポ畑にごろりと寝転がった。
「きもちいいね」
「……うん」
リュカも隣に転がった。
「てくてく 君と歩く てくてく 君と歌う てくてく 君と咲う 君が咲えば僕の胸には勇気の花が咲く……」
心地よい風が吹く。楽しげに歌うその声に、応えるようにたんぽぽの花が揺れていた。
大成功
🔵🔵🔵
百地・八刀丸
藤子(f08440)殿と
ふむ、飲んで騒いで終わりとは、けったいな依頼もあったものよ
しかしまァ、それで救われた者があるのならば、それに越したことはない
海賊か。賊には違いないが、気は良い奴らなのやも知れぬな
勿論、賊を賊たらしめるような者もおるであろうが……
くァー……夜通しと言うのはちと老体に堪えよる
藤子殿。すまぬがワシは横にならせて貰おう
流石に主は若いな、元気そうじゃ。うむ、寄る年波には勝てぬわ
何ァに、眠ると言うても数刻ほどじゃ。昼までには起きる
昼飯は共に食おうか
こうして日の下で大の字になるのは贅沢じゃなァ
平和でなければ出来やせんわ。いや実に心地よいものよのう
鵠石・藤子
百地・八刀丸(f00181)と
こう言うのは、心を救うってのが近いのかもしれねぇな
しかし海って…ほんとにしょっぱいんだな
何度目かの海だけど、少ししみじみ
物珍しいと拾った貝殻を、手のひらで翻しながら
ンー、確かにちょっと疲れたよな
結構働いたし、濡れたし、塩でバッサバサだ
…あ、働いたのはオレじゃねーけど
ははっ、ジジイんはジジイだな!
ほれ、美女の膝でも貸してやろーか
笑ってぽんぽんと膝を叩く
ふと、たんぽぽで小さな花冠のような物を編み
飽きた、と八刀丸に投げる
平和か、こうやっていると…故郷を思い出すな
海と山と、全然違うのにな
昔も花を摘んだりした
…昼飯は何にするかなー
勿論、年長者のおごりでいーよな!
朝日がまばゆい。
小憎らしいぐらいまぶしい。
「くァー……夜通しと言うのはちと老体に堪えよる」
目をしばしばさせながら、八刀丸は浜辺で海を見つつも大あくびをした。
「もう一戦、ともなるならば、あるいは踏ん張れたであろうが。あとはゆるゆる過ごすだけともなると、体の糸も切れてくるのう……」
「はっ。ジジイにとっては戦いのほうが楽ってか?」
からりと藤子は笑って肩をすくめる。それはどうだろう。と八刀丸は己を振り返り……、
「そうだな。いささか物足りないといえぬこともない。それにしても、飲んで騒いで終わりとは、けったいな依頼もあったものよ……」
物の怪に化かされた気分じゃわい。なんて八刀丸が言うと、事実幽霊に化かされたんだろう。なんて、楽しげな藤子の返事が返ってきた。
「うむ、そうか。なるほどそうか。……しかしまァ、それで救われた者があるのならば、それに越したことはない」
「そうだな。こう言うのは、心を救うってのが近いのかもしれねぇな……」
きっと。
死んでしまった海賊を、確かに藤子たちは救ったのだろうと。藤子はそんな気がしていた。
オブビリオン化してしまった海賊だけではない。この海で長い間、長い間さまよっていた、海賊たちの魂を、だ……。
「海賊か。賊には違いないが、気は良い奴らなのやも知れぬな。勿論、賊を賊たらしめるような者もおるであろうが……」
「人間だって一緒だろ。いい奴もいりゃ、悪い奴もいる。おしとやかなのもいれば、ガサツなのもいる。けれども特別、何かがあって分かれてるわけでもないからさ。自然とそういう風に、なってるんだろ」
「なるほど藤子殿らしい考え方だな……」
それが多様性というものか。なんて言う八刀丸に、なんじゃそれ上手いのか。なんて藤子は返したりもして、
「しかし海って……ほんとにしょっぱいんだな」
そんな難しい話は終わりとばかりに藤子は八刀丸に視線を向けた。
何度目かではあるけれども、何とも不思議だと藤子は首を傾げる。
「あの塩分はどっからくるんだろうな?」
透明な巻貝を拾って、藤子は首を傾げた。よく見れば小さいオウムガイに見えなくもない。とはいえ中身は入っていないのだが。それを指先でつつきながら言う藤子に、
「藤子殿。すまぬがワシは横にならせて貰おう」
「あん?」
「流石に主は若いな、元気そうじゃ。うむ、寄る年波には勝てぬわ」
「ンー、確かにちょっと疲れたよな……。って、おう、待て待て、そこで寝るんじゃねぇ」
「う、うーむ……」
グラグラする八刀丸を押すようにして、藤子は砂浜から脱出する。こんなところで寝たら砂まみれになるだろう。なんて。なんだかんだ言って面倒見の良さを発揮して。タンポポ畑まで引きずっていった。
「藤子殿は元気じゃのう」
「いやいや。オレだって結構働いたし、濡れたし、塩でバッサバサだ……あ、働いたのはオレじゃねーけど」
「わしはもう駄目じゃな。後のことは頼んだぞ……」
ごろん。と。タンポポ畑までかろうじてたどり着くと、八刀丸は横になった。
「ははっ、ジジイんはジジイだな! ほれ、美女の膝でも貸してやろーか」
それで藤子が膝をポンポン、笑って叩く。
「うむ、お頼み申す」
そういって、八刀丸は藤子の膝を枕に目を閉じた。
「やれやれ。ジジイにはこの長期戦はこたえたかねー」
それを感じて、藤子は周囲にあるタンポポを手に取った。特に意味があったわけではない。特にすることがなかったからである。それでせっせと、小さな花冠のようなものを藤子は編んでいく。
雲が流れて行く。遠くで鳥が鳴いている声がする。穏やかそのもののその日差しに……、
「飽きた」
ぺい、と。藤子は八刀丸に花冠を投げた。
途中でやめたので、ティアラのようになっていて、かわいらしい黄色が八刀丸の額を彩った。
「平和か、こうやっていると……」
故郷を思い出すな。と。そこまでは口にせずに藤子は目を細める。
(海と山と、全然違うのにな……)
昔も花を摘んだりした。ささやかな遊びは、あの時は最後まで続けられたであろうか。
もう遠い昔のことだ。ずっとずっと……、
「……昼飯は何にするかなー」
ぽつん。と、藤子はつぶやいた。
まるで平和の真っただ中にいる少女のようだなんて、自分で考えてその考えに笑えてきた。
「何ァに、眠ると言うても数刻ほどじゃ。昼までには起きる。昼飯は共に食おうか」
寝てるのかと思ったジジイが起きていた。とはいえまだ寝るらしい。目を開けて笑う顔を藤子は見降ろす。頭に花ついてるぜ、とまではいわなかった。つけたのは自分だからだ。
「おう。勿論、年長者のおごりでいーよな!」
「ふむ、勿論奢るとも。……なに」
そういって、確かにうなずいて八刀丸は目を閉じる。聞いたぞー。なんて言う藤子にうなずいて、
「こうして日の下で大の字になるのは贅沢じゃなァ。平和でなければ出来やせんわ。いや実に心地よいものよのう」
のびのびと、そういって八刀丸はまた眠りに落ちる。
そうだな……なんて。藤子も小さく頷いて、そっと微笑んだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
テオ・イェラキ
ディアナ(f01023)と
疲れた、な…
だがせっかく来たのだ、このまま休んで過ごすのもつまらん
せっかくだから、朝市でも見に行かないか?
うむ、普段見たことの無い魚がたくさんあって面白いな
中々見ない大物に目を惹かれ、つい買ってしまう
店に戻ったらどう料理しようか今から楽しみだ
ディアナも食べるだろう?
少し小腹が空いてきたな
イカ焼きか…珍しいな、これにしようか
うむ、美味い
土産か、たしかにそれは必要だな
やはり女の子の方が気が利くもんだ
愛しい妻の漆黒の髪に似合うのは、どんなアクセサリだろうかと
ついつい探すのに集中してしまうな
ん?…何か言いたそうだな、ディアナ
馴れ初めか…また今度な
さすがに素面ではこっぱずかしい
ディアナ・ロドクルーン
テオ(f00426)
大きな欠伸を一つ
さすがに夜通し宴会は堪えたようだが
朝市に行くというおじさまに、面白そうなので付いて行く
活気のある市場ね、あっ!何あれ?
うわぁ…目が大きいし、歯がギザギザしてる。美味しいの…?
どう料理するのかしら
もちろんおじさまのお料理も頂くわ
魚売りの人に話を聞いてみたり、美味しそうな果物があれば買って食べながら歩く
そう言えば…せっかくここに来たのだから、オリオさんにお土産の一つでも買って行かないの?
綺麗な細工物を売っている所をさっき見つけたんだけど。
(奥様のお土産を一生懸命考えるおじ様を後ろからニマニマと眺めるのも一興だと提案一つ)
今度、馴れ初めとか教えてね、おじさま♪
「疲れた、な……」
テオは遠い目をしていた。隣でディアナが大きな欠伸をしていた。
「ディアナ、無事か」
「ええ。さすがに夜通し宴会ちょっと堪えたけどね」
「それはよかった。せっかく来たのだ、このまま休んで過ごすのもつまらん。せっかくだから、朝市でも見に行かないか?」
「面白そうだから、一緒に行くわ。それにしてもおじさまも、元気よね……」
ふぁーい。なんて、欠伸交じりで返答をすると、うむ。とテオは頷いて歩きだす。
「これでも、鍛えているからな」
「鍛えてどうにかなる問題かしら、それ……」
なんて、いいながらも。
塩の風薫る朝市のあたりまでくれば、ディアナの眠気も幾分かましになっていた。
「活気のある市場ね……。……あっ! おじさま、おじさま!!」
「うん、なんだ?」
ぐいぐいと手尾の袖を引っ張るディアナ。なんだなんだとテオも露店のひとつに目を向ければ、
「何あれ? ねえほら。うわぁ……目が大きいし、歯がギザギザしてる。美味しいの……?」
どう料理するのかしら。と、真剣に覗き込むディアナに、
「本当にな。どう扱うのか……。よし、これをひとつくれ」
「え、買うの!?」
「勿論だ。欲しかったんだろう?」
「ほしくないわよ! ……あ、でも、これを使ったおじさまの料理は、ちょっと食べてみたいけれど」
「なら、持ってくれ」
にゅうっと、
怪しげな魚もどきの頭部を渡されて、ディアナはうむむむむ。と、その眼玉を見つめる。とうのテオはというと、それの地元での調理法を聞いてからさっさと次の露店へと向かっていた。
「これは……。ほら、ディアナ。面白いな」
「面白い? 私にはショッキングピンクのアンコウにしか見えないけど」
「ずいぶん海水温が高いから、そうこともあるだろう。……良し、ひとつくれ」
「それ、なんか関係あるの? ……まあ、いいけど」
そんな調子で、次から次へ。
「うむ、普段見たことの無い魚がたくさんあって面白いな。中々見ない大物に目を惹かれ、つい買ってしまう。店に戻ったらどう料理しようか今から楽しみだ」
「それにしても買いすぎよ、おじさま」
「だが、ディアナも食べるだろう?」
「そりゃ……もちろんおじさまのお料理も頂くわ」
ほんのちょっと露店街をうろうろするだけで、何だか大げさな買い物になってしまった。
いくらか荷物を抱えながら、二人はそれでもやっぱり店をのぞく。
「少し小腹が空いてきたな……」
「そうね。ありがとう、おじさま」
「先にお礼を言うな。……あまり高いものは奢れないぞ」
「ん、やった……!」
思わずはしゃいだ声を上げて、はっとディアナは己を顧みて、けれどもやっぱりご機嫌でテオの前を行く。
魚売りの人に話を聞いてみれば、おいしそうな魚の話や美容にいい海藻の話を聞いてみたり。
おいしそうな果物を見つければ、おごってもらおうと振り返って……、
「ねえ、おじさま……」
「イカ焼きか……珍しいな、これにしようか。うむ、美味い」
「おじさま。ひとりでずるいわよ。私にもわけてちょうだい。それと、あのマンゴージュースも買ってほしいわ」
「わかったわかった」
はいはい。とやっぱり子ども扱いするテオに、奢ってもらっておきながら、ふーん。とディアナは考える。
「あ、そう言えば……せっかくここに来たのだから、オリオさんにお土産の一つでも買って行かないの?」
ふと思い出したのは、先ほど通り過ぎた綺麗な細工ものを売っているお店だ。
さすがにおじさまにアクセサリーを買ってもらうのもな、と思ってスルーしていたのであるが、
「土産か、たしかにそれは必要だな」
考えこむテオに、ディアナはふふんと得意げに言う。
「綺麗な細工物を売っている所をさっき見つけたんだけど、案内しましょうか」
「ああ。頼んだ。やはり女の子の方が気が利くもんだ」
ディアナの内心に気付いているのかいないのか。テオはあっさり承諾する。
(奥様のお土産を一生懸命考えるおじ様を後ろからニマニマと眺めるのも一興よね。私ばっかり子ども扱いされるのは、面白くないわ)
そんなことを思いながらも、こっちこっち、とディアナは店に案内するのであった。
案の定。テオはディアナが思った通り……、
「ああ。あの漆黒の髪に似合うのは……。やはり飛び切り美しい白でなければ……」
真剣に。真剣にあれこれ選んでいくテオ。
あれも、これもと。いつの間にか候補が積みあがっていく。もちろん全部は買えないから、一通り選んだ後に選別作業も必要だろう。
その真剣さに、ディアナの目元が和らぐ。そうやってアクセサリーを眺めるテオは、なんだか少年のようで、
「ん? ……何か言いたそうだな、ディアナ」
その視線に気が付いたのか、テオが顔を上げる。ディアナは軽くウィンクした。
「ふふ、今度、馴れ初めとか教えてね、おじさま♪」
「む……」
言われた言葉を、テオは考える。
かし、と軽く彼はその頭を掻いた。
「馴れ初めか……また今度な。さすがに素面ではこっぱずかしい」
つい。と横を向くテオ。であるが、「楽しみにしてるわよ」なんて言われると、今後逃げられる気がしない。
「……さて」
愛はいっぱいあるけれども、なんとなくそれは気恥ずかしくて。テオはアクセサリーに視線を落としたまま、今度な。また今度、と、曖昧に言葉を濁すのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
綾華兄さんf01194と
体力には自信あるけど
貫徹はやっぱ疲れんな
寝ないと背伸びなそうだし
ってやっぱそうか
綾華兄さんは大丈夫?
広場の方行って休憩してもいいか?
うおっ
たんぽぽすげー
黄色と桜色でめちゃくちゃ春色じゃん
同時には見た事なかったな
腰下して欠伸一つ
…眠
転がって
でも寝るの勿体ねぇな
降ってくる花弁手に取ろうと
そんじゃ甘えるか
えー好きな花?
綾華兄さんちの庭、綺麗にしてるもんな
オシャレだし風流だし何者だ
俺あんま花とか知らねぇ
桜にチューリップに…
知ってる花指折り眉間に皺
うーん
あっあれはわりと好きかなネモフィラ
青空みたいで綺麗だ
起き上がり不思議そうに
そう言う綾華兄さんは?
ぶっ
やめてくれよ
そんな柄じゃねぇ
浮世・綾華
理玖(f22773)と
うんうん、寝る子は育つらしーし
しっかり寝た方がいーよ
理玖は優しいねえ
でもそうだな
動いた後はのんびりすんのがいい
だなぁ。可愛いし、きれーだ
寝転ぶ横に座ったまま、空をみて
――寝てもいーよ
ちゃんと起こしてやるから
そいや、理玖は何の花が好きなの
うん、俺花好きだからさ
ふ、何者てなに
紡がれる花の名を耳に
そうかと穏やかに目閉じ
ネモフィラ
嗚呼、きれーな青だよなぁ
青空、青空ネ
後ろに手をついて、ぐっと空を仰ぐ
嗚呼、なんて遠くて――懐かしい色をしている
俺は――最近は蒲公英が好きだよ
まぁ色々好きなんだケド
覚えた、理玖の好きな花
次からきっと
ネモフィラをみると理玖を思い出すよ
照れなくてもいーのに?
うーん。と。
朝日を前に、軽く理玖は体を伸ばした。
「体力には自信あるけど、貫徹はやっぱ疲れんな……」
こきこき。と、軽く肩を叩く。「寝ないと背伸びなそうだし」なんていう理玖の様子に綾華は腕を組んで、
「うんうん、寝る子は育つらしーし、しっかり寝た方がいーよ」
なんて、真面目な顔をして顔で言うのであった。それを聞いて理玖もきり、と頷く。
「ってやっぱそうか。綾華兄さんは大丈夫? 広場の方行って休憩してもいいか?」
「理玖は優しいねえ。俺はもうこれ以上身長伸びなくてもいいけど……。でもそうだな、動いた後はのんびりすんのがいい」
いこっか。と、綾華がいうと、行こう。と理玖もまじめにうなずいた。そのあとで目をしばしばさせて、軽く目元を理玖が擦るので、綾華は思わず笑って、急いだほうがいーかな、なんていうのであった。
そして……、
「うおっ。たんぽぽすげーっ」
視界が開けた瞬間、理玖が思わず歓声を上げた。
「黄色と桜色でめちゃくちゃ春色じゃん。春じゃん。つまり春」
「だなぁ。可愛いし、きれーだ」
「だなっ。この二つを同時には見た事なかったなー……」
そわそわと。なんだかテンション高めに言いながらも理玖はその場に腰を下ろす。風に揺れて流れてくる桜の花びらも、踊るタンポポも心地よくて目を細める。目を細めた途端、欠伸が出た。
「……眠」
「――寝てもいーよ」
綾華が隣に腰を下ろして、空を見上げながらそう言う。
「ちゃんと起こしてやるから」
「ああ……。そんじゃ甘えるか」
遠慮なく。
綾華の申し出に、ありがたいとばかりに理玖はそのままその場へと寝転がるのであった。
さわさわ。さわさわと、風が躍っている。
「でも寝るの勿体ねぇな……」
瞼は落ちかけているのだけれども、その風があまりに心地よくて。理玖は降ってくる花弁手に取ろうと手を伸ばす。そのしぐさにふと、
「そいや、理玖は何の花が好きなの」
綾華が問うた。理玖はものっそい変な顔をしていた。多分、日常であんまり聞かれることがなかった質問だったのだろう。
「えー好きな花?」
首を傾げながらも、理玖は考え込む。花。花。
「うん、俺花好きだからさ」
「ああ。綾華兄さんちの庭、綺麗にしてるもんな。オシャレだし風流だし何者だ」
「ふ、何者てなに」
綾華が笑うので、理玖はむむむ、と考えこむ。だったら綾華の家の庭の花を、と思い出そうとしたが、そうなると理玖にはその庭の花の名前すらわからない。
「……俺あんま花とか知らねぇ……」
うぅん。と唸りながらも、理玖は知っている花を指折り数える。「桜に、チューリップに……。……ああ。たんぽぽたんぽぽ……」そこで言葉が止まって、眉間に皺が刻まれて行って……、
「うーん………………。あっあれはわりと好きかなネモフィラ」
するりと、不意にその名前が口をついて出た。
青い花。理玖は思い出して目を細める。
その花の名前が耳に入ったとき、綾華はそうか、と穏やかに目閉じた。
「ネモフィラ。……嗚呼、きれーな青だよなぁ」
「うん。青空みたいで綺麗だ」
「青空、青空ネ……」
しっかりと頷く理玖に、綾華は後ろに手をついて、ぐっと空を仰ぐ。
嗚呼、なんて遠くて――懐かしい色をしている、と。
口には出さないけれども目を細める綾華に理玖は不思議そうに起き上がった。
「そう言う綾華兄さんは?」
何か、おかしなことでも言っただろうかと。問いかける理玖に綾華は視線を理玖のほうへと戻す。
「俺は――最近は蒲公英が好きだよ。まぁ色々好きなんだケド……」
それから、理玖の顔を見て。にっ、と笑った。
「覚えた、理玖の好きな花。次からきっと、ネモフィラをみると理玖を思い出すよ」
「ぶっ」
にこにこしながら言われた言葉に、思わず理玖は言葉に詰まる。
「ちょ、ま、やめてくれよ。そんな柄じゃねぇ」
「ええ。照れなくてもいーのに?」
「照れるとか照れないとか、そういう問題じゃないぜ……っ」
「うーん。じゃあ、どういう問題?」
綾華の笑顔に、理玖はぐぬぬ、と言葉に詰まる。勝てる気がしないとはこのことで、
ため息をついて、理玖は天を見上げる。それ以上は何も言わなかった。
なので綾華はその横顔に微笑んで、静かに空を仰いだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
れ つ
た か
(海の家のテーブルに突っ伏して見事に撃沈している。ぷしゅー、と煙だか魂だかわからないものを吐き出すデフォルメ姿が幻視できるかもしれない。
常時3~7本のタスクを同時展開・並列処理し続ける通称「修羅場モード」終了後のいわば反動である)
ノリでやっちゃったけど、やっぱそうほいほいやるもんじゃないわねこれー…
ちょっと泳いでもいいかなーとも思ったんだけど…あー、うん、だめだわー…ぜんっぜん動く気力がわかないー…
せっかく海の家なんだし、ここでぼへーっとしてましょー…
…あー、そうだ。漁師ご飯とかあるかしらぁ…?ちょっとざっくりしたお魚料理食べたい気分なのよねぇ。
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
ティオレンシアは海の家のテーブルに突っ伏して見事撃沈していた。
「ああ……。つ か れ た……」
ぷしゅー。と、煙だか魂だかわからないものが頭から吐き出されているような、気がする。
それだけ働いたのだ。
物凄く働いたのだ。常時3~7本のタスクを同時展開・並列処理し続ける通称「修羅場モード」終了後のいわば反動である。
「ノリでやっちゃったけど、やっぱそうほいほいやるもんじゃないわねこれー……」
もう若くないのに。と、がりがり己の頭を掻くティオレンシア。
ついつい、美味しい、もっと、と、厨房に活気がありすぎて、働いてしまったのだ。
「あー……」
机に突っ伏したまま、ごろり。と、大勢を変える。
かえれば目に飛び込んでくるのは青い空に白い雲。輝く太陽に、きらっきらに輝く海と砂浜。
「ちょっと泳いでもいいかなーとも思ったんだけど……。あー、うん、だめだわー……ぜんっぜん動く気力がわかないー……」
ごろごろ、ぐだぐだ。
客が他にいないのをいいことに、ティオレンシアはグダグダしまくる。
恐ろしいことに猟兵たちはまだまだ気力が有り余っているようで、砂浜で泳いだり遊んだり。朝市をのぞきに行って買い物を抱えて戻ってきたりと、そんな人の流れがここからだとよく見えた。
「みんな元気ね。ああ、元気よねー……。っていうか、若いわね。若いっていいわねぇ……」
まだ遊べるのが、もう、それだけですごいと。ティオレンシアは目を細める。
海がきらきらしている。遊びに来ないかと誘っている。生憎そんな体力は……もはや、ない!
「せっかく海の家なんだし、ここでぼへーっとしてましょー……」
きらきらする海から目を背けて、ティオレンシアはお店の厨房のほうに顔を向けた。何かを察したらしいお店のおばあちゃんが、苦笑しながらもだらけたティオレンシアの様子を見守っている。
「……あー、そうだ。漁師ご飯とかあるかしらぁ……? ちょっとざっくりしたお魚料理食べたい気分なのよねぇ」
「おやおや。色々あるけれど……さっぱりしたのがいいなら、お茶漬けにするかい? 鯛のお茶漬けだよ」
もちろん海鮮丼だろうが味噌汁だろうが何だってあるけれども、というおばあちゃんに、うん、と、ティオレンシアは頷く。
「あー。その家庭的な感じ、ちょうどいいわー」
いっぱい食べられそう。なんて、ゴロゴロしながらティオレンシアは笑う。
きっと今日はそんな感じで、ずっとごろごろしているだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ユルグ・オルド
f10471/黒羽と
散々褒めたじゃん?
よっぽど気に入ったのネ
ッつったってどっち行ったよ、と歩き出し
絵に描いたように晴れ渡る空が徹夜明けに眩しくて
漏れ聞こえる欠伸の気配にもう寝ちゃえば、なんて
んふふ、なに、諦めんの
上から覗けば寝落ち寸前
バカ言えのんびり飲んだわ
笑われてんじゃ誤魔化せてないケドも
まァ、うんとは言わずに隣へ腰下して
そォ、そら良かったネ
普段だって、
……あれもう寝たの
告げかけた言葉は風に溶けた
落ちかかる黒い髪を払って寝顔のぞけば
幸せそうな寝顔でまァ、
そう在れるんならいつだってどこへだって連れ出すのに
すいと一度撫でたら眠るかはさておき隣で寝ちまおう
仰向けに臨む、過ぎた空の穏やかだこと
華折・黒羽
ユルグさん/f09129
ユルグさんユルグさん
ほら、コックさん追いかけますよ
ご馳走のお礼をちゃんと言わないと
袖引きふらふら先行く背を追おうと
夜通し起きていたからか
時折もれる欠伸を空いている手で隠しながら
あれ、確か此処に入っていったはずなんですけど…
蒲公英畑で見失った背を視線左右に探すも見つからず
限界とばかりに花へと埋もれ仰向けに
…ユルグさん
宴会の時物足りなそうな顔してましたよね
俺のお小言無くて物足りなかったですか?
なんて笑って
…なんだか随分と久しぶりに思いっきり笑った気が、します…
楽しかった、な…
言葉の結びには至らず聞こえ始める寝息
いつの間にか丸まった背は蒲公英に包まれて
撫でるぬくもりも心地好く
「ユルグさんユルグさん」
黒羽はユルグの服の袖を引っ張った。
「ほら、コックさん追いかけますよ。ご馳走のお礼をちゃんと言わないと」
「あぁ……。散々褒めたじゃん?」
「いいえ。まだ足りませんよ。そういうのは、疎かにしてはいけないんです」
「……よっぽど気に入ったのネ」
ッつったってどっち行ったよ、と頭かしかし呆れるユルグに、こっちですっ。と黒羽は駆け足でユルグを引っ張ったまま走り出す。
「ちょ、ちょっと手加減してよ。徹夜明けにこれは……」
ああ。空が絵に描いたようにまぶしい。
徹夜明けでこんな青空のもと走るだなんて青春っぽいことは、もうユルグには許される年ではない。
なんてグダグダ言いながらもついてきてくれるユルグに、黒羽は一瞬、漏れる欠伸を手で隠しながらくるりと振り返る。
「まだ、いけますよ。さあ早く。たまにはこうして朝日に向かって走るのも、悪くはないでしょう」
「……眠いなら、もう寝ちゃえばいいのに」
「寝ませんっ」
欠伸を隠したつもりがばれていた。即座に反対する黒羽に、ユルグはまたおかしげに笑った。
そして……、
「あれ、確か此処に入っていったはずなんですけど……」
ぱっ。と視界が開けて、黄色の花が咲き乱れる公園で、黒羽はその姿を見失った。
「う~~~」
右へ。
「う~~~~~~~~~~ん」
左へ。
若干挙動が怪しい。
ユルグが何か声をかける前に、
ばたり、と。黒羽は仰向けでタンポポ畑の中に倒れこんだ。
「んふふ、なに、諦めんの」
大の字になって転がる黒羽に、おかし気にユルグは覗き込む。
明らかにもう眠たくて眠たくて仕方がないという顔をしている黒羽であったが、その顔にふーん。とちょっと意地悪い顔で、
「……ユルグさん。宴会の時物足りなそうな顔してましたよね。俺のお小言無くて物足りなかったですか?」
なんて聞いてみて、笑った。
「バカ言えのんびり飲んだわ」
「そーですか?」
「まァ、そーですよ」
ユルグの言い方に、また黒羽は笑った。
それでユルグも肩をすくめるのであった。
「ああ……」
ひとしきり声を上げて笑った後で、黒羽は空を見上げる。
「……なんだか随分と久しぶりに思いっきり笑った気が、します……」
青い空に、白い雲。ゆっくりと流れて行く雲の形を追いかけながら、黒羽は目を細める。
「そォ、そら良かったネ」
対するユルグは黒羽を見たまま、優しい目で微笑む。
「普段だって、黒羽が……」
「楽しかった、な……」
いつだって。言いかけたユルグの言葉を、黒羽は遮る。
否。遮ったことも気づいてはいないだろう。ゆるゆるとつぶやく言葉は何処か寝息に似ていて、
そのまますう、と、
黄色の花に包まれて。ユルグは寝息を立ててそっと眠りに落ちて行った。
「……あれもう寝たの」
言葉が消えたのに気づいて、ユルグはその顔を覗き込む。
「まだいけます、なんて言ってたのはそっちでしょ。おーい」
「……」
返事はない。微かに寝息のようなものが聞こえる。
落ちかかる黒い髪を払って寝顔のぞけば、そこには何とも幸せそうな黒羽の顔があった。
「……幸せそうな寝顔でまァ」
本当に、ただの少年のような姿にユルグは息をつく。
「そう在れるんならいつだってどこへだって連れ出すのに……。お前さんが、そうしたいっていうなら……」
別に、そんなことたやすいのになあ。なんてユルグはぼやくけれども、
黒羽がそういうことを口に出して言わない人間であることぐらいわかっていて。
だからこそ、ユルグも黒羽を放っておけないんだと。寝顔を見ながらそんなことを考えた……ところで、
「ん……」
「おっと」
すいと一度撫でたら、心地よさそうに黒羽は身じろぎする。
それでユルグも手を離して、その隣にごろりと横になった。
仰向けになると、視界いっぱいに広がる青空。
「ああ……。なんて穏やかだこと」
呟きは空の中へと消えていく。
眠りに落ちるまで、ユルグは流れて行く雲の形を静かに見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
百鬼・智夢
薄荷さん(f17474)と
なんだか…本当に、不思議な一日でしたね
一日の出来事を思い返しながら
慣れない事への戸惑いはあったけれど
確かに…楽しかった
ずっと自分をリードしてくれる薄荷さんを見上げて
色んなことを教えてくれる彼女に
もしも…姉妹がいたら、こんな感じなのかな、なんて
花冠…少しだけなら…自信は無いですけど…
慣れないけれど器用な指先でせっせと編んで
太陽…そう、ですね
まぶしくて、温かくて…
花冠を乗せられ少しきょとんとしてからはにかむように頬を染め
…先、越されちゃいましたね
私からも、その…プレゼントです
お礼…いつも、いっぱい…ありがとう
…おねえちゃん
作った花冠を渡しながら
小さな声で呼んでみたりなんて
薄荷・千夜子
智夢さん(f20354)と
なんだか桜吹雪とともに消えてしまって夢幻だったのかという気がしてしまいますね
でも楽しかった気持ちはまだ残っているから
智夢さん、この先にたんぽぽ畑があるそうですよ!
せっかくならここでも花を楽しみましょうと智夢さんの手を引いて
ゆっくり散歩をするのも楽しいかもですが…智夢さんは花冠とか作るのは得意ですか?
花畑に腰掛けてたんぽぽの花を摘み器用に花冠を編んでいきます
ふふー、私は小さい頃から結構編んでみたりしていたので得意なのですよ
たんぽぽの花冠だとなんだか太陽の冠みたいですね
なんて言いながら出来上がった花冠を智夢さんの頭に乗せて出来上がり!と微笑んで
智夢は、ふう、と、息をついた。
「ん? どーしました?」
千夜子がそれに気付いて、智夢の顔を覗き込む。
その表情に、智夢は笑った。
「なんだか……本当に、不思議な一日でしたね」
昨日、一日中の出来事を思い出して智夢は躊躇いがちにそんな感想を述べる。ああ、と、千夜子も納得したようにうなずいた。
「なんだか桜吹雪とともに消えてしまって夢幻だったのかという気がしてしまいますね……」
本当に、跡形もなくすべてが消えてしまったから。
目を眇めて、千夜子も海を見つめる。すべて夢だったといわれても、なんだか妙に納得できてしまうような気がして、
「……でも楽しかった気持ちはまだ残っているから」
胸に手を当てて、千夜子は小さく言った。あの時の賑わいも、歌も、智夢の顔も、何一つ忘れていないと。
「確かに……楽しかった。慣れない事への戸惑いはあったけれど、それでも……」
それでも、と、そこで言葉を切って、智夢は顔を上げる。
「ん?」
千夜子を見ると、千夜子は不思議そうに智夢を見返した。
「いえ……。私は、ずっと楽しかった、です。千夜子さんが、ずっと自分のことを導いてくれたから……。いろんなことを教えてくれたから……」
「えええ。そんな大げさな! 私は、私のやりたいことをやっただけですよ」
正直に自分の気持ちを述べる智夢に、千夜子は慌てたように、照れたように笑う。その顔に智夢は小さく、
「もしも……姉妹がいたら、こんな感じなのかな、なんて」
「ん?」
「いえ、なんでもありません」
呟いて。それから慌てて首を横に振った。千夜子は不思議そうに首を傾げていたが、
「そうですか? ……あっ! 智夢さん、この先にたんぽぽ畑があるそうですよ!」
道行く人の話を小耳にはさみ、がぜん、千夜子はやる気になった。
「せっかくならここでも花を楽しみましょう!」
「えっ。あ……、は、はい」
ぱっと智夢の手を引いて、千夜子は歩き出す。ウキウキと走り出しそうなぐらいだったけれども、そこは智夢を気遣って走り出さないのが千夜子である。
「ゆっくり散歩をするのも楽しいかもですが……智夢さんは花冠とか作るのは得意ですか?」
「花冠……少しだけなら……自信は無いですけど……」
何をしましょう。なんて鼻歌交じりで千夜子は尋ねる。智夢のおずおずとした返答に、それはそれは。なんてご機嫌にうなずいたりもして、
「では、そうしましょう。たくさん働いて今日は疲れたでしょうし……おおっ」
「わあ……」
タンポポ畑へとたどり着けば、思わず二人、同時に歓声が上がった。
一面のまばゆい光に、黄色の世界。ちらちら混じる桜の色。
「すごいすごい。徹夜明けでなければ、きっと駆けだしていましたね!」
「は、はい……っ」
圧巻ですと。目を輝かせる千夜子に智夢も嬉しそうに笑う。
「それでは……参りましょうか!」
「は、はい……っ」
そうして二人、花畑に腰を下ろすと。
咲き乱れるタンポポの花に手を伸ばした。
「ふふー、私は小さい頃から結構編んでみたりしていたので得意なのですよ」
千夜子は何だか得意げだ。実際手慣れたもので、さささっと花冠を編んでいく。
智夢のほうはというと、手慣れていないので、若干遅れているのだが元来器用である。すぐに千夜子のやり方をまねて、せっせと花冠を編み上げて行った。
「たんぽぽの花冠だとなんだか太陽の冠みたいですね」
「太陽……。そう、ですねまぶしくて、温かくて……」
ちらりと智夢は千夜子を見る。そんな視線に千夜子も気づいたのか、ふふ、と微笑んで、
「ほら、出来上がり! です」
なんて言いながら、己の作った花冠を智夢の頭へと載せた。
ぱちりと、驚いたように智夢は瞬きをする。そっと頭の上、目だけを動かしてそれを見て、
「……先、越されちゃいましたね」
はにかむように、頬を染めて笑った。
「私からも、その……プレゼントです。お礼……いつも、いっぱい……ありがとう」
それからそっと。己の作った花冠を千夜子の頭に乗せようとする。はい、と、千夜子も軽く頭をかがめて乗せやすいようにした。
「……おねえちゃん」
囁くような声で、呼んでみる。
智夢の声が聞こえたかどうかは、わからない。
ただ、千夜子もまた嬉しそうに笑って、
その花冠を、見上げた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【灰】
コレの住む場所にはシロツメクサがあるある。
沢山歩くと見つかるンだ。
ココも沢山歩くとタンポポがある。
アァ……タンポポでも花冠が作れるンだ。
賢い君が上手上手ー。
花を摘んで束ねてそれから縫う
無理に縫うとダメダヨー
賢い君が怒る。すごーく怒る。
賢い君の赤い糸で縫って、タンポポも繋いで縫ってーはい。
君からのプレゼント。王様の冠ー。
二人もやってみようそうしよう。
トキワは不器用でトキジは器用
賢い君も手伝うってサ。
赤い糸で縫おう
アァ、王様ー。イイネ!
今日は桜だらけだったなァ
動いて、腹ごしらえもして王様の証も作った。
たーのしかったなァ……。
あとやり残したコトは、昼寝ー
起きなかったら起こしてくれくれ
オヤスミー
宵雛花・十雉
【灰】
あんな灰だらけの近くに花畑があるとは俄かにゃ信じがたい話だよなァ
そっちの花も楽しみだけどよ
今はたんぽぽだ、たんぽぽ
へぇ、花冠たぁ器用なモンだなァ
よっ、似合ってんぜエンジ
立派な王様じゃあねぇか
ピーピー指笛を鳴らして盛り上げてやる
常盤、アンタ案外不器用なのな
思わぬ弱点を見つけて嬉しくなる
しゃあねぇ、オレが請け負ってやるか
細かいのは得意な方でさ
さっきのに負けねぇ冠を作ってやるよ
お、賢い君も手伝ってくれんのかい?
こりゃあ百人力だ
完成した花冠はエンジの頭の上に更に重ねてやろ
オレたちから王様への献上品さ
一通り楽しんだら仰向けに寝っ転がって空を眺める
あー疲れた
たまにゃこういう日も悪くねぇな
神埜・常盤
【灰】
そういえば、そんな話をして居たねェ
君の山に咲くシロツメクサも
今度見せてくれ給え
あァ、たんぽぽが沢山
卵みたいで美味しそうだなァ
賢い君が花冠を造るのか
器用に結んで行くものだねェ
宛ら灰の王様の戴冠式だ、おめでとう
綿毛が有ればお祝いの風船がてら
それを飛ばしてあげよう
僕も真似して摘んでみるけれど
想像通りには結べない
不器用だから仕方ないねェ
よし、僕は花をひたすら集めておくから
誰か縫う係をやってくれ給え
おお、十雉君も器用なのかね
それは頼もしいなァ、謹んで君に任せよう!
立派な冠が出来ると良いねェ
綺麗な花ばかり、いっぱい摘もう
海に落ちて酔いが覚めたし
僕は未だ起きておく
こういう長閑な眺めも良いなァ
ふっ。とエンジはそこで、なぜか得意げな顔をした。
「コレの住む場所にはシロツメクサがあるある。沢山歩くと見つかるンだ。シロツメグサはとっても白いんだ」
すごいんだ。と主張するエンジに、なるほどと常盤も小さく頷く。
「そういえば、そんな話をして居たねェ。君の山に咲くシロツメクサも今度見せてくれ給え」
「まかせろまかせろ。びっくりするぞォ」
「確かに。あんな灰だらけの近くに花畑があるとは俄かにゃ信じがたい話だよなァ」
何なら今すぐにでも連れて行きたそうなエンジに、十雉は首を傾げる。が、
「だが……シロツメグサはまだ早いんダ。ココも沢山歩くとタンポポがある。まずはタンポポだ」
「おー。そっちの花も楽しみだけどよ。今はたんぽぽだ、たんぽぽ」
しゅっしゅっしゅ。と。たんぽぽをぶっちぎるポーズをとる十雉。そうそう! と、エンジは両手を上げた。
「こっちだ、こっち! いこういこう」
ふんふん。と匂いを追うような仕草の後で、走り出すエンジ。
「おっと、置いていかれるわけにはいかないなァ」
「おー。走るのか。まだ走るのかー……」
全然平気そうな常盤と、あー。疲れた。とでも言いたげな十雉はしかし、勢いよく走るエンジを送れることなく追いかける。
「おお……これは」
ぱ、と視界が開けたら、目の前に広がるのは黄色のじゅうたんで。十雉が驚いたように声を上げる。知っていたけれども、この目で見るとインパクトとメルヘン具合が全然違う。
「あァ、たんぽぽが沢山。卵みたいで美味しそうだなァ」
そのメルヘンをぶち壊すような常盤の発言に、
「そういえバ、タンポポは食べられるって聞いた聞いた」
こだわりなくエンジがのっかって、
「あん? そりゃ、酒のつまみにでもなるか?」
十雉がまたぶち壊すようなことを言った。
まあ、そういう三人である。
まあ、それはそれとして。
「アァ……。食べ物は兎も角。タンポポでも花冠が作れるンだ」
三人、まばゆいばかりの黄色が輝くタンポポ畑に、
三人で輪になって据わると、おもむろに人差し指を立てて、エンジがそういいだした。
「賢い君が上手上手ー。花を摘んで束ねてそれから縫う。縫う。縫う!」
こんな感じ。と、エンジが主張して、賢い君の赤い糸と共にタンポポを絡め、縫っていく。
「へぇ、花冠たぁ器用なモンだなァ」
その様子を感心したように十雉が眺めていると、
「賢い君が花冠を造るのか。器用に結んで行くものだねェ」
常盤も興味深げにそれを覗き込んだ。
「うんうん。縫って、タンポポも繋いで縫ってーはい。君からのプレゼント。王様の冠ー」
そうこうしている間に冠が出来上がる。ぱんぱかぱーん。と、タンポポの花冠をエンジが天へと掲げる。そのまま自分の頭にのせると、
「おぉ、宛ら灰の王様の戴冠式だ、おめでとう」
なんて言って、常盤がお祝いの風船がてら、ふうっとたんぽぽの綿毛を飛ばした。
「よっ、似合ってんぜエンジ。立派な王様じゃあねぇか」
十雉も指笛を鳴らしてご機嫌に盛り上げると、エンジもまた得意げに胸を張った。
「アァ、王様ー。イイネ! じゃあじゃあ、二人もやってみようそうしよう。二人も王様になればいい!」
「おおっと。これは痛いところを突かれたねェ」
今すぐ! と、主張するエンジに、常盤が瞬きをする。徐にタンポポを幾らか摘んで、真似してみるけれども……、
「ここをこうして、こう……だったよねェ。だったはずなんだけれどもねェ」
エンジの作業はしっかり見ていたので、見ていた通りにすれば間違いなく完成するはずだと常盤は言いながらも手を動かす。
できるはずなのだと、常盤はもっと手を動かす。
「……」
同じように動かしている……つもりで、
「……不器用だから仕方ないねェ」
「無理に縫うとダメダヨー。賢い君が怒る。すごーく怒る」
「そうはいってもねェ」
できないのだよ。と真顔で主張する常盤に、十雉が見かねて、
「常盤、アンタ案外不器用なのな。思わぬ弱点、見つけたりってやつだ」
若干ご機嫌な様子で、作りかけた花冠を覗き込む。その不器用な作り方を見て、十雉は目を細めた。
「いいのだよ。多少不器用でも俺は生きて行けるし、できないことはできる人に頼むからなァ」
平気だと。なぜかそこで得意げに常盤が言って、それから堂々と花冠を十雉とエンジのほうに差し出した。物凄くいい笑顔であった。
「よし、僕は花をひたすら集めておくから、誰か縫う係をやってくれ給え。……おお、十雉君も器用なのかね。それは頼もしいなァ、謹んで君に任せよう!」
「おいおい。まだ俺はなーんにも、ひとっことも、言ってねーぞ」
まるで決定事項のようにぽんぽんと紡ぐときわの言葉に、十雉は苦笑する。苦笑して、
「しゃあねぇ、オレが請け負ってやるか。細かいのは得意な方でさ。さっきのに負けねぇ冠を作ってやるよ」
笑顔のまま差し出される花冠を、十雉は受け取った。それをエンジも覗き込む。
「トキワは不器用でトキジは器用。覚えた。賢い君も手伝うってサ」
「お、賢い君も手伝ってくれんのかい? こりゃあ百人力だ」
「うんうん、赤い糸で縫おう」
それじゃあ、始めようかと。エンジと十雉がその花冠の後を引き継ぐ。
言葉通りで、十雉はエンジ同様器用に編んで、二人してそれを作り上げていく。
で。等の常盤はというと……、
「立派な冠が出来ると良いねェ。よしよし、綺麗な花ばかり、いっぱい摘もう。そこは任せてくれたまえ。その代り、飛び切りの花冠にしておくれよ」
なんて言って、花をどんどんと摘んでくるのであった。
……そして。
「……できた」
「デキター」
出来上がった花冠は、先ほどエンジが作ったものよりも立派な花冠であった。
「うん、可愛い可愛い。これには賢い君もご機嫌だナ」
「そりゃあよかった。じゃあ……」
ほい、と、十雉は花冠を、エンジの頭にさらに重ねてみた。
「お? お?」
「オレたちから王様への献上品さ。いいだろう?」
「なるほどなるほど。……ウムウム、苦しゅうない」
「ぶっ。なんだそれ」
胸を張るエンジに、思わず十雉が笑う。
「お言葉、恐悦至極に存じ上げます」
なんて、常盤がさらに言って、妙に仰々しく頭を下げたので、エンジも十雉も、また笑い声をあげるのであった。
「あー疲れた」
それから一通り遊んで喋って。それで十雉はタンポポ畑の中に転がった。もう限界だー。なんて、仰向けに転がって空を眺める。
「ふー。今日は桜だらけだったなァ」
続いて、エンジもその隣に転がった。右手をにゅうっと挙げて、今日のことを指折り数える。
「動いて、腹ごしらえもして王様の証も作った。たーのしかったなァ……」
「そうだね。いつになく色んなことをして、たくさん遊んだねえ……」
常盤も感心したように言って。常盤自身は添わったまま点を見上げる。その背中を見ながら、エンジは小さく頷いた。
「あとやり残したコトは、昼寝ー」
「おや?」
「起きなかったら起こしてくれくれ。オヤスミー」
いうなり、
返事も待たずにエンジはすこんと目を閉じた。
「おっと。エンジ。エンジ。寝たのかー?」
「そのようだねぇ。そっとしておいてあげようじゃないか」
「だな。オレも疲れたし……」
言っていて欠伸が出てきた。疲れたなー。ともう一度呟いて、十雉は青い空に流れて行く雲を見つめる。
「……たまにゃこういう日も悪くねぇな」
ポツン、とつぶやかれた言葉に、常盤も頷いた。十雉の声音に眠気が少し混ざっても、常盤のほうは座ったままで。常盤自身は海に落ちて酔いが醒めたし、それに……、
「こういう長閑な眺めも良いなァ」
もう少しこの世界を眺めていたくて。
常盤は二人の顔を見て、そっと、笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
呉羽・伊織
【花宴】
まだ食べんの!(また食気に戦きつつ市や狐達を眺め)
んで土産と褒美…オレの懐も船の桜の如く盛大に散りそう
まぁ悪かないか!
それじゃ清史郎にはコレもオマケ!(謎のバスボムを唐突に買い、悪戯げに笑い)
最初の砲弾宜しく、花弁やら海の生物細工やらが入ってるそーな――今度は貝よか可愛いのが出る筈!
しかし手伝い上手なお供って良いな
オレも何か――いやあの亀って噂のアレでは??
ウン、オレにはぴよこ(留守番中)がいるしアレは…くっ、起こすだけだぞ!
あっソレホントぴよこ達に良さげ!(助けた亀から目を逸らし)
留守番組ともまた宴ってのも良いな
花は消えども、思い出は見事に残ったモンで!
(最後まで満開のまま風に消え)
筧・清史郎
【花宴】
皆と朝市巡りへ
無事に事も収まり、これで何の憂いもなく美味な物が頂けるな(微笑み
菊里の狐さんは大活躍だな(労う様に撫でもふ
ああ、俺達も存分に満喫しようか(早速甘い物に注目
果実の甘味か、とても美味しそうだ(迷わず抱えるほど購入
謎の球体…ばすぼむ、とは? ふむ、成程
あの美味しくなさそうな貝は御免だが、可愛い海の生き物さんが出てくると良いな(何気にわくそわ
そして助けた亀さんが、仲間になりたそうに伊織を見ているが…?
ポポ丸(留守番のひよこ)達に土産か、それも勿論購入しよう(再び迷わず買う
帰還後も宴、それは良いな
では、美味な物を沢山買って帰らなければだな(微笑み
最後に満開桜咲かせ、皆と記念撮影を
千家・菊里
【花宴】市巡り
一仕事後の御馳走は格別――これは無論別腹ですよね、ふふ(早速浜焼き頂き笑顔)
今日も海賊さんに倣い気前良く参りましょう
(土産持ちは任せろ!序でに御褒美頂戴!な顔した狐達連れ)
清史郎さんには誕生日祝いに、南国果実の甘味等如何でしょう?
甘いのと可愛いのとで、一層幸い溢れる一時を
伊織もお供が必要なら、彼方で引っくり返ってる助けてほしげな亀さんとか最適かと
というかぴよこさんいますよね
其方の貝殻装飾、ポポ丸さんやぴよこさん、亀さん(ちゃっかり仲間に入れた!)にも似合いそうでは?
後は御馳走もまた山盛買い――帰還後も打上げの宴を是非
この写真達が良い肴と花代わりになる筈
(笑顔で名残の桜を撮り納め)
朝である。
市場がにぎわっている。
「ふ……。無事に事も収まり、これで何の憂いもなく美味な物が頂けるな」
「まだ食べんの!」
微笑みながら活気づく市の様子を見守る清史郎に、思わず伊織が突っ込むのであった。
「一仕事後の御馳走は格別――これは無論別腹ですよね、ふふ」
「で、その手に持っているものは」
「浜焼きですよ。見たことないのですか? 伊織」
「いや見たことぐらいはあると思うけど……。……そうか……」
当然のごとく既に浜焼きを手にほくほく笑顔の菊里。
そうして、「土産持ちは任せろ! 序でに御褒美頂戴!」と、びしーっと整列する狐の式神たちに、伊織はその食い気におののくのであった……。
「さて。今日も海賊さんに倣い気前良く参りましょう。本気を出せば俺達で、この市すべてを食い尽くすことすらできるやもしれません」
得意げにいざ出陣、と歩き出す菊里。あれも、これもと覗き込むと、すかさず狐たちが後をついていくので、
「菊里の狐さんは大活躍だな」
労うように清史郎もその頭を撫でた。狐たちは嬉しそうに、荷物持ちはお任せください、とキラキラした目で清史郎を見つめるので、
「ああ、俺達も存分に満喫しようか。と、いうわけで……」
早速。と。
甘そうな果物が並ぶ店へと清史郎も顔をのぞかせるのであった。
「……土産と褒美……オレの懐も船の桜の如く盛大に散りそう」
若干ついていけている気がしない。かしかし、と、伊織は軽く頭を掻く。
「けど……まぁ悪かないか! おーい。もうちょっとゆっくり行こうぜ」
せっかくだ。ここは使い果たすつもりで行こうか! と。伊織も結局楽しげに、二人の後を追いかけるのであった。
「清史郎さんには誕生日祝いに、南国果実の甘味等如何でしょう? ほら。これとか」
マンゴーにパイナップルに。甘味で絞っても様々なものがあって。菊里が示したのは、ココナッツジュースであった。
ココナッツを割ってそのままストローを指しているので、なんだかかわいい。
「甘いのと可愛いのとで、一層幸い溢れる一時を、というわけです」
「なるほど果実の甘味か。とても美味しそうだ。折角だから皆で買って、一緒に飲まないか?」
そして他のものももちろん買う。それ以外にも抱えるほど、あちこちの果物を。迷うことなくよどみない仕草で購入していく清史郎。すでに割と狐たちの荷物はすごいことになっているのだが、全く止まる気配はない。
さすがに突っ込む気もなくなったと。笑いながら伊織がふと周囲を見回すと……、
「おっ」
何やら見つけて、伊織は一つそれを手に取った。
「それじゃ清史郎にはコレもオマケ!」
お金を払うと、ぱしんと伊織はそれを清史郎へと投げる。清史郎は片手で果物を抱えて、もう片方の手で器用にそれをキャッチした。
「おや。この謎の球体は……?」
「バスボムだよ。謎のバスボム?」
知ってるか? と、伊織はいたずら気に笑ってみせる。「ほう?」と、菊里も興味深そうに、清史郎の肩越しにそれを覗き込んだ。
「ばすぼむ、とは?」
「最初の砲弾宜しく、花弁やら海の生物細工やらが入ってるそーな。でも細かくなにが出るかは、使ってみてからのお楽しみだな!」
「ふむ、成程……」
興味深そうに、清史郎はそれを見つめる。ひっくり返したり、覗き込んだりしていると、
「――今度は貝よか可愛いのが出る筈!」
なんて、伊織が太鼓判を押すので、清史郎の目は思わず輝いた。
「あの美味しくなさそうな貝は御免だが、可愛い海の生き物さんが出てくると良いな。折角だ、今使ってみてもいいだろうか」
「今!? バスって言っただろ。家に帰ってからだぜ、家に帰ってから」
「む、そうか……」
海水でもいいじゃないかと、なんだかそわそわする清史郎に、海水はダメです。なんて真面目な顔を作って見せる伊織。
「ならば仕方がない。このばすぼむも、帰ってからの楽しみにしよう。……ありがとう、これも頼むぞ」
若干残念そうに、清史郎は狐たちにひとまずバスボムを預けるのであった。
その様子を見て、んー、と伊織は目を細める。
「しかし手伝い上手なお供って良いな。なんか、いろんなところで助けてもらえそうな気がする」
便利だし、可愛いし、気が利くし。オレも何か――、なんて。
羨ましそうに言う伊織に、ついと菊里は首を傾げて指をさした。
「伊織もお供が必要なら、彼方で引っくり返ってる助けてほしげな亀さんとか最適かと」
「!?」
そんなまた都合よく。なんて言いかけた伊織だったが、菊里が指さした先ではひっくり返ってうごうご動くカメさんがいて、
「いやあの亀って噂のアレでは?? え?? なにあれ?」
「というか、伊織にはぴよこさんいますよね」
「ウン、オレにはぴよこ(留守番中)がいるし。そんな、アレは……くっ、起こすだけだぞ! ぴよこがいない間に、俺はそんな不義理なことは……!」
「そうですね。もしかしたらぴよこさんにとってはひどい裏切りかも……」
カメを見つけておいて、真面目な顔でそんなことをいう菊里に、おぉぉぉぅ。と、ぶんぶん、伊織は首を横に振る。
「そして助けた亀さんが、仲間になりたそうに伊織を見ているが……?」
「言わないでくれ。言わないでくれ清史郎。オレは、オレは……!」
助けたカメから目をそらし、何やら苦悩する伊織に、清史郎はふむ、と、頷いて、
「……これが、修羅場というやつか?」
「ええ。修羅場というやつですね」
菊里と顔を見合わせて、小さく頷くのであった。
「伊織、其方の貝殻装飾、ポポ丸さんやぴよこさん、亀さんにも似合いそうでは?」
菊里がちゃっかりカメも入れて、小さな貝殻のアクセサリーを示す。元はブレスレットだったり子供用だったりするものもあり、探せばちょうどいい、気に入ったものが見つかりそうであった。
「あっソレホントぴよこ達に良さげ!」
「ああ。ポポ丸達に土産か、それも勿論購入しよう」
ぱっと伊織の顔が輝く。清史郎もまた、留守番のひよこたちにいいだろうと一緒にのぞき始めた。ところで、と清史郎は真面目な顔で、
「亀さんが悲しそうな顔をしているが、いいのか……?」
「!!」
清史郎の割と天然な悪気のない指摘に、伊織は言葉に詰まるのであった……。
そして。
「さて、これからが本番ですね。御馳走もまだまだ山盛り買いたいです」
ひとまずはお土産のアクセサリーを選び終えれば、菊里はそう言って顔を上げた。それからきらりと、
「――帰還後も打上げの宴を是非」
なんて、いうので、清史郎は微笑んで、おお! と伊織も嬉しそうな声を上げる。。
「帰還後も宴、それは良いな。では、美味な物を沢山買って帰らなければだな」
「留守番組ともまた宴ってのも良いな。せっかくここまで来たんだから、とことんまで楽しみ尽くすか!」
「ああ。となると酒と、そして肴も必要になってくるな」
もちろん、ごちそうも……なんて、算段をつける清史郎であるが、
「肴ですか。……ふふ。この写真達が良い肴と花代わりになる筈」
と、菊里が手を掲げた。
さすがにもう、二人にもそれが何かは分かっていた。
昨日さんざん撮った写真だ。
「それ、皆さん行きますよ」
「おう! 花は消えども、思い出は見事に残ったモンで!」
伊織が答えて笑顔を向ける。清史郎も微笑むと、菊里は三人移るように調整して、シャッターを切った。
「最後に満開桜が咲いたな」
清史郎の言葉に、二人も笑って頷いた。
頭の桜はちょうど満開で、どんどんと花びらを散らしていく。
きっとそのうち、すぅっと溶けるように消えて行ったとしても、
思い出だけは、ずっとずっと、残るだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
波打ち際をゆるり游ぐ
船も桜もなくなっちゃった
寂しくなった頭の上をみてため息ひとつ、唇を尖らせる
櫻宵とお揃いで嬉しかったのにな
櫻宵の手が伸びて、僕の髪にひとつ
櫻龍のさくらを咲かせてくれた!
ふふ、僕のさくらだ!
ここに花は咲かなくても、僕には僕の櫻が咲いている
いつだって春のように微笑んで、満開の桜が吹雪くんだ!
嬉しくなって飛びついて、額にひとつ口付けを
驚く顔も可愛いね
嗚呼、濡れちゃったね?
せっかくだから泳ごうよ
君が泳げないことは知ってるよ!
脱ぐ脱ぐかないの押し問答、嗚呼
愉快
拗ねたフリして水をたくさんかけてやる
そうすれば
櫻は入れる所までは来てくれるだろ?
君を海底に連れてったら海に桜が咲くのにな
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
桜が散ってしまったわ
噫
春の夜の夢のよう
美しい歌と桜と幽霊と私だけの舞台を忘れないわ
素足で浜辺を歩み
ぱしゃり波を弾く
頭の桜がちって残念そうな可愛い人魚に私の桜を分けてあげるわ
角の桜を摘んだならそっとリルに飾ってあげる
ほら、お揃い
きゃ!?
突然人魚が飛びついて
額に柔い感触
気がつけば浜辺に尻もちついてびしょ濡れよ!
意外と大胆よね
游ぐの?私泳げないわ…
それにこんなとこで脱ぐなんて!
そんな押し問答もまた楽し
けれど泳ぐのだけは絶対いや
あっ、リル?怒ったの?
ねぇ拗ねないで
遠くに行きそうな人魚を慌てて追う
……膝までなら、なんとか
揺蕩う人魚の姿はまるで
海に咲き誇る絢爛の花のよう
今日見たどんな花より美しいわ
リルは波打ち際をゆるゆると泳いでいた。
陸に上がるつもりはなかった。
若干不貞腐れたように、ぱしゃん、と水を跳ねさせる。
「……船も桜もなくなっちゃった」
不満そうに。寂しくなった頭の上をみてため息ひとつ。そうしてリルは唇を尖らせた。
「噫、そうね。桜が散ってしまったわ。……まるで春の夜の夢のよう」
櫻宵は素足で浜辺を歩み、波打ち際でパシャリと波を弾く。
「美しい歌と桜と幽霊と私だけの舞台を忘れないわ」
「もー。櫻宵はまたそんなこといってー」
「なあに、ご不満なの? 可愛い人魚さん」
「だって」
むう、と。リルはそう言って己の頭に手をやった。
「櫻宵とお揃いで嬉しかったのにな……」
「もう、しょうがない子ね」
そんなことを言いながらも、櫻宵はリルの言葉が嬉しくて仕方がないという風で。
パシャパシャと波を立てて、リルのほうへと寄っていくと、
「可愛い人魚に私の桜を分けてあげるわ」
そういって、角の桜を摘んだなら。そっとリルの髪へとひとつ、飾った。
「ほら、お揃い」
「わ……っ。櫻龍のさくら? 咲かせてくれたの!?」
「ええ。そうよ」
「ふふ、僕のさくらだ! ここに花は咲かなくても、僕には僕の櫻が咲いている……。いつだって春のように微笑んで、満開の桜が吹雪くんだ!」
言って。飛び跳ねるようにリルが櫻宵に抱き着いた。
「やった、やった!!」
「きゃ!?」
飛びついてきたリルを櫻宵は受け止められず。
体勢を崩すと同時に、櫻宵の額に柔らかい感触が届いた。
それがリルの口づけだと気付くころには、櫻宵は水の中。尻もちをついていて、
「ああ。リル。怪我はない?」
「勿論だよ! 驚く顔も可愛いね!」
屈託なく笑うリルに、櫻宵はもう、ぷるぷると首を振った。
「喜んでもらえたなら嬉しいけど、リルは意外と大胆よね。もう、びしょ濡れよ!」
「嗚呼、濡れちゃったね? せっかくだから泳ごうよ」
「何。その、せっかくだから、って。游ぐの? 私泳げないわ……」
「うん。君が泳げないことは知ってるよ!」
「知ってるならどうしてそんなこと言うの!?」
意味が分からない。と、愕然とする櫻宵に、物凄く楽し気にリルは笑っている。ご機嫌なのだ。それは知っている。それは知っているが……、
「それにこんなとこで脱ぐなんて! いやよ!」
「いいじゃない、誰も見ていないよ」
「見てるわよ! 丸見えよ! 泳ぐのだけは絶対いや!」
そんな押し問答すら楽しい。脱ぐ脱がないの攻防はしばらく続く。お互いがお互いを楽しんでいるとわかっている……けれど、
「ふーんだ。櫻宵なんて、もう知らない」
「あっ、リル? 怒ったの?」
ついにリルが実力行使に出た。ついと櫻宵から遠ざかるリル。
「あぁ。待って。ねぇ拗ねないで」
「知らない知らない。……えい!」
拗ねたふりをしながら、リルはたくさんたくさん、櫻宵に向かって水を跳ねさせた。
「きゃっ」
「ふふん」
してやったり、みたいな顔でリルは櫻宵を見る。
(拗ねたフリして水をたくさんかけてやる。……そうすれば、櫻は入れる所までは来てくれるだろ?)
そんな、言葉を持つようなリルの視線に、櫻宵はうーん。と軽く唸って、リルを追いかけた。
「……膝までなら、なんとか」
そこまでが妥協点。なんて言う櫻宵に、はーい。とリルは頷いて軽く泳ぐ。
「……君を海底に連れてったら海に桜が咲くのにな」
「はい、はい」
リルの言葉に、櫻宵は肩をすくめた。
それでも、櫻宵に行くことができるのは膝までだ。
それが何とも歯がゆい。歯がゆいのだけれども……、
「けれども私、ここから見るリルのことも、好きよ」
「ふーん。僕は櫻宵が、水の底まで一緒に来てくれたらいいのにな、って、思ってるよ」
そうしたらもっと楽しいのに。なんてリルは笑う。その笑顔を櫻宵は微笑んで見つめ返す。
揺蕩う人魚の姿はまるで、海に咲き誇る絢爛の花のよう。
「……今日見たどんな花より美しいわ」
小さな櫻宵のつぶやきに、ぱしゃん、と水の跳ねる音がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
櫟・陽里
おにーさん(リオン/f21392)からは逃れられない…?
上陸後すぐに別行動希望!っつって別れたのに
土産物屋でキラキラ光る貝殻のブローチを見てたら鉢合わせてしまった
ぐっ…別に誰宛てでもいいだろ…何で俺が誕生日プレゼント貰った事まで知ってんだおにーさんウゼェ
人使い荒いとか言うけどそれ完全に自業自得じゃねぇかよ…
はー…
実は今日はオフ、予定はねぇよ
昨日は盛り上げるばっかだったし腹は減ってんだ
土地名産の酒に興味あるし付き合ってもいいか
ウザいおにーさん潰してやるよ
…なんて言ったはいいけどおにーさんの底が知れない
負け戦だったか…
二日酔いに効く薬…おにーさんの薬なんて…ぜってー危険…
…いややっぱりちょうだい
リオン・リエーブル
昨夜は一晩中料理してたら疲れちゃった
陽里さん(f05640)はどっか行っちゃったし
さてと
この島に来た目的を果たしますか
GOのラム酒って美味しいんだってね
お酒ゲットしてホクホク顔で朝市を覗いてると
陽里さん発見!
なになにー何してるの?
ひょっとして誕プレのお返し?
ひゅーひゅー隅に置けないなぁ
これ?GOで一番美味しいラム酒
秘蔵のワインくすねたらパラスさんに代わり持ってこいって
ホント人使い荒いんだから
よおし!これで飲み明かそう!
大丈夫大丈夫いっぱい買ったから!
これでマイタイ作って貰うんだー!
屋台でごはん買って二人で酒盛り
おにーさんお酒は強いよー!
あれ?もうおしまい?二日酔いの薬いる?
味は保証しないけど!
明け方。
砂浜にたどり着いた陽里は、さっ。と片手を上げた。
「じゃ、ここからは別行動希望! ってことで!」
リオンが返事をする暇もなく、ざざざざざーっ! と走り出して何処かへと消えていく陽里。
「うーん。陽里さんどっか行っちゃうのかー」
それを見送り、リオンは軽く伸びをした。
「僕はどうしようかな~。昨夜は一晩中料理してたら疲れちゃったし……」
のんびりと朝日を浴びる。まぶしいねえ。なんて目を細めたりしながら、ああ。と、思い出したように呟いた。
「そういえば、そうだ。僕は用事があってこの島に来たんだ。だったら……、この島に来た目的を果たしますか」
ふ。と何やら使命がある! という顔をするリオン。それから陽里が去っていった方角を見て、にっこりと笑った。
「まあ、どっか行っちゃった陽里さんとも、そのうち会えるでしょう!」
「……つか、なんでこんなところにいるんだよ……」
そうして。
陽里はアクセサリー店の前で、ぐったりとした声を上げるのであった……。
運悪くも土産物屋で、キラキラ光る貝殻のブローチを手に取っていた直後のことであった。これはもう、言い逃れも言い訳もしようがない状況だ。きらきらである。
「おー! 陽里さん発見! なになにー何してるの? ひょっとして誕プレのお返し? ひゅーひゅー隅に置けないなぁ」
何やら荷物を抱えたリオンは陽里の姿を見かけた瞬間、さっと近寄って物凄く的確なことを言ってはやし立てる。素早い。反論ができない。ごまかしようがない。陽里はちょっと視線をそらした。
「ぐっ……。別に誰宛てでもいいだろ……。ていうか何で俺が誕生日プレゼント貰った事まで知ってんだおにーさんウゼェ」
「ええ。うざいとかそんな寂しいこと言わないでおくれよ! 昨日は一日、共に激しい戦場を潜り抜けてきた、いわば僕たちは戦友じゃないか!!」
「まったく戦いのなかった戦場だけどなっ。ていうか……」
まずい。このままではまずい。
陽里は必死に死線をさまよわせて考える。このままこのプレゼントに対して突っ込まれるのは非常に避けたい。しかし放っておけば突っ込まれること間違いがない。ならば……、
「ていうか、おにーさんは何買ったんだよ。結構大きそうだけど、それ」
そして見つけたのがリオンの抱えている包み紙である。その質問に、うん? と包み紙から中身を軽く示して見せた。
「これ? お使いの品だよ。このあたりで一番美味しいラム酒。秘蔵のワインくすねたら、パラスさんに代わり持ってこいって言われたんだ。ホント人使い荒いんだから。ひどいと思わないかい?」
「人使い荒いとか言うけどそれ完全に自業自得じゃねぇかよ……」
まるで被害者のようなリオンの口ぶりだが、当然ながら陽里は騙されなかった。
呆れたような陽里の言葉に、リオンはにこにこと笑う。
「そんなことないよ。せーっかくのお休みだっていうのに、買い物なんてつまらないさ。……な・の・で」
どうやら追及からは無事逃れられたようだ。と、陽里が息をついた……その時、
「と、いうわけで、楽しまなきゃ損だよね!! よおし! これで飲み明かそう!」
「は!? ついさっき自分でお使いの品とか言っただろ、それ!」
「大丈夫大丈夫いっぱい買ったから! これでマイタイ作って貰うんだー!」
マジか。という顔をする陽里に、うっきうきのリオン。
「さあのもう、今すぐ飲もう。あっちの方に広場があるっていうからそこに行こうか!! おいしいものももちろん買おう!」
「はー……」
呆れたように、陽里はため息をついた。
そしてがりがりと、頭を掻きむしった。
実のところ今日はオフのつもりだった。予定なんてなかった。
昨日さんざん働いて、自分は食べてなかったので腹も減っているのは確かだった。
「……土地名産の酒に興味あるし付き合ってもいいか」
結局、このおにーさんからは逃れられないのか……。と肩を落とす陽里。
「いいぜ。ウザいおにーさん潰してやるよ」
「よーし、そうこないと! おにーさんお酒は強いよー!」
まずは屋台だ! と、ご機嫌に歩きだすリオンの後についていきながら、
あれ、やっちまったかな……? と、陽里はほんのり、考えていた。
そうして屋台でご飯も買って、一緒に酒盛りともなれば……、
「……おにーさんの底が知れない……。負け戦だったか……」
どう、と、陽里は突っ伏すのであった。
「あれ? もうおしまい? 二日酔いの薬いる? 味は保証しないけど!」
「二日酔いに効く薬……おにーさんの薬なんて……ぜってー危険……」
言って、ぐらぁ。と視界が回る陽里。
「……いややっぱりちょうだい」
「勿論だとも。ダイレクトに効くやつと、半分が優しさでできてるのとどっちがいいかな!」
「何その、究極の選択……」
ぐったりと絞り出すような声であったという。
陽里の休みは、そんな感じで過ぎていきそうだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
たんぽぽ畑にソヨゴと連れ立って行くよ
日差しは眩しい
風は軽く吹いていて気持ちいい
この辺りで休もうか
桜はもう咲かせたくないネ
と思い出し笑いをする
夜通し動き回って疲れた
ソヨゴの傍らで花畑に寝そべり目を瞑る
普段ならこんな場所で無防備に居眠りなどできないのだけど
彼女が側にいると不思議と眠くなる
呼ばれて目を開け
ゴメンソヨゴ
僕は眠ってた?
ブローチを受け取る
きれいだネ
僕にくれるの?
ニンジンというか
これは僕とソヨゴでしょう
説明を聞いて軽く吹き出す
そうだネ
まだ少し気が早かったみたいだ
でもありがとう
大切にするネ!
もちろん合格するとも
ソヨゴこそ進学おめでとう!
これからは女子高生って呼ばなくては
城島・冬青
【橙翠】
桜も素敵でしたがタンポポも良いですね
黄色い花も可愛らしいです
桜はもういいかなって…
花畑に座り込んで暫しのんびり
あ!アヤネさんが寝てしまう
まだ少し待って下さい
……アヤネさん…(鞄からガサゴソと何かを取り出し)これどうぞ
先日ちょっと父とA&Wへ行った時に入手した戦利品で作ったんです
橙と翠のバイカラーの石を加工して作ったピンブローチを彼女の手に乗せる
石がニンジンみたいで可愛いなって思って
実を言いますとぉ…
えと…アヤネさんの大学進学祝いも兼ねて贈ろうかと思ったんですが
アメリカの受験は夏だし進学は9月ってことを失念してまして…(照れ)
だからソレはお土産兼合格祈願守りってことで
勉強、頑張って下さい
アヤネと冬青は手を繋いで。
タンポポ畑を連れ立って歩く。
日差しは眩しくて、風は軽く吹いていて気持ちいい。
すうっと息を吸い込むと、アヤネの中にも心地よい春の香りが溶け込んだ。
「うーん。桜も素敵でしたがタンポポも良いですね」
同じように息を吸い込んで、冬青は足元を見る。
「黄色い花も可愛らしいです。なんだか、素朴で……」
昨日はあまりにもこう、いろいろ濃すぎた。
若干疲れが混じる声音で言う冬青に、アヤネは笑った。
「じゃ、この辺りで休もうか。それとも、桜の木の下がいい?」
「うーん。桜はもういいかなって……」
苦笑いをする冬青に、ふふふ、と楽し気な笑みをアヤネは浮かべる。
「桜はもう咲かせたくないネ」
「はい。しばらくはこりごりです……」
といっても、また楽しそうなことがあれば、アヤネを引っ張って飛び込んでいくのだろうけれども。
それでも、今はもうこれでお腹いっぱいだと。息をつく冬青にアヤネは思い出し笑いをするのであった。
「じゃ、ここで……。夜通し動き回って疲れたネ」
封、吐息をついて、アヤネはその場に腰を下ろす。冬青もそれに倣った。そのままアヤネは体を倒して寝そべると、急速に睡魔が襲ってくる。
……普段なら、こんな開けた場所で無防備に居眠りなんてできるわけがないのに。
どういうわけか、今日は異常に眠たかった。
一日働きづめで疲れたからか。……ああ。それとも、
冬青が隣に、座ってくれているからだろうか。
それだけでも何だか幸せで心地よくて。
不思議とこの陽だまりの中、安心できる気になって。
そして……、
「あ! アヤネさん! アヤネさんが寝てしまう。まだ少し待って下さい」
不意に、冬青が声を上げて、アヤネははっ。と目を開いた。
「ゴメンソヨゴ。僕は眠ってた?」
「ええと、眠りそうでした。いえ、眠ってくれてもいいのですが……」
そのまえに。と。冬青は自分のカバンを何やらごそごそしている。
先ほどエプロンが入っていた鞄だ、冬青のカバンにはいろんなものが入っているんだろうなあ。なんて、アヤネがぼんやりと考えているところで、
「……アヤネさん……。ええと……あ、あっと。これどうぞ」
はい。と、差し出されたものに、アヤネは体を起こした。
「これ……?」
それは、橙と翠のバイカラーの石を加工して作ったピンブローチであった。アヤネは一度、瞬きをする。
「きれいだネ。僕にくれるの?」
「はい。先日ちょっと父とA&Wへ行った時に入手した戦利品で作ったんです。石がニンジンみたいで可愛いなって思って」
アヤネはもう一度、瞬きをする。
「ニンジンというか……これは僕とソヨゴでしょう?」
なんで素直にそう言わないの。と、アヤネは若干半眼になって意地悪く問い詰めてみた。
冬青が、そう思わないはずはないと思っているのだ。
果たして冬青は、ちょっと顔を赤くしてむぅ、と黙り込む。
「ほらほら、これを見たら僕のことを思い出していてもたってもいられなくなったんだーって、素直に言ってくれたら僕はとっても嬉しいな?」
このまま抱きしめるかもしれない。なんて真顔で言うと、
「ち、違いますっ。それは……その。実を言いますとぉ……」
何が違うんだろうかと、問いかけるような眼に、冬青はしどろもどろでそう説明をした。
「えと……アヤネさんの大学進学祝いも兼ねて贈ろうかと思ったんですが、アメリカの受験は夏だし進学は9月ってことを失念してまして……」
何だ。やっぱり僕のことを考えていたんじゃないか。とまでアヤネは口にしなかった。
真っ赤になって、いつもとは違うぽつぽつとした口調で説明する冬青を、なんだかとてもいとおしく思えたからだ。
だから、アヤネはその説明に軽く吹きだした。
「そうだネ。まだ少し気が早かったみたいだ」
「そ、そうなんです。だからソレはお土産兼合格祈願守りってことで……勉強、頑張って下さい」
はい! と、両手で差し出されたブローチに、アヤネは微笑む。
「……ありがとう。大切にするネ! もちろん合格するとも」
そっとそれを受け取ると、己の胸に飾った。
「……っ、私も、そういっていただけると嬉しいです」
「うん。ああ、そうだ……」
ふとそれで思い出して、アヤネはそっと手招きをした。
「?」
何だろう、内緒話だろうか。顔を寄せる冬青を抱きしめて、アヤネはそっとその額にキスをする。
「!」
「ソヨゴこそ進学おめでとう! これからは女子高生って呼ばなくては」
「え。えええええ。それは反則ですよ! 反則です、アヤネさん!」
真っ赤になる冬青を、離さずそのままアヤネは抱き込む。
穏やかな春の日差しが、二人を優しく包み込んでいた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラウン・メリー
【OS】
露店でお土産を沢山買いそのままたんぽぽ畑へ
わぁ!とっても綺麗だね!
くるくる回りながら黄色い絨毯に座る
わ、エルル貰って良いの?ありがとう!
紅茶の色も桜色かなぁ?楽しみ!
そうだ!俺も二人にプレゼント!
星の砂と桜貝が入った小さな小瓶を手渡して
この貝、桜みたいで綺麗だよね!
本物の桜だと枯れちゃうからこっちにしてみたよ!
今日の出来事思い出せるかなって思って!
わわ、ティルも良いの?ありがとう!
あはは、お花見とっても楽しかったね!
みんなで今日の思い出をこうかんこだっ!
ぽふんと寝そべり
ふふー、二人もどうかな?
あ、お花の冠とか作りたいね!
ふわりと舞う花弁を眺めて
暖かくて気持ち良い……ね……
すやすや夢の中
ティル・レーヴェ
【OS】
蒲公英は晴やかな日の光に似て
何とも明るく愛らしい花よのぅ
包まれておると
エール殿の仰るように
心の内までぽかぽかと致すようじゃ
くるくる回るクラウン殿の様子も微笑ましくて
自ずと笑みが零れつつ二人の傍へと腰下し
――わぁ!
星と桜貝が詰まった小瓶も
花の香纏う紅茶も嬉しくて
何方も今日と言う想い出を抱いた素敵なお品
お二人とも有難う!
妾も露店で見つけてきたのよ、と
取り出した掌サイズのボトルシップは
中で桜舞うスノードーム
皆で遊んだかの船を象ったみたいじゃろう?
微笑み乍ら二人へ贈る
花冠とは良き案じゃ!
皆で作れば尚華やかで楽しかろうなぁ
エール殿の歌声に重ねて歌を紡ぎつつ
並びて辿る夢路の先も今日の幸せな想い出に
エール・ホーン
【OS】
たんぽぽっ、可愛いっ
そっと座ればあったかい色に包まれて心もぽかぽか
――あっ、ぽかぽかって言ったらね
ボク、あったかい紅茶を買って来たんだっ
桜風味なんだって
ふふ、二人の分も。はいっ
プレゼント?――わあっ
かわいいっ
うんうん、桜の花弁みたいとクラウを見て
ボトルシップ!ボクはじめてみたの
どうやってできているのか不思議でまじまじ
クラウもティルちゃんもありがとうっ
ボクも何か残るものを用意すればよかったなぁ
一緒にぽふん
花冠っ。前にクラウと一緒に作ったことを思い出し
うん、後でみんなでつくろうっ
少しだったら摘んでも平気かな?
るらら、ららら
優しい日差しの下で歌を奏でる
夢の中でもきっとみんなで楽しく遊んでるっ
露店でお土産、いっぱい買って。
みんなでもちよりピクニック気分でタンポポ畑まで向かっていけば、
「わぁ! とっても綺麗だね!」
黄色いじゅうたんに、思わず声を上げたのはクラウンであった。エールは嬉しそうに、
「たんぽぽっ、可愛いっ」
「可愛いっ!」
「わー。クラウ回ってるよ」
「うんっ。なんだか回りたくなっちゃった!」
そういって、くるくる回りながら黄色いじゅうたんに腰を下ろすクラウンに、
「じゃあじゃあ、ボクも回るもんー」
真似するようにその隣にエールが腰を下ろす。
「そっと座ればあったかい色に包まれて心もぽかぽか」
ふふふん。と。ひだまりあったか幸せそうにするエールに、
「ふふ。蒲公英は晴やかな日の光に似て、何とも明るく愛らしい花よのぅ」
その傍に、ティルが楽しそうに。そして優雅に腰を下ろす。
「包まれておると、エール殿の仰るように心の内までぽかぽかと致すようじゃ」
穏やかな日差しに目を細めれば、あっ。とエールが思い出したように顔を上げた。
そう。穏やかな日差しに和んでいる場合ではない。今日は露店で見つけたお土産を交換する、とっておきのイベントがあったのだっ。
「ぽかぽかって言ったらね、ボク、あったかい紅茶を買って来たんだっ」
ぱんぱかぱーん。と、エールは露店で購入したものをお披露目! とばかりに二人に示す。
「桜風味なんだってっ。ふふ、二人の分も。はいっ」
「わ、エルル貰って良いの?」
「もっちろんだよ!」
「ありがとう! 紅茶の色も桜色かなぁ? 楽しみ!」
素敵でしょう。って胸を張るエールに、わくわくとクラウンは紅茶を見つめて。それからはっと思い出したように、
「そうだ! 今度は、俺も二人にプレゼント!」
自分の戦利品を、いそいそと引っ張り出してくるのであった。袋に入れたまま、中身を言わずに渡したクラウンは、ドキドキと二人が袋を開けるのを見守っていて、
「プレゼント? ――わあっ」
「――わぁ!」
何だろう。わくわくしながらエールとティルは袋からそれを取り出して、思わず二人とも歓声を上げた。
「かわいいっ。うんうん、桜の花弁みたい!」
そういってクラウンを見るエールの瞳がきらきらしていて、えへへ。と、クラウンは笑った。
中身は、星の砂と桜買いが入った小さな小瓶であった。
「何という……。星と桜貝が詰まった小瓶も、花の香纏う紅茶も……」
ティルもまた感極まったように、ぎゅっとそれを胸に抱く。何方も今日と言う想い出を抱いた素敵な贈り物に、
「お二人とも有難う!」
大きく叫ぶように声が出て、クラウンもエールも笑った。
「えっとね、この貝、桜みたいで綺麗だよね! 本物の桜だと枯れちゃうからこっちにしてみたよ! 今日の出来事思い出せるかなって思って!」
「そんな意味があったんだ……。素敵だね、ティルっ」
「ああ……。……えー。コホン。それでは、図らずとも最後になってしまったが……、妾も露店で見つけてきたのよ」
一つ。ティルは咳払いをする。最後に出すのはなんだか少し緊張するが、取り出した手のひらサイズのボトルシップを、二人に示すと、
「……皆で遊んだかの船を象ったみたいじゃろう?」
その二人の表情に、思わず微笑みが漏れた。
それは、中で桜の舞うスノードームにもなっていた。
「わわ、ティルも良いの? ありがとう!」
「勿論だとも。今日という日の思い出に、ぜひ受け取ってほしい」
「ボトルシップ! ボクはじめてみたの。どうやってできているのかなあ。不思議だなあ……」
嬉しそうにそれをぎゅっと抱きしめるクラウンに、右へ左へ。ひっくり返して中を覗き込むエール。回すたびに桜吹雪が舞い散って、すごいすごい。と、小さな歓声を上げる。それでもやっぱりわからなくて、エールは顔を上げて、
「クラウもティルちゃんもありがとうっ」
とても嬉しそうに笑い、それから頬を掻くのであった。
「ボクも何か残るものを用意すればよかったなぁ」
「そんなことないぞ。エールのくれた紅茶で、またお茶会をしよう」
「わ、いいね! そうすれば、また楽しい時間が増えるよ!」
ティルの提案に、おおお。とクラウンが言葉を引き継ぐ。それから、
「あはは、お花見とっても楽しかったね! みんなで今日の思い出もこうかんこできたっ! やったー!」
感極まったようにクラウンはぽ分とその場に寝転がった。
「わ、クラウいいな、いいなー」
「ふふー、二人もどうかな?」
「もちろん、やっちゃうよっ。えーい」
クラウンの声に任せて、とばかりにエールもその横で寝転がった。
空が青くて、花が黄色くて。黄色い花が……、
「あ、お花の冠とか作りたいね!」
はっ。と思い出したように言うクラウンに、エールも頷いた。
「花冠っ。うん、後でみんなでつくろうっ」
以前、クラウンと花冠を作ったことをエールは思い出したのだ。
あの時も楽しかったから、今日もきっと楽しいだろうとエールもうきうきした声でそう言って、ふと、
「少しだったら摘んでも平気かな?」
いいよね? と、誰にともなく問うので、
「いいじゃろう。これだけ花があるのならば、花冠とは良き案じゃ! 皆で作れば尚華やかで楽しかろうなぁ」
きっと、きっと絶対、楽しいと。ティルが頷いた。クラウンも頷いた。
「黄色い花で、いっぱいいっぱいにね。それから、それから……暖かくて気持ち良い……ね……」
徐々に徐々に。クラウン言葉が小さくなっていく。それに気付いて、エールが歌を歌いだす。るらら、らららと優しい日差しの下で歌う。
「ああ……。いい天気じゃ……」
それに合わせるように、ティルも歌を紡いだ。並びて辿る夢路の先も、今日の幸せな想い出になるだろう。その声も徐々に小さくなっていくので、
「おやすみなさい。夢の中でもきっとみんなで楽しく遊んでるねっ」
そういって、最後にエールも目を閉じた。
あとにはただ、暖かな日差しが降り注いでいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シチカ・ダンテス
【ベイメリアさん(f01781)と】
旅の途中で立ち寄った渚
海は何処までも美しく広大で
自分のちっぽけさを嫌でも感じてしまうけど…
それが決して嫌というわけではなく
むしろ大きな海からは暖かさを覚える
砂浜に腰掛け陽気とさざ波を見ていたら
柄にもなく気持ちが昂ぶる
少し泳いでいこう
仕事に備えサーフパンツも用意してある
着替えを終えたところで声をかけられて驚くも
その人は海よりもずっと美しく見え…
なんだろうこの感じ…凄くドキドキする…
「うん、俺で良かったら…」
緊張するものの断る理由はなく
泳いだり水をかけ合って遊ぶといつしか打ち解け
「俺はシチカ。貴女の名は?」
夕陽が海に映り輝く頃
浜辺に座って語らいながら海を眺めるよ
ベイメリア・ミハイロフ
【シチカさま(f21761)と】
偶然出会う様子を
どうやらこちらの海は、水温がとても上がっているようでございますね
桜とたんぽぽの香る季節に
海水浴をするのも良うございましょうか
白い水着に身を包み、浜辺へ駆け出してみましたならば
ふと、南国の海のように鮮やかな綺麗な瞳の男の子さんをお見掛けして
貴方さまも、桜に誘われて
こちらにいらしていたのでございますか?
もしよろしければ、わたくしと
ご一緒していただけませんか
並んで泳いだりして海を楽しんで
そういえば、名乗っておりませんでした
まあ…シチカさまと仰るのでございますね
わたくしは、ベイメリアと申します
気づけば夕陽が海に反射してきらきらして
このご縁に、感謝の祈りを
シチカ・ダンテス(オウガブラッドの殺人鬼・f21761)がその浜辺に立ち寄ったのは偶然であった。
海は何処までも美しく広大で、すべてを包み込んでくれるようで。
(自分のちっぽけさを嫌でも感じてしまうけど……。それが決して嫌というわけではなく、むしろ、大きな海からは暖かさを覚える……)
こういうのを、雄大というんだろうな。なんてぼんやりと砂浜に腰掛け陽気とさざ波を見ていたら、
シチカは柄にもなく気持ちが昂ぶった。
(……少し泳いでいこう)
幸い泳ぐ用意はしてあった。準備を済ませて再び海に出ると、
「あら……?」
声が聞こえて、シチカは振り返った。
ベイメリアは海の水に手を浸した。
海賊船が消えて、海上に投げ出された時にも感じたのだが、水温はとても暖かい。
(桜とたんぽぽの香る季節に……。どうやらこちらの海は、水温がとても上がっているようでございますね。ならば、海水浴をするのも良うございましょうか)
せっかくだから、珍しいこの季節に海に潜ってみるのもいいかもしれない。
もしかしたら、ほかにない珍しい魚が見られるかもしれない。
そう思って、ベイメリアは白い水着に身を包み浜辺へと駆けだした。
「……あら?」
とはいえこの時期がら。そう泳ぐ人は少ないだろうと思っていたのだけれど。
ベイメリアは浜辺に水着姿の男の子を見つけて思わず感嘆の声を上げる。
(なんて綺麗……。南国の海のように鮮やかな、綺麗な瞳の男の子さんでございますね……)
と、さすがにそこまでは声に出さなかった。声に出したのは、思わず漏れた感嘆の声だけである。
けれどもそれを聞いて、男の子のほうもこちらを見た。なんだかひどく驚いたような顔をしていたので、ベイメリアは瞬きをする。
「あの、貴方さまも、桜に誘われて、こちらにいらしていたのでございますか?」
なんて。にっこり微笑みを浮かべると、男の子のほうははっとしたように、
「……ああ」
とだけ、答えた。
実のところ彼、シチカはベイメリアに一瞬で見とれていて、
もう、今まで美しいと思っていた海よりももっと。ずっと美しいものを見た気持ちになっていた。
(なんだろうこの感じ……。凄くドキドキする……)
と。喉元まで出かかった声を抑えたのは、シチカも同じだったのである。なので、
「もしよろしければ、わたくしと、ご一緒していただけませんか」
そういって、微笑んで手を伸ばしたベイメリアに、
「うん、俺で良かったら……」
シチカはそう言って、頷くだけで精いっぱいだったという。
それから二人は、海に入って
水を掛け合って遊んだり、魚とともにもぐったり。
様々なことをして楽しんだ。
帰る時刻まで目いっぱい遊んだころには、緊張もすっかりほどけていて。
そろそろ着替えないといけませんわね。なんてベイメリアが声を上げて。海に上がって着替えてから後。それから、ふと……、
「そういえば、名乗っておりませんでしたね、お互い」
これだけ遊んだというのに、互いの名前も知らないことに気が付いて、ベイメリアは思わず笑った。
「そういえば……そうだったかもしれない。俺はシチカ」
「まあ……シチカさまと仰るのでございますね」
まったく今になるまで忘れていたというシチカに、ベイメリアはくすくすと笑う。シチカとしても、己の名を呼ばれるとほんの少しくすぐったいので、
「貴女の名は?」
代わりに、そう問うた。
「わたくしは、ベイメリアと申します」
「ベイメリアさん」
「はい」
名を呼ばれるととても嬉しそうだったので、シチカも何だか、嬉しくなった。
夕日が太陽に反射して輝いている。
「このご縁に、感謝を……」
浜辺で海を眺めながら、祈るベイメリアの横顔をシチカはそっと見つめた。
その横顔は、やっぱりきれいで、
それが、二人の出会いの日であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラビ・リンクス
ロキ25190と
急に落っこちて何が何やら
ロキの首元に全力で絡み
塩辛さに目を回す
…死んでたァ
役に立たないまま助けられた後は耳だけ起こして
悪ィ、首大丈夫だった?折れてねェ?
思わず首輪掴んだかも、とあやふやな記憶のままゴメンして
今度こそ甘いか警戒しながらジュースやスープを飲んで生き返る
お土産、帰って皆で食べられるヤツがいいかなァ
土産と言いつつ、氷菓など見つけては買い食いに走りながら
元気を取り戻したらフラフラコックの後を追う
途中あまりの道のりに後悔しつつ
思ったより遠出過ぎたわ…
何かー色々ー疲れたァー
周囲を真似て大の字に寝転び
こもりうたってどんなの?
聞きたい。
微睡ながら耳をそっと嵐の後の静けさに揺らす
ロキ・バロックヒート
ラビくん(f20888)と
うわ船が消えた!?
これには流石にびっくり
ラビくんだいじょ…あっ、ちょっと待ってその引っ付き方は泳げないかも
しかも気絶してる??
いやーこれはほんとに遭難かな?あはは
なんて思ってたら海賊に助けてもらっちゃった
ありがとありがと
ラビくーん生きてる?って頬ぺちぺちして
やっと陸地に着いたよ生きてるよ
むしろ首輪でセーフだった気が
甘いジュースとか船酔いに良さそうなスープでももらって
お土産物はどんなのがあるかな
日持ちするお菓子にしよか
疲れちゃったし花畑でのんびり
うたた寝してるラビくん撫でて
子守歌でも歌ってあげようか?
きっと聞いたことない古い調子の穏やかなうた
俺様もちょっと寝ちゃおうかな
「!! ……!!!!!」
足場が、消えた。
ラビは、悲鳴を上げた。否、上げようとした。
しかしもはや言葉にならなかった。
「うわ船が消えた!?」
さすがのロキも、それには驚いているようだった。
驚きながらもそこには余裕があった。
ラビは無我夢中で手を伸ばした。何がなんやらわからなかったが、頼るべきものだけは忘れていなかったようで……、
次の瞬間。塩辛さに包まれて、ラビは意識を手放した。
一方、ロキは冷静であった。驚きながらもすべきことは分かっていたのである。
「ラビくんだいじょ……あっ、ちょっと待ってその引っ付き方は泳げないかも」
だが……。
「しかも気絶してる??」
すべきことは理解していても、することができなければどうしようもなかった。
ギリギリと抱き着いて、締め上げてくるラビを振りほどいてさらに引っ付構えて泳ぐのは相当の難度を必要とする。
「いやーこれはほんとに遭難かな? あはは。死因・ラビくんとか。ラビくんがきいたら落ち込むだろうなー」
結果、ぶくぶくぶく、と沈むことになる。
なんとか全力で浮上だけはしてみるが、それ以上のことはできない。
そしてそんな状態でも、ロキは呑気なものであった。そして、ラビを見捨てるという選択肢は全くかけらもなかったのである。
さて。どうしたものかなー。なんて、のんびり彼が考えていた、ところに、
「おーい。だいじょうぶかー!」
二人を船が迎えに来た。海賊たちの船であった。
「わ。こっちこっち。大丈夫じゃないー。ありがとありがと」
やっぱり日ごろの行いがいいから、助けは来るものだねえ。なんて、ロキは声を張り上げるのであったお。
その後。
「ラビくーん生きてる?」
浜辺に打ち上げられた人のように浜辺に転がるラビを、ロキは頬っぺたぺちぺちして声をかける。
「………死んでたァ」
「いやいやいや。やっと陸地に着いたよ生きてるよ」
目を開けたラビは、しゅーん。としていた。耳だけ起こして、役に立たなかった……。なんて、ものすごくわかりやすく落ち込んでいる。
「まあまあ。ラビくんが生きているだけで、俺様はよかったよ」
「……悪ィ、首大丈夫だった? 折れてねェ? 思わず首輪掴んだかも……」
生きている、という言葉に思い出す。そういえばラビは沈むとき、思い切り首輪を掴んでいたような気がする。
自分が死ぬのは仕方がないが、ロキまで道連れにしようとしてしまった。
その事実が、ラビの気持ちを重くした。
「……ゴメン」
「あ、いやいやいや。むしろ首輪でセーフだった気が。それに、親切な海賊に助けてもらったし」
ほらほら、とロキは起き上がったラビの背中を励ますように叩く。
「ん……」
「ほら、このジュース船酔いにいいんだって」
「貰うぅー」
若干、ちゃんと甘いか警戒しながらもラビはロキが差し出したジュースを頂く。
甘くてさわやかな味がして、生き返ったばかりのラビにはなんだか心地よかった。さらに生き返ったような気がした。
「美味しー。アリガト」
「どういたしまして。……さて、お土産物はどんなのがあるかな。日持ちするお菓子にしよか」
「!」
お土産。ロキが言った瞬間に、ぱああっ。とラビの表情がわかりやすく輝いたので、ロキは思わず笑った。
「そうだな、そうだな。お土産、帰って皆で食べられるヤツがいいかなァ」
行こう、見に行こう。と、立ち上がってさっさとロキの手を引くラビに、ロキは面白そうに笑いながらも、はいはい。と後に続いた。
「お、これもうまそうだなァ。……あぁ、これも」
「ラビくん、さっきから見てたんだけど、それ、お土産には無理だよね?」
「あァ。これはこれから、お前と二人で食べる」
「あ、うん。そりゃどうも」
お土産と言いながらも、凍らせた果汁やおいしそうなジュースなんかにもあれこれ手を出していくラビ。
そして……。
「何だヨあれ、なんなんだよ」
「もー。何があるのかついていきたいって言ったのはラビくんじゃないか」
「思ったより遠出過ぎたわ……。疲れたわ……。今、後悔してるわァ……」
とか、コックの後を追いかけながらもグダグダ言うラビと。
「ほら、もうちょっとそうだよ、頑張って」
それを楽しげに励ますロキ。
買い込んだお菓子を食べて、ああだこうだ言いながら歩いて歩いて。たどり着いたのは、一面に黄色い花が咲き乱れるタンポポ畑であった。
「あー。何かー色々ー疲れたァー」
みんなが思い思いに転がって楽しんでいたので、ラビもごろり。とその場に大の字になって転がった。
「うんうん。さすがにちょっと、疲れちゃったね」
その隣に、ロキも腰を下ろす。おろしたと思ったら、ラビはもううとうととしていた。さすがに振り回されて疲れたのだろうと、ロキも苦笑する。
「子守歌でも歌ってあげようか?」
ラビの髪を撫でながら、ロキが塔。ラビは撃とうとしたまま、んー。って、頷いた。
「こもりうたってどんなの? 聞きたい」
「そうだねえ。きっと聞いたことない古い調子の穏やかなうただよ……」
そういって、ロキはそっと歌を歌う。穏やかな表情で、穏やかな歌を。
ラビはそれを夢見心地で聞きながら。ゆっくりゆっくり、耳を揺らせてそっと微睡み目を閉じた。
「あ、寝ちゃった? ……俺様もちょっと寝ちゃおうかな」
穏やかに聞こえる寝息に、のんびりとロキも目を閉じる。
いつしか歌はやみ、穏やかな風の声が二人を包んでいた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
【壁】
最後の花見は慌ただしい中だったからゆっくり花見を楽しみたい
島民に島独特の料理を何点か頼んで広場に持っていく
栴さんが持ってきた飲み物で体の、
花に囲まれて落ち着いて心の疲れが癒える気がするよ
ほんと、菊花さんの着物と同じ配色
この広場の精みたい、なんてね
黒竜さんも貴船さんもお疲れさま
何か食べたいものある?
がっつくなんて元気でいいね
貴船さんはどこに差し出せばいいかな?
鳥獣戯画さんの質問攻めにはマメに答えるつもり
ただ酔っていたときの話は避けて…ってそこに興味があるのか
困ったな、再現できるほど覚えてないよ
自分のことは言いにくそうな相馬さんを謙虚だねと笑い
コックにかかった精神的圧力を軽減してた活躍を話す
八重垣・菊花
【壁】
貴船もずっと袖ん中やったからな、外は気持ちええやろ?
肩に乗せたまま朝市で美味しそうな食べ物をゲットや!ん?なんや相馬くんとお揃いやなぁ(肩に乗った互いのを見て笑う)
レッツ!お花見やでー!桜とたんぽぽ、ピンクと黄色、うちの着物みたいやなぁ、春らして好きやわぁ。
サンディさんと生浦さんは何食べよとしてるん?またあの貝…あ、普通やった、美味しそうやねぇ!
貴船は触手んとこにご飯あげると器用に食べるんよ
カメラは外見はレトロやけどデジタルやで!
団長さんはまた迷子やったん?しゃーないなぁ、うちが手ぇ握っとったるよ?そりゃあもう、皆優しくてええ人らやよ!
相馬くん、相馬くーん?ぼんやりして、酔うてしもた?
生浦・栴
【壁】
のんびりしたいし朝市での仕入れは賛成だ
UCと鍵を連動して開けて置く。保冷で構わぬならいくら入れても構わぬよ
飲料はフルーツジュースやココナツか
瓶等で纏めて買って持参しよう
団長は流石に元気か。泳いで来たとかは無いよな?
花見の広場に着けば鍵から食料を取り出す
購入品の他、夜明け間際で余りそうだった菊のの料理など
貴船や黒竜も、腹を減らしてないか?…と、ノックスのはマメだな
トンチキとは、此う云うものか?(最後の貝を手渡し
皆が余さず話しておるので俺は適度に喰う方に回ろう
ほぼ冷やかしていただけだしなあ
然う云えば菊の、お主のカメラはフィルムか?デジタルとか云う物か?
厨房でも撮っておけば良かったな
鬼桐・相馬
【壁】
2、3日位なら徹夜でも問題ない。宴に混ざれず不服そうな黒竜を肩にへばりつかせたまま露店で酒と食料調達。お揃いと笑む菊花の頭をぽんぽんする。
密かに栴のUCに吸い込ませた刺身の盛り合わせも皆で食べよう。
冷えて丁度いい塩梅だ。
団長は遅かったな、何処で迷子になっていた?
栴の俊敏なオウムガイ捕獲、酔ったサンディの豹変ぶり、菊花の見事な料理・給仕を報告。
俺?…焼き料理とコック救助を。
ん、栴は僅かに団長より背が高いのか。サンディ、こいつがっつくから指噛まれないようにな。
桜の花吹雪にふと自身が嗜虐の鬼に成り果てた錯覚に陥るが、視界が再び開けた時には先刻と変わりない宴が続いている。
大丈夫だ。何でも、ない。
桜田・鳥獣戯画
【壁】
皆の仕事を見届けに来た というのは建前で本当は皆と桜を見たくてな。邪魔するぞ!
遅刻の理由? 桜に惑ってしまってな…
まあ朝市での荷物持ちと駆けつけ三杯で許せ!
此度は皆が主役だ、私は聞きに回りたい!
菊花、この兄貴達とは仲良くなったか?(手を握り返す)
サンディ、どうやら酔っ払う場面があったようだが詳しく。ああ再現でも構わんぞ?
鬼桐、首尾はどうだった?(酒を継ぎ)ほう、自分の話はせんのか。では他の者に聞くぞー?
で、栴は今回はどんなトンチキ魔法を使ったのだ?
菊花お前さんもう鬼桐とそんなに親しいのか! いいなー!
私もいずれ下の名で呼んでしまおう!
皆、さすがに疲れておるか。戻ったらゆっくり休もう。
最後の花見は慌ただしい中だったからゆっくり花見を楽しみたい。と、いいだしたのはサンディだった。
「そのためには食べ物だよね。独特な料理って何だろう……」
豚の足の揚げ物だったり、マンゴーっぽい木の実が使われた焼きそば風の麺類だったり。その辺の家を訪れて事情を説明すると、山のように食べ物を渡されたので、サンディはそれを抱えながら移動する。
「ノックスの。こっちだ、こっち」
「ああ。ありがとう。助かるよ」
栴が鍵を開けてそれを収納していく。
「貴船もずっと袖ん中やったからな、外は気持ちええやろ? ほらほら一緒に朝市で美味しそうな食べ物をゲットや!」
菊花もご機嫌で、しまっていた貴船を肩に乗せたまま歩き出す。共に行く相馬もまた宴に混ざれず不服そうな黒竜を肩にへばりつかせたまま、露天で酒と食料を調達していると、
「ん? なんや相馬くんとお揃いやなぁ」
お互い肩に乗せている。と菊花が笑いかけるので、
「……そうだな」
小さく頷いて、相馬は菊花の頭を軽くぽんぽんと撫でた。
あれやこれやと買い物して、あとは……と、お互い飲み物やら、食べ物やらを買い込んで、仲間たちとも合流して、本日の宴会会場に向かうのであった。
「……ん?」
あった。とか思いながら、栴は首を傾げる。
何か一人、増えている気がする。まあ、いうまでもないんだけれども。
「ふ……っ。私は遅れてくる女。待たせたな、諸君!!」
いつの間にか混ざっていた桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)がかっこいいポーズをとった。
「皆の仕事を見届けに来た というのは建前で本当は皆と桜を見たくてな。邪魔するぞ!」
「特に待ってはないけど、鳥獣戯画さん、座るならこっちでお願いします」
サンディが冷静にお花見シートの位置を指定する。
「うふふ、レッツ! お花見やでー!」
ほらほら座ってー。と、菊花もご機嫌であった。
「桜とたんぽぽ、ピンクと黄色、うちの着物みたいやなぁ、春らして好きやわぁ」
「ほんと、菊花さんの着物と同じ配色。この広場の精みたいだね」
「も、も~~~。そんな、まじめな顔して言われたら照れるわあ」
ばしばしばし。とサンディの背中をたたく菊花。隣で栴が呆れたような顔で食事とジュースを取り出した。ジュースは主に島の果実を絞ったものがいくつも出て、それを瓶に入れて鍵を使いしまっていたのである。保冷もばっちりだ。
「ほれほれ。早く飲み物をとるのだ。皆大丈夫か、疲れてないか? ……と、おや、これは……」
「ああ。2、3日位なら徹夜でも問題ない」
そういうのは相馬であった。こっそり栴の荷物に忍ばせていた酒と刺身を取り出して、相馬も並べる。
「うちは平気よ。まだまだ元気や。騒ぐで。騒ぐでー!」
ふんす。と両手で拳を固める菊花。その様子にサンディが肩をすくめる。
「疲れてないとは言い切れないけど、花に囲まれて落ち着いて心の疲れが癒える気がするよ」
「ふむ。皆、もうしばらくは大丈夫そうといったところか……うん……?」
「くっ。なんだかみんなが遠くに見えるようなそうでもないような。これが激しい戦いを共に乗り越えた仲間とそうではない私との違いというものか……っ」
「いや、激しい戦いは全くくり広げていないが」
「うむ。団長は流石に元気か。泳いで来たとかは無いよな?」
なんだか衝撃を受ける鳥獣戯画に、まじめに相馬が返して。それで栴は肩をすくめてそう問う。問いながらジュースやお酒をいきわたらせ、菊花の最後のほうに作られて残った料理まで並べて他の料理も食べやすいように持ったりとなかなかにかいがいしい。そういえば、と相馬も頷く。
「団長は遅かったな、何処で迷子になっていた?」
「ええっ。団長さんはまた迷子やったん? しゃーないなぁ、うちが手ぇ握っとったるよ?」
「また? またって?」
「うんうん。聞きたい? 聞きたいよなあ」
相馬の言葉に今度は菊花がのっかって。興味を示したサンディに、菊花がにっこり笑ったりしている。
言いながらも鳥獣戯画のほうに手を差し出された菊花に、鳥獣戯画もそれを握り返しながら、
「菊花、この兄貴達とは仲良くなったか?」
「そりゃあもう、皆優しくてええ人らやよ!」
「それはよかった! 遅刻の理由? 桜に惑ってしまってな……まあ朝市での荷物持ちと駆けつけ三杯で許せ!」
「もう荷物運びは終わったるがの」
「そうやそうやー!」
「此度は皆が主役だ、私は聞きに回りたい!」
強引に終わらせた。そういって腰に手を当ててなぜか胸を張る鳥獣戯画である。
「聞きたい……聞きたいか。そうだな……」
そういわれると、うーん。と相馬がしばし考えこむ。
「栴の俊敏なオウムガイ捕獲、酔ったサンディの豹変ぶり、菊花の見事な料理・給仕……」
「ほう。まずは片っ端から詳しく」
「それは……」
ぽつりぽつりと端的に言う相馬に、鳥獣戯画が食いついていくので、サンディが丁寧に一つずつ解説していく。
なお、自分が酔ったときの話は曖昧に避けたのも愛嬌である。
愛嬌ではあるが……、
「サンディ、その酔っ払う場面を詳しく。ああ再現でも構わんぞ?」
あっさり突っ込まれた。
「わざわざ避けてたのに、てそこに興味があるのか」
「勿論だ。こんな面白そうなネタ、突っ込まずになんとする!」
「困ったな、再現できるほど覚えてないよ」
えーっと。と、サンディは視線をそらせる。……それから、
「そういえば相馬さん、自分のこと、話してないよね。謙虚だね」
「おお、そうなのか? 鬼桐。首尾はどうだった?」
さ、と鳥獣戯画はそれを察したのか切り上げて、相馬のほうにも酒を注ぐ。
「俺? 俺か……」
若干言いづらそうな雰囲気の相馬に、鳥獣戯画がふんふん、と、笑った。
「ほう、自分の話はせんのか。では他の者に聞くぞー?」
「……焼き料理とコック救助を」
「そうそう。コックにかかった精神的圧力を軽減したりして、活躍してたんだよね」
話をつけ足して、サンディは笑う。なるほどなるほど、と鳥獣戯画も楽し気に声を上げた。それから……、
「で、栴は今回はどんなトンチキ魔法を使ったのだ?」
「む。いつも俺をトンチキな魔法を使うもののように言うでない。……ところで、トンチキとは、此う云うものか?」
言いながら、ひょいと栴が出してきたのは貝だった。例のオウムガイの最後のやつである。こんがり焼いているのできっとおいしく食べられる。
「おお……!」
鳥獣戯画が嬉し気に歓声を上げた。もう一つおまけだ。と、栴が貝をサンディのほうに渡そうとすると……、
「サンディさんと生浦さんは何食べよとしてるん? またあの貝……あ、普通やった、美味しそうやねぇ!」
菊花がのぞき込んで笑った。
「あ、そういえば、黒竜さんも貴船さんもお疲れさま。何か食べたいものある?」
「貴船や黒竜も、腹を減らしてないか? …と
そのときに、菊花の肩に乗った貴船を見てサンディと栴が同時に声を上げた。ん~~~。と、菊花は少し考えこむ。
「好き嫌いはせえへんと思うんよね」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと待っててよ」
「うむうむ、ノックスのはマメだな。では頼んだ。この貝をおまけにつけよう」
なんて、栴がまた貝を取り出していると、相馬が顔を上げる。
「サンディ、こいつがっつくから指噛まれないようにな」
「はーい。がっつくなんて元気でいいね。貴船さんはどこに差し出せばいいかな?」
「ほらほら、貴船は触手んとこにご飯あげると器用に食べるんよ」
ここここ。と、示す菊花に、おお。と、若干感動するようなサンディ。
そんな彼らの様子に、ところで、と、栴は声を上げた。
「然う云えば菊の、お主のカメラはフィルムか?デジタルとか云う物か?」
「え? うん。カメラは外見はレトロやけどデジタルやで!」
「そうかそうか。厨房でも撮っておけば良かったな。あの幽霊たちが映ったかどうかはわからんが……」
惜しいことをした。なんて言う栴に、私も見たかった。と、隣で悔しそうにする鳥獣戯画。
そんな彼らを相馬は見ているようであったが、不意に眉根を寄せて黙り込む。ぼんやりとしているような。そうではないような。なんだか奇妙な沈黙があって……、
「相馬くん、相馬くーん? ぼんやりして、酔うてしもた?」
菊花が、ぶんぶんと相馬の前で手を振っていて、相馬ははっとした。
「大丈夫だ。何でも、ない」
はっとしたような声音で、相馬は我に返る。そんな相馬に、菊花はにっこりと微笑んだ。
「おっ。菊花お前さんもう鬼桐とそんなに親しいのか! いいなー!」
鳥獣戯画が軽くおどけるような声を上げる。
「私もいずれ下の名で呼んでしまおう!」
と、胸を張る彼女に、「もう、変なこと言わんといて~」なんて、菊花もからからと笑った。
ひとしきり笑った後で、鳥獣戯画は顔を上げる。
「はは。皆、さすがに疲れておるか。戻ったらゆっくり休もう」
帰っておいで~。なんて冗談めかして彼女が両手を広げるので、
「はーい。ただいまーっ」
なんて、冗談めかして菊花も声を上げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【⚓】
アドリブ◎
は~飲んだ飲んだ
普段は殆ど酔うこともないから
余計に飲んだ気分になるな
満足そうな顔でタンポポ畑に寝転がる
朝露が冷たくて気持ちがいいな
このままごろんと転がって酔いざましだ
今まで酔ったこともねぇだろ
心配するガイにニカっと返す
何だ、まだ酔ってるって言やぁ甘やかしてくれんのか?
大きな手を笑いながら受け入れて
シェフィーにはあんな大人の対応なのに俺は子供扱いか
さらに笑ってごろんと回転
流石ガイ、大正解♡
んな事言うと全力であまえるぞ
ガイの言葉を疑う理由なんざひとつもねぇ
なら…次に起きたらきっとそこは俺たちの船《家》だ
すやりそのまま目を閉じる
海のような広い背中と鼓動が心地よくて
いくらでも寝れそうだ
ガイ・アンカー
【⚓】
アドリブ◎
帰る前に休憩だ休憩
たんぽぽ畑に座り
村で買った煙草に火を点けて一服しつつ
転がるアリエに苦笑
酔いが回っちまうぞー
昨日は珍しく出来上がってただろうがと呆れの半目
ま、今は心配いらなそうだな
アリエからの問いにはわしゃわしゃと髪を掻き回すように撫でる
甘えてえならそう言いな
なに、お前は甘えてえように見えたからよ
当然だろ、と今度は軽く撫でる
おー。そうしな
なんなら俺が連れて帰ってやる…って、もう寝てんのか
一日中遊んだ子供のような寝顔に苦笑い
煙草を吸い終わるまで桜とたんぽぽと寝顔を眺めてようか
で、こいつが風邪引く前におぶって帰ろう
俺達の船《家》に
…あー
背中に乗る全体重と体温に思わず笑みを溢す
重てえ
「は~飲んだ飲んだー……」
ごろりと、アリエはタンポポ畑に転がった。満足げな表情で、んー。と、大の字になる。
青い空の中に、白い雲が流れて行く。揺れない陸地はそれだけで、なんだか不思議な気持ちになった。
「朝露が冷たくて気持ちがいいなー」
ごろごろん。と、その場所に転がって酔い醒まし。
「あー。お疲れさん。帰る前に休憩だ休憩」
隣にガイも腰を下ろして、村で買った煙草に火をつけてふーっと煙を吐き出した。
「そうそう。休憩は大事だぜー」
普段は殆ど酔うこともないから、余計に飲んだ気分になる。ゆえにどこかご機嫌で転がっていたアリエに、ガイは苦笑する。
「酔いが回っちまうぞー」
「なぁに。今まで酔ったこともねぇだろ」
大げさだなあ。なんて。心配するガイにアリエはニカっと笑って返す。そうするとますますガイは呆れたようになって、半眼でじとりとアリエを見た。
「昨日は珍しく出来上がってただろうが。まさか、忘れたとは言わねぇだろうな?」
「ははは。忘れてはねぇけどさ。そーゆーのは」
よいしょ。と。何かを右から左へ置く仕草をアリエはした。
「こうだ!」
「こうだ、じゃねえ。……でも、ま、今は心配いらなそうだな」
やれやれ、と、けらけら笑うアリエを見下ろして、ガイは肩をすくめる。
ので、アリエはふーん? と、面白そうに問いかけた。
「何だ、まだ酔ってるって言やぁ甘やかしてくれんのか?」
「……ふん」
「わー」
わしゃわしゃ。
アリエの問いにガイはアリエの髪の毛を掻き回すように撫でる。アリエは笑ってそれを受け入れて、
「甘えてえならそう言いな」
なんて言う、ガイの言葉を聞いていた。
「シェフィーにはあんな大人の対応なのに俺は子供扱いか」
「なに、お前は甘えてえように見えたからよ」
「ふっ」
あっさり言われた言葉に、さらにアリエは一回転してガイと背中合わせになり、
「流石ガイ、大正解♡」
ビシッ。と親指を立てるので、
「当然だろ」
と、ガイは今度はアリエの髪を軽く撫でるのであった。
「んな事言うと全力であまえるぞー」
撫でられるのが心地よくて、ふんふんと鼻歌でも歌いながらアリエはそんなことを言う。
「おー。そうしな」
対するガイもまた、やれやれやるがいい。なんて歌うように言う。
「いっくらでも、甘えりゃいい。そんなことで、俺は手を離したりなんてしねぇよ」
「そーかそーか。いや、わかってら。ガイの言葉を疑う理由なんざひとつもねぇ……。なら……次に起きたらきっとそこは俺たちの船《家》だ……」
「あん? あー……。そうだな。なんなら俺が連れて帰ってやる……って」
「……」
「もう寝てんのか」
ちょっとガイが空を見上げたりなんかした隙に、
アリエは目を閉じそのまますぅっと眠りに落ちていた。
海のような広い背中と鼓動が心地よくて、いくらでも寝れそうだ。なんて、
思っていたけれども、口に出すような暇もないくらい、あっという間の心地よい眠りであった。
「……やれやれ。本当に、まるで子供だな」
そんなアリエの寝顔に、ガイはほんの少し苦笑いをする。
そうして己の煙草に、ちらりと目をやった。……まだ、ずいぶんと残っていそうで。
「……」
アリエガ寝てしまえば、語ることもない。
煙草を吸い終わるまで桜とたんぽぽと寝顔を眺めてようか。
(で……、こいつが風邪引く前におぶって帰ろう。俺達の船《家》に……)
なんて。そんなことを考えて、ガイは苦笑する。
ずいぶんと、甘ったるい考え方だ。
けれども、ガイはそれが嫌いではなかった。
そもそも、甘えられているのだから、甘いのは当たり前か……なんて、とりとめのないことを考えていたところで、
「……」
「!」
アリエが身じろぎをして、背中が揺れる。
「……あー」
ガイは、思わず笑った。
「重てえ……」
背中に乗る全体重は、きっと信頼の重さだろう。
その体温に思わずガイは笑みをこぼして、
「ま、それぐらい幾らでも、背負ってやるか……」
なんて、くゆる紫煙を見つめて呟くのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルベル・ノウフィル
【金平糖2号】緋雨殿と
緋雨殿は泳げないと聞きました
ならば今日は僕が教えてあげましょう
(白狼姿で犬かきをする)ふふん、いかがです?僕の洗練された犬かきは
って、何故水に入らないのです?それでは練習になりません
それにしてもおさかなのきもちって
お子様…
(諦めて人型に戻り陸へ)
運動してお腹が空きましたし、浜辺でBBQをしましょう
お肉と野菜と飲み物はお店で買って、お魚と貝が穫れましたよ
火精霊さんに頼んで焼いて…カニが歩いていますが、あれは食べられるのでしょうか?
僕はとても気になるのです
浜辺を掘ると貝が増える?砂の中にいるのですね、何を隠そう僕はトンネル掘りが得意でございます
ここ掘れわんわんでございますよ
天翳・緋雨
【金平糖2号】ルベル君と
えぇぇぇ?
泳ぐの?
いやほんとにね、およげるよ!?
一緒に水中戦を繰り広げたよね?(注:泳いではいない)
その目は疑ってるね?
よし本気をお見せしましょう!
(注:「演技」による自己暗示)
ぼくわおさかなだからおみずこわくないばっちりおよげるだいじょうぶしずまない!
(急にキリッとして)
さあ、颯爽と!
(水面を高速で助走してからのダイブ)
いくよ! ゴボッ、ガゴグゴボボボッ……………………。
(長い沈黙を破り)
只今の記録、12メートルで…… お願 い します……
じゃあ、泳ぎも終えたし!!
のんびりしよっか!
え?蟹さん?
うん、きっと食べれる
調理法はね…
(スマホで検索)
よし、カニ鍋だね!
ルベルが言った。
「緋雨殿は泳げないと聞きました。ならば今日は僕が教えてあげましょう」
緋雨にとっては、非常なる言葉であった。
「えぇぇぇ? 泳ぐの? なんで? こんなに桜! 満開! なのに。泳ぐのとかもったいなくない?」
緋雨は、抵抗した!
「でも、泳げないのでしょう? 先ほどのように海に投げ出された時に、困りますよ」
「いや、あれは急なことでびっくりしただけだし……。いやほんとにね、およげるよ!? 一緒に水中戦を繰り広げたよね??」
「……」
そうだっただろうか。
ルベルは胡乱気な表情を緋雨へと向ける。
あれは泳ぐというより、むしろ海の上を飛んでいったという方が正しいのではないか。
「その目は疑ってるね? よ、よし本気をお見せしましょう!」
何を言っているんだ。とでも言いたげな雰囲気を感じ取ったのだろう。
どん、と緋雨は己の胸を叩いた。
「……ほう」
本当に? と、言いたげなルベルの問いかけに、本当さ! と緋雨は自信満々だったので……、
「では、行きましょう。楽しみですね」
なんて言って、ルベルは白い狼の姿へと変身すると、そのまま海へと飛び込んだ。
ざぶざぶざぶ。
水温はちょうど心地よくて、泳ぐ感覚が楽しい。
ルベルは犬かきでぐるぐるとその辺を回ってみせる。
「ふふん、いかがです? 僕の洗練された犬かきは」
得意げにわふわふと鼻を鳴らすと、肝心の緋雨はというと、砂浜で立ちすくんでいた。
「って、何故水に入らないのです? それでは練習になりません。いえ。そもそも泳げる、でしたっけ?」
怪訝そうに、ルベルは沖のほうに近寄っていく。緋雨は真っ青な顔で、
「ぼくわおさかなだからおみずこわくないばっちりおよげるだいじょうぶしずまない! だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ……」
あ、これダメな奴だ。
と、ルベルは察した。
緋雨は真剣である。必死におさかなの演技をすることによりおさかなになって海を泳げると自己暗示をかけているのである。
言いたいことはルベルにもわかる。やりたいこともルベルにもわかる。
「それにしてもおさかなのきもちって……」
お子様……。と、いいたいのを堪えて、ルベルは緋雨を見守った。そもそも魚とは人体(?)構造が違うのだから、同じように行くわけがないだろうと思うのだが、そこを突っ込むとまたややこしくなるに違いない。と、ルベルは判断する。そうこうしている間に緋雨は顔を上げ、なぜかきりっとさわやかな笑顔を見せた。
「さあ、颯爽と!」
だっだっだっだっだ。と、砂浜から走りこんでくる緋雨。
そのまま水面を、最初の時と同じようにジャンプを繰り返し走る緋雨。
「サード・アイ起動……。予測演算開始……!」
第三の瞳開放で短距離転移モードを発動してまでルベルのま隣ぐらいまで高速で走ってくる緋雨。
そして……!
「いくよ!!!」
緋雨は、空を飛んだ。
魚は、空を飛ぶものだろうかと。ルベルは思った。
思った瞬間、緋雨は水面へと突入した。
「ゴボッ、ガゴグゴボボボッ……………………」
突入した反動で、急激に緋雨の身体は水面へと降りていく。……というか、落ちていくというか。
ルベルはしばし待った。
しかし、緋雨は上がってこなかった。
「……深海魚の演技をしてるのでしょうか。……いや、そんなわけありませんよね」
しょうがないので、ルベルは緋雨の後を追うように水の中へ潜っていく。
再び水面に顔を出した時、ルベルは緋雨の首根っこをくわえていた。
「…………只今の記録、12メートルで…… お願 い します……」
水面から引き揚げられた緋雨は、長い沈黙の末にそう言った。
それは、水面を飛んでいった長さを含んでいるのではないか。というか、ほぼすべてそうなのではないかと。ルベルは思い……、
「……まあ、そういうことに、しておきましょう」
思案の結果、ルベルはそういうのであった。
人間とは、時に優しさとウソが必要なものなのだ。
「ふふ。やり切ったね……」
その言葉に、緋雨はとてもいい笑顔をしていたので、まあ、間違った選択では、なかったのだろう。
「じゃあ、泳ぎも終えたし!! のんびりしよっか!」
そして、泳ぎも終わったとなったら早速緋雨は沖でご機嫌に主張していた。先ほどまでの雰囲気はどこへやら。諦めて人型に戻ったルベルはうーん。と考えこむ。
「運動してお腹が空きましたし、浜辺でBBQをしましょう。さっき合間にお魚と貝が穫れましたから、お肉と野菜と飲み物はお店で買っていきましょう」
「お、いいねいいね!! じゃあ、ボクがお肉買ってこようか!」
「はい、野菜もお願いしま……」
す。と、言いかけたところで、ルベルは不意に言葉を閉ざした。
「なになに?」
その様子に、不思議そうに緋雨がルベルの顔を覗き込む。
「……カニが歩いていますが、あれは食べられるのでしょうか?」
覗き込まれて、ルベルは指をさした。丁度砂の中にいい感じのカニが潜っていくところであった。
「え? 蟹さん? うん、きっと食べれる……」
食べよう食べよう。と言いながらも、いわれて緋雨はスマホを取り出した。
「ちょっと待って、調理法はね……」
「ええ。待ちます。待ちますとも。けれども僕はとても気になるのです。浜辺を掘ると貝が増える? 砂の中にいるのですね、何を隠そう僕はトンネル掘りが得意でございます」
もうめっちゃ掘りたい。って顔を、ルベルはしていた。目が輝いていた。今にも飛び出しそうであった。というか飛び出していた。
「見つかったからには観念なさい。ここ掘れわんわんでございますよ」
さっさとカニがいたあたりに飛び込んで、わふわふ穴を掘る。逃げたカニを引っ張り出すころには、
「よし、カニ鍋だね!」
緋雨の検索も終わっていた。さわやかな笑顔で鍋を主張する緋雨に、
「了解しました。火精霊さんに頼んで火を起こしてもらいましょう。鍋ができるくらいたくさん掘りますよ……!」
ルベルはめっちゃやる気で、次のカニを探し始めた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大紋・狩人
【仄か】
ねえ、ラピタ。
蒲公英畑と海辺、どっちが先がいい?
僕どっちも行きたい。
すあしで海辺を歩いてみたくて。
いいの?
感触気持ちよさそうだ。
僕も先。嬉しいな。
(靴を片手、手を繋ぐ)
外を裸足で歩くの初めてなんだ。
あはは、さらさらで
思ってた以上にちくちく、くすぐったい。
僕も今日、靴はお休み。
同じものに沢山ふれたい。
(ドレスをからげ、波に遊ぶ)
はしたないけど、いっか。
冷たくて気持ちいい。
あー……砲弾割りの時はその、あっ恥ずかしいな?
僕も夢心地だった。
楽しい酔いっていいよな。
ラピタ。
飲める年になったら二人でお酒飲もう。
また一緒にはしゃごうよ。
ああ、約束な。
(海の宝石を陽へ透かして
眩しげ)
宝物が増えたなあ。
ラピタ・カンパネルラ
【仄か】
カロンは、
楽しみは、後にとっておくタイプ?
僕は、先に、味わいたい派
砂を素足で味わうカロンが、今とても楽しみになった。
砂の感触さらさらだったよ!
ふふふ、そうなんだよ
素足だと、いろんなものがチクチク、ガサガサするのが、嬉しくて
靴はくの、いつも忘れちゃう
(さらさら、砂を掴み、蹴り上げ、感触を遊ぶ)
ね、冷たい
一日中、夢みたいにふわふわあたたかかったから
カロンも楽しそうで、あの感じ、好きだった。
あの状態の方が、僕らはしたなかったかもしれないけど。
ふふ!
うん、飲もうね
じゃあこれが約束。
(砂の中に、反射して光ったシーグラスを拾って、互いの手の中へ)
(なにか綺麗なものが見えたから、拾っただけだけど!)
海の音がする。推しては返す波の音。そして塩の匂い。
「ねえ、ラピタ。蒲公英畑と海辺、どっちが先がいい?」
狩人が穏やかに問う。問うてから、僕どっちも行きたい。と、いったので、
「カロンは、楽しみは、後にとっておくタイプ? ちなみに僕は、先に、味わいたい派」
なんて尋ねて、ラピタは微笑んだ。うーん。と狩人は考え込む。
「僕も先。嬉しいな。……じゃあ……そうだね。今は、すあしで海辺を歩いてみたい、かも」
一番にしたいこと。を、狩人が考えて口に出す。するとラピタが、
「じゃあ、海にしよう。砂を素足で味わうカロンが、今とても楽しみになった」
なんて楽しそうに言うので、いいの? と狩人が一度問うと、
「砂の感触さらさらだったよ!」
と、そういうなぜか得意げな返答が返ってきた。
「さらっさら」
「そう、さらっさら」
ラピタの表現に、
「それは……感触、気持ちよさそうだ」
そういって、狩人も笑って頷いた。それに、ラピタはなぜか得意げに胸を張る。
「ふふふ、そうなんだよ。素足だと、いろんなものがチクチク、ガサガサするのが、嬉しくて、靴はくの、いつも忘れちゃう」
すっごく楽しいんだ。って、ご機嫌で言う様に、でも忘れちゃうのは大丈夫なんだろうか。って、狩人はちょっとだけ心配をしながら靴を脱ぐ。
「じゃあ、僕も今日、靴はお休み。実は、外を裸足で歩くの初めてなんだ。不思議な感じがするな」
脱いだ靴を片手で持って、もう片方の手で狩人はラピタの手を引いた。
ラピタもはだしでさらさらと。二人そうして、砂浜を歩く。同じものに沢山ふれたい。そんな気持ちで狩人はその道を行く。
「あはは、さらさらで、思ってた以上にちくちく、くすぐったい」
「うんうん。わかってくれる?」
「勿論だとも。けれども靴を履くのを忘れちゃうのは、ちょっと心配するかもしれない」
「あはは。だったら、カロンが忘れないように、僕のことを見守っていて」
何気なく言ったラピタの言葉に、わかった。と、狩人も頷く。
二人とも本当に何気なくて。
けれどもラピタは、ありがとうと言って、さらさら遊ぶように、足元の砂を軽く蹴った。その感触をしっかりと確かめるように。遊ぶように。そして、それはそれは嬉しそうであった。
いくらかそうして歩いた後で、狩人はドレスをからげて、
「はしたないけど、いっか」
と、波の中に足を入れる。
「ん……。冷たくて気持ちいい」
「ふふ。……ね、冷たい」
冷たさに目を細める狩人に、ラピタは得意げに言う。自分も音を立てて水の中に足を入れれば、ことさら水しぶきを立ててみせる。
「一日中、夢みたいにふわふわあたたかかったから、冷たいのも、たまにはいいよね」
「ああ……」
「でに、あったかいときの、カロンも楽しそうで、あの感じ、好きだった」
「あー……」
頷いていた狩人の笑みが、曖昧に固まった。
「砲弾割りの時はその、あっ恥ずかしいな?」
思い出すと、思い返すと。なんと恥ずかしいことをしていたものだと。若干顔が赤くなる。
「ふふ! あの状態の方が、僕らはしたなかったかもしれないけど……。でも、とっても楽しかったよ」
ラピタのほうはというと、ご機嫌なので、それがますますちょっと、恥ずかしくて。視線を逸らす狩人だけれども、ラピタはお構いなしに笑っているので、
「……僕も夢心地だった。楽しい酔いっていいよな」
それから一つ、一呼吸をして。意を決したように、狩人は言った。
「ラピタ。飲める年になったら二人でお酒飲もう。また一緒にはしゃごうよ。だから、それまで……」
それまで、ずっと。
「……」
ラピタは狩人の言葉に一呼吸、置いて。
「うん、飲もうね。……じゃあこれが約束」
何か、ラピタの瞳の片隅に光ったから。
ラピタはそれに向かって手を伸ばした。きらきら光る。それだけでラピタにとっては素晴らしいもの。
それはちょうど二つあって、一つを、狩人の手の中に落とす。
「これが何だか、僕にはわからないけれども、とっても綺麗に輝いていたから」
それは、海の色を映したようなシーグラスであった。
「……ああ、約束な」
狩人はそれに目を落とす、それから掲げて陽の光へとすかした。まぶし気に目を細めると、
「宝物が、増えたなあ……」
「ふふ。知っているかい。僕は宝探しが、とても得意なんだ!」
任せろ、と。
得意げにラピタが胸を張るので、思わず笑って狩人も頷いた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏑木・寥
少年(雲珠/f22865)と
またも麦わら帽on
少年の様子を煙管を吹かしながら見ている
一度も見たことないのか?海
俺はまあ、商売で色々行ってるから
根っこって……確かに帝都来てからはあんまり遠出はしてないが
少年がそういうと俺なんて船に乗って酒飲んでただけになっちまう
いいんじゃねえの、これが仕事で、これで金もらえるってなら
楽しいこともあり面倒くせぇことも辛いこともあり
…なんかおっさんの説教みてぇだな
金も入ることだし、何かお土産でも買って帰、
……なあんだ、やっぱり結構疲れてたんじゃねえか
溜息一つ
日除けの麦わら帽を相手の顔に掛けると、
適当な席に座って海を見る
帰りに煙草買って帰らないとなあ、なんて思いながら
雨野・雲珠
鏑木さんと/f22508
これが砂浜…!意味もなくダッシュして戻ってきます。
すごい。すごく砂。
白い貝に、変な模様の石。
角が削れた色硝子に、…これは胡桃?
お土産を拾い上げながら歩きます。
前に依頼で横濱に行った時、潮風を嗅いだくらいで
波打ち際は初めてです。楽しい。
鏑木さん、意外と行動範囲が広いですよね。
いつも縁側に根っこ生やしているのかと思ったら、
そうでもないという
俺、楽しく働いておいしいジュースを頂いただけで、
猟兵らしいことを何もしてない気がします…
日陰の休憩処に腰を下ろした瞬間、
無言で寝落ちします。限界でした。
朝日と共に去っていった死者たちの、
陽気なさざめきが夢まで届くかも知れません。
おー……。と、呟いて。
寥はまたもや麦わら帽子を頭に被った。
まばゆい日差しが煙草に染みる……。と、思わず煙管をくわえて海を見つめてみると、
「これが砂浜……! すごい。すごく砂! 砂です! 一面砂! 鏑木さん!」
雲珠が浜辺を超ダッシュしてぐるりとターンして戻ってくる。
全力疾走。全力で戻ってくる様に、
「……」
「どうしました、鏑木さん。ほら。砂浜ですよ、砂浜!!」
なんかきらっきらしてるので、寥は一つ頷いた。間違っても砂浜ではしゃいで遊ぶわんこみたいだなんて思ってはいない。
「一度も見たことないのか? 海」
「はいっ。前に依頼で横濱に行った時、潮風を嗅いだくらいで。波打ち際は初めてです。楽しい……楽しいです!!」
ふふん。となぜか得意げで本当にうれしそうにする雲珠に、なるほど。と寥も頷く。
「鏑木さんは? お察しするに、初めてというわけではなさそうですが」
「ん? 俺はまあ、商売で色々行ってるから」
「なるほど。鏑木さん、意外と行動範囲が広いですよね」
言っている間にも、はっ。と雲珠は何かを見つけたと思ったらしゃがみ込む。
「見てください、鏑木さん。この貝、キラキラしてますよ。それにこの捩り具合が素晴らしいですね」
「お、おお……?」
「それにこれは……色硝子? こちらは胡桃でしょうか。いろんなものが、砂浜には落ちてくるのですね」
「海を渡って、旅してんだろ。こいつらも。そういうやつらがこうして、浜辺にたどり着くんだ」
「なるほど……。鏑木さん、少し歩いていいですか。お土産を拾いますから」
「はいはい」
若いっていいなあ。と。寥は軽く欠伸をするのであった。
「それにしても、いつも縁側に根っこ生やしているのかと思ったら、そうでもないという。鏑木さんは、実はすごい人だったんですね」
「根っこって……確かに帝都来てからはあんまり遠出はしてないが。少年は俺のことを何だと思ってるんだ」
お土産を時折拾いながら、二人は歩く。雲珠は何か新しいものを見つけるたびに目を輝かせて、寥にとってはさほど大事でもないものを、大事そうに閉まっていく。そのしぐさが見ているだけでなんだか楽しい。
いろんな話をする。言った海の話とか、今回の敵の話とか。それから、
「今回の俺、楽しく働いておいしいジュースを頂いただけで、猟兵らしいことを何もしてない気がします……」
うーん。と若干肩を落としたくもたまに、ああ。と寥は瞬きをした。しばし考えこみ、今回の依頼を振り返り、
「……少年がそういうと俺なんて船に乗って酒飲んでただけになっちまう。いいんじゃねえの、これが仕事で、これで金もらえるってなら」
「これでお金をいただいてもいいのかと、悩んでいるのですよ」
「少年は真面目だなあ」
んー。って、寥は思わず笑ってしまう。
「仕事なんて楽しいこともあり面倒くせぇことも辛いこともありってもんだろ。楽しいことが続いてる間は、楽しくしてりゃいいんだよ。そのうち面倒くせぇことばっかりだったり、辛いことばっかりだったりする仕事もあるだろうからさ」
「それは……あんまり来てほしくはないですね」
寥の言葉に、雲珠は思わず笑う。寥はというと、余計なこと言った。とばかりに頭を掻いた。
「……なんかおっさんの説教みてぇだな」
「そんなことは……、あ、鏑木さん、あそこ、休憩所です。ちょっと休んでいきませんか」
「お。そうだな。ちょいとこの朝日は徹夜明けには目に染みるわ……」
雲珠が指さしたのは、よくある浜辺の休憩場所だった。いたってシンプルな、屋根とテーブル。そして椅子があるところであったが、
「あ。やっぱり少し涼しいですね」
「そーだな。一休みしたらあとは……、金も入ることだし、何かお土産でも買って帰……」
二人して席に座ると。
はたと寥は雲珠の顔を見て苦笑した。
座った瞬間に、雲珠は無言で眠っていたからだ。
「……なあんだ、やっぱり結構疲れてたんじゃねえか」
即寝落ちする雲珠の様子に、寥はため息をつく。それから日除けの麦わら帽を相手の顔に掛けると、雲珠の隣で静かに海のほうを見つめた。
寄せては返す波とともに、雲珠はどこからともなく朝日と共に去っていった死者たちの、陽気なさざめきの声を聴いた気がした。……きっとそんな、夢を見た。
そんな雲珠の傍らで、寥は煙草をくゆらせながら静かに海を見つめ続けた。
帰りに煙草買って帰らないとなあ、なんて。こちらは若干現実的なことを、思いながら……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リヒト・レーゼル
【荒屋】
美味しい物、面白い物を探そう。
海の魚、塩焼き。魚の塩焼き。
俺の世界には無くて、食べる機会がないから
塩焼きを、食べてみたいな。
どこも、美味しそうな匂いがするね。
あれも美味しそう……。
あ!あの店は塩焼きかな?
塩焼きは、辛いのに香ばしくて
でも身は柔らかい。美味しいな。
皆は、何か見つけたかな。
面白い物も、一杯ある?
海、は珍しいから
海の面白い物も、沢山見つけたい。
海賊の、お宝が流れていたらいいな。
海賊のお宝、お店に並んでいないかな。
宝の地図。この場所に行けば、宝が……。
き、気になる……。
皆の、冒険の話も、もっと聞きたい。
海賊船の上で、どんな事をしてきたのかな
聞くと、ワクワクする
次は、宝探しだね!
冴島・類
【荒屋】
ええ、豪快で楽しくて
船が消えた時は焦りました…
おや?
ジャハルさんこそ
翼も力も大活躍だったんですよ!
うん、良いね
リヒト君にあったことを話しながら
食べに行こうか
塩焼きが香ばしくて引き寄せられるなぁ…
かぶりつくと
これは「しょっぱい」の方だね
辛すぎず美味しいし
ふふ、海の味の方が素敵な表現かも
こっちは、貝や魚入った汁物みたい
エンパイアのあら汁に似てるが…
土産はきょろきょろするのが微笑ましくて
め、なんて言わないが
はぐれぬよに見守るよ
自分も漂流物に羅針盤見つけわくわく
お?宝の地図かい
なら、また皆で探しに行っても良いかも
例え何もなくとも、道のりが楽しいさ
今日あったことを話し
次、君たちと進む明日を笑って
ジャハル・アルムリフ
【荒屋】
うむ…船乗りというのは、皆ああなのだろうか
実に豪快な亡霊達であったぞと
待ち合わせたリヒトへと
いばらの蔦、それに冴島は
…、とても活躍していた
かの姿について滑らせぬよう切り上げる
飲ませるばかりで
少々喰い逸れての店巡り
先ずはリヒトの見つけた塩焼きの魚へ
…これは海の味がする、いばらも食べてみるといい
こちらの店は…はて
なんという料理か、冴島なら知っているだろうか
串焼き魚を片手に漂流物の店先眺め
地図の宝を見つけたら
持ち主は困るのだろうかと思案しつつ
並べられた錆びた古い銅貨は
海賊の落とした物やもと
様々な地から流れ着いたものらが一堂に会する様は
…我等と似ているのやも知れぬ
罅の入った
硝子の浮玉手土産に
城野・いばら
【荒屋】
あれが宴会…
皆とわいわいって楽しかった
お船が消えた時は吃驚だったけど
不思議なのよって
島で合流したリヒトにね、教えてあげたいわ
そういえば、皆お腹すいてない?
お店からの香ばしい匂いにくんくん
味、というのがよくわからないのだけど
焼魚さんはしょっぱい?甘いのかしら?
類に倣ってがぶり
しょっぱい、海の味…これが
また一つ、はじめてを知れて嬉しくなる
海に纏わる物は珍しくて
度々足が止まってしまう
気になる、が沢山ではしゃいじゃいそう
今度こそめっがないようにしたいけれど…
わぁ、ジャハルが持ってるのなぁに?綺麗
ね、ね、宝の場所を書いた地図ですって!
…ちょっと難しいかも
だって、皆との次なる冒険のお話なんだもの!
「あれが宴会……。そう、宴会との出会いだったのよ!」
拳を固めて、力説するいばらに、リヒト・レーゼル(まちあかり・f01903)も成程、と感心したようにうなずいた。
「皆とわいわいって楽しかったの。とっても賑やかな人ばかりだったわ」
「うむ……船乗りというのは、皆ああなのだろうか。実に豪快な亡霊達であったぞ」
力説するいばらに、ジャハルが頷いて言葉を添える。それから類が腕を組んで、
「ええ、豪快で楽しくて。何もかも無茶苦茶で…………船が消えた時は焦りました……」
ふと漏らされた言葉に、そうね、といばらも小さく頷く。
「お船が消えた時は吃驚だったけど……。不思議なのよ。本当に、ぽんと消えたの」
「それはすごいね。でも、みんなが無事でよかった。ほかには? みんなの活躍が知りたいんだ」
わくわくするようなリヒトの言葉に、そうだな……とジャハルは考え込んで、
「いばらの蔦、それに冴島は…………、とても活躍していた」
そっと視線をそらした。
類も視線をそらした。
あれは忘れることだ。大人のお約束だ。
「おや? ジャハルさんこそ、翼も力も大活躍だったんですよ!」
なんて、類がそっちに話を流したりして、
「ふふ、みーんなで、頑張ったの!」
と、いばらが笑った……ところで、
「そういえば、皆お腹すいてない?」
何だか良い匂いがする。
お店から漂ってくる香ばしい匂いにくんくん、といばらは鼻を揺らした。
「あっちこっちから、いい匂いがして、どこへ行こうか迷っちゃうわ」
「そうだね……。だったら、美味しい物、面白い物を沢山探そう」
片っ端から見ればいいよ。なんてリヒトはとてもいい提案だ、と自分で言って自分で笑う。まずは……と、ほんの少し考えこんで、
「海の魚、塩焼き。魚の塩焼き。……そう、塩焼き! 俺の世界には無くて、食べる機会がないから、塩焼きを、食べてみたいな」
塩焼きが食べたい、とこぶしを握り締めて主張した。それから一度、改めて周囲を見回す。
「どこも、美味しそうな匂いがするね。あれも美味しそう……。これもおいしそうだね……。でも、最初は塩焼きなんだ……。あ! あの店は塩焼きかな?」
はっ。と、リヒトは指をさした。
ちょうど店の前まで、網が出張っていて、そこで魚が焼かれているところであった。
「うむ。あれで塩焼き以外のものではなかろう。行ってみるか」
「うん、良いね。食べに行こうか。この匂いは香ばしくて引き寄せられるなぁ……」
ジャハルが確認して頷くと、ふらふらと類もそちらの方へと歩き出す。
「店主、四人分だ。一番上等なものをくれ」
「上等? うちはこれしかないけれどもいいかい?」
「うん、それでいいよ。ありがとう」
ジャハルがそんなことを聞いて、類が商品を購入する。魚を串にさして塩焼きにしているシンプルな、料理とも言えないぐらいシンプルな焼き魚だったが、それが今はちょうどいい。
「なかなか旨そうだな。飲ませるばかりで、少々喰い逸れていたのだ」
良い匂いがする、とジャハルはそれをためらいなくかぶりつく。
「……これは海の味がする、いばらもリヒトも食べてみるといい。素朴だが奥の深い味だ」
うん、うん、と、頷くジャハルに類は笑う。
「うん、いただきまーす」
言って、同じようにかぶりついた。二人のその様子を、初魚のいばらとリヒトは真剣に見ていた。
「こう……かしら?」
「いや……たぶんこうだね」
「うーん。二人ともちょっと違うかな? けれども、こういうのは、美味しければそれでいいんだと思うよ」
真似して食べる二人に、類は楽しそうに笑った。いばらはこくりと頷く。
「味、というのがよくわからないのだけど……。焼魚さんはしょっぱい? 甘いのかしら? 海の味?」
「んー。分類すると、これは「しょっぱい」の方かな。辛すぎず美味しいし。でも……ふふ、海の味の方が素敵な表現かも」
「うん。確かに塩辛い。辛いのに、香ばしくて、でも身は柔らかい……」
反芻するように、リヒトも言う。何度も、何度も、味をかみしめるように。美味しいな。と、いっていた。
「しょっぱい、海の味…これが……。また一つ、はじめてを知ることができたのね」
そんな三人に、いばらも本当にうれしそうに微笑む。
初めて食べた焼き魚は、塩辛くて海の味がして、そして暖かかった。
「こちらの店は…はて。なんという料理か、冴島なら知っているだろうか」
「うーん。貝や魚入った汁物みたい。エンパイアのあら汁に似てるけど……」
「よし。わからぬものは食えばいい。買うぞ」
「ふふ。それじゃあ、次の味ね!」
「皆、いろんなお店を見つけるなあ……」
「うん? リヒト君はもうお腹いっぱい?」
「まさか。もちろん、食べるに決まってるだろう」
そんな感じであれこれ食べモノを見回って。
それからおみやげ物も探し回って。
「ううっ。気になる、気になるの……!」
あれもこれも。あっちへふらふら。こっちへふらふら。
と、いばらはいきそうになる。
「あっ。あれは何かしら……!」
はしゃいで走り出そうとして、いばらは急停車。
(今度こそめっがないようにしたいけれど……)
ちら、と類のほうを見ると、類は笑った。
「大丈夫大丈夫。め、なんて言わないよ。はぐれないようにに見守っているから」
「……っ、ありがとう!!」
わーい。と途端に明るくなるいばら。
「リヒトは何か、見つけたの?」
はしゃいであちこち見回って、あれこれ買ってみるいばらに対して、一か所。ある場所から動かないリヒト。
「うん。面白い物が、一杯あって。……海、は珍しいから、海の面白い物も、沢山見つけたいって、思ってたんだけど……」
ほら、とリヒトが指をさしたのは、漂流物の店だった。
「海賊の、お宝が流れていたらいいな。と思ってたら、海賊のお宝のお店があったんだ」
ボロボロの旗に、キラキラした王冠。錆びた剣は磨けば美しく光りそうだし、鍵のない宝石箱は、何やら重たい。もし開けることができたなら、いいものが入ってるかもしれない。
「まあ……!」
いばらがはしゃいだような声を上げる。
そんな中でジャハルは黙々と、串焼き魚を片手に漂流物を眺めていた。
大半のものがガラクタだ。だがこういう場所にこそ掘り出し物が……。なんて。思っていたら。
「……」
隅っこのほうに無造作に置かれた紙に、ジャハルは手を伸ばした。
隣に並べられた錆びた古い銅貨は、海賊の落とした物やもとしれぬな、なんて思いながらジャハルはそれを広げた。
……地図であった。
(……地図の宝を見つけたら、持ち主は困るのだろうか……)
これは、漂流物というより落とし物なのでは、とジャハルが考えこんだその時、
「わぁ、ジャハルが持ってるのなぁに? 綺麗」
と、いばらが肩越しにそれを覗き込んで、
「これは……っ、ね、ね、宝の場所を書いた地図ですって!」
二人とも!! と、いばらが類とリヒトに向かって手招きをした。
「お? 宝の地図かい。なら、また皆で探しに行っても良いかも」
これも一緒に使おうと、漂流物の羅針盤を手に取りながら、類がその地図を覗き込む。
「宝の地図。この場所に行けば、宝が……」
リヒトがどきどきしながら、その地図をじっと見つめた。
「き、気になる……。お宝って何だろう……」
「それがわからないから、面白いのだろうな」
くるくると、ジャハルは地図を丸める。罅の入った硝子の浮玉を手土産に、買うか。と、声を上げた。
「勿論よ。素敵ね! ……この地図は、いばらにはちょっと難しいけれど……、でも、かまわないわ。だって、皆との次なる冒険のお話なんだもの!」
わーい。と両手を広げるいばらに、リヒトも嬉しそうにうなずく。
「うん。次は、宝探しだね! なんだかわくわくしてきたよ。……あ。皆の、冒険の話も、もっと聞きたい。海賊船の上で、どんな事をしてきたのかな、とか」
聞きたい聞きたい。と輝く目で尋ねるリヒトに、ジャハルも笑う。
「そうだな……」
色んな事があった。いろんな人間がいた。語り掛けてジャハルは思う。様々な地から流れ着いたものらが一堂に会する様は……我等と似ているのやも知れぬ。と、そんなことを考えた。
「宝探し、いいね。例え何もなくとも、道のりが楽しいさ」
「もう、類ったら。宝物は絶対あるわ!」
いばらの主張に、類は楽しげに笑った。
昨日のことを離しながら、明日を探しに行こうか。
誰もが進む、明るい明日を……。
大成功
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