度胸試しだ、縄なしバンジー!
●俺達は何者にも繋がれない!
キマイラ・フューチャー世界の街に聳え立つ、様々なアトラクション施設を内包したビル。屋上から下を眺めれば、眼下には巨大なプールが広がっている。
そんなビルの屋上で、なにやら怪人達が妙な動画をアップ中。
「画面の前の君達! 君達は、自分の勇気を試したいと思わないかい?」
「そんな時、最適なのはバンジージャンプだ! しかぁし! 普通のバンジーじゃ刺激が足りない! そもそも、勇気を試すのに、命綱なんて必要ない!」
のっけから無茶苦茶なことを叫ぶイソギンチャクの怪人達。彼らは自らの足首を縄で縛って固定すると、命綱も装着せずに、そのままビルの上から飛び降りた。
「ヒャッホォォォォッ! こいつが新時代のエクストリームスポーツ、名付けて縄なしバンジーだぁっ!」
「こいつで水の中に飛び込めば、この世界から失われた、原初の海へと近づくことができるんだぜぇっ!!」
そう、口々に叫びながら、プールへとダイブして行く怪人達。受け身すらまともに取れない恰好で、巨大な水飛沫を上げて水没して行く様は、殆ど新手の自殺行為にしか見えなかったが……。
●人、それを自滅という
「刺激的なスポーツ……ねぇ。まあ、確かに命の保証もされない行為は、ある意味じゃ刺激的かもしれないけどね」
それでも、さすがに限度というものがあるだろう。一時の刺激を求め、自分の命を捨てるような行為に走るのは、さすがにどうか。そう言って、パトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)は猟兵達に、キマイラ・フューチャーで起きる事件の詳細を語り始めた。
「怪人達がキマイラ・フューチャーにあるビルの上で、危険なスポーツの動画をアップしているわ。『縄なしバンジー』とか言って、両足首を縛った状態で、そのままビルの下にあるプールに飛び込むっていうスポーツよ」
怪人達によれば、このスポーツは度胸試しに最適で、見事成功させた者は、原初の海を垣間見ることができるらしい。もっとも、失敗した際のリスクなんぞは全く説明されておらず、危険極まりない行為であることに変わりはない。
だが、そんな危ないスポーツでも、刺激を求めるキマイラ達が、我も我もと真似を始めないとも限らない。そうなる前に、怪人が動画をアップしている現場に乗り込んで、彼らの野望を阻止せねばならない。
「最初にやって欲しいことは、怪人達の提案しているエクストリームスポーツが、ブームにならないよう止めることよ。いきなり怪人を倒しても、生放送なんかで流されちゃった動画はどうにもならないからね」
今後、怪人の真似をする者が出ないようにするためにも、まずはブームを終息させねばならない。怪人達は縄なしバンジーを刺激的なスポーツとして薦めているので、その主張を砕けば良いわけだ。
敢えて縄なしバンジーに挑み、難なくこなすことで、つまらない競技だと主張する。あるいは、縄なしバンジー以上に刺激的な、それでいて安全なスポーツを提案するのも良いだろう。
もしくは、真正面から危険性を説くことで、動画を見てしまったキマイラ達の目を覚まさせるという方法もある。どちらにせよ、大切なのは言葉だけではなく、具体的にやって見せること。見た目のインパクトで怪人達を上回らないと、否定するにしても何か別のものを薦めるにしても、説得力を欠いてしまう。
「無事にブームを終息させたら、いよいよ怪人達との本格的に戦いになるわよ。まずは、動画を流していた、イソギンチャク怪人達をやっつけて。そこまで強い相手じゃないけど、触手を振り回したり、麻痺毒を注入したりして来るから、油断は禁物よ」
イソギンチャク怪人達を蹴散らせば、いよいよ今回の事件の黒幕が姿を現すだろう。その名は、怪人オンナマズ。デンキナマズを愛する女の怪人で、デンキナマズの他にも巨大なナマズやナマズ人間などを召喚し、ヌルヌルでヌメヌメな攻撃を仕掛けてくる。
「刺激が足りないから、度胸試しねぇ……。そんなに肝試しがしたいなら、いっそのこと、私の尻尾をモフモフさせてあげても構わないんだけど……な~んてね! 冗談よ、冗談♪」
なにやら意味深な笑みと共に、パトリシアが猟兵達に尻尾を向ける。もっとも、彼女がスカンクのキマイラであることを考えれば、誘いに乗らない方が良いのは火を見るよりも明らかだった。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
キマイラ・フューチャー世界にて、怪人達が危険なエクストリームスポーツのブームを起こそうとしています。
動画を見てしまったキマイラ達が真似をする前に、怪人の野望を阻止してください。
第一章では、怪人達が動画をアップしている現場に乗り込んで、ブームを止めるために行動していただきます。
なお、各種能力によって可能な行動は、以下の通り。
見た目のインパクトを工夫しないと、怪人の主張に負けてしまうかもしれません。
【POW】 危険なスポーツを容易くこなし、つまらない競技であると主張する。
【SPD】 よりエキサイティングな、新たなブームを提案する。
【WIZ】 危険性を説き、キマイラ達の目を覚まさせる。
続く第二章では、動画をアップしていたイソギンチャク怪人達の集団と戦闘。
第三章で、事件の黒幕である怪人オンナマズと戦っていただきます。
第1章 冒険
『危険なエクストリームスポーツ』
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POW : 危険なスポーツを容易くこなし、つまらない競技であると主張する
SPD : よりエキサイティングな、新たなブームを提案する
WIZ : 危険性を説き、キマイラ達の目を覚まさせる
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モン・サンシン
【SPD】
うみゃっ、サッカーの方が面白いよー。ルールを説明しながらサッカー漫画やアニメを見せてサッカーの熱さを説いていくがボールを見つけては自分が玉転がしに行ってしまうのであった。(猫の本能には逆らえなかった…)
●レッツ、プレイ、サッカー!
怪人達の野望により、危険なエクストリームスポーツが広められようとしている。それを聞いたモン・サンシン(イタズラ大好き猫・f00444)は、大量のサッカー漫画やサッカーアニメの記録された媒体を持って、怪人達が動画を配信している場所に急行した。
「うみゃっ、そのスポーツは危険過ぎるだけなんだよー! そんなスポーツより、サッカーの方が面白いよー!」
「え~、サッカ~? そんなの、普通過ぎてつまんな~い」
野次馬根性から現場に集まっていたキマイラ達から、早くも巻き起こるブーイングの嵐。だが、それでもモンは気にしない。なぜなら、彼女の持って来たサッカー漫画やサッカーアニメは、常識を覆す技の数々を繰り出してバトルをしながらサッカーをする、『超時空超人サッカー』だったのだから。
「す、すっご~い! こんな技、練習すれば本当にできるようになるのかな?」
「普通のシュートなのに、ゴールネットを突き破ってるよ! それに、なんか竜巻が起きたり、雷が落ちたりしてるし!」
どう見てもユーベルコードの一種としか思えない技を繰り出す漫画やアニメのキャラクター達を見て、キマイラ達の興味や関心もサッカーの方へと移り始めた。そんな彼らの様子を目にし、ドヤ顔で微笑むモンだったが。
「ぬぅ……このままでは、我々の計画が!」
「慌てるな! やつは所詮、猫のガキだ。そんなにサッカーが好きなら、こいつで好きなだけ遊んでいろ!」
形勢不利と判断したイソギンチャク怪人が、モンの前にボールを放り投げる。それを見たモンは、思わず瞳を輝かせ、転がるボールを追い掛けに行ってしまった。
「うにゃにゃ~! 待つんだよー!!」
キマイラ達の興味を逸らすことこそ成功したが、最後の最後で怪人達と痛み分け。
だが、猟兵達の作戦は、これだけではない。そして、刺激的なスポーツも、サッカーだけではないのである。
苦戦
🔵🔴🔴
風間・敬人
【SPD】
新たな世界にやってきた虎さんですよ。
話を聞いてきた訳だけど、ありゃスポーツじゃないな。
ただの飛び降り自殺じゃぁねぇか。
俺がもっと刺激的なスポーツを提案してやろう。
その名も『鬼ごっこ』だ。
鬼ごっこなんか、子供の遊びじゃないかって?
おいおい、鬼ごっこだってルールを整備してやりゃぁ、
すんげぇ刺激的なんだぜ。
先ずは場所だ。
四方を壁に囲まれたとこにすんだ。
で、キマイラは様々な動物の特徴を持ってんだから、
三次元機動を有りにする。
で、相手を捕まえる際に、しっかり確保しなけりゃいけねぇってして、
反撃も有りにすりゃぁ対集団戦格闘スポーツに早変わりってなもんだな。
てな動画、作れねぇかなぁ?
要相談だな。
ラルフ・アーレント
コレ普通に自殺行為だろ!
原初の海って最早幻覚、いや三途の川的な何かじゃないのか!?
インパクトのある物……、パルクールとか提案してみるか。
ココの奴らなら個性発揮するのは得意だろうし、アレンジの幅広いから誰かと被るのも無さそう。新しい技編み出したら話題にもなるかもな?
こっちも無茶な動きは危険だし、基本極めてから挑戦するように警告。あと公道や人多い場所では厳禁とも。
[コミュ力5]で興味引くように話し、[ダッシュ4][ジャンプ5]でフリップやヴォルト交えて走って実践。
失敗しても笑って見せて再挑戦。兎に角楽しさと躍動感アピールで。
危険も過ぎれば場が白ける。周りも楽しませる方が面白いしカッコイイと思うぜ!
●立体機動鬼ごっこ!
危険なスポーツのブームを阻止するため、怪人達の動画配信現場に急行した風間・敬人(大虎・f04208)とラルフ・アーレント(人狼のブレイズキャリバー・f03247)。だが、現場のビルに降り立つや否や、思わずドン引きした表情のまま固まってしまった。
「話を聞いてきた訳だけど、ありゃスポーツじゃないな。ただの飛び降り自殺じゃぁねぇか……」
「コレ普通に自殺行為だろ! 原初の海って最早幻覚、いや三途の川的な何かじゃないのか!?」
単に高所から飛び降りるだけならまだしも、両脚を縛られた状態で、受け身もとれないままプールに落とされるとか怖過ぎる。万が一、狙いが逸れてプールサイドにでも直撃したら最後、その者に命の保証はない。
こんな危ない競技、一刻も早く阻止せねばならない。否、そもそも単に刺激を求めて無謀なジャンプをしているだけで、競技であるかどうかも怪しいものだ。
「キミ達。俺がもっと刺激的なスポーツを提案してやろう。その名も『鬼ごっこ』だ」
「鬼ごっこ~? そんなの、子どもの遊びじゃ~ん!!」
敬人の提案に、早くも湧き起こるブーイング。しかし、とりあえず話だけでも聞いてくれと、敬人は逸る野次馬のキマイラ達を諭し。
「鬼ごっこなんか、子供の遊びじゃないかって? おいおい、鬼ごっこだってルールを整備してやりゃぁ、すんげぇ刺激的なんだぜ」
そのために、まずは場所を選ぶことが重要だ。四方を壁に囲まれた場所で、キマイラ達が自らの持つ様々な動物の特徴を持って逃げ回る。予め指定されたフィールドの中でなら、壁を蹴って逃げるも良し、翼を広げて空中から追い掛けるも良しだ。
「要するに、三次元機動を有りにするってことだ。で、相手を捕まえる際に、しっかり確保しなけりゃいけねぇってして、反撃も有りにすりゃぁ対集団戦格闘スポーツに早変わりってなもんだな」
その際に、過剰な暴力は禁止するなど、安全面へ配慮できれば完璧だ。縄なしバンジーとは違い、これならチーム戦も期待できる。それこそ、下手なサバイバルゲーム以上に、刺激的な遊びが完成すると告げ。
「そうだなぁ……後は、パルクールなんてどうだろうか?」
それでも刺激が足りないなら、自分が新しいスポーツを教えてやろうと、ラルフは近くにある壁に向かって走り出した。
「ちょっ……あんなスピードで走ったらぶつか
……!?」
「うわ、凄い! 壁を蹴って、隣の壁に……。あぁっ! あんな体勢から、空中で回転してる!!」
パルクール。元は軍事訓練から派生した、走る、跳ぶ、登るといった移動所作に重点を置く動作鍛錬。卓越した技量を持つ者が行えば、ダイナミックでアクロバティックな動きと相俟って、見る者の視線を惹き付けること間違いなしだ。
「ただし、最初から無茶な動きは厳禁だぜ。何事も、基本を極めてからだ」
ついでに言うなら、人通りの多い場所でも控えるように。他にも、安全面を考慮して、靴の選び方も重要だと。
「うわ~、すっげー! ねぇ、お兄さん。僕にもそれ、教えてよ!」
「っていうか、この動きを鬼ごっこに取り入れたら、それだけで凄いスポーツになりそうな予感~♪」
最後は野次馬のキマイラ達が敬人やラルフを取り囲み、勝手に話を膨らませて盛り上がっていた。
「ぐぬぬぬ……。このままでは、我々の計画が……」
歯噛みするイソギンチャク怪人達だったが、こうなってしまっては、どうしようもない。
敵の目論見は、もはや風前の灯だ。後はこれに加えて、縄なしバンジーの危険性でも併せて説けば、キマイラ達も危険なエクストリームスポーツからは、興味を失うことだろう。
大成功
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アリス・フォーサイス
キマイラの人たちなら本当に真似しそうで怖いね。
ぼくは紐なしバンジーの危険意識を高めるショッキングな動画を配信するよ。
紐なしバンジーを人形にさせてバラバラになるってやつね。人形視点とか撮影ドローンの視点とか、複数の視点を利用して、最も恐怖をあおるように編集するよ。
さらにステマコメントをつけて怖がる空気を作るよ「これはヤバい」みたいなやつ。
神羅・アマミ
「えー、今日はぁ、縄なしバンジーに挑戦してみようと思いまーす、ウェヘヘー」
素人感丸出しの危険な香り漂う動画撮影。勿論彼女は素の天然でやっている!
縄なしバンジーに大変な魅力を感じるものの、それは自らのような人外フィジカルを持つ者のみが許されたエクストリームスポーツである証明を配信で試みます。
勢い余って落下地点の目測を見誤りプールサイド目掛けて落下(素)、滅茶苦茶焦って縄を引きちぎりつつ着地時には咄嗟に両腕を用いた『グラウンドクラッシャー』で衝撃を和らげます(素)。
あらゆる意味に於いて事故としか言いようのない悲惨な状況に住民もきっとドン引きすること間違いなし!
「最悪じゃな紐なしバンジーやめます」
弥久・銀花
こんなの怖いですよ、高層ビルから真っ逆さまに落ちるなんて……。
一歩間違ったらプールサイドに赤い花が咲く事でしょう。
では、真似する人が少なくなる様に私が一計を案じて見ますので誰かやってみて下さい。
1、足首だけでなく両手も縛って下さい、後ろでで。
2、目の直ぐ横にカメラを設置して被害者、もとい参加者の見ている物を撮影して下さい。
3、プールで溺れる演技をして下さい。
4、これらを怯えながら実行する。
さて、こんな映像を撮影すれば皆自粛するでしょう、猟兵の誰か、やってくれませんか?
子供の様な人なら画面栄えするんですが……。 (何故か注目を集める言いだしっぺの銀花(12歳))
「ひぁーーー!」(落ちる時の悲鳴)
ルナ・ステラ
縄なしバンジーなんて危ないことはやっちゃだめです!
失敗した際のリスクが説明されてないなんて絶対におかしいです!
危険性を説いて、キマイラさん達の目を覚まさせます。
「もし、プール以外に落ちてしまったらどうすんですか?たとえ、プールに落ちたとしてプールの底に頭や体をぶつけってしまったらどうするんですか?」
言葉で説得しますが、納得がいかないなら流れ星をビルの上から降らして、プールの外でも中でも砕け散るところを見せます。(たとえ失敗してたらいが降ってきても、たらいがひどいことになるのを見せます。)
「ね?みなさんも、ビルの上から飛び込んだら、これらの星(たらい)のように砕け散ってしまいますよ?」
●実演、縄なしバンジー!
猟兵達の活躍によって、縄なしバンジーを流行らせようと目論むイソギンチャク怪人達の計画は、徐々に失敗へと追い込まれ始めた。
だが、どんな世界にも怖いもの知らずな連中というのはいるものだ。ここ、キマイラ・フューチャーでも、それは変わりないはずであり。
「こんなの怖いですよ、高層ビルから真っ逆さまに落ちるなんて……」
「でも、キマイラの人たちなら本当に真似しそうだしね……」
ビル風に吹かれて思わず震える弥久・銀花(人狼の剣士・f00983)の隣では、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が野次馬根性で集まったキマイラ達の行く末を、心の底から真面目に心配していた。
楽しそうなことがあるなら、物は試しにやってみる。それで命を落とすことがあっても、それはそれ。そんな考えで生きていそうな連中も混ざっているので、放っておけば大惨事に成り兼ねない。
ここは一発、彼らの目の前で縄なしバンジーの危険性を証明してやろう。この高さから落下して、万が一にでもプールに着水できなかった場合はどうなるか、実際に物を落として見せてやればよい。
「縄なしバンジーなんて、危ないことはやっちゃだめです! 失敗した際のリスクが説明されてないなんて、絶対におかしいです!」
それでも諦めきれないなら、今から実際に見せてやる。そう結んで、ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は自らが得意とする、流星を呼ぶ魔法を繰り出した。
「お星さんたちわたしに力を! 悪しきものに降り注げ! シューティングスター☆ ……って、あれ?」
だが、残念ながら、降って来たのは星ではなくタライ。もっとも、今回に限っては、星であろうとタライであろうと、あまり効果に違いはないのが幸いだ。
高所から落下したタライはプールサイドに落下して、そのまま音を立てて砕け散った。そうでなくとも、亀裂が走ったり、ひしゃげたり、タライの末路は散々だった。
「ね? みなさんも、ビルの上から飛び込んだら、これらのタライのように砕け散ってしまいますよ?」
だから、こんな危ないスポーツは止めるべきだとルナは告げるが、さすがにここまで好き放題されては、イソギンチャク怪人達も黙ってはいない。
「諸君、騙されてはいかん!」
「所詮、あれは貧弱なタライに過ぎず! 君達の身体は、もっと丈夫にできているはずだ!」
自分を信じろ。勇気を持て。状況を全く知らない者が聞けば、なんとも感動しそうな台詞を吐いて、怪人達も食い下がる。
「では、真似する人が少なくなる様に、私が一計を案じて見ますので、誰かやってみて下さい」
ならば、今度はそちらの言う通り、本当に人を落としてやろうと銀花が言った。
縛るのであれば、足首だけでなく両手も固定して欲しい。そのうえで、目の直ぐ横にカメラを設置し、被験者の視界をリアルタイムで中継。プールに落下した後は、溺れる演技もできれば良しだ。これら、一連の流れを、怯えた表情でやれば完璧である。
「さて、こんな映像を撮影すれば、皆自粛するでしょう。猟兵の誰か、やってくれませんか?」
そう、銀花が問い掛けたが、今のところ名乗り出る者は全くいない。まあ、それはそうだろう。失敗した時の保証がないだけでなく、余計な枷まで追加されているとなれば、誰が好き好んで縄なしバンジーなどやりたいと思うだろうか。
「えぇい! これ以上、好き勝手に言われて堪るものか!」
「そんなに実演したければ、貴様が身を以て実演しやがれぇっ!!」
今まで、散々に計画を邪魔されて来たイソギンチャク怪人達が、とうとうブチ切れて銀花に襲い掛かった。
「えぇっ! ちょ、ちょっと待って……ひぁぁぁぁっ!!」
哀れ、本当に両手両足を縛られたまま、ビルの上から放り出される銀花。辛うじてプールに着水することはできたものの、凄まじい水柱が立った後、浮いて来るものは誰もおらず。
「なにも、自分で飛び込む必要はないと思うんだよね……」
撮影用のドローンと等身大の人形を用意したアリスが、ビルの上から真下に広がる光景を眺めつつ呟いている。
恐怖を煽る映像を撮影するのに、本当の人間を落とす必要はない。危険な行為への注意喚起なら人形で十分。敢えてプールサイドを狙って人形を落下させれば、コンクリートの床にぶち当たった瞬間、人形は木っ端微塵に砕け散った。
「ね、危ないでしょ? わかったら、こんなスポーツなんて、やっちゃダメだよ」
運が悪ければ、即死することは必至。しかし、そう主張するアリスに対し、怪人達も最後の抵抗を試みる。
あれは人形だから駄目なのだ。本当の人間は、あそこまで飛散に砕け散ったりはしない。何の根拠もない主張を並べ立て、粘りに粘るのが鬱陶しい。
ならば、こちらも覚悟をみせよう。そう思っていたかどうかは知らないが、最後にふらりと現れたのは、素人感丸出しの神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)。
「えー、今日はぁ、縄なしバンジーに挑戦してみようと思いまーす、ウェヘヘー」
動画を見ているであろう者達の目線を意識しつつ、アマミは怪人達の言うままに、両脚を縛った状態で屋上から飛び降りた。が、何の因果か狙いは外れ、アマミは硬いコンクリートのプールサイドへと一直線!
「うわっ! ぶ、ぶつかるぞ!」
外野からそんな声が聞こえてきた気もしたところで、アマミは慌てて縄を引きちぎり、プールサイドに赤い花が咲こうとする瞬間、両腕を武器にして豪快にプールサイドへと叩き付けた。
「ちょ……っ! な、なんだ、あれ!?」
「嘘……プールサイドが、粉々に……」
アマミのユーベルコードで完膚なきまでに叩き壊されたプールサイドを見て、流石のキマイラ達も、目を丸くして硬直する他になかったようだ。
「ふぅ……最悪じゃな。紐なしバンジーやめます」
そんな中、肩の埃を払いながら、アマミが瓦礫の山を押し退けて現れた。
お前達、縄なしバンジーとは、こういうものだ。恐怖に負けない強靭なメンタル。常人離れした超人的なフィジカル。それらを併せ持った者のみが許された、禁断のエクストリームスポーツなのだと。
「う、うわぁぁぁっ! 化け物だぁぁぁっ!」
「無理! こんなの、私には絶対無理!!」
先程からの予期せぬ事故の連発を前にして、とうとう野次馬で集まっていたキマイラ達も、我先にと悲鳴を上げて逃げ出して行く。
兎にも角にも、これで怪人の計画は完全に阻止できたことになるだろう。
残る仕事は、こんな危険なスポーツを広めようとした怪人どもを、きっちり成敗してやるだけだ。
成功
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第2章 集団戦
『イソギンチャク怪人』
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POW : テンタクル・テンペスト
予め【触手を振り回しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ウネウネ・アネモネ
自身の肉体を【ウネウネモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : ポイゾナス・ポリプ
【頭部】から【毒針のついた触手】を放ち、【麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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●対決、イソギンチャク怪人!
猟兵達の、時に自身さえも犠牲にして行われた説得により、怪人による縄なしバンジーのブーム化は阻止された。
しかし、戦いはこれからが本番だ。計画を邪魔されたイソギンチャク怪人達は、怒りに任せて猟兵達へと襲い掛かって来たのだから。
「おのれぇっ! こうなれば貴様達を倒して、新たなるエクストリームスポーツの実験台にしてくれる!」
迫り来る触手と、猛毒の針。だが、猟兵達も負けるつもりはない。
そちらこそ、敗北する覚悟はできているか。それぞれの武器を片手に怪人達と対峙すると、猟兵達は躊躇うことなくイソギンチャク怪人の集団に突撃して行った。
神羅・アマミ
「ふはははは!見事に目論見が外れたようじゃのうバ怪人ども!どっからでもかかってきやがれー!」
敵を激昂させ冷静で的確な判断力を削ぐために煽りに煽ります。いや、彼女に関してはやはり素の天然。
口はともかく全身では細心の注意を払い攻撃を捌くことに専心し、予備動作から『テンタクル・テンペスト』の予兆を感じたならばこちらも『羅刹旋風』の準備に入ります。
・同属性の攻撃ならタイに持ち込めそう
・その上で怒りに任せて放たれたテレホン気味の触手ならばこちらの攻撃を同時にカチ合わせるのも容易?
・敵の厄介な武器である触手を率先して狩りたい
の三点が狙いです。
「ふむ、こいつはなかなかエクストリームな死亡遊戯じゃったぜ…」
ラルフ・アーレント
ワー、リョーヘーッテスゴイナー。
実演した奴らの心意気に拍手を、じゃなくて。ユーベルコードで何とかなるかもなオレら以外そんな危ない事できねーから!煽って勧めるとか言語道断だこのウネウネ共!
ブレイズフレイムで攻撃しつつ[気絶攻撃]で反撃の芽摘んだり、[2回攻撃]や[なぎ払い]で速攻掛ける。あ、触手燃やして手数減らせられねーかな?焼きイソギンチャクですよ―的な。
痛い一撃や毒持ちは、動きしっかり[見切り]で見極めてからの[ダッシュ]で避けるに限る。てか気持ち悪いしあんま近寄りたくない。
他の奴にも予備動作分かったら声掛けしておこう。
建物壊れたり味方の邪魔にならないよう、敵以外に延焼した分は消火しとくか。
弥久・銀花
ぶくぶくぶくぶく、ごぼごぼっ、ぷはぁっ!
はぁ、はぁ……。
し、死ぬかと思いました……、縄抜けするのが後少し遅れたらと思うとゾッとします。
さて、私をビルから投げ落としたイソギンチャクはどれですか?
・
・
・
名乗り出ませんか、では貴方が犯人です。
違う? 嘘を吐かないで下さい、その顔は確かに私をビルから投げ落とした顔です。
と言うか、良く見るとみんな犯行的な顔をしてますね。
では、反省の意味も篭めてこれから全員スキンヘッドの刑です。
覚悟は良いですか? 良くなくても執行します!
風間・敬人
何とか飛び降り自殺から気を反らせた虎さんですよ。
次は……って、またうねうねぬるぬるかよ。
別の世界に来てまで、うねうねぬるぬるを相手する事になるなんて、
全くついてねぇ。
今回は、前回みたいな無様はやめねぇとな。
相手がイソギンチャクなら、乾燥させちまえば良さそう、か?
レプリカクラフトで、乾燥剤の仕掛け罠、
落とし穴や降ってくる奴とか、
色々用意してやろう。
江戸の仇を長崎で、って訳じゃぁねぇが、
お前に勝つことで苦手意識を晴らさせてもらう。
アリス・フォーサイス
さあて、それじゃあ、ヒーローショーのはじまりだよ。みんなも応援してね。
この戦いも撮影して配信するよ。これで怪人の本性もわかるだろうしね。
相手は肉体がのびる系の攻撃だから、攻撃を予測しながら動くことが重要だね。大丈夫、ぼく、そういうの得意なんだ。相手の動きを解析して次来る攻撃を予測するよ。
そうすれば相手の攻撃の合間を縫って攻撃をしかけられるでしょ。
攻撃はそうだな、派手に火の玉とかを撃って攻撃しようかな。
そうすれば、より盛り上がるだろうし、そうなればなるほど、グッドナイス・ブレイヴァーの力でますますパワーアップだからね。
モン・サンシン
うみゃっ、さっきはうっかりボールにつられたけど今度はそうはいかないよー!
ホトケぇぇぇぇぇ!を可能な限りぶつける。
そんな危ないものを流行らせようとするから天罰が下るんだよー。新しいのを考えるなら今のうちだよー!
戦闘終了後
鬼ごっこの何を勘違いしたのか鬼のお面とおもちゃのこん棒をを持ってきた。
ルナ・ステラ
なんかウネウネしてて怖いですが、エクストリームスポーツの実験台なんてごめんなんで、迎え撃ちます!
今度こそ、魔法を成功させます!
と、ルナは詠唱に入るものの隙を突かれてしまいます。
「ひゃあ!気持ち悪いです...」
「でも、あともう少し!」
魔法を発動させたらこちらのもの、相手の攻撃に耐えつつも詠唱を最後まで終わらせ、流星を降らせ攻撃します。
「少し、ひどい目にあいました...」
「他にひどい目にあっている人がいれば癒します!」
もし余裕があれば、【楽器演奏】の技能で癒しの獣奏器の音色を奏で、自分や仲間やを癒します。
●怪人軍団を掃討せよ!
危険なエクストリームスポーツからキマイラ達の興味を削いだ猟兵達だったが、しかし本当の戦いはこれからだ。
「おのれぇっ! 我らの計画を邪魔する者には死を!」
「こうなれば、もう容赦はせんぞ! 全員纏めて、簀巻きにしてビルから放り投げてくれる!」
怒り狂ったイソギンチャク怪人達が、縄なしバンジーを広めるのを邪魔した猟兵達へと襲い掛かって来る。だが、猟兵達とて、黙ってやられるつもりはない。むしろ、今までのフラストレーションを発散するチャンスとばかりに、真正面から真っ向勝負!
「さあて、それじゃあ、ヒーローショーのはじまりだよ。みんなも応援してね」
アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が戦いの様子を中継しながら、自らもまた怪人の群れに飛び込んで行けば。
「ふはははは! 見事に目論見が外れたようじゃのうバ怪人ども! どっからでもかかってきやがれー!」
巨大な戦斧を振り回し、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)が必殺の一撃に賭けて力を溜める。
「えぇい、怯むな! 我らの内に宿る、原初の海のパワーを見せてくれるわ!」
イソギンチャク怪人達もまた、それぞれに触手を伸ばし、あるいは振り回し、猟兵達へと襲い掛かった。空中を蠢く、大小様々な触手の群れ。そんな光景を目の当たりにして、明らかにドン引きしている者達も存在したが、それはそれ。
「次は……って、またうねうねぬるぬるかよ。
別の世界に来てまで、うねうねぬるぬるを相手する事になるなんて、全くついてねぇ」
「なんかウネウネしてて怖いですが、エクストリームスポーツの実験台なんてごめんなんで、迎え撃ちます!」
風間・敬人(軽トラ・f04208)が愚痴を零す中、ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)もまた勇気を振り絞ってイソギンチャク怪人に挑んで行く。乱闘に次ぐ乱闘となり、戦場は早くも大混乱だ。
「フシュルルルゥゥゥッ! 貴様達を倒して、縄なしバンジーの素晴らしさを、改めて全世界に広めてくれるわ!」
「はぁ!? ユーベルコードで何とかなるかもなオレら以外、そんな危ない事できねーから! 煽って勧めるとか言語道断だ、このウネウネ共!」
迫り来る触手を華麗に避けつつ、ラルフ・アーレント(人狼のブレイズキャリバー・f03247)はイソギンチャク怪人目掛けて炎弾を放った。炎が燃え広がり、怪人の体を包み込んだ瞬間、なんとも言えぬ生臭い匂いが辺りに広がり、触手の塊がのたうち回りながら、ビルの屋上から落下して行った。
●落ちろ、奈落の底まで!
失敗すれば命を落とす、危険なスポーツ、縄なしバンジー。そんな危ないエクストリームスポーツの動画を公開していたビルの上は、瞬く間に猟兵とイソギンチャク怪人が入り乱れる戦場と化していた。
「フッシュッシュ……捕まえたぞ~。さぁて、どうやってお仕置きしてやろうか?」
「ひゃあ! 気持ち悪いです.……」
乱戦の中、詠唱中の隙を突かれ、ルナが怪人の触手に捕まってしまった。
「何をするのか知らんが、そうそう好きにはやらせん! この猛毒で、貴様の動きを封じてくれる!」
怪人の頭部にある口から触手が伸び、ルナの首元目掛けて迫って来る。だが、他の者達は別の怪人と戦っており、彼女を助ける余裕などない。
「くっ……貴様、さっさと仕掛けてきたらどうなんだ!」
「そういうお主こそ、仕掛けて来ぬのか? こうしている間にも、妾の力はどんどん溜まるぞ?」
唯一、戦斧を振り回して力を溜めているアマミも、触手を振り回す怪人と完全に膠着状態。
こういう場合、焦って先に手を出した方が負けである。初撃を外してしまったら最後、待っているのは自分の繰り出した技以上の威力を持った手痛い反撃。それを解っているからこそ、お互いに迂闊な手出しができないのだ。
「うぅ……。あ、あと、もう少しなのに……」
このままでは、本当に身体に猛毒を注入されて、詠唱どころではなくなってしまう。思わず目を瞑り、触手の先端から顔を背けようとしたルナだったが……彼女の体を触手の先端が突き刺すよりも早く、鋭い刀の一閃が、敵の触手を斬り捨てた。
「うぎゃぁっ! お、俺の触手がぁぁぁっ!!」
「はぁ、はぁ……。し、死ぬかと思いました……、縄抜けするのが後少し遅れたらと思うとゾッとします」
刀を片手に、弥久・銀花(人狼の剣士・f00983)が肩で息をしつつも怪人達を睨み付ける。手足を縛られた状態でビルの上からプールに落とされたところを、辛くも脱出して舞い戻って来たのだ。
「さて、私をビルから投げ落としたイソギンチャクはどれですか?」
そう言って刀の先を突き付けるが、残念ながら怪人達は戦闘に夢中で、彼女の問いに答えるだけの余裕は無かった。
「名乗り出ませんか。では貴方が犯人です。……違う? 嘘を吐かないで下さい、その顔は確かに私をビルから投げ落とした顔です」
ドヤ顔で近くにいた怪人を犯人扱いする銀花だったが、そもそも敵は全員が全員、似たような姿をして見分けがつかない。実際、銀花自身にも見分けがついているのかさえ怪しく、他の怪人と改めて姿を見比べて。
「……と言うか、良く見るとみんな反抗的な顔をしてますね。では、反省の意味も篭めてこれから全員スキンヘッドの刑です」
覚悟はいいか。まあ、良い悪いに関係なく、全員纏めて触手刈りだ。刀を振り回しながら銀花が乱入したところで、今まで拮抗していた戦列に乱れが生じ。
「うみゃっ、さっきはうっかりボールにつられたけど今度はそうはいかないよー!」
同じく、ボールの誘惑に打ち勝って舞い戻って来たモン・サンシン(イタズラ大好き猫・f00444)が、謎の力で近くにいた怪人を持ち上げた。
「お、おい! なんだ、こりゃ!?」
「(しょうがないな、力貸すよ)うみゃー! ありがとー!」
常人の目には見えない、実に胡散臭い仏様の力を借りて、モンは怪人の身体を空中に放り投げる。そんなに縄なしバンジーが好きなら、自分達だけで勝手にやっていろとばかりに。
「ちょっ……ま、待て! この下はプールじゃなくて……あぁぁぁぁっ!!」
哀れ、ビルの上から叩き落とされ、怪人はそのまま固いコンクリートの地面に激突して飛散した。
「そんな危ないものを流行らせようとするから、天罰が下るんだよー。新しいのを考えるなら、今のうちだよー!」
奈落の底へ落ちて行った怪人にモンが告げるが、当然のことながら答えは返って来ない。この高さから落下し、固い地面に激突したら最後、さすがに猟兵やオブリビオンと言えど、致命傷は避けられまい。
「くそっ! 忌々しい猫め! ……って、るぶわぁぁぁっ!?」
仲間の仇を取らんと、別の怪人がモンに襲い掛かろうとしたが、そんな彼も横薙ぎの一撃によって吹き飛ばされ、屋上から真っ逆さまに落下して行く。見れば、戦斧を肩に担いだアマミが、次の獲物を物色するように品定め。
「き、貴様! いきなり真横から攻撃するとは、それでも正義の味方か!」
「正義? そんなものは、知らんのじゃ。戦いの中で、余所見をしている方が悪いのじゃからのぅ」
怪人の突っ込みに対しても、アマミは何ら動じない。もはや、どちらが悪役か解らない展開になっているが、細かいことは気にしたら負けだ。
「少し、ひどい目にあいました
...…。もう、許しませんよ!」
触手の拘束から脱出したルナが、ここに来てようやく必殺のユーベルコードを発動させる。
「お星さんたちわたしに力を! 悪しきものに降り注げ! シューティングスター☆」
今度は成功。タライではなく、実に80個近い流星が、光の矢の如く怪人達に降り注ぎ。
「痛っ! な、なんだこの星は……のわぁぁぁっ!?」
「引っ掛かりやがったな、ウネウネども。特製の、強力乾燥材入り落とし穴だ。存分に味わいな」
逃げようと走り出した瞬間、敬人の仕掛けていた罠に嵌り、怪人達は大パニックだ。
「た、助けてくれ~! 干からびる~!!」
「くそっ! こうなったら、一人でも多く道連れに……グフォッ!?」
水分を奪われ、次々に触手をヘタレさせて行く仲間の姿を見て、残る怪人の内の1体が、半ば自棄になってアリスに仕掛けた。が、身体を伸ばして襲い掛かろうとした瞬間、彼女の手痛い反撃を真正面から食らい。
「どんなに身体を柔らかく伸ばしても、支点になってる胴体を狙われたら避けられないよね」
「うぐぐ……む、無念……」
そのまま力無く膝を折り、腹を抱えて動かなくなった。
「さて、これ以上は面倒だな。そこの穴に嵌ってるやつは、全部纏めて燃やしちまおうぜ」
「うん、そうだね。なんかカリカリに乾いてるから、きっと良く燃えるよ」
敬人の罠に嵌っている怪人達を狙い、ラルフが地獄の炎弾を、アリスが火球をお見舞いする。もはや、完全に干物状態になっていた怪人達の身体は、炎を受けて良く燃えた。
「「う、うぎゃぁぁぁっ!!」」
断末魔の悲鳴と共に、イソギンチャク怪人達の身体が燃えて行く。仏様の力を借りて、銀花の斬り落とした触手もまた、モンが炎の中に放り込んで後始末。
「……ふむ、こいつはなかなかエクストリームな死亡遊戯じゃったぜ」
最後は、アマミが戦斧を力強く地面に突き立て、動かなくなった怪人の身体を踏み付けた。
●真の黒幕
猟兵達の活躍によって、危険なスポーツを広めようとするイソギンチャク怪人の野望は阻止された。
だが、これで全てが終わったわけではない。今回の事件、裏でイソギンチャク怪人達を扇動していた、黒幕的存在がいるはずなのだ。
「ふぅ……。な、なんとか、この場は勝てましたけど……」
「油断するなよ。まだ、連中の親玉は姿を見せてないからねぇ」
安堵の溜息を吐こうとしたルナを、敬人が制した。果たして、そんな彼の予想は正しく、ビルの屋上に野太く図々しい声が突如として響き渡った。
「ちょっ……なにから様子が変だから見に来たら、いったいなぁんてことかしら!」
ナマズの頭部に女性の身体。今回の事件の元凶である、怪人『オンナマズ』が姿を現していた。
大成功
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第3章 ボス戦
『怪人『オンナマズ』』
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POW : ジャイアントナマズ
自身の身長の2倍の【巨大ナマズ怪人 】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : ナマズ人召喚
レベル×1体の、【後頭部 】に1と刻印された戦闘用【ナマズ人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 矢ナマズ発射!
レベル×5本の【雷 】属性の【刺さるデンキナマズ】を放つ。
👑17
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●出現、怪人オンナマズ!
イソギンチャク怪人達を撃退し、危険な縄なしバンジーのブームを、無事に止めることができた猟兵達。しかし、それでも戦いは終わらない。今回の事件を引き起こした真の黒幕、怪人『オンナマズ』が、とうとうその姿を猟兵達の前に現したのだ。
「アンタ達、よ~くもやってくれたわねぇ! このアタシの考案したスペシャルエクストリームで刺激的なスポーツ、縄なしバンジーが台無しじゃない!」
「…………」
怒り狂うオンナマズだったが、対する猟兵達の視線は酷く冷たい。
まあ、無理もないだろう。こんな、スポーツともいえない代物を考案した挙句、動画で配信して流行らせようとか、もはや狂気の沙汰でしかない。
「こうなったら、アタシが直々に片付けてあげるわ! さあ、覚悟しなさい、邪魔者ども!」
巨大な口をバクバクと開きながら、激昂したオンナマズが猟兵達に迫る。危険なエクストリームスポーツを阻止するための、ラストバトルの開幕だ!
弥久・銀花
接近戦一択です、ナマズなんて腸抜きして放置ですよ。
運だけの遊びなんてスポーツじゃないです、あんなのは唯の処刑です。
身内だけでやってて下さい。
愛刀;白嵐玉椿でナマズ人やジャイアントナマズを捌いて、オンナマズに挑みます。
接近できたら鋭刃線閃で2枚に下ろしてあげましょう。
ルナ・ステラ
うねうねの次は、ナマズですか
ヌルヌル、ヌメヌメも苦手なのですが―
大きいナマズにナマズ人もたくさん...
近づかずに魔法で撃退していきましょう。
思ったよりもあっさりナマズ人(1と刻印されたナマズ)は倒せますね!
(楽勝かな?)
あれ、あまり魔法がきいてないナマズ人もいませんか?
―それに、なんかこっちに向かってきてるような!?
「や、やめてください!纏わりつかないでください...ヌルヌル、ヌメヌメ、やだよぅ...」
(魔法があまりきかないなら、ライオンを召喚してピンチを切り抜けます!)
「ライオンさん来てください!」
(召喚しててなんですが、ライオンってナマズ食べないですよね?ちゃんとしたもの食べてほしいです)
神羅・アマミ
「お、おう…そうじゃそうじゃ!こんな馬鹿げた真似をする怪人なんざメチャ許せんよなぁ~ッ!」
結構ノリノリで狂気の沙汰に乗っかってたので複雑な心境。
それにしても彼奴め、分身や飛び道具を取り揃え容易に近づくのは難しそうじゃが、だからこそ本体の耐久力は低いと見た!
ナマズ人や矢ナマズを捌き続ければ、いずれ切り札の巨大ナマズを召喚するじゃろう…そこを狙う!
コード『見切』を発動、攻撃を掻い潜り本体の裏に回る!
分身が本体をトレースするというなら致命的打撃は与えられなくともよい!
ほんの一瞬…そう、ほんの一瞬隙を作れば他の猟兵の援護になるはず!
例えば膝カックンとか…
妾は盾キャラ!トドメの一撃は人まかせじゃよー!
アリス・フォーサイス
ついに黒幕の登場だね。
攻撃をひきつけて時間稼ぎできないかな。
自尊心が強そうだし、挑発すればのってくると思うんだよね。
それに頭に血がのぼれば、攻撃は単調になるばす。うまくみきって避けられないかな。
攻撃は、相手の隙に、火属性の矢を飛ばして攻撃するよ。あせる必要はないんだ、確実に狙って当てていくよ。
あとはナマズ人の合体に注意かな。合体されないように、ナマズ人を召喚されたら、そっちの数を減らすことを優先しようか。
モン・サンシン
じゅるり…
すごくうまそうなナマズだ…うみゃー!
食料になりそうと勘違いしてありとあらゆる手を使って食べれないかと考えながら戦闘する。
そんな時もホトケぇぇぇぇぇ!を使う。
で、倒した後に食えないと気づく。
ラルフ・アーレント
考案したって、アンタ自らやった事あんのか……?
無いならあのイソギンチャク共に同情するわ。さっき盛大に燃やしたけど。
正直凄く気持ち悪いんでバトルキャラクターズ召喚。
え?心なしか行きたくなさそうにしてるって? きっと気のせい。大丈夫だお前ならやれる。
相手も召喚してくるなら、基本それの数値+1を目安に強化して向かわせる。余裕あったら追加で数体出して牽制。
動けるなら、自身も[2回攻撃][気絶攻撃]織り交ぜて攻撃。斬撃通りにくそうだし、剣の腹使っての打撃に重点を。手応え感触覚えたくないし速攻狙いたいところ。
相手の攻撃は[見切り]と[ダッシュ]で回避。確り相手の動きを見て、攻撃の予測できたなら注意喚起を。
風間・敬人
……はっ?!
女言葉で喋るナマズに、思わず思考がフリーズしてしまった虎さんですよ。
なんだあれ?
とりあえず癇に障るから、退場願うとしよう。
あいつには、どんな罠が有効かね?
細い脚にでかい頭、重心が凄い悪そうだなぁおい。
足元にパチンコ玉でもバラまいてやろうか……って、
俺らも近寄れなくなるか。
ま、選択肢の一つとして考えておくか。
となると、ワイヤーフックで足元払ってやって、
避けた先に落とし穴。
で、その底には電極埋めといて、
オンナマズが触れると高圧電流が流れるようにしとくか。
奴の頭は導電性が高そうだし、良いのを思いついたな。
●対決、オンナマズ!
危険なエクストリームスポーツ、縄なしバンジー。その考案者を名乗る親玉の出現に、猟兵達は思わず両目が点になった。
「うねうねの次は、ナマズですか。ヌルヌル、ヌメヌメも苦手なのですが……」
「なんだあれ……。とりあえず癇に障るから、退場願うとしよう」
ドン引きしているルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)の横で、風間・敬人(軽トラ・f04208)は早くも難しく考えることを止めたようだ。というか、突如としてナマズ頭の女がセクシーポーズを決めながら現れ、おまけに意味不明なことを叫び始めれば、呆れて思考も停止しようというものだ。
「じゅるり……。すごくうまそうなナマズだ……うみゃー!」
そんな中、モン・サンシン(イタズラ大好き猫・f00444)だけは、何故か怪人を食料としてしか見ていなかったが、それはそれ。
「ついに黒幕の登場だね」
敵の容姿にも惑わされることなく、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は油断せずに対峙する。しかし、あくまで自分の考案したスポーツが最高だと主張するオンナマズに対し、他の猟兵達は突っ込まずにはいられなかった。
「考案したって、アンタ自らやった事あんのか……?」
「はぁ? そんなもの、やらなくても分かるわよ! 私の考えた縄なしバンジーは最高! 縄なしバンジーこそ至高! 縄なしバンジーこそ、絶対にして唯一のエクストリームスポーツなのよぉぉぉっ!!」
ああ、聞かなければよかったと、ラルフ・アーレント(人狼のブレイズキャリバー・f03247)が後悔した時には遅かった。
よりにもよって、考えるだけ考えた挙句、自分では試しもしないで勧めるとは何事か! これでは、配下として使われたイソギンチャク怪人達が、あまりにも哀れ。先程の戦いで落とし穴に嵌めた挙句、盛大に焼き払った気もするが、細かいことは気にしたら負けだ。
「運だけの遊びなんてスポーツじゃないです、あんなのは唯の処刑です。身内だけでやってて下さい」
「お、おう……そうじゃそうじゃ! こんな馬鹿げた真似をする怪人なんざ、メチャ許せんよなぁ~ッ!」
冷めた表情で言い放つ弥久・銀花(人狼の剣士・f00983)の横で、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)も賛同の意を示す。もっとも、先程までかなり悪ノリしていたので、内心は少しばかり後ろめたい部分もあったようだが。
兎にも角にも、ここで怪人を倒さなければ、今までの苦労が水の泡。命を無駄にする馬鹿騒ぎなど終わらせねばならないと、猟兵達は果敢にオンナマズへと挑んで行った。
●ヌメヌメ、パニック!
無謀なエクストリームスポーツを考案し、それを流行らせようとした怪人オンナマズ。彼女自身の戦闘力はそこまで高くないものの、厄介なのは彼女の操る配下だった。
「オ~ホッホ! お前達、やぁっておしまぁい!!」
「ナマナマ~!!」
オンナマズの号令と共に、どこからともなく続々と現れるナマズ人。こちらも、個々の強さは大したことないが、しかし無駄に数が多いのは面倒だ。
「思ったよりもあっさりナマズ人は倒せますね! これは楽勝かな?」
迫り来るナマズ人を撃破しながら、思わず安堵の笑みを浮かべるルナ。もっとも、それはあくまで、相手がレベル1のナマズ人……即ち、額に1と書かれたナマズ人であった場合の話であり。
「あれ、あまり魔法がきいてないナマズ人もいませんか? それに、なんかこっちに向かってきてるような!?」
合体し、額のナンバーが増えたナマズ人は、そう簡単には倒せない。案の定、気が付けば周りを囲まれて、一斉に襲い掛かられてしまった。
「ヌォォォッ! ナママ~♪」
「や、やめてください! 纏わりつかないでください……! ヌルヌル、ヌメヌメ、やだよぅ……」
全身をナマズの粘液でベタベタにされ、ルナの瞳に思わず涙が浮かんだ。
何故だ! どうして、こうなった! そんな彼女の叫びも空しく、ナマズ人達はともすれば中央にいるルナ諸共に、取り込む形で融合しようと密着してくる。
「うへぇ、気持ち悪ぃ……。こうなりゃ、こっちも数で応戦するしかないぜ」
できるだけ触りたくなかったので、ラルフは戦闘用のゲームキャラクターを召喚し、自身の代わりにナマズ人達へと向かわせた。どことなく、キャラクター達が嫌がっているような気もしたが、きっと気のせいだろう……たぶん。
大丈夫だ。お前達なら、絶対にやれる。そう言ってキャラクター達を合体させ、ラルフは改めてナマズ人へと向かわせた。
途端に始まる、大乱戦! 数ではゲームキャラクター達の方が劣るが、合体しているため、質では上だ。このままでは拙いと思ったのか、ナマズ人達も合体しようと試みるが、そこはアリスがさせなかった。
「残念だったね。これ以上、合体なんてさせないよ」
「ナマナマァァァッ!!」
放たれた火矢に射抜かれて、ナマズ人達が燃えながら倒れて行く。戦場に、微かに漂う焼きナマズの匂い。それを嗅いだモンが食欲を抑えきれない様子で涎を垂らしていたが、そんなことよりも、今は敵を倒す方が先決だ。
「とりあえず、これでも撒いとくか」
乱闘を続けるナマズ人達の足元に、敬人がパチンコ玉をばら撒いた。それを踏んだナマズ人達は盛大に転倒し、そのまま滑ってビルの下へと落下して行く。
「ナマァァァッ!」
「ヌォォォンッ!!」
まさか、自らの主が考案したスポーツを、自身で体験することになるとは思ってもいなかったであろう。しかも、先程までの騒ぎでプールは破壊されており、下にあるのは冷たいコンクリートの床と瓦礫だけだ。
「ルブギャッ!?」
「マナ……ブショォッ!?」
地面と盛大にキスをして、ナマズ人達は弾けて散った。そのドサクサに紛れ、ルナはライオンを召喚し、ヌルヌル地獄から逃げ出した。
「はぁ……ひ、酷い目に遭いま……うぷっ!?」
何気なくビルの下を見てしまったことで、思わず口元を抑えて顔を背ける。木端微塵になったナマズ人達の姿は、想像以上にグロかった。
「さあ、これでもう、あなたの部下はいませんよ?」
「配下に頼っている分、本体は弱いと見た! いい加減に、観念するのじゃ」
丸腰のオンナマズに、銀花とアマミが武器を構えて迫る。しかし、それでもオンナマズは諦めることなく、更なる切り札を繰り出して来た。
「ふん! そう簡単に、やられてなるものですか! 出でよ、ジャイアントナマズ怪人!」
そう、オンナマズが叫ぶと同時に、現れたのは彼女の2倍近い身の丈を誇る巨大な怪人。鼻息は荒く、身体も筋骨隆々としており、いかにも強敵な感じ満載である。
「フンナマママァァァァッ!!」
オンナマズの動きに合わせ、巨大ナマズ怪人が、猟兵達に襲い掛かって来た。その一撃は軽く一振りしただけれ床を砕き、壁に大穴を開け、鉄骨を圧し折るほどに強烈な。
「オ~ッホッホ! これが私の切り札よ! さあ、お前達も大人しく、このビルの上から投げ落とされなさぁい!」
勝ち誇った口調で、ドヤ顔を決めながら高笑いするオンナマズ。だが、それでも猟兵達は怯まなかった。
このナマズだけは、色々な意味で存在そのものが許せない。迫り来る巨大ナマズの拳を避けつつ、彼らはこの状況を脱するための、次の一手に向けて動き出した。
●巨大故の盲点
召喚された大ナマズ怪人。オンナマズの動きに合わせて暴れ回るそれは、確かに強敵ではあった。
「ヌォォォンッ!!」
咆哮と共に放たれる一撃は必殺の威力を持っており、一瞬たりとも油断できない。粘性の高い皮膚は斬撃を受け流し、弾力性の強いボディは打撃を吸収し、おまけに湿った身体は中途半端な熱による攻撃を遮断する。
正に、動く天然要塞。しかし、巨大故に動きが大振りになりがちな隙を、アマミは見逃さずに距離を詰めた。
「クハハハ……見える! 見えるぞ! 其方の攻撃が手に取るようにわかるのじゃ!」
そう叫びながら、闇雲に出鱈目な方向へ走り回る。もっとも、これはオンナマズにとっても予想外。あまりに不規則かつ不可解な動きを前にして、却って動きが読めない。
「むきぃぃぃっ! ちょこまか動くんじゃないわよぉっ!!」
苛立ちを隠し切れずにオンナマズが手を振り下ろし、巨大ナマズ怪人も同様にアマミを潰さんと腕を振り下ろす。が、アマミはそれを易々と避け、巨大な怪人の背後へ回り込み。
「最早妾には一切が通じると思うな! 死ねーッッ!!」
炸裂する、渾身の力を込めた必殺の一撃。その直撃が決まった場所は……よりにもよって、敵の膝の裏だった。
「オロォッ!? オロロロォォォォッ!!」
盛大な膝カックンを食らい、巨大ナマズ怪人がバランスを崩す。その巨体は、あろうことか後ろで操っているオンナマズへと向かって倒れて行き。
「ちょ、ちょっと! なんで、こっちに向かって倒れてくるのよ! うきゃぁぁぁっ!!」
哀れ、オンナマズは自分の呼び出した巨大ナマズ怪人の下敷きに。
「ぬぅぅ……こ、こんなはずじゃ……って、ちょっと! 動けないじゃないの! なによ、これ!」
巨大ナマズ怪人に潰されたオンナマズが両手をバタバタと振って暴れるが、巨大ナマズ怪人も、同じく両手を振って暴れるだけだ。動きをトレースしている以上、オンナマズが立たねば巨大ナマズ怪人も立ってくれない。
だが、巨大ナマズ怪人の下敷きになったオンナマズは立ち上がれる状況になく、当然のことながら巨大ナマズ怪人も、このままでは彼女の上から退いてくれない。
もはや、完全に詰みである。策士策に溺れるが如く、オンナマズは自らの呼び出した切り札によって自滅した。
「よし、チャンスだ! お前ら、一気に決めるぞ!」
召喚したゲームキャラクター達を一ヶ所に集めて合体させ、ラルフはそれを動けないオンナマズに差し向ける。その後ろからは、アリスがありったけの火矢を打ち出して、巨大ナマズ諸共にオンナマズを丸焼きに!
「あ、あぢっ! あぢぃっ! や、やめなさい、アンタ達ぃっ!!」
巨大ナマズ怪人の下から辛くも這い出したオンナマズが、矢を払いながら逃げ出した。が、ここで彼女に逃走を許す程、猟兵達は甘くない。
「ライオンさん、敵はあれです!」
「うぎゃぁぁっ! し、尻がぁぁぁっ!!」
ルナを乗せたライオンに尻を齧られ、オンナマズは盛大に飛び上がった。そのまま尻を押さえて着地したが、運悪く、そこには敬人が仕掛けた罠があり。
「きゃぁっ! 今度は何……あばばばばっ!!」
古典的な落とし穴だが、高圧電流の流れるオマケ付き。電気ナマズを愛する怪人とはいえ、自分の身体に耐性を超えた電圧で電流を流されれば堪らない。
「ひぃ……ひぃ……。じょ、冗談じゃないわよ……」
満身創痍になって穴から抜け出したオンナマズだったが、もはや彼女の体力は限界だ。それに気付いた銀花が、愛刀を片手にオンナマズへと迫り。
「ナマズなんて、腸抜きして放置ですよ。私の刃で捌いてあげます」
キラリと光る、鋭い刃を突き付ける。すると、オンナマズは何故か両手で胸元を覆い、顔を真っ赤にさせて叫び出した。
「ちょ、腸抜き!? 捌く!? さ、さては、アンタ達、この私の衣服を切り裂いて、お尻にあんなことやこんなことするつもりなのねぇっ!!」
いや、誰がするかよ、そんなこと。というか、ナマズ頭の女の裸なんぞにアブノーマルな欲情するとか、UDCアースに巣食う一部の邪神の眷属どもしかいないだろう。
こんなやつ、もう話すだけの舌も持ちたくない。変に誤解をされたまま、『いあいあ』もとい、『いぁんいぁん』と泣き叫ばれてはキモ過ぎる。
「研ぎ澄まされた刃に斬れぬ物無し! 鋭刃線閃!」
「うぎゃぁぁぁっ!!」
完全にブチ切れた銀花の一撃が、オンナマズを情け容赦なく両断する。それでも、這い蹲って逃げようとするオンナマズだったが、もはや逃げ場など何処にもなく。
「(しょうがないな、力貸すよ)うみゃー! ありがとー!」
ここぞとばかりに、モンが何やら胡散臭い仏の力を借りて、倒れていた巨大ナマズ怪人の身体を投げ飛ばした。
「そ、そんな! またなのぉっ!? い、いやぁぁぁっ!!」
最後は自らの呼び出した存在に潰され、盛大に床の染みと化したオンナマズ。危険なエクストリームスポーツ、縄なしバンジーを勧める集団は、これにて無事に成敗された。
●それは食べられません
親玉怪人、オンナマズは倒され、危険なスポーツがブームになることは阻止された。
「うみゃー! 折角だし、あのナマズも料理してやるみゃー!」
最後の最後まで、モンは敵のことを食材としか思っていなかったようだ。もっとも、あんな気色悪い怪人など食べたら何が起こるか分からないため、他の者達が一斉に止めた。
(「召喚しててなんですが、ライオンってナマズ食べないですよね? ちゃんとしたもの、食べてほしいです」)
戦いの最中、オンナマズの尻に噛み付いたライオンのことを、ルナが心配そうに見つめている。ピンチも救ってもらったことだし、今日は美味しい肉でも食べさせてあげようか。
幸いなことに、キマイラ・フューチャーは楽しく弾けた未来世界。あんなナマズ人間など食さずとも、美味しいものを手に入れるには、さして苦労せずに済みそうだ。
大成功
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