●閉ざされた幽霊船
帝都が管理する港のひとつに、もう何カ月も停泊を続けている蒸気船があった。
名は、縁臨丸。
どこかの汽船運航会社が所有していた筈だが、その会社は数年前に倒産し、現在は誰の管理下にあるのかも、はっきりしない。
その黒々とした巨影は、いつしか港を行き交うひとびとにとっては何の変わり映えもしない、当たり前の風景として、生活の中に溶け込みつつあった。
ところが、最近になってとんでもない事実が判明した。
この縁臨丸、実は内部がいつの間にか逢魔が辻と化していたのである。
もし何者かが縁臨丸を動かし、各地の港を出入りするようになれば、それは即ち海上を奔る魔界として、全国に影朧を撒き散らす災厄の種となるのは、誰の目にも明らかだった。
帝都桜學府は直ちに縁臨丸の破壊を命じたが、どういう訳か縁臨丸は外部からの如何なる攻撃をも受け付けようとはしない。まるで目に見えない、鉄壁の守りが縁臨丸を包み込んでいるかのようであった。
そこで帝都桜學府は第二の策として、討伐隊を縁臨丸内部へ送り込むことを決定した。
恐らく、縁臨丸内に巣食う影朧が不可視の防御壁を張り巡らせているのだろう。
ならばその影朧を倒すしか、縁臨丸の奔る魔界化を防ぐ手立てはない──。
「皆の者、準備は良いか」
帝都桜學府が組織した討伐隊の長、朽木典膳は渋みのある面で年若い隊員達をぐるりと見渡した。
いずれも、緊張でがちがちに固まっている。それも仕方の無い話だ。今回の任務は、余りにも危険が大き過ぎる。何より縁臨丸の内部がどうなっているのか、誰にも分からないというのが最大のネックだった。
朽木は朝陽が眩しい東の空を、ちらりと見遣った。
こんなに清々しい朝だというのに、これから自分は将来ある若者達を、凄惨な地獄絵図に送り込まなければならないのだ。
心が痛まない筈は無かった。
自分も一緒に、戦いの場に赴くというのがせめてもの慰みというのが実に皮肉な話であった。
「では、参ろうか」
隊長朽木の号令一下、討伐隊は決死の覚悟で縁臨丸内へと突入していった。
●若者達を救う為に
このままでは、討伐隊は確実に全滅する──アルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)は不機嫌そうな顔でグリモアベースに集まった猟兵達に、そういい放った。
「兎に角、内部構造が全然分からないというのが一番の問題だね。そんなところに、猟兵ではなく、経験も少ない若者を送り込むというのは、はっきりいって自殺行為だ」
だが帝都桜學府の思惑も、分からなくはない。
先ずは斥候とでもいうべき部隊を投入し、内部状態を調べ上げないことにはどうにもならない。何の情報も無いままに精鋭部隊を送り込めば、大事な戦力を無為に失うことにもなる。
それは戦術・戦略上、最も避けなければならない愚策であろう。
頭では分かっているものの、矢張りその為に若い命が簡単に失われる現実は、セバロスにとっても余り面白いものではない。
「だから是非、君達には真っ先に縁臨丸内部へと突入して貰い、影朧の群れを片っ端から叩いて貰いたい」
プロセス自体は極めてシンプルだ。
ただ敵の巣窟に突入し、そこに群がる影朧を全て討伐すれば良いだけの話だ。
しかし、状況が全く分からない、未知の領域での戦いということが、猟兵にとっても最大の問題として立ちはだかることになろう。
尤も、そういう問題に対処する為に猟兵というものが存在する、といわれれば、全くその通りなのだが。
ともあれ──。
史上稀に見る、海上の逢魔が辻。
猟兵達は、どのような戦いでこの危難を乗り越えるのであろう。
革酎
こんにちは、またもサクラミラージュな革酎です。
今回は、ストーリーそのものは至ってシンプルな内容です。
兎に角敵を倒すのみ。
但し、ギミックが少々特殊です。海上で、しかも内部が全然分からない逢魔が辻。
何がどう変貌しているのかも予測出来ませんし、討伐隊の若者達を守り切る為にも、討ち漏らしは厳禁というシビアな戦いです。
しかし基本は蒸気船です。構造材自体は変化しませんので、そこをどう攻めるかがポイントになってくるかも知れません。
第一章では、甲板や船室での戦いです。狭い場所もあれば、比較的広い空間もあります。ここで苦戦するということはあまり無いかも知れませんが、それでも油断は禁物です。
第二章では、船底近辺での集団戦です。ここら辺になると、構造がどう変化しているのかも全く読めませんので、戦い方も慎重にならざるを得ないでしょう。
第三章では縁臨丸に不可視の防護壁を張り巡らせている真打登場です。防護壁自体は逢魔が辻そのものの魔力のようなもので、影朧に付随しているものではありません。兎に角、倒してしまえばOKです。頑張って討伐して下さい。
第1章 集団戦
『女郎蜘蛛』
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POW : 操リ人形ノ孤独
見えない【ほどに細い蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 毒蜘蛛ノ群レ
レベル×1体の、【腹部】に1と刻印された戦闘用【小蜘蛛の群れ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 女郎蜘蛛ノ巣
戦場全体に、【じわじわと体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
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黒影・兵庫
未来の英傑たちを失うわけにはいきません!
何としても俺たちの手で解決しましょう!せんせー!
地の利は敵側に大いにあり、討ち漏らしは厳禁です!
となると、ここは地に囚われることがない相当数の戦力で挑まねばなりません!
(UC【蠢く霊】発動)
強襲兵の皆さん!早速ですが船内に侵入し敵を殲滅してください!
壁をすり抜けられる霊体の皆さんであれば船内だろうと関係ないでしょう!
ついでに内部構造の『情報収集』もお願いします!
敵の配置は俺の『第六感』で大体の位置を割り出しますので、そこを重点的に調査してください!
俺は皆さんの持ち帰った情報を他の猟兵さんたちに共有しようと思います!
縁臨丸は、全体的に黒っぽい色合いを基調とした、やや古めかしいデザインの蒸気船である。
タラップから甲板へと降り立った黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、恐々とした様子で船内への突入に時間をかけている若き討伐隊員達の後ろから、大声を張り上げた。
「たーのもーうッ!」
その不意打ちのような大声に、若い討伐隊員のみならず、朽木隊長までもが驚きの余り、慌てて振り向いた程であった。
「こ、これは……もしや猟兵殿でありますか?」
「はいッ、いかにもッ! 黒影兵庫と申しますッ! 未来の英傑達をお助けすべく、馳せ参じましたッ!」
見えない敵を前にしてもまるで動じる様子が無いどころか、寧ろ元気一杯の兵庫。その限り無い全力パワーに朽木隊長はすっかり気圧されていた。恐らく、猟兵が救援に駆けつけてきてくれるとは、予想だにしていなかったのだろう。
「おぉ、有り難い……もう少しで無謀な突入戦に入るところでした」
「大丈夫、お任せ下さいッ! 何としてでも俺達の手で解決してみせましょうッ! ね、せんせーッ!」
この時、兵庫の視界には確かに、彼を導き教えてきた蜂皇族の姿が映っていた。が、それは兵庫にだけ見える姿であり、当然ながら討伐隊員達には見ることも叶わない。つまり、兵庫が誰に呼びかけているのか、朽木隊長にも討伐隊員達にも理解出来なかったという訳だ。
しかし、兵庫は幾らか困惑している討伐隊員達などまるで気にすることも無く、蠢く霊を発動させた。
するとそこに、無数の何かが現れた。気配だけが甲板上を覆い尽くし、見ることは出来ない。だがそこに何が居るのか、兵庫には分かっていた。
「強襲兵の皆さんッ! 早速ですが船内に侵入し、敵を殲滅して下さいッ!」
兵庫の指令が下るや、甲板に蠢いていた気配が一斉に船内へと消えてゆくのが、感覚で分かった。
同時に兵庫は、朽木隊長から縁臨丸の設計図を一部、借り受けることにした。幸い、朽木隊長は設計図の写しを複数枚、余分に持参して来ていた。
兵庫は設計図をじっと凝視し、第六感を働かせる。敵の大体の位置を、先ずは割り出そうという訳だ。
そのうち、幾つか怪しげなポイントを見出した。食堂、倉庫など、比較的大勢が集まれそうな位置だ。
「皆さん、今からいう場所を重点的に捜索願いますッ! また内部構造の情報収集もお忘れなくッ!」
兵庫が指示を出してから数分後には、早くも第一報が届き始めた。船内に巣食っている影朧は、どうやら女郎蜘蛛の一団らしいことが分かってきた。
また、比較的浅い層はほとんど改変らしい改変は生じていないらしいのだが、至る所に漆黒の瘴気が凝り固まっており、うっかり触れると全身に衝撃が走るらしいことも分かった。
やがて──船内から地獄の亡者が唸るような、不気味な声が次々と折り重なって聞こえてきた。強襲兵と女郎蜘蛛が船内のそこかしこで局地戦を開始した模様である。
当初は優性に戦いを進めていた強襲兵だが、どうやら女郎蜘蛛の数はこちらの想定を遥かに上回っていたらしく、一部が強襲兵の襲撃を潜り抜けて、甲板に走り始めていることが分かってきた。
「どうやら、こちらでも一戦交える必要が出てきたようですッ! せんせー、気合入れて参りましょうッ!」
ひとまず先制攻撃には成功した。
次は敵の反撃を出迎える番である。果たして甲板上の戦いは、どのような展開になるか。
大成功
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松月・撫子
蓮の池 釈迦にはあらじ 糸の主
蓮の池と称するには大きすぎる海ですが。
糸を垂らすが釈迦でなければ、そこに救いもありませんね。
甲板に逃げ出した蜘蛛を迎え撃ちます。
【花の下にて春死なむ】を発動。刀装備の男性と銃装備の女性を呼び戦わせ、花吹雪で敵の攻撃を妨害し弱めながら自身は攻撃を受けて解除されないように距離をとり回避の構え。
男性に刀を持ってもらったのは糸を張り巡らされても斬って突破できるように。その上で女性に有効な火力を入れてもらいます。
子蜘蛛の群れを蹴散らすにも薙ぎ払いのできる刀が有効でしょう、銃は威力はありますが散弾する型でも連射の効くものでもありませんので……(リボルバーのようなものです)
木常野・都月
討伐隊が中に突入するよりは、微力な狐の俺が突入した方が、若干マシな気がする。
まずは突入前に外にいるオブリビオン…影朧を倒してしまおう。
室内じゃないから、ある程度暴れても大丈夫だろう。
UC【狐火】を使用、それぞれバラバラに敵に張り付いて確実に燃やしていきたい。
ただし、船に引火させないように、火加減には気をつけたい。
最初は火力を上げて、倒したら速やかに狐火を消していきたい。
付近は海。
水の精霊様も多いはず。
船に引火しそうなら、水の[属性攻撃]で消化に努める。
霧ヶ峰・星嵐
甲板は派手に戦いが起きているみたいですね。加勢できないのは心苦しいですが……私は自分の役目を果たします!
忍者装束を着た状態で忍び足で船内を行動、地図から割り出した敵が多い位置ではない場所を捜索し、隠れている敵などを撃破、討ち漏らしがないようにします。
見えないくらいに細い蜘蛛の糸ですが……視覚以外にも感知手段はあります、さらに言えば全く見えないわけではありません!
忍び足で船内を捜索しながら野生の勘を働かせ敵や張られた蜘蛛の糸を感知し見つけます。見つけてしまえば糸から敵の場所が分かるはずです、そのまま背後から忍び寄り、【忍者課業】も使用し短刀の形をした月ノ輪で首を切っていきます
甲板上に、女郎蜘蛛の群れが一斉に躍り出てきた。
討伐隊の若者達は初めて見る怪物に、全員一様に恐れをなし、恐怖で凝り固まっている。
その時、場違いな桜吹雪が甲板上に吹き荒れた。
「蓮の池と称するには大きすぎる海ですが……糸を垂らすが釈迦でなければ、そこに救いもありませんね」
歌うような調子で囁く松月・撫子(詠桜・f22875)の姿が、そこにあった。
撫子の左右には、刀を携えた男とリボルバー式拳銃を構えた女が佇んでいる。
「退がっててくれないか。これから少しばかり、火遊びに興じるからな」
撫子とは若干距離を置いた位置に、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の姿があった。
このふたりが猟兵であることは一目瞭然だったらしく、朽木隊長はただ黙って頷き、部下の若き討伐隊員らを舳先に近い位置まで後退させた。
その頃、船内では。
(加勢出来ないのは心苦しいですが……私は自分の役目を果たしますッ!)
忍者装束に身を包み、忍び足で狭い通路をひた走る霧ヶ峰・星嵐(桜幻朧・七変化・f22593)。自身の戦闘スタイルが開けた場所での集団戦には向かないと判断してのことか、今回は陰から陰、闇から闇へと走る暗殺型の攻撃手法に特化していた。
甲板からは派手に戦っている様子を思わせる震動が伝わってくる。隠密たる星嵐には、敵の意識が全て甲板上に向いてくれる為、有り難い状況ではあった。
星嵐は蜘蛛の糸に対して、最大限の注意を払っていた。凝視しなければ発見も難しいといわれる女郎蜘蛛の糸ではあったが、しかし全く感知不能という訳でもない。
(視覚だけに頼れば引っかかってしまうかも知れませんが……)
星嵐には、蜘蛛の糸を見極める自信があった。
そして、見つけた──女郎蜘蛛が一体、通路の向こうの曲がり角の奥へと姿を消そうとしている。
糸を追っていたら案の定、敵はこちらの捜索の網にかかってくれたという訳だ。
(まずは一体)
星嵐は短刀によく似た形の月ノ輪をそっと構え、標的たる女郎蜘蛛の背後へそっと忍び寄っていった。
再び、甲板上。
都月の放った狐火が前後左右で激しく燃え盛ったかと思えば、その直後には人魂のように小さくゆらゆらと揺らめいては消えてゆく。
女郎蜘蛛の群れはまだまだ数が多いものの、少なくとも都月周辺の敵は彼の放った狐火に焼かれ、力無くその場に崩れ落ちた。
「おっと危ない」
頭上から女郎蜘蛛の爪足が襲い掛かってきたが、都月は俊敏な身のこなしで、これをあっさり回避する。女郎蜘蛛も相当に素早いが、都月の敏捷性はさらにその上をいっていた。
「ひとの世は、うつりにけりな、いたづらに……でも、ここに居るのは蜘蛛ばっかりですわね」
幾分興覚めしてしまったように、撫子は肩を竦めた。
その間にも、男霊は刀を振るって女郎蜘蛛が張り巡らせた糸の防壁を切り刻み、無防備となったところへ女霊が容赦無く弾丸を叩き込む。
この攻防一体の戦術で、女郎蜘蛛を確実に一体ずつ仕留めていった。
幸い、敵は子蜘蛛の群れを撒き散らす戦術には出ていない。猟兵だけではなく、討伐隊員の数を合わせると、先に踏みつぶされてしまう可能性を考慮したのかも知れない。尤も、女郎蜘蛛にそこまでの知恵があるかどうかは分からなかったが。
尤も、仮に女郎蜘蛛が子蜘蛛を放ったところで、男霊の刀で一掃出来たであろう。その点についても、撫子は全く抜かりが無かった。
「しかし、きりが無いな。後から後から、どんどん湧いて出てくる」
都月が呆れたように、かぶりを振った。
狐火はまだまだ御役御免とはなりそうにもない。
「蜘蛛でも一匹だけなら、何かしら歌が詠めそうなものですけど、これだけ居たのでは無粋としかいいようがありませんわね」
撫子にも都月の感情が伝わったのか、後方で男霊と女霊を指揮しつつ、同じように呆れた様子で溜息を漏らした。
流石に面倒になってきたのか、都月は特大の狐火を呼び起こし、数体の女郎蜘蛛を纏めて焼き払った。この時に噴き上がった炎が意外と大きかった為、都月は水の精霊の力を借りて、同時に消火活動にも着手したのであるが、これが意外と気分転換になった。
つまり、それだけ甲板上の戦闘が単調になりつつあったのだ。
単調ということは即ち、撫子と都月の側が圧倒的に強かったという証左でもある訳だが。
と、その時。
「あら……何か飛んできましたわよ」
男霊が薙ぎ倒した女郎蜘蛛の尻から、蜘蛛の糸が船内に伸びていたのだが、その伸縮力を利用して、一枚の紙片が蜘蛛の糸の先端に括りつけられたまま、甲板上に跳ね上がってきた。
撫子が手に取ると、それは先行して船内の女郎蜘蛛に暗殺戦闘を仕掛けている星嵐からの報告だった。
それは、船内の見取り図であった。女郎蜘蛛の潜んでいる場所や、瘴気が凝固している箇所が克明に記されていた。
「粋なことをなさいますわね」
「ま、ちょっとしたお土産ってなところか」
女郎蜘蛛はまだ完全に討伐し切った訳ではないが、撫子と都月は顔を見合わせて笑みを交わした。
さて、甲板上に途中経過報告を投げて寄越した星嵐であるが、彼女は早くも単独で五体目の女郎蜘蛛を始末したところであった。
よくもまぁ、これだけ多くの女郎蜘蛛が湧いていたものだと呆れる思いではあったが、しかし船内の雰囲気は奥へ行けば行く程に、重苦しい空気が漂ってきている。
逢魔が辻としての闇の力が、いよいよ強まり始めてきたというところであろうか。
(ここから先は、単独では危ないかも知れませんね)
星嵐はそこでぴたりと歩を止めた。
軍人気質だから、という訳でもないだろうが、彼女の猟兵としての嗅覚と判断力が、無謀な突入は自身を危険に晒すだけではなく、味方にも悪影響を及ぼすという事実を誰に教わるともなく理解していたのだ。
ここは、一旦退くことにした。
女郎蜘蛛の残りも、あと僅かだといって良い。無理をする必要は欠片も無かった。
星嵐は踵を返すと船内通路を再び音も無く駆け始めた。ところが、途中でふと気になる物を発見した。
(はて、これは……?)
そこは、客室だった──が、何故か爆発か何かで酷く損傷した痕跡が見られた。
一体これは何を意味するのだろう。
そんなことを考えながら、星嵐は一時退却の途に就いた。
成功
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鈴城・有斗
アルダワでもそうだったけど、実戦経験の乏しい生徒が危険な前線で戦わなきゃいけないのは、やる方も送る方も辛いだろうな・・・。
ともあれ、今やるべきことは戦う事だ。
カノン、防御を頼む。
ドラン、遊撃と撃ち漏らしが居ないかの確認よろしく。
カ「おっけー! ついでにドランが見つけたのもこっちで吹き飛ばしておくわよ」
風の精霊魔法で風を通じての知覚や障壁と衝撃波が使える
動物と話せるのでドランとの通訳も
ド「クァ!」
咆哮による衝撃波や長い尻尾で鞭の様に打ち据える
背中に光輪を浮かべて空を飛ぶ
ガンブレードにUC迅牙を纏わせての近接や斬撃を飛ばしての遠距離で攻撃
自分でも撃ち漏らしや挟み撃ちに注意しながら戦闘を行う。
西院鬼・織久
逢魔が辻とはよく言ったものです
彼奴等の臭気は潮の香ですら誤魔化せぬ
狩るのは我等、喰らい尽くすも我等よ
【行動】
縁臨丸か同型船の図面から敵の配置を予想
五感と第六感+野生の勘で周囲の把握と不測の事態に備える
武器やUCの炎は怨念の炎(呪詛+殺意+生命力吸収)で船への影響は薄い
広い場所では「UC+範囲攻撃+先制攻撃」の牽制、対処が遅れた所に「なぎ払い+範囲攻撃」で追撃し「傷口をえぐる」
狭い場所はUCを目晦ましに「夜砥」で即席の罠作り
罠で動きが鈍った敵に後続が追い付いた所を狙いUCか「なぎ払い」
集団から突出する敵がいれば「二回攻撃+なぎ払いか串刺し」で迎撃、後続に投げ付け纏めて「なぎ払い」とどめにUC
女郎蜘蛛の群れが、甲板上を所狭しと駆け巡る。
その間を、若い討伐兵達は悲鳴に近い怒声を響かせながら、必死に抵抗しながら走り回っていた。
「アルダワでもそうだったけど……」
手近の敵を軽く切り伏せながら、鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)はふと、暗鬱な気分に表情を曇らせた。
実戦経験の乏しい生徒を危険な前線で戦わせなければならない──現場で指揮する者も、そして後方から彼らを送り出す者も相当に辛い思いをしているに違いない。
現に、目の前で若者達を必死に守ろうとしている朽木隊長などは、自身が深手を負っているにも関わらず、怯える部下を庇って懸命に剣を振るっているではないか。
何とも因果な戦場だが、それでも有斗は頭を切り替え、今この場で為すべきこと、即ち先頭を切って女郎蜘蛛を駆逐するというその一点に、全ての意識を集中させた。
「カノン、防御は頼んだ」
「おっけーッ! ついでにドランが見つけたのも、こっちで吹き飛ばしておくわよッ!」
有斗はつい、苦笑した。使役者たる彼よりも、妖精人形のカノン(改)の方が余程に元気だ。白い毛並みが美しいドラゴンのドランもカノンに合わせるように、ひと声大きく、
「クァッ!」
と吠えながら宙空へと舞い上がった。
背面に浮かび上がる光輪は荘厳さに溢れ、若き討伐兵達に少なからず勇気を与えている。
その傍らで、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は淡々と女郎蜘蛛を一匹、二匹と確実に焼き払い、敵の数を減らしつつあた。
「全く、逢魔が辻とはよくいったもの……」
幾分呆れた表情ながら、織久は更に後方から襲い来る敵を一瞬で焼き尽くした。
女郎蜘蛛の臭気は潮の香ですら誤魔化せぬ、と小さくぼやく。ならばこの醜い影朧共は、己の手で狩り、そして喰らい尽くすのみ。
有斗とは戦闘に対する思想面で大きな隔たりを見せるものの、猟兵同士、互いに協力し合うことには何の抵抗も無かった。
ガンブレードの弾倉を小気味良く回転させていた有斗は、迅牙一閃を炸裂させて甲板から船内へと入る通路上の女郎蜘蛛を一掃した。
そろそろ、甲板上の敵の数も残り少なくなり始めている。ここからは、船内に突入してからの戦術も意識し始めなければならない。
「任せられよ。敵の大体の位置ならば、既に予測済み故」
縁臨丸の内部構造を頭の中に叩き込んでいた織久が、有斗の考えを先読みするかのように、静かに語りかけてきた。その間も織久は怨念の炎で女郎蜘蛛を焼き続ける。時には空間一杯を使った大火で、時には一点を貫くような鋭い炎刃で。
或いは、通路から飛び出ようとしている女郎蜘蛛を炎の壁で足止めさせ、後続が追い付いてきたところで纏めて焼き払うという巧みな戦術も披露した。
有斗は素直に、織久が戦い慣れていると直感した。これならば、十分に側面を任せることが出来るだろう。
不意に、上空でドランが吠えた。
咆哮による衝撃波と、長い尾を鞭のように使った攻撃は、有斗ではなく、どちらかといえば若き討伐兵達を守るように機能していた。
「だいぶん、数が減ってきたな……後は、朽木隊長さんに任せても大丈夫かな」
「然様さな」
船内への通路を睨む有斗に、織久は周囲を見渡しながら応じた。
甲板上に蠢く女郎蜘蛛は残り三匹。この数ならば、朽木隊長の指揮のもと、若き討伐兵達もしっかり対処するだろう。彼らにも経験の場を与えてやることが、猟兵としての思い遣り、ともいえる。
「されば先ず、我が炎にて」
織久は有斗に先立って手近の船内通路へと足を踏み込んだ。途端に、右手の角の陰から女郎蜘蛛が一匹、奇襲を仕掛けるように襲い掛かってくる。
が、これも織久は夜砥による即席の罠で敵の動きを封じた。蜘蛛の糸を発する影朧が、同じ糸に絡め捕られるなど滑稽という他は無い。
「全く……喰らい尽くす程の価値も無し」
ばっさりと切り捨て、女郎蜘蛛を数匹纏めて薙ぎ払う織久。容赦が無いとは、まさに彼のような者をいうのだろう。
「討ち漏らしも無い、な……よし、いよいよ船内か」
両手で気合を入れるように、自身の頬をぱんぱんと軽く叩いた有斗。それからふと、彼は上空のドランを見上げた。
流石にこの船内、あのドラゴンの姿のままでは一緒には入ることは出来ないだろう。有斗はドランをツインランスに変身させた上で、船内に連れてゆくことにした。
「さぁ……ここから先は、ある意味冒険だね」
「油断は禁物ぞ」
織久は怨念の炎をゆらゆらと揺らめかしつつ、有斗を先導する形で船内へと足を踏み入れていった。織久の意識の中には、船底付近に広がる空間が、どうにも気になっていた。
あそこに何かある──そんな予感が今の彼を突き動かしているといって良い。
「さぁ~、いよいよ盛り上がって参りましたッ!」
カノンの幾分調子に乗った声が、船内通路に勢い良く木霊する。有斗は苦笑しつつ、織久の背後を守る格好で後に続いた。
成功
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第2章 集団戦
『怪異『泡沫の人魚』』
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POW : 泡沫の夢(地形変更)
自身からレベルm半径内の無機物を【地形を水辺にした後に大渦】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : 泡沫の夢(拘束)
質問と共に【自身の身体から相手を拘束する泡】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : 泡沫の夢(無限爆破)
対象への質問と共に、【自身の身体から】から【戦場を覆うほどの爆発する泡】を召喚する。満足な答えを得るまで、戦場を覆うほどの爆発する泡は対象を【増殖と爆発の繰り返し】で攻撃する。
👑11
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甲板上の女郎蜘蛛は全て駆逐され、船内の狭い通路内からも敵は姿を消した。
だが、影朧の気配はまだ有り余る程に充満している。
それは、船底の倉庫から噴き上げるようにして、漂ってきていた。
若き討伐兵を率いる朽木隊長は一気に船底へと隊を進め、そこで思わず言葉を失った。
船底倉庫は、腰まで海水に浸かる巨大な水辺へと変貌していたのである。
「これは、拙いかも知れん」
朽木隊長はすぐさま、若き討伐兵達を一旦船底から退去するように命じた。が、その時、彼の背後に迫る影が水中を不気味に突き進んできた。
それはひとでもなく、大魚でもない──恐ろしく凶悪な表情を面に張り付かせた、泡沫の人魚だった。
黒影・兵庫
あぶない!隊長さん!
(隊長さんたちを庇うように敵に対峙する)
ここは俺たち猟兵に任せて皆さんは速やかに退却してください!
敵の攻撃を『見切り』して『武器受け』で防御しながら『衝撃波』で敵をけん制して
敵の接近を防ぎながら隊長さんたちが無事に退却できるようサポートします!
敵のUCの質問はせんせーが『第六感』で質問の先読みをして回答を作ってください!
俺はそれを回答して『言いくるめ』ます!
回答中にひそかに{皇糸虫}を『念動力』で操作して敵に絡ませ『ロープワーク』で一塊にした後
UC【亜空の流砂】を発動するので引込兵さんは敵を亜空間へ引き込んでください!
松月・撫子
たまゆらに 言の葉鳴りし 船の底
地の利は敵にあり、不用意に踏み込むのは悪手でしょう。
その上、こちらの動きを大幅に制限してきますね。好き勝手させないように迎え撃てる体勢をとりましょう。
【花嵐】を展開。符を花に変え、迎撃しながら攻撃に転じる隙を探します。
質問……何を質問されるかわかりませんが、嘘をついたり隠しだてするようなものは特別ありませんのでお答えしましょう。
ちなみに、わたしの扱う桜の花弁は松月という八重咲きの桜です。
回答して相手のUCが弱まった瞬間が狙いどころですね。花嵐はわたしを中心に展開されますので、有効範囲まで接近します。
木常野・都月
腰まで水が…この状況だと、俺の使う攻撃系の術は殆ど使えない?
使っても相殺されるか最悪こちらが怪我をしかねないか。
それなら…今の俺で出来る最善を尽くすしかない。
UC【俺分身】を使用したい。
俺と分身それぞれ自分に[オーラ防御]を付与。
後は…駄目元で敵に[範囲攻撃、催眠術]を。少しでも弱らせたい。
水の精霊様には、水の抵抗を減らして貰うよう、頼んだ上で…
分身も俺もダガーに持ち替えて、[野生の感、第六感]をフル稼働、分身と俺の2人で、各個撃破を狙いたい。
敵からの攻撃は[ダッシュ、逃げ足、武器受け、カウンター、見切り、激痛耐性]あたりで凌ぎたい。
使えるかどうか分からないけど[水泳]も無いよりマシ…か?
霧ヶ峰・星嵐
さっき客室で見た爆発の跡、あれをやったのがこの影朧とは思えません。
まだ真打ちが控えていそうですが、まずは目の前のことからです!
【鉄壁跳躍】を使用、忍者装束からプレートアーマーに早着替えしつつ大盾に変形した月ノ輪で學府の同輩や他の猟兵をかばいます、ユーベルコヲドによる瞬間移動であれば足場の悪さは問題になりません!
敵の泡の規模次第ですが、余裕があれば怪力で大盾を水面に叩きつけ、水しぶきで放たれる泡を防ぎます
質問はどんなものがくるかは分かりませんが……知られて困るようなことはたぶんありません! 答えられるものなら真実を答えます
自由に動ける状態で敵が近くにいれば大盾による打撃で敵を攻撃していきましょう
朽木隊長の背中目掛けて必殺の一撃が炸裂しようとしたその瞬間、いつの間にかプレートアーマー姿へと変じていた霧ヶ峰・星嵐(桜幻朧・七変化・f22593)が割って入り、大盾に変形した月ノ輪を壁の様に押し出して構え、敵の攻撃を正面から受け止めた。
「さぁ早く、上層階へッ!」
いきなり現れた星嵐に驚きつつも、朽木隊長は短く頷き返し、水辺から退避しつつある若き討伐兵達を、懸命に階段の上へと押し上げていた。
すると、今度は別の角度から水中の敵──泡沫の人魚の一体が飛沫を上げて襲い掛かってきた。
「危ないッ! 隊長さんッ!」
が、今度は黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)が敵の攻撃を受けて立ち、逆に衝撃波を叩き込んで、泡沫の人魚を水中へと弾き返していた。
別の泡沫の人魚が、不気味な笑みを浮かべて質問を投げかけてきた。同時に放たれた泡が、兵庫の全身を一瞬で捕らえる。
あなたの大好きなひとは?
最初、兵庫は彼の精神の中だけに常に居続ける恩師の蜂皇族に、質問の答えを用意させるつもりだったが、今浴びせられた問いには自分で答えることが出来た。
「そりゃ勿論、せんせーッ!」
直後、兵庫は自由になった。彼は亜空の流砂を発動させ、出現した引込兵に目の前の泡沫の人魚を、攻撃対象として指示した。
「引込兵さんッ! 敵を亜空間へ引き込んで下さいッ!」
兵庫の言葉に忠実な引込兵は、恐怖で顔を引きつらせている泡沫の人魚を一体、力ずくで異界の穴の中へと引きずり込んでゆく。
「たまゆらに、言の葉鳴りし、船の底……」
一句詠んでみた松月・撫子(詠桜・f22875)だが、自身の美声の余韻を楽しむ間もなく、敵は飛沫を撒き散らしながら襲い掛かってきた。
地の利が敵にあることを、撫子はよく心得ている。それ故、最初から花嵐を展開してこちらの迎撃態勢を確立させておき、その上で泡沫の人魚の接近を警戒することにしていた。
花弁が闇の中で、嵐のような勢いで舞う。その間を突破して、一体の泡沫の人魚が撫子の面前に飛び出してきた。
八重桜の花言葉は?
だがその問いは、寧ろ撫子には味方したといって良い。これ程、彼女にお誂え向きの問いも無いだろう。
「豊かな教養」
撫子を包み込んでいた巨大な泡は一瞬で消し飛び、逆に花嵐による無数の攻撃が、目の前の敵を縦横無尽の勢いで切り刻んでいった。
敵は相手が悪過ぎたと後悔したのだろうが、時既に遅し。
撫子の鮮やかな逆転劇を、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は小さな口笛で称えた。
「流石だな……ってひとのことを誉めてる場合じゃないか」
都月は生み出した分身共々、ダガーを構えて泡沫の人魚の群れを迎撃する陣形を整えた。彼が本来得意とする狐火の技は、場所が場所だけにあまり効果を発揮しないかも知れない。
素早く判断を下した都月は、思い切って戦術を変えた。分身と共に、使える技は何でも使い、敵の攻撃を少しでも弱めて各個撃破に走る。地道だが、今の都月にはこれが最良の方法だった。
「範囲攻撃の催眠術に野生の勘に第六感……まさしく総動員だな」
ついつい、苦笑が口元を歪める。場合によっては泳いで戦うことも視野に入れていた。だが猟兵たるもの、その場その場で使える技や装備を最大限に活かして窮地を突破してこそ、その資格があるというものである。
オーラ防御で守りを固めつつ、手近に接近してきた泡沫の人魚を左右から挟撃に出る。敵も、まさかこんな地道な戦術で仕掛けてくるとは思っても見なかったのか、慌てて引き返そうとする有様だった。
だが、質問攻撃に対しては矢張り、何かの策が必要であろうと思われる。
都月は如何にして、この不利な戦局を打破すべきかと必死に思案を重ねつつ、ダガーを振るい続けた。
その時、不意に傍らで水柱のような波が噴き上がった。
水柱を立てたのは、星嵐の大盾だった。
彼女は怪力を発揮して大盾を水面に叩きつけ、水飛沫を上げて迫り来る泡攻撃を防いでいたのである。彼女もまた、都月と同じく腰まで浸かる水の中で足場を失っていたが、星嵐の場合は瞬間移動という最大の武器があった。
如何に足場を取られていようが、この能力のお陰で星嵐は泡沫の人魚の群れと互角以上に戦うことが出来ていたのである。
更にその傍らでは、兵庫が皇糸虫を念動力で操作し、敵に絡ませた上でひと塊に纏め上げている。そこへ引込兵が再び現れては奈落の底へと引きずり込んでいた。
仲間達の巧みな戦術を見るにつけ、都月も負けていられないと気合を入れ直す。幸い、水の精霊が味方してくれている為、泡沫の人魚相手には思った以上に善戦していた。
「あら……いつの間にか、囲まれていますわね」
撫子が然程の危機感も無く、冷静に分析した。都月と兵庫が同時に左右を見遣ると、確かに泡沫の人魚達は多少穴だらけではあるものの、猟兵達を包囲しつつあった。
だがこの状況は、猟兵達の側にとっては決して不利ではない。寧ろ、こちらの攻撃範囲に敵の方から近付いてきてくれているともいえるのだ。
星嵐は再び、大盾を水面に叩きつけた。跳ね上がった水飛沫は、しかし、攻撃の為ではない。単なる目くらましに過ぎなかった。
泡沫の人魚達が水柱に気を取られた瞬間に、撫子の花嵐が猛威を振るい、難を逃れた一部の敵は引込兵が背後から忍び寄って亜空間へと運び去る。
即席とはいえ、見事な連携であった。
それらの攻撃を辛うじて潜り抜けて間合いの中へと飛び込んできた敵も、都月とその分身が素早く発見し、即座に切り伏せていった。
泡沫の人魚の群れは、敵が相当に手強いという事実を漸く、悟ったらしい。包囲陣形を少しばかり広げて、泡攻撃を仕掛けるタイミングを計ろうとしていた。
どうやら、持久戦に持ち込む腹らしい。
尤も、敵の数はかなり減ってはいる。力で押し切れば、何とかなる可能性はあった。
敵が間合いを取ったことで、少し余裕が出来た。星嵐はこの時、客室で見た爆発の痕跡のことを思い出していた。
「どうか、したんですか?」
兵庫が不思議そうな面持ちで訊いた。
星嵐は、自身の疑問を素直に口にした。
「あれをやったのが、ここの連中だとは到底思えません。恐らく、真打がどこかに控えているのでしょう」
「……それはそれでまたひとつ、興に乗ってみせようというものですね」
撫子は飽くまでも前向きに、静かに笑った。
縁臨丸を包み込む謎の防御壁。それを操っている者が、必ず居る筈だ。しかし、ここに居る泡沫の人魚ではないことは、撫子も兵庫も敏感に感じ取っていた。
少なくとも、そんなことが出来る器ではないといえるだろう。
「だがその前に、まずはこいつらだな。残る数は、そう多くない」
都月とその分身は、ダガーを構え直した。星嵐も大盾を改めて、攻撃態勢に構える。
階上からは、朽木隊長や若き討伐兵らが息を呑むようにして、この戦いをじっと見つめていた。
成功
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鈴城・有斗
良かった、隊長さん達は他の人がなんとかしてくれたみたいだ。
ならこっちもやることやらないと。
特殊な能力があっても泡は泡だよな・・・カノン?
カ「判ってる、風で逸らす様にすればいいんでしょ? やってみるけどダメな時はなんとかしてよね」
風を操り泡を受け流し逸らす様に
ダメな時のためにUCダークハンドで壁を作れるように準備はしておく
遠い敵には足元から影を伸ばし敵の下に着いたら突き上げる様に細身の槍を構築
近い敵には結晶槍身を構成したドラン(ツインランス)で切りつけたりUCで纏わせた影を鞭の様に使ったり
質問には別に隠してる事も無いけど、好きな人とか悲しい別れとか答えの無いものは無いって言えばいいのかな?
西院鬼・織久
狩るべき敵を逃すは我等の恥
例え海の底に隠れようとも引きずり出してくれる
【行動】
「戦闘知識」を最大限に活かす為五感と「暗視」で暗い水中を見通し「第六感+野生の勘」を働かせ不測の事態に備える
敵の「殺気」を察知しUCに「毒+マヒ」を齎す「呪詛+範囲攻撃+武器改造」を使用。「串刺し」の要領で水を貫き爆破で敵に撒き散らす
同時に爆炎を避けるため散会する敵の動きを予測し「夜砥」で拘束。「怪力」で引き寄せ「二回攻撃+なぎ払い」
又は拘束したまま敵の攻撃の盾にした後、水中にいる敵に叩きつける
大渦は方向を「見切り」回避するが、討伐隊が巻き込まれるようならUCで中心を爆破して威力を削ぎ「なぎ払い+二回攻撃」で散らす
ほっと胸を撫で下ろして、鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)は階段上を見上げる。
朽木隊長率いる討伐部隊とは異なるルートからこの船底へと辿り着いた有斗は、先ず真っ先に、若き討伐兵達の安否が気がかりだった。
もしかしたら、船底にはびこる敵に襲われて大変なことになっているのではと、最悪の事態も視野に入れていたのだが、どうやら杞憂だったらしい。
(良かった。隊長達は他のひとが何とかしてくれたみたいだ……)
ならば、と有斗はすぐに頭を切り替える。猟兵として、為すべきことを為さねばならぬ。
この船底に満ち満ちる海水の暗い水面を眺めつつ、意識だけは妖精人形のカノン(改)へ流した。
「特殊な能力があっても、泡は泡だよな……カノン」
「分かってるって。風で逸らせば良いんでしょ? やってみるけど、駄目な時は何とかしてよね」
途端に、有斗の周辺に大気流が渦を巻き始める。
泡沫の人魚達は風の障壁に妙な苛立ちを見せ、有斗の周囲を旋回するものの、不用意に泡を放とうとはしていなかった。
一方、有斗は高い位置にある船窓の光を浴びる位置に立った。今の有斗には、影が出来る程度の光源が必要だったのだ。
(さぁ、どうくる?)
結晶槍身を構成したドラン、即ちツインランスを腰だめに構えて、周囲をぐるぐると廻り続ける泡沫の人魚達に警戒の視線を走らせる。
先ずは敵の出方を見る戦術だった。
逆に、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は積極的に敵の懐へと飛び込んでいた。織久は有斗と同じルートを辿ってきた為に、討伐隊とは途中から離れてこの船底に辿り着く格好となっていた。
「狩るべき敵を逃すは我等の恥……例え海の底に隠れようとも、引きずり出してくれる」
腰まで浸かる水で足場が悪いにも関わらず、織久は果敢に攻めた。
敵も、織久ならば倒せるとでも踏んだのだろうか。左右から挟撃する形で二体の泡沫の人魚が同時に、姿を現した。
織久は、敵に舐められている、とは考えない。寧ろ、自ら墓穴を掘った愚か者と内心で嗤った。
船底は兎に角暗いが、水中はもっと暗い。ほとんど陽光が差し込まない暗黒といって良い。その闇の中でも、織久は自在に動いた。
泡沫の人魚が両側から同時に繰り出す攻撃を難なく躱し、片方を水飛沫を貫いて爆炎を放ち、もう片方は完全に動きを封じ、怪力でその場に捻じ伏せた。
爆発を受けた側の泡沫の人魚は、撒き散らされた武具を散弾のように浴びて、甲高い悲鳴をあげた。あらゆる攻撃要素を詰め込んだ強烈な破壊力に、その泡沫の人魚はたちまちのうちに消し飛んだ。
そして怪力で捻じ伏せられた方の人魚は、織久に軽々と振り回され、盾のように扱われた。織久にとっては如何に相手が地の利を得ていようとも、全く関係が無かった。
織久がひとりで残りの人魚を引き受けてくれる格好となった為、有斗にしてみれば、他の人魚を片っ端から攻め抜いていけば良かった。
手近にいればツインランスで切りつけ、間合いが開けば伸ばした影を敵の真下に潜り込ませ、突き上げるように細身の槍を構築して、狙った相手を一撃で貫く。
ふたりの半ば意識しないままに自然と生じた連携は、残りの泡沫の人魚を瞬く間に喰らい尽くしていった。
やがて、最後の一体が織久の仕掛けた爆炎に焼かれて水中に没した。
これで終わった──と思った次の瞬間、あり得ない現象が生じた。
それまで、腰まで浸かる程もあった海水が一瞬で蒸発し、船底内は突然目も眩む程の明るさに覆われた。
いや、明るさだけではない。そこは、灼熱の火焔地獄と化したのだ。
「真打現る、か」
「……あれが、この逢魔が辻の主か」
織久と有斗は我知らず左右に並び立ち、船底の奥に忽然と姿を現した謎の少女と対峙した。
炎を操る魔人──間違いなく、縁臨丸を地獄へと変えた影朧であろう。
成功
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第3章 ボス戦
『桜火ノ少女』
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POW : ファイヤー・オン・クイーン
自身の身体部位ひとつを【、又は対象の身体部位ひとつを強力な爆弾】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD : 花散る爆弾
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【含む、生物・非生物を生きた爆弾】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : バレッテーゼボム
【指定座標に見えない爆弾を設置、起爆する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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10年前。
ある客船で、帝都に混乱を招こうとする反体制組織が砲火テロを決行した。
幸い、多くの乗客や乗員は難を逃れたが、たったひとりだけ──まだ15になったばかりの若い娘が炎に焼かれ、犠牲となった。
娘は死の間際まで、何故自分だけが、と世を呪った。世を呪い、平和を呪い、ひとびとを呪った。
その客船は、縁臨丸として再建され、再び航海の途に就いた。
だが程無くして船内で怪異が連続した挙句、死者までが出る有様となり、帝都の港に廃船として放棄されるに至った。
娘は、再び目を覚ました。
影朧として、この世に、自らの呪いを解放する為に。
木常野・都月
影朧に理性があるなら駄目元で、転生への説得をしたい。
亡くなった事は残念だけど、他の人を呪い殺しても、貴女は救われない。
転生して新たな人生を歩んで幸せになって欲しい。
こんな内容か。
説得が無理なら、残念だけど猟兵として彼女を倒したい。
さっきは敵が大勢だったけど、今回敵は1人。
コントロール可能なUC【狐火】なら船に損害は起きにくいか?
これがきっかけで、船や猟兵、討伐隊に迷惑は絶対にかけたくない。
まずは[野生の感、第六感]を使用、周囲や敵の[情報収集]を行いたい。
仮に敵が水に潜ったり、狐火が船に引火するようなら[高速詠唱、氷の属性攻撃]で対処したい。
敵からの攻撃は[オーラ防御、武器受け]で凌ぎたい。
西院鬼・織久
死の苦痛と恐怖、全てを呪う怨嗟
我等が糧として丁度良い
全て喰らい尽くしてくれよう
【行動】
敵能力を把握する為にも五感と「暗視」に「第六感+野生の勘」も働かせ、攻撃前兆や隙も逃さず不測の事態に備える
・爆弾条件が目視や距離
「先制攻撃+範囲攻撃+UC」の牽制と拘束
「怪力」で振り回して顔面を叩きつけて目視を防ぎ「なぎ払い+傷口をえぐる」
・意識で変異可能
「先制攻撃+範囲攻撃+UC」に「夜砥」を忍ばせ拘束
「毒+マヒ+生命力吸収」で意識を散らし引き寄せと同時に「ダッシュ+串刺し」
どちらも「生命力吸収」で弱らせながら行う
爆破は「激痛耐性」で耐え他の爆弾は前兆と範囲を「見切り」回避か「武器受け」からの「カウンター」
娘の姿を取る炎の影朧──あれは確か、桜火だ、と西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は傍らの木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)に囁くような声を流した。
桜火は言葉を発することなく、周囲に炎を撒き散らしながら船底の奥からゆっくりと歩を押し出してくる。彼女が一歩前へ進むたびに、彼女の内にくすぶる過去の記憶が映像となって、猟兵達の意識の中へと忍び込んできた。
「……成程、そういうことか」
桜火の凄惨なる最期の記憶に、都月は僅かながら顔をしかめた。
自分ひとりだけが命を落とした、その事実に不公平さを覚え、そして世を呪った。人間なら誰にでも起こり得る怒りといって良いだろう。だが今は、桜火は影朧だ。転生させるか倒すかせねば、今度は逆に現世を生きるひとびとの脅威になりかねない。
先ずは説得を試みようかと足を踏み出しかけた都月を、織久がそっと手で制した。
「死の苦痛と恐怖、全てを呪う怨嗟……我等が糧として丁度良い」
まるで酷薄な悪鬼そのものといわんばかりの尖った台詞ではあったが、しかし織久の瞳に宿る光は戦局を見極めんとする冷静な戦術家としての意志を伺わせた。
相手は爆炎の魔人。即ち、織久と似た戦闘能力を持っているということ。ならばここは、怨念の炎が宿る武器を得物とする織久が敵の戦術を見極める役としては、うってつけといえるだろう。
炎と爆発、その性質と弱点を知り尽くしている織久でなければ、この大役は任せられない。都月はひと言、任せると応じて僅かに退いた。
織久は五感を研ぎ澄まし、全ての感覚と圧倒的な肉体能力を全開にして、桜火に立ち向かった。
いずれが放ったのか分からない程に、船底は爆発と炎で充満した。織久はまず、桜火の動きを封じる戦術に出た。夜砥と怪力で動きを封じようと試みる。それが駄目なら得物で薙ぎ払い、爆風を巻き起こして逃げ場を全て潰す。
反撃が来れば痛みに耐え、ヤバそうな爆発が続けば間一髪のところで見切り、再び得物を突き込む。
僅か数十秒の攻防だったが、見つめる都月には一時間をも超える激闘のように思えた。
「全てを喰らい尽くしてくれよう」
桜火を挑発し、全ての攻撃を一身に受けようと試みる織久。倒されるつもりは毛頭無かったが、敵を狩り、その怨念の糧とするならば、自らを囮とすることも厭わない壮絶な戦術だった。
織久は、敵の生命力を吸収し続けた。であるにも関わらず、桜火には全く弱った様子が無い。その湧き出るような生命の根源に、織久は内心で呆れる思いだった。
このままでは埒が明かないと判断し、わざと打撃を被ったように見せかけたところ、敵は織久の予想通り、幾らか油断して間合いの内に踏み込んできた。
ここが勝負どころだと一気に突撃し、桜火を串刺しにせんと仕掛けたが、桜火は思いの外、身軽だった。瞬間的に薙ぎ払って追い打ちをかけてみたが、織久の得物は僅かに届かず。
と、そこへ都月が割り込んできた。
これ以上は幾ら織久でも拙い、と判断しての突入であった。
「亡くなったことは残念だけど、他のひとを呪い殺しても貴女は救われない」
こちらには、桜火と互角以上に戦い得る人材が居るということを織久が証明したところで、都月は呼びかけることにした。
このタイミングであれば、聞き入れてくれるかも知れない。
「転生して、新たな人生を歩んで幸せになって欲しい。今ならまだ、間に合う」
都月は、頬を伝い落ちる汗を拭った。熱さの為ではなく、緊張感が彼の全身を支配していた。
だが、桜火はにやりと笑った直後、爆風を叩きつけてきた。
「まだ時期尚早か」
都月は織久と共に左右に跳んで、敵の攻撃を躱した。この影朧が抱える恨みは、相当に深い。先ずは徹底的に叩きのめし、反撃の気力も湧かない程に力の差を見せつけるしか無さそうだ。
都月は狐火を駆使し、桜火の左右から攻撃を仕掛けた。幸い、この縁臨丸は総鋼鉄製の艦船の為、船底で爆発や炎上が発生しても、船全体に延焼する恐れは無さそうあった。
尤も、高熱で肺を焼かれたり、一酸化炭素で神経をやられる可能性はある。この場は、朽木隊長率いる討伐隊を上層へ撤収させる必要があるだろう。
都月は氷の属性攻撃を一瞬で完成させ、狐火との両極端な攻撃方法を駆使することにした。桜火は、都月の発想に対応し切れないのか、爆炎を仕掛けてくるものの、どのように都月の攻撃を防いだものかと思案する様子を見せた。
(理性は、あるようだ……少なくとも、考える余地は持っている)
これなら、何とかなるかも知れない。
都月は織久に目線で合図を送ってから左右に散開した。
糸口が、見えたような気がした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
黒影・兵庫
この子がこの客船の主というわけですか
説得...試す価値はありますね、せんせー。
『第六感』であの子の視野に入らないよう『見切り』と『衝撃波』で素早く移動しながら攻撃を回避します!
攻撃が一旦落ち着いたら、事前調査で『情報収集』した10年前の事件も絡めて『言いくるめ』ながら説得します!
(UC【穿つ言霊】発動)
言霊兵さん、俺の言葉を反響させて言霊にした後、あの子にぶつけてください!
『もうやめにしませんか?この暗い船に居るより、生まれ変わって晴天の桜並木を散策するほうがとても気持ちがいいですよ?』
桜火が、他の猟兵に気を取られている間に、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は敵の死角から確実に忍び寄りつつあった。
(この子が、この客船の主という訳ですか)
相手にはどうやら、多少の理性は残されているようにも見える。
(説得……試す価値はありますね、せんせー)
だが、単純に言葉を投げかけるだけでは効果が無いことも分かった。徹底的に叩きのめして反撃の意志を奪うか、或いはもっと直接に精神に働きかける方法でなければ、如何なる言葉もあの影朧には届かないだろう。
ではどうすれば、桜火に自分の言葉を心に響くものとして刻み付けることが出来るだろうか。
「今は、これしか無いかもですね」
兵庫の決断は、早かった。彼は桜火の不意を衝くようにして傍らから姿を覗かせ、相手が驚いたところで衝撃波を叩き込んだ。
桜火の爆撃戦術が一瞬だけ、止まった。
この瞬間を除いて、兵庫が説得に時間を費やすタイミングはもう無いだろう。
兵庫は穿つ言霊を発動させた。
「言霊兵さん、羽音に俺の想いを乗せて下さいッ!」
その瞬間、200を遥かに超える言霊の目に見えぬ塊が桜火の周囲を完全に覆い尽くした。ここで兵庫が発する言葉は、巨大な音波兵器にも似た反響を伴って、相手の心の壁を突き崩しにかかる訳である。
「もうやめにしませんか?」
兵庫自身は、決して大声で叫んでいる訳ではない。
だが、彼の口から発せられるひと言ひと言が、船底全体を走り回る膨大な音量と化して、桜火の鼓膜に、引いては彼女の精神に鋭く突き刺さる声の兵器と化した。
「この暗い船に居るより、生まれ変わって晴天の桜並木を散策する方が、とても気持ちがいいですよ」
穏やかな口調。
それでいて、銅鑼の様に鼓膜を激しく叩き続ける大音響。厳密にいえば、音量自体は桜火の鼓膜だけを襲っているに過ぎない。実際、朽木隊長率いる若き討伐隊員には然程の音量を届けもいない。
ただひとり、桜火の精神だけに突き刺さる爆音として、彼女の心を激しく打ち付けた。
桜火は、しかし、何かに耐えるようにして奥歯を噛み締めていた。
兵庫の声は、確かに彼女に届いている。
もう少しだ──もう少し押せば、何とかなりそうだ。
(せんせー、後少しですッ!)
思わず兵庫は、自分の目だけに映る恩師に、手応えを感じたと自慢げな笑みを見せた。
大成功
🔵🔵🔵
霧ヶ峰・星嵐
帝都とそこに暮らす人たちを守るのが帝都桜學府の學徒たる私の役目。
その中にはもちろん、帝都の人間であったあなたも含まれています。
桜幻朧・七変化! その身に積もった怨恨、呪詛、邪心、斬らせていただきます!
【桜幻朧・七変化】で桜學府制服に早着替え、ここまでの他の猟兵との戦闘から爆発の規模や瞬間を見切り回避。
オーラ防御で大きな負傷は負わないようにしつつ爆風や爆炎を突っ切り接近します。
接近したら「月ノ輪」を軍刀の形に。桜學府で学んだ剣術(戦闘知識)で戦い、破魔の霊力を込めた【強制改心刀】で一閃します
まだやり直しはできます。全てを呪うには早すぎますよ。
鈴城・有斗
(説得で転生を促そうとしてるのか。 そう望む人が居るのなら、それが許されるのがこの世界なら、リスクを負う意味だってあるはずだ)
影朧とはその苦しみを現す力だ。
今のままじゃずっと苦しいままだぞ、あんたはそれでいいのか
転生すれば、今の気持ちからは解放されるはず、もう一度明るい世界に生きられるんだ。
視えなくても存在するのなら、カノン!
カ「風の流れで違和感探せっていうんでしょ、もうやってる!」
見つけた場所に風で目印の渦を作る
爆発する筈の爆弾を治したら、果たしてもう一度起爆出来るのか?
不発して消えていくのか?
UCヒーリングタッチで片っ端から爆弾を治療し時間稼ぎ
多少遠くてもツインランスを使って伝って届かせる
「今のままじゃ、ずっと苦しいままだぞ……あんたは、それで良いのか?」
鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)は敢えて感情を押し殺した声で、静かに問いかけた。
爆炎が左右から襲い掛かってくるが、それでも有斗は、桜火に声が届くと信じて呼びかけ続けた。
「転生すれば、今の気持ちからは解放される筈……もう一度、明るい世界に生きられるんだ」
桜火はしかし、有斗の声を敢えて掻き消そうと必死になって爆風を引き起こし続けた。その姿は、有斗の目には決して拒絶しているようには見えなかった。
寧ろ、受け入れたいとさえ思っているように見えた。だが、まだ何かが彼女の中で、邪魔をしている。
その障害を取り除かなければ、桜火は有斗の言葉を受け入れられないのではないか。
「視えなくても存在するのなら……カノンッ!」
有斗の呼びかけに、いつもの明るい声が響くような勢いで跳ね返ってくる。
「風の流れで違和感探せっていうんでしょッ! もうやってるッ!」
今、カノンは有斗の為に死力を尽くして頑張ってくれている。これはと思われる個所を見つけたら、そこに風で目印の渦を作ってくれる筈だ。
ツインランスを腰だめに構えて桜火の懐へ飛び込むチャンスを伺っていた有斗の傍らに、爆風を避けて後退してきた霧ヶ峰・星嵐(桜幻朧・七変化・f22593)が、得物を八双に構えて片膝立ちとなっていた。
今の星嵐は桜學府制服を纏っている。相変わらず着替えが早い。
既に星嵐は桜火の爆炎や炎風の技を他の猟兵達の戦いから、ある程度見切ることが出来るようになっていた。仲間達がここまで蓄積してくれた情報を、活かさない訳にはいかない。
星嵐にも、覚悟があった。
帝都と、そこに暮らすひとびとを守るのが帝都桜學府の學徒たる星嵐の使命。その中には勿論、かつて帝都の人間であった桜火も含まれている。
ならば、星嵐は桜火を救うことに全力を尽くすべきだと自らに誓った。影朧となった彼女の身に積もり積もった怨恨、呪詛、邪心──それらを全て断ち切る。
それが出来なれば帝都桜學府の學徒を名乗る資格は無いと、自らにプレッシャーをかけていた。
「次の爆炎が消えた瞬間に、仕掛けます。援護をお頼みします」
「心得た。そっちのタイミングに合わせる」
有斗の応えに、星嵐は相手をじっと見据えたまま静かに頷き返した。
桜火は苦しそうに美貌を歪めながらも、再び爆炎を放ってきた。その火球が周辺の酸素を吸い尽くし、勢いが収まると同時に星嵐は駆けた。
同時に有斗も、並行するように奔り出す。彼の手が触れた爆弾は、癒しの力で起爆が極端に遅れた。こんな戦術を取って来るとは桜火も予想していなかったのか、明らかに動揺している。
次なる爆発が生じない。即ち、今の桜火は守りを失い、丸裸も同然だ。
月ノ輪を軍刀の形へと変じ、破魔の霊力をその刃先に込める。星嵐は喉の奥で気合の唸りをあげ、桜火の懐へと飛び込んだ。
闇の中で、白刃が一閃。
桜火は、見えない力で弾き飛ばされるように、分厚い鋼鉄の壁に全身を叩きつけられた。そのまま、壁に背を預けたまま、ずるずると床にへたり込む。
弱々しい笑みが、桜火の頬を彩っていた。ありがとう、といっているように、唇が小さく動いた。
「まだ、やり直しは出来ます。全てを呪うには、早過ぎますよ」
傷だらけの体躯を無理に引き起こしながら、星嵐は凛とした表情で笑みを返した。
その傍らに、有斗の姿があった。
朽木隊長と若き討伐兵らは誰ひとりとして命を落とすことなく、陽光降り注ぐ甲板へと出た。
そのすぐ後に、星嵐と有斗、そして他の猟兵達が続く。
有斗がツインランスを宙空に手放すと、ドランが再び本来の姿に戻り、嬉しそうに大空を舞った。
縁臨丸は、既に逢魔が辻ではなくなった。
「あと、もう何年かしたら、今度は彼らが帝都を守る有能な學徒として、最前線に立つのでしょうか」
「……猟兵がお払い箱になるような日がくるのが、一番なんだろうけどな」
だがそれは、まだまだ当分先の話になるようだ。
星嵐と有斗は何ともいえぬ苦笑を交わし、港を後にした。
成功
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