【旅団】クリスマスにはケーキとCakeとけぇきと?
●【重要】本シナリオは【旅団シナリオ】です
本シナリオは、旅団「喫茶【スノウホワイト】」及びその友好旅団の団員のプレイングだけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
●せめてクリスマス気分だけでも味わいましょう
周囲の山に雪が降り積もるようになり、登山客の姿もめったに見られなくなった、喫茶【スノウホワイト】のカウンターにて。
「もうすぐクリスマスだが……困ったことになった」
この店のオーナー兼グリモア猟兵藤崎・美雪が、両肘をテーブルに尽きながら顎に両手を当てて溜息一つ。
どうした? と常連客の猟兵が出した質問に対し、美雪は再度溜息をつきながら答える。
「クリスマス当日な、私の恩人の店を手伝いに行かねばならなくなったのだよ」
恩人とは、己の力を恐れて家を飛び出し彷徨っていた美雪に衣食住を用意し、カフェ経営の手ほどきをしてくれたUDCアースのあるカフェ経営者のこと。今年は特に多忙が予想されるため、手伝いに来てほしいと要請があったそうだ。
「困ったな……皆でここでクリスマスパーティでもしようと思っていたのだが」
三度溜息をつく美雪の脳裏に、唐突に思い浮かぶアイデア。
「そうだ、ちょっと聞いてくれないだろうか?」
アイデアを披露する美雪に、嬉しそうにうなずく猟兵達。
数日後、常連客を集めた美雪が提案したのは、クリスマスケーキ作り。
「キマイラフューチャーのクッキングスタジオを1日借り切ったので、ここにいる皆でケーキを作ってささやかなパーティでもしようじゃないか」
おー、と常連客の間から歓声があがる。
「スポンジは1から焼いていると時間がかかりすぎるのでな、事前に私が用意する」
基本は大きなホールケーキ1台に皆で飾り付けてもらうが、形状や味の希望があれば応じる。人数が増えた場合、用意するスポンジも増やすため、遠慮なく言ってほしい。
「皆にはクリームやケーキを飾るトッピング、デコレーションの材料を、ひとり1種類持ってきてもらいたい」
ケーキに挟むフルーツを持ってくるもよし。
ケーキを彩るデコレーション食材を持ってくるもよし。
いっそのこと、砂糖やチョコレート、マジパンでできた飾りを用意するのもアリ。
「まっ、皆のことだから変な食材を持ち込まれることはないと思いた……い……」
ある意味困った食材が持ち込まれたバーベキューの事を思い出し、言葉尻が弱々しくなる美雪。しかしすぐに持ち直して注意をひとつ。
「出来上がったケーキは最後に皆で食べるので、他人の口に入ることも考えて食材を選んでくれよ」
穏やかにお願いする美雪の手に鋼鉄製ハリセンの幻影が見えるのは……なぜだろう?
「ああ、今回はひょっとしたら常連客でない私の知人も来るかもしれんが、これも何かの縁という事で温かく迎えてやってくれないか」
こういうのは人数が多いほうが楽しいだろうしな、とにこやかに笑う美雪に、常連客らもつられてにこやかに笑っていた。
というわけで。
――喫茶【スノウホワイト】、クリスマスパーティー、はじまりはじまり。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
喫茶【スノウホワイト】旅団シナリオ第2弾は、クリスマスケーキ作り。
皆さんで楽しくケーキを作りましょう!
●【重要】本シナリオ限定の注意事項
旅団シナリオのため、EXP/WPは一切獲得できません。
本シナリオは喫茶【スノウホワイト】及びその友好旅団の所属者のプレイングのみ、採用致します。
(【スノウホワイト】への一時入団は不可。友好旅団への一時入団の可否は、直接各団長にお問い合わせを)
●本シナリオの構成
本シナリオのメインは、クリスマスケーキ作りです。フラグメントの内容は無視してください。
出来上がったケーキは最後に皆で美味しくいただきますが、リプレイの描写はケーキ作りがメインとなります。
ケーキの土台となるスポンジは美雪が用意いたしますので、皆様には「スポンジ以外の材料(トッピング、デコレーション、クリーム等)」を1人1種類持ち寄っていただきます。
ケーキの形状は特に指定が無ければ普通のホールケーキとなりますが、指定がある場合はプレイングに明記してください。
ただし、「大惨事必至」となる材料を持ち込んだ場合、美雪がグリモアを操作して持ち込んだ猟兵ごと次元の狭間に送り込みます(プレイング不採用)。
何が大惨事かは北瀬判断となりますが、節度を持った材料選択をお願いします。
グリモア猟兵かつ団長藤崎・美雪は、シナリオの性質上お誘いがなくても勝手に登場致します。
北瀬所持PCかつ友好旅団所属の森宮・陽太は、プレイングでお呼びいただいた場合のみ登場。(館野・敬輔は参加しません)
なお、旅団シナリオであっても、商標等の各種権利に触れるもの、飲酒喫煙行為、問題行動、公序良俗に反する内容のプレイングは絶対に採用できません。ご注意を。
●本シナリオ運営スケジュール
旅団内相談期間:OP公開後~12月20日(金)
プレイング受付:12月19日(木)8:31~12月20日(金)いっぱい
リプレイ執筆 :12月21日(土)or22日(日)の予定
※変更ある場合はMSページ及び旅団シナリオスレッドで告知します
それでは、張り切ってケーキ作り、いきましょう!
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
👑1
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真宮・響
美雪、今回も場所の手配ありがとう。いつも苦労かけるね。今回も家族で来させて貰ったよ。ふむ、良く焼けているパウンドケーキだ。大きさも皆で飾るのに丁度いいね。
アタシが持って来たのは、キイチゴ、ラズベリーだ。暗い赤色のを持って来たよ。苺でも良かったんだが、少し変化球を狙ってみた。
年上として細々とした作業など面倒くさい作業は積極的に引き受けるよ。若者は楽しむのが一番だ。飾り付けたケーキの切り分けや盛り付けも引き受けるよ。皆で楽しんで飾り付けたクリスマスケーキ。きっと味は極上だろうね。
真宮・奏
クリスマスの季節ですね♪皆さんと楽しく過ごせるので、ワクワクしてます。美雪さん、会場セッテングお疲れ様です。今回も家族で押し掛けさせていただきました!!
私が用意したのはアイシングクッキーです。サンタさん、ツリー、星などクリスマスモチーフしたものを一杯持ってきました。はりきって飾り付けます。皆と一緒なら最高のケーキが出来ますね!!最高の笑顔で食べますよ。
神城・瞬
美雪さん、ご招待ありがとうございます。また会場設営とセッテングを任せてしまいました。今回も楽しませて貰いますね。
僕が持って来たのがビオラの砂糖漬け。ちょっと変わってますが、食べれますので。土台を飾り付けるお手伝いは積極的に。皆さんが協力して作るのは最高のケーキになるのに違いないです。ケーキを皆さんに配るお手伝いもしますね。
ペーナァ・キャットハウス
ケーキ作るのん!?
うちも食べたい! 混ぜてーや!
うちが持ち寄る材料は「イチゴ」です
これをケーキの上に乗せる係はうちがやるやんー!
でもそれって最後までやる事ないし…
味見係も、うちがやってもええんやで!
クリームや乗りきらない細工物を味見という名のつまみ食い
「うん! きっとこれなら美味しいケーキが出来るんやで!」
怒られない程度に
最後にとうとううちの出番!
イチゴをケーキの上に乗せていきます
ちゃんと人数分、均等に
余ったイチゴはまた味見します
うち、やり切ったで!
食べる時は気分重視でサンタコスして臨みます
こういうのんは雰囲気が大事やねんから!
アドリブ歓迎です
アンヘル・フュネライユ
・・・・・ちっ!(舌打ち)
しょうがにゃいから・・・どうしよう?
食べるだけにするつもりだったけどにゃあ~
ドリアンにするにゃあ・・・・え、ダメ?
・・・・・・・・・・・
しょうがにゃいから生クリームでも持っていくにゃあ~
チョコ混ぜてチョコ生クリームにしたにゃあ~
これを塗りたくってやるんだにゃ~
・・・・・・とっても普通過ぎる!
ああ、カオスは、カオスはいずこや!
これが人間の所業なのか!?
猟兵だよ!!
アカネ・リアーブル
アカネはクリームをお持ちしました
フルーツや飾りを邪魔しない純白のクリームで土台をお作りします
お兄様(リオン)の暗号レシピを解読して
本人にアドバイスもいただきながらチャレンジです
…苦労は察してくださいませ
クリームと言っても奥が深いのです
乳脂肪分が一番高いクリームと
もう少し少ないクリームを半々混ぜて手でホイップ
高乳脂はすぐ硬くなりますから
スポンジの中に挟むクリームは硬く泡立て土台をしっかり
上に塗るのは口溶けよく気持ちやわらかめ
デコレーションは若干硬めに泡立てて形を綺麗に
泡立てすぎたらやり直しです
この日のために頑張った練習の成果とくとご覧に入れましょう!
アカネがミスする訳に参りません
がんばりますよ!
リオン・リエーブル
連携アドリブ大歓迎
おにーさんはマジパンのニンジャサンタを持ってきたよ
ちなみに味は食べてのお楽しみ
赤いニンジャ服着て赤い帽子を被った人形が
いろんなポーズを取りながらでっかい袋を背負ってるの
シュリケンみたいにプレゼント投げつけたり
家の鍵をピッキングしたり
色々芸が細かいんだ
…なんでニンジャなのかって?
だあってサンタってニンジャでしょ?
欲しいプレゼントをリサーチして
痕跡も残さず家の中に忍び込んで枕元に置いてくる
見つかったら親のフリをする変装技術も必要だし
この時期以外に何をしてるのかっていう問題も解決!
諜報・潜入・逃走
腕の良いサンタに当たったら
子供はいつまでもサンタを信じるんだよ
きみはサンタを信じてる?
●スノウホワイト側:持ち込み材料を巡るドタバタはいつものことですね
キマイラフューチャーの片隅にあるクッキングスタジオの一室から、スポンジが焼き上がる美味しい香りが漂う頃。
その一室に、期待を込めて足を踏み入れる猟兵の姿があった。
「美雪、今回も場所の手配ありがとう。いつも苦労かけるね」
片手にラズベリーの入った袋を下げながら、今回の提案者でもある藤崎・美雪に頭を下げるのは、真宮・響(赫灼の炎・f00434)。
「響さん、来てくれて感謝だ。何、今回言い出したのは私だから、気にするな」
オーブンから焼き上がったスクエア型のスポンジケーキを取り出しながら、感謝の言葉を述べる美雪。実際、今回のパーティは彼女が言い出したことです。
「今回も家族で来させて貰ったよ」
ちら、と後ろを見やった響に続いて入ってきたのは、響の子供の真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)。
「美雪さん、会場セッテングお疲れ様です。今回も家族で押し掛けさせていただきました!!」
「美雪さん、ご招待ありがとうございます。また会場設営とセッテングを任せてしまいました」
「奏さんと瞬さんも、ありがとう」
奏が持って来たのは、サンタやツリー、星をかたどったアイシングクッキー。
一方、瞬が持ち込んだのは、ビオラの砂糖漬け。
「ちょっと変わってますが、食べれますので」
スミレの砂糖漬けはよく聞きますが、ビオラは少し珍しいかも?
「あれ? あそこにいるのはアンヘルじゃないか?」
クッキングスタジオの隅で、足をぶらぶらさせながら口を尖らせているアンヘル・フュネライユ(嗤う虐殺人形・f14841)を見て、首を傾げる響。
「ちぇ~……食べるだけにするつもりだったけどにゃあ~」
「アンヘルさん、何を持って来たのでしょうか?」
アンヘルと目を合わせるようにしながら話しかける奏から、そっと目を逸らすように遠い目をしながら語るアンヘル。
「それがだにゃ……」
――パーティの数日前。
「美雪ち、何か持ってこないとダメ?」
喫茶【スノウホワイト】のカウンターで足をぶらぶらさせながらぼやくアンヘルを見て、微苦笑を浮かべながらオレンジジュースを勧める美雪。
「ああ、今回は1人1種類、何か持ってくることが参加の条件だ」
「じゃあ、ドリアンにするにゃあ」
「やめんかああああああ!!」
――スパーン!!
脊髄反射の如く、アンヘルの頭に鋼鉄製ハリセンを振り下ろす美雪。その顔には軽く血管が浮いているような?
「……え、美雪ち、ダメ?」
「ダメだダメだ! 大惨事が発生する前に次元の狭間に送るぞ!?」
「ちぇ~……」
ジンジン痛む頭を抑えながら、舌打ちするアンヘル。
「というわけで、ドリアンは止められたにゃあ……」
アンヘルの回想を聞かされた真宮家のお三方、そろってこめかみ押さえて頭が痛そうな表情を浮かべていた。
「アンヘル、ドリアンはやめておけ……」
「表現できないような臭いの強い果物を持ち込んだら、私たち全員ここから追い出されますよ?」
「美雪さん、いい判断でした……」
呆れる響と奏、そして天を仰ぐ瞬。実際持ち込まれていたら、臭いだけで大惨事間違いなし。
「しょうがにゃいから、チョコを混ぜた生クリームを持ってきたにゃあ」
「それでいいんだそれで……」
常連客以外も顔を出す場までカオスに叩き込む気かい、とひくーい声で呟く美雪。
●テアトル・リエーブル側:ああ、普通の材料が有難い……っておや?
続いてやって来たのは、アルダワ魔法学園の一角にある劇場【テアトル・リエーブル】の団員たち。ちなみに先日、やんごとなき事情でレストランと居住区が崩壊したため、現在再建に向けた準備中。
「美雪様、ご招待感謝致します」
出迎えた美雪に優雅にお辞儀をしたのは、純白の羽根のオラトリオ、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)。
「アカネさん、こちらこそ大変な時に来てくれたこと、感謝する」
「アカネはクリームをお持ちしました。フルーツや飾りを邪魔しない純白のクリームで土台をお作りします」
手提げ袋に入っているのは、2種類の生クリームと砂糖のようですが。
「お兄様の暗号レシピを解読して、本人にアドバイスもいただきながらチャレンジです」
どうやらここでホイップするようだが、苦労は察してくださいませ、と呟くアカネの視線はどこか遠いところを見ているようで。
(「錬金術師は本人にしかわからない独特の暗号や記号を用いて調合レシピを残すと聞いたことはあるが……お兄様の暗号レシピとやらはその類だったのだろうな」)
色々察して何とも言えない表情を浮かべる美雪だった。
「ケーキ作るのん!? うちも食べたい!」
うちも混ぜてーや! と元気にアカネの陰から飛び出したピンク髪の少女は、ペーナァ・キャットハウス(お外でゴロゴロ・f05485)。
「ペーナァさんか! 構わんよ」
もちろん大歓迎の美雪に、ペーナァは少し大きめの箱を差し出す。
「うちはイチゴを持ってきたんや。これをケーキの上に乗せる係はうちがやるやんー!」
「おお、構わないぞ」
倒さずに乗せなければいけないので、責任重大だぞ!
「でもそれって最後までやる事ないし……味見係も、うちがやってもええんやで!」
「まあ、怒られない程度にな?」
美雪は苦笑気味ですが、味見しながら作るのも楽しいですよね!
「やっほー! おにーさんも混ぜてもらうよー!!」
続いてばーん! と扉を開けて登場したのは、リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)。
「リオンさん、いつも突然だな!」
「おにーさんはマジパンのニンジャサンタを持ってきたよ!」
リオンが箱から取り出したマジパン細工のニンジャは、いずれも赤いニンジャ服に赤いサンタ帽子を被った姿。何だろうこのちぐはぐさ。
「わー、いろいろなポーズを取ってるやん」
様々なポーズを取っているマジパンニンジャサンタを見て、目をきらきらとさせるペーナァ。
シュリケンを投げるようにプレゼントを投げつけているニンジャ。
家の鍵をピッキングしているような姿勢のニンジャ。
煙突をするすると昇っているようなニンジャ。
しかし共通しているのは、ニンジャサンタとほぼ同じサイズの大きな袋を背負っているところ。
……おや? ますますなんかおかしいぞ?
「お兄様、どうしてニンジャなのでしょう?」
先日、美雪とともにUDCアースの忍者の本場で忍者屋敷を見学していたアカネがリオンに質問すると、リオンからの返答は予想外のもの。
「だあってサンタってニンジャでしょ?」
あっけらかんと言ってのけるリオンに、突っ伏す一同。
皆が突っ伏すのを見ても、リオンの語りは止まらない。
「欲しいプレゼントをリサーチして、痕跡も残さず家の中に忍び込んで枕元に置いてくる。見つかったら親のフリをする変装技術も必要だし、この時期以外に何をしてるのかっていう問題も解決!」
「そんなわけあるか!!」
――スパーン!!
どこからともなく取り出した紙のハリセンでリオンの頭をはたく美雪。鋼鉄製じゃないだけ優しいね。
「あわや釣られるところだった……」
「うん、うちも信じるところやった……」
呆れる美雪に同意するペーナァ。サンタがニンジャだったらプレゼントを置くより闇の仕事をこなされるほうが先だと思うのですが!?
さて、かなり字数を費やした気はするが、ケーキ作りはここからが本番。
……ええ、いつものことです。
●さて、ケーキを作ろうか
お互い自己紹介した後、皆が持ち寄った材料を見て、知恵を出し合って作れそうなケーキを考える一同。
クリームは2種類、純白のクリームとチョコ生クリーム。
ラズベリーとイチゴは、スポンジに挟むフルーツとして使えそう。
アイシングクッキーとビオラの砂糖漬け、そしてマジパンニンジャサンタは飾り用として活用できそうだが、イチゴやラズベリーも十分な数があるので飾りとしても使えるだろう。
材料を眺め皆で検討して出した結論は……。
「よし、作るのはショートケーキとブッシュ・ド・ノエルだ」
●まずクリーム作りから始めよう!
方針が定まったところで、まず始まるのはケーキを彩るクリーム作り。
「この日のために頑張った練習の成果、とくとご覧に入れましょう!」
ミスする訳に参りません、がんばりますよ! と気合を入れるアカネが取り出したのは、乳脂肪分が一番高い生クリームと、それよりは少し乳脂肪分が少ない生クリーム。
「クリームと言っても奥が深いのです」
乳脂肪分が高ければ高いほど固まるのが早く、色も純白にはならないため、アカネは2種の生クリームを半々ずつボウルにいれ、まずは手でホイップ。
ある程度混ざったら、今度はボウルの底を氷水に当てながら泡立て器でしっかりとホイップ。
六分ほど泡立てたら、使用用途に応じて固さが変わる様に慎重にホイップ。
スポンジの中に挟むクリームは、固く泡立てて土台をしっかりと。
一方、スポンジの上に塗るクリームは、口溶けよく気持ち柔らかめにホイップ。
デコレーション用のクリームは若干硬めに泡立て、絞り出した時の形が綺麗になるように。
うまくいかなかったらやり直すつもりだったが、練習の成果あって、ミスなく固さの異なる3種類の純白のクリームが完成!
「アカネ、やったね!」
「お兄様のレシピのおかげです」
ハイタッチするリエーブルきょうだいを横目に、ひょいっと指先でクリームを掬い取り、口に入れるペーナァ。
「わあ! アカネちゃんのクリーム、最高やー!!」
一方、アンヘルが持ち込んだチョコ生クリームをホイップするのは、響。
「年上として、面倒くさい作業は積極的に引き受けるよ」
若者は楽しむのが一番だ、と微笑みながら、ボウルに入れたチョコ生クリームを冷やしつつ泡立て器でホイップ。
「響さん、そこにある便利そうな泡立て器、使わんのん?」
全く出番のない電動泡立て器を見ながら質問するペーナァに、響はこれまた優しい笑顔を向けて。
「アタシもこのほうが慣れているんだ……よっ!」
手に持つ得物を槍から泡立て器に変えて、ひたすらホイップし続けると、見る見るうちに適度な硬さのチョコクリームの完成!
すぐさま指を差し入れ味見するペーナァ、パッと顔が明るくなりました。
「これ、口の中でふんわり溶けて甘くておいしいやん!」
「そうかい、いい感じに仕上がったようだね」
●いよいよ皆で飾り付け!
アカネと響がクリームをホイップしている間に、アンヘルとリオンがイチゴのヘタを取り、奏と瞬がイチゴを適度な大きさに切り分け、ラズベリーも飾り用に取り分けたら、残りは細かく刻んで。
「皆と一緒なら最高のケーキが出来ますね!!」
「ええ、最高のケーキになるのに違いないです」
もっとも、細かく刻んだラズベリーをペーナァが味見して、酸味の強さに少し顔をしかめていたのは皆にはナイショ!
アカネと響がホイップし終わったクリームを持ってきたら、いよいよ飾り付け開始。
ここからは手早くやるために2組に分かれ、仕上げていく。
ショートケーキの飾り付け担当は、アカネ、響、瞬。
まずはスクエア型のスポンジを横半分にスライスし、片面に固めにホイップしたクリームを塗って。
「イチゴを並べるのはうちの役―!」
「ええ、ペーナァさん、お願い致します」
縦半分に切ったイチゴをペーナァが並べ、その上から残しておいた固めのクリームをアカネが塗ってもう1枚のスポンジを上に置き。
アカネが柔らかめにホイップしたクリームを全面に塗ったら、響と瞬がデコレーション用のクリームを絞って飾り付け、ラズベリーとビオラの砂糖漬けをあしらって。
「ペーナァ様、お仕事です」
「わーい、うちが乗せるんよー」
瞬が気を利かせてイチゴの土台となる様に絞り出したクリームの上に、ひとつずつ丁寧に、しかも人数分きっかりのイチゴを乗せるペーナァの表情は満面の笑顔!
「うち、やり切ったで!」
ちなみに余ったイチゴはペーナァの胃に納まりました。
一方、ブッシュ・ド・ノエルの飾り付けを行うのは、奏、アンヘル、リオン、美雪。
チョコクリームは2等分した後、片方に刻んだラズベリーを混ぜ込んでから美雪が薄いスポンジに塗り。
その上から小さめのイチゴをペーナァが並べ、奏がぐるぐると巻いてロールケーキにした後は、残しておいた半量のクリームを塗る時。
「ここはあちきがやるにゃ~。塗りたくってやるにゃ~」
アンヘルがゴムベラ片手にひたすら塗る、塗る、塗って塗って塗りまくる!!
……もっとも、分厚く塗りすぎたところはそっと美雪が修正しているのだが。
その後、アンヘルがフォークで模様をつけ、仕上げにマジパンサンタニンジャを乗せようとして……リオンが気づいた。
「あれぇ? これ袋が大きすぎて載せられない?」
「……無理に乗せたところでコケてしまうな」
美雪も頷く。不釣り合いに大きい袋が原因で、ブッシュ・ド・ノエルの上には乗せられない。
何かいい案はないかと思案する中、奏が何か思いついたようで。
「切り分けた後で添えるのはどうでしょうか?」
「おおっ、奏さんいいアイデアだ!」
というわけで、切り分けた後に皿に1つずつ添えることで解決。
「アイシングクッキーは載せられそうだね」
「ああ、一つずつ載せていこうか」
代わりにアイシングクッキーを飾り付け、こちらも完成!
こうして完成したケーキは響が切り分けて皿に盛りつけ、瞬と奏が配膳し。
美雪が美味しい紅茶を用意し終わったら、さあいよいよパーティだ!
●完成したケーキのお味は?
ケーキを食べる直前にそそくさと姿を消したペーナァ。
戻ってきた彼女の姿は……サンタクロース!
「こういうのんは雰囲気が大事やねんから!」
「ペーナァさん、良くお似合いですよ」
嬉しそうに見せびらかすペーナァを褒める奏の表情は、にこやか。
「それでは、いただきまーす!」
皆がケーキに銘々にフォークを入れ、口にすると、そこかしこに綻ぶ笑顔。
「皆で楽しんで飾り付けたクリスマスケーキ。味は極上だろう?」
自信満々に太鼓判を押す響の言葉通り、自分たちで作ったケーキが美味しくないわけもなく。
瞬も奏も、リオンもアカネも、ペーナァも美雪も、無心でケーキを口に運んでいく。
一方、アンヘルはケーキを美味しそうに味わいながらもどこか不服そう。
「……とっても普通過ぎる! ああ、カオスは、カオスはいずこや!」
確かに今回、カオス成分控え目ですが。
「だから常連客以外のいる場にカオスを求めるな!」
――すぱこーん!!
アンヘルの頭を叩いたのは、鋼鉄製ハリセンを手にした美雪。
「これが人間の所業なのか!? 猟兵だよ!!」
嘆くアンヘルだが、【スノウホワイト】常連客だけだったら容赦なくカオスに叩き込んだよ! 後の責任は負わないけどね!
ひと騒動はともかく、無心でケーキを食べ続けた結果。
あっという間にケーキとアイシングクッキーは、全員の満足そうな笑顔と共に胃の中に納まった、のですが……あれ、マジパンニンジャサンタだけが残っているぞ?
●ニンジャサンタからのプレゼント
「ところでこれって、食べられるんよね?」
最後まで残ったマジパンニンジャサンタをじーと眺めながら、首を傾げるペーナァ。
「食べられるよー。味は食べてのお楽しみ!」
持ち込んだ主のリオンが太鼓判。確かマジパンの基本材料はアーモンドプードルと砂糖ですが。
「リオンくんの言うことなんか信じやへんけど……」
実はある事情でリオンのことがあまり好きではないペーナァ、ブツブツ言いながらも一口齧り、あまりの甘さに目を白黒。
「あ、甘いやん……これ何の香りやのん?」
「リオン、ローズウォーターが入っているのかい?」
ふんわりと口の中に広がるローズの香りに気づいた響。
「そうだよー」
肯定するリオン。もともとアーモンドの粉末と砂糖、そしてローズウォーターを混ぜて練ったものがマジパンの原型と言われているとか。
「紅茶と併せて口にすると、ちょうどいい甘さかもしれません」
「あーん!」
感心する瞬をよそに、ペーナァが思いっきりサンタ袋にかぶりつく。
――ガキッ。
直後、固いものを噛んだかのような音が響き渡り、ペーナァの顔が一瞬にして泣き顔に。
「固いもの入ってるやーん!! リオンくんのいじわるー!!」
「ペーナァ様、よく袋の中身をご覧になって下さいませ」
「アカネちゃん?」
何か気が付いたアカネに諭され、ニンジャサンタの袋の中身を眺めると、なんと中に入っていたのは小さな陶器製のネコのモチーフ!
「わー、可愛いやんこれ!」
ぱぁっと顔が明るくなるペーナァ。
「サンタ袋に入る大きさの小物を探すのって大変だったよ!」
「道理で袋が不釣り合いに大きかったわけですね……リオンさん、やりますね」
袋の中からそれぞれに陶器製のモチーフを見つけた奏の表情も、またケーキを食べ終わった後とは別の笑顔が浮かんでいた。
「お兄様、いつの間に仕込んだのですか?」
まさか兄がこれを仕込んでいるとは予想だにせず、アカネも思わず聞いてしまうが、リオンはちっちっち、と指を立てて横に振りながら答えた。
「ふっふっふ、腕の良いサンタに当たったら、子供はいつまでもサンタを信じるんだよ」
――きみはサンタを信じてる?
アカネを煙に巻くようなリオンの質問の答えは、皆様の心の中に。
こうして、一足早いクリスマスパーティは、モチーフというお土産と共に幕を下ろしたのでありました。
――喫茶【スノウホワイト】&テアトル・リエーブル、クリスマスパーティ、大成功!
大成功
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