エンパイアウォー⑰~因果応報、その名は晴明
魔軍将。織田信長配下の、強大なる幹部級オブリビオン。
その中でことさらに人命を軽視し、それでいて意図の測り知れぬ敵がひとり。
それこそが、安倍晴明。陰陽術の大家たる歴史に名高き術師、だが……。
「もはや言うまでもないが、かの敵は強大である。そして予兆を見たものも居よう……」
どうやら、魔軍将の中にも、我々が知らない『何か』を知るものが居るらしい。
そのような強大な敵を放置することは、たとえ戦争に勝利しても不穏の影を落とすこととなる。
「ゆえにこの戦い、エンパイア・ウォーの大勢には影響しないが、無視は出来ぬ。
死闘となるのを覚悟の上で挑んでくれる者だけが、ワガハイの話を聞いてほしい」
グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアの声音に、茶化す気配はない。
敵の居城は鳥取城。餓死した人々の壮絶な怨念が渦巻く魔境。
水晶屍人による奥羽地方蹂躙は、多くの猟兵にとって記憶に新しい。
あのような無惨な事態を巻き起こした敵が、怨念渦巻く魔城で何を待つのか。
……あるいは、単にこの戦に興味なく、呆けているだけなのか。
なんにしても、討たねばならぬ。その点において、その場に残った猟兵たちに異論はなし。
だが敵は、いかなユーベルコードにも先んじて己の攻撃を叩き込んでくるだろう。
そしてその存在を完全に滅却するには、幾度も立ち返る敵をその都度倒すほかにない。
「絶対先制、そして即座の復活再生。この二つを覆すにはオヌシらの知恵と勇気が必要だ。
屍人と怨霊を操る稀代の陰陽師を相手に、いかに戦うか。けして油断せず熟考してくれ」
アドバイスと言うには、あまりにも心もとない言葉である。
己がそんなありきたりな言葉しか吐けぬことに、ムルヘルベル自身がため息をついた。
「"死すべきときを知らざる人は、生くべき時を知らず"。
……とある篤志家の言葉だ。彼奴にこれ以上、死者を愚弄させてはならぬ」
その非道の然るべき報いを、滅びを以て与えるために。
賢者が本を閉じたとき、転移は始まった。
唐揚げ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
カルメ焼きです。以下は本シナリオにおける注意事項。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
という具合です。つまり、作戦が重要になります。
強敵との戦いである関係上、合同プレイング以外の同時採用は基本的に行いません。
また、完結をある程度優先するため、採用数は普段より抑えめになる可能性があります。
以上の点をご承知のうえ、ご参加くださる方はどうぞご健闘を。
では、前置きはこのあたりにして。
皆さん、シリアスにキメつつよろしくおねがいします!
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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●業魔
そもそも安倍晴明とは、その生き様の脚色が特に激しい人物である。
現代で言えば気象予報士のようなものであった、とする現実的なものもあれば、
荒唐無稽な妖しの技を以て、内裏を騒がせた美丈夫である……とする史料もある。
仮に。
この場にいる"それ"が、サムライエンパイアにおけるそのものであったとして。
ならばなぜ、復活を果たしたはずのこの――おそらくは――男は、飽いているのか。
他者はおろか、己の在りようにすら関心を抱いていないような面持ちなのか。
わからぬ。謎だ。だが確かなことはひとつ。
「大悪災が討たれた今、猟兵とやらの関心はこの私に向けられることでしょう。
願わくばその者らの怒りと力が、私の興を掻き立てるようなものであればよいのですが」
斯様にすべてに飽きながら、人の生を、死を弄ぶ外道はあってはならぬ。
非道誅戮。怨念渦巻く魔城を舞台に、驚天動地の死闘いざ幕開けん。
●プレイング受付期間
【19/08/15 08:30】~【19/08/16 23:59前後】
宮入・マイ
笑えるネタだったらマイちゃん気にしないっスけどね。
屍人もマイちゃん的には面白かったっスから…晴明ちゃんも面白いっス?
とりあえず腕をちぎってぶん投げるっス。
多分普通に躱すんじゃないっス?
そんなところにUC無駄撃ちしたくないと思うっス。
まぁ、マイちゃんの本体は投げた腕の方に隠れとくっスけど、身体はどうぞお好きなようにっス。
『アーちゃん』にまみれてチェーンソー剣もボロボロになっちゃえっス。
後は切り刻まれてる間に投げた腕から『サナダちゃん』伸ばして齧るっス!
【細部破綻の物知り】っス!
晴明ちゃんの真似っこ開始っス!
びっくりしたっス?
少しはその顔崩せないとマイちゃんの沽券に関わるっスからね。
きゃっきゃ。
●業魔覆滅:宮入・マイの段
人でない自分にとって、屍人の犠牲だの、死者の冒涜だのはどうでもいい。
興味がない。それが笑えるネタ、楽しめるものならば何も気にしないのだ。
一般的な人倫や道徳からは甚だ逸脱激しいと言わざるを得ないが、
そもそもマイという女は人ではない。個体の生物ですらない。
群れをなす蟲たちが、効率と指向性の観点からヒトの姿を取ったのみ。
「だからマイちゃん、晴明ちゃんも面白いか確かめに来ただけっス~」
事実、それで彼女はすでに、この敵の別個体の討滅に成功している。
であれば、オブリビオンに多少の差異はあれど――やることも、結果も変わるまい。
「…………」
一方で、相対する安倍晴明は、いやに人の不安を誘う瞳を、すっと細めた。
まるで、目の前に立つこの女……女の姿をしたおぞましい生命体の、
その本質を見抜こうとするような。あるいは、発言の意図を探るような。
「なるほど。あなたは然様なものにございまするか。猟兵とはまこと不思議なもの」
「……マイちゃんのこと品定めするのは、あんま面白くないっスね」
厭な感じだ。安倍晴明のそれは、戦いのスリルに酔いしれた狂人だとか、
心すり減った修羅が行うような、強者との死合を求めてのそれでは……ない。
たとえるならば、道端に落ちていた死にかけの虫をじろじろと眺め、
取るに足らぬ存在の最期を興味本位で見届けるかのような……。
あるいは、無邪気な子供が、虫の羽根をもぎ取って残酷に遊び苛むような、
そういう類の――ひどく無機質で、そして絶対的に傲慢な目であった。
いいだろう。そんな顔で相対するならば、それをかき乱してやる。
そして戦場を引っ掻き回して、カオスにして、面白いようにしてやるのだ。
「少しはギャグにしてかないと、マイちゃんの沽券に関わるっスからね!」
強者ぶって、あんな取るに足らぬ小石を見るような目で己を測ることなど、
己を前にして意に介さぬことなど、ましてやその驕った雰囲気を保つことなど、
面白おかしく日々を生きる女の姿をした化け物には許されざる行為。
嘲って、踏みにじって、面白おかしく捻じ曲げて、きゃっきゃと笑ってやろう。
「然様にございまするか」
……晴明の興味なさげな相槌は、それだけでひどく癪なものであった。
わかるのだ。奴には、そうやって皮肉めいて"己を揶揄するつもりすらない"。
心底からどうでもいい。こういう敵ほど、からかって遊ぶのが面白い!
マイは己の片腕をやおら引きちぎり、それを投擲して敵の注意を、
「え」
惹こうとした。
正しくは、それをブラフに、体という囮に惹き付けようとした。
突然片腕を投げつけられて、そんなものをいちいち引き裂く敵はいまい。
ならば、本体を喪った身体のほうを、敵はまんまと引き裂くだろう。
その間に不意打ちを仕掛け、さらにブービートラップと貸した身体から、
液体寄生虫を染み込ませ、あの剣呑なチェーンソー剣を錆びつかせ破壊する。
なるほど、その身体の特異性を利用した、奇妙キテレツな作戦であると言えよう。
ただしそれが、尋常の敵ならば、だが。
「噫」
鋸刃に纏わりつく虫の群れを呪詛で灼きながら、晴明は他人行儀めいて言った。
「やはり、あなたがた猟兵でも、私の興を掻き立てるには至りませぬか」
……何を、された?
簡単だ。"投げつけた腕もろとも、胴体を真っ二つに引き裂かれた"のだ。
安倍晴明は強大な幹部級オブリビオン。能力はもとより、
そもそもオブリビオンとしての存在格、力、全てが他の個体を凌駕する。
同じ"抱きつく"でも、人間の赤子と強靭な獅子では、もたらす結果が違うだろう。
同じ"噛み付く"でも、ネズミと虎では、噛まれた人間がどうなるかは一目瞭然だ。
"そういうもの"なのだ。斯様に強大な敵と相対する、ということは。
力の強さ、技の速さ、頭の回転、知恵、霊力、魔力、呪力、およそすべての力――。
圧倒的であり、絶対的であり、だからこそ倒すには相応の覚悟が必要となる。
「か――」
「そちらでございましたか」
――ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!
こぼれ落ちた本体を、呪詛を纏うもう一振りの鋸刃が容赦なく抉った。
悲鳴はない。悲鳴は人が出すものだ。人のカタチをした化け物はのたうつのみ。
蠕動する虫の群れが血の如くに撹拌し拡散し、かろうじてその存在を留める。
死なぬ。あるいはそれが、此度においてはマイにとっての不幸だったか。
「……マイちゃんの、沽券に関わるんっスよ、その顔……」
女の姿を形作ろうとして、六割近い群体が脱落したそれは、半分だけ再生した顔でそう言った。
飛び散った身体の一部が、チェーンソー剣とそれを握る晴明の手に纏わりついている。
「真似っ子開始っス……少しはびっくりさせて、やる……!」
「私を、模倣なさる? なるほど、むべなるかな。ならば」
ぎゃり。ぎゃりぎゃりぎゃり。刃から異音をさせながら、王は一歩踏み出した。
「私のこの生への飽きさえ、あなたが模倣なさるかどうか、試すといたしましょう。
――不死なるこの身と異なり、あなたがどれだけ痛みを耐えられるかは疑問にございまするが」
そこで初めて、晴明は嗤った。人の笑みではなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
神酒坂・恭二郎
「嫌な面だねぇ。だが、気持ちは分らなくもないな」
永遠に死を失えば、生きながらにして屍になる他はない。
無限の生は無限の死と等しい物だ。
「まぁ、それはそれとしてお前さんの性根自体が好かんのだがね」
台無しにする一言で開戦する。
先制を取れる相手ではない。
初撃に対し【見切り、クイックドロウ】で居合い抜きで受ける。
合せに風桜子を炸裂させ【衝撃波、吹き飛ばし】で強く弾いて崩しを狙う。
【残像】で間合いを狂わせ、二撃目を前に八双の構え、UCでの刷り上げの一刀で【カウンター、早業、呪詛耐性】の変形切り落し狙いだ。
神滅の刃を前に無謀だが、死を必する【覚悟】の【捨て身の一撃】だけが、万死の中に一生の道を拓き得るのだ。
●業魔覆滅:神酒坂・恭二郎の段
――ギンッ!!
「ほう」
冴えた一刀である。真一文字の剣閃には些かのブレもなし。
然様な刃を、晴明はその鋸剣を以て弾き、かくて両者は間合いを再び離した。
恭二郎から仕掛けた形である。見ていられず"待った"をかけたのだ。
敵からの反撃は、ない。そもそも彼奴と己の戦力差は絶対的であり、
あれが"本気の攻撃"ならば、とうに彼奴は絶対先制を容赦なく振るっただろう。
防げた一撃を、ただ防いだ。だがともあれ、それで彼奴の意識を逸らしはした。 晴明の足元、女のカタチを喪った群体が飛び散っている。おそらくは生きている。
ならばそれでいい。危険を冒した甲斐はある、というものだ。
「なるほど。あなたは"これ"の、知己か何か……縁を結んでいらっしゃる」
「……厭な面だねぇ」
敵の戯言に構わず、マイへの攻撃をインターラプトした恭二郎は、端的に言った。
晴明は嗤っていた。おそらくそれは、人の表情で言うならば笑みが近い。
人の姿をしている。だのにその表情は、まるで人のそれをしていない。
「永遠に死を失えば、生きながらにして屍になる他になし。無限の生は無限の死だ。
……味わったことはないが、その気持ち。剣士としてわからなくはない」
武道とは、技術とは、どんなものであれその頂点を目指して挑むものだ。
研鑽し、鍛錬し、いつか唯一絶対になれると信じて卓越していくものだ。
不思議な話だが、しかしてそれを一足飛びで満たしたところで意味はない。
意地の問題、と言ってもいい。苦しく辛い道のりだが、それを歩むことに意味がある。
「賽の目を楽しむってぇのは、そういうことだと俺は思うがねぇ」
「いかにもその通りにございまする。噫、我が身の飽きること……」
「……まあ、それはそれとして」
ぎらり。嗤う王を、剣豪は凄まじき威圧と眼光を以て射竦めた。
「お前さんの性根自体が好かんのだがね、俺は」
「――……」
……死闘に参じ、あまつさえ他の猟兵の介錯に待ったをかける。
愚行ともいうべきそれの理由としては、あまりにも興醒めな一言である。
だが。
「噫」
晴明は体を震わせた。歓喜に浸るようでもあり、怖気をこらえるようでもあり。
「人の心とは、結びつきによって頑丈になるもの。やはりこの世界でも同じでありまするか。
いえ……あるいはそれこそが、猟兵、あなたがたの強さなのか……ふ、ふ」
もはや恭二郎は意に介さぬ。敵が"来る"と彼の全細胞が察知したからだ。
来るとは、わかっている。わかっているから見切れるというものではない。
されど恭二郎は居合を構えた。その身に爆発的な風桜子が充足していく。
「受けると? 私の剣を? よもや、真正面から?」
「――……そうしねぇと、俺とあの子の沽券に関わるのさ」
もはあ無言。両者の間の空気がゼラチンめいて凝り、歪み、滲んでいく。
5秒か、10秒か。張り詰めた空気が――。
音もなく爆ぜた。必殺の潮目!
「!!」
恭二郎は目を見開く。眼前には白き王の如き異物、鋸刃がのたうつように走る!
だが遅い。わずかにだが鈍い! 刃に絡まるマイの蟲たちの成果だ!
「――疾ッ!!」
ガ、ギン……! パァンッ!!
そして再び大気が爆ぜた。此度は音を以て、たしかに波を伴い、爆ぜた!
「ほう」
晴明は感嘆した。そしてその体幹が、わずかに、わずかに乱れた。
――ギャリ、リ、リリリギギギギギ……!!
「……ッ!!」
ばきり。恭二郎が噛み締めた奥歯にヒビが走る。さもありなん。
風桜子の破裂を以て、刃をとどめはした。だがそれで完全に崩すことはできぬ。
鈍くなったとはいえ、鋸刃はその身に埋まり、巡り、肉を削いで骨を壊す。
脂汗が噴き出す。意に介さぬ。居合は成れり! 踏み込んでの二刀――否!
「!」
瞠目した。晴明は瞠目した! 来ると見えた剣閃は恭二郎の剣気が見せた残像!
己の呪詛籠もりし刃、恭二郎は先んじるのではなくこれを迎え撃つ構えだ!
(――あいにく。俺はもう何度も、死線を潜ってきてるのさ)
脳裏に過去の戦いが去来する。そして流れていく。時に沿うようにして抜刀。
すり上げの一太刀。決死の覚悟を込めた銀河一文字、白々と敵を裂く!
「……は、は!」
これだ。これこそ。噫、これこそまさに我が貪りに等しき業なり!
ざっくりと剣閃を穿たれながら、晴明は嗤う。愉快げに。笑う。
――万死の中に一生の道を拓く、これこそが、人の……!!
成功
🔵🔵🔴
オブシダン・ソード
【剣狐】
戯れで色々やりすぎじゃない?
良いけど、僕の相棒が君とは相容れないらしいから
斬らせてもらうよ
斬りかかり、初手の先制攻撃をこちらに誘導
ぎりぎりでダークネスクロークでもあるマントを外して、目くらまし兼囮に
二撃目の間合いを外して凌ぐ
オーラ防御と、呪詛には魔を破る力で対抗
いすゞへの先制攻撃に対しては、手を取ってUCを発動
その子に手を出すのはやめてもらえる?
先制攻撃が凌げたらいすゞのUCに手を貸す形で攻撃
死角から攻撃が来るなら警告を
隙を見つけたなら指示を
君の力を見せてやってよ、とか煽って鼓舞も行う
如何に高名な陰陽師だろうと、この刃の下では皆平等だよ
ぶった斬ってあげようじゃないか
行くよ相棒
小日向・いすゞ
【剣狐】
本当止めて欲しいっス
陰陽師が皆性悪だと思われると商売上がったりっスよ
初撃外す気無いっスか?
残念っス~
相棒が一瞬でも時間を稼いでくれりゃ
器物と化した彼を手に取り
あっしは武器受けの良いオンナっスから
受けきって見せるっス
やってやるっス
気合っス
高名たるセンセの名はあっしも知る所
例えカス男でも陰陽の技で向かってみたい気持ちは在るっス
その上であっし一人の未熟な技じゃ勝てない事も理解してるっス
しかし魔を破る力まで棄てちゃいないっスよ
応援と指示は任せたっスよ相棒
…期待が重い剣っスね
逃げ足にゃまま自信があるっス
駆けて、受けて、斬るしか出来ないならば
駆けて、受けて、斬るだけっスよ!
はぁいはい
やるっスよ相棒
●業魔覆滅:剣狐の段
ふたりで肩を並べて――いいや、柄を握って――戦うのは、これで何度目か。
強敵……すなわち、幹部級オブリビオンと相対したことも、初めてではない。
先のキマイラフューチャーにおける大戦争、バトル・オブ・フラワーズでも、
あの恐るべき欲望の権化、ドン・フリーダムに敢然と立ち向かったのだ。
小日向・いすゞの陰陽術と、オブシダン・ソードの変身能力。
そこにふたりの絆と信頼・機転・知恵が合わされば、敵はない。
……はずだ。いや、それを慢心と誹ることが出来る者はまず居まい。
ふたりの強さは、向かうところ敵なしと嘯くに足るだけのものがあるのだから。
だが。
それでもなお。
目の前に相対した――やや傷を負ってはいるが――敵のそれは。
彼奴が放つ、まったき"屍"と"業"の気配、そして外套めいて纏う怨念の強さは。
……この世の全てに飽いているかのような、虚無的なその双眸は。
明らかに生者のそれではない。さりとて、死を乗り越えた屍者のものでもない。
「……本当、やめてほしいっス。そういう顔で、その名前を名乗るのは。
陰陽師の大御所がそんなんだと、あっしらみんな性悪だと思われるっスよ。
しかし、いすゞは退かぬ。無限に欲望を求める女は、すでに超えてきた道程。
死を弄びすべてに飽いた敵など、何するものぞ。ましてや己は陰陽師。
その名を知らぬはずもなし。陰陽術の大家、伝説を超えた神話そのもの。
相手に取って不足はない。多少の威圧感など覚悟以前の前提というものだ。
「僕は別にいいんだけどね。君は、戯れで色々とやりすぎたようだ。
そして――僕の相棒が、君とは決して相容れないと確信したようでね」
ばさり。マントをはためかせ、オブシダンがいすゞの一歩前に立つ。
今のその姿は、ヤドリガミたる化身――すなわち人の姿である。
「商売上がったりなんで」
「そういうわけだから」
「「斬らせてもらうよ(っス)」」
剣狐の声が重なった。対する晴明は……くくっ、と、喉を鳴らして嗤った。
「なるほど。義憤に非ず、使命感に非ず。言わば矜持と繋がりにございまするか。
それもまた、人の強さというものでございましょう。ええ、善き哉。実に」
囀るような声。されど、そこに嘲りだとか、皮肉めいた感情は籠もらない。
"よく知っている。だから、そんなものはどうでもいい。飽きた"。
……と、晴明は言っていた。言葉にせず、されど言葉と表情でそう云った。
取るに足らぬものだと。ふたりを、ふたりの道程を、ふたりの全てを、断定したのだ。
一振りの剣たる己に、使われるための道具である己に、矜持などない。
嘲られようが、嗤われようが、皮肉を言われようが、意に介さぬ。
その真の姿に相応しき、鋭く、硬く、されどシンプルな在り様ゆえに、
オブシダンが精神戦において遅れを取ることは、ほとんどない。
(――いいだろう)
だがそれでも、無価値と断ぜられたならば、武器として思うところはある。
もとよりそのつもりではあったが、オブシダンは無造作に踏み込んだ。
緩く、しかし鋭い。剣豪の達人めいた、玄妙にして幽霊めいた踏み込みである。
華奢な魔杖剣を、居合抜きめいて逆袈裟に振るう。その速度もまた一流。
当然だが、オブシダンはこの程度の一撃がはいるとは思っていない。
敵の二段構えの攻撃を、前衛である己に引きつけるための囮、ブラフだ。
一撃目は受ける。その上で黄昏の外套を目眩ましとし、二撃目を避ける。
なるほど、その技量と覚悟をもってすれば、実際効果的な作戦と言えるだろう。
「――」
相手が、かの安倍晴明。すべてに飽いた屍の王でなければ、だが。
疾い。オブシダンの剣は相応の速度を伴っていたが、それよりもなお疾い。
一撃目が来た。そう思った瞬間には、すでに二振り目の鋸剣が振るわれていた。
外套が引き裂かれ、べちゃりとタールめいて変化し地面に広がる。血のように。
……比喩に思えたその光景は、オブシダン自身が裂かれることで現実となった。
いすゞがその光景を見て、逃げも挑みもしなかったのは、実際称賛すべき判断だろう。
相棒が、斬られた。それを目の当たりにして、彼女は冷静に、手筈通りに、
相棒がその身を変じさせる瞬間と、その可能性に賭けて動いたのである。
来る。相棒を引き裂いた晴明が、その眼で己を見て鋸剣を振るう。
一撃目――いすゞはほとんど祈るような気持ちで、手を伸ばし、引いた。
空を掴むと思われたそれに、ボロボロの有様で応える男がいた。相棒だ。
――ガギン! ギャリ、ギャギギギギギギギッ!!
『その、子に……』
ギギギギ、ギリ、ギャリ、ギャリギャリギャリ、ガガガガガッ!!
『手を出すのは、やめてもらえる……ッ?』
「ほう」
晴明は感嘆らしき声を漏らした。鋸剣は、たしかに阻まれていたからだ。
それは実直なまでに、原始的な作りの、何の変哲もない黒曜石の剣である。
全体に蜘蛛の巣めいたヒビ、あるいはそう見える呪詛のラインを走らせながらも、
けして砕けることなく、折れることなく鋸剣を受けている一振りの武器。
オブシダンが変形したもの。その真の姿。"およそ"無敵であるはずの剣。
(――やってやるっス! 気合っス!!)
いすゞはこころの中で己を激した。ガギンッ!! 二振り目の鋸剣!
オブシダンを引き裂き切り裂き抉り冒したそれが、もう一方から来た!
いすゞは相棒を縋るように握りしめたまま振るい、この二段攻撃を受ける。
……受けた。いすゞは無事だ! だが、おお、オブシダンが……!
(あっしじゃ勝てない。こんなカス男でも、やっぱり"上"なんだ)
然り。仮に陰陽術で相対していたならば、いすゞはすでに死んでいただろう。
ふたりでひとりだからこそ。オブシダンが囮となる作戦を立てたからこそ。
彼女は相棒の身を、その身に走ったであろう激痛と、呪詛の苦しみを犠牲に、
己に迫る刃を受けた。守られた。そして――凌いだ。……凌いだのだ!
「けど、魔を破る力までは、棄てちゃいないっスよ!!」
パキン――!
オブシダンの刀身を通じ、ふたりが持つ破魔の力が見えない織となり、
呪詛を孕みし鋸剣を弾いた。両者の間合いが拓く。いや、開かせたのだ。
いすゞは駆けた。これ以上の受け太刀は通じぬ。ならば背中を見せて、走る。
背後は仰がぬ。来ている。なんたる速度! そしてこの、おぞましい……!
『警告は僕がする。指示も僕が……する』
「応援も頼むっスよ、相棒!」
接敵。ガギ、ギ、ガギギギンッ!! ギャリギャリギャリギャリッ!!
「鬼ごっこのつもりでいらっしゃいますか? 私は構いませぬ」
『期待しているよ。君の力を見せて、やってよ』
「そのエールは、期待が重いっスね! この剣、はっ!!」
嵐だ。嵐が目の前にある。体躯にそぐわぬおぞましいまでの速度と威力。
ふたりの思考を一体として、いすゞとオブシダンはこの猛威を凌ぐ。
だが致命的な絶対先制はすでになし。状況は対等! ならば、ならば!
「やるっスよ、相棒!」
『ああ、ぶった斬ってあげようじゃないか』
怨念渦巻く城内を、駆けて、受け、凌ぎ、避け、弾き、躱し、いなす。
一秒後に死の牙がふたりを掠める。怨霊どもが手ぐすね引いて待っている。
ガギ! ギ、ギギギギギギギギギギギギギンッ!!
「はは!」
晴明が嗤った。それはふたりへの称賛か、愉悦か、あるいは驚嘆か?
いずれにせよ、それは理解だ。己が間隙を晒されたということへの理解!
『行くよ相棒』
「はぁい、はいッ!!」
幾重もの切り結びの果てに得た刹那。いかな命も平等に断つ刃が振るわれる。
円弧の軌跡――浅い。だが確かに入った。皮ではなく肉を裂いた手応えがある!
「――賽の目は、振るってこそ面白いもの。ああ、やはり、やはり!」
業魔は嗤う。いすゞも笑う。おそらくは相棒も、きっと笑ってくれている。
戦いは続く。百の斬撃に対し返せるのは五か十か、だが黒曜石は敵を裂く。
じきに訪れる決着のため。その道程は確かに積み上げられていく――!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルトリウス・セレスタイト
蒐集癖も悪いとは言わんが
生きている間に留めるべきだったぞ
避け得ぬ先制には纏う原理――顕理輝光を操り対処
水晶屍人が群れて来るのだろうが、その攻撃まで俺より速いとも限るまい
『天光』『天冥』にて晴明の攻撃と合わせて確実に捉え見切り
『無現』『虚影』にて躱し、往なす
同時に自身も攻撃の一手
『超克』を通じて己の原点、全なる空虚を呼び込み創世を起動
世界を逸脱したものへ如何に届かせるか、挑んでみるが良い
だが挑める時間は短いぞ
起動後は屍人と晴明双方の存在根源を権能によって消去
代償もあるが、取り敢えず構わん
どのみち己はまともな死に方はしない
そうだな。強いて言うなら
お前は終わるべきだ、と思ったからだ
●業魔覆滅:アルトリウス・セレスタイトの段
屍人が蔓延っている。水晶の生えた屍人、半自然的な死せざる者どもが。
天地の理を、あり得たはずの運命すらも捻じ曲げ、死を与えられた屍ども。
すなわち、安倍晴明が、その禍々しき邪法によって生み出した者ども。
生者を求め、喰らわんとし、己の同胞を増やす汚らわしき反存在ども。
対するは、世界の規矩、触れ得ざる領域に触れてしまった"原理"の奴隷である。
……否、かつてそうであり、今もそうであるが、もはや男はそれだけではない。
"それ"は世界の外側へ追放された者の残滓なれど、もはや残骸ではなく、
確かにその裡に、ヒトとしての意思と繋がりを以て駆動する者。
「蒐集癖を悪し様に言うつもりはない」
屍人が来る。その数は想像を絶している。飽和攻撃というレベルではない。
軍勢だ。彼奴は、たった一度のユーベルコードで文字通りの軍勢を生む。
その数を前にして、アルトリウスが臆さぬのは、彼が無機ゆえだからか?
ヒトとしての情動を持たず、真似事めいて駆動する人骸であるがゆえ?
……否。その背、その肩に忌まわしき水晶の証は非ず、心臓は拍動する。
生きているのだ。この世界で、この時を、アルトリウスはアルトリウスとして。
彼はそれを知っている。それを知った。だからこそ彼は、彼として戦う。
「だが――生きている間に留めておくべきだったぞ。安倍晴明」
原理干渉。その身、その魂に幾重もの織めいて纏うそれらは防にして攻。
『天光』『天冥』『無現』『虚影』。
淡青にて全てを、万象を照らし、数多の摂理とその行く末を見通す。
漂う青藍は運命を紡ぎ、全知の瞳が定めた未来へと手を伸ばす。
世にあり得ざる光は存在を覆い、繭の如くすべてを否定し滅却する。
朧に揺らぐ輝きは、何者にも己を捉えさせずその身を影として流転させる。
全知。因果。拒絶。そして隠形。顕理せし輝光はまさに神の御業。
されど男は神ではない。アルトリウスは神ではなく残骸に過ぎぬ。
その身は人ゆえに、起こせる事象は人としてのそれにとどまり、
その身は人ゆえに、知覚・確定・否定・流転できる事象にも限度がある。
すなわち有象無象の屍人の群れ、はたしてその爪と牙は凌げれど、
これを隠れ蓑とした晴明の攻撃は、狙い過たずその身を侵しつつあった。
「私の"業"とも異なる。されど魔術にも非ず。なんとも面妖にござりまするな」
「お前ごときが、この淡蒼に触れることは出来ない。識ることも不可能だ」
「善き哉。であれば然様な厄介者は、ここで滅ぼすが必定かと」
苛烈。尽きぬ屍人どもの攻勢はそれ自体が重圧であり壁であり波だ。
近づき触れようとする屍人をその輝きを以て否定・滅却しながらも、
アルトリウスは己のかたちを保つ。猛攻を凌ぎ、兆しを探る間隙を得る。
すなわち。存在根源をも消去する権能の牽引実現。創世の理の再現・起動。
「その言葉を果たしてみせろ。世界を逸脱したものへ、お前は届くか」
見よ。溢れかえっていた屍人どもが、まるで最初からいなかったかのように、
その根源的存在そのものを否定されて消えていく。跡形もなく。一瞬で。
では晴明はどうか。彼奴とて、原理そのものからの存在滅却の影響は避け得ぬ。
指先からぼろぼろとささくれていくように消えながら、されど滅却は叶わぬ。
「賽の目を振らずして勝つ。あなたの原理とやらは然様なものと見受けました。
なれば、不死にして不生に非らぬ我が身、ただそれだけで滅びるには足りませぬ」
"業"の過剰消費による急速再生。人の身で行使できる権能の存在的限界か。
消滅と再生、存在否定と存在肯定、目に見えぬ形而下的闘争が大気をきしませる。
だがアルトリウスは躊躇わぬ。己の命を、存在を代償とするとしても。
(どのみち己は、まともな死に方はしない)
躊躇わぬ。脳裏によぎるのは、己が己として結んだ縁の姿!
「……何故に、斯様な過ぎた力を用いられるのか……興味は、ございますな」
その不敵な笑みに一筋冷や汗を垂らしながらも、再生を繰り返しながら晴明は言った。
己が鑢めいて削られる実感を得ながら、アルトリウスは夢見るように呟く。
「――強いて言うなら、お前は"終わるべきだ"と思ったからだ」
それは、未だ終わらぬもの、終わりを否定する者だけが言える言葉。
アルトリウスは生きている。だから彼は、立って戦うことが出来るのだ。
たとえその先が、残骸すら遺らぬ虚無であったとしても――恐れは、ない。
苦戦
🔵🔴🔴
火守・かこ
こいつが平安の世に名高き安倍晴明か…随分と呆けたイケメンだな?
寝ぼけてんならまずはビシッと叩き起こしてやる!その後でテメェの罪を償ってもらおうじゃねぇか!
先制攻撃だが、あのチェーンソーを生身で受けるのはヤバイ。まずは初手も追撃も《金砕棒》で受け止める。
そしたら互いの武器がぶつかり合う事で火花が散るはず。その火花を《火天の加護》の神通力で一気に強めて爆発させる!
爆発の勢いで互いに吹っ飛ばされたら、奴が態勢を整える前に間合いを詰め、腕を蹴り上げてチェーンソーを奪い取る!
今度はこっちが二刀流、攻守交代ってな!
金砕棒とチェーンソーの乱撃で攻めまくって、締めはチェーンソーを投げつけて奴に返してやるぜ!
●業魔覆滅:火守・かこの段
平安の世に名高き大陰陽師、されどその正体は屍人を操る外道の中の外道。
100年を生きた妖狐ですら、かの者が生きた時を識らぬのは無理からぬもの。
だからこそ、その偉大な時の重みに圧されることなく、意気揚々と挑めるのだ。
(っても、それで奴さんがラクな相手になるわけじゃあねえってかい――)
憔悴した様子の晴明と相対した時、かこは己の頬を冷や汗が伝うのを感じた。
恐れはない。だが圧倒的なプレッシャーが、目の前に厳然としてある。
口元の強気な笑みは心の底からか、はたまた強がりか。それは本人ばかりが識る。
「よう、寝坊助の色男さんよ。少しはマシな面ぁしてるじゃねえか」
「……ふ、ふ。いやはや、なかなかどうして。まったく然様にございまする。
猟兵。あなたがたの繋がりと怒り、こうして私をかくも追い詰めるとは……」
かこは知らぬことだが、先の猟兵との戦いにおいて、晴明はその根源的な存在格を削り取られている。
見た目には傷一つなくとも、言わば体の内側を抉られてかき混ぜられた状態。
それでもなお、これほどの強大さを損なわぬことが、彼奴の格の証左か。
「けど足りねぇな。その物言いだ」
かこは不敵にも、晴明を堂々と指差した。
「手前は埒外、無関係な外様でございってその物言い。その呆れ果てた面!
……こんだけのことをやらかしておいて、他人行儀なんざいただけねぇぜ」
「ならば、私を如何になさると?」
「決まってらぁ――その面はっ倒して、ビシッと叩き起こす。そして!」
みしみしと、かこはあらん限りの力を込めて拳を握りしめた。
「テメェの罪を償ってもらおうじゃねえか、安倍晴明!!」
「私に、懺悔と贖罪をさせようとは。まこと、猟兵というものは――」
愚かに、ございますな。
その言葉がかこの怒りに火をつけ、そして両者が動く合図となった。
絶対先制。
それはオブリビオンと猟兵という、互いに世界の埒外にある存在ながら、
その中でなお覆し得ぬ絶対的力量差がもたらす、一種の死刑宣告である。
防御、あるいは回避を強制されるアドバンテージ。絶対的不利。
上等だ。むしろ、それを耐えきり、叩きのめしてこそ意味があるのだ。
この勝負は、ただ相手を倒せばいいというものではない。かこはそう考える。
呆れ果てるほどにふざけた、その常軌を逸した精神に、罪の重みを叩き込む。
そうでなくば勝利とは言えぬ。倒せたとしても意味はない。
ならば、その正道を進む者は、けっして搦め手を取ってはならない。
かこは愚直な女だ。つまり、彼女は、鋸剣に対しまっすぐに突き進んだ!
「うおおおおッ!!」
ガギン――ギャリ、ギャリリリリリリリリッ!!
一撃目。金砕棒と鋸剣が打ち合い、火花を散らす。
(お……重いッ!?)
ずしん。見た目の華奢さに反してなんたる速度、そしてなんたる重さ。
かこは膝を突きかけ、奥歯が砕けそうなほどに噛み締め、これを耐える。
だが、ダメだ。押し切られる! 刃が、腕の肉を――ぎゃり、り、ぎちぎちぎち!!
「…………ッ!!」
ふつふつと脂汗が噴き出す。晴明は、ああ。またその笑みか。
己は不滅であり、不死であり、ゆえに賽を振ることすらやめたという顔。
己にすら無関心であるからこそ、この世にありしあらゆる者を無価値と見る顔。
「気に食わねぇ」
呼気を吐き出す。二撃目が降る――金砕棒で受け止める力は、ない。
ガギンッ!! だが、こうして"武器と打ち合わせる"だけでいい。
「……ノウマク・サマンダ・ボダナン――」
死にかけの呼気の合間、掠れた声で唱えられた呪文に、晴明が眉根を顰める。
(十二天の真言? これは)
帰命したてまつる。あまねき諸仏に。アグニ神よ、我が願い成就奉れ。
火天よ、我が身に加護ぞあれ。邪悪を祓う火ぞここにあれかし。
「オン・バザラナラ・ソワカ――爆ぜて吹っ飛べッ!!」
――KBAM!!
見よ! チェーンソー剣と金砕棒の激突が生み出した火花が、爆ぜた!
これこそがかこの狙い! 彼女自身すらも焦がし、炎が両者の間合いを離す!
「ぬう……ッ!?」
「その得物ォ、ちょいと借りてくぜッ!」
無謀だ! かこはチェーンソー剣を奪い取り、その怪力で叩きつけた!
KRAAAAASH!! 内在する呪詛を噴き出しながら鋼が砕け散る! さらに一歩!
「どうしても反省できねえってんなら――食らって、後悔しなあッ!!」
燃え上がる金砕棒が……不死にして不滅たる白き王を、叩きのめした!!
成功
🔵🔵🔴
ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)
興の為だけにこの沙汰を起こすのか。
いや、いい。"知っている"。
お前のようなものがいる事をよく知っている。
――故にお前を倒す。
(ザザッ)
"砂嵐"を展開。【範囲攻撃】
先制で放たれる攻撃は電脳体デコイと高速機動を駆使し可能な限り回避。【迷彩+フェイント+早業+ダッシュ+見切り】
"砂嵐"はロクの攻撃を隠す視覚撹乱としても使用。
敵の技は奇特な上に強い、複製は易くないだろう――
そう、敵のなら。
では、味方のなら。
一撃いいのをくれ、ロク。
――解析完了。
この場の"砂嵐"、そこから伸びる焔の爪牙を喰らえ。【力溜め+一斉射撃+スナイパー】
――相棒の言葉を借りるなら。
"病は絶えろ"。
(ザザッ)
ロク・ザイオン
※ジャックと
ジャック。
…避けて。
おれの命は、それでいい。
――ああァアアア!!!
(【地形利用】し駆け回りながら
湧き出す水晶屍人は【殺気】を乗せた【早業】で【なぎ払い】
一人二人束ねた程度では追い付かせない
危うい程の前のめり
全て、全て束ねてしまえ)
(刀すら取り落し、到底敵う筈の無い巨体に無謀に食らい付く姿
割り込んだ相棒ごと切り裂く「燼呀」
そう見せつければ。
あの薄笑いの病も、気を緩ませるだろうか)
(屍人は相棒に任せすり抜けて、爪は病の源へ
「燼呀」は、今度こそ全てお前の首に)
骸は。
なにもかも。全て森のものだ。
お前はゆるさない。
……避けろよ。
ジャック。
●業魔覆滅:ジャガーノート・ジャックとロク・ザイオンの段
病だ。死んでいながらにして同胞を求めて蔓延り増殖する水晶屍人は、
いわば"死をも超えた病"である。ヒトだけを病ませ殺すための、病である。
ならば、灼かねばならぬ。その病葉を、根源を、あの飽いた白亜の王を。
ヒトの命を、営みを、平和という名の豊穣を簒奪する邪悪なるもの。
ふたりが相対したその男は、左顔面から胸元にかけて夥しい火傷を負っていた。
ジャガーノートのカメラアイは、対手の根源的存在力とでも言うべきもの、
つまりは目に見えない"存在する力"が大きく減じられていることを悟る。
……死に体。でありながら、敵は不敵。己の消滅すらも歯牙にかけないのか。
《――興のために屍人を殖やし、信長に与し、この沙汰を起こしたと》
ザリザリと、沸き立つような音の中から、怜悧な声がした。
「然様にございまする。私に大それた目的や、理由などはこれっぽっちも。
……"ご存知"なのでございましょう? 私のようなモノを、その在りようを」
《――ああ。お前のようなものがいることを、本機はよく知っている》
ちらりと、ジャガーノートは傍らにうずくまる相棒を見た。
獣だ。たてがみを燃やし、ほとんど四肢で立つかのように身を縮こませ、
血走った目で敵を睨むロクは、もはや隠しようもない獣であった。
だが、その激情に任せて突っ込まないその冷静さは、やはりヒトのそれである。
その身を燃やす怒りは獣の激情なれど、たしかにヒトの冷静さを以て在り、
ジャガーノートから見てさえ、ロクの在り方は不安定で危険な均衡にある。
「…………病が、ヒトのかたちを取るな」
しゅうしゅうと、白い息を吐きながら、牙を尖らせた獣が言った。
「骸は。なにもかも、すべて、森のものだ。病(おまえ)が、奪うな」
晴明は目を細めた。
「生命の埒外、その輪廻の法則すらも逸脱しかねぬ猟兵が、いのちを語るとは。
いえ――あるいはだからこそ、我らの戦いは賽の目次第ということになるのか」
謎めいた言葉。確かなのは、彼奴が"喜んでいる"ということだ。
その怒りを味わうことを。憤りを以て相対することを。敵の存在を。
「あいにくと、私は"そういうもの"でございますゆえ。もはや覆しようもなく」
《――知っている。だから、我々はお前を倒す》
「お前は、ゆるさない。絶対に」
噫。晴明は声に出すことなく、口の中で転がすように吐息を漏らした。
ヒトと獣の間にありし者、なんと忌まわしく、それでいて――懐かしいのか。
郷愁に似た笑みを浮かべ、晴明は指を滑らせた。
そして、"屍(し)"が、溢れ出した。
かつて、ふたりは黒龍ダイウルゴスを使役するドラゴンテイマーと相対した。
龍そのものを溢れさせ敵を燼滅するという、単純ゆえに強大なる圧倒戦術。
打ち崩すには死線を要したが、あれに比べればこの"屍"はまだ劣る。
劣りはする。ならば易いのかと言えば、無論否。これは強敵なのだから。
「――ああァアアアッ
!!!!」
文字通り"湧き出した"水晶屍人を、燃え上がる獣が引き裂き、捻り潰す。
疾い。そしてすさまじい。まるで生きて吠えて走る山火事のようだ。
それを護るように、あるいは追い風めいて砂嵐が吹き荒れる。屍人を飲み込む。
「迂闊にございますな」
鶴の一声。だがジャガーノートが動じることはない。苦悶することも。
十数体の電脳体デコイと、残像すら生み出す高速機動を以て回避に移るが、
当然のように屍人の物量と、それに紛れる晴明の攻撃がこれを圧した。
《――範囲攻撃を行った本機を狙うこと。その行動も、すでに知っていた》
鋼が砕ける。痛みはない。悲鳴もない。ただ血のごとくバチバチと火花が散る。
晴明は薄く笑う。なるほど、被弾も覚悟した上での領域展開か。善き哉。
ジャガーノートひとりであれば、砂嵐を展開したところで意味はなかったろう。
その複製能力も、言わずもがな、水晶屍人の生産・指揮を模倣することは叶わず。
つまり彼は、この攻撃に耐えられなかった。そう、"彼ひとりならば"。
だが、ここにはもう一体――否、もうひとり。
砂嵐の中を駆け抜けるロクの脳裏に、直前のブリーフィングがよぎる。
――敵の攻撃は複製できないだろう。ならば、君の攻撃はどうか。
ジャック。でも、それは、失敗したら、キミは。
――一撃だけでいい。"いいの"をくれ。それで十分だ。
ジャック。おれは。キミを灼きたくない。
――それでも、"僕"は君を信じている。ロク。
……ぎりり。牙を噛みしめる。
怒り? 否。
悲しみ? 否。
恐れ? 否!
「避けろよ、ジャック」
たてがみが輝く。
「おれの命は、それでいい。――相棒なら、避けろ!!」
――ごぉうッ!!
爪と牙が燃え上がる。たてがみが輝き、それは砂嵐の中の星となる。
明滅する閃光は屍人を切り裂く。切り裂く。切り裂く。切り裂く。
「いじましきかな」
晴明は呟いた。屍人どもはその意を汲んで、ねじ曲がり、合わさり、一となる。
獣を潰すのに百は要らぬ。ただ一があればよい。それで事足りる。
到底敵うはずのない敵に、得物すら落とした獣が挑む。無謀である。
だがそこで、晴明は何かを思案し――そして、瞠目した。
「まさか」
燼呀が奔った。吹き飛ばされた相棒すらも切り裂く……いや、いや。
「まさか――!」
"あの鋼は、死んではいない。無傷だ"。
なぜだ。なぜ己の手でとどめを刺さなかった。なぜ殺させようとした。
当然だ、己の身はもはや、賽の目も振らずして勝てる無粋な――否、違う。
思い出せ。思い出せ! かつて己を滅ぼしたあの牙を! あれは、ああ、ああ!
《――解析完了》
黒き豹が言った。そのそばに獣がいた。己の周りには砂嵐が在る。
否。それは爪であり牙だ。まったく同時に全方向から襲い来る滅びの牙。
黒き、牙。ああ。あああ! 己はそれへの恐れすらも忘れてしまったと!?
「――は、は」
晴明は乾いた笑みを浮かべた。爪と牙がそれすらも引き裂く。
荒れ狂う嵐(こうげき)を切り裂いて、ふたつで一つの黒き牙がきた。
「私を滅ぼすならば、やはり"それ"が似合いでございますな――まったく」
《「――病は、絶えろ」》
声はふたつ。重なる音はひとつ。振るわれる爪と牙は無数に。
そして、炎が、呪われたその生命のひとつを、灼き滅ぼした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
我が身は不死。されど殖えることが出来、それでいてなんの力もなしに生きられる。
これがセイメイだと? 笑止。ならば我は確かに"安倍晴明"である。
……"忘却(オブリビオン)"。
なんと皮肉な諱であろうか。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
余裕綽々って感じだね……
おじさん、私達とも遊んでくれない?
初撃は【武器受け】で対処
防ぎきれず体勢を崩し掛けた、ように見せかける
思わず顔を顰めるのは演技でも何でもないけど
――重い、と思い知ってしまったのは事実だから
槍のリーチを活かして、
二撃目が届く前に手元を攻撃して武器を落としたい
最初から狙いは二撃目の阻害!
ここからはヨハンとの連携を重視しながら攻めに転じる
UCが上手く通用したら攻撃力を強化、
しなければ【力溜め】で下準備
得物を揮う力を削ぐように再び手元を狙って
ヨハンの魔術に合わせて【2回攻撃】で一気に体力を削る
っ、こいつ……強い
これが陰陽師とやらの力なの?
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
気に喰わない顔をしていますね
余裕ぶった表情、崩してやりましょうか
『蠢闇黒』から<高速詠唱>で闇を喚び、障壁を展開
<呪詛耐性>と<全力魔法>で強化し、符による攻撃を封殺する
むざむざ強化を許したくもない
斬り裂かれた地形に障壁を敷き、怨霊どもを<呪詛>でそのまま沈めてやる
まさか強化されるとは思いたくないですが……その場合は魔力のみに切り替え、
消せずとも抑え込もう
攻めに転じるタイミングは彼女と合わせる
【降り注ぐ黒闇】で継続的に黒刃を浴びせ、
オルハさんがUCで強化できる時間を作る
最後は彼女と合わせ残りの黒刃を集中して浴びせよう
●業魔覆滅:オルハ・オランシュとヨハン・グレインの段
「……さて」
はじめからそこに在ったかのように、忽然と白髪の男が、ひとり。
こき、こきと首の骨を鳴らし、掌を握り、開いて、嘆息する。
「噫。やはり私は、もはや賽の目を厭うこともなく成ったのでございますな。
なんとつまらぬ存在でございましょう。なんと無為な存在でございましょう」
「――だったらそのまま還ることなく滅びればいいものを」
ちらりと、向けられた声――ヨハンのほうを、晴明が見返した。
黒い少年は動じない。そこに虚無だとか害意といったものはなかったからだ。
代わりに、苛立つ。敵が"己を敵とみなしていない"ことが、腹立たしい。
「その気に食わない顔を見せつけるために、わざわざ再生したと?
であれば、その余裕ぶった表情を、俺たちが崩してやりましょうか」
"たち"。
――言葉を肯定するかのように、傍らの少女がびょう、と三又矛を振るった。
「余裕綽々……ううん、そもそも敵なんてどうでもいい、って思ってるのかな。
……ねえ、それはそこまで強いから? それとも、本当に興味がないの?」
オルハの問いかけは、ほとんど非難に等しい。答えが得られるとは思っていない。
それでも、投げかけずにはいられない。投げかけなければならない。
そのぐらい、敵の無感動で無興味な有様は、彼女の癪に障っていたからだ。
「……賽の目とは、如何な目が出るか分からぬからこそ、振る意味がございます。
私は滅びませぬ。己の存在を確立するために、エナジーを集める必要もない」
「だったら、ヨハンの云う通り、もうこの世に出てこないでよ!」
少女の言葉にも、晴明はあるかなしかの笑みを浮かべるのみ。
「猟兵とやら、我らの天敵たるあなたがたならば、おわかりでございましょう?
我らは"そういうもの"。そうせずにはいられないものでございますれば――」
「……どのみち、言葉で追い返せるだなんて、甘い考えは持っていません」
ヨハンの瞳が細まった。じわり、と、闇色の魔力がその身から立ち上る。
「何度でも滅ぼします。俺たちが、俺たちの手で」
「――やろう、ヨハン。私は、こいつを……認められないッ!」
その義憤すらも心地よさげに、晴明はチェーンソー剣を唸らせた。
ふたりは、けして素人ではない。いや、むしろ歴戦と言っていいだろう。
名だたる強敵と相対し、これを打ち砕き、あるいはその礎となってきた。
死を覚悟したことは一度や二度ではなく、九死に一生を得たのも数知れず。
――だが、ここまで濃密な"屍(し)"の気配は、初めて感じる。
その只中で、ああも涼風のように嗤う男は、いったいなんなのだ。
「く
……!!」
バチバチバチ!! と闇色の火花を散らし、ヨハンの展開した障壁がこわばる。
晴明の擲った符による呪詛の侵食。真正面から受ければこうなるのは必定だ。
「なるほど、よく耐えられる」
「いつまでも、その顔で見下さないでっ!」
疾い。ヨハンが耐えている間に、オルハが後ろを取っていた。
晴明は振り向くことなく、チェーンソー剣をオルハの首めがけ振るう。
がぎん。オルハは初めから、この一撃を引き出すために近づいたのだ……が。
(なんて、重さなの……ッ!?)
ぎゃり――ぎゃり、ぎゃり、ギャリリリリリリッ!!
「う、くっ!」
苦悶しながらも、晴明の油断を誘うようによろけたふりをした。
翼をはためかせ、即座に後退しながら身をひねり、手首めがけての刺突!
――ガインッ! オルハは瞠目する。手首を返して防がれた。読まれたのか!?
「私は"業(カルマ)"というものを蒐集してございます」
オオ、オオオオオ――。
符が散らばった地形が割れ、そこからおぞましきものどもの声が響く。
ヨハンはこれを障壁によって蓋をし、怨霊の反乱を拒み沈めようとする。
だが、音叉する怨霊のうめき声は一つに非ず。それは全ての方角から響く。
(この城の怨霊そのものが、共鳴しているのか――?)
だとすれば、あれはどこにいようが強化されているも同然なのではないか。
薄笑いを浮かべた晴明が、チェーンソー剣を持ち直した。――まずい!
「オルハッ!!」
「!!!!」
鋭い警告の一声が、結果的に彼女を救ったこととなる。
胴体を両断するはずだった呪詛の刃は、かろうじてその脇腹を裂いたのみ。
「かは……っ」
「穿てッ!!」
闇が凝り、飛礫となって襲いかかる。晴明はやはり振り返らずこれを相殺。
「もはや収集することすら私は飽いてしまいました。が、これこの通り――」
「こいつ……ッ!」
――強い。次元の違いではなく、"根本から別の何か"なのだ、これは。
地獄じみた虚無を持つわけでも、飽くなき飢えがあるわけでもない。
燃え上がるような憤怒も、絶対的自信も、ない。ただ、ただ強い。
――それはなんて、虚しいことなのだろうか。
「合わせます、攻撃をッ!」
「わか、った……!」
血をひとしずく吐き捨てながら、オルハは武器を構える。目元が霞む。
戦える。戦わなくてはならない。"これ"を認めてはならない。
――大事なひとと、生きることを決めた、ひとりの生命として。
闇を見据えてでも未来に歩みだすと決めた、ひとりの信念として。
業をすら貪る悪魔を、ここで見逃してはならない。
その決意と意地が、ふたりをかろうじて立たせていた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
月凪・ハルマ
この目の前の男は今ここで、
確実に倒さなければいけない
……そんな気がする
◆SPD
戦闘開始直後から、全ての行動に【早業】を適応
そして水晶屍人が召喚されたなら、それを手裏剣で穿ち
(【投擲】)
動きを【見切り】、躱し
片方の旋棍で攻撃を受け止め、もう一方で殴り飛ばし
時に破砕錨・天墜でまとめて薙ぎ払い(【範囲攻撃】)
水晶屍人を屠りながら少しづつ、だが確実に、
真っ直ぐに清明の元へ
そうして距離を詰めたら【錬成カミヤドリ】発動
清明の周囲を複製宝珠で囲い、全方位からの射撃
そして、ここでようやく【忍び足】を使い
【目立たない】様に清明の死角へ移動
宝珠の射撃と旋棍の連打を同時に叩き込む
(【2回攻撃】)
―お前は、此処で潰す
●業魔覆滅:月凪・ハルマの段
何か、これというべき確証があるわけではない。
いうなれば勘――それも、ひどく直感的な、言語化し難いものだ。
そんなことで命をかける必要があるのか、と問われれば、おそらく否。
"かもしれない"や"そんな気がする"なんてあやふやなもので死んでしまったら、
己も、己をよく思ってくれる人々も浮かばれない。何も残せやしない。
だが。
(この目の前の男は、いま、ここで。確実に、倒さなければいけない――)
ハルマはそう思った。いいや、確信した。義務だとすら感じた。
だから彼は、挑んだ。たったひとりで、目の前の名状しがたい男に。
あれはなんと言ったのだったか、"善き哉"だったか、あるいは"なるほど"か?
いかにもそれらしいことを言って、あるかなしかの笑みを浮かべて、
そして、そう――今彼が鏖殺し続ける、水晶の屍人どもを生み出した。
莫大な数である。数えるのもバカらしくなるほどの、凶悪な屍人ども。
ハルマはそれにどう対したか?
――結論から言えば、真正面から挑んだ。
手裏剣を投擲し、四方八方から襲い来る敵の動きを全力で見切り、躱し、
避けきれぬ攻撃は旋棍で受け止め、同時に屍人をもう一方で殴り飛ばし、
ときには地形もろとも薙ぎ払い、突き進んだ。
逃げたのではない。退いたのでもない。前に、進んだのだ。
晴明のもとへ。当然だ、己はそのためにこの禍々しい雰囲気の城に来たのだから。
「――ほう。この状況で、私にまだ挑んでくるとは」
屍人どもの人垣の向こう、晴明は目を細めて、ただそう言った。
口元には薄い笑み。それは嘲りでも皮肉でも、ましてや感嘆でもない。
たとえるならば、瀕死の獣がそれでも巣を目指そうとするのを眺めているような、
あるいは、死にかけた虫が、無機質に蠢くのを眺めているかのような。
そういう、無感動で、無興味で、己を歯牙にもかけぬ、どうしようもない酷薄な瞳。
「お前は、ここで潰す」
「如何にして? その体で、私を?」
然り。ハルマはもはやぼろぼろだ。傷がない場所がわからないほどに。
……しかし、彼は抜けた。その堅き意思でもって、屍人どもを乗り越えた。
「こうやってさ……!」
晴明はふわりと布めいて後退。直後、先程までいた場所を全方位射撃が襲う。
「見え透いた手を――」
「"見え透いてる"のは、そっちだろ」
晴明は瞠目した。声は背後! 振り返りざま――SMASH!! SMASH!!
「そうやって、自分にすら、敵にすら関心を持ってないから、騙されるんだ」
血の混じった唾を吐き捨て、ハルマは言った。
その眼に、純然たる闘志が燃えていた。
苦戦
🔵🔴🔴
ステラ・アルゲン
飽いているから人を殺していい、ということはない
ここで討てると思えないが……今の行動を止めることはしたい
だからお前の力を貸せ、ソル!
今はお前が必要だ
【太陽剣】のソルを構えて敵の前へ
先制攻撃は避けない
この身に受けて【激痛耐性】で耐える
仮初の体だ、剣させ振れればどんな傷でも構わん
それにその呪詛の剣を待っていたとも
【黒陽の星】を発動
黒炎の【呪詛】の呪いが体を巡るが力をくれる
体に受けた敵の呪詛を【生命力吸収】しこちらの力に
さぁ敵の呪いごと、全て喰らい尽くせ!
私を斬るために近づいた敵を逃さぬ内に【属性攻撃】の【呪詛】を持つ黒炎を纏った大剣で敵を斬る
痛みと魔力と引き換えに得た【怪力】で敵に重い一撃を!
●業魔覆滅:ステラ・アルゲンの段
人を殺す――本来、そんな行為に"やっていい"などという免罪符は、存在しない。
命はかけがえのないものであり、如何な理由であれ、それを奪うことは罪だ。
たとえ相手が大悪人であろうが、己に確固たる正義があろうが、
世界中の人々が、その悪党の死を望んでいようが、罪は罪なのだ。
そうでなければ、きっと、誰もが誰かの命を奪ってしまうであろうから。
……だのに人は戦う。その必要があるからこそ。わかっていて罪を犯す。
同じ罪人だとしても、そこに覚悟や理解、あるいは決意があるならば、
それは何か違うものをもたらすだろう。人はそう信じて武器を鍛え、形作る。
剣なりし己の身も、あるいはそうした矛盾のもとに生み出されたのだろうか。
……もはやわからぬ。ただ、願いを込められていたことは確かだ。
己はそれを果たした。主を英雄へと導き、栄誉と名声を与えることが出来た。
だからこそわかる。屍者を送り、葬ってきたからこそ、わかる。
――興のあるなしで屍者を、死を弄ぶこの外道を、許してはならないのだと。
「…………ッ!!」
わずかな懐旧に染まったステラの精神を、強烈な痛みが引き戻した。
チェーンソー剣が、肩口からばっさりとその身に食い込み、回っている。
肉を削ぎ、骨を砕き、神経を巻き込みながらその牙で己を抉っている。
「ごほっ」
「如何な策をお持ちなのかは、存じ上げませぬが」
晴明の、悪魔じみた瞳が、うっそりとステラを見下ろした。
「耐えられる、とお思いだったのでございましょう。問題はないのだと。
人ならぬ剣の身のご麗人よ、ああ、私はその愚かさをこそ尊びまする」
嗤っていた。それは間違いなく、人ならぬ者の嗜虐の笑みである。
人という種を、それが持つ愚かさを味わい尽くした外道の笑みである。
「覚悟。決意。意思。信念。責任。噫、噫、いつも人は然様にございまする。
カタチのないものが、カタチある己を支えてくれると信じ、たやすく命を賭ける」
ごきり。肺がチェーンソー券に抉られ、引きちぎられた。
「がぼ――っ」
「そして、然様なお顔をなされて、皆死ぬのでございます」
仮初の体である。剣が触れればどうなってもよい。それは事実だ。
だが痛みは殺せぬ。苦しみは払えぬ。耐えると決めたとしても、だ。
ましてや、敵は強大なるオブリビオン。その刃はそれ自体が破滅である。
「喜びめされよ。あなたは確かに人間でいらっしゃる――その愚かさゆえに」
囁いて、そして断首の刃が横薙ぎに振るわれた。
――がぎん。
「……わた、し、は」
ごぼごぼと、血の泡を吐き出しながら、ステラが呻いた。
「ころされに、きたわけ、でも……愚かだと、謗られにきたわけで、も、ない」
がぎ、ぎゃり、ぎゃりりりりり。ぎゃりりりりりりり。
鋸剣が唸る。剣の刃もろとも、その身を抉りほじくり轢き潰そうとする。
「ここで、お前を、討てるとも、思えぬ、が……」
ぎり。奥歯を噛みしめる。痛みに負けかけた己を叱咤する。
「これ、以上――お前、に。死を、弄ばせは――しな、い!!」
「ほう」
……押し返される。二振り目の鋸剣が。
「ソル。起きろ。お前の力を貸せ」
剣は応えぬ。
「私の、この身を得た理由のために――私が、私であるために! ソルよ!!」
剣は応えぬ。
「お前の、その太陽の光輝を――全てを灼く力を、よこせぇっ!!」
剣は――剣は、脈動した。どくりと、心臓のように。
「かはっ!!」
ステラは吐血した。当然だ、この有様でさらに己の命を太陽の炉にくべたのだ。
たとえその身が幻想、すなわち本体ありし器物の霊だとしても、限度はある。
すなわち、この世界に存在するモノとしての限界。根源的な存在格。
ヤドリガミが霊の存在であるとすれば、その死は"死を受け入れた瞬間"であろう。
たとえ本体が砕けずとも、意思として在るステラという個が死を認識したなら、
認識"してしまった"なら、その時精神は砕け散り、ステラという個は消滅する。
痛みはそのための呼び水だ。傷がなくとも、病でなくとも、苦痛で人は死ぬのだから。
「ほしいならば魔力はやる。我が命、我が心、我が信念を、喰らえ、ソルッ!!」
「――その黒い刃、忌々しい」
晴明は舌打ちし、再び呪詛の刃を振るった。それはステラを抉った。
だが悪手だ。なぜならば、黒陽の星は呪詛をこそ喰らいて輝く緋色の星!
黒炎がステラの全身を駆け巡る。血管を焦がし、臓腑を灼く。
激痛だ。だが遥かに良い。それこそが今の自分を正気づかせてくれる。
「お前が与えてきた痛み、苦しみ、無為! 我らの一撃を以て、味わえッ!!」
晴明は退こうとした。出来ぬ。食い込ませた刃が絡め取られている。
「黒き、牙……! なんと、忌々しい――!!」
破滅のイメージ。脳裏に蘇ったそれを切り裂くように、黒陽が一条煌めいた。
苦戦
🔵🔴🔴
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
(ちぇーんそー。かみごろし。…器物的に、相性的に、本当はちょっとだけ怖くはある、が)
…まる、まる。絶対、絶対に。カガリの外へ出てはいけないぞ。絶対、だ。
初撃の五芒符は【鉄門扉の盾】で防ぐ(盾受け・オーラ防御・全力魔法・破魔・呪詛耐性)
敢えて外す符もあろうが、まるごと【籠絡の鉄柵】で囲って内側に入らせない
怨霊ごと、符の効果を消し去ってくれよう(【追想城壁】)
更に近接して物理的に盾を破る(双神殺)のであれば、【神座の飾紐】を解いて鉄柵を囲い、【隔絶の錠前】をかけて壁の内を結界と化す
これなるは、不落不動の結界…ここより内へは通れぬ境の標
その刃、使い物にならなくなるぞ?
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
陰陽師にしては物騒な武器を持っているが、俺が討ち取れる相手ではないことなど承知
ならばその武器の一つを破壊、後に続く仲間のために技(双神殺)を封じてみせよう
先制攻撃はカガリが防いでくれる
先制攻撃終了と同時、【金月藤門】のフェイクと残像でカガリの後ろにいるように見せかけ
迷彩効果を発揮しつつ【黒華軍靴】でダッシュ、一気に間合いを詰める
【真紅血鎖】の血の鎖でチェーンソー剣を絡め取って封じたら、もう一本を【碧血竜槍】で刃の破壊を試みる
俺に危険が及べばカガリが庇うだろうが、チェーンソーは鉄骨を斬るもの
カガリの本体が真っ二つになる前に【白檀手套】で刃を握ってカウンターを返す
●業魔覆滅:出水宮・カガリとマレーク・グランシャールの段
……ボロボロの有様で、男装の麗人が、意識を失い倒れ伏した。
怨霊渦巻く城で息絶えると思われた女は、しかし、優しい腕に抱きとめられる。
女は何かを言う前に意識を失い、受け止めた男はそんな彼女をそっと寝かせた。
「ステラ……」
愛する鍵剣の無惨な有様、おそらくは太陽の剣を限界以上に酷使した様に、
カガリは哀切を浮かべ、眉根を顰める。握りしめた拳がぎりぎりと鳴った。
「……こんなになるまで、お前は戦ったんだな。よく、頑張った」
「…………」
マレークは何も言わない。彼は、じっと目の前の敵を、睨みつけていた。
安倍晴明。その有様は、あちこちに火傷めいた剣傷を負い、ふらついている。
だのに放射される悪意と狂気は、強大なるオブリビオンに相応しい。
――いや、あれは、無関心だからこそ見せられる一種の残酷さなのか。
「……まる」
「ああ。カガリ、俺はお前の外へは出ない。お前とともに在ろう」
絶対に。
カガリの言いかけた言葉を紡ぎ、マレークは視線を向け、静かにうなずいた。
「奴を討つ。俺たちは、そのための礎となろう」
「ああ。――ステラが受けた痛みを、味わわせてやる」
壁と槍の突き刺すような視線が、屍人めいた白き相貌の王を睨みつける。
呪わしき鋸剣が唸る。――死闘は続く。続かせねばならない。終わりのために!
戦端を開いたのは晴明である。投げ放ったのは無数の五芒業蝕符。
生きとし生けるものが持つ業(カルマ)を蝕み、己のものと為す外道の符。
カガリは避けることなく、退くことなく、己の盾を以てこれを防ぐ。
無論、ただ立ちはだかるのではない。全身全霊の魔力を盾に込めて、立つのだ。
ガギン――!!
まるで鋼の鏃が突き立ったような音。盾越しに感じる圧力はそれよりも上。
飛び散ったそれらは内包した"業"を起爆剤に破裂、呪詛を撒き散らす爆弾と化す!
「このカガリを、その程度で砕いて進めると思うな――ッ!!」
「滾っておられまするな。なるほど、たしかに堅い門のご様子」
オオオ……オオオオオ……。
割れた床、壁、あるいは天井から怨霊どもが這い出てくるが、
境界を定めこれを守護する門は、その侵入を許さぬ。蔓延ることを許さぬ。
堅牢な門である。晴明はそこに、何者をも通さぬ絶対の鉄壁を視た。
「ならば、こじ開けてご覧にいれましょう――!」
走る。なんたる疾さか! 唸る鋸剣が、ステラをも抉り飛ばした剣が、
堅牢なる城壁の幻影を引き裂き、砕き、がりがりと鉄柵を、結界を喰む!
「通さぬと! 言っている!!」
「あいにくと、私めはひねくれ者にございますゆえ!」
ギャリギャリギャリギャリ! ガリガリガリガリガリガリガリ!!
見よ。呪詛を纏いし刃は、捨て身で門たろうとするカガリの領域を侵食!
さながら荒ぶる獣が肉を引きちぎり食い進むかのように、着実に歩を進める!
「…………ッッ、まる!」
カガリは、背後に護るマレークに呼びかけた。マレークは無言である。
いじましきかな。晴明は眼を細める。もはやあちらの男は戦意喪失したと――否。
「…………幻かッ!」
「遅いな」
ガギィンッ! 振り返りざまのチェーンソー剣の一撃を、マレークの蹴撃が弾いた!
然り、遅い。カガリの門に食い下がっていたからこそ、晴明の対応は一手遅れる!
そこに龍が縫い進むべき間隙がある。くるくると回りながら、マレークは手首をスナップ。
あらかじめ自らの手で裂いた動脈から血が溢れ出し、鎖と化して敵を――絡め取る!
「ちぃ
……!!」
「隷属するがいい。我が血の鎖、もはやその鋸剣を自由にはさせん」
がちがちに巻き付いた鎖を振り払おうと、呪詛の鋸剣はガガガガ!! と唸った。
だが、果たせぬ。力比べの格好だ。晴明は脂汗を浮かべ……しかして、嗤った。
「愚かな。それはつまり、あなたが無防備ということでもありましょうや――!」
「カガリを、忘れるな」
晴明は……そこで初めて、驚愕を浮かべた。門の声ににじむ怒りに。
「これ以上、お前に誰も傷つけさせない。ステラも、まるも、誰もだ」
まるでその激甚たる怒りと決意に呑まれたかのように、晴明は棒立ちとなった。
マレークは気を逃さぬ。鎖を引き、自ら走り、鋸刃の一撃をかいくぐり!
「――俺は幸運だ。お前にない信頼(もの)を、持っているのだから」
麗人が叩き斬った焼け焦げた傷跡に、槍じみた手刀を、鋭く突き刺した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎
生きたかった人達が
生きるのに飽きた君の道具になって死んだ
ばか櫻宵
自信をもてよ
君はいつも僕を守ってくれてるだろ
歌唱に込めるは櫻宵への鼓舞
「戀櫻ノ守り歌」――ほら忘れた?
あんな男に負けるなよ
全部、打ち消してやる!
どんな強敵でもふたりなら、大丈夫
歌う、破魔こめて怨霊すら誘惑して蕩かすように
呪詛も怨霊も浄化する破魔の水泡(オーラ防御)で防ぎ櫻宵を守る
傷つけさせはしない
君は立派な陰陽師だよ
物理も術も!晴明より!
そう
自分自身の意思で望むなら
僕は君が希みをもてたことが嬉しい
だから
その願いを叶える為に
共に生きる世界ごと守る
またそういう事を!
…好きだけど
君の過去ごと斬っておいで!
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎
晴明
父はいつだってあなたとあたしを比べて
越えよなんて期待して勝手に落胆して
くだらぬ声が木霊する
だのに
こんなつまらない男だったなんて
残念で屈辱
今度は私がリルを守る
自信は少しない
千年桜の符に破魔を込め七星七縛符
オーラ防御で五芒星も怨霊達も防ぎ衝撃波こめ
なぎ払い斬り裂く
踏み込み駆けて傷を抉る2回攻撃
リルの歌が力をくれる
怪力こめ斬り殴り砕いて
見切り躱して咄嗟の一撃
私のもてるかぎりのものを叩きつける
弱気になってる暇はないの!
私は夢も願いもなかった
今はひとつ成りたいものがある
陰陽師
ちゃんとなれるかな
生に飽きてるやつに
私の世界は貪らせない
首を頂戴
実家へのお中元にしてやるわ!
●業魔覆滅:リル・ルリと誘名・櫻宵の段
そもそも、オブリビオンというモノは、生きていると言えるのだろうか?
その身が滅んだとしても、骸の海に在る本質は滅多なことでは消滅せず、
世界への憎悪甚だしく、生命を脅かしこれを刈り取ることを躊躇しない。
生きるためでもなく、大した義務や信念、責任があるわけでもなく、
ただ"そうである"というだけで世界を冒し、乱し、喰らい、飲み込む。
なるほど、己の存在そのものに飽いてしまうのも納得と言えよう。
生命の姿をし、生命と同じ活動をし、しかれどそれはもはや必要ない。
世界を滅ぼす装置としての役割を果たす。ゆえにこその"忘却"か。
……だから? それで、あの暴虐を肯定していいはずはない。
するつもりもない。オブリビオンが"そうである"からといって、
その存在に憐憫を抱いたり、見逃してやるつもりなんてさらさらない。
リルも、櫻宵も、その点は同じだ。だからこそ彼らはここへ来たのだ。
「……屈辱よ。残念で、悲しくて、もう意味もないのにムカついてくるわ」
ただ、櫻宵に関しては、それだけではなかった。
「あなたに言ったってしょうがないでしょうけどね。知りもしないでしょ。
けどね、あたしはずっと、何度も何度も、あなたの名と比べられてきた」
陰陽術の大家。何百年と名を残してきた、歴史上の偉大なる人物。
越えよ。その才を。我が家の名を背負って立つに相応しき術師となれ。
くだらぬ声だ。もう過ぎた日々だ。解き放たれたはずの枷だ。
なのにやっぱり、こびりついた残滓が、あのじじいの声で責め苛んでくる。
「そんなあなたが――こんな、つまらない男だったなんてね」
目の前の男は、常人であれば死んでいそうなほどの重傷である。
おそらく、相当の死闘を経たのだろう。傷は深い。あともう少しだ。
もう少しで、その生命を滅ぼし、骸の海へと叩き返せるだろう。
――その有様で、まだ、ヤツはあるかなしかの笑みを浮かべていた。
「そんなになってまで、君はこの世界の誰かを、自分自身すら見れないんだな」
リルは敵を憐れんだ。この燃えるような思いを知らないその男を。
「なのに君は、他の誰かを道具にして、弄んで。まだそのつもりでいる。
……そして、櫻を悲しませる。だから、僕は君の存在を、もう許さないよ」
「猟兵とやらの義務や、役目ではなく、繋がりある者ゆえに……で、ございますか。
ふ、ふ。なんとも複雑怪奇。いやまったく、これだから人というものは」
ボロボロのチェーンソー剣を投げ捨て、生命は無数の符を構えた。
「――度し難いものでございますなあ!」
業を食らう符がふたりを襲う。決戦の合図である!
この男を乗り越えるには、ただ挑んで首を落とすだけでは物足りない。
櫻宵はそう確信した。戦略上の問題ではなく、自分自身の生き様の話だ。
陰陽師であれと育てられてきた、己の過去を本当の意味で乗り越えるには。
敵が符で来るならば、それに応じる。ともすれば愚行に過ぎる判断である。
だからこそ意味があるのだ。蛮勇とは、愚かしくとも勇ましきに変わりなし!
「千年桜の符――今は、今だけは、あたしの想いに応えてっ!」
投げ放つ。向こうに回すは業を蝕み喰らう呪いの符。相殺――否、呑まれた。
呪詛の飛沫がその身を切り裂き、闇色の飛礫を受けた櫻宵は吐血する。
ふらついて退きかけたその背中を、後ろに立つ彼の歌声が支えてくれた。
「櫻! 退いちゃダメだ! 負けちゃダメだ、あんな男に負けるなよ!」
そうだ。そうとも。己はひとりではない。
家柄に苦しめられ、縛られ、生きながら死んでいた己ではない。
「君が倒れそうになったなら、僕が歌声で呼び起こしてみせる。
君が苦しくなったなら、僕の歌声でその苦しみを和らげてみせる!」
歌声に応じ、ぽつぽつと無数の水泡が生まれてふたりを護る。
かそけき護り。飛び散った符に切り裂かれた四方八方から業が溢れ出し、
怨霊の形を取ったそれらは、ふたりの足に纏わりついて引きずり込もうとする。
リルも無傷ではない。悔しい。でも、そんな己を彼は信じてくれている。
「あたしに――私に! 私が持っている限りのものを、全部……ッ!!」
弱気になっている暇はない。まだ動ける。降り注ぐ符の雨の中を、進め!
「ずっとずっと疑問にございます。なぜあなたがたはそうも愚行を犯せるのか。
勝てぬはずの敵に挑み、苦しいはずの猛威に己を晒し、そして多くは息絶える」
新たな符が櫻宵を襲う。刀で切り裂き、進む。リルの歌声が響いてくる。
時折歌声が途切れるのは、彼も無傷ではないから。けれど振り返らない。
「あなたがたが未来へ歩もうとすればするほど、過去は積み重なりまする。
いずれその重さはあなたを押し潰しましょう。だのになぜ足掻くのか……」
「決まってるじゃない」
血まみれの姿で、櫻宵は笑った。
「夢が、願いが、人間(あたし)たちにはあるからよ」
「ほう」
「かつての私にはなかった。――けど、あたしは!」
進む。あと数メートル。狂おしいほど遠い。
「行ける――行けよ、櫻! 君は、誰より立派な陰陽師なんだから!」
目を見開く……溢れる涙を拭わぬまま、声援に押されて、櫻宵は進む!
支えてくれる誰かがいるから、私は/思い続けられる誰かがいるから、僕は。
「前に! 進めるのよッ!!」
「――君の背中を、送り出せるんだ!」
だから護る。ふたりで生きていくこの世界を。誰でもなくふたりのために。
「生に飽いてるやつに、私たちの世界は貪らせないッ!!」
首を。よこせ。愉悦のためでも、快楽のためでも、陶酔のためでもなく。
逃避のためでも、酩酊のためでも、目を背けるためでもなく。
「――ああ、櫻」
やっぱり綺麗だ。僕は、そんな君が大好きなんだよ。
この心にどれだけ醜くて汚らしい部分があったとしても、やっぱり。
溢れてくる涙は、どんな海よりも透き通った透明なしずくなんだ――。
「……やはり、理解できませぬな」
晴明は言った。
「噫……あるいは私もまた、斯様な脆弱なものであれば」
刃が首にめり込む。
「その理由を、理解することも――」
言葉は続かぬ。首が飛んだ。血が飛沫をあげた。
もう、櫻宵の脳裏に、忌まわしき父の姿は蘇らなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
猟兵とやらは、生命の逸脱者と申します。世界に祝福されし者だと。
異なものでございませぬか。我らと彼らはこれほどにも対極にある。
誰がそうしたのでございましょうか。
はじめからそうだったのでございましょうか。
いくら問うたところで、答えはわかりますまい。
この身は、もはや何の答えにも辿り着けぬ残骸にございますれば。
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<呪詛>宿し呪詛/呪操る
酷い怨念…
城の由来故か、彼の者の所業故か
屍の量産も戯れに過ぎない、と…
[ステラ+ケイオス]剣槍形態:増殖変形、二刀流や投擲も
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
<念動:オーラに破邪破魔の呪>込め纏い行動補助と耐性
【符】の初撃を念動で受け逸らし時間稼ぎ《界》核形成
力場に破魔の呪込め符の迎撃と怨念祓う
まずは強大な敵の強化を防ぐ事にのみ集中
<早業>接近戦挑む:防御優先
[ウロボロス]念を身に取り込み呪詛とし力溜め
一撃に懸ける
呪詛を破魔の呪に変換剣槍に充填
機を見てオーラ集中、片腕犠牲覚悟で一撃受け払う
力場で相手の周囲の怨念祓いつつ体勢崩し
渾身の一撃を
●業魔覆滅:月宮・ユイの段
むせ返るほどの怨念。しかも、これは晴明がばらまいたものではない。
だがおそらく、かの者の存在が、怨霊たちを騒がせていることは確かだろう。
「……あなたがなぜ、ここを居城に選んだのか。私には判じかねます」
相対する敵――安倍晴明を前に、ユイの表情は固い。そして、鋭い。
「ただひとつ、わかることがあります。あなたは……」
頭を振り、言葉を継いだ。
「――この人々の怨念にすら、何の関心も抱いていないんですね」
くすり、と、笑い声がひとつ。
「なるほど。人ならぬ身なればこそ、私の意図も察せるということにございますか。
然り、にございます。己に意味を抱けぬ者がなぜ他者に興味を持てましょうや」
「……見下すならばまだいいでしょう。惰弱だ、矮小だと、吐き捨てるのも」
傲慢であるならば、驕慢があるならば、人はそれに怒りを抱くだろう。
いかに誰かを見下し侮蔑していようと、それは"感情を向けている"証なのだから。
「けれど、あなたのその無関心は、全てにとっての最大の侮辱です。
……その上、人の死をも冒涜する所業。私は、見逃すわけにはいかない」
「なれば、私に挑みまするか? その身一つで」
「いいえ」
ユイの周囲、不可視の圧力が増した。
「私はひとりじゃない。この身に、この心に、引き連れてきたものがある。
――己の存在にすら飽いた愚者よ。その愚行の報い、私たちが味わわせてみせる!」
怨念をも吹き飛ばすほどの呪詛が、ユイの全身から溢れ出た――!
はたして敵は、剣槍を構えて突き進むユイに対し、至極単純な戦法を選んだ。
符である。五芒業蝕符。業(カルマ)を蝕み喰らいし外法の符。
無造作に擲たれたそれは、空中で無数に分裂し雨のように降り注ぐ!
「――っ!」
多い。念動力で受け、逸らそうにも、その数がこれを阻んでしまう。
ユイは己の被弾を最小限に留め、勢いを殺さぬまま床を蹴った。
その体をヴェールのように覆う魔力が、破魔の力を込めて怨念を祓う。
だが、城にわだかまる怨霊たちもまた、業を食われてその身の力に変わる!
「我らは過去。残骸でありノイズであり、不要とされた者なれば」
がぎん!! 振るわれた剣は鋸剣に払われる。だが槍の刺突。
残るもう一振りがこれを受け止め――両者は拮抗した。
「過去を拠り所とするあなたに、私が負ける道理はございませぬな」
「それは、違う。あなたという過去と、私を形成する過去は違うッ!」
がいん!! 怒りとともに刃を弾く。発散した呪詛を切っ先に収束充填!
怨霊どもが渦を巻く。業が晴明のもとへと吸収されていく!
「あなたは滅ぶ。私の過去は、私が在る限り意味を持って続いていく!
これ以上、世界を……いまを生きる人々を弄ばせはしません、晴明ッ!」
「噫! その高き理想と意思こそ、我らが踏みにじるべき希望なれば!」
再度の激突――怨念が触手めいてユイを蝕むなか、ユイはさらに一歩踏み込んだ。
手応え。その身を傷つけられ蝕まれようとも、剣は、槍は届いた。
それがきっと、光明となる。この戦いを――世界の未来を護るための光明に。
苦戦
🔵🔴🔴
祇条・結月
安倍晴明……UDCアースでも同じ名前の陰陽師の伝説があるけど、やっぱりこっちにもいるんだ
……あの屍人の親玉として
だったらなおさら。見逃すわけにはいかない
僕に勝ち目が薄いとしても
水晶屍人の大量召喚にはちょっと眉をひそめて
それを妨害する術はないし出されてから対応するしかないよね
術者が使役してるって言っても、その数じゃ自由自在って風にはいかないだろ
小回りを利かせて【敵を盾にする】風に動いて推奨屍人の動きを制限していく
それでも向かってくる敵には苦無を【スナイパー】で投擲して目を潰していく
多少のダメージは【覚悟】してるよ。それでも【激痛耐性】で足を止めないで、鍵ノ悪魔を降ろして、渾身の一撃をお見舞いする
●業魔覆滅:祇条・結月の段
水晶屍人は、どこから湧き出てくるのか。骸の海から? あるいは無から?
わからない。確かなことは、そのユーベルコードは"規格外"だということだ。
かつて異なる世界――キマイラフューチャーで相対した、あの地獄じみた男。
それが従えていた黒龍に、勝るとも劣らぬ数。質は劣れど、数は同量か。
(やっぱり、屍人の召喚を止めることは出来ない)
これほどの屍人を生み出すまでにもてあそばれてきたであろう、
犠牲者たちの末路とその人生と苦しみとを無双し、結月は眉根を顰めた。
しかして今は、そのような感傷に浸っているような場合ではない。
もとより勝ち目の薄い戦い、無数の水晶屍人が城内をうろつく今となっては、
それは那由多の海に雫を落としたかの如き、か細いものとなっている。
一秒、否、コンマゼロ秒の余裕すら惜しい状況。結月は駆ける。
己の武器はなんだ? この、少し前まで平凡であった自分の武器は。
大それた魔剣だの神剣だの、龍を使役するような大げさな術式も、
万の軍勢を一撃で灰燼にせしめる禁呪があるわけでもない。
悪魔を身に宿しているわけでも、未来をも確定させる眼があるわけでも、
冷徹な兵士のごとき鎧を纏えるわけでもない。ただ己には――鍵と、錠前がある。
(やれることをやるしかないんだ。いつだって、これまでだって)
結月は、ごくごく平凡な感性を持つ少年でありながら、
どうやらある程度の鉄火場に至ると、逆に腹の据わる性質であるらしい。
蠢く屍人どもの足元をくぐり抜け、反応する者があればこれを飛び越えて躱し、
大柄な屍人の視界を盗んで障害物として、なおもすがる者は苦無で滅ぼす。
足を止めるな。"いかにして防ぐか"ではない、"いかにして生きるか"を考えろ。
己は痛みに弱い。覚悟して一撃を受け止めて、やり返すなんてことは出来ない。
ならば、こうして、影に隠れて影を縫い、頭を沈めて突き進むのだ。
……それが業腹だとしても、向かうべき先を忘れていなければ意味はある。
顔を上げろ。男に生まれたからには、歯を食いしばって意地を張れ!
「……ッッ」
脇腹を引き裂いた爪の痛みをこらえながら、結月はぎらりと睨みつけた。
いた。屍人どもに己の処理を任せ、どこへともなく消えた敵の姿。安倍晴明。
陰陽術の大家が聞いて呆れる。ゾンビムービーならショッピングモールでやれ。
「こっちを見ろよ――こっちを見ろ、晴明ッ!」
自然と声が出た。晴明は振り返らない。屍人どもが彼を包囲する。
だが、もはや結月は止められぬ。その身に境界を統べる悪魔を宿したがゆえ。
血を吐きながら駆け抜けて、傷の痛みも躊躇わず、再び、叫ぶ。
「――後悔するぞ、僕の言葉をも切り捨てるなら」
視られたくない。この力を、己を。でも今は逆がいい。逆でいい。
言葉に従うことはあるまい。ヤツは自分を軽んじているのだろう。いいだろう。
思い知らせてやる。銀の鍵が輝く。血を吐き捨てて、あと一歩!
「――なんと」
「遅い……ッ!!」
振り向いた晴明が瞠目した。その顔面を、結月の拳が殴り抜けた。
意識が遠のきかける。心のなかで己を叱咤してそれを保つ。
「僕は……過去(おまえ)たちなんかに、負けないんだ」
それは、世界に我を張る少年の、か細きも気高き強がりだった。
成功
🔵🔵🔴
ルーナ・ユーディコット
逃がしちゃいけない
そして好きにさせてはいけない
こいつはおそらくドラゴンテイマーと同質の敵
あの日の敗北を超えるために
人でありたいと願う私の為に
竜の力と共に今を弄ぶ外道に一泡吹かせてやる
先手で撃ってくるユーベルコードは避けない
目指すは敵の懐、至近距離
凌ぐのは初撃、腕一本犠牲にする覚悟で、二撃目を受ける
覚悟と呪詛耐性を以てしてどれほど立っていられるか
分の悪い賭けもこいつ相手なら悪くない
狙うは悪竜【隠者】の発動
人の血や悲鳴を浴びてもすまし顔をしてそうなその横っ面に特別派手なのを食らわせてやる
私の体がそのあとまだ動くなら、敵の首を叩き落す
セイメイだか何だか知らないけど
過去は過去のまま、眠っててよ
●業魔覆滅:ルーナ・ユーディコットの段
……あの日。この世界とは別の場所、地球の核に等しき花の中で。
地獄をそのまま人の形にしたような敵と戦い、ルーナは――敗けた。
大局的に見れば勝利ではある。彼女のぎせいもまた、勝利の一翼を担っている。
だが、そういう話ではない。己が、あの男……ドラゴンテイマーに挑んだ戦い。
それは間違いなく、彼女の敗けだった。後に誰かが続いてくれたとしても。
自分は敗けて、倒れ伏したのだ。その記憶は、おそらく永遠に残るだろう。
これまでも。これからも。おそらくは、ずっと。
ぎゃりん、ぎゃり、ぎゃりりりりりり。
生理的恐怖を催させる、生命を惨殺し滅却するために生まれた刃が、
鋸が、呪詛を孕んだ禍々しい刃が、威嚇するかのように、値踏みするように鳴る。
まるで、獣が、獲物を取り囲んで喉を唸らせるかのような有様だった。
怖くない、といえば嘘になる。いつだって自分は恐怖心を押し殺しているんだから。
ただ、そうと決めた以上、ルーナはもはや臆しも退きもしない。
「いくら自分自身に飽いたあなたでも、目の前に立ちはだかる敵は無視しないでしょう」
「さもありなん。私とて、無為に滅びるつもりはございませぬゆえ」
「――なら、かかってこい。私はそれを乗り越えて、その横っ面をぶっ飛ばす」
晴明は、ふ……と、意図の察しきれぬ笑みを浮かべた。
「今しがたひとついいのを食らったばかりでございまするが」
「なら、もう一撃。……あなたは、絶対に逃さない。好きにもさせない」
晴明が目を細める。ルーナという障害物の存在を認識し、推量しているのだ。
いかにして殺すか。如何にして引きちぎるか。いかにして絶望させるか。
その殺意に呼応するかのごとく、鋸剣のあげる剣呑な唸り声が増していく。
……ルーナは、腰を落とし、音もなく疾走した。
自殺行為だ。手ぐすね引いて待っている獣に自ら心臓を差し出すが如き!
言わんことなし。晴明は薄く笑いながら、容赦なくチェーンソー剣を振るう、だが!
「………ッッッ!!!」
「なんと」
さしもの晴明も驚いた。ルーナは、"さらに自ら腕を差し出したのだ"。
ごり、ごりごりごりぎちぎちぎち――ばつん。どさり。
「………私、は」
しゅうしゅうと吐息の間に苦悶の声が混じる。
「人で、ありたい。獣じゃなく、自分の意思で、生きる、人として――」
――その疾さ、ひたむきさ。獣に相応しいまっすぐな殺意は誇るべきものだろう。
「獣じゃなく、ひとりの、人間としてッ!!」
それで敵を殺せぬというならば。危うい綱渡りすらもしてみせよう。
血が吹き出す。これこそが狙い。ルーナは叫んだ!
「神とも鬼とも呼ばれた、悪竜の幻影よ! 憎悪を吼えよッ!!」
「!!!」
見よ。噴水のように飛沫をあげる血の中から、恐るべき龍が現れた!
逃れようとする晴明を喰らい、龍はその有り余る力を、解き放つ……!
「――これだから、人間は」
舌打ち混じりの声。ルーナはことさら不敵に笑ってやった。
「私は敗けない。立ちふさがる過去(あなたたち)を、全部破滅させてみせる」
己はけして、あの惨劇を忘却(オブリビオン)しはしない。
それが、お前たちと、私との絶対的な違いなのだ。
成功
🔵🔵🔴
壥・灰色
足下に、「衝撃波」を発露
敵手の攻撃を回避せんと飛び回り、それでも追いすがる五芒印を『制圧回路』――ライオットを起動、拳打にて迎撃破壊
ユーベルコードを使用せずに敵の先制攻撃をやり過ごすことを試み、機をうかがう
多少のダメージは覚悟の上だ
逃げ場が少なくなり、敵の全力攻撃を喰らうことが必定となった段で「第七二番魔術数理」を起動
敵の膨大なユーベルコードのエネルギーを、吸収できるだけして魔力に転化、すかさず衝撃変換・増幅加速
地面を削り飛ばし、一直線に前進する
ライオット、全開
阻むセイメイの攻撃を、ただただ繰り出す拳にて砕きながら
撃拳一擲、外道に届かせようじゃないか
退屈が嫌いなら、紛らわせてやる
この拳でな
●業魔覆滅:壥・灰色の段
KRAASH!!
衝撃波に耐えきれず、城の床がひしゃげて砕け、虚空が間口を覗かせた。
大悪・安倍晴明のその"業"によって、ここは一種の異空間となりつつある。
裂け目から聞こえてくるのは怨念。死者たちの恨みのこもった音叉である。
それすらも吹き飛ばし、灰色は撃力を以て空を、否、城を舞う。
「ちょこまかと鬱陶しゅうございますな。勅ッ!」
ナイフめいて放たれた五芒符、灰色は着弾前に拳打で迎撃破壊。
だがそれすらもフェイントだ。本命はすでに床の虚空に飲み込まれている。
――オオオ、オオオオオ……!
「さて、いつまで逃げ回られるのか。見ものにございまするな。
我が符は"業(カルマ)"を呼ばい、以てあなたの逃げ場を奪いまするゆえに」
「おれを、直接仕留めることが出来ない。そんな不安が透けて見えるぞ」
「――はてさて、いかに」
KRAASH!! 足場代わりに使われた壁が砕け、そこにまた符が呑まれていく。
敵の符は無数。迎撃のために一瞬でも気を逸らせば、それで相手の術中だ。
かといって業の領域を防ぐために足を止めれば、おそらく符をまともに喰らう。
それこそ元の木阿弥だ。ユーベルコードにユーベルコード無しで抗うというのは、
それ自体がすでに難行なのだ。これこそが、絶対先制の矛盾である。
だがしかし、その難行に挑む灰色の目に、絶望や焦燥のたぐいはない。
もとより表情は死人めいて抜け落ちた青年だが、今彼の双眸に燃えるのはひとつ。
怒りだ。かの大敵への、激甚たる、猛烈なる、燃えるような義憤がある。
彼は冷血漢ではない。人と同じように悲しみ、怒り、楽しみ、そして喜ぶ。
ただその出生ゆえに、彼は人と同じようにそれを見せることが出来ない。
……悔しいと思ったことは、ある。笑いたい時に笑えればいいのに、と。
ただ。それが苦しみばかりを与えてきたわけではないし、得になったこともある。
幸いなことに、彼の周りの者たちは、そんな無表情を気にしもしないでいてくれる。
ありがたいと思う。守りたいと思う。彼らを、この世界を、この世界の人々を。
「この世界を、いま、生きるために死ぬ気で救おうとしている人々がいる」
捨て石の覚悟を以て我が号令に応えよという大君の呼び声に、10万の兵が応じた。
欠けさせぬ。誰ひとりとして。戦いのあとの遺恨すら残しはしない。
「おれは壊すことしか出来ない男だ。お前にとっては退屈だろう」
晴明が目を細めた。
「――それでも、何も出来ないこのおれの拳に、もう一つ出来ることがある」
「それはつまり、意思半ばで果て業に呑まれて死ぬことでしょうかや!」
哄笑。見よ、灰色を包むように符の五芒結界が完成している!
四方八方、まったく同時に放たれる業蝕の呪詛! 逃げ場は……ない!
「違う。それを教えてやる」
――逃げるつもりなど、ない。
第七二番魔術数理(セオラム・オブ・アルイーズ)、証明。
放たれた呪詛を飲み込み、しかれど許容値を超え、灰色の魔力回路=血管が爆ぜた。
あちこちから血を噴き出し、意識を失い、また覚醒するほどの強烈な激痛。
無表情で良かったと思う。痛みを見せて敵を喜ばせることがないのだから。
「……制圧回路(ライオット)、全開」
ドウッ!!
灰色はその身に取り込み激流めいて荒れ狂う魔力を、F1カーのガソリンめいて噴射。
音をも超えて間合いを詰め、ただ一撃を込めるために床を砕く!
「退屈が嫌いなら、紛らわせてやる――おれの、この拳で。この壊鍵で」
魔剣着弾――符の壁を、呪詛の結界を超えて、衝撃が浸透し、炸裂した!!
KRAAAAAAAAAAASH!! 激甚たる余波が壁を床を天井を引き裂き砕ける!
「がはあっ!!」
「理解したか。これが、"おれに唯一できること"だ」
外道覆滅。撃拳ここに成れり。滂沱の血を流して男は立つ。
灰燼の如き拳は、たしかに飽いた悪魔の、その心根を叩き砕いてみせた!
成功
🔵🔵🔴
シーザー・ゴールドマン
退屈そうだね。
まあ、私としても君にはあまり興味はないのだが邪魔ではある。
とりあえず、退場して頂こうか。
先制対策
オーラセイバーを片手に、魔力で質量を持たせた分身(残像)を展開しつつ間合いを詰める。
チェーンソー剣の攻撃を直感(第六感×見切り)で回避あるいは残像で受けてこちらのUC発動までの時間稼ぐ。
回避しきれない一撃は受ける瞬間を見切ってオーラセイバーを手放し、オド(念動力)で固定。
呪詛籠めの一撃をオーラセイバーをデコイとして受ける。
この段階で敵の先制UCは消化していると考えますので
次の瞬間、脚に『ラハブの割断』の魔力を纏わせて渾身の蹴りで切り裂きます。
その後は再びオーラセイバーを具現化して戦う。
●業魔覆滅:シーザー・ゴールドマンの段
ガギ、ガギンッ! ガギ――ガギギギギギッ!!
チェーンソー剣が怨霊渦巻く大気を切り裂き、赤いスーツの男を引きちぎる。
だが、それは虚像だ。幾度目かの手応えに、晴明は舌打ちする。
その身のあちこちからは血が噴き出し、薄笑いはとうに消えていた。
痛みだ。猟兵に与えられた傷と痛みが、彼奴をここが戦場であると思い出させていた。
そこに、ひとりの男がやってきた。
ちょうどさっきまでの晴明のように、薄く笑っている男が。
――退屈そうだね。気持ちはわからないでもないよ。
脳裏に、切り裂いたはずの虚像のオリジナルの相貌が蘇る。
――まあ、そうは言っても、私も君にはあまり興味はないんだ。
忌々しい男の姿が。
――だが、邪魔ではある。そういうわけだから、退場してくれたまえ。
忌々しい。忌々しい。
――何の甲斐もなく、これまでの敵と同じように、当然にね。
「私を軽んずる……その余裕、驕慢、いかにして溢れたものでございましょうか!」
「知りたいかね? ならば、その人生を実りあるものにして、楽しみたまえ」
声がした方向を、晴明は一瞬にして、旋風のように切り裂いた!
だが手応えなし。そこにあった笑みもまた幻影である!
「この世を楽しむことが出来ぬ者に、真の意味での苦痛を与えることは出来まいよ。
君は飽いた。私は飽いてはいない。それが唯一の、そして大きな違いだろう」
「……この身の、果たして何を楽しめというのか。まったくッ!」
グオオオオン、ギャリ、ギャリガガガガガガガッ!!
幻影を切り裂き、その後ろに立つシーザーと晴明はついに対面した。
「だから言っただろう? 私は君に興味がないのだよ」
「小賢しい――!」
両者は相対し、そして疾走する。チェーンソー剣がシーザーを狙う、だが!
「滅びてしまえば忘れるだろうが、一つ覚えておくといい」
呪詛のこもった刃がその身を切り裂くことはなく、赤公爵は晴明の背後。
遅れて、晴明の脇腹が切り裂かれ、ぞっとするほどの量の血が噴き出した。
「過去は、けっして未来に勝つことは出来ないのだよ。絶対にね」
相容れぬ者同士、その深く広い溝の如く、激甚たる傷跡が。
成功
🔵🔵🔴
五条・巴
七結と(f00421)
僕一人では出来ないけれど、七結と共に行くことで1人では出来ないことが出来るようになる。
大切な物を、場所を、譲りはしないよ。
水晶屍人が召喚と同時にEdelweissを構える
僕は"薄雪の星"でそれらの数減らしに専念するよ
風の属性を纏わせて水晶を粉々に砕いていく
僕の前で刃を振るう七結が踊りやすいように
彼女の周囲に細かな水晶が舞う
美しいだろう?存分に魅了されてくれ
ただ、これだけ見て飽きたなんて言わせないよ
投げられた毒瓶はすかさず空中で打って彼の頭上に落とす
さあ、七結の毒の味はどうかな?
風を利用して最大限に毒を浴びせる
君がこの場に、君自身に飽きてしまう前に
蕩けて無くなれ
蘭・七結
トモエさん/f02927
あなたの住む世界
ナユの愛しの世界
晶石の骸に、呑ませはしない
両の手に『彼岸』と『此岸』の双刀
先制攻撃にて現れ出でる屍人を薙ぎ払い
救えぬひと、戻らぬひと
ひとりずつ散らしながら
羽織の裾から融解毒の香水瓶を取り出す
〝満つる暗澹〟
そうと念じ、複製した小瓶を屍人たちの周囲に漂わせるわ
準備はできたわ、トモエさん
晶石の骸たちの主
あなたに和国の彩はあげない
仄闇の果てへと、いざなってあげる
ナユが魅せるのは甘く蕩ける蜜の毒
たあんと、味わってちょうだい
避けられたのなら、散らすまで
蕩かす毒の雨はフェイント
〝毒〟の及ばぬ場所へとおびき寄せて
双刀に付与するは猛毒と生命吸収
能を纏った残華の一閃を降らせ
●業魔覆滅:五条・巴と蘭・七結の段
切り裂く。斬り裂く。斬り続ける。
撃ち抜く。打ち抜く。撃ち続ける。
彼らはもう"終わったもの"だ。生者と同じ姿をした、しかし違うもの。
水晶屍人。その生を弄ばれ、捻じ曲げられ、屍すらも辱められたものたち。
……あるいは、その被害者たちと同じ姿をした、ただの屍の成れの果て。
だから、ふたりの刃と銃に憐憫や躊躇が宿ることは決して無いし、
波濤のような屍どもを、ふたりはただひたすらに斬り裂き/撃ち抜き続けた。
"彼岸"と"此岸"の二刀を振るい、踊るように舞う七結の姿は、幽玄ですらある。
飛び散る水晶の"あお"を、屍人たちがこぼす臓物の"あか"を、七結は見る。
救えなかったひと。戻らぬひと。もうすでに居ないひと。
それぞれの生があったのだろう。それぞれの意思があったのだろう。
だがそれは、もうない。ここにあるのは抜け殻の、それ以下の残骸だ。
(――なんて、虚ろで空のような"あか"なのでしょう)
噫。これほどまでに虚しい剣舞は、果たして今まであっただろうか。
だが彼がいる。巴。もう何度戦場を駆け抜けたわからぬひと。
それと肩を並べて舞い踊ることが出来ることは、とても快い。嬉しい。
だから剣を振るう。もう何者でもない屍人どもを、それを骸たらしめる水晶を、
砕き、斬り裂き、穿ち、断ち割り、前へ前へと進んでいく。
……舞い踊る淑花をきらめかせる水晶、その輝きを巴は視ていた。
きらきらと散りゆく光は、屍人を屍人たらしめたものにしては美しすぎた。
あるいは、彼らの弾丸と刃によって、呪わしきさだめから解き放たれたからか。
指先ほどにも満たぬ晶石の輝きを浴びて、怨念渦巻く鉄火場を舞う女の姿は、
まるで男を誘いたぶらかす毒花のよう。己すらも魅入られそうなほどに。
此岸と彼岸、二刀がくるくると演舞するさまは、ああ、そうだ、まるで月の輝き。
少しでもその舞が続くように、少しでもその美しさが損なわれぬように、
巴は引き金を引く。無慈悲に、風を纏う弾丸で、敵の尽くを散らしていく。
そこに憐憫はない。感慨はない。達成感も、手応えも、怒りも喜びもない。
ただ、人のカタチをしたものを、その引き金で壊したという実感だけだ。
たとえるなら――道端に生えている花を一輪、思いつきで手折ったとして。
花の命を奪ってしまった、美しさを損なってしまった――と、思うだろうか。
そんな者もいるかもしれない。だが殆どの者はそうは思うまい。
屍者を穿つ感慨は、それに近い。なぜなら彼らはもう誰でもないのだから。
だから巴は、笑顔めいた表情のまま、ただ踊る七結だけを見つめていた。
……しかして、あふれかえる屍者の数は、想像を絶していた。
たしかにそれは、一体一体は何の変哲もない、しかし凶悪な屍者である。
猟兵は生命の慮外ゆえに、噛まれたところでその同胞にはならねども、
ただ斬って裂いて、撃って穿って終わらせるにはあまりにも数が多すぎる。
だからこその強敵。だからこその大悪。だからこその――安倍晴明。
「毒花は、その毒が強ければ強いほど、美しく咲き誇るもの――」
屍人どもの河の向こう、そのあるじは呟いた。
「さて。あなたという毒花は私を脅かすほどの毒を持つのか、否か」
「解っていて、逃げないのね。骸の主。あなたはそこまで飽いているのね」
ぞっとするような色気を持つ少女が見返した。その周囲にはいくつもの小瓶。
「――だとしても、あなたに和国(このせかい)の彩はあげない」
カキン! 浮かび上がる小瓶を、銃弾――の纏う風――が弾いた。
さながらジャグラーの曲芸めいて、小瓶は屍人の只中を、晴明の目前まで迫る!
BLAMBLAMBLAM!! 放たれた弾丸が……猛毒を孕みし小瓶を、貫いた!
「君が君自身に飽きる前に――蕩けて亡くなれ」
毒の雨が滴る。ふたりを苛んでいた屍人どもが苦しみ悶え、融けた。
苦悶の海を超え、さらなる一撃を見舞うために七結が跳ぶ。大輪のごとく!
「仄闇の果てへ、いざなってあげる。たあんと、味わってちょうだい?」
「――しかして、滅ぶにはまだ少々早うございますな――!」
がぎん!! 刃とチェーンソー剣が打ち合う。毒が飛び散り大気を侵す。
満身創痍の晴明、されど融けて崩れるには一手足りず。潮は引かず。
新たな屍人どもが溢れてかえり、毒花とその紡ぎ手を覆い隠していく。闇のように。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
神籬・イソラ
同じ「まじない」を扱う者として
直接まみえたいと思っておりました
貴方さまも、その身に『呪い』を宿しておいでなのですね
かように心地良き場でお目にかかることができ、光栄にございます
いのちの名――セイメイを冠する御方
この場にて戦闘力を強化させるは厄介
符はあえてこの身に受けましょう
放つ瞬間の挙動を見極め『巫覡載霊の舞』を発動
女神のごとき神霊体へ変身し、攻撃の軽減を狙います
ナノマシンアーマーも多少の助けになれば
傷の回復は後に
なぎなたの衝撃波で敵の足止めを狙います
一瞬でも隙を作れ、他猟兵の契機となれたなら
場に満ちる怨念は、わたくしにとってはいとおしきもの
恨みつらみをこの身に降ろし、彼らの無念ごと挑みましょう
北条・優希斗
…セイメイ…晴明、か
(ふと脳裏を過る富士の樹海。それは決して届かない泡沫の記憶)
アンタの所業、知っている
だからかな。俺の中の『俺』が囁いている。アンタを殺せ、とね
…一つ、死合わせて貰おうか
召水晶屍人を見切り+残像+敵を盾にするで同士討ちを誘いつつ、更に攻撃をオーラ防御で防御し蒼月、月下美人を抜刀
二回攻撃+範囲攻撃+早業+薙ぎ払い+傷口を抉るで仕留めつつ、ダッシュ+地形の利用+先制攻撃+ジャンプ+戦闘知識で肉薄
晴明にUC発動、月桂樹による騙し討ち+串刺し+フェイントで晴明の虚をつき蒼月、月下美人、鏡花水月、夕顔にUC+二回攻撃をのせて刃を見舞うよ
『滅なる刃で永劫に眠れ、深き業を背負う者よ』
雨宮・いつき
これまでの数々の非道、許すわけにはいきません
それが名高き陰陽師の所業であっても、決して
放たれる五芒符は冷撃符の【高速詠唱】で生み出す氷の壁で受け止めて
続け様に晴明へ向けて魂縛符と起爆符を放ちます
起爆符は直撃させるつもりで制御し、魂縛符は五芒符で生み出された亀裂の中へ
地の下から晴明を吸い寄せる事で地面に這い蹲らせ動きを封じ、
怨霊の魂も亀裂の中へ吸い留めて、能力の強化に使用させないようにします
そして生み出した隙を使い【全力魔法】にて顕現させるのは、桃の侍とその御供
雉の冷気と狒々の雷撃の【マヒ攻撃】で晴明の動きを阻害し、
狛犬の焔と僕の起爆符、魂縛符で五芒符を迎撃
桃の侍様の力、存分に振るって頂きます!
●業魔覆滅:神籬・イソラ、雨宮・いつき、北条・優希斗の段
屍人が溢れかえる。怨念渦巻く城に地獄が現出したのだ。
「なんて数だ……このためにどれだけの人々を苦しめた、晴明!」
優希斗は激しながらも、立ち止まることなく蒼月の刃を振るい屍人を殺す。
すでに死んでいるものを殺すとは異な話だが、それでも元は人だ。
その心に幾許かの慚愧と追悼の念を込め、されど刃は曇らせることなく。
ときには同じ屍人を盾にして、己に振るわれる爪や牙の傷を厭うことなく、
優希斗は走る。斬り裂く。無限にも思える屍人どもを乗り越えようとする。
「我らは"そういうもの"なれば。これはいわば呼吸し、眠るようなものにございます。
意を問われたところでそう答えるほかになく、ゆえに罪悪の念はなく――」
傷だらけのその身に、明らかな嘲笑が浮かんだ。
「ただ、鏖殺し捻り潰すしかございませぬ。お覚悟を」
たったひとりの猟兵であろうとも、もはや躊躇はしない。
こうまで己を追い詰め、おそらくはすでに幾度となく滅した天敵。
己の根源的な存在が騒いでいる。かの者どもを滅せよと。
――だがしかして、優希斗を襲うはずの屍人どもが、倒れていく。
まるで、己らを操り人形めいて手繰る、その糸を断ち切られたかのように。
「"まじない"を以て操られた屍人ならば、おなじ"まじない"を以て抗するに易し。
――直接まみえたこの幸運、光栄。敵ながら一礼を尽くしたくございます」
倒れ伏した屍人たちを無に帰しながら、ひとりの女が現れた。
鮮やかな晴れ姿に対し、相貌も手先も、一片の曇りもなく昏く、黒い。
「ほう」
「我が身は呪いを宿すモノなれば、貴方さまとある意味では同種にございましょう。
ああ、怨念渦巻くこの城も、我が身にとっては斯様に心地良く――」
慈悲深き声音でありながら、イソラと名付けられたブラックタールは、
救済のために呪いを振りまき、罪を、穢れを己の身で受け止め、濯ぐ。
いわばこの城は、イソラにとっては豊穣の甘露が溢れる密場のようなもの。
いのちの名――セイメイを冠していながら邪悪に堕ちたモノとは、
在りようは似ていながら正反対である。
「呪い、か……呪いなら、俺も今も苛まれているさ」
優希斗が云う。その口元には自重めいた笑み。
脳裏によぎっては水月のように消えていくのは、己のものか怪しき記憶。
ちぎり取れた断片は、あべこべなパズルめいて覚束ない。
「だが、そんな俺でも、お前のような存在を許すことは出来ない。
そして――同じようにお前を倒しに来た者は、まだいるってことさ」
イソラが頷く。晴明は何かを訝しみ――突如、弾かれたように符を放った!
だがはたして、五芒符がイソラを、そして優希斗を害することはなかった。
瞬時に生み出された氷の壁が、これを物理的に防いで相殺したからである。
散らばった呪詛が空間に亀裂を生み、新たな怨念を呼ばう。
「……これまでの数々の非道、あまつさえその理由は飽きと来ましたか。
ええ、その方のおっしゃるとおり、あなたの悪逆を許しはしません」
レンズ越しの力強い瞳で、陰陽師であるいつきが敵を睨みつける。
高名な陰陽術の大家であろうと、関係はない。世界の敵は滅ぼすのみ!
「あなたがたの行動が、必ず花開くとは限りますまい?」
「けれどここで座してみていれば、その可能性すら失われます!」
反撃だ。いつきは、魂縛符と起爆符を続けざまに晴明へ投擲!
されど晴明は、さらに五芒符を展開し、これによって符の連撃を防ぐ。
怨霊だ。沸き立つ怨念が彼奴を強化しているのだ。あの亀裂を塞げば!
「あなたが人々の命を弄んできたものが、同じ陰陽術の成れの果てならば、
僕は正しき術理を以て打ち払うのみ。その怨念――もはや、封じるまで!」
「ぬう……!」
見よ。起爆符はフェイント! 魂縛符はその実、晴明を狙ってはいない!
亀裂の中へ投げ込まれたそれは、霊的な重力場を生じさせ怨念を飲み込んだ。
さらに屍人までも、見えない渦に引きずられて倒れ伏す。好機!
「滅なる刃、その空虚な体に味わわせてやる……!」
戦神の呪詛を纏いて優希斗は驚異的な速度で近づき、刃を走らせ、
「屍人たちの恨みつらみをこの身に降ろし、彼らの無念を晴らしましょう」
イソラは、沸き立つ怨念を纏い、女神めいた神霊体となって薙刀を振るう!
晴明はチェーンソー剣を構え――否、悪手だ。いつきの術に隙を突かれるだろう!
「ええい……! 陰陽術が、私を追い詰めると申し上げるのですか!?」
「それだけではありませんよ、安倍晴明。この国に伝わるお伽話を識るでしょう。
すなわち、大敵を討つは日の本一の兵(つわもの)。無双の武者よ、ここに!」
いつきの術式が生み出したるは、歴史に名高き桃太郎とその配下たち!
正しくは、その逸話の大元となった、剛力無双・吉備津彦の霊である!
演義開帳――狛犬の焔が、雉の氷結が、狒々の雷が晴明の逃げ場を奪う!
「バカな……!」
「お前は俺たちを見損なった。だからまたこうして滅びるんだ」
散華葬月斬。一閃の裡に九つの斬撃。
「――その飽いた虚無とともに、骸の海へと今一度沈まれませ、晴明様」
巫覡載霊の舞。神楽の刀が心の臓腑を抉る。
かくて大悪、また一度の滅びを迎えたり。
けして歴史に語られることなく大立ち回り、されど屍者のみが識る。
己らの呪いと、恨みを糧に、未来を切り拓いてくれたモノたちがいることを。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
何度滅びても、何度死のうとも、我が身は立ち返り再び鼓動を刻む。
我が意思に依らず。何の目的もなく、意味もなく、大義もなく、喜びもなく。
……滅びから学ぶことも、死して何かを理解することもなく。
噫。我が身はもはや、虚無以外の何と呼ばうべきでありましょうや。
心禰・白雨
琥白さんと参加します。
(本人達は気付いていませんが生き別れの兄妹です)
琥白が敵を引き寄せて。ギリギリまで着た所で『フェイント』『春炎』を使い琥白の元へ現れます。
『踏みつけ』『怪力』で敵を押しのけ『手を繋ぐ』『ジャンプ』で包囲を抜け。
自分が琥白を守りながら琥白には敵の攻撃に集中してもらいます。
「まさかこの戦場で琥白と縁が繋がるとはな。これも業ってやつかね晴明」
(琥白が自分の贈った琥珀を大事に持ってた様子を見て嬉しそうに笑います)
「気を付けろよ琥白。親父から聞いた話じゃあいつは顔はいいが趣味は悪い。死体遊びの好きな男に琥白を渡すわけにはいかねえな」
満月・琥白
白雨さんと参加します。
(本人達は気付いていませんが生き別れの兄妹です)
【心結びの赤糸】を白雨さんと結び、屍人を召喚させます。
『見切り』でなるべく攻撃を受けないようにしつつ、晴乃雫が持つ『破魔』の力と、風の『属性攻撃』を乗せた、にょろにょろさんの発する『衝撃波』による『範囲攻撃』をして、少しでも威力を上げて屍人を効率良く倒せるように務めます。
ある程度数を減らしたら『時間を稼ぎ』ながら『おびき寄せ』て、白雨さんが来たら『手を繋』いで一緒に行動です……!
「白雨さんのお父さんの知ってるひと
……!」「……大丈夫、です!あんなひとより、とっても素敵な人が、すぐちかくにいるので……!」
●業魔覆滅:心禰・白雨と満月・琥白の段
人と人の縁とは、時として物語よりも数奇な軌跡を描くことがある。
たとえば……亡くしたはずの妹が、互いにそれと知らず目の前に現れるだとか。
ましてや、それを知らぬまま、まったく別の形で縁を結ぶことになるとか。
あまつさえ、そんなふたりが恐るべき強敵に挑むことになるであるとか……。
……だが悪いことに、現実は物語のように"めでたしめでたし"では終わってくれない。
たとえそのふたりを、その心を結ぶ赤い糸がつないでいたとしても。
「そんなっ、なんて数
……!!」
琥白は戦慄した。想像していたよりも、水晶屍人の数があまりにも多すぎる。
「こっちだ、琥白! させるかっ!!」
白雨が逃げ惑う琥白をかばうように前に立つが、いじましき努力に過ぎぬ。
たとえ怪力を以てその頭を踏みつけようと、一度に全てを払えるわけではない。
「白雨さんっ、危ない!」
「チ……ッ!」
一体の屍人を倒した瞬間、その隙を狙って別の屍人が白雨に襲いかかる。
破魔の霊力がわずかに屍人を押し返すが、その爪が彼を斬り裂くのまでは止められないのだ!
「がはっ!」
「白雨さん!!」
倒れかけた白雨をかばい、琥白はその手を取って駆け出した。
「これはこれは、囲まれようとも飛んで跳ねて逃げ回るとは面倒でございますな。
なれば――少しばかり飛んで跳ねたところで逃れられぬよう、策を打ちましょう」
晴明がぱちんと指を鳴らせば、水晶屍人どもは互いに喰らい合い……おお、おお!
あっという間に、それらは混ざるように、一体の巨大な屍人へと融合したのだ!
大量の数で攻めてくるならば、まだかいくぐり逃げ切る目はあった。
だがこれでは――怪物の如き豪腕が、ふたりの行く手を薙ぎ払う!
「琥白、離せ! あいつは俺が足止めする!」
「い、いや! ダメです白雨さん、それじゃ白雨さんが……!」
「けどこのままじゃ、ふたり揃ってやられちまうだろ!」
「……それでも、いやですっ!」
思ってもみなかった琥白の強い言葉に、白雨はやや気圧されてだまりこんだ。
だが言い争う時間はない。巨躯が、壁を薙ぎ払いながらふたりへと近づく!
「……大丈夫、大丈夫です。融合するまでに数は減らしたんだから。
きっと倒せないことはない……はず、です。だから、力を合わせれば」
「…………わかったよ。けど、本当に危なくなったら逃げろよ」
白雨の目をまっすぐと見返して、琥白はこくりと頷いた。
――不思議だ。どうしてこんなに、この子の目を視て安堵したのだろう。
白雨は識らぬ。琥白もまた識らぬ。己らを取り巻く数奇な運命の糸を。
「にょろにょろさん、お願いっ!」
琥白がかざしたビー玉から、奇怪なUDCが現れ咆哮を放った。
まさに琥白を掴み取ろうとぬうっと伸ばした巨躯の手が、思い切り押しのけられる!
「いつまでも琥白を狙ってるんじゃないぜ、趣味の悪い死体野郎がっ!」
白雨が走る! 桜吹雪を後に引き、怪力を伴った蹴撃一閃!
……やった! 屍人の大木めいた首がめきめきと音を立ててちぎれていく!
そして巨躯が倒れ伏す。これで屍人は倒せた、ならばあとは――。
「――琥白ッ!!」
桜吹雪が白雨を包む。そしてすぐさまに彼女のもとへ。
予感は的中した。安堵する琥白の背後、忍び寄っていた晴明が!
「死体遊びの好きな男に……琥白を、渡すかぁっ!!」
「白雨さ――!?」
薄く嗤う晴明の虚無的な瞳と、白雨の赤い瞳が交錯する。
刃が振り下ろされる。血が飛沫を上げる。捨て身の特攻じみた一撃!
「白雨さん……白雨さんっ!!」
己をかばって倒れた少年に、琥白は何度も何度も泣きながら呼びかけた。
「……人と人の繋がり、縁とはまこと恐ろしいもの。いやはや……」
こふ、と血を吐き出した晴明は、それ以上の追撃を諦めて姿を消す。
はたしてその一撃、次なる滅びをもたらす嚆矢となるか否か……。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
リゥ・ズゥ
アドリブ歓迎
先制、攻撃。リゥ・ズゥは、構わん。先に攻めると、いうことは、先に、手の内を見せると、いうこと、だ。
無数の屍人を出すということは、リゥ・ズゥは、それを無数に喰らい、力を得られる。
さあ、いくらでも、繰り出して、来い。リゥ・ズゥは、纏めて、喰い尽くす。
(野生の勘、見切りで先制攻撃へ身構え、水晶屍人が襲ってきたら捨て身の一撃、カウンター、怪力、鎧無視攻撃を加えた『カタチの無いカイブツ』で次々捕食し、生命力を補給しながらダッシュ、早業で駆け抜けます。
激痛耐性と液状の身体により、どれだけ敵の数が多くとも怯むことなく暴れ続け晴明へと喰らいつきに行きます。)
●業魔覆滅:リゥ・ズゥの段
――絶対先制。
それは強大なる幹部級オブリビオンと、猟兵の覆し得ぬ戦力差の証左。
いかなる攻撃も、いかなる行動も、いかなる作戦すらも凌駕するルール。
敵は、必ず先んじる。何をしようと、天地がひっくり返ろうと。
そして策もなく突っ込めば、狙い過たずそれが挑戦者を害し、斃れさせる。
これまで二度、そして此度で三度目……戦争のたびに明らかになる敵は、
名だたるオブリビオンは、皆その恐るべき優位性を誇示し、しかし斃れてきた。
そう、覆せるのだ。これまでの猟兵たちは、それを覆してきた。
覚悟で、
知恵で、
意地で、
機転で、
協力で、
あるいはもっと別の何かで。
……されど、覆してこられた、という事実が、翻って敵の易さに繋がるわけではない。
ましてや此度の敵は、魔軍将・安倍晴明。
歴史に名高き陰陽術の大家にして、水晶屍人を生み出す虚無的な男。
その手駒の数。質。策。非道。どれをとっても強敵なのである。
それを前にして、なおもまっすぐに挑んだリゥの度胸は称賛に値する。
彼の強みはその飽くなき闘争心と、あらゆる獲物を喰らう禍々しき怪物の口。
ブラックタールたるその身は、これまで多くの敵を喰らい、糧としてきた。
此度も同じだ。己の護りを省みることなく、喰らい、噛み砕き、飲み干した。
襲い来る屍人が波濤の如くだとすれば、それに挑むリゥは地割れか何かだろう。
飲み干し、喰らい尽くし、暴れまわり、殴り飛ばし、怯まず打ち砕き……。
「……なるほど。私が思っていた以上の食いしん坊がいらっしゃったようで」
リゥは、安倍晴明の前に立った。その身は満身創痍。
敵を喰らうことで傷を癒やすユーベルコードをしてなお、
無限じみて襲い来る水晶屍人の波濤は、与えられる傷は、治癒の速度を上回った。
それをまるごと平らげたということこそ、リゥの死闘の結果であろう。
「……リゥ・ズゥは、オマエを、喰らう。全て、全て、喰らう」
「その傷でよくもまあおっしゃられるものでございまするな」
「傷など、問題では、ない……オマエを、滅ぼす!!」
ぎらり。猛犬じみた赤い瞳が剣呑に輝く。晴明は涼やかな顔だ。
うなりながらリゥは身を沈め、さながらピラニアめいて体を液化し襲いかかる!
「あれだけの屍人を相手に、怯むことなく挑んだことは見事にございます」
が。と、晴明は視線を滑らせた。
飛びかかったリゥの真横、壁が砕けて潜んでいた屍人どもが襲いかかる。
「――よもや、"あれだけ"とは思いますまい?」
リゥは逡巡……しない。すでに獲物は定めている。行動も起こしている。
不意打ちした屍人どもの爪が、牙が、己の黒い体を引き裂いたとして。
一度開かれた牙は、それと定めた獲物の血肉を以て閉じられねばならぬのだ!
「言った、はず、だ」
晴明は訝しんだ。直後、その身を恐ろしき怪物の牙が喰らいついた。
「リゥ・ズゥは……敵を……お前を、喰らう、と……!」
みち、みちみちみち……ぶちぃ!
晴明は舌打ちし、食いちぎられた傷跡を抑えながら後退。
屍人どもがリゥに群がる。そこには傷つき暴れる猛獣がいた。
食らうと決めたならば、是が非でも喰らう。
それが、カタチ無き怪物の妄執なのだ。
苦戦
🔵🔴🔴
ゼイル・パックルード
随分退屈そうだな……あぁ、お前らがいる今はともかく、全てが終われば俺もお前のようになるのかな。そうならないうちに楽しいうちに死にたいもんだ、今はそのときじゃないがね
刀じゃあれは受けきれないか。鉄塊剣を両手持ち。
連撃技ってことは、初撃で同時に振ってくることはたぶんないだろう、片方に集中して武器受けする
チェーンソーならおそらくこちらに押し込んでくる形になるだろう、そこを怪力を生かし、ダッシュで全体重を乗せながら吹き飛ばしをして、態勢を崩す。吹き飛ばせたなら、更に牽制のために鉄塊剣はそのまま投擲。
とはいえ、強敵。そこから攻撃が更に来ることを覚悟しつつ、攻撃に意識を集中。UCの一撃をお見舞いする。
●業魔覆滅:ゼイル・パックルードの段
すべてが――この戦いが、いつか終わった時。
はたして終わるかはさておき、とにかく"いつか"が来た時、己はどうするのだろう。
義憤を以て戦うならば、訪れた平穏を喜び愛する誰かと暮らすのやもしれぬ。
名誉を求めて戦う者は、与えられる然るべき対価に耽溺するのか。
主義や信条に従う者はどうか。内なる誇りに、静かに浴するのか。
ただ、確かなことは――きっと皆、その平和を喜ぶのだろう。
おそらく自分はそこにいない。なぜなら、己は、その平和を喜べない。
そこに、己の居場所はない。生きがいがない。死んでいるも同然だ。
「……あぁ。なら俺も、いつかはお前のようになるのか」
ふとゼイルが呟いた言葉を、晴明はしばし目を細めて吟味した。
「我らの闘争に心血を捧ぐ決意の人――と、いう風な顔でもございませぬな」
「わかるかい? ああ、そうさ。怒りや憎しみなんて、うざったいだけだね」
炎が揺らめくのはなぜだ。それは、炎が炎であるからだ。
"そうである"から燃えて、木々を燃やし、家々を灼き、命を紡ぎもする。
そこに正義はない。悪もない。害意も、主義も、誇りも、なにもない。
だからゼイルは炎を愛する。燃え盛る炎を、静かに燃える火を愛する。
それは――己からすれば、この上なく理想的な在りようなのだから。
己も同じだ。何がという理由があるわけではない。
ゼイル・パックルードという人間は、ゼイル・パックルードだから戦うのだ。
戦って、殺して、死を、死の間際で得られる快楽を求めて戦場を歩く。
意味なんてない。ほしいものがあるわけでもない。
ただ――こうしていないと、生きている実感が得られないだけなんだ。
「世界の規矩とは、残酷なものでございまする」
晴明が言った。
「たとえその心根が、我らとほとんど同じものであろうとも、あなたは猟兵。
我らの大敵であるがゆえに戦うことが出来、我らの大敵であるがゆえ――」
いずれは、死ぬ。その死すらも、ゼイルは受け入れるのだろうが。
「あなたこそ、我らのようなモノであればよかったでしょうに」
「そうでもないね。俺は、お前らみたいな"終わりのないモノ"に成り下がるのは御免だ」
鉄塊剣が軋んだ。
「炎はいつか消えるのさ――だからこそ燃え盛る。違うかい?」
「……噫」
晴明が目を細めた。それは羨むようでもあった。
「私が飽き、あなたは燃え盛る。なんとも――羨ましい。ああ。噫!」
チェーンソー剣が唸る。一息の瞬間には間合いの裡に!
「その生命、今すぐにこの手で止めねば我慢なりませぬな!」
「そうこなくっちゃあ、なッ!!」
ガギィッ!! ギギ、ギギギギ……ギリ、ギャリギャリギャリギャリ!!
満身の力を以て、重厚な鉄塊剣を受け止めたゼイル。その判断は正解だ。
痩身に見合わぬ巨人じみた怪力。ゼイルは不敵に笑いながら、拮抗する。
「そうでなきゃあ、俺も殺しがいがない……ッ!!」
「その言葉をそっくりそのままお返しいたしまする! いざ!」
二手目が来る! 刹那、ゼイルは耐えていた一振り目を全力で振り払った!
鉄塊剣を投擲――否。地獄じみた男は一瞬で相打ちの覚悟を決めた。
ああ。この痛みすら。痛みを前にした武者震いすらも生者の特権だ。
屍人ども。滅んだ残骸ども。さぞ羨ましかろう。だから俺は笑ってやろう。
笑いながら燃え盛り、すでに終わったお前たちを嘲って、満足して終わるのだ。
"いつか"が来るその前に。されどそれは今ではない。
「――死にな」
邪刃一閃。呪詛の刃がその骨肉を抉り、削り取るのとまったく同時。
晴明は、鏡写しめいた男を憎々しげに睨み、臓物を裂かれた痛みに血を吐いた。
苦戦
🔵🔴🔴
冴木・蜜
チェーンソーの駆動音も頼りにし
攻撃を見切りつつ
回避が間に合わない攻撃は
体内UDCの蔦や蔓で受け流しながら
晴明の挙動を観察
動きの癖などを分析
頃合いを見計らって
全力で回避や受け流しをしたものの
直撃して脱落したと見せかけます
攻撃を受ける直前
ここで初めて体を液状化
上手く急所を避け
多少の損傷は激痛耐性で凌ぎ
飛び散った己の血肉さえ利用し
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
有りっ丈の毒を濃縮しその体を蝕めたら
貴方程の敵を相手に
無傷で帰ろうとも
私一人で殺せるとも思っていない
ただ
人の生命を 尊厳を
戯れで踏み躙る貴方は許さない
私の毒に溺れて下さい
●業魔覆滅:冴木・蜜の段
己の存在に飽いた。だから、戯れに屍人を作って、放つ。
なんだ、それは。そんなことが許されていいはずがない。
そのために、どれほどの生者が犠牲になった。
どれほどの死が冒涜されて、そしてどれほどの被害を生んだのだ。
許されない。許されてはならない。絶対に、絶対に、絶対に!
……救われねばならない命が、きっといくつもあったはずなんだ。
ギュオオオ―――ギャリ、ギャリギャリギャリギャリギャリ!!
「手詰まり、でございますな」
「ごほっ」
晴明の言葉通りである。チェーンソー剣は完全に蜜を捉えていた。
無慈悲な刃は唸りをあげ、体内UDCによる妨害をも一蹴して筋肉を破壊。
以て肋骨を粉砕し、ごりごりと音を立てて臓器めがけてめり込んでいた。
晴明があと少し力を入れれば、数ミリ進んで鋸剣が全てをずたずたに引き裂く。
ミンチの出来上がりだ。そして心臓ごと肺が潰れ、混ざり、おしまいだ。
「のらりくらりと私の剣を避けるのは実に鬱陶しい……失礼、見事でございました。
その黒い血、おそらくは体内に何かを仕込んでいるのでございましょうが……」
ギャリ、ギャリ、ブチブチブチブチブチ。
「ぐ、はっ」
「ご覧の通り、手詰まりにございますれば。どうかおとなしくなされますよう」
このまま臓器を引き裂いて殺すのは容易い。
だが、もしかすると、この猟兵は自らの命を犠牲に相打ちを仕掛けてくるかもしれぬ。
わかるのだ。必死に逃げながらも、己の動きを読もうとするその眼差し。
落ち窪んだ双眸、絶望に浸っていると見えてぎらぎら輝くその瞳の光の強さが。
「――あなたは生き残ることを諦めてはおられぬ。そうでございましょう?」
「…………」
何か手がある。となれば、もっと確実な手段を使うべきだろう。
晴明がもう片方の手で振りかぶるのは――黒ずんだ呪詛を纏う二振り目。
ギャリ、リ――ギィイイイイイイッ!!
「斬首は思ったよりも苦痛が残るものでございますれば、脳を潰しましょうか。
どうか動かずに受け入れくださりますよう。私、手前味噌でございますので」
高速回転する鋸を見上げながら、蜜は思った。
「……人の生命を、尊厳を」
「……」
「戯れで、ごほっ、踏み、にじる……あなた、は」
そうだ。この瞳。とっくに朽ちたと思わせる意思を秘めた瞳。
こういう手合こそが厄介なのだ。何をしてくるかわからないのだから。
「――あなたは、絶対に、許さない」
救えるはずの人々がいた。
救う必要もないぐらいに幸せな人々が。
なぜだ。どうしていつも、手を伸ばすこともできずに奪われてしまう。
……それでも、己がそんな世界に遺されてしまっているならば。
「絶対に、です」
「――おさらば、でございます」
鋸剣が振り下ろされ――そして、空を切った。
晴明はそれを予期していた。なんらかの"手"があるはずだと。
だがよもや、相手が"液状化して崩れ落ちる"などとは誰が予期できる!?
「な――」
『私は救えなかった』
ごぼごぼと黒い水たまりが煮え立つ。
『だから、私はせめて、貴方を殺すために少しでも働かなければならない』
チェーンソー剣を振り下ろす。水銀めいた速度で黒い飛沫が逃げ延びる。
……飛沫。晴明は口元を抑えた。指の間からぼたぼたとこぼれ落ちる大量の血!
「が、ごぼっ」
このためか。このために逃げ惑い、飛び散った己の血肉すら――!
『私の毒に溺れてください。あなたがここで滅びる、その時まで』
「が、ごはっ! ぐ、が、ぼ――おの、れ
……!!」
もはや誰も救えなかった男は、そこにはいない。
それでも彼は、滅ぼすべき敵に大きな風穴を開けることは、出来たのだ。
大成功
🔵🔵🔵
白寂・魅蓮
安倍晴明…あれが世に聞く名高い陰陽師、ってやつだね。
随分と退屈そうに笑うじゃないか…そんなにこの戦いが退屈なら、ひとつ僕と踊ってもらおうかな?
敵の最初の先制攻撃、こればかりは防がざるを得ないからね
【見切り】【ダンス】を使いながら避け回り、時に水晶屍人を使って【敵を盾にする】としよう。
ある程度の攻撃は【オーラ防御】でも防ぐ
正直近接戦じゃこちらには分が悪そうなんでね
逃げてばかりでその程度か、だって?
確かにそうかもね…でも、君の動きはだいたい読めてきた。ここからが本番だ
一連の避ける動作はこの死霊を気づかれずに呼び出すためのもの…
僕の自慢の鬼夜叉と大蛇が、君の怨霊ごと食らいつくそう!
●業魔覆滅:白寂・魅蓮の段
「げほっ、がはっ!! お、のれ……この、私に
……!!」
魅蓮が目撃した安倍晴明は、予兆で視たそれとは大きく異なる姿だった。
吐血し、あちこちを(おそらくは)己の血で汚し、よろめきながら喀血する。
まるで絵に書いたような重病人だ。おそらくは相当の猛毒を食らったか。
「世に聞く名高い陰陽師。しかしてその姿は己に飽いた退屈な外道――。
……と見せかけて、毒を浴びた重病人か。ころころ表情を変えるものだね」
晴明の血走った目が、魅蓮を睨む。僅かな哀れみを覚えた。
滅びることなき己の存在に飽いたとて、苦痛を感じぬわけではない。
もちろん、ヤツの非道から考えれば、毒の苦しみなど万分の一にも届くまい。
ただ、飽いた飽いたと嘯いて、ああして苦痛に悶え苦しむ様は……。
「――哀れだな。君には、浸るべき愉悦も忠義もないのか」
「ふ、ふ……ならば、いかがなさいますか、猟兵」
「踊ろうか。それで君の気が紛れるならば」
薄く笑って扇を広げる。晴明は訝しむように眉根を顰めた。
「いのちの重みを感じたならば、滅びるその時まで踊って舞うがいい。
僕らはそれを打ち砕き、踏み潰し、滅ぼそう。君がそうしたように」
玄妙な足取り。
「それが、退屈と嘯いた君に与えられるべき、罰なのだから」
常ならば帰ってきたであろう慇懃無礼な物言いはない。
代わりに晴明が血反吐混じりに放ったのは、禍々しい五芒符である。
これを読んでいた魅蓮は、くるくると踊るように舞い、初手の符を回避。
転んでもただでは起きぬ符は、空間に亀裂を走らせ怨霊を呼び出す。
溢れかえる業が晴明の傷を休息に癒やす。だが魅蓮はまだ仕掛けない。
「舞踏の類で私を翻弄しようなどとは!」
「そんなつもりではないよ。僕にとってはこれが一番の得手なんだ」
くるくる、くるり。戦場にありてもそのふるまいは優雅ですらある。
しかし踊り避ければ避けるほど、次に逃れるべき領域は狭まっていく!
……無論、それは覚悟の上だ。
さりとて魅蓮の細腕では、あの鋸剣を受けることも避けることも叶うまい。
「業は満ちてございます。もはや舞台袖、逃げ場はございませぬ」
「確かに。ただ晴明、君はどうやら舞台鑑賞に向いていないらしい」
「何――?」
ばさ、ばさり。魅蓮は見得を切るように手足を翻し、だん! と床を踏んだ。
すると見よ。その隣には鬼人じみた殺気を放つサムライの死霊が現れ、
踏みしめた足元からは渦を巻くように巨大な大蛇が立ち上がり、とぐろを巻く。
「!!」
「演目を言っていなかったね。これは"月下剣麗"。僕の十八番のひとつだよ」
ふるさとを救うため、人であることを棄てた侍。
その侍に討たれ、死霊となってなお争い続ける大蛇。
「鬼夜叉、そして大蛇よ。業の怨霊を喰らい、舞い踊れ!」
符を放つ。遅い! 亀裂を蹂躙しながら大蛇が晴明を襲う!
振りかぶろうとした鋸剣よりも先――鬼人の刃が、その胴を袈裟懸けに裂いた!
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
人の命を、掛け替えない命を弄ばないで。ええ……絶対に許さないわ。
まずは水晶屍人達の対処をするわね。
【先制攻撃盾受けシールドバッシュ】で守りつつ体制を崩し【2回攻撃薙ぎ払い衝撃波早業】で斬撃を飛ばし足を斬って機動力を奪い【第六感野生の勘】も併用して立ち回り最低限の損傷で可能な限り無力化しましょう。
……亡者だとしても、傷つけば痛いもの。
隙が出来たらUCを使い晴明を狙うわ。騎士に力を与え【フェイント力溜め破魔】も乗せ確実に力一杯胸を貫き塵も残さず滅ぼすの。
でも仲間は傷つけてはダメよ?この程度の命構わない。【激痛耐性】もあるしね?
そうよ、掛け替えないの……だから、これ以上誰一人、亡くさせはしない……!
●業魔覆滅:フェルト・フィルファーデンの段
いのちは、失われたらそこでもう終わりだ。
国も、城も、地位も、宝も、いつかは取り戻せるかもしれない。
だが、いのちはそうではない。それは無数にあるが、それぞれはひとつきりだ。
だから赦してはいけない。逃してはいけない。滅ぼさねばならない。
でなくば――己の行為は、なにもかも無駄だと理解/誤解してしまうのだから。
晴明の有様はすさまじいものであった。
全身には夥しい血――これは毒によって吐き出したヤツ自身の血だ――に塗れ、
胴体には袈裟懸けの斬撃。相当に深いらしく血は止まらない。
「手段を選んではいられぬ状況でございますゆえ
……!!」
ばたばたと無数の屍人どもが、天井から、壁から、あるいは床から現れる。
たったひとり、とても小さくか弱きフェアリーの乙女を殺すために。
「わたしの騎士たちよ! なんとしてでも切り抜けて!」
フェルトの号令/操演に応じ、人形騎士たちが盾を構え、剣を振るう。
相手は屍人だ。生者であったもの、しかしもう生者ではないもの。
生きていたはずの誰か、その残骸を辱めて生まれた哀れな木偶。
それでもフェルトは、首を刎ね飛ばし心臓を貫くことは命じなかった。
結果的に、それがフェルトの命を救うこととなる。
足を切り飛ばし機動力を奪うことは、最小限での無力化でもある。
もしも愚直に立ち向かっていたら、彼女は苦戦を強いられていただろう。
(亡者だとしても、傷つけば痛いもの――)
甘いとも言えるその感傷が、彼女を救ったのだ。
そして、機はフェルトが思っていたよりもずっと早く訪れた。
晴明は弱っている。屍人を集合させようにも機動力が削がれている。
ならば己が、とチェーンソー剣を始動した、まさにそこが好機!
「騎士たちよ! ――わたしの"命"をもって命ずるわ」
敵に、死という名の粛清を。
「……斯様に、小さきものに、私が……!」
「ええ、そうよ。あなたはそういう形でしかいのちを見れないでしょう。けどね」
命を燃やして指輪を輝かせながら、妖精は騎士たちを従え、けしかける。
「――それでも、いのちはかけがえがないもの。取り返せないものなの。
だからもう、アナタには、これ以上奪わせも弄ばせもしない……ッ!!」
散った涙のしずくは、亡者への鎮魂か、止まれぬ己への慚愧か。
成功
🔵🔵🔴
夏目・晴夜
私は至高ではありますが、
それに胡坐をかいて自惚れるような馬鹿ではありません
強さは敵のが圧倒的に上ですね
でも勝ちます
五芒符は妖刀で斬ります
ダメージや地形切り裂きの無効化を狙う為、
あと武器は妖刀だと印象付けさせる為にです
直接的な攻撃は【第六感】で避けつつ妖刀を振るい
途中でわざと妖刀を弾き落とされ、得物を失った無能を演じます
トドメを刺さんとする際の最も気の緩む瞬間に『憑く夜身』で即拘束
人形代わりに操る影のその手で、片方だけでも【目潰し】させている隙に
妖刀でも刀代わりになる物でもいいです、それを拾い【串刺し】
敵が現状を認識する前に一気にいきたいところです
愉悦に笑う事や自賛もこの時までグッと慎しみますよ
●業魔覆滅:夏目・晴夜の段
五芒符が、妖刀によって真っ二つに断ち切られて散っていく。
晴夜は止まらぬ。残滓が地形に染み込み亀裂を生み出すとしても無視。
一瞬でも怨霊の発生を遅らせられるならばそれでいい。必要なのは間合いだ。
この妖刀を以て彼奴を――目の前にいる満身創痍の安倍晴明――討つには、
妖刀が届くための間合いに踏み込まねばならない。だが、危険な賭けだ。
「理解に苦しみまする。猟兵! なぜあなたがたはまっすぐに参られるのか!」
「そうしなければあなたを殺せませんからね」
「痛みを顧みず、苦しみを厭わず。噫、やはり理解不可能でございます!」
狂乱めいて叫ぶ晴明は、さらに無数の符の雨を降らせた。
それは裏を返せば、間合いに踏み込まれれば妖刀の一撃を防げぬという証左。
敵は弱っている。ならばこそ晴夜は止まることなく走る。符を切り払う。
「ですが――噫、だからこそ私は、それを踏みにじってしまうのでございます」
「!」
――ガギン!!
呪詛によってナイフめいて硬質化されていた符が、妖刀を弾き落とさせた。
あと一歩。晴夜はそれを愕然とした目で見下ろし、そして敵を見る。
晴明は嗤っていた。笑いながら、チェーンソー剣を振り上げている。
そして晴夜は絶望の表情でそれを視――ようとして、やめた。
「私は、あなたのようにあぐらをかいて自惚れる莫迦ではないんですよ」
「!!」
動けぬ。なぜだ。――影。晴夜の手から影に繋がる操り糸!
「これ、は!」
「"憑く夜身(ツクヨミ)"です」
きゅ、と音を立てて、不可視の糸が引かれた。チェーンソー剣が、振り上げられる。
「莫迦な」
「そうです。莫迦はあなたですよ」
鋸剣が――その持ち主を、糸にかられて引き裂いていく……!!
成功
🔵🔵🔴
コノハ・ライゼ
クロちゃんf04599と
アドリブ他◎
でもオイシソウじゃナイ?
借りた外套で笑み隠し
戦闘力上昇阻止狙って敢えて五芒符受けるヨ
*オーラ防御纏い踏み込みクロちゃんを*かばう立ち位置維持
五芒符の軌道読み*見切り
*第六感も合わせ致命傷避けてのギリ狙う
負傷は*激痛耐性足しに凌ぐケドそれも想定内
そんなモンで倒せると思った?と*誘い気を惹き【黒嵐】起こそう
一瞬でも動き止めればヨシ、封じれたら万々歳ってネ
*2回攻撃で後追い駆け「氷泪」の紫電奔らせ目眩まし&万一の時の盾
徹底的に邪魔してあげるねぇ
ついでに刻んだ*傷口をえぐって雷捩じ込んで摘まみ食い(*生命力吸収)してイイ?
コレが楽しみだったの、美味しく喰われて頂戴な
杜鬼・クロウ
コノハ◆f03130
アドリブ負傷◎
陰陽師らしからぬ風貌な上、胡散臭ェヤツだなァ
何考えてンのか分かりゃしねェ
只一つ言えるのは
俺達の邪魔をするならば意地でも推し通る
コノハ、お前にはかなり負担を強いる
だがお前が切り拓いた路は必ず活かす
俺の流儀に則ってなァ!
コレ着とけや
ちったァマシだろ(黒外套投げて
コノハの後ろへ
敵本体への攻撃全集中
玄夜叉を地面に突き刺し敵の先制を凌ぐ(武器受け
【煉獄の魂呼び】使用
蠍の尾で薙ぎ払い支援
尾の先端を刺し毒で動き鈍らせる
棍棒で叩み掛け
コノハの撹乱に笑み
好機ならば剣に黒焔の業宿し頸を刎ねて斬り刻む(属性攻撃・2回攻撃・呪詛
”食べ物”の恨みは怖ェからな(コノハの顔を見て邪魔せず
●業魔覆滅:コノハ・ライゼと杜鬼・クロウの段
五芒符が飛び交い、業(カルマ)の怨霊を呼び出す亀裂を四方に生み出す。
それ自体が致命的な呪詛を持つ上に、数も速度も並の符術士を凌駕しているのだ。
「さすがはウワサの大陰陽師ってトコ? けど、オレには通じないネ!」
前衛を務めるコノハは、全身に破魔のオーラを纏いあえて符に身を晒す。
可能な限り悪霊召喚を阻止し、また後衛に回ったクロウの被弾を避けるためだ。
符は体に触れた瞬間、オーラの護りを侵食して手足を呪い壊死させる。
もしもコノハが妖狐でなければ、そして彼が自他共認める"悪食"でなければ、
流し込まれる呪詛をあえて喰らうという荒業は不可能だっただろう。
血管を駆け巡り、心臓やその他の臓器を破壊しようとする致命的な呪詛を、
コノハは瀉血めいて穢れた血もろとも体外に排出することで阻止。
「その調子で頼むぜコノハ、こっちもじきに術が整うッ!」
地面に黒魔剣を突き刺したクロウは、彼の陽動に全幅の信頼を置いている。
己に降り注ぐ"流れ弾"はその頑強な体力を精神力で跳ね除け、術を練るのだ。
対する安倍晴明は満身創痍。この攻勢はヤツにとっても負担を強いるだろう。
言わば敵とこちらの我慢比べ、おそらくはそれも終局が近い。
……安倍晴明と接敵する少し前のこと。
「オレが前に出て、アイツの攻撃を凌げるだけ凌ぎゃいいわけネ?」
「あァ、まずはどうにかして噂の先制攻撃をくぐり抜けなきゃどうしようもねェ。
だが、一瞬でもヤツの動きを止められりゃ……あとは、俺がどうとでもしてやる」
裏を返せば、それまでコノハは綱渡りめいた命の駆け引きをしなければならない。
ましてや、敵は安倍晴明。魔軍将のひとりであり、強大なオブリビオン。
「言うまでもなく、お前にはかなり負担を強いることになる。が――」
「"お前が切り拓いた路は必ず活かす"、ってトコ?」
口にしようとした言葉を先取りされて、クロウは肩をすくめつつも頷いた。
コノハはうたずらっぽい表情でウィンクをして、おどけてみせる。
「イイじゃない、どうせ喰うならたっぷり噂の腕前を味わってみたいしネ」
「お前、あんな何を考えてンのかわからねェ、胡散臭ェ野郎が好みなのか?」
「そういうワケじゃないケド、オイシソウではあるでしょ?」
理解できない、とばかりに、クロウは口をへの字に曲げて眉根を顰める。
しかしまあ、その"悪食"なところが、この作戦の鍵となることは事実だろう。
「お前の好みにゃとやかく言わねェよ。俺も、俺の流儀に則ってキメんだからな。
――てなわけで、選別だ。コレ着とけばちったァマシだろ、あとで返せよ?」
己が纏う黒外套を脱ぎ、コノハに投げつける。受け取ったコノハは驚きつつも
「だったらオレがキチンとこの手で返せるように、くたばる前にカタつけてヨ」
「当然だ。俺たちの邪魔をするヤツは意地でも押し通る。やってやろうぜ」
ふたりは不敵に笑い、頷きあう。戦友同士の信頼がそこにあった。
……そして再び、カメラは死闘の最中へ!
「ええい、しぶとい……!」
安倍晴明は焦れていた。己の負傷はかなり重い。修復が必要だ。
そのためには目の前のこの猟兵たちを倒し、その"業"を集めねばなるまい。
だが! いかにしてか、どれほど符を放とうとふたりが倒れる気配はない!
「悪いけど、そんなモンで倒されるわけにはいかないんだよネ」
ボロボロの有様で、しかしコノハは不敵に笑う。晴明はこの挑発に乗ってしまった。
直後、コノハ自身の影から、黒一色の管狐が飛び出し旋風を巻き起こす!
「これは……ッ!?」
「はぁい、残念。アンタはアタシに捕まった――"つかまえた"」
にたりと妖しい笑み。晴明は己が致命的な罠にかかったことを理解した。
晴明はとっさにナイフめいて符を投げ放つ。だがコノハは首を傾げて回避。
符が右目付近をかすめ、血が一筋。コノハは涙めいて流れる血を拭い、
手首をスナップさせて血のしずくを擲つ――それは紫電に変わり晴明を貫いた!
「がはっ!!」
「痛いでしょ? けどネ――アンタが与えた苦しみも」
薄く微笑むコノハの背後。黒魔剣を支えに立ち上がる美丈夫の姿。
「アンタが"これから味わう"苦しみも、こんなモンじゃないヨ?」
「あァそうさ―黄泉の門は拓かれり。怨霊よか恐ろしいモン、見せてやンよォ!!」
見よ! クロウの足元に呪術的文様が描かれ、床に空間の亀裂が走る!
はたしてそこから溢れかえったのは、禍々しき餓鬼――すなわち、禍鬼!
晴明が反撃するより早く、サソリめいた毒尾がその四肢を串刺しにした!
「お前はやりすぎたンだよ。罪もねェ人々を、さんざっぱら弄びやがった。
だが何よりマズかったのは――俺たちの征く路を、邪魔しやがったことだ」
肩に担いだ魔剣に黒き焔を宿し、クロウはそれを横薙ぎ一閃。
晴明の視界がぐらつく。しかし胴体はそのまま。ごとり、と音がした。
「コレが楽しみだったの」
呆然と天井を……切り刻まれる己の体を見上げる晴明の視界が最期に捉えたのは。
「おとなしく、美味しく。喰われて頂戴な?」
ちろりと妖しく舌なめずりをする、悪食の妖狐の笑みだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
業は我が血。我が肉。我が骨にして我が魂の甘露。必要不可欠なもの。
されど斯様な身にありては、それを蒐めることすら私は飽いてしまいました。
――噫。私は滅びを求めているのか、滅びをばらまきたいのか、はて……。
三咲・織愛
屍人と怨霊を操る……あなたが陰陽師だと言うのですか
このままあなたのような者を放っておく訳にはいかないのですよ
人の命は尊いもの。一度失われた者は二度と戻って来ない
蹂躙など決して許しません
両手武器への対処は骨が折れそうですね
<覚悟>を持って、心を落ち着かせましょう
確りと敵の攻撃の軌道を読み<見切り>ます。最低限、致命傷は避けられるように……!
両手で槍を扱う私よりも、片手の方が力は入らないのではないかしら
<怪力>籠めて<武器受け>からそのまま弾き返してみせましょう
力で負けたくありません!
ノクティスだってチェーンソーなんかにやられませんよ!
そのまま【打ち砕く拳】を叩き込んでみせますから
●業魔覆滅:三咲・織愛の段
陰陽術とは、決して人を不幸にするために研鑽されたものではないはずだ。
吉兆を占い、鬼神を調伏し、災いを退け健やかに、穏やかに過ごせるように。
そうした人々の祈りが連なり、今日までこの世界で伝えられてきたはずだ。
そのための術理が、人の命を脅かし、あまつさえ弄ぶなどあってはならない。
……あっては、ならない。失われれば命は二度と戻らない。
人は、戻ってこない。どれほど恋い焦がれ、願い、寂寥に苛まれようと。
戻っては、こないのだ。
この戦いには私怨がこもっている。それも、ひどく私的で、勝手な怒りだ。
織愛はそれが浅はかで、自分勝手で、ともすれば致命的になりかねないことを、
彼女なりに冷静に理解している。それで抑えられるかと言えばまた別の話だが。
「肩肘に力が入りすぎてはおられませぬか? 私を恐れているふうでもなし」
相対する安倍晴明――骸の海から幾度目かの再生を果たした敵――は、
あるかなしかの笑みを浮かべながら、様子を伺うように囁いた。
一方でその両手には、ドル、ドルル……とアイドリング中の鋸剣がふたつ。
「敵(あなた)に心配される筋合いはありません。来るなら早く来なさい」
決然とした織愛の言葉に、晴明はやれやれといった様子で頭を振る。
「これ以上、あなたに人々を蹂躙などさせません。くだらない企みも、何もかも」
槍の柄を握る織愛の手に、力が籠もる。
「いのちの重みを、その意味を、私が痛みを以て教えてあげます」
「それは異なことを。私とて、ヒトのいのちの重みはようく理解しておりまする」
口元に三日月めいた笑み。それは確かに愉しんでいた。
「――"だからこそ、もてあそぶことに意味があるのではございませぬか"」
「……!! あなたは……ッ!!」
織愛は怒りをにじませた。そして、直後に瞠目し歯噛みする。
わずか一瞬。織愛の心が乱れたその一瞬に、晴明は間合いに踏み込んでいた!
(挑発――!)
やられた。しかし、織愛とてひとかどの猟兵。即座に精神の均衡を整える。
敵は必ず二段構えの攻撃を仕掛けてくる。一撃目は右――否、左だ!
避けはしない。このふざけた男に、その存在の根源にこの怒りを叩きつけるなら、
真正面からその力に挑んで粉砕しなければ意味がないのだから!
――ガギンッ!!
「く、ぅううう……っ」
ギャリギャリギャリギャリ!! 獲物を求めて受け止めた鋸剣が唸る。
槍の柄が削り取られて折れそうになる。相棒の龍の声無き呻きが聞こえる。
(ごめんね、ノクティス。でもお願い、どうかもう少しだけ耐えて!)
有り余る怪力を四肢に込め、脂汗を噴き出しながら織愛は耐える。
奥歯を食いしばる。子供じみた意地っ張り……だとしても、この男は、
絶対に真正面から討ち果たさなければならない。絶対に……!
「然らば、おさらばでございます――」
来た。二撃目! 織愛は一撃目を振り払い、愚直にもこれを再び受ける!
だが防ぐためではない。呪詛纏いし刃を弾き返すためだ!
――ガ、ギィンッ!!
今度の音は段違いに大きい。汗が珠のように散り、両者の間に漂った。
(……今なら!!)
織愛は即座に覚悟を決めた。一撃目のチェーンソー剣が脇腹を狙っている。
その被弾を厭うことなく、体勢を崩した晴明に、槍を……否、握りしめた拳を!
「反省しなさい、安倍晴明ッ!!」
金剛石よりもなお堅固なる一撃を、その鼻っ面に叩き込んだのである――!
成功
🔵🔵🔴
ヌル・リリファ
アドリブ歓迎
つまらないならこのまま骸の海にかえってほしいんだけど。
無理な相談なんだろうな。そうならやることはひとつ。
……骸の海に、たたきかえす。
五芒符は【見切り】でさける。元々直接あてるための攻撃ではなさそうだしできるとおもう。
怨霊がでてきたら距離をおきつつアイギスをなげてシールドを展開、シールドの内側にとじこめる。
それからUC起動。
そとにのこった怨霊をけしさりつつ本体をせめたてる。
同時に武器にまぎれて接近、【捨て身の一撃】。
無数の武器とわたし自身、すべて対処するのはむずかしいとおもう
あふれでるならシールドはながくはもたないだろうけど、わたしは最高傑作だもの。それまでにダメージをあたえてみせる
●業魔覆滅:ヌル・リリファの段
そもそも、己の存在に飽いているというならさっさと消えろと言いたい。
この世界は、自分自身のアイデンティティに飽いた残骸を許容できるほど、
余裕があるわけでも悠長なわけでもない。やるべきことは多いのだから。
……などと正論を投げかけたところで、いちいち唯々諾々と従うはずもあるまい。
であれば、実力行使を以て骸の海に叩き返す。それが猟兵の仕事だ。
それこそが最短で最良の復讐。きっと誰もがわかっているはずだろう。
そこに私情を挟む余地はないにも関わらず、迷い、苦しむ人たちがいる。
不思議だと思う。ただ、それが無意味であるとは、思いたくなかった。
たとえそれが、己にはまだ不可能なことであるとしても。
強烈な拳撃を顔面に受けた晴明は、襖を巻き込みながらがらがらと吹っ飛ぶ。
予想だにしない好機。それを目撃したヌルは、即座にスプリントに入った!
「かは、かは……いやはや、次から次へと! 猟兵とやらはッ!!」
鼻骨を無理矢理に整えた晴明は、鼻血を拭いながらもう片手で符を擲つ。
五芒業蝕符。触れれば致死的な呪いが、避けても怨霊をもたらす二段構えの符。
ヌルの空色の瞳は、数十に分かれた符の軌道、そして真贋を一瞬にして看破。
予想通りだ。この符、そもそも符自体での必殺を目的としていない。
カモフラージュのために紛れた偽の符がその証左。狙いはあくまで怨霊召喚か。
(なら、さけられる。問題は、そのあと――)
ヌルは最小限の動きで符の弾幕を躱し、スピードを落とさぬまま疾走。
背後の空間に亀裂が走った瞬間、光の盾を投げ放ち怨霊を物理的に阻害。
分裂したシールドは、四方を取り囲み業の怨霊どもを封じ込めることに成功した!
「これでもう、あなたはじぶんを強化できない」
空色の瞳が再び晴明を捉える。敵の表情は――苛立ち。そこに感慨はない。
すでにシールドには亀裂が走り、怨霊が溢れかえりかけているのがわかる。
一瞬の余談もなし。ヌルの周囲に無数の光の剣、槍、斧……数多の武器が現れた!
「いっしゅんでもはやく、あなたを消し去る。この世界から」
「それは出来ぬ相談にございまするな」
「しってる。あなたの許可やいしなんてもとめてないよ」
雪崩を打って飛びかかる光の武器群を、晴明はチェーンソー剣で撃墜。
だが遅い。その中の一つを手に取ったヌルが間合いに飛び込んでいる!
「――このぐらいで、あなたを倒せるとも、おもってない」
無数の武器と、捨て身の攻撃を仕掛けるヌル自身。二重の攻勢。
仮にヌルが首を刎ねられたとしても、すでに指令を受けた武器は止まらない。
晴明は舌打ちし……飛来する武器群を、符で撃墜した。
「あなたの屍人なんかより、マスターがつくってくれたわたしのほうが強い。
それをおしえてあげる。あなたのけんきゅうには、なんの意味もなかったって」
突き出された剣が腹部を貫く。ヌルはそのまま体当たりを仕掛け敵を吹き飛ばす。
傷を負うことは怖くない。最高傑作たる自分の性能ならばやれるとわかっている。
……不思議と、少しだけそれが悲しくて、けれど誇らしい気持ちになれた。
成功
🔵🔵🔴
斬崎・霞架
【POW】
敵だ。強敵だ。あの龍使いのような。
…アレに優るとも劣るとも関係ない。
―何れはあの龍使いも、討つのだから。
(手甲を展開。敵に向かっていく)
言葉を交わす事にも飽き飽きしているか?
安心しろ…無駄に言葉を交わすつもりはない。
動きを【見切り】初撃に【カウンター】を当て弾く。
それで「命中した」として追撃が来ても構わない。
…寧ろ、それを誘っている。
【オーラ防御】を貼りつつ【武器受け】。
無効化出来るなど思わない。【激痛耐性】【呪詛耐性】で耐える。
…これだけ近くにいると言う事は、こちらの“手”も届くと言う事だ。
(【力溜め】から【何れ訪れる終焉】を放つ)
【捨て身】かと?
…貴様を殺せば、そうではなくなる。
●業魔覆滅:斬崎・霞架の段
忘れてはならない記憶。忘れようとも忘れられない記憶。
魂に刻まれた苦味。あれは、あの戦いは――おそらくは、そういうものだ。
地獄を人の形に固めたような男。溢れかえる龍の群れ。咲き誇る花々。
不要と誰もがわかっていた戦いで、愚かしくもそれに挑み、そして敗けた。
……意味は、あったのだと思う。それが完全勝利の礎になったのは、わかる。
けれど、自分は斃れたのだ。届かせられず、斃れて、そして――。
うねうねと蛇めいて蠢く触腕が、禍々しい黒の手甲にがちがちと巻き付いた。
さながらそれは、ただでさえ危険な武装に、棘まみれの鉄線を巻きつけるような、
凶悪で危険で、そして絶対的な殺意をまざまざと見せつけたような形である。
敵は負傷している。顔面に一撃、さらに腹部を剣か何かで貫かれたか。
その傷は、おそらく敵のなんらかの能力――実際は"業"の蒐集と消費――で補われつつある。
つまり、強敵だ。あの男、ドラゴンテイマーに勝るとも劣らぬ敵である。
圧倒的な威圧感を、放射される殺意を前に、霞架は決断的に歩みを進める。
口元から溢れた血を拭い、晴明は呆れたようにそれを見返した。
「飽いていたと云う割には、追い詰められて少しは生の渇望が芽生えたか」
「……もとより私は、何も滅びたいわけではございませぬ。当然でしょう」
「そうだろうな。オブリビオンであれ、この世に生じたならば、そうなんだろう」
瞑目。足を止めることなく、一歩、また一歩。
「けれども僕は違う」
また一歩。
「敗者に価値など無い。敗けたままでいるぐらいならば、僕は死んだほうがマシだ」
また一歩。
「――だから、お前に勝つ。お前に重ねた過去に、僕は打ち勝つ」
そして、一歩。
「こんな言葉は飽き飽きだろう? 安心しろ、僕だってもう十分なぐらいだ」
八つ当たりめいた感情だが、己の情動に嘘はつきたくない。つけやしない。
勝たねばならないのだ。この敵を倒すことで、敗北したという己の過去に。
過去の残骸を相手にするというのは、そういうことなのだから。
晴明はうんざりした様子で、血の混じった唾を吐き、鋸剣を構えた。
「過去を糧に成長する。そのヒトの在りよう、それこそが厄介なのでございます。
私はそれを摘み取りまする。それが斯様に成り果てた、私の唯一の仕事なれば」
鋸剣が唸りを上げる。晴明が迅雷じみた速度で床を蹴った!
真正面からの切断惨殺。たしかに敵の強さならばそれは容易だろう。
わかっている。ならばいかにして躱すか――躱す? 莫迦を云うな。
自分はこれから"乗り越える"のだ。なぜ恐れびくついて頭を下げねばならない。
右の鋸剣が来た。霞架は、これを自身の左手甲で裏拳をぶつけにいく!
ガイン――ッ!! 強烈な破砕音! 衝撃が内部にまで浸透し血が噴き出した!
「意地で推し通れるほど、我が身は脆弱にはございませぬゆえ!」
左の鋸剣が来る。ありったけの呪いを込めた必殺の刃である。
狙いは胴。六甲を砕き脊髄を折り、肺を抉りながら心臓を轢き潰す軌跡。
霞架は右拳に全ての力を込める。避けない。防ぎもしない。これは意地だ。
呪詛ならば己も纏える。そこにありったけの恨みと怒りと絶望を込め……!
「お前も僕も、形あるモノだからこそ、安易な終焉を選ぶことは出来ない」
刃が肉に食い込む。その時すでに霞架の拳は大気を切り裂いていた。
「だから――それでもなお避け得ぬ"終わり"を、貴様に教えてやる」
激烈なアッパーカット。骨が砕けていくのと同時に、それは晴明の顎を砕いた。
「――弄んだ死の分、呪いに塗れて死ね!!」
ギャリギャリ、ギャリギャリゴリゴリゴリ、ゴッッッ!!
「がはッッ!?」
チェーンソー剣は半ばが食い込んだところで止まった、晴明が吹き飛ばされたからだ!
ピンボールめいて天井と床を跳ね、ごろごろと転がってのたうち回る。
霞架は強烈な痛みに顔をしかめながら、血を吐き捨てつつ剣を肉体から引き抜く。
「敗けられないんですよ、僕は」
それは、妄執に等しき"勝利"への意欲であった。
成功
🔵🔵🔴
鳴宮・匡
◆アサルト
膝関節を中心に足を砕く援護射撃で
ヴィクティムのUC起動までの時を稼ぐ
自身への攻撃は
過去の屍人との交戦から得た戦闘知識をもとに見切り回避
敵を引き付けるヴィクティムへの援護は、しない
自分の方へ来る相手の対処に絞り
身を守ることを最優先
――揺れるな
眼前の光景がどんなに痛々しくとも
託された自分の仕事を違えないために
「何もない」と言い聞かせる
そうしなきゃいけないほど、俺は弱い
そんなこと知ってるけど
こいつらと並ぶ時だけは、それでも「強く」ありたいんだ
ネグル
一瞬でいい、動きを止めてくれ
それで十分だ
終の魔弾は、絶対に獲物を違えない
「滅んだ」からこそここにいるお前にはよく効くだろ?
そのまま、消えてくれ
ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】
各員用意は?ウィズ
では──ランだ
屍人の召喚を確認後に
セット『VenomDancer』
屍人のヘイトを一身に受けて、俺が注意を引く
ダメ押しに【ハッキング】、全サイバネを限界突破
【ドーピング】でコンバット・ドラッグ摂取
【ダッシュ】【ジャンプ】【フェイント】【見切り】【早業】【おびき寄せ】で
高速機動しつつ、とにかく何でも使って動き回る
暇さえあれば猛毒と鈍化のパルスを乱打
──なぁ
屍人に与えた毒と鈍化が、合体するとどうなる?
消える?いいや違う
完全に別個体になるわけじゃないんだ
"集まっちまうんじゃねえか?"
全ての不利な効果が一つに合計されるとしたら──
もう屍人は、役に立たねえ
行け!晴明を殺れ!
ネグル・ギュネス
【アサルト】
破を以って魔を祓う
貴様は退魔に非ず、ただの畜生だ
───殺るぞ、許可は得た
屍人召喚と同時に、【《失っても、壊せ》(ジ・イクリプス)】を起動
超加速を以って、小さい間に【破魔】と【雷撃】を宿した刃、そして仲間の強化を追加し、ぶった斬りながら、晴明に向かう
真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ、
雷鳴の如く【ダッシュ】し、知恵の薄い屍人は【残像】で欺く!
あいつはやれると言った
あいつは必ずやると言った
二人を信じてやるのは、ただ一つ
晴明!貴様の負けを刻む
貴様を僅かでも止めたら、十分だ
相棒の弾丸が、敵を穿つ
指揮官の策が巨人を屠る
そして、我が刃は、【衝撃波】に破魔を含ませた、斬閃の【二回攻撃】で、二つの首を落す!
●
俺は強くなんかない。弱いんだ。どうしようもないぐらいに。
強いから、何もかもを切り捨てて気にせずにいられるわけじゃない。
弱いから、見て見ぬ振りをして、"沈め"続けなければいけなかったんだ。
乗り越えるなんて出来やしない。だってそもそも、自分はヒトじゃない。
ヒトでなしの、本当にどうしようもない最後の一歩手前で踏みとどまってる、
ただそれだけの弱者だ。ただそれだけ。それだっていつ違えてしまうか。
――でも、だからこそ、強くありたい。
強くあれと願われたから。
その約束に頷いたから。
……そんなお前を信じると、言われたから。
だから、これは、俺自身の願いなんだ。
●
敵は殺す。まだだ。戦争は終わっちゃない。殺して殺して殺し尽くす。
一匹たりとも逃さねえ。ひとつたりとも企みなんて成就させやしねえ。
クソみたいなプランを全部叩き潰して、バラバラにして、ひっくり返して、
盤面を黒一色にしてやる。駒を全部奪って、鼻っ柱を叩き折る。
それ以外は勝利じゃない。ああ、無理難題なんてわかってるさ。
だから俺はなんだってやってやる。命を削ろうが、なんだって、だ。
お前も死ね。今すぐ死ね。まだ戦いがある。やることがあるんだよ。
かかずらってる暇なんてない。お前らは全員、全て、何もかも叩き潰してやる。
そうすると決めた。
そうしなければならないんだ。
そうでなけりゃ俺は、ただの、あの頃から何も変わらないガキだ。
……わかってるさ。本当にそうだとしても、だからこそだろ。
やっぱり俺は、"Arsene"じゃなきゃいけねえんだよ。
●
たとえば、今の私は水面に浮かんで、いつかは消える月なのかもしれない。
眠りに落ちたらそれで消えて、目が覚めたときにはもういないのかもしれない。
ある日突然弾けて消える、うたかたのようなものなのかもしれない。
だが、それがどうした。私は私だ。ネグル・ギュネスという名の猟兵だ。
私が私だからこそ、彼らは私をよく思ってくれた。
私が私だからこそ、彼らは私と言葉をかわしてくれた。
私が私だからこそ、この手に応えてくれたんだ。
この時間は嘘じゃない。私が私として感じたことは間違ってはいない。
それは、誰のものでもない、私自身の、私だけのものだ。
ならば私は――俺は、この心のままに駆け抜ける幻影で在ろう。
いつか消えるこの己を、誰かの心に永遠に遺せる己であろう。
俺を信じてくれる奴らを、俺として信じ返せる己であろう。
オブリビオンよ。過去の残骸よ。世界を侵すノイズどもよ。
俺はお前たちとは違う。俺は、"いま"を生きているのだから。
なあ、そうだろう。我が相棒、我が友よ――。
●業魔覆滅:チーム・アサルトの段
水晶屍人どもが、たったひとりを獲物と狙い定めて群がっていた。
まるでそれは、救いを求める哀れな群衆が、救世主にすがるようでもある。
救いを。無限に飢え、餓え、殺さずにはいられない我が身にどうか救済を。
その血を、肉を、魂を以て、我らに甘露(くるしみ)を味わわせたまえ。
群がる衆愚を、あざ笑いながら色付きの風が駆け抜けていく。
一時たりとて止まらない。額に汗を滲ませながら、粋に笑って翻弄する。
ヴィクティム・ウィンターミュート。舞台で踊り狂う哀れな道化。
さあご覧あれ。これなるは、己の身をわきまえぬ端役の一人舞台。
どうぞお手を触れられませい。追いつき、届かせることが出来るならば。
媚びの代わりに毒を振りまき、おひねりの代わりに強化薬を叩き込む。
ブーストされた脳神経は1秒を1時間のように知覚して、目と鼻から溢れた血が、
まるで虚空に朱をひいたかのように散って、そして消えていく。
「来いよ。来い! こんなやせっぽっちのガキ独り、有象無象じゃ殺せねえのか?
そいつはウィズなジョークだぜ、サイコーに情けねえって意味でだがなぁ!!」
タフな男のように高らかに笑い、血反吐を吐きながら、のたうち回るように走る。
命を薪に燃やして燃やして、屍人どもを翻弄し、毒を振りまく小悪党。
屍人どもは、そんな愚かで哀れな悪党に釘付けにされていた。
そしてもうひとつの風――墨を塗りたくったような禍々しい風が、駆け抜ける。
旋風じみた暴威が一陣、また一陣。そのたびに屍人はバラバラに散らばっていく。
噫。それもまた命を削りながら続ける、向こう見ずでがむしゃらな悪あがき。
命を喪ってでも。
己を喪ってでも。
壊せ。敵を。そのかたちを。戦いが終わるまで何度でも、何体でも、何時間でも。
光なき暗黒のような鋼は、もはや生身の熱き心臓を持つ男ですらなく。
しかしその意思は狂うことなく、透明な氷のように冷たく、硬く、鋭い。
まっすぐに。迅雷の如く。天から地へ伸びゆく光の柱のように。
駆け抜ける。破壊する。世界すらも壊す暗黒が突き抜けていく。
すぐ隣で死にゆく道化のことを、鋼となったネグルが省みることはない。
あいつは、やれると言った。
ならば、己も同じようにやるだけだ。
鼓動を刻む心臓は、クロームの鋼に変わっている。
ただ、どこにもない心には、ふたりを信じる想いが確かに残っている。
――目を、背けたい光景だった。
始まってみれば、いっそ時間稼ぎに終始したいと心の底から思ってしまった。
鳴宮・匡は、視ている。その人間離れした目でしっかりと視ている。
聞いている。化け物じみた耳で、彼らの命が削れていく音を聞いている。
感じている。風すらも読み取る肌で、鋼と道化の苦しみを感じている。
味わっている。己の無力さ。弱さ。どうしようもなく脆弱なその本性を。
嗅いでいる。濃密な死の気配、そこに加わろうとする仲間たちのそれを――。
(揺れるな)
銃を持つ手が震える。
(こんなことは、なんでも無い。どうでもいい。何もない)
トリガにかけられた指が、震える。
(あいつらは俺を信じてくれた。俺はそれに応えられるだけの強さがある)
ああ。己のなんと弱きこそ。命を賭けるふたりの背中に怯えるなど。
怖くて、怖くて怖くて、怖がっている自分の弱さがまた怖くて。
……目を閉じて見開いたときには、それは嘘のように消えていた。
いいや、"嘘だ"。消えてなどいない。恐れも、弱さも、そこにある。
ただ、瞳に瞬く深い蒼は、それすらも受け止めて、揺らぎすらも認めて、
その上で揺らぐことなく輝いていた。"揺らぐからこそ"静かに凪いでいた。
(ただ一撃。それでいい。それだけだ。ただそれだけでいい――)
縋るような言葉。ただ一撃。あまりにも遠く恐ろしく、そして難い一撃。
――それを届かせる。出来る。彼らが信じてくれた己ならば。
彼らが信じてくれた己を信じる。指先が、弓弦のように引き絞られた。
「屍人の仲間入りでもなさりにいらしたのか! これは!!」
たったひとりで屍人どもの狙いを引きつけるヴィクティムの荒行を、
ボロボロの安倍晴明はことさらおかしそうに呵々大笑してみせた。
「その間に私に刃を届かせると? あいにくそれは叶いませぬ!
すべて、すべて――噫、真っ平らにされて潰れてしまうのが必定ならば!」
ぞる、ぞるるる――おお。屍人どもがねじ曲がりより合わさり融合する。
生まれるのはたったひとつの巨人。ちょこまか逃れようと何の意味もない。
己の首に刃が辿り着く前に、すべてぺしゃんこに潰してしまえばいい。
絶望そのものを前に、道化はしかし。嗤っていた。
「ようやく乗ったな」
バックファイアが脳を灼く。目から血を流しながら、斃れぬよう胸を張る。
「もう終わりだ。こいつがプランの完成だ。ネグル! 匡!!」
さあ、主役の出番だ。端役らしく、高らかに、大声で。
「――行け(ラン)! 晴明を、殺れェッ!!」
巨人の拳が道化を押し潰そうとする。だが、その拳は直前で腐り落ちた。
「――何?」
晴明は瞠目した。だがすぐさまチェーンソー剣を、
「させんッ!!」
ガギィ!! 強烈な黒き刃が、雷電を纏いて風めいた速度で叩き込まれた!
「……毒か! 逃げ回りながら屍人どもに!?」
「わかったところでもう遅い。言ったはずだ、貴様は"もう終わり"だとな!!」
ガギ、ガギ、ガギギギギギギギッ!!
ネグルの命が燃えている。命を受けて黒き機械兵はさらに疾さを増す!
その背後で巨人が腐り落ちていく。ヴィクティムは斃れない。嗤っている。
「――味わえ。これが、それが、死の恐怖だ」
晴明の背筋を、ぞくりとした悪寒が駆け抜けた。
振り向く。背後。銃を構えた男。絡み合う視線に蒼が応えた。
「十分だネグル。"もう終わった"」
BLAM――放たれた弾丸が晴明の胸部を貫く。
何を。斯様な銃弾ひとつで……ああ。否。これは。この、焔!
「クロ……バ……ッ!!」
血反吐を吐く。黒炎はたちまち晴明を包み込む。
「刻み込むがいい。我らの力を、我らの怒りを。我が、刃を!」
刃が滑る。晴明の視界がぐらりと揺らいだ。
何もかもが焔に呑まれていく。呪われたいのちの簒奪者を薪として。
それが、男たちのたどり着いた、またひとつ新たな終わりのかたちであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
仕掛けは上々。しかしおそらく、それすらも猟兵には看破され打ち砕かれましょう。
噫。忌々しき生命の慮外者。我らの天敵にして世界に祝福されし者ども。
私が滅びし後、私の策も、信長の存在も、おそらくは何もかも完膚無きに潰えましょう。
――はて。
なぜ私は、斯様に心の底から嗤っているのやら。
メルノ・ネッケル
『狐の逡巡』……手慰みと見せかけ、仕込みのガンスピンを開始。
スピンの為に時間を稼がないかん……猟兵に興味持っとる相手や、無視して襲って来る事はない筈。問いを投げてみよか。
「魔軍将の中でも、アンタは取り分け謎が多い……アンタ、何の為に戦っとるん?外道なのは百も承知やけど……それだけじゃないやろ」
始まったら……トンファー、【武器受け】!
本命は呪詛乗せチェーンソー、先に振るう方は強化が薄い。
チェーンソーは押して削って斬る武器、即座にスッパリとはいかへん。トンファーを回し、長い側を腕で支えん様にすれば……手放して離脱・回避が出来る!
「R&B」で反撃や!
武器への仕込みはお互い様……受けろ、安倍晴明っ!!
●業魔覆滅:メルノ・ネッケルの段
……晴明は、無表情なまま、ぺたぺたと自分の顔を触る。
首を。体を。当然、そこには何の傷も、怪我も、ありはしない。
「噫。どうやらまた私は、どこかの誰かに滅ぼされましたか」
オブリビオンは、滅びる前の記憶を保持することはない。
同位体であれ、どうあがいても、滅びた瞬間に"その個体"は消滅する。
たとえるなら、骸の海というデータベースから、個体の記録を引き出すようなもの。
まったく同じデータであろうとも、別媒体にコピーされた時点でそれは別物だ。
ゆえに、此処に新たに再生された安倍晴明が、他の"己"を識ることはない。
「……せやけど、アンタにはアンタの目的がある。そうやろ?」
晴明の虚無的な瞳が、声のした方向を見やる。
挑むように彼を睨みつける妖狐の娘が、くるくるとガンスピンをしていた。
「うち、これでも一応、他の魔軍将の連中ともだいたい戦ってるんや。
だからこそわかる。アンタはその中でも、とりわけ謎が多い……」
「それを、問われたからと私が答えると、本当にそうお思いで?」
メルノは頭を振った。
「けど、アンタは自分自身にも飽いてるんやろ? なら、聞いてみる価値はある。
もしかしたらそうすることで、アンタの興が乗るかもしれへんからな――」
くるくる、くるくる。ガンスピンを続けながらメルノは間合いを伺っている。
晴明は何かを言いかけ――ふっと笑い、頭を振った。
「ようございましょう。その時間稼ぎにどれほどの意味があったのか――」
「!」
「ご自分の身で、しかと味わってくださいませ」
晴明が消えた。……否、そうとしか思えぬ速度で、動いたのだ。
グォオオ、ギャリギャリギャリ!! 鋸剣が目の前で唸るをあげる!
「お見通しかいな……くっ!!」
ガギィ!! メルノはトンファーでこれをかろうじて受ける。重い!
ガンスピンによる戦闘力増強をもってしても、なおこらえるのが精一杯だ。
だが一撃目は受けた、そこに2つ目のトンファーを叩き込めば――。
「……が、はっ」
ギャル、ギャルルル――ざぐっ、ギャルルルルルッ!!
「――ッ!!」
それよりも早く、二つ目のチェーンソー剣が、メルノの脇腹を抉っていた。
「口惜しや。私であれば、私に舌戦で時間稼ぎをしようなどとは思いませぬ」
「……そォ、かもしれへん、な……」
脊髄を両断するはずの鋸剣は、しかし一手遅かったトンファーで、
かろうじて胴体切断の悪夢を逃れている。少しずつ刃が肉から引き抜かれる。
「だからって、うちは、負けるつもりはないで……ッ!!」
晴明は訝しみ――気づいた。最初に剣を受けた側の手。熱線銃。
「よもや、この距離で」
「一蓮托生や――一発目食らっとけ、安倍晴明ッ!!」
ZAP――熱線が、怨霊渦巻く城の虚空を貫いた!
苦戦
🔵🔴🔴
フランチェスカ・ヴァレンタイン
ずいぶんと腐ったニオイのする水晶ですけれども…
…ええ。ニオイの原因は、元から絶たねばなりませんわね?
先制攻撃はチェーンソー剣の二つの軌道を第六感と野生の勘も駆使して見切り、推力偏向機動での回避マニューバを
避け切れそうもなければ外殻装甲をパージしてチェーンソー剣にぶつけ、切り抜ける隙間を確保します
擦れ違いざまに斧槍の一撃を叩き込みつつ、得物と残像をその場に残しての上方ループを
頭上の死角を舞うように背面へ回り込み、延髄へと浴びせる蹴り脚にUCを載せて
「身を突き抜ける神音の響き――お気に召しまして?」
退きがけに得物を回収しつつ全速で戦域を離脱し、後に続く方へバトンタッチすると致しましょう
●業魔覆滅:フランチェスカ・ヴァレンタインの段
熱線銃による脳破壊を、とっさにチェーンソー剣を手放すことで回避した晴明。
しかしその回避行動によって、ヤツは猟兵へのとどめのチャンスを手放してしまった。
「転んでもただでは起きない、なるほど、これが猟兵とやらの―― !」
言いかけた晴明は、しかし急速に近づく敵意に気づき、跳ね起きる。
一度は擲ったチェーンソー剣に手を伸ばし、なんらかの力で引き寄せ装備!
そして見よ。晴明が睨みつけた方向、長廊下を亜音速で飛ぶ女の姿!
「鼻が曲がりそうなこの悪臭、いい加減に元から断たせてもらいますわ!」
フランチェスカは背面バーニアの出力を最大にして、速度を上げた。
晴明はあるかなしかの笑みを浮かべ、この愚直な突撃に正面から応じる。
チェーンソー剣が唸りを上げる。フランチェスカは顔を顰めた。
(あの速度、回避マニューバでは避けきれませんか)
……だが速度は落とさない。むしろさらに加速し、音の壁を突き抜けた!
「いただきますわ、その首をッ!」
晴明の手元が霞む。迅雷じみた速度の鋸剣による斬撃ふたつ!
左鋸剣! フランチェスカの胴体を断ち切るような横薙ぎの一撃!
フランチェスカはこれをほぼ直角の回避マニューバでかろうじて避ける。
かすめた鋸剣が装甲を削り火花を散らす――そこへ時間遅れの右鋸剣だ!
フランチェスカの読みどおり、狙いは正中線! 頭から叩き割ろうというのか!
「……ッ!!」
そこで鎧装が火を吹いた。推進剤を使い果たした背面バーニアをパージ。
振り下ろされた鋸剣と残骸がぶつかり合い、派手に爆発して煙を吹き上げる!
「なんと――!」
「リアクティブアーマーをご存知なくて? どちらでも構いませんけれど!」
飛び越えるように晴明の背後を取ったフランチェスカ、ハルバードをぐるんと回し、下から上に切り上げるように振るう。だが浅い。
晴明は前に飛ぶことでこれを避け、フランチェスカの攻撃後の隙を突こうと――否。
(得物を手放したと? これは中
々……!)
ハルバードによる斬撃は囮! フランチェスカは柄から手を離している!
ではヤツはどこに消えた? 晴明は周囲を見やり……背後の気配に気づく。
「言ったでしょう? その首、頂きますと!」
「ぐッ!!」
延髄めがけた知覚外からの蹴撃! 今度こそ吹き飛ばされたのは晴明だ!
「身を突き抜ける神音の響き――お気に召しまして?」
艶やかに微笑むフランチェスカ、しかし彼女とて無傷ではない。
爆炎が身を焦がし、かすめた呪詛が体を蝕みつつあるからだ。
「次に痛みを感じた時は、この程度ではすまないでしょうね。
きっとあなたの首が飛んでいるでしょうから――では、ごきげんよう」
晴明は頭を振りながら立ち上がり、忌々しげに飛んでいく光を見やる。
鮮やかな奇襲と撤退。もしも追撃を仕掛けていたら彼女は死んでいたはずだ。
「己ひとりではなく、次の誰かに希望を託す――誰某を思い出しますな」
忌々しげに舌打ちする晴明には、初めにあった余裕は失われつつあった。
成功
🔵🔵🔴
叶・都亨
アオイくん(f17479)と
思わず身震いするような強敵だ
毛は逆立つし今すぐにでも逃げ出したい!…んだけど、そうも言ってらんないよなあ!
俺に出来ることなんてたかが知れてるけどさ
人の命を軽んじるような奴を放っておくのはやだからな!
心を奮い立たせて矢を番える
アオイくん、合体されるとどんどん強くなるんだってさ!
それなら合体させないようにするしかない
刻印をよく見て数字の大きいやつから狙って撃ち込む
強くなられる前に倒すしかないよな
【スナイパー】と【援護射撃】で可能な限り早く倒す
「スピカ」でハルカを操りセイメイの動きを見ていてもらおう
近付かれたら負ける
ので、その前に逃げる!
【流星】の一矢くらいは届けてみせる
アオイ・ソラール
都亨ちゃん(f01391)と
陰陽師安倍晴明…聞いたことあるーーー!
しかもなんかよく見たらイケメン!!!ってのは置いておいて
こんな強敵と戦うの初めてだし
ちょっぴり不安もあるけど
都亨ちゃんと一緒なら大丈夫。
ボクは負けないよ。
OK!合体させないように、だね!
強くなる前に潰しちゃえば、いけるよね!
「迷彩+スライディング」を合わせて素早く動く!
ダメージを最小限に抑えるよう気をつけながら
水晶屍人は合体する前に攻撃
合体してしまったら数字の大きいものからの攻撃に切り替えるよ
清明はUC【青空拡声器】で攻撃
ボクの歌声、頭に響くでしょ!
人の生を弄ぼうとする子はそのまま砕け散っちゃって!
●業魔覆滅:叶・都亨とアオイ・ソラールの段
いくら普段から不真面目でお気楽極楽な少年だからといって、
それでもやっていいことといけないことの区別はついている。
……それを土足で踏み越え、人々を踏みにじる外道への怒りも、ある。
放っておいてはならない敵を、いかにすればいいかも、知っている。
「アオイくん、どうしよう俺ちょー怖い!! 毛とかめちゃめちゃ逆立ってる!」
「奇遇だね都亨ちゃん、ボクもだよ! いやーヤバいね、これ!!」
雲霞のごとく溢れかえった屍人どもを前に、ふたりはいつもどおりに笑い合う。
表面上の話だ。よく見れば、その声は震えていて手足も同じである。
ただそれでも、ふたりはやっぱり笑っていて、声を上げて明るく頷きあった。
「でも、やんなきゃな」
「うん、大丈夫だよ」
「「俺/ボクたちは、敗けない!!」」
そう信じているからこそここへ来た。
その思いを現実にするためにここへ来た!
しびれをきらせた屍人どもが、四方八方から同時に襲いかかる!
そして戦いを始めてしまえば、ふたりの動きは普段よりも冴えていた。
若さが、一山越えたことでかえってその度胸を据わらせたのだろうか。
なんにせよ、屍人どもの足元を滑るようにスライディングするアオイの動き、
そしてそれを阻もうとする屍人どもを矢で射抜く都亨の狙い。
そのどちらも、もはや恐怖による震えもミスもありはしなかったのだ。
「人は繋がることで力を増すもの。まったくこれだから厄介にございますな」
屍人どものはるか彼方、晴明はごきごきと首の骨を鳴らしながら言う。
ふたりの信頼の絆――それを軽んじるほど、晴明はやわではない。
人の心の繋がりがもたらす力を識るからこそ、ヤツはそれを利用する。
徹底的に、完膚なきなまでに、圧倒的な方法でそれをねじ伏せる。
そのための屍人の大群である。数の利はどうあがいても覆し得ない!
「とはいえ、それだけでは足りぬでしょう。ならば――」
ぱちん。晴明が指を鳴らした瞬間、屍人どもは互いに互いを喰らい始めた。
すると見よ。屍人の肉と肉、手と手、足と足がねじ曲がり、より合わさり……!
「!! 始まったよアオイくん、全力でいこう!」
「オッケー! スピーディに、徹底的に、だね!」
ふたりはこれを予期していた。いや、待っていたと言ってもいい。
いかに屍人どもが、合体することでより強力になるとはいえ、
これほどの数では一瞬で済むようなものではない。必ずタイムラグが存在する。
それを見越して狙いを定めていたならば、合体中の個体に対応することは可能!
……晴明は眉根を顰める。ふたりの狙いがあまりにも決断的だからだ。
(一手でも誤り、仕留め損なえばそこで終わりでございまするが、これは――)
だからこそ、これまでの戦いの中で最大の集中と最速の攻撃を以て、
ふたりは着実に屍人を破壊していく。路を拓くのではなく命を繋ぐために。
その連携が功を奏した。合体個体は次々に矢によって斃れていくのだ!
晴明は状況判断した。厄介なのは、あの矢を番えた子供だ。
手ずから処理しようと身じろぎした瞬間、それを監視していた鷹が高く鳴いた!
「ハルカ、ナイス!! じゃあアオイくん、俺逃げるね
!!!!」
「心配しないで都亨ちゃん、あとはボクに任せてっ!」
これは敗北のための闘争ではない。死ねば全て終わりなのだ。
アオイを省みることなく都亨は全力疾走、晴明はこれに引っ張られてしまう。
背中を向けた敵をむざむざ見逃すほど、ヤツは甘い敵ではないからだ!
「すぅ――さあ、ショータイムの、始まりだよーっ!!」
「!!!!」
横合いから殴りつけるような、アオイの歌声による超音波攻撃!
晴明はがくんと、頭をハンマーで殴られたかのようによろめいた!
「何を――」
「あれあれぇ? ボクを見つめてくれるのは嬉しいけど、いーのかなぁ?」
アオイがことさら小悪魔めいた笑みでおどけてみせる。
「キミが最初に見つめていたのは、ボクじゃないよね❤」
「――!!」
弾かれたように視線を戻す。はるか先、攻撃射程外で矢をつがえる都亨の姿。
「――逃さないよ」
怒りを込めた流星が、まっすぐと放たれ……晴明の体を、過たず貫いた!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
非在・究子
て、テンプレ、残虐長命種仕草だ、な。
きょ、きょうび、自分で、自分の楽しみを、見つけられないとか、ダサい、ぞ?
しょ、しょうがない、から、アタシが、遊んで、やる。
せ、先制で、雑魚敵、たくさん、呼ばれる、な。
い、一気に攻め寄せられる、前に、牽制の、攻撃を、しつつ、【ハッキング】で、雑魚敵の、命令権限に、割り込みを、かける。
そ、そうやって、UC起動の、隙を作って、起動できたら、一気に、畳み掛ける、ぞ。
物理限界を、超えた、スピードの、向こう側を、見せて、やる。
ざ、雑魚敵どもを、足場代わりに、一気に、晴明に、肉薄して、チェーンソー形態に、変形させた、ゲームウェポンの、攻撃を、連続で、叩き込む、ぞ。
●業魔覆滅:非在・究子の段
屍人が溢れる。城を満たすほどの勢いと数で、さらに増えていく。
増えていく。それはつまり、晴明が追い詰められつつあることの証左。
ヤツは傷を回復するための時間を稼ぐため、徹底的に肉の壁を殖やしているのだ。
「なる、ほど……これが、猟兵とやら……ふ、ふふ、ふ」
矢傷を抑えながら、晴明は屍人どもから少しでも離れようとする。
血が滴る。噫。いかに滅びから離れた我が身とて、痛みは変わらぬ。
「なんとも手強い……まるで、あの者らを思い出すような……」
おそらくこうして、他の魔軍将も、あるいは過去の己も滅んだのだろう。
しかし、だからといって、今の自分がむざむざ殺されるつもりはない。
まずは"業"を集め、傷を癒やす。そして猟兵を迎撃し、数を減らし――。
「……?」
そこで、晴明は訝しんだ。水晶屍人どもの様子がおかしいからだ。
猟兵を見つけ次第、即座に襲いかかるように命令を出していたはずが、
自分の方に少しずつ戻ってくるのを感じる。これは一体……?
「え、厭世家、み、みたいなことを、い、言っておいて、お、追い詰められたら、
て、手下に任せて、に、逃げ出すとか、ど、どこまでも、て、テンプレだな」
「!!」
目の前に小柄な少女。猟兵! いつの間に!!
「な――」
「し、屍人を配置してたは、はず、って、お、思っただろ」
ぐふふ、と究子は笑う。
「あ、アタシのハッキングにか、かかれば、お、お前の命令権限なんて、
す、少しぐらいは書き換えられる、ぞ。え、エンカウント回避、だ」
晴明は舌打ちし、チェーンソー剣による攻撃を繰り出そうとする、が!
「じ、自分の楽しみも、み、見つけられない、ダ、ダサいヤツに!
あ、アタシが、本当の、あ、遊びってやつを、お、教えてやるっ!」
消えた! 究子は凄まじい超スピードで晴明の背後を取っている!
チェーンソー剣を振り上げようとした瞬間、同じカタチをしたゲームウェポンが振り下ろされた!
ガル、ガルルルルッ!! ギャリギャリリリリリッ!!
「かは――!」
「い、いくら現実がクソゲーでも、な! お、お前は、や、やりすぎ、だ!
か、監獄なんて生ぬるい、から、さ、さっさと、骸の海に、か、還れっ!!」
鋸剣がその身を削る。なんたる屈辱、なんたる苦痛!
だがそれを上回るもの。それは、電子の世界からやってきた少女の怒りである!
成功
🔵🔵🔴
鼠ヶ山・イル
よぉはじめまして色男。
オレぁアンタと好みが被りそうなんだが──残念だ。生かして帰せねーよ
だってアンタ、滅茶苦茶性格悪ぃだろ?
必ず先制攻撃を受けるってンなら、もう傷付くのは仕方ねーよな。
羅刹女乃術を瞬時に発動できるよう呪符を用意し、呪符で攻撃する素振りを見せて敵に迫る。
攻撃が来たら、腕で防ぎつつ呪符で羅刹女乃術を発動。ダメージを軽減する
首尾よくうまくいけば、七星七縛符を使って敵の術を一つ潰したいね。
そのけったいなチェーンソーとかな。
オレも実は陰陽師の家で修行してたんだよな。
なあ、陰陽道のご先祖サンよ。オレの符術もなかなかなもんだろ?
●業魔覆滅:鼠ヶ山・イルの段
人間は、弱く脆い。だが群れた時、異常なまでの強さを発揮する。
よく知っている。己はそうして滅ぼされて、こう成り果てたのだから。
わかっている。だからこそ、それを利用して弄んできたのだから。
噫。だがこの身のなんと忌まわしきことか。
わかっていようと、辛酸を舐めようと、結局は"それで終わり"なのだ。
なぜならばオブリビオンは過去の残骸。もうすでに終わった者の影法師。
失敗に学ぶことも、
敗北を糧とすることも、
成長し強くなることもない。
噫。そしてまた、私は滅ぶのか。同じように。何度も。何度も。
……認められない。そう足掻く簒奪者のもとに、猟兵がまた、ひとり。
「よぉ、はじめまして色男」
「…………」
あちこちに矢傷や裂傷を帯びた晴明の前に、女がひとり。
「正直言って、オレぁアンタと好みが被りそうなんだが――ああ、残念だ」
さっぱり残念でなさそうな表情のまま、イルは言葉を続けた。
「生かして帰せねーよ。だってアンタ――滅茶苦茶、性格悪ィだろ?」
イルの視線は、自分を取り囲むように広がる屍人どもを一瞥する。
「こんだけの数の人間をよ、ただ殺すだけじゃなく苦しめて死なせたワケだ。
大事ないのち。かけがえがないもの。"だからこそ"奪っちまうのがイイんだよな」
わかるぜ、と言葉をこぼす。
「……猟兵であるあなたが、私に同意を示すとは、度し難いものでございますな」
「オレもそう思うさ。ただオレはアンタと違って、そのへんを"わきまえて"る。
本当に奪っちまったアンタと、知らないようにしているオレは、やっぱ違うのさ」
そんな同類がこの世界にふたつも在ったら、はたしてどうなるのか。
……簡単だ。互いに互いを欲しがり、そして奪い、殺すのだろう。
「だから死んでくれ。陰陽道のご先祖サン。アンタ――もう、要らねぇよ」
その言葉に対する返答とばかりに、雄叫びを上げて屍人が襲いかかった。
四方からの同時攻撃に対し、イルが取った方法は簡単なものである。
"腕を犠牲に、術を発動するための時間を稼ぐ"。ただそれだけだ。
溢れ出した呪符はその腕を覆い、鬼子母神の膚に変異させていく。
"羅刹女乃術"。欲しくて欲しくて仕方ない、貪欲さの顕現たるその御腕。
屍人どもが放射状に吹っ飛んだ。イルは即座に符を投げ放ち――。
「……チッ」
敵が投げ放った五芒符と打ち合い、七星七縛符がばちりと電光に消えた。
敵は仮にも陰陽道の始祖。そしてユーベルコードの多重発動。
イルに行えることは、敵にも出来る。すなわち二度の絶対先制。
「オレの符術も、なかなかのもんだと思ってたんだがなぁ!」
イルは駆け出す。怨霊どもが溢れかえり晴明に力を与える!
「ええ、見事にございます――だからこそ、あなたはそれに頼った」
晴明が立ち上がる。鬼子母神の腕が小刀を振るう。わずかに遅い。
「――なるほど。たしかに私とあなたは同類のようでございますな」
小刀が晴明の体を切り裂いた時、新たな符がイルの体を呪いで包んでいた。
苦戦
🔵🔴🔴
シズル・ゴッズフォート
最早、私が獣であることはきっと避けようのない事実なのでしょう
しかし今は……今だけは。この身の獣、抑え切ってみせましょう
無辜の民を虐げ、死者すら嘲弄するこの男。捨て置けはしません……!
獣の因子は励起せず。しかし楯を構えての有無を言わさぬ突進
初撃は騎士剣、呪詛付きの第二撃を楯の【武器/楯受け】で防御
直接は受けず、【怪力】を以て下方に向けて流すように
チェーンソーの破壊力による武器の損壊も織り込み済み
本命は鎖刃剣の二撃を凌いだ後の隙への【カウンター】
空いた姿勢に向けて騎士刀を抜刀
戦の酔気に噎び笑う己が獣を歯を食いしばって抑えつけ、半挙動―――否、四半挙動遅れての首目掛けての全力斬撃
●業魔覆滅:シズル・ゴッズフォートの段
獣が義憤することはない。
獣に信念はない。
だが憎悪はある。激怒もある。だからこそ我が身の裡なる獣は燃え上がる。
されど。されど牙と化しそうな歯を食いしばり、今だけは抑え込もう。
溢れかえる激情だけを借り、力となして刃を振るおう。
今だけは。今このときだけは。
人としての怒りを、あの男に叩きつけなければならない――!!
荒々しい呼吸である。
今にも爆発しそうな激情を、無理やり抑え込んでいるからだ。
まだ刃を交えていないのに、シズルの面持ちは修羅じみていた。
ふつふつと脂汗を噴き出し、ざわざわと金髪をはためかせ、
血走った目で敵を――安倍晴明を睨みつけている。
「なんと嘆かわしい。それほどの獣を秘めていながら、抑え込もうとは。
苦しいでしょう。辛いのでございましょう。楽になるべきではございませぬか」
シズルは瞑目し、深呼吸した後に応えた。
「……あなたを討ち果たしてから、そうさせてもらいましょう」
もはや言葉はない。晴明は両手にチェーンソー剣を担いて走る。
シズルは応じる。されど、己の獣の因子を起こすことはなく、自ら走った。
ギャルルルルルルッ!!
唸りを上げるチェーンソー剣。それはまさに飢えた狼の咆哮のように!
(私は――)
初撃。騎士剣で受け止め、いなすように下方向へベクトルを流す。
ガギ、ガギギギギギッ!! 剣がきしみ、ヒビが走った。
手放す。両手で盾を支え、続く呪詛つきの鋸剣を受け止め――ガルルルルッ!!
(私はッ!)
ギャリ、リリリリリ、ギギギギギギギギ……!!
火花を散らして鋸剣が唸る。脆弱な盾を、人間性を打ち砕いて引き裂き、
その身を切り裂いて獣たるを明らかにしようとばかりに!
これは試練だ。人として生きようとするならば避け得ぬ試練だ!
「……私は、獣であろうともッ!!」
「!!」
叫び、シールドバッシュの要領で鋸剣を受け流す!
がら空きの胴。シズルは盾さえも棄てて、騎士刀を抜刀した!
「――誇りある、ひとりの騎士として、あなたを討つッ!」
首狙いの斬撃。晴明はわずかに早く後方跳躍しこの直撃逃れた。
だが、円弧の軌跡はたしかに届いた。鎖骨付近がばっくりと裂かれて血を吹き出す!
「……ぐッ」
「無辜の民を虐げた罪、必ず贖わせてみせましょう
……!!」
しゅうしゅうと荒い息で耐えるさまは、とても高貴な騎士とは言いがたい。
だがその不安定で、無様で、愚かしいまでに未熟な在りようこそが。
おそらくは、ヒトがヒトたる所以の証左、彼女の人間性なのだ。
成功
🔵🔵🔴
花剣・耀子
此処に居るのは、私情なの。
おまえが気に食わない。
それだけよ。
その剣が殺すには、まずあたしを斬る必要がある。
斬るためには刃を回す必要がある。
刃を回すには駆動が必要。
――ようく知っているわ。
気配も音も、判るのよ。
初動を察すると同時に機械剣の全加速を注ぎ込んで追い縋り、
致命傷を阻むよう咄嗟に斬り上げましょう。
二撃目が来るのも判っている。
鋼糸のアンカーを地面に射出、上げた機械剣を高速で引き落とし阻むように。
死ななければ安い。
痛みも呪詛も、いま耐えられるなら充分よ。
飽いて死なないだけなんて、只の罰ね。
神を殺すことが出来たって、退屈を殺す術も知らない癖に、
……――ねえ、おまえ、生きていたいの。
只、斬るわ。
●因果応報、その名は晴明
剣とは、私情が混じれば混じるほどに切れ味を鈍らせるものである。
柄を握る手に力を込めれば込めるほど、刃は鈍く、遅く、ぬるくなる。
わかっている。求道とはすなわち無我を目指すものであり、
高みを目指すならば雑念を棄てることは絶対。明鏡止水こそが必須となる。
「……それでもね、安倍晴明」
瞑目していた花剣・耀子が、ゆっくりまぶたを開いた。
鳥取城天守閣。ふたりはそこで、月光差し込めるなか相対している。
「あたしがここにいるのは、私情なの。――おまえが、気に食わない」
ただそれだけ。シンプルで、とでも卑俗な私情である。
「おまえのやったことが、おまえの考えが、お前の言い分が、何もかも。
……どう? おまえは、こんなあたしを、あたしの私情にも、飽いているかしら」
満身創痍の晴明は、ふ、とあるかなしかの笑みを見せた。
「ええ、嫌というほどに見、そして感じてきたものでございます」
「そう」
「そして、利用して参りました。それが気に食わぬとあなたがたはおっしゃる」
「そうね。おまえは、そういうヒトの心の脆さ、強さをどちらもよく知っている」
瞑目。アイドリングした鋸剣の唸り声がよく聞こえる。
「だから敗けてきたのでしょう。そして今日、ここで。またおまえは負けるのよ」
己の剣の腕に? ……否、そうでもあるが、それだけではない。
「おまえが弄んできた、ヒトのこころに。ヒトの、いのちにね」
空気が張り詰める。もはやどちらかが死ぬことは確定した。
……斬る。
敵を。その首を。その存在を。いのちを。否、それだけではなく。
あの唸る刃を。刃の根源を。その殺意を。何もかも。
そうとも。己には斬れる。今この剣に乗るのは心眼に程遠き私情なれど、
己はあの鋸剣を"ようく知っている"。ならば、斬れる。
悪しきものを斬るために、悲しみを、運命を斬るために、戦ってきた。
鍛えてきた。振るってきた。ならば、此度も同じく。
「――来なさい」
晴明は何も言わぬ。だが耀子の言葉には結果的に応じた。
出がかりすら悟れぬほどの迅雷じみた踏み込み。ふわりと構え流れるさまは、
いっそ不気味なまでに意を悟らせぬ。これが幹部級オブリビオンか。
「――……」
耀子は何も言わぬ。呼気も何もなく、いやむしろ呼吸をぴたりと止め、
丹田に力を込め、以て全身の筋肉を鋼めいて硬直させ、しかしてしなやかに。
舞い踊る乙女のように柔らかく、立ち上る水の気のごとく鮮やかに、
剣を斬り上げた。敵の初撃にまったく同調した全速力の斬り上げ。
――がぎん。
晴明はこの初撃を読んでいた。ゆえに二撃目をすでに放っている。
だが瞠目した。耀子が――剣豪が、"剣を下に構えていたからだ"。
(なぜ)
口の中で呟く。床に突き刺さったアンカー。鋼糸。煌めく糸。
機械剣を引き戻した仕掛け。剣は刃を阻む。
――がぎん。
「飽いて死なないただの罰のような存在の中で、ねえ」
剣が振るわれる。
「――お前、生きていたいの」
敵を斬るために。
そして刃は、過たず、悪しきものを斬り裂いた。
成功
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