アルダワ魔王戦争2-A〜微睡む永眠の地
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「集合お疲れ様。ダンジョン攻略は良い調子みたいだね」
猟兵達へと笑顔を向けて、ユェン・ウェイ(M.Y.W・f00349)は説明の準備を進めていた。
「向かってもらいたいのは地下墳墓のダンジョンだよ。ここには沢山の怨念が渦巻いていて……ボスのオブリビオンがその影響を受けているみたい」
地下墳墓に潜む怨念達は、猟兵達には大きな影響を与える事はない。
けれどここに潜んでいたボスにとっては良くない影響を与えてしまっているようだ。
「怨念はボスから理性を奪ってるんだ。これだけならボク達に有利なようだけど……結果として、ボスがパワーアップしちゃってるんだよね」
ボスは理性を失った代わりに、強力なパワーを得てしまっている。
けれど猟兵達なら対策を講じる事も可能だ。
「ボスに取り付いた怨念を払ったり、この地に漂っている怨念自体を浄化していけば、ボスのパワーアップは解除されていくみたいなんだ。その際に理性も戻りはしないみたいだから、最終的には弱体化が出来るっていう訳だね」
怨念を浄化する方法は常識的な範囲なら何でもいいようだ。
例えば聖なる光で浄化したり、祈りを捧げてみたり。
あるいはポジティブなパワーや陽の気のようなものを生み出して怨念の力を弱めたり。
とにかく最終的にボスから怨念を祓えばいいのだから、色々と挑戦してみる価値はありそうだ。
「ここのボスの名前は『微睡の残滓』。元々眠る事が大好きで、出会った人を添い寝の相手にしようとするオブリビオンなんだ。そんな子が理性を失ってるんだから……意地でもボクらを眠らせようとしてくるんじゃないかな」
『微睡の残滓』はありとあらゆる手段を講じて猟兵達を眠りへと誘うだろう。
余裕があれば彼女の攻撃への対策も行っておいた方が良さそうだ。
「それじゃあ改めて。今回お願いするのは怨念に憑依された『微睡の残滓』の討伐だよ。彼女に取り憑いた怨念を上手く祓って、弱体化してから倒してね」
ここまで話し終えたユェンは、猟兵達へと頭を下げる。
「ダンジョン攻略はまだまだ続くけど、気をつけて行ってきてね。それじゃあよろしくお願いするよ」
ささかまかまだ
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プレイングボーナスの条件は「怨霊を浄化したり、鎮めたりする行動を取る」です。
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こんにちは、ささかまかまだです。
ダンジョンに地下墓所。いいですね。
怨念を浄化する手段は荒唐無稽すぎなければ大丈夫です。
祓おうとする意思が大切です。
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シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
それでは今回もよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『微睡の残滓』
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POW : 固い枕? ふわふわパジャマ? あなたのお好みは?
いま戦っている対象に有効な【睡眠導入に用いる道具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : わるいことも、こわいことも。ぜんぶなくなるよ。
【甘美に響くよう祈り】を籠めた【睡眠へと誘う囁き】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神】のみを攻撃する。
WIZ : さみしいの。いっしょに寝よう?
小さな【空中を漂う仄灯り】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【快眠が約束された空間】で、いつでも外に出られる。
イラスト:ハチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「メルヒェン・クンスト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リオ・ウィンディア
ただいま地下墳墓を巡回中
喪服が似合いすぎて困っちゃう?
いいわよ。あなたが満足するまでそばにいてあげる。
手巻きオルガンで子守唄を【歌唱・楽器演奏】し、
【呪詛】を取り払うように癒しの音楽を奏でる
安心しておやすみなさい
月夜が星があなたに眠りのキスをする
そっと前髪を書き上げて
あなたを優しく抱いて
母はあなたを優しく、優しく、眠りへ誘う…
ふわぁぁ
私もなんだか眠くなってきたわ
でもあなたと一緒に眠れるのならそれもまた嬉しい・・・
いつまでも一緒にいましょう
私も寂しいの
(あなたもきっといなくなってしまうから)
あぁ、愛しき悲しみの子よ
どうか安らかにお眠りなさい・・・
(むにゃむにゃ、スヤスヤ
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地下墳墓の中を喪服の少女が歩んでいる。
その様子はとても自然だけれど、ここはアルダワの広大なダンジョン。
喪服の少女――リオ・ウィンディア(Cementerio Cantante・f24250)も、誰かを弔うためではなく世界を救うためにここへとやって来ていた。
「おねえちゃん……一緒に寝よう……」
リオの前に、小さな女の子が姿を現した。
けれどリオには分かっている。その少女はオブリビオンで、彼女が強い怨念を纏っている事を。
怨念は少女の周囲に漂う仄灯りと混ざり合い、リオを永遠の眠りへと誘おうとしてくる。
けれどリオは構わず少女の方へと近づき、優しげな笑みを浮かべていた。
「いいわよ。あなたが満足するまでそばにいてあげる」
そう言いつつ取り出すのは、美しい装飾が施された手巻きオルガン。
リオはそっとハンドルを回し、優しい歌を奏で始めた。
「これって……?」
「子守唄よ。安心しておやすみなさい」
曲に合わせて子守唄を紡いでいけば、少女は墓石に背を預けうとうとしだす。
そんな少女の額に優しくキスをして、リオは少女を抱きしめた。
月夜が星があなたに眠りのキスをする。そっと前髪をかき上げて、あなたを優しく抱いて。母はあなたを優しく、優しく、眠りへ誘う……。
優しく暖かな旋律が二人を包んでいけば、怨念の気配が薄くなり始めたようだ。
リオが奏でるのは癒やしの子守唄。これに共感した少女のオブリビオンは、彼女本来の力によって怨念を払い除けていけるのだ。
「ふわぁぁ、私もなんだか眠くなってきたわ」
小さなあくびをして、リオも少女の側でうとうとし始めていた。
けれどその表情に不安はない。この歌に包まれている限り、二人を誘いのは冷たい死の眠りではなく、暖かな午睡なのだから。
「いつまでも一緒にいましょう。私も寂しいの」
「おねーちゃんも寂しいんだ……」
二人の少女はずっと前から友達同士だったかのように、寄り添って音楽に身を委ねている。
けれどリオには分かってる。この子も最後にはいなくなっちゃうんだって。
今少女を動かしているのは、怨念による力だろう。それがなくなってしまったら、残るのは弱ったオブリビオンが一体だけ。
そうしたら、きっと彼女は消えてしまう。
だから、せめてその時までは一緒に。
「あぁ、愛しき悲しみの子よ。どうか安らかにお眠りなさい……」
「……ありがとう、おねえちゃん」
少しでも、この子が静かに眠れますように。
リオの捧げた祈りは、悪しき力を着実に打ち消していった。
大成功
🔵🔵🔵
アンノット・リアルハート
まったく、怨霊はどこでも押しつけがましいものね
【早業】と【スナイパー】で『ノイギーア・シャッテン』を伸ばし、相手の喉を一突きして囁きが出ないように【時間稼ぎ】、そうしたらこの地に満ちる怨念達に呼びかけましょう
思い出しなさい貴方達の真の望みを!失われてしまった思い出たちを!そう言って選択UCを発動し怨念達が忘れてしまった記憶の【封印を解く】。かつての暖かな記憶を思い出せば怨念達の怒りも静まるでしょう
成功して相手が弱体化したら【2回攻撃】で『ノイギーア』を縦に回して穂先を微睡の残滓の脳天に叩き付けましょう
一緒に寝てあげたいのは山々だけど……私にはできないの。私自身、夢みたいなものだから
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「まったく、怨霊はどこでも押しつけがましいものね」
大きな槍『ノイギーア・シャッテン』を肩に担いで、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は墓所を進む。
彼女も滅びた国からやって来た走馬灯、役割を押し付けられて旅に出た存在。
だからこそ、怨念もオブリビオンも放っておけない。
アンノットの目線の先にはゆらゆら佇むオブリビオンの姿も見えていた。見た目は幼い少女だが、彼女の瞳には狂気の色が宿っている。
少女がアンノットを視認し、口を開いた。そこから紡がれる囁きは聞いたものを眠りに誘う呪詛だろう。
「……させないわ!」
だから、アンノットは駆けた。槍をしっかり前に構え、柄を握る手に力を籠めて。
それに応えるように、ノイギーアの影は勢いよく伸びて……一気に少女の喉を突き刺す。
囁きは発せられない。その隙を利用して、アンノットは大きな声で叫んだ。
「思い出しなさい貴方達の真の望みを! 失われてしまった思い出たちを!」
アンノットが呼びかけたのは周囲に漂う怨念達だ。
彼らがどのようにしてこの迷宮に囚われたのかは分からない。けれどここで苦しむことは、きっと本意ではないはず。
「彼方の夢よ、失われた記憶を呼び起こしたまえ!」
さらなる叫びと共に、アンノットはユーベルコードを行使する。
それは優しい記憶の魔法。忘れてしまった夢と思い出を伝える祈りだ。
魔法によって生じた光が周囲を照らし、少女に取り憑いた怨念達も包んでいく。
彼らもきっと、かつての記憶を思い出しているのだろう。少しずつ禍々しい気配が薄れていくのが分かる。
「……ぁ」
少女もその光に中てられて、瞳から狂気の色が滲んでいく。弱体化には成功しているはずだ。
そこでアンノットはすかさず槍を振り回し、一気に穂先を少女の頭へと叩きつける!
凄まじい衝撃が手から伝わり、少女も苦しそうに顔を歪めていた。
「おねえちゃんは、一緒に寝てくれないの……?」
涙目でこちらを見つめる少女には憐憫の情も湧いてきた。けれどアンノットは静かに首を振り、自身の為すべき事を伝える。
「一緒に寝てあげたいのは山々だけど……私にはできないの」
私自身、夢みたいなものだから。だから一緒に眠ってしまっては、きっと二人で消えてしまう。
「だから、今はおやすみなさい」
挨拶を交わし、アンノットは少女から槍を離した。その表情は優しい姉のようで、少女の表情も安らいでいくのが分かる。
アンノットの魔法と優しさは、怨念と少女を救う一歩として地下墳墓を照らし出した。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
催眠を武器にする身としては
眠らされてあげるわけにはいかないかな
気持ちはすごくわかるんだけどね?
眠ることが勿体無いと思えるくらい楽しい音楽をあげる!
【ダンス】と【空中戦】を組み合わせた優雅な舞いに明るい【歌唱】を合わせ
彼女のワクワクを沸き立たせるように
【誘惑】も上乗せした【パフォーマンス】
誘いには勿論抵抗するよ
だって勿体無いじゃん!
もしも危険がなさそうなら
そっと彼女の【手を繋ぎ】
笑顔で誘いをかけてみよう
眠り姫様?どうぞ一曲
怨霊を祓うため、演出も兼ねて
【指定UC】も発動してみよう
歌で操る【破魔】を乗せた花弁は
優しい風で、魔を浄化してくれる
もう一度眠るのは…
ありのままの貴方を取り戻してからにしようね
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優しい眠りは好きだし、眠りは自分にとっても大切な武器だ。
だからあの子の気持ちは分かるけど、眠らされるわけにはいかないね。
密かな決心を胸に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はふわりと地下墓所に舞い降りた。
「んー……さみしいなぁ。りょうへいさんも、一緒に寝よー……」
オブリビオンの少女も澪の到来に気がつくと、周囲の仄灯りを漂わせながらそっと距離と詰めてきた。
見た目だけなら愛らしいこの少女も、今は怨念による狂気に囚われている。だから彼女の誘いに乗る訳にはいかない。
「ううん、眠るよりもっと楽しい事をしよう! こんな音楽はどう?」
少女が接近するより早く、澪は薄桃色の翼をはためかせながら宙を舞った。
楽しい歌を口ずさみ、それに合わせて楽しく踊って。
ここが地下墳墓であるという事すら忘れてしまいそうな楽しい空気。少女もじーっと澪を見つめ、微かに身体を揺らしていた。
きっとこの子にも悪意はない。それならいっそ、一緒に踊ってしまおうか。
澪は舞いながら少女の方へと近付いて、彼女の手を優しく取った。
「眠り姫様? どうぞ一曲」
「わ、わぁ……」
一緒にふわりと空を飛び、広がる墓所を見下ろして。
少女の顔にも柔らかな笑みが浮かび始め、それを見た澪もにっこりと笑みを浮かべた。
「それから、お花は好きかな?」
「お花……?」
「そう、綺麗なお花!」
澪の歌声に合わせて、美しい花弁が生まれ始めた。
本来は刃と化すこの花弁も、今は優しい風に合わせてそっと二人を包んでいく。
「幸せのままに……ううん、それは後でね」
この子を眠らせるのは、この子を覆う魔が消えてからだ。
眠れば辛い事も苦しい事も忘れられる。そんなオブリビオンの気持ちも分かるけれど。
でも苦しいまま、辛いまま終わってしまうのはもっともっと悲しいから。
「……楽しいけど、やっぱり眠いの」
目をこすり、少しだけぐずるように少女が呟く。澪は困ったように微笑んで、そんな少女の頭をそっと撫でた。
「もう一度眠るのは……ありのままの貴方を取り戻してからにしようね」
だから、もう少しだけ一緒に踊って歌おう。
澪の伝える楽しさと癒やしは少しずつ怨念を浄化して、少女を狂気から解放出来ている。
こうしていれば、きっと大丈夫だから。
「もう少し、楽しく踊ろう」
「ん……分かったー」
二人は手を取って、楽しく空を舞い続ける。
その様子は仲のいい兄弟のようで、その暖かさは着実に二人を癒やしていった。
大成功
🔵🔵🔵
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と参加。
怨霊を浄化してボスのパワーアップ解除後に、能力ダウンしたボスを倒す…。
まずは怨霊を退治しなきゃ、ですね。
対怨霊はお任せください。
私は人間の聖者。そしてクレリック。
毎週ミサを欠かさない敬虔なカトリック教徒です。
怨霊は悪魔であると認識しました。
となれば、私の出番!
【UC】で一斉浄化。
祈りが媒体のUCは、破魔を乗せて。
ええ、有無を言わさぬ神罰です。
悪は滅びよ。
UC範囲が134mなので、ボスも含んだ形になりますね。
呪詛耐性もありますけど、負けないという強い意志が対抗手段でしょうか。
怨霊に取り込まれた貴方より、私の意志は強いですよ。
ふふ、すずちゃん、寝ちゃ駄目ですよ~。
コイスル・スズリズム
仲良しのホテルのオーナーさん(f03848)と同行
怨念といえば聖者なオーナーさん、ぜひよろしくお願いします!
早速の眠気、、、は
kawaiiけど怒ると世界観が変わるオーナーさんの前で寝るとマジでやばいことになりそうなので「気合い」をのせつつ
オーナーさんの殺気と存在感も頼りにさせてもらおう
怖いこと、不安なこと
学園の生活には――確かに存在するよ
でもね、それらがない世界ってきっとつまらないの
魔法学園の驚きと新鮮を夢の中だけにとどめたくない
眠って立ち止まってられないの
すずに刺激を与えてくれるオーナーさんと進んできたいからね
オーナーさんの
光に合わせ
ランスを中心とした「全力魔法」と「祈り」をのせたUCで攻撃
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「怨霊を浄化してボスのパワーアップ解除後に、能力ダウンしたボスを倒す……。まずは怨霊を退治しなきゃ、ですね」
「怨念といえば聖者なオーナーさん、ぜひよろしくお願いします!」
地下墳墓を、二人の少女が進んでいく。二人の様子はどこか明るく、どこか散歩をしているようだ。
オーナーさん、と呼ばれたのは小宮・あき(人間の聖者・f03848)。桃色の髪を揺らしつつ、しっかりとした足取りで歩いている。
その後ろで金色のツインテールを弾ませているのはコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)。彼女の表情はどこか緊張気味だ。
「ええ、対怨霊はお任せください。怨念は悪魔であると認識しました。となれば、私の出番です!」
あきは聖者であり信心深いクレリックだ。そんな彼女からすれば『怨念を祓う』という今回の仕事はうってつけだろう。
コイスルもまた祈りや魔法を放つ事が出来る。あきとも仲良しなのだから、連携も取りやすい。
そんな二人の前へ、早速オブリビオンの少女が姿を現した。
「おねーさん達も、一緒に寝よー……そしたら、つらいことも、こわいことも、なくなるよ」
少女の言葉は柔らかいが、実際に籠められている意志は眠りを強制するものだ。
甘い囁きが二人の耳に入り、精神を眠気が苛み始めた。
「うう、確かに眠いかも……」
思わずうとうととするコイスルだが、その肩をあきが揺すった。
「ふふ、すずちゃん、寝ちゃ駄目ですよ~」
にこにこ笑顔のあきだけれど、その笑顔にはどこか凄みがあった。
その様子を見たコイスルは身体をびくりと震わせ、ぺしぺしと自分の頬を叩いた。
「ありがとうオーナーさん! もう大丈夫!」
「それなら良かったです。一緒に頑張りましょうね」
オーナーさん、kawaiiけど怒ると世界観が変わるのだ。ここで眠ってしまってはマジでやばいことになりかねない。
ぐっと自分に気合を入れて、コイスルは改めて敵を見つめ直した。
「眠らないのー……? ふかふかの枕に、お布団もあるよー……」
オブリビオンの少女は次々に安眠のための道具を取り出して、二人を手招きしているようだ。
その様子も微笑ましく愛らしいけれど……あきには少女の周囲に漂う怨念の姿がしっかり見えていた。
確かに彼らは哀れな存在かもしれない。けれど今の彼らは生者もオブリビオンも傷つける立派な驚異だ。
「ええ、眠りません。代わりに神罰を与えましょう」
あきは両手を祈りの形に変えて、ユーベルコードの力を高めていく。
彼女を中心に広がるのは光の柱。有無を言わさぬ悪を滅ぼす力だ。
その光は少女ごと怨念達を包み込み、少しずつその存在を薄れさせていく。
「どうして……どうして起きてるの? 祈っても、つらいことはいっぱいあるの……」
光に撃たれつつも、少女は二人を眠りへ誘う事をやめたりはしないようだ。
そんな彼女の元へ、コイスルはふわりと飛んだ。袖からランスを取り出しつつ、コイスルも祈りのユーベルコードを発動していく。
「怖いこと、不安なこと。学園の生活には――確かに存在するよ」
起きていて、嫌な事があるのは十分分かっている。眠りの世界ならそれをかき消してくれる事も。
けれどコイスルは首を振り、少女の誘いを否定した。
「でもね、それらがない世界ってきっとつまらないの。眠って立ち止まってられないの」
起きていれば、刺激的で楽しいことだっていっぱいあるのだ。
そう思いつつ、コイスルはあきの方を振り返る。
刺激を与えてくれる大切な人達と、起きて道を歩んでいきたい。
あきもコイスルの視線に気づき、にっこりと笑みを浮かべる。今度は優しい少女の笑みだ。
オブリビオンはまだまだ二人を眠りに落とそうとしているが、強い意志でそれに抗って。
あきは祈りを強めつつ、そっと少女に声をかける。
「怨霊に取り込まれた貴方より、私の意志は強いですよ。これが私達の答えですから」
幸せな眠りより、辛くてももっと刺激的で楽しい日々を進もう。
大切な友人達と一緒にいれば、辛い事だって乗り越えていけるのだから。
あきとコイスルの祈りは怨念達にも伝わって、少しずつ彼らを墳墓から解放していく。
「だから、まだ眠る訳にはいきません。やりたい事もやるべき事もまだまだありますから……だから、悪は滅びよ」
「魔法学園の驚きと新鮮を夢の中だけにとどめたくないんだ。もっと先まで歩いていきたいんだよ」
祈りは更に強まって、少女の力は少しずつ弱まっていく。
けれど少女の表情に苦しみの色はない。自らの言葉を否定されているのに、どこか晴れやかな雰囲気も感じられた。
二人の祈りは悪しきものを滅ぼして、進むべき道を照らし出していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィロメーラ・アステール
「よーし任せろ、この光で……いや」
眠るのが好きなのか?
寝かせてあげたら抵抗も少ないんじゃない?
【此方に誘う夜空の存星】を使うぞ!
【第六感】に働きかける【優しさ】を込めた、安らぎの宵闇を放ち、敵を眠らせる!
怨霊も眠らせて、怨みの原因になった心の傷とか、成仏に必要な欠けてる部分とかをケアして、おやすみしてもらうぞ!
敵の技で出てくる灯りは【全力魔法】パワーで対抗して、闇で上書きしてやったらいいんじゃない?
寝そうになっても【気合い】で持ちこたえるぞ!
夜と闇はお星さまの舞台だから、寝てなんていられないぜ!
もし邪悪な眠りに落ちそうになった人は、こっちで寝かしちゃえ!
眠らせてしまえば眠らせられない! かも!
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敵は怨念と眠りのオブリビオン。そんな相手ならきっと自分がうってつけ。
そう考えたフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は眩い光を纏いつつ、地下墳墓へと訪れていた。
「おねえさんだ……寂しいの、一緒に寝よ……」
オブリビオンの少女がふらふらと、仄灯りを纏いつつフィロへと近づく。
「よーし、早速この光で……いや」
光の魔力で少女を照らそうとしたフィロだが、ここで一つ新たな考えが浮かんできた。
この少女は眠る事を愛している。それならいっそ寝かせてあげた方がいいんじゃないだろうか?
それなら放つべきは光ではなく、優しい闇だ。
「ふたたび輝くための力を……眠いなら、これで寝ちゃえばいいんだぞ!」
フィロを中心に、夜のような柔らかな闇が広がっていく。
これは包んだものを休眠へと誘う力。優しい癒やしの夜闇。
「なんだかあったかいけど……おねえさんも寝るのー……」
しかし少女も素直に言う事は聞いてくれないようだ。
漂う仄灯りをフィロへと飛ばし、彼女も眠りに落とそうとしている様子。
けれど闇の中にいてこそ星は輝く。フィロは自分を中心に魔力を高め、仄灯りも夜で包み込んだ。
「夜と闇はお星さまの舞台だから、寝てなんていられないぜ!」
フィロの役割は夜闇に癒やされる人を照らし出すこと。眠っていたら勿体ない。
それと同時に少女の身体も夜に沈み始めたようだ。彼女は墓石に背を預けてうとうとと微睡んでいる。
「ゆっくり眠ってていいんだぞ。周りの皆もな!」
優しい癒やしに誘われているのは少女だけではない。
怨念の皆もその暖かさに包まれ、ゆっくりと癒やされているようだ。
そうすれば彼らの声も聞こえてくる。ある者は冒険者として挑み夢破れ、ある者は故郷に置いてきた家族を悔い、またある者は……。
怨念達の声に耳を傾け、フィロは優しく笑みを浮かべる。
「皆、凄く大変だったんだな……。話したい事があれば全部聞くぞ」
夜の闇で皆の事を包みつつ、フィロは怨念達の心の声を聞き続けた。
そうすれば彼らの悔いも消えていき、少しずつ気持ちも安らいでいる様子。
無念を話し、満足した怨念達は静かに天へと登っていった。
「なんだか身体が軽くなったのー……」
「それなら良かった。もうちょっと寝てていいんだぜ。あたしが見守っているからな」
幸せそうな表情に少女にもフィロはにっこり微笑んで。
優しい星の妖精は、更に少女と怨念達を苦しみから解放していった。
大成功
🔵🔵🔵
アルゲディ・シュタインボック
オブリビオンも怨念みたいなものなのにね。
まぁいいわ、どっちも退散させてやりましょう。
セクンダ、行くわよ!
杖に眠る光霊に声をかけ。
破魔の光属性魔法で祓ってやろうじゃない。
聖炎で仄灯りは吹き飛ばしつつ、飲み込まれそうになったら精一杯抵抗。
私に添い寝求めるなんて百年早いわ、目覚めなさい!
周囲に聖炎展開させつつ敵に近づいて。
唐辛子って邪気を祓う効果あるのよ、知ってる?
破魔の祈り籠めて、鷹の爪複数を敵の口に押し込む。
目が覚める辛さに眠気も怨霊も吹っ飛ぶでしょうね。
最後は聖炎を有りっ丈纏めて大きな一つの炎にしてぶつけるわ。
残念ね、骸の海でぐっすりお休み遊ばせ?
一仕事したし私も帰ったらぐっすり寝たいわねぇ。
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聖霊の護杖を片手に、アルゲディ・シュタインボック(白金の癒杖・f03929)は墳墓を歩く。
オブリビオンも怨念も似たような『過去』の存在なのに、かち合っちゃうのね。
その事を不思議に感じつつも、やるべき仕事はシンプルだ。
「まぁいいわ、どっちも退散させてやりましょう。セクンダ、行くわよ!」
杖に眠る光霊を起こしつつ、アルゲディはオブリビオンの元を目指す。
「あ、おねえさん……おねえさんもいっしょに寝よう……」
オブリビオンの少女はアルゲディの登場に気がつくと、魔力の仄灯りを纏わせながら歩み寄ってきた。
一見愛らしいその姿だが、クレリックであるアルゲディには周囲の怨念の姿もしっかりと見えていた。
「私に添い寝求めるなんて百年早いわ。さあ、目覚めなさい!」
まずは相手を明るく照らしてしまおう。
アルゲディは杖に聖なる力を集め、それをユーベルコードへと形成していく。
魔力は聖なる炎へと姿を変えて、漂う仄灯り達を払い出した。
「生かしも殺しもしないわ。悔い改めなさい!」
仄灯りに意識を向けたからか、眠気がアルゲディの身体を襲う。
けれどセクンダの輝きが彼女を照らし、二人でなら耐えられると教えてくれていた。
「おねえさんは眠くないの……?」
「すっごく眠いわ。だから……眠気覚ましをあげる」
炎を展開しつつ、アルゲディは少女の側まで歩み寄った。
そして少しだけ祈りの言葉を囁き……突然、アルゲディは左手を少女の口元へと一気に近づける!
「えっ、あっ、~~~~!!」
次の瞬間、少女は目を白黒させつつバタバタともがき苦しみ始めた。
よく見ると彼女の口の中には赤い物体が見え隠れしている。
「唐辛子って邪気を祓う効果あるのよ、知ってる? それに、これならよく目が覚めるでしょう?」
アルゲディが少女の口に突っ込んだのは、破魔の力を籠めた鷹の爪だ。
辛さと聖なる力は少女から眠気と怨念を吹き飛ばしていく。割と物理的に。
その隙にアルゲディは再び距離を取り、改めて聖なる炎の展開を始めていく。
「けほっ、けほっ……やっぱり……添い寝、だめ?」
涙目で訴えてくる少女には悪いけれど……ここで足を止める訳にもいかない。
しっかりと破魔の意志を魔力に籠めて、アルゲディは少女を見た。
「眠るなら私は家のベッドで、あなたは骸の海でね。ぐっすりお休み遊ばせ?」
勢いよく放たれた十字の炎は怨念ごと少女を燃やし、悪しき力を祓っていく。
なかなか派手に魔力も使ったし、帰ったならぐっすり寝たいわねぇ。そんな事を考えるアルゲディだった。
大成功
🔵🔵🔵
ハルア・ガーラント
可愛い女の子……ううん、見た目に惑わされて手を止めちゃ駄目!(ぶんぶん顔を振る)
【WIZ行動】
戦闘前に怨念さん達に向けて、静かな鎮魂歌を[祈り]と[慰め]の気持ちを込め[歌唱]します。どうか、安らかに。
ごめんね、一緒に眠る訳にはいかないの!
[咎人の枷]を[念動力]で動かし[なぎ払い]、敵を攻撃。距離を取られた場合は[銀曜銃]を[誘導弾]で撃ちます。彼女の攻撃は[第六感]で予感し[オーラ防御]。
戦闘中は、仄灯りに当たっても吸い込まれてなんかやりませんから!と自らを[鼓舞]。強い心を持ち抵抗します。抵抗したら今度はこちらの番。
さあ、いつまでも寝ない子にはお仕置きです!(UC発動)
※連携アドリブ歓迎
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お墓は怖いし、相手の見た目は可愛い女の子。
惑ってしまう要素は多いけれど、手を止めちゃ駄目。
そんな決意をしつつ、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)も墳墓へと姿を現していた。
周囲には怨念の気配も強く漂っている。まずは彼らを鎮めよう。
ハルアは静かに息を吸い、優しく歌を歌い始めた。
それは祈りの気持ちを籠めた鎮魂歌。こんな地下の墳墓に閉じ込められていた人達への慰めの歌だ。
優しい歌声は少しずつ怨念達を安らげていき、周囲の気配も柔らかなものへと変わり始めた。
それと同時に……歌声を聞きつけた少女もやって来たようだ。
「おねえさん、それ、子守唄……? 一緒に寝てくれるの……?」
怨念による力は薄まっていても、まだまだ少女は動くつもりのようだ。
彼女の周囲に漂う仄灯りがハルアを包み、深い眠りへと誘ってくる。
「うう、確かにとっても眠いです……ですけど、吸い込まれてなんかやりませんから!」
自分の頬を軽く叩いて、しっかりと気合を入れて。
眠気に抗いつつ、ハルアは翼に巻きつけた鎖に力を籠める。
「ごめんね、一緒に眠る訳にはいかないの!」
鎖は念動力でふわりと浮かび、勢いよく少女の元へ。
鞭のようにしなった鎖が少女を打って、彼女から怨念も叩き出していた。
「きゃっ……どうして、眠ればつらくないのに……」
少女は苦しみながらもハルアを誘う事をやめない。
そんな言葉に首を横に振り、ハルアはじっと少女を見た。
「眠るなら一人で眠ってください。わたしには……まだやる事がありますから」
鎖は更に激しく動き、一気に少女の身体を拘束して。
可哀想だけれど、この子がこれからも一人で彷徨うよりは、こうした方が。
「さあ、いつまでも寝ない子にはお仕置きです! ゆっくり眠って下さい!」
次の瞬間、鎖は美しい白い花弁へと姿を変えて一気に少女を包み込む。
それは鳥の羽根によく似た白い刃鳥花。その花弁は鋭く少女を刻みつつも、どこか優しい眠りにも誘っていく。
「子守唄なら歌ってあげます。だから……おやすみなさい」
先程と同じく鎮魂歌を口ずさみつつ、ハルアは白に包まれる少女を見た。
彼女の表情もどこか安らかで……きっと怨念達と一緒に、彼女の魂も癒やされているのだろう。
その様子に、少しだけ救いを感じるハルアだった。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
WIZ
一応、神官の端くれの隅っこの末端なので、お祓いを行います。
「サイコロの神様、どうかこの地に縛られた怨霊達をお鎮めください」
持っている筒から色とりどりのサイコロを一気にぶち撒け、出目の順に丁寧に並べてからお祈りします。
「眠たいなら1人で寝ててください。自分は忙しいので」
灯は触らないように気を付けつつ、災魔に慎重に近付きます。
灯が動いて来るならオーラを纏わせた盾や武器で弾き、徹底的に抵抗します。
「自分に出来る事は…骸の海に帰らせて、きちんと眠って頂くようにするだけです」
静かに祈ってから指10本を全て災魔に向け、10本の光を集中して落とします。
アドリブ歓迎です。
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高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)はパラディンにしてクレリックである。
つまり彼は神官の端くれの隅っこの末端……という自己認識をしているため、墳墓に到着してすぐにお祓いの準備をし始めた。
けれど彼がお祓いに使うのはマジックアイテムや聖なる何かしら……ではなく、色とりどりのサイコロであった。
「サイコロの神様、どうかこの地に縛られた怨霊達をお鎮めください」
筒から一気にサイコロをぶちまけ、憂鬱な彩りをした墳墓に鮮やかな色が踊る。
零は地面にしゃがみこみ、祈りの言葉を捧げつつ……サイコロを丁寧に並べていく。
出目の順番になるように一つずつ手にとって、祈りは常に捧げつつ。
これが彼流の祈祷術であり、確かにサイコロの神が怨念を祓っていくが……何も知らなければ少年がサイコロ遊びに興じているようにも見えなくもない。
「おにいちゃん……遊んでるの……? 一緒に寝るのー……」
オブリビオンの少女もその光景を見つつ、零の方へとやって来た。
彼女からすれば『遊ぶくらいなら一緒に寝よう』という感覚なのかもしれない。
「眠たいなら1人で寝ててください。自分は忙しいので」
少女が接近するより早くサイコロは並べ終わった。
零は静かに立ち上がり、慎重に少女へと近付いていく。
彼女の周囲に漂う仄灯りは危険だ。接近されれば勿論抵抗はするが、その手間はない方がいい。
剣や盾で灯りを払い除けつつ、零は少女の前まで歩み寄った。
「どうして寝てくれないの……寝れば、つらいこともくるしいことも、しないでいいんだよ……」
「確かに起きていれば苦しい事もたくさんあります。ですが、それでも自分達にはやるべき事がありますから」
少女の誘いをきっぱり断り、零は少女の姿を見る。
このオブリビオンも墳墓の怨念達も、過去に置き去りにされた哀れな存在だ。
神官である自分が、彼らの魂を本当に癒やしたいならやるべき事はたった一つ。
「自分に出来る事は……骸の海に帰らせて、きちんと眠って頂くようにするだけです」
零は両手の指を少女に向けて、更に祈りの意志を強めていく。
「天よ邪なる力を封じたまえ」
祈りによって生じた光は一つになって、天から降り注ぐ大きな光の柱となった。
柱は少女を穿つけれど、彼女の顔に苦しみはない。むしろ怨念が払われていく事で少しずつ晴れやかになっているようだ。
きっとこれが一番彼女達のためになる。
「安らかにお眠り下さい」
ぺこりと頭を下げて、零は静かに少女と怨念の安眠を祈った。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
永遠の眠りを与える、「死」の誘い手か。
……俺は、まだ死ぬつもりはない。
「兵」の道の果てを知るまでは。
■祓
先ずは怨霊達を救わねばな。
辺りの霊たちに声をかけ、その魂に安らぎが与えられる
よう【祈り】を捧げるぞ。
無念を晴らす事、後事を引き受けることも伝える。
■闘
先ずは、流れる囁きを全身に【オーラ防御】を纏って
【狂気耐性】を付与し、全力で聞き流す。
聞いてしまわなければ、逃れられる筈……
凌ぎきったら全身に【破魔】の力を宿しつつ居合の構えを
取り、残滓を直視。
そこから【心切】を放ち、本人の霊魂と纏わる怨霊のみに
攻撃を与え、荒ぶる魂を鎮めよう。
安らかに眠れ……(我ながら洒落にならん言い方だ)
※アドリブ・連携歓迎
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「永遠の眠りを与える、『死』の誘い手か」
この墳墓に眠るオブリビオンは、見た目は幼い少女だが……相手を深い眠りに誘う存在。
そんな敵の事を考えつつ、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は静かに息を整える。
「兵」の道の果てを知るまでは、深い眠りに誘われる訳にはいかない。
この地に縛られた怨念達も含めてしっかり祓ってやらなければ。
清綱は墳墓をしっかりと見渡して、漂う怨念達の姿を捉えた。
「貴殿らの無念を引き受けるため、俺はこの地を訪れた。後事も引き受けよう、今は安らかに眠ってくれ」
清綱の祈りに応えるように怨念達の姿が揺らぐ。
猟兵達が自分達を癒やし、鎮めてくれている。そう感じた怨念は深い恨みから解放されて、彼方へと解けていった。
全ての怨念を祓えた訳ではないが、確実に墳墓の空気は軽くなっている。次に対峙すべきはオブリビオンだ。
「……おにいさん、一緒に寝よう……そうすれば、大変なことはしなくていいよ……」
囁きと共に少女が姿を現した。
彼女の言葉を少し耳に入れただけで、頭の中がふわふわとしていく。
柔らかな誘いの言葉だけれど、その中には怨念による呪詛も籠められているのだろう。
清綱は自分の周囲に気を巡らせ、少女の囁きから自分自身を守り始めた。
「すまない。これ以上の言葉は聞き入れられん」
清綱の様子に気付かず、少女は何かを囁き続けている。その様子はどこか哀れで……だから、早く解放してやろう。
愛刀『心切』を手に取り、清綱は居合の構えを取った。そして少女の姿をじっと捉え、彼女の周囲に漂う怨念の姿も見た。
切るべきはあの少女の肉体ではない。
断つべきはあの少女の気魄と霊魂。現在への執着と彼女達を苛む狂気。
「秘伝……心切」
霊力を身体に巡らせ、清綱は一気に心切を抜刀する!
放たれるのは痛みなき慈悲の奥義、【霊剣】の一。刀から放たれた不可視の刃は少女達の霊魂のみを切り裂いていく。
「っ……!」
「痛みや苦しみはないはずだ。今の一撃、どう感じる?」
衝撃に目を見開いた少女だが、清綱の声を受けて少しずつ落ち着きを取り戻しているようだ。
彼女の表情は先程よりも和らいだものになっている。
「なんだろう……さっきとは違う眠気があるの……」
「それがきっと本来の眠気だ。それに身を委ね……安らかに眠れ」
我ながら洒落にならない言い方だ。少しだけ罪悪感を感じつつ、清綱は再び少女の顔を見る。
清綱の気持ちとは裏腹に、少女はどこか救われているような顔をしていた。
この子も、怨念達も。救えるまではあと少し。その事を実感し、清綱もまた胸を撫で下ろした。
大成功
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テラ・ウィンディア
怨霊を払えばいいのか
んと…
炎は全てを焼き尽くし浄化する
ならば浄炎を以て弔おう
東洋では火葬が主体だしな
【属性攻撃】
炎を全身に付与
怨霊を鎮める
我が炎の導きを以てあるべきところに帰るがいい
紅蓮神龍波発動
炎の龍が迷える魂や怨霊の煩悩を焼き払い導こう
敵に対しては
【戦闘知識】でその動きと立ち位置の把握
その上で槍による【串刺し】
燃え盛る炎は何というか闘争心を燃え上らせるんだよな
で…なんでもそういう時ってこーかん神経ってのが凄い働いて眠気が来なくなるんだぞ!
だからお前ももう少し熱く頑張ってはどうだ?
後さぁ…寝落ちってとっても悲しくて割と後悔が強いらしいな
最後に
…ああ、でも…6時間から8時間の睡眠は大事らしいな
●
怨念を払い、取り憑かれたオブリビオンを退治する。
依頼の概要を思い出しつつ、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は敵の元を目指していた。
「んと……ならば浄炎を以て弔おう」
口に手をあて軽く思案。出した結論はこれだった。
炎は全てを焼き尽くし浄化する。火葬によって死者を弔う場所もあるそうだし。
それに炎を操るのはテラの得意分野だ。
「それじゃあ……いくぞ!」
テラは紅龍槍『廣利王』を高く掲げ、小さな身体を激しい炎で包み始めた。
「怨霊達よ、我が炎の導きを以てあるべきところに帰るがいい!」
噴き上がる炎は巨大な龍へと変わり、墳墓の中を進み始めた。
けれどこれは他者を傷つけるような猛る炎ではない。ここで苦しむ人達を導くための、眩い道標だ。
龍の炎に惹かれ、墳墓に眠る怨念達も空を舞い始めた。
彼らは龍と共に天に昇り、穏やかに執着から解放されていく。
「わ……すごい炎なの……!」
これだけ派手な行動が起こればオブリビオンも気付いたようだ。彼女は小さな足取りでテラへと歩み寄ってきた。
「ああ、おれの炎だ! これでお前も導くぞ!」
テラは槍をしっかりと構え、弾けるように墳墓を駆けた。
少女の周囲に漂う仄灯りは炎で薙ぎ払い、できるだけ一直線に少女の元へ。
「少し痛いけれど、我慢してくれよ!」
少女が防御の姿勢を取るより早く、テラは槍を彼女へと突き刺した。少女は苦しんではおらず……何か疑問を浮かべている様子。
「どうして……寝たくないの……?」
「確かにあの灯りに近付いた時は眠くなったけど、俺は炎のおかげで闘争心を燃え上がらせているんだ」
強い炎は人の心を刺激して、眠気を吹き飛ばしてくれる。
こーかん神経ってのが凄い頑張って、と仕組みについて聞いたこともあるけれど、とにかく炎は凄いのだ。
「これに包まれてたらお前も頑張れるぞ。だからお前ももう少し熱く頑張ってはどうだ?」
「んー……でも眠いのー……」
会話だけなら和やかな少女達のそれだが、二人の周囲にはしっかりと炎が舞っている。
少女の言葉を受けて、テラは少しだけ寂しそうな顔をした。
「そんな風に寝るのは寝落ちっていうんだよ。それってとっても悲しくて、割と後悔が強いらしいな」
「そうなの……?」
「寝るならやりたい事をやりきってからだ! それに人間なら6時間から8時間の睡眠が大事らしいぞ!」
人らしく眠るため、少女の誘いはきっぱり断り。
テラはテラらしく、最後まで少女を弔う事にした。
「それじゃあ……おやすみなさい」
槍を少女から引き抜くと同時に、一層強い炎が二人を包む。
それが燃え尽きた時に、この地に残っていたのはテラだけ。
テラは瞳を閉じて、静かに少女の安眠を祈った。
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こうして猟兵達は地下墳墓の怨念達を浄化し、オブリビオンを骸の海へと還していった。
けれどこのダンジョンには、あるべき所に帰れていない存在がまだまだ存在している。
この戦いを終わらせ、猟兵達も帰るべき場所へ帰るべく。
長い戦いはまだまだ続く。
大成功
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