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眼球奇譚

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●ある職人の独白
 貴婦人達がサロンで歓談している。
 いつも彼女たちの前に出る瞬間は、この世の終わりを迎えるかのごとく緊張する。
 それも当然か。あの方々はヴァンパイア。わたしのような人間など、歯牙にも掛けぬ超越者。上品に微笑む彼女達はいずれも美しく、同時にどんな猛獣よりも残虐だ。
 だが、わたしの手が震えるのは、彼女達が恐ろしいからではない。
 この作品が、新しい作品が。
 彼女達の目に叶うかどうか。そして、結果、マダムを失望させないかどうか。
「――あら、ご機嫌よう、マイスター。お待ちしておりましたわ」
 ひとりの貴婦人がわたしに気づき、艶美に笑んだ。あわせて周囲の皆様から、ほう、と溜息が零れる。何となく艶めいた、熱のある吐息。
「わたくし新しい作品が楽しみで楽しみで。ふふ、どうぞ、もったいぶらずにお願いしますわ」
 女性が目を輝かせる対象は、ヒトでもヴァンパイアでも然程変わらない――否、例外があるのは解っているが、それを論ずるつもりはない。
 わたしは丁寧に天鵞絨で覆った箱をテーブルに置き、丁寧に開いていく。
 ――正直にいって、自慢の作品だ。
 美しく色を残せたアレキサンドライトを中心に、ブルーサファイア、アクアマリンを配置した白いティアラ。繊細な切り出しにはいつも以上に苦心したが、元の曲線が理想的で、仕上がれば元からそうあるべきであったような形は――金の糸で縁取ることで、美しく輝いている。
 素材は酷かったが紗のように薄くしてみたら、何とも不思議な風合いとなった生地で作ったヴェールを重ねたコサージュ。中心には真っ赤なルビーをあしらい、黒い糸で繊細に編んだレースのリボンが、ふわりと立体的に広がるように出来ている。
「まあ、素敵……本当に素晴らしい仕事ですわ」
 うっとりと頬を染め、貴婦人はわたしの作品を見つめる。その美しく手入れされた爪を飾るマニキュアも、唇を塗らす紅も、わたしがこさえたもの。
 彼女はマダムに次ぐ、かなりの支援者だった。
「ねえ、マイスター。今度は首飾りを作って欲しいの。わたくしのために」
「畏まりました……それでは、まずは素晴らしい素材を揃えます」
「お願いね。けれどそうね、とても時間がかかるでしょう? ふふ、わたくし、いくらでも協力してよ……」
 囁かれる言葉がわたしの胸を熱くする。ああ、次の素材を早く揃えなければ。

●潜入の手段
「――ダークセイヴァーになかなかクセのある仕事があるのだけれど、どうかしら」
 ジュマ・シュライク(多重人格者の死霊術士・f13211)は冷ややかな視線を虚空に向けて、猟兵達に問い掛けた。
「いえ、仕事そのものは単純とも言えましてよ。ヴァンパイアの館に乗り込んで、オブリビオンを倒すだけですもの。問題は、現時点では直接転送して差し上げることができない……ということですわ」
 つまり館に乗り込むための道筋は、猟兵達が自分で作らねばならないらしい。
 そこにクセがある、ということだろうか。
「――そのヴァンパイアは、ある人間を飼っているようですわ。個の名など失った『マイスター』……彼は自分の技術を売り込んで、彼女に養われることで欲望を満たしていますの」
 そこで一度きって、猟兵達を一瞥する。
 皆の表情を確かめると、
「彼はさるヴァンパイアの貴婦人に依頼された『作品』を作るために、まずは素材を集めることにしましたの……ええ、素材の『人間』を」
 皮肉げに口元を歪めて、彼は続ける。
 マイスターは人体を加工し、美しい装飾品に変える技術を持っている。骨を削りだしてアクセサリーに。髪でレースを編んで、皮膚を透かしてヴェールを作る。
「極めつけは彼らが『宝石』と呼ぶ……ええ、おわかりかしら? 眼球でしてよ」
 彼の技術は、死者の瞳を至高の宝石がごとく――色を残し、魅力的に見せるらしい。
「さて、そろそろ予想はついた頃かしら? アナタ達には『素材』として館に潜り込んで貰いたいということですわ」
 ――素材の条件は見目の良さに限らぬ。
 その人間が最も自分を輝かせる行動をとることで、滲み出る魅力が必要らしい。
 聖者は聖者らしい輝きを。悪党は悪党らしい輝きを。
 見窄らしい姿であれ、自分の本質を知り、惜しみなく行動するものの肉体に、マイスターは素材として至上の輝きを見出すようだ。
「件の依頼者が多くの人買いを町に放っているそうだから……アナタ達は好きに振る舞い、あっさりとそれについていけば良いだけですわ。簡単でしょう?」
 ジュマは其処までを語ると、猟兵達を金眼でじぃっと見やる。
「ああ、そうそう……人間の屑はどうでもいいですわ。後ろ盾などいなくなれば、のたれ死ぬだけ……アナタ方が倒すべきはオブリビオン。アタシからはそれだけですわ」
 では宜しく頼みますわ――彼は言うなり、猟兵達を送り出すのだった。


黒塚婁
 どうも、黒塚です。
 なお、眼球をメインにした装飾というと、今時ポップなアクセサリーに思えますが。どうやらとても芸術的で、きらきらした装飾品になる凄い技術です。

●1章
 人買いが見ているという設定で、皆さんは町で気儘に行動してください。
 人買いは対象に合わせた甘言を向けてきますので、それに乗ったということになります。
 善行・悪行問わず、自身の性質、本質を示す行動をとればアピールとなります。
 また、敢えて貧しいフリをする必要もありません。
 着飾ること、富めることも「それが自分の本質。魅力」ということになるということです。勿論、敢えてそういう演出を加えるのは有りです。
 ※そして出来ればアピールポイントも(目とか髪とか健康さとか)さり気なく教えていただければ幸いです。

●2章:集団戦
 館を守るオブリビオンとの戦闘になります。

●3章:ボス戦
 『マダム』と呼ばれるオブリビオンとの戦闘になります。
 マイスターはおそらくこの場に居合わせますが、彼の処遇は皆様に委ねます。

●プレイングに関して
 基本的にはまず「導入」を公開しますので、お待ちください。
 プレイング受付の日時については、マスターページ、及びTwitterで連絡をいたします。
 それ以前に送られたものは内容の如何を問わず、返金させていただきます。
 また、今回は人数制限などは特に決めておりませんが、いただいたプレイングすべての描写もお約束できません。
 申し訳ございませんが、ご了承の上、ご参加いただけたら幸いです。

 それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
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第1章 冒険 『ドレスアップ・ビフォー・アフター』

POW   :    肉体や強靭な精神を引き立てて美しくなってみる

SPD   :    凝った装飾や軽やかな仕草で美しくなってみる

WIZ   :    ミステリアスさや神秘さを引き立てて美しくなってみる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ある職人の独白
 素材に老若男女の関係は無い。
 芸術的な傷のある皮膚は味わいが有り、薄汚い刺青も、透かせば変わった風合いを出すことがある。皮膚の色が汚くとも漂泊はできるし――元々念入りな洗浄をせねば、貴婦人方の目にさらせぬ――色だって好きに変えられる。
 櫛など一度も通していない少女の髪も、こちらで丁寧に洗って整えてみれば、本当に艶やかで、なかなか手に入らぬ逸材であったこともある。
 容色が全く使えぬものも、捨てた物では無い。まだ骨と臓物、血液が残っている。
 脆い骨だと彫刻に使えないから、大男の骨は重宝する。人買いが集めるのは貧民が多いため、なかなか手に入らないのが難点だった。
 そして血液――これは抽出してみるまでわからない。時に驚くべき色を生み出すことがある。色を調整し、溶かした蜜蝋と混ぜ込んだ化粧品は、いずれも貴婦人方には好評だ。
 ああ、だが、わたしがもっとも拘るのは、やはり眼球だ。
 食うに困ってやせ衰えているのに、妹に食事を譲った少女の瞳はとても澄んで美しかった。
 加工など、殆ど不要なアクアマリン。わたしの目に狂いは無く、本当にいつまでも澄んだ輝きを放っていた。
 片や、漸く黴びたパンを手に入れた老女を滅多打ちにして、パンを奪い取った男のぎらつくようなルビーもまた美しかった。
 血濡れた色は、深く深く。怨念めいた暗い輝きを籠めている。
 眼球は様々な世界を映しとる鏡――そして彼らは同じ世界を見ながら、全く違う色を見せる。
 不思議な、奥深い素材だ。
 さあ、マダムの期待に応えるため、貴婦人に満足いただくため――至上の素材を、集めなければ。

●街
 ――かの街には光と影が色濃く刻まれていた。
 大通りのマーケットには様々な食料品が並んでいる。数多の土地を越えた食材は、多くのヴァンパイアが介する際に運ばれる。
 彼女達は畏怖を集めると同時に、豊かさをもたらす。彼女達のために、彼女達に請われ、死を恐れず商人は荷を運ぶのだ。
 しかし、一本通りを移れば、スラムで飢えたものたちが壁に身を寄せている。その大半は子供であった。
 ここにいるのはスラム生まれの子供も多いが、富裕層に属していた子供も少なくない――ヴァンパイアの気紛れで親を奪われた彼らはどうすることも出来ないまま、此処へ集まるのだ。
 人通りの少ない路地では盗人が横行し、時に奇声をあげながら刃物をもって無闇と襲い掛かってくるものもある。
 かと思えば、豊かな人々の乗る馬車は目の前に飛び出した当たり屋を容赦なく轢き殺す。
 ヴァンパイアは人々を搾取し。人々はより弱きものを虐げる。
 ダークセイヴァーでは珍しくもない、よくある街だった。
ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
SPD
使用技能:パフォーマンス、存在感

街中で絡繰人形のメボンゴ(白兎頭のフランス人形)と共に路上パフォーマンス
私の本質といえばこれ

アクセサリーにされる為に命を奪われるなんて酷すぎるよ
これ以上の凶行は絶対にさせない!
なんて決意は胸に秘め明るく楽しく

さあ、ショータイムの始まりだよ!
メボンゴを巧みに操り踊らせて私は歌う
人目を引くよう派手に
時折手品も披露
これは可愛いお嬢さんに!
虚空から薔薇を出し観客に贈る等して盛り上げる

声をかけられたら
公演依頼かな?
もちろんどこへなりとも!
路銀稼ぎたい旅芸人のふり

希望に満ちた輝く目が私のチャームポイント
エメラルドの色で綺麗だよ
上手く食い付いてくれるといいな


八上・偲
んー……じゃあじゃあ、街をお散歩するね。
(きらきらした青い瞳できょろきょろ)

大通りでお店に並んでるものを眺めたり。
綺麗なお洋服。かわいいお人形。新鮮な食べ物。
でもふと視線を細い路地に向ければ、
暗い地面。澱んだ空気。薄汚れた子供。

視線を大通りへ戻せば、大きな馬車が道の真ん中で転んだ子供を撥ねている。
猟兵だって死んじゃったものは元に戻せない。

ヴァンパイアが人を殺して。人も人を殺して。
……この世界ってどこ行ってもこんな風景ばかり。
馬鹿みたい。早くヴァンパイアごと滅んだらいいのに。
死んだ子の目をそっと閉じて。

……ん?なあに?わたしに用事?


※絡み・アドリブ歓迎


エスタシュ・ロックドア
久しぶりだな、こーいう街
いっそ懐かしいぜ
12から18までこの世界で生きてたが、
流れ着いた先々の街の、路地裏の物陰で蹲ってよ
溝鼠とっ捕まえたりして食いつないでたわ
餓えて倒れたとこを、群青の目をした珍しい鬼子って売っ払われそうにもなったなぁ

隊商の護衛の口を探すフリでもすっか
いくらヴァンパイアの子飼いったって道中の安全なんか欠片もねぇからな
このガタイでフリント背負ってりゃ隊商の方から声かけて来るだろ
あるいは目ぇ付けてきた人買いのが先かぁね
力と頑丈さにかけちゃ自信大アリだぜ
もちろん目端効かして素早く襲撃に応じるのにも慣れてら
昔は良くこの世界で護衛の真似事して、
食いモンのお零れ恵んで貰ったもんだしな


シュデラ・テノーフォン
人体で宝飾作る技術か
俺の金系オッドアイも濃淡違う色の宝石になるのかな
作りたいと思わないけど

先に街で商人に硝子細工の売り付けがてら
単純作業程度の求人を聞いとく

次にスラム街へ
当たり屋や窃盗する子を何人か捕まえる
生きたいなら他のやり方教えるよ
その場だけの施しは彼等の為にならないからね

教えるのは仕事で使う文字読みと会話術
後は実際働いて覚えなと求人先を伝える
それと硝子の売金を幾らか差し出し
これで多少身なり整えようか
怪我してるならこっそり癒しを歌おう

今は辛くても。どうか生き抜いて
ヴァンパイアもそのうち居なくなるし…あァコレは内緒だよ
余裕ができたら今日俺が君達にした事を兄弟友達にしてあげな

さて人買い来るかな


ショコラッタ・ハロー
ドレスではなく、目立たない盗賊の格好に戻る
街で見掛けた屑な金持ちに目をつけ追跡
闇に紛れて屋敷に侵入し財産を盗む
悪党から奪った金はスラムの子らに配ろう
助け合わねば生きていけないのは、賊も孤児も同じだからな
金は今日の飯の種にせず、この生活から抜けるための足がかりにしろ

義賊気取りのバカな盗人の体で、人買いの甘言に釣られ
それがオブリビオンを滅ぼすために進まねばならない道ならば
いいだろう、刻まれるくらいの覚悟は出来ている

灰の瞳は少しだけ劣等感で、綺麗だとは思えないが
きれいな指だと褒められたことはあったっけ
耐え難い苦痛に泣き叫ぶことはあるだろう
けれど、涙だけは決して見せてやるものか

※どのような描写でもOK


ノエマ・アーベント
眼球をアクセサリーにするなんて
ヴァンパイアだけじゃなくって人間にも悪趣味なのがいるものね

私は自分を着飾ることに興味はないわ
どちらかといったらスラムの方が私の性に合うかしら
マーケットでパンを買い、華やかな通りを外れて寂れた貧民街へ
食うに困った飢えた子達を見かけたら、その子らにそっとパンを差し出すわ
人の愚かな欲を知らないその眼差しが、吸血鬼に狙われないよう祈りつつ
早くお家に帰りなさいと促しながら
自身の黄昏色の瞳で未来を案じるように、子達の背中を見送るわ

こうして後は私だけが人買いたちに拐われるだけ
黙って従うフリをしながら彼らに連れて行かれるわ

さて…これから連れてってくれるところは素敵な楽園なのかしら


冴島・類
眼鏡に適うか謎ですが…
ひとが、連れてかれるよか
余程ましだ

【WIZ
瓜江は納め
彼の面を借りつけ
旅芸人を装い
大通り側の人通り多い場で剣舞を見せ
人買いへのアピールに
投げ銭を得たなら
市で熱量高そな菓子かパンを買い

後に物知らずなツラでスラムを通り
幼い盗っ人に襲われれば
逆に捕らえ
面外しにこと笑い

捕まえた

懲らしめる為でなく
君達のよな子らに頼みがあってね
僕は旅すがら子供の好きそな寓話を集めてる芸人だ
良ければ
君達にこの地のお話を教えてもらえないかな?
話が無ければ風習でも良い

勿論タダとは言わない
お代は食べ物と交換だ

善行じゃない
人攫いの手口です
ただ与えるのは避けたいが
飢えた子は見てられぬ

※鶸萌黄の目
耐火性強い丈夫な肌


冴木・蜜
眼球を宝石と呼ぶ、ですか
私のこの沈んだ毒のような紫紺の眸に
果たして惹かれるかは分かりませんが
出来る限り善処しましょう

私らしくあればよい、と言いましたね
使い古した白衣を身に纏い
流れの医師に扮し
貧民街で怪我や病に苦しむ人々を助け回りましょう

その際には人型は崩さぬよう
其処だけには注意を払っておきましょうか

医術と薬学知識を使って
出来得る限りの人命救助を
勿論お代は頂きません
私はただ皆さまの力になれれば良い
救えれば良いのです

この毒の身が使えるかは分かりかねますが
毒蜜には芳香がありますし
これにも価値があるのかもしれませんね

……さて
誘われてくれるでしょうか
どんな甘言で私を誘って下さるのでしょうね


ヴァシリッサ・フロレスク
【POW】
……ぁあ、このセカイは、相変わらず卦体糞悪いね。
下衆で悪趣味なヴァンパイア共は、雁首揃えて鏖(みなごろし)だ。

ふぅん?カラダ自慢かい。
フフッ、伊達に腕で食い扶持稼いで無いからねぇ?
そこらの輩にゃ負ける気は無いよ。

それにこの瞳は――虚ろの灰、不死の紅、餓狼の黄金。
あら不思議、変幻自在の一品さ。興味は無いかい?

さて、タダの謳い文句だけじゃあ面白くないねぇ?
その辺の裏通りで、孤児を狙う人攫いのひとりやふたり、ブチ伸してやるか。
一寸この瞳で睨んで、軽く捻ってやりゃあ大人しくなるだろうよ。
※技能【世界知識】【おびき寄せ】【かばう】【殺気】活用

――この饐えた匂い。血泥の香り。……懐かしいねぇ。


無供華・リア
SPD
生命の纏った素材が美しいというのは同意致しましょう
けれど本物でないと納得できないなんて悲しい方々ですこと
そうは思いませんか、ジェイド?
この子が本物の生命に劣る事など何一つ御座いませんわ

「わたくしらしさ」が何なのか、自分では判りませんが
普段通り行動致します
黒衣の花嫁としてジェイドを抱いて街を歩くのです
猟兵といえど人目にはつくでしょう
人形用品店等があるか人々に聞いて回ります
この地では娯楽用品は難しいでしょうか?
問われればこの子との婚礼に相応しい衣装を探していると答えますわ
わたくしと同じ銀髪と紫眼が映える装飾を探しておりますの

狂っている?
そうかも知れませんね
狂人同士、響くものも有るのでは?


ユエ・イブリス
瀟洒な鳥籠を準備しておこう
入れるのは小鳥ではないよ
マーケットの軒先にでも吊しておこうか

『我が手は君に届かざる
 嗚呼、神よ憐れみ給え
 この身は地に囚われしも
 魂は蝶となりて空を往き
 薔薇の如き君に憩わん』

値踏みしたいのであれば魅せてやろう
この身は哀れな囚われの妖精
か弱い細腕では逃走などできはしない
薄氷の翅はさぞ珍しかろう?

私は鳥籠の中で詩など吟じ
飼い鳥として生を終える運命を憂いてみせよう
だが鳥であれば心のまま唄うもの
飼い主を退屈はさせはしないさ


演じながらも視線や気配には注意を払い
必要であれば唄に【誘惑】を乗せる
さあ、せいぜい高値で買うがいい
私は、安くはないよ?


コノハ・ライゼ
ナルホドよくあるハナシ
街も堕ちゆくヒトも
それを嘲笑う奴らの、喰らい甲斐もネ

大通りで焼いた肉とパンを無造作に買い込み
子供達の居る路地裏へ
パンと肉を一切れ、食う?と掲げ薄氷の瞳で見下ろす
代わりにキミらの中から一人、オレに喰われてくれるならネ

――なあんて!
様子見、不穏な空気が蔓延る前に笑い飛ばし
細身だが筋肉質な体躯屈ませて
争わず分け合いな、小さい子優先ネ
ンな事いうヤツはこの世界にゃ溢れかえってる
今誰かの顔を思い浮かべちまったコはその事を絶対忘れンな
……コレも只の気紛れ
さっさと食っちまえ、じゃなきゃ奪われるヨ

鳩の餌やりかの様に手を払い立ち去る
喰うのは大好きダケド
飢えてるの見ンのは気が削がれちまうからネ


早乙女・翼
髪と瞳は柘榴色、つまり俺はガーネットの原石にでもなれるかねぇ?

スラムの方を歩いてみようか。飢えた子供達にパンや干し肉等の施しを。
俺には君達にこれくらいしか出来ない。
そして主に祈るしか出来ない…今は。

整った身なりと行動を見て、窃盗犯にはカモだと思われてくれれば僥倖。
周囲には注意し、襲いかかってきたり子供達に害なす輩は恐れる事無く返り討ちにでも出来れば。
その際、それまで隠してた背中の翼をこれ見よがしに広げて華麗に舞う様に。
「命は取らないよ。アンタらだって辛いだろうし」
この辺はまぁ、本心でもあるけど。

綺麗な柘榴と緋紅の羽根持つ、真っ直ぐな性格の青年オラトリオ。
人買いさんにも適度に抵抗して捕まろうか。


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
街のあまりにも大きな格差に
紫水晶のような、菫の瞳を瞬かせ
これが…この街の普通?どうして皆平然としているのだ?
でも雪のように白い頬をぺちんと叩いて、考えを改め

…この子たちはここで必死に生きているんだ
彼らを哀れんではいけない
俺はこの子たちを、真に救うことができないんだから
薄氷の髪を揺らし、気持ちをなんとか奮い立たせ

スラムの彼らに、人間を素材に装飾品を作る職人の噂や、最近人攫いがあったかを聞いてみる

聞き終わったら、施しではなくお礼として
持ち込んだアルダワ製のお菓子をあげる
取り合いにならないよう、順番にプレゼント
たくさんあるから、分け合って食べるんだぞ
お腹いっぱいが一番幸せだからな?

(アドリブ大歓迎)


氷月・望
ゆーくん『月待・楪(f16731)』と同行
アドリブ等歓迎

【WIZ】
美しさって、中々難しいよねー?
しかも、眼球とかまた……ゆーくん、眼球アクセとか興味ある派?
まァ、俺もタダであげるつもりはないんだケドね
ヒトを詐欺師みたいに扱わないで下さーい

神秘的って線で狙ってみよっか
【煌花】を使って周囲に火花を、それから光る眼をアピール
子供達が不思議そうに寄ってきたら、手品師のフリでもしてみよっか
種も仕掛けも御座いませんってね……よし、ゆーくんにも火花を飛ばすよー!
ちょっ、浮かせるのとか聞いてないってばー!?ダンスはゆーくん任せで!

アピールポイント:
ユーベルコード発動と同時に光る深紅の両目
人当たりの良い笑顔


月待・楪
氷月(f16824)と同行
(アドリブetc歓迎)

人間を加工か…何が美しいかなんざ個人の趣味だが、めんどくせーな
アクセにするには目玉はデカいからパス
お前がタダで物をやるとか、どー考えても罠でしかねェな?
…手品っつーか詐欺師の間違いじゃねーの

まァいい…グレーよりは紅色のが目立つだろ
氷月、メインの囮はお前の目だ
その火花有効活用してやるよ
【念動力】で氷月を浮かせて、ついでに自分の身体を補助、火花に合わせて軽業みてェにカポエィラで【ダンス】の真似事でもするか
氷月の周り踊ってりゃそういうコンビみたいに見えるだろ
浮いてる方が神秘的だからな

アピールポイント:黒から紺色にグラデーションしている髪としなやかな肉体


ユエ・ウニ
気持ちの良い話ではないが、職人同士マイスターが気になるから行くだけかな。
僕は僕の主人達が願い想ってこの身体を得たのだろうし、そう思えば髪も目も全て誇らしく。
人買い云々も何とでもなるだろう。

子供の多いスラムの方へ。
人形や玩具が落ちていたり、壊れているのを見かけたら直してやろう。
芸だ何だは出来ないし、僕は着飾らせる側。一番僕らしい事だろう。
すぐに直すさ。
僕はここにいる誰も助けを出来る事は出来ないが、【祈る】事は出来るから。
願わくば、持ち主の幸運を。
人買いから声を掛けられたなら、話を合わせてついていこう。 元よりそれが目的だからな。


レガルタ・シャトーモーグ
スラムへ行き人買いを探す

見慣れた風景だな…
貧困と病と絶望の匂いがする
被ったボロ布の端から炯々と目だけを光らせる
ありふれすぎて吐き気がする…

浮浪児のフリをしてスラムや周辺の市場を歩き回り
【盗み】で財布や店先の果物等を盗って回る
見つからない様にスってもいいが、人買いに見つけられる為なら多少下手を打った風を装ってもいいか
捕まりそうになったら【見切り】で避けて逃げる
人買いの好みは目らしいから
顔は隠さず睨みつけてやるか…

盗ったものはスラムのガキにくれてやる
一時凌ぎにしかならないのは分かってるさ
くだらない、ただの自己満足だ…
それでも、何もしないよりはマシだろうから
人買いが掛かるまでの時間潰しにはなるだろう


ユラ・フリードゥルフ
WIZ
ふぅん、マイスターね。
マイスターって人に、素材的な価値はどうなんだろうね?

さてと、まずは仕事だね
黙っていればお綺麗なお人形って昔知り合いにも言われたし
街中を気ままに歩く
誰かの視線を感じればただ微笑み
足につけたナイフは隠さない
そう、俺は気まぐれに遊びにきただけってことで

人買いと出会い、甘言を聞けばふぅん、と息をついて
ねぇそれだけ?
俺の瞳はタンザナイトなんだってさ
熱を知ったら終わる瞳

褒めそやしこの目を欲した家は、綺麗に滅びた
曰く付きの瞳
ねぇ、貴方にはその覚悟がある?
甘い言葉を続けられる?人買いのおにーさん?

不敵に笑って傲慢に告げようか
女王様みたいに

かかってくれれば良いけど

アレンジ歓迎


タロ・トリオンフィ
大通りのマーケット、その片隅で絵筆をとる

描くものは……興味を惹かれれば何でも構わないのだけれど
他の猟兵が近くに居れば彼(彼女)が題材に良いかもしれない

かつて孤独な画家が唯一の友の為に描いた「僕」のカード達は
色褪せぬ絵具が描く鮮やかな色、活き活きとした筆致
――時を経て、この身を得た僕は真っ白だったけれど
きっと彼が描きたかった世界は、この万色を映す瞳に

僕自身の絵柄は、作者の影響……というより、殆どそのもの
作品である僕自身が模倣というのも変だけれど
けれどそれもまた
生きた時代には愛されなかった彼の想いに触れるようで
だから僕は、かつて彼が使った絵筆を手に世界を描く

(あ、忘れてたけど人買いが来るんだっけ)



●街中で
「俺の金系オッドアイも濃淡違う色の宝石になるのかな。作りたいと思わないけど」
 硝子細工屋の戸を閉めながら、そこに映る自身を見つめ、シュデラ・テノーフォンは不意に零す。白い髪に白い耳、金と銀のオッドアイ――自分の姿に創作意欲が湧くかと言われれば、難しい。客観的に、モチーフとしては確かに興味を惹くだろうが。
 作品の売り込みがてら、ある情報を収集し、次の目的地へと向かおうと踵を返す。
 その視線の先、黒衣のドレスを纏った女がひとり、ゆっくりと歩いていた。
 艶やかな銀髪を上品に纏め、浮かべる微笑みは幽玄と。浮き世のものならぬ気配――何処か幻想めいた空気が漂うのは、壮麗なるドレスが婚礼衣装だからか。
 それとも、胸に大切に抱く人形のためか。
 女は時折、それもひときわ優しい視線を向けて、彼へと語りかけている。
「生命の纏った素材が美しいというのは同意致しましょう。けれど本物でないと納得できないなんて悲しい方々ですこと……そうは思いませんか、ジェイド?」
 無供華・リアはそう問い掛けた。答えはない。彼は人形だから。
 けれど、その足取り、その声音は愛しい者と共に散策をするように。紫の瞳には楽しげな色を湛えている。
 別に不思議なことではないな――シュデラも思う。同時に何となく察することがある――彼女もヤドリガミならば。物を人と愛するは道理。
 彼と入れ替わりに、彼女は店を訪れる。
「この子は人工物ですが、本物の生命に劣る事など何一つ御座いませんわ」
 やはり現実ばなれした空気で、周囲から隔絶されているが如く、艶然と笑む。

 ご機嫌よう、と彼女は店主に挨拶した。
 店を一周してみたが、彼が扱っている細工は一流だと認識する。ただし、彼女が欲するものは無さそうだ――しかし、こういう職人の卸す品は、何処かで繋がっているもの。
「ミニチュアショップや人形の店を探しているんですの」
 ご存じないかしら、と品の良い微笑みで問う。
 視線を人形に向けて、首を傾げてみせる。
「この子との婚礼に相応しい衣装を探していますの……わたくしと同じ銀髪と紫眼が映える装飾を」
 その声音に冗談めいた響きは一切無い。ゆえに、店主は彼女に困惑の視線を向けた。
 ――ああ、やはり狂人だ。
 目の前の人間に浮かんだ言葉を、彼女は否定しない。受け入れるように、静かに佇み、微笑む。幸せそうに。
 答えに窮し、困り果てた彼を置いて――横からリアに声をかけるものがいる。
「レディ……いえ、マダム。よろしければ、御用を承れるかもしれません」
「あら、本当?」
 勿論、リアはきちんと理解している。この男の甘言は全くの嘘であることを。
 だが愛しい人を胸に抱き、うつくしく微笑んでみせる。
 満足のいく衣装に出会えるならば――何処へでも参りますよ、と。


「ナルホドよくあるハナシ。街も堕ちゆくヒトも、それを嘲笑う奴らの、喰らい甲斐もネ」
 コノハ・ライゼは唇に笑みを浮かべ、唱うように弄す。
「お客さん、何か言ったかい?」
「ン? 美味そうな匂いダネって」
 にこりと愛想良く彼は嘯いて、商品を受け取り歩き出す。良い匂いの漂う肉。後はパン屋を探すだけ。なんだか妙にパンが売れるらしく、理想的なパンに巡り会えない。
 別に何でもイイんだけどネ――思うけれど、少々、そういうどうでもいいことに彼は拘ってしまうのだ。
 歩いていると、妙な人だかりがあった。
 ある店の軒先の前、扇状に取り囲むように、ぎゅっと人が詰めている。
 ゆえに彼からは確認できなかったが――、軒先に吊された瀟洒な鳥籠。その中身を覗き込もうと人々が列を成していたのだ。
 鳥籠の檻は間隔が詰まっている。だが中の鳥を観賞できる絶妙な幅。しかし、その中にあるのは鳥ではない。だからこそ、人々は極力距離を詰めて、確かめようとするのだ。
 それが『本物』かどうかを。

 我が手は君に届かざる
 嗚呼、神よ憐れみ給え
 この身は地に囚われしも
 魂は蝶となりて空を往き
 薔薇の如き君に憩わん

 ――詩が聞こえる。
 目をやや伏せて、ユエ・イブリスが謳っている。
 白い睫の奥、真紅の瞳。頬に掛かる白い髪が呼気で揺れて、その様をまじまじと眺める人々の感嘆が零れる。
 彼はまるでちいさな細工のようだ。
 薄氷の翅を振るわせ、薄い唇で詩を吟じる。飼い鳥として、不自由な身を儚む詩。
 自分を見るために目を細める人々の前を、気紛れに飛んで見せたりする。自分の価値を知らしめるように。
「私は飼い鳥。一生外の世界を知る事はできない……誰かがこの檻から解き放ってくれない限りはね」
 寂しそうに溜息を吐き、彼は独演を続ける。
「だが鳥であれば心のまま唄うもの。主を退屈はさせはしないさ」
 次はどんな人がご主人様となるのだろうか――小夜啼鳥か、金糸雀か、そんな詩を彼は吟じ始める。
 しかし彼は周囲を注意深く探っている。赤い瞳は媚を売るかのように視線を移ろえているわけではない。そう見せているのだ、そう見えたとしても仕方は無いが。
 目のあった相手に、にこりと気紛れに笑んでみせる。
 さあ、せいぜい高値で買うがいい。
(「――私は、安くはないよ?」)
 ひそりと微笑んだ。つくりもののように、美しく。


 これ見よがしに足にナイフを備えた少年は、目的も無く街を彷徨いているように見えた。
 小綺麗な服装、品の良い顔。視線に気付いて、悪戯っぽく微笑む。
 だが、その姿には妙に隙が無い。
「何か用かな、おにーさん」
 ユラ・フリードゥルフ(灰の柩・f04657)は首を傾げて問う。黒髪がさらりと頬にかかる。
 作り物めいた――否、実際彼はミレナリィドールだが――顔で、覗き込む。
 人なつっこいとも、無遠慮とともとれる態度だ。
「ある貴人が使用人を集める。そこで是非とも君を雇い主に合わせたい、と思ったのだが……」
 少々たじろぎながら、男はそう告げると、ユラはただ、ふぅん、と零した。
 ――彼の反応はそれだけだった。
 男が面食らっていると、その様子を眺めながら、漸く次の言葉を紡ぐ。
「ねぇそれだけ? 俺の瞳はタンザナイトなんだってさ――熱を知ったら終わる瞳」
 誰かに雇われるのは、初めての経験ではない。
 だがその結末は。
「褒めそやしこの目を欲した家は、綺麗に滅びた、曰く付きの瞳……ねぇ、貴方にはその覚悟がある? 甘い言葉を続けられる? 人買いのおにーさん?」
「人買いだなんて――」
「そうだったね。使用人を集めてるんだっけ? いいよ、丁度身体が空いてるからね」
 男が否定しようとしたところへ、そう畳み掛ける。
 家が滅んで暇なんだ、と。笑えぬ冗談で相手を冷やかして、ユラの眼鏡の奥、タンザナイトの瞳が笑う。


 大きなスーツケースを地において、白兎の人形を抱いた少女が呼び声をあげた。
「さあ、ショータイムの始まりだよ!」
 ジュジュ・ブランロジエは人形を地面に降ろして無造作に解き放つ――ように見せかけ、白兎はドレスを鮮やかに捌いて踊り出す。
 彼女の十指に従い、愛らしい兎の人形――メボンゴは躍り、ジュジュは唱う。
 愉快なダンス、華麗なダンス、彼女は気儘に演じて見せた。いつしか集まってきた子供達はかぶりつくように二人の演技を見て、歓声を上げる。
「おねえさんすごいっ」
「うさぎさんのドレスかわしい」
「メボンゴってへんななまえー」
 素直な反応に、ふふ、とジュジュは笑う。因みに『変な名前』という評に、彼女は怒ってもいないが、理解もしていない。
 人々が楽しそうに見てくれる――笑顔を浮かべてくれる。いつしかジュジュは勤めを忘れ、全力で演じていた。
 大きく、きらきらとエメラルドの双眸が輝いて。
「みんな、ありがとう」
 曲の合間に、こんな事もできるんだよ、と彼女は空で指を弾く。
 虚空から薔薇を出し、真っ正面で目を輝かせていた少女へ、演技じみた優雅な動きでプレゼントする。
「これは可愛いお嬢さんに!」
「わあ、いいの?」
 にっこりと微笑んで頷く。
 彼女のパフォーマンスが好評なことを遠巻きに、氷月・望が人当たりのよい笑顔を浮かべ、隣の男へ問う。
「ゆーくん、負けてられないねー?」
「知るか」
 月待・楪はにべなく言う。にっこりと笑った儘の望は、構わず口上を始めた。
「はいはーい、どうぞお立ち会い! こちら流れの魔法使い。皆さんに神秘の術をご覧に入れます……」
 幾人かの注目を受け取りながら、望は自らの周囲に温かな色の火花を散らす。薄暗いダークセイヴァーにおいては鮮やかに、温かに、ぱちぱちと流星のように爆ぜる。
 子供の歓声と、大人の歓声。
 そして、力を発動している彼の両眼が、美しく深紅に輝いていることへの感嘆――。
「種も仕掛けも御座いませんってね……よし、ゆーくんにも火花を飛ばすよー!」
 望が差し向けるままに、火花が動く。
 灰の視線は愛想の欠片も持たないが、火花を纏うように、地面に逆立ちするように、ぐっと身をひっくり返す。
 同時に、大きなどよめきが走る。
 楪はカポエィラを基礎とする、アクロバティックなダンスを見せながら――念動力で望を浮かせたのだ。浮いた彼の周囲を、火花と共にキレのあるスピンを見せる。
「ちょっ、浮かせるのとか聞いてないってばー!?」
「浮いてる方が神秘的だからな――目立てばいいんだろ」
 動揺する相方に、知ったことかと彼は身体を捌く。観客達はただただ驚きに目を丸くしている。異次元に軽やかな動き。温かな火花の神秘的な光。
 自身の動きにも、多少力を使っている――楪にしても、後でひどい副作用を抱えるパフォーマンスだ。黒から紺へとグラデーションする髪、躍動するしなやかな肢体が、美しく照らされた。

 そんな彼らを目を輝かせて眺め、絵筆をとる白い少年が居る。一見穏やかな眼差しに真摯な光を宿して、対象を見つめ――その姿こそ、絵になる少年であった。
 白い髪、白い服、白い肌。そしてその虹彩も白いのだが、きちんと捉えれば、七色の輝きが揺らぐようなオパールであると知れる。
 タロ・トリオンフィは自身と向き合うように、対象を描く。
(「かつて孤独な画家が唯一の友の為に描いた『僕』のカード達は色褪せぬ絵具が描く鮮やかな色、活き活きとした筆致……」)
 彼がキャンバスに載せる色遣い、筆遣い、絵柄もすべて、作者の受け売り――模倣。
(「――時を経て、この身を得た僕は真っ白だったけれど、きっと彼が描きたかった世界は、この万色を映す瞳に」)
 変な話だとも思う。
 作品が筆をとり、作者の模倣をする。
 どういう運命の交錯か、おそらく作者も思いも寄らなかっただろう。
「けれどそれもまた……生きた時代には愛されなかった彼の想いに触れるようで」
 呟いて、小さく笑う。握る絵筆は、まさしく作者の使っていたもの。
 意志を継ぐとか、追体験をしたいとか、そういう話では無いのだけれど。
 何となく同じことをトレースしているような事実が面白い。ただ絵を描くのが、面白い。
 対象がきらきらと輝くように演じている。その瞬間を切り取るのは難しいけれど。彼の筆はその一瞬を色と載せていった。
 ついつい夢中になって絵に没頭していた彼に、ひとりの男が声をかけた。
 オパールの瞳を瞬かせ――ついぞ、もうひとつの仕事を忘れていた彼は、本気で目を瞬かせ、ああ、そうだったと零すのであった。

 ジュジュが終演を告げると、拍手喝采が路地に響き渡る。
 その輪を割って前へと進んできた男の提案に、彼女はメボンゴと共に一礼してみせる。
「公演依頼かな? もちろんお金をいただけるのならどこへなりとも!」
「領主様のお屋敷で? それは緊張するなあ、ねえ、ゆーくん」
 また一方で、声をかけられた望が楪を振り返る。忌々しげにこめかみを押さえながら、彼はああ、そうだな、と曖昧に頷いた。


 路地で、黒い異国の仮面をつけた男が剣舞を披露していた。
 美しい刃がひゅっと風を切り、ぴんと伸ばした手足で流れるような型を披露している。
 銀杏色の組紐飾りの付いた短刀を巧みに動かし、見事な身体捌きを見せていた。
 それをじっと見つめる子供達、感嘆をあげる大人達の横を通り抜け、ゴーグルを頭に載せた少女――ヴァーリャ・スネシュコヴァは菫の瞳を瞬かせた。
「どうして……」
 思わず呟く。
 こうして誰かの芸に足を止める心があるのに――。
 マーケットの方に目を配れば、店の品物を盗もうと手を伸ばした少女がいた。
 それを見咎めた年老いた店主は、すぐさまに激昂すると、棒を手に彼女を幾度となく打ち据え、路地へと突き倒す。
 街を歩いていた、小綺麗な女や男が悲鳴をあげて彼女を避ける。血を流して道路に伏して動けなくても、誰も手を差し伸べない。
「……これが……この街の普通? どうして皆平然としているのだ?」
 心の奥から出る、驚きと疑問。しかしすぐその考えを改めるように、ヴァーリャは雪のように白い頬をぺちんと叩いた。
「……この子たちはここで必死に生きているんだ」
(「彼らを哀れんではいけない――俺はこの子たちを、真に救うことができないんだから」)
 ほら、蹲っている子供を、こっそりと迎えにいく、同じように小汚い子供がいる。路地の向こう側で、早くしろと手招く仲間がいる。
 薄氷の髪を揺らし、ヴァーリャは心を決めた。彼らを追って、路地の奥へ。


 道路に取り残された、子供の死体がある。
 その子は先程馬車に轢き殺された。パンを盗んで、道に飛び出したのだ。
 不運を嘆くは御者で、汚い舌打ちをひとつ、馬が無事なことだけ確かめると、さっさと立ち去ってしまう。
 残された死体に殺到したのは、餓えた浮浪者。子供が持っていたパンは轢かれ、ひしゃげて汚れていたが、彼らは醜く争いながら奪い合いあっていた。
 血と吐瀉物が道に広がって。驚愕に見開かれた光のない眼球は、最期に何を見ただろうか。
 その横に、ちょこんと座った灰色髪の少女。ふわりとした髪に勿忘草を咲かせた、黒衣のオラトリオのこどもだ。
 彼女は先程まで、興味深そうにマーケットを見つめ、出し物を見つめ――綺麗なものを見つめていた。
 俯いたまま、彼女はそっと少女の死体を見つめる。
「猟兵だって死んじゃったものは元に戻せない……」
 八上・偲は青い瞳に悲しげな色を――否、やるせなさ。失望、そんなものを湛えていた。泪はない。けれどその瞳は水のような色をしている。
「ヴァンパイアが人を殺して。人も人を殺して。……この世界ってどこ行ってもこんな風景ばかり。馬鹿みたい。早くヴァンパイアごと滅んだらいいのに」
 暗い空の下で、ねえ、そう思わない――偲は問い掛け、小さな掌をその子供の目を優しく閉じる。
 自分に出来るのは、それだけ。
 その場を離れようと立ち上がった幼き娘の横に、男が並ぶ。手伝おう、とその死体を担いでくれた。
 けれど偲はわかっている――その人が善意の人ではないことを。
 それでも無知な子供のように、彼女は見上げる。
「……ん? なあに? わたしに用事?」


「泥棒だ!」
 ボロ布を被った少年が駆けていく先々で、声が上がる。
 店に寄れば果実を、人に寄れば財布を。
 小柄な少年はジグザグに渡りながら、可能な限りの盗難を行う。
「待て!」
「こいつ!」
 叫ぶ大人達の手をかいくぐり、彼は駆けていく。必死に逃げる最中、その顔を隠していたフードが外れた。青い髪がはためき、髪に咲く鳥兜が揺れる。
 白い肌に赤赤と輝く瞳が明らかになった。
 レガルタ・シャトーモーグは追っ手を強く睨んだ。この世界を強く憎んだような瞳だった。
 走りながら、顔を隠し直すと、人混みの中に紛れて消える。小柄な身体を活かして人の影を渡れば追い切れぬものだ。
「全く、この街は酷いな。質の悪いガキどもが多すぎる」
「へえ」
 エスタシュ・ロックドアは買った果実を口に運び、適当な相鎚を打った。
 鉄塊剣を担いだ大男は、この騒動を傍観と見守った。余計な仕事はしない、ということだろうか。
 仕事の手が空いたのだろう、隣の穀物を売る女が、果実売りに囁いた。
「それどころか――ついさっき、宝石屋の旦那さんの家に盗人が入ったらしいわよ」
「物騒だな……それなら、問題無く仕事にありつけそうだ」
 黒い頬を笑みで歪めて、彼は歩き出す。大振りな得物をこれ見よがしに見せつけて大通りを行く。居並ぶ商人達の視線を受けて、スカウトを待っている。
 ――その群青色の瞳は遠くを見つめ、何事かを考えている。
 郷愁。
 今のように、未だ武で身を立てられぬ頃。数多の街を渡り歩き、流れ着いた先々で――路地裏の物陰で蹲っていた時の事。
 溝鼠を捕まえて、食い繋いでいた時の事。
 決して豊かな世界ではないが――何とか生き抜いた、その記憶。
 成長した少年は、護衛の真似事を続けて此処に至る。仕事をすれば、何とか食事のお零れに与って――逞しく、並以上に成長したわけだが。
「そこのお兄さん。仕事をお探しかね」
 暗い路地から、声を掛けられた。帽子で目許を隠した老人だ。胸元には金の細工を身につけている。それだけで、豊かなものだとわかる。
 にっと歯を見せ、エスタシュは不敵に笑う。
「力と頑丈さにかけちゃ自信大アリだぜ」
 証明するように、隆々とした身体に刻まれた創をさり気なく見せる。
「結構、結構……良い仕事がある。この先にある馬車にのって、少し移動して貰わねばならないが……」
「いいぜ。直ぐ行ける」
 老人の言葉に即時応じる。疑いなど一切持たぬ彼の様子に、満足そうに頷いた。
 エスタシュはその小さな背を追いながら、不意に目を細めた。
 ――餓えて倒れたとこを、群青の目をした珍しい鬼子って売っ払われそうにもなったなぁ。
 今は餓えちゃいないし、可愛げもより一切なくなったが、まさかアレより質の悪いスカウトを受ける事になるとはなぁと。
 相手に悟られぬように息を殺し、笑ったのだ。

●スラムにて
 薄暗く薄汚れた路地。大きく破壊された集合住宅の裏は本当に行き場も無く困り果てた子供達の終着点。
「この饐えた匂い。血泥の香り。……懐かしいねぇ」
 女が口の端を歪めた。到底人に好かれる種類の笑顔ではない――と、少なくとも本人は思っている――が、その言葉はそれなりの郷愁を伴っている。
 眼鏡の奥では灰色の瞳が隙なく周囲を睨め――在るところに止まると、鉄火の如く、燃える髪を無造作に掻いた。
 孤児の腕を男が引っ張っている男が居る。
 子供はいやいやと首を振り、何とか抵抗をしていた。
「いやああ!」
「うるせぇ! 今日中に数揃えねえとオレの首が飛ぶんだよ」
 子供の腕を掴んでいないほうの左腕で、痩せた子供の頬を殴り飛ばす。ゴッ、と重い音がして子供は言葉も無く、項垂れた。血が散って――汚い壁を更に汚した。
 彼女の足は自ずとそちらに向かった。
 旅慣れたブーツが割れた石畳を鳴らし、男が彼女に気付いた瞬間。
「なら、今日と言わず……今すぐここで飛ばしてやろうか」
 ニィ、と。
 ヴァシリッサ・フロレスクの笑みはますます深くなる。その表情の儘、ぶん殴った。
 無造作に見え、腰をいれて深く振り抜いたので、恐らく頬骨は折れただろう。
 呻きながらも、男が子供から手を離し――そのまま、右手で殴りかかってきた。その意気や良し、だが彼女の二撃目は強かに鼻柱を打ち砕く。
 路地に倒れ込んだ男は、元の様相もわからぬ始末。だが彼女は笑ったまま、
「こいつを使わなかっただけ良心的だと思うけどね」
 スヴァローグに触れながら振り返った。その灰の瞳が、淡く、赤く、輝いている。
「で、そっちは見てるだけかい? オトモダチだろう?」
 物陰に馴染むように薄汚れた外套を纏った男が、彼女に呼ばれて姿を現す。
「善行のつもりか? ――その割に、容赦ないな」
「フフッ、伊達に腕で食い扶持稼いで無いからねぇ? そこらの輩にゃ負ける気は無いよ」
 子供にこの場を去るように促しながら――彼女は男にそう告げる。
 場合によってはこいつも張り倒そう、と考えながら。
「それにこの瞳は――虚ろの灰、不死の紅、餓狼の黄金。あら不思議、変幻自在の一品さ。興味は無いかい?」
 その言葉を、男がどう解釈しただろうか。
 彼はヴァシリッサの頭から爪先までを一瞥すると、こう返してきた。
 金が欲しいならば、よい案件がある――。

 ……ぁあ、このセカイは、相変わらず卦体糞悪いね。
 下衆で悪趣味なヴァンパイア共は、雁首揃えて鏖だ。
 笑いながら、裡に零す。


 貧民街の一角。今にも崩れそうな粗末な小屋で――顔色の悪い白衣の男が、厳しい表情を見せていた。
 その視線の先には、薄い布を敷いただけの寝床に横たわった少年。苦しげに表情を歪めて、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)の触診を受けていた。
「――恐らく、異常は腹部……ですが、治療には外科手術が必要でしょう」
 沈んだ紫紺の眸は真摯に患者を見つめている。
 彼の知る治療法を駆使すれば、救うことはできる。問題はこの環境で、その手技をどれくらい発揮できるのか。
「大丈夫なんですか、先生」
 少年の姉という娘が不安そうに覗き込む。
 蜜は幾分か穏やかな表情を作り、手を尽くしてみる――と頷いた。
 気がつけば小屋の周囲には人々が集っており、順番を待っている。流れの医師がやってきて、無料で治療を行ってくれる。
 半信半疑だった人々の心を短い時間で掴んだのは、実際に蜜が幾人かの問題を解決してきたからだ。
「でも本当にお金……」
 娘は不安そうに蜜の顔を見る。元は育ちが良かったのだろう。薄汚れているが、どことなく立ち振る舞いに品のある娘だった。
「勿論お代は頂きません。私はただ皆さまの力になれれば良い――救えれば良いのです」
 ゆっくりと首をふって、小屋から出るように告げる。ここから先は見せられなかった。
 無人となった小屋の中、タールの指で少年の病巣を探る。麻酔の代わりは彼の毒蜜。
 それが持つ芳香が漂い――治療を繰り返すにつれ、いつしかこの近辺にはこの不思議な芳香が漂うようになっていた。
 小一時間後――治療に成功した蜜が小屋を出ると、並んでいたはずの患者達が消え、代わりに、中年の男がひとり立っていた。
 訝しげな視線を浴びても、男は怯まず、口をきく。
「なんでも、流れのお医者さんだとか」
「……はい」
 やや間を置いて、蜜は答える。さて、どんな誘いを貰うのか。
 同時に、追い払われた貧民達が無事であればよいのだが、とも思う。
「――薬に興味がありませんか? とても珍しい効能のものがありまして」
 ありきたりだ。或いは本当なのかもしれない。けれど、蜜に断る理由はない。
「興味深いですね。しかし、何故私にそのような話を?」
 対し、男は乾いた笑みを浮かべる。
「無償で人を救いたいという方にこそ、この薬はふさわしいのですよ」
 詐欺師の常套句だな、と蜜は思ったが、顔には出さず。
 ただ、眼鏡の奥の紫紺を閉ざし――頷いた。


 先程まで大通りで剣舞を見せていた仮面の男が、今は人気の少ない路地を歩いていた。
 そこに、小さな影が走り込んでくる。密かに煌めいたのはナイフか。影は警告も発さずに、男へ斬りかかった。
「こら」
 ナイフは空を掻く。子供は首根っこを掴まれて、ぐいと遠ざけられた。
 仮面の男は笑みを滲ませた声で、咎める。
「捕まえた」
「か、金をよこせ」
 それでも健気にそう告げた小さな盗賊に、面を外して、にこりと笑った。鶸萌黄の目が優しく彼を見つめる。
「タダではあげられない」
 冴島・類は穏やかに告げる。真っ赤な顔で睨んでくる子供に、でも丁度よかったと続ける。
「君達のような子らに頼みがあってね。僕は旅すがら子供の好きそな寓話を集めてる芸人だ――良ければ、君達にこの地のお話を教えてもらえないかな? 話が無ければ風習でも良い」
 訝しげな視線とぶつかる。
「勿論タダとは言わない。お代は食べ物と交換だ」
 内心で――人攫いの手口だと、自嘲する。
 けれど、ただ与えるだけは避けたかった。それでも結局、餓えた子供を放っておくことはできない。
「できれば、落ち着くところに案内してくれると嬉しいかな」

 子供達を追って、貧民街にやってきたヴァーリャは子供達の中に混ざっていた。彼らが盗んだ食べ物は極々少なかったが、みんな少しずつ分け合っていた。
 君も欲しいの、と尋ねられて、彼女は慌てて首を振る。
 聴きたい事があって、と用件を切り出す。
「ねえ、最近人攫いがなかった?」
「わかんなーい」
「みんなすぐいなくなっちゃうからね……」
 ヴァーリャの問い掛けに、子供達は顔を見合わせ首を傾げる。そんなのは日常茶飯事だ、という顔をした者もいる。
 それじゃあ、彼女は質問を変えた。
「人間を素材に装飾品を作る職人って知ってる?」
「……そざい?」
 子供達の反応は、いまいちだ。
「髪とかを売れば高く買ってくれるひとがいるっていうのは聴いたことあるけど……」
「そうか――やっぱり、知らないか」
 残念そうに零すと、荷物をがさごそと探り、アルダワから持ってきたお菓子を取り出す。
 わあ、子供達から歓声が沸く。
「話を聴かせてもらったお礼だ。たくさんあるから、分け合って食べるんだぞ。お腹いっぱいが一番幸せだからな?」
 菫色の瞳で穏やかに彼らを見つめ、ヴァーリャは微笑む。
 子供達が去って行くのを見送ると、彼女は類と鉢合った。子供達と会話を交わし、謝礼を終えた、類はすっかり仮面を持ち上げて顔を明らかにしていた。
「なあ、後ろの」
「ええ……どうやら、この地にまつわる面白いお話を聞かせて貰えるらしいです」
 伝わるように、肩を竦めて見せる。明らかに怪しげな笑みを浮かべた男が、お嬢さんもどうですか、と無節操に誘うのであった。

 また別の、路地――薄氷の瞳、紫雲に染めた髪の男が、ふらりと訪れる。彼は両腕に良い匂いのするパンと肉を抱え、皆の注目を浴びている。
「パンと肉を一切れ、食う?」
 コノハが小首傾げ、彼らに尋ねる。
 暗く俯いていた子供達はその優しげな声音にと匂いに誘われ、顔を上げる。直ぐには近づいてこないのは警戒心だろう。それでも期待の滲む顔と、急にあちこちで腹の虫が音をあげているのは隠せない。
 その代わり――コノハは薄氷の瞳を冷ややかに細め、彼らを見下ろす。
「代わりにキミらの中から一人、オレに喰われてくれるならネ」
 ――沈黙が落ちた。
 彼が何を言っているのか、探り合う表情。困惑の中に、別の感情を浮かべる子供もいる。自分が腹を満たすために、どうするべきか。もう暫く待てば、誰かが誰かに跳びかかるかもしれない。
 相手はコノハか、同胞か――。
「――なあんて!」
 クハ、と彼は笑い出した。先程までの剣呑で冷酷な空気は完全に吹き飛ばし、コノハはすぐ近くに身を寄せ合っている子供達のところへ近づくと、膝を折る。
 細くとも確かに鍛えられた体躯は、しなやかに。悪戯めいた微笑みを浮かべて子供達を覗き込む。
「争わず分け合いな、小さい子優先ネ」
 でもネ、と彼は付け足す。
「ンな事いうヤツはこの世界にゃ溢れかえってる。今誰かの顔を思い浮かべちまったコはその事を絶対忘れンな」
 みんなおいで、と彼は誘い、手にした食料がなくなると立ち上がる。
「さっさと食っちまえ、じゃなきゃ奪われるヨ」
 素直に、夢中でパンを貪る子供達を、再び目を細めて見つめ――よろよろと後を追ってくる子供に、あっちへ行きなと手を払う。
 ……コレも只の気紛れ。これ以上世話を焼く理由はないと。
「喰うのは大好きダケド。飢えてるの見ンのは気が削がれちまうからネ」
 でも、そっちは違うみたいだネ――と薄氷の瞳を暗がりに向ける。
 姿を現した男は、にやりと笑いかけた。
 マズそうなひどい顔だ。先が思いやられると、コノハは溜息を吐いた。


 シュデラは幾人かの子供に、文字読みと会話術を教えていた。
 相手は大通りで見かけた当たり屋の子供や、強盗見習いの少年。街中で彼らの悪事を咎めると、
「生きたいなら他のやり方教えるよ」
 そう告げて、連れてきた――正確には、彼らの住処に連れてきて貰った、のだった。
 その言葉に捨て台詞を吐いて逃げていった子供達もいるが、幾人かは彼が何を教えてくれるのか見極めようという体で着いてきた。
 ――彼らとて、平穏に生きられるのならば、それに越したことはない。
 勿論、これらは一朝一夕で身につく物では無い。
 それでも彼らの中には、元々文字に関しては知る子供もいるにはいて、何とかなりそうだ。会話術に関しては、覚えの良い子供に念入りに教えていく。
「大事なのはちゃんと仕事をすることだ」
 授業の終わり、彼は言う。
 奪うのでは無く、得るのだと。
 そのために――彼は先程、持ち込んだ硝子商品を売って得た報酬を、子供達に渡す。
「これで多少身なり整えようか。何日分かの食費にも使えそうだけど……それじゃあまた奪う生活に戻ってしまう」
 その場だけの施しは彼等の為にならないからね――シュデラの心情は、今を必死に生きる子供達に伝えるには、難しいものだけれど。
「今は辛くても。どうか生き抜いて。ヴァンパイアもそのうち居なくなるし……あァコレは内緒だよ」
 戯けるように唇に人差し指を当て。
 けれど、ヴァンパイアがいなくなったところで――彼らの生活が楽になるわけでもない。
「余裕ができたら今日俺が君達にした事を兄弟友達にしてあげな」
 最後にそう告げた時、輝いた子供達の視線を受け止め、シュデラは口元に笑みを湛えた。
 もう大丈夫。安易で危険な手段はとらぬだろう。
 誇らしげな気持ちも持ちながら、外へと出た彼の前に、幾人かの男達が現れる。
「おや、君達も授業希望かな……なんてな」
 大仰に肩を竦めて、彼は笑って見せた。

 長い灰色の髪を揺らし、黄昏色の瞳の女が暗い路地を歩く。
 その足取りに迷いは無く。饐えた匂いに表情を歪めることもない。白い衣装は闇を裂くようだ。
 腕に抱えるはパン。まるで家路を目指すような雰囲気で、彼女はそこへ辿り着く。
 いくつかある、貧民街。路地よりはマシだが、今にも崩れそうな小屋――のようなもの――を連ねただけの場所。不思議な力に破壊されて、半分抉られたような家屋の中に身を寄せる者達もある。
 それらを眺めていると、背後から歓声が聞こえ、ノエマ・アーベントは小さく振り返る。
 通りに子供達が集まっている――粗末な椅子に、作業台。
 腰掛け作業しているのは褐色の肌に銀の髪を持つ青年だった。影でもきらきらと輝く髪、針を手に、細かく動く指。
 人形の服を繕って、できた、と微笑むは花のように明るい瞳。
「次のを見せてみろ」
 今度はこれーっと小さな女の子が、彼にぐりぐりと押しつけるようにぬいぐるみを渡す。
 こらこら、と困惑を見せつつも、直ぐに彼の眼差しは真摯と戻る。
 破れた熊のぬいぐるみをじっくり眺めると、不安そうに見つめている彼女へ、優しく微笑む。
「安心しろ。すぐに直してやる」
 ユエ・ウニがそう断言すると、嬉しそうに笑う。技術的に難しいことは何もない。
 表面を繕って、中の綿を詰め直せばいい。洗浄することはできないから小綺麗にはできないが、形が整うだけで随分違うだろう。
 くたびれた汚い人形であっても、彼の指先は丁寧に仕事をする。
 この子が――ずっと大切にされてきた人形であることは確かだ。
(「僕は僕の主人達が願い想ってこの身体を得たのだろう」)
 だから、その思いの一端に触れるのは、厭うどころか、楽しいモノだ。自然と口元に浮かぶその表情は穏やかで美しい。
 彼の指先は休みなく動き続け――あっという間に、熊のぬいぐるみはしゃっきりと身を起こすようになっていた。
「最後におまじない――願わくば、持ち主の幸運を」
 祈りをこめて彼が手渡せば、彼女は天真爛漫な笑みを浮かべて、礼を告げるのだった。
 楽しそう――ノエマはユエの姿をみて、そう思った。
 同じ目的で此処にいるはずだが、今彼はそれを忘れて仕事に没頭しているように見えた。そして子供達が皆、喜んでいることも。
 そちらに気をとられている間に、傍らを何かに囲まれているような気配を感じて、彼女は視線を近くに戻す。
 ――パンの匂いに誘われた子供達が、じぃっと彼女を見上げていた。とても小さく、細く、やせ細っている。目は子供らしい輝きをもっているが、疲れ果てたような表情が痛ましかった。
 ノエマは膝を折り、彼らへパンを差し出す。持っているものを、すべて。
「……いいの?」
「ええ。だから、早くお家に帰りなさい」
 驚いたように目を見開いた子供達に、深く頷いてみせ、彼女は落ち着いた声音で告げる。
 黄昏色の瞳でその背を見つめる。その子の未来を案じるように。
 彼らの境遇に惻隠を抱いたところで――ヴァンパイアを、オブリビオンを駆逐したとして、彼らは今後どうなるのだろう。
 少なくとも悪趣味なアクセサリーへと身を変じる未来だけは、なくせるけれど。
 後ろに迫る気配に、瞑目し。小さく問い掛ける。
 向こうではユエを囲う子供達がさっと離れていき、ひとりの男が近づいていくのが確認できた。
「さて……これから連れてってくれるところは素敵な楽園なのかしら」


 古ぼけた廃墟の中で色づくのは石榴石の髪。
 かつて何かの神を祭った場所で、子供達はパンと干し肉に齧り付いていた。
「落ち着いて食えよ。パンも肉も逃げやしないから」
 身体に悪い――早乙女・翼は水を差しだし、困ったように笑った。
 子供達の貧窮ぶりを改めて見つめ、石榴石の如き色をした瞳を細める。
「ありがとねぇ、おにいちゃん」
 真ん中の歯の抜けた少女が、にっこり笑う。年端もいかない子供だ――彼らが、救われる日は来るのだろうか。
「俺には君達にこれくらいしか出来ない。そして主に祈るしか出来ない……今は」
 天を仰ぐ。ステンドグラスが嵌まっていたと思しき窓は破れて、ほんの少し色の輝きを見せるだけ。これが好きなの、と彼を此処に導いた少女は笑った。
 ひどく痩せて、性別すら曖昧な印象の娘だった。
 翼はふと何かに気付いたように振り返ると「ちょっと向こうを見てくる」と告げ、足早に廃墟を出る。
 注意深く左右を探る。何かの気配を感じたのだが、さて早とちりか。
 無意識に翼が壁にもたれた時、子供達の声が外から響いた。
 拠点を持たぬ浮浪児達に、レガルタがすった財布や果物を子供達に与えていた。
「ほら、これ」
「わあ、すごい!」
 年端もいかぬ子供という意味ではレガルタもそう変わらない。だが手にした技能や環境が異なる――無論、彼が俗に言う恵まれた育ちをしているわけではないのだが。
 競い合うように彼の成果を手に、散っていく子供達を見送って――翼の視線に気付いたレガルタは、小さく零す。
「一時凌ぎにしかならないのは分かってるさ。くだらない、ただの自己満足だ……それでも、何もしないよりはマシだろうから」
「いや、俺には偉そうなことは言えないな」
 自分とて、できることは施しだけだ――まあ、盗難については、この際不問だ。
「けど――火の粉は払おうか」
 はっとレガルタが振り返った瞬間、翼は地を蹴った。ばさりと広がった翼もまた赤く、深い緋紅。炎が舞い上がったように、暗がりを一躍して、隠れていた男を見出すと、手にした武器を手刀で落とし、後ろ手に捻り上げる。
「命は取らないよ。アンタらだって辛いだろうし」
 くそ、と男は罵るのを、翼は鼻歌交じりに昏倒させる。
「……! あんた、」
 だが赤い瞳に緊張を走らせたレガルタが、警告を発する。
「囲まれてるな。さて、何の御用か……」
 彼すら庇うように立って、翼は笑う。けれどお互いに理解している――すべては思惑通り。


「助け合わねば生きていけないのは、賊も孤児も同じだからな。金は今日の飯の種にせず、この生活から抜けるための足がかりにしろ」
 ショコラッタ・ハローは子供達に金をやる。
 勿論、それは彼女が身を切ったものではない。先程悪徳商人からいただいてきた金だ。
 猟兵達に馴染みの姫御前としたドレスを脱いで、盗賊家業で慣れた装束。それでも鮮やかな金の髪は艶やかで、賊には見えないと、子供のひとりは目を輝かせた。
「きれいなひとはね、おやしきでいいくらしができるんだよ!」
 拙い口調で、別の子供が言う。おれの姉さんも連れて行かれた、面倒をみてくれていた兄貴分が、言葉が次々とショコラッタの前で湧く。
 ばかを言え、と彼女は唇を尖らせた。そんな話があるかと突き放しながらも興味深そうに。
 つまりこの界隈で、人買いどもの動きは公然としている。
 それもそうだろう――命じているのは領主様で、クライアントもヴァンパイア。
 スラムの子供達も、甘言を伝聞で聴き、おそらく容貌の美しいものには、こうしてそのことを告げるのだろう。
 勿論、彼らが知る由もない――マイスターという存在が求める美は、決して容色に限るものではないのだが、雇われた人買いならば、それを手がかりに人を集めるだろう。
 ――確かに、お屋敷で良い暮らしは出来ているだろうな。『その一部』は。

 ――ふと目を醒ます。
 そんな温い覚醒ではなかった。全身を針が刺し貫くような痛みに、叫んでいた。
 貧しいものに良い生活が出来ると囁く相手が、如何に自分へ接触してくるかを考えていた折、捕らわれた。否、すべてを理解した上で、自分からついていった。
 そして、ああ、義賊気取りのバカな娘だ――そんな卑下た笑いと共に、引き渡された。
 見極めよう、難しい顔をした男は謂う。
「満遍なく整っているが――特に皮膚が美しい。しなやかで、きめが細かい」
 皮膚に小さな切れ込みをいれて、肩の関節を外された。腱の強さを見るのだと、ゆっくりと圧を加えて引き延ばされてる。
「少し荒れているが、爪の形、指の形もそのまま使えそうだ」
 耐えがたい苦痛の中、指先が白く揺れている。手の形は良い装飾になるのだという独白がある。
 視界はぼんやりと揺れている。何もされていない――自身ではきれいだとは思えぬ、コンプレックスすらある灰色の瞳が熱い。けれど、涙は浮かばない。
(「きれいな指だと褒められたことはあったっけ……」)
「うつくしい血だ」
 傷口からこぼれる鮮血を褒められる。髪を引っ張られ、角を調べられる。
「悲鳴は、聴くに堪えないが」
 黙れ――思ったが、彼女の口が発せられるのは、ただ悲鳴だけ。
 優位を信じる男は楽しそうに覗き込んでくる。唾を吐いてやりたいが、拘束されて敵わない。
「涙を見せぬ灰燼、なかなか面白い色だ」
 ――そして、意識が暗くなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テスアギ・ミナイ
ギドさん(f00088)と

難しい横顔を見ています
ここには、私の知らないものが沢山並んでいて目が回るから
ところで、あの赤い果物がほしいのですが
ええ、はい、…うれしい

正直なところ
私のからだから売れるものがあるのか分かりません
血などとても、恐らくヒトのそれとは違う

己に恥じぬ振る舞いを自然に、ですか
…そういえば、この皮膚などはどうでしょう
特に磨かなくても変質しないので、そこそこの価値はあるかと
……は?イロケとは

そうですね、例えばパン一欠片分の貨幣を見逃したとして
スリの子どもが今日のあと半分を生き延びるだけ
命一日分の価値もない
もしくは負の価値ともなり得ましょう

それでも一日を積み重ねれば或いは
夢の様ですね


ギド・スプートニク
テスアギ(f04159)と

物価も高ければ質も悪い

根本的に吸血鬼を駆逐した上で長い年月を掛けてインフラを整えなければならないだろうな、など思案

果実は
帰るまで我慢できぬのか
と言いつつ1つ買い与え

魅力など他人が勝手に見出すもの
不自然に主張をしても人は違和感を覚えるし
警戒心も抱くだろう

常日頃から己を磨き
己に恥じぬ振る舞いをしていれば自然と魅力など付いてくるものだ

…お前に魅力が無いとは言わぬが、少し色気が足りぬかも知れんな
主に性格面で、と付け足し


物乞いやスリなど見掛けるが施しはせず

私とて気紛れに誰かを救う事はある
だが私は、彼らの未来にまで責任を持てぬ

誰もが飢えず、平穏に過ごせる日々を目指したいものだ




 男と女が歩いている。男は神経質そうに街を見つめている。時折マーケットの商品を見て、少し鼻に皺を寄せかけて、直ぐに何事もなかったかのように涼しい表情を取り戻す。
 冷たい氷のような色をした瞳は、すべてを値踏みしているかのようだ。
 彼の一歩後ろをいく女は、フードで顔を隠している。しかし身体つきはしなやかで、手足が細い。その身体運びは周囲を常に警戒しているようでもあった。
「物価も高ければ質も悪い」
 ギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)の言葉は冷ややかだった。
(「根本的に吸血鬼を駆逐した上で長い年月を掛けてインフラを整えなければならないだろうな――」)
 思案巡らせる彼の横顔を、テスアギ・ミナイ(Irraq・f04159)はじっと見つめていた。
 彼はそう評するものの、彼女にしてみれば、マーケットには充分すぎるほどの色とりどりの果物が溢れており、他の店には芳香を放つ料理、大雑把に分けられた木の実、大きな塊のまま吊された肉――兎角、目まぐるしい。
 しかし見るモノは見ている。さっさと先ヘ進んでしまう彼の袖を、つんと引く。
「ところで、あの赤い果物がほしいのですが」
「帰るまで我慢できぬのか」
 ギドは氷のような瞳を細め咎めたが――それ以上は何も言わず、ひとつ買い求め、彼女の掌にぽんと載せる。
「ええ、はい、……うれしい」
 テスアギが果実を見つめ俯くと、殆ど表情を変えておらぬのに、笑っているように見えた。
 フードを深く目許を隠しながらテスアギは歩調を早め、ギドに追いつくと――ぽつり、と疑問を口にした。
「正直なところ、私のからだから売れるものがあるのか分かりません。血などとても、恐らくヒトのそれとは違う」
 この地に、この仕事のためにやってきたものの、いまいち合点のいかぬことだった。
 くだらぬ疑問だとギドは一蹴した。
「魅力など他人が勝手に見出すもの。不自然に主張をしても人は違和感を覚えるし、警戒心も抱くだろう」
 一度言葉を切ると、彼女の方へと視線を送る。
「常日頃から己を磨き、己に恥じぬ振る舞いをしていれば自然と魅力など付いてくるものだ」
 ごく当たり前のことのように告げられ、テスアギは首を捻る。
「己に恥じぬ振る舞いを自然に、ですか……そういえば、この皮膚などはどうでしょう。特に磨かなくても変質しないので、そこそこの価値はあるかと」
 真面目に言い切った彼女の前で、嘆息が零れたのは言うまでもない。
「……お前に魅力が無いとは言わぬが、少し色気が足りぬかも知れんな」
「……は? イロケとは」
 目を瞬いた彼女に、もう何も言うことはないと、彼は再び歩き出す。
 ――不意に、二人が揃って前方に注意を向けた。
 肥えた男に体当たりする少年。謝りもせずそのまま駆けていった少年の背に、スリだ、と男が吼える。
 今度こそ、ギドは眉根を寄せた。テスアギがどうしますか、という視線を向けるも、彼は僅かに頭を振るだけだ。
「私とて気紛れに誰かを救う事はある。だが私は、彼らの未来にまで責任を持てぬ」
「そうですね、例えばパン一欠片分の貨幣を見逃したとしてスリの子どもが今日のあと半分を生き延びるだけ……命一日分の価値もない。もしくは負の価値ともなり得ましょう」
 同調する言葉を紡ぎつつ。
 けれど、こうも思うのだ。
「それでも一日を積み重ねれば或いは……夢の様ですね」
 彼女の言葉に、彼はただ瞑目する。
「誰もが飢えず、平穏に過ごせる日々を目指したいものだ」
 あ、と。テスアギが小さく声を漏らす。何だ、と思った瞬間、赤い果実が目の前を転がっていく。
 それを目の前の男が拾う。一見、紳士めいた装いの男だが、漂う偽物臭さにギドは目を細めた。彼は丁寧な所作でテスアギに果実を返すと、穏やかに微笑んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
この世界に蔓延る輩は本当に忌々しいですね

まずは人買いの目を引く為に、わざと馬車の前に歩み出て
轢かれる直前に「憑く夜身」で馬車を強引に止め、
車体を妖刀で【殺気】を込めて【串刺し】にし【恐怖を与え】ます
このハレルヤの歩みの邪魔をするだなんて、随分ご立派なのですね

ああ、勿論一般人は傷付けないよう留意します
少々乱暴なアピールかもしれませんが、
私の行動に間違いなど微塵も存在しませんよ
この多大なる自信こそが私を形作るものです

顔も髪も瞳も短命の証である狼耳すら極上なのも当然です
全て私の一部ですからね
しかし褒めて頂けるのは素直に嬉しいです
私は褒められる事が何よりも大好きで、
褒められるなら何でもしてきましたので




 ふらりと、ひとりの少年が道の中央を渡ろうとした。
 その脇には馬車が迫っている。それは彼の存在に気付いても、速度を緩めることはない――少年は忌々しそうにそれを紫眼で見つめ、指をそちらへ向ける。
 突如、車輪がギッとヒステリックな音を立てて止まり。馬が戸惑いに啼いた。本能的に上肢を上げて、下肢を振り上げようと力を籠め掛けたが、その二足の姿勢で動かない――動けない。
 少年が鞘のない妖刀を瞬く間に振り抜けば、馬の間、御者も避け、車体を易々と貫く。
「このハレルヤの歩みの邪魔をするだなんて、随分ご立派なのですね」
 灰色の前髪の奥、夏目・晴夜がじとりと相手を見つめる。
 伝わる殺気は今すぐ此処から逃げ出したくなるほど。馬車を止めた不可解な現象もあって――冷静に考えれば、他ならぬこの少年の力であるわけだから――尚更恐ろしかった。
 御者が、こくこくと何かに頷く。
 通ってください、という言葉をその怯えの表情に見た晴夜は、涼しい表情で向こうへと渡る。幾つもの怯えを孕んだ視線を浴びても、彼は変わらぬ。その足取りは踊るように軽やかだ。
 ぴんと上を向いた白い耳からして、堂々としている。
 何故ならば、自信がある。
 多大なる自信が。
 ゆえに、彼のなすことはすべて正しく。
 顔も髪も瞳も、短命の証である狼耳すら極上なのも当然なのだ――すべて彼であるのだから。
「もし――」
 つくづく、そんな少年に声を掛ける物好きもいるものだ。第三者が思うならば、そんなところだろう。
 しかしその男は、臆さずに彼へと話しかけた。
「さるお方の元に、参じてみませんか? あなたの技倆があれば――……」
 男は晴夜の腕を褒めた。姿も褒めた。褒めて、宥め、搦め捕ろうとした。
 そして晴夜は、いいですよと即頷いた。
「……私は褒められる事が大好きな性分でしてね。相手が誰であろうとも、何でもしてみせますよ――褒めてくださるのであれば」
 上から目線の、無表情。
 だが不思議と――極上の笑みを浮かべているかのように、相手に印象づける不遜な視線であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗峠・マナコ
瞳を装飾品に、ですか
私の名は瞳の意味もあるとの事で、なんとも見過ごせません
まぁ、美しい瞳が魅力的なのはとても良くわかりますが

普段の赤い衣服は脱ぎ捨てて、タールの身体のみで作ったドレスを身に纏い、町に出ます
折角なので私も町中にあるキレイなものを探しましょう
道の隅に追いやられたボロボロの花飾りや、ドレスから解けた小さなビーズを集めて

私の身体は骨も皮も血もなく、自慢の瞳も星空の宝石で代用したもの
金色の傷跡を消す事はできませんが、それを除けば「変幻自在のお人形」になることが出来るでしょう
もしくはこの身体は「この世に二つと無い深き黒」を描くのにも使えるのかもしれませんね
私、キレイなものが好きなのです




 影のように黒いシルエット――彼女を見た印象はまさに、影。
 ブラックタールであることを一切隠さぬ四肢、そして同じくタールで作り上げたドレス。
 形は華やかで人目を惹くが、よく見てもどこからが身体で、どこからがドレスなのか解らぬ。がらんどうの腹部は目の錯覚ではない。これも、彼女がブラックタールであればこそ。
 オーダーメイド以上に、自身を引き立てる装いであった。
 奇異なる装いに目を引かれるものの、顔立ちも愛らしい女性であった――中でも目を引くのは、星空のような大きな瞳。鼻の上を通る金色の傷。
 実際、星空の宝石で代用している、自慢の瞳だった。
 暗峠・マナコはとくに目的も無くふらふらと歩いているように見えて、街の中にある『キレイなもの』を探していた。
 例えば、道の片隅に追いやられたボロボロの花飾り。千切れて捨てられたのか、歪な形をしているそれを、彼女は愛おしげに拾い上げる。
 或いは、誰かのドレスから零れたビーズ。地面に散らばってそのままの欠片を、楽しそうに集める。
 変わり者だ、と誰もが思うだろう。説明しなければ、ゴミのようなものを喜んで蒐集している女だと。
 拾い上げたものを見つめ、彼女はふふ、と笑いを零す。
 そして歩き出そうとした時、目の前に立ち塞がるように、男性が並んでいる。
「お姉さん、変わっているね」
 男が素直にそう声を掛ければ、マナコはにっこりと微笑んだ。
「私、キレイなものが好きなのです」
 その回答に彼らが何を思ったのかは解らない。ただ、次の句はこうだった。
「そうかい、そうかい。もっとキレイなものが集まる場所があるんだが――」
「本当ですか?」
 マナコの反応に、男達はほっとしたような様子であった。
 彼女が笑うと、ドレスのフリルも不思議と波打つ。黒の少女に聞こえぬような声で、男達は囁き合う――曰く、珍しい一品を確保できた、と――。
 浮かびそうになる苦笑を首を傾げて誤魔化して、まず一段階巧くいったと安堵する。
 ――美しい瞳が魅力的なのはとても良くわかりますが。
 私の名前は瞳の意味もあるとの事。なんとも見過ごせません。
 それにしても、もしも自分が何かの素材と使われるとしたら、どんな風に使われるのだろうか。
(「傷を除けば『変幻自在のお人形』――『この世に二つと無い深き黒』を描くことも……まあ、そうはいかないのですが」)
 全く期待はしていないが、キレイなものに出会えればいいな、と思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・バントライン
自分の売りはこの髪と眼だ。

昔はどちらも嫌いだった。
常に薄暗い空の下でどうしたって目立ってしまうこの髪と、ヴァンパイアに紛れ込もうにもあんな風に紅くは光らないこの瞳。
ただ、この髪を月のようで綺麗だと、この瞳を空のようで美しいと言ってくれた人が居た。
ならばそれで良いと思う。
何より愛し信頼している人がそう言うのだから、自分は綺麗でいいんだと思う。
これは数少ない自分の武器なのだ。

最初はいつもの覆面をしたままで、途中から外し市場を歩く。
見えない物が見えた時、人は興味を惹かれるものだろうか。
大切な人は花屋だ。
花屋に行くと自然と笑顔になる。

愛する人がくれた武器が獲物に刺さるよう祈ろう。この幸福感をもって。




 妙に目を引く――黒い覆面で顔を隠した男が、街を歩いていた。
 注目はされている割に、彼がじっくりと商品を見ていても、話しかけられることもない。
 それでも、暫くすれば街の人々も見慣れたのか、いちいち彼をじろじろと見つめることはなくなった。
 ゆえに、誰も気付かない。
 いつしか仮面を外した彼が、マーケットを同じように眺めているということに。
 薄闇の世界でも鮮やかな明るい金髪、細めた青い瞳は涼しげ――シン・バントラインは商品を見つめながらゆっくりと歩み続けていたが、不意に花屋の前で足を止めた。
 正直、品揃えはいまいちだ。
 目立つのは薔薇。赤い小振りなものが多く並んでいて、後はグリーンが多い。この街において、生活に潤いを与える植物と言えば観葉植物なのだろうか。それとも、品切れでも起こしているのか。
 殊に異世界の花屋を見慣れていると、寂しい品揃えとしかいいようがない。
 それでも――彼は青い瞳を細めて、幸せそうな表情で花々を見つめる。
 花の向こうに、自身を救ってくれた人の面影を見る。
(「常に薄暗い空の下でどうしたって目立ってしまうこの髪と、ヴァンパイアに紛れ込もうにもあんな風に紅くは光らないこの瞳――昔はどちらも嫌いだった」)
 厭うがために、顔を隠し。
 ――そして、それを自ら嗤うように演じていた。
 けれど、今はそれほどでもない。
(「この髪を月のようで綺麗だと、この瞳を空のようで美しいと言ってくれた人……」)
 その人を信じるように。こうして今、その容貌を顕わにして人の目を試そうとしている。
(「愛する人がくれた武器が獲物に刺さるよう祈ろう。この幸福感をもって」)
 この世界が彼の外見を認めてくれるならば。
「そこのお兄さん……花が好きなのかい」
「……そうですね」
 ――ああ、なんと幸せなことだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
※単独で

眼球って人体で最も綺麗な部位だよねェ
首飾りにしたくなる気持ちも……まァ分かる
僕の美点と云えば此の容姿とよく喋る舌か
どんな装飾に誂えて貰えるのか楽しみだなァ

僕の本質は血を求めてやまない吸血鬼
半端者とはいえ、常に喉が乾いて仕方ないのだ
此度は仕事に託けて此の喉を潤して仕舞おうか

其の辺の若い娘に声を掛け、ダンピールの容貌を活かし誘惑
催眠術も用いて路地裏へとエスコォト
昏がりで其の首筋にそっと牙を――あァ、矢張り止めた
娘には菓子でも掴ませて帰そう

吸血鬼の血を引いているが、僕の半分は人だ
だからこそ、人らしく在らねばならない
嗚呼、己の血こそ忌々しい
渇望と葛藤、そして憂鬱が僕の総て
さて、お眼鏡に適うかね




 ふらふらと、琥珀色の髪持つインバネスの男が歩いている。
 宵にそぞろ歩く――酔っているわけではないのだが、どことなく浮かされたような足取り。
「お嬢さん、――」
 男はすれ違い様に年若い娘に何事か囁く。低い声音は美しく、何処か淫靡であった。
「ええ、お待ちしておりましたわ」
 不思議な事に――娘はその男にこくりと頷いて、着いてきた。頬を少し赤く染め、心此処にあらぬといったような表情で。
 微笑んだ男は白い肌に軽薄な笑みを載せ、赤茶の瞳をほんの少し輝かせた。
 誰もいない路地裏へとエスコートしながら、神埜・常盤は誰にでもなく、独白した。
「僕の本質は血を求めてやまない吸血鬼――半端者とはいえ、常に喉が乾いて仕方ないのだ……此度は仕事に託けて此の喉を潤して仕舞おうか」
 演技がかった言葉は、催眠に掛かった娘しか聴かぬ。
 彼女はその言葉をしっかり耳にしているけれど、意味は理解できない。
 娘の瞳は深いブルー。ダークセイヴァーでは望むべくもないが、深く更けた夜空が、僅かにあけゆく先駆けの色だ。それを至近で見つめながら、常磐は笑う。
「眼球って人体で最も綺麗な部位だよねェ。首飾りにしたくなる気持ちも……まァ分かる。僕の美点と云えば此の容姿とよく喋る舌か――どんな装飾に誂えて貰えるのか楽しみだなァ」
 独白の吐息は正面から、娘の首筋に。
 彼が何を告げようが、彼女は何の疑問も持たぬ。そういう力が、働いているのだから。
「――あァ、矢張り止めた」
 急に熱が冷めたように。彼はとん、と娘の額を指で小突いた。
 それを合図に正気に戻った娘が目を瞬くと、悪かったネ、と菓子をその手に預け、コートを翻した。驚いたままの娘の視線を背に、彼は肩を竦めて、立ち去る。
 ――吸血鬼の血を引いているが、半分は人。
 だからこそ、人らしく在らねばならない、そう思う。
 喩え無性に血に駆られる瞬間があれど。
「――嗚呼、己の血こそ忌々しい」
 嘘か誠か、嘯きて。
(「渇望と葛藤、そして憂鬱が僕の総て――」)
 思う心は、表情に載せて。
 本物の吸血鬼をよく知る男が、常磐に声を掛けるのだ。
 その鬱屈を晴らす、貴方のような人にこそ相応しい場所があると――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
人間を素材にした芸術品ですの?
まあ、それは大層悪趣味な
けれど、とても惹かれる代物ですこと
ふふ、なんて
でも、この目で拝見してみたいものですわ

好きに振る舞えばいいだなんて
では私はお買い物でもしようかしら
ちょうどこの世界の服が欲しかったんですの!
舞い散る桜の花弁のごとく
花々へ飛び交う胡蝶のごとく
好奇心と興味の赴くまま気になるお店へお邪魔しましょう
生まれも育ちもエンパイア故に何を見ても新鮮で
“桜色の瞳”はキラキラと燦めき翳ることを知らず
美しく稀少なものが私好み
そんな服を片っ端から試着してみようかしら?
着る度に店主へ感想を求めて
一着になんて絞れない
あれも!これも!それも!ぜーんぶっ!
いただきたいですわ!




 まあ、まあ、ドレスの並ぶ店で少女が思わず声をあげる。動きにあわせて広がった黒髪の、内は薄紅。額の角も同じく闇に咲くはなのいろ。
「ちょうどこの世界の服が欲しかったんですの!」
 豪奢な服を集めた、煌びやかな店内――とはいえ、下品な華美さではない。薄暗い店内に瀟洒なランタンを飾り、意匠の凝ったそれらを映えるように工夫している。
 色は様々、形も様々。最近流行しているドレスはしっかりと型がついた重いスカートなのだと店員が言う。
 ふわりと膨らませ、ボリュームを持たせたフリル、レースは何処までも繊細だ。この世界のドレスといえば単一色のものが多いかと思えば、案外上から下へ色を変じたドレスもある。
「まあ、これなんて、振り袖のよう……」
 裾に広がる刺繍を見つめ、桜色の瞳はきらきらと輝いた。
 舞い散る桜の花弁のごとく。
 花々へ飛び交う胡蝶のごとく――千桜・エリシャは次から次へと服を並べて、その度に感嘆の息を吐く。
「ねえ、試着はできるのかしら?」
「勿論でございます――」
 ばっと振り返った彼女に、店員は恭しく頷いた。
 それから店中の服を制覇するような勢いで、彼女は身につけていく。その度に店員に意見を求め、お世辞ではない賛辞を貰い、くるりと回って、嬉しそうに笑う。
 彼女の喜び、輝き――鏡が映す姿は万華鏡のように。
「一着になんて絞れませんわ」
 エリシャは惑う。だってどれも素敵だし、似合うのだから。
「あれも! これも! それも! ぜーんぶっ! いただきたいですわ!」
「ああ、お目の高いお客様――」
 裾を摘んで振り返った彼女の前にいたのは、先程とは別の店員だった。品良く髪を詰めた女は愛想良く微笑んで、誘う。
「領主様のお屋敷に行かれたらよいですわ。きっと今までに見たことも無い美しい服がたくさん御座います。お客様ならば、きっと素敵ですわ」
 その口調にはいささか引っかかるものがあるが、エリシャは何も疑わぬ風を装って尋ねる。
「……そんなに勝手に行けるものですの?」
「はい、わたくしがご紹介いたします」
 微笑む女の言葉に、お願いするわ、とエリシャは微笑む。
 彼女の言葉通り。そこに素敵なお洋服と――眼鏡にかなう頸があればいいのだけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
自分を輝かせる行動って言われてもなぁ
わかんないけど、慣れてることやればいいんだよね、多分
俺に馴染みがあるのは街中じゃなくてスラムの方だ
スラムでさえ居場所がないこともザラにあったけど
ああ、嫌だな、こんな場所でも懐かしさを感じてしまうのは

見られてることに気付いたら、気付いた素振りは見せずそのまま尾行させるように誘き出す
建物か何かの陰で一旦まいて、背後から首元へダガーを突きつけ
露骨なくらい警戒心と失望に満ちた冷めい視線を向けてやる
ねえ、俺に何か用?

これで御目に叶えばいいんだけど
釣れたらダガーは下ろすけど警戒は怠らず話は概ね肯定して
案内してよ、詳しく聞いて考えるから
相手に油断を与えない視線のままで




 街の喧騒を嫌うように、蔭りに身を置き。周囲を探るように青い瞳を向けていた男は、不意に踵を返した。
 目的など無いように――暫し歩いては、足を止め。周囲を探るように見て、歩き出すのを繰り返す。憂いを帯びる瞳は茫洋と、汚れた地を見つめ、晴れぬ空を眺める。
 まるで、何かを探しているかのように。まるで、道に迷ったかのように。
 実際のところはただ手持ち無沙汰なだけだ。ふらふらと気の向くままに歩いているだけだった。
 そして、暗い眼光を向ける人々が力なく座る路地を軽い足取りで通り抜け――貧民街に辿り着く。
 そっと――誰にも悟られぬように鹿忍・由紀は小さな吐息を零した。
 仔細は違えど漂う空気は、過去の記憶とよく似ている。
「ああ、嫌だな、こんな場所でも懐かしさを感じてしまうのは」
 スラムでさえ居場所がないこともザラにあったけど――。
 苦いような、そうでもないよう遠い日のことを思い出しつつ、彼はあっさりと其処を通り抜けていく。
 元々ここに用があるわけではない。それに――。
 一瞬、彼は歩調を早めて物陰に消える。追ってくる足音も歩調を乱し、駆け足になった――薄暗い十字路で、周囲を確認している男の頚元へ、ひたりと当たる冷たい感覚。
「ねえ、俺に何か用?」
 ぞっとするほど冷ややかな声音で、由紀が問う。いつでも首を掻き斬れるダガーの重みと、失望に満ちた冷たい視線に、男は小さく歯を鳴らした。
「あ、主が――用事があるのだ、と。わ、私はただの遣い……だ」
「へえ。どんな?」
 警戒は解かず、ぐっと刃を埋める。案外、皮膚は柔らかく伸びて斬れぬものだ。怯えて動けば解らぬが。
「りょ、領主の屋敷の、下男を、あ、集めている――貧民ならどんな条件でも、連れて行けるからな……」
 冷ややかな態度は変えず、内心彼は薄く笑った。通り過ぎただけが、自分はあの空気にそこまで馴染んでいたのだろうかと。
「――その腕があるなら、別の仕事もあるだろう」
 甘言を重ねる――と本人は思っている――男の言葉に、小さな嘆息。警戒した視線はそのまま、一度刃を放す。喉元へと突きつけられるような位置は意識したまま、由紀は促す。
「案内してよ、詳しく聞いて考えるから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

色採・トリノ
(刻一刻と色を変えるオパールの瞳。これが彼女のトレードマーク)

目の色を見られるのなら、今は『他の子』を呼ぶのはやめておいた方がよさそう、ね?
それじゃあ、街を歩きましょう

貧しい人には、ささやかなパンを
凍える人には、肩掛けを
轢かれ亡くなった人の遺体すら厭わず触れて
可能なら弔ってあげたい、わ
ええ、だって、皆が心穏やかに暮らせる世界
それがリノの願いで、世界はそうあるべきだもの
そのために、リノもできることをやる、わ?

この右目?
こちらの目はね、ひらいたことがないの
だからリノも、なに色なのか知らないの
うふふ、ふしぎでしょう?

リノに御用の方がいるの?
ええ、ええ、構わないわ
その方に会いに行きましょう――チュィ




 淡い色彩の少女が膝を折り、はいどうぞ、と幼い子供にパンを手渡す。
 その白い手が汚れようと気にせずに、凍える老婆に温かそうな毛布を肩に掛けてやる。
 そして、力尽きたものの死体を厭わず運び、布をかけ、祈りを捧げた。
 お姉ちゃんはどうしてそんなことをしてくれるの、と小さな子供に問い掛けられて、彼女は左のオパールの瞳を優しく細めた。
「ええ、だって、皆が心穏やかに暮らせる世界……それがリノの願いで、世界はそうあるべきだもの。そのために、リノもできることをやる、わ?」
 色採・トリノは子供と視線を合わせて、微笑んだ。
 目をぱちぱちとさせて、子供は首を傾げる。彼女の言葉は子供にとっては大きすぎて、よくわからなかった。
 ただ、それよりも目の前の優しい少女が、ずっと右目を閉ざしていることが心配だった。
「お姉ちゃんもご病気なの……?」
 知り合いに眼病を患ったものがいるのだろうか。その不安そうな眼差しは、実感に根ざしている響きをもっている。
「この右目? こちらの目はね、ひらいたことがないの。だからリノも、なに色なのか知らないの――病気じゃないのよ」
 うふふ、ふしぎでしょう?
 秘密を共有するように、囁いて、左目のオパールが乳白色に輝いた。
「おねーちゃーん、なんかお話ししたい人がいるって」
 別の子供が駆けつけてくる。本当に子供が多い貧民街だ。
 彼女の袖を、同じ年頃の娘が躊躇いがちに退いた。
「いけません……その人は、きっと――」
 顔は真っ黒に汚れているが、品の良い言葉遣い。きっと過去はそれなりに裕福な娘で、目端も聴くのだろう。
 彼女の手をトリノは自らの手で柔らかく包み、穏やかに笑む。
「皆が心穏やかに暮らせる世界が、リノの願いなの」
 だから、信じて待っていて。
 告げた時の瞳は冴え冴えとした青みが射した、強い白。
 そして振り返る。案内の子供の後について、舞踏会へと参じるように。
「その方に会いに行きましょう――チュィ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

明日知・理
アドリブ大歓迎

何をしようか
思案の途中、子どもの悲鳴と大人の男の罵声
次に頬を殴られた痛み
考えるより先に俺は子どもを背で庇い、男と対面していた

理不尽が、子どもに襲い掛かって
否、理不尽なんて何処の世界だってある

だが、
それは、見て見ぬふりをしていい理由には、きっとならない。

助けられるならば助けたい
再度降り掛かる相手の拳をいなし男を投げ飛ばす
相手に怪我はさせないが、殺気を放って逃げさせる
子どもに怪我はないかの確認
あったのなら医術での応急措置を

-
(健康的で強靭な、雄狼を連想させる体躯
何より目を惹くのは精悍な男の若く美しい顔
そして
この世に同じものは一つとして無い
冴え冴えとした輝きを放つ
――黄昏の紫の眼)




 何をしようか、と考えて。
 次に走ったのは、口内に広がる鉄の味。大した衝撃ではなかったが、巧い具合に歯に当たったのだろう。衝動的な行動だったから、巧く受け流せなかった。
 明日知・理は子供を背に庇い、男と対峙していた――。
「邪魔するな、お前には関係ない」
「ああ、関係ない――だが、それは、見て見ぬふりをしていい理由には、きっとならない」
 フードの蔭、紫の瞳で強く睨み据え、血を吐き捨てる。
(「理不尽が、子どもに襲い掛かって――否、理不尽なんて何処の世界だってある」)
 だがそれをそういうものだと思い流すことなど、彼にはできなかった。
「ガキが、」
 怒りに顔を赤らめた男が、再度拳を振るう。
 先程は子供を庇うために無防備に喰らったが、正面できっちり対峙するなら、温い動きだ。相手の肩を見るだけで、その軌道を読んで、腕を捕る。
 刹那、そのまま腕を捩るように巻きとって、投げる。鮮やかな放物線が路地に舞う――瞬く間に、理は男をねじ伏せていた。
 服に隠れていてもわかるだろう、鍛え上げられた理の強靱な体躯。無駄のない動きは、雄狼を連想させるように。浮き上がったフードから覗く、精悍な印象に隠れた――美しい顔立ち。
 そして相手を強く見据える、黄昏の紫をした双眸。
「消えろ」
 ――殺気を滲ませ低く告げれば、解放された男は、聴くに堪えぬ捨て台詞を放ちながら逃げていった。
「怪我はないか? ああ、腫れているな」
 残されたのは、痩せた少年だった。幾度か殴られたのだろう、赤くなった目許と、口元に青い痣がある。怯えたような視線を向けてくる彼に、少しだけ困惑の表情を向ける。
 険しい眼差しは、簡単に変わる物では無い。
「これで冷やせ……それでも顔は腫れるが、いくらかマシになる」
 湿布を貼ってやり、頭をぽんと一撫で、立ち去ろうとすれば。
 虫の啼くような声が足元で、聞こえた。
「……ありがとう」
 その言葉を受け止め、瞑目し歩き出したところで――彼は男達に囲まれる。
 隙の無い構えをとって、彼は相手の出方を見る。恐らくは人買いなのだろうが――さて、交渉が来るか、暴力が勝るか、どちらだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マルゾ・プリマヴェッラ
【アドリブ歓迎】
人体をアクセにってすごーい!
特に眼球を宝石にだなんてきっと綺麗なんだろうね!
せめて遺族向けに商売してたら良かったのにね
ま、こんな世界じゃしょうがないか

まずはちょっと目立ってみよう
やあ、僕の手品見ていかなーい?
【錬成カミヤドリ】で僕の本体である杖を増やしたり
お手玉したり宙に浮かせたり
途中でパッと消したり街角で手品師っぽく【パフォーマンス】してみよう
僕は楽しいことと周囲の人の反応を見るのが大好き
本当は嫌がる顔の方が好きだけど面白がってる顔も好きなのさ
無邪気に楽しそうに振舞うよ

それに僕の目は本体の杖と同じ燃える緑玉の色
髪だって長くしてるから綺麗に手入れしてるし
素材になるんじゃないかな




 長い白髪を高く結い、輝くような緑の瞳をした男が、これまた特徴的な笑みを浮かべて手を広げた。
「やあ、僕の手品見ていかなーい?」
 ニヤついた表情はそのままに、道行く人に、軽く声を掛ける。
 数人が足を止めるか否かというタイミングで、彼はそれっぽい掛け声と共に、銀色の杖を十ほど増やして宙に浮かべた。
 そしてそれをジャグリングの要領で投げてみせる。
 くるくると器用に回しつつ、時に戯けて取り落としそうになって――忽然と、杖が消える。
 ああっ、見ていた観客が思わず声を漏らす。
 驚きの声と表情に気を良くした彼は、掌で石突きを持ち上げるようにして、目線の高さで杖を止めると、そのまま掌を離す。
「わあ、すごい」
 誰か――子供の声がした。杖が空中に浮かんだまま、固定されていた。
 男――マルゾ・プリマヴェッラが恭しく一礼してみせる。
「さあ、今までのは小手調べ。もっと凄いのを見せてあげるよ」
 顔を上げて、ますます深めた笑みで、口元が三日月のように弧を描く。
 増えた観衆と、期待に満ちた視線。受け止める彼も、楽しくなってくる――どんな反応を返してくれるのか、とても興味深い。
(「本当は嫌がる顔の方が好きだけど面白がってる顔も好きなのさ」)
 にやりと笑い、くるりと杖を回してポーズを決める。
 こうして観衆を一瞥すれば、パフォーマンスにでは無く、自分に視線を注いでいる存在に気付く。お嬢さん方のそれっぽい視線とは、明らかに異なる不躾な視線。
 お気に召したようだねー、暢気に思い。
 まさに杖に収まる宝石の顕現である自らの眼球を思う。
(「せめて遺族向けに商売してたら良かったのにね……ま、こんな世界じゃしょうがないか!」)
 そんな思考はおくびも出さず、ただ彼は楽しそうにジャグリングを続け――大喝采の後、男達に声を掛けられた。
「とても素敵なパフォーマンスでした。どうでしょう、領主様のお屋敷で披露なさってみては」
 そんな言葉を滑らかに言う。けれど、その目は全く笑っていない。
 ある意味、そういう心理がよく解る彼はニヤと笑う。
「お誘い、謹んでお受けしよーかな」
 演技じみた言葉で返す。
 ――そして、思う。そこにはどんな素敵な眼球があるのだろうね?

大成功 🔵​🔵​🔵​

霄・花雫
【SSFM‪α‬】

仲間を追い掛けて飛んで跳ねるような歩み、ひらひらりと尾鰭と耳鰭が揺れる
左右異色の瞳で周囲を見回す様は物珍しげ、スラムなんて来たこともない元病弱な箱入り娘

盗み、かぁ……
ユアのダガーに合わせて宙を蹴って飛んで、逃げ道を塞ぐように頭上を飛び越えて向こう側へ軽やかに

大丈夫、キミには健康な手も足もあるんだもん
やれることは他にもいっぱいあるんだよ
ユアおねぇさんたちも言ってるけど、知識を付けて、ヒトを見て、強くなってね

宝石はさ、もし持って行くなら怖いヒトたちには見つからないように隠しておいてね
危険を減らして稼ぐ手段を増やすのは大事だよ

……もしかして、ご飯待ってるヒトとかいるのかなあ……


シャルロット・クリスティア
【SSFMα】

スラムの様子を見に行ってみましょう。
治安が悪い……限られた富で生きることの難しさを痛感しますね。
誰かを犠牲にしてでも生きたいというのは、誰もが思うことですから。

……?
今、あの男の子……通行人の懐から……?
……盗みですね。
大丈夫、目は利きます。追えますよ。
ですけど、あまり事を大きくしないようにお願いします、皆さん。

悪いですけど、見つけてしまった以上は取り返させてもらいますよ。
……落としたのを拾った、と言うことにでもしておきますから。

……この子たちだって、こうでもしないと生き残れないからやってるんです。
それを、部外者の私が安易に「もう止めろ」なんて言えるわけないじゃないですか……。


リュシカ・シュテーイン
【SSFMα】

シャルさん、ユアさん、花雫さんが足止めをなされたぁ、盗人さんにお声を掛けましょうかぁ

いぃえぇ、捕まえに来たわけではありませんのでぇ
逃げようとなさらないでくださいねぇ
私の《翡翠色の瞳》はぁ、貴方の動きを【見切る】こと程度はぁ、容易ですのでぇ

貧困が辛いことはぁ、昨日の食事が砂糖水だけだった私も少し解りますぅ
なのでぇ、貴方は頭をよくしなさいぃ
口と頭を上手くすることはぁ、生き延びるための近道ですよぉ

このルビーのジュエルをぉ、貴方にお貸ししますぅ
この世界でどれほどの価値となるか分かりませんがぁ、口と頭を使えば多少はお金になるはずですよぉ

……いつかぁ、その貸しを返して頂ければ構いませんからぁ


ユア・アラマート
【SSFMα】

シャルが見つけた盗人が路地裏に入った所で足元にダガーを投げて足止め
こういうのを【見切り】するのは得意だよ
足を止めたら逃げないように囲んで、まあ私は説教ができるような立場でもないんだが、少しだけ

ただ飢えていくのを待つだけよりは、行動力がある方がよっぽどいい
とはいえ、こうして盗みばかりをしているというのも効率が良くない
だから、強くなるんだ。別に物理的な意味だけじゃないぞ
心を強く、どんな困難があっても自分が永らえるために努力できるように

私が持ってるパンをあげるから、今日はこれで我慢しろ
しかし、この世界では見慣れた風景だが見ていて気分が良いものじゃないな
(虹の光沢を持つ銀髪を掻き上げて)




 霄・花雫の尾鰭と耳鰭がひらりひらりと揺れる。
 左右で色の異なる瞳が興味深そうに、貧民街を見つめている。此処には何か楽しい物があるわけでもない。愉快なものが見られるわけでもない。けれど、箱入り娘には何でも新鮮に映る。
 踊るような足取りでひょこひょこと歩いていた彼女は、先導する仲間が不意に足を止めたことで首を傾げた。
「なになに? どうしたの?」
 彼女達の背から、前を覗き込むように背伸びする。
 目の前で、二人の人物がすれ違った。おそらく貧民街の住民ではないらしい男が足早にスラムを通り過ぎようとして――その前を、掠れた継ぎ接ぎだらけの服を着た少年が駆け抜けていった。
「……? 今、あの男の子……通行人の懐から……?」
 先頭をゆくシャルロット・クリスティアが、目を瞬いて――確信を持って、告げる。
「……盗みですね」
「まぁ」
 リュシカ・シュテーインののんびりとした――感嘆とも相鎚とも取れる声音を通り過ぎ、翡翠色の視線がシャルロットを真っ直ぐ貫く。
「追えるか?」
 ユア・アラマートの問い掛けに、彼女は確りと頷いた。
 追えますよ――答えながら、案ずるように青い瞳を半ば伏せ、続ける。
「ですけど、あまり事を大きくしないようにお願いします、皆さん」
 実際――彼女は未だに少年の背へ意識を向けた儘でいた。シャルロットの先導に従い、様々な色彩を纏う彼女達は、路地を駆け出す。
 彼を捉えるのは、本気で追いかけてみれば、あっという間だ。
「うわ、何だアンタら……!」
 追われている事に気付いた少年は、急に細い路地へと曲がり。けれど待っていたとばかり、ユアがダガーを放つ。
 濁った翡翠色の刀身が少年の進路を先行し、その足元に突き刺さる。
「わっ」
 本能的に、危険を察して――当然、ユアも彼に当てるようなヘマはしないが――少年は足を止める。
 その頭上、壁と壁の間を蹴り上げて、宙を舞うは優雅なる熱帯魚。
 空を駆けて、くるりと一回転、少年の前を遮るように花雫が軽やかに降り立った。
 流石に驚いたのか、少年は仰け反って、尻餅をついた。
「盗み、かぁ……」
 しげしげと覗き込んでくる大きな瞳に、彼は懐を隠すように自分を抱きしめた。
 背後からゆっくりと三者の足音が近づいてくる。
「なんだ――俺を捕まえようってのか」
「いぃえぇ、捕まえに来たわけではありませんのでぇ。逃げようとなさらないでくださいねぇ」
 怯えというよりも、やるならやってやると目をつり上げた少年に、リュシカがおっとりと言う。
「貧困が辛いことはぁ、昨日の食事が砂糖水だけだった私も少し解りますぅ」
 え、そうなの、という花雫の視線が正面から突き刺さる。
 だが彼女は気にせず、少年へと手を差し出した。立ち上がるように、と。
「なのでぇ、貴方は頭をよくしなさいぃ。口と頭を上手くすることはぁ、生き延びるための近道ですよぉ」
「……どうやって」
 ふてくされた少年は、それでも素直にその手をとった。にっこりとリュシカは微笑んで、もう一方の手を差し出す。
 掌で輝く、真っ赤な宝石。思わず少年は石に魅入り――そして、ぽかんと口を開けたまま、彼女の貌を見る。
「このルビーのジュエルをぉ、貴方にお貸ししますぅ。この世界でどれほどの価値となるか分かりませんがぁ、口と頭を使えば多少はお金になるはずですよぉ」
 リュシカは彼を起こした掌に、宝石を握らせる。
 でも、その財布は返して貰いますよ、とシャルロットが言う。
「悪いですけど、見つけてしまった以上は取り返させてもらいますよ。……落としたのを拾った、と言うことにでもしておきますから」
 少年に否を唱える理由はない。
 すんなりと、懐から取り出した財布を差し出す。薄っぺらで、殆ど実入りは期待できない財布だ。丁重に受け取って、シャルロットは少しだけ、表情を和らげてみせる。
 すると、少年は彼女が艶やかな金の髪が綺麗な、自分と然程年齢の変わらない少女であると気付いて、顔を逸らした。
「まあまあ、見事な手捌きだったな。目撃者がシャルロットでなければ、見逃していたかもな」
 こんなことを褒めるのもなんだが、リアが華やかな笑みを浮かべた。
「ただ飢えていくのを待つだけよりは、行動力がある方がよっぽどいい――とはいえ、こうして盗みばかりをしているというのも効率が良くない。だから、強くなるんだ。別に物理的な意味だけじゃないぞ」
 彼女が動くと、ふわり、と不思議な香りが漂った。
「……心を強く、どんな困難があっても自分が永らえるために努力できるように」
 まあ私は説教ができるような立場でもないんだが――困ったような微笑み、ふと思い出したように、彼女は荷物から包まれたパンを取り出す。
「私が持ってるパンをあげるから、今日はこれで我慢しろ」
「……いいのか?」
 少年は驚いた。盗みを咎められながら――宝石を預かり。
 その上で、一食分に足りるかどうかわからない食料を分けてくれる。少なくとも、この街でそんな幸運に恵まれることはあるまい。
 喜びよりも困惑を示した彼に、いいの、受け取って、と花雫が声をかけた。
「大丈夫、キミには健康な手も足もあるんだもん。やれることは他にもいっぱいあるんだよ。ユアおねぇさんたちも言ってるけど、知識を付けて、ヒトを見て、強くなってね」
 そうなって欲しいから、おねぇさんたちはそれを託すんだよ、と。
 きらきらと輝く瞳は無邪気に、彼を見つめている。
「宝石はさ、もし持って行くなら怖いヒトたちには見つからないように隠しておいてね。危険を減らして稼ぐ手段を増やすのは大事だよ」
 忠告を一つ、道を譲るように一歩下がった。
「……いつかぁ、その貸しを返して頂ければ構いませんからぁ」
 深く、頷いて。リュシカが少年の背を押した。

 最初こそ躊躇いがちに幾度か振り返ったが――言葉に困ったのだろう。結局、そのまま駆けていく彼の背を見送りながら、花雫はぽつりと零す。
「……もしかして、ご飯待ってるヒトとかいるのかなあ……」
 さぁ、どうでしょうねぇ、リュシカは小首を傾げた。
 一人にせよ、家族がいるにせよ。
「……この子たちだって、こうでもしないと生き残れないからやってるんです。それを、部外者の私が安易に「もう止めろ」なんて言えるわけないじゃないですか……」
 シャルロットは俯き、呟く――この街に居ると、過去の記憶が少しだけ浮き上がる。
 ヴァンパイアに支配され、苦しみ喘ぐしかない人々。
「……しかし、この世界では見慣れた風景だが見ていて気分が良いものじゃないな」
 虹の光沢を持つ銀髪を掻き上げてリアが零す。
 こんな暗い世界から、解放される時はいずれ来るのか――少なくとも。この街を苦しめている元凶を排除することは、できる。
「もし、お嬢様方……」
 老人の声がする。彼はどんな甘言を弄し、彼女達を連れて行ってくれるのだろうか。
 ――オブリビオンと非道なる職人が待つ、その館へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『首無しヴァンパイア』

POW   :    影移動
【血肉を求め、相手の影から自らの身体】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
SPD   :    影蝙蝠
自身が装備する【再生能力を有する蝙蝠】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    復元再生
自身の装備武器に【驚異的な再生力】を搭載し、破壊力を増加する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ある職人の独白
 休憩を挟んでいると、報告が次々に舞い込んでくる。
 ひとつ掻い摘んだだけでも極上の素材の数数。変わり種も多く混ざるが、いずれも上質。
 一体何があったというか――或いは、気運が向いているのか。命を賭けた最高の作品を作り上げよという天命なのではないか。
 直接素材を見極め、吟味せねば――そう思って腰を浮かしたところで、部屋に使用人が飛び込んできた。
「何事だ」
 静寂を乱され、深いに眉を顰める。使用人は人では無いが、わたしは畏まらなくてよいとマダムにお許しをいただいている。
 彼女達はそれをどう受け止めているかはわからないが、マダムの言葉は絶対だった。
「マダムがお呼びです、マイスター。紅玉の間まで疾く参じるように、と」
「なんと――」
 その言葉に、急に不安が押し寄せる。
 わたしは何か粗相をしてしまっただろうか。マダムの機嫌を損ねるような失態を。
 最初に浮かんだのは、そのことだった。
 紅玉の間とは、マダムが極限られた存在のみ許す広間。招かれるものは彼女のお気に入りか、或いは――。
「マイスターの身を案じているのだそうです。そちらが一番安全だから、と」
 使用人は不思議なことをいう。
 マダムの屋敷に一体何の危険が迫るというのか。否、常に危険であるともいえるが――その対象がわたしとなるはずがない。
 しかし、館の内部にただ事ならぬ緊張感が漂っていることに、只人であるわたしも兪勘付いた。
 使用人はきらりと光る黄玉の瞳でわたしを見つめる。彼女の存在は「使用人」という枠に当て込めるには印象が強すぎる。強すぎるが、その瞳はあまり生気を宿していない。
 ヴァンパイアの貴婦人達があんなにも『宝石』を好むのは、もしかするとそういう側面もあるのかもしれない。
 生きた人間にだけ生み出せる、感情のいろ。
 ――部屋を見渡し、僅かな逡巡後。急かされるようにして、部屋を後にした。
 咄嗟に愛用のメスを握りしめたのは何故だったのか。
 わたしは一度だけ目蓋を閉ざす。暗闇の中で、世界がぐるりと回る。
 嫌な予感がする……けれど、その正体を掴むことは敵わなかった。

●領主の屋敷
 美しい赤薔薇の咲き誇る、翠の庭園。白いアーチが迎え、奥に控える屋敷もまた白い。
 視界の限り屋敷なのではないか、と思わせるほど、永延と続く回廊。
 説明によると実際、三棟ほどに分かれた構造をしており、それらは白亜の柱を並べた回廊で結ばれている。中庭に招かれるのはヴァンパイアの貴人のみで、本邸に入れるのは領主の腹心に限られる。
 当然、下働きの人員は本邸から最も遠い棟から出ることも許されぬという。
 果たして此処に潜り込んだ猟兵達は、己を監視するものたちを瞬く間に制圧し、自由を得る。
 しかし部屋を飛び出せば、鼻につく血の臭い。
 ――その原因は一目でわかる。
 屋敷の内部、回廊、ありとあらゆる場所を巡回する、首の無いヴァンパイア。
 バサバサと耳障りな羽ばたきを従わせ、彼らはゆっくりと歩き続けている。なるほど、ただの人間であれば、この光景を見ただけで――喩え己の天命を悟れど、逃走する気を失うだろう。
 本邸に辿り着くには、これらを蹴散らしながら進む必要があるが――戸惑う猟兵など、いなかった。
八上・偲
綺麗なお庭。お屋敷。
ヴァンパイアなんて暗い部屋の中に引きこもっていればいいのに、
どうしてこんなに真っ白で綺麗にするんだろうね?

わたしが小さくて弱そうだと思う?
でもわたし、一人じゃないから。
『黒騎士を伴う残火の王女』で騎士を呼んで守ってもらうね。
【属性攻撃】や【2回攻撃】、お願いね、ガイスト君。

近づかれたら、わたし自身も槍で攻撃したり。
わたし、そう簡単には目も命もあげないの。

外に逃げるんじゃないよ。奥へ倒しに行くの。
わたし、ヴァンパイアとか神様とか、人を好きにするものが大嫌いだから。
ぜんぶ灰になればいい。


※絡み・アドリブ歓迎です


暗峠・マナコ
さて、お仕事の時間です。
まだ本命は奥の方ですか。
ぜひとも作家先生方には、キレイな皆さんの、ええ、
生きているキレイな皆さんの生き生きとされた姿を魅て頂きたいものなのですけどね。

しかしそうですね、突入した事でどこかで急いた作業を行われては困りますので、早めに奥に到達したいものです。
【トコヤミフタツ】で大きな大きな私を作り出して、液状の身体で津波のように、攻撃防御も兼ねつつ敵さんを押し潰していきましょう。
コウモリさん達もたくさんいるようですが、身体に取り込んでしまえば再生能力なんて関係ないですよね。



●キレイなもの、キライなもの
「綺麗なお庭。お屋敷。ヴァンパイアなんて暗い部屋の中に引きこもっていればいいのに、
どうしてこんなに真っ白で綺麗にするんだろうね?」
 八上・偲は庭を見つめて、むすりと零す。
 気を遣い整えられた庭には何者の気配も無い。誰も省みない回廊は無駄に立派だ。
 あの街で同じような建物を、庭を、どんな人間も持っていないというのに。
「キレイなものがお好きなのでしょう」
 そんな彼女の背後に落ちる影が口をきいた――否、影では無い。深淵の肌に真一文字にはしる黄金の傷をもつ、暗峠・マナコは闇色の瞳をゆっくりと瞬かせた。
「ぜひとも作家先生方には、キレイな皆さんの、ええ、生きているキレイな皆さんの生き生きとされた姿を魅て頂きたいものなのですけどね」
 そことなく不機嫌な偲と比べ、マナコの声音は弾んで、楽しそうだ。
 彼女はそれとなく屋敷の内部にキレイなものがあるかどうか探していたが、ここではマナコの目に叶うキレイなものはなさそうだ。
 価値観があわないようです、そう告げる彼女に、ふうん、と偲は顔を上げた。
 灰色の髪に咲く蒼い勿忘草が、ヴェールと共に風に揺れた――風。風が、どこから吹きつけてくるというのか。
 頭上をさっと飛び抜けていった蝙蝠に、偲はますます機嫌を損ねた。
「ほら、呼んでも無いのに、すぐ出てくる」
 大きな青い瞳は敵意を隠さず。行く手を阻むように現れた首無し吸血鬼を見つめる。
「さて、お仕事の時間です」
 マナコが微笑み混じりに、一歩、前に進み出て――ふと思い出したように、天を仰いだ。
「しかしそうですね、私達が突入した事でどこかで急いた作業を行われては困りますね」
 早めに奥に到達したい――そう改めて確認し、印象的な瞳を笑みで細めた。
「ごきげんよう、キレイなわたし」
 そういって呼び出したのは、巨大なマナコ。
 それも今の彼女のように人間の形をとっていない、液状の彼女。
 回廊を数十メートルほどもある黒い津波が突如と押し寄せ、飲み込み、洗っていく――蝙蝠の数も、吸血鬼の数も、ものともしないブラックタールの洪水だ。
「取り込んでしまえば再生能力なんて関係ないですよね」
 彼女が言う通り。何とか逃れようと突破を試みるが、易くは無い。生物でありながら武器である蝙蝠たちは、死ねぬが故に闇の中で力の限り藻掻く。
 それでも呑み込まれる瞬間、巧く前へと駆ることで、難を逃れた吸血鬼も居る。それは一歩退いたところで灼炎を宿した槍を抱く偲へと、色の悪い腕を伸ばした。
「わたしが小さくて弱そうだと思う? でもわたし、一人じゃないから」
 残念でした、と。告げる声音は年相応めいた響きがあった。
「ガイスト君、そこにいる?」
 問い掛けに答えるが同時、全身甲冑の騎士が姿を現し、迫った吸血鬼を槍で無常と貫くと、後ろの洪水へと放り投げる。
 強化の力を得た蝙蝠どもが、マナコの拘束を牙と翼で貫いて飛来する。
 偲へ接近することを許さぬように、身を盾と遮りながら、空へと騎士が差し向けた炎が奔る。
 いくつかは彼の前で両断し灰へと焼け落ちていったが、しぶとく舞い上がった数体の蝙蝠はぐるりと旋回し、身に炎を灯したまま蝙蝠が滑空してくる――偲も手にした槍で迎え撃つ。
「わたし、そう簡単には目も命もあげないの」
 小さな身体から、容赦のない一突きが蝙蝠を貫いた。
「ほら、逃げちゃダメですよ」
 大きなマナコの腕が、蝙蝠をぺちりと叩きつぶし、自らの元へと連れていく。
 ふらふらと左右に蹌踉けながら、這い出してきた首無し吸血鬼へ――そんなに必死に追いかけて来なくても、偲は淡淡と告げる。
「外に逃げるんじゃないよ。奥へ倒しに行くの。わたし、ヴァンパイアとか神様とか、人を好きにするものが大嫌いだから」
 ――ぜんぶ灰になればいい。
 その願いを、言葉を叶えるために。
 炎を手繰って。彼女の騎士と共に道を拓く。
 星を呑み込んだような闇を広げたマナコは、そんな彼女を眩しそうに見つめつつ。もうひとりの自分に、ぎゅっと吸血鬼を捻り潰させたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マルゾ・プリマヴェッラ
ふっふー乗り込めた乗り込めた
次はこの屋敷の主を、と思ったけどまずはこの首無し君たちを相手にしないとか
んー血の匂いも嫌いじゃないけど、顔がないのはつまんないなぁ
僕は嫌がる顔が見たいのにな!特に涙目なやつ!

ともかく蹴散らそっか!
数も多いし先手を取らせないように【高速詠唱】でUC【ウィザード・ミサイル】撃っちゃうぞっと
逆に向こうからの攻撃は【第六感】で回避しちゃいたいな
それでも当たっちゃったら【激痛耐性】で堪えながら攻撃の手は止めないよ
流石に体力ヤバくなっちゃったら【生命力吸収】で体力回復したいかな
僕まだ死にたくないんだーごめんねー

無事倒せたら主倒しに行かないとね
さーって主はどーこっかなー?


無供華・リア
「随分と、物騒なお出迎えですわね」
わたくし達の敵ではないでしょうけれども
――ええそうね、油断は禁物ですね、ジェイド

『翡翠のお告げ』で蝙蝠の羽や牙を躱し
毒を乗せた妖剣での一撃をお見舞いしましょう【属性攻撃/毒使い/だまし討ち/串刺し】
首無しヴァンパイアさまは数が多そうですが
わたくし、残念ながら範囲攻撃は不得意ですゆえ
かわりに一撃で確実に仕留めるよう尽力致しましょう
仕留めきれず再度攻撃する場合は初撃の【傷口をえぐる】事でダメージ増大を計ります

わたくし達が用があるのは貴方がたでは無いのです
退いてくださいませ

※アドリブ、連携歓迎
※苦戦等でダメージを受けても悲鳴・狼狽えNG



●杖の魔術師と、人形の花嫁
「ふっふー乗り込めた乗り込めた」
 いつも通りのにやけた笑顔でマルゾ・プリマヴェッラは得意げに杖をくるりと回してみせた。
「さてと、次は館の主……と行きたいところだけど」
 周囲を見渡す。陰気な空気に包まれた廊下だ。表で見た華美さの欠片も無い。薄汚れて不気味な室内から考えて、釣った魚をもてなす気はないようだ。
 この辺りも屋敷の主が人間をどう考えているかが解る――。
「まあ、いいけどねぇ」
 歩き出してすぐの曲がり角。マルゾはおやと物陰に身を潜めた。
 隠すつもりも無い血の臭いと、一定のリズムを刻む足音。
 けれどそれがぴたりと止まり、何かがばさばさと飛び交う音が反響する。高まった緊張感に、角の向こうを覗き見れば、首の無い吸血鬼と――黒衣の花嫁がいた。
「随分と、物騒なお出迎えですわね」
 困ったように無供華・リアが首を傾げる。彼女の胸に抱かれた人形は、硝子の瞳でじっとそれらを見つめている。
『わたくし達の敵ではないでしょうけれども』
「――ええそうね、油断は禁物ですね、ジェイド」
 淑やかに女は微笑みを口元に。僅かに瞑目すれば、睫の影が白い頬に落ちた。
 繊細な細工が美しい細剣を確かめるように握り――そして、紫水晶の瞳がひたと前を見据えた。
「少しだけ、「ずるっこ」させてくださいね」
 軽やかに、地を蹴った。
『右、後ろです……一回転して、また右』
 彼が読むのは蝙蝠の動き。しかし実際の蝙蝠は、まだ吸血鬼の傍らに居る。これはあくまで『お告げ』である――だがリアは、それを疑わぬ。
 やや左前に大きく跳んで、くるりと回転しながら、レイピアを視線の位置で一閃する。蝙蝠の軌道を断ちながら、吸血鬼の肩口へと吸い込まれるように。宵色のドレスが彼女の動きにふわりと膨らんで従う。
 その舞踏は片腕にジェイドを抱いていながら、優雅であった。
『次は後ろ……ああ、間に合わないかもしれないですね』
 肩を、何かが走っていった。衝撃と残る熱が、蝙蝠は戦果を誇るように、キィと啼いた。
 無数に複製された蝙蝠がリアを取り囲んでいた。しかし彼女の表情は変わらない。声一つあげず、ゆっくりとレイピアを構える。
 そこへ、無数の炎の矢が降り注ぎ、多くの蝙蝠を焼いていく。
「んー血の匂いも嫌いじゃないけど、顔がないのはつまんないなぁ」
 驚きの表情一つ浮かべようのない相手に、マルゾが肩を竦めた。更にはリアも――彼が望むような表情を浮かべるひとではない。
 これも巡り合わせか、ニタニタと愉快そうに笑う魔術師は、もう一度、本体である白銀の杖に力を回す。
 彼の攻撃で焼け死んだはずの蝙蝠どもが、吸血鬼の力を受けて甦る。より強力に獰猛に。甦ったそれらは二人へと牙を剥いた。
 それを泰然と見つめて、マルゾが朗らかと告げる。
「ともかく蹴散らそっか!」
 緑玉が強く美しく耀く――。その力強さに、リアは小さく頷いた。
「では、わたくしは本体を仕留めて参ります。お任せしますね」
「まっかせて!」
 言葉と同時に、再び火の矢が降る。室内が一気に朱に染まり、焼けて藻掻く蝙蝠が不規則な動きをして落ちてくる。
 喰らい付いてくる蝙蝠の牙は唇がめくれる程に巨大化している。醜悪さもあるが、それ以上に直感が危険だと囁いてくる。
「僕まだ死にたくないんだーごめんねー」
 魔除狩霊符でそれらを避けつつ、杖を手繰り、魔力を叩きつける。
 同じく、速度を増した蝙蝠の飛来を、予言の力で避け――あとは儘、流れに任せてリアは踏み込む。
 ふわり、と重いドレスが大きく膨らむ。大きな溜めから、鋭く繰り出されたレイピアの鋒は、先につけた傷を正しくなぞって、より深く貫く。
 ――その心臓を、抉り穿つ。
「わたくし達が用があるのは貴方がたでは無いのです。退いてくださいませ」
『きこえませんよ、耳がないのですから』
 彼がそっと囁いたような気がして、リアは淡く表情を緩めた。
 おや、マルゾがニヤと笑う。この淑女は存外、瞳の表情は豊かなのかもしれない――と。
「さーって主はどーこっかなー?」
 そしてのんびりと進路を見つめるのだ。きらきらと輝く瞳で以て。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
コノさん(f03130)と
美味しいご飯を作ってくれる店長でお友達

なるべく背後を守りあう様に立つ
背中合わせの共闘ってやつだね

第六感・聞き耳を活用
見切りを試みたり相手の動きを読んだり
全ての攻撃に光属性付与

千里眼射ちの集中時は
コノさん頼りにしてるよ!

近距離相手はコノさんに任せ私は弓やメボンゴ波(メボンゴから出る衝撃波)で主に遠戦担当

影蝙蝠には範囲攻撃+二回攻撃+光属性の衝撃波
ホーリーメボンゴ波!

撃ち漏らし接近されたらナイフで応戦

敵からの攻撃はメボンゴから衝撃波を出して衝撃緩和しつつ武器受け(メボンゴガード)併用
隙あらばカウンターでナイフ投擲

私もメボンゴも淑女というにはおてんばすぎるかも


コノハ・ライゼ
ジュジュちゃん(f01079)と
あらこんなトコで鉢合わせるなんて
ま、らしいって言えばらしいかしら
ふふ、淑女二人のお手並み拝見ネ

背を庇い合い立ち互いの行動の隙を埋めるよう動くネ
彼女が集中する間『高速詠唱』で【彩雨】呼び
全方位に牽制するよう『2回攻撃』で降らすヨ
範囲攻撃で撃ち漏らした敵へは彩雨の集中攻撃

飛んでくる反撃捌くのは彼女達に任せ
オレは近接する敵を優先し相手しようか
大事なお得意サマにゃ手を触れさせマセン、ってネ
彼女達と踊るよう立ち位置変え、時に離れ
彩雨と合わせ「石榴」振るい『傷口をえぐる』よう単体攻撃
再生する暇もなく『生命力吸収』で喰らってあげよう

ああ、淑女の前では少々はしたなかったかな



●紳士と淑女の輪舞曲
「あらこんなトコで鉢合わせるなんて」
 コノハ・ライゼと背中合わせに、ジュジュ・ブランロジエが楽しそうに声音を弾ませた。
「背中合わせの共闘ってやつだね」
 状況は楽しいものではない。廊下で無数の蝙蝠に取り囲まれ、退くことも進むことも敵わぬ。
 だからこそ、馴染みの顔を見つければ、安堵するというもの。一人でも潜り抜ける自信がないわけでもないが――。
「ふふ、淑女二人のお手並み拝見ネ」
 コノハの言葉に得意げな笑みを見せたジュジュは、首無しヴァンパイアに向けてメボンゴに華麗なるお辞儀をさせる。
「まずはこの鬱陶しい蝙蝠を片付けようか」
 薄氷を少し細めて、コノハが地を蹴った。いつの間にやら、その手にはナイフが収まり、突進してきた蝙蝠を迎え撃つ。
 そうして稼いだ距離を数歩下がり、ジュジュは十指を巧みに動かし、メボンゴを踊らせる。ひらり、ゆらり、白いスカートを捌きながら、蝙蝠相手にウサギは楽しそうに躍り。
「ホーリーメボンゴ波!」
 その動きから、生じた衝撃破を――ジュジュはそう呼んだ。
 聖属性を乗せ、前方に放射線状に広がった衝撃破は二段階で叩きつける攻撃は、容赦なく蝙蝠を吹き飛ばしていった。
 しかし、今更そのセンスに動じるコノハではない。うっすら笑った儘、確実に目の前の蝙蝠を斬りつける。
 彼の振るう刃――柘榴は、しっかりと喰らいつき、生命力を枯れるまで吸い上げると、一歩退く。背中が触れるか触れないか、その距離でくるりと彼女と場所を入れ換えつつ――メボンゴで蝙蝠をブロックしたジュジュが言う。
「やっぱり、本体をどうにかしないとダメみたいだね」
「――だネ」
 軽妙に二人は意見を合わせると、すれ違うように、コノハが駆った。
「コノさん頼りにしてるよ!」
 その言葉に応じるように、軽く頷き。
 周囲全ての蝙蝠を引き寄せるように縦横無尽に小さな傷を付けていく。いつしか、彼の腕や頬に一筋の朱が走っていた。それでも構わず、寄っておいで、と不敵な視線を投げる。
「大事なお得意サマにゃ手を触れさせマセン、ってネ――煌めくアメを、ドウゾ」
 集中に入った彼女を守るため、コノハが呼び起こす力。
 視界の限りを、万色映す水晶の針が埋め尽くす。それはきらりと美しく耀くと、四方八方へ貫き奔る。
 瞬く間に二度。美しい針が貫けば、二人を中心に黒い靄のように蠢いていた蝙蝠どもが一掃され――肌を程よく冷やす冷気だけが、余韻と残る。
 優美なる金の弓、その弦がきりりと鳴った。これ以上無く集中したジュジュの瞳が見つめる、首無し吸血鬼へ。
 指先を解き放てば、びゅう、と風切り奔った。
 とす、と。小気味よい音を立てて矢がその胸の中心に突き立った。持てるありったけの力と、聖属性をふんだんに盛り込んだ一矢だ。小さな傷口はそこから吸血鬼の身体を焼き尽くすように大きく広がり――そのまま、吸血鬼の身体は仰向けに倒れた。
 やがてそれは灰燼と消え失せることだろう。
「ああ、淑女の前では少々はしたなかったかな」
 柘榴を揺らして片目を瞑って見せたコノハに、あは、とジュジュは笑顔を返す。
「私もメボンゴも淑女というにはおてんばすぎるかも」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ギド・スプートニク
テスアギ(f04159)と

首を無くしてまでこの世を彷徨うとは、侮蔑を通り越していっそ憐れみすら感じる

よもや此奴らに関して討ってやるのが慈悲とさえ言えよう
無数の血刃を生成し、それぞれの肉体へと突き刺す

蝙蝠も同じく、地より生やした血刃によって百舌鳥の早贄の様に
いくら再生しようとも、突き刺したままならば関係あるまい

テスアギの疑問には一瞬、言葉を失いながら
やがて耐えきれず、大笑い

くっ…はは、それは確かに、良い着眼点だ

さてな、奴らに聞いてみれば良いのではないか?
尤も、答える口すら持ち合わせてはおらぬが

真面目に答えるならば眷属を、蝙蝠を介して得るのではないか
まぁ、知らぬ
献血してやる義理もないしな


テスアギ・ミナイ
ギドさん(f00088)と

ギドさんに買ってもらった果物と同じ色を見て
ほとんど無意識に口元を拭います
あれはとても美味しかったんですよ

それにしても、誰の顔も分かりませんね、顔がありませんから
ああ、なんて可哀想
酷く暴力的で未来のない光景
あんまりに悲しいから、壊しましょう
イガルクの手で手当たり次第に手折っていきます

ところで
「あの、ギドさん」
ほんのちょっとした、自然な疑問を投げかけます
「首がなくなったら、どうやって血を得ますか?」
彼の心象など気に留めずに

そして素直に聞きにいきます
大人しい方の襟を掴んで、覗いて
中の光景は口にせず、瞳に写して覚えておくに留めて
「わかりませんでした」



●探求心
 ――あの色。
 テスアギ・ミナイは殆ど無意識に、口元を拭った。買って貰った果実と同じ色。
「あれはとても美味しかったんですよ」
 喜びを思い出しながら、ああ、と目の前に迫りつつある首の無い吸血鬼どもを、彼女は不思議と見つめる。
「それにしても、誰の顔も分かりませんね、顔がありませんから」
「首を無くしてまでこの世を彷徨うとは、侮蔑を通り越していっそ憐れみすら感じる」
 その言葉にギド・スプートニクが冷ややと相手を見つめて告げた。
「よもや此奴らに関して討ってやるのが慈悲とさえ言えよう」
「ああ、なんて可哀想。酷く暴力的で未来のない光景――あんまりに悲しいから、壊しましょう」
 前へとテスアギが踏み込めば、蝙蝠どもが群がってくる。それを無造作に掴み、殴り、薙ぎ払う――透きとおった腕。
 真っ二つに折り曲げられ、ひしゃぎ、生物としてあり得ぬ形状になろうと、僅かな時間をおけば、ひくりひくりと奇妙な痙攣を起こし、再生していく。
 それらに向けて、指先を向けたのはギド。小さな仕草と共に、地から次々と血刃が飛び出し、貫いた。
「いくら再生しようとも、突き刺したままならば関係あるまい」
 百舌鳥の早贄のごとく。貫かれ痙攣する蝙蝠どもは縫い止められて、動けぬ。
 その無様を確認し、後ろに控える吸血鬼を射程距離に捉えるべく、一歩踏み込んだ時。
「あの、ギドさん」
 既に相手を掴んでいるだろうと思ったテスアギが、目の前にいた。
 戦場ではあるが――喉元まで迫り上がった疑問を、やはりそのままにはしておけぬ、と。
 テスアギはじっとギドを見つめて、その名を呼んだ。いつもと変わらぬ視線だけが交わる。ちゃんと聞いてくれている、と考えて彼女は続きを口にする。
「首がなくなったら、どうやって血を得ますか?」
 その質問。無垢なる瞳に、ギドは虚をつかれ――状況も忘れ、唖然とし。
 そして、耐えきれず笑い出した。
「くっ……はは、それは確かに、良い着眼点だ」
 ひとしきり笑った儘、彼は視線を首の無い吸血鬼へと向け、それから彼女を見つめた。
「さてな、奴らに聞いてみれば良いのではないか? 尤も、答える口すら持ち合わせてはおらぬが」
 真面目に答えるならば、眷属である蝙蝠を介して得るのではないか――というものだが。
「まぁ、知らぬ。献血してやる義理もないしな」
 そして、進路を遮る吸血鬼を数十を超える血刃が貫いて、その場に留める。
 武器である蝙蝠が抗うべく二人へ群がってくるのを、ギドの言葉を素直に受け止めたテスアギが、透きとおった腕で押しのけて、身体を刺し貫かれ身動きが取れぬ吸血鬼の元へと向かう。
 そして、当然のようにその首の断面をしげしげと見つめた。
 頚元を検分を終え、無表情で戻って来たテスアギは、淡淡とギドに報告する。
「わかりませんでした」
 彼のいらえは、そうか、の一言であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユエ・イブリス
あいにく力仕事は不向きでね
首なし退治は腕自慢の猟兵に任せ、私は別の仕事をしよう
興味は『マイスター』、この屋敷のどこかにいる
おそらくは厳重に隠され守られているだろう

「行っておいで、我が眷属」
薄氷の翅もつ蝶の群れ、私の目となり耳となり
広い屋敷の人捜しを始めようか

屋敷の最も奥深くへ
使用人らしきものが急ぎ行く先の部屋
警備が厳重な部屋
耳を澄ませ、声を聞き、
翅に重く気配ののし掛かる場所
最も重厚で最も豪華、最も昏く最も血腥い場所へ
何が見える、何が見つかる、何が聞こえる
――嗚呼、愉しみだ

私は戦場を見下ろす高い場所に座り
蝶がもたらす情報をまとめようか
何しろ数が多い、集中せねば徒労となるからね

「……見つけた」



●幕間
 宵が重なる屋根の上。
 この世界は概ね――今が昼か夜か、よくわからない空をしている。だが、この屋敷の頭上を彩る空は街よりも暗く重く感じた。
 戦闘の喧噪を巧く離脱して、閉じ込められた離れの屋根の上。白い妖精は吐息を零した。
「あいにく力仕事は不向きでね。首なし退治は任せ、私は別の仕事をしよう」
 言うなり、ユエ・イブリスは白い掌を天に向け、囁く。
 月も太陽も無い寂しい空だが、薄暗い屋敷を覗くならば似合いの舞台かな、と朧気に微笑み。
「行っておいで、我が眷属」
 薄氷の翅もつ蝶の群れを召喚すると、それらは淡い耀きと共に飛びたつ。
 ――広い屋敷の、人捜し。
 ターゲットは『マイスター』と呼ばれる男――彼が何処に居るのか。
(「何が見える、何が見つかる、何が聞こえる」)
「――嗚呼、愉しみだ」
 思わず、零す。

 感覚を共有する蝶たちは、美しい庭を高く横断し――奥の奥、未だ猟兵達が辿り着けないところへ、潜り込む。
 本邸と思わしき建物は、この離れとは全く異なる豪奢な作りであった。
 塵一つ無い絨毯敷きの床、薔薇が咲き誇る庭を望むサンルーム――吸血鬼の屋敷においてはただの皮肉だが――だが、奥に進めば美しさよりも不穏な空気を肌で感じる。
 此処にはあの首無し吸血鬼は居ないようだ。床が汚れるから、当然だろう――ユエはそう思った。
 ゆっくりと歩く使用人。彼女達が向かうのは、ひときわ大きな赤い扉の前。刻まれたレリーフは美しい女の姿をしている。
「……見つけた」
 そっとユエは微笑む。ただ、その部屋の内部を垣間見た瞬間――ぐしゃり、と蝶は潰された。
 確りと覗くことはできなかったが、彼は考え込むように顎に指を当てた。
「悪趣味な赤い部屋と……眼球、か」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュデラ・テノーフォン
変な獲物
首無しでどうやってヴァンパイアしてるの?
あァ。血を浴びるのかな
何にせよやる血は無いし
狩られるのは君達だよ

影から来るのは野生の勘も頼りに反応して指輪の盾を展開
触らないでくれるかな?
クイックドロウからの零距離射撃で撃退するよ

成る程ソノ蝙蝠で血吸ってるの?
良いよ。幾らでもおいでよ
Cenerentolaに光の精霊弾をセットし複製
血と暗い所で彷徨いてるから首無しでも成仏出来ないんじゃない?
綺麗な雨で浄化されなよと一斉発射
幾ら再生しようが、幾らでも。何度でも撃ち抜いてやるよ雑魚ども
なぎ払えたらテンション上がりそう
あっはっは!あー…あーァ、彼らの血を浴びちゃったよ
俺はヴァンパイアじゃ無いんだけどなァ


明日知・理
悪いな。
――眠れ。


周りに誰かがいるのなら、体力の低い者を優先的に庇いつつ迎撃。
攻撃は刀で受け流すか、隙あらばカウンターを試みる。

対する此方の発動するユーベルコードは『氷雨』。
俺の目立たない特性や、…暗殺の技術を保ってして、死角からの一撃を狙っていく。
併せて範囲攻撃にてより多くのヴァンパイアを、そして捨て身の攻撃にて極力威力を高めつつ、屠っていく。
-
(――びしゃり、とヴァンパイアの返り血が、まるで化粧のように理の顔を彩る。
冷え、冴えながらも、闘争本能が瞳の奥で燃え盛り
雄狼の如きこの男は、どこまでも勇ましく、美しく、どこか妖艶に。戦場を駆ける。)

-
(アドリブ大歓迎)



●獣の供宴
「変な獲物。首無しでどうやってヴァンパイアしてるの?」
 シュデラ・テノーフォンはじろりとそれを左右色の違う瞳で見つめた。
 当然の如く返事は無い。口が無いのだから、当然だ。
 しかし、さて、言葉は通じているのだろうか。
「――あァ。血を浴びるのかな。何にせよやる血は無いし、狩られるのは君達だよ」
 そのあたりはどうでもいい、というのがシュデラの結論だ――向こうもまた然り、吸血鬼が腕を上げれば、蝙蝠が増殖していく。
 目の前の獲物を屠れ、さながらそんな仕草だ。
 嫌だなァ、と小さく彼は笑った。手にするのは硝子細工装飾の大型拳銃。白いそれは繊細で美しい。
 対照的に――視界を覆い尽くす蝙蝠の群れと、付随する羽ばたきの音。
 煩わしそうに眺めていたシュデラの瞳が、僅かに横へと動いた。
 行く先を曇らせる暗雲のようなそれがあるからこそ、埋没できる男が居る。
「悪いな――眠れ」
 低い姿勢から、その顔は隠れて確認できぬ――明日知・理は音も無く距離を詰めていた。
 翻弄するように吸血鬼の前で軽く跳躍すると、その反動をつけて、妖刀を縦に閃かせる。
 蝙蝠どもが一気に集まってくる――極めて気配を押し殺した理であるが、攻撃の瞬間だけは揺らぐ。
 むしろ、吸血鬼の知覚を担う蝙蝠はそれほどに鋭いということだ。
 されど動じず、後ろへと跳躍しながら、理は鮮やかに剣を振るった。目にも止まらぬ斬撃が、次から次へと蝙蝠を落としていく。
「成る程ソノ蝙蝠で血吸ってるの? 良いよ。幾らでもおいでよ」
 ふうん、と。
 いつしかその近くまで踏み込んでいたシュデラが一撃を撃ち込んで、理に集る蝙蝠の注意を引くと、口元に獰猛な笑みを湛えた。
「血と暗い所で彷徨いてるから首無しでも成仏出来ないんじゃない? 綺麗な雨で浄化されなよ」
 今度は吸血鬼へ銃口を向け、引き金を引く。
「綺麗な雨を、観せようか」
 光の精霊を弾丸と変え、ひとつ撃ち込めば、無数と分かれる耀く銃弾。
 彼の言葉通り――煌めき、七彩を湛えた硝子製の弾丸が、行く手を遮る蝙蝠どもを貫き、破裂させながら、吸血鬼へ奔ると、理の脇を通り抜けて、次々と吸血鬼の身体を捉えて穿っていった。
 ぴしゃり。
 鮮やかな血が噴き出して、理の顔を汚す。
 しかしそれすら化粧のように――彼をより一層引き立てる。凍えた紫の視線、瞳の奥に点る殺気は隠せず。
 顔立ちは元より、伸びやかな四肢の一投一足すべてが美しい。無意識に歪めた口元が作る陰影は、どこか妖艶でさえある。
 彼は雄々しい気配を纏いながら、それを瞬く間に消すことが出来る。
 華やかな気配を振りまくシュデラとの対比ともあってか、その消失は完璧で、蝙蝠どもを戸惑わせた。
「―――おやすみ、」
 気配を完全に断った理が、吸血鬼の懐に飛び込んでいた。雄狼の如き男の牙は、既に吸血鬼の胴を捉えている。
 腰元に噛んだ妖刀の刃は滑らかに斜めへ走った。立木を斬るよりも易々と、彼は吸血鬼を両断してみせた。
 だというのに、多くの蝙蝠が脚を止めた彼の元へと押し寄せる。
 涼しい顔で刀を振るって躱す理であるが、再生能力を持つそれは暫くすればまた纏わり付いてくる。
 はは、場違いに明るい笑い声が、彼の隣を通り過ぎていった。
「――道理で蝙蝠が多すぎると思ったよ」
 鋭くその存在を指摘したシュデラは左手を前に差し出す。
 中指に収まった指輪から展開した硝子の盾で、少しだけ蝙蝠を振り払うと――操る硝子の銃弾と共に、潜んでいた吸血鬼へと迫る。
 その身を守ろうと再度眼前に広がった蝙蝠ごと、彼は零距離の斉射で吹き飛ばす。
「あっはっは! あー……あーァ、彼らの血を浴びちゃったよ」
 俺はヴァンパイアじゃ無いんだけどなァ、と。嗤う口元は獣に似て。
 さらりと揺れる銀糸の向こう、零すシュデラの瞳は爛と妖しい耀きを灯していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
罠とはわかっていたとはいえ
薬で釣られてみれば
…ああ 嫌なにおいですね

本邸に辿り着いてから
囲み込まれても面倒です
行く先々に居る首無しは片っ端から
倒しておきましょう

医療器具を取り出し
なるべく多くの傷を刻むように
その肉体を痛めつけます

強化された武器による攻撃は
武器を振るう音や軌道を見切り
液状化する等して躱し
生じた隙に乗じ『耽溺』による麻酔を浴びせてやります

強化したとて
攻撃が当たらなければどうということはない

対象の動きを止めたら
その頸部や器具でつけた傷口に毒蜜を塗り込みましょう

傷が露呈しているのは寧ろ好都合です
私はただ触れるだけでいい
どうか私の毒に溺れてください


タロ・トリオンフィ
随分と大きい屋敷だけれど、構造が分かっているのなら真っ直ぐ本邸に向かおうか
道中倒しながら進むなら、複数で当たる方が手早く済むし
同じルートを進む猟兵に同道させて貰おう
僕は補佐の方が得意だからね

攻撃手や回復手に来る攻撃を庇って守備を重視(かばう)
夢見の絵筆で盾を描いて弾いたり(武器受け)(オーラ防御)

影移動の兆しが見えたら(見切り)
グラフィティスプラッシュを仲間の影に被せるように使用
少しは見失いにくくなるといいけれど……
いざとなれば(第六感)を頼りに塗料で攻撃
僕の勘は結構当たるんだよ

それにしても
常夜の中にあって、この白亜の屋敷は美しいけれど
……何だろうね、こんなに美しいのに、筆が乗らないな


エスタシュ・ロックドア
最初から首がねぇたぁけったいなヴァンパイアもいたもんだ
一体誰に取られたんだか
ま、関係ねぇ
これから灰も残さず燃やし尽くしちまうからよ

しっかし、こんなトコで仕事してるたぁな
マイスター、か
いや、今考えたってしょうがねぇ
まずはこいつらを焼くのが先だぜ

『群青業火』発動
【範囲攻撃】で周囲に敵だけを燃やすようにした業火を撒いて牽制
それからフリントにも業火まとわせて【怪力】で【なぎ払い】【吹き飛ばし】
手当たり次第ぶっ飛ばすぜ

敵の攻撃は【第六感】で回避してみっか
それでも喰らったら【激痛耐性】で耐えつつ【カウンター】
自ら地獄に突っ込むたぁ見上げた根性だ
褒美に至近距離から業火を喰らいやがれ



●描く、群青と耽溺の毒
「随分と大きい屋敷だけれど、構造が分かっているのなら真っ直ぐ本邸に向かおうか」
 タロ・トリオンフィが先を見やる。
 案内された建物を抜けて、回廊。視界の限り白い柱が延々と連なっており、少なくとも次の建物がすぐに見えるような距離ではない。
 それでも回廊を真っ直ぐ辿れば着くのだろうから、道程は至って単純だ。
 ――もしそれを困難にするとすれば、今も、目の前からひたひたと歩いてくる、それ。
「……ああ 嫌なにおいですね」
 冴木・蜜がぽつりと零す。血の臭い――それも澱んで、汚れた匂い。
 否、彼は血のにおいだけならば、其処まで嫌悪するまい。吸血鬼どもが纏う不浄なる気配。屋敷中に漂う空気、そのすべて。
 猟兵達の間合いから測って倍ほどの距離まで進んだところで、吸血鬼は脚を止め。傍らに浮遊していた蝙蝠が突如と飛び立った。
 臨戦態勢ってか、エスタシュ・ロックドアが鉄塊剣を軽々担いだ姿勢で言う。
「最初から首がねぇたぁけったいなヴァンパイアもいたもんだ。一体誰に取られたんだか……ま、関係ねぇ。これから灰も残さず燃やし尽くしちまうからよ」
 頚元の血はこれ以上零れることもなければ、乾くことも無い。
 まるで頭部を失っていることすら知らぬような風に、吸血鬼は闇色のマントを翻した。
 はっ、と笑いを零してエスタシュが構えをとると――彼の周囲の気温が変化する。
「此処に示すは我が血潮、嘆かわしくも誇るべき臓腑の火。――さあ、燃えろ、焼けろ、灰になれぇ!」
 刹那、エスタシュの傷口から『地獄の業火』が噴き出した。彼の闘志に呼応し襲い掛かってきた蝙蝠へ、愛剣に群青色の炎を纏わせ叩きつければ、それ伝いに見渡す限りに広がっていく――。
「本邸に辿り着いてから囲み込まれても面倒です」
 腐蝕の進んだ様々な医療器具を十指に広げ、蜜も彼に続いた。
 剛剣を手にしているとは思えぬ俊敏さで回廊を駆りつつ、エスタシュは道すがら蝙蝠を叩きつけた。
 蜜の毒をこれ以上も無く含んだメスが、蝙蝠の羽を落とす。再生しようとする肉を、彼の毒が焼いて融かし、瞬間的な復活を阻止する。
 蒼い炎と黒い血で、瞬く間に道が拓ける――既に逃げ場を奪うべく、吸血鬼の周囲をぐるりと炎は取り込んでいた。
 まずは一撃叩き込もうと、エスタシュが一足で踏み込む。
 しかし。目の前の吸血鬼が――忽然と消えた。
「次は、そこだね」
 冷静なる囁きと共に、すかさずエスタシュと蜜の影へと、タロが絵筆を振るう。
 飛び散った塗料が影を塗りつぶし、出現と同時に先制を加えた。
「自ら地獄に突っ込むたぁ見上げた根性だ。褒美に至近距離から業火を喰らいやがれ」
 鮮やかに浮き上がった首の無い吸血鬼に、膂力任せの一閃を振り返り様にエスタシュは放つ。
 強く、熱い群青の軌跡が目に焼き付くようだ――彼の剣は吸血鬼の片腕を落とし、更に蜜が鋏を突き立てるも、再び煙のように消える。
「影に潜みましたか」
 怪訝と己や仲間の影を見つめ、蜜が零せば、直ぐに仕掛けて来るだろうとエスタシュが鋭く己の影を睨み。
「今の助かったぜ。ありがとよ」
「僕は補佐の方が得意だからね」
 素直な一言に、タロは穏やかに微笑む。勿論完全に影に潜んでしまえば見えないが、彼の扱う塗料は特殊な武器。
 僅かに浮かび上がった時点で目に止まるような――明確な目印となる。
 何より、タロはオパールの瞳を柔和に細めた。
「僕の勘は結構当たるんだよ」
 適当なタイミングで、タロは絵筆を気儘に振るった。その都度巧い具合に、姿を現そうとした吸血鬼を、鮮やかに塗りつぶしていく。
 いよいよエスタシュの追跡を諦めた首無し吸血鬼は、彼らから距離をとると、周囲で燃えて悶えたままであった蝙蝠へと力を注いだ。
 群青に燃えたまま、或いは毒で蕩け、骨を覗かせた蝙蝠どもが不可思議な形状で甦り、高速で飛来してくる。わあ、とタロは小さく声をあげた。
 地獄か悪魔かを描けば、その眷属とはこうであろう――彼の放った美しい色彩を浴びても止まらぬ。
 其れを再び、群青の炎が包む。共に振るわれる斬撃が肉を断ち、だがそれは蝙蝠を落とすためのものではない。
 道を遮る障害を薙ぎ払う、シンプルな動作に過ぎぬ。肩や腕を裂く浅い疵など、些事に過ぎぬ。
 力を籠めるための咆哮と共にエスタシュは両手で剣を振り下ろした。風を巻き付けながら、ねじ切るような一刀。群青の炎は依然と刀身に巻き付いて、斬りつける傍から焼いていく。
 更に、影の如く静かに吸血鬼の背後へと回っていた蜜は――病巣を見定めた医師の指先を、ぴたりとその首の断面へ重ねた。
 ――傷が露呈しているのは寧ろ好都合。
「私はただ触れるだけでいい。どうか私の毒に溺れてください」
 途端、吸血鬼の全身が硬直する。
 首が無い存在が微睡むような幻覚を得ることはあるのだろうか――ふと蜜は気になったが、瞬時に流す。
 彼は吸血鬼から離れる間際に無数のメスを背へと打ち込み、それを楔と、剛剣が吸血鬼の身体を縦に割った。
 その身体が確りと消え失せるよう、強く燃え上がった群青を横目に、エスタシュは小さく嘆息した。
「しっかし、こんなトコで仕事してるたぁな。マイスター、か……いや、今考えたってしょうがねぇ。まずはこいつらを焼くのが先だぜ」
「まだまだ立ち塞がって来るでしょうからね」
 自分の毒が通用するのを確かめられたのは僥倖だ。
 床に散らばった器具を回収し、体内に収納した蜜は振り返る。
 ぼう、とタロは回廊を仰いでいた。芸術家に近しい目を持つ彼は――改めてこの屋敷をどう見るのだろう。
 白い柱が整然とならぶ回廊は美しい。常闇の世界において、ぼうと浮き上がるように計算された巧みな彫刻。ふと視線を巡らせれば立派な庭園があり、灯された照明も形も配置も絶妙だ。
 贅を尽くされた屋敷なのは間違いない。
 けれど、そのオパールに僅かな影を落として、彼はささめく。
「常夜の中にあって、この白亜の屋敷は美しいけれど……何だろうね、こんなに美しいのに、筆が乗らないな」
 ああ、けれど。
 しかし、二人の――猟兵達の活躍を刻みつけるには、悪く無い風景かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ショコラッタ・ハロー
眼は……おれの眼はどうなった?
ああ、ちくしょう
瞼を開けるのが恐ろしい
片眼くらい残されていることを祈るしかねえ

周囲に人気が無ければ起き上がり、体の損傷を確かめる
包帯や消毒薬があれば応急処置を
まともに戦える体じゃねえが、やりようはある

紅玉の間とか言ってたな
屋敷の中央に目星をつけて進んでいく
敵は皆殺しにするが、先手を取れるよう行動は慎重に
手も腕もろくに使えない以上は、道化師の慧眼だけが頼りだ
物陰に身を隠し、足音は忍ばせ、気付かれぬまま暗殺を狙う
体を囲むように半数のダガーを浮かし、防御としても用いよう

あの野郎、次に会ったら必ず報復してやる
半殺しにして荒野に放り出してやる
楽に死ねると思うんじゃねえぞ


レガルタ・シャトーモーグ
さて、首魁の居る所は…
いかにもな邸宅部分を目指せば見つかるだろう
道中に騒ぎを大きくするのも面倒だしな
「視えざりし屍の招聘」で共犯者を召喚し、周囲を警戒しながら進む
その際、敵から未発見状態なら【迷彩】で家具や扉の影に隠れ
敵を見かけたら共犯者と同時に仕掛け、俺は背後から【暗殺】を狙う
発見されて敵がどんどん出てくるなら隠密に拘っていられないな
【毒使い】で毒を仕込んだ飛針で動きを鈍らせている間に【鎧無視攻撃】を叩き込んでやろう

猟兵の他に捕まってる奴がいないかも、一応みておくか…
怪しい部屋は一通り見て回り
誰かいれば開放する



●陰を征く
 漆黒の共犯者と共に、敵を避けて進んでいたレガルタ・シャトーモーグは、不意に人の気配のする部屋に気がついた。
 ここに誰か――囚われの一般人などがいたら、どうすべきか。解き放っても良いが、今は危険だろうか。
 様々に考えつつも見過ごすわけにはいかないなと思い至り、ひとまず共犯者に見張りを任せ、部屋の内部へと慎重に侵入した。
 生々しい血と薬品の臭いがする――嗅覚が報せる情報に、レガルタは僅かに眉をよせた。
 やはり、誰か居るのだ。
「……!」
 しかし驚くことに、彼が見つけたのは見知った少女の姿であった。
 敵はなく、脅威も周囲にあるまい。質素な実験台の上で、頭を抱え蹲ったような状態で、ショコラッタ・ハローはそこに居た。
 彼は静かに駆け寄り、声をかけた。
「おい、大丈夫か」
「眼は……おれの眼はどうなった?」
 何処か朦朧とした様子で、彼女はそう問うた。
(「ああ、ちくしょう……瞼を開けるのが恐ろしい。片眼くらい残されていることを祈るしかねえ」)
 突き刺すような頭痛と、感覚が酷く遠い。
 周囲を探るよう空を掻いた指先は痛々しい色に染まっている。他にも、肩や脚に赤い染みが滲んでいる。軽く布が当てられているが、手当と言うには雑だった。
 ショコラッタは目を閉ざした儘だ。今の言葉も譫言めいていて、別段、レガルタに問い掛けたわけでもなさそうだったが――彼は答えた。
「……大丈夫だ。疵は無い」
 彼は幼いながらも、傷の種類やその状態については見識深い方だと自負している。薄暗い部屋ゆえ小さな疵の有無についての確証は持てないが、ショコラッタの顔は――致命的な傷はない、という意味で――綺麗なものだ。
 ただ、専門的な判断ができるわけではない。実際、眼球はあっても何が起こっているか――それを外観から判断することは出来ぬ。
 誰かとの対話が成立した、という事実からか。
 どうやら彼女も意識がはっきりとしてきたらしい。恐る恐る目蓋越しに触れてみれば、馴染みのある弾力が返ってくる。
(「眼はある……のか……」)
 ゆっくりと目を開け、慎重に目を瞬く。
 視界がひどく暗い、ショコラッタは思う。部屋自体が薄暗い、とレガルタは言うが、まさか宵闇に小さな灯火を浮かべたほど視界が狭いわけがないだろう。
 強い麻酔薬でも使われたのだろう。いずれ回復するだろうが、暫くはこの視界と付き合わねばなるまい。
「チッ」
 彼女ははっきりと舌打ちした。弱った姿を他人に見られてしまった――それ以上に、自分をこんな目にあわせた者へ向けた、明確な殺意の吐露だ。
「――行くぞ」
 手早く自分で手当を済ませると、ひらりと寝かされていた実験台のようなものから飛び降りて、彼女はさっさと部屋を出て行った。

「紅玉の間とか言ってたな」
 ショコラッタが声を潜めて言う。屋敷の中央あたりに目星をつけ――偉い奴はそういうところを好むという彼女の見立てに、レガルタも異論は無い――二人は物陰に身を潜めて進んだ。
 二人のスタイルは似ていた――陰に潜み、ある程度やり過ごし、奇襲で確実に仕留める。
 レガルタは自身とよく似た長い髪の少年――漆黒の共犯者と協力し、陽動を彼に任せ、自身は暗殺を仕掛けるべく背後を盗る。
 未だ身体が十全でないショコラッタは、複製したダガーを操って、離れたところに武器だけ差し向けるやり方で相手の核を穿つ。
 同時、十数のダガーは身を守るように周囲に浮かせ、万が一に備える。
 果たして、単独行動が優位な双方の在り方だが、此処では巧くいった。
 ショコラッタがダガーで蝙蝠の攻撃を誘導したところを、レガルタが共犯者と揃って死角から吸血鬼を襲撃する。
 それぞれの得物が持つ強烈な毒は彼らが得意とする再生能力を不全とし、無駄なく仕留めていく。
 仕込み暗器の飛針が吸血鬼の心臓部を捉え、穿った。憂さ晴らしに近いダガーの雨が更に降り注ぐ。派手な出血を伴う亡骸の物陰から、レガルタが先を窺うように顔を覗かせた。
「……数が増えてきたな。そろそろ、隠密にも拘っていられないか」
 彼がぽつりと零せば、ショコラッタは――良く見えぬのだろう、目をただ細めた。
 実際、遠くまで見通せぬ彼女にとって、レガルタの誘導は助かる面も度々あった。
「こういう所には裏口があるもんだ」
 表の回廊は吸血鬼どもが占めている。だが、しかし。ここの主はこの吸血鬼を好んで周囲に置くのだろうか。
 そんなことへと考えを巡らせた節に、名も知らぬ男の顔を思い出し――忌々しそうにショコラッタは吐き捨てた。
「あの野郎、次に会ったら必ず報復してやる――半殺しにして荒野に放り出してやる。楽に死ねると思うんじゃねえぞ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
ヴァンパイアにもデュラハンの類は居るのだねェ
中々に興味深いし、血の匂いも別に嫌いじゃあ無いンだが
――何故だか、お前たちには食欲が湧かないなァ
些か目障りなので、一息に掃討して仕舞おう!

高速詠唱と全力魔法を用いて、夜王より給わす喝采を発動
広範囲に光の雨を降らせて属性攻撃を行おうか
諸君のような闇の眷属たちには効果覿面だろう?

蝙蝠や取り零した個体には破魔を纏わせた霊符を投擲
強化を無効化したり、上手く足止めできると良いなァ
物理的な攻撃は第六感を活かして見切り

体力が危うく成ったら生命力吸収で態勢の立て直しを
敵に囲まれた際は催眠術で同士討ちを命じようか
――ダンスの時間だ、吸血鬼ども。さァ、此の掌中で踊り狂え


夏目・晴夜
敵がどれほどいようとも、このハレルヤの前では全てが無力です

複製された蝙蝠もヴァンパイアも「謳う静寂」での落雷で皆平等に貫きます
私も鬼ではありませんのでね。その耳障りな羽ばたきの音を直ちに消すか、
あるいは私を盛大に褒めて褒めて崇めてくださるならば、
もしかしたら見逃してあげない事もないかも知れませんよ

仕留め損ねた敵がいるなら、悠々と妖刀で【なぎ払い】
はは、一匹たりとも見逃してやるはずがないでしょうが
私が世に褒め称えられる為の糧となって頂きます

このハレルヤに目をつけた人買いの審美眼はかなりのものでしたが、
屋敷の主はどれほどの御方なのでしょうね
まあ、雑魚どもの姿を見るに、美的センスはイマイチでしょうか



●薔薇と饒舌
 回廊の行き当たり。招かれてやってきたのに、ひどいもてなしですねえ、と嘆息する男がひとり。
 部屋を出てふらふらと散策してみれば、何体かの吸血鬼に追い詰められていた。
 ――否、彼は追い詰められたつもりは欠片もないのだが。
「敵がどれほどいようとも、このハレルヤの前では全てが無力です」
 夏目・晴夜の在り方は、何処へ行こうとも堂々としたものだ。
 美しい白い毛並みは艶やと耀き、下を向くことなど知らぬと言うように。
 そして、紡ぐ言葉は途切れず滑らかに、叩きつけられる。
「私も鬼ではありませんのでね。その耳障りな羽ばたきの音を直ちに消すか、あるいは私を盛大に褒めて褒めて崇めてくださるならば、もしかしたら見逃してあげない事もないかも知れませんよ」
 口の無い相手に、無茶を言う。
 浮かべている笑顔は愛らしくも見えるし、心底相手を莫迦にしているようにも見える。本人に聴けば、どちらも当然と答えるであろうが。
 しかし、無為な競争にも飽いた。道案内の役にも立ちそうにない――そろそろ片付けようか、と晴夜が口を開きかけたその時。
「これはこれは――薔薇ではないものが、ひどく匂うと思ったら」
 別の男の声が響いた。
「ヴァンパイアにもデュラハンの類は居るのだねェ。中々に興味深いし、血の匂いも別に嫌いじゃあ無いンだが」
 顎に指で触れつつ、胡乱そうに神埜・常盤が眼前の吸血鬼どもを見つめた。
 血の匂いは、それが首や衣類に染めたものでもあり――屋敷中に充満している、死臭のようなものでもある。
 彼自身が先に言った通り。横を見やれば綺麗に手入れされた薔薇なども見えるが、不思議と、彼の心を動かすほどの魅力はなかった。
「――何故だか、お前たちには食欲が湧かないなァ。些か目障りなので、一息に掃討して仕舞おう!」
 台詞めいた言い回しと共に飴色のインバネスを翻し、霊符を指に常磐は笑う。
「目障りであるなら仕方ありませんね。私を手伝わせてあげますよ」
 吸血鬼を挟んで向こう、晴夜も不敵な色に瞳を耀かせた。
 視界いっぱいに膨れあがった蝙蝠どもが、両者に向けて羽ばたく。
「ちょっと黙っていて下さい」
 ただ、単純に、晴夜は敵対するすべてへそう命じた。当然、聴かぬ。キィキィと耳障りな鳴き声をたてて、大仰な羽音と共に飛来する――その、全てを。
 ぴしゃり、と唐突な落雷が襲った。
 視界に白い閃光が残るほど、眩い雷は、彼の命令を効かなかった相手に落ちる天罰のようなもの。
「はは、一匹たりとも見逃してやるはずがないでしょうが。私が世に褒め称えられる為の糧となって頂きます」
 楽しそうに、彼は謳う。当然のように『見逃してあげない事もないかも』を覆す。
 まあ、相手は退かず、ましてや晴夜を褒めなかったので、この結論もやむなしであるが。
 それでも運良く死に損なった――或いは途端に再生を始めた蝙蝠は、常に抜き身の妖刀で無造作に断ち切る。
 しかし、やはり聞く耳もなければ、利く口もない吸血鬼には大した負傷は与えられなかったようだ。
「面白いものを見せて貰ったからねェ、僕もひとつ披露しようか」
 端麗な顔に余裕の笑みを湛え。常磐は腕を広げて、それを招く。
「忌まわしき我が権能の一端、とくとご覧あれ」
 朗々と奉じれば、室内にも関わらず雨が降る。否、それはひとつひとつが強い光。
 強い日差しを細やかに注ぐような、光の雨。
 それは燦燦と吸血鬼に降り注ぎ、その身を焼いていく。肉が焦げる匂いが辺りに充満する――何となく、腐臭めいた嫌な臭いだ。
「諸君のような闇の眷属たちには効果覿面だろう?」
 口元を霊符で隠すように振る舞って、常磐は問いかける。
 身動きがとれなくなった吸血鬼に向け、晴夜が堂々と刀を振り上げながら近づいた。
 身を焼かれながらも不格好に浮き上がった蝙蝠の顔を、常磐の霊符が無常に遮る。在らぬ方に飛行していくそれは柱へとぶつかり、ずるずると血の帯を伸ばして落ちた。
「それにしても集めるに集めたものだ!」
 まだ周囲を取り囲むように距離を詰めてくる首無し吸血鬼を、常磐は赤茶色の瞳で一瞥して、手をひらひらと振った。
「褒め言葉ととりますね」
 早速、正面から返答があった。常磐も口元の笑みを深める。
「……ずっと遊ンでいるわけにもいかないねェ」
 ふと、思いついたように――彼は一番距離の近しい吸血鬼にそっと囁きかける。耳も無い、目も無い相手に霊符を貼り付け、嫌疑を謳う。
「隣の彼は、本当に君の仲間かい? その蝙蝠は、本当に君の眷属かい?」
 それが巧くいったのは、ひどく消耗していたからだろう。
 思考能力が何処まであるのかわからないが――彼の操り人形と、巧く一体の吸血鬼を惑わせば、同等の力を持つそれが戦況を引っかき回す。
「――ダンスの時間だ、吸血鬼ども。さァ、此の掌中で踊り狂え」
 そして、そのまま勝手に踊っているといいよ、と――突き放す常磐もなかなかに人が悪い。
 つまらない遊びでした、晴夜はしれっと妖刀をからくり人形に預けて歩き出す。
「このハレルヤに目をつけた人買いの審美眼はかなりのものでしたが、屋敷の主はどれほどの御方なのでしょうね」
「僕としては、せめて美女であってほしいけどねェ」
 常磐の軽口を背に、彼は口元に薄い笑みを刷いた。
「……まあ、雑魚どもの姿を見るに、美的センスはイマイチでしょうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
相手の腹の中に案内されたんだ
後は
疾く、数減らしながら攻め入るべしですね

回廊を駆け上がる
蝙蝠にたかられぬよう
残像見せるフェイント交えた動きで
相手の狙いを、僅かでも逸らし
その数秒に踏み込み、破魔の力込めた薙ぎ払いにて
吸血鬼本体を狙い

目視できる動き以外も
第六感働かせ注意
自分や他の猟兵の影が揺れれば
反応しUCで敵の攻撃受けるにしても軽減
味方が狙われていれば庇い
二回攻撃で、カウンターを

この場に満ちる血の匂い
勝手な欲に奪われたのが
全て命あるものだったこと
町で理不尽に傷つけられた者を思う
慣れたくは、ない
良くあるなどと
言いたくないんだよ

命の輝きに魅せられたなら
奪って飾るなど
馬鹿の所業なのに

※アドリブ・共闘歓迎


ノエマ・アーベント
辺りに満ちた血の臭い
果たしてどれだけ多くの人達が、吸血鬼共の私欲の為に
命を落としていったのかしら

とにかく折角招いてくれたのだから、趣向を凝らしたこのおもてなし
それなりに愉しませてもらうわよ

相手の影蝙蝠はちょっと目障りね
こちらもそれに対抗し、錬成カミヤドリで本体のギロチンを複製するわ
それらで影蝙蝠を排除しつつ、隙を狙って首無しヴァンパイアに仕掛けるわ
オーラ防御と武器受けで、敵の攻撃を受け流しつつ動きを見切り
複製したギロチンを、返す刃で全てぶつけて斬り刻んであげる

飛ばせる首はもうないみたいだし、懺悔の言葉が聞かれないのは残念だけど
残った身体を肉片にして、地獄の涯まで罪の苦痛を味わいながら死になさい



●ペンデュラムの指し示すところ
「相手の腹の中に案内されたんだ。後は……疾く、数減らしながら攻め入るべしですね」
 走りながら、冴島・類が腕を閃かす。
 その動作に、銀杏色の組紐飾りが遅れて従う。蝙蝠が落とした翼が、はらりと木の葉のように舞った。
 束の間、類が踏み込んで方向を転換する一瞬を狙い、ぎゅっと一カ所に凝縮するように蝙蝠が集う。
「何処を狙っているですか?」
 声は、その塊の外から響いた。
 神霊体が放つ衝撃破は、短い刀身の不利を補う。薙ぎ払われた蝙蝠どもが次々に床に落ちていく。
 だが彼は安易にその場に踏み込んだりはしない。実際、一度一斉に再生して肝を冷やした。
 何より今は単独行動ではなく――。
 ひゅ、と。彼の視線の上を風切り、巨大な刃が奔った。
 重く鈍い、丸い刀身。斬り落とすためのそれは、吸血鬼の腕を肩からざっくりと落とした。核心を避けたのは蠢く蝙蝠の功績か。
「果たしてどれだけ多くの人達が、吸血鬼共の私欲の為に命を落としていったのかしら」
 ノエマ・アーベントの黄昏色の瞳は静かに、吸血鬼を見つめた。
「とにかく折角招いてくれたのだから、趣向を凝らしたこのおもてなし、それなりに愉しませてもらうわよ」
 鎖を引く。しかしノエマが手にする『彼女自身』は動かない。
 じゃらりじゃらりと音がする――天井には無数の振り子が彼女の思う儘に現れて、逃げ場など与えぬように容赦なく振れる。
 大きな弧が蝙蝠どもを幾度でも苛み、何処にも逃れようがないように、振り子が吸血鬼を取り囲んでいる。
 しかし相手も成されるが儘ではない。
 吸血鬼の力で強化された蝙蝠が群れを成して飛ぶ。一匹が振り子に斬り裂かれるが、そのまま半身を分割したまま飛行を続ける。
 滑空してきた群れに、ノエマは今度こそ手にしたギロチンで応じる。小柄な体格に似合わぬ刃の嵐。
 羽を、鼻を、斬り乍ら叩き潰す。そこから逃れた蝙蝠が、喰らい付いてくる。
 彼女は煩わしそうに、ただ、腕を払った。
 するとごうと風をきり、振り子が彼女の正面を横切る。彼女の念力で自在に動くギロチンは、いくらでも場所を変えるのだ。
 そうして出来た空間に、凛と踏み込むは類。陽動と振り上げた刀を、徒と下げ。
 ノエマのギロチンが作る僅かな安全地帯を縫うように駆る。
「――勝手な欲で奪われたのは、全て命あるものだ」
 彼はぽつりと零す。
 あの街はこの世界では、よくある街。
 だがそれを当たり前だと。仕方が無いのだと、慣れて諦めたくは無い。
「風集い、舞え」
 だから、類は命を捧げて舞う。短刀と共に、街で見せたものに劣らぬ艶やかな舞いを。
 吸血鬼に見せるには惜しい――否、顔の無い吸血鬼に見ることは敵わぬ。
 感情を殆ど投影しない黄昏色の瞳で、ノエマはその舞いを静かに見つめている。
 類の怒りは解る。その美しさも解る。
 解らないのは、吸血鬼どもと。それを傘に着る人間の所業。
「飛ばせる首はもうないみたいだし、懺悔の言葉が聞かれないのは残念だけど。残った身体を肉片にして、地獄の涯まで罪の苦痛を味わいながら死になさい」
 二対の振り子が、吸血鬼を前後から挟撃する。回避は出来ぬ――腹をジグザグに貫かれ、それでも息絶えず悶えるのは、吸血鬼であるからか。
 慈悲深き類の剣が、破魔の力をもってその核を貫く。
 この吸血鬼に告げても仕方がないけれど。それでも彼は、告げずにはおられぬ。
「命の輝きに魅せられたなら――奪って飾るなど馬鹿の所業なのに」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユラ・フリードゥルフ
翼おにーさん(f15830)と

ふぅん、味気ない出迎えだね
先ず首なしのヴァンパイアの相手だよね
あれって喋るのかな?

周囲を警戒し、敵が背を向けた隙に移動を開始しよう
翼おにーさんが目眩ししてくれたら、合図で動くよ
槍を投げるから、おにーさんぶつからないでね

基本はリンドブルムを使っての攻撃を
おにーさんの作ってくれた隙を逃さずに敵の懐に入り込んでいく
敵が下手な動きを見せれば暗器を放ち

これでも俺、結構前に出れるんだよね
だから、この槍は外さないよ?

片付けたらおにーさんと状況と安否を確認して
屋敷の部屋とか気になるけど
他に素材になった人の名残があるとすれば、本邸だったりするのかな
おー、おにーさんさすがの情報通


早乙女・翼
ユラ(f04657)と。

首ねぇのに、どーやってこっちのこと感知してんだろうな、こいつら。
喋るんなら腹話術じゃね?

一応奴等が背を向けた隙を見計らって進み出そうか。
気付いた素振りを見せたら、サーベルと己の翼を前に突き出し、羽翼の結界を展開、首無達を攻撃。
敵の武器が再生するんならその先から彼岸花が張り付いて蝕むように。
だが結界の主な目的は目眩まし。
羽根と花片まみれになって見失ってくれた隙を見、ユラに合図。
自分でも魔剣を手元に喚びながら足目がけて斬り伏せる。
ひとまずは徘徊出来なくしてやるさよ。

大体片付けた所で、大丈夫?とユラと互いの安否確認。
本邸への道は、さっきぶちのめした見張りの身体に丁重に聴取済。



●タンザナイトとガーネット
 美辞麗句重ねて誘ってきた割には、ユラ・フリードゥルフが僅かに身体を傾げれば、黒髪がさらりと音を立てた。
「ふぅん、味気ない出迎えだね」
 廊下の陰に身を身を潜めて、タンザナイトの瞳は対象の動きを観察している。
 真っ直ぐ歩いて行くだけの首無し吸血鬼。彼らの歩みは小さな血の染みで分かり易い。
「首ねぇのに、どーやってこっちのこと感知してんだろうな、こいつら」
 早乙女・翼は素朴な疑問を口にする。彼もまた目立たぬように翼を畳んで廊下の奥に身を潜め、同じ方向を窺っている。
「あれって喋るのかな?」
「喋るんなら腹話術じゃね?」
 ふと重ねた疑問に、さらりと返ってきた翼の言葉にユラが思わず笑む。
 それなら見てみたいね、と嘯く。
「じゃ、行くか」
「はい、いつでも」
 視線を交わした後、最終的な合図は翼が出した――というよりは、翼自身が合図のようなものであった。
 ばさり、コートを翻すよりも大きな風音が起こる。地を蹴り、真紅の刀身持つサーベルと、深緋の翼を広げ――首無し吸血鬼の背を目掛け、躍りかかる。
 咄嗟に振り返るが、遅い。否、充分か。吸血鬼の操る蝙蝠が激しい羽音を立てて向かってきた。
「死天使の羽根と彼岸花、死に逝く者に捧げよ」
 しかし翼も落ち着いたものだ――紡ぐ詞に澱みはなく。
 身を守るように。しかし実際は矛なるように。身体に沿って緩やかな孤を描いて前へと差し向けた羽根の先が、さらさらと舞い、崩れていく。
 否――彼の突きつけたサーベルが、詞に応え、深紅の鳥の羽根と曼珠沙華へと変じ、幻影が如く舞い散った。
 真っ赤な羽根がひらひらと舞う只中で、蝙蝠どもは果敢と飛来する――その身も、赤い乱舞に触れれば斬りつけられたような朱が走る。
 再生能力を強化された蝙蝠は、片羽を落とされようとも不格好に滑空してきた。花と羽根を蹴散らしながら、ガーネットの瞳を不敵に耀かせた翼へ、奔る。
「俺しか見えていない――ってか。悪くねぇな」
 身体を低く沈めれば、髪に咲く彼岸花の花弁が震えた。風を断ちて、何かが来る。
「おにーさんぶつからないでね」
 さらりと流れる冷静な声音、腕に這わせた小型の銀のドラゴンを槍へと変えて、流れるように投擲したのは、ユラ。
「警告が遅くないか?」
 目の前に銀の槍が落ちる。穂先の鋭さを嘲笑うこと勿れ。触れた瞬間に、召喚されたドラゴンが蝙蝠どもを食い散らかしながら、吸血鬼へと顎を開いて飛びついた。
 衝撃を後ろへの跳躍で逃しつつ翼が笑うと、おにーさんなら大丈夫かと思って、という笑みを含んだ言葉が返る。
 蝙蝠どもは赤い幻影の中で、まだ藻掻いている。
「ユラ!」
 だが、その向こう――忽然と吸血鬼が姿を消したことを認めた翼が警告の声を発した。
 自分の足元から、首の無い吸血鬼が腕を伸ばしてくる――解っていれば、驚くことでもない。脚のベルトに固定している暗器を掴み、そのまま陰へと突き立てた。
 傷の痛みよりも出鼻を挫かれたことで体勢を崩し、陰からずるりと現れたものの、一瞬の隙が発生する。
 懐に入るまでもなく、懐まで来てくれるなんて、と彼はにこやかに笑みを作り、手元に戻っていたリンドブルムを再び閃かせた。
 立ち位置こそ翼が先行し、後衛に甘んじている体勢ではあるが。
「これでも俺、結構前に出れるんだよね。だから、この槍は外さないよ?」
 くるりと一回し、矛先を前へと繰り出す。胸の中心を深々貫く。
 吸血鬼の背後で、大きな羽ばたきがひとたび。翼が深く構えた姿勢から解き放った真紅の一閃が、艶やかに薙ぐ。
「ひとまずは徘徊出来なくしてやるさよ」
 軽やかに、膝から下を切り落とすと、そのまま力強い踏み込みで床を叩き、垂直に――床に縫い止めるように、サーベルで刺し穿つ。
「大丈夫?」
「掠り傷程度、そちらも問題ないみたいだね?」
 ユラは脹ら脛に走る血を軽く拭いつつ、翼は応えるように蝙蝠に削られた袖口を振って見せた。
「他に素材になった人の名残があるとすれば、本邸だったりするのかな」
 ひとたび拓けた道の先を見つめ、ユラが呟く。気になる部屋を少し探ってみたが、今の所、猟兵を除いて生きた人間には遭遇していない。
「本邸への道は、さっきぶちのめした見張りの身体に丁重に聴取済」
 任せろと目的の方角へと視線を向けた翼に、おー、おにーさんさすがの情報通とユラが讃えて見せれば。
「ま、進路よりこいつらが厄介さね。慎重に行こう」
 満更でもない表情で振り返った翼に、ユラも静かに口元に笑みを湛えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と同行
(アドリブetc歓迎)

…腹立つケドやっぱお前の目は囮に抜群だったな
つか、めんどくせーのが彷徨いてやがる…さっさと片付けて最短コースで本館まで行くぞ氷月

前衛は氷月任せで【援護射撃】で露払いに徹しておく
派手にぶちかませ、氷月!
蝙蝠がアイツに近寄った端からカルタとガランサスの【クイックドロウ】【2回攻撃】で撃ち落とす
くはは、ひーづき…ちゃーんと避けねェとお前ごと撃ち抜くからな?

隙が出来れば【Columbine】で敵の本体と蝙蝠を撃ち抜き炎を延焼させてやるよ
…再生する端から燃えてりゃ意味ねーだろ?

…やっぱあんなつまんねー曲芸してるよか戦ってる時のお前の目の方が数倍綺麗だな


氷月・望
ゆーくん(f16731)と
アドリブ等歓迎

いやいや、もしかしたら……
ゆーくんの目がお眼鏡に叶ったのかもよ?
……ゆーくんは俺のだから、ちょっとムカつくケドね
派手にブッ飛ばして、顔面轢きに行こうかァ!

後衛はゆーくんに頼んで、前衛でドラテク魅せちゃうよ!
【Full Throttle】発動して、バイク騎乗
【運転】【先制攻撃】【範囲攻撃】で邪魔なヤツらは潰していこうか
轢けなくても、周囲に迸る赤雷で焼ければ上々
ちょっ、俺まで巻き添えやーめーてー!?ゆーくん!?
【傷口をえぐる】で再生した端から突撃、轢いて、焼き尽くす

ホント……ゆーくん、嬉しいコト言ってくれるよね
戦っている方が楽しい、って意味では同感だケドさ?



●赤雷の衝撃、糸繰草の弾丸
「……腹立つケドやっぱお前の目は囮に抜群だったな」
 月待・楪がぽつりと零す。背中合わせに響いた言葉に、氷月・望が振り返り、いやいや、と別の可能性を提示する。
「もしかしたら……ゆーくんの目がお眼鏡に叶ったのかもよ?」
 言いながら――赤い瞳を細める。
「……ゆーくんは俺のだから、ちょっとムカつくケドね」
 彼の言葉を、楪は涼しい顔で聞き流す。
 今は周囲を警戒している最中。軽口を叩き合うのも悪くは無いが、それで先手を許すのは腹立たしい。
「つか、めんどくせーのが彷徨いてやがる……さっさと片付けて最短コースで本館まで行くぞ氷月」
 吸血鬼に向け楪が忌々しそうに舌打ちすれば、望は好戦的にエンジンを噴かせる。
 クラッシックアメリカンな大型バイクの轟きは、吸血鬼どもに己の気配を報せるようなもの――無論、わざとだ。
「派手にブッ飛ばして、顔面轢きに行こうかァ!」
 言葉と共に解放されたバイクが哮る。
「派手にぶちかませ、氷月!」
 楪の言葉に深く頷き、望が身を乗り出すように、飛び出した。風よりも速く回廊の中心へ、赤雷を纏う相棒――Shadow.Remを駆る。
「轢かれたくなけりゃ、ソコどきなァ!」
 加速したバイクは吸血鬼どもを弾き飛ばしていく。その姿は風というよりも、雷。赤い雷が尾と伸びて、軽く前輪を持ち上げて走り、吸血鬼を薙ぎ倒す。
 純粋な破壊力は大砲を撃ち込まれたのと変わるまい。
 しかし、敵も然るもの。脚やら腹やらに裂けた傷を作りながらも――元から頭が無いのだから、然程不思議でも無い――平然と起き上がり、蝙蝠どもを走らせる。傷口が焦げて燻っているのは雷が灼いたか。
 回廊をみっちりと蝙蝠が占めていく。彼の雷に灼かれようが、轢かれようが、瞬く間に再生する蝙蝠の群れ。
 連続する甲高い音が、火花を散らし、回廊を穿つ。望の背中へ追いた蝙蝠を撃ち落としたのは楪の二丁拳銃。拵えが違うだけで同じ型の無骨な銃を、彼は巧みに操り、援護する。
 ヒュ、と。
 ひとつの銃弾が望のこめかみを掠めた。
「ちょっ、俺まで巻き添えやーめーてー!? ゆーくん!?」
「くはは、ひーづき……ちゃーんと避けねェとお前ごと撃ち抜くからな?」
 速度は緩めぬが、思わず首を竦めた望に、笑みを含んだ人の悪い表情を返しつつ――灰の双眸は、直ぐに甦る蝙蝠に向けられていた。
「……落とした端から再生しやがる」
 赤雷に打たれてもしぶとく甦るのだから、そう巧くはいかないのは解っていたが。逃げおおせた望の代わり、彼の周囲を蝙蝠がずらりと取り囲む。
 ゆーくん、望が呼ぶ。解っている――彼は嘆息混じりに力を解放する。
「愚かだよなァ…どうせ撃ち抜かれるのによ」
 発火能力からの、糸繰草の色をした弾丸が次々と浮かび上がり、燃えた。
 それは空気さえも燃やしながら、白く、周囲を染め上げる。容赦の無い炎は次々と蝙蝠を巻き込んでその範囲を広げていく。
 これを消すのは楪の意志ひとつ。
「……再生する端から燃えてりゃ意味ねーだろ?」
 前輪を派手に持ち上げてキュルリと転回した望が、最後の一掃とばかりエンジンを噴かす。
 ますます高く走る赤い雷が蝙蝠どもの天幕を貫いて、その後ろを膨れあがった糸繰草色の弾丸が続く。
 臆すこと無く――笑みさえ浮かべ、炎の中で望はハンドルを深く回す。持て余しそうな大型バイクを自身の体の如く操り、人機一体となりて。
 轢いて――灼く。
 その様を後ろから眺める楪は、とても眩しそうに目を細めた。

 道を遮る吸血鬼を容赦なく轢き切った望がスピードを緩めて、それでも凄まじい風圧と共に楪の前に戻って来た。
 スピードを殺すためにハンドルを切り。きゅっとタイヤが軋む。それでも一切の無駄な動きを発生させないのは、望の腕か。
「ゆーくん、どうせだし、このまま走ってこうか」
 真っ赤に染まった回廊を見やり、彼が問う。
 だが楪は暫く黙って望を頭の上から爪先まで、じろりと眺めた。
「……やっぱあんなつまんねー曲芸してるよか戦ってる時のお前の目の方が数倍綺麗だな」
 真顔で楪が告げると、望は二度ほど目を瞬いた。
「ホント……ゆーくん、嬉しいコト言ってくれるよね。戦っている方が楽しい、って意味では同感だケドさ?」
 ふわりと笑う。軽薄な声音と表情だが――楪は瞑目し、同意を示した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
流石にまっすぐ主とやらのとこへ向かわせてはくれないか
さて、下男よりかは良い仕事をもらえるように
こちらの実力を披露しなくちゃね

ふーん……首無し、ねぇ
それでもまだ生きてるんだから大した生命力だ
頭はどこに置いてきたの?
なんて興味もなさげに

影を伝うようだけど、影を利用出来るのはお前たちだけじゃないよ
野生の勘と第六感を働かせて気配を感じとることに集中する
ヴァンパイアの気配を感じ取ったら
影を踏みにじって魔力を込め影雨を一気に叩き込む
見つけづらくても数打てば当たるでしょ
わざわざ逃げ場がないところから出てきてくれるなんて助かるよ
首以外もなくなっちゃうかもね


色採・トリノ
あら、あら、お首がないの
どこかに、忘れてきてしまったの?
それでは、とても不便でしょう
何とかしてあげたいけれど…うぅん、ごめんなさい
リノたち、今、少し急いでいるの

首無しさんは、再生力に長けているの、ね
数と耐久力で時間が掛かると大変
一気に踏破できるように、手数を増やした方が良さそうかしら
『オルタナティブ・ダブル』で、戦闘の得意な子に手伝ってもらいましょう

「戦いの得意な子、得意な子、リノを手伝ってちょうだいな」

リノは後ろで他の猟兵さんたちの治療などできれば
呼び出した子は、前に出て、オブリビオンさんたちを倒せるだけ倒してもらいましょう
でも、無理はしないで、ね?

(人格名(色名)・性格お任せします)


ユエ・ウニ
へぇ……屋敷は美しいのにまるで空気が淀んでいるな。
首無しというのも趣味が悪い。
さっさと用を済ませて早く帰りた限りだ。

特に誰かと組んでいる訳でもないから、孤立だけは気を付けたい所だ。
まぁその分身軽ではあるからな、どうとでも動ける。
エレクトロレギオンで攻撃を。
手が足りそうであれば【2回攻撃】を狙おうか。
敵の数が多い。油断なんてしないさ。

もし困っている奴がいたなら、加勢を。
【フェイント】をしつつ【時間稼ぎ】が出来れば僥倖か。
こんな所で倒れる訳にもいかないだろ。

僕らは猟兵だからまだましだが……今まで素材にされてきた奴らは……。
絶望の中で死んでいった、か……。反吐がでるな。



●束の間の静寂に、
 多くの赤い道筋が、白い回廊に進路を示すように描かれている。
 いよいよ終着点の気配を感じるが――なればこそ、守りも堅くなろうというもの。
「流石にまっすぐ主とやらのとこへ向かわせてはくれないか」
 鹿忍・由紀は薄い青を細めて、溜息混じりに零す。乍ら、身体は既に後ろへと跳んでいた。
 蝙蝠が彼の立っていたところで旋回する――機を逸したという雰囲気で、背を向けて主の元へと返っていく。
 あら、と。
 のんびりとした響きを伴った声が首を傾げた。
「あら、あら、お首がないの。どこかに、忘れてきてしまったの?」
 きょとんとした表情で色採・トリノが左目を瞬かせる。
「ふーん……首無し、ねぇ。それでもまだ生きてるんだから大した生命力だ――頭はどこに置いてきたの?」
 半身で振り返った由紀は、ひたひたと歩いてくる首の無い吸血鬼へ、冷ややかな視線と言葉を向けた。興味など欠片も持たぬと隠さぬ、気のない声音。
 対し、トリノは可哀想にと眉尻を下げる。
「それでは、とても不便でしょう――何とかしてあげたいけれど……うぅん、ごめんなさい。リノたち、今、少し急いでいるの」
 その言葉は揶揄でもなんでもない、心からの本心だろう。
 由紀はそれを否定しない。ただ口を閉ざし、前へと駆った。
 ばさり、――蝙蝠が羽ばたく音が再度響くに合わせて彼はダガーを翻す。
 迫る蝙蝠を瞬く間に斬り刻む。翼を落とし、地に落ちた蝙蝠どもと直ぐに距離をとる。再生速度は既に把握していた。
 相手が一時的に武器を失っている間に、距離をつめ、本体へと仕掛けるまでを一息でこなす。
 何せ、戦っている間に増える。回廊は広いが、広いがゆえに果ても無く吸血鬼が押し寄せてくる。
 実際――何処かに詰めている兵士などと違い、キリ無く呼び出される存在なのだろう。
 その中で立ち回るのは、ひとりじゃ大変よね、と。
 直接問えば、きっと由紀は平気だと淡い微笑を浮かべただろうが、トリノにも出来る事がある。
「戦いの得意な子、得意な子、リノを手伝ってちょうだいな」
 彼女が呼ばうと同時、その左目が僅かに色を変えた。光を宿すオパールから――青磁の焼き物の如き、灰を帯びた青緑へ。
 姿形は寸分違わずトリノと同じ――けれど、つんと澄ました表情の『ヒソク』は、姿を現すなり聖痕を光らせた。癒やすためではなく、周囲の吸血鬼どもを厭うように。
『ああ、不浄なものばかり……触れるのも嫌だわ』
 嫌悪感を隠さずそう告げた人格は、トリノが声をかけようと口を開く前に、前へと駆っていた。
『見るのも嫌だから、言われなくても片付けるわよ』
 獣奏器を手にさっさと敵に迫る――その姿を頼もしいと思うと同時、案じる心だけ、確りと声に乗せた。
「でも、無理はしないで、ね?」
『……』
 ヒソクは応えないけれど、トリノに不敵な笑顔を向けた。恐らく平静のトリノであれば、自分でも見ることもないような好戦的な笑顔であった。
『そう、曲がりなりにもお前達は動物――ならば、私に逆らえないのよ?』
 増殖した蝙蝠どもを操るように笛を奏でる。
 それらは吸血鬼の近くに居るときこそ、彼女や、トリノに向かって飛翔できるが、笛の音によって、方向感覚が狂ったように進路を変えてしまう。
 それを由紀がダガーで散らす。
 増やした武器がひたすら空を掻き、意味を失う事実を前に――頭があれば、どんな表情を浮かべていただろうか。
 だから、というわけでもあるまいが、吸血鬼は不意に姿を消した。
 ああ、由紀が小さく息を吐く。その手段を使ってしまったか。
「――影を利用出来るのはお前たちだけじゃないよ」
 研ぎ澄ました感覚が『今』だと告げる。
 自身の足元をじりと全ての体重を籠めて踏みにじる。爪先に力を籠めた時、肉の感触を捉え――瞬時に魔力を巡らせる。
「貫け」
 影から、次々に闇色の刃が顔を覗かせ、天に向けて走る。
 複製した夥しい数のダガーは影を伝い現れた吸血鬼とほぼ同時、零距離から放たれるのだ。回避できようはずもない。
「わざわざ逃げ場がないところから出てきてくれるなんて助かるよ。首以外もなくなっちゃうかもね」
 血溜まりを避けるように、飛び退く。
 代償がないわけでもない――彼の足元から飛び立った蝙蝠が、肩に喰らい付いていた。容赦なく払い落とせば、トリノが光を放ってその傷をすかさず癒やす。
 痛みには耐えられるがある程度、負傷の心配をしなくても良いのは心強い。
「数が多くても同じ事だけど……多いね」
 由紀は心底辟易したように零すと。
「手が必要かい?」
 吸血鬼どもの背後から、百を数える機械兵器が押し寄せてくる。
 彼らは小さいが確りと武装しており、手にした重火器が放たれれば、合わせて吸血鬼は奇妙なダンスを踊るように崩れ落ちる。
「屋敷は美しいのにまるで空気が淀んでいるな。首無しというのも趣味が悪い――さっさと用を済ませて早く帰りたい限りだ」
 輝くような銀の髪を揺らし、ユエ・ウニが機械兵器たちの背後の立つ。
 数は備えているが、一撃貰えば失われる機械兵器。次の攻撃をすぐさま指示し、自身もからくり人形を手繰る。
「油断なんてしないさ」
 言って、ユエは花の色をした瞳で笑う。
 彼が加われば、この吸血鬼どもを制圧するのに苦労はしない――ヒソクが笛を奏でて、蝙蝠を操って無効化するばかりか、潰し合わせる。
 武器がまごついている間にユエの機械兵器が吸血鬼に攻撃を仕掛け、それを陽動に由紀が次々とダガーを閃かせる。
 最後はひとどころに追い詰めた敵へと纏めて影の刃を走らせる。
 先程までの耳障りな羽ばたきと、狂乱した蝙蝠の鳴き声が消えれば、漸く静寂が訪れた。
 更にユエが機械兵器を消せば、こんなにも回廊は広かったのかと不思議な感覚にとらわれる。
 しかしそこに敵があった証左、腐臭めいた空気が漂う。だが、それだけだ。流した血はすべて猟兵の物。目印のように刻まれていた吸血鬼の落とした血すら、此処には残っていなかった。
 がらんどうの空間へ、行く先の無い視線を巡らせて――ユエはぽつりと零す。
「僕らは猟兵だからまだましだが……今まで素材にされてきた奴らは……」
 夢を見たはずだ。
 領主がお前を見出したのだと、甘言で買われ。苦しい生活を豊かにできると信じて、ついて行ったはずだ。
 或いは意志の決定すら出来ず、連れて行かれたか。いずれにせよ、素材として磔にされた時、彼らは間違いなく――。
「絶望の中で死んでいった、か……。反吐がでるな」
 半ばに伏せたユエの、銀月のような睫が僅かに震えた。
 トリノは悲しそうな表情を見せ、由紀は無表情の儘――俯き加減に踵を返せば、前髪が表情を殆ど覆い尽くしてしまう。
 彼は先ヘと一歩踏み出して、二人へ告げる。
「急ごうか。きっと本邸はすぐそこだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
【SSFMα】

さて、と。それではひと暴れするとしますか。
ユアさん、今回は前衛がおひとりですが、大丈夫ですか?
……分かりました。では後ろは気にせず、存分に暴れちゃってください!

とは言え、機動力の高い敵です、ある程度の乱戦は免れませんね……。
火力支援は事足りるでしょうし、私はみなさんの死角の警戒をして【援護射撃】。
こいつらは影の中を移動する……【視力】を凝らし、仲間の影に移動するのが見えたら【早業】の銃撃で仕留めます。
リュシカさんとの射線の干渉?お互い【スナイパー】です。そんなヘマはしませんよ。

ただ流石に、自分の影は対応難しいでしょうし、そこは花雫さん遊撃アテにしてますからね!


霄・花雫
【SSFM‪α‬】

うわー、首無しだ……アレどっから血を吸うつもりなんだろ……
あ、そっか。今回ユアおねぇさんだけなんだ前衛……
んー……よっし、あたし遊撃回るから!ちょっとは負担減らさなきゃね!

ユーベルコードで地を蹴って、【空中戦、全力魔法、毒使い、野生の勘、第六感】
レガリアスシューズに大気を集めて、蹴り飛ばす所から毒を仕込んで行くよ
地面になんか降りないよーだ、回数足りなくなったら敵を蹴って再発動!
【誘惑、パフォーマンス、挑発】で敵を惹き付けて引っ掻き回すよ、ユアおねぇさんが囲まれないようにしないとねー
ついでにシャルちゃんやリュシカおねぇさんが狙いやすいように誘導出来ないかもチャレンジしてみるよ


リュシカ・シュテーイン
【SSFMα】
はぁ、交渉も出来ないようなぁ、相手を相手にするのは気が滅入りますねぇ
……物理的にぃ、お話が出来ないような相手はぁ、初めてですがぁ

ユアさんにぃ、前衛をお任せいたしましてぇ、私はスリングを用いてぇ、周りを舞う蝙蝠を中心にぃ、回復阻害を目的に狙撃致しましょうかぁ
【スナイパー】としてはぁ、自信はあるんですよぉ
花雫さんやユアさんの遊撃やぁ、シャルさんとの射撃干渉を起こさないようにぃ、ですねぇ

私は手持ちのぴんぽん玉ほどの小さな鉄鉱石にぃ、小型手榴弾ほどの威力のルーンを刻みぃ、射出しますよぉ

ふふふぅ、ユアさんには絶対に当てませんよぉ
しっかりお仕事が出来ればぁ、法石の宣伝にもなるでしょうぅ?


ユア・アラマート
【SSFMα】

なるほど、趣味の悪い眷属を従えているものだな
ああ、心配ないよシャル。お前も、それにリュシカや花雫もいる
安心して後ろは任せておくから、お前達も好きに暴れると良い
私の刃が届く限りは、お前達に手出しはさせない

【全力魔法】で風の術式を纏って速度を強化。【ダッシュ】と【見切り】で高速移動と回避を駆使し蝙蝠達を撹乱しながら素早く切り裂いていこう
蝙蝠の操作に気を取られているのなら、本体の接近もしやすいだろうしな
ある程度近づいたら【暗殺】で死角に回り込み、【先制攻撃】で振り返られる前に心臓を背中から貫く

どうかな、中々速いだろう?
まあ、その様子じゃあ見えてはいないだろうけどな
急ごう。本番はこの先だ



●絢爛遊戯
 白亜の回廊を巡り、薔薇の庭をいくつか通り過ぎる。
 すると不意に背の高い木々が目立つようになり、その先を回廊伝いに進めば、荘厳なる本邸に辿り着く。
 其処までに、多くの猟兵達が何体のそれを倒したことだろう。
「うわー、首無しだ……アレどっから血を吸うつもりなんだろ……」
 色の違う青を瞬かせ、霄・花雫がシャルロット・クリスティアの背で思わずそう零す。
 此処から先には通さぬと言う意志を表すかのように、ずらりと居並ぶ首無し吸血鬼の姿は、いっそ冗談のようでもある。
「なるほど、趣味の悪い眷属を従えているものだな」
 ユア・アラマートはさらりと評する。
 その口調はあっさりとしていて、不思議と悪意のようなものを感じさせぬ。
「はぁ、交渉も出来ないようなぁ、相手を相手にするのは気が滅入りますねぇ……物理的にぃ、お話が出来ないような相手はぁ、初めてですがぁ」
 深い溜息を隠せず、リュシカ・シュテーインは嘆く。言葉が通じたところで、相手が侭と動いてくれるかは解らない。
 皆の反応には余裕がある――それをとても心強く感じながら、シャルロットが前に立つユアへと、声をかけた。
「さて、と。それではひと暴れするとしますか……ユアさん、今回は前衛がおひとりですが、大丈夫ですか?」
 その問い掛けにユアは少しだけ振り返り、微笑んだ。
「ああ、心配ないよシャル。お前も、それにリュシカや花雫もいる」
 信頼の証と、華やぐ香りがふわりと漂う。
「安心して後ろは任せておくから、お前達も好きに暴れると良い――私の刃が届く限りは、お前達に手出しはさせない」
 言いつつ、正面に向き直したユアは、ダガーを構える。
「あ、そっか。今回ユアおねぇさんだけなんだ」
 少しだけ考えるように花雫は天を仰いで――きらり、と大きな瞳に光が宿る。
「んー……よっし、あたし遊撃回るから! ちょっとは負担減らさなきゃね!」
 彼女と、常と変わらぬにこやかな表情で頷くリュシカと、それぞれ見やり、シャルロットも力強く頷いた。
「分かりました。では後ろは気にせず、存分に暴れちゃってください!」
 それを口元に小さな笑みを刻み、ユアは地を蹴った。
 迎え撃つは黒い霧のように蠢く蝙蝠どもだ。猟兵達が吸血鬼と遭遇した時には、数匹を数える程度であったが、今や行く手を阻むようにそれらが広がっている。
「さ、飛ぶよ!」
 続いて、花雫も駆る。地を直線と駆ったユアと対照的に、彼女が描いた軌道は、ふわり、と弧を描く。
 彼女の脚を彩るリング型レガリアスシューズが薄翅を靡かせ、優雅に空を泳ぐ。
 その様は、まさに飛翔という言葉がよく似合う――大気の力を集めて蹴り込む力は毒を孕み、強烈だったが。
 それでも翼を持った蝙蝠には歩が悪いか。否、彼女は空中を蹴ることで方向転換し、蝙蝠を蹴り、吸血鬼を蹴り、再度宙に戻るのだ。
「地面になんか降りないよーだ」
 ちらりと相手に舌を見せ、鮮やかに蹴り薙いだ。
 戦場を掻き乱す熱帯魚の舞い、真っ直ぐに貫いていくユアの短剣。
 彼女達の動きを鋭く見つめ、その死角を補うように、シャルロットのライフルが轟く。
「基礎は努力を裏切りません!」
 撃ち込んだルーンを刻み込んだ弾頭が蝙蝠どもを爆ぜ、消し飛ばす。
 単発式ゆえ毎度装填が必要だが、それが隙とならぬ程度に彼女の技巧は鍛え上げられている。
 その派手な成果から捉えがたいが、実に正確な射撃であると――リュシカはふんわりと笑う。
「私もスナイパーとしてはぁ、自信はあるんですよぉ」
 そんな彼女が構えるはスリング。打ち出すのはピンポン球ほどの小さな鉄鉱石――ルーンを刻まれたそれは淡く輝いて、放たれる瞬間を待っている。
 放てば当たるほどに的は多いが、最良の瞬間を彼女は待つ――ユアの虹の光沢を持つ銀髪が揺らめいた。
 蝙蝠の牙を潜り抜け、低い姿勢から吸血鬼へと距離を詰める。その背後を、蝙蝠どもが怒濤と押しかける。それを躱し、再度地を踏み込んで前へと飛び込む――其の境界線を狙って、撃ち込んだ。
 爆風が、蝙蝠を木っ端と弾いた。背後で起こった瞬間的な風に乗ることで、ユアは更に加速する。
 射出された鉄鉱石に刻まれたルーンは、小型手榴弾ほどの威力を持っている。
「ふふふぅ、ユアさんには絶対に当てませんよぉ」
 その自信は技術に裏付けされている。
 証左、次々と彼女が石を撃ち込もうと、シャルロットと射線が干渉することもなく。空を制する花雫に当たることも無い。
 蝙蝠どもがそれを狙うように動こうが、同じ。
「お互いスナイパーです。そんなヘマはしませんよ」
 シャルロットの青い瞳は確りとターゲットを捉え、揺るがぬ姿勢でライフル構え、断言する。
 一体目、ユアは密かにカウントする。吸血鬼の背後に回り込んだ瞬間、切り替えして背から心臓を貫く。首が無くても動けるそれも、心臓を失えば動けぬであろう。
 それが霞と消え、蝙蝠の数が少し減る。
 狙うべき射線を見出したシャルロットが、素早く場所を移動しようと腰を上げようとして――その影に違和感を覚えた。
 素早く、銃口を向ける。幸い銃弾の装填は済んでいる。間に合うか――引き金を引くより速く、風が吹いた。
「大丈夫っ?」
「花雫さん、信じてました!」
 影を薙ぐように蹴った花雫の問いに、大きく後ろへと跳躍しながら、シャルロットは答えた。
 自分の影が妙に長く伸びている――それは全て吸血鬼の身体だろう。一度浮き上がりかけたところを蹴撃され、アーチを描いて闇に沈んでいる。
 自分の脚が地に着く前に。浮いたまま、シャルロットは撃った。
 弾頭が影に呑まれる。立体的に浮き上がった背に潜って――裡で爆ぜた。これで二体目ですね、彼女はカウントして前を向く。
 まだまだ油断はならぬ状況だ。
 ユアがひとりで蝙蝠の群れを潜り抜けている。相手を翻弄するように、近づいたり離れたり、流水が如く――捕らえ難い動きで、彼女は立ち回る。数が多いがゆえに、細かな傷は避けられないが、致命と囲まれる前に、リュシカの宝石弾が吹き飛ばす。
 乱戦が激しい時は威力が控えめなもので、ユアが逃げる機を作り、その進路を作るため、威力の高いものを撃ち込み支える。幾度放とうが、その狙いが外れることはない。
 見事なものですね、と。改めてシャルロットが讃えれば。
 当然ですよぅ、と彼女は胸を張る。それはスナイパーとしての矜持もあるのだが。
「しっかりお仕事が出来ればぁ、法石の宣伝にもなるでしょうぅ?」
 次の宝石を手に、そんな含みを見せると、花雫がくるりと宙返り、蝙蝠を足蹴にしながら口元に人差し指を当てた。
「あの子とかが宣伝してくれるかなあ?」
 素朴な疑問に、シャルロットは真面目に頷く。
「ええ、きっと。リュシカさんの活躍が伝われば」
 最大の問題はその目撃者がいないであろうことだが――誰も今の所、触れぬ。
 彼女達の言葉に、ユアは思わず笑みを零す。
 まったく、心強い仲間だ。後ろを振り返らずに駆け抜けられる。翡翠の瞳は、残る吸血鬼をひたと見据えた。
 目は合わぬ。奴らが蝙蝠が敵の動きを感知しているのか、直感のようなもので捉えているのか。此処まで立ち回れど、やはり解らなかった。
 背後で、風が揺れる気配と、鋭い銃撃と、容赦のない爆風が次々と起こる。もう蝙蝠の幕は無い。
 ぐっと深く踏み込んで、風を纏いてユアは奔る。
「どうかな、中々速いだろう? まあ、その様子じゃあ見えてはいないだろうけどな」
 ひとすじの光が、吸血鬼の脇を駆け抜た――ほぼ同時、濁った翡翠色の刃が、吸血鬼の背に隠れている。
 ぐるりと回しながら引き抜いて、彼女は立ち上がる。身に飛んできた血飛沫を拭わぬまま、壮麗なる扉を見やる。
 周囲の敵は完全に沈黙した――最早、邪魔も入るまい。
 薔薇の蔦が巻き付いた玄関ポーチ。屋敷の中の屋敷でありながら、此処はやはり特別な空気を醸していた。
 細く息を吐いて、ユアは三人を振り返る。
「急ごう。本番はこの先だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『血に濡れた伯爵夫人・アミラ』』

POW   :    血霧と踊りて
全身を【物理攻撃を無効化する深紅の霧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    鮮血の荊棘
技能名「【串刺し、傷口をえぐる、生命力吸収、吸血】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    たった一人の私の味方
自身が戦闘で瀕死になると【逃走時間を稼ぐために従属吸血鬼】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエミリィ・ジゼルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ある職人の独白
 本邸はまっすぐに進む。私も滅多に此処にやってくることはないが、異常なほど人気――元々ここに人は殆どいないが――は無い。
 曰く、次の『もてなし』のために、すべて払ってあるらしい。
 紅玉の間はその名の通り赤い部屋だ。壁も天井も床もすべて赤い。
 細長い空間の突き当たりに玉座めかした椅子があり、そこにいつもマダムは座っておられる。
 そして部屋を彩るのは無数の『宝石』――ルビー、サファイア、パール、アンバー、ペリドット、ダイヤモンド……そんな耀きを湛えた眼球達。
 いつ見ても背筋に震えが走る。
 この宝石はすべてわたしが拵えたものだ。マダムがこれを最も近くで愛でてくださるという事実に、歓喜で震えるのだ。
 一歩踏み込む。
 部屋の中央には大きな滑車。足元には大きな堀。なみなみと揺れる水面は真っ赤に染まり、その中を怪魚が泳いでいる。
 滑車の先には鉤爪が備わり、肉片が刺さっている。生きた人間を――主に不作法をおこした使用人を吊して、怪魚の餌にする。これを客人と眺めて、歓談なさっているらしい。
 一歩踏み込む。
 無数の檻が並んでいる。中にはそれなりの見目をした人間の女が閉じ込められている。素材云々は関わりなく、マダムが「そう」しようと思ったものだ。
 中には棘。人の急所を巧みに外した長い棘だ。その数は数十。貫かれている間はじわじわと消耗し、檻から解放されても助からない、そういう傷だ。彼女達は両目を貫かれたまま、泪を流して苦痛に呻く――マダムはその歌声がとてもお好きだ。
 更に、一歩踏み込む。
 美しい少女達が艶然と微笑んでいる。全てマダムが見定めた美しい貌の娘達だ。浮き世離れした――殺してしまうには惜しいが、死したことで美しさを永遠に留めた娘達。
 年齢は様々だが、比較的若いものが多い。これらは腐らぬように加工して、ただ部屋の装いに置かれている。つまり、剥製のようなものだ。
 私が前に進むと、悠然とマダムは笑んだ。
「おまえ。とんだ素材を引き当てたものね。でも安心なさい……彼らがどんな宝石になるか、私も興味があるの」
 今までに見た中で最も美しい――最も残酷な微笑みを浮かべるこの方に、私はただ従い、ついていく。
 そうすることで、我が眼は――様々な世界を。様々な美を見ることができるのだ。

●紅玉の間
 女が玉座を降りる。如何にも吸血鬼らしい、貴族らしい女。
「使用人は取り替えないといけないわね。鼠退治も碌にできないなんて。顔が無いから気に障らなくて、丁度良かったのだけれど」
 溜息を吐く。玉座の後ろで怯える男がいる。ひどくやつれ、目の血走った男だ。
 あの野郎――誰かが囁いた。
 それを無視して、女は続ける。
「美しくないものはいらないわ。この世界に必要なのは、美しいものだけ。人間なんて醜いものが、私達を彩れる……それほど光栄なことはないでしょう」
 不遜と女は言って、前に進む。指を弾けば、力が弾け、檻の中身がひとつ弾けた。
「物言わぬ装飾品になりなさい。そうすれば愛してあげるわ。可愛がってあげる。囀る口も、動く身体も不要。あなたたちは私の血肉。家畜なのだから」
 猟兵達を一瞥し、女――血に濡れた伯爵夫人・アミラは告げる。
「家畜から宝石になれるの。これ以上無い名誉でしょう?」
 同時に悟る。
 ――ああ、愛玩動物でさえないのだ。この女にとって、他の生物とは。

===
●3章プレイング受付に関して
まず【6月1日(土)~5日中(水)】に一度、プレイングの送付をお願いします。
ただし、この期間のプレイングは一度すべて返金させていただきます。
※時間帯は気にせず都合の良いタイミングで送っていただいて構いません。
この間、グループの方がばらけても問題ありません。

プレイングの本受付は【6月8日(土)8:30以降】からとさせていただきます。
期間は【8日(土)~11日(火)中】見込みです。
予定の変更は随時お知らせ致します。
※再送受付といいつつ、内容の調整や変更もしていただいて構いません。
※前の期間に送れなかったプレイングは受け付けない、ということもありません。
※なお、それでも再送をお願いする可能性はあります。

大変お手数をおかけしますが、ご協力いただければ幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
===
霄・花雫
【SSFM‪α‬】

あんたの愛なんて要らないかなー、ゴミより価値ないしこっちからお断り!
それに、美しいって誰が?
根性悪なの滲み出てるじゃん
あんたなんかよりユアおねぇさんの方がずーっと綺麗だもん!

こんなののさばらせておけないよ、あたしも前に出るから!
【空中戦、パフォーマンス、見切り、野生の勘、誘惑、挑発】で飛んで跳ねてくるりと舞って、敵を引き付けるよ
鬼さんこちらっと!
あっ、ごめーん!鬼さんっていうか鬼婆だった!

合間合間にレガリアスシューズに大気を集めて【全力魔法、毒使い】で蹴りも入れて、敵の目からユアおねぇさんの姿を隠すよ
シャルちゃんやリュシカおねぇさんへの射線も、可能な限り遮ってみせるから


シャルロット・クリスティア
【SSFMα】
吸血鬼に飼われて人の上に立ったつもりですか、下衆が……!

……分かりました、ユアさん。後ろは引き受けます。存分にどうぞ。

あなた達が醜いと見下す我々人間の力、見せて差し上げます。
少なくとも、その腐り切った性根を滅する程のものではあることを知るんですね……!

ダメージソースは仲間に任せます。私の役目は、その為の道を作ること。
相手の攻撃の予備動作を【視力】を凝らして見切り、【早業】の【援護射撃】で出足を挫く。
相手はこちらにもいるんです。余所見していたら遠慮なく、その心臓貰い受けますからね……!

もう、その手で何も奪わせはしない……誰も傷つけさせるものか!
お前達の歪んだ芸術は、ここで終わる…!


リュシカ・シュテーイン
【SSFM‪α‬】

美的感覚などぉ、人それぞれだとは思いますぅ
しかし私から見ればぁ……そうですねぇ、貴方はただただ醜悪ぅ、ですねぇ

大人になればお綺麗になってぇ、力を付け富を築いた方もいたでしょうぅ
未来の顧客となり得た方達をこのようにぃ、子供すらも慈悲無く手を下す貴方はぁ……
私が、ここで滅しますから

私は後方からの【スナイパー】【援護射撃】による援護ですねぇ
投擲はスリングをぉ、弾は火の効力を強めた爆破する魔術を刻んだ法石を用いますよぉ
シャルさんの攻撃を邪魔せずぅ、ユアさんや花雫さんにも掠らせることもしませんぅ
私の目はぁ、貴方のような節穴とは違いますのでぇ

さぁ、あの醜い頭を消し飛ばしてみせましょうぅ


ユア・アラマート
【SSFMα】

いつ見てもこの手合が考えることはわからないが
自分の醜さを隠すために飾っているなら納得できるな…手段に品性の無さが垣間見える所も含めて
ふふ。花雫、事実でもあまり言ってやるな。流石に可哀想だ
三人とも。また支援を頼んでもいいかな?

【ダッシュ】で速度を強化した上で残像を生成、仲間の援護を受けつつ撹乱を仕掛けつつ敵に接近
どんなに力が強くとも、本体に当たりさえしなければどうということはない
敵がそちらに気を取られているうちに【暗殺】で死角に回り込み【2回攻撃】で連撃を叩き込む

暗殺者を背にしたなら初撃をかわせたとしても油断しない方がいい
二撃目は、そのご自慢の顔を切り裂いてしまうかもしれないからな



●吸血鬼を翻弄する、四色の輝き
 女の口上を聞き終えた猟兵達の反応はどれも乾いていた。
 当然と言えば当然であろう。ヴァンパイアであり、オブリビオンたる――そんな存在の言葉など、如何なる高説であったとしても聞く耳を持つ必要は無い。
 はあ、惘れたという溜息を零すのが精々だ。
「美的感覚などぉ、人それぞれだとは思いますぅ。しかし私から見ればぁ……そうですねぇ、貴方はただただ醜悪ぅ、ですねぇ」
 リュシカ・シュテーインはのんびりと響く声音で、然し強く否定した。
 眼鏡の向こうの緑石の瞳は、微塵も揺らがぬ。
 彼女の断言に、笑いを含んだ吐息と共に、ユア・アラマートが少しだけ肩を揺らす。
「いつ見てもこの手合が考えることはわからないが、自分の醜さを隠すために飾っているなら納得できるな……手段に品性の無さが垣間見える所も含めて」
 彼女の言葉に――うん、と霄・花雫は美しく透ける鰭を動かしながら、頷いた。
「あんたの愛なんて要らないかなー、ゴミより価値ないしこっちからお断り!」
 じろり、色違いの瞳がアミラを上から下までしげしげと見つめると、それに、と花雫は続ける。
「それに、美しいって誰が? 根性悪なの滲み出てるじゃん。あんたなんかよりユアおねぇさんの方がずーっと綺麗だもん!」
 くす、と。今度こそ本当にユアは笑い、虹と輝く髪が煌めいた。
 隙の無い構えは無骨な戦闘のそれだが、目の前の着飾った女より、断然美しい。
「ふふ。花雫、事実でもあまり言ってやるな。流石に可哀想だ。三人とも。また支援を頼んでもいいかな?」
 ううん。花雫は首を振って、彼女の隣に並ぶ。
「こんなののさばらせておけないよ、あたしも前に出るから!」
 二人の背を、ひたと見つめて――シャルロット・クリスティアは愛銃を構える。
「……分かりました、ユアさん。後ろは引き受けます。存分にどうぞ」
 艶やかな金の髪に縁取られた彼女の表情は、ただただ真摯であった。
「あなた達が醜いと見下す我々人間の力、見せて差し上げます。少なくとも、その腐り切った性根を滅する程のものではあることを知るんですね……!」
 凛々しく宣言した彼女の横で、スリングの石突きが真っ赤な絨毯敷きの床を強く叩いた。
 リュシカが片手に用意した石は、今まで披露してきたいずれの石よりも純度の高い輝きを見せていた。
「大人になればお綺麗になってぇ、力を付け富を築いた方もいたでしょうぅ。未来の顧客となり得た方達をこのようにぃ、子供すらも慈悲無く手を下す貴方はぁ……」
 すぅ、とゆっくり息を吸う。リュシカの指はルーンを刻んだ法石に触れたまま。スリングに備えて、ゴムを引く。
 周囲の、犠牲となった人々のなれの果て。彼女、或いは彼らは――吸血鬼のために生きているわけでは無い。
「私が、ここで滅しますから」
 解放された石は赤く輝く軌跡を描き、悠然と構えるアミラへ飛来した。
 彼女は赤い瞳を憐憫に細める。
「――そう、それがお前達の答えなのね」
 パチンと白い指が空を弾くと、爆破の魔力を秘めた石へ、赤い荊が絡みつく。
 空中で激しい爆発が起こり、爆風で鉄籠が煩く悲鳴をあげた。
 けれど、既にユアが距離を詰めて――否、僅かにアミラは眉を上げる。迫り来るユアは七人と分かれていた。その正体は加速から生じる残像であるが、意志を持ち、短剣を振るうその身体は実体である。
 彼女の身はそれを甘んじて受け止める。吸血鬼の肌は安易に裂けぬ。四方から波状と押し寄せるユアの刃を、血で作った荊をもって、届かせぬように身を守った。
 ひらり、頭上で美しい魚が舞った。
 伸身の回転で、鰭が揺らめく。重力から解き放たれたような花雫のしなやかな蹴撃が、その視界を横切った。
 ――どころか、彼女の脚は、強かにアミラの頬を叩いた。大気の魔力をこれ以上も無く集めて発した、毒を孕む風と共に。
「鬼さんこちらっと! あっ、ごめーん! 鬼さんっていうか鬼婆だった!」
 悪戯っぽく笑って空を蹴り、宙へ逃れた彼女に、生意気な微風ね、とアミラは微笑んだ。
 自然な所作で荊を操り、背後に迫りつつあったユアの胸をあっさりと貫く――。
「そんなにばたばたと走り回ってはしたない。それしか脳がないのかしら?」
 問いかけには余裕がある。貫かれたまま、忽然と姿を消したのは――ユアの残像のひとつ。
 そうかもしれないな――本体だか、残像だかの彼女は不敵な微笑みを口元に浮かべて返す。
「だが、当たりさえしなければどうということはない」
「ユアおねぇさんははしたなくなんて無いもん!」
 空から、逆襲と花雫が駆ける。
「おまえにも言っているのよ。目障りな翅を毟って、籠にでも入れてやろうかしら」
 アミラは空に腕を伸ばせば、合わせて荊が奔る。けれどそれは、ルーンを秘めた銃弾が打ち破った。
 極めて高められたシャルロットの視力は、より精密な射撃を裏付ける。
 アミラの手が及ばぬ場所で、素早く射撃姿勢をとりなおした彼女は再度、次の銃撃を叩き込む。
 それを躱すべく、アミラは掌を引きながら、一歩下がる――。
「相手はこちらにもいるんです。余所見していたら遠慮なく、その心臓貰い受けますからね……!」
 シャルロットが未だ熱い銃身を突きつけながら、警告を発する。
「シャルちゃん、ナイス!」
 喜びに花雫が空を蹴り直す。毒を巻き上げる大気の魔力が、アミラの髪を乱す。
 ――それで終わりではない。
 シャルロットの射撃も、ユアの分身達――無論、本人自身の接近も、空を自在に踊る花雫の動きの隙間を高速の投石が貫き奔る。
「私の目はぁ、貴方のような節穴とは違いますのでぇ」
 それは、最初に見たものだ。よくよく見極めれば、撃ち落とすことも何ら難しくない射撃。
 だがこの時のアミラは、ユアに片手を、花雫にもう片手を向けていて、注意はシャルロットに割いていた。
「さぁ、あの醜い頭を消し飛ばしてみせましょうぅ」
 言葉と共に、石が弾ける。爆破のルーンがアミラの肩口で鮮やかな花を咲かせる。
 爆風の勢いを借りて、ユアが踏み込む。
 翡翠は好機を見出し輝いて、アミラの血濡れた瞳を真っ直ぐに繋ぐ。
 儘ならぬ視界の中でも、咄嗟に無数の荊を奔らせた反応は、流石は吸血鬼というべきか。
 跳び上がったユアは全身を赤い棘に貫かれ、仰け反り、血を吐いた――。
「暗殺者を背にしたなら初撃をかわせたとしても油断しない方がいい――そのご自慢の顔を切り裂いてしまうかもしれないからな」
 笑みを湛えたような声音が、耳朶を打つ。
 背後から、濁った翡翠色の刃が斜めに滑る。鮮血が、白磁の肌に朱線をつける。
「マダム……――!」
 背後で、男が驚きに声をあげた。
 三人は誰も彼への興味をもっていなかった――シャルロットも、彼自身になんら興味をもっていない。その行く末も。
「吸血鬼に飼われて人の上に立ったつもりですか、下衆が……!」
 それでも、言わずにはおけなかった。
 ヴァンパイアの背後で身を縮こまらせている男へ――怒りを滲ませたブルーが煌めく。
「もう、その手で何も奪わせはしない……誰も傷つけさせるものか! お前達の歪んだ芸術は、ここで終わる……!」
 信奉する、主と共に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

タロ・トリオンフィ
――ああ、残念だな
喜怒哀楽を浮かべていた頃、
彼ら彼女らは形だけの今よりずっと美しかっただろうに

「宝石」は表情を彩り心を伝える事は無くなってしまった
微笑を貼り付けただけの「置物」は、相手の心を弾ませる力を失ってしまった

今、此処で僕が見ていたいと思えるのは
この場に踏み入れた猟兵達だけ、かな

――『力』のカードを此処に
UCで仲間の強化を
その活躍を、輝きを、より強く

僕自身は支援とフォローに徹する
見切ったらオーラ防御や武器受けでやり過ごしつつ
立ち位置や動向をよく見て
従属が召喚されたら攻撃に割り込み妨害

時間稼ぎはさせないよ
……此処で逃がせば、
きっと世の中にある僕の好きなものが、また幾らか失われてしまうから


エスタシュ・ロックドア
はっ、この部屋、吸血鬼の趣味としちゃまだマシな方か
だが目玉をやる気はさらさらねぇし、
骨はダチにくれてやる事になってんだ
皮の一片だろうとてめぇにゃ過ぎた一級品よ

マイスター?
いいわ、顔見たら気ぃ済んだ
どこでくたばろうがもう興味ねぇ

『群青業火』発動
【範囲攻撃】で業火を撒くぜ
火勢で敵の霧も【吹き飛ばし】
味方は焼かねぇようにするぜ
あの嬢ちゃん達も燃やさねぇようにな
看取るにも荼毘に付すにも、全部終わってからだ
したら業火付フリントでぶっ叩斬る
敵の攻撃は【第六感】【カウンター】
それでも喰らったら【激痛耐性】で耐えて、
あえて突っ込むぜ
遠慮すんな、俺の眼と同じ群青色の火だぜ
ありがたく至近距離で拝んでいきやがれ


八上・偲
少し、安心したの。
あなたがすっごく普通のヴァンパイアだから。
人間なんかおもちゃ以下だと思ってる、この世界で普通のヴァンパイア。
だから燃えて。灰も残さず。

『炎帝の審判来たりて』の【属性攻撃】で燃やすね。
【範囲攻撃】で避けにくく、逃げにくいように。

そんな召使の壁作って逃げちゃうつもり?
攻撃を従属吸血鬼に阻まれても【2回攻撃】でもう一度狙って。

怪魚も燃やす。ヴァンパイアのペットなんて鬱陶しいから。
女の子たちの剥製も燃やす。そのままは悲しいだろうから。

マイスター?知らない。ご主人様と一緒に燃えたらいいんじゃない?


※絡み・アドリブ歓迎です


無供華・リア
困りましたね
荒事は得意ではないのです
わたくしにできるのは、そう…
デカダントドリームで少しだけ、貴女の運命を操る事くらい

直接手は下せぬ非力な術ですが
齎される「不運」は
共に戦うどなたかの支援にはなるでしょう
「フェイント/だまし討ち」
で命中率向上も計ります

美しくなければ価値がないと仰るのですね
ならこの子を御覧になって
……美しいでしょう?
人形は作り物だからこそ
心を持たぬからこそ
人の想いを全て受け止めてくれるのです
好い心も、悪い心も
美しく投影してくれる
純粋な鏡

誰かを踏みにじって成り立つ美しさなど
わたくしの愛しいジェイドには遠く及びません
無粋と言っても良いでしょう

ええ
真に価値がないのは
貴女ですわ、ご婦人


冴島・類
よく喋るなあ…
少しだけ呆れ頰を掻き
彼女なりの理論の囀りを一通り聞いた後

開戦後はそれ左右されず
刃に乗せるのは冷静に破魔を
憤りは
乗せはしないと熱は内に
中距離からの薙ぎ払いで
相手の攻撃、回避手段を見定めながら距離詰め

出来る限りは血を奪われぬよう見切り
フェイントによる回避狙いますが
受けねば近距離まで近付けぬようなら
串刺されようと跳び込み
その代わりカウンターで
UCの糸を向け縛り
近くで瞳を覗き

美を求め続ける本人が
どんな瞳をしているのかと思いましたが
やはり…と言葉飲み込み
苦く笑い

相手が逃走図る場合は
破魔の力込めた刀を
躊躇なく投擲
縫い止め阻止狙う
美しくないものは不要なのでしょう?
ならば、逃げなどせず
過去に還れ



●オパールの嘆き、瑠璃の焔、不運を招く紫水晶と翡翠の紡ぐ糸――静謐なるベニトアイト
「よく喋るなあ……」
 女の囀りを聞き終えた、冴島・類の感想はそれだ。少し惘れ、頬を掻く。
 もっとも視線を空に彷徨わせれば、彼女の理論によって組み上げられた部屋のいずこも、正視に耐えがたい――いや、見つめることはできる。
 その胸に憤りを覚えずに見ることが叶わぬものがある。
「――ああ、残念だな」
 タロ・トリオンフィは溜息を零した。
 無数に並ぶ眼球を宝石だなんだと囃し立て、壁を彩る残虐の限りを美しい装飾品だと彼女達は謳うが。
(「『宝石』は表情を彩り心を伝える事は無くなってしまった――微笑を貼り付けただけの『置物』は、相手の心を弾ませる力を失ってしまった」)
 それこそ、アミラの望んだものなのだろう。
 けれどタロの心を動かす美しきものではない。
「喜怒哀楽を浮かべていた頃、彼ら彼女らは形だけの今よりずっと美しかっただろうに」
 オパールは月色の睫で影を作る。
 彼らは望んで輝きを失ったわけでは無い。だからこそ、残念なのだ。そんな風に美を奪い、誇る眼前の愚者どもが。
「はっ、この部屋、吸血鬼の趣味としちゃまだマシな方か」
 鉄塊剣担いだ姿勢で、エスタシュ・ロックドアが言う。もっと悲惨なものを――否、認めているわけではない。
 最低の段階で、少しだけマシ、と評したに過ぎぬ。
「だが目玉をやる気はさらさらねぇし、骨はダチにくれてやる事になってんだ。皮の一片だろうとてめぇにゃ過ぎた一級品よ」
 その鋭い視線が奥へと向けられる。殺気を隠さぬ羅刹のそれに、奥で顔色の悪い男が身を竦ませた。
「いいわ、顔見たら気ぃ済んだ――どこでくたばろうがもう興味ねぇ」
 言葉通り、彼は以後、男を見やることはなかった。
 そんな猟兵達の一番奥で、困ったように視線を巡らせるのは、無供華・リア――相変わらず、愛する人形を胸に抱き、小首を傾げる。
「困りましたね。荒事は得意ではないのです」
 黒い花嫁は困惑の視線を、人形に向ける。
 まるで、どうしたらいいかを彼に相談するかのように。
 そんな彼女が、不意に真っ直ぐとアミラを見据える。感情を表に出さぬ紫が、僅かな笑みを宿したように映る。
「わたくしにできるのは、そう……デカダントドリームで少しだけ、貴女の運命を操る事くらい」
 そっと囁き、白い指で空に絵を描く。
 彼女が手繰るは、不可視の『運命の糸』――それは因果律操作による『不運な出来事』を招く。
 それを切っ掛けに。
「此処に示すは我が血潮、嘆かわしくも誇るべき臓腑の火。――さあ、燃えろ、焼けろ、灰になれぇ!」
 エスタシュが哮る。全身の傷から群青色の『地獄の業火』が噴出し、彼と一体であるかの如き、剣にまで及ぶ。
 焔は一気に周囲に拡散する――相手が纏う血の霧も、荊も、その群青が包み込む。
 彼は分かり易い。戦いの本能に駆られて走る。彼の意志で自在に向ける焔が、周囲の犠牲者に及ばぬところから、それでも冷静に状況を見ていると解る。
 とん、と踊るように類も衣を翻した。群青の中で、銀杏色の組紐が揺れるのが、印象的に刻まれる。
 憤りは、胸の奥に。頭は冷静に相手を見極め――しかし、彼を突き動かすのは、群青の炎に劣らぬ熱だ。
 そして、あと一人。
 ――ひそり、祈るように。
 ヴェールを被った灰色の髪の少女がいる。吐息に合わせ、青い勿忘草がふわり揺れた。
「少し、安心したの。あなたがすっごく普通のヴァンパイアだから。人間なんかおもちゃ以下だと思ってる、この世界で普通のヴァンパイア――」
 八上・偲の青い瞳がアミラをひたと見据える。
「だから燃えて。灰も残さず」
 ふわり、と意志を持つようにヴェールが少し浮き上がった。
 繊細なる指先が魔導書を捲れば、空に薔薇の花がひとつ、ふたつと花開く――それは炎。
「燃えて、燃やして、灰になるの。なにもかも。」
 獄炎は華やかに、群青と共に燃え上がる。二対の炎が螺旋を描くように。アミラの進路も退路も限るように延焼していく。
 仲間の躍動を前に、タロが美しいタロットを一枚、口元に寄せた。
「今、此処で僕が見ていたいと思えるのは……この場に踏み入れた猟兵達だけ、かな」
 自身の真っ白なローブに反射と映る青を見て、その絵を読む――Ⅷ【LA・FORCE】――指先でくるりとカードを返し、二人へ告げる。
「それは強固なる信念に拠る『力』」
 途端、類とエスタシュの身体が軽く、それでいて末端まで力が漲って充実している。
 加速した二人が――エスタシュは直感的に、類は自ら攻撃を誘導しながら――アミラの奔らせた荊を躱す。
 それでも彼女の前には次々と荊が展開し、二人を迎える。群青に燃やされようと、荊は鋭く発出し、二人の肌を浅く裂いた。
 掠めただけで、命が啜られる感覚が伝わる――。
「色は美しいけれど。すべてを燃やす……ただ野蛮で不躾な力ですこと」
 アミラの表情が不機嫌に彩られる。
「ありがとよ! ちっとも嬉しくねぇけど、よッ」
 力任せにエスタシュが薙いで、群青が風に踊る。紛れ、類がくるりと身を返した。
 刀が真っ直ぐに伸びて、アミラの白肌を走った。
 その表情が僅かな驚きに変じたことに、二人と、遠方よりその戦況を見つめるタロが密かに目を瞬いた。
 彼女は今までと同じく、回避の一手を打ったはずだ。
 だが、その一瞬に不自然に脚を滑らせ、体勢を崩したのだ――群青の焔が絨毯を焼き、足元が不均等になっていたことに由来する。
 しかし本来、吸血鬼の身体能力において、そんなことは起こりえない――くすり、淑女の微笑みが戦場に妙に響いた。
 リアの糸がアミラの運命を手繰り、その脚を滑らせたのだ。その意味を知ろうと、如何とも対応できぬ。
「おまえ……」
 何か言いたげにリアを振り返ったアミラへ、彼女はただ微笑みを向ける。
「美しくなければ価値がないと仰るのですね。ならこの子を御覧になって……美しいでしょう?」
 彼女はアミラに向け、大事に抱くジェイドが良く見えるように片腕を広げる。
「人形は作り物だからこそ、心を持たぬからこそ――人の想いを全て受け止めてくれるのです。好い心も、悪い心も、美しく投影してくれる……純粋な鏡」
 つるりとした美しい曲線を持つ、表情を変えぬ人形。
 とても愛おしそうにリアはジェイドを見つめて――すっと視線を上げる。細めた紫の瞳は、途端に冷たくなった。
「誰かを踏みにじって成り立つ美しさなど、わたくしの愛しいジェイドには遠く及びません――無粋と言っても良いでしょう」
 口元には、人形のような微笑み。人を無機質に変えても人形になどなれぬ。
 逆も然り。彼女は人形であるジェイドを愛している。
「ええ。真に価値がないのは貴女ですわ、ご婦人」
 侮蔑を隠さず告げる言葉。それに彼女が反応するより先、冴え冴えとした青を筆先に乗せ、タロが振るった。視界を遮る絵の具に、咄嗟とアミラが荊を放つ。
 振り返るよりも先にそれを選ぶのは、不運の代償を怖れてか。
「燃えて」
 けれど、偲の炎が早い。大輪の花がアミラのすぐ傍で花開く。
 彼女の炎は次々と部屋で咲き続ける。血のような床に。天井に。血の色をした池に。
「燃やすね、ヴァンパイアのペットなんて鬱陶しいから」
 揺らめく炎の輝きで、その白い肌が鮮やかに照らされる。見る間に干上がった池は炎を吹き上げて、中にいる魚を骨まで燃やし尽くした。
「その子達も燃やす……そのままは悲しいだろうから」
 奥に並んだ少女たちの剥製へと偲の寂しげな視線が向く――。
「待て」
 それを、エスタシュが遮った。
「看取るにも荼毘に付すにも、全部終わってからだ」
 思わぬ制止に、彼女は目を瞬いた。実際、群青の炎が彼女の薔薇による延焼を留めていた――その代わり、二人の炎が蜷局を巻いて、マイスターなる男の近辺は地獄のような熱気となっているが。
「見届けさせてやろうぜ。自分達を苦しめた吸血鬼の末路ってやつを」
「……そう」
 返事は、短い。しかし偲はそれも悪く無いと思った。それが救いとなるかはわからないけれど、後で優しく送ってあげよう。
 迫った瞬間の棘に四肢を貫かれながら、類は指先をアミラへと突きつける。その十指から伸びた絡繰糸がぐるりと彼女の身体を縛る。
 翡翠と血水晶の視線が交差する。
「美を求め続ける本人がどんな瞳をしているのかと思いましたが」
 やはり――それ以上先は言葉にせず。
 浮かべた苦笑だけが答え。
「燃えよ、祓え」
 類が糸を爪弾けば、炎が糸伝いに女を包む。
「貴様ァ……!」
「おや、そちらが素ですか?」
 赤い熱の色が揺らめく中で、吸血鬼は怒りの滲む視線を向けてくる。
 お似合いですよ、類は嘲りながら、糸は緩めずに後ろへ跳んだ。入れ替わりに、突風を纏う群青が剣を振り上げ迫り来る。
「遠慮すんな、俺の眼と同じ群青色の火だぜ――ありがたく至近距離で拝んでいきやがれ」
 斜めに掲げられた剣はアミラの糸を断ち切る代わりに――身を焼く焔の色を群青に塗り替え、その肩に、新たな傷を与えた。
 吹き上げた血霞が彼女を庇護するように覆う。其れを追いかけ、薔薇の花弁が散るのでは無く集約して、アミラの身体を飾った。
「無駄なのに……全部、全部、燃えて」
 灰になるまで燃やし尽くす――偲の強い意志を示すように、炎は美しく残虐に、猛る。アミラはひとたび真紅の炎に包まれた。
 熱波の揺らめきの中で、吸血鬼の瞳はひどく獰猛な輝きを見せ、猟兵達を睨み付けた。
「時間稼ぎはさせないよ。……此処で逃がせば、きっと世の中にある僕の好きなものが、また幾らか失われてしまうから」
 追撃の手は止まぬ。リアの糸は変わらず彼女の運命を捉え、炎で囲まれた闘技場の中、涼しげな表情でタロが絵筆で空に色を刷く。
 逃げる事など許さない――類は破魔の力で相手を少しずつ追い詰めながら、冷ややかにささめく。
「美しくないものは不要なのでしょう? ならば、逃げなどせず――過去に還れ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
お友達のコノさん(f03130)と

なんて酷い!
アクセサリーだけでなくこの部屋も!
命への冒涜が許せない

全ての攻撃に光属性付与
逆効果なら中止
メボンゴから出る衝撃波は敵の攻撃の威力を削ぐのにも使用

庇ってくれるコノさんに感謝して防御より攻撃寄りに
早業と二回攻撃で手数を増やす

とはいえコノさんの負担を減らしたい
敵のコノさんへの攻撃を見て動きを学習し見切りの精度を上げ第六感と合わせて回避確率を上げる

メボンゴでフェイントかけて視線を逸らすよう誘導しUCワンダートリートの効果を上げたい

吸血されたら即カウンター
暗器のナイフで切り裂く
距離あれば投擲

センスないね、マダム
生きた瞳の美しさがわからないなんて


コノハ・ライゼ
ジュジュちゃん(f01079)と

趣味じゃナイし胸糞悪い、けど
隣に立つ彼女の憤り、正義感は己が持ち得ない感情のひとつと記憶に刻み笑む
ま、傲慢なご夫人よか可愛いお得意サンのが大事なだけヨ

彼女らに合わせ人間大の【黒影】喚ぶ
たんと喰らいな
嗾け2回攻撃で距離詰め「柘榴」振るっては離れ攪乱

厄介そうな彼女らへの反撃は見切り、オーラ防御展開し庇うヨ
この子らの血は一滴たりともあげられないンでネ
激痛耐性足しに痛む面も見せたくないトコ

従属吸血鬼が召喚されたら黒影向かわせ対峙
と見せかけ柘榴で夫人を狙い傷口をえぐり生命力吸収し返すだまし討ち

おや、お宝前に逃げるナンて勿体ナイ
今のアンタの血肉
オレには宝石より惹かれるネ


冴木・蜜
…随分とまぁ素敵な価値観をお持ちのようで

我々が家畜以下というのなら
貴方の言う通り
地を這いずって差し上げましょう

身体を液状化し
影に紛れる形で潜伏
目立たなさを活かして背後に回り
機を待ちます

アミラの注意が逸れた瞬間
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
その脚に毒を塗り込み融かし落とし
逃げ足すら奪って差し上げます

私はただ触れるだけで良い
さあ 素敵に踊って頂きましょう


マイスターには正直興味がありません

彼にとっては此処で殺しておいた方が幸せかと
思わなくもないですが
私は快楽殺人者でも審判者でもない
罰する権利は罪人の私にありませんし

…生きて地獄を味わうのもまた一興では?


神埜・常盤
どんな装飾に仕立てて貰えるのか、大変興味深かったが――
お前を飾るのは気が進まない、其の申し出はお断りさせて貰おう!

高速詠唱で速やかに管狐を召喚し伯爵夫人へ嗾けるよ
炎は複数合体させ、全力魔法で火力を強めたく
さァ、九堕よ――今宵の供物は極上だ
存分に其の業を焼き尽くし、喰らい尽くせ

逃走の気配を見せたら、護符を投げてマヒ攻撃
少しでも足止めに貢献出来れば幸いだ
従属吸血鬼は邪魔になりそうだねェ
数が多ければ催眠術で同士討ちを唆したり
一体だけならば九堕の炎で燃やして仕舞おう
体力危い時は吸血で自己回復
さて、君の命はどんな味だろうか

マイスターの処遇は仲間に委ねよう
其の才能を真っ当に活かせなかった事、残念に思うなァ


明日知・理
(…胸糞が悪い。
やり場のない苛立ちに、頭に血が上る。)

他者の趣味や感情に興味は無えが、
命がかかってンなら話は別だ。

──眠れ
深い、深い海の底で。

▼戦闘
体力の低い者を優先的に庇う。
攻撃を出来るだけ得物で受け流し、
もしくは狙えるのならカウンターを

致命傷以外はかすり傷だ。
痛みは当然感じるが不敵に笑って
激痛耐性も持ち合わせているゆえ
なんて事ないさという風に
背筋伸ばし
地に足をしっかりつけて
やせ我慢は得意中の得意だ。

此方が発動するユーベルコードは『buddy』
赤い眼の大きな黒犬を模したUDC ――シスが俺の体を覆って一つになる
捨て身の攻撃として威力を最大まで高め
この大きな牙を葬送の一助とする

-
アレンジ大歓迎



●冷徹なる藍玉と聖なる翠玉、憂鬱なるアメシスト、嗤う紅玉髄と獣が如き尖晶石
 ――……胸糞が悪い。
 血の気が引くほどの憤りに、明日知・理は相手を睨めつけた。
「……ドレスが台無しね」
 嘆息し、アミラは埃を払うように、炎を消した。正確には燻っている状態に力で押さえ込んだ。だから、黒いドレスの端々が、赫と燃ゆる時がある。
 そんな様でも彼女は未だ平然と猟兵達を見下している。視線の位置など関係ない。不遜な吸血鬼は手首に這う血を自ら口づけ啜った。
 自身を取り巻く状態は刻一刻と悪化していくが、それでも彼女の表情は変わらなかった――今の処、は。
「なんて酷い! アクセサリーだけでなくこの部屋も!」
 ジュジュ・ブランロジエの吐露する素直な憤り。
 その傍らに立つコノハ・ライゼは、感情に揺れるサファイアを見、笑みを刻む。
 ――正義感は己が持ち得ない感情のひとつ。
 目の前に広がる惨劇を、惨劇と捉える心はあるが。それを道徳に照らして善悪を処断するような心はもたぬ。それでも。
「趣味じゃナイし胸糞悪い、けど……ま、傲慢なご夫人よか可愛いお得意サンのが大事なだけヨ」
 ジュジュが怒り、悲しむのならば――それが優先されるのだ。くるりと手首を返せば、ナイフがその裡に収まった。
「……随分とまぁ素敵な価値観をお持ちのようで」
 ぽつりと零すのは、冴木・蜜。強気なヴァンパイアの視線を潜り、周囲を見る。炎が、多くを焼いている。陽炎で視界が歪む。
 その最中で、やれやれと神埜・常盤が肩を竦めて首を振る。
「どんな装飾に仕立てて貰えるのか、大変興味深かったが――お前を飾るのは気が進まない、其の申し出はお断りさせて貰おう!」
 外套翻し、片腕を差し出す。演技掛かった所作だが、その瞳は冷ややかに冷め切っている。
 前者は女に向け――残る言葉は、その背の向こうに身を潜める男に向け、彼は嗤い告げる。
「其の才能を真っ当に活かせなかった事、残念に思うなァ」
 彼の差し出した掌には竹筒。
「さァ、九堕よ――今宵の供物は極上だ。存分に其の業を焼き尽くし、喰らい尽くせ」
 そう呼べば竹筒から飛び出すは火神の加護を纏う管狐。三十余を数える小さな狐たちが次々と空に浮かび上がるや、常磐の号令に従い、ひとつに合わせる。
 浮かぶ塵を焼きながら、雄々しく育った管狐が宙を蹴る。それはアミラが飛ばした血霞を燃やしながら、その脇を通りすがり、黒いドレスを焦がす。
「ははは、踊れ踊れ」
 彼が命じるままに、管狐はアミラを翻弄する――しかし、これを捕らえても無駄であると判断した彼女は、自らを追い詰める炎の動きを無視し、常磐へ向け、荊をけしかける。
 床を舐めるように血の楔が走り、その足元へ迫るのを――理の刃が、受けて逸らした。刀を正面に構え、駆る。在らぬ場所へと伸びる荊を裂きて道を作り、前のめりに飛び出す。
「他者の趣味や感情に興味は無えが、命がかかってンなら話は別だ」
 彼を突き動かすのは、怒り。
 そして、この吸血鬼を止めるという意志。
 その表情は黒いフードが目深く覆い隠し見えないが――返した刃の輝きは、殺気を放った。
 先行する火精たる管狐の動きを愉快げに見つめ、負けてられないネ、くーちゃん、とコノハは微笑し、黒き管狐を差し向けた。
「たんと喰らいな」
 軽やかに地を蹴るは、人ほどの大きさをした黒い狐。
 絨毯の上を、ウサギ頭の人形が軽やかに踊る。
 メボンゴの一挙一動がもたらす衝撃波は、聖なる力を含み、アミラの動きを制限する。
 その攻撃を遮らぬように、されどジュジュを庇うような軌道をもって、コノハが蠱惑な笑みを湛えながら、走る。
 妖刀の間合いを荊が阻めば、近づくナイフは血霞が守る。
 そこに、黒影が牙を剥いて跳びかかる――アミラはとうとう腕を振り上げ、己の爪で応酬する。
 だがその間に、二人の男は距離をとっており、追撃は衝撃波に逸らされる。
 ジュジュが導くメボンゴの愉快なダンスは否でも応でも目を引いて、彼女の集中を途切れさせた。
 いつしか――蜜の姿が消えている。否、管狐が鮮やかに場を照らし、理とコノハが躍動することで無数に伸びる影に紛れるように。
 液状化した彼は、影となりて身を潜めていた。
(「我々が家畜以下というのなら、貴方の言う通り――地を這いずって差し上げましょう」)
 裡の囁き。その容貌がゆっくりと形作られていく。
 血色の悪い色をした指先が、その足首に触れる。ちくりと毒虫に刺されたような感触に対し、アミラは瞬時、地から生やした荊で、ブラックタールを蹴散らす――否、それは思うツボだ。飛沫した彼の血。それは傷口から更に侵食し――ヴァンパイアの身体に、毒を刻む。
 液体たちは千切れながら一カ所へ流れて逃れると、ゆっくりと繋がりながら、元の蜜の形へ戻っていく。
「さあ 素敵に踊って頂きましょう」
 直ぐに息の根を止めることはない。けれどそれは致死性の贈り物。彼の存在に気付かなかった事も、不運なる因果のひとつかもしれぬ。
「誰が、おまえたちの思い通りに――!」
 兪、彼女は動いた。
 余裕すら滲ませ、反撃のみに注力していたアミラは、ヒールで地を叩く。
 着飾った女だてらにヴァンパイア。その速度は凄まじく、猟兵に劣りはしない。
「まずはそこの人形師――!」
「そっちこそ覚悟して……!」
 受けて立つ、と。ジュジュは糸を強く引く。身体の影に隠した片方の指先が触れるは、薔薇咲く銀のナイフ――秘密の暗器。
 けれど、その間に紫雲の残影が揺らめいて、身体を返しながら、アミラの握る荊の槍を弾いた。
「コノさん!」
「この子らの血は一滴たりともあげられないンでネ」
 にこりと笑う。だというのに、薄氷の瞳は何の感情も持たず――ただ皮肉げな形を作っただけ。
 影の管狐が逆の方向から飛びついてくる。爪が白肌ごとドレスを裂いて、更に空を蹴った炎の管狐が其れを燃やしていく。
 代償は、深い深い深紅の霧――視界を覆うように霞が広がって、その最中にあるだけで全身を棘で貫かれ、生気が抜かれる感覚に襲われる。
 転がるように離れた彼は、表情こそ平然としていたが、霧はどんどんと拡散し、やや離れたところに構えた常磐まで至る。
(「なんとか……コノさんや、みんなの手助けをしなきゃ!」)
 決意に、ジュジュは前に出る。正確には、メボンゴを盾に、共にアミラの前でくるりと踊り、踊らせた。
 楽しそうなダンスに興じるメボンゴが、紙吹雪をばらまいた。はらはら舞う花のような光景の中、ジュジュが血霞を躱して、備えたナイフをその足元に放つ。
「これもある意味ショータイム!」
 最後に、お菓子を投げる。カラフルな色味の棒付き飴。惑う吸血鬼の口へ、直接叩きつけるような、そういう動きだった。
 その一連の動きはひとつのショーのように鮮やかだ。彼女は至近距離でそのエメラルドの輝きを見せつける。
「センスないね、マダム。生きた瞳の美しさがわからないなんて」
 反論は、飴が許さない。
 クハ、と。お得意様の予想外のパフォーマンスに愉快げに笑ったコノハが、黒影と共に走る。
 先に爪を振るったのは、黒い狐。二対の黒い風が走るかの如き斬撃は、血霞に阻まれ――衝突と同時に、霧散した。
 それを前に、共に駆けていた男の姿が、くるりと反転した――。
「おや、お宝前に逃げるナンて勿体ナイ。今のアンタの血肉。オレには宝石より惹かれるネ」
 皮肉を叩く暇を与えず、そのまま脇へと潜り込んだコノハが囁く。白い肩についた爛れた斬撃の痕へ、ナイフを滑らせ、抉る。
 ひとたび鎮まっていた傷が、再びじくりと壊れ、血を吐いた。更に彼と対峙する位置から、黒い突風が寄せる――妖刀を振り上げた理が、最後の一歩を跳んだ。
 然れど。
「私を甘く見ないことよ――」
 アミラの身体を更なる血霞が覆う。彼女が腕を軽く上げれば、床から無数と荊の槍が射出された。
 踏み込んだ理に回避の術はない。そして彼も――この際、避けるよりも距離を詰めることを優先した。
 腕に、脚に、腹に、熱が走る。それでも彼は止まらない。呼吸も儘ならぬ赤の中へ、臆さず飛び込む姿勢は、一切ぶれず。
 彼女をそのまま抱き留めるのではないかという程に、深く、踏み込んだ。
「致命傷以外はかすり傷だ」
 最後の跳躍と同時――端麗な顔立ちに獰猛な笑顔を刷いて、彼はその名を呼ぶ。
「―――"Thys"」
 赤い眼の大きな黒犬を模したUDCが、彼の身を覆う。
 腕を伸ばす必要さえ無い距離で、彼は妖刀を真横に閃かせた。
「──眠れ。深い、深い海の底で」
 囁く低い言葉と共に、アミラの胴が、赤く弾けた。
 夥しい血霞が彼らとの距離を遠く広げるが、理にとっては其の方が容易に間合いを取り直せる――思わず数歩後退ったアミラが、憎らしげに猟兵たちを見つめる。
「よくも、よくも……私の身体を……」
 そこに飴色のインバネスが蝙蝠翼のように彼女を覆う――。
「さて、君の命はどんな味だろうか」
 常磐は失った命を取り戻すべく、その肩に触れる。
 阻むように荊が壁と立ち塞がる――血に濡れた唇を笑みに歪め、常磐は自身の代わりに管狐を駆った。
 背後で、吸血鬼を案じる声が、震えた。
 その身を心配しているのか、その行く末を怖れているのか、いずれとも解りかねる声音だが――男の視線はずっと、猟兵と吸血鬼の戦いへ注がれている。瞬きを忘れ、血走った瞳。
 彼が今いかなる精神でそこにあるのか――知る由もなく、知りたくも無いが。
 蜜は暗い双眸で彼を見やる。
「私は快楽殺人者でも審判者でもない――罰する権利は罪人の私にありません」
 けれど。恐らくは――生存が希望に繋がるとは思えぬ。
「……生きて地獄を味わうのもまた一興では?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

夏目・晴夜
もしかして、自分が命を着飾れる程の存在だと本気で思っているのですか?
オブリビオン如きが笑わせないでください

敵の攻撃は妖刀で【カウンター】【串刺し】
余力があれば切っ先で【目潰し】し、機動力を削ぎたいところです


貴女の仰るとおり、美しくないものはいりません
ゆえにオブリビオンなどという醜悪な存在はこの世には不要です

瀕死状態のアミラが従属吸血鬼を召喚した際は
アミラの影も従属吸血鬼の影も全て「憑く夜身」で片っ端から操り、
その影を足や身体にしがみ付かせて逃げられぬように動きを封じます

生物の影は全て私の可愛いからくり人形です
影だけでもこのハレルヤに可愛がってもらえたという誇りを胸に、
どうぞ惨めに死んでください


ユエ・イブリス
※マイスターの護衛
※生死問わず良心の呵責無し

嗚呼、神よ憐れみを垂れ給え
「人の道外れし吾が罪なりせば」

マイスター、君はこれからどうする
この館は残念だがもうお仕舞いだ
落ち延びて違う主人に腕を売り込むか
それとも、ここで終わりを望むかい?

自死なんてつまらない終わりはいけないよ
だがその屍は綺麗に、綺麗に加工してやろう
皮膚を、髪を、骨を、眼球を――
(【夢幻泡影】広間に居る犠牲者の姿、マイスター本人の姿)

悪ふざけが過ぎたか
どこへなりと行くといい
運が良ければ次の主人に恵まれ
運が悪ければここまでだ

一つ聞きたい
私は『何』になれただろうか
君の見立てを
死の後に宝石となれるなんて、中々無い機会だからね

(アドリブ可)


シュデラ・テノーフォン
家畜かァ…でも
俺にとって君は獲物だ
お互い認識はそう変わらないだろうし
自分が特別なんて考えない方が良いと思うよ
ソコで固まってる彼もね
同じ職人として言うけど、君はマイスターじゃない
唯のマーダーだ

風の精霊弾で血霧を巻き上げる
血より俺と踊ろうよ
風の刃で斬り込み相手の攻撃は硝子の盾で防く
合間周囲の作品諸共怪魚も仕留める
死した眼球や助からなかった者達は風に乗り地に還るべきだから
ごめんねちゃんと後で供養するよ

さァ戯れも終いにしよう
Accoladeを与えた光線銃で獲物を貫く
逃さないよ

よく見てたかいマーダー君
幾ら強くても報いは必ず受けるんだ
自分がした事と、その未来を思えばもう作れないだろうね
生きて罰を受け続けな


ノエマ・アーベント
随分いい趣味している部屋にいるものね
でもそんな貴女の戯れで、どれだけ多くの人が殺されたのかしら
だから私は貴女を断罪するの、罪を犯した者を裁く刑具(モノ)として――

鮮血の荊棘の強化に対し、こちらも最初から全力で行くわ
【赤と黒のカデンツァ】で力を解放、代償として受ける呪縛や毒に耐えながら
ギロチンを振るって攻撃するわ
でも最初の一撃は、相手の出方を窺う為のフェイントよ
荊の軌道を見切って、オーラを纏った武器で防御して
鎮魂歌を口遊みつつ、返す刃でアミラの首を狙って斬りつける

今まで犯した全ての罪は、命で償って貰うわよ
貴女みたいな外道には、もはや死すらも生温い……
その目に恐怖を刻み込み、地獄で苦しみ続けなさい



●玻璃と輝く金と銀、気儘なるスキャポライト、断首の黄玉
 かつん、と随分と薄くなった絨毯の上でアミラの靴が音を鳴らす。
 追い込まれようとも、その尊大な様子は変わらぬ。
「この……家畜風情が。もはや瞳も髪も、骨も残してやるものですか」
 銀色の耳がぴくりと動く。耳を疑う、そんな動きだ。
「もしかして、自分は命を着飾れる程の存在だと本気で思っているのですか? ……オブリビオン如きが笑わせてくださいますね」
 実際、薄く笑いを浮かべながら、夏目・晴夜が滑稽そうにアミラを見つめた。
「家畜かァ……でも、俺にとって君は獲物だ」
 憎々しく、猟兵達を睥睨する相手に、シュデラ・テノーフォンは金銀の瞳を等しく細める。
 活きの良い獲物の方が、狩り甲斐はあるというもの、等と嘯き。
「お互い認識はそう変わらないだろうし、自分が特別なんて考えない方が良いと思うよ――ソコで固まってる彼もね」
 顎を上げて、後ろの男へ鋭く告げる。
「同じ職人として言うけど、君はマイスターじゃない……唯のマーダーだ」
 突きつけられた宣告は、彼に如何に響いたか。男は引き攣った表情で、猟兵達を見るばかりだ。
 言いたいことは、それだけかしら――アミラへと静かな声音が続く。
「随分いい趣味している部屋にいるものね。でもそんな貴女の戯れで、どれだけ多くの人が殺されたのかしら」
 静かに一歩を踏み込んで、ノエマ・アーベントは問うた。軽く首を傾げれば、灰色の髪がさらりと流れた。手には彼女自身。
 振り子型の首切り刃。ノエマの僅かな動作に、ゆらりと動きに合わせて、鎖が謳う。
「だから私は貴女を断罪するの、罪を犯した者を裁く刑具(モノ)として――」
 これが最も……貴女に、似合う装飾品だと思うわ。
 囁き、力を解放する。
 小柄な女の身体から、刑具としての血の記憶、断罪されし咎人達の霊、解き放たれし虚無の闇が放たれる――その圧たるや、触れればそれだけで首が落ちるのでは無いかという、応報の記憶。
「簡単には死なせない。貴方の罪の苦痛、魂にも刻んであげるから」
 言い放ち、刃を振るう。
 遠心力を伴う振り子の刃は空で唸りを上げて、アミラの首を狙う。その速さたるや、吸血鬼として最上の力を引き出しつつある彼女に迫るもの。
 だが、不自然に一歩踏み込めなかった。血霞の表面を削って、それはひとたび好機を失う。
 多大なる力の代償――ぐ、とノエマは身を縛る呪縛を堪えつつ、黄昏色の瞳で相手を見据える。これは、相手が如何に動くか見極める一投に過ぎぬ。
 同時、妖刀を手に駆った晴夜が挟撃を仕掛けている。
 踊るように軽やかに。気儘に彼は撃ち込んだ。相手の反撃は鈍い。貫く事に特化した荊は、猟兵の仕掛けにより、その冴えを僅かに失っているからだ。
 晴夜へと伸びる荊の槍は、その剣戟によって短く刻まれていく。相手の呼吸から、彼の呼吸に。ペースが一気に反転する。
 差し込む一刀は荊の隙間を縫って――濃密な血霞にぶつかる。けれど、横から放たれた風の精霊弾が、それを巻き上げていった。
「血より俺と踊ろうよ」
 硝子細工装飾が華やかな白い大型拳銃を軽々片手で操って、シュデラが不敵な笑みを見せる。
 ちらりと、彼は周囲の作品を見やる――否、作品などという言葉を使うのは、職人としての矜持が許さぬ――並んだ眼球、剥製の少女たち。
(「早々に土に還してあげたいけど……」)
 先に、誰かが望んでいた。此処には全ての結末を見せてから――丁寧に供養する時間があるはずだ。
「ごめんねちゃんと後で供養するよ」
 優しさを含んだ声音で囁くと、銃を下ろし。佩いた水晶の刃を抜き払う。柄は白銀、刃は透けた美しい一振り。
 三者はそれぞれの呼吸で、仕掛けた。
 白髪靡かせ、シュデラが正面から斬りかかる。左中指に煌く透明な環が、硝子の盾となりて貫く形となった荊を阻み、薄くなった血霞を更に吹き飛ばすように剛と薙ぐ。
 すれば、真横にギロチンが飛んでくる。
「――♪」
 鎮魂歌を口遊み乍ら、ノエマはステップを踏む。一刀目で血霞を砕いて、二刀目でその肩を裂く。三刀目は耐えきれず、アミラは横へと跳んだ。
「おやおや、わざわざ晴夜に斬られるのをお望みとは、殊勝なことです」
 そこに抜き打っている晴夜がいた。
 輝く刃先がその腕に埋まる。彼女から差し出すように腕を伸ばしているのだから、仕方が無い。
「貴女の仰るとおり、美しくないものはいりません。ゆえにオブリビオンなどという醜悪な存在はこの世に不要ですね」
 彼は愉快そうに告げて、容赦なくねじ切った。
「……!」
 吸血鬼の矜持か、アミラは叫ばなかった。
 傷口を抑えて数歩押し下がる。取り囲む猟兵達に油断は無い――その傷さえ、彼女の力になる。押さえ込んでいた炎が、ドレスの裾を焦がし始める。
 此処で、今までに無い変化が起こった。彼女の従属吸血鬼が猟兵達の前に姿を現したのだ。
 美しい貌をした少女の吸血鬼。シックなドレスを身に纏い、アミラを背に庇うようにして、構える。
 其れを見て、シュデラが艶然と笑う。追い込んだ、という感覚に浮かんでしまう笑みは、どうにも獰猛な印象を与える。
「さァ戯れも終いにしよう」
 そう謳い、自らの翼から徐に羽根を抜くに合わせ、もう片手でゆっくりと銃を構えた。
「12時の魔法を君に」
 逃さないよ、囁くが同時。
 銃は硝子の羽根を飾るブラスター兵器と化し、部屋を隅から隅まで繋げるような光を放った。
 そこへ、従属吸血鬼は臆さず身を挺した。光を逆行するように彼女は荊で身を守りながら、距離を詰めてくる。肌が粟立とうが、意に介さぬ無表情だ。
 しかし、それはシュデラに届くより先。
「どうぞ存分に自分の影とお遊び下さい」
 晴夜の指先が彼女に向けられる。
 吸血鬼たちの影と結びついた目に見えない操り糸を、くいと引けば。その脚にしがみつくように、影が腕を伸ばした。
「……!」
「生物の影は全て私の可愛いからくり人形です。影だけでもこのハレルヤに可愛がってもらえたという誇りを胸に、どうぞ惨めに死んでください」
 こんなもの、という表情をアミラは浮かべた。弱りつつあることもあるが、この単純な仕掛けに気付かぬか、という自身への怒り。
 これも不遇の糸が導いた失態であっても――ヴァンパイアの矜持には疵が付く。
 噫、然し。
 一時であれ脚を止めることは、危険では無かったか。
 ひゅっ、と。風を斬りて、鉄が謳う。鎮魂歌と共に月が駆ける。
 斜めに重い刃が、骨と骨の間に喰らい付く。肉を裂いて鎖骨を割って、ギロチンは一度、ノエマの手元に戻ってくる。
「今まで犯した全ての罪は、命で償って貰うわよ。貴女みたいな外道には、もはや死すらも生温い……その目に恐怖を刻み込み、地獄で苦しみ続けなさい」
 夥しい血で半身を濡らしたアミラへ、彼女は冷ややかな視線を送りながら告げる。
 朱だ。
 腕と頚元から、吸血鬼が朱を晒している。
「よく見てたかいマーダー君」
 不意に、シュデラが声を掛ける。
「幾ら強くても報いは必ず受けるんだ……自分がした事と、その未来を思えばもう作れないだろうね――生きて罰を受け続けな」
 金と銀の瞳が、強く男を射貫く。
 猟兵達は今の所、こちら側へと踏み込んではこない。所謂罰を与えにやってくるものはいない――だが、男は震えていた。最早自覚すらなく、カタカタと歯を鳴らしている。
 そんな男の近くで、祈る声がある……。
 ――嗚呼、神よ憐れみを垂れ給え。

●嘲弄する石の名は
 ――嗚呼、神よ憐れみを垂れ給え。
「人の道外れし吾が罪なりせば」
 朗々とユエ・イブリスは諳んじて見せた。人の顔ほどしかない体躯に、見事に端麗な容姿を整え、輝く羽根を振るわせる妖精。
 彼は謂わば、男を守るように其処にあった。
 ――けれど、それは。慈悲なる心では無く。
「マイスター、君はこれからどうする。この館は残念だがもうお仕舞いだ……落ち延びて違う主人に腕を売り込むか、それとも、ここで終わりを望むかい?」
 優しい毒を吹き込むのは、静謐に似せた妖艶なる微笑み。
「自死なんてつまらない終わりはいけないよ」
 そんな一言と共に、ありありと浮かび上がる光景――。
 檻に閉じ込められ、四肢を砕かれ、けれど決して致命的な破壊では無い。
「だがその屍は綺麗に、綺麗に加工してやろう……皮膚を、髪を、骨を、眼球を――」
 謳うような妖精の言葉と共に、情景はありありと浮かんで、目の前で実演される。
 皮膚を損ねず剥がすのは得意だ。
 瞳は傷つけぬように、骨を取り出し、刀を走らせる――骨に響く振動、痛みまでもがありありと。目の前に自分とそっくり同じ男が現れ、彼の手技を全て受け入れるまやかしが。
 男は無意識に自ら段取りを口にしていると知らぬ。その通りにユエがそれを思い描き、変貌させていると知らぬ。
 ――ああ……悪ふざけが過ぎたか。刻限のようだ、と突き放すような声に目が醒める。
 くすり、とユエはうつくしく笑った――先に見たひとつの未来図は、全ては彼の悪戯なのだから。
 妖精が気紛れに人をもてなし遊ぶ。何ら不思議なことはない。
「どこへなりと行くといい。運が良ければ次の主人に恵まれ、運が悪ければここまでだ」
 ああでもその前に、迎えが来ているからね、と。その背を押す。本来なら微塵も動かせぬだろうに、男は均衡を崩して数歩前に出た。
 眼前に、彼の末路を定めるものがある。それは明らかな憎悪を湛え、相応しき裁量を成す心をもっている。
 ああ、思い出したとばかり、ユエは吐息をひとつ。
 男へと問い掛ける。
「一つ聞きたい。私は『何』になれただろうか? ……君の見立てを。死の後に宝石となれるなんて、中々無い機会だからね」
 ユエの表情は相手を試すように不遜でありながら、評価されるもののように澄ました風にも見える。
 熱に浮かされたように茫洋と、男の紡いだ詞は。
 ――見る物を惑わす、マラヤガーネット。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ギド・スプートニク
テスアギ(f04159)と

生きる為の吸血ならば許されるのか
家畜を飼う行為が必ずしも悪と言えるのか

人間とて動物の骨や毛皮で着飾りもすれば
動物の剥製を部屋に飾りもする
生きる為に
或いは贅沢の為に家畜を育て、その血肉を喰らう

同族同士ですら争うこの世界で、異種族の命をどう扱おうと何の罪がある――とは、確かに思わぬでもない

ふふ、だがな
生者ならばいざ知らず
亡霊如きに同胞の命を弄ばれて素直に見過ごすほど甘くはない

いや、生者であろうと同じこと
単純に『私が気に入らぬ』。故に貴様らは此処で滅びよ

魔眼にて敵の動きを縛り
手には血の処刑剣
ゆっくりと歩み寄る

今この場に在るのは我が魔眼のみならず
此方に貴様の居場所は無いと知れ


レガルタ・シャトーモーグ
汚い部屋だな…
こんなモノが宝石に見えるとは、他人の目玉を欲しがる前に自分の目玉を磨き直せ

多少の傷を与えただけだと、生命力吸収で帳消しにしてしまうのか
ならば、ちまちまダメージを重ねるより、まずは吸収への対抗が先決だな

距離を取りながら隙を伺い
「咎力封じ」で生命力吸収の封印を狙う
とはいえ、普通に飛ばしても躱されるだろうから
フェイントに飛針を一気に投げて、その中に本命を偽装する
飛針にも傷口を腐食させる毒を塗っておくのも、気休めにはなるだろう

上手く封印ができたら、一気に空中から飛び込み暗殺を狙う
この期に及んで逃走を許すなんて思うのか?
配下まで盾にして逃げようとするとは
全く美しさとは程遠いな…


テスアギ・ミナイ
ギドさん(f00088)と

あまり見たことのない景色です
美しいのかそうでないのか分からないけれど
玩具を壊したら怒られるものではないのですか

三歩目で足が止まります
美しい女の子達と目が合ったから
やっぱり綺麗な死体は綺麗です、とても、とても
「私も前はそうでした」と親しげに話しかけます
もう友達にはなれないだろうけど
だって彼女らのこれからは…

うつくしいもので飾っただけで
自分もうつくしくなれると思ったら大間違いなんですよ
宝石だって迷惑してます
もっともっともっともっと大切にしてよ
もっともっと、自分よりも

ムカつきます
私も気に入りません、あのおばさんおじさん

ハイカナコさん
目を突いて差し上げて
赤い果物を啄むみたいに


ユエ・ウニ
確かにあの女の求める物は美しいかもしれないが、僕はそうは思わない。
こんな歪で醜いものが美しいだなんて反吐が出る。
それは職人の男にもだ。
お前の様な外道が職人を名乗るな。
同じ職人として……これ以上はやめておこう。

厄介な相手だ。油断すれば一気に押されてしまいそうだが、行くしかないか。
基本はエレクトロレギオンで、他の猟兵を援護する様に攻撃を。
もし、攻撃を受け続けている猟兵がいればオペラツィオン・マカブルも使用し、暫くは僕が囮になろう。
無効化されると言っても、一旦は受けるから痛みもあるが仕方ない。
【フェイント】と【時間稼ぎ】は得意だから、多少は役にも立てるだろう。
治癒は他の奴にしてやれ。



●死を招く紅玉、侮蔑する紅水晶、憧憬の天青石と支配者の黄金
 羽ばたきの音に、アミラは荊を携え振り返る――黒い翼を広げた少年が、その頭上を落ちるように飛んだ。
 すれ違い様に、仕込んだ飛針をひとつ見舞いながら、されどそれが霧か荊かに阻まれたのを確認すると、そのままとれるだけの距離をとって、翼を畳む。
「汚い部屋だな……」
 レガルタ・シャトーモーグの感想はにべもない。
 周囲の状況を再度認めようが、表情は変わらず。ただ嫌悪で少しだけ赤瞳だけを曇らせながら、アミラとの距離を測った。
 紅玉の間は猟兵と彼女を取り囲むように何種かの炎が消えず燃えさかり、退路と呼べるものは失われている。だが、自分が潜り込んだような抜け穴が、何処かしらにあるかもしれぬ。
「こんなモノが宝石に見えるとは、他人の目玉を欲しがる前に自分の目玉を磨き直せ」
 厳しい言葉に、アミラはせせら笑う。
「子供に何の真価がわかるというの?」
 全くだ――。別の処から、同意が響いた。
「こんな歪で醜いものが美しいだなんて反吐が出る」
 レガルタの言葉に応じ、ユエ・ウニははっきりと告げる。更にその瞳を細めつつ、すっかり腑抜けたような男を見る。
「お前の様な外道が職人を名乗るな。同じ職人として……」
 言いかけて、やめた。
 言葉を交わすことすら、疎ましい。
 後は行動で示すだけ――元凶を断ち、醜悪なそれをこれ以上生ませぬように。
(「あまり見たことのない景色です」)
 テスアギ・ミナイは居並ぶ『装飾』を見つめて、目を瞬いた。
「美しいのかそうでないのか分からないけれど……玩具を壊したら怒られるものではないのですか」
 一歩、二歩……。
 三歩目で、彼女の脚が止まる。部屋の奥。熱で揺らめく世界なのだが、猟兵達とヴァンパイアの戦いをただじっと見守る少女。
 その一人、場違いなほど穏やかな微笑みを浮かべたそれと、目が合ったからだ。
 印象的な瞳――淡い水色の中に、ほのかな炎を灯したような色。
 彼女と、じっと見つめ合う。刹那のことであったが、長い間ずっとそうしていたかのような感覚に、それを解いたときテスアギは小さく息を吐いた。
(「やっぱり綺麗な死体は綺麗です、とても、とても」)
 心からそう思うゆえ、テスアギは親しげに声をかけた。
「私も前はそうでした」
 でも、友達にはなれない。
 テスアギは動くものだったけれど、彼女達は動かないものになってしまった。
 そんな彼女のことを横目で見つつ、男は悠然とアミラへ近づく。
「生きる為の吸血ならば許されるのか。家畜を飼う行為が必ずしも悪と言えるのか」
 誰にでも無く、ギド・スプートニクはそう問うた。
「人間とて動物の骨や毛皮で着飾りもすれば、動物の剥製を部屋に飾りもする――生きる為に、或いは贅沢の為に家畜を育て、その血肉を喰らう」
 ――人の営みも、謂わば同じ。その舞台に立つものが変わるだけ。
 牛馬が人間に反抗したとして、それを人間がどう思おうか。吸血鬼に置き換えてみれば、同じ事。
「同族同士ですら争うこの世界で、異種族の命をどう扱おうと何の罪がある――とは、確かに思わぬでもない」
 皮肉に、口の端を歪める。
「ふふ、だがな。生者ならばいざ知らず、亡霊如きに同胞の命を弄ばれて素直に見過ごすほど甘くはない」
 ――根本的な話だ。この女は過去の亡霊。骸の海より這い出た残像に過ぎぬ。
 ほら、見るが良い。あの余裕を滲ませ人々の上に君臨していた女は、もはや満身創痍。猟兵達にどろりとした憎悪を投げつけるだけ。
 あふれ出した血が霞と部屋に充満し、ただ其処にあるだけでも疲弊するような感覚に捕らわれるとも――彼女を健気に守ろうとする従属吸血鬼が、薄汚れながらも冷ややかな表情で猟兵達を牽制しようとも。
 状況は何ら変わらぬ。
「いや、生者であろうと同じこと。単純に『私が気に入らぬ』。故に貴様らは此処で滅びよ」
 言い放つ彼の瞳は、爛と輝いたか。
「ムカつきます。私も気に入りません、あのおばさんおじさん」
 憤然とテスアギが応じる。
 だから、言い切ると同時にすかさず招来した。
 目隠しのシャーマン。世界を支えているという逸話ももつ、老女の霊を。
「ハイカナコさん。目を突いて差し上げて――赤い果物を啄むみたいに」
 落雷が、吸血鬼を苛む――前に、従属吸血鬼が駆った。
 飛来した鳥の嘴を、その掌が遮って、穿たれようとアミラを守る。
「下手に仕掛けて、回復されても困るな」
 ぽつりと、レガルタが零す。いつでも飛び出せるように低い姿勢で、壁か、天井か、兎に角あの護衛を出し抜く道を探しているようだった。
 それならこんな手はどうだろう――言い乍ら、ユエはずらりと眼前に機械兵器を召喚した。
「油断すれば一気に押されてしまいそうだが、行くしかないか」
 エレクトロレギオンで呼び出した機械兵器は、瞬間的に制圧力を誇るが、一撃で消えてしまう。
 だがそれで構わない。皆の攻撃を通すための、目眩ましか、盾となればいい。
 ユエのうった手を見つめ、ギドが僅かに思考を巡らせると――ふむ、と小さく頷いた。
「出来る限り、あの吸血鬼どもを一カ所に集められるか。同時に視界に入る場所に導け」
 致命的な隙という機を作ってやろう、彼が告げる。テスアギは今更何も言わぬ。
 二人は短い返事と共に、それぞれ動き出した。ユエの指示通りに機械兵器は銃を撃ちながら前へと進む。
 従属吸血鬼は腕に血の荊を巻き付けて、その中に飛び込んだ――無数の兵器を蹴散らしながら、ユエへと迫ってくるのを、レガルタが脇から飛針を放って牽制する。
 その後ろへ、テスアギが鳥を差し向ける。
 アミラの顔を狙って飛来するそれは、血霞が守り、しかし放った反撃の荊は空を掻く。
 自分の身を守るのが精一杯のヴァンパイアに向け彼女は言い放つ。
「うつくしいもので飾っただけで、自分もうつくしくなれると思ったら大間違いなんですよ。宝石だって迷惑してます」
 より強い、はっきりとした意志が、その目に宿る。
「もっともっともっともっと大切にしてよ――もっともっと、自分よりも」
 呼応するように、雷が落ちる。
 乱れ狂う室内において、よりこちらが危険と判断した従属吸血鬼がとって返す――半数以上減った機兵が、銃撃で追いかけながら、退路を阻む。
 アミラから引き離すのではなく、彼女の元へと押し込めるように。
 そこでいい。そこがいい――ギドは密かに呟いて、顔を上げた。
「私が貴様を拒むのではない。世界が貴様を拒むのだ」
 その声は朗々と空間を揺らし、その視線は全てを支配する。
 金色の瞳が見つめる先――場にあるものを、一時的に縛りつける。
 従属吸血鬼も、その主も、不自然な姿勢で動きを止めた。藻掻くように指先が震えたが、叶わぬ。
「無様なものだな」
 その間に、ユエが人形と共に機兵を仕掛ける。
 地を揺らす銃声と共に、彼は踊る。万が一、動き出せばその攻撃は引き請けようと考えていた――躊躇など無く、アミラの懐まで近づき、纏う血霞を砕く。
 ハイカナコが征く。その目を啄もうと、容赦なく嘴を突き立てる。悲鳴も上がらない、上げられぬ。
 ギドはそんな女を見つめた儘、ゆっくりと歩み寄る。歩調は一定、焦る理由などひとつもない。
 間合いのやや前から、処刑剣を無造作に振り上げた。
「今この場に在るのは我が魔眼のみならず。此方に貴様の居場所は無いと知れ」
 首を落とすように、垂直に剣が落ちる。ごとり、と腕が落ちた。だがアミラのものではない――従属吸血鬼が呪縛を引きちぎって、身を挺したのだ。
 ただ、アミラの指もいくつか落ちた。白い芋虫に似た何かが床に転がっている。
 その瞬間、吸血鬼の呪縛が解けた――彼女は一足で飛び退き、彼らから大きく距離をあけ、身を隠すように一体の鉄の処女を転がした。
 本能的にアミラがとった行動は、逃走に似ていた。
 既に周囲は火の海、そして猟兵たちに取り囲まれている――到底逃げ場などない。だがそれでも『過去の亡霊である彼女』は、それを選択することから逃れられない。
「この期に及んで逃走を許すなんて思うのか?」
 嘆息したのは、レガルタ。ワイヤーで天井に身体を固定し、そんなアミラの行動を一挙一動、観察していた。背後をとり、心臓を貫くために。
「全く美しさとは程遠いな……」
 赤く冷ややかな視線で射貫いて、彼はダガーを振るった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と同行
(アドリブetc歓迎)

美しいかなんざ心底どーでもいい
…ただ、俺から氷月を奪うなら容赦しない
こいつは全部俺のモンだ
…奪わせてたまるか
今回はおふざけ無しのガチで行く

カルタとガランサスで後衛から氷月の【援護射撃】
氷月の攻撃の隙を【クイックドロウ】で【スナイパー】みたいに正確に弾丸の雨で埋める

お前みたいな成りだけのクソ女には氷月に傷一つ付けさせてたまるか…!

挑発してる後ろから【P. granatum】を撃ち込む
逃げても地形を塗り替えてこっちに有利なように【地形の利用】をしてやる
ついでだ、氷月が攻撃出来るように【念動力】で直接頭ん中揺さぶって【マヒ攻撃】

くたばれ、クソアマ!


氷月・望
ゆーくん(f16731)と
アドリブ等歓迎

美しくないものは要らない、ねぇ
じゃあ、テメェ自身も必要ねぇよなァ?
だってよー、俺が出会った女の子達の中で一番性格ブスだし
……で、俺の唯一をテメェにくれてやる気は毛頭ねぇから消え失せろ

背中をゆーくんに任せて、俺は前衛
Invaderで【情報収集】して、敵の隙を確認次第
ダガーで【暗殺】【2回攻撃】で近接戦を仕掛けるぜ
デカいのは態度と胸だけかァ、なんて挑発も

ゆーくんの攻撃で怯んだら 【Full Throttle】で顔面狙って
【運転】【恐怖を与える】【傷口をえぐる】で轢く
顔面が無理でも、壁に叩き付けるとか

楪、ナイスアイスト!
家畜にボコられる気分はどうだ、クソババア



●イーグルアイと尖晶石
 ぐるぐると獣が唸るように、轟くものがある。
 炎揺らめく戦場においても臆さず乗り上げてきた大型バイク。斜めに床を切りつけて、止まった車体から、黒い影が跳んで降りる。
 そのまま臨戦態勢と身構えた月待・楪と。バイクに跨がった儘の氷月・望はヴァンパイアをひたと見据える。
「美しくないものは要らない、ねぇ。じゃあ、テメェ自身も必要ねぇよなァ?」
 赤い瞳でアミラを冷たく見下ろし、そう嗤った。
「だってよー、俺が出会った女の子達の中で一番性格ブスだし……で、俺の唯一をテメェにくれてやる気は毛頭ねぇから消え失せろ」
 対し、楪の言葉はより端的だ。
「美しいかなんざ心底どーでもいい……ただ、俺から氷月を奪うなら容赦しない。こいつは全部俺のモンだ」
 奪わせてたまるか、と彼は低く零すと、二丁拳銃を突き出し構える。
「今回はおふざけ無しのガチで行く」
 そんな言葉に。そんな姿勢に。
 囃すような口笛ひとつ、他ならぬ望が吹いて。彼が跨る愛機が怒号を上げた。
「そう、そんなにお互いが大切なの……」
 アミラが二者を見つめる瞳は他の誰を見つめるものと変わらない。けれど、僅かに残虐な色が滲んだ。
 ほんの僅かに。意気を失いかけたアミラの殺意が膨れあがる――上等、望が不敵に笑い、楪は寡黙に引き金に指をかけた。
 サイバーアイから、情報を収集する――体力に関してはほぼ死に体だが、ゆえにアミラと従属吸血鬼はおそろしく早い。何せ、今既に目の前に爪が伸びている。
 同時、リズミカルな銃撃の音が高らかと響く。
 距離を詰めていた従属吸血鬼と、アミラの額に火花が散る。血霞の守りに弾かれたのだろう。
「お前みたいな成りだけのクソ女には氷月に傷一つ付けさせてたまるか……!」
 楪が作り出した時間、望は退きながらダガーを投げる。
「デカいのは態度と胸だけかァ」
 嘲りながら、次々と放った刃が、吸血鬼どもの動きを制限する――再びそれらの注意が望に向いたと認識するや、楪が次々と炎の弾丸を生成する。
「弾けろ」
 短い言葉は号令。流星の如く赤く燃える弾丸が襲い掛かる。
 二体の吸血鬼は流れるような素早さで其れを避けていく。既に様々なところを火が舐めているような状態だが、楪の炎は更に限定的に――相手を追尾するように伸びて、炎の道を作り出す。
 その上に立てば、楪にその力が還元されるのだ。
 だからこそ、できる。
 彼は炎の上に立ち、ありったけの集中力を掻き集め――吸血鬼の頭を、念動力で揺さぶった。
「くたばれ、クソアマ!」
 裂帛の罵声。されど反動は、凄まじい。仕掛けたのは己だというのに、頭が割られたかのような痛みが走った。
「ゆーくん!」
 その言葉は彼の様子を案ずるのではなく、よくやってくれたと讃えるもの。思わず頭を抱えたアミラへ、愛機と共に望は全力で突っ込んだ。
「轢かれたくなけりゃ、ソコどきなァ!」
 爆音高らかな歌声と、大きく振り上げた前輪。加速からのウィリーで、ヴァンパイアの頭部へとバイクを叩き込む。
 手応えは対象が小さすぎて解らない。だがタイヤが何かを轢きつぶすような感覚は、確かだ。
「楪、ナイスアイスト! 家畜にボコられる気分はどうだ、クソババア」
「……アアァア!」
 奇声の如き悲鳴をあげて、従属吸血鬼が喰らい付いてきた。荊も何も無い、無謀な跳躍だった。
 楪は気付いて腕を上げていたが、先に望がダガーを振るった。腕を引き裂かれた従者はそれでも、バイクをアミラの上から退けた。
「ふふふ、まだよ……まだ……」
「その……執念だけは感心するぜ」
 アミラの肩は捻れ曲がっていた。骨も出ず何とか保つのは吸血鬼の頑丈さだろう。
 バケモノ退治らしくなってきたなと楪が嗤い。望も頷きながら再度、ハンドルを握り込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

色採・トリノ
…?
この世界に、美しくないものが、あるのかしら?

チュィ
リノは、宝石も、人の糧として育てられる動物も、
みんな、みんな、愛しくて尊いものだと思うけれど―
でも、あなたはそうは思わないみたいね?

リノは攻撃は得意ではないから、他の方のサポートに回るわ
UCで、アミラちゃんの攻撃力の減少と、狙えるのならUC封じを
旋風と羽でアミラちゃんの視界や逃走経路の阻害も考えましょう、ね

リノの目だけで事が済めば、それもいいかしら、と思うけれど
ごめんなさいね、そうはできないの

職人さんには、もう悪いことしちゃ、だめ、よ、と
リノはあなたのこと、憎んだりはしないけれど…でも、そうでない人も、きっと、いるでしょう、ね
お気をつけてね


暗峠・マナコ
この世に必要なのは美しいものだけ、それには全面同意です。
けれど、仮にも誰かを従える立場でいるなら、
この世がキレイで満ち溢れれば、少しくらいキレイでないものが居ても許される、
それくらいの、私の様な度量は持ってしかるべきだと、そう思いませんか?
まぁ、キレイなものを生ゴミにするのは流石に許容範囲外です。
なので、貴方は不要なのです、私の世界には。
キレイじゃないので

私を串刺しにしてくるそれを液状の身体で受け止めて、
そのまま【星か屑か】で相手に覆いかぶさり、無数の瞳と暗闇で精神を侵していきましょう。
瞳が好きならどうぞいくらでも。沢山ありますから。


マルゾ・プリマヴェッラ
【アドリブ・連携歓迎】
わぁ綺麗な主さんだ!
僕の目も綺麗だけど、君の目を宝石にしたらもぉっと綺麗なんだろうね!

【高速詠唱】で【全力魔法】や【マヒ攻撃】の魔法で攻撃しちゃおう
攻撃されたら【第六感】で回避したいな
それでも怪我したら【激痛耐性】で耐えつつ【生命力吸収】で回復しよっと

UC【七星七縛符】でUCも封じちゃおう
可能ならUC【錬成カミヤドリ】で増やした『僕』でたくさん串刺しにもしたいな!そしたらきっと標本の蝶みたいに綺麗だよ!

倒せたらマイスター君に会いたいなぁ
ねぇねぇ目を宝石にってどうやるの?とか聞いちゃおう
特に死人の目を加工できるのか、とかね
教えてくれれば、僕は見逃してあげるよ?



●笑うエメラルド、深遠なるスターサファイア、転変するオパール
 腕は片方失って、身体は穴だらけ。焦げたドレスは見るも無惨。片目は浅く潰れて、肩はあらぬ方へ捻れている。
 それでも立っていられるのは――既に平然と、ではないが――ヴァンパイアゆえ。
 しかしアミラの矜持は随分と損なわれ、彼女のただ一人の味方である従属吸血鬼もまた死に体。その赤い唇は悲観こそ零さぬものの、機を見れば逃走を試みてしまう身体を持て余すオブリビオンへ――大仰な感嘆を向けたものがいる。
「わぁ綺麗な主さんだ!」
 マルゾ・プリマヴェッラ――にやけた笑みはそのままに、彼は自信を寄せてうんうんと頷く。見定める緑の瞳はきらきら輝く。
 皮肉だろうか。
 アミラは明らかに不機嫌に彼を睨み据えた。
 ――それでも、何処か。ヴァンパイアとは血濡れることで輝く種であるように。死に瀕した蔭りが、彼女に別の彩りを与えていた。
 詰まるところ、死にかけの彼女は、ゆえに美しくもあった。
「僕の目も綺麗だけど、君の目を宝石にしたらもぉっと綺麗なんだろうね!」
 高らかに告げ、含み笑いと共に、マルゾは無遠慮に彼女を見つめる。何処かぞっとするような視線だ。
 それから逃れようとアミラが振り返れば、黒と、白。対照的な色彩をもつ女性がそこにいた。
「この世に必要なのは美しいものだけ、それには全面同意です」
 深淵に耀く瞳をもつ、暗峠・マナコは言う。
「……? この世界に、美しくないものが、あるのかしら?」
 七色を孕む瞳をもつ、色採・トリノは首を傾げた。
「チュィ――リノは、宝石も、人の糧として育てられる動物も、みんな、みんな、愛しくて尊いものだと思うけれど――でも、あなたはそうは思わないみたいね?」
 心底不思議そうに。彼女は問うて。
 仮に他のものの美しさを理解できなくとも。マナコは憮然と引き継ぐ。
「けれど、仮にも誰かを従える立場でいるなら、この世がキレイで満ち溢れれば、少しくらいキレイでないものが居ても許される――それくらいの、私の様な度量は持ってしかるべきだと、そう思いませんか?」
 彼女の問い掛けに、アミラははっきりとした嘲笑を浮かべた。
「愚かな話だこと。そんな貴女の結論を……私が先に指摘してあげましょうか?」
 対し、マナコは――くすり、と愛らしい印象の笑みを浮かべた。
 それが合図。
 両者が、それぞれに優位な距離をとる。
 マルゾが銀の杖を掲げると、緑の石が光り、魔法が次々と走る。それを従属吸血鬼が突き破りながら、迫ってくる。
「痛いこと、しちゃ、だめよ。いい子にしていましょう、ね?」
 トリノが鳥笛を吹けば、突風に乗って飛び交う羽根型のグリモアがそれを優しく押さえ込む。
 風は広間に不思議な気流を招き、吸血鬼にはその行動を阻害するように、猟兵にはその行動を後押しするように――あくまでもささやかな力の働きなのだが、従属吸血鬼は動きにくそうに、煩わしそうに空を掻きながら、飛び出した。
 そこへ、マナコが『広がって』待っていた。それでもひとの形であったものが――金の傷痕がうっすらと光って、形を失い融けていく。
 液状化した身体は薄い膜のように、従属吸血鬼と、その背後から荊の槍を仕掛けたアミラを飲み込む。
 無論、傷付かぬわけではない。全てを呑み込みきれるわけでもない。
「そうね、きっとこれは、キレイじゃないわ」
 紛れもない侮蔑を視線に籠めて、彼女は両者を己の闇に閉じ込める。
「まぁ、キレイなものを生ゴミにするのは流石に許容範囲外です――なので、貴方は不要なのです、私の世界には。キレイじゃないので」
 冷ややかな言葉が反響することで解る、光射さぬブラックタールの内部。
 数多の瞳が、次々と瞬き、吸血鬼どもを見つめた。
「瞳が好きならどうぞいくらでも。沢山ありますから」
 彼女がくすくすと笑うと、闇が顫動する。
 その視線は吸血鬼の力をも奪っていく。既にトリノの差し向けた羽根で力を奪われたアミラには、力業での突破を難しくした。
 それでもそのままでは居られぬと――何とか荊を突き立て、穴を穿って二人は転がり出る――そこに待ち構えていたのは、杖を前へ突き出したマルゾ。
 その背には複製された無数の銀の杖が、鋭い石突きをアミラに向けて、射出の瞬間を待ち構えていた。
 とろみのある闇が、ドレスを、脚を掴んでいる。
 吹きつける飆、そして舞い落ちる光の羽根がその力を奪う。生まれたての小鹿のように震える手足が――、床にもたつく。
 にや、と笑みを深くしたマルゾが腕を下ろせば、銀が次々と、赤い床に突き刺さっていく。
 腕を、脚を、腰を、縫い止められる。
 悲鳴はない――ただただ苦痛に血霞が噴き上がるだけ。殆どの能力を封じられつつ、それでも生き存えるは強い種ゆえの祝福か、悲劇か。
「標本の蝶みたいに綺麗だよ!」
 楽しそうに彼は笑う。そこには皮肉も、嘲りもない――素直に、そう思っている。
 その傍ら――。
 よろよろと男が脚を踏み出すのを、トリノの左目は認めた。亡霊に取り憑かれたように、危なっかしい足取りだ。
 時折笛を吹くことは忘れず、彼女は男の傍へと近づいた。
「もう悪いことしちゃ、だめ、よ」
 その声音は、優しいものだったが――男は酷く怯えた。血走った目は、瞬きを忘れたかのように見開かれたまま固まっている。
「リノはあなたのこと、憎んだりはしないけれど……でも、そうでない人も、きっと、いるでしょう、ね。お気をつけてね」
 そして、彼女はそれを憐れんだ。目を僅かに伏せ、その身を案じる。
 ねえ、ひょこりと彼女の背から顔を出した男が、口を挟む。
「ねぇねぇ目を宝石にってどうやるの?」
 死人の目を加工できるの――マルゾはにやにやと、しかし真剣な眼差しで問うてきた。
 残る猟兵達の動きを、ひとつの瞳で見つめたマナコは――やはり、その輝きは比べようはずもないと――最後の機会に賭ける吸血鬼の背に蔑視を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
ああ、随分手の込んだことしてるんだね
あの吸血鬼が人間にしてることは
人間が動物にしてることと大差はないよね
強者が弱者を弄ぶのは自然の摂理でもあるのかな
アンタも、狩られる側になることを覚えなよ

人間のオブジェは一瞥だけして興味は示さず
淡々と吸血鬼の動向を観察
隙を見極め急所を狙って
二回攻撃で傷口を抉る
敵の荊棘は見切りで避け
避けきれない分は切り捨てて
速さを生かして立ち回る
冷たく冷たく、見下した視線で

ああ、そういえば職人気取りの男もいたんだっけ
どうでもいいけど吸血鬼の隙を作るくらいには役に立ってくれるかな
吸血鬼のことだから別に気にもしないかもしれないけどね
使えるものは使うけど使えないから放り捨てとこう


ユラ・フリードゥルフ
翼おにーさん(f15830)と

へぇ、おねーさんの目にはそんな風に映ってるんだ
でもね。終わりだよおねーさん。
その目は全部、その人たちが持っていて意味のあったものなんだから
貴方には似合わない

任せておいて。いってらっしゃい、翼おにーさん。
暗器と槍で中距離攻撃を
翼おにーさんの動きは、電脳世界も展開してしっかり確認
危険があれば声をかけて

ねぇおねーさん。俺と遊ぼうよ

向けたナイフで繭の辿りを発動
俺の結界に捕まえてあげる、おねーさん。
身動きが取れない気分はどう?

煽りを口にして、少しは惹きつけられるかな
ずっと捕まえて置くのは無理だけど、ねぇおねえさん
おにーさんの赤も、ずっと綺麗だよ

あれは、生きている人の
戦う赤だ


早乙女・翼
ユラ(f04657)と。

悪趣味甚だしいオバサンさね…?
人間を醜いって言い放つけど、その瞳の美しさには魅了されてんだろ?
瞳の色は命の輝き――死せる存在には持ち得ないからな。

突っ込むんで、俺に当てるなよ?
ユラの中距離攻撃に合わせ、合わせて剣での攻撃。
背の翼広げ宙を駆け死角より攻める。
どこを見ても赤い部屋。俺の色彩はイイ迷彩状態さね。
天井にあるもの利用し、調度品か滑車の紐を切って落下急襲とか。

ユラの結界発動に合わせ魔剣召喚。思い切り投げつけ俺も結界展開。
従属吸血鬼ごと纏めて攻撃する。
真っ赤な花と羽根はこの部屋では目立たないだろうけど。
お前の好きな色で逝かせてやるさよ。

ユラの言葉には、はにかんで謙遜。


ショコラッタ・ハロー
人間が醜いだって?
血に狂ったおまえのほうが、よほど醜い存在さ

敵の攻撃はよく観察し、行動時に見せる癖や前動作を把握
棘茨は舞踏家の嬉戯を用いて回避しつつ、敵の頭上を取り続けることを試みる
回避と攻撃は一体だ
空中から、カルカネアムの蹴撃で気取った顔面を刻んでやる
動きを見極められたら地上戦に移る
敵の死角を突くように横手を取り、ダガーをお見舞いする
お美しいテメエの血にまみれて死ねるんだ、本望だろ?

マイスターは一発ぶん殴ってふん縛って、街にまっとうな自警やら司法を志す市民が見つかったら引き渡す
居なけりゃ宣言通り、荒野に放り出す
おまえを裁くのは街の人間か、腹をすかせた野犬のどっちかだ
せいぜい祈りやがれ



●燃え立つ柘榴石と涼やかな灰簾石、灰燼より耀くダイヤモンド、冷淡なるグランディディエライト
「ああ、随分手の込んだことしてるんだね」
 鹿忍・由紀はあっさりという。周囲のオブジェを一瞥し、それだけ告げる。
 感情の色が見えぬ貌は変わらぬ。ある意味ずっと、不快そうなものから変わらないとも言える。ここにやってくる前から、ずっと。
「悪趣味甚だしいオバサンさね……?」
 肩を竦めれば、早乙女・翼の背負う深緋の翼も連動して倣う。
 その大きな揺らめきの傍で、
「へぇ、おねーさんの目にはそんな風に映ってるんだ」
 ユラ・フリードゥルフは心底感心したような表情を見せた。
 眼鏡の奥、淡い青がすっと細くなる。
「でもね。終わりだよおねーさん。その目は全部、その人たちが持っていて意味のあったものなんだから……貴方には似合わない」
 強い否定。悪戯めいた感情と、不敵な感情を織り交ぜたような視線で、翼が重ねる。
「人間を醜いって言い放つけど、その瞳の美しさには魅了されてんだろ? 瞳の色は命の輝き――死せる存在には持ち得ないからな」
 は、息で笑う。
 炎に照らされ、金の髪を皓と耀かせたショコラッタ・ハローは、自分の四肢と視界を確かめるように動かして、アミラを見下ろす。
「人間が醜いだって? 血に狂ったおまえのほうが、よほど醜い存在さ」
 喩え相手の方が大柄であろうと、彼女は見下ろしている――脚に力を籠めると、瞬く間に跳躍し、宙へと逃れている。
「……黙れ。黙れ、黙れ……」
 吸血鬼の静かな狂瀾と共に、猟兵達の足元を穿つは荊の槍。最後の最後、理性を棄てて、女は力を振り絞る。
 先に誰かも言っていたが――由紀はそれを躱しつつ、ひとりごちるように、囁くように、唇を開く。
「人間が動物にしてることと大差はないよね……強者が弱者を弄ぶのは自然の摂理でもあるのかな」
 なれば、反対も然り。由紀は本当に薄く、淡く、笑みを浮かべた。
「アンタも、狩られる側になることを覚えなよ」
 それが摂理だ――と。
 従属吸血鬼が前に飛び込んでくる。彼女の腕も、脚も、もげそうだが、その速度は変わらぬ。冷静に荊巻き付けた拳を躱し、ダガーを閃かせる。
 互いの攻撃は牽制に似て、位置を入れ換えるようにして、通り過ぎる。
 それらの動きを見つつ、翼が羽根を広げた。
「突っ込むんで、俺に当てるなよ?」
 冗談めかして言って、地を蹴った彼の背をユラは見送る――ふふ、と笑った表情はいかんとも判断し辛い。
「任せておいて。いってらっしゃい、翼おにーさん」
 言うや否や、脚に留める暗器をひとつするりと抜いて、素早く撃った。
 翼の上昇を阻止せんと――否、最も近い対象に襲い掛かっているだけかもしれぬ――距離を詰めていた従属吸血鬼へ。
 爪が空を裂く感覚を眼前に、彼はそのまま踏み切る。
 重い羽ばたきの音と共に翼は上へと舞い上がる――赤い残像の向こうから、暗器が鋭く打ち込まれたのを、従属吸血鬼は血塗れの腕を振り上げて受け止める。
「空中に逃げたって――」
 無駄だ、とアミラは言おうとした。散々に、空中を利用する猟兵は見てきた。今も、ショコラッタが彼女を翻弄すべく駆けているが、弱りながら、追い切れぬということはない。
 しかし、他ならぬ彼女に気をとられた一瞬、翼を見失う。
 この部屋は赤い。血霞で更に赤く染まっている。
 素早く壁や天井を蹴りつけ加速する彼の姿は、時折朱の中に埋没するのだ。
 完全でなくとも、目を欺けたならば――。
 ギィ、と軋んだ音がして、天井に釣られた籠が落ちてくる。金属のそれは滑車から外れ、けたたましい音を立ててアミラへと落ちる。
 後ろに跳ぶ――疵だらけの白い脚を顕わに、彼女はなりふり構わず、躱す。そこに不敵な笑みを浮かべたショコラッタのピンヒールが凶悪に閃いた。咄嗟に首を下げる。
「その気取った顔面を刻んでやる」
 言葉が嘘ではないと示すように、アミラの首筋に真っ直ぐと朱線が描かれた。踵は刃が仕込まれている。
 捕らえようと腕を伸ばそうが、既に空を蹴り上げ、彼女は頭上に逃れる。更に翼がサーベルを振るう。薙ぎの剣戟に、放った荊が断たれ、腕に新しい血が零れる。
 最中――ユラの視界は電脳世界と共に、多角的に広間の内部を写し取っていた。
 躍動する猟兵達、前を駆ける従属吸血鬼。そして、他ならぬアミラの様子。掴めるのはそれだけ。認識しても反応しきれぬことは多い。
 何より、部屋中に漂うアミラの血、これは最早計測しても意味がない。
 あらゆるものを拒むような血の靄の中、翼にせよ、ショコラッタにせよ、苦痛は口にせず。
 従属吸血鬼に執拗に狙われている由紀も、深く仕掛ける隙を狙っている。魔力で加速した彼を、弱り切ったそれが今更捉えられるとは思わないが。
 ――このまま遊んでても勝てる気はするけど。
 でも無駄に苦しむ必要も無い。少なくともユラは『そこまで』戦闘狂ではない。
「ねぇおねーさん。俺と遊ぼうよ」
 彼は二体の吸血鬼に、そう声を掛けた。少なくとも三人の誰よりも隙をもって。
「じゃぁ、描こうか。これは俺の檻。俺の操り絲」
 方角を示すように、暗器のナイフを突きつける。
 吸血鬼どもは、ぴたりと動きを止めた――否、動くことはできる。ただ見えぬ何かに引っかかって、荊が断たれた。
 ユラが張り巡らせた不可視の絲による結界。鋼の糸がきりりと啼く。その僅かな軋みに、目を僅かに伏せながら。
「身動きが取れない気分はどう?」
 問いかけに、アミラはぐっと唇を噛みしめる。
「ナイスサポートさね、流石」
 天井を蹴り、翼が魔剣を召喚する――両腕に収まった剣がその形状を保ったのは刹那のこと。
「死天使の羽根と彼岸花、死に逝く者に捧げよう」
 低い声音で差し向ければ、剣は深紅の羽根と曼珠沙華に姿を変じて両者の頭上に降り注ぐ。
「お前の好きな色で逝かせてやるさよ」
 翼が笑う。
 視界を埋めつくす、赤、朱、紅――そのものが身体を切りつけていき、吸血鬼を更に赤く染めていく。
 そんなアミラに従属吸血鬼が覆い被さった。突き刺さる羽根と花弁から守り――弱り切った最後の下僕は、消えた。
 残されたのはただ血の雨を浴びたように真っ赤になった女だけ。
 ねぇおねえさん――ユラは再び変わらぬ調子で声を掛けた。
「おにーさんの赤も、ずっと綺麗だよ……あれは、生きている人の、戦う赤だ」
「褒めすぎさね。ただ――」
 はにかんで、謙遜しながら。燃えるような色の瞳を、鋒と共に吸血鬼に向ける。
「魂を燃やすことの意味、解ったんじゃねぇの?」
 女が吼えた。
 今までそれでもギリギリ取り繕ってきた貴族らしさを失って、アミラは朱に濡れ、乱れた髪のまま――まるで悪鬼のようだ。
 すっかり絨毯の剥げた床と、ヒールが音を立てる。ショコラッタは地に降りた――その認識を相手に与えるより先に、前へと跳んだ。
 クロスする両手に握られた対の短刀。ひと振り目で、貫く荊を裂いて道を作り、ふた振り目は振るわず、横へと滑る。
 空を掻くはアミラの片腕。既にまともな形状もしていないが、伸びきった爪は金色の一房を切り落とした。
 ち、と舌打ちしつつも、ぐるりと後ろに回り込む。深く穿たれた傷で、不安定な首。既に美しさとはかけ離れた形になっているが――。
「お美しいテメエの血にまみれて死ねるんだ、本望だろ?」
 脇から懐に潜り込んだような位置でショコラッタは囁いて、刃を振るう。それは叩き込む、という表現が似合う、無骨な一突きだった。
 そして、風が吹く。
 ゆらりと影の中から現れたように――由紀が半身を振り上げ、女の背後に迫っていた。
「絶ち切れ」
 邪なるものを容易く断ち切る破魔の刀身が、その喉を後ろから貫く。魔力によって加速した由紀は血霞も荊も突き破る。
 凍える視線を向けたまま。何の感慨も告げず、無言で刃を返した。肉の抵抗など知らぬように抉り、引き抜く。
 女の赤い瞳は何を求めてか、ぎょろりと周囲を一瞥したが――そのまま床に落ちて、二度と動かなかった。

 がたん、と音がして――男が転んだ。炎に噎せて、咳をしている。
「ああ、そういえば職人気取りの男もいたんだっけ」
 興味も無いと由紀は少しだけ視線を投げて、別を見る。
 宝石と称された無数の瞳。オブジェと化した少女たち、捕らわれた苦悶の女たち。それぞれ猟兵が解き放ち……安らかな場所へと送られる。
 彼女達は皆、清々しい表情を浮かべていた。最後に覚えるのが憎悪の昇華か、もう二度と苦痛を覚えずに済むという救済か。それは彼女達にしか解らぬ。
 ショコラッタは男の襟首掴み、その頬を強かに殴打した。
 渾身の力だ、男の頬骨は砕け、顔は瞬く間に腫れ上がっていく。だが気を失ったわけではないようで、取り押さえられながら縛られている間、ずっと呻いていた。
 吸血鬼に怯える人々は、この『マイスター』と呼ばれる男の引き取りを拒否する。マダムが消えても、他の吸血鬼の機嫌を損ねるかもしれないから――。
 それはそれでいいだろう。気兼ねなく、より残酷な選択を選ぶだけだ。
「荒野に放り出してやる。おまえを裁くのは街の人間か、腹をすかせた野犬のどっちかだ――せいぜい祈りやがれ」

●とある男の……
 あの日の光景が、目に焼き付いて離れない。
 よもや人の力の及ぶはずもない、吸血鬼と……渡り合うものたちがいた。
 その数数の瞳が、見てきた世界――想像するだけで背筋が震える。
 マダムが傷を負うことに、戦慄を覚え。
 マダムが窮地に陥るごとに、震撼した。
 目から血が零れるほど、瞬きを忘れて焼き付けた光景。
 彼らを、作品と残したい。けれど――今までの形では到底描けぬ。
 彼らの輝きはあんな紛い物では刻めない。何処にも、どうすることも、術すら思いつかぬ。
 わたしの双腕は残されて。
 わたしの瞳も残された。
 荒野に放り出されて、獣に追われながら――時にかつて馴染みの吸血鬼に拾われたこともあった。
 しかし、すべての材料を与えられても、わたしは何も作ることができなかった。
 強烈な輝きを見て眩んだように。わたしの心はわたしの信じる美を見失った。
 だというのに、創作意欲だけがある。燃える感情のみが消えず、生きよと突き動かす。
 何も出来ぬ私は再び不毛な大地に取り残された。餓える苦しみよりも。生きたまま獣に囓られる痛みよりも。
 生きる苦痛をむざむざと浴びながら、わたしは繰り返し目に焼き付いた光景を見続ける。
 渇いた心に、水は沁みぬ。
 ――永遠の罰。
 名前を失い、何者でも無いまま――わたしは何も作れず、何も為せず、野垂れ死んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月15日


挿絵イラスト