●希望の花
「領主様、お願い致しますこれだけは……!」
血のように真っ赤なドレスを見に纏う少女に、縋りつく老人。瞳に涙を浮かべ、懇願するように地べたに額を擦り付ける。
そんな彼を蔑むように。少女は鋭い眼差しを向けると、楽しそうに笑みを浮かべた。
「美しい物はぜーんぶ、私が貰うのよ。それが当然でしょう?」
老体をヒールのある靴で蹴り上げると、そのまま枯れた手を勢い良く踏む。老人は痛みに顔を歪めるが、叫び声を上げれば暴君たる目の前の少女に何をされるか。
心に満ちるのは恐怖のみ。
けれど――そんな彼等にも、守りたいもの。大切にしているものはある。
ぐしゃり。
手にした真白の花弁を握り潰しながら、少女は楽しそうに笑う。
はらりはらりと零れ落ちる花弁を、転がる姿勢で眺める老人は。心を痛めたように唇を噛み締めながら、涙を流す。
夜と闇に覆われた世界――。
微かな蝋燭の光の下。微かな彩りが彼等の癒しだった。
●彩の花
ふう――ひとつの重い息を零した後、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は集う猟兵達へと向き直る。その眼差しは、いつもとは少し違う真剣なもの。
「皆さんに今回向かって貰いたいのは、ダークセイヴァーです」
闇夜が覆い、ヴァンパイアが支配する彼の世界。そこでの事件を、救ってきて欲しいと少女は言葉を零す。
そう、今回のお話はやはりヴァンパイアの討伐。
彼等に支配された場は数あれど、ラナの語るのはとある小さな村。
暗闇の中、微かな蝋燭の灯りを頼りに生活する質素な世界。決して豊かでは無いその村には、名前の通り希望の花が咲いていた。
その花は真白の薔薇の花。
光を灯すかのように鮮やかなその花は、暗い世界を照らす光のようなもの。
彼等は質素な生活でも。その花の彩を糧に頑張って生きてきた。けれど――。
「ある日、ヴァンパイアが来て……その花を、全て独り占めしてしまったんです」
村に咲く花々は全て潰し、燃やし、何もかも奪っていった。美しい物は全て自分の物。そんな考えがヴァンパイアを動かし、村人達の希望を奪った。
希望を失った彼等は、さぞ絶望していることだろう。
ただでさえ救いの無い世界。理不尽な力が支配し、いつ、誰が死ぬか分からない世界。
そんな中でも、健気に生きていけたのは――全て、希望の花があったから。
だからラナは。君臨するそのヴァンパイアを倒し。村人に花を返してあげて欲しいと語る。きゅっと杖を握る力を強め、唇を微かに噛み締める彼女の表情は真剣なもの。
まずはヴァンパイアの住む館へ向かう必要がある。
その道中はさほど困った事は無いので簡単に辿り着けるだろう。美しい薔薇が囲う、薔薇庭園の中へ足を一歩踏み込めば――そこはもう、相手の領土。
頭と片翼を失った悪食の化身が猟兵達を襲う。植物と金属に対し、ある程度の耐性を持つ彼等がどの程度いるかは分からない。
けれど、全ての花を食い尽くしたのは彼等だろう。だから、今後の為にも残しておくわけにはいかない。幸い弱体化しているようなので、倒すことはさほど難しくないはずだ。
配下の討伐が終われば、その後は屋敷内へ。敵が潜む場がどこかは分からないが、庭先で戦闘を行えばその騒ぎを聞きつけて向こうから出てくるだろう。
全ての花を奪い。村人を支配する彼女は、幼い見た目ながら確かな実力者。血を滴らせる槍を用いた、容赦の無い残虐な動きをするだろう。
彼女が好きなものは――美しい物と人々の悲鳴。
人間のことなど、ただのおもちゃのようにぞんざいに扱う。そんな彼女が村人達に、どのような行いをしてきたか。
癒しを奪い、人を殺め、見せしめに――。
数多の血が流れたのだろう。だから此処で、しっかりと終止符を打って欲しい。
全ての戦闘が終われば、村に一時でも平和は戻ってくる。
けれど――失った花は、戻ってこない。
「庭園の薔薇も、ヴァンパイアの手によって弄られているので……」
残しておくことが出来ない。だから、全てが無になってしまうのだとラナは語る。
彼等に平和が戻っても、彩りと云う希望が無いのでは今後問題に立ち向かうのは困難であろう。だから、せめてもの希望を――手作りの花を、残して欲しい。
「布でも紙でも粘土でも。何でも良いんです、しばらくの間希望になれば」
猟兵達がまず作り出すことで、村人達も鼓舞され、一緒に花作りを行うかもしれない。偽者であろうと、本物が咲くまでの希望にはなるはず。――自身の手で、希望を作り出すこともまた、彼等の心に残るはずだから。
勿論猟兵達へ感謝の心がある彼等は、ささやかだがもてなしてくれるだろう。そこから、花作りの流れにすることは難しい事では無いはず。
白花しか知らない彼等に、どのような景色を見せるか――それは猟兵達の気持ち次第。
長くなってごめんなさい。
一言謝罪の言葉を述べると、ラナは改めて猟兵達へと向き直り。
「……よろしくお願いしますね」
言葉と共に一礼をして。彼女は自身のグリモアを輝かせた。
公塚杏
こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
『ダークセイヴァー』でのお話をお届け致します。
●シナリオの流れ
・1章 集団戦(喰われた神々)
・2章 ボス戦(リーシャ・ヴァーミリオン)
・3章 日常(闇を彩る花飾り)
『POW/SPD/WIZ』の行動については、あくまで一例程度に考えてください。ご自由に、自身のキャラらしさを意識して頂けると嬉しいです。
●3章について
全ての花が失われた村で彩り作り。
紙、布、蝋。どのような素材でどう作るかは、ご自由に。
ダークセイヴァーの世界観から逸脱しない程度でしたら、持ち込みも可能です。
本物の花を持ち込むことも可能ですが、この世界で育てることは難しいです。
花作りの他。パンやチーズ、ワインに温かなスープ。
質素なものですが。簡単に村人からの感謝の振る舞いがあります。
●その他
・心情重視のシナリオです。採用は心情部分に重きを置いて考えさせて頂きます。
・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
・途中からの参加も大丈夫です。
・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。
以上。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『喰われた神々』
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POW : この世のものでない植物
見えない【無数の蔦】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 名称不明の毒花
自身の装備武器を無数の【金属を錆びつかせる異形】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 異端の一柱
【一瞬だけ能力が全盛期のもの】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
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●鮮血花
彩の無い、殺風景な村を抜け。
辿り着いた先にあるのは、鮮やかな色が覆う薔薇庭園。
芳しい花の香り。輝くような花弁は――紅色に、染まっていた。
白い花しか見たことのない村人達は知らない、紅色。
否。それは鮮血で染められた、偽りの紅。鮮やかな紅は花弁から雫が滴り。空気を含み黒に近付いた紅は闇を抱いているかのよう。
この薔薇に、どれ程の人の血が注がれたのかは分からない。
けれど広大な薔薇園だと云うことを考えると、相応の人数が必要なはず。
その花を乱暴に手で掴み。ぐしゃりと散らす存在は、背に生えた片翼を揺らす。
口に運び、暴食を行いたいのに存在しない頭部。だから彼の存在は、そのまま握り締めた花弁を手から離し、はらはらとその場に零れ落とす。
細い手や衣服に付着する紅は、花弁に塗られた鮮血のもの。汚れることも気にせず、彼等は次々と花弁を手にし、辺りに紅を撒き散らす。
――それはまるで、血痕のように。
この紅は、恐らくこの場を支配する吸血鬼によって染められたもの。
どのような理由があったかはまだ分からない。
けれど――この紅がある以上、村人達に希望は見えないのかもしれない。
トトリ・トートリド
塗り潰された花が、悲しい
嫌悪より、胸がいたい
…こんなこと、するなら
村のみんなの、大切なもの。敢えて奪う、必要なんて、なかったのに
仲間と、連携
岩群青の雨、一斉掃射して
届く範囲の敵全部、弱らせる
花は少しの間しか、咲けない
こんな咲きかた、きっと、したくなかった
…人だって、同じ
傲慢なやつの、絵具に、なるために。…生きてきたんじゃ、ない…
胸の中は嵐みたい、だけど
村の人達にどんな花を描こうか、考えて、落ち着いて
水を含んだ大嵐を、呼ぶ
攻撃しながら洗い流して
せめて最後だけ、少しだけでも
自分の色で、咲けるように
…花たち
その色、きれいに消してあげられなくて、ごめん
流されてく命の色も
…守ってあげられなくて、ごめんな
セシリア・サヴェージ
ヴァンパイアの理不尽な行いで簡単に奪われる命や希望。この世界ではもはや当たり前の光景になってしまった。
ですが、そのような暴虐は私が許しません。人々が再び希望を抱けるよう、かのヴァンパイアを必ず倒しましょう。
この異形たちはヴァンパイアの配下ですか。どのような形であれ村人たちに仇をなすというのであれば殲滅します。
不可視の攻撃は厄介ですが、植物の蔦のようなものであるのは辛うじて分かります。
植物は火に弱いのが道理。UC【闇炎の抱擁】で真勇剣に炎を付与し、襲いかかる蔦を【第六感】で感知し、【武器受け】すれば燃えて無くなることでしょう。その後本体に炎を纏った斬撃を浴びせ、闇へ葬ります。
●
闇夜の世界、ダークセイヴァー。
ヴァンパイアの理不尽な行いで、簡単に奪われる命や希望。この世界では、もはやそれが当たり前の光景。
ふう――重い息を吐き、額を抑えるセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。輝く銀の瞳は鋭さを宿し、彼女の強い意思を表しているかのよう。
「ですが、そのような暴虐は私が許しません。人々が再び希望を抱けるよう、かのヴァンパイアを必ず倒しましょう」
凛と通る声で、セシリアは宣言する。そう、数多の理不尽を彼女は打ち破ってきた。今回だって、無辜の民を守る為に。彼女は大剣を振るう覚悟を決めている。
一見美しい薔薇庭園。異形さを抱えた花と、その花弁を散らすのもまた異形。
「この異形たちはヴァンパイアの配下ですか。どのような形であれ村人たちに仇をなすというのであれば殲滅します」
どこか冷たい物言いで、迷い無く放たれる言葉。そのまま彼女は黒衣を闇に翻らせ。純白の衣装纏う成れの果てとの距離を詰める。
紅滲むその衣服の胴体は、頭が無くとも敵が目の前にいると判断したのだろう。細い指をついっと宙に躍らせた途端、数多の見えない蔦がセシリア目掛けて伸びてくる。。
狙いを定めるように彼女は瞳を細めると――そのまま大剣に黒い炎を纏わせ、一気に振りかざした。
炎に包まれ、消え行くのは蔦のほう。見えぬ蔦は燃え尽きたのか、全てが消え果てた。
蔦を放った一瞬の隙を逃さず、セシリアは一気に敵の懐に入ると。黒炎纏ったままの剣を構える。ぎりりと柄に力を加え、振り下ろせば敵のみを炎が包み込む。
燃える、燃える――頭部を持たぬ神は声も上げずに、そのまま崩れ果てる。
それが彼女の強い意思の結果。
弱き者を護る剣と盾になろうと――語る彼女の示す力。
暗い世界に咲く花々。毒々しい紅の色を見て、トトリ・トートリド(みどりのまもり・f13948)は悲しそうに琥珀色の瞳を細める。
塗り潰された花が、悲しい。
そっと尖った手を、胸元へ当てるトトリ。胸が痛むのは、痛々しい花が溢れているから。自然が好きな彼にとって、花が痛い想いをする事は場合によっては、自身が傷付く以上に痛みを感じるのだろう。
けれど、目の前の片翼の神の果ては。またぐしゃりと花を潰し散らせる。
それを見つめるトトリは息を止め――変わらぬ表情のまま、瞳を閉じた。
「……こんなこと、するなら。村のみんなの、大切なもの。敢えて奪う、必要なんて、なかったのに」
悲痛感じる彼の呟きは、けれど敵には響かない。彼等は欲望のままに、ただ手を動かし花を、人の心を傷付ける。
そんな花の姿を見るのは辛い。けれど、守る為にはやらなければならないことがある。
ついっと、彼がなぞるのは青色の戦化粧。精霊の加護込められたその指先を、彼は一点へと示した。花を殺める、片翼の存在へと。
「……この雨は、空のなみだ」
ぽつりと、いつもの口調で彼が呟けば。戦場に吹き荒れるのは青色の雨。ごうっと音を立てたかと思えば、庭園の中を大嵐が襲う。
揺れる薔薇の木々。鮮血に染まる神は、その血を洗われながらも、抵抗するように地へと爪を立てている。無数の蔦を対抗するように放つが――トトリは愛用のペイントローラーを用いて、その見えない蔦を弾き飛ばした。
彼の心は、吹き荒ぶ嵐と同じくらい荒れている。けれど、落ち着いて深呼吸をしながら雨を操る。村の人達にどんな花を描こうか――それが、世界を塗り替える彼の役割。
荒れる嵐は敵を殺めるだけでなく、輝く水滴は薔薇の花をも襲い、その色を落としていく。最後の一瞬だけでも、自分の色を取り戻し咲き誇る為に。
「……花たち。その色、きれいに消してあげられなくて、ごめん」
――流されてく命の色も。……守ってあげられなくて、ごめんな。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
いやな、花じゃな……偽の色は美しいとは思えん
この香も、何も心躍らんの。心冷える、ばかりじゃ
どこでも花は花じゃろと思うとった時期も、あったが…
今は愛でるを知ってしもうたから
わしにとっては、これは花ではないようじゃ……
せめてこの紅色が無ければ違ったのかも、しれんが
かわいそうな、花じゃな
あれらにはこれは、何なのか
なんにせよ、片翼のモノをこのままにはできん
虚の主よ、この地の花より麗しく、強かに、そして清冽な汝の姿を見せておくれ
真っ白な、薔薇の花弁に変えて攻撃を
敵からの攻撃を受けたならば、花弁で包むように切裂いていく
花の色は戻せぬが、せめて散らすものは排してやろう
いつかその色取り戻す時があることを願って
ヴェルベット・ガーディアナ
この暗い世界に白い薔薇はきっとよく映えただろうね。
それをわざわざ紅く染めてまで人々を冒涜するなんて…許せない。
そんな理不尽が簡単に起こるのがこの世界。
ボクは少しでもそんな理不尽をなくしたい。
ボクができるのはシャルローザと共に戦うことだけれど…。
UC【戦乙女の審判】を発動。
戦乙女よどうかボク達に力を貸して。
その槍とその弓で敵を打ち滅ぼして…!
護身用精霊銃:アリアで【援護射撃】【二回攻撃】
【オーラ防御】や【見切り】で攻撃から身を守る。
アドリブ連携歓迎です。
白波・柾
俺たち猟兵は人々の希望の光であり
彼らに望まれ、そうであるべくして振るわれる刃だ
彼らが困っているならば、この刃を振るうことになんのためらいがあろうか
さあ、尋常に―――勝負だ
『名称不明の毒花』がかなり厄介だな
喰らわないように気をつけていきたい
基本的にはヒットアンドアウェイで戦うことができれば
長く近接距離にいるのは相手からして分が悪い
【鎧砕き】【ダッシュ】【なぎ払い】を使用して体力を減らしていこう
危険な窮地は【咄嗟の一撃】【傷口をえぐる】で敵のけん制を行いたい
ここぞというときは『正剣一閃』で仕合うとしよう
●
俺たち猟兵は、人々の希望の光であり。彼らに望まれ、そうであるべくして振るわれる刃。――それが、白波・柾(スターブレイカー・f05809)の考える姿。
彼等が困っているならば、この刃を振るうことに躊躇いなど無い。大太刀を本体とする彼にとっては、その一振りこそが全ての意思の表れなのだろう。
すらりと輝く、長い刃。
暗闇の中だからこそ、青白く輝くその姿はとても神秘的で――敵を捕らえる柾の眼差しは、鋭い光を宿している。
「さあ、尋常に―――勝負だ」
言葉の後。彼は軽い足取りで踏み込むと、一気に敵との距離を詰める。零れた花弁が彼の生み出した風に乗り、ふわりと舞う中――彼は刃を振るった。
この一振りこそが、彼の正義。
ただただ真っ直ぐに、純真な彼の剣戟が振るわれる。
ぎりりと爪でその場に踏ん張る神の果て。その身に鮮やかな紅の血を滲ませながら、片翼をばさりと鳴らし生み出したのは黒い花びら。
すっと、柾のオレンジ色の瞳に警戒の色が宿る。
金属を錆び付かせる異形の花びら。それは、彼の攻撃手段にも。そして、本体にも悪影響を与える天敵のような存在。あれを喰らっては、全ての意味で彼は深い傷を負う。
だから彼は、強く地を踏み敵との距離をとった。
既に生み出された花びらを、無かったことには出来ない。ならば――全て当たらないように、注意をするだけ。
大きな太刀を庇いながら、ひらりと舞うように彼はステップを踏む。花びらが頬に触れ血が流れようと、ヤドリガミである彼にとっては肉体の損傷は大した問題では無い。この刃さえ、守れれば。
ひらり舞う黒の花びらが、地へと零れ落ちれば。柾はするりと敵の間合いへ。
「俺の一刀―――受けてみろ!」
閉じた瞼を開き、研ぎ澄ました精神集中で放たれるのは華麗な一閃。空を切る音すら聞こえそうなその一撃で――悲鳴も上げられぬ神は苦しそうに身をよじった。
じわり、広がる鮮血の海。
ぱしゃりと水音を響かせながら、柾は深い息を吐き。次なる対象へと刃を煌かせた。
世界に満ちるのは闇。
この世界に、白い薔薇はきっとよく映えただろう――ヴェルベット・ガーディアナ(愛しい君と踊る・f02386)は琥珀色の瞳を伏せる。
美しかった筈のもの。それをわざわざ紅く染めてまで人々を冒涜する行為。
許せない。
彼女の心に満ちるのは、そんな感情。
握る手が震えるのは、怒りからか。けれど、そんな理不尽が簡単に起こるのが、この世界であると云うことも理解している。だから――そんな理不尽を無くしたい。
「ボクができるのはシャルローザと共に戦うことだけれど……」
大切そうに抱く愛らしい人形へと語り掛ければ、少女は青い瞳をヴェルベットへと向ける。何かを、語り掛けているようで。ヴェルベットはこくりと頷くと、敵を見る。
ぐしゃりと潰され、花弁を散らせていく薔薇の花。
どれ程の被害が出ているのか。それは分からない。けれど、果てた神の罪ある行動だとヴェルベットは思うから――審判を委ねよう。
「さぁ、戦乙女の審判の時間です……戦乙女はあなたをヴァルハラへと導くでしょうか?」
彼女が紡げば現れるのは戦乙女。輝く矢と槍が戦場を包み、次々と片翼の存在へと審判を下す。光が晴れた時には――そこには無残にも散り果てた花弁のみが残っていた。
緑の木々と、紅色の薔薇に染まる庭園内。
「いやな、花じゃな……偽の色は美しいとは思えん」
すっと指先ですっかり変色した赤黒い薔薇の花弁に触れながら、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は小さく呟く。いつもは柔らかな笑みを浮かべるその表情は、どこか険しさを持ち、琥珀色の瞳が鋭く輝く。
薔薇の芳しい香りも確かに感じるが、何も心踊らない。冷えるばかり。
かつては、花は花だと。何も変わらないと思っていた。けれど今は――様々な出会いを経て、嵐吾は愛でると云うことを知ってしまった。人も、花も。
だからこの冷える紅は、彼にとっては花とは言えない。
「せめてこの紅色が無ければ違ったのかも、しれんが。かわいそうな、花じゃな」
瞳を細め、じっと花弁を見つめた後――そっと手を放し彼が向き直るのは、花を殺める片翼の神。彼等には、これはどのような存在なのだろう。
語る口を持たぬ彼等には、何も問うことは出来ない。
けれど迷い無く花散らす姿を見れば、決して許す事は出来ないと。だから彼は、右目の瞼に触れる。
――虚の主よ、この地の花より麗しく、強かに、そして清冽な汝の姿を見せておくれ。
そう、虚の主へと語り掛ける。
そして主は、応えるように花を生み出す。本来ならば視界に溢れているであろう、真白の花弁は暗い世界をくるりくるりと舞いながら、けれど確かな鋭さを持って敵を襲う。
対抗するように相手も蔦を嵐吾目掛けて放つが、見えない細い蔦は真白の花弁に包まれ霧散するように散り果てた。――そして、蔦が触れた薔薇も同じように地面へと落ちる。
薔薇が落ちる様子を見て、嵐吾の眉がぴくりと動く。
その花は、もう救えないことは分かっている。だからこそ、彼に出来ることは――。
「花の色は戻せぬが、せめて散らすものは排してやろう」
薔薇に向け優しげな眼差しを浮かべると、彼は改めて神へと花弁を舞わせる。いつか、薔薇がその色を取り戻す時があることを願って。
――戦場を舞う真白の花弁は、本来のこの場を映したかのような。泡沫の夢。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウトラ・ブルーメトレネ
紅色と、自分の尻尾や翼を見比べ
赤は、キライ
(赤は呪われた彩、生まれた時からそう言い聞かされて来た)
うーちゃん、赤だから。閉じ込められて来たのよ?
だから、この紅も。さっさと閉じ込めちゃわなきゃ
―あなたたちごと、ね
第六感を働かせつつ、オブリビオン達を注視
いきなり仕掛けることはなく、冷静に状況を判断
狙うべき相手を見極め、ドラゴニアン・チェインを放つ
オーラの鎖で繋いだら渾身の力で引き寄せて、マリー(拷問具)の中へご案内
ないない、しましょ
オブリビオンの攻撃は、可能な範囲で躱す
受けた場合は、カウンターを狙いたい
負傷には眉を顰める
痛いからじゃなくて、今は自分の中に流れる赤にさえ嫌悪
赤も、ヴァンパイアもキライ
エンティ・シェア
敵の殲滅なら、僕の仕事です
村人の希望そのものが、もう残っていないのなら
僕が気にすべきものは何もないのですから
沢山敵が居るのなら、一体ずつ確実に処理をしたい
もうひとりを召喚して、囮役と手数の確保を
そこらにある血を拝借して、拷問具を振り回しましょう
多少錆びようとも、叩きつけるだけなら威力は変わらないでしょうし
それに、鋭利な形状なら、いっそ錆付いた方がより傷口を抉れそうです
勿論仕事ですから、仕留める気でいますけど
どうせなら苦しんでください
村人の気持ちがどうこうとか、そういうつまらないことは言いません
もののついで、です
これが、僕の仕事でしたので
貴方達の主を引きずり出すためにも、ご協力お願いしますね
●
――赤は、キライ。
背の羽と短い尾を揺らしながら。ウトラ・ブルーメトレネ(花迷竜・f14228)は自身の紅と咲き誇る紅を見比べる。
いつもは無邪気な輝きを抱く空色の瞳は、どこか冷ややか。
赤は呪いの色。生まれた時からそう言い聞かされてきた彼女にとっては、それが真実。
赤だから、閉じ込められて来た。外の世界を知らなかった。
だから――この紅も閉じ込めなければ。
「――あなたたちごと、ね」
鋭い眼差しで。けれど無邪気な笑みを浮かべ。ウトラはぺたりと足音を鳴らし敵へと近付いた。油断無く、相手の出方を見ながら彼女が纏うのはドラゴンのオーラ。
そのオーラを敵へと放てば爆破音が静寂に響き渡る。風に乗り、舞い散る紅の花びらはまるで鮮血の雫のようで――ウトラは嫌悪の色を瞳に宿した。
敵を包むオーラはそのまま鎖へと変化し、ぐるりと身を拘束するように包み込んだかと思うと、敵と敵の身を繋ぎ止める。頭が無くとも、自由が奪われたことは分かる。抵抗するように地面を掻く敵は黒い花びらをどこからか作り出した。
――ふわりと舞う花びらはウトラでは無く。彼女の手にするアイゼルネ・ユングフラウへと向かう。金属を錆び付かせる花びらだと気付き、ウトラは慌てて自身の身で兵器を庇った。露出した腕に花びらが触れれば、切り傷となりじわりと血が滲む。
「……っ」
息を吸い、眉をひそめるウトラ。――それは痛みにでは無い。自身に流れる赤色が露出したことに、嫌悪の感情が満ちたから。
だから、彼女はその嫌悪さえも込めて。拘束された敵へと向き直る。
「ないない、しましょ」
ぽつり、呟かれる言葉。傷を受けなかったマリーゴールド咲く武器をぱかりと開けると、躊躇無く人の身をした敵を閉じ込めた。
鈍い衝撃が、彼女の小さな手に伝わる。じわりじわり、地に広がる赤い海。
「赤も、ヴァンパイアもキライ」
彼女の呟きは闇へと溶ける。甘い甘いその声は、どこか遠くを見ているようだった。
「敵の殲滅なら、僕の仕事です」
そう零すエンティ・シェア(欠片・f00526)の物言いは、ひどく冷たいものだった。口元に浮かべるのは冷笑。彼の心には、村人の為という気持ちは無い。
むしろ村人の希望そのものが、もう残っていないなら。エンティが気にすべきものは何も無いとすら思う。
カツリと靴音を響かせれば、頭部の無い神の果てが反応する。
先制をするように、ふわりと敵が作り出すのは毒々しい黒の花弁。宙を舞う花弁は金属を錆びさせると聞くが――エンティは、周囲の血の跡から出現させた拷問具を庇うこと無く、その場に立ち冷ややかな眼差しを向けている。
――多少錆びようとも、叩きつけるだけなら威力は変わらない。
「それに、鋭利な形状なら、いっそ錆付いた方がより傷口を抉れそうです」
くすりと浮かべる笑み。そのまま彼は、もうひとりの自分を呼び出すと――囮のように、敵の周囲へと距離を詰めた。敵は1体。こちらは2人。どうすればと、思考の巡らない様子の敵を、鮮やかな瞳で見下ろすエンティ。
仕留めるとしても、一瞬では勿体無い。
「どうせなら苦しんでください」
ギリギリと拷問具を押し付けながら、生かさず殺さずの按配で彼は攻める。
村人の気持ちがどうこうとか、そういったことでは無い。
――だたの、もののついで。
だってこれが、彼の仕事だから。全てを殲滅し、領主を打ち倒すことが。
ギリリと腕に力を込めれば、肉を裂く感触が伝わってくる。
「貴方達の主を引きずり出すためにも、ご協力お願いしますね」
器具に伝う鮮血をちらりと見た後、エンティは一番の笑顔でそう零した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュマ・シュライク
リオ(f14030)と
手塩に掛け育てたものが奪われ、元に戻せぬ沈痛たるや。
……独占しても碌なことにはならないもの。
けれど、教訓は身に刻まねば覚えませんわね。
そういえば、リオは美しいと思うものを、地上に見出せたかしら?
なるほど、空に見る星と、宙で見る星は違いますわね。
花も、宝石も、建造物も装飾品も。魂の顕れのようではなくって?
勿論、銀河の輝きも。
本当に美しいものは、権力の象徴ではありませんわ。
銀狼に前を任せ、呪詛と毒を魔法で刻む。
あとは魔女を信じて任せましょう。
完全なるアナタは美しいですわね。
でも既にその首は失われている……過去の幻を追い求めても元には戻りませんわ。
この、物言わぬ狼のように。
リオ・フェンブロー
ジュマ(f13211)と
それが彼らにとって希望であるというのであれば
身勝手に奪われる動議などありますまい
美しいもの、ですか?
そうですね。地上から見る星が
流れ星なんて聞いたことが無かったんですよ
魂の現れ、ですか。
花も、宝石もそんな風に思った事は無かったのですが…
銀河の輝きと言われれば理解できます
そう思えば、印象も変わりますね
ー…、どれ程の狂気がこの花を染めたというのか
レディ、貴方はどうだったのか…
いえ、今更問いますまい
アンサラー を起動、全力魔法で砲撃を叩き込みましょう
前はお任せください。存外、頑丈なものですよ
魔女の身に肩翼の神を前に怯む心もない
歪みし神を穿て、アンサラー
我らが祈りを届けたまえ
●
美しい薔薇庭園。――けれど、今広がる景色は偽りの色を持つ。
これだけ広大な地の、薔薇の管理。それは手塩に掛けた、努力の結晶だったのだと優に想像出来る。だからこそ、元に戻せないことに沈痛の面持ちをジュマ・シュライク(多重人格者の死霊術士・f13211)は浮かべた。
「それが彼らにとって希望であるというのであれば。身勝手に奪われる動議などありますまい」
いつもは柔和な表情を浮かべるリオ・フェンブロー(鈍色の鷹・f14030)も、今回ばかりは少し険しい眼差しで。そっと首を振る彼に、ジュマは頷いた。
「……独占しても碌なことにはならないもの」
零れる息と共に紡がれる言葉が、暗い世界に消えていく。ぐしゃりと花を潰し、尚も世界に紅を振りまく神の果て。彼等に、ジュマの言葉は響かない。だからこそ、その教訓は身に刻まなければならない。覚えない。
カツリと靴音響かせたジュマは、ふわりと宙に手を泳がせた。するとどこからか、彼の足元に銀色の大狼が現れる。吼えるような仕草をしたが、音は響かずに勇み足で前へ飛び出る様子を彼は静かに見守る。
前は狼に、そして魔女に任せれば良い――そう想い、ちらりと視線を横にやれば。
「前はお任せください。存外、頑丈なものですよ」
笑みを浮かべたリオが、その視線に頷いた。そのまま彼はアンサラー――漆黒の砲台を展開する。そのまま構え、確かな狙いを持って全力の一撃が撃ち込まれる。
相手は神であろうとも、頭部と片翼を喰われ弱体化した身。怯む心すら生まれず、笑みを浮かべたままリオはそのまま狙いを定める。
「そういえば、リオは美しいと思うものを、地上に見出せたかしら?」
確かに後方より魔法を刻みながら、ジュマはふとした疑問を口にしていた。――戦場で距離があっては聞き取りづらいと思い、少し声を張り上げて。
その疑問にリオはぱちりと沈む青の瞳を瞬いた。視線はしっかりと敵を捉え、攻撃の手を休めずに。口と意識を感謝の気持ち抱く仲間へ向け言葉を紡ぐ。
「そうですね。地上から見る星が。流れ星なんて聞いたことが無かったんですよ」
ふわりと笑む姿は、本当に美しいと思ったのだろう。戦闘中だとは想えないほど穏やかな笑みは、ジュマからは見えない。けれど彼の口調からそれは窺い知れる。だって、彼の出生を考えるとなんとなく分かるから。空に見る星と、宇宙で見る星は違うことが。
黒い髑髏抱いたジュマは、再び精神を集中させると敵へと毒の侵食を試みる。狙撃と狼の牙、そして蓄積したダメージを負う神は、苦しげに身もだえながらその場に横たわる。
まずは1体――そう言いたげに瞳を細めるジュマ。
冷静に次なる対象へと意識を逸らしつつ、口から零れるのは雑談の続き。
「花も、宝石も、建造物も装飾品も。魂の顕れのようではなくって?」
「魂の現れ、ですか」
問い掛ければ、変わらぬ応えが返る。リオの好きな銀河の輝きも、同じこと。そう付け加えれば、イマイチ理解出来ていなかったリオも直ぐに頷いた。彼の価値観の中では、現地に溢れる輝く物より、やはり宇宙に輝く神秘の星々が分かりやすい。
「本当に美しいものは、権力の象徴ではありませんわ」
輝く金の瞳を細め、ぽつりと零す男。美しい物を独り占めしようとする、少女に対する言葉なのだろう。今はまだ通じなくとも、この先へ進めば語ることも出来るはず。
だから彼等は、目の前の障害たる神々を討つ。
美しい物を散らすことしか出来ない、歪んだ神を。
神が潰した花から手を放せば、風に乗りふわりと世界を舞う。リオの目の前をくるりと舞う花弁を見て――彼はひとり、寂しげに瞳を細めた。
どれ程の狂気がこの花を染めたのか。レディ、貴方はどうだったのか……。
「いえ、今更問いますまい」
ふるりと首を振れば、彼の緩やかに編まれた三つ編みが揺れる。前で揺れるその髪を見つめたジュマは――砲台からの攻撃を受け、傷を抑える神へと視線を向ける。
「完全なるアナタは美しいですわね。でも既にその首は失われている……過去の幻を追い求めても元には戻りませんわ」
既に喰われた部位は戻らない。紅に染められた花と同じく。
だからこの地から断ち切ろう。全てが消えれば、きっとまた希望の芽は生まれる。
抵抗して放たれる見えぬ蔦を避け、弾き、時に受け止めながら。彼等はただ全力で、この地の歪みを晴らそうと動いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葉月・零
綺麗なものは全部自分のもの?
なんというか、うーん、その理屈が気に入らないんだよなぁ。
きっと綺麗なバラだったんだろうに。人の犠牲の上に成り立つ美しさなんて……綺麗とかではなくて醜いものでしかないのではないかなぁ。と俺は思うんだけど。
まぁ、頭ないから口もないだろうし、君たちに言ってもダメなんだろうなぁ。
だから、加減なんてしないし、さくっと片付けて君たちの主人に文句言うことにするね。
エレメンタルファンタジアで、炎の精霊に力を借りて。
炎の嵐で薔薇もろとも焼きつくして。
薔薇には悪いけど……これが残ってちゃダメだと思うから。
ついでにその片翼も炎に巻き込めたら、地に堕ちて戦いやすくなるかな?
オズ・ケストナー
バラの花が…
わたしのおうちにも咲いていた
手入れをされないバラがきれいに咲くのはむずかしい
しってる
だから、きれいに咲いているのはだいじにだいじに育てられたものだって
それをぜんぶうばうなんて
今はもう立ち入ることが許されない
自分のおうちを思い出して目を閉じ
赤いバラは、きれいな深紅
でも目の前のバラは
こんな、痛い色
やだ、いやだ
シュネーには見せたくない
握りしめた斧を振り回して【範囲攻撃】
【武器受け】をして斧の錆に気づいたら
ぱっと距離を取って
【ガジェットショータイム】
金属がなくて、使ったことがあるのは棍
いつもより息が上がるのが早い気がする
落ち着けようと大きく息を吐いて
希望を、とりかえさなきゃ
再び武器を構えて
●
「バラの花が……」
そう呟くオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の声は、いつもの楽しげな明るい声色ではなかった。
薔薇は、家に咲いていたからよく分かる。手入れをされない薔薇が、綺麗に咲くのは難しい。その世話も一苦労だと云うことを。
だから、綺麗に咲いているのは大事に、大事に、育てられたものだと云うこと。
視界に広がる緑には、大輪の花と数多のこれから咲き誇る蕾を抱いている。けれど、どれも等しく紅の色に染め上げられ、毒々しい世界を作り上げている。
悲しげにキトンブルーの瞳を伏せるオズ。彼のこのような表情は珍しい。
――美しい薔薇情景は、瞳を閉じれば思い出すことが出来る。
もう、立ち入ることが許されないその場には、美しい薔薇の花が咲き誇っていた。そう、それは今目の前の景色のように。
全部を奪われ、染められた薔薇の花々。真意を知らなければ、ただ美しいと感じる深紅色を宿している。鮮血は輝き、雫が零れ落ちる様子もまた美しい。
けれど、痛い。
見ているだけで、オズの心はズキズキと痛む。
「やだ、いやだ。シュネーには見せたくない」
胸を押さえ、首を大きく振りながら。彼は抱える美しい人形の瞳に、自身の関節が目立つ手を添えて世界を隠す。
キリリと彼の眼差しが強くなる。嫌だと、語るだけではない。彼は真っ直ぐに花を奪う神の果てへと巨大な斧を振り回し、勢いよく振り下ろした。
避けることも出来ず、傷を受ければ神の血が零れ落ちる。その痛みを振り払うように、彼は毒々しい黒い花びらを生み出し、未だその身体に突き刺さる斧へと放った。
くるり、舞う花びらは不思議な力を持ち斧をじわじわと錆び付かせていく。
輝かしい金色が変色していく。その様子に気付くと、オズは慌てて距離を取り、その斧を棍へと変形させる。――その拍子に、彼の頭に飾られたシルクハットが地面に落ちた。
美しい青と紅の花を見て。彼の息はいつもより早く上がっていることに気付く。
落ち着けよう。
微かな時間瞳を閉じ、息を吐いて呼吸を整える。
「希望を、とりかえさなきゃ」
零れる言葉は彼の意思の証。強い心を表すように、彼は武器を構える。
再び花びらが襲おうとも、もう怖くは無い。彼の心は、止まることは出来ないから。
綺麗なものは全部自分のもの。
「なんというか、うーん、その理屈が気に入らないんだよなぁ」
ぼんやりとした気怠げな眼差しのまま、自身の頭をかきながら葉月・零(Rien・f01192)は零す。
辺りに広がるのは緑と紅のコントラスト。
その色は正体が分かった今は、毒々しくも見える。きっと、元は綺麗な薔薇だったのだろう。人の犠牲の上に成り立つ美しさなんて……綺麗とかではなく、醜いものでしかないのではないか。眼差しを細め、零は心に思う。
それを伝えたいのはこの地を荒らす暴君たる領主と、次々と花を散らす神の果てへ。
「まぁ、頭ないから口もないだろうし、君たちに言ってもダメなんだろうなぁ」
溜息混じりに彼が零すように、零の言葉など聞こえていないようなそぶりで。彼等はまた新たな花を握り潰していく。――零れた赤黒い花弁が、ふわりと風に舞い宙を舞う。
その様子に彼は、加減などいらないと思う。
かざすのは精霊宿した魔法の杖。彼の祈りに乗せるように、炎の精霊の力を込めた赤い光が眩く輝いたかと思えば、数多の炎の弾が降り注がれ嵐を成す。
細い身を、片翼を燃やし神の果ての動きを封じるだけでなく。彼は辺りに咲く薔薇をも炎の対象とし、次々と燃やしていく。
――薔薇には悪いけど……これが残ってちゃダメだと思うから。
それは色だけではなく、ヴァンパイアによって何か危険な手が加えられている可能性もある。それが無くとも、見たことの無い紅色の真実をしった村人はどう想うだろう。
立ち上がれない程の絶望を感じる可能性すら、ある。
だから零は、宿す力を緩めはしない。暴走しない程度に、強い意思を持って辺りを燃やし尽くそう。全てを、灰燼に帰そう。
「さくっと片付けて君たちの主人に文句言うことにするね」
緩く口元に笑みを浮かべ、語る彼の眼差しの先は――主人がいるであろう館へと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリゼ・セラ
まあ、醜いこと!
欲望も度が過ぎると見るに堪えませんわね
わたくしなら、もう少し上手に『独り占め』してみせますけれど
あら、ウフフ 冗談ですわ
静寂に仄か咲く白薔薇は何と美しかったのでしょう
それをわざわざ穢すとは――わたくしも蒐集者の端くれではありますが、趣味は合わないようですわね
せめてありのまま愛でていたなら、語らうこともあったのかもしれません
しかし此度、わたくしは正義の味方――全て灰にと求められたなら応えましょう
ウィザード・ミサイルで敵ごと燃やし尽くしてみせますわ
植物と金属を操る生き物なら、炎には弱いのではなくて?
鳴き声が聞こえないのが残念ですけれど
庭ごと派手に燃やし尽くせば、主人にも届くでしょう
リーヴァルディ・カーライル
…ん。失った物を取り戻すことはできない。
だけど、希望を残すことはできるはず…。
その希望を終わらせる事は赦さない…。
…この地から立ち去りなさい、異端の神々。
魔力を溜めた両目に第六感が捉えた殺気を、
存在感のある残像として暗視して行動を見切り、
不可視の蔓や攻撃を大鎌のカウンターで迎撃する
…この程度の攻撃に当たる気はしないけど。
刃の通りが悪いのが厄介ね。
“血の翼”を広げて空中戦を行い、
血色の呪詛を大鎌に纏わせUCを二重発動(2回攻撃)
傷口を抉り生命力を吸収する波動を放ち敵陣をなぎ払う
…どうして吸血鬼に従っているのか知らないけれど、
ここは未来を目指す人が住む世界。
過去の残骸は、華のごとく散りなさい…。
●
ゆるりと紫水晶のように輝く瞳を閉じ。リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は深く息を吸う。
美しかったであろう、白い薔薇の影はもう無い。
この地を埋め尽くすのは、どこか狂気を孕んだ紅の花のみ。
失った物を取り戻すことは出来ない。けれど、希望を残すことは出来るはず。
その希望を、終わらせることは赦さない。
「……この地から立ち去りなさい、異端の神々」
瞼を開き。輝く瞳で見つめるのは、片翼だけの異形の存在。神聖だったであろう彼等は、今は地に落ち食べられぬ花を散らすことしか出来ない。
紫の輝く瞳に宿るのは魔力。
敵の放つ見えぬ蔦だって、その気配を察せれば避けられなくはない。大きな黒い鎌を振るい、弾き返しながら彼女は瞳を細めた。
「……この程度の攻撃に当たる気はしないけど。刃の通りが悪いのが厄介ね」
ぽつりと呟かれたその言葉は、敵に聞こえているのかいないのか。けれど敵は、更にリーヴァルディを追い詰めようと蔦を放っている。
四方八方から攻められる蔦を、避けるだけで精一杯。
――ならば。
静かにリーヴァルディの背に広げられるのは、血色の翼。魔力で作られたその翼を用い、彼女は宙へ浮かぶと大鎌を構え、勢い良く血色の波動を放った。
1つ、2つ――放たれる波動に、苦しみもがく神の姿。その姿を見ながら、少女は息を零す。どうして彼の存在が、吸血鬼に従っているのかは分からない。けれど、此処は未来を目指す人が住む世界。
「過去の残骸は、華のごとく散りなさい……」
彼女の呟きの後。更に放たれた波動により、神の身は儚い花のように散り果てた。
「まあ、醜いこと!」
潰され、儚く舞う花弁を見つめながら。セリゼ・セラ(薔薇の名前・f17738)は憤慨したように声を張り上げた。
彼女も美しい物が好きだが、敵の欲望も度が過ぎると見るに堪えない。染められた紅色の花々は、どのような意図でそんな見た目に成り果てたのか。
「わたくしなら、もう少し上手に『独り占め』してみせますけれど」
ぽつりと言葉を零した後、冗談だと優雅に笑むセリゼ。――けれど、敵の所業が許せないと云う心は本物。静寂の中。整えられた緑の木々に咲く白は、きっと美しかったことだろう。それをわざわざ血で汚す所業。
「わたくしも蒐集者の端くれではありますが、趣味は合わないようですわね」
恋を宿す瞳を細めながら、セリゼは零す。せめて染めずに、ありのままの薔薇を愛でていたならば。敵とはいえ語らうこともあったかもしれない。
けれど、今のセリゼは正義の味方。
「全て灰にと求められたなら応えましょう」
強い口調と眼差しでそう零し。彼女は小さな身体で杖を翳すと、自身の身体より大きな炎の矢を作り出す。
燃え盛る炎は、真っ直ぐに神の果てへと降り注ぎ――その身も、散りゆく薔薇をも燃やし尽くしていく。赤々と燃えるその色は、染められた血とは違う鮮やかな色。
植物と金属に耐性があると聞いた。ならば、炎には弱い。そう思った通り、声は聞こえないが燃え盛る熱に敵は苦しそうに身をよじっている。
全てを燃やそう。穢れた花は、残すべきではない。
燃え盛るこの景色に気付けば――分かり合えぬ相手にも届くだろうから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『リーシャ・ヴァーミリオン』
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POW : 魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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●鮮血人形
神の果てが消えれば、そこに残るのは零れ落ちた血痕のような紅色。
そして、そこかしこ焼け焦げた跡は。歪んだ薔薇の花々を消え去ろうとした名残。しかし広い庭園内全てを燃やすには、まだ時間が足りない。
「さっきから誰? 私の屋敷で騒いでいる奴等は」
――鈴のような愛らしい声が耳に届く。
ヒールの音を響かせて、立派な屋敷の扉を開けて現れたのは。真白の肌に銀色の髪、そして血のように鮮やかな瞳とドレスを身に纏う少女だった。
鋭い眼差しを持つ彼女は、どこか楽しそうに笑い猟兵達を一瞥する。
「まだ薔薇を返して欲しいだなんだって、言う余裕があるの? もっともっと痛めつけてやらないとダメかしら?」
無邪気な笑みで笑い声を零しながら。けれど零す言葉は歪で残虐。
これがこの地を支配する 『リーシャ・ヴァーミリオン』 だとは、名乗られなくても察する。幼い見た目ながら、威圧感を感じる彼女は相応の強さを持つのだろう。
その手に握られた槍をキラリと輝かせ、不敵に笑むリーシャ。
武器を構える猟兵達に、彼女はピクリと不機嫌そうに眉を動かした。村人が生意気だと、言いたげに。だから猟兵達は、自身が余所者だと名乗り上げる。
「どうでもいい。たかが人間の顔なんて覚えているわけがないでしょう?」
さも当然のように語る彼女。そんな彼女に対して、素朴な疑問を問い掛ける。
何故、薔薇を奪うのか。
何故、真白の薔薇を歪な紅に染めたのか。
「そんなの美しいからでしょう? 私は赤が好きなの。私に相応しい色だもの」
悪びれも無く語るリーシャ。見せしめに、戯れに、人の命を奪っては血を注ぎ花を愛でてきたのだろう。
「知ってる? 薔薇って血を吸うと美しく咲き誇るのよ」
口元に指を当て、無邪気な笑みを浮かべる少女。
それ以上の言葉は紡がないが、彼女が言いたいことはなんとなく理解出来る。
薔薇は、花びらに鮮血を注がれただけではない。
その地中に、数多の罪無き人が眠っているのだろう。
全ては、彼女の美しさを求める想いから。人間など、ヴァンパイアであるリーシャにとってはおもちゃや、ただの養分でしか無いのだ。
「さあ、アンタ達も私の薔薇の養分になって貰うわよ!」
槍を構えるリーシャ。このまま彼女を生かしていては、更なる被害が出ることは明白。
一刻も早く、美しさに囚われたヴァンパイアの討伐を。
そして村に希望を。光を取り戻さなくてはならない。
オズ・ケストナー
もう、バラを血にそめないで
言ったって届かないのは
わかってた
だけど言わずにはいられない
血を吸うと美しく咲き誇るなんて
しらない
このバラは、ちっともうつくしくなんて見えない
走り出す前から
息がくるしいような気がする
これは、なんだろう
【ガジェットショータイム】
武器を振り上げ
攻撃は雑に【武器受け】
多少攻撃がかすっても厭わず
わたしには血が入っていないんだ
壊しても、バラに血はあげられないよ
ああ、でも
ケガをしたら心配をかけてしまうんだった
ともだちのつらそうな顔を思い出して
シュネー
頼りたくはなかった彼女に時間を稼いでもらい
いつもの身の振り方を思い出そうと
シュネーに迫った刃を弾いて
うん、だいじょうぶ
いこう、シュネー
エンティ・シェア
奇遇ですね。僕も、どうでもいいんです
貴方が何を好んで何を虐げ何を殺そうと、全て、どうでも
ただ僕が貴方を殺すつもりでいる。それだけです
興味がないので、できれば早く殺されてくれません?
…ほぼ本音ですが、煽られて機嫌を損ねてくれませんかね
怒りを与えられそうなら挑発しつつ色映しでその怒りを叩き返させて頂きましょう
興味がなさそうなら仕方ありません、地道に殴ります
先の戦闘と同じ拷問具で攻撃しつつ、他の猟兵が隙を突いたりしやすいよう、当たらずとも大勢を崩すようなことができれば
血に塗れた薔薇を見ているのは、流石に気分のいいものでもありませんし…
僕の拷問具の触媒にして、少しでも赤い面積を減らせれば良いですね
●
「もう、バラを血にそめないで」
キトンブルーの瞳を震わせながら、オズ・ケストナーの口から零れる言葉は真剣そのものだった。普段は笑顔浮かぶその端正な顔に、今は珍しく怒りを感じる。
彼の悲痛な叫びのような声は、確かにリーシャの耳に届く。けれど少女は。
「どうして? 私が好きなようにすることに、何の問題があるの?」
瞳を瞬き、そう語る。全く理解が出来ない。人を傷付けるということが分からない。だって彼女はヴァンパイア。
オズは俯き、握る手が震える。
言っても届かないことは分かっていた。けれど、言わずにはいられなかった。
だけど、真っ向から言葉にされると改めて胸に重いものがのしかかるようで、きゅっと締め付けられ苦しくなる。
胸を押さえるようにベストを握り締めるオズ。
血を吸うと美しく咲き誇るなんてしらない。
このバラは、ちっともうつくしくなんて見えない。
荒い息を吐くオズ。走り出す前から、息が苦しいのは気のせいだろうか。これは、なんだろう。その答えは見えないけれど――彼は想いに任せて、細い棒が集まったように見える刃を作り出す。巨大な武器を迷い無く振り上げ、オズは真っ直ぐ――リーシャに目掛け刃を振るえば、彼女も血塗られた槍の刃を向ける。
刃と刃が交差する。
零れる鮮血は――リーシャだけ。
「!?」
紅が見えないことに彼女は驚く。確かに刃は、オズの横腹に当たったはず。戸惑う敵の眼差しを見て、オズは静かな笑みを浮かべる。
「わたしには血が入っていないんだ。壊しても、バラに血はあげられないよ」
血と云う目に見えての傷の証は見えない。けれど怪我はする。そして――怪我をしたら心配を掛けてしまう相手が、彼にはいる。
思い浮かぶのは、友のつらそうな顔。
だから彼は、大切な雪白の友達の名前を呼ぶ。糸に操られふわりと舞うシュネー。
視界に映る雪白の姿は、よく見るもの。頼りたくは無かったけれど、その姿を見れば彼の心も落ち着くから――息を整え、彼はいつもの笑みを取り戻す。
目障りだと、友を攻める刃をガジェットで弾けば。彼は友を腕に乗せて微笑んだ。
「うん、だいじょうぶ。いこう、シュネー」
優しく強い笑みを抱いて。この気持ちで立ち向かえば、負けなどしない。
人間なんて、どうでもいい――。
その言葉を放った少女に向け、くすりと笑むとエンティ・シェアは言葉を掛ける。
「奇遇ですね。僕も、どうでもいいんです」
そんな、同調の言葉を。
意外な反応に、リーシャはピクリと反応するが。油断無く槍は構えたままで、けれどエンティの言葉に耳を傾けようと、踏み出した足を一歩引いた。
だから彼は言葉を紡ぐ。――彼がどうでもいいのは、吸血鬼たる彼女が何を好んで何を虐げ、何を殺そうとも。
エンティが彼女を殺すつもりでいる。ただそれだけ。
「興味がないので、できれば早く殺されてくれません?」
冷たい眼差しで笑みを浮かべたエンティがそう零せば、リーシャは眉を吊り上げ握った手を振るわせた。カツリとヒールを響かせて、鋭い眼差しでエンティを見る。
「なんなのアンタ! あまりにも、あまりにも無礼よ!」
顔を真っ赤に染め、怒りを露にする少女。そのまま彼女は、勢い任せに踏み込むとエンティ目掛けて槍による重い一撃を放とうとするが――冷静な彼にひらりとかわされる。
その行動もまた、リーシャの怒りを高めていく。
(「……ほぼ本音ですが」)
彼の狙い通り、煽るような言葉に彼女は機嫌を損ね冷静さを失っている。だから彼はひらりと、華麗にリーシャの懐に潜り込むと。血色の瞳を見つめ。
「その感情、お返しします」
ひとつ呪文を唱えると――目の前に現れたのは鏡。その鏡がキラリと煌いたかと思えば、突然強烈な衝撃波が生まれリーシャのみを弾き飛ばす。
「きゃああああ!」
上がる悲鳴。
それは彼の思惑の通りに、怒りを露にした彼女に対する反撃の傷。地面に倒れこんだ彼女は、起き上がるが更にきつくエンティを睨みつけた。
あまりに予想通りの流れに、エンティは思わず息を零す。そのまま彼は――辺りの染められた薔薇の血を触媒に、拷問具を作り出した。
(「血に塗れた薔薇を見ているのは、流石に気分のいいものでもありませんし……」)
少しでも赤い面積が減らせれば良い。
そんな微かな想いでの行動。――けれど、被害者の血で作られた拷問具による攻撃は。きっと死者の心を救うだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
最早問答は無用です。お前が欲望を満たすために人々を手にかけると言うなら、私は使命を果たすためにお前を討つだけのこと。
UC【血の代償】を発動。受ける傷を力にかえて戦います。私には彼女が繰り出す攻撃なぞ恐れぬ【勇気】がある。
致命的な攻撃のみ【武器受け】で防ぎ、その他の攻撃を【激痛耐性】で耐えながら【捨て身の一撃】で反撃します。
この身がどうなろうと無辜の人々の一助となれるならば...。暗黒騎士の務め、果たさせていただきます。
ヴェルベット・ガーディアナ
この薔薇は醜い。ハッキリとそう言えるよ。
たくさんの人を犠牲にしたこの赤は美しくない。
綺麗な白を踏みにじった。お前もね…。
さぁ、シャルローザ。一緒に踊ろう。
お前に美しい白を見せてあげるよ。
【フェイント】を交えた攻撃。
攻撃は【第六感】で【見切り】
【パフォーマンス】で気を引き【おびき寄せ】
【二回攻撃】を叩き込む。
踊る様に華麗に軽やかに。
UC【絶望の福音】で敵UCを回避し。
隙ができたところにさらに攻撃。
アドリブ連携歓迎。
白波・柾
なんとも強大な敵だな
そして、厄介にして攻略の難しい敵だ
だが、このような場所には鮮血こそ似合わない
そして、俺たちのやることは変わらない
この強大な敵すらも、乗り越えて見せよう……!
基本的にはヒットアンドアウェイで戦うことができれば
【怪力】【鎧砕き】【ダッシュ】【なぎ払い】を使用して体力を減らしていこう
危険な窮地は【咄嗟の一撃】【傷口をえぐる】で敵のけん制を行いたい
【敵を盾にする】【追跡】も使用して、敵の技との相殺を狙っていきたい
ここぞというときは『正剣一閃』で仕合うとしよう
●
「なんとも強大な敵だな」
思わず深い溜息を零す白波・柾。敵は1人だが、確かな強さを持つヴァンパイア。厄介にして攻略の難しい敵だと思うが――大太刀の柄を握り、戦う意思を彼は表す。
このような場所には、鮮血こそ似合わない。
そして、柾のやることは変わらない。
「この強大な敵すらも、乗り越えて見せよう……!」
大太刀を構えれば、光を浴びてきらりと長い刃が妖しく煌く。
鋭いオレンジ色の瞳で見つめるのは、ただ1人の少女。真紅に染まる彼女を、打ち倒して見せよう――その意思で彼は、迷い無く距離を詰めた。
この戦いに迷いなど無い。
だって、彼の刀は敵を斬るためにあると、そう信じているから。
だから彼の瞳は、どこまでも真っ直ぐに敵を見る。
敵は1人なのだから、体力さえ尽きればこちら側の有利にもなるだろう。柾は翻弄するように、右に左へ攻撃をかわしながら戦場を駆け回る。大きな武器を手にしていることが、嘘のような華麗な立ち回り。
「ちょこまかと、うざいわね!」
舌打ち混じりに呟くリーシャ。うろうろと瞳を動かし、迷いながらも柾に向けて鋭い切っ先を向けてくるが――ひらりとかわし、彼は刃でその動きを止める。
隙を狙うように、勢いよく槍による突きが放たれる中。煌く美しい刀身を向け、彼は体力が削られて動きの鈍くなった少女に向けて一閃を。
ぽたり。零れる鮮血。
それは薔薇の花では無く――紅に焦がれた少女から零れた一滴。
つうっと、柾の持つ大太刀の刃にも。鮮血が伝っていくのが見えた。
楽しそうに笑う少女の姿に。セシリア・サヴェージはふう、と溜息を零した。
輝く瞳で鋭く睨み、彼女は大きな剣を持ち上げる。
「最早問答は無用です。お前が欲望を満たすために人々を手にかけると言うなら、私は使命を果たすためにお前を討つだけのこと」
同情など無い。相手は罪の意識など持っていないのだから。
そう判断したセシリアは、瞼を下ろし暫し深呼吸。――その瞼を開いた時、彼女の瞳が血のような真紅色へと変化していた。
そのまま迷うこと無く、リーシャへと近付くセシリア。特大剣を迷い無く、慣れた手付きで振り下ろせば、敵の真白の髪がはらりと散った。
「なあに? その目は」
間の前に対峙すれば、セシリアの瞳に眉を寄せ嫌悪を露にするリーシャ。無辜なる人々の為に。そう想うセシリアの瞳は真っ直ぐで――その眼差しが苛立ったのか、敵は槍を構えると真っ直ぐに、セシリアの露出した足を狙うように刃で突く。
大剣ゆえか。次なる攻撃に移る前に生まれた隙を突くように。
ギリリと奥歯を噛み、堪えるセシリア。痛みなど我慢出来る。致命傷はかわしたから問題は無い。この身がどうなろうとも、彼女には果たしたいことがある。
「暗黒騎士の務め、果たさせていただきます」
凛とした声が響き渡る中、彼女は暗黒の炎を大剣へと纏わせリーシャへと振り下ろす。
紅が好きな彼女を、闇が埋め尽くすように――。
この薔薇は醜い。
そう、ハッキリと言えるとヴェルベット・ガーディアナは想う。
「たくさんの人を犠牲にしたこの赤は美しくない」
そして、綺麗な白を踏みにじったリーシャも――。
そう零すヴェルベットに向け、彼女より背の小さなリーシャは釣り上がった眉をぴくりと動かし、不機嫌そうに視線を向ける。
「あら、私の赤を侮辱するなんて。自分の立場を分かっているの?」
その言葉に、ヴェルベットはくすりと笑う。
彼女は知らない。美しいものが何かということを。
「さぁ、シャルローザ。一緒に踊ろう」
言葉を紡げば、彼女の抱く真白の人形がふわりとドレスを広げ宙を舞う。細い銀糸を操れば、まるでダンスを踊っているかのようにふわふわと。
「お前に美しい白を見せてあげるよ」
琥珀色の瞳を向けそう零し――人形を彼女の視界に入るように操る少女。
「もう! その白もアンタの血で染めてあげるわ!」
苛立ち含んだ声で放てば、敵は血塗られた槍を真っ直ぐに、ヴェルベットの急所目掛けて放つが――寸でのところで避けられる。それはまるで、未来を予測するかのように。
予想外のことに驚くリーシャ。その背後はがら空きで、ヴェルベットはその隙を逃さず背後から攻撃を仕掛ける。
宙をふわりと舞う真白の人形が、敵の瞳には映っていたことだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
モルテ・フィオーレ
【KoR参加】
アドリブ等歓迎
貴女は美しい薔薇を咲かせるのね
私は荊なのに
咲けないのに
羨ましいわ
妬ましいわ
憎らしいわ
ねぇ
だから
今度は貴女の血で綺麗な赤薔薇を咲かせるのがいいと思うのよ
サクラコさん、フラウロスさん
まだ未熟な私を助けてくれるなんて
優しい人
だから私もがんばるわね
呪詛を込めた荊を操って纏い鞭のようにしならせて攻撃したり脚を絡めて2人の攻撃が当たりやすいようにしてみるわ
怪我をしたなら【生まれながらの光】で癒すわ
戦いに集中して貰えるように
私は死ねないけど
あなた達はそうじゃないでしょ
気をつけて
白い薔薇も赤い薔薇も等しく美しいの
花を求めるひとへ
美しい花を返しましょう
それが
花の望みでもあると思うのよ
フラウロス・ハウレス
【KOR】
ふん、相変わらず傲慢ではないか、リーシャ=ヴァーミリオンよ。
そんなに血の薔薇が好きなら、貴様の血で彩ってやろうぞ!
「さぁゆくぞ、サクラコ、モルテ。神だろうが出遅れたら置いていくぞ!」
自らの指と同化した黒爪を鋭く伸ばし、相手の懐に駆け込んで斬りかかる。
サクラコはともかく、モルテはこれが初陣だ。フォローはサクラコに任せるが、せめてリーシャの気は惹いてやろう。
「ククク……どうした?まさか妾に気圧されているわけではあるまいな!」
相手が逆上したら、相打ち覚悟で【ブラッディ・インパクト】を合わせる。
受けた傷は黒爪からの『吸血』と『生命力吸収』、それとモルテの癒しで補おう。
「フン……隙だらけだ!」
鏡彌・サクラコ
【KoR参加】
花は地に咲き誇るもの
染めては興が削がれます
我が身は民の願いを映す鏡なり
サクラコが敵を誅しましょう
感情の昂りは無し
いつも通り僅かに微笑みさえ浮かべて状況を確認します
敵とフラウロスちゃんを見比べて小首を傾げ
雰囲気似てますねい?偉そうなところとか
おっと、口にしたら双方から怒られちゃいますか
バレたら失敬失敬でいす
まあ水と油みたいなものですねい
後衛は任されました
銅鏡33枚をフラウロスちゃんの周囲に展開
敵の攻撃を受け流しつつ
死角から回り込んで攻撃させます
もちろんモルテさまへの攻撃は通しません
相手が焦れて隙を見せるまで
幾度でも攻め続けましょう
●
「貴女は美しい薔薇を咲かせるのね。私は荊なのに。咲けないのに」
モルテ・フィオーレ(朽荊・f17424)の髪に飾られた、黒の荊冠が重たく感じる。
羨ましい。妬ましい。憎らしい。
どす黒い感情がモルテの胸に満ちる。――貴女の血で綺麗な赤薔薇を咲かせるのが良い。そんな事を想い、静かに微笑んでいると。
「ふん、相変わらず傲慢ではないか、リーシャ=ヴァーミリオンよ。そんなに血の薔薇が好きなら、貴様の血で彩ってやろうぞ!」
想い耽る少女を破ったのは、フラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)の言葉だった。どこか尊大な物言いで、きらりと尖った牙を煌かせ笑う少女。
敵は小さな少女の言葉に、どこか見下した眼差しで口を開く。
「傲慢で何が悪いの? 私にはそれだけの力がある。口答えするほうが問題じゃない」
鋭い眼差しで、牙を煌かせ笑うリーシャ。――そんな2人の様子を、鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)はまじまじと交互に見つめる。
(「雰囲気似てますねい? 偉そうなところとか」)
小首を傾げつつそんな事を想うけれど、口にしては恐らく怒られるだろう。そっと胸の内に秘めて、サクラコは改めて敵へと向き直る。
辺りに咲くのは血で染められた紅の薔薇。それを美しいと彼女は言うけれど。
「花は地に咲き誇るもの。染めては興が削がれます」
柔らかく笑み、サクラコはそう告げる。ふわりと彼女の身の周りを舞う銅鏡。にやりとフラウロスは笑むと、2人へと視線を送り。
「さぁゆくぞ、サクラコ、モルテ。神だろうが出遅れたら置いていくぞ!」
高らかにそう告げ、彼女は黒爪を伸ばしながら敵の懐へと駆け込んでいく。ヴァンパイアであるリーシャを倒したい。その想いだけではない。今回は初陣であるモルテの為に、敵の気を惹こうと云う考えを含んでいる。
「我が身は民の願いを映す鏡なり。サクラコが敵を誅しましょう」
フラウロスの言葉にこくりと頷き、サクラコは戦う意思を表す言葉を述べると。前衛を駆ける少女の周りに銅鏡を展開させる。後衛ながら少し前に出て、モルテへの攻撃を守るような位置取りで。
2人のその様子は――言葉にしなくとも、モルテには伝わっている。
「まだ未熟な私を助けてくれるなんて。優しい人」
ぽつりと零れるのは小さな声。私もがんばる、勇気付けられ笑顔でそう零せば。彼女は敵を真っ直ぐと見据える。視界には、ひらりと紅のドレスを舞わせる友の姿。
そのまま爪を煌かせ、フラウロスは重い素手での一撃を繰り広げる。
その衝撃に、細い足を折り崩れ落ちるリーシャ。自身より視界が下がった彼女を見て、フラウロスは不敵に笑むと。
「ククク……どうした? まさか妾に気圧されているわけではあるまいな!」
見下ろしながら、そんな事を言う。
まるで挑発をするような物言い。年下にそのようなことを言われて、傷を受けて、プライドが許さないのだろう。強い眼差しで睨みつけると、リーシャは舌打ちをした。
「何よ、生意気。1人じゃ立ち向かっても来れない小娘のくせに」
膝を突いても、鋭い槍を手放すことは忘れなかった彼女は――そのまま素早く、フラウロスに向かいその切っ先を放つ。それはとても素早く、避けられないと察し、受け止める。けれど、それだけでは終わらせない。
血風を纏った真紅の拳。それがフラウロスより強く、強く放たれる。
流れる鮮血は2人分――その傷を癒す温かな光は、1人のみ。
「私は死ねないけど、あなた達はそうじゃないでしょ。気をつけて」
支えるように、癒しの光を作り出したのはモルテだった。真剣な眼差しで、小さな少女へと声を掛ければ笑みが返ってくる。
「相手が焦れて隙を見せるまで。幾度でも攻め続けましょう」
サクラコの言葉は、前で戦うフラウロスには届かなかったかもしれない。けれど――モルテの耳にはしっかりと聞こえた。こくりと頷き、隙を見て攻撃を行おうと。彼女は武器を強く握りしっかりと前を見据える。
白い薔薇も赤い薔薇も等しく美しい。
花を求めるひとへ、美しい花を返そう。
それが――花の望みでもあると思う。
想いを込めたモルテの茨が、しゅるりと冷ややかな地に動いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ジュマ・シュライク
リオ(f14030)と
あら、赤しか愛せないなんて可哀想ですわね。
自身の白い肌がお嫌いなわけでもあるまいに。
血染めの薔薇のために失われた命に憐れみを。
せめてこの地を解き放ち、白い薔薇を再び愛でられるように。
アタシは死を悪とは捉えない……厭っても死は訪れるもの。
ただ、死に方と。その後のことを。
選ぶことが出来なかった者のために、力を尽くしてよ。
魔法を駆使し、リオを援護。
アタシの魔法は死と呪詛。毒と怨恨。
いいえ、リオ。それは薔薇の流す血。苦痛の顕れ。
大好きな赤い薔薇と共に、送って差し上げましょう。
あえて矛が接触の瞬間は逃さず。
我が差し向ける先に、光あれ。
どんなものでも眠りは守られる。
どうぞ安らかに
リオ・フェンブロー
ジュマ(f13211)と
ー…宇宙であれ、大地であれ邪悪は変わらず存在するのか
傲慢な吸血鬼に言葉を失う
魔女が紡ぐは弔いの歌。それが生者の傲慢に過ぎずとも
貴方に消費される為だけの命などありませんよ
存外、近接を好まれるのですね
空中戦を駆使、回避の先に空をも選び
傷を受ければ静かに笑い至近にて杖を向ける
ご存知ですか? 魔女は祟るものですよ
地上で見た罪の形に、戦場に咲く赤い薔薇に心が波立つ
砲撃を選べぬのは、そこに彼らを見る気がするからか
甘い、ですね…私は
薔薇の流す、血…
ジュマの言葉に惑う心が決意に変わる
えぇ、送りましょう
全力の魔法で、ジュマと連携し
再臨を告げよアドヴェンティア
良き眠りのあらんことを
●
美しい物が好き。赤が好き。
ただただ自身の欲望にのみ拘るヴァンパイアの少女を目の前にして、リオ・フェンブローは深い溜息を零した。
(「ー……宇宙であれ、大地であれ邪悪は変わらず存在するのか」)
この地にも、邪な存在が居ると目の当たりにし。信じたくない気持ちもあるが、受け止めなければならない。額に指を当て、ちらりと少女を見遣るが言葉は出ない。
そんなリオの横で、ジュマ・シュライクはくすりと笑みを浮かべた。
「あら、赤しか愛せないなんて可哀想ですわね」
自身の白い肌が嫌いなわけでもあるまいに。そう笑う彼を、睨みつけるように少女は血色の眼差しを向けている。けれどジュマは、一歩も引かない。やりたい事があるから。
「アタシは死を悪とは捉えない……厭っても死は訪れるもの」
ただの否定では無いジュマの言葉に、ピクリとリーシャの槍を握る手が反応する。けれどひとつ冷笑を零すと、少女は距離を詰めてくる。銀髪揺らし、前へ出るリオ。彼の後姿を身ながら――ジュマは、語る。
死に方と。その後のこと。選ぶことが出来なかった者のために、力を尽くすと。
その言葉を聞いてリオも自身の想いが明確になる。目の前には鮮血零れる槍を持つ少女の姿。身長差も体格差もあるが、その力は相当でぎりぎりと押される。
けれど、リオは挫けない。笑みを零すと、少女を見遣り。
「貴方に消費される為だけの命などありませんよ」
柔らかな声で、そう告げた。
――そのまま彼は、彼女の刃を避けるように高く飛び上がり炎の矢を放つ。
絶え間なく降り注ぐ炎に、リーシャは逃げ道を失う。炎が紅のドレスを焦がし、燃え上がらせれば舌打ちをし、炎を消そうと強くはたいている。
「ご存知ですか? 魔女は祟るものですよ」
優雅に笑みを浮かべ、余裕な声色でリオは紡ぐ。そんな彼を援護するように、ジュマも後方より呪詛を込めた魔法を敵へと放っていく。
まるで絡め取られるように、次々と魔法を受ける少女。
近接を得意とする彼女にとっては、近付かなければ刃も向けられない。傷が増える。痛みが身体を襲う。けれどリーシャは変わらぬ傲慢な笑みを浮かべている。
そんな彼女の所業は、辺りに咲く血塗られた薔薇が証明するように尚も咲き誇る。
地上で見た罪の形。戦場に咲くその薔薇に、リオの心が波立つ。
愛用に砲撃を選べないのは、そこに彼等を見る気がするからだろうか――。
「甘い、ですね……私は」
ぽつりと零れた声は、ふわりと消えていくようだけれど――しっかりと聞こえたジュマは、笑みを浮かべながら首を振る。
「いいえ、リオ。それは薔薇の流す血。苦痛の顕れ。大好きな赤い薔薇と共に、送って差し上げましょう」
「薔薇の流す、血……」
彼の言葉に迷いが消え、決意へと変わる。
頷きを返した後――彼等は2人で、全力の魔法を込めた1撃を放つのだ。
「我が差し向ける先に、光あれ」
「再臨を告げよアドヴェンティア」
ジュマが銀に覆われた指先を指し示せば、リオは杖を掲げる。
現れるのは光と炎。戦場を包み込む眩い光は、闇夜の世界を照らし。人々の心を闇へと落とした少女へと落ちていく。
聞こえる悲鳴を耳にしながら――ジュマは、鋭い眼差しを細め一言零す。
「どんなものでも眠りは守られる。どうぞ安らかに」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウトラ・ブルーメトレネ
キライ、キライ、キライ
これは嫌い
おんなじような翼、持っているのね
それも、なんだか、とても嫌
そんなに薔薇を、紅く、美しく咲かせたいなら
アナタの血をささげれば、良いと思うの
だから血の一滴までも絞り尽くしてあげなきゃね
(いつも持っているリボンの束を、ポケットの奥に仕舞いこみ)
心がささくれる程、思考は冷える
考えるのは、アレをどうやってこの世界から消し去るか
周囲の猟兵さんの動きをよく見て、出来るだけ敵の隙をつけるタイミングで空中戦で一気に間合いを詰め【剣刃一閃】
叶うなら、翼を断ち切りたい
怪我をしても無頓着
自分の赤も目に入らない
でも、どこかで思う
こんな自分は、大好きな人たちには見せたくないって
なんでかな?
終夜・嵐吾
トトリ君(f13948)と共に
ああ、屋敷の主のお出ましか
花を愛でるを知らんようじゃな
血が欲しいのは薔薇ではなく汝じゃろうに
これを美しく咲き誇るという輩とは、残念ながら仲良うなれんな
トトリ君が援護してくれるならば、わしは直接叩きに行こう
虚の主も、汝の事が気に入らぬと言うておる
わしは許しておらんのに洞から這い出てきたわ
眼帯外し、零れる笑みは仕方ないのとわがままを許すのみ
右腕の上を貸してやろう。その三爪、見舞えば良い
トトリくんの攻撃はわしを避けてくれとるからその心遣いに感謝しつつ、懐に踏み込むのみ
あれはうーの嬢ちゃん(f14228)…
ああ、ええよ。トトリ君が行きたいとこに
好きに動けるように力を貸そう
トトリ・トートリド
嵐吾(f05366)、トトリ、援護する
一緒に、倒そう
見かけたウトラ(f14228)は…いつもと様子、違ってて、心配
…見守って、危ないとき、助けにいく
…赤の、領主
トトリ、お前、きらいだ
選ぶいろは、赤
辰砂の毒の炎、前を行く嵐吾と、うつろ…さん?に
当たらないように、描く
連撃が当たりそうなら、庇いにも、いく
振るう絵具は、めいっぱい…浴びせたい、気持ち
お前の好きないろで、送るのも…勿体ない、くらい、だけど
一番きれいなすがた、汚されて…赤く塗られた、花の気持ち
お前も、知ればいい
ウトラがもし、ひとりで特攻、してたら
…嵐吾、あの子、助けたい
ちらっと目線で、お願いする
…ウトラに、さわるな
愚者の金鎖でがんじがらめ
●
目の前には、自信に満ちた笑みを浮かべる少女。輝く槍は鮮血を纏い、ぽとりと鮮紅の雫を地面に作っている。
「……赤の、領主。トトリ、お前、きらいだ」
変わらない、変えられない表情の中。トトリ・トートリドの琥珀色の瞳には嫌悪の色が確かに表れていた。珍しい彼の様子に、終夜・嵐吾はゆるりと瞳を細める。
「花を愛でるを知らんようじゃな」
血が欲しいのは、薔薇ではなく汝。これを美しく咲き誇るという輩とは、残念ながら仲良くはなれないと。いつもの緩やかな笑みで――けれど、瞳に鋭さ宿し嵐吾は語る。
とん、触れるのは眼帯。その奥に眠る虚の主も、リーシャの事を気に入らないと言っているようで。まだ許していないのに、洞から這い出てくる感覚が。
しゅるりと、嵐吾の眼帯が解かれる。――仕方ないの、と笑みを零しながら。
「嵐吾、トトリ、援護する」
そんな嵐吾に向け、率先して武器を構え言葉を零すトトリ。その姿にほう……と言葉を零した後、嵐吾はひらりと衣服を揺らし敵との距離を詰めていく。
慌てて武器を構え、嵐吾を迎え撃とうとリーシャはするが――そんな隙は与えない。トトリが容赦なく、赤絵の具で描いた炎を纏い彼女に向けて放った。
それは毒性を帯び、熱だけでなく身体を蝕んでいく。
「お前の好きないろで、送るのも……勿体ない、くらい、だけど」
元となった絵の具は、彼女が好きだと高らかに告げた色。好きな色で彼女を染めたいとは思わない。けれど、一番綺麗な姿を汚されて。赤く塗られた花の気持ちを。
「お前も、知ればいい」
赤に塗れて、知らせたい。それが、悲しむ花々の想いだと。そうトトリは思うから。だから彼は悲鳴が聞こえても、炎を放つ力を緩めることなどしない。
その炎は敵へと近付く嵐吾を綺麗に避け、彼は余裕の笑みを浮かべている。
その身を犠牲に――今日は右腕の上を犠牲に、彼が作り出すのは黒き茨の獣。三爪がリーシャの白い肌を襲う。熱と傷に、悲鳴が聞こえる。
しかし、例え傷を負っても彼女の瞳は揺るがない。目の前の相手は全て敵。自身が負けるわけが無いと、この状況でも信じて疑わない。
「赤は……私じゃなくて、邪魔者を染めるから、良いのよ……!」
ギリリと歯を食い縛り、彼女は鋭い刃の一突きを嵐吾に繰り出した。
キライ、キライ、キライ。
これは嫌い。
どくんとウトラ・ブルーメトレネの心臓が音を立てる。
目の前の少女は、紅に染まったドレスを身に纏い。紅彩られた武器を手にし。その背には、呪われたような翼を所持している。
嫌。
全てを拒絶する感情が、ウトラの心を包み込む。
「そんなに薔薇を、紅く、美しく咲かせたいなら。アナタの血をささげれば、良いと思うの」
いつもの彼女とは違う、冷ややかな声でそう告げる。
そう、だから――彼女の血を、一滴までも絞り尽くさなければ。
いつも大事に握るリボンを。赤、青、紫を束ねたそれをポケットの奥へと仕舞い。きゅっと唇を結び、嫌悪の感情が包み込む瞳でウトラはヴァンパイアへと近付いた。
心がささくれる程に、思考は冷える。
彼女を満たすのは、もうアレをどうやってこの世界から消し去るか。ただそれのみ。
共に戦う猟兵の邪魔にならないよう、敵の隙を狙って。そんな戦い方の冷静な判断は出来る。橙色の刀身を煌かせて、ウトラは真っ直ぐにリーシャを狙う。
鋭い空色の眼差しが、リーシャを見る。
その眼差しを見て――怯んだように、彼女は後ずさったが。ウトラは、容赦しない。リーシャの身体を、そして翼を狙い鋭い刃を振るった。
「あ、アンタ! 何、するのよ!」
痛みに怯んだ心も忘れて、我に変えるリーシャ。すかさずウトラの胴体目掛けて槍を一突きすれば、確かに命中した手応えが。一瞬笑みを浮かべるが――今のウトラは、その程度では怯んだりしない。
自身の腹部から紅が零れようとも気にしない。
目の前の、赤を、消し去らなきゃ。
ギラリと、獰猛な瞳が再びリーシャを見た。
「!」
視界に映る見知った顔に、トトリははっと顔を上げる。いつもとは違う空気だが、彼女を見間違うはずが無い。
「ウトラ……」
ぽつりとトトリが呟けば、嵐吾も視線を動かした。
「あれはうーの嬢ちゃん……」
ひらりと舞う、虹色にうつろう長い髪。真紅の尾と羽を揺らし、戦う彼女はいつもと同じ姿。けれど、いつもとは違う空気を纏い、鋭い眼差しをしている。
「……嵐吾、あの子、助けたい」
瞳を潤ませ、震える声で告げるトトリ。そんな彼に、嵐吾はゆるりと笑むと。
「ああ、ええよ。トトリ君が行きたいとこに」
そう呟き――彼が好きに移動出来るようにと、リーシャの自由を奪うように絡め取る。
リーシャと直接対峙する小さな少女。距離を置いて戦っていた2人とは距離がある。否、それは大した距離では無い筈なのに、やたら長く感じる。
けれど、駆けつけなければ。
ウトラを、ひとりには出来ない。その想いで、トトリは必死に足を動かす。ぽろぽろと鞄から物が落ちるのも気にせずに、懸命に駆け寄る。
少女が、剣を振るう。翼を切り落とそうと、振りかざした時。
「ウトラ……!」
叫ぶトトリの声。
「トトリ、ちゃん……?」
ふと、顔を上げたウトラの表情は先程とは違い。あどけなさ残る無垢なものへ。
彼女の心は、先程の嫌悪とは違う。だいすきな人たちに、こんな自分を見せたくなかったと。ざわりと心を覆う気持ちに身の毛がよだつ。
そんな彼女を抱き寄せて、トトリは鋭い眼差しをリーシャへ向ける。
「……ウトラに、さわるな」
ぽつり、呟かれた言葉はどこまでも冷ややかで。黄鉄鋼の鎖で彼女を捕らえた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葉月・零
キミが、あの醜い薔薇の主?
元の薔薇なら返してもらいたいけど、この醜い薔薇は要らないや。
それよりも更に醜いのはキミだろうけど……。
なんかもう、呆れて文句いう気も無くなってきた。
まぁ、何言っても聞かないんでしょ、きっと。
よろしくね、と相棒の騎士を呼び出して。
リーシャが攻撃に入りそうな時に、炎を使って妨害を。
目眩しとか、標的を合わせきれなかったりはしないかなぁ。
ついでに燃やしきれなかった薔薇もろとも、焼き尽くせたりできないかなぁ。
あんなの、村の人達にとっては、嫌な記憶でしかないだろうから。立ち直るためにも、残ってたらダメなんだよなぁ。
うまく焼けなくてもリーシャ撃破した後にはなんとかしておきたいなぁ。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。この地に眠る多くの魂達、どうか私の声に応えて。
紅くなった花を白くする事はできない…。
失った命は、取り戻す事はできない…。
…それでも、今を生きる人たちの為に。
貴方達の想いを、私に背負わせてほしい。
あの吸血鬼を狩る為に。私に力を貸して…!
犠牲者の意識と手を繋ぎ【断末魔の瞳】を発動
死者の誘惑は呪詛耐性で耐えつつ空中戦を行う
魔力を溜めた両目を維持(第六感・殺気・存在感・残像)し、
先読みの暗視で【吸血鬼狩りの業】を補助して敵の動作を見切り、
死者達の呪詛を纏う大鎌を怪力任せになぎ払い、
呪詛を爆発させて傷口を抉る2回攻撃で仕留める
…人は。世界は。お前の玩具なんかじゃない。
報いを受けなさい、吸血鬼…。
●
「……ん。この地に眠る多くの魂達、どうか私の声に応えて」
祈るように瞳を閉じ、リーヴァルディ・カーライルは呟いた。
この地には、数多の人の血が流れた。彼等の断末魔の悲鳴が、聞こえる気がする。
紅くなった花を白くすることは出来ない。失った命は、取り戻すことは出来ない。
それでも、今を生きる人たちの為に。死者の、貴方達の想いを背負わせて欲しい。
「あの吸血鬼を狩る為に。私に力を貸して……!」
悲痛の叫びのように、発せられるリーヴァルディの声。普段とは違うその声色は、彼女の真剣な想いが込められている。
瞳を開き、敵を見据えれば。その左瞳の聖痕が、数多の魂で覆われている事に気付く。
ふう――ひとつ息を零すリーヴァルディ。死者の霊魂の想いを確かめるかのように。そして想いを通わせた彼女は、ふわりと宙を舞った。
黒衣から覗く銀色の波打つ髪が、宙を舞う。それはまるで、月のように輝いて見える。
鋭い眼差しで、リーシャを見つめるリーヴァルディ。
彼女が構えるは黒いグリムリーパー。赤いオーラ纏ったその刃を、彼女は空中より勢いよく振るい血色のオーラを放った。
「きゃあ!?」
上がる悲鳴に、無の表情が微かに緩んだ気がした。確かに手応えを感じ、そのまま柄を握る力を強め次々とオーラを放っていく。
敵も黙って攻撃は受けない。鮮血纏う槍を、空中にいるリーヴァルディ目掛けて素早く放つが、彼女は先読みの暗視を用いてひらりとかわす。
「……人は。世界は。お前の玩具なんかじゃない。報いを受けなさい、吸血鬼……」
輝く瞳で敵を見下ろし。真剣な声色で語るリーヴァルディ。
ヴァンパイアを狩る――その強い意思を止めることは、誰にも出来ない。
美しく歪められた薔薇の中――葉月・零の目の前の彼女は、既に装いでは無い鮮血に染まっていた。翼にさえも傷を負っているが、それでも強い眼差しは変わらない。
「キミが、あの醜い薔薇の主?」
「そうよ! 美しい物は全て私の物にしたんだもの! けれど醜いは余計ね」
ぽつりと零が零せば、彼女は変わらずの傲慢な物言いで。
ふう――と零は溜息をひとつ。長い前髪から覗く気怠げな眼差しは、何かを諦めたように細められている。
元の白薔薇ならば返してもらいたい。けれど、この醜い薔薇は要らない。
「それよりも更に醜いのはキミだろうけど……」
それは傷負った見目ではない。楽しそうに笑う彼女が、醜く映るから。
色々と文句を言いたいと思っていた。けれど、今対峙する彼女の様子を見る限り。何を言っても無駄だし、その行いには呆れの感情以外は無い。
放たれる刃を寸でのところで避ける零。自身を歪める事無く、世界を歪める彼女に。
「なんかもう、呆れて文句いう気も無くなってきた」
頭をかきながら、そんな事を零す。どうせ何を言っても聞かないのだから。
だから彼は、変わらず鮮血を零しながら武器を振るう彼女に向けて。かつて憧れた騎士の霊を召還する。カチャリと鎧の音を響かせて、武器を構える彼に。
「よろしくね」
一言掛ければ、彼は勢いよく――大剣から炎を生み出し少女へと放った。
小さな身を真紅の炎が覆う。
燃え上がり、鮮血さえも焦がし、傷付いた羽を燃やし尽くそうとする。
「熱い! なんなのアンタ等……!」
ギリリと噛み締めながら、熱に耐えるが――もう、リーシャは限界なのだ。数多の傷を受け、熱に身体を焦がされ。蓄積したダメージは確実に身体を蝕んでいる。
「ついでに燃やしきれなかった薔薇もろとも、焼き尽くせたりできないかなぁ」
叫ぶ彼女にもう興味を無くしたように。零の意識は既に辺りに咲く薔薇へと移っていた。彼の目の前に、相棒の騎士が変わらず剣を構えているから大丈夫なのだろう。
「許さない、許さないから……! 人間なんて……」
最後まで傲慢な態度のまま消え行く少女。――燃えた衣服の欠片が地面へと落ちたが、ジジっと音を立てて消え果る。
その様子をちらりと見た後――零は改めて歪んだ薔薇庭園を見つめた。
村人が頑張って育てたであろう庭園。けれど歪んだ色が残る此処は、村人達にとっては嫌な記憶でしかないだろう。彼等が立ち直るためにも、残っていてはダメだと思う。
だから全てを、無に変えそう。
そう想い彼は、改めて相棒へと声を掛けた。
●紅の世界
紅色の薔薇の花。
全てが消えれば、此処に残るのは何も無い世界のみ。
燃える、燃える。
傷の証も、燃え落ちる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『闇を彩る花飾り』
|
POW : 粘土で花飾りを作る
SPD : 折り紙で花飾りを作る
WIZ : 布で花飾りを作る
|
●闇世界に色を
紅に染まる世界を見届ければ――闇夜の世界に咲く希望は尽き果てる。
その様子を見守り。猟兵達は村へと足を運び、領主を倒した旨を伝えた。
「ありがとうございました……」
村長であろう老人が、深々と礼をすれば。同じように、周囲に集う人々も礼をする。
命が消えることに、恐れる日々に終止符が打たれたのだ。――たとえ、一時のものだとしても。今日は心穏やかに眠れることは確か。
だから彼等は、猟兵達へとささやかなもてなしをする。
大きなチーズを切って並べ。果実を絞ったジュースやワインを用意し。微かな野菜を入れたスープも準備中。せめてパンだけは美味しくと、焼き立てを用意している。
それはとてもささやかで。決して特別なものでは無い。
それが彼等にとって精一杯のもてなしなのだ。
彼等は当然嬉しそうに笑っている。
けれどどこか表情が暗いのは――希望の白を、全て失ったから。
希望が無ければ、此処はなんとも殺風景で。彩の無い、寂しい世界が広がる。今はまだ、領主が居なくなったことで笑顔を浮かべられる。けれどこの先は? 明日目覚めた時、世界の闇に彼等は何を思うだろう。
だから彼等に、花を送ろう。
一時でも希望に変え、本物の希望を再び芽吹かせる力を得られる、鮮やかな花を。
一緒に前へ、向いていけるように。
この先何があっても、希望を持てるように。
さあ、何で作ろうか? どんな花を作ろうか?
色は。形は。――全て猟兵達の心次第。
想いを込めた花で世界が満たされれば。きっと彼等は、前を向けるだろう。
ヴェルベット・ガーディアナ
何とか倒す事が出来て良かった。
これでもう一度薔薇を咲かせる事ができる。
けれど咲くまではしばらく時間がかかるから…。何かその間だけでも代わりになるものを…。
見て…シャルローザのドレス。白くてふわふわで綺麗でしょう?
白い布でお花を作ってみるってのはどうだろう?お洋服に付けてもきっと素敵だよ。
んーこうやってこうかな?
どう?意外と簡単でしょう?
【祈り】【優しさ】【鼓舞】を込めて。
アドリブ連携歓迎です。
●
「これでもう一度薔薇を咲かせる事ができる」
敵を倒せた達成感に息を零しつつ、ヴェルベット・ガーディアナは未来の希望を思い描く。再び、美しい希望に溢れた世界を。
けれど再び花が咲くには時間が掛かる。
種から育て、美しい花が咲くのはどれ程の時が必要なのだろう。この闇夜のダークセイヴァーでは、尚時間が掛かるのかもしれない。
だから、その間の代わりになるものは何か。ヴェルベットは琥珀色の瞳を細め、思案する。彼女は答えを導き出すと、パンを食べる少女へと近付いた。
「見て……シャルローザのドレス。白くてふわふわで綺麗でしょう?」
「真っ白……」
銀糸に操られ、ひらひらと闇夜を舞う美しい人形。蝋燭の灯りでぼんやりと橙色を映すその姿は、闇を照らす真白を抱く。
世界に無い白。
その色を見て、少女は嬉しそうに微笑む。その様子にヴェルベットは笑みを浮かべると、布で花を作ってみてはどうかと。飾るだけでなく、洋服に付けても素敵だろう。
少し戸惑いながら、ヴェルベットは指先を動かす。人形を操る時ほどすべらかでは無いが、その指が作り出すのは美しい花。
「どう? 意外と簡単でしょう?」
祈りと優しさを込めたその言葉は少女を鼓舞し。彼女は細い指で布へと手を伸ばした。
大成功
🔵🔵🔵
葉月・零
明るい未来に歩き出すため、とはいえ、残ってた花を燃やしちゃったからなぁ、なんとなく罪悪感はあるけど……。
まぁ、燃やしちゃったものは仕方ないし、出来ることをしなきゃね
ハンカチをくるくる、小さな花を作って。
あとはそうだなぁ……俺にできそうなのは……。
ねえ、花の物語を紡ぐのはどうかな。
俺の、というか皆の心が作る華の物語は素敵だと思うから。
思い出だったり、花をみて想像したり、感動したり記憶だったり……。
そう言う物語、があるでしょ?
聞かせてほしいな、それと村の人たちにも聞かせてあげて?
きっと、ね。其々、物語があると思うから。
此処に咲いてた花は
きっと綺麗なんだろね。みてみたいなぁ。
咲いたら、また訪れたいな
明るい未来を歩く出す為――。
その名目があったとはいえ、葉月・零が花を燃やした事実は変わらない。勿論それを村人達だって恨んではいないことは十分分かっている。
けれど、罪悪感があるのも仕方が無いこと。
燃やした花は帰ってこない。だから出来ることをしなければと――彼は、ハンカチを取り出すと。パンを運んできた少女と青年の前で、くるくると巻く。
「出来た」
ぽつり、呟いた彼の手元には――1輪の小さな花が咲いていた。
「わあ……! すごい……!」
瞳を輝かせ、覗き込む少女と青年。生花でない花など、彼等には想像もつかないのだろう。2人の反応に、零は瞳を細め口を開く。
「……ねえ、花の物語を紡ぐのはどうかな」
彼の言葉に、2人はきょとんと瞳を瞬いた。
零の話を聞かせてくれるだろうと、期待の眼差しを向けてくる2人へと首を振り。零は皆の心が作る華の物語は素敵だと思うから、と語る。
思い出話。花を見て想像したり、感動したり記憶だったり――そう云う物語。
「聞かせてほしいな、それと村の人たちにも聞かせてあげて?」
微笑み、語る零。数多の絵本に触れている彼にとって、物語は身近なもの。そして、其々に物語があるとも、想っている。
「えーと……。母さんが、育てた花の話でも良い?」
恐る恐る、青年が口を開けば零は頷いた。
今までそのような事を話したことは無かったのだろう。青年は悩みながら、言葉を紡ぐ。どこの花よりも綺麗に見えた、花のことを。口には出来ないけれど、そう想っていたことを。語る彼は、どこか楽しそうで――俯いていた顔が、しっかりと前を向いている。
それが、零の出来ること。花を作るだけでなく、心に消えぬ花を咲かせること。
嬉しそうに語る青年の様子から、本当に美しかったのだろうと想える。
そしてそれは、この村中全ての花が――きっと綺麗なのだろう。
(「咲いたら、また訪れたいな」)
美しく咲き誇る景色を見たいから。零は瞳を細め、心にそう想った。
大成功
🔵🔵🔵
モルテ・フィオーレ
【KoR参加】
アドリブ等歓迎
花を咲かせる……?
この私が
枯れた荊たる私が
ふふふ、あはは!
おもしろいわ
私にも咲かせられる花が、あるというならば
咲かせてみせましょう
……とはいったものの
何かを枯れさせ壊したことはあっても作ったことがないの
サクラコをみながら粘土をこねて…せめて花らしくなれるように努めるわ
案外楽しいわね
美しい美しい、決して朽ちない――穢れなき白の薔薇をつくるわ
【ゴッド・クリエイション】でそれはそれは強い薔薇にしてあげる
鮮血に染まることがないよう祈るわ
どう?なかなかでしょう?
サクラコの花も美しいわ
並べて飾ってもいいかしら?
ほ、褒められるのは……慣れてないわ
――私にも咲いていたらよかったのに
鏡彌・サクラコ
【KoR参加】
【WIZ】
花を作りましょう
血に染まらない純白の
どうにもこうにも
世界そのものが血や泥に汚れているようで
素材は自分の世界から取り寄せましょう
花びらは真っ白なシルクを使い
枝は銀で拵えましょう
光を帯びて輝いて見えるように
サクラコにうまく作れるでしょうかねい?
モルテさまが一生懸命粘土をこねているのを微笑ましく見ておりましたが、
UCでそうなりますか?!さすが神さま、素敵でいす!
フラウロスちゃんは…苦手そう
でも大丈夫!こういうのはハートが大事ですからねい!
そう。渡せるのは気持ちだけではありますが
この村に明るい未来がありますように
願いを込めて贈ります
フラウロス・ハウレス
【KoR参加】
……ふん。
失ったものを取り戻すのは容易ではない。
だが……希望まで失っては生きられまい。
……仕方ないな。趣味ではないのだが。
『怪力』で人数分の粘土を集めて運び、作るとしようか。
「ほれ、遠慮なく使うが良い」
大まかな形状を粘土をこねて作り、形を整えたら黒爪で細かく削って模様を付けて行こう。
……薔薇を模すというのは難しいものだな。
加えて、細かい作業も疲れるものだ。
……ふん、さすがに妾より上手いな、二人とも。
こういうのはやりなれないからな。
にしても、これが神の力か。本物だったんだな?
一通り終わったら並べて飾ってやるか。
……柄にもないことをしたな、全く。
帰るぞ、長居は無用だ。
●
花を作ろう。血に染まらない純白の花を。
金色の瞳を細め、鏡彌・サクラコは微笑みながら心に想う。
そんな彼女の笑みとは違い、モルテ・フィオーレはどこか遠くを見るよう。
(「花を咲かせる……? この私が。枯れた荊たる私が」)
人を愛す薔薇の女神となるはずだったモルテ。けれど今の彼女は黒の茨冠を飾る姿。それは呪いのように、彼女に重く絡みつくが。
「ふふふ、あはは! おもしろいわ」
不意に零れる笑い声はどこか不思議な声色。――そんなモルテに瞳を細め見つめながら、フラウロス・ハウレスは作業に使う大量の粘土を2人の目の前に置いた。
「ほれ、遠慮なく使うが良い」
そう語る彼女も、趣味では無いが花作りをするつもり。失ったものを取り戻すのは容易では無い。けれど、希望まで失っては生きられないと思うから。手を貸そうと思うのだ。
「サクラコにうまく作れるでしょうかねい?」
粘土を手に取り、小首を傾げるサクラコ。けれど彼女は、持参したシルクで花びらを作り、1枚1枚繋ぎ合わせ薔薇の花を作り上げていく。
その様子をじっと見ていたモルテ。何かを枯らさせ、壊したことはあっても作ったことが無い彼女にとっては未知の体験で。サクラコを参考にしようとしたのだ。
シルクの花びらだけでなく、銀の枝を添えたサクラコの薔薇は光り輝く白。その煌きに瞳を細めならが、モルテも必死に粘土をこねる。多少不恰好になるのは仕方が無い。けれど、せめて花らしくなるようにと想いを込めて。
自身にも咲かせられる花があるのなら、咲かせてみたいと思うから。
「……薔薇を模すというのは難しいものだな」
手馴れた様子で作るサクラコ。懸命に作るモルテ。作業を進めていく彼女達の横で、爪を動かしていたフラウロスは、模った花を掲げながら頬杖をついた。
大まかな粘土から爪により削られた薔薇は、十分美しい。
けれど、細かい作業は疲れたとフラウロスは大きく伸びをする。
素直に、2人は自身より上手いと思う。だからそう口にすれば、照れたようにモルテは微笑んだ。各々出来も違う花。並ぶその花を見てサクラコは。
「でも大丈夫! こういうのはハートが大事ですからねい!」
フラウロスを勇気付けるようにそう零せば、モルテも頷く。
もう作業が終わったように感じるけれど――実はモルテは終わりでは無い。粘土で懸命に作り上げた白い花。その花に生命を宿そうと、彼女は薔薇を掌の中へ。
穢れ無き白薔薇を。強い強い、鮮血に染まることが無い薔薇を。
祈りを込めれば光り輝き、掌の中の粘土の薔薇が瑞々しく感じるのは気のせいか。一連の流れに、感心したようにサクラコとフラウロスはモルテの薔薇を見つめる。
「さすが神さま、素敵でいす!」
「本物だったんだな?」
瞳を輝かせるサクラコ。瞳を瞬くフラウロス。反応は違うが、2人ともモルテの行いに驚きを隠せないのは確か。だからモルテは、再び頬を染めながら呟く。
「どう? なかなかでしょう?」
2人と並べて飾っても――そう切り出せば、3人の花がテーブルに並ぶ。見た目はそれぞれ違うが、想いが篭っているのはきっと同じ。
この村に明るい未来がありますように。瞳を閉じサクラコが祈りを捧げれば、フラウロスは柄にも無いことをしたと息を零す。
「帰るぞ、長居は無用だ」
フラウロスが言葉を紡げば、2人も頷き村を出ようとする。やるべき事はやったと、そう告げるかのように素早い動きで。
2人の後を追うように歩きながら、ふとモルテは並ぶ3つの花を振り返る。
「――私にも咲いていたらよかったのに」
瞳を細めぽつりと呟いた言葉は――誰に届く事無く、闇夜へ消えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンティ・シェア
事が済んだら私に投げるのかい
まったく、仕方がない。君は上手に笑えないからね。任されよう
さて、折角のもてなしはありがたくいただこう
どうせなら皆で賑やかに食べたいね。寄せ会える笑顔があるというのは、尊いことだ
美味しい食事を頂いたお礼には、布の花を用意するよ
綺麗なものでなくていい。端切れで十分だ
布をリボン状にして巻くだけで、薔薇が出来る
村に裁縫の得意な子はいないかな。できれば一緒にやろう
針と糸の扱いなら、きっと君達の方が上手いだろう
それに、この薔薇は装飾に向いたものだからね
髪留め、コサージュ…何につけるか、知恵を貸しておくれ
彼らが自分の手で生み出せる物を残したい
それが少しでも慰めになるなら幸いだ
●
「事が済んだら私に投げるのかい。まったく、仕方がない。君は上手に笑えないからね。任されよう」
小さな声で呟くエンティ・シェア。ひとりで、誰かに話し掛けるかのように呟く彼の一人称は、先ほどの戦いの『僕』とは違い『私』に変わっていることは、誰も気付かない。
纏う空気もどこか変わった彼は、微笑みながらもてなしのスープを受け取った。
具材は少ないけれど、心が篭った丁寧な味付けが口に広がる。――どうせなら皆で賑やかに。そう彼が零す通り、彼の周りには老若男女の村人が共に食事をしている。
寄り合える笑顔があるということは、尊いこと。
村人の様子を見てエンティは、長い赤髪から覗く眼差しを緩める。
今この瞬間はとても幸せなひと時。けれど未来を見据えて、依頼されていたことを思い出し彼は布を取り出した。
「お兄さんそれなに?」
彼が手にするのは、ただの布の端切れ。――けれどそれは、普通の布より村人にとっては馴染み深いものだろう。エンティは笑みを浮かべると、少年の目の前で期用に手を動かし、見事な薔薇を作ってみせる。
「おや、美しいねえ」
その薔薇を見て、老婆が眩しそうに瞳を細める。謝辞を述べたエンティは、周りの人々に一緒にやろうと声を掛けた。
「針と糸の扱いなら、きっと君達の方が上手いだろう」
裁縫が上手い人は何人もいる。自身の力で様々な修繕が必要なのだから。けれどまだ前に出れない彼等の為に――エンティは、この薔薇は装飾に向いていると言葉を添える。
「髪留め、コサージュ……何につけるか、知恵を貸しておくれ」
美しいと褒めてくれた老婆の白髪に白薔薇をあてがった後、エンティはその手に花を落とした。彼女は慈しむように表情を和らげ、深々と礼を。
老婆のその様子を見て、辺りの人々は立ち上がったかと思うと。
「少し、待っていて下さい……!」
その一言を残し、裁縫箱を取りに走って家へと戻る人々。
その姿は、逃げ惑う彼等とは違う。未来へ駆け出そうとしているような、美しい後姿。
彼らが自分の手で生み出せる物を残したい。そうエンティが想った通りに、きっと進んでいくだろう。慰め以上の、希望の花へ。
大成功
🔵🔵🔵
ジュマ・シュライク
リオ(f14030)と
自分の手が紡いだものが、誰かの希望となるならば。
布で白い薔薇を作りますわ。
ただ白ではなく、間に色を混ぜた斑のものを。
真に迫るつもりはありませんわ。
もっと美しいモノがあったのだと、誇ってほしいんですの。
リオの器用なこと。魔法のように、次々と。
自分を不器用だとは思わないけれど、上がいるものですわね。
(礼に驚き)
いいえ、礼には及びませんわ。
人は迷うもの……選び取るのもまた自分ですわ。
綺麗な花冠ですわね。
折角だから、村の子に被ってもらましょうか(笑いつつ)
造花もいつか朽ちていくけれど、その時には薔薇が咲くといいですわね。
前の薔薇が残してくれた遺産が、ここにはあるのだから。
リオ・フェンブロー
ジュマ(f13211)と
命があったとしても、縁たる物を失うのはあまりに辛いでしょう
せめてその美味しいパンのお礼に
私も花を作りましょう
では私も、布で花を
折角ですし花冠にしましょうか。色とりどりに、季節に合わぬ色があってもそこは愛嬌で
おや? そうですか?
ジュマも十分に器用に思えますが…布の薔薇も美しい
私には、この色を選ぶ事は思いつけないでしょうから
ジュマ
あの時は、迷う私に声をかけてくれてありがとうございました
そうですね。何方か被ってくれると良いのですが…
レディ、もし良ければ如何ですか?
花冠は花嫁もつけると聞きます
いずれ、白の薔薇を花束に幸せになる子が出るよう
その花が再び、この地に咲くことを願って
●
温かなパンをちぎった手をジュマ・シュライクは見つめる。
自分の手が紡いだものが、誰かの希望となるならば。作ろうと思うのだ。そしてそれは、同行するリオ・フェンブローも同じこと。
幸いにも命が残った村人は確かにいる。けれど、縁たる物を失うのはあまりに辛い。
「私も花を作りましょう」
先ほど口に広がった小麦の味を思い出し、感謝の想いを込めながらリオは紡ぐ。
2人は視線を交わし、頷き合う。彼等が用意したのは布。――けれど白だけでは無い、様々な色があるのはこの世界に彩をプレゼントしたいから。
くるり、白の間に色を混ぜ。ジュマが作るのはまだらな白薔薇。
それはあくまでイミテーション。真に迫るつもりは、元々彼には無い。その想いは――もっと美しいモノがあったのだと、誇って欲しいと云う純粋な想い。
手元を動かしながら、ちらりと鋭い金の瞳で横を見れば。リオは手馴れた様子で布を操る。糸で寄せていけば、素早く出来上がる花の形。様々な色の花がすでにいくつも詰みあがり、「折角ですし花冠にしましょうか」と零す彼は次なる作業に移っていく。
色も形も様々な花で出来た花冠。季節に合わなくとも、華やかな彩は確かに。
「リオの器用なこと。魔法のように、次々と」
感心したような声でジュマが零せば、リオはふわりと優雅に微笑むと。
「ジュマも十分に器用に思えますが……布の薔薇も美しい」
友の手元を見て、そう呟いた。私には、この色を選ぶことは思いつけないとリオが語るように。各々の考える彩は、違うからこそ美しいのだろう。
お互いの花を見て、微笑み合う2人。――先ほどの歪な花とは違う、偽りでも確かに美しい花が、彼等の手により作られていく中。ふとリオが、ジュマの名前を呼んだ。
何かと。作業を止めて顔を上げるジュマ。その視線の先には、いつも通り柔和な笑みを浮かべるが、どこか真剣さを宿した沈む青色の瞳があった。
「あの時は、迷う私に声をかけてくれてありがとうございました」
微かに瞳を揺らし、語る青年。その言葉に、ジュマは驚いたように瞬くと首を振る。
「いいえ、礼には及びませんわ。人は迷うもの……選び取るのもまた自分ですわ」
そうですか……。ジュマの言葉に、視線を落とし微笑むリオ。そして響くのは、パチンと糸を切るハサミの音だった。
様々な色の花が集まった花冠は、なかなか枯れない魔法のような冠。見事な出来は、芳しい花の香の幻想を抱くほど。
「綺麗な花冠ですわね。折角だから、村の子に被ってもらましょうか」
その花冠を眺めながら、笑みを浮かべジュマが語れば。リオも頷き辺りを見渡す。
様々な村人がいる。皆笑顔で、それぞれの未来を語っているのだろう。誰にしようか――考えていると、彼の目の前を駆ける人狼の少女が視線に入った。
「レディ、もし良ければ如何ですか?」
美しい男性に声を掛けられて、幼い少女はびっくりしたように飛び上がる。けれど、差し出された鮮やかな花冠を見るとわあ……! と瞳を輝かせた。
「良いの!?」
問い掛ける少女に頷くと、リオはそっとその頭に花冠を乗せてあげる。
ありがとう、嬉しそうな少女を見送れば。一連の流れにジュマが笑みを浮かべていた。
「造花もいつか朽ちていくけれど、その時には薔薇が咲くといいですわね」
――前の薔薇が残してくれた遺産が、ここにはあるのだから。
どこか遠くを見るように瞳を細めた彼に、リオは頷きを返す。
花冠は、花嫁もつけると聞く。いずれ、白の薔薇を花束に幸せになる子が出るよう。
「その花が再び、この地に咲くことを願って」
リオは祈りを捧げるように、余った花を蝋燭の灯りに照らした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トトリ・トートリド
嵐吾(f05366)と
皆、毎日を過ごすのも、大変なのに
ささやか、じゃない。皆には、ぜいたくなはず
…ありがとう、って。ちゃんと、伝えたい
うまく笑えない、けど…トトリの気持ち、伝えたい、から
台所を借りて、嵐吾を、手伝う
林檎…あ、そうか。トトリ、わかった
赤く染まった、林檎の花…
嵐吾、やっぱり、すごい。台所の芸術家、だ
もらったチーズと、小麦粉…蜂蜜、たまご
こねて、折って…焼いたら、白薔薇のケーキ
甘いもの、好きなら…食べてくれたら、うれしい
ウトラ(f14228)がいたら、頭をなでて
…ウトラは、正しいと思ったこと、すればいい
見守ってる、から
…戻ってこられなく、なりそうな時は…ウトラの名前、呼ぶから、ね
終夜・嵐吾
トトリ君(f13948)と
心遣いが、とても優しいな
ささやかというがこれは嬉しい
ありがとうと、彼らに伝えよう
わしからも、このもてなしに……花を送るんじゃよ
ふふ、持ってきたんじゃ、これを
林檎。これくらいなら…良いじゃろう、振舞って
今日はちょっと、特別な日として
持ち込んだのは林檎。これを薄く切って少しばかり煮て、味をつけて
それをくるっと巻いて重ねれば花のようになる
これは美味しい花じゃな
トトリ君も、うーの嬢ちゃん(f14228)も手があいているなら手伝ってくれると嬉しいんじゃ
ちょっとくらいのつまみ食いは勿論良いぞ
皆の心を、本当に癒すのは――この花ではない
けれど一時の慰めになるのなら、それは嬉しい事じゃ
ウトラ・ブルーメトレネ
パン、あったかい
美味しいが嬉しいのに、頭の中を「分からない」がぐるぐる
らんごちゃん(f05366)やトトリちゃん(f13948)にみせたくなかったのは、なぜ?
思わず、二人の前から逃げ出した
トトリちゃんに抱き寄せられたのを思い出すと涙が出そうになるけど、やっぱり理由が分からない
むねのあたりが、ちくちくする
(誰かに抱きしめて貰ったのは、生まれて初めて)
いけない、ちゃんとお花をつくらなきゃ
白いお花を一杯
それから沢山の色を混ぜた虹色の大きな花を一輪(紅は除く
あのね、わたしの生まれた街ではね。にじいろは『祝福』の色なんだよ
この街のみんなに、おおきなおおきな『祝福』がありますように
お食事のお礼に、精一杯を
●
チーズにスープ、焼き立てのパン。
村人の用意してくれた品々を前に、終夜・嵐吾は瞳を伏せ微笑んだ。
「心遣いが、とても優しいな」
ささやかだと云うもてなし。確かに、他世界の生活を知っている猟兵達にとっては、ささやかなのかもしれない。けれど、村人は違う。
「皆、毎日を過ごすのも、大変なのに。ささやか、じゃない。皆には、ぜいたくなはず」
胸を痛めたように、胸元に手を当てながらトトリ・トートリドが呟けば。彼の髪に止まる小鳥達もどこか悲しげにさえずる。
これが彼等の精一杯であることは、よく分かる。だから2人は伝えたい。ありがとうと云う想いを――頷き合い彼等は花を送ろうと、台所へと足を踏み込んだ。
トトリは上手く笑えない。けれど、気持ちを伝えたい。だから嵐吾の手伝いをするのだ。何でも言って欲しいと言うトトリに頼もしい、と返しつつ。嵐吾は持参した荷物をごそごそと漁る。その様子にトトリが小首を傾げて見守っていると。
「ふふ、持ってきたんじゃ、これを。これくらいなら……良いじゃろう、振舞って」
そう言って嵐吾が掲げたのは、真っ赤に染まる林檎。
その美しい赤に目を奪われるようにトトリは見つめた後――あ、と言葉を零す。
「そうか。トトリ、わかった。赤く染まった、林檎の花……」
そう、今日はちょっと特別な日だから。こんなことも許されるはず。
トトリの言葉に笑顔を返すと、嵐吾は早速慣れた手付きで作業に取り掛かる。小麦粉、卵、蜂蜜に村で作っているチーズを合わせて。こねて、折って、焼けば出来上がるのは美しい白薔薇のケーキ。
トップを飾る白薔薇は林檎。薄く切って甘く煮た林檎を丁寧に並べれば、まるで本物の花のように煌き、美しい。テーブルに大きな手を乗せ、見つめるトトリの瞳もキラキラと輝いている。
「嵐吾、やっぱり、すごい。台所の芸術家、だ」
どこか誇らしげに笑みを浮かべて。嵐吾は手伝ってくれてありがとうと、トトリへと言葉を掛ける。2人の美しい力作なら、きっと喜んでくれるだろう。
(「パン、あったかい」)
ほかほかと湯気を上げるパンを手に。ウトラ・ブルーメトレネはぼんやりとそんな事を思った。いつもの彼女とは違う、どこか遠くを見るような空色の瞳。
ぱくりと食べれば、口に広がる小麦の香りが香ばしくて。硬い皮ともっちりとした生地は焼き立ての醍醐味。それはとても美味しくて、嬉しいはず。
なのに――。
(「らんごちゃんやトトリちゃんにみせたくなかったのは、なぜ?」)
彼女の頭をぐるぐると回るのは『分からない』の感情。
ふう、と息を零し。ウトラは露出した腕に触れる。傷跡は残っているが、もう紅は拭い取ったその腕には――まだトトリに抱き寄せられた時に感じた、温もりが残っているようで。あの時のことを思い出して、思わず瞳を雫が覆う。
温かかった。力強いけれど、優しかった。人の命をすぐ傍に感じた。
それはウトラが生まれて初めて知った温もり。だからなのだろうか、こんなにもウトラの心を、『分からない』が満たすのは。
ぐるぐると思考回路の迷路にはまる。けれど、じっと覗き込む同じ年頃の女の子の存在に気付いて、ウトラの意識は現実へと引き戻される。
「いけない、ちゃんとお花をつくらなきゃ」
首をぷるぷると振り、彼女は再び花作りに没頭する。――こうしていれば、不思議な感情も消えていってしまう。
ウトラが作るのは、沢山の白い花。
そして、紅を除く沢山の色を混ぜた虹色の大きな花が1輪。
様々な色を抱くその花を、ウトラの隣に座る少女は輝く瞳で見つめている。まるで、見たことも無いような物を見たように。だからウトラは、笑みを浮かべると。
「あのね、わたしの生まれた街ではね。にじいろは『祝福』の色なんだよ」
そっと少女に花を差し出して。少しぎこちない笑みを浮かべてみせる。
この街のみんなに、おおきなおおきな『祝福』があるようにと願いを込めながら。
今の笑顔はぎこちないけれど。込めるお礼と願いは、確かだから。
ケーキと取り分け皿を手に、外に出た2人。美しく見たことも無いケーキに、村人達が集まってくる。フォークを刺して、口に運べば。
「これは林檎? こんなに甘いのは初めてです……!」
女性も、子供も、老爺も。皆が嬉しそうに笑う姿を見て、2人は嬉しそうに瞳を細めるが――嵐吾は視界に入った虹色を見つめ、はたと瞳を瞬く。
「あれは、うーの嬢ちゃん……」
「っ! 嵐吾」
名前を呼べば、彼は全て分かったように頷きを返す。いっといで。その優しい声に頷いて、トトリは彼女の元へと走る。先程の戦いでのウトラの様子がずっと気がかりだった。彼女が心から、心配だから。
「ウトラ……」
小さな声で呟く声。けれどウトラにはしっかりと響いた、耳馴染みの良い声に。
「トトリちゃん……」
彼女は名前を呼びながら、動揺したように瞳を泳がせた。
今の姿は見せても良いのだろうか。でも、先程の戦いは見られてしまった。どうしよう、どうしよう。ぐるぐるが再び彼女の心を満たしていく。
その迷いが彼女を包み、身動きが出来なくなっていると――トトリの大きな手が、ウトラの虹色の髪へと置かれ優しく撫でる。
「……ウトラは、正しいと思ったこと、すればいい。見守ってる、から」
たどたどしい、けれどしっかりと意思の篭ったトトリの言葉。その言葉にウトラは、空色の瞳でしっかりとトトリを見返した。その空色はもう、迷う色では無い。
「……戻ってこられなく、なりそうな時は……ウトラの名前、呼ぶから、ね」
「トトリちゃん……!」
頬に涙の粒を伝わせ、幼い泣き声を上げる彼女はいつもの姿。零れた涙が、ウトラの悩みを少しでも流してくれていれば良い。
――そんな彼等の様子を遠くから見守り、嵐吾は嬉しそうに微笑んだ。
皆の心を本当に癒すのは、甘味の花では無い。けれど一時の慰めになるのなら、それは嬉しい事。
その癒しは、きっと知人の心も癒してくれる。
そう想って嵐吾は、小さく切り分けたケーキをお皿へと乗せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月居・蒼汰
花…上手に作れるかな
ちょっと不安なので、ラナさん
お手伝い、お願いできますか…?
造花用のワイヤーとか紙テープくらいの持ち込みはいけますかね?
出来るならワイヤーとテープで茎を作って
白い布を巻いて薔薇みたいな花にできれば
葉は緑の布でそれっぽく
生憎と不器用なので、ちょっと変な形に咲くかもしれない
けど、それをいくつか作って束ねれば多分ブーケにもなるし
他の花と組み合わせればリースとかも作れると、思います
…ラナさんは、どんな花を作りますか?
こういう、ちっぽけなお手伝いしか出来ないけど
それでも、誰かの力になれてるのかな
自分の手で咲かせた花で、誰かが笑顔になってくれたら
それは、俺にとってはすごく嬉しいことです
●
上手に作れるかな……。不安そうにぽつりと、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は小さな声でそう零した。
ひとりでは不安だからと、ラナに声を掛ければ彼女は笑顔で応じてくれた。向かい合うように座り、蒼汰が取り出したのは持参したワイヤーと紙テープ。
「これくらいの持ち込みは大丈夫かなって」
「んー……平気じゃないですか?」
きっと機械で出来た花など、ぱっと見でこの場に無い物じゃなければ大丈夫だろう。蒼汰はそのままワイヤーに緑の紙テープを、茎を見立て巻き。白い布で薔薇の花を作る。緑の葉のような布を添えれば、薔薇に見えるはず。
「んー……」
けれど蒼汰は不器用で、綺麗にならずに悩ましげに首を傾げる。動きに合わせて、垂れるロップイヤーの耳も揺れ動いている。
上から横から眺めて――直そうにも、これが彼なりの精一杯。
少し歪んだ花でも、多くの花を束ねればブーケになる。他の花と組み合わせて、リースのようにすれば違った楽しみ方も出来るだろう。
きっと大丈夫。
信じるように頷いた後、蒼汰は
「……ラナさんは、どんな花を作りますか?」
「私は粘土です。お菓子作りみたいに出来るかなって」
工作とかお裁縫は得意では無いけど、これなら大丈夫と。恥ずかしそうに告げる彼女に頷く蒼汰。花びらを合わせて花の形を作る彼女の手元を眺めた後、彼は再び自身の作業へと戻る。大きな指先に握られる、小さな布切れ。
こういう、ちっぽけなお手伝いしか蒼汰には出来ない。
それでも、誰かの力に慣れているのだろうか。
少し歪な花を指先で弄りながら物思いに耽っていると――蒼汰の手元を、じーっと見ている少年がいつの間にか傍に居た。
蒼汰は少年と花を順々に見ると。
「……あげる」
ぽつり、呟きながら差し出した。その花を見て、少年は嬉しそうに顔を上げ。
「いいの!? ありがとう!」
笑顔で受け取り、母親の元へと駆けて行き誇らしげに見せている。そんな少年の様子に、蒼汰は嬉しそうに瞳を細め笑みを浮かべていた。
自分の手で咲かせた花で、誰かが笑顔になってくれた。それが、彼にとってはとても嬉しいことだから。目の前で綻ぶ笑顔が見れただけで十分。
もっと多くの笑顔を咲かせようと。彼は花作りを再開した。
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
わたしは人形だから食べなくても平気だけど
おいしいものだいすき
気持ちがこもってるのがわかるから
差し出されたら断らずに
焼き立てのパンを子供たちとわけっこ
みんなで食べるのがいちばんおいしいんだもの
おおきい方を渡しながら
ふふ、おいしいねえ
ねえしってる?
リボンでバラがつくれるんだって
白いリボンや布を端からくるくる巻いて
最後は針と糸っておしえてもらったけど
ちいさな子でもできるようにピンも用意して
宝石や星、蝶やハチが花にとまるような
布が白だからピンはカラフルに
布に絵をかいてから巻いてもたのしい
すごいよね
つくりかた、ともだちにきいてきたんだっ
だれにあげたい?
うつむいた子にも手をさしだして
いっしょに、つくろうっ
●
ミレナリィドールであるオズ・ケストナーにとって、食事は必須ではない。
けれど彼は、おいしいものが大好き。
差し出されるパンは柔らかな湯気を上げ、芳しい香りが人形である彼にも分かる。それは、村人が精一杯のおもてなしと感謝の気持ちを込めた証。だから彼は微笑み。
「ありがとう」
嬉しそうな声で、受け取った。
「みんなもいっしょに食べよう」
そう言って彼は、じっとパンを見る子供たちへと声を掛ける。本来は硬いパンは、今は焼き立てなので簡単にちぎれる。ほかほかと温かな湯気を上げながら、彼は子供たちへとパンを配る。――大きいほうは、勿論子供へ。
「ふふ、おいしいねえ」
「おいしい!」
オズが微笑めば、子供たちも満面の笑みを返してくれる。――純粋な彼らが、沈む未来にならなくて良かった。安堵の笑みを零しながら、先の光を失わない為に。オズが取り出したのは白いリボン。彼の指から垂れる細長い布に、子供たちは首を傾げる。
「ねえしってる? リボンでバラがつくれるんだって」
くるくると巻いて、出来上がったのは布製の白い薔薇。キラキラと瞳を輝かせる子供に微笑むと、オズは鮮やかなピンク色のピンを用いて女の子の胸元へと留めてあげた。
「お花、つけてもいいの?」
嬉しそうに頬を染め呟く少女。キラキラ輝く赤い瞳。――どうやら、生花は大切なものである為不必要に触れることは出来なかったようだ。だから初めて触れる花に、子供たちは興味津々、前のめりで見つめている。
そんな彼等に、オズはくすりと笑みを浮かべ。
「すごいよね。つくりかた、ともだちにきいてきたんだっ。だれにあげたい?」
弾む声で言葉を掛ければ――お父さん、お母さん、おばあちゃん。それぞれ皆、大切な人を声にして響かせる。その言葉はどこまでも純粋で、オズの心も震えるよう。
夢中になって不器用ながらも花を作る彼等の眼差しは、どこまでも真っ直ぐだから。
「いっしょに、つくろうっ」
俯き、前に出れない子供たちに間接目立つ手を差し伸べれば――温かく小さな手が差し出される。それはまるで、希望を掴むかのように。
彼等の幸せを、希望を咲かせよう。
想いを込めた花を愛しい人に手渡せば、きっと希望は開くはずだから。
●花息吹
花の香りはしないけれど。
闇夜に開いたのは白を中心とし、色鮮やかな偽りの花々。
けれどその花は美しく、村人達を見守るように咲き誇り続ける。
――どれ程かかるかは分からない。
けれど数年後。本当の花で溢れたこの村の姿を見て欲しいと。輝く笑顔で村人達は、口々に猟兵に向けて告げていた。
それは数年先まで、生きるという強い意思の表れ。
希望が芽吹いた、確かな証拠だった。
大成功
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