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夜露死苦新入生

#アルダワ魔法学園


●阿琉堕輪魔砲學園
「月日が流れるのは早いもので、アルダワ魔法学園が新入生を受け入れるようになってからもう一季節が巡ろうとしているでござる」
 ただ、学園側が一番求めている人材は事務方ではなく戦闘要員。平たく言うと強い人。故に、入学してくるのが品行方正な生徒ばかりとは限らないのでござるよ、と、祓月・清十郎(異邦ねこ・f16538)は球形のグリモアを突っついた。
「入学して結構経つにも関わらず、歓迎コンパをサボりにサボり、まだ一歩たりとも迷宮に足を踏み入れていない、不良(ワル)い奴らも居るのでござる」
 そんな不良達を何とかダンジョン攻略に連れ立って欲しい、というのが今回の依頼の大筋らしかった。
「件のワル共の名は暴走集団『血斗死威』」
 ケットシイ。
「迸る若さの赴くまま、地元ではぶんぶかぶいぶいご近所迷惑も顧みず爆音を轟かせていたのでござるが、そんなに元気が有り余っているのならせめて人様の為に使ったらどうだと喧々諤々紆余曲折の末、最終的にほぼ無理くり学園へ押し込められたのでござる」
 地元。
「地元については……日本で言うところの名古屋あたりに近い土地柄でござるなー」
 名古屋。
「無論、学園側も慈善事業で彼らを受け入れた訳ではないでござる。すぱげっちーよりこんがらがった迷宮を攻略するだけの実力が彼らにはあると、そう踏んだからからこそ引き取ったのでござるが……他の新入生にメンチは切るわ、授業にも出ないわ、日がな一日バイクいじってるだけで終わるわ、想定以上にやんちゃでほとほと手を焼いているのが現状なのでござる」
 それで後は任せたどうにか頼むと、最終的に猟兵(こちら)へお鉢が回ってきた訳だ。
「まぁ、どうにかするにあたって、ワル共全員ネコの皮を被ったモヒカンだと把握しておけば特に問題ないでござろう」
 問題しかないのでは。
「それでもってモヒカン故に正論・説得の類には超がつくレベルの耐性があるでござる」
 ネコだが正に馬の耳に念仏と言うヤツだ。
「これはもうアレでござるね。夕暮れ時の河川敷っぽいロケーションのダンジョンで、お互い分かり合うまで血みどろの決闘をするしかないでござるね」
 ないでござるか。
「拳と拳の新歓コンパ、仲良くなったその後は、一緒にはじめての迷宮探索でござる。しゅっ! しゅっ!」
 清十郎はシャドーボクシングの真似を始める。体術の心得があるわけでは無いのだろう。大して様になってない。
「……実際のところ、学園側の目は節穴では無いのでござる。彼らには迷宮攻略に必要な気力と根性とガッツと勇気がきちんと備わっているでござるよ」
 足りてないのは愛校精神……災魔と戦い、世界を守る気概だろうと清十郎は言う。
「『世界を護る』の一点において、猟兵はこれ以上ない位の本職(プロ)でござろう? 先輩としてその生きざまをそこそこ良い感じに見せつけてやれば、まーなんとか使命感とかに目覚めて八方丸く収まると思われるでござる。たぶん」
 思い切りぶつかり合わなければ熱意の方向修正が効かない場合もある。若いのならなおさらか。

 ……今回赴く迷宮の攻略難度と深部に待ち構える災魔の強さはそこまででもない。こちらが引率しなくても、彼らの本来の実力なら問題なく踏破できるレベルだ。
 これからの学園生活を考えるとあまり甘やかすのもよくないが、初めての迷宮探索、危険は少ないに越したことはないだろう。
「現地の人々と一緒に諸々の問題をあれこれ解決する。ヒーローズアースしかり、そう言うシチュエーションはこれからもっと増えていくかもしれないでござる。今回はその練習も兼ねていると思えば、こちらにとってもそう悪くない話でござるでしょ? 焦らず挫けず頑張ってファイトでござるよ。それではレッツゴーでござる!」


長谷部兼光
 昭和で言うと今年は94年だそうです。

●目的
 ・血と汗を流して友情を育み(武器の持ち込み、UCの使用可)、
 ・新入生と迷宮を探索し、
 ・ボスを撃破する。

●暴走集団『血斗死威』
 見た目はネコで中身はモヒカン。
 気力と根性とガッツと勇気がすごい。
 職業的には全員がガジェッティアです。
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第1章 日常 『鍛錬をしよう』

POW   :    拳と拳、体術勝負

SPD   :    技と技、技能勝負

WIZ   :    心と心、精神力勝負

👑5
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●良平クンと良子チャン
 転送直後。夕暮れ時の川原めいたダンジョンで猟兵達を出迎えたのは、スチームバイク(主燃料=水。超エコ仕様)に跨って、どこか懐かしくも厳めしい特攻服を纏った数十名のケットシー。否、血斗死威。
 縮尺(スケール)的にはちょっと大きめのお人形が玩具の自転車に乗っかっている様にしか見えないが、成程このサイズなら小回りが効いて、狭い迷宮内でも機動力を損なわず良い具合に行動することが出来るだろう。
 ネコたちが手にする武器は木刀に釘バットにチェーンにぱちんこ。更に、彼ら全員がガジェッティアだとすると、跨るバイクにも注意を払った方が良さそうだ。見た目からしてバリッバリの改造車、何かしら奇天烈な仕掛け(ギミック)が施されているかもしれない。
「おう! 早速来たにゃ? おみゃーさんらが良平クンだか良子チャンだか知らにゃ~が、こちとら不甲斐ない先輩の下に着くつもりはないにゃ。先輩風をびゅ~びゅ~吹かすつもりなら、それ相応の実力ってヤツを見せてもらわにゃあ始まんないってなもんにゃ!」
 威勢良く猟兵に啖呵を切ってくる三毛のネコ。どうやら彼が総長であるらしい。
「クックック……御託なんざどうでもいい。早いトコやっちまおうぜ総長。俺は今、過去最高に虫の居所が悪いんだから……ニャア!」
 衣装から察するに、総長の左右を固める2人のネコのうち、眼光鋭い狂貌の黒猫が特攻隊長で、
「ふ。食後のデザート床に落っことしただけでそんなにブチギレるとは何とも頼もしい。流石ネコなのに狂犬と言われてるだけの事はある。でも正直カルシウム足りてないと思うにゃ。煮干しもっと齧るにゃ」
 眼鏡を掛けている気持ち知的っぽそうな白猫が副長の様子。
「よぅし野郎ども! 情け無用にゃあ! オレ達を可愛がりに来たセンパイ方を、逆に可愛がり返してやるのにゃあ!」
 ミケ総長の号令一つ、血斗死威達はアクセル全開に、微塵の躊躇無く猟兵(こちら)目掛けて突っ込んでくる! なんて活きのいい後輩たちだろう。
 ともあれこの場は正真正銘、問答無用の決闘場。
 ここで彼らと分かり合うために必要なものは、何より、拳だ。

 ――尚。拳の内訳として、各種武器及びユーベルコードは当然含まれるものとする。
才堂・紅葉
「決闘なんてそんな。私、お嬢コースなので苦手なんです」

困ったように微笑んで、【情報収集】で調べておいた、彼等の好物のマタタビコーラを差し出す。
大事なのは対話た、そして礼儀作法だ。彼等も話せば分かってくれる猫だ。【礼儀作法、コミュ力】

「その。お近づきの印にいかがでしょうか?」

品の良い微笑で用意する。きちんと人数分有ります。
ただ栓抜きをわすれてきましたので。

「あ、少し離れてくださいね」

【殺気、グラップル、クィックドロウ、二回攻撃】
手刀の一振で瓶首を飛ばします。手早くやれば瓶首はその場に浮くので、返す手でキャッチします。危ないですからね。

「話の続きですが、決闘はいかがしましょうか?」

【優しさ、気合】


花邨・八千代
ほォん?
つまりアレだろ、マウントとりゃ良いんだろ?
オッケーオッケー、俺そーゆーのすっげー得意ー。

纏めてかかってこいよ、にゃんこども。
たっぷり可愛がってやらァ。

◆KAWAIGARI
「殺気」混じりの「恫喝」でまずはご挨拶。
南天を金棒に変えて『ブラッド・ガイスト』だ。
「怪力」を乗せて思いっきりぶん回すぜ、「2回攻撃」の「なぎ払い」。
「第六感」で攻撃避けつつ全力でぶっ飛ばしてくぞ。

あっはっはっ!中々良い動きしやがんなァにゃんこども!
中々楽しくて俺ァ嬉しいぞ!
とことん遊ぼうじゃねェか、わかり合うにはもうちょい拳が必要そうだしなァ。

最後の最期まで楽しませてくれや。


ベルゼドラ・アインシュタイン
不良の血が騒ぐので終始女を装う事は(面倒だから)止めるか
何だ何だ、野良猫がにゃーにゃー喚いてやがる
こういう単細胞共は力ずくで分からせるのが一番だよな、ホント
傭兵時代は俺もこんなだったぜ…思い出してうずうずしてきたわ


おらおらてめぇら、先輩に歯向かうたぁ礼儀がなってねぇな?ぁ”??
所詮可愛い面だけのにゃんこだったら、思う存分愛でてやるから覚悟しろ!!

捲し立てながらにゃんこ共の群れに【殺気】を振り撒きつつ此方も突っ込む
愛用の拷問具を振り回すがまぁ、これは今回は脅し用で【恐怖を与える】
にゃんこ共の中心に辿り着けば
間髪入れずに【ベルゼブブの鉄槌】

暑苦しいからよ
その毛皮まるっと燃やしてやるぜ感謝しな!!!


エスタシュ・ロックドア
……ガジェッティアチューンのスチームバイク
良いなぁ
おっと、わーってるって椋(f01816)
お前と一緒にすんなちゃーんとやる事やってやんよ

椋を後ろに乗っけて、鉄塊剣担いでシンディーちゃんに【騎乗】【運転】
ライディングテク見せ付け【存在感】出しつつ登場
スライドブレーキで停車するぜ
調子こいてる新入生がいるって?
『羅刹旋風』発動
【怪力】で鉄塊剣を軽々振り回しながら軽く威嚇だ
それでも向かって来るなら上等
闘ろうじゃねぇか
シンディーちゃんで突っ込みつつ鉄塊剣を地面でギャリギャリ擦りながら殴りかかるぜ
【なぎ払い】【吹き飛ばし】だ
血斗死威連中の攻撃は、まぁ一発位貰っといてやる
その後すぐ【カウンター】だがな


六島・椋
【存在感】あるオボロと共に、エスタ(f01818)の後ろから姿を現す
自分にとって骨は美しいものだが、
向こうにとっては衝撃かもしれないしな、経験的に
やあどうも、可愛がってくれる後輩がいると聞いた

エスタの威嚇に合わせ、オボロと数体の蝙蝠骨格人形に前に出てもらう
オボロ、フジ、ハギ、モミジ、すまないが怖がらせてやってくれ

突っ込むエスタを隠れ蓑に【目立たない】よう降り、
人形たちと共に、後輩たちの死角から【早業・範囲攻撃】でバイクのタイヤを狙う
自分は投げナイフを【投擲】しよう
流石にバイク本体を壊すのはな

相方とは逆に【第六感】と絶望の福音で攻撃を避けきるつもりだ
いけそうなら彼らのバイクの上を跳ね回ってやろう


暁・エリカ
元気があるケットシー達だね、悪くない…
でも可愛がるってなんだろう…案外可愛い物のが好きなのかな?

ん…確かバイク…だったかな?あんまり走り回ると危ないからね、先ずは動きを止めよう
【聞き耳】を立てて【第六感】でバイクの動きを察知して迎えよう
それから【大量の狐】をこゃーんと召喚しておこうか…そうだな…ダンジョンを埋め尽くす勢いで
彼らは狩りが上手なんだ、どんなに早く動こうとも敵の動きを【見切り】、【スナイパー】のように獲物に飛びかかるよ
大きい子はケットシーの倍ぐらい大きいから怪我には気をつけてね
遊びたがりの子が多いんだ、舐めたり遊そぼうとしてきたりしてくるけど付き合ってあげて欲しい

アドリブ連携歓迎


ジェイクス・ライアー
これはまた可愛らしい擦れ方を
『先輩』として、教育してあげよう

突撃してくる相手のバイクを避けることなく叩き込む右ストレート一発
ギミックがなんだね?叩き壊せば屑と変わらん
そもそもバッドの使い方がなってない
バットはな
こう使うんだよッッッ!!!(振り抜くフルスイング)

さっきからブンブンブンブンやかましい煙吹かせやがって、イキがったガキ共が
ヤリ方が甘ェんだよッッッ!!タマ取る気あンのか!?Screw you!ふぐり捥がれる覚悟くらいは出来てるんだろうなァ!?

動きが遅いわ愚図共!!!そのみじけぇ手足詰められてマトリョシカにされてェのか?!あ゛!!??

さて、説得はこんなものか
少しは更生してくれるといいのだが




「待ってください!」
「にゃ?」
 加速する血斗死威。迎え撃つ猟兵。
 まさに先輩と後輩が全てを賭してぶつかり合おうとしたその直前。誰より先に才堂・紅葉(お嬢・f08859)がその身を挺して両者の前に立ち塞がり、一時、夕陽の河川敷は凪ぐ。
「おう、何にゃ? ここはもうおみゃーさんみたいな子が居ていい場所じゃないにゃ。すぐ退くにゃ」
 暴力に頼るでもなく、言葉で紅葉を退かそうとするミケ総長。
『一見』、気弱で病弱そうなお嬢様。そんな女の子(ヒロイン)が目の前に現れたとあっては、嫌が応にもまず立ち止まらなければ不良(ワル)の名折れというものだ。
 ……名が折れているから不良なのだが。
「決闘なんてそんな。私、お嬢コースなので苦手なんです」
「お嬢コース……!」
「むぅ……知っているのかにゃシロ副長!?」
「文武両道才色兼備は勿論の事、何より品格の有無が重要視され選ばれた一握りの人間しか入ることが出来ないと言われてるあの……!」
「本当かにゃ! さすが副長は物知りにゃ。メガネ掛けてるだけはあるにゃあ」
 果たしてどうだろう。眼鏡を掛けていようが中身はモヒカンだ。見栄を張るために知ったかぶっているだけかもしれない。が、もしかすると本当に知っているのかもしれない。全ては副長のみぞ知るところだ。
 ともあれ紅葉は困ったように微笑んで、瓶のマタタビコーラを差し出した。
 事前に調べはつけてある。血斗死威の下っ端がマタタビコーラを頻繁に買い込んでる姿が目撃されているので、これが彼らの好物なのはまず間違いない。
「その。お近づきの印にいかがでしょうか?」
 大事なのは対話と、そして何より礼儀作法。敵意を持たず、ただ柔らかに。言葉が通じるのなら、彼等もきっと話せば分かってくれる猫だ。と思う。
「ふふん。モノで釣ろうって魂胆かにゃ? まぁ悪い気はしないにゃ貰っておくにゃ」
 紅葉は総長の横柄な態度にも、品の良い笑みで応じる。
 そう。例えどう言われようとも。きちんと人数分用意されたマタタビコーラは、分かり合う為の、その嚆矢。
 ただし分かり合う為のコーラは持ってきたが、瓶のふたを開けるための栓抜きはうっかり忘れてしまった。
 なので紅葉は仕方なく、
「あ、少し離れてくださいね」
 ハイペリアの紋章輝くその右手を、殺意の塊で入念に研磨して、目にも止まらぬ速さの手刀を一閃。
 刹那。数十の瓶首は悉く宙を舞い、手刀を解いた紅葉の右手は復路、全ての瓶首を地に落ちる前に回収して帰還する。
 瓶が散らばったら危ないし、何よりポイ捨てなどお嬢様がやっていい行為では無いのだ。
「話の続きですが、決闘はいかがしましょうか?」
 紅葉は殺気(やさしさ)が際立った口調で血斗死威たちにそう尋ねると、気力と根性とガッツと勇気がとてもすごいミケ総長はコーラを呑み干し不敵に笑い、まだ余ってる新品の瓶を寄越せと言ってきた。
 何をするつもりなのか、紅葉が瓶を手渡すと、その位俺にも出来ると瓶首を叩き、噛みつき、また叩き、小休止し、そして十分後。
 ミケ総長は得意げに、瓶首のへし折れたマタタビコーラを紅葉に差し出した。
「……にゃ?」
 にゃ、じゃない。
 瓶首はバキバキでコーラには硝子の粒子がシュガーパウダーの如く混入しており、恐らく痛めたのだろう右手首をしきりに振って、極めつけ、総長のつぶらな瞳はやたらと潤んでいた。この有様で紅葉と同様の事を成し遂げたのだと胸を張るのは烏滸がましいにも程ある。
「……はっ! いけませんにゃ総長! これはきっと我々と瓶を戦わせ、じわじわと消耗するのを待つ作戦ですにゃあ!」
「にゃんと! おのれ何たる策士、恐るべきはお嬢コース! 副長が気付かなければまんまと術中にハマるところだったにゃ……!」
 どう解釈してそうなったのか。
「へぇ。バレてしまってはしょうがない。どうやら、そちらにも中々頭の切れる人材が居るようだね」
 その上さらに暁・エリカ(狐の賢者・f06763)が少々の悪戯心を利かせてネコたちの勘違いを加速させる。
 紅葉の目論見とは幾分……幾分程度ずれているが、どうあれ向こうが何かしらの形でこちらに畏れを抱いているのは確か。なので、そのまま乗っかることにした。
「副長あれは!」
「間違いありませんにゃ。奴こそがお嬢コース第二の刺客……!」
 そう言うことにしておこう。
「そうそう好きにはやらせ無いにゃ! 可愛がり再開にゃあ!」
 最早惑わされまいと――何に惑わされていたのか不明だが――血斗死威達は再びアクセルを吹かし、円の軌道で猟兵達を取り囲み、八方から突撃を仕掛けてくる。
「元気があるケットシー達だね、悪くない……」
 凛と立った銀(しろがね)の狐耳、爆音で満たされた戦場から、エリカは自身へ接近して来るそれのみを直感的に拾い分け、ネコ達の突撃をひらりとかわす。
「……でも可愛がるってなんだろう……案外可愛い物のが好きなのかな?」
 多分そうだろう。なんだかきっとそんな気がしてきた。
 だったら善は急げだ。惜しげも無く可愛いものをぶつけてやることにしよう。そんな決意に満ちた青の瞳が夕陽を受けて煌く。
「あの瞳の輝き……! 野郎ども気を付けるにゃ! きっと眼からビームとか来るにゃ!」
 しかし。総長の懸念とは裏腹に、エリカの瞳が輝いても特に何も起こらなかった。
「……ゃーん……こゃーん」
 ――否。エリカの一手は既に打たれていたのだ。そこら辺のちょっと背が伸びた草叢から狐が一匹、狐が二匹、その後もどんどん現れて、気付けば十と言わず百とも言えず、ダンジョンを埋め尽くす勢いで狐がたくさん。河川敷はフォックス大戦争の様相を呈していた。
「なんにゃこれ!?」
「彼らは狩りが上手なんだ、どんなに早く動こうとも敵の動きを見切り、スナイパーのように獲物に飛びかかるよ。あ。大きい子はケットシーの倍ぐらい大きいから怪我には気をつけてね」
 きつねとねこがどたばた取っ組み合うその光景はなんだかとってもエモかった。どこぞのバニーが生きていれば、喜んで間に挟まりたいと言い出していたかもしれない。
「副長! この状況を何とかするにゃー!」
「こゃーん」
 総長が助けを求めた副長は、しかしいつの間にか副長では無かった。人知れず副長に擬態した狐は、総長をがしっと捕まえ遊び倒す気満々だ!
「にゃ!? こいつメガネ掛けて白っぽいのに副長じゃないにゃ~!」
「申し訳ないですにゃ、メガネ取られちゃいましたにゃー!」
「遊びたがりの子が多いんだ、舐めたり遊そぼうとしてきたりしてくるけど付き合ってあげて欲しい」
 何たるフォックス八ザード。最早ネコ達はされるがまま狐まみれになるしかないと思われたが、しかしそこは腐ってもガジェッティア。
 スチームバイクを一人旅でも便利なクッキングモードに変形させ、チームで買い込んでおいた夕飯の材料を都合よく錬成することで油揚げを量産し放り投げ、狐の意識を自分達から逸らして見せる。
 ……だが、血斗死威側が払った犠牲も大きい。狐達を抑え込むため、チームの二割を油揚げ量産に割かなければならなくなってしまったのだ。


「……ガジェッティアチューンのスチームバイク……良いなぁ」
「何だ。いつもはこっちを咎めて来る癖に、同じ状況になれば、エスタだってそうじゃないか」
「―――おっと! わーってるって椋。お前と一緒にすんな。ちゃーんとやる事やってやんよ!」

 スチームバイクが吐き出す爆音を切り裂き戦場を疾走するのは、彼らの物とは異なる技術(テクノロジー)で造られた、しかし彼らと同類の大型二輪。エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)の駆るシンディーちゃんは何に縛られることも無く、ただ、威風堂々と最前線にその身を曝す。
 直後、スライドブレーキを勢いよくかけて、河川敷へ大きなタイヤ痕を刻みながらダイナミックに停車すると、エスタシュは無造作に、燧石の名を持つ鉄塊を振り回した。
「どれ……調子こいてる新入生がいるって?」
 威圧の色濃い口調と共に、ゆっくりサングラスを外してヤンチャな後輩たちを睨む。
 種族の差だ。シンディーちゃんも、エスタシュも、ケットシーと彼らが跨るバイクより何倍も大きい。
「あ? 何にゃ? 何か文句あるのかにゃ?」
 けれども血斗死威は一切臆せず睨み返してくるのだから、確かに大した胆力の持ち主なのだろう。このまま腐らせておくのは勿体ない。
「やあどうも、可愛がってくれる後輩がいると聞いた」
 吐息交じり、呟くようにそう言って、シンディーちゃんの後部から降りた六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)は、オボロとサカズキ、二つの骨格人形を同時に血斗死威の前で繰り、演じる。
「……エスタの威圧に耐え切るとはなかなか骨太。けど、これならどうだろう――オボロ、フジ、ハギ、モミジ、すまないが彼らを怖がらせてやってくれ。」
 漆黒の眼窩でネコ達を見つめる骸骨。
 夕闇空に羽搏く骨蝙蝠。
 椋にとって骨は美しいもの。であるが、さて、血斗死威達にとってはどうだろう。
「にゃー! 骨が! 骨が! こっちを地獄に引きずり込もうと手招きしてるぜ、だにゃあ!」
「落ち着くにゃ気をしっかり持つにゃクロ特攻隊長! 骨がなんぼのもんにゃ! カルシウム足りてないにゃ!」
 予想通り、衝撃的だったらしい。場合によってはもう二つの骨にも出陣願おうと思ったが、総長以外は阿鼻叫喚だ。不良ぶっていてもこう言うのには弱いのか。
「くっ、流石噂の転校生。まさか血斗死威唯一の泣き所、十年前のあの町内肝試し大海の悲劇まで完璧にリサーチ済みとは恐れ入ったにゃ……!」
「え。ごめん。完全な初耳だ」
 なんてどうでもいいエピソードだろう。
「フフフ。しかし、あの時総長の俺だけはおばあちゃん家に泊まりに行って難を逃れたのまでは知らなかったようにゃね……!」
「ちっ! なんてこった。まさか椋が情報戦でしくじるとはな……!」
 あまりの衝撃に、エスタシュはサングラスを掌からから落としかけた。真似をした。
「エスタ……。キミまで乗っかったらいよいよ収集つかなくなるじゃないか」
「皆! 落ち着くにゃ平気にゃ大丈夫にゃ! 俺がこの身をもってそれを証明してやるにゃ!」
 言って、総長はバイクを身長嵩増しモードに変形させると、オボロの眼窩に丁度目線を合わせ、
「おいガイコツ! ちょっと一っ走り売店まで行ってぜんざいとマタタビコーラ買って来るにゃ!」
 即骨法。
 総長は敢え無く川底に沈んだ。
「総長! ぐぐぐ! 俺達も怖がってる場合じゃないぜ、にゃ!」
 総長の死(死んでない)を目の当たりにしたクロ特攻隊長たちは、髑髏の恐怖に縛られる体に鞭打って無理くり動かし、咆哮と共に一致団結。椋とエスタシュに弔い合戦を挑む。
「へっ、上等! 気の済むまで徹底的に闘ってやるぜ!」
 唸る木刀、響くバット、波打つチェーン。傷は男の勲章と、エスタシュとシンディーちゃんは矢継ぎ早に全方位から迫るそれらを甘んじて受け止め、雪崩か波濤か、それでもなお止まらずに疾走する。
 鉄塊剣が火花を散らして地を抉り、振り抜く一撃は有象無象の血斗死威を払ったが、エスタシュの猛進に負けじと喰らいつく漢が一人。クロ特攻隊長だ。
 特攻隊長は自前のバイクを大剣(ブレード)に変形させ、エスタシュの鉄塊剣(フリント)を受け止める。
「やるな。だが、悪く思うな。体格差だ」
「にゃんの。俺は唯の時間稼ぎに過ぎない……にゃ!」
 エスタシュが特攻隊長を吹き飛ばしたと同時、彼を取り囲んでいたバイク達から捕縛網が発射され、エスタシュとシンディーちゃん、そして鉄塊剣を一纏めに絡め取る。
「エスタ。必要なら手を貸そうか」
 左右両手で糸を繰り、さらに数本の投げナイフを指に挟んだ椋が訊く。
「問題ねぇな。要らねぇよ」
「了解」
 全身から吹き上がる群青色の業火が十重二十重に絡まった網を焼き切って、その健在を示すように、エスタシュは今一度鉄塊剣を力強く振り回した。
「大輪の花火のごとく、か。さて……」
 夕日の川原に現れた、群青色の隠れ蓑。椋はそれに身を潜め密やかに、後輩たちの死角へ侵入する。
(「流石にバイク本体を壊すのはな」)
 そんなさり気ない先輩の優しさが、素直に後輩達に伝わってくれれば良いのだが。
「相乗り、失礼」
 椋はそろりと一機のバイクの後部に降り立ち、
「にゃにゃ!?」
 密やかに、密やかに、至近まで迫ったオボロの掌がバイクの前輪を破り、サカズキの白翼がすれ違いざま後輪を裂く。血斗死威唯達のバイクの上を跳ねまわりながら、それを繰り返すこと数回。
 遅れて椋の存在に気付いたネコ達は椋へ一斉にぱちんこ弾を放つが、即座炎の揺らめきの奥に隠れた椋は、まるですべての弾道を予め予測していたように、難無くそれらを回避する。
 さらに椋自身が広範囲にナイフをばら撒いて、血斗死威のバイクの大多数は『走行不能』に陥った。

 のだが。
「こうにゃったら仕方ない、奥の手にゃあ!」
 風呂上がりよろしく河底から復活したミケ総長がそう叫ぶと、なんと血斗死威のバイクからにょっきりプロペラが生えて全機離陸した。出鱈目な。
「ふっふっふ。燃料の消費が激しくてあんまりやりたくにゃい禁断の飛行も~どにゃ。まぁ水が尽きたら川から汲めばいいにゃ。というか俺達バイク乗りだから地に足つけてないと不安でしょうがないにゃ。お空恐いにゃ」
 驚異のテクノロジーにより、血斗死威達は空へと飛び立ったが。しかし語るに堕ちていた。


「ほォん? つまりアレだろ、マウントとりゃ良いんだろ? オッケーオッケー、俺そーゆーのすっげー得意ー」
 方や羅刹の女――花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)が煙管を口に、
「こういう単細胞共は力ずくで分からせるのが一番だよな、ホント。傭兵時代は俺もこんなだったぜ……思い出してうずうずしてきたわ。不良(むかし)の血が騒ぐってヤツだ」
 淑女の仮面を脱ぎ去った女――ベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)が煙草を口に。二人の周囲には紫煙が気ままにゆらゆら揺蕩って、戦場の最中にありながら、そこだけ乱痴気騒ぎから遠く隔絶された気配があった。
 真実、二人が全方位に巡らせた殺気が、何を言わずとも血斗死威達を警戒させ、一定以上の距離に踏み込ませない。
 その上、
「あんたら、悠々自適に居られるのもこれまでゲフゲフ! 覚悟するゲェッーホゲホ! たばこゲホゲホゲフゲフゲファ!」
 紫煙自体が駄目らしい。ミケ総長は盛大に咳き込んだ。
「何だ何だ、野良猫がにゃーにゃー喚いてやがる。てか、不良なのに煙草苦手かよ」
 仕様も無いとベルゼドラは紫煙を吐き、
「はッ、とんだオコチャマじゃねぇか!」
 八千代が悪辣な笑みを崩さず子猫を煽る。
「ぐむむ! 何たる愚弄! 美人さんだからって言っていい事と悪いことがあるにゃ! その言葉、絶っ対後悔させてやるにゃ! 吐いた唾飲まんときーにゃ!」
 空飛ぶ血斗死威達のバイクのフロント部が展開し、現われた数十の機銃(ゴム弾)、その全てが二人に向けられる。
「よぅし。いいぜ。その意気だ。纏めてかかってこいよ、にゃんこども。たっぷり可愛がってやらァ!」
「所詮可愛い面だけのにゃんこだったら……思う存分愛でてやるから覚悟しろ!!」
 八千代とベルゼドラ。大人の二人は漸く紫煙を潰し、背伸びの一つもした後に、血斗死威達と相対する。

「強がっていられるのもこれまでにゃ! 今にきっと泣きべそかかせてやるにゃ!」
「そうにゃ!」
「こちとらプライドの安売りはしないにゃ!」
「そうにゃそうにゃ!」
「でも強くて美人なお姉さん達に可愛がられるのも吝かじゃないにゃあ……」
「そうにゃあ!!!」
「……誰にゃ今足並乱そうとしたやつ!?」

 総長の掛け声の元、妙に纏まってない銃撃を潜り抜け、八千代は血斗死威達に南天紋の描かれた印籠を翳す。
「ふん。そんな紋所なんて知らにゃいにゃ。目に入んないのにゃあ~」
「ああ。そう言うと思ったぜ。だから俺が今、手ずから、アンタらの眼の奥に捩じり込んでやるよォ!」
 言うが早いか、南天は一瞬きの間に八千代の血を啜って金棒へと変じ、数度それを振るって感触を確かめ終えた八千代は嗤う。
 まさかこの金棒が空まで届かないたァ思ってないよな? と。
「にゃ!?」
 大岩を投じた水面の様に、八千代の脚は空を躁がせ宙を蹴り、夕焼け空を駆け上がって血斗死威達に迫る。
「じょ、上昇にゃ弾幕にゃ回避機動にゃ!」
「あっはっはっ! 良い動きしやがんなァにゃんこども! 中々楽しくて俺ァ嬉しいぞ!」
 第六感の赴くままに、降り注ぐ弾雨の一雫に至る全てを躱す。赤の瞳は沈みゆく夕陽に変わって天高く昇り、そして。
「上空(マウント)、取ったぜ?」
「にゃんと!?」
 弾雨のさらに上から金棒を振り下ろし、まずは手付としてミケ総長をバイクごと叩き落とす。
「最初の一つが大金星たァ幸先良い。とことん遊ぼうじゃねェか、わかり合うにはもうちょい拳が必要そうだしなァ。最後の最期まで楽しませてくれや」
 ダンジョンの見えない天井(ゆか)を蹴って、飛翔回数を元に戻した八千代の眼下には……選り取り見取りの獲物(バイク)が居た。

「にゃんとも。制空権は取られたにゃ。タイヤも壊れて、最早人力(ガッツ)だけがある状態にゃ。暴走族の名が泣くにゃー。練り歩くにゃ? 暴歩族にゃ?」
 真っ先に落ちた総長が空を見上げれば雹塊の如く、八千代に叩かれ勢い墜落してくる多数の血斗死威。いくら根性がすごいとはいえ、その戦闘スタイルは人機一体、マシンが無ければ発揮できる実力は半分以下。このままネコのみで踏ん張るしか無いのは酷と言うものだ。
「大丈夫にゃ総長!」
「お前は……トラジマ団員!」
「新しくタイヤ製造機造りましたニャー。これで再び地を走れますニャー」
「ナイスにゃ! これでまだまだ戦えるにゃあ!」
 手早くタイヤを交換した血斗死威達。生意気盛りにまだまだ終わりは無いようで、性懲りも無く武器を手に、ベルゼドラ目掛けて距離を詰める。
「おらおらてめぇら! 先輩に歯向かうたぁ礼儀がなってねぇな?ぁ”??」
 しかし、ネコ達に寄って集られて、怯むベルゼドラではない。逆に殺気を込めた言葉で捲し立て、精神的に彼らを圧倒するものの、
「へーんだ! まだまだおみゃーさんらを先輩と認めたわけじゃ無いにゃー! だから正直ガクブルだけどノーカンにゃあ!」
 この強がりだ。
 ともすれば止むを得ぬ。愛用の三日月二つを宙へ解き放ち、その鋭利なる軌道を以ってネコ達に目一杯の恐怖をくれてやらねばなるまい。
「そら、さっきまでの威勢は如何した?」
「う、うぉう。皆下がるにゃ。あれに触れたらお陀仏だにゃ……」
 但しあくまでこれは脅迫用。ネコ達を如何にかするつもりはない。
 それでも三日月達が道を開けよ乱舞するならば、ネコ達は必然それに従わざるを得ない。
 そうして拓いた道を進み、彼らの中心までたどり着いたベルゼドラは――全てを燃やし尽くすため、蠅の王を召喚する。
「フン! 甘いにゃ! 全機蠅叩き抜刀――」
「馬鹿。それでどうにかなるもんかよ」
 なるわけが無かった。
「暑苦しいからよ その毛皮まるっと燃やしてやるぜ感謝しな!!!」
「あわわわあっちいにゃー!!!!」
 蠅の王の生み出す無数の業火球が、草を、土を、そしてネコの毛を、全てを焼いて灰にする。
「にゃー!!! 唯一の給水ポイントがっ!」
 更に川へ着水した業火球達は一瞬でその全てを蒸発せしめ、スチームバイクの補給路を断つ。

 最早どう考えても折れた方が速いのだが、それでも易々と膝を屈しないのが不良(ワル)の道。
 どうやらお互い、行きつくところまで行くしかないようだ。


「おやおや、これはまた可愛らしい擦れ方を。『先輩』として、教育してあげよう」
 遅めの換毛期のお陰で業火を逃れたネコ達の、その眼前に現れたのはジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)。
 洗練された身なり、動作の一つ一つが軽やかで、気品すら感じさせる立ち振る舞い。その男の在り方は、正しく紳士だった。
 そんな紳士を間近で見たネコ達はヒソヒソと、
「紳士にゃ? ジェントルマンにゃ? 怖くないにゃ?」
「立派なおじ様にゃあ……」
「つまり親父狩りにゃ? いくにゃ? 行っちゃうにゃ?」
「行っちゃうにゃ。生まれて初めての経験でドキドキにゃー」
 ロクでも無い事を話し合っていた。
「ようようそこのジェントルマン! 命が惜しけりゃみぐるみ全部おいてくにゃー!」
 先程の二人と比べて与しやすいと見たか、ミケ総長が釘バットぶんぶん振り回し、先陣切ってジェイクスへ突撃する。
「はっはっは。最近の若者は。本当に。全く、何というか……」
 相手は物腰落ち着いた紳士、少し驚かせばすぐに折れると恐らくミケ総長は思っていたのだろう。が。
「……にゃ? にゃ!?」
 突如の震動。衝撃。がしゃりと金属がひしゃげる音。もしや事故(ダンス)っちまったかとハンドルにしがみついていた総長は、息つく間もなく、バイクの前面に突き刺さったジェイクスの右腕……素手を見た。
「ギミックがなんだね? 叩き壊せば屑と変わらん」
「えっ? あのすいません。、紳士……さん?」
 穏やかな紳士の顔から一転、溢れんばかりの怒気をはらむジェイクスの表情に、総長は思わずにゃごや弁も忘れて敬語だった。
「そもそもバッドの使い方がなってない」
 ジェイクスは持参のバットを構え、
「いいか、バットはな」
 タイミングを計って片足を大きく上げると、
「こう使うんだよッッッ!!!」
 全身全霊のフルスイングで、有無も言わさずミケ総長をダンジョンの端まで叩き飛ばした。
「にゃああぁぁぁぁ………!?」
「総長~!?」
 遺された血斗死威達が総長の安否を気にしている余裕は無い。何故ならもう既に、ジェイクス主催・地獄の千本ノック地獄(パーティ)、その恐怖の顎は開かれているからだ。
「さっきからブンブンブンブンやかましい煙吹かせやがって、イキがったガキ共が! ヤリ方が甘ェんだよッッッ!! 命(タマ)取る気あンのか!?」
「にゃー! やめるにゃー!俺達は球じゃないにゃー!」
「黙れ! 腑抜けのお前達は今から問答無用で全員『タマ』だ! ほら行くぞタマ一号!」
「にゃー……!」
 ジェイクスが一本、一本、心を込めてバットを振り抜く度に、流れ星が弧を描き、夕焼け空を彩った。
「動きが遅いわ愚図共!!!そのみじけぇ手足詰められてマトリョシカにされてェのか?!あ゛!!??」
「このおじさま全然紳士じゃないにゃー! きっとギャングかマフィアの幹部だにゃ―!」
 不思議なことに悲鳴は全く、一つも聞こえない。
 実の所不思議でもなんでもなく、スチームバイクのぶんぶんうるさいエンジン音が、タマ達の悲鳴を遮っているからだった。
「Screw you! ふぐりもがれる覚悟くらいは出来てるんだろうなァ!?」
「勘弁するにゃあ! 急所を攻撃するのは不良(ワル)でもやらないにゃー!! 不良にだって情けは存在するにゃあ!」
 煙草が苦手、コーラが好き、親父狩りが初めて……バイクの主燃料よろしく、この集団、暴走する以外は意外とクリーンなのかもしれない。

 タマたちを粗方星にし終わった後。
 ジェイクスは服装の乱れを優雅に繕い、ほう、と一息。空を見上げる。
「さて、説得はこんなものか。少しは更生してくれるといいのだが」
 壁(そら)には所狭しと無数の星たちが――めり込んでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



「ま、まだにゃ。まだまだにゃ。血斗死威は気力と根性とガッツと勇気がすごいのにゃ……!」
 誰よりダメージが深くとも、それでも未だヘコたれず、よろよろ立ち上がる三毛総長。
 携えたスパナ一本でジャンク寸前の愛機をレストアし、再び跨りイグニッション。
 マフラーが吐き出す音は途切れ途切れで、車体は隈なく罅だらけ。残りの燃料とてもう心許ないが、そんな事は関係ない。
 動く限りは走るのが、血斗死威の生き様だ。
千桜・エリシャ
空気を読んで(?)セーラー服姿で参りましょう

あら、かわいらしい猫さんたちですこと
私、猫は好きですわ
まあ、私のことをかわいがってくださりますの?
嬉しい…私、今ちょうど喉が乾いておりましたの
何か買ってきてくださらない?
傾世桜花――上目遣いでしなを作っておねだりを
お願いできるかしら?
ついでに甘い物もお願いしますわね!

あら、でもさすが気力と根性がある猫さんですこと
魅了が効かない猫さんには致し方ありません…
バイクは見切ってカウンター
すれ違いざまに2回攻撃で車輪を切り刻んで差し上げましょう
走れないバイクはただのガラクタですわね?
さあ、私のことしか考えられないようにしてあげる
魅了が効くまで桜吹雪の渦へご案内


八幡・茜
フィンさん(f00295)と一緒

血斗死威の人たち、かわいいわね!
ふふふ、この美人なおねーさんがみんなを舎弟にしてあげるわ!

拳と拳で語り合う。良いわね! かかってきなさい!
と言って殴りかかってきたら、その手を取ってお友達になりましょう!
ガジェットのバイクで突っ込んできたらよく見て避けて、手を握るわね!

さて、フィンさんは……ひえひえのケットシーさんね?!
ふわふわもふもふでひえひえなんて素敵ね! 暑い時期には最高だわ!

上手く勝てたら
どう? 参ったかしら! 参ったのならば、その体を存分に堪能させてもらうわ! もふもふもふもふ
もふもふでかわいい舎弟、最高ね!
ふふふ、もっとひえひえになったらもっと素敵ね?


フィン・クランケット
茜さん(f04526)と!

かわいい…かわい…かわいいですかぁ?あれ…(モヒカンキャッツをじとーっと見)
ま、まぁ、茜さんもやる気ですし、私もがんばって――
(何かしらの攻撃を受ける)

…がんば(二発目)

あーーーもう!!
ぜーーーーーったい許さないですからね!!!
凍れ!!
スリップしろ!!
コタツの中に詰め込んで猫まんじゅうにしてやる!!
(UCで大人げなく周囲一帯凍らせる)

はっ
てへぺろ☆
やだやだ、冗談ですよぉ、冗談っ
茜さーん、私ももふもふさせてくださぁーい

もふもふ、もふもふっ
(氷の妖精さんに頼んで、キンキンに冷やした手で)
もふもふ、もふもふっ♪
頭は冷えましたかー?そうですかー
うふふふふ、良かったですねぇ




「血斗死威の人たち、かわいいわね!」
 何処の世界でも、どんな形でも、新たな出会いは喜ばしく。ましてそれが可愛い要素だけで構成された猫の妖精・ケットシー達との邂逅ともなれば、可愛いもの好きな八幡・茜(銀狐・f04526)のテンションは運命的に高くなる。が、
「かわいい……かわい……かわいいですかぁ? あれ……」
 フィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)は、茜の感嘆に若干小首を傾げつつ、厳しい審美眼で血斗死威(モヒカン)達を観察する。
 素体がネコ故ある程度の愛らしさが保証されているのは確かだが、この世界の流行(トレンド)から考えても相当時代遅れな特攻服、我が物顔で騒音をまき散らす素行の悪さ、誰彼構わず挨拶代わりにメンチ切ってくるその態度。
 総合すると個人的にこれはちょっと無いかなぁ……と思ったが、フィンがそんな素直な感想を茜に打ち明けるべきか否かを逡巡しているその隙に、当の茜は駆け出した。
「ふふふ、この美人なおねーさんがみんなを舎弟にしてあげるわ!」
 自信満々な茜の振る舞い引き寄せらるように、ついさっきまでお空のお星さまだった血斗死威達が集結する。打ち身、たんこぶは据え置きだ。
「拳と拳で語り合う。良いわね! かかってきなさい!」
「大した度胸にゃ。でも度胸ならこっちだって負けてらんないにゃ! それじゃ行くに――!」

「ちょっと待つにゃ!」
「にゃんにゃ!?」
「彼女の姿をよく見るにゃ」
「よく見るも何も、美人な狐のお姉さんにゃ。にゃんならごはんに誘いたいくらいだにゃ――はっ!?」
 ネコ達は何かに気付いたらしい。
「そうにゃ狐にゃ! 第二の刺客はこう言ってたにゃ。『大きい狐(こ)はケットシーの倍ぐらい大きい』ってにゃ!」
「それじゃああのお姉さんがフォックスたちの親玉――!?」
 違う。
「きっとそうに違いにゃいにゃ!」
 全然違う。
「……っく! けど今度はそう簡単に術中にはまったりしにゃいにゃ! ぶっちぎってやるにゃ!」
 茜の全く与り知らないところで、与り知らない話が纏まったらしい。
 負けん気アクセル全開に、一匹の血斗死威が激突も厭わず先陣切って茜に仕掛ける。
 けれども小さい猫のそれ、茜は軽やか跳躍し、すれ違いざまバイクの直上でくるりと一回転。
 バイクに乗ってたネコだけを見事捕獲(キャッチ)し、抱きかかえながらお友達になりましょう、と、平和的に手と肉球(て)を繋ぐ。
「にゃにするにゃ! 手をつなぐのは悪くないけどそんなんで絆されたりしないにゃ! 離すにゃー!」
「いいえ、決してこの手を離さない!」
 果たして、頑固なネコ達に茜の誠意は届くのか。
 いずれにせよ、繋いだ手からは友達になることを強制される毒電波が流れ、精神的なショックにより全てが解決するので問題ない。
「お、おい、大丈夫なの……かにゃ?」
 茜と手を繋いだネコが沈黙してしばらく。仲間の一人が彼の身を案じたが、
「ダイジョウブニャ。世ノ中全部らぶあんどぴーすニャー」
「洗脳されてるにゃー!」
 ……彼らはまだまだ年若いケットシー。故に身内が他者と仲良くしているところ見て、洗脳されている、と誤認しても仕方がない。
 仕方が無いのだ。

 順調にお友達を増やし、血斗死威(モヒカン)達と楽しそうにじゃれあっている茜を眺めていると、やはり彼女の言う通り彼らも可愛いげがあるかもしれない、そんな感情が、
(「無いな……」)
 フィンの中では全く湧かなかった。
「ま、まぁ、茜さんもやる気ですし、私もがんばって――」
「――にゃ!」
 不意に右膝を襲うモヒカンの木刀。地味に、地味にだが……骨に響く。
 けれどここは見渡す限り全て敵意に塗れた戦場。誰かを狙った流れ木刀が不意に当たる事もあるだろう。
 なのでここは広い心で――。
「……がんば」
「――にゃ!」
 二撃目。やはり右膝。

「効いてるにゃ?」
「きっと効いてるにゃ。女の人の顔とかボデーとかアホ毛をぶつのは躊躇われるニャ。だからローにゃ。徹底的にローにゃ」
「ダメージは蓄積するにゃ。きっと後一発でダウン……」

「あーーーもう!! ぜーーーーーったい許さないですからね!!!」
 堪忍袋の緒が切れた。
「凍れ!! スリップしろ!! コタツの中に詰め込んで猫まんじゅうにしてやる!!」
 フィンが焼け野原となったダンジョンに常冬の世界を展開する。痛くなるような寒さの夕暮れに、儚く咲き乱れる氷の花弁がひらりと舞って落ち行くまま、周辺一帯を凍結させた。
 つまり地面はすべすべだ。
「ふふふそんなもん何でもないにゃ! このボタン一つでタイヤからスパイクが……出ないにゃ!?」
「すみませんにゃー。それ夏タイヤでしたニャー!」
「トラジマ団員―!」
 どれほど馬力があろうとも、哀れバイクは氷上を滑り、玉突き事故を起こして大惨事。
 そんな自分で描いた地獄絵図を見て、冷静さを取り戻したフィンの第一声は、
「てへぺろ☆」
 そんなフィンのてへぺろ☆に、抗議の声は一切ない。この寒さだ。ネコは炬燵(バイク)の上で気絶(まる)くなっているのだろう。
「やだやだ、冗談ですよぉ、冗談っ! 茜さーん、私ももふもふさせてくださぁーい!」
 そんなこんなでフィンは常冬の世界を離れ、口笛吹きつつ茜に合流する。

「冗談で済んだらけーさつ要らないにゃあ。おっかないにゃあ……」
 フィンの活躍の一部始終を見ていた一番目の友達ネコは、フィンと茜にもふもふさている最中、、幾分後になってぼそりとそう呟いたが、
「もふもふ、もふもふっ♪」
「にゃ! ちべたいにゃ!」
 氷の妖精の力を借り、氷点下もかくやと言う程キンッキンに冷やしたフィンの掌による猫可愛がりがネコの口を封じた。
「何でもないにゃー。元はと言えば突っ張ってたオレたちが悪かったにゃー」
「そうですねー。頭は冷えましたかー? そうですかー。うふふふふ、良かったですねぇ」
 遅まきながら、モヒカン猫は一つ賢くなったらしかった。
「ひえひえのケットシーさん? ふわふわもふもふでひえひえなんて素敵ね! 暑い時期には最高だわ!」
 茜のもふもふも止まらない。何せそれが目的でもあったのだ。満足するまでもふり倒してやる勢いでもふもふする。
「どう? 参ったかしら? 参ったのならば、その体を存分に堪能させてもらうわ!」
 もっふもっふ。
「ぐむむ、俺も男にゃ! 煮るなり焼くなり好きにするにゃ! だから毒電波勘弁にゃー。あ、もっと強めでも全然かまわないにゃー」
 茜とフィンの攻勢に、遂に折れた血斗死威。満更でもなくもふもふされながらの敗北宣言。生き様とは何だったのか。
 完勝し、毛並み具合を絶賛堪能中の茜は満面の笑みで、
「もふもふでかわいい舎弟、最高ね! ……ふふふ、もっとひえひえになったらもっと素敵ね?」
「にゃ!? 夏毛にひえひえはゆるしてほしいにゃ!」


「なんにゃなんにゃ? こんなさっぷーけーな場所にハクい女(スケ)が紛れ込んでるにゃー」
 死語に近しい言葉を発しながら、血斗死威達が取り囲むのは、セーラー服姿の千桜・エリシャ(春宵・f02565)。
「あら、かわいらしい猫さんたちですこと。私、猫は好きですわ」
 言って、エリシャは瞳を細め、魅惑的に微笑する。
「にゃにゃ。中々好感度高いにゃあ。それにこの子、猫の扱いに慣れてる気配があるにゃ。猫飼ってるにゃ?」
「でも俺達思春期ネコにゃ。悪いと思いつつ可愛いあの子に意地悪したくなる気持ち、抑えきれないにゃー」
「つまり可愛がりにゃ。手加減したい気持ちもありつつ、それでも血斗死威の一員として手は抜かないにゃ!」
 ハンドル片手に、それぞれのネコがそれぞれの武器を構える。彼らとて悩める若者、葛藤めいたものはあるのだろう。けれど血斗死威(チーム)とその他を天秤にかければ前者が勝つのだ。何たる熱い友情か。
「まあ、私のことをかわいがってくださりますの?」
 ……なのでエリシャは、その天秤の均衡(バランス)を、そっと崩してやることにした。
「嬉しい……私、今ちょうど喉が乾いておりましたの。何か買ってきてくださらない?」
 いつの間にか、黄昏時に舞う桜。上目遣いでしな作り、ふわりとスカートの裾を翻す。
「お願いできるかしら? ついでに甘い物もお願いしますわね!」
 稀覯本がほどけて生まれた傾世桜花。風にそよぐ花弁が、そっと彼らの頬を撫でたなら、不動の筈の天秤は、音を立てて動き出す。
 つまり。
「はい……シロ副長、マタタビコーラとぜんざい買ってきますにゃ……」
「にゃー! シロ副長~ッ!」
 夕闇を揺らすミケ総長の絶叫。
 ものの見事にシロ副長は篭絡された。
「にゃんてこったにゃ。でも、俺はそう簡単は言いなりにならないにゃ!」
 副長の仇を取らんと、バットと木刀の二刀流でエリシャを狙う総長。ギミックの一つだろう、総長が両手放し運転でもバイクは自動的にエリシャへの距離を詰める。
「あら、流石は総長さん、と言ったところですわね?」
 覿面に効いているのが副長他十数名で、他のネコは程々に、そして、総長にはさして効いてないようだった。モヒカンたちのボスだけあって、気力と根性が凄まじいからか、それとも、『そう言うもの』をまだ理解できない位『お子様』だからか。
「致し方ありません……今回は出来るだけ平和的に行きたかったのですが……」
 どれだけの速度があろうとも、不良のバイクを避けることなど、災魔の攻撃を避ける事に比べれば造作も無い。
 ただ半歩動くのみでバイクを躱し、瞬刻、大太刀・墨染が2度瞬けば、前輪後輪二つのタイヤは粉微塵。
「――走れないバイクはただのガラクタですわね?」
「そんなことないにゃ! こっちには無限タイヤ製造機があるんだにゃ! トラジマ団員!」
「はい……トラジマ団員、マタタビコーラとぜんざい買ってきますにゃ……」
「トラジマ団員!?」
 トラジマ団員も駄目だった。

 蕩けるようにエリシャは笑う。
 墨染の刀身もまた、蠱惑色の桜に変じ空に舞い、吹雪の坩堝となって血斗死威達を逃がさない。

「……さあ。私のことしか考えられないようにしてあげる」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

多々羅・赤銅
【百威盧鴉覇】

オォラオラオラ桃色羅刹連盟、百鴉(モモクロ)様のお通りだァ!!!
可愛い可愛い子猫ちゃんども全員子猫ちゃんにしてやるぜ!!
クローバーなのに二人だからメンバー募集中ゥ!!!
ジンガめっちゃ準備いい 褒める えらい 百点!!!

拳で行くわ。拳に諸々含むっつったって、刀で斬られるとか怖ぇじゃん?
友情育みに来たのであって、何も脅しに来た訳じゃねえしさ
轢かれる撃たれるの類は激痛耐性で耐えて、お前らのヤンキー魂の奥深くまで鎧無視の拳骨だオラァ!!!

何……!?私らの攻撃を食らってなお……お前は立ち上がって……!?
気に入ったぜどら猫ちゃん。今日からお前らも含めて、百威盧鴉覇CATだ……(またたび祝杯)


ジンガ・ジンガ
【百威盧鴉覇】

ヒィーーヤッハァーーッッ!!
俺様ちゃんたち桃色羅刹連盟、百威盧鴉覇ァーーラセーーツッッ!!!!
こんなコトもあろーかと
ピンクピンクな特攻服、何枚か発注しておきましたァ!!
さすが俺様ちゃんデキるオトコ!!

赤銅ちゃんステゴロ精神~
あ、俺様ちゃんはフツーにいつものヤツ(ダガー)でっす
ダイジョーブ、峰打ちにしといてあげるから
たぶん

羅刹旋風ブン回し
武器落とし、敵を盾にする、フェイント、だまし討ち、恫喝なんでもアリだオラァッ!!
相手の攻撃は見切ってダッシュして逃げます!!
俺様ちゃん痛いのキライ!!

わァい、一気に絵面がファンシィ~~~~
ハイ、みんなで一緒に――百威盧鴉覇ァーーキャーーット!!!!




 逢魔が時に桜が溶ける。乱れ舞い、ネコ達を魅了するその様の、なんと風雅な事だろう。
 そして、桜と言えばピンク色。ピンクと言えば、そう、
「ヒィーーヤッハァーーッッ!! 俺様ちゃんたち桃色羅刹連盟、百威盧鴉覇ァーーラセーーツッッ!!!!」
「オォラオラオラ桃色羅刹連盟、百鴉(モモクロ)様のお通りだァ!!! 可愛い可愛い子猫ちゃんども全員子猫ちゃんにしてやるぜ!!」
 誰が呼んだか百威盧鴉覇、満を持しての登場だ!
「さぁ! 初手イカしたメンバーを紹介するぜ! 先ずは私、赤銅鬼こと多々羅・赤銅と~!」
「俺様ちゃんこと俺様ちゃんじゃんよーー!」
「以上! メンバー紹介終わり! なんてこったクローバーなのに二人しかいねぇ! マジかよ! このままじゃ寂しすぎるからメンバー絶賛募集中ゥ!!!」
「羅刹は寂しいと死んじゃうやつだからね。しょうがないですよねェー!」
 多々羅・赤銅(吉祥・f01007)とジンガ・ジンガ(塵牙燼我・f06126)は本能の赴くまま、突き抜けてハイだった。
「さァてお耳をご拝借ゥ! そんなこんなでこんなコトもあろーかと! ピンクピンクな特攻服、何枚か発注しておきましたァ!!」
 バナナの叩き売りよろしく、ジンガがずらりと並べたのは、ポップでキュートでワイルドなネコ用特攻服。サイズは色々取り揃えて御座います。人間用のサイズに関しましては、二人が羽織っているモノをご参考ください。
「さすがジンガめっちゃ準備いい。褒める! えらい! 百点!!!」
「いやいやそんな、それ程でも……あるけどォ! さすが俺様ちゃんデキるオトコ!!」

「……なかなかイケてる特攻服にゃ。お値段次第で考えてやらなくも無いにゃ……お高いんにゃ?」
 ジンガが用意した特攻服に、ネコ達は興味津々、食いついた。
「そんなことないじゃんよー! お値段たったのいちきゅっぱ!」
「にゃんと! たったのいちきゅっぱ(1万9千800)!」
「そうだねーたったのいちきゅっぱ(1億9千8百万)だよーやすいよーやすいよー」
「……今の短いやり取りでなんかこう、致命的な齟齬があった気がするにゃ。ヤバいやつにゃ。こうなったら代金払わず分捕ってやるにゃ」
 交渉決裂。どら猫達は武器を握る。何が悪かったのだろう。分かり合えないのは悲しい事だ。やはり最終的に殴りあうしかないのか。
「拳で行くわ。拳に諸々含むっつったって、刀で斬られるとか怖ぇじゃん?」
 赤銅が愛刀を自ら地に突き刺(てばな)して、両の拳をぐいと握る。
「赤銅ちゃんステキなステゴロ精神~。あ、俺様ちゃんはフツーにいつものヤツでっす」
 ジンガは使い慣れた一対のダガーの、その刃を返すと、ゆったりした調子で血斗死威達を一瞥した。
「ダイジョーブ、峰打ちにしといてあげるから」
 ……たぶん。と後付けの呟きだけをその場に残し、掌中でダガーを竜巻の如く高速回転させながら、ジンガは戦場を縦横無尽に駆け巡る。
 ネコたちの肉球に握られた木刀を叩き落とし、特攻服を脱ぎ棄てて、急加速と急減速を巧みに織り交ぜ不意を作ってだまし討つ。乱打乱撃全てを嵐に巻き込み、やりたい放題暴れ回るが、気付けば敵陣ど真ん中。
「囲んでやったにゃ、もう好き勝手させないにゃー! 一斉攻撃にゃ!」
「やだ! 俺様ちゃん痛いのキライ!!」
 全方位から迫るパチンコ弾から、間一髪全力疾走で逃げ抜けて、標的を見失ったパチンコ弾は、当然お互い全方位にすれ違い、行きつく先は血斗死威(なかま)の元。
「にゃあ!!」
「おやまぁタナボタ。美味しく貰ってゴチソウサマ~」
 結果、ネコ達は目出度く同士討ちだ。

「騙されんぞ。武器を捨てるとは何の真似、にゃ? きっとこっちを油断させ、卑劣な罠にかけるつもりに違いないぜ、にゃ」
 バイクを変形させた蒸気大剣の切っ先を赤銅に向け、クロ特攻隊長は問うた。
「いいや。別に。だって友情育みに来たのであって、何も脅しに来た訳じゃねえしさ」
 本心だった。損得など関係なく、ただ彼らが真っ直ぐになってくれれば赤銅はそれ以上望まない。
「嘘にゃ! だったらあれはどう説明するにゃ!」
「……あん?」
 激昂した様子の特攻隊長が指し示す、その先には――。

「おっと! ヘッヘッヘェ~。それ以上下手に動いたら、この子猫ちゃんが一体どうなるか……俺様ちゃんにも判らないじゃん?」
「くっ! 構う事無いにゃ! 俺ごとこいつを倒すんにゃー!」
「出来る訳ないにゃー! 恫喝ニャー!」
「おやおやあんまり五月蝿くしていると、俺様ちゃんコーボ―も筆のナントカで、刃物の扱いミスっちゃうかもよォ?」
「卑劣! あんまりにも卑劣にゃ! こいつアレにゃ! ブレザー着てるタイプの不良(ワル)にゃあ! 手段を選ばない不良にゃあ!」
 ――赤銅が少し目を離したその隙に。百威盧鴉覇の片翼・ジンガは、至極平然と猫質を取ってネコ達を脅迫していた。

「あっごめんやっぱさっきの無し路線変更で。ええと、ほら、あの子を解放したくば私と戦え……的な?」
 なんて美しい助け合いだろう。赤銅の咄嗟の気転で、グループ解散の危機は免れた。
「元よりそのつもりだ。ニャ! 武器を捨てた事後悔させてやる、にゃ!」
 言い捨てるが早いか、特攻隊長とその配下ネコ達は取られた人質を解放する為、捨て身となって赤銅へ襲い掛かる。
 粗削りだが息の合った連携。パチンコ弾で牽制し、脚の止まった相手に容赦なく全速力のバイクで間断なくぶつかる命知らずの波状攻撃。そして溜らず防御が崩れれば、そこを狙って特攻隊長の一撃が全てを斬獲する。
 ……いつもならば、そのはずだった。なのに、血斗死威の前に立ちはだかる赤銅(せんぱい)は、どれだけ撃って轢こうとも、不敵な顔で、決して倒れない。
「なん、にゃ? 痛くないのにゃ!?」
「まさか! よくもやってくれたなすっげえ痛ぇ! すっげぇ痛ぇけど、痩せ我慢は大得意でね!」
 言葉はいらない。血塗れの握りこぶしに混めるのは、大きな大きな唯一つ。相手の魂の奥深くまで揺さぶる……赤銅鬼の心(たましい)だ。
「とくと味わえよ、真心こめたとっておきの拳骨だオラァ!!!」
「にゃああ!!」
 防具どころか心の壁すら貫通して、赤銅の拳骨は、大振り一発で特攻隊長以下全員の魂を隈なく震わせる。
「まだ、にゃ! ここで俺が倒れたらチームの示しがつかない、にゃ!」
 ……拳と拳で互いの心を読み解くほどに殴り合ったのだ。それでもう、良いではないか。意地を捨て、氷解し、肩を並べて笑い合うには十分ではないか。
 それでも特攻隊長は立ち上がる。何よりも護るべきチームのために。
「何……!? 私の攻撃を食らってなお……お前は立ち上がって……!?」
 なんて強情なのだろう。ここまで頑固なら最早打つ手は無い。赤銅は観念したように表情を綻ばせ、

「……負けたよ。気に入ったぜどら猫ちゃん。今日からお前らも含めて、百威盧鴉覇CATだ……!」
 穏やかな聖者の眼差しで、特攻隊長たちに百鴉(モモクロ)特攻服を着せてやった。
「にゃん、だと……!?」
「わァい、一気に絵面がファンシィ~~~~! ハイ、みんなで一緒に――百威盧鴉覇ァーーキャーーット!!!!」
 猫質ネコを小脇に抱え、快く恫喝(せっとく)に応じてくれた新メンバーも引き連れて、ジンガがそれっぽい音頭を取れば、集団(チーム)の性か、百鴉ネコ達は反射的にポーズを決めてしまう。もう言い逃れは出来ない。
 負けたと言いながら、いつの間にかシームレスに勝敗が逆転していた。沢山の新メンバーの誕生に、マタタビコーラで祝杯だ!

「すまねぇ、総長ッ! 俺、百威盧鴉覇になっちまった……にゃ!」
 護るべきチーム云々は特に何でも無かったので、忘れても良い範囲の問題だろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
アドリブ連携◎
雰囲気ヤクザ

ハ、拳と拳のぶつかり合いか
実に分かりやすくて俺好みだぜ!
テメェらの漢気、俺に魅せてみろ
後腐れねェよう全力で掛かってこいや!
俺もガチでいく(指くい
威勢がイイのは嫌いじゃねェよ
売られた喧嘩は買う
いてこますぞオラァ

指鳴らし愉しげに笑って恫喝
グラサン媒体に【無彩録の奔流】使用
外套翻し玄夜叉構え
地割れ起こす位の派手な衝撃ぶちかます(先制攻撃
命は取らず魂の闘い(ソウルパッション
相手の攻撃を食らったら血反吐吐き拳でカウンター
咄嗟の一撃で胴に回し蹴り
属性攻撃・2回攻撃で暴風の如く上空へ吹き飛ばす
墜落前に捕獲

イイ喝もらったわ
相手が俺じゃなければなァ!(拳(剣)と背中で語る
実力見れて嬉々




 拳と拳のぶつかり合い。そんな実に分かりやすくて自分好みの展開に、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は心躍らせ戦場に降り立つ。
 ……が。
「ちっ。少しばかり遅かったか?」
 サングラス越しに当たりを見渡すと、継戦により消耗し、大量の狐に動きを封じられ、モフり倒され、桜吹雪に絆され、百威盧鴉覇の軍門に下り……壊滅状態の血斗死威の姿がそこにはあった。
 それでも辛うじて動けそうなのは総長と彼の元に集まった残りの一割。その彼らとて、息も絶え絶えの有様だ。
「……で、どうする?」
 剥き出しの岩に腰を掛け、クロウはミケ総長に訊く。彼の纏う雰囲気から、射竦めるが如く、それはヤクザの尋問にも近かった。
「このままごめんなさい僕らが悪かったですって素直に頭を下げるなら、まぁそれでお開きだ。俺としちゃ詰まんねぇけどな」
 そうなれば、致し方ない。意気の萎えた相手と殴り合いを演じるほど、クロウも暇ではない。
 ……だが。クロウの問いかけに、ミケ総長は燃える根性でこう返す。
「まだにゃ! 破れたタイヤは奇蹟的に無事だったのと交換したにゃ! 少なかった燃料は皆の集めて満タンにゃ! 右手に特攻隊長の大剣(バイク)を借りるにゃ! 左に副長の銃(バイク)を借りるにゃ! にゃああ!!」
 収束し、爆発する蒸気の中心点。その中で、総長は自身のバイクを戦闘服(バトルスーツ)として着装し、後先などは知らぬと覚悟に満ちた瞳でクロウと相対する。これが彼の本気の姿なのだろう。
「皆の力を一つに、か。そう来なくっちゃな。オラ! 売られた喧嘩は買ってやる。テメェらの漢気、俺に魅せてみろ。後腐れねェよう全力で掛かってこいや!」
 指を鳴らして愉しげに笑うと、クロウは外したサングラスを代償に、黒魔剣・玄夜叉(アスラデウス)の封印を解く。
 纏う宵闇を翻し、指をくい、と総長たちに挑発(サイン)する。
「その挑発に乗ってやるにゃ! 行っくにゃああ!!」
「おう、どんどん来いよ。いてこますぞオラァ!」
 クロウはフルスロットルで突っ込んでくる総長たちを完全無視し、地精を宿した玄夜叉で大地を叩く。
 その一撃が地割れ震動するほどの衝撃を引き起こし、バイクは走っていられない。
 たまらず飛行モードに変形させ、血斗死威達は空に逃げる。同時、蒸気煙幕を展開し、クロウの視界を遮った。
「甘ぇよ」
 しかしクロウは火精の力を借りた玄夜叉の一振りで蒸気を熱し、消し飛ばす。
「威勢がイイのは嫌いじゃねェよ。けどな。悪ィが俺もガチでいく」
 熱した刃で飛空バイクを溶断し、血斗死威、最後の一割の戦力はみるみるうちに溶けていく。
「もーらったにゃああー!!」
 飛空バイクを粗方撃墜し終えたその直後、クロウの目鼻の先を掠めたのは総長が放った蒸気銃の光線。
 直撃こそはしてないが、無彩録の奔流でサングラスを代償にしていたのが仇となる。仮初の肉体とはいえ、一時視力が喪失するのは免れない。
 総長はその隙を見逃さず、クロウ目掛けて蒸気大剣を振り下ろす。
 視力が回復したクロウが最初に見たものは、自らの口から吐き出した、血反吐の真紅色。
「やったにゃ!?」
「ああ……イイ喝もらったわ」
「しまったにゃ! 瓶割ったときの痛みのせいで浅かったにゃ!?」
 にやりと笑い、クロウの拳が、総長の強化服にめり込む。
 今度は逆に、総長が虚を突かれた形だ。
「相手が俺じゃなければなァ!」
「にゃあ~……!!」
 風精の力を籠めた咄嗟の、そして全力の回し蹴りは、総長を暴風の如く上空へ吹き飛ばす。
 その威力によって、強化服は散り散りに脱落し、総長はこのまま生身で地面に激突するしかないと思われた。が、
「にゃ? ぶじにゃ?」
 クロウが寸前、総長をキャッチして事無きを得る。
「なんで助けたにゃ? 恩を売るつもりかにゃあ?」
 穿った眼差しをクロウに向ける総長。
「今回は命は取らずの魂の闘い。ド派手な自己紹介だろう? それが終われば、手を伸ばさない理由は無ぇさ」
 クロウの言葉に、総長ははっとした。
「で……でかいにゃ。でかい男の背中だにゃあ……!」

●好感度50%
 そんな訳で、拳と拳を交え合い、徹底的に猟兵(センパイ)達にノされた血斗死威の面々(副長は甘いもの買い出しに行ってるので留守)。
「ま~にゃ、他の学生達よりかっこよくて、腕っぷしが強くて、かっこいいのは認めるにゃ。現状好感度80……にゃ! 50%くらいだニャ!」
 コテンパンされた筈のミケ総長は、何故だか偉そうに講釈を垂れる。諸々懲りていないらしい。
「でもにゃ~。他の世界ではどうだか知らにゃ~けど、腕っぷしだけでは如何にもならないのがここアルダワ魔法学園にゃ。迷宮ダメな先輩に従ってもお先真っ暗にゃし、今度は迷宮攻略の実力を確かめさせてもうにゃ。精々頑張るが良いにゃあ。にゃーフッフッフ!」
「にゃーフッフッフ!」 
 ミケ総長に釣られて、他の血斗死威達も子悪党気味に笑う。学園側が匙を投げるわけだ。 

 ……偉ぶりたいがために、実際に頑張るのは彼らだという事を、彼ら自身が忘却していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『この先生きのこるには』

POW   :    胞子を無視して突き進めむ!

SPD   :    胞子の影響を受ける前に素早く駆け抜ける!

WIZ   :    解毒きのこを探して活用する!

👑11
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※次回冒頭文章更新6月5日(水)予定。
●彼らの本来の実力(=きちんと真面目に授業を受けていた場合)
 夕陽の下の殴り合い(かんげいかい)から数日後。
 猟兵達は、迷宮攻略したことない癖妙に自信たっぷりな血斗死威を連れ立って、学園から斡旋されたダンジョンへと赴いた。
 迷宮に足を踏み入れると同時、真っ先に肌で感じたのは、地上より一段低い温度と張り付くような湿度の高さ。
 うすぼんやりと、まるで長い時間を掛けて穿たれた天然自然の洞窟めいた迷宮内。よくよく周囲を窺えば、上下左右に無数のキノコがひしめきあって過密状態だ。キノコの雑踏とでも表現すればいいだろうか。
 大きな段差は無いが、ダンジョン自体緩やかに地下へ向かって傾斜しており、攻略を進めれば自然と次の階層へ辿り着くことが出来るだろう。また、どのような生態か、仄かに輝くキノコが迷宮内のあちこちに群生しており、心許ないが最低限の光源はあるようだ。
 ……と、猟兵達が真面目に迷宮の構造を確認しているその横で、

「おっ、旨そうなキノコが生えてるぜ、だにゃ」
「初めてのフィールドワークにゃ。早速食べてみるにゃー」
「いただきますにゃ。ヒョイパクにゃ」
「……。――!! ゴブハァ!!」

 手持ち無沙汰していた血斗死威共はその辺に映えていたキノコをつまみ、ダンジョン進入3分目で総長と副長を残しさくっと壊滅した。
「にゃー! 特攻隊長と野郎ども!」
 キノコを生かつノータイムで齧ったものだから、制止する間すら無かった。どうしろ言うのか。
「おお、なんという……狂犬気取ってるくせに仲間外れが怖くて、そんな習慣無いにもかかわらず無理矢理語尾ににゃをつけてキャラ作ってたあのクロ特攻隊長が……!」
「……別、に……死んでないし、後で、ぶん殴るからな……副長」
 どうやら仲間内でじゃれ合うくらいには傷が浅い――入り口付近に生えていたもの故か、大した毒は無かった様子。血斗死威は上から下まで気力と根性とガッツと勇気がすごいので、放っておいても数分後には全員復活してるだろう。
「良くわかんないもの口にしちゃダメにゃー。俺はそこら辺おばあちゃんが口酸っぱくして教えてくれてたから食べなかったにゃ」
「流石総長、何たる深謀遠慮……我らの頂点に立つに相応しいお方ですにゃ……」
 褒めるべきは孫想いのおばあちゃんである。
 それ以前に真面目に授業にさえ出てさえいれば、初めての授業の開始10分以内には教わる初歩の初歩のそのまた初歩の知識だろうに。
 せめて授業に出なくとも暇なときに教科書読んだりしないのか、猟兵の一人が駄目元でそう訊いたが、
「読む訳ないにゃ。俺達教科書(マニュアル)人間には絶対ならないにゃー」
 いや良いから読めよ今すぐ。
 そう言いたいのは山々だったが、どう考えても時間を無駄に消耗して終わるだけ感ひしひしあったので、先輩達が変わりに目を通すことにする。
 猟兵達は血斗死威達から剥ぎ取った豆本サイズの教科書を開いた。
 
 ☆きのこ迷宮
 ・文字通り、多種多様なキノコが存在するジメ~っとした迷宮です。
  迷宮内には相当量の胞子が充満しており、万一吸引した場合、毒・麻痺・眠気・酩酊に酷似した状態・トリップする・精神が極端に躁(ハイ)もしくは鬱(ロー)になる等の諸症状が現れます。

「見てくださいにゃ。あらゆる胞子がカクテルされて最早瘴気状態ですニャ。ほんとにこの先進むんですかにゃ?」
「すっごい大見得切って出てきた手前、前進するしかないにゃ。まあ血斗死威のバイクは全車、心地良いお昼寝の為に超強力空気清浄機搭載済みにゃ。修理とバージョンアップの賜物にゃ。バイクの近くにいれば、全部は無理だろうけどある程度胞子の影響カットできるんにゃない? 俺達迷宮の事わかんにゃいし、カラダが変になる前に、先輩たちに迷宮の奥までエスコートしてもらうにゃー」

 □解毒キノコ
 迷宮内には稀に、あらゆる状態異常を打ち消し、体力を回復する万能キノコが生息している場合があります。
 上手く特定することが出来れば、迷宮攻略の難度は大きく下がるでしょう。
(左図参照。大体の場合、これは絶対に食べちゃダメな奴だろうと言う絶望的な色合いと形状をしている)

「そう言えば副長もキノコ食べなかったにゃ?」
「食べましたにゃ。けどお腹壊さなかったですニャ。むしろ元気になりましたにゃ」
「おいしかったかにゃ?」
「……。……。……まぁ、調理次第なとこあると思いますにゃ」

 !!!要注意品種!!!
 ・ゾッキノコ
 属キノコ。別名マジックナイトキラーとも呼ばれる新種です。
 色・形状は様々ですが、概ね一瞥しただけで直感的に異質さを覚えるキノコが本種であり、

「あっ、なんか不思議な形のキノコ向こうにありますにゃ」
「こっちにもあるにゃ。きっとレアなキノコにゃ。持って帰ってお小遣いの足しにするにゃ」

 大気中に漂う、もしくは魔法等で自身が受けた『属性』を吸収、増幅、一定範囲へ近づいた生物へ放出する性質を持っています。
 接触する際は細心の注意を払いましょう。

「にゃにゃにゃにゃんととととキきキキノコが電気発射してきましたにゃにゃにゃにゃ! ビリビリですにゃにゃ……!」
「こっちはサメが出てきたにゃー! どーにゃってるにゃー!」

 遭遇した場合の対処例
 1:無視して別のルートを進む。 新種であり、その生息数は決して多くありません。数度迂回したとしても問題なく迷宮深部に到達することが出来るでしょう。
 2:打撃、斬撃、銃撃など、物理的な手段で取り除く。 ゾッキノコは『無』属性の攻撃を吸収できません。但し、技量の問題か運の問題か、刺激する事により、溜め込でいた属性を無差別に放出するケースも報告されているので、くれぐれも処理中油断しないようにしましょう。
 3:敢えて許容量以上の属性攻撃を浴びせ、崩壊させる。 最新の研究(アルダワ魔法学園ゴリオシ委員会による)で、ゾッキノコの属性許容量は無限では無い事が判明しました。また、キノコに任意の属性を意図して含ませることにより、迷宮攻略のキーアイテムとして活用することが出来るかもしれません。
 ……等。
 
 豆本を閉じる。掻い摘んで、この迷宮に関わる記述はこれ位だ。
 ――ダンジョンの仕掛け云々より、血斗死威(トラブルメーカー)達と一緒に行動する方がよっぽど難度高い様に思える空気が漂い始めてきたが、辛い現実に敢然と立ち向かわなければならない時もある。今がきっとその時だ。
 総長副長以外の血斗死威達が回復し次第、迷宮攻略に取り掛かろう。
グウェンドリン・グレンジャー
【POW】
キノコ
私……は、食べられない。けど、見ていて、かわいい
そして、たのしい
(血斗死威やきのこをスケッチする)

ゾッキノコの対処……楽しそう
きのこは、炎が4倍。もしくは、5倍。そして、飛行、しているモノ、から……の、攻撃にも、弱い
金枝篇にもそう書かれている

つまり、【属性攻撃】……で、炎属性、乗せた、Feather Rain、なら
こうかは、ばつぐん……多分

処理、失敗したら……【激痛耐性】で、暫く、誤魔化す
植物性、食品、基本的に、食べても不味く、感じるけど
頑張って、解毒キノコ、探して、食べる……
……あっ、なんだろう。背が伸びていく、ような


※アドリブ、絡み大歓迎


エスタシュ・ロックドア
椋(f01816)俺ぁ動きやすい様に解毒キノコ探してくるわ
シンディーちゃんで突っ走った所で猫ども取りこぼしちゃ意味がねぇ

予めブルーフレアドレス取り外して『群青業火』で点火
アイドリングした状態を【怪力】で持ち運ぶ
胞子はグリッタリングクラック着て防げねぇかぁね
それでも駄目なら【毒耐性】な
よぉ副長、活きが良いな
ちょっと俺に付き合えよ、キノコ狩りだ
シナトちゃんも連れて教本片手に虱潰し
見つけたらシナトちゃんに持ってってもらうわ
ゾッキノコはブルーフレアドレスから『群青業火』を火炎放射するぜ
許容量以上の火で焼き尽くす
返されたところで元は俺の業火だ、ダメージ受ける前に消す
消えなかったら【火焔耐性】な


六島・椋
エスタ(f01818)と
茸か。茸自体に骨はないしな……
それに自分は胞子を防ぐのが難しい
困ったものだ。どこかにバイクに乗せてくれる格好よくて頼りになる後輩はいないものか
マタタビコーラや好きな食い物も奢るんだがなあ
まあ名乗りがなくても勝手に乗るが

『静寂追い』で来てくれた人形に、
エスタの後を追い解毒キノコの運搬を手伝うように頼む
手は多いほうがいいだろう

自分もまた人形たちに頼み、バイクのそばから解毒キノコを探してもらおう
【情報収集】と【毒使い】の知識が役立つといいが

もしエスタや周りが胞子にやられるようなら、
【医術】と解毒キノコで処置しよう
もとは骨格を知るために得た知識だが、何処で何が役立つかわからんな




 薄暗闇を進むたび、真白い紙面が充実する。
 幾つもの胞子からなる瘴気が充満し、行けども行けども名の知らぬ茸とばかりすれ違う不気味な迷宮。
「意外と……かわいい……かも」
 しかしグウェンドリン・グレンジャー(NEVERMORE・f00712)にとっては他種多様に生育するそれら全てが興味深く、
「あ! お姉さんキノコだけじゃなくて俺達の事も描いてるにゃ。困るにゃー、俺達もついにモデルデビュ~にゃ」
「そうならそうと、もっとおめかしして来ればよかったにゃー」
「今からでも遅くないにゃ。もっとキリっとした態度で気持ち格好つけながら迷宮探索するにゃ」
 何より賑やかなネコ達と一緒なので、道中退屈することも無かった。
 お陰でスケッチブック上を滑るペンも快調だったが、
「……? 指、が……?」
 格好つけてるネコ達を描いてるうち、少しだけ、指先にしびれを感じる。
 グウェンドリンはペンを止め、指先の違和感を確かめると、無意識の内に瞼を擦り、小さな欠伸を一つ。
「……ねむ、い」
 ……おそらくこの痺れと眠気は胞子の影響だろう。同様の症状に掛かるネコ達もちらほらいるようだ。バイクに搭載された空気清浄機のお陰で今はまだ大したことは無いが、少し歩を早めた方が良いのかもしれない。
 そう思っていた矢先、薄暗闇の先から何らかの気配を感じた。
 敵か味方か、グウェンドリンはネコ達を制止し、念の為黒翼を展開すると、『それ』を待ち受ける。
 闇に燈る赤い線(ライン)、獣のような低い唸り声。時折見える白の四肢。果たして、グウェンドリン達の前に現れたのは――。
「にゃー! 地底人にゃ!」
「地底人が骨の獣と一緒になって攻めてきたきたにゃあ!」
「――おいおい、いくら何でも地底人は酷いだろ」
「ああ。まぁ。でも、確かに、地底(ここ)で宇宙服(それ)着てたら地底人って言われてもしょうがないかもな」
 暗赤色の宇宙服・グリッタリングクラックにその身を包んだエスタシュと、狼の骨格標本人形『シナト』を操る椋だった。
 赤い線は宇宙服の発光、低い唸り声はバイク・シンディーちゃんのエンジン音、白の四肢はシナトのもの。解ってしまえば何の事は無い。邂逅した仲間達へ、グウェンドリンは軽く会釈した。


 ――時間は少し遡り、エスタシュと椋の視点。
「椋、俺ぁ動きやすい様に解毒キノコ探してくるわ……よぉ副長、ちょっと俺に付き合えよ、キノコ狩りだ。まだ活きは良いんだろ?」
「ふっふっふ。数居る血斗死威の中で私に声をかけるとは。さすが我らが認めたバイカーの中で五指に入るお人ですニャにゃ。呼ばれたからには喜んでお供しますにゃーにゃ」
 いつの間にそんなものに組み込まれていたのかは定かでは無いが、一々突っ込んでいたらきりがないのでまぁ良しとする。痺れが抜け切れて無さそうなところもこの際無視だ。
 宇宙服を着こんだエスタシュは、シンディーちゃんのエンジンを自前の群青業火でイグニッション。いつも装着しているジェットエンジン・ブルーフレアドレスは温存しておく。
 あくまで今回は引率なのだから、エンジン全開・全力で突っ走って猫達を置いてけぼりでは意味がない。
 教本片手、アイドリング状態の大型二輪(シンディーちゃん)を怪力便りに動かし、副長をお供に、エスタシュは解毒キノコの探索と採集を始める。
「解った。そっちは任せる……シナト。お願いできるかな。手は多い方が良いだろう。キノコの運搬を手伝ってあげて欲しい」
 椋はシナトを召喚し、エスタシュの後につけてやる。五感を共有しようとも、『骨』のみで構成されたその躰、胞子の影響を受ける事は無い筈だ。
 が、軽やかな身をこなしでエスタシュをサポートするシナトとは対照的に、シナトの主である椋は、あまり動き回る気が起こらない。
「茸か。茸自体に骨はないしな……」
 茸自体、椋の趣味から幾分外れた題材(モチーフ)であったし、自分の能力と装備は胞子の対策向きではない。有効なのは精々作業用のゴーグル程度か。
 不用意に行動したところで毒に浸るだけだ。ここは空気清浄機(バイク)の近くでシナトとエスタシュの帰還を待つのが賢明だろう。椋がここで出来る事と言えば、毒の知識と収集した情報を基に、指先を少し動かすくらいだ。
「やれやれ。困ったものだ。どこかにバイクに乗せてくれる格好よくて頼りになる後輩はいないものか。マタタビコーラや好きな食い物も奢るんだがなあ」
 からくり糸を伸ばし、オボロやサカズキ組を空気清浄機の範囲外へ探索に向かわせながら、椋はさり気なく、しかしよく通る声音であからさまにそう呟いてみる。
 直後ピンと、ネコ達の耳が動く。速い。
「甘く見ないで欲しいにゃー。モノで簡単に釣られる血斗死威ではないにゃ」
 なら勝手に乗っかってやろうと考えた刹那、
「でももし万一するめ持ってるなら交渉に応じなくも無いにゃ」
「チョコレイト! チョコレイトあるかにゃ!? 早く乗るにゃ! そしてさっさとブツを出すにゃ!」
 爆釣だった。
 そう言えば猫にするめとかチョコレートとか大丈夫だったろうかと思ったが、彼らががっついてる様子を観察しても中毒を起こす気配は無く、猫ではなく猫精(ケットシー)なのでそこのところ問題ないのだろう。都合のいい体をしていた。
 おやつのお礼か、猫達は人間が座りやすいサイズまでバイクを合体・巨大化させ、VIP待遇で椋を後部座席へ迎える。中々どうしてちょろい道行きだ。

 一方、エスタ、シナト、副長のパーティーは黙々とキノコ狩りを続ける。
 完全気密のグリッタリングクラックはエスタシュの目論見通り、胞子を一切通さない。酸素の続く限り、毒の心配はしなくて良いだろう。
 ……唯一心配になるのは、解毒キノコの絶望的な色彩と形状だ。真っ赤に焼けただれていると言うか、おどろおどろしいと言うか、何とも筆舌に尽くしがたく、悪夢めいている。
「……おい副長。もう一度確認するが、本当にこれで間違ってないんだよな?」
「間違い無いですにゃ。見た目ぷるんぷるんで涼やかで、イチゴの様にまっかっか。おいしいと思って食べたのに、そんなでも無くて騙された気分でしたにゃ」
 物は言い様だ。教本に乗っている形状に近いし確かにひいき目に見ればそう見えなくも無いが、普通躊躇なく口には含まないだろう。突き抜けた無謀さを勇気と呼ぶ時もあるのかもしれない。
 エスタシュは呆れ半分関心半分でシナトにキノコを渡したが――ふと、前方に気配を感じる。
 宇宙服の赤い光が映す鳥人のシルエット。急ぎ椋達を呼び寄せひとかたまりに、じりじりとそのシルエットへ接近し――。


 かくして、グウェンドリン、エスタシュ、椋は合流を果たす。
 お互い挨拶もほどほどに、次の道へ目を向ければ、そこに生えるは悪名高いゾッキノコ。不可思議な形状をした大きなそれは、立ち塞るかの如く猟兵達の進路を阻む。
「ゾッキノコの対処……楽しそう。きのこは、炎が4倍。もしくは、5倍。そして、飛行、しているモノ、から……の、攻撃にも、弱い。金枝篇、にも、そう書かれてる」
 かの有名な呪術研究書・金枝篇に書かれているのならまず間違いない。
「つまり……炎属性、乗せた、漆黒羽(これ)なら、こうかは、ばつぐん……多分」
 グウェンドリンは黒翼を炎の紅(いろ)に染め上げる。元より迂回するつもりは無く、無属性の攻撃で取り除くつもりも無く、出会ったのなら真正面から押し通るつもりでここまで踏破してきたのだ。
「気が合うな。俺も最初(ハナ)からそうしようと思ってた。二人で同時に叩けば、30倍はカタいだろ」
 エスタシュは再び、シンディーちゃんにブルーフレアドレスを装着し、全身から群青色の炎を迸る。
「自分達は少し距離を取ろう。副長、血斗死威達を下がらせてくれ」
 椋の言葉に頷き、血斗死威達はバイクを繋ぎ合わせバリケードモードを構築する。
 椋、副長、全員がそこへ避難したと同時、他者を気にする必要のなくなったグウェンドリンとエスタシュの二人はさらに明々と輝き、ただそこにあるだけで、洞窟に沈んだ二つの炎が、周辺一体を焼く。
 ゾッキノコはその火気を吸収、増幅し、二人へ放出する。その炎は元々こちらのモノ、エスタシュはキノコが放出する炎を自身の意思で消滅させようとするが、消えない。不本意ながらキノコに吸収された時点で既に向こうの物という事だろう。
 グウェンドリンはその身に返ってくる炎の激痛を、ただ黙して受け止めるのみ。
 面白い、と二人の意識が並ぶ。『まだこちらは何もしていないのに、これだけの温度を返してくるとは』。
 全てが熱に歪む洞の中、グウェンドリンは元の漆黒(いろ)が想起できぬほど赤熱化した刃羽(やいば)を放ち、エスタシュがブルーフレアドレス、その排気孔からさながら火炎放射器の如く、群青色の業火(じごく)で全てを焼き尽くす。
 二人の炎とキノコのそれがぶつかり合い、拮抗を演じたのはほんの一瞬。即座キノコは圧し負けて、その身に過ぎた熱量を反射することも受け止めることも出来ず、最後の最期に太陽の如く煌いて、跡形一つ残さず爆ぜ散った。
 
「二人とも、お疲れさま。辺りの胞子も残らず全部焼け落ちた……か。またいずれ充満するだろうけど、今のうちに大きな怪我も小さな状態異常も治しておこう」
 二人を労う椋の態度は至極平静だったが、指の先、糸の向こうではオボロとサカズキが祝賀ムードでやたらアクロバティックに踊っていた。どうやら椋自身、気付かぬうちに軽い躁状態になっていたようだ。
 椋は二人の炎にあぶられ丁度いい感じに焼けた解毒キノコを齧る。元より味には期待していない。期待していないが……無性に塩が欲しくなった。
「もとは骨格を知るために修めた医術だが……何処で役に立つかわからんな」
 体調を戻した椋は密かにそう呟き、全員を軽く診て回る。炎を操った二人の傷は勿論、血斗死威達も大なり小なり胞子に侵されている様子。エスタシュと骨格人形たちが集めた解毒キノコを全員に配った。
「キノコ……たべるのは、ちょっと、だけど」
 グウェンドリンは動物性食品メインの偏食家。鑑賞するのは兎も角、植物性食品(キノコ)を食べるとなれば延々炎に晒され続けるより度胸が居るが、これに滋養強壮効果があると言うのなら仕様がない。
 グウェンドリンは意を決し、小さな口を大きく開けると解毒キノコを齧った。
「うー、ん……」
 幽か渋い顔をする。想像通りの味だった。ただ、怪我に効いているのは実感できるし、何より、
「……あっ、なんだろう。背が伸びていく、ような」
 効果には個人差があります。
「マジかにゃ! 俺もでっかくなりたいにゃ3メートルでっかくなるにゃ! キノコ一杯食べるにゃー!」
「……おいおい、そんながっついたら喉詰まらすぞ」
 案の定、のどにキノコ詰まらせたネコの背を叩きながら、エスタシュもキノコを頬張る。胡椒があればギリギリ行ける味だと思った。
 
 ……ともあれ、進路上のゾッキノコは取り除いた。
 エスタシュ達はささやかな小休止の後――再び迷宮深部を目指す。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

フィン・クランケット
茜さん(f04526)と

キノコ
蒸気と日当たりの悪い地下なら、確かに生育に適しているんでしょうか?
しかし躊躇なく食べますねぇ(お手本のようなリアクションを見せる血斗死威たちを生温く見守り

と・り・あ・え・ず!(ポシェットからマスク取り出し
はい、茜さんっ
簡単だけど胞子対策しときましょうっ
後は、あの安全そうなキノコは万が一に備えてきっちり確保しましょうねっ

って、もふもふって属性なんですか?
何やら意味合いの毛色がちょーっと違う気もしますけれどもぉ
(茜さんを振り返る
(小脇に抱えてるのを二度見する
(ぎょっとする
ちょちょちょ、さすがにそれは…!
あー!
間に合わなかった、血斗死威さんごっめーん!!><(南無三!)


八幡・茜
フィンさん(f00295)と

不思議な迷宮、すごいわね!
ふふふ、どんな迷宮でもこの美人なおねーさんが居るんだもの何とかなるわ!

わぁ、フィンさんってば気が利くわね!
まるでお……いえなんでも!
それにしても、そのポシェット何でも入っているのね(覗き見ようと

属性茸……はっ!
この茸にもふもふ属性を付与すれば、もふもふしほうだいなのでは?!
凄いことに気が付いてしまったわ……おねーさんってばテンサイかしら?

丁度射程の血斗死威の人たちもいるし、茸に向かって放り投げればもふもふ属性になるわよね!
血斗死威の人たちを両脇に抱えて投げつけるわね!
……え? 怖い?
怖いのは最初だけだから、ちょっともふもふにするだけだから!


杜鬼・クロウ
アドリブ連携ツッコミ◎

吸引後は酩酊状態(呂律が回らず。気は張ってるので行動に多分差異無

明らかにヤバイ色してるキノコがあるンだがお前らよく食べる気になるなァ(感心するが真似する気ゼロ
上手く調理したら、ねェ…(興味有
解毒キノコ探して他のキノコはぶっ潰すぜ
無防備に前出すぎンなよお前ら

七つ道具から布出して口押え、
解毒茸の特徴と照合させ樹の根元や地面捜索(地形の利用・情報収集・第六感
ゾッキノコに遭遇後は玄夜叉で先制攻撃・2回攻撃で切り刻む
キノコの攻撃は武器受け・カウンター
特攻隊が怪我しないよう護衛
他は属性攻撃で滝の如く水を沢山吸わせ肥大化狙う
変幻自在の水の盾キノコを作れるか試す

へへ…キノコ狩りらのしい


才堂・紅葉
「私はマニュアルを読み込む派ですね」
猫さん達の前で膝を付き、悪戯っ気に唇の前に人差し指を立てる。
「その方が面白い事が出来るからですよ」

上着を脱いで腰に巻き、裾をまくって身軽になると。
躊躇いなくスカートを縦に裂き、太腿のガンホルダーからリボルバーを抜く。

「誰か私と来ませんか?」

・踏破手順
猫さんを背負い、カバンを片手に風の属性弾でゾッキノコを六つ撃つ。
「しっかり息を止めてくださいね?」
ジャンプしゾッキノコへと飛び出す。
明鏡止水に入って意識を澄ます。
反撃の風を鉄板入りのカバンで受け止め、反動で次のゾッキノコヘジャンプ。これを6回繰り返し、危険地帯を踏破します。

「こんな感じですね。面白かったでしょ?」


花邨・八千代
なるほど、こいつら馬鹿だな?
いや俺も馬鹿な自覚あるけどその紙一重上いくな?

そこは自分で喰うんじゃなくて誰かに食わせて安全か確かめてから火を通して喰うんだぞ。
ちなみに時間を置いて腹痛出てくる場合があるから半日は様子見しろよな。
先輩との約束だ。

◇行動
「怪力」乗っけて【ブラッド・ガイスト】
南天を大鎌に変えてキノコに「なぎ払い」からの「2回攻撃」だ
ざくざく伐採してくぞー、にゃんこ共手伝え
なんかキノコが反撃してきそうなら「第六感」で回避すんぞ
にゃんこに攻撃が当たりそうなら蹴って回避させる
あとヤバげな解毒キノコっぽいの口に突っ込む

攻撃に当たらないコツは当たる前に避けることだ
勘と気合と根性で避けろ、以上!


暁・エリカ
属性を吸収するキノコとは珍しいな
…いろいろ使えそうかな?面白そうだ

せっかくだからこの族キノコ…じゃなかったゾッキノコを【失せ物探し】で探してみようか
キノコを見つけたら色々属性を込めてみたいね、【狐火】だったらやはり炎の属性になるかな?
…炎だけじゃ面白くないな…せっかくだから色々込められないか試してみよう
聖者らしく【祈り】とか陰陽術とか【破魔】なんかも挑戦してみよう
ある程度属性を吸収し終えたら血斗死威達にも何個か配って持っていてもらおう
これから先使える時が来るかも知れないしね

…何が起きるかわからないから落とさないでね
落とさないでね…絶対に落とさないでね(内心わくわくしつつ)

アドリブ連携歓迎




 月に一度か、年に一度か、どれほど完璧な男でも、酔いに飲まれて全てを忘れたい時もある。
「へへ……キノコ狩りらのしい」
 呂律は回らず、足元はいささか覚束ない。 
 クロウにとってその時が今かどうかは定かでは無いが、現在彼がしたたか酩酊したのと同じ状態なのは確かだった。
「お前りゃ……あきりゃかにヤバイ色してるキノコがあるンだが、よく食べる気になるなァ。俺にゃあはとても真似出来ぬぇ」
「杜鬼先輩酔ってますにゃ。足元千鳥足にゃし、お水飲んだ方が良いですにゃあ……」
「――馬鹿野郎!」
 一喝。クロウは自分を心配する血斗死威の肩にぐいと手を回し、
「あれだけぶん殴り合ったのに苗字呼びとは洒落臭ぇ。ほら、俺の事ちゃんと名前で呼べよ?」
「クロウ先輩……!」
 酔っ払っても兄貴肌だった。
「脚が千鳥足らってんなら……こうら!」
 クロウは濡羽色の八咫烏(レイヴン)を召喚し、騎乗する。
 こりゃいより太陽神に司りし者よ。禍鬼かりゃ依り代を護られたしその力うぉ我に貸せ──。杜の使い魔を喚び出すための呪文にも、多分に怪しい呂律が紛れ込んでいたが、それでもきちんと八咫烏はやって来たので、ネコ達はクロウの酩酊(に似た状態)をあんまり気にしないことにした。
「これで文句無いらろ? 解毒キノコ探して他のキノコはぶっ潰すぜぇ」
 七つ道具から取り出した厚手の布で口元を覆い、クロウは前進を開始する。
「俺の後ろについて来い。調子乗って無防備に前出すぎンなよお前ら」
「了解ですにゃヒック!」
 一部のネコ達もいつの間にかほろ酔い気分。クロウ達はほんわか幸せ気分で前進しつつ、副長の情報を頼りに、樹の根元や地面をかき分け解毒キノコを探す。
「上手く調理したら、ねェ? ……鍋でもありゃあなァ」
「そんなの持ってきてる酔狂なやつなんている訳ないですニャ。酔っ払い過ぎですにゃあーひっく」
「そうだな……ちょいと惜しいが……」
 そうしてネコ達が見つけた解毒茸は、真っ先にリーダーであるクロウへと差し出されるが、しかし俺はいらねぇとクロウは受け取らない。
「俺は一番後でいい。お前達が齧っとけ。お前ら体が小っこいから、胞子の回りも速いだろ~ぜ」
「クロウの兄貴……!」
 クロウの好感度がぐいぐいアップしていたその間にも、八咫烏は迷宮を進み、そして何かを警戒したか、不意にその爪(あし)を止める。
 八咫烏の視線を追い、クロウが天井に目を向ければ、そこには小さいながらも複数寄り添うゾッキノコの姿。
 玄夜叉を地面に突き刺し、割れた迷宮の剥片をキノコの一つにぶつけてみる。先行した仲間の『火気』に影響されたか、キノコ達が吐き出すのは炎だ。
 全てが同じ属性なら逆に容易い。仲間達に感謝すべきだろう。ネコ達を下がらせると、噴きだす炎を玄夜叉で払い、キノコが改めてこちらを認識する前に、クロウは一太刀、ゾッキノコの群れを天井から斬り離し、その一つを宙空にて、爆ぜさせる間もなく切り刻む。
 手に入れた残りの二つのキノコには、水精の力を借りて、大滝の如くありったけの水分を吸わせてみる。
 菌床から切り放されたが故か、キノコは水を含むだけ含んで、しかし放出せずに肥大化し、クロウはそれを血斗死威に投げて渡した。
「それを使って変幻自在の水の盾とかバリアとか、そう言うもん作って見せろ」
「にゃ!?」
「いつまでも俺達が世話できるわけじゃねぇんら。ここで勉強しとかないと、後で苦労するろ?」
「いやいやそんなこと急に言われて出来る訳……」
「出来る……」
「出来……」
「出……」

「……できましたにゃあ!」
「な? やればできるじゃねーら?」
 できちゃった。合体バイクを中心に水のベールが展開され、周囲の胞子と炎を弾く。血斗死威驚異の科学力。動力源は水キノコ一本分と驚きのローコスト。
 これで随分攻略が楽になるだろう。発奮させてみるものだ。


 迷宮に関する記述だけとは言わず、教科書の隅から隅まで目を通した紅葉は、
「私はマニュアルを読み込む派ですね」
 豆本をぱたんと閉じ、そっと膝をついてネコ達と目線を合わせた。
「やっぱりお嬢コースは品行方正な教科書人間にゃー!」
「不良な俺達とは相容れないにゃー!」
 喚くネコ達。しかし紅葉は淑やかに、自分のペースを決して崩さず、悪戯っ気を含んだ表情で片目を閉じ、しぃ、と唇の前に人差し指を立てた。
「その方が面白い事が出来るからですよ」
 大げさに周囲を窺い、さも秘密っぽく、敢えて囁くように……ネコ達の好奇心を煽りにかかる。

 上着を脱いで腰に巻き、裾をまくって身軽になると、紅葉は躊躇いなくスカートを縦に裂き、太腿のガンホルダーから古びたリボルバーを引き抜いた。
 その姿はお嬢様と言うよりも、どこか工作員(スパイ)めいており、実を言うならこちらの姿の方がよく馴染む。
「さぁ。誰か私と来ませんか?」
 それでも表情(かお)だけはお嬢の『体』を崩さず、儚げに笑んで見せた。
「ふふん。いいにゃ。その挑戦、あえて乗っかってやるにゃ」
 一匹の勇敢なネコが立候補し、紅葉がそれでは、とその猫の手をゆるり引いた直後。
「いや待つにゃ! 俺が行くにゃ!」
「いいや俺が行くにゃー! 女の子のお誘いには全力で乗っからなきゃ損にゃー!」
「不純すぎるにゃ! ここは血斗死威の中でも最も紳士と言われる俺の出番だニャ!」
「俺達の中の紳士評価にどれほどの価値があるっていうんにゃ―! 俺が行くにゃ!」
 立候補者多数の為、やらなくてもいい盤外戦が発生したのだった。
 喧々諤々、そして十数分後。
 厳正なる協議の結果、紅葉は、背中・両腕・両足の計五か所に血斗死威を積載することになった。何故。
「くっくっく。各部位からお嬢コースの実力とくと見せてもらうにゃ」
「果たしてフルアーマー状態で自由に身動きがとれるかにゃ?」
「あっ、でも動きにくいからってパージとかはしないで欲しいにゃ……」
 重りのつもりだろうが、もともと猫一匹の体重が軽いので、一匹だろうが五匹だろうが大差ない。
 紅葉は風の力を帯びた詠唱弾をリボルバーに装填し、壁から生えるゾッキノコに狙いを定め、39分の1秒で6発の弾丸全てを撃ち尽くす。
「行きますよ……しっかり息を止めてくださいね?」
「にゃ?」
 洞窟内に響いた銃声はただ一つ。しかし放った弾丸の全てはキノコに命中し、そろそろ頃合いだろう。
 紅葉が跳躍した刹那、キノコが増幅した風――嵐を吐き出し、余りの風速に周辺のキノコは根こそぎ地から攫われ宙に舞う。
 ごう、と狂風が渦巻く只中にあって、しかし、紅葉の心は既に明鏡止水の境地にあった。
 時見月在晴天影在波。静かに澄んだ水面に、明月の影を映すように、紅葉の瞳は不可視の気流を捉え、自身に跳ね返ってきた風撃を鉄板仕込みの学生カバンで受け止め、意図的に、望み通りの方向へ弾かれる。
「にゃあああ!?」
 全身にしがみついていたネコ達の顔が風圧で酷いことになっていたのは気にせずに、風に押されて宙を飛ぶ紅葉は、次なるゾッキノコへと銃口を向ける。
 一つきりの銃声が嵐を切裂き、そしてまた新たな嵐を生む。翼無き紅葉はそれを幾度も再現し、空を駆ける。
 ――そして、6発目の銃声鳴り響いた、後。
「こんな感じですね。面白かったでしょ?」
「にゃにゃにゃ。参ったにゃ。プロペラなくても人は空を飛べたんだにゃあ……」
 危険地帯を駆け抜けた紅葉は漸く地に戻り、すっかり伸び切ったネコ達を介抱した。


「なるほど、お前ら馬鹿だな? いや俺も馬鹿な自覚あるけどその紙一重上いくな?」
 全く仕様も無い奴らだと、流石の八千代も見かねて頭を抱えた。
「つまりそれが俺達の、先輩たちにも勝る長所って事にゃ?」
「早い話褒められちゃったにゃ。こそばゆいにゃー」
 八千代の言葉の本質がネコ達にはまるで伝わっていないが、その神経の図太さだけは手放しで称賛に値する領域だ。
「いいか、そういう時はな……」
 八千代は神妙な顔つきで、後輩たちへ門外不出の対処法を伝授する。
「自分で喰うんじゃなくて誰かに食わせて安全か確かめてから火を通して喰うんだぞ。ちなみに時間を置いて腹痛出てくる場合があるから半日は様子見しろよな。先輩との約束だ」
「おお、言われてみればなるほどにゃ。これは良いこと聞いたにゃ。今度暇そうにしてる奴とっ捕まえて早速実践してみるにゃー」
「あいきゅーがぐいぐい上がっていくの感じるにゃ。姉御のワンポイントアドバイスめっちゃ俺達に馴染むにゃ」
 乾いたスポンジが水を吸収するが如く、ネコ達は八千代の教えを継承していく。彼らは基本的な性格がモヒカンなので、継承に当たって事の清濁には頓着しない。
「さぁて、一つ賢くなったところで今度はお待ちかねの実践だぜにゃんこ共。俺と一緒に来る以上楽はさせねぇ、スパルタだ」
 不敵に笑いながら、八千代は南天紋の印籠に自身の血を飲ませ、その形を大鎌に造り変える。
「ざくざく伐採してくぞー、にゃんこ共手伝え!」
「にゃー! 俺達だって不良(ワル)の端くれ! 姉御に遅れは取らないにゃー!」
 洞窟ごと両断する勢いで、その細腕からはまるで想像つかないほどの圧倒的な怪力を、大鎌に乗せて薙ぎ払い。横一閃で左右を開き、縦一閃で上下を拓く。
 ついでネコ達が鎌撃を逃れた小~中サイズの雑魚茸を地道に切り倒し、八千代達は順調に進軍する。
「姉御見るにゃー! 俺の木刀の振り方もなかなかのもんにゃろー!?」
 途中、一匹のネコが自分の構えを八千代に自慢しようと得意な顔で声を上げたが、
「おらァ!」
「ニャゲフ!」
 八千代は即その猫を蹴り飛ばした。
「ニャ……にゃんでにゃ? 蹴っ飛ばすのがご褒美とかそういう……?」
「違ぇよ。神経研ぎ澄ませ。前見ろ。前」
 ひやり、とうすぐらの洞窟内に冷気が奔る。
 危険を察した八千代が猫を蹴り飛ばしていなければどうなっていたことか。ネコ達のすぐ近くには、凍気を含んだゾッキノコが在ったのだ。
「他愛無ぇ」
 絶対零度よりも早く動いた大鎌が、ゾッキノコを断ち切って、洞窟内は再び平温を取り戻す。後に残るのは蹴っ飛ばされた際、群生するキノコに突っ込んでありったけの胞子を吸い込んだネコだけだ。
「ほら、口開け。あーんだ。解毒キノコ食わせてやる」
「にゃがががが!」
 毒に侵され自力では口を開くことも出来ないのだろう、八千代は無理矢理ネコの小さな口をこじ開け、どうしようもない形状のキノコを丸ごと一つ無理矢理ねじ込む。これで一件落着だ。

「いいか。攻撃に当たらないコツは当たる前に避けることだ。勘と気合と根性で避けろ、以上!」
「なんてわかりやすい説明にゃー! 了解にゃー!」
 八千代と行動を共にするネコ達は、順調に不良(ワル)としての実力を伸ばしていったのだった。


「キノコ、ですか……蒸気と日当たりの悪い地下なら、確かに生育に適しているんでしょうか?」
 そう考察しながら、フィンはそっと洞窟の壁に触れる。もしかするとこの高い湿度も、蒸気由来のモノなのかもしれない。
 ……と言うか、むしろ洞窟よりも気になるのは、血斗死威(モヒカン)達のリアクションなのだが。
(「しかし躊躇なく食べましたねぇ……」)
 ネコ達曰く育ちざかりなので多少は食い意地が張ってもしょうがないとのことだったが、そう言う問題でも無い気がした。
 しかしあんまり構い過ぎるのもよくないだろう。取り敢えず今の所は、胞子が飛び散ると知りながらチキンゲーム的にキノコを突っついて、案の定毒って悶絶するモヒカン達をそこそこ生暖かく見守ることにする。
「不思議な迷宮、すごいわね! ふふふ、どんな迷宮でもこの美人なおねーさんが居るんだもの何とかなるわ!」
 えへん! と茜は胸を張り、まるで陽だまりの小道を散歩するように、軽やかなステップで迷宮を進んでいく。
「おー。おねーさん凄い自信にゃあ」
「これなら俺達特に何もしなくても楽~にゴールまで行ける気がするにゃ。ふれふれお姉さんにゃー」
 びっくりするくらい能天気なモヒカンたちだが、これまでの行動パターンと照らし合わせると、その余裕も大して長続きしないだろう……とフィンは見守りついで生暖かく予測する。
「と・り・あ・え・ず! はい、茜さんっ!」
 フィンは四次元ポシェットからマスクを取り出し、茜に渡す。
「簡単だけど胞子対策しときましょうっ!」
 機能的には何の変哲も無いマスクだが、これを装着するか否かで、胞子の吸引量に無視できない差が出るだろう。備えあれば憂いなしと言うやつだ。
「わぁ、フィンさんってば気が利くわね! まるでお……」
「お?」
「いえいえ! なんでも!」
 胞子で喉を痛めちゃったかしら? そう言いながら、茜はげふんげふんと大きく咳払い、
「……それにしても、そのポシェット何でも入っているのね?」
 話題転換に、茜はフィンの四次元ポシェットを覗きこみ、興味津々、手を伸ばす。
「あ、わわわっ! 勝手に探っちゃだめですよぉ……!」
 何が入っているのかは、フィンだけが知ってる企業秘密。手早く四次元ポシェットを閉じると今度はフィンが誤魔化すように、
「後は、ほら……そうです! あの安全そうなキノコは万が一に備えてきっちり確保しましょうねっ!」
 もう一度話題を変えた。

 解毒キノコを探しつつ、迷宮を下って暫く。
「属性茸……はっ!」
「どうしたんです、茜さん?」
 何個目かの解毒キノコを確保したその刹那。突如として、茜に天啓が舞い降りる。
「この茸にもふもふ属性を付与すれば、もふもふしほうだいなのでは?! 凄いことに気が付いてしまったわ……おねーさんってばテンサイかしら?」
 まさに世界の法則全てが反転する様な、奇跡の閃きと茜は確信するのだが、
「なるほどー……って、もふもふって属性なんですか? 何やら意味合いの毛色がちょーっと違う気もしますけれどもぉ……」
 まさか彼女とて本気で考えてはいまい。場を和ませるための、彼女なりのジョークだったのだろう。フィンはそう考えながら、手を休め、話半分、何気なく茜へと振り返る。

「ふふふー」
「にゃー! ちょっと待つにゃ! 離すにゃあ!」
「はなせばわかるにゃー!」

 そこには満面の笑みで両脇に血斗死威を抱える茜の姿が。
「……何だ。ちょっとファンシィ強めの幻覚かー。胞子の影響って怖いですねぇ……」
 幻覚だろう幻覚に違いない。フィンは程良く味付けした解毒キノコを頬張り、落ち着いて数回深呼吸。コンディションを万全に整え、改めて茜へと視線を向ける。

「ふふふー」
「にゃー! がっちりホールドされてるにゃー!」
「最早にっちもさっちもいかないにゃー!」

 やはり。間違いなく。幻覚よりも吹っ飛んだ現実(リアル)がそこにあった。
「丁度舎弟の血斗死威ちゃんたちもいるし、茸に向かって放り投げればもふもふ属性になるわよね? ね?」
「にゃー! 発射5秒前な雰囲気が漂ってきたにゃー!」
「肝試し大会よりよっぽど怖いにゃー!」
「……え? 怖い? 怖いのは最初だけだから、ちょーっともふもふにするだけだから!」

「ちょちょちょ、さすがにそれは……って、あー!」
 ようやく事態を飲み込んだフィンが制止する間もなく。茜は何の躊躇いも無い、誰もが息を飲むほど完璧なフォームでゾッキノコ目掛け血斗死威達を投げつけた。
 これには流石のフィンも少々の罪悪感。南無三と血斗死威の無事を祈り、祈りを受け取った血斗死威は覚悟を決めたか、とても澄んだ瞳でサムズアップをフィンに返し、ゾッキノコに特攻する。
 今。この瞬間。フィンは初めてモヒカン達と分かり合えた。かも知れないし、気のせいかもしれない。
 モヒカンと接触したキノコは火なり水なり、何かしらの攻撃的な属性を放つモノかと思われたが、
 フィンの想定外に、そして茜の想定通り、キノコは辺り一面を何やらもふっとふわっとさせた。ふかふかで、触り心地も最高だ。
「もふもふ属性……まさか本当に存在するなんて……」
「知らなかったにゃあ。俺達もふもふ属性だったんだにゃあ……」
 もう一度。フィンと血斗死威達は解毒キノコを食べる。やはりどうしようもなく現実だった。

「ふふふ。もっふもっふ!」
 作戦が成功した茜はもふもふの海に身を預け、天にも昇るいい気分。ありがとう天啓。
 兎も角、ももふもふが胞子の飛散を抑え込み、快適な空間が一丁出来上がってしまったのは確かなので、フィン達は若干腑に落ちない気持ちをもふっと拭い去り、もふもふが道を示すまま、ゴールまで突き進むことにした。


 血斗死威にとって、はじめての迷宮探索。
 だからこそ生真面目に迷宮を攻略し危なげなく終わる。
 ……理屈はわかる。しかし、果たしてそれでいいのだろうかとエリカは敢えて一石を投じたい。『教科書人間』とは言い得て妙だ。
「にゃ? 狐の大首領先輩が真剣な眼差しでこっちを見てるにゃ」 
「きっと俺達の安全を第一に考えてくれてるんだにゃ。いい先輩だにゃあ……」
 ここでアクシデントの一つでも経験しておかないと、血斗死威(かれら)の為にもならないだろう。
 無表情の裏側で、エリカはあの手この手、悪戯心と好奇心に満ち満ちた思考を巡らせる。
「族キノコ……じゃなかったゾッキノコか……」
 ふとした弾みの言い間違いだったが、なぜだろう、そこまで間違っていない気がした。
「属性を吸収するキノコとは珍しいな……いろいろ使えそうかな? 面白そうだ」
 ともあれ、手元に実物が無ければ始まらない。エリカは失せ物探しで磨いた直感を頼りに、ゾッキノコ探索への遥かな道行き、その第一歩を踏み出した。

「あれ? もしかしてこれかな?」
 目当てのゾッキノコは道行きの十歩目くらいですぐにたくさん見つかった。
「さて、それじゃあまずは……」
 送火狐松明、その篝火をゾッキノコにくべてみる。
 炎に触れると即座、灰色をしていた不可思議キノコは赤く染まり、炎を噴きだすようになる。正直な反応だ。
「だったらこっちの狐火は……?」
 次に翳したのは治癒効果を持つ蒼火。蒼炎の狐火を宿したキノコはその治癒能力を増幅、強く柔らかな輝きで迷宮を遍く照らし、瘴気を祓い、ご丁寧にこちらの体力まで回復してくれる。大当たりだ。
「ううん、けど……炎だけじゃ面白くないな……」
 そう独り言つエリカの視界にふわふわと侵入してきたのは、モフっとした毛玉っぽいもふもふ。
 誰かがとんでもなく突飛な属性をキノコに含ませたのだろう。無意識のうちに毛玉っぽいもふもふをもふもふし、そしてエリカは吹っ切れた。
「よーし……せっかくだから色々込められないか試してみよう」
 試行錯誤した結果、祈りや破魔をたっぷり籠めたキノコを収穫し、これから先使える時が来るかも知れないから、と、ネコ達に渡す。
 滑る足場の影響か、キノコを渡された猫の一匹はぐらぐらと、今にもすっ転びそうな足捌き。
「…何が起きるかわからないから落とさないでね。落とさないでね……絶対に落とさないでね」
「そそそんなに言い含められると逆に……にゃー!」
 何という事だろう。あれだけ落とさないようにとてもとても丁寧に言い含めた矢先、ぐらぐら猫は待ってましたと言わんばかりにキノコを落っことしてしまう。
 直後、破魔と祈りが炸裂し、世界を真白に染め上げる。
「お……おい、大丈夫かにゃ?」
 そして光が引いた後、

「ええ……私はこの通り大丈夫ですよ? しかし、ああ――生まれ変わった気分です」
 ぐらぐら血斗死威は光属性のネコに転生していた。
「差別、偏見、悪徳、背徳――この世界には不条理なものが多すぎるとは思いませんか? 故にこそ、私はこの世界を一度まっさらに――」

「にゃー! こいつ光が強すぎて世界を滅ぼす系のやつになってるにゃー!」
「くっ! ここは俺達に任せてお前達は先へいくにゃ!」
「で、でも……」
「……先に進むしかないよ」
「大首領先輩!?」
「彼らの遺志は無駄に出来ない。そうだよね?」
「……っ!」
 そして、エリカと主人公風味のネコは決して振り返ることなく、忸怩たる思いを抱え全速力で暗闇を駆けた。
 因みに、正気に戻った光ネコを含め、後から全員普通に合流したので、別に世界が崩壊したりはしなかったらしい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



「うー……ようやくサメを振り切ったと思ったら、随分出遅れてしまったにゃ。総長がこれじゃ恰好つかないにゃあ……」
 ガス欠寸前のバイクに燃料を補給し、ミケ総長と彼の準備が整うまで律義に待っていたネコ達は改めて、はじめての迷宮攻略に乗り出す。
「こんな胞子がなんぼのもんにゃー! むしろ目いっぱい吸い込んでぶっちぎってやるにゃー!」
「にゃー!」
 気合を入れるにせよ、力の注ぎどころ間違っているくらい大きな声量で吼えるミケ総長&猫達だった。
千桜・エリシャ
あら、随分と自信たっぷりですこと
いざとなったら頼ってもいいのかしら?
うふふ、期待しておりますわ

私は教科書や説明書はちゃんと読むタイプですので
ふむふむ…旅館に持ち帰ってみたいきのこが沢山ですわ…
酩酊きのこ…殿方に食べさせたら面白そうではなくて?なんて

ここはゾッキノコを活用していきましょう
私の鬼火を吸収させて炎のきのこへ
それを猫さんたちへ配って
きのこを見つけたらこれで燃やすようにお願いしましょう
特殊なきのこと言えど植物ですもの
燃やしてしまえばそれでお終いですわ
ゾッキノコの後処理は私にお任せを
鬼火を合体させて許容量崩壊まで燃焼
迷宮中のきのこを燃やして燃やして燃やし尽くしましょう!

(躁状態になってる)




 そんな総長たちの様子をすぐ近くで見ていたエリシャはあらあら、と柔らかに笑う。
「随分と自信たっぷりですこと。いざとなったら頼ってもいいのかしら?」
「まーかせるにゃ―! 泥船に乗ったつもりでいるにゃー!」
 それは頼ったら沈んでしまう奴だ。
「うふふ、期待しておりますわ」
 あえて訂正せず、仲間の前で総長に恥をかかせまいとするエリシャの優しさ。
 そう言う細やかな心配りが教科書に載っているかと問われれば否であるが、泥船が間違っている事程度はきちんと教えてくれるので、やはり目を通しておくべきだ。
「ふむふむ……旅館に持ち帰ってみたいきのこが沢山ですわ……」
 熱心に豆本の頁をめくるエリシャ。
 毒と薬は表裏一体。使用法と使用量を調節すれば、良い効能だけを引き出すことも可能だろう。
 眠りキノコは不眠気味のお客に良いかもしれないし、躁鬱にさせるキノコはアロマ的に心を癒すことが出来るかもしれない。
 麻痺キノコ辺りは無体を働くお客様に已む無くうふふ――と、この時点でエリシャは幾分躁状態になっていた。
「酩酊きのこ……殿方に食べさせたら面白そうではなくて? なんて――」
 ――ひっく。洞窟のどこか、聞き覚えのある声音で酩酊の証が響いた気がした。

 俄か、総長たちが騒ぎ出す。エリシャがキノコ活用法に纏わる思索から浮上し、周囲を検めると、ゾッキノコの群生地とかち合ってしまったらしい。
「どーするにゃ? 迂回するにゃ?」
 総長はエリシャに判断を仰ぐ。
「いいえ。ここはゾッキノコを活用していきましょう」
 退かず、構えず、エリシャは笑う。刹那。桜色、花開くように燃える鬼火が音も無く現れ、洞中の炙り出された影達が妖しく揺らめいた。
 揺蕩う火の遊女達はエリシャの命じるまま、篭絡するが如くキノコに溶け、この後キノコ達は遊女の真似事を始めるのだろう。
 だが、教科書に曰く、キノコが属性を吸収・増幅・そして放出に至るまでは相応の時間差(ラグ)がある。
 エリシャは属性が放出される、その数分の一秒前に黒刀・墨染を瞬かせ、事もなくキノコを斬穫した。
「にゃ? これ手に持って大丈夫なやつにゃ? 暴発しにゃーにゃ?」
「ええ。恐らく。こちらで好きに利用できる筈。洞窟内に満ちているのが特殊なきのこと言えど植物ですもの。燃やしてしまえばそれでお終いですわ」
 斬穫したゾッキノコをネコ達に配り、火炎放射器(これ)を使って進めば楽になりますわ、と薦める。
「迷宮中のきのこを燃やして燃やして燃やし尽くしましょう!!」
 とても躁(ハイ)な状態のエリシャに押されたネコ達は最初、半信半疑、恐る恐るで火炎キノコを使用していたが、
「にゃー! これ凄いにゃー! 胞子もキノコも全部消し炭にゃー!」
「キノコは消毒ですニャ―!!」
「何処かで聞いたセリフにゃー! そう言うの乱用しちゃダメにゃー! でもよくぞ言ったニャトラジマ団員! こういう感じのやつ血斗死威の標準装備として正式採用するにゃー!」
 最終的にハイテンションに取り込まれ、血斗死威(モヒカン)史のターニングポイントとなる技術革新まで行きついたらしかった。
 火炎放射器(みず)を得たネコ(さかな)達はそこから足を一切止めずずんずん進み、遂には最深部まで強火のウェルダンに到着する。もう燃やせるものは周囲に無かった。
 ……いいや、正確には、あと一つだけ。

「はい。ゾッキノコの後処理は私にお任せを!」
 最後に放射器を引き取ったエリシャはそれらを纏め、再び創り出した39の鬼火を一つに合わせると、キノコの許容量を上回る火力で悉く焼却し尽くした。
「にゃっは―!」
「にゃっはー!」
 炎に魅入り、狂喜乱舞するネコ達。
「うふふ……彼方も此方もわたくしも、最終的にみんなハイになってしまいましたわね……?」
 エリシャは目を細める。
 ただ灰を作るためだけに伸びる火柱は……どこか桜の樹に似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイクス・ライアー
川原での出来事などまるでなかったかのように終始紳士然として(見た目上は)

さて、ようやく本題というわけか。

近くにいろと言われても、どうにも勝手が悪いな。
どれ、そこの君。その小さなバイクを貸してはくれまいか?(静かな恫喝圧)
(とはいえケトッシーサイズ。バイクに跨ってもおさまらない長い足。気にせず発進だ!!!!)

●ゾッキノコへの対処
ドゥルルンドルン
迂回してもいいが、それで諸症状が出ては本末転倒だ。弱点も分かっている。
ならば、バイクに跨りながら浴びせる弾丸でキノコを吹っ飛ばして進むのみ。(脳筋の思考)

アドリブ連携歓迎




「……さて、ようやく本題というわけか」
 衣服に付着した胞子を軽やかに払い落し、この迷宮をどう攻略したものか、とジェイクスは優雅な仕草で顎に手を当てる。
「……やっぱり紳士にゃ。身のこなしが紳士以外の何物でもないにゃ」
「ほんとかにゃ? 夕日の川原ではギャングかマフィアだった気がするにゃ」
「きっと気のせいにゃー。あの時は俺達もアドレナリンどばどば出てたから良くわかんなくなってただけにゃー」
 紳士然と洞窟に立つ今のジェイクスと過去――夕陽の下のアウトローなジェイクスの姿が余程結びつかないのだろう。ネコ達は何やらそれっぽい理由をつけて地獄の千本ノック地獄を忘却しようと試みる。
「やぁ、そこのタマ君達。少し話があるのだが――」
「にゃ!?」
 しかし哀れ、過去はそう簡単に変えられない。
「近くに居ろと言われても、どうにも勝手が悪くてな。どれ、その小さなバイクを一機、貸してはくれまいか?」
 即ち、紳士にバイクの性能を認められたネコ達は一瞬デレっと破顔するが、すぐに睨むような表情に転じた。
「いくら頼んできたのがおじ様でもそう簡単にイエスとは言えないにゃー。俺達だってボランティアで暴走(はし)ってる訳じゃにゃいにゃ。払うもん払ってくれにゃいと……」
「……もう一度だけ言おう。貸してはくれまいか?」
 それはネコ達のメンチの迫力をはるかに飛び越えた、穏やかな紳士ならではの恫喝(ウィット)に富む完璧な話術。圧がすっごい。
「あ。はい。どうぞご自由にお使いください」
 平和的に絆されたネコ達は喜んでジェイクスにバイクを貸し出した。
「うむ。よろしい」
 そしてジェイクスは早速、スチームバイクのシートに腰を降ろし――。
「……あ! やっぱりダメにゃおじ様! だって――!」
 とある事実に気付いたネコがジェイクスを制止しようとする。しかしジェイクスはそれを退け腰を降ろす。その姿……。
「バイクがちっちゃいうえにおじ様スタイルが良すぎて長い足がすっごいことになってるにゃー!」
 そう。まさかスタイルの良さが仇となって妙ちくりんな姿を晒す日が来ようとは誰が想像出来ただろう。
 ……もしここに悪意ある者が存在し、バイクに跨るジェイクスの姿をパパラッチしようものなら、彼の紳士然としたイメージは一瞬のうちに崩れ去ってしまうだろう。
「さぁ、行くとしようか。紳士たるもの……これくらいの苦難を乗り越えられず何とする」
 しかし、ジェイクスは、何を犠牲にしても絶対に迷宮を攻略するのだと言う『鋼の意志』で覚悟を決め、バイクを走らせる。ドゥルルンドルン。
「おじ様……カッコ悪いのに滅茶苦茶カッコ良いですニャ……」
 ――そう。紳士を紳士たらしめるものは移ろいやすい見た目などでは無く……何より、その心の在り方なのだドゥルン。

 ジェイクスを先頭に、バイカー軍団は陰気臭い洞窟内で軽快なエンジン音を響かせ我が道を征く。
 所構わず生える各種キノコは鬱陶しいが、路自体は大きな段差や急な曲がり角が有るわけでなし、素直なものだ。となると、やはり一番の障害はゾッキノコ。
「おじ様! あそこにゾッキノコが! このまま行くと……!」
 ジェイクスの肩に乗っかったネコが警告を飛ばす。
「このまま突っ切らせてもらおう。少しの間、ハンドルを頼めるか?」
「了解ですニャ!」
 迂回しても良いが、迷宮に長居をして毒の諸症状が出ては本末転倒だ。『無』属性攻撃で的確に……弱点も分かっている。だからごり押す。
 バイクに跨ったまま、ジェイクスは傘型の散弾銃を構え、ゾッキノコを有効射程内に捉えた瞬間、即時弾雨を浴びせ吹っ飛ばす。
 運悪く属性放出を起こしたキノコもあったが、此方はバイクだ。爆ぜた瞬間にはもう、そこに居ない。

「速度を上げるぞ。遅いタマは……」
「にゃー! 頑張って食らいついていきますにゃ!」
 そして、ジェイクス達は何事も無かったかのように疾り続ける。
 目指すゴールはもうすぐだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベルゼドラ・アインシュタイン
ぁ???きのこ??ジメジメ鬱陶しい場所だなおい

豆本の御託を並べた所で当たるときは当たるんだよ
んなもん気にせず突っ切ればいい話だ

…とは言いつつ何気に教科書の話は頭に叩き込んだのは秘密
最低限自分の身さえ守れりゃ良い

【怪力】に任せ相棒の拷問具を風車代わりに器用に振り回し
胞子をなんかこう、上手いこと風圧で吹き飛ばしながら
問答無用でキノコを【2回攻撃】して圧し進む

正直こんなもの焼き払ってしまうのが手っ取り早いんだが
ゾッキノコの話を聞いてしまったので面倒なことはなるべく避けたい所存

まぁ、斬撃で溜め込んだ属性攻撃ぶっ放されても構わず進むけどな

ぇ????さっき切ったやつ解毒キノコだったって???知らん!!!!




「……ぁ? きのこ?? キノコねぇ……?」
 ベルゼドラは然して興味も無さそうに迷宮内を見回し、嘆息する。胞子云々抜きにしても、じめじめと不快な洞窟だ。長い黒髪に絡みついてくる湿気も煩わしい。
 こんな場所に長く留まれば、釣られて性根だって無意味に暗くなるだろう。まさかこの場で鍋をつつくわけでもなし、大した用も無いのだ。さっさと通り過ぎてしまうに限る。
 その点に於いて、同行者である血斗死威(モヒカン)共は単純明快で非常によろしい。
「姐さん、どうやってこのダンジョン行けばいいかにゃ? なんかいい感じの作戦とかあれば教えて欲しいにゃー」
「無い」
「にゃ?」
「そんなもんは無ぇ」
「にゃんと!」
「豆本の御託を並べた所で当たるときは当たるんだよ。んなもん気にせず突っ切ればいいだけの話だ。簡単だろ?」
「おお、何たるシンプルイズベスト……真っ直ぐ行けばその分前に進める。策を弄することばかり考えて、俺達はそんな簡単な理屈を見失いかけてたにゃ……」
 実際の所、ベルゼドラは教科書の内容を徹底的に頭の中へ叩き込んだのだが、その話をしたところでネコ達が自主的に教科書を読むことなど9分9厘無いと断言できるので、黙っいるのが賢明だろう。時は金なりだ。
 グローブを外す。鎖に繋がれ、だらりと頭を垂れる二つの三日月に己の血を流し、ベルゼドラは薄暗闇を睨めつける。ネコ達の事はもう、気にしない。
「俺からお前達に教えられるモンはただ一つ。最低限自分の身は自分で守れりゃそれで良い、って事だけだ」
 そろりと静かに両三日月を離陸させ、そこから怪力任せに鎖を繰る。高速回転する三日月は宵の如き暗闇に紛れ、時折刃影を晒すのみ。
 月が引き起こす風圧は、揺蕩う胞子達を問答無用で吹き飛ばし、ベルゼドラが一歩圧し進むその度に、視えぬ双刃が天地上下のキノコ達を斬滅する。
「かっこいいにゃー。俺達も肉球の続く限り武器振り回すにゃ。キノコ滅多打ちにしてやるにゃー!」
「あ! バット吹っ飛んでいったニャ! 肉球の限界びっくりするくらい低かったにゃー!」
 気にしない。
 三日月達は遠慮も躊躇も無くベルゼドラの血液を呑んでゆく。正直こんな場所、焼き払ってさっぱりさせた方が後腐れも無いのだが、ゾッキノコの話を聞いた手前面倒なことはなるべく避けて通りたい。
 避けて通りたい、が、
「にゃ!? あれゾッキノコにゃ!? でも行くにゃ!? このまま行っちゃうにゃ!?」
「怖いのなら逃げるんにゃあー。俺は姐さんに最後まで付き合うにゃー!」
 たかが新種のキノコ如きに頭を下げて迂回するのも癪だった。
 ベルゼドラは三日月の速度を一切緩めずに、ゾッキノコを切り裂く。案の定、撫で切られた断面達から地・水・火・風、あらゆる属性が飛び出して、牙を剥いてきた。
 だが、それらは全て、何処かの誰かの、或いは何かの借り物だろう。突っ切る以上は通行料代わりに甘んじて食らってやるが、それで倒れるつもりは毛頭ない。
 したたかダメージを受けながらも、ゾッキノコ群生地を突破した。

「姐さん結構ダメージ大きいにゃ。あそこに解毒キノコ生えてるにゃ。あれ食べて体力回復――」
「あ?? 解毒キノコが何だって?」
 ネコが言い終わる前に、ベルゼドラが聞き終わる前に、三日月達が解毒キノコをさくっと斬った。粉微塵だ。既にそこらの石ころと区別がつかない。
「にゃー! キノコ消失しちゃったにゃ!」
「いや――……知らん!!!!」
 過ちを振り返らない。後はただ、行くのみだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジンガ・ジンガ
【百威盧鴉覇】

赤銅ちゃん、提案がトチ狂ってやがるにゃー?
その発想はなかったわァ!

胞子あんま吸わねーように気休めでもマスクして
改めて豆本読んだり
さっき食ったキノコがどれか思い出してもらったり
後輩ちゃんの反応見たりして【情報収集】
なるべく安全なヤツと解毒っぽいヤツ中心に探して採取

ゾッキノコちゃんはダガーや銃で手早く処理
運悪く無差別放出されたら【逃げ足・ダッシュ】
間に合わなきゃ、さりげなくその辺の後輩ちゃん盾にしよ
ホラ、新鮮さと俺様ちゃんのイノチって何よりもダイジじゃん?

ンひひ、残念だけど俺様ちゃんキノコアレルギーなの(※嘘)
キノコは新入生ちゃんたちがじゃんじゃん食べてチョーダイな!
イノチダイジニ~


多々羅・赤銅
【百威盧鴉覇】
飛ぶ胞子の霧を、羅刹旋風交えて剣刃一閃。道を切り開き、ヤバい時にゃ祈酒。シンプルだな!

よし
キノコ鍋するにゃー(マジ顔)

実質新歓なんだから美味い飯は必須にゃ必須!百鴉CATもキノコ生で食えるくらいにはキノコ好きっぽいし良くね?
つまりアレだろぉ?どんな自由なキノコ鍋も、ヤバ赤キノコさえぶっこんどけば万事回復。いけるいける。なんなら私の血もあるし。
水が足りない?よーしメンバーに告ぐ!水属性攻撃持ちのキノコいたら教えてくれにゃ!!では各自美味しそうなキノコを持ち寄るように!ヤバい時は教えるように!解散!!!!!

こーらジンガ
仲良くやんなさい




 鞘に納めた大業物を勝手気儘に数回転。そこからおもむろに柄を捕まえて剣刃・一閃。胞子のベールを斬り開き、先ずはこんなものかと赤銅は息を吐く。
「我が愛刀、卵雑炊の切れ味に一切の曇りなく……ってまぁ、霞を斬ったようなもんだけど」
 そもそも全身隈なく不浄を払う血潮が巡る赤銅にとって、この迷宮の環境は地上と何ら変わらない。仮に24時間居ようが一週間滞在しようが全く平気そのもので、易い難しい以前の問題だ。正直住める。住まないが。
「よし」
 な。
 の。
 で。
「キノコ鍋するにゃー」
 赤銅は真顔で百鴉(モモクロ)メンバー達にそう言い放つ。酔狂な奴はここに居た。
「実質新歓なんだから美味い飯は必須にゃ必須! 百鴉CATもキノコ生で食えるくらいにはキノコ好きっぽいし良くね?」
 一言一句正論だ。流石百威盧鴉覇の光の方と言わざるを得ない。
「マジでか、にゃ」
「度胸試しにゃ? それともどっきりにゃ?」
 必然、赤銅の重大発言に困惑するクロ特攻隊長以下困惑する百鴉CAT達。
「赤銅ちゃん、提案がトチ狂ってやがるにゃー? その発想はなかったわァ! もしかして一升瓶とか密かに持ち込んで既に始めちゃてるヤツ?」
 驚く訳でも否定する訳でもなく、赤銅の鍋パーティーに喜々として加担しようとするジンガも流石、闇の方と言えるだろう。
「どーなってるにゃ百鴉(モモクロ)上層部……」
 ネコ達の疑問は当然だ。しかしその特攻服に袖を通した以上、郷に入れば郷に従えの精神でキノコ鍋キメるしかない。
「つまりアレだろぉ? どんな自由なキノコ鍋も、ヤバ赤キノコさえぶっこんどけば万事回復。いけるいける。なんなら私の血もあるし」
 祈酒(ウケイザケ)は百パーセント赤銅の味方、というか血液なので、彼女のどんな無茶振りも万パーセント赦してしまうのだ。
「けど水が無いぜ、にゃ。残念だなぁ、鍋だけあっても仕方がないぜ、にゃ」
「うん? 水が足りない? よーしメンバーに告ぐ! 水属性攻撃持ちのキノコいたら教えてくれにゃ!!」
「そんなの都合よくよくあるわけないにゃー! 鍋会中止にゃー!」
「と思うじゃん? 見つけてきたぜ水キノコ!! 偶然道の端っこに転がってて助かったわぁ~」
「にゃんで!?」
 先んじてひとっ走り探索に出かけたジンガが抱えていたのは、紛う事無く水属性をたっぷり含んで肥大化したゾッキノコ!
 ……どうしてそんなものが都合よく一本だけ道端に転がっていたのかはわからない。
 きっとカミ様からの贈り物だろう。
「ジーンーガー! 超グッジョブ! では各自美味しそうなキノコを持ち寄るように! ヤバい時は教えるように! 解散!!!!!」

 鍋の番を赤銅に任せ、ジンガと百鴉CAT達はキノコ狩りに精を出す。
「……へー。なるほどネェー」
 顔の下半分をマスクで覆い、ジンガは豆本を流し読む。
 教科書の扱いは小さいが、この迷宮、解毒キノコ以外にも普通に食べられるキノコが生えているようだ。
 よくよく観察してみると、たしかにシメジ……っぽいキノコや舞茸……のような奴や松茸……かもしれない茸が洞窟内に散在している。
 が、努々油断するなかれ。ここは焦らず情報収集を重ねるのが最善手だろう。
 ……実を言うと鍋を食べる気は全くないので、多少毒っぽいやつが混じっても、ジンガ自身に害は及ばないのだが。最終的には赤銅が居るので多少雑でもなんとかなるだろう。きっと。
「どうよ後輩ちゃん。さっきこのキノコ食べた?」
「それはダメな奴にゃ。食べたらテンションぶっ壊れたニャ」
「ふーん……シメジは駄目、と」
「にゃー! こいつまたキノコつまみ食いして泡吹いたにゃあ!」
「ブクブクにゃにゃにゃ……」
「あー、松茸も駄目かァ。侘しい鍋になりそうだわ」
 後輩たちの情報提供のお陰でキノコ採集が捗るはかどる。
 いっそ鼻歌などを交えつつキノコを狩るジンガだが、幾度目かのゾッキノコ発見の際、ふと気付く。
 属性的な何かが作用するのか、どうやら無毒らしきキノコはゾッキノコ周辺に群生していることが多いようだ。
「そうと解れば一攫千金のチャンスじゃん? ゾッちゃん倒して総取り丸儲け!」
採集したキノコを端に置き、コートを宙へと放り投げる。
 一息に、壁から生えるゾッキノコまで近づいて、根元からダガーで丁寧にスライスした後、散弾をまぶす様にトッピング。名付けてゾッキノコの蜂の巣風・散弾を添えて。
 ジンガとしては会心の出来だったが、キノコ的には受け付けなかったらしい。調理されたキノコが放出するのは紫電――雷だ。
 自分だけが全速ダッシュで電撃から逃げ出すなら問題は無かったが、そうすると宙をひらひら舞うお気にのコートが焼け焦げるか胞子まみれの地面に貼りつくか、その二択は避けられない。それは嫌だ。ならばダメージを受けながらコートを回収するか? 否。
「ゴメンちょっとマジゴメン。けどホラ、素材の新鮮さと俺様ちゃんのイノチって何よりもダイジじゃん?」
「おぎゃー! だ、にゃ!」
 一瞬の判断。近くに居たクロ特攻隊長を犠牲(たて)にして、自身もコートも食材もノーダメージで乗り切った。
「何にゃ今の音? ……は!? 特攻隊長!? 大丈夫にゃ?」
 音に釣られてネコが惨劇の現場に来る。倒れ伏すクロ特攻隊長。なんというバッドタイミング。このままでは自分が疑いの目で見られるのは避けられない。
 止むを得ないだろう、ジンガは沈痛な面持ちで意を決し、
「……俺様ちゃんがゾッキノコにやられそうになった時、特攻ちゃんがその身を挺して守ってくれて……っ!」
「何とニャ! 特攻隊長! あんた男だニャあ!」
 こうしてジンガは無傷で、特攻隊長は株を上げ、全ては丸く収まった。
 嘘は言ってない。しかし完全犯罪の成立だ。

 その後。紆余曲折を経て完成したキノコ鍋。恐らく血の池地獄が丁度こんな有様に相違ない。湯気の時点で目が痛い。解毒キノコが中和し切れて無い感がある。
「ンひひ、残念だけど俺様ちゃんキノコアレルギーなの! キノコは新入生ちゃんたちがじゃんじゃん食べてチョーダイな! イノチダイジニ~」
「こーら。嘘は良くないなジンガ。仲良くやんなさい」
 何たる想定外。闇(ヤバ)鍋回避にそそくさ逃げようとしたジンガの腕を、赤銅ががっちり掴んで離さない。
「え? ちょっと。待って。赤銅ちゃん。放して?」
「え? 駄目だけど?」
 ぐつぐつ煮立つ光(やみ)の鍋。なんて温かいんだろう。そりゃそうだ鍋だもの。辛(から)い事があるんならいつでも相談に乗るよ、と鍋は途方もないフランクさでジンガに話しかけてくる。あっこれ幻覚だ。

 ……どうにかして鍋から逃れたいジンガと、どうやってでもネコ達と同じ鍋の茸を食べさせたい赤銅。
 百威盧鴉覇トップ2が演じる壮絶な闘争の火蓋が今。切って落とされようとしていた。
 が、特に本筋とは関係ないのでここでは割愛する。決着の行方は二人だけが知るものだろう。
 
 その後なんやかんやあって結束力の強まった百威盧鴉覇は全員最深部に辿り着いた。それで良いのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クーナ・セラフィン
元気がいいねぇ。
向こう見ずさは大切な素質だと思うけどちょっと程度がある気がしなくもないかにゃー?
そんな彼らの為に解毒キノコを探そうじゃないか。
…ところでここはキレイだにゃー。壁が虹色なんて(胞子うっかり吸引済)

ええっと目的のは色合いと形がヤバいんだっけにゃー。
何かあれ異質な感じ、絶望的に食べ物じゃなさそうな感じ…これかにゃー?
食べ辛そうだし剣でスパスパ一口サイズまで斬っておくかな。
剣のルーンは発動させないように。ゾッキノコかもだし安全第一、うん。
何も放出しないならきっとそれが解毒きのこ。
胞子でハイになって思考レベル血斗死威状態になりつつ、れっつごー向こう見ずきのこハント。

※アドリブ絡み等お任せ




「ヘイヘーイ! そこの彼女(ケットシー)、男装姿が可愛いにゃー。ドコ学ー?」
「アル学ー」
「うっそ! マジで!? 俺達と同じにゃ! ちょっとそこまでお茶しにゃい?」
 同じも何もこの世界、この迷宮で該当する学校なんて一つしかないだろう。
 女の子の前でカッコつけたいのか、ゾッキノコに立ち向かっては返り討ちを繰り返す血斗死威(やろう)共を遠目に眺め、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は立派に青春やってるにゃーと心を温める。
「元気がいいねぇ。でも、向こう見ずさは大切な素質だと思うけど、ちょっと程度がある気がしなくもないかにゃー?」
 男の子って加減を知らないモノである。血斗死威(モヒカン)ならばなおさら。
 けれどそんな頑張る彼らの為に解毒キノコを探すのも悪くない。
 何せこんなぽかぽか陽気の日にはキノコ達が奇麗に花開き、普段は陰気な迷宮の壁だって虹色に染まるのだから!

 ――クーナは既に結構な量の胞子を吸引して駄目になっていた。
「見るにゃ団員。ほらあそこ。最新鋭の武器を揃えた湯豆腐屋さんがオープンしてるにゃー」
「ほんとにゃ団員。キノコが変形合体してタケノコになったにゃ」
 気が付けば血斗死威達も駄目になっていたのでもう本当に駄目かもしれない。
 それでも。この事態に収拾を付けられるのは先輩であり転校生であり猟兵であるクーナだけ。それを知っているからこそ雪華の騎士猫はギリギリの所で踏みとどまり、解毒キノコ目当てに虹色輝く迷宮内を彷徨する。
「ええっと、目的のは色合いと形がヤバいんだっけにゃー?」
 胞子の影響で基本思考レベルが血斗死威まで落ち込んだ今のクーナには、どんなキノコも最上級のご馳走に見えてくる。そうか。ノータイムでキノコ齧った彼らの心境はこんな感じだったのだ。
「何かあれ異質な感じ、絶望的に食べ物じゃなさそうな感じ……」
 大して頭をひねってないのに知恵熱が出てきた。いっそ風花を舞い散らせ、周囲を冷やせば頭もしゃっきりするだろうかと銀槍を掲げかけたが、近くでゾッキノコに焼かれた血斗死威(モヒカン)の悲鳴を聞いて何とか必要最低限の正気を取り戻す。流石に今の状態でゾッキノコと戦うのは分が悪い。
「……これかな?」
『やめてくれ! 俺には妻と子供が居るんだ!』クーナはそんな風に叫んでるような模様のキノコに注目する。なるほどこれは確かに絶望的で食べ辛い。
 しかし素面にならなければ迷宮攻略はままならない。クーナはルーンソード切っ先に覚悟を乗せて、解毒キノコらしきものを一口サイズまで切り刻む。
 乗せるのは覚悟のみ。万一ゾッキノコだった場合面倒なことになるので、今回は安全第一に、剣のルーンはお休みだ。
 解毒キノコ(仮)が属性を放出してくる素振りは無い。運がよかったか、鍛えた技量のお陰か、いや、恐らくこれはゾッキノコでは無かったんだろう。
 試しに、捌いたキノコを口の中に入れてみる。今のHigh Tensionなクーナなら、キノコを生で食べることなど造作もない。
「頂きまーす。ひょいぱくにゃー」
 舌で味わい、歯で齧り、姿は華麗な騎士なれど何たるモヒカン的蛮勇。しかしキノコを飲み込んだ直後、クーナの視界と思考は一気に開け――。
「うん、一気に眠気が吹っ飛んだ気分。もう大丈夫。何故なら」
 泰然と、大きく深呼吸。透き通った藍の瞳が全てを理解したように煌き……。
「壁があんなに金ピカだなんて!」
 キノコは本物だったが、吸い込んだ胞子量のせいかまだ少し本調子ではない様子だった。
「さあさあ元気を取り戻したのなら練り歩こう、れっつごー向こう見ずきのこハント!」
「食べ放題にゃー! 過去は振り返らないにゃー」
「取り放題にゃー! 未来なんか知らにゃいにゃー」
 そして始まるキノコフェスティバル。後はもうテンションのまま走り抜けるしかない。

 ……クーナが真に調子を取り戻したのは、もう少しだけ後の話。

●好感度99.9%
「……くっ! まさか一人の脱落者を出す事もなく迷宮を攻略するにゃんて! これは認めにゃー訳にはいかにゃー様にゃね……!」
 きのこ迷宮最深部。集結した全員の前で、ミケ総長は再び偉そうに講釈を垂れる。この男、一体どんな地位(ポジション)に居る想定で演説ぶち上げてるのか。
「割とひどいこともされたような気もするけれど、俺達の先輩に対する好感度は99.9%! もう後がニャいにゃー! 俺達真人間になっちゃうにゃ―! 実際今回で自信もついたんで先輩たちが居なくても頑張って行こうって雰囲気になってるにゃー!」
 良い事尽くめでは。
「まーだーにゃー! 残り0.01%あるにゃー! これは俺達の繊細かつ不安定な心の顕れにゃー! 思春期だからほっとくと大変なことになってしまうにゃよ?」
 なので一緒に災魔と戦ってほしい、とミケ総長は言ってきた。
「なんだかんだ言って先輩たちは優しいから、俺達と闘った時は手加減してたーにゃ? だから今度は世界を護る闘いってヤツを隣で見せてもらうにゃ。それが0.01%のしこりってやつにゃー」
 
 この先に災魔って奴が待ってるんにゃろ? それじゃ行くにゃー!
 
 言って、総長が合図を飛ばす。
 一斉に反響を始める数十のエンジン音。
 血斗死威達のバイクから、勢いよく蒸気(スチーム)が噴き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『ツッパリヤンキー』

POW   :    角材アタック
【手にした角材】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ヤンキー増援部隊
自身が戦闘で瀕死になると【Lv×3体の、増援のツッパリヤンキー】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    メンチビーム
【ガニ股でしゃがみ込んで】から【威圧感を込めた視線】を放ち、【気の弱い相手であれば、怯えさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:きすけ

👑11
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※次回冒頭文章更新6月16日(日)予定。
●暁の抗争
 猟兵達が進むのは、暗くて長い洞の迷宮。先へ先へと沈むほど闇は深くなり、僅かばかりの蓄光キノコとヘッドライトが細々と道行きを照らす。
 10分か、1時間か、真夜中のハイウェイ染みた迷宮を駆け抜けて、終点と思しき光に飛び込んだその直後。狭かった道は大きく開け、猟兵達は朝焼けの如き照明が眩い新たな階層(ダンジョン)へ辿り着く。
「……にゃ? 校舎にゃ? 上に出てきちゃったにゃ?」
 迷宮の中心に大きくそびえ立つ校舎らしき建築物を見た総長は首を傾げた。
 確かにその建物は地上に立つアルダワ魔法学園の外観とよく似ていたが、幾分造りが古めかしい印象を受ける。
 ――今、この瞬間にも構造が変化し続けている地下迷宮。時にはその『運動』に学園の一部が呑み込まれる事もあると伝え聞く。

「おいそこのテメェら! ウチの敷地に何許可も無く勝手に入り込んでくれちゃってんだコラァ!」
 周囲を探索しようとした矢先、がなる様なダミ声を迷宮中に轟かせ、校舎内からガラの悪い不良(ヤンキー)達がぞろぞろと校庭(こちら)に向かって集まってくる。その数は、軽く見積もっても、猟兵と血斗死威を合わせたそれより多いだろう。
「あ? 何にゃ? 何か文句あるのかにゃ? 入口に柵なりベルなりつけておかないそっちの手落ちにゃ。てか気軽にこっちへガン飛ばして来て、おみゃーら一体ドコ学にゃ?」
 そんな状況でも全く怯まずヤンキー達へメンチ切り返す総長と血斗死威。さすが気力その他諸々が馬鹿そのものに高いだけはある。そこの所は頼もしい。
「地下迷宮学園(チカガク)だオルァ! ぼてくりこかすぞテメー!」
「……ははーん。俺解っちゃったにゃ。災魔ってつまり他校生にゃ? 要するに他校生がアル学乗っ取ろうと日夜侵略仕掛けて来てるのが現状にゃ? こんな奴らに俺達の学び舎(あそびば)取られるわけにはいかないにゃ」
 強ち間違ってもいない。大体そんな感じである。
「それに見るにゃ先輩、あの不健康そうな顔、焦点が定まって無い目つき。あいつら絶対キノコやってるにゃー!」
「やってねーよバーカ!」
「にゃ!? マジかにゃ。それは御免にゃ。早とちりしちゃったにゃ」
「嘘ですにゃ総長! あの端っこに居る奴見てくださいニャ! 袋にキノコ詰めてスパスパやってますにゃー!」
「にゃ!? マジかにゃ副長!? やっぱこいつら相容れないにゃ! ぶちのめすにゃー!」
 キノコジャンキーに激怒した総長は蒸気(スチーム)を吹かし、釘バット片手、単身敵へ突っ込んで、宣言通りヤンキー一人を叩き潰す。が、ヤンキーが斃れたと同時、新たなツッパリヤンキー数十人が突如その場に出現し……。
「オレ達のキノコ迷宮(いこいのば)をめちゃくちゃに壊した落とし前、きっちりつけさせてやるからよ、覚悟しな!」
「何にゃ!? 増えるにゃ? 増える不良にゃこいつら?」
 増援ヤンキーの角材が一斉に振り下ろされようとした刹那、総長はアクセル全開、からがら包囲網を突破し帰還する。
「ちっ、なんて数だ、にゃ。こうなったらアレを使うしかないぜ総長、にゃ」
「むぅ……確かに特攻隊長のいう通り、血斗死威のバイクを全合体して放つ『最終血斗砲(ファイナルけっとキャノン)』なら奴らを有無も言わさず一瞬で完全消滅させられるにゃ」
 そんな奥の手があったのか。
「でもチャージまでちょっと時間がかかるのが弱点にゃ。先輩たちにはそれまで時間を稼いで欲しいのにゃ」
 折角後輩たちが自主的にやる気を出そうとしているのだから、そのアシストに回るのも悪くないかもしれない。
「チャージ完了まで丸三日掛かるにゃ。それまで耐え忍んで欲しいにゃ」
 一瞬に至るまでの時間が長すぎる。絶対普通に戦った方が早く終わるので、今回、最終血斗砲については完全完璧に忘れよう。そんなものは無かった。
「にゃ!? しょうがにゃいにゃ。それじゃ俺達がアシストに回るにゃ。行くにゃ先輩! 他校生(やつら)に俺達のアル学魂見せつけてやるにゃー!」

 君達いつの間にそんな愛校精神芽生えたの? という疑問を払拭しつつ、兎も角。不良(ワル)達と共に不良(ヤンキー)達を打ち倒そう。
 それがこの歓迎会の、大トリを飾る最後の演目(プログラム)だ。
才堂・紅葉
【改変連携歓迎】

「あら、良いじゃない。チャージの詰めは甘いけど、その発想は面白いわ」

ぽんと一匹の頭を叩くと、召喚符を取り出して野性味のある笑みを浮かべる。
まず召喚されたのは蒸気バイクだ。
更にその周囲に巨大な魔法陣が浮かび、バイクをコアとして巨大なゴーレムが召喚される。

「来たわね、蒸気王。『最終血斗砲』を装備よ」
蒸気王が胸元の装甲を開き、合体砲を持ち上げてジェネレーターを接続。
【メカニック、封印を解く】

「これなら15分って所かしら。何人かは整備につきなさい」
自身は召喚符を六尺棒に変え、飛び出す。
「さて今は守備時間よ。アル学魂を私に見せなさい」

猫達を率いて時間稼ぎし、チャージが終われば砲撃したい。


八幡・茜
フィンさん(f00295)と

まあ! やる気のある人たちね! おねーさんそういう人大好きよ!
ふふふ、この美人なおねーさんが、やる気に応えてあげないといけないわね!

あの人たちの頭から生えてる茸(髪の毛)もなんだかもふもふしてそうね
とりあえず掴んでお友達になってからもふもふするわね!
もふもふしてなくても、この茸を突き刺せばきっともふもふになるから!(もふもふ茸を頭に突き刺し)

フィンさんったら硝子を割るだなんてそんな過激な……効率的に割るために飛ぶ花火を撃ち込みましょう!
あ、花火が無いから代わりに血斗死威の人たちを放り投げるわね!

フィンさんはお疲れなのね
おねーさんも労ってあげるわね、このもふもふ茸で!


フィン・クランケット
茜さん(f04526)と

(三日経ったら、間違いなくキノコ食べるしかなさそうですねという顔)
(茜さんは三日間もふもふ漬けでも喜びそうという顔)

こんなじめじめした場所、頭にキノコが生えちゃいます!(みょみょん!)
健康被害も深刻ですし、ぱぱっとヤキ入れt(こほん)
倒しちゃいましょうね、茜さん!
派手に窓ガラス割りつくしてやりましょう!

投げられる方に心の中で冥福を祈り
迷宮で拾った解毒キノコを敵にぶつけ、せめて正気にさせながら
接近戦は氷属性を乗せた薙ぎ払いで応戦
ダッシュと逃げ足のヒット&アウェイで敵を翻弄します

戦闘後、「疲れましたねぇ」とこれ見よがしに血斗死威さんたちに
あ、茜さんは座ってて――いやぁー!!


六島・椋
エスタ(f01818)と
ああ、かっ飛ばしてくるといい(軽く拳を合わせ)
自分は血斗死威たちのアシストに回るかな
高らかに叫んだ「アル学魂」を見せてくれよ、後輩諸君

【目立たない】ようバイクの動きに紛れて、
バイクの陰や死角からナイフを【投擲】したり、
後輩への攻撃を『オペラツィオン・マカブル』や人形たちで代わりに受けたり
エスタ? あれくらいの相手なら自力で何とかするだろ

隙があれば【盗み・盗み攻撃】でヤンキーの角材を盗み、
戦闘と並行しつつ【早業】でケットシーの形に彫る
彫った木像は近くの後輩にあげようか。うまくできただろう

なんだ、また子分を増やしたのか友よ
違うのか、では舎弟を増やしたのかアニキよ


エスタシュ・ロックドア
迷宮探索も大詰めだな
そんじゃ椋(f01816)、俺ぁいつも通り突っ込むわ
後よろしく(拳を突出し)
行くぜ血斗死威ども、ブッコミの時間だオラァ!

シンディーちゃんに【騎乗】
【ダッシュ】で【運転】して【存在感】発揮しつつ敵陣に突っ込むぜ
『羅刹旋風』発動
フリントを【怪力】でぶん回して、
【なぎ払い】【吹き飛ばし】敵をぶった斬ったらぁ
動きを読みにくくするためにシンディーちゃんで縦横無尽に走り回りながらな

血斗死威への攻撃は【かばう】かぁね
なに、ちょっとでも面倒見た奴に手ぇ出されんのが嫌いなだけさ
……よせ、やめろ、アニキって言うな
これ以上子分弟分増やす気はねぇぞ俺ぁ
うるせぇ椋、またとか言うんじゃねぇ


グウェンドリン・グレンジャー
これが、金枝篇にも、記された、古の生き物。ヤンキー
なんでも、「フウキイーン」と、いう……生物に、弱いとか

血斗機械(ケットマシン)……ケットシーチェンジ、三日かかる、残念

Mórríganの翼、広げて、Imaginary Shadowで、補助、して【空中戦】で飛行
私が、抱えるか、背中、乗せられる、血斗死威、乗っけてく

ヤンキー、溜まってるとこ、目掛けて降下
Imaginary Shadowの、念動力【属性攻撃】盾属性で
血斗死威、守りつつ、攻撃
射程内の、ヤンキーに【生命力吸収】乗せた、Feather Rain
よし、みんなー、一気に、ヤッチマイナー……ケットシー、チェーンジ!!

(数年ぶりの大声で咳きこむ)


花邨・八千代
最終血斗砲とか何それ超見たいやつじゃん…
敵倒しといてやるからがっつり三日チャージしろよお前ら
いいか、絶対だぞ
手ェ抜いたら容赦しねーからな!

◆戦闘
おーし、楽しい楽しい喧嘩のお時間だ
南天に血ィ吸わせて金棒に変化、【ブラッド・ガイスト】
「挑発」「殺気」を乗せた「恫喝」でご挨拶だ

そのモヒカンまるっと引き剥がしてやっから覚悟しとけや!

「第六感」で敵の攻撃避けつつ広範囲を巻き込む勢いで「怪力」乗っけて「なぎ払い」だ。「2回攻撃」で更にダメージ加速させんぞ
攻撃食らったら「だまし討ち」と「カウンター」、何か武装してやがったら「鎧砕き」だ
こっちが倒れそうなら「捨て身の一撃」で無事じゃ済まさないぜ
逃すかよ!




「三日……三日ですかぁ……うーん」
 不良達の怒号飛び交う校庭で、フィンはこめかみに手を当て思案する。
 何でも入るポシェットと言えど、流石に三日分の食料は詰め込んで来ていない。本当に丸三日闘い続けるなら、間違いなくキノコのお世話になるしかないだろう。
「まあ! やる気のある人たちね! おねーさんそういう人大好きよ! ふふふ、この美人なおねーさんが、やる気に応えてあげないといけないわね!」
 片手に友達ネコを抱え、ネコたち以上にやる気に満ち満ちた茜。文句のつけようのないその笑顔に、フィンはどうしようもなく波乱の予感を覚えた。
 ネコにキノコ、側にもふもふがある限り、彼女なら三日程度余裕で、むしろ喜んで耐えられそうな気がする。


「あら、良いじゃない。チャージの詰めは甘いけど、その発想は面白いわ」
 紅葉は茜に抱えられたネコの頭をぽんと叩くと、召喚符を取り出し、『お嬢』のそれとはかけ離れた野生的な笑みを見せる。
 放たれた符が喚び寄せたのは紅葉自身の蒸気バイク。しかしこれはまだ本命ではない。本命の二段召喚。符は蒸気バイクを中心に魔法陣を展開し、それを核として更なる召喚――巨大ゴーレムの顕現を成し遂げる。
 強く、大きく、重く。そんな蒸気ゴーレムに紅葉が与える役目は――。
「来たわね、蒸気王。『最終血斗砲』を装備よ」
 同意するように、蒸気王の胸部装甲は開き、ジェネレーターが露出する
「にゃんと!? 待つのかにゃ!? 三日待ってぶっぱなすのかにゃ!?」
 紅葉の言葉に驚愕する総長。何か秘策があるのだろう。何より駄目だと思っていた奥の手を披露する機会があると言うのなら、男として、何よりガジェッティアとして協力しない理由はない。
「……でもちょっと待つにゃ。このまま全車についてるマル秘なボタンをぽちっと押せば合体できるけど、折角ならもっとドラマちっく行きたいにゃ。なんかこう……ないかにゃ?」
 男ゆえ、ガジェっティアゆえ、総長は変なところで躓いた。
「血斗機械(ケットマシン)……ケットシーチェンジ」
「――!?」
 全ての雑音を征服し、突如、素敵単語が戦場に響く。
 総長が敏感に反応する。首が千切れそうな勢いで声音の方へ振り向くと、そこに佇んでいたのはグウェンドリンだ。
 二人の目と目が合う。余計な説明はいらない。グウェンドリンはただ、深く、強く頷いて――。
「――ケットシー、チェーンジ!!」
「おおお! それにゃー! みんな行くにゃー! ケットシー!! チェーーンジにゃ!」
 その単語(ことば)で、血斗死威たちの心は一つになった。数年ぶりに大声出して思い切り咳きこむグウェンドリンが見守る中、全員が一斉同時にボタンを押せば、巻き起こる蒸気と共に数十あったバイク――否、血斗機械(ケットマシン)が結集し、ただ一塊の巨大な砲(カノン)を創り出す。
 互換性が有るわけでも無かろうに、完成した最終血斗砲はまるでそれが当然と言わんばかりに自動(オート)で蒸気王へ接近し、双方のジェネレーター諸共連結合身。今ここに、禁断の封印は解かれた。
「これなら15分って所かしら。何人かは整備につきなさい」
 事も無げに紅葉が言った。
「15分!? 相当無理してますにゃ。けど了解ですニャ―!」
 細かい調整はトラジマ団員含む数名のネコ達に任せ、紅葉自身は役目を終えた符を特殊鋼の六尺棒に変え、前線(まえ)に出る。
「さあ、今は守備時間よ。アル学魂を私に見せなさい」
 六尺棒を一振りすれば、仕込み鎖が伸長し、三節棍に変じてヤンキーの顔にめり込み、倒す。
「バイクが無くても俺達やるにゃ! 戦力半減が何にゃ! 練り歩くにゃー! 暴歩族にゃー!」
 闘志入魂、紅葉に負けじと、総長達も我武者羅にヤンキーの波へ突っ込んだ。


「最終血斗砲……いいよな。俺も丁度それ超見たかった所なんだよ」
 向かってきた角材を素手で受け止め、握り潰し、無防備のヤンキーを思い切り蹴り飛ばすと、八千代は悪辣に微笑する。
「15分だってよ。破格じゃねーか。そんくらいなら全力行ってもぶっ倒れたりしねぇよな?」
 血斗砲の調整に回ったネコが少数だったお陰で、八千代の目論見より、前線で暴れる位には人員に余裕があった。
「にゃー! 攻撃に当たらないコツは当たる前に避けることにゃ! 勘と気合と根性で避けるにゃー! 姉御の教えはこの胸に生きてるにゃー!」
「ははっ! そうかい? だが、口先だけなら何とでも言えるだろうぜ。だからほら、待望の実践タイムだ。いいか、手ェ抜いたら容赦しねーからな!」
「にゃー!」
 八千代が血塗れの掌で南天を掴めば、印籠は餓えた獣の如く貪欲に真紅を啜り取り、その形を大金棒に変化させる。
「おーし、楽しい楽しい喧嘩のお時間だ」
 挑発、殺気、恫喝。即ち赤の瞳は明確な敵意を帯びて、挨拶代わりにヤンキーたちを射竦めた。
「……そのモヒカンまるっと引き剥がしてやっから覚悟しとけや!」
「ンだとコラァ! いい女だからって調子乗ってんじゃねーぞ!」
 根本的な精神構造が似通っているのだろう。その口ぶりはどことなく出会ったばかりのネコ達に似ている気がした。しかし、彼らに対して手加減する理由は微塵もない。
 ただでさえ強力無比な金棒に、自前の怪力を上乗せし、思うままに振り回す。
「ああン? 増えるヤンキー? 雑魚が何匹増えようが変わんねぇよ!」
 一撃目で倒されたヤンキーが召喚した増援を、二撃目で他愛なく全て薙ぎ払う。
 それでも敵が数に任せて攻めてくれば、多少の手傷は負うものだ。
 運よく自身に攻撃を当てた敵が余裕たっぷり笑う度、八千代は間髪入れずに金棒を返すか、わざとふらつき重傷を負った『フリ』をして更なる攻撃を誘き寄せ、その慢心ごと敵を叩き潰す。仮に学ランの下に何か防具を着込んでようが、全く気にせず粉砕するのみだ。
 捨て身になる程度のダメージは覚悟していたが、八千代の薫陶を受けたネコ達の奮戦もあって未だ大きな傷は負ってない。有るとすれば精々、南天の喉を少々潤す程度の流血だ。
 こちらが斃れ、あちらは倒れない。劣勢を悟ったヤンキーたちは八千代に背を向け逃走しようとするが、
「ばーか。逃すかよ!」
「男らしくないにゃあー! 背中ぶっ叩いてやるにゃー!」
 八千代達は躊躇なく、ヤンキーたちを背から打ちのめした。


「これが、金枝篇にも、記された、古の生き物。ヤンキー」
 校庭狭しと暴れ回るヤンキーを一瞥し、グウェンドリンはぼんやり呟く。
 神話とか呪術とか信仰とかその辺のことが纏められた研究書・金枝篇に、忘れ去られたショーワの異物・ヤンキーの記載が有るのは今更疑うべくもない真実だろう。
「なんでも、『フウキイーン』と、いう……生物に、弱いとか」
「にゃ!? それは言ってはいけない言葉にゃー! タブーにゃー!」
『フウキイーン』の詳細は知れないが、どうやら不良ならば誰しもが恐れる存在らしい。もしこの場に居れば、きっとヤンキーたちを封じ込めてくれたのかもしれないが、無いものねだりをしても仕様がない。
 腕と背中、計二匹のネコを抱えたグウェンドリンは闇の如き影を纏う黒翼を広げ、暁の空へ飛び立つ。
 光を受けて、地に落ちる影。それを認識したヤンキー達は上空(そら)目掛け角材を放り投げるが、
「にゃ! にゃ! にゃ! 撃ち落すにゃ!」
「大忙しにゃー!」
「……らくちん」
 背と腕のネコがぱちんこで弾幕を貼り、それらを撃ち落す。
 そして敵の密集地帯に目をつけたグウェンドリンは、そこへ急降下蹴撃を仕掛け、ヤンキー一体を蹴り抜いて、勢いそのまま周辺地形を破壊しつつ着地する。
 視界を遮る砂ぼこりを無視して投擲される角材の群れ。グウェンドリンはクレーターの中心に降り注ぐそれらを、影が変じた『盾』属性の黒蝶に弾かせる。
 自身が避けるのはそう難しい事ではない。盾蝶が防御を固めて手間無く反撃するためのモノであるのは確かだが、一番の目的は連れ立ったネコ達を守るための防御壁(バリケード)だ。
 砂塵が舞う。しかし、投擲された角材の軌道から暗幕の後ろに居るヤンキーたちを探し当てるのは容易い。
 グウェンドリンが漆黒の羽根を放てば、刃羽達は暗幕を切り裂いて獲物を目指す。
 果たしてそれらが命中したのか、外したのか、その結果を知るに砂塵が治まるのを待つ必要は無いだろう。
 何より羽根越しに、グウェンドリンへ伝わるヤンキーたちの生命力がそれを物語っていた。
「よし、みんなー、一気に、ヤッチマイナー……」
「にゃー!」
 集積する命が少し痛かった喉を癒す。
 ネコ達は砂塵が晴れた戦場を駆け抜けて、グウェンドリンに活力を奪われ衰えた敵から狩り穫る。
 最早立っているのがやっとだったのだろう。ヤンキー達は軽く殴られるだけで面白いように沈んでいった。


 陽に近しい照明はあるものの、すぐ上層(うえ)が例のきのこ迷宮だからか、ここも何処となく湿気っぽい。
 むしろ上より体感温度が高い分、こちらの方が不快指数は上かも知れない。
「こんなじめじめした場所、頭にキノコが生えちゃいます!」
 至極当然の訴えと共に、みょみょん! と湿気を含んで若干しっとりしたフィンのアホ毛が鞭の如くしなる。
 そうねー、と相槌を打ちながら、フィンのアホ毛をじっと観察していた茜は、またしても革新的な発想(もふもふ)を閃いてしまったようだった。
「あの人たちの頭から生えてる髪の毛(キノコ)もなんだかもふもふしてそうね?」
「ええ……? そう……でしょうか?」
 フィンは訝った眼差しでヤンキーたちの頭を見る。
 お金より情に弱くとも、フィン・クランケットは紛う事無く街で生きる商人だ。
 その鑑定眼を以てして、青い瞳を閉じるか閉じないか限りなく薄くー開いて見てみれば、ヤンキーたちの頭髪もぎりぎりもふもふしてそうに見えないことも無い。かもしれない。
「とりあえず掴んでお友達になってからもふもふするわね!」
 フィンとしては異論があるが、茜がそう言うのなら、ルンルン気分でヤンキーとの距離を詰める彼女を応援するしかない。
 バチバチと、毒電波が迸る彼女の手を見、フィンはこの後の展開に何となく察しがついた。
「何だおらァテメー! ぶちのめされてぇのかああん?」
「そんな。戦い合うだけなんて悲しいわ。話し合えばきっと分かり合えるはず。だから――お友達になりましょう!」
「なん……あばばばばボランティアダイスキ―!」
 知ってた。
 話し合おうが合うまいが、茜は毒電波により一時的に戦意が喪失したヤンキーの頭をモフる。
「うーん……もふもふ度30%って所かしら?」
 意外と厳しい査定を下す茜。やはり生育環境がどう考えても良くないのだろう。
「でも大丈夫! もふもふしてなくても、この茸を突き刺せばきっともふもふになるから!」
 それは一種のドーピング。茜はきのこ迷宮からひっそり持ち出したもふもふゾッキノコをヤンキーの頭に突き刺した。直後、ヤンキーの頭はリーゼントからアフロヘア―にモフっとチェンジする。
 一人だけではない。『突き刺した』衝撃に反応したキノコは無差別にもふもふ属性を拡散させ、辺り一面は最早パンデミックのアフロまみれ。
「あ!? そうか、こいつら迷宮をもふもふまみれにした主犯じゃねーか!!」
 いつの間にかヤンキーたちにそのもふもふっぷりを知られるほど名を馳せていたらしい。
 何という事だろう。にもかかわらずもふもふの良さは一向に理解されていない。やはり猟兵とオブリビオン、闘いあうしかないのか。
「ともかく! 健康被害も深刻ですし、ぱぱっとヤキ入れ、こほん、倒しちゃいましょうね、茜さん! 派手に窓ガラス割りつくしてやりましょう!」
 一瞬出かけた地を誤魔化すように、フィンは薙刀・開刀『幻世』をポシェットからするりと取り出し、構える。
「フィンさんったら硝子を割るだなんてそんな過激な……やるんだったら効率的に割るために飛ぶ花火を撃ち込みましょう!」
「いえ、残念ながら花火は今回持ってきて……」
「あ、花火が無いから代わりに血斗死威の人たちを放り投げるわね!」
 えっそんなごく自然に……フィンは迷宮に続き再び茜を制止しようと思ったが、彼女に抱きかかえられた血斗死威達を見てその言葉を飲み込んだ。
 今まさに放り投げられようとしている彼らの瞳。それは……決意を秘めた漢の哀しくも美しい瞳。
 もう覚悟は出来てるにゃ。ここは男らしくいくにゃ。誰かの心で生き続けられればそれで本望にゃ。
 何より瞳がそう語っていた。口元が何かすごい勢いで助けを求めていた気もするが、そっちの方は戦闘音と血斗砲のチャージ音に紛れてよく聞こえなかった。
 最早フィンには彼らの冥福を祈ることしか出来ない。
 雄々しく発射される血斗死威達の冥福を祈り、がしゃんと彼らが見事に任務を果たしたのを見届けた後、フィンは校庭(せんじょう)を駆ける。
『幻世』を一振り、ヤンキー改めアフロ達との間合いを広げ、先ずは彼らの口元目掛けて解毒キノコを放る。
 トリップ状態で何も知らぬまま倒れるのも後味が悪かろうと、正気に戻ったヤンキー達はそれまでとは比較にならぬ俊敏さでフィンに襲い掛かるが、角材のスコールを全速力で抜け出して距離を取り、
「お願いしますね、妖精さん。私に力を貸してください」
 遠間から刃さながら鋭い氷柱でヤンキー達を打ち抜いて、それでも挫けず接近戦を仕掛けてくる相手には、同じく凍気を載せた幻世の一刀で断ち切る。流れ落ちるはずだった血液は、ただ、朱色の氷雨となって地を叩くのみだ。
 
 フィンが自在に冷気を操りヤンキー達を翻弄する傍ら、茜は自在にネコを放り投げ別の意味でヤンキー達を翻弄していた。


「いやはや、初めての迷宮探索もそろそろ大詰めだな。長かったような、短かったような……」
 ふ、と、息を吐き、エスタシュは黄昏れる。脳裏に浮かぶ血斗死威達とのやり取り数々は、楽しかったような傍迷惑だったような……。
 チャージ80%ですニャ! 血斗砲の進捗を告げるトラジマ団員の言葉に、思い返すにゃまだ速いかと我に返り、にぃ、と笑って相方へ拳を突き出した。
「そんじゃ椋、俺ぁいつも通り突っ込むわ」
「ああ、いつも通り、かっ飛ばしてくるといい」
 椋もまた、軽く拳を前に出し、合わせた。
 劇的でも無く、無感動でも無く、二人が交わす挨拶は、それくらいが丁度良い。
「よっしゃ行くぜ血斗死威ども、ブッコミの時間だオラァ!」
「にゃー!」
 現状バイクの無い血斗死威達を六ケツ程度詰め込んで、シンディーちゃんは戦場を疾走する。ただでさえ大きなエスタシュの存在感が、ネコ達のお陰で倍増していた。
「にゃにゃにゃ! これが俺達とは別の技術で作られたバイク……!」
「でっかいにゃー! エンジン音が沁み渡るニャー!!」 
「速いにゃー! 俺達風になってるにゃー!」
「……へっ、 もっと飛ばすぜ。振り落とされんなよ?」
 ハンドル片手、フリントを豪快に振り回し、エスタシュの宣言通り加速したシンディーちゃんは、容赦なくモヒカンの群れに突っ込んだ。
 フリントが雑魚の波濤に真一文字の孔を穿ち、シンディーちゃんがヤンキーを吹き飛ばしたその瞬間、ネコ達も勢いよく車体から飛び出してヤンキー達をぶん殴る。
 四方を囲まれ助けが必要かとも思ったが、陽動するからそちらは自由に動けとネコ達はサインを飛ばしてきた。
「それじゃあここは、あいつ等に甘えるとするか……!」
 ネコ達を視界の端に置きながら、重さ、大きさなど一切障害にならぬと自在に振るうフリントで強引に進路を作り、エスタシュはこれまで培ったドライビングテクニックを全て出し切るように、シンディーちゃんを縦横無尽に走らせた。

「にゃ? サカズキ・オボロ先輩どこ行ったニャ?」
 余程骨たちの第一印象が強かったのか、骨の方の名前で憶えられてしまったらしい。
「きっと今この瞬間にも地獄の底から俺達のこと見てるにゃー。手は抜けないにゃ」
(「大当たり」)
 校舎ごと呑み込まれた機材。倒れたヤンキーの山。少し注意して観察してみれば、目立たず身を隠せる場所はいくらでもあるものだ。
(「さて、自分は君たちのアシストに回るとしよう。先輩たちが居なくとも、高らかに叫んだ『アル学魂』を見せてくれよ、後輩諸君」)
 この程度の敵なら、自由奔放に暴れ回っている相方(エスタシュ)への心配は無用だろう。
 地獄から、とは言わないが、椋はネコ達からも死角となる位置に潜り込み、彼らを見守る事にした。
「行くにゃ皆! 俺達だけでもそこそこやれるってところを見せるんにゃー!」
 先輩の姿も見えず、半身と呼ぶに相違ないバイクも今は使えず、それでもネコ達は勇猛果敢にヤンキーの波へ特攻する。
 威勢の良さは達人級だが、実戦経験の少なさからその戦い方にはまだまだ隙が多い。
 椋は危ない、と声を出す代わりにナイフを投げてヤンキーたちの動きを牽制し、彼らがまだどうしようもない窮地に立たされた時はオボロたちを繰り、危険な攻撃を肩代わりして排出(いな)す。
「オボロ先輩……やっぱり俺達のことちゃんと見てくれてるんだにゃ!」
 そんな事を何回も繰り返しているうちに鈍感なネコ達も陰ながら守られていることに気付いたらしい。
 ならばと椋はケットシーの木像片手に猫たちの前へ姿を現した。
 何の脈絡もなく現れたその彫像、正体はサカズキ組がヤンキー達を阻む際失敬した木材を、骨人形たちの操演と並行して彫ったものだ。
「どうだ。うまくできてるだろう」
「なななんにゃその彫像! めっちゃかっこいいにゃー!」
「欲しいのなら、どうぞ」
「あ! ずるいにゃー! 俺も欲しいにゃー! ……どうやったら貰えるにゃ?」
「角材分捕れば彫ってもらえるにゃ? なら分捕るにゃ!」
 予想外な戦意の高まりを感じる。
 椋の彫刻が、ネコ達の心のどこかにクリティカルで突き刺さったらしい。
「よーし援護は任せたにゃオボロ先輩! このまま角材強奪しながらシンディー先輩の所まで一直線にゃー!」
(「……まぁ、自分がオボロ先輩ならエスタはそうなるよな」)
 などと思いつつ、兎も角。やる気があるのは非常に良ろしい。
 骨人形をネコ達の後衛に配置し、彼らの進軍に付き合う事にした。
 
「おー! こっちにゃこっちにゃー!」
 ちらりと見えた椋班へ、大きく手を振るエスタ班陽動ネコ。けれども、たった、その一瞬の気の緩みが、ヤンキー達に付け入る隙を与えてしまう。
「……この、ちょろちょろてこずらせてくれやがって! キャットハントの始まりだこるぁ!」
「――にゃ!?」
 気付いた時にはもう遅い。背後から迫る不可避の角材。
「おおっと、させねぇよ!」
 しかし、それに気付いたエスタシュがシンディーちゃんを全速力で駆り、寸前ネコの盾になる。
「ちっ、邪魔しやがって。そんなにネコが可愛いかおおん?」
「正直生意気が過ぎて可愛いたぁあんまり思わねぇが……なに、ちょっとでも面倒見た奴に手ぇ出されんのが嫌いなだけさ」
 木材を受け止めて、未だしびれが引かない右腕を、それでも強引に動かし、ヤンキーを縦に真っ二つ。振り回しに降りましたフリントの威力は、多少の不調で陰らない。
「エスタのアニキ……もしかして俺を助けるために無茶したにゃ……?」
 何時の間にやらアニキ呼び。陽動ネコを庇った結果、彼の心の0.01パーセントが埋まったらしかった。
「……よせ、やめろ、アニキって言うな。これ以上子分弟分増やす気はねぇぞ俺ぁ」

「……なんだ、また子分を増やしたのか友よ」
 ヤンキー達を掻き分けて、無事エスタシュと合流した椋がからかう様にそう言うと、
「うるせぇ椋、またとか言うんじゃねぇ」
「違うのか、では舎弟を増やしたのかアニキよ」
 まんざらでもなさそうなので、からかい含みの二回口撃。
 エスタシュはそんなんじゃねえよと否定しながらサングラスで視線を隠し――照れくさそうに頬を掻いた。


「チャージ完了ですにゃー! 120%ですにゃー!」
 最終血斗砲の整備に当たっていたトラジマ団員が叫ぶ。
 血斗砲と蒸気王は周辺に蒸気(スチーム)と火花をまき散らし、軋む。3三日から15分に縮めたチャージがやはり両機に相当の負荷をかけているのだろう。不安定かついつ爆発してもおかしくない様相を呈していたが、それでも機械(マシン)であるが故、尚駆動する。
「来るぞ来るぞ馬鹿でかい砲(の)がきやがるぞ! おら! にゃんこ共! 敵を限界まで引き付けて全力撤退(しっそう)だ!」
「ラージャーにゃー!」
「待てコラー!」
 八千代は棍棒を振り回し、ヤンキーに追われ、ネコ達を追い立てる様に避難させる。
 血斗砲の射線上から八千代班、及び味方の完全退避を確認した紅葉はゆるりと古びたリボルバーを引き抜き、構える。
 紅葉が右に左にリボルバーの照準を動かせば、蒸気王も軋み叫びながらそれに追随して狙いを定めた。
「トリガー、任せますにゃー! 虎の子の一発ですにゃー!」
 果たして、紅葉は何時ものように、淀みなく……リボルバーのトリガーを引いた。
 刹那。校庭(せんじょう)に迸るのは光の奔流。
 援軍を呼ぼうが武器を投げようがメンチを切ろうが関係ない。
 圧倒的暴威を孕む白光は、ヤンキー達の何もかもを一瞬で呑み込み、末期の言葉や跡形すら残さず完全に消滅させた。
 光が去った後。
 そこにあったのはただ、煙る蒸気と……静寂のみ。

 これですべてが終わったか、今の所は定かでは無いが、一息つける程度の『間』が生まれたのは確かだった。
「疲れましたねぇ……」
 なのでフィンはこれ見よがしに血斗死威達へそう言ってみた。
 ネコ達は何処で憶えたか、それなら、と肩の凝りを解してくれる。にくきゅータッチが中々どうして心地いい。
「後はマタタビコーラにしますにゃ? ぜんざいにしますにゃ?」
「そーですねー」
 甘味までついてくるとは何てサービス精神旺盛なネコだろう。
「それとも――」
 それとも? フィンがおやつを注文しようとした直前。悪寒が走る。この声は――!
「あ、茜さんは座ってて――!」

「フィンさんはお疲れなのね。おねーさんも労ってあげるわね、このもふもふ茸で!」

「いやぁー!!」
 何もかも、一瞬気付くのが遅かった。
 故にフィンは――暁の空の下で、もふっと、もふもふってしまったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



「まーだ終わってないのにゃー!」
 一時の平穏を打ち破ったのは、旧校舎から轟くネコの声。
 校舎に特攻(ブッコ)んだはずのネコ達が、なりふり構わず割れた窓から身を乗り出して、慌てふためき校庭(こちら)側へ戻ってきた。
 その数瞬後。新手のヤンキー達が、威嚇めいた怒声(こえ)を上げつつ校舎の至るところから顔を出し、こちらにメンチ切ってくる。
「にゃ!? まだ居たにゃ? だったら今度は最終血斗砲で校舎諸共ぶっとばすにゃー!」
 飛んで火にいる夏の虫、と、わらわら迫り来るヤンキー達を前に、総長は余裕の態度で次弾発射を指示するが、
「もう無理ですにゃー! 発射機構がぶっ壊れましたにゃー! そもそも連射出来るようには作ってませんにゃー!」
 血斗砲を調整し続けていたトラジマ団員はお手上げ状態の現状を報告した。
「えっ!? 無理にゃ!? ヤバいにゃ予血斗死威想外にゃ敵が来ちゃうにゃせめてとりあえず分離させてバイク機能復旧させるにゃー!」
 大慌てでスパナ片手にバイクを修理する血斗死威。
「まさか……こちらの奥の手が連射できないのを見越して部隊を二つに分けていたのでは?」
 きらりとメガネを光らせ、副長は鋭い考察を披露する。
 しかし。恐らく。十中八九、あのヤンキー達は単に校舎の中でサボっていただけだと思われる。
暁・エリカ
愛校心か…普段は気にしてない素振りをしても知らない人達が居るとなんとなく出したくなるんだろうね

さて、相手は…おお、あれが噂に聞くメンチを切るか
ここはケットシー達にメンチを切って貰って【威圧感を込めた視線】に対抗しようか
大丈夫、相手の威圧感に勝てるように援軍を用意したよ…さっき召喚した【チベットスナギツネ】だ
睨み合いで彼の【殺気】溢れる?視線に敵うものはいないよ

睨みあいで膠着状態になったらこっそりと攻撃しよう
睨みあってる
睨みあってる
睨みあってる
そう睨みあってる
そこをガツンだ
さっき持たせた炎のゾッキノコを投げつけさせたり、それに合わせて狐火で【全力魔法】による【範囲攻撃】の時間だ

アドリブ連携歓迎


杜鬼・クロウ
アドリブ◎
解毒茸食べスペアのグラサン装着

キノコキノコうるせェぞ
ヤクみてェな言い方すンなガキ猫ども!(恫喝

馬鹿正直なワルは嫌いじゃねェ
最後までお前の矜持は貫き通せ
他校のヤツらもだ

今後送る華々しい学園生活の一端となるようド派手にイこうじゃねェか!なァ!(先制攻撃で玄夜叉で横薙ぎ
さっき作った水盾の茸でカバーしてみろ
後は俺がきっちり片ァつけるからよ(命は取らず

【トリニティ・エンハンス】使用
状態異常力重視
正面突破
姑息な真似は一切無し
敵の攻撃は水盾の茸で防御頼む
属性攻撃・2回攻撃で狂風起こす
上空へ飛ばし気絶させてキャッチ

短期間とはいえお前ら血斗死威達と巡れて楽しかったわ(情が移り
また会いてェな(猫の頭ぽむ


ベルゼドラ・アインシュタイン
何だ何だ、地下に住み着いてる雑把共か????
テメェらにかまってる暇はねーんだ、さっさとその場を退きやがれ

角材での攻撃は全部拷問具で薙ぎ払う様に【怪力】任せに振り回せばいいだろう
やっぱ数がいるんなら、一箇所に集めてブチかましてぇよな
【殺気】を振り撒き拷問具で掻き集めるように一箇所に集めて
ある程度寄せた所で【ベルゼブブの鉄槌】をお見舞いすっぜ

テメェらのその頭、キレイに焼けた方がスッキリするかもな?




「あーっ! 真ん中ら辺に居る奴見るにゃ! またあいつらキノコやってるにゃー!」
「赦せないにゃー! 俺ら健全健康暴走族にゃー!」
 平然とキノコやる不健康なヤンキー達を、やいのやいのと囃し立てるネコ達。余程気に食わないのだろう。
「キノコキノコうるせェぞ。ヤクみてェな言い方すンなガキ猫ども!」
 班(チーム)の面子で一番最後、ようやく解毒キノコを齧って酔いを醒ましたクロウは、脅す様にネコ達を一喝する。
「俺達の相手はキノコじゃねぇ。他校生どもだ。間違うなよ。本質(そこ)を取り違えちまうと、足元掬われる事も有るだろうよ。気ぃつけろ」
 スペアのサングラスを掛けながら、クロウは叱るように、諭すようにネコ達へ語る。
「だがまぁ、馬鹿正直なワルは嫌いじゃねェ。アル学魂――何かを守りたいって矜持をお前達が持ったんなら、それを最後まで貫き通せ」
「クロウの兄貴……わかったにゃ」
 クロウを慕うネコ達の態度が引き締まる。決して遅れは取るまいと、武器を握る肉球に信念が籠ったようだった。
 そしてクロウはヤンキー達を見据え、
「よぅ、聞こえてたか? 折角やり合うんだ。勝手だが、他校生(おまえ)たちにもそう言うモンを期待するぜ?」
 剛毅に笑うと同時、玄夜叉に属性を浸透させた。
「あぁ!? 知った事かよ! てめぇらの矜持なんざ、秒で砂にしてやんぜコラァ!」
 ヤンキー達は威勢良く啖呵を吐き出す。しかし、その態度とは裏腹、こちらを警戒してるのか、距離を取り、一定以上は近付く様子を見せない。
「――何だ何だ、地下に住み着いてる雑把共か??」
 ベルゼドラはそんな煮え切らない態度のヤンキー達を、根性無しと罵る様に眼(ガン)飛ばす。
「テメェらにかまってる暇はねーんだ、さっさとこの場を退きやがれ!」
「姐さんのいう通りにゃ! さっさと退くにゃー!」
「この校庭は俺達がありがたーくバイクの練習場として使ってやるにゃー!」
 見たものに恐怖を与えるその視線。
 ベルゼドラと無数のネコ達に睨まれたヤンキー達はプレッシャーに呑まれ数歩後退り、しかし負けじとガニ股でしゃがみ込んみメンチを切り返す。

「……おお、あれが噂に聞くメンチを切る、か」
 武器も飛ばず、言葉も飛ばず、先程同様の静寂が校庭を支配するが、しかし目には見えない異様な雰囲気は、外野で観戦するエリカにも否応なく感じることが出来た。
「大首領先輩。どうするんですにゃ? メンチ加勢しますにゃ? 数は向こうの方が多いですにゃ。微妙に押されてる感ありますにゃ」
 たった一条のメンチビームに負ける血斗死威ではない。ただ、数に物を言わせて無数の視線(ビーム)が収束し、間断なくネコ達に注がれるなら、彼らの気力と根性とガッツと勇気を貫通するだけの眼力(いりょく)を持つこともあるだろう。
 エリカ同様、趨勢を見守っていた副長の言う通り、眼力戦況は拮抗を装っているが、少しだけこちらが不利かもしれない。士気が崩れれば、倒される。それでもクロウとベルゼドラは実力的に大事無かろうが、ネコ達は『初めての迷宮探索で眼力負けしました』となると可哀そうだ。
「万一こっちが負けたらそれイコールアル学魂の敗北ですにゃー。じめじめしてるチカガクなんかに負けたくないですにゃー」
 何時芽生えたか愛校心。
 普段は気にしてない素振りをしていても、見知らぬ他校生が居ればなんとなく出したくなる……のかもしれないとエリカは思った。
「私達は私達でやることがある。大丈夫。相手の威圧感に勝てるように援軍を用意したよ」
「強力な助っ人!?」
「そう。さっき召喚したチベットスナギツネだ」
「こゃーん」
 エリカの背後から、デフォルト半眼のそいつは満を持してひょっこり現れた。
「おお……まるで水晶の如く全てを見透かす眼差し……睨まれたからには『次なんて無い』。何より瞳がそう語ってますにゃ……」
 そうだろうか。そうかもしれない。
 何にせよ、睨み合いで彼の殺気溢れる(?)視線に敵うものはいない。有り体に言ってしまえば無敵だ。
 チベスナが血斗死威側に加勢するとどよめきと共に眼力戦況は真に膠着状態へ陥り、それでもなお双方は睨み合う。
 睨みあっている。
 睨みあっている。
 睨みあっている。

 そう、睨みあってる。
「そこをガツンだ」
「了解ですにゃ。俺達の答えはこうですにゃー!」
 突風の如く、副長以下エリカ班がヤンキー達へ放り投げた火炎キノコが時を動かす。
「丁度良い。睨み合いにも飽き飽きしてた頃合いだ」
 火炎キノコが齎した混乱に乗じ、一対の三日月が朝焼けに閃く。怪力任せにベルゼドラが繰るそれは、ヤンキー達が握り締める角材を切り飛ばし、唸りを上げる風圧で火の粉を助け、火勢を煽る。
「右の月も左の月も。よくよく目ん玉に焼き付けておけよ。最後位は奇麗なモン見て逝きたいだろ?」
「姐さん優しいにゃー。俺達も続くにゃー」
「俺達の生き様瞼の裏に縫い縫いしてやるにゃ!」
 ネコ達もベルゼドラに倣って携えたチェーンをぶんぶん振り回す。今度はすっぽ抜けないようだ
 沈み、登り、隠れて、出でて、月が生物の如く天地を往復する度にあちらこちらで緋色の花が咲き乱れる。
 元からいたヤンキーも、増援で現れたヤンキーも区別無く十把一絡げに斬り伏す。刃に押され、ベルゼドラが振りまく殺気に圧され、やがて二つの三日月が呑み切れないほどの紅に染まった頃合い、ヤンキー達は知らずの内に彼女にとって都合『一箇所』へ誘導され、塵紙をまとめるように、かき集められる。
「やっぱ数がいるんなら、一箇所に集めてブチかましてぇよな?」
 そう言って、召喚するのは蠅の王。
 茸迷宮で自重した鬱憤を晴らすように、ベルゼブブは流星群もかくやと言う程の業火球を一点に降り注がせ、ヤンキー達を焼き尽くす。
「テメェらのその頭、キレイに焼けた方がスッキリするかもな?」
「残念。この火力ならボウズどころか何も残らないかも……せめて迷うこと無く送り届けよう」
 蠅の王の王が作り上げた火の海へ、エリカは渾身、36の狐火を更にくべた。
 そして副長達が最初に投げ入れたゾッキノコが二つの炎を吸収・増幅放出し、終には迷宮の暁(そら)を染め上げるほど巨大な火柱が顕現する。
 これでは確かに、塵一つとて残るまい。

「見ろよ、あの火柱。アレに負けねぇ位、ド派手にイこうじゃねェか! ついてこい! これから始まる華々しい学園生活の、鐘(ゴング)を鳴らすぞ!」
「にゃー!」
 熱く燃え盛る炎を背に、クロウ達は堂々と真正面からヤンキー達にぶつかる。
 炎・水・風、3つの属性をその身に宿し、状態異常力を強化する。成すべき技(こと)はそれで十分。奇策・搦め手、姑息な真似は一切無しだ。
 ヤンキー達が何かをしでかす何かをしでかすその前に、クロウは先んじ玄夜叉で二度横薙ぐ。しかしそれは誰一人として間合いに捉えていない、全く刃の範囲外。空を切る斬撃を、ヤンキー達は嘲笑う。
 ――そう。本当に『空』を斬ったのだ。刹那狂風が巻き起こり、その風速にヤンキー達は嘲笑う事も立っていることも出来ず吹き飛ぶ。追撃とネコ達がこつんと彼らの頭を殴り、瞬く間に制圧完了だ。
 それでも未だ大量にのさばるヤンキー。仇討ちとばかりに角材振り上げクロウ達へ殺到しようとするが、
「さっき作った水盾の茸。まだいけるだろ? それでカバーしてみろ」
「ハイですにゃー!」
 ネコ達の起動した水盾がヤンキーの攻撃を弾き、寄せ付けない。
「上出来だ。後は俺がきっちり片ァつけるからよ」
 狂風、狂嵐、玄夜叉が呼ぶ太刀風は思うさまに吹き荒ぶ。
 そうして暴風域内で最後に残ったヤンキーを払暁へ吹き飛ばし、夕陽の下でそうしたように、気絶・戦意喪失した彼を地面に激突する直前確保する。
 ――だが。覚えていろよ、その言葉のみを遺し、致命傷を負っていないにもかかわらずヤンキーは消滅する。
 見れば、クロウが相手にしたヤンキーは皆そのように消え果てていた。
 刈り取ったの意識だけ。命を取るつもりは毛頭なかった。
 しかし――ヤンキー達は根性の無い事に、勝てぬと悟り自ら骸の海へ戻って……逃げて行ったのだろう。

「兄貴。兄貴が気にすること無いですにゃ。あいつら見てくればっかでヘタレも良いとこでしたにゃ」
「ああ……かも、な」
 若干、寂しげに。クロウはネコの頭にぽんと手を置いて、
「乱痴気騒ぎもそろそろ幕だ。少しの間だが、お前らと巡れて楽しかったわ」
「にゃ~! くすぐったいですにゃあ~!」
 くしゃくしゃに撫でてやった。
 縁があれば、またな、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
あらあら…これは抗争というやつですのね!
では私もアル学魂というのを見せて差し上げますわ
セーラー服のスカートでカーテシーを

とは言え猫さん達もやる気になっていますし
ここは支援に徹しようかしら

彼らに攻撃が及ぶようならば花時雨を開いてオーラ防御
さり気なく守りましょう
避けられそうならば見切り
声掛けをして避けてもらいましょう

敵を彼岸花腕で拘束
さあ!今ですわ皆さん!
この隙に猫さん達に攻撃してもらいましょう
…さり気なく敵の生命力吸収をして弱らせることも忘れずに

アル学魂を見せてくださいまし!
メンチなんかに負けるあなた達ではないでしょう?
猫さん達を鼓舞


…今日の件が猫さん達の今後のやる気に繋がるといいのですけれども


多々羅・赤銅
【百威盧鴉覇】

百威盧鴉覇CAT最終ステージ始めていくぜぇ!!
えっここらのキノコジンガのになったの?
鍋そんなに気に入った?

あっちでジンガの罵倒も盛り上がってきてるし、一喧嘩、おっぱじめっかぁ。

(抜刀、刀を掲げーー羅刹旋風で強化した風圧で、一切圧撃、チンピラどもを文字通り吹き飛ばす。
飛ばされまいと踏ん張った奴らの根性讃えつつ、そっちの処理はジンガが得意。
後輩を庇うような立ち位置にて、チンピラどもを斬っては捨て、斬っては捨て)

そおそお、新入生も派手にやれやれ!
三日でも付き合う覚悟はあっけど
流石に三日間なぶり殺されるチンピラが哀れだし?
手早くガンガン、やっていこーぜ!

よっ、ジンガ先輩カッコいいぞ


ジンガ・ジンガ
【百威盧鴉覇】

はァーい!
遠路遥々カチコミに来ました
百威盧鴉覇CATでェーす!
ココのキノコは主に俺様ちゃんが占拠したので
スパスパすんなら使用量払ってよネ!

は?
俺様ちゃんが俺様ちゃんのモノですって言ったら
それはもう俺様ちゃんのモノなんだよボケ
理解できないの?バカなの?死ぬの?
てめェの脳味噌ピスタチオなの?
てめ(ピー音まみれの口汚い恫喝)

地形を利用しダッシュで敵陣へ
フェイントかけて
だまし討ちで武器落としながら2回攻撃叩き込み
相手の攻撃は見切り
他の敵を盾にして数減らし

おい、今日の主役はてめェらだろうが新入生!
もっと好き勝手暴れろ暴れろォ!
ケツはセンパイが拭いてやっからよォ!

……そーでしょ、赤銅ちゃん?


クーナ・セラフィン
災魔にも学生というか不良いるのかにゃー(遠い目)
…こんなコッテコテと言われそうなのがまさかこの世界にいた事があるとはにゃー。
血斗死威達の切り札も見たかったけど、まあここは私達が頑張ろうじゃないか。

基本は支援。
にゃーにゃ―メンチ恐いにゃー。
つまりは正当防衛?うん正当。
UC発動でれっつイリュージョン!と花弁と吹雪で不良を幻惑。
もう何か危ない感じの吸ってるのも居るし余計に効くかも?
こう、ちゃんぽんやると悪酔いするって聞くし。バッドトリップ。
あと血斗死威達が大怪我しないように注意。
角材攻撃を割り込んで突撃槍で防いだり角材を剣で斬り飛ばしたり。
さあ、熱い魂をぶつけるんだと煽ったり。

※アドリブ絡み等お任せ




「災魔にも学生というか不良いるのかにゃー……」
 何と言うべきか何も言わざるべきか、こんなコッテコテな感じの奴らがまさかこの世界にいた事があるとは。クーナは無の境地で空を仰ぐ。ああ、日の出色の照明が眩い。
 猟兵が明確にグリモアを所持し始める以前から、個人が突発的に各世界間を移動してしまう例はあったと言う。
 数十年前、まだツッパリ華やかなりし頃のUDCアースからヤンキーが偶然こちらに流れ着いて、そう言う文化が輸入されたのかもしれないし、逆に発祥はアルダワ(こちら)が先でUDC(むこう)に出荷されたのが全ての始まりなのかもしれない。いや単に偶然被っただけなのかもしれない。いずれにせよなぜヤンキー。
「色々考えた所で不毛なんだろうにゃー。血斗死威達の切り札も見れたことだし、気を取り直してまぁ、ここは私達が頑張ろうじゃないか」
 羽付き帽子をぐいと被り直し、銀の槍と魔法剣、クーナは両手に武器を携える。
「あらあら……これが抗争というやつですのね!」
 耳を劈くバイクのエンジン音と、獣の咆哮染みたヤンキー達の叫び声。
 平穏静寂どこへやら、バットと角材が鈍く交わり、エリシャの眼前で繰り広げられる男達の意地の張り合いは、それこそ放っておけば永遠に続くようにも思われた。
「では、そろそろ私も……アル学魂というのを見せて差し上げますわ」
 言って、セーラー服姿のエリシャがスカートの両裾をつまみ、その場で軽やかに挨拶(カーテシー)を決めれば、ネコもヤンキーもその仕草に見蕩れたか、一瞬、息を呑むように、全ての雑音(おと)が止んだ。
(「とは言え猫さん達もやる気になっていますし、ここは支援に徹しようかしら?」)
 コーラとぜんざい買って来て貰ったお礼も兼ねて、さり気なくそう立ち回るのも悪くない。
 楚々と戦場に乱入したエリシャは迫り来る角材の暴威を事も無げに潜り抜け、四方から集まる視線(メンチ)を涼やかにいなす。桜の花とは、即ち高嶺の花なのだ。
 くるりと回って舞踊の御供に開いた和傘・花時雨は、何より自分の為ではなく、ネコ達を驟雨から守る為のもの。
 オーラを着せた和傘の胴が、ネコに降り注ぐ筈だった角材を弾く。
「おおう!? 守ってくれたにゃ? ありがとにゃ。そろそろ角材の角に頭ぶつけすぎて記憶とか吹っ飛ぶところだったにゃ」
 彼らのモヒカン的気質は理解していたが、見れば頭に大きなたんこぶ作ってるネコも少なくない様子。
「向こうの角材捌きは、よく観察すると大振りで大雑把。素人並みの練度ですの。集中すれば、避けられない攻撃ではありませんわ」
 そんな彼らに、エリシャは少しだけアドバイス。
「マジかにゃ!? そう言えば姉御付きのヤツもそんなこと言ってた気がするにゃ。皆、聞いたかにゃ? こっからは蜂のように舞い、蝶の様に刺す感じで行くにゃー!」
「にゃー!」
 本当に理解してるかどうか怪しかったが、これ以降目に見えてネコ達の被弾数が落ちたので、意図はちゃんと伝わったのだろう。

「にゃーにゃ―メンチ恐いにゃー」
「てめー待てコラうろちょろと!」
 血斗死威達に紛れてちゃっかりエリシャの傘で角材(あめ)を凌いでいたクーナも彼らの支援に動き出す。
 バイクより小回りの利くレガリアスシューズの機動性でヤンキー達を撹乱し、一秒と同じ位置にはいない。要するに彼らの視界に捉われさえしなければ、視線(ビーム)など然したる脅威でも無いのだ。
 それにしたってこちらは逃げてるだけなのに、問答無用でメンチ切ってくるとはやはりヤンキー。
『てめーぶっ殺すぞ!』と敵意がありあり籠ったその眼差し、最早本物の暴力に等しく、いわばハラスメント。つまりこちらが先に手を出しても正当防衛だろう。うん正当。
「そんな訳でこんな趣向はどうだい? れっつイリュージョン!」
 クーナは翳した銀槍・ヴァン・フルールから六花と風花を舞い散らせ、降りしきる二つの花弁はヤンキー達を凍結と幻惑の世界へ誘う。
「どうかな。もう何か危ない感じの吸ってるのも居るし余計に効くかも? なんて。ちゃんぽんやると悪酔いするって聞くし」
「おー、あいつらめっちゃ顔色悪そうにしてるにゃー!」
「にゃっはー! 保健室でおねむの時間にゃー!」
 凍てつく寒さの真中で、サイケデリックにバッドトリップ。血斗死威達が騒ぎ立てる通り、風花に惑わされたヤンキー達の体調は見るからに最悪そうだ。
「くっそ、やっべ、このままじゃどうしようもねぇ……!」
 苦悶の呻きを上げながら、ヤンキー達は這う這うの体で校舎へと戻っていく。

 ゾンビの如き足取りのヤンキー達が目指すのは、旧校舎内の保健室。
 より正確に言うのなら、目当てはそこに溜め込んだ多種多様なキノコ達。。
 解毒キノコでバッドトリップを直すのも良いし、更にキノコ極めて廃になるのも良いだろう。
 どうあれ先ずはキノコだ。それを齧らなければ始まらない。
 ……筈だった。

「はァーい! どーもー! 遠路遥々カチコミに来ました! 百威盧鴉覇CATでェーす!」
 待ってましたと言わんばかりに意気揚々と、保健室の前を塞ぐのはジンガと赤銅、それからゆかいな百鴉メンバーたち。
「にっひっひ! 何となく校舎漁ってたら、もとい警戒してたら良いモン見つけちゃったじゃん? ココのキノコは主に俺様ちゃんが占拠したので、スパスパすんなら使用料払ってよネ!」
「……えっ、ここらのキノコジンガのになったの? 鍋そんなに気に入った?」
 あれそう言えば俺様ちゃん結局キノコ鍋食べたんだっけどうしたんだっけ?
 ぽつりと零れた赤銅の言葉になんとなくそこら辺の記憶が曖昧ながら、この先のキノコは彼らが大事にしているお宝に相違ないので、とりあえずジンガは真正面から掻っ攫う事にした。
「ざっけんな! そりゃ俺達が丹精込めて収穫したやつじゃねーか!」
「……は?」
 おちゃらけた表情から一転、何言ってんの? と冷ややかに、ジンガの顔から笑みが消える。
「後輩ちゃん保健室のキノコ見た?」
「みたにゃ」
「名前とか書いてあったっけ?」
「なかったにゃ」
「だよネー! 名前が書いてないってことは誰のものでもないし、誰のものでもないって事はつまり俺様ちゃんのモノって事じゃん!」
「そうかにゃ?」
「そうニャの!」
 そうらしい。
「そんな馬鹿な理屈……!」
 ドン、と、ジンガは徐に、注文つけてくるヤンキーをショットガンで沈めた。これ以上の議論は不要だ。
「俺様ちゃんが俺様ちゃんのモノですって言ったらそれはもう俺様ちゃんのモノなんだよボケ。理解できないの? バカなの? 死ぬの? あっ死んでたわ。てめェらの脳味噌ピスタチオ?」
 結論だけでいい。しかし、これだけ根折丁寧に説明しても、ヤンキー達は不服そうだったので、ジンガの口撃は加速し止まらない。
「てめ■(自己規制)が◆◆(検閲)で▲▲▲(削除済み)の▼▼▼▼(記載するのも憚られる恫喝)に――」

 ~しばらくお待ちください~

「……凄いな。矢継ぎ早の罵倒が大盛り上がりの絶好調だ……さてさて、こっちも負けてらんないな」
 相方のシャウトをBGMに、赤銅は愛刀・卵雑炊をくるくるかき混ぜる。
「そろそろ一丁、一喧嘩、おっぱじめっかぁ!」
 かき混ぜ練り上げ、羅刹旋風。全身へ満遍なく活力が浸透し切った頃合い、赤銅は鞘から刃毀れ一つ無い刀身を引き抜いて、天衝く程に高く掲げた。
「悪いがこっちは見ての通り、正真正銘・真剣(マジ)の大業物(おおマジ)だ! 百威盧鴉覇CAT最終ステージ! 始めていくぜぇ!!」
 此方の手番を待ち構えるヤンキー達を気にも留めず、一息踏み込んで、足跡と残像を置き去りに刹那極至近へ詰め、刀を振るう。
 角材(ぶき)も肉も骨も、その軌跡を阻めない。刃の通過したヤンキーの身体が真二つに泣き別れた直後、凝縮された剣圧が空をまたいで大きく壁面を斬り崩し、それでも足りぬと暴れ狂う。
 一陣の剣嵐は瓦礫ごとその場に集っていたヤンキーの大半を吹き飛ばし、辛うじて飛ばされまいと踏ん張った少数の不良達へ、
「おっと嬉しい予想外! 中々根性あるやつも居たもんだ」
 赤銅は素直に称賛を贈る。
 が、けれども。まぁ。と抜き身の刀を担いで小休止。
「この手の奴らの相手はジンガ、任せた。得意分野だろ?」
「赤銅ちゃんズルいわァ~。そういう風に言われると俺様ちゃんも手ェ抜けなくなるじゃんよ」
 ネコのバイクに上着を掛けたジンガは何より速く疾走し、校舎の外へ蹴り飛ばしたヤンキーの目鼻の先にショットガンを突き付ける。
 雀の羽根程軽い引鉄が鳴り、しかし放たれたのは残念ながら空砲(フェイント)だ。
 軽薄に笑ってそのまま空のショットガンを投げつけて、視界を塞いだその隙に、持ち替えた左のダガーで角材を叩き落とし、右の刃で心臓を穿つ。
 そのままジンガは別のヤンキーの動きを見切って背後に回り込み、殺到する角材達を彼(たて)に受け止めさせ、そしてためらう事なく、盾の背越しに旧友(バトルライフル)を乱射した。
 銃弾が盾(にく)を貫通し、そのまま別の肉を抉る。

「ブレザー先輩の戦法、割とドン引きにゃ。心優しい俺達には真似できないニャ」
「でも味方だと心強いにゃ。みそしる呑んだ時みたいにほっとするにゃ」
「……おい、今日の主役はてめェらだろうが新入生! もっと好き勝手暴れろ暴れろォ! ケツはセンパイが拭いてやっからよォ!」
 若干引いてるネコ達をよそに、ジンガ本人は水を得た魚の様に活き活きしていた。若干お肌もつやつやしている。
「……そーでしょ、赤銅ちゃん?」
「よっ! ジンガ先輩カッコいいぞ! そおそお、新入生も派手にやれやれ!」
 百鴉の両翼が全力でアクセルベタ踏みするものだから、もう誰にも止められない。そもそもこのユニット、最初からブレーキなんて搭載してなかった気がする。
 赤銅はネコ達を庇うように立ち回りつつ、唐竹袈裟に逆袈裟に刃を閃かせ、一歩一斬、チンピラ達を斬って捨てる。
「ほら、特攻隊長も! ネコなのに狂犬って呼ばれてたその手並み、此処で披露しとかなきゃあ持ち腐れだぜ?」
「むぅ。キノコ鍋先輩がご所望とあらば、封印していた俺のやんちゃぶり、とくと見せてやるぜ、にゃ」
 彼らの命名法則的に、何となくそんな感じになるのは見えていた。
 特攻隊長はバイクを大剣に変形させると、赤銅の後を追いかける。
 赤銅が前方から押し寄せる増援部隊を両断すれば、特攻隊長は背後より迫るヤンキー達を、凄まじい叫び声を上げながら滅多矢鱈に斬り伏せる。
 見た目はアブないが、味方を傷つける事は一切せず、これで案外冷静なのかもしれない。背中を任せることは出来そうだ。
 ……耳栓が恋しくなるのが難点だが、
 そうしてネコ達と共に一切合切いかほど斬ったか、赤銅が愛刀に付着した血を祓い、校庭を一瞥すれば、いつの間にかあれ程犇めいていたヤンキーの数が激減していた。
 そろそろ増援も尽きたか、既にその総数は血斗死威達の二倍程度か、それ以下だろう。この分なら数時間と言わず、もうすぐ片が付く。
「三日でも付き合う覚悟はあっけど、流石に三日間なぶり殺されるチンピラが哀れだし? 手早くガンガン、やっていこーぜ!」
「にゃー!」
 少々の怪我は赤銅の祈酒が即癒し、それを受けた百威盧鴉覇CAT達の不死身っぽい快進撃は止まらない。

「おっとっと!」
 繰り返すのも幾度目か、クーナは咄嗟、血斗死威達の盾になる。
 先輩たちの助言を吸収しようとも、やはりまだまだ未熟な血斗死威。
 知識に体が追いついていかない彼らを大怪我させないように守るため、クーナは西に東にフォローへ走る。
 ネコ達が不意を突かれてぶたれそうになった時は代りに突撃槍で防いでやり、そもそも武器を持っているのがよくないだろうと火の力を宿したルーンソードで斬り燃やす。
 クーナを始め先輩達のフォローあってか、現状、最終盤のこの局面において、戦闘不能になったネコはいない。
「其方は既に満身創痍。そろそろ終わりにしましょうか――地獄に咲く花の色をご存知?」
 エリシャが黒刀・墨染、その切っ先を地面に突き立てると、地から呼び覚まされた死霊の黒手が無数に伸び、蔓の如くヤンキー達に絡みついて乱れ咲く。
 満開の黒手は拘束した不良達から生命力を抜き取って、彼らがもがけばもがく程に消耗させる。
「さあ! 今ですわ皆さん!」
 エリシャは血斗死威達へ鼓舞するように呼び掛ける。
 増援は呼べず、角材も使えず、今のヤンキー達が出来ることと言えば精々睨みつける程度。これ以上の好機は無い。
「アル学魂を見せてくださいまし! メンチなんかに負けるあなた達ではないでしょう?」
 初陣くらいは特別に。エリシャはヤンキー達の御首(トドメ)を、ネコ達へ譲ることにした。
「さあ、行って! 熱い魂をぶつけるんだ!」
 クーナも満を持してと言った感じにネコ達を煽ってみる。
 ……人を成長させるのに、何より必要なのは経験と実績。今日の件が彼らのやる気に繋れば、それで一件落着だ。

「にゃ!? 本当の本当に俺達が止め差しちゃってにいいにゃ?」
「だったら俺が刺すにゃー。いいとこ全部持ってくにゃー」
「いやいや俺がいくにゃー! 言い忘れてたけど俺今日誕生日なんだにゃー」
「絶対嘘にゃ! くじ引きで決めるにゃー」
「ここは副長たる私が代表して……」
「俺だってまだまだ暴れたりないぜ、にゃ!」

「静かにするにゃー! 先輩に恥しいところ見せらんないにゃー! ここはみんなでいくにゃー。ゴールテープ一緒に切るやつにゃ。みんなで一斉にぼっこぼっこにするにゃ」
 ここまで来てぐだぐだ揉めていたが、総長の鶴の一声で何とかまとまったらしい。
「それじゃみんないいかにゃ? あの可愛くないヤンキー共を徹底的に可愛がってやるにゃー!」
「にゃー!」
 一番最初。夕陽の下で見た光景。
 最後のあがきのメンチを跳ね返し、ミケ総長の号令一つ、血斗死威達はアクセル全開に、微塵の躊躇無くヤンキー目掛けて突っ込んでいく。
 そして――絶妙に生々しい殴打音が響いた後。
 ヤンキー達は、一人残らず消滅した。

●オーバーフロー
「終わったにゃ。終わっちゃったにゃ。寂しいにゃ。何か別の迷宮探してもう一回歓迎会やり直さにゃい?」
 総長が名残惜しそうにそう言うが、立派(?)に迷宮を攻略できたのだから、そろそろ独り立ちの時だ。
「そうにゃね。大人になるってそう言う事にゃ。ちなみに俺達の先輩に対する好感度は65535%にゃ。オーバーフローしたにゃ」
 先輩たちの生き様からいろいろ学んだにゃ。と総長は言う。
「単なる不良が、どこまでやれるか知らないけれど、世界を護るのもそう悪くないと思ったニャ。でも俺達まだまだ力不足にゃ。今回も先輩たちのお陰で何とかなった様なもんにゃ。もっと色々鍛えるにゃ。ビッグになるにゃ。5メートル位でっかくなるにゃ」
 だから先輩たちも安心して俺達から巣立って欲しいと潤んだ瞳で総長は訴えてくる。あれ?
「でも寂しくなったらOBとしていつでも戻ってくると良いにゃー。コーラとぜんざいくらいは用意しておくにゃ」
 いつの間にか立場が逆転している気がするが、まぁ今更あれこれ言いはすまい。
 
 いずれにせよ、地上に戻るまでが歓迎会だ。
 猟兵と血斗死威は朝焼けを背に――学園へと帰還した。

「あ! 校舎の中にチカガクの学食っぽい所見つけたにゃ」
「他校の料理って興味津々にゃ。早速食べてみるにゃー」
「いただきますにゃ。ヒョイパクにゃ」
「……。――!! ゴブハァ!!」
 
 ――帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月23日


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🔒
#アルダワ魔法学園


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト