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城下町に潜む影

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 ここは紀州藩、和歌山城下にある城下町である。紀州藩と言えば、徳川御三家の一つである事は、言うまでもないだろう。
 町は大きく、人々にも活気がある。今は正月という事もあり、その賑わいはいつもよりも大きい。
 今日は一月二日。お昼時。早いお店は既に新年の営業を開始している。
 そんな町のうどん屋で、同心、阪井・由雪(さかい・よしゆき)はうどんを食っていた。好物の鶏肉が入った少し塩が効いたうどんだ。
「ああ、うめえなあ。やっぱりここのうどんは最高だぜ……」
 ずるっ……ずぞぞー……。
 見事なすすり上げで、うどんを完食する。そこに、由雪の手下である岡っ引が店の戸を開けて入ってきた。
「親分さん。ここにおったんやな」
「何だよ。今良い気分なんだ。少し余韻に浸らせろよ……」
「悪いけど、ちょっと事件なんや……」
 事件と聞き、由雪はふうとひとつ息を吐いた。そして、話せよと言わんばかりに肩眉を上げる。
「実は、飾り職人の忠助ってヤツが、朝から消えたって話や……」
「おいおい……今日はまだ正月だぜ? 元日は昨日だが、朝から出かけるヤツなんてゴマンと居るだろ?」
 由雪はそう言って岡っ引に返すが、岡っ引は首を横に振って話を続ける。
「本来はせや。でも、忠助は昨日の朝、つまり元日から正月の飾りつけの仕事があったんや。でも、忠助に頼んだ町民の所には一向に来やせんねやて。アイツ結構真面目なヤツでな、仕事をほっぽり出したりはせんのや」
「……成る程? で、今もまだ家にも居ない、と?」
「そうなんや。何か怪しいやろ?」
 岡っ引の言葉に頷いた由雪は立ち上がると、ごっそさん、と勘定を机に置いて事件へと向かったのだった。

 所変わってここは、グリモアベース。
「ちょっと、手伝ってくれへんか?」
 如月・鬼怒(羅刹のバーバリアン・f04871)が唐突に話を切り出した。
「実は、サムライエンパイアで正月の飾りつけをしようとしていた職人の、忠助っちゅうやつが消えたって話なんや」
 鬼怒の話を聞いた猟兵は、少し足を止めて話の先を促した。
「詳しい事は分かってへんねんけどな、どうやらオブリビオンが絡んでいるらしい。それだけは確実や」
 鬼怒が話した事件の様子からは、町の中で起きた事レベルの話だったのだが、オブリビオンが絡んでいるとなると、此方の仕事である事は間違いなさそうだった。
「ひとまずや、現場に向かって情報収集からお願いしたいねん。ちょっとした事件やけど、何らかの前触れかもしれんしな。ほな、頼むで。終わったら酒でも一杯やろう」


沙羅衝
 初めましての人は始めまして。そうでない方も始めまして。そして、あけましておめでとう御座います。
 マスターの沙羅衝です。

 今回の事件は紀州藩で起こる職人さんが消えたというところから始まります。
 詳細や雰囲気などは、オープニングを参考にしてくださいね。
 鬼怒ちゃんの話の通り、まずは情報収集から行っていただきます。
 それ以降の話は今のところ伏せておきますね。

 それでは、プレイングをお願いします。
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第1章 冒険 『消えた飾り職人』

POW   :    町中を歩き回って痕跡を探す

SPD   :    聞き込みで情報収集

WIZ   :    怪しい人物を調査

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

勘解由小路・津雲
ふむ、正月早々、職人の身に何がおこったのやら……。現段階では誰が怪しいかもよくわからん、まずは聞き込みといこう。

【行動】(SPD)現地のことは現地の人間に聞くのが一番、同心や岡っ引きに協力を求めつつ、聞き込みをしていこう(もちろん他の猟兵とも情報共有などの協力をおしまない)。いつ出て行ったのか、どこに向かっていたのか、誰かと会っていなかったか、何か言っていなかったか、などを中心に聞いていくとしよう。


松平・富嶽
飾り職人が消えた…ですか。ここは怪しい人物を調査しましょう。
「怪しい人物となると…まずは飾り職人に近い人たちを調査しますか」
と言って、調査開始。対象の主なポイントは
・忠助と親しい人
・忠助を元日に見た人
・由雪と手下の岡っ引以外の人
の3つ。
対象の人たちに会うことができれば、会って当時の様子や忠助との関係を聞く。できなければ対象の人物に近い人に会って、その人についてのことや忠助との関係について聞く。
聞く時は自身の印籠と天下自在符(てんかじざいふ)を相手に見せて
「私は松平富嶽という者です。幕府からの命で、忠助という失踪した職人について調査しています。お話を聞かせてもらえませんか?」
と言う。アドリブ可。


コエル・フーチ
【SPD】
正月早々から何やらキナ臭い話だな
新年にケチがつかないよう、なんとか無事に見つけてやりたいが

とりあえず、聞き込みをしてみよう
忠助の家のご近所に、おかしな様子はなかったか
最後に見かけたのは何時かなど話を聞いてみるとしよう。
噂話程度でも聞けることは聞いておく
関係なさそうな話の中に重要な手掛かりがある事もあるからな(第六感)



「私は松平富嶽という者です。幕府からの命で、忠助という失踪した職人について調査しています。お話を聞かせてもらえませんか?」
 松平・富嶽(忠烈義士・f02974)は、同心、阪井・由雪にそう話を切り出した。
 ここは由雪が所属する町の奉行所である。正月という事からか、殺伐とした雰囲気は感じられない。
「ああ、猟兵さん達か。でも、あなた達が関係するような事件ではなさそうですが?」
 由雪はそう言って、少し怪訝な表情で尋ねる。
「そうとも限らないみたいなんだぜ? どうやら、オブリビオン絡みである事は間違いなさそうなんだ」
 勘解由小路・津雲(ヤドリガミの陰陽師・f07917)はその銀の瞳で、真直ぐに由雪へ返した。
「親分さん。ほら、怪しいって言ったやないすか」
「そうだな……」
 由雪は岡っ引にそう言われ、ふむ、と首を傾げる仕草をする。
「例えば忠助と親しい人や彼を元日に見た人、他の岡っ引や、ひょっとしたら全く関係の無い人とかな……」

 富嶽の言葉に納得した由雪は、そのまま町の中に出た。まずは忠助の家に言ってみようという事だった。
 天気は晴れ。空気は穏やか。おおよそ事件が起きている事など想像が出来ないくらい平和だ。
「その人が同心さんなのか?」
 するとそこに、コエル・フーチ(指先の熱・f08889)が現れる。
「そうだ。今忠助の家に向かおうとしている所だ」
「そっちはどうだ?」
 富嶽と津雲はコエルにそう問うと、彼女は煙草に火をつけてふうと紫煙を吐いた後答える。
「今のところそれらしい手がかりは見つからないな」
 彼女は町の中で聞き込みをしつつ、情報を探っていたのだ。彼女が得た情報は、今年の正月は暖かいという事、何人かが餅を喉に詰まらせたという事、そして、初日の出は美しかったという事だった。
 コエルの言葉に、成る程と頷いた二人はそのまま歩き出す。
「もう直ぐ忠助の家になる……。と、ここだ」
 由雪の案内した先は、5軒くらいが連なった長屋であった。周りでは子供達が遊びまわっている所が見える。
「やっぱり、留守みたいっすね」
 一足先に忠助の家にたどり着いた岡っ引が、家の中に入って探るが、もぬけの殻という事だった。一行はならばと、同じ長屋に住む住人に聞き込みを開始した。
 何件か聞き込みをした結果は、忠助は前の晩、つまり大晦日の遅い時間まで仕事をしていたという事、そしてとても忙しそうであったという事だった。
「様子はどうだった? 何でも良い。……そうだな、例えば彼女さん、とか?」
 コエルが噂話が好きそうな中年の女性にそう尋ねた。
「いやだ。あの人はまだ独り身よぉ」
「恋人も?」
「んー。恋人はこれからね。確か気になってる人が居るから頑張るんだって話は、少し聞いたけど。ふふふっ。良いわね、若いって」
「好きな人、か……」
 その言葉を聞いた一同は、忠助が頑張っていたというのは、その好きな人の為であったのでは無いかと予想をつけたのだった。それはコエルの言う第六感的なものであったのだが、意外とそう言った勘は当たるものなのだ。
 そして津雲はもう一度、忠助の家の中を見る。よく整えられた仕事場という印象で、正月の為の出来上がった飾りが、綺麗に整頓されて並べられてあったのだった。
「確かに、真面目な人物のようだな」
 津雲がそう言うと、富嶽は頷きながら女性に礼を言う。
「良し、その辺りをもう少し当たってみよう」
 こうして一つの手がかりを得た猟兵達はまた、町の中へと聞き込みをしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

氏神・鹿糸
お正月は飾り付けの人がいなければ始まらないものね。
聞き込み。近しい人の声は大切よね。地道に、【SPD】聞き込みで情報収集して行きましょう。
忠助さんの家の近くの人々や、町民の人にお話を聞くわ。

自然に親しげに。お正月の挨拶から雑談を交えて、聞き出していきましょう。
「……そういえば、職人の忠助が行方不明と聞きたのだけれど」
噂程度でも聞けたら良いわね。
加えて彼のいなくなる前の様子も聞いておきたいわ。
「何処に行ってしまったのかしらねぇ。…何か様子や容態については聞いたことはある?」

いなくなる前の彼の様子や、噂について聞けたら撤退ね。また考えましょう。



「成る程。好きな人……ね」
 氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)は、富嶽達の情報を元に行動を開始していた。時刻は夕刻となり、少し薄暗くなって来ただろうか。
「……そういえば、職人の忠助が行方不明と聞きたのだけれど」
 彼女はそう切り出し、忠助の近所の人々が帰宅して来た所を尋ねたのだった。
「忠助かい? そうみたいだな。アイツ何処に行っちまったんだ? 真面目だけが取り得なんやがなあ……」
 話を聞いた相手は、どうやら忠助の仕事仲間という事だった。
「何処に行ってしまったのかしらねぇ。……何か様子や容態については聞いたことはある? あ、そうそう。何か好きな人がいるってのはそこのおば様に聞いたわ」
「姉ちゃん良く知っとるなあ。そうなんや。アイツ隣町の花屋の娘さんの美紀ちゃんにホの字でな……」
 忠助の仕事仲間の哲平は、そこまで言うと、言葉を止める。
「どうしたの?」
「いやあ、そういえばその美紀ちゃんと一緒に除夜の鐘を突きに行くって張り切ってたのを思い出してな」
「ひょっとして、彼が仕事を急いでいたっていうのは……」
「ああ、どうやらデートするって張り切ってたから、それじゃねえか? しっかし、真面目だよなあ。仕事をキッチリ仕上げてからデートに行こうってんだ。俺なんか、絶対にほっぽりだしてるな。ガハハハハ……」
 これは重要な手がかりとなった。彼の直前の行動が分かるかもしれないのだ。
「ちなみに、どのお寺に行くって言ってたかは知っているかしら?」
「ああ、確か『秋華寺(しゅうかでら)』って言ってたな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫谷・康行
夜になった後、黒いフクロウのような闇の精霊、ミーミトリィを呼び出し、夜陰に乗じて人々の噂話を聞き出す。必要ならば、ミーミトリィにしゃがれた老人の声でしゃべらせ、町の人を驚かせながら人がいなくなる事件について心当たりがないか尋ねる。また、怪しい話が聞けそうな場所を見つけた場合はミーミトリィを張り込ませて調査をする。康行本人も夜の酒場やうどん屋に出向き、先見話をしながら反応の怪しい人物や事件と関係がありそうな人物を探す。気になる人物がいたらミーミトリィに尾行させる。「最近、突然人がいなくなることがあるみたいだね。俺も知り合いがいなくなってしまってさ。探してみてはいるんだけど」と鎌をかけて聞く。



「兄ちゃん脅かすなよ……」
 紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)は夜の酒場の影から、闇の精霊を呼び出し、人々を驚かせては聞き込みを開始していた。
 酒場からは、まだまだ新年のお祝いと言う名目の賑わいが響いてきていた。
「最近、突然人がいなくなることがあるみたいだね。俺も知り合いがいなくなってしまってさ。探してみてはいるんだけど」
「へえ……。兄ちゃんも大変だな。でも、俺はそんな話は聞いたことねえや……」
「そう。邪魔したね」
 そう言って別れを言う。
「入ってみるか……」
 康行は精霊をそのまま店の外に出し、自身は単身で酒場『大漁』に入っていった。
「いらっしゃーい」
 そう元気なお姉さんの声が聞こえてきた。康行は、今日のオススメの魚の煮付けを注文し、席に着いた。
 他のテーブルの人々は、陽気に歌い、笑っている。
「お兄さん、この辺の人じゃないね?」
 暫く待っていると、店員のお姉さんが煮付けを持ってきてくれた。
「まあね。そうだ、この辺りで何か怪しい人物とかの噂とか聞いた事あるかい?」
 そう言って、煮付けに箸をつけて口に運ぶ。甘辛く味付けられた煮つけは、口に運ぶとほろりと崩れ、煮汁が口に広がる。
「んー。噂ねえ」
 お姉さんはそう言って人差し指を唇にあて、少し考える仕草をする。
「そう言えば、お寺の住職さんが亡くなって、新しく来た人が異国の人みたいでね。たいそうな美人さんみたい」
「へえ……。その住職さん、なんで亡くなったの? 病気?」
 康行はそう言って、少し箸を止めて聞いた。
「何か原因不明なんだって。病気っぽくも無かったんだけど、体中の血がなくなってたって噂だね」
「そのお寺、なんて言う所? 近い?」
「『秋華寺』だよ。お兄さん。あそこの山の中腹にあってね、日の出を見るにはいい場所なんだ」

 こうして、全ての調査を終えた猟兵が導き出した答えは、『秋華寺』に集約されそうだった。
「あそこか……。そういえば怪しかったな……」
 とは由雪の言葉だった。
 集まった猟兵達は、急ぎ支度を行い、由雪に場所を聞いた後に寺に向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『真の黒幕』

POW   :    鉄拳制裁で本音を聞き出せ! 怪しいヤツが尻尾を出すまで寝ずに監視しろ!

SPD   :    偽の証拠を偽造して黒幕を動揺させボロを出させろ! 死者に変装し黒幕を自白に追い込め!

WIZ   :    論理的思考を続け破綻している証言を見つけろ! 「それは犯人しか知らないはず」と口車で黒幕に言わせろ!

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秋華寺に集まった一行は、寺の門の前にまで来ていた。
 夜の遅い時間である。当然門は閉まっている。ただ、寺の中からはかがり火が燃える音がパチパチと聞こえてきていた。
 手がかりはこの中にあるはずである。猟兵達は行動を開始したのだった。
勘解由小路・津雲
秋華寺が怪しい、というのはわかった。しかし、鹿糸が聞いてきた花屋の娘とやらは、どうなったのだ? 結局忠助と一緒に行ったのか、それとも断ったのか? 忠助は仕事があったから早めに発覚した、娘はまだ行方不明に気づかれていないかもしれないな。

■行動
もし一緒に行き、現在も行方不明であったら(SPD)「おや、こんなところに花びらが。秋の華の寺と書くだけあって、こんな花が咲いているのか、見せてもらえるかい?」と寺にはない花を用意し、証拠を偽造。寺の様子はユーベルコード【式神召喚】で式神を呼び調査しておく。

まだ花屋の娘について未調査なら→そちらを調査、結果は式神で他の猟兵に伝える。

もし断られていたら 忠助乙。



ーーここで時を少し遡る。
「夜遅く失礼する……」
 津雲はどうしても、鹿糸の聞いてきていた『花屋の娘』美紀の事が気になっていたのだった。津雲が叩いた門は、その花屋『かなりや』だった。『かなりや』の場所は直ぐに分かった。ついでにその家庭事情も聞いておいたのだが、どうやら母ははやり病で他界し、父と娘で切り盛りしている問い事だった。
 すると、ろうそくの灯りがふと門から見え、一人の男性の声が聞こえてきたのだった。そして門が少しだけ開く。
「誰だい?」
「すまない。実は猟兵なのだが、単刀直入に尋ねたい事があるんだ」
 津雲はまだ怪しんでいる男性に、『天下自在符』を見せる。
「本物の猟兵さんだったか」
 そう言って、男性は門を全て開けて津雲を門の中まで入るように言う。そのまま素直に従い津雲が入ると、男性はすぐに門を閉め、閂をはめた。
「すまないね。ちょっと身内に変な事が起こってよ……」
 そう男性が呟くと、津雲は話を切り出した。
「変な事ってのは、忠助の事だな?」
「ああ、猟兵さんが動いているのか……。じゃあ、やっぱり変なんだな……。ああ、申し送れた、私はここの花屋を営んでいる五平ってモンだ」
 その言葉に津雲は頷いて、先程の単刀直入を「これは噂程度の話なのだが……」と、尋ねようとした。
 すると、玄関の奥から女性の顔がこっそりと此方を見て話しかけてきた。
「お父ちゃん。誰か着たの?」
「美紀か。ああ、猟兵さんだそうだ。安心していいぞ」
 するとその女性、美紀が明らかにほっとした表情で、玄関から出てきた。
「貴方が、美紀さんか? そうか……」
 津雲はその姿を見て、一つの仮説が外れた事を認識する。
(「攫われては居ない……。どういうことだ?」)
「あの……。忠助さんの事、何かご存知なのでしょうか?」
 津雲が考えていると、美紀は遠慮がちに逆に尋ねる。
「少し整理したい。まず、貴方は大晦日の夜、忠助さんと除夜の鐘を突きに行ったんじゃないのか?」
 ここで重要なのは、まず確かな情報を集めること。そして、その情報を持ち帰り、仲間に伝える事だ。すると、美紀は申し訳なさそうな顔で答えた。
「あの……忠助さん。待ち合わせに来なかったんです。姿は、見たんですが……」
「見たのに来なかった? どういう事だ?」
「あの晩。秋華寺がある山のふもとにあるお茶屋さんで待ち合わせをしていたのですが、忠助さん時間通りに来なかったんです。で、私帰ろうと思って腰を上げて、お寺に続く道を見たら、忠助さんがふらふらと、登っていく姿が見えたんです……」
「……様子がおかしかった?」
「はい。嬉しそうと言うか、気持ちよさそうというか……そんな感じでした。私、何かそれで頭にきちゃって、帰ったんです。……でも」
「成る程、その後に忠助が消えたから、貴方は……」
「こんな事、今まで一度も無かったんです! よく考えたら、忠助さん、そんな人じゃないし! 私、あの時必死に止めに走ればよかった!!」
 美紀はそこまで言うと顔を手で覆い、しゃがみこんでしまった。
「すまない、そんなつもりじゃなかった。……とすると、益々怪しいな」
「猟兵さん。忠助の事は私も良く知っています。猟兵さんが絡んでいるという事の意味は、私には良く分かります。お願いです、忠助のヤツを助けてやって下さい。私も、心配で……」
 五平にそう言われ、津雲は礼を言って門を出た。そして式神召喚を召喚したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

松平・富嶽
黒幕らしき人物から証言を聞いてみましょう。
「夜分遅くに失礼いたします。私は松平富嶽という者で、幕府からの命により奉行所の方と共にとある人物の行方を調べています。お話だけ伺ってもよろしいでしょうか?」
と切り出す。話を伺えるのであれば礼を述べた後に
「では、あなたは忠助さんを大晦日の晩に寺で見ましたか?」
「その時、彼は1人でしたか?」
と2つの質問。1人だと答えられた場合は
「はて、おかしいですね? 他の方からはとある女性と一緒に除夜の鐘を突くと伺っておりましたが…」
と言う。2人だと答えられた場合は
「では、最後の質問です。あなたは忠助さんをなぜそこまでご存知なんですか?」
と聞いてみる。アドリブ可。


紫谷・康行
秋華寺に集合後、誰かが門を破壊して中に入ろうとするなど騒ぎを起こしたタイミングで【消えない空色のカネンカ】を使い自分の体を透明にして騒ぎに紛れて中に入る
もし誰も騒ぎを起こさない場合は透明になった後でロープを使い塀を乗り越えて中に入る

中に入った後は物音を立てないように気を付けつつ移動、人通りがありそうな場所の物陰に隠れ聞き耳を立てる
忠助、住職の死、血を吸う/抜く怪物をキーワードに気がかりなことを言うものがいれば注意深く様子を窺う
鎌をかけられそうな言葉を聞けたら仲間と合流して訳知り顔をして聞いた単語を混ぜ込みつつ話をする。
相手が犯人しか知り得ない情報を言ったらなぜそれを知っているのかと問い詰める



「そうですか……。という事は、彼はここに一人で来たという事ですね。これで一つ作戦の確実性が増しました。調査、感謝します」
 松平・富嶽は秋華寺の門の前で、津雲の式神にそう言うと。門に進み、音がよく聞こえるように叩き、響かせた。そして暫くすると、一人の男性の声が聞こえてきた。門は閉ざされたままだ。
「何用かな?」
「夜分遅くに失礼いたします。私は松平富嶽という者で、幕府からの命により奉行所の方と共にとある人物の行方を調べています。お話だけ伺ってもよろしいでしょうか?」
 富嶽はそう話を切り出した。幕府の命という言葉に協力しない寺など、怪しい限りであるため、この言葉には従わざるを得ないはずだ。
「暫し待たれよ……」
 そう言って通用門の閂が外され、一人の僧が出てきた。
「ご協力、感謝します。実は、一人の人物の行方と言うのは、飾り職人の忠助という者なのですが、あなたは忠助さんを大晦日の晩に寺で見ましたか?」
 富嶽は用件を素早く、簡潔に問う。これは、相手に考える隙を与えない為だ。
「……忠助。そうですなあ。大晦日は此方は忙しい身で、余り他の方を見ている余裕は無いので……」
(「成る程。まずは知らぬ存ぜぬという事ですね。では……」)
 富嶽はそう考えると、次の質問を用意する。
「では、その様な姿を見たという少しの情報でも良いのですが……。確か、女性と二人で来ているはずなのですが、知りませんか?」
 富嶽はここで賭けに出る。確実な情報は此方にある。知っていれば一人と答えるはずだ。二人見たと言えば出鱈目。そして……。
「そうですなあ。少しチラリと参拝の方を見たのですが。……その様な方々は」
 その言葉を聞き、罠にかかった事を確認した富嶽が一気にまくし立てる。
「おかしいですね。確か忠助さんは、凄い浮かれた様子でこの寺に登って行ったという情報だったのですが、それすら気付かなかったのですか?」
「なな……何を、根拠に!?」
 明らかな動揺の様子である。
「今だね」
 狼狽する僧を見て、紫谷・康行が動く。
『空へ続く扉に咲く忘れられぬ空色のカネンカよ。我ら空とともに歩み空となるものなり。我が命において我らを空となせ。』
 小声でそう呟くと、康行の体が透明になっていく。そして、その二人の間をすり抜けて、門を抜け、境内の奥へと潜り込んだ。
(「あれは……」)
 康行は物陰に隠れ、本堂のほうを確認するとかがり火に照らされた人物が奥のほうで何か行っている様子が感じ取れた。康行は聞き耳を立て、集中する。
「ええい。さっさとアレを……」
「ですが、白仙狐様……」
「役立たず共め……。さっさと追い返さぬと、お主も、喰ろうてやるぞ??」
 そこまで聞くと、康行はまた、来た道を戻り始めた。門にはまだ富嶽と僧が言い争っている。そしてまた、その二人の間をすり抜けて、元の場所に戻る。
「ねえ……」
 そして、満を持して康行は言うのだった。
「貴方も喰われてしまう見たいだね?」
 その言葉に、僧は青い顔をする。
「くく、喰われるとは、そんな妖怪変化じゃ、あるまいし……な、何のこと……」
「白仙狐様。だったかい?」
「!?」
 明らかな動揺に、猟兵達が動く。
「ボロを出しましたね。乗り込ませてもらいますよ!」
 富嶽がそう言うと、猟兵達は一気に境内に雪崩れ込んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


「侵入を許しよったか……」
「で、すが……。ああ……」
 そう言って、バタリと人が倒れる音を聞いたコエル・フーチは、『フェアリーランド』で壺の中に隠れ身を潜めた。彼女はフェアリーの翅を使い、前もって寺に潜入していたのだ。
(「倒れた!? 美紀さんのためにも忠助の無事を確かめたいが、どこかに囚われているのか、それとも……」)
「一人減ってしまったか……まあ、良い。また集めれば……」
(「また、集める!? という事は、この声の主が黒幕!)
 すると、そう声を発した女性が、本殿の前まで進み出た。目の前には複数人の猟兵。
「こんな夜更けに物騒ですね。何用ですか?」
 そう言って現れたのは、美しい女性だった。猟兵達は、その姿を見て構えを取る。
 すると、猟兵達から忠助を出せ、と言った声が聞こえてきた。しかし、その言葉を女性はヒラリとかわし、煙に巻く。
「ねえ、その奥に誰か倒れているようだけど? 病気の人なのかな!? じゃあ、大変だ!! 私猟兵だから、見てあげるよ!」
 コエルはここで、先程の情報を使いながら、本殿の階段を上ろうとする。
「大事無い。大事無いぞ。寝ているだけじゃ!」
 すると女性はコエルの行く先を阻み、両者がにらみ合う。すると、コエルが一呼吸を置き、トドメの言葉を発した。
「ねえ。さっき言ったよね。私たち『猟兵』だよ! と、演技はもういいな。幕府の命に抵抗するって事だな。という事は……あなた……」
 その言葉に、女性は突然震えだした。
「ええい……。かくなる上は……」
 そして、女性の髪が白髪となり、耳が生える。
「妾が、全員喰ろうてくれるわっ!!」
コエル・フーチ
小柄な体躯とフェアリーの翅を活かして寺に忍び込もう
可能なら他の仲間が注意を引いている隙に
門を飛行で乗り越えて寺に潜入したい

美紀さんのためにも忠助の無事を確かめたいが
どこかに囚われているのか、それとも……

そもそもなんで忠助を
……職人だから何かの作業をさせているのか?

【第六感】で怪しい場所を周って【聞き耳】を立てつつ【情報収集】する
もし見つかりそうになったら「フェアリーランド」で壺の中に隠れる



「侵入を許しよったか……」
「で、すが……。ああ……」
 そう言って、バタリと人が倒れる音を聞いたコエル・フーチは、『フェアリーランド』で壺の中に隠れ身を潜めた。彼女はフェアリーの翅を使い、前もって寺に潜入していたのだ。
(「倒れた!? 美紀さんのためにも忠助の無事を確かめたいが、どこかに囚われているのか、それとも……」)
「一人減ってしまったか……まあ、良い。また集めれば……」
(「また、集める!? という事は、この声の主が黒幕!)
 すると、そう声を発した女性が、本殿の前まで進み出た。目の前には複数人の猟兵。
「こんな夜更けに物騒ですね。何用ですか?」
 そう言って現れたのは、美しい女性だった。猟兵達は、その姿を見て構えを取る。
 すると、猟兵達から忠助を出せ、と言った声が聞こえてきた。しかし、その言葉を女性はヒラリとかわし、煙に巻く。
「ねえ、その奥に誰か倒れているようだけど? 病気の人なのかな!? じゃあ、大変だ!! 私猟兵だから、見てあげるよ!」
 コエルはここで、先程の情報を使いながら、本殿の階段を上ろうとする。
「大事無い。大事無いぞ。寝ているだけじゃ!」
 すると女性はコエルの行く先を阻み、両者がにらみ合う。すると、コエルが一呼吸を置き、トドメの言葉を発した。
「ねえ。さっき言ったよね。私たち『猟兵』だよ! と、演技はもういいな。幕府の命に抵抗するって事だな。という事は……あなた……」
 その言葉に、女性は突然震えだした。
「ええい……。かくなる上は……」
 そして、女性の髪が白髪となり、耳が生える。
「妾が、全員喰ろうてくれるわっ!!」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『傾国の白仙狐』

POW   :    その精、喰ろうてやろうぞ
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり
【自身に従属する妖狐】の霊を召喚する。これは【剣】や【電撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    妾の炎に焼かれて死ぬがよい
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


白仙狐の声に構え、一斉に武器を取る猟兵達。本殿の壇上で威嚇する白仙狐と、地面で構える猟兵達という図式。
 両者がジリジリと距離を詰める。
勘解由小路・津雲
(忠助め、相思相愛じゃないか! こいつはなんとしても、無事に連れて帰らなければな……)「遅れてすまない、無事化け狐めの尻尾をつかんだようだな、加勢するぜ」

■ 戦闘
ユーベルコード【エレメンタル・ファンタジア】を使用。雨を降らせ、氷の刃にかえる……のがいつもの使い方だが、狐火による被害を拡大させないために防御的にも使いたいところ。「青竜の名をもって雨を降らせたまえ、急急如律令!」「この雨はお前が泣かせた花屋の娘の涙だと思うんだな」

(台詞の順番や内容など適宜変更してもらってかまいません)



その時、一人の猟兵が門を打ち破り飛びこんできた。
「遅れてすまない、無事化け狐めの尻尾をつかんだようだな、加勢するぜ」
 勘解由小路・津雲だ。彼は情報を式神を使って情報を発信した後、すぐに此方の寺に向かっていたのだ。そして現場に辿り着くなり即座に、状況を把握する。
「青竜の名をもって雨を降らせたまえ、急急如律令!」
 雨をもってして、現在の状況を一変させるべく、その場に一瞬で雨を降らせる。
「こしゃくな……!」
 白仙狐はその雨を嫌がっているのか、顔を袖で隠し後ろに飛び退ろうとする。
 通常の雨であれば、勿論影響はない。だが、勢いが強い雨は、それだけで打撃となり得るのだ。
 ざあ……という音から、どどど……と雨が一点に集中し始める。そして、雨がちょうど人一人程の塊となった時、一気に白仙狐を襲い、弾き飛ばした。
「この雨はお前が泣かせた花屋の娘の涙だと思うんだな」
 津雲の雨により、壇上に上がりこむ猟兵達。津雲の攻撃は白仙狐の最初の勢いを削ぐことに成功したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫谷・康行
俺が助けると言うことは無い
助かるものは自らの意志で助かるもの
彼にその意志はあるだろう
なら目の前の相手を倒すだけか

味方の後方に位置し、白仙狐の様子を観察する
彼女が何を信じ、何をよりどころにしているかを見極め
彼女が己が信じるものに頼り切った瞬間を狙い無言語りを使用
その信念を蝕み存在そのものにダメージを与えるとともに意志を鈍らせ隙を作ろうとする

「あなたが何を願っているにせよ、それは叶わない。かの者の歩みは止まらない。俺は勝たない、あなたを少し薄めるだけ、勝つのは彼らだ。」

その後も機を見て牽制のため攻撃をする
自らとどめを刺す必要がある場合は引導を渡す

戦闘後、忠助の無事を確認したら足早にその場を去る


コエル・フーチ
【WIZ】
おっと、ようやく正体を現したか
喰うとは穏やかじゃないな……お前、忠助をどうした

まだ生きてるのか、亡くなってしまったのか分からないが
先ほど倒れた人を【念動力】で壺を動かし「フェアリーランド」に入れ
壺ごと戦闘に巻き込まれない場所まで移動させておく
生きてればよし、亡くなっていても供養は必要だろう

●戦闘
ダブルバレルのショットスピリッツを構え
【念動力】で僅かにでも動きを阻害した後に
更に時間差【フェイント】を入れて
2つのトリガーを引き【2回攻撃】で「熱線の雨」の熱【属性攻撃】
95本の熱線の【誘導弾】で白仙狐に集中攻撃だ

※熱線の雨
精霊銃弾に魔力を集束、凝縮させ、それを銃に装填し撃ち出します



「お……おの、れぇ……」
 津雲の雨の雫を、ぼたりぼたりと滴らせながら、ゆっくりと起き上がり、猟兵達を睨む白仙狐。そして諸手を腰から上に向けぬうんと力を籠めると、白仙狐の周囲に青白い炎が一つ、二つと出現していき、彼女を取り囲むように円を描いて浮かび上がった。
「妾の炎に焼かれて死ぬがよい」
 左手を伸ばし、津雲に向けて怒りと共に射出した。
 ドシュ!!
 だが、その瞬間に白仙狐の左腕が弾き飛ばされ、狐火はあらぬ方向へと飛んでいく。
「ぐ……!!」
 思わぬ位置からの攻撃は、コエル・フーチの熱線だった。
 ドシュ!!
 そして、もう一発が今度は右腕を飛ばす。すると、右手側にあった狐火も寺の地面へと飛ばされた。
「喰うとは、穏やかじゃないな……」
 がちゃりとダブルバレル型の散弾銃の砲身を開けて上に向けると、放った精霊の弾丸をゴトリと床に落とす。
「そうだ、お前……」
 そして再び懐から弾丸を取り出し、装填する。
「……お前、忠助をどうした?」
 熱線により焼け爛れた両腕を抱え、コエル睨む白仙狐は、答えの代わりに全身に不可思議な術を浮かび上がらせる。どうやら、答える気は無いようだ。
「そうか、それならば構わない。後で探せば良いだろう」
「その精、喰ろうてやろうぞ!!!」
 コエルと白仙狐の声は同時に響き渡り、術と熱線も同時に放たれた。
 ひいいんという甲高い音が辺りにこだまする。そう、お互いの力が拮抗し、宙でせめぎあっているのだ。コエルの熱線の95本が集束し、一点を突き抜けようとするが、白仙狐の術がそれを包み込み、それ以上先に進めないように押さえ込む。
 だが、
『虚ろなる眼窩に見出された全き無。お前は世界に在る真なる虚。在ることは無く、虚ろにして全。残るはただ静寂のみ』
 紫谷・康行の『虚無』の『言霊』が無防備な白仙狐に突き刺さっていく。
「う……があぁぁ……」
 康行の放った『虚無』はその術を蝕んでいく。
「あなたの信念は、その精を喰う事。つまりその術があなたの拠り所。違うかい?」
 術そのものが『言霊』によって侵食していく様子は、明らかに白仙狐の神経を逆撫でする。
「おい……やめるのじゃ。……やめいと言うておる!!」
 怒り、焦り、その他おおよそ彼女が感じたことが無いであろう感情なのか、明らかなる動揺を隠しきれていない。
「残念だけど、あなたが何を願っているにせよ、それは叶わない」
 そして、その『言霊』が術を全て虚に戻した時、康行はぽつりと言のだった。
「かの者の歩みは止まらない。俺は勝たない、あなたを少し薄めるだけ、勝つのは彼らだ」
 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

松平・富嶽
現場に乗り込んで、敵の姿を見た時に
「ついに化けの皮が剥がれましたね。化け狐だけに」
と相手を挑発して、様子を見る。攻撃を仕掛けてきたら、【見切り】と【武器受け】を駆使して攻撃を避けていき、愛刀の間合いまで接近する。
「その程度の攻撃で、私を捉えられると思いましたか? 全く、舐められたものですね」
と言って、【カウンター】と【鎧無視攻撃】、【力溜め】を駆使して攻撃力重視の『富嶽新陰流・水龍突』を放つ。
「もう一つ、おまけです」
と【2回攻撃】を駆使して、さらに同じような一撃を追撃で放つ。
「忠助さんは返してもらいますよ。彼には帰りを待っている人たちがいるので」
と言って、愛刀を構え直す。アドリブ可。



 康行に術を逆に喰らわれる形になってしまった白仙狐は、自らの周囲にあるはずだった力の行方を少し捜すように見たあと、俯いてから再び猟兵を見た。
「お……おのれぇ……」
 その瞳に怒りを携え、叫ぶ。
「出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり!!」
 すると、彼女の周囲に薄く透明な、狐の姿が二体浮かび上がる。その二体は共に、剣を握っていた。
「ついに化けの皮が剥がれましたね。化け狐だけに」
 そう言ったのは、松平・富嶽だ。富嶽の言葉に、あからさまに反応する白仙狐。
(「さて、どう出てきますか……」)
 愛刀『越前守安定(えちぜんのかみやすさだ)』を正眼に構え、少し挑発するようにちらりちらりと切っ先を動かす。
 言葉と刃に挑発である。のってくればそれまで、のらないのなら、また違う方法もある。どちらにせよ、悪い方向には進まない。
「まずはアヤツから始末するのじゃ!!」
 すると白仙狐は、そのまま素直に富嶽に向けて、狐達を放った。
 その様子を少し納得した表情で、その狐達の剣を弾き、受け流す。
「その程度の攻撃で、私を捉えられると思いましたか? 全く、舐められたものですね」 高い金属音がきん、きんと響いたと思うと、白仙狐へと一気に間合いを詰めた。
『その動き、見切った。富嶽新陰流・水龍突!』
 刀は空気に滑らせるように動き、その切っ先が白仙狐の左腕を貫いた。その動きはまるで、宙を進む龍の如き動きであった。
「がああああ……!?」
 悲鳴をあげる白仙狐。だが、その攻撃だけでは終わらなかった。
「もう一つ、おまけです」
 突き、駆け抜けた富嶽は今度は背後に回り、もう一突きを、彼女の脇腹へと突き立てた。
「忠助さんは返してもらいますよ。彼には帰りを待っている人たちがいるので」
 そして再び、少しの距離を取る。
 まだ終わっていない。彼は、その事を知っている。
 その姿からは、微塵も油断が感じられなかったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

氏神・鹿糸
忠助さんを待つ美紀さんの為にも、城下町の為にもね。
安全と、幸せのために。お狐さまにはご退場してもらいましょ。

「精を集めるためにこんなことしてたのよねぇ…」
「私たちは猟兵として、忠助さんも、街の人も貴方達から守らなくては行けないのよ。」
皆が十分に攻めてくれたら…もう少しね。
戦闘ではユーベルコードを使用。相手の魅了には十分注意して、距離を取りつつ攻めていくわよ。

「お狐さまには、信じる神さまはいる?」
「これは、私の神さまからの天罰よ」
さらに「全力魔法」で、【ジャッジメント・クルセイド】を使用。
少しでも戦力を削げたら良いわね。


勘解由小路・津雲
しぶといやつめ、だがもう一押しか。いくぞ!

■戦闘
ユーベルコード【七星七縛符】を使用、相手の攻撃を封じる。また、技能【破魔】【拠点防御】【呪詛耐性】、道具【霊符】等を用いて簡易結界をはり、仲間の守りを固めて攻撃のチャンスをつくりたい。「北斗聖君の名において、汝の攻撃を封じる。急急如律令!」「守りは固めた、後は頼んだぞ!」(と、仲間に呼びかける)

(アドリブ・連携歓迎)



「精を集めるためにこんなことしてたのよねぇ……」
 富嶽の後方から、氏神・鹿糸が姿を現す。白仙狐との距離は、ちょうど他の猟兵達に阻まれて、彼女に直接の攻撃を与える事が出来ない位置だ。
(「忠助さんを待つ美紀さんの為にも、城下町の為にもね」)
 そして、両掌を舞うようにゆっくりと広げる。
(「安全と、幸せのために。お狐さまにはご退場してもらいましょ」)
 掌を天に向けると天から光が出現し始めた。
「妾の炎に焼かれて死ぬがよい!」
 しかし、白仙狐も距離があるならばと、狐火を生み出して投げる。数少なくなってしまった狐火は、即座に生み出したからなのか、3つ程しか無いが、鹿糸へと蛇行して飛ぶ。だが、鹿糸は少し笑みを浮かべて屈むように反動をつけた。
「お狐さまには、信じる神さまはいる?」
 その狐火をふわりと風に舞うように上空に飛んで避け、ついにはその指先を白仙狐へと向けた。
「これは、私の神さまからの天罰よ」
 強烈な光が白仙狐を直撃し、彼女の体の一部が変色する。それほどの強い光だったのだ。
「この光……ヤメロ。止めるのじゃあぁ……!」
 白仙狐は袖で顔を隠し、明らかに嫌がるそぶりを見せる。
 もう一押し。敵は確実にダメージを受けている。畳み掛けるなら、今だ!
「いくぞ!」
 津雲が腕をクロスさせて、真言を籠めた御札『霊符』を両手に合計6枚広げ、叫ぶ。
「北斗聖君の名において、汝の攻撃を封じる。急急如律令!」
 素早く腕を振りぬき、『霊符』を投げる。札は白仙狐の周囲に5枚、均等に停止し、そして最後の1枚が白仙狐の頭の上に停止する。
 すると、頭の上の1枚から、力が周囲の5枚に線を描くように張り巡らされた。
「云!」
 最後に気合の声を上げると、その力が一気に狭まり、五芒星を浮かび上がらせ、輝く。
「ぎゃああああ!!!」
 その力に縛られた白仙狐が、怒号を上げ、暴れようとする。だが、その度に五芒星の輝きは増していく。
 完全に動きを封じ込めた津雲は、共に行こうと言う願いを籠めて、叫んだ。
「守りは固めた、後は頼んだぞ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

松平・富嶽
「さて、化け狐退治もいよいよ終局ですね」
と言い、愛刀を納刀する。
「最後は、我が全身全霊の斬撃をあなたに送りましょう」
と言って、水属性の魔力でできた刀を生成して手に持ち、【力溜め】、【属性攻撃】、【鎧無視攻撃】を利用して『富嶽新陰流・水龍斬』を放つ。
止めを刺した場合は
「散滅すべし、化け狐」
と決め台詞。
戦闘後は生きている人たちを救出。忠助を救出した時は
「さぁ、帰りましょうか。由雪さんや美紀さんたちが、あなたの帰りを待っていますよ」
と言う。連携・アドリブ可。



 新春の夜空に、緩やかな風が吹き、月明かりが壇上に躍り出た猟兵達を照らし出した。
「さて、化け狐退治もいよいよ終局ですね」
 津雲の声に応えたのは、富嶽だ。彼は『越前守安定』を鞘にすっと納めて白仙狐に近づいていく。そして、床から畳に入り、奥へと進む。
 津雲の術に縛り上げられた白仙狐は、鬼のような形相で富嶽を見る。
「最後は、我が全身全霊の斬撃をあなたに送りましょう」
 富嶽はその視線を受け流し、両手に水の様な刀を生成していく。そして、その刀が切っ先まで綺麗に伸びた時、彼は少し膝に力を籠めて、一直線に駆け抜けた。
『富嶽新陰流・水龍斬!』
 刀が白仙狐の胸から背中を貫通し、背後に到達した富嶽を水龍の如く結んだ。
「わ、妾……。妾の、ゆ、め……が……あぁ……」
 白仙狐がそう言葉を発した時、最後に富嶽がぶんと返り血を払うかのように彼女との繋がりを切った。
「散滅すべし、化け狐」
 刀がふわりと水が弾ける様に四散すると、白仙狐はそのままバタリと倒れ、静かに消滅していったのだった。

●終章
 一行は白仙狐を倒した後、寺の奥で縛り上げられている男性を助け出した。かなり衰弱しているようだったが、どうやら命に別状は無いようだった。勿論、その男性とは忠助だったのだ。
 忠助は意識が朦朧としていたが、富嶽や津雲に美紀の事を話すと、途端にはっきりとした声で、美紀ちゃんは大丈夫か? などと言う物だから、全員から、お前が大丈夫か? という突っ込みを受けたのだった。

 ずるっ……ずぞぞー……。
 店内にうどんをすすり上げる音が響く。何一つ変わらない、町のうどん屋である。
「でも、めでたしめでたし。ね?」
 鹿糸が物凄い勢いでうどんを完食すると、そのままおかわりを注文する。
「まあ、これでやっと新年を迎えたというものだ」
 コエルはそう言って、昨晩の事件を考えている。既にうどんは食べた後のようで、煙草をふかしている。
 康行は忠助の無事を確認した後に、姿を消したようだったが、他の猟兵達は事の顛末を同心の由雪に詳しく話すために、夜が明けた後に集まったのだった。どうやら由雪は忙しいらしく、このうどん屋で飯でも食べていてくれと言われて待っていたのだ。
「いらっしゃーい!」
 その時、うどん屋の扉が開き、他の客が入ってくる。
「おっと、主役の登場だな」
 津雲が入り口に視線を向けた先に立っていたのは、忠助の恋人である美紀であった。津雲が手を振ると、彼女は猟兵達の前まで来て、深々とおじきをする。
「猟兵さん。本当に、有難う御座いました!」
 顔を上げた美紀の表情はくしゃくしゃになっていた。どうやら彼女の話では、忠助はゆっくりと回復に向かっているそうだった。
「良かった。早く元気になって下さい、とお伝え願えますか?」
「勿論です!」
 富嶽の丁寧な声に、元気に返事をする美紀。この様子なら、大丈夫だろう。
「相思相愛だから、これから先、幸せにな!」
 津雲が少し茶化して、笑う。すると美紀は、もう、からかわないで下さい、と可愛らしく頬を膨らませたのだった。

 こうして、紀州藩で起こった事件の一つは終わりを告げた。
 新年を迎えた町はまた、活気に溢れていくのだろう。
 もし事件が起きれば、また自分達が飛んでいけばいい。その為の猟兵なのだから。
 うどん屋を出た猟兵達が見上げた空は、雲ひとつ無い、青空だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月23日


挿絵イラスト