バトルオブフラワーズ⑪〜アネモイ墜とし
スピード怪人『ウインドゼファー』は、単純にして明快な存在である。
ただひたすらに、速く、疾風[はや]く、電光石火[はや]い。
暴風を纏い、吹きすさぶものをも置き去りに。
目にも留まらぬほど生易しくはなく、その苛烈さは花の舞台をも散らす。
花の香りに満ちた戦場に、嵐が訪れんとしていた。
●グリモアベース
「ラビットバニー撃破によって新たな道が開き……必定、新たな敵が現れました」
無数の花弁が敷き詰められた美しい光景がグリモアベースに映し出されながらも、撩乱たるその景色に見惚れていられる事態ではない。
予知を告げるグリモア猟兵、光・天生の面持ちもそれを物語っていた。
「敵の名はスピード怪人『ウインドゼファー』。風を操るユーベルコードの使い手です」
真紅の仮面で顔を覆い隠し、タイヤに気筒、ランプにバックミラー、車を想起させる装備を無数に身につけた怪人。我こそ最速なりと知らしめるかのようなヴィジュアルに違わず、疾風が如き速度で敵対者を翻弄する。
「これまでの戦場のような特殊な法則はありません。小細工なしの、正面勝負です」
踊る必要も歌う必要もなければ、エモなるもので敵を殴る必要もない。
だがそれは同時に、相手からすれば「そんなものに頼るまでもない」ことを意味する。
純然たる速さで猟兵を圧倒する自信と、それに足る力がウインドゼファーにはある。
「ですが……余計なルールに縛られないから力を発揮できる。それは皆さんも同じこと」
猟兵たちをまっすぐに見据え、天生が確かな信頼を込めた言葉を口にする。
最後の門番にふさわしい難敵なれど、佳境に至ったこの戦いにおいて最大限に力を発揮できるようになったのは猟兵たちもまた同じこと。
はるか銀河の暴君を打ち砕いた彼らに、ここで勝てぬ理屈はないのだ。
「――ご武運を」
それ以上の言辞は不要とばかりに天生が拳を握りしめる。
いざ、西風を吹き止ませ。
鹿海
鹿海です。はじめて高難度のシナリオを出させていただく運びとなりました。
まずは下記の注意事項を「必ず」ご一読ください。
====================
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
攻撃の前に対策の明記を忘れぬよう、お願い致します。
対策が皆無だと非常に厳しい結果となってしまうことが確定します。
猟兵からの先制攻撃は絶対にできませんが、
対策として防御や回避にUCを用いるのはアリです。(ただし発動は必ず後手になります)
エイプモンキーやラビットバニーと違い、特殊なルールはありません。
キマイラフューチャーには珍しい、真正面からのガチンコ勝負となります。
普通に強く、それゆえストレートに難敵です。
最後に、私個人より。
「失敗や苦戦を無様に描写するようなことは絶対にしない」つもりです。
ですので(先制対策は書いた上で!)どうか失敗を恐れすぎずにご参加ください。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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高柳・源三郎
まず、たぬきの着ぐるみを身に纏い戦場に現れる。
相手が風で攻撃してくるなら戦場に花びらが舞うはず。
花びらで視界が悪くなったら技能【早着替え】で着ぐるみを脱いで【たぬき人形たろう】と【はな】を着ぐるみの中に忍ばせてわしは隠れる。
操り糸に神経を集中して敵の攻撃が着ぐるみに当たった瞬間にUC【荒れ狂う「はな」びら】を使い2体のたぬき人形と着ぐるみを【たぬき人形はな】の花飾りの花びらに変えて戦場に舞う花びらに紛れ込ませる。
敵の攻撃でわしが四散したと思わせると同時に、UCの花びらが戦場にに舞う花びらと見分けがつかず相手はこの後素早く動けないはずじゃ。
後は動きを封じつつUCの花びらで攻撃するんじゃ。
はじめに戦場に現れたのは、ぽってりとしたたぬきの着ぐるみであった。
より正確に言えば、それに身を包んだ高柳・源三郎(流浪の酔いどれおやじ、たぬき人形と共に・f15710)である。
だがいかなる容貌とて油断ならぬのは自明の理。
言辞の代わりにウインドゼファーの全身が激しい駆動音を上げ、身体に埋め込まれたタイヤと車輪剣、双方が高速で回転を始める。
抜き身の車輪が振り抜かれると同時、着ぐるみへと襲いかかるのは「嗤う竜巻」。
ひょう、ひょう。戦場中の花びらを巻き込みながら、相対する者の遅きを嗤うかのごとく甲高い風の音がたちまちすべてを切り裂いてゆく。
巻き上げた花びらをも……そして敵対者たる、着ぐるみをも。
そう。
ウインドゼファーの放った竜巻は源三郎でなく、着ぐるみを切り裂いたに過ぎない。
源三郎の謀である。
竜巻によって舞い上げられた花びらで視界が覆われたが好機。
スピード怪人もかくやの早着替えにより、既に源三郎の体は着ぐるみの中にない。
入れ替わりに詰められたのは愛するたぬき人形《たろう》と《はな》。
(手応えがない)
幹部の名は伊達ならず、ウインドゼファーも竜巻の直撃と同時に違和を覚える。
だが何よりも疾き彼女は、この時ばかりは遅きに甘んじた。
「残念。はずれじゃ」
花の嵐に紛れ、何者も源三郎が手繰る糸を目にすることは能わなかっただろう。
細工によって切り裂かれた着ぐるみの中から炸裂するように溢れ出すのは、さらに数えきれぬほどの薄桃色をした花びら。それらが全て、風に巻き上げられてゆく。
「これは、まさか……!」
ウインドゼファーの驚嘆は、花の一片が彼女を掠め、その身体に傷を与えたためだ。
【荒れ狂う「はな」びら(ハナ・フラワーズ)】……着ぐるみの中のたぬき人形たちが姿を変えた花びらは、一枚一枚がウインドゼファーに仇なす刃。そして彼女自身が発生した風に巻き上げられ、戦場を覆う無数の花に完全に紛れてしまった。
一寸先も華やかなる視界の中、源三郎の声が響く。
「たぬきが人を化かすにゃ、木っ葉一枚ありゃあ十分じゃ」
ならば数えきれぬほどの花びらが舞うこの舞台はもはや源三郎の術中にある。
百花楼蘭、千変万華。化かし合いにおいて狸に勝る化生ぞなし。
「……とんだ狸親父ですね……!」
「そいつは、何よりの褒め言葉じゃのう!」
回避も能わず乱れ飛ぶ花びらに、ウインドゼファーが切り刻まれる中。
好々爺の笑い声が、高らかにこだましていた。
成功
🔵🔵🔴
ジェン・ジェンガラ
美しく絢爛に咲く花々の、何と見事なことよ。光と土と、そして恵みの風の賜物じゃ。だが…成る程、忠義により、豊穣の風を暴風と変えたか。厄介な相手じゃ。
WIZ:魔尽天敷の理を使用
相手が放つのは竜巻…ならばワシも竜巻を起こそう。ただしワシが生み出すのは炎を纏う竜巻じゃ。相手の竜巻の軌道を【見切り】、【高速詠唱】にて炎の竜巻を呼び出す。竜巻とは渦を巻く上昇気流。火炎を纏う竜巻は只の竜巻よりも強烈な上昇気流を起こし、お主の風を飲み込むぞ。
そしてそなたの『全タイヤ高速回転モード』…燃え盛る炎の中では、ちと熱すぎではないか?故障せん内に解除することじゃ。
解除したなら【全力魔法】でとどめとしよう。
※アドリブ歓迎
「光と土と、そして恵の風の賜物。絢爛に咲く花々の、何と見事なことよ」
ウインドゼファーと対峙しながらも、ジェン・ジェンガラ(悠久なる遊興・f16501)は飄々とした態度を崩さぬまま、視界を覆う爛漫を讃えていた。
「忠義により、豊穣の風を暴風と変えたか」
「教える必要はありません。全ての欲望は、私達が喰らい尽くす。その事実で十分」
「人の子の欲を律するもまた、神の役目じゃろうて」
ジェンの双眸が深紅の仮面を見据え。
数秒の静寂の後、両者が後方へ跳びのき、一斉に動き出す。
速さを追い求めるだけはあり、機先を制したのはウインドゼファーだ。駆動音と共に車輪剣を十字に振り払い、巨大な「嗤う竜巻」を発生させる。
「ならばワシも付き合ってやるかのう、西風神の名を持つ者よ!」
対し、かざされたジェンの掌から巻き起こる熱波がたちまち炎の竜巻を形成。
ジェンが掌る【魔尽天敷の理(ユー・ディー・オーバー)】の産物である。
見切るのも困難なほどのウインドゼファーの先手なれど、不老の神たるジェンが長い時間をかけて編み出した高速詠唱術が彼の反撃を間に合わせた。
天成されゆく颶風が互いを喰らい合い、花々を吹き上げながら弾け飛ぶ。
ぶつかり合う間にも車輪剣は目にも留まらぬ速さで振るわれ、ジェンもまた休みなく詠唱を重ねる。間断なく「嗤う竜巻」と炎の竜巻が生まれては相殺、消滅。
猛炎が「嗤う竜巻」と混じり合いながら上昇気流をなし、春の暖かさを覚える景色が次第に熱気に呑み込まれる。舞い飛ぶ花びらが火の粉を浴びては燃え尽きてゆく。
「頃合いじゃな……」
目を細めたジェンが両の掌を重ね、口早に詠唱。
一大魔法を放つとなれば、さしものジェンといえ詠唱は刹那に終わらない。
「晒しましたね、隙を!」
当然、この間隙を見逃すウインドゼファーではない。
全タイヤ高速回転モードが織り成すスピードに任せ、詠唱の隙を晒すジェンへと瞬きひとつを行う間もなく肉薄し、直接その体を切り刻む!
……はずだった。
「そなたの駆動。この熱気の中じゃあ、ちと熱すぎではないか?」
「……!?」
車輪剣を振りかぶったウインドゼファーが、ジェンの眼前で停止する。
オーバーヒート。休む暇のない応酬による長時間駆動と少しずつ上昇させられた戦場全体の温度によって、機械の体が熱暴走を引き起こしたのだ。
「晒しおったな、隙を」
不敵な笑みを携え、詠唱を終えたジェンの両掌が前方へとかざされ。
一等巨大な炎の竜巻が、ウインドゼファーをさらなる強熱に呑み込むのであった。
成功
🔵🔵🔴
セルマ・エンフィールド
マニアック理論やエモさとやらよりよほど分かりやすい。押し通らせてもらいます。
・先制対策
風には必ず流れがあります。それに逆らって動く、または立ち止まろうとすれば吹き飛ばされたり飛来物がぶつかったりと逆に被害は強くなる。
なので散った花の足場を視力でとらえて風の流れを見切り、多少の傷は激痛耐性で耐えて足を止めず、風に逆らわないよう動くことで被害を抑えます。
まさか暴風圏が1km以上ということはないでしょうし、敵の射程ということは【氷の狙撃主】も射程範囲。
動きながら、かつ暴風の中と条件は悪いですが、スナイパーとしての技量、および回避と同様風の流れを見切ることで当ててみせましょう
戦場に、再び嵐が巻き起こっていた。
ウインドゼファーによる【レボリューション・ストーム】……花の足場さえバラバラにしてしまう暴力的なまでの風が、圧制を敷いているのだ。
花の足場を崩し、文字通り立つ瀬すら失わせる激しい風の中、セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)はひたすらに耐え忍ぶ。
(凄まじい威力……でも、マニアック理論やエモさとやらよりよほど分かりやすい)
自身の細い体躯を容易く吹き飛ばす力を受けながらも、セルマは至って冷静である。
立ち止まってはいけない。風に逆らってもいけない。
不可視の風は、舞い上げられる花の足場によってその輪郭を露わにしている。
ならば風の流れそのものを見切るのは簡単なこと。
そしていかに暴風圏が広大であれ、敵の攻撃が届くならそこは狙撃手の射程圏。
ならばあとは狙撃手の資質……肉体と精神における、忍耐力の勝負だ。
レボリューション・ストームはその最中に身を置くだけで容赦なくセルマの身を苛み、間断なく痛みを齎す。それでも少女は銃を手放さず、敵だけを見据え続ける。
風のユーベルコードは生半な威力ならず、長くは耐えられない。機は、一度きりだ。
吹き荒れる風が肌を切り裂く。まだだ。痛みに耐え、歯を食いしばる。
ひときわ巨大な花びらがセルマを叩きつける。まだだ。薄い空気の中、か細い呼吸。
大小問わぬ無数の花々が吹き上げられ、視野を覆い尽くしてゆく。
当のウインドゼファーでさえ、花の嵐でセルマの姿を見失うコンマ一秒の間。
ただひたすらに一射の機を伺い続けたセルマだけが、〝それ〟を見出した。
(――今!)
風向きが、変わる。
花びらと花びらの、針の穴を通すような隙間。
必要なのは暴風の勢いがウインドゼファーへと向く瞬刻と、ほんの一筋の弾道。
条件が揃った以上、【氷の狙撃手(アイシクル・スナイパー)】は任を果たすのみ。
セルマの構えたマスケット銃は火ならず氷を噴き、凍てつく弾丸が風を切り裂く。
ウインドゼファーがいかに優れた風の操り手であったといて、追い風を得た氷の弾丸はもはや風力程度でその温度を奪われることはない。
吹き荒ぶ風さえも凍てつかせながら、放たれた弾丸がウインドゼファーを貫いた。
「コントロールさえ効かぬ全力の風を、見切ったというのですか……!」
ウインドゼファーに膝をつかせるほどの衝撃と、凍結。常識の埒外をゆく技量を前にして、苦痛よりも先に一驚が彼女を震撼させていた。
「暴風の中であろうと何であろうと、あなたはスコープの向こうに映った」
硝煙を立ち昇らせる銃を構え、荒い呼吸を整えながらセルマが口を開く。
「なら……何者であれ、あなたはすでに獲物です」
狙撃手の目は、いかなる獲物をも逃しはしない。
相手が一兵卒であれ、比類なき力の幹部であれ。
その事実だけは、不変なのである。
苦戦
🔵🔴🔴
ロカロカ・ペルペンテュッティ
【WIZ】アドリブ歓迎
彼女の攻撃をしのぎ続ける手立てはボクには少ない。
なので、一瞬の隙に、全力を賭けるとしましょう。
風の精霊の声に耳を傾け(第六感)て僅かな隙間を探り、UDCの因子を喚起して起こす【衝撃波】をぶつけて間隙を広げつつ、守護霊の加護による【オーラ防御】を致命傷だけは負わないように要所に集中して「嗤う竜巻」の間隙を抜けます。
そして、連鎖式刻印と封鎖紋による制限を解除。
全UDCの因子を活性化して生み出した呪力を祭礼呪具と杖の力で増幅。
そのすべてをボクの一番の友、《雷鳥》に捧げます。
……呪力をすべて雷へと変えた《雷鳥》の突撃、受けきれますか?
(技能:属性攻撃、捨て身の一撃)
逆巻く風が、高音をあげて嗤う。
ロカロカ・ペルペンテュッティ(《標本集》・f00198)に対し、ウインドゼファーの攻撃が嗜虐的なほどに勢いを増すのは、ロカロカが人間たちに成り代わりこの世界に繁栄した種族……キマイラであるがゆえか。
「無限大の欲望。あなた達キマイラの享楽で食らい尽くせるものではありませんよ」
淡々と、しかし絶え間なく車輪剣を振るっては新たな竜巻を放つ。
刃の直撃こそ避けながらも、放たられる竜巻の無情な嘲笑がロカロカを攻め立てる。
「ッ……!」
掌より衝撃波を放ち、オーラの守りで身を覆ってなお、肌に刺さる痛みは強烈だ。
これが幹部を名乗る怪人の力。
否応無しに実感させられながらも、しかしロカロカの目は前を見据え続ける。
「さあ……吹き飛びなさい。この世界に、あなた達の居場所はありません!」
両手を振りかぶり、ウインドゼファーが一等巨大な「嗤う竜巻」を生み出す。
ロカロカのしなやかな体躯を切り刻み尽くすに十分な威力を誇る、最大の一撃は。
ウインドゼファーの意に反した軌道へと逸れ、その勢いを弱め……消えていった。
「何
……!?」
「ようやく、聞こえました」
自然の失われたキマイラフューチャー、その中枢。大自然の精霊が声を聞くことはともすれば困難な環境だったろう。だがロカロカには、見えていた。聞こえていた。
皮肉にも……ウインドゼファーが呼び込んだ風にこそ数多宿る、精霊たちの声が。
彼らへの語りかけにより、「嗤う竜巻」を逆に操作してみせたのだ。
精霊と心を通わすことで本領を発揮する、ロカロカの有りようそのもの。それがウインドゼファーにとって唯一にして最大の誤算。緑という緑が、自然という自然が狩り尽くされた世界の住人、キマイラではあり得ないはずの能力。
「あなたは、〝違う〟
……!?」
ウインドゼファーがロカロカのルーツを直感したとて、機は既に熟した。
精霊たちによって生み出された一瞬の隙。
狙いを絞っていればこそ、ロカロカの行動はウインドゼファーより速きをゆく。
「おいで、猛き雷」
一筋の血を垂らす唇が、もの柔らかなほどの語調で友の名を呼ぶ。
――嵐あるところ、雷あり。
吹き荒れる風をつんざいて、吹き上がる花弁の渦を貫いて、それは現れる。
【標本番号001《偉大なりし雷鳥》(スペシメンゼロゼロイチ・サンダーバード)】。
ロカロカが身に宿すあらゆる制限を解除した全身全霊の姿は、まさしく神鳥。
宙へ舞い上がった雷の翼が翻り……風の速度を、音の速度をも超え、友に仇なす敵を……ウインドゼファーを「嗤う竜巻」ごと穿ち抜く!
「かッ……!」
金属の体を伝導してゆく電撃に、さしものウインドゼファーも膝を屈する。
「……無理をさせてしまってごめんね。しばらく、ゆっくりお休み」
同じく地に膝をつきながらも、役目を果たした雷鳥を労うロカロカの穏やかな声音。
彼を嗤う風は最早なく、今や傷つき血を流す少年の口元にこそ微笑が浮かんでいた。
苦戦
🔵🔴🔴
ノイ・グランガイオス
アドリブ、連携歓迎 大阪弁です
イロモノ2人倒した後に真面目な強敵とか、いよいよ敵も
後がなくなってきたんかいな?
せやけど、まだ後がつかえとるからな。
ここもガツンといかしてもらうで!
●対策
足場をばらばらにする暴風っちゅーても、
自分の足元まで壊しても―たら立ってられへんやん?
ちゅー事は、そのUCの死角は……あんたの真上や!
HMカスタムでブースターを装備、急速上昇してゼファーの直上に飛び込む!
そのまま落下スピードにブースターの加速を加えて、さらに
両足に熱エネルギーを集中させた状態で矢のように突っ込んで
両足キックをかますで!
ひっさぁつ!
グラン・メテオフォーーール!(←今思いついた名前)
今一度、戦場に嵐が吹き荒れていた。
花の足場が崩れ去り、純粋なる命の奪い合いをなす戦場が繚乱の花に彩られてゆく。
広がる光景の美しさに反し、ウインドゼファーが放つ【レボリューション・ストーム】はなおも手心なく敵対者を呑み込まんとする。
「なんかえらいロマンチックな気分になってくるなあ!」
他方、敵対者ことノイ・グランガイオス(ごっつウォーましん・f08595)はといえば、身にまとった鎧の重々しさとは正反対、風よりも軽やかな調子で笑ってみせる。
「末期の風景としては、雅に過ぎるほどでしょう!」
「抜かしや!」
ウインドゼファーの挑発をも、ノイはニヤリと歯を見せて受け流す。
足場をバラバラにすることで敵を無力化しつつ叩きのめす暴風。
だがその弱点を、ノイは先んじて見抜いていた。理屈としては至極単純。自分の立つ足場まで崩しては、相手とて立っていることさえままならない。
いかに強力な嵐であれ、そこには必ず〝台風の目〟があるのだ。
「本日は荒天、なれど飛行に支障ナシ! 高機動モード、いくで!」
ノイ・グランガイオス【HM・カスタム(ハイマニューバ・カスタム)】……大出力のブースターを装着したグランジウム超合金製の機械鎧が、火を噴く!
ウインドゼファーの力が魔法めいたものであるならば、ノイは科学の粋を結集した装備でもって風となる。旧文明の支配者が異端に手を染め、それを阻まんとする猟兵こそが文明の結晶を用いる皮肉が、あるいは既に勝負の結末を裏付けていた。
ノイが見出した〝台風の目〟……すなわち、ウインドゼファーの、真上。
ノイの巨体なればこそ装備が適う重装備が約束する高機動力は巻き起こる嵐をたやすく切り抜け、深緋色の軌跡を残しながら目標高度に到達する。
「悪いけど、まだ後がつかえとんねん!」
猟兵から、ノイからすればこれはまだ前哨戦に過ぎない。
全力を尽くしこそすれ、どうしてここで立ち止まっていられようか。
猛進の意思はそのまま急降下するノイの速度となって表れる。
「あなたの狙い通りになど……!」
ウインドゼファーもまたこれに対抗し、全ての風を上空へと集中。
愚直に加速を続けるノイと、突き上げるような颶風がせめぎ合い、拮抗する。
「ひっ……さぁつ!」
だがノイは勝利を確信すればこそ叫ぶ。
突き出された深緋の足に熱エネルギーが集まり、分厚い風の壁を突き破る!
「押し返せない
……!?」
ウインドゼファーは知る由もあるまい。
グランジウム合金……ノイの全身を包む金属が有する磁性が金属製の体を持つウインドゼファーへと引力を発生させ、それこそが文字通りの突破口を生んだのだ。
「グラン・メテオフォーーール!!」
即興の必殺技名を叫びながら、緋色の矢となったノイの蹴りがウインドゼファーの体……その正中へと突き刺さると同時に、百花繚乱の爆風が戦場を吹き渡った。
理屈など無用。怪人に、必殺の飛び蹴りが命中した。
ならばその結末は爆発が飾る勝利のほか、あり得ないのである——!
成功
🔵🔵🔴
多々羅・赤銅
速さへの答えはさあ
多分単純なんだよな
結局、飛ばされても、斬られても、抉られても
倒されねえこと一つ。
【祈酒】巡るこの身体、斬られた程度で止まると思うんじゃあねえぞオラァ!!!!
激痛耐性で耐えてしまえば、開いた傷は直ぐに血が塞ぐ。
目に止まらぬなら風読む六感で識るのみぞ、もしも自分があれほどに速かったらどう立ち回る、という先読みをひた巡らせる。
回転じゃあ外側から斬ってもはじかれる。
中心点を見切り、鎧無視の斬撃を。只々滑らかに、斬りこんでみせよう大業物。タイヤ一つでも斬れりゃあスリップすんだろ!
もし刀が折れようが
拾い上げた刀の破片ででもなんでも斬ってみせようぞ
赤銅鬼は刀の鬼ぞ
斬れないものなど何一つ無い
切り裂く風が、多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)を嗤う。
敵の速度に先んじるを不可と判断した赤銅の打った手は、単純明快。
何が来ようとも、倒れず、耐え切る。
無謀無策とも後ろ指をさされかねない愚直さは、果たして彼女の身を傷つける。
竜巻が肌を切り裂くたびに【祈酒(ウケイザケ)】なる血が噴き出し傷を塞ぐが、痛みまでは遮れるものではない。一歩を踏みしめるたび、激痛で気を絶しそうになる。生ぬるい雫が肌を滴り、紅梅色の髪よりも深い紅で染まってゆく。
「斬られた程度で止まると思うんじゃあねえぞオラァ
!!!!」
それでも吠える赤銅を嗤うように、ウインドゼファーは車輪の高速回転が生み出す速度によって戦場を疾る。休む暇も、接近する暇も与えない。速度で押し切るのみ。
「嗤う竜巻」が命中するたび、赤銅の肌が少し、また少しと、血に染まる。
……ふと。ウインドゼファーの中に、違和が芽生えた。何かがおかしい。
答えはすぐに明白となった。
赤銅の血が、ただの一滴も、風に吹き飛ばされていないのだ。
「血も、臓物も」
その思考を読んだかのように。風の主の視界、そのはるか先に立つ赤銅が口を開く。
「一片余さず、私のもんだ。そんな風で浚えるかよ」
原理、道理は定かならない。此処が欲望の中枢たるシステムの内側だからか。
幾たび竜巻に身を割かれても、赤銅の血は、彼女の肌だけを滴り落ちる。
ウインドゼファーは絶句した。背筋を伝う、冷たい感覚がある。
それでもなお彼女は冷静であった。素早く距離を置き、竜巻を放ち続ければいい。
ヒットアンドアウェイを繰り返せば確実に勝てる戦い。後方へ全速力。
だがその動きこそ、赤銅の待ち望んだものであった。
「そりゃあ、そうするよな」
縮地。
赤銅が、跳ぶ。
もしあれほどの速度があるならば。その速度に対し、誇りと自負があるならば。
その速さを最大限活かす手を、軌道を取るに決まっている。
幾度も身に受ければこそ、迫る竜巻の中心点は見切り切った。
芯を捉えた大業物が滑らかに竜巻を縫いほどき、散り際の風に乗る。
瞬く間、ウインドゼファーの目先。
弾ける竜巻が生み出した勢いに任せ、足元の車輪を一閃。
(死に体で、何故ここまでの動きを……!)
速さの源を奪われたウインドゼファーが驚嘆と共にスリップし、その速度が緩む。
言うやもなく、其処は既に〝彼女〟の間合い。
安全策を選ばず……避けず、倒れず、そして攻撃をも諦めず。
より欲深くあればこそ、軍配は血塗れの鬼に上がった。
「つーかまーえた」
悪戯小僧のように舌を出し。
斬り断つ鬼が、ウインドゼファーを嗤う。
苦戦
🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
なんの捻りもなくただただひたすら迅い、かぁ…
ホント、相性としては笑っちゃうくらい最悪ねぇ。
…ま、だからって諦めるのは、ちょっと癪よねぇ。
できる限り、悪あがきしてみましょうか。
足場ごと吹き飛ばされるんなら、しがみついても無駄そうねぇ。
あえて暴風に吹き飛ばされてダメージを最小限に。
荒れ狂う風の流れ、吹き荒ぶ気流の乱れ、その悉くを〇見切り、掌握。
〇空中戦の応用で姿勢を制御して、●射殺を撃ち込むわぁ。
狂嵐の檻、暴風の鎧。攻防一体無欠の障壁。
パッと見無敵で、実際それに近いわねぇ。
…けど。「風の流れを読む」のは、銃手のたしなみの一つよぉ?
(…実のとこ、あたし狙撃手としては二流以下なんだけど)
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)を暴風が襲う。次から次へと足場を不確かなものへとしてゆく風は、少し力を抜いただけでティオレンシア自身の肉体をも容易く宙に放り出してしまうほどの勢力であった。
(ホント、相性としては笑っちゃうぐらい最悪ねぇ)
強風にさらされた夜色の髪が暴れなびき、細めた目から赤い瞳が覗く。
立ち止まれば暴風で近づくこと能わず、距離を置けば純然たる疾さの攻め立て。
とはいえ……〝相性が悪い〟とは、諦める理由にはならない。
「それじゃ……できる限り、悪あがきしてみましょうか」
薄く微笑むと、ティオレンシアは足場に力を込めることをやめ、全身を弛緩。
風勢に任せ、その身を宙へと舞い上げていった。
(諦める……はずはないでしょうね。彼らなら)
猟兵たちとの戦いを重ねればこそ、ウインドゼファーもこれに当惑することはない。わざわざ真正面から受けたということは、必ず思惑がある。足場を崩す以上は自身も最速を発揮できない状況……嵐を操作し、風の流れを徹底的に乱れさせる。
「あらあら……そういう芸当まで出来ちゃうわけぇ」
攻防一体の風に押し流されながらも、しかしティオレンシアは冷静であった。
風の流れ、気流の流れは舞い飛ばされる足場のおかげで簡単に見切れる。
あえて風の動きに逆らわず抵抗からなるダメージを削ぐことに成功したお陰だろう。空中での姿勢制御が適う程度に体力と精神力の余裕はある。
そして最大のアドバンテージとして……敵は、ティオレンシアの手の内を知らない。
(あたし、狙撃手としては二流以下なのよね)
自嘲気味に内心で呟く。何しろ彼女の得物はシングルアクションのリボルバー。到底狙撃などに向いた武器ではない。
だが……早撃ちとなれば、話は別だ。
赤き瞳が、風向きが切り替わり、〝台風の目〟への流れが生まれる一瞬を捉える。
姿勢制御、抜銃、発砲。
それはウインドゼファーの目にすら留まらぬ、神速の早業。
分厚い鎧と紛う嵐の壁を突き破り、【射殺(クー・デ・グラ)】の弾丸がウインドゼファーの体を貫く。
「がッ……!」
銃とは、弾丸とは……人が英知を結集して研鑽を重ねた、殺しのための道具。
ただひたすら効率的に命を奪うためだけに研ぎ澄まされてきた武器。
畢竟、命中がもたらすのは死、あるいは等価の痛みである。
「あの荒れ狂う嵐の、中で……!」
驚嘆、屈辱を通り越した脱帽からの言葉が風の主から漏れる。
「風読みは銃手の嗜みよぉ。それに……」
元へ戻ってゆく甘い香りの足場へ、すとんと軽やかに着地してみせながら。
花の香りより甘ったるい声で、ティオレンシアが告げるのは当然の帰結。
「あたしの前に立ったんだもの。逃げられるわけないでしょぉ?」
硝煙が、風の残滓に溶け落ちていった。
成功
🔵🔵🔴
天之涯・夕凪
正面からの真っ向勝負
いいですね
小細工してくる相手より、余程気持ち良く戦えます
では、勝負と参りましょう、ウインドゼファー嬢
貴女が初撃で私を落とせたら貴女の勝ち
そうでなければ――、
彼女の先制直後、可能な限り早くUCを発動
攻撃はグールドライバーで身体の重要部を保護、【激痛耐性】で耐えます
…何とか、致命傷は避けたいですけれどね
どこまで反応できるか
UC発動後、反撃開始です
貴女は強い
だからこそ、この技もまた力を増す…皮肉でしょう?
以降は聖痕の強化した攻撃力と生命力吸収で近接攻撃
ヒット&アウェイは許しません
「Zurücke, zurücke, geflügelten Winde」
貴女もそろそろ、御退場なさい
「勝負と参りましょうか、ウインドゼファー嬢」
天之涯・夕凪(動かない振子・f06065)が、ウインドゼファーと向かい合う。
数多の手傷を負ってなお、絶えず鋼鉄の体から鋭い風の流れが生まれ続ける。
幾度膝をつけどもまだ倒れることがないのは、流石の幹部級といったところか。
「紳士的なことですね。暴風の中でも、エスコートの自信がおありですか?」
「如何でしょう。何しろ私、しがない文筆家ですので」
冗談めかしたやり取りの後、風に紛れたのはどちらの微笑であったか。
静寂はタイヤの生み出す金属音によって引き裂かれ、ウインドゼファーが動く。
車輪剣によって「嗤う竜巻」を生み出しながらの突撃。肉薄は、刹那。
すれ違い様、竜巻と左手の車輪剣の交差が夕凪の肉体を苛烈に斬り刻んでゆく。
(だが、浅い)
仕留め損なったと、ウインドゼファーは直感した。
回避の動作がなかったことも、なるほど距離を離して振り返れば納得できよう。
夕凪のグールドライバーが急所を保護し、引く幕を押し返したのだ。
「まったく……本当に小細工抜きで強いのですね、貴女は……」
激痛を堪え、夕凪もまた焦りを見せることはない。傷と痛みこそが、彼の勝算。
花びらが舞い上がり、むせ返るほどの香りが広がっている。
心を溶かされそうなほど甘く華やかな香りの中、しかし飛び交うのは殺気だ。
急停止と共に足場を削り取りながらのドリフトを決め、ウインドゼファーが復路へ向けて竜巻を放つ。一度で殺せないなら二度放つまで。再び、瞬く間の接近。
「——ヒットアンドアウェイを許すと、思いましたか」
竜巻も、斬撃も。やはり再び、夕凪の正中を捉えたのだ。
だが、彼は倒れていない。どころか、禍々しいまでの呪怨が彼の体より立ち上り、振り抜かれた右手の車輪剣をその肉体に受け止めていた。
「その角度を、待っていましたよ」
右手の車輪剣は、ウインドゼファーの体と一体化している。
それを食い込ませることが適えば……彼女の動きを、止められる。
「本当に貴女は速く、強い。だからこそこの技も力を増す……皮肉でしょう?」
夕凪の手が伸び、その指先が、撫ぜるようにウインドゼファーの仮面を這う。
【骸津海(ムクロツミ)】……重ねた罪と、受けた傷の数だけ、夕凪は強くなる。
聖なる傷跡は、しかし呪詛を齎し、ウインドゼファーの体へと染み込み。
同じだけ、傷ついた夕凪の体を癒してゆく。故に、彼は唄う。
「Zurücke, zurücke, geflügelten Winde」
退け、退け、風どもよ。
夕凪の奏で上げる退場曲は、ついにウインドゼファーの風を奪い切り。
鋼鉄の体は鈍い音を立て、花の棺へと倒れ込んでいった。
●
ひゅるりと、風が吹いた。
ウインドゼファーが引き寄せたものではない。
システム・フラワーズ中枢部に訪れた微風は、世界のどこからか、吹き寄せていた。
「風は」
もはや自分の手で生み出すことは能わないほど優しい風を浴びながら。
「いつの世も、止まないのですね……」
風神[アネモイ]の名を抱いた女は、骸の海へと墜ちていった。
苦戦
🔵🔴🔴