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餓鬼踊る。消えるは誰そ。残る首。

#サムライエンパイア


 その日はとても暑い日だった。
 長い坂を、首に巻いた手拭いで汗を拭き拭き、上って行く一人の男。
 町まで村の品を売りに出ていた又助(またのすけ)は思い描いていた以上の売上に頬を弛めている。
 ここ最近は日照り続き、しかし農作物の収穫を一足早く終えた又助の村では飢饉の心配もなく。
 お得意さまの取引相手である町人は、それでも何かあるといけないと色を付けて支払いを多目にしてくれた。
 旦那には頭が下がる一方だと彼は言うが、それもこれも又助の人徳故だろう。
 いつもは煩わしく耳元でがなりたてるような蝉の鳴き声も、自分の帰宅を待ちわびる声に感じる。
「へへへ。陽の沈む前に帰れるなんて、ありがてぇや」
 帰りを待つのは愛しき女か子か、それとも両方か。ご機嫌な男が坂を降りながら景色を見れば、眼下にあるのは変わらぬ村だ。
 意気揚々と帰り道を急ぐ又助の前に、四体の地蔵が現れる。なんのことはない、道中安全を祈願するお地蔵さまだ。
 飢饉を避けれたのも、今日の売りも彼らのお陰で上手くいったのだと、上機嫌な又助は道端の地蔵に頭を下げて、気づく。
 ぴちょん。ぴちょん。
 水滴の音。思わず見上げてもこの天気、雨の気配すらない。
 訝しげに辺りを見回した又助。その目は地蔵に向けられた。
 地蔵のひとつは随分と昔に雷に打たれ、頭を無くしていた。その地蔵に笠がかけてあるのだ。
 見覚えのある笠の傷に又助は首を傾げた。
「……こりゃあ、あいつの……イタズラってえ訳じゃなかろうが、何かあったのか?」
 家に居るはずの想い人の顔を浮かべて笠に手を伸ばす。
 しかしその手はすぐに止まった。この笠、やたらと高い位置にないかと。
 首無しの地蔵のはずなのに、笠のせいで並び立つ地蔵と同じ高さに見える。
 そう、まるで笠の下に頭があるかのような。
 ぴちょん。ぴちょん。
 水滴の音は地蔵から響いていた。胸元を汚し、脇を伝い、肘から落ちる液体が道を赤黒く汚している。
 ぴちょん。ぴちょん。
「…………、そ、……そんなはず……そんなはずはねぇ……」
 あんなにも耳元で囃し立てるようだった蝉の声も、もはや遠い。
 熱い陽射しの中で凍える寒さを感じた又助は、やがて意を決し、震える手で地蔵の笠に手をかけた。

●今回はホラー仕立てシリアスなのじゃ。
「しかしそこには何もない。しんのすけは一安心……じゃが、ふと、手元の笠に目を向けると……?」
「…………(ふよふよ、ごくり)」
「そこには地蔵の頭がっ! しんのすけを睨んでおったのじゃっ!」
「…………!(びくーんっ)」
「カーッカッカッカッカッ!
 む、来おったな愚民ども!」
 …………、誰が愚民だって?
 グリモアベースの一画で、ふよふよ漂う黒布と話し込んでいたのは見るからにクッソ生意気な金髪ロリータ。
 当然の如くクッソ生意気な言葉を吐き出している。
「ふふん。おぬしらに仕事を恵んでやるのじゃ。慈悲深いレイヤに感謝するのじゃな。カッカッカッ!」
 何様かと聞かれればレイヤ様と即答しそうな高飛車ロリ。
 物理的に凹ましたい所であるが、実はこのクソロリ、漂う黒布ことブラックタールのハララァ・ヘッタベッサ(亡霊の纏う黒き剣布・f18614)の死霊術で呼び出されたオブリビオンのため攻撃が一切効かない。しかし戦闘能力もないという半端者だ。
 つまり構うだけ無駄なのだがハララァも幼い為かろくに喋れず、このクソガキが通訳となってしまっている。
 寛大な心を持って接してあげよう。
「さくっと仕事の話をしてやろう。レイヤの主様が予知した情報によれば、サムライエンパイアのとある村で餓鬼の群れが暴れているというのじゃ。
 おぬしらにはそれを処分してもらいたいワケじゃな。村に被害が出ないよう、奴らのやってくる山道での迎撃戦じゃ。塊で来るから射撃武器がおすすめじゃぞ。
 まあ、夜じゃから、鳥目は気を付けんとのぅ。カーッカッカッカッカッ!」
 何が可笑しいのか分からないが、これまたさっくりやってくれたものだ。
 仕事に関しては有能かもしれない。
 レイヤはにやりと笑い、ここからが大事な話だと嘯く。
「村の惨状を聞いた親交のある町人が、事を治めてくれれば街道沿いの旅籠で宴会に紹介してくれるそうじゃ。肉がたんまり食えるのじゃ、主様も呼んでくれんかの?
 くくく、主様の感じた味はレイヤも共有できるでのう……ああ、久々の肉が味わえる……っ」
 ほほう。
 レイヤの言葉に悪い笑みを浮かべる猟兵たち。
 レイヤは涎を拭うと、真顔に戻って気になる事がある、と含みを持たせる。
「今回の一件、間違いなく餓鬼の仕業じゃ。餓鬼というのは国の伝承によって性質は変わるものの、本件の餓鬼は日ノ本に伝わるような、飢えに苦しみ満たされぬ空腹を抱えて自我を失い、鬼畜生となった者たちのはずじゃ」
 レイヤとハララァは実際に現地で調査をしており、被害にあった近くの村が干ばつにより飢饉を迎えた事を確認している。
 その村人が畜生道に堕ち、餓鬼となった事も。
「事件の発覚は村の外れに住む若者、又助の家族が襲われた事からじゃ。被害者の首は首なし地蔵に乗せられていた。
 体は見つかっておらんが、家の中は床と言わず柱と言わず噛み痕だらけで餓鬼の犯行と見て間違いないのじゃ。
 のう、おぬしら。おかしいと思わんか? 正気も保てず食い物以外も食む畜生どもが、何故、頭を残すのか。それも地蔵の上に置く? 何の意味があるんじゃ、そもそもそのような考えを餓鬼が起こせるのか?」
 レイヤの指摘は最もだ。つまりこの件には餓鬼以外の何者かが関与している。
 それも、ともすれば自分を襲いかねない、簡単に暴走する危険な存在をだ。
「餓鬼が現れたら、周囲の生き物に限らず何でも貪る。故に発覚は早いものじゃ。
 それが隣の村が襲われて初めて知ったのは、まだ食えるものがあるのに畜生どもが隣村にやって来たのが原因じゃ」
 物的証拠はない。しかしレイヤは間違いなく煽動者がいると睨んでいた。
 村人を守り、餓鬼だけではなく、その裏に潜む者も潰す。これが今回の猟兵の仕事だ。
「まあこの程度、猟兵なら楽勝じゃろ。レイヤの肉の為に頑張るんじゃぞ、カッカッカッ!」
 そうは問屋が下ろさねえ。
 心密かにクッソ生意気な金髪ロリータへの鉄槌を計画していた猟兵たちの元を黒布がふよふよと漂ってくる。
 お兄ちゃん、お姉ちゃん、気を付けてね。村の人たちを守ってね。
 どこからともなくそんな声が聞こえた気がして、猟兵たちは黒布を優しく撫でた。


頭ちきん
 皆さまお疲れ様です、頭ちきんです。
 今回はサムライエンパイアでの迎撃戦、ボス戦、そして日常イベントとなります。
 本シナリオはシリアス調となっており、迎撃戦とあるように皆さま方、猟兵の活躍によっては突破され、惨事が引き起こされる可能性があります。
 十分に気を付けて下さい。
 また、場所は山道となり、片側は岩肌、もう片側は急斜面という狭い地形での戦闘です。
 上手く活用して餓鬼を撃滅しましょう。
 皆さまのプレイングは極力反映させたいと思いますので、どんな堅実・破天荒な作戦でも有用と思えば迷わず実行していただきたいです。
 また、3章ではハララァを呼べばレイヤを上手く懲らしめる事ができるかも知れません。
 天上天下唯我独尊系クッソ生意気なガキなのでこっぴどくやっても意気消沈する事はないので、しっかり懲らしめてやりましょう。
 それでは皆さまのご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『餓鬼』

POW   :    共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
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●来るよ、来るよ。始まるよ、始まるよ。
 陽が沈み、夕闇が足音を忍ばせて這い寄る夜の始まり、日の終わり。
 いずれ来るであろう暴威を前に、猟兵は瞼を落としてただ時を待つ。
 まだ陽が高い内に地形は確認し、戦場を有利に運ぶべく算段は建てた。
 だからこそ、猟兵は汚れた首無し地蔵を無念に思った。救えたかも知れない命は、既に消えた後。
 それは彼らの同胞たるグリモア猟兵が事件の詳細を調べ、確信を伝えるが為の時の流れで犠牲となったのかも知れない。
 お門違いかも知れない。だが、もっと早く、報せがあれば。そう想う者もいる事だろう。
 だからこそ、この事件を解決せねばならない。餓鬼どもを討つだけでは駄目だと、ひとつの未来と引き換えに得た答えを無駄にする訳にはいかないのだ。
 ――やがて、足に感じる些細な揺れ。それほ徐々に徐々にと大きさを増していく。
 猟兵はようやくと瞼を上げた。暗闇に慣れた眼の前に、陽の落ちた山道はしっかりと映る。
 遠くから聞こえる唸り声、叫び声。走るそれらは大量だ。諸手を挙げ、または一杯に広げて足に当たらないようにして工夫しているようだ。
 走り方を覚えていないのか、そもそも理解すらしていなかったのか。
 まるで踊るようにすら見える悪逆無道の波を前にして、猟兵は如何なる手立てを用いるのか。
 夜の闇に浮かぶ月すらも雲に逃げ隠れる中で、猟兵は静かに構えた。
春乃・菊生
[WIZ]
餓鬼道に堕ちた者らを祓い鎮めるは良いが、成程のう。
確かにこれは何奴か、裏で糸を引く奴でも居りそうじゃ。


さて、出来ることなら地の利を得たいの。
餓鬼どもの進行経路を上方から見下ろす形で陣を敷こう。
最も、限られた時間じゃ。
城はおろか、塀のひとつ柵のひとつも組めるかどうか。


まあ良い。来れ。
秘術ノ壱にて、呼べる限りの鎧武者の霊を召喚。
陣を敷き、餓鬼を迎え撃とうぞ。
各々の得物に【破魔】の力を宿らせた上で、
先ずは遠くから弓で射掛け、いよいよ近付いて来たなら太刀や薙刀に持ち替えて此方から打って出る。
(【範囲攻撃】による【援護射撃】+【串刺し】と【なぎ払い】+【鎧砕き】)

黄泉の国まで案内致そう。



●さあ、さあさあさあ、お祀りだ、お祀りだ。
 迫るそれらを見据えて、春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)は瞳に色を浮かべずに、成る程と胸中で呟く。
 餓鬼道に堕ちた者らを祓い鎮める、それだけではこの事件が解決しない事を菊生は察した。
 一心不乱に村を目指して山道を走駆する異界の群れは、何かに囃し立てられたかの如く。
(確かにこれは何奴か、裏で糸を引く奴でも居りそうじゃ)
 しかしすべき事はまずひとつ、村人を守る事。
 山道を見下ろすよう、切り立つ岩肌の上に構える菊生が手を挙げると、その後ろに控えていた鎧姿の武者どもが、影の中にゆらりと立ち並ぶ。
 秘術により予め用意していた古兵(ふるつわもの)たち。
 それぞれの武器に【破魔】の力を宿し、前列に立ち並ぶ者は番えた弓を構え、横方には片膝を降ろして同じく弓を、更に後方には彼らの次射の為に控える者の姿。
 敵はこちらの姿を捉えていない。対してこちらは餓鬼どもを撃滅するに万全の態勢と言えるだろう。
 菊生は僅かに、その目に憐憫の色が映る。飢饉さえなければ彼らもまた、このような人の道を外れた化生の者となる事もなかったろうに。
 しかし現に、彼らは堕ちてしまったのだ。
「ならばせめて、黄泉の国まで案内致そう」
 菊生が手を振り下ろすと同時に放たれた無数の矢は、唸る塊へと吸い込まれていった。

●ああ、ああ、誰が邪魔をするの。どうして邪魔をするんだろう。
 その効果は覿面だった。
 放たれた矢のひとつひとつが、餓鬼どもを四散させる。足先に当たったものですら、まるで見えぬ獅子に噛み砕かれた様に消失するのだ。
 菊生の破魔の力。それは餓鬼どものように矮小な存在ではとても太刀打ちできない程に高められていた。
 しかし群れはそれを気にも留めない。
 足を失い倒れる者がいれば、それに貪りつく者が発生し、しかして後続の者どもに踏み潰される。
 なんとも惨く、醜悪な光景か。何を行えばこのような無道に堕とされなければならないのか。
 憐れな姿に、しかし容赦なく絶え間ない矢を放つ菊生。
 まだまだ数があるとは言え、全滅も時間の問題という所。群れも近づき、控える鎧武者らへ武器を変えるよう命じた折に変化が起こる。
 道端の、彼らに踏み荒らされた木に登る者の姿があった。闇の中、それを見た菊生は鏃を向ける。
 逃げたはずの月が、雲の切れ間から僅かに顔を覗かせた。
 一瞬、光を浴びたそれは月光を照り返し飛来する数々の矢に気付き、顔を岩肌の上に陣取る菊生たちへ向ける。

●あいつだ、見つけた、酷い奴。
 餓鬼。その姿、間違いなく。しかし黒子の如き布で顔を雑に覆うそれは、布の隙間から覗く肌が妙に白く見えた。
「貴様が群れを導く者かえ?」
 番えた指に力を込めて、しかし菊生は逡巡する。果たしてこの矢、放つべきなのかと。
 餓鬼どもを見ればこの一矢で敵を仕留める自信はある。だが、本能ではなく理性で動くそれを、ここで仕留めるべきなのか。
 一瞬の迷いの間に、月光が辺りを照らし出した。
 死屍累々の血臭漂う山道に、駆けずり回る餓鬼の群れ。
 そして、黒子のような布を巻く餓鬼が四匹。先の一匹の様に僅でも高い所へと登り周囲を窺っていた。
「けえええええええっ!」
 甲高い子供の泣き声の如く、けたたましく叫んだそれに長弓から矢を放つ。
 しかし、一瞬にして他の者どもの中へと紛れたそれに当てる事はかなわず。残りも同じく、間を置かず群れへと消えた。
「放て、矢を放つのじゃ! あれを逃がすな!」
 それは理屈よりも直感だった。正体を掴むよりもあれを逃す事に災いを感じる。
 控えていた大薙刀へと武器を変えた鎧武者も、岩肌を滑り降りて群れを薙ぐ。
 しかし幾度と振るう前にその刃は空を斬った。群れが、後退を始めたのだ。
(馬鹿な、あの統率もない群れをどうやって引き返させたというのじゃ)
 波と引く餓鬼どもの中に、例の黒頭巾を認める。それは共食いの末か、血の滴る餓鬼の足を肩に担ぎあちらこちらを走り回っていた。
 地べたに転がる同族に噛りつく者をその担ぐ足で殴り、殴られた者は目先の肉と血の滴る足に釘付けとなり、黒頭巾を追いかける。
 それを繰り返し一塊となれば、あとは何も知らぬ白恥どもがその群れを追いかける。
 餓鬼どもが理性を持たない故の、本能を利用した動きだった。
(このような所作、あやつ、餓鬼ではあるまい)
 先頭を上手く誘き寄せて元来た道を戻るように導いた黒頭巾は、足を捨てて走る塊をかわす。
 そのまま闇に姿を眩まそうとするが、そうそうとやらせはしないのが猟兵だ。
 菊生の放つ矢が、今度こそ黒頭巾の足を捉えた。
 破魔の力で弾けるも、他の餓鬼どもと違い悲鳴をあげなければのたうち回る事もなく、手で這いずって逃げようとする。
 しかしその手も菊生の狙いすました一撃が、容赦なく撃ち抜いた。動けなくなった黒頭巾を薙刀片手に鎧武者が持ち上げる。
「…………? ……人形……じゃろうか?」
 月明かりの下で頭巾を剥がされたそれは、生白い面の人形だった。ふっくらとした頬に笑みを浮かべる子供の顔だ。
 それがかたかたと揺れながら鎧武者を見上げて、四角の口を開く。
「けえええええええっ!」
「むっ!?」
 先程よりも数段大きく、耳に痛みさえ伴う人形面の絶叫は、果たして帰り始めた餓鬼を呼び戻した。
 あまりの声量に奴らの注意を引いたのだ。満足に動けぬ状態であれらを呼び寄せるなど、その目的はひとつしかない。
「いかんっ、彼奴めを守れ、喰わせるな!」
 地鳴りを伴って戻って来たのは先程、この人形面が率いた群れの一部。しかし数がばらけてしまっては矢も当たり辛く、何より餓鬼との距離が近い上に鎧武者が壁となり矢を当てられない。
 大薙刀を振るう鎧武者の霊に餓鬼の群れが次々と飛びついた。

●陽が昇る、祀りが終わる。今夜はね。
 事が終わって一夜明け。
 白む空を見上げて、菊生は血と肉とがこびつく山道の中、己の選択を悔やんでいた。
 敵の撃滅を優先する余り、怪異の正体を確保する方法を考えていなかったのだ。しかし、誰が彼女を責められるだろう。何せ彼女はたった一人であの餓鬼の群れの進攻を防いだのだから。
 それに、あの暴威の波に指揮者が潜むなど、到底予想しえるものではない。高い場所に陣取り、戦場を見下ろせたからこそ、この異変に気付いたのだ。
 今回は失態ではなく、むしろ多くの情報を得た上で村人を守り切った成果なのだ。
 だが、次の襲撃は近い時期に訪れるだろう。
(彼奴ら、群れを逃したという事は、餓鬼どもをまだ使うつもりじゃ。村への道はこの山道しかない。我の陣もきちんと効果を上げた。
 ……ならば……今度は彼奴らめが策を用いるつもりかのう)
 あの人形面が見せた確かな知性。次の襲撃は恐らく、総力を上げたものとなるだろう。突撃をかけるだけではない搦め手の用意もあるやも知れない。
 考えながら、噛み砕かれた白い欠片をひとつ、手に取った。
 菊生はそこに宿る僅かな邪気を感じ取ると、懐にしまいこんで道の穢れを祓うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●幕間
 案の定と言うべきか、猟兵の報告を受けたレイヤは煽動者を捕らえられなかった事を責め立てた。が、間に庇うようにハララァが現れた事でたじたじとなり、ついにはその戦果を認めた。
 ハララァにはゲロ甘いようだ。
「しかし、次は敵も簡単にやられるようなミスはしないじゃろう。しっかり準備するんじゃな!
 …………、準備と言えば、あの村の愚民どもがなにやらやる気を出しておったぞ。
 人手が足らんなら戦力になりそうな若い愚民の雄を連れてったらどうじゃ?
 まあ、命の保証はできんがのう、カッカッカッ!」
 不愉快に笑うレイヤに背を向ける猟兵。しかしレイヤは猟兵を呼び止めると、ハララァの受け取った人形の欠片を見つめる。
 両の目をすいと細めて猟兵を見やれば、禍事の兆しありと告げた。
「最初に見つかった犠牲者、体が見つかっておらんと言ったな。
 家に暴れ込んだのは餓鬼じゃが、その愚民を襲ったのが……餓鬼でなかったとしたら……」
 含みを持たせて笑うレイヤに一抹の不安を覚え、猟兵は再び現れるであろう餓鬼の群れの対策へ向かう。

・春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)様の大成功により敵の正体に大きく近づきました。
・その奮闘を見て村人が決起しています。戦力として使えますが犠牲は覚悟しなければなりません。
・村を狙う新たな危機をレイヤが感じています。
・村人の犠牲や村の危機は起こり得るかも知れない、であり、また猟兵の目的は餓鬼の殲滅にあるためこれらを考慮しなくても構いません。
アーネスト・シートン
畜生どころが、更に1つ下の階級に堕ちていた者たちですか。
畜生とか言われるのは、要するに動物たちのことですが、これは、更に酷い有様の者たちですね。地球でも、飢餓に苛まれる場所の人たちはあんな姿をしていますし。

地形を見るに、片方は崖のようなものですか。
なるほど、ここなら、このようにして戦わせていただきますか。
来る前に、斜面には可燃性の油を撒いておきましょう。
まず、奴らが来たら、油に火を付けて、更にはM.S.L.の破壊重視モードで撃っていきましょう。
更には崖の上方を狙って岩を餓鬼に崩れさせるようにします。
それでも突破するなら、小動物大騒乱で石をネズミの姿に変えて餓鬼を固定させて、その隙に撃ちます



●そうれそれそれ、お祀りだ、お祀りだ。
 迫るそれらを見据えて、アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は、ふむ、とひとつ声を漏らす。
(報告に上がっていたより数が少ない気がしますね)
 夜の闇、山道を転がり落ちる様に走り抜ける異界の者どもにアーネストは胸中で呟く。
 すべき事は変わらないが、第一波を食い止めた同胞、彼女の得た情報から、黒頭巾の変わり種の事もある。
 不安要素は取り除きたいのが正直な所だ。
(戦力の出し惜しみ、他方への襲撃、敵に問題の発生、あるいは策とやらの準備、といった所ですか)
 初日に全戦力で突破出来ないと判断した冷静な敵が、出し惜しみする事はないだろう。
 他方への襲撃も、『事前の調べ』からその可能性は低い。
 敵に問題があった、などという楽観視は捨てたいものだ。
 であれば、残るは策。真っ先に思い浮かぶのは陽動だが、ひとつしかない道をどの様に攻略するつもりか。
(あるいは、まとめて出てしまえばまとめて倒される。それを考慮しての作戦かも知れませんね)
 少数で出撃を続ける事が作戦なのだとしたら、こちらも疲弊するとは言えその程度でしかない相手だ。
 アーネストは斜面上方、岩肌に鉄杭を打ち込んで括りつけた壺へ銃口を向ける。昼間に村人に用意して貰ったそれらには油が仕込まれていた。
 奮起する村人にこれらの仕掛けを頼みつつ、次なる作戦の為と地形を確認していたアーネストは他の村々も回っている。
 やはりと言うべきか、干ばつに耐えたこの村以外は飢饉に見舞われた様子で、餓鬼が大量に発生した痕跡が見られた。これも事前の情報でひとつの村だけから発生した数ではないだろうと考えた故だ。
 アーネストは準備に尽力してくれた村人たちに感謝しつつ、引き金を絞る。
 一発の音が見事に壺を砕き、その熱によって発火した油が他の壺にも火を纏わせる。
 熱により、次々と壺が割れて赤い波が斜面を下り、粘りつく火が山道を駆け降りる餓鬼へ広がっていく。
 悲鳴を上げ、火の波に巻かれ崖へと落ちていく餓鬼どもの姿に同情を覚えつつ、だからこそ楽になれる様にと速やかにその頭部を狙う。
 しかしこちらの考えなどわかるはずもなく、火の波に巻かれる同族がまるで壁と言わんばかりに、餓鬼どもは進行を止めようとはしない。
 まるで何かに追われるかの如き姿。アーネストはそこに疑問を挟む前に【威力を重視した】銃弾を上方岩肌に向けて撃ち込んだ。
 マルチプル・スナイパーライフル。機能を切り替える事で威力、精度、連射性能の内のひとつを高める事が可能となる。
 干ばつにより斜面は乾き、脆くなった岩肌は地層の境目を露にする。自然を故郷とするアーネストにとって、地滑りの起きるであろう箇所を見極めるのは容易だった。
 果たして、その弾丸は岩肌を砕き、狭い範囲とは言え地滑りを起こす事に成功する。
「けえええええっ!」
 響く声の中に、やけに甲高い子供の声が混じっている事に気付いたアーネストは眉を潜めて周囲を確認する。
 例の黒頭巾がいないかと探しているのだ。崩れた岩に餓鬼の殆どが飲み込まれ、残る餓鬼も苦労するように荒れた道を進んでくる。
 ひょっとして、落ちた餓鬼の群れの中に例の奴らがいたのではないか。
 アーネストは確認の気持ちで崖下に目を向けた。

●あーぁ、見つかっちゃった。
 そこには、とても素手では取り付けない場所に十程度の数の餓鬼がへばりついていた。
 否、へばりついているのではない。小さな鎌や鍬といった農具を使い、崖を横断しているのだ。
 どれもこれも、黒い布を雑ながら頭巾とばかりに巻いている。
「なるほど、こちらが本命ですか」
 油の流れもここまでは届かず、走り跳ぶ餓鬼が壁を渡る黒頭巾に触れるはずもない。崩れた大小様々な岩が山道を破壊しながら落ちてきたからこそ、この黒頭巾の一部が巻き込まれたのだ。
 自らの作戦が思わぬ幸をもたらして、アーネストは安堵する。だが、安心してばかりもいられない。こちらの死角を突き、道具を使った知能は人間のそれだ。
 アーネストは足下の悪さに転び、傷だらけとなった餓鬼を撃ち抜きつつ、逃げ場のない壁渡りをする黒頭巾の頭を狙撃した。
 抵抗もままならない相手を撃つのは気が引けるが、そもそもこうして背後を取ろうとした連中なのだから、容赦の必要はないだろう。
 本当ならば捕らえたい所だが、とてもじゃないがあの場所から捕らえ上げるのは不可能だ。
 即座の判断で最後の黒頭巾を撃ち落としたアーネスト。すっかり少なくなった闇夜に這いずる餓鬼どもを一瞥してほぞを噛む。
(やはり、少なすぎますね。頭巾を被った餓鬼を倒せたのは行幸でしたが、罠を存分に発揮できる数ではありませんでした)
 意外にも響いた敵の作戦に、心許なくなった弾数を確認して一先ずの後退を決める。
 崩れた山道を行くのは困難であり、餓鬼の進行もままならないだろう。
 しかしまだまだ、陽は落ちたばかりだ。
「…………、嫌な予感がしますね。早く建て直しをかけませんと」
 苦心して岩の上を行く餓鬼を撃ち抜き、先導者がいないにも関わらず前へ進もうとする彼らの異変、そして高い知能を見せた黒頭巾の存在。
 アーネストはこれから起きるであろう敵の総力戦、にも関わらずやたらと静かな山道に不安を隠せなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サジー・パルザン
今回餓鬼が大量に発生しているようだが。まぁ、いい。俺のやる事は変わらん。

野郎共今すぐ出て来い!俺達の力を見せてやる!【ヴァイキングの行進】でLV分の人数の剣と盾を持ったバーサーカーを召喚する。お前らは急斜面の上のほうで待機しろ。

俺がまず、出張ってやる。
正面から俺が特攻したら側面から雄叫びを上げながら餓鬼どもに襲いかかってやれ!

おらぁ、特攻する時はハチェットで手近な餓鬼に「投擲」してやるぜ!その後はデーンアックスを怪力で「なぎ払い」崖下に突き落とし、もしくは脳天から叩き割ってやるぜ!

敵が多いならルーンアックスの冷気を開放して敵の動きを止め、乱戦に持ち込んでやるぜ!全滅させてやる!


黒天・夜久
先に防衛に当たられた方が何か怪しいものを見つけているようですし、襲撃を潰すのと同時にそれの回収も狙ってみますか。

予め、「ハニバー」で【視力】の強化をしておきます。
【空中戦】で急斜面側から餓鬼たちの上に陣取り、ユーベルコードを発動。「ブラックウィドウ」と「ミーティア」は花びらに変換しないで、こちら目がけて跳んでくるだろう餓鬼たちの迎撃に当たらせます。村に向かう餓鬼は【属性攻撃】で氷漬けに。
件の黒頭巾の人形の姿を見つけたら、「ブラックウィドウ」を嗾けます。【空中戦】と【属性攻撃】の風で高機動を確保し、追いついたら六腕で頭、手足、胴を拘束。引き戻します。
人形を放っている間は自分が足止めを担当。



●よーし、やるぞぉ、凄いのやるぞぉ。
 息を切らし、崩れた道を越えた餓鬼。その頭上に落ちる影に見上げれば、月の光を遮る影がひとつ。
「ぬぅん!」
 巨斧一閃。
 閃く刃が易々と餓鬼の首を刈り取り、その質量に吹き飛ばされた体と頭が岩肌に跳ねて、崖へと落ちていく。
 サジー・パルザン(ヴァイキングの生き様・f12550)はその脆き体に苛立ちを覚えた。
(今回、餓鬼が大量に発生していると聞いた所だが。これは一体、どういう事だ!)
 よたよたと歩き、崩れた道を抜けるにも苦戦する。
 斜面の上に待機する彼らの部下も、前情報と違う敵の動きに肩透かしを食らった様な顔をしている。荒事を己の体で処理してきたヴァイキングにとって、これ程に退屈かつ屈辱的な戦闘はないだろう。
 しかし。
「人形の首にすげ替わった変わり種の話もある。油断だけはしてられないか」
 巨刃を地に突き立てて、腕を組む。仁王像の如く堂々したる出で立ちで、男の赤毛は風に揺れた。
 生温い風だ。どうにも不安を煽るそれに、男はむしろ、戦い前の高揚を感じていた。
 やがて、がらがらという足音は明らかに違う音が道の向かいからやってきて、サジーは太い笑みを見せた。
 彼が太い腕を上げると、その近くに二本の松明が投げ込まれる。そして更に二本、三本と道の向こうへ投げ込まれる松明。
 部下に投げさせたそれは、自らを相手に認めさせる為、戦うべき相手を見せる為。
 そして後に投げさせた松明こそ、サジーが敵を見極める為の物だ。
 響く音が大きくなり、炎の明かり現れたのは黒頭巾。それも手車を退いて坂道を全力で疾走していた。
 それに乗るのは五つの樽。
(――爆薬か!)
 徒歩での突破をならぬと見ての道具の使用。黒頭巾という変わり種がここまで用意するのかと、逡巡する間ももどかしく、サジーはハチェットの一本を抜くと坂道を駆け降る餓鬼目駆けて投擲する。
 ゆるりと回転するそれは重く、刃の背でも受けた黒頭巾は悲鳴をあげて手車へ弾かれ、そのまま轢かれる。
 御者を轢いたそれは大きく揺れて、積み荷を空へぶちまけた。
 ――爆風すらも両断する。
 手に唾を吐き、握り締めた巨斧の名はデーンアックス。非常に重い、鈍重たる者をサジーは軽々と地面から引き抜いて体を回転、竜巻を想起させる動きで振り抜いた。
 自らの後方にまで飛ぶ樽には目もくれず、その刃の届く樽の全てを破壊する。
「ぬおおりゃあっ!」
 ばらばらに吹き飛ばされた樽と、落ちる中身。それは火薬などではなく、縛られた餓鬼だった。
 これは一体。
 樽ごと半身を断たれ、もはや動けぬ者もいれば致命傷でなく、踠く者もいる。
 その内の一匹が、自らを縛る縄を引き千切り、月光に咆哮する。戦意、否、ひとつの意思に凝り固まった視線を向けられて、サジーの背筋を電流が走った。
 それは危険に対する警戒心。だからこそ、サジーは笑う。
「来い!」
「ぐぅあああっ!」
 獣の如く飛びかかる餓鬼は、先に払った者とはまるで違う。正しく野獣。
 先程こちらへ向けた目に表れていたのは、獲物を欲する野獣の目。飢えに狂う捕食者の目だった。
 鋭い爪の連撃、牙を剥く噛みつき。それらを斧の柄で受けながら、サジーの脳裏に受かぶのは吹き荒ぶ風と身を切る寒さの中で対峙する大型の肉食獣だった。
 しかし。
「俺を相手にするには軽過ぎる!」
 刃を使う必要もなく、柄に齧りつく餓鬼を力で地面に叩き伏せ、サジーは吼える。
 元の傷もある。しかし、力で押さえつけてもなお暴れ狂う餓鬼の膂力は大きく、サジーは笑みを抑えて足を振り上げた。
 濡れた音が響き、大きく体を震わせた後は動かなくなる体。サジーは頭を無くしたそれから目を離すと、坂の上からがらがらと鳴り響く音に顔を更に険しく固めた。
「野郎ども、今すぐ出て来い! 敵だ。俺達の力を見せてやる!」
『おおおおおおおっ!!』
 サジーの呼び声に答え、斜面から盾と剣を持つバーサーカーが駆け降りる。
 その数、実に二十余り。突然と降りて来たそれらに反応出来ず、手車の者たちは体を仰け反らせ――。
 否。
 その小さな体を跳ねて、手車を大きく跳ね上げれば、後方へ散乱する樽の数。
 樽と手車と、あるいは樽同士がぶつかり次々と割れていく。散乱する木片とともに地に落ちるのは、やはり縛られた餓鬼の姿。
 月の光に刺激された様に、縄を裂き雄叫びを上げる。
 それらは砕けた車輪を、または縛られた仲間を、あるいは逃れようとする黒頭巾へと見境いなく襲いかかる。
 一見、策にも使えない凶暴性。しかし同士討ちを狙うには距離が近過ぎる。
 すでに多勢と踏んでいた黒頭巾どもは、強力な兵をこちらにぶつけるつもりだったのだ。
(……こんな奴らを策に仕込むとは……確かに悪知恵の働く奴らだ!)
 狂った様に襲い来る餓鬼どもを、部下が盾で押し返すのを見て、サジーは再びデーンアックスを構えた。
 乱戦になる。味方も密集した状態では薙ぎ払うにも億劫だ。
 自らの策の失態を感じてほぞを噛むサジーだったが、その頭上から涼やかな声が響いた。
「咲け。散れ。悉く微塵に裂き散らせ」
 現れ出でた花びらは夜風に舞い、月の明かりにも負けじと柔らかな光を湛えている。
 幻想的な光景は一瞬で、刹那には赤い刃となって餓鬼どもの肉だけを削ぎ取っていく。
「おお!」
 思わず感嘆の声を上げて空を見やれば、ふわりと舞う様に降りてくる異形の女の姿。
 喪服姿に六本の腕を従え、表情に乏しいそれがくるりと身を翻すと、服の下から取り出した蒸気機関銃【ミーティア】が収まっていた。
 直後には花火の如く炸裂する音と光にさしもの勇猛なヴァイキングも身を竦めたが、それが敵にだけ穴を穿つ光景を見せられれば心強い味方が現れたのだと確信しただろう。
 代わる代わるの攻撃に悲鳴を上げて後退る餓鬼ども。
 間が空けば、隊列が整う。
 隊列が整えば、そこに敵の踏み入る死角は無い。
 乱雑とした戦場で餓鬼どもを押し返したバーサーカーは一列に並んで盾を壁とし、行進する。
 蛮勇なるヴァイキングの行進だ。
 壁に齧りつきひっかく音が辺りに響けば、盾と盾の間から現れた斧がその体に撃ち込まれる。
 激しく暴れる体、恐るべき耐久性を見せる敵に対し、頭部に一撃と決められないのが残念だが、すでに勝敗は決したと言える光景だ。
 道に降り立つ女の生気の無さにサジーが訝しむと、その体から伸びる糸に気づいて視線を向ける。
 彼の部下が身を潜めていた場所に、今は闇に溶け込む黒い影がひとつ。
 相反する様に白い面は表情に乏しくもサジーと視線を交わすと、黒天・夜久(ふらり漂う黒海月・f16951)は頭を垂れた。
「本体はそっちか。俺の名はサジー・パルザン! あんたも猟兵か?」
「初めまして、パルザン様。自分は黒天・夜久と申します。
 微力ながら助太刀に参りました」
 微力などとはとんでもない。
 サジーは優しげに微笑むとも見える整った顔立ちの男に、改めて礼を言う。陶器を思わせる肌艶に作り物の様だと胸中で呟いて、前を向いた。
 確かに勝敗は決しているが、敵の物量の前では被害が出てもおかしくはない。サジーは流れを完全に自分たちへと奪い取るべく、歩を進める。
「俺は突撃をかける。奴らに風穴を開けてやる。夜久はどうする?」
「さて、どうでしょう。機を見て判断させてもらいます」
「ああ、期待させてもらうぜ」
 太い笑みで上げた手には、ハチェットが握られている。
 敵の群れが僅かでも少ない場所を見極めて、サジーは息吹き獲物を投げる。重い一撃を受けて転倒する体が後続を巻き込んだ。
 その隙を逃さず、巨体が走り、自らの部下を押し退け敵の集団へ躍り出た。
「すぅりゃあっ!」
 重く、鋭い一撃が餓鬼をまとめて薙ぎ払い、崖下へと弾き飛ばす。ばらばらに引き裂かれた体が、どの道と助かる事はないだろう。
 牙ある旋風の如く敵を食い破り、果敢に先陣を切る赤毛の巨体が楔となり、敵の群れを押し返していく。この勢いを止める事は困難だろう。
 その一方で夜久は戦場の動きを見つつ、先の女人形【ブラックウィドウ】に戦いの跡を拾わせた操り投げて受けとれば、それは白い欠片であった。
 陶器の欠片。肉片の中に浮いて血で汚れたそれは、人形遣いの彼には見覚えのある代物だった。
(一般的な人形に使われている素材ですね。なるほど)
 欠片を握り、夜久はひとつ頷く。
 今回の事件、異変にまとわりつくのは人の形が挙げられる。餓鬼の首とすげ替えられた人形の首、首なし地蔵に置かれた人の首。
 グリモア猟兵の喚んだ亡霊が残した不吉な言葉。
 人形とは言葉の通り人の形を模して造られる。故に魂を一度持てば人に憧れる事もあると寓話には語り継がれている。
 この怪異を起こした者は人間ではない。首を取り替えて寄生する存在。それが人の体こそ欲しているのなら。
(あるいは首のない地蔵に親近感を覚えて、人の体に近づけようと人の首を乗せた。【人の体を得た人形】が)
 ここで夜久は考えを中断する。夜風に混じる血の臭いが濃くなったからだ。
 斜面を降りて山道ではサジーが暴れている所だ。彼の派手な戦いぶりでその臭気が鼻をついたとも考えられるが、離れていく背中にそれはないだろうと夜久は思う。
 ならば、敵か。
 そう判断した彼の纏う漆黒の外套に、ぞろりと同じ色の耳が発生する。彼の纏うそれもまた、彼の一部。ブラックタールである夜久は必要に応じて器官を生やすのだ。
 それに伴い、風に揺れる草木の音から僅かに調子の違う者を聞き定めて顔を向ける。
 茂みの奥から覗く存在を視認して、夜久は目を細めた。

●もっとだ、もっと凄いのやるぞお。
 豪快に敵を薙ぎ払うサジーの前に、凶暴化した餓鬼も次々と倒れていく。群れの数も少なくなり始め、終わりを意識した男へ、部下から緊迫した声がかかる。
「頭ぁ、後ろだ!」
 その言葉に振り返れば、崖から飛び出すひとつの影。
 舌打ちしながら右腕を盾とすると、鋭い爪が肉に食い込んだ。大きく振り払うと離れたその者は中空で体を反転させて着地する。
 黒の頭巾を被った隙間から覗く白い面。それは、口許を赤黒く汚した人形の顔と、一回り大きな体躯の餓鬼だった。
「てっきりみぃんな、食われたのかと思っていたが、まだ生き残りがいたか!」
「けええええええええっ!」
 腹を他の餓鬼より大きく膨らませたそれは甲高い声で鳴くと飛び上がり、群れの中へ着地する。無秩序を体現した様な群れの中へ降り立てばどうなるか。
 しかし黒頭巾はそれらの攻撃をいなしつつ、手近な一匹の膝を踏み抜いて体勢を崩すと、そのまま担ぎ上げてサジーへと投げ込んだ。
 傷を負った腕でこれを防ぐ。サジーは後退して同胞の盾の後ろに身を置くと、その中で後ろ手に抜いたのはフィヨルドの氷で出来た魔法の片手用斧【ルーンアックス】。
「我らが育ち、鍛え上げられた極寒の大地の厳しさ、その片鱗を味わうといい!」
 凄まじい冷気を放つ斧を振るえば発生した冷気の波が、山道を凍てつかせ霜柱を立てていく。
 迫る敵意ごと凍り足を大地に縫い止められていく餓鬼の姿に、黒頭巾は唸りを上げて跳び上がった。
 再びの跳躍を見逃すほど、この赤毛の巨漢は甘くなかった。
 黒頭巾の動きをしっかりと見定め、全身に力を漲らせた。黒頭巾を迎え討つ様に跳躍し、右腕から噴き出す血を物ともせず黒頭巾の脳天目掛けてデーンアックスを振り下ろす。
「ぬうぅりやあああっ!!」
 猛々しい咆哮を発し、空中で頭から真っ二つに両断したサジーは凍てつく大地へ地響きを立てて着地し、空から注ぐ血の雨を浴びた。
 その顔には、すっきりしたとばかりの笑みがあった。

 木々の間を縫い、闇を駆ける黒頭巾。夜久はこちらに動きを捉えさせない様にと動くそれに彼は舌を巻きつつ、ブラックウィドウに風を纏わせ追撃させる。
 ミーティアは人形から自分に移し、彼の人形で拘束するつもりもこちらの意図を理解しているのか、敵はこちらに踏み込む事もなく旋回している。
 その目的はこちらの足止めだろう。サジー率いるヴァイキングの集団を援護させない為に駆け回るその体が、他の個体よりも大きい事に夜久は気づく。
(レイヤ様の下さった情報の中に、共食いによって戦闘力を増加させる、というものがありましたね)
 なるほど、血の臭いが濃くなった原因はこれかとする夜久は同時に、この黒頭巾が群れを追い立てていたであろう事と、そう簡単に死なないであろう事を悟る。
「遠慮は要らないな。逃がさない!」
 蒸気機関を唸らせて、黒頭巾の進行方向を塞ぐべく鉛弾を連射すれば、折り返す黒頭巾目掛けて夜久は冷気を放つ。
 凍りついた草木に足を取られ、動きを鈍らせた黒頭巾。直後にはその後を追いかけていたブラックウィドウがその体を拘束する。
 それぞれの腕で首、手、胴、足と絡み付く様に締め上げて動きを止める。
「対象捕縛。戦闘行為終了」
 斜面の下で、同じく氷の魔法で敵を足止めし各個を撃破していく同胞の姿を認めた夜久。甲高い声で鳴く黒頭巾をコンパクトにまとめ、そのまま山道へと滑り降りた。

●祀りが終わる。祀りが終わる。残念だなぁ、僕たちは。
 全ての敵を駆逐し、サジーは人形に拘束された黒頭巾に鋭い目を向けていた。夜が白み始める頃、彼の部下が山道の片付けを行っていた。
「ちったあ歯応えがあったぜ」
 その黒頭巾を剥ぎ取ると、現れた子供を模す人形の頭が露となる。その口許は血で汚れ、肉を食らう為につけられたであろう鉄の歯が雑に打ち込まれていた。
 醜悪な姿にサジーは眉を潜め、夜久は人形に言葉を投げる。
「人形ども、お前たちの目的は何だ? 餓鬼を利用して、村人と体を入れ替えるつもりだったのか?」
「なんだと?」
 彼の言葉にサジーはとんでもない事を考えたものだと人形を見やる。何も言わずに俯く姿が肯定に思えて、サジーは唾を吐いた。
 喋らないならば生かしておく必要もない。そう断じたサジーに同意する夜久。
 その背後で唐突に爆発音が響いた。振り向けば立ち上る黒煙と火の手が見えた。村の方向だ。
 その隙を狙ったか、急に顔を上げた人形面の口から鉄の刃が撃ち出された。しかし、それは隙なく外套に発生させた目でその動きを察知した夜久が、サジーが反応する間に刃を叩き落とす。
 サジーは助かったと夜久に笑みを浮かべた後、デーンアックスの柄頭で人形の頭を砕いた。
 急ごう。どちらともなく呟いて、猟兵は村へ足をむけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『妖怪移し身人形『更紗』』

POW   :    人として生きる為の団結の力
【人の姿をした移し身人形達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    人として生きる為の希望の力
対象のユーベルコードに対し【同じ姿になり、同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    人として生きる願いの力
自身の【人間として生きる事】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●成人望肉人形。
 村の中は大騒ぎであった。みなが町の外を警戒していた中で起きた火事に、敵が侵入していたのかと村人が右往左往している。
 火を消す為に水を集める者や、猟兵がいない為に武器を構えて火の元へ向かう者がいた。
 しかし、その誰もが火の上がる家屋を前に立ち尽くしていた。
 火のすぐ近くには、燃える我が家を見てしくしくと泣く一人の女――否、引き裂かれた男を前に泣く女の姿があった。
 ならば男を見て泣いているのかと言えばそうではなく、血にまみれた両手からこの女こそが男を引き裂き、燃える家を見て泣いているのだろうと村人たちは理解する。
 村に潜む怪異の元凶こそ、この女なのだろうと。
 ごうごうと燃え盛る家は扉という扉、窓という窓が塞がれていた。中からは子供の泣き声すら聞こえる。
 何十人という子供の声が。
 村にそれほどの数の子はいないし、元よりその家は餓鬼に襲われ女房を亡くした又助の家だった。彼も別の村人の家に身を寄せていたが、猟兵が現れてからふらりとその姿を消したのだ。
 誰もが餓鬼の餌になったのだと諦めていたが、当の本人は満足そうな笑顔で、女の前に倒れている。そう、ふたつに裂かれた男こそ又助であったのだ。
「……おめえは一体……誰だ?」
 やがて、勇気を出した村人の一人が声をかけると、朝焼けの空に女が振り返る。
 その女の着物は、又助が女房に買ってやり自慢していたものだと男は思い出した。しかし泣き腫らした女の顔に見覚えはない。
 はらはらと泣く女は、何故こんな酷い事をするのかと顔が血で汚れるのも厭わず、両手で涙を拭う。
「あたしらは、ただ人として生きたいだけです。だから、餓鬼に襲われた人の体を使わせて貰おうと、ただ消えるはずの命を、肉体を、使わせてもらっているだけなのです。
 なのに何故、どうしてこうも酷いことをなさるのですか。あんまりではないですか」
 そう、さめざめと泣く女の恨み節に、村人は身構えた。女から発せられる攻撃的な意志が伝わったからだ。
 自らの同胞も、数が少なくなってしまったと女は言う。だからこそ、残る者たちを生かしておきたい。
 人として。焦がれ求めた人としての生を。
「みぃんなみんな、その体、いただきます」
 女の声を合図に、燃え盛る家屋から火に巻かれ、数十に及ぶ人形が躍り出た。


●とうとう正体が分かったのう。
 猟兵らの活躍により、村への餓鬼の突破は叶わなかった。しかし、すでに潜り込んでいた【人形】が同胞を引き連れ潜伏していた様だ。
 レイヤは人形の言葉を並べると小馬鹿にした笑みを浮かべる。
「何を言ったところで、あやつは駆除する害虫に変わりない。おぬしらのすべき事は決まっておる。よもや、同情などすまいな?」
 当然だと頷く猟兵の中にも、人形の想いから不憫を感じる者もいて、顔を曇らせた。ハララァも同じく元気を無くして、静かに地面をたゆたう。
「全く、主様といいおぬしらといい。しゃんとするのじゃ!
 あのガラクタどもの言うことを真に受けてどうする! 餓鬼どもが現れたのは不幸故かも知れんが、あの村に災禍を招いたのは人形どもじゃぞ!
 あやつらが餓鬼の群れを村に誘導し、自分たちが人間になりたいという勝手な考えで村の人間を苦しめておるのじゃ。本質を見極めんでどうする!」
 偉そうにぷりぷりと怒るレイヤに、まだ人形の事を思ってかハララァはどっちつかずな様子だ。
 となれば、その矛先が向くのは猟兵か。しっかりやるのじゃと激励とも命令ともつかない言葉を投げるレイヤは、主の見えない場所で顔を醜く歪めた。
「カカカ、生にしがみつく下郎を潰す事ほど小気味良い見世物はないわ。あやつらを潰せば肉が食える!
 目に良し心に良し舌に良し、なぜおぬしらが惑うかわからんわ! カーッカッカッカッカッ!
 …………む?」
 愉しそうに馬鹿笑いするレイヤの体が不意に薄くなる。まるで時代遅れのビデオ画像の様にノイズが走る体に金髪が慌てふためくと、視線の先ではハララァがふよふよとどこかへ行く所だった。
 どうやらレイヤの言い種に腹を立てた様だ。
「ぬああ、待つのじゃ主様! くぅ、良いか愚民ども! 主様とレイヤの為にも――……、ええい、待つのじゃ主様~!」
 消えかける体に言葉もそこそこ切り上げて、ふよふよと漂う黒布を追う金髪クソガキ。
 傲慢不遜な態度であっても召喚士たるハララァにはやはり敵わないと見える。くっそ生意気な鼻っ柱をへし折るにはハララァを利用した方が良さそうだ。
 しかし態度や動機はともかく、レイヤの言葉はもっともだった。あの村の人々を守るため、そして身勝手な願いから滅びをもたらさんとした人形ども。
 情けをかける必要はないと猟兵たちは心を新たに出陣の準備を始めた。
黒天・夜久
してやられましたね……。
酷い?ならば、貴方方はどうです。餓鬼に成り代わり、村へ意図的に多くの餓鬼を呼び込もうとした。それはもう未必の故意ですらありません。
その罪、貴方方の消滅をもって償ってもらいましょう……!

「アトラタス」に乗り、【オーラ防御】でガードしながら人形たちに突っ込んで、UCで当たるを幸いに切り刻んでいきます。バラバラになったパーツは「アトラタス」で轢き潰していきます。
「ブラックウィドウ」では村人に襲いかかろうとしている人形を、「影ノ刃」で【属性攻撃】(氷)で氷漬けにしていきます。【衝撃波】を使えば砕けませんかね。
無事なパーツ同士で合体できるとしても粉々にすればどうにか……。


春乃・菊生
アドリブや共闘等、歓迎じゃ。

[WIZ]
ようやっと姿を現したか、人に仇為すしか知らぬ妖怪変化め。
所詮は我らと相容れぬ定めの者どもにかける情けがある筈もなし。
去ね。引導を渡してくれるわ。


…火の手が回る前にけりを付けねばの。
我が奥義にて相手どろう。

秘術ノ弐。
神楽舞により鎧武者の軍団を召喚し、人形共を包囲。
己と彼らの武具に【破魔】と【呪詛耐性】の力を与え、
総攻撃(【範囲攻撃】【なぎ払い】【鎧砕き】【援護射撃】【串刺し】)をかけさせる。
可能であれば燃える家屋も諸共に打ち壊してしまおうか。

また舞に合わせ【残像】を残せば、移し身人形に狙われてもその攻撃を回避し得るかのう。
かなえば【カウンター】をも狙えよう。



●祀りは終わり、決着の朝。
 してやられたと、言葉を溢すのは黒天・夜久(ふらり漂う黒海月・f16951)。
 表情の変化が乏しい故に、その感情が強く感じられる。
 先の戦闘で負傷した同胞は傷の手当ての為に残し、夜久は朝焼けの空の下を村目指して疾走する。
 彼が移動に使用する宇宙バイク【アトラタス】。漆黒のボディに紫のラインが怪しく光る。光学迷彩を搭載している愛車は敵に気付かれない様にとカモフラージュしていたが、もはや不要とばかりに朝日を照り返す。
 音とともに駆け抜ける夜久は風の如く、怪異の元凶が潜むであろう村へ向かった。

 燃え盛る家屋から飛び出した人形の群れ。
 炎に巻かれ、奇声を上げて迫るそれに頭を抱えるしか出来ない村人の間から、籠手をはめた逞しい腕が覗く。
 迫るそれらをその手に握り、焼けるも怯まず突き返す。現れ出でた鎧武者の集団、その後方には戦巫女、春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)が控えている。
「ようやっと姿を現したか、人に仇為すしか知らぬ妖怪変化め。
 さあ、早う逃げるのじゃ。貴様らの逃げる背中、戦場で名を馳せた古兵たちが守ってくれよう」
 叱咤する菊生の声に、地を這い逃げ出す村人たち。先の戦意もどこへやら、すっかり腰を抜かしてしまった様子だ。
 その尻を叩くが如く急かせる鎧武者たちへ、焼け爛れて恐ろしい形相の人形どもが唸りをあげて噛みつく。
 一体一体は驚異ではないが、数が多すぎる。
 更には燃え盛る家屋、その火が勢いを増した。菊生は、その前で満足そうな死に顔の男を見て苦い顔を見せる。
 彼女は最初の餓鬼との戦闘、そして黒頭巾を被った人形の頭を持つ餓鬼と戦い、レイヤの言葉から村へ注意を向けていた。しかし、道具を携えた敵の情報、激しくなる戦いの場。
 突破する敵が現れるやもと注意を外に向ければこの有り様だ。
(自分の手で仇は取りたいと……愚かな男じゃ……しかし、ようやってくれたのう)
 蛇の様な眼で睨み付ける女へ、視線を返す。
「…………、火の手が回る前にけりを付けねばの。
 我が奥義にて相手どろう」
 その瞳に妖しい光が灯る。菊生の変わり様に不吉を感じたか、顔をしかめて袖で隠す女。
 菊生の両眼からは怪光が発し、角が長く伸び羅刹紋が全身へと廻る。変貌した姿に女は大きく後退り、その間へ壁になるかと人形が並び立つ。
 ――秘術ノ弐。
 舞い踊る神楽の姿に菊生が重なり、煙が沸き立つ様にして現れる鎧武者が人形たちを囲う。
 ちらと視線を向けた先、火元の家屋を倒すには人形らと離れる必要がある。囲いを突破されない為にも、布陣は解けず、手早く祓い清めねばならないと菊生は心に決めた。
 並び立つ兵どもの、その装具の纏う神聖なる破魔の気配を感じて人形どもが身を引く中、一本槍とばかりに突き出された一つ太刀を、人の衣を纏う女がその身で受ける。
 鮮血が新たな柄とばかり黒の布地に咲き誇るが、女の顔に苦痛の色はない。
「ああ、私の体。何て酷い事を」
 呟く女の諸手が武者の頭に触れると、そのまま挟み潰す。果実を潰す如く、濡れた音を響かせて消える男の向こうで女が嗤う。
 ――舞へ。
 菊生の号令を受けて、鎧武者は大薙刀へ武器を持ち変え、多勢を薙ぎ払った。
 破魔の力を受けて、刃が触れれば物言わぬ塵となる人形どもと違い、女はその刃を受け、あるいは身を貫かれても気にする事なく霊を握り潰していく。
 後方から放たれる矢の数々は人形がその身で受け、まるで姫を守る小姓とも見えた。
「ああ、酷い。あなた方に慈悲は無いのですか。なぜ、こうも私たちの邪魔をなさるのです。
 私たちが人間ではないからですか。こんなにも人を愛しているのに」
 涙を溢す女はしかし、獣染みた身のこなしで兵の刃を掻い潜る。
 凄まじい速度。接近する女の振り上げた爪が、菊生の腹を狙う。
「くう!」
 その一撃を受けてたたらを踏むが、衣服を裂かれ血を流しても薄皮一枚だ。真の姿を解放し、菊生の纏う力場が臓腑に至らずとしたのだ。
 不思議そうに自らの手を見下ろす女。その背後では、女の動きに気を取られ、主の危機に瀕して動揺する鎧武者の囲いを突破する人形の群れ。
 こまい動きに大振りの薙刀では、足下を抜ける輩の全てを止めるには不向きだった。
「ひいいっ!」
 彼らが狙うのは、眼前で繰り広げられる人の世とも思えぬ光景に逃げる事さえ出来ずにいた村人たちだ。
 頭を抱え、あるいは祈りを捧げている彼らへ凶牙を向けた人形。菊生に焦りが生じたその瞬間、村を駆け抜けた黒い影が人形の前へ飛び出した。
 影の中に走る紫線。アトラタスを駆る夜久だった。
 道を削り土塊を飛ばし、ブレーキをかけて車体を回し、唸る車輪が人形を轢き潰していく。
 巧みなハンドル捌きで前輪を中心に回転したアトラタスは、村人の危機を救った。だが、それだけで終わりではない。
 続く人形の群れに対し、夜久の腰に腕を回していたブラックウィドウが降車、黒一色の薙刀を振るえば氷の壁が発生し、その行方を阻む。
 ならばとばかりに村人から狙いを変えず、横へと回る人形らにはその背から翅翼を発生させた夜久が待ち構えていた。
「翅翼展開。目標捕捉。――、発射」
 その翼から放たれるは色なき刃、【不可視の閃刃(ソニック・ブレード)】。
 火に焼かれ、変質した体はあまりにも脆く、夜久の一撃でばらばらに吹き飛ばされる。
 焼け爛れて、地獄の亡者と相違ない様相の人形どもと、内側から破られたであろう家屋、倒れる男に事態を察した夜久は、思わず目を閉じ黙祷する。
 しかし、それも一瞬だ。
 次に目を開いた時には、ブラックウィドウを操る腕はそのままに、脇の下から新たな腕を生やして、傀儡から受け取ったミーティアを構える。
 朝日から逃げ出した夜、そこから零れ落ちた者たち。黒き風貌にそう感想を抱いた菊生だが、人形と敵対する異形の戦士に、味方かと安堵する。
 同時に新たな敵対者に注意をそらした女から身を離し、舞を継続した。
 再び力を得て、躍動する霊の存在に菊生こそ本体と看破していた女はその敵意を向けた。
 彼女の胴を貫かんと手を刺し込むも、朧げに霞む残像だけで、今度は肉の体に触れる事も出来なかった。
「お返しじゃぞ」
 身を反転させて放った肘が、女の鼻先を捉えた。


●恨めしい、恨めしい。程に恋しく狂おしく。
 肉にめり込む肘先に、脆く割れる音が伝う。
「おぉがっ! かああああっ!」
「ぬおっ!?」
 女は激しく腕を振り回し、菊生を薙ぎ払った。伴う威力は削がれたものの、女の腕力でそのまま弾き飛ばされる。
 体重の乗ったカウンターとは言え、刃を受けても顔色ひとつ変えなかった女が激しい反応を見せている。
 鼻と言わず口と言わず、両の目や耳からも出血を見せる女は、首を押さえて唸り声を溢す。
 菊生の脳裏に浮かぶのは先日の餓鬼の姿。手足を射ぬかれても悲鳴を上げなかった、あの姿。
 変化の術ではなく、寄生する。それも血を流す体だ、あの体は生きているのだろうか。魔を持たぬ体でありながら、操られるだけの肉の塊。
 だからこそ破魔の力が通じず、動きも止まらない。
 生きたまま首をもがれたのは、愛する人を持つただの村娘だ。この様な怪異に囲まれ、その心境を察するのも難しい。
「どうして、ああ、どうしてあなた方は、私たちを害するのですか。人では無いからですか。
 誰にも気取られぬよう、迷惑にならないよう、餓鬼に襲われる人からしか体を引き継いでいないと言うのに」
「…………」
 女の言葉に、菊生はその思考を辿る。しかし、それでも彼女は彼女であり、あの女はあの女だ。
 人だから、人形だから。そんな恨み節を言われるまでもなく、菊生には人を害する存在と女を認めているのだ。
「所詮は我らと相容れぬ定めの者ども、かける情けがある筈もなし。
 去ね。引導を渡してくれるわ」
 返す菊生の頬を伝う汗。秘術ノ弐は使用している間にも己の命を燃やす技。故に高い効果を持つが、激しい消費にそういつまでも術を展開してはいられない。
 自らも携えた長弓に矢を番え、その面目掛けて速射する。
 その一撃を身に受けたのは女ではなく人形だ。しかしその姿、炎に晒されたものではない。
 仲間の危機を察したのかあるいは呼ばれたのか、餓鬼溜まりとなった村々に打ち捨てられていた人形が、女を守りに来たのだった。
 おのれ。
 鬱陶しくまとわりつく人形をその剛力で払うが、数が多い。女が最初から引き連れていた人形どもほどの凶悪な気配や力がないのは救いか。
「さあ、早く、早く。人の道を生きないと」
 顔中から血を落とし、しかし軽やかな足取りの女に付き従う人形たち。
 それを鉛弾の雨嵐が横薙ぎに襲った。
 小さな体で身を呈したそれらにより、ほとんど傷を見せなかった女であるが、同胞を傷つけられた怒りを見せて振り返る。
 その先にはミーティアを構える夜久の姿があった。
 怒る視線を真っ向から受け止めて、酷いとは良く言えたものだと夜久は語る。
「餓鬼に成り代わり、村へ意図的に多くの餓鬼を呼び込み。今もまた、現れた人形が人を害する。
 そんな事をするあなた方はどうです? これはもう未必の故意ですらありません」
 夜久の背から開いた翼。
 その瞬間、女の顔が朧に消えると、残った血はそのままに夜久の顔へと変じた。
 背の肉と黒い布を裂き、蛹から蝶が現れる様にして骨の羽を広げる女であった者。
 放たれた不可視の閃刃は正面からぶつかり合い、炸裂して砂塵を巻き上げる。
 乱れ飛ぶ礫に身を守る夜久。そこへ続けて放たれた刃が砂塵を引き裂いた。
 甲高い音を響かせて、砕け散ったのは鉄の刃。見れば自らの武器と体を盾に、砂塵へと消え行く兵の姿があった。菊生の召喚した古兵。
 菊生はすでに真の姿を保てなくなり、武者の数もほとんどが消えていたが、力の限りと夜久に向けて声を張り上げる。
「顔じゃ。顔を狙うのじゃ!」
「了解しました」
 群がる人形を払いながらの菊生に、さらりと答える夜久。その会話を聞いてか両腕で彼と同一の顔を隠し、骨の羽を広げる。
 しかし夜久の狙いはその翼。こちらのユーベルコードを真似て見せた以上、驚異であるに違いはない。連射するミーティアの猛攻を受けて、根本から折れ飛んでいく。
「どうして、あなた方は私たちの邪魔をするのです。私たちの人になりたいという願いを、どうしてあなた方は奪いなさろうとするのですか」
「それが害悪だからです。人を愛していると言うなら、なぜ、あなた方は人を襲うのか」
 そんな事も分からないのか、という夜久の言葉もかの者は理解出来ていない様だ。
 ただ、消える命。ならば体を使わせて貰う。その行動の根底にある、人を愛するという人形どもの考えと、だから人になりたいという気持ち、それに対する手段。
 夜久と菊生は悟る。
 この怪異にあるのは人への羨望と憎悪、そして確かに愛があるのだと。
(自分の顔を写し取った事を考えると、身代わり人形といった所ですか)
 人々を悪意から守る人の紛い物。
 人々の為に作られ、悪意に晒される物。
 その身を刻む程に人を愛して守るから。
 その身が刻まれる程に人を憎しむから。
(守るべき人の移し身となるべく作られたのであらば、人と成り代わろうと考えるのも頷けるのう。
 じゃが――)
「だからこそ、あなた方の願いを遂げさせはしません。その罪、あなた方の消滅をもって……償ってもらいましょう……!」
 夜久の言葉に反応して、黒い着物が蝶とばかりに袖を開く。
 疾走する黒い影を迎え撃つのもまた黒き影。
 朝日を浴びて輝く村に、銃声が木霊する。移し身人形と連なる人形の群れがそれを防ぐため壁となった刹那、夜久の後方に氷塊が出現する。
 人形らに視界を妨げられていたその者は、突然現れた氷に面食らっていた。しかし、凶事の臭い有りと判断したのか、夜久から離れるべく進路を変える。
「早々と、何度も逃がしはせぬのじゃ」
 額に汗しながらも、残る鎧武者と共に菊生の放つ二本の矢。面へと翔ぶ一矢を防ぐも、もう一本がその足を縫い止める。
 長々と敵を拘束する力は無い。だが、その一瞬があれば十分だ。
 氷の坂を駆け上がるアトラタス、それに跨がるブラックウィドウ。
 夜久の操りによって空を走る黒の鉄塊は、獰猛な鋼の唸り声をあげて移し身人形の頭部へと、回転する駆動輪を叩きつけた。
「――ぎえええええええっ!」
 おぞましき人形の咆哮が村中に木霊する。
 全質量をかけた必殺の一撃を、自らの足も裂けよと飛び退いた移し身人形に止めを刺すには浅い。
 割れた顔から、怒りに燃える目玉がぎょろりと回り、猟兵を睨み付けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・菊生
アドリブ等々、歓迎する。

[WIZ]
真の姿への変化も解け、新たに霊を呼び出そうにも気力すら残り僅か。
正に満身創痍と言えようか。
しかし、じゃ。
決して此奴を逃してはならぬ。
逃せば何処かで、また多くの人間を殺めよう。
何より此奴がこうして居る限り、安心して黄泉路を逝けぬ者が居よう。



貴様らよ。
死して尚、死を決する【覚悟】はあるな?

薙刀携え、残存する鎧武者の霊と己自身による決死の突撃をかける(秘術ノ壱)。
武者らに露払いと足止めをさせ、大上段から唐竹割りにしてくれよう。
(【範囲攻撃】【なぎ払い】【鎧砕き】【串刺し】【破魔】を併用。)



●血舞い感昧、されど意識は昂りて。
 天を裂く獣の遠吠え。
 群れる人の形が横一列に並び、崩れ落ちた移し身人形を守るとばかりだ。
 春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)は汗する額に構う事なく、並ぶそれらを睨み付けて袖を捲る。傍らの武者より手渡された帯で袖口を結ぶと、他の者が片膝をつけて掲げる薙刀を受け取った。
「貴様らよ。
 ――死して尚、死を決する覚悟はあるな?」
 菊生の言葉を受けて、残る鎧姿が一斉に足を踏み鳴らした。口に出来ぬ言葉を表す様に。
 その数は既に両手で数える程もないが、彼らが見せる覚悟は百人力だろう。
 力強い答えに菊生は不適に笑い、未だに数有る人形を睨む。菊生に見覚えはないが、山道での戦いで見せた鉄の歯を持つ物、耕具を武器と携える物とも居る。
 だがその数も無限ではない。もう増える様子は見せず、黙して並ぶのみ。
(真の姿への変化も解け、新たに霊を呼び出そうにも気力すら残り僅か。正に満身創痍と言えようか。
 しかし、じゃ。決して此奴を逃してはならぬ)
 携えた薙刀で空を切り、菊生は敵が立ち上がるのを認めて気合いを入れた。
 逃せば何処かで、また多くの人間を殺めよう。
 移し身人形らの人が傷つく事に対する意識の低さ。これを改める事は出来ないだろう。
「何より貴様がこうして居る限り、安心して黄泉路を逝けぬ者が居よう。
 我等の覚悟は出来たぞ。そちらはどうじゃ?」
「き、貴様ら、は……なぜ我等を……害する……の、じゃ……」
 崩れた顔を押さえる手。そこから伸びるのは変形した人形の一部を角としたのか。
 姿を変えたか。
 菊生の混乱を誘う為か、あるいはそれが習性か。彼女の顔を真似た人形の姿に、しかしならばこそ戦うつもりがあるのだろうと大きく息吹く。
 人形は問う。なぜ自分達を害するのかと。
 こちらが害されたからではないか。当然の感情を理解できないそれらに、相容れないからこそと思っていた。だがそもそも、人形らにその考えがないのだとしたら。
(愛と憎しみを持ち、されど善悪の区別がつかない。当然じゃ、移し身となるべく傷つけられたのじゃ。
 それが当然と作られ使われ、ならば、自分達の移し身とする人を刻む事に躊躇いはなかろうのぅ)
 燃える敵意をその目に宿す移し身人形。菊生にはそれを受け続ける気力もない。
 勝負は一瞬。
 両翼に並ぶ兵どもはそれぞれが大薙刀と太刀を構え、菊生の言葉を待つ。移し身人形らもまた、こちらの出方を伺う如く揺らいで立つのみ。
 菊生は、薙刀で空を突き上げた。
「突貫じゃ!」
 菊生が張り上げた声に合わせ、鎧武者が獲物を手に駆け出した。同時に駆け出す人形どもに対して、互いの薙刀を交差させて振り払う。
 広い範囲を薙ぎ切っても、壁の一枚が剥がれただけだ。だが、続く壁を太刀持ちの鎧武者が薙ぎ払う。
 そして。
「獲るぞ、大将首!」
 その間を抜けて跳ぶ菊生。
 移し身人形が伸ばす諸手を薙刀の刃と、くるりと回した石突きとで着地と同時に弾き、回転の力を強めて真正面から大上段に振り下ろす。
「――なにっ……!?」
 菊生の顔に浮かぶ驚愕の色。
 振り下ろされた刃を、首をぐるりと曲げて口で受け止めたのだ。
 持てる力を持って腕に全てを賭けると体重を乗せる。先に一撃を受け、崩れた顔にそれを止める力はなく、移し身人形の下顎を切り飛ばす。
「…………、駄目かっ!?」
 体を回転させ、大きく振り回した腕を止める力もなければ防ぐ事も出来ず、菊生の体が地面を転がる。
 鎧武者たちも人形に取りつかれて動きを封じられている。だが、人形はそれで打ち止めだ。もはや、あの移し身人形を守る盾はない。
 言葉にもならぬ声を漏らすそれもまた満身創痍と呼べるだろう。それでも力を増す姿は手負いの獣とも見える。
 危険だが、今こそこの呪われた怪異に止めを刺す時だ。
 黄泉路を逝く者に手向けを、災意を持つ者に安らぎを。猟兵よ、敵を討ち、人の未来を閉ざす過去を骸の海へ還すのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
どうして私達を害するのか……ね。
私達は猟兵で、貴方達はオブリビオン。それ以外に理由が必要かしら?
それとも、そんなことも分からないほどに壊れちゃってるのかしらね。

貴方達が人間かどうかなんて何も関係がないわ。
貴方達が何者だろうと、何をしようと何もしまいと、私達は貴方達を破壊する。
そこには何の違いもないわ。

違いがあるとしたら苦しまないように……って、貴方達は痛みなんか感じなさそうね。

・念のためにUCで力場を広域に展開し、範囲内に存在する敵を把握。
・捕捉した敵の手足を念動力で逆関節に極めて破壊していく。
・動けなくなった物は、火焔により焼却する。

貴方達は人になれなかった。
それはもう終わった過去の話よ。


アーネスト・シートン
…それにしても、妖怪が、人間の体を乗っ取った所で、結局は妖怪でしか無いのですけどね。

闇の濃い世界ならではですかね。
まず、奴が人形を呼んだ時は、M.S.Lで連射モードで一掃を目指しておきます。「そこまでにしてもらいますよ。」

「コピーをどうにかできればいいのですが…」
コピーされないために隙を伺い、閃光弾で目を潰す。自分はサングラスで閃光を防ぐ。「効けばいいのですが」

その後、M.S.Lの威力重視で相手の胸と頭を【スナイパー】で狙い撃ち。
「これで、終わらせていただきますよ。」



●過去を降す者たち。
 輝く陽光の中で、血にまみれた女の体。
 黒い染みの様に立つその者は白目を剥き、顎を切り飛ばされ、血泡を溢すその姿は闇夜に蠢く餓鬼よりも浅ましく、地獄の鬼よりも恐ろしい。
 一歩、また一歩と進むその先には力を使い果たした猟兵の姿。他に人がいないのは、彼女が殿となっている間に別の者が逃がしてくれたお陰だろう。
 だが、彼女と轡を並べた兵どもも、もはや朝露に消えている。
 迫る影が伸ばした腕、しかしそれは怨敵に届く前に止まった。移し身人形が首を巡らせると、追従する人形どもも顔を向ける。
「はじめして、オブリビオン」
 ごぼごぼと喉を鳴らすそれに、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)はにこりと笑った。
 愛嬌のある顔立ちは自信に満ち溢れ、害意を持った手を触れさえせずに万力の如く締め上げた実力を如実に語る。
 風もないのに赤いロングコートを棚引かせて、十二層から成る圧倒的力場に人形どもを捕らえる。
「あなた言っていたわね、どうして私達を害するのか、て。
 私達は猟兵で、貴方達はオブリビオン。それ以外に理由が必要かしら?」
 それとも、そんなことも分からないほどに壊れちゃってるのかしらね。
 憐れみではなく蔑みを。アレクシアは静かに笑うと踠くことも出来ずにいる人形へ目を向ける。
 彼女にとってそれらが人外であるかどうかは関係などなかった。例えそれが何者だろうと、何をしようと何もしまいと、必ず破壊する。
 アレクシアにとっての猟兵とはそういった存在であり、それが当然であった。だからこそ移し身人形らの恨み節など、人あらざる身を嘆く卑屈さを、意にすら介していなかった。
「まあ、違いがあるとしたら苦しまないように……って、貴方達は痛みなんか感じなさそうね」
 鼻で笑うと、彼女の後ろから放たれた銃弾が人形の頭部を破壊する。
 装備を整えて戦場に戻って来たアーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は、すでに決着の着きそうな戦場に小さく安堵の息を吐く。
「……それにしても……妖怪が、人間の体を乗っ取った所で、結局は妖怪でしか無いのですけどね」
 それは実に当然のことだ。しかしその言葉を聞き咎めたのは移し身人形、その目がぐるりと動いて真っ黒な瞳がアーネストを映す。
 向けられた敵意に手負いの獣を思い、気を引き締めたアーネスト。アレクシアは敵の態度に思うことがあるでもなく、力場を拡げて探知機のように他の敵を探す。
 どうやら、他に敵はいないようだと結論する。となれば、話しは早い。
「さようならよ」
 拡げた力場を縮小し、捕らえた人形へ力を加える。人形どもの手足の間接が逆方向へねじ曲がり、さして抵抗もなく音をたててへし折られていく様は寂しさすら感じるが。
 ごぼり、と血の塊を吐き出した移し身人形の瞳がアーネストからアレクシアへ移る。
「目を閉じて下さい!」
「!」
 危険を感じて閃光弾を放つアーネストは、自身はサングラスをかけて朝陽より強力な閃光を防いだ。
 アレクシアは目を閉じ、腕を顔の前に交差させて目を守る。
(……効けばいいのですが……!)
 その不安が的中したようで、光の中、移し身人形の顔が変じていく。
 アーネストが結局は妖怪だと断じたように、生き物とは違う体にその武器は効果がなかったようだ。
 骨の角が抜け落ちた移し身人形、その顔は砕けており判別が難しいが、その赤い瞳はアレクシアを真似たものか。
 発生した不可視の力場が彼女の使用していた力場を弾き、空間を歪ませて帯電する。
「こいつ!?」
 自らの力を阻害する力を感じ取り、アレクシアが驚きの声を上げた。
 戒めが解け、行動を再開する人形どもに対して即座に銃を構えたアーネストは連射能力を増やしたマルチプル・スナイパーライフルを速射する。
 前に進む人形の一体ずつを、頭部から確実に粉砕。行進を止めるその攻撃は、すでに頭数も打ち止めとなった人形どもには効果的だ、
 移し身人形もアレクシアの力を止めるので精一杯なようで、満足な動きを見せていない。アレクシアはその様子に不敵な笑みを浮かべると、周囲を抑える力場に更なる力を加えた。
「あなた達は人になれなかった。それが全て、そしてそれはもう終わった、過去の話よ」
 ごぼり。
 噴き出した血泡が発火する。移し身人形を覆う力場はそれが抗う力を越えて集束し、その手足をねじ曲げていく。
 移し身人形を中心に発せられた熱は着物を燃やし、ゆっくりとその体を焼き焦がした。
 すでにその身を守る、動ける人形の姿も無く。
 アーネストは人の体を、そのまま焼き潰すには忍びないと感じたのか銃を構えた。勝敗はすでに決している、だからこそ重ねたのは慈悲であったのかも知れない。
「これで、終わらせていただきますよ」
 その言葉は人形に対してか、それとも。
 破壊力に偏重した弾丸が、銃口からふたつ放たれて、移し身人形の胸と頭を捉える。
 頭を失い、膝から崩れ落ちた体を見送って、アレクシアは瞼を閉じた。周囲を覆っていた彼女の強大な力は霧散し、同時に向けた視線が燃え上がる家屋へ向けられて、風もないのに盛る炎が渦を巻いて空へと巻き上げられる。
 これで火事が広がる心配もないだろう。
「念動力というものは頼もしいですね」
 得意気な笑みのアレクシアにこちらも笑みを見せて、アーネストは力を使い果たした仲間を助け起こす。
 やがて、村人を避難させた猟兵もこちらへ戻って来るだろう。村の中で起きた怪異との決戦も、人的被害は最小限に抑えられたと言って良い。
 そこに犠牲はあったものの、猟兵らの活躍に触発された村人により敵の拡散は防がれ、また戦い続けた猟兵らの活躍があってこそそれ以上の被害が増える事なく決着となった。
「…………。ご遺体を、返して差し上げましょうか」
「綺麗にしてあげてからね」
 激しい戦いの跡を残す女性の体。全てを元通りにとはいかないが、体に残る血液をさきほどの炎と同じく巻き上げて、その身に纏う着物を正してやる。
「これも念動力のちょっとした応用よ」
 優しい笑みでアレクシアはその体を、事切れた男の元に並べてやる。裂かれた体も見掛けだけは戻してやり、戦闘が終わったことで猟兵とともに慌ただしく戻って来た村人に後を託す。
 彼の活躍、結果を目の当たりにした彼らは男はもちろん、女の体をも手厚く葬ってくれることだろう。
 人であるからこそ、人として。身を張って村を守ってくれたことに頭を下げる村人たち。猟兵らへ、村長となる年老いた男は街道沿いの旅籠で行われる宴会について触れた。
「あなた方のお陰で村は救われました。町では、私どもの品をよくご贔屓なさるお人が、この一件を解決してくれれば宴会に招待したいとのことでした。
 私どもからも、あなた方の紹介をさせていただきます。ぜひ、お礼をお受けください」
 改めて深々と頭を下げる彼の言葉を受けて、猟兵たちは村を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『街道沿いの旅籠で宴会』

POW   :    酒だ!肉だ!舞妓さんに芸子さんだ!ひゃっほう!

SPD   :    舞妓さんや芸子さんから芸事の手ほどきを受けてみよう。優美な気分になれそう。

WIZ   :    和風建築やサムライエンパイア流の宴会の催し方に興味津々。本陣の主人にいろいろ聞いてみよう。

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 これでこの近隣の村を荒らした餓鬼と、それらを煽動していた存在も消え怪異は解決した。
 激闘の山道を越えた先、町では宴会が行われる。村の感謝の気持ちを無下にすることもない。
 戦いの疲れを癒すため、また亡くなった者たちの弔いのためにも、宴会に参加すると良いだろう。


・第三章は宴会です。犠牲者の鎮魂のためにも明るく楽しくのご参加をお待ちします。
・参加される猟兵のプレイングにハララァ、もしくはレイヤについての記述があった場合のみ彼女たちも参加します。
 お食事を楽しみにしているので呼んであげるのも良いです。
・レイヤは天より高い場所から見下ろしているような高慢な人格なので、懲らしめるにも意に介しません。が、召喚主であるハララァにはゲロ甘いので彼女をダシに精神的ダメージを与える事は可能です。
サジー・パルザン
はぁ。いや、チビ化け物共を追いかけまわしてたらいつの間にか全部終わってたぜ。どうやら他の猟兵が始末つけたようだな。

まぁ、俺も相伴にあずかるぜ!まぁ、サムライエンパイア。ここの飯は肉より魚を貰うのが通かもしれねぇな!とりあえず、大量に塩まぶして焼いた鮎とか、新鮮な魚を上に乗せた丼とかあるといいゼ。

魚も肉と同じで筋肉を維持するに欠かせねえ。しっかり頂くとするぜぇ!
とりあえず飯食ったら、昼寝でもするか!食ったら寝る。これが筋肉を維持する秘訣よな。

あと、温泉とかあればいいんだが。さすがに贅沢ってもんか。



●北国生まれの佐治井さん。
 サジー・パルザン(ヴァイキングの生き様・f12550)は人々の賑やかに往来する様を見て笑みを浮かべる。
 まさかここから少し離れた山道や、その先の村々で起きた怪異など、彼らは知る由もないだろう。
(はぁ。チビ化け物共を追いかけまわしてたら、いつの間にか全部終わってたぜ)
 他の猟兵が始末をつけてくれたとサジーは独りごちる。山道での共闘後、負傷した腕の処置を行った後、街へ向かう餓鬼を見つけた部下と共にそれらの排除にあたった。
 徹底的に山に潜む者共を探し、終わった頃には陽も天高く昇っていたのだ。
 件の旅籠の前ではすでに酔った町人も見える。やはり、村の異変どころか、飢饉すら知らないような騒ぎぶりだ。その様子には鼻のつくものもありはしたが。
「おい、そこの。松之進(まつのしん)って奴を知らないか?」
 旅籠から出て来た灰色の着流し姿の男へ声をかけると、男は袖に両腕を通して組むと、あからさまに不審の目を向けた。
「松さんかい、何の用件だ?」
「呼んじゃくれないか。用件ってのは、そうだな。用件が終わったと伝えてくれればいい」
「用件が終わった、ねえ?」
 男は疑いの眼差しを止めず、名前を聞く。
 サジー・パルザンと言葉少なに伝えれば、男は聞き取れなかったようだ。
「さじ、なんだい? どこの産まれだい?」
「サ、ジ、イ、パルザンだ。ずっと遠く、北で産まれた」
「さじ、佐治井さんかい。北からとは随分と遠くからやって来たもんだねえ。まあ、伝えといてやるよ」
「よろしく頼むよ」
 着流しの男を見送って、サジーはひっそりと溜め息を吐く。場所はともかく勝手のわからない所で無理を通す気概はない。他の猟兵よりも街に近かった彼は先に旅籠へ向かうよう、レイヤからの指示を受けていた。
「お待たせしたなぁ。あんたがあの、〝いえがぁ〟、とかいう所から来た佐治井さんってお人かい。北にあるんだってなぁ」
「…………、まあな」
 誤解を解くのも面倒だと、サジーは同意する。現れた男は黒い羽織袴姿で、眼鏡をかけていた。左手に持った扇子で、暑いことだと自らを扇ぐ。
 人の良い笑みを浮かべてはいるが眼鏡の奥は、蛇のように鋭くサジーを観察している。商人として人となりを観察していると言うより、サジーのように武勲にあやかる者が相手の戦力を測っていると感じられて、彼はにやりと笑った。
 その笑みを見て、松之進は右手で帯を正して左腰元の刀を見せつける。その様子に、修羅場を潜った者、一筋縄で行く人物ではなさそうだとサジーは結論した。
「佐治井さん、あんた、他にお仲間はいないのかい? この前に会った、いえがぁから来たのは子供だったが」
「今は俺一人だ。後から来るから、先に報せてくれとさ」
 サジーの返事にそうかと頷くと扇子をたたみ、ついてくるように促す。
 素直にそれに従う彼へ松之進は声を潜めた。
「なあ、あんた。村はどうだった?」
「それは後から来る連中に聞いてくれ。俺は山道で踏ん張ってただけだ。俺からも質問していいか?」
 目も合わせずに話すサジーへ、こちらも目を合わせずになんなりと、と先を促す。
 彼が気にしたのは飢饉の事だった。山を越えた村の事とは言え、ここでは派手にお祭り騒ぎに興じる町人たちの気持ちが理解できなかったのだ。
 松之進はその不快の言葉を受けて、だからこそだと笑う。
「ここは村の連中とは苦楽を共にした奴らも多いのさ。辛くて、悲しくて、だからって塞ぎこんでちゃ良くなるモンも良くはならねぇ。
 あっしゃねえ、佐治井さん。この町の病気を治す医者なのさ。内緒の話、お上に渡す年貢もちょろまかしてここに入れてるんだけどよ」
 ぬははは、とあっけらかんと笑う松之進。サジーは目を丸くしたが、故に町人から信頼され、そして外からの者が警戒される訳だと納得する。
 義賊紛いの事をして喜ぶ別けではなく、必要な時だけそうすると言うのだろう。掠め取られた方は堪ったものではないが。
「まあ、それなら俺も相伴に預かるぜ! サムライエンパイアと言えば、塩焼きに新鮮な身の魚があるそうだな」
「おう、どれもこれも揃えてあるぜ。任しときな」
「あとは……温泉……ってのもあるのか?」
 それはさすがにない。
 悪びれもなく答える松之進だったが、ややもすると首を捻る。
「よう、六(ろく)。こん前に話してた奴、出来たかい?」
「松さん、ばっちり仕上げてあるよ!」
 その辺を走る、裾をたくしあげた男は松之進の問いかけに答えてそのまま走り去って行った。
 忙しそうだとは見ての通りだろう。それからサジーへ振り返ると、温泉とは違うが似たようなものがあると笑った。
「飯はまだだがよ、先にそっちに案内するぜ。他のいえがぁのお人が集まってから飯にするといいや」
「構わんが、急いでくれよ。腹ペコなんだ」
「そりゃ、あっしに言うことじゃねえや」
 サジーの言葉に笑いながら、松之進は旅籠の戸を開いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーネスト・シートン
まぁ、今回は終わったということで、わたくしも、宴会に参加しておきましょうかね。
それほど多くは食べないですが、たしか、この世界ですと、獣の肉は少なかったはず(鳥や魚はある)ですので。
まぁ、わたくし的には、今回の料理を堪能させていただこうかと思いますし。
いろんな野菜や豆腐、精進料理なんかも、味わって酒もほどほどにしておきますかね。
そういえば、ハララァさんも参加されますよね。
たしか、この世界ですと、肉は鳥と魚、あと、兎になりますけど。
山の方では、猪や鹿あたりもあるのですが。
飢餓が起きているし、あまりいなさそうな感じでしたけど。

とりあえず、ゆっくりしますかね。



●さあさあ人も揃いてきましてな。
 サジーは案内された場で思わず顔をしかめた。狭い部屋に男ばかりが、湯気の中に額を汗して顔を付き合わせにらめっこだ。
 松之進は、どうだとばかりに得意気だが、サジーからすれば答えられるものでもない。
 彼らがしているのは足湯だ。サムライエンパイアでは一般的な入浴方法だが、部屋ひとつの床板をコの字に剥がして湯を張れば、それだけ多くの人が入れるというわけで。
「おうおう、てめえ顔も真っ赤でみっともねえな。早く上がっちゃどうだよ」
「べらんめえ、俺っちが赤いのは酒のせいだ。ま、おたくは飲んじゃすぐ寝ちまうから、酔ってお湯に浸かる気持ち良さは知んねぇだろうがよ」
「おめえ、上等じゃねえか!」
 あっちこっちで顔を真っ赤にした親父たちが意地を張り合っている。
 暑苦しく狭苦しければむさ苦しいと、好き好んで入ろうとは思えない光景だ。しかし松之進としては自慢の場であったようで、喧嘩する男二人の間から手を湯へ入れて温度を探る。
「なんだい、お前さんたち。もう冷めちまってんじゃないか!」
 しかたないなとばかりに松之進は、部屋の中央に据えられた大型の七輪で焼かれた石を鉄の箸で次々とつかみ、投入していく。
「あちちちちっ、止めろよ松さん!」
 我慢していたお湯が更に熱くなり、慌てて抜け出す男らを情けないと鼻で笑い、曇った眼鏡をそのままに袴をたくしあげて足を湯へ入れた。
「……うっ……ああぁ。やっぱりこんぐれえじゃないとな。佐治井さんもどうだい?」
「いや、俺はいい」
「そうか。佐治井さん、北国の産まれだもんなぁ。いい湯でも堪えらんねぇか」
 にやりと笑う松之進。安い挑発だ。しかしサジーは、暇のついでだとばかりにこちらも笑って松之進の対面に座り込んだ。
 足を入れれば確かに熱い。熱いが、猟兵である彼にとって耐えられない熱さではない。
「松之進よ、イェーガーと会うのは初めてか?」
「? そのはずさ。なにかあるのかい?」
「いや、いいんだ」
 首を傾げる松之進。サジーは人を見下した笑みを浮かべる幼子の顔を思い浮かべて、彼らが猟兵を勘違いしたのではなく、わざと勘違いさせられているのではと思い至る。
 とは言え、江戸幕府から頂いた【天下自在符】を使うつもりもないので、そのままで構わないかと結論した。他の猟兵も同じだろう。
 他の者が来るまでゆっくり待つ。つもりであったのだが、その後は松之進から質問攻めが続く。
 彼の故郷での生活や戦いに大きく興味を示しているようだった。
「――するってえとその斧は、呪術が扱えなくても物を凍らせる事ができるってのかい。量産できりゃあ、下々の生活をあっという間に変えちまわぁな」
「できれば、な」
 扇子を扇ぎ夢物語に目を輝かせる男に釘を刺すと、襖が開く。サジーの話した着流しの男に続き、顔を出したのはアーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)だ。
 客人は集まったか。
 嬉しく笑う松之進に、着流しの男は頷く。裾を払って彼の隣に膝をつき、その耳元へ口を寄せた。何事か呟きを受けて、松之進は笑みを止めると扇子を閉じて立ち上がる。
「この先に食事を出している部屋がある。この三郎(さぶろう)に案内させよう、楽しんでいっておくれよな」
「なんだ、逃げるのか」
「はっはっはっ、いえがぁのお人には敵いそうもねえや」
 サジーの挑発返しに愛想笑いを浮かべて松之進は部屋を出ていった。サジーも立ち上がり、紹介された三郎に先導されて部屋を出れば、アーネスト以外に人影はなく。
 これで全員かと問えば、他にもいるとの答えがアーネストから返ってくる。
 一人は別の部屋に通され、他は勝手に食事のある部屋に向かったとのことだ。
「そうか、それじゃあ飯を全部食われる前に、急がなきゃな」
「わたくしはそれほど多く食べるつもりはありませんが」
 先駆けした者がいるという事実に闘志を燃やすサジーとは対照的に、苦笑するアーネスト。彼は料理を食べるよりも、どのような料理があるのかに興味を持っているようだ。
(いろんな野菜や豆腐、精進料理なんかも味わって、酒もほどほどにしておきますかね)
 三郎に案内されて、二人は会場となる大部屋に向かった。


●江戸幕府御墨付討伐人、〝猟兵〟。
 灯りもなく、薄暗い部屋に座す松之進は、キセルから煙を漏らして溜め息を吐く。目の前には誰も座らぬ座布団があり、男はそれを物思いに見つめていた。
「松さん、お連れしやした」
「おう、あんがとよ。入れてくれ」
 襖越しの声がけに答えて、姿勢を正す。キセルの火種を傍らの小壺に落とし、そのまま壺の上に置く。
 やがて開いた襖から現れたのは、見目美しくも角を持つ羅刹、春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)だった。
「すまねえな、飯を前に呼びつけてよ」
「構わぬ。それより、用件はなんじゃろうか」
「……あの村で起きた事と……又助の事について聞かしちゃくれないか」
 先程と打って変わって真面目な様子の松之進に、しかし菊生は三郎に話した以上の事はないと語る。
 ならばこそだろう。実際に彼の最後を認めた者の口から直接聞きたいのだと、両の拳を畳につけて頭を下げた。
 菊生はそこまでする必要はないと顔を上げさせて、この旅籠に来る道中で受けたアーネストの話から、近隣の村も飢饉に襲われ餓鬼が発生していた事、餓鬼を利用して、健康的な村人の体を乗っ取ろうとする人形どもが暗躍していた事、そして犠牲となった妻の仇を取ろうと密かに村に潜伏していた人形どもを、又助が焼き討ちした事、それ故に命を落とした事。
 それらを話す菊生だったが、村長から又助を殺めた人形の着ていた服装から、彼の妻の体を使っていたのではないかとする言葉も聞いていたが、それは伏せる。
 松之進の様子を見れば又助とは友人関係にあったと見える。そんな彼を余計に苦しめる様な事実を増やす必要はないと考えたからだ。
「確かに、ここいらの地域じゃあ、人形に悪い事を肩代わりしてもらおうって考えが盛んでな。人形どもが怨んでも仕方ねえ。たが、又助はそんな奴等に一矢報いたんだな。大した奴だ」
 袖に収めた腕を組み、一人頷く。しかし、と松之進は菊生を見て眉を潜める。
 彼としては腕に覚えのある連中を雇い、村を襲う餓鬼を退治てくれるようにという考えだけであった。それがここまでの怪異が息を潜めているとは考えもつかなかったし、更にそれを叩きのめす力を持つ者たちだとも考えていなかった。
「…………、お、お前さんら、いやあなた方はもしや、江戸幕府からの御墨付きで諸国を巡っている、猟兵と呼ばれる方々では?」
「そのようじゃの」
「……かっ……」
 菊生が肯定すると、顎が落ちる程に口を開いた松之進は後退り、座布団を払い除けて額を畳に叩きつけるようにして土下座した。
「申し訳ありませぬ。物を知らぬ不出来な身とは言え、幕府よりの方々へ不躾な言動を……まことに……まことに……っ!」
「これ、よさんか! 我らもそのような扱いを受けようと思っておらんわ。不躾と思うならばこそ頭を上げよ。
 此度の件、犠牲になった者も多い。だからこそ、その御霊を鎮める為にも、人々の不安を取るためにもと開いた宴じゃろう。そのような態度では誰も喜ばんわ」
 菊生の言葉に感じ入ったか、それでも少し居心地が悪そうにして松之進は顔を上げた。
 この事は誰にも話さないようにという菊生の言葉に、深く頷いた。
 その後は松之進に先導されて食事の待つ大部屋へ向かう。背筋をぴしりと伸ばした彼の後ろ姿からは緊張感が伝わり、菊生はそっと息吹く。
「この部屋にございやす」
 襖を開いたその先では、器を手に飯をかっ食らう屈強な男と、その両隣で呆れた視線を向ける男女が二人。しかしその視線が向けられているのはその男ではなく。
「カーッカッカッカッカッ! 見よ、これが江戸幕府より受けた【天下自在符】じゃあっ!」
『は、ははーっ!』
 高笑いし両手を上げる少女。その後ろでふよふよと漂う布から伸びた手の掲げる符に、料理人に舞妓や芸子が一斉に平伏する姿があった。
 菊生はその光景に思わず眉間を押さえるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシア・アークライト
私はまだお酒が飲めないから、食事メインで参加させてもらうわ。
山菜が好きなのよねー。今だと、ミズとかワラビとかエノキとか……って、こっちの世界には、今まで食べたことがないようなものもあるかもしれないわね。

それと、お肉も食べたいって言っていたから、レイヤも呼びましょうか。
――これが最後の食事になるかもしれないしね。

あの子、オブリビオンって話よね。
幻のような存在だって言うけど、光と音には干渉しているんだから、こちらからも干渉できるはずよ。召喚術そのものを消す方法もあるわね。
何者だろうと、何をしようと何もしまいと、私達はオブリビオンを倒す――それをひっくり返せるだけの話が聞けるかしら?


春乃・菊生
アドリブ等々、歓迎じゃ。

[WIZ]
殊更にハララァら邪険にする理由もなし。
何より折角の宴じゃ。賑やかな方が良かろうて。

……さて。
我も白拍子、宴の席で歌舞のひとつも演じねば名が廃ると言うものじゃが…。
折角と言うならば、送られる者らに演目の望みはあるか聞いてみようか。


秘術ノ陸。
(今回の件での犠牲者らの霊に歌や舞いの希望を聞き、それらを演ずる)



●宴だ宴だ無礼講!
 菊生らが到着する前に、先に大部屋へついていたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)とハララァ・ヘッタベッサ(亡霊の纏う黒き剣布・f18614)は並ぶ料理に興味津々だった。
「のう、料理人。この小さいのは虫かえ?」
「虫ぃ? とんでもねえ、めざしだよ。嬢ちゃん、魚、見たことないのかい?」
「これも魚か。前に見た奴は食べる前に変態どもに投げてしまったからのう」
「あら、これってタンポポ?」
「うん? タン、ポポ? よく知らねえが、こりゃツヅミグサっていうのさ。お浸しにしてあるからよけりゃあどうぞ」
「美味しそうね、いただくわ」
 お膳に待ちきれないとばかりに皿を乗せる様子はまるでバイキングだ。
 後から合流したサジーも負けじと料理をかっさらい、アーネストは程々に料理を受け取りつつ、用意されていた酒を注いでもらう。
「しかし、牛馬の肉がみあたらんのう。この世界にもいたはずじゃが」
「ああ、この世界では獣肉というのは忌避されているんです。表向きは、ですが。特に今回のように悪い事を忘れようといった宴会では、そうそう出るものではないと思いますよ」
「なんじゃとっ!?」
 アーネストの言葉にレイヤは目を見開いた。よっぽど楽しみにしていたのだろう。
 一方でサジーは、この世界ではそういった肉よりも魚肉こそ相応しいのだと告げる。海に囲まれた島国、彼の言うように色とりどりの様々な魚が捌かれ、焼かれ、あるいは煮込まれている。
 ここまで漂う海の幸、その香りにサジーは待ち切れないと皿にかじりつく勢いで食事を始めた。
 アーネストは全ての料理を味わおうと考えているであろうサジーを苦笑しつつ、作り出されていく料理を目で楽しむ。
 特に彼が今回の目的のひとつとしていた精進料理は色鮮やかで、味もしっかりとつけられ多くを食べないとするアーネストにも満足のいく出来であった。
 そんな折である。ハララァを引き連れたレイヤがおもむろに大部屋の中央へやって来たのは。
「こほんっ。聞くのじゃ愚民ども! 主様とレイヤは肉が食いたいのじゃ! 血の滴るような新鮮な肉を持って参れ!」
「肉って、そんなことを言われてもなぁ」
「嬢ちゃん、ほれ、こっちの魚がよっぽど旨いぞう」
 わがままを言うなとばかりに苦笑い。だがレイヤは、そんな人々の言葉に不敵な笑みを見せる。
 そんな言葉を我らに使ってよいのかと。レイヤの様子に何をしでかそうとしたのか気付いたアーネストだが、時すでに遅く。
「カーッカッカッカッカッ! 見よ、これが江戸幕府より受けた【天下自在符】じゃあっ!」
 得意気なレイヤに合図され、これまた得意気にハララァは符を掲げた。
『は、ははーっ!』
 符の存在を受けては平伏するしかない。同時期に開いた襖から顔を覗かせた菊生は顔を歪め、惨状に頭痛を感じているようだ。
「カカカ、どうじゃ主様。同じ身分と勘違いしておった者共に違いというものを分からせる瞬間!
 力だろうが権力だろうが構わぬ。気持ち良いじゃろう?」
 腕を組むレイヤだが、その後ろでは事態を飲み込めずにハララァはおろおろしているだけだ。アーネストは嘆息して立ち上がると、天下自在符をハララァの中に隠させた。
「イタズラにも程がありますよ、レイヤさん。ハララァさんも困っているじゃないですか」
「なにいっ、レイヤが愚民相手に嘘を吐くわけなかろうが!」
「〝ハララァさんも〟、困っていますよ」
「……ぬぐっ……」
 アーネストの言葉にレイヤは唸り、ハララァへ目を向ける。すっかり静まり返った会場、陽気な空気が消えて途方にくれているようだ。
 レイヤは一度、アーネストを睨み付けたがハララァの元に行くと、今のはただの冗談だと声を張り上げた。
「な、なんだ冗談か」
「無礼講にしても、大きくやりすぎだぜ!」
 広がる安堵と不安。松之進が菊生へ視線を向けると、彼女は小さく肩を竦めた。
 ならばとばかりに咳払いをひとつ。視線を集めて松之進は声を張り上げる。
「さあさあ、冗談ひとつに目くじらを立てている場合じゃないぞ。宴は始まったばかり、皆楽しんでくれよな!」
『おーっ!』
 松之進の言葉を受けて、参加する者たちはさらに大きな声で返事をした。
 やれやれと席に戻ったアーネストに、レイヤは近付いて礼を言う。すぐにハララァの元へ走って行ったが、再び活気を取り戻した事で安堵したハララァを見たからこその礼なのだろう。
 そこで謝罪をしないのは実にレイヤらしくもあるが。
「主様、これとこれ、あとこれが食べてみたいのじゃ!」
 レイヤの言葉を受けてハララァはお膳に料理を乗せていく。ふよふよと浮かぶ布の下から伸びる手にお膳をふたつ持ち、一杯にまで皿を乗せた彼女にお行儀が悪いぞと菊生が口を挟めば、無礼講じゃとレイヤは笑う。
「そうそう、たくさん食べさせてあげましょう。――これが最後の食事になるかもしれないしね」
「ほう?」
 まだまだ料理を取るぞとはりきるハララァが飛んでいくのを尻目に、アレクシアの言葉を聞き咎めたレイヤが振り返る。
 アーネストは驚いたように彼女を見るが、菊生は喧嘩と捉えたか溜め息を吐くだけで、サジーに至っては眼中にすらないようだ。
「あなた、オブリビオンよね?
 幻のような存在だって言うけど、光と音には干渉しているんだから、こちらからも干渉できるはずよ。召喚術そのものを消す方法もあるしね」
「干渉しておるのは――、まあ、よいか。
 なんじゃお主、レイヤを退治ておきたいと、そういう事かえ? レイヤは主様の武器でもあるのじゃぞ」
 苛立つでもなく、怒るでもなく、ただ楽しそうに聞くレイヤにアレクシアも笑みを湛えたままで、タンポポのおひたしを口に運ぶ。
 勿体ぶるように、それを飲み下してから口を開いた。
「あなたがハララァの武器だとか、そんな事はどうでもいいのよ。
 何者だろうと、何をしようとも何もしまいとも、私達はオブリビオンを倒す――それをひっくり返せるだけの話が聞けるかしら?」
 言いながらも、アレクシアには既にレイヤを排除する為のユーベルコードが組上がっている。
 【能力中和(アンチ・サイ)】。対象と自分とのユーベルコードの力を失わせる。これにより、ハララァを攻撃してレイヤを消失させようというのだ。
 本気を感じたアーネストが止めに入るが、それを押し止めたのはレイヤだった。
「勘違いしておるようじゃがアレクシア。レイヤがお主に聞かせる話は、お主の価値観をひっくり返すものではないぞ」
「と言うと?」
「レイヤは主様に喚ばれてここに在るに過ぎぬ。出会いは偶然じゃが、主様が求める以上、何度でも骸の海より出づるじゃろう。
 おぬしら猟兵ができることなど、我らオブリビオンを骸の海に還すことだけじゃ」
 本当にそうかしら。
 オブリビオンの完全なる破壊、それは不可能な話ではない。だが同時に、骸の海より投影されるように召喚されているレイヤを破壊するには、今の状態だと厳しいのも事実。
 召喚術を無効化したところで、ハララァが言うように骸の海の本体に影響はない。
(オブリビオンとしての自覚や猟兵への考えを見ると、この子自身、何度か猟兵と戦った経験があるみたいね。でも、ハララァに特別な感情を抱いているなら、彼女から喚ばれなくなったらどうなるのかしら)
 睡眠術をも扱える彼女らしい考えだ。しかし気になるのは、レイヤの表情。
 子供とは思えぬほどの妖しい笑みを浮かべて、まるで愛する者を見つめるかのようですらある。今までのレイヤの言動からは想像も出来ない顔だ。
 と、異常に気づいたのか舞い戻ったハララァがレイヤの体をすっぽりと包み込む。
「なんじゃ、主様。甘えたくなったかのう」
 その体をするりと抜けて顔を出すレイヤを、再び包み込む。アレクシアにはそれがじゃれついているのか、それともレイヤを守ろうとしているのか判別はつかなかったが。
 肩の力を抜くと、アレクシアは確かに、今相手とするには無駄になりそうだと笑う。
 召喚術を無効化したところで、戒めが解かれればハララァは即座にレイヤを喚ぶだろうし、場合によっては敵が増えるだけでこちらの行動に支障が出かねないと考えたのだ。
 そんな彼女にハララァの体から腕を透過して指を突きつけるレイヤ。
「アレクシア・アークライト、敵の名は覚えたぞ」
 それは宣戦布告に対する返答だった。アレクシアは笑みを崩さず、無言でそれを受け取った。
「喧嘩は終わったか?」
 一頻り飯を食い終ったサジーは伸びをすると、アレクシアとハララァの両名をがしがしと乱暴に撫でる。
「きやっ、ちょっと!」
「主様に触れるでない!」
「がっはっはっはっは! 元気があって結構!
 俺は昼寝でもしてくる。お前らも良く食べて良く寝て、良く喧嘩して大きくなるんだぞ」
 彼としては仲直りという扱いなのだろう。さんざん子供扱いすると、部屋から出ていった。だが、こういう扱いこそ正しいのかも知れないと、アーネストは酒をちびりとやりながら思う。
「空気がまだ悪いな」
 そんな中でぽつりと溢したのは菊生。確かに、芸子らの動きも先程のレイヤの行動、そして今の二人の喧嘩になにやらただならぬものを感じたのが動きが固く、皆が心から楽しんでいるようには見えなかった。
 我が舞おう。
 菊生はそう言うと部屋の中央に立ち、神楽を舞う慌ててそれに音を合わせる女たち。
 雅で美しく、流れるような所作で柔らかく。
 菊生の舞いに料理人すら手を止めてそれを見る中、松之進は目元から零れる涙を押さえられなかった。
 それはかつて、又助の愛した女が舞った踊り。彼らが出会った縁あるもの。それは二人を送り出すに相応しい舞いと言えた。
 秘術ノ陸により呼ばれた亡霊が彼らかはわからないが、その希望に応えた舞いであった。小うるさいレイヤや闘争に昂っていたアレクシアさえもその舞いに引き込まれて言葉も出ず。
(素晴らしいものです)
 アーネストは静かに菊生を讃えた。


●終いにて。
 崩れた山道の復旧は終わり、人も往来している。道を守っていた地蔵は今も山道に四体並んでいる。
 その内のひとつに、誰が被せたのか笠を被る者がいる。その下には人形の首があり、それは様々な厄を受け負うと噂された。
 故に人々は、厄を受け取らないことがあればその首を刻んだ。そのため、人形の首は一目と見られぬ醜さになったという。
 夜な夜な、体が欲しいという声も聞く者もいる。
 誰もが恐れる山道では、今日も四体の地蔵が並び替え、一体だけが笠を被る。
 果たして、その下にあるのは人形の首か、それとも。
 今では怖がり、誰もその笠をめくる者はいないそうだ。
 だが、夜、人目のつかない時間になれば話は別。人形の首に身代わりを求める者が出る。そして、そういった者には天罰が下るとまことしやかに噂された。
 それでもなお、辛さを誰かへ背負わせたいとするのは人の性なのだろうか。
 なればこそ、そのような人から生まれた人形も、同じく人へその業を背負わせたいのかもしれない。
とっぴんぱらりのぷう。



・レイヤの春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)様、アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)様の印象が良くなっています。
 ハララァの予知するシナリオにお二人が参加された場合、レイヤの協力度が上がるかも知れません。
・レイヤのアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)様の印象が悪くなっています。
 ハララァの予知するシナリオに参加された場合、レイヤによる邪魔が発生する可能性があります。注意して下さい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年07月17日
宿敵 『妖怪移し身人形『更紗』』 を撃破!


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#サムライエンパイア


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月鴉・湊です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト