【RP】死地よりの帰還後の一幕
六道・橘 2022年8月16日
……どうやって万年櫻の此処に帰り着いたかは憶えていない。
腐りゆく呪いからは解放されたというのに、熱病に罹患したかの如く全身が脈打っている。
自分で斬り落した右腕は未だ存在を知覚できなくて、歩く度に激痛が駆け巡る。
朦朧を食み、荒い息を気遣いかけられる声を振り払い、辿り着いた長屋は自分の家ではなかった。
【依頼履歴/橘(と彷)】
>「鏖殺リテラチュア」
古本を彷に預けて、いつか感想を聞かせてと約束した
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=41108
>「水棲洋燈のつくりかた」
想いの儘に拾った石
もらったのは“ジャスパー”
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=43694
>「腐りゆく」
ダークセイバーの常闇の燎原にて
腐りゆく幻影に囚われながらも戦い帰還
死と背中合わせの極限で、縋ったのは『兄』
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=43935
※橘が「腐りゆく」から帰還した所から開始
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比良坂・彷 2022年8月26日
え? 計算以外でなんで配んの? 情報につながりそうなのと、後の仕込みだよ
六道・橘 2022年8月26日
…………
六道・橘 2022年8月26日
それで、あなたはどうされるの?
比良坂・彷 2022年8月26日
そうね……「神」を信仰する人達の中で、より「神」に近い地位の奴を探っていくかなァ
教会でもなんでもいいや、祭ってる場所があるならそこに行く
六道・橘 2022年8月26日
……もし「祭っている場所」がなかったら? あったとしても実態がないとか……
知ったかぶりに語る人はいても、信徒としてえらいわけではない
六道・橘 2022年8月26日
…………文献を辿っても「神」はでてこないわ。見つかるとしたら絶望的なオブリビオンの所行のみよ
あなたなら、この状況でどうするの?
比良坂・彷 2022年8月26日
でも「神」は既に語られて流布されている
だったら簡単――
俺は「神」に近しい信徒を騙る
状況次第では「神」を騙ったっていい
先程バラまいた食べ物に手当で仕込んでおくのが前提ね?
人は死に貧している時に無償の慈愛を施されたら案外コロッと落ちてくるもんさ
あとは俺が騙しに掛かってると疑ったって、それで足を止めるよりは一か八かで賭けようって気なりやすい
――どうせ、死ぬんだから
最期の夢と縋る奴は多いだろうさ――
六道・橘 2022年8月26日
――
………………
(ゾッと背筋が粟立った。歯の根が合わなくなる恐ろしさを噛みしめ隠し、)
六道・橘 2022年8月26日
彼らを騙し「神」を騙ってどうするの? それでもあなたの腐敗が止むことはないわよ
比良坂・彷 2022年8月26日
けれど祭り上げられていたら街で色々振る舞いやすい
人脈は力となる
……もしかしたら、信仰してない奴らがいて、そいつらは無事とかさ、街の仕組みに近づけるかもしんない
比良坂・彷 2022年8月26日
そうじゃなくたってさーあ
もし後から……そうね、例えばきっちゃんが来るなら、逃がしてやれたり色々と融通が利くじゃない? 街をある程度掌握できてたらさ
六道・橘 2022年8月27日
………………
(嗚呼、嗚呼、なんということ。全部同じだ。自分が頭に描いた前世の兄の行動と)
(街の掌握が自分の為ではないところまで――前世の兄の妄執めいた溺愛から構築した行動原理)
(けれどこれは例え話だ。わたしが目の前にいるから「わたし」が当てはめられただけ。友人であれば彼は同じようにするに違いない)
六道・橘 2022年8月27日
(ふと思いついたことを怖々と聞いてみる)
――もし
――……もし、既にわたしが死んでいるとしたら? あなたはそれを知っている、ないしはこの街でそれを知った、だとしたらどうなさるの?
比良坂・彷 2022年8月27日
やだなァそれ
例え話でも考えたくねェよ
(置いて逝かれるなんて――もう、いやだ)
(けれど、置いて逝かれてどうなったかも、
知っている)
比良坂・彷 2022年8月27日
…………
施すよ、この身の限り
それで誰かが生き残ってくれるなら充分だから
縋られたら全部明け渡したっていて、その刹那に見せてくれた上辺だろうが本心だろうがの感謝で、俺は満たされて死ねる
そいつが生きれば俺のことを語ってくれる、そうしたら俺はその『話』の中に生きてることになる
六道・橘 2022年8月27日
本心から優しくされるの……?
比良坂・彷 2022年8月27日
さぁ。俺の本心なんざわかんねェよ
だって俺はからっぽの『匣』なんだから
『匣』に相手の欲望を流し込んでもらって、なんか入ってるような錯覚に陥ってんのが関の山だ
六道・橘 2022年8月28日
(彼が俺の『兄』だとしたら……常にそんな虚ろを抱いていたのだろうか)
(自分が『からっぽ』にしか見えないから、瓜二つの外見をしていた俺の何もかもを真似ようとした――?)
(俺は、それが、不気味だった)
(兄は全てにおいて俺より優秀で何でも持っているようにしか見えなかったから……そうまるで、憐憫の情で“あわせてもらっている”ように思えた)
(怒りで覆い隠し、その実、兄が何を考えているか分らずに、不気味で恐怖を覚え、逃げた)
六道・橘 2022年8月28日
(常に感じていたのは――全てを真似られて『俺』を乗っ取られる恐怖)
六道・橘 2022年8月28日
………………
(また、裡が何かを呟いている。けれど見せて聞かせてくれることもあれば、今みたいに隠すこともある)
六道・橘 2022年9月6日
――うそつき
比良坂・彷 2022年9月6日
(つかれたように顔を上げ声を殺した)
(自分がどうするか本当のことを話していたつもりだ、隠し立てなく)
(自分で自分がわからない、虚ろだ。だから本当か嘘かわからなくて)
比良坂・彷 2022年9月6日
(この子は――弟は、やはり俺を信じてはくれない)
(言いたいのは、あの日のように「信じて」なのか、それとも「ごめんなさい」なのか)
六道・橘 2022年9月6日
(口走った台詞は相手を甚く傷つけるものだ)
(嗚呼、嗚呼、またやってしまった。浮かんだことを考えなしに口にする。相手の感情が読み取れない)
ごめんなさい……わたし、酷いことを……
比良坂・彷 2022年9月6日
いいよ、きっと全部あなたが正しいから
(わらう、かくす、わらう、わらう……ほらやっぱりうそつきだ)
六道・橘 2022年9月6日
違うの
あの…………
六道・橘 2022年9月6日
あなたは、自分に対して嘘つきと思ってしまって
常に自分を騙してらっしゃる
わたしには、そう見える…………
これも非道い言葉だけれども
……わたしには、とても誠実に向き合ってくださっていると、思っていて
………………
六道・橘 2022年9月6日
――
(これは、俺がずっと兄に言いたかったこと)
六道・橘 2022年9月6日
あなたに向けてではないことだけれども
……わたし、ずっと前世の兄に言いたいことがあったの
(真っ直ぐに見据えて、けれど、声が震えてしまう……)
(この人に言ったところでなんら気持ちが昇華されるわけでもない。むしろ戯れ言を聞きたくないと止めてくれという気持ちすらある)
六道・橘 2022年9月6日
(
喉を塞ぐように俯き胸元に手をあてがった)
比良坂・彷 2022年9月6日
ああ、あの本の『お兄さん』か
――
………………
作家の腕が良くて読みやすく仕上げてあったけれども、双子のお……妹?
六道・橘 2022年9月6日
弟
記されたのはわたしがモデルだから妹になっていたけれど
比良坂・彷 2022年9月6日
そう、じゃあ弟で
並々ならぬ執着で弟の未来を先回りして潰し
自己犠牲と言いながらも弟の人生を侵食するロクでもない輩だ
きっちゃんが以前貸す時に「この男を真似ても気は惹けないから止めろ」と言った通りに、きっちゃんはこの兄を――
六道・橘 2022年9月6日
うるさい、黙って
わたしが話しているの!
比良坂・彷 2022年9月6日
………………あ、ごめ……
六道・橘 2022年9月6日
(勢いよく跳ね起きて、申し訳なさそうに唇を震わせる男の胸ぐらをつかんだのは右手。そう、さっきつないでくれたちゃんとある、右手)
(利き腕と反対の手)
ずっとずっと言ってやりたかったわ
「自分には中身がない、虚ろだ。恐らく
天と一緒に大人にはなれない」
そんな風に言われる度に
助けられない悔しさと、そんなことをほざく口を塞いでやりたかった。聞きたくなかった
悔しい、悔しい
でも……言われるのが嫌だったのは、それだけじゃない
ずっとなにかが引っかかっていた
けれど言葉には出来なかった。わたしは莫迦だから
でも――やっと、見つけた
一度死んで、とおに死んだ年齢を超えて漸く……ッ
六道・橘 2022年9月6日
(姿は女のままで、不機嫌な口元は少年のように下がる)
「兄さん。あなたは
わたしのことで頭がいっぱいじゃない
の! 四六時中
わたしのことだけを考えて、全ての行動原理
わたしの為になるように」
「天、天、天、天……天、天……」
「そんな人間の心の何処が虚っぽ
ですって?」
六道・橘 2022年9月6日
――ちゃんと、
わたしで一杯じゃないの
虚っぽなら、
あなたの中にいる
わたしはなんなの? 正体もない存在? 違うでしょう?
六道・橘 2022年9月6日
…………だって、
わたしは18までは生きていたもの
……………………兄さんは、虚っぽじゃないわ。そう、言ってあげられたら、兄さんは死ななかった……かもしれない
………………
~~~
(力なく腕を放し顔を覆う。指の隙間から熱い涙がぼたぼたと落ちて布団に染みた嗚咽が零れるのみ)
(あとはもう、ただ只管に悔しさを滲ませた)
六道・橘 2022年9月7日
(自分が『虚無』なのは、怖ろしいこと。心の病がやがて人の命を奪うように)
(けれど当時の『俺』にはその恐怖は戯れ言にしか思えなかった)
(常に誰かに支配されていないと生きられない、だから歓心を買うのが上手いだけ――そんなものはへりくつだと切って捨てた)
(末期は『兄』が何を言おうが『俺』を莫迦にして騙しに来ているとしか思えなかった)
六道・橘 2022年9月7日
(――同時に)
(兄が二十歳になれず死んでしまうってことだけは信じてた。恐らくそれは事実だったと思うのだ――母が、俺達双子の母が末期は「なにもかもがわからない」と絶望の元に生きる力を佚して身体が弱り亡くなったように)
(兄の未来の死を信じるくせに、兄の言葉は何一つ信じずに俺は追い詰めてしまった)
(追い詰めた先でも、何処までも兄の精神は美しく只管に俺への尽力しかなくて――『俺』は対する自分の救いがたい醜さを直視して、もう、なんだか、どうしようもなくなってしまった)
(俺が死ねばいいと思った)
(俺が死んで、代わりに兄が生きればいいと願った)
(――きれいごとの自己欺瞞だ、でも、その願いは確かに欠片であれ存在していた)
(兄は、あの後、生きたんだろうか――それすらもわからないけれど…………できれば、それを知りたいけれど
…………)
六道・橘 2022年9月7日
(目の前の『彼』はその答えも持ってるんだろうか)
(――『俺』からは『兄』にしか見えないけれど、そんな思い込みで
橘を引きずってはならない)
(
橘の望み俺に伸ばす手を本当は振り払って消えてしまうべきか、悩む)
(――
………………)
(この子の孤独を救ったのはある意味『俺』であり『過去世の兄への執着』なんだよな
…………)
(今は友人もできて、猟兵として日々を過ごせているけれど――もう『俺』と魂が同化しきっていて橘は俺でしかない)
(だからこの子は、こんなにも泣きじゃくる。俺と同じ悔しさと悲しみで)
比良坂・彷 2022年9月27日
(泣いてる女を慰めるなんて物心ついた頃からやってきた)
(最初は母親。彼女は愛人で
夫に目をかけてもらえぬといつも泣いていた)
(他の女達もみな同じ立場で泣いていた。だから俺はその悲しみを自分に取り込み共感して慰めた。それが後に「先見教」のやり口になった)
(信徒の子供達。意に染まぬ結婚話に親に未来を決められて涙を零すのに向き合って、心までが死なぬようにと慰め、幸せに見える道を作ってやった)
(家を出てからも、泣いてる女や何かに欠けた女に縁があり、片時の恋愛モドキなんて幾らでもやった――俺に、多分情はなく、ただ生きる糧として相手の感情をもらった。信者を相手にすんのと同じだ)
比良坂・彷 2022年9月27日
(――でも
この子にだけは、その文脈で触れてはならない。俺の中の経典を壊して仕舞う――)
比良坂・彷 2022年9月27日
(そう『経典』だ。俺の心の奥底に『弟』が収まったから、漸く『俺』は人のフリができる、死から遠ざかる。『弟』の存在は俺という身体を動かすネジ――ああ、そうだ。彼女の言う通り、俺の中は『弟』で一杯だ)
比良坂・彷 2022年9月27日
(努めて冷静にコップに水を注ぐ。物入れから出したハンカチを添えて差し出す)
もし、その『兄さん』とやらに出会えたら同じ事を言ってやりゃあいいさ
あなたの言う通り、その言葉は『俺に向けてのことではない』から。大丈夫、全て忘れて流すよ
流石に腹も減った。ちょっと飯を調達してくるわ
きっちゃんも、俺がいない方が落ち着けるでしょ。あー……まぁ10分ぐれェで戻るよ。そこの定食屋で握り飯を分けてもらってくるから
六道・橘 2022年9月27日
………………
(無言で受け取りハンカチを瞳に押し当てる。すると傍らから気配が減じた。次に視界を解放したら、障子の閉じる音と向こう側に男の影しか見えない)
六道・橘 2022年9月27日
…………いやよ。忘れないで、流さないで
(声は届いただろうか)
(またしゃくり上げてハンカチを宛がい、駄々っ子のようにうーと唸るのみ)
比良坂・彷 2022年9月27日
(襖越しに聞いた声に応えかけて口元を覆う、指には煙草があり翻したマッチの火で煙を吐いた)
……………………………………
(今、一緒に過ごしているのはなにかの弾みだ。一過性の縁はいつか解け、あの子はより相応しい人の元へと羽ばたいていく)
(――でも、俺はもう持っているから、大丈夫)
(だからあの子を前世の縁でなんて縛り付けてはいけない――)
比良坂・彷 2022年10月13日
この日は、続きの会話は虚しく噛み合わず
やがて疲れが限界に達した橘が眠りに落ちたところで幕引き――
娘が目覚めたら男の姿はなく「鍵はかけず好きに出ていくよう」書き置きだけが残っていた
娘は家に自分ひとりの気配しかないのを思い知らされた所で諦めて家路につくのであった
〆