アルダワ魔王戦争1-E〜きみしにたまふことなかれ
●大番長の王国
アルダワ・ファーストダンジョンの一角。迷宮キノコが繁茂するフロアにて。
「さあ、来いよ転校生。オレが相手になってやる」
一人のオブリビオンがアルダワ魔法学園の転校生――猟兵達の到来を待ち構えていた。
彼が背に追うのは迷宮深部への道。その先にいる大魔王と仲間達――災魔の軍勢を守るために、彼はただ一つの盾となって猟兵達の進攻を阻む覚悟であった。
たとえここで砕け散る結末が容易に予想されるとしても。
目深に被った帽子も前を開け放した長ランも白。白一色の姿で、大番長と呼ばれる彼は敵の訪れを待ち続ける。
それは民を守るために立つ王のようでもあり、死地を探してさすらう孤狼のようでもあった。
●きみのまもるべきもの
「守りたいものってあるぅ?」
グリモアベースに集まった猟兵達に、華祭・エリナ(転生の水先案内人・f22606)はそう問いかけた。
「大魔王との戦争をしてるファーストダンジョンにな、茸がいっぱい生えとるところがあるんよぉ」
特殊な性質を持ったそのキノコは、胞子を吸いこんだ者の特定の感情を増大させるのだという。
「これから向かってもらう場所にあるんは、何かを『守りたい』って気持ちを暴走させてまう茸みたいなんやぁ」
すなわち、庇護欲である。普通ならどうということはない、むしろプラスに働くことが多いだろうその感情も、迷宮キノコの胞子がもたらす悪影響を受ければ狂気となる。
「例えばぁ、自分の命を守りたくて戦えへんくなってしまったりとか。恋人さんが絶対危なくならんように無理矢理止めたりせとか。そぉゆう感じやなぁ」
自らの命を守ろうとする本能までもが過剰に発揮されるこの環境で、オブリビオン撃破のために行動するのは容易ではない。
「けどなぁ、この状況を上手に利用する方法がないわけじゃなくてぇ。それでみんなに『守りたいもの』はあるかってきいたんやぁ」
自分の「守りたいもの」をしっかりと認識し、それを守るためには災魔を倒すことが必要だ、という意識を持つことで庇護欲の暴走を防ぐことができる。それを押し進めて「守りたいものを守るために絶対災魔を倒す」という気持ちを持つことができれば、迷宮キノコの影響はむしろプラスに働き、爆発的な力をもたらしてくれるだろう。
●盾と盾の戦い
「問題は、そういう『相手を倒して絶対守る!』って気持ちに、敵がなってしまってるってことなんやぁ」
エリナが示す、このエリアで立ち塞がる災魔は「ホワイト・ウルフ」。またの名を「大番長」である。
徒手空拳による格闘戦、いわゆるステゴロを得意とするが、遠距離攻撃を回避する能力も非常に高い。総じて非常に厄介な能力を持つオブリビオンと言えるだろう。
「この災魔は人間くらいの知能がある他の災魔のまとめ役みたいな感じでなぁ。一人でみんなを食い止めるつもりみたいなんよぉ」
ホワイト・ウルフの「大魔王と災魔達を守る」という意志は強い。迷宮キノコの増幅を受けた結果、通常より遥かに高い戦闘力を発揮しうる程に。
「もし何を『守りたい』かはっきりわからんっていう人じゃぁ、敵わんと思う。だから、気持ちで相手に絶対負けへん! って人だけついて来て」
そう言うと、エリナは皆の戦意を確かめるように猟兵達の顔を順繰りに見つめ、それから微笑んで戦場へと手招くのだった。
中村一梟
猟兵の皆様ごきげんよう、中村一梟でございます。
今回はアルダワ魔王戦争のシナリオをお届けいたします。戦争シナリオのため1賞のみの攻勢となっております。
●ギミック
今回の舞台となるファーストダンジョンのフロアには『何かを守りたい』という気持ちを肥大化させる迷宮キノコの胞子が満ちています。この影響は技能やユーベルコードで無効化することができません。
プレイングに「『守りたい』気持ちを戦闘へのモチベーションに変化させる方法」を加えて頂きますと、判定にボーナスが入ります。
もし守りたい対象が人物であるならそのお名前を書いて頂いても構いません。その方の名前を口にする描写を加えさせて頂きます。
それでは、今回も皆様とよい物語を作れることを楽しみにしております。
第1章 ボス戦
『『大番長』ホワイト・ウルフ』
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POW : ビッグバン・フィスト
【オーラを纏った必殺パンチ】が命中した対象を爆破し、更に互いを【拳で語り合った体験が紡ぐ、熱き絆】で繋ぐ。
SPD : スピリット・オブ・番長
技能名「【気合い】」「【勇気】」「【覚悟】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : ワイルド・ウルフ
【猛獣の如く激しく攻め、そして野生の感で】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
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諏訪野・みすず
「みすずちゃんが守りたいのは『現在』と『未来』なのだ。何が起こるかわからないのが面白いのだ」【ネイキッドフラッシュ】で一騎打ちを挑みます。「みすずちゃんも素手で、というかスッポンポンで何もつけないで闘うのだ」「番長さん、あなたが本当に守りたいのは何?」アドリブ、共闘歓迎です。
迷宮キノコに覆われたファーストダンジョンの床に、諏訪野・みすず(不思議系ダンサー・f00636)が降り立った。
「みすずちゃんが守りたいのは『現在』と『未来』なのだ。何が起こるかわからないのが面白いのだ」
見据える先に、白ずくめの服を着た長身の青年。災魔ホワイト・ウルフ、またの名を『大番長』。
「ようやく来たな、転校生!」
その名の通り餓狼の如く翔けてくるオブリビオンの左右の手は、空。タイマンステゴロ、小細工無しの勝負!
「みすずちゃんも素手で、というかスッポンポンで何もつけないで闘うのだ」
「何っ!?」
みすずの着衣が無数のドットとなって分解される。白い裸体があらわになる寸前、その肌から発せられたオーラがなだらかな胸の頂点や腰回りから、彼女の全身を覆っっていく。ユーベルコード『ネイキッドフラッシュ』だ。
「纏うものなき者の力、うけてみよ!」
素肌を駆け巡る高揚感と、『現在』と『未来』を守る決意を乗せて。みすずは大番長に拳を叩きつける。
「番長さん、あなたが本当に守りたいのは何?」
「ダチ公に決まってんだろうがぁぁッ!!!」
ホワイト・ウルフの『ビッグバン・フィスト』と激突。互いのオーラが爆発するかの如く吹き荒れる。
烈風が治まった時、その場に立っていたのは大番長であった。その身を覆うオーラを吹き飛ばされ尻餅をついた姿勢のみすずに、彼は追撃の一発を放つことなく、代わりに上着を放り投げた。
「タテマエとかそんなんじゃねえよ。オレはダチ公と親分のためにここに立ってんだ」
苦戦
🔵🔴🔴
ヴェル・ラルフ
リズ(f20305)と
漢気のある敵だなぁ
一本芯の通ったひと、僕はすきだよ
ふふ、リズは手厳しいね
僕が守りたいのは、今隣にいる妹
素直で真っ直ぐな、僕の大切な妹
指一本触れさせないよ
彼女に傷をつけたら、怒るじゃ済まないから
隣にいてくれるから、その覚悟も明確
…身が引き締まるってこういうことか
前に出て戦おうとするリズを守るように【赫々天鼠】で蝙蝠達を突っ込ませ敵の視界を攪乱
リズが攻撃し、敵が避けるなり負傷するなりしたところへ素早く肉薄
足払いから振り上げた脚で頭上から一撃を
仲間を守るその気持ちもとても尊いと思うけれど
負けるわけにはいかないよ
兄として、カッコ悪いとこ見せられないもの
★アドリブ歓迎
エリザベート・ブラウ
にいさま(f05027)と
あら、リズはああいう暑苦しいのは嫌だわ
犠牲になる覚悟なんて馬鹿らしい
生きてこそだもの
にいさまったら酔狂ね
リズが守りたいのは勿論にいさま
リズの美しいにいさま
二度と見失わないって決めたのだもの
隣を決して離れないわ
別とうとする無粋なやつなんか、こうよ!
【罅ぜ蝶】を発動
貴方、守りたいならそこを動かないことね
全力で叩くから、まわりも破壊されてしまってよ!
たとい鎖で貴方に繋がれようとも、止めないわ
わたしがにいさまを探した年月を
にいさまに会うために費やした年月を
にいさまを想った年月を
ぶつければ、貴方、解ってくださる?
★アドリブ歓迎
「漢気のある敵だなぁ。一本芯の通ったひと、僕はすきだよ」
倒れた敵にあえて背を見せたホワイト・ウルフの姿に、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は微かに頬を緩めた。
「あら、リズはああいう暑苦しいのは嫌だわ。犠牲になる覚悟なんて馬鹿らしい、生きてこそだもの。……にいさまったら酔狂ね」
そんな義兄と大番長を細めた目で交互に見やりつつ、エリザベート・ブラウ(青の蝶・f20305)は不満そうに呟いた。
「ふふ、リズは手厳しいね」
笑みをはっきりと形にして、ヴェルはエリザベートの右手の甲に自分の左手の甲を触れさせた。
守りたい人が隣にいる。その事実が迷宮キノコの胞子によって増幅させられ、熾火のように心臓を叩く。
(素直で真っ直ぐな、僕の大切な妹。……指一本触れさせないよ)
(リズの美しいにいさま。二度と見失わないって決めたのだもの)
自らの身を相手の盾とする覚悟を抱いて、兄妹はオブリビオンに挑みかかった。
想いは同じ。だが、その立ち位置は真逆だった。
「わたしがにいさまを探した年月を、にいさまに会うために費やした年月を、にいさまを想った年月を。ぶつければ、貴方、解ってくださる?」
速度を上げ、エリザベートは大番長に肉薄する。その細い腕が掲げるのは*Psyche*と名を付けられた、くろがねの大鎚。
「貴方、守りたいならそこを動かないことね。全力で叩くから、まわりも破壊されてしまってよ!」
「もうちょっとお淑やかにできねぇのか、お嬢ちゃん!」
「嫌よ。大人しいお嬢さんなんて、なれない」
振り上げられた鉄槌を、大番長は必殺の拳で迎え撃とうとする。だが、激突の数拍前に、横合いから黒い炎で形作られた蝙蝠が襲いかかってきた。
「おいで、……僕の一部」
「チィッ! しゃらくせぇんだよッ!!」
ヴェルのユーベルコード『赫々天鼠』によって召喚された黒炎蝙蝠を、大番長は猛獣の如き一喝だけで迎撃。しかし、その遅れが決定的な隙となった。
「リズは隣を決して離れないわ。別とうとする無粋なやつなんか、こうよ!」
『罅ぜ蝶』の直撃。大地をも砕く一撃を受けて、なお大番長は拳を前に出す。
「なめんじゃねぇぇぇッ!!」
固く握った拳にこめられたオーラが爆裂。衝撃を受けてエリザベートがよろめいた。
「……傷をつけたら、怒るじゃ済まない……!」
赤色の風となって、ヴェルは駆けた。疾走の勢いを乗せた蹴撃を、大番長は交差した腕で受け止める。
「仲間を守るその気持ちもとても尊いと思うけれど、負けるわけにはいかないよ」
素早い切り返し。ヴェルの体がふっと沈み、足払いをかける。ぐらりと揺れた大番長に向けて、今度は上段からの蹴りを放つ。
「兄として、カッコ悪いとこ見せられないもの」
ホワイト・ウルフは咄嗟に体を投げ出してかわそうとした。できない。強い力で引っ張られる。何が――先の交錯で、災魔とエリザベートの間に渡された絆。力量を認めた強敵の挑戦から、大番長は逃げられない!
「たとい鎖で貴方に繋がれようとも、止めないわ。わたしは、にいさまの隣にいる」
次の瞬間、ホワイト・ウルフの頭に鉄槌のような一撃が叩きこまれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
あるヒトを守りたいって気持ちなら誰にも負けない
彼は俺を信じてくれた
俺は悪だと、その理由を明かしても信じてくれた
それに俺を頼ってくれた
ずっと一人で抱えていた苦しみを明かしてくれた
そのときに俺は誓った
守るために強くなる、内包する力を使いこなしてみせるって
彼は優しいから、ヒトの命が危なくなったら無茶のひとつやふたつするだろう
自分のことはすぐ目に入らなくなるんだもの
だからアルダワが滅びかねない状況になるのは困る
守る相手が多い大番長と、たった一人を守りたいと思う俺
でも、守りたい気持ちの大きさは負けるものか
解放・夜陰発動
敵を取り囲むように水晶を放ち攻撃
この数を回避しきれる?
激しい猛攻も引かず、黒剣で応える
『大番長』ホワイト・ウルフはぐらつく頭を振った。割れた額から流れ落ちてくる血を拭う。
「!?」
そうして、彼は自らを包囲するように飛来する漆黒の水晶の群れに気がついた。
「あぁ、見えちゃったんだ? 気付かず“俺”に染まっていれば幸せだったのにねぇ」
水晶の剣の向こうに、サンディ・ノックス(調和した白黒・f03274)が佇んでいた。冷酷ささえ宿した青色の瞳が、まっすぐに敵を射抜く。
「この数を回避しきれる?」
告げるや、三百余の水晶刃が八方から襲いかかった。
「ッざけんなぁ!」
大番長が咆哮した。回避と迎撃、致命的でないものはあえて命中させ、夜陰の刃雨を強引に突破する。
「オレは! 負けられねえんだよぉッ!」
オーラをまとって鋼鉄の如き硬度を得た拳が繰り出される。抜き放った黒色の剣でサンディは迎え撃つ。
「あるヒトを守りたいって気持ちなら誰にも負けない」
「何ッ!?」
「彼は俺を信じてくれた。……俺は悪だと、その理由を明かしても信じてくれた」
剣と拳がぎりぎりと軋み声を上げる。拮抗の中で、サンディは増幅された衝動を言葉にしていく。
「俺を頼ってくれたんだ。ずっと一人で抱えていた苦しみを明かしてくれた」
その声音は、戦場にあるとは思えないほど穏やかで、優しい。
「彼は優しいから、ヒトの命が危なくなったら無茶のひとつやふたつするだろう。自分のことはすぐ目に入らなくなるんだもの。だからアルダワが滅びかねない状況になるのは困る」
だが、暖かな炎の中心には赫々たる熾火があるのだ。
「俺は誓った。守るために強くなる、内包する力を使いこなしてみせるって!」
「うおぉッ!?」
炎が弾けた。大番長が初めて気圧され、後退る。
「守る相手が多いお前と、たった一人を守りたいと思う俺。――でも、守りたい気持ちの大きさは負けるものか!!」
空気との摩擦で赤く燃え上がりそうなほどの速度で、黒剣が振り抜かれる。その剣閃は真一文字に走り、ホワイト・ウルフの胸に深々と傷を刻んだのだった。
成功
🔵🔵🔴
戀鈴・イト
【硝華】アドリブ◎
守りたいもの
浮かぶ大切な存在
僕は華
君は花瓶
華は花瓶がなければ美しく生けないの
ねえ、シアン
君が何より大事だよ
睦まじい夫婦になれなくてもいい
シアンが笑っていてくれるなら
守りたいよ、君を
護るよ、君を
この身は砕け散って構わない
共に闘うならば僕が盾に
シアンには傷一つも許さない
この覚悟が僕の強さだ
君が為 美しく咲いて魅せるよ
七彩に君想う祈りを込めて鼓舞を
守って魅せるから、愛し君
敵といえど守る意思は同じ
同情かもしれない
優しさ含ませ花弁の串刺し
舞い散れ
硝子細工に破魔の光宿して
シアン、怪我はない?
お姫様になれなくとも僕は君の傍に居たい
音にならない言の葉代わり
真白の指先伸ばし無事を確かめる
戀鈴・シアン
【硝華】アドリブ◎
守りたいもの
浮かぶ大切な存在
常に隣合う、華の少年
花瓶は華がなければその存在意義を為さない
イト
お前は何があっても俺が守るよ
過去のあの日々が返ってこなくてもいい
イトが笑っていてくれるなら
お前は誰にも砕かせない
イトを傷付けようとする刃は
俺がすべて叩き落としてみせる
自分達を囲むように、幾つもの剣を浮かべる
硝子でできた繊細な剣
イトの支援を受けて淡く眩く光る
その意志は砕けて破片となっても、対象へ纏わりついて離さない
敵の姿勢も嫌いじゃないけど
護りたいものへの想いは絶対に負けない
うん、大丈夫だよ
お前が隣にいてくれたから
触れる指先は愛おしく、掌でそっと包み込む
硝子細工の花と硝子の花瓶。二人で一つの役割を果たすもの。戀鈴・イト(硝子の戀華・f25394)と戀鈴・シアン(硝子の想華・f25393)が、大番長へと立ち向かう。
「ねえ、シアン。君が何より大事だよ」
「イト、お前は何があっても俺が守るよ」
比翼の鳥の如く肩を並べて向かってくる二人のヤドリガミを、白い孤狼が迎え撃つ。
「譲れねえんだよ、この道はなぁッ!」
無尽の気合い、不壊の勇気、そして絶後の覚悟――番長の魂を燃やすホワイト・ウルフ。対するは『虹の戀華(マイディア・シャワー)』と『想華の硝刃(イノセント・アルクス)』のユーベルコード。
「君が為美しく咲いて魅せるよ。七彩に君想う祈りを込めて鼓舞を。……守って魅せるから、愛し君」
「過去のあの日々が返ってこなくてもいい。笑っていてくれるなら。誰にも砕かせない。傷付けようとする刃は、すべて叩き落としてみせる。――煌めいて、斬り裂いて、貫け」
赤橙黄緑青藍紫、七色の色彩が輝いた。硝子の武器と硝子の花弁が嵐となって襲いかかる。
「守りたいよ、君を。護るよ、君を。――この覚悟が僕の強さだ」
唄うようなイトの宣告。視界を色彩と煌めきで覆い尽くす、硝子の奔流。並の災魔であれば瞬くまに呑みこまれ粉砕されるであろうそれを、大番長は耐え抜いた。
「知るか……! ダチが、オレを、待ってんだぁッ!!」
必殺の拳が地に叩きつけられる。オーラの塊が炸裂、爆風で巻き上げられた砂礫の波がイトとシアンを吹き飛ばす。
「先に行って待ってろって約束したんだよ。なら、そう簡単にくたばるわけにゃいかねえだろうがッ!」
吠え猛る白狼を見上げつつ、イトは手を伸ばした。触れた指が握られて、シアンの体温が確かめられた。
「シアン、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。お前が隣にいてくれたから」
「――ごめん。守れなかった」
「――いいさ。お前が生きていてくれるなら、それでいい」
これ以上の戦闘続行は不可能だ。二人は仲間達に後を託して、瞼を閉じた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
出水宮・カガリ
【星門】ステラと
門の外の脅威から守るため、守るべきものを門の内に閉じ込める…いつも通り、だ
なに、城門なら後ろに建ってろ?
先に倒してくる?
ふざけるなよ剣風情がちょこまかと、お前のような壁から飛び出す奴が一番嫌いなのだ、これだから英雄というのは
大人しくカガリの内に戻れ
(突出しようとするステラと揉める)
ああ、言っている側から…!
(ステラの剣への反撃を、彼女の前へ割り入り【駕砲城壁】で反射)
全ての命は、カガリの内に
壁の外の、善も悪も、カガリにとって脅威であるならば
ただ、拒絶する
部屋を出て落ち着いたら、ステラに謝ろう
大嫌いなどと、すまなかったな
カガリの内にいてほしいのは本当だが…カガリはステラが好きだぞ
ステラ・アルゲン
【星門】カガリと
他の者たちを守るために一人立ち向かう……お前のその心には共感するな
私も守りたいもののためならばそうするとも!
だからここは私に任せて、カガリは城門らしく後ろに建っていろ!
先に敵を倒してくるからお前の出番はないからな
……なんだと?
ええい、止めるなバカ野郎!脅威は未然に防いでこそだ!
それが英雄だというなら、私のこれは治らないから諦めろ!
兎に角、お前を守るために先に敵を倒すからな!
【ダッシュ】で突っ走り【高速詠唱】で発動した【流星一閃】で攻撃する!
捨て身の攻撃だ。パンチは受ける覚悟で――カガリ!
後ろにいろと言っただろう?
このばか……ありがとう
こっちこそ無防備に飛び出して悪かったよ
満身創痍の大番長。だが彼は倒れることなく、それどころか猟兵達を打ち破らんと前進さえしてみせる。
「他の者たちを守るために一人立ち向かう……お前のその心には共感するな。私も守りたいもののためならばそうするとも!」
白き孤狼を食い止めるため、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)が進み出る。自らの本体でもある魔剣の鞘を払い、彼女は出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)に向かって告げた。
「だからここは私に任せて、カガリは城門らしく後ろに建っていろ! 先に敵を倒してくるからお前の出番はないからな!」
「なに、城門なら後ろに建ってろ? 先に倒してくる?」
カガリの頬に、かっ、と激情の朱が差した。それは迷宮キノコによって庇護欲から助長された怒り、あるいは嫉妬だろうか。
「ふざけるなよ剣風情がちょこまかと、お前のような壁から飛び出す奴が一番嫌いなのだ、これだから英雄というのは。――大人しくカガリの内に戻れ!」
「……なんだと? ええい、止めるなバカ野郎! 脅威は未然に防いでこそだ! それが英雄だというなら、私のこれは治らないから諦めろ! 兎に角、お前を守るために先に敵を倒すからな!」
言い捨てて、ステラは駆け出す。剣を掲げるその姿は、いつも通り流星のようだ。
「ああ、言っている側から……!」
彼女ならそうするだろう、と容易く予想できたにも関わらず、カガリはステラの後を追わなかった。
追うべきだ、と心の一部が声を上げる。突出するステラは容易く危機に陥るだろう。それをただ見ているだけでいいのか?
別の心の一部が言う。ステラが守られることを望んでいないのに? カガリ、お前が守るべきものは何だ? 門の外の脅威から守るため、守るべきものを門の内に閉じ込める。それがいつも通りの、お前の役割だろう。門の内にしか、お前の守るべきものはないはずだ。
カガリが逡巡する内に、ステラと大番長はお互いをユーベルコードの射程に捉えていた。
「待たせたな!」
「ちょうどいい休憩だったぜ。……さあ来な、転校生!」
「願いさえ斬り捨てる、我が剣を受けてみよ!」
『流星一閃』。刃の輝きが宙を裂く。流れて消える星の如き刹那の炎を上げて、天の鉄から生み出された剣がホワイト・ウルフの首をはねた。……否、斬ったのは白学帽と、髪の一房!
「もらったッ!」
孤狼の咆哮。必殺の拳が迫る。捨て身の勢いで攻撃をしかけたステラに、それを回避する余力はない。
「――カガリ!」
直撃する寸前に割りこんだ背中の名前を、ステラは呼んだ。星霜を経た鉄門扉を盾として掲げた彼が、炸裂するオーラの爆風に呑まれる。
「反撃せよ。砲を撃て。我が外の脅威を駆逐せよ」
轟音の中、確かに聞こえた声。ユーベルコード『駕砲城壁(ロアードウォール)』の発動を告げる、何度となく聞いた声。
「カガリ!」
オブリビオンの攻撃が光弾となって反射されるのに合わせて、ステラは剣を突き出した。切っ先が掠めた右目を斬り裂き、光弾が打ち据え吹き飛ばした。
「後ろにいろと言っただろう? どうして」
「全ての命は、カガリの内に。壁の外の、善も悪も、カガリにとって脅威であるならば、ただ、拒絶する。――そしてカガリは、もう立っているだけの門ではない」
「このばか……ありがとう」
「……大嫌いなどと、すまなかったな」
「こっちこそ無防備に飛び出して悪かったよ」
「カガリの内にいてほしいのは本当だが…カガリはステラが好きだぞ」
肩を寄せ合う二人が見る先で、大番長がなおも立ち上がろうとしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈴木・志乃
……悪いけど先に進ませてもらう
私、恋人の為に戦ってんの
アルダワのみならず全ての世界から呪詛(負の感情)を消し飛ばす為にね
恋人はちょっと厄介な体してて、詳細は省くけど呪詛があるとスッゴク困るの
だから約束した
私が貴方を助けてあげる
絶対にそこから救い上げて見せるって
絵空事? 夢物語?
なんとでも言いなさんな
私と彼の願いは一つ
『皆が笑顔になれますように』
その為なら……いつかオブリビオンが生まれるシステム自体をぶち壊してやる
これはその為の一歩!
UC発動
第六感で攻撃見切り光の鎖で早業武器受けから念動力で鎖を操作し捕縛(ロープワーク)
油まいて高速詠唱全力魔法で焼却&衝撃波攻撃
疑似爆破!!
「……悪いけど先に進ませてもらう」
よろよろとふらつきつつも立ち上がろうとするホワイト・ウルフに向けて、鈴木・志乃(ブラック・f12101)が言った。だが、その言葉とは裏腹に彼女は大番長の傍らをすり抜けて行こうとはしない。
理解しているのだ。鋼鉄の如き大番長の戦意を砕かねば、ここを通過しても勝利ではないと。
「……なあ、お前は何を守りたいんだ?」
ふいに、大番長が問いかけてきた。鮮血に濡れた右目はもう何をも見ていないが、残った左目はまだ爛々と輝いている。
「私、恋人の為に戦ってんの」
志乃の答えはごくシンプルだった。
「私の恋人はちょっと厄介な体しててね。詳細は省くけど」
だから彼女は約束した。私が貴方を助けてあげる。絶対にそこから救い上げて見せる。そのために、全ての世界から呪詛を生む負の感情を消し飛ばす、と。
「……ふッ、夢みてぇな話だな」
「なんとでも言いなさいな。……私と彼の願いは一つ」
皆が笑顔になれますように。それを成すために、どんな試練をも踏み越えてみせる。
「これはその為の一歩!」
踏み出して、志乃はユーベルコードを発動した。
「駆け抜けるよ、邪魔しないでね!」
その名の通り『閃光(ライトニング)』と化して、彼女は飛んだ。迎撃する拳をくるりと回避、念動力で操る鎖で拘束。燃料の入ったカプセルを叩きつけ、全力をこめた火炎魔術で着火。爆発燃焼!
燃え上がる炎から、大番長が転がって脱出する。ぜえぜえと荒い息を吐いて、だがそれでも膝は屈しない。
「他の世界とか……そういう難しいことはわかんねぇな。オレはただ、ダチのために戦うだけだ。――何があってもなッ!」
成功
🔵🔵🔴
ステラ・エヴァンズ
守りたいもの?勿論あります
そも私は守るために猟兵をしているのですから
この学園を、生徒さんを…強いてはこの世界を守るため、倒さなければならぬものがあるのです
守るために戦います
攻撃は最大の防御、なんて申しますでしょう?
天津星を振り回しなぎ払い、相手の攻撃は見切って避けます
間合いを詰めては吹き飛ばし、距離が空いたところで氷属性の衝撃波を
足元でも凍らせて動きを封じたのを確認して高速詠唱開始
それに、個人的に守らなければならない約束もあるのです
大切な人の元へ帰る
死んでも破れない、守らなければならない約束が
だから…
火属性を付与した精霊彗星を墜とします
凍らせた上に、流星ならぬ彗星群なら回避の先もないでしょう
するりと滑るような足取りで、ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)がホワイト・ウルフの前に立つ。
「死んでも破れない、守らなければならない約束は私にもあります」
静かな、しかし決然とした視線と薙刀の切っ先を、彼女は大番長へと向けた。
「大切な人の元へ帰る。とても個人的な約束ですが」
「そうかい。なら、それを守るためにお前はどうするんだ?」
「守るために戦います。攻撃は最大の防御、なんて申しますでしょう?」
約束と、この学園と生徒と、ひいてはこの世界を守るために。守るための猟兵を自認するステラは、守るためには倒さねばならぬ相手に攻勢をかける。
薙ぎ払う。徒手よりも遥かに長いリーチを活かした初撃は、獣の如く伏せた姿勢で避けられる。肉薄された。次々と繰り出される連撃を、受け、捌き、かわす。少しでも目算が狂えば直撃を受ける、焦げつくような攻防が繰り返された。
隙を突いて、ステラは大番長の長身を投げ飛ばした。受け身を取って転がる災魔に、凍風の追撃。さらに距離が離れる。再び間合いを詰めようにも、凍結した地面は疾走を許さない。
「星の源 根源を織り成すもの 我が声に応え……墜ちろ!」
吹き飛ばし、足止めし、そして『精霊彗星(エレメントゥム・コメーテース)』の集中砲火。三段構えの攻勢は、ホワイト・ウルフに大きなダメージを与えた。
成功
🔵🔵🔴
リコリス・ミトライユ
絡み・アドリブ歓迎
守りたいもの、ですか。
んーっと、いっぱいありますけど……
やっぱり、お友達と、一緒にあまーいお菓子を食べる時間でしょうか。
そのためにも、こんなとこで倒れちゃいたくないんですよね!
それに、もいっこ、あたしにも負けたくないものはあるんです。
ちっちゃなプライドですけど……守りたいですし。
ぎゅう、っと拳を握って、突きつけて。
あたしのパンチとあなたのパンチ、どっちが強いか、勝負ですっ!
狙うのは必殺技へのカウンターです。
相手の右に合わせて、あたしは左で【ペネトレイトブロウ】ですっ!
どかんってなるのはちょっとびっくりしますけど……。
でもでも、もう悪いことが出来ないように拳を砕いてあげますっ!
とっくに倒れていていいはずだ。いくつものユーベルコードを受け、それに倍する攻撃を受けて、それでもなお『大番長』ホワイト・ウルフは立ち上がった。
「お前は……何を……守るんだ……?」
「守りたいもの、ですか。んーっと、いっぱいありますけど……」
譫言のような問いかけに答えたのは、リコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)だった。彼女は首を傾げ、ひとつ手を打って答える。
「やっぱり、お友達と、一緒にあまーいお菓子を食べる時間でしょうか。そのためにも、こんなとこで倒れちゃいたくないんですよね!」
「……なんだ、意外とかわいいじゃねぇか」
リコリスの返答に、大番長は笑みを零した。それは狂暴でもなく、好戦的でもなく、純朴とさえ言える表情だった。
「それに、もいっこ、あたしにも負けたくないものはあるんです。ちっちゃなプライドですけど……守りたいです」
無言で続きを促す大番長に、リコリスは右の握り拳を突きつけた。
「あたしのパンチとあなたのパンチ、どっちが強いか、勝負ですっ!」
それを見た孤狼は、残った左目を大きく見開いて、それから大きな声で笑った。
「いいねぇ。オレ好みのやりかただ。……いいぜ、真っ向勝負だ」
笑みを牙を剥くようなものに変えて、大番長は拳を構える。いくつもの深手を負っていても揺らぐことのない構えだ。
「ちっちゃいからってナメると、痛い目見ますよっ!」
一息に、リコリスは相手の間合いへと飛びこんだ。身長差から来るリーチの違いは、埋め難い不利な条件だ。だがそれでも、彼女は真正面から戦いを挑む。
「もう悪いことが出来ないように拳を砕いてあげますっ!」
穿ち貫く一撃と、開闢の拳。二つはリコリスの狙い通りのタイミングで激突し――。
「……お前の、勝ちだ」
敗れたのは、大番長の拳だった。
成功
🔵🔵🔴
トーカ・スノーフレイク
守りたいもの?そりゃあ何って、この学園だべ。
うちに沢山の事を教えてくれた、この学園を守り抜きたい……だから!
その為に、アンタを倒して道を開く!
……行くべ、大番長。アルダワの学生の意地、見せてやるべさ!!
『放出・氷矢連射』、初っ端から全弾発射!
更に氷矢に紛れて接近!『グレイシャルエッジ』を振り抜き、避けられざまにバックステップからの投擲!
……ここまでは避けられる前提。
魔力は使い果たし、武器も手放した。だからこそ放てる、予想の外の一撃。まだうちには、この拳があるッ!
《キネティックナックル》!【念動力】を全開にして、この右手に纏わせる!
うちの想いを乗せた、全力の右ストレート……食らえ、大番長ッ!!
もはや反撃の手立てはない。とっくに限界を迎えた体は悲鳴を上げているし、理性では一片の勝ち目もないことを理解している。
だがそれでも、大番長は倒れない。何が相手だろうと、どんな状況だろうと敵には挑みかかるのが彼の流儀であり、矜持だからだ。
「さあ、決着をつけようぜ。――転校生」
トーカ・スノーフレイク(冬の花片・f24431)が頷いて、鎖のついた魔法剣を構えた。その切っ先に、氷結の魔力が満ちていく。
「……行くべ、大番長。アルダワの学生の意地、見せてやるべさ!! 出でよ、氷矢! 魔力の限り撃ちまくるべ!」
不融氷の剣が踊り、その軌跡に沿って氷の矢が次々と出現――射出。宣言通りに全ての魔力を賭した連射が地面を、床を、迷宮キノコを穿っていく。
「その程度かよ、アルダワの転校生ッ!」
いくつかは直撃した。だが、白の孤狼は止まらない。トーカは床を蹴り、弾幕と共に距離を詰める。最後の一発に追いついて、ほぼ同時のタイミングで一閃。
斜め下から突き上げられたグレイシャルエッジを、大番長は拳の砕けた右手で受け止めた。掌が貫かれ、噴き出す血潮が瞬時に氷結。だが、彼は刃を放さない。引き寄せられかけて、トーカは愛剣の柄を手放した。
「終わりだッ!」
「まだうちには、この拳があるッ!」
奥の手――キネティックナックル。念動力によって強化された拳を、トーカはぐっと握りしめる。
(守りたいもの? そりゃあ何って、この学園だべ。うちに沢山の事を教えてくれた、この学園を守り抜きたい……!)
衝動が昇華される。願いと意志が交錯して、念動力が爆発的に増大。
「……だから! その為に、アンタを倒して道を開く! ……食らえ、大番長ッ!!」
文字通り、全身全霊をこめた右ストレート。左腕でのガードを弾き、ホワイト・ウルフの心臓に突き刺さる!
「……楽しかったぜ。あばよ、転校生」
かすかな囁きにトーカがはっと顔を上げた時にはもう、大番長ホワイト・ウルフの姿はそこになかった。
成功
🔵🔵🔴