●砦攻めの依頼
招集、という声がグリモアベース内を凛と貫く。
普段の可愛げのある表情とは打って変わって、グリモア猟兵としての確たる決意を秘めたニコラの声である。
「ニコラの予知に、廃棄された砦を巣にしているモンスターたちのことが引っ掛かったわ。すぐにでも、砦攻めの準備をして頂戴!」
ニコラがグリモアを操作し、猟兵たちに提示するのはアックス&ウィザーズ世界において、人々の生活圏からそう遠くない所にある渓谷に建てられた城砦だ。古いためか木造の部分が目立ち、汚れてしまってはいるが、それでも城砦は城砦だ。本来は人々の生活を守るために在るその場所が、モンスターによって使われているという現況はあってはならない。
「もう地図にも載っていないくらい古いから、きっと整備する人たちがいなくなってしまったのね。そうこうしているうちに、ゴブリンとワイバーンが住み着いてしまったのがこの城砦よ。今回の目標は、その住み着いているモンスターを退治することになるわ」
城砦を外部からぐるりと一周する形で映し、その砦部分にはゴブリンが、鐘楼となっている中央はワイバーンがいると説明するニコラ。砦は木造とはいえ十分な強度と高さを持ち、真っ向から攻略しようとすればたかがゴブリンが相手とはいえ、苦戦は逃れられなさそうだ。
「幸いなことに、ワイバーンとゴブリンは協力関係ってわけではないみたい。だから、城砦に押し入って、ゴブリンを倒して、それからワイバーン、っていう風に段取りを組むことが出来るわ」
●手順説明
「砦の攻略方法は一任するわ。でも、燃やしたりして大幅に壊してしまうと、そのままにはしておけないの。ここが制圧できた後、現地の人に城砦の場所を伝えるつもりだけれど、壊れたままではその間にまた別のモンスターが入り込んでしまうかもしれないもの。だから、砦を壊すような作戦を取るときは、その後の修繕まできちんと考えてくれると助かるわ」
城砦というものは、その壁や砦を破壊して攻めるのならばまだ手が掛る程度で済むが、そこを制圧して再利用することを考えると途端に攻略難易度が上がるものだ。それを承知の上で、ニコラは猟兵たちに困難な道へとトライすることを願う。それは、アックス&ウィザード世界の住人達を慮っての面もあるのだろう。
「ただ、砦の攻略を始めた時点で、ここを住処にしているゴブリンたちは反撃してくるでしょうね。砦の中に入り込むまで、どうにか耐えて頂戴……ワイバーンのことは、この時点では気にしなくて大丈夫よ」
ワイバーンが住処にしているのは、砦の中央にある鐘楼の上部。少なくとも、その鐘楼に踏み込むまではワイバーンの縄張りを犯すことにはならないようだ。
「砦部分の正門から突入するなり、どこかに橋頭保をかけるなりして中に入り込めれば、あとはゴブリンの制圧ね。たくさんいるはずだから、見落としが無いように注意して頂戴。ないとは思うけれど、ワイバーンと戦ってる最中に挟み撃ちにされたら大変ですもの」
一度突入する経路が出来上がれば、それを崩す程の知能を持ったゴブリンは存在しないようだ。だからこそ、砦の攻略とゴブリンの掃討を2段階に分けることも可能なのだろう。
「そして、最後はワイバーン。鐘楼を巣にしているわ。とはいっても、鐘楼自体がかなり大きくて頑丈なつくりをしているから、ここを崩して追い払う、といった方法は無理ね。鐘楼の広さはかなりのものだから、そこに入り込んで戦う事になると思うわ」
そして、ゴブリンを掃討すれば、後に残るのは中央の鐘楼に住み着いたワイバーンのみ。
「完璧な3段階だと思わない?」
猟兵たちを見回して、ウィンクするニコラ。
「――準備が出来たら教えて頂戴。順次、砦の近くへ送りださせて貰うわ。ゲートを潜り抜けてゴブリンから不意打ちされるような場所ではないから、安心してね」
最後に転移先について告げて、ニコラは転移の準備に入るのだった。
Reyo
3本目のシナリオをお届けさせていただきます、Reyoです。
舞台はアックス&ウィザード、そして相手取って頂くのはファンタジーといえば定番のゴブリンとワイバーンとなります。
シナリオの3部構成のうち、第1部はゴブリンたちの攻撃を凌ぎながらの攻城戦、第2部では砦に巣食うゴブリンの退治、そして第3部ではこの砦の頂点に立つワイバーンとの決戦となっております。
特に第1部では、二コラの言うように「後々、アックス&ウィザード世界の人がこの砦を再利用する可能性があること」を念頭に攻略手順を考える必要があります。例示されているような火責めなどは、後々猟兵の手によって再建する必要が出てきたりしますのでご注意ください。そのような砦を破壊するようなプレイングの場合、後々の再建方法について触れて下さると採用率がアップします。
第2部、第3部では戦闘がメインとなります。各オブリビオンの能力については、公開されるデータをご参照ください。集団としてのゴブリン、単体としてのワイバーン、それぞれで攻略法は異なるでしょうが、皆さまのカッコ良い戦闘シーンを描写出来ればと思っております。
以上、マスターからのコメントとなります。
皆さまの参加を心よりお待ちしております。
第1章 冒険
『渓谷の攻城戦』
|
POW : 攻城槌などで、正面から門を破ります
SPD : 敵は頭上から岩石や矢で反撃してくるので、遠距離こうげきでそれらを攻撃します
WIZ : 火攻めにします。再利用不可能となりますが、その際の修復は猟兵自らしなければなりません。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
バーソロミュー・スケルトン
ガハハハッ!砦をなるべく壊さんようにとは面倒じゃが、やりがいもあるというもんじゃな。とにかく速やかに制圧するのがベストじゃろう。
わしはデカくて目立つからのう、陽動も兼ねて正面から門を破りにかかるぞい。わしの巨大海賊兵装をもってすれば攻城槌なぞ不要じゃ!
古い鎧なり、武具の残骸なり取り込めれば真価を発揮できるじゃろう。
あとは巨体で門に突撃して抉じ開けてくれるわい。
さっさと門をぶち壊してやるつもりじゃが、無理でも敵の注意はわしに集中するじゃろう。他のやつらも動きやすくなるというもんじゃな。
あとは、壊したもんは直さんといかんのじゃったか?
まあ、巨大海賊兵装で建設重機の代わりぐらいはしてやるわい。
ドリスコ・エボニス
いいじゃん攻城戦、胸が踊るじゃない
砦の門が破られる恐怖と絶望ってのを教えてやるよ
というわけで正面から門を破壊していくぜ
門まではゴブリンの反撃があるだろうからダッシュで駆け抜けていく
門の元まで着いたら戦闘知識や野性の勘を生かして門の破壊に適した箇所を探る
グラウンドクラッシャーを使用して完膚なきまでに破壊してやる
門の修繕か、砦の門なんて壊されてなんぼだからな
また新しく作った方が早いかな
材料になりそうなのをあとで探しておくか
富波・壱子
今は使われていないからって、そのままにはしておけないよね。
任せて!皆でやっつけちゃおう!
そう意気込んでから、人格を日常生活用の明るい少女らしいものから戦闘行動用の冷徹な兵士のものへと切り替える。
それではこれより状況を開始します。他の方達が突入しやすいよう、先行して敵軍の撹乱を試みます。
ユーベルコードを用いて城砦内部へと瞬間移動で侵入し、砦を防衛している手近なゴブリン達へと手に持った刀や銃で攻撃を加えていきます。
ある程度注目を集めたところで再び瞬間移動で包囲を脱しては再度手近なゴブリンへと襲いかかるのを繰り返し、他の方が城砦内に突入できるまで時間を稼ぎます。
●陽動と突撃
するりと転移ゲートを潜り抜けて真っ先にアックス&ウィザードへと乗り込んだのは富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)だった。ブリーフィングの時に見せていた明るい表情はどこへやら、今は冷徹さすら感じさせる鋭い表情で、彼女は攻略目標である砦をじっと睨む。
続けて乗り込むのはドラゴニアンのドリスコ・エボニス(蛮竜・f05067)とウォーマシンのバーソロミュー・スケルトン(ウォーマシンの宇宙海賊・f03437)だ。殊更大柄な種族であるドリスコとバーソロミューに挟まれると、女性としてはそれなりの身長があるとはいえ壱子の小ささが際立って目立つ。
「それでは、打合せ通りに――わたしは先行して敵軍の撹乱を」
「正面から門を破壊するのはオレたちに任せるんだぜ?」
「なぁに、陽動という意味ではワシらが正面から門に掛るのも同じじゃ。おめぇさんも、無理はせんようにのう」
「はい。それでは、お先に」
ちょっとした会話を経て、砦を睨んでいた壱子の姿が掻き消えた。彼女のユーベルコード「あなたを決して逃がさない」による瞬間移動だ。
ゲートを潜り抜けたばかりのこの位置からでは、壱子がどう暴れているかは定かではないが――彼女が姿を消して数瞬後には、銃声と共に砦の中からゴブリンたちのだみ声が上がっている。強行突入による撹乱は上手くいっているといって差し支えないだろう。
「さぁて、お嬢さん1人にやらせるわけにゃあいかん。ワシらも行くとするかのぅ」
「ああ、砦の門が破られる恐怖と絶望ってやつを教えてやろうぜ」
ドリスコとバーソロミューは互いの拳をぶつけ合って開幕の合図とすると、威圧感を与えるような大幅な歩みでもって砦の正門へ向かう。
「砦を壊さんようにとは面倒じゃが、やりがいもあるというもんじゃな。とにかく速やかに制圧するのがベストじゃろうて――さあ、わしのボディとなれ。共に大暴れしてやろうじゃねえか!」
歩みながらユーベルコードを発動するのはバーソロミュー。掛け声とともに、ゴブリンがこの砦に侵入する時に破壊した跡であろういくつかの建材を取り込むと、そこに現れるのは身の丈が4mを越える巨大海賊兵装だ。
その姿に気付いた砦のゴブリンたちが慌てた様子で弓矢や投げ槍を射掛けてくるものの、まるで羽虫を追い払うような手の動きだけでそれらが纏めて打ち落とされる。そして、一度でも攻撃を仕掛けたゴブリンの元へは壱子が瞬間移動してその首を刀で掻き切っている。ゴブリン側の反撃はどうしても遅れがちになった。
その間に、バーソロミューの姿を囮に砦の正門へとひた走るのはドリスコだ。ゴブリンたちの気がバーソロミューに取られている間に一気に距離を詰める算段。ここまでは事前の打ち合わせ通りに事が進んでいる。
「攻城戦とは、胸が躍るぜ!」
そして、見張りのゴブリンが正門に取りついたドリスコに気付いた頃にはもう遅い。日ごろから蓄えた戦闘知識、そして何よりも戦場でこそ冴えわたる戦の勘働きが、木造の門を崩すのに最適な場所を割り出している。
「材料は後で探しておくぜ! また新しく作ったほうが早いからな!」
ズン、という重厚な打撃音と共に、ドリスコのユーベルコード「グラウンドクラッシャー」で振りおろされるのはバトルアックスだ。加工を経て十分な強度を持っているはずの砦正門が、その一撃でめしゃりと折れる音と共に凹む。
ここで追いついたバーソロミューも建設重機顔負けの膂力でもって正門への攻略へ加わる。木がへしゃげ、折れる乾いた音と共にドリスコの一撃で凹んでいた部分がメリメリと押し広げられていく。
さすがに正門が破られつつあることに気付いたゴブリンたちが、壱子の妨害撹乱を振り切って正門に集結してくる。数の差が祟ってか、ドリスコとバーソロミューの破壊の手も止まりがちだ。
とはいえ、初撃でここまでとなれば十分な戦果だろう。3人は現状を維持するべく、後続の猟兵が来るのを待ちながら正門付近で暴れ続けることとした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レイチェル・ケイトリン
おそくなっちゃってごめんなさい、
わたしも正面から門をやぶるのおてつだいしますね
わたしが得意な念動力技能といっしょに吹き飛ばし技能もつかって
サイコキネシスで門をたたきます。
岩石とか矢もゴブリンたちの方に押し返すよ。
がんばってた人たちがむくわれるように、
そして、けがとかでつらいおもいをしないですむように
それがわたしが心にいだくねがいだもの。
直すのだってもちろんおてつだいするから、
いまはがんばってこわすんだよ。
●加勢する猟兵
慌てた様子で転移ゲートを抜け、今まさに乱戦状態にある砦正門に向けて走り込んでいく猟兵の姿がある。
「おそくなっちゃってごめんなさい! わたしも、門をやぶるお手伝いをしますね!」
レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)は前衛を務める2人の巨漢にそう叫びながら、己のサイキックエナジーを解放する。ユーベルコードとして昇華された「サイコキネシス」は、レイチェルの体を中心として球状に広がり、いままさにゴブリンたちが放った弓矢の類を見事に弾き返した。
「いまは、がんばって、こわすんだよ!」
頑張る人が報われるように。怪我や痛みで辛い思いがあってはならないように。心の奥底から発露するレイチェルの願いが、サイコキネシスに爆発的な力を与える。
ついに手持ちの矢玉が切れたのか、そこらへんに転がっている石を投げ始めたゴブリンたちをレイチェルが一瞥すれば、その一瞬だけでサイコキネシスがゴブリンを捉えて正門の上から叩き落とすように吹き飛ばす。
「直すのだって、もちろん、おてつだいするから――!」
だから今は、一度、壊さなければならない。
ヤケクソになってか槍を片手に飛び降りてくるゴブリンをサイコキネシスで捕まえて、レイチェルはそれをそのまま門に向けて弾き飛ばす。
がら、と。ついに門が崩れる音がした。
――突入路の形成まで、あと少し。
成功
🔵🔵🔴
ニア・スクニロトマ
攻城兵器が入り用だって?
ふっふっふ、任せろ! このあたしこそ地底怪獣キグサック! 地底を掘り進むことができる凶悪な怪獣だ!
なに、着ぐるみにしか見えない?
ええい、この着ぐるみはあたいのガジェットにして鎧装、見た目以上のパワーがあるのさ!
とにかく、城門というのは外からの攻撃に強くできてるんだ。
それを崩すには、別角度からの攻撃が一番!
着ぐるみの力で城門の下まで【トンネル掘り】して、ユーベルコードの力で着ぐるみから光線を発射!
地下から爆破するのは城門崩しの基本だからね。これなら上からの攻撃も受けないし、いい考えだろ?
ちょっと時間がかかるけど、必要な時間は仲間が稼いでくれるさ!
●地底からの使者
ゲートを抜けて、すぐに姿が見えなくなった猟兵がいた。彼女の名前はニア・スクニロトマ(着ぐるみ怪獣スクニロドン・f06973)、猟兵としての報酬を全て怪獣映画制作に擲っていることで、そういった界隈ではよく知られているらしい。
「地底をゆっくぞー、キグサック! 掘ってぇ進めよ、キグサック!」
ゲートのすぐ近くの地面に開いた穴から聞こえるのは、ニアのそんな鼻歌である。その姿こそ、よくある遊園地のショーで見られる怪獣のきぐるみなのだが、その実、それはニアの鎧装であり、ガジェットである。
彼女にしか理解できない使い方でもって十全にその能力を発揮した地底怪獣キグサックは、暫く時間はかかったものの、砦正門の直下までトンネルを構築することに成功していた。
そして、上で猟兵たちがゴブリンたちと一進一退の攻防を繰り広げている中、十分な広さのトンネルを確保したニアは今こそその時! とトンネルの中でポーズを取っていた。
「説明しよう!宇宙怪獣スペースゾゴンは、体内に溜めたエネルギーを解放し、巨大ビームを放つことができるのだ! 喰らえ、全方位、スペェースレーザー、ビィイイイイイイインム!」
十分な溜めを以て絶叫されるのはユーベルコードの詠唱。宇宙怪獣スペースゾゴンと名付けられたきぐるみガジェット鎧装から放たれるビームが、地底から地上を貫く。狙いは、既に半壊している門そのもの。
地面がぼこり、と膨れ上がった次の瞬間、眩いビームの光が砦正門を斜め下から吹き飛ばしたのであった。
――トンネルの作成と正門の破壊。この2つによって安全な侵攻路を確保した猟兵たちの攻勢は、この段階を以て砦内に巣食うゴブリンたちの掃討へと移ることとなる。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ゴブリン』
|
POW : ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●荒城の小鬼たち
――どうする?
ゴブリンたちは、ここを拠点としてからある意味安穏と暮らしていた。モンスターとして群れをつくるのに、廃砦というのがとても便利だったからだ。外敵と言える冒険者たちから隠れ潜む必要がなく、他のモンスターは鐘楼に座したワイバーンに恐れをなしてか、あまり近寄って来ることが無い。
――入口ができちまった。冒険者たちが来るぞ!
ゴブリンの群れの中でもリーダー格である少々大柄なゴブリンが大声を上げて仲間たちに注意を促す。
そのリーダー格も、冒険者によって討ち取られずここまで育つことが出来たのは、廃砦という環境によるものが大きい。
それらを自覚してか、あるいはモンスターとしての本能からか。侵入経路を確保した猟兵たちに対して、ゴブリンたちは十分な戦意を以て待ちかまえるのだった。
リタ・ドニアザード
遅くなってはしまいましたが、ここからは私も加勢させていただきますね?
いきなり事を急いては失敗するもの。まずは皆さまが安全に切り込めるよう、露払いをさせていただきましょう。私の煙の精霊様ならトンネルの狭い入口からでもゴブリンを縛ることができるかと。
必要であれば、煙の本来の動きで目くらましをすることもできますね。
あまりトンネル内にこもっていれば狙い撃ちされてしまいますので、ある程度のゴブリンを縛りましたら煙に乗じて忍び込みましょう。できるだけ見つからないように動きながら、精霊様にゴブリンを縛っていただきます。できるだけ囲まれないように、逃げながらは忘れずにですね。
スパイニア・ソーン
遠距離戦で露払い
「ソコ、どいてちょうだい」
手ごろな狙撃ポイント(見張り台等)を見繕い、見張りのゴブリンがいるなら
背後から襲撃し、喉首を掻き斬る。
「叫び声すらあげさせない。それがプロってもの」
返り血その他は気にも留めず、弓を構え【千里眼射ち】でゴブリンに矢の雨をお見舞いする。
毒ストックから複数の調合を試しながら射撃
「ゴブリンは、汎用ストックの毒で十分な効果を確認」
狙撃ポイントに気づかれた場合、追っ手を撒いて、別のポイントに移動
「気付いたか。まったく、鼻のいい小鬼達だ」
手頃な場所に陣取り、範囲射撃で露払いがメイン
「七面鳥なら後で美味しく食べられるのに」
「ワイバーンなら食べられるかしらね」
イデア・ファンタジア
地の利は向こうにある?いいえ、私の【アート】はそんなもの塗り替えちゃうんだから。
『最果ての世界壁』!君たちが最期に見る光景よ!
今回はそんなに高さはいらないから、その分横に長く、数も増やして、入り組んだ形にしていくよ。
相手のダッシュや蹴りを防げるならそれで充分!これで条件は互角だねっ。
夜桜・雪風
敵が沢山いるのはいいことですね。
いかにも戦場って感じがします。
こういう戦いってワクワクしちゃいますね。
ゴブリン相手に慈悲なんて無いので、
【高速詠唱】でユーベルコードを発動させて【範囲攻撃】で敵だけを指定して攻撃しましょう。
私の【全力魔法】で範囲内の敵は討ち取らせていただきますね。
【鎧砕き】をして【鎧無視攻撃】で大きなダメージを狙っていきましょう。
【2回攻撃】で相手の数をさらに減らして、ゴブリンの群れを撃破しましょう。
ゴブリンと言えど、その命を奪いつくすのはなかなか素敵ですね。
こういう時に私は生きているなって充実します。
戦うのって生きがいといいますか、生きる意味そのものですね。
ニア・スクニロトマ
地底からの攻撃に驚いてるみたいだね。ふふふ、作戦成功!
数が多い敵だから、あたい一人じゃ手が回りきらない。
というわけで、ユーベルコードで巨大地底怪獣キグサック(211cm)を召喚だー!
モグラに掘削機をあわせたキグサックは耐久力抜群。
あたいと同じ動きをするキグサックの力で群がってくるゴブリンをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……肉弾戦で相手をさせてやろう。
レイチェル・ケイトリン
いろんな技能はあっても、それをつかいこなすってたいへん。
だから、ニアさんすごいよ。
もちろん、それができるように門とかでがんばってたひとたちも
すごいよね。
すごいひとたちといっしょなんだもの、わたしもがんばるよっ
また得意な念動力技能をつかってサイコキネシスでたたかいます。
一度にかかってこれないように吹き飛ばし技能も使って
ふっとばすようにして。
まわりのひとたちにも気をつけてゴブリンの足払いで体勢を
崩されちゃった人がいたら精密な操作もできるサイコキネシスで
ささえるよ、もちろん最初におはなししとくね。
荒城の中が暗かったら、暗視技能もつかって上の壁をちょっと壊して
光をいれるよ。あとでちゃんとなおすからね。
バーソロミュー・スケルトン
ガハハハッ!やっと攻め入れるようじゃな。ゴブリンなぞ、どれだけ来ようとも全部ぶっ飛ばしてやるわい。
まずは正面から突撃し、盛大に大暴れしてゴブリンどもをひきつけるぞい。
ある程度数が集まってきたところで、至近距離からフルバースト・マキシマムでまとめて薙ぎ払ってくれるわ。
至近距離ならそうそう外さんじゃろうし、砦の被害も抑えられるじゃろう。
ドリスコ・エボニス
さて後々に砦は使うわけだから掃除が必要だな
こりゃきれいさっぱりさせないといけないな
グラウンドクラッシャーで一体一体仕留めていく
一撃で倒せるならよし、ダメならもう一度攻撃する
倒したのならダッシュで次のヤツに挑んでいく
仲間が苦戦しているようであればそちらにも助太刀にいくぜ
戦闘知識や野性の勘を生かして砦内の隠れている
ヤツがいないか確認していくぜ
背後から奇襲とかされるのはゴメンだからな
●破城、突撃
がらがらと木造の正門が崩れ落ち、地面にはトンネルの穴。最前線を張っていた猟兵たちは、それが完成するのを見届けながらなだれ込むようにして砦へと突入する。
「地底からの攻撃に驚いてるみたいだねぇ、作戦成功!」
「ニアさん、すごいね! わたしもがんばるよっ!」
ユーベルコードで貫いたトンネルから姿を表す地底怪獣キグサックきぐるみを着たニアを見て、レイチェルが称賛の声と共に戦列を押し上げる。崩れた正門へと殺到してきたゴブリンたちを、サイコキネシスで吹き飛ばしたのだ。
その吹き飛ばしで空いた間隙へと突撃するのは、キグサック・ニアだけではない。
「ガハハハッ! ようやっと攻め入れるようじゃな。どれだけ来ようとも全部ぶっ飛ばしてやるわい!」
「ああ、後々使う事になる砦だ、きれいさっぱり掃除だぜ!」
猟兵たちの最前列を行くのは、正門を崩す際も連携していたバーソロミューとドリスコの2人。バーソロミューの巨大海賊兵装は既に効果時間が過ぎている所為か解除されているが、それでも巨躯といって間違いない2人組だ。目立つ彼ら目がけて殺到するゴブリンたちを、ドリスコは丁寧に1匹ずつ、バーソロミューはある程度を引きつけた後の一斉射で仕留めていく。
ゴブリンたちは次から次へと猟兵へ群がっていく。数の差は圧倒的、されど実力の差は猟兵側に大きく分がある。
――突撃の先陣は、かのようにして切られたのである。
●後に続く者たち
正門を攻略した4人の猟兵に続いて、今まさにゲートから転移してきた猟兵たちも、ニアが掘り抜いたトンネルを利用して安全に砦へと侵攻していた。
後続の猟兵たちの先頭を行くのはオラトリオの姿。精霊術を得意とするリタ・ドニアザード(精霊との語り手・f06991)だ。
「ランプの精霊さん、私に力を貸してくださいな」
手に持ったランプを擦り、呼びだすのはランプのジン。煙状のジンは呼び出したリタの指示に従ってトンネルの出口周辺へと先行し、そこを囲って待ち伏せるゴブリンたちを魔力の籠る煙で縛りあげていく。
「――!?
……!!!!」
煙幕にもなるジンの体で視界を狭められ、その上拘束されるのだ。ゴブリン達は焦って武器を振りまわすが、煙であるジンに対しては有効打とならず、次々と煙に絡め取られて拘束されていく。
「――遅くなってはしまいましたが、ここからは私たちも加勢させていただきますね」
ジンがゴブリンたちをある程度拘束したのを察すると、リタは言葉と共に後続の猟兵たちへ合図を送る。ジンを利用したその合図は、後続の猟兵にはトンネル出口付近の安全が確保を知らせ、先行する猟兵には増援の到着を知らせる狼煙だ。
――真っ先に飛び出したのは、イデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)だった。
「ありがとう、リタちゃん! ――空想者より愛を込めて、その姿を描き出そう! 君の名は――!」
詠唱されるは空想現界『最果ての世界壁』――イデアのユーベルコードの名である。トンネル出口から飛び出し、すぐさまに周辺地形を把握しながら彼女が描き出すのは巨大な壁だ。高さこそないが、縦横に描きだされていく漆黒の壁は複雑な形で組み合わされて、ゴブリン達を各個に分断する迷路として機能し始める。
アートによって城砦入口を迷路へと作り変え、猟兵たちがゴブリンに押しつぶされぬような領域を作ったイデアに続いて、今度は夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)が詠唱しながらトンネルから飛び出す。
「いかにも、戦場って感じで――ワクワクしちゃいます!」
高速詠唱で本来の詠唱を大幅に圧縮された雪風のユーベルコード「鈴蘭の嵐」が、イデアのユーベルコードで分断されたゴブリンたちを丁寧に薙ぎ払っていく。
それでもなお撃ち漏らしが発生するのは、決して雪風やイデアの実力が低いという訳ではない。
――多いのだ。ゴブリンの数が。
雪風の鈴蘭の嵐はゴブリン達の鎧を砕き、高速詠唱の速度と相まって凄まじい速度でゴブリンを殲滅していく。だが、倒れるゴブリンの屍を乗り越える新たなゴブリンの数が圧倒的なのだ。この時点で先行する猟兵と合わせて、この砦に巣食うゴブリンを相当数倒している筈なのに。
イデアの迷宮を抜け、雪風の手数を乗り越え、今まさに雪風に向けて武器を振り上げるゴブリン。
……けれど、その武器は振り下ろされることはなかった。とす、という軽い音と共にゴブリンの脳天を一本の矢が貫いたのだ。
「……ゴブリンは、汎用ストックの毒で十分か」
トンネルの中からゴブリンを狙撃したのはスパイニア・ソーン(致命の一矢・f03958)だ。鏃に塗られた毒がまわったからか、彼女に狙撃されたゴブリンはそのまま仰向けに倒れてひくひくと全身を痙攣させ絶命する。
こうしてトンネルを抜けて前線に加わった4人の猟兵たちは、視線を合わせて頷き合うと、それぞれが得意とする戦場を探して散会した。
●乱戦
「ご覧ください、新たな怪獣が出現しました!し、しかも、さらに巨大な……みなさん、さようなら!」
アナウンサーのような詠唱は、ニアのものだ。最後のさようなら、というのは映画の場面であればその台詞とともに映像がロストするのだろうが、今、それを向けられているのはゴブリンたちだ。巨大化したキグサック・ニアによる大仰なアッパーカットが数匹のゴブリンを纏めて打ち上げる。
いまやキグサック・ニアはユーベルコードの効果でウォーマシンのバーソロミューやドラゴニアンのドリスコと並ぶ巨躯となり、前線を構築する重要な役割を果たしている。大きい、ということはそれだけでゴブリンたちの注意を惹くのだ。2m級の体躯が並んでいるだけで、その威圧感はゴブリンたちにとって途方もないものだろう。
「オレは隠れてる奴を探してくる――背後から奇襲とかされるのはゴメンだからな」
「おう、ここは任せておけぃ! 至近距離ならそうそう外さんじゃろうし、砦にも被害は出さんからのぅ!」
そう言って前線から遊撃へと回ったドリスコ。彼が丹念に隠れているゴブリンたちを探しだしてグラウンドクラッシャーで仕留めている間、ニアとバーソロミューが集団を相手にしてちぎっては投げ、投げて集め、そして一斉射で砦に被害なくゴブリン達を纏めてぶっ飛ばしている。
集められたゴブリン達があまり逃げ出さずにいるのは、リタが戦場に散布した煙のジンによって動きを鈍らされ、あるいは拘束されているからでもある。そして、リタ本人は戦場を逃げ回りながら拘束するゴブリンの数を増やしていく。ドリスコが遊撃に回ったのも含め、前線構築はそれだけで完璧と言えよう。
だが、前線の集団から漏れて闇打ちを仕掛けるようなゴブリンもいる。猟兵たちに向けて足払いや突撃を繰り返すゴブリンたちだが、それを受けても猟兵たちの戦線は崩れる様子がない。突撃はともかく、足払いが上手く入ってしまえば、転んだ猟兵を袋叩きにできるだけの戦力がゴブリン側にはあると言うのに、だ。そもそも転倒する猟兵が1人もいない。
「ささえるから、あんしんしてね!」
何故猟兵が転倒しないのか。それは、レイチェルのサイコキネシスによる支援が理由である。レイチェルのサイコキネシスは十分な出力を持っており、前線の猟兵たちをがっしりと支えて、ゴブリンの足払い程度では猟兵を転倒させるのに足りないだけの安定感を与えているのだ。
「命を奪いつくすのはなかなか素敵ですね……戦うのって、生きがいといいますか、生きる意味そのものですもの」
そして、そうやって行動を無駄に終わらせるハメになったゴブリンたちは、ある程度の数がいるのならば雪風の範囲攻撃で、そうでない撃ち漏らしのような少数ならばスパイニアの狙撃で丁寧に対処されていく。
「七面鳥なら後で美味しく食べられるのに……ワイバーンならたべられるかしら?」
他の猟兵からやや離れたところでユーベルコード「千里眼撃ち」による狙撃を繰り返すスパイニアの空恐ろしい呟きは、誰にも聞かれることなく戦場へ散逸した。彼女の狙撃ポイントはイデアの構築した迷路がしっかりと護っており、ゴブリンも猟兵もあまり近寄らないからだ。
――かくして。即興とは思えない連携を見せて、途中からは一方的ともいえる掃討戦は終わりを告げる。終わってみれば、誰かが致命傷を負った様子もない。少々の手傷はあろうとも、猟兵たちは確かにゴブリンを圧倒していたのだ。
――残るは、砦の中央、鐘楼に座したワイバーンのみ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ワイバーン』
|
POW : ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
●亜竜、鐘楼に座す
――闘いの音が止んだ。
亜竜と言われることもあるワイバーンだが、アックス&ウィザード世界において、その強さは十分上位に食い込むものだ。そして、その強さは単純なモンスターとしてのスペックだけでなく、他のモンスターにはない智恵に支えられる部分もある。
ゴブリン達の戦闘音を聞いて、最初はまたいつもの馬鹿騒ぎかと思っていたワイバーンも、その戦闘が長引くにつれて、この城砦――ひいては自身の巣に侵入者があったことを明確に認識したのだ。
そして、その音が止んだ時、侵入者とゴブリン、そのどちらが勝利したのかも、亜ワイバーンは認識していた。
ぐわり、と翼を広げ、鐘楼に作った巣の中でワイバーンは大きく伸びをする。鐘楼内部はワイバーンが巣を作ってなお十分な広さがあり、ワイバーンが少々羽ばたいて低空飛行するにも十分な高さも備えている。その空間を理由に、ワイバーンの戦力が制限されることはないだろう……だからこそ、この鐘楼に巣を作ったのだろうが。
ぼふっ、ワイバーンの喉が鳴る。
――これから訪れる侵入者……猟兵との戦いを前に、ワイバーンは静かに戦意をみなぎらせたのだ。
レイチェル・ケイトリン
鐘楼の中の巣……このワイバーン、おかあさんかおとうさんなのかな。
それなら……にげられないよね。
わたしの得意な念動力技能とスカイステッパーをつかって
ワイバーンの上にとびあがり、吹き飛ばし技能もつかって
下に蹴り落とすよ。
ここだからってワイバーンの戦力はへらない。
でも、ここだとワイバーンは「わたしよりたかくとべない」んだよね。
わたしの方がちいさいから。
そしてワイパーンがぶつかって屋根がこわれたら
下にある巣があぶないし。
だから「急降下からの攻撃」「眼下の攻撃予想」は
ワイバーンよりも上にいるわたしにはつかえない。
下に蹴り落とせばワイバーンがもってるその力って
ほかの猟兵さんたちにもつかえなくなるよね。
バーソロミュー・スケルトン
ガハハハッ!いよいよ、大物が相手じゃな!
打ち取ったら剥製にして砦に飾ってやるわい。
なかなか狡賢そうな奴じゃからな。
クイックドロウで一発避けさせてから、その先にもう一発撃って当てて見せるぞい。
上から一方的に攻撃されると厄介じゃからのう。
優先して狙うのは翼じゃな。
地べたに落としてやれば、デカいトカゲと一緒じゃろう。
夜桜・雪風
ついにワイバーンのところまでたどり着きました。
戦場をかけるのはとても楽しいですね。
ここからが一番の難関でしょうか。
【高速詠唱】でユーベルコードを使い【全力魔法】で精霊さんに魔力を送って戦いましょう。
精霊さん、私に力を貸してください。
精霊さんに雷をワイバーンに落としてもらいますね。
雷【属性攻撃】の【鎧無視攻撃】でしょうか。
きっと鱗が硬いでしょうから、
攻撃で【鎧砕き】をして防御力を下げるようにして支援しますね。
【2回攻撃】でできるだけ攻撃手数を稼ぎます。
私一人では無理でもみんなで頑張れば勝てるって信じています。
【傷口をえぐる】ように雷を落として、
ワイバーンの注意を散漫にさせられるか試しますね。
●緒戦――亜竜はその翼を捥がれる
ゴブリンたちを片付けたあと、鐘楼に真っ先に乗り込んだ猟兵の数は3つ。
「ガハハハッ! いよいよ、大物が相手じゃな! 打ち取ったら剥製にして砦に飾ってやるわい」
「ええ、ついにワイバーンです。戦場をかけるのはとても楽しいですね――ここからが一番の難関でしょうか」
意気軒昂に先陣を切るバーソロミューと雪風に比べ、どこか思うところのある表情で2人に続くのはレイチェルだ。
(鐘楼の中の巣……このワイバーン、おかあさんかおとうさんなのかな)
レイチェルが気にかけているのは、そのワイバーンが繁殖期にあるかどうか、あるいはその巣の中に子供を持っているか、だ。どのようなオブリビオンとして現れているかが定かでない今、丁重に巣を作ってそこに籠っていることからそういう発想に至るにはごく自然なことだろう。それが正解かどうかは別として、ワイバーンにとって巣が重要なものであることは間違いではない。
故に、その初撃は自然と生まれた連携だった。
「地べたに落としてやれば、デカいトカゲと一緒じゃろう?」
「――ここだとワイバーンは、わたしよりたかくとべない!」
先制攻撃を仕掛けたのはバーソロミューだ。いかな雪風の高速詠唱を以てしてもコンマ秒以下の速度で抜き放たれるクイックドロウに速度で追いつけるはずもない。そして、銃撃をきっかけにスカイステッパーを用いて空中へ躍り出るレイチェル。自然と、攻撃の順番がこの動作で決まっていく。
1秒――クイックドロウの銃声を聞いたワイバーンが羽ばたきと共に鐘楼の中で滞空する。
2秒――自身の小柄さを生かしてワイバーンが滞空できない広さである鐘楼最上部へとジャンプし、ワイバーンのさらに上を取るレイチェル。ワイバーンの注意がそちらへ向いた瞬間、バーソロミューの2発目が容赦なくワイバーンの皮膜を捉えて貫く。
3秒――ワイバーンが宙空でもがくように羽ばたきし、その瞬間を見逃さずにレイチェルのサイコキネシス込みのドロップキックがワイバーンを地面へと叩きつける。
4秒――追い打ちをかけるのは雪風の詠唱で呼び出された過激な精霊の加護。銃撃で孔の空いた皮膜を狙い打ち、その傷口を広げるように精霊が巻き起こした雷が落ちる。
5秒を数えるころにはワイバーンはその片翼の皮膜を黒焦げにされていた。完全に飛翔能力を奪われた訳ではないが、それでも自由な滞空行動を制限される程度の痛手を受けている。
くわ、とワイバーンが猟兵たちを睨むが、急降下を軸とした亜竜のユーベルコードはその大半が使用に制限を受けるような状態。その威嚇が猟兵に通じないことは、ワイバーンが一番よく判っているだろう。
未だ無事な側の翼で揚力を確保し、中空に飛び上がろうとしても、スカイステッパーの回数を残しているレイチェルが小刻みに鐘楼の上部を封鎖し、容易くは飛び上がらせない。そして、バーソロミューのクイックドロウはたとえそれがどんなに小さな隙であろうとその一瞬を逃さずに銃弾を放ち、そもそも雪風の召喚した精霊はこれからしばらく暴れ続けるだけの効果時間を残している。初撃の連携を短時間で為した猟兵たちが圧倒的に有利な状況だ。
猟兵側の――主に上空を閉鎖し最も行動を制限してくるレイチェルのスカイステッパーが回数を使い切るまで一方的な防戦を余儀なくされたワイバーンは、目前にいる猟兵たちが己を狩りにきた狩人であることを思い知らされることとなった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
富波・壱子
巨大な体躯と空を飛ぶ翼。
高きから低きへ、常に眼下に獲物を見下ろしてきたあなたには、自分よりさらに高い位置から襲いかかってこられた経験など無いでしょう。
空を飛びこちらを見下ろすワイバーンの上方へとユーベルコードを用いて瞬間移動し、両手で握った刀で攻撃を加えます。
狙いは翼。上手くいけば地上に叩き落とすことができるでしょう。
その後は刀から銃へと持ち替え、援護射撃で他の方たちを支援していきます。
ドリスコ・エボニス
ワイバーンの飛べるっつー最大の利点が生かせないいまがチャンスだな
狙うは翼、二度と飛べないように力溜めて捨て身のグラウンドクラッシャー
を叩き込むぜ
一発とはいわねぇ二発食らっときなってんだ
戦闘知識と野性の勘を生かして翼の脆い所を狙っていく
飛べなくなってしまえば後はこちら側のもんよ
戦場で相手を有利にさせないことが一番よ
レイチェル・ケイトリン
上からの攻撃、うまくいったみたいだね。
鐘楼の屋根に止まれるような場所がないならいったんおりて
またとびたつけど、そのタイミングってワイパーンの様子をみつつ、
いっしょにたたかってくれる猟兵さんたちにたすけてもらってだよね。
でも、すぐとべないからって、わたしがなんにもできないわけじゃない。
わたしが上にとぶのってそれだけじゃ攻撃じゃなくてただの移動。
上で空中を蹴ってジャンプの方向をかえてワイパーンを蹴っとばすとき
攻撃になるんだよね。
だから、わたしがちょっととびはねただけでもワイパーンは
わたしの上昇経路を必死にふさがなきゃならなくなる。
念動力技能とスカイステッパーにフェイント技能もつかってがんばるね。
花巻・里香
順調すぎて殆ど真の姿が解放されていないのも珍しいわね?。
とはいえ、出遅れた分、油断せずにお仕事しましょ。
誘惑は通じるかしら?竜種には色仕掛けよりも宝石、よね。
私は蘭花の饗宴、花びらと蜂達で目晦まし、その向こうでちらちらとみえる露わになった宝石の肌の煌めきで注意を惹きつけるわ。
その隙に小さな花に擬態したからくり人形で目や翼を狙うけれど、
最大の狙いは喉、大きく口を開けたなら蜂達を口の中へ突っ込ませましょ。
たんと召し上がれ。
後々のことだけれど、蜜蝋だけでなくワイバーンも砦の補強にも使えるかもしれないわね。
スパイニア・ソーン
緒戦には出遅れたけど、だいぶボロボロねぇ、ワイバーン?
中途半端なその翼、引き裂いてあげる。
【援護射撃】でもう翼の完全破壊を試みる。
飛行能力の喪失後、鱗の薄い部分や眼を狙った射撃に切り替える。
【野生の勘】が上手いこと働けば、最適な部位を見分けられるかしら?
竜を撃ち落とせるなんて、この上なく甘美ね。
とっとと狩られて肉にお成り。
ブレスに合わせて喉奥に毒矢を撃ち込みたいけれど、タイミングと位置取りが重要ね。衝撃波と爆風による狂いも計算しないと。
アナタのトッテオキには、こっちのとっておきをあげる。食らいなさい!
可能ならば【盗み攻撃】で巣のめぼしいものを物色
貴方はどんなコレクションを持っているの?
ニア・スクニロトマ
つまり、空を飛ぶから厄介なんだろ?
ふっふっふっ、怪獣の力を甘く見ちゃいけないよ。
この地底怪獣キグサックの機能を見せてやる!
口から吐くビームで地上から牽制して、降下してきたらユーベルコード発動だ!
あたいの開発した着ぐるみがぶよぶよの粘体に早変わり!捕まえて地面に引きずり倒す…とまではいかなくても、重りになって動きが鈍くなるはず!
そうなったら、トドメは任せたよ!
●継戦――亜竜は地上で奮戦する
レイチェルを警戒しつつ、そのスカイステッパーが途切れた瞬間にワイバーンはこれまでにない低空での滞空を見せた。それは、この場で最大の天敵と見たレイチェルの上昇経路を塞ぐための滑空であり、ワイバーンからすればようやく見出した反撃の巧妙だったのだろう。
「すぐとべないからって、わたしがなんにもできないわけじゃ――!」
地面へと着地する瞬間、そこを読まれて絶妙なタイミングでワイバーンの逆撃を受ける形となるレイチェル。着地の瞬間から回避の動きへと移るが、飛行行動はワイバーン生来のモノ、さすがに分が悪くワイバーンダイブを喰らうかにみえた――。
だが、それを……仲間への直撃を易々と許す猟兵たちではない。
「出遅れた分、油断せずにお仕事させてもらうわ? ――捕食者たる花蟷螂はあなたの傍に」
戦場に馳せ参じた花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)が放つのは幻惑のユーベルコード、その名を「蘭花の饗宴」という。無数の花びらとからくり人形が滞空するワイバーンの目前へとばら撒かれ、それに加えて里香本人のクリスタリアンとしての輝きがワイバーンの目を晦ませるのだ。そして、亜竜とはいえ竜種の一端ということなのだろう。宝石の輝きに魅入られるようにしてワイバーンの滑空攻撃が狙いを変えた。
「つまり、空を飛ぶから厄介なんで――怪獣の力を甘く見ちゃいけないよぉ!」
その滑空攻撃をインターセプトするのはキグサック・ニアだ。きぐるみの口部から放たれるビームがワイバーンの滑空攻撃を牽制し、その着地点を狭め――着地の瞬間をユーベルコードで狩り取る。
「地下に眠っていた粘菌か? 宇宙から来訪した新物質か!? 喰らえ! 『正体不明アメーバの恐怖』ゥ!」
どろりと、キグサック・ニアのキグサック部分がぶよぶよした粘体に早変わりする。まるでトリモチのような粘着性で、片翼での滞空・滑空能力をどうにか保っていたワイバーンを完全に地上に縫いとめる一手である。なお、その正体が粘菌か、宇宙由来の新物質かはニアだけが知っている。
「追撃は任せたよ!」
「おう、任せな!」
叫ぶブロブ・ニアに応えるのは、ゴブリンの隠れ家を全て暴いて後方の安全性を確保し終えたドリスコ。鐘楼に走り込みながら状況を把握し、即座に狙いを付けるのはワイバーンに残るもう一方の翼。
ワイバーンの懐へ突撃しながらバトルアックスを振りかぶる、その姿はまさに捨て身。ワイバーンからのカウンターすら覚悟して振り抜かれるその一撃は、当たりさえすればワイバーンの飛翔能力を完全に奪い去るだろう。
鬼気迫るドリスコの突進にさすがに危険を感じてか、ついにワイバーンはユーベルコードではなく体躯に宿った能力での抵抗をはじめる。滑空を伴えばユーベルコードとなるワイバーンブラストだが、ただ咆えるだけでもその衝撃は猟兵を十分吹き飛ばすに足るものだ。
ゴッ、という風が空間を引き裂く音。にわかに吹き荒れる嵐のような乱気流にドリスコの走りが僅かにぶれる。このまま本命のブラストブレスが吐かれれば、ドリスコだけでなく前衛付近にいる猟兵たちが纏めて吹き飛ばされてしまう、その瞬間。
「アナタのトッテオキには、こっちのトッテオキをあげるわ?」
「――
!?!?!?!?」
最後衛から狙撃のタイミングを推し量っていたスパイニアによる毒矢狙撃が、ワイバーンの口蓋へと突き刺さった。ワイバーンが絶叫するような咆え声を上げて首をやたらに振りまわす。矢が刺さったことによる鋭い痛みと、鏃に塗られた浸透毒の効果だ。
「たんと、召し上がれ?」
さらにそこへ追撃を入れるのは里香の操るからくり人形。どこからともなく蜂を召喚するその人形がワイバーンの口へと飛び込み、毒矢が突き刺さった箇所へと誘導を開始する。泣き面、というよりは吠え面に蜂である。
結果として、ブラストブレスはワイバーンの口から吐かれたものの、その方向は全くの見当違いとなってしまう。多数対一。いかにワイバーンがこの荒野の生態系で頂点に立つ生物とはいえ、智恵を以て連携してくる猟兵たちを前にしてその能力は封殺されつつあるのだ。
「戦場では、相手を有利にさせないことが一番、よォ!」
ドリスコの言葉は、現況をよく表す台詞であった。
そして、無事にブラストブレスを凌いだドリスコが、その台詞を叫びながらついにワイバーンの翼へとバトルアックスを振り落とす。
斬、という重い音と共に翼の鱗がはじけ飛び、裂傷と共に皮膜が破れ。
「一発とはいわねぇ――二発、食らっときなぁ!」
振り落としたバトルアックスを、遠心力で以て再び振り上げるドリスコ。追撃の一撃は、ワイバーンの翼端を見事に斬り飛ばした。
●終戦――そして猟兵は亜竜の首を落とす
既に両翼は飛翔能力を失った。ブレスを吐こうにも、喉に突き刺さった毒矢とそこを苛むからくり人形、さらには纏わりつく蜂がそのような隙を与えない。自慢の毒を持つ尻尾で周囲を薙ぎ払おうにも、それは猟兵たちに背中を見せると言う事と等価。滑空や飛翔とまでまで行かずとも持前の脚力で跳躍し、重力に従って落下することをきっかけにユーベルコードを発動させようとしても、ブロブ・ニアが十数メートルまでは伸びてしっかりとその行動を縛り跳躍を許さない。そもそも、スカイステッパーの回数が回復したレイチェルがワイバーンの上空を抑えているため、跳躍できたとしてユーベルコード発動まで持ちこめたかが怪しいのだが。
一言で言って、詰み。抵抗らしい抵抗といえば、先の滑空攻撃やブレス程度。下手をすればゴブリンを相手にしたときより、猟兵側の損害は少ないレベルである。
「だいぶボロボロねぇ、ワイバーン?」
「飛べなくなっちまえば、後はこちらのもんだよなぁ!」
今、攻撃を仕掛けているのは後衛がスパイニア、前衛がドリスコである。スパイニアの眼や鱗の継ぎ目を狙う正確な狙撃に、ドリスコの力を籠めた重い一撃。ワイバーンの抵抗があるとはいえ、ブロブ・ニアと里香による妨害も含めればワイバーンの体力が無くなるのも時間の問題に思えた。
――そんな中、ユーベルコードで瞬間移動してきた壱子に気がついたのは、空中でワイバーンを抑えていたレイチェルが最初である。
スパイニア以上に好機を狙い澄ましていたのだ。そう、ワイバーンの機動力が完全に奪い去られ、他の猟兵に気を取られて消耗戦へと突入するその瞬間を。富波・壱子という猟兵は。
「自分よりさらに高い位置から襲いかかられるのは、2度目でしょうか?」
1度目はレイチェルであり、2度目が壱子だ。疑問形の形を取りながらも、その実、壱子の言葉は断定するような強さをもってワイバーンに対して投げつけられており。
「翼は――もう潰れていますね。では、首を頂きましょう」
その斬撃音は、ドリスコが放ったバトルアックスの一撃と比べるとずいぶんと軽いものになった。
しゃらり、と。まるで鈴でも鳴らしたかのような涼やかな音を伴う一閃。壱子の構えた刀は、ワイバーンの頚骨の継ぎ目や鱗の隙間を見事に捉え、まるで抵抗なくストンと切り落とす。
「常に眼下に獲物を見下ろしてきたあなたには、良い経験でしょう」
血振り、納刀。鞘へ刀を納める金属音で、漸くレイチェル以外の猟兵たちも壱子の転移に気付いた。
壱子の所作にやや遅れて、ワイバーンの首が重い音と共に地面へ落ちる。その体躯が崩れ伏せる音は、猟兵たちにちょっとした地震を思い起こさせただろう。
ワイバーンの巨躯が倒れたことで上がった土煙りが収まる頃、猟兵たちは己の勝利を確信するのだった。
●再建――後の亜竜砦
城砦内のオブリビオンが一掃されたことを確認し、あらためて猟兵たちは勝鬨の声を上げた。
突入時に破壊した正門や掘り抜いたトンネル、その他破損が目立つ箇所の修繕は、巨躯を有する猟兵を中心に、ワイバーンの死骸から得た骨や皮を建材の足しにして行われることとなった。
オブリビオンの危機が去り、この城砦の位置が知らされればアックス&ウィザード世界の住人による補修も始まることだろう。ひとまずの目立つ損害を穴埋めして、猟兵たちの活動はこれで一区切りだ。
――かつて放棄された後に亜竜が住居とし、再建に亜竜の骨が使われたことで、その城砦が亜竜砦と渾名されるようになるのはこの事件が終わって暫く経ってからのことである。
―
――
―――
――――荒城の亜竜、完
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴