8
殺人機構

#アックス&ウィザーズ #戦後 #群竜大陸

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#戦後
🔒
#群竜大陸


0




●群竜大陸・蒸気魔法迷宮
 アックス&ウィザーズの上空、群竜大陸。
 じゅう、とそこかしこから白く高温の蒸気が噴き上げるその場所は、帝竜『オアニーヴ』のユーベルコードによって『アルダワの魔法蒸気機械群』と化している。
 軋む音を立てて回転する歯車や滑車によってひとの入る大きさの箱が吊り上げられたり、逆に地面すれすれまで急降下したりしている。
 時折、ほよん、と中空に樹液が浮かんで、弾けて消える。『天空樹の精髄』。帝竜の消滅後、ごく稀に出現するようになった、凄まじいエネルギーを秘めているとされる流動体だ。無論、非常に高価で取り引きされる。
 それらを求め、群竜大陸へ向かう冒険者たちは後を絶たない。

「……ッ!」
 少女の足許に強大な斧が突き立ち、複雑な機構の施された石造りの畳が大きく罅割れた。少女の前には無数の人型。
 彼らは『血の一族』。千の竜が棲むと言われていた時代から群竜大陸に存在し、幾多の脅威を払い去らんと腐心し続けてきた民族だ。
 ……ただし、彼らは手段を選ばなかった。どんな非道な手段でも用いた。故に彼らは自らをも滅ぼし、結果、現在の群竜大陸に這い回るのは過去の残滓──オブリビオンだ。
 少女も群竜大陸に辿り着くからには、腕に覚えがあるのだろう。追われ、防戦一方ながらも瞳に怯えや恐れはない。
 とは言え、勝つこともできないらしい。
 歯車の機構を利用し、上へ下へと逃げ回っていたが、気付けばジリ、と踵が建物の縁を越え、空中を踏みかけた。
「ぁ……っ」
「貴様は竜の脅威を利用する」
「故に貴様も竜の脅威と見做す」
「……死ぬが良い」

●無垢な殺意
 冒険者の酒場──に今は容を変えたグリモアベースの一角で、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は紅茶のカップを集まった猟兵たちへと勧めた。
「『|賢竜《ダンジョンメーカー》オアニーヴ』……仮面の呪いとかなんとか言ってましたね。新しい世界のこともありますし、なんか関係してんのか」
 そこまで言い掛けて、へらとセロは笑って見せた。
「ま、今回のシゴトにゃなぁんにも関係ねーですけどね! とりあえず女の子が群竜大陸で襲われてるんで、助けに行きません?」
 おれの予知も完璧じゃなくて、ぜんぶ視えたわけじゃねーんですが。そう言いつつ、セロは拳を握って見せる。
「報酬は『天空樹の精髄』。拳くらいの大きさでなんと金貨950枚分の価値があるらしいですよ!」
 UDCアース的に換算するなら950万円、となる。
 無論、希少だからこそ価値があるのであって、簡単に見付かるものではないのだが、盗人はへらり笑って口を噤む。
「アルダワっぽい蒸気がそこここから噴き出してますし、上に下に移動する方法もたくさんあります。女の子はおれがみんなを送り出す時点で、建物のてっぺんで追い詰められてるみたいですね」
 ま、みんななら大丈夫でしょ。気負う様子もなく、彼は言う。
「敵に話は通じそうにねーです。ただ殺す。毀す。それだけのために動いてるオブリビオンです。……傷付く覚悟があるひとは、手伝ってくれるとうれしい、ですよ」
 左頬のハートのペイントを歪めて、セロはそう締めくくった。


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 時々やりたくなる。朱凪です。

▼注意!
 このシナリオは2章編成です。
 2章に渡り、肉体的に、あるいはそれらを見て精神的に傷付く可能性があります。また、そういう描写を含む可能性があります。
 グロ、というレベルにはしない予定ですが、苦手な方はご注意ください。
 また、人間以外の方は「傷付くとどうなるか」を教えていただけるととても助かります。記載がなければ勝手に書いてしまうと思います。

プレイングボーナス: 魔法蒸気機械群を戦闘に利用する。

▼舞台
 OPの通り、あちこちから高温の蒸気が噴き出しています。
 また、石造りのビル群のような場所であり、でもその外側に大抵エレベーター(不安定)があって誰でも乗り込めます。昇るときはやや早め、降りるときは地面すれすれまで急降下します。
 その他にも魔法蒸気機械群、と呼べそうなものならなんでもあると思ってもらって大丈夫です。

▼募集
 タグにてご案内します。
 期間を区切って募集できたら。

 では、傷付き戦うプレイング、お待ちしてます。
201




第1章 集団戦 『血の一族』

POW   :    聖魔伏滅拳
【破魔の力を込めた拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    聖魔伏滅斬
【破魔の力を封じた剣や斧】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    血の福印
【自らの血】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雨絡・環
【雲蜘蛛】

まるで見てきた様に仰いますのね?アルフィードさん
わたくしも生前は
化生として人を喰らうを当然としておりました
人にとって害ある化生は討たれて当然とも
其の理が狭い世界でしかない、
という事は往々にあるものですが…
あら、まあ。そう
そのお仕事はどうなったのか伺っても?
ほほ、…そうでしたか

我々の着地場所が少女の目の前ならばよし
違うなら疾く向かいましょう
彼の一族を見つけたならば
少女に害なす前に間に入り『返し縫い』
蜘蛛の絲で動く意思を奪ったまま捕縛
少女を避難させた後
アルフィードさんの方へ放ります
貴方様ならば屹度、上手に仕上げて下さいましょう

他の者共も絲で捕らえてはえれべーたの下へ括る
降下すればどうなるか…
わざわざ下を見る事は致しますまい

あら、わたくし怪我を?
言われて気づきました
傷口から血と共に揺蕩う悪霊たる所以の霞
この程度なんてことありませんよ
悪霊ですもの
寧ろ貴方様の慌てる姿を見れてお得?

アルフィードさんこそお怪我を
赤が映えて大変男ぶりが上がっておりますが、一先ずは
痛みますか?
懐紙でそうと拭って


アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

血の一族?
んー、古くから伝わる伝統を重んじる一族って厄介なんだよねー
そういう人達の世界って自分達だけだからとっても狭い
正義な事をしてると思ってるし、小さな頃から教育されてるだろうから普通の事をしてる感覚だよね

ほら、環ちゃん。ご飯食べてお風呂入って寝る、みたいにこういう人達は邪魔する者、異物な者は殺すも普通なんだよ
ふむふむ、環ちゃんの日常だったのね
生きる事だもの!
昔、こういう一族を滅ぼせって依頼あったけど…
今回は子供は居なそうだし、うん、大丈夫!
ん?その一族は滅んだよー
子供?あぁ、どうかな?きっと今頃何処かで美味しいご飯でも食べてるじゃないかな?とふふっと笑って

環ちゃん怪我しない様に
少女の事を考えつつ
近くに居たら、安全な場所に移動してもらおう
死神の導き
死神さんが地獄へご案内!
ザクザクと切り刻んであげるね!
環ちゃんの攻撃は蜘蛛の巣の様に隙が無いよね!素敵!!

久しぶりに怪我した
わぁ!環ちゃんも怪我してるー
手当てしないと!!
痛くない?しみる?大丈夫?とオロオロしながら
手当てありがとう!



●混濁
「揺れますのね」
 雨絡・環(からからからり・f28317)は建造物の外側に設えられた粗雑な箱は高速で上昇しながらも、滑車や歯車の動きによって不安定だ。
「こういう遊具みたいで楽しいけどねー」
 傍ではアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)はわくわくと素早く下へと流れていく景色を眺めた。
 屋上に辿り着くとがしゃんっと全身が跳ね上がるほどの衝撃が襲う。蛇腹状の扉を押し開き、ふたりは戦場へと駆け込んだ。
「!」
 屋上の縁に立つ少女と、それを追いつめる複数の屈強な男たちの視線が、余さずふたりに向けられた。その隙にいち早く察した少女はふたりの方へと駆け出し、薄く唇に笑みを刷いた環は獲物の逃亡に色めき立つ男たちへとすいと指先を伸ばした。
「お逃げなさい、時は稼ぎます」
 「環ちゃん、怪我しない様に」アルフィードの意思は環に向き、それに環は更に笑みを深めつつも馳せ違い様に少女へ告げた。しゅるる、と極細の煌めく銀の糸──否、蜘蛛の絲が男たちへと絡みついた。途端、彼らはだらりと身体の動きを止める。
 それは返し縫い。蜘蛛の絲により肉体を傷付けずに対象の攻撃や動く意思を奪うユーベルコードだ。
「環ちゃんの攻撃は蜘蛛の巣の様に隙が無いよね! 素敵!!」
 拍手でもしかねないアルフィードの称賛の蔭で少女は短く礼を述べて、他の建造物の凹凸へロープを絡めて飛び移り逃げ去った。
 もちろん、環の絲だけですべての男達──血の一族を縛めることはできない。それだけの数がいた。
 ようやく戦場に敵しかいなくなったのを見遣って、呪いと血を啜ったナイフを手にしつつ細く長く息を吐いた。黒い膚に呪いの印を描いた一族たちはぎらぎらと目を光らせ、環の絲を警戒しながら間合いを測っている。
「んー、古くから伝わる、伝統を重んじる一族って厄介なんだよねー」
 くるくると刃を回し、アルフィードは敵を見定める。
「そういう人達の世界って“自分達だけ”だからとっても狭い。正義な事をしてると思ってるし、小さな頃から教育されてるだろうから、普通の事をしてる感覚だよね」
「まるで見てきた様に仰いますのね? アルフィードさん」
 きりきりと縛り上げた動けぬ一族の男たちを、環は|昇降機《えれべーた》の底へと括りつけていく。その背を護りながら、アルフィードは「ほら、環ちゃん」と視線を男たちから視線を外さず言葉を紡ぎ続けた。
「ご飯食べてお風呂入って寝る、みたいに、こういう人達は邪魔する者、異物な者は殺す、も普通なんだよ」
 なるほどと肯きながら仕込みを終えた環は立ち上がり、昇降機の釦を押した。ひとが乗るものとは思えぬ速度で箱はほとんど急降下し、遠く離れた地面で大きな熟れた果実が潰れるかのような生々しい音が響いた。
 見届けることもなく、その麗しいかんばせに特になんの感情も浮かべぬまま環は再び絲を繰る。一族の同胞を凄惨な方法で殺された男たちの眦に更に怒気が滲んだ。
「わたくしも生前は化生として人を喰らうを当然としておりました。人にとって害ある化生は討たれて当然とも」
「ふむふむ、環ちゃんの日常だったのね」
 彼女は絡新婦の妖怪であり悪霊だ。アルフィードの相槌にも、くてりと首を傾げた。
「其の理が狭い世界でしかない、という事は往々にあるものですが……」
「ま、それが生きるって事だもの!」
 聖者はあっけらかんと笑い飛ばす。適当に聞き流したわけでは、もちろん、ない。彼は本当にそう思っている。
「昔、こういう『一族を滅ぼせ』って依頼があったけど……、今回は子供は居なそうだし、うん、大丈夫!」
「あら、まあ。そう」
 目を凝らし見つめても、オブリビオンとして蘇っているのは屈強な男たちだけだ。袖口を口許に添えて銀色の双眸を丸くしたが、環は再び蜘蛛の絲を放ち、敵を捕らえた。
「……そのお仕事はどうなったのか、伺っても?」
「ん? 一族は滅んだよー。あぁ、子供のこと? どうかな。きっと今頃何処かで美味しいご飯でも食べてるんじゃないかな?」
 ふふ、と邪気なく相好を崩す彼に「ほほ、……そうでしたか」と環も笑み返し──動く意思を失った男の背を押し、アルフィードの前に召し出した。アルフィードはひとつ肯き、ナイフを高く突き上げた。
「さぁ、死神さんが地獄へご案内! ザクザクと斬り刻んであげるね!」
 死神の導き──デァ・トートアポステル。嫉妬、妬み、怨み、怒り、哀しみ。それらの感情を与えた相手に対して、死神による死の宣告を与えるユーベルコードだ。
 だから仮面神父は煽る。嗤う。
「ほら、無惨な死に方をした仲間の仇を討たなくていいのかな? いい年した男性が子羊のように寄り集まって震えるだけかい?」
「貴様、愚弄するか……!」
 途端に燃え上がる憎悪と瞋恚。死神の死の宣告が付与されていく。狩られる前に、さぁ逃げろ! 両手広げて告げるからには──その鎌が命を刈り取るまでにいくらかの猶予があるのだろう。それが此度については裏目に出た。
 なにせ、敵は複数同時に回復する手段を備えている。死の宣告を受けた者から命を削って意思を託し、託されたものが怒りや哀しみ、あるいは誇りを乗せた全身全霊の破魔の力を込めた拳を環の白い頬へと思い切り叩き込む。悪霊たる彼女に、破魔の力。灼けつく痛みが走り抜ける。
「環ちゃん!」
「お気になさらず。この程度なんてことありませんよ」
 環が動きを封じた敵を肉の壁にしても、死神に好まれる感情に支配された血の一族たちは同朋を踏み越え超高速で肉迫し、アルフィードにも大威力の一撃を振り下ろす。叩き付ける。打ち抜く。彼の口許が切れて血が散る。
 焦点が瞬時失われるが、追撃が来る前に蜘蛛の絲が敵の動きを止め──その隙に彼はナイフで敵の喉を掻き斬った。弾けた紅が降り注ぐのも、一瞬のこと。オブリビオンたる彼らの痕跡はその死と共に消えていく。
 だが敵は明らかに消耗戦だ。なにせ自らで自らの一族をも踏み越え圧し潰すのだから。
 次第に勢力は失せ、この場の最後のひとりをアルフィードが斬り伏せた。
「はぁ……やっぱりこういう人達って加減も見境もないから面倒だなー。久しぶりに怪我した……わぁ! 環ちゃんも怪我してるー、早く手当しないと!」
「あら、わたくしの怪我、それほどですか?」
 頬に手を添えても大きく腫れたりはしていないようだが、破魔の力によって揺蕩う霞は彼女の傷が確かにそこにあることを示している。
「痛くない? しみる? 大丈夫?」
「ふふ、貴方様の慌てる姿を見れてお得かもしれませんわね。アルフィードさんこそお怪我を」
 赤が映えて大変男ぶりが上がっておりますが。懐紙を差し出し、彼の唇の端を拭えば彼もへらと笑う。
「痛みますか?」
「平気、ありがとう!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リック・リック
アドリブ・連携、グロ〇

要は女の子さえ助かればいいんでしょ?
最近体を動かしてないから…運動しなきゃ…ね?

私は指定UCを発動させて完全な理性を失わせます
アイテムの肉切り包丁を片手に動くものを全て「切断」しにいきます

あぁ…この感覚よ!私を満足させるための要素のひとつだわ!

目に映る血の一族をひたすら屠る…相手が聖魔伏滅拳が当たろうと今の私は超耐久力を持ってる…当たっても攻撃な手をとめないわ

やつらに「恐怖を与える」で徹底的に追い詰めてただ屠る…女の子がいる場所までこの駆ける足は止むことはないわ

(後はおまかせでお願いします)



●狂乱
 辿り着いた場所は蒸気に|煙《けぶ》り、そこかしこで幾多の歯車が噛み合う音がする。
 肉切り包丁を手にしたリック・リック(愛(とげ)のあるオレンジのヒナゲシ・f34577)は耳を震わせ、作り出されたダンジョンの中を亡者のように徘徊している血の一族たちを見つけ、長い舌で口許をぺろりと舐めた。
 彼らも件の少女を見失っているらしい。だが、だからと言って放置することはできない。──したくない。
 やっと機会が得られたのだ。存分にこの腕を振るうことのできる機会が。
「最近身体を動かしてないから……運動しなきゃ、……ね?」
「貴様も、竜の脅威か」
 血の一族のひとりが問う。リックは刃を手にしたまま優雅にスカートを抓み礼をして、
「……そう言ったら?」
 オレンジ色の双眸に狂気が光った。解放する、マーダー・クレイジメント。湧き上がるのは普段胸の裡に沈めた殺戮衝動。敵が気色ばむよりも疾く踏み込み、払った。
 一瞬の手応え。未だ臨戦態勢すら整っていない一族の男の腕が吹き飛んで、一拍遅れて切断面からは鮮血が噴き出しぐるんと男の目が白く剥いた。どちゃりと血だまりの中に身体が仰向けに倒れ、痙攣する。
「あぁ……この感覚よ! 私を満足させるための要素のひとつだわ!」
「貴様ァ……!」
 血を浴びたリックが目を潤ませ空を仰ぎ身を震わせるのに、当然他の血の一族が拳を振るった。超高速かつ大威力の一撃。それはリックの左目へと叩き付けられ──ぼき、と。
「がぁああ!」
 殴った側の腕が、手首が、完全に折れて皮膚を貫き、骨をすら覗かせた。リックのユーベルコードは理性を代償とに超攻撃力のみならず、超耐久力を得る。けらけらとリックは笑い続けた。恍惚の哄笑を続けた。
 無論、完全ではない。あくまで耐えているだけ。それは血の一族が誇りと因習によって負傷を恐れず戦い続けることと等しい、狂乱の果ての|無自覚《アドレナリン》。
(要は女の子さえ助かればいいんでしょ?)
 戦場に辿り着く前は、彼はそう考えていた。きちんとそう考えていた。
 だが今は関係ない。逃げない獲物が目の前に据えられる、それだけで高揚する。腹の底から笑みが競り上がって、左目から血を流しながらも厨刀を振り回す。
「さぁ! さぁ! 次は誰?!」
 

成功 🔵​🔵​🔴​

六道・橘
【宿世】
※会話負傷他アドリブ大歓迎

それが今回やりたい事なら
全力で叶えるわ
だからもっと願いを見せて

歯車捕まり不器用に上へ
最期に飛ばぬ選択をした|わたし《今世》は翼をなくした
同じを投げ捨て
今は隣を願う愚
考え事に足を滑らせ手を取られ熱に幸せ感じる
ああ、そうなのね
もう“違う”から
わたしは|くろ《恋心》を抱いて糧にできる
一方通行だろうが
恋心破れ|心折れるまで《折れるものか》あなたを愛す
ああけれど
恋心を知られたら嫌われそう
わたしは『弟』でしかないものって
また心に『くろ』が増えていく

敵が見えたら「遊んでらっしゃい」と笑い送り出す

漸く辿り着いた戦場で
彷は既に血塗れで胸が苦しい
でも此処で「やめて」と嘆くなら隣は無理だわ
奥歯噛みしめ初手は彷の背を斬り8回は敵へ
殺すまで同じ敵斬り数減らす
わたしには刀しかない
刀で彷と己を生かす

…莫迦!
無防備なふりかえりを咄嗟に庇い負傷
痛みに吼え猛り
太刀筋は冷静確実に屠る

自己犠牲実る度に彷が幸せそうなのは憶え
死なせぬよう鏖殺

自刃を腕斬らせ止める彷に泣きそうに
紡いだ言葉は―(お任せ


比良坂・彷
【宿世】
※橘と同じ
きっちゃん
俺が死ぬ前に殺し尽くしてね
信じてるから

歯車利用し橘とはぐれぬように
橘が落ちる前に手を取り引き上げる

|嘗て《前世》
護るつもりで護られてた
飛べるのに羽ばたかず堕ちて死ぬ
なんて凄惨な覚悟だろう
俺は“そこまで生存を願われる程に”想われていた
|橘《弟》は
最期の最期で|隣《狂気の領域》に来てくれた
だって俺も同じ事をするもの
―あの続き
今世も俺と同じだけ狂い咲いてくれるなら
俺は畏れず生まれつきの壊れ全てを見せる―

破顔し羽ばたき敵の中へ
UC使用
雀牌ばらまき回し蹴り
多く巻き込み惹きつける
さァ殺りあいましょ?
橘への攻撃は全て受ける勢いで庇いカウンター狙い
更にUC効果深める
翼を前に攻撃弾けばまぁ斬られるな
右羽堕ち…しまった
トラウマ心配と目を向けたら庇われた
…あぁ強くなったね
勇ましく斬り進み斬られていく橘へ追いすがりかばう
同時に太刀元へ敵蹴り込み殲滅速度をあげる

|我儘《自己犠牲の庇い》を聞いてくれて
一緒に遊べて嬉しいや

橘の自刃を腕入れ止める
「…自分を傷つけるのも、駄目
ひとりにしないで」



● “|隣《となり》”──一番近い両横の位置
 群竜大陸の『アルダワの魔法蒸気機械群』にある、建造物。誰かに手入れされているはずもなく、傷み古びたそれらに比良坂・彷(冥酊・f32708)は赤い瞳を僅かに細め、振り向いた。
「きっちゃん」
 呼ばれ、六道・橘(|加害者《橘天》・f22796)は顔を上げる。視線が絡む。
「俺が死ぬ前に殺し尽くしてね。信じてるから」
 彼が此度の戦いでどんな作戦を取るのかは聴いている。まるでなんでもないことのように、軽い語調で『信じてる』などと口にする。そこに一切の他意がないことが判り過ぎるほど判るからこそ、橘はふいと目を逸らした。
「それが今回やりたい事なら、全力で叶えるわ。……だからもっと願いを見せて」
 もっと、あなたが幸せになれる望みを。
「そうだね」
 穏やかな笑みを浮かべて、彷は肯く。届いていない。それが伝わるからこそ橘は話をそこで終え、喧噪の降ってくる建造物を見上げた。
 幾多の壁面時計が埋め込まれた建造物。上に件の少女が居るのかどうかは判らないが、敵たる血の一族は確かに存在している。歯車に指掛け足乗せて、あるいは時計の文字や針に飛び乗って、橘は不器用に登攀を始めた。
 見下ろせば微かに心の臓が竦む。
──最期に飛ばぬ選択をした|俺《わたし》に|今世《いま》、翼はない……。
 “同じ”を投げ捨て、だというのに今は“隣”を願う愚かさに、眩暈がする。
「、……っあ」
 気を取られた瞬間、高熱の蒸気が噴き出し橘は咄嗟に手を引いた。浮遊感。臓腑が居場所を変え、血の気が引いた。
「きっちゃん!」
 影が落ちると同時に掴まれた手首。ばさと力強く背に広がったのは純白ではなく猛禽の翼であったけれど。
「どしたの」
「ごめんなさい。……ありがとう……」
 唇を引き結び、既に離された手首に自らの手を添え、針の上に引き戻された橘は頭を垂れた。手首に残る熱に緩んでしまいそうになる口許を隠したくて仕方なかった。
──ああ、そうなのね。
 花火の音に負けぬ鼓動に自覚した『いろ』。そう、もう“違う”から。
──わたしは|恋心《くろ》を抱いて糧にできる。一方通行だろうが、この恋破れ|心折れるまで《折れるものか!》あなたを愛す。
 眦に力を籠めて橘は彷を見据え、再び時計の凹凸へと指先を掛ける。ああ、けれど。
 黙々と壁面へ取りつく橘の姿を見つめ、彼女と同じ高さに位置取りながら彷は思う。“かつて”の弟の、最期。
 彼の両翼は揃っていた。違いを願っていたから斬り落とした『 』のそれとは違って。故に彼は飛べた。飛べるのに羽ばたかず堕ちて死んだ。それは、なんて凄惨な覚悟だろうと。
──俺は“そこまで生存を願われる程に”想われていた。
 護るつもりで、護られていた。
──|橘《おとうと》は、最期の最期で|狂気の領域《となり》に来てくれた……。
 だって俺も同じ事をするもの。暫時瞼を伏せる。
──あの続き。今世も俺と同じだけ狂い咲いてくれるなら、俺は畏れず生まれつきの壊れ全てを見せる。
 彷はほんの少し、笑みの形に唇を歪める。はたと気付けば橘と視線が合ってへらと笑みを深める彷とは真逆に、橘は唇を笑みの形に象りながらもそっと眉を寄せた。
──けれど、恋心を知られたら嫌われそう……わたしは『弟』でしかないもの。ああ!
 少し前までは、弟として見て欲しいとあんなに希っていたというのに!
 心にまた、『くろ』が増えていく。
 響いた喊声。ふたりの紅い瞳がそちらへ向いて、橘はようやくいつも通りの笑みを浮かべることができた。なぜならそれは、先に既に聴いていた彼の願いだ。
「遊んでらっしゃい」
 橘の科白に、赦された子供のように笑って彼は猛禽の翼を大きく広げ、空へと舞い上がっていった。
 さほど広くもない屋上に群れた屈強な男たち。既に絶えた一族。彷は雀牌の詰まった鞄を無造作に開き、散らばる牌を目で追う隙にその中へ飛び込み、蹴撃を見舞う。
 途端──血の一族の目の色が変わる。|破産教唆《バカラ》。命中した敵に、彷だけを集中攻撃し絶対に殺したいという衝動を付与するユーベルコードだ。
「さァ殺りあいましょ? 余所見しちゃやーよ、なんてね」

 笑い声が聞こえた。
 屋上の縁に手を掛け、身体を持ち上げた橘はどこかでそれを理解していたから、特に慌てることはない。だが、実際目の当たりにすると。
 蛮族の雄叫びの中、四方八方から繰り出される剣や斧によって彷の姿はもはや血塗れ。未だ四肢が残っていることが奇跡だ。白い翼は見る影もなく、赤く染まって垂れ下がる。
「……っ、」
 やめて。迸り掛けた音を、喉を締め付けることで殺す。これは彼の望み。それを止めるようなら“隣”は無理だ。橘は理解している。
 ああきっちゃん来られたんだね。ちょっと複雑な場所にあるお店での待ち合わせみたいに気安い笑顔を浮かべ、彼女へ振り下ろされる刃と彼女の間へ差し込んだ腕が斬りつけられて血が|飛沫《しぶ》いた。痛みがないわけじゃない。そりゃ少しの耐性はあるけれど。止められないのだ。
 骨で受け止めそこを支点に捩じる動き加えて蹴りを叩き込んだなら、脳天まで響く激痛が走るけれど、敵の視線は彷に釘づけになる。それでいい。
「ッ!」
 繰り返すうち、同じように差し出した右の翼。鈍い衝撃と、……異様な軽さが襲う。
──しまっ、
「莫迦!」
 “弟”の命断つ原因になった姿。右の翼のない“兄”。“彼”の反応に意識向けた瞬間の隙を、ぐいと引き寄せられて橘の肩口から腕が深く長く斬り裂かれた。彼岸花のような紅が咲く。
「──ッ!」
 全身を強張らせるほどの熱が溢れ、橘は吼えた。赤い瞳が瞬き、彼女は刀を抜いた。九死殺戮刃。約束。彼女の刃は過たず彷の背を斬りつけ、それを視界に捉えることなく神速の太刀筋で敵を屠っていく。
──……あぁ、強くなったね。
 彷は思う。橘の噛み締められた奥歯になど気付くこともなく。
「わたしには刀しかない。刀であなたとわたしを生かすわ」
 手数増やし斬り進む彼女の後を追い、九回の斬撃毎に身を差し出す彷はまるで子供のように笑う。
──|自己犠牲の庇い《わがまま》を聞いてくれて、一緒に遊べて嬉しいや。
 その満足気な表情を、橘は瞳に灼きつける。
 灼きつけながらその笑顔を守るために敵を斬り、──彼を斬る。

 すべてが終り、荒い息と共に橘は屋上の床に座り込んだ。
 敵の姿はすべて塵と化し、広々とした空の下、ふたりきり。だいじょうぶ? なんて橘よりもずっと傷に塗れ、右の翼はなく足を引きずり蛞蝓のように血の跡残す姿に、橘は知る。
 喪った翼の側を支える“|右隣《おとうと》”と、白に色を変えた彼岸花を見上げる“|左隣《こいごころ》”。
 両立は、できないのだと。
「っ!」
「、」
 ならばせめて左隣の想いが露見しないようにと、償いの想い含め自らに差し向けた刃との間に、けれどまた彼の血の匂いが広がった。傍に、真摯な赤い瞳がある。
「……自分を傷付けるのも、駄目」

 ひとりにしないで。

「っぅ……!」
 零された科白は、あまりにも胸に痛く苦しくて。斬られた傷よりもずっと橘の喉を締めて涙が浮いた。
 だから──絞り出す。
「ッそのまま返すわ……!」
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冴島・類
冒険者さんなら常から危険はつきものでしょうが
対オブリビオンとなれば僕らの領域か

問答無用という相手、一刻も早く到着しないと
少女のいる位置みて
魔法蒸気機械の上昇機に乗り込み向かう
万一直通がなければ、側の建物の上から飛び降り割り入る算段

着次第、薙ぎ払いで仕掛けこちらに気を引き
少女へ援護にきた者と名乗り、庇う形取り
下がって…昇降機で下へ逃げれますか
早急に一族の攻撃の射程から外したい
くれあ、念の為彼女について結界をお願いできる?

ここから先へは行かせない
背以外の傷は守れるなら安いが
死ぬ気は皆無、なんですよ

多数相手に血が流れれば瓜江の封を解く
自身の刀での戦闘以外に
彼の風の刃でも応戦を

※人と変わらず血が出ます



●あかい
 少女は駆けた。息を切らし、駆け続けた。
 逃げ続けた彼女のロープは切れた。直通の外部昇降機のない袋小路の屋上に追い詰められた少女は、周囲の歯車との距離とどこにでも湧く敵との間合いを間合いを測る。そこへ伸ばされた手。
「飛んで!」
「!」
 更に高層のビルから飛んだ冴島・類(公孫樹・f13398)が叫んだ。彼の言葉に咄嗟に反応した彼女の身体を、からくり人形の瓜江が抱き留め、着地と同時に糸を繰り、類は瓜江ごと彼女の身体を隣の建造物へと移した。
「救援に来た者です。そのまま昇降機で下へ逃げれますか。……いや」
 ダンジョン内のどこにでも湧く敵だ。攻撃の射程からは外したいが、完全に視野の外に行かれるのも不確定要素が多い。この位置関係ならば敵の拳は届かない。類は首を振り、少女にその場に留まるよう依頼した。
「くれあ、念の為彼女について結界をお願いできる?」
 ふわりと浮き上がったのは炎の精。燃える髪に手足。おしゃまな表情で当然とばかりに微笑んで、彼女は少女の周囲に真朱の炎で陣を展開した。
 ありがとうと告げて、類は血の一族へと向き直る。
「ここから先へは行かせないよ」
 言葉は通じない。判っているが口にせずにはいられない。当然、彼の言葉には聞き取れないほどの呪詛が返る。
──冒険者さんなら常から危険はつきものでしょうが、対オブリビオンとなれば僕らの領域、だな。
 血の一族たちは一斉に類との距離を殺し、拳を振り上げた。超高速かつ大威力の破魔の力を籠めた一撃をこめかみへ頬へ腹へと見舞われ、視界が瞬時回った。
 視界に血が滲み、霞む。吐き出す苦味に喉が灼ける。
 けれど。
 社に祀られていた神鏡を相手どって、|破魔《ヽヽ》の力?
 確かに交わりの中で、大切なものができた。怪我など安いものだが、死ぬつもりなど皆無。俗と言えばこれほどの俗はないが、彼は本性を忘れられるほど愚かでもない。
 銀杏色の組紐飾り揺らし短刀を抜きながら彼は背側に立たせた相棒を呼ばわった。
「──荒れ狂え、瓜江」
 風が巻く。紡いだそれは刃となって、敵を裂いた。
「がぁあっ!」
 風の刃を喚ぶだけではなく瓜江はそれを纏う。憑依する。ただ在るだけで、斬り裂く刃が躍り続ける──|風巻《シマキ》。
「……本当の、と言うのもおこがましいけれど。お礼に僕の破魔を見せてあげるよ」
 瓜江に背を任せ、ぐいと親指で唇に滲んだ血を拭って薄く笑い、類は短刀を握って敵の中へと躍り込んだ。
 鮮華咲く。
 なまぬるい血液に滑る柄に、ほんの少しだけ──奥歯を噛んだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『人喰い鳥の魔女』

POW   :    食事の時間
【攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    脳のない体
【人体の頭部以外を瞬間再生し】【新たに己の喰らった死体を喚び】【その人間の特性に沿った強化方法】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    死者の紬
自身が戦闘で瀕死になると【己の喰らった人間の死体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リュカ・エンキアンサスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●開示
 血の一族の喧騒がすべて消え、再び蒸気と歯車の音だけに満ちたその場所で──未だオブリビオンの気配があることに猟兵たちは気付くだろう。
 ちいさく、けれど禍々しい気配。
 その気配を探りながら彼ら、彼女たちは集まるだろう。少女の元に。
「怪我はない?」
 誰かが問う。
 少女はこくりと肯く。
 それと同時に鳥が飛んだ。一同の視線を奪うように垂直に飛翔した鳥が放つ、羽根。
「きゃッ……!」
 それは五月雨のように降り注ぎ、集まった猟兵たちを裂いた。
 裂くと同時に──破壊する。
 大なり小なりの負傷を負った猟兵の誰かが咄嗟に反撃した。鳥は躍り上がり旋回して少女の前を|過《よ》ぎることで攻撃をいなし、少女の腕が、吹き飛んだ。
 悲鳴を掻き消すほどの鮮血が噴き上がる。紅く染まる石畳。けれど。
「! 腕が……!」
 ずるり、と。
 切断面から新たな腕が瞬時に生え伸び、同時に周囲にはすべて倒したはずの血の一族が現れた。否。正式に言うなら血の一族の、死体が。
 少女の細い手は血の一族の死体から石斧を受け取り、その不釣り合いさに更に拍車を掛けるたおやかな微笑みを浮かべた。
「あなたたちのお味はいかがかしら」
「……食べたの……」
 嫌悪を滲ませ、誰かが言う。
「まさか、不死身とか言わないだろうな」
 誰かも言う。

「……そんなことは、きっと有り得ない」

 未だ空舞う鳥を見据えて、誰かが応えた。
 
リック・リック
アドリブ・連携、グロ〇

中々躊躇がないのね?
女の子は生きてるみたいだし…まぁいいわ、腕は大丈夫ね?

さて、踊ってくれるわよね?
まぁ踊るのはあなたなんだけど

私は指定UCを発動。「闇に紛れる」で更にステルス性を上げて相手に攻撃を当てさせない、いや当てれないわね?見えないでしょうに

私は歩きながらゆっくり彼女の周りを歩いて「恐怖を与える」でじっくり追い詰めてあげるわ、魔法蒸気機械をあえて相手に攻撃する為ではなく「威圧」に使う

貴女のお味はいかがかしら?

というふうな皮肉を込めてね

相手が動揺、怒りの負の感情を抱き始めたら笑ってあげる

飽きたら「暗殺」でさようなら…

女の子はその後保護するわ

細かいところはおまかせよ


アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。


諏佐・姫夜(サポート)
『貴様等が未来を奪うなら、私はその過去を奪ってやる!』
 羅刹の戦巫女×妖剣士、29歳の女です。
 普段の口調は「凛々しく(私、お前、だ、だな、だろう、なのか?)」、敵には「高圧的(私、貴様、言い捨て)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●蜜と苦味
 鳥の羽根によって『破壊』され、ぼたぼたと鮮血の落ちる自らの腕をぺろりと舐めて、リック・リックはうっそりと笑みを浮かべる少女──魔女へと似た笑みを浮かべて見せた。
「なかなか躊躇がないのね?」
 駆けつけたリックからすれば、突然の強襲だ。それへ恨みを懐くような性質ではないが、再びの好機。彼がそう思うには充分だった。手にマーダーナイフと呼び表す刃物を握り、ゆらと身体から力みを取り去って姿勢を低く維持した。
「さて、踊ってくれるわよね? ……まぁ踊るのはあなたなんだけど」
 歯車機構の多く埋め込まれた建造物の影に溶け込むように、突如リックの気配が希薄になる。ステルス・キル。速度を代償に、自身を完全に|隠密《ステルス》状態に保ち、更に殺傷力を増すユーベルコードだ。
「ねぇ、確かに貴女の攻撃は驚異だわ。でも当たらなければ意味がない、そうでしょう?」
 当然、きょろきょろと視線を彷徨わせる魔女の周囲から、声だけが届く。
 じゅう、と不定期に噴き出す魔法蒸気も用い、じわじわと恐怖で浸食し、不安定にさせる。彼の技能としての習熟度はさほど高くはない。だが、技能の習熟度だけがすべてではない。
 リックの作り出した状況に不安の表情を浮かべた魔女は手を差し上げ、白い鳥へ攻撃を放つよう命じようとする──が、彼女の敵はひとりではない。
 簪揺れる長い漆黒の髪を靡かせて禍々しい気配を放つ刃を前に女が飛び出し、魔女の細身の身体を吹き飛ばすことで命令を掻き消す。短い悲鳴が上がる。
「……子供か」
「見た目だけだ」
 苦々しい表情を浮かべる諏佐・姫夜(日に背を向けて歩む者・f02771)に、彼女が体勢を崩さぬよう庇う立ち位置でアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)も敵の姿を見留め苦々しく右目の下に皺を刻んだ。
 屋外の風の中でも未だ血の匂いの漂う戦場。
 そこに立つのは血塗れの石斧を握るたおやかな少女と、白い鳥。
 アスが愛用の筒状の柄を振るえばふぉん、と光の剣が現れる。姉と妹を探し続ける彼にとって、その年頃の見目の敵を屠るのは苦い味が舌に広がりはするが、所詮別人であることは明確だ。躊躇う必要はない。
「ほぉら。どんどん逃げ場がなくなるわよ?」
 駆けつけた猟兵たちの目にも姿は見えないが、リックの声が魔女へと囁き、くすくすと笑い続ける。
「貴方のお味はいかがかしら?」
「っ……!」
 少女が──否、鳥が放つ幾多の羽根。それが皮膚を掠めただけでぼろりと表皮が破壊される様を溢れ出す血をアスは見下ろし、「……くだらん」そして駆けた。驟雨の如く叩き付ける羽根を神速の光の刃が叩き落とし、切断していく。
 アスが斬り拓いた場所に踏み込んだ姫夜は鋭い眼光を、礼を乗せて僅かアスへと和らげて見せてから、再びきッ、と鳥を泳がせる少女へと向き合った。
「貴様のような輩には反吐が出る……」
 子供の姿を象る。それは明らかに捕食する、あるいは殺戮するための“機構”でしかない。
「眠れ。──ただしこれは、慈悲などではないことを含みおけ」
 清風招来。清らかな風が漂う血の匂いを払い飛ばし、魔女を眠りに落とす。
 眠りの間に気力も回復してしまう技ではあるが、未だ戦いは始まったばかり。アスが攻撃をいなすため支援に徹してくれたからこそ、無に帰す蓄積は、今はない。
 がくりと膝を折った魔女に、「あらつまらない」姿の見えないリックが呟いた。
「ならおしまいね。──さようなら?」
 少女の白い頸筋を幾多の血を吸い続けてきたナイフが斬り裂き、清められたはずの戦場に血華を咲かせた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

六道・橘
【宿世】
※アドリブ歓迎
嘗ては兄妬み
今は|彼《兄》が手を伸ばす|女《敵》を羨み憎む
「わたし、そのまま返すって言ったわ…なのに何故この女に命を与えていなくなろうとするのよ!」

死に急ぐ彷に心が決壊
二つ目の真の姿『13歳の己』に
長髪と學徒兵制服
此が今世の真実
盾にされ生死の境を半年彷徨い
誰にも選ばれぬ惨めな娘
…けど右隣にしてもらえて
漸く「生きて正しかった」と思えたのに!
「お前なんかに渡すものか!」と反撃厭わず我武者羅に敵を斬る
翼食い荒らされても気にせず追いすがる

「彷、あなたが死の傍を好むならギリギリまで遊ばせ生かす
でも死ぬのは赦さない」
此は右隣の願い?
…両方か
左の想いを明かせぬ癖に双方欲しいと強請る己

大事かの問いへは
血反吐と共に「…俺が死んでも生きて欲しかった」
わたしもまた弟と同じひと

手元に来た白花を嬉し泣きで受け取る
膨れ面には「答えを見つけたとにやり

「|全部《両隣》をもらうわ、返さない」
咲いた赤花もつかみ取り破顔
抱擁を抜け彷の肩蹴り空へ
敵の頭へ刀振り下ろす
「頭をすげ替えたらそれはお前じゃないわ」


比良坂・彷
【宿世】
※同じ
いいね騙し討ち
キミに食べられたら俺は末永く生きられそう
片羽でも飛び方は憶えてる
鞄で叩き壊しても再生する四肢に昂ぶる
「なぁどうやったらあんた死ぬの?」
さぁ俺を喰らえ
無尽蔵なお前の欲を見せて頂戴
俺の命が代金なら安いもの
あぁいけない「きっちゃんお逃げ」と振り返ったら叱られた

無茶でボロボロの橘を後ろから抱き取り反転
「なんで、そんな俺が大事なの?」
敵に背から刺し貫かれ庇いきる
死は真の姿化で躱す

返事代わりに千切った白花を橘へ差し出して
“想うはあなたひとり”“また逢う日を楽しみに”
「この花のように想っていいなら受け取って―|あなた《弟》を死へ追いやった|この姿《兄》を見てなお求めてくれるなら」

「橘、もう泣かないで」
非道な扱いされた時代の姿を真とするその疵を癒やす誰かに逢えるまで
俺が隣にいるから

後ろ手に雀牌ぶちまけたまに蹴り
何やっても再生すんの厄介と膨れたら
赤い花も千切られ腕から飛び立たれた
頭を刺し貫き決定打を与える様が鮮やかで囚われる

…ホントは“誰か”なんて現れなきゃいいのに
ずっと俺の―



●羨望
 鳥の翼によって、ただでさえ千切れそうな足を『破壊』され、ぴくりとも動かない左足を見下ろして、比良坂・彷は口角を上げて少女──魔女を見据えた。
「いいね騙し討ち。キミに食べられたら俺は末永く生きられそう」
 その横顔を見上げる姿には気付かぬまま彷は残った左の翼を羽ばたいた。動かぬ左足を補うように跳ぶように飛び、再び鞄を開き魔女へと向けて麻雀牌をぶち撒けた。それは|破産教唆《バカラ》。途端に魔女の瞳が彷だけを映す。
「なぁ、どうやったらあんた死ぬの?」
 さぁ俺を喰らえ。爛と光る赤い目も魔女を見据える。重厚な鞄を右足で踏み込み叩きつけると同時に、鈍く太い枝の折れるかのような音が響き魔女の左腕が、だらりと垂れ下がった。
 そしてすぐにずるずるずるっ、と皮膚の下で蠢いた肉によって再生され──湧き上がる血の熱さに彷は、魔女と同時に「すげぇ」笑った。
「あら、なにかした?」
「いいえぇ? 無尽蔵なお前の欲を見せて頂戴」
 手を伸ばし|死闘《ダンス》のお誘いをかけて。俺の命が代金なら安いもの──あぁいけない。彷は振り返る。
「きっちゃんお逃げ、」
「わたし、そのまま返すって言ったわ……」
 その背の衣服を掴み、俯いたままの六道・橘は呟いた。え、と目を丸くする愚かな彷をこそ、橘は睨みつけた。
 ────ひとりにしないで。
「なのに何故、この女に命を与えていなくなろうとするのよ!」
 心が弾けた。敵への、羨望と妬みに。
 橘の姿が変わる。それは彼女の真の姿。“弟”とは違う、ふたつめのそれは、『十三歳の頃の姿』。腰ほどの長さの髪、學徒兵の制服。後ろ指さされ、盾にされて生死の境を半年彷徨い、誰にも選ばれなかった橘にとっての今世の『真実』。
──けど、隣に、傍にいることを赦されたのに。漸く「生きて正しかった」と思えたのに!
 ばさりと少女の背に広がった、一対の白い翼。彼女はそのまま高く高く舞い上がる。
 眼下に見るのは敵の魔女ただひとり。
「お前なんかに渡すものか!」
 音速で振るうのは柄に彼岸花咲く刃、天音。魔女の身を斬る、斬る、斬る。例え反撃があろうとも構うものか──橘の覚悟を裏切り、魔女は石斧を振るった。彷に。
 当然だ。彼のユーベルコードにより、魔女には『彷だけを集中攻撃し絶対に殺したい』という強い衝動を与えられている。橘と同様、対象以外は眼中にない。
「ッ巫山戯るな……!」
 ざりッと石畳をにじり彷と魔女の間に割り込み、刃を斬り上げる。喉を縦に割かれ熱い血飛沫が橘へと降り掛かる。 魔女が狙うのはあくまで彷ただひとりだが、軌跡に割り込めば当然橘の身体にも石斧の鈍い刃が食い込み骨が折れた。それでも顔色ひとつ変えることなく、橘は更に刀を振るった。
 耐え兼ねたのは、彷だ。
 獣のように刃を振るう橘の背後から両の腕伸ばし、掻っ攫うように抱きすくめて己ごと身体を反転させた。
「きっちゃん!」
 なんて無茶を、と言い掛ける彼の背中に、「ぐっ……!」鈍く鈍く響く痛みが走った。千切れた右の翼の痕に、魔女の石斧が突き刺さった。「お前……!」彷の肩越しに敵を見据え、再び狂気を瞳に宿す橘を、痛みの中でそれでも彷は抱き締め続けた。そこでようやく、橘の視線が彷へと据えられた。そ、とその頬に橘は手を触れる。
「……彷、あなたが死の傍を好むならギリギリまで遊ばせ生かす。……でも、死ぬのは赦さない」
──此れは“|右隣《おとうと》”の願い? それとも。
「……両方か」
 背中の翼越しに、あるいは腕を抱えるように感じる相手の体温に、橘は絶対聴こえないように小さく零す。案の定彷は、その血の飛んだ頬を後ろから覗き込む。
「……なんで、そんな俺が大事なの?」
 橘はようやく視線をひたと合わせた。
「……俺が死んでも、生きて欲しかった」
──わたしもまた弟と同じひと……。
 痛感する事実。嘘のない想い。
 目を見開いた彷は自らの髪に咲く白い彼岸花を千切り、橘へと差し出した。同時に真の姿──赤い彼岸花のその姿を解放する。
「……この花のように想っていいなら、受け取って──|弟《あなた》を死へ追いやった|兄《この姿》を見てなお求めてくれるなら」
 “想うはあなたひとり”。“また逢う日を楽しみに”。
 その花の持つ意味を理解しているだろうか。触れたら朽ちてしまうと恐れているかのように、震える手で橘はその花を受け取った。自然と頬が赤らみ、口許が緩み、そして我知らずほろりと涙が落ちた。
 そして手を伸ばしたかと思えば、むんずと橘の赤い彼岸花を掴み──摘んだ。
「いっ、」
「|全部《両隣》をもらうわ、返さない」
 左の想いを明かせもしないまま微笑んで、ぐいと彷の肩に手を掛け更に足掛け蹴って空へ躍り上がり──空へと舞い上がった。「あ、」思わず声は漏れたけれど。確かに今は、この背を叩き斬り続ける敵を捌くのが優先なのは理解できるから、なにやっても再生すんの厄介だよねと膨れる彷に、橘は微笑んだ。
「答えは見つけたわ」
 なにせ敵は──頭だけは再生しない。彼女は猟奇探偵。推理は得意だ。
 渾身の力を籠めて、振り下ろす天音。既に他の猟兵によって大きく裂かれ血を流すその頸──頭部を刺し貫いた。
「頭をすげ替えたらそれはお前じゃないわ」
 どちゃっ──。
 血飛沫が噴き上げ落ちた首は、毬のようには跳ねず鈍く潰れて転がった。僅かの間を空けて、首のない魔女の身体は崩れ落ちた。凄惨なその光景。それでも、敵ではなく橘の姿に魅せられて見つめながら、彷はぽつりと零した。
「橘、もう泣かないで。──……俺が隣にいるから」
 出会う前の十三歳の姿。非道な扱いをされてきたその時代を『真の姿』と称すその身を、魂を、癒す誰かに出逢えるまでは。
 その願いは本物だ。偽りなどない。
 けれど。彷は欠けた赤い花に手を触れて、視線を落とした。口の中だけで言葉を紡ぐ。
──……ホントは“誰か”なんて現れなきゃいいのに……。
 ずっと、俺の──。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冴島・類
死体を操る…
羽ばたく鳥の姿に
以前戦った似た手合いの記憶が刺激され
うん…不死身ということはない、はずです

操られてるのを全て、倒し切るか
鳥自体を撃破できれば

追加の召喚も、強化も厄介だな
血の一族は破魔の力込めた薙ぎ払いと
瓜江との連携、二回攻撃で数を減らしていき
鳥か…残る相手に接近したい

倒し、必ず帰る気なので
攻撃は、致命的な箇所は破壊されぬよう
残像交えたフェイントで誘い、見切り避けれる限り避ける

操る魔力自体を、なんとかしたいな
接近できれば枯れ尾花ではなく、黒曜を抜く
黒曜、強化し繋ぐ魔力を…奪えるかい?
斬り合う中で傷を与えたら
奪い、魔力の代わりに呪いを返す

今度こそ
終わった方は
静かに、眠らせてあげて下さい



●何度目かの邂逅
 他の猟兵によって首を刎ねられ崩れ落ちた少女──魔女の肢体を見、けれど冴島・類は瓜江と共に意識を切らさずに睨め続けた。羽ばたく、鳥の姿を。
「死体を操る……」
 類は「うん……」ひとりごちる。以前に出逢った、似た手合いとの戦いの記憶が蘇る。より身近に、生活の中に浸食していたあのときと比べれば、まだ、まだ……、躊躇いは少ない。
「不死身ということはない、はずです」
 悠々と空を泳ぐ鳥はまるで血に塗れる地上の惨劇を嘲笑うかのようで、類は奥歯を噛み締めながら糸を繰った。
 ぐぐと首の無い死体が起き上がろうとするのを一歩踏み込んだ瓜江の手刀が薙ぎ払い、時折鳥が放つ豪雨のような羽根の攻撃を短刀で振り払う。
──操られているのを全て倒し切るか、……鳥自体を撃破できれば。
 なんとか接近し攻撃を与えなければキリがない。キリがなければ、こちらの体力を削られる。
「操る魔力自体を、なんとかしたいな……」
 色違いの目を鳥へ据え、ぱち、と枯れ尾花と呼ばう短刀を仕舞った。そして類は代わりに『呪殺の黒曜』──大振りの刃を取り出した。
「黒曜、あの鳥の強化し死体と繋ぐ『魔力』を……奪えるかい?」
 返る言葉はもちろん、ない。けれど確かに伝わる重みが、ヤドリガミである彼の掌に答えをくれる気がした。
 大丈夫。必ず帰るよ。懐に咲くリトル・リティにそっと触れて意思を新たに、類は歯車仕掛けの機構へと足を掛け、空へと躍った。当然、良い的だ。鳥は色めき立って|爆撃装置《ミサイル》の如き勢いでその鋭い嘴で類の肩を貫いた。弾けるように赤が散って──否。残像だ。
 残像による、ほんの僅かな視差。鳥の狙いは外れ、類の手の中で黒い刃は形を変えた。それは魔力捕食形体。この鳥が、魔女が与えてきた理不尽な死を呪いとして還す力。過日の牙──イツカノキバガトドクトキ。
 貫いたと思った敵の想定外の方向からの攻撃を、鳥は躱すことができない。牙は確かに鳥を喰らい、眼下の死体たちが糸の切れた人形のように石畳に鈍い音を立てて落ちる。
 逃れようと踠く鳥を逃がすまいと類は両の手で深く「今度、こそ……っ」敵の小さな身体に刃を押し込んだ。
 何度も見送り続けてきた、短い生。
 もう一度、逢えたら。
 その願いを、一度も懐かなかったとは言わない。だからこそ、そうした想いを弄ぶかのようなオブリビオンへの苦い思いが確かにあった。
「終った方は、静かに、眠らせてあげて下さい……!」
 ぎぎぎと断末魔の醜い悲鳴を上げた鳥は大量の血を流して翼と類の手を赤く染めて、事切れた。類の落下する身体は瓜江によって掬い上げられる。
 類が再び降り立ったときには石畳の上に死体はなく、彼は小さく安堵の息を吐いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月20日


挿絵イラスト