桜舞うカフェーの看板娘
大きな幻朧桜の木が入り口の傍に立っているのが目印の、レンガ造りの建物にカフェー『ブルースター』が営業している。街路側の壁が取り払われ、穏やかな日差しと桜が舞う野外にもテーブルが設置され、解放的で洒落たオープンカフェーとなっていた。
晴れた日には老若男女を問わずに客足が途絶えず、給仕が慌ただしく動き回っている。
「えっと、珈琲とクリームソーダのお客様は……」
「こっちじゃ、アオちゃん」
きょろきょろと持っていく先を探していた女給仕に、老紳士といった風体の客が手を上げた。
「あっ、はい! お待たせしました。珈琲とクリームソーダ、それにサンドイッチとホットケーキになります!」
まだあどけなさの残る元気な少女が注文の品を老夫婦の座るテーブルに置く。
「ふふ、ありがとうアオちゃん。ここのクリームソーダは絶品なのよねえ」
「儂はこの苦みの中に甘さを感じる珈琲がいいと思うがね。しかしアオちゃんは家の手伝いをして立派なもんじゃ」
珈琲に口をつけ、その香りと味を楽しみながら老紳士が女給のアオを褒める。
「いいえ! わたしなんてまだまだです!」
ぶるぶるとおさげが大きく揺れるほど首を振り、トレイをぎゅっと抱いたアオが否定した。
「アオちゃんはあれじゃろ、メイドの……」
「パーラーメイド」
「そうじゃそうじゃ、パーラーメイドを目指しとるんじゃろ。アオちゃんくらいの器量良しならなれるに決まっとる」
「そうねえ、アオちゃんはとっても気立てがいいし、もうこの店の看板娘だものね。きっとなれると思うわ」
自分の孫を見るような優しい視線で老夫婦が少女の成長を見守っていた。
「そ、そんな……わたしがあんな素敵なメイドさんになるには全然足りないですよう……」
顔を赤くしたアオは顔を隠すようにトレイを持ち上げる。
「注文いいですか?」
「あ、はーい! すぐにうかがいますね!」
そこへ他の席の客に呼ばれてアオはすぐに切り替えて小走りに向かう。
「パーラーメイドになるためにももっと頑張らなくっちゃ!」
目指すカフェーの花形を思い浮かべ、今日も給仕を頑張ろうと気合を入れた。
●
「みんなはもう新しい世界サクラミラージュに行ってみた?」
桜の花びらが舞う町並みを映すグリモアベースで、ラフィロワ・ベルシルト(幸せ運ぶ星のうた・f04751)が猟兵達に声をかける。
「帝都にあるカフェーに影朧(かげろう)が現れるみたいなんだ。このままだといっぱい犠牲者が出ちゃうみたい」
人気のカフェーには多くの客が居て、被害も大きくなってしまうという。
「予知だとそのカフェーの看板娘の子が狙われてるみたい。どうして狙われてるのかはわからないけど、守ってあげないと!」
一般人では何の抵抗もできずに影朧に殺されてしまう。
「影朧はまず手下の集団を送って来て、それを倒せば今回の事件を起こすボス影朧が出てくるよ。上手く説得して倒せばいずれ転生する可能性もあるんだって」
転生なんて不思議だねとラフィロワは首を傾げる。
「敵が現れるまではカフェーでゆっくりしてるといいよ。クリームソーダとコーヒー、それに軽食も美味しくて人気の店みたいだから、戦いの前の……えーっとなんだっけ? とにかくご飯を食べて元気に戦おうってことだよ!」
カフェーに敵は直接現れるので、待ち構えるには客となっているのが一番手っ取り早い。
「それじゃあカフェーで美味しいご飯を食べたら、お客さんも働いてる人もみんな守ってあげてね! あ、それと帰ってきたらカフェーの感想も聞かせてね!」
そう言ってラフィロワは笑顔で桜舞う世界へと道を繋げた。
天木一
こんにちは天木一です。サクラミラージュのカフェーで看板娘を守ってあげましょう!
まずはカフェーで美味しい食事を楽しみましょう。一番人気はバニラアイスとサクランボの乗ったクリームソーダです。オープンカフェとなっていて、この時期は気持ちのよい場所です。
看板娘の子は星野アオ。13歳の少女で両親が経営しているカフェーでお手伝いをしています。将来の夢はパーラーメイドになることで、頑張り屋の前向きな子です。
第一章ではカフェーを楽しみ、第二章で集団戦、第三章でボス戦となります。
プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページにて。
では桜舞うオープンカフェーでお茶と戦闘をお楽しみください。
第1章 日常
『彩る泡の傍らに』
|
POW : 甘味も頼む
SPD : 軽食も頼む
WIZ : 今日のお勧めも頼む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
華都・早紗
【WIS】(アレンジ絡み歓迎です。)
ブルースター
おかしい、カフェー巡りが趣味の私が何でこんな人気店知らんかったんやろ。
私のアンテナもまだまだやったか。
にしてもええやーんオープンカフェ、影朧来るまで結構時間あるんやろ?
ほなほな、桜を眺めながら人気メニュー堪能させてもらいましょ。
クリームソーダと軽食。
パンケーキってあるんやろか?無いなら今日のおすすめでよろしいよ。
食後にカフェーオレお願いします~。
あ、忘れとった、いや…ちゃんと覚えてます。
噂の看板娘を確認しときます。
あら~~、可愛らしい。
●桜とカフェー
「ブルースター……おかしい、カフェー巡りが趣味の私が何でこんな人気店知らんかったんやろ」
華都・早紗(幻朧桜を見送る者・f22938)が客で賑わうカフェーの看板を見上げる。大通りから外れた場所とはいえ気付かなかったのは不覚と早紗はささっと店名と場所をメモした。
「私のアンテナもまだまだやったか。にしてもええやーんオープンカフェ、影朧来るまで結構時間あるんやろ?」
こんな天気の良い日に外でお茶できる好機を逃す手はないと、敵が現れるまでカフェーを楽しむことにする。
「ほなほな、桜を眺めながら人気メニュー堪能させてもらいましょ」
いらっしゃいませと迎えられてテーブルに着くと、メニューを見て給仕に声をかける。
「注文ええかな?」
「はい、ご注文ですね」
すぐに女性給仕がやってきてにこやかに注文を受ける。
「クリームソーダと軽食。あー、パンケーキってあるんやろか? 無いなら今日のおすすめでよろしいよ」
「パンケーキですね、ございますよ」
「ほんならそれで、食後にカフェーオレお願いします~」
「はい、注文承りました」
慣れた様子で注文を受けると、給仕は店の厨房へ向かい今受けた注文を告げた。
日向ぼっこでもするようにのんびり桜を眺めていると、パタパタと忙しなく動き回る少女の給仕が目に入る。
「あ、忘れとった、いや……ちゃんと覚えてます」
決してカフェーに夢中になって忘れていた訳ではないと、誰にでもなく言い訳して早紗はその狙われているという少女、星野アオを目で追う。元気な笑顔で楽しそうに接客する姿は見ている者も笑顔にしてしまうものだった。
「あら~~、可愛らしい」
早紗も釣られて笑みを浮かべ、看板娘と呼ばれるのも頷けるとその小動物のような動きを楽しむ。
「お待たせしました」
そこへしゅわしゅわと泡立つアイスとさくらんぼの乗ったクリームソーダと、メープルシロップとバターが添えられたパンケーキが運ばれてくる。
「おーどっちも美味しそうやね。早速いただきましょ」
まずはクリームソーダの強い炭酸で喉をさっぱりと潤し、バターとたっぷりのメープルシロップをつけてパンケーキを口に運ぶ。
「ん~ふわふわで美味しい~。これなら何枚でも食べれそうやわぁ」
目を輝かせた早紗はクリームソーダとパンケーキを楽しみ、戦いのことなどすっかり忘れたように、食後のカフェーオレを飲みながら桜を眺め、ゆったりとした時間を過ごした。
大成功
🔵🔵🔵
和島・尊
◆心情
……さて、カフェーを襲う影朧か
看板娘が狙われるらしいが、情報が少なくては現場で待ち構えるしかないか
◆対応
POWを選択する
人気の噂を聞き付けて初めて訪れた客といった感じで、甘味として一番人気のクリームソーダを頼む
(まぁ、初めての客であることは間違っていないしね)
それとなく世間話といったていで話を聞ければ幸いだが……こちらは無理をせずともよいだろう
ともかく、影朧が現れるまでは甘味を楽しむとしよう
◆その他
アドリブ等は大歓迎だ
●泡立つクリームソーダ
「……さて、カフェーを襲う影朧か」
人々がお茶を楽しむ平和なカフェーを見渡した和島・尊(氷結男爵・f22798)は、女給の中でも一際目立つ子供っぽい少女を見つける。その娘が今回の事件で狙われる看板娘の星野アオだった。
「看板娘が狙われるらしいが、情報が少なくては現場で待ち構えるしかないか」
何が理由であれ影朧が暴れるのであれば撃退するだけだと、尊は普通の客として店に向かう。
「いらっしゃいませ!」
看板娘の少女がパタパタと近づき、尊を席へと案内する。
「噂を聞いて来てみたが、繁盛しているようだな」
「ありがとうございます! クリームソーダが一番人気なんですよ!」
尊が話しかけると嬉しそうに少女は笑顔を浮かべた。
「そうか、ではその一番人気のクリームソーダを頼めるかな」
「はい! クリームソーダですね、うけたまわりました!」
元気に返事をしてまたパタパタと少女は注文を厨房に伝えに行った。
(「まぁ、初めての客であることは間違っていないしね」)
嘘も方便と、尊は注文を待ちながら店や周辺に目を向け、戦いになった時のことを考えて頭に叩き込む。
「お待たせしましたー! クリームソーダになります」
笑顔でトレイに乗せた色鮮やかなクリームソーダを少女が持ってくる。
「ありがとう」
釣られるように笑顔を浮かべて受け取った尊は、長いスプーンで上に乗ったバニラアイスを一口食べてみる。バニラビーンズの香りが鼻に抜け、口の中に溶けだした甘いアイスの味が広がる。
「ほう、これは自家製アイスかな」
「そうなんですよ! お父さ……店長がクリームソーダに合うようにって作ったんです!」
我が事のように胸を張って少女が答え、そこで他の席から呼び出しが掛かる。
「はーい、それじゃあごゆっくり楽しんでくださいね!」
ぺこりと頭を下げると少女はパタパタと注文を聞きに向かった。
「成程、これならば一番人気になるのも分かるな」
炭酸の強いソーダを飲み、口の中を爽やかにするとまたアイスの甘みを新鮮な気分で味わえる。
「アオちゃんならきっと素敵なパーラーメイドになれるよ」
「そんな、まだまだですよー!」
そうして味わっていると少女が常連の客と話しているのが聞こえ、少女がパーラーメイドになる夢を目指して頑張っているのが知れた。
(「夢か、そういったものも狙われる理由になるのかな」)
疑問に思いながらも、今は答えがでないと尊はクリームソーダに乗ったさくらんぼを口に入れた。
大成功
🔵🔵🔵
御園・ゆず
暖かな日差し、舞うさくら。
アースでは、今は紅葉が綺麗な季節なのにな
まさかお花見、とは
……ほんと、不思議な世界。
冷たいコーヒーに、ミルクとシロップ
携えるのは、大正の文豪、夏目漱石の『こころ』
大正の風を感じながら読む名作は……
やっぱり、悲しいものですね
くるくる働く彼女を見遣り、ひとつ、溜息
パーラーメイド。
戦わなくては務まらない、ソレ
彼女は『埒外のチカラ』に目覚めたいのかな
…代わってあげたい
わたしはこの『埒外のチカラ』なんて欲しくなかったから
『普通の日常』を送りたかったから
忌々しいチカラを携え、彼女を護りましょう
もちろん、このお店も、です
●読書と珈琲
「暖かな日差し、舞うさくら。アースでは、今は紅葉が綺麗な季節なのにな。まさかお花見、とは」
桜咲く春の景色が一面に広がり、御園・ゆず(群像劇・f19168)は不思議な気分で舞い散る花びらを眺める。
「……ほんと、不思議な世界」
景色に見惚れながらカフェーに足を踏み入れると、テーブルに案内される。注文をして本を開く。それは大正の文豪、夏目漱石の『こころ』。まさにこの舞台に相応しい一冊だと云える。
「お待たせしましたアイス珈琲です」
給仕が冷たい珈琲を置くと、カランと中の氷がグラスに当たって涼やかに鳴る。
本に夢中になっていたゆずは少ししてから珈琲が置かれている事に気付き、本にしおりを挟んでテーブルに置くとアイス珈琲に手を伸ばす。
「冷たいコーヒーに、ミルクとシロップ」
黒い珈琲に白いミルクがゆっくりと沈んでいき、混ぜると柔らかな色合いへと変化する。シロップで甘くなったそれを一口味わうと、ほんのりとした苦みと甘みが広がる。そうして一息入れてまた本を開き読書に戻る。
「大正の風を感じながら読む名作は……やっぱり、悲しいものですね」
文字を目で追いかけていると、その上に桜の花びらが乗っかる。ふと気がそれて視線を上げると、一生懸命に働く少女の姿が目に入った。
「はぁ……」
くるくるとあちこちのテーブルを忙しく回る少女、星野アオを見て、溜息ひとつ。
「パーラーメイド。戦わなくては務まらない、ソレ。彼女は『埒外のチカラ』に目覚めたいのかな」
ソレは見栄えは良いが、決して逃れられぬ戦いの螺旋への道を踏み入れる運命に導かれることでもある。
「……代わってあげたい。わたしはこの『埒外のチカラ』なんて欲しくなかったから」
代われるものならこの普通とは違うチカラに振り回される運命を交換したいとゆずは願わずにはいられない。
「『普通の日常』を送りたかったから。忌々しいチカラを携え、彼女を護りましょう。もちろん、このお店も、です」
少女や店の当たり前にある日常を守る為にチカラを使うのならば、少しは心の救いになるだろうと、ゆずは胸に手を当て、落ち着かせるように息を吐く。
「このコーヒーのように、一度混ざればもう元には戻らない。チカラを手にする意味を、よく考えて……」
呟くゆずはアイス珈琲を混ぜながら、働く笑顔の看板娘へと視線を向けた。
大成功
🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
ここがサクラミラージュですか。ぼくこの世界に来るの初めてなんですよね。
カフェーの感想聞かせろって言ってたけど、食事を楽しむ習慣はもってません。効率良く補給できたら味とかどうでもいいですし。
でもこれも任務の内か、一番高いやつ頼めば印象良くなるかもしれない。
支払いは勿論支給されたサアビスチケットで。
しかし看板娘が襲われるって、何故なのか理由が全然見えませんね。
過激なファンが居たりとか妬まれたり、とかあるのかさりげなーく聞いてみます。
パーラーメイドを目指してるそうだけど、戦えなきゃ務まらない仕事をこの娘が……襲われて自信無くさなければいいが……。
●憧れる少女
「ここがサクラミラージュですか。ぼくこの世界に来るの初めてなんですよね」
物珍しそうに色鮮やかな桜に覆われた世界を見渡して、ナギ・ヌドゥー(殺戮の狂刃・f21507)は眩しい物でも見たように目を細めた。
「カフェーの感想聞かせろって言ってたけど、食事を楽しむ習慣はもってません。効率良く補給できたら味とかどうでもいいですし」
だが作戦上カフェーに居る為に何も頼まぬわけにもいかないと、ナギはテーブルに着くと店のメニューを見て一番高い高級珈琲に目を止める。
「スペシャルティ珈琲一つ」
「スペシャルティ珈琲ですね、承りました」
注文すると女給はすぐに厨房に向かった。
「これも任務の内か」
高い注文をすれば長居をしても文句は言われないだろうと考えながら、ナギは給仕の中から狙われているという看板娘の少女を探し、元気に注文を取ってはパタパタと厨房に向かう少女を見つけた。
「しかし看板娘が襲われるって、何故なのか理由が全然見えませんね」
少女を見ても元気なだけで普通の子供にしか見えない。何が理由なのだろうかと考えていると女給が珈琲を持ってきた。
「スペシャルティ珈琲になります。ごゆっくりどうぞ」
香ばしい珈琲の香りが漂うカップを手に取り、ナギは一口含んで独特な酸味と苦みのハーモニーを無表情に飲み込み、味よりも情報収集が重要だと女給に話しかける。
「あそこに小さい子が居るみたいですが、お手伝いですか?」
「ああ、アオちゃんですね。あの子はこの店の店長の娘さんで、いつもお手伝いしているんですよ」
まるで妹の事を話すように女給が優しい目で少女を見る。
「アオちゃんは子供の頃にパーラーメイドに助けてもらったことがあるみたいで、それがきっかけで憧れて自分もパーラーメイドになるって、店のお手伝いをして目指してるみたいなんですよ」
我が事のように自慢げに女給が話していると、他のテーブルの客に呼ばれ一礼してそちらに向かった。
「妬まれたりしていることはないようですが、そういった類の相手ではないのかもしれませんね」
オブリビオンの考えなど探るだけ無駄かと、ナギが答えの出ぬ問題を切り上げ珈琲に口をつける。
「パーラーメイドを目指してるそうだけど、戦えなきゃ務まらない仕事をこの娘が……襲われて自信無くさなければいいが……」
猟兵の力に目覚めなければパーラーメイドになることは出来ない。戦いを目の当たりにして心折れないかと、ナギは心配そうな目を少女に向けた。
大成功
🔵🔵🔵
鈴城・有斗
一番人気と言われたら、試してみたくなるのが人情ってもんだよね。
そんなわけでクリームソーダと、あと腹ごしらえにサンドイッチも。
のんびり楽しみつつも影朧が出た場合のお客やお店の人の避難経路や誘導をどうするか考えている
関係無いけど、娘の名前がアオでお店の名前がブルースターってのは、娘の名前にちなんだのか、お店の名前にちなんで名付けたのか、はたまたただの偶然か。
アオちゃんと話す機会があれば訊いてみようかな
あるかは判んないけど。
●由来
「一番人気と言われたら、試してみたくなるのが人情ってもんだよね」
他の客たちもよく頼んでいるアイスの乗った炭酸ジュースを見て、鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)も注文しようと女給を呼ぶ。
「そんなわけでクリームソーダと、あと腹ごしらえにサンドイッチも」
「クリームソーダとサンドイッチですね、承りました」
笑顔で注文を受けて女給が厨房へと歩いて行った。
「のんびりお茶を楽しみたいところだけど、仕事のことも考えておかないとね」
有斗は店の客や従業員の状況、そして避難経路への誘導など、影朧が現れた時の事を考えて今からどう動くかを想定する。
「お待たせしました!」
そこへトレイを持った少女、看板娘の星野アオが料理を運んできた。
「クリームソーダと、サンドイッチになります!」
笑顔で有斗の前に泡立つジュースと、ハムとキュウリに玉子、それとトマトとチキンのサンドイッチの乗った皿をテーブルを置いていく。
「そういえば、このお店ってブルースターって名前だよね。何か名前の由来ってあるのかな?」
有斗がもしかしてこの看板娘の名前と関係があるのかと疑問に思って尋ねてみる。
「えっと、わたしの両親がこのお店を始めたんですけど、ちょうどわたしが生まれた後だったみたいで、わたしの名前は星野アオって言うんです。それでわたしの名前からお店の名前を名付けたみたいで……その、ちょっと恥ずかしいんですけど」
両親が子煩悩に名付けた店名の由来を、アオは少し恥ずかしそうに説明した。
「それはいい名前だね。この手入れの行き届いた店を見ていると、君が大切にされてるのがよくわかるよ」
「ありがとうございます!」
有斗が褒めると、照れたアオは顔を赤くしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「すいませーん」
「はーい! それじゃ、ごゆっくりどうぞ!」
ぺこりと頭を下げてアオは他のテーブルに向かう。
そんな様子を微笑ましく眺めながら、有斗はクリームソーダとサンドイッチを味わった。
「料理も美味しいし、みんなに愛されてるお店ならしっかり守ってあげないとね」
店が潰れてこの料理が食べられなくなるのは惜しいと思い、食べながら有斗はいつでも戦えるように警戒して待ち構えた。
大成功
🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
異国情緒を感じるというのはこういった感覚なのでしょうね
…まあ、現に異世界なわけですけれど
何処懐かしいようで、それでいて見た事の無い世界…
いつもこうして異世界に赴く度に感じますが、とても興味深いですね
◆行動
さて、折角ですからお薦めのクリームソーダを頂きましょうか
出来れば星野アオと直接顔を合わせておきたいところですが…
すみません
クリームソーダと、他に何かお薦めがあれば其れも頂けますか?
注文中や食事中もそれとなく周囲を観察
特に星野アオの様子、建物の構造、家具等の配置に注目
敵の襲撃方向や方法を予想しつつ、効率の良さそうな避難経路を幾つか考えておきます
…嗚呼勿論、クリームソーダも堪能するつもりです
●魅惑の甘味
「異国情緒を感じるというのはこういった感覚なのでしょうね……まあ、現に異世界なわけですけれど」
霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はこのサクラミラージュ独特な、桜舞うモダンな景色を見渡した。
「何処懐かしいようで、それでいて見た事の無い世界……いつもこうして異世界に赴く度に感じますが、とても興味深いですね」
長く歴史ある建物も多いのだろうが、そこに新しい文化が混じった建築物に絶奈は目を惹かれる。
「さて、折角ですからお薦めのクリームソーダを頂きましょうか。出来れば星野アオと直接顔を合わせておきたいところですが……」
ずっと見ていたくなる景色だが、今は事件の方を先に片付けねばならないとオープンカフェーに足を運ぶ。
「すみません。クリームソーダと、他に何かお薦めがあれば其れも頂けますか?」
絶奈が近くの女給を呼んで注文する。
「クリームソーダを頼まれる方はよくパンケーキを頼まれますよ」
「ではそれをお願いします」
注文を済ますと辺りをさりげなく見まわし、建物の構造や、家具や人の配置を覚えていく。
「私が襲撃するならば逃げられないように囲むでしょうか、それならば避難経路を作る為に包囲を突破する必要がありそうですね」
自分ならどうするかを考え、それを破る方法にまで思考を巡らせる。
「お待たせしました。クリームソーダとパンケーキになります」
そこで目の前に美味しそうな食事が並び、一旦思考を打ち切った絶奈は礼を言ってナイフとフォークを手に食事に取り掛かる。
「パンケーキはふわふわで美味しいですし、クリームソーダもバニラアイスの風味が良くて一番人気なのも納得です」
甘味を楽しみながら、絶奈はまた戦いのシミュレーションに没頭していく。だがクリームソーダに乗ったアイスをスプーンで掬って食べると、その甘みに食べる方へと意識を引き戻される。
「……嗚呼、本当にこのクリームソーダは絶品ですね」
アイスとソーダのハーモニーに、今のひと時は考えるよりも味わおうと絶奈は頬を緩ませて食事を堪能した。
大成功
🔵🔵🔵
朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)と
可愛らしいメイドさんは綺麗なパーラーメイドに成ってほしいです
白玉あんみつと暖かいお茶を注文
野外のテーブルで桜を愛でながら頂きます
「これは…うんうんおいしいですね」
あんみつの甘さとお茶の温かさが
身体にしみわたります
「メイドさん可愛らしいですね、ベイメリアが着たらきっと似合いますよ」
「帰ったら、ぜひ来て見せてほしいです」
「ふふ私が和風メイド姿ですか
そういうのも楽しいですね」
悪戯っぽく笑います
注文の品が来た際にアオさんとコンタクト
「あなたはパーラーメイドに成りたいんですって。
なにかそれを志すきっかけはあったのですか?」
もし貴方がパーラーメイドになったら弱い人を守れますか?
ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
わたくしはクリームソーダをお願いしたいと思います
野外のテーブルで狭霧さまと向かい合わせに座り
景色を楽しみながらいただきたく
ソーダ水の鮮やかな緑色が、なにか懐かしさを思わせますね
味も、甘いクリームとさわやかなソーダの味が相まっておいしゅうございます
ええ、メイドさん、とてもおかわいらしくていらっしゃいます
…え?な、何を仰るのですか狭霧さま…!(頬を赤くして)
狭霧さまこそ、和風メイド姿、お似合いになるのではないでしょうか
アオさまがいらしたら、今日のお勧めを伺って追加注文したい所でございます
きちんとご案内されたなら、アオさまはもう、立派なパーラーメイド一直線でございますね…!
●守る覚悟
「ご注文をうけたまわります!」
看板娘の少女アオが元気にテーブルへとやってくる。
「私は白玉あんみつと暖かいお茶をお願いします」
「わたくしはクリームソーダをお願いいたします」
同じテーブルに向かい合った朝沼・狭霧(サギリ先生・f03862)とベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)がメニューを見ながらアオへと伝える。
「はい! 少々おまちください!」
混み合うオープンテラスを縫うように、パタパタとアオは厨房の方へと向かっていった。
「桜の花が綺麗ですね」
「そうですね。こうして外でお茶ができるのも素敵です」
狭霧とベイメリアは店の傍にある桜の木を見上げ、舞い落ちる花びらを目で追い、ゆったりとした時間を過ごす。
「お待たせしました!」
そこへアオがトレイを手にゆっくりやってくると、テーブルに白玉あんみつと湯気の立つ緑茶。それに泡がパチパチ跳ねるクリームソーダを置いた。
「これは……うんうん、おいしいですね」
狭霧はスプーンで掬った粒あんと白玉を口に含み、甘くなった口の中を温かなお茶でほっとする。
「ソーダ水の鮮やかな緑色が、なにか懐かしさを思わせますね。味も、甘いクリームとさわやかなソーダの味が相まっておいしゅうございます」
ベイメリアも懐かしさを感じるクリームソーダを味わい、甘く蕩けるアイスとさっぱりしたソーダの調和を楽しんだ。
「メイドさん可愛らしいですね」
「ええ、メイドさん、とてもおかわいらしくていらっしゃいます」
動き回る看板娘のアオを眺めながら狭霧とベイメリアは甘味を口にする。
「ベイメリアが着たらきっと似合いますよ」
「……え? な、何を仰るのですか狭霧さま……!」
ふと思いついた狭霧がベイメリアに視線を移して想像すると、ベイメリアは頬をほんのり赤く染めて照れる。
「帰ったら、ぜひ着て見せてほしいです」
追い打ちをかけるように狭霧はもっとベイメリアの頬を赤くさせた。
「狭霧さまこそ、和風メイド姿、お似合いになるのではないでしょうか」
逆に今度は逆襲するようにベイメリアが狭霧の和風メイド姿を想像して提案する。
「ふふ私が和風メイド姿ですか、そういうのも楽しいですね。一緒にメイドに成ってみましょうか?」
狭霧が悪戯っぽく笑い返すと、藪蛇だったとベイメリアが言葉を詰まらせた。そんな様子を見てしてやったりと狭霧が笑みを深くした。
「こちらのお皿はお下げしてもよろしいでしょうか」
空になった皿を受け取りにアオがやってくる。それに気付いた狭霧とベイメリアはアイコンタクトを交わし、ベイメリアが話しかける。
「ええ構いませんよ。それと今日のお勧めを伺いたいのですが」
「今日のおすすめはクリームたっぷりのフルーツサンドです!」
「ではそれを追加でお願いします」
ベイメリアが注文するとアオは頷き、他にも注文があるだろうかと狭霧に視線を向けた。
「私にはお茶のお代わりを。それと小耳に挟んだのですが、あなたはパーラーメイドに成りたいんですって? なにかそれを志すきっかけはあったのですか?」
さりげなく狭霧が少女がパーラーメイドを目指す理由を尋ねた。
「ああ、その話ですか? わたし昔、パーラーメイドのお姉さんに助けてもらったんです!」
その時のことを思い出したアオは目を輝かせる。
「そうなんですか、どういった状況だったのですか?」
ベイメリアも興味があると話を促す。
「わたしの誕生日に、家族でレストランにいったんです。そこでお店を襲おうとした影朧が現れちゃって、でもそのお店のパーラーメイドのお姉さんがパーってやっつけたんですよ!」
手振り身振りを交えてアオが興奮した様子で語る。
「それがすごくカッコよくって! 絶対わたしもパーラーメイドになりたいって思ったんです」
それから家の手伝いも積極的に始め、今もこうして働いているのだという。
「でもパーラーメイドになったら戦いに身を置くことになってしまいますよ」
「もし貴方がパーラーメイドになったら弱い人を守れますか?」
ベイメリアと狭霧が真剣な顔で少女に尋ねる。
「えっと……はい、守りたいです。あの時のお姉さんみたいに、わたしもこのお店やお父さんにお母さん。それとお客さんたちを守ってあげたいです」
戸惑いながらもアオは真剣な答えを返し、パーラーメイドになる為の覚悟を示した。
「そうですか、突然失礼しました」
「その覚悟があるならきっとなれると思いますよ」
狭霧とベイメリアが表情を緩めると、アオも笑顔に戻って頭を下げて注文を伝えに厨房に向かった。
その背中を見送り、いつか自分達猟兵の仲間になるかもしれない少女を守ろうと二人は顔を合わせ頷いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
愛久山・清綱
星野殿、まだ13なのに見事な働きぶりだな……
俺も見習わねばな。(←そんな彼は14歳)
しかし、何故あんなに立派な御方が狙われねばならんのか。
■行
【WIZ】
いや、考える必要はない。全力を以て護るのみだ。
星野殿が狙われている以上、此処から動かないほうがいいか。
今日のおすすめを口にしながら、敵が現れるのを待つとしよう。
「腹が減っては戦はできぬ」だ。
それにしても……むむむ、美味しいアイスだ。
■他
食事中でも、周囲の警戒は怠らないようにしよう。
【視力】で目を凝らし、妙な存在がいないかチェックだ。
それらしい姿が見えたら、近場の猟兵に敵襲を伝えるぞ。
※アドリブ歓迎、食べる速度はやや遅め
●異変
「星野殿、まだ13なのに見事な働きぶりだな……」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は一生懸命に、そして楽しそうに働く看板娘の少女を目で追う。
「俺も見習わねばな」
その一つ年上だとは思えぬ立派な貫禄を持つ清綱は、負けてはられぬと気合を入れ直す。
「しかし、何故あんなに立派な御方が狙われねばならんのか」
一体どんな理由が影朧にあるのだろうかと首を傾げる。
「いや、考える必要はない。全力を以て護るのみだ」
ただ己が使命を果たす為に全力を尽くすのみと、清綱は雑念を振り払う。
「星野殿が狙われている以上、此処から動かないほうがいいか」
店で待っているのが最も最短で敵を迎撃する方法だろうと、オープンカフェを見渡しやすい端の席に座る。
「ご注文はお決まりですか?」
「では今日のおすすめランチとクリームソーダを」
「はい、ミックスサンドとクリームソーダですね。承りました」
女給が注文を受けて厨房へと足早に去っていく。
「しかし見事な桜だな」
見上げれば秋だというのに桜が咲き誇り、絶えず花吹雪が舞い散っている。
「お待たせしました。ミックスサンドとクリームソーダです」
そうして時間を忘れていると、目の前に注文の品が置かれた。
「ありがとう」
感謝の言葉を述べて女給を見送り、清綱は早速食事に手をつける。
「腹が減っては戦はできぬ」
サンドイッチはさまざまな具がたっぷり挟まれ、具が零れぬように一口食べ味わうと、甘いクリームソーダで口の中にまた違う刺激を与える。しょっぱいものと甘いものを交互に味わって、ゆっくりと食事を楽しむ。
「それにしても……むむむ、美味しいアイスだ」
クリームソーダに乗った自家製のバニラアイスを口に含み、一瞬戦いの事を忘れてしまいそうになる。
「どれも美味しい……つい食事に夢中になってしまいそうだが、警戒も怠らないように気をつけよう」
このような美味しいカフェーが潰れては困ると、清綱は食べながらも注意深く周囲を観察する。
「あれは……?」
その目に異物が映る。先ほどまで何もなかった場所に、薄い木の板で出来た人が入れそうな大きさの箱が置かれていたのだ。それも一つではない、あちこちに同じようなものが現れていた。
「現れたか! 影朧だ!」
異変に気付くと迷うことなく清綱は周囲の仲間に敵襲を伝え、椅子を蹴って立ち上がった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『殭屍兵』
|
POW : アンデッド イーター
戦闘中に食べた【仲間の肉】の量と質に応じて【自身の身体の負傷が回復し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : ゾンビクロー
自身の【額の御札】が輝く間、【身体能力が大きく向上し、爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : キョンシーファクトリー
【死者】の霊を召喚する。これは【仲間の死体に憑依する事で、負傷】や【欠損箇所が完全修復し、爪やユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●包囲する殭屍兵
突如としてカフェーを包囲するようにあちこちに現れた木の大箱が、カタカタ、カタカタと揺れる。それが内からゆっくり開くと、中から現れたのは額に御札の貼られた中華風の衣装を着た人間だった。
否、人間と呼ぶにはその肌は青白く、既に死んでいるように血の気が無い。
それは死体。作られし動く屍。その目がカフェーに居る人々を捉える。何の感情も無い目。そこには個の意思などなく、ただ命令に従う人形のようなものだった。
「に、逃げて下さい!」
突然の事態に静まり返ったカフェーに少女の声が響く。看板娘の星野アオが怯えながらも客に向けて呼びかけていた。その足は震え今にも泣き出してしまいそうだった。それでも勇気を振り絞って声を張り上げ、人々を逃がそうとする。
それを見た動く屍たちは、その少女の勇気など歯牙にも掛けず、少女やカフェーに居る生きた人間に向かって無差別に襲い掛かる。
このままならばカフェーに居る人間は全滅してしまう。だがそれを阻止せんとする者もこの場には居た。
猟兵達が好きにはさせないと少女と人々とカフェーを守る為に動き出す。
ナギ・ヌドゥー
この娘、逃げないのか……力無き勇気など死に急ぐだけなのに。
でもその覚悟、案外嫌いじゃありません。
星野アオの勇気を無駄にしてはならない。
UC発動。幻影よ、【誘導弾】を撃ちながら避難経路を確保せよ。
自分は直後に敵に斬り込む!この同時攻撃を続け敵を皆に近づけさせない。
アオや客を攻撃しようとする敵を優先して倒し、避難を進ませる。極力自分に敵を【おびき寄せ】。
【オーラ防御】【生命力吸収】を続け、体力を保つ。
敵UCはあの額の御札が発動のカギみたいだな。
ならばあの御札を武器・邪絞帯を操作して引き剥がしてしまおう。
鈴城・有斗
君もちゃんと逃げてねアオちゃん
さぁ出番だ、カノン、ドラン。
まずはここの人達を逃がす。 力を貸してくれ。
リュックに隠れてた妖精人形のカノンと子竜のドランを呼び出す。
カノン
「りょーかい! まずは敵を剥がすわよ」
風の精霊魔法で衝撃波や障壁を使える
ドラン
「クァ!」
咆哮による衝撃波や尻尾を鞭の様に振るう。
UCダークハンドで敵の足元まで影を伸ばして掴んだり、壁をせり出して時間稼ぎ
カノン達には衝撃波で敵を吹っ飛ばして人々から離させる。
客や店の人達に呼びかけて一か所に纏まってもらう
集まったら包囲の一か所を狙い衝撃波や影で壁を構築して逃走経路を作る
誘導はカノンに任せ、自分は壁の維持と壁の外の敵の行動の阻害に注力
和島・尊
◆心情
さて、影朧のお出ましか
なるほど、屍を元にした存在か……厄介といえば厄介だ
だが、これでも「帝都桜學府」に所属し……そして猟兵たる身だ
この店を守るため、努力しよう
◆戦闘
店や他の客、そして店員を傷つけないよう光線銃を【乱れ撃ち】牽制しつつ、【破魔】を宿した退魔刀・『氷零』で敵を斬っていく
それでも店員や客を敵が襲うようなら、この身を盾にしつつユーベルコヲド『氷結男爵(ミスタア・コォルド)』で逆に敵を凍りつかせよう
敵の動きを止める為に足元を凍りつかせれば、他の猟兵達の援護になるかもしれないね
◆その他
アドリブや他の猟兵との連携は大歓迎だよ
●避難経路
棺桶から起き上がった殭屍兵の群れが包囲を縮め始める。
「この娘、逃げないのか……力無き勇気など死に急ぐだけなのに」
ナギは客を逃がそうと勇気を振り絞る少女、星野アオの姿を無謀な行動だと思う。
「でもその覚悟、案外嫌いじゃありません」
口元に薄い笑みを浮かべ、ナギは少女と人々を守る為にユーベルコードを発動し、己が幻影を生み出した。
「幻影よ、誘導弾を撃ちながら避難経路を確保せよ」
幻影が掌から精神力を変換したビームを放つ。敵がそれを避けようとすると、ビームが曲がって正確に胸を貫く。
胸の大穴を空けながらも殭屍兵は構わず顔を攻撃してきたナギに向け、狙いを変えてぴょんと跳んで接近してくる。
「動く死体か、なら動かなくなるまで破壊すればいいだけです」
乱暴な口調になり凶暴な笑みを口に浮かべたナギが突っ込み、こちらに伸ばされる腕を鉈のような刃で斬り飛ばした。
だが痛みなど感じないように反対の腕でナギの目を狙う。それを顔を逸らして避け、鉈を腹に叩き込んだ。普通ならば致命的な一撃を受けても殭屍兵は鋭い爪を振り抜く。その一撃を屈んで避けると、もう一度腹に鉈を叩き込み胴を両断した。
「二度と動けなくなるまでバラバラにしてやる」
上半身が倒れたところにさらに凶暴に鉈を叩き込み、四肢をバラバラにして首も断ち切る。すると殭屍兵はピクリとも動かなくなった。
「次に刻まれたいのは誰だ」
己に敵の注目を集めるように凶暴な笑みを浮かべてナギは殭屍兵を見渡した。殭屍兵が襲い掛かり、その間に敵に近かった人々はその場から逃げ出していく。
「あれは!? ユーベルコヲド使いの方が助けてくれてます! みなさん助かりますよ!」
看板娘のアオが猟兵を見て指さすと、人々もその雄姿を見て、絶望に染まっていた顔色が戻り始める。
「君もちゃんと逃げてねアオちゃん」
有斗は看板娘のアオに向かってそう呼びかけ、ここは自分たちが何とかすると敵と対峙する。
「さぁ出番だ、カノン、ドラン。まずはここの人達を逃がす。 力を貸してくれ」
リュックに隠れてた妖精人形のカノンと子竜のドランが元気に飛び出て姿を見せる。
「りょーかい! まずは敵を剥がすわよ」
魔力を高めたカノンは風を巻き起こし、殭屍兵の足を止めて人々との間を作る。
「クァ!」
そこへドランが飛び込み咆哮による衝撃波で殭屍兵を引かせた。
「僕達がみんなを守る! 今のうちにこっちに集まるんだ!」
その間に有斗は人々を保護する為、近くの人々に呼びかけて一カ所に集めようとする。
その動きを見た殭屍兵は、動くものに反応するようにぴょんと跳ねて追いかける。
「大丈夫、安心して集まってくれ、敵の足は僕達が止める」
有斗は影を伸ばし敵の足を地面から伝う影の腕が捕まえた。まるで縫い付けたように足が地面から離れなくなり、そこへドランが尻尾を叩き込んだ。その尻尾を追うよう近くの殭屍兵が爪を振るおうとすると、カノンが突風を叩きつけて吹き飛ばした。
「さて、影朧のお出ましか」
尊はカフェーを囲む青白い動く屍の集団を見渡す。
「なるほど、屍を元にした存在か……厄介といえば厄介だ。だが、これでも『帝都桜學府』に所属し……そして猟兵たる身だ」
この程度で怯むことはないと光線銃を構えてビームを乱れ撃ち、客に近づこうとする敵の足を止めさせる。
「この店を守るため、努力しよう」
ビームで敵を牽制しながら移動し、尊は敵に接近すると破魔の力を宿した退魔の霊刀を振り抜き、胴を薙いで深く斬りつけた。だがその傷口から血が流れることはなく、表情一つ変えずに殭屍兵は鋭い爪を突き立てようと首元に手を伸ばす。
「痛みはないようだな。だが戦いで痛みを感じぬのは必ずしも利点ではない」
尊が下がって躱すと、殭屍兵はそれを追いかけようとする。だがその足が動かない。見下ろして見れば胴の傷口が冷気を帯び、凍結が広がって動くのに支障を来たす程になっていた。
「破魔の力だ。屍にはよく効くだろう」
尊は顔を上げた殭屍兵の首を刎ねて止めを刺す。
「痛みとは己の体がどれだけ動くか教えてくれる判断材料でもある。屍を兵にして痛みを知らぬ不死の兵を作るつもりなのかもしれんが、弱くなっている部分もあるということだ」
語りかけ己に敵の意識を向けようと尊は霊刀を構える。すると殭屍兵達が跳び掛かってくる。
それを刀で捌き、尊は人々から引き離そうと後ろにじりじりと下がった。
「これから避難経路を作る。そこから逃げてくれ」
集まった人々に有斗が指示を出し、影が隆起して壁となり包囲を抜ける道を作り出した。
「カノンは人々を先導してくれ、ドランと僕で敵の接近を防ぐ」
「りょーかい! みなさんこっちですわ!」
羽ばたくカノンが大きく手を振って人々を誘導する。
その様子を見た殭屍兵が次々と集まって来て、行く手を阻もうと影の壁に爪を突き立てて破壊しようとする。
「じゃあこっちも仕事をしよう。行くよドラン」
「クァー!」
有斗が影の厚みを増して強度を高め、咆えるドランの衝撃波で薙ぎ倒す。ダメージを受けても無表情に殭屍兵達は次々と起き上がり何度でも攻撃を繰り返す。
「誰も傷つけさせたりしない」
有斗は影の腕で殭屍兵を拘束し、動きを封じ込めて妨害する。そこへドランが突っ込んで尻尾を振り回し、敵を纏めて吹き飛ばした。
殭屍兵の額の御札が青白い光を帯び、突然その動きが素早くなり逃げようとする人々に目にも留まらぬ爪の連続攻撃を仕掛けようとする。
「速い」
それを割り込んだナギが鉈で受け止めるが押されて体勢を崩す、しかし敵の追撃の前に幻影の援護射撃によって敵を吹き飛ばし難を逃れた。
「あの額の御札が発動のカギみたいだな。ならばあの御札を引き剥がしてしまおう」
ナギは呪いの紋様が施された包帯を自在に操り、自ら攻撃を仕掛けて意識を逸らし、不意を突いて包帯を蛇のように素早く飛びつかせ額の御札を奪い去った。すると殭屍兵の動きが元に戻る。
「死体は大人しく棺桶に戻っていろ」
ナギは鉈を振るって首を刎ね、続けて振り下ろして体を両断した。
「一般人を狙うようだな、ならばユーベルコヲドで足を止めるとしよう」
敵の群れに向かって尊は駆け出し、霊刀を一閃して人に近づこうとしていた敵を斬る。すると反撃に殭屍兵が爪を突き刺す。その爪先が尊に触れた瞬間、尊の纏う冷気が殭屍兵に伝わり手が凍りついた。他にも何体も攻撃しようとしては触れた瞬間凍ってしまう。
「これが私のユーベルコヲドだ。触れたならば全て凍りつかせよう」
尊が踏み込んで敵の足を踏むと、地面ごと凍りついた。そうして攻撃してくる敵を凍らせ動きを鈍らせていく。
「凍っていたらせっかくの素早さも無意味だな」
そこへナギが鉈を振り下ろし、凍った敵を叩き斬っていく。その横の殭屍兵が足が砕けるのも構わずに凍結の戒めを抜け、ナギに向かって爪を突き出す。
「死んでるからって無茶苦茶するな」
その腕を有斗の影が掴み、ドランが体当たりして押し倒した。そこへナギが鉈を叩き込み御札ごと頭をかち割った。
「この周辺の客は逃げ終わったようだ、だがまだ全ての客が逃げた訳ではない。敵を一掃して全ての人々を避難させよう」
ここらに居た客が影の避難経路を脱出したのを確認し、尊はまだ逃げ遅れている店に近い人々へと視線を向ける。ナギと有斗も頷き、近くの敵を倒しながらそちらに向かうことにした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)と
アドリブ、絡み歓迎
「ええ、アオちゃんはパーラーメイドに【絶対】なりたいと言っていました」
「なら、ここで彼女の物語は【絶対】に終わることはないでしょう
「・・・なぜなら、私たちが守るから!」
ベイメリアに背中を預けて
反対側の殭屍兵を攻撃
優先順位は一般人に危害をくわえようとしてしている
物から優先的に攻撃していきます
ユーベルコード【鈴蘭の嵐】を使用
ベイメリアのRed typhoonと合わせ
赤と白の花びらの奔流で殭屍兵達をうちたおします
「私たちはパーラーメイドじゃないけれど、猟兵っていうのもなかなかやるもんでしょう?」
アオちゃんに向けて優しくウィンク
ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
他の方との協力・連携も惜しみません
アオさまは「守りたい」と仰いました
その言葉、わたくし然とお聞きいたしました
パーラーメイドのたまごを、ここで失う訳には参りません
ええ、左用でございます、狭霧さま
必ずやお守りいたしましょう!
敵の攻撃は絶望の福音、不可であれば第六感にて見切り
一般の方やアオさまをかばうように
オーラ防御又は武器受けにて受けて守ります
狭霧さまとは反対側の敵を見据えて
一般の方やアオさまを狙ってきた輩からRed typhoonにて牽制・攻撃を
狭霧さまの鈴蘭の嵐と息を合わせて参ります
早業・高速詠唱からの2回攻撃も狙って
再び舞い戻ってこぬうちに手早く倒してしまいましょう
●花が舞う
「アオさまは『守りたい』と仰いました。その言葉、わたくし確とお聞きいたしました」
「ええ、アオちゃんはパーラーメイドに『絶対』なりたいと言っていました」
ベイメリアと狭霧はまだ逃げずに残った人々を逃がそうと、震えるほど怖れながらも勇気を以って行動する少女に目をやる。
「なら、ここで彼女の物語は『絶対』に終わることはないでしょう……なぜなら、私たちが守るから!」
「ええ、左用でございます、狭霧さま。必ずやお守りいたしましょう!」
狭霧とベイメリアは互いの背中を預け合い、死角を無くして囲むように迫る殭屍兵に対処する。
「それ以上近づかせません!」
狭霧が腕を広げると、ひらひらと清楚な鈴蘭の花びらが舞い飛び、近づく殭屍兵達が触れるとその体を切り刻んだ。
傷ついても構わず突っ込もうとした殭屍兵の足が切断され、接近するほど体中が深い傷を負って倒れ伏す。その屍を越え、感情を持たぬ殭屍兵は怯む事無く突っ込んで来る。
「一般の方もアオさまも、誰一人として害させはいたしません」
その前にベイメリアが立ち塞がり、剣を模したメイスを構えて突き出される刃物のような爪を弾く。そして艶やかな深紅の薔薇の花びらが舞い、辺りを色鮮やかに染めて敵をズダズダに切り裂いた。
白と赤の花びらの結界が敵を一歩も通さぬと、その美しさと裏腹の鋭さを以って立ち塞がる。
「す、すごい……」
その光景に看板娘のアオが恐怖を忘れたように見惚れていた。
「私たちはパーラーメイドじゃないけれど、猟兵っていうのもなかなかやるもんでしょう?」
狭霧はアオに向けて優しくウィンクし、突っ込んで来る敵を白い花びらの嵐に巻き込んで動けぬまで傷つける。
「パーラーメイドのたまごを、ここで失う訳には参りません」
ベイメリアも赤い花びらで一歩も近づかせないと、触れただけで敵の体に深く傷を刻んだ。
無謀な突進を繰り返しバタバタと倒れていく殭屍兵達。だが突然ピタリと突進が止まり、殭屍兵達がぶつぶつ何かを呟くと、半透明な人型、死者の霊が召喚され倒れていた殭屍兵達に入り込んだ。するとむくりと破損して倒れていた殭屍兵達が起き上がり、その傷も修復されていた。
「これは、憑依術でしょうか……」
「死者が蘇るなんて厄介ですが、何度起き上がろうとも倒せばいいだけです」
ベイメリアと狭霧は起き上がった敵に対し、また赤と白の花びらの奔流を叩き込み、手足が飛びその全身をズダズダにした。それでも敵は諦めることを知らず、這いずってでも前へ前へと進んで来る。
「その通りでございますね。狭霧さまとならばどれだけの敵が襲って来ようとも怖れるものではございません」
ベイメリアは深紅の薔薇をさらに咲かせ、真っ赤な花びらで視界を埋めるように敵を攻撃し体を両断した。
「未来のパーラーメイドに猟兵の戦いをしっかり見せてあげましょう」
狭霧も鈴蘭の花を増やし、純白の花びらを敷き詰めるように、敵の足を切断して機動力を奪う。
「綺麗……あ、見惚れてる場合じゃありません!」
赤と白の花の競演に目を奪われていたアオは我に返り、振り向いて人々を集めようと声を張る。
「みなさんこっちへ! ここはユーベルコヲド使いの方が守ってくれて安全ですから!」
アオが店の近くに残っている人々を集め、その周囲を赤と白の花びらが守るように舞う。
「良きパーラーメイドに成りそうでございますね」
「その為にも決してここで終わらせられませんね」
ベイメリアと狭霧は背中越しに頷き合い、赤と白の花びらによって敵を切り払う。だが倒れ伏せた敵が腕を伸ばし狭霧の足を掴もうとする。
「あっ、あぶない!」
それに気づいたアオが叫ぶと、その腕は割り込んだベイメリアのメイスで叩き潰された。
「ありがとうベイメリア、それにアオちゃんもね」
狭霧は微笑みをベイメリアとアオに向け、白い花びらに埋めるように敵に止めを刺す。
「アオさまは状況を冷静に見る目があるようでございますね。将来有望かもしれません」
ベイメリアはそうアオを褒め、ならばもっと猟兵の戦いを見せようと赤い花びらを飛ばし、人々を守る為の防戦に気合を入れる。
狭霧とベイメリアの繰り出す白と赤の世界が殭屍兵を阻み、指一本人々には触れさせないとその体に美しい花の持つ棘を刻み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・ゆず
対集団戦では、サブマシンガンを使うのが常ですが…
お店まで傷つけてしまいそうです
スコーピオンとパーカーホールはお留守番ですね
鞄から閃光手榴弾を出して、ポケットへ
鞄も楽器ケースも置いて身軽に
椅子を蹴って、テーブルからテーブルへ
翻弄するように移動
腰後ろに刺したFN Five-seveNを抜いて、キョンシーに突き付け、撃ちます
被害者なんて出しませんよ
左袖中に隠した鋼糸も使い、敵を縛って、引っ掛けて
囲まれましたか
でも、これも台本通り!
みなさん!目と耳を塞いでください!
叫ぶと共に閃光手榴弾のピンを口で引き抜いて叩き付ける
この芝居も、すべてかみさまのお気に召すまま
…貴女に、覚悟はありますか?
霧島・絶奈
◆心情
力無き正義は無力で、勝算無き勇気は唯の蛮勇です
…ですが、其の心意気其の物は好ましいと思いますよ
◆行動
『暗キ獣』を使用
軍勢による【範囲攻撃】で敵を鏖殺
また、敵と一般人との間に割り込ませ、避難完了まで壁として機能させます
但し、何割かは星野アオの直掩に回し護衛
私は【目立たない】様に軍勢に紛れて行動
【罠使い】として持ち込んだ「ワイヤートラップ連動のサーメート」を設置
また、敵ユーベルコードによる再利用を防ぐ為、敵に死体にはサーメートによるブービートラップを仕掛けます
荼毘に付しましょう
設置を進めつつ【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
愛久山・清綱
あの死霊は……既に自我が失われてしまっている。
声が届かない以上、救うことは叶わんか……
だが、今は星野殿達を守らなければならない。
■前
一般人がまだ残っている場合は、店に隠れるよう指示。
【威厳】を見せれば、安心してもらえるだろうか。
■闘
大なぎなたに【破魔】の力を宿し、戦闘に入る。
転生はできずとも、魂は救いたいものだ。
敵の集団に向かって【ダッシュ】で急接近、そこから大ぶりな
【剣刃一閃】を放ち、【範囲攻撃】で大量撃破を狙う。
共食いしている個体がいる場合は、其方を優先して攻撃。
敵の攻撃は【野生の勘】を働かせながらその動きを【見切り】、
後方へ下がりつつ【カウンター】の一振りで追い払う。
※アドリブ・連携歓迎
●戦う決意
「あの死霊は……既に自我が失われてしまっている。声が届かない以上、救うことは叶わんか……」
清綱はただ兵士としてして利用されている敵の姿に憐れみを覚える。
「だが、今は星野殿達を守らなければならない」
辺りを見渡し、まだ逃げ出せていない人々を確認して清綱は動き出す。
「店の中に隠れていろ」
自信と威厳を持った清綱の言葉に、厨房で働いていて逃げ遅れていた店員達が頷いて店の中へと入っていく。
「さて、では始めるとしようか」
大型のなぎなたを手に、清綱は迫って来る敵の前で立ち塞がる。
「意思がないのならば転生は無理か……転生はできずとも、魂は救いたいものだ」
そう言いながら踏み込み、破魔の力を籠めたなぎなたを振り抜き、敵の胴を両断して上半身を地面に転がした。だがそれでも上半身だけになった敵がずりずりと這って迫って来る。
「それでも死ねぬか、憐れな」
ならばと頭を叩き割り、上半身を両断して仕留めた。
「掛かって来い。安らかに眠らせてやる」
なぎなたを構え、清綱は次の敵を迎え撃つ。
「力無き正義は無力で、勝算無き勇気は唯の蛮勇です……ですが、其の心意気其の物は好ましいと思いますよ」
看板娘のアオが示す勇気に、絶奈は優しい視線を向けて見守る。
「であれば力持つ我々がその心意気を守らねばなりません」
蒼白き燐光の霧を纏うと、絶奈の姿が神々しいものへと変わり、その周囲に屍の獣と兵の軍勢が現れた。
「同じ怖れを知らぬ屍同士の軍勢、ならば数で勝る此方が有利というもの。人々を守り敵を鏖殺しなさい」
指示を受けた屍兵が槍衾で敵と人々の間の壁となり、屍獣が駆け抜け敵の足に喰らいついて押し倒すと、次々と圧し掛かってその体を噛み千切る。敵も屍獣に爪を突き立てて仕留めるが、次々と襲い掛かる数に圧倒されて倒れていった。
「倒れてもユーベルコードで修復するのでしたね」
先ほど他の仲間が戦っている時に見た敵の能力を思い浮かべ、姿を潜ませた絶奈は罠を仕掛けることにする。
「対集団戦では、サブマシンガンを使うのが常ですが……お店まで傷つけてしまいそうです」
ゆずは市街地での戦闘を考え、マシンガンではなく鞄から閃光手榴弾を取り出して、ポケットに仕舞い込む。そして鞄も楽器ケースも足元に置き、身軽になると椅子を蹴ってテーブルに飛び移り、すぐに遅い掛かって来る敵の手を逃れ、テーブルからテーブルへと移動して翻弄する。それを追いかけて殭屍兵達がぞろぞろと動き一塊になっていく。
「そんなに集まったらいい的ですよ」
ゆずは腰後ろに差していた自動拳銃を抜いてそこへ撃ち込む。額を撃ち抜かれてもよろよろと前進する殭屍兵が迫って来る。
「既に死んでるというのは厄介ですね。でも被害者なんて出しませんよ」
掴もうとする腕を躱し、ゆずは敵の周りを駆け抜け、左袖中に隠し持った鋼糸を伸ばして敵を纏めて縛り上げる。
「こうすれば動けないでしょう」
その隙に銃弾を叩き込み手足を破壊した。
「好機だな」
そこへ清綱が突っ込み、大きくなぎなたを薙ぎ払って、縛られた敵の胴を纏めて断ち切った。そして崩れ落ちた敵の頭を割って止めを刺していく。
そんな倒れた仲間に殭屍兵が飛びつき、大きく口を開けて噛みつく。すると自らの傷が癒され、その体に力が漲り出す。
「共食いか。持っているのは殺戮衝動と飢餓だけとはな、いま楽にしてやろう」
踏み込んだ清綱がなぎなたを横に薙いで、敵の首を高々と刎ね上げた。その身体にも他の殭屍兵が餌でも見つけたように食らい付こうとする。
「動くだけの屍なぞこの世に死を蔓延させるだけだ。死者はあの世に帰るがいい」
その前に首を斬り落とし、清綱はなぎなたを振り回し、旋風の如く敵を斬り倒していった。
殭屍兵がぶつぶつと口を動かして何事か呟く。すると死者の霊が姿を現して倒れた殭屍兵へと乗り移る。
「其れを待っていました」
姿を現した絶奈が呟くとその死体が燃え上がる。仕掛けていた焼夷弾が起爆して炎上させたのだ。
「二度と迷い戻らぬように荼毘に付しましょう」
次々と敵の死体が燃え上がり、二度と蘇らぬように体を破壊していく。
そんな絶奈を仕留めようと、殭屍兵が包囲するように襲い掛かる。
「動きを封じます」
すれ違うようにゆずは鋼糸を巻きつけ、敵を縛り上げて地面に転がした。
「屍兵は死を恐れず破損も気にせず疲れも知らない。そんな強力な兵ですが、弱点もあります」
こうして縛られてもただ前へと進み爪を向けようとする敵に、絶奈は剣を突き立てる。
「死して魂を失えば臨機応変さを失います。的確に指揮する者が居なければただの猛牛に過ぎません」
己も屍の軍勢を扱う絶奈にはその利点と欠点がよく解っていた。
残り少なくなった殭屍兵達は包囲して一斉に襲い掛かろうとする。
「囲まれましたか。でも、これも台本通り! みなさん! 目と耳を塞いでください!」
ゆずが叫ぶと共にポケットから取り出した閃光手榴弾のピンを口で引き抜いて地面に叩き付ける。光と轟音が放たれ、近くにいた殭屍兵達の視界が潰され、混乱したように辺りのテーブルや椅子を闇雲に破壊する。
「この芝居も、すべてかみさまのお気に召すまま」
その隙をついてゆずは敵の手足を撃ち抜き、動きを鈍らせていく。
「互いに臨まぬ戦いだろう。これで終わりにしてやる」
動きを鈍らせたところへ清綱が斬り掛かり、なぎなたを縦横無尽に振るって敵を薙ぎ払っていく。
「貴女はパーラーメイドを目指しているのでしたね」
じっとゆずがアオと視線を合わせる。
「……貴女に、覚悟はありますか?」
こうして手を汚し、戦いの日常に身を置かねばならなくなると、自らの行動を見せてゆずはアオに問いかける。
「……はい、わたし、こんな状況からみんなを守ってあげたい!」
この窮地に於いて覚悟を決めたようにアオが頷き、ぐっと胸に当てた拳を握った。
「……それならばチカラの使い方をよく見ておくことです」
溜息をついたゆずは、近づいてくる敵の攻撃を避けながら額に銃口を突き付けて銃弾を放った。額に穴を開けた敵が仰向けに倒れ、さらに弾丸を撃ち込んで止めを刺す。
そうして周囲を見渡せば、全ての殭屍兵が倒れ伏していた。
「こ、これで終わりですか?」
「いいえ、まだ終わりではありません」
気の抜けそうなアオに、まだ神経を研ぎ澄ましたまま絶奈が否定する。
「油断するな。親玉が残っている」
清綱も油断なく武器を構え、辺りに気を配る。すると背後に気配を感じて飛び退き振り向く。
「現れたようですね」
ゆずはアオを庇うように立ち、姿を現した女の姿をした影朧と向かい合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『白鞘・ユヲ』
|
POW : アナタがくれた全て、お返しするわ
全身を【四肢のように動き、鋭く赤黒い衣】で覆い、自身が敵から受けた【五感の刺激】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : ワタシに宿るもの、ワタシになったもの
肉体の一部もしくは全部を【呪われたクロイバラ(黒薔薇・黒茨)】に変異させ、呪われたクロイバラ(黒薔薇・黒茨)の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : いたくないわ、鞘は割れるものだもの
自身の【五体いずれか】を代償に、【自身に宿るクロイバラの鬼】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【花弁となり回避、武器を模った赤黒い血】で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●欲しいもの
「羨ましい……」
血のような赤いドレスを纏った女が看板娘のアオへと視線を向けた。
「アナタ、夢に向かって激しく感情を揺らしてるわね」
じっと女はアオの事を羨むように見つめる。
「ワタシにはそんな感情の揺れがない。うれしいも、かなしいも、ワタシには分からない。ワタシは人の姿になってもただの鞘……」
女は貼り付けたような微笑のまま、全く感情の揺れを見せずに語りかける。
「だからアナタの感情をワタシに頂戴。きっと強い感情に触れればワタシの心も揺れるはず。アナタの命を、ワタシに頂戴。そうすればワタシに感情が宿るはず」
影朧『白鞘・ユヲ』がアオしか目に入っていないとばかりに、ゆっくりと歩を進める。
だがその前を遮るように猟兵が割り込み、アオを守るように立ち塞がった。
感情を求める影朧。その存在を転生させるには心揺らす言葉が必要になるだろう。
猟兵達は得物と言葉を武器に影朧を討とうと戦いを始めた。
和島・尊
◆心情
……さて、どうにも難しい影朧だ
元は人ではなかったのか?だからこそ、感情を求めている……?
……どうにも、私にはうまく説得できそうにない
説得は他の猟兵に任せて、戦うか
◆戦闘
悪魔召喚「Crocell」で、クロセルを召喚して戦う
退魔刀や光線銃を用いて攻撃は行っていくよ
◆その他
アドリブ等は大歓迎だ
御園・ゆず
アオの前から動かずに
後ろ手で文庫本を渡しましょう
盾にでも使ってください
使う機会など与えませんけれど
命を刈り取ればそれに成り代われるとでも?
どういう理屈ですか
馬鹿?
だからいつまでも鞘なんですよ
あ、怒りました?
……ふふ。
なぁんだ、あるじゃないですか、ちゃんと感情が
そもそも持っているんですよ、貴女
『アオさんに固執するほどの強い感情』が
ほら、揺れている
貴女は立派にヒトですよ
流れた血を舐めとって
わたしはあたしに成り代わる
自信満々に笑って、転生へ至る鉛弾を贈る
いってらっしゃい
わたしに戻って、振り返る
これが、『埒外』です
血まみれで
泥だらけ
…決心は揺るがないようですね
せいぜい死なないように頑張ってくださいね
●感情の揺れ
「ひゃっ!」
看板娘のアオは、鋭い殺気に当てられ尻餅をついてしまう。
「これを」
敵との間に立つゆずはアオを背に隠すように守り、後ろ手で呼んでいた文庫本を渡す。
「盾にでも使ってください……使う機会など与えませんけれど」
「は、はいっ」
アオが文庫本をぎゅっと抱きしめて不安を押し留める。
「わ、わたしは大丈夫ですから、みなさんは早く逃げてください!」
そして周囲にいた残った人々に呼びかけ避難を促した。敵の意識に入っていない人々は安全にカフェーから逃げ出す。
「……さて、どうにも難しい影朧だ」
尊は女性の姿をした影朧を観察する。
「元は人ではなかったのか? だからこそ、感情を求めている……?」
影朧が口にした台詞から推測し、元は鞘が人型の姿になったヤドリガミの類かと見当をつける。
「……どうにも、私にはうまく説得できそうにない。説得は他の猟兵に任せて、戦うか」
ともかくこの看板娘が狙われるならば、迎え撃たなくてはならないと霊刀を構える。
「邪魔をしないで」
呪われたクロイバラの茨が伸びて、鞭のように薙ぎ払われる。それを尊は霊刀で受け止めた。そして踏み込み首を刎ねるように横に振るうが、肩に咲いた黒薔薇に受け止められる。
「邪魔をするなら死んでもらうわ」
白鞘の視線が尊に向けられ、左腕が巨大な黒薔薇と化し、それが鬼の姿へと変化して分離し、個の敵として尊に襲い掛かる。
「己が腕を眷属としたのか、厄介な技のようだ」
対する尊は迫る拳を受け流し、胴を両断するように斬り裂く。だが体が黒薔薇の花びらのように舞い散り、攻撃を躱して元に戻った。そして刀を血で生み出した鬼が斬り掛かる。それを霊刀で受け止めながら下がって間合いを開ける。
「ならばこちらもそちらに相応しい相手を用意しよう」
尊がダイモンデバイスを取り出す。
「来たれ! 48軍団を従えし氷剣の魔将! クロセル!」
悪魔クロセルが召喚され、氷剣を手に鬼と対峙する。そして互いが刃を振るい剣戟が鳴り響く。
「私は援護するとしよう」
尊は光線銃を構え、ビームを撃ち込んで鬼の足を止め、その間にクロセルが深く鬼の体を深く斬りつけた。
「さあ、その命と感情をワタシに頂戴。アナタの輝きをワタシの輝きにしてあげる」
白鞘がアオに向けて一歩踏み出す。
「命を刈り取ればそれに成り代われるとでも? どういう理屈ですか。馬鹿? だからいつまでも鞘なんですよ」
言いたい放題にゆずが罵ってやると、白鞘が漸く目の前にいるゆずへと鋭い視線を向けた。
「あ、怒りました? ……ふふ。なぁんだ、あるじゃないですか、ちゃんと感情が」
その殺気に動じずゆずが芝居がかった笑みを浮かべる。
「そもそも持っているんですよ、貴女。『アオさんに固執するほどの強い感情』が」
「……何を言っているの? ワタシに感情はないわ。だからワタシは感情が欲しいのよ」
妄言と切り捨てるように黒茨を振るってゆずの頬を叩く。だがその一撃は浅く迷いが出ているようだった。
「ほら、揺れている。貴女は立派にヒトですよ」
口の端から流れる血を指で拭って舐め、ユーベルコードが発動してゆずはわたしからあたしへと成り代わる。
「だから安心していってらっしゃい」
素早く自動拳銃の銃口を向けて引き金を引く。弾丸は狙い違わず胸の中央を穿った。
「かはっ」
口から黒い液体を流し、白鞘は胸を押さえる。
「この感じ……熱い、何かがワタシの中に……もっと、アナタを殺してもっとこの熱を手に入れるわ」
はっきりと白鞘の眼がゆずを捉え、赤黒い衣で傷口を覆い黒茨を振り回す。
「一発じゃ足りなかったか、それなら満足するまで撃ち込んであげる」
それを躱しながらゆずは弾丸を撃ち込むが、黒茨によって弾かれる。
「もっと、もっと……アナタの命でこの胸を熱くして」
白鞘は茨を増やし、逃げ道を塞ぐようにゆずを狙う。
「大暴れだな」
そこへ割り込んだ尊が霊刀を振るって茨を斬り飛ばした。
「……ふむ、感情を昂らせているようにも見えるな。説得は任せて正解だったか」
そして踏み込み白鞘を斬ろうとしたが、体のあちこちが凍って傷ついた鬼が横入りして刃を受け止める。
「まだそれだけ動けたか」
鬼にクロセルが斬り掛かり、鬼は黒薔薇の花びらとなって躱すが、元の姿に戻ったところに尊が霊刀を走らせ、胴を断ち切った。ずるりと体が崩れ落ち、鬼は花びらとなって散り去った。
「ワタシの左腕を倒したの。アナタもワタシに心をくれるのかしら」
試してみようと白鞘は狙いを変えて尊に黒茨を叩き込む。
「私では難しいと思うがな」
尊はそれを斬り払い、横からクロセルに狙わせるが、増えた黒茨が薙ぎ払ってクロセルを吹き飛ばした。
「試してみましょう」
白鞘は尊の心臓目がけて黒茨を伸ばす。それを霊刀で払おうとするが、刃に茨が絡みついた。そして白鞘が近づく。
「その心を頂戴」
「まだそんなことを言ってるの? 自分の心は自分に聞けばいい」
求めるように右手を伸ばす白鞘に、ゆずが弾丸を叩き込んだ。連射する弾が右手と身体に穴を穿つ。だがその穴も赤黒い衣で覆い塞いでしまう。
「これが、『埒外』だよ。まだパーラーメイドを目指すというのならよく見ておくといいよ」
ゆずがそう背後のアオに伝え、また銃を手に攻防を繰り広げる。
「はい!」
その背中を片時も見逃すまいと、文庫本を胸に抱いたアオは真剣に見つめ続けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
感情が欲しい…ですか
私自身、其処まで激情に駆られる経験が無いので何とも言えませんが…
感情とは己の内から沸き上がるモノ…
其を言葉にするのならば…
◆行動
『二つの三日月』を召喚し戦闘
私は【罠使い】の技能を活かし「魔法で敵を識別し起爆するサーメート」を設置
言葉と共に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
闘いの緊張感と高揚感、世界を護ると言う義務感と多幸感…
此れ等が私を突き動かす感情であると言えるでしょう
貴女は感じませんか?
戦いとは死を内包する行為である故に、最も生命の息吹や鼓動を感じられる行為であると…
其は麻薬よりも遥かに刺激的です
愛久山・清綱
持たぬ物を求める……俺も似たようなものか。
俺も、故郷では知り得ぬ事を知るため猟兵になり、
果てには異形の武芸に手をつけた。
■噺
やりにくいが、気にかかる事は聞こう。
先ず「其方は感情を得てどうする?」、「それは喜ぶためか、
満たされたいがためか」と質問。
そこから「いっそ死ぬ気で戦うのはどうだ?」と言い、戦闘へ。
■闘
あの薔薇は遠方まで届くかもな。
【野生の勘】で軌道を【見切り】、【衝撃波】を放って
撃ち落とす。
攻撃を凌いだら【山蛛】の構え。
中距離から空間切断による【マヒ攻撃】を仕掛け、
無防備になる【恐怖を与える】。
仕上げに相手の懐まで接近し、【破魔】の力を込めた
二の太刀で一刀両断。
※アドリブ・連携歓迎
●闘いに揺れる心
「感情が欲しい……ですか」
絶奈は影朧の求めるものを知り首を傾げる。
「私自身、其処まで激情に駆られる経験が無いので何とも言えませんが……感情とは己の内から沸き上がるモノ……其を言葉にするのならば……」
身を震わすような激しく求める感情を想像しながら、心の動きをどう口にしようかと思案する。
「では、こういった方法は如何でしょう」
絶奈は二つの三日月を合わせたような光の巨人を召喚する。巨人は敵を見下ろすと、その巨大な拳を振り下ろす。隕石でも落ちて来たような一撃を白鞘は体から無数の黒薔薇を咲かせてクッションにするように受け止めた。
「アナタはどんな心を持っているの?」
白鞘は絶奈に視線を移し、黒茨を伸ばして薙ぎ払おうとする。それを絶奈は仕掛けておいた罠を起動し、爆発が起こり茨を吹き飛ばした。
「闘いの緊張感と高揚感、世界を護ると言う義務感と多幸感……此れ等が私を突き動かす感情であると言えるでしょう」
爆風の中を突っ切り接近した絶奈が剣を振るう。胴を狙う刃が赤黒い衣に当たり分厚い布を裂くような手応えで止められる。だが刃は浅く体に達し、黒い血が流れ出す。
「貴女は感じませんか? 戦いとは死を内包する行為である故に、最も生命の息吹や鼓動を感じられる行為であると……」
絶奈は剣を引くとすぐさま追撃の斬撃を振り下ろす。それを白鞘は黒茨で受け止めた。
「其は麻薬よりも遥かに刺激的です」
だが剣より放つ衝撃波が白鞘の体を吹き飛ばす。
「……感じる? 戦いの刺激? 本当に戦いで感じられるの? ならアナタを仕留めてその感情を確かめてみるわ」
白鞘は絶奈の背後まで這わした黒茨を操り、不意をついて背中に叩きつける。だがそれは届く前に白刃に斬り落とされた。
「持たぬ物を求める……俺も似たようなものか。俺も、故郷では知り得ぬ事を知るため猟兵になり、果てには異形の武芸に手をつけた」
割り込んだ清綱は、敵の姿に己を重ねながら手にした刀で茨を切り払って問いかける。
「其方は感情を得てどうする?」
「……ワタシもそこの子のように楽しみたいわ。いつも笑顔で楽しそう……ワタシも感情に揺り動かされたい……」
少し考え、白鞘は己の願いを口にする。
「喜ぶためか、虚ろな心を満たされたいのだな」
ならばと清綱が刀の切っ先を敵に向ける。
「それなら霧島殿の言う通り、戦いの中で感情を見つけるのがよいのではないか。死ぬ気で戦えば得るものもあろう」
返事を待たずに清綱が斬り掛かる。振り下ろす刃が黒薔薇に受け止められるが、それを裂いて刃は肩を斬りつける。
「いいわ、それで感情を得られるかどうか、アナタたちを殺せば判ることよ」
白鞘は清綱に黒茨を叩きつける。それを刀で受け流し、衝撃を逃す為に後ろに下がる。そこへ血に張り巡らされていた黒茨が起き上がり、周囲を囲み襲い掛かる。
「遠方まで届くとは思っていたが、ここまで届くか」
勘で茨が動くよりも先に駆け出していた清綱は、衝撃波を放って斬り払いながら包囲を抜ける。だがそれを追うように黒茨が迫る。
「斬っても斬ってもきりがないな」
清綱は敵の方へ向けて突破しようと駆け出す。それを邪魔しようと茨が重なり壁となる。それを振り下ろす一刀で両断するが、茨が次から次へと邪魔をする。
「無駄よ……このまま潰してあげるわ」
白鞘が地面から突き出た黒茨で清綱の足を掴む。
「戦いに少しは高揚しているようですね、では次は緊張感を差し上げましょう」
絶奈が巨人から無数の小さな二つの三日月を放たせ、それが張り巡らしてあった黒茨の結界をズダズダに切り裂く。
「自由にしておくには厄介な相手ね……」
白鞘は光の巨人を封じようと、黒茨を巻き付けて拘束する。巨人が暴れるが、強引に幾重にも巻き付いた黒茨が黒薔薇を咲かせて姿が見えぬほど埋め尽くした。
「こちらから注意が逸れたな。そして道も開いた」
足の茨を斬ると真っ直ぐに清綱が駆け寄り、近接すると刀を振り下ろす。その一撃を白鞘は赤黒い衣で受け止めるが、布が斬り裂かれ刃が額にまで達する。黒い血が伝いぶるっと白鞘が震えた。
「これが緊張? 嗚呼……もっと……もっとワタシに感情を教えて」
下がりながら白鞘が右腕を振るうと、黒い花びらが舞って清綱の体を包む。それに触れると刃物のように皮膚が裂けた。
「戦いとは心技体の凌ぎ合い、こうして刃を交えれば相手の心が伝わるものだ」
清綱は紙一重で花びらを躱しながら山蛛の構えを取り、刀を振るい空間を断ち花びらを散らし、さらに白鞘にまで届いて胸を斬った。そして距離を詰めると二ノ太刀を浴びせる。その刃を白鞘は赤黒い衣を纏った右腕で受け止める。だが鋭く重い刃は衣を裂き腕を断ち切った。ぽとりと腕が地面に落ち、黒い血溜まりができる。
「ワタシを殺そうと思っているのね……なんだか体が震えるわ」
僅かに口の端を吊り上げた白鞘が黒茨を放って清綱を弾き飛ばし、全身を茨で覆う。
「それが死が近づき、生命の危機を感じた心の震えです」
絶奈が罠を発動し、焼夷弾の起こす爆炎によって敵を呑み込み、茨が燃えて緩み清綱が戒めから逃れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朝沼・狭霧
【心情】
アオちゃんは守る
・・・けれど面倒ね、世迷言に、無いものねだり。
一番嫌いなタイプね
小さくため息をつき
一瞬、自分の中の憎しみに
目を曇らせそうになりますが
ベイメリアの
「敵は既に羨望という感情を持っている」という言葉に
目を覚まされます
なんだ、それもそうよね
一瞬毒気を抜かれたかのように
ぽかんとしたのち、迷いを吹っ切って戦います
「無理ね、アオちゃんは私たちが守るもの」
【サモニングガイスト】で古代の戦士
パーラーメイド達を召喚
ユヲと戦ってもらいます
「サクラミラージュの偉大な古の戦士たちよ!」
帰ったらうんとベイメリアを褒めてあげよう
そんな事を思い一瞬、微笑みを浮かべながらも
戦いに戻ります
ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
あの者はわたくしたちがお止めいたします
そうです、アオさまはわたくしたちが必ずお守りいたします!
相手の攻撃はしっかり見切って
アオさまが攻撃されそうな場合にはオーラ防御しつつかばいます
こちらからの攻撃は常に本体を狙って
ジャッジメント・クルセイドを天から放ちます
アオさまの感情にご執着のようでございますが
命を取ったからといって、それがご自身のものには成りえません
所が、その、アオさまを羨むお気持ち…
貴方は既に、羨望という感情をお持ちでございます
それこそが…感情というものでございます!
微笑む狭霧さまに
ああ、なんと頼もしいことでございましょうか
安堵感を得、これも感情なのだと感じます
●欲しいと思うことが
炎を黒薔薇で身を覆う事で払い、両腕を失っても表情を変えず、白鞘は器物のように平然としていた。
「こ、これがユーベルコヲド使いの戦い……」
ごくりと唾を呑み込み、アオはその猟兵と影朧の戦いに魅入る。その視線に気づいたように白鞘と目が合った。
「未来を想い輝くアナタ。アナタもワタシの心にしてあげる」
獲物を狙う鋭い視線に、アオは蛇に睨まれた蛙のように青くなって息を止める。
「あの者はわたくしたちがお止めいたします。そうです、アオさまはわたくしたちが必ずお守りいたします!」
その視線を遮るようにベイメリアが立ち塞がり、安心させるように声をかけて敵と対峙する。
「アオちゃんは守る……けれど面倒ね、世迷言に、無いものねだり。一番嫌いなタイプね」
狭霧は小さな溜息をつき、自分の中に湧き上がる憎しみに胸が苦しくなり、その苛立ちに視界が狭くなっていく。
「その子を殺したら、アナタたちもワタシの感情にしてあげる。だからいろんな心を見せて死んで頂戴」
白鞘は邪魔をするベイメリアを無視して、黒茨を伸ばしアオを捕えようとするが、それをベイメリアはメイスで払う。
「アオさまの感情にご執着のようでございますが、命を取ったからといって、それがご自身のものには成りえません」
敵の言葉にベイメリアが反論する。
「所が、その、アオさまを羨むお気持ち……貴方は既に、羨望という感情をお持ちでございます。それこそが……感情というものでございます!」
自分で気づいていないだけで、既に感情を持っているのだとベイメリアは告げる。
「なんだ、それもそうよね」
狭霧はベイメリアの『敵は既に羨望という感情を持っている』という言葉を聞いて、一瞬ぽかんとして毒気を抜かれたように怒りが消え、憎しみに曇っていた目が覚める。
「ベイメリアの言う通りよ、その執着こそが感情の証。もう持っているのに気付いてないだけよ」
狭霧の言葉を聞いて白鞘が僅かに眉をしかめた。
「気付いてない? ……意味が分からないわ。感情があればそこの子のように笑顔になるものでしょう。ワタシにはそんなものが無いわ」
白鞘は能面のように変わらぬ自分の顔に触れ、今は怯えた表情を見せるアオに視線を向けた。
「……いいわ、何にせよ殺してワタシのものにすればいいだけだもの」
白鞘は邪魔をするベイメリアを黒茨で拘束しようとする。
「無理ね、アオちゃんは私たちが守るもの――サクラミラージュの偉大な古の戦士たちよ!」
その茨を狭霧が召喚した武者が槍で斬り払い、炎で燃やした。
(「帰ったらうんとベイメリアを褒めてあげよう」)
そんなことを思いながら狭霧はちらりとベイメリアに向かって微笑みを浮かべ、表情を引き締めて戦いへと集中する。
(「ああ、なんと頼もしいことでございましょうか」)
ベイメリアはその微笑みに安堵感を得て、己の胸に宿る温かな感情を感じ取る。心の通じ合うもの同士の連携。その様子を白鞘は羨ましそうに、アオは憧れの目で見ていた。
「アオさまに近づかせはいたしません!」
自分も頑張らねばとベイメリアが敵を指さし、天より落ちてくる光が白鞘の右肩を貫いた。
「いいえ、もう近づいているわ」
斬り落とされていた白鞘の右腕が黒薔薇となり、それが黒い鬼へと変化すると、刀を手に横からアオを狙う。
「ひゃぁっ!」
驚いたアオがビクッと飛び上がる。そこへベイメリアが割り込み、オーラを纏ったメイスで刀を受け止めた。
「大丈夫です。アオさまに指一本触れはさせません」
ベイメリアは鬼を押し戻し、絶対にアオを守ると纏うオーラと強めた。その守りを撃ち破らんと何度も鬼が刃を振るい火花が散る。
「私たちに任せて、アオちゃんの憧れるパーラーメイドのようにみんなを守ってあげるからね」
そこへ狭霧が指示を出して武者が槍を突き入れ、鬼の体を貫いた。
「邪魔をしないで、アナタたちから先にワタシの感情になりたいの?」
目を細め邪魔者に苛立つように白鞘は無意識に唇を噛む。
「怒ってらっしゃるのでしょう。お気持ちが顔に出てございます。それが貴方が感情を持っているという証拠でございます」
「ワタシが……?」
ベイメリアが指摘すると、白鞘は顔をべたべたと触って確かめる。
「感情なんて人から奪うものではありません。己が内から湧き出るものです」
狭霧もそれが感情の表れだと、僅かに表情を動かした白鞘に教える。
「これが……ならもっと、もっともっと感情を頂戴」
白鞘の目がアオだけでなく狭霧とベイメリアにもしっかりと向けられる。そして黒薔薇の大輪が身体に咲き、無数の花びらが放たれて辺りを侵食した。
「感情が芽生えても話が通じるわけではございませんか」
「アオちゃんは巻き込まれないように後ろに下がってね」
「はいっ!」
ベイメリアは花びらをオーラで防ぎ、その間に狭霧がアオを射程外まで後退させた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
華都・早紗
【SPD】(アレンジ絡み歓迎です。)
君か、こんな事を起こしたのは。
人の気持ちが欲しい、人になりたいんやな。
可哀想に、でもこの子を殺しても、君に命は宿らない。
この子の感情に触れてもそれは君の感情やない。
君の感情は君自身が生み出すものや。
そしてそれは悲しみの、憎しみの、そういう負の感情であってはならない。
わかる?
まぁ、
つまり、
大事なんは、
笑いや。
どうせ感情手に入れるんなら笑いにしましょ。
痛快爽快爆笑漫奇譚
なんかおもろい事、言って?
今は無理やろうけど、きっとそうなれる。
だからお眠りよ、私が君の力になってあげる。
鈴城・有斗
代償に比例するなら・・・代償を無くせば戦闘力が下がったりなんて事にならないかな。
リスクは高いしリターンの保証もないけど、やれることがあるならやってみないと!
UCヒーリングタッチで敵が代償に払った部分を回復
鬼の戦闘力が下がらなければ以後は自身や味方への回復に
随分と人の感情に拘りがあるみたいだけど、自覚してないなら教えてやる。
何かを求める、それが既に思いを持つって事、感情の一つなんだ。
お前は既に持ってるんだよ。
今はまだ小さくて気付けてないのかもしれないけどな。
そもそもこの世界には転生なんてものがあるんだ。
生まれ変われば、借り物でも奪ったものでもない、あんただけの心を手に入れる事が出来るんだぞ。
ナギ・ヌドゥー
うれしい、かなしい、そんな感情なんか要らないよ……。
感情の中で最も根源なるものは「恐怖」だ。
アンタにその感情を今、呼び起こしてやろう。
【呪詛】を込めた【精神攻撃】を仕掛けながら攻める。
UC「虚飾暗行」発動、これから虚実の感情を植え付けてやる。
『感情が欲しいなら、オレの心を喰らってくれよ!』
【恫喝】と共に【殺気】を飛ばし【恐怖を与える】。
『このドス黒い殺戮衝動をアンタに全て奪ってほしい』
【部位破壊】【傷口をえぐる】でじわじわと削る。
『鞘なんだろ……その黒薔薇でオレの狂気を包んでくれ……』
身体が薔薇に包まれたら【生命力吸収】でその命を吸い取る。
●桜に包まれて
「君か、こんな事を起こしたのは。人の気持ちが欲しい、人になりたいんやな」
早紗は黒い薔薇に包まれ、周囲を無差別に攻撃する敵の姿を見て憐れに思う。
「可哀想に、でもこの子を殺しても、君に命は宿らない。この子の感情に触れてもそれは君の感情やない」
アオを守るように立ち、早紗は敵に向かって言葉を投げかける。
「君の感情は君自身が生み出すものや。そしてそれは悲しみの、憎しみの、そういう負の感情であってはならない」
攻撃的で全てを殺して得ようとする負の感情を感じ、諭すように早紗は言葉を続ける。
「わかる? まぁ、つまり、大事なんは…………笑いや」
長い間を置いて笑顔で告げる一言。それは笑いこそが世の理不尽を吹き飛ばす最大の力であるという早紗の信条だった。
「笑い? 分からない……笑うとはどういった感情なの。アナタを殺したら分かるかしら?」
じっと白鞘は早紗を見つめ、その笑顔を真似しようとするが上手くいかず、黒茨を放って早紗を締め上げようとすると、早紗は飛び退いて躱した。
「教えて、ワタシにもっと感情を……アナタたちの心をもっと」
白鞘の右脚が根元の方から分離し、茨が出て右脚の代わりとなる。そして離れた右脚は黒薔薇となり、鬼へと姿を変える。刀を生み出した鬼は素早く近づき早紗に向けて一閃する。それを割り込んだ有斗がガンブレードで受け止めた。
「代償に比例するなら代償を無くせば戦闘力が下がったりなんて事にならないかな」
敵が代償に失った右脚を見て、有斗は鬼を弱体化させられないかと考える。
「リスクは高いしリターンの保証もないけど、やれることがあるならやってみないと!」
鬼の攻撃を凌ぎながら白鞘に駆け寄り、有斗はガンブレードを左手に持って、右手に生命の光を宿し白鞘の右脚の失われた付け根に触れる。すると光が宿り足の形を形作って右足を再生した。それと同時に代償として生み出した鬼が黒薔薇に戻り、散って消え去る。
「なんとか上手くいったみたいだな」
成功したとほっと有斗は息を吐く。だがすぐに集中し、敵が足元に伸ばしていた茨を飛び退いて避けた。
「どうせ感情手に入れるんなら笑いにしましょ。痛快爽快爆笑漫奇譚」
早紗は帝都中を席巻する笑道を追求した十笑神の中から、本日最も輝いていた笑いの神様を一名様召喚する。すると笑いの神が敵の頭上に金タライを生み出し、落下させて頭に直撃させた。いい音が響き白鞘の体がふらつく。
「笑いは体を張ってなんぼやで、そうやって人を笑わせる努力をすれば笑いが何か掴めるって寸法や」
その様子を早紗は笑いながら、笑いの何たるかを教えてあげる。
「笑い……痛いのが笑い? ならアナタも痛くして笑わせてあげる」
白鞘は早紗の足元に黒茨を這わせ、捕まえて棘で全身を串刺しにしようとした。
「うれしい、かなしい、そんな感情なんか要らないよ……」
ナギはそんな感情など不要と切り捨て、ただ強力な殺戮衝動に身を委ねるように笑みを浮かべて黒茨を鉈で斬り飛ばした。
「感情の中で最も根源なるものは『恐怖』だ。アンタにその感情を今、呼び起こしてやろう」
強く呪詛を籠めてナギは虚言を放つ。
「感情が欲しいなら、オレの心を喰らってくれよ!」
言葉は白鞘の心に干渉し、虚実の感情を植え付けながら鉈を振るい、敵の体を斬り裂く。肩から腰にかけて赤黒い衣が破れ、黒い血で染まっていく。
「このドス黒い殺戮衝動をアンタに全て奪ってほしい」
殺気を放ちナギは何度も鉈を振るい、敵の黒い血を周囲に撒き散らしていく。
「なら奪ってあげるわ。その感情をワタシに頂戴」
白鞘は黒茨をナギの体に巻き付ける。だがすぐに鉈を振るって茨は千切れた。
「鞘なんだろ……その黒薔薇でオレの狂気を包んでくれ……」
ナギは敵を押し倒し、振り下ろす鉈が身を守ろうと咲く黒薔薇を散らす。何度も何度も鉈を叩き込み、分厚い黒薔薇の守りを抜くと刃は白鞘の顔に食い込んだ。
「奪ってあげる……包んであげる……だからアナタの感情をもらうわ」
恐ろしいものでも見るように目を見開いた白鞘は、黒茨をナギに巻き付けて引き剥がした。
「これが狂気……これが恐怖……」
起き上がり無表情に戻った白鞘がよろりと後退する。
そこへ笑いの神様が足元にバナナの皮を置き、敵の足を滑らせてお尻から引っくり返す。
「ええでええで、なかなかの笑いの才能や。ほんなら次はなんかおもろい事、言って?」
楽し気に笑った早紗がもっと高度な笑いを求める。
「面白い……面白い事とはなんでしょう。アナタを殺せば理解できるのかしら」
起き上がった白鞘は早紗に向けて黒薔薇の花びらを飛ばす。
「今は無理やろうけど、きっとそうなれる。だからお眠りよ、私が君の力になってあげる」
早紗は笑いの神様の力で神風を起こし、花びらを押し返して敵の顔にぶつけ貼り付け視界を奪った。
「感情など戦いでは邪魔になるだけだ」
そこへ飛び込んだナギが鉈を振るい、首を刈ろうとするが赤黒い衣に防がれた。
「狂気だ、殺戮に駆り立てる狂気だけが戦場には必要だ」
ナギは止まらずに連続で鉈を振り回し、肋骨を砕き、左脚を斬り飛ばす。
「こんな心が欲しいならくれてやる。奪ってみせろ!」
狂ったようにナギは鉈を叩き込み、一撃ごとに呪詛を注ぎ込む。
「殺したい……この感情が狂気……それならワタシもそう。アナタのことを殺したくて仕方ないわ」
白鞘は口元に笑みを浮かべ、黒薔薇を体中に咲かせ、鉈を受け止めると逆にナギの体を侵食するように、黒薔薇を手から咲かせていく。
「オレを包むのか……やってくれ……オレの狂気をその鞘で納めてくれ……」
ナギは鉈を黒薔薇に叩き込み、そこから生命力を吸い上げる。すると手に咲いた黒薔薇が枯れ始め、白鞘の体の黒薔薇も朽ちていった。
「どうした、オレを包み込んでくれ!」
鉈を振るい、ざっくりと白鞘の胸を抉った。人間なら致命傷という一撃を受け、白鞘はよろめきテーブルや椅子を蹴倒しながら後退する。
「感情を……ワタシはもっと感情を知りたい……」
それでも白鞘は倒れるのを堪え、喜怒哀楽を示すアオや猟兵へと視線を向け欲した。
「随分と人の感情に拘りがあるみたいだけど、自覚してないなら教えてやる。何かを求める、それが既に思いを持つって事、感情の一つなんだ」
有斗はそうやって執着する事こそが感情によって起こされる行動だと教える。
「お前は既に持ってるんだよ。今はまだ小さくて気付けてないのかもしれないけどな」
自覚はないのかもしれないが、他から見ればそれは確かに感情による行動だと分かる。
「そもそもこの世界には転生なんてものがあるんだ。生まれ変われば、借り物でも奪ったものでもない、あんただけの心を手に入れる事が出来るんだぞ」
転生すれば、影朧というしがらみを逃れ、本当に自由な感情を得られるかもしれないと有斗は告げる。
「転生をすればワタシも感情を持てるの? ワタシも人のように楽しんだりできるの?」
「できるはずだよ。この世界ではいずれ影朧は生まれ変わって普通の生を送れるはずだ」
白鞘が有斗を凝視して問いかけると、有斗は頷きできると返答する。
「……そう、ならワタシは……ここで……」
駆け出す白鞘が黒薔薇を纏って突っ込んで来る。それを迎え撃つ有斗がガンブレードを振るい、その差し出されるような首を断ち切った。落ちた首と身体が桜の花びらに覆われていく。
「いつか生まれ変わったら感情豊かになれるといいな」
有斗が顔を見下ろすと、消えゆく白鞘が微笑んだような気がした。
「みなさん、助けていただいてありがとうございました!」
怪我一つなかった看板娘のアオが猟兵達に頭を下げて礼を述べる。
「テーブルとか椅子は壊れちゃったけど、店自体は無事だから営業もそれほど時間がかからずに元通りにできそうだね」
有斗は辺りを見回し、怪我人は出なかったが、戦いに巻き込まれ壊れたテーブルや椅子を目にして、アオを元気づけるように前向きに話しかける。
「はい! みなさんのおかげでお客様も無事でしたし、きっと大丈夫です!」
店よりもお客様が無事でよかったとアオは安堵の笑みを浮かべた。
「せやね。可愛らしい看板娘がおるんやから大丈夫大丈夫。こんなええ店やねんから、すぐ元通り繁盛するわ。安心してよろしいよ」
そんなアオの頭を早紗はええこええこと撫でてやり、今日の頑張りを褒めてあげる。
「今日は本当にありがとうございました。わたしもみなさんみたいにみんなを守れるパーラーメイドを目指します!」
もう一度頭を下げたアオは猟兵達を見上げ、憧れの目を向けて宣言した。
「今日の事件を乗り越えたならきっとなれますよ」
ナギは事件で自信を失わなくて良かったと、元気な笑顔の少女を応援する。
「はい!」
他の猟兵達もアオと言葉を交わして応援し、また皆でカフェー『ブルースター』に食べに来ようと約束すると、元気に手を振って見送る少女に手を振り返し、カフェーを後にした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵