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雲にも届きそうな高い高い迷宮塔。
その頂上の部屋で、一人の少女が泣いていた。
「ひぐっ……うぇぇ……嫌……まだ死にたくない……」
少女に課せられたのは死の運命。
明日の夜に身体中を切り刻まれ、化け物の美味しいご飯になる運命。
閉じ込められた時はすぐに脱出しようとしたが、見張りや仕掛けの多さに既に心は折られている。
少女はひたすら泣いていた。
塔から出てもどこへ帰ればいいかは分からない。でもこのままは絶対に嫌。
せめて、私をこの塔から出して!
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「こんにちは、今日はアリスラビリンスでの事件だよ」
グリモア猟兵のレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)は集まった猟兵達に笑顔を向けて説明を始めていく。
「今回皆にお願いしたいのはアリスラビリンスに捕らえられた人間……『アリス』の救出だね」
アリスラビリンスには記憶を失った人間が連れてこられ、オウガというオブリビオンの餌として惨い目に遭わされてしまうという事が日常的に起こっている。
今回はオウガに食べられる直前のアリスに接触出来そうだという予知があったために呼び出しが発生したようだ。
「アリスが捕まっているのは迷宮塔と呼ばれる場所で……そこの仕掛けや見張りを突破しながらアリスを救出して欲しい」
迷宮塔はとても高い塔で、その名前の通り内部は入り組んでいる。
高さが凄まじいために飛んだり壁をひたすらつたって最上階へ登るのは難しい。
また、擬似生物達が見張りや看守を務めており、侵入者の邪魔をしてくる。
更には鍵や罠といった仕掛けもたくさん設置されており、それらを解除していく必要もあるようだ。
「擬似生物達は小さなトランプ兵の姿をしていて、皆なら簡単に倒せると思うよ。看守の方も擬似生物なんだけど、こっちは自分でものを考えたり出来るみたいで……だから説得の余地があるかな」
ひたすら迫り来る敵を倒す。仕掛けを解いて道を開く。看守達を説得したり騙したりする。
皆が思い付いた手段で塔を進んで欲しいとの事だ。
「アリスがいるのは最上階。彼女も少しだけなら戦えるから、合流出来たら一緒に脱出してね」
レンはアリスの詳細について書かれた資料を配っていく。
今回のアリスはリノという名前の少女だ。どこの世界からやって来たかは覚えておらず、唯一分かるのは自分の名前と不思議な光を纏えること。
その光は【生まれながらの光】のユーベルコードと同等のもののようだ。
それなりの強さの敵とならば一緒に戦う事も出来るだろう。
「リノさんが脱出したと分かればすぐにオウガがやって来るだろうね。幸い塔の中には広い区画もあるから、戦闘はそこで行う事になると思う」
塔の中を闊歩するのはトランプの巨人達と切り裂き魔。どちらもアリスの殺害に対して並々ならぬ執着を見せる悍ましい存在だ。
彼らを倒さなければリノが安心して逃げ出す事も難しいだろう。
オウガの討伐までが今回の依頼になりそうだ。
「まだ発見されたばかりの世界で不馴れな事も多いだろうけど……皆が無事に事件を解決するのを祈っているよ。それじゃあ行ってらっしゃい」
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
今回はアリスラビリンスを舞台にした事件です。
迷宮塔を突破しながらアリスを救出しましょう。
一章は「塔を攻略する冒険パート」
二章は「トランプの巨人との集団戦」
三章は「切り裂き魔とのボス戦」となっております。
救出対象のリノは十代半ばの少女です。
記憶は失っていますが【生まれながらの光】を扱う事が出来て、集団戦なら猟兵と共に戦います。しかしボスには歯が立たないのでボス戦時には身を潜めます。
どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
それでは今回もよろしくお願いします。
第1章 冒険
『籠の鳥の「アリス」』
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POW : 塔を守る疑似生物と戦い、正面突破
SPD : 塔や独房の鍵となるパズルを解き、扉を開く
WIZ : 牢番や拷問吏を騙す、情に訴えるなどして塔に入り込む
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猟兵達が転移した先には大きな塔がそびえ立っていた。
近くには見張りの擬似生物達が歩き回っているようだ。近づけばすぐに猟兵達は気付かれてしまうだろう。
だが塔に近付かなければアリスは助け出せない。
どんな風に攻略していくかは猟兵次第だ。
ギルティナ・エクスキューション
アドリブ共闘OK
「ふむふむ…普通に登ったら苦労しそうですねぇ…」
まぁ普通に登る予定はあんまりないですけどねぇ…
とりあえず適当に歩いて見張りの擬似生物さんを探しましょうかねぇ…
自身の鞭で敵を縛り上げて【「おそれ」の化身となった鞭】を発動しつつ…会話してみようと思います…
「あなた達ならぁ…抜け道とか罠の抜け方とか分かりますよねぇ?知ってるだけ教えてほしいんですけどぉ?」
必要に応じて手持ちの道具で更に恐怖をあおりつつ、恫喝して有用な情報を教えてもらいましょうねぇ…
あ、聞いても解放する気はありません…そのまま始末しますねぇ…
血が出るのでしたら針で血を抜いて衣に吸わせて元気を分けてもらいましょうかねぇ…
山梨・玄信
…この世界自体許しがたい構造なんじゃが。
まあ、1つ1つ解決して行くしかあるまい。
【POWを使用】
わしが一番得意な方法…殴り合いで救出を目指すのじゃ。
と言っても、出て来る相手を片っ端から倒すなどという事をしていたら、幾ら命があっても足りんからのう。
隠密系の技能を使ってこっそりと進むぞい。
やり過ごせる敵はやり過ごし、進路上の邪魔な敵は不意打ちで助けを呼ぶ間もなく、灰燼拳で排除してやるのじゃ。
もし、騒ぎになったら増援を範囲攻撃で纏めて倒し、早目に騒ぎが収まるようにするのじゃ。
「食料にするだけでなく、更にいたぶるとはな。許し難い相手じゃ」
「雑魚と侮るのは危険じゃからな」
アドリブ、絡み歓迎じゃ
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「ふむふむ……普通に登ったら苦労しそうですねぇ……」
高い塔のふもとから上方を眺めているのはギルティナ・エクスキューション(有罪死刑執行人・f14284)。
彼女はこう呟きつつも普通に登るつもりもない。まずは擬似生物をどうにかしなければ。
「……この世界自体許しがたい構造なんじゃが。まあ、1つ1つ解決して行くしかあるまい」
その隣で同じく擬似生物への対処を考えていたのは山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)。
アリスを食料にするだけでなく更にいたぶるとは。オウガへの怒りが胸に滾る。
二人はまず見張り達を利用して先へ進むための手がかりを得る事にした。
幸い見張りのトランプ兵達は近付く二人には気付いていない。ギルティナが茨鞭を震えば簡単に捕獲する事が出来た。
「ナ、何ダ
……!?」
「静かにして下さいねぇ……少し、お話させて下さい……」
トランプ兵が騒ぐより先に鞭で思い切り締め上げればすぐに相手も大人しくなる。
この鞭は『「おそれ」の化身となった鞭』、相手の恐怖と痛みを抉るものなのだからその効果は覿面だ。相手の見た目は紙製のトランプだが、その身体には血が滲んでいた。
「あなた達ならぁ……抜け道とか罠の抜け方とか分かりますよねぇ? 知ってるだけ教えてほしいんですけどぉ?」
ギルティナは薄い笑みを浮かべながらトランプ兵へと詰め寄るが、相手はなかなか口を割らない。
それならば、と懐から焼き鏝やかえし付き針を示して話を続行だ。
「……こちらを使っても、いいんですかぁ?」
「ヤ、ヤメロ! 知ッテイル事ヲ話スカラ!」
より恐ろしい道具を示された事で兵士は観念したようだ。彼は口早に見張りの少ないルートを教えるとぐったりとした様子でギルティナを見つめる。
「コレデ許シテ……」
「すみませんねぇ、仲間を呼ばれたら厄介ですから……」
次の瞬間には兵士の身体に深々とかえし付き針が突き刺されていた。溢れる血がギルティナの衣装を汚し彼女に力を与えていく。
しばらくの静寂の後に兵士は絶命したようだ。ギルティナは彼の身体を拷問具から解放すると改めて見張りをしていた玄信と話し合う。
「……大丈夫でしょうか」
「わしも見られた相手は倒すつもりじゃったし……今は情報に感謝じゃ」
ルートが分かったのなら進むだけ。今度は玄信が先行して塔の中へ潜入する事となる。
彼が最も得意な手段は殴り合いだ。だが見張りの総数は分からないし塔も広い。オウガも控えている以上全ての見張りを倒していくのは不可能だ。
なのでここは出来るだけ身を潜めて進んでいこう。玄信はそう結論づけていた。
「雑魚と侮るのは危険じゃからな」
塔の内部は入り組んでいたが、それは隠れながら進むのにも適していた。見張りの数もそれなりに多いが対処自体は難しくなさそうだ。
玄信はシーフとしての技術と経験を活かし、無視しても構わなさそうな敵と倒していくべき敵を見極めて先へと進んでいく。
狭い一本道や扉を塞ぐ敵とは戦わざるを得ない時もあったが、その時もすぐに戦闘は挑まない。
まずは小さな音を立てて相手をおびき寄せていく。例えば小さな石を投げたり、足音を立ててみたり。
「ン……?」
「……そこじゃ!」
相手があっさりと近づいてきたのなら一気に『灰燼拳』でかたをつける!
一番厄介なのが相手に騒がれる事、それによりオウガが襲来する事やリノの殺害が早められる事だ。
玄信はその可能性を確実に潰しつつ先へと進む。
「……リノさん、早く助け出さないといけませんねぇ」
「わしらなら大丈夫じゃ、頑張って行くぞい」
玄信がしっかりと道を見極め、ギルティナも敵の排除を手伝いながら共に進む。
二人の道のりは順調だった。
大成功
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天乃河・光
可哀そうに、『アリス』はきっと泣いている。
早く助けに行かなければ。
猟兵としては新参でも、この世界のことに関してなら少しはわかっているつもりさ。遠慮なく頼ってくれたまえ。
塔の攻略の話に移ろう。
看守の疑似生物達の中にも話が分かる子がいるんだろう?
彼らの中にも、血や乙女の涙よりも、楽しいお茶会や笑顔の方が好きな子はきっといるはずさ。
『アリス』を助けるために協力して貰えないか説得してみよう。
話の通じない奴らに遭遇した時には、申し訳ないがご退場願おう。
【輝剣サザンクロス】で倒せればよし、手に負えなそうならば【ガラスのラビリンス】を暫くの間さ迷って貰うよ。
何、私も以前通った道だ。抜けられないことはないさ。
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可哀そうに、『アリス』はきっと泣いている。早く助けに行かなければ。
そう思いつつ塔を進むのは天乃河・光(アリス適合者の王子様・f19385)だ。
彼女は猟兵になってから日は浅いものの、この世界についてはよく知っている。
だからこそ塔に囚われたアリスがどうなってしまうかも……そして今の自分ならばそれを止められる事も分かっていた。
なので道を塞ぐ擬似生物のうち、話し合う事が出来ないトランプ兵達には剣を以って退場していただき。
敵の数が多ければガラスの迷宮に彷徨ってもらいつつ。
迷宮は私も以前通った道だ。抜けられないことはないさ。そんな風に思いながら光は進む。
そして……どんどん進んでいくと、とても広い部屋に辿り着く事となる。
部屋の奥には巨大な扉が備え付けてあり、その前には見張りの擬似生物達がいた。
彼らは木で出来た大きな兵士だ。そしてその表情はトランプ兵とは違う。きっと話が出来る相手なのだろう。
「ごきげんよう、少し話をしても構わないかな」
「えっと……し、侵入者だ……どうしよう」
彼らの手に武器はあるが、それをすぐに光へと向けるつもりはないようだ。きっと彼らもオウガに無理やり従わされているのだろう。
光は見張り達に笑みを向けると優しく言葉をかけていく。
「君達はこの先にいるアリスをどうしたい? 私は彼女の事を助けに来たんだ」
その言葉を受けた兵士達の顔に戸惑いと期待の色が浮かぶ。彼らもアリスを苦しめたいとは思っていないようだ。
「私は乙女の涙より、一緒にお茶会をしたり笑い合う方が好きなんだ。だから……同じ気持ちなら、協力して欲しい」
「う、うん! 僕らもアリスを助けたい……!」
兵士達はぱっと笑みを浮かべて道を開ける。光がここを通ったことも隠してくれるようだ。
ありがとう、と一声かけて光は進む。
彼らの期待にも応えなければ。その心は使命感で熱く燃えたぎっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
疑似生物は、オブリビオンに隷属を強いられている……だとか
看守さん以外は、説得できないみたいですが
看守さん以外の疑似生物も、できるだけ殺さず、すませてみたい、ですね
ソラ(f05892)に抱えて飛んでもらい、塔へ
『生命力吸収光』で【力溜め】も兼ねながら、疑似生物さんを殺さず、意識を失わせ進みます
罠は【第六感】とソラの知識で察知、電脳ゴーグルかけて解析、【ハッキング】して解除
鍵がかかっていれば【念動力】を鍵代わりに錠を動かし開けて
……しかし、本当に。物語の中みたいな世界、ですね
看守さんのところまで、いければ
オウガさん退治を約束して、通して貰おうと、思います
大丈夫。私達は……勇者、ですから
ソラスティベル・グラスラン
なんと大きく高い塔!他の世界でもそうはありません…!
これだけ大きければ、最上階へは厳しい道のりになりそうです
…準備はよいですか、ナイくん(f05727)っ
ナイくんを連れて空を飛び塔へ
出来る限り高く飛び、塔の壁を【怪力・鎧砕き】で破壊し侵入します!
盾を構えて前衛を務めます【盾受け・オーラ防御・かばう】
擬似生物の方々を斧の側面でべしっと気絶【優しさ】
道中の罠は愛読する英雄譚の知識で指摘【罠使い】
むむっ、ここにはこういう罠とかありそうですよ…物語的に!
解除はナイくんにお任せ
不可能であれば【勇気】を持って【範囲攻撃】で砕きます!
まだ見ぬアリスさん!
待っていてください、わたしたち勇者が今行きますっ!
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塔のふもとに二人の小さな冒険者が現れた。
「なんと大きく高い塔! 他の世界でもそうはありません……!」
塔を見上げて感心しているのはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)。
これだけ大きな塔なら最上階へは厳しい道のりになりそうだ。だが彼女の瞳は期待と使命感で輝いている。
「そう、ですね……。中の疑似生物は、オブリビオンに隷属を強いられている……だとか」
できるだけ殺さず、すませてみたい、ですね。そんな風に優しさを示すのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)だ。
彼もまた自分達の進む道の険しさを感じつつもしっかりと役目を果たそうと決意を示す。
「……準備はよいですか、ナイくんっ」
「はい……行きましょう、ソラ」
二人は顔を見合わせると一気に空へと舞い上がる。ソラスティベルがナイを抱え、夕焼け色の翼で飛び立ったのだ。
最上階までは行けなくとも途中までなら大丈夫。ソラスティベルは体力の限界まで上空へと飛び上がると、一気に塔の壁へと体当たりをぶつけた!
壁は大きな音を立てて崩れ去り、二人の小さな身体は塔の内部へと突っ込んだ。こうやって連携するのは慣れっこだ。二人の身体に怪我はない。
しかし音を聞きつけたトランプ兵達が駆けつけてしまった。すぐさまソラスティベルが盾を構えて前に立ち、ナイも彼らの無力化を試みていく。
「これぞ我が勇気の証明、来たる戦渦の最前線! 故に応えなさい、勇者の大斧よ!!」
ソラスティベルは勢いよく大斧『サンダラー』を振るうが、擬似生物達にはあくまで側面で殴りつけるだけに抑えている。
吹き飛ばされたトランプ兵達は気絶していくが、命を落としたりはしていないようだ。
「加減は、難しい」
一方でナイの身体が淡く輝き、そこから不思議な光が溢れてきた。その光は『生命力吸収光』、相手がそこに生る、在る為の力を吸収する光。
だがナイの絶妙なコントロールにより、それは相手の命を全て奪う危険なものではなく気絶させる程度のものに抑えられている。
その光によりトランプ兵達はパタパタと倒れていき、ナイの体に力が満ちる。
「こんな感じで……大丈夫、ですか?」
「はい! ばっちりです!」
これなら兵士達の対処は心配なさそうだ。ならば次に気をつけなければならないのは罠だろう。
これも二人は力を合わせて解決していく事にしている。
まずは先行するソラスティベルが周囲を観察し、今まで読んできた英雄譚の知識をフル回転させ。
「むむっ、ここにはこういう罠とかありそうですよ……物語的に!」
「本当、ですね……解除、してみます……しかし、本当に。物語の中みたいな世界、ですね」
ナイが電脳ゴーグルを用いて罠を解析し、ハッキングしていけば確実に解除して進む事が出来た。
そしてどんどん進んでいくと……二人は大きく頑丈な扉の前までやって来る事となる。
そこには木で出来た兵士が立ち塞がっていた。彼が看守なのだろう。兵士は小さな侵入者に困っているようだ。
彼とは話が出来るはず。それならしっかり話し合うべきだ。
「わたし達はアリスさんを助けに来ました! だから……先へ進ませて欲しいです!」
「大丈夫。私達は……勇者、ですから。オウガは、必ず、退治します……」
二人が投げる言葉はとても真っ直ぐだ。それはすぐに兵士へ届き、彼の心を動かしていく。
「ちょっと心配だったけど……君達ならお願い出来そうだ。大変だと思うけれど頑張って」
道を開けてもらったならば二人も礼を告げて先へと進む。
最上階まではあと少しだろう。
「まだ見ぬアリスさん! 待っていてください、わたしたち勇者が今行きますっ!」
「絶対に、助け出します、から……」
二人の気合も十分で、大事な相棒と一緒なら何だって大丈夫。
小さな勇者達は駆け足で塔を登っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カルペ・ディエム
SPD
囚われのお姫様、か
…己の運命に涙し、助けを求めるならば
それは十分に彼女を助ける理由になるだろう?
見張りに気付かれぬよう
極力物陰を縫う様にして移動
僕の身長ではどうしようもない段差も
人形を用いれば移動出来る筈
不審に思われた時は他に気付かれぬようこっそり無力化
…別に無闇に殺そうとは思わないよ
他の猟兵達へ注意が向けられている隙をつき
誰も周囲にいない事を確認して鍵の解錠に取り掛かる
その際も警戒は怠らず、敵が近付く気配あれば物陰に隠れよう
…影から人形で襲ってみたら怖がられたりするかな?
まあ、見つけられそうになった時のみに留めよう
出来る限り敵に気付かれぬよう仕掛けを解除、少女の捕らえられた最上階を急ぐ
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塔の内部は猟兵達の動きによりかなり騒々しいものになっていた。
その影で密かに、そして確実に最上階へ近付く者もいる。
天狼星のように煌めく銀髪の少年、カルペ・ディエム(クロノスヘア・f19494)だ。
彼は骸の乙女の人形と共にひっそりと塔を登っていた。
(囚われのお姫様、か)
最上階にいるのはアリス。彼女が己の運命に涙し、助けを求めるならばそれは十分に彼女を助ける理由になるだろう?
理由があるなら行動するだけ。カルペは小さな身体を利用して上手く隠れながら進む事が出来ていた。
大きな段差や戦闘で空いたのであろう大穴も人形と協力すれば問題ない。
その手先の器用さならば仕掛けを解く事も簡単だった。
塔の中には様々な罠や仕掛け、鍵のかかった扉も存在しているが……カルペは周囲をしっかりと警戒しつつそれらの解錠に挑んでいく。
だがやはり見張りの数も多い。なかなか解けない鍵に手こずっていると、見張りが近付く音が聞こえてきた。
(……それなら君に任せよう)
カルペは一度鍵から離れると、近くにあった棚の側に身を屈めて人形を手繰る事にした。
骸の乙女に大鎌を握らせて、一気に見張りの方へと飛び出させる。
「ナ、何ダ!?」
見張りが本格的に騒ぐより早く人形が動いた。大鎌で彼らを切り裂いていくが命までは奪わないように気をつけて。
別に無闇に殺そうとは思わない。彼らはオウガに従っているだけなのだから。
見張り達が無力化したのを確認すれば、カルペは再び仕掛けへと挑んでいく。
かちゃり、かちゃり、と何度も鍵の開く音がして。
ひたすらに進んでいけば……最上階への扉が見える。見張りは別の場所での騒動を聞きつけてどこかへ行っているようだ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。カルペは足早に扉へと近付くと、その鍵も一気に開け放った。
そして慎重に扉を開き……アリスの元へと向かっていく。
カルペの柘榴石のように紅い瞳が、期待と喜びに輝いていた。
大成功
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第2章 集団戦
『トランプの巨人』
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POW : 巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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最上階の、牢獄のような部屋にて。
金髪の少女が猟兵達の到着に気付きぱっと顔をあげる。
「あ、あなた達は……助けに来てくれたの……?」
彼女がリノ。ここに囚われているアリスだ。
猟兵達からいくつか説明を受けると彼女はすぐに逃亡に同意し、一緒に塔を降りていく。
しかしオウガも黙ってはいない。
塔の中程、ホールのような大部屋にて悍ましき兵士達は待ち受けていた。
彼らの身体の大部分は機械のような材質で出来ていたが、大きな口だけはやけに生物的だ。
兵士達の名は『トランプの巨人』。リノの倍ほどの背丈の、巨大な化け物。
彼らは猟兵とリノの姿を確認すると大きな口を嗜虐的に歪め、無骨な剣を振り上げる。
ここで彼らを倒していかなければ安全に逃げ切る事は難しいだろう。
リノも震えてはいるが共に戦うつもりのようだ。
果たして食うか食われるか。激しい戦いの幕が開く。
※補足
リノは【生まれながらの光】で猟兵の回復をしてくれます。
また、必要であれば囮になったりもしてくれます。必要であれば適宜指示して下さい。
ソラスティベル・グラスラン
むっ…そう簡単に帰して貰える訳もありませんか
おや、リノさんだけでなく、わたしたちも食料なのです?
ふふふ、ではお腹一杯味わって貰いましょう
わたしたちの力を!
こういう時はアレですね、ナイくん!(f05727)
数には数、共に叫ぶは彼らの名!勇気の名の下に『蜜ぷに召喚!』
まん丸で可愛らしい沢山のスライムさん!
わたしの蜜ぷに軍団は攻撃・攪乱に、リノさんに近づけないで!
倒れて蜜を散らしても何度でも呼びます、【勇気】ある、彼らの名を!
そしてわたしも【勇気】を漲らせ、突撃!
【鎧砕き・範囲攻撃】の大斧で蹴散らし、
巨人の剣は【怪力・盾受け・見切り】で弾く
ナイくんの暗殺を気付かせず目いっぱい暴れて【誘き寄せ】ます!
ナイ・デス
現れました、ね
この世界のオブリビオン……私達も、食べたいですか?
けれど、食べられない、ですよ
骸の海に、還る時、です!
ソラ(f05892)と、合体ユーベルコード発動
『蜜ぷに召喚』!ぷにぷにタイム、です!
花の蜜100%のからふるぷにぷにさん達
私の蜜ぷには壁となり私達を、リノさんを【かばう】
リノさん。その光は、疲れますから。その時は、蜜ぷにさん達、美味しく、食べてあげてください
疲労回復効果有、あまあまです
告げて
【地形の利用、迷彩】蜜ぷにの波に隠れて
【忍び足ダッシュ】近づいて
【鎧無視攻撃】短剣を突き立て【生命力吸収】し【暗殺】していきます
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巨大なオウガの集団を前にしても、ソラスティベルとナイは決して怯みはしない。
「むっ……そう簡単に帰して貰える訳もありませんか」
「現れました、ね。この世界のオブリビオン……私達も、食べたいですか?」
ナイの問いかけへ直接の答えは返ってこない。だが彼らの口からは涎が溢れ、二人とリノの方を吟味しているような雰囲気を感じる。
「おや、リノさんだけでなく、わたしたちも食料なのです?」
「けれど、食べられない、ですよ。骸の海に、還る時、です!」
二人はさっとリノの前に立ち、手を繋いで力を合わせる。
「ふふふ、ではお腹一杯味わって貰いましょう。わたしたちの力を! こういう時はアレですね、ナイくん!」
「はい、ソラと一緒に、ぷにぷにタイム、です!」
二人の周りから力が溢れ、呼び出されるのは虹色の蜜ぷに軍団!
ソラスティベルが呼び出した蜜ぷに達は勇ましく進んでいき、彼女自身も彼らと共に前へと走る。
「皆さんいきましょうッ!」
「勇気ト根性でムテキプニ!」
「確実ニ、シトメル、プニ」
ソラスティベルの大斧と蜜ぷに軍団は次々に動き回り巨人の動きを制していく。
しかし巨人も数が多く、彼らが剣を振り回せば蜜ぷに達は容易く蜜を散らせてしまっているのまた事実。
それでもソラスティベルは恐れずに彼らの名を叫び続けた。
「戦ってくれた蜜ぷにさんはありがとう、まだ頑張れる子は共に頑張りましょう!」
「頑張ルプニ!」
巨人の剣は大斧で弾きつつ、ソラスティベルは後ろを見やる。リノの光のお陰で敵の攻撃を弾いた際の負担は軽減されているようだ。
それなら遠慮なく、と次々に斧を振るっていくソラスティベル。
一方でナイも呼び出した蜜ぷに指示を出し、彼自身も動き始めていた。
「蜜ぷにさん達、リノさんを、守ります。それと、その光は、疲れますから。その時は、蜜ぷにさん達、美味しく、食べてあげてください」
「うん、ありがとう……!」
「オイシクタベテプニー!」
同じ聖者の光を扱うナイならこのユーベルコードによる疲労もよく理解していた。
彼が呼び出した蜜ぷには疲労回復効果有のあまあま。リノのサポートにも適している。
蜜ぷに達にはリノの盾と回復を命じ、ナイ自身は前に歩み始めた。
ただし彼は隠密しながらだ。きらきら輝く蜜ぷに達の波は姿を隠すのにもってこいだ。
出来る限り静かに、敵に察知されないように気をつけて。ナイは確実に敵へと向かう。
道中でソラスティベルとナイはこっそりと顔を見合わせて頷き合った。
「……もっと行きますよ、蜜ぷにさん達!」
ナイが前に出てきたと分かればソラスティベルは更にド派手に動き始めた。彼女の斧は次々に巨人を打ち倒し、敵の注目を彼女自身へと集めていく。
巨人も彼女の存在を脅威と捉えて剣を振るうが、彼らの大振りな攻撃は容易く斧に弾かれていった。
その裏で、蜜ぷにの波に紛れてナイは巨人へと接近していく。
(ここで……!)
そしてギリギリまで近づいた所で……一気に彼らの背を登り、首と思しき部分に黒剣を突き立てる!
一気に生命力を奪っていけば巨人は声を出す事もなく命を落とした。
他の巨人はソラスティベルと蜜ぷに達への対処に必死でナイの暗殺には気付いていない。
それならば、とナイは更に彼らの背を飛び移って首を切っていく。
「最後ニ勝ツノハ、勇気アル者プニ――ッ!!」
「プニプニー!」
こうして二人の勇者と蜜ぷに達の活躍で巨人を次々に骸の海へ還す事が出来ていた。
敵の数もまだまだ多いが、二人が歩みを止める事はない。
「まだまだ頑張れますッ! ナイくんと一緒ですから!」
「うん、ソラと一緒なら、大丈夫、です……!」
小さな勇者達の戦いは、彼らの優勢で進んでいっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
山梨・玄信
先ずは中ボス登場といったところかの。
リノ殿は安全な所に下がっておるのじゃ。必要な時に回復だけお願いするぞい。
【SPDを使用】
召喚されたトランプ兵は出現直後にダッシュで接近し、気の放出(範囲攻撃+鎧無視攻撃)で一気に倒すのじゃ。討ち漏らしたら、気弾で素早くとどめを刺しに行くぞい。
バインドカードと巨人の剣は、見切りと第六感で動きを読み躱すのじゃ。
避け損なったらオーラで受けるぞい。
巨人には目を狙って気弾を2回攻撃で撃つのじゃ。
当たれば良し、外れても視界が逸れるから、その隙に足の後ろに回り込み、鎧無視の2回攻撃を細い足首に打ち込んでやるぞい。
これで転んでくれれば、しめたものじゃ。
アドリブ歓迎じゃ。
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「先ずは中ボス登場といったところかの」
玄信は迫りくる巨人達を観察し、彼らの戦力を測る。
わざわざ数で押してきている以上一体一体はさほど強くはないのだろう。
それでもリノを無闇に危険に晒す訳にもいかない。
「リノ殿は安全な所に下がっておるのじゃ。必要な時に回復だけお願いするぞい」
「分かったよ!」
リノが隠れたのを確認すれば、玄信は思い切り駆け出し敵の方へと突っ込んだ。
小柄な彼に対してはより数で圧殺すればいいと判断したのか、巨人達はすぐさま小さなトランプ兵を生み出し向かわせてくる。
だがこれも玄信にとっては狙い通り。
「はぁッ!」
玄信は全身に気を巡らせ、叫びと共に一気にそれを放出する!
迫ってきたトランプ兵達はあっさりと吹き飛ばされ、玄信の進む道を開けていく。
巨人達もこれはまずいと判断したのか今度は大剣を振り下ろしてきた。巨体に合わせた剣はまともに喰らえばひとたまりもないだろう。
だが大振りな攻撃は見切る事も難しくない。
「甘いわ!」
振り下ろしを華麗によければ玄信は更に加速していく。気がつけば一体の巨人の足元にまで辿り着いていた。
今度は巡らせた気を手元へと集中させ、気弾へと形成させて。
「はっ!」
『神聖気弾』で狙うは巨人の顔面!
どこが目元かは判断しきれなかったが、相手はこちらの姿をどこかの器官で確認している。
それなら輝く気弾が直撃せずとも目眩ましにはなるはずだ。
巨人が眩しそうに身体を反らしたのを確認すれば、玄信は一気に敵の背面へと回り込んだ。
今度の気弾は確実に狙いを定めて。目標は細い足首だ。
「これで……どうじゃ!」
足元に気弾を連続で撃ち込めば、巨人は耐えきれずに前のめりに倒れ込む。
自らの体重と大剣の重みに耐えきれない巨人は仲間を巻き込んで消滅していった。
「この調子でいけそうじゃな」
余裕を見せる玄信だが、決して油断はしていない。その表情は勇ましい戦士のものだった。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
POW
ほう、こんな図体のデカイのが寄ってたかって女の子を追い回すとは情け無い。
成敗してくれましょう。
リノさんを後ろにかばいつつ、オーラを被せた盾で防御しながら進みます。
「リノさんは自分が守ります。しっかり着いて来てくださいね」
大剣の攻撃は見切りで読み、天斬りで剣を切断します!
失敗したらリノさんは全力でオーラで包み、自分は盾受けと激痛耐性で踏ん張ります。
「このぐらいの痛み、銀河皇帝に比べれば何てことないです!」
「リノさん、怪我はありませんか?」
成功したら、返す剣でもう一度天斬りを使いトランプ兵を攻撃します。
「2連撃は自分の得意業です!」
アドリブ歓迎です。
●
巨人達と戦う猟兵の元に新たな味方が現れた。
「ほう、こんな図体のデカイのが寄ってたかって女の子を追い回すとは情け無い。成敗してくれましょう」
そう言いつつリノの前へと立ったのは高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)。
バスターソードと盾を構えつつ、零はリノへと声をかける。
「リノさんは自分が守ります。しっかり着いて来てくださいね」
「う、うん。分かった!」
敵の数はまだ多い。零はリノを守りながら戦った方が効率的だと判断し、早速共に前進していく。
勿論巨人達も放って置いてはくれない。二人の元へと殺到した巨人達は全力で大剣を振り下ろし、真っ二つにしようとしてきた。
零は敵の攻撃を見極め華麗に剣を避けていく。
「天に変わって悪を斬る!」
すれ違いざまに『天斬り』で攻撃していく事も忘れない。バスターソードの重い一撃が巨人の大剣を次々に切断していく。
だがこちらにやってきた敵の数が多かった。巨人の剣撃が零へと迫り、二人まとめて吹き飛ばそうとしてきたのだ。
零は防御に使うオーラを全てリノへと渡し、自分は盾と全身で巨人の剣を受け止めた。
凄まじい痛みが身体を走るが、零は歯を食いしばって耐える。
「このぐらいの痛み、銀河皇帝に比べれば何てことないです!」
思い出すのはかつての強敵。それに比べたらまだまだ耐えられる。
お返しとばかりにバスターソードで巨人を切り裂けば、零はすぐにリノの様子を確認する。
「リノさん、怪我はありませんか?」
「私は平気だけど……貴方こそ大丈夫?」
彼女は無事だがその表情は不安そうだ。だからこそ零は顔の液晶に笑顔を浮かべてリノを励ました。
「このくらい大丈夫です。それよりまだ巨人は多いです、自分から離れないで下さい」
これ以上彼女を不安にさせるのは得策ではない。零は剣を握り直して巨人へと走る。
「二連撃は自分の得意業です!」
敵の攻撃を弾き剣を一線、返す刃で更に敵を切り裂いて。
零はリノを守りつつ確実に敵の数を減らすことに成功していた。
大成功
🔵🔵🔵
カルペ・ディエム
雑兵が集まろうと屈する心算は毛頭ない
…リノ嬢も必ず守り通してみせよう
リノ嬢の護衛には骸の乙女を使おう
…大丈夫、この人形は君を害する存在じゃない
【狡兎】の範囲攻撃で複数の巨人を切り裂こう
極力他の猟兵が攻撃したところを攻撃したり
死角を狙うようにしてナイフを操る事で防がれる確率を下げる
トランプの兵を召喚されようとすべき事は何ら変わらない
一層リノ嬢に魔の手が及ばぬよう守護に努め
トランプ兵の数を減らす為にナイフを振るうだけだ
敵の攻撃はナイフや時計で受ける
時に人形を操る鋼糸に敵を絡め、盾にせんと試みる
光の行使には疲労が伴う
ならば無闇に使用させぬよう生命力吸収も躊躇せず
…やれやれ、強そうなのは図体だけかい?
●
巨人の数はかなり減りつつある。だがまだ油断は出来ない。
カルペは冷静に状況を確認し、深紅の瞳で敵を睨む。
雑兵が集まろうと屈する心算は毛頭ない。そしてリノ嬢も必ず守り通してみせよう。
決意と共に骸の乙女を手繰れば彼女はリノを守る盾となった。
「……大丈夫、この人形は君を害する存在じゃない」
「うん、ありがとう」
巨人達は二人の元へ集まりつつある。それならまとめて倒してしまおう。
「少し、注意した方が良い」
カルペが手にした小型ナイフ『秘染』は次々に数を増やし、彼の周囲で煌めき出した。
増えたナイフはカルペの意思に従い動き、一気に巨人へと向かっていく!
巨人も剣でナイフを跳ね除けようとするが、その巨体では自分の死角をカバーしきれない。
鎧のような身体の隙間に次々と刃が入り込み巨人は徐々に打ち倒されていく。
だが彼らも防戦一方にはならなかった。巨人達はカルペの手数が多さに対抗するように小さなトランプ兵を量産し始めたのだ。
トランプ兵達はカルペの動きを阻害するだけではなく、リノに向かっても殺到していく。
「近付かせない」
カルペはナイフを操りつつ器用に人形の糸も手繰り始めた。骸の乙女が呼応するように動き、リノへと集う兵士達を薙ぎ払っていく。
更に糸はトランプ兵達も絡め取るとカルペの方まで引き寄せていく。
巨人の大剣に合わせてトランプ兵達を操れば彼らに見事同士討ちさせる事が出来ていた。
しかし戦闘が続けばカルペにも細かな傷が生まれ、肌に血が滲みだしている。
「大変……!」
それを見たリノが光で癒そうとするも、カルペは敢えてそれを引き止めた。
「……その光は疲れてしまう。僕なら大丈夫だ」
その言葉の通りにカルペの傷が塞いでいく。糸に捕らえたトランプ兵から生命の力も奪っていたのだ。
アリスを守るためなのだから、このような手段も厭う必要はない。
後は巨人達を倒すだけ。
カルペは一気にナイフを操ると残る巨人を一斉に切り裂いていく!
「……やれやれ、強そうなのは図体だけかい?」
しばしの静寂の後、巨人達は見事に打ち倒された。
だがまだ終わりではない。本命のオウガが残っている。
カルペはそれを肌で感じて、再び息を整え始めた。
大成功
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第3章 ボス戦
『切り裂き魔』
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POW : マッドリッパー
無敵の【殺人道具】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : インビジブルアサシン
自身が装備する【血塗られた刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 殺人衝動
自身が【殺人衝動】を感じると、レベル×1体の【無数の血塗られた刃】が召喚される。無数の血塗られた刃は殺人衝動を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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●
見事にトランプの巨人達を倒した猟兵達は、リノを連れて塔を降りていく。
塔の一番下、エントランスホールまでは問題なく辿り着けたが……。
そこには悍ましい姿のオウガが待ち構えていた。
身に纏う衣服は大量の血で汚れ、一見人間のように見えるその姿が逆に不安を掻き立てる。
そして何より、彼の巨大な手は凶悪な凶器だ。
アリスを切り裂き、殺害するためだけの存在。
彼の名前は『切り裂き魔』。この塔の主。彼を倒さなければ脱出は不可能だろう。
先程の戦いと違いリノを守りつつ戦う事は難しい。彼女には下がってもらい、猟兵達は戦いに専念する事になる。
塔の出口まではあと少し。事件を解決するための最後の戦いが始まろうとしていた。
摩訶鉢特摩・蓮華
リノちゃんを塔の最上階から助け出して、ようやっとここまで来れたね!いや~ホント、たいへんだったよ~。あとはこの血塗れの切り裂きマッドハッターみたいなオウガを倒せば脱出できるね!さぁ、全力でいくよ!
WIZ
まずは全速力で敵に近づきながら、片方の鉄塊剣を投げつけて牽制するよ!
投げた剣は念動力で回収しつつ、二刀流で斬りつけてあげる!
敵の攻撃は、大きく側面に回り込んだり、バックステップで回避するよ!
あるいは剣で敵の爪を力一杯打ち返して、次の攻撃がやりにくくなるように体勢を崩させるね!
敵が無数の血塗られた刃を喚びだしたら、紅散華を使ってオウガ諸共刃を全て焼き尽くしてあげるよ!
●
「リノちゃんを塔の最上階から助け出して、ようやっとここまで来れたね!」
いや~ホント、たいへんだったよ~、と紅白の鉄塊剣を構えて呟いたのは摩訶鉢特摩・蓮華(紅蓮眼・f09007)だ。
あとはこの血塗れの切り裂きマッドハッターみたいなオウガを倒せば脱出出来るはず。
「さぁ、全力でいくよ!」
善は急げとばかりに、蓮華は敵へ向かって走り出した。
切り裂き魔もまさか大振りな武器を二本も携えた少女が走ってくるとは思っていなかったのか、慌てて蓮華の方へと顔らしき部位を向ける。
蓮華はそこに生じた隙を見逃さなかった。まずは紅い斬鉄剣『紅蓮華』を投げつけて牽制だ!
しかし相手も手練。敵は紙一重で鉄塊を回避すると、一気に蓮華へ迫り大きな爪で彼女を切り裂こうとしてきたのだ。
敵が大きな腕を振り抜こうとしても、蓮華は避ける仕草を見せない。何故なら……。
「戻ってきて!」
投げつけられたはずの紅蓮華が一気に蓮華の方に引き寄せられ、オウガの腕にぶち当たったからだ。
予想外の攻撃に思わず体勢を崩す切り裂き魔。蓮華はそこへ畳み掛けるように白い斬鉄剣『白蓮華』で斬りかかる!
そこから生み出される力は単純な斬撃ではない。岩をも砕くような凄まじい力だ。
その力をまともに胴体へとぶつけられた切り裂き魔は一気に後退し、蓮華に強い殺意を向けてきた。
殺意は無数の血塗られた刃へと姿を変え、彼の衝動を表すように蓮華へと殺到する!
しかし蓮華はまたしても落ち着いたままだ。敵が遠くから攻撃してくるなら、自分も同じように攻撃すればいいのだから。
「ひらひらと、舞い散る命……紅散華」
蓮華の詠唱と共に紅白の斬鉄剣が炎の花弁へと姿を変えて彼女の周りを舞い始めた。
そして……蓮華が手を前へ向ければ花弁達は一気に刃を打ち払っていく!
全ての刃を撃ち落としても炎の勢いは止まず、そのままオウガまでもを燃やしていく。
オウガは大きな爪で何とか炎を振り払ったが身体への損傷も大きいようだ。更に強い殺意を蓮華へと向けてきている。
だが彼女に恐れる事は何もない。弱者を痛めつける悪党に負ける道理はないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
山梨・玄信
ほう、オウガというから鬼のような者を想像しておったんじゃが、随分と違ったのう。まあ、やる事は変わらんがの。
【POWを使用】
殺人道具に拳で挑んでやるのじゃ。挑発を交えながらの。
見切り、第六感で攻撃を読み、出来るだけ威力を削ぎつつ全力のオーラ防御で攻撃を受けてやるぞい。相手が武器に疑念を抱けば、戦いを有利に進められるからの。
2回攻撃や範囲攻撃で細かなダメージを入れつつ、敵が体勢を崩したら踏み込んで灰燼拳を叩き込んでやるのじゃ。
「そんな道具に頼るとは、お主、腕に自信がないんじゃろ?」
「この程度の傷しか与えられん道具なぞガラクタじゃな」
「鍛えた拳はお主の道具より強いのじゃ!」
アドリブ歓迎じゃ。
●
「ほう、オウガというから鬼のような者を想像しておったんじゃが、随分と違ったのう」
玄信は切り裂き魔の悍ましい姿を見ても全く怯える様子はない。
どのような敵だろうと、やる事は変わらないからだ。
玄信は敵へ向かって一直線に駆け出して攻撃を見極める準備を進めていく。
その様子が無謀に思えたのか、切り裂き魔は周囲に自身の爪と同じような形状の武器を生み出し迎撃の構えを取った。
これは無敵の殺人道具。不用意に攻撃を受ければ人間の身体なら簡単に切り裂けるのだろう。
だが玄信はこれにも怯えない。真っ向勝負をしようという姿勢を崩さずに一気に切り裂き魔の懐へと駆けていく!
「そんな道具に頼るとは、お主、腕に自信がないんじゃろ?」
挑発と共に腕を振るえば、まずは一発敵の胴体へと。
切り裂き魔もお返しとばかりに数本の刃を振るい、玄信の身体を切り裂こうとしてきた。
刃は的確に首や心臓といった急所を狙ってきている。玄信は身を翻して刃を避けるが、少し掠めただけでもそれなりの傷はつけられてしまう。
身体をオーラで覆った事も幸いし致命傷は避けられている。普通なら敵が有利な状況に思えるが……?
「この程度の傷しか与えられん道具なぞガラクタじゃな」
彼の挑発通り、切り裂き魔は少し困ったような反応を示していた。
無敵の殺人道具をこれだけ振るえば玄信は致命傷を負うはずだ。だが彼の重要な器官は全て無事であり、戦意も決して衰えていない。
そこから生じる疑念と迷いは武器の威力を弱め、付け入る隙に変わっていく。
敵の戸惑いを感じた玄信は再び拳を振るい始めた。次の狙いは胴体ではなく脚のような部分だ。
衝撃により思わず体勢を崩す切り裂き魔。ここが玄信にとって最大のチャンス。
「鍛えた拳はお主の道具より強いのじゃ!」
叫びと共に全力の『灰燼拳』が放たれる!
まともに拳を浴びた切り裂き魔は大きく吹き飛び、ヨロヨロと身体を起こしていた。
彼はまた鋭利な刃で玄信を狙うだろう。だが、それなら何度でも迎え撃つだけ。玄信は静かに拳を構え敵を見据えていた。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
この迷宮塔の、最後のオウガ、ですね
ソラ(f05892)、油断せず、勝ちましょう……!
【覚悟】を決めて
全てばらばらに、全方位からくるだろう刃を
正面からのはソラに任せ
私は他からの刃を【第六感】で察知して
【オーラ防御】纏わせた黒剣で【吹き飛ばし】
ソラに迫るの最優先。私は、受けても【激痛耐性】有、慣れてる。気にせず
腱など断たれても【念動力】で身体を動かして
無敵の殺人道具が使われたら全力で【忍び足ダッシュ】【ジャンプ】して
ソラを【かばう】!目だけは、守り
代わりに受けて『フェイタルムーブ』
【暗殺】剣を突き刺し【生命力吸収】
無敵の殺人道具で、殺せた筈の私が、生きている
疑念を与えたとこで
ソラとの連携攻撃です!
ソラスティベル・グラスラン
リノさん、下がっていてください
ふふ、恐れることはありません…わたしとナイくん(f05727)がいますから
今一度、わたしたちを信じて!
【勇気】を振り絞り、正面からッ!
ナイくんに迫る刃の群れを【かばう】!
此処に誓うは不退転の意思!これがわたしの【勇者理論】!(防御重視)
迫る刃を【範囲攻撃】の大斧で砕き、残りをその身、【気合】の鎧で受けますっ
無敵の殺人道具が迫るならば、今ですナイくん!
庇われ、ナイくんの奇襲に合わせ挟み撃ちに
タイミングばっちり!全力の【怪力】を籠めた大斧を!
弱きを守る勇者の矜持
わたしたちの冒険は自分の世界に留まらない
民を苦しめる魔がいるならば、わたしは何処へでも駆けつけましょう!!
●
「この迷宮塔の、最後のオウガ、ですね」
「そうですね……ですがきっと大丈夫です!」
土煙の中から立ち上がる切り裂き魔を見据え、ナイとソラスティベルはしっかりと武器を構える。
後ろを見れば不安げな顔をしたリノが見える。ソラスティベルは彼女へニッコリと笑いかけ、励ますように声をかけた。
「ふふ、恐れることはありません……わたしとナイくんがいますから。今一度、わたしたちを信じて!」
彼女の力強い言葉を受けたリノは、少し安心したように表情を和らげ頷く。
そしてナイとソラスティベルも顔を見合わせ、最後の戦いへ向けて意思を確認しあった。
「ソラ、油断せず、勝ちましょう……!」
「はいっ! 行きましょう!」
言葉と共に二人は全力で駆けていく。ソラスティベルが大斧を構え前を走り、ナイは黒剣を携えその後ろに付いていく。
切り裂き魔も二人を迎撃すべく、周囲に大量の刃物を生成しだした。
二人へ向けて鋭い刃がバラバラに飛来してくる。少しでも切り裂かればダメージは免れないだろう。
恐ろしい想像が頭を過るが、二人は勇気と覚悟でそれを制した。
「勇気で攻め! 気合で守り! 根性で進む! 一部の隙も無い、完璧な作戦ではないですか!」
大斧を振り回しながら迫りくる刃を落とすソラスティベル。彼女が誓うは不退転の意思。これが彼女の『勇者理論』だ。
気合で自身の守りを固める事で掠める刃の痛みに耐えた。自分とナイを出来るだけ傷つけないように、そして決して足を止めないように。
ナイも黒剣で飛来する刃に対応していた。ソラスティベルが正面から来るものに対処してくれているおかげでナイも落ち着いて対応出来ている。
だが……やはり敵の手数が多い。二人の力でも全ての刃から致命傷を避ける事は難しかった。
死角から現れた刃が、ソラスティベルの首を狙う。
「ソラ、伏せて……!」
「っ……ナイくん!」
ギリギリの所でナイが割り込む事で刃は止まったが、代わりに彼の腕に大きな傷が出来てしまう。
「ナイくん、大丈夫ですか!?」
「ソラが、無事なら、大丈夫……!」
二人は足を止める事なく様子を確認しあう。ナイは出来た傷の痛みに耐えつつ、動きづらくなった腕を念動力で補う事で対応していた。
その様子を見てソラスティベルは不安げな表情を浮かべたが……ナイの行動を、共に作った作戦を最後までやり遂げようと再び意志を固める。
「分かりました……! でも残りの攻撃からは、絶対に守ります!」
二人は更に刃を跳ね除け、切り裂き魔のすぐ傍まで到着する事が出来ていた。
だが小さな勇者達を見た切り裂き魔は更に二人の希望を絶たんと、無敵の殺人道具を生み出し振るい始めた。
オウガの爪のような殺人道具は振るわれた際に生じる風圧だけでも凄まじい。直撃すれば二人の身体は真っ二つになってしまうだろう。
だが……これにも二人は怯えない。ナイが敵の正面に残り、ソラスティベルは一気に敵の背面を目指していく。
切り裂き魔は鬱陶しげに二人を見るような動きを見せると、まずはソラスティベルを切り裂かんと刃を振るうが……。
「させ、ません!」
再びナイが刃の方へと割り込んだ。だがこれは先程の飛来する刃とは威力が段違い。
ナイの小さな身体は一気に切り裂かれ、鮮血が弾け……。
「私はここにいて、ここにはいない」
切り裂き魔の頭上から、声が聞こえる。思わず彼が上を向くと……そこには今さっき殺したはずのナイが、黒剣を構えて迫っていた!
オウガは焦る。先程の攻撃には確かな手応えがあり、周囲には血の跡もある。どうして無敵の殺人道具が打ち破られたのか?
実はナイは咄嗟に『フェイタルムーブ』を使う事で仮初めの肉体の再生成を行っていた。ヤドリガミである彼だからこそ出来る芸当だ。
これこそが二人で立てた作戦。痛みは伴うが、オウガの行ってきた暴虐の方がずっと誰かを苦しめてきたはず。
そして今こそ悪逆を打ち破る時!
正面からはナイが、そして背面に回り込んだソラスティベルが、同時に自身の武器を振るう!
「これで……!」
「行きますよ!」
黒剣と大斧による凄まじい一撃は切り裂き魔の身体に凄まじい衝撃を与え、その身体をホールの奥まで思い切り吹き飛ばした。
その様子を確認し、そして互いの無事と作戦の成功に安堵するナイとソラスティベル。
そして二人はリノにも声をかけていく。
「弱きを守る勇者の矜持。わたしたちの冒険は自分の世界に留まらない。民を苦しめる魔がいるならば、わたしは何処へでも駆けつけましょう!」
ソラスティベルの明るい言葉はリノの胸に大きく響いた。
二人の事を思えば塔を出た後もきっと歩いていける。小さな勇者達は、囚われの少女にも確かな希望を与えられていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高柳・零
POW
切り裂き魔…食べる事よりも傷つける事を優先してそうですね。
リノさん、下がっていてください。あれさえ倒せばゴールは遠くないと思いますので。
盾と武器で攻撃を受けつつ、メイスの2回攻撃で反撃します。
殺人道具を出して来たらワザと隙を作り、見切りで打点をずらしつつ、オーラ防御と無敵城塞で攻撃を受けます。
「その程度の武器で自分を倒せると思ってましたか?」
敵が自分の道具に疑念を持ったら一気に畳み掛けます。
鎧砕きで防御を削り、2回攻撃でダメージを重ねます。
「あなたには『痛み』というものを充分に味わってもらいます!」
敵を倒したら、リノさんと一緒に出口を探します。
「最後まで守るのが護衛の仕事ですから」
●
土煙の中から、切り裂き魔はのそりと起き上がった。
身体に確実に傷は増えているが、その爪の鋭さは未だに失われていない。
その様子を眺める零は切り裂き魔の性質について考えている。
敵は恐らくオウガとしての捕食本能より相手を傷つける事に対する関心が大きいのだろう。
「リノさん、下がっていてください。あれさえ倒せばゴールは遠くないと思いますので」
後ろに隠れるリノの様子を確認し、まずは彼女を安心させるように声をかけて。
出口は見えているのだ。ならばあとはオウガを倒すだけ。零は盾とメイスを携え敵へと向かい出す。
切り裂き魔も応えるように前進し、まずは爪を一振り。だが生半可な攻撃では零の盾を傷つける事は出来ないだろう。
上手く爪を弾けば、零はお返しとばかりににメイスを胴へと打ち込んで行く。
紳士のような服装が衝撃で破け、中からでろりと影が這い出た。これが敵の本性なのだろう。
爪だけでは零に敵わない。そう判断した切り裂き魔は無敵の殺人道具を生み出すと、今度こそ零を切り裂かんと振り回し始めた。
今度は盾でも攻撃は防ぎきれない。ならばこちらもユーベルコードで対処する時だ。
零は上手く殺人道具の軌道を見定めると、自らの身体をオーラで覆い……更に超防御モードへと変身させた!
殺人道具は零の身体に直撃したが鈍い音と共に思い切り弾かれる事となる。
「その程度の武器で自分を倒せると思ってましたか?」
追い打ちのようにかけられる言葉。切り裂き魔も戸惑うような姿勢を見せる。それこそが彼の油断だ。
零は超防御モードを解除すると一気に攻撃を畳み掛けにいった。
彼の身体は小柄ながらメイスの扱いには慣れている。確実に敵の弱点を見極め、素早く打ち込めば衝撃が敵の全身へと浴びせられていく。
「あなたには『痛み』というものを充分に味わってもらいます!」
敵は恐らくリノ以外のアリスも苦しめてきたのだろう。ならばきちんと反省させねば。
そして……この戦いが終わったならば、リノも必ず安全な場所に送り届けよう。
「最後まで守るのが護衛の仕事ですから」
その言葉は物語に出てくる騎士のようで、確かな頼もしさを感じさせていた。
大成功
🔵🔵🔵
カルペ・ディエム
為すべき事は為した
…後は、あのオウガを倒すだけだ
さあ、帰る為の戦いを始めよう
指先で手繰るは鋼の糸
【繚乱】にて、敵を裂くと共に動きを牽制する
そら、一歩歩けば瞬く間に君の身体は傷付くよ?
…なんて、恐怖を与える精神攻撃には少々稚拙かな?
召喚された刃も、確実とは言えずとも鋼糸を絡めて威力を削ぐ
何より死角を狙われたならば一溜りもない
見切りに努め、鋼糸を操ると同時に人形で攻撃を受け流そう
…やれやれ、手酷くやられたならば
新しい服を見繕わなければね
後方からの支援は欠かさず
他の猟兵達の死角を補う為、鋼糸で敵の手を払おう
…全員生きて帰らねば、リノ嬢に悪い
…さて、ではそろそろ
いけ好かない帽子屋の首を狩ってしまおうか
●
指先から鋼糸を手繰りながら、カルペは切り裂き魔を見つめていた。
ここまでに塔を登り、アリスを助け、巨人達を討った。
為すべき事は為した。後は、あのオウガを倒すだけだ。
「さあ、帰る為の戦いを始めよう」
宣言と共に鋼糸が展開し、ホールの内部に次々と張り巡らされていく。
展開された糸はオウガの身体を裂くだけではなく、敵の動きを制限する檻にもなる。
「そら、一歩歩けば瞬く間に君の身体は傷付くよ?」
カルペは脅すように言葉をかけるが……それでも切り裂き魔は前へと進みだした。
もう自らの身体が傷つこうとも構わないようだ。それよりも猟兵達とリノを切り裂きたい。そんな雰囲気が読み取れる。
オウガもお返しとばかりに自らも血塗られた刃を呼び出せば、鋼糸ごとカルペを切り裂こうとけしかけてきた。
だが鋼糸は盾にもなる。カルペは上手く糸を操り、飛来する刃達を次々に絡め取っていく。
しかし刃は多く、死角からの攻撃には対処しきれないかもしれない。
だから背中の守りは骸の乙女に任せる事にした。鋼糸と同じく乙女も手繰り、二人は踊るように刃を避けていく。
その甲斐もあって致命傷は避けられたが、刃は何度も身体を掠めた。
血と切り傷が服を汚す度にカルペは溜息を吐く。やれやれ、新しい服を見繕わなければね。
カルペは部屋中に糸を張り巡らせていたが、他の猟兵にはずっと気遣い続けていた。
何故なら全員生きて帰らねば、リノ嬢に悪い。彼女をこれ以上悲しませる必要はない。
だから敵が投げる刃は全て鋼糸で受けるつもりだった。
そして糸が捕まえるのは刃だけではない。カルペが大きく手を引くのに合わせ、糸はとうとうオウガの両腕を捕まえた!
切り裂き魔は糸を振りほどこうと腕をばたつかせるが、カルペが丁寧に張り巡らせたそれには敵う事はない。
「折角ならば、美しく咲きたいだろう?」
最期の時に向けてカルペの深紅の瞳がオウガを見つめた。彼からは感情こそ読み取れないものの、自らの終わりを感じて頭を垂れた。
ならばそろそろ、いけ好かない帽子屋の首を狩ってしまおうか。
カルペの指が小さく動かされ、糸が切り裂き魔の首を断つ。
その身体は地に伏す事なくどろどろの影になって消えていった。
こうしてオウガは倒された。カルペは糸を回収しながらリノへと歩み寄る。
アリスを守れたという実感が、彼の胸を満たしていた。
●
こうして猟兵達は無事に囚われのアリスを救出し、迷宮塔を脱出した。
あの塔もオウガがいなくなった以上は愉快な仲間達がどうにかしてくれるだろう。
「皆のおかげで本当に助かったよ。ありがとう」
リノは猟兵達に何度も頭を下げて感謝を示した。
だが彼女はこの世界から脱出する手立てを得た訳ではない。世界を巡って自分の扉を探さなければならない。
だが、今の彼女に恐れはない。猟兵達の戦う姿がリノを励まし、先へ進む力となったのだから。
猟兵達の戦いもまだまだ続く。だがきっとそこに恐れはない。
それを示すかのように、暖かな日差しが皆を包んでいた。
大成功
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