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アースクライシス2019④〜虚構のペルフェット

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #夕狩こあら #戦神アシュラのクローン


「ユタ州南部からアリゾナ州北部にかけて広がるモニュメントバレーに、突如として幾つもの洞窟からオブリビオンが現れた事件については、もう知っているかな」
 ナバホ族の聖地と呼ばれ、多くの観光客が訪れる記念碑の谷に脅威が襲い掛かった。
 花唇を開くや冷厳の聲で切り出す枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)を見るに、グリモアベースに集った猟兵達は、未だ事態の収束を見ぬ深刻を知る。
 精鋭らと視線を繋ぎ合った帷は言を継いで、
「奴等はセンターオブジアースから地上に送り込まれた刺客で、鋼神ウルカヌスが授けた『神鋼の鎧』を装備しており、鎧の効果により殆どの攻撃を受け付けない」
 原初の鋼と炎の神、『鋼神ウルカヌス』。
 神々の時代に、討伐した不死の怪物から最初に「鉱物」と「生命の礎」を取り出したと言われる彼の者が与えた鎧は、聖地――モニュメントバレー内に居る限り、あらゆる攻撃への超耐性を持ち、物理的な攻撃はおろか、悪口などの精神攻撃や、毒やガスさえも遮断する。
 猟兵が駆使するユーベルコードでさえ通らぬなら、苦戦は決定的だが――。
 然し帷が常と変わらぬ沈着を見せるのは、攻略があるのだと察しが付く。
 間断なく言は続いて、
「鎧を纏う者は完全無欠の戦士に為る訳だが、絶対という言葉は絶対に存在しない」
 珍しく笑ったか――口角を僅かに持ち上げた帷が炯眼を注ぐ。
「洞窟から現れるオブリビオンは並(な)べて鎧を身に着けているが、この鎧には必ず何処かに隙間がある。隙間を探して攻撃を集中させれば、鉄壁の防御は破られるだろう」
 武蔵坊弁慶然り、英雄アキレス然り、地獄の番犬ケルベロス然り。
 無双を誇る者にも弱点はあると、不敵な咲みを挿した帷は、改めて猟兵の精悍を見詰め、
「私が君達に討伐をお願いしたいのは、『戦神アシュラ』のクローン体。こいつもまた鎧を纏っているが、炎を掲げる背面――左右の肩甲骨の間あたりに鎧の隙間がある」
 強敵を相手に背面に回り込むのは中々に難しい。
 然し此処に敵を下す弱点がある以上、果敢に攻めて欲しいという帷。
「一人では無理でも、君達には頼もしい仲間が居る。皆と協力して敵の背後を取り、鎧の隙間に死の一撃をくれてやれ」
 言って、ぱちんと弾指する。
 説明を終えた帷は、開いた掌手にグリモアを喚び、
「ヒーローズアースにテレポートする。聖地の平穏を脅かす無法者に、たっぷりと荊棘をくれてやれ」
 と、勇敢なる猟兵らを眩い光に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、『アースクライシス2019』における第四の戦場、モニュメントバレーにて「神鋼の鎧」を攻略する一章のみの戦争シナリオ(ボス戦)です。

●敵の情報
 余りの残虐さと邪悪さ故に処刑された、原初の戦の女神『戦神アシュラ』のクローン体。クローン作成以前から、その殺戮衝動が「アシュラレディ」として受肉化しています。
 鋼神ウルカヌスより授けられた「神鋼の鎧」を装備しており、使用するユーベルコードに加え、あらゆる攻撃への耐性を持ち合わせている為、弱点を探しましょう。
 撃破後、鎧は光の粒になって消え去る為、持ち帰る事は出来ません。

●プレイングボーナス
 戦神アシュラのクローン体は「神鋼の鎧」を装備しており、どこかにある「鎧の隙間」を狙うと「プレイングボーナス」が付与され、行動が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 複数での参加者様は一括採用のみで、個別採用は致しません。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『戦神アシュラのクローン』

POW   :    神獄斬
【6本の剣を振り回しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【心から現れる殺戮衝動の具現アシュラレディ】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    アシュラブレイド
【集中と共に踏み込み、一刀】による素早い一撃を放つ。また、【攻撃に使う1本を除いた剣を手放す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    阿修羅六輪斬
【剣の切っ先】を向けた対象に、【炎を纏った剣を次々と飛ばすこと】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:otomo

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 雄大にして勇壮――。
 粗削りの大自然に、決して人類が触れられぬ神聖を感じる『モニュメントバレー』(記念碑の谷)に何台かのバスが向かう。
 車窓からスマートフォンを向け、絶景を撮影しようとしていた観光客は、然しその画面に自然ならざる脅威を映して悲鳴を上げた。
「オーマイガッ!!」
「マンマミーア!!」
 世界中から集まった観光客が、あらゆる言語で絶叫する。
 刻下、車窓より見えるは、烈々たる炎を背負った異形の女が、六本の腕に魔劔を握り、何かを探し求める様に洞窟から出てきて――バスの方へと向かって来る異様の景。
 妖しくも美しい紅唇は忌々しげに端を吊り上げて、
『猟兵は何処だい? アタシが探さなきゃならないなんてムカツクね!』
 ムカツク、ムカツク! と。
 瞋恚と嚇怒に更に火勢を強める――彼女こそ『戦神アシュラ』のクローン体。
 柳眉を蹴立てて歩く女は「神鋼の鎧」を纏って気炎万丈、苛立ちをそのまま六筋の斬撃に変え、赤岩のビュート(孤立丘)を切り崩した。
 凄まじい衝撃音を連れ、女が喊ぶ。
『アタシがキレない内に来な! 今なら綺麗に切り刻んでやるよ!』
 蓋し言い終わらぬ裡である。
 グリモアの光粒子が解けるより早く爪先を弾いた猟兵達は、一気呵成に吶喊し、女の視界いっぱいに無数の冱撃を衝き入れた――!
西方寺・鞍馬
完全無欠の神鋼の鎧にすら弱点がある。
これは、神話で謳われる神々ですら完璧じゃ無いって事なのかね?
さぁ、仕事の時間だ。

【SPD】で戦闘。アドリブは常に大歓迎。
御同業との連携重視。

【戦闘知識】と【第六感】で相手の攻撃を予測して、【残像】と【見切り】をもって回避しつつ、周囲を滑るように移動しながら弱点を探す。
たまに相手の攻撃に合わせて【カウンター】を狙ったり、通常攻撃もする。
弾かれても構わない。相手が油断して、行動が大雑把になってくれると助かるね。

弱点を発見次第、【夜刀神・烟(UC)】を放ち、相手の動きを止めた後に【呪詛】を込めた刺突を弱点と思われる場所へ突き入れる。


九条・救助
お前が炎を繰るのなら、オレの零度で消し潰す。
正面から挑んでやる。
【神格共鳴】……!
オレだって神の血族だ。戦神だろうがブン殴ってやる!

UC由来の飛翔能力で加速し、追ってくる炎の剣を振り切る。中遠距離を保ちつつ氷矢レタルアイで応戦。敵の注意をこっちに引きつける。
敵の視線が完全にこっちを向いたら急加速して接近。クトネシリカで近接戦を挑む。こっから先は捨て身の覚悟。オーラ防御も気休め程度だろうが、叩きのめしてやる!
ああ、そうさ。さすが戦神。そうだろうな。お前の方が強い。間違いねーよ。複製体でもオレじゃあかないっこねー。その通りだ。
……一対一ならなッ!!
とどめは仲間の猟兵に任す。
オレたちの、勝ちだッ!


パルピ・ペルポル
完全無敵、とは上手くいかないものなのね。
この場合は上手くいかないほうがありがたいわけだけど。

念動力で空中に雨紡ぎの風糸を蜘蛛の巣状に張り巡らせて、敵の行動を阻害と敵がつっこんでこないよう盾としても使用するわ。
攻撃によるダメージは鎧で防がれても、物理的な障害まではどうかしら。
体の小ささも生かして、なるべく目立たないように立ち回るわ。

上手く背中側に回り込めたら隙を見て穢れを知らぬ薔薇の蕾を鎧の隙間に投げ入れるわ。
そうすれば後は内部で茨が伸びてくれるはず。美しい華が咲いてくれることを期待するわ。

隙を作るためには偶然の不運なる遭遇を使用するわ。
ダメージはなくても気ぐらいは逸らせるでしょ、多分。


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

無敵の鎧を纏う戦神…
だけど隙間を狙えれば…
行こうか…

「戦神よ、ワタシが相手をする!」
[挑発とおびき寄せ]で敵を引き付けよう
鉄塊剣による[武器受け]と[激痛耐性]で猛攻を耐えよう

【凄惨解体人間】を使い敵の攻撃で血肉を撒き散らしながら
バラバラにされてゆく[パフォーマンス]をしよう
血肉の一部を敵の目に浴びせて[目潰し]し
肉体をドロドロに溶かして敵の背後に回り込み[だまし討ち]をかけよう
上半身だけを再形成し妖刀を隙間に目掛けて[投擲し串刺しによる鎧無視攻撃]で敵を刺し貫こう…


水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:アノン
何か怒ってんな、せっかく殺し合えるってのに。楽しくないのか?ヒトソレゾレ、ってやつか?

UDCを纏って黒狼の姿になると、光・氷・雷・金属属性を取り込む
氷の冷気を纏って相手の炎の威力を弱めつつ、攻撃は野生の勘で回避する
地面の一部を金属に変え、雷属性で磁石化して剣の動きを阻害するぜ
動きながら足元にUDCの液体金属もばら蒔いておく
磁石化した金属と見分けがつかねェだろ
相手が剣を振り上げた瞬間を狙って、足元のUDCから触手を伸ばしレーザーで肩甲骨の間を狙う
外したら光属性でレーザーに干渉、空中を鏡のように反射させて再び弱点を狙う
複数のレーザーで追い込んで1発でも多く当ててやるぜ


フィロメーラ・アステール
「背中だから守りやすいと思ったか!」
でもそれは大きなミス!
存分に思い知らせてやる!

【紲星満ちて集いし灯光】を発動!
光精を呼び出して数で押せば、背後なんて取り放題!
【空中浮遊】してるし?

よーし光精のみんな、後ろから光線だー!
邪悪な神みたいだし聖なる【破魔】の力が効くと思うぞ!

……という【パフォーマンス】で、敵の反撃を誘う!
敵は剣を向けてくるんだから大体攻撃ポイントわかるよな?
そこに光精たちと連携し【火炎耐性】【オーラ防御】バリア展開!

【気合い】を入れて剣を次々に受け止め!
止めたら剣に光精を宿らせ【武器改造】して【盗み】取るぜ!

【ダンス】のはじまり!
剣とか光精で囲んで【残像】の速度で隙間を狙うぞ!


御形・菘
敵の背後を取るような、テクニカルな戦略が妾にできるはずもない!
ならばこそその逆、妾へと向かせ続けることで、背後の弱点を皆に狙わせ突かせるとしよう
右手を上げ、指を鳴らし、さあ鳴り響けファンファーレ!

はっはっは、戦神とは大層な肩書ではないか!
しかし殺戮衝動の具現って……控えめに言って、脳筋ということであろう?
多分お主、陰では結構バカにされておるぞ?

もちろん、炎も、妾を見たいという情動すらも軽減されるのであろう
だが妾ほどの存在感を持つ者が、真正面に陣取り格闘を挑み、挑発を行いながらバトる!
怒りに燃えよ! 他所に気を向けさせることはさせん!
まあそもそも、早くせんと妾の左腕で以てボコり倒してしまうがな!


パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
バスに並走しながら
【コミュ力】を活かして、運転手さんに逃走経路をアドバイス☆

念の為にKrakeを二砲のみ展開し
バスが避難完了するまでの間は
牽制用の【制圧射撃】か【援護射撃】に徹するね。

おっまたせ~♪
一緒にダンスしよ、アシュラちゃん☆
UC発動―躍るぜ、Glanz!
踏み込みと相殺する勢いで正面からフルスロットル突進。
既に展開済の二砲を
フェイクとして真っ直ぐ前方に向け構えておくね。
【捨て身の一撃】で初撃を敢えて受けつつ
【カウンター】で突き出された腕を掴みたい。
隠しておいた残り二砲付きの触手を
背面へ伸ばし
左右の肩甲骨の間を狙って【零距離射撃】ィ!

※絡み&アドリブ歓迎!


雨糸・咲
猛る女神様の背後を取る、というのはなかなか難しそうですが…
前も後ろも同時に見えるわけでもないでしょうし
他の方と協力し、別方向から攻撃するようにすれば
誰かが背後を突ける状況が作れるのでは

…それにしても、随分と荒っぽい女神様ですね

攻撃を受けるのは危険でしょうから、回避は全力で
視覚で動きを追うのは勿論、剣を振るう音に聞き耳を立て
迫る刃の気配を捉えるべく第六感を駆使

切り刻まれるのはさすがに困るので
なんて微笑むのは、ギリギリの場面ほど不思議と集中できるから

高速詠唱の2回攻撃は氷の旋風
巨大な渦で前方から攻めるのをフェイントとし
もう一本の渦は細く鋭く絞って背後から
精密な制御で、背にある鎧の隙間を狙う


バーン・マーディ
他の猟兵との共闘を希望する

【オーラ防御】展開
【戦闘知識】で敵の動きの癖の把握

哀れだな
貴様の苛立ちは我らに向けられたものではあるまい

【武器受け】で車輪剣と魔剣で可能な限り受け止めそれでも尚続くダメージに耐え

我らにとって不条理なるその鎧もまた貴様にとって恥辱の証であろう戦神よ

だが安心しろ
それでも尚…貴様は敗れる

ユベコ発動
【カウンター・二回攻撃・怪力・生命力吸収・吸血】
あらゆる技能を使い全力で正面からぶつかり合う
弱点を狙う?
それは他の猟兵に任せよう
…偽りといえど
クローンといえど戦神に正面からぶつからず何が悪の神か!

傷を力に変え
己の力が尽きるまで…最後の最後まで闘争心を失わずぶつかり続けよう


テラ・ウィンディア
共闘OKだ

炎に刃か
ならば…挑まずにはいられないよな!

【属性攻撃】全身と武器に炎を付与

【戦闘知識】でアシュラの動きと癖と立ち回りを把握

ああ、同感だ
おれもお前を切り刻みたいと思ってた所だ
気が合うな!

【空中戦・残像・見切り・第六感】を駆使して可能な限りぎりぎりで刃の回避
その上で剣と太刀による刺突による【串刺し】
【早業】による斬撃による反撃を繰り返す
一つ一つ必殺の勢いを込めて繰り返し
常に敵の刃も己の刃も他の仲間の刃も記憶して

彼女の猛攻に後退して尚突撃され…彼女の弱点の背中ごと先程まで攻防を繰り返した場所へと入れば

消えざる過去の痛み発動!
いっただろ?
切り刻んでやるってな!!

斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬!!


大崎・玉恵
血の気の多そうな女じゃ。
阿修羅は仏道の守護神ではなかったか?少々この世界の風土に染まっておるが、この異国の地でお目にかかるとはのう。

手練れじゃな、心してかかるかの。
【御社・出雲八重垣】を展開、社の結界で守りを固めつつ多重結界で締め付ける。
縛り付けることにより奴の自由を奪い、鎧の軋みを見て弱点を露にする。
直接痛打とはならずとも、次に繋がる攻撃じゃ。

結界は可能な限り維持して仲間と連携する。
決定打を欠くならば、接近し【破魔】の力を込めた薙刀の【2回攻撃】で鎧の隙間を突く。必要ならば【ふぇいんと】も使う。
これが成功すれば、突き入れた破魔の力を鎧の内部から炸裂させる。外が駄目なら中からじゃ。


アノルルイ・ブラエニオン
この敵に対して私がすることは二つだ──すなわち、集中し、待つ

我が千里眼射ちは視界に収めたもの全てを射抜く
しかるに、敵から離れた、視界のいい位置で集中し、
集中が終わり次第、肩甲骨の間が見えれば、即、射抜く

一瞬はむしろ長すぎる
──エルフの矢から逃れる術は無し!

なお、攻撃対象にされそうになったら【ダッシュ】で逃げて味方に任せるぞ



 苛立つ儘に魔劔を振り回しては、大地と台地を斬り刻む狂邪――其は原初の戰の女神『戰神アシュラ』、その複製体。
 鬼神の女が鬱憤晴らしに放った【阿修羅六輪斬】が観光バスに向おうとした時、猟兵が射線に割り込んだ。
「――哀れだな。貴様の苛立ちは我らに向けられたものではあるまい」
「戰神よ、ワタシが相手をする!」
 同時に差し入る冷儼と凛冽。
 聲主はバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)と、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)。
 身ごと霊気滴る白刃の如くして踏み込んだ両者は、迫る冱撃を片や魔劔『Durandal MardyLord』の鋩に往なし、片や鉄塊剣『錆色の乙女』の劔身に赫炎を掃う。
 その衝撃に美髪を巻き上げた戰神は声を荒げて、
『やっとお出ましかい! 谷一帯が更地になる処だったよ!』
 嚇怒が生みし殺戮衝動の具現、アシュラレディを連れて突貫すれば、合計12本の劔が猟兵に迫った。
『さぁ死にな! 今すぐ死にな!』
 短気で躁急。
 まるで噛み付く様な斬撃は、刻下、左右より同時に踏み出た大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)と水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)が阻んだ。
 両者は視線を戰神に繋げた儘、飄然と言を交して、
「――全く、血の気の多そうな女じゃ」
「何か怒ってんな、せっかく殺し合えるってのに。楽しくないのか? ヒトソレゾレ、ってやつか?」
「ふむ。人それぞれ、神もそれぞれと云った処か」
 玉恵が繊手に薙刀を握って斬撃を薙ぎ払う傍ら、怜悧は黒く玉虫色に耀くUDCを纏って黒狼へ變じると、鋭爪に斬撃を裂く。
 衝撃の余波が肌膚を烈々と掠める中、二人は敵の行動の阻害に掛かり、
「抑も阿修羅は仏道の守護神ではなかったか? 少々この世界の風土に染まっておるが、この異国の地でお目にかかるとはのう」
 とまれ手練れに間違いないと心して掛かった玉恵は、美し妖し舞扇『白面』を翻すと、【御社・出雲八重垣】(ミヤシロ・イズモヤエガキ)――聖性の加護に守りを固めつつ、戰神を多重結界に締め付けんとする。
 その間、怜悧は次々と襲い掛かる炎劔を冷気を纏って禦ぎながら、駆け抜ける紅い大地を金属に變えると同時、更に雷属性を付与して「磁石」にしていった。
「磁界が干渉すれば、劔も自由に出来ないだろ」
 的を絞らせず、的に当てさせず。
 怜悧は獣の勘で鋩を躱しながら、四つ足で疾りざまにUDCの液体金属をばら蒔いた。
『ハッ、無駄だよ! アタシには結界も磁界も効かない!』
 忌々しげに言い放つ戰神だが、影響を受けずとも破れる訳ではない。
 挙措を禦し、攻撃を阻む両者の連携は、『神鋼の鎧』の無欠に護られた戰神を直ぐには掣肘できぬが、後から紫毒の様に効いて来よう。
 然うとは知らぬ鬼神は、勇躍として魔劔を振り被り、
『レディ! アタシに協力しな! ムカツク猟兵共を蹂躙するよ!』
 光芒一閃、【神獄斬】――!
 無数の刃撃を連れて突貫した阿修羅は、刻下、我が嚇怒の炎を漆黒の瞳に映して煌めくテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)と角逐した。
「炎と刃を扱う戰神か。ならば……挑まずにはいられないよな!」
 牙ッと魔劔と噛み合うは星刃剣『グランディア』。
 当に炎玉の如く、劔身と全身に猛炎を巡らせた可憐は、幼な花顔を赫々と照らしながら劔戟と言を交える。
『上等だ! その根性ごと切り刻んでやるよ!』
「ああ、同感だ。おれもお前を切り刻みたいと思ってた所だ」
『ッ!』
「気が合うな!」
 天性の戰闘勘と経験則で太刀の軌跡を見極め、肌膚一枚で冱刃を躱す。
 間際で避ければ間際から反撃が繰り出せよう、『神鋼の鎧』は創痍を許さぬが、必殺の勢いで迫る刃撃は六本の腕を佳く制した。
 テラと戰神が火花を散らす中、爽涼の風を流す碧落より絶対零度の颶風を纏って迫るは九条・救助(ビートブレイザー・f17275)――ヒーローネーム『ウェンカムイ』。
「お前が炎を繰るのなら、オレの零度で消し潰す!」
 氷雪淸霜、【神格共鳴】(カムイライザー)――!
 その血汐に雪と氷を司る悪神の血を秘める彼は、我が神格と共鳴して凍神形態と為り、氷杖『クトネシリカ』を振り被って戰神を楔打つ。
『くッ、ッ!!』
 六本全てを攻撃に振っていた劔は、神速の冱撃に防禦も儘ならぬ。
 痛撃に柳眉を顰めた戰神は、衝撃と共に舞って煌めく氷雪の欠片の向こうに、凛冽と研ぎ澄まされた闘志を見て、
「オレだって神の血族だ。戰神だろうが正面からブン殴ってやる!」
『ッッ佳い度胸だ! 真面で闘り合えるか試して遣ろうじゃない!』
 相剋、争覇、角逐――!
 戰神の灼熱と救助の絶対零度が抗衡し、赤土の大地に戰渦を巻き起した。
 同じく六本の腕で迫るアシュラレディには、西方寺・鞍馬(帝都の昼行燈・f22626)とパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)が相対して、
「完全無欠の『神鋼の鎧』にすら弱点がある。これは、神話で謳われる神々ですら完璧じゃ無いって事なのかね?」
「無敵無双も上手くいかないものなのね。――まぁ、この場合は上手くいかないほうがありがたいわけだけど」
 幾許か憂いを帯びた冷艶の一瞥を交す。
 その一瞬で役儀を分けたか、パルピが『雨紡ぎの風糸』を放ってレディの繊腕を絡げると、次の瞬間には鞍馬の打刀『大蛟国景』が冱月の如く閃いて魔劔を打ち落した。
 からん、と乾いた音を立てて転がった愛刀を瞳に追ったレディは、睫毛を持ち上げるや吃ッと二人を睨める。
『~~~~ッ! ムカツク!!』
 瞋恚を露わに再度、突貫するが、情動で闘り合える相手では無い。
 鞍馬は歴戰の経験と戰闘勘から劔筋を見切り、漆黒のコートを颯爽と翻しては斬撃を間際で躱し、傍らのパルピは風糸を蜘蛛の巣状に編みながら、魔劔を絡め取る網として盾として張り巡らせていった。
「扨て、先ずは弱点の状態を探らなくては」
「わたしは体の小ささを活かして、目立たないように上手く背後に回るわ」
「それなら僕が引き付けよう」
 フェアリーの繊翅の羽搏きより靜かに囁(つつや)き、戰術を共有する。
 間もなくパルピが戰塵に紛れて穹を往けば、鞍馬は剽悍なるレディに相応しい刀撃を閃かせ、其の闘争心を繋ぎ止めた。
 時に雨糸・咲(希旻・f01982)は、戰女神の立ち回りを具に観察して、
「猛る女神様の背後を取る、というのは中々難しそうですが……前も後ろも同時に見えるわけでもないでしょうし、皆さんで別方向から攻撃するようにすれば、或いは……」
 倖にして手数では彼女の六臂に勝る現況。
 複数が多方向から冱撃を放てば背襲が叶うかもしれない――其には間隙なき連携が必要だろうと言う彼女に対し、多くの者が力強い是を返した。
『アタシの前でお喋りとは度胸があるよ!』
「、ッ」
 ひやうと空を斬る刃の音を逸早く拾い、繊躯を翻す咲。
 右腕の生地を裂き、其処に僅かに血を滲ませた修羅は、劔身に掠めた鮮血を美味と嘗めると、更なる血を求めて大地を蹴った。
『無駄口叩けぬように、ブッ殺してやる!』
 正に刻下。
 射線に割り込んだ御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が、我が鮮血を代償に突貫を止めた。
「はっはっは、戰神とは大層な肩書ではないか!」
『ッッ! 退きな!!』
 停めた足を大地に踏み込み、吃ッと睨める戰女神。
 時に菘は、邪神のオーラを烈々(めらめら)と滾らせる右腕を穹に掲げるや、弾指――雄壮なファンファーレを響き渡らせる。
「邪神たる妾と何方が上か。其の名に違わぬ戰い、見せて貰おうかの」
 刮目を命ずは、【見よ、この人だ】(エッケ・ホモ)――。
 敵背を取るようなテクニカルな戰略は採れぬ、と端整の唇を持ち上げた菘は、ならばと真正面に立ちはだかり、敵意を己に向かせ続ける事で、背後に回る仲間を援けんとする。
『無駄だよ! 神鋼の鎧は心だって支配させない!』
 情動の炎を浴びながら、其を花弁と散らして喊ぶ修羅。
 その間、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は躯の小ささと機動性を活かして穹を翔け、遙か上空から戰神の弱点を探る。
「鎧の隙間は左右の肩甲骨の間あたりにあるんだよなー」
 無双を誇る鎧に隠された綻び。
 其は炎とベールに覆われて直ぐには見えぬが、天地を自在に往く妖精なれば、隙を暴く瞬間は見極められよう。
 フィロメーラは軽快に一回転、繊翅を羽搏かせて『星の燐光』を降らせ、
「光輝の縁を知るもの、集まれー! 背後なんて取り放題だぞー!」
 顕現、【紲星満ちて集いし灯光】(スターダスト・シンクロニシティ)――!
 ほわ、ほわ、と宙を漂う295体の光精を喚び、破邪の光条を一斉に射させた。
 無数の光条に背襲された戰神は、然し直ぐに躯を反転させて邀撃し、
『ッッ邪魔だね! 一薙ぎで蹴散らしてやるよ!』
「どっこい、バリアで炎は通さないぜ!」
 劔鋩が方向を示してくれるのだから、軌道は見切れる。
 フィロメーラは光精たちと連携して光壁を展開すると、炎帯びる劔を次々と弾いた。
『……油断ならない相手とは思ってたけど、ムカツクね!』
 愈々嚇怒は滾ろうか。
 戰神は勢いを失って墜下する魔劔を回収し、怒り心頭に握り込めた。

 ――時に。
 バスの車窓からオブリビオンの脅威を目の当たりにした観光客達は、同じ様に戰慄する運転手に向かって、必死に避難を促していた。
「早くバスを出してチョーダイ! ワタシ達、巻き込まれちゃうジャナイ!」
「……然し何処に逃げれば良いんだヨ……岩を斬るヨーナ奴ダゾ……!」
 戰々兢々、恐慌に陥る民間人。
 余りの恐怖に運転手がハンドルを泳がせる――その時、天真爛漫なる穹色の聲が車窓を敲いた。
「どもー! エイリアンツアーズでっす☆」
「!? アー・ユー・イェーガー……?」
「イエス!」
 朗笑を以て是を示すは、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。
 彼もまた旅行会社で運転手を務める身なれば、白銀の宇宙バイク『Glanz』を並走させ、同業者宜しく抜群のコミュニケーションで避難路を案内する。
 ハンドサインに方向を示したパウルは、別の手――触手に光砲『Krake』を用意させ、牽制に二砲を開いて追撃を禦いだ。
「お客様を安全に運ぶのが運転手の務めだからね」
「サンキュー! パウル!」
 もう名を覚えられたか。
 彼は戰闘の余波を相殺しながら、彼等を丘向こうの安全地帯へと護送した。

  †

「……それにしても、随分と荒っぽい女神様ですね」
 鋭い視覚に彼女の嚇怒を、聡い聴覚に振るう刃の音を、そして禍々しく迸る鏖殺の気を、第六感を研ぎ澄ませて感知していた咲が言ちる。
 剣呑に触れるほど感覚が鋭利になる不思議も妙々、可憐は迫る鋩を目尻に掠めて躱し、
『キワッキワで遣り過す……ッ、それで揺さ振りを掛けたつもりかい!?』
「切り刻まれるのはさすがに困るので」
 ふわり、微笑を零す。
 清冽にも優艶にも見える咲みは、尚のこと戰女神を逆撫でたろう、
『アタシは絶対油断しないし、絶対負けないよ!』
 阿修羅六輪斬――ッ!
 瞋恚の劔が炎を纏って振り放たれた、刹那、盾と踏み出たアンナが創痍を代わった。
「ぐ、ッッ――!」
『肩、鎖骨、両腕に二本ずつ……即死だね』
 戰神が歪な嗤笑を零した通り、六本の劔を受けたアンナは赤黒い血汐を噴き、ぼとぼとと肉片を零して赤土の大地に崩れる。
 形あるものとして目視できるのは髪の毛の束くらいだろうか、酸鼻の景が戰神を喜ばせるが、實は彼女のパフォーマンス【凄惨解体人間】(セイサンバラバラニンゲン)。
 こう見えても痛みはなく、呪われし処刑執行人は役儀を果すに極めて冷靜沈着。
 芙蓉の顔(かんばせ)に苦悶を浮べた演技も中々、口無き血肉は密かに囁き、
(「無敵の鎧を纏う戰神……だけど隙間を狙えれば……行こうか……」)
 夥しい血肉を浴びた戰神が視界を取り戻すまでの間、グロテスクな肉塊と化して蠢き、這い擦り、そっと背後に回り込む。
 真逆(まさか)血肉が動くとは思ってもない戰神は、次いで真面に聳立するバーン目掛けて突進し、炎滾る六本の魔劔に刺突せんとした。
『アンタも仲良く肉塊になりな!』
 蓋し怜悧に洞察していたバーンには劔筋が読めている。
 鬼気迫る斬撃に堂々正対した彼は、魔劔を噛み合わせ、或いは車輪劔『ダイアモードR』の超回転に鋩を弾くと、剛毅木訥と引き結んだ唇より言を滑らせた。
「我らにとって不条理なるその鎧もまた貴様にとって恥辱の証であろう、戰神よ」
『やけに理解った様な口を利く! 直ぐに黙らせてやるよ!』
 唯の強情で無いとは、残る二振りがバーンの『逆十字のマント』を切り裂き、精悍の頬を裂いて鮮血を滴らせた事実でも知れよう。
 蓋し彼は一縷と表情を崩さず、蒼鷹の瞳に邪を睨め返した。
「だが安心しろ。それでも尚……貴様は敗れる」
『何、だって――』
 積極して共闘するバーンは知っている。
 己が正面を預る間に背襲を狙う仲間が、必ずや鎧の隙間を捉える事を、幾許の時を経た後には、必ずや戰神が大地に斃れる事を――信じている。
『ッ、これは……!』
 闘志燃ゆる程、暗澹に染まる闇黒騎士。
 其は当に【ダーク・ヴェンジャンス】――創痍損耗を負う程に強靭を増したバーンは、不撓の盾として戰神の前に立ちはだかった。
『壁が厚いほど高いほどブチ抜きたくなるってね! レディ、合わせな!!』
 斯くして戰神は闘争の炎を愈々燃え上がらせる。
 アシュラレディと合わせれば、合計12本の魔劔がバーンを切り刻んだろうが、その様な凄惨は仲間を結界に護った玉恵が許さない。
「その修羅は“鎧”を纏っておらぬ故。直ぐに縛れるのう」
『な、ん……っ』
 八重垣作る、その八重垣を――。
 嘗て須佐乃男命は新妻の為に八重の垣を巡らせたが、玉恵は舞扇に差し示したアシュラレディを幾重の結界に囲繞し、悪しき挙措を封じる。
 直接の痛打とは為らずとも、次に繋がる攻撃をと先を読む慧眼は、この時、当にテラがレディを斬り落とす瞬間を見た。
「――おれが退く時には意味がある!」
 強気で突撃志向のテラが、鬼神の猛攻を背進して甘んじていたのには理由がある。
 彼女は先程まで攻防を繰り返した場所へと入るや、悔恨【消えざる過去の痛み】(キエザルカコノヤイバ)を発動し、虚空から『空間に刻まれた斬撃』を降り注いだ!
「いっただろ? 切り刻んでやるってな!!」
『――ギャァァアア嗚呼!!』
 其は自身が嘗て為す術なく敗れた相手の魔技を、痛みの記憶と共に再現したもの。
 悔恨と無念――テラが知る恐るべき刃を全身に浴びたレディは、赤土の大地に鮮烈なる血汐を染ませて消滅した。
『……ッ、生意気な事をしてくれるね!』
 苛立ちに舌打つ戰神。
 然し闘争の炎が消えぬ限り、殺戮衝動は何度でも具現化すると血滴を踏み締めた女は、間もなく次撃を――魔劔を振り被る。
 刻下、其を阻むは『ウェンカムイ』こと救助。
 悪神の名を与る彼は、手にせし力を振り絞り、氷雪のオーラを迸らせた素手を以て二振りを止めた。
 然して返り血を浴びた戰神が猛り喊ぶ。
『アンタじゃアタシに勝てっこないよ! 負けを認めて斃れな!』
「ああ、そうさ。そうだろうな。複製体でもオレじゃあかないっこねー。その通りだ」
 救助の聲が悴んだのは、残る魔劔が躯を切り刻み、斬撃に翻るジャケット『Wenkamuy』に血斑を染ませたからだ。
 蓋し救助は、握り止めた掌より流るる血を凍結させて『叛逆剣ハウルブラッド』を構築すると、血の吼える儘、心叫ぶ儘に抗った。
「……一対一ならなッ!!」
『――ッ!』
 真逆(まさか)、猟兵の闘志に戰神が退くなど――!
 須臾に我が身を疑った女は、然し本能こそ正しいと知る事に為ろう。
 正に救助の言う通り、彼の背中から左右に分れて幾人もの猟兵が飛び掛かり、戰神を一気に押し返した。
『連携して手数で攻めて来る……やっぱりこいつらムカツク、ムカツク!』
 無双の鎧に護られていようとも、間隙なく攻撃を畳み込まれれば焦燥は為よう。
 阿修羅が苛立ちに柳眉を蹴立てた瞬間、戦闘機エンジンの轟音に鋭く空気を切り裂いた鐵騎が、一陣の風に艶髪を巻き上げた。
「おっまたせ~♪ 一緒にダンスしよ、アシュラちゃん☆」
『ッッ次から次と……!!』
 無邪気な様でいて艶帯びたカヴァリエ・バリトン――聲主はパウル。
 観光客を乗せたバスを安全地帯に嚮導した彼は、間もなく戰場に戻り、全き真正面からフルスロットル! 艶やかな蒼き光線を尾を引いて突貫した。
「――躍るぜ、Glanz!」
 呼べば愛騎は最高のレスポンスで彼を悦ばせよう。
 人騎一体、【ゴッドスピードライド】――銀河の流星となった彼は、既に展開した二砲を突き付け光を弾き、無数の火弾を以て女の六臂を動かす。
『畜ッ生!』
 六臂を有する鬼神なれば、八面ならずとも三面は在るべきだったろう。
 真面の冱撃に繋ぎ止められた彼女は、常に上空から背を狙っていたフィロメーラに狙われ、
「鎧の隙間が背中にあるからって守りやすいと思ったか! それは大きなミスだったって、存分に思い知らせてやる!」
『な、に――』
 咄嗟に投げた炎劔が光壁に吸い込まれる。
 光精は勢いを削いだ劔に宿るや、権能を改めて我が憑代とし、今度はフィロメーラを主にして見事な劔舞を見せた。
「光って、踊って、一気に飛び込む!」
『――ッッ!』
 鋩を輝かせ、光の帯を引いて降り注ぐ劔は、戰神の炎を潜ってベールを切り裂いた!
『ッこの――!』
 然し反撃は間に合わず。
 今度は光精ならぬ光レーザーが、宙空で自在に屈折しながら背後に迫り、幾条もの灼熱が戰神が背負う炎を掻き消した。
『ッ、アタシの闘争の炎を……! ナメた真似してくれる!』
 術者は怜悧――其の躰に発生した人格アノン。
 冷然と紫瞳を注いだ儘、少年は粗野な口跡で告げて、
「ナメた真似するのがオレだけだと思ったら、大間違い」
『な、に――』
 冷たい佳聲に時が凍るほど。
 不穏を悟った鬼神が背越しに流眄を注げば、間もなく危殆は痛撃として迫った。
『――ッッッ!!』
 須臾。
 靴底を滑らせて軍庭を移動していた鞍馬が、紅き大蛇の呪いが宿る妖刀より悪魔サマヱルを力を解き放ち、凄まじい衝撃と呪力に蹴立つ黒烟を以て戰神を呑み込む。
「ちょっと止まって貰おう。御同業がこの瞬間を待っているからね」
『ッ、御同業……ッッ』
 御同業――其は鞍馬の麗し漆黒の瞳に映る者達。
 血肉の塊、髪の毛の束と化したアンナが。
 密に『穢れを知らぬ薔薇の蕾』を投げ入れたパルピが。
 背後に回り込んでいた猟兵らが此処に冱撃を集め、戰神の躯を激痛に縫い留めた。
『――アャァアア嗚呼嗚呼嗚呼ッッッ!!』
 この時。
 当にこの瞬間にこそ、動いた者が居る。
 其は戦場たる赤い大地から遙かに離れた、メサ(卓上台地)にて戰況を見守っていた、アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)。
「この敵に対して私が為る事は多くない」
 集中して、刻(とき)を待った弓手。
 寂寥の風が金糸の艶髪を梳る儘、唯だ戰女神の背中――肩甲骨の間が見える瞬間だけを待っていたエルフの射手は、古式懐しき櫟の弓を引き絞り、瞳に炯光を湛える。
「一瞬は寧ろ長過ぎる――エルフの矢から逃れる術は無し!」
 射石飲羽、【千里眼射ち】――!
 究極の集中の後に射られた矢は、角度も風向きも全て計算された上で空を裂いて飛び、鋭利な鏃を『神鋼の鎧』の隙間に聢と届けた。
『ッ、ッッ――!!』
 射程距離1,764mの彊涯より放たれた矢に対抗する術を、鬼神は持たない。
 激痛に勝る嚇怒を劔に變えようとも、一射した彼は台地に伏せて姿を隠し気配を殺し、怒れる魔眼を虚しく泳がせるのみ。
『刺客が潜んでいた……ッ畜生!!』
 砂利ッと大地を踏み躙る戰神。
 蹈鞴を踏んだのも一瞬、直ぐにも身を起した女は、反撃に魔劔を投擲した。
『相応の代償を払って貰うよ!』
「しかし“殺戮衝動の具現”って……控えめに言って、“脳筋”ということであろう?
 多分お主、陰では結構バカにされておるぞ?」
『な、に――』
 身を屈めて劔撃を禦いだ菘が、犀利な金の炯眼を上目に射る。
 神鋼の鎧の効果が持続していれば、露骨な挑発も効かぬ筈だが、女は情動の炎を赫々と迸らせて聲を荒げた。
『バカ? バカって言う奴がバカなんだよ! そのバカ野郎を連れてきな!』
 ――掛かった!
 精神攻撃が通じたと、鎧の亀裂を見た菘が丫(ふたまた)の舌を嘗め擦る。
 彼女は滾る血汐が創痍より噴くのも構わず大声を発し、
「怒りに燃えよ! 他所に気を向けさせることはさせん!」
 戰神が斃れるその瞬間まで繋ぎ止めて見せる、と好戰的に嗤った。

  †

「よっし、鎧が破られたぞー!」
 幸運と倖福を振り撒く妖精フィロメーラが、蒼穹を舞って仲間を応援する。
 彼女と光精達が踊る度に零れる燐光は皆々を鼓舞し、燦然に包まれた猟兵らは、一気に優勢を攫みに行った。
「……連環の鎖を途切れさせてはいけないから」
 鎧の隙間を衝いてからこそ連携を密に。
 仲間の聲に呼応した咲は、精霊杖と化した『雪霞』を振り翳すや、【エレメンタル・ファンタジア】――氷の旋風を巻き起こし、鬼神の視界を巨大な渦で覆い尽くす。
『ッッ……その程度の凍気でアタシの怒りの炎は消えないよ!』
 蓋し其はフェイント――。
 咲は二撃目に細く鋭く絞った渦を背後に回り込ませ、全き死角から鬼神の肌膚を切り裂いた!
『ズ、ァア!! ……やってくれる!!』
 心火を燃やした戰神が反撃に出るが、その勢いは次撃を継いだバーンに止められよう。
 鮮血淋漓を力に變えた彼は、大地が震えるほど闘気を迸らせて魔劔を手折り、
「――偽りといえど、クローンといえど、戰神に正面からぶつからず何が悪の神か!」
『ッ!! ッアタシの劔が……!!』
 最も美しい一刀が硝子の様に欠け、砕ける――。
 其は矜持が折られた瞬間でもあったろう、鬼神が瞠目した刹那、間隙許さず鼻緒を踏み締めた玉恵が、視界いっぱいに迫る。
 一陣の風と化した白面金毛の妖狐は、破魔の力を籠めた薙刀を一閃し、
「既に鎧は綻んだ故、脱いで貰おうかの」
『――ッ!!』
 弓張月の斬撃が胴に沈むや、淸けき衝撃は鎧の内部を駆け巡り、その完全無欠を見事に破砕した。
『ッ、ッッ……鎧は無くてもアタシは十分戰える!!』
「ああ、本来の戰神の強さを見せてみろ!」
 好戰的な咲みを連れて追撃に掛かるはテラ。
 濡烏のポニーテールを揺らし真面に躍った少女は、火球の如く猛進して炎劔を衝き入れた。
「斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬!!」
『ッ、クッ……ァッッ!!』
 斬り、刻まれ、鮮やかな血汐を花弁と散らす修羅。
 屈辱の背進を余儀なくされた女は、然し激痛を拒む様に弾ッと踏み込むと、魔劔を一閃、二閃、十字に結んだ斬撃を三度、振り絞った。
『アタシは原初の戰女神! 世界の外からやってきたアンタ達を排除する!』
 更に身ごと突貫すれば、猟兵の陣は忽ち崩れよう。
 然しその凄撃は、變わらず正面に陣取った菘が許さなかった。
 異形の左腕は『五行玻璃殿』を展開するや、幾筋も襲い掛かる魔劔を受け止め、夥しい血飛沫の挟んで邪神と邪神を睨み合せる。
「妾の圧倒的存在感に目が離せんか。いやー、人気者はつらいの~」
『ッアンタが邪魔しただけで、別に惹かれちゃいないんだから! ブチのめす!!』
「ならば早くせんと、お主がブチのめすより先、妾がボコり倒してしまうぞ!」
 好戰的な嗤笑と鬼神の狂貌が、拳撃と斬撃を角逐させる――!
 その衝撃が龍尾と波打って大地を、岩を削るが、其を一条の光と駆け抜けたパウルは、鋭くハンドルを切って旋回、後輪に砂塵を巻き上げて戰神の全き背面へと回り込む。
『無駄だよ! 右に三本、左に三本あるアタシに適う訳――』
「うん、オレもタコだから、その便利は知ってる!」
『――!!』
 咄嗟に振り下ろされる劔撃を敢えて受ける。
 瞬間、突き出された腕こそ狙っていたパウルは触手を絡め、聢と獲物を繋ぎ止めた処で全砲展開、カウンターの鐵鉛を背面に一斉発射した!
「ドンピシャ、零距離射撃ィ!」
『ズァア嗚呼ッッ!!』
 前方では無双を誇る戰女神も、背面は斯くも弱い。
 奇しくも『神鋼の鎧』の隙間と自身の弱点を同じくした女は、痩躯を突き抜ける激痛に蹈鞴を踏み、然もその脚は大地に斃れた血肉の塊に刺し貫かれる!
『なンだって……ッッ!!』
「“解体”した後は如何様にも戻れる」
 上半身だけを再形成したアンナだ。
 渾身の力で繰り出された妖刀『アサエモン・サーベル』は、戰神の腓骨と脛骨を串刺しにし、嚇怒に勝る激痛を以て躯を転がす。
『ク、ソッ……ッッ!』
 膝を付きながらも魔劔を振り被れば、当にその瞬間を狙っていた怜悧(アノン)が手首をレーザーに射て、弾いた劔の鋩を紅い大地に突き刺した。
「一撃必中――こんな芸当も出来るんだぜ」
『ズ、ゥッ!』
 彼の足下で280丁の銃口を向ける其こそ、【触手式魔導兵器-シンフォニア】。
 そして彼が手の内を暴いた今こそ、戰神にとって覆らぬ劣勢を突き付けられた瞬間であったろう。
 敗北を拒む様に背進すれば、距離を取った瞬間には救助が大気中の水分から氷矢『レタルアイ』を生成して斉射し、戰神の躰を褐色の巨壁に縫い留める。
「勝利は一人じゃなく、全員で奪い取る」
『それがアンタ達の遣り口って訳? 新種の! 侵略生命体の!』
 少年は戰神の美唇より放たれる痛罵より、我が背より迫る仲間の呼吸に耳を澄ます。
 其は凛然にして清冽と、死の一撃を置くべく冱えて――。
 故に彼は任せ、預けた。
「――オレたちの、勝ちだッ!」
 時に須臾。
 濡烏の艶髪を疾風に梳って疾った鞍馬は、長躯を鞭の様に撓らせるや渾身の力で『大蛟国景』を打ち掃い、
「――聢と仕為めよう」
『ず、ァ嗚呼――!!』
 逆袈裟に穹へと衝き上がる斬撃が、六本の腕を弾いて敵懐に沈む。
 鮮やかな血飛沫が宙を躍った瞬間、其を見上げた戰神の瞳には、繊翅の羽搏きが移り込み――、
「終わりにしましょう」
 決して巻き戻せぬ終焉を告ぐ、聲主はパルピ・ルプル・ペルポル。
 彼女が意味ありげな視線を降り注ぐど同時、【偶然の不運なる遭遇】(ナニガクルカハソノトキシダイ)は聖性漂う天蓋から一つのメサ(卓上台地)を超高速で落して、戰神の繊躯を圧し潰した。
『――ッ、ッッ――……!!』
 今際の絶叫を裂いたろうが、其すら巨岩に圧殺され。
 全き沈黙と大自然の靜寂が、猟兵の勝利を誇らかに喊ぶ様だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クーガー・ヴォイテク
【筋肉チーム】
強そうな敵だからな、今回はちょいと仲間を呼んでみたぜ

戦争での被害を食い止めるため"祈り"【聖者の誓い】を捧げる
「(たぶん脳が)筋肉チームが一番やりいいいいいい!!!肉盾のクーガーが参るぜッ!!!」
真っ向から【聖者の行進】によって接近し、敵の攻撃は【聖者の気合い】による"気合い"で受けると"覚悟"を決めておく
傷が目立って来たら【聖者の闘争】によって奮い立たせる

敵の攻撃に対し、迎え撃つように"怪力"任せに【聖者の鉄拳】を振るっていく
俺の役目は、こいつの足止めと意識を向ける事
やることが単純なら「まだまだ楽勝だってなァ!!!」
気合いで乗り切る!!

アドリブ絡み歓迎


ディー・ジェイ
「クーガー、ローズ、プランBで行くぞ!!」
【筋肉チーム】
クーガー、ローゼマリーと共に参戦

・アタッカーは俺
開幕前には既にツーマンセルを起動状態にし、呼び出したもう一人の俺を三人と行動させて敵に"本人"だと思い込ませておく。三角形に囲む様な位置を取り、六本腕の処理を分けて戦力の分散を図りたい。

そして隠れ鬼状態でずっと潜んでいた"本人"の俺は、肩甲骨を狙える瞬間が来たら狙撃。その時点で存在がバレるはずだから、間髪入れず制圧射撃を行い他二人のサポートに入る。
と見せかけてもう一人の俺がアシュラの腕一本にワイヤーを絡ませ引っ張り、体勢を一瞬でも崩れたところに肩甲骨へフルバーストを叩き込む。

※アドリブ大歓迎


ローゼマリー・ランケ
【筋肉チーム】で参加
「ベル、真向からぶつかるナラ、私の出番デスネ?」
「ロミィにお任せしますが、チームに迷惑を掛けない様に……」
(クーガーを囮にスレバ、何とかなるデショ多分)

仲間がSPDの技を使い、アシュラが剣を手放した隙等を突く
無ければ【見切り】【野生の勘】等で戦況を読んで
連携を取れるタイミングで仕掛ける

「人の形をしてるナラ、こんなのはいかがデショウ?」

相手に飛び掛かり、頭部か腹部へ蹴りを入れて体勢を崩す
がぶりの形で敵の腕を纏めつつ、ハイジャックバックブリーカーへと移行
弱点を攻めつつ【力溜め】【グラップル】を発動し
パワーボム式バックブリーカーの形で弱点に膝を入れてフィニッシュ
攻撃後はすぐに離脱



 嚇怒と瞋恚を炎と滾らせ、我が背に負う鬼神。
 原初の戰の女神『戰神アシュラ』、その複製体たる女は、苛立ちを露わに魔劔を振るい、聖なる大地を凄まじい斬撃に切り崩していた。
『アタシが先に来るって如何いう事よ! まるで此方が格下じゃないか!!』
 鬱憤晴らしに放った【阿修羅六輪斬】が観光バスに向おうとした、その時――聖性の光が割り入った。
「民間人への被害は俺が食い止める!」
 其は無辜の命を戰火に巻き込ませぬと【聖者の誓い】を捧げたクーガー・ヴォイテク(自由を愛する聖者・f16704)。
 刻下、衝撃の波動が赤土を巻き上げ、周辺を覆い隠すが、精悍の聲は聴こえよう。
「強そうな敵だからな、今回はちょいと仲間を呼んでみたぜ!」
 クーガーの好戰的な笑顔が覗いた瞬間、吹き荒ぶ砂塵が二つの影を暴く。
「ベル、真向からぶつかるナラ、私の出番デスネ?」
 ――“ロミィにお任せしますが、チームに迷惑を掛けない様に……。”
 一人はローゼマリー・ランケ(ヴァイスティーガー&シュバルツシュランゲ・f01147)の愛称「ロミィ」の方。
 天真爛漫なる佳聲は軽やかに副人格「ベルトーシカ」の了解を取りつつ、衝撃を両断した愛用の手斧を担いでいる。
 もう一人は経歴不明の傭兵、ディー・ジェイ(Mr.Silence・f01341)。
 此度もふらりと戦場に降り立った彼は、ガスマスク『Silenceface』越しにターゲットを確認すると、精悍なるカヴァリエ・バリトンに号した。
「クーガー! ローズ! “プランB”で行くぞ!!」
 刻下、【筋肉チーム】にオーダーが下される。
 既に戰術を共有したメンバーなら初動も疾かろう、先ずは【聖者の誓い】に身体能力を増大させたクーガーが大地を蹴り、
「(たぶん脳が)筋肉チームが一番やりいいいいいい!!! 肉盾のクーガーが参るぜッ!!!」
 義気凛然、意気軒昂!
 損耗負傷は覚悟の上と、【聖者の気合い】によって意思を強めた聖者が、迫る魔劔を剛拳に迎え撃った。
『たった二本の腕でアタシと闘り合おうなんて佳い度胸だよ!』
「だったら! 俺を圧倒して見せろ!」
『上等だ! レディ、アタシに合わせな!』
 角逐――!
 己が心に燃ゆる殺戮衝動をアシュラレディと具現化した戰神は、六臂二体、合計十二振りの【神獄斬】を以てクーガーを切り刻み、赤土の大地に血斑を染ませる。
 端整なる白皙に血滴が返り、バンテージも漸う朱に染まるが、クーガーは【聖者の闘争】を奮わせると、流血を代償に強靭と堅牢を得た。
『しぶとい男だね! しつこいのは嫌いだよ!』
「まだだ、まだ気合いで耐えられる……ッ!」
 全身を聖性の光に包み、犀利な金瞳を煌々と輝かせるクーガー。
 戰神を足止め、意識を向けさせる事こそ己の役儀と知る彼は、眩き耀きを両拳に収斂し、十分に引き付けた瞬間に【聖者の鉄拳】を撃ち付けた!
「まだまだ楽勝だってなァ!!!」
『――ッッ!!』
 霹靂閃電――!
 超高速かつ大威力の拳閃が、敵懐の深くに侵襲し、上腕の二振りを宙空に泳がせる。
『ッ! それならもっと“身軽に”なってやるよ!』
 刹那に舌打ちした戰神だが、他の三振りは自ら手放し、大地に鋩を突き刺す。
 魔劔を一振りに絞る代わり超速を獲得した戰神は、爪先を弾くや絶影の機動でクーガーの懐に凄撃を衝き入れた。
『二度と立ち上がれなくしてやるよ!!』
 秘劔、アシュラブレイド――!
 逆袈裟に疾走って穹へと血肉を繁噴かせる筈の斬撃は、然し振り切る前に止められる。
『なっ――!』
 戰神が劔を手放す瞬間を捉えるべく、戰況を見極めていたローゼマリーが、絶好の機に飛び込んだのだ。
(「クーガーを囮にスレバ、何とかなるデショ多分――と思っていまシタガ」)
 其が全き至当だったとは、次撃を継いで示そう。
 本能に根差す戦闘勘と歴戦の経験からタイミングを見出したローゼマリーは、魔劔を失った腕の脇腹に蹴撃を打ち込み、一瞬、体勢を崩させる。
『く、ッ――』
「腕は六本。でも人の形をしてるナラ、こんなのはいかがデショウ?」
 聲は變わらず軽快だが、繰り出る技は凄惨。
 がぶりの形で戰神の繊手を纏めつつ、ハイジャックバックブリーカーへと移行した彼女は、筋肉に証される強靭な膂力に六臂を極めた!
『ングググ……ッッ、抜けられ、ない……!!』
 然し痛撃にも勝る屈辱が心火を燃やそう。
 戰神が嚇怒の炎を烈々とすれば、ローゼマリーも美し肌膚に焦熱が迫るが、彼女は火傷も構わず【猛虎強襲撃】(ロミィ・インパクト)を完遂させた。
「捉えた獲物は逃さナイ! 猛虎強襲撃ーッ!」
『ンァア嗚呼嗚呼――ッッ!』
 パワーボム式バックブリーカーが大地に衝撃を突き刺し、放射状に波動を放つ。
 この時、ローゼマリーの膝は『神鋼の鎧』の隙間にがっちりと嵌り込んでおり、完全無欠の鎧に慥かな亀裂を疾走らせた。
『ッッやってくれる……!!』
 赤土の大地にでんぐり返しで転がった後、恥辱を踏み付ける様にして立った戰神。
 同じ様に地に横たわった魔劔を手に、烈火の如く怒った修羅は、返報の一撃を呉れてやらんと柳眉を蹴立てるが、真面にローゼマリーの姿は無い。
 見れば彼女はクーガーとディーと共に三角形の頂点を成し、我が身を囲繞すると同時、六本の腕より繰り出される劔撃の分散を図っていた。
 腕の可動域から前面に攻撃を特化した戰神には苦しい布陣だろう。
 奇しくも『神鋼の鎧』の隙間と自身の弱点を同じくした鬼神は、苛立ちを噛み潰す様に言ちて、
『アンタ達、見た目に拠らず策士だね……!』
「戰神に褒められるとは光栄」
『あぁムカツクね! 世界の外からやってきた、新種の侵略生命体!』
 蓋し鬼神は“誰”に怒りをぶつけていたろう。
 彼女は【筋肉チーム】の指揮を執るディーを痛罵したつもりだったが、三人で三角形を成していた彼等の他に、全く別なる方向から鐵鉛が撃たれ、激痛に蹈鞴を踏む。
『な、ッん――!!』
「中々の演技だった。もう一人の俺」
 然う、其は【ツーマンセル】――。
 戦場に降り立つ前に「完全武装の自分」を前線に送り出したディーは、自身は【隠れ鬼】として息を潜め、肩甲骨の間が見えた瞬間に『AR-MS05』の銃爪を引いたのである。
 事実の暴露は同時に奇襲となり、また間髪入れぬ制圧射撃が鬼神を撹乱した。
『ッッ鎧が……砕けて……!!』
「鎧を脱いだ後こそ、戰神の本領発揮といった処だろう」
 三角形の戦陣は、遠近を違えた四角形へと展開し、弾幕の中で立ち回るメンバーを凌駕するに六臂では足りまい。
『ッ畜生……!!』
 クーガーの拳撃、ローゼマリーの格闘技は敵の表に裏に冱撃を衝き入れ、すっかり翻弄した頃合にディーのワイヤー『Silence,S2-log』が繊手を絡め取る。
『ッッ……放せ……!!』
「――終わったらな」
 冷儼の聲が短く告げ、全武装展開、一斉発射する。
『ズァァアア嗚呼嗚呼嗚呼ッッッ!!』
 無数の鐵弾火弾に撃ち抜かれた戰神は、当初のオーダー通り、“プランB”に斃れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六条寺・瑠璃緒
ジャック(f16475)と

元は神なのに、今はただの偽物か
怒りで理性まで失くして…可哀想に

それにしても凶暴なレディだね
「ちょっと助けて貰えない? 荒事は苦手なんだ」
近くにいた頼もしげな黒い彼に声をかける
彼の影に添う様に、Nocturneを操り敵を絡め取り動きを妨害

守って貰うだけの演技をしつつ、
敵のUCにカウンターの様にUC使用
敵の刃の前に割って入る様にジャックの前に飛翔してRequiemでだまし討ち
と、見せかけ本命は背後に回り込ませるNocturne
二重のだまし討ちで鎧の隙間を狙う
敵の刃が透過してジャックに届かぬ様オーラ防御でかばうのも忘れずに
「君、有難う。次は僕が盾になろう」


ジャック・スペード
瑠璃緒(f22979)と

神とは清廉な存在だと思っていたが
一概にそうとは言えないらしい

「ああ、構わない。当機のことは存分に使い潰してくれ」
声を掛けてきた子に頷き一歩前へ
盾と成りながら氷の弾丸を乱れ打ち、敵の気を逸らす

神速の一太刀はよく見切って怪力で白刃取り
最悪の場合は覚悟を決めてこの身で受け止めよう
もし俺が避けたら瑠璃緒に当たる
――この子に、傷をつけさせるものか

瑠璃緒の騙し討ちが決まったら、俺も隙を突くとしよう
激痛耐性で損傷に堪えつつ敵をグラップル
怪力でアシュラを捕まえたら
口部パーツをライフルに変え
肩甲骨の間を狙い弾丸を放ち鎧無視攻撃

自在に得物を操れるのはお前だけじゃない
――負けず嫌いを発揮して


ヘンリエッタ・モリアーティ
【白日】
本当は、一人で挑もうと思っていたのだけど――
神楽耶、力を貸してくれる?
頼りにしてるの。貴女は私を救ってくれた友達だわ
今回の戦いも、きっと私を救ってくれる。そうでしょう?

こんにちは、戦神アシュラのクローン。ダークヒーロー・ウロボロスです
「本物」にもお伝え願えます?棒っ切れ振り回してたら、ただの駄々っ子みたいよってね
【暁光】で正面から相手をしましょう。使う武器は【死樹の篭手】
目的は「派手に立ち回る」ことよ。窮地に陥れば陥るほど強くなるから、ダメージは込みの作戦
私がヘイトを稼いで、的確に神楽耶が後ろを狙えるよう、刀を恐れず取っ組み合いをしましょうか
――悪いわね、ここで死ねない
お前が、死ね。


穂結・神楽耶
【白日】
あなたなら、ひとりでも行けるでしょうけれど。
ヘンリエッタさん――いいえ、ウロボロス。
力を合わせましょう。
あなたに救われたのは、わたくしも同じ。
だから今度も。
あなたの願う勝利を形に致しましょう。

ウロボロスの後方に控えます。
岩場、崩された丘、そして土煙。
潜む場所ならいくらでもございますもの。
頑健な竜と殴り合っているのに、全てに気を払う余裕などないでしょう?
隙を縫って位置を変えつつ、鎧の隙間を狙える場所まで移動。

【神遊銀朱】《スナイパー》――
狙い定めて、撃ち抜きます。
はじめまして、戦神アシュラのクローン体様。
早速で申し訳ありませんが、
先に骸の海で同胞をお待ちなさい。


アルバ・アルフライラ
やれ、随分な無理難題を叩きつけられたものだ
…然し彼奴等を征伐する為ならば
如何なる苦難であれ乗り越えてみせようぞ

背面に回りこむのが難しいならば
回り込まずとも背後を狙えば良い
我が魔術ならばそれを成せる
魔方陣を描く事による高速詠唱
召喚するは【雷神の瞋恚】
鎧の隙間があるとされる肩甲骨の間を狙い
紛い物の神へ、神なる雷の裁きを下す
飛び来る剣は魔術で逸らすか
第六感を駆使して回避を試みる
腕の一本くらい落ちようと私には些事よ
激痛耐性で気絶せぬ程度は凌げよう

ふふん、ただ魔術を闇雲に行使するでなく
時には彼奴の注意を雷に逸らす事で
他の猟兵による弱点狙いが容易になるやも知れぬ
此処ぞという好機の逃さず、皆で畳み掛けようぞ



 世界的な観光名所ともなれば、団体客も一人旅のバックパッカーも居る。
 然し其の誰もが、六臂に魔劔を振り翳す異形の女に恐怖した事だろう。
「コワーイ!」
「タスケテー!」
 脅威に居合わせた観光客が其々の言語で裂帛の悲鳴を喊べば、刻下、鬱憤晴らしに迫る斬撃が直前で垂直の波動を突き上げる。
 言が置かれたのは間もなくの事。
「神とは淸廉な存在だと思っていたが、一概にそうとは言えないらしい」
「元は神なのに、今はただの偽物か。怒りで理性まで失くして……可哀想に」
 砂塵より現れるは、我が忠実なる灰色の友『Cenere』を翩翻と翻し、衝撃を往なしたジャック・スペード(J♠️・f16475)と、朧な白翼と顕現した『Serenade』に斬撃を撥ね除けた六条寺・瑠璃緒(常夜に沈む・f22979)。
 片や冷儼の聲に、片や冷艶の聲に場を同じくした二人は、衝撃の余波が渦を巻く最中に一瞥を交し、
「それにしても凶暴なレディだね。ちょっと助けて貰えない? 荒事は苦手なんだ」
「ああ、構わない。当機のことは存分に使い潰してくれ」
 之も“同業”の縁か。
 瑠璃緒が精悍なる黒鐵を頼もしげに仰ぐと、ジャックもまた其の心は無碍に為まいと前に踏み出て、重厚なる盾と成る。
『やっとお出ましかい、猟兵! アタシを待たせるんじゃないよ!』
 時に焦燥を炎と燃やす戰神アシュラの複製体が喊ぶ。
 竟ぞ消えぬ殺戮衝動をアシュラレディと具現化した鬼神は、六臂二体、合計十二本の腕に魔劔を握って振り被り、身ごと火球と化して突貫した。
『レディ、合わせな!!』
 情動に狂う瞳に映るは、ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)と、穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)。
「本当は、一人で挑もうと思っていたのだけど――神楽耶、力を貸してくれる?」
「あなたなら、きっとひとりでも行けたでしょうけれど。ヘンリエッタさん――いいえ、ウロボロス。力を合わせましょう」
 凄撃を前にそっと佳聲を囁(つつや)き合った凄艶と可憐が、動く。
 ヘンリエッタは炯々煌々【暁光】(リンカネイシオン)を迸らせるや、凄まじい勢いで突貫した六筋の劔閃を無効化し、その隣、後方に控えた神楽耶が白銀の刃『結ノ太刀』を閃かせて返報する。
『チッ!!』
 吃ッと睨めて距離を置く戰神を見つめた儘、殺伐の軍庭に言を交す二人は、余程強い絆に結ばれているのだろう。
 互いを慈しむ様な優艶の聲は、秋穹の風に染みて、
「頼りにしてるの。貴女は私を救ってくれた友達だわ。今回の戦いも、きっと私を救ってくれる。そうでしょう?」
「あなたに救われたのは、わたくしも同じ。だから、今度も――あなたの願う勝利を形に致しましょう」
 これだけで戰術を共有したか、ヘンリエッタは今しがたの衝撃に『死樹の篭手』(ターミュナル・ガントレット)の硬度を上げて真面に立ちはだかり、彼女の影に隠れた神楽耶は、岩場、崩された丘、土煙――周囲のあらゆる地形と環境を読み取って、鎧の隙間を狙える場所へと影を滑らせた。
『入れ替わり立ち替わり次々と……数は揃えたみたいだけど、アタシには勝てないよ!』
 闘争の神にして、鋼神ウルカヌスより『神鋼の鎧』を授けられた身は無敵。
 普く攻撃を無効化し、遍く状態変化に耐性を持った戰神は、柳眉を蹴立てて猟兵を睥睨すると、六臂に握る炎劔を一斉に放った。
『さぁ死にな! 今すぐ死にな!』
 秘劔、【阿修羅六輪斬】――ッ!
 須臾、躁急な冱撃がアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)目掛けて飛び込むが、彼は天鵞絨の外套を翻すや目尻の際に鋭鋩を遣り過し、靜かに嘆息を零した。
「やれ、随分な無理難題を叩きつけられたものだ」
『何、ッ!』
 岩壁に突き刺さった炎劔を一瞥した麗人は、流眄に青瞳を戻すや凛々と狂邪を睨め、
「……然し彼奴等を征伐する為ならば、如何なる苦難であれ乗り越えてみせようぞ」
『ッァア!!』
 魔導杖『星追い』を一振り、紡がれた流星が魔劔の軌跡を精確に辿って小気味佳い反撃を返した。

  †

『次から次と……忙しない連中だね!』
 間隙許さず次撃を継ぐ猟兵たち。
 手数の多さを存分に発揮すべく、積極的に連携した彼等は、直情的に突貫しては魔劔を振り回す戰神を巧みに往なし、翻弄した。
 彼等の戰い方は、剽悍な鬼神を十分に焦れさせたろう。
 戰神は炎を巡らせた劔を投げると同時に痛罵して、
『ムカツクんだよ! 何なんだい、アンタ達!』
「ご挨拶が遅れました。
 こんにちは、戰神アシュラのクローン。ダークヒーロー・ウロボロスです」
 丁寧に、若しか慇懃無礼に踏み出るヘンリエッタ。
 彼女は強靭と堅牢を増した篭手を構えて炎劔を凌ぐと、一気に間合いを詰めて戰神の瞳を覗き込んだ。
「――それで、『本物』にもお伝え願えます? 棒っ切れ振り回してたら、ただの駄々っ子みたいよってね」
『ッ、棒ッ切れッ――!!』
 炎々と燃え上がる後輪が瞋恚を示そう。
 挑発は鎧の効果によって受け付けぬ筈だが、ヘンリエッタの真正面から立ち向かう姿に闘争の炎を迸らせた戰神は、六臂に握った魔劔を大きく振り被った。
『これが棒っ切れかどうか、味わってみるといい!!』
「――いいえ、ウロボロスにそんなものは味わわせません」
 淸澄なるソプラノ・リリコは然し聴こえぬ距離に在る。
 神楽耶の【神遊銀朱】(シンユウギンシュ)は全き死角――詰り背後から『結ノ太刀』の模造刀を射るや、炎輪を潜って戰神のベールを切り裂いた。
『ッッ、アタシの面紗が……!』
 鎧の上に纏ったベールが、裂帛の音を立てて風に解ける。
 これで鎧の隙間は瞭(さやか)に暴かれたろう、戰神は舌打ちして鋩の方向を辿ったが、赤い岩壁には既に神楽耶の影は無い。
 その代り、アルバが碧落に描いた魔方陣が怒れる魔眼を引き付けて、
「私にとっては腕一本失うも些事だが、六臂もあれば尚の事些末に思えよう」
『ッ如何言う――』
「紛い物の神へ、神なる雷の裁きを下す」
 時は刹那。
 繊手が『星追い』を振り、厖大なる魔力が光を引くや上空の魔方陣より雷鎚を喚ぶ。
 美し霹靂は【雷神の瞋恚】(ディエス・イレ)――凄まじい稲光と灼熱を連れた雷撃が、魔劔を強かに打ち据えて宙空に彈いた。
 躯は鎧に包まれて無欠と雖も、武器まで耐性を得た訳ではなかろう。
 四振りの魔劔が円弧を描いた後に大地に突き刺さるのを見た戰神は、屈辱を奥歯に噛み砕くや大声を発した。
『じゃあ、もっと“身軽”になって見せるよ!!』
 疾風迅雷、【アシュラブレイド】――!!
 力強く大地を蹴った戰神は、残る一振りを手放して愈々加速し、唯一握った魔劔の鋩を神速で突き入れる。
『ッ退きな! 切り刻んでやる!』
「――この子に、傷をつけさせるものか」
 避ければ瑠璃緒を傷付ける。
 其は為せぬと両脚を踏み込んだジャックは、迫る劔鋩を両掌で挟むと、二度と引き抜かせぬと強靭な膂力で抑え込み、戰神を近距離に足止めた。
『くっ、抜けな……それなら、後ろに居る奴ごと貫いてやるよ!』
「ッ、ッッ」
 だが彼女も戰の女神。
 抜けぬなら押し込めば佳いと、ジャックの両掌ごと魔劔を胴に押し込めば、堅強の黒鐵に灼熱の刺撃が沈む。
 劔鋩が背面まで突き抜けるが、然し瑠璃緒は其処には居ない。
「君が呉れた“時”を使わせて貰うよ」
『――上か!』
 まるで重力を感じさせぬ繊麗の躯が碧落に躍り、戰神の炯眼が影を追う。
 瑠璃緒は白磁の指に血刃『Requiem』を操ると、変幻自在の穢刃が飛雨より疾く眉間に襲い掛かった。
『アタシは戰神! そんな孅弱(かよわ)い切先に怯む訳ないだろう!』
「……眉間を狙うのは、君を繋ぎ止めておきたいから」
『な、に――ッ』
 視界を遮るものほど、眼前に動くものほど注視してしまうのが本能。
 戰神を真面に惹き付けた瑠璃緒は、宵闇『Nocturne』こそ背後に回り込ませ、鎧の隙間に刃鋩を届けた!
『ズ、アッッ……畜生!!』
 屈辱の衝撃に柳眉を蹴立てた戰神が、瑠璃緒を睨めるも遅い。
 既にジャックの敵懐に深入りした彼女は、華奢な躯ごと彼の両腕に捕われ、怪力による拘束を受けながら【我が身総てが引鉄也】(トリガーハッピー・クリーチャー)の銃筒が口部より顕れる脅威を目の当たりに為る。
『クッ、放せ……ッッ!』
「自在に得物を操れるのはお前だけじゃない」
 時に負けず嫌いを見せたのが、鋼鐵の躯の機械仕掛けの胸に芽生えた心の証。
 ジャックは無機質な鐵鉛を真正面から撃ち込み、完全無欠の効能が掻き消えた鎧を無残な欠片と變えた。
『アタシの鎧が……ッッッ!!』
 戰神さえ瞠目したこの時こそ、無敵の防御が破られた瞬間だった。

  †

 完全無欠の鎧は砕けた。
 蓋し原初の戰の女神たる剽悍が削れた訳では無い。
 鎧を脱いだ今こそ戰神と死合う可し、と気を引き締めた猟兵らは、愈々嚇怒と瞋恚に身を焦がす鬼神に正対した。
『アタシはアンタ達を絶対に許さない! 世界の外から来た、新種の侵略生命体!』
 鎧無くとも修羅は修羅。
 彼女の凄まじい闘争に触れた瑠璃緒は、寄り添っていた巨影を仰いで、
「君、有難う。次は僕が君を護ろう」
 守って貰うばかりで無く――と爪先を動かし、敵意を引き付ける的と為る。
 間もなく炎帯びた魔劔が迫るが、昏い神気を纏って神体化した麗人は、怒れる刃を透過する――【古き銀幕の活劇譚】(プラウディテ)によって創痍は負わない。
 己が浴びるものは拍手喝采のみと、残像に艶笑を置く瑠璃緒。
 彼の妙々たる立ち回りに咲みを得たか――ジャックはリボルバー銃『Deus ex Makina』に饒舌を代わらせ、美し氷彈を乱れ撃って彼を援護した。
『ッッ余所者共が生意気に……!!』
 悪態を吐きながら氷彈を回避し、劔鋩を差し射る戰神。
 この時、赫炎を帯びた劔がジャックへと飛び込む筈だったが、其は常に正面に立ち続けたヘンリエッタが止めた。
『退きなッ! 退かないならアンタから殺すッ!』
「――悪いわね、ここで死ねない。
 お前が、死ね」
 人救う竜は仲間を護る代り敵を死に突き堕さんと、炎劔を掌に掴むや砕き折り、周囲に欠片を飛び散らせながら踏み込んだ。
『ッッアタシの愛刀を――!!』
 此処に、と呼ぶ前に以心伝心の鋩が血飛沫を差し出そう。
 刻下、『結ノ太刀』の刀鋩を向けた神楽耶が、複製せし刃を射かけ様に佳聲を紡いで、
「はじめまして、戦神アシュラのクローン体様。早速で申し訳ありませんが、先に骸の海で同胞をお待ちなさい」
『ッ、ッッ!!』
 初めて射線を暴いた可憐が、清冽の花唇に死を告ぐ。
 ヘンリエッタが望んだ通り、鋭刃は心臓を背面から刺突し、夥しい血量に大地を紅く朱く染めて敵躯を沈ませた。
『グッッ……ァッッ……!!』
 轉回ち、這蹲う戰女神に慈悲を注ごう者は居まいが、其処に儼然と立ちはだかったのがアルバとは運が無い。
 凄艶の魔術師は長い睫を落して邪を俯瞰すると、冷儼の聲を降らせ、
「ふふん、中々の無様にて。死の間際の其の表情が最も美しいとは皮肉よな」
 惜しむか――全き否。
 彼は訣別の死撃こそ美しく在れと、花唇に秘呪を詠唱し、
「皆が集めた冱撃、総て天罰と心得よ」
『――ッッ、ッ!!』
 其が今際。
 我が白皙も、戰神の肌膚も青白く浮き立たせる紫電が天地を結ぶ。
 透徹の天蓋を白ませた雷撃は、鬼神の瞋恚も嚇怒も、焦燥も性急も何もかもを灼くと、聖なる大地に密々たる靜寂(しじま)を連れた。
 沈黙が何より饒舌に彼等の勝利を謳おう。
「……終わった」
「ああ、神鋼の鎧は破ったぞ」
 猟兵は軈て訪れた寂寥の風に、無欠の鎧の敗北と戰神の死を受け取り、安堵の吐息を運ばせた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
無敵では暇だろう


破天で掃討
高速詠唱を最大限活かし、2回攻撃分の魔弾全て統合した巨大な魔弾を生成
一連の手順を『再帰』で循環、『刻真』で加速
一部隊を魔力量だけで吹き飛ばす爆ぜる魔弾を嵐が如く浴びせかける

目標の周囲一体を巻き込む範囲攻撃で回避の余地を与えず
攻撃の密度速度威力で反撃の機を与えず
その間も状況は『天光』で常時把握
必要魔力は『超克』で汲み上げ供給

ダメージが内部へ通らずとも衝撃は消せまい
無理矢理姿勢を崩し後ろを向かせて叩き込む為の飽和攻撃
狙い通り行かぬなら耐性の上から叩き続け押し切る

無敵の鎧にとて終わりは厳然として存在する
どこまで阻めるものか見せてみろ


マリス・ステラ
【WIZ】味方と連携して戦う

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
光は『オーラ防御』の星の輝きと星が煌めく『カウンター』

「灰は灰に、塵は塵に」

オブリビオンは骸の海に還します

弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
響く弦音は『破魔』の力を宿して敵の動きを鈍らせる

負傷した味方を『かばう』と同時に【不思議な星】
緊急時は複数名に使用

「援護は任せてください。あなたは敵に集中を」

星辰の瞳が『封印を解く』ように鎧の隙間を暴き出す
隙がなければ輝きを増して『存在感』で『おびき寄せ』て作ります

「今です。総攻撃チャンス!」

星の『属性攻撃』は彗星のように
質量を伴い敵を吹き飛ばす

「あなたに魂の救済を」


ヴィクティム・ウィンターミュート
…なるほど、結構めんどくせえ鎧みてーだな
背後に回らなきゃ仕留められないっつーのはヘビーだが…
逆に言えば、背後に回れれば致命的な一発をぶち込める、ということでもある
だったらいっちょ、暗殺者──フェリーマンのように立ち回るとしよう

ステルスクローク起動、周囲環境と同期
電磁迷彩発動完了…これで奴に俺は見えない
【忍び足】で決して気取られぬように、常に背後を狙えるようにセットアップする
誰かの攻撃の最中、あるいはアシュラが何かの行動で隙を晒した時
一息で接近して、肩甲骨にある鎧の隙間へ、ナイフを突き立てる
一撃に全ての力を籠めるんだ──

戦の女神を相手に、まともに戦うもんかよ
フェリーマンはいつだって、お前の後ろに



 仲間の猟兵が民間人を避難誘導する間、戰神の注意を引き付けておく必要がある。
 言語を違える様々な観光客がバスに乗り込み、猟兵の嚮導に従って戰場を離れる様を、背越しの流眄に映したアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、爆風と轟音の中に冷儼の聲を置いた。
「女の機嫌を取る――力づくなら出来ようか」
 鬱憤晴らしに放たれる激情の劔撃を己に集める。
 其には“力”を見せるのが最も早かろう、と硬質の指を動かした男は、会敵劈頭、埒外の強さを示して見せた。
「誰ぞより鎧を借りたらしいが。無敵では暇だろう」
『暇か如何かはアンタ次第さ! 死の間際までアタシを愉しませてみな!』
 顕現、【破天】――!
 秘呪は鼓動を詠唱として高速不断に、人型の器に満ち満てる魔力を魔彈と生成しながら、循環の原理『再帰』に幾度と巡らせて無限を為し、時の原理『刻真』にて超加速させる。
「死の原理で存在根源を直に砕く」
『無駄だよ、神鋼の鎧は死すら受け入れない!』
 295発の魔彈を二射する威力を統合し、一発で一部隊を殲滅できる魔彈が嵐の如く浴びせられるが、鎧は一縷と創痍を許さず。
『佳いねぇ、悪くない! アタシの真面に立つに相応しいよ!』
 爆轟と烈風が渦巻く中、不敵に咲む原初の戰の女神は恐ろしく美しい――。
 凄撃を目の当たりにするほど美唇が歪に端を持ち上げる――其の妖艶を見たヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は、つと言ちて、
「……なるほど、結構めんどくせえ鎧みてーだな」
 あらゆる物理攻撃を無効化し、あまねく状態変化に耐性を持つ『神鋼の鎧』。
 原初の鋼と炎の神、鋼神ウルカヌスが授けたとは聞いたが、神々の時代に討伐した不死の怪物から抽出した鉱物が影響しているのか――未だ謎は多い。
 彼は返報と迫る魔劔を絶影の機動で躱しながら、戰神の立ち回りを具に観察して、
「背後に回らなきゃ仕留められないっつーのはヘビーだが……逆に言えば、背後を取れば致命的な一発をぶち込める、って事だろ」
 ふむり、思案した後に端整の唇を持ち上げる。
 烈風に梳られる灰色の前髪、その隙間より覗く透徹の瞳が漸う炯光を帯びた。
「だったらいっちょ――」
「何か秘策が浮かばれたのでしょうか。お手伝いします」
 玲瓏のソプラノ・リリコを添えたのは、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)。
 幾筋もの衝撃波が猟兵に噛み付く中、彼等を庇い護ると同時、【不思議な星】(ステラ・ミラ)に傷を癒していたマリスは、そっと優艶の瞳を注いで、
「――電磁迷彩を発動して、隠密高速移動で背後に回る」
「――援護は任せてください。あなたは敵に集中を」
 靜かに密かに戦術を共有する。
 然ればアルトリウスも視線を繋いで、
「――真面は与る」
 戰神を引き付ける間に、弱点を衝けと――。
 其々の役儀が決まれば、三人は直ぐにも散じて動き出した。

  †

「ダメージが内部へ通らずとも衝撃は消せまい。せいぜい“的”と立って居ろ」
『好きなだけ絞り出しな! アンタが疲れるまで付き合ってやるよ!』
 鎧の効果がある限り、創痍損耗は与えられぬが、衝撃に足止める事は出来る。
 美し淡青の光を帯びたアルトリウスは、顕理輝光――創世の原理『超克』で魔力を無尽に汲みながら、全知の原理『天光』を以て戰神の状態を捉え続ける。
 鎧によって精神は安定していようが、やはり修羅は修羅、鬼神は凄撃を前に愈々闘争の炎を燃やし、
『はっ! 首の獲り甲斐があるってものさ!』
 秘劔、【阿修羅六輪斬】――!
 刻下、赫炎を纏った魔劔を次々と飛び掛からせるが、鋩に示したアルトリウスに痛撃が届くより先、『九星』の袖を翻したマリスが射線に割り込む。
「――主よ、憐れみたまえ」
 繊指を合わせて祈れば、瞳に刻まれた聖痕『星辰』に光が燈り、彼女とアルトリウスを星の輝きに包む。
『な、ん――!』
 玲瓏なる星の瞬きは光壁と成って劔撃を拒むと、間もなく光を束ねた一条がカウンターに差し入り、戰神の六臂を彈いた。
 其はダメージを与えずとも、戰神の自由を奪って苛立たせるには十分。
『ッッ次から次と忌々しい……!!』
 鬼神は吃ッと柳眉と蹴立てて両者を睨めるが、あまりの戰塵と吹き荒ぶ熱風に、或る者――ヴィクティムを見失ったとは気付くまい。
(「ステルスクローク起動、周囲環境と同期……電磁迷彩発動……完了。これで奴に俺は見えない」)
 真に腕の良い暗殺者は、誰にもその姿を見せず、存在を知覚させない。
 己も然う在る可しと凛然を萌したヴィクティムは、【Invisible Ferryman】(フカシノアンサツシャヲオソレヨ)――電磁クロークを起動してステルス状態となり、敵背に回る。
(「戰の女神を相手に、まともに戰うもんかよ」)
 倖にして隙を伺う機は頼れる仲間が呉れる。
 アルトリウスが圧倒的物量に戰神の挙措を抑え込み、マリスの巨弓『星屑』が流星の如く煌いて魔劔を彈き返す中、ヴィクティムは跫を殺して疾駆した。
(「一撃に全ての力を籠めるんだ──!」)
 時に須臾。
 高度学習機能搭載型生体ナイフ『エクス・マキナ・カリバーンVer.3』が嚇怒の炎を潜り、面紗(ベール)を断ち裂いて、肩甲骨の間にある鎧の隙間を刺突した!
『――な、に――!』
 衝撃に押された瞬間に背襲に気付くが、遅い。
 戰神は蹈鞴を踏みざま屈辱に舌打ち、くるり躰を變換して魔劔を突き刺すが、肩口に激痛を喰らったヴィクティムは、鮮血を躍らせながら小気味よく嗤っていたろう。
 何故なら彼の瞳には、「今こそ」と畳み掛ける仲間の姿が聢と映り、
「無欠が破られたか」
「今こそ総攻撃のチャンスです!」
 戰神を引き付けたアルトリウスが、援護に回ったマリスが一斉に仕掛ける。
 超一流の端役でありたいと己を律していた少年は、実に佳い景色を見たろう。
「無敵の鎧にとて終わりは厳然として存在する。終焉の後は“戰神”として本領を見せるべきだろうが――どこまで闘れるものか見せてみろ」
『――ッッ!!』
 ここに【破天】は飽和状態から際涯を超えて溢れ出す。
 高威力の魔彈が不断に降り注ぎ、戰神の躯を打つや凄まじい衝撃が絶叫を摺り潰し、
『ッ、クッ……ァッッ……!!!』
 不撓の『神鋼の鎧』は今や完全に砕け、焦熱が肌膚を灼き、激痛が膝を折らせた。
 苦渋に麗顔を歪めた戰神は、爆轟の中にマリスの慈悲に満ちた佳聲を聴いて、
「――あなたに魂の救済を」
『――ッ……』
 降るは婚星。
 彗星の如く精彩の尾を引いた光は、質量を伴って戰神を吹き飛ばし、先住民の聖地に再び靜寂(しじま)を連れた。
「……勝った……!」
 鼓膜に迫るほどの沈黙に勝利を実感した猟兵達は、爽涼の風に安堵の息を混ぜた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月12日


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30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト