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昏冥の果てにて君を待つ

#ダークセイヴァー #異端の神々


●夜に凍える
 いつも闇だけが、儕だった。
 くだらぬいきさつで光を喪い、くだらぬ謂われで独りになった。
 他者からの判断など如何様にも。ただ真実、守りたい者があった。それが自分を認識出来ない呪いに隔てられていたとしても。
 そして自分もまた、それを認識出来ずとも。
 私に出来るのは呼び続けることだけ。応えの無い、虚しい声を上げ続けるだけ。
 いつか何かが復ってくるだろうという――情けなくも、か細い光に縋りながら、未だ存在している。
 待ち続けている。
 だが私は――一体、何を……待っているのだろう……。

●孤独なる旅人達
 オォオォオオ――。
 身を斬り裂くような凍風に紛れて、獣の声がする。
「しまった、領域を越えちまった」
 キャラバンを先導する男が、心底疲れた表情でぼやく。焦燥が貼り付いて消えず、やつれている。此処に至るまでの旅路――否、人生そのものに疲弊しきった者の顔だった。
 年若い男が分かり易い怯えを顔に貼り付けて彼に問う。
「――ヤバイ獣っすか?」
「いんや」
 一行の中で一番年嵩の男が頭を振って、神様だよ、と声を潜めて言う。笑うと、頬の傷口が引き攣って、泣いているように見える男だった。
「昔から辺境には色んな神様がおられるそうだ。どいつも狂った荒神で、迷い込んだら食い殺されちまう」
 ひえ、と若い男が情けない声をあげる。莫迦、先導が窘めた。
「お陰でヴァンパイアが近づかない。オレ達も安全に移動できるんだぜ――まったく、人に優しい神様だったらな」
 命からがら、街と街を回ったりせずに済む、安寧の地になるだろうに。
「そんな夢想より、気を引き締めろ。此処から抜け出す前に凍死もありうるぞ」
 オォオオオ――声がする。
 この声に気を取られたら最後。永遠にこの空間を彷徨い続けることになるのだ。

●神を狩るもの
「かつて、辺境に住まう『異端の神々』をヴァンパイアどもは殲滅せんとして――失敗した」
 淡淡と黒金・鈊(crepuscolo・f19001)は過去を語る。
 奴らはオブリビオンの軍勢を率いて辺境制圧に向かい、半ばまで目的は果たした――神々を殺すところまでは達成したのだ。
 だがしかし――神々は事もあろうにオブリビオンに憑依し、魂と肉体を奪い取ってしまった。
「それでも快哉、とはいかないのが厄介でな。ヴァンパイアは辺境から手を引いたが、異端の神々はオブリビオンとして未だ辺境に留まり、一帯を支配している。最早理性も無く『狂えるオブリビオン』と成り果てて、な」
 この土地を解放出来れば、人々がヴァンパイアに怯えずに済む土地が増えるかもしれぬが――楽観はできん、鈊は囁く。
 さて此処までは背景の説明に過ぎぬ。憶えておくも忘れるも自由な話だ。
「今回、君達に依頼するのは件の『狂えるオブリビオン』の討伐だが……その前にさるキャラバンの救援を頼みたい」
 琥珀の双眼を細め、彼は続ける。
 キャラバンは貧困に喘ぐ街と街を繋ぐ物資の運び屋だ。長らく培った知恵でルートを定めて動いていたが、今回はうっかりと辺境側へと逸れてしまい、呪術の掛けられた昏闇の領域なるものに囚われてしまった。
「そこは一切の灯りもない――先の見えぬ暗闇のただなか、狂った神の呼び声が強く響き、人々を惑わせる」
 怯え、怒り、混乱――その声が無意識の領域に語りかけ、暗闇の迷宮から脱出しようと試みているのにも関わらず、狂えるオブリビオンの方へ引き寄せてしまうらしい。
「殊に、その声は不安を煽り、疑心暗鬼に陥らせるらしい」
 こんな環境で仲間を信じられなくなれば、その運命は明白。斯くして命運尽きた人々が数多眠る地でもあるらしい。
「そこで……君達の救援が必要だろうと判断した。彼らを安全域に逃しつつ、狂えるオブリビオンを目指して進め、ということだ」
 暗闇の領域は、氷点下の世界。
 指先すら見えぬ闇の中、身を裂くような凍てつく風が吹いている。
 それは神の施した呪術であり、倒すまで環境は変わらぬ。道中には理性を失ったオブリビオンどももいるようだ。
「呪術による災いに包まれている領域だが、それだけだ。灯りは使える。キャラバンの者達は備えに乏しいようだが、君達なら問題あるまい」
 単純な松明でも、魔法の灯りでも、懐中電灯などでも。好きな光源を使うと良いし、使わなくともよい。
 ただ――鈊は鋭い視線で猟兵たちを一瞥した。
「奴の声は猟兵にも効く。その狂気に搦め捕られぬよう、気をつけろ」
 後のことは現地にて。臨機応変に任せる――彼はそう告げ、説明を終えるのだった。


黒塚婁
 どうも、黒塚です。
 常闇の世界で、更なる闇の中にある何か。

●1章捕捉
 行動は二択となります。
 キャラバンを安全な領域まで護衛すること・狂えるオブリビオンを目指して闇を抜けていくこと。
 どちらを選択するにせよ、周囲が闇に包まれており、「狂えるオブリビオンの狂気」が感情に影響を与えることは変わりません。

●プレイング募集に関して
 各章導入公開後、プレイングを受付します。
 期間についてはマスターページ及びツイッターでご案内します。
 受付前に受け取ったプレイングに関しては、内容如何を問わず、採用しませんのでご注意ください。
 また全員採用はお約束できません。
 ご了承の上、ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

 それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
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第1章 冒険 『凍える夜』

POW   :    強行突破…気合と共に歩む

SPD   :    一刻も早く抜ける為に脇目も振らずに走り抜ける

WIZ   :    魔法で暖や光などを取りながら進む

👑11
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●暗中模索
 荷台ふたつ、総勢十名のキャラバンは完全に道を見失っていた。
 先導の男は疲弊しきっていたが、その瞳には鋭い光を灯し、未だ希望を失っていない。
 だが、経験の浅い若輩のものたちは、随分とへこたれ、参っているようだった。
 寒さで体力的にも厳しいが、最も辛いのは風に紛れる唸り声だ。
 ――オォオオォオオ……。
 これが頭の中を激しく掻き乱す。苛立ちが膨らんで、我慢が効かなくなる。
(「このままコイツを信じて大丈夫なのか?」)
(「コイツの所為で、此処に迷い込んだんじゃねえか……」)
 猜疑心からの言葉が、あと少しで口を突いて出そうだった。
 ただ、感情のままに行動すれば死ぬ、ということを散々経験してきた彼らは、そのぎりぎりまで、耐えることが出来る。
 届けられる物資は減ってしまうが、食糧もあるうちは大丈夫だ。
 頼りないカンテラの火は徐々に小さく。儚くなっていく。
 誰も言葉を発しない。沈黙が重たい。足取りもゆっくりと遅くなっていく。
 体力を遣い果たすのが先か、気がおかしくなるのが先か、仲間割れして尽きるが先か。
 祈っても、指先まで見えなくなるほどの深い闇は、晴れそうにも無かった。
 ――祈る神も、いないのだが。

○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
【プレイング期間】2月23日(日)8:31~26日(水)いっぱいまで(27日日付変更まで)

●捕捉:キャラバンの護衛について
こちらは目的から反対方向へ移動することになります。
狂えるオブリビオン方面への突破と同時に考えなくて結構です。
なお24日までにいただいたプレイングからの採用を考えております。

それ以外、暗闇を突破する行動の方は期間内いつでも構いません。
○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
ジェイ・バグショット
ザザ(f07677)と

あー…寒い…。アンタは良いな。
寒けりゃその立派な尾で暖を取ればいい。
俺は防寒マントが無いとやってられない

…異端の神に手ェ出して結果失敗とは…笑える。
いい気味だ。と愉快

キャラバンとの接触はザザに任せ
【狂気耐性】【暗視】と【第六感】で周囲を警戒

…守ってやるが、死にたくなかったら俺らの傍から離れるなよ。
うろちょろされると守りづらいし面倒だ。

言葉は優しくないが冷たくもない
影のUDCテフルネプによる【闇に紛れて】の【騙し討ち】【早業】で敵を屠る
キャラバン隊がパニックにならないよう素早く静かにが理想
拷問具『荊棘王ワポゼ』を複数空中へ召喚
自動で敵を追尾し【傷口をえぐる】攻撃


ザザ・クライスト
ジェイ(f01070)と参加

「まァなと言いてェところだが、オレだって寒い」

肩をすくめて煙草に火を点けて【ドーピング】
感覚を研ぎ澄ませると同時に【破魔】の力を纏う

「水先案内人が必要そォだな?」

キャラバンと接触
周囲の警戒はジェイに任せる

「オレ達は猟兵だ。この先にいるって神に用がある」

が、アンタらが出会えばお陀仏は避けられねェ
最悪眷属に変えられちまうし、面倒は避けたいワケさ

松明に加えて煙草や酒、懐炉などを配る

「アンタらは命が助かり、オレらは手間が省ける。悪くねェ話だろ?」

【狩猟者】を発動

猟犬レオンハルトに疲労が濃い奴らを運ばせる
【救助活動】も女子がいないンでやる気は怪しィが状況はヤバい
とっとと脱出だ



●水先案内人
 ざくざくと無造作に闇を征く、足元はごくありふれた荒野の感触だ。平坦で、乾いた大地。木々など、遮るものが無いゆえに、風は全身に容赦なく冷気を叩きつけてくる。
「あー……寒い……」
 ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)が白い息を虚空へ吐く。
 温かな吐息は瞬く間に凍えていく。大した効果はないだろうと知りつつ、彼は襟を強く引き寄せた。
「アンタは良いな。寒けりゃその立派な尾で暖を取ればいい。俺は防寒マントが無いとやってられない」
 金の視線を受け止めたザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)は、まァな、と肩を竦めた。
「――と言いてェところだが、オレだって寒い」
 加えた煙草に、火をつけ、赤い双眸で鋭く周囲を見つめる。
 感覚を研ぎ澄ませ、紫煙と共に力を巡らせるのは、彼のやり方――沈黙が落ちるのは刹那のことであるが、彼方を見やりジェイは軽く頬を上げた。
「……異端の神に手ェ出して結果失敗とは……笑える――いい気味だ」
 気取って人間を支配するヴァンパイアどもが、実際は辺境など興味ないと素知らぬ顔を決めているのではないのだという事実に、喉だけで笑う。
 彼が闇の方角に睨みを利かせている間、ザザはキャラバンへと声をかけていた。
「水先案内人が必要そォだな?」
 彼は笑みを向けるが、どうにも剣呑な、威圧的な気配がある。
 何よりこんな昏冥において、声をかけてくる存在に、キャラバンの面々はそれなりに緊張し、構えている。
「オレ達は猟兵だ。この先にいるって神に用がある」
 煙草を咥えて口の端を上げて見せる。
 猟兵、と。彼らは口々に繰り返す。噂には聞いたことがあるような――。
 戸惑いは置き去りに、ザザは自分のペースで話を続ける。本題では無いからだ。彼は己の荷物を探ると、酒や煙草、松明の種に、懐炉を取り出し、キャラバンの面々へと手渡した。
「が、アンタらが出会えばお陀仏は避けられねェ――最悪眷属に変えられちまうし、面倒は避けたいワケさ」
「……! いいのか、こんなに」
 上物だ、と酒に目の色を変えた若者を制しながら、先導役がザザへと問う。
 言ったろ、と肩越しに振り返るだけで、彼は先行するジェイに並ぶ。話は済んだ、そういう姿勢だ。
「アンタらは命が助かり、オレらは手間が省ける。悪くねェ話だろ?」
 片やジェイは半ば闇の中に立ち、血の気の薄い美貌を彼らへ向けた。
 その背後には棘輪の武器が浮かび、彼が臨戦態勢であることを示す。闇や気候に怯えぬこと。武器を持つこと。それだけで、二人が只者では無いことは確かに伝わった。
「……守ってやるが、死にたくなかったら俺らの傍から離れるなよ」
 それだけ告げると背を向けて、闇の中へと消えていく。オブリビオンにどれほど視界が重要な要素かは解らぬが、闇に隠れる事で戦闘上の優位がとれるのは間違いない。
「うろちょろされると守りづらいし面倒だ」
 簡潔な、にべもない声音だけが届く。
 だが、彼の態度は淡淡としているだけで、守ろうという心は変わらぬ。
 無駄口叩いてる暇はねぇぞ、灯りの中にいるザザが促す――その向こう側に、巨大な猟犬が見えた。巨大化させたレオンハルトは、キャラバンに女っ気がないため、何ともやる気の無い雰囲気を出していたが――主は構わぬ。
「とっとと脱出だ」
 顎で示すと、先導するように歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
【キャラバンを安全な領域まで護衛】

一寸先も見えぬ闇の中…眩しく輝く一団があった。
カビパンである。【女神の加護】で自身から放たれる聖なる光が周囲を明るく照らしている。
「光はいくらでも調整できますので」
キャラバンは安定した光源を確保できたことには安堵するも、カビパンに抱いた感情は『明る過ぎてうぜぇ』だった。

グォキュ~!グルルル…

突然、地獄から響くようなうめき声にキャラバンに動揺が走る。
カビパンは【女神のハリセン】を手に、不安そうなキャラバンの頭に振り下ろす。
スパーンと快音が響いた。
「失礼、私のお腹の音です」

緊張感もなくなってきたキャラバンであるが、時折ハリセンの音が鳴り響く。
もはや芸団のようだ。


アレン・カーディス
旅にトラブルはつきものとはいえ、とんだ災難だね。
私は護衛に回るとしよう。


【魔法具『ククロセアトロ』】から仄かに光る小鳥を最大数
一羽一羽は頼りなくてもこれだけいれば……
(光る雲のような有様に)うむ、少しばかり多かったかな……?
いや、大は小を兼ねるという。恐らく大丈夫だろう。うむ。(無理やり納得)

1羽は私の元へ。
5羽は先行、もし何かに気づいたら教えておくれ。
残りは5〜10羽ずつ隊を組み適宜配置、キャラバン隊の視界確保頼んだよ。

さぁ、暗闇にとらわれる前に疾くと抜けようではないか。
足下に気をつけつつ、周囲を警戒しながら先行の鳥と勘を頼りに移動

※アドリブ、絡み歓迎


宇冠・由
お母様(f00173)と参加
キャラバンの護衛希望

守ることに関しては得意と自負があります
暗く先行きの見えない旅、きっとそれは心細いもの
一寸先すら見通せない闇だからこそ、自分の内側に見えてくるものだってありますわ
「大丈夫です。私たちがついております」
誰かの所為にしたいならば、私が含めて守りましょう

【七草仏ノ座】にて大鬼に変身
私はキャラバンを守るように距離を少し置いて先頭を歩み、皆様の進むべき道を確保します
十階建て相当の炎の化身。太陽……とまではいかないでしょうが、暖かな光源にはなるはずです

私の炎は消えません。消させたりしません
誰かを守ろうと心に刻む限り、この光は誰かの助けになるのならば


宇冠・龍
由(f01211)と参加
キャラバンの護衛希望

娘の逞しくなった後姿を誇りに思いながら、キャラバンに同席させて頂きます

信じ続けるという感情は、中々に強くエネルギーを使うもの
心に余裕が生まれなければ、信じることも他者へ優しくすることも難しくなってしまうでしょう
だからこそ、手を取り合い助け合うことが、この暗闇の突破口に続くのだと思います

【談天雕竜】で百の騎馬隊を、ランタンの明かりと共に周囲に護衛として散開
私自身は戦闘行為ができませんが、救助活動ならば問題ありません
持参した食料を配給します
移動しながらなので、豪勢とはいえませんが香草付けた干し肉に暖かなパンと水
少ないですが十名ならば全員に行き渡るはず



●ともしび
 闇の道無き道を彷徨っていたキャラバンに、次々と猟兵が合流していく。
 シルクハットに三揃えのスーツ。小柄な、白い毛並みに鮮やかに輝く青い瞳。
 松明に照らされた彼の顔は淡く輝いて、神秘的に見えたことだろう――アレン・カーディス(旅の人形遣い・f05232)は帽子を脱ぎ、紳士的な一礼をキャラバンの面々へと向けると、
「旅にトラブルはつきものとはいえ、とんだ災難だね」
 気さくに労った。
 ぱちりとウインクを向ける様は人形のようでもあり、髭を動かすような細かな表情は確かに猫らしい。
 旅人には思えぬ品の良い仕立て――だが、靴は履いていない。長い旅路に耐えるのは、自前の肉球である。
「出でよ」
 一言唱えて召喚するは、仄かに光る小鳥の自立自動型人形。
 一斉に羽ばたけば、光の群れのように彼らを導く。
「一羽一羽は頼りなくてもこれだけいれば……――うむ、少しばかり多かったかな……?」
 いや、大は小を兼ねるという。恐らく大丈夫だろう。うむ。
 君もそう思わないかと問うてみたアレンだが、キャラバンの一員は目を丸くしたままだ。
 灯りはキャラバンの全貌を明らかにした。荷台はふたつ。馬に引かせ、騎乗し御する二人と、先導役が一人が馬に乗り、他は徒歩七人で代わる代わる周囲の警戒にあたっていた。
 キャラバンなどといってみたが、それほど立派な物では無い。荷台はぼろぼろで、幾度となく旅路の最中、修復された跡がある――苦労しているのだろう。
 労るようにアレンは目を細めて、頷く。
「さぁ、暗闇にとらわれる前に疾くと抜けようではないか」
 五体ほど先行させていた鳥が、不意に脅威的な輝きに気付いて、その場で滞空している。
「おや」
 アレンは鼻をひくり動かした。
 先で待っていたのは、ふわりと空に浮かぶ愛らしいマスク。だがその下の肉体はドレスごと燃えて、闇の中に赫と輝いていた。
「良かった、無事に合流できましたよ、お母様」
 宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)がその背に佇む宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)へと声をかける。
「あんたらも猟兵……ってことかい」
 先導役の男は、もう驚きを顔には表さなかった――慣れたのだろう。ただ、若者は、またしても目を丸くし、年嵩の男に惘れられている。
 そんな表情の数数に、未だ彼らは闇や狂気に搦め捕られておらぬのだと、安堵を覚えながら由は頷き、告げる。
「守ることに関しては得意と自負があります――私達も同行させてください」
 力強く請け負う、そんな娘の姿を誇らしげに見守り、龍は穏やかな笑みを浮かべていた。
 その時だ――アレンが不意に耳を動かし、顔を上げた。
 オォオオオ、虚空から、恐ろしい声が響いてくる――。
 一瞬、表情を強ばらせた人々へと、龍が儚げな笑みを向けた。
「信じ続けるという感情は、中々に強くエネルギーを使うもの」
 反射的に浮かび上がる疑念を取り払おうとするように。
「心に余裕が生まれなければ、信じることも他者へ優しくすることも難しくなってしまうでしょう……だからこそ、手を取り合い助け合うことが、この暗闇の突破口に続くのだと思います」
 言葉を向けながら、彼女は目を伏せ、力を織る。
「悪鬼百鬼と数えれば、七転八倒列を成す」
 刹那、キャラバンを守るように百の騎馬隊が現れる――悪霊たちはいずれもランタンを所持し、格段と周囲を明るく照らす。
 おお、と歓声が上がる。

 養母の言葉に、由も頷く。
「一寸先すら見通せない闇だからこそ、自分の内側に見えてくるものだってありますわ」
 でも、大丈夫です。私たちがついております――告げた彼女の躰が、ゆらりと大きく揺らめいた。
 少女サイズの炎の躰が、不意に大きく膨れあがる――炎は高く燃え上がり、見上げても追いつかぬほどの巨躯へと変わった。
 三十メートルほどの鬼。その姿は先程までの愛らしさとは、離れてしまったが、キャラバンの面々は動じなかった。
「太陽……とまではいかないでしょうが、暖かな光源にはなるはずです」
 確かな熱気は、そこに燃える炎が本物であることを示している。
 上空より囁く声音の柔らかさも、先から変わらぬ。
「私の炎は消えません。消させたりしません――誰かを守ろうと心に刻む限り、この光は誰かの助けになるのならば」
 さあ、参りましょう。炎の鬼が歩き出すのに合わせ、再びキャラバンは進み始めた。

 然し猟兵とは多種多様な存在だ。
 解っているが――ひとりの若者は、目頭をぐっと押さえる。突如とキャラバンに加わり、救援に来ました、と告げる猟兵をまたひとり向かえた、その瞬間は浮き立ったものだ。
 何せ皆、心強く。言葉でも励ましてくれる。
 見知らぬ相手に疑心暗鬼に駆られそうな心も、温かな光の中では少し前を向いた。
「光はいくらでも調整できますので」
 カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)はそんなふうに告げるものの。すっかり閉口したキャラバンの人々の内心はどうだろう。
 彼女は本当に慈悲深い微笑みで、彼らに笑いかけたつもりだった。おお、さすがは教皇さまと崇められるに相応しい笑みを。
 ――実際は、眩しくて、何も見えなかった。
 女神の加護でぴかぴかと輝く彼女は、確かに光源として貢献している。たとえ目の前に三十メートルに至る炎の巨人が歩いていたとして、神の作る呪いの闇は、本当に絡みつくように這い寄ってくる。
 行く手は明るいが、少し気を抜くと、闇の膜に遮られそうになる。声をかければ彼女たちは止まってくれるとはいえ――手元を照らしてくれる輝きは、ひとりひとりの心を勇気づける。
 ああ、それでも。
「なあ、リーダー……」
「言うな。助かってる」
 いいながら、先導役も目を閉ざした――至近距離が、明る過ぎてうぜぇ。
 言いたくても言えない、そんな切ない言葉だ。
 そんな彼らの元へ、後ろから龍が近づいてくる。
「香草付けた干し肉に温かなパンと水です――皆さんの分は足りるでしょう」
 先程、後ろの方々には配ってきましたから、告げつつ、彼女がそれらを手渡そうとした時だった。

 グォキュ~! グルルル……。

 地獄の底から響くうめき声のような――すわ、獣かと身構えた若者の後頭部を、何かが叩く。
 スパーン!
 吹っ飛んでいくような衝撃――実際、吹っ飛んだ。少し前にいたアレンが、驚きながら受け止めた。ケットシーとはいえ、一般人を支えることくらいはできるのだ。
「失礼、私のお腹の音です」
 ハリセンを手に、空いた片手を腹へ当てて、彼女は神妙に目を伏せた。憂う表情は、やっぱり、光の中で見えないのだが。
 幸いあれ、かの一撃は、呪いを祓う女神のツッコミ。心を蝕む疑念を祓う。まあ、それを祓ったところで――という感想は誰もが胸にしまい、口にしなかったが。
 彼女は今や無我の境地。真っ直ぐ歩く。最短を歩く。面倒くさいから。お腹が空いているから。さっさと仕事を終えるのだ。
 良くも悪くも、その表情も女神の輝きの中に隠されて、傍迷惑な神聖さは顕示され続けていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
セロ(f06061)と

灯を腰に吊り下げキャラバンの傍へ
なんの力も持たない脆い身で、
幾多のいのち繋ぐために荷運ぶ勇敢を護りたくて

笑って右目の花を毟り取れば
不可思議な膂力でひょいと荷を担ぐ
疲れたひとがいたら背負ってあげるけど

……ばけものは、こわいかな

困ったように首を傾げた刹那、
名を呼ばれてはっと疑心暗鬼が霧散する
いつも飄々とやさしいきみの声は
今はどこか歯車が軋んだような、

セロ! こっち向いて!

塞がった両手の代わりに、
額をごちんときみにぶつけて伝えよう
セロはわたしに空を盗ってきてくれた
偉大なるシーフで魔法使いだってこと

きみがきみを疑っても、わたしが証明してあげる
だから笑って――ええ? そんなに硬い?


セロ・アルコイリス
花世(f11024)と

キャラバンと聞けば余所事じゃねーし
がんばってるヒトは是非とも救けてーですね!

花世の灯りで足んなきゃ光魔法『属性攻撃』使いつつ、
ラファガで荷物運んだりすんの手伝いましょうか

え? いや、別に奪らねーですよ?
ねぇ花世、……かよ?
本当にあれは花世?

おれは確かに盗人で、
……あれ? まだおれも魔法使いになる前?
疑う相手はヒトより己へ
けれど突如頭に響いた衝撃に目の前に星が飛んだ
いっ──?!

瞬けばそこには姉のよに慕う牡丹の君が居て
告げられた言葉にぽかぽかすんのはこれが、

……花世、思ったより石頭ですね
って困ったように笑う

『うれしい』だって、識ってる
でもちょいと気恥ずかしいから言わねー



●きみの心
「キャラバンと聞けば余所事じゃねーし、がんばってるヒトは是非とも救けてーですね!」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)の力強い声音に、境・花世(はなひとや・f11024)も自然と笑みを零す。
「にしても、充分明るいですね。楽ちん楽ちん」
「視界は、ね」
 気楽に寄りがちなのは、セロの性質だ。言葉ほど軽く考えているわけではないと識っているが――咎めるわけでもないが、自分はあまり気を緩めないようにしようと、花世は笑いながら思う。
 灯を腰に下げていることに、意味が無いわけでもない。
 神の呪いというべき闇は、輝く光を吸い込んで、すぐにとろりと黒を滑らせてくる。通常の暗闇とは違うらしい。灯りを持たず暫し離れれば、あっという間に迷ってしまうだろう。
 猟兵たちがこれを克服できるのは不思議でも無い。
 だが、力を持たぬキャラバンの人々も、果敢にこの闇に挑んでいる。諦めず、荷を運ぼうとしている。
「なんの力も持たない脆い身で、幾多のいのち繋ぐために荷運ぶ勇敢を護りたいから」
「ですね」
 セロの相鎚に微笑んだ花世は、無造作に、極自然に。右目の花を毟り取った。
「疲れてない? 少し荷物、かしてもらえるかな」
 途端、解き放たれるは女性らしい躰でありながら、脅威的な膂力。ひとりが重そうに背負っていた荷物を受け取ると、片手で軽々持ち上げた。
 驚いた表情に悪戯っぽく笑いかけると、なんなら、と付け足す。
「歩けないなら背負ってあげるよ」
「いえいえ、流石に!!」
 自分で歩きます――若者は恐縮して隊列に遅れぬよう駆けだした。
 逞しーと、笑ったセロは「おいで」と優しく囁き、風を纏う白い翼竜――ラファガを喚ぶ。
「荷物、運びますよ」
「そんなこといって、荷物もってくつもりじゃねえよな」
「え? いや、別に奪らねーですよ? ねぇ花世、……」
 キャラバンの男は盗賊だと名乗ったセロに、冗談半分問うて。それに、軽く彼も応じたはずだった。
 ――オオォオオ。
 風が吹く。微笑した表情そのままに、彼女がぽつり、囁いた。
「……ばけものは、こわいかな」
 困ったように首を傾げる。
 心に荒ぶ、風の音が呼んだ、一瞬の虚だ。鮮やかな髪を風に躍らせる女の姿を見て、セロの表情が、消えた。
「……かよ?」
 本当にあれは花世?
 胸に浮かんだ疑問が、不意に、自分の大地を揺るがした。
「おれは確かに盗人で、……あれ? まだおれも魔法使いになる前?」
 疑心暗鬼は、他者に向かず。
 己という存在に向かう。
 今、自分は誰と何をしている。自分はなんだったのだろう――。
 自分を不可解に見つめる彼に気付いた花世は、即座に地を蹴る。
「セロ! こっち向いて!」
「いっ──?!」
 視界に星が飛んだ。ぱちぱちと、セロは目を瞬く。
 視界いっぱいに、花の色が広がっていた。心配そうな表情で覗き込んでくる花世は、額を合わせたまま、優しい声音で告げる。
「セロはわたしに空を盗ってきてくれた、偉大なるシーフで魔法使いだよ」
 ゆっくりと、確認するように。
 彼の裡にきちんと届くように。
「きみがきみを疑っても、わたしが証明してあげる。だから笑って――」
 ――真摯な眼差しに、すっかり冷静になったセロは軽く目を瞑り。
 ふ、と表情を緩ませ、笑う。困ったような、居心地の悪そうな。
 ほっとした花世がお互いの表情がしっかり確認出来る程度に離れたタイミングで、セロはしみじみ言う。
「……花世、思ったより石頭ですね」
「ええ? そんなに硬い?」
 割れるかと思いました、悪戯っぽい口調で告げれば、姉のように慕う人は、再度困惑の声を上げる。
 こんなふうに誤魔化してしまうのは、多少、申し訳ないとは思うけれど。
 この零下でも胸の辺りを温める何かが――『うれしい』だって、識っているから。少し乱れたマフラーを巻き直しながら、口元を隠す。
(「でもちょいと気恥ずかしいから言わねー」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

無間・わだち
pow

護衛に動きます
助けが、必要なんでしょ
なら、やりますよ

死に損ないの身には大したことない寒さでも
只の人間には厳しいのが当たり前だ
懐中電灯の明かりは暗闇で相当に目立てる
不安にさせぬよう声掛け

物資の運搬、お疲れ様です
あなた達を安全圏まで送ります

キャラバンの安全最優先に
移動速度も彼らに合わせ
空腹の者には用意した食料を渡し
動くことままならぬ者はおぶるなり手を貸す

…これ位、どうともないんで
それより
貧しい誰かの為に、毎回頑張ってきたんでしょ

不安になるのはわかる
けど、あなた達は皆で何度も一緒に旅してきたんだ

今回も
あなた達を導いてきた彼を
最後まで、信用しろよ

…こういうのは、慣れてないんだ

【救助活動、優しさ】


ユルグ・オルド
絶えぬ火を
灯して行き来するってのはなかなか酷なもんだよね
此処で潰えりゃ待ってる人の希望も一つ擦り減るもんで

キャラバンが無事抜けられるように護衛といこう
吹き付ける風に紛れる声は
そうネ、いつでも寄る辺のあった覚えもない
だから迷わず駈けるしかねェんだよ
もしももしかして、もっと良い方法を
知ってるんなら迷いもしなかったろうけども

さあ、火が足りないなら持ち込んだカンテラどうぞ
灯りのないのは心許ないでしょ
キャラバンの灯が見えてんならこっちも多少安心だとも
自分の火としては咥えた煙草に小さく燈し
軽口とともに止めずに在ろう
運んでいるのはなんだっけ、待っているのは誰だろう
そんだけのよすががあるなら、十分だろう



●不確かな行く先の
 細い光が、闇に浮かんでいる。
 佇んでいたのは、外見から不思議な青年だった。
 オッドアイは稀というほどでもないが、少女の容貌と瞳をもつとなれば――無間・わだち(泥犂・f24410)は、相当に浮き世離れした印象を彼らに与えた。
 彼の装備は薄着だが、平然としている。人々は知る由もない――彼が、死者であることを。
 ただ、既に猟兵なる奇っ怪な技と知識をもつ存在に、彼らは馴染んでしまったので気に留めぬ。彼が何者であろうとも、そういう見目の存在なのだ、と受け取るだけだ。
「物資の運搬、お疲れ様です。あなた達を安全圏まで送ります」
 丁寧に名乗りを上げる。声音の柔らかさに、キャラバンの面々はむしろ安堵する。
「食料も用意してきましたので」
 宜しければどうぞ、わだちが荷を解いた時だ。
 ――オオオオオ、強く吹きつける風に乗って、おぞましい声がする。
 猟兵たちから励まし、支援を受けて――随分と柔らかな表情を浮かべていた人々が、身を強ばらせる。
(「……そうだな」)
 体感して、わだちは裡で頷く。この心を逆撫でする感覚は、彼でも居心地が悪い。
 行く手に灯りを得て、腹が膨れても。疲労を消せるわけでは無い。此処までずっと、消耗という旅を彼らは続けてきたのだ。
「絶えぬ火を――灯して行き来するってのはなかなか酷なもんだよね」
 ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)が言う。
 飄飄とした空気を纏いながら、さっくりあっさりと、場の空気を変えてみる。
 或いは、この世界において、当たり前の淘汰、そのひとつなのかもしれぬ。その原因がヴァンパイアにあるとしても。いいや、なればこそ。
(「此処で潰えりゃ待ってる人の希望も一つ擦り減るもんで」)
 手を貸さぬ、理由にはならぬ。
 遮るものもない世界では、声を遮断するものもなく。耳を塞いでもこの声は届いてしまう。
 ユルグは赤い双眸を軽く伏せ、呟くように言う。
「そうネ、いつでも寄る辺のあった覚えもない」
「剣士さんでもかい」
 年嵩の男の問いに、ユルグははっきりと首肯した。
 彼らからすれば、こうして色鮮やかな衣裳を纏い、立派な武器をもった彼らは――そしてその常人よりも強い力を目の当たりにしたことで、ある意味ヴァンパイア達と匹敵する、そんな強さを覚える対象だった。
 それでもさ、とユルグは続ける。
「だから迷わず駈けるしかねェんだよ――もしももしかして、もっと良い方法を……知ってるんなら迷いもしなかったろうけども」
 微かな笑い声を立てれば、緊張が緩む。
 弱音は吐けないが――男が顔の傷に触れながら、明後日を向き、ひとりごちる。
「若い奴らに、無理はさせて――悪いと思うこともある。ただ愚直に、荷を積んで届けるしかないのではな」
 自嘲の声に、そんなことないさ、とユルグは顎で傍らのやりとりを示す。
 若者から荷物を一つ引き取ったわだちが、大丈夫だと頭を振っていた。
 体格は、彼の方が優れている。蓄積させた疲労も当然乍ら無い。軽々と荷を背負うと、若者へと躰を休めるように言い、水を渡す。
「……これ位、どうともないんで。それより――貧しい誰かの為に、毎回頑張ってきたんでしょ」
 左右異なる目で、真っ直ぐな視線を彼へ向ける。
「不安になるのはわかる……けど、あなた達は皆で何度も一緒に旅してきたんだ」
 風が吹く度に、心の中の何かが不安を煽ろうとも。
「今回も――あなた達を導いてきた彼を、最後まで、信用しろよ」
「……――」
 率直な言葉に、若者は暫し閉口し。
 そっすね、と照れたように笑う。疑いを覚えてしまう自分を恥じたのか――先導役を尊敬するという感情に、照れたのか。
 そのやりとりを前に、にやりと口の端を上げるだけで、ユルグは進路へと向き合った。
 ただ歩くだけってのも暇だねェ、と煙草を咥えて火をつけて、彼は嘯く。
「先じゃ、誰が待ってるんだい」
「――今回は女子供ばっかが残された村だよ。可哀想に、働き手は殺されたってな。物資を運ぶだけじゃ解決にはならねえけど」
「へぇ。そりゃ、着いたら英雄だろうねェ」
 軽口を叩きつつ、そんだけのよすががあるなら、十分だろう――。
 足取りが軽くなったような、若者の背を見送り――巧く出来たかな、わだちは誰にも聞こえぬように囁いた。
「……こういうのは、慣れてないんだ」
 ぽつりと零して闇を見上げる。標のない世界で、猟兵たちが灯す光だけが、ゆらゆらと揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
※グレさん(f13457)とキャラバン護衛

運ぶ荷は、人が夜の世界で生繋ぐ糧だ
狂った神を探しに行くのは
彼らを送り届けてからに

ランタンを腰に固定し光源追加
隊の先導の男性に声かけ
護衛や、灯り追加を担うから気を確かにと

グレさん、殿と先頭どの辺り行きます?
尻を叩くなら、やはり殿ですかねなんて笑い

歌か、それは良い
声を出すと身体も暖まるし
魔除けにもなるかも

闇に潜む影がないか
連れのヤマネと共に夜目活かし警戒
隊の面子の様子も観察し
疲労と不安濃い子から声かけ
温めた飲み物で腹から活力を出させたい

グレさんの分ける甘味と
心強い送り届ける、に頷き重ね

知らぬ声聞くより…
貴方達が越えてきた夜の数と
届ける先の人達を思いましょう


グレ・オルジャン
類(f13398)とキャラバン護衛

燈火の一つは連れの狼に預け
類や仲間と手を分けて広く照らす
腰の引けた若衆は殿かねと後ろを窺い
類に一緒に尻を蹴っ飛ばしにいこうと笑って
ほらほら、若いのに背中丸めてんじゃないよ
妙な声が耳に付くなら、愉快な歌でも歌おうか?
魔除けはいいねと調子っ外れに口遊みながら
闇から庇う位置取りを

類の目はよく働くね、小さな相棒殿も
遠い闇は果てがなくて恐ろしいもんだから
不安な顔には近くの灯りを見つめておいでと促そう
それから時期外れのチョコレートでも
灯りに甘味、芯から温める飲み物までありゃ上等さ

人を豊かにする荷という光を
夜を越え抱えていくのが商人だ
大丈夫、死なせやしない
必ず送り届けるよ



●ぬくもり
 闇に埋没した進路であるが、元より定まった道があるわけではない。
 荒野の淵をなぞるように、神と人の領域の狭間を渡る。元よりそういう旅路だったのだという先導する男の言葉に、冴島・類(公孫樹・f13398)はひとつ頷いた。
 つまり、脱出のための明確なルートは、明るさが確保されても相変わらず手探りだ。何とか目印となる地形を見出して、そこへ目掛けて進むだけ、らしい。
「運ぶ荷は、人が夜の世界で生繋ぐ糧だ」
 狂った神を討つことも重要な仕事だが、彼らの事も見過ごせぬ――類が、己の意志を確かめるように囁き、振り返る。
「ああ、その通りだとも」
 女が頷く。グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)の燃えるような赤い髪の尾が描く軌跡は、闇の中にあっても鮮やかだった。
 それも灯りを吊せばこそ。キャラバンの位置は最早見失うのが難しい程に眩いが、暫し距離を取れば、個々は闇に隠れてしまう。
 少し先を行く、灯りを咥えた狼が時折こちらを振り返る。グレの家族たる狼は、彼女の頼みに従って燈のひとつを担っていた。
「グレさん、殿と先頭どの辺り行きます?」
 類が尋ねると、グレは顎に手をやり、キャラバンの頭から殿までを一瞥するように首を傾げた。
「腰の引けた若衆は殿かね」
「――尻を叩くなら、やはり殿ですかね」
 すかさず緑の双眸を細めて類が返すと、にっと彼女は笑みを向けた。

 疲労と、神経衰弱に――猟兵に荷物を預けているにも関わらず、青年の足取りは重そうだった。
 神の声が気にならぬよう、猟兵たちはあの手この手で励ましてくれる。
(「――でもよ、報われるのか……? この闇を抜け出して、その後は?」)
 辛い旅路を思い返し、長い溜息を零す。俯いた瞬間、ばしんと肩を叩かれ、若者はなんとも素っ頓狂な声をあげた。
「ほらほら、若いのに背中丸めてんじゃないよ」
 溌剌と、グレが早足で追い抜いていく。似たような様子の若者の背へと軽い気合いを入れつつ、彼女は朗らかに笑う。
「妙な声が耳に付くなら、愉快な歌でも歌おうか?」
「歌か、それは良い」
 得心したように類が頷く。肩に乗せたヤマネがちょろりと右から左へ、移動する。
「声を出すと身体も暖まるし、魔除けにもなるかも」
 魔除けはいいね、彼の言葉を気に入ったグレは、調子外れの歌をうたう。
 品良く聴かせるのも悪く無いが、皆で唱和し、少し笑えるくらいが丁度良い。
「ほら、あたしばっか歌ってる――あんたらも何か歌いな」
 誰も笑いやしないし、さっきこっそり貰った酒だって呑んでただろう――目敏い指摘に、照れたように頬を掻く。
「え、じゃあ……」
 ひとりの男が、漸く歌い出す。いいよ、と囃してグレも続ける。
 数人が調子づいて賑やかになってきた――類はそんな彼らを楽しそうに見守りながら、同時に闇に潜む影がないか、注意を払っていた。
 その肩で、相棒のヤマネ――灯環も同じく目を光らせ、彼の歩みに合わせて四方を見張っている。
「類の目はよく働くね、小さな相棒殿も」
 もう良いだろうと暫し隊列を離れたグレの労いに、類は穏やかに笑って応える。灯環も嬉しそうに胸を張った。
 ふと顔を上げた彼女に倣い、向けた視線の先。歌にも加わらず、ひとりで黙々と歩む男がいる。寡黙に口を噤んだまま、じっと前を見ている表情は、真摯にも映るが――。
「大丈夫ですか」
 横へと並び、問うたのは類だ。
 少し、躰を休めては――温かく湯気を立てる杯を手渡す。
「温めたミルクです。冷えますからね……どうぞ」
「あ、ああ。ありがとう……」
 彼は突然話しかけられたことに困惑した様子で、杯を受け取る。歩きながらで器用に飲むのは、なんやかんやで旅慣れているからだろう。
 目の下や頬に刻まれた焦燥に、類は労りの念を抱いている。彼らが真に安らぐためには、闇を抜けるのが一番なのだろう。勿論、その先に過酷な道のりが残るとしても。
「前を見ていれば、余計な事を考えなくてすむかな、と」
 温かいミルクも手伝ってか、頑なだった口元を緩めると、彼は小さく不安を吐露する。
 どんな言葉を告げようか、類が思案する前を、甘い匂いが横切った。
「不安なら、近くの灯りを見つめておいで。ほら、炎に、電気。なんだか神秘的な光から、よりどりみどりさ」
 軽く片目を瞑りながら、グレが若者へとチョコレートを差し出していた。
「灯りに甘味、芯から温める飲み物までありゃ上等さ」
 くいと後ろを指し示せば、すっかり歌うことに夢中になった若者達が好き好きに声を出している。
 それを聴く年長者たちも、心なしか楽しげな表情を浮かべていた。
 絶えず吹く風と、逃がさぬように追いかけて来る神の叫び。彼らの胸に湧く不安を、温かなもので塗りつぶしていく。
「人を豊かにする荷という光を夜を越え抱えていくのが商人だ――大丈夫、死なせやしない。必ず送り届けるよ」
 力強く、グレは請け負う。
 その言葉に深く頷いた類が、真摯に彼の目を見つめて告げる。
「知らぬ声聞くより……貴方達が越えてきた夜の数と、届ける先の人達を思いましょう」
 二人の鼓舞への応えは、頼もしい首肯――嬉しそうな微笑であった。

 闇を抜けていく。
「脱出だ!」
 嬉々と誰かが声をあげた。闇とそうでない場所を隔てる境界は、くっきりとしていた。明るい方へ、キャラバンは速度を落とさず、かといって駆け抜けていくわけでもなく、自然に踏破した。
 暫し歓喜に湧く彼らと、猟兵たちは労い合い――荷を担いだ猟兵は別れの言葉を交わしてそれを返した。
 その重みに、若者達は苦笑いする。だが、言葉こそ愚痴めいていたが、彼らに躊躇いはなかった。
 酒も煙草も食糧も――灯りも、差し入れた物資は、餞だと、猟兵たちはそのまま預けた。
「世話になった――よい旅を」
 先導役は最後にそう告げて、猟兵たちを見送った。
 闇の中へ残る猟兵たちの姿は見えぬというのに、いつまでも彼らは手を振っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
神殺し(源次の横で頷いて)
信仰の、途絶えた、異端の神…

◆狂えるオブリビオンを目指して
Glim of Anima、狂気耐性…の、ランプを灯し、進む
この光…少しは、心を、落ち着かせる、はず…だけど。相手が、神…なら、気休め、かも

なんだろう…頭蓋骨、内側…が、ざわつく
私の中…の、誰かが、囁く
『お腹が空いたでしょ?目の前の人間を食べてしまえばいいわ』
って、言われて、いる…ような

そうだ、この人、身体の、全部が、機械…ではない
食べられる、とこも、あるはず

…何考えてる、んだろ、自分
顔も、人となりも、知る人を、食べたら…それはもう、『人』じゃない…

私は、人でいたい
だから、前を照らして、しっかり、歩く


叢雲・源次
【煉鴉】
異端の神々…
グウェンドリン、神殺しだ。まるで俺達に対して誂えたかのような任務だな

◆狂えるオブリビオンを目指して
(ダークセイヴァーを訪れると心臓が一層揺らぐのが分かる…俺の心臓に宿ったそれはやはり…この世界に由来するものなのか)
…グウェンドリンが持つランプが闇を払うとはいえ、精神を蝕んでいくのが分かる…心臓が疼きを増し、殺意が精神を塗り潰していく…『見る者全てを斬り殺す』そんな狂気が蝕んでいくを自覚した
隣を往く少女とて例外ではない。その身に邪神を宿しているのならば、尚更だ
だが、しかし

『俺はお前を斬る事はない』

あの日そう宣言した。その言葉を違える事は無い
そう自分に言い聞かせながら、闇を往く



●衝動
「異端の神々……グウェンドリン、神殺しだ。まるで俺達に対して誂えたかのような任務だな」
 叢雲・源次(DEAD SET・f14403)の言葉に、神殺し――その単語を繰り返し、グウェンドリン・グレンジャー(Moon Gray・f00712)は頷く。
「信仰の、途絶えた、異端の神……」
 囁く言葉は凍てつく風に紛れて消えた。
 元よりいらえは求めておらぬ、独り言だ。表情を変えず、彼女は青い光を放つランプを掲げる。
 白い貌が青く輝いて、陰影を深く刻む。
「この光……少しは、心を、落ち着かせる、はず……だけど。相手が、神……なら、気休め、かも」
「信じる」
 源次は短く告げると、進路を見つめた。
 元より、彼らが頼るものは彼女の手にする灯りしかない。方向感覚も掴めぬ闇の中では、あの声を追わねば、辿り着けぬのだ。
 暫し無言で、二人は歩く。吹きつける風が痛いほどに冷たいが、地形はただの荒野だ。
 オォオオオ――。
 唸る声を耳に、源次はあわい光をじっと見つめる。
 だが、胸が微かに騒いで、鎮まらぬ。
(「ダークセイヴァーを訪れると心臓が一層揺らぐのが分かる……俺の心臓に宿ったそれはやはり……この世界に由来するものなのか」)
 地獄の宿った心臓が、何かに呼応するように疼く。
 無意識に、虚空を彷徨った指が――佩びる剣の、柄に触れている。艶の無い闇が精神を侵食していく。
 双眸を鋭く細めて睨む。指先が震えるのは、衝動を逃すためだ。
 ――『見る者全てを斬り殺す』そんな狂気が、堰を切ろうとしている。ふと、グウェンドリンを見る。邪神を宿す少女。斬ってしまえ、心臓が騒がしい。
 柄を強く握る。だが、引かぬ。それで行き場の無い殺意を連動し、微かに息を吐いて、青い光に集中すれば、少しずつ鼓動が落ち着いてくる。
『俺はお前を斬る事はない』
 ――自分が誓ったのだ。
(「あの日そう宣言した。その言葉を違える事は無い」)
 足取りにすら変化を与えぬ。
 片や。少女も額の奥が疼くような感覚に、軽く目を伏せていた。
「なんだろう……頭蓋骨、内側……が、ざわつく」
 空いた片手でこめかみに触れる。別に何も蠢いてはしない――知っている。
 だが声がした。
『お腹が空いたでしょ? 目の前の人間を食べてしまえばいいわ』
 内なる誰かが囁く。よく識っているような、知らぬような――そして、囁き声の儘に、源次をちらりと盗み見た。
 精悍な剣豪は隙の無い歩みを刻んでいる。だが、自分ならば、その虚をつくことも可能――。
(「そうだ、この人、身体の、全部が、機械……ではない――食べられる、とこも、あるはず」)
 それはとても、魅力的な提案に聞こえた。
 だって、空腹なのだ。いつだって。何かが足りぬのだ。
 だが真っ直ぐ前に眼差しを向け、背筋を伸ばして歩く彼に揺るぎはない。彼も、自分のように何かしらの精神の波と戦っているはずなのに。
 少なくとも、彼女が彼を見た時には。柄に手をかけた状態で、源次は先だけを見ていた。
「……何考えてる、んだろ、自分」
 打ち破るように、軽く頭を振った。誰にも気付かれぬ程度の、微かな動きで。
(「……顔も、人となりも、知る人を、食べたら……それはもう、『人』じゃない……」)
 強くランプの持ち手を掴む。青い光が微かに浮かべる三相女神の紋章を、瞼に焼き付けるように見据えて、呟く。
「私は、人でいたい。だから、前を照らして、しっかり、歩く」
 闇を踏みしめて。屠るべき相手に辿り着くまで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
愚鈍な悪鬼共め
彼奴等の後始末をさせられるなぞ癪だが
…まあ一つ貸しとしてやろう

一人、暗澹たる闇に歩を進める
闇は杖に宿した眩いばかりの光魔術で退け
狂える声の元へ、臆する事なく
此の侭、闇を彷徨うのみで良いものか
果して、誠にオブリビオンに辿り着けるのだろうか
脳裏を過る疑問を理性で制し、笑う
無駄に齢は重ねておらぬ
怒りにも疑心暗鬼にも、もはや慣れた
ならば一人、進むのみ
っくく、態々招待してくれるのだ
誘いに乗らぬ謂れはなかろうよ
そして死を以て知らしめてやれば良い
人の感情を弄ぶが如きその愚行を
ふふん、我が寛大なる処置に感謝せよ

闇を進みながら心の底より思う
…孤独は良い、気が楽だ
荒ぶる感情により何人も傷付けずに済む



●ひとり
「愚鈍な悪鬼共め」
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)が過去の残滓、そのまた過去のできごとを嘲る。
「彼奴等の後始末をさせられるなぞ癪だが……まあ一つ貸しとしてやろう」
 掲げた杖は光の魔力に眩く輝き、闇を祓う。
 されど、数メートルの視野を確保したところで、とっぷりと落ちた闇は行く手を隠し、呼び声のみが道標であることも変わらぬ。
 ――オオォオオ……。
 凍てつく風が、スターサファイアの輝きを躍らせる。いつもならば、澄んだ光が大地に落ちるところだが、裡の反射が白粉の肌に映るのみだ。
 全てを飲む込むような闇の中、狂瀾の声を聴きながら、ゆっくりとアルバは歩く。
 征けども、目印となるものは無い。ただただ荒野が広がるばかりだ。
(「――此の侭、闇を彷徨うのみで良いものか……果して、誠にオブリビオンに辿り着けるのだろうか」)
 つと、目を細めた。薄紅の唇が弧を描き、吐息が溢れる。
 ――などという懊悩、弱気を覚えるものか。
「無駄に齢は重ねておらぬ。怒りにも疑心暗鬼にも、もはや慣れた……ならば一人、進むのみ」
 理性を御すのは、魔術を御すのと相違ない。
 軽く目を伏せて心を遮断する。奥から浮かぶ不安に似た靄を、奥底に押しとどめ、微笑する。
「っくく、態々招待してくれるのだ――誘いに乗らぬ謂れはなかろうよ」
 耐えられるならば、後はただの呼び水に過ぎぬ。
「そして死を以て知らしめてやれば良い。人の感情を弄ぶが如きその愚行を」
 歩調は変わらぬ。
 風と、叫び声の他は――己が立てる布擦れと、足音以外の音は無く。
「ふふん、我が寛大なる処置に感謝せよ」
 喪われ、狂った神を終わらせるために、距離を詰めていく。何も無い世界だが、匂いだけは僅かにあった。乾いた土と、痛みを伴う冷気と、饐えた血の臭い。
 ああ、ひとたび、アルバは完全に目を伏せた。
 殺気が鋭利と磨かれていく。悪鬼を赦さぬ、その心は正義とも呼べようが――。
「……孤独は良い、気が楽だ」
 虚空を定めて囁く。
 荒ぶる感情により何人も傷付けずに済む――その声音を、誰も、何も拾いはしない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティレット・クロワール
神様のお膝元だなんて。追い出されなくて良かった
暗闇も怨嗟も馴染みがある。進むことに憂いは無いさ
どうせだったらこうパーンって賑やかにしても良いんだけどねぇ

誘われるままに進めば
風の唸り声の向こう、遠い日の弔いの鐘を聞く
慣れた暗闇を、知らぬものへと落とそうとする鐘の音
光を知って見た闇はーー…

ーー朽ちかけの神が、俺を煩わせるな

毒も疑心も飲み干した俺が、辿り着く底にあいつはいない

闇へと引きずり込む狂気も常にある
結局最後は何もかもーー……

うーん、よく無いなぁ

剣に手をかけようとして、衣に隠していたランプを外に出す
蒼白く輝く炎は闇を道行を照らして

明るいなぁ。
あぁ。そうだね。もう一度炎を知ってしまう方が、よほど



●底で眠る
「神様のお膝元だなんて。追い出されなくて良かった」
 軽やかな自嘲を共に、スティレット・クロワール(ディミオス・f19491)はのんびりと周囲を見渡した。
「暗闇も怨嗟も馴染みがある。進むことに憂いは無いさ――どうせだったらこうパーンって賑やかにしても良いんだけどねぇ」
 白い司祭服に纏わり付く闇をそのままに、彼は歩き出した。
 声が誘う方向へ。
 ――オオオォオオ……。
 風が耳元で唸る。それ以上に、彼方からの哮りが低く空気を震わせる。
 幾重にも膨らみ煩く響く声が、いずれ種類を変えていく。勝手に記憶の底を浚って、変えていく。
 ――脳裡で、鐘が鳴る。
(「遠い日の弔いの鐘……知らぬものへと落とそうとする――」)
 いつかの記憶が甦る。生々しい感情が、勝手に蓋を開けて出てくる。
 思わず、瞳を閉ざした。闇よりも明るい底で、何かが蠢いている。それは、自分の――。
「――朽ちかけの神が、俺を煩わせるな」
 忌々しく吐き捨てる。
 スティレットは軽く俯く。銀髪が音を立てて肩から滑り落ちていく。いつもの輝きは闇の中に隠れ、何も見えなかった。
 自分が纏う衣さえ、この世界ではただただ真黒だ。だが、其の方が正しいのではないか。喉の奥で、欺瞞を詰まらせる。舌の先で、嘘で戯れる。
「毒も疑心も飲み干した俺が、辿り着く底にあいつはいない」
 藍の双眸が宿す光は、鈍い。だというのに、見据える相手をひやりと凍えさせるような、冷めた眼差し。
 その先には、ただ虚空が広がるだけである。
(「闇へと引きずり込む狂気も常にある。結局最後は何もかも……――」)
 己は、結局。
 諦観か、達観か。或いはもっと別の名がつく感情なのやもしれぬ。
 暫し――スティレットはそのまま、じっと風の止む間を待った。何かを考え込むように。実際の所は、突如と荒ぶった感情を宥める、理性が追いついてくるのを待っていただけだ。
 細く、淡く、息を吐く。
「……うーん、よく無いなぁ」
 乾いた笑いを浮かべて、剣の柄へと伸ばしかけた指を、衣の裡へと向ける。
 取り出したランプは、蒼白く輝く炎を揺らめかせた。
 スティレットは目線の高さまで掲げると――闇で煌々と輝くそれを、眩しそうに見つめた。
「明るいなぁ。あぁ。そうだね。もう一度炎を知ってしまう方が、よほど」
 ――目指すべきは冥府ではなく。
「君たちもそう思うかい?」
 周囲に転がる頭蓋骨に、つと問い掛けながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
此の道外れずとも、容易く揺らぐ
そう自覚して暫く経つ
女々しさを自嘲すれど
…知るが故に、標を定めてゆける

風と誘いだけであるならば
脇目振らぬよう
少しでも耳を塞げるよう
頭から外套を被り
手元には洋燈と、ちっぽけで古びた羅針盤
伸びる細い鎖は手首に巻き付けて

視線は明かりの中
彫られた星が示す鋒、ただひとつに注いで
貰って十数年にもなろうか
…頼りにしている、我が星

凍てる息も流れ去ろうと
爪先が感覚を失おうと
光の向こうに、今は見えぬ導きの背を見て

本当に、信じるに足るのか
一歩先は奈落ではないか
俺のこれは真に本心か
或いは
次々と過る雑音には
足らぬとすれば己の覚悟
追う星は疾うに定めた筈と叱咤し
掌中の星を守るよう握り締め、前へ



●星示す先
 闇に、佇む。長躯の男は更に深く黒く、空間にあった。
「此の道外れずとも、容易く揺らぐ」
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は凍える風に前髪を遊ばせながら、ひとりごつ。
 ――そう自覚して、暫く経つ。存外己が持つ女々しさに、自嘲を湛えた。
 然し、だからこそ。
「……知るが故に、標を定めてゆける」
 己は揺らぐのだ。声に惑わされてしまう。それを識るならばこその手を打てば良い。
 ――オォオオ……。
 風が吹き、声を運ぶのを、遮るように外套を頭から被る。
 幾分か冷気が遮断され、音も遠ざかる。心を揺さぶるような狂瀾の衝動も、少し遠ざかったような気がした。
 片手に掲げるは洋燈と、ちっぽけで古びた羅針盤――伸びる細い鎖を、手首に巻き付ける。
「貰って十数年にもなろうか」
 こんなに華奢な存在だっただろうか。
 改めてまじまじと視線を落とし、ジャハルは道標にそっと囁く。
「……頼りにしている、我が星」
 後はじっと唇を閉ざし。黙々と、歩む。
 彫られた星が示す鋒だけを見つめ、荒れた野を征く。
 向かいから風が斬りつけるように肌を傷めようと、彼の眼差しは揺らぐことなく、一点を見つめ――その光の向こうに、今は見えぬ導きの背を見る。
 ――……オオオォオ。
 しつこく、神は問う。
 疲れを覚えるには些か早い距離で、心に隙間が生まれるのは――凍てつく風の所為だろうか。何処も見果てぬ闇の所為だろうか。
 己の声が、頭の中で響く。
 ――本当に、信じるに足るのか。
 羅針盤はとうに出鱈目ではないか。これを信じるという決心そのものが、誤りではないのか。
 猜疑の言葉が次々と浮き上がってくる――。
(「一歩先は奈落ではないか――俺のこれは真に本心か」)
 ――否。
 惑うとすれば、惑う己の心の弱さゆえ。
 雑音に耳を貸すほど、優しい性質ではなかったはずだ。
「足らぬとすれば己の覚悟」
 ゆっくりと、大きく頭を振る。少々乱雑にだが、雑音を振り払い、声にする。
 信じるものは、遙か前に決めている。
「追う星は疾うに定めた筈」
 黒き双眸が意志の光で闇を払い。星宿す片角の存在を、外套の中で妙に強く感じる。
 掌中の星を守るよう握り締めると、力強く踏み出した。
 白き骸を踏み越えて、石畳を踏み――血の臭いが、強くなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
響く声が殊更に音を拾う耳に纏わり付く
振り払おうと頭を振ったとて大した効果も無く
知らず伝い落ちる汗が冷たい肌を撫でる感触が気持ち悪い

煌々燃える松明の火の揺らぎ
大きく吸って吐いた息が身の裡の熱を浚っていく

敵の元へと行くならこの声を便りに歩かねばいけないというのに
何処からか聞こえる別の声が邪魔をする
ぐつりぐつりと腹の底から這い出ようとする狂気
身に纏う影が皮膚を喰い潰していく様な、そんな─

呑まれるな

言い聞かせ踏み出す足は
一歩歩む度に酷く重く感じる
煩わしい影を払おうと形成した屠がどろり溶ける様な
瞬きの錯覚
己の腕に喰い込む程に強く強く爪を立てた

──嗚呼、気持ち悪い

つうと流れる朱の雫で意識繋ぎ止め
また、一歩



●いたみ
 ――オオオオオ……。
 煩い――華折・黒羽(掬折・f10471)は身を捩るようにして、蹲り、耳を塞ぐ。
 だが、意味は無かった。耳を押さえようと、頭を振ろうと、効果は得られず。
 冷や汗が顎を伝って、落ちる。無意識に、全身を冷たく撫でる汗の感覚がただ気持ちが悪い。
 尾は縮こまり、寒さを和らげるようなぬくもりは得られそうに無い。
 ゆっくりと、大きく息を吐いて――吸う。
 深い呼吸の最中、澄んだ青に映りこむは、松明の揺らぎ。闇で煌煌と輝く、熱源。
 赤と橙の輝きに、何とか正気を、軸を取り戻す。
「――行かないと……」
 膝に力が入らない。それでも何とか立ち上がり、不安定ながら、前へと一歩踏み出す。
 だが、崩れ落ちそうになる。驚く程、芯が無く――自分の躰とは思えぬ。背中で、羽がふるりと揺れた。ただ重い。
(「敵の元へと行くならこの声を便りに歩かねばいけないというのに」)
 神の声ではない。それから呼び起こされる別の声が、邪魔をする。
 笑い声と、泣き声と、……――。
 頭を締め付ける痛みは鼓動の度に強くなる。
 ぐつりぐつり、と。
 腹の底より這い出してくる狂気。身に纏う影が皮膚を喰い潰していく様な――黒羽は喉を掻くような動作を無意識に、息苦しさを吐き出すように、発した。
「呑まれるな」
 叱咤し、躰を前へと傾ぎ、脚を動かす。
 一歩、一歩。
 酷く重い脚を、身体を、引き摺るように闇を這う。
 周囲に漂う錆び付いた血の臭いも、良くなかった。色々な悪夢を呼び起こし、正気の一瞬を逃がさぬよう狂気に引き摺り込む材料となった。
 風が相変わらず煩い。
 彼の意識の内か外か、煩わしい影を払おうと黒剣を形成し――したはずの、屠が、溶けて崩れてしまう――。
 呼気が乱れた。
 瞠目し、半身振り返る。だが、そもそも彼は剣を抜いていない。
 かは、と喉の奥が痛んで、咳き込んだ――息を止めていたらしいが、どれほどだか解らない。自分の感覚という感覚が、自分の制御から離れていた。
 腕を押さえ、強く爪を立てる。猫の爪は自身の腕を容赦なく穿ち、朱を滴らせる。
「――嗚呼、気持ち悪い」
 だが、この痛みの方が余程、現実的だった。
 松明に照らされる白亜の柱跡。ここには何が居たのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァン・ロワ
【影鏡】
アドリブ◎

オニーサンが厚着なだけじゃない~?
汗かかない様に俺様が預かってあげようか
ハイハイ~っと

完全な暗闇でもなければ闇の中でも影はある
なら俺様は【君は子羊】で眼を呼び出して進もう
特に明りをつける様子もなく飄々と振舞ってみせて

狂気も呪いも慣れたもの
元より自分以外を信用することなんてない
ああ、けど―
狂気に惑わされたオニーサンがもし斬りかかってきたら
それはそれで楽しそうだ
けど同時にがっかりするんだろうなぁ

どっちに転がっても面白い
そう思うと笑いが零れる
首根っこを掴まれても愉快そうに
―半面見えない闇で牙を構え
え~俺様の事心配してくれたの~
やさし~
そんじゃ敵が来たらオニーサンは俺様が守ってあげる


杜鬼・クロウ
【影鏡】
アドリブ◎
名呼ばず
厚着
光源は金蓮火で照らす

慎重に闇夜進む
夜雀召喚
暗視で確認
最短距離行く

お前寒そうな格好してンなァ
貸してヤらねェケド
…凍死しても知らねェ
護衛は他のヤツに任せて抜けるぞ
声なんぞに惑わされる俺じゃねェわ

と数分前まで思う

(犬っころの気配ねェな
ついて来てるか?
この暗闇に乗じて敵が成りすまして…流石に考えすぎか)

妙に疑心暗鬼に
気許した覚えもねェし
コレは何時も通りの警戒心で、と自分に言い訳
声は夜雀の超音波で波長少しずらす

あんま俺から離れンなや(首根っこ掴み
ハ?駄犬が自惚れてンな
固まってた方が万が一の時に対処しやすいからだ
お前に守られるか弱いお姫サマじゃねェンだよ
テメェの身を案じてろ



●背中を任せるわけでもない
 夕赤と青浅葱の瞳が、傍らの男を上から下まで眺めた。
「お前寒そうな格好してンなァ」
 惘れを隠さず言う杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は、首まで確り詰めた厚着だ。ある意味珍しい。
 んー、灰色の瞳を訝しげに細めて、ヴァン・ロワ(わんわん・f18317)は首を傾げる。
「オニーサンが厚着なだけじゃない~? 汗かかない様に俺様が預かってあげようか」
 などといって手を伸ばしてくるのを、適当に払い、クロウはヴァンを置いて歩き出す。手元では黒地に金蓮花柄の着火具鳴らし、蝶を象る火の粉がふわりと浮かぶ。
「貸してヤらねェケド……凍死しても知らねェ」
「ハイハイ~」
 適当にヴァンが応えるのを横目で睨みつつ、蝙蝠の式神を放って闇へと踏み込んでいく。
「護衛は他のヤツに任せて抜けるぞ――声なんぞに惑わされる俺じゃねェわ」
 離れていく彼の背を見やり、ヴァンはおかしそうに口元を歪める。
「なら俺様は――」
 影に潜む無数の眼と共に。
「完全な暗闇でもなければ闇の中でも影はある」
 告げる言葉は真摯に似て。然れど踏み出した足取りは、闇の中に消えたクロウを追うようで、ふらりひらり飄飄と覚束ない。
 灯りすら、必要としなかった。
 眼は周囲の警戒に当たっているが、それ以上に僅かな灯りを纏うクロウの姿は見逃さぬ。彼の歩調や気配の変化も、程々見ている。
 周辺には何にも面白いものはない。精々足場が、荒れ地から、石畳になってきたくらいか。血の臭いがして、ぞくぞくする。ただ、新鮮なものではなさそうだ。
 ――オオオォ……。
 虚空を唸る風の音へ、耳を立てた。神の嘆きか、狂瀾の悲鳴か、忘れたが。これが確か、人を不審にさせる力をもつというやつだ。
 他人事のように彼は思い出す。
 ヴァンにしてみれば、狂気も呪いも慣れたもの――元より自分以外を信用することなど、ない。
「ああ、けど」
 態とそれなりの距離をとって歩く、クロウの背を眺めながら、ふと思いつく。
(「ああ、けど――狂気に惑わされたオニーサンがもし斬りかかってきたら……それはそれで楽しそうだ」)
 双眸の宿す光は暗夜で敵を狙う狼の如く、鋭く輝く。
「けど同時にがっかりするんだろうなぁ」
 にやと笑う。さあ、現実はどうだろうねぇ。でも、どっちに転んでも面白い。
 などという発想から――息を潜め、気配を闇に顰める、悪戯心と共に。
 そんな不穏な気配に気付いたわけでも無く――クロウは、不意に脚を止めた。
 僅かな光源に映る世界に、彼はひとり。置いていったのは己とはいえ、連れの気配も無い。周囲には血の臭いが漂い、時折朽ちて長いこと経った骸が転がる。
 そんなものに怖れを抱くクロウではないが。
「犬っころの気配ねェな」
 神の声が煩く喚く力は、菫青石のピアスで安らげているはずだ。
(「ついて来てるか? この暗闇に乗じて敵が成りすまして……流石に考えすぎか」)
 弱気にも似た、自分の考えに舌打ちする。
 ふるりと、底冷えする冷気に身を震わせ、彼は忌々しそうに闇を睨んだ。
(「気許した覚えもねェし――コレは何時も通りの警戒心だっての」)
 疑心暗鬼になったわけではない。自分の身に及ぶ危険への、正統なる警戒だ。
 堪え切れず、にやにやと笑っている男の気配を間合いの裡に感じた瞬間――クロウの腕はその首を引っ掴んでいた。
「あ、オニーサン」
「あんま俺から離れンなや」
 猫のように首根を掴まれたヴァンは愉快そうに笑う。
「え~俺様の事心配してくれたの~」
「ハ? 駄犬が自惚れてンな。固まってた方が万が一の時に対処しやすいからだ」
 すげない返答に、へへ、と軽い笑みを見せる。
 その灰色の瞳の底にある――昏き衝動を。彼が隠し持つ牙を。
 クロウは理解しているのだろうか。
「やさし~そんじゃ敵が来たらオニーサンは俺様が守ってあげる」
「――お前に守られるか弱いお姫サマじゃねェンだよ。テメェの身を案じてろ」
 へらへらとしたヴァンの軽い言葉に、遮る厳しいいらえと、眼差し。
 互いに解っていても、いなくても――いいのだ。今は。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】
運屋の心配は無用と確信し闇の果てへ

まぁ打ってつけだな
俺達みたいなのには
(この狐の返しは常の事――そう、闇の中に在っても、常と変わらぬ調子で進み)
え、冷たいコト言うなよ
唯でさえ寒いんだから!
ってうわやっぱナシナシ、寄るなよ逆に鳥肌立つ!

(――鬼や妖の類を宿し、狂気とも呪詛とも常に隣り合わせのこの身
耐性もあるが、其以上にこの闇に惑わず進める由は――)

胡散臭いのはお互い様とはいえ
お前も本当良い趣味してんな!

(嘗ての様にモノとして、心を殺し無になれば、疑心もわかぬのだろう
でも俺は、ヒトとして歩むと決めたから
殺すのではなく、強く、一心に
紡いで来た縁と信を――揺るがぬ其を光明として、闇を抜ける)


千家・菊里
【花守】
救援はきっともう十分
なれば我らは解放へ
――土地は無論として、はてさて――

え、君と一緒にされるのはちょっと
(緩く笑い、UCに破魔と耐性を込めて闇を照らし)
冷たい?ならもっと寄り添います?
なんて、俺とてそんな寒気が酷くなる真似に本気で走りはしませんとも

(灯す炎はしかし、お守り程度のもの――これが無くとも、この男はもうきちんと迷わず進めるのだろうと、何となく心内で思いつつ)

しかしこんな所まで連れ立とうとは
腐れ縁もいいところですね
俺が牙剥いたらどうするんです?なんて――

(本当に、人間臭くなったもので――その顔ならば大丈夫なのでしょう
俺も心配なくこの腐れ縁を続けられるというもの
不安等、欠片も)



●怪、連れ立ちて
 見果てぬ先を見やり、不敵な笑みを刷きて。
「まぁ打ってつけだな、俺達みたいなのには」
 呉羽・伊織(翳・f03578)が軽い調子で告げれば、千家・菊里(隠逸花・f02716)はえっ、と目を瞬いた。
「え、君と一緒にされるのはちょっと」
 狐火を召喚し周囲へ並べながら――拒否と微笑と、声音に宿る在り方はよく知っているから、伊織も負けじと斬り返す。
「え、冷たいコト言うなよ――唯でさえ寒いんだから!」
「冷たい? ならもっと寄り添います?」
 首を軽く傾げて、一歩身を寄せてくる――のを、伊織が同じだけ下がって距離をおく。
「ってうわやっぱナシナシ、寄るなよ逆に鳥肌立つ!」
 割と切羽詰まった声音で拒絶されるを、笑って受け入れ、俺とてそんな寒気が酷くなる真似に本気で走りはしませんとも、菊里もしゃあしゃあといってのけて、狐火を操る。
 二人の進路のその先を照らす。数はいちいち数えるなら六十近くあるのだが、広すぎる深淵の前にはちっぽけだ。
 赤き眼差しを細めて、菊里は伊織の背を眺める。軽口を叩きながらも、彼の足取りは確りと目指す場所へ向かっている。
 ヤドリガミと、妖狐、呪詛や狂気もお馴染みではあるものの。
 異界の神。狂い変質したそれの声は、胸の裡に漣を立てる。
(「鬼や妖の類を宿し、狂気とも呪詛とも常に隣り合わせのこの身――」)
 真摯と虚空を見つめる伊織は、気付かれぬように息を吐く。
 たとい、独りであっても、狂瀾に乱れるような無様はしない自負はある。だが――。
(「其以上にこの闇に惑わず進める由は……」)
 周囲に浮かぶ、柔らかな光。炎であれば、近づけばぬくもりもある。
(「嘗ての様にモノとして、心を殺し無になれば、疑心もわかぬのだろう――でも俺は、ヒトとして歩むと決めたから」)
 殺すのではなく、強く、一心に。紡いで来た縁と信を――。
 口に出せば、適当に混ぜっ返されるに違いないが、それすら想像出来る存在に、彼は笑いを殺す。
 片や――惑わず前を見る伊織の横顔を窺いながら、菊里もひとり頷いた――彼は安定している。
(「仮に――これが無くとも、この男はもうきちんと迷わず進めるのだろう」)
 そっと瞼を下ろす。それが頼もしいと思うか、底知れぬ不安が残るか。
(「本当に、人間臭くなったもので――その顔ならば大丈夫なのでしょう」)
 鼓膜を揺らす神の声も、こうなれば虚しいな、と密かに零す。
 結局、器物であろうが、ヒトであろうが、伊織は信を持って惑わぬ。そんな彼の内心を悉に知る菊里ではないが、彼の声音、所作、眼差しから、伝わるものはある。
(「俺も心配なくこの腐れ縁を続けられるというもの……不安等、欠片も」)
 それを口に出して、告げることはあるまい。少なくとも、今は。
 いっそ、悪戯心が芽生えて、ゆるりと尾を揺らす。
「しかしこんな所まで連れ立とうとは腐れ縁もいいところですね。俺が牙剥いたらどうするんです?」
 冷めた言葉が背後からかかって、伊織はじとりと横に並んだ菊里を見つめた。
「胡散臭いのはお互い様とはいえ、お前も本当良い趣味してんな!」
 ふ、と吐息が溢れるような笑みを浮かべるだけで、菊里はそれ以上何も言わなかった。

 ――狐火が照らす光景は、異郷であれど解る、曾ては神殿と呼ばれたであろう建造物の成れの果て。
 とはいえ、壁は一切無く、柱も膝までも残らぬ残骸だ。石畳も破れて久しく。決して歩きやすいものではなかった。まだまだ闇は先まで続き、果てなどそもそも存在しないかの如く。
 黙殺してきた骸どもは神殿に近づく毎に増えて、それがいつからのものかも解りはしない。
 今まで一切の気配を感じなかった旅路の中で、いよいよ闇の向こうで蠢く気配を嗅ぎ取る。
 錆びた血の臭いが、近づいてくる。
 だが今更、その正体を問う必要はあるまい――オブリビオン。
 神に喚び寄せられて闇を彷徨う、その信者だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『異端の神に捧げる処刑人』

POW   :    幸あらんことを
自身の【肉体】を代償に、【斧に歪んだ信仰】を籠めた一撃を放つ。自分にとって肉体を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    神は希望を与えて下さる。神は、神は、かみかみか
【自己暗示により限界を超えた筋肉】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    救いを、救いを、救いを成す為。立ち上がれ
【心や身体が壊れても信仰を果たす】という願いを【肉体が破損した者、昏倒した者】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●失われしは……
 ――その神は、両眼を潰されていたのだという。
 見つめるだけで相手を縛る邪眼で、数数の神を支配することができた。獣を隷属させた。一切の武を振るう事無く、である。
 然し、力に傲れた彼は、遥か格上の神をただ『見つめた咎』で、両眼を潰された。
 愚かなことで最大の武器を失った事実と、惨めな自らの姿をひどく恥じ――闇の中に閉じこもった。
 強すぎる瞳の力を失った神は――他の感覚がとても鈍かった。最愛の存在を、徐々に認識出来なくなった。
 そして、永い時を経て、神は考えた。
 ――その愛も、私の目の力によってもたらされたもので。
 ――最初から自分を見ている存在など、いなかったのではないか、と。

 そう、かの神は甚大な力を持っていたのに、愚者の象徴として語られる逸話ばかりが溢れているのだ――。

 かつて異端の神を崇拝するものたちがいた。
 神が狂い出した後、敢えて闇の中に身を投じて殉じたものたちの魂。
 彼らがどういう教義を持って、神に仕えたのかは今は解らぬ。
 ただ、その身はオブリビオンとして報われた。骸の海より現世へと甦り、それが本来奉ずる神か否かも問わぬまま、光に惹かれる羽虫が如く。
「救いを、救いを……」
 昏冥の最中を錆びた斧を引き摺りながら、処刑人はただ、血を求める。
 ――新たなる、神の供物を捧げるために。

○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
【プレイング期間】3月2日(月)8:31~5日(水)いっぱいまで(6日日付変更まで)

●捕捉
前章と変わらず、先の見通せぬ闇はそのままです。
如何に戦うかはご自由に。
神の声も同じく聞こえますが、こちらは触れられていない限り、特別描写の予定はありません。
○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
……運命の、押しつけ、私嫌い
あなたたちの、行い……どす黒い、善意
(腰から、うっすらと青く光るカラスの翼を生やして)
そんなに、救われたい……なら、何も無い、静かなとこに、行くと、いい
今から、案内して、あげる

私は……捕食と、生命力吸収……乗せて、Feather Rainを、放つ
巻き込めるだけ、巻き込む……ため、空中戦で、飛んで、固まっているところへ、突っ込む
斧の一撃、激痛耐性で、我慢
代償で、弱ったところ、叩く

討ち漏らし、Mórríganで、すれ違いざまに、傷口を抉ったり、Black Tailを伸ばして、叩く

……分かっ、た
(足元の影から、すぐに消える人魂のようなものがペッと吐き出される)


叢雲・源次
【煉鴉】

どうやら俺はつくづく邪教というものに縁があるらしい
UDCアースでも、アポカリプスヘルでも、そして此処ダークセイヴァーでも…
是非もあるまい…それが俺の宿業であるならば。

(胸の内に燻る何かが強烈な嫌悪感を放つ。これは、心臓に宿るそれから発しているものでは無い。これは、俺の感情そのものだ。怒りと憎しみ。身勝手な信仰心とそれを押し付け命を簒奪するものに対する者へ対する、憤怒だ)

地を爆ぜさせんばかりの踏み込み
斬り、屠る
ただそれだけを込めて、鞘から電荷を纏った刃が射出され、一閃を振るう

悪食も程々にしておけグウェンドリン、奴らを喰らったとてそれは強さにはなるまいよ…ヒトであろうとするのなら猶更だ



●冒涜
 闇の中、冷徹な赤の視線が処刑人を鋭く貫く。
「どうやら俺はつくづく邪教というものに縁があるらしい」
 声音は冷徹に、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は低く構える。一瞬で居合うことが出来るよう、鍔を鳴らし。
「UDCアースでも、アポカリプスヘルでも、そして此処ダークセイヴァーでも……是非もあるまい……それが俺の宿業であるならば」
 その姿勢の儘、微塵と動かぬ。
 静なる殺気に呼応するように、ふわりとグウェンドリン・グレンジャー(Moon Gray・f00712)が軽く浮いた。
「……運命の、押しつけ、私嫌い。あなたたちの、行い……どす黒い、善意」
 腰から、うっすらと青く光るカラスの羽を広げ、扇の睫が瞬きを打つ。
「そんなに、救われたい……なら、何も無い、静かなとこに、行くと、いい――今から、案内して、あげる」
 羽ばたきが、地を打って、彼女は重力から解き放たれる。
 闇の中に青く輝く鳥が一羽。
 眼下を指さすように伸びるは長い尾羽根。彼女は身を倒すと、ぐんと高度を下げ、処刑人どもへと飛来する。
「下がって。この、羽根……は、当たる、と……痛い。」
 グウェンドリンは源次へと忠告を放つ。言われるまでもなく、彼は既に間合いを空けている。闇の中、深き闇の羽がブレードより放出される。
 図らずも不可視に近いそれを処刑人どもは躱せるはずもない。
 肉が裂ける鈍い音、粘性の何かが弾けるような音が次々と前方より響くを、源次は聴いた。
「幸あらんことを」
「幸あらんことを」
 されど、その苦痛とて神へ奉じるものであると。全身を羽で射貫かれようと、斃れた他者の身体を踏み越えて、処刑人は斧を高く掲げて応酬する。
 近づくものを引き裂くようなグウェンドリンの翼は、風と共に彼らを蹴散らしたが、細い腕にうっすらと朱線を与えた。
 彼女は微かに眉を顰めるだけだ。無言の儘、空に逃れ、その尾羽で貫いた肉より命を取り込む。
 瞬間的にぽかりと朱で染まった空間に、源次だけが取り残される。
 処刑人どもが迫ってくる気配が、それらがしきりに「幸あらんことを」と繰り返していることに、源次は僅かに目を細めた。遠くを定めるに似た、違う発露。
 ――胸の内に燻る何かが強烈な嫌悪感を放っている。
 俗に、血気が逸るとはいうが。これは些か異なった。旅路において感じた、心臓の感覚とも違う。
(「これは、心臓に宿るそれから発しているものでは無い。これは、俺の感情そのものだ」)
 確かめるように、彼は瞼を閉じた。
 敵の呼吸で距離は解る――元より暗闇、視界に然程の意味は無い。
(「怒りと憎しみ。身勝手な信仰心とそれを押し付け命を簒奪するものに対する者へ対する、憤怒だ――」)
 静かに呼気を吐いて、吸う。
 刹那、源次は爆ぜ跳ぶように距離を詰めていた。
「……その間合い…戴くぞ。」
 籠めるは、斬り、屠る――ただその一心。
 解き放たれた刃は電荷を帯び、闇に鮮やかに輝く。斬り上げの所作が通り、ずるりと処刑人どもの身体が斜めに落ちた。
 傍らに降り立ったグウェンドリンは、言葉少なに剣士を労う。彼女の腰から生えた翼と、続く長い尾羽根がさり気なくオブリビオンの死体を包んで、咀嚼するように蠢いた。
 納刀しながら、それを横目で認めた源次は、淡淡と言う。
「悪食も程々にしておけグウェンドリン、奴らを喰らったとてそれは強さにはなるまいよ……ヒトであろうとするのなら猶更だ」
「……分かっ、た」
 素直に頷くと。彼女の影は、ぺっと何か霞のようなものを吐き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
ジェイ(f01070)と参加

「神がいるとして、ソイツァ人の味方かは怪しィモンだぜ?」

ジェイには任されたと敵に突っ込む
バラライカをぶっ放して【先制攻撃】
派手にばら撒いて【挑発】【おびき寄せ】る
イイ感じに釣れたら銃弾で【なぎ払い】

ジェイは【かばう】
同時に【援護射撃】で野郎のケアは怠らねェ
防御は【盾受け】
多少の傷は【激痛耐性】で無視する

「オィオィ、随分とアブねェ得物使うじゃねェか」

野郎の戦いに口笛
頼もしいねと嘯くと新たな煙草に火を点けて【ドーピング】

ジェイの援護に【鉄血の騎士】を発動
銃が紅く染まり凍りつくような音で哭く

「派手に踊るぜ! ロックンロール!」

【乱れ撃ち】で根こそぎに【吹き飛ばし】てやる


ジェイ・バグショット
ザザ(f07677)と

この世界にまともな神がいるとは思えんが…、アンタは神を信じるか?

俺は後方から行くぞ。
…どーもパワータイプは苦手でな。

拷問具
【傷口をえぐる】『荊棘王ワポゼ』
棘の鉄輪を複数空中に召喚。多方面から輪を強襲
【恐怖を与える】『首刎ねマリー』
、断頭台と拘束具が個別に飛来。拘束具で囚われた対象を断頭台の刃で切断
武器は自動で敵を追尾し攻撃

月が世界を赤く染めたら俺の独壇場
寿命が縮むのも気にしない

影のUDCテフルネプでザザの支援
【第六感】と【カウンター】で敵の攻撃を防ぎザザの攻撃を通すよう動く

…道は開けてやる。あとは頼むぜ?
ザザが派手に暴れてくれんなら幸い
俺自身は【闇に紛れて】の【騙し討ち】



●赤の世界で
 闇の中で、吐息が零れる――嘆息と共に、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)が惘れを混じり、胡乱そうな視線で敵を見やる。
「……この世界にまともな神がいるとは思えんが……、アンタは神を信じるか?」
 問われた方は眉を軽く上げて応える。
「神がいるとして、ソイツァ人の味方かは怪しィモンだぜ?」
 まあ、そんな助言をやつらが聞き入れるとは思わねぇが、ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)は唇を笑みで歪める。
 ああ、とも、あー、とも。曖昧なジェイの声音に改めてからりと笑ったザザがじりと石畳を踏みにじるように立つ。
 対し、その場から動かぬジェイが、彼の背へ告げる。
「俺は後方から行くぞ……どーもパワータイプは苦手でな」
「任された」
 さらりと受け止めるザザの様子に、ひとたび笑みを湛え、自らの血で、拷問具を呼び起こす。
 ふわりと天冠が如く浮き上がった鉄棘輪。左に拘束具と、右に断頭の刃を備え、ジェイは冥く笑う。
「おやすみの時間だ。」
 いつしか、上空に紅い月が出ている。無論、この闇に月が浮かぶはずがない。
「……月が世界を赤く染めたら俺の独壇場だ」
 宣告するや否や、世界は黒から、赤く塗りつぶされる。
 回転した鉄輪と、数多に伸びた拘束具が、処刑人どもに襲い掛かる。
 掴まれば最後、鉄輪は次々に処刑人の頭にめり込む――それでも、彼らは尋常を超越している――神、神、と譫言のように言いながら、斧を振りまわそうとするところへ、後から飛来した断頭刃が首を落とす。
 ヒュウ――高らかな口笛が囃す。
「オィオィ、随分とアブねェ得物使うじゃねェか」
 頼もしいね、嘯きながらザザは煙草に火をつける。巡る破魔の力を確かめるように、愛銃を握りしめる。
「神は希望を与えて下さる。神は、神は、――!」
 かみ、かみ、と狂ったように繰り返すそれの体躯が膨れあがる。拘束具を引きちぎり、前へと突進するようにジェイの凶器を回避しながら迫る前に、ザザが潜り込む。
 オラ、軽く合わせるように声を発すると、腕に固定した盾で受け流し、身体を返しながら短機関銃を至近距離より叩き込む。
 ぬるい血霞を浴びつつ、腕を平行に動かし掃射を続けながら、ザザは転がるように前へと駆る。
 立ち塞がる処刑人は、片腕を失ったことでより猛々しく斧を振り下ろす。走る烈風が前髪を断つ。それを嘲るように笑う彼の横を、棘の鉄輪が鮮やかな孤を描いて閃く。
「……道は開けてやる。あとは頼むぜ?」
 血を撒き散らす戦場を引いて眺めながら、ジェイが試すように問い掛ければ、クッと愉快そうに喉を鳴らして、ザザは応える。
「幸あらんことを!」
 力強い祈りと、破れかぶれの一刀だった。身体を傾ぐことでザザは回避するが、深く踏み込んだ処刑人の斧が予想より伸びる。
(「面白いじゃねェか」)
 その理由が、肘が半ば断裂しているからであると――ザザの赤い瞳が捉えて細くなった。
 相手の脇腹を蹴りながら方向を転換しつつ、彼は斧が掠めた頬より滴る一滴を親指で拭って、目線と同じほどに銃を構えて手を添える。
「鉄と血によってのみ問題は解決する」
 魔器形態に変化させた銃を、神なんぞに全てを捧げる亡者に突きつけ、放つ。
「派手に踊るぜ! ロックンロール!」
 バラライカは独特な射撃音を響かせ歌い――合わせて舞い踊る、赤と処刑人の身体。
 硝煙の匂いさえ掻き消す濃密な腐臭がたちまち彼らを捉える。
 ふたりの道は赤く染まり、やがて月の輝きが消えたならば――再び闇の中に埋没した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
セロ(f06061)と

灯は消して闇に紛れていよう
異形の右目はひかりなんかなくたって、
蠢く妄執を捉えて標的にできるから

ああ、でも、きみの火があんまりきれいで
見惚れずにはいられない
浄化の切っ先を追うように花の種を撒き散らそう
救いたいのなら、救われたいのなら、今

――咲かせてあげるよ

花咲かす傀儡を操って同士討ちさせ、
斃れたらまた種を植えて芽吹かせて、
空っぽなまま動く生贄はわたしによく似てる
やさしいきみの声に頷いた表情が、
ちゃんと笑えていたならいいのだけれど

セロ、ねえ、最期は燃やしてあげてくれるかな
闇の向こうまで届くくらいにあかあかと
誰ひとり信じないひとりぼっちの神さまは、
愚かで、哀れで――さみしいね


セロ・アルコイリス
花世(f11024)と

なんでしょう、コレ
腹の底がムカムカする
あんたらの言う救いってのは
自分達への?
それとも、おれ達への?

敢えて花世とは離れて【旱魃】、
光で折角隠れた彼女の姿を暴かないように
戦場駆けて
狂気を祓ったなら花世へ目配せ
ええ、生贄と救済を同時にさせてあげましょう

踊るよに操っていく彼女の姿が
綺麗なのにどこか無機質で
とおくて
銃で支援するついでにひと言
……こいつらとあんたは違いますよ、花世

落ち着いたなら
花世の願いに灼熱の属性魔法で応じましょう
闇に籠もった神サマを照らしちまうくらいに

ねえ花世、教えてください
あの神サマのコトを思うと、なんか喉が苦しいんです

――ああ、
これが『さみしい』、ですか



●ひかりと花
 ひときわ強い風が、虹を帯びる白い髪を揺らして乱す。
「なんでしょう、コレ――腹の底がムカムカする」
 身じろぎもせず立つセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は、目の前に立ち塞がるもの達へ、強い視線を投げた。
「あんたらの言う救いってのは自分達への? それとも、おれ達への?」
 東雲色の双眸は疑念に満ちている。相手へか、自分の不思議な感情へか。
 腰の鞘より抜いたダガーを水平に構え、セロは魔力を織る。
「誰の所為でもなく、ただ。」
 短い刃が、赤く燃え上がる熱の刃を重ねる。太刀ほどに伸びた輝きを手に、いけますかね、とでもいうかのように虚空へ大きく瞬きして、彼は地を蹴った。
 それを、闇の中で見つめる花も応えるように瞬く。
「ひかりなんかなくたって、蠢く妄執を捉えて標的にできるから――」
 ひそり、境・花世(はなひとや・f11024)が囁いた。
 彼女の自認通り、セロと離れて、闇で駆ける。彼が強く輝く温かな光を放てば、闇も濃くなる――。
「……ああ、きれいだ」
 思わず見惚れ、微笑を湛えた。
 躍動する炎の一閃は処刑人とぶつかる度に小さく爆ぜて、花が咲くようだ。
 けれど、彼が盗むのは命ではない。証左、彼のダガーは次々と処刑人達の胸を貫くけれど、肉を抉り、身を燃やすような惨劇は起こらぬ。
 セロが振るうは、狂気を浄化するひかり。
 ただ棒立ちになった処刑人達は、振り上げた斧をどうしていいか解らぬように途方に暮れる。
「――ええ、生贄と救済を同時にさせてあげましょう」
 微かな笑みに、目配せ一つ。
 頷くやいなや、花世の四肢が跳ねる。彼の辿った道を追いかけるように、合間を縫って、種を植える。彼女に宿る、百花の王――そのひとつひとつを、仲間に加える。
「救いたいのなら、救われたいのなら、今」
 憐れみを、親しみを込めて、さけよ、と促す。
「――咲かせてあげるよ」
 大輪の牡丹が狂い咲く――脳裡を、心に根を張って、処刑人を支配する。
 ズタ袋から零れる薄紅の花弁が、場違いに鮮やかだった。花世の思う儘、舞うが儘に、彼らは互いに斧を向け合う。
 凶悪な刃が、肩を裂き、額を割り――死者になったのなら、更に彼女は種を植える。
 再び死骸は花に操られ、立ち上がり、処刑人としての勤めを同胞へと向けるのだ。最早、その心に信仰は無く。その頭脳に思考は無い。
 そっと、セロに気付かれぬよう――花世は嘆息する。
(「空っぽなまま動く生贄はわたしによく似てる」)
 残酷なことをしているなどとは思わないが――もし、そう思ってしまえば――わたしは一体、どうなるのだろう。
 僅かに物憂うも、別の処刑人が迫ってくる。きちんと、見ていた。
(「綺麗だけど――花世、」)
 とおい。
 唇だけで囁いて、セロは目を眇めて狙いを定める。
 花世が斧を見極め躱せば、髪を掠める。一筋の髪が闇に散る――彼女が反撃に転じる前に、そのズタ袋の中心に穴が空く。
 銃をくるりと回して、セロが不敵な笑みを向けていた。
 刹那の静寂に、足音と、馴染む声が届いた。
「……こいつらとあんたは違いますよ、花世」
 優しい声音に応えるために、確りと彼の顔を、花世は見つめた。比較的素直に表情を変えるはずの自分の顔が、どういう風に動いたのか、よくわからない。
 ――ちゃんと笑えていたならいいのだけれど。
「セロ、ねえ、最期は燃やしてあげてくれるかな。闇の向こうまで届くくらいにあかあかと」
 敵の気配へ、背中合わせに警戒しながら、彼女は問うた。
 その意図に、セロは目を瞬いて――察して、ダガーを天へと掲げた。
「えぇ――闇に籠もった神サマを照らしちまうくらいに」
 彼の手より灯されたあかあかと燃える光が、動かなくなった処刑人も、花に捕らわれた処刑人も、焼べていく。
 こうして送る事で、彼らが信じた神に届くのだろうか――。
「ねえ花世、教えてください。あの神サマのコトを思うと、なんか喉が苦しいんです」
 熱の輝きを見つめながら、今度はセロが問う。
 頬に掛かった髪を軽く掻き上げて、花世は僅かに視線を落とす。
「誰ひとり信じないひとりぼっちの神さまは、愚かで、哀れで――さみしいね」
 ああ。彼は納得したように表情を変えた。それがどんな様子なのかは、花世には見えなかったけれど。
「――これが『さみしい』、ですか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

無間・わだち
轟々と
茫々と
片耳から入って、通り抜けていく声
今は、どうでもいい

変わらず電灯は点けたまま
この方が目立っていいですよ
敵の気を惹くのにも十分だ

疾走、疾駆
敵がなるべく集団で纏まった地点に突っ込む
一度死んだ身体に
今更ダメージがあろうが関係ない
【限界突破】

他の猟兵から十分に距離を保って
駆動音が唸る大剣を三度、ふたつ重ねて
限界を超えた肉の繊維諸共
ズタズタに裂いてしまえ
【2回攻撃】

もろに攻撃を喰らうほど
やさしくもない
避けられる動きのものは
確りとよく見て、全て躱す

神様が希望をくれたことなんて
一度もないでしょ

俺の元に救いは
どこにもなかった
愛されるべき
あの子にも来なかった

あなた達も、それは同じだ
供物にすら、成れない



●其はただの肉塊
 形の違う双眸を閉じる。
「今は、どうでもいい」
 風の音も、神の声も――無間・わだち(泥犂・f24410)は瞳を開く。
 電灯を手にした儘、彼は佇んでいた。
 闇はいつかどこかで見たものよりも深い。彼の視野においては、電灯の伸びたひかりまで。相手は何処まで見えるだろうか。
 いずれにせよ、この方が目立っていい――敵の気を惹くにも充分だろうと、わだちはそのまま駆る。
 迎え撃つ処刑人たちはわだちを認めると、何事か叫きながら、斧を振り下ろしてくる。それを掻き分け、彼は走った。
「神は希望を与えて下さる」
「かみは、かみは――」
 狂った声音が降ってくるのを、色の違う双眸は冷ややと見つめると、寂寥の滲む声で、そっと告げる。
「神様が希望をくれたことなんて、一度もないでしょ」
 処刑人たちの膨張した体躯が、斧を加速させる。風を切って唸る刃を横飛び躱せば、電灯の明かりがランダムに跳ね返ってくる――前方を囲まれた――望むところだ。
 わだちは軌道を見極め、身を傾げる。まともに食らうこともないが、無傷でも済まない。肩に、腕に、刃が浅く疵を刻む。背に熱が走ったが、感覚は鈍い。
 一度死んだ身体に、今更ダメージがあろうが関係ない――。
 痛みなど知らぬように淡淡と、彼は処刑人どもを限界まで引き寄せると、彼は手元の大剣を駆動させた。
「皆、殺した虫のことなんて覚えてない」
 体内の暗黒の竜巻を操り胎動した偽神兵器は、唸りを立てて三度閃いた。
 暗闇に、斬撃だけが数十メートルを奔り、膾と刻む。
 どんなに強化された筋肉繊維だろうが容赦なく断ち切り、ばしゃばしゃと、濃厚な血の臭いがわだちの周囲に広がった。
「――俺の元に救いはどこにもなかった……愛されるべき――あの子にも来なかった――」
 右肩を撫でながら彼は呟くと、電灯を構え直す。
「あなた達も、それは同じだ……――供物にすら、成れない」
 ぴしゃり、血潮と肉を踏みしめながら、わだちは先へと進む。既にその眸は先だけを見据えて、揺れることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティレット・クロワール
私を楽しませてくれたお礼をしたいのだけれど
まだ見えないのは残念だなぁ

常闇は我が庭。深淵も狂気も、慰めにもならない。

神の声が聞こえれば笑って、処刑人さん達も来てる頃かな
灯りは落とさぬように衣にひっかけて

私を供物にするのには向かないと思うよ?

でも今の私は機嫌が良いからね。
君たちの嘆きを聞いてあげよう

私の満足する答えをくれたらね

詩の蜜酒で嗾け問いかける
その希望は、君たちを救ってくれたかな?

うんうん、私が満足するまでだよ。
告解が嫌ならば私の首を落としてみることだ。

強化も結構。獣を盾に使おうか。
さぁ、役立っておくれ

迎撃には剣を。傷は気にしないしね
でもその斧で足りると思わないことだ

指先で喉をなぞって笑おう



●希望
「私を楽しませてくれたお礼をしたいのだけれど――まだ見えないのは残念だなぁ」
 ランプを翳した男は迷いも無く――足取りは、軽やかだった。
 彼は闇を楽しむように歩き、虚空に響く神の声に微笑を浮かべる。
「常闇は我が庭。深淵も狂気も、慰めにもならない」
 歌うように闇に囁いたスティレット・クロワール(ディミオス・f19491)は、前方からの気配に、つと脚を止めた。
 ランプを衣に結わえて固定すると、悠然と腐臭を漂わせる処刑人たちを迎えた。
 ゆらゆらと身体を揺らすように近づいてくる彼らの姿へ、スティレットは一瞬、藍の双眸に剣呑な光を湛えたが――すぐに穏やかなものへ戻る。
「私を供物にするのには向かないと思うよ?」
 軽口を叩いて、清らかなるものの笑みで、首を傾げた。
 或いは、向かう人々の話に耳を傾けるような動作だ。
「でも今の私は機嫌が良いからね。君たちの嘆きを聞いてあげよう……さぁ、私と話をしようか」
 ――ただし、私の満足する答えをくれたらね、と唇だけで囁き。
 蜜の香りを帯びた魔法陣より、異形の角を持つ獣を喚び寄せる。スティレットの問い掛けは、ただひとつ。
「――その希望は、君たちを救ってくれたかな?」
「神は希望を与えて下さる――!」
 それはかく言う。それしか言わぬ。
 そしてスティレットはそれを解とは認めぬ。
「うんうん、私が満足するまでだよ。告解が嫌ならば私の首を落としてみることだ」
 白い貌は無情に彼らを見つめ、嘯き笑う。
 獣が石畳を蹴って、牙を剥く。対し、処刑人は斧を無造作に振るった。筋力の強化によって、斧は凄まじい勢いを誇るが、獣は軽々とそれを潜る。
 遊ぶような獣の躍動を微笑ましく見つめながら、彼も剣を抜く。
 くるりと、衣を捌きながら斧を受ける。
「さぁ、役立っておくれ」
 別の処刑人がスティレットに迫るのを、指示通り、獣が体当たりしながら、腕へと喰らいつく。
 助けを得ながら、彼は問う。
「さあ、今まさに君達に試練が訪れている――希望は、救いたるのかい?」
 憐れな子羊を、拾い上げてくれただろうか。
 闇に光をもたらす美しきサーベルを水平に構えると、力任せに振り下ろされる斧に合わせて跳ぶ。
 受け流し続ければ、処刑人たちは昏倒する――その首を、逆に狩る皮肉に、スティレットは目を細めた。
「さあ、まだ……でもその斧で足りると思わないことだ」
 自らの首筋を、指でなぞり――招くように、微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユルグ・オルド
カミサマ、ッてのもめんどくさいね
どちらに同情したやら肩竦め
なンて、信徒の前で言うもんでないな

咥えた火一つなんて的になるだけかしら
落として、踏み消すと同時に駆け出そう
衣擦れの音を金属音を呟く声を追いかけて
掠める風の声があったとしてもすぐ知れる
同士討ちしないかどうかは
……見えてる人に避けてもらいてェわあ

けれど蠢く気配に闇に慣れた目ならば
きっと間違うこともない
呼気を気配を、錆の臭いを追って
縋ったところで、叶えてくれる?
尋ねたところで応えもないだろうが

骸の海に還るのに、もう意味なんてないだろうけど
せめて暗がりの中で苦しまぬようにと
贄とばかりのブラッド・ガイストでもって
半端にゃしないさ、終わりにしよう



●血葬
「カミサマ、ッてのもめんどくさいね」
 どちらに同情したやら――嘯き、ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は肩を竦めた。
「なンて、信徒の前で言うもんでないな」
 唇を笑みに歪めて、咥えていた煙草を吐き捨てる。
 駆け出す脚で踏みしめ消せば、微かな灯りすら消えて、世界は完全な闇の中に落ちる。
 処刑人どもが動く布擦れの音を頼りに、疾駆したユルグは軽やかに裾を翻す。
 はて、この方法だと、万が一に猟兵に斬りかかる可能性もあるのではないか――そんなことがふと脳裡を過ぎったものの、逡巡と呼べる程の迷いも無く。
(「……見えてる人に避けてもらいてェわあ」)
 ふと笑みに緩むは、そんなことはあり得ぬという自信か、信頼か。
 さて、闇の中。駆ける男と、神の贄を求める処刑人どもは、いよいよ間合いの裡に踏み込む。
 粗い呼気は、自らの存在を隠そうともせず――錆びた鉄、拭えぬ腐臭が強い。
 ああ、先程の考えは杞憂だった。
 闇に慣れたユルグの目は、それらの微かな動きを確りと捉えている。無論、くっきりと見えているわけではないが。
 ねェ――ユルグは囁くように問うた。
「縋ったところで、叶えてくれる?」
 すれ違い様に、素早く居合う。抜刀と同時に処刑人の片腕を落とし、相手の間合いの端まで駆る。
 重みのある音が次々と響く。次々に斬る鮮やかな技倆に、処刑人は怯えも賞賛も浮かべぬ。
 当然、彼の問いへの答えもなく、残った腕で斧を振り上げる。
「幸あらんことを」
「幸あらんことを」
 ――幸あらんことを。狂った唱和にユルグは目を眇めると、刀身に掌沿わせ――血を、己へ捧ぐ。
 刀身を濡らす朱が、その形を、意味を、剣であるままに変じる。
 手首を返して構え直すと、ゆっくりと息を吐く。赤の双眸で処刑人どもを見据えた。
「骸の海に還るのに、もう意味なんてないだろうけど、せめて暗がりの中で苦しまぬように」
 一息で距離を詰める――振り下ろされる斧は先程よりも早く。風圧が、触れぬのに皮膚が弾ける。血潮も、痛みも、ユルグの脚を止める程では無い。いっそ、ぐんと加速し、捕食を望む刃に、処刑人の血を与えた。ずるりと落ちる上半身、袋に隠れた頭は未だに幸あらんことをと呻いた。
 横薙ぎに裂いてくる斧を膝を折って躱し、前へと跳んで、斜めに斬り上げる。続け、一体、二体と立ち塞がる敵を斬り伏せていく。
 真っ赤に染まる刀身は、即ち彼自身でもある――。
「半端にゃしないさ、終わりにしよう」
 まだやるかい、彼は朗らかに問い掛けた。
 ああ、無論、解は不要だとも――解っている。薄く笑って、地を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
いつまで続く
何処まで続く

いつもはこの身を隠し添うてくれるやさしい闇
この闇は違う
身体を散り散りに引き裂くような
理性を引きずり出し持ち去るような
思い全てを…塗り潰すような…

朦朧とし始めた意識の中で辛うじて耳が音を拾った
重々しい風斬り音に咄嗟に受けようと成した屠─のはずだった
またどろり、影は朽ちその手には何もない
痛みと熱がじわり、広がる

なぜ
なぜ

──こくてっ…

呼んでも応えてくれなかったら?
助けては、くれなかったら…?

……ぁ、

宿る力が全てこの身を拒んだような
計り知れない孤独が首を絞める感覚
御しきれない身を敵の攻撃は待ってはくれない

いけない
なにか
何か
このままでは

手繰り寄せた力は──『記憶』の、桜



●ひとひら
 いつまで続く。
 ――何処まで続く。
 重い身体を引き摺るように、華折・黒羽(掬折・f10471)は苦しげに喘ぐ。
 滴る小さな血の珠と伴う小さな痛みだけを頼りに、神の声を掻き消しながら進む彼は酷く消耗していた。
 ――彼は闇を厭うわけではない。いっそ、闇の中に身を隠すことで、安らぎを覚える。
 いつも闇はやさしく、黒羽に寄り添い、守ってくれる存在であった。
(「この闇は違う……」)
 無意識に、頭を振った。脂汗が、顎を伝って落ちた。
(「身体を散り散りに引き裂くような――理性を引きずり出し持ち去るような――思い全てを……塗り潰すような……」)
 黒羽は未だ昏迷の中にあった。戦場であることも承知。敵がいることも解っており、警戒もしていた――今の、彼なりに。
 朦朧とし始めた意識の中。厭う声の狭間に、救いを、という得体の知れぬ声が混ざる。
 全身の毛が逆立つような感覚の中、目を瞠る。鋭敏になった両耳は、確かに迫る風切りの音を聞く。
 だから、黒羽は影を動かした。その中に潜む、彼の牙を呼んだ。
「屠っ……」
 影は僅かに波打って――差し伸べた黒羽の掌で、形を成さず溶けて消えた。
 灼熱が肩に埋まる。
 痛みに伏せて、転がることで、何とか次の攻撃を躱す。だが、再度呼んでも剣は作れない。
「なぜ……なぜ――……こくてっ」
 黒獅子の名を呼ぼうとして、躊躇う。
(「……呼んでも応えてくれなかったら? 助けては、くれなかったら」)
 恐怖を覚えてしまえば、声が萎える。
「……ぁ」
 膝から下の力が抜けて、崩れ落ちる。石畳の上で藻掻くが、巧く立ち上がれない。
 自分に宿る力が全て自分を拒絶したような感覚に、激しい動悸が起こる。確認するのが恐ろしくて仕方が無い。
 計り知れない孤独が首を絞め、息が出来ない――。
 身体が震えて、動かない。
 だが、斧は近づいてくる。血の臭い。自分と、誰かの。振り下ろされる音に何とか応じようと思うが、僅かに身体を捩るだけ。
 痛みが背を襲う。
「いけない――なにか、何か――このままでは」
 目を瞑る。混乱してぐちゃぐちゃな脳内に、ひらり、落ちる何かがある。
 暗闇の中、一片の――白。
 青い瞳が闇に再び開いた。
「白い桜、あなたの桜、今でも鮮明に──覚えてる」
 氷の桜吹雪が、血に染まった黒羽を守るように吹き荒れて、周囲の処刑人を凍らせていく。
 胸を押さえながら、身体を起こし――黒羽はじっと『記憶』の光景を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
ふふん、随分と敬虔な信徒ではないか
貴様等の献身は大いに結構
…だが生憎私は虫の居所が悪い故
悉くを蹂躙させて頂くが、悪く思うでないぞ?

魔方陣より召喚するは【愚者の灯火】
遥か遠くは見通せずとも襲い来る処刑人が見えたら良い
灯火の幾つかを周囲に配置
盾として、そして存在感で敵を此方へ誘導する為
更に幾つか傍らに並べたならば、後は思いの侭に燃やし尽くす迄
処理が追いつかぬならば高速詠唱で何度でも灯火を増やせば良いだけの事だ

彼奴等が信仰のもと、その斧を振るおうとも
灰の一つすら残さぬ程に燃やしてしまえば、恐るるに足らず
神の下僕であろうと――たとえ怒れる神であろうと
アルバ・アルフライラの名において
等しく鉄槌を下そうぞ



●闇に焼べる
 愚直に、ただ贄を求めて断罪する――無論、その罪科が全くの言いがかりであろうとも、ただ己の救いを求め、迷い込んだものの首を落とす。
「ふふん、随分と敬虔な信徒ではないか」
 皮肉を隠さず、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は褒めそやす。
「貴様等の献身は大いに結構……だが生憎私は虫の居所が悪い故、悉くを蹂躙させて頂くが、悪く思うでないぞ?」
 仕込み杖をくるりと回し、星の輝きを闇に散らせる。
 ふふん、笑い混じりに魔力を紡げば、瞬く間に周囲に温かな光が宿る。
 魔法の炎を無数に灯すと、アルバはスターサファイアの眼差しで敵影を捉えた。
 遥か遠くは見通せずとも構わぬ。ただ敵の姿を確認出来れば、それでよい。
 彼の促すように焔が盾と並ぶ。
 処刑人どもはそれを何とも感じぬのか、じっくりとアルバへ距離を詰めていく。
 錆びた斧、彼よりも屈強な体躯。
 ――まともにやり合えば、ひとたまりもない。解っているからこそ、儚い宝石の指で彼らを招く。
 光の方へ。
 贄の方へ。
 ざくりざくりと不規則な歩調で近づくものどもへ、アルバは一斉に炎を解き放った。
 彼の前で、処刑人ども燃料に、ごうと燃え上がった輝きが世界を赤で染め上げる。
 眩しそうに目を細め、杖を握り直す。半身まで炎に包まれた処刑人が、焦げた腕を伸ばして叫ぶ。
「救いを、救いを、救いを成す為。立ち上がれ」
 信仰を果たす――そのためならば、如何なる損壊をも省みない。殆ど死体と化したものたちが幽鬼のように起き上がり始める。
 は――、吐息を零すように、アルバは笑う。その程度で済ますと思うてか。
 囁く声音は涼しく、微笑は何処までも美しい。再度、魔力を集めて放つ。
 同じ数の炎が亡者どもへと容赦なく畳み掛け――今度は骨まで灼き尽くす。
「灰の一つすら残さぬ程に燃やしてしまえば、恐るるに足らず」
 凄まじい火炎より放たれる風圧に、暴れる髪を押さえる。
「神の下僕であろうと――たとえ怒れる神であろうと……」
 冷たい風に、白い灰が吹き飛んでいく。
 再び静かなる闇の中、術士は次の術を結ぶ。派手な目印を灯したのだから、次が来るは道理である。微塵の油断も、彼はせぬ。
「アルバ・アルフライラの名において――等しく鉄槌を下そうぞ」
 いくらでも、何度でも。灯火を業火へ変えてくれてやろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
神などと呼ばれるものが
ただ、こうして
好み望んで聞く者もおらず
闇に紛れて無為に嘆くばかり
全知全能どころか、人と変わらぬではないか

…その神は、自らをも救えぬというに
信徒とは残酷なものだな

暗さで敵が見えぬのなら敢えて無防備に身を晒し一撃受け
方角を、刃持つ根本の位置を知る
此処においては苦痛は只の目印に過ぎず
その頸でも、柄、或いは刃でも構わぬ
掴み捕らえて逃がさぬよう
【竜墜】にて斧ごと砕こう

…戦いは気楽だ
何処へ向かうかなどと悩む必要がない
目指すは、ただその喉元、心音穿つため
ただそれだけ
奪い、壊す事の容易さよ
こんな昏い笑みとて誰にも気付かれずに済む

されども闇の中、見慣れた筈の黎明の色に
今は少し飢えるよう



●闇に墜とす
 外套に隠れた容貌は知れず。闇に紛れた、黒き双眸が鋭く見据える。
 羅針盤を仕舞い、洋燈を消し、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)はまさしく闇と一体化し、錆びた血の臭いへを追うように感覚を研ぎ澄ます。
 その合間に届く、神の声と。ただただ冷たい風に、彼はひそりと息を吐く。
「神などと呼ばれるものが、ただ、こうして――好み望んで聞く者もおらず……闇に紛れて無為に嘆くばかり」
 瞳を閉ざす。闇に覆われた世界で、敵の纏う匂いだけが生々しく届く。
「――全知全能どころか、人と変わらぬではないか」
 何一つ儘ならず、惑うものへ――ジャハルは憐れみを覚える。
「……その神は、自らをも救えぬというに、信徒とは残酷なものだな」
 疑心を覚える声をひとびとは怖れて近寄らず。
 近づくものは、その声を正しく聴かぬ。
 だが、その心に寄り添うのは、ジャハルの役割ではない。彼は軽く踏み出す。風を切って、敵の気配の只中に飛び込む。
 力任せの斧と、祈りの言葉が彼を迎え撃つ。
「幸あらんことを」
 風の変化を読み取り身体を深く傾いで、躱す。右肩に、痛みが走る――それを標と、彼は前へと地を強く蹴って、無造作に右腕を突き出す。
「墜ちろ」
 瞬時、龍と化した腕が呪詛を纏い、処刑人の首を掴んで地に叩きつける。
 斧どころか、石畳を砕き、めり込ませ――首から無惨に歪んだ処刑人を、無情に見下ろす。
 それすら、闇に紛れて定かでは無い。
「……戦いは気楽だ」
 つと零す。
(「――何処へ向かうかなどと悩む必要がない。目指すは、ただその喉元、心音穿つため……ただそれだけ」)
 俯くジャハルは背に迫る気配に、素早く身体を起こし、備える――。
「奪い、壊す事の容易さよ」
 壊すだけなら、灯りも、羅針盤も不要。
 そして指先すら見通せぬ闇の中ならば――外套で隠すまでもなく。
(「こんな昏い笑みとて誰にも気付かれずに済む」)
 肉を打ち、骨を砕く。その感触に淡淡と応じる。片腕を壊した程度ならば。その傷の分だけ強化された応酬が返ってくる――それを回避する瞬間さえ、躊躇も無く振る舞える。
 ――ああ、だが、暗すぎる。
 何処までも深みに落ちていきそうな闇は蠱惑な毒だ。安寧を覚えてしまうのが恐ろしい。 だから。
(「――見慣れた筈の黎明が、今は少し」)
 豪快に拳で処刑人どもを蹴散らしながら、息を逃がすように、笑いを殺した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グレ・オルジャン
類(f13398)と

吹き荒れる声に不安煽る信徒の姿
商人たちを先に帰せてよかったよと、笑みは絶やさずおこう
肚の底は誰も一緒かね
あたしも人だ、呼ばれる不安がないじゃないけど
今はあんたと並び戦える期待が勝ってる

想起するは息苦しいほどの砂嵐
長鞘で斧を弾き懐を抉じ開け
熱風で吹き飛ばし冷えた信徒を炙ろう
身滅ぼす覚悟に応うなら生きる覚悟をと
斧の軌道見定めて刃と鞘で受け流す
翻る一手が類目指すなら薙ぎ飛ばし、戦線維持を
あたしもあんたも、膝付くにはまだ早い

信仰や愛情や、見えないものを信じるのは難しいね
報いちゃくれない神を見つめる健気さも人らしくて嫌いじゃないけど
隣に燃える山吹の燈もこんなに鮮烈だから
負けやしないよ


冴島・類
グレさん(f13457)と

闇を満たす声
静かになった分響きますね

血を求め迫る信者の姿を捉えたら
確かに、この様見たら悪夢に出かねない

纏わり付く恐れは…
常に腹の底にあるから今更で
寧ろ、笑みを唇に乗せ前へ向く
グレさんの熱がしるべのようで、気合い入るな

こじ開ける先陣の後を駆け
彼女が周囲から攻撃受けぬよう注視
あれば、破魔込めた刀で薙ぎ払う

生きる覚悟か…それは良い
熱く、心地よい気迫に触れ
込み上る衝動、踏み込みに力が満ちる

突進で体勢崩した信者に向け
斧を瓜江の風乗せた蹴撃で逸らし
己は飛び移り、追撃に胸か首を狙い止めを

自分のみたいものでなく
有りの侭を映さなきゃ惑うばかり
凍え惑う声よか
並び立つ眩しい赤を信じるよ



●熱と衝動
 見晴らす限りの闇に、吹きつけるは風の音ばかり。否、狂う神の声が強く響いている。
「闇を満たす声……静かになった分、響きますね」
 先程まで賑やかだったからこそ余計に――冴島・類(公孫樹・f13398)は遠くを見るように目を細める。
「商人たちを先に帰せてよかったよ」
 グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)は明るい笑みを類に向けた。
 同意を示す微笑は、僅かに緊張を孕んでいた。彼の緑の双眸は彼女の向こう、わざわざ出迎えに現れたもの達を見据えている。
 ズ、ズ――奇妙な音は、斧を引き摺る音だ。姿を現した処刑人どもは、二人を見ても歩調を変えず、然し脚を止めることも引き返すこともない。
 錆びた血の臭いと、饐えた血の臭いが混ざり合い、異様なる存在をこれ以上無く気味悪く感じさせた。
「血を求め迫る信者の姿を捉えたら……確かに、この様見たら悪夢に出かねない」
 それらを認めて告げた類の声音に、真摯を通り越した緊張が滲むことを――彼は気付いていただろうか。
 処刑人をじっと見据えるのは戦場においては当然の選択だ。風の音に混じる神の声がそう囁くようで――。
 傍らで、ふっと噴き出すような吐息を聴き、類は目を瞬いた。
「歌でも歌おうか?」
 ぱちりと片目を瞑って冗談を投げてくるグレに、虚を突かれたのは一瞬。はは、と明るい笑い声で類は応えた。
「ええ、恐れは……常に腹の底にあるから今更です」
 空元気などではなく、唇にも笑みを刻んで、類は十指の赤い糸を意識して引いた。
「肚の底は誰も一緒かね――あたしも人だ、呼ばれる不安がないじゃないけど。今はあんたと並び戦える期待が勝ってる」
 グレの炎のような髪は、闇の中でも、常と変わらず――いっそ、より鮮やかに。心強い灯火だと、思う。
 そんな人からそう言われては、確りしたところを見せねばなるまい。類が肩の力を抜くようにひと呼吸するのを、合図とし。
 不敵とも不遜とも異なる――隣り合う誰かを鼓舞するような笑顔のまま、グレは杖を無造作に掴んでひとつ唱う。
「爛れ落ちなよ」
 ――想起するは、息苦しいほどの砂嵐。
 熱砂を纏う女はひらりと間合いを踏み越えて、振り下ろされる斧へと、臆さず鞘を合わせた。
 軸をずらして懐を開かせる、戦舞のようにしなやかな動き。いつしか鞘と別れた砂嵐を纏う刃が正面から処刑人を吹き飛ばす。
 横から伸びた無骨な斧は、繊細にも見える短刀が噛んで、留める。
「グレさんの熱がしるべのようで、気合い入るな」
 やや前をゆくひとを見やり、類が笑う。
 彼は風のように素早く割り込むと、くるりと内側へ力を逃がし、手首を返して刃を薙ぐ。
 容赦なく、深く、肩を裂くと、間合いの外へと跳躍する。
 地に伏したと思った処刑人が跳ね起きて、先程よりも素早く距離を詰めてくる。
「幸あらんことを――」
「さ、さ、ささ――幸、あらん、ことを」
 負傷を糧に神に身を捧ぐ処刑人どもの表情は隠れて見えぬ。だがその狂瀾は見るまでも無い。
 さあ、おいで――グレは鞘と刃を深く構えて、正面からそれに応える。
「身滅ぼす覚悟に応うなら生きる覚悟を」
 見せてやろうと迎え撃つ。鞘で振り下ろされる斧を食い止めながら、更に先へと真っ直ぐに刃を振り下ろす。
 熱い砂嵐を二度も受ければ、身は焼けただれて声も出せぬ。
 苛烈に前へと向かう姿に、生き様を示すような言葉に。類の胸にも込み上げるものがある。
 彼自身も短刀を隙なく備えながら、片手で瓜江を操る。
 吹き飛ばされていった処刑人どもへ、鴉面の人形が迫る。何とか振り上げた斧は瓜江が風を纏う蹴撃で言葉通り蹴散らし、その背を軽々飛び越えた類は、柔らかく笑んだ。
「生きる覚悟か……それは良い」
 破魔の刃で、胸を貫き、喉を掻き斬る。
 彼女は戦ってきた者。生きる、ということを続けてきたもの。
 存在こそ彼女より長い類であるが――その熱は、衝動は、触れて移るものなのだと、実感する。共に駆けることが、この昏冥を忘れさせてくれる。
 現に、次の処刑人どもが行く手を阻もうとも、赤金の獣は嬉々と駆っていく。
「信仰や愛情や、見えないものを信じるのは難しいね。報いちゃくれない神を見つめる健気さも人らしくて嫌いじゃないけど――」
 応酬の狭間、礫が舞って、色の濃い肌に薄く朱を走らせる。斧が掠めて出来た疵もあろう。
 躍動の度に、生々しく落ちる朱の珠すら、彼女が灯す炎のように眩しい。
「負けやしないよ」
 定める黒い瞳の輝きに、力強いシンプルな言葉に。
 不穏を煽る、余計な声は遠ざかる。
「自分のみたいものでなく――有りの侭を映さなきゃ惑うばかり。凍え惑う声よか並び立つ眩しい赤を信じるよ」
 穏やかな心で、確かな戦意を胸に抱き。比翼のように、類はグレと斬り込んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
この闇と逸話の奥に、どんな想いや真実が在ったか――何が救いになるかなんて、分からない
でも、まぁ、だからこそ
見極め、見届け、見送れるように、進むのみ
――悪いな、供物として御前に出る気は更々無い

早業でUC放ち先制攻撃
闇の中なら一等目を欺き易くて助かる
加えて身を戒める呪詛乗せ、賛同等許さぬよう封じ込め
弱った奴から確実に眠らせてく
さぁ悪い子は寝る時間だぜ――お前らも、いつまでもこんな所に縛られてちゃいけない

それでも飛んで来る攻撃は耐性で軽減したり、第六感と見切りで危機回避
攻撃に残像やフェイント混ぜて的を定められないよう撹乱も

さて、拝みに行くか
闇の果て、嘆きの神の元
――願わくは其処に夜明けが訪れる刻を



●醒めぬ眠り
 神の声が強く響く。だが、既にそれは遠く。心から弾き出されている。
 強靱と呪で護りを固めた己が、狂気に搦め捕られることはない――だが、その声音の響きに、呉羽・伊織(翳・f03578)は目を細めた。
(「この闇と逸話の奥に、どんな想いや真実が在ったか――何が救いになるかなんて、分からない」)
 今、こうして茫洋と虚空を眺めていても、先は見通せぬように。
 そんな事を思いつつ、伊織は小さく笑う。
「でも、まぁ、だからこそ。見極め、見届け、見送れるように、進むのみ――悪いな、供物として御前に出る気は更々無い」
 此処でうだうだと考えていても仕方が無いと、石畳を蹴る。
 対し、処刑人どもの動きは鈍い。袖口に手を引っ込めた伊織は、そのまま両腕を交差させるようにそれぞれ薙いだ。
「自由気儘が取り柄でな」
 放たれたのは、敵を眩惑させる暗器――闇の属性を塗り込めれば、殆ど知覚できまい。
「欺き易くて助かる」
 戯ける通り、暗器は悉く処刑人を貫いて、眠りに落とす――無論、それは醒めぬ眠り。
 彼らは元より回避しようという意志がないように見えた。それが信心ゆえか、狂気ゆえかは解らぬ。
「救いを。救いを――」
「――立ち上がれ」
 誰かが呻くように歌い出せば、救いを、という声が続く。
 重なり合う不協和音の声を、伊織は曖昧な表情で聴きながら、次なる暗器を放つ。呪詛を籠めて、言葉を封じ。
 歪に立ち上がった処刑人どもの斧の合間をかいくぐって、直に暗器を撃ち込んでいく。
 捉えた、と思えば、するりと抜ける――掴み所の無い動きで、伊織は敵を攪乱する。返す着物は鮮やかに、闇に漆黒の髪が溶けて、浮かんで消える幽霊のように。
「さぁ悪い子は寝る時間だぜ――お前らも、いつまでもこんな所に縛られてちゃいけない」
 手にしたすべての暗器を再度起き上がったものたちへ、叩き込んでいく――。
 さっさと眠ると良い。
 猟兵が――自分たちが来たからには、長らく狂い続けた神も、眠る刻限なのだ。
 斃れ伏す処刑人どもを背に、伊織は天を仰いで不敵に笑う。
「さて、拝みに行くか。闇の果て、嘆きの神の元――願わくは其処に夜明けが訪れる刻を」
 然し、その眼差しは――何処か憂いを帯びていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒鋼公シュヴァルツ』

POW   :    存分に愉しませてくれ
自身の【戦闘を楽しみたい欲求】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    貴様の力を見せてみよ
【猟兵の攻撃を受け止め続けた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    この程度、児戯に等しい
【自身の細剣】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身の細剣から何度でも発動できる。
👑11
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●昏冥の神
 ――アレが異端の神か。私が討つ。
 その吸血鬼は告げるや否や我が前に立った。
 部下が斃れようが意に介さず、嬉々と戦場を駆る指揮官であった。
 だというのに、それはこちらへといきなり躍りかかることもなかった――私と間合いの内に対峙していながら、泰然と吸血鬼は言う。
 ――お前の力を見せてみよ。
 その瞬間に、私は世界が白く染まったように思えた。憤怒。ただただ深い怒りだ。
 なんと傲慢なのだろう。なんとおぞましいのだろう。
 私は彼の姿に、曾ての自分を見て、狂乱した。
 ああ……そうだったのか。
 あの日、あの神は私を憐れんだのだ。傲れて何も見ることも適わなくなった私を。

 ――ただ、結果として私は敗れ、肉体は消え去った。
 これもまた滑稽な話である。傲慢不遜。そして力を伴わぬ。まさに人々に語られた通りの顛末を私は迎えたのだから。
 当時、如何にあのヴァンパイアと対峙したかは忘れた。
 然し――戦いの最中に喪われたはずの力をふたつ取り戻した。
 心を覗き込み、強制的に内側と向き合わせる力。
 そして、相手から向けられた力を、害意を、相手に返す力。

 しかし今、私は別の存在と成り果てて此処にいる……何を求め、何を待つのかも、解らない儘に。
 過去の再現のような暗闇を敷いて、待っている。
 あの時には既に――守りたかったそれは喪われていただろうに。

 それでも……ヒトの命は巡り、幾度でも還ってくるものなのだから。

●狂えるオブリビオン
 神殿の姿は無く、だがこの石畳は白く綺麗な儘だった。それは些かおかしい。
 オブリビオンの軍勢との戦いがあったはずなのだ。
 然し其れが神域の理であるというかのように、柱も壁も天井も無い野ざらしの神殿は、規則正しく並んだ石畳だけで威厳を残す。
 その中央、祭壇に腰掛けたそれの姿は、喩えるならば美丈夫であった。
 如何にも自信に満ちた吸血鬼。戦い慣れたような、しなやかな体躯――だが、中身はまったく別のモノになっている。
 ああ――、苦悩に満ちた声音を零し、曾て異端の神と呼ばれたそれは猟兵達を見る。
 声は、今まで聴いた呻き声よりは澄んだものであったが、孕む不穏はより強く感じる。
「ヒトか? それ以外か?」
 どちらでもいい。客があるのは、何百年ぶりであろうか――美しい金髪をくしゃりと乱しながら、神は猟兵を見た。瞳は冥く、何処か視点が合わぬ。やはり、見えておらぬのだろう。
「……私が振るうは、この身体が宿す術のみ。だが、私の魂は――別の力を持つ」
 それは囁く。
「誰かを疑う心。自分を疑う心。世界を疑う心……これらを拭わねば、真っ当には戦えぬと知れ」
 ――何故そんなことを。
 言葉にせずとも、誰かが思う。そんな表情をも読み取ったのか。神はあわく嗤った。
 正気の時間は終わり。本当の終焉まで、あと幾ばくか。

○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
【プレイング期間】3月10日(火)8:31~13日(金)いっぱいまで(14日日付変更まで)

●捕捉
戦場は変わらず、闇の中にあります。
また、神は『害意を相手へねじ曲げることで技を返す』異能を持ちます。
とはいえ、これはシステム上のものではなく、フレーバー的なものですので、効果的な対策がなくとも、何も出来ず敗北するということはありません。
お好きなように、戦ってくださいませ。
○==+==+==+==+==+==+==+==+==+==+==○
無間・わだち
疑う?
ああ、大丈夫ですよ
俺は最初から
神様を信じてませんから

遮蔽物の一つもない神殿を駆ける
隠れられない神殿で
攻撃を受けてもかすり傷ならばそのまま突っ込む

乱反射する電灯でも
少しは彼が見えるだろう
真っ向から、食らえ

振りかざした右腕の熱が
彼ではなく自分へ襲いかかれば
ごうごう呻く無数の声がして
なんとなく、気付いた

ああ、あなたは

棄てられて
疑われて
悲しかったんですね

大丈夫ですよ
俺はあなたを信じてないが

あなたが此処に在ることは
認めるよ
【優しさ】

敵意でも害意でもなく
ただの動作のように
もう一度彼に熱を与える
【限界突破、2回攻撃】

左腕が胴から離れていくのを感じれば
その嗤みを引き継ぐようにわらう

あの子は
俺を信じていた



●不信
 不思議と、此処は風が薙いでいた。視界を奪う闇、肌を刺すような寒さは已然猛威を振るっているが、無間・わだち(泥犂・f24410)には関係ない。
「疑う? ああ、大丈夫ですよ」
 左右、印象の違う眼差しで神を射貫く。
「――俺は最初から、神様を信じてませんから」
 相手の反応を探るよりも先に地を蹴る。遮蔽物の無い神殿は、一種の闘技場のようでもある――神は細剣を手にしているが、そのままだ。
 何かを仕掛ける様子もない。ただだらりと腕を下げ、感覚でわだちの動きを探っているようだった。
 元より向かい疵は厭わぬ覚悟――そちらがそのつもりなら、構わない。
「真っ向から、食らえ」
 間合いを正面から踏み込んで、右腕を翳す。赫熱で腕が膨れるような感覚――わだちは、その熱を拳と共に黒衣へ叩きつけた――つもりであった。
 空回って、爆ぜる。自分の腕が自分の胸を貫きそうになるのを、寸でで堪えた。だが反動でそれは右腕は肩から吹き飛び、胸から腰までも、赤赤とした肉を覗かせた。
 力の暴走にも――彼が見せた反応は、静かに瞬くだけ、だった。
 対し、神はああ、と小さく息を零す。
 焦げた肉と、血の臭いが届いたのだろう。神は細剣を繰り、その傷付いた肩を貫いた。
「……」
 しかしわだちは、身じろぎすらせず。ただ神を見つめていた。
 右腕を失ったことも。疵を負ったことも。彼にとっては驚くことでも、特別苦痛を伴うことでもない。
 ただ――その瞬間に聴いた、ごうごうと呻く無数の声に、一度ゆっくりと瞬きをする。
「ああ、あなたは」
 悟る――声音は静かに、殊更特別な感情を含んでもいない。
 だが、乾いているかといえば、そうでもない。
「棄てられて、疑われて、悲しかったんですね」
 至近で眺める顔は端麗だ。ただ、これは神の本来の顔ではない。
 わだちが、ひとりであって――ひとりではないように。
「大丈夫ですよ――俺はあなたを信じてないが……あなたが此処に在ることは――認めるよ」
 はっとした表情で、神がわだちを見た。
 認める、ただその一言に魂ごと揺さぶられたかのように――見えぬはずの瞳で、彼を捉えている。
「おまえは……」
 神が何を言おうとしたのか、わだちは皆まで待たなかった。
 今の間合いは、まるで互いの腕にすがるような距離に思えた。手を伸ばせば、届くだろう。
「この痛みは、悼みだ」
 左腕を上げる。それはもう、敵意や害意と離れた、ただの動作に過ぎぬ。
 剣が離れる程の時間を赦さず、彼は左腕を神へと手向ける。
 熱が、互いの間を埋めて、衝撃で剣が遠ざかっていく。同時に、左腕も――離れていく。
 神は左腕を熱で焦がして僅かに顔をしかめている。身体が無事かを確かめるような様子で、痛みに苦しむようでもない――ふ、と。わだちはあわい嗤みを浮かべた。
 もう笑うことも、嗤うこともできぬ妹のために、彼はわらって、
「……あの子は俺を信じていた」
 誰に聴かせるでもなく、囁いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スティレット・クロワール
ーーは
名残の神が俺の心を覗き見ると?

猜疑など今に抱くものでもない
世界などいつ、信じるに足りたのか

君の力を飲み干すのも楽しそうだけど
折角遊びに来てあげたのだからね
ちょっと遊んでいこうか

言ってあげるよ?
沸き立つ疑心を害意を沈めるように

私は私の世界を救おう
その為に、慈愛と祈りを持って君を案内してあげよう

冥府の棺よ開け、葬送の時だ

薔薇の冠を発動。斬り込むよ
あちらも近接が得手のようだし立ち回りには気をつけて
さぁ蛇君手伝っておくれ?

身も心も魂も、燃やし尽くせ。それが相応の礼としれ
躰の方は楽しんでいるようだね。さぁ、君は私の炎を纏えるかな?

死を思い出すことだ
異端の神よ
君には俺が何に見える?
ヒトか、それ以外か



●不遜
「――は。名残の神が俺の心を覗き見ると?」
 スティレット・クロワール(ディミオス・f19491)は挑発的な視線を、神へと向ける。
 はらりと肩から払った銀の髪を輝かせる光は、結わえたランプのみ。
 藍の瞳に、剣呑な光が一筋差し込む。
「猜疑など今に抱くものでもない――世界などいつ、信じるに足りたのか」
 青白い輝きを前に嘲笑――あるいは自嘲を湛え、一息こぼすと一転、戯れに和らいだ。
「君の力を飲み干すのも楽しそうだけど、折角遊びに来てあげたのだからね――ちょっと遊んでいこうか」
 合わせて抜刀する。片手に輝く美しいレイピアと、もう一方に白蛇を巻き付けて、スティレットは両腕を広げた。親しい友に向けるように。
「言ってあげるよ?」
 疑心も猜疑を底へ沈め、心からのそれを招く。
「私は私の世界を救おう――その為に、慈愛と祈りを持って君を案内してあげよう」
 ゆっくりとレイピアの鋒で空をなぞる。
 神は何をするでもなく、口を挟む事も無く、じっと彼がなすがままを見つめていた。それは向けられる害意にしか、戦端を見出せぬのやもしれぬ
 或いは身体の持つ闘争への歓心に、ただ不利な状況を望むのか。。
 ああ、不自由なものだと気のない言葉を思い浮かべながら、スティレットは厳かに告げる。
「冥府の棺よ開け、葬送の時だーー凱歌を告げよ。我が来たりしを告げよ」
 声音の韻が消え去る前に――彼の周囲が突如と赫く。
 舞い落ちる青白き薔薇の花々は冥界の炎で燃え、白い衣を青く染めた。
 石畳を蹴って駆る。それは剛と結ぶ線ではなく、ふわりと柔らかな跳躍、相手の攻撃を誘うような動きだった。
 反射的に、神も斬り込んできた。最短で距離を詰める無駄のない挙動。腕の延長のように真っ直ぐ伸びた黒い細剣が袖を裂く。
 小さな痛みが腕を伝うが、射程範囲に入った――とスティレットは唇に笑みを湛える。
「さぁ蛇君手伝っておくれ?」
 腕に絡むそれが、任せろとばかりに身体を伸ばす。
 相手の腕に巻き付いて、ぐいと引きつける。逃さぬと、冥界の炎の内に引き摺り込む。
「身も心も魂も、燃やし尽くせ。それが相応の礼としれ」
 これは、害意ではない――そう、彼の世界を防衛するために、焔を宿しただけ。
 指先を焦がす熱に、神は嗤った。その身を半ばまで差し出せば、ぐんと伸びる黒衣の脚が、スティレットを突き放すように蹴りをくれる。
 力は神が上回ったが、痛みと衝撃を殺して腕を伸ばす。横に薙がれた鋒を剣で弾き、懐へ――今度こそ白蛇が潜り込み齧り付く。
「躰の方は楽しんでいるようだね。さぁ、君は私の炎を纏えるかな?」
 楽しそうに笑い、スティレットは前へ跳んだ。青白い薔薇の炎と、蛇の導きに合わせて突進する――。
 レイピアで腹を貫き、後ろへと共に駆りながら、彼は問う。
「死を思い出すことだ、異端の神よ。君には俺が何に見える? ヒトか、それ以外か」
 それへ、神はうっすらと笑った。
 貌にある狂気めいた色は薄れ、スティレットへ挑むようにそれは視線を上げた。神は視力を持たぬというのに、視線は確かに交わる。
「――そうだ、神を終わらせるのは、いつでもヒトでなければならぬ。神でも、ヴァンパイアどもでも為し得ぬのだ」
「……そうか。それは――」
 何とも狡い答えだ。乾いた笑みを浮かべたは、どちらだったか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
ジェイ(f01070)と

前に出るジェイに【援護射撃】
または【制圧射撃】で前に入れ替わる
連携しながら疑念に蝕まれる

敵は本当に金髪だったか?
顔色の悪い虚弱は味方なのか?
何故オレは戦っている?

「チッ! ワケがわからねェ!」

二人纏めて銃弾で【なぎ払う】
喰らうマヌケが敵でイイ

「ジェイ、これぐらいでくたばるタマじゃァねェだろ!?」

新たな煙草で【ドーピング】
瞳が輝き狼の目が顕れる
【呪殺弾】にマガジンを替えて

【魔弾の射手】を発動

1回分はサボってる猟犬レオンに

通常秒間15発の弾丸を9-1=8倍の120発を【零距離射撃】で金髪に叩き込む

「アッディーオ!」

心ここにあらず
オマエはそんなツラしてたぜ
理由なら十分だろ?


ジェイ・バグショット
ザザ(f07677)と

…相手がヴァンパイアならやる事は一つだ。
【狂気耐性】と明確な意思に疑念など混じらない

黒剣『絶叫のザラド』
大振りな剣に破壊力を乗せ【闇に紛れて】の【騙し討ち】

ザザの様子に混乱を察する
ハハ、なかなか豪快にやってくれんじゃん。
拷問具:荊棘王ワポゼを空中へ複数召喚し
影のUDC『テフルネプ』と共に【カウンター】で弾丸の嵐を捌くとそのまま敵へ殺到させる

UC使用でザラドは殺戮捕食形態へ変化
切っ先から裂けた剣は牙の覗く異形剣へ
発する絶叫は耳障りだが敵の気を引き付けるには丁度いい
…俺にばかり構っててイイのか。
ザラドの【捕食】で敵へ食らいつき動きを止める
意外と芸達者だろ?褒めてもいいぜ。



●不迷
「……相手がヴァンパイアならやる事は一つだ」
 中身が何であれ――ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は迷わぬ。
「――明確な意思に疑念など混じらない」
 大振りな黒剣を担ぐように構えると、軽やかに石畳を蹴る。まるで重みなど一切知らぬかのように。
 チ、小さく舌打つは、ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)だ――銃を構え、腕をあげ――いつもなら、惑わず撃てる。
 だというのに、今は狙いを定めきれぬ。それでも、ジェイが仕掛けるのに合わせ、ひとまず掃射する――独特のリズムを刻む銃撃の歌だけは常と変わらぬ。
 ザザの銃撃を目眩ましに、ジェイは闇より神へと鋭い斬撃を放つ。深い位置を狙ったそれを、神は軽く蹴って躱す。
 ふわりと金の髪を踊らせて伸身で跳び退いたそれへ、ジェイは青白い貌に笑みを浮かべると、身を低くしながら追いすがる。
 ――然し、撃ち尽くして再装填する間に、立ち位置を入れ換えた両者を眺め、ザザはますます昏迷に陥る。
(「敵は本当に金髪だったか? 顔色の悪い虚弱は味方なのか? ――何故オレは戦っている?」)
 不機嫌さを隠さず眉間に皺を寄せ、煙草を吐き捨てた。
「チッ! ワケがわからねェ!」
 自棄気味に言うが否や、視界の限り、構わず乱射し始める――喰らうマヌケが敵でイイ、という実にシンプルな結論に至った。
「ジェイ、これぐらいでくたばるタマじゃァねェだろ!?」
 信頼なのか横暴なのか――ザザらしい判断だとも思う。外套を掠めて焦がした銃弾を追うように見やると、ジェイは思わず破顔する。
「ハハ、なかなか豪快にやってくれんじゃん」
 言って、彼が剣を持たぬ片手を虚空に突き出せば、浮かんでくるくると回るは鉄棘の輪。ジェイの影より喚び出でたUDCと共に、ザザの銃弾を弾いて、神へと導く。
「――……アァ……」
 神は何も言わぬ。元より、彼らの攻撃を見て受けているのではない。
 ましてや、他の五感に優れているわけでもないらしい――それが反応するのは、吸血鬼の身体に備わった戦闘能力と、神の異能だ。ジェイのように完全に身体を意識の内で制御して見せても、僅かに狙いの精度を鈍らせる。
 それは殆ど意識出来ぬ、本当に些細なズレだ。
 正気かどうかも定かでない神は、無軌道に自分を狙う銃弾を細剣で弾き、更に死角から狙うジェイの剣を受ける。繰り返す内に、その精度が上がり――神の一刀がジェイの肩を深く裂く。
 弾けた朱は、闇の中で匂いだけを撒く。
「……やるじゃん」
 ふっと息を吐きながら、ジェイは後ろへ跳ぶ。誘うようにだらりと下げた黒剣に、肩より滴る血を与える――。
 刹那、剣が切っ先から裂けて、牙の覗く異形へ変じる。伴う絶叫は、振るうジェイにとっても耳障りだったが――、
「敵の気を引き付けるには丁度いい」
 あわく笑い、呼吸に合わせて迎え撃つ。神も深く斬り込んできている――その速さたるや、ジェイが合わせるにやっとであった。
 だが、浅い傷は厭わず、相手の位置を視認するよりも先にジェイは異形の剣を大振りに薙ぐ。剣風が、切っ先が、神の鼻先を掠めたが血は零れなかった。
 疵そのものはどうでもイイ――そう嘯いて、無防備を曝す危険を冒しながら、彼は心臓を狙う細剣を、懐まで招くと巻き込んでねじ伏せる。
「……俺にばかり構っててイイのか」
 目を鋭く細めて、ダンピールは問うた。
 しかし、神は退こうにも、身体が動かせずにいた。もしや、身体の痛みも殆ど感じぬのか、神は不審そうに顔をしかめた。
 ――イイぜ、程よい距離で、目を伏せてザザが笑う。新たな煙草に火をつけた男は、ゆっくりと煙を含みながら、静かに開眼する。
「有象無象の区別なく、静かに、清らかに」
 赫く双眸は狼の目。
 替えたマガジンは呪殺弾――傍らでウンともスンとも言わずサボる猟犬に一撃喰らわせると、一気に距離を詰める。
 目印は、金髪。一切の迷いを捨て、ただそれだけを見据える。
 その危険性を悟った神がジェイを突き放そうとするも、異形と化した剣が、神の脚に喰らいついて離れない。
「意外と芸達者だろ? 褒めてもいいぜ」
 軽く眉をあげて、ジェイは嘯く。
 哄笑と共に、ザザが回避も誤射もあり得ぬほど距離を詰めて、その背を、縦になぞるように斉射する。
「アッディーオ!」
 要するに、こいつがなんだか解らなくても、金髪が敵。そう認識すればいい――迷いが晴れたザザは掌に伝わる振動と、ヴァンパイアの身体が爆ぜる音に、ただ笑みを深めた。
「心ここにあらず――オマエはそんなツラしてたぜ。理由なら十分だろ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
意識が朦朧とする
視界が霞む

流れた血は応急処置として巻いた白布では間に合わず
負った箇所も相俟ってまともな処置も出来ないまま
虚ろな視線で敵に向く
思考が止まる
頬の影が、侵食を始める

……嗚呼、敵か
はやく斬ろう
はやく喰らおう
はやく殺してしまおう
飢えて飢えて、仕方がない
喉が渇いたんだ
血が足りないんだ

──お前の肉も、血も、全てを喰わせて



“オレ”の血は美味いだろう
さあ、ちゃんと働くんだ
お前は誰の身に棲んでいる
朽ちてほしく無いのならば

…ああ、そう──イイ子だ

駆ける、振るう、欲する
沈み堕ちた思考は只々飢えを凌ぐ為
裡の獸がこの身体を失うまいと肥大した渇欲を振り上げて
哭いている様に嗤う

バケモノ

そんな聲が、聴こえた



●不随
 辿り着いた華折・黒羽(掬折・f10471)は粗い呼吸を繰り返す。
 何処か虚ろな視線を闇へ――神へと向けて、ただ佇んでいる。彼の身は既に満身創痍――手当と当てた布までじっとりと鮮血で濡れている。
 意識も朦朧としているようで、視点が定まらぬ。ただ、この闇の中では、大差は無いのやもしれぬ――不思議なのは、黒羽がそれでも概ねじっと神の位置を見据えていることだ。
 頬の影が、じくり、侵食を始める。
「……嗚呼、敵か」
 零した声音は、思いの他低い。誰も聴いてはおらぬ――黒羽自身にも響かぬ、虚ろな声だった。
 はやく斬ろう、はやく喰らおう、はやく殺してしまおう。
 ――飢えて飢えて、仕方がない。
 ――喉が渇いたんだ。
 ――血が足りないんだ。
 じわり、じわりと。顔を黒く染める影に身を任せ、黒羽は手を伸ばす。
「――お前の肉も、血も、全てを喰わせて」
 屠、と。影を呼ぶ。
 背を伝い、滴る血はいくらでも足元に落ちている。ああ、此処までの道程で、血溜まりが、血の軌跡が残らぬ理由を知っている。
 影の中に潜む黒剣が啜っているからだ。
「“オレ”の血は美味いだろう。さあ、ちゃんと働くんだ――お前は誰の身に棲んでいる……朽ちてほしく無いのならば」
 喰うだけ喰って、働かないのは無しだ。
 優しく囁くようで乾いた脅し文句。今度こそ、正しく剣の形を成したそれを、黒羽はしかと握る。
「……ああ、そう──イイ子だ」
 空腹を埋めにいこう。完全なる捕食体として身一つ混ざり、黒羽は地を蹴った。
 奔る速度は、深手を負ったものとは思えぬ。構えも、隙も気にせず、獣のように前のめりに彼は剣を振るった。
 斜めに放たれる影の剣、貪欲に肉を食み、血を啜ろうとする害意を、神は片腕で受けた。痛みを感じぬゆえに平然としているが――僅かに、彼は顔をしかめると、細剣を斜めに構えた。
「そうか――思考を棄てたか……」
 歪な容れ物、という言葉が聞こえた気がした。黒羽は渇欲を満たすために、意識すら剣に委ねている。手と足と、四肢で地を蹴り跳躍する姿は、もう獣と変わらない。
 思考の投棄、武器の投影、ならば神はただ応じるしかない。理性ではなく衝動から仕掛けられる激しい攻撃を、綺麗に凌ぎきる事は難しい。
 然れど、敢えて受けて返すという状況こそ、このヴァンパイアの躰は巧く動く。真っ直ぐに跳びかかってくる黒羽へ――それは片腕を捧ぐように餌にした。
 濃密な血の臭いは、誰と誰のものか。黒羽は垂直に跳んで、大上段と振り翳した黒剣を、獲物の肩まで埋める。
 ずぶずぶと沈む感触に、少し靄が掛かったような青い瞳が喜びに輝く。
 食らいついた肉と、その血に黒羽は口元を歪めた。
「は、――ハハ、は……」
 開いた口は、哭いているような嗤い声を上げる。
『バケモノ』
 喚んだのは誰だろう。遠い聲に耳を傾けると同時に、意識が白く、黒く――反転した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
グレさん(f13457)

闇に響く声に、浮かんだ問い

試練かぁ
内覗かれるなら、今度は僕が先に
大丈夫
背にグレさんがいるんだからと笑い駆ける

細剣の軌道を注視
刀で弾き、受け流し
彼女の放つ曲刀で生まれた隙つき至近へ
惑わす力は背後へ届かせぬよう射線塞ぎ

どろり纏わり付く寒気、怖気
届くのか、敵うのか
戦場で己を疑わぬことはない

けど
情けない背見せたとて笑わぬ貴女の
渡り合い鳴る鼓動は、恐れなんかで見失わない
好きに覗け
預かった信が、形をくれる

名呼ぶ声に応と返した
遮られた瞬間、操り糸で剣持つ手絡め
深く踏み込み花を喚び、闇を喰い問う

誰を呼んでいるの
応えが返るのを待ち続けるだけかい?
瞳や力無くとも
魂ひとつで、会いに行きなよ


グレ・オルジャン
類(f13398)と

疑心を拭え、ね
流石、神様らしい試練をお与えになると笑い

肚を探られるなら自分がと引き受けた
類の強さは信じちゃいるけど
強さと弱さは共存するもの
信じると案じるとに同じくね

人の懐踏み躙る不躾な傲岸は
闇に乗じ不意打つ曲刀で後ろから注意を惹き
虚ろな視線切り剥がし護る
損じようとすれば跳ね返るなら、ただ渡り合うのを楽しもう
ねえ、本気で遊んでくれるかい、神様

遊びだけで終われる程弱かないだろうから
『倒そう』と猛る熱は鎮め
最後には静かな終わりだけ思い
射線遮るように剣を擲つ
精度高めた一撃が類へ至る前、一瞬を稼げば充分
疑心拭う手は己だけの神様とあんたは違う
足りない分をあたしが信じるさと、名を呼ぼう



●不肖
 肩を無造作に押さえれば、偽りの出血は止まり、その動きも滑らかに戻る。
 神らしいといえば神らしいが、どちらかというと悪鬼の類だ――思えば、躰はヴァンパイアか、そんなことを考えながら、グレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)は肩を竦めた。
「疑心を拭え、ね――流石、神様らしい試練をお与えになる」
「試練かぁ」
 戯けたような、ある種人間らしい彼女の言葉に――冴島・類(公孫樹・f13398)が思案するようにしみじみと重ねた。
 内を覗かれ試されるならば、自分が受けよう。そんな決断を伝える代わり「今度は僕が先に」とだけ告げ――しゃり、石畳を踏みしめ、類は前に出る。
「大丈夫――背にグレさんがいるんだから」
 本当かい――信頼してくれるからこその声音に、肩だけ振り返って笑いを残し――正面に向き合うなり、駆けだす。
 既に隙なく迎え撃つ体勢を整えていた神は、類が間合いに入ると同時、細剣を鋭く繰る。懐狙いの一閃を、類は短刀で凌いで躱す。
 彼の近くに寄れば、神気――とは異なるだろうか、彼方で聴いた声のような、不安を加速させる嫌な感覚が纏わり付いてくるようだった。
 これをグレまで届かせぬよう、庇うように彼は奮う。
 片や彼女は闇に乗じて仕掛ける。不意討ちは、相手を削るよりも類から視線を剥がすことで、彼を援護しようという目的なのだが――。
 生半可では通じまいと、本気で踏み込めば、自分の斬撃が自分に返って理解しがたい疵が腕に朱を走らせる。
「人の懐踏み躙る不躾な傲岸――流石は神様」
「――……」
 向けた挑発に、笑いのような呼気で神は応えた。狂気に陥っているはずのそれが、正確無比な斬撃を鮮やかに返してくるものだから――グレも自ずと、不敵に笑っていた。
「ねえ、本気で遊んでくれるかい、神様」
 暫し、三者の狭間を、鋼が響き合う音だけが占める。突き、薙ぎ、斬りかかるを相手が薙ぐ――神の常人とは思えぬ身体捌きは、数をこなせばこなすほど、精度が上がる。
 倒したいのならば、そろそろ熱を冷まさねば――不意に、グレが退いた。けれど類は驚かぬ――彼女の狙いは承知している。
 ただそれを成すため、全力で護らねば――意気込んで、類が思い切って深く斬り込む。
 けれど、逡巡はほんの僅かな隙間に、滑り込んでくる。
(「届くのか、敵うのか――戦場で己を疑わぬことはない」)
 類は、自信過剰な質ではない。常に、疑心を世界に、自身に向けている。
 慎重なのだと称せば立派に響くが、臆病とも言い換えられる。不安が腹の内から芽生えて、指先が無意識に戦慄いた。
 それが反映されたのか、合わせるはずの剣筋の狙いが逸れた。空を掻いた短剣と、背後に守るといった人がいることに躰が震えた。
 自分の肩を貫いた痛みよりも、喪う畏れに躰が凍える。
「――類」
 だが、グレは臆することなく、真っ直ぐに彼の背を見つめていた。
 その四肢は命の輝きに満ちるよう躍動している。ゆるりと舞えば、月が煌めくように曲刀が輝く。一度、垂直に放り投げて、背で受け止める。
「強さと弱さは共存するもの――信じると案じるとに同じくね」
 笑いも交えず、真摯な表情でグレは類へ告げる。
「疑心拭う手は己だけの神様とあんたは違う。足りない分をあたしが信じるさ」
 躰を反転させながら、彼女は鋭く剣を擲った。靡く赤金が、闇にも見えた。
 奔る曲刀が、弧を描き、神を追う。類を捉えようという一閃を遮るための斬撃だ。
「好きに覗け」
 腹は据わった――神へとすげなく告げながら、彼は最後の一歩を詰める。この距離に至っても、もう身に触れる不快感は消えていた。
 銀杏色の組紐飾り揺らし、細剣の切っ先を大きく弾く。
 類――、再度名を呼ぶ声に、応、彼は自分でも驚く程、軽やかに返していた。
 もう一度翻った曲刀が、神の頬を掠めた刹那。懐に飛び込んだ類が赤い糸を神の腕に搦め、括り付けると――何処までも見通すような緑の双眸で、深淵を見据えた。
 両者の狭間に情念の花が咲き、類は答えを求めて問い掛ける。
「誰を呼んでいるの。応えが返るのを待ち続けるだけかい? 瞳や力無くとも――魂ひとつで、会いに行きなよ」
 見つめられた神は、笑った。まるで、よくぞ訊いてくれたとでもいうかのように。
「そうだ――私の望みもそこにあるとも。ただ、そのためには……」
 花が語る。だがそれにはヒトの手が必要だった――。
「それとも、そなたが導くか――信仰得たる、異端の神よ」
 ああ、類は頷く。
「会いに行きたいというのが、あなたの願いなら」
 ただひとつ訂正するならば、何も手を出せぬ神としてでは無く――人と共にあるものとして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
…嘗て神と崇められた御身が
何とも哀れな末路よな

魔方陣より召喚するは【雷神の瞋恚】
闇をも切り裂く雷で、彼奴を打ち据える
我が魔術を模倣されたならば
残像で神の意識を其方に逸らしつつ
電撃耐性、オーラの護りを以て耐える
…やれ、随分と舐められたものよ
これは私が編み出した魔術
――ならば、その対策を知らぬ訳があるまい

罅の走る音すら気に留めず
渾身の魔力を込め、高速詠唱にて絶え間なく
神威を彼の敵へと齎そう

私は、我が力に絶対の信を置く
そうでなければオブリビオンを屠る事なぞ到底叶わぬ
…ふふん、心配するな
貴様も私が滅してくれよう
己が何者であったか
――己が何の為にこの地に在ったのか
骸の海で頭を冷やし、暫し考えてくるが良い



●不敵
 語るものもなくなった神は、虚構、虚無――うつろな存在である。
 絶たれた神話、神性。今は『彼』がいうところの悪鬼のひとつに閉じ込められて、ただ嘆きで世界に闇と不信を招くのみ。
「……嘗て神と崇められた御身が――何とも哀れな末路よな」
 神殿を一瞥し、最後はヴァンパイアの器に収まった神を見つめ――静かに囁くと、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は仕込み杖をかつりと下ろした。
 煌めくスターサファイアの耀きは、憐れみなどではなく。
 人に害為すものを排そうという意志。
 紅を載せた指先で、しかと杖を掴み、彼は滑らかに魔方陣を描く。
「天罰と心得よ」
 厳かに言い放つと、闇が割れた。
 天より地を穿つは、神の怒りといずれの世界でも呼ばれる、光の刃。けたたましい破裂音と共に炸裂する、直視も出来ぬ閃光の狭間、神は軽く、自らと天を結ぶ雷を躱そうと後ろへ跳んだ。雷を斬ることは叶わずとも、その一片を写し取り――術者へと返すことはできる。
 細剣が空を踊れば、アルバの頭上に、光の兆しが現れる。
「……やれ、随分と舐められたものよ」
 やや瞳を伏せて、彼はゆっくりと歩き出した。魔力の残滓が、アルバの擬似的な像を残して神の感覚を惑わせる。然れど、ぴしゃりと破壊音と共に石畳を穿つ天雷は概ね狙いを外さずに、彼の躰を掠めて落ちた。
 ずれたのは、移動が間に合った分だけ、ということだ。だが、魔力の膜をもって身を守る彼には大した衝撃でも無い。
「これは私が編み出した魔術――ならば、その対策を知らぬ訳があるまい」
 微笑を唇に刻んで、より強い魔力を、より強力な一矢を――短いその一言を終えぬ間に、杖を翳し、放つ。
 それから暫し、何も見通せぬ闇は賑やかに輝いた。雷の競演、どちらが強く、鋭く、相手を穿てるかの根比べ。
 互いに無防備に喰らい合う程、愚かでは無い。それでも、疵付いた神の躰は更に疵付いていき、アルバの躰も罅で毀れていた。
 さりとて譲る気は無い。彼にも、意地と矜持がある。
「私は、我が力に絶対の信を置く」
 そうでなければオブリビオンを屠る事なぞ到底叶わぬ――。
 幾度目ともなる雷を差し向けながら、アルバは不敵に笑った。美しく、整えられた表情の奥――然し内側より何かの使命を燃やす、魂の力を、神は暗闇の中に感じた。
「……ふふん、心配するな、貴様も私が滅してくれよう」
 白い世界の中で神が動きを止めた理由も、彼は知らぬが――機を逃しはせぬ。
 重ね、もう一撃。
 黒々と躰を焦がして崩れ落ちる相手ではないだろうが、可能な限り削り取ってくれようと楽しげに魔力を編み、
「己が何者であったか――己が何の為にこの地に在ったのか……骸の海で頭を冷やし、暫し考えてくるが良い」
 それが望みなのだろう。囁く声には、憐憫が混ざった。
 雷の音に掻き消され、届かなかったけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】
ヒトか、なんて面白い事聞かれたモンだな――ああ、そうだとも
どうでも良い事だろうが、一応、な

さて、心
何も持たぬモノであったなら、いっそやりやすかったのかもしれないが――俺はもう、どうあってもヒトなモンで
なればこの心を力に、人間臭く挑んでやるだけだ

――口にはせずとも、並ぶ狐には信頼を
――そして彼の神には害意に非ず――ただ静かに、この闇を終わらせようという一心を

風切と烏羽で細剣狙い武器落とし
細剣落ちれば即UC――をフェイントに
常は抜かぬ花明を――この心を照らす一振を叩き込む

呼べど待てど手詰まりなら
せめて此処から送り出そう
黎明は、遠くとも――昏冥の過去に立ち止まったままの時間は、終わりにしよう


千家・菊里
【花守】
――おや迷いなく答えたものですねぇ
いやぁ、此処にきてまさかこんな問答が聞けるとは

疑心など、元より持ち合わせず――加えて俺は小難しい事など考えない手合
今は中々面白い――もとい、良いもの拝めてますし、ねぇ(ちらりと伊織を見遣って)
実に感慨深くて、何かを疑っている暇などないというもの

なんて――さて、最早言葉も無用
神に向けるは鎮魂の念――狂気と昏冥に沈み続ける夜を終える為にこそ、心と刃を向ける

霊符にて破魔の光属性攻撃
狙うは細剣――武器落としにてUC放つ隙を作り出すべく連携
落ちれば炎を送火に
微力たれど、道行と心を今一度照らせたならば

ええ、どの様な形となろうとも――終わらせ、そして進みましょう



●不言
 ヒトか、それ以外か――それは呉羽・伊織(翳・f03578)にとって、妙に耳に残る問い掛けであった。
「ヒトか、なんて面白い事聞かれたモンだな――ああ、そうだとも。どうでも良い事だろうが、一応、な」
 ふふと可笑しそうに笑うものの、ヒトと答えた声音に迷いは無い。
「――おや迷いなく答えたものですねぇ」
 対峙する神の代わり、軽く眉を上げたのは、千家・菊里(隠逸花・f02716)であった。
 愉快そうな様子を隠さぬ彼に、じとりと伊織は一瞥くれる。ただ、そんなことで尾を丸めるような男ではないことも知っている。
「いやぁ、此処にきてまさかこんな問答が聞けるとは」
 くすくすと笑っている菊里を余所に、伊織は神の前へと一歩、距離を詰めた。
 袖口に手を潜ませる無礼も、元より信者でもなし、相手は視力を持たぬゆえに咎めもなかろう。
「何も持たぬモノであったなら、いっそやりやすかったのかもしれないが――俺はもう、どうあってもヒトなモンで……なればこの心を力に、人間臭く挑んでやるだけだ」
 言うや否や、蹴る。
 跳ねた男を尻目に、さて己はと菊里は首を只傾ぐ。
「疑心など、元より持ち合わせず――加えて俺は小難しい事など考えない手合。今は中々面白い――もとい、良いもの拝めてますし、ねぇ」
 ぽつぽつと、周囲に狐火を浮かべて、艶美と笑む。
「実に感慨深くて、何かを疑っている暇などないというもの」
 戯ける言葉とは裏腹に、眼差しは真摯と神を捉えている。手を振れば、扇のように霊符を並べ、ゆるりと薙いだ。
「狂気と昏冥に沈み続ける夜を終える為に」
 それだけを願いと彼は囁く。
 駆ける霊符が伊織を追い抜き、神へと飛来する。
 男は腕を掲げると垂直に下ろす。軽い一閃、霊符を断ちて、第二陣となる伊織をそのまま待ち受ける。抜き放った黒刀を、細剣を落とすように斜めに払った。
「――ただ静かに、この闇を終わらせよう」
 彼が戦いに奉じるは、ただその一心。
 神と対称に懐を空けた伊織だが、至近より暗器を繰り、隙間を埋める。刹那、神の脚が強く地を叩いて――疵を厭わず、伊織との距離を詰めてきた。
 鋭く奔る鋒を、躰を逸らして彼は躱す。髪が一筋離れていくのを見やり――傾いだ躰は、追撃できぬ態勢へと追い込まれた。だが、追い詰められたとは思わぬ。
 霊符が舞う。
 剣を目的とするのを悟って、神は後ろへ跳んで其れを斬る。すかさず、十数の狐火が次々と襲い掛かる。赫きを捉えられぬ神は、肌に感じる熱に初めてその存在を知る。
 伊織と菊里、互いに言葉にせずとも――その呼吸は掴んでいる。
 霊符で口元を隠して、笑う妖狐がひそりと囁く。
「――微力たれど、道行と心を今一度照らせたならば」
 充分だ。再び正面から、暗器を放つ。名の通り、闇に紛れ風を斬る小さな刃が、神の退路を奪うように反撃する。
 然れど、事も無げに神は細剣を返す。躰を軸に半回転すると、鮮やかに細剣を閃かせ、襲い掛かる暗器を払うと、写し取った菊里の炎を放って散らす――重ね、炎を、霊符を、自ら迎えて相殺しながら、再び放たれた四肢を狙う暗器を剣で弾く。
 応えるように、伊織が再び黒き妖刀を放とうという動作で、前へ合わせる。
 懐へ一刀を叩き込もうと低い体勢で出た伊織へ、水平に大きく腕を振るって凌ごうとした神の腹に――匕首が刺さっていた。
 間合いはほぼ同じだが、見せかけの一刀と暗器を目眩ましに、普段は抜かぬ刃で裏をかいてみせた。
 悪戯が成功したような表情で――伊織は笑った。
「呼べど待てど手詰まりなら、せめて此処から送り出そう」
 見ぬ黒瞳が、懐を見下ろす――その表情は落ち着いている。
 とても、狂気に満ちたものの顔では無かった。だが、この神が何処へも行けず、この中で苦しんでいるのは判っているから。
「黎明は、遠くとも――昏冥の過去に立ち止まったままの時間は、終わりにしよう」
「ええ、どの様な形となろうとも――終わらせ、そして進みましょう」
 菊里が小さく頷く。周囲に残った焔を集めて――うんと豪勢に送ってやろうと、神へと放つ。
 闇を終わらせ、世界を先へ進めるための送り火を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユルグ・オルド
多少は馴染んだ暗闇に
地面の変化程度は知れて
さてお膝元で謀叛といこう

目以外は、悪かったんだっけ?
今もそうだかは知らないが
まァわざわざ知らせるこたない
息を潜めて動作を追って
低く自分が溶けて気配を絶つように
飛び掛かるまでの機を窺って
手数勝負とはいきたかねェな

それで何でンなコトしてたんだい、カミサマ
狂気にいらえがあるとも思わないケド
思考を吐いて棄てるのは蠢く底に攫われないように
届かなかったら、折れたなら
――不要であるというならば
正気のままで気振れてみせよう
それなら、死ぬだけだ
慄いて笑う、そのまま振り抜いて

ねェ、目も開かずこんなところで
どんな祈りを待ってたの



●不意
 神殿を眺め、石畳を眺め、空間を見つめ――、大分慣れたな、と男は口元に笑みを湛えた。
「さてお膝元で謀叛といこう」
 くるりとユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は愉しげに振り返る。
 一見その一挙一動は大胆ではあるが――実際の所、布擦れの音すら微かだった。
 大股に進んでいくにも関わらず、靴底が立てる音も無い。無音では無いが、ほぼ無音――しなやかな動きでユルグは神との距離を詰めていく。
 ――目以外は、悪かったんだっけ?
(「今もそうだかは知らないが、まァわざわざ知らせるこたない」)
 不利な戦いを楽しむことも無くはないが、敢えて身を削るのが好きなわけでもない。
 他に誰か居合わせていれば、より楽に、言葉通り暗躍したものだが。
 息を潜めて機を窺う――手数勝負とはいきたかねェな、考えはそこにある。
 決めるなら一撃だ。自分はそういう剣だ。
 然し、視界は無く、鼻も効かずとも――相手は曲がりなりにも神。ただ棒立ちのでくの坊ではない。
 無意識にすっと細剣を構え、ユルグの接近に備えたのだから、彼は紅瞳を細めた。
「それで何でンなコトしてたんだい、カミサマ」
 地を蹴る。
 狂人の――正確には狂神か、いらえなど期待しない。剣を抜かず、すれ違うように立ち位置を入れ換える。
 脳裡を、腹の裡を、探り試すような感覚を試すように、ユルグは息を潜めて相手の反応を観察する。危険を顧みず、警戒全てを解いて、無防備に空間に溶け込む。
 その行動の根本に、害意がないとは言わぬ。
 だが今は、ただの観察。
 そこまでやっても、最後の一刀がどう響くかは判らない。
(「届かなかったら、折れたなら――不要であるというならば」)
 ――正気のままで気振れてみせよう。
「それなら、死ぬだけだ」
 それは覚悟か。或いはただの事実の確認か。飄飄と彼は言ってのけた。
 刹那、ふるりとユルグの躰が震えたのは、如何なる慄きか――少なくとも、恐怖ではない気がする。何故なら、彼は笑っていた。
 神が、紡がれた声に振り返った時には、もうユルグは躰を捻っていた。
 一刀はすぐに放たれる。確りと彼の間合い、細剣の外、ああそれでも合わせてくるか。
 それでも、先に弾けたのは黒衣の袖。振るう白刃は神の左腕を裂いて、右腕の細剣が彼を貫く前に、跳ねるように距離を取る。
 打ち合うつもりはない。先程観察した動きの幅を思い出し、再度仕掛ける。がきりと鋼が合わさる音は、互いの刃を外し合う。
「ねェ、目も開かずこんなところで――どんな祈りを待ってたの」
 問い掛けに、神は自嘲する。
 知っている。気付いている。だが、自分では儘ならぬ。
「――待ち人来たらず、でさ」
 いつまで待つンだい――ユルグは再度、問い掛けた。ふ、今度は明確に、狂った神は彼に笑いかけた。
「……待ち人を、持て成しているのだが」
 そのいらえに剣で応える。やはり、このカミサマは狂っているのだろう。
 ――ならばもう少し、加減をしてくれてもいいのではないか。
 低く突出したユルグの肩から背を、一筋の鋭い熱が奔る。だがそれで、深い懐に潜り込んだも同然だ。
「見えた、」
 鋭く深く、刃を埋めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
神など知らぬ身には
矢張り只の生き物としか映らぬまま

疲弊しような
怒りを燃やし続けるのは
己はといえば
決して許してはならぬ者へのそれすら
時折薄れそうになるというのに
この疑心は奴の力か、知らぬが

怒りだけに狂い斃され消えるしかないもの
ならば、もし最期にそれを失えば

果たして害と成り得ようか
竜化させた腕より【心喰】の一撃
怒りを身に喰らい、根源を覗くように
返されるならば互い何も感じぬのだろうか
どちらの苦痛か、最早解らぬのだろうか
身体が動く限り爪を振るう

…俺は、俺を、許しはせぬ
さりとてお前のようにも生きられぬ
吐露は誰にも聞こえぬよう

ヒトとして逝くも
狂気のままに還るも
お前の好きにすればいい

此処には、もう何もいない



●不知
 神など知らぬ目の前に立つのは、只の生き物にしか見えぬ――師であれば、もっと別の言葉で置き換えてくれたかもしれない。
 だが、自分はいまひとり。
「疲弊しような――怒りを燃やし続けるのは」
 深い闇の色をした瞳をそれへと向けるジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)の様子は、戦場に身を置きながら、硬く神経を尖らせるような風ではなかった。
 茫洋たる闇を眺めて歩いてきた時と変わらぬような、遠くを見つめるような眼差しの儘。
「決して許してはならぬ者へのそれすら――時折薄れそうになるというのに」
 左腕で、胸の辺りに拳を当てた。
 今、憶える疑心は、かの神の仕業だろうか。
 しかしそれらすべてが、神の存在したときの業であり、滅んだ時の未練であるならば。
(「怒りだけに狂い斃され消えるしかないもの――ならば、もし最期にそれを失えば」)
 その力が、害となると判断されるか否か。
 賭けてみてもよい――。
 ジャハルはぐっと身を低くしたかと思うと、爆ぜるよう、駆った。
 掴みかかるように上げた右腕は、黒く龍の鉤爪と変じていく。
 神は動かぬ――ジャハルが如何なる一撃を与えようと、受け止める自信があるのか。或いはその攻撃を受ける不利を甘んずるのが、それにとって優位だからか。
「教えてくれ」
 黒銀の鉤爪がその胸を抉り、与えるのは――苦痛を喰らい己へと移し替える呪詛。
 ゆえに叩きつけたジャハルの全身に、苦痛が渦巻く。
 この一閃は、謂わば苦痛を喰らうだけ――彼の腕は胸を貫いているにも関わらず、神は無傷であるはずだった。
「――……ッ」
 息を呑んだのは、神だった。
 害意なのか疑心なのかは判らぬが――ジャハルの与えた一撃が、ジャハルに返れば――神にも苦痛がある。
 皮肉な構図だと、ジャハルは口の端を上げた。
 ――躰が燃えるように痛く、心は深淵に澱むように重い。だが、彼は構わずに、幾度となく爪を振るった。
 本来、一切の外傷を与えぬ――多少の打撃による負荷はあるにせよ――爪の乱撃は、受けるモノ、仕掛けるモノ、互いに苦痛をもたらした。
 殆ど痛みを感じていなかったらしい神は、ジャハルから還元された痛みに顔を歪めると、抗おうと細剣を上げる。ひとたび彼は距離をとって逃れる。
 呼気が荒れ、動きが鈍いのはお互い様だが、覚悟がある分だけ彼に分があった。休む間を与えぬよう、彼はすぐさま神へと迫る。
 ひたりとジャハルの黒髪が額に張り付く。彼の膚濡らす汗は、あまり見られぬものであろう。
 心を削ぐような苦痛。それがどちらのものだか、解らない。
「……俺は、俺を、許しはせぬ。さりとてお前のようにも生きられぬ」
 息と共に零れた吐露は、あまりに淡く、彼自身の躍動に掻き消される。
 神が半歩退きながら、剣を繰る。刺突の刃を爪で無造作に押さえ込むと、もう一閃、斜めに爪を振り上げる。
 そこから突き放すように掌打を撃って、反動で距離を取る。
「――……あァア、正気とはおもえぬ……ヒトとは――なんと……」
 胸を押さえながら、神は呻いた。
「なんだ、痛みも知らずに嘆いていたのか」
 大きく息を吐き、改めて構えながらジャハルは神を見た。
 罪悪とは、痛みと向き合うことだ。或いは――痛みが実感出来なかったのか。
「ヒトとして逝くも、狂気のままに還るも、お前の好きにすればいい」
 ただひとつ、ジャハルにも、誰にも明らかな事実がある。
「――此処には、もう何もいない」
 思い出したように吹きつけてきた凍み風を、もう何とも思わない。
 ただ、虚しいだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セロ・アルコイリス
花世(f11024)と

お待たせしました、神サマ
おれはヒトじゃねーし
花世もあんたの想いビトじゃねーけど
あんたの“さみしい”ココロ、奪りに来ましたよ

花世。
あんたがばけものだって言うなら
おれはばけもののあんたごと大好きですよ、
華の勇者サマ!
温かい光魔法を彼女に

囚われる中で呼ばわれたなら瞬いて
疑いを自分に向ける神サマにゃ
ほんのちょいと共感しますけど
おれにゃおれを証明してくれるココロ強い友達がいるんです
あんたに愛しいヒト達が居たみたいにね

害意を捻じ曲げて返す先が互いを攻撃しねーように同時の攻撃は避ける
光魔法を纏ってから【曙光】、
受け止められる時間を極力減らす

ヒトが愛しいってトコも、ちょいと判るなあ


境・花世
セロ(f06061)と

すきなひとが見えなくなったら
うんとさみしいね、神さま
今はまだ確かに眸に映るセロの、
ふわふわ揺れる綿菓子の髪に微笑って

今、ぜんぶ、終わらせてあげよう

囁く刹那に躰から爛漫の花が咲く
攻撃はセロと交互に
高速移動と早業で敵の意表を突いて
できる限り受け止めさせずに切り裂こう

もしも疑心がはね返って来たって、
きみの声を聴く耳はまだ死んでない
わたしは花世だ、ばけものだって確かに花世で
そうしてセロ、きみはわたしのセロだ!

一斉に舞い踊る花びらで神さまを送り出そう
もう待たないで、どうぞ還っておいで
何もかもが交ざり合う、愛しい面影揺れる海の底へ
そうしたらきっと――さみしいも、融けていくから



●不滅
 躰のあちらこちらから灼けた匂いがする。思い出した苦痛が、全身を苛む。
 金の髪に彩られた貌は涼しいものだが、負傷は負傷として、肉体に刻まれていると思い出し、徐々に綻びつつある。
 然し、それを操る魂は、まだ消滅する気はないようだ。
「お待たせしました、神サマ」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)が挨拶ひとつ――軽く首を傾げば、虹を帯びる白い髪がふわりと揺れる。
「おれはヒトじゃねーし、花世もあんたの想いビトじゃねーけど――あんたの“さみしい”ココロ、奪りに来ましたよ」
「――さみしい」
 神は鸚鵡返しに、その感情の名を呟いた。
「すきなひとが見えなくなったら……うんとさみしいね、神さま」
 ゆっくりと深く頷いて――境・花世(はなひとや・f11024)が囁きかける。
 隣り合うセロの柔らかな髪に、彼女は華やかな微笑を浮かべた。
「今、ぜんぶ、終わらせてあげよう」
 花世の躰に華が咲く。絢爛たる絢爛たる百花の王を纏った彼女は、軽やかに駆った。
 ほぼ同時、ええ、そう頷く気配があった――もう互いを確認しなくても、大丈夫だった。
 神を挟むように、花弁を撒きながら距離を詰める花世と、光の魔法で加速したセロ。対峙する神が、その鮮やかなる競演を見ることが叶わぬことを、憐れむべきか。
 腕を緩やかに広げ、それは細剣を構えた。
 小さな意気を吐息と混ぜて、セロが斬り込む。どうしたって、間合いの狭いダガーを届かせるのは不利だ。魔力を脚に籠め、光の如く、跳ぶ。
 それをほぼ柄で受けて、神はセロとすれ違う――反撃は、諦めたらしい。否、まだだ――ふわり、華の香りが漂う。刀のように鋭く、扇のように嫋やかに。遮蔽となるよう、花世が花弁を操る。
 踊るように、黒衣の脚が地を踏んだ。剣で薙ぎ払い、自ら道を作って抜け出す神へ、二人はすかさず追撃する。
 神に届かせるならば。響かせるならば。
 戦意を燃やせば、燃やしただけ、儘ならぬ力に搦め捕られそうになっても――セロ、名を呼ぶ声が、自分の立ち位置を教えてくれる声が引き戻してくれる。
「疑いを自分に向ける神サマにゃ、ほんのちょいと共感しますけど」
 ぱちりと幻惑を払うように、瞬いて、彼はダガーを振るう。
「おれにゃおれを証明してくれるココロ強い友達がいるんです。あんたに愛しいヒト達が居たみたいにね」
 軽妙な声音で、セロが笑う。
 きみはセロだといってくれた花の色を忘れない。
 だから、おれも応えよう。
「花世。あんたがばけものだって言うなら――おれはばけもののあんたごと大好きですよ、華の勇者サマ!」
 花纏う彼女とは、視線は一度たりとも交わしていなかった。お互いのすべきことを、きっと成すと信じているから。
 束の間の微睡みに似た疑心へ、割り込む光を感じ――ああ、微笑みを浮かべた儘、花世は確りと華を手繰る。
「もしも疑心がはね返って来たって、――」
 きみの声を聴く耳はまだ死んでない。
 だから、わたしも何度も叫ぼう。
「わたしは花世だ、ばけものだって確かに花世で――そうしてセロ、きみはわたしのセロだ!」
 叫び合い、響かせ合う。余計なものを挟み込ませぬように。
 そんな二人へ――神は、一筋の涙を零す。そんなものが零れた驚きに、形が崩れつつある掌で受け止め、握りしめる。
 否、様々猟兵たちが見せてきた、在り方の証明。そして、神へ向けた、怒りや、慈悲や、同調の結実。
 待っていたのだ、ヒトを。
 神を終わらせてくれる存在を。
 其れを知って、彼らは力で示してくれる。先の見えぬ闇へを畏れず――疑心も、不信も、返る刃の鋭さすら、臆さず立ち向かってくる。
 気付いた時には受けとめた傷が存在を思い出したように、堰を切ったように溢れ出す。
 内側からからの崩壊ではなく、刻まれた全てが、ヴァンパイアの器を灼いていく。
「もう待たないで、どうぞ還っておいで――」
 何もかもが交ざり合う、愛しい面影揺れる海の底へ。
 囁く声と、ゆらりゆらりと美しい花弁が視界を包む。既に剣を握る腕は、灰のように崩れていた。
「そうしたらきっと――さみしいも、融けていくから」
 優しく声音は、記憶の底にある何かを刺激する。でも届きはしない。行って、確かめねばならない。
「さあ、約束通り、いただきますよ」
 セロがその背にダガーを埋めた。核となるココロを、砕いて解き放つ――。

 ――かつて虚空に響く狂瀾の声は、救いを求める悲鳴であったのか。
 いずれにせよ、勝負が決した、その瞬間――凍える風が吹き荒れる闇は、忽然と消えて、何処までも広がる自由な荒野と、奉るモノを喪った空の神殿だけが残された。
「――ヒトが愛しいってトコも、ちょいと判るなあ」
 薄暗いダークセイヴァーの空でさえ、こんなにも明るかったのかと――天を仰いでセロは笑う。
 ヒトの時代、ヒトの世界。
 紡ぐための障害は未だ未だ多いが――この薄闇は、黎明と呼んでも良いはずだ。

 崩れ去った躰より解き放たれた神の魂は、待ち人を探しにいけるよう自由になったのか。
 それとも深い闇の底へと沈み搦め捕られたかだけなのか――誰にも知る術はない。
 ただ――猟兵達の去り際、見送るように駆け抜ける風の余韻に、笑うような、歌うような、不思議な声が混ざっていたような気がした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月15日


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#ダークセイヴァー
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#異端の神々


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト