●ええやんか
ここはサムライエンパイア。
徳川の治世にあり、市民は平穏な日々を送っている。とはいえ、やはり年貢は厳しいし、生活に困って一度お金を借りようものならば、生涯かけても返済できるかは甚だ疑問だ。
借金で首が回らなくなった者は、首を括るか、貸主の下で奴隷同然の条件で働かなくてはならない。
「なぁ、この金、どうやって返すよ」
「俺もアテはねぇ。こうなりゃいっそ……」
ある村では、住民の半数以上が負債者となり、経済状況はパンク寸前といったところまでになっていた。
とはいえ、元々彼らは資金繰りに困っていたわけではない。真面目に畑を耕してさえいれば、少なくとも己の生活を守り、妻子を養うことはできたはずなのだ。
そんな彼らが、何故借金に手を出したのか。これについては、現状では分からない。
しかし異変は起こった。
多くの村人が借金のために人生を棒に振るべきかと諦めかけた、ある日の朝。
日の出と共に村人が表に出ると、村の北側、幅三間ほどの川を越えたところに、ボロボロの城が聳え立っていた。
「おい、何だありゃ……」
誰かが呟いたその時だ。
「え、ええやんか!」
「ええやんか」
「ええやんかぁぁ!」
数人の村人が一斉に呟いたかと思うと、振り付けもまばらに踊り狂い、「ええやんか、ええやんか」と歌いながら川にかかる橋を渡っていったのだった。
●グリモアベースでは
「皆、集うてくいて、あいがとさげもす」
呼びかけに応じて集まった猟兵達に、新納・景久(f02698)はまず頭を下げた。
それから、しばらく黙ったかと思うと、顔を上げてモニターに映像を映し出す。
「……言葉が通じないと困るから、うん、この喋り方で。えーっと、ここに出てるのが、あたいの予知した事件の現場ね」
家屋の数に対して、畑の面積が広い。農村ではあるのだろうが、畑ばかりが村民の仕事ではないようだ。つまり、畑を持たぬ者は、例えば材木であるとか、別の収入源を得ているのだろう。
しばらく映像を見ていると、家から出てきた村人が数人、踊りながら橋を渡っていく。
これは、事件、なのだろうか。
「ここの村人達、借金を背負ってる人が多いみたいなの。貸主が誰かってのは、事件には関係がないみたいで、あたいには見えなかったけれど。でも、事の中心にいるのは、この踊ってる人達なんだ」
このままモニターを見ていて、と景久は告げる。
すると、橋の先に聳える古城へと村人達は消えていった。
モニターで確認する限りでは、古城周辺にも家屋がある。村人達の住まいよりは立派な佇まいのようだ。
この城が怪しい、と誰かが口にしようとするのを、景久は一度制する。
また見ていると、今度は踊っていない者が橋を渡ろうとした。するとどこからともなく踊る村人が現れ、橋を渡らないようにと遮った。
「確かに、この城は怪しいんだよ。村人の様子も変でしょ? まずはこの橋を渡らなきゃいけないんだけど、絶対に何かあるんだよね。踊る村人以外は渡らせたくないっていう、何かが」
つまるところ。橋を渡ること自体に妨害が入ると予測ができる……というより、見せられた。
もしも強引に渡ろうとすれば、どんな罠が待ち受けているか分からない。
「村人の急変には、きっとオブリビオンが関わってる。でもまずは、この橋を渡るとか、迂回するとか。とにかく向う岸へ行かなきゃしょうがないんだ」
すると景久はモニター画面を切り替え、村全体の見取り図を映し出した。
村の中央に川が流れ、北側と南側に分けている。畑が広がっているのは南側で、古城があったり立派な家屋があるのは北側だ。
「見れば分かると思うけれど、村は二層に別れてて。貧民層の南と、富裕層の北って感じ。古城は村の最北端だね。事件が起きるのは北側だけど、どう転移しようとしても南側にしか飛べないんだ。だから、まずはこの川を超えることに、今は集中してね」
川の幅は三間、とある。メートル法に換算すると、ざっと5.5mに相当する。橋が必要となるのも納得だ。
とはいえ、川は自然の産物。幅が均一であるとは限らない。罠を承知で強引に橋を渡るか、別の方法を探るか……。
それを考えるのは、猟兵の仕事だ。まずは、村の北側へ渡らなくてはならない。
数巴トオイ
お初にお目にかかります。数巴トオイと申します。
素早く、そして「楽しかった」と言っていただけるようなリプレイを返せたらなぁ、という意気込みです!
力の限り取り組みますので、是非是非、よろしくお願い致します。
ええやんか踊りに興じながら、ご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『このはしわたるべからず』
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POW : 例え罠だと分かっていても、のっぴきならない戦いは人生二、三度はある。構わず前進ッ
SPD : 罠に警戒して慎重かつ迅速に進む。自分で新たに橋を建てたり、器用に飛び越えるのもアリかな……
WIZ : どう見ても罠でしょ、素直に迂回して安全なルートを探す。
👑11
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ソフィア・テレンティア
何故このような摩訶不思議な事態になっているのかは存じませぬが、
オブリビオンが関わっている可能性があるとなれば放っておくわけにもいかないでしょう。
妨害があることが分かっているのに、態々橋から行くこともありませんね。
ソフィアは【学習力】がありますので素直に迂回して行くことにします。
UC【ガジェットドローン】により小型ステルスドローンを召喚し、周囲を捜索。
通りやすい安全なルートを探して川を渡ります。もし橋や川の方で妨害されてる方がいましたら、
ソフィアの【蒸気駆動式機関銃・冥土式】で【援護射撃】を行い通り掛けに支援していきましょう。
ヴァリアクルス・プロディクト
ムリヤリ踊らせるなんて、変わったオブリビオンですね…。このまま、世界中を踊らせるつもりでしょうか。危険な気配がぎゅんぎゅんします!
こほん。……とにかく、橋があるのに避けて通るのは、サムライの流儀に反する……気がします!
しかし、ぼくはひとりではあまり戦えません。こういうときは頭を使うのです…… 踊っていない人が入ろうとしたら止められるのなら、ぼくたちも踊りながら進めばいいのでは?
え、ええやんか、ええやんか、と叫んで踊ればいいんですね。恥ずかしさをこらえて、がんばってみます。
誰か一緒に踊ってくれたり、音楽をかけてくれたりしてくれたら、勇気を出して(雰囲気に飲まれて)踊れるかもしれません……!
エミリィ・ジゼル
【WIZ】
これは間違いなく罠ですね。
というわけで橋は渡らずに川を横断しましょう。
なあに5メートルちょっとの幅などあってないようなものです。
なぜならわたくしは巨大ロボットに変身できますからね。
というわけで今回は【メイドロボの術】で巨大かじできないロボに変身。
そのまま一歩で川を踊りながら横断します。
え?踊る理由?
踊りたかったからですけど…?
「ええやんかーええやんかー、あ、ほいほい」
●君子危うきに近寄らず
ええやんか、ええやんかと踊り狂う村人を尻目に、ソフィア・テレンティア(f02643)は橋の位置だけを確認し、その場をこっそりと離れていく。
「妨害があることが分かっているのに、態々橋から行くこともありませんね」
その心は、漏らした呟きによく表れていた。予め妨害があることを知りながら、敢えてその道を選ぶ道理は、ソフィアにはよく分からない。
すんなりと事を進めるのならば、障害は少ない方が――いや、むしろない方が良い。
家屋の影に身を隠したソフィアは、【ガジェットショータイム】で鳶に似たドローンを召還すると、空高くに飛ばした。
村人の現在地、それから川の幅が狭い位置をこれで把握できたならば、村の北側へ容易に移動できるだろうとの考えだ。
「あら? 何故このような摩訶不思議な事態になっているのかは存じませぬが……、これもオブリビオンの仕業なのでしょうか」
そうして見つけた村の現状に違和感を覚えたソフィアは、脳内で必死に、違和感の正体を探る。
何故だ、何故こんなことになっている……?
●ええやんか、ええやんか
「ムリヤリ踊らせるなんて、変わったオブリビオンですね……。このまま、世界中を踊らせるつもりでしょうか。危険な気配がぎゅんぎゅんします! 」
物陰から橋の様子を伺っていたヴァリアクルス・プロディクト(f08857))は、 妙に楽しそうだ。
村人が踊り狂っているのは妙であるものの、オブリビオンが一枚噛んでいるとなれば、考え梨に橋を渡ることは不可能と見るべきだろうか。
「……とにかく、橋があるのに避けて通るのは、サムライの流儀に反する……気がします! こういうときは頭を使うのです」
橋があるのならば、この橋を渡るべし。そう考えた彼が考え付いた妙案とは。
一緒に踊ればいいじゃない!
脳内に神のお告げが聞こえたかのごとく、これだと思った彼は、恥も外聞もプライドも世間体もかなぐり捨て、物陰から身を投げ出して橋へと向かった。
「え、ええやんか! ええやんか!」
他の村人に混じり、声の限りに叫び、手足を方々へ投げ出すような滅茶苦茶な動きで、彼は橋へと突撃。
しかし。
「おい、お前。見ない顔だな」
「知らないヤツは通さなくてもええやんか」
「ええやんか!」
「ええやんか!!」
流石に怪しまれたのか、ヴァリアクルスは他のええやんか隊に阻まれてしまった。
●違和感に次ぐ違和感
「あぁ、あの方……。猟兵でしたね。多少は手助けして差し上げましょう」
人気がなく、川の幅が狭いポイントを発見したソフィアは、召還したドローンを足場代わりに、トントンと軽いステップで川を渡った。
彼女が先ほど覚えた違和感の正体。それは、同じ猟兵が踊りながら橋を渡ろうという、ソフィアが考えもしなかった手段に出る者の存在だった。
しかしやはりというべきか。その猟兵は村人によって行く手を遮られている。
自分は川を渡ったことだし、何とか手助けしてやろうかと考えた矢先のことだった。
「あっ、あれは……! 何ということでしょう。理解が、嗚呼、理解が……」
橋の方で新たな動きがあることを認めたソフィアは、その破天荒さに眩暈を覚えた。
いったい、橋の方で何が。
●メイドロボが猛進してもええやんか
「ええやんかーええやんかー」
ユーベルコード【暴れまわるメイドロボの術】にて、メイド型の巨大「かじできないロボ」に変身したエミリィ・ジゼル(f01678)は、周囲を気にすることなく川を目指していた。
「止まれー!」
「あ、ほいほい」
何人かの村人が、エミリィの突撃を阻止せんがために踊り出たものの、その圧倒的かじできないパワーの前にはあまりに無力。
まるで遊びのように村人を弾き飛ばし、エミリィは猛進する。
その暴力的な存在感に、橋でヴァリアクルスを足止めしていた村人までもがエミリィ対応に回った。
これぞチャンスとばかりに、ヴァリアクルスは一気に橋を渡りきる。
一方でエミリィにとって、幅三間の川など何でもない。橋を使うまでもなくひょいっと川を飛び越え、彼らは村の北側へと渡りきった。
ええやんか踊りによる渡河を成し遂げたヴァリアクルスとエミリィは、完遂の証とばかりに、揃って決めポーズ。
「「チャンネルは、そのまま!」」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リサ・ムーンリッド
●心情
混沌が私を呼んでいる…そう、私は真理に試されている!
●渡れないのなら渡らなければいい
よし、飛ぼう。
レプリカクラフトでタイヤのついたロケットをつくり、自分が背負う減速用パラシュートと衝撃吸収のクッション、そして農道などを利用して簡易的な滑走路も作る。
用意ができたらロケットに捕まり、点火。
なあに50mかけて時速60kmまで加速すればほんの6m分、時間にして0.5秒だ。その間機体が保てば良し。
私の体重と機体の重さを持ち上げる推力も計算した。
高さがあれば向こう岸に落下できるだろう。
着地のときに上手く転がれば衝撃も吸収できる。
派手な動きで他の味方が突破しやすくなればなお良し
さあ、実験が楽しみだ…♪
仲佐・衣吹
えっ、一緒に踊っちゃ駄目なんだ~
踊りたかったのに……
ヤメてくれベスト
無骨な戦闘狂人格(サーベル)と会話しながら陰から様子を見ていた衣吹(主人格ベスト)
ふふふ、でも、僕等には奥の手があるんだよね~
あっ、体はあげるよサーベル
テメェ何する気だ!?
僕ことベストがええやんか(音痴)踊り(運動音痴)で橋を渡ろうとするから
サーベルは見られてない所で走り幅跳び男子平均記録をちょっと超えておいで
そのまま走り去れば僕は自動的に消えられるからさ
「さよなら村人さん。僕の事は借金苦の幽霊だと思ってね」
恥さらしやがって、覚えてろベストーーー!!!
※SPDで飛び越えます
●とんでけロケット! ぼくらのゆめをのせて
「混沌が私を呼んでいる……」
ええやんかと踊り狂う村人達。
愉快な方法で川を渡ってゆく猟兵達。
是即ち、混沌。そう呼ばずして何とするか。
そうだ、これぞ混沌だ。狂気の沙汰だ。何とかしてください、リサ・ムーンリッド(f09977)さん。
「そう、私は真理に試されている!」
ええ、ですからやっちまってください、リサさん。
「えっ、一緒に踊っちゃ駄目なんだ~」
呑気な声を出したのは仲佐・衣吹(f02831)。多重人格者である彼の主人格、その名をベストという。
もう一人の彼、サーベルは「やめてくれ」と彼の中で呟いた。何か他の手段を探す方が賢明だ。
「ふふふ、でも、僕等には奥の手があるんだよね~。あっ、体はあげるよサーベル」
「テメェ何する気だ!?」
ユーベルコード【オルタナティブ・ダブル】でもうひとりの自分を作り出した衣吹は、表の人格をサーベルと交代した。
もうひとりの自分には、ベストの人格が宿る。
「僕ことベストがええやんか踊りで橋を渡ろうとするから、サーベルは見られてない所で走り幅跳び男子平均記録をちょっと超えておいで」
それだけ言うと、ベストは調子の外れた音程で「ええやんか~」と歌いながら、どこかへと消えていった。
「クソッタレ、何が走り幅跳びだ。……言っててもしょうがねぇ。どこか渡れそうなとこでも探すか」
仕方なく、サーベルは家屋の陰に隠れて移動を開始した。
一方。いつの間にか、そこかしこに放置された農具や材木を集めたリサは、川の手前で何やら工作を始めた。
農具をいくつか並べ、その上に板切れを乗せていく。何やら小さな滑り台にも似た土台が完成した。これを一体何に使おうというのか。
それから距離を取る。目測だが、ざっと50mといったところか。滑り台(仮称)までの直線状に障害物がないことを確認。ちなみにこの滑り台(仮)へ真っ直ぐ向かうと、丁度上り坂となるような向きになっている。
「さぁ、実験が楽しみだ……♪」
そこで彼女は、【レプリカクラフト】によって車輪付きの小さなロケットを作り出す。乗り込むことはできないので、これに跨った。
角度を調節し、ロケットが真っ直ぐ滑り台(仮)へ向くようにする。
あの、リサさん。何をなさるおつもりでしょうか。
「よし、飛ぼう」
……彼女もまた、混沌よりの使者だったようだ。
ロケットに点火し、彼女の短い旅は始まった。徐々に加速していくロケット。これだけの距離があれば、滑り台――否、ジャンプ台へ至る頃には十分な加速を得られるだろう。
そのちょっと前のこと。
「ええやんか~♪」
滅茶苦茶な動きで踊りながら、ベストの人格が宿るもうひとりの衣吹はそのまま橋を渡ろうとした。
しかし。だがしかし。
「渡らなくてもええやんか~」
案の定というか。村人に捕捉されてしまった。
両脇を固められ、どこかへと連れていかれるベスト。だが、それも計算の内だ。
こうして正面から橋を渡ろうとすれば、必ず注意を集められる。
その隙にサーベルが川を越えてくれれば良い。どうせ、ユーベルコードで作り出された自分は消えるのだから。
サーベルはというと。橋からはそう離れていないが、川の中央に水面から顔を出した岩があり、助走をつければこの岩を飛び石にして、飛び越えられそうな程度には川の幅が狭い場所を見つけた。
少々橋の方が騒がしいが、問題はないだろう。
川を飛び越えようとしたその時のことだった。
「ええやんか~」
「ええやんか~」
なんと、リサの進路上にええやんか隊が現る!
あろうことか、ベストが連行されているではないか。
「何してるんだい、どきなさい!」
しかしロケットは止まらない。勢いそのままに、ロケットはリサ(と数人の村人withベスト)の夢と体を乗せて、川向うへと飛んでいった。
本来の衣吹はこれを目撃したショックで川に落ち、ずぶ濡れになりながら泳いで川を渡るハメになったのは、また別の話。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ビリー・ライジング
踊る村人とは、随分奇妙なオブリビオンだな。
とにかくまずは、あの橋を渡らないとな。
ミリィ(f05963)、打ち合わせ通りに行くぞ。
行動方針:POW
まずは橋に近付いて、踊る村人を出す。
「三回チャンスをやる、今すぐそこを退け」
二回目は炎の魔力を中心にした攻撃力重視のトリニティ・エンハンス。
三回目で強行突破を図る。
「ミリィ、跳べ!」
橋に罠があると思いがちだが、俺は『罠が無いのが罠』と考えた。
ミリィに橋を渡らせる事を先行させる。
俺はその間に止めようとする村人を食い止めたり、橋の上から投げ飛ばす。
もしも、予想通りに罠が無かったら、俺も橋を渡る。
村人が遮る様なら、その時も橋の上から投げ飛ばす。
ミリィ・ライジング
ええやんか……何か、違うような気がするんだけど。
でもオブリビオンが関わってるなら、介入しないわけにはいかないよね。
お兄ちゃん(ビリー:f05930)、先行お願いね。
行動方針:SPD
まずは降魔化身法で自己強化。
ビリーの合図が来るまで、橋近くの物陰で待つ。
合図が聞こえたら、飛び出して、橋へと駆け出す。
ビリーの強行突破を食い止める村人を踏み台に、
橋にある罠を警戒しつつ、慎重かつ迅速に進む。
(お兄ちゃんは「罠は無い」って言ったけど、警戒するに越したことはないよね……)
罠があった時は身体能力で回避する事に専念。
罠が無かった場合は勢いそのままに渡りきる。
「お兄ちゃーん!罠無かったよー!」
●兄妹の橋渡り
「ええやんか……何か、違うような気がするんだけど」
物陰から村人の様子を伺っていたミリィ・ライジング(f05963)は、頭の中で必死に日本史の授業内容を思いだしながら呟く。
似たような事件ならば、確かにあった。江戸時代に実際に起こったという、「ええじゃないか」だ。しかし、何かが、どこかがおかしいと感じずにはいられない。
「とにかくまずは、あの橋を渡らないとな。ミリィ、打ち合わせ通りに行くぞ」
ミリィの兄であるビリー・ライジング(f05930)は、堂々と橋へと向かった。
当然のように踊れる村人が現れてその道を塞ぐ。
「ええやんか~ええやんか~」
「三回チャンスをやる、今すぐそこを退け」
静かに、ビリーはそう告げた。
相手は一般人だ。力業で押しのけるようなことは、可能な限りしたくない。忠告し、素直に道を譲ってくれるのならばそれで良し。
「そうはいかない。通らなくてもええやんか~」
「なら、二回目だ」
ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】で炎の魔力を身に纏い、ビリーが凄む。
しかし、村人は怯む様子すら見せない。まともな精神状態ではないらしい。
「三回目だ。悪いが、頭を冷やして戻ってこい」
力を宿したまま、ビリーは村人の一人を引っ掴んだ。そしてそのまま、川へと放り込む。
可哀想に、村人はそのまま流されていってしまった。彼は無事に帰ってこられるのだろうか。大丈夫だろう、多分。
だがこれを宣戦布告と受け取ったか、村人が次々にビリーへと襲い掛かる。
ちぎっては投げちぎっては投げ、ビリーの大立ち回りが始まった。
そして。
「今だ、来い!」
ビリーが叫んだ。
途端に、家屋の陰から【降魔化身法】にて己を強化したミリィが飛び出してくる。
その進路上に、ビリーは村人を突き出した。
「ミリィ、跳べ!」
「いってきまーす!」
軽く地を蹴ったミリィは、村人を踏み台にして高く跳躍。そのままビリーや村人の頭上を越え、無人となった橋の手前へと着地した。
勢いそのままに駆けてゆくミリィの背を見ながら、ビリーは思った。
(罠があるように見せておきながら、『罠が無いのが罠』なんだろう。もう何人か、あの橋を越えている猟兵もいる。大丈夫だ、安心してそのまま突っ走れ、ミリィ!)
トントンと軽いステップを踏むようにして橋を渡るミリィ。床が抜けるだとか、そういった罠は特にない。ただ村人が邪魔をしてくるだけで、罠らしい罠などないまま、彼女は橋を渡りきった。
「お兄ちゃーん! 罠無かったよー!」
念のために、いつ罠が発動しても対応できるよう、走りながらも神経を尖らせていたミリィ。しかし杞憂に終わったのならば上々だ。
彼女の声に手を振って応えたビリーは、軽々と村人を振り切って橋を渡る。
炎の魔力に包まれたビリーにとって、力なき村人など問題ではない。
悠々と橋を渡り、兄妹の橋渡りは難なくと成った。
多くの猟兵が橋を渡り切り、十分な戦力が集まった頃。
橋の先、村の北側では、またも異変が起きていた。
大成功
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第2章 冒険
『一向一揆騒動』
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POW : 気合と根性でしらみつぶしに声の主の出てきそうな場所を探す
SPD : 地元の村々を巡って声の主の出てきそうな場所を探す
WIZ : 地元の城下町の文献を調べて声の主の出てきそうな場所を探す
👑11
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●ええやんかnext
村の北側へと渡った猟兵達。
彼らが目にしたものは。
「ええやんか!」
「ええやんか!」
「おい、何をしている、やめろ! 私の家だぞ、降りてこい、おい!」
例によって、ええやんかと叫びながら、立派な家屋を次々に破壊しようとする村人達の姿だった。
彼らは正気ではない。正気ではないが、何がそうさせているのか、見当もつかない。
手がかりなしか、と猟兵らが諦めかけたその時。
「……災いじゃ。これは、あの時の。嗚呼、災いじゃ」
かすかに、だがハッキリと、年老いた男の声が聞こえた。
周囲を見回しても、どこから聞こえたのかが分からない。
もしや、この状況をよく知る者が、どこかにいるのかもしれない。オブリビオンの居場所は目に見えているのだから、まずはこの声の主を探さねば。
万が一にも、声の主が正気を失った村人によって危険な目に遭わされていてはならない。
ソフィア・テレンティア
引き続き【ガジェットショータイム】で周辺を警戒しつつ、人の気配のない家屋を探し、文献を調べることにしましょう。
調査中に邪魔されてはかないませんし、探していることを村人に悟られると声の主に危険が迫りかねませんので。
急いでいる時ほど冷静に落ち着いて、それがメイドの嗜みです。
先ほどの橋での一件は……まあ、お陰でいい陽動になったと思う事にしましょう。
ヴァリアクルス・プロディクト
声……確かに聞こえたはずなのですが、どこから聞こえて来たのか手がかりはなし……
こういうとき、A&Wでは幸運と加護に頼るのです。
魔法とは見たままの法則性に縛られないこと、奇跡とは一見してつながりのないものをつなぐこと……
信じるものは救われる。目に見えない力で神がぼくたちを助けてくれるはずです。
というわけで、魔法的手続きで進む道を確かめましょう。
メイスを地面に立てて……倒れた方向に進むのです。
……はい、これだけですよ?
もしかしたら踊っている人たちの真ん中にに突っ込んでいくことになるかもしれませんが、神は乗り越えられない試練は与えません。進みましょう……!
エミリィ・ジゼル
声の主を見つけないことには話が進みそうにありません
個人的には「城に大砲ぶっ放せば話進むじゃねえかなぁ」と思ってますが仕方ありません
渋々声の主を探すとします
とはいえ面倒なことは嫌いなので先ほど声が聞こえた所で大声で叫びます
「先ほど『災いじゃ』とか呟いてた方ー!出てきてくださいー!」
当然、周囲の村人が妨害に来るでしょう
なので【黒歴史を暴くメイドの術】で片っ端から無力化していきます
なあに黒歴史が白日のもとに晒されたからって別に死にません
せいぜい夜中に思い出して布団の中でのたうち回るぐらいです
ここまでやっても声の主は出てこないかもしれません
しかし何かを調べに外の者がやってきたことは伝わるでしょう
リサ・ムーンリッド
ここの村人は踊ってないんだね。
実は声の主がオブリビオンだったりしないだろうか?
なんにせよ、もうすこし情報が欲しい。
声の主を見つけて丁重に素巻きにして保護したいところだね。
●情報収集は基本。
もう一度「災じゃ」ってアピールしてほしいし、
移動中は召喚したゴーレムと一緒に橋で見たダンス(真顔で)でも踊りながら城下町て聞き込みをしてみよう。 目立てば何かしらのアクションがあるだろう。
そして恩を売れそうなタイミングで村人たちの破壊行為を退けたり、けが人への応急処置もして聞き込みをしてみよう。
世界知識や医術の技能も活用したい。
過去に似たことがあった場合はさらに詳しく。
私は常に真面目で全力なつもりだよ!
ミリィ・ライジング
お兄ちゃん(ビリー:f05930)、今の聞いた?
これ、急いで探さないとまずいかもしれないよ。
行動方針:SPD
「私、村でこの事に詳しそうな人、探してみる!」
多分、他の村でも暴れている人がいるかもしれない。
最悪、私に襲い掛かってくる可能性もあるから、
まずは七星七縛符で暴れてる村人を捕縛しておく。
捕縛したら、家屋を破壊された人に話を伺う。
「この事に関して、詳しい男性の老人ってご存知ないですか?
例えば、この村の長老や、治めてる人とか!」
ビリー・ライジング
聞いたぜ、ミリィ(f05963)。
「あの時」ということは、前にもこんな事があった訳だな。
行動方針:WIZ
「頼んだ!俺は城下町の図書館で調べる!」
恐らくだが、前にも村人たちが暴れた事件などの文献があるはずだ。
図書館が破壊されていない事を祈るしかないが……。
村人が図書館を壊そうというのなら、実力行使。
ウィザード・ミサイルで村人を攻撃、躊躇しない。
「村で人々が暴れてるのは知っている。だから、ここに来た。
前にも人々が暴れた事件に関して、書かれた文献を探したい」
あった、これか……この本は貸し借りできるか?
できるのなら、この本を借りた人の記録は残っているか?
すまないが、それを貸してくれ!後でちゃんと返す!
●ええやんか踊りDX
「確かに聞こえたはずなのですが……」
男の声を聞いたヴァリアクルス・プロディクト(f08857)は、その出どころを探ろうと周囲を見回す。しかし、それらしい人影は見えない。手がかりもまだ掴めていない状態だ。
こんな時には、ヴァリアクルスなりの調査方法があった。
アックス&ウィザード世界出身の彼。魔法によって事象を探るのが、彼なりのやり方だ。
魔法とは、見たままの法則性に縛られないこと。そして奇跡とは、一見して繋がりのないものを繋ぐこと。信じる者は救われるのだ。
目に見えない力を信じ、魔法的手続きを以て、歩むべき道を決めようではないか。
「はっ!」
メイスを地に突き立て、手を離す。
さぁ、ここからどのような奇跡が――?
「よし、こっちですね! 神よ、ありがとうございます」
乾いた音と共にメイスが倒れる。その方向へと、彼は歩き出した。
そう、彼の用いた手段とは、棒倒し。完全な運任せだ!
さて。ヴァリアクルスの向かった先では、リサ・ムーンリッド(f09977)が調査に当たっていた。
ただの聞き込みではない。その手段とは、【ゴーレム生成】にて産み出した巨大ゴーレムと共に、ええやんか踊りを繰り広げることだった。
「ええやんかー、ええやんかー」
それは、ゴーレムの存在感も相まって非常に目立つ。だがリサは真顔だ。誰がどう見ても真顔だ。まるで首から下は別人であるかのような、あるいは面でも被っているかのようなアンバランス加減。
飽く迄リサは真面目だ。大真面目で全力だ。表情以外。
というのも、ただ踊りたいから踊っているのではないからだ。こうして目立っていれば、その内に。
「おい、お前、何だそのでかいのは」
家屋の破壊に興じていた村人の一団が近づいてくる。
そうだ、これを待っていた。こうしてええやんかムーヴをしていれば、村人の方から声をかけてくるに違いないのだ。わざわざ自分から声をかけるまでもない。
「この踊りは、過去の災いに由来しているらしいと聞いた。誰か、何か知らないか?」
村人達は互いに顔を見合わせ、そして誰一人として声を挙げなかった。
彼らの着物等を見ると、南側からやってきた者ばかりだ。つまり、貧民層では知られていない、あるいは伝わっていないのだろう。
「そんなことより、ええやんか~」
「ほら、お前も、お前も。ええやんか~」
会話はこれで終わりだとばかりに、村人達は踊り出す。その輪に、いつの間にかヴァリアクルスも巻き込まれていた。
「え、ええやんか~。あ、リサさんもよろしければ。ええやんか~」
「え、あ、うん、そうだね。ええやんか~」
家屋が破壊されるくらいなら、踊っていた方が被害も少なく済むだろう。ここで声の主は見つからなかったが、村人達の動きを止められたのなら、上々だ。
「あの、何をなさっているのですか?」
ええやんか踊り集団におずおずと近づいてきたのは、エミリィ・ジゼル(f01678)だ。内心、城に大砲ぶっ放せば話進むじゃねえかなぁ、とも思うが、得られる情報は得ておきたいものだ。
この件、オブリビオンが絡んでいるとなれば、敵の特徴などが分かるかもしれない。そうすれば、いざ対峙した時に有利となるだろう。
しかし、村人だけでなく、一部の猟兵までもが躍っているではないか。
「いや、その、何と言うか、成り行きで?」
「はぁ……。仕方ありませんわね」
リサの返答に、エミリィは嘆息。
そして深く息を吸い込むかのように見せると、
「先ほど『災いじゃ』とか呟いてた方ー! 出てきてくださいー!」
彼女の声が、村中に響いた。
あまりのことに、辺りが一瞬の静寂に包まれる。
そして。
「ええやんか~!」
「ええやんか~~~!!!」
一部猟兵を含むええやんか踊りは、一層の盛り上がりを見せた。何がどうなっているのか分からない。
「ちょっと、そこの村人さん。あなた奥さんがいるのに、隣の長屋に住んでいる娘さんにちょっかいをかけていましたね?」
「そっ、それが何だ! というか、何故知っているんだ!」
埒が明かないと、【黒歴史を暴くメイドの術】で村人の記憶を読み取り、指摘してゆく。
誰にも言えない秘密を暴かれ、村人が次々と踊りどころではなくなっていった。
声の主は出てこない。これはきっと、出てこられない状態にあるのだなと判断したエミリィは、ひとまず村人の無力化に心血を注ぐことにした。
●声の主
ミリィ・ライジング(f05963)は、破壊された家屋を目に、背中に冷たい物が流れるのを感じた。放置しておけば、被害はさらに甚大となる。
半数近いええやんか隊は、猟兵によって無力化されているようだが、それでも破壊活動は続いている。
「これ、急いで探さないとまずいかもしれないよ。私、村でこの事に詳しそうな人、探してみる!」
「頼んだ!」
妹であるミリィに聞き込みを託したビリー・ライジング(f05930)は、この村に図書館がないものかと、出発前に見た見取り図を思い起こす。しかしここはサムライエンパイア。徳川家光の治める世。現代の図書館に相当する物は御文庫と呼ばれ、それこそ江戸城内にしか存在しない。
ならば、蔵書のありそうなところを探すしかないが、そういったところは、ある程度破壊されてしまっている。
「いや、ミリィ、待ってくれ」
しばし逡巡した後、ビリーは妹を追って駆けた。
状況を見るに、正気を保っているのは、北側の村民。ミリィは彼らに話を聞くと言っていた。
もし文献を所有している者がいるとしたら、ミリィの向かう先にいるであろう。
ソフィア・テレンティア(f02643)は頭を抱えていた。
先の、橋での一件。そして遠目に見える、(沈静化しつつあるものの)ええやんか踊り。腹いせに蒸気駆動式機関銃・冥土式でも撃ちまくりたいところだが、これも良い陽動になったと思うことにした。
おかげで。半分破壊されているが、人の気配がない家屋に易々と浸入できたのだから。念のために【ガジェットショータイム】で作り出したドローンに周辺を警備させることも忘れない。
急いでいる時ほど冷静に落ち着いて。それがメイドの嗜みなのだ。
入り込んだ家屋には、カウンターのような物が見える。周囲には鎌や鍬などが並び、ここは農具を販売している店なのだということが分かった。
「あら、ここは……。当たりを引いたようですね」
奥の間まで歩を進めたソフィアは、書庫を発見。といっても、書物の収められた棚は一つだけ。このような村では、所蔵があるだけでも相対的にかなりの知識人となり得るのかもしれない。
いくつかの書物を手に取り、表紙を確認していく。その中に、「郷土史」の文字を認めたソフィアは早速頁を捲った。
素早く、そして熱心に読んでいく彼女は、パタリと書物を閉じて家屋を飛び出した。
「あの、お話を……」
「今はそれどころではありませんので」
村で最も大きな家。これも屋根が破壊されているが、ミリィは何か話が聞けるかもしれないと戸を叩いた。
中から壮年の女性の声が返ってくる。
「せめて、この事に関して、詳しい男性の老人ってご存知ないですか?」
「村で人々が暴れてるのは知っている。前にも人々が暴れた事件に関して、書かれた文献を探したい」
ミリィに続いて、ビリーもそう声をかけた。
ややあって、戸がゆっくりと開く。中からは女性が、疲れ切った表情を見せた。
「ウチの人なら詳しいかもしれないですけれどね、生憎と今はいませんよ」
嘘を言っている様子はない。ならば次へ行くべきか、と思って踵を返す。
その脇を、ソフィアが通りすがった。
「あっ、あの、何か分かったの?」
「知りたかったらついて来てください。集会所があるはずです。声の主は、恐らくその地下……」
何故ソフィアがそこに気づいたのか。
それは、今回の事件にかなり似通った出来事が、過去に起こっていたから。
そして文献には、村の有力者は集会所に地下室を設け、そこへ避難したとの記述を見つけたのである。
成功
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第3章 ボス戦
『仮面の武僧』
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POW : 末世読経
予め【読経を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 狛犬噛み
自身の身体部位ひとつを【狛犬】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 金剛力士の招来
戦闘用の、自身と同じ強さの【金剛力士(阿形)】と【金剛力士(吽形)】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑17
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●真相
集会所の地下室には、村の有力者が集っていた。
猟兵らの聞きだした話をまとめると、以下のようになる。
今から四世代ほどの昔。この村で飢饉が起こった。しかし、今は失われた村の北側に住んでいた領主による税の取りたては変わらない。
生活に苦しんだ村人は、「税なんて払わなくてもええやんか」と開き直り、踊り狂い、領主の屋敷を破壊してしまったというのだ。
しかし領主の上役は人情の分かる者で、「民が苦しんでいるのに己のことを優先した報い」として、村人にお咎めはなかったということである。
この事件はその再来であると。
それから、最近になって、貧民層の村人が、やたらと富裕層の村人から金を借り受けていたようだ。
恐らく、その時点からオブリビオンは動いていたのだろう。
経済を狂わせ、村人を手先とし、村を破壊していこうというのではないだろうか。
●古城では
「うひょひょ、ええやんか、ええやんか。もっと踊れぃ、もっと騒げぃ! 壊しまくってええやんか~! ワシの受けた苦しみを、おみゃーさんらも受けんかぃ。あっそれええやんか~」
仮面をつけた男が、天守で扇子を広げ、踊り狂っていた。
しかし古城を駆け上ってくる複数の足跡を聞くと、踊りをやめて振り返る。
「邪魔しにきたんかぃ? ええやんか、ええやんか! 止められるもんなら止めてみぃ! うひょ、ひょひょひょ!」
諸悪の根源。間違いない。かつてこの村の住民を税によって苦しめた、当時の領主がオブリビオン化したものだ。
ソフィア・テレンティア
最初に見た時は意味が分かりませんでしたが……。なるほど、そういうことですか
自身の悪政が招いた事態を逆恨みとは……。
そんなことの為にオブリビオンとして蘇ったのですか貴方は……と呆れつつ。
まあいいでしょう、もう一度躯の海に送り返して差し上げます。
●金剛力士の招来により召喚された金剛力士像と本体を纏めて
UC【魔導式収束光照射機構・紫眼】の収束光線により攻撃いたしましょう。
さらに【ガジェット】による【支援射撃】で本体を狙います。
所詮本体の傷一つで消える案山子、金剛力士像に手間をかけるよりは
本体にダメージを与えることを優先しましょう。
ヴァリアクルス・プロディクト
オブリビオンは過去から現れるものですから……エンパイア流に言えば、怨霊、というやつでしょうか。
それなら、ぼくもクレリックとして勤めを果たさなければなりません。
その苦しみは過ぎたことなんです。
ユーベルコードで光を放って、その怨念の浄化に努めましょう。
メイスもいちおう装備はしていますが、自分で殴りかかるのは苦手です。
後ろから仲間を援護していきますよ。
ちゃんと事件が解決したら、踊りで疲れた人たちをいやしましょう。
コワしたぶんだけ、またやり直すための元気を取り戻さなければいけませんもの……ね?
●対峙! ええやんか武僧
「自身の悪政が招いた事態を逆恨みとは……」
いざ黒幕と向き合ったソフィア・テレンティア(f02643)は、呆れたように呟いた。
そこに信念などない。プライドもない。ただ、己の私利私欲に塗れた自分勝手な逆上でオブリビオン化した、最低最悪のワガママさんだ。
これまでのええやんか踊りに違和感を覚えていた彼女。しかし、これで全てに合点がいった。
村人達は、踊っていたのではなく、踊らされていたのだ。
「オブリビオンは過去から現れるものですから……エンパイア流に言えば、怨霊、というやつでしょうか」
メイスを握り直すようにして、ヴァリアクルス・プロディクト(f08857)は考えを巡らせた。
怨霊。確かにそうなのだろう。かつて身を滅ぼす原因となった事件を逆恨みしてこのように現世へ現れるなど、怨霊以外の何物でもない。
クレリックであるヴァリアクルスは、こうした存在を浄化してこそ、自身の存在意義を満たすことができるに違いないと考えた。
「うひょっ! なんとでも言いなはれ。おまはんらはここでワシの手下に潰されるのじゃぁ」
武僧はポンと手を叩いた。
すると、二体の金剛力士が現れる。
「いてまえやぁ!」
金剛力士阿形はソフィアに、吽形はヴァリアクルスにそれぞれ飛びかかる。
まず、阿形の初撃を躱したソフィアは、右目の紫眼でその姿を捉えた。
「ソフィア僚機の遺した力、少しだけお見せして差し上げましょう!」
【魔導式収束光照射機構・紫眼】によって放たれた光線が、阿形を貫く。
これを見た吽形は、狙いをソフィアへと変更した。
「うっ!?」
背後から強かに打たれたソフィアが呻く。
「ソフィアさんっ、大丈夫ですか!?」
【ジャッジメント・クルセイド】で吽形を引き剥がしたヴァリアクルスが、ソフィアの手を引いて立ち上がらせる。
短く礼を言ったソフィア。
二人は再びオブリビオンと対峙する。
「ヴァリアクルスさん。私に考えがあります」
「……はい、なるほど、分かりました」
「何をごちゃごちゃと!」
小声で作戦会議をする猟兵に、オブリビオンはうひょうひょと笑う。
「何をしようと無駄じゃぁ。諦めた方がええやんか?」
「そんなことはありません。僕らは、人々を救わねばならないんですっ!」
「ワシはな、ここの村を治めとったんじゃ。殿に、税をしこたま納めて、褒めて、認めてもらうために! それを村人共は、殿はぁっ!!」
人々を救う。ヴァリアクルスの言葉に、オブリビオンが怒りを表した。
これに対し、ソフィアは小さく呟く。
「そんなことの為にオブリビオンとして蘇ったのですか貴方は……。まあいいでしょう、もう一度躯の海に送り返して差し上げます」
「やれるもんならやってグハァッ!」
言い終わらない内に、激しい衝撃がオブリビオンを襲った。
鳶型のガジェットを自らの影に隠しておいたソフィアの一撃が武僧本体を攻撃したのだ。
これに合わせ、金剛力士の姿が消える。
「ヴァリアクルスさん、上手に気を引いていただいて、ありがとうございます」
「う、上手くできてたのでしょうか?」
結果オーライである。
「お、おまはんら、よくもぉぉ!」
「あなたの苦しみは、もう過ぎたことなんです。僕らが、浄化します!」
次の攻撃が来る。猟兵達はそれに備え、各々武器を構えた。
成功
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リサ・ムーンリッド
●いとも容易く行われるプライバシーの侵害。
この領主は過去を克服するためのケアも必要だな。
というわけで領主殿、戦いながらで恐縮だが質問に答えてほしい。
オブリビオンとなった者が歩んだ人生を知りたいんだ!
(ただの好奇心)
●【賢者の影】による妨害。
逃げ足と見切りの技能で逃げ回りながら実行。
仲間の攻撃と合わせることも意識。
●
真実以外はダメージ。
つまり『答えられないような変態的な真実』があると考えるのが妥当。
領主なら一度は深夜の城下を裸で歩いてスリルを味わうのだろう?
違う?そうか…残念だ…
・いつまでおねしょを?
・初恋のエピソード
・口臭対策について
などの合間にフェイントで簡単な質問をはさみつつメモる。
エミリィ・ジゼル
【WIZ】
やはり城に居ましたね。うん、まあそうですよね。
よーし、かじできない頑張っちゃうぞー。
○戦闘
今回はリサさんと協力し、彼女が敵を動揺させるのを利用して攻撃します
敵が動揺したら【サメを呼ぶメイドの術】を使って「すべてのサメの父」を召喚。
そして大量のシャークを呼び出してもらい、それをまとめてけしかけます。
「ひゃっはー!サメ祭りじゃー!」
あ、サメを呼びだした後はわたくしは敵の射程圏外でええやんか踊りでもしてます。
敵はなんか近距離攻撃しかなさそうですしね。
煽ったり集中を阻害しつつ、常に死角からサメで攻撃しつづける感じで。
金剛力士を呼び出しても無視して本体に集中攻撃です。
●ええやんかサメ祭り
「あー、ところで。戦いながらで恐縮なんだが」
周囲の緊張感もそっちのけに、リサ・ムーンリッド(f09977)がオブリビオンに声をかけた。
彼女の原動力は好奇心。新たなものを見ること、知ること。既に過去のものとして葬られた歴史を直に体験したオブリビオンは、リサにとって格好の取材対象だ。
「やはり領主なのだから、一度は深夜の屋敷を裸で歩いたりしてスリルを味わったりしたのだろうか」
「うひょ、そんなことするわけがグワァァッ!?」
うっかりオブリビオンが回答すると、激しい電撃がその身を襲った。
【賢者の影】によるものだ。質問に対して嘘を吐くとダメージを与えるといったユーベルコード。リサにとって、これ以上相応しいユーベルコードもないだろう。
今、オブリビオンはダメージを受けている。ということは……。
「うわぁ」
リサ、ドン引き。
しかしオブリビオンも、動けないわけではない。真実を答えねばならないだけで、その身は自由だ。
これを抑えるべく動いたのはエミリィ・ジゼル(f01678)だ。
「よーし、かじできないさん頑張っちゃうぞー」
【サメを呼ぶメイドの術】ですべてのサメの父を召喚。そこからあらゆる環境に対応するサメを打ち出した。
「そげなもの、ワシの金剛力士をもう一度呼び出して」
「いつまでおねしょを?」
「おねしょなどしたことグッホァッ!?」
対抗して行動せんとしたオブリビオンに、すかさずリサが問いかけを投げる。
この期に及んで外聞が気になったオブリビオンは、咄嗟に嘘を吐いてしまった。思わずダメージを受けたことで金剛力士の召喚に失敗。
「ひゃっはー! サメ祭りじゃー! あっそーれっ、ええやんか〜ええやんか〜」
これでもかとサメを飛ばし、オブリビオンに多大なダメージを与えながら、エミリィは余裕のええやんか踊り。
サメは飛ばし、エミリィは踊るし、リサは恥ずかしい質問をするし。もう訳が分からない。
「最後に一つ。今の気分は?」
「とっても、最低でおま」
ようやく素直になったこの回答を以て、ようやく【賢者の影】は解除となった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビリー・ライジング
自業自得だな。そしてオブリビオンとして蘇り、村ごと破壊するわけか。
行くぞ、ミリィ(f05963)。
「それじゃあ、遠慮しなくて、ええやんか!」
真の姿を解放。
見た目は変化しないが、俺の魔法剣がレイピアに変わる。
T・Eは風の魔力中心の攻撃力重視。
風の魔力を活かして、素早さを中心にした剣技で攪乱。
敵の攻撃は極力回避。回避した後の、刺突でのカウンターも狙う。
挑発も交えて、攻撃目標をなるべく俺に引きつける。
「どうした?口は動いてる様だが、動きが見え見えだぜ?」
攻撃の時、剣での斬撃でボスの身体のどこかにバツ印を付ける。
これはミリィに「ここを狙え」のマーキング。
ミリィが攻撃を行った瞬間、素早く敵から離脱する。
ミリィ・ライジング
自分の身から出た錆の癖に、そんなの只の八つ当たりよ!
行くよ!お兄ちゃん(ビリー:f05930)!
「それなら、遠慮しなくて、ええやんか!」
真の姿は解放。
見た目は変わらないが、私に憑いてる陰陽師の亡霊が傍に立つ。
(亡霊は周囲の猟兵、敵にも可視出来る)
起動する事で爆発する霊符や、
忍者手裏剣の投擲などでビリーを援護する形で攻撃。
「私がいるのも忘れないでね。私達は無敵の兄妹なんだから!」
ボスの身体にビリーの付けたバツ印を見つけたら、
ユーベルコード用の霊符を用意。
バツ印目掛けて霊符を投擲、命中した時にボスに剥がされる前に、素早くもう一つの霊符も投げつけて、ユーベルコードを発動させるよ!
●無敵の兄妹
徐々に追い詰められるオブリビオン。その姿をたった一言で一蹴する者達がいた。
「自業自得だな。そしてオブリビオンとして蘇り、村ごと破壊するわけか」
「自分の身から出た錆の癖に、そんなの只の八つ当たりよ!」
流石は双子といったところ。兄ビリー・ライジング(f05930)、妹ミリィ・ライジング(f05963)は、揃ってオブリビオンに指を向けた。
既に愉快な状況になっているオブリビオンだが、それもこれも、生前死後を問わず領民を、村人を苦しめた報いだ。断じて許されるものではない。
だからこそ。
「「それなら、遠慮しなくてもええやんか!」」
「ええい、黙れ黙れ黙れェェッ!」
とうとう余裕のなくなったオブリビオンは、センスを投げ出して憤慨する。
そして何やら巻物を広げたかと思うと、何やらブツブツと唱え出した。
「あーええやんか〜ええやんか〜、そんなんゆーてもええやんか〜」
意味は全く分からないが、何かの準備をしているに違いない。放っておくわけにはいかないだろう。
「行くぞミリィ!」
「うん、行くよお兄ちゃん!」
呼吸を合わせた二人は、同時に真の姿を解放する。
ビリーの持つ魔法剣はレイピアに、ミリィの背後には陰陽師の霊が現れた。
「まずは俺からだ。覚悟っ!」
レイピアを手に、ビリーが一直線に飛び出す。
オブリビオンは手にしていた巻物を放り出すと、その巨大な掌で張り手を繰り出した。
これに左肩を打たれながらも、ビリーは勇んで踏み込む。レイピアを握る右手を伸ばし、オブリビオンの臍下にバツ印を刻んだ。
「今だ、ミリィ!!」
「私達は無敵の兄妹なんだから!」
その印は、兄から妹へのメッセージ。双子で刻む勝利への道標。
「天地万物生滅盛衰、陰陽五行相生相剋。混沌の太極に飲まれて、破滅せよ!」
二枚の霊符を、ミリィは放った。
それは吸い込まれるように、オブリビオンに刻まれた印へと命中。
城を揺るがすほどの絶叫が響いた。
過去の遺物よ、覚えておくが良い。
輝く黄金、煌めく白銀。華々しく光を放つ、太陽と月の兄妹。ライジングの名を、骸の海へと伝え響かせよ。
成功
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白幡・修理亮
おお、新納殿はあの薩摩のご出身であられるのかな?
父や祖父から関が原での死闘の話はよくよく聞かされたもので…
一度その太刀筋をご教授願いたいものですなあ。
うむ、ではこの不肖、白幡修理亮!
新納殿のために、みごと大将首を掻っ切って取ってご覧に入れまする!
…などと、大見得を切ってきたはいいものの。
本当に刀を振るうのなんて初めてでござる!
相手は怨霊の類とは言え、ううう…斬れば血が出るのじゃろうなあ…
ええい、ままよ!
敵の大将が姿をあらわにしているなど、もはや勝利は我らのもの!
小細工なしで、真っ向唐竹割りじゃあ!!
うおおおおーーーー
!!!!!
仲佐・衣吹
やれやれ、やっと服が乾いたよ。ドジっ子だなぁ~サーベルは
隣で滅茶苦茶睨まれてるけれど、ボス戦もうひと息かな。頑張ろう
分身の僕ベストが剣で斬り込む
と見せかけて剣を後ろへポーンと投げる
そして脱いだコートで敵の視界を塞ぎ飛び蹴り
体勢が崩れた所で攻撃力強化したサーベルが二刀流で斬りかかってね
分身じゃないと絶対やらない荒業さ
……まぁ思い切りの良さだけは評価してやるよ
※POW
●決着! ええやんか踊り
オブリビオンとの死闘の脇で、一人意気込む侍がいた。
(今回案内役を務めたグリモア猟兵は薩摩の武士。一度その太刀筋をご教授願いたいものですなあ。しからばこの不肖、白幡・修理亮(f10806)、みごと大将首を掻っ切って取ってご覧に入れまする!)
とは言うものの。刀を振るのは初めてとのこと。よほどボンボンに育ったのだろう。
しかし、武士として、刀が飾りとなってしまってはその本懐に恥じるところ。気合いの方はひとまず十分のようだ。
一方では。
「やれやれ、やっと服が乾いたよ。ドジっ子だなぁ~サーベルは」
己の別人格に喋りかける仲佐・衣吹(f02831)の姿があった。先程川に落ちたこともあり、ずぶ濡れの状態だった彼(ら)だが、その不快感も何のその、とうとう辿り着いた今回の大将を前に気合いが入る。
「おい、ベスト。あれを見ろ」
衣吹の人格が一つ、サーベルが、主人格であるベストに声をかけた。
言われた方を見てみると、屁っ放り腰で刀を握る侍が一人。言うまでもなく、修理亮だ。
「どうするの?」
「分かってるだろ。アレだよ、アレ」
「あぁ、アレね。そっか、面白くなりそうだ」
ニタリと笑む衣吹。全てが動き出すその前に、下準備を手早く進める。
「何をごちゃごちゃ言うてはる。ワシは、こげなとこでは終わらんで!」
「ええい、ままよ! うおおおおお!!」
刀を担ぎ上げた修理亮は、気勢一発に踏み込む。
振り下ろされる刃。それはしっかとオブリビオンを捉えた、かに見えた。
ガキリと金属音が響く。
オブリビオンが咄嗟に腕を出し、刀はそれに弾かれて中を舞った。
「ひょひょ、ええやんか。ワシにはそないなもん、効くわけなかろ」
「まだだよっ!」
一瞬の高笑いを遮り、衣吹が跳ぶ。
修理亮の刀を空中で受け取ったかと思うと、己の剣と合わせ二振りの刃で斬りつけた。
「お、おま、許さへんで!」
「構わん。終わりだ!」
衣吹の背後から声が響く。
これに合わせて、衣吹の主人格であるベストが、二振りの剣を背後へ放り、オブリビオンに組み付いた。
「某も、武士の矜持を見せる時でござる!」
同時に、修理亮も敵の足を掴んだ。
オブリビオンの胴がガラ空きとなる。
彼らの背後から上がった声。その正体はもう一人の、いや、本来の衣吹の体。サーベルだ。
己の剣を右手に、放り出された刀を左手に、ベストの剣を口に咥え、三刀流の形を取る。
「バカな、バカなバカな! ええくない、ええくないやんかァァッ!!」
オブリビオンの絶叫が城内に響き、三つの太刀筋に体を裂かれ、その肉体は骸の海へと帰っていった。
●それから
オブリビオンが消えたため、ええやんかと騒いでいた村人達は正気に戻った。
しかし借金が消えたわけではない。彼らは壊してしまった富裕層の家々を修繕しながら、返済に奔走しなくてはならないだろう。
それでも救いはある。
今回のオブリビオンが存命だった頃、彼の上役は大変人情のある人物であったと記録が残る。領主の住む屋敷はいないものの、この土地の真の所有者は、その血筋を色濃く残していたようで、村に対してこのようなお触れを出した。
これより二年の間、税の取り立ては無しとする。
元より贅沢を知らない村人だ。借金と言えどもタカが知れている。返済など大した苦にならないどころか、一時的に税が なくなったことで、村の修繕は進み、やりくり上手な者ならば多少の貯蓄も出来ることだろう。
成功
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