サンタさんはいる? いない?
●クリスマスパーティ会場
キマイラフューチャーでもクリスマスパーティは盛大に行われている。今まさにパーティが始まろうとしている会場があるこの区画では、何とサンタクロースを信じている子どもは100%であるという統計もあるとかないとか。
子どもたちはみな、サンタクロースからのクリスマスプレゼントを楽しみにしている。この季節になるとキマイラの子どもたちは「いい子」でいる事を自主的に心掛ける程だ。バーチャルキャラクターであろうと、テレビウムであろうと、果てはヒーローマスクであろうと。サンタクロースを信じる心を持った、無邪気で純粋な子どもたちと、それを微笑ましく見守る住民たち。だが――。
「サンタクロースなんていませーん!」
「サンタはね、君のお父さんなんだよ〜」
「サンタはただのおとぎ話! いたらただの不法侵入者じゃん!」
そんな事をパーティ会場で叫ぶものたちがいる。頭が本物のケーキで出来た怪人たちだ。自らの売れ残った恨みをはらすかのように、大声で叫び続ける。子どもたちがいくら「サンタさんはいるもん!」と反論しても、彼らはそんな子供たちを指差し笑う。
「サンタ信じてるとか馬鹿なんじゃないの〜? お子様じゃん〜」
「ホントは気付いてるんでしょ〜? サンタなんていないって。ほら、正直に言いなよ〜」
けなし、小馬鹿にするように、「サンタはいない」と吹聴していく。子どもたちいきなり現れた怪人たちの言葉に傷付き、大声で泣きだす子も出てきた。そんな様子を見てほくそ笑むのは、頭を機関車にした怪人だ。
(くくく。この調子で子どもたちを絶望させれば非行に走るはず。そうして世の中を混乱させていくのだ)
怪人の作戦は遠大だが、今この時は確かに成功しているのだろう。泣き叫ぶ子供たち、何も言えぬ大人たち。怪人たちへ逆らう気力もわかず、言われるがままただその場に立ちすくんでいる。
「いるもん……サンタさんはいるもん……」
幼い嘆きの声は、瞳からこぼれる雫と共に儚く怪人たちの声にかききえていった。
●グリモアベース
「以上がグリモアから俺にもたらされた予知だ」
草壁・行成が予知した内容を告げ終えると、改めて集まった猟兵たちを見渡した。
「幸いな事に、これは未来の出来事だ。怪人が襲ってくる時間も場所も完全に特定できている。つまり、君たちの手で悲劇の未来を変える事が出来る」
行成の言葉に、猟兵たちは思い思いに頷きあい、両手の拳を握りしめる。こんな事で、子供たちの未来に傷を付ける訳にはいかない。
「この程度の怪人たち、君たちであればそう時間はかからないだろう。そのまま、クリスマスのパーティ会場へなだれ込むといい。なに、猟兵たちはキマイラフューチャーでは人気ものだ。きっと歓迎される」
ふっ、と珍しく行成が微笑む。それは、猟兵たちを信頼している証である。
「さあ、サンタがいないだなんて喚き散らす嘘つきな怪人たちを懲らしめにいこう」
ゲンジー
●マスター挨拶
こんにちは。ゲンジーです。せっかくのクリスマスなので、サンタクロースネタを。サンタがいないだなんて言う怪人たちをやっつけましょう。え? 何を言ってるんですか? サンタさんはいますよ?
●シナリオについて
第一章にて集団戦、第二章でボス戦です。それぞれ避難誘導などは必要ありません。戦いに集中してもらって大丈夫です。
第三章はパーティです。思い思いに遊んでください。キマイラフューチャーの四種族の誰とでも遊べます。お誘い頂ければ行成も食事くらいは付き合うかもしれません。
●プレイングについて
第三章については、全員のプレイングを採用する予定です。パーティだけ参加の方も大歓迎です。
それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
第1章 集団戦
『売れ残ったクリスマスのケーキ怪人』
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POW : 恨みのローソク
【ケーキの飾りのロウソク 】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ふかふかボディ
自身の肉体を【スポンジケーキ 】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : 生クリームブラスト
【両掌 】から【生クリーム】を放ち、【ベトベト感】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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ニィ・ハンブルビー
さんた?ねぇねぇ、さんたってなに?
(拝聴中)…おお~!
この世界にはそんなステキなおじいちゃんがいるんだね!すごーい!
ボクもいい子にしてなきゃダメってことだね!OKOK!!!
よーし!スッとしたところで勝負だ怪人達ー!
【POW】使用
とりあえず真正面から【ダッシュ】で怪人達に突貫して【捨て身の一撃】!
【スライディング】や【スカイステッパー】なんかも利用して、
敵陣のど真ん中に飛び込んで【水の一滴岩をも砕く】!
怪人達をひたすらぶん殴るよ!
よく知らないけど、人を泣かせる悪い奴らなんだよね!
だったら遠慮なしで行くよー!
竹城・落葉
「サンタは居ない」と主張するばかりか子供達に暴言を吐くその悪行、元武将として許せる筈が無い。我のサムライブレイドで怪人を成敗してくれる!と、色々考えるが、戦闘中は戦う事のみに集中する。
まず戦闘を始める前に、子供達を巻き込まぬよう、事前に戦場から離れるよう誘導しておくぞ。我は、『剣刃一閃』で怪人を切り伏せる。いや、怪人はケーキだから、切り分ける……と言った方が良いのか?まぁ、いいか。なお、戦闘中は冷酷な雰囲気を醸し出し、無表情かつ無言で攻撃を仕掛けるぞ。
後は、怪人の暴言で傷ついた子供達の心を癒すべく、サンタのコスプレをしていくぞ。そして、我はサンタだ、と言って、サンタのフリをしよう。
二神・マ尾
あーくそ、泣くな。
「サンタはいるって。いい子にしてたんだろ?」
なんて安心させるためにガキの頭撫でてやる。
【SPD】
会場に到着したら、接触前に会場外に罠をレプリカクラフトで仕掛ける。
人払いは必要ないけどさ、やっぱ会場をめちゃくちゃにされたくないじゃん。
敵と接触したら、傷口をえぐる技能で「売れないからって大人気ないことすんなよ半額ケーキ」と挑発。
挑発するからには失敗の懸念と油断しない心積りで臨む。
相手が向かってきたら「逃げ足」を使い罠へ誘導する。
挑発に乗らないなら咎力封じで拘束ロープを投げ、攻撃力低下を狙うかな。
どちらかが成功すればガチキマイラでかぶりついてやる。
おー、半額にしちゃあ美味いな。
「こんなもんか」
二神・マ尾(真尾・f07441)は会場外へユーベルコード『レプリカクラフト』を発動させ、【仕掛け罠】を設置した。用心深い性格からか、怪人が会場そのものへ攻撃を行う事を阻止するのが狙いだ。本来造りが甘くなるレプリカクラフトであるが、造ったものが仕掛け罠であるがゆえ、極めて精巧な形となっている。その性能もまた、極めて高いものとなっている。
「何だありゃ……」
一旦様子を見にマ尾が会場内へ入ると、すぐ目に入ったのは竹城・落葉(一般的な剣客・f00809)であった。これから戦闘へ入ろうというのに、真っ赤な服と白のラインが入った服、要するにサンタ服を着ていた。
「我はサンタだ」
と、無表情に子どもたちに告げている落葉。すぐにでも戦闘に入れるよう、業務用の冷酷な人格のようだ。だが、落葉はあくまで無表情ゆえ、気弱なテレビウムなどは画面に「(:_;)」が表示され、怯えているようだ。
「ったく、サンタクロースが子供怖がらせてちゃ世話ねぇぜ。……ま、その頑張りは嫌いじゃねぇが」
落葉なりの気づかいだろう。しょうがねぇな、と頭を掻きながら、マ尾は怯えるテレビウムへ近づいていく。
「僕が悪い子だったから、怖いサンタさんが来たんだ。僕のとこに来る優しいサンタさんはいなんだ(:_;)」
マ尾はテレビウムの頭へぽん、と手を置き、優しく撫でた。
「んなことあねぇ。サンタはいるって。いい子にしてたんだろ?」
マ尾の言葉に、テレビウムの子供の表情は「ほんと!?(*^▽^*)」と明るくなった。
「さんた? ねぇねぇ、さんたってなに? さっきお話聞いてたけど、わからなかったんだぁ」
そんなやり取りを見ていたニィ・ハンブルビー(近距離パワー型フェアリー・f04621)が無邪気にマ尾へ声を掛けてきた。
「な、ニィ、お前見てたのか!」
思わず尻尾の白蛇で威嚇してしまうマ尾。だが、ニィはそんな事を意にも介さずにこにことしている。そんなニィへ、子供たちが「あのねあのね!」とサンタクロースの事を教えてくれる。
「……おお~! この世界にはそんなステキなおじいちゃんがいるんだね! すごーい! ボクもいい子にしてなきゃダメってことだね! OKOK!!!」
ハイテンションに納得すると、嬉しそうにその場をひらひらと飛び回るニィ。
「っち。ほら、そろそろ行くぞ。怪人たちが来る頃だ。そっちのサンタもな」
「うん! よーし! スッとしたところで勝負だ怪人達ー!」
そんなニィへ何かを言う気力も失せ、マ尾はニィと落葉へ告げ、会場の外へと向かっていった。ニィもまたそこへついていく。
「そろそろか。さて子どもたち。これからしばらくの間、外へ出てはならない。危ないからな。この会場の中でいい子にしておくんだ」
ちょっと怖いサンタだが、子どもたちは素直に「はーい」と返事を返した。そんな様子に思わず微笑んでしまう落葉。しかし、戦いはもう間もなく始まる。さっと踵を返し、会場の外へと向かっていった。そんな落葉の、サンタの様子を見て、先ほどまで怯えていたテレビウムがつぶやく。
「あのサンタさんも、ほんとは怖くなかったんだ(>_<)」
●パーティ会場の外
既に何人もの猟兵が並び立ち、向かってくる売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちを睥睨していた。子どもたちの笑顔を、未来を守る為、猟兵たちは動き出す。
「よく知らないけど、人を泣かせる悪い奴らなんだよね! だったら遠慮なしで行くよー!」
最初に動いたのはニィだった。真正面に怪人たちへダッシュで向かっていく。怪人たちは頭上の【ケーキの飾りのロウソク】をむんずとつかむと、ニィへ向けていくつも放り投げる。だが、ニィはその小さな体でひらりと投擲されるロウソクを避けながら、スライディングをも駆使し怪人たちの中を走っていく。時に避けきれないとみるや捨て身の一撃で目の前の怪人をぶん殴り、ひたすら前へ。そして、程よいところで【スカイステッパー】を発動させる。
ニィは空を駆けあがるように飛び上がっていき、敵陣のど真ん中へと降り立った。あまりに無謀に見えるそれはしかし、彼女が近距離パワー型フェアリーであるが故。
「でりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!!」
ふわりと飛び上がると、ニィは【高速で飛び回りつつ怒涛の連撃】を繰り出した。『 水の一滴岩をも砕く(クダケチルマデブンナグレ)』 、ニィのユーベルコードである。彼女から半径15mは、全て彼女の射程内。売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちはクリームをまき散らしながら、倒れていく。
そんな様子を遠目にみながら、他の猟兵たちも動き出す。
「売れないからって大人気ないことすんなよ半額ケーキ」
マ尾の挑発は、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちの傷口をとても深くえぐったようである。
怒髪ならぬ怒クリームが天へ遡らんばかりに、怪人たちはマ尾へと向かっていく。自らの肉体を【スポンジケーキ】へと変え、鞭のようにしならせながらマ尾へと伸ばしていく。だが、マ尾の逃げ足もなかなかのもので、そううまくは当たらない。怒りのままにマ尾へ少しでも当てようと近づいていく怪人たち。だが、それはマ尾の戦略であった。 マ尾が事前に仕掛けた罠に、怪人たちがかかったのだ。身動きしようにも、精巧に作られた罠からそう簡単には抜け出せない。
「『ガチキマイラ』」
そんな怪人たちへマ尾はユーベルコードを発動する。自身の頭部を【ライオン】へと変えると、怪人の頭へかぶりついた。そして、マ尾はむしゃむしゃと怪人たちを咀嚼していく。
「おー、半額にしちゃあ美味いな」
マ尾が早めのデザートを食している間にも、前線では激しい戦いが続いている。
(サンタを居ないなどと主張するばかりか子どもへ暴言を吐くその悪行。元武将として許せる筈がない)
落葉は怒りをもって腰に下げたサムライブレイドを引き抜いた。
(成敗してくれる!)
落葉の鋭い切っ先は向かってくる怪人たちをたやすく切り裂いていく。ケーキだからという訳でもなく、落葉の技術と膂力によるものだ。放り投げられるロウソクもまた、次々と切って捨てている。
間合いを見ながら、時に重い一撃、『剣刃一閃』も繰り出していく。一閃の元に断たれた売れ残ったクリスマスのケーキ怪人はたやすく切り伏せられる……いや、この場合は切り分けられたのか。きちんと等分出来ない事は、少し残念ではあるか。
落葉は淡々と、冷酷な雰囲気を醸し出しながら無表情のまま、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちを切っていく。真っ赤なサンタクロースのコスプレの恰好のままである為、きっと子どもたちには見せられないが。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
カチュア・バグースノウ
サンタさんはいるわよ!
いないなんていう悪い子のところに来ないだけ(キリッ
あたし?あたしのところは信じ続けてきたけど来ないわよ
……し、仕方ないじゃないサンタさんの電話番号もメルアドもSNSも知らないんだもの!(グスッ
集団戦ね、あたしはみんなを守るわよ!
前衛に立って敵たちの攻撃を盾受けでガード
攻撃はドラゴニックエンドを使用する
弱っている敵を優先的に攻撃するわよ
でもメインはガード
盾受けメインに行動する
守るのは同じ攻撃手を優先的に、回復役も守るわ
半額ケーキだって美味しいからいいのよ!どこが悪いの?
ていうか敵が可愛いんだけど!?
アイシャ・ソルラフィス
うーん… 泣いてる子供たちは放っておけないね。助けにいこう!
とりあえず悪いクリスマスケーキを倒せばいいんだろうけれど…売れ残ったこの子たちも可哀想なんだね…
けどここは心を鬼にして…ちょっと離れたところから、《全力魔法》《なぎ払い》技能からの、精霊攻撃!
…ケーキさん、ごめんね…
ケーキさんからの攻撃は…頑張って避ける!
ボク、回避技能とか、ないからね。
頑張って避けるしか方法がなくて…
他力本願で申し訳ないんだけど、他の猟兵さんたちに助けてもらえると、助かります。
エール・ホーン
悪者であるあのケーキ君と
正義のヒーローであるボクら!
良い子である君たちは一体どっちを信じるのかな?
この立派な角!そして天高く飛べるつばさ!かっこいいだろ?
子供達を鼓舞するように、ふふりと笑う
サンタさんはいるよ!
君たちが心から信じるならば、それは絶対さ!
ケーキ君たちも、きっと悲しい想いをしたんだろうけど
子供達を悲しませるのは違うでしょう?
クリスマスがすぎたって、きっと美味しく食べるって誓うから、もう悪さはやめるんだ!
なんていったって、売れ残ったケーキは!半額だからね!!!
攻撃はスカイステッパーからのスライディング!
これなら某仮面のヒーローみたいで子供達も喜びそうだろ?
●会場近く
猟兵たちが遠ざけているとはいえ、さすがに外の喧騒が伝わり、会場内でもざわめきが起こっている。だが、そんな状況をエール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)が鎮めていた。
「悪者であるあのケーキ君と正義のヒーローであるボクら! 良い子である君たちは一体どっちを信じるのかな?」
優しく子どもたちへ微笑みかけるエール。ぐずりながらも、子どもたちはエールの言葉に「ヒーロ!」と元気よく返事をする。
「この立派な角! そして天高く飛べるつばさ! かっこいいだろ?」
エールは自慢である真っ直ぐな一本角を指さし、白い翼をばさりとはためかせた。子供たちは大喜び。その様子を見て、エールはふふりと笑った。これで心置きなく戦えるだろう。
そんなエールと子どもたちの元へ向かわせないよう、アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)とカチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちを抑えていた。
「サンタさんはいるわよ! いないなんていう悪い子のところに来ないだけ」
腕を組みながらきりっと怪人たちへ言い放つカチュア。アイシャもこくこくと頷く。だが、怪人たちも負けじと言い返す。
「いい大人のくせしてサンタ信じてるのかよー!」
「そうだそうだ! お前のところには来たのかよー!」
「あたし? あたしのところは信じ続けてきたけど来なかったわよ」
思わぬ返答に、怪人たちも思わず二の句が告げずにいる。そんな様子にカチュアは慌てて言いつくろう。
「……し、仕方ないじゃない! サンタさんの電話番号もメルアドもSNSも知らないんだもの!」
ほんの少し涙目になりながら必死になるカチュアに、アイシャも怪人たちもほんの少し気まずくなった。
「お前も辛かったんだな……わかるよ、俺たちも半額だからさ」
「ちょっと! あたしを半額の女みたいに言わないでくれる!? だいたい、半額ケーキだって美味しいからいいのよ! どこが悪いの?」
怪人たちは思わず黙り込む。売られていった仲間を尻目に、処分される寸前であったところを拾われた怪人たち。自分たちが半額となった事を憂いていたが、カチュアのように肯定してくれる存在がいたとは夢にも思わなかった。
そんな怪人たちの様子を見てとり、アイシャは複雑な感情を抱く。
(売れ残ったこの子たちも可哀想なんだね……)
売れ残りたくて売れ残った訳ではない。無理な発注をかけられ、ただ手に取られなかっただけだ。そんな悲しい過去から生まれたオブリビオン。ほんの少し、同情してしまうアイシャであった。
だが、彼らはオブリビオン。売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちはすぐに気を取り直し、自らの頭のロウソクを次々にアイシャたちに投げつけていく。
「わわ!」
アイシャはそんな攻撃を頭を両手で守りながらなんとか避けていく。だが、そんなアイシャの頑張りなど素知らぬ体で、怪人たちは【両掌】をアイシャに向けて、【生クリーム】を放った。絞り袋から飛び出すように、にゅるにゅると、しかし勢いよくアイシャへ生クリームが向かってくる。
「おっと! 全く、可愛い顔してにくい事するわね」
そんな生クリームをカチュアは手にしている黒い斧で受ける。斧の剣先はべとべとになるが、元より斧で攻撃をするつもりはない。
「カチュアさん!」
「ほら、あなたの得意分野は前線(こっち)じゃないでしょう? 後ろに下がって」
「はい! ありがとうございます!」
アイシャはカチュアへ礼を言いながら、言われた通りに少し距離を取る。その間にもカチュアは怪人からの攻撃を受け止め続けている。
カチュアの頑張りを無駄にするわけにはいかない、とアイシャはすぐさま【全力魔法】による風属性攻撃で飛び交うロウソクをなぎ払った。そして、一瞬出来た空白の時間を使い、集中する。
「その炎、使わせてもらうよ! 『エレメンタル・ファンタジア』!」
アイシャは「風属性」とロウソクに灯った「炎」を合成した。そうして、目に見えぬはずの風は赤を纏った「風の炎」となり、怪人たちへ吹きすさぶ。その熱に、怪人たちのケーキはどろりと溶けていく。既にアイシャへとコントロールが移った炎は、怪人たちには消しようがない。だが、怪人たちはそれでも止まる事はない。
(ドラゴニック・エンドを……いいえ、そうするとアイシャが危ないわ)
エレメンタル・ファンタジアは制御が難しい。その状態でアイシャが怪人の攻撃を避けられるはずがない。次の一手を模索しているなかも、怪人はこの場が不安定と見て取ったのか、次々に集まり、その数を増していく。そして、離れた距離からも攻撃が出来るユーベルコード『ふかふかボディ』を放った。【スポンジケーキ】へと変わった怪人の肉体は、強い伸縮性を持ってカチュアとアイシャへ襲い掛かる。 耐えきれない――そう思われたその時、空からやってくる者がいた。
そう、エール・ホーンである。
『スカイステッパー』により高く高くジャンプした彼女は、そこからスライディングの要領で地面へと蹴り下りてきている。重力に乗ったそのスライディング・キックは、集まっていた売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちの群れのど真ん中へと着弾し、衝撃波をもたらした。
衝撃の余波により、多くの怪人たちは倒れ、わずかにその動きを止めた。
エールはそんな中、ゆっくりと立ち上がり、翼をばさりと広げながら怪人たちへ告げる。
「ケーキ君たちも、きっと悲しい想いをしたんだろうけど、子供達を悲しませるのは違うでしょう?」
エールの厳しく、しかし優しい問いかけに、怪人たちは沈黙する。
「クリスマスがすぎたって、きっと美味しく食べるって誓うから、もう悪さはやめるんだ!」
ロマンティストなエールは、たとえ怪人であろうと説得を試みる。彼女が夢見る幸せで彩られた優しい世界は、きっと戦いで解決なんてしないから。
「なんていったって、売れ残ったケーキは! 半額だからね!!!」
ただ、エールはお調子者であった。その言葉が説得力を持つのかどうか。
それでも、少なくとも「きっと勝てない」という感情を怪人たちに植え付ける事には成功したのだろう。エールたちの周囲にいた多くの怪人たちは身を翻し、その場を去っていった。果たしてエールの言葉が届いたのかどうかは、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人にしかわからない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●殲滅戦
多くの売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちが去っていったとはいえ、未だに会場へ向かおうとしている怪人の数は多い。特に、機関車怪人を守る売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちは、その忠誠心から機関車怪人を守ろうと必死になっている。そのまま機関車怪人と戦おうとしても、ままならない。猟兵たちはひとまず、取り巻きである売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちの殲滅戦へ移った。
杼糸・絡新婦
(子ども泣かすことにご立腹)
・・・おのれら、覚悟できとるやろうなあ。
錬成カミヤドリにて鋼糸を召喚し、
切断するように攻撃していきます。
(サンタ発言した時点でそれ以上言わせる前に攻撃していきます)
そのふざけたケーキごとカッティングしたるわ、粉々にな!
パーティーの余興にはちょうどええやろ。
おら、来いや!!
サンタがおらん?当たり前やろお前らみたいなところに
サンタが来てくれると思うてんのか?
そりゃ見たことないやろなあ?サンタさん来てくれへんもんなあ。
おお、かわいそうやなあ。
筒石・トオル
子供達を悲しませるなんて最低な怪人だな。…まあ僕も子供ではあるんだけど。
『トリニティ・エンハンス』水の魔力で防御力を強化。
敵は炎を使うみたいだからな。防御を固めて、放たれた炎を突っ切るように接近し、ルーンソードで怪人を真っ二つにしてやる。ケーキカットだ。
怪人は悪い子だからサンタに会えないんだ。自分が会えないからって子供に八つ当たりするのはよくないぞ!
「子供達を悲しませるなんて最低な怪人だな……まあ僕も子供ではあるんだけど」
「……おのれら、覚悟できとるやろうなあ」
前線や中心地からはやや離れた場所で、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちが群れていた。そこえ駆け付けたのは、共に怒りを露にするの筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)と杼糸・絡新婦(ヤドリガミの人形遣い・f01494)である。特に、絡新婦に至ってはいつもの笑顔が消えているほど、怒っていた。だが、怪人たちはそんな絡新婦の怒りなど知る由もなく、いつものように煽ろうとする。
「なんだなんだ、お前たちもサンタを信じてるのか? いいか、サンタは――」
言葉を全て発する事なく、怪人の一人が切断された。絡新婦の周囲にはいつの間にか鋼糸が召喚されており、その周囲で風切り音を鳴らしている。
「そのふざけたケーキごとカッティングしたるわ、粉々にな! パーティーの余興にはちょうどええやろ。おら、来いや!!」
いつもの丁寧な口調が崩れるほどに、絡新婦は怒声を張り上げた。
「ひー、怖い怖い。僕には当てないでね、絡新婦さん」
トオルは軽口を叩きながら、『トリニティ・エンハンス』を使い、【水の魔力】で自身の防御力を上げた。その間に、怪人たちは恨みがましくロウソクを投げつけていく。いくつかは鋼糸により切断、消火されるが、いくつかが地面に落ちると、一面に炎が広がった。自らのユーベルコードの特性を熟知している、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちの中でも先鋭のようだ。
トオルはルーンソードを構えると、鋼糸が暴れ回る怪人たちの群れへと突き進んだ。元より、絡新婦がミスをするなど微塵も思っていないのだ。
怪人たちはわざわざ炎の中へ突っ込んだトオルをあざ笑いながら、その炎をより強くする。売れ残った恨み、ここで晴らすべし。だが、それは自らの視界を狭めたに過ぎなかった。トオルは炎を突っ切るように接近し、怪人の目前へと躍り出た。トリニティ・エンハンスにより上がった防御力により、怪人たちの炎はほとんどトオルには聞いていなかった。水属性と炎という相性もよかったのだろう。
「さあ、ケーキカットだ」
ルーンソードにより、怪人の体は真っ二つとなる。
「怪人は悪い子だからサンタに会えないんだ。自分が会えないからって子供に八つ当たりするのはよくないぞ!」
トオルはそう言いながら次の怪人たちへと目標を切り替え、斬りかかっていく。
「な、何だと! 元々サンタなんかいないんだ!」
怪人は自らの体を【スポンジケーキ】へ変えると、トオルめがけて殴り掛かった。だが、その腕はトオルへ届く途中で鋼糸に切り落とされた。
「サンタがおらん? 当たり前やろお前らみたいなところにサンタが来てくれると思うてんのか?」
次々と鋼糸を念力で操作しながら、怪人たちの手を、足を、頭を切り落としていく絡新婦。
「そりゃ見たことないやろなあ? サンタさん来てくれへんもんなあ。おお、かわいそうやなあ」
笑う口元を着物の袖で隠しつつ、しかしその目に一切容赦はない。
この場にいた怪人たちは瞬く間に殲滅されたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●売れ残ったクリスマスのケーキ怪人・最終戦
粗方売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を始末し終えた猟兵たち。いよいよ企みの元凶である機関車怪人の元へと向かう。だが、そこに最後の砦と言わんばかりに、忠誠を誓った売れ残ったクリスマスのケーキ怪人たちが機関車怪人を守っていた。
猟兵たちは哀れに思いながらも、殲滅すべく武器を取った。
遠呂智・景明
「その三太ってのがどこの誰だか知らねぇが。子供の信じてるもんを嘘だと断じるのは良くねぇよなぁ」
三太、刀のヤドリガミでありサムライエンパイア出身の己には馴染みはないしいるかいないかも分からない。
だが、子供を泣かせるのは許せない。
「その身体、切り分けてやるよ」
【錬成カミヤドリ】によって己の依代の分身である刀を呼び出すと念力で操り、一斉に切りかからせる。
【見切り】【フェイント】を用いて敵のユーベルコードに対応しつつ【2回攻撃】による連撃を狙う。
「えーと、なんつうんだったか。くりすますとやらの時には」
うーんと頭を捻りつつケーキ怪人たちを切り分ける手はとめない。
オルク・オセアン
サンタがいないと分かっていてもそれを夢見る子供達に教えるなど言語道断だと怒るオルク。
(子供達の夢を壊すなんて許せません!)
そう思いながら怪人達が密集した場所に行きユーベルコードを発動させる。
メル・ルビス
「もうっ!なんで子供たちの夢を壊しちゃうかな?」
僕もつい最近まではサンタさんの存在を信じてたから、
なんか人ごとには思えなくて思わず参加したの
悪い怪人さんは僕の「秘儀・猫猫パンチ」を食らわせるよ!
【野生の勘】を使って相手からの攻撃を避けながら、
行ける!って思ったときにパンチしちゃうの
パンチした後は見えない鎖で繋がれるから、行動範囲も狭く出来るしね
「これでも食らえーっ!子供たちの恨みなのっ!」
「もうっ! なんで子供たちの夢を壊しちゃうかな?」
メル・ルビス(いつでもキミの傍に・f03622)はその小さな体いっぱいで怒りを表していた。つ最近までキマイラフューチャーの子供たちのような考えでいたメルである。それが理不尽に壊される事を怒っていた。そして、それはオルク・オセアン(電子の少年・f00431)も同じであった。
「夢見る子どもたちにサンタがいないなど、そんな事をするなんて言語道断です」
オルクはアイドルであり、夢を与える存在である。そんなアイドルと対極の行動をする怪人を、許せるはずがない。
「行くよ、オルクくん!」
「はい、メルさん」
二人は合図と共に怪人の元へと走る。怪人たちはまず動きを止めようと、取り巻きの半数が自らの【両掌】を掲げた。怪人のユーベルコード『生クリームブラスト』の予備動作だ。
「左に!」
「はいっ」
しかし、【生クリーム】が飛び出てくる前に、メルは【野生の勘】を働かせた。元から決めていた合図と共に、メルとオルクは攻撃を避ける。メルはさらに、地を蹴り攻撃を終えた怪人たちの群れへと一息に飛んだ。
「『秘儀・猫猫パンチ(ヒギ・ネコネコパンチ)』!」
そして、その愛らしい肉体から【猫パンチ】をお見舞いしていく。怪人の肉体はクリームを飛散させながら爆発していった。クリームを浴びながらも怪人たちの群れの中をかいくぐり、次々【猫パンチ】を怪人へ叩きつけていく。何とか肉体を保っている怪人も、気づけば【見えない鎖】で繋がられ、思うように身動きが取れなくなっている。
丁度中心から見て右側でのメルの攻防の反対側でも、激しい戦いが繰り広げられている。
【生クリーム】は避けられてしまう、と判断したのか、オルクに向かってロウソクを投げつけている。その炎が当たれば、オルクのシャチをモチーフにした上着はたちまち燃え尽きてしまうかもしれない。だが、それでもオルクは群れの中へと突き進む。
(子供達の夢を壊すなんて許せません!)
オルクはユーベルコード『花びらの嵐(ペタル・オラージュ)』を発動させた。装備していた武器が、無数の【ブラックビオラ】の花へと変わる。ビロードのような質感を持った花びらたちは、ふわふわと風に揺れている。
「舞って、ビオラのお花さん達」
オパール色の花びらたちは、オルクの言葉で舞い踊る。怪人たちは無数に舞うブラックビオラにより、その身が切り裂かれていった。
「か、囲め! 挟み撃ちにしろ! サンタなどいないと、思い知らせろ!」
リーダー格の売れ残ったクリスマスのケーキ怪人が指示を飛ばす。素早く怪人たちはメルとオルクを囲むように動く。突っ込んできた二人を挟み撃ちにしようという動きだ。
「その三太ってのがどこの誰だか知らねぇが。子供の信じてるもんを嘘だと断じるのは良くねぇよなぁ」
その機を待っていたのは猟兵たちの方であった。遠呂智・景明(大蛇殺しのヤドリガミ・f00220)はどこからともなく現れ、刀を構えた。売れ残ったクリスマスのケーキ怪人は、機関車怪人を守る事を優先していた。その為、あえて囮のような形でメルとオルクは突っ込み、怪人たちを攻めに転じさせたのだ。
「その身体、切り分けてやるよ」
景明は【錬成カミヤドリ】によって己の依代の分身である刀を呼び出した。『大蛇切 景明』。かつて人々を苦しめていた大蛇を一刀のもとに斬り捨てた、元は無銘の刀である。景明は呼び出した19本の刀を、念力で操り、一斉に怪人へと切りかからせた。
鎖と花びらにより動きを制限されていた事もあり、怪人たちは次々とその身を切り刻まれていく。
「えーと、なんつうんだったか。くりすますとやらの時には」
景明は何やら頭を捻りつつ思考しているが、怪人たちを切り分ける手はとめない。
だが、怪人もまだ終わらない。最後に残ったリーダー格の怪人がその身を【スポンジケーキ】へと変えると、両腕をしならせて、今まさに攻撃しようとする刀を振り落とそうとする。が、それは【フェイント】であった。ぴたりと振り下ろす前に止まった刀のすぐ下を怪人の腕が通り過ぎる。と同時に、刀が振り下ろされ、あっさりと腕が斬り落とされた。
「く、くそぉ!」
最後のあがきに、とリーダー格の怪人が、体ごと沈み込んだ。そして、その伸縮性を持ってロケットのように景明へと体当たりを行った。しかし、【見切り】によりあっさりと躱され、ついでにとばかりに体に深々と刀が突き刺さる。
「まだだ!」
だが、そんな中でも怪人は再び地面に足をつけ、さらに体当たりを食らわそうと体を沈ませる。
「それはこっちの台詞だな」
刹那。怪人の頭上から【2回攻撃】による連撃により、最後の売れ残ったクリスマスのケーキ怪人が二等分される。これで、機関車怪人を守る売れ残ったクリスマスのケーキ怪人は全ていなくなった。
「なあ、お二人さん。くりすますの時の口上があったと思うんだが、なんていったんだっけかな」
景明は戦闘中にも考えていて結局思い出せなかった言葉をメルとオルクへ尋ねた。
二人は顔を見合わせ、くすりと笑うと、せーので答えた。
「メリー・クリスマス!」
大成功
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第2章 ボス戦
『機関車怪人』
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POW : トレイン・フリーク
【時刻表】【鉄道模型】【鉄道写真】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 出発進行!
自身の身長の2倍の【蒸気機関車】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : アクシデントクラッシュ
対象の攻撃を軽減する【高速走行モード】に変身しつつ、【煙を噴き上げながらの体当たり】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
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●機関車怪人との戦い
売れ残ったクリスマスのケーキ怪人が全て倒され、機関車怪人は怒り心頭であった。
「せっかく拾ってやったものを、なんと役立たずな! やはりクリスマスの眷属は役にたたん!」
機関車怪人は怒りのままに傭兵たちをにらみつける。
「だが、この私自らが貴様ら傭兵を倒してやろう。そののち、再び子どもへ『サンタなどいない』と叫び続けてやろう!」
竹城・落葉
何だと……。命を賭して戦った部下達を、役立たずと呼ぶとは……。元武将として、その言動は許せん。貴様をサムライブレイドの錆にしてくれよう!そう考えた後は余計な事を殆ど考えず、戦闘に集中する。
我は『剣刃一閃』を用いて怪人を切り伏せる。戦闘中は冷酷な雰囲気を醸し出し、無表情かつ殆ど無言で攻撃を仕掛ける。
「サンタなどいない」と言っているが、残念ながら今の我はサンタだ。そうだな、邪悪なオブリビオンである貴様には、我から剣刃一閃をプレゼントしてやろう。問答無用!
ムー・リンラン
「わかりあえないね、だってサンタがいたほうが楽しいじゃないか。」
自分は釣竿使って他の皆が攻撃しやすいところまで怪人を釣り上げよう。【祈り】【投擲】すれば針にかかるのを待つことも要らない、針は直撃するはず。体を持ってかれないように地縛鎖で自分を固定しておかないとね。
釣ってる間は無防備だけど、そこは味方に任せようか。
「さぁて一本釣りだ。」
【ゴースト・リボーン】で先の戦いのケーキ怪人達を味方にしよう。彼らだってそんなこといわれちゃ黙ってないでしょうよ。売れ残ってしまったから負の感情が生まれてしまったけれど、もともとクリスマスケーキは子供達を喜ばせるためのものだよ。役立たずではないさ。
「全く、べとべとして邪魔だな」
機関車怪人は倒れている売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を蹴とばしながらスペースを空けると、次々と【時刻表】【鉄道模型】【鉄道写真】をその場に並べていく。あまりに乱暴な手段で、怪人は自らを強化していった。あまりの事に、周囲の猟兵たちは思わずその場で固まってしまった。
命を賭して戦った部下たちの扱いに、竹城・落葉(一般的な剣客・f00809)は激怒する。どのような形であれ、部下を役立たずと呼び、そして微塵も感謝の気持ちもない。
(元武将として、その言動は許せん。貴様をサムライブレイドの錆にしてくれよう!)
落葉はサムライブレイドを腰から抜くと、どの猟兵よりも早く怪人へ真っすぐに突き進んだ。
「!」
だが、すぐに足を止め、身をかがめる。次の瞬間、怪人の豪腕が頭上すれすれをかすれていく。これでもかと置かれた【時刻表】により、怪人の力は最早わずかに触れる事すら許されないほど、上がっていた。それを瞬時に見切った落葉はその攻撃を受けずに避けたのであった。無論、そのままでは終わらせない。かがめた状態から足腰の力だけで身をひねり、サムライブレイドを頭上に向かって切り上げた。
狙うは攻撃の為に怪物が伸ばしきった左腕の健――が、ガキン、と金属音を響かせ、剣は通らなかった。怪人の防御力もまた、各段に上がっていた。
「ふはは! 無駄無駄! 私はこのまま会場へ向かい、叫んでくる! サンタなどいないのだとなぁ! ふははは!」
怪人は猟兵など眼中にない、とでも言うように、自らの体を【高速走行モード】に返ると、煙を噴き上げながら走り出した。今この瞬間ならば、確かに猟兵たちの動きでは怪人の動きに間に合わない。機関車怪人は思い込みが激しいだけに、一つ一つの行動が迅速なのであった。
「わかりあえないね、だってサンタがいたほうが楽しいじゃないか」
そんな怪人へぼそりとつぶやいたのはムー・リンラン(放浪マンゴー・f06630)だ。各地を気ままに放浪している彼は、夢や希望などとは言わないかもしれないが、楽しい方が好きなのだ。
今まさに高速で猟兵たちの間を突き抜けようとする怪人へ向かって、ムーは釣竿を【投擲】した。煙に覆われながらの動く的であったが、ムーの【祈り】も届いたのか、あるいはデコボコとした怪人の体が災いしてか、針は怪人へと引っ掛かる。
大魚よろしく、そのまま走り去ろうとする怪人に体を持っていかれそうになるムー。だが、予め体は地縛鎖で固定している。
「さぁて一本釣りだ」
ムーは目一杯の力を持って怪人を「釣り上げた」。高く放り投げられるように浮き上がった怪人は、そのまま猟兵たちのいるど真ん中へと戻される。怪人は受け身も取れず、全身を地面へと叩きつけられた。
「こ、こんな屈辱を……だが、貴様らの攻撃など怖くは……何ぃ!?」
怪人が並べていた時刻表、鉄道模型、鉄道写真を振り返ると、そこでは【シャーマンズゴースト人間】が次々とそれらを破壊していたのだ。彼らはひとしきり「売れ残った恨み!」「役立たずじゃないやい!」などと叫び、ひたすらに怪人の作りだした時刻表や写真を破き、模型を破壊していく。
「【ゴースト・リボーン】。もともとクリスマスケーキは子どもたちを喜ばせるためのものだよ。役立たずではないさ」
ひょうひょうと言い放つムー。彼は自身のユーベルコードを用い、先ほど戦った売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を復活させていたのだ。戦闘力こそ落ちているが、模型などを破壊するには十分だ。こうなっては、今この瞬間、怪人の攻撃力も防御力も、元に戻っている。
「サンタなどいないと言っているが、残念ながら今の我はサンタだ」
怪人が落ちた先は落葉の近くでもある。落葉は未だにサンタクロースのコスプレをしている為、確かにサンタである。
「そうだな、邪悪なオブリビオンである貴様には、我から剣刃一閃をプレゼントしてやろう」
「な、なに――」
「問答無用!
ユーベルコード『剣刃一閃』。落葉の一撃は容易く怪人の左腕の健を切断した。
落葉とムーの協力により、怪人は以後左腕を上手く動かす事が難しくなるだろう。
大成功
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筒石・トオル
敵が高速走行モードに変身してる間に、僕は『ヒプノシスリストラクション』を発動する。
変身の最中に攻撃するのはお約束に反するかもだけど、相手は子供を悲しませる悪い奴だからいいよね?
動きが鈍った所で接近し、【零距離射撃】で熱線銃を撃ち込むよ。
「クリスマスにはクラッカーだけど、キミにはこの一発の方がお似合いだよ」
動きを止められる時間は短いので、撃ち込んだら離脱。
以降は遠距離から熱線銃での牽制攻撃に務めるよ。
オルク・オセアン
「仲間を使い捨てなんて……」
売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を哀れに思うオルク。
戦闘では他の猟兵達をサポート。
ユーベルコードにより相手のユーベルコードを相殺させる。
「仲間を使い捨てなんて……」
機関車怪人の行動に、オルク・オセアン(電子の少年・f00431)は胸を締め付けられるような思いであった。アイドルであるオルクにもまた、仲間がいる。仲間と共に歩んで来た事を思うと、怪人の行動は信じられず、とても哀しい気持ちになるのであった。
「売れ残りが仲間な訳なかろう!」
だが怪人にそんな想いは届かない。再び、怪人は自身の肉体を【高速走行モード】へと変身させようとする。
「おっと、そうはさせないよ」
筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)がユーベルコード『ヒプノシスリストラクション(ヒプノシスリストラクション)』を発動させた。怪人へ向け、【眼鏡】から【点滅する光】が放たれる。
「ま、まぶしい!?」
変身途中であった怪人だが、思わずその身を竦ませ、動きが止まる。その隙をトオルは逃さない。瞬時に怪人の懐にまで潜り込むと、熱線銃の銃口を怪人の胴体へと突き付けた。その距離は、零。
「クリスマスにはクラッカーだけど、キミにはこの一発の方がお似合いだよ」
【零距離射撃】でトオルは熱線銃を撃ち込んだ。放たれた強力なビームは機関車怪人の体を熱し、銃口が突きつけられた表面を溶かしていった。
(ここまでか……)
だが、効果時間はそう長くない。怪人が動き出す前に、トオルは素早く撤退していく。だが、既に怪人は動き出していた。
「おのれぇえええ!」
【高速走行モード】への変身を終え、トオルへと体当たりを行う。トオルもまた、その動きを牽制する為熱線銃を放つ。だが、機関車怪人のユーベルコード『アクシデントクラッシュ』は、その体から煙を噴き上げる。熱線銃から放たれるビームは煙にまかれ、その効果を十分に発揮出来ていない。怪人はトオルにまでごくわずかの所まで近づいていた。
「させません!」
オルクはユーベルコード『音の波(オトノナミ)』を発動する。既に二台のスピーカーへマイクを繋ぎ、準備は出来ている。怪人へ向け、【強力な音波】を放った。音波はトオルを通り過ぎ、怪人へと直撃する。
「なんだぁ、そんなもの効かな……何!」
海洋生物の中で一番賢いのはと問われると、イルカと答える者も多いだろう。だが、イルカに負けず劣らず、シャチもまた賢い。オルクはそんなシャチもモチーフとされており、その頭脳もまた秀でている。既にオルクは機関車怪人のユーベルコード『アクシデントクラッシュ』を目にしていた。そのユーベルコードを相殺させる音波を怪人に放ったのだ。 怪人のユーベルコードは解除され、トオルは無事離脱に成功する。トオルによる攻撃も、決して浅くはないだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイシャ・ソルラフィス
もぉーっ! さっきからひどいことばかり言って!
サンタさんはいるよっ、みんなの心の中に!
ただ、悪い子なあなたの心の中には、いないだけ!
それが分からないから、あなたの元にはサンタさんがやってこないんだよ!
ボクは、支援型ユーベルコードでみんなを強化して、その後はWIZによる《全力魔法》《属性魔法》技能で攻撃します。
相手の体当たり攻撃とかは、《見切り》技能で、なんとか回避…できたらいいなぁ。
「とにかくみなさん、怪我しないように注意してくださいね?」
「もぉーっ! さっきからひどいことばかり言って!」
アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)は怪人の暴言、暴挙へ頬を膨らませる。
「サンタさんはいるよっ、みんなの心の中に! ただ、悪い子なあなたの心の中には、いないだけ!」
アイシャの言葉は真理であった。サンタクロースはいるのか、いないのか。いるならどこにいるのだろうか。世界のどこかでは神が実在するように、もしかしたら世界のどこかにサンタクロースが実在するのかもしれない。だがそんな事は実際の所どうだっていいのだ。サンタクロースはいる、と信じる心。それこそが、サンタクロースが存在するという証明に他ならない。そういったものが、誰かの心の拠り所になるのかもしれない。アイシャにとっての、シェイミーや尚のように。
「ふん! 屁理屈だな。いない事実をさもいるかのようにのたまって」
だが、怪人がアイシャの言葉を受け入れる事はない。
怪人が再びユーベルコード『アクシデントクラッシュ』を発動させる。だが、そこにはこれまでのような油断や驕りが一切ない。吹き出す煙もその勢いは先ほどまでの比ではない。怪人は死力を持って猟兵を相手取るつもりであった。
「これは……」
アイシャはその雰囲気を感じ取り、思考を切り替える。
「みんな! ここが正念場だよ! ここで怪人を倒して、子どもたちを笑顔にして! みんなで楽しいクリスマスパーティをしよう!」
アイシャがその場にいた猟兵たちへ呼びかける。もちろん、と全ての猟兵たちは頷いた。アイシャの励ましの言葉は【アイシャの応援】であり、その言葉を聞いた全ての猟兵たちは戦闘力が増加する。
「小賢しい!」
機関車怪人は即座にアイシャへと体当たりを行う。全力の【高速走行モード】は、機関車と同等の速さを持ってアイシャへと向かってくる。そう来るであろう事を予測していたアイシャは【全力魔法】と【属性魔法】をぶつけながら、その軌道を計る。
「……今だ!」
わずかな魔法のうねりから機関車怪人の体当たりを何とか【見切り】、寸前で回避する。そしてすぐさまその場を離れる。
「とにかくみなさん、怪我しないように注意してくださいね?」
アイシャは猟兵たちを気遣いながら、後方へと退避していく。
成功
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メル・ルビス
「クリスマスを楽しむためにもう1戦だね。
大丈夫。僕はまだまだやれるよっ!」
さっきの敵もサンタさんはいないとかひどい事言ってたけど、
君もさっきの敵は役立たずとかひどいこと言うんだね
僕は【ライオンライド】を使うよ
このライオンはすごく大きくて強いんだからねっ
君は僕のパンチだけじゃ通用しなさそうだから、
更に強力なのをお見舞いしてあげるね
楽しいクリスマスを絶対に邪魔はさせないっ!
「クリスマスを楽しむためにもう1戦だね。大丈夫。僕はまだまだやれるよっ!」
アクシデントクラッシュにより毎秒寿命を削りながらも、怪人は走り続ける。そんな怪人を止めるべく、メル・ルビス(いつでもキミの傍に・f03622)が駆けていく。
「おいで!」
走るメルに並走するように、黄金のライオンが召喚される。メルのユーベルコード『ライオンライド』である。メルがタイミングを合わせジャンプすると、ライオンもまたメルの飛び上がった軌道へと走り、メルはライオンの背にまたがった。その瞬間、ライオンの速度がぐんと上がり、雄たけびを上げながら機関車怪人の元へと走る。
戦闘力を強化し、さらにはメルとライオンとで強化している。アイシャの応援もあり、その力は互角――のはずだった。
機関車怪人は未だ完全体ではない。助走を付けるように加速し、飛び上がった。
「出でよ、わが愛機!」
怪人の掛け声と共に、全長4メートルの【蒸気機関車】が召喚された。そして、怪人が機関車の煙突に入るように騎乗した。下半身は煙突の中に、上半身はそのまま飛び出ている恰好だ。
「『出発進行!』」
怪人は声高らかに発信の合図を送る。アクシデントクラッシュと相まって、初速すらも高速である。
(ん~、ちょっと難しそうだけど……やるっきゃない!)
怪人の死力を尽くしたアクシデントクラッシュと出発進行の合わせ技、メルは分が悪いと理解する。だが、メルは次に繋げる事を選択した。
メルはライオンを巧みに手繰り、機関車怪人の左側を並走する。
「 楽しいクリスマスを絶対に邪魔はさせないっ!」
メルは全力で蒸気機関車の機体へ拳をぶつける。機体はは大きくへこみ、だがそれだけであった。
「傷をつけたな!」
怪人は蒸気機関車を大きく「ドリフト」させ、並走していたメルをライオンごと吹き飛ばした。あわや、という事態に、しかしメルのダメ―ジはそう多くない。ライオンがその身を挺し、メルを庇っていたのだ。
(無理させてごめんよ……そして、後は任せたよ)
送還されゆくライオンへ心の中で謝りつつ、他の猟兵へと後を託した。
苦戦
🔵🔴🔴
カチュア・バグースノウ
クリスマスをバカにしたわね?
その愚かな心、ぶち倒してやるわ
クリスマスは神聖なものよ!(武器で指差し)
ごめんなさいするまで叩くのをやめない!
賢者の影で攻撃するわ
問いかけは「あなたのサンタはいる?いない?」
いるって言ってもぶち倒す。いないって言ったら倍増しでぶち倒すわ!
別にね、サンタがいるかどうかなんてどうでもいいのよ
信じていたいって気持ちが大切なのよ
わかった!?
サンタはいるの!
ついでにサンタの連絡先知ってたら教えなさい!
エール・ホーン
仲間を役立たずだなんて
なんて酷いやつなんだ……!
そしてケーキ怪人を抱き起こす
敵だったけど、ケーキ君たちは一生懸命だった!
そしてこんなにもおいしい!
抱き起こしたケーキ怪人をちゃっかり美味しく頂きながらほっぺにクリームをつけ立ち上がる
自慢の翼をはためかせて出発進行した蒸気機関車に一緒に乗車してしまおう
野生の勘で動きを見切って武器受けで受け止める
君の攻撃なんて効かないよ!
ほら、せっかくだから蒸気機関車を綺麗にデコって
子供達を喜ばせる、夢列車にならない?
きっと毎日、子供の達の笑顔がみられて、幸せな気持ちになるよ!
わかり合えないなら悲しいけど仕方ないね
ガチキマイラで思いっきり噛みつき攻撃!
杼糸・絡新婦
行かせるかいな。
進行方向に立ちふさがる形で
真正面から力を抜いて攻撃を受け止めます。
オペラツィオ・マカブル使用
ほれ、自分からもクリスマスプレゼントや、受け取り。
狩衣を着た狐人の人形・サイギョウで攻撃。
お子ちゃんたちが待っとるのはお前やないで。
あとな、お前さんにはたくさんのサンタがおるみたいやから、
感謝せえよ。
悪い子にお仕置きするサンタやけど。
「仲間を役立たずだなんて、なんて酷いやつなんだ……!」
エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)は機関車怪人に誑かされ、こき使われた売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を抱き起す。オブリビオンとはいえ、その愛らしい造形と哀愁をさそう表情には、戦う事を躊躇してしまった猟兵も少なくないだろう。
「敵だったけど、ケーキ君たちは一生懸命だった!」
エールもまた、そんな猟兵の一人だったのだろう。怪人の表情をよく見る為だろうか、抱きかかえた怪人を自身の顔に近づけていく。
「そしてこんなにもおいしい!」
いいや、エールはケーキを食べたかっただけだった。会場近くにいたため、マ尾の「半額にしちゃあ美味いな」という言葉を聞いていたのかもしれない。
「絶対に許さないぞ!」
エールは口にクリームを付けながら、勢いよく立ち上がった。ちょっと幸せそうな表情なのは、気のせいだろうか。落葉やオルクにはちょっと見せられないかもしれない。
そんな風にエールが売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を味見している中でも、戦いは続いている。
メルを弾き飛ばした事で「猟兵恐るるに足らず」と安心したのか、現在機関車怪人は余裕の表情で猟兵たちを見下ろしている。そんな怪人へカチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)が啖呵をきる。
「クリスマスをバカにしたわね? その愚かな心、ぶち倒してやるわ」
サンタクロースが来なかった身ではあるが、それでもカチュアにとっては楽しく、心待ちにしているイベントの一つである。シャンパンやスパークリングワインで流し込むローストチキンは、格別なのだ。
「クリスマスは神聖なものよ!」
カチュアは手にした黎の槍の切っ先を怪人へ向けつつ、叫ぶ。
「ごめんなさいするまで叩くのをやめない! 『賢者の影』!」
カチュアは魔法で影を伸ばすと同時に、怪人へ質問をした。
「あなたのサンタはいる? いない?」
至ってシンプル。だが、怪人の答えは決まっている。
「サンタなどいない!」
ユーベルコード『賢者の影』は、命中した対象が真実を言えばよい。だが、カチュアにとってはともかく、怪人にとっての真実は「いない」のである。影は空しく霧散する。そして、怪人は再び動き出す。
その初速はすでに最高速度。まともに当たれば打ち所など関係なく、五体無事ではいられないだろう。削られていく寿命は、もはや怪人にとって些細な事。今はただ猟兵たちを倒す事だけ考えている。
そんな状況の中、ふらりと一人の猟兵が機関車の進行先、真正面に立った。正気の沙汰ではない。強化されたメルがまるで相手にならず、吹き飛んだのだ。そんな、まるで脱力したような姿勢でいるなど、自殺行為に他ならない。
「行かせるかいな」
だが、杼糸・絡新婦(ヤドリガミの人形遣い・f01494)の声色に恐れはない。すぐ目の前にまで迫った機関車の先端へ、すらりと伸びた手を前に差し出した。
「ば、ばかな……」
あまりの事態に、怪人は思わずうめく。同時に、絡新婦の背にいた【からくり人形】がカラカラと音を立てたかと思うと、とてつもない勢いで蒸気を吐き出した。
それは、相性によるものなのかもしれない。『オペラツィオン・マカブル』。絡新婦のユーベルコードは、怪人のユーベルコードのうち、『アクシデントクラッシュ』を無効化する事に成功する。
「お子ちゃんたちが待っとるのはお前やないで」
そう、今宵はクリスマス。子どもたちが待つのは怪人などでは決してない。
「あとな、お前さんにはたくさんのサンタがおるみたいやから、感謝せえよ――――
悪い子にお仕置きするサンタやけど」
くすり、と絡新婦が笑うと同時に、機関車怪人の背後から元気な声が響く。
「こんにちは! サンタだよ!」
エールが自慢の翼をはためかせて、怪人の真後ろへと舞い降りる。そして、両手を後ろ手に回しながら、怪人へ問いかける。
「ねぇねぇ、どうせなら蒸気機関車を綺麗にデコってみない? 子供達を喜ばせる、夢列車になればさ、きっと毎日、子供の達の笑顔がみられて、幸せな気持ちになるよ!」
「わ、私の機関車をバカにしてるのか!」
「えー、そんなつもりじゃないのに。そっか、わかり合えないなら悲しいけど仕方ないね」
エールは両腕を後ろ手から前へ持ち上げる。その両腕は、【ライオン】となっていた。そして、怪人が行動を起こすより早く、両腕のライオンで怪人の両肩へかみついた。
「うおおお! この、は、放せ!」
「あらあら。素敵なプレゼントやな。 ほれ、自分からもクリスマスプレゼントや、受け取り」
間髪入れず、絡新婦は怪人へ向けて狩衣を着た狐人の人形・サイギョウを繰り出す。サイギョウは身動きの取れない怪人を容赦なく攻撃していく。拳を叩きつけ、蹴り付け、また殴る。それはこれまでの行いを反映するかのようなプレゼントだ。
「別にね、サンタがいるかどうかなんてどうでもいいのよ。信じていたいって気持ちが大切なのよ」
そして、カチュアが再び怪人へと近づいていく。
「もう一度問うわ。『あなたのサンタはいる? いない?』」
カチュアの問いかけと共に、影が伸びていく。もはや動く事すら出来ぬ機関車を影が飲み込む。
「な、何度聞かれようと答えは変わらないぃ! いない、サンタなどいないぃい!」
怪人の答えは変わらない。ああ、もしも怪人が心変わりするような存在であったなら、まだ結末はわからなかったのかもしれない。
「残念。サンタは『いる』わ」
賢者の影は、機関車怪人の答えを「真実」ではないと判断する。びしり、と亀裂が走る。落葉が傷つけ、トオルが熱した機関車怪人の体は蒸気機関車に共有され、そしてメルがへこませた。そこに蓄積されたダメージが、一気に迸る。
「な、なぜ、なぜだああ!」
絡新婦言った。「お前さんにはたくさんのサンタがおるみたいやから、感謝せえよ――――悪い子にお仕置きするサンタやけど」と。怪人はきっと不本意であろうが、『クリスマスプレゼント』をもらってしまったのだ。怪人にとって、猟兵はサンタクロースとなってしまっていた。
蒸気機関車がぐしゃぐしゃに崩れ落ちていく。生命力を共有していた機関車怪人もまた、体がひしゃげ、折れ曲がっていく。すでに、機関車怪人の残りの命はごくわずかである。
聖夜の戦いは激闘であった。理不尽を働く怪人へ多くの猟兵たちは義憤にかられ、時に苦戦を強いられながらもどうにか勝利をもぎ取った。
「わかった!? サンタはいるの! ついでにサンタの連絡先知ってたら教えなさい!」
「し、知る訳ないだろう……」
しかし、カチュアへのツッコミが機関車怪人の最後の言葉になろうとは、怪人にも、猟兵たちの誰も予想出来なかったかもしれない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『レッツ☆キマイラ流パーティー!』
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POW : おいしいものを食べるぞー!!(壁から出てきた食べ物を食べる)
SPD : インスタント・ファッションショー(壁から出てきた衣服で遊ぶ)
WIZ : キマイラリゾートを満喫(リラックスしたり、キマイラと遊んだりする)
👑11
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●メリー・クリスマス!
怪人は倒れ、もはや何の危険もない。キマイラフューチャーの住民たちは、面白おかしくパーティを楽しみ始めている。
そしてそれは猟兵も同じであった。
パーティ会場はクリスマス一色。そのパーティは三日三晩は続くだろう。え? 25日までがクリスマス? そんなものはキマイラフューチャーではもう古い。いつまでだってクリスマス。みんなが飽きるまでクリスマス。
さあ、みんな、楽しいクリスマスを、キマイラ流に楽しもう!
メル・ルビス
戦闘お疲れ様なのっ!
一緒に戦ってくれたみんなにお礼を言いながら、僕はキマイラリゾートを満喫するよ
キマイラのみんなと遊ぶの楽しみにしてたんだ♪
この機会に友達も作っちゃうの!
「ねーねー。何して遊ぶ?
僕はみんながしたいことしたいんだ♪」
ご機嫌そうにしっぽをゆらゆら揺らして遊ぶ気満々!
もし遊んでる時にケガをした子がいたら、猫の毛づくろいで直してあげちゃう
ケガを放っておくのは危険だからね
他にケガをした子がいたら僕に言うんだよ?
オルク・オセアン
子供達の前でクリスマスソングを披露。
その後、子供達と遊ぶ。
「皆さん、メリークリスマスです!」
オルクはかつて自分を創ってくれた人(通称マスター、すでに亡くなっている)と楽しく過ごしたクリスマスを思い出しつつパーティーを楽しむ。
竹城・落葉
さて、仕事はひと段落したが、今の我はサンタだ。つまり、この世界の子供達にプレゼントを配らねばならぬ!まずは、先程会った子供達にプレゼントをあげよう。
……しまった、勢いでサンタのコスプレをしたから、プレゼントを用意していない。そうだ、ケーキ怪人をケーキとしてプレゼントしよう。
勿論、彼らの悪行を許した訳ではないし、死によって十分償っている。だが、売れ残りである苦しみや上の者(機関車怪人)から受けた仕打ちには僅かに同情する。これはせめてもの手向けだと思っての行動だ。
さぁ、楽しいクリスマスだ。今の人格は冷酷な雰囲気が出るが、子供達に優しく接するとしよう。無表情のつもりだが、思わず口元が緩むな。
桜雨・カイ
あいにくとサンタクロースという人について知識が無いので
子供達と準備をしながら教えてもらいましょう
私は人形だし子供ではないですが
子供たちのもとへ来てくれるのなら手伝います
ミルクとクッキーを用意しておくんですね
靴下も必要ですか…足袋では駄目でしょうか?
ちゃんと眠らないとサンタクロースは来てくれないのでは…
心配なのではしゃぐ子供達が眠るまで様子見します(つられて一緒に眠ってしまう)
目が覚めたら子供達のもとに望むプレゼントがありますように…
カチュア・バグースノウ
ぼっちクリスマス回避ー!
よーし食べるわよ!飲むわよー!
シャンパンとケーキ食べるわ!
足りなくなったらチキンにオードブルもいただく
……壁から出てくるのはまぁ気にしないことにして
ん〜!おいしい!
端っこで飲み食いしてる人がいれば巻き込むわよ〜
こっちきてみんなで楽しみましょ!
ぷはー!シャンパンが五臓六腑に染み渡るー
かんぱーい!
乾杯なんて何回やってもいいのよ〜なんたってクリスマスなんだもの!
サンタさんの連絡先は聞けなかったけどー
また来年があるもんね!
大将ー!(?)ワインおかわりー!
アイシャ・ソルラフィス
WIZで、キマイラの子供たちと遊びます。
ちょうど《歌唱》《鼓舞》《料理》技能があるので、
おうたを歌ったり、
まだ怪人たちの「サンタなんていない」発言を気にしてる子を励ましたり、
クッキーなどの、ちょっとしたお菓子を作ってきて、それを振る舞ったり。(でも壁から食べ物が出てくるのなら、必要ないかな?)
あとは《祈り》技能もあるので、サンタさんに感謝の祈りを捧げて、そのお祈りの仕方を子供たちに教えたり。
余興でユーベルコードを使って透明になって驚かせたり。
(これ、疲れるんだよね…/汗)
そんな感じでワイワイガヤガヤできたらいいなって思います。
杼糸・絡新婦
さてと、ほなお酒飲みつつ、美味しいもんでも食べましょか。
呑めるやつ他にもおるか?
(遊んでいる様子を楽しそうに眺めつつ食事しています)
あ、折角や、草壁さんもいっぱいどう?
ほい、おまけ(サンタの乗ったケーキ一切れ渡す)
サンタさんが来てくれたで。
猟兵サンタのお仕事はおわったから、
今からはちゃんとプレゼント配るサンタさんの出番やろうなあ。
メリークリスマスや。
メヤ・トゥスクル
【絵空】
エール、お仕事、おつかれさま。
イクスは、こんばんは。メリー、クリスマス。
赤い帽子を、被るのが、マナー、なのかな。ありがとう。
すこしびっくり、したけど。
僕は、だいじょうぶ。かかってない、よ。イクスは、大丈夫、かな。
エールも、怪我、ない?
どんな食べ物が、出てくる、かな。
壁をこん、こん、とたたいて。
あまいものとか、お肉がいいな。
ふわふわして、ゆきんこは、初めて言われた。
冬は、嫌いじゃないし、クリスマスの雰囲気
似合ってるなら、うれしい。
イクスが、春、というのは、わかる気が、する。
エールも、春のような、雰囲気が、するから。
二人は、似てるのかも。
春のお花見、いい、ね。楽しみ。また、みんなで。
エール・ホーン
【絵空】
こんこんで現れた赤い帽子
二人にもにこにこはいどうぞっ
ノンアルシャンパンでめりーくりすまぁ…(ばしゃーん)
わぁぁあ、ご、ごめんね!?
うぇぇ、二人ともかからなかった!?
恥ずかしい失態にわたわたしちゃったけど
二人の優しい言葉にすぐにぽかぽかな気持ちになって
ハンカチもどうもありがと~><
感動してすぐ涙が出ちゃう
ケーキもチキンみんなで食べるとおいしーね?
なんて口一杯に頬張って!
メヤくんはふわふわして、ゆきんこみたいで
クリスマスの雰囲気がとってもよく似合うよね~!
イクスくんは反対に春って感じ!
あっ、でも確かに、それも分かるっ!
それじゃあ春は、みんなのお揃いだね
ボク、春にはみんなでお花見もしたいな♪
イクス・ヴェルデュール
【絵空】
メリークリスマス。エール、メヤ
友達とすごすクリスマスなんて初めてだ!
赤い帽子を被れば気分はもうサンタクロース
おーい、二人共。プレゼントは何がいい…って
……ぷっ、あはは!
すごかったなシャンパン
きらきら流れ星みたいで綺麗だった!
俺は平気。メヤも大事ないようで何より
エールは大丈夫か?濡れたりしてたらこれで拭いておけよ(そっとハンカチを)
期待に胸を膨らませながら叩く壁
俺はケーキをめいっぱい食べたい
クリスマスにたべるケーキって特別しあせな甘さがして好きなんだ
メヤの優しい雰囲気も春っぽさを感じるけど
みんなそれぞれ似てるのかも。ってそういうこと
お花見もみんなで行けたらいいな
ああ今から春が楽しみだ!
クリスマスパーティの会場として選ばれているこの施設だが、選ばれたのにも理由がある。この施設、クリスマスの時期になると、壁を叩く事でクリスマス風の衣装や食べ物類が出てくるのだ。そういった理由から、近隣のキマイラフューチャーの住民たちはこの会場へ集まるのだ。
そして、今日は多くの猟兵が参加しているという事もあって、子どもたちは大はしゃぎ。みんなが構ってもらおうと次々に遊びに誘ってくる。
そんな中でも、戦いを終えた猟兵たちは互いを労いながら、時にはキマイラたちと遊びながら、パーティを楽しんでいる。
「みんな、お疲れ様なのっ!」
「ああ。ひと段落だな」
「落葉さん、ずっとサンタ服で戦ってて、すごいね」
「うんうん! あんなに動きにくそうなのに、どんどん切り捨てていってたの!」
メル・ルビス(いつでもキミの傍に・f03622)とアイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)が竹城・落葉(一般的な剣客・f00809)を労う。落葉は大したことではない、と無表情で答える。
「我は今日はサンタだ。子どもたちの為ならば苦ではない。……はっ!」
しかし、落葉は急に何かを思い出したようにはっとすると、早足でその場を去っていった。そんな様子にメルとアイシャが互いに首をひねる。
「落葉さん、どうしたのかな?」
「何か用事を思い出したのかな? ようし、僕もキマイラのみんなと遊ぼうっと♪」
「わぁ、楽しそう。じゃあ、ボクはお歌を歌おうかな?」
「それも楽しそうだねっ!」
「でしょでしょ?」
メルとアイシャはくすくすと笑いあい、キマイラの子どもたちの元へと向かっていった。
そんな二人の近くで、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)とオルク・オセアン(電子の少年・f00431)は子どもたちと一緒に会場を飾り付けていた。
「ここ、でしたでしょうか」
材料を出す為に、カイが壁をコンコン、と叩く。だが、壁を叩いて出てきたのはノンアルコールのシャンパンであった。思わず手に取り、しげしげと眺めるカイ。
「おや、これも素敵ですが、ちょっと違いましたか」
「ふふ。カイさん、もうちょっとこっちですよ」
カイの叩いた壁からもう少し左側をオルクがコンコン、と叩く。すると、そこからはたくさんの飾り付け用の紙が飛び出てきた。
「ああ、そちらでしたか。オルクさん、ありがとうございます」
「いえいえ。しかし、このシャンパンはどうしましょう」
「そうですね……」
オルクがカイからシャンパンを手に取り、思案する。ノンアルコールの為、子どもたちでも飲めるものだ。いっそこの場で飲みましょうか、と提案しようとしたオルクに声がかかる。
「あ! いたいた! オルクさーん!」
「アイシャさん?」
「ねえ、オルクさんアイドルなんだよね? あっちで一緒に歌おうよ!」
アイシャが左手でぐいぐいとオルクの腕を引く。アイシャが右手で指差している先には、簡易ではあるがステージが用意されていた。オルクは戸惑いの表情でカイを見る。歌に誘われたのが嫌なのではなく、準備を手伝えなくなる事を心配しての事だ。カイはそんなオルクへ優しく頷く。
「こちらはもうすぐ終わります。どうぞ、皆さんの所へ。私も後ほど向かいます」
「……ありがとうございます。では、お任せします」
オルクはぺこりとお辞儀をすると、アイシャと共にステージへと向かった。二人を見送ると、カイは「そういえば、オルクさんはシャンパンを持ったままでしたね」と思い出すが、まあ大丈夫でしょう、と子どもたちへ視線を移す。
「しかし、サンタクロース、という方は素晴らしい方なのですね。子どもたちにプレゼントを配って回るとは」
「そうなの! それでね、サンタさんは空飛ぶトナカイさんのソリに乗ってるんだよ!」
カイはヤドリガミという事もあり、サンタクロースという存在の知識がなかったため、子どもたちに教わっている。
「空飛ぶトナカイがソリを引くのですか」
「そうなの! それでね、トナカイさんはね、お鼻が真っ赤なんだよ!」
「ふむふむ。トナカイは空を飛べて、お鼻が真っ赤なのですね、なるほど」
一般常識に疎いカイは子どもたちの説明を鵜呑みにしてしまっている。
「それでね、みんなが眠ってる時に、靴下にプレゼントを入れてくれるんだ!」
「ふむふむ。靴下も必要ですか……足袋では駄目でしょうか?」
「タビ? は知らないけど、きっと大丈夫だよ! えっとね、ミルクとクッキーを用意してね、サンタさんにお疲れ様ってするんだよ!」
「ミルクとクッキーを用意しておくんですね。それは、とても素敵な事ですね」
プレゼントを持ってきてくれるサンタの為に、子どもたちもプレゼントを用意する。そんな思いやりの行為に、カイは微笑む。子どもたちは猟兵へ何かを教えてあげられる事がうれしいのか、どんどんカイへクリスマスやサンタクロースの事を教えていく。
「えへへー。あ、でもね……」
にこにこと話していたキマイラの子どもは、しゅん、とウサギ耳を垂らして悲しそうな顔をする。
「この辺はクッキーが出てこないの。でも、お店にはあんまりなくて……」
怪人たちの事件の影響か、お店への入荷が滞ってしまい、クッキーの数がきちんと用意できていなかったのだ。怪人の作戦の成就はならなかったが、影響は出てしまったようである。
そんな怪人を一人せっせと切り分けているのは、落葉であった。仕掛け罠で捕らわれていたり、頭のケーキが無事な怪人を見つけては、ケーキ部分を丁寧に切り取っている。落葉は子どもたちを和ませようと勢いでサンタクロースのコスプレをしたものの、プレゼントの事をすっかり忘れていたのだ。そこで、売れ残ったクリスマスのケーキ怪人の、ケーキ部分をプレゼントとする事を思い付いたのだ。
無論、怪人の悪行を許した訳ではない。だが、売れ残りである苦しみや上の者から受けた仕打ちは僅かに同情出来る。落葉は怪人への手向けだ、と丁寧にケーキ部分だけを切り取っていく。
「よし、こんなものか。さあ、待っていろ、子どもたち」
落葉は無表情に会場から持ってきたカートに、大量のケーキを乗せると、再び会場へと向かっていった。
その間にもパーティは続いている。
「ねーねー。何して遊ぶ? 僕はみんながしたいことしたいんだ♪」
メルはご機嫌そうにしっぽをゆらゆら揺らし、遊ぶ気満々であった。そしてそれはキマイラの子どもたちも同様である。
「えっとねえっとね、じゃあ鬼さんごっこしよう!」
「鬼さんごっこだね、よーし!」
ふわふわの犬の尻尾をぶんぶんと振るキマイラの子どもと、同じくふりふりとしっぽを振るメル。テンションが上がりに上がり、もはや箸が転がっても笑い転げてしまうだろう。
会場内は壁から食べ物が出てくる特性上、テーブルなども壁に寄っている。真ん中は比較的スペースがある為、かけっこをしても十分な広さがある。
「じゃあ僕が鬼さんだぞ! ガオー!」
「わー、逃げろー♪」
わいわいとメルとキマイラの子どもたちとの鬼ごっこが始まった。無論メルは手加減をしているが。
子どもたちとメルが走り回る姿を眺めながら、杼糸・絡新婦(ヤドリガミの人形遣い・f01494)も冷えたシャンパンを片手に呑み仲間を探していた。
「さて、呑めるやつは他にもおるか?」
仮初であろうと、ヤドリガミの肉体は普通の人間とそう変わりはない。絡新婦もまたパーティを楽しもうと、会場を歩いていく。そして、それはすぐに見つかった。
「ぷはー! シャンパンが五臓六腑に染み渡るー!」
カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)は、ちょうどシャンパンのビンを空にしたところであった。既にカチュアの周りには大量の空き皿と空き瓶が並べられている。
「…………」
「あ! 良いところに! 絡新婦さん、一緒にどう?」
何となく素通りしようとした絡新婦だが呼び止められては仕方ない。カチュアの隣に腰を下ろした。
「ぼっちクリスマス回避ー! よーし、食べるわよ、飲むわよー!」
カチュアは背後の壁をコンコン叩き、次々とチキンにオードブルに、様々な料理を出しては食べていく。絡新婦もまた、カチュアの食べっぷりに呆れながらも、チキンを頬張る。
「カチュアさん、ほんまよう食べるなぁ」
「えー、これくらい普通よ、普通! ほらほら、絡新婦さん、コップ持って、コップ」
カチュアはシャンパンを手馴れた様子で開けると、絡新婦のコップへ並々と注ぎ、「かんぱーい!」と、絡新婦のコップへ自らのコップをカチン、と合わせる。
「さっき空けたばかりやあらへんの?」
「んー? 乾杯なんて何回やってもいいのよ~。なんたってクリスマスなんだもの!」
絡新婦の遠まわしな皮肉をさらりとよくわからない理屈で返し、カチュアはぐびぐびとシャンパンを飲み干していく。絡新婦も「敵わんなぁ」とひとりごち、こぼさぬようにちびりちびりとシャンパンを味わうのであった。酒の肴はチキンにオードブル、そして楽しそうに走り回る子どもたちの笑顔だ。……そういえばケーキがあらへんな、と絡新婦が少し物足りなさを感じている頃、落葉は会場へ再び戻ってきていた。
落葉はガラガラとワゴンを引きながら、会場を練り歩く。
「わぁ、怖いサンタさんがケーキを運んでる!」
「うむ。我からみんなへのクリスマスプレゼントだ」
「ありがとう、サンタさん! (*^▽^*)」
最初の戸惑いはどこへやら。子どもたちはわいわいとクリスマスケーキを運ぶ落葉へ群がっている。
「こらこら、たくさんあるから、慌てるな」
口調はぶっきらぼうながら、優しく子どもたちへケーキを手渡していく。無表情のつもりだろうが、思わず頬が緩んでしまう落葉であった。
子どもたちが「サンタさんからもらったの!」とケーキを自慢しに、ステージのところにまでやってきている。そしてもうすぐステージでお歌を披露、というところで、アイシャがオルクの手に持っているシャンパンに気付いた。
「そういえば、それどうしたの? ずっと持ってるけど」
「え? あ、忘れてました……どうしましょう」
「えっと、ノンアルコールなんだね。でも……」
アイシャがオルクの持っていたシャンパンを手に取る。辺りを見渡すが、その場にはノンアルコールシャンパンは既に十分すぎるほど並べられているようで、今ここで渡してもきっと持て余してしまうだろう。
そんな折、その場に子どもたちの泣き声が響き渡る。どうやら、鬼ごっこをしている最中、よそ見をしていた同士でぶつかり、転んでしまったようだ。軽いものだが、両ひざには痣が出来ている。
アイシャとオルクが慌てて近づいていったが、そこには既にメルがいた。メルはアイシャとオルクへ「任せて」とウィンクをする。
「くすぐったいかもしれないけど、我慢するんだよ? 『猫の毛づくろい』」
メルはユーベルコードを発動し、子どもの膝をペロペロとなめる。転んだキマイラの子どもは痛みよりもくすぐったさが勝り、「くすぐったーい!」と既に笑顔になっている。
「よし、これで大丈夫。他にケガをした子がいたら僕に言うんだよ?」
メルの言葉に「はーい」と子どもたちは元気に返事をする。
「すごいね、メルくん」
「大したことないにゃ……ところで、どうしてシャンパンを持ってるんだい?」
「えっと、どうしようかなって。これからステージでお歌を歌うんだけど」
「ふうん。あ、じゃあ僕に任せてよ! 吞兵衛のところに持って行ってあげる」
「え、でも」
これはノンアルコールだから、と言おうとしたアイシャだが、メルは構わずシャンパンのボトルをさっと手に取り「任せるにゃ~」と走り去っていった。
アイシャとオルクはお互いに顔を見合わせると、しょうがないね、とくすくすと笑いあった。
「じゃあ、一緒に歌おう!」
「はい、歌いましょう」
そうして、二人のステージが始まった。
歌うのはお馴染みの定番ソング。きっと誰もが一度は耳にした、クリスマスにはありきたりの歌。サンタさんがベルを鳴らしながらやってくる、クリスマスソング。二人の【歌唱】は特別すごいとまでは言えないかもしれない。だが、その場にいたみんなが大きな拍手で二人を讃えた事からも、とても素敵なステージであった事は間違いない。オルクの『シンフォニック・キュア』により、自然と周囲のキマイラたちは癒されてもいる。
少し照れくさそうにながらステージを下りた二人は、声をそろえて慣用句を告げる。
「皆さん、メリークリスマスです!」
「みんな、メリークリスマスだよ!」
いつもの言葉は、しかしいつも聞くからこそ、なのだろう。
そんな風に歌声が響く少し前、メルはカチュアと絡新婦の元にいた。そう、シャンパンを二人に届けに来たのだ。
「はい、どーぞ!」
メルがネコ目を細めながら、二人へとシャンパンを差し出す。思わず受け取った絡新婦だったが、アルコール度数が書かれていない事に気付いた。メルは気付いていないようだが、それはノンアルコールのシャンパンだ。二人が飲むには、残念ながら度数が足りない。
「あー、メルさん、これな」
「ありがとう! とっても嬉しいわ!」
絡新婦がメルへ断りを入れようとしたところで、カチュアが絡新婦からシャンパンを奪うように手に取り、メルへお礼を言う。絡新婦が驚いていると、カチュアは人差し指を立てて唇へ当てる。
「どういたしまして! 二人がお酒を飲んでいるのを見てたからね! よーし、もっと遊ぶぞー!」
メルはそんな様子を気にもせず、再び子どもたちと遊ぶべく、駆け戻った。そんなメルの後ろ姿をみながら、くすくすと絡新婦が笑う。
「ええの?」
「無下にするのも悪いじゃない。クリスマスなんだしね」
それは酔っているがゆえのてきとうさなのか、カチュアの優しさであるのか。残念ながら本人にもわからないであろう。
「けど、私たちに物足りないのは確かね」
「そやねぇ。おや、いいところに」
「む、どうした。ケーキが欲しいのか?」
二人が思案しているところに、落葉が通りがかった。まだまだプレゼントを配っている途中のようで、ケーキの数にも余裕が見える。
「ほな、ケーキを一つもらおか」
「ええ。それと、これを誰かにプレゼントしてくれるかしら?」
「うむ。任せるといい。何せ我はサンタだからな」
落葉はケーキを絡新婦へ渡すと、カチュアからシャンパンを受け取った。
「さあて、新たにケーキも手に入った事だし、ぱーっといきますか!」
「ほんま元気やなぁ。そや、サンタさんの連絡先はもうええんか?」
うぐっ、と呻くカチュア。
「うー、サンタさんの連絡先は聞けなかったけどー、いいの! また来年があるもんね! 大将ー! ワインおかわりー!」
「大将って誰やねん」
二人の晩酌は続く。
そして、メルが元気に会場を走りすぎた先では、ステージを終えたアイシャが余興を行っていた。
「さーん、にー、いーち……ぜろ!」
アイシャが掛け声とともにオルクへ抱き着くと、二人の姿が一瞬で消えた。その様子に子どもたちがわー! と歓声を上げた。アイシャのユーベルコード『願いの祈り(プレアー・オブ・ウィッシュ)』である。余興として大盛り上がりであったが、その分アイシャはとても疲弊してしまっていた。表情にこそ出していなかったが、さすがに大人たちが気付いたのか、アイシャとオルクを解放してくれた。
「疲れたー!」
「お疲れ様でした。僕、何も出来なくてごめんね」
「ううん、全然だよ! やっぱりアイドルってすごいね! とってもきれいな歌声だったよ」
「そ、そんな事ないです」
「ううん、そんな事あるよ!」
「ふふ、私もそう思いますよ」
「あ、カイさん」
「とても素敵な歌声でした。勿論、アイシャさんも」
カイは二人をねぎらいながら、冷たいジュースを差し出した。疲れ切っていた二人は、お礼を言いながらそのジュースをごくごくと飲み干した。
「そういえば、気になっていたのですが、それには何が入っているのですか?」
カイがアイシャの腰に下げてある袋を指さした。
「これ? お菓子だよ! みんなと一緒に食べようと思って、クッキーとか作ってみたんだ! でも、壁から色々なものがでるから、いらないかなーって……」
「おや、それは勿体ない。先ほど子どもたちから聞いたのですが、特にクッキーがあまり手に入っていないと言っていました。きっと、喜んでもらえますよ」
「ほんと!? じゃあ、ちょっと、行ってくるね!」
「ええ、是非」
アイシャは目を輝かせながら、子どもたちの元へと向かった。カイはその後ろ姿を優しいまなざしで見送った。そんな二人の姿を、オルクはかつての自分とマスターとに重ね合わせていた。
もう既にこの世にはいない、オルクを創った研究者。
(いつかのクリスマスでも、こんな風に私も背中を押してもらった気がします)
もはやいつの事かも思い出せない、遠い過去。オルクにとって、大切な思い出の一つだ。
「はて、そういえばサンタクロースは寝静まった頃にやってくるとの話。ちゃんと眠らないとサンタクロースは来てくれないのでは……オルクさん、私ちょっと心配になってきたので、行って来ますね」
カイが急に何やら考え込んだかと思うと、慌てた様子で子どもたちの元へと向かった。オルクは、そんなカイの様子にくすりと微笑む。そこにマスターの面影を見たのだろうか。
どこもかしこも賑やかに騒ぎあっていたパーティ会場だが、少しずつ、ざわめきも小さくなっていく。はしゃいでいた子どもたちも、疲れて大人しくなっていく。そんな中、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)の声が響いた。
「メヤくーん! イクスくーん! こっちこっちー!」
元気よく、目立つようにと少し羽ばたきながら、エールは両手を振って居場所を告げる。メヤ・トゥスクル(憑代・f09104)とイクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)はおかげで迷わずにエールの元へとたどり着いた。
「エール、お仕事、おつかれさま。イクスは、こんばんは。メリー、クリスマス」
「メリークリスマス。エール、メヤ。 友達とすごすクリスマスなんて初めてだ!」
メヤはたどたどしく、イクスはちょっぴりはしゃぎ気味に、エールへと挨拶を返す。
「メリークリスマス、だね! あ、ちょっと待ってて!」
エールが壁をこんこん、こんこんと二度叩いた。すると、赤い帽子がぽんっと二つ現れる。その帽子をにこにことメヤとイクスに差し出すエール。ちなみに、エールはとっくに帽子を被っている。
メヤははてと首を傾げながら、イクスは待ってましたと帽子を受け取る。
「赤い帽子を、被るのが、マナー、なのかな。ありがとう」
「ありがとう、エール!」
二人はエールにならい、いそいそと帽子を被る。見た目はバラバラな三人だが、お揃いの帽子がとてもよく似合っていた。
「ねぇねぇ、二人は何が食べたい?」
「あまいものとか、お肉がいいな。ちょっと、試してみてもいい?」
「もちろんだよ!」
「あ、じゃあ俺も俺も! 俺はケーキをめいっぱい食べたい! クリスマスに食べるケーキって特別しあせな甘さがして好きなんだ」
期待に胸を膨らませながら、三人で思い思いに壁を叩く。こんこん、こんこん、こんこん。
飛び出てくるのは美味しそうなケーキにチキン、あったかいスープに、パスタにピザ、たくさんのローストビーフ。いくらでもなんどでも、美味しそうな料理が次々と出てくる。三人はわいわいとはしゃぎながら、料理を並べていく。
「うーん、シャンパンが出てこないね」
「この辺りにはない、のかも」
「もうちょっと向こう側行ってみるか?」
出てこないシャンパンを探しに行こうとしたその時、落葉が通りがかった。
「どうした。何か探し物か」
「あ、落葉さん! えっとね、シャンパンってどこにあるか知ってる?」
「ふむ。ちょうどいい。ここにあるぞ。ノンアルコールだ」
落葉はカチュアから預かったシャンパンを取り出し、エールへと渡した。
「ありがとう、落葉さん!」
「ありがとう、ございます」
「ありがとな!」
「ふ。ついでにケーキも食べるといい。なかなかだぞ」
三人が落葉にお礼を言うと、サービスだ、とばかりにケーキもその場に置いていき、落葉は再びプレゼント配りへ戻っていった。
これで準備万端、とエールは張り切ってシャンパンを開ける準備を始める。だが、エールは知らなかった。シャンパンが様々な経緯で、猟兵たちの元へ次々と渡っていったことを。そして、浮かれてしまっているがゆえ、すっかりぬるくなってしまっている事を。冷えていないシャンパンを勢いよく開けるとどうなるか。
「じゃあ、改めて! めりーくりすまぁ――」
ポン、ばしゃーん!
コルクが弾丸のように飛んでいき、シャンパンが噴水のように噴き出した。
「わぁぁあ、ご、ごめんね!? うぇぇ、二人ともかからなかった!?」
エールは自分の失態に慌てて、わたわたと手を振り回す。しゅわしゅわとシャンパンから勢いよく中身が噴き出ている。
「……ぷっ、あはは! すごかったなシャンパン。きらきら流れ星みたいで綺麗だった!」
「すこしびっくり、したけど。僕は、だいじょうぶ。かかってない、よ。イクスは、大丈夫、かな。」
「俺は平気。メヤも大事ないようで何より」
イクスは手を叩いて大喜び。メヤも大丈夫だよ、と返事をする。
「エールも、怪我、ない?」
「エールは大丈夫か? 濡れたりしてたらこれで拭いておけよ」
そして、二人はエールを気遣い、イクスはそっとエールへとハンカチを渡した。
「ううぅ。ありがとう、僕も大丈夫だよ! ハンカチもどうもありがと~」
二人の優しい言葉に、思わずエールは感動して、涙ぐんでしまうのだった。それから、三人はたくさんおしゃべりし、料理もたっぷりと楽しんだ。
「ケーキもチキンみんなで食べるとおいしーね?」
「うん、みんなとだから、おいしい」
「ああ。こんなにケーキやチキンがおいしいなんて、知らなかった」
エールは口いっぱいに頬張って。メヤは小さな口でもそもそと。イクスはにっこり笑顔でむしゃむしゃと。シャンパンの量は少なくなってしまったから、ほんのちょっぴりを三等分。料理はどれも至って普通のものだ。だが、三人一緒に食べる事が、何よりの調味料なのだろう。
「メヤくんはふわふわして、ゆきんこみたいでクリスマスの雰囲気がとってもよく似合うよね~!」
たくさん食べた三人は、壁にもたれかかりながら、静かに談笑する。
「ふわふわして、ゆきんこは、初めて言われた。冬は、嫌いじゃないし、クリスマスの雰囲気似合ってるなら、うれしい」
メヤはシユをぎゅっと抱きしめながら、照れくさそうにしている。
「イクスくんは反対に春って感じ!」
「イクスが、春、というのは、わかる気が、する。エールも、春のような、雰囲気が、するから。二人は、似てるのかも」
「メヤの優しい雰囲気も春っぽさを感じるけど」
「あっ、でも確かに、それも分かるっ! それじゃあ春は、みんなのお揃いだね」
「みんなそれぞれ似てるのかも。ってそういうこと」
とりとめもなく、ただ感じたままに、思ったままに。
「ボク、春にはみんなでお花見もしたいな♪」
「春のお花見、いい、ね。楽しみ」
「お花見もみんなで行けたらいいな」
「また、みんなで」
「ああ今から春が楽しみだ!」
まだまだ先の話であるが、きっとそれは現実となるだろう。三人は、そう信じて疑わない。心地よい満腹感と満足感と共に、三人はクリスマスの夜を楽しんだ。
●そして夜は深まって
会場の喧騒は嘘のように収まり、今や小さな談笑の声すら大きく響くほど。走り回った子どもたちは、メルの傍でぬくぬくと寝静まり、カイもまた、子どもたちを見守っていたが、いつの間にやら眠ってしまったようである。そんな中を、オルクや落葉が片っ端から毛布をかけていってやる。アイシャがまだ起きている子どもたちへ、サンタへの祈りの言葉を教えてあげている。素直な彼らは、もう間もなく眠りにつくだろう。少し離れたところでは、イクスとメヤがエールの羽に包まれて、すやすやと寝息を立てている。
「サンタさぁん……むにゃむにゃ」
「いくらザルでも、あのペースで呑めばそうなるわな」
そして、カチュアもまた眠りについていた。
「ほんま、こうしていれば別嬪さんやのに」
カチュアが気持ちよさそうに眠っている様子を見ながら、絡新婦がつぶやく。透き通るような白い肌に、端正な顔立ち。エルフは総じて美形と言われているが、カチュアはその中でも群を抜いているだろう。喋らなければ、だが。
「あ、草壁さんやないか。まだ仕事しとるん?」
「ん、ああ。絡新婦か。今終わったところだ」
「そうなん? じゃあ、折角や、草壁さんもいっぱいどう?」
草壁は逡巡し、まあ、一杯程度なら、と絡新婦の隣、カチュアとの反対側へと座る。
「こんな時間までお仕事かいな。お疲れ様やな」
「君たち猟兵たちの頑張りに比べれば、どうという事はない。むしろ、楽をさせてもらってる」
「ふふ。なら、いっぱい感謝してもらわなあかんな」
「無論だ」
「……お堅い人やなぁ。少しはカチュアさんを見習い?」
「……考えさせてくれ」
からからと笑う絡新婦。そして、二人でしばらく静かに料理とシャンパンを楽しんだ。
「ほい、おまけ」
少しして、絡新婦がサンタの乗ったケーキ一切れを草壁に渡した。
「サンタが来てくれたで」
「……ああ」
ふっと笑う草壁。いい感じに、アルコールが回っているようだ。
「猟兵サンタのお仕事はおわったから、今からはちゃんとプレゼント配るサンタさんの出番やろうなあ」
「そうだな」
二人はどちらからともなくシャンパンを掲げ、どこかでプレゼントを子どもたちへ配っているであろ、赤白服のおじいさんへ捧げる。
「メリークリスマスや」
絡新婦の言葉は、サンタクロースへ届いただろうか。
●サンタクロースは――
翌朝。子どもたちの枕元。思い思いの靴下の中には、溢れんばかりにクリスマスプレゼントが入っていた。サンタクロースを信じて疑わない子どもたちは、きっと起きたら大喜びだろう。素敵なクリスマスは、たくさんの猟兵たちの手によって守られた。
だから、あえてもう一度問おう。サンタクロースはいる? いない?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
二神・マ尾
【SPD】
戦いも終わったし、
やっとクリスマスってとこだな。
パーティだし本当は食べ物からあり付きたいとこなんだけどさ。
こんな日ぐらいじゃなきゃオシャレもしねえしな。
壁を叩いて服を取り出せば、
ロックスタイル、燕尾服、カジュアル中華などさまざな衣装に着替えてみて、いつもの自分を解放してみる。
最後に叩いた壁から出てきた衣装に何秒か固まって
「俺にもやれっての
……!?」
と言いつつ着替えたら「忍び足」で最初に出会ったテレビウムのガキに近づいてプレゼントの小包を頭の上にぽんと置いてみよう。
サンタは居るっていう夢は壊したくねえし、俺だったなんてわかるのはシャレになんないから。
振り向く前に「逃げ足」で帰るぞ。
●外伝~忍び足のサンタクロース~
ちょうどステージで歌が披露されていた頃、二神・マ尾(真尾・f07441)は一人、キマイラの子どもたちに教わったエリアへ来ていた。その付近にはあまり人はいないようで、料理なども並べられていない。この近辺の壁は、パーティを楽しむための衣装が飛び出てくる壁だからだ。
本来、クリスマスパーティなのだから料理から楽しむべきなのだろうが、マ尾は売れ残ったクリスマスのケーキ怪人を少し食べすぎていた。軽い腹ごなしをしてから食事をしようと考えたのだ。
「こんな日ぐらいじゃなきゃオシャレもしねえしな」
マ尾が壁を叩くと、服が飛び出た。不思議な仕組みながらも、キマイラであるマ尾は慣れたものだ。そして、マ尾はファッションショーさながら、様々な服を着こなしていく。
革ジャンとダメ―ジジーンズのロックスタイルはマ尾の眼光の鋭さにぴったりであるし、燕尾服でピリッと決めるのも悪くない。カジュアル中華で拳法の構えを取るのも様になっている。
そんな風に一通り楽しんだところで、次で終わろうと壁を叩くマ尾。だが、壁から出てきた衣装を見て、マ尾は数秒固まってしまう。
「俺にもやれっての
……!?」
●
近くを歩いていたシャンパンを持ったメルへとあるテレビウムの居場所を聞き、途中「サンタクさんだー」と指さすキマイラの子どもたちに手を振りながら、マ尾は会場内を歩いていく。そう、壁を叩いて飛び出たのはサンタクロースの衣装であった。それならば、とプレゼントを渡すべくマ尾は小包を片手にテレビウムを探す。
マ尾が件のテレビウムを見つけるのにそう時間はかからなかった。マ尾が探していたのは、最初に落葉サンタに怯えていたテレビウムである。マ尾はアイシャとオルクの余興に夢中になっているテレビウムに【忍び足】で近づくと、頭にぽん、とマ尾が小包を置いた。
あれ、とテレビウムが振り返る前に、マ尾は【逃げ足】ですぐさまその場を去る。と同時に「もう一人のマ尾」がテレビウムに話しかけた。
「へぇ、プレゼントもらったのか」
「え、あ、ほんとだ! (*^▽^*)」
マ尾は『 猫の手も借りたい(ネコノテモカリタイ)』ほどに、サンタを自分自身だと思わせないよう徹底していた。
「今のってもしかして(゚д゚)!」
「ああ、俺も後ろ姿しか見えなかったが、サンタだったぜ」
「わぁ! サンタさん、来てくれたんだ! (≧▽≦)」
「ああ、いい子にしてた証拠だな」
「うん!(*^-^*)」
テレビウムは画面を一杯に使ってニコニコと喜んでいる。そんな姿を少し離れたところで「サンタのマ尾」も満足そうに眺めている。
きっとそんな風景は、この会場だけでなく色々な場所で見られたのだろう。それであるならば、みんなが幸せな気持ちで迎えられる記念日を締めくくるに相応しい言葉で、この物語を締めよう。
メリー・クリスマス!
成功
🔵🔵🔴