比良坂・彷の日記帳
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比良坂・彷
2022年5月22日
なんで俺は俺なんだろう
俺ではない者になってりゃ、まだその手を取れたのに
もしかしたら恋に落ちることだって出来たかも知れない……
(書いてからこみ上げるような嫌悪が腹から迫りあがる。トイレに駆け込み胃液と昨夜の酒を吐き出した)
比良坂・彷
2022年5月22日
(水で口を何度もゆすぎ、なくなった中身を足すようにごくごくと勢いよく煽る)
……ッ、ぷはっ……ッ、はぁ
あー……まァここは拒絶反応でんはいいかァ
昔もそうだったけども、彼女(かれ)に愛する人が出来てそちらへ幾分にゃァいいんだよ
そりゃあ身の上は調べるけどさ。詐欺や騙しに不誠実な奴ァにはやれねェからな
………………
でもそうやって引き裂くなんて、俺は何様なんだよ
比良坂・彷
2022年5月24日
(でも、俺が俺じゃなかったら、あの子が再び生を得たことをこんなにも喜びはしなかっただろう)
(そもそも全くの赤の他人としてすれ違ってお仕舞い、二度とは会わない)
比良坂・彷
2022年5月24日
それはあまりに寂しいな
比良坂・彷
2022年6月2日
(明け方に散々酒と煙草の匂いをさせて帰宅する)
ちゃぶ台の上の日記には、酔っ払ったくせにいつもと変らぬ端正な文字でこう書かれている
“兄と、呼んでもらえた”
“どうしよう、嬉しい”
“どうしよう、離れられない”
比良坂・彷
2022年6月2日
(目が覚めたら既にお天道様は頭の上。二日酔いで頭がズキズキとするが、それすら楽しめる)
『匣』には昨日のあの子の呼び声を入れることはできねェもんなァ
俺は、いつだって『弟』に救われる
だから、この身全てを賭して尽くしたい
俺は、いつか『弟』を死に追いやってしまう
だから、こんどこそは『弟』より……きっちゃんより、先に死にたい
いいや、この世の春の今、この時、この瞬間
死んでしまいたい
比良坂・彷
2022年6月2日
(背中の傷を愛おしむ。嘗て斬り落した翼とは反対の右側の背中に入った一太刀。あれから何度も一振り目は必ず自分に入れてくれた)
(生きる為に利用してくれたことが、なによりも、嬉しくて――)
比良坂・彷
2022年6月14日
**
(何の気なしに、いいや嘘だ、気になってしまい彼女の家のそばを通りかかった)
(啜り泣く声と共に「わたしはあなたが嫌い」と聞こえた)
比良坂・彷
2022年6月14日
(やっぱり死んでしまえばいいのだ自分なんて)
(偶数で即離れる/奇数は少し留まる)
比良坂・彷
2022年6月14日
(花びらを落さぬよう抑え、羽音を殺して浮き上がりその場を去った)
比良坂・彷
2022年6月15日
(屋根の上に座って煙草を吹かす。彼女の家は視界内だ)
あー、こういうことすっから気持ち悪い嫌いって言われんだろうなァ
(見ていたら、彼女が包みを持って家から出て来た。行き先は――俺の家)
え、何しに来たの、あの子
(包みを持ったまますぐに出て来て自宅へ戻る。しばらくしてからまた俺の家に行き、今度は包みを置いて帰っていった)
六道・橘
2022年6月15日
【手紙】
この本はこの世に1つしかない大切なものです
押しつけておいて勝手ですが
酒煙草からは遠ざけて丁重に扱ってくださいませ
内容は、あなたと出会う前からわたしが見ていた妄想を、とても腕の良い作家様に紡いでいただいたものです
前に読ませなかったのは恥ずかしかったから
けれど、わたしの妄想にあなたを完全に巻き込んでしまったから、お見せすべきだと思って
斯様にわたしの妄想は非道く逸脱したものです
あなたが意趣卓逸の名優でわたしにあわせてからかってらっしゃるのでしたら、後戻りなさるのは今の内です
そもそも斬られて喜ぶな、怒れ!
(女性のまろやかな文字で綴られているが、最後の一行だけは大ぶりの荒い筆跡だ)
比良坂・彷
2022年6月15日
………………
(手紙の最後の行をなぞった。
煙草を咥えマッチに手を伸ばしてから、弾かれるように引く)
…………そっか、そっちにも、いるんだ
比良坂・彷
2022年6月15日
(咥えた煙草を外し、手を洗ってきちりと拭いてから本をひらく)
(読む)
(更に読む)
(読む)
感想はひとつ
やばい、俺が居る
比良坂・彷
2022年6月15日
(読み終えた)
(念のため、ちゃぶ台の端に遠ざけて背を向けてから煙草を一服……しようとしたら、畳まれた桜色のメモ用紙が落ちているのに気づく。どうやら本の最終ページ辺りに挟んであったよう)
(中身には文字がびっしり)
六道・橘
2022年6月15日
【メモ】
人の情を知らぬ女が無意識に作った妄想
そう思われるなら、どうか本を元通りに包んでわたしのポストに入れておいてくださいませ
わたしはこのように色々な面で重たく逸脱した『兄』が想い人として理想像だとは思っておりません
だから、まかり間違って、万が一、あり得ない思い上がりとは思いますが…………わたしの気を惹きたくての話をあわせた振る舞いでしたら、お応えすることはできません
それ以外で、今後もおつきあいをしていただける物好きな方なのでしたら、下記の古書店にてお待ちしておりますので、直接返しに来てください
六道橘
比良坂・彷
2022年6月16日
押しつよ……
でもどっちも同時選択出来るよね
(この季節、コートも上着も不要。ただ昨日帰宅してそのまま寝てしまったから、シャツは変える)
(彼女宅のポストに戻した後、古書店へと向かった)
比良坂・彷
2022年6月16日
(『大切』をしまう匣の中には、彼女と『 』手描きの手紙と、彼女手描きのメモが新たに増えた)
比良坂・彷
2022年7月12日
俺が九龍城で飲みたかった
溢れ出す言葉は果たして今世か前世かどちらのものなのか
……はは、大差ない
比良坂・彷
2022年7月12日
(包みにはあの子が読んで感想を聞かせてくれと言った本)
(同じものを摂取して共有できるのが、とてもとても、嬉しい)
比良坂・彷
2022年7月12日
離れらんねェや
そして、つながっていたら、他がなァんもいらなくなる
頓服でつきあってる女とそろそろ切れ時だけど……もう、いらねェかもな……
比良坂・彷
2022年7月12日
(日々があの子で染められていく)
(とてもとても、幸せ)
比良坂・彷
2022年7月12日
(でも)
(そしたら、出来ないことも増えていく――)
(あの子が詰まっているからか、他の人を流し込んでの同期が難しくなっている……)
(……今は、本を読んで丸暗記も、信者へ正しく突き刺さる助言も、できる自信がない)
比良坂・彷
2022年7月13日
…………あの子に上手に“使って”もらえたら、そういうことはまた出来るようになる気はする
でも
“使う”のは怖ろしく手間が掛かるし負担も強いてしまう
――嘗ての世では、そういう組み合わせが“比良坂の双子”だったけれども
俺と弟は混血だったからお役目は継がなかった
……混血で均等に“比良坂”の能力が薄まれば良かったのに、俺はそのままであの子は父に似てまっとうだった
比良坂・彷
2022年7月13日
まっとうだったから弟は自ら命を絶ってしまった
やはり、背負わすわけには、いかないんだ
比良坂・彷
2022年7月15日
本でも読むか
ささやかな事であれあの子が俺に求めてくれたんだ、それに応えたい
比良坂・彷
2022年7月20日
|先生にとってはどちらも大切な生徒ですよね。僕から2人にはお話しておきます《淫行がバレて辞めさせられるまで弟のために利用させてもらいますね》
比良坂・彷
2022年8月9日
(こっそりと1つだけ隠し持ち帰った赤い石をテーブルに置いた)
「聡明」「永遠の夢」「セルフコントロール」「勇気」
石言葉、4つともバラバラじゃねぇか
でも全部俺に必要なもんだなァ
「永遠の夢」だけがはぐれもんで、俺はそこにいたい――
比良坂・彷
2022年8月9日
(手首をとったのは二度目)
(おちていく、落ちていく、堕ちて逝く……)
(巻き戻りゃしないのに、けれどもう二度と俺より先に逝って欲しくはないから…………)
比良坂・彷
2022年9月21日
責任は取らないと、ね(掌で転がした赤と青の十面体をぱらりと落す)
比良坂・彷
2022年9月21日
7 事後処理を手伝わされる/2 2日
……あ、無難に根回ししてことを収める俺が出たわ
藍夜と暁くんはどーなんだろーなァ
比良坂・彷
2022年10月13日
実際につかってみる
比良坂・彷
2022年10月19日
上に兄が2人。正妻の息子はこの2人だけで、家督はこいつらだけのもの
俺を含めた後は『先見教』に集めた妾の子供達
『先見教』には、家柄こそはいいが正式な結婚には出せない女が集められている
――駆け落ちから連れ戻した娘
――性格や嫁ぎ先との折り合いが悪く離縁された女
――不義を為し愛想を尽かされた女
その他、家に置いておくに体裁の悪い女が補充される
今は父と兄2人が、立ち寄っては適当に遊んでいく
見目を清く正しくした体の良い専用の娼館だ
年を食った女は……どっかへ消える。あー俺の母親はまだ残ってたっけなァ?
腹違いの弟妹はそれこそ腐る程いるし、|母親《胎》が一緒のも何人かいる
……でもそれがなんだって言うんだろうな
弟妹は頭良く従順なにばたまに母親の実家へ引き取られる
引き取られた恩義をおしつけりゃ、将来は政略結婚のコマにできる
それが俺の|生きた場所《実家の隠れ里》
比良坂・彷
2022年10月21日
朝なのにとても眠い。
比良坂・彷
2022年10月21日
あと、模擬戦したいなーって思ったらユベコ増量したくなる。しかし俺のユベコはインチキ四字熟語+ギャンブルふりがなの縛りがあるからネタがない
比良坂・彷
2022年10月24日
上の同背後ロールはちょっと未来の時系列
だから俺がお返しするロールは、これの前のスタンスのつもりだよ
緋かーさんはその内くるかもしんない
比良坂・彷
2022年11月24日
(だがいつも連れてる白い花を千切り手渡そうとしたのは自分だ)
……咲くまでどんぐらいかかるかなぁ
(白い花があの子の手に収まった刹那、己の“有り様”が変った)
(|學徒兵《身分》が剥げ落ちて、|常に誰かを求めるロクでもない本質《寵姫》が露わになってしまった)
比良坂・彷
2022年11月27日
(『寵姫』になってから数日経った。まずい、まずい、まずい。とても人恋しい。手当たり次第の誰かに好きなようにされたい。つまりは女に遊ばれたい――)
(けれど、自分で千切り渡した白い花がそれを留める。まだ花は咲いては居ない。けれど昨日からの蕾が開きはじめている)
(この花が咲いたら、|あの花《手渡したもの》はなかったことにはできないだろうか)
比良坂・彷
2022年11月27日
今更気づくのはどうなんだよ
“なんてものを手渡してしまったんだ”って
何故、負担にしかならない己の気持ちなんて晒したんだ
――13のあの子が余りに憐れで、あの姿を『真の姿』とする程に疵ならばって言うけど、それは今まで通りの支え方で出来る筈なんだ
比良坂・彷
2022年11月27日
ああだけど、俺の本体は所詮はカネとコネだ
それが最大の武器で、あの子の後ろ盾として重要なんだ……けど
(立場を保持する為にはなにか手を打たないと)
(けれど『寵姫』が暴走している今向かったら、高確率で実家に囚われてそれを良しとしてしまいそうな自分も見出している――)
比良坂・彷
2022年12月3日
【花を毟られてから1週間】
(屋敷に帰宅)
…………珍しく素直になって話をしようとしたら、何故いないのか
手紙……手紙は、ないな
流石になァ、女性の部屋に勝手に入るのは憚られるしなぁ
そういうことしたら話し合いのはじめから躓くの見え見えだろ
あー……どーこ行ったかなぁ
一日待つか。|ここ《屋敷》で
……あぁくっそ、治ったんじゃなかったのかよ、刀傷がいてえ