アルダワ魔王戦争9-E〜 スリーピングファイトリジョン
「カメラート、新しい予知が見えた。手の空いている者は向かってほしい」
いつになくまじめな口調でミーティア・シュヴァルベ(流星は燕が如く・f11420)は猟兵達に声を掛ける。
「強敵が現れたわけではない……いや、見ようによっては強敵か。知ってる者もいるだろうが、呪いの鏡によって映し出された自分と全く同じ姿と能力を持つ蒸気人形、それが今回の相手だ」
相手にした者も多いだろうとミーティアは告げる。そして今回はそれだけではないという。
「どうも記憶の方もコピーしているみたいだ。それにしゃべる事もできるらしい。呪いの鏡という物も進化しているのかもしれないな。……興味は尽きないが本題に戻すと、そのコピーした能力と記憶を使って、お前達との戦いを有利に導こうとするだろう……いや、ちょっと違うな。コピーした記憶を使ってお前達を戦いから遠ざけるように仕向けてくるはずだ」
様々な、個性豊かな能力を持つイェーガーにおおよそ共通する、オブリビオンと戦うという意思を、戦う理由を奪おうと彼らは言葉巧みに襲ってくるだろうと。
「奴らは攻撃よりもその猟兵の戦意を無くすという命令にそれなりに重きを置いている。今までとは違う戦術を行うことで猟兵にどれだけの効果があるのか試しているのかもしれん。だから、カメラート」
迷うな、とミーティアは言う。戦う理由を気高く保てと、グリモア猟兵が言う。
「お前達の進んだ道は、そんなに軟なものではなかったはずだ。心は人形なんかに支配されないという事を証明してやれ。作戦名は『ヘルツファーネ』。心の旗という意味だ」
自身の戦う理由がこれだという旗を戦場に、自分の心に立てて来いと、そういってミーティアは彼らを送り出すのであった。
風狼フー太
とりあえずもう一人の自分が出てきたらこれが定番かと。風狼フー太でございます。
今回の相手は姿も能力も記憶も同じ偽猟兵。そして力よりも心を攻めてくる敵となっております。具体的に申し上げれば、フラグメントの内容に心攻めがプラスされている物と思っていただければ。
ついでにものすごくぶっちゃけると。うちの子が戦う理由を見失いかけてる姿を見るのが実に愉悦だとか、それでも!と言いながら戦おうとする姿を見たいだとか、この機会に戦う理由の見つめなおしとかになれば本望でございます。
プレイングボーナスは自分自身に打ち勝つ方法となっております。技や力で上回るというのも良い物ですが、心で上回るというのもたまには乙なものではないでしょうか?
では、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『鏡写しの蒸気人形』
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POW : 人形などには負けない気合と熱意を高める事で、蒸気人形に打ち勝つ
SPD : 技量や速度を極限まで高める事で、蒸気人形が模倣しきれない攻撃を放ち、蒸気人形に打ち勝つ
WIZ : 客観的に自分自身を見る事で、自分自身の弱点を把握。その弱点を利用して、蒸気人形に打ち勝つ
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ダンジョンへとテレポートして、鏡を見たと同時に現れた自身と瓜二つの人形に何を思うのかは人それぞれだろう。
彼らは姿形は違えど、共通して猟兵達の戦いを止めようと言葉を投げかけてくる。
だがしかしだ。君達の始まりがどのような喜びであろうと、普遍であろうと、悲しみであっても、怒りであっても、絶望であったとしても。武器を取り戦うと決めたのだ。
目の前の相手がたとえ自分と同じであろうと、他人に自らの始まりに踏み込ませていい理由にはならないはずだ。
心の旗を両手に持って、此処に建てよう。きっとこれは、侵されてはいけない聖域にh時踏み込ませないための様な、きっと、そんな戦いなのだ。
ユウキ・スズキ
戦う理由か
そういえば、良く考えればもうほとんど理由も無いな
部下を奪ったアレを殺し、私は戦う理由を失った
「お前が俺ならわかるだろう?私はなぜ戦っている?」
…理由なんて無いさ。
「…どうせ他に誰も居ないんだ……教えてやろう。俺は壊れてるのさ。他の道を知りながら、戦う理由すら持たぬというのに戦いをやめられない。分かるか?……戦いの中愉悦も後悔も、なにも感じやしない。全てがまやかし。全てが虚無」
UC起動。
「残念ながら、一朝一夕で真似できる技術だと思うな。私がこの手で引導を渡してやろう。虚無の中で戦う者を知るがいい。そして、私を摸倣したことを……私を知った事を後悔しながら……虚無の中死んでいけ、ガラクタ」
「よお。初めましてだな私」
煙草をふかしながら、ユウキ・スズキ((元米国陸軍)少尉 不審者さん・f07020)が相対するのはもう一人の自分。呪われし鏡によって生み出された、姿、能力、記憶を持った蒸気人形。
『そうだな、初めましてだ』
見える範囲での装備は同じに見える。服装もそうだ。それどころか目線の運びやちょっとした癖といった、そう言った物が全て同じの自分が目の前にいる。
『お前の戦いを止めに来たぞ』
「いってくれるじゃないか。止められるのかお前に」
『止められるさ』
あくまで無表情。嘲りもなく、これといった感情はなく人形は告げる。
『お前に戦う理由はないはずだ』
「……」
そう。考えれば考えるほどユウキ・スズキに戦う理由という物はなかった。
部下を奪った存在は屠り、弔いは済ませた。愛すべき養子もいる。何より、戦い以外の他の道を知っている。
『そんないい年した大人が――』
「壊れてるんだろうさ」
二つのたばこが宙を舞い、一足でお互いに間合いを詰めた二人の拳と拳がぶつかる。
「戦いの中愉悦も後悔も、何も感じやしない。だというのに戦う」
蹴りが頭の上の高さで交差する。まるで順番が決まっているかのように、交互に相手が拳銃を手にする前に制し、もう片方の手に持ったナイフで頭を、腹を、胸を狙いそれを躱す。
「それが壊れて無くてなんだと言う?」
『俺がそこまでガラクタ人間だったとは、な――!?』
完全な均衡。その崩壊のきっかけは、人形の頬を裂いたナイフの一撃だった。
「どうした。俺にしては動きが鈍いな」
その一撃をきっかけに徐々に。本当に徐々にではあるが人間が人形を押し返し始める。
同じ体を、同じ技を、同じ記憶を持っているはず。なのにという動揺が、人形の中で広がり続ける。
『こんなバカ事が』
小さな綻びが解決できないまま戦いを続ける、それは大きな綻びを作ることに他ならない。
わずかな隙をついて足を払い、バランスを崩し倒れた人形に馬乗りになったユウキは拳銃を人形の頭に合わせ。
『ガッ……あ』
ためらう事なく引き金を引く。
「……記憶を持っていようが戦いの経験や勘ってのは、長年戦って培うもんだ」
最早人形は動かない。この戦場でやるべき事は終わった。懐から再び取り出した煙草に愛用のライターで火をつけ、往くは次の戦場。
「私を知った事を、そして、私を摸倣した事を後悔しながら……虚無の中死んでいけ」
――じゃあな、ガラクタ人形。
成功
🔵🔵🔴
祓月・清十郎
成程。では拙者、初手で立てた心の旗を勢いよくぶん投げるでござる
具体的にはフルパワーで撃つと自分の記憶も漏れなく吹っ飛ぶ記憶消去銃を全力ぶっぱ!
お互い全てを失くして出逢った拙者と人形
その後一緒に釣りに行ったり深夜のコンビニ前で屯したり、真贋不明のおっかさんの料理をつついたり
似た者同士の二人が意気投合するのにそう時間はかからなかったでござる
けれど銃の効果が切れ戻る記憶
くっ! これまで育んできた友情を思えば拙者に彼を倒すことはできないでござる!
それは拙者を完コピした人形も同じ心情で
故に人形はこれ以上拙者を戦わせない為、諸悪の根源である鏡を道連れに自滅することを選択し…
そ、そんな…人形ぉーーッ!(完)
『これが、拙者の答えでござる』
「止めるでござる!拙者ッ!!」
二人が出会ったのは、後で知った事だったが迷宮の奥底だったでござる。
「此処はどこでござる?」
覚えていたのは祓月・清十郎(異邦ねこ・f16538)という名前だけ。そして目の前には、まるで鏡の様にそっくりな姿が。
「せ、拙者でござる!?」
『どういう事でござるかー!?』
いったいどういう事か全然分からなかったでござるが、なんやかんやで意気投合した拙者達は二人でいろんな所で友情を育んだでござる。
迷宮の中の池で釣りをして蒸気魚に追い回されたり、迷宮コンビニで買った熱々の肉まんを二人で割って猫舌なのを忘れて大火傷をしたり、迷宮おっかさんのおでんを箸でつつきあいっこしたり。
でもそれは、偽りの友情でござった。
二人隣通しで寝た布団の中、夢で呼ぶ声が聞こえたのでござる。それは、拙者の、猟兵としての拙者の。
「……思い、だした!拙者は――!!」
起きた時にもう一人の拙者はいなかったでござる。同じ記憶消去銃で消されたなのだから硬化時間は同じ、当然でござる。
寝巻のまま裸足で迷宮河原のへと辿り着くとそこには。
「……もう一人の、拙者」
『全部思い出したでござるね拙者』
そうだったのでござる、偶々二人の記憶消去銃がお互いの額を貫いただけの。此処から生まれた記憶の空白が怖くて、それで求めた偽りの友情、それが――。
「断じて、違う!」
『拙者……』
「拙者達は、始めは敵だったでござる!それは間違いないでござる!でも!こうやって分かり合えて」
そんな拙者の話を、もう一人の拙者は手に持った万能ネギで遮ったのでござる。
『これが、拙者の答えでござる』
手にした万能ねぎをもう一人の拙者の、自分の口に。
「止めるでござる!拙者ッ!!」
きっと、人形の拙者も同じ気持でござったのだ。戦いたくなかったのでござろう。だから、自分で自分を殺すなんて事をしたのでござる。
「拙者……許せ!拙者は、拙者を守れなんだ
……!!」
葱を生で丸かじりした拙者を拙者は抱き起したが、拙者はもう動かなかったでござる……悔しさがどんどん溢れてくる。例え無理でも二人はいつまでも、一緒に居たかったでござる。
「……拙者よ。必ず拙者は、拙者の分まで生き抜いて見せるでござる」
その言葉に、拙者の髭を風がふわりと薙いだのでござった。
信じるか信じないかはこれを見て聞く、お主達次第でござる。しかし、でござる。
――これが、あの時の迷宮内で起こった切ない拙者達の物語でござった。
成功
🔵🔵🔴
ハルア・ガーラント
わたしのはじまりは絶望だったなぁ。
【WIZ行動】
所謂不義の子って分かった時から……ううん、物心ついた時から周囲のわたしを見る目が他と違うなっていうのは気付いてたけど、認めたくなかった。
蒸気人形はもう十分って言うのかな。わたしのせいじゃない、これ以上頑張らなくていいって、優しい言葉を選んでくれるんでしょうね。分かっていても泣いてしまいそうです。うわ~鼻水出てきて顔が上げられなくなった。
だけど、戦う事や猟兵をやめたら、ずっと一緒に戦ってくれた白鷲さん達とも会えなくなる。そのほうがすごく怖い。あなただって分かっているんでしょう?この子達と離れたくないから、戦って前に進むんです!
ちり紙、ちり紙を……。
私、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)の始まりは絶望だった。既に家庭を持っていたお父さんをずっと慕っていたお母さんから生まれたのが私だった。
だから、私が物心ついた時から……。
『もういいよ私』
そんな始まりを知っている目の前の私は、私に向かって語り掛ける。
『もう十分頑張ったよ』
それが蒸気人形として生まれた私の使命だから、そう言っているってわかってる。
それでも、だ。
『逃げたり立ち止まったりする事って、悪い事じゃないよ?』
その言葉が本心で言っている所もあるのだろうなぁって、そう思ってしまう私がいた。
そんな優しさに、涙がこぼれそうになるけど。
「私、戦ってよかったって思ってる」
私の思いに答える様に現れた白鷲さん達に、背中を押されるように。
「進んだから、戦ったから。色んな人達に合えたし、この子達にも会えた」
私の言葉を最後まで聞くことなく、まるで答えが分かっていたかの様に目の前の私も同じ様に白鷲さん達を次々と召喚していく。
どうしても溢れてくる涙を拭って……拭いきれなくて。でも、頑張るって、戦うって決めたのだ。
「私、貴方を超えて先に行きます!」
『……ねえ、私』
「……何?」
どうして私の白鷲さん達が勝ったのかはわからない。でも私の白鷲さんは人形の私に確かにその爪を突き立てて……私が倒したのだ。
『いつでも……止まっていいからね』
私の膝の上に頭を乗せた私はもうボロボロで、壊れそうな体なのに。微笑みながら、微かに唇を動かして私の人形は最後まで私の歩みを止めようと言葉を紡いで、動かなくなった。
最後まで使命を全うして、でも心の何処かに感じる優しさにどうしても涙が止まらないけど。
――わかってる。でも、私は大丈夫だよ。
成功
🔵🔵🔴
ベルベナ・ラウンドディー
大魔王と対峙して私では相手に出来ないと知りました
と、同時に渡り合う猟兵の凄さを思い知りました
私が望まず、願わず、祈らずとも彼等が未来を創るでしょう
それが自分の矮小さを自覚させ、少し失望し
…怒りに変わりました
戦う理由など知れたこと
情けない貴方を殺したいだけです
●
【気勢炸裂】
爆弾・剣・格闘・念動力
特化せずに多岐に渡る技能は
単身で様々な局面に対応する運用論に則したもの
味方の想定に乏しいことを思い出せ
猟兵の戦列に加わるのは世界の為ではない
行儀よく振舞う竜派の姿で偽り
人派の顔の下に隠した本性は利己的で野蛮な精神だ
思いだせ
この醜悪な憎悪と怒りが私の強さの源だと
それを示すにはただの一撃
剣を突き出すのみでいい
その戦いは、爆発音から始まった。
『随分と乱暴じゃないですか』
「……」
土煙の中を両手に刀を構え、風を切ってベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)が己の人形と切り結ぶ。
『そんなに悔しいのですか?敵わない相手がいたのが』
「……ッ!」
力と力がぶつかり限界を超えた鉄は削れる音を刻んでゆく。刀同士の鍔迫り合いを力任せに下に持っていき、出来た人形の構えの隙間に己の尻尾を槍の様にして突き刺そうとして、人形に後ろに跳んで回避される。
『全部知っていますよ。この鏡に映った時点の貴方が、私ですから』
ふと刀を見れば刀の中腹の刃が潰れて、最早切る事ができる鈍器になり果てている。
この武器とはこの仕事でお別れだろう。そしてそれは相手の刀も同じ状況になっているという事のはずだ。
『そこまで自分が許せないものですかね』
目の前の人形が口を開く度に私の心をざわつかせる。成程、あれはまさしく戦いを捨てた私だ。弱い私だ。
……見ているだけで反吐が出る。
私は、お前とは違うとばかりに再び前に出る。
思い出せ。頭の隅々まで意識を張り巡らせる。元々私の戦い方は、味方がいる事を想定したものじゃない。
ありとあらゆる状況に対応した立ち回りこそが私の力だ。
その上で、だ。
「お前は必ず、殺す」
お互いに放った念動力が空中でぶつかりはじけ飛び懐へと入る。どの手を打つべきかという思考が頭の中で数巡繰り返してお互いが出した結論の結果は。
『……がっは……』
武器になりえない刀は、深々と人形の体を貫いていた。
「この刀は武器ではないと判断した貴方の負けです」
確実な致命傷の前に、倒れ伏した人形の体から聞こえていたきりきりと軋む様な微かな駆動音が徐々に消え失せて行く。
『……今更、正義の味方ですか?』
最後。何処か嘲る様子で出た言葉を最後に人形はもう動かない。
(随分と殊勝な事を)
私が正義だとか世界の為に戦うなど冗談にもほどがある。皮をむけば、そこにあるのは利己的で野蛮な精神。それが私だ。その本能に従って戦っているだけに過ぎない。
――此処に来たのも、情けない貴方を殺したかっただけです
成功
🔵🔵🔴