19
射鵰猟兵伝

#サムライエンパイア


 サムライエンパイア南西部に、紅湖(こうこ)という国がある。
 古くから武術の盛んな国で、戦国時代には猛威を振るったという。
 そこに、高内(たかうち)という大名家がある。
 代々武芸百般に秀で、鷹狩りを能くし数多の武功で名を馳せた。
 高内とは"鷹射ち"と"多功地"に通ずる。そのぐらいの家なのだ。
 領内に多くの道場が存在するのも、納得と言えよう。

「そのお侍様の領地で、オブリビオンが暗躍してるのよ」
 グリモア猟兵の白鐘・耀の予知によると、『嗤う厭魅師』なる呪術師が首魁らしい。
「こいつは口八丁手八丁や呪術を使って、当主を籠絡しているわ。
 おかげで領内じゃ"武侠御免状"なんてものまで出回ってるんですって」
 免状なくして武を修めること罷りならず。しかしこれを賜るのは無法者ばかり。
 おまけに免状は呪力を持ち、所持者を強く闘う相手は弱くしてしまうという。
「私達ならそこまで致命的な影響は受けないでしょうけど、まだ敵が居るのよ。
 "紫陽衆"とかいうはぐれ忍者の集団が、親玉の周囲を常に守ってるってわけ」
 厭魅師の呪法により、武家屋敷は奇怪な"オブリビオン城"と化している。
 領内の悪漢どもを糺さねば、城に攻め込むことすら叶わないのだ。
 無策で飛び込めば苦戦は必至である。

 しかし、手がないわけではない。
「"流派を名乗って闘った時"だけは、御免状の呪いが弱まるのよ。
 多分、武芸者同士を争わせて自然淘汰したかったんでしょうね」
 名乗りは即興でも構わない。武術流派とはだいたいそういうものだ。
 だが実際に修めた流派ならば、呪いはさらに弱まり敵を精神的に圧倒できる。
 そうでなくとも、武術らしく見えれば同じ効果を得られるかもしれない。
「でも皆が皆、殴ったり斬ったり得意なわけじゃない。そういう人いるでしょ?」
 何名かが手を挙げたのを見て、耀はなぜかドヤ顔で頷く。
「そこで可憐な私が考案したのが、ズバリ『ホニャララ書房作戦』よ!!」
 名前からして不安しかないが、ようは漫画などでよくあるアレだ。
 戦わずとも横からそれっぽく解説すれば、説得力が増して呪いを弱められるんじゃね?
 ……という、大変杜撰でルーズな作戦である。効果の程は実際に試さねばわからない。

 一通り説明が終わったところで、耀の背後に紅湖国の風景が映し出された。
 免状を持つ悪党どもが、あちこちの道場に押しかけ狼藉を働いているではないか!
「ご覧の通りよ。遠慮はいらないから即! ぶっちめてやりなさい!」
 無辜の人々を救い、奇妙奇天烈なオブリビオン城を打ち砕く。やることは単純明快だ。
 耀は火打ち石を取り出し、自らも蹴りまくりたくてしょうがないという顔で笑う。
「私のぶんまで大暴れしてくるのよー!!」
 カッカッという勇ましい音が、転移の合図となった。


唐揚げ
 武侠小説とか好きだから!! 焼餅(シャオピン)です。
 はい細かいこたあいいのでまとめいきましょうまとめ!

●目的
 悪党どもをぶちのめす(1章・冒険)
 忍者どもをぶちのめす(2章・集団戦)
 悪の術師をぶちのめす(3章・ボス戦)

●1章特殊ルール(2章にも似た感じのがつく予定です)
 "流派を名乗り正面から闘う"ことで、免状の呪いを弱められる。
 色んな意味で説得力が高いほど、呪いは大きく弱まる。
『ホニャララ書房作戦(合同プレイング推奨)』
 誰かの技を『あの技はもしや!』みたいに解説するとプレイングボーナス。
(その方自身は非戦闘もしくは後方支援扱いになります。解説役なので)

 以上です。かっこいい(もしくはトンチキな)プレイングお待ちしています!
 それでは皆さん、必殺拳で悪党どもをぶちのめしましょう!
533




第1章 冒険 『殿様のおふれ』

POW   :    ごり押しで解決

SPD   :    走り回ってささっと解決

WIZ   :    そうか!このおふれには抜け道が!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●第一幕:悪侠誅伐
 犯罪者、無法者、山賊、浪人に下級の化生。
 往来を肩で風切り歩くは、いずれもうだつの上がらぬ悪党ばかり!
「おう姉ちゃん、めんこいのう。儂が大人にしてやろうか! おお?」
「ご勘弁くださいまし、どうか!」
 髭面のうらなり男がおぼこい町娘を捕まえ舌なめずりする。

 他方、病気がちな老婆とその息子を取り囲む剣客くずれの男ども!
「拙者らは人助けが大好きでのぉ。その身なり、懐が寒かろう?」
「十中八九、ご母堂殿の薬代と見た。助けてしんぜようぞ」
「どうれ、我らのこの自慢の槍でぶすりと一突きじゃ」
「おらぁ刀でばっさりやってやろうではないか!」
「「ご勘弁を、どうか、ご勘弁を……」」

 あちらはどうだ。古びた武術道場!
 汚い身なりの悪漢どもが徒党を組んで、道場主と思しき男を袋叩きにしている!
「おっとう~! もう、もうやめてけれぇ!」
「うるせえ餓鬼だ、引っ込んでろ!」
 悪辣……! 幼い少女の襟首が掴み上げられる!

 いまや高内の領土はどこもかしこもこうだ。
 往来を肩で風切り歩くは悪党ども。路傍の石も涙で濡れて渇きゃしない。
 浪人は皆々高楊枝で大威張、盗人どもはお天道様すら憚らんと来ている。
 救いはないのか。光明はないのか!

 ……否!
 見よ。街のど真ん中、通りに生まれた幾つもの光を見よ。
 あれが救いだ。あれが乱麻を断つ快刀だ!
 世界を越えて来たる者、化生を猟する不思議の者ら!
 天地よ人よ刮目せよ。いざや悪侠誅伐開幕なり!
三咲・織愛
名乗り……!!
名乗ってもいいのですね!
名乗りますとも!!

こほん
三咲流槍術、師範代(ということにしておきましょう!)
三咲 織愛!いざ参ります!

ノクティスをひゅひゅんと振るってビシッ!構え!

私の槍は目にもとまらぬ速さであれしてこれしますので!
退くなら今ですよ!
そうしませんとこう、びゅびゅんとあれがこうなって!
ああなってしまいますからね!

喰らいなさい!
夢想流星疾風突き!!
夢のように綺麗に輝く星がすごい勢いで流れるかのような疾風の如き突きです!!

なんという説得力!言ってる私もびっくりです!
すごい説得力でしたね!



●夢想流星ここにあり!
 ざしゃり。
 突如として虚空から現れた謎の女に、男どもは呆気にとられた。
 びょう、と一陣風が吹く。尖り耳の女は、目を輝かせながら顔を上げる。
「てめえ、何者だぁ!」
 いままさに、おぼこい町娘を手篭めにせんとしていた悪党が吼えた。
 女はその悪辣な所業に眦を決し、凛とよく通る声でこう名乗る。
「三崎流槍術・師範代――三咲・織愛と申します」
「何ぃ……?」
 ざわり。男達の雰囲気が一瞬にして変質する。
 そして町娘を突き飛ばした男が、胸元から一枚の御免状を取り出した。
「儂らは天下御免の武侠様だぜぇ? それに流派を名乗るってこたぁ……」
「わかっていますとも!」
 大音声! 悪漢はその意気に思わず息を呑みたじろぐ!
「これ以上の狼藉、たとえ殿様が許そうともこの私が許しません。
 さあ、退くなら今ですよ。そうしませんと――こう、あれがこうなって!」
 びゅんびゅん。愛用の夜槍を華麗に振るう。
「ああなってしまいますからね! いいですか!?」
「お、おう……!?」
 微妙に具体性に欠ける脅しに、悪漢はちょっとだけ我を取り戻した。
 そして織愛の全身を頭からつま先まで眺め、下卑た笑みで舌なめずりする!
「けけけ。いいじゃあねえか、"神無池波流"が免許皆伝の儂が相手をしてやるぜ!」
 無論、ありもしない流派である。悪漢は鎖鎌を構え呵呵と哄笑した!
「退く気はなしですか。しからばいざ、尋常に!!」
 その時、御免状が不気味に輝き、悪漢を赤黒いオーラが包む。
 そして織愛を青紫色のオーラが包み込む。四肢がわずかに重くなる違和感!
(これが呪い……でもこの程度なら戦えます!)
「勝負だァ! キーヒヒヒヒヒィ!!」
 卑劣! 先の先を打ったとばかりの不意打ちである!
 悪漢は鎖分銅を抛ち、織愛の腕から槍を絡め取らんとする!
 下手に踏みとどまれば敵の接近を許し、槍を奪われれば無手となる。
 そこに鎌で斬りかかるという二段構えの攻撃だ。
「これぞ池波流殺法、縛り大鎌よォーッ!!」
「……っ!」

 だが悪漢は知らなかった。織愛という女の真髄を。
 彼女は縛られた槍ごと、満身の力を込めてぐいと鎖を引く。
「えいっ!」
「うおうっ!?」
 豪快一本釣り! 川魚よろしく宙を舞ったのは他ならぬ悪漢の方!
 きょとんと呆けた悪漢の視界に、鈍く輝く龍の槍……!!
「ま、待っ」
「喰らいなさい――夢想流星疾風突きっ!!」
 疾い! 突き出された矛先、まさに夜闇に煌めく流星の如く!
 へたりこんだ町娘は、まるで夢を見ているかのような心地だった。
 自分とさして変わらぬ体躯の少女が、おお、悪漢を……一撃誅伐である!
「……ああ! 名乗りに立ち合い、そして必殺技……!
 いいですね、すごくいいです! ね、そう思いませんか!?」
「へえっ? あ、ああ、えっと」
 嬉しそうに飛び跳ねる織愛に、町娘はぽかんと頷くばかりであったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
こういうノリは嫌いではないよ。そうだね……
「北斗派総帥とでも名乗っておこうか」
「北斗は死を司る神。北斗派の技は敵に必ず死を齎す。
 死の運命からは何人も逃れることは出来ないよ」
 絶技『降神十八掌』(でっちあげ)でお相手しよう。
《シドンの栄華》、『破壊の魔力』(内功)を込めた十八種類の掌打で戦います。
(怪力×フェイント×グラップルなどなど色々活用)
敵の攻撃はスルスル回避。(見切り)

※何故かツボにはまったらしくノリノリで武侠っぽい演技で楽しんでいるようです。



●赤き英侠悠々と
 老いた老婆と、病弱な彼女を看病する若き息子の二人組。
 それを取り囲むのは、各々一山いくらの刀を佩いた浪人崩れである。
「……誰だ!!」
 まさに老婆を槍衾にしようとしたその時。悪漢が鋭く誰何した!
 はたして土埃舞う通りを、まるで散歩のように悠々歩く長駆がひとつ。
「ほう、これはなかなか。いかにも"らしい"相手だな」
 金眼の男はそうひとりごちると、楽しげにゆるく笑んだ。
 悪党どもは片眉を釣り上げる。男の余裕綽々が鼻についたらしい。
「手前ェ……我らが何者か知っての無礼か?」
「残念だが知らないな。ご紹介いただいても?」
「この野郎!!」
 青筋を立てて勇みかけた槍男を制し、頭目と思しき男が歩みだす。
 にこり。一見すると紳士めいた穏やかな笑みを浮かべるが、纏う気配は鋭い。
「同門が失礼し申した。我らは"卍組"と申す者――」
「ほう」
「見ての通り、諸国を漫遊し武勇を磨く者らにござる」
 数は五。いずれも御免状をこれ見よがしに取り出しにやついていた。
 槍が一、刀が三。頭目らしき男は徒手空拳だが苛烈な殺気を放つ。
「無礼は承知ながら、其処許の名をお聞きしても?」
 男はふっと笑う。そして思案ののちにこう言った。

「北斗派総帥、シーザー・ゴールドマン――とでも、名乗っておこうか」
「北斗派だぁ……?」
 気の短いらしい槍男が凄む。するとその隣の青瓢箪めいた男がくふふと笑った。
「北斗星君と言えば、死を司る神にあらせられまするな」
「いかにも。北斗派の技は敵に必ず死を齎す。誰一人例外なく」
 ……どろりと、周囲の空気が濁った。
 窮地を救われた老婆と息子はしかし、震えながら見守る他にない。
「我らは御免状持ちにござりまするぞ。それを知った上で――」
「それは少々違うな」
 シーザーは言葉を遮り、首を振るとこう告げる。
「"そんなものは関係ない"。君達はもはや、死の運命からは逃れられんよ」
「「「…………!!」」」
 五人組が凄む。御免状の呪いが互いを強めあるいは弱めた!
 だがシーザーの表情は変わらず。そして頭目がじとりと睨みつけ……、
「――殺せ。八つ裂きにしてはらわたを路端に広げてやれぃ!!」
「「「「ウオオオオーッ!!」」」」
 四人が一気に迫る! 意外や意外、統率の取れた同時攻撃だ!
 一の槍を避ければ残る三の刀が、飛ぼうが這おうが頸を断つ構えか!
「「「「これぞ卍組が秘剣、卍血衾斬りよぉーっ!!」」」」

 シーザーは微笑みながら腰を落とし、それらしく身構えた。
 瞬間的に、彼の体を赤黒いオーラが纏う――そして姿が消えた!
「「「「何っ……ぐわあっ!?」」」」
 見よ! 驚愕の声もそこそこに、四人の悪党どもに叩き込まれた打撃!
 掌打である。内気功めいて高められた、破壊の魔力を撃ち込む強烈な掌打!
 四人組はどさどさと地面に倒れる。シーザーは残る頭目を見やり、
 くいくいと指で手招き挑発してみせた。頭目が激高し飛びかかる!
「死ねェーッ!!」
「名前は、そうだね――ああ、これがいいか」
 ずどん!
 大砲じみた撃音とともに掌打が正中線をきれいになぞって叩き込まれ、
 頭目は血を吐きながら土の上をのたうち回る。
「絶技『降神十八掌』。どうだね? それらしいだろう?」
「て、てめえ、ふざけ……が、はっ!?」
 おお、いかなる不思議の技か? 悪漢どもの顔が、肉体が……!
「「「ぶぎょらっ!!」」」
 膨れ上がりある者は折れ曲がり、奇怪な断末魔と共に……おお、おお!
「ふ……くっくく。いやこれはなかなか……ふ、ふふ!」
 シーザーはこらえきれず噴き出しつつ、呆然とする親子へ歩み寄る。
「ご無事かね? もう安心だ。今日のうちに悪党どもは皆、この街から姿を消すだろう」
 この男、割とノリがいい。
 颯爽と歩み寄る背中は、まさに英雄好漢そのものである!

大成功 🔵​🔵​🔵​

館・美咲
悪党ども、そこまででです!
寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
蒸気の力を込めたこの鞘から放つ刃はまさにジェット噴射の如し。
流派、ジェット居合流伝承者、館・美咲、ここに見参ですよ!

と高らかに名乗りを上げて、正面から悪党どもを切り伏せましょう。
これもジェット居合流の名を広めるため、門下生を増やすため。
気合を入れてやってみせましょう!

※ジェット居合流とは、鞘に蒸気を込め抜刀時にその蒸気の力を乗せることで、通常の居合よりも速度と威力が上がるといいなぁという思い付きで開発された流派である。実際に強くなっているかは食らった相手のみぞしる。



●蒸気切り裂く快刀一閃!
 古びた武術道場に押し入る不埒な悪漢どもの姿あり!
 場内には顔を腫らし気を失った門下生達が打ちのめされていた。
 そして道場主と思しき中年の男は、噫! 取り囲まれ袋叩きにされている!
「おとう~! おっとう~!」
 涙ながらに父を呼ぶ幼き少女。身の丈七尺半はあろう巨漢が掴み上げる!
「うるせえ餓鬼だ、てめえからぶっ殺してやろうか!」
「や、やめろ……うちの娘に、手ぇ出すんじゃねえ……!!」
「けっ、老いぼれは黙ってな!!」
 ずん! と踏みつけられ、師範は血を一塊吐いてしまう。
 なんという所業か。いかな神仏もこの悪行を見逃すといいたもうか!!
「そこまでです!!」
 だが神も仏もなくとも、ここには猟兵という者がいる。
 黒髪をたなびかせ屹然と悪党どもを睨みつけるは、異国情緒の装い纏う女ひとり。
「ハ! 誰かと思えば女かよ。なんだ、俺らに可愛がられてえのかあ?」
 巨漢がニタニタと言えば、手下と思しき悪党どもがげらげらと笑う。
 だが黒髪の女はそんな挑発も意に介さず、不敵に胸を張るではないか。
「ただの女ではありませんよ! あなた達を成敗する者なのですから!」
 男どもは女の言葉を鼻で笑う。巨漢はこれみよがしに御免状を突き出した。
 呪いの気配! ただでさえ巨大な体躯の威圧感がさらに増す……!
「どうだ、恐れろ! こいつぁ大名様直々の武侠御免状よぉ。
 それとも本気で挑むてか? この無敵無双流の鶴清(かくせい)様に!!」
「その通りですよ。さあ皆さん、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
 大仰に両手を広げ、女は威風堂々と自らを名乗る!
「蒸気の力込もりしこの鞘より、放つ刃はジェット噴射の如くなり!」
 愛用のサムライブレイドを手に、朗々響く言の葉気合十分!
「ジェット居合流伝承者、館・美咲! ここに見参ですよ!!」
 ぺたん、と地面に尻餅をついた幼子も、涙を止めてきょとんとするばかり。

 だが面白くないのは悪党ども!
 鶴清はビキビキと青筋を立てて歯を剥いた!
「小娘がァ……!! いきがりやがって!!」
「どうしました? その小娘と立ち合うのはお嫌ですか!」
「くだらねえ! おうてめえら、やっちまえ!!」
「「「ヒヒヒーッ!!」」」
 段平を提げた一山いくらの悪党どもが、美咲めがけて襲いかかる。
 女一人に徒党を組んで、何が武侠か片腹痛し! 卑劣千万この上ない!
 ……しかし! 美咲に些かの恐れなし。なぜならば!
「しからば存分に、お見せしましょうジェット居合!」
 ――ざんっ!!
 美咲が腰を落とし居合の構えを取った。
 その場にいる全ての者が、そこ"まで"は目視できた。
 だが直後! 女の姿は悪漢どものはるか後方にあるではないか!
 まるでその後を引くかのごとく、入道雲めいた蒸気一筋吹き荒ぶ。
 美咲の利き手には、白白と輝く刃ひとつ。――すなわち、抜刀姿勢である。
「「「ぐわああああっ!?」」」
 直後! 迅風一閃、十は居ようという徒党がまるごと吹き飛んだ!
 ごしゅう! 機構鞘が思い出したかのように蒸気を噴出する!
「ふっ、今日も冴えてますね、私の剣!」
「お、おねえたん、あぶないっ!」
 幼子の悲鳴! 然り、美咲を背後から襲わんとする鶴清だ!
 奴は猿(ましら)じみた雄叫びとともに、岩をも砕くであろう膂力を込めて拳を振り上げる。
 無敵無双流など駄法螺もいいところ、所詮は力自慢の木偶の坊か。
 だがそのぶん、呪いを込めた力は怪力無双! どうする美咲!?
「――ジェット居合流」
 黒髪がたなびいた。ごしゅう、と蒸気が噴出する。
 まるで舞踏を刻むかのように、軽やかな足取りで踵を返す。
 緩やかに見えてしかし疾く。すでに納刀完了、がちゃりと歯車が噛み合う!

 ――斬(ざん)。

 清々しいまでの一太刀であった。
 おのが噴き上げた蒸気をも断ち切る、音をも超えし神速抜刀。
 切り裂かれ払われし蒸気は、さながら朝露と消える濃霧の如し。
 ゆえにこの剣、その技、銘をこう呼ぶ。
「――断霧(たちきり)」
「……ご、ぼっ」
 逆袈裟の太刀筋を刻まれ、滝のような血を吐いて巨漢が倒れ伏す。
 血漿ひとつ刃紋を汚さぬ凄絶な居合。残心を打った美咲が納刀すれば、
 ちん――と鈴めいた鍔の音。そして蒸気は消えていく。
「……しゅごい」
「でしょう? これが――」
 幼子を振り返り、異装の女は微笑んだ。
「ジェット居合流なのですよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​


●一方その頃
 ――旧高内家武家屋敷、通称"呪殺城"にて。
「ほう……」
 暗黒めいた広間に佇む長身痩躯、笑みは張り付く仮面の如し。
 いかにもこれこそが、いまや領内を悪漢匪賊の住処に変えた外道の首魁。
 "笑う厭魅師"。またの名を――否、それはまだ誰も知ることなく。
「これはこれは。我らの天敵がいらっしゃるとは」
 遠見の呪術によって転移を嗅ぎつけた厭魅師は、楽しげに呟いた。
 時期尚早の襲来ではある。だが早晩、誰某が忍び込むであろうと予期していたゆえに。
「さて、噂の猟兵、その力はいかばかりか……まずは見物いたしましょう」
 闇の中に禍々しい気配が立ち込める。おお、化生ここにあり……!
●業務連絡
 プレイング締切は【4/18(木)18:00前後】です。
須藤・莉亜
「悪鬼羅刹流の中でも、血を奪う事に特化した一派【致死舞曲】の技、存分に味わうと良いよ。」
適当な流派を名乗って、妙な威圧感を出しつつ悪党たちの前に出ようかな。
…ノリと勢いで言ってみたけど、意外と楽しいねぇ。若干悪役っぽいけど。

悪党たちは複製した大鎌で峰打ちでもしてボコっとこう。

「ちなみに悪鬼羅刹流には他にも【毒伊吹】とか【霧殺界】があります。」
味わってみたい人はいるかな?



●悪を斬る悪喰らう悪
 悪党というものは不思議とやることなすこと判を押したように似るもので、
 そういう連中に限って『我らこそは外道にござい』と声高に喧伝する。
 須藤・莉亜がやってきた通りには、まさにそういうあからさまな連中がたむろしていた。
「うわあ、よくもまあここまで絵に描いたような連中集めたもんだねえ」
「あぁ? てめえ何様のつもりだ!!」
 飯屋で威張り散らして酒をゆすろうとしていた悪党どもが、
 気怠げな莉亜の物言いに青筋を立ててガンをつける。
「何様のつもりでもないよー、それよか君達アレ持ってるんでしょ?」
「こいつ……わかってて喧嘩売ってるってのか」
 殺気立った悪党ども、手に手に取り出したるは呪いの御免状。
 だがもとより呪詛に慣れた莉亜、大して驚くふうもなく大鎌を担げば、
「悪鬼羅刹流の中でも、吸血に特化した一派"致死舞曲"の技。存分に味わうといいよ」
 と適当な流派を名乗り、表情を変えぬまま妙な威圧感を醸し出してみせる。
 この男、飄々とした外見に似合わずなかなかの益荒男である。
 裡に秘めた闘争本能はかくたるもの、さながら猛獣がごろごろ唸ったかの如く、
 悪党どもは目に見えぬ異様な気配に震え上がってしまった!
「……これ、ノリと勢いで言ってみたけど、意外と楽しいなあ」
「ぶ、ぶつぶつ独り言してんじゃねえっ!!」
 ゴカッ!! 迂闊に飛び出した悪漢一人目の鳩尾に、大鎌の石突が突き刺さる!
「なあっ! い、いつのまに!?」
「しかも、おい! 見ろよ、あ、あれ!」
 悪党どもは震えた。
 なにせ莉亜の周囲には、三十以上の不気味な大鎌が死霊めいて浮かんでいるのだ!
「若干悪役っぽい気がするけど~」
 呑気な様子と裏腹に、莉亜の口元に三日月めいた不気味な笑み……!
「かかっておいでよ。御免状持ちの武侠様なんでしょ?」
「「「な、嘗めやがってぇええええ!!」」」
 段平に手斧にいかにも雑魚らしい得物を手に悪党どもが襲いかかる!

 ……が、そんな一山いくらの連中が敵うはずもなく。
 丁寧な峰打ちにより、六人目の悪党が白目を剥いて顔から倒れた。
「ひいいっ!!」
「ちなみに、悪鬼羅刹流には他にもいろいろ技があるんだけど……味わってみる?」
 一人残った七人目、鼻水を垂らしてへたり込みぶんぶんと首を横に振る。
 完全に心が折れているようだ。莉亜は少し残念そうに唇を尖らせつつ、
 荒らされた飯屋に首を突っ込みにへらと笑った。
「あ、せっかくだしお酒一献もらっていい? お金はちゃんと払うよぉ」
 はたしてどちらが本性なのか、掴みどころのない男である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼリナ・ファルゼナ
(鳴り響く戦国バイクのエグゾースト爆音バババババーー!)
(すごくうるさい! だがそれよりもデカい声で喋るやつがいた!)
(わたしです!)
天が呼ぶ地が呼ぶ紅湖が呼ぶ、それが私だ正義の騎士リゼリナ参上!!!です!!
なんたる!!なんたる荒廃!!許せないですよ正義の怒りマックスパワー!!唸れ黒剣ひかれシュバルト丸!
む!!!そこの悪いことしてるあなた!!!目が合いましたね!!名乗りなさい!!このリゼリナ・ファルゼナまたの名を黒剣シナナイがその性根を叩き切ってやります!!
え?!!なんですって!??聞こえません!!もっと大きい声で!!聞こえないです!!もっと!!1大きな!!!声!!ウオオオーー!!【人狼咆哮】



●唸れ黒剣シナナイ!
 ズババババ! ロロロロロ!! ダダドムゥ!!!
 悪党どもの笑い声と無辜の民の悲鳴を切り裂く謎の排気音!
 ……排気音か? 排気音である。すさまじいエグゾースト爆音だ。
「なんだなんだどこのちんどん屋だぁ!?」
「わたしです!!!!!!!!!」
 エグゾースト音のほうがまだマシという大音声が応えた。
 そして戦国バイク(彼女自身は馬だと思っている)シュバルト丸に跨がる者こそ、
 雄々しき人狼騎士リゼリナ・ファルゼナだ! すでにおわかりだがアホである!
「天が呼ぶ地が呼ぶ紅湖が呼ぶ、それが」
「なんだこの乗り物マジでうるせえな!」
「耳が壊れそうだ!!」
「あの女はもっとうるせえ!!」
「正義の騎士リゼリナ参上!!!!! です!!!!」
「「「うるせえ!!!!!!」」」
 ドルドルドルドル。エンジン音が大きすぎて悪党どもの声もリゼリナにはよく聞こえない。
「そこの悪いことしてるあなたがた!!!!! 目が合いましたね!!!!! 名乗りなさい!!!!!」
「「「そのうるさいの止めろよ!!」」」
「このリゼリナと黒剣シナナイがその性根を叩き切ってやりましょう!!!!!」
「「「だからまずそのうるさいの止めろって!!」」」
「えっ!?!? なんですって!?!?!?!? 聞こえません!!!」
「「「その!! うるさいの!!! 止めろって!!!!」」」
 ウォオオンウォオン。ドルドルドルドル!!(エグゾースト音)
「もっと大きい声で!!!!」
「「「だから!! そのうるさいのを!!! 止め」」」
「もっと!! 大きな!!!!! 声で!!!!!! ウオオオオーーーー!!!!!!!」
「「「グワーーーーーーーーーッ!?!?!?!?」」」
 ナムアミダブツ! リゼリナの人狼咆哮が炸裂だ!
 会話からのよどみなきアンブッシュ、正直正道を名乗る騎士としてはどうなのか!
 だが待ってほしい、リゼリナにはそもそもユーベルコードを使った自覚すらない。

「……はっ!!!!!」
 耳からたらーんと血を流して倒れている悪党の皆さん。
 無辜の民の皆さん? その前に気絶したので問題なかったようだ。
「自ら改心して倒れるとは……敵ながらあっぱれ!! ですね!!!!!」
 誰かこの暴走騎士を止めたほうがいいのではないだろうか。バイクもろとも。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎
…我流だな
ってことは俺が師範ってことか

黒鳥流師範セリオス・アリスだ
死にたくなけりゃ今すぐ帰んな
歌うように朗々と
相手を煽るような調子で

鳥名乗ったしな
まずはそれっぽいとこ見せて説得力をあげるとすっか
『力を溜めて』【蒼ノ星鳥】を初っぱなからぶっぱなす
鳥青いけど黒じゃねえけど
まあ鳥は鳥だし
たぶん、アレだ
お前が燃えて黒く(墨に)なる的な
適当なことをいいながらも『ダッシュ』で距離を詰め『2回攻撃』
打ち合った2回目から踊るように体を回して勢いつけ
左の拳に雷の『属性』を纏わせぶん殴る
続けざまに剣でも一閃

おいおい、剣だけだって誰がいった?
最近の流行りは剣も拳も魔術も全部のせた強くてかっこいい流派だぜ



●黒鳥は雷鳴とともに
 いまや悪漢どもはどこにでも蔓延っている。
 たとえばあそこだ。町民の憩いの場である井戸端へ群がる野盗ども!
「おうおう、水が使いたきゃ俺らに許しを得な!」
「そんな……娘が熱を出しているのです、どうかお許しを」
 薄幸そうな女が平伏すれば、やつれた男どもは下卑た笑みを浮かべる。
 その視線の意味を悟り、若き母はぎゅっと目を瞑った。なんたることか……!
「ったく、ろくでもねえことしてやがんなあ」
「「「誰だっ!?」」」
 殺気立つ悪党どもを前にして、飄々とした面持ちの男が一人!
 優男は不敵な笑みで片眉を吊り上げると、自らをこう名乗る。
「黒鳥流師範、セリオス・アリス……ってとこか? ま、我流だからな」
「聞いたこともねえぜ、田舎の三下流派じゃねえのかあ?」
「色男さんよぉ、俺たちゃこれからお楽しみなんだ! 帰(けえ)んな!」
 徒党を組んで気の大きくなった悪党どもはげらげらと笑う。
 そしてこれみよがしに御免状を見せつけるというわけだ。
「ハ! そりゃこっちの台詞だぜ?」
「何ィ……?」
「ま、井戸端と来りゃあ死に水を取るには最適だろうけどよ。
 ――死にたくなけりゃ、今すぐ帰(けえ)んな」
 ざわり。朗々たる煽り言葉に、余裕綽々でいた悪党どもが再び殺気立った。
 だがセリオスには些かの恐れもなし。むしろちょいちょいと指で挑発してみせる!

「てめぇ、くたばりやがれぇ!!」
 御免状が禍々しく輝きセリオスを呪う。だが影響は軽微だ!
 そして勢い込んで飛びかかってきた悪党の段平が、セリオスの肩めがけ――。
「……あ?」
「なんだ、見えなかったのか?」
 己が斬られたことすら察知出来なかった悪党は、呆けた面のままどさりと倒れる。
 そして見よ! 振り抜いた剣から生まれる蒼き炎を。雄々しいフォルムの星鳥を!
「「「な、なんだありゃあ!?」」」
「こいつはまだ始めだぜ? 黒鳥流"蒼ノ星鳥(アステル・テイル)"なんつってな!」
 ごぉう――!
 蒼焔の鳥が火の粉を散らして羽ばたけば、後に引くは流星めいた尾羽根。
 悪党どもがなまくら刀を振るうより速く、ぐるりと回転飛翔し敵を薙ぎ払う!
「「「ぐわぁーっ!!」」」
「こ、この野郎! 嘗めんじゃねえぞ!!」
 一山いくらの三下どもが吹き飛べば、頭目らしき男が血色ばんだ。
「へえ、お前は少しは腕に覚えがありそうだな」
「一刀流の村丸様だ! つかてめえ……鳥、黒くねーじゃねーか!!」
 ごもっともな指摘である。
「あ? あー……まあ、アレだ。お前が燃えて黒い炭になる、っつーか」
「どこまでもふざけやがってぇ!!」
 疾い。さすがは悪党どもをひとまとめにするだけはあるか。
 だがセリオスの踏み込みはなお疾い! 気がつけば間合いの内側だ!
「何っ!?」
「おらよっと!」
 がぎん! 打刀と青星が撃ち合う。敵の一に対しセリオスの撃剣は二!
 蹈鞴を踏みながらも留まった村丸が、全力を込めた袈裟懸けを繰り出した!
「死ねぇ!!」
「おっと」
 がぎんっ!! セリオスも感心するほどの重い一撃である。
 ぎちぎちと刃同士が鍔迫り合いを――いや。セリオスが引いた!?
「な」
 拍子を崩された村丸は体幹を崩す。その時青年は舞踏めいて一回転。
 そして青星で打刀を払って守りを剥がすと、がら空きの鳩尾に左拳を叩き込む!
 バチバチバチ! とすさまじい雷撃が村丸の全身をつんざいた!
「げえええっ!」
「こいつはお釣りだ、とっときな!」
 ざんっ! とどめの剣閃一条、その軌跡もまた蒼碧なり。

「ち、畜生、卑怯だぞ……」
 ビクビクと稲妻の魔力に痙攣する村丸が、恨めしげに呻いた。
 セリオスは悪びれもせず、刃を肩に担ぐとニヒルな笑みを浮かべて応える。
「おいおい、剣だけって誰が言った? 最近の流行りってのはなぁ」
 ばちばちと雷の残滓を纏う拳を掲げれば、そこへ星の鳥が舞い降りる。
「剣も拳も魔術も、全部載せた強くてかっこいい流派なんだぜ?」
 この伊達男、いかにも強者なり。
 己らがいかに井の中の蛙だったかを悟り、悪党どもはぐたりと倒れるのだった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

無銘・飯綱丸
やれやれ、けったいな免状もあったもんじゃ。

我流、されどこの身は剣に秀でる烏天狗の加護を預かりし退魔の霊刀。悪鬼悪霊、化生外道をぶった斬る――その他用を為さぬただの鈍刀よ。名などお前らにくれてやるつもりはない。

この身退魔の刃、ヒトを斬るものにあらず。魔性の者でないのなら用はない。俺を鞘に納めたまま、静かに、疾く、鞘や柄で昏倒させていく。

なにが楽しくて名乗りやら正面勝負やらをするものか。俺は侍でも、ましてや武芸者でもない。

ただの、刀よ。
 



●その刃無銘、されどその技無双なり
 ざすり、ざすり、ざすり――ざしゃり。
 通りをそぞろ歩いていた士(さむらい)が、ふと足を止めた。
 昼時である。常ならば往来には多くの町人や働き手が行き交って、
 さぞかし活気ある風情を描いていよう。だがいまは無人の如く静まっている。
「やれやれ、けったいな免状もあったもんじゃ」
 嘆息し頭を振る。見れば通りの向こうから、男が数人やってくるではないか。
 流浪の剣客めいた士と異なり、彼方の奴らはいかにもな風体である。
 すなわち帯を着崩しだらしなく髷を解き、口元には卑賤な笑み。
 ぎんぎらとした煙管やら大切羽やらを見せつけるあたり、趣味が悪い。
 士を閉口させたのは、連中が懐から御免状をちらつかせているところであろう。
「あぁん……? なんだぁてめえ、ここらじゃ見ねえ面だな」
「この通りは辺り一面、俺らの縄張りって知らねえのかあ?」
 にたにたと笑う浪人崩れが威張り散らす。士は無言。
「けっけ、ビビって声も出ねえときたか!」
「おいおい、よせ野郎ども。無知は悪いことじゃねえよ」
 恰幅のいい親分らしき男が、手下どもをニヤニヤしながらたしなめる。
「いやいや親分、まさかあっしら紅湖五名刃を知らねえ奴がいるはずがねえや!」
 げらげらと笑う悪党ども、いやさ紅湖五名刃! 無論それはでっちあげだろう。
 斯様に士道も心得ぬ悪漢どもには、大仰に過ぎた二つ名である。

「ほう」
 その時、士が口を開いた。
「三下どもを然様に有難がるとは、変わった風習もあるもんじゃ」
 ぴきり、と周囲の空気が張り詰めた。
「……てめえ、今なんつった?」
 士、含み笑いをひとつ。
「いや失敬、三一(さんぴん)侍とでも言ってやったほうがよかったかのう」
「この野郎……!!」
 血気盛んな手下が一人、その言葉に苛立ち剣を抜き士を斬って捨てた!
「あ?」
 だがそこで男は気づいた。いやに手先が軽いことに。
 ……鍔から先、太刀がへし折れているではないか!
「げええっ!?」
「て、てめえ何をした!?」
 悪党どもは慌てて飛び退き、各々鞘走って身構える。
 士、再び嘆息。鞘は握れどその手は決して柄に運ばれず。
 然り。士は抜刀すらせずに柄尻で刀身を叩き折ったのだ!

「何者だ、こいつ!?」
「名を名乗りやがれ!!」
 士はぎらりと悪党どもを睨めつけた。
「名などお前らにくれてやるつもりはない。所詮は我流の身なれば」
 実はこの士、人に非ず。
 古くは烏天狗の加護賜りしと謳われる、退魔の霊刀の化身である。
 ゆえにその刃は人ならぬ者――悪鬼悪霊、化生外道を叩き斬るために在り。
 どうしても名が必要な時のみ、この無愛想な刀はこう名乗る。
 "無銘・飯綱丸"。いかにも士らしい無骨で不器用な名と言えよう。

「お前達、免状は与えられどヒトの身は外れておらぬと見えるな」
 退魔の霊力を宿した浄眼が、ヒトの本質を容易く見抜く。
 呪いの顎が触手めいて士を絡め取らんとするも……さもありなん。
 赤黒い波動は、男の裡より溢れる破魔の気配に鎧袖一触なり。
「き、気取ってんじゃあねえ!!」
 親分らしき男が吼えた。それを合図に四人が一斉に斬りかかる!
 士、やはり抜刀せず。腰元から鞘ごと刀を引き抜き、柄尻や鞘でもって敵を打つ。
 剣が来ればこれを弾きあるいは砕き、首筋や鳩尾に重い一撃を加えて昏倒させるのだ。
 瞬き一つの間に、あっという間に徒党は白目を剥いて倒れ伏していた。
「……まったく、何が楽しくて名乗りやら勝負やらをするのか」
 士は頭を振った。なぜならその身、侍にも武芸者にもあらぬただの刀なりと。
 そして再び通りをしめやかに過ぎていく。

 恐れ慄きながらも一部始終を目の当たりにしていた街の人々。
 戸口の隙間から食い入るように男の背中を見送った幼子が、呆然とする両親に言う。
「すごいや、おさむらい様だ! 本物のおさむらい様だよ!」
 悪漢どもを見逃さず、無用な殺生すらも控えて風の向くまま去っていく。
 その背中、まことの士と呼ばずにどう呼ぼうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

テイク・ミハイヤー
どっちを向いてもヒーロー不在!だったら俺がやらなきゃ誰がやるってんだ!

[SPD]
どこもかしこも悪党だらけ、1人ずつ相手してたんじゃきりがないぜ。
走り回って連中を原っぱに集めてまとめて決闘だ。
お前はどこのどいつだって?
誰が呼んだか、愛と勇気と熱い鼓動流のテイクとでも名乗っておくぜ。
俺の獲物はこのレンチかって?違う違う、今から見せてやるよ。
幸い街を駆け回ってる間に材料は十分集まったしな。

正々堂々真正面からUC即席爆弾で勝負だ。ちんぴらごろつき纏めてかかって来い!
仲間を巻き込む心配がない爆弾は、剣より槍より銃より強い!
そらっまとめてドカンだ!



●一触即"爆"発!
 どんな世界にもオブリビオンが現れるように、悪党もまた存在する。
 そして悪あるところ苦しめられる人々がいる。であればヒーローにも出番がある!
「ってなわけで……さあ、これだけ集めりゃ十分だろ!」
 街から離れただだっ広い原っぱに、少年ひとり。
 するとあちらから来るわ来るわ、うだつの上がらぬ悪党どもの群れ!
「が、ガキぃ! ちょこまか逃げ回りやがって!」
「ぜえ、ぜえ……ようやく追い詰めたぞ!」
「こんなとこまで来させやがって……!」
 どいつもこいつも息を切らせて、口々に少年を罵る。
 少年は挑発や不意打ちで悪党どもの気を引き、走り回りながらここまで逃げてきたのだ。

 いや、逃げてきたというのは正しくないだろう。
「ふさわしい場にご招待したって言ってくれよ。決闘てのはこういうとこが定番だろ!」
「決闘だとぉ……?」
「こいつ、よほどの命知らずらしいな」
「どこのどいつだ、名を名乗れ!」
 数十人近い悪党を前にして、少年は少しの恐怖も見せはしない。
 問われればむしろ胸を張って、こう名乗ってみせる。
「誰が呼んだか、愛と勇気と熱い鼓動流のテイク・ミハイヤー、なあんてな。
 ……ちょっと長すぎるかな? ま、大した問題じゃないだろ!」
 草原に風が吹き、テイクの赤いマフラーをたなびかせる。
 悪党どもの目線は、彼が肩に担いだ動力機つきのモンキーレンチに集まっている、が!
「おっと、早とちりするなよ? 俺の得物はこいつじゃないぜ!」
 "スチームモンキー"と名付けたチープウェポンを槍のように地面に突き刺し、
 テイクがポケットから取り出したのは……はてな、ガラクタばかりだ。
 割れた陶器片やら炭の欠片やら、これで何をしようというのだろう?
「ケッ、大口を叩きやがって! もうハッタリにゃ騙されねえぞ」
「こっちは数がいるんだ、逃げ回ったてめえの判断を恨むんだな」
「おい、やっちまおうぜ! 囲め囲め!」
 ザザザザザ、と悪党どもがあっという間にテイクを取り囲む!
 そこで奴らは気づいた。包囲網を敷く僅かな隙に、テイクがなにやら妙な物体をこしらえていたことを。
「おーおー、らしいことしてくれるじゃんか。こっちは正々堂々真正面から行くぜ!」
 ぽーい。ガラクタの塊にしか見えない球状物体が……着弾、爆発!?
「「「グワーッ!?」」」
 KA-BOOOOM!! 爆裂とともに陶器片が散らばり大ダメージだ!
「なんだこりゃあ!?」
「おっと、お決まりのアレを忘れてたぜ。"いいわね? 行くわよ!"なあんてな!」
 SWOOOOOSH……KA-BOOOOOOM!!
「「「ぎゃああああっ!!」」」
「くそっ、やっちまえ! 殺せぇー!!」
「そうは行くかよ、まとめてドカンだっ!」
 BOOM! BOOM!! KA-BOOOM!!
 こんな開けた場所では遮蔽物に隠れることも、逃れることも出来はしない。
 テイクは逃げていたのではない。誰かを巻き込む心配がないフィールドで、悪党どもを思うがままに吹っ飛ばす状況をセッティングしただけなのだ!
 鬨の声は、あっという間に情けない悲鳴と断末魔に変わってしまったのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

アロンソ・ピノ
流派を名乗って堂々と闘うとは、これほどオレに向いた依頼もねえ
実戦経験と流派の武名の為にも、悪党悪漢叩っ斬って行かなきゃな
というわけでごり押しで解決のみだ。
そうでなくとも力を嵩に狼藉ばかりの奴らなんて風流さのかけらもねえし見過ごせねえ。出来うる限りぶった切る。
ユーベルコードは春風だ。
徒党を組んだ野郎共に、風流ってのを教えてやらなきゃな、文字通り。一切合切横薙ぎだ。
あと何はともかく武名を上げねば。
逐一流派の名前はアピールするぞ。


――春夏秋冬流、アロンソ・ピノ。参らせてもらう。



●ひととせ巡りて
 流派を名乗り、真っ向から悪党どもを叩き斬る。
 善(い)い、実に、これほどまでに己に向いた仕事があっただろうか?
「剣豪たるものこうでなくっちゃあいけねえや――なあ?」
 ざしゃり。突然ふらりと現れた男の声に、鋭い視線がいくつも応えた。
 エルフの青年がやってきたのは、町外れにあるボロ屋敷である。
 かつては郷士の立派な住まいであったであろうに、今や見る影もなく、
 御免状を笠に着た悪党どものねぐらと化している始末。
 しかもどうやらここに屯するのは、もともと徒党を組んだ賊の群れであるらしい。
「なんだぁ? ここはてめえみたいな優男が来るとこじゃあねえぜ」
「酒が欲しけりゃよそへ行きな、もっともここらの酒はみぃんな俺らが頂いてるけどな!」
 げらげらげら。略奪を隠しも悪びれもしないとは、悪漢ここに極まれり!
 そんな野盗どもの嘲りにも目くじら一つ立てず、青年は肩を竦めた。
「力を笠に着て狼藉三昧、挙句に弱えモン同士でお山の大将気取りかい。
 ああ、やだやだ。これだから風流の欠片も知らねえドサンピンどもはよ」
「んだとこらぁ!!」
 歯に衣着せぬ物言いがよほど癪に障ったか。
 野盗どもは額に青筋を浮かべ、ガシャガシャと剣呑な武器を手に取る。
 あっという間に入り口を塞いで青年を取り囲み、じわじわとにじり寄るのだ。
「俺達"空羅党(くうらとう)"に嘗めた口聞いてくれるじゃねえか、ええ?」
「あん? なんだって? "ぼんくら党"?」
 これみよがしに耳に手をやって、聞き間違えたふりをしてみせる。
 ぶちり、とどこかで堪忍袋の緒が切れる音がした!
「この野郎、どこの誰だか知らねえがやっちまえ!!」
 一度に五人の野盗が飛びかかり――そして、放射状に吹き飛ばされた。

「「「げぇえっ!?」」」
「なっ!?」
 身構えていた後続は、己らの真横を砲弾めいて吹っ飛んだ仲間の姿に唖然!
 一瞬である。青年はすでに抜刀していた。そして刀身が異様なのだ!
 まるで鞭めいてしなっていたそれは、しゅるしゅると音を立てて元の太刀へ。
 薄い笑みすら浮かべながら、青年がじろりと悪党どもを睥睨する。
「いきなりご挨拶をくれるじゃあねえか。もう終わりかい?」
「て、てめえ……な、何者だ!?」
 ふっ、と微笑んだ青年が身構えれば、どこからともなく一陣の風。
「春夏秋冬(ひととせ)流、アロンソ・ピノだ。悪漢どもに風流を教えに来てやったぜ。
 さあ、かかってきな。免状もろとも、一切合切オレが横薙ぎにしてやらぁあよ!」
「か……かまうこたあねえ、やっちまえ! 殺せ!!」
「「「うおおおおおお!!」」」
 アロンソはニヤリと笑う。そして再びの斬撃一閃!
 瞬間、伝家の宝刀"瞬化襲刀"がしゃらりと伸びてしなり、悪党六人をばっさりと薙ぎ払う!
「「「ぐえええ!!」」」
「春夏秋冬流・春の型壱の太刀……春風。春一番ってやつだ、避けてみなぁ!」
 春一番などとはとんでもない、悪党を薙ぎ叩き斬る様はまさに颶風なり!
 かくして破れ屋敷の野盗どもを相手に、アロンソの大立ち回りが始まった。
「オレの流派は春夏秋冬流だぁ、地獄に行っても忘れんじゃねえぞぉ!」
 風に乗って響く大音声に、外の悪党どもすら震え上がったことだろう!

大成功 🔵​🔵​🔵​

在連寺・十未
……ふっ、常ならば君達のようなこざいくだよりの武侠くずれに名乗る名等は無いのだが……そうは行かないようだ。然らば、そうだね。

我が鋼糸の閃き――無形無尽流弦術の恐ろしさを受けるが良い

我が無形無尽流を極めし弦術師にかかれば、その手で 触れた無機物を鋼糸として扱うことすら容易い。これがどういうことか解るか?
僕は得物を持たないのでなく、持つ必要がないのさ。得物の元は君達が用意してくれるし……なんなら、石礫一つあれば良い。

無形無尽流、幽薄紡糸。……なんて。ね
多対一は慣れてるのでね【ロープワーク】【敵を盾にする】【地形の利用】+無形無尽流の弦術で裁いていこう。

適当な名前だが……こういうのも楽しいな



●亡霊、無形にして尽きることなし
 悪党のほとんどは男であり、しかも欲望を隠しもしない連中だ。
 そしてこの手の輩が好むことと言えば、酒に博打に女と相場が決まっている。

「よぉ~お嬢ちゃん、見ない面だなぁ? んん?」
 そんなわけで銀髪の少女は、今まさに悪漢数人に囲まれていた。
 着物をだらしなく崩した連中は、御免状を懐からちら見せしているものの、
 間違いなく犯罪者上がりの無法者どもだろう。武芸者ですらないのだ。
「俺っちの好みにゃちと歳が足りねえが、何、これも乙なもんよ」
「へ、へ、へ! そこがいいんだよそこがぁ」
 下賤! 本人を前にして斯様な会話を控えもしないとはなんたる下劣さか!
 だが色白の少女は瞑目したまま、男どもの言葉を無視して歩き出そうとした。
「おいおいおいおい、待てよお嬢ちゃん! 俺の話を――え?」
 細い腕を掴もうと伸ばした手が、すとんと落ちた。
「あ、が、お、俺の手が!? ああああ!?」
 まるで鋭利な刃物で斬ったかのように、手首から先が切断されているのだ!
「こ、こいつ!? 妖術師か!?」
 残る悪党どもがざざざっ! と後退って段平を構えれば、ようやく少女は眼を開いた。
 虚のごとき黒い瞳に睨みつけられ、男達は金縛りに遭ったかのようになってしまう。

「常ならば、君達のような小細工頼りの連中に名乗る名など無いのだが」
 しゅるしゅると音を立て、"何か"が少女の手に撚り集まる。
 それは小さな石ころに変じ――正しくは戻ったのだが――少女はそれを投げ捨てた。
「これ以上は荷が勝つか。然らば、そうだね――」
 悪党どもは誰何すら出来ない。尋常ならざる気配が張り詰めているゆえに。
 まるでそれは、路辻を彷徨う恐ろしい亡霊と相対してしまったかのよう。
「無形無尽流"弦"術師、在連寺・十未。と言ったところか」
「幻術師、だとぉ!?」
 ふ――と。細められた十未の眦に、あざ笑う気配。
「幻に見えるかい? あいにくだが違う。僕の得物は鋼糸。目に見えないほど細いが、ね」
「ほざけこのガキぃ!!」
 二人目。裂帛の気合とともに、振り上げた刀を兜割りめいて叩き下ろす。
 十未は避けも防ぎもせず、ついと指先を伸ばして、降り来たる刃に触れた。
 するとどうだ。刀はひとりでにしゅるしゅると"解け"、そして消えてしまった。
 否、消えたのではない。すべては十未の言葉通りである。
「や、刃が消えてなくなっちまった!?」
 柄から先が失せた剣を放り捨て、悪党が蹈鞴を踏む。
 ひゅん、という風切りの音が耳元で聞こえた――そう思ったときにはもう、遅い。
 きらりと光の筋が煌めいたかと見えた瞬間、悪党の体はバラバラに四散する。
「ひいっ!!」
「い、糸だと!? どこから出しやがった!」
「見てたならわからないのかな? "変えた"んだよ」
 ひゅるるる。十未の掌の上に、喪われたはずの刀身"だけ"が現れた。
 正しくは糸に変じていたそれが撚り集まったのである。
「これぞ無形無尽流、"幽薄紡糸"――なあんてね」
 正しくは"Lemures"と名付けられたこの力は、彼女の周囲にある無機物を極細の鋼糸に変換してしまう。
 そして一流の糸使いである十未にかかれば、糸は見えない殺意の雨にも壁にもなる。
「僕は得物を持たないのではなく、持つ必要がないのさ。
 ところでさっきは、なにやら僕を相手にあれこれ口走っていたようだけれど」
「「「う、うおおおおおーっ!!」」」
 この時点で、生き残った連中はさっさと逃げるべきであった。
 十未は表情を変えぬまま、最初に飛び込んだ一人を盾として糸を展開、攻撃を捌いて受け流し、淡々と片をつけていく。

「……適当に名付けてみたけど、こういうのも楽しいな」
 歩み去る十未の足元で、御免状がバラバラに切り裂かれた。
 風が吹き、紙片をさらっていく。跡には何も残らない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
くううっ、流派を名乗るなんて最高にかっこいい!
設定はちゃんと考えてきたから、合わせてくれる?
なんとか書房作戦でいくよ!
かっこいい解説よろしくね!

緒蘭朱流槍術士、折葉――
推して参るんだよ!

まずは小手調べのなぎ払い
あっ、必殺技の名前考えてなかった
まぁなんとなるよね
ヨハンがかっこよく解説してくれるはず!

君……、お主もなかなかやるではないか
奥義を見せる時が来たようだね――だな!

一気に風を纏ったら【早業】の【2回攻撃】
フィロ……じゃなかった
鬼蜘蛛連斬ッ!
ふっ、またつまらぬものを斬ってしまった
悪党、此処に破れたり!

ちらりと振り返ってヨハンを見て
決まってた?と得意げな視線を送っちゃう


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

最高にかっこいいかどうかは分かりませんが、
作戦は了解しました
やってやりましょう

緒蘭朱流槍術
そう、槍を揮った後には草木一本残らず、
継ぐ者は名に必ず"葉"を冠するという――あの緒蘭朱流です

あれは、閃影迅――!
鋭い一閃が影も残さず翔けるという
少女の腕で自在に槍を繰るとは、さすが折葉さんですね

彼女が本気を出せば狼藉者など
四肢を切り裂かれ舌は絶たれ
二度と陽の光は拝めないという
あいつ、死んだな

そして疾風の二連斬!
空より迫る鬼蜘蛛の如き多段攻撃
これを喰らって生きていた者はない!

……得意気な表情にはふっと笑みを返す

楽しかった



●いつもの彼女と意外な彼
 御免状を賜ったのは大半が一山いくらの悪党だが、中にはそうでない者もいる。
 善人、という意味ではない――むしろある意味では、わかりやすい三下よりも厄介な手合いだ。
「――……」
 こじんまりとした荒れ寺に、襤褸を纏う剣客がうずくまっていた。
 ざんばらの髪の合間から鋭い眼光が覗く――ただならぬ気配。
「ほう」
 剣客は吐息を漏らす。その口元は残忍な笑みを浮かべていた。

 時間はやや巻き戻る。
「……って感じでいこうと思うんだけど、どうかな?」
 長台詞を終え、オルハ・オランシュは得意げに笑った。
 彼女の考えた"最高にかっこいい流派"の設定である。
「準備がいいに越したことはないのですが、流派の開祖まで設定する必要はあったんでしょうか」
 対するヨハン・グレインは相変わらずの無表情で首を傾げる。
「いいのいいの、こういうのは細かいとこまで考えるのが大事なんだよ!」
「はあ」
「それに、あれまだ省略したほうだしね」
「完全に考えるのが楽しくなってるやつじゃないですか……」
 ヨハンは呆れた。オルハはいつもこうなのだ。
「とにかく! ちゃんと合わせてねヨハン、解説は任せたからね!」
「まあ、作戦は了解しました、やってやりましょう」
 といったところで二人は石段を登りきり、荒れ寺へやってきた次第である。

 そして時間軸は元に戻る。
 うずくまっていた剣客がゆらりと立ち上がる――オルハの表情が張り詰めた。
(……なるほど、あれは)
 ヨハンをして中々の腕前と分かる、鋭い殺気。そしてあの笑み。
 いかに御免状があろうと猟兵と常人とでは差があれど、気を抜けば危ういか。
 しかしオルハはヨハンの方をちらりと見ると、胸を張って一歩前に出た。
「其処許、儂の免状目当てで参ったか」
 時代がかった口調で剣客が言えば、オルハは三叉矛を身構える。
「うん……じゃなくて! いかにも、その通りである!」
(微妙に素が隠しきれてないんですが大丈夫でしょうかね)
 若干不安そうなヨハン。剣客は大して気にした風もなく誰何する。
「神無双松前流・天全。其処許も名乗るがよい」
 二人は顔を見合わせ、こくりと頷いた。オルハは朗々と名乗りを上げる!
「緒蘭朱(おらんしゅ)流槍術士、折葉! 推して参るんだ……じゃない、参る!」
 そして飛び込んだ。剣客はすでに柄に手を置いている!
 だがオルハの初動が先の先を得た。小手調べの薙ぎ払いが大気を切り裂く!
「ほう!」
 剣客はこれを見事に躱していた。すかさずヨハンが合いの手を打つ。
「なかなかやりますね、あの緒蘭朱流槍術の初撃を避けるとは。
 そう……槍を振るったあとには草木一本残らず、後継者には……ええと」
「"葉"を冠する!」
「そう、後継者は名に必ず"葉"を冠するというあの緒蘭朱流です」

 ヨハンが微妙にトチったことにオルハが口を挟みかけるが、
 そこへ剣客――天全が割り込んだ。フェイントを交えての刺突。狙いは喉!
「っと!」
「呵呵! 聞かぬ名だが中々の使い手よな!」
 がきん、とウェイカトリアイナの柄と刃が拮抗し火花を散らす。
 剣客は二度ほど小刻みな刺突を放った上で飛び退る。攻め手は再びオルハへ。
(っ……ちょっと、体が重くなってきたかも)
 呪いの影響か。長期戦はどうやら不利と見えた。
 ここは速攻で勝負を決めねばなるまい。一つ大技を放ちたいところ……だが。
(あっ。どうしよう、必殺技の名前考えてなかった!)
 ものすごくどうでもいい、ように見えて実はけっこう大事なことに気づくオルハ。
 その間にも天全は刺突薙ぎ払いを丁寧にいなして躱し、攻撃の隙を伺う。
 呪いの重圧は少しずつ高まる。ここはヨハンを信じて撃つ他にない!
「君……じゃなくて、お主もなかなかやるではないか」
「ハ。酔狂をほざいておる場合か?」
「それはこちらの台詞だ……である! せやぁ!」
 瞬間、ヨハンと天全はオルハが消えたように思えた。
 だが実際は、そう見えるほどの速度でオルハが踏み込んだのだ!
 つまり彼女は勝負をかけに行っている。ヨハンの頭脳が高速回転した!
「! ……あれは、閃影迅!」
(なにそれ、かっこいい!!)
「鋭い一閃が影も残さず翔けるという……さすがは折葉さん、少女の腕であれほどとは!」
 オルハの体が軽くなったのは、呪いが弱まったせいかあるいはノリにノッたからか。
 反撃の糸口を失った天全は、徐々に徐々に圧されていく!

 がきん! ひときわ重い金属音とともに、両者は飛び離れた。
「ぬうう……!」
 天全は呻く。あちこちには避けきれなかった疵が増えつつある。
「これはどうやら、奥義を見せる時が来たようだ……な!」
(ほんとにああいう演技が苦手なんですね……仕方ないか)
 ヨハンはんん、と咳払いをひとつ。
「彼女が本気を出せば、狼藉者など……」
 若干の間。
「……四肢を切り裂かれ舌を絶たれ、二度と陽の光は拝めないという。
 あいつ――死んだな」
(なにそれ! 緒蘭朱流そんなのじゃないんだけど!?)
 まさかの解釈違いである。だがオルハはあえてこれに乗ることにした。
 にたりと(彼女なりに)凄絶な笑みを浮かべ、颶風を纏って疾駆する!
「何、疾いっ!」
「行くぞっ、これぞ緒蘭朱流奥義――」
 疾風を纏いての二連突き。空より来たる避けようのない多段攻撃である。
 奇しくもその時、ヨハンとオルハの声はまったく同時に重なった。
「「……鬼蜘蛛連斬っ!!」」
 びょう――! 風が吹き抜け、そして血が飛沫をあげて舞い散った。
「み、見事なり……」
 どしゃり。天全が倒れ、免状はボロボロと塵に変じて消えてしまう。

「ふっ、またつまらぬものを斬ってしまった……」
「それ、槍で使う台詞じゃないと思うんですよね」
「んもうっ、そういうツッコミはいいから!」
 などと言い争いをしつつ、ふっとオルハは片目を閉じて微笑んだ。
 ……意外なことに、ヨハンもまたこれに、リラックスした笑みを返す。
 数多の戦いを、そして年頃の少年少女らしい交流を経た二人だからこその笑み。
(…………思ったより、楽しかった)
 だけではないらしいのは、ご愛嬌である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒・烏鵠
こんな奴らに“万嶺殿”を名乗るのもなァ。
つーワケだから、今回オレらは【チーム・いろは】で行こうかァ!
ホラ、オレらの名前って頭文字が「あ・い・う」だからサ。

ってなワケでオレサマはトーゼン解説役担当だァ。気張れよお二人サン!

おっと、あっちゃんのあの技は『豪打・啄木鳥』!目にもとまらないスピードでキツツキみてーに全く同じポイントを突き刺す妙術!あれ難しいんだよな真面目に。槍でもスナイパーかよ。

あ、いっちゃんたら『無明長夜』出してる。敢えて視界を捨てることで相手のフェイントを無視し、的確に急所を刎ねる技だ。手加減してなきゃ首が落ちてたナ!

コレ楽しいな!UCで臨場感溢れる実況しちゃろ!がんばれアホ共ー!


イリーツァ・ウーツェ
【チーム・いろは】だ。今回はそういう趣向らしい。
戦杖を使うのはいつもの事だが、流派か。
そういえば、この杖術は烏鵠に教わったものだったな。
当時の奴はどう名乗っていたか……ああ、思い出した。
では。
まずは幼子に手を出していた悪漢の手を砕く。

白縫流大杖術、免許皆伝者イリーツァ。
義(友の頼み)によって助太刀いたす。

さぁ来い、虫けら共。叩き潰してやろう。


アルバート・クィリスハール
なーにが【チーム・いろは】だっての、この性悪狐……。
はぁ。流派、流派ねぇ……そんなの考えた事もなかったなぁ。僕の槍は完全に我流だし……。
でもこういうの考えるの、楽しいよね。なんかカッコ良さげな感じにしたいなぁ。
うーん……よし。

やあやあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!
我こそはカルラ流槍術の皆伝者、アルバートなり!
蛮力ひけらかす卑賤の輩め、この僕が相手してやろう!

こんな感じかな?
あとは変に魔術使わないで、UCで技能を底上げしつつ槍で戦っていこう。
地に足着けて戦うの久しぶりだなぁ。羽根は仕舞っておこうね。

しかし……狐うるせぇな……。



●色は匂へど散ることなく
「びえええええっ!!」
「あぁうるせえ餓鬼だなあ畜生!」
「ど、どうか! その子に手を出すのはおやめくださいまし!」
 泣き叫ぶ幼子、それを吊り上げる悪漢、必死に懇願する母親。
 絵に描いたような、しかしけっして許されてはならぬ悪行がそこにあった。
「元はと言えばお袋さんよぉ、あんたが俺らにぶつかってきたのが悪いんだぜぇ?」
「で、ですから私のことはどのようにしてくださっても……」
「あぁ? 俺らに指図するつもりかこのババア!!」
「おかあちゃあ~ん! びぇえええ~!!」
 ……とまあ、このような有様である。
 幼子の年頃はまだ3つか4つといったところだろう。母の顔立ちも若々しい。
 だが悪党どもが意に介することはない。むしろ下卑た舌なめずりをする始末!
「おい、さっさとその餓鬼を黙らせちまえ。そのあとはよう……」
「お願いでございます、その子だけはどうか……!」
 覚悟を決めた母親の嘆願も、卑劣な連中の耳にはまさに念仏か。
 泣きじゃくる幼子が地面に叩きつけられようとした、その時!

「あでぇっ!?」
「「「!?」」」
 幼子の襟首を掴んでいた輩の手の甲が、ばっくりと砕けていた。
 そして勢い余って宙を掴んだ幼子に、何かが絡みついてぐいっと引っ張る。
 見よ。杖である。一撃で外道の手を叩いて砕き、素早く幼子を絡め取ったのだ。
 続けざま、母親を取り囲んでいた一党がわけもわからず吹っ飛んだ!
「「「うおおおっ!?」」」
「な、なんだ! 誰だ!?」
「いいねェ、お決まりのセリフって大事だよなァ!」
 誰何の声に応えたのは、ボリューミーな赤髪が特徴的な伊達男である。
 傍らには剣呑な戦杖を担いだ巨漢――彼は幼子を下ろすとついと母親のほうへ押してやった――と、古びた両刃の矛槍を持った優男。
「チーム・いろはだ。今回はそういう趣向らしい」
 巨漢が真面目くさった……より正確に厳密に表現するならフラットな声音で言う。
 その機微に聡く気付くようなものでなければ、理知的で温厚と見えるだろう。
「それ、ホントに使うの?」
 不満げな優男の言葉に、伊達男がカッカと調子よく笑う。
「こんな奴らにゃ"それ"で十分だろ? それにホラ、オレらって名前の頭文字が"あ・い・う"だしサ」
「だからってなーにが"いろは"だっての、この性悪狐……」
 などと軽口を叩く優男だが、この状況そのものはまんざらでもないらしい。
 三人して、人助けだとか悪党をやっつけてやるなどという義憤は見当たらない。
 つまりは景気よく暴れられればそれでいい、そういう連中であった。

「こいつら、ふざけてんのか!?」
「まァまァ焦りなさんなって、ほれお二人サン、ちゃんと名乗らねェと」
 主犯格……もとい焚き付け役の荒・烏鵠はさっさと後ろに退いてしまいつつ、
 うまいこと優男と巨漢に水を向け、悪漢どもの注意をそちらに逸らしてしまう。
 殺気立った視線がいくつも向けられるが、二人がそれを恐れる節はなし。
「だってさイル、なんか考えてある?」
「この杖術は烏鵠から教わったものだからな、当時の奴はどう名乗っていたか……」
 呑気に腕組みなどして、巨漢はしばし沈思黙考。やがて"ああ"と思い出した様子。
「白縫流大杖術・免許皆伝者――イリーツァ・ウーツェと云う」
 巨漢、もといイリーツァの堂に入った名乗りに、ほほうと感嘆を漏らす優男。
 なんだかんだで名乗りには胸躍るものがあるのか、その隣でひゅんひゅんと槍を構えた。
「やあやあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!
 我こそはカルラ流槍術の皆伝者、アルバート・クィリスハールなり!」
 なかなかどうして、威風堂々とした朗々たる名乗りである。
 実際のところは我流なので何もかもでっちあげなのだが、こういうのは迫力が重要だ。
 その点において二人は満点と言えよう。悪党どもは気圧される!
「蛮力ひけらかす卑賤の輩、この僕が相手をしてやろう!」
「このイリーツァ、義によって助太刀いたす」
 といった具合である。後ろの烏鵠は大受けで手を叩いている。性格が悪い。
 助けられた親子にとっては、まさに天の遣わした救いも同然なのだが!

 この奇妙な三人組のやりとりに毒気を抜かれていた悪党どもも、
 どうやら連中が自分達をぶちのめしに来たのだと分かると再び血色ばむ。
「嘗めた連中だ、畳んじまえ!」
「「「おおっ!!」」」
 数にして十……いや二十近い連中、いずれも免状をひけらかした悪漢ども!
「来るがいい虫けらども。叩き潰してやろう」
「こんな感じでいいのかなぁ? じゃあまあ、始めようか」
 かくして戦端は開かれた。だが趨勢は誰の目にも明らかである。
 呪いによる補正を差し引いても、いろはの二人の方が圧倒的に上手だからだ。
「地に足着けて戦うの、久しぶりだなぁ」
 世間話めいて軽く言いながら、アルバートはすいすいと敵の攻撃をかいくぐる。
 いや、そもそもあまりにも自然な動きゆえに、懐に入られたことすら敵は察知出来ないのだ。
 先ほど吹き飛ばされた悪党どもも、こうして間合いに飛び込まれたのである!
「ぎゃああ!?」
「お、俺の脚がぁ!」
 アルバートの両手が霞んだ瞬間、敵の苦悶が木霊する。
 まるで畳針で縫い留められたかのごとく、手足に穿たれた大きな穴!
「おっと、あっちゃんのあの技は……『豪打・啄木鳥』!」
「ご、ご存知なんですか?」
 幼子を掻き抱いてへたり込んでいた母親の台詞に、烏鵠はナイス! と指を鳴らす。
「目にも止まらないスピードで、キツツキみてーに全く同じとこを突き刺す妙術!
 ……あれ、難しいんだよな真面目に。槍でもスナイパーかよ」
 然り。アルバートの本来の戦闘方法は斯様な"生っちょろい"やり方ではない。
 今の彼は、猛禽の黒翼を隠せし一人の槍手であるゆえに。

 一方のイリーツァはどうか?
「囲め囲め、数で圧せばどうってこたあねえ!」
「――……ふん」
 己を取り囲む徒党に対し、イリーツァは……なんと、目を閉じた!?
「ええっ、あれじゃなにもみえないよ!」
 幼子が驚くのも無理はない。目で見ずにしていかに敵を捉えるというのか?
「いや、そんなことねえぜェ。ありゃ『無明長夜』の構えだなァ」
 そして狙いすましたかのように、烏鵠の名解説が挟まれる。
「敢えて視界を捨てることで相手のフェイントを無視し、的確に急所を刎ねる技だ」
 ――"刎ねる"。
 杖術には些か不似合いかつ不穏当な響き。直後、それは現実となる。
「ぐええええ!!」
 ひとつ、ふたつ。瞑目したままのイリーツァによる的確な打撃。
 それはまさしく敵の腕を足を刎ね飛ばすような鋭さで、前後左右の悪党を昏倒させるのだ。
「手加減してなきゃ首が落ちてたナ! さすがいっちゃんだぜ!」
 この技、本来の銘を"不推不察・超直観"と呼ばれている。
 五感に頼ることなく、直感を研ぎ澄ませて"正解"を見出す。そこに"もしも"はありえないのだ。

「おお! 今度はあっちゃんの『瞬打・百舌鳥』が炸裂だァ!」
「……あのさ、イル」
「すげェ! いっちゃんもまさかの『暗夜套路』でガンガン攻めやがる!」
「どうした、アルバート」
 軽々と悪党どもを薙ぎ払いながら、アルバートはげっそりとした顔をした。
「あの狐、うるさくない? いや、ていうかうるせぇ」
「そうだな。楽しそうでなによりだ」
「イルらしい感想でなによりだよ……」
 次から次へと悪党どもが駆けつけては、鎧袖一触とばかりに打ち倒されていく。
「コレ楽しいな! 化けて終わりじゃ能がねェ、がんばれアホ共ー!!」
 一方の烏鵠、いよいよ解説芸に磨きがかかりその様まさしく"万両役者"。
 二人の大立ち回りと一人の名調子は、悪党どもが山と積み上がるまで続いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神酒坂・恭二郎
「俺の流派は神酒坂風桜子抜拳流」

挨拶し。

「今はシティ拳豪の神酒坂恭二郎だ」

名乗りを残して背を翻す。

挨拶から名乗りまでの間は1秒足らず。
恭二郎の抜拳術は30分の1秒で放たれる。
10人ばかしの悪党を倒すには、少しばかし長すぎる時間だった。



●その男、振るうは剣のみに非ず
 ――魔拳・十指鬼(まけん・じゅうしき)。
 紅湖の悪党の中でも、ことさら腕自慢として名を知られる連中がいる。
 武のためならば殺人をも厭わぬという、札付きの罪人どもだ。
 常に十人。されど一切馴れ合うことなく、隙を見れば互いに殺し合う。
 飢えた猛虎すら素手で殺すという、恐るべき達人集団。
 御免状を賜るに当たり、これほど向いた奴らもいなかろう。
 今や奴らは街の一角を己らの縄張りと定め、完全に支配していた。
 よその悪党どもから守るという名目で、近隣の住民から酒や金子を巻き上げているのだ!

「……で? その十指鬼のねぐらと分かってて、来たわけか」
 剣呑な入れ墨を全身に施した男が、闖入者に向かって凄む。
 常人ならば、その一睨みだけで言葉を喪い立ちすくむだろう。
 入れ墨男の他にも、巨漢や太っちょ、はたまた痩せぎすや小男……。
 多種多様な奇人変人が、合わせて十人。まさに十指鬼の集いである。
 あたりには酒瓶や食い散らかした飯が、さながら獣の屍肉めいて散らばる。
 否、獣の死骸"も"、である。太っちょが血まみれで骨をしゃぶっている。
 浅ましくも凄まじい有様。だがふらりと現れた男は無言である。
 凄まれてなお、あたりに立ち込める血臭を浴びてなお、口元には薄い笑み。
「おいおい、あんまりビビらすなヨォ。震えて声も出なくなってるゼェ?」
 小男がヒョッヒョと気味の悪い笑い声をあげた。
「見逃してやるからよ、とっとと有り金置いて消え――」
「いや、知らなかったんだ」
 詰め寄った痩せぎすの男の言葉を遮り、闖入者は言った。
 それがあまりに涼やかで平易な声音だったものだから、誰もが呆けた。
 訝しみながらも、闖入者の言葉の続きを待つ他なかった。
「お前さんらが居るとは知らなかった。ただふらついてただけなもんでね」
 ……誰ともなく、十指鬼は笑った。声を上げてげらげらと笑った。
 己らの縄張りに踏み込んでおいて、"知らなかった"と来る!
「は、は、ははは! こりゃいいや、傑作だ!」
「命乞いにしちゃあ新しいや、ぐひひひひ!」
「こ、ごいづ、喰っでいいのがぁ?」
 よだれを垂らす太っちょを、刺青男が制する。
「よせよ。言葉通りなんだろ? それともまさか――」
 ぎらり。刃めいた双眸が闖入者を睨めつけた。
「"そういう挑発だ"なんてことは、ねえよなあ?」
 笑い声が、止む。すさまじいまでの殺意が周囲を張り詰めさせる。

 鳥すらも恐れおののき頭上を飛ばぬ有様で、男はしかし笑っていた。
「俺の――」
「あン?」
「俺の流派は、神酒坂風桜子抜拳流だ」
 名乗り。名前より先に、己の武術流派を名乗る、それが意味するところはひとつ。
 十指鬼は血走った目で男を睨みつける。誰かの拳がごきりと鳴った。
 それぞれの殺人武芸が繰り出される緊張。筋肉がぎちぎちと縄めいて引き絞られる音!
「今は、"シティ拳豪"の……神酒坂・恭二郎だ」
 ふざけるな、と誰かが言った。
 嘗めるな、とも誰かが言った。
 そしておそらくは同時に飛びかかったはずだろう。
 だがその時、恭二郎はすでに踵を返し、すたすたと歩いていた。

 一秒にも満たぬ、一瞬である。
 一体この男は何をしに来たのかと、常人ならば思うことだろう。
 名乗るだけ名乗って逃げ帰るつもりなのか、と。
 否である。その時すでに、恭二郎の拳は叩きつけられていたのだ。
 神酒坂風桜子一刀流・"石火(いわほ)"。
 本来ならば電光石火の速度で刃を振り抜く、神速の抜刀術。
 この場この時にありて刃はない――然り、必要がない。
 剣の代わりに拳を抜き、放ち、そして打ち込んだ。
 一撃わずか30分の1秒。十指鬼に叩きつけられた拳は十と四つ。
「――ちとばかし、長居しすぎたてなもんか」
 嘯く男の背後で、悪党どもが壁に背中を叩きつけられ伸びていた。
 その者ら、腕自慢として名を知られる悪党徒党。
 されど、神酒坂・恭二郎にとっては一山いくらの雑魚である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リョーコ・アサギ
※ヒーローマスクの「師匠」と肉体側の弟子「リョーコ」のコンビ

POW判定

リョーコ
聞かれて名乗るもおこがましいが
聞かれたからには名乗りましょう!

ウチこそがアルダワ新鮮組切り込み隊長
スペース・ジゲン流剣士リョーコ・アサギだー!

規律を破り、世の風紀を乱すものはウチが叩き切ってやる!
罰・即・斬!ちぇーすとーーっ!

師匠
……まあ悪漢だけを切るならば其れで良いでござる
但し油断だけはするではないぞ?(呆れ気味に)

行動
なんか悪そうなやつを見つけたら切って回る
切って切って切りまくり
"武侠御免状"を集めればやがて本命が出てくるはず

戦い方
上段からの打ち込みで一撃で敵を叩きのめす
回避や防御を許さない圧倒的な剣速が武器



●凸凹師弟いざ参る
「ちぇーすとーーーっ!!」
「グワーッ!!」
 どさり。うだつの上がらぬサンピン侍が無様に倒れ伏す。
 これでちょうど十人目。免状狩りは上々と言ったところだ。
「ほう……どこの誰かと思いやこんな餓鬼とはな」
「む!!」
 ゆらりと姿を現した悪漢に、少女は表情を変えて身構える。
 纏う気配が、これまでの雑魚とは一味違うと知らせていた。
「目当ては俺か、免状か、両方か。この心眼流の道雪斎様にかかってくるつもりなら名乗りな!」
 懐に差した御免状が赤黒く輝き、悪漢あらため道雪斎の体を覆っていくではないか!
 さらに呪いは少女にすら作用し、じわじわと体の動きを重くさせていく。
「師匠! よいですか? よいですね!」
 少女が独り言めいて呟けば、彼女が着けた眼帯から声がする。
 実はこの眼帯、意思を持つ立派な猟兵――すなわち、ヒーローマスクなのだ。
『……まあ、これまでの雑魚狩りはすべてそのためのもの。
 悪漢だけを斬るならばそれでよし。油断だけはするでないぞ?』
「承知!」
 そして意気揚々と道雪斎を見据え、少女は朗々と名乗りをあげた。
「聞かれて名乗るもおこがましいが、聞かれたからには名乗りましょう!
 ウチこそがアルダワ新選組切り込み隊長! スペースジゲン流リョーコ・アサギだー!」
「なんだぁそりゃ、聞いたことねえな! 田舎の三流剣法か!」
 もとよりリョーコと"師匠"が悪党どもを見逃すつもりはないが、
 このあからさまな挑発は彼女らにとって覿面に効いた。
『……叩きのめしてやるでござる、リョーコ!』
「もちろんです!規律を破り、世の風紀を乱すものはウチが叩き斬ってやる!」
 罰・即・斬を合い言葉に、サイキックエナジーの刃を纏いし剣を構えた!
 スペースジゲン流とはすなわち示現流に通ず。
 示現流は、猿叫とも呼ばれる奇怪な怪鳥音とともに一ノ太刀を叩き込む流派だ。
 ゆえに道雪斎は、当然上段からの打ち込みを警戒した。
 した、のだが……リョーコの剣速は、ヤツの想像をはるかに越えていた!
「ちぇすとぉーっ!!」
「ぐほぉっ!?」
 一撃! 一撃である!
 防御のために構えた剣を叩き折り、大上段から叩き込まれた振り下ろし一条。
 真正面から正々堂々と挑みかかるという士道に相応しい戦いぶりが、
 呪いをはねのけリョーコの力をさらに強化したといえよう。
「見たか! スペースジゲン流の恐ろしさをー!」
『ま、多少はやるでござるな!』
「ええーっ、満点ではないのですかー!?」
 などと、やかましい凸凹師弟であったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八海山・いのこ
【GWP】でナナちゃんとお師匠様と一緒に悪者退治だねっ

最初はバナちゃんの出番みたいだから賑やかしになるよー!
お師匠さまと一緒にナナちゃんの技の解説とか実況とか、襲われている人が居たらそれとなーく避難させておこうかなっ!

お師匠様があの技は…って言ったとき
「知っているの、お師匠様!?」

お師匠様が技の解説し始めた時
「そ、そんなすごい技なんだ。それならきっと…!」

勝利した時
「やったねナナちゃん、すごいすごーい!」

犠牲者を助けるとき
「もう大丈夫だから安心してね!」

など、賑やかしに徹するよー!
必要があれば技の実況とか合いの手とか沢山入れたいね!


西行・胡桃
ばなこ(f00572)
いのちゃん(f01962)と「GWP」で参加

ルール上、武術に詳しい人が解説した方がいいはず!
と解説役に
あのユーベルコード(黄金果実の情熱)を解説するの?
あれは!…あれ、は…何?

ええい勢いで押し切れ!
「流派絢爛芭蕉とは、UDCアースがまだ戦乱の時代。時の権力者が反乱を恐れて刀狩りを行った頃に一見武器だとは思われないバナナを使って戦うようになったことがはじまりだと言われているわ」

「あの技は、あまりにも流派絢爛芭蕉が強すぎたために、バナナの所持も禁じられてしまい、食べてしまえば良いんだ!元々食べ物だし!となって編み出された技よ!餓えれば餓えるほど強くなる、つまり逆境に強い!」


難駄芭院・ナナコ
西行・胡桃(f01389・しっしょー呼び)
八海山・いのこ(f01962・いのこ呼び)
とチーム名「GWP」で参戦

「ハーッハッハッハー!そこまでだ悪党どもォ!」
二人よりお先に高いところに昇ってから飛び降りて華麗に着地!
フッ、決まったぜ!
待たせたな!アタイこそが『流派!絢爛芭蕉!』参上!
百戦錬磨!甘味完食のナナコとはアタイの事よぉ!

POW
さーて悪党どもォ!テメエらの悪行はアタイ達の前では許さねぇぜ!
見ておけよテメェら!このアタイの恐ろしさを思い知らせてやるからな!
いくぜぇ!「バナナが食べてえええええ!」
うぉぉぉぉぉ!バナナを求める!このバナナへの熱い想い!
この力がアタイを成長して強くしていくぅぅぅ!



●今日も元気だバナナが美味い
 領内にある農村! 農民達がへとへとになりながら田畑を耕している……!
「おらおらキビキビ働けぇ!」
「てめえらみてえな農民を使ってやってるんだ、感謝しろぉ!」
 圧制ここに極まれり。悪党どもが村を支配して農民を強制労働させているのだ!
 睡眠食事はおろか水分補給さえ制限された農民達は、目も虚ろで足元が覚束ない。
「も、もう無理でさあ、勘弁してけろ……」
 頬のこけた農民男性が、悪党の足元に跪く。息も絶え絶えだ。
「口答えするのかぁ? ならお前を……いや」
 ニヤリと笑った悪党の視線の先には……おお! 農民の若娘の姿!
「親の責任は子供に取ってもらわないとなぁ?」
「ま、待ってくだせ! おらぁ痛めつけるってんならわかる、あの子は関係ねえべさ!」
「ごちゃごちゃうるせえんだよぉ!」
 すがりつく農民を蹴り飛ばし、悪党の魔の手が娘へ迫る!
 若き娘が逃れられるはずもない、もはやここまでなのか……!?

「ハーッハッハッハァー!!」
「「「誰だっ!!?」」」
 突如どこからか響き渡る高笑い、悪漢どもはたじろいだ!
「あ、あそこだ! 櫓の上にいるぞ!」
 指さした先、物見櫓……のさらに天井に凛と仁王立ちする姿あり。
 まるでその姿を照らし出すかのように、中天に登った太陽が逆光を背負わせる!
「ううっ!? ま、眩しくて見えねえ……!」
「そこまでだ! 悪党どもォ!!」
 くるくるくる……しゅたっ。軽やかな回転跳躍からの着地。
「何者だ、名を名乗りやがれ!!」
「よくぞ聞いてくれたじゃねえか。アタイの名は――難駄芭院・ナナコだ!」
 びしぃ! (本人的には)かっこいいポーズをキメたナナコは会心の笑みを浮かべる。
 決まった……! そんな彼女の横にざざっと駆けつける影さらにふたつ!
「ねえお師匠様、今のってあそこ(櫓のこと)に登る必要あったのかな!!」
「あ、あんまり深くツッコまないほうがいいよ、いのちゃん……」
 そっかー! と天真爛漫(ややアホっぽいとも言う)な笑顔で納得した、
 白い髪に色黒の肌をした少女の名は八海山・いのこ。
 そして二人のハイテンションっぷりに、苦笑いを浮かべているのが西行・胡桃だ。
 合わせて三人、いずれも見目麗しき少女達。だが悪党数十人を前にして恐れなし。
「あ、あんたがたは一体(いってぇ)……!」
「フッ、よくぞ聞いてくれた。アタイ達こそ――そう!」
 呆然とへたり込んだ農民達、そして唖然とする悪党どもに胸を張り、
 ナナコが高らかに己らの存在を知らしめる。胡桃はちょっと恥ずかしそうだ!
「流派! 絢爛芭蕉!! ……百戦錬磨、甘味完食のナナコたぁアタイのことよぉ!!」

 若干の間。

「絢爛芭蕉? 聞いたことあるか?」
「いや、ないな……俳人の名前じゃんよ」
「そもそも流派なのか二つ名なのかわかんなくねえか?」
 悪党どもの反応はイマイチであった。
(お師匠様お師匠様、これ私達の出番じゃない!?)
(そ、そうね。じゃあいのちゃんは村の人達をお願い!)
 了解っ! と笑顔で敬礼したいのこに人々の避難を任せ、胡桃はおほんと咳払い。
「流派絢爛芭蕉……それは、えーと……UDCアースがまだ戦乱の時代だった頃!
 時の権力者が反乱を恐れて刀狩りを行った頃に興ったとされる流派……!」
「知っているの、お師匠様!!」
 UDCアースってなんだ? 的な悪党どもの疑問は切って捨てる二人である。
 なお、ナナコは腕組みをしてさあ解説しろとばかりにふんぞり返っていた。何様だ。
「一見武器だとは思われないよう、バナナを使って戦った反逆者達が始まりだと言われているわ。 
 つまり……そう! バナナを使って戦う、まったく新しい武術流派なのよ!!」
「な、なんだってぇー!?」
 どぉーん。いのこと胡桃のコンビネーションはある意味完璧であった。
 バナナが武器? 物ですらなく? みたいな悪党どものごちゃごちゃを察したナナコが、くわっと目を見開く!
「御高説はここまでだ! 悪党ども、テメエらの悪行はアタイ達の前では許されねぇぜ!」
「すごい、ナナちゃんが強引に話をねじ込んでいったよ!」
「私達必要なのかしらこれ!?」
 ジャキン! ナナコが両手に取り出したのは……おお、見よ!
「バナナだ」
「バナナだな」
「バナナ? バナナナンデ!?」
 コワイ! なぜか両手にたっぷりのバナナのぶら下げてドヤ顔のナナコ!
 あまりの意味不明っぷりとドヤ顔っぷりに悪党はある意味でたじろいだ!
 ついでにいうと助けられる側の農民のみなさんもだいぶ訝しげな顔だ!

「見ておけよテメェら……ここからが絢爛芭蕉の恐ろしいところだぜ」
「「「うう……っ!?」」」
 ナナコのただならぬ眼光に、武器を構えていた悪党どもは尻込みする。
 その隙にいのこは農民達を助け出し、戦闘の邪魔にならない場所へ避難させるのだ。
「まさか、あの技が出るというの……!?」
「お師匠様、知ってるの!?」
(……知らないし嫌な予感しかしないけど、ここは勢いで乗り切るわ)
(そっか、勢いは大事だよね!)
 解説役&驚き役の二人もある意味ハラハラドキドキである。
 そしてナナコは……おもむろにバナナを……おお、なんたることか……!
 バナナの皮をむいむいと剥がし、そしてバナナを……バナナを!?
「このアタイの恐ろしさを、思い知らせてやるからな! いくぜぇ!!」
 バナナを食べ……食べない! 食べないが目の前にぶらさげて凝視する!
「うおぉおおおお!! バナナが、バナナが食べてぇえええ!!」
 食べたい。だが食べない! 眼の前にちらつかせるだけで我慢する!
 どこからどう見ても狂人だ! だがあまりの熱意がオーラめいて揺らぐ!
「あ、あの技は……あれは!」
「あれは!?」
 いのこがうまい具合に合いの手を入れる。胡桃は……。
「……あれ、は……何?」
 バナナを手に持ちメラメラと荒ぶるナナコ。かなりセインではない光景である。
「よ、よくわかんねえがやっちまえ!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
 そこへ襲いかかる悪党ども! 悪い夢は終わらせるに限るからだ!

 ……だが!!
「「「グワーッ!?」」」
 見よ。飛びかかったはずの悪党どもが放射状に吹っ飛ぶ!
 ナナコは無傷。それどころか陽炎めいて揺らめくほどの闘気、体が巨大に見え……いや、
 実際に巨大化している。ぐんぐんと大きくなっていく!
「「「な、なんだーっ!?」」」
「うおぉおおお!! バナナを求める! このバナナへの熱い想い!!
 この力が、感情が! アタイを成長させ強くしていくぅうう!!」
「目の前にあんだから食えばいいじゃねーか!」
「問答無用だ喰らえーっ!!」
「「「ぎゃああああ!!」」」
 鎧袖一触とはまさにこれ。悪党どもは為す術もない!
「……えーと」
 気を取り直した胡桃は勢いで押し切ることにした。
「あの技は、あまりにも絢爛芭蕉が強すぎたために、バナナの所持も禁じられてしまった時の伝承者達が『なら食べてしまえばいいんだ! もともと食べ物だし!!』と思いついて編み出された技よ!」
「すごいや! それでどう強くなれるのお師匠様!」
「……み、見ての通りよ!!」
「見ての通りなんだ……そうか、そんなにすごい技なら、それならきっと!」
 きっとも何もナナコの体は増大を続け、文字通り悪党どもを足蹴にしていた。
 もはや悪党が悲鳴を上げて逃げ出す有様だ。逃げ遅れた農民の皆さんも悲鳴をあげる。
「うぉおおおバナナバナナバナナバナナバナナァアアア!!」
「「「グワーッ!!」」」
 もはや暴れ狂う怪獣みたいな勢いである。
「飢えれば飢えるほど強くなる……つまり、逆境に強い!」
「逆境っていうか蹂躙だよね、あれ!」
「それはそれで強いということよ! みんなで応援しましょう!」
「そうだねお師匠様! ナナちゃん頑張れ、すごいすごーい!!」
 流派・絢爛芭蕉ここにあり。その武名は大きく知れ渡ったことだろう。
「…………そもそもバナナって、なんなんだべか」
「おっとうも知らないんだべか?」
 助けられたはずの農民達は、蹂躙を呆然と見守るばかりだったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイリ・ガングール
【同行者:アイナ・ラウタヴィーラ・f00892】
 いやぁ!姫将軍やってた頃を思い出すねぇ!占領した土の悪代官をぶった斬ったもんさ。
「きけぇ悪漢共!我が名はアイリ!天正新谷新道流師範!いざ尋常に立ちあわん!」
 既に滅んだ新谷の国にあった流派の業を振るおう。普段からじゃけれどね?みども【戦闘知識】の根幹じゃし。
 基本は先の先。剛剣にて相手の出を潰すが定石。女子の腕と侮るなかれ。妖狐仕込みの呪術がそれを補う。まさしく鬼神。
 アイナの視線が何時も違う・・・?いやぁ!おばあちゃん、張り切り過ぎたやねと珍しく頬を染めてあたふた。にしてもアイナも戦いのときは果敢じゃのぅ!と恥かしさをごまかすように褒めるよ


アイナ・ラウタヴィーラ
〇アイリ・ガングール(f05028)さんと合わせ

呼ばれてないけど参上、です。
お天道様に変わっておしおきです、よ

狩猟本能に目覚めたきつねの怖さを悪漢に思い知らせて……、って、アイリさん……!?
そんな性格でしたっけ……!?

でも凄い戦術、です。かっこいいです、ね……!私もがんばらないと

私の白兵戦技も、巷ではシス・テマとか言われているらしいので、ある意味流派、です。多分。きっと
無力化できれば一緒ですよね
女狐だからって甘く見てると、狩られちゃいますよ?


アイリさんの戦い方、とても参考になりそうですし沢山観察しなくちゃ
とめちゃくちゃ観察して合いの手とかいれてみたりしましょ

・こちらの分のアドリブは歓迎です



●妖しの双狐、並び立ちて悪を狩る
 ここは高内の領内に建つ、とある呉服屋の屋敷!
「さあ今日は無礼講だ、皆さん存分に飲んで食って騒いでください!」
 白昼堂々と酒宴を催すのは、他ならぬ屋敷の主である呉服屋だ。
 では宴の参加者は? 顔にも脛にも傷のありそうな悪党ばかりである!
 壁際には何人ものうら若き乙女達が並べられ、酌に配膳にと右往左往していた。
「皆さんのおかげで私も商売繁盛してますからねえ」
「こちらこそ、旦那のおかげでのびのびと遊ばせて頂いておりやすよ」
「天下の御免状に呉服屋旦那のご後見とくらあ怖いものはねえや!」
「法度も政令もくそったれ、てなもんだぜ!」
 ガハハハハ! と笑いあう悪党と呉服屋。なんたることか……!
 あろうことか呉服屋の主人は御免状を賜った悪党どもを囲い込み、
 食客としてもてなすことで商売敵や都合の悪い相手を蹴落としているらしい。
 免状を持つ者だけが悪党ではないということか。ではこの娘達は!?
「さてお前達、わかっているね?」
 呉服屋のいやらしい笑みが、かすかに震える娘達へ向けられる。
 ……然り。彼女らは法外な借金や言いがかり、あるいはより直接的な脅しによって、
 呉服屋の屋敷へ連れてこられた無辜の町人達である。
 夫や両親、はたまた友人や子供を守るためにいいように使われているのだ。
 無法ここに極まる! 悪を糺す正義は、もはやこの地から喪われたのか!?

 ……否!
 突如として外から警備の悲鳴が響き渡り、悪党どもは殺気立った。
 勢い衾が開かれ、血まみれとなった浪人が転がり込んでくる!
「どうした騒がしい!」
「だ、旦那様! ふ、不埒者が、屋敷の正面からこちらへ……!」
「なんだと!?」
 がくり。浪人はそのまま昏倒してしまった。
 そして戦闘の鬨の声は、まさに酒宴場に面した中庭へとなだれ込んでくる!
「コココココ! いやぁ、こうしてると昔の頃を思い出すねぇ!
 こうしてあちこち攻め込んで、悪代官をぶった斬ったもんさ」
 奇矯な笑い声とともに颯爽と現れたは、金の髪が艶やかな幼子である。
 だが心せよ、この女、見た目にそぐわぬ長齢老獪、武も呪も究めた剣豪術士なり。
「聞けぃ悪漢ども! 我は天正新谷新道流が師範、アイリ・ガングールなり!」
「何! 天正新谷新道流とな!?」
「知っているのか雷丸よ!」
 雷丸と呼ばれた禿頭の悪漢が、持っていた盃を握り潰しながら頷く。
「今は亡びしさる国に伝承されていた、ただならぬ流派と聞いたことがある。
 その剣、風よりも速く岩より重く、先の先を得ては出を潰す剛剣であると」
「コココココ。存じておるとは見上げたものじゃね、みどもは嬉しいぞぉ?」
 異色の双眸が艶然と緩く笑みに歪んだ。あどけなさにそぐわぬ妖しの色香……。

「と、相手はアイリさんだけではないですよ?」
 手足をてんでばらばらにへし曲げられた浪人を放り捨てつつ、
 続けざまにやってきたのはやはり妖狐の少女。
 前髪で覆われているはずの双眸は、たしかに悪党どもを見据えている。
「流派は……シス・テマとしておきましょう、か。巷ではそう言われている、とか。
 アイナ・ラウタヴィーラ、呼ばれてないけど参上、です」
 お天道様が見逃そうと、悪漢どもの所業を見逃すはずはなしと身構える。
 アイリよりは一回り大きなれども所詮は少女の体躯、だが異様なまでに充実した殺気!
 然り、この娘、見た目に反して恐るべき戦場傭兵なのである。
 女狐だからと嘗めていれば、あの浪人どものような目に遭うは必定か!
「せ、先生! 畳んでしまってください!」
「どうれ……」
「余興にゃあちょうどいいな、きっひっひ!」
「化生なら我が刃にも不足なしよ」
 悪漢どもは各々剣呑な武器を構え、悠然と中庭に降り立つ。

「重畳じゃね。しからばいざ、尋常に立ち会わん!」
「応さ小娘。この新陰如月流が吉政、相手になろうぞ!」
 アイリの挑戦に応じたのは、二刀流を構えた鷹の目じみた鋭き眼光の剣士!
 雷丸は瞠目した。立ち合いが始まった直後、アイリの姿が消えたからだ!
「吉政殿、注意めされよ!」
「失伝流派何するものぞ……ぬうっ!?」
 疾い。アイリの姿が再び現れたのは、吉政の眼前やや頭上!
 跳躍から全体重を載せ、すさまじい速度の振り下ろしを叩き込む!
 がぎん――っ!! 吉政、これを素早く二刀流を交差させ受ける!
「こ、れは!」
「コココココ! 一ノ太刀を凌ぎよるか、みどもの剣に耐えきれるかのう!」
 がぎ、がぎ、ぎゃぎんっ!!
 所詮は女子供の腕力、太刀など普通ならば振り回すだけで精一杯であろう。
 だがアイリは剣豪であるとともに呪師でもある。
 妖狐仕込みの呪術ここにあり。機動力が強みたる二刀流が圧されるばかりとは!
「そうらそらそらそらそらぁ!!」
「アイリさん、そんな性格でしたっけ……!?」
 旧知の仲であるアイナをして、攻め手の苛烈さはすさまじい。
 いや、あそこまで高揚に酔いしれる女の姿は初めて見るのではなかろうか?
「でも凄い戦術、です。かっこいいです、ね……!」
「よそ見をしてる場合かァ、女ァ!」
「……私も、頑張らないと」

 そしてアイナと対峙するは、彼女の二倍近くの背丈を誇る異常身長の怪人!
「あいにく我流だ。だが二つ名ならあるぜェ……クッキキキ。
 "怪力乱人"の剛羅様たぁオレのことよぉ! バラバラにしてやるぜぇ!」
 ビキビキと全身の筋肉が緊張する。特に指先はもはや異形だ。
 おそらくは膂力で相手を殴り蹴り叩き伏せ、握力で以て破壊する闘法と見えた。
 アイナはいかにして立ち向かうか? ……構えるは小ぶりな刀一振りのみ。
「"狐刀一尾"でお相手いたしま、しょう。どうぞ、かかってきてくだ、さい」
「そんな脇差みてえな刀で何が出来るってんだ、クソガキがぁああ!!」
 ドウ、ドウドウドウ! 巨象じみた巨漢の突進がアイナへ迫る!
「剛羅が完全にキレたな。あの娘っ子、もはや形も残るまい」
「いかにもよな。天禀たる膂力で鉄の柱すら引きちぎる、まさに"怪力乱人"よ」
 観戦に回る悪党どもは、アイナの無残な最期を予期し下卑た笑みを浮かべた。
 だがただ一人……雷丸のみは違う。冷や汗がこめかみを伝う!
「むうっ、あれは!」
「「「なんと!?」」」
 そして次いで全員が驚愕した!
 防御も回避も為す術なく捻り潰されると見えたアイナは、しかし!
 まず片腕の腱を一太刀で切り伏せ、空いた片手で敵の片腕を掴み受け流す。
 勢いそのまま懐へ潜り込み、まず鳩尾へ痛烈な肘打ち! 巨漢は絶叫!
「触らない……でッ!」
「ぐほぁっ!?」
 くの字に折れ曲がった上体をばっくりと切り裂き、さらに腹部へ膝!
 たまらず倒れ込んだ後頭部への回し蹴り。痛烈かつコンパクトな連撃である!
「あ、あれほどの体格差を逆に利用するとは……!」
 斯様な閉塞状況でこそ、アイナの白兵戦技(クロース・コンバット)は最大効果を発揮するのだ。

 ……そしてアイリの側は!
(攻め込めぬ、これが失伝流派だと……!?)
 防戦に徹せざるを得ない状況で、吉政は屈辱に唇を噛んでいた。
 そしてふとアイリが拍子を外した瞬間、防御が……がら空きに!
「な」
「よう耐えたもんじゃね」
 剣士は震えた。己が相対していた者の正体を知ったゆえに。
 その苛烈なる攻め、重さ、そして浮かべた笑み――まさに鬼神の如く。
「け、化生――」
 ざん。呻き声すらなく、亡国の名刀が剣士に引導を渡す。
 剣刃一閃。納刀音と対手が倒れ込む音は全く同時に。
「お見事、です!」
「うおうっ!? なんじゃ、そっちはもう終わっとったのかアイナ!」
 髪で隠れているが、おそらく目をキラキラさせたアイナの小さな拍手に、
 我に返ったアイリはテレテレと顔を赤らめて慌てた。
「いやぁ、おばあちゃん張り切りすぎたやね!」
「とても参考になりそうでし、た。かっこよかった、です」
「あ、アイナこそ、戦いのときは中々に果敢じゃのぅ! コココココ……っ」
 照れるアイリ。真正面から称賛するアイナ。尊みのある空間だ。
 だが残る悪党どもはそうもいかぬ! 凝固した殺気を放ち身構える!
 アイナとアイリは咳払いして頷きあい、肩を並べて武器を構えた。
「さあて、次は誰がみどもの相手になるのじゃね?」
「誰からでも、かかってこい……です!」
 かくて、死闘はなおも続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
武侠御免状を持つ武人とお見受けする!

「実戦空手紫電会初段、雷陣・通が武を以って、汝に挑まん。決して逃げたりはしねーよな?」

半身を切った、サイドスタンスで構える
「背中の刀? おめーらには必要ねえよ!」
フットワークを効かせて『紫電の空手』で攻撃回数を上げ、二回攻撃を上乗せ、徹底的に手数で攻める
敵の攻撃に関しては見切りを主体に
殺気を乗せた先制攻撃のフェイントで牽制しカウンター

「紫電の空手を教えてやる!紫電とは死に至る電、それを体現する一撃を基として、そこへ至る道を伝えるための連撃を以って戦う事を型とする」
「すなわち死に至る電を至伝にて作り、紫電を打ち込む!」
「故に紫電!」

正拳一撃
「もらってくぜ免状」



●その稲妻は真白く真っ直ぐに
「武侠御免状を持つ武人とお見受けする!!」
 白昼堂々、街の通りにあどけない大音声がこだました。
 いまだ声変わりを迎えきらぬ少年の、しかしびりびりと大気を揺るがす声だ。
「……ほう」
 ゆらり。陽炎めいたオーラをどよもしながら、ボロボロの僧服を纏う怪人が振り向く。
 背の丈は少年より三、四回りはあろう。七尺近い巨体である。
「この繋心坊に勝負を挑むとは、見上げた心意気。名乗るがいい」
 巌じみた巨体が大きく両足を開き、大地を踏みしめた。ずしりと地が揺れ、
 まるで猛獣が足踏みしたかのように土埃が吹き上がる。ただならぬ気配。
「実戦空手・紫電会初段、雷陣・通だ。武を以て汝に挑まん……!」
 対する少年……通もまた、ずしん!! と大地を踏みしめる。
 だがそのまま腰を落とすことなく、まるで地面の反発力を受けたかのように、
 小柄な体躯はふわりと浮かび上がり、やがて小刻みなフットワークを重ねる。
「お互い名乗ったんだ。決して逃げたりはしねーよな?」
「笑止」
 亀裂めいた眼窩に病的な眼光を宿した破戒僧は皮肉げに微笑んだ。
 さながら力士めいた、四股を踏むかのような泰然自若たる繋心坊の構え。
 対する通は、半身を切ったサイドスタンスで常にフットワークを刻み続ける。
 静と動。大と小。剛と柔。揺らめく赤い呪詛(オーラ)と紫電の飛沫。
「――空手使いが得物頼りか」
 ぴくり。繋心坊の言葉に、通が片眉を吊り上げた。
 言わずもがな、奴が言及したのは、通が背負う一振りの刀である。
「ハッ、おめーらみてえな悪党には必要ねえよ!」
「…………笑止」
 呪詛が濃密さを増す。殺意が迸り、通りに面した家々を軋ませた。
 対抗するかのごとくに、通の内側からバチバチと紫電が吹き出す……!

 ……そして、先の先は通が得た!
「っしゃおらぁ!!」
 疾い! 文字通り稲妻じみた速度での接敵、そして二連蹴り!
 繋心坊はあえてこれを避けずに、より深く強く地を踏みしめて受ける。
 みしりと脛、そして脇腹を蹴り足が打つ。通は瞠目し即座にバックステップ!
 ずしんっ!! 少年が鞠めいて後転宙返りを打った瞬間には、
 直前まで彼が居た場所に雪崩めいた恐ろしい手刀が突き刺さっていた!
(まるで大木、いや大岩だぜ……ちょっとやそっとじゃ揺らぎやしねえ!)
「どうした小僧、小手調べにもなってはおらぬぞ」
「言ってろ、ライトニングにいくぜぇ!!」
 再びの踏み込み。迎撃の前蹴りをあえてのしゃがみこみで避け、
 立ち上がりながらのアッパーを鳩尾へ。入った、だが筋肉の鎧が分厚い!
 通は即座に拳を引き戻し、勢いを殺さぬまま跳躍、さらに鳩尾へ二連突き。
(どんだけ鍛えりゃこんな腹筋が作れんだよ……!)
 まるで手応えがない。じんじんと痛む手の甲を強く握りしめながら、
 通は裂帛の気合とともに首筋めがけ空中回し蹴りを叩き込んだ。……不動。
「笑止」
「!!」
 破城槌じみた正拳突き! ばちんっ!! と奇妙な破裂音が響く。
「ぬう……?」
 鼻骨は愚か頭蓋を破砕する心算であった繋心坊は、その手応えに呻いた。
 通はこの一撃を見切り、巨木じみた手首を掴んで勢いを殺していたのだ!
「もらったッ!」
 そのままぐるりと体をひねり、小柄な体躯で腕ひしぎへ移行……否!
(動かねえッ!?)
 繋心坊は両足で寝技への移行を拒否する。そして腕を振り上げ叩きつけようと!
「ぬんっ!!」
「そうは行くかよ!」
 通は即座に四肢を離し、腕を蹴って寸前で着地。
 だが着地直後のよろめきを狙い、繋心坊は本命の踏み込みを終えていた。
「砕け散れぃ……!!」
 あまりの威力に踏み込んだ地面が砕け、土埃が両者を覆い隠す。
 正中線めがけた満身の正拳突き。勝負あったか……!?

 ……土煙が、晴れる。
「教えてやる」
「何……」
 見よ。通は片手を頬に添えるようにぴたりとつけ、肩で押し出すように拳をいなしている。
「紫電とはすなわち死に至る電(いなずま)。それを体現する一撃を基に、
 そこへ至る道を伝えるための連撃を以て型とする――」
 ばちり。少年の裡なる稲妻が四肢を伝って迸る。
 紫電とは死に至る電を伝えるものであり、すなわち至伝に通ず。
 起死回生を自ら生み出す、一撃必殺ならぬ"連撃必殺"の套路。これこそ!
「小僧――」
「ふっ」
 小柄な体躯が霞んだ。狙いは顎下への飛び蹴りか。
 笑止。繋心坊は全身に膂力を込め、これを凌ごうとする。
 そして瞠目した。跳躍は極めてコンパクトに、振り上げると見えた足は四股めいて大地を踏みしめたのだ!
 ……フェイント! であれば本命は!? 繋心坊は即座に攻撃を――。
「死電を至伝にて作り紫電を打ち込む、ゆえに――」
 バチィ!! ……音よりも疾く、拳は鳩尾に叩き込まれた。
 全身を使っての踏み込み、撥条じみた緩急による威力の作動。
 敵の攻撃を誘ってのカウンター。威力は双方の運動力がそのまま倍増する……。
「がぼっ」
 "紫電の空手(ライトニングファクター)"ここに完成せり。
 血の塊を吐いて倒れた繋心坊、通は油断することなく残心を切る。
 ひらりと舞った免状を掴み取れば、それはボロボロと炭めいて散って消えた。
「もらってくぜ免状。一本と一緒にな!」
 青天の霹靂の如き、晴れやかな戦いぶりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

竜石堂・はつら
悪い人たちの狼藉三昧、見過ごすことなんて出来る筈がありません!


はつらさんは悪い人たちに名乗る名前なんてありませんっ

でもはつらさんを呼ぶ時に困っちゃいますでしょうし、名乗ります!
はつらさんこそ優鉢羅流の開祖です!


ぺたぺたと無造作にも見えるごく自然な歩みで近付いていき、鞘に入れたままのはつらさんブレイドを地面にどんぐらがっしゃんと叩きつけます

これこそが優鉢羅流の零の巻、力任せの一撃は効く相手にはとことん効果的、です
つまり悪いことをしたら地面に埋まって反省をした方がいいと思います!

さて、快刀を乱麻したい所でしたが…鯉口を切る前に皆さん穴に入っちゃいましたね
お天道様に顔向け出来たらまたお会いしましょう



●はつらさんまかり通る!
 何の変哲もない定食屋に、悪党どもが徒党を組んで殴り込みをかけてきた!
「酒がほしいなあ酒がよ!」
「俺は腹いっぱい飯が食いてえや!」
「酒も飯もいらねえ、代わりに遊んでくれよお嬢ちゃんよう……」
 山賊あがりと思しき無法者どもは、怯える主人の制止も聞かずに店の中を荒らし回る。
 看板娘は震えながら顔をそむけるしかない。免状持ちに逆らうことは出来ないのだ!
「そこまでです!!」
 悪漢どもは、突如として遮った声にギロリと振り返る。
 そこにはなんと……男達の胸に届くかどうかという、小さな背丈の少女が一人。
「悪い人達の狼藉三昧、見過ごすことなんて出来る筈がありません!」
「あぁ~ん? なんだあお嬢ちゃん、ごっこ遊びかあ?」
「ままごとなら他所でやりな、他所でよう!」
 悪党どものからかい言葉にも臆することなく、少女はきっと眦を決する。
「まさかたぁ思うが……俺らが免状持ちと知ってて逆らうんじゃないだろうなぁ?」
「その通りです!」
「けっ! 餓鬼が。ならてめえの名前を名乗ってみやがれ!」
 少女は腰に両手を置き、胸を張ったまま答えた。
「はつらさんに、悪い人達に名乗る名前なんてありませんっ」
「「「はぁ?」」」
 悪党どもが声を揃えて呆れたのも無理からぬもの。
「でもはつらさんを呼ぶ時に困っちゃいそうですね……なら名乗ります!
 はつらさんこそ、優鉢羅流の開祖なんですよ!」
 少女――竜石堂・はつらの奇妙な物言いに、悪党どもは薄ら笑いを浮かべた。
 中には仲間の方を見て、こめかみのあたりでくるくる指を回す輩もいる。
 しかしそれは見下しが過ぎるというものだ。なぜならば……。
「さあ、外に出てください! お店の迷惑ですから!」
「うおおおおっ!?」
 ぺたぺたと無造作に近づいたはつら、悪漢の腕を掴み外へと放り投げたのだ!
 呆気にとられる他の連中も、次々にぽいぽい店外へ放り出される!
「痛ぇ!」
「なんだこの餓鬼、とんでもねえ馬鹿力だぞ!!」
「はつらさんはバカじゃありませんっ!」
 唇を尖らせながら店外に出てきたはつらは、悪党どもが身構える前に剣を振り上げる。
 ただし鞘に入れたままだ。それをやおら、地面に叩きつけたのである!
 ――どんぐらがっしゃん!! 見た目にそぐわない音と衝撃!
「「「う、うわわわうおおおおっ!?」」」
 鞘が突き刺さった場所から地面にビシビシと亀裂が走り、悪党どもを飲み込む。
 そう、このはつらという少女、実は人間ではない。
 すなわちヤドリガミ。人ならぬ怪力を持つ器物の化身なのだ!
「これこそ優鉢羅流の零の巻、悪いことをしたら地面に埋まって反省ですよ!」
 首から下が穴に埋まってしまった悪党どもは、目を回して昏倒している。
 なんという怪力、そして大破壊を可能にする不可思議な超重刀であろうか。
 鯉口を切るまでもなく、悪漢をひとまとめに片付けてしまうとは!
「快刀乱麻を断つどころではありませんでしたね。まあ問題ありません!」
 ひょい、ひょいと地面に落ちていた免状を拾い上げ、はつらは微笑む。
「お天道様に顔向けできるぐらいに懺悔したら、またお会いしましょう?」
 仮に改心したとして、この恐ろしい少女に二度も会いたがる輩が居るかどうか。
 突然の救い主に、店の主人と娘も腰を抜かすほかなかったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
おーおー、小悪党が揃いも揃ってイキってるっすねぇ
――ナメてんのかテメェら
弱者をいたぶるばかりのチンピラが武侠を名乗るなんざ片腹痛ぇ
傭兵崩れに落ちようが、こちとら騎士の家の出っす
武芸者のあり方を見せてやるっすよ

豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動!
骨喰流呪剣術、豹の型!
地上最速の捕食者の速度にゴロツキ風情がついてこれるはずがねぇっす
瞬く間にヤツらの四肢の健を切って再起不能にしてやるっすよ!

刀を握れなくなるだけで済んで有り難いと思うことっすね
またもし同じことをするようなら……次は首を斬らなきゃいけねぇんすから

……さ、民草を安心させるのも騎士の務め
もう大丈夫って触れ回らないとっすね

アドリブ大歓迎



●骨喰の騎士、その疾さ韋駄天の如く
 悪"党"などと言うだけあって、人の道を外れた連中は群れを作りたがる。
 そして頭数が増えれば増えるほど、この手の奴らは幅を利かせるものなのだ。
 強き心を持たぬがゆえに悪に堕ちる。驕慢はすなわち臆病の裏返し。
「おーおー、こりゃあまた盛大なこって」
 ゆえに街の外れにたむろする悪党どもを前にして、青年が恐れを抱くことはない。
 むしろ怒気の籠もった睨みなどどこ吹く風で、愉快げにニカっと笑ってみせるのだ。
「小悪党が揃いも揃って、何の罪もねえ人らをビビらせ大物気取りっすか。
 そういうの、イキってるっつーんすよ? ま、知らなくても無理ねえか!」
 かんらかんらと呵々大笑する青年を、悪党どもが取り囲む。
「いきなり現れてご挨拶じゃねえか? あぁ!?」
「嘗めてんのかてめ――ひっ」
 凄んだドサンピンが、言葉を終わらす前に悲鳴を上げた。
 さもありなん。見返す青年の凄絶な眼光に、恐れをなしたのである。
「"ナメてんのかテメェら"だ? そりゃこっちの台詞だぜ」
 底冷えするような怒気。一山いくらの悪漢どもはごくりと息を呑む。
「て、てめえ! こちとら天下御免の武侠様だぜぇ!」
 御免状を掲げられようが、青年は萎縮するはずもない。目当てはそれなのだ。
「ハッ! 弱者をいたぶるばかりのチンピラが武侠を名乗るなんざ、片腹痛ぇ」
 青年が担いだ盾に、掲げるべき紋章はない。なぜならば彼は傭兵まがいの騎士。
 誇りとする家紋も家柄もなく、その日その日を生きる風来坊なのである。
 自由を愛する遍歴騎士と言えば聴こえはいいが、所詮は根無し草の戦争屋だ。
 落ちぶれたと言わば言え。否定するつもりもない。それでも騎士の家の出なのだ。
 貫くべき道と精神、そして守るべきものがなんであるかは知っている。
「たとえ世界が違おうが、武芸者の在り方ってのは大して変わりゃしねえ。
 オレっちが――この"骨喰"リンタロウが、そいつを見せてやるっすよ!」
 黒騎士"骨喰"、正しくはリンタロウ・ホネハミ。それが青年の名。
 外道に堕ちた悪漢を前にして、騎士が退くことなどありえない!

「ほざけ余所者がぁ!」
「たかが一人で何が出来んだ、あぁ!?」
「囲め! 数で圧して押し潰しちまえ!」
 そしてこういう時、数を頼みに徒党を組むのもよくある光景。
 辟易した様子で嘆息しながらも、リンタロウは銜えていた骨をがりっと噛み砕いた。
 ばり、ごり、がぎん。奇矯な振る舞い、異食癖か? 否なり!
「ゴロツキ風情に豹の骨(こいつ)を喰うのはちぃと勿体ねえっすが――」
 ごくり。リンタロウは咀嚼したそれを躊躇なく嚥下する。
 するとどうだ。彼が持つ骨剣がカタカタとひとりでに唸り始めた!
「なんだこいつ? 妙ちくりんな――あ?」
 ごうっ!!
 風鳴りだけが、先陣を切ったチンピラどもの聞いた最後の音。
 そのときにはすでに、短剣と骨剣によって四肢の腱が切断されている!
「「「げ、げぇええええっ!?」」」
「骨喰流呪剣術、豹の型――なあんつって、な」
 姿勢を低くし薄く笑う様、まさに獲物を狩る豹の如し。
 再びリンタロウの姿が霞のようにかき消えて、チンピラどもの間をくぐり抜ける!
「ど、どこだ!? 速すぎる!」
「捉えきれねえ! なんだこいつ!?」
「あ、脚が! 俺の脚がぁ!!」
 色付きの風となったリンタロウには、誰も追いつけない。
 達人ならまだしも、数を頼みに群れるごろつき風情に何が出来よう?
 骨を喰らうことで力を得る。これが"骨喰"リンタロウの力にして呪いである!

 ざっと一分。土埃が舞い上がり、最後の一人がどさりと倒れた。
 死んではいない。手足の腱を的確に斬られ、二度と刀を握れなくなっただけだ。
「これにて再起不能ってとこっすねえ、まあ運が良けりゃくっつくんじゃねえっすか?」
「ち、畜生、覚えてやがれこの野郎……!」
 痛みに呻くチンピラは、己の発言を後悔した。
 太陽を背負い自分を見下ろす騎士の、殺意に溢れた眼光に射竦められたのだ。
「"覚えてやがれ"? ……刀ぁ握れなくなるだけで済ませてやったんすよ?
 だのにまだ同じことするようなら――次は首(ここ)を斬るしかねえな?」
「ひ、ひぃいいい……!!」
「ったく、吠え面かくならもう少し度胸つけろっつーんすよ……」
 情けなく泣き出したチンピラに呆れ果て、リンタロウはその場を後にする。
 こんな雑魚ども相手では栄誉にもならず、またその名誉を誇示するつもりもない。
 が、辺りの住人に、ひとまずゴミ掃除が終わったことは伝えて回るとしよう。
「民草を安心させるのも、騎士の務めってやつっすからね」
 さあっ、と気持ちのいい風が吹く。リンタロウは、どこか故郷を思い出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズル・ゴッズフォート
【POW】
―――醜い
形だけでも武侠を名乗るならば、相応に求められる振る舞いがあるでしょうに

さて、名乗りによる鼓舞も騎士の職務。必要であるなら異議もなし
ただ、故郷では決まった名がなかったので……ふむ
「―――神塞流陸殲術、防楯の型皆伝。シズル・ゴッズフォート、参ります!」

剣と大盾での「武器/盾受け」を駆使した、防戦を中心とした個人級白兵戦術
剣で斬り、いなし、時に盾での殴打や体術も交えつつ防ぎ、どうしても防げない攻撃は【無敵城塞】で受ける
言葉にすればそれだけですが。相手は傷つかず、自分達だけが損耗する理不尽への恐怖……耐えられますか?

「力ある者には、相応の義務が生じるものです。良く覚えておきなさい」



●騎士の矜持は何処にありや
 転送直後に目に飛び込んできたのは、悪漢どもの乱痴気騒ぎ。
 怯え震える民草を足蹴にして、げらげらと下卑た笑いをあげる匪賊ども。
 耳に届くのは悲鳴、懇願、あるいは嘆願。痛ましい叫びばかり。
「……――醜い」
 日に焼けたような肌が特徴的な金髪金目の女は、ただそう吐き捨てた。
 武侠とは名ばかりの惨状である。だが名は体を示すとも言うではないか。
 形だけでもそう名乗るならば、相応しき振る舞いを求められるのは当然のこと。
「世も己も意に介さない。なるほど、よくわかりました」
「あぁん? なんだこの女、一人でブツブツと!」
「おいおいずいぶん別嬪じゃねえかあ、けひひひ!」
 女の存在に気づいた悪漢どもが、ぞろぞろと群れをなして取り囲む。
 足蹴にされていた人々は、安堵と不安の入り混じった表情で女を見上げる。
 己らから矛先が逸れたのは正直ありがたい。だが次は彼女なのだ!
 それを見て見ぬふりが出来るほど、民の心は穢れていない。
「ふ。ならばまだ、力の振るいがいもあるというもの――」
「おう姉ちゃん、独り言言ってねえで俺らと……ぐほぉ!?」
 ごんっ!! 不埒なチンピラの顔面を大盾が殴り飛ばした!
 女は悪びれもせずにふぁさりと金髪をはためかせ、凛とした眼差しで徒党を睨む。
 悪党どもがたじろぎ一歩退けば、大きく息を吸い込み朗々と名乗りをあげた。
 戦場において、己と家の名を高らかに叫ぶのは騎士の本懐、職務である。
 声が大きく高く響けば響くだけ、それは味方を鼓舞する力となるのだ。
「神塞流陸殲術、防楯の型皆伝。シズル・ゴッズフォート――参ります!!」
 それが、戦端を切り開く合図となった。

 さて、このシズルなる女、実は只人ではない。
 その身の裡に獣の因子を秘めた者――すなわち、キマイラである。
 強烈な飢えと衝動を抱えながらも、薄く笑む様は凛々しくそして美しい。
 しかして騎士を名乗る者ならば、美しいだけで済むはずもなし。
 バスタードソードを苦もなく片手で振り回し、もう一方を守るは巨大な盾。
 彼岸花と蝶の紋様を刻んだそれは、彼女の誇りである忠誠の証。
「な、なんだこの女、さっぱり攻め込めねえ!」
「くそっ、なんべん打っても斬っても隙がねえぞ!」
 堅固とは、堅くまた固いさまを示した言葉である。シズルの戦いはまさにそれ。
 剣でいなし、斬り、あるいは柄で敵を打つ。
 迫る攻撃を盾で凌ぎ、弾き、近づくものは打ち払う。
 よしんば守りをかいくぐったとして、その身を超常の防御が包むのだ。
「これこそが防楯の型。あなたがたの攻撃は決して私に届きはしません」
 傷一つ負わせられはしないと豪語する、その言葉は事実である。
 数十、ともすれば百の撃剣を浴びてなお、鎧はおろか肌にすら一縷の傷もなし!
「ひ、ひぃ! 化物だぁ!!」
「た、助けてくれぇ!!」
 相手は傷つかず、撃てど殴れど響きもしない。体力だけが減っていく。
 返す刀――もとい剣と盾は的確に一人一人徒党を突き崩す。
 さながら山を、あるいは海を相手にするかのような理不尽との戦いである。
 人は、理不尽には勝てない。体より先に心が折れる。
 恐怖して潰走する悪党どもを、しかしシズルは心を鬼にして打ち据えた。
 これが戦場ならば斬って捨てている。だがここは戦場ではない。
 ゆえに殺しはせず、昏倒させるに留める。見逃すつもりは一切ない。
「力ある者には、相応の義務が生じるのです。望むにせよ望まざるにせよ」
「ぐええっ!!」
 背中を踏みしめられ、足元のチンピラが呻く。
「よく覚えておきなさい。そして二度と、罪なき民を苦しませてもなりません」
 金色の瞳には、たしかな嗜虐と血への高揚と陶酔があった。
 満たされぬ植えを強靭な精神力で押さえ込み、正道たる騎士は悪を討つ。
 そのさまは、まさに終わりなき求道そのものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夷洞・みさき
そんな物に頼って人を傷つけたら、君達もそんなモノになってしまうよ。

咎を重ねたいなら、それを棄てて己だけでね。
咎は何時か廻り帰るものだから。
でも近くで人を襲ったら止めるけどね。

故郷の名前は無くなったし、僕等は七人だし。
悌が残ってるのかな。なら。

”忘七流拷問術・車輪業序列二位。夷洞みさき。いざ尋常に。”

君達が現世の人なら殺しはしないよ。
物理のみ。片手両手で車輪を振り回す。

【POW】
車輪の使い方を習っていたのは事実だしね。
車輪の回転音が【恐怖を与え】掠るだけでも摩擦で【傷口をえぐる】
車輪の輻(スポーク部分)で絡めとって色々へし折りつつ【敵を盾にする】
されど、基本は無慈悲に【踏みつけ】る。

アレンジ歓迎



●ふるさとは無く輩も亡く
 欲に駆られた悪党に、道理を説いて聞かせることほど愚かなことはない。
 馬の耳に念仏、というやつだ。馬鹿とはまさによく言ったものである。
「君達、そこまでにしたほうがいい」
「「「ああ?」」」
 だが世の中には、その愚行をあえて犯す者もいる。
 ただし彼女の場合は、それが愚かとわからぬほど世間知らずなわけでも、
 ましてや人の善性を脳天気に信じ切っているわけでもない。
「"そんな物"に頼って人を傷つけたら、君達も"そんなモノ"になってしまう。
 どうしても咎を重ねたいならば、それを棄てて己だけでやるべきだね」
 痩せぎすの女の神妙な物言いに、悪党どもはきょとんとしたあと声を上げて笑った。
 どうやら連中にとって、彼女の言葉はさぞおかしいものであったらしい。
「なぁにわけわかんねえこと言ってやがんだ、こいつはよぉ!」
「ぎゃはははは、どこのお坊様だよ! 説法でお布施ねだりか!」
 そんな嘲笑の囲まれようと、痩せた女はあるかなしかの笑みを崩さない。
「咎はいつか、巡り帰るものだ。君達が咎を重ねることを僕らは止められない。
 とはいえ、見てる範囲で人を襲うようなら、それはもちろん止めるけれどね」
 なるほど、道理をあざ笑う悪党どもならば、彼女の物言いを嘲笑うのも納得か。
 だが奴らはこの時点で気づくべきだったのだ。
 "咎"の在り様と輪廻を説く、痩せた女の不可思議な雰囲気の正体に。
 ……彼女からかすかに漂う、この世ならぬ海の薫りのその意味に。

「おい、ちょうどいいぜ。この女で遊ぼうや!」
「けけけ! そりゃ豪気だな!」
 下賤な笑みを浮かべ己を取り囲む徒党に、女はくすりと微笑む。
 誘うような? 否。
 嘲るような? それもまた、否。
 たとえるならば、それは臨終を見送る死神めいた微笑み。
「忘七流拷問術・車輪業序列二位――夷洞みさきだ。まあでっち上げなんだがね」
 故郷の名は無く輩は在れど亡く、ただ遺るは悌のみ。ゆえに名乗る。
 ぎしり――呼び声に応じ、女の背中に現れるはいびつな大車輪。
「なんだ、この女……!?」
「お、おい、やばいんじゃねえか!?」
 いまさら気づいたところでもう遅い。すでに奴らは剣を抜いている。
 そしてみさきは名乗った。咎を殺す車輪がそのために来た。
 彼らは現世の者。されど罰するべき咎はそこにあり。
「殺しはしない。けれど相手はしてもらおう――さあ、いざ尋常に」
 そして、咎人殺しの御業が心と骨と肉を砕く時が来た。

 ぎしり、ぎしりと車輪が軋んで回転する。
 悪党どもは剣を振り上げる。遅い――あまりにも、遅い。
 車輪の歩みが疾いということはない。しかし緩くもないのだ。
 彼女"ら"が歩む/廻るとき、罪人はけして逃れられぬ。
 現世の者であれそれは当然。奴らは人々を甚振り悦楽した咎人なり。
 軋み音が心を砕き、掠れば肌を皮を裂いて摩擦が肉をこする。
 ならばと破壊にかかれば、これこそまさに悪手。めきりと骨がへし折れる。
 逃げ惑う者がいる。それを追って車輪はぎしぎしと咎人を押しつぶす。
 踏みつける。これぞ貴様らの咎なりと、心と体に刻み込む。
 車輪が軋む。傷をえぐる。刃を弾き、ぐるりとその身を盾にして、
 同胞を従えた海鳴りの女が幽鬼めいてそぞろ歩く。
「た、助、助け……あぎッ」
「殺しはしないよ。安心してくれ」
 ――だが見逃すこともない。
 みさきは、ただ微笑んだまま、表情を変えることなくそう言った。
 咎を殺し罪を禊ぐことこそ、その身に与えられた使命であるゆえに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルジャンテ・レラ
独学で覚え、指南書で伸ばした弓術です。
流派などありません。
即興ですか?無理です。
耀さんの提案された作戦に乗らせていただきますね。
過去に共闘した方でしたら戦法もおおよそ記憶していますし、
初見の方でも上手く合わせていきましょう。

書物で得た表現力を活かせると尚良しですね。
(※よきに御計らいください)

今の一撃は……
天地をも揺るがすという、あの。
しかし、真の一手は次にこそ。
先程の攻撃は確たる死の刻印を与えたに過ぎません。
あの構え……いよいよですね。
麒麟を討ったと云われている、彼(彼女)の秘儀。
狙われたが最後。
己の死にすら気付かぬほど、鮮烈な最期を迎える事でしょう。

お疲れ様です。
お見事な戦いぶりでしたよ。


神元・眞白
【WIZ/ネタ系?】
(実況の意識。解説には誰かを引きずり込んで)
あーあー、まいくてす、まいくてす。天を貫くこの城を……デジャヴ。
なんだか周りで色々見た事ない戦い方がやってる。あれは…
(ガイドブック的なものをぱらぱらしている観光客が1)
私?通りすがりの実況なのでお気になさらず?
あーあー、お侍様いけません。お侍様、あー困ります、あー。
…危うくぼっしゅーとされそうに。ここはいけないところ。

そうそう、こういったところには何か美味しい物が隠れてるって相場。
この案内書にもそう、書いてある。穴場?散策しないと。
おだんごにおまんじゅう、おはぎ、さくらもち?この世界は楽しそう。


才堂・紅葉
心底を震わせる重低音のビートを刻み、名乗りを上げる。

あるだわしきですめたりゅう・ぎたりすと
阿流蛇倭式出主眼多流・魏足素斗
才堂紅葉と申します、一手ご指南いただきたく

優雅な外国(とつくに)の礼儀作法で挨拶する。
戸惑う男達に向け演奏を開始
超絶技巧を見せつけ、悪魔を称えるが如き邪悪な歌詞を天使の如きクリアボイスで歌い上げる

「あら、かかってはこないのですか。○○野朗は所詮××で△△△ですね(※放送できません)」

戸惑う男達に眼を疑う罵倒を投げかけ。

「おかわいいこと」
冷ややかな憐憫の眼差しを向ける。

激昂した男達の攻撃は流水の如く回避し、悪魔の演奏を続け心をへし折り。
曲の締めに蒸気ギターで殴り倒します。



●あまりにズレると逆に噛み合うこともあるのではないか
「あーあー、まいくてす、まいくてす」
「…………」
「天を貫くこの城を……ううん、このカンペ違う」
「…………あの」
「本日は―晴天なりー晴天なりー」
「すみません、何をやっているんですか……?」
 アルジャンテ・レラは、ツッコミを入れずにはいられなかった。
 なんだかここのところこういう役割が多いような気がする。人形は訝しんだ。
 おそらく気のせいだろう。他のグリモア猟兵の予知だとまともなはずだ。
「なぜこんなところに、その、なんですかそれ実況席……?」
「いいところに。ちょうど解説が欲しかったの」
 ツッコミを完全スルーした神元・眞白はぽふぽふと解説席を叩く。
 アルジャンテは言語によるコミュニケーションの限界と可能性に思いを馳せつつ、
 これ多分断ってもYESを選ぶまで選択肢が出続けるやつだな、と諦め、
 おとなしく眞白の誘いに従って解説席に腰掛けた。寒風がぴゅうと吹き抜ける。
「……で、なんなんですかこれは」
「通りすがりの実況と解説」
「なんのですか……?」
 いや聞くまでもない。アルジャンテはわかってしまった。
 なぜなら彼もまた、あのトンチキグリモア猟兵の口車に乗ってしまったのだ。
 ……ホニャララ書房作戦! あれっ実況とかする作戦でしたっけ!?
「まあそれはいいのですが、肝心の解説をする相手はどこに?」
「おまんじゅう、おだんご、おはぎ、さくらもち……」
「すいませんどうしてガイドブックをパラパラめくってるんですか」
「あーあー、いけません。解説さん、あー困ります、あー」
 やる気が全く感じられない眞白からガイドブック(?)を取り上げるアルジャンテ。
 読んでみると意外にガチな装丁がされていた。どこの誰が発行してるのか。
「私達だけで席を用意したところでなんの意味もないでしょうに」
「大丈夫。ほら、あそこ」
 眞白が指さした先。木枯らしとともにやってきたのは一人の女……!!

 ギャァアアアア~~~~ン!!
「うおおっ!?」
「なんだぁ!?」
 酒を呷っていた悪党どもは、突然の重低音に飛び上がった。
 ギャァア~ン!! ギャァンバリバリギャリリrィ~ン!!
 なんたる心底を震わせるビートか! 否が応でも注目せざるを得ない!
 そして見よ! 高々と天を指差すギター持ちの女……ギター? なんで!?
「阿流蛇倭(あるだわ)式・出主眼多(ですめた)流――魏足素斗」
 ぎたりすとと読むらしい。というかもうギタリストでいいのでは。
 ギャァア~ン。呆気にとられる悪党どもに女は旋律をかき鳴らす。
「才堂・紅葉と申します、一手ご指南いただきたく」
「「「えぇええ……」」」
 悪漢達は戸惑った。萎縮も出来ないし脅かすこともできない。
 むしろ可能な限り目を合わせないようにこの場を辞去したい気持ちで一杯だ。
「ええええ……」
 それは解説席のアルジャンテも同じだった。眞白は無表情である。
「あの、そもそも戦いでもなんでもないような」
「まだ始まったばかり。ちゃんと解説しないと」
「あ、はい……」

 そんな解説&実況席の困惑をよそに、無駄に優雅な礼儀作法を披露した紅葉は、
 おもむろにピックを掲げ……そして! 力強くギターをかき鳴らした!
 ギャァアア~~ン!! ガリガリガリギュキューン!
「あれは!」
「知っているのですか、実況さん?」
「……解説さん、どうですか」
「あの聞いたの私の方ですよね」
「こういうときは、解説が大事だから」
「実況席必要あるんでしょうかこれ……」
 アルジャンテは呆れ顔で彼方を見た。
 ぽかんとしている男達。ノリノリでギターを弾く紅葉。悪い夢かな?
「あー……今の一撃……一撃? 一打……一フレーズ、ですね。
 あれは天地をも揺るがすという……曲、曲としか言いようがないですね」
 無駄に上手いのがなおさら不安と混乱を煽っている。さらに!
「殺戮上等(キル・ゼム・オール)~~~~~~~♪」
「歌いだした」
「歌いだしましたね」
「ものすごいソプラノ」
「アルトもすごいですね、ある意味天地を揺るがしてますね」
 乱舞する音階をこともなげに行き交う天使の如き美声であったという。
「そして人類はみな死に絶え~♪ 悪魔が地上を支配す(ここで2オクターブ跳ね上げ)る~~~~♪」
「いちいち歌詞が禍々しいですね」
「あれが出主眼多流……」
「歌い方はオペラですが。しかし、真の一手は次にこそあるはずです」
 そう信じたいというのがアルジャンテの本音である。悪い夢だこれでは。
 多分あの歌が、なんかこう死の刻印的ななんかを与えているのだろう。

 ギャァアアーンッ!! クインッ。演奏が終わった。
 静けさが戻る。紅葉は目を閉じたまま余韻に浸っている……!
「「「…………」」」
「ふう……あら。かかってはこないのですか?」
「むしろなぜこの流れで襲われると思ったんでしょうか」
「挑発は大事」
 きらびやかな汗を拭い、紅葉はあからさまな嘲笑を向けた。
 嘲笑われる側の悪漢どももさすがに戸惑うばかりである。
「所詮(ピー)野郎は(見せられないよ!)で(自粛)ですね」
「音声は加工してお届けしています」
「誰に対する発言なんですかそれは。そしてどうやってカフをかけてるんですかこれは」
 その間にも紅葉はちょっとそこまで言わなくてもみたいな罵倒を振りまく!
 そして冷ややかな憐憫の眼差し……わけがわからないよ!
「――おかわいいこと」
「あれが出主眼多流の決め台詞」
「そんな馬鹿な……」

「……よ」
 チンピラの一人が震えながら言葉を絞り出した。
「よくわからねえがこいつ殺すしかねえ!!」
「「「うおおおおーっ!!」」」
 恐怖である。この女をここで殺らねばヤバいことになると本能が叫んでいた!
 そして襲いかかる悪党ども! 紅葉は流水めいてこれを避ける!
 さらに……ギャァアア~ン!! 演奏を再開した!?
「再開した」
「何故……?」
 実況席も困惑するばかりであった。
「し、しかし。あの構えはいよいよ、終わりのはずです。終わってください。
 相手はおそらく、己の死にすら気づかぬほど鮮烈な最期を迎え……」
「ッダァーーーーーーーーイ!!(ゴガシャア)」
「「「アバーッ!?」」」
「迎えませんでしたね」
「普通にギターで殴った」
「完全に力任せでしたね……」
 クオンクオンクオン……残響めいてギターの旋律が消えていく。
 蒸気ギターでぶちのめされた悪党どもを背に、紅葉は満足げな顔で片手を掲げた。
「…………終わり?」
「アンコールはちょっと勘弁していただけると」
 だが紅葉はやる気だった。悪い夢はまだ暫く続くのだ……!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
名乗りですか。一般的な剣術……それもどちらかといえば競技用ですからこれといった流派があるわけでもないのですが。そうですね、こちらの流儀に則るならば……

マクリントック式細剣術・中伝、アリシア・マクリントック、参ります!

わが剣は人を殺める剣にあらず、その力を奪うのみ。人を斬るための剣には敵わないでしょう。
ですが、貴方たちのような心無き者の剣にならば私が負ける道理はありません。

打ち合うのに向いた剣ではないですから、そこは注意して立ち回る必要がありそうですね。
「秘剣・虹光裂破!」
腕を狙って必殺の突きを。大見得を切ってしまいましたし、できるだけ傷つけずに戦闘力を奪いたいところですね。



●おてんばお嬢様悪を討つ!
「左だ! 左から攻めろ! 俺達は右から行く!」
「よおし、両側から同時だぞ。相手は一人なんだ、構うこたねえ!」
 ざざざざざ、とチンピラの群れが両翼に展開する。
 対するのは金髪碧眼の、淑やかな少女たったひとり。
 明らかな人数差、ましてや相手は女である。悪漢どもの警戒は過剰ではなかろうか?
 ……いいや、過剰などとんでもない。彼女の足元を見よ。
 すでに五人以上の悪党が、腕を抑えてのたうち回っているではないか!
「い、痛ぇ、畜生!」
「この女、つ、強ぇ……」
 金髪の令嬢は、油断なく両翼の敵を視界に捉えながら独特の構えを取る。
 フェンシングである。この世界では滅多に見られぬであろう西洋剣術。
「いきなり現れたと思ったら、まさかここまで手こずらせるとはな……」
「よくもまあ暴れたもんだ。名前を聞いておこうじゃねえかお嬢さんよ」
 じりじりと包囲網が狭まる。少女は決然と目をそらさない。
 たおやかな眼差しには、しかし鋼のような力強い信念が感じられた。

「いいでしょう。なし崩しに始まった戦いゆえに、名乗りが遅れてしまいましたね」
 本来であれば、彼女が修めたのはあくまで競技用の剣術である。
 ゆえに大それた銘があるわけではない。だが郷に入っては郷に従えとも云う。
 彼女は他国の、ひいては他世界の文化を尊ぶ。外の世界の全てを楽しむ。
 だからこそ、そこに住む罪なき人々を苦しめる輩を見逃すわけにはいかないのだ!
「――マクリントック式細剣術・中伝。アリシア・マクリントックと申します」
 ざあ、と一陣の風が吹き抜け、アリシアの髪とリボンを揺らす。
 彼女の相棒たる狼は、平屋の屋根上からじっと戦いを見守っていた。
 これは剣と剣、武と武の戦い。アリシア自身が望んだ孤立である。
「わが剣は人を殺めずその力を奪うのみ。人を斬るための剣には敵わないでしょう」
 瞑目し、アリシアは滔々と語る。
 この免状を持つ悪党どもは、どれほどの命を奪ってきたのだろうか。
 もはやそれは取り戻せない過去だ。しかしここで、止めねばならない。
 容赦と慈悲を棄てた剣は苛烈である。尋常の剣術では勝てぬほどに。
 では逃げるか? ……否。アリシアはきっと目を見開く!
「ですが、貴方達のような心なき者の剣に、私が負ける道理はありませんっ!!」

「大口を叩きやがってぇ、容赦しねえぞ!」
「こっちはまだまだ多勢なんだ、殺せぇ!!」
 来る。アリシアは深く腰を落とし、左右同時の攻勢に対抗する。
 数の利は圧倒的。これを覆すには攻撃の回数で凌ぐ他になし。
 一撃も仕損じてはならない。いわば薄氷を踏むかの如き連撃のみが、
 今を切り開く起死回生の一手となる。意識がレイピアそのもののように細まる!
「か弱い娘と――侮らないことです!!」
 銀光が煌めいた。まず右翼の第一陣二名の腕を瞬速で貫く!
「げえ!」
「がああっ!?」
「次!」
 刃を引き抜いての振り返りざま、頬すれすれを段平がかすめた。
 アリシアはほとんど無意識にこれを躱し、腰のバネを使って真下から腕を突く!
「がっ!?」
「これで三人……!」
 緩みかけた気を引き締める。ステップを踏んで敵の攻撃をかいくぐり、
 左、左、右と三連続の刺突を繰り出す。次が来る。七手目を抉り込む!
「こいつ、ちょこまかと!」
「慌てるな、たかが女ひとり……うおおお!」
 女一人。小娘一人。聞き飽きた台詞だ、嫌というほど耳にした台詞だ。
 彼女は抑圧を嫌う。そのために家を飛び出し世界を越えたのだから!
「秘剣――虹光裂破っ!!」
 口訣は自然と唇から漏れていた。銀光はなお鋭く、そして疾く。
 わずか10秒。アリシアが三度目の呼吸を終えた時、勝負は決していた。
「……やった。やりました! マリア、見ててくれたっ!?」
 屋根上の狼が吼え返す。傷は最小限に、効果は最大。無傷での勝利。
 アリシアは快哉をあげる。かくして悪は討たれたのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

馮・志廉
緑林の徒には緑林の徒なりの仁義というものがある。
それもわきまえぬ外道ならば、残らず叩き伏せるのが鏢師の役目というものだ。

「河南馮氏の槍を見よ!」
ブゥン、と大きく槍をしならせて、槍頭が天を指す起槍式。これを起点として次々と技を繰り出して行く。
すなわち、横掃千軍、白蛇吐信、衝陣斬将、四夷賓服……。

戦いの途中で突如踵を返して逃げの手を打ち敵を誘い込むと、巧みに槍を返して振り向きざまに一突き。これぞ馮家槍法の絶技、回馬槍。

「貴様らのごとき外道に侠の一字は名乗らせん。」



●千里独行、刚毅之士也
 うだつのあがらぬ徒党が取り囲む輪の只中、槍を構えし鏢師の孤影あり。
「緑林の徒には、緑林の徒なりの仁義というものがあろう。己の領分を弁えよ」
 いかにも道理である。巣林一枝、偃鼠飲河とはまさにこのことか。
 だが匪賊ども、悪びれもせず。言って聞かすは琴を弾くより至難と見えた。
「外道どもめ。ならば鏢師の役目を果たし、残らず叩き伏せてくれよう!」
 鏢師、勇んで振るうは房飾りつきの中国槍。切られた銘は"鎮八方"とある。
「河南馮氏の槍を見よ!」
 ぶうん、と風切り音を立て、ぐんとしなった槍が名の通り八方を威嚇する。
 堂に入った槍使い。この鏢師、名を馮・志廉と云う。
 悪を憎みて義を為す好漢、つまりはまさしく俠気の徒である。
 かくの如き緑林白波の外道どもが武侠を名乗るなど、我慢出来る性質ではない。
 ゆえに天高く掲げた槍頭は、まさしく怒髪、天を衝くかのよう。
 故事における大王めいて、凶漢どもが震え上がったことは言うまでもなし。

「脅しにすぎねえ、畳んじまえ!」
「たかが野郎一人だ、やれ、やれぇ!」
 ぎらりと、猛禽じみた双眸が白浪どもを睨めつける。
 脅しと? 笑止。これなる起槍式は、すなわち套路の起こりに過ぎぬ。
 まずぐるりと身をねじり、二転三転と群がる敵を払う。横掃千軍。
 これを飛び越え来る者あれば、さながら蛇めいた足運びで刃を躱しいなし、
 開いた守りへ牙じみた槍を突きおろし一撃にて伏す。白蛇吐信。
「こいつ、見掛け倒しじゃねえぞ!?」
「くそ、運び屋風情がちょこまかと!」
 敵は血気にはやる。そこを打つのが衝陣斬将、そして四夷賓服へ。
 乱戦混戦の最中にありて、志廉が振るう槍捌きは手本のように揺るぎなし。
 打つべき場所へ穂先を運び、敵の四肢を頸を誘い込む。
 所詮は卑劣下賤の連中である。呪いがあろうがなかろうが物の数ではない。
 鎮八方がしなり風を切るたび、呻き声が増え志廉を追う影は減っていく。
「さあどうした、俺を畳んでやるのではなかったのか!」
 裂帛の怒声がびりびりと大気を震わせる。怯んだところへ掩手撩拳の一撃炸裂。
 志廉は一瞥で敵の数を見て取る。残りは五。然らば仕上げにかかる頃合いか。
「……!」
 はたして志廉は突如として踵を返し、通りをひた走って逃げ出したではないか。
 あまりにも唐突な転身ぶりに、兇漢どもは束の間呆気にとられたほど。
 しかしてすぐさま我を取り戻すと、罵声もあらわに鏢師の背中を追っていく。
 折り悪く、彼の逃げた先は袋小路であった。当然敵は承知済みだ。
 ゆえに彼奴らは注意警戒一切なく、まんまと誘い込まれる形となる!
「所詮は仁義も解さぬ左道の輩か。些か見合わぬ褒美だが――」
「「「何っ!?」」」
 驚愕にて二重の隙を晒すのは愚の骨頂。志廉は見逃すような手合ではない。
 突き出された蛮刀を背向きのままで巧みに弾き、振り向きざまに槍の一突き!
「がっ!?」
「河南馮氏に三つの絶技有り。味わってみるか!」
 緑林は後悔した。だが遅いのだ。悪足掻きの横薙ぎ切り下ろしを躱し払い、
 まるで舞うかのように一つ二つ三つと回転しながら立て続けに槍の刺突を返す!
 残心。同時に、身の程知らずの悪党どもがどさりとその場に倒れ伏した。
 これぞ馮門槍法絶招・回馬槍なり。
「……貴様らの如き外道に、"侠"の一字は名乗らせん」
 硬骨漢の言葉に応じるかのごとく、呪いの免状は燃えて尽き塵滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

街風・杏花
うふ、うふふ!
鏡花翠月流皆伝、街風・杏花。さぁさ、いざ、いざ、参ります。

鏡に映る花が如く、捉えどころなく舞い踊り!
届かぬ月に手を伸ばすが如く、勝てぬ相手にこそ食らいつくが我が剣の秘奥!

嗚呼、嗚呼、けれど、貴方がたは月に見立てるに相応しい剣腕をお持ちでしょうか?
その剣、足りぬとみれば――うふふ、花吹雪が如く、お掃除してしまいますよ?



剣技は磨いているが、流派らしい流派はない
格上相手が本領のため、剣腕は精々十人並み
けれど、見栄を切るのはノリノリで、心から愉しげに

アレンジ、絡み歓迎



●月の下/瀾(おおなみ)狂ひて/花と散る
 日が暮れれば、それはすなわち悪漢匪賊の時間の到来を意味する。
 無辜の民はみな各々の家に籠り、戸をぴたりと閉じてただ震えるのみ。
 だがそれすら、免状持ちが気まぐれを起こして蹴り込んでくればそれでおしまい。
 蹂躙されようが殺されようが、文句一つ言えやしない。
 狂っていた。魘魅師のもたらした現状はいかにも狂っていた。
 だが――月夜の路辻を軽やかに歩く少女の瞳には、なお炯々たる狂気の光。
 向かう先はただ一つ。悪名轟かす兇漢の根城である――。

 ……月夜の晩、破れ寺にて!
「うふ、うふふ! こんなところにも鼠が巣を作っておりますのね!」
 開口一番、身の程知らずにもほどがあろう挑発を口にした。
 闇夜のなかに、鼠めいて浮かぶ鋭き眼光数十が少女を睨めつける。
 凄絶な殺気である。ゆえに少女はにんまりと笑みを深めた。
「子供が随分と嘗めた口を利くじゃあねえか。ええ?」
 ぬうっ、と闇の奥から現れたのは、身の丈六尺半の巨漢である。
 明らかに頭目とわかる風情。この男、巷では"血脂の銀次"と呼ばれる腕利きだ。
 名の由来は、言わずもがな腰に佩いた蛮刀――人を斬りすぎたあまりに、血脂で赤黒く汚れた凶器――に端を発する。
 手下がさらに数十。無論、全てが免状持ちの外道である。
「ああ、ああ! いいですわね、いいですわ! こうでなくては!」
 その事実はむしろ彼女を喜ばせた。大手を振って微笑んだ。
 そしてうきうきと体を揺らしながら、少女は己の名を名乗る。
「鏡花翠月流皆伝、街風・杏花と申します。御免状を賜りし皆々様!
 さぁさ、いざ、いざ。月夜にひとつ死合をするといたしましょう!」
 これが尋常の小娘ならば、盗賊どもは嘲笑で切って捨てたことだろう。
 物狂いの小娘を取り囲んで引きずり込み、最悪その場で殺したやもしれぬ。
 だが全員が悟った。この娘、杏花のただならぬ狂気と高揚の気配を。
 夜風に凛と揺れる鈴飾りと、一見無銘の打刀から確かに薫る血の臭いを。

 ゆえに徒党は腰を据えて杏花を睨みつけ、手に手に刃を取って警戒した。
 だがそれでもなお、呪いによる身体強化を課してなお。
「嗚呼、嗚呼――」
 杏花は嘆息めいて頭を振った。達人は挙措一つで力量を知るゆえに。
 武器を構えた兇漢どもの仕草ひとつ、足運び一つでそれを悟ったゆえに。
「けれど、残念ですわ。貴方がたはいかにも一山いくらの鼠のよう。
 その剣どれほどなのかと喜び勇んで参りましたけれど、ああ、ああ……」
「……殺せ」
「「「うおおおおおっ!!」」」
 憐憫すら見せる少女の狂態を意に介さず、頭目が指令を下す。
 悪党どもが雪崩を打って襲いかかる――そして少女は顔を上げた。
「相応しき剣腕をお持ちで非ぬ雑魚ならば、ひとつ花吹雪を咲かせましょう。
 咲いて、吹かせて、有象無象をお掃除してしまうといたしましょう! うふふ!」
 夜風が吹いた。花に変じた打刀がさらわれ咲き誇った。
 "百合水仙の嵐"。吹き荒ぶは弱者を、美しきなきものを切り裂く無慈悲な暴威。
 匪賊は雪崩を打って飛び込んだ。そして大嵐に呑まれて悲鳴を上げた。
 やがて花びらが刀の形を取り戻せば、誰一人として立っている者は――否。

 否である。
「あら」
 血脂銀次。蛮刀を担いだ、ただならぬ殺気を纏う者。
「あら、あら、あら! うふ、うふふ! これはこれは、まあまあ!」
「手品は終わりか小娘。それだけじゃああるまい」
 きらきらと、杏花の瞳が月より明るく星よりまばゆく輝いた。
 "足りない"。だがこの男は"だいぶマシ"だ。つまりは、ああつまり!
「私に、手を伸ばさせてくださりますのね?」
 格上殺しの杏花にとって、剣技など所詮は机上の空論。
 鏡花翠月とはよく言ったもの、届かぬ月に指を運ぶは亡者の如く。
 ゆらりゆらりと歓喜に揺れる足運び、鏡の花のようにとらえどころなく。
 いかにもそれは、"勝てぬ敵に勝つ"ための外道の剣術である。
 術理とも呼べぬ、狂気と凶気が可能とする常軌を逸した剣理である。
「さて、さてさて、あなたはどこまで踊らせてくれますでしょう?
 月が雲が隠れる間? それともまた顔を覗かせて、次に隠れるまで?」
 所詮は只人。だがおそらくは数十を越えて命を奪った兇漢である。
 半刻か一刻か、杏花の飢えを束の間満たすには十分な力量を備えている。
「……そのよく回る口を、頭の後ろまで裂いてやろう」
「うふ、うふふふ! では私は――」
 ぢきり。無銘の刀が鈍い音を響かせる。
「赤い紅い大輪の華を、咲かせてみるといたしましょう?」
 かくて外道と剣鬼が相剋した。狂瀾のえみが夜闇に劈いた。
 はたしてやつがどこまで"凌げた"のか、それは少女のみが知る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皐月・灯
はん。悪党外道が雁首揃えて我が物顔で闊歩するか。
景気が良いのは結構だがよ。
そんな腐った心根で、よくも恥ずかしげもなくいられるもんだ。

ああん?
何だよ腹でも立ったかよ。
弱いヤツらにゃでけー顔して、てめーが言われちゃ口惜しいってか?

だったら相手になってやるぜ。
てめーらまとめて覚悟しろ。散々好きに暴れたツケを、ここでまとめて支払いな!

――レイヴァール式烈剣術。無刃、皐月・灯。

全てを【見切り】、【カウンター】で仕留める。そいつが術理だ。
"我ら刃を交えず"……ってな。
半端な技じゃ、届かねーよ。

って、もう聞こえちゃいねーかな。
……雷雨一極。拳速で音の壁を破って、【衝撃波】で吹っ飛ばしてやったのさ。



●無刃/無音/無影/無双
 領内にはいくつかの街や村があり、それぞれに悪漢が君臨している。
 村人を奴隷めいて酷使する者、気ままに町人を脅かす者、様々だ。
 中には我こそ義侠なりと嘯いて自警団を名乗り、法外な金子をせびる者もいる。
 彼が相手をしたのは、まさにそういう"守護者"であった。

 白昼にも関わらず寂れた往来を、肩で風切りふてぶてしく征く輩あり。
 合わせて四人。傾奇者めいた派手派手しい装いに、飾りつきの鍔は彩り過剰。
「いやあ今日も平和太平実によし!」
「何もかも我らのおかげであるよなあ!」
「然り、然り! 我ら紅湖四侠居らばこそ、悪党どもも恐れをなしておるわ!」
「それもまた義侠の役目よな! はぁっはははは!」
 わざわざ大音声でがなりたて、往来を歩く理由などひとつきりだ。
 この平和は我らのおかげ。お前達を守ってやっているのだ。
 我らの機嫌を損なえば、どうなるかわかっていような……と。
 ゆえに誰も逆らわない。この四人の兇漢を揶揄する者すらいない。
 伏して乞えば平和が得られる。たとえ連中が酔って暴れて狼藉を働いても、
 へつらい笑顔でやり過ごせばいい。そうとも、少なくとも命の保証は――。

「…………」
 そんな人々の諦観を、鼻で笑って通りを塞ぐ少年がいた。
 年頃は15、いや4か。フードの下、垣間見える口元すらもあどけなく。
「あぁ? おい小僧、さっさとどけぃ!」
「ここは我ら紅湖四侠の通り道なるぞ!」
「このあたりの者ではあるまいな、ならば知っておけ」
「我らこそがこのあたりを守護してやっている義侠である! はははは!」
 動かない。退く気配すらない。代わりに少年は、
「――はん」
 と、文字通り一笑に付した。紅湖四侠とやらの表情が固まる。
「悪党外道が、雁首揃えて我が物顔で闊歩ときたか。景気が良くて結構だぜ」
 風にあおられ、フードの下の双眸がちらりと見える。決然たる二色の眼光。
「だがよ。そんな腐った心根で、よくも恥ずかしげもなくいられるもんだ」
「なぁにぃ……!?」
「このガキ、口の利き方ってもんを知らないらしいな!!」
 何が義侠の輩か、直截な罵倒にあっさりと面の皮が割れて剥がれる。
 いかにも図星である。だからこそ、白波どもは牙を剥いて無様に吠えるのだ。
「ああん? なんだよ。腹でも立ったかよ」
 紅湖四侠何するものぞ。少年はむしろ己から眼(がん)をくれてやる。
「弱いヤツらにゃでけー顔して、てめーが言われちゃ口惜しいってか?」
「ガキぃ!! 黙って聞いてりゃ好き放題!!」
「おいおいよせよせ――礼儀を教えてやりゃいいだけだろう」
 身体差は頭二つ以上。此方はいずれも武器を帯び、彼方は徒手空拳である。
 ましてや子供。それを相手にこの殺意。大人げないというのも馬鹿らしい。
 挙句の果てに紅湖四侠とやらは、合図すらなく武器を抜き放ったのだ!
 不意打ち! まともに立ち合うつもりすらないというのか!?

 ――だが、今度こそ悪漢四人はいずれも目をむいた。
 居合。振り下ろし。死角からの斬り上げ。そして暗器。
 いずれも異なる、得手による不意打ちだった。殺すつもりで撃ったのだ。
 しかし少年は無事。まるで最初からそこにいたかのように一歩分下がっている。
 退いた? 否である。避けただけだ。路傍の犬の糞を避けて通ると同じように。
「おいおい、ギキョーとやらがおっかないじゃねーか」
 ばさり。風が吹きすさび、フードを取り払う。尋常ならざる闘気。
「だったら相手になってやるぜ。てめーらまとめて、覚悟してかかってこい」
「まとめてだと!?」
「そうさ。散々好きに暴れて威張ったツケを、ここでまとめて支払いな!」
 静かなる、しかし迫力をたたえた怒声がびりびりと大気を揺れさせる。
 悪漢どもをしてたじろがせるほどの怒り。少年はいっそ静かに名乗った。
「――レイヴァール式烈剣術。"無刃"、皐月・灯」
 さりとて打つ気配はなし。痺れを切らせた兇漢四人が雄叫びをあげる!
「「「「死ぃいいいねぇええええ!!」」」」
 日本刀。暗器。二刀流。奇怪な偃月刀。
 多種多様な武具凶器を振り上げ切り下ろし時に擲つこと猛攻の一語。
 並の武芸者ならば圧されていよう。数の利はいかんとも覆し難いゆえ。
 わけてもこの連中、四侠と名乗るに十分な腕前は備えていた。
 ……しかし見よ。少年の白肌には傷一つないではないか!
「な、なんでだ!?」
「こいつ、まさか全部見切って!?」
「うろちょろするな、おとなしく死ねぇ!」
「がぁきがぁあああ!!」
 もはや狂乱の有様である。灯はうるさそうに舌打ちした。
 だがそれだけだ。さらに速度と威力を増す攻撃の尽くを見切り、
 躱し、僅かな間隙を見出した瞬間に――パンッ!! という破裂音。
「はへっ?」
「な、なんだぁ!?」
 三人は当惑した。残る一人は? あそこだ、はるか後方の彼方。
 刀を両手で握りしめたまま、白目を剥いて伸びたあれがそうだ。
「て、てめえ、何をした!?」
「言っただろ、"無刃"――そいつが術理で、全てだ」
 ちょいちょいと掌を上向けて手招き。敵はこの挑発に乗る。
 大上段からの稲妻じみた振り下ろし。躱す、直後に再び破裂音。
「「げええっ!?」」
 二人目は別の方角に吹っ飛び、ごろごろ転がって無様に昏倒した。
「"我ら刃を交えず"、ってな。半端な技じゃ、オレには届かねーよ」
「や、野郎ぉ!!」
 二度あることは三度ある。回避、からのカウンター。
 残る一人には何も見えなかった。破裂音がした瞬間には仲間が吹っ飛んでいる。
「ひ、ひぃいいい!!」
 武器を放り投げ、跪いて鼻水を垂らしながら平伏する。灯は黙って見下ろす。
「許してくれ、ってつもりなんだろーが――」
 "ダメだね"。唇がそう動くのを見たのが、四人目の最後の記憶。
 再び破裂音が響いて、四人仲良く土にまみれて転がった。

「だから言っただろ……って、もう聴こえちゃいねーかな」
 ぱんぱんと両手を払う。恐る恐る町の人々が戸を開け通りへ出てきた。
 事態を理解した人々が誰何するより先に、灯はフードをかぶって踵を返す。
 称賛、感謝の類を求めたわけではない。自分はそういう性質ではない。
 喜びの声を背中に受けて、あえて離れるようにひとり歩き出す。
 ではあの謎の破裂音。その仕掛けはいったい何処にありや?
 答えは"どこでもない"。彼はただシンプルに拳打を放っただけだ。
 しかもそれすら触れてはいない。破裂したのは圧されて爆ぜた大気と音の壁。
 電光じみた拳速による、衝撃波の発生。その銘を"雷雨一極"。
「――あーあ、くっだらねーぜ」
 通り雨のように突然に、嵐のようにしめやかに。
 誰が呼んだか無頼漢、世界の涯てより来た少年――。
 いかにもその有り様は、刃なくして義を為す英雄好漢そのものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

片瀬・栞
流派名乗りかあ。変わった呪いだねー。
流派なんて持ってないけど…。
ま、いいや。じゃあそれに沿ってやってみよー!

>行動
【POW】共闘、アレンジ歓迎
あたしは前衛ね。武器は懐の携帯戦術端末JBから取り出して戦うよ!

「流派フラッシュバン空手。片瀬栞!いっくよー!」
無造作にフラッシュバンを投げる
フラッシュバン空手とは!フラッシュバンと空手を組み合わせた全く新しい格闘技なのだ!
「あ、次フラググレネードバリツね!はーい!」
フラググレネードバリツとは以下略!
「お、しぶといなー。じゃあ次!ぐれぽんテコンドーね!JB!ぐれぽん!装填6!」
『howling wolf stand by.(はいはい。)』
ぐれぽん以下略!


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

…正直、こーゆー正面切ってナントカで御座い、ってのはあんまり得意じゃないんだけど。
ま、たまにはちょっとタガ緩めましょ。

黒曜式射道奥伝、ティオレンシア。
別に恨みもなんにもないけど…袖すり合ったのが運の尽き。諦めてちょうだいな?(ってとこかしらぁ?)

〇クイックドロウから●鏖殺で一網打尽にするわぁ。
抜く手も見せぬ一閃で吹っ飛ばす、ってのが理想ねぇ。
「火筒の壱・晶から弐・石英の崩し、雲母。…何したか見えたなら、多少は見込みあるんじゃないかしらぁ?」

一応、礼儀として相手の流派も聞いといたほうがいいのかしらねぇ?
…多分、果てしなぁくどうでもいいから刹那で忘れちゃうだろうけど。



●ペンは剣より強いが銃は全てをねじ伏せる
 不思議なものだが、この手の悪漢匪賊はなぜか男ばかりが顔を並べる。
 そして判を押したかのように似た背格好で、似たような言葉遣い振る舞いをする。
 それらが並んで徒党を組むと、いよいよ見分けがつかないわけで。
「……こりゃあ、流派がどうのって聞くだけ無駄みたいだわねぇ」
 取り囲まれているというのに、ティオレンシア・シーディアはぽやぽやと言った。
 普段ならとっくに早撃ちで膾切りならぬ膾撃ちにしているところなのだが。
「流派を名乗らなきゃいけないんだもんね、変わった呪いだなー!」
 こちらもやはり危機感ゼロと言った様子の片瀬・栞の言葉通りである。
 二人を取り囲む野盗の数、おそらくは数十以上に登るだろう。
 当然ながら全員が御免状を賜っている。こうなると少々分が悪い。
「本番もまだだってのに怪我したら、面倒だものねぇ」
「そうそう、弾も体力も節約しないとだよねー!」
 てなわけで、ガンスリンガーな二人も流儀に則るつもりではいるらしい。
 言うまでもなく、彼女らが絡まれたのは連中が男所帯だからであり、
 普段ならなんの力もない無辜の民の若娘などが毒牙にかかっている。
 外道下賤この上なし。そういう意味でも見逃す理由はない。

「よぉ、よぉ! この状況でまーだなにかしようってのかぁ?」
「けっひひひひ! どうせなら舞いの一つでも見せてくれよ!」
 などと、ふたりを囲んだ兇漢どもはくだらない揶揄をふっかけてくる。
 いちいち相手をするようなティオレンシアと栞ではない。
「こーゆー正面切ってナントカで御座い、ってのはあんまり得意じゃないんだけど。
 ま、たまにはちょっとタガ緩めましょ。あなたはどうかしらぁ?」
「ん? 全然問題ないよ! なるみー先輩は呆れそうだけど!」
 あら、とティオレンシアは驚いた顔をした。知った傭兵の名が出たからだ。
 彼の後輩であるならば、つまりはそういうことである。心配は無用と見えた。
「じゃあまああたしからねぇ」
 のほほんとした声で言いつつ、細目がたしかに雑魚どもを睨めつける。
「――黒曜式射道奥伝、ティオレンシア。別に恨みもなんにもないけど……。
 絡んできたのが運の尽き。諦めてちょうだいな? ……ってとこかしらぁ?」
 そんな彼女の横からずずいと一歩踏み出して、栞もまた名乗りを上げる。
「流派フラッシュバン空手。片瀬・栞! いっくよー!」
「なんだこのガキと女、妙なことを言っ」
「フラッシュバン空手一の型ー! いやーっ!!」
「あらぁ、耳塞がなきゃあ」
 ヒュルルルルルル……BOOOOOOOM!!
「「「グワーッ!?」」」
 すさまじい閃光、そして爆音! 言うまでもなく閃光手榴弾だ!
 フラッシュバン空手とは、フラッシュバンと空手を組み合わせた……いやそんなものはない。
 当然のように昏倒する敵を踏みつけながら、栞はさらに大量の榴弾をばらまく!
「あ、次フラググレネードバリツね! はーい!」
 KA-BOOOOOM!!
「「「グワーッ!?」」」
「お、しぶといなー。じゃあ次、ぐれぽんテコンドーね!」
『howling wolf stand by.(はいはい)』
 にゅるん、とスマホ型戦術端末から飛び出すグレネードランチャー。
 相手が常人だろうが意に介さず、爆炎があちこちで火の手をあげる。

「若いっていいわねぇ、血気盛んで好奇心旺盛だしぃ」
 などとぽえぽえした様子で炎上(物理)を見届けつつ、
 ティオレンシアの笑みが対角を取り囲む外道どもに向けられた。
 奴らは恐れおののいていたが、反射的に彼女に襲いかかろうとした。
「か、数はこっちのほうが上だぁ! やっちまえ!!」
「「うおおおおおおーっ!!」」
 さながら討ち入りのごとき野太い鬨の声、迫る数は十以上!
 ティオレンシアは微動だにしない。そして前触れなく――閃光が爆ぜた。
 BBBBBLLLLLAAAAAMMMMNNN!!
「「「グワーッ!?」」」
 そう、閃光としか言いようがなかった。一瞬のことだった。
 銃声らしき激音が幾重にも重なり合って響き渡り、
 そして盗賊はすべてまとめて破城槌で打たれたかのように吹っ飛んだ。
 後続の兇漢どもがビビりつつ襲いかかろうとするが――BBBBBLLLAAAMMMNNN!!
「「「アバーッ!?」」」
「火筒の壱・晶から弐・石英の崩し、雲母。……なあんちゃってねぇ?」
 ティオレンシアは無手である。事実そうとしか見えない。
 その場にいる誰もが、彼女が何をしたか気づきすらしなかった。
 実際はこうだ。彼女はただ、己の愛銃を抜き放ってトリガを引いた。
 ファニング、そしてリロード。至極単純なリボルバー銃撃。
 されどその装填・射撃、取り出すもしまうもいずれも神速。
 達人ですらその一瞬を見極めきれぬクイックドロウ。雑魚どもに何が出来ようか?
「何してたか見えたなら、多少は見込みあるんじゃないかしらぁ?」
 答えがわかっていようにも関わらず、フィクサーはぽえぽえと嘯く。
 たとえ武術流派を修めずとも、彼女らはともに死線火線のエキスパートなのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神威・くるる
悪辣卑劣な悪党をー
嘆き哀しむ人々をー
正す正義の光ありー
……こほん(音がちょっと外れたのを咳払いで誤魔化し)

つまりはひゃーて驚いたり解説したりして賑やかせばええんどすやろ?
まかしとき
そういうんは得意やさかい
なー、猫ちゃん
猫の手貸したげる

【言いくるめ】で(無理やり)解説したり
お相手さんを【挑発】したり

もし都合の悪い展開なってしもたら
【催眠術】で観客誤魔化して
猫ちゃんに手伝うてもろて【罠使い】でこっそり【だまし討ち】したりしてお手伝いしたるさかい
……ふふ


九十九曲・継宗
悪党に名乗る名は持ち合わせていません。
が、ここは貴方がたの流儀に合わせて、あえて名乗りましょう。
北星一心流(適当)後継者、九十九曲・継宗。
義によって、助太刀に参りました。

ここで大人しく引くならよし。
引かぬというなら、我が奥義でお相手いたしましょう。
一振りで、敵の刃を断ち、戦意を断ち、そして心の裡に潜む悪を断つ。
これが奥義、一振三断『悪滅』(という設定の剣刃一閃)
貴方のような相手に見せるのは、些か惜しい技です。

※ 時代劇の侍とかに憧れて滅茶苦茶ミーハーなので、ノリノリで名乗ったりします。
普段のちょっと大人びたところとか見る影もありません。



●かくて悪滅相成りて
「「「誰だっ!!」」」
 白昼堂々、無辜の民を取り囲み脅かす悪党どもがいた。
 そして兇漢達は、突如としてただならぬ気配を感じて振り返り叫んだのだ。
 伊達に武侠御免状と賜ってはいない。ひとかどの感知能はあると見えた。
「悪党に名乗る名は持ち合わせていません」
 びょう、と空っ風を引き連れて、やってきたのは奇妙な少年。
 赤茶の髪を三つ編みにまとめて流し、羽織を纏うはいかにも侍めく。
 されどその瞳と指先は、彼が人ならざる存在だと知らしめていた。
 ミレナリィドール。魂たりし人ならざる人のカタチの人形。
「が、ここはあなたがたの流儀に合わせて、敢えて名乗りましょう」
 オッドアイの人形少年は、しかし実は割とノッていた。
 普段なら記憶喪失なだけあって、見た目に反して大人びていたり、
 かっこよーくロケットスタートとか切って頸を落としたりするのだが、
 あいにく今は完全にミーハーだった。憧れの野球選手と会った少年みたいに。
(悪党に誰何されての名乗り。これぞまさしく侍の王道……!)
 ぐっとガッツポーズをしたくなるのを堪えていた。ここは大事な局面だ。
 さりげなく人目を盗んで練習した名乗り特訓の成果を、今こそ見せる時!

「私は、北星一心流……」
「悪辣卑劣な悪党を~」
「…………おほん。私は」
「嘆き哀しむ人々を~」
「……私は、北星一心流後継者――」
「糺す正義の光あり~。……こほん」
「遮るならせめて音は正しく取ってくれませんか……」
 うまい具合にかぶさってきた調子はずれな歌声にツッコまざるを得なかった。
 もう雰囲気もへったくれもないなか、てへぺろって感じの顔で黒猫少女が顔を出す。
「いやあ堪忍、堪忍な? ついついいたずらしたくなってもうて……あやや~」
「くっ、私の憧れの名乗りチャンスがこんなことに……」
 悔しさをぐっとこらえる少年に、小首をかしげる神威・くるる。
「なんや名乗りしたかったん? せやったらうちに任せとくれやす」
「えっ」
「あ~、おほんおほん~。こちらにおわすかたを~、どなたと心得る~」
 悪党どもはくるるな妙ちくりんな振る舞いに、すっかり毒気を抜かれてぽかんとしていた。
 顔を見合わせてどうしたもんかと話し合う兇漢ども。微妙~な空気が流れる。
「こちらにおかす方こそ誰であろう~……」
「…………」
「名前なんやったっけ?」
「九十九曲・継宗です。しかもそれ侍ではないですよ」
「てへぺろ☆」
 もはや完全に流れはぶっ壊されていた。

「……とにかく」
 だが、人形少年あらため継宗は決してへこたれない。
 咳払いをしてそれらしく雰囲気を仕切り直すと、ざっと流し目をくれてやる。
 いい感じに空っ風も吹いてくる。悪党どもは生唾を呑み込んだ!
「――北星一心流後継者、九十九曲・継宗。義によって、助太刀に参りました」
 キリッ。横でくるるがおお~とか拍手してるのは意識してスルーする。
 そこを相手にするとまた元の木阿弥である。侍ドールはへこたれないのだ。
「ここでおとなしく退くならばよし。退かぬというなら――」
 ちゃきり。愛刀"風魚"の鯉口を切る。身構える兇漢ども!
「わが奥義にて、お相手いたしましょう」
「奥義なんてあるん? すごいわ~、どないなのどないなの?」
「…………」
「ねえねえ、うち聞きたいどすえ~ほら、猫ちゃんたちも聞きたい言うとるし」
 いつのまにやら召喚された子猫の群れが、一斉ににゃーと鳴く。
 しばらく無言でスルーしていた継宗だが、やがてこらえきれずにちらりとそちらを見た。
「……知りたいのですか?」
「知りたい知りたい! うちに教えてくれへん~?」
「……おほん。ならば、いいでしょう」
 侍ドールは自作設定をひけらかしたくてしょうがないらしかった。
「わが刃は一振りで敵の刃を断ち、戦意を絶ち、そして心の裡に潜む悪を断つ」
「ふんふん。それでそれで?」
「これこそ我が奥義――その名も一振三断"悪滅"。です」
「あややぁ、よろしおすねぇ! かっこええしいかすやないの!」
 くるるが合図をすると猫達もこれみよがしに拍手をした。
 お世辞と分かっていても、そこはかとなくウキウキする継宗。
 悪党どもも、なんとなくやべーんじゃね? みたいな気配になっている!
「あなたのような相手に見せるのは些か惜しい技ですが――」
「「「ううっ!!」」」
「悪党はざーんって倒しはったほうがええんやないの?」
「……そうですね。せっかくですからね」
「「「えっ見逃してくれるとかじゃないの!?」」」
「問答無用! 奥義、悪滅――!!」
「「「グワーッ!?」」」
 哀れ! 悪党どもは載せられた継宗の刃で次々に倒れ伏す!
 なおなにやら大仰な設定が乗っかっているが、
 実際のところこれはただのユーベルコード"剣刃一閃"である。
 剣を振るうごとにくるるがそれっぽいオノマトペとかを(口で)挟み込むが、
 特になんか悪の心を断つとかそういう効果は一切ないらしかった。


「……これにて、一件落着」
 ちきん。納刀とともに最後のひとりが倒れ伏す。
 継宗はいい感じの角度で空を見てキメた。時代劇ならED入りするところだ!
「わーわー、ぱちぱちぱち~」
「……感無量、です」
 ぐっ。だがガッツポーズはこらえきれなかった。
(あややぁ、この解説とか驚き役するのやっぱ楽しおすなぁ。
 こういう載せやすい子だと余計にかいらしくて飽きへんわぁ~)
 にこにこと拍手しつつ、なかなか黒いことを考えているくるるであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆好きにしてください
◆終始呆れてはいます

…………
流派ってなんだよ…………

えーと……
じゃあいいよ、鳴宮流ってことで
立場とかいるの? じゃあ師範代とかでいいよ

……別に嘘ではないしな
そもそも俺に戦う術を教えたのは、
――いや、それはいいや

……民間人の前で殺しはまずいな
素手でやるか……しょうがない

【確定予測】で動きを読みながら立ち回る
出来るだけ気絶で済ませるのと、
なるべく派手な流血沙汰にならないように心がけるかな
人体の急所なんてだいたいわかるし

こういうの、できないわけじゃないんだよ
泥臭いのが好きじゃないってだけで
(あと、感触が手に残るのは嫌いだから、)

……まあ、こういう時くらいはいいけどさ


リア・ファル
【POW】
こういう手合いに遠慮はいらないよね!
それじゃ、ヌァザ、出番だよ!
(銀毛黒縞の猫が、腕を伝い魔剣と化す)

流派?流派か。オリジナルだし何かでっち上げないと…そうだ。

「遠からん者は音に聞け! 近けりゃ寄って目にも見よ!
ボクは『三界戦艦流、次元剣の使い手』、リア・ファル!
この銀の輝きを恐れぬのなら…纏めてかかってきなよ!」

UC【銀閃・次元斬】で、相手のエモノを受けるそばから叩き斬る!

「おっと、遠当ても披露しようか!」
遠方にいても空間干渉して斬っちゃおうか

リアルタイムで複数の相手の動きを情報収集・探査
動作モーションを演算して、最小の動きでカウンター!
お天道様に代わって、まとめて天誅!



●傭兵と電脳少女、いつもと少し違った邂逅
 ……呆れていた。鳴宮・匡は、心底から、マジで、呆れていた。
 なんか最近こういう案件が多くないだろうか。家族と話をしているだろうか?
「流派って、なんだよ……」
 鳴宮・匡は傭兵である。幼い頃から戦場で暮らしてきた。
 おかげで男子のロマンには理解がまったくないし、なんかこういうカートゥーンめいた文化もさっぱりピンと来ない。
 悲しい男である。そう、これは紛れもなくシリアスな話だ。
「…………ていうか、ホニャララ書房って、なんだよ……」
 シリアスな話なので、そこらへんを深く掘り下げてはいけない。

「って匡さんっ! ダメだよそんなんじゃっ!」
 そこへ突然ブォンっと虚空から現れたのは一人のバーチャルキャラクター。
 彼女の名はリア・ファル。匡とはビジネスパートナー的な関係にある。
 バーチャルキャラクターである。どこからどう見ても、電脳少女だ。はい。
「まあでもピンとこないのも無理はないのかなぁ? 仕方ないね。
 よし、じゃあボクが匡さんに、こういう時のお手本を見せてあげようっ!」
 などと、あどけない顔立ちのリアはお姉さんぶってみせたりする。
 呆れていた匡は、なんでそんな乗り気なんだよ、とか、
 そもそも別に手本なんて頼んだ覚えがないんだけど、とか、
 そういうツッコミはやめておくことにした。一度やるとキリがないので。
「……じゃあ、見せてもらうよ」
「うん、任せておいて!」
 くるっと振り向いた先、往来の向こうからやってくる悪党の一団あり。
 この通りは我らの者ぞとばかりに大きく横に広がる迷惑集団である!
「やあやあ、そこなうだつのあがらぬ悪党諸君!」
「「「あぁ!?」」」
 いい感じに食らいついたのを見て、満足げに頷きひとつ。
 そんな彼女の腕を伝い、銀毛黒縞の猫が魔剣へと変じる。
 リアはそれを、さながら御旗の如く雄々しく高々と掲げてみせた!
「遠からん者は音に聞け! 近けりゃ……近くば? 寄って、目にも見よ!
 ボクは……あー、えーとー……ヤバい、思いつかない……!?」
「……大丈夫かよ」
 匡の呆れ顔に、リアは持ち前の電子頭脳をフル回転させる。
 そして答えが出た! 気を取り直して剣を掲げ直す!
「ボクは『三界戦艦流、次元剣の使い手』リア・ファル!
 この銀の輝きを恐れぬのならば……まとめてかかってきなよっ!」
「なんだ、三界戦艦流って?」
(いいから! でっちあげなんだから細かいことは気にしないで!)
 ひそひそと匡に耳打ちするリア。ぽかんとした様子の悪党ども。
「むむ……先手必勝? こっちからやっちゃっていいのかな~?」
 にんまりと微笑んだリア、やおら魔剣で虚空をぶん、と横薙ぎに払う。
 するとどうだ、数十メートル先の悪党数人が斬撃を食らって吹き飛んだのだ!
「「「グワーッ!?」」」
「ああ、空間干渉か」
「これぞ三界戦艦流、遠当の術……って匡さん、だーかーらー!」
 そうじゃないんだって、などと熱弁を振るうリアめがけ、
 宣戦布告と受け取った悪党どもが雪崩を打って襲いかかってくる!
「おっとと、いけないいけない! まあとにかく、こういう感じだよ!」
「こういう感じって言われてもな……」
 腑に落ちない顔で頬をかく匡をよそに、戦端は開いてしまっている。
 リアは襲いかかってくるチンピラどもの動きをリアルタイム探査検索しながら、
 動作モーションを即時演算反映、未来予測めいて最小限の動きで回避する!

 反射的に愛銃を抜きかけた鳴宮だが、ふと周囲を見渡す。
 どうやら街の住人が、悪党どもを倒さんとする自分達を見物しているらしい。
(民間人の前で、殺しはまずいな……)
 しかし数が多い。ヘタな銃声は敵の増援を呼ぶ恐れがある。
 そして相手の得物はどれも白兵武器。となると選択肢は一つだ。
「素手でやるか……しょうがない」
「おおっ、匡さんすごい! それ大事だよー!」
 ひょいっと攻撃をかわして反撃を叩き込みつつ、リアがぱちぱち拍手をした。
 匡は相変わらずよくわからないという表情で首を傾げつつも、
「あー……えーと、じゃあいいよ。鳴宮流……って、ことで?」
「せっかくだしほら、伝承者とか後継者とかさ!」
「…………それいるのか? じゃあ、師範代で」
 ものすごく適当かつ大雑把であった。
 だがウソではない。何も流派として系統立てているわけではないが、
 彼に生存術と戦い方のイロハを仕込んだのは一人の人物であるゆえに。
 いまだ、自分が"あの人"を越えたなどというつもりはない。
 そもそも越えたとか越えていないとか、そういう話でもないのだが、
 とにかく彼女をないがしろにすることは、なんとなくためらわれた。
(――またか、こういうの)
 自分の内心の変化……と彼が捉えているかはさておき……に戸惑いを覚えつつ、
 匡は襲いかかってきたチンピラの腕を取り滑らかに関節を極める。
「あでででででで!?」
「よっと」
 ごきり。嫌な音がするとともに、チンピラは泡を吹いて気絶した。
 二人目。鋭敏な感覚能力で攻撃の予兆を感じ取り、斬撃を躱して懐へ。
 勢いを載せた掌底が下顎をチッとかすめると、一撃で兇漢は昏倒した。
「ワオ、すごいね匡さん!」
「こういうの出来ないわけじゃないんだよ。泥臭いのが好きじゃないのと、あとは」
 3人目。振り返りもせずに裏拳で視界を奪い、鳩尾に肘を入れながら思う。
 一撃ごとに伝わる生々しい手応え。振り払いようのない感触。
 弾丸が尽きた戦場で、草むらに隠れてひとりひとりナイフで刺殺した時などを思い出す。
(……嫌いなんだよな、これが)
「匡さん? 匡さん! 後ろ!」
「ああ」
 五人目。バックキックで股間を強打し、襟を掴んで背負い投げする。

 不思議なことに、感覚を思い出さされたのがこの大立ち回りであるのに、
 リアの小言を聞きながら悪党どもをちぎっては投げているとそれが薄れてくる。
「どう匡さん、なんとなくわかってきた!?」
「いや、全然」
「相変わらずだなー、とーう! 次元剣Zの字斬りーっ!!」
「いちいち叫ぶ必要ないだろ」
「そこが大事なんだよ、そこが!」
 何もまったくわからない。不合理だし呆れるばかりだ。
 ……しかし。こうして体を動かしていると、妙に余計な考えが払われていく。
(変だな。戦ってるのは同じはずなのに)
「お天道様に代わって、まとめて天誅だー!」
「「「グワーッ!!」」」
 楽しいと感じたことはない。だが今は厭な気分もしない。
 ならまあ、悪くはないか。匡は、ただそう思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
さぁさ、皆様方!刮目してご覧いただこう!

電脳世界を股にかけ!有象無象を討ち滅ぼす!
東西南北陸海空!あらゆる舞台に名を響かせ!
霞のように消えては、何も残さぬその男!
全ての主役が望んだ稀代の端役にして、舞台を支配する傾奇者!
我が名はヴィクティム・ウィンターミュート!

我が流派……『冬寂』の業、ご覧あれ

あ、こんなんでいい?アドリブにしては頑張ったな俺

名乗りと同時にUC展開。ステルス、背後に回り込んで【暗殺】
卑怯?姿を隠して卑劣?
馬鹿言っちゃぁいけねえよ、なぁ?

冬の静けさのように、誰にも知覚されず、全てを黙らせる
凍りついたことすら、気づかないで終わってしまうんだ
──故に、俺の技は冬寂の名を刻んでいるのさ



●卑怯卑劣と言わば言え
 ここは卑劣漢どもがたむろする、いくつもあるねぐらの一つ。
 もともとは人柄の良さで慕われた、老人が営む酒蔵である。
 だが今では、酒を目当てに転がり込んできた"武侠"どもの住処だ。
「だ、旦那がたぁ、もうこれ以上はご勘弁くだせぇ……」
「あぁ~? いいから酒を出せ! つってんだよっ!!」
「ひいいい!」
 平伏する老主人の顔の真横に、ずだん!! と脇差が突き刺さる。
 暴虐ここに極まれり。酒蔵の未来など悪漢どもが気にするはずもなし。
 ただ酒を好きなだけ飲めればそれでよいと奴らは云う。
 来年の仕込み? 知ったことか。秘蔵の銘酒? 全部飲ませろ!
 酒は人を虜にする。悪党ほど、その汚らしい本性を顕にさせるのだ。

(ほんと、酒とドラッグってのはどの世界も変わらねえな)
 酒屋の外まで届く怒鳴り声を耳に、少年は舌打ちして肩を竦めた。
 ジャンキーどもなど何人相手にしてきたか、味方としても敵としても。
 抗いがたい魔力に取り憑かれたものは、早晩心身を破壊されドロップアウトする。
(ああ、ああ、やめだ。こういうのは"らしく"ねえ)
 思考を切り替える。シケた考えはいかにもらしくない。
 蘇りかけた灰色のメガシティの光景をD&Dで消去して、少年は酒屋の扉を蹴り開けた。

「あぁ!?」
「誰だてめえ!」
「何の用だ!!」
 手前らの家でもなかろうに、悪漢どもは色めきだった。
 これみよがしに各々の得物に手をかけて、ぎらぎらと殺気を込めて睨みつける。
 一山いくらの徒党。少年にとっては見慣れたたぐいのクズの群れ。
 ゆえに彼は普段押し殺した恐れすらもなく、心からのニヒルな笑みで殺気に応える。
「こいつは失礼! だが旦那がた、どうか耳目を一寸拝借ってなあ」
「あぁ……?」
 ばさり! 少年は大仰に手を広げて注目を集める!
「さぁさ皆様がた! 刮目してご覧いただこうッ!」
 大胆不敵。不遜極まりない、ともすれば香具師じみた大音声である。
 こういうハッタリに関して彼は秀でている。むしろ本懐と言ってもいい。
 これで生き延びてきた。これで今までやってきたのだから。
「電脳世界を股に掛け! 有象無象を討ち滅ぼす!
 東西南北陸海空! あらゆる舞台に名を響かせ!
 霞のように消えては、何も残さぬその男!」
 それでいい。それが当然。それでこそ己だと彼は思う。
 そうあることが望みだし、そうあらねばならぬと己に決めている。
「全ての主役が望んだ稀代の端役にして、舞台を支配する傾奇者!
 ――我が名は、ヴィクティム・ウィンターミュート!」
 さながらショーマンめいて口上を終えれば、慇懃に一礼などしてみせる。
 あっけにとられた悪党どもを前にして、片眉を吊り上げ小首を傾げた。
「つまりだな。俺ぁあんたらに挑戦を仕掛けに来たってわけだ。
 わかるか? それともあれか、もうちっと噛み砕いて言ったほうがいいか?」
 口元に皮肉な笑み。あからさまな嘲りを込めて見下ろしてやる。
「お前らのクソ生っちょろいプライドをへし折りにきてやったのさ。
 ゴメンジョーをお持ちの、卑怯で卑劣でビビりな皆々様?」

 ――この小僧は、俺達を馬鹿にしている。
 いくら頭の血の巡りが悪い兇漢どもでも、それはたしかに理解できた。
「このガキ、ふざけやがってッ!!」
「ろくに戦えなさそうな面ぁしやがってよ!」
「吐いた唾呑ませてやるぜ!!」
 どたどたと剣を鞘走らせ、顔を真っ赤に茹で蛸めいてやってくるお馬鹿ども。
「ああ、そうそう。流派も名乗っといたほうがいいんだっけか――」
 ヴィクティムは慌てない。それはArseneのスタイルではないのだ。
「"冬寂"の業、見えるならとくとご覧あれ」
 そして、その小憎たらしい皮肉の笑みが、かき消えた。
「……き、消えた!?」
「違う、気配はあるぞ!」
「野郎、術かなんかか!? 何が卑怯卑劣だこの野郎!」
 どこだ、どこにいる。悪党どもは四方八方に目を凝らす。
(――おいおい、馬鹿言っちゃいけねえよ、なあ旦那がた?)
 背後。ステルス状態となったランナーがそこにいる。
 大仰に名前を叫ぶだの、闘気を込めて振り上げるだの、そんなものは要らない。
 それは主役の仕事だ。目立って、悪党どもをやっつけるのが仕事の連中の。
 自分は端役。そんな彼らの道筋を整えて、大団円に導いてやる裏方役。
 そういう奴はどうやって役目を果たす? ――こうやってしまえばいい。
「……ぉぐっ」
「おい、どうした? お……ひいっ!?」
 どさり。呻き声をあげた男はすでに死んでいた。
 血が流れることもない。だが一撃で絶命したとわかる傷跡が急所にある。
「なっ、いつのまに!?」
「待て、固まって注意をしぉぼっ」
 二人。三人。四人、五人――。断末魔すらもなく。
 やがてすべての外道が倒れ、震える老主人の前にジジ、とノイズが走る。
 クロークのステルス機能を解除して、優男が再び現れた。
「あ、あんた、あんた……し、死神か……!?」
「死神? そりゃチルなジョークだな、ご主人よ」
 鼻で笑い、ヴィクティムは嘯く。
「冬の静けさのように、誰にも知覚されず、全てを黙らせる。
 凍りついたことすら気づかないまま、全ては終わっちまうんだ」
 ゆえに冬寂(ウィンターミュート)。ガラス片は獲物を逃さない。
 端役の仕事はこれで終わり。怯える老主人に手を振って、姿なき暗殺者は再び虚空へ消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

奇鳥・カイト
鷹狩りな──ま、気持ちよくはねぇな
胸くそ悪ィわ

流派とかよくわからんので任せる事にする
母親がなんかそれっぽい家系だった気がするが、忘れたのでどうでもいい

さてまあ、他の奴らの戦いっぷりを見とくとすっか

流派とかわかんねーが、まあ色々あるもんだな
なんでそんなたくさんあんのかね、面倒くせえや

へー、まあまあやるもんだな
まあ、なんだ。スゲーかもしれねぇけど、あの程度なら俺にも出来るし?
楽勝よ。多分、きっと、もしかすると



それっぽい解説をそれっぽく言います
見栄っ張りいじっぱりぶっきらぼうなので簡単には褒めません
センスだけはあるので見たままの事で利点とか察します、多分
【アドリブ可、好きに使ってください】


千桜・エリシャ
なんだか楽しそうなノリですわね
とは言えか弱い女性に手を出す輩は許せません
花の正しい愛で方を教えて差し上げねばなりませんわね…

ごきげんよう
私は夜桜傾国流、最後の後継者
千桜エリシャと申します
どうぞ、よろしくお見知りおきを
桜花を散らしてぱっちりウィンク

あら?か弱い女だと油断しました?
ならば上々、それも私の奥義の渦中
くるり、ふわりと見切りで花弁のように攻撃を躱してみせましょう
それはまさに春の夜の夢
夜桜の妖しさで惑わして敵の得物の上に降り立ち挑発などしてみましょうか
ではそろそろ本領発揮――美しい花には必ず棘があるものですから
呪詛乗せた二回攻撃で切り刻んで差し上げましょう
女の敵にはそれに相応しい制裁をね?



●綺麗な薔薇には棘がある、と云うのなら
 この手の兇漢どもは、こぞって女子供を手篭めにしたがるものだ。
 単順にいたぶるもの、筆舌に尽くしがたい狼藉を働く者、
 あるいはより残忍な愉悦のために使い捨てる者――どれもろくでもない。
 そして今ここでは、まさにそういう狂った数寄物が暴虐を振るっている。
「お、お待ち下さい! たしかに税は納めたはずでございます!」
「も、もう私どもは、三日も何も食べておりませぬ!」
 頬のこけた両親が、地面に土下座して何度も叩頭する。
 それを見下ろすのは、うんざりするほどの血の臭いを纏った痩せた男である。
 そして脇腹に抱えているのは、誰であろう……跪く二人の実の子供。
 年頃は7か8つか、まだ女童と呼ぶべきあどけない幼子であった。
「知らん。己(おれ)の気分が変わった。それだけだ」
「ご、ご無体な! ああどうか、どうかその子だけは……あぐっ!!」
「ああっ! あんた、大丈夫かい? あんたっ!」
 足蹴にされた夫をかばい、妻は泣きながら体を揺する。
 この兇漢、またの名を"肉斬り"半左衛門と呼ばれた札付きの悪党である。
 二つ名がいかなるものか? この場において詳細に記す必要はあるまい。
 戯れで人を斬らずにはいられない――特に肉の"柔らかな"女子供を――そういう輩だ。

 泣き叫ぶ両親を無視し、半左衛門はその場を後にしようとする。
 ……だがそんな奴の前に、いつのまにか二人の人影が佇んでいた。
「せっかく楽しそうなノリですのに、こんな輩もおりますのね」
「どこも変わりゃしねーな、胸糞悪ィ」
 一方は胡蝶と桜花を纏う、年頃定かならぬ羅刹の女。千桜・エリシャ。
 その傍らで毒づいて吐き捨てるのは、生意気そうな少年。奇鳥・カイト。
 共に、見知った仲である。肩を並べて戦った経験も一度二度ではあるまい。
「ま、俺流派とかよくわかんねーし。女将に任せるぜ」
「あら、いいんですの? ええ、では――」
 などと会話をして、エリシャがざすり、と淑やかに一歩進み出る。
 ひらひらと胡蝶を伴に唐傘を開いたさまは、この世ならぬ気配がある。
「ごきげんよう。私は夜桜傾国流が最後の後継者、千桜・エリシャと申します」
「……何用だ」
 うっそりとした声に、女主人はにこりと艶やかに微笑んだ。
 ぱっちりと片目を閉じてウィンクなどをばしてみる様は、年頃らしい茶目っ気がある。
 問題は、相手がその手の洒落を解さぬ外道であるということだが。
「つれない方ですのね。まあ、いいでしょう」
 流派を示し、己の名を名乗った。つまりはそういうことだ。
 半左衛門が、懐から御免状を取り出してみせる。エリシャの笑みが深まる。

 ……だが実のところ、嗤いたいのは半左衛門のほうだった。
 女だ。それも特上の、柔らかそうで切り応えのありそうな女。
 こんな一山いくらの餓鬼などどうでもいい。"これ"を斬ってしまいたい。
「殺されても文句は云えぬぞ」
 抱えていた子供を放り捨て(こちらはカイトが素早い糸捌きで受け止めてやった)、肉斬り包丁めいたいびつな刀を構えて舌なめずりする。
 どろりと周囲の空気が濁る。両者の殺気がぶつかり合う気配である。
「女は、好きでな」
「あら――どうして?」
「手応えが、いいのだ。血を抜くと、雪のように白くなるのも、よい」
 にたり。気色の悪い笑みに、昏倒した幼子を抱えたカイトは顔をしかめる。
 エリシャはあるかなしかの笑みを浮かべたまま不動。
「こんな奴にもばらまいてんのかよ、御免状とかいうやつ。
 なんでそんなたくさんあっちこっちばらまいてんだか、面倒くせぇや」
 カイトはひとりごちながらも、ちらりと両者を見比べる。
 言うまでもなくエリシャは達人だ。分は完全にあちらにある。
 だがもしも、呪いが思った以上に彼女を絡め取っていたとしたら?
 死ぬことはないにせよ、あの下卑た刃が肌を、肉を裂く可能性は……。
「……チッ」
 どうやら"らしい"振る舞いはしなければならないらしい。
 しかし、エリシャはやはり不動である。

 そこへ、半左衛門が襲いかかった。
 亡霊じみた、あるいは幽鬼じみた不気味な足運びである。
 気がつけばその姿は眼前。近づいてみれば想像以上の巨体!
「おい女将、さっさとなんでもいいから技とか使えよ!」
「あら、カイトさん。それは勿体無いですわ?」
 ふわり。くるり。
 まるで舞い散る桜花のように、緩やかに見えてしかし疾い足運びで、
 エリシャは急所を狙う太刀筋をかいくぐってしまう。
「もったいないって……あー、んん?」
 片眉を吊り上げて目を凝らす。カイトの目からみてもエリシャの動きは不可思議だ。
 いや、動きそのものではない。見ていると妙にぼんやりとしてくるような……。
「……あー、もしかしてもう"始まってる"……のか?」
 半左衛門はエリシャを捉えきれぬ。
 それどころか、一撃ごとに徐々に刃はキレを失っていく。
 遅く、鈍く、温く。ついにはのたのたと億劫そうな太刀筋にすら。
 ふわり――エリシャの体が重みなどないかのように浮かび上がり、
 肉切り包丁めいた獲物の上に、音もなく降り立った。
 半ば夢遊病患者めいた面持ちで、半左衛門がその妖しの姿を見上げる。
「夜桜の魔性、御覧くださりまして?」
 "傾国宵桜(コノハナ・テンプテーション)"。それがこの技の銘だ。
 一挙一動の全てと目線や声音の全てを使い、対手を誘惑する妖しの技。
 カイトをして囚われかねぬほど、その誘惑の位階や夢魔めいて際立っている。
「……あー」
 減らず口を叩きかけたカイトだが、ぐっと帽子を被り直した。
「ありゃ別に、俺は出来なくてもいいや。いやま、真似できないっつーか……。
 ……うん、まあ少しはスゲーんじゃね。ちょっとな、ちょっぴりだけどな」
 もごもごと素直らしからぬ言葉を漏らす少年に、にこりと微笑んで。
「さて」
 いつのまにやら刃を佩いていたエリシャの刀身が、鈍く輝く。
「綺麗な薔薇には棘があると申しますけれど」
 半左衛門は避けられない。避けようとすらしない。
「桜花の下には何が眠るかご存知でして?」
 くすり――艶笑が奴の心を捉えて離さない。
 だが頭は冷えていた。冷えた頭で、誰にも聴こえぬ悲鳴を上げていた。
「女の敵には、相応しい剣戟(おわり)を差し上げましょう――」
 剣閃ふたつ。追って吹き荒ぶ剣風は幾重にも。
 肉の魔性に酔いしれた外道は、いかにもらしい最期を迎えることとなる。
「――ああ、物足りない」
 女は、うっそりと嘯いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハル・ウロハラ
※ウェンディちゃんと!

やーやーわれこそは美墨流…あっ

(美墨の名前出しちゃうとハルが超注目されちゃって美墨流は最強ってどかーん轟いちゃって
よーちゃんに勝手に冒険してるのバレるのはまだいいんだけど
そうすると流れ流れておかーさんの耳に入るでしょ?
それはヤバい!超困ります!)(高速思考)

ウェンディちゃん
入門していい? ハル今サーッと入門していいかな?
よぉし!ロックビル流!!いえい!!

ウェンディちゃんダンスに見惚れてていいのかなっ!?
ハルのキックは地を砕く!(びしっ!)
必殺っ!(天高く舞い上がる)
地裂龍蹴撃!!!
(説明しようっ!
半分ドワーフの血が流れるハルは「地裂斬」的なアレがこう! ねっ!)


ウェンディ・ロックビル
※ハルちゃん(f03051)と!
おっけーハルちゃん!僕らは一緒にしゅぎょーに明け暮れた中!にゅーもんを許可しましょー!
ロックビル流しはん!ウェンディ!いくぜっ!

説明しよー!ロックビル流とは!「〜〜流とかいって小難しいこと考えるよりとにかく自分の脚を信じて蹴り飛ばせばなんとかなる!」を信条としたりゅーはである!!
自分のキックに自信があればあるほどその威力はますのです!多分!

とゆーわけで今日の僕らはさいきょーです!なぜなら!大親友の僕らがタッグを組めば敵なんていないからです!!

最・速・乱・舞!
僕のダンスに見惚れてちゃ、ダメだぜ!
(ダンスで敵を誘導して)
今だぜ、ハルちゃん!ゆーじょー必殺技!



●細けえこたあいいんだよ
 いまやこの地に悪党はびこること雨後の筍のごとし。
 見よ! 往来という往来を闊歩し、通りに面した家々の戸を蹴破る悪漢ども!
 おそらくはどこぞの山野に身を隠していたであろう、数十人以上の無法者だ!
「なんてこった! ウェンディちゃん、ここはかっこよくキメるタイミングでは!?」
 颯爽と駆けつけたハル・ウロハラは、幼馴染に問いかけた。
「そうだね! まさに僕らの出番だよハルちゃん!」
 と、ハルの幼馴染であるウェンディ・ロックビルも元気に頷く。
 どうやらこいつら、こんなうだつのあがらぬ割に免状持ちであるらしい。
 となれば意気揚々と名乗りをあげて蹴散らすのみだ!
「やーやー、われこそは美墨流……あっ」
 そのとき、ハルは考えた。ものすごい勢いで普段使ってない脳みそが高速回転した。
(美墨の名前出しちゃうとハルが超注目されちゃって美墨流は最強ってどかーん轟いちゃってよーちゃんに勝手に冒険してるのバレるのはまだいいんだけどそうすると流れ流れておかーさんの耳に入るでしょそれはヤバい超困ります!!)
 現実の時間にしてコンマゼロ秒にすら満たないレベルの超高速思考であった。
 なにせハルは家出中の身である。名前が轟くのは非常にまずい。
 なお、大活躍して超注目されることは彼女の中で確定事項であるし、
 ついでにいうと家の名前がどかーん(擬音語)と轟くのも確定事項である。
 ……さすがにそこまで広まることはないのでは? みたいなツッコミは無用だ。
 ハルがそうだと言ったらそうなのだ。そういうことになった! まずい!!
「ウェンディちゃん!!」
「どうしたのハルちゃん!?」
「入門していい? ハル今サーッと入門していいかな?」
 著しく主語を欠いた、素晴らしく混乱を催す会話であった。
 ハルはドラゴニアンである。だが多分にお味噌が足りてない感じがあった。
「おっけーハルちゃん!!」
 しかしウェンディはハルの幼馴染である。色んな意味でツーカーなのだ!
 なのでだいたい言いたいことはわかった。そんな馬鹿な。
「僕らは一緒にしゅぎょーに明け暮れた仲! にゅーもんを許可しましょー!」
「よぉしハルはこうしてロックビル流のめんきょかいでんになりましたいぇい!!」
 入門から皆伝までがスピーディすぎやしないだろうか。

「なんだ、あの小娘どもは!?」
「どっから現れやがった!」
 突如としてなんかこう櫓とか高いとこに現れた二人に驚くチンピラども。
「めんきょかいでんのハルです!!」
「ロックビル流しはんのウェンディだよ!!」
「「「ロックビル流……!?」」」
 さすがの兇漢どもも、唖然とせざるを得ない流派の名前であった。
 流派らしさが欠片もないからである。ウェンディは自慢げに胸を張る!
「説明しよー! ロックビル流とは!!」
 ごくり。誰もが息を呑む。ハルも息を呑む。免許皆伝なのに。
「なんとか流とかいって小難しいこと考えるよりとにかく自分の足を信じて蹴り飛ばせばなんとかなる!
 ……を、信条としたりゅーはである!! 自信があればあるほどキックの威力は増すのです!」
「ほんとに!?」
「多分!!」
「そっか!!」
 ハルは納得した。悪党の皆さんはあまりにもストレートすぎる思考回路に恐怖した。

「とゆーわけで! 今日の僕らはさいきょーなのだよハルちゃん!」
「大親友のハル達がタッグを組んだら敵なんていないからね!!」
 がしぃ! ふたりは力強く腕をクロスさせ、そしてまずウェンディが飛び降りる!
「さあ行くぜー! ロックビルりゅー、最・速・乱・舞!!」
「「「うおおおおっ!?」」」
 その瞬間、往来に竜巻が生まれた。……否、竜巻の如きファストステップだ!
 上下左右の区別なく空間という空間を使った縦横無尽のバトルダンスは、
 立ちはだかる敵をなぎ倒し逃げ惑う悪党どもを一箇所へと追いやる。
 誰も追いつけるはずがない。なぜならばその舞は三十六界最速なのだ!
「「「う、美しい……!!」」」
「さあさあ、僕のダンスに見とれてちゃ、ダメだぜー?」
「「「はっ!?」」」
 そこで奴らは気がついた。己らを見下ろす少女の影に!
「いまだぜ、ハルちゃん! ゆーじょー必殺技だー!」
「おっけーウェンディちゃん! ハルのキックは地を砕く!!」
 びしぃ! 自作のかっこいいポーズを取るハル。
 ウェンディ流は自分と仲間を信じる心が力になる流派……!
 特にそんな設定は今までなかったのだが、今言いだしたのでそういうことになった。
 そしてさらに天高く飛び上がるハル!
「必殺っ!! 地裂っ龍蹴撃ーーーっ!!!!」
 普段の二倍の高さからの跳躍! さらに通常の三倍の回転!
 そしてウェンディとの友情でもはや無限大の必殺飛び蹴りパワーだ!
 あとなんか地裂斬的ななんかそういうアースでクエイクなパワーもある。
 そういうことになった。なったので炸裂即ドカーン!!
「「「グワーーーーーーーッ!?」」」
 もうもうと土煙が立ち込め、悪党どもは山と積み上がり昏倒する。
「「やったぜだいしょーり!!」」
 ハイテンションガールズはハイタッチして勝利を喜んだ。向かうところ敵なしだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネロ・バロック
シオン(f09324)と協力参加するぜ

こいつは気持ち良い位の悪党どもだ
ぶっ飛ばすのに手加減はいらねェな!

今までは力任せに剣を振ってきたけどよ
力で我を通すために磨いた技だ
だから俺の流派はあえて言うなら――「唯我独尊流!」

「オラァ!薄汚ねェ悪党共!
お前らも今日が年貢の納め時だぜ。
俺は唯我独尊流免許皆伝のネロ様だァ!
ついでにこいつはツレのシオン!
この大剣のサビにしてやらァ!」

と派手に名乗って剣を振り回しながら敵に突っ込んでいくぜ!
必殺技は唯我独尊斬り(いわゆる羅刹旋風)だ!

唯我独尊流は独自の型は無く、状況に応じて本能で剣を振るい
膂力と気迫で相手を制圧する殺人剣だぜ!


シオン・ミウル
ネロ(f02187)と

悪党共を強化する御免状とか
ふざけた話だよな
まあネロが思いっきり暴れられるんなら
細かいことはどーでもいいんだけどね

俺は後ろの方で応援してよっと

いいぞー!ネロ!
唯我独尊流の真髄、見せてやれ!
えーっと、解説するといいんだっけか
唯我独尊流は独自の型はなく……え、それ自分で言っちゃう?
俺の出番なくなっちゃうんだけどな

ま、いっか
もうちょっと追加しておこ

唯我独尊流はネロの正義の心(笑)に比例して
敵の身体を蝕む呪詛の力が増すんだぜ
一太刀浴びれば肉は爛れ骨は腐り
見るも無残な腐乱体に成り果てる
それが唯我独尊斬り
お前達、腐り落ちる覚悟できてる?



●天上天下
 右を見ても左を見ても、御免状を笠に着て傲慢に振る舞う悪漢だらけ。
 もはや荒野のほうがまだマシかもしれない。今のこの地はそういう場所だ。
「いいねぇ、こいつは気持ち良いくらいの悪党どもだ」
 猟犬じみた仄暗く鋭い三白眼が、ギロリと通り一面を睥睨する。
 彼の名はネロ・バロック。野卑にして凶暴、されど強かなる藍色の羅刹。
「あっちばっか強化する御免状とかふざけた話だよ。あ、俺は後ろで応援してるね」
 と、ひらひら手を振って踵を返したのはシオン・ミウルである。
 ネロとは悪友というべき関係にあるが、今回は見に徹する構えのようだ。
「あぁ? まあ手加減なしにぶっ飛ばすつもりだからいいけどよ」
「でしょ? 俺もネロが思いっきり暴れられるんなら、それでいいのさ」
 にこりと微笑むシオンに、ネロはにやりと笑って応える。
 そして凶暴な眼差しは、突然の不遜な若者に殺気立つ悪党どもへと巡るのだ。
「誰が誰をぶっ飛ばすってんだぁ坊主?」
「偉そうな口叩きやがって、ちっこいくせによぉ!」
 呪いの力を得た悪漢どもが、誰かを恐れることなど滅多にない。
 無造作にネロに近寄り襟首を掴もうと……した瞬間、そいつの腕が飛んだ。
「げえっ!?」
 そして乱暴な前蹴りを喰らい、ごろごろと地面を転がる!
 いつのまにやら、ネロの手には無骨な黒の大剣が一振り。
「オラァ薄汚ェ悪党ども! 今日がお前らの年貢の納め時ってやつだぜ!!」
「「「な、なんだこいつ!?」」」
 ガツンッ! 大剣が地面を抉り、土埃が大きく舞い上がる。
 ギラギラとした殺意の笑みを浮かべるネロと、そのさまを楽しげに見守るシオン。
「俺かァ? 俺は――そうさな……唯我独尊流免許皆伝のネロ様だァ!」
 これまで、ネロは技も術もなく力任せに魔剣を振るってきた。
 いわば力で己を、我を通すための剣。技はそのためにある付属品に過ぎない。
「だから唯我独尊流、ね。あははっ、ネロらしいや」
 くすくすと、赤い瞳を楽しげに綻ばせて微笑むシオン。
 悪党が震え上がるさまも心地いいが、なによりも悪友のあの豪放磊落ぶりが好ましい。
「いいぞーネロ! 唯我独尊流の真髄、見せてやれー!」
 なので、こうして外野の立場で勝手な声援を気楽に送ったりする。
 言うまでもなくすべてでっちあげなのだが、この場においてはノリが重要だ。

「さァて行くぜェ、全員この大剣の錆びにしてやらァ!!」
 名無しの魔剣をぐるんぐるんと膂力に任せて縦横無尽に振り回し、
 派手な名乗りと共に真っ直ぐに突撃するネロ。敵は大いに震え上がる。
 悪党どもは本当ならば、ネロを先制攻撃してその勢いを削ぐべきだった。
 羅刹であるネロにああして武器を振り回すような隙を与えるのは悪手である。
 しかし、この刃の如き凄絶な戦意を前にして、我先に挑めるような者が早々居ようか?
 否である。仮にいたとしても、そんな輩が一山いくらの悪党であるはずはない。
「「「ひぃいいいっ!!」」」
「オラオラどうしたァ、さっきまでの威勢はよォ!?」
 ゆえに悪党どもは恐れをなして悲鳴を上げ、ネロは呵々大笑した。
 近くにいた敵を片っ端から膾切りに……いや、大剣で吹き飛ばしていく。
 あまりにも破壊力が高すぎるために、地形ごとぶった切られる有り様だ。
「おーすごいすごい、さすがは唯我独尊流! ……っていつも通りすぎない?」
 見物していたシオンは苦笑しつつ、それっぽくデコレートしてみることにした。
「あー、つまり唯我独尊流にこれといった独自の型はなく~……」
「状況に応じて本能で剣を振るい、力と気迫で相手を制圧する殺人剣なんだよォ!」
「えっ、それ自分で言っちゃうの!?」
 速くもシオンの仕事がなくなってしまった! ネロは聞く耳持たない!
 悪魔じみた哄笑をあげながら、まさに悪党どもをちぎっては投げている。
「あー、まあ楽しそうだからいいけどさあ、俺が暇になっちゃうじゃん」
 どうしよっかなーと唇を尖らせていたシオンは、なにか思いついたらしい。
 それというのも、新たな兇漢どもが数人、シオンの背後を囲んでいたからである。
「この餓鬼、偉そうにのんびりこきやがって!」
「てめえからぶっ殺してやる!!」
 といった様子の連中を見やり、シオンはこう言った。
「なんにもしてない俺を攻撃するの? やめといたほうがいいけどなぁ。
 唯我独尊流は、ネロの正義の心(ここでシオンは噴き出した)に比例して、
 敵の体を蝕む呪詛の力が増していくんだぜ?」
 言うまでもなく(特に正義どうこうのあたりが)嘘っぱちなのだが、
 シオンの放つただならぬ気配と威圧感に、悪党どもは信じ込まざるを得ない。
「一太刀浴びれば肉は爛れ骨は鎖、見るも無残な腐乱死体に成り果てる。
 ――お前ら、腐り落ちる覚悟は出来てるの?」
「「「うう……!?」」」
 そしてそこで、一通り敵を蹴散らしたネロがぎらりと振り向いた。
「ほォ……食らってみるかァ? 唯我独尊斬りをよォ!!」
 悪党どもは逃げ出そうとした。だが選択肢などはじめから存在しない。
 猟犬は笑みを浮かべて襲いかかり、オラトリオの少年はそれを見下ろし笑い転げた次第である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミハエラ・ジェシンスカ
流派を名乗れだと?
よくわからんな、まじないというヤツは
だがまあ良いだろう
ウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカ
ご覧に入れよう、我が帝国式剣術(インペリアル・ブレイドアーツ)を
帝国式剣術こそは護国の要たる帝国騎士が振るう守りの剣
我が間合い、我らが領土、そう簡単に侵せるとは思わない事だ



嘘だがな
そもそも銀河帝国は侵略国家の類いだ
ここが他世界でなければ冗談にもならん

フォースセイバーを一振りだけ構えて【武器受け】の態勢を取り
敢えて僅かな隙を見せる事で敵に打ち込ませる
そこに【カウンター】【だまし討ち】【邪剣開帳】

我が剣などは一度種が割れればその価値を失う手妻の如きもの
ただの邪剣よ



●隠し剣ここにあり
 ミハエラ・ジェシンスカは剣士である。
 剣士ではあるが、その前にウォーマシンである。
 ゆえに彼女は、此度の"ルール"に大いに疑問と困惑を抱いた。
「よくわからんな、まじないというヤツは……」
 流派を名乗り挑むなど、何の合理性もないではないか。
 ともあれそれが効率につながるなら、拒否する余地はない。
「あん? 誰だぁてめえ……?」
 そんなミハエラが対峙したのは、背中に二本の刀を背負う凶暴な顔立ちの男である。
 この男、武芸者の間では"四ツ腕"大十郎という名で知られている。
 本当に腕が四つも生えているわけではない。
 二刀流を凄まじい速度で振り回し、まるで四つも腕があるかのごとく、
 上下左右から縦横無尽の攻撃することからついたあだ名である。
 達人だが、ご覧の通り正道から外れた無法者なのだ。
「武侠御免状の持ち主と見た。私と立ち合ってもらおう」
 一方的なミハエラの言葉に、しかし大十郎はにぃい、と笑みを浮かべた。
「面白ェ……"四ツ腕"の名の意味を教えてやろうじゃあねえか」
 そして、周囲の空気が一気に張り詰める。
「ウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカ。流派は――」
 短い思案の気配。
「……帝国式剣術(インペリアル・ブレイドアーツ)、とでも名乗っておくか」
「ほぉ? ずいぶん御大層なお名前じゃあねえか」
 大十郎には嘲弄の笑みがあった。いかにもなお座敷剣法だと見くびっているのだ。
 ミハエラはそれを意に介さない。
「帝国式剣術こそは、護国の要たる帝国騎士が振るう守りの剣。
 我が間合いはすなわち我らの領土。そう簡単に侵せるとは思わないことだ」
 怜悧な声音の裏で、ミハエラは自らの言葉を皮肉る。
(――もちろん、すべてウソだがな)
 然り。ミハエラはスペースシップワールド出身である。
 帝国とはすなわち銀河帝国であり、すでに滅びた侵略国家だ。
 このサムライエンパイアだからこそ皮肉として成立するが、元の世界では冗談にすらならないだろう。
 だが、この時点からすでにミハエラの戦術は始まっているのである。
 大十郎はまんまと策にかかり、ミハエラを侮りきっている。
 彼女はフォースセイバーをあえて一振りだけ構えた。
 しかも攻めの手ではなく、受け太刀。つまり守りの姿勢である。
 さらにその構えのなかにも、あえて打ち込みやすい隙を残している。
 言葉と、構えと、そして餌。巧妙に張られた三重の罠だ。
 たとえどれか一つを見破っても、全てを見切ることは容易くない。
 悪の道に堕ちた大十郎であればなおさらのこと。奴はその隙に舌なめずりした。
「ケケッ! お座敷剣法破りたりィーッ!!」
 疾い! 四ツ腕の名に恥じぬ苛烈にして怒涛の連続斬り!
 その意識はフォースセイバーの鋒に向いていた――ゆえに、奴は見落とした。
「――え?」
 己の腹部を深々と貫く、ありえないはずの角度から突き出された刃を。
「な……ッ」
「貴様の剣、さぞかし多くの血と修練を経て築いた技なのだろうな」
 ミハエラは酷薄な声で言った。胴体から展開した隠し腕。隠し剣。
「我が剣など、一度種が割れればその価値を見失い手妻の如きもの。
 拝む価値もない邪道の剣だ――知ったことを後悔しながら死んでいけ」
「……て、てめえ……」
 ごぼり、と血を吐き、外道は地に伏す。
 弱肉強食。半端な悪では、真の邪道に勝てはしないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
武術は修めてるけど、別に流派名とかないんだけど。
竜を相手に名乗りを上げるとか想定してないからね。 
うん、仕方ないね!
ここはてきとーに名乗っておくっぽい。
竜殺闘法鬼燈派、ってね。
お仕事前に茶屋で一休みするのです。
ここ、茶屋娘が美人さんでお団子も美味しいとか。
…事件が起こるよね、きっと。
まぁ、その時はその時です。
今はお茶と団子を楽しむとき。
なんて言ってるそばからこれですか。
わかりやすい悪行、斬ってもいいよね。
めんどくさそーに名乗りを上げて戦闘開始。
いきなり剣嵐舞踏を発動してすべて斬り捨てるっぽい。
この程度の相手なら物を壊すこともない完璧な仕事だね。
あっ…血の匂いが!
これじゃお茶も台無しっぽい。



●屠龍の戦士
「ふ~……」
 こんな状況でも、安息の地というものは存在する。
 露木・鬼燈が一休みするこの茶屋などがまさにその一例だ。
 町外れにからなのか、はたまた悪漢同士のパワーバランスによって台風の目にあるのか。
 いずれにせよ、鬼燈はのんびりとお茶とお団子を楽しんでいた……。

 そう、"いた"のである。
「あっ……! あ、あのお兄さん、お代は結構ですから、どうぞお引取りくださいまし」
「え? 急にどうしたの?」
 看板娘の突然の言葉に、最後のお団子を食べようとしていた鬼燈はきょとんとする。
 だが対する娘のほうは青い顔だ。そして鬼燈を追い払うと云うよりは、
 彼の身を案じてこんなことを言っているらしい。
「は、はやく! ここにいらっしゃったらお兄さんが危のうございます!」
「おいおい、まるで邪魔者が来るような口ぶりじゃあねえか、ええ?」
「ひい!」
 怯える看板娘の手首を掴み上げる、厳しい面の男連中数人!
 なるほど、彼女はこいつらの姿を遠くに見て、鬼燈を巻き込むまいとしたようだ。
「いけねえなあお嬢ちゃん、俺らは大事なお客様だぜ?」
「団子を食いに来ただけなのになぁ、こりゃあどうしたもんかね!」
「ご、ご勘弁ください、どうか……っ」
 震える看板娘を片手で持ち上げ、悪党どもは下卑た笑みを浮かべる。
 はたして彼女はどうなってしまうのか。誰も助ける者はいないというのか!?
「はあ~」
「あん? なんだてめえ、まだいたのか。さっさと消えな!」
 めんどくさそうにため息をついた鬼燈は、兇漢どもの罵詈雑言を無視して立ち上がる。
「せっかく美味しいお団子を楽しんでたのに、これじゃ気分台無しっぽい」
「何をぶつぶつ言って……ぶげっ!?」
 睨みを効かせた悪党は、鼻骨を砕かれごろごろと地面をのたうち回る!
 鬼燈が手に持つのは奇っ怪な連結刃。その柄で鼻を砕いたのだ。
「て、てめえ!?」
「僕の想定してる相手はあくまで龍なんだけどなあ」
 言いつつ、鬼燈はその場しのぎの流派名を名乗ることにした。
「龍殺殺法鬼燈派、ってとこっぽい? 人の楽しみを邪魔した報い、受けてもらおうか!」
 疾い! 片手が霞んだ瞬間、すでに斬撃は無数に放たれていた!
 悪党どもが斬りかかるより早く、竜巻めいた斬撃が敵を吹き飛ばす。
 無論、茶屋や娘に被害は一切ない。これぞ秘剣、"剣嵐舞踏"である!
「「「ぎゃああああーっ!!」」」
「はい、お仕事完了っと!」
 一瞬で悪党どもを蹴散らした鬼燈は、しかし団子を食べようとして肩を落とした。
 どれほど華麗に仕留めたところで、血の匂いがあっては茶を楽しむどころではない。
「はあ~、台無しっぽい。仕方ない、全部片付けてからまた来ますね!」
「え、ええっ?」
「それじゃ!」
 呆然とする看板娘にお代を渡すと、鬼燈は一瞬のうちに姿を消すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

挾間・野菊
言動のアドリブ・合流等歓迎です!

※口調は平仮名多め、外来語苦手、たどたどしく直接的


なのり……んと、
後藤流、裏兵武流、柳派小太刀術、双虎剣、(その他任意の流派名)
えぇと……ほかにも
聞いてないの、とか。なまえないの、とか……いろいろ?
奪って、あわせて、……それがアタシの、挾間村の野菊の「盗剣術」

それを抜くってこと、は
斬られる覚悟も、あるんだよ、ね?

さぁ
アナタたちの
「剣」を、みせて


※盗剣術
盗み、斬り、生きる
数多の異なる剣理を状況にあわせて使う、歪で合理的な戦闘術
技はバラバラ、名称も雑多
外道の刃は、奪うに値する剣士を斬る度、また一つ鋭くなる

細かい描写はお任せで、イイ感じで自由にやっちゃってほしいです!


ヌル・リリファ
【WIZ】
アドリブ、共闘歓迎。

ヌル。お人形のヌルだよ。あえていうなら、つかうのは人形流、かな?(適当にいま作った流派)(面白い名前があったら変えちゃっても構わないです。)

演算装置に刻まれた【戦闘知識】をもとに、最適化したうごきで、相手をおいつめる。
UCだけじゃなくてつかえる戦闘技能を全部つかう。
演算装置は【学習力】で、どんどん相手を理解してさけにくいうごきを算出するよ。

人形のわたしがもつ演算装置と機能をフル稼働させる。卑怯?きたない?

全部の機能をつかって、手加減せず相手をたおすのが、お人形だよ。

マスターのために、目的のために手段はえらばない。



●外道と人形、その在り様
「なんだぁてめえ! どこのどいつだ!」
「薄汚え餓鬼のくせして、えらく強いぞこいつ!」
「もう十人は仲間がやられてやがる!」
 悪党どもは色めきだっていた。いかにも奴らは鉄火場の最中である。
 正しく言えば、突然に何者かの襲撃を受けた、というのが正しいのだが。
 そして奴らを襲ったのは、あろうことかたったひとりの若き少女。
「……ああ、そっか。なのり……しなきゃ」
 痩せぎすの少女は、そこでようやく求められた用件を思い出した。
 すでにその身を免状の呪いが絡め取り、手足は普段の数倍は重く鈍くなっている。
 ゆえに手傷もいくつか負っていたが、この程度は彼女にとって日常茶飯事だ。
「後藤流、裏兵武流、柳派小太刀術、双虎剣、林崎新陰流、上楚辺小鉄流……」
「柳派小太刀術だと? 伝承者が死んだってあの!?」
「双虎剣ったら野試合五十人斬りを成し遂げた奴の流派だぜ……」
 悪党達は肝を冷やした。少女があげる流派はいずれも無双の剣術ばかり。
 ……そしてその使い手が、ほとんど不審な死を遂げているものである。
「ほかにも、聞いてないの、とか……なまえないの、とか……いろいろ。
 奪って、あわせて……それが、アタシの、"盗剣術"」
 挾間・野菊。普段猟兵として名乗るその名も便宜上のものである。
 挾間村で生まれ、売られ、戦場を彷徨って生きてきた孤独な野菊でしかない。
 無限に餓えた虚のごとき眼差しは、悪党どもをして心胆を寒からしめる!

「あ」
 そんな野菊の孤軍奮闘を、偶然にも見咎めた者がいた。
 なにも彼女を助けようとしていただとか、悪を求めていたわけではない。
 ただ青い瞳の少女は、ふと戦闘の気配を察し、そこに知己を見出しただけのこと。
 だが見出した以上は行動する。そこに理由はないが、迷いも存在しない。
 それが、ヌル・リリファという人形の行動原理である。
「ねえ、野菊さん。ひとりでたたかってるの?」
「…………」
 一触即発の状況に、人形はするりと当たり前のように入り込んだ。
「……うん」
「そっか。じゃあ、わたしもお手伝いしていい?」
「……好きにすれば、いい」
 交わす言葉は最低限のもの。本来彼女らの見た目に相応しい年頃なら、
 もう少し愛嬌や助太刀への感謝などがあって然るべきだろう。
 だがかたや、凄絶なる戦場を這いずり回った盗賊。
 かたや、戦闘存在としての意義を己に課した人形。
 ともに人ならざる精神性の持ち主であり、ゆえに会話は最小限である。
「また餓鬼が増えやがったぞ!」
「こいつも盗人剣法使いやがるのか……!?」
「ううん。ヌルはお人形だよ。りゅうはは……あえていうなら、人形流、かな?」
 彼女も彼女で、流派だとか武名に意味を見出すタイプの者ではない。
 素っ頓狂な物言いは、しかし却って悪党どもの神経を逆撫でした。
「嘗めやがって、死ねぇ!!」
「バラバラにして軒に吊るしてやらァ!」
 耳をふさぎたくなるような罵詈雑言と共に襲いかかる緑林白波の群れ!

「……刀(それ)を、抜いたね」
 野菊の瞳が、ぎらりと昏い輝きを持つ。
 抜いたということは覚悟があるということ。問うまでもない。
「なら、アナタたちの"剣"を……アタシに、みせて」
 静かな言葉とともに、痩せぎすの少女はふっと姿を消す。
 否。その小柄な体躯を地を這うほどに沈めて、足元をかいくぐったのだ。
 そして殺到する悪漢どもの足元でぐるりと懐剣を廻らす。裏兵武流外法"鼬"。
「がぁあああっ!?」
「あ、脚が! 俺の脚がぁ!」
 敵の足並みが乱れる。その時野菊はすでに集団の後方にいる。
 己の存在に気づかぬ敵の喉輪を片手の二本指できゅっと締め、
 声を出せないようにした上で刃を寝かせ肋骨の隙間から肺を突き刺す。
 柳派小太刀術・"空抜(そらぬき)"。標的に悲鳴すら許さぬ無慈悲な魔剣。
「あそこだ! いつのまに!?」
「殺せ! 槍衾にしちまえ!」
 今しがた仕留めた敵の体を盾に、全身を使って押し出す。
 包囲の輪が崩れた瞬間、倒れ込む死体を蹴り上げて頭上へ跳躍。
 くるくると鞠めいて回転しながら、落下速度を利用して鎖骨を垂直破壊。
「がぼっ!?」
 藤浪離心流中目録秘伝、"秋雨"。背後から不意打ちの気配。
「……おそいね」
 ぐんとブリッジをするように上体を跳ねさせ、
 刃を引き抜きながら背後の敵を袈裟懸けに斬る。
 鳴鷺流・弐の太刀を歪に捻じ曲げた我流の外道剣だ。
 野菊の剣は実戦的であった。獲物を殺すための最適な方法を選んでいた。
 だがそれは外道である。正々堂々も何もあったものではない左道の刃。
「――……つぎは、だれ?」
 それが、少女が生き抜くために得た牙である。

 一方、ヌルのほうはどうか。
 彼女の足取りは達人のそれとは言い難く、隙だらけであった。
 にもかかわらず、打ち込む悪党の攻撃をするりとかいくぐり、躱し、
 あるいはその起こりを潰して急所を潰してしまう。
「なっ、なんだこの……なんだこいつは!?」
「あ、当たらねえ! どういう剣法してんだ!?」
「だから、そんなのないよ」
 言いながら、横合いからの刺突をくるりとかわし、そいつの背中を押す。
 すると勢い余った攻め手は、彼方にいる別の悪党の腹を串刺しにしてしまった。
 真上から振ってくる兜割り。すでに知っていたヌルはこの仕手の腕を取り、
 躊躇なく180度ひねる。ぼきぼきと嫌な音と悲鳴が響くが意に介さない。
「ひいい!」
 困惑と恐怖は戦場では命取りだ。悲鳴を上げた悪党は次の瞬間に死んだ。
 一撃ごと、一秒ごとに、ヌルの動きはより最適化され合理的に敵を処理する。
 そこに華麗さも人間性もあったものではない。敵を破壊することに躊躇はない。
 演算装置高速回転。蓄積された戦闘知識から最適な動きを選択する。
 躱し、防ぎ、いなし、突き刺し、へし折り、砕き、抉り、叩き潰す。
「ひ、卑怯者!!」
「卑怯?」
 こてんとヌルは首を傾げた。そして罵った悪漢は直後に死んだ。
「全部の機能をつかって、手加減せずにあいてをたおすのが、お人形だよ」
 目的のため、造物主のために手段は選ばない。
 それが人形の在り方だと定義し、ただ遂行する。

 二人の少女の戦いは、対称的でしかしまったく同様だった。
 善も悪もありはしない。ただ殺意とその結果だけが後に残るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・明日真
【アドリブ歓迎】
フフフ…貴様らゴロツキどもに見せるには惜しいがそうかそんなに見たいか。
ならば見せてやろう。
この激烈筋肉流釣法をな!

【ドラゴン・スパイラル・キャスティング】
竜すら釣り上げるこの釣り針を恐れぬ者からかかってくるがいい!
ヒット!爆破確認!【気合い】で釣り上げるぞ!!

うおおおおおっしゃフィィィィィィッシュ!!!
釣ったら殴る!!!
釣果は上々だぜ!!!


杜鬼・クロウ
アドリブ連携・カオス◎
厨二全開
御免状の効果は降下
勢いだけの名乗りなので変更可

【杜の使い魔】使用
格好良く八咫烏に跨り悪党達の前でスタイリッシュに着地(しゅた
決めポーズ(存在感
黒外套が鴉羽の様に翻る
しゅるんとUC解除
顔は逆光で見えず
誰だと言われたら名乗る

運命が俺をココに呼び寄せた
滅びの鬼が杜にて神宿りの鏡が心得し刃(ちから
刮目せよ!
滅鬼伝阿修羅流、一の型…黒焔の鴉(適当
俺の総てを以て、仇となすぜ!オラァ!

顔見える
前髪掻き挙げ舌舐りし敵見定め
徐に刃に指滑らせ玄夜叉構える
双眸をカッと開く
地面を蹴り駆ける
先制攻撃で凪の様に倒す
敵の攻撃は武器受け・カウンター
属性攻撃・2回攻撃で炎焔の赤宿し一回転で薙ぎ倒す



●舞うは八咫烏、振るうは釣り竿
 もはやこの地に道理も法度もあったものではない。
 お天道様が見下ろしていようが、悪党にとっては構うこと無し!
「だ、誰かぁ! お助けくださいましぃー!」
「ゲヒヒヒ、無駄だよお嬢ちゃんよぅ」
「俺らと楽しいことしようぜぇ~」
「あんなこととか……こんな! こととか! ギヒヒヒ!!」
 おお、若き乙女を取り囲む悪漢ここにあり! だが救いの手を差し伸べる者はなし。
 ただ悲鳴が響き渡る。太陽よ! どうか悪党どもを焼き滅ぼしたまえ!
 ――そんな祈りに応えるかのごとく、どこかで鴉が高く啼いた。
「おい、なんだありゃあ!?」
「あぁん? ……う、うおおお!?」
「鳥か? いや、で、でけぇ!」
 空を見よ! 太陽の輝きを覆い隠す巨鳥の羽ばたきがそこにある!
 翼長に至っては二十尺に至ろうかというその鳥影、異形なるは三つの肢だ。
 待て、鴉の鳴き声に三本足? それはまるで、太陽神の御使いのようではないか。
「とうっ!!」
 颯爽たる声ひとつ。八咫烏の背から飛び降りる何者かの姿!
 ざしゃあ、と土埃を舞い上げて、逆光を背負い黒塗りのフォルムが見得を切る!
「そこまでだぜェ悪党ども!」
「「「な、何奴!?」」」
 一陣風が吹き抜ければ、はためく黒外套はまるで鴉羽の如し。
 頭上では、巨大なる太陽の化身が高く高く、雄々しく啼いて羽ばたくのだ。
「――運命が、俺を此処に呼び寄せた」
 中天に上りし太陽の輝きが、黒々としたその貌を照らし出す。
「滅びの鬼が杜にて、神宿りの鏡が心得し刃(ちから)――刮目せよ!」
 カッ! 陽光に照らし出される端正なる美貌、そしてぬばたまの黒髪。
「俺の名は杜鬼・クロウ。滅鬼伝阿修羅流の使い手……悪を討つ者だ」
「「「滅鬼伝阿修羅流……!?」」」
 然り。この者、眉目秀麗なれどその身は人に非ず。
 すなわちヤドリガミ。百年の月日を経て現界せし器物の精霊なり。
 おもむろに前髪をかきあげれば、異色の双眸が悪党どもを睨めつけた。
「――ハ。うだつのあがらねえ三下どもが」
 ちろり、と赤い舌が唇をなぞる。
 危機一髪の状況にあって、乙女すらも頬を赤らめるほどその様艶やかに。
 されど指先が刃渡り六尺の黒魔剣をなぞれば、敵はいよいよ震え上がらん。
 ……瞑目。クロウは己を心頭滅却し、悪への怒りを研ぎ澄ませる。
 もはやこの地に理法なし。ならば義を為すは己の役目なり……!
「行くぜ玄夜叉、狩りの時間だ――!」
 双眸が大きく見開かれる。そして機先を制し、地を蹴立て疾駆した!
「一の型、"黒焔の鴉(ダークフレイムレイヴン)"。俺の総てを以て、仇と――」
「フィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!」
 その時、敵は盛大に爆発した。
「爆発!?」
「爆破成功だァ!!」
 どうしてこうなった。

 その答えは数秒時間を巻き戻せば明らかとなる!
 見よ! かっこよくキメてるクロウのちょっと上の方!
「フフフ……ついに来たぜ、俺のこのテクニックを見せつけるこの時が!」
 妙にスタイリッシュなポーズで、なぜか蒸気製の釣り竿を構える男あり。
 青年の名は柊・明日真。太陽の輝きを受け橙色の瞳が燃え上がる。
「あんなごろつきどもに見せるには惜しいが、惜しいが! だがしかし!!」
 くわわっ。クロウが目を見開いた当たりでこっちも瞠目していた!
「この激烈筋肉流釣法の相手に不足はなぁい!!」
 え、なんて?
「俺が鍛え上げた、この筋肉を使って獲物を釣り上げる激烈筋肉流釣法ならば!!」
 だからなんて?
「たとえ龍すら吊り上げてみせるぜぇ! うおおおおおおらぁあああああ!!」
 無駄に巨大なギガンティック釣り針、ぽーい。
 このへんでクロウがものすごくかっこよくキメていた。
 そして彼がチャージした瞬間、釣り針がごろつきに命中して爆発したのである。
 わかったかな!? ……わかんないね!? 爆発ナンデ!?
「お、お前は!」
 ともあれ時間軸は現在に戻り、クロウはその姿を見て驚愕する。
 一方明日真は大きく目を見開いた! 釣り竿が大きくしなる! 何故!?
「うおおおおおおフィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!」
「グワーーーーーッ!?」
 アフロヘアになったごろつき一名が吊り上げられ、明日真のほうに来た。
 普通の釣りなら釣果は捌いて食べたり釣り場に戻す。
 悪党を吊り上げたら悪党が来る。悪党が釣り上がったらどうする?
 知らんのか。
「殴る!!!!!!!!!!!!!!」
「アバーッ!?」
 哀れ、ごろつきはそのまま彼方に吹っ飛び星となった。
「「…………!?!?」」
「テメエらも死ねオラァ!!」
「「グワーッ!?」」
 唖然としていたごろつきの皆さんもクロウの一撃で吹っ飛んだ。
 さながら凪の如く。返す刀を振るうことすら出来ずの一撃必殺。
 刃に宿るは炎焔の赤。回転され描くさまはまさに太陽の光輪めいて……!
「やるな、クロウ!」
「そっちもなかなかじゃねえか、明日真!」
 男達は互いの技と健闘を称え合った。そして同時に若乙女の方を見る。
「あ、あの、ありがとうございます……黒髪の方」
「俺は!?」
「いいさ、気にすんなよ。さあ、立ちな」
「とんでもないです、ああ、お手を……もう少し握っていても、よろしいですか……?」
「だから俺は!? ねえ!?」
 外野の明日真を完全スルーして、いい感じの雰囲気になるふたりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰炭・炎火
【結社】
ふふーん、そっちがなんちゃら流なら、こっちは結社流やんね!
……え、どういう流派かって?
えーっとねー、んーと…………そう。
武器の扱いを、納め、極め、習熟した! 流派なんよ!
さあ、結社流の奥義、とくと見るがええんよ!

壱の型、猛撃!(斧を振り回す。コマンド:←タメ→A)
弐の型、豪撃!(斧を振り回す。コマンド:←タメ→A)
参の型、王撃!(斧を振り回す。コマンド:←タメ→A)
そして奥義……刻器神撃!!!(斧を振り回す。コマンド:←タメ→A)

どうや!!!!!


ラグ・ガーベッジ
【結社】
見た目は痩身矮躯の折れそうな少女
しかしその目はギラギラと病犬が如き鈍い光を放つ

纏う雰囲気や顔つきだけを見れば、道場へ押しかける荒くれが一人増えただけと錯覚しかねないだろう

おーおー居るいる、社会のゴミ共が
 おいテメェら、今すぐ腹切って死ぬか泣いて謝るか選べよ

……あ”?人が親切で言ってやったってのによぉ
わぁったよ俺が手ずからやってやるよ

我が肚に刻みし数字はⅦ
我が抱くは憧憬……いいや、ちげぇ!確信だ!
俺が至る刻器は”最強”を冠する絶望の箱!
希望なんざ残してやらねぇ!
テメェを殺すのはラグ・ガーベッジ様だ!閻魔に自慢しやがれ!
刻器身撃―――!!!!

身体の一部をあらゆる武器に変え戦う
詳細は解説任せ


アダムルス・アダマンティン
【結社】
ビリウットと共にナンバーズの日頃の成果を見る

ラグは動きが俊敏で判断が早い点は良い
だが経験不足だ。無駄な変形や動作が多い
奇襲性は高く初見で倒しきれないと地力差で押し負けるだろう
ほう、奴め遠距離もそれなりにやるようになったか。全ての距離を満遍なく二流で熟す奴の戦法は厄介極まりない。並の相手では到底奴を倒せまい

…炎火の言うことは間違いではないのだが
…ビリウット、無理に解説しようとするな
炎火のアレは――暴力だ
先に扱いを修めるだとか極めるだとか言っていたが、なんということはない
奴の戦法はただ振り回す。それだけだ。それだけで充分なのだ
…それはそれとして、あのゴリ押しを結社流と名乗らせたくはないな


ビリウット・ヒューテンリヒ
【結社】

御大将と解説役をしようじゃないか
心躍る闘争を頼むよ。炎火、ラグ?

あのラグの動き…流石と言うしかないね
あの刹那でラグは刀から槍に変形して、動こうとした剣士の肩を貫いた
敵からしてみれば、刀の間合いかと思ったら、いきなりアウトレンジから刺突を食らったんだ。ラグだからこそできる、変幻自在の射程距離
名付けるとするならあれは…『変幻間合い突き(ハイパーウルトラスラッシュ)」

見てくれ御大将、あの炎火の一撃を。
あれは…何だろう、こう…すごい、なんだ?
暴力だね
そう、暴力なんだ。力こそパワー。パワーこそ力。
すごいよ、技名全部違うのにモーション一緒なんだよ?
ルビに全部暴力って振ったほうがいいんじゃないかなぁ


マリア・マリーゴールド
【結社2】
Oui!ワルワルさんたち、倒すデスネっ!
ばば様楽させたら良いデスか!
まかせろ下サイデス!

それじゃ今日もマリィ、はりつける……
non?はりつけ違うマスカ?
えーと……ハリキるデス!(ふんすっ)

【SPD】
えーと、なのり?名前言うデスネ!
マリィはマリィデス!
刻器、短いののばってん番!"お父様"の代わりに戦うマス!
ヨロシクおねがいマスヨー!

それじゃ、『めっ』の時間デス!


マリィ――"アドナイの神罰"、いぱい増やして、たくさん切るマス!
ちょっぷちょっぷ!デス!

ワルワルさんはんせーシマスたカ?んん!エライデスヨ!

"――では、来世ではより清く正しき生のあらん事を。Amen."


伴場・戈子
【結社2】
やれやれ、武侠御免状ねぇ。武侠ってのはなんて書くかしってるんだろうね。
おっと、アタシゃ戦わないよ。たまにはババアに楽をさせとくれ。
ほらセレナ、行っといで!マリーを一人にするのも心配だろう。

刻器のⅩ、アドナイの神罰。純粋すぎる正義感によって振るわれる断罪の刃。こういう無法者相手なら無類の相性さ。まぁ、まっすぐすぎて危なっかしいのが玉に瑕だけどね。
だが、そんなあの子をフォローするのがセレナさね。
自分のためには戦えないあの子がもっとも力を発揮できるのは、危なっかしい相方と組ませた時――まぁ、ウチの若いのなんて危なっかしいのばっかりだけどね。

(※ご自由にどうぞ。トンチキ理論大盛も問題なし)


セレナリーゼ・レギンレイヴ
【結社2】
はい、伴場様
マリア様は私がお守りします
マリア様、そこははりきる、というのです

え、名乗り?
ほ、本当にやるんですか?
ええっと、その、こほん
我が胸に刻まれし数字はⅥ
我が誓うは献身
我を選びし刻器は“契約”を冠するミトロンの書
レギンレイヴの娘、夜の闇を照らす者
セレナリーゼ・レギンレイヴ、いざ参ります
――い、言えました!

ミトロンの書にこめる【祈り】は救済
罪なき者たちを守る力をどうか
与えられた魔力は光の槍に
どんな武器でも対応できるようにしろ、と言われてますしね
武器の扱いはお姉ちゃんほど得意ではないのですが、
ごろつきに劣るほどさぼってもいませんので
遊牧の民の槍術、お見せいたしましょう

アドリブ歓迎です




 ……高内家領内にある、通称"城見の野"。
 ここは高内家の武家屋敷――今となっては見る影もないオブリビオンの呪いの城に変貌しているが――を遠くに臨む広大な平野である。
 そこに、およそ100を越えるであろう悪党どもがずらりと揃っている。
 なぜか? ……奴らは、ここに呼ばれたのだ。
 文言や方法は様々ながら、おおよそ『腕に自信があるならば来るがいい』的な挑発的な誘いである。
 当然、悪党どもはいきり立っていた。ブチギレていた。
 ……はたして、そこへ新たな人影が現れた。
 百を超える徒党の群れに対し、此方はわずか七人。
 そのカタチも背丈も、何もかもが異なる老若男女七人である。
「ふん、集まったのはこれだけか」
 2メートル近い背丈の巨漢――アダムルス・アダマンティンが腕組みする。
 その威圧感は人ならざる……事実、彼は不老不死たる神の者だ。
 だが此度においては手出しはしない。悪党どもを集めるよう命じたのも彼である。
「あちこちで猟兵達が頑張ってるみたいだからねえ、残ってるのはこれで全部じゃない?」
 そんな彼の隣には、どこか軽薄な雰囲気を感じる女が一人。
 ビリウット・ヒューテンリヒ。アダムルスを"御大将"と呼ばう魔術師である。
 本来ならば恐るべき魔銃の使い手だが、やはりリラックスした様子だ。
「やれやれ、武侠御免状ねぇ。"武侠"てななんて書くか知ってんだろうかね」
 灰色の髪に浅黒い肌をした老婆、しかし口ぶりとその格好は非常にパワフルだ。
 サングラスにライダージャケットという出で立ちの彼女は、伴場・戈子と云う。
 やはりというべきか否か、アダムルス同様に神たる身にして"子供"達の後見人だ。
「日頃の成果を見るいい機会だ。存分に見物させてもらおう」
 アダムルスは至極真面目くさった顔つきで言った。
「どうせなら心躍る闘争をお願いしたいよね、御大将?」
 ビリウットの言葉はなかなかどうして真意が見えない。
「二人して真面目だねえ、アタシゃあの子らがラクさせてくれるなら構いやしないよ。
 ……ほらセレナ、行っといで! マリーを一人にさせんじゃないよ!」
 そして少女を急かす戈子の眼差しは、暖かくも厳しくある。

 この者ら、その名も知られざる恐るべき秘密結社の面々である。
 時を刻みし器の使い手。ただし此度は、同じ担い手の戦いを見守る構えだ。
 ……では、実際に戦うのはどんな連中なのか――?


「おーおー居る居る、社会のゴミどもがよくもまあ雁首揃えたもんだ」
 じゃり、と一歩踏み出したのは、見た目こそ痩身矮躯の幼い少女である。
 一方でその双眸は悪漢どもに負けず劣らずギラつき、狗めいて飢えていた。
 こうしてはっきりと相対していなければ、それこそごろつきの一人に見えかねない。
「おいテメェら、今すぐ腹切って死ぬか、泣いて土下座するか選べよ!」
「ってラグちゃん、それ段階飛ばしすぎてんよ! あかんから!」
 さっそくおっ始めようとした野良犬を、フェアリーの少女が押し留める。
「こういうのは手順が大事なんよ、ちゃんと皆揃ってやらんとあかんやね!」
 などとそれらしい理屈を並べているが、実は彼女がノリノリなだけである。
「Oui(はい)! ワルワルさんたち、みんなで倒すデスネっ!
 ばば様見てるデスし、マリィはりきるデス! まかせろくだサイ!」
 こちらはこちらでにこにこと、殺気立ったこの場に似つかわしくない少女がひとり。
 純白の修道服に身を包むさまは、この平野には果てしなくミスマッチである。
「セレナもいっしょにがんばるデスよ、たのしいデスネ!」
「えっ。は、はい。もちろんマリア様は、私がお守りします」
 年頃は少女よりも上であろう、オラトリオの乙女がやや困惑しつつ頷いた。
「……ところで、あの、名乗りって本当にやるんですか……?」
 青い瞳を困惑とちょっとの気恥ずかしさに細めつつ、おずおずと問いかける。
「当然やんね! どするどする、やっぱり"数字"ちっちゃい子から行くのが妥当やんね?」
「あァ!? 最強である俺が一番最初に決まってんだろうが!!」
「ダイジョブデス、マリィなのりわかるデスよ! 頑張ってはりつけるデス!」
「あの、マリア様、"はりきる"です。そこは"はりきる"というのが正しいです」
 さっそくわちゃわちゃしているが、この乙女達も一応あの三人と同じである。
 つまり謎めいた結社の一員にして、選ばれた器の担い手達。

「おっけーラグちゃんがキレそうなんであーしからー!!」
「おいそこは俺に譲れよ! 聞いてんのかテメエ!!」
「Oui! じゃあ次はマリィがやらせろくださいデース!」
「マリア様、そこは"やりたい"のほうが適切かと。
 あとラグ様が怒ってるので譲ったほうが……」
 などとわちゃってるのを無視して(というかねじ伏せて)、妖精少女が先陣を切る。
 ズガンッ!! 地面に叩きつけられ亀裂を生じさせる超巨大な斧!
 悪党どもはどよめいた。ようやく、この者らが只者ではないと理解したのだ。
「あーしは灰炭・炎火! 流派はねー、んーと……えっとねー……」
 チクチクチク ポーン(名案を思いついた、という顔の炎火)
「あれね、結社流やんね! 結社りゅー!」
「はあ? 結社流?」
「Hein?(なんて?) それ、なのりすればいいデス?」
「えっ、あの、ナンバーズとしての名乗りとかは」
「さあ、結社流の奥義、とくと見るがええんよー!!」
 びゅーん。焔の翼を広げて炎火はさっさと吶喊してしまった。

「あっ、おいテメエ!! チッ、人が親切で譲ってやったらこれだよ!!」
 続けて飛び出しかかった少女は、しかしちらりと見物勢の方を見る。
 彼女は最強を己に任じる。ここはそれを証明するいい機会だ。
 ……はたから見ると授業参観で親の目線を気にする反抗期の子供にしか見えないが。
 なお"数字"はもっと若い者がいるのだが、ギロリと睨んで黙らせた。
「我が肚に刻みし数字は"Ⅶ"! 我が抱くは憧憬――」
「ドウケイ?」
「あ、憧れとかそういう意味の」
「ち・げ・ぇ!! 違う!! 確信、だ!!」
 咳払い。
「俺が至る刻器は、"最強"を冠する絶望の箱! 希望なんざ遺してやらねぇ!!」
 ぞわぞわとその身が様々な武器に変じる。刃! 矛! 槌!
「テメェらを殺すのはこのラグ・ガーベッジ様だ! 閻魔に自慢しやがれぇ!!」
 かくて短針にして単身のⅦが、有象無象の群れへと突っ込んでいく。

「次、セレナデスよ!」
「い、いえ私はマリア様のあとで! さ、ど、どうぞ」
 少し恥ずかしそうなオラトリオがすすすっと譲った。
 なんでかなみたいな顔で首を傾げつつ、純白の乙女が天使のような笑顔を浮かべる。
「マリィはマリィデス!」
「マリア様、フルネームです、フルネーム」
「Oh! ……マリア・マリーゴールド、刻器、短いののばってん番! デス!」
「マリア様、Ⅹ(テン)です、ばってんではありません……」
「それな、デス! タンシン? の、テン番! デス!!
 "お父様"の代わりに戦うマス! ヨロシクおねがいマスヨー!」
 早速頭を抱えてため息をつく観戦勢のほうににこにこ手を振ったあと、
 マリアもまた軽やかに戦場へと踏み込む。その身を純白の器刃に変えて。

「……あの、伴場様」
 ちらっ。オラトリオの乙女が戈子のほうを見た。
 戈子は『さっさとやれ』的なことを全身のジェスチャーで表現した。
「う、うう……わ、わかりました。こほん!」
 こうなっては仕方ない。乙女は顔を赤らめつつ気合を入れる!
「我が胸に刻まれし数字はⅥ。我が誓うは献身――」
 すーはーすーはー。彼女はあがり症のケがあるらしい。
 トチらないように深呼吸しつつ、続きを口ずさむ。
「我を選びし刻器は“契約”を冠するミトロンの書。
 レギンレイヴの娘、夜の闇を照らす者――セレナリーゼ・レギンレイヴ」
 ……沈黙。セレナリーゼはぱあっと明るい笑顔になる!
「い、言えた! 言えました、伴場様! 言えましたー!」
 ぱたぱた嬉しそうなセレナリーゼ、『さっさとお行き』と叱りつける老婆。
「あっ、そ、そうでした! ではいざ、参ります!!」
 そしてばさりと黒き翼をはためかせ、戦場へと馳せ参じる!

「……とりあえず全員、減点だ」
「御大将の採点は容赦ないねえ」
「いやありゃ仕方ないねぇ、もう少ししゃきっと出来んのかいあの子らは」
 観戦勢は先行きの不安さに頭を痛めていたという。

●かくて刻器爆闘す
 しかして戦いが始まれば、彼女らはナンバーズに相応しい活躍を見せた。
 当然だ。彼女らはすべて、ただならぬ器物に選ばれた担い手である。
 それぞれが各々の超常と権能を持ち合わせ、その戦いぶりたるや――。
「結社流奥義、壱の型ぁ! 猛撃!!(→ぶーん→)」
「「「グワーッ!?」」」
「結社流奥義、弐の型ぁ、豪撃ぃ!!(←ぶーん←)」
「「「グワーッ!?」」」
「結社流奥義、参の型! 王撃っ!!(↑ぶーん↓)」
「「「グワーッ!?」」」
「そして超奥義――刻器神撃!!!(↑ぶん↓ぶん←ぶん→ぶん)」
「「「アババババババーッ!?」」」
「どや!!!!!!!!!!!!!!!」
 ただの、ただの暴力じゃないですかぁ!
「足りへん? 足りへんね! したら裏奥義いくやんね! 超撃ぃ!!(🔃ぶーん🔃)」
「「「アイエエエエアバーッ!!??」」」
 名前を変えようがコマンドが変わろうが暴力は暴力である。
 だがそれで天変地異規模の破壊を巻き起こせるのが炎火の恐ろしいところだ。
「……あれただ斧振り回してるだけじゃないかい?」
 戈子のツッコミはごもっともである。
「いや! いや、待ってくれたまえ。御大将もほら、見てみるんだあれを」
「…………」
 ビリウットの言葉に、アダムルスはじっと炎火の戦いぶりを見つめた。
 斧を。振り回している。とにかくニャメの重斧を、振り回している。
「あれは……なんだろう。こう、すごい……つまりだね、そのー、あれだ。
 ……そう! パワフル! 原始的な野生を武器にした、こう根源的な――」
 アダムルスが口を開いた。
「暴力だ」
「暴力だね」
「やっぱり暴力じゃないかい」
 誰がどう見てもそれ以外の何者でもない。
「無理に解説しようとしなくていい、ビリウット。炎火はアレで間違っていない」
 アダムルスはしかし、冷静な声音でこう続ける。
「先に扱いを修めるだとか極めるだとか言っていたが、なんということはない。
 奴の戦法はただ振り回す、それだけだ。それだけで十分なのだ」
「な、なるほど! 力こそパワー、パワーこそ力というわけだね?」
「それ言ってること何も変わってないじゃないかね」
「いやだって、すごくないか? 技名全部違うのにモーション一緒なんだよ?
 なんかもう、いっそ一の暴力二の暴力とかでいいんじゃないかな……」
 ビリウットは完全に呆れ果てていた。アダムルスはしかし無言。
 やはり結社の長として、いかなるカタチであれ強ければそれでいいということか。
「それはそれとして、あのゴリ押しを結社流とは名乗らせたくないな」
「それは私も思う」
「賛成する奴ぁひとりもいやしないよ」
 ダメだった。

 ではラグのほうはどうか?
「ハッハァ! どうしたテメェらぁ、最初の威勢はよォ!?」
「な、なんだこの餓鬼! あああああっ!!」
 まさに鬼神……いや、こちらもこちらで暴風じみた戦いぶりだ。
 力の強さに関しては、ラグは炎火には当然ながら劣るだろう。
 だが己の体をありとあらゆる"武器"に変化させるその力。
 短針にして単身たる"テセウスの箱"の可能性は、戦いでこそ花開く。
「逃げられると思ってんじゃねェ!!」
「ぎゃあああ!!」
 霧めいた細い刃が、背中を見せた悪漢を背後から貫く。
「テメェもだァ!」
「は、疾すぎる! なんなん……ぐげっ」
 振り向きざまに繰り出したミドルキック、鞭めいた軟鉄剣が頸を刈る。
 かと思えばその矛先は重い鈍器に変わり、遠間の敵の頭を砕く。
 単なる変貌だけではない、その特性すらも利用したまさに一騎当千。
 ――いや、ヤドリガミたるラグの場合は、一器当千と呼ぶべきか。
「あのラグの動き、流石という他ないね」
 一瞬のうちに刀から槍へ変じ、先の先を得て肩を貫く。
 極めてフレキシブル名動きを見せるラグを、ビリウットは冷静に分析する。
「敵からしてみれば、間合いを読みきれずにアウトレンジから攻撃を喰らうんだ。
 ラグだからこそ出来る、変幻自在の射程距離。逃げたくなるのも無理はない」
「だからってちょいと荒っぽすぎやしないかねえ?」
 戈子はサングラスの下で眉根を顰めながら言った。
「技術も何もあったもんじゃないよ」
「いや、あれは名付けるなら、そう――変幻間合い突き(ハイパーウルトラスラッシュ)」
「アンタが適当に名前つけてるだけじゃないかい」
 ごもっともであった。
「まとめるならば」
 そしてご意見番、もといアダムルスが的確に言葉を括る。
「ラグは動きが俊敏で、判断が早い点はいい。だが経験不足だ」
「そう。もしも勢いを持ってかれたら対応しきれないだろうねェ」
 古馴染みである戈子の言葉に、"Ⅰ"たる神は重々しく頷く。
「無駄な変形や動作も多い。奇襲性は高いが、逆に言えば」
「……初見で倒しきれないと、地力差で押し負けるってわけか」
 ビリウットは納得した様子で頷いた。
「しかし、ビリウット。お前の指摘も実際正鵠を射るものだ。
 前に見たときより……奴め、遠距離もそこそこやるようになっている」
 アダムルスは合理的な思考だが、評価するべき点は評価する男だ。
「あの調子で全ての距離を満遍なく蹂躙するような戦法を極めれば、わからんな。
 どのみち現状ですら奴の立ち回りは厄介だろう。並の相手では倒せまい」
 その点においては、二人も認めるところである。

「じゃ、あの子らはどうだろうかねェ」
 戈子はセレナリーゼ、そしてマリアを指さした。
「ミトロンの書よ――」
 まずセレナリーゼ。彼女はやや後方に立ち、常のように祈りを捧げる。
 彼女が扱いし器はその祈りに応える。此度の祈りはすなわち救済。
 罪なき者達を守り、そして悪しき者達を"救う"ための力を与え給え、と。
 書は応えた。魔力は光の槍に変じ、空より降り注ぐ。
「あ、あの女を殺せ! あいつからだ!」
 無防備なセレナリーゼを狙い、悪党どもが詰めかかろうとする。
 そこへまるで柵、あるいは牢獄めいてガガガガガッ!! と槍が振るのだ。
 誰も祈り子には近づけない。ならば他の者達に襲いかかるか?
 これもやはり敵わない。そもそもいずれも強敵であるゆえに。
 もしも死角を得たとしても、やはり光の槍がそれを戒める。
「……と、祈っているばかりではいられませんね」
 セレナは、己の前に降ってきた槍を掴み、ぶうんと振り上げた。
 彼女は遊牧の民の出である。暗黒の騎士たる姉には劣るが、覚えがないわけではない。

「ほう。セレナリーゼ自ら武器を振るうとはな」
「たしかに。あんまり見ない光景だね」
 アダムルス、ビリウットらの言葉に、戈子はニヤリと笑う。
「だろう? けど、ああいう時こそ、あの子は力を振るえるのさ。
 つまり、危なっかしい相方や、仲間を守る時……誰かのために、ってやつだねェ」
 だからこそマリアの保護を任せ、戈子は彼女を送り出したのである。
 そして狙い通り、セレナリーゼは炎火やラグ、あるいはマリアの支援のため、
 果敢に悪漢どもを薙ぎ払い、あるいは突き、的確な槍術を披露している。
「ま、ウチの若いのなんて、みんな危なっかしいのばっかりだけどね」
「言われてるよ、御大将」
「…………」
 無言を貫くアダムルスに肩を竦めつつ、戈子の視線はマリアの方へ。

「ほのかにラグに、セレナもみんなカッコいいデスネー!」
「ハッハー! この餓鬼なら簡単にやれそうだぜぇ!」
 セレナの攻撃を巧妙に避け、数人の悪漢がマリアを取り囲んだ。
 純白の乙女はこてんと首を傾げつつ、むっと眉を顰めてみせる。
「あなたたち! ワルワルさんなのに反省してない、ダメデスよ!」
「あぁん? 知るかよんなこたぁ!」
「悪事なんざ数えるのもやめちまったんでなぁ」
 悪びれもしない兇漢どもを前に、マリアはふうとため息をつく。
 そして――笑顔になった。それが逆に男どもを怖れさせた。
「それじゃ、"めっ"の時間デス!」
「な、なんだこの餓鬼」
「……おい、早くやっちまおうぜ!」
 なにか嫌な予感がする。悪党どもは直感に任せ刃を振り上げる。
 だが遅かった。振り上げた腕は付け根からばっさりと切断されたからだ。
「え」
「は?」
「あ……ああああああ?!」
 血が吹き出す。激痛を浴びて男どもはのたうち回る。
 マリアは笑顔のまま不動。その周囲には無数の、純白の器刃。
 すなわち"アドナイの神罰"。マリア自身、罪を裁くための無慈悲なる刃。
「いぱい増やして、たくさん切るマス! ちょっぷちょっぷ! デス!」
 痛みに悲鳴をあげる悪党どもの頭上に、ギロチンめいて翻る刃。
「ワルワルさん、はんせーシマスたカ?」
「い、いてぇ」
「助けてくれ」
「ああああ……」
「んん! エライデスヨ!」
 悲鳴は嘆願である。嘆願は懺悔である。ならば少女は祈るのみ。
 それが"アドナイの神罰"。純白の、まっすぐに狂った乙女の思考回路。
「""――では、来世ではより清く正しき生のあらん事を。Amen."」
 刃が降り落ちた。かくて罪は灌がれた。

「……とまあ、あの通りさね」
 戈子は肩をすくめる。口元の笑みはいかなる意図か。
「純粋過ぎる正義感によって振るわれる、断罪の刃。
 こういう無法者相手なら、これ以上ないぐらいに相性がいいもんさ」
「だが戦術も何もあったものではないな」
「たしかに。それをカバーしているのがセレナリーゼなわけだね」
 アダムルスは思案する。
「……マリアの強みは他ならぬその狂信と、何者にも染まらぬ正義感にある。
 下手に効率的な戦術を教え込むよりは、ああして奔放に振る舞わせるほうがいい」
 なるほど、戈子の与えたプランはアダムルスも認めるところのようだ。
 戈子はといえば、サングラス越しにいたずらな笑みを旧知の男へ向ける。
「けどもし、あの子のその正義感が、何かの形で喪われたりしたら?」
 ビリウットの何気ない問いは、言葉以上の意味を持っていた。
 ナンバーズはそれぞれにそれぞれの強みと、それぞれの事情を背負う。
「あーしは強いんよー!!」
 天真爛漫なもの。
「オラオラオラァ! 俺様が最強だァ!」
 価値に固執するもの。
「ウソはダメです! はんせーするデスよ!」
 純粋なもの。
「マリア様、後ろ失礼いたします!」
 献身的なもの。
「あれは強さであり、脆さでもある。それがもし、喪われたら?」
 ビリウットの問いかけに、戈子は沈黙を返した。
 しばし瞑目したあと、アダムルスはただ静かに応える。
「――己の問題を克服出来ぬようであれば、選ばれた意味はない」
 長たる男は、ただそう答えた。
「ナンバーズとは、"そういうもの"だ。覚えておくがいい」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『模擬忍法・紫陽衆』

POW   :    苦無乱舞
【レベル×1の苦無】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    我らに理解できぬ戦術なし
対象のユーベルコードを防御すると、それを【即座に理解し時には秘術で種族や体格を変え】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    我らに唱えられぬ忍術なし
いま戦っている対象に有効な【忍術が書かれた巻物と忍具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●第二幕:紫陽墜つるとき
 ……旧高内家武家屋敷!
 いまやオブリビオンの呪法によって、それは禍々しい城に変じていた。
 高さもサイズも何もかもがあべこべな、空間すら歪ませたいびつなフォルム。
 それは来る者を拒まず、されど踏み込む者は皆呪い死ぬというおそろしの館。
 邪悪の根源。この地を歪ませたる元凶のねぐら。
 ――ゆえにその城は、"呪殺城"と呼ばれている。

 そして城を目指して"城見の平野"を征く猟兵達の前に、いくつもの影!
「よくぞ城下を平定した」
「それでこそ我らの天敵」
「そしていよいよ城へと参るか」
「「「その蛮行待ったをかけようぞ!!」」」
 立ちはだかりしは忍である。只人ではない、オブリビオンの恐るべき抜け忍達。
 古今東西、数多の忍術忍法を集めし精強無双の隠密軍団!

「我らその名を紫陽衆!」
「鋭き刃は獲物を逃さず」
「唱えし術は天地を乱す」
「然らばこの身盾にして」
「此処で果たすは主命也」
「すなわち入城是能わず」
『来るか猟兵! ならば心せよ!
 砕けし骨は塵となり、血潮は大地を海と変えん!!』
 朗々たる名乗り。数は百……いや、もはや数えようがない!
 さらに降り注ぐのは雨粒――否、雨粒にあらず! 符である!
『いざ! 我ら紫陽衆の技を見よ!
 これぞ、呪殺城のその由縁なり!』
 城壁屋根上に展開した射撃部隊が、一斉に印を切る。
 すると彼奴らの得手、すなわち超常模倣の忍法により、符が生まれ来たるのだ。
 ただの符ではない。魘魅師が振るいし『呪殺符』だ!
 触れれば即死、浴びれば即死! それが数百、いや先、万にも上ろうか!
 空からは呪いの雨、地と壁と屋根には無数の模倣忍者あり。
 どうする。どう攻める? たしかなことはただひとつ。

 ――足を止めるな。韋駄天の如く野を駆け空舞い壁を撃て。
 これより、呪いの城への決死行が開幕せり!
●2章概要
 この章は『城目指して移動しながら敵と闘う』というシチュエーションになります。
 追いすがる(あるいは立ちはだかる)紫陽衆をどう躱し、倒すか?
 そのあたりをイメージしてプレイングしてみてください。

●特殊ルール1:そ、その姿は!(単独プレイング推奨)
 敵の姿が、自分にとって因縁深い何者かの姿に変わる……。
 そういうシチュエーションのための特殊ルールです。
 このルールを採用したプレイングでは、敵があらかじめ、
『SPD:●我らに理解できぬ戦術なし』
 を使用した上で戦闘する、ということになります。
 敵がどんな姿に変わり、それをどう倒すのかをプレイングしてください。

 Q1:紫陽衆が知らなそうな相手を指定してもいいの?
 A1:忍法でなんかわかるんじゃないですか? 多分。
 Q2:指定するのは猟兵でもいいの?
 A2:これまずそうだな、と思ったら却下します。

●特殊ルール2:ここは俺に任せて先に行け!(合同プレイング推奨)
 自分が足止め(あるいは殿)になる代わり、味方を城へ送り出す……。
 そういうシチュエーションのための特殊ルールです。
 このルールを採用したプレイングでは、
『どのようにして敵を足止めする(あるいは味方を守る)か』
 を判定ボーナスの基準とします。
 リプレイ描写は成否に拘わらず『敵の猛攻の中に姿を消す』みたいになります。
 このルールを適用したお客様が3章にもご参加頂けた場合には、
『待たせたな!』ルールが使用できます(詳細は3章開始時告知)

 特殊ルール適用希望の方は、それとわかるように明記してください。
(『ルール1希望』とか『ここ俺希望』とかそんな感じでOKです)

 プレイング締切は【4/23(火)23:59前後】です。
荒・烏鵠
【いろは】
(全力でノってこそ楽しい派)(GROVAは男の教科書)

エッなにこれ超アガるわ。あっちゃんあっちゃん、ちょっと腰から上は微動だにしないまま音速超えて移動してみない?
そっかーダメかー……ダメかぁ……!

ん?どったのいっちゃん。
……なンだオマエ……エ、何それ天然?天然でやってる?
エッ、マジで。マジで?マジかよ。
あっちゃんまでノってくれた……カンペキじゃねーか……最高かよ……生きてて良かった……。

【WIZ】
ッつぅ……耳がイテェ。本気でヤベーな、あの技。とにかく今がチャンスだ、行くぞいっちゃん!
来たれ【暴レ猪】、デカくなれ!乗れ、いっちゃん!溶けた地面は扇(水気)で冷やす、全力で駆けろ装甲猪!


アルバート・クィリスハール
【いろは】
(やるまで恥ずかしがるけど、やり始めるとノリノリになるタイプ)

誰がやるか。
なんでガチ目に落ち込んでるんだよ……意味わからんコイツ……。

えっこれそういうノリなの? イルまでノるの?
……。なるほど。まあ、確かにそうだよね。
うんうんそっか、そういう事なら仕方ないよね、適材適所っていうし?
先鋒は僕が務める。一直線に道を切り開くから、全力で駆けてくれ。
生き……そこまで??

【SPD】
猿まね忍者風情が生意気に。いいよ、なら真似してごらんよ。
この身は空裂く流れ星。命を燃やして輝く光、防げるものなら防いでみせろ!
カルラ流奥義、【明けの彗星】ッ!!

(衝撃波と高熱で呪符も敵も吹き溶かしながら道を作る)


イリーツァ・ウーツェ
【いろは】【POW】『特殊2希望』
・ノリを恥ずかしがるほど情緒が育っていない。
おい。
お前たちは先に行け。私が殿を務める。

二人が何を言っているのかわからないが、
加速手段もない私では、お前たちに速度で劣る。
ならば、これが最も適した役割だ。

良くわからんが、やる気が出たようで何より、か?

烏鵠の巨大猪に相乗りするが、敵の量が量だ。
追いすがってくるだろうから、私は途中で降りる。
今、最も重要なのは、烏鵠がアルに追いつく事だ。
ならば最適な技がある。

コード【不死盾】発動。今より我が身は友の苦痛を全て引き受ける。
これで烏鵠は止まらず、アルも動けよう。

我こそは盾の竜!
友を倒すならば、まずは私を殺してみせろォッ!



●いざや血風連なりて
 空からは無数の呪殺符と苦無の雨。そして地を覆わんばかりに立ちはだかる敵、敵、敵!
 油断すれば歴戦の猟兵とて命を落としかねない修羅場にあって、
「エッなにこれ超アガるわ」
 荒・烏鵠はめちゃくちゃテンションが上がっていた。目をキラッキラさせていた。
 どうも彼の記憶にあるなんらかの映像と、この光景がガッチリ噛み合ったらしい。
(うわあ……)
 アルバート・クィリスハールは嫌な予感に眉根を顰めた。
 この性悪狐がこういう顔をした時、だいたいろくでもないことを言い出すのだ。
 なお、先頭に立つイリーツァ・ウーツェはまったく気にしていない。
 余計なことは考えず、降り注ぐ符や苦無を魔杖で弾くのに集中している。
「あっちゃっんあっちゃん、ちょっと腰から上は微動だにしないまま音速超えて移動してみない?」
「誰がやるか」
 そんなイリーツァの後ろで、烏鵠とアルバートが妙なやりとりをしていた。
「そっかーダメかー……なら太鼓叩いて敵吹っ飛ばすとか」
「そんな技使ったことないだろ、却下」
「衝撃波……」
「妥協案みたいに言い出すことかそれ」
「ダメかぁ。……ダメかぁ……!!」
「なんでガチめに落ち込んでるんだよ……意味わからんコイツ……」
 この状況で? ってレベルでしょげる烏鵠に頭を振るアルバート。
 烏鵠が何をイメージしているのかさっぱりわからないが、
 コテコテの熱血なノリを要求されていることはアルバートにもわかる。
 そしてアルバートは色々な意味でスレている。平たく言うと恥ずかしかった。
 だいたい、イリーツァもいるというのにそんなことをやっている暇があるわけない!

 そんな矢先、イリーツァがちらりと後ろの二人を見やった。
「……おい」
「ん? どったのいっちゃん」
 しょげる烏鵠が顔を上げた。するとイリーツァはとんでもないことを言い出した!
「お前達は先に行け。私が殿を務める」
「……なンだオマエ……」
「えっこれそういうノリなの?」
 ぽかんとする烏鵠に、困惑するアルバート。
「エ、何それ天然? 天然でやってる?」
「イルまでノるの???」
 などという二人の言葉も、イリーツァにはよく意味がわからない。
 いわゆるお約束の類がピンと来るほど、彼はカルチャーに馴染んでいないのだ。
「加速手段のない私では、お前達に速度で劣る。ならば、これが最も適した役割だ」
 なので常通り、直截な物言いで意図を語った。
「エッ、マジで。マジで? マジかよ」
「なんでコイツものすごい勢いで元気になってるんだ」
 水を得た魚めいて目に輝きを取り戻した烏鵠にげんなりするアルバート。
 だが彼も咳払いすると、まんざらでもなさそうにうんうんと頷いた。
「なるほど、まあたしかにそうだよね。うんうんそっかそっか」
 "!?"みたいな感じの、烏鵠の鬱陶しい驚き顔は努めて見ないふりをする。
「そういうことなら仕方ないよね、適材適所って云うし?」
 マジで? ほんま? ホントに? みたいな顔の烏鵠は全力でスルーする。
「なら先鋒は僕が務める。一直線に道を切り開くから、全力で駆けてくれ」
 これでいいかい、とアルバートは烏鵠の方を見、ぎょっとした。
「あっちゃんまでノってくれた……カンペキじゃねーか……!!」
「うむ、よくわからんがやる気が出たようでなによりだ」
「イルのそういうとこが時々羨ましくなるよ……」
「最高かよ……生きててよかった……!」
「そこまで???」
 繰り返しガッツポーズする烏鵠、ちょっとヒいてるアルバート、うむと頷くイリーツァ。
 三者三様凸凹にも程があるが、これが彼らのいつも通りの風景である。

 そしてやることが決まったいま、三人がおとなしくしている理由もなし。
『たかが三人、けして征かせてなるものか!』
 流星めいて正面に立ちはだかる紫陽衆、ざっと十以上!
 それぞれが各々の会得した秘伝の超常を放とうと、高速で印を結ぶ!
「猿真似忍者風情が生意気に……いいよ、なら真似してごらんよ」
 ぐんと速度を増し、イリーツァを追い越しアルバートが先頭に立つ。
 バチバチと、アルバートの体のあちこちから火花が噴き出した。
 違う、彼の体表面の大気が高熱により爆ぜているのだ。徐々に煌光が生まれる!
「この身は空裂く流れ星、命を燃やして輝く光――」
『拝謁せし奪命の符、防ぐも避けるもこれ能わず。さあ足掻くがいい!』
 まったく同時に放たれる、およそ千以上の呪殺符。横殴りの殺意!
 防御も回避も不可能、それはけして大言壮語ではない。
 だがそれを前にして、アルバートは薄く笑った。その体がいま、プラズマの輝きに!
「それはこちらの台詞だ、防げるものなら防いでみせろ!
 カルラ流奥義――"明けの彗星(アストライオス)"ッ!!」
 おお、見よ! いまやアルバートは人のカタチをした超高熱のプラズマである。
 生命力を薪にその身を超常の焔に変え、ただまっすぐに飛び込む単純な技。
 しかしそれゆえに軌道は音速を超え、熱と衝撃とがすべてを薙ぎ払う。
 音の壁が破裂の絶叫をあげれば、たちまち符は焼け焦げ散り散りに!
『ば、バカな!?』
 断末魔すらも、熱と光と衝撃に呑まれ、敵の実体もろとも消えていく。
 かくて混迷の戦場に、箒星めいた一陣の空白――すなわち、道が生まれた!

「ッつぅ……耳がイテェ。本気でヤベーな、あの技」
 音速による破裂音に顔を顰めていた烏鵠だが、すぐに表情を裏返す。
 このチャンスを逃してはならない。一呼吸の裡に祝詞を高速で詠唱した!
 ――"煌神に帰依し奉る。契約に基づき、我に巨獣を貸し給え……"。
「来たれ暴レ猪(あばれしし)、デカくなれ! 行くぞいっちゃん、乗れ!」
「ああ」
 イリーツァは普段どおりの鉄面皮でこくりと頷き跳躍した。
 召喚されたのは、強靭な装甲を纏う小さなウリ坊である。
 しかしそれは烏鵠の言葉に従いたちまちに風船めいて膨れ上がり、
 二人を背中に乗せられるほどの巨大な猪に変じた、というわけだ。
 そしてイリーツァらが飛び乗るとともに、大猪は猛進を開始する!
「っと、ちゃんと道は整えてやらねェとな!」
 烏鵠が取り出したるは、香の匂い芳しき古びた竹扇。名を五行神宴扇と云う。
 陰陽道における五行――すなわち木・火・土・金・水を操る仙具なり。
 ふわりと扇で扇げば、融けた地面がたちまち霜を張り凍りつく。
 強靭な暴れ猪の蹄が氷を砕き、猪突猛進そのままに明けの明星を追う!
『おのれ小癪な、散れ散れ散れィ!』
 だが敵もさしたるものか。紫陽衆はすばやく散開しアルバートを回避。
 そして食虫植物が獲物を絡め取るかのごとく、徐々に陣形が狭まっていく!

「……やはり、量が量だな」
 イリーツァは背後を仰ぎ、追いすがる有象無象を睥睨した。
 すぐに追いつかれることはないだろうが、いずれ元の木阿弥だ。
 いま重要なのは、烏鵠が一刻も早くアルバートに追いつくこと……。
 烏鵠を見れば、狐はまるでイリーツァの言うことがわかっているかのように手をひらひら振った。
 イリーツァは無言で頷き、しかし飛び降りる直前にふと呟いた。
「私にも、そういう情緒が理解できればよかったのだがな」
「あン?」
「それならお前のやる気も、さらに倍増したのではないか?」
 イリーツァは無骨な男である。ゆえにこの手の"お約束"はよくわからない。
 そんな朋友の言葉に、烏鵠は噴き出した。そしていつも通りに笑う。
「いっちゃんらしいなァ! そういうのもアリじゃねーの?」
「そういうものか」
「そういうモンさ」
 はっきり言ってピンとこない。だがそれでいいと彼は思った。
 言葉はそれだけ。龍の男は躊躇なく猪の背を蹴り、ひとり追手と相対す。
『何奴!?』
「名乗りは終えた。貴様らに名乗る名などない」
 端的に切り捨てるとともに、その身がじわじわと姿を変えていく。
 ここに在るはただの戦士に非ず。己の身を以て友を護るもの。すなわち――。
「我こそは盾の龍! 友を倒すならば、まずは私を殺してみせろォッ!!」
 轟――! イリーツァの、否、龍の咆哮が大気を揺らす!
 その身めがけて降り来たる苦無、符、あるいは知られざる忍具忍法雨あられ!
 烏鵠も、先を行くアルバートも、ともに彼の姿を振り返ることはない。
 彼らは知っている。イリーツァがこの程度で死ぬようなタマでないことを。
「やっぱいいなァ、仲間ってよ!」
「オマエが言うと白々しすぎるんだよ、この性悪狐!」
 いつも通りに減らず口を叩き合い、呪われた城へと突き進むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
ルール2

敵を引き付けるって……何言ってるの!?
無茶だよ!

でも、私も残るって言ったところで、許してはくれないか
……わかった。ここはヨハンに任せるよ
これをお守り代わりに渡しておくね
大切な物だから、後で返して
待ってるから

簪を握らせて駆け出したら、もう振り返らない
絶対大丈夫だって、今は信じるしかないから

混戦に乗じ人目を盗んで移動、無用な戦いは極力避ける
けれど、行く手を阻む立ち位置にいる紫陽衆は
姿を確認したと同時にその喉元へダガーを一投
苦無を放つ厄介な紫陽衆の腕は槍で容赦なくなぎ払う
――邪魔しないでくれる?

多少の受傷は気に掛けずお城へ突き進もう
ヨハンも今頃頑張ってる……そうだよね


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

*ルール2希望

敵の数が多いですね
このままではキリがないですし……、
城まで辿り着かなければ意味がないでしょう

敵をひきつけます
出来るだけ目立たぬよう隙をついて駆けてください

人目を引くならこちらだろうか
焔喚紅から黒炎を出現させる
火力に力を注がず広範囲に展開
その隙に蠢闇黒から地に闇を這わせておこう

どうした、炎が怖いのか?
来いよ
骨まで焼き尽くしてやる

敵が掛かれば足を狙う
追う事が出来なければそれでいい
わざわざ姿を晒しているんだ
首を狙ってこい

出来れば近付かれたくないですが
傍に寄る者には影より出ずる者を

多少の敵は彼女自身がなんとかするだろう
……渡された簪、後で返さなければならないな



●誓いの意味
 ごう――!
 ぱちぱちと火の粉を散らし、尋常ならざる黒き焔が燃え上がる。
 それは野火めいて地面をのたうち回り、突き立った符や苦無を飲み込み広がっていく。
 蹂躙跋扈していた忍者達はそれを見咎め、火種の主を中心に包囲した。
「無粋なる者。我らの戦場を灼こうてか」
「たかが野火ひとつ、我らを呑めると思うなよ」
「浅ましきかな。自ら姿を晒すとは!」
 嘲弄あるいは罵詈雑言を浴びつつも、ヨハン・グレインの表情は翳らない。
「どうした。べらべらと口が達者な輩を、この世界では忍って呼ぶのか?」
「……我らを誹るか、愚か者!」
「大言壮語のツケは命で払ってもらうぞ」
「城へ進むも能わぬ臆病者が!」
 殺気立つ紫陽衆を、ぎらりと藍色の瞳が睨めつける。
「臆病者? ……ああ、そうだろうな。俺は臆病者だとも」
 この舌鋒の裏で、ヨハンは静かに蠢く闇を地へ這わせている。
 ちろちろと絨毯めいて燃え広がる黒焔の下、それらを見咎めるのは至難だ。
「さあ、かかってこいよ。骨まで焼き尽くしてやる」
「「「ならば死ね! 素っ首かき切ってくれる!!」」」
 四方より同時に飛びかかる紫陽衆! その動きいささかもズレがない!
 ――しかし、そこまですべてヨハンの想定通り。そして狙い通りである。
 敵は見事に"引っかかった"。頸を狙ってこちらに注意を惹かれた。
 ならば重畳。まず地の底から間欠泉めいて闇が吹き上がり、忍を絡め取る!
「「「何っ!?」」」
「――やめた。あんた達は"ねじ切る"ことにしよう」
 びき、びき……べきり。
 闇は絡め取った忍どもを雑巾絞りにし、あらぬ方向へ捻じ曲げ破砕する。
 血と臓物が飛び散るなか、怖れなき第二陣が彼へと襲いかかる!
「――鳴け」
「「「ぬうっ!?」」」
 奥の手。ヨハン自身の影が風船めいて膨らみ、そして爆ぜた。
 それらは黒い刃となって地面から生えて、忍どもを刺し穿つ。
 すべてを倒せたわけではない。だがほとんどの敵は足を貫かれ動きを封じられる。
 そして黒焔、あるいは闇が獲物を絡め取り飲み込むのだ。
「猪口才な」
「小賢しい」
「所詮は悪足掻き」
 敵は次から次へと無限めいて殺到する。
 冷静に次の手を思索しながら、ヨハンはふと懐に手を当てた。
「――あとで、返さなければならないな」
 その呟きもろとも、苦無の雨と無数の忍術の帳がヨハンを覆い隠した。

 ……一方、呪殺城近傍!
「猟兵どもめ、鬱陶し――がッ」
 舌打ちした忍は、喉元に短剣を突き立てられて断末魔すらなく絶命。
 一陣風が吹き抜けると、ダガーだけが幻のように消え失せていた。
(これで10人目……気づかれてないよね)
 風の名をオルハ・オランシュと云う。暗殺を能くする翼の少女。
 普段ならポニーテールにまとまった髪はしかし、風に荒々しくなびいている。
(ヨハンは、大丈夫かな)
 心配が胸をよぎる、だが足を止め振り返ることはしない。
 そのために別れたのだ。ここで止まってしまっては何の意味もないのだから。

 ……そう、オルハを送り出すため、ヨハンは自ら囮を買って出た。
(敵を惹きつけるって、何言ってるの!? 無茶だよ!)
 色を失うオルハに対し、ヨハンはいつもどおりの静かな面持ちで諭す。
(このままではキリがないですし、城までたどり着かなければ意味がないでしょう)
 道理である。しかしひとりで、しかもヨハンが? ありえない話だ。
 彼は術士であり、普段はオルハの後ろで術を練る支援役である。
(それなら、私のほうが)
(城に乗り込むには)
 オルハの言葉を遮り、ヨハンが言った、
(出来るだけ目立たぬよう、隙を突く必要があります。
 そして迅速に接近できる機動力も。俺にそんなものがあると思いますか?)
 ……彼はもう心を決めている。オルハはそれを、はっきりと理解した。
 よしんば固辞したところで、今度は彼のほうが頑として譲らないだろう。
(……わかった。ここはヨハンに任せるよ)
 言って、オルハはおもむろに己の後頭部に手をやった。
 そして洋簪を引き抜き、髪を広げるとともにそれをヨハンに差し出したのだ。
(これは)
(お守り代わり。……大切なものだから、後で返してね)
 陽に煌く水面のような、黄彩の石を連ねた洋簪である。
 少年は何かを言いかけた。今度はオルハが、その言葉を遮る番だ。
(待ってるから)
 指先が少年の掌に重ねられ、有無を言わさず簪を握らせる。
 そして少女は、もはや振り返ることなく駆け出したのである。

「――……」
 ついさきほどのことを回想していたオルハは、頭を振った。
 今はそんなときではない。己の役目を思い出せ。
「見つけたぞ!」
「女だ!」
「殺せ!」
 頭上。紫陽衆が数名、こちらをめがけ苦無を構えている!
 オルハは意を決して風を頼りに舞い上がり、ウェイカトリアイナを振るう!
「がっ!?」
「――邪魔、しないでくれる?」
 薙ぎ払いはひとつ。吹き飛んだ敵影はおよそ三つ。
 その腕をずたずたに切り裂き、あとは構わず野を疾駆する。
 きっといま、彼も自分と同じように必死に戦っているはずだ。
(ヨハンの、ばか)
 言葉は心の裡で。それを伝えるのは、きっとすぐあとのはずだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

三咲・織愛
ふふふ
立ちはだかる敵が多ければ多いほど、
燃えるというものです

呪殺城、必ずや落としてみせましょう
そのためにも――いざ、参ります!

★ルール1希望

――!
お義父さま!
幻術かなにかでしょうか
まさか再びそのお姿を目にする時がくるなんて

あなたの遺したノクティスは優しい子
私をいつでも守ってくれています
いい機会ですね
例えご本人でなくとも、この槍の力をお見せ致しましょう
安心してください!こんなに使えるようになりましたから!

薙いで、見切り、手足のように槍を振るう
穿ってみせましょう、狙うは急所、胸元目掛け一直線に貫いて


どうして……いなくなったんですかぁ!!!
力いっぱいに顔面に拳を叩き込みます

……ふぅ。すっきりしました



●過去を砕く金剛拳
 あちこちから鬨の声が立ち上り、空からは符と苦無の雨。
 狂乱波濤のさなかにありて、三咲・織愛は頼もしく笑っている。
「さあ、次は誰が相手ですか!?」
 その見た目とは裏腹に、織愛は非常にパワフルな少女だ。
 立ちはだかる敵が多ければ多いほど、壁は高く厚いほどに燃え上がる。
 無数の忍、そびえ立つ城、降ってくる死。いいだろう、相手にとって不足なし。
 民草を苦しめた悪漢どもの姿を覚えていらばこそ、槍を握る手に力は籠もる。

 ――だが。
 そんな彼女をして、現れた姿には瞠目せざるを得なかった。
「お義父、さま……!」
 然り。いま織愛の前に在るは、他ならぬ彼女の義父そのもの。
 その姿、立ち振舞、間違えるはずもなし。だが明らかにおかしい。
「まさか再び、そのお姿を目にする時が来るなんて――」
 ありえない話だ。ここはサムライエンパイア、ましてや戦場である。
 十中八九、幻。あるいは変化した忍がその正体であろう。
 これこそは紫陽衆が誇る模倣忍法。
 技はおろか、そのためならば己の姿も形も自在に変えてしまう秘術!
 いかにしてか、敵は織愛の攻撃から彼女の過去を読み取ったらしい。
 あるいは過去の化身たるオブリビオンならばこその技か――いや、さておき。
「あなたの遺したノクティスは、優しい子……私をいつでも守ってくれています」
 ぶん、と音を立て、龍の変じた槍を構える。敵もまた、構える。
 亡き義父そのままに、されど異郷にて相対する。なんとも不思議な状況だ。
「……いい機会です。たとえあなたがお義父さま本人でなくとも、
 この力をお見せするにはまたとないチャンス。お相手願えますか?」
 言うまでもなし、敵は天敵どもを目通りさせるつもりなどないのだから。
 だが織愛は莞爾と笑った。亡き義父にその槍の腕を"直接"振るえるのだ!
「安心してください――さあ、行きますよ!」
 かくして、決戦が始まる!

 恐るべきは紫陽衆、見た目だけでなく技すらも模倣するか。
 突き出した槍と対手の振るう矛とが噛み合い、がぎん!! と衝突音。
「やりますね……!」
 織愛はすばやく一歩引いて敵の攻撃を誘う。義父はそれに応じる。
 刺突。正中線を狙った三連突きである。かつての織愛ならば見切れなかった。
 今は違う。これらを半身をずらすことで回避、さらにぐるんと槍を薙ぐ。
 横薙ぎを回避するため敵が跳躍する。織愛が想定したとおりの動きである。
(お義父さまそのままの技を、これほどにも……!)
 驚嘆は不要。織愛は薙ぎ払いを振り切る前に、柄を蹴って動きを中断。
 強制的に軸をずらされた槍は、上からの突きおろしを地摺り残月で迎え撃つのだ。
 がぎん!! 衝突、相殺――反発力をねじ伏せての刺突、再びの交錯!
「はあっ!」
 まさに手足の如く。力に緩急をつけ、ぎゃりんと敵の得物を絡め取る。
 懐に入った。敵が地に足をついた瞬間、胸元へ――夜の槍が、突き刺さる!
『がはっ』
 殺(ト)った。だが織愛の勢いはまだ続く。槍を手放し拳を握りしめる。
 その顔を見たときから湧き上がった思い。もっとも強い激情を込めて、
 金剛のように硬くなった鉄拳……否、金剛拳を、顔面めがけ!
「どうして……どうして、いなくなったんですかぁっ!!」
『ぐ、おぉ!?』
 この少女、実はとてつもない膂力の持ち主である。
 その怪力娘が、躊躇なく全力で拳を叩き込んだのだ!
 变化した顔面は陥没し、粘土めいて崩れ、そして消滅した。

 あれは義父ではない。なぜなら彼はすでに亡いのだから。
 混迷の戦場にありて、しかし織愛はふう、と安堵めいて吐息をもらした。
「ああ、すっきりしました!」
 浮かぶ表情は晴れ晴れとした笑顔。そして少女は城を目指す。
 足を止める理由はない。彼の想いは、夜の龍とともに胸にある。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーザー・ゴールドマン
【特殊ルール1】
「ほう、なかなか面白い能力を持っているようだね。そうだね、せっかくだ」
シーザーが様々な世界を巡って見知った猛者たちの姿に変化するように仕向けます。
(非オブリビオンの為に戦うのを自重していた各世界の武芸の達人達)
「重畳だ。それでは楽しませて貰おう」
今回は第一章と同じく徒手空拳で相手。北斗派(でっちあげ)の技を駆使して戦います。
『倚天掌』で貫いたり、『屠龍掌』で真っ二つにしたり、『摘魂掌』で魂ごと粉砕したり、『吸星掌』で命を吸い取ったり……(全部、アドリブ)
「なかなか楽しめた。今回の首魁には御礼を言わないといけないね」



●あくまでも愉悦のため
 カカカカカッ!
 平野を埋めんばかりに降り注ぐ苦無の雨。
 シーザー・ゴールドマンは、これを見もせずに赤黒いオーラで乱雑に払う。
「その程度で私の歩みを止められはせんよ。わかるだろう?」
 刃を振るうまでもない。凄絶なプレッシャーに忍達が呻く。
「ならば見せてくれよう我らの秘術」
「すでにその技その過去見たり!」
「いざや恐れよ、これぞ紫陽の御業である」
 印を切れば、奴らの姿はぐにゃりと粘土めいて歪み変貌していく。
 姿形はおろか、技すらも模倣する超常の秘術。シーザーの片眉がぴくりと動いた。
「ほう……なかなか面白い能力を持っているようだね」
 いかな敵に変じようが、所詮はくぐり抜けた道程である。
 恐れる理由など然程にもない、なので彼は"愉しむ"ことにした。
「私が諸世界で出会った猛者達……彼らの技ならば、あるいは」
 呟く口元には緩い笑み。忍者どもはまんまとそれにひっかかる。
 ほどなくして、現れたるは洋装和装趣様々、老若男女異なる達人達。
 サムライエンパイアの者もいれば、UDCアースの者もいる。
 むろんスペースシップワールドや、ヒーローズアースで出会ったヒーローすら。
「重畳だ」
 恐れはない。全てはこの戯れのために仕向けたことである。
 達人達が構えを取る。オブリビオンでないがゆえに自重していた獲物たち。
 シーザーは猟兵である、ゆえにそうでないものを殺めたり襲うことはない。
 だが今はどうだ。敵はオブリビオンならば――愉しむには十分であろう。
「それでは、存分に味わわせてもらおうか」
 こきり、と男の手が骨を鳴らした。そこへ老齢のヒーローが襲いかかる!
 ユーベルコードを使う、されど猟兵でもオブリビオンでもないもの。
 現役を引退した、経験と技術で戦ういぶし銀の男である。
「君の技をぜひとも味わってみたかったんだ」
 まるで本人に語りかけるように言いながら、徒手空拳で相対する。
 繰り出される拳足、あるいは武器による斬撃射撃をいなしながら、
 横合いから踏み込んできたウォーマシンの殺人兵器をかろやかにかわす。
 回避地点に狙いを定める歴戦のスナイパー。銃弾を見もせずに摘みとった。
「善いな」
 ねじり潰した弾を地面に放り捨て、飛び込んできた蛮族戦士の腹部に貫手。
「北斗派奥義"倚天掌"――というところかな?」
『がはっ』
 胴体を貫いたそれを乱雑に引き抜き、ウォーマシンへ手刀を叩き付ける。
「これは"屠龍掌"だ。どうだね」
『ガ、ガガガ……!!』
 真っ二つに断ち割られた残骸越しに、老齢の達人が飛びかかる。
 人差し指と中指を立て、とんっとその眉間を叩いた。
 途端、それはぐるりと白目を剥き、人形のようにどさりと仰向けに倒れる。
「魂をも粉砕する。これぞ"摘魂掌"――そしてこれは」
『なっ!?』
 背後。死角から暗殺の一撃を抉りこもうとしていた女の頭を掴む。
 そして掌から、超常の力をもってその生気を吸い出す……!!
「"吸星掌"。うむ、我ながらなかなかのネーミングセンスだ」
 すべて模倣ですらない架空の拳。だが魔王めいた蹂躙である。
 シーザーは猟兵である。だが彼の全ては愉しむためにある。
 戦いも。救済も。打倒も。今このときも何もかも。
「実に愉快な催しだ。今回の首魁にはお礼を言わなければ」
 次々に現れる忍達を前に、シーザーは軽やかな声で言った。
 たかが雑兵に、彼の足を止められるはずはない。

成功 🔵​🔵​🔴​

リゼリナ・ファルゼナ
アババやばいですあんな…即死?!即ち死が、ブワワーーって…(竦むリゼリナ…しかしそのとき聞こえる助けた人々の応援の声)(がんばれリゼリナ!)(まけるな正義の人狼騎士!)(お前は俺が倒すのだからこんなところでやられてくれるなよ)(正義の人狼騎士が来てくれてよかった…強い子にあえた…)ッハァァそうだそうですそうとも私は正義のブラック人狼騎士うおおお往きますよシュバルト丸!!(超かっこいいエンジン音で駆け抜けるものの直撃を食らって吹き飛ぶシュバルト丸)シュ、シュバルト丸…!私をかばって…!(ア・リ・ガ・ト・リ・ゼ・リ・ナ…)シュバルト丸ーーーー(慟哭する正義の騎士…(だが悪はまだ残っている!(戦え!



●然るべき機関に罹る必要があるのでは
 即死。然り、この呪殺符、"即死属性"という危険なワードの踊る符である。
 生命の慮外たる猟兵ならばあるいは耐えられる可能性もあるが……。
「アバババやばいですやばいやばいですよこれはやばい!!」
 即死、即ち死である。触れたら死ぬ。それがバンバン降ってくる。
 なのでリゼリナ・ファルゼナはビビった。だいぶ帰りたくなった。
「ブワワーって! ブワワーって!! こんなの無理じゃないですか!!」
 尻尾を足の間に挟んで震える駄犬。だがその時!
(……ばれ……)
「はっ!!」
(がんばれリゼリナ! 負けるな正義の人狼騎士!!)
 彼女は立ち上がった。周囲を囲み声援をあげる多くの人々!
「あ、あなた達は!!!!!」
(ふっ、お前はこんなところでやられるような奴ではあるまい)
 腕組みをしたライバルが、貴様は俺が倒すのだとかなんとか言っている。
(正義の人狼騎士、あなたならやれるわ……強い子に会えてよかった)
 そこはかとなく俗物がとか言いそうな妙な髪型の女も微笑んでいた。
 リゼリナ! リゼリナ!! 正義の人狼騎士、悪を討つ正義の騎士!
 人々が彼女を励ます。リゼリナは己を奮い立たせた!
「ッハァアア!! そうだ、そうです!! そうとも私は正義のブラック人狼騎士!!
 うおおおおお往きますよシュバルト丸!!!!!!!!!!!!」
 パラリラパラリラ! プオープオープオー!!(謎めいたエンジン音)
「とうっ!!」
 リゼリナは愛馬(※バイクである)シュバルト丸に跨がり疾走!
「行かせるものか!」
「死ねぃ!!」
「雑魚はひっこんでいろ!!」
 そこへ降り注ぐ敵の攻撃! リゼリナ絶体絶命だ!
「うわああああっ!?」
 チャカポコチャカポコブゥウウウウウウ――……ウン(エンジン音)
 その時! シュバルト丸がひとりでに跳ね上がり、リゼリナを振り落とした!
 そして自ら攻撃の盾となり、敵を吹き飛ばしながらクラッシュしたのだ!
「「「グワーッ!!」」」
「シュ、シュバルト丸ーーーーっ!!」
 愕然とするリゼリナ。シュバルト丸のヘッドランプがチカチカと明滅する。
(ア・リ・ガ・ト・リ・ゼ・リ・ナ……)
「シュバルト丸ぅううううーーーーーっ!!」
 友は倒れた。正義の人狼騎士は膝を突いて慟哭する!
 だがリゼリナよ! 見よ、敵はいまだ無数にあり! 城はそこにあり!
「くっ、私は戦います! 正義のために!!」
(そうだ、リゼリナ頑張れ!)
(俺を倒した女がこんなところで屈するなよ)
(強い子に会えてよかった……)
(リ・ゼ・リ・ナ・ト・モ・ダ・チ)
「うおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
 そしてリゼリナは征く! 悪の巣窟へと!!

 ちなみに、彼女は最初からひとりきりであり周囲には誰もいない。
 つまりすべて幻覚である。でもなんか本人的には居ることになっているようだ。
 リアルシャドーというやつだろう。忍者達はアホの襲来に恐怖した。

失敗 🔴​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「阿琉陀和式出素滅多流の才堂紅葉です」

先陣を蒸気バイクで駆け、ハンドルを足で操作して演奏する。
蒸気アンプで戦場に響く音。
手の内は知られている。物量による問答無用の飽和戦術で来るだろう。

「私が好き好んで奇矯のふるまいをしていると思いました?」

先の戦いで忍者達がこちらを観察していたのは知っている。
流派を開示させそれに対応する。情報戦とはそう言うものだ。
逆手に取ろう。

「実はその通りです」

後ろ手で髪の毛を解き、品の良い笑みで隊長格を空に打ち上げ、真の姿にて空中でUC。
超重力で呪符や忍者共を上空に引き寄せ、道を開きます。

「ここは任せて先に行ってください」

少しして、落星の如き地響きがします。

『ここ俺希望』


神元・眞白
【WIZ/特殊ルール1希望】
どこかで見た事あるかと思ったらアスレチックもといポークランド。
アルダワの迷宮……まさか、あれは……忘れました。長い名前だった気が。
なんとかかんとかグレートカイザー?あの時散ったはずの姿を取るなんて。

符雨、周りが煩いから魅医をつけるから迎撃しておいて。
同じ様な戦法だから留めるぐらいで。飛威はこっちのサポートを。

あの時できなかった数え歌通りに……飛威、叩くのは結構ひどい。
こんな酷い雨降りの中だと体格が大きくなるのはそれだけできっと大変。
姿はポーク、中身は忍者。傘が無いなら頑張って避けてもらって。
そうそう、符雨の物も混じってるのは早めにいわないと?
10、とうとう幕引きに。



●シリアス? 奴さん死んだよ
 無駄に贅を凝らしたアスレチックコースがそこにあった。
 否、正しくは生み出された。神元・眞白はそれを無表情で見上げる。
「まさか、あれは――……なんとかかんとかグレートカイザーの……」
 正しくはウォークグルェートである。触手の生えたキモい豚だ。
 いかにもこれは眞白の過去に体験した、アルダワ学園迷宮での出来事だ。
 見た目からしてエロコメのためにあるようなオブリビオンが、
 身の程知らずにもシリアスバトルを願った折のアスレチックコースである。
 そしてコースの最上段、ふっふっふと腕組みする巨体!
『また会えたな人形遣い! この俺様が相手だ!!』
 実際はただ变化した忍者なのだが、秘術なので実質本人である。
 眞白は名前なんだったっけと悩みながらも、戦術器達とともに身構えた!
『さあ、あの時出来なかったシリアスバトルをグワーッ!?」 
 その時、アスレチックコースが崩落した。

 ブォオオウウンガルガルガル!! ギャリギャリギキィイーンッ!!
 アスレチックコースを轢殺粉砕しながら現れたのは一台の蒸気バイクだ!
 後部座席には巨大な蒸気アンプが搭載されている! では運転手は!?
「阿琉陀和式出素滅多流の才堂・紅葉です」
 おお、見よ! ハンドルを足で操作しながら蒸気ギターを演奏する女あり!
 無駄にギターテクを披露しながらのご登場である! まだ演奏にこだわるのか!
「なんだあれは」
「あれも猟兵か」
「あれが奴の戦い方なのか」
 追ってきた忍者達は困惑した。あとデスでメタルな音楽に耳を抑えた。
 ……実のところ、紅葉のこのふるまいは考えなしというわけではない。
 彼女は、先の大立ち回りの際、己らに監視の目があったことを察知していた。
 実はこれは与太話ではなくマジなのだが、よくぞ見抜いたものである。
「私が好き好んで、奇矯な振る舞いをしていると思いましたか?」
「「「何っ!?」」」
 忍者達は当惑した。相手はこちらの考えを見抜いていたというのか!?
 ではよもや、いよいよ本当の戦いぶりを発揮するとでも……!?
「実は、その通りです」
「「「何っ!?」」」
「……そこ驚くところ?」
 さしもの眞白もツッコミを入れざるを得なかった。
 ともあれ紅葉はにこりと微笑み髪を紐解くと、隊長格(つまり豚だ)を空に打ち上げた。
『ブヒーッ!?』
「とうっ!」
 そして跳躍! その姿はたちまち彼女の真の姿へ変じた!
「ジャスト5秒で仕留めます!」
『き、貴様何を……!?』
 見ず知らずの豚の襟首を掴み、紅葉はぐるぐると共に回転する。
 すると! ブラックホールに吸い寄せられる星雲めいて、符も忍者達もふたりへと吸い寄せられていくではないか!
「「「うおおおおっ!?」」」
「ここは任せて先へ行ってください」
「あ、でも数え歌が」
「ご心配なく!」
 これぞハイペリア重殺術・墜天!
 彼方へ飛んでいった紅葉と敵影の群れ、やがてそちらから地響きと轟音。
 破壊されたアスレチックコースと、眞白達だけが残された。
「……ポーク、相変わらず良い味でした」
 まあどうせ豚だしいっか、そうだねみたいな感じで後ろで顔を見合う飛威と符雨。
 すでに滅んだシリアス好きの豚に改めて弔いを投げかけ、眞白達はそそくさと城を目指す。

 紅葉の生死? 不明ですがなんとかなるのではないでしょうか。
 ハイペリア重殺術は無敵! そこに音楽の余地は一切ないが……!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
現れましたね、オブリビオン!ここからは私も全力で行きます!――変身!

ニンジャというものは素早い身のこなしで幻惑するような戦い方をすると聞いたことがあります。
長剣で戦うのは分が悪いでしょう。……ですが。それならば、こちらもそれに追いつく可能性を見つけるまでです。行きます……フェンリルアーマー!
まだ拳での戦いは不慣れですが……素早く、数のいる相手となればこのフェンリルアーマーが最も性能を活かせる状況の一つのはず。それに軽装のニンジャの戦い方からも学ぶところはありそうです。この戦いで何かを掴んで見せます!
マリアも援護をお願いね!



●お転婆お嬢様、鎧纏いて悪を裂く!
 ニンジャ。それは平安時代の日本をカラテで支配した半神的存在……ではなく、
 韋駄天のごとき素早い身のこなしで敵を幻惑する、アサッシンである。
 事実がどうかはさておき、アリシア・マクリントックはそのように聞いたことがある。
 であれば、長剣で立ち回るのは分が悪い。なにより数の利があるのだ。
「けれど、私はその程度では諦めません」
 ざん、と一陣の風が吹きすさび、アリシアの腰元に巻かれたベルトが露わになる。
 それはアリシアが超常と渡り合うために手に入れた力。可能性の兆し。
 敵が素早く幻惑するならば、それに追いつくほどの可能性を見つければいい!
「ここからは私も、全力で行きます! ――変身っ!」
 駆け出したアリシアの体が光の粒子に包まれ、そして鎧を纏った。
 白き甲冑の各所には耳や爪といった突起、そしてサイバーな青いラインが刻まれる。
「マリア、援護お願いね!」
 狼が吠え返せば、アリシアの姿は色のある風となってかき消える。
 これこそはフェンリルアーマー。風よりも早く、雄々しく敵を討つ正義の鎧だ!
「否なり! ここは通さぬぞ!」
「天敵よ、我らの術理を知れ!」
 当然のように紫陽衆が立ちはだかり印を切る。
 奴らの周囲にいくつもの秘伝忍法を記した巻物、はたまた恐るべき忍具が現れ、
 獲物を必殺せしめん秘術が解き放たれるのだ――しかし!
「嵐は、誰にも止められませんっ!!」
「「何っ!?」」
 すでにアリシアは眼前。そして両手が霞み、忍者をして捉えきれぬほどの高速連打を次々に叩き込んだ!
 疾い。防御すらもままならぬほどに。まさに天狼の嵐そのものである!
「おのれ、ならばその足を止めて――」
 GRRRRRッ!! 狼・マリアが不埒な忍者の足元に食らいつく。
 敵がよろめいた瞬間、金の髪をたなびかせアリシアが振り返る。
「マリア、ありがとう!」
 声は風の後に。その時には魔狼の爪が忍者を引き裂いていた。
 忍法忍術何するものぞ。敵は徒党を組み、アリシアの上下左右を疾走する。
 まるで分身したかの如き高速移動。令嬢はしかし不敵に笑った。
「その程度ですか? まだ、まだですっ!」
 敵が襲いかかる。攻撃をかいくぐり爪で脇腹を裂く。
 上空から苦無を構えた敵を、数百のラッシュで迎え撃つ。
 斬撃。鎧で弾き強烈なハイキック。不得手とは思えぬほどの立ち回り!
 ひとりならば太刀打ち出来なかっただろう。だが彼女には友がいる。
 マリア。旅立ちのきっかけ。愛すべき朋友。命を預けた半身!
「行くよ、マリア!」
「ウォフッ!」
 力強い声。アリシアはなおも微笑んで鉄火に飛び込む。
 呪いも苦無も忍法ですら、風を捉えることなど出来はしない。

成功 🔵​🔵​🔴​

露木・鬼燈
はわっ!なんかすごいことになってるです。
これはなかなか骨が折れそうなのです。
どう突破するにしても呪殺符への対策はいるよね。
呪いには呪いで対抗、呪炎で焼き払うのです。
瞬身焔舞を発動し、そこに生命力を注いで強化。
呪炎に触れた符を一瞬で灰に変えるです。
あとは忍者をどうにかすればいいっぽい!
まぁ、まともに戦う必要はないとゆーか無駄なことだよね。
ここは一気に駆け抜けるです。
軽功術と呪炎のブースターを駆使して進むのです。
僕だってニンジャなのです。
壁や屋根を移動するくらいお手のものっぽい!
敵の少ないルートを無理やり進むです。
敵の攻撃は連結刃で弾けばいい。
立ちはだかる忍者?
斬ったり、踏みつけたり、止まらずに!



●鉄火場を征く一陣の赤
 走る。一時も足を止めることなく、露木・鬼燈は疾走する。
 空からは無限めいた符。地を埋め尽くすほどの忍の群れ。
 紛れもない鉄火場、骨が折れると感じた第一印象は間違ってはいまい。
「けど、僕だってニンジャなのです!」
 然り! 鬼燈は羅刹の化身忍者、敵が呪いを操るならばこちらも当然である!
「呪炎よ、僕の生命(いのち)をくべてやる!」
 口訣とともに、その身を包むはこの世ならぬ呪いの火炎。
 避ける必要などない。呪殺の符は、呪いの炎に触れた端から灰となって燃え上がる。
 これぞ瞬身焔舞(しゅんしん・ほむらまい)。命を糧とした生命収奪の呪炎である!

「おのれ小癪な忍風情が!」
「我らの忍術なんと心得る!」
「その炎、素っ首まとめて叩き斬ってくれるわ!」
 紫陽衆は当然面白くない。鬼燈を阻まんと同じ速度で並走する。
 呪殺符では効かぬ。そう見えた連中は、あろうことか呪いの炎を模倣した。
「見よ、これぞ我らの……ぐ、うおおおっ!?」
「あはは、お馬鹿っぽい! 僕以外に呪炎が纏えるわけないよ!」
 生命を収奪し、高らかに燃え上がる超常の炎である。
 鬼燈ほどの技量と卓越した生命力があって初めて可能な絶技なのだ。
 哀れ、過去の化身は自ら薪となり苦悶のうちに焼死した!
「よっ、ほっ、とうっ!」
 野を蹴り、壁を駆け上り、屋根という屋根を飛び渡る。
 時折襲いかかる忍者どもの攻撃を、連結刃で巧みに弾き、いなす。
 それでもなお追いすがる者には、呪炎を放って燃やすのみ。
「「「小賢しい!!」」」
「それはこっちの台詞っぽい~」
 目の前に愚かにも立ちはだかった敵の脇をくぐり抜け、すれ違いざまに裂く。
 血漿を払う必要すらない。速度が刃を清廉に保ってくれる。
 いまや鬼燈と追手達は、周囲が絵の具めいて伸びて見えるほどのスピードの中に在る。
「へえ~、この姿の僕に追いすがるんだ?」
「「「我らを誹るなよ、小物めが!」」」
 くすりと鬼燈は笑う。飛礫めいて呪炎を放ち追手を牽制。
 ごう、ごごう! 呪炎はさらに燃え上がる。鬼燈の生命を喰らいて。
 彼の相貌に恐れはない。討つべき敵は彼方の城の中にあるのだから。
 そして戦いの最中に、恐怖するほど彼はなまくらなどでもない。
「邪魔邪魔邪魔~!」
 斬り、踏みつけ、燃やし、潜り、飛び、躱しながら走る。
 疾る! 常人では、その立ち回りの残滓を見ることすら出来まい!
 後に残されるのは、哀れな敵どもの燃え滓と呪いの炎のレールめいた軌跡。
 ぐんぐんと城が近づいてくる。軽気功が風よりも早く鬼燈の身を舞わす!
「さあ、僕とおいかけっこするのは誰っぽい~?」
 紫陽衆何するものぞ。竜喰の忍ここにあり!

成功 🔵​🔵​🔴​

竜石堂・はつら
今度はかけっこですねっ
はつらさんはぺたぺたーっくるくるーっぴょんぴょんって感じで舞うように早足でいきますね

敵はいっぱい、それはつまり、切り結ぶ相手に事欠かないってことですっ!
とはいえ、先を急ぐ身、居合からの剣刃一閃で切り抜けて行きましょう!
剣豪なら誰でも使える業ですから、強さは折り紙つきです、コツは納刀を速くする事です!

例え幾億の符が行く手を阻んでも、はつらさんはそんなに大きくありませんからね!
こちらに来るのはその中の幾許かですから、刀を振って、散らすことなんてわけない話ですっ!
何回刀を収めたかわかりませんが、コツコツやって行けばいつの間にか目的地にはたどり着くはずですから、頑張りましょうねっ



●はつらさん駆け抜ける!
 遮るものはない。建物も壁も、呪殺城を遮るには、城そのものが巨大すぎるゆえに。
 忍? 降り注ぐ攻撃の雨あられ? それは遮るものには含まれない。
「そーれ、しゃきーんといきますよー!」
「がはっ!?」
「では次です!」
「なんだと……!?」
 竜石堂・はつらにとっては、それは障害物に値しない。

 敵は無数。多数ではなく"無"数である。
 もはや平野の地は見えず、空の青すら見切れぬほどの猛攻猛勢。
 それを見上げた時、はつらは思った。
「うん、やっぱり切り結ぶ相手に事欠かないですねっ」
 城への難く遠い道のりなど、はつらにとっては遠足も同じである。
 いやかけっこ同然か。ならば、立ちはだかり追いすがる連中などどれほどのものか。
 奴らは超常の忍である、いかなる秘術秘奥すら模倣するすさまじきものどもだ。
「よいしょっ、はいっ」
 来たる符はどれほどか。千、万、億にも届こうか?
 だがそのすべてがはつらを狙って集まってくるわけではない。
 いわば雨だ。雨はたしかに無限めいているが、雨雲の生み出す水滴がすべてひとりを襲うわけではない。
 百分の一か千分の一か、ともあれさしたる数ではないのだ。
 ゆえに伐ればよい。斬れば散る。ただ繰り返したように鞘走ればよい。
 言うは易い。成し遂げるのは困難などというものではない。
 だがはつらはやってのける。なぜなら彼女はヤドリガミであるゆえに。
 尋常ならざる剣豪ゆえに。立ちはだかる敵をこれでもかと居合で切り捨てる。
「ぺたぺたーっ、くるくるーっ、ぴょんぴょんっ!」
 まるで雨にはしゃぐ子供めいて、口ずさみながら駆け抜ける。
 もうどれほど刀を抜いたか、百か、千か。
 まだ遠い。まだ着かぬ。まだ敵は無数に現れる。
「はつらさん、まだまだがんばりますよっ!」
 だが折れることはない。それが竜石堂・はつらというヤドリガミである。

 言うは易し行うは難し。机上の空論と言わば言え。
 その断行、成し遂げてみせるから彼女は猟兵なのだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

リョーコ・アサギ
SPD判定

※ヒーローマスクの「師匠」設定
SSWの闇の理力を操るフォースサムライマスター
解放軍のフォースナイトに討たれ死亡
身に着けていた眼帯に意識だけが宿りヒーローマスク化
銀河大戦の次元崩壊によりアルダワ迷宮に流れ着き
フォースの素質を秘めたリョーコと出会った

・敵は正統派のフォースナイト
敗北を経て悟った光の理力を駆使して且つての因縁を清算する

「リョーコよ、ここは拙者に任せてもらうでござる
何があっても動じず、その身を委ねてくれるか?」

「何をやってもダメだったウチを、
戦える様にしてくれたのは師匠だよ。もう最初から信じて任せてるよ!」

襲い掛かる無数の光刃を無防備に受けたかと思いきや
そのすべてを弾き返す!



●光と闇
 ふしぎなことに、混迷の戦場にあってそこには空白が生まれていた。
 対峙するのは一人の少女と、ただならぬ剣気を纏う敵である。
 忍が秘術によって変じたそれは、この世界にあらぬフォースの使い手であった。
「ウチ、こんな相手知らない……」
 敵が変じるのは、あくまでもその当人の攻撃そのものか、
 さもなければ当人の記憶を何らかの方法で模したものである。
 であれば、リョーコ・アサギにとってそれは知己であるはず。
 にも関わらず、目の前の敵の姿に、リョーコはなんら覚えがなかった。
『――リョーコよ』
「師匠?」
 その時、彼女の眼帯……正しくは眼帯の姿をしたヒーローマスクが口を開いた。
 リョーコにとっては師である。"師匠"は真剣な声音で言う。
『ここは拙者に任せてもらいたいのでござる』
「……師匠は、あいつを知ってるの?」
『…………』
 沈黙。だがそれはリョーコの言葉に対する肯定であった。
 眼の前のフォースナイトと、"師匠"の因縁は一言では片付けられないのだろう。
「……話せば長くなるのでござるが、拙者はリョーコにお願いしたい。
 何があっても動じず、その身を拙者に委ねてはくれないだろうか?」
 勝手な言葉だ。"師匠"自身もそれは重々承知の上だろう。
 リョーコはしかし、すぐにニカっと笑ってこう答えた。
「何をやってもダメだったウチを、戦えるようにしてくれたのは師匠だよ」
『リョーコ……』
「もう最初から信じて任せてるよ! だからだいじょぶ!」
『……かたじけないでござる!』
 師弟にはそれで十分。もはや言葉は要らない。
 眼帯を中心に理力――すなわちフォースの光が、リョーコを覆った。
 銀河帝国の徽章を誇らしげに着けた敵手が、フォースセイバーを構える。
 疾い。風じみてその姿が消え、直後に襲い来たのはおよそ五条の剣閃!
「……!!」
 リョーコは息を呑んだ。なぜなら"師匠"は『避けようとしない』からだ。
 普通ならば、悲鳴を上げかねない状況である。この肉体はあくまでリョーコのもの。
 だが彼女は師を信じた。己の命を師に託した。
 はたして光の刃は、幼き彼女の体をずたずたに切り裂き――。

『いいや』
 然り。光の刃は彼女の体を、いささかも損じてはいない。
 触れてすら。まるで磁力の反発を受けたかのように静止している!
『我が身を世界の理力と一体と成し、受けた悪意をすべて仕手へと返す。
 これぞ光のフォースの極意なり。すなわち因果応報(リベレーション)!』
 リョーコの手が霞んだ。迅雷の如き速度でフォースセイバーが煌めく!
 敵の五に対し、繰り出した返しの斬撃は十。
 その害意と、師弟の技と絆とを上乗せした必殺の反撃!
「『――キリステ・ゴーメン!』」
 残心。かくて、かつての宿敵の姿は絶叫とともに消え去った。
 光の理力が、師弟の力で過去を乗り越えた瞬間である……。

成功 🔵​🔵​🔴​

テイク・ミハイヤー
何だお前等、紫陽衆だって?それにその出で立ち……ニンジャか!マジで本物のニンジャ?すげぇ!流石エンパイアだ!
って……そ、その姿は!(特殊ルール1希望)

[SPD]マフラーにゴーグルそして手にはスチームモンキー……俺の物真似か!って待て待て!俺はもうちょっと足が長くて顔立ちもシュッとしてて。
え?そういうくだりはいい?
さっき使った即席爆弾で仕掛けて来るつもりだろうけど、こういう芸当も出来るんだぜ?
UC加速迎撃。その爆弾を爆発する前に撃ち返す!技巧を凝らして俺に化けたのが仇になったな!
あと俺はもうちょっと背が高いし、声も渋めで……。
え?そういうくだりはいい?



●アメイジング!
「すげぇ! ニンジャだ! マジで本物のニンジャ?」
 雨あられと降り注ぐ呪符をえっちらおっちらとかいくぐりながら、
 あちこちを影めいてあるいは風の如く飛び回る敵影に快哉をあげる。
 テイク・ミハイヤーはヒーローである。つまりは地球の人間だ。
 このサムライエンパイアの景観文化尽くは、彼の知るジャパンのそれに近い。
「シヨーシューか、さすがエンパイアだ、まさかニンジャが見れるなんてな!」
 おかげで別の意味でテンションが上がっていたのだが、喜ぶのはそこまで。
 目の前にスタッと降りてきた者を見て、テイクは愕然とした!
「そ、その姿は……!」

 風にたなびく赤いマフラー。
 パイロットめいた大きなゴーグル。
 そして手にはスチームモンキー……。
「って、俺のモノマネじゃねーか!!」
 然り。そこにいたのはテイク自身を模したニンジャである。
「待て待て、俺はもうちょっと足が長くて、顔立ちもシュッとしてて……」
『何言ってやがる、お前の足が短くてブサイクなだけだろ!』
「んだと!?」
 鏡の前に立ったかのように、同じ姿の二人が言い争う。
 どうやら秘術は、姿形だけでなくその中身までも模倣するらしい。
 きーっとヤケになるテイクを、映し身はけらけらと嘲笑った。
『さあて、そんじゃ派手にブッ散らばってもらうとするか!』
 そして映し身が取り出したるは、どこでこしらえたのか即席爆弾。
 いかにも悪党どもに見舞ったのとまったく同じ。
 いや、ニンジャの秘技が使われているぶん、威力は明らかに上か!
「へっ!」
 しかし、テイクはそれを見て鼻をこすりながら不敵に笑った。
『何がおかしいってんだ? お前はこれからドカンなんだぜ!』
「なあに――俺が、それ"だけ"だと思ってんのが面白くってな!」
『言ってろ、冴えねえ遺言だぜ!』
 ブンッ! ベースボールめいて爆弾を投擲する映し身!
 テイクはその爆弾をじっと見つめる。避けも防ぎもせず、正面から。
 そして……なんと! スチームモンキーをバットのように構えた!?
『なっ』
「集中するまでもねえ、だってお前は俺なんだからなっ!!」
 SMAAAAAAASHッ!! 真芯を捉えたスイングは的確に爆弾を打ち返す!
『しま……ッ』
 避ける余裕などない……KA-BOOOOOM!!
「よっしゃあ! ホームランならぬ"ボーム"ランだぜ!」
 テイクはぐっとガッツポーズ。ヴィジランテとしての発想の勝利だ。
 そう。使えるものはなんでも使い、発想と機転で勝利を掴む。
 ユーベルコードのほかは何の特別な力も生まれも持たない者だからこそ、
 テイクはどんな時でもテクニックとイマジネーションを活用するのだ。
「技巧を凝らして俺に化けたのが仇になったな!
 あと俺はもうちょっと背が高いし、声も渋めで……」
「「「おのれ猟兵め! 覚悟せよ!」」」
「っと、そういうくだりはいいってか? 忙しないね!」
 次なる敵影を見上げ、少年は不敵に笑う。
 どんな時でも。それが、ヒーローというものなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
まずは城か
なるべく急ぐとしよう

界離で時の原理の端末召喚。淡青色の光の、格子状の針金細工
自身を呪殺符が存在しない時間に置いて影響を回避
まっすぐ城を目指す

そこらの忍者は勝手に攻撃を仕掛けてくると考え、被弾で自動起動する消失での反撃に任せる
仮に威力不足なら破天で掃討
高速詠唱と2回攻撃で間隔を限りなく消し、全力魔法と鎧無視攻撃で威力を最大化
敵性個体の周囲を纏めて消し飛ばす面制圧飽和攻撃
攻撃の密度速度で圧殺する



●原理を紐解くもの
 豪雨の中、水滴のみを避けて進むことは出来るだろうか?
 あるいは吹雪の只中を、雪に触れずに通り抜けることは?
 理論的には可能かもしれない。なぜならそこには隙間があるのだから。
 雨は極論を言えば水滴が高速で降って落ちているのに過ぎず、
 吹雪とは雪が風の中をびっしりと満たして吹き荒んでいるものだ。
 ……だが、そんなことを実践しようとする者はいない。
 なぜならば、出来ないからだ。理論的と言っても屁理屈に近い。
 雨は避けられない。雪を躱すことなど出来はしない。
 いまここに降り来たる、無数の呪符もまた同じである。
 ゆえに進むには、どうにかしてこれを防ぐか消し去る他にない。

 "普通"ならば。
「……!?」
 そのさまを目の当たりにした紫陽衆の一員は、我が目を疑った。
 まるで日向道を歩くかのごとく、男は悠然と駆けているからだ。
 魔術で膜を張ったか? 否、その気配はない。
 では神速の技巧で守りの壁を振るったか? その気配もない。
 風。光。違う。ただヤツは、針金細工を傍らに進んでいるだけ。
 "なのに、呪符は何一つ触れていない"。弾かれてすらいない。
 まるで男がそこにいないかのように、当たり前のように落ちている。
「な……」
 疑問を口にしようとした。だがその前に全てが消し飛んだ。
 点でも面でもなく、辺り一帯を吹き飛ばすような飽和攻撃がそれを為した。
「――邪魔だ」
 アルトリウス・セレスタイトは、敵を一瞥すらせずただ言い捨てた。
 そして進む。淡青色の光の、針金細工が時の原理を証明する。
 それは世界の根幹に根ざす、余人には理解できぬ原理の干渉端末。
 時間という概念に触れ、自らの位相をずらすことによる当然の結末。
 いま、アルトリウスはここにいるが此処には居ない。
 彼という存在は、呪殺符などが存在しない時間軸に置かれている。
 敵性個体に対して、何かしらの反撃を意図する必要もない。
 設定された通り、驚異的な密度速度の攻撃が全てを圧殺するのだ。
「いかに秘術秘奥といえど、"原理"を模倣することは出来まい」
 傲慢などない、事実を端的に述べたまでのシンプルな言葉。
 その通りに、忍たちは己らがなぜ滅びるのかもわからぬままに滅びた。
 誰も、何も、アルトリウスの道を遮ることは出来はしない。
 男はひとり野を征く。原理を識る者は、しかしそれゆえに孤独である。
 敵もなく、ならば伴もなく。ただひとり、野を征く。

成功 🔵​🔵​🔴​

雷陣・通
おおっ……まさか?
父ちゃんか!
すげー!
サムライエンパイヤに父ちゃん出た!

って、なんで苦無投げんだよ?
あれか?
修行の成果を見せてみろってヤツか
見てろよー

『前羽の構え』にて苦無や紫電会の空手を防御に回る
「紫電の空手は連撃が故、守勢だとペースをつかまれる。ならば徹底的に攻撃を捌き切り」
攻撃のタイミングを見切って、先制攻撃からカウンターで二回攻撃、正拳からのハイキック
「今度はこちらが攻勢を握る」
『紫電の空手』で攻撃回数を増やし、二回攻撃で更に増やし、フェイントを混ぜて左右から攻撃
「そして死に至る雷を見舞うべし」
殺気を込めた残像をフェイントに真正面からの『正中線五段突き』
あれ、父ちゃんは……なんだ幻覚か



●雷の教え
「おおっ?」
 雷陣・通は、思わず足を止めて眉根を顰めて訝しんだ。
 陽炎めいて揺らめく彼方に見えるフォルム、あれは……。
「まさか?」
 いや、そんなはずはと訝しむ。しかし見間違えようはずもない。
 瞬きし、目元をこすり、二度三度と見直して確信した。
「父ちゃんだ! 父ちゃんか! すげー!」
 雷陣・通は子供である。彼には姿を消した父がいる。
 武者修行を謳って失踪したその背中を探し、今日まで戦ってきた。
 しかし、よもやサムライエンパイアでその姿を目の当たりにしようとは!
「おい父ちゃん、探し――うおっと!?」
 ヒュンッ! カカカカカッ!
 突如として"父"が投げてきた苦無を、通は慌てて回し受けで弾く。
「なんで苦無なんか投げんだよ? あれか、修行の成果を見せてみろってヤツか!?」
 冷静に考えれば、忍者が変異したものと気がつくところ。
 しかし通は。子供である。ついでにいうと少々お味噌が足りていない。
「おっしゃ! 見てろよ父ちゃん、ライトニングに決めてやらぁ!」
 だが意気込みは十分。父の姿をした忍に紫電を纏い挑むのだ!

 初撃は布石。敵はさらに無数の苦無を投擲して接近してくるはずだ。
 ゆえに通は絶対的防御姿勢である"前羽の構え"でこれを迎え撃つ。
 脳裏に、在りし日の父の教えが蘇る。
『紫電の空手は連撃がゆえ、守勢だとペースを掴まれる』
 降り注ぐ苦無! 通はこれを冷静に受け流し、あるいは指で掴み取る!
 三戦を基礎とする前羽の構えは、あらゆる方向からの攻撃に対応しうる。
 基礎にして秘奥とされるこの構え、極めればおよそ無敵と言っていい。
『ならば徹底的に攻撃を捌き切り』
 "父"が疾走し、さらに苦無を投げ放つ。通はひたすらにいなす。
 たしかに猛攻だ。だが攻撃には、必ずテンポや呼吸というものがある。
 守勢とはそれを見切るためのもの。前進のための予備動作だ。
 苦無の雨が――止んだ。ここだ、ここに間隙がある!
『今度は、こちらが攻勢を握る』
 紫電の空手ここにあり。通の姿が残像となり、一瞬にして消えた。
 まず一撃。さながら張り詰めたゴムが解き放たれるかのごとく、
 こちらから間合いを詰めての正拳、そしてハイキック。"父"はこれをまともに食らう。
 怯んだ瞬間に次の隙が生まれる。勢いを殺さぬままのソバット。
 さらに鉤突きからのショートフック。前蹴り――否、これはフェイント。
 敵がまんまと引っかかった瞬間、蹴り足は側頭部に叩き込まれる。
 体軸を切り替えてのローキック! 足元に注意を逸らした上での左右連突き!
 完全にイニシアチブは通が握った。そしてこれらはすべて布石に過ぎぬ!
『そして――』
 父の教えが今の光景と重なる。
「『死に至る雷を見舞うべしっ!!』」
 殺気を迸らせる。敵は眉間を抉られる幻影に囚われて上段ガードをとった。
 その時、通は身をかがめ両足でがっしりと地を踏みしめている。
「せやぁあっ!!」
 決まった! 正中線五段突き、裂帛の気合も清々と!
「どうだ父ちゃん、俺の修行の成果……って」
 残心を打った通は、きょとんと倒れる敵の姿を見た。
「なあんだ、偽物かよ! 道理で他愛ないと思ったぜ!」
 姿を模倣した忍に対する怒りなどなし。ただ晴れやかな手応えがある。
 いつか本当の背中に追いつくため。少年は、今度こそ鉄火場へと勇んで踏み込んだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

八海山・いのこ
引き続き「GWP」でお師匠様とナナちゃんと参加だよっ。
チーム単位で特殊ルール2希望です!

どどどどどど、どうしようお師匠様、ナナちゃん!?
こんなの避けて先に進むなんて無理だよ~!?

ナナちゃんが囮になるって言ってるけど、心配だなぁ…。
でも、そうでもしないと先に進めなそうだし、足止めに一番向いているのはナナちゃんだから、お願いするよっ!

せめてもの援護で錬成カミヤドリで私の分身の鍵を飛ばしてナナちゃんの援護をしつつ、先に進むね!
ナナちゃん、バナナの食べすぎには気を付けてねー!

ちょっと心配…ううん、ナナちゃんはこの後ドヤ顔で再登場しようとするし、その時のセリフ考えておかなきゃね、お師匠様!


難駄芭院・ナナコ
チーム名「GWP」で参加!
チーム単位で特殊ルール2希望!

城が見えてきたな!このまま一気に行くぜぇ!
だけど流石にこの数はやべぇな、なんだこりゃ!?

(しっしょーは何としても到着させてぇし、いのこは…この数見てもう既に泣き出しそうだぞありゃ)
しゃーねぇ!アタイがやるしかねぇな!腹括れぇ!アタイ!
「しっしょー!いのこ!ココはアタイに任せて先に行きなァ!」
いつも通りの自信満々の表情で啖呵を切ってやるぜ!
「心配すんな!こんなトコでアタイ達の旅は終わらねぇ!ぜってぇ追いつくからな!」

WIZ
さぁて、殿の仕事だ!
『流派!絢爛芭蕉!』秘技!黄金果実の絨毯だ!
二人の進路を阻む敵を中心に展開!頼んだぜ二人とも!


西行・胡桃
ばなこ(f00572)
いのちゃん(f01962)と「GWP」で参加
特殊ルール2希望

「大丈夫よ、いのちゃん。流派絢爛芭蕉ならっ!」
……ってこれはもういいのか。癖になったらどうしよう
「ばなこ、任せたよ」
長々と言葉をかける必要はない、信頼しているから
内心滅茶苦茶おろおろしてるのはバレないように!

「あんまり食べ過ぎたら祝勝会で美味しいバナナ食べられなくなるから程々にね」
「どや顔で登場かあ。……すっごくありそう」
どうしよう、全然心配じゃなくなってきた
私って薄情なのかな……

とりあえず、今は走ろう!!
「さぁ、行くよ!!」



●急げ! 進め! 吹きとばせ!
 呪殺城。あきらかに悪の枢軸とわかる歪んだ巨影。
 それを目指し、難駄芭院・ナナコを筆頭とする三人娘は突き進んでいた。
「城が見えてきたな! このまま一気に行くぜぇ!」
「って待って、あれを見て!」
 西行・胡桃が指さした先、立ちはだかる無数の忍達!
 そして降り注ぐ即死の呪符! 途端に平野は戦場と化した!
「うわ、うわわわっ!? ど、どどどどうしようお師匠様、ナナちゃん!?」
 八海山・いのこは、涙目で頭を抑えながら攻撃をかわす。
「ああ、さすがにこの数はやべぇな、なんだこりゃ……!?」
 ナナコをして、この状況にはシリアスにならざる圧力がある。
 胡桃もまた、真剣な表情でいかにして切り抜けるかを沈思黙考していた。
「こんなの避けて先に進むなんて無理だよ~!?」
 いのこの泣き言を、あえて咎める者もいない。
 すでに何名かの猟兵はそれぞれの方法で猛攻を切り抜けているが、
 それでも個人個人が自ら突き進むので精一杯である。
 人数が増えれば増えるだけ、凌ぐべき面積と手数は比例していく。
 ましてやここに集まったのは、種族も何もかも異なる猟兵達なのだ。
 即座の連携行動など至難。むしろ個々人で動くよりも統率が乱れかねない。
 つまり、彼女たち三人は彼女たちの力でこの状況を突破しなければならないということだ。
「ううん、困ったわね……」
「お、お師匠様! なにかいいアイデアは……!?」
「…………」
 考え込む胡桃と慌てふためくいのこを前に、ナナコは無言。
(しっしょーはなんとしても到着させてぇし、いのこはもう泣き出してるし……)
 今はまだ、時折降ってくる呪符を切り払えば事足りる状況だ。
 進めば進むだけ、敵の攻撃も熾烈さを増すだろう。
 かといって足を止めれば元の木阿弥である。つまりじきに状況は詰む。
(考えろ、考えろアタイ! どうすれば――)
 ひたすらに考え続けて、しかしナナコはふと結論に至った。
 ……初めから答えは分かっていたのだ。ただ見ないようにしていただけだと。

「「「ここは通さぬ、我ら紫陽衆の名にかけて!」」」
「ふええええっ!? て、敵まで来たよお師匠様ぁ!?」
「まずいわね……!」
 呪符の雨に混ざり、苦無による面攻撃が三人を襲う。
 かろうじて回避し防御しながら進もうとするが、歩みは遅くならざるを得ない。
(……しゃーねぇ! アタイがやるしかねぇんだ! 腹括れ、アタイ!)
 もはや待ったなし。ナナコは、閉じていたまぶたをくわっと見開いた!
「しっしょー!」
「!?」
「いのこ!!」
「ナナちゃん!?」
 驚くふたりの顔をそれぞれに見つめ、ナナコは頷いた。
「ココはアタイに任せて、先を行きなァ!」
「「ええっ!?」」
 胡桃、そしていのこは驚愕した。当然である。
 こんな状況でひとり足を止めるなど、自殺行為にも等しい。
 ましてや三人で力を合わせてやっとだというのに、ひとりで切り抜けられるわけがないのだ。
 仮に胡桃といのこを送り出せたとして、そのあとナナコは……。
「心配すんな! こんなトコでアタイ達の旅は終わらねぇ!」
「ナナちゃん……」
「ぜってぇ追いつくから、な! さあ行った行った!」
「…………」
 いのこはそれでも心配そうに、おろおろと胡桃とナナコを交互に見た。
 対する胡桃は……ナナコのいつも通りの、自信満々な表情を見つめた。
 彼女がいかに決意し、啖呵を切ったか。胡桃にはありありとわかるのだ。
「……そうね、大丈夫よいのちゃん! 流派絢爛芭蕉なら!」
「ってそれはもういいですよお師匠様~!!」
「いや、案外悪くねぇかもだぜ! へへ!」
 ツッコミを入れるいのこと、悪童めいて屈託なく笑うナナコ。
 そんなナナコの方を見て、胡桃はふっと柔らかく微笑んだ。
「ばなこ」
「ん?」
「任せたよ」
 きょとんと、一瞬だけナナコが目を見開く。そして力強く頷いた。
「おう! さあ、もう時間はないぜ!」
 長々と、あれやこれやと言葉を掛ける必要などない。
 彼女らには絆と、それに足る信頼がある。だから微笑んで送り出される。
(……だって、私がしっかりしてないといのちゃんが泣いちゃうもの!)
 内心、めちゃくちゃおろおろしているのは努めてバレないようにしていた胡桃である。

「さぁて、殿の仕事だぁ!」
 ナナコは空からやってくる忍者達を見上げ、にやりと笑う。
「流派! 絢爛芭蕉の秘技! 黄金果実の絨毯だぁ!!」
 見よ! おもむろに取り出したるは、ナナコ特製携帯皮捨て袋!
 そう、バナナ専用、バナナの皮を捨てるためのグッドマナーな袋だ!
 食べ終わったバナナにも使いみちはある。そういうことなのだ。
「そらそらそらそらぁ!」
「「「な、何ぃ!?」」」
 おいしく綺麗に食べ終えたバナナの皮を、呪符よろしく大量に放つ。
 文字通り足の踏み場もないほどの、まさに黄金果実の絨毯そのもの!
 忍者達は慌てて姿勢を整えようとするが遅い。無様にも滑って転んでいる!
「頼んだぜふたりとも!」
 いのこと胡桃は顔を見合わせ、頷き、走り出す。
 しかしいのこは心配そうに背後を仰ぎ見、せめてもの援護を放った。
 すなわち鍵である。ヤドリガミたるいのこの本体を錬成し放ったのだ。
「ナナちゃん、バナナの食べ過ぎには気をつけてねー!」
「あんまり食べたら、祝勝会で美味しいバナナ食べられなくなるから程々にね!」
 ナナコは笑顔で手を振る。その姿も、符と苦無の雨に覆われ見えなくなった。

「はぁ~、ほんとによかったのかなあ……ちょっと心配」
「そうね、私も……」
「でも絶対、ナナちゃんこのあとドヤ顔で再登場しようとするよね」
「……ああ~、ありそうだわ。すっごくありそう」
 いのこの言葉に、胡桃は味わい深い顔をした。ありありと想像できる。
「……どうしよう、全然心配じゃなくなってきた」
「ええっ!? ……うーん、たしかに」
 薄情? いいや、これもまたふたりからの信頼の賜物だろう。
「と、とにかく! ちゃんとその時のセリフ考えておかなきゃ。ね、お師匠様!」
「ええ、そうね。いまは――走りましょう! さぁ、行くよ!!」
「はいっ!!」
 そして胡桃といのこは、もはや背後を振り返ることなく疾走する。
 目指すは呪殺城。首魁のもとまであと少し!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アイナ・ラウタヴィーラ
同行者:アイリ・ガングール(f05028)

んと、破落戸の次は忍者……ですか。降ってきている符、あまり近づかない方がよさそうです、ね。

アイリさんを呪詛をのせた援護射撃でサポートしつつ、呪符で邪魔をされないように屋根の上にいる術者をユーベルコードで強化したスナイパーの技能で狙撃して排除しながら前進しま、しょう。

主命の為にここまでやる、その心意気は立派、ですが……。
申し訳ないですけど、こちらも仕事なの、です。
アイリさんと私の呪術と貴方達の付け焼刃、どちらが上か試しましょう、か


思ったより敵の数が多い、ですね。え、アイリさん? まさか残るのですか!?
……わかりました。どうか、無事で。必ず生き残って下さい


アイリ・ガングール
【同行者:アイナ・ラウタヴィーラ・f00892特殊ルール2】
 ん。とりあえずは数必要やろての。じゃからみどものかつての配下、赤狼衆を呼び出すよ。
 で、呪殺符はそいつらに庇わせて進もうかねぇ。
 そいでこれだけ数が居ればもう一つ。つまりは味方を先に行かせる事も出来るんじゃな。そういう訳で一つ。アイナや先に行きなね。
 大丈夫大丈夫。ここは婆に任せておきなって。援護射撃をしていたアイナを先に離脱させる。
 よし、それじゃあ遠慮なくつっこませようかね。からめ手で来るならそれに勝る物量と【戦闘知識】よる指揮で。押しつぶそうか



●進む者、残る者
 ……BLAM! ……BLAM!!
「ぐっ!!」
「がはぁっ」
 はるか彼方、呪殺城の屋根上。
 呪殺符を模倣し投擲し続ける役目を負った忍者達が、ひとりまたひとりと倒れる。
 ある者は心臓を貫かれ、血反吐を吐いて屋根から転がり落ちて。
 またある者は眉間を穿たれ、断末魔すらなく仰向けに。
 はたまた喉、目、鳩尾、あるいは大動脈……。
 当然ながら、まだ城まで辿り着いた猟兵はひとりもいない。
 にも関わらず、忍たちは為す術もなく倒されるのだ。
「おのれ、なんたる遠間からの攻撃か」
「まるで千里眼よ。前衛は何を……あぐっ!」
 しかし忍者たちはそこを離れることなく、ただ符を放ち続ける。
 数が減るたびに、新手が城の中から現れその役目を受け継ぎ、また死ぬ。
 では、それを為す超射程の攻撃は、はたしていずこから……!?

 ……城見の野! アイナ・ラウタヴィーラこそがその仕手である!
 BLAM! BLAM!!
「主命のためにここまでやる、その心意気は立派、ですが……」
 愛銃"Valkoinen DMR"を構え、アイナは冷静にトリガを引く。
 スコープ越し、超絶の集中力で得た視界には棒立ちめいた忍者たちの姿。
 油断しているのではない。姿なき死神を認識した上での仁王立ちである。
 その忠義、覚悟に対しては思うところはある。だが。
「申し訳ないですけど、こちらも仕事なの、です」
 BLAM。BLAM。
 一撃一撃、丁寧な狙撃で確実に敵を排除していく。
 足を止めていないとは言え、アイナにそこまでの集中が可能な状況だろうか?
 なにせここは決戦場、符は無限めいて降り注いでいるのだから。
「ん、それにしても一向に数が減らんやねぇ」
 アイリ・ガングールにその答えがある。正しくは彼女の配下たちに。
 いまやアイリとアイナは、赤備えの猛々しき武者達に周囲を守られていた。
 旗印はその装い同様、血の如き赤き餓狼を模した者である。
『者ども、我らが将軍様の御前である! 臆するな!』
 応、と皆が応えた。アイリはその背中を見つめ、ふっと微笑んだ。
 ……これなる者ども、実は生者ではない。一時的に呼ばわれた幽世の民。
 すなわち死者。アイリを名乗る姫将軍が率いていた、赤狼衆なる配下達。
 赤狼衆はアイリの主命に従い、すでに滅びたその身を盾とし彼女らを庇う。
 符が触れれば、もののふ達を二度目の死が襲う。否、事実それは二度目と限らぬ。
 なぜならばアイリの左目は、彼らを呼ばうための焦点具であり、
 ゆえに幾度となくその力を借りてきた。そして彼らはまた滅んだ。
(みどもはまた、汝らを死なせておるのじゃね)
 所詮はユーベルコードによる一時的な召喚物。滅びた残影。
 だが主命のため戦う忍達の姿は、否応なく彼らの忠義を思わされる。
 敵は無数。こちらもまた尽きることはなし。ならば――。

「……アイナや。先に行きなね」
「へっ?」
 出し抜けなアイリの言葉に、アイリは素っ頓狂な声を漏らした。
「数が多いじゃろ? で、こいつらはご覧の通りまだまだ数が揃っとる。
 つまりは味方を先に行かせることも出来るんじゃな。そういうわけでひとつ、な?」
「……アイリさん、まさか、残るのですか!?」
 アイナの驚愕はもっともだ。赤狼衆は無限ではない。
 いずれその数は尽きる。召喚主がその場を離れれば余計に、である。
 アイナを"送り出す"。それはつまり、アイリが残ることを意味している。
「コココココ! 大丈夫大丈夫、ここは婆にまかせておきなって」
 いつも通りに笑い、アイリは顎でしゃくり、アイリを急かした。
 左目を閉じていたずらっぽく笑う女童と、女傭兵の視線が束の間交錯する。
 ……向けられるアイナのそれを、アイリは"右目"でしかと見返した。
「…………わかりました」
 2秒ほどの余韻、アイナは、素直に頷く。
「どうか、無事で。必ず生き残ってください」
「大仰じゃなあ、コココココ! ま、案ずるなと言うとこかの」
 そしてアイナは走り出す。もはやアイリの姿を振り仰ぐことはない。
(アイリさん――いいえ、いいえ!)
 言葉はいらない。アイナは立ちはだかる敵を薙ぎ払い、トリガを引く。
 銃口で狙いを定め敵を穿つ。突き進む。それだけに意識を集中させる。
 そうせよと彼女は言った。ならばそうするのが兵士の仕事なのだから!

「さあてと」
 アイリは周囲をみやった。取り囲む忍の数はざっと数十。
 すでに兵士はない。ゆえに彼女は再び左目を見開く。
「嘗て、汝らは勇猛であった――」
 冥門解錠。開けてはならぬ幽世の扉が開かれる。
「敵を食い破るその牙は我が誇り」
 この世ならぬ鬨の声が、左目を通じ常世から響く。
「たとえ冥府魔道に浸されようと、汚れぬ誇りを此処に顕せ!
 来たれや我が同胞、我が牙どもよ! 赤狼衆、ここが汝らの戦場ぞ!」
『主命である! いざや進め赤狼衆! ここが我らの戦場なり!』
 応――! 猛々しき怒声が主命に応える。餓狼がここに強襲す!
『敵を喰らえ! 殺せ! 我らの将軍様に赤狼の様を見せよ!』
 応――!
「コココ……コココココ!」
 おお、赤狼衆、飢えたる狼の牙よ、滅びて死してなおここにあり。
 アイリは、アイリと名乗るかつての将は嗤った。そして鉄扇を掲げ持つ!
「その意気ぞ我が牙ども! さあ、生者の道を拓け死者ども!」
 応――!!
「搦め手何するものぞ、すべて押し潰し食ろうてくれるわ、コココココ!」
 応――!!

 それはまるで、もはや終わったはずの合戦のようであった。
 兵と忍とがぶつかり合い、怒涛と波濤がうずまき彼らの姿を覆い隠す。
 アイナは一度だけ振り返った。もはや、敵も味方も見分けがつかなかった。
 流れ出る血は、赤備えのように地を染め上げ覆っていたゆえに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

片瀬・栞
リアちゃん(f04685)と。
スピードランね!一気にお城を駆け上がって行こう!

>行動
【SPD】アレンジ歓迎
両手のサブマシンガンで前方を撃ちながら前進。
討伐より突破優先!
UC【エアリアルステップ】【ダッシュ】【スライディング】【ジャンプ】。
スモークグレネードで【目潰し】【時間稼ぎ】し敵を抜ける

あー、もう!静音性あって多数を捌く武器が無い!
撃つなってのも無理!なんかしつっこくない!?
後方の敵が多くなり追い詰められたあたりでリアちゃんと合流!
前章と今消費した弾薬を補充。JBに仕舞っておく。ありがとー!
むう先輩め。でもピンチになった手前何も言えない
リアちゃんの言に躊躇しつつ任せて先に行く。…後でね!


リア・ファル
行動SPD
アドリブ歓迎

栞さん(f17024)と

栞さんのピンチにイルダーナで駆けつけ
グッドタイミングだったでしょ?
視の良い先輩からフォローを頼まれてね

UC使用して栞さんの弾薬補充を
これで当面大丈夫だね、
それじゃあ此処はボクに任せて先に行って

確かに二人なら確実に抜けられるけど
厭魅師と対決の時にキミの戦術が限られる方がリスキーだと思うよ
それにボク…忍術には俄然興味があるんだ

オロチウィルスって知ってるかい?
抗体解析した時に…知見は得ていてね
『コードライブラリ・デッキ』ダウンロード、
ボク流にアレンジ…名付けて「インスタンス・大蛇弾(オロチバレット)!」
キミたちの呪殺符とどっちが効くか…試してみるかい?



●ビジネスパートナー
 BRATATATATA! BRATATATATATATA!!
「はいはい邪魔邪魔! どいたどいたー!」
 BRATATATATA! BRATATATATATATA!!
 片瀬・栞は両手にサブマシンガンを握りしめ、トリガを引き絞る。
 これほどの混迷では、いちいち照準を合わせる必要がないのはありがたいことだ。
 立ちはだかる敵を、呪符を、ことごとくを蜂の巣にして道を開く。
 そして突き進む。単純だが、それゆえに効果的な射撃とチャージ。
 本来サブマシンガンとは、機関銃とはこうやって使うものである。
「おのれ!」
「通すな!」
「うっさいなあ、どいてってば!」
 BRATATATATATA!! 即座の応戦射撃で忍者を仕留める!
 そして口で手榴弾のピンを抜き、やおら投擲。スモークグレネード!
 煙幕の中、栞は空中を蹴って加速し、時にはスライディングで足元を抜け、
 空と地上を縦横無尽に駆け抜けくぐり抜けることで前へと進む。
 そう、目的地はあそこだ。あの歪んだ呪殺城こそが本命なのだ。
 ゆえに止まってはならない。足を止めればすなわちいい的である。
「あそこか!」
「逃すな!」
「姿を隠そうと無駄だ!」
「……!」
 煙幕を焚こうと閃光を放とうと、忍者達は栞を見つけ出し追いすがる。
 なぜ? そんなことはいちいち思案するまでもない。"これ"だ。
 サブマシンガンはたしかに突破力に優れるが、当然ながら銃声がやかましい。
 隠密行動などもってのほか。ならばサイレンサーを装着した拳銃で切り抜けるか?
 愚行である。そんな事が可能なのは、悪魔的な視覚聴覚を持つ超人だ。
「あー、もう! 静音性あって多数を捌く武器なんてあるわけ無いじゃん!?」
 かといって射撃をやめる、などとはそれこそ愚の骨頂であろう。
「おのれ小娘め、覚悟せよ!」
「我らに歯向かった代償を支払ってもらうぞ!」
「なんかしつっこいし……ああ、もう!」
 いかに猟兵といえど、戦場傭兵といえど、徒歩では速度に限界がある。
 ましてや彼女に、スピードを高めるようなユーベルコードはないのだ。
 弾薬も尽きかけている。そして敵はさらに増えていく……!
「やば!」
 そして前方を忍者たちに遮られた、まさにその時!

 ZANK! 時空を切り裂く謎めいた斬撃が敵を吹き飛ばした!
「「「何奴っ!?」」」
「ごめんね、今は付き合ってる暇ないかな!」
 ゴシュウウンッ! と推進剤を吹き出しながら現れた一機のマシン。
 それにまたがる少女は茶目っ気たっぷりにいうと、栞をさらって姿を消す。
「リアちゃん!?」
「やあ、グッドタイミングだったでしょ?」
 意外な救世主は、誰であろう栞の知己――リア・ファルであった。
「ナイスタイミングだよ! でもどうして?」
「視(め)のいい先輩から、フォローを頼まれてね」
 なるほど。どうやら"彼"が、栞の存在をどこかで認知したらしい。
 栞はあちゃー、と頭を抑えつつ、ひとまず救援に素直に感謝を示した。
「むう、なるみー先輩め……でもピンチになった手前、何も言えないなあ」
「それよりほら、弾薬を補給しないとでしょ?」
 ブオン、とリアの真横に、ARウィンドウが展開される。
 Dag's@Cauldron。リアが運営するECサイトの商品ページである。
 言わずもがな、傭兵たちのビジネスパートナーであるリアの店舗には、
 弾薬や武器といった物騒な商品も豊富に取り揃えてあるというわけだ。
「お代は後ほどね」
「うん、ありがと!」
 栞は文句を言わずに弾薬を補給し、携帯端末"JB"にしまいこんだ。
 そしてリロードを終え、武器を構える、のだが……?

「ああ、栞さん。ここはボクにまかせて、キミは先に行って」
「えっ! どうして? 二人なら確実に抜けられるのに!」
 道理である、と頷き、しかしリアは首を振った。
「魘魅師と対決する時、キミの戦術が限られる方がリスキーだと思うよ」
 それにボク、忍術には俄然興味があるんだ。
 ウィンクしながら言う少女に、栞はほんの少しだけ心配そうな表情をした。
 だがおそらく、それも含めて"先輩"の読みもあるのだろう。
「わかった。じゃあ……またあとでね!」
「うん、そっちも気をつけて!」
 栞は躊躇しながらも頷き、イルダーナを飛び降りて敵の目をかいくぐる。
 そしてマシンとともにリアはグインと急停止。殺到する忍者に向き直った!
「やあニンジャ諸君! 突然だけど、キミたちはオロチウィルスって知ってるかい?」
 かちゃり、かちゃり。愛銃のリボルバーに弾丸を装填していく。
 それは禍々しき呪いの弾丸。この世界とは異なる戦争で得た記憶のアレンジメント。
 猟兵をして苦戦させられた、恐るべきドクターオロチの悪意の弾丸だ!
「ボク流にアレンジした、名付けて"インスタンス・大蛇弾"ってとこかな?」
 それを知らぬこの世界のオブリビオンをして、警戒を予期なくされるプレッシャー。
 銃口を向け、リアはにやりと小悪魔めいて笑う。
「キミたちの呪殺符と、どっちが効くか――試してみるかい?」
「「「ほざけ、小娘が!」」」
 BLAMBLAMBLAMBLAM!! ……銃声を背に、栞は疾走する!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夷洞・みさき
『ルール1希望』
変化:18歳程の焼けた肌の黒髪金目の逞しい咎人殺しの青年。
七咎潰しの大車輪を担ぐ。
みさきより車輪の腕前は上だった今は亡きそして今も共にある同胞の生前。

偽物でも感慨深い物はあるね。
躰の一部が生前の姿を使われ憤慨。

どこまで再現できているのか興味があるし、兄弟子越えに挑もうか。

僕の同胞にその体を貸してみないかい。

戦い続け再現性向上。真に迫ればみさきの車輪術では勝てなくなる。

車輪では君には勝てなかったけど
他の拷問具なら僕が上だったよね。

肉を轢かせて作った隙に、元青年だった大怪魚をUCにて開放。咬み付き拘束
呪殺符を束ねた八寸釘を敵に刺して呪詛返し。

君が他の五人にもなれたら危なかったかな。



●咎人殺しと咎人殺し
 "我らに理解できぬ戦術なし"。
 新手のユーベルコードを前にした時、紫陽衆は決まってそう嘯く。
 ……いや、"嘯く"などという表現はいささか適切ではない。
 なぜならば、奴らの言葉は真実。いかなる超常ですら模倣してみせるのだから。
 剣だろうが、魔術だろうが、紫陽衆に模倣できぬものはない。
 秘術を用いれば、姿形さえも自由自在に変えられてしまう。
 そう。いままさに、夷洞・みさきが相対する"彼"のように……。

「偽物でも、感慨深いもの"は"あるね」
 ぎしぎしと軋む車輪を褒めそやすように撫でて宥めながら、みさきが云う。
 対するのは、年頃17、8と思しき、焼けた肌の青年である。
 みさきがそうであるように、七咎潰しの大車輪を担いでいる。
 黒髪に金色の瞳。体躯はたくましく、痩身白皙の女とは何もかも対称的だ。
 だがしかし、同じ気配をまとっていた。
 それはつまり、彼女と彼とがともに咎人殺しであったことを意味する。
 ぎしり、ぎしり。みさきの車輪が、憤慨するかのように軋む。
「同胞を刺激しないでくれると嬉しいんだけどね」
 ……然り。忍が模倣したのは、みさきの同胞のかつての姿。
 いまは大車輪として在りし骸の、その生前の有り様。
 骸が憤慨するのも無理からぬもの。ぎしり、ぎしり。
 ――加えて、"彼"はみさきよりも車輪手繰りが上手の男だった。
 体躯を見れば一目瞭然である。しかしてみさきはくすりと笑う。
「僕の同胞に、その体を貸してみないかい?」
 応える声はない。ならば挑み、そしてその罪を禊ぐのみか。
「いいだろう――兄弟子越えと往こうじゃあないか」

 ぎしり! ともに大車輪を放ち/振るい、咎潰しの拷問具が打ち合う!
 六の同胞を裡に秘めたみさきのそれは、重みにおいては上。
 されど技量は彼方が上。膂力にかんしてもまた同様。
 今は車輪の重みと同胞たちの怒りでみさきが拮抗しているが、
 このまま打ち合い続ければ、いずれ"彼"の技を真に模倣されてしまうだろう。
(そうなれば、僕の車輪術では勝てまいな――)
 ぎしり、がごんっ!! ぎし、ぎしり……!
 咎人を押し潰し罪を禊ぐための拷問具は、それ自体が凶悪な鈍器である。
 みさきはまるで地を滑らすように車輪を走らせ、彼方は乱暴に振るう。
 みさきは侍り、ともにあるかのごとく車輪を操る。
 彼方は掴み、道具として乱雑に扱い前へと進む。
(……嗚呼、なるほど)
 撃ち合いながら、反発した車輪を受け止めかわしながらみさきは思った。
(これは、僕の罪を禊ぐ時でもあるのか)
 そう思ったとき、すでに体はそのように動いていた。
 相手が振り下ろした大車輪に、あえてみさきはその身を委ねる。
 ぎちり。ごごん、ごり、ごりごりごりごり、みちみちみち……!!
「噫!」
 それは快哉か。苦悶の絶叫か。艶然たる媚笑か。
 そのどれでもあるようで、そのどれとも違う声だった。
 肉が轢かれる。みさきの骨がきしみ押しつぶされていく。
「――車輪では、君には勝てなかったけれど」
 だがみさきは笑っていた。じとりとその金眼が同胞を見上げた。
「"他の拷問具"なら、僕が上だったよね――?」
 ……ごり、ばきん。
 大怪魚を呼ばう。かつて、彼方のそれであった同胞を超常にて呼ばう。
 牙が、顎がその身を齧りついて動きを止めた刹那、無事な片腕で手繰るは呪符。
 貫くは八寸釘。ごり、ごりり……肉が骨が軋んで轢かれる痛みはすなわち呪詛。
 ありったけの呪いを込めて、微笑んだまま釘を対手の心の臓腑へ。
 ごり――どす、がくん。

「君が他の五人にも成れたなら」
 無残な有り様で、しかし血まみれのままみさきは笑う。
 それは彼女の血であり、咎人の血でもあり、つまりはまだらであった。
「あるいは、危なかったかな」
 ぎしり。咎潰しの大車輪は、満足げに軋んだ。
 まだ咎の禊は終わらない。咎人殺しの巡礼は廻らない――。

成功 🔵​🔵​🔴​

館・美咲
下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言いますが、物には限度っていうものがあるでしょうにーー!?
流石にこの数は刀一本でどうにかするには骨ですし、ここはひとつガジェットくんにお願いしますかね!

とりあえず近づく手段さえあればずばっと一閃出来るでしょうし!
さあ、今日もどんなガジェットくんが出てくるか楽しみですねー、どんな構造なのかなー、どんな機能なのかなー!わくわくです!
おっと、思わず忍者とか符のこととか忘れちゃわないように気を付けませんとね。

それじゃ行きますよー!レッツ、ショータイム!


龍之・彌冶久
おお、遅れて馳せ参じれば居るもいたり忍びども。
それに呪いの雨とはまたけったいな……
いや全く、空模様には似つかわしくない。

どれ、耄碌じじいが何処までできるかはわからんが。
一仕事するとしようか。

【WIZ】
"刃羅万象の型"。

龍脈は『陽脈』『天脈』より、少しずつ刃を紡ぎ拝借する。
天の御星と天照、空、それに天道様の光を借りて。
これ則ち破邪の光の刃也。

さて、呪の雨に対抗し光の雨を降らすとしよう。
遍く物は我が刃たれば、此より降るは"光の刃の雨"。
(属性攻撃:光+ "斬撃属性の雨")
呪いの雨など悉く破ってくれる。
嗚呼、先に行けお前ら。
この様な場など爺に任せておくといい。

【特殊ルール2?(適用するかはお任せ)】


神酒坂・恭二郎
大地や壁面を水面のように泳ぐ星白鮫を召喚し、その背に乗って疾走する。
サーフィンのように大地を滑りながら、スペース手拭いに風桜子を通し、千変万化の布操術で敵を蹴散らそう。
相手の忍術に合せ、布を槍斧鞭、あるいは盾と留まる事を無く変じさせる。
模倣と対応が得意な紫陽衆。
何処までついてこられるかな。

「俺の布操術は銀河武侠の直伝だ。江湖の武侠、その神髄を見せてくれよ」

蹴散らしながら一直線だが、とにかく敵の数が多いのは骨だ。

途中、もし足のない者がいたらフォローしよう。
身を挺して敵を防ぐ者がいたら、感謝して一気に先へと進ませてもらう。

「感謝する。この場は任せた!」

【アドリブ・連携歓迎】



●幕が上がりて剣は舞う
「おわわわ、っとっとっとっとぉ!!」
 符が降ってくる。無数の苦無が雨の氷柱の雹の如くに降り注ぐ。
 愛刀サムライブレイドをぐるりと回し、それらを受け流しながら館・美咲は悲鳴をあげる。
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言いますがぁ!」
 カカカカカカッ! 足元をあわや寸前で埋め尽くす苦無の群れ!
 美咲は慌てて飛び退り、追尾してくる苦無をガギギギ! と斬り裂いた!
「物には限度というものがあるでしょうにーー!?」
 道理である。しかし敵がいちいち道理を聞くはずもない。
 なぜなら奴らはオブリビオン。過去の化身、未来の破壊者。
 天敵にして仇敵たる猟兵を討つためならば、万の雨でも降らせよう!
「ううーん困りましたね、さすがにこれは刀一本で切り抜けるわけにはいきません……」
 思案。だが答えは事実上決まっているようなものだ。
 彼女が振るう蒸気式サムライブレイドは、すなわちガジェットの一種である。
 そして彼女はガジェッティア。居合でダメならば基本に立ち返るのみ!

「ここはひとつ、ガジェットくんにお願いしますかね!」
 ぎらり。アンダーリムの眼鏡のレンズが不穏な輝きを帯びて白く染まった。
 この館・美咲という女、ガジェットに関してはかなりのマニアである。
 ガジェッティアと一言に言っても、その熱意たるや少々度を超えている。
「さあ、今日もどんなガジェットくんが出てくるか楽しみですねー!
 どんな構造なのかなー、どんな機能なのかなー! うふふふふ!」
 ワクワクドキドキ、さっきまでの困惑混乱何処へやら。
 回りにハートマークをひらひら浮かせて、るんるん気分で小躍りする。
 ご覧の通り、ガジェットのこととなると少々回りが見えなくなってしまうのだ。
「それじゃ行きますよー! レッツ、ショータイムッ!!」
 ガジェットショータイム! 何が現れるかはガジェッティアにもわからない!
 ゴシュウ! と蒸気を吹き出し、召喚されたのは……?

 ……美咲はおろか、殺到しかけた忍者たちも思わず唖然となった。
 まず、召喚されたガジェットは……簡単に言うなら、ドア、だろうか。
 真鍮製の扉。あちこちにメーターや歯車、蒸気の噴出口がついている。
 それ自体は、まあガジェットショータイムならよくあることだ。
 問題は、開かれたドアの奥から現れた二つの影だろう。
「むう? 遅れて馳せ参じれば……はてな、これはしたり」
 どうやら本人もわけがわからないのか、祭祀めいた衣を纏う白髪の男。
 その若々しい見た目とは裏腹に、なにやら好々爺めいた古びた口調である。
 男の名を、龍之・彌冶久と云う。ガジェットなどではなくれっきとした猟兵だ。
 それも、神。人ならざる、不老不死の超常存在そのものである。
「居るも居たり忍ども、そして呪いの雨とはなんともけったいな。
 いやまったく、空模様には似つかしくない、が――ふうむ」
 あごひげをさするかのような仕草をしながら、美咲や忍者達を見やる。
 どうやら、彼が転移されてくる瞬間に何がしかの偶然が起きたか。
 背後を仰ぎ見る。これなる真鍮の扉が、グリモアによる転移に干渉したか?
「困ったな、老耄にはいまいち皆目見当がつかぬが――お前、どうだね?」

 然り、現れたのは二人である。もう一人の男が水を向けられ肩を竦めた。
 伊達男めいた装いに、ふわりと黒髪を流す偉丈夫である。
「さあて。ちょいと厄介な輩を召喚しようとしたら、この有り様さ」
 こちらの男、その名を神酒坂・恭二郎と呼ばわる流浪の剣客である。
 此度の戦においては、スペース剣豪ならぬ"拳"豪を名乗りて武を振るう侠漢。
 つまりは無頼の輩である。短い問答からも、その気っ風は感じられた。
 彌冶久と異なりすでにここには参着していた身だが、言葉通り彼は"あるもの"を喚ぼうとしていた。
 それはおそろしの魔物。星の海を滑り泳ぐ人食いの怪物である。
 あるいはその超常の力が、これまたガジェットと干渉しここに引き寄せられたか。
 神と人、種族はことなれど共に剣を能くする者同士。
 僅かな言葉ながら、互いに目を見、立ち振舞を見、そして所作を聴いた。
 挙措を知った。そして識った――この男、いずれもただならぬ使い手と。
「だがまあ、なにやらお困りの方がいるらしいな」
 ちらり。蒸気の向こう、ぽかんとする美咲を見て曰く。
 この男、そうした匂いにはすこぶる鼻のいい好漢である。
 彼方に敵がいる。此方には仲間たる猟兵達がいる。
 ならば、選ぶべき道はひとつであった。

「あ、あの~……」
「おお、お前がこの機械を喚(よ)んだ娘か」
 彌冶久はかんらかんらと、おずおずした様子に美咲に破顔した。
「いやどうやらお前にもさっぱりのようだが、逆に良い頃合いに来れたようだ。
 どれ、招かれたからには一仕事するとしようか」
「ひょえっ!?」
 じわり。好々爺めいた彌冶久から溢れた"圧"に、美咲は戦いた。
 それは彼が神たる証、すなわち龍脈より力を手繰る気配である。
「いい風桜子だ。あんた、名前を聞いておきたいな」
 呵呵と笑う彌冶久を誰何しながら、恭二郎が己の腕を裂く。
 血に浸された絵馬より来たるは、本来彼が召喚せしめんとした魔物。
 すなわち、星の海を泳ぐ星白鮫。獰猛なる人食いの獣である。
「足がないだろう? 乗っておくといい」
「こ、これにですか……?」
「なに、噛みつきやしないさ。――獲物はたくさんいるからな」
 然り。鮫が牙を剥くのは、じりじりと包囲網を狭める忍たちのほうだ。
 美咲は恭二郎に招かれ、恐る恐ると云った様子で星白鮫の背に立ち乗る。
 恭二郎がちらりと彌冶久を見た。翁は微笑んだまま顎で先へ行くようしゃくった。
「「「おのれ面妖な、いざや滅びよ天敵ども!!」」」
 そこへ忍どもが殺到する! しかして彌冶久はすでに"刃"を握っている!
 束ねたるは天の星、そしていと高き空の青と天照らす太陽の光輝。
 掌の内側に撚り集まる光の刃、これを握り、そして振るう。
「これぞ"刃羅万象(じんらばんしょう)の型よ。俺が拝借するは破邪の光の刃也」 あまねくものは我が刃、龍脈を司りし老神はそう嘯く。
 果たして振り払った光刃は再び解け――そして、無数の雨となって降ってきた。
「「「な、何ぃ!?」」」
「如何した。耄碌じじいひとりにずいぶんと大仰に驚くではないか!」
 呵々大笑。忍どもは破邪の斬撃豪雨に"斬られ"て微塵とせむ。
 呪いの雨など何するものぞ。これこそは神に御業なり。
「嗚呼、先に行けお前ら」
 ちらり。思い出したかのように翁がふたりをみやる。
「このような場など、爺に任せておくといい」
「す、すごい……でも先に行けって!?」
 美咲は当然のように驚いた。恭二郎は当然のように受け入れた。
「爺さん。その技は興味深い。感謝する、この場は任せた!」
「呵呵! そうだ若いの、年寄りの云うことは聞いておけ!」
 神と人、ことなれど剣を識る者ゆえの通じ合いか。
 鮫はがちがちと牙を鳴らし、光の雨の中を自在に泳ぐ。
 やがて翁の姿は見えなくなり、無数の敵が立ちはだかる!

「俺の布操術は銀河武侠の直伝だ。紅湖の武侠、その神髄を見せてくれよ!」
「て、手ぬぐいぃ!?」
 ただの手拭いではない、スペース手拭いである。
 これに風桜子――すなわちフォースを通せば、これこの通り。
 飛来する苦無を弾き、撃ち払い、敵を薙ぎ払う槍にも斧にも早変わりだ。
「「「なんたる業前、貴様一体!?」」」
「通りすがりのスペース拳豪さ。お前さんは?」
「えっ? はっ! わ、私だってやれるんですから!」
 思い出したかのように、美咲が愛刀を握りしめ一瞬の裡に振るう。
 豪刃一閃! 蒸気すらも切り裂く、神速必殺の一刀である!
「ジェット居合流の美咲です! ふふふ、ようやく調子が出てきました!」
 ごしゅう! ガジェットが頼もしく唸りを上げる。
「さて紫陽衆、どこまでついてこれるかな?」
「たとえ敵が多くとも、こっちにだって仲間がいるんですよ!」
 美咲と恭二郎は、サーフィンめいて鮫の背に乗りながら互いの背を預けあう。
 先へ行けと託された。ならば刃と拳を振るいて血路を拓くのみ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アロンソ・ピノ
雁首揃えてよくもまあ。
だが残念ながら雨あられの符も、触らなければ良いんだろう?
ユーベルコードは秋弦、刀身の代わりに鋼糸を作ってなんたら符を掴んで、敵の忍者に向けて振り回す。
ただオレの剣は抜刀して変形させる度に鞘に収まらないなら壊さんとならんので、一度秋弦を使ってから剣戟するには鋼糸を引き千切る必要はあるな。
とりあえず基本戦略は符を振り回して敵陣の邪魔な所を崩す。
あとは…地形の利用、クライミングで道なき道を無理矢理よじ登る。握力と指の力はあるからな。
秋弦で作った鋼糸で屋根やらに引っかけて登るのも良いかもしれん
悪いな、剣士ではあるな、普通の剣ではねえべ

――春夏秋冬流、参る。
(アドリブ、絡み等歓迎)



●春が終わり夏は枯れ、かくて廻るは
 秋の音色とは、何か――問われて答えられるだろうか。
 さんざめく紅葉の、木の葉の擦れる音がそうだろうか。
 はたまた降り積もる銀杏を、踏みしめる音がそうか。
 あるいは、ぴゅうと吹いたからっ風こそがそうかもしれない。
 此度に響く"秋の音色"は、枯れ木が軋むきりりという音だった。
 だがここに枯れ木などない。降り注ぐのは無数の呪いの符。
 立ちはだかるは忍たち。挑むは猟兵、未来の守護者。
「雁首揃えてよくもまあ、だが残念ながら――オレにゃあ通じねえ」
 きりり。枯れ木が軋むような音とともに、"何か"が強く張り詰めた。
 それはまるで念動めいて符を手繰り、敵めがけて振り回す。
 あるいはそれは、短冊を通された笹の葉が風に揺らぐかのように。
 近いうちにぽとりと墜ちる、赤や茶の枯れ葉を遺した木々が揺れるように。
「バカな、我らの符が!?」
「一体どんな術なのだ!」
「見えぬ、あれは術ではない……!?」
「忍術なんかじゃねえよ、剣"術"だ」
 アロンソ・ピノはそう言った。その言葉が敵へ届くことはなかった。
 呪いの符が敵めがけて殺到し、致命の呪詛を彼奴らに振りまいたからである。

 はたして、これなる仕業はいかなるからくりか。
 それは、アロンソが握りしめる柄にこそ答えがある。
 きりり。引き絞った柄に応じ、きりきりと虚空が軋んだ。
「秋の音色は聴こえたか――いや、聞くまでもねえな」
 ぶちり。アロンソは乱雑に"それ"を引きちぎった。
 たちまち、張力を失った鋼の糸が姿を表し地へと落ちてしなびる。
 つまりは宝刀"瞬化襲刀"を、糸めいて変異させての立ち回り。
 触らずして符を掴み取り、敵へと返す変幻自在の外道剣。その名を、
「……春夏秋冬(ひととせ)流・秋の型。弐の太刀"秋弦"――そう簡単にゃ模せねえよ」
 納刀。ぱちり、という音は秋が終わり霜が張るかのように。
 アロンソは剣士である。されど、その剣はただならぬものなのだ。
 糸をたぐり、刀を振るい、時には鞭めいて刃を振るう、四季折々めいた変幻自在の型。
 それこそが春夏秋冬流の極意であり、基礎であり、すべてである。
 符が失せた空白を察知し、さらなる忍どもが現れる。
 アロンソは再び宝剣を構え、にやりと笑って敵手を見据えた。
「いいぜ。どんどん来いよ、全員薙ぎ払ってご当主のもとへ馳せ参じてやらあ」
「「「我ら紫陽衆に理解できぬ戦術なし! 畏れるがいい!」」」
 ふ、と鼻で笑う。凄絶なる剣豪の圧が敵をたじろがせる。
「やってみな。――春夏秋冬流、参るぜ」
 春・夏・秋・冬、いずれも廻りて敵に訪れるのはただひとつ。
 すなわち、まったき死にほかならない。

成功 🔵​🔵​🔴​

誘名・櫻宵
🌸 アドリブ等歓迎
ルール1

こんなに沢山!幾つ首が刈れるかしら!
呪詛を込めて『鶱華』纏い
駆けて
第六感で察して見切りで躱し残像でいなす
呪殺の符ごと衝撃波で斬り裂きなぎ払い進む

刀交えた敵が姿を変える
黒い長髪に真紅の瞳の羅刹の女

サクヤ
あたしと恋人ごっこに興じてくれた
かつて愛した憎い女
また会えるなんて!
誘七の家ほしさにあたしの愛を裏切って騙して踏み躙った
偽物でもあなたをまた殺せるなんて
嬉しいわ!

衝撃波込めてなぎ払い傷を抉り幾度も斬り裂き―四肢を穿ち
嗤う
あの時みたいに首を刎ねようか
それとも四肢を?

首ね!
踏み込んで「絶華」を放つ
今度も綺麗に
咲いて頂戴


あたしには愛しくて可愛い人魚がいるの
あなたは『いらない』



●亡い、居ない、要らない
 敵。敵。敵。右を見ても左を見ても、敵がいる。
 紫陽衆。超常の技を、超常をもって模倣するおそろしの忍者たち。
 降り注ぐは死の呪いと致命の苦無の雨。忍術忍法雨あられである。
 だが。その只中を、嬉しげに、楽しげに進む者がいた。
「こんなにたくさん! ああ、ああ、幾つ首が刈れるかしら!」
 纏うは血色の桜吹雪。振るい放つは千、万に届くほどの斬撃と衝撃の波。
 すなわち死である。呪いなどとまだるっこしいことは云いはしない。
 かの龍人は楽しげに、乙女めいて微笑みながら死を振りまく。
「踊りましょう? 舞いましょう?」
 血しぶきが舞う。それすらも桜吹雪に覆い隠される。
「斬って、裂いて、穿(つらぬ)いて!」
 傷が荒れる。苦悶すらも千万の斬撃に呑まれる。
「――美しい、血桜を咲かせましょう」
 陶然と微笑むその死の名を、誘名・櫻宵と云った。
 誰も止められない。止められるはずがない。
 呪いも、忍も、忍術忍法秘術のいずれも無駄・無用・無為である。
 櫻宵の視る先に敵が在り、駆け抜けたあとには死と屍だけがあった。
 生命などくれてやろう。この狂乱こそが心地よいのだが。

 されど、その波瀾も一瞬のうちに終わりを告げる。
「――……あなたは」
 一合。刃を交えた敵が、飛び退った瞬間に姿形を変えた。
 これこそは紫陽の秘技。己の有り様すらも変えてみせる超常のわざ。
 それが取りたる姿は、ぬばたまの黒い長髪に、血のごとき真紅の瞳の羅刹。
 女である。されど笑みは凄絶――櫻宵が見せる笑みもまた、同様に。
「サクヤ」
 知らぬはずがない。忘れるはずもない。
 かつて櫻宵が、かつて持っていた純情を捧げた、愛し"かった"女。
 愛憎とはよく言った。裏返された憎悪のままに斬った女である。
「また会えるなんて。ふふ、うふふふ!」
 狂笑であった。いかにもサクヤなる女はすでに亡い。
 櫻宵の―ー正しくは誘七という家柄を欲し、ただそのためだけに彼を籠絡せんとした。
 かくて愛は裏切られ、憎に裏返り、驕慢の代償は命で支払われた。
 ゆえにわかる。ここに在るのは所詮は偽物、贋作だ。
 だが。ああ、だが! その姿、まるであれと瓜二つ!
「嬉しいわ」
 だから櫻宵は笑った。哂って、"屠桜"を構えた。
「あなたをまた殺せるなんて。ふふふふふ!」
 それはまさに狂気であった。狂喜であり、嬌気でもあった。
 愛憎とはよく言った。サクヤの影は、いまだ櫻宵の中にあるのだから。

 はたして起きた立ち合いは、立ち合いと呼ぶには無残すぎた。
 寿命を奪う超常を快く纏い、血吹雪とともに刃が振るわれる。
 千万の斬撃と衝撃波は対手の攻撃を尽く遮り、防ぎ、払い、これとともに薙いだ。
 斬った。
「足りない」
 裂いた。
「まだよ」
 穿いた。
「このぐらいじゃ全然!」
 斬り裂き穿ち抉り斬り裂き穿ち抉り斬り裂き穿ち抉り斬り裂き穿ち抉る。
 肩を。腹を。胎を。腕を。足を。脚を! ああ、嗚呼、噫!!
「足りない!」
 嗤っていた。高揚の中で櫻宵は想った。
 四肢を断つか首を刎ねるか。傷を抉りながら上の空で考えた。
 あの時の手応えが甦った。もう一度それを味わいたいと何かが囁いた。
「首ね」
 瞬間、櫻宵はすでに対手の一尺近い超接近距離に近づいていた。
 絶無の踏み込み。にこりと、乙女めいた莞爾の笑み。
「今度も綺麗に、咲いて頂戴」
 かくて、空間をも切り裂く剣閃が首元に走った。
 蹂躙である。黄泉路参りなどとは片腹痛し、もはやそれは斬首刑なり。
 手応えはたっぷりと残った。間欠泉めいて吹き出す血の華を櫻宵はたっぷり浴びた。

 ――そして、高揚はぞっとするほどにあっさりと覚める。
 冷めるのではない。櫻宵の裡には、それよりもなお熱き恋心がある。
 愛しきものへの慕情がある。だから高揚は所詮一瞬のものだ。
「あなたは、"いらない"わ」
 斬って捨てた手応え、喜び、狂喜も何もかも。
 謳う人魚への愛おしさに比べれば。枯れた桜よりも無意味なものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

在連寺・十未
※アドリブや連携など大歓迎です。単独リプレイで人知れず足止め、という形でも構いません

さて。僕の最適解はと考えたら。足止めになるな。狭いがある程度動ける空間で、多対一で、防衛。先へ行かせない。実に僕向けの戦闘課題だ

ユーべルコード起動。まず相手を引き付け誘導しながら見えにくいワイヤーを飛ばして飛ばして、退路を断つようにワイヤーを飛ばして張りつつ廊下や中庭、あるいは大広間など、囲まれるように【罠使い】で罠を張った一本道に引き寄せる。このユーべルコードのワイヤーの他。見えやすいのと透明なのと、色々使ったワイヤー空間にね、そしたら【地形の利用】【ロープワーク】【敵を盾にする】を駆使して【時間を稼ぐ】



●亡霊は人知れず
 呪殺城への道を、人知れずにそぞろ歩き踏破した者が居た。
 ではそのものはどうしたか。一足先にと城へと踏み込んだか?
 否である。
「居たか!?」
「いや、見つからぬ」
「ええい、鼠如きがこそこそと!」
 どたどたと城内を駆け回る忍たち。
 それを影から見やりながら、亡霊はついと虚空を視た。
 指先が動く。それだけて鋼糸は彼女の意思通りに張られる。
 中庭。廊下。大広間。果ては城の外側、壁に屋根。
 あちこちを忍よりもか細き気配をさらにおぼろにして忍び歩き、
 無数の網を張り、時には釣り餌めいて気配を晒して敵を誘う。
「こちらだ!」
「おのれ曲者め!」
「主命によって討ち取らん!」
 敵は気づいていない。それがすべて仕組まれたものであることを。
 気配を追う忍者たちは、しかし誘い込まれているのだ。
 わかろうはずもない。なぜなら奴らはたかがオブリビオンである。
 所詮は過去の化身。所詮は未来の破壊者。
「――ああ、来てしまったんだね」
 本物の"亡霊(アパルシオン)"の意図など、見通せようはずもない。
 何故ならば彼女は――在連寺・十未は、まったき糸使いなのだから。
「見つかったならしょうがない。さあ、おいでよ」
 十未はひっそりと手を振る。うっそりと手招きする。
 じりじりと忍たちは詰め寄る。誘い込まれた一本道へ。
 そして袋小路へ入ればそれが最後。きりりと背後で音がした。
「「「何!?」」」
「このあたりには、"出る"から、気をつけることだね。――まあ、もう遅いか」
 然り。これらはすべて布石。張り巡らされた罠はすべて足止めのために。
 敵をひきつけ、閉じ込め、それでも越えようとする者は斬り裂いて。
 城内、さらに発とうとした忍たちを足止めしようという孤軍奮闘。
 だれよりも早く城に辿り着いておきながら、十未が選んだのは時間稼ぎだった。
「猪口才な」
「たかが糸ごとき」
「我らを阻めると思うてか」
 口々の罵倒を、しかし亡霊はあるかなしかの笑みで哂う。
「なら、やってみるといい。――決して、先へは行かせない」
 亡霊は、生者を招いて幽世へ連れ去ってしまうという。
 魅入られた者たちが、その魔手を逃れられるわけがない。
 たとえそれが、仲間たちを襲わんとするものであれ。
 彼女はそう決めた。そして糸が張られた。ならば、全ては彼女の意図通りに。

成功 🔵​🔵​🔴​

灰炭・炎火
結社とは別行動 【そ、その姿は!】

あれ? ……皆おらん! ……もー、迷子になっちゃうんだから、仕方ないなぁー。
ま、奥で合流できるよね……ん?

相手の姿変わってく……あれ、誰?

――それは、2mを超える巨躯
――手に持つは、それより更に巨大な重斧
――刻まれた数字は“Ⅱ”
――狂ったように斧を振るう狂気の戦士

あーし、あったことない……? っ、意識が、急に――――

「……己ニ深イ因縁ガ無イカラカ、我ノ縁ヲ写シ取ッタノハ先代ノ持チ主カ。哀レ。我ヲ振ルイ切レズ潰レテ死シタ弱者メ」
「コチラノ玩具ノ方ガ、余程楽シク遊ベルトイウ者」
「古キ長針ヨ。オ前ノ時計ハモウ止マッタ」

ニャメの重斧、その力の本質を引き出して瞬殺します



●長針に選ばれる、その意味
 混迷の戦場にあって、相変わらずの猪突猛進で剛力を振るう。
 とてつもない、規格外の怪力である。彼女が振るう"ニャメの重斧"は当然として、
 実のところ灰炭・炎火が纏う防具は、どれもこれもが超重量の塊だ。
「あれ? ……みんなおらん!!」
 大地の形をも抉って変える力を振るえばどうなるか、こうなるのだ。
「もー、迷子になっちゃうんだから、仕方ないなぁ~」
 炎火はやれやれと頭を振った。彼女は少々お味噌が足りない。
 何が言いたいかというと、炎火はみんな"が"迷子になったと思っている。
「おっちゃんがいるのに……あー、おっちゃん方向音痴かもしれんね!」
 本人が聞いたらどう反応することやら。おま言うの極地ここにありだ。
 炎火は、自分が迷子になったなどとはさっぱり思っていない。
 思うがままに斧を振り回してたらいつのまにかはぐれただけの話なのだが。

 さて。そんな彼女の前に、一体の忍者が現れた。
「お? あーしと一騎打ち、命知らずやんね!」
 ニャメの重斧を構え、にやりと不敵な笑みを浮かべる炎火。
 しかして忍は挑むことなく、奇妙な印を結んで何かの祝詞を唱える。
 するとどうだ。粘土めいてその身は揺らぎ、みしみしと軋んで膨れ上がる。
 さながら風船のように、あるいは山火事が起こす煙のごとく。
「……あれ、誰?」
 炎火は巨躯を見上げた。七尺、すなわち2メートルを超える巨体である。
 全身の筋肉は内側から膨れ上がり、いまにも爆ぜそうなほどにたくましい。
 だが炎火の視線を奪ったのは、狂戦士の威容などではなかった。
 担ぐ斧。そこに刻まれた、見知った刻印。3メートル近い重斧。
「……ニャネの重斧? あーし、こんな奴知らんね!」
 会ったことがない。誰だ、この男は何者なのだ?
 炎火は困惑した。いかにも、これなる秘術は対手の過去をすら再現する。
 それが紫陽衆の秘術。研ぎ澄まされた模倣のわざ。
 だが同じ得物を担いだ狂戦士は、炎火にとって覚えのない相手である。
 では化身は誰の過去を模倣した? ――否、"何"の過去を?
 答えに至ろうとしたその時、妖精の意識はふっと出し抜けに落ちた。

『……己ニ深イ因縁ガ無イカラカ』
 うなだれていた炎火の口から、彼女ならぬ声が漏れた。
 それは機械的、いやさ悪魔めいたこの世ならぬ声音である。
『"我"ノ縁ヲ写シ取リ、"先代"ヲ模倣シタカ。……哀レナリ』
 Grrrrrr、と、餓えた獣じみた唸り声をあげる狂戦士。
 それは紛れもなくかつての"長針"。ニャメの重斧に選ばれた嘗ての担い手。
 されど声は云う。
『弁エヨ。所詮貴様ハ、我ヲ振ルエズ潰レテ死シタ弱者メガ』
 クロックウェポンは担い手を選ぶ。その理由は器物によりて多岐にわたる。
 炎火が選ばれた理由はなんであろうか。生まれ? 異能? どちらも否。
 ならば信念か。奔放な在り様か。隠された才能や可能性ゆえか。
 否、否、すべて否。彼女が選ばれ、振るうことを"許されている"理由はただひとつ。
『此方ノ玩具ノ方ガ、余程楽シク遊ベルトイウモノ』
 ぐおん。炎火の意識は無いまま、ひとりでに体が斧を振り上げる。
『旧キ長針ヨ。オ前ノ時計ハモウ、止マッタ。滅ビヨ!!』
 GRRRRRRRッ!! 狂える戦士が偽りの重斧を振り上げて襲いかかる。
 ――これなる神の器には、本来の姿とそれに相応しき異能がある。
 重斧など所詮はかりそめ。その真の姿、神斧の力とは、すなわち!
『――滅ビヨト、云ッタノダ』
 炎火、正しくは炎火を操るモノは斧を振るいすらしなかった。
 狂戦士の眼前にぽつんと黒い"穴"が生まれた。ただそれだけ。
 そして周囲の大気もろとも、"穴"は狂戦士も何もかもを呑み込んでいく。
 直後、"穴"は閉じた。――まるで役目を終えたかのように。

「……はっ!?」
 しばしのち、炎火はふっと目を覚まして辺りを振り向く。
 誰もいない。なにもない。符も、忍も、何もかも。
「…………???」
 担ぎ上げた重斧を見た。今はまだ、それが炎火に応えることはない。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルジャンテ・レラ
ルール2希望

多勢に無勢。
戦況は芳しいとは言いかねますね。
そうと解っていながらも前に進んでしまうのは、
私の猟兵としての自覚によるものなのか。それとも……。
いや。今考えるべきではない。

……!
またその"金色"ですか……。
貴方が金で、私が銀で。
貴方は表情も豊かで、私はそうとは言い難い。
搭載された機能数も違う。
瓜二つながら、似ても似つかない存在ですね。

しかし惑わせられるなどと思わない事です。
貴方は隠密の一人に過ぎません。
そもそも、私に刃を向けた時点で、クリューソス本人である筈がない。

10秒間心を鎮め、射た矢で麻痺毒を与えます。
……実際には10秒以上を要したかもしれませんが。
さあ。元の姿へ戻ってください。



●夢の跡
 猛攻を前にして、猟兵たちはそれぞれの方法で突き進む。
 そしてアルジャンテ・レラもまた、多勢に無勢と分かっていて走っていた。
「戦況は芳しい、とはいいかねますが――」
 そうとわかっていながら、なぜ己は前に進んでいるのだろうか。
 猟兵としての自覚ゆえか。その責務を果たさんとする自負からか。
 あるいは……あるいは? 考えようとした、胸がずきりと痛む気がした。
 頭を振る。アルジャンテはただ城を見据えようとする。
 その視界に、見知った金色がふわりと現れた。

「……また、その"金色"ですか」
 かつて、この世界とは異なる場所で、アルジャンテは幻を視た。
 夢の中で、幸福を映し出す蝶たちの鱗粉の中で、それを視た。
 クリューソス。共に作られたいわば兄弟姉妹、されど似ても似つかぬもの。
 金と銀。
 表情豊かなものと、笑顔さえ作れぬもの。
 豊富な機能を搭載された人形と、ひび割れた感情回路の出来損ない。
「あなたと私は、何もかも違うというのに」
 瓜二つの、しかし何もかもが対称的なそれを前に、アルジャンテは不動。
 まどうことなどありはしない。それはかつて視た幻があるゆえに。
「――そもそも、クリューソスが、私に刃を向けることなどないのですから」
 また、胸がずきりと傷んだ。この痛みはなんなのだろうか。
 痛まないはずの胸に手を置いて、じっと敵を見据える。
 クリューソスの姿をした、金色を模倣した、たかが忍ひとりの姿を睨む。
 ……そう、睨む。アルジャンテは知らず裡に剣呑な眼差しを向けていた。
 それは怒り。同胞を模倣されたことに対する、歴然たる憤懣の相。
 出来損ないの人形の、精一杯の、児戯じみた純粋な怒り。
 純朴なそれに打たれ、襲い来るはずの金色はびくりと身をすくめた。
「…………」
 アルジャンテはそれに気づかない。無意識のうちにじいっと目を凝らす。
 ひとつ、ふたつ、みっつ……他の何者も彼を妨げることはない。
 見つめて、見据えて、ひたすらに意識を集中して。
 やがて胸から手を離し、いつものように弓弦を張り詰めさせた。
「…………」
 とお。じゅういち、じゅうに――。
 怒りだけでは、ないのだろうか。敵を撃てぬ何かがあると?
 ……それは躊躇と呼ぶべきなのだろう? だがその理由はなんだろう?
 アルジャンテにはわからない。ただ彼は、頭を振って力を込める。
「さあ、元の姿へ戻ってください」
 祈るようにつぶやいて。矢を放った。

 そして射抜かれた敵は、ものの見事に元の姿を晒していた。
「……」
 アルジャンテはそれを見下ろし、ぽつりと呟いた。
 その言葉を、誰よりも彼自身が訝しんで驚いた。

 ――よかった。

 わかりきったはずの結果に、安堵する己の不具合を。 

成功 🔵​🔵​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
【ルール2】

盾は掲げず、紋章もなく
以て流派などなき無銘の剣なれど
この身は力無き者を守るものなれば
手を拱いて見ている理由もない

妹の邪魔はしない
如何にも曰くありげな組織故
下手に近づけばあの子に不利益を強いるでしょう
――ならばすべきことは、あの子の為
可能な限り数多くの敵をこの場に縫い止めること

《漆黒の夜》を伴に前へ
殺気を無視するような木偶の坊だらけではないわよね?
来なさい、お前達の敵はここよ

可能な限り多数を引き付け、手近なものから順に斬り伏せる
突破を試みる味方が居れば庇いにも入りましょう
痛みなど慣れたもの、足を止める理由にはならない
傷を負えば追うだけ、この身は奮い立つのだから

【連携・アドリブ歓迎】



●混迷のその影で
 彼女は、純白の乙女とそれに付き添うオラトリオの姿を視ていた。
 彼女が照れくさそうに笑い、祈り、献身を以て力を振るうのを。
 ただ視ていた。見て、見届けて、それで去るつもりでいた。
 ――だが敵はそうはさせてはくれなかった。万の波濤と億の悪意がそこにある。
 あそこに、あの子が挑むというのか。
 彼女はそう思った。きっと、あのただならぬ組織の連中はわかりやすく助けはすまい。
 あの子は何かに選ばれた。それはきっと名誉あることなのだろう。
 だが同時に、重く辛い責務を背負わされることでもあるのだろう。
 そのためには、背負う当人の覚悟と力量が必要とされるのは当然のこと。
 わざわざ手を差し伸べたとして、誰よりもあの子がそれをよしとすまい。
 ではどうする。無事を祈って背を向けて、この場を去るか?
 はたまた颯爽とその前に現れて、任せなさいと胸を張るか?
「――くだらない」
 彼女はどちらも選ばない。どちらも彼女の流儀にはそぐわない。
 なぜならば彼女に掲げる紋章はなく、名乗る流派もありはせず。
 誓うべき正道も、ましてや担うべき責務も何もありはしない。
 騎士ならばそうするのだろう。あるいは猛々しき戦士ならばそうするのだろう。
 彼女はどちらでもない。その両方であるがそれだけではない。
(……この身は、力なきものを護るためなれば)
 この地でいまなお苦しめられる多くの人々のため。
 困難に挑むであろうあの子のため。
 ――そうした人々を想い、護りたいと思う己のために。
 暗黒を纏いて、人知れずのうちに女は征く。
 どうか英雄と呼んでくれるな。この道は、影と共に歩む孤独の旅路なのだから。

 ……かくして、アストリーゼ・レギンレイヴは独り戦場に立つ。
 孤立無援である。周囲には百近い忍たちが彼女を取り囲んでいた。
 ただひとり、女ひとりを攻め殺そうと言うにはいささか過剰である。
 だがそうせざるを得ない、見えざる圧力がアストリーゼにはある。
 ゆらめく暗黒がゆえか? 凄絶なる剣気がそうさせたか?
 はたまた、彼女は大破壊を齎すユーベルコードの使い手か?
 おそらくはいずれも否。たとえるならば、それは彼女の魂がゆえ。
「よかったわ。殺気を無視するような木偶の坊だらけならどうしようかと思ったの」
 そんな必死の状況にあって、されど黒き騎士はうっそりと云う。
 誰も彼女を助けない。そもそも暗黒がそれを妨げる。
 伴とするのは漆黒の夜めいた暗黒だけで、おそらく誰もそれを称賛すまい。
 だがそれでいい。称えるな、謳うな、どうか英雄と呼んでくれるな。
「何奴だ」
「名乗る必要はないわ」
 名誉などほしくない。労りやねぎらいなど不要である。
 感謝などもってのほか。あの子の――妹の笑顔は、己に向けられなくていい。
「何故に我らを阻む」
「応える必要もないわね」
 認められればいいのか。対価があればいいのか。
 否である。平穏無事に生きる、そんな安寧など狗にでも食わせろ。
 アストリーゼは騎士であり戦士である。されどそのどちらでもない。
 ただひとつ、夜闇の如き暗黒を伴とし、死よりも冥き闇に身を置く黒き騎士。
 遥かな憧憬は彼方へ。
 ありきたりな奇跡は彼岸へ。
 幾千の痛みを背負い、幾万の傷を受けてなお。
「来なさい、お前達の敵は――此処よ」
 襲い来る敵を、近くに在るものから順に切り伏せる。
 凄絶な剣である。守りを捨てた危険なほど前のめりな刃。
 その暗黒は獲物の魂を啜り、時には呪いをもってその魔力を吸い上げる。
 傷が応報する。そのたびに彼女を包む夜は力を与える。
 アストリーゼは止まらない。防ぐことなく、斬り、薙ぎ、払い、果敢に挑む。
「バカな。貴様は苦痛が惜しくないのか」
「物狂いめ。お前は狂っている」
 数多の傷を帯びてなお佇む女を、忍どもは罵倒した。
「そうね。そうかもしれない」
 アストリーゼはうっそりと言って、なお溌剌たる剣で敵を切り伏せた。
「けれど痛みも傷も連れて行く。それがこの身を奮い立たせてくれる」
 そう在ると決めた。その時から、暗黒だけが伴にある。
 妹のことを思う。彼女に苦難は待っていよう。だがどうか、ああ。
 どうか――少しでも、それが安らかに健やかなることを。
「英雄などと呼ばれなくていい」
 それは己にそぐわない。ただ信念のもとに刃を振るうのみ。
 果てなき道程は、しかし揺らぐことなくたしかに歩まれる。
 暗黒は、唯一無二の盟友のように、アストリーゼと伴にある。

成功 🔵​🔵​🔴​

セレナリーゼ・レギンレイヴ
【そ、その姿は!】
マリア様(f00723)と

伴場様、どうかご無事で
と分かれてマリア様の護衛をしていると他の仲間と離れてしまい
それは迷子かと、と話していれば周囲に敵の姿

それは私には見覚えのない神職
けれど、けれども、ミトロンの書が震えている
許してはいけない、と告げているよう
それに、と周りを見渡せば
屍人の群れ、かつての部族の仲間たち
また殺すことを強いる、彼らを許すことは私にもできません

マリア様、どうか力を貸してください
武器と化した彼女を右手に
ミトロンの書は左手に
書に乞う【祈り】は神罰へと
浄化の光を悪滅の刃に灯して、立ちふさがる一切を斬り伏せましょう
……御身が神の身元で安らかに過ごせます様にAmen.


マリア・マリーゴールド
【そ、その姿は!】

~あらすじ~
ばば様に任せてわるわるサンめっ!てしにいったら迷子になりマリア。

Oh.
セレナ、ココドコデス?
まごになちゃいマシタ。

んン……?あれ、あの姿は。"お父様"デス?

(神職者めいたエルフの姿。)
(前の"長針Ⅹ"、アドナイの神罰の使い手かつ、その有様を"歪めた"本人。)

おお、戦うマス?
non、わかってマス!
お父様いてマシタ!
"哀れで愚かな罪人の咎を須らく清めてあげなさい"

お父様も、最期はマリィが罪を灌いだデスから。
一回じゃ足りなカタデスネ!
じゃ、も一度デス!

ンん?セレナやるマス?
良いデスヨ!一緒にやるマショー!
刻器転身!

……御身が神の身元で安らかに過ごせます様に。Amen.




 姉がただ独り戦い続けていた最中、当の妹はどうしていたかというと。

●罪を濯ぎ、安らぎを祈る
「セレナ、ココドコデス?」
「その、私にも皆目見当がつかず……」
「もしかしてマリィたち、まごになちゃいマシタか?」
「それを云うなら"迷子"です、マリア様」
 てな具合に、マリア・マリーゴールドとセレナリーゼ・レギンレイヴは仲間とはぐれていた。
 完璧完全な迷子である。この鉄火場にあって!? 逆に驚嘆すべきことだ。
「伴場様も皆様も無事ならばよいのですが……」
 セレナリーゼが思案した老婆が如何なる道を選んだかは、少々時計の針を戻さねばならない。
 ここで語られるは、これなる二人の長針と短針が過去の因果と相対する縁。
「Oh,マイゴですネ! ……んン……?」
 いつものようにのほほんとしていたマリアは、しかし眼前に見えた姿に怪訝となる。
 セレナリーゼがつられてそちらを見やれば、エルフの男性が佇んでいた。
(あれは……この世界のものではなさそうですが)
 サムライエンパイアのものとは異なる、僧服を纏った神職者である。
 セレナリーゼには見覚えはない。だが彼女を選んだ刻器は識っていた。
(ミトロンの書が、震えている――?)
 "許してはならない"と。"裁かねばならない"と、そう告げるように。
 そして同時に、得心に至ったマリアがああ、とぽんと手のひらを合わせる。
「間違いありまセン! あの姿は"お父様"デス!」
 ――"お父様"。
 ヤドリガミ、すなわち刻器そのものであるマリアに、常で云う両親は居ない。
 であれば答えは一つ。あれは"かつての長針"だ。
 彼らの属する組織において、長針と短針はすなわち担い手と器物の関係にある。
 それぞれがペアを組み、短針の力を長針が振るう。それによって真のナンバーズ足り得る。
 だがいま、"長針のⅩ"の席は空白。それはマリア――"アドナイの神罰"の在り様が『歪んで』しまったためだ。
 彼女が"お父様"と呼ばうモノこそ、その歪みをもたらした張本人である。
「それは……」
 セレナリーゼは言いかけて、周囲を見渡し息を呑んだ。
 屍人の群れ。かつての部族の仲間たちが、いつのまにかそこに在る。
 それを視た時、セレナリーゼは決然とした表情でマリアを見つめた。

「マリア様、どうかお力を貸してください」
「おお、戦うマス?」
「私には、彼らを許すことは出来ません。マリア様にはお辛いかもしれませんが」
 苦悩の影を見せたセレナリーゼに、しかしマリアは微笑んでこう云う。
「non、わかってマス!  お父様いてマシタ!」
 ――"憐れで愚かな罪人の咎を、須らく清めてあげなさい"。
 その言葉に、セレナリーゼは瞠目せざるを得ない。
 彼女は父と慕う相手を、それが偽物であれ罪人とみなしている。
 つまりそれは。……答えは、他ならぬマリア自身の口からあっさりと出る。
「お父様も、"最期はマリィが罪を濯いだ"デスから!」
「マリア様……」
「一回じゃ足りなカタデスネ! じゃ、も一度デス!」
 屈託のない笑顔。その装いと同じく、無邪気という言葉そのままの純白。
 けがれなき善意は、しかしそれゆえに明らかに歪んでいる。
 彼女に何があった。彼女は何を抱えている? わからない、過去はすべて闇だ。
 白とは清廉の色である。されどそれは、何者にも染まらぬ無慈悲な色。
 ……セレナリーゼは、雑念を振り払う。そして立ち上がる。
「ならばマリア様、どうか私めにそのお力を」
「……ンん? セレナやるマス? 良いデスヨ! 一緒にやるマショー!」
 セレナリーゼにとっては勇気を振り絞って繰り出した言葉を、屈託なく受け入れ。
 刻器転身。その身が純白の断罪刃に変わり、セレナリーゼの手へと収まる。
 右手にはアドナイの神罰。左手にはミトロンの書。
 立ちはだかるセレナリーゼを、過去の化身の群れが徐々に追い詰める。

「ミトロンの書よ。どうか、どうか罪深きモノたちの咎を濯ぎたまえ……」
 祈りに書が応え、生まれた輝きはもう一方の神罰の刃へと注がれた。
 いまや白そのものの光輝を纏った刃を手に、セレナリーゼは一歩踏み出す。
 マリアは何も言わない。彼女が疑問を挟むことなど無い。
 では己は。……湧き上がる諸々を、セレナリーゼは祈りで塗りつぶす。
「悪しき者どもよ、その咎を濯ぎましょう。これなるは我が祈りの輝き。
 汝らを裁くは神の刃。――だからどうか、ああ、どうか……」
 瞑目。刃を振り上げる。紡いだ祈りの言葉に、刃のそれが重なった。
「『"御身が、神の身許で安らかに過ごせますように――"』」
 ……Amen(そうあれかし).
 かくて裁きはくだされた。過去の化身たちは斬り伏せられ光に融けた。
 けれども心の裡に生まれた懊悩は、よりいっそう影を増してそこに在った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アダムルス・アダマンティン
【結社】
適材適所だ。こと防戦に関してあの女の右に出る者はいまい。先を急ぐぞ

ならば俺が執る。来い、ラグ
武器化したラグを手に、立ちはだかる紫陽衆へ突撃する

まずはお手並み拝見だ
武器であるにも関わらず先走って勝手に攻撃を始めるラグにしばらく任せておく

気は済んだか。ならば逆襲を始めるぞ。指示に従え
ラグをユグドラシルの小枝に変化。鎧を砕かんばかりの怪力でもって振るい、まずは手近な敵をどける
照準は任せるぞ
敵が引いたら喰らい尽くす者、アポリオンへ変化
殺し切るのも時間がかかる。牽制射撃で動きを止めて先を急ぐぞ

ラグ、覚えておけ。貴様は手札が多い。だからこそ、よく考えて敵が厄介だと思うことをしろ
それが貴様の価値だ


ビリウット・ヒューテンリヒ
【結社】

戈子殿、行くんだね
無論、止めないとも
貴方が行くのなら、却って私たちは邪魔になるだろうからね
ご武運を

なに、心配はいらないさ
戈子殿がやると言ったなら、必ずやるのさ

さ、我らは我らの道を行こうじゃないか
御大将、カバーは任せて
ラグ、この機会に御大将に教えを叩きこんでもらうといい

バロウズ、急いで食べてね…
──刻器神撃
形態変化『インフィニティ』

フレシェット弾を使うショットガンさ
堅い相手にはあまり効果が無いのだけど…君らには関係なさそうだ
道を開けたまえ、御大将の前で頭が高いよ?

あれ?ところで炎火はどうしたんだい?
ふーむ…はぐれたかな?まぁ、彼女なら心配ないか
おっと、後ろ危ないね。カバーしておくよ


ラグ・ガーベッジ
【結社】
戈子が名乗り出る前にダッシュで先へ進む

仲間が追いついてきたら
「あ”?ババアがやんだろどうせ」
「心配なんざするかよ、昔中国だかどっかで似たようなことしたとか言ってやがった」
「確か髭面で酒飲みの……っと、雑魚がまだ残ってやがったか!」

「誰でも良い、俺を使え!」
刻器転身で武器状態へ変化
アダムルスに装備させる

「ハッ!真似してみやがれ!一回しか使えねぇ変身で何するかしらねぇけどよぉ!」
次から次へと素早く形状を変化させ敵を倒していく

が、数に押され手が回りきらなくなる
「ぐっ……!クソが……!」
アダムルスに叱責され指示通りに変化し武器に徹する
「チッ……」
静かに立ち回りを学び徐々に指示無しで合わせ始める


伴場・戈子
【結社】【ここ俺】
さて、クソガキ(ラグ)が走り出したのを見てから、ゆっくり一歩前に踏み出すよ。
ホラ、アンタたちもボサっとしてないでさっさと行きな。このままじゃクソガキが危なっかしいったらありゃしない。

マリーにセレナは……まあ、過保護も過ぎると毒かね。

あの子達が立ち去ったら、己の分け身たるアンチノミーの矛を呼び出して名乗りをあげるよ。
――我が手より零れし数字は“Ⅲ”。
我が背負いしは“諦念”。
我が至れぬ刻器は“万能”を宿すくにつくりの戈。

護りに関しちゃ、アタシに敵う子はウチでもいないさ。
この諦念をアンタたちが崩せるってんなら……まだまだ捨てたもんじゃないってことさね。

かかっておいで、坊やたち。


ペル・エンフィールド
【結社】
もぉ!皆してペルが居ない所で楽しんで狡いのです!!
ペルだって大暴れしたいのですよ!

あ、婆様が残ってくれるですね?なら安心なのです
ペルは奥のもっと美味しそうな獲物の匂いの方に行かせてもらうのですよ!

ラグったらアダムルスに怒られてしょんぼりですね
あとから来るだろう婆様からお菓子でも貰って元気出すですよ

さて、ペルも暴れちゃうですよ!!
阻めるつもりであるのなら阻んでみるとよいのですよ。ペルを捕まえられるつもりなら…ですけど
翼を止める事無く最速で突っ込んで、邪魔者は踊るように交わして、皆よりも先を目指すですよ




 彼らは時計を模した位階を名乗る。
 ではその流儀に従い、少しだけ時間軸を巻き戻してみよう。
 炎火が斧に振り回され、セレナリーゼ達が罪を濯いでいた頃、その少し前。
 そもそもなぜ、彼らがこうしてバラバラに動くか至ったかを。

●老いてなお猛々しく
 立ちはだかる無数の敵と、降り注ぐ呪いと苦無の雨。
 仮にこれをかいくぐっても、今度は追っ手が無数にかかる。
 行くは難し、戻ることなどもはや不可能。足を止めるのはもってのほか。
 ここはそういう場所だ。そういう戦場である。彼らをしてそう在る。
「面倒だな」
 アダムルス・アダマンティンは端的に言った。全員がそう考えていた。
 面倒。言い得て妙である。一体一体の忍はけして大したことはないのだ。
 それがこれほど徒党を組んで戦術を敷くこと。実に、手間がかかる。
「いやはや、御大将は相変わらず直截だね」
 ビリウット・ヒューテンリヒは呆れたふうでもなく肩を竦めた。
 言って詮無いことではある。その彼をしてこうして言葉がこぼれたのだ。
 つまり事態はそれだけ厄介であり、手をこまねいている暇もない。

 その時、ばさばさと頭上から羽ばたき音が聴こえた。
 防ごうとした呪符の尽くが切り払われ、燃えて崩れて散っていく。
「もぉ! みんなしてペルがいないところで楽しんでずるいのです!!」
 ばさり。現れたのは、鋭利な武器を両足に装着したキマイラの少女である。
 ペル・エンフィールド。彼らと同じく、長針のⅨとして名を連ねるもの。
 すなわち選ばれた担い手。大暴れがしたい、などと喚く様は子供めいているが。
「ああ、うるせえのが増えやがったな! ハブったわけじゃねぇぞ!!」
 そんなペルに、ラグ・ガーベッジは苛立たしげに吠え返す。
 もともと野卑な気っ風のラグだが、この状況に対する苛立ちがなお口を荒くさせていた。
 案の定、ぎゃあぎゃあと少女ふたりが喚き始める有り様である。
「…………」
 そんな四人を見ながら、伴場・戈子は無言。サングラスの下で何を思うか。
 見やる先には無限めいた敵。後方を仰ぎ見ればこちらもまた同様。
 どこかで変節点を生まねばならぬ。……誰かがそれを担わなければならぬ。

 一同がふと雰囲気の変質を感じた時、最初に行動したのはラグであった。
 戈子本人が口を開くよりも早く、である。ビリウットがそれを咎めかけた。
 しかしそれを、当の戈子が制する。そしてこう云う。
「ホラ、アンタたちもボサっとしてないでさっさと行きな。
 このままじゃ、クソガキが危なっかしいったらありゃしない」
「え? え? どういうことなのです?」
 事態が飲み込みきれず、きょとんとした顔のペルが一同を見返す。
「戈子殿、行くんだね」
 ビリウットの言葉に、戈子は無言で皮肉げに笑い、ラグの去ったほうを顎でしゃくった。
「適材適所だ。こと防戦に関して、あの女の右に出る者は居まい。先を急ぐぞ」
 アダムルスの言葉はやはり端的である。そこでペルもようやく事態を飲み込んだ。
「あ、婆様が残ってくれるですね? なら安心なのです!」
 そう言って、アダムルスに追従する形でラグを追って速度を上げる。
 ビリウットはもう一度戈子を見た。老婆はいよいよ口をへの字に曲げる。
「早くお行きよ、まさか止めるってんじゃないだろうね」
「……まさか。無論、止めないとも」
 戈子が残るというのなら、却って他人の存在は彼女の邪魔になってしまう。
 ビリウットはただサングラス越しにその瞳を見返し、こう言った。
「ご武運を」
「ハ! そっちもね。ぬかるんじゃないよ」
 そして最後のひとりも駆け出した。そこで戈子はざりざりと地面を滑り停止する。
 ……土煙が立ち込める。やがてその姿を、数多の敵が取り囲んだ。

 ふと戈子は、どこかではぐれたふたりのナンバーズのことを思い浮かべた。
 あの子たちはどうしているだろうか。この近くにまだいるのか?
 ……そんな風に考えた、自分自身を一笑に付す。くだらない懊悩だ。
「まあ、過保護はむしろ毒かね」
 マリアやセレナリーゼだけではない。他のナンバーズたちのこともそうだ。
 少し気を抜くと、すぐこうしてあれやこれやと益体もないことを考えてしまう。
 あのラグのように、鬱陶しがるならまだわかりやすい。
 セレナリーゼあたりなどは、恐縮してかしこまってしまうタイプだ。
 ああではいけない、ナンバーズたるもの――ああ、またこれだ。
「いやすまないね、歳を取るとあれこれ考え事をしちまっていけないよ」
 前後左右はおろか頭上をすら取り囲む敵の群れを前に、老婆はふてぶてしく云う。
 その手の中に生まれしは、Ⅲのナンバーを刻印された大矛。
 アンチノミーの矛。折れたる短針。神の身の分体にして担い手なき刃。
「覚悟するがいい、天敵よ」
「じきに貴様の同胞も同じ道を辿ろう」
「ここが貴様の死に場所なり」
 傲慢なる言葉を、老婆は呵々大笑して嘲り飛ばした。
「そりゃあいい! やれるもんならやってごらんよ!
 ま、仮に出来たとして――アンタたちがそれを見るこたないだろうがね」
 忍どもは訝しげに片眉を釣り上げる。ズン!! と石突が地面を叩いた。
「――我が手より零れし数字は"Ⅲ"」
 静かな、されどけして拒めぬ迫力を持った、朗々たる名乗りである。
「我が背負いしは"諦観"。我が『至れぬ』刻器は、"万能"を宿すくにつくりの戈」
 然り。アンチノミーの矛はすでに折れたる短針。資格を喪失した刻器。
 大望たる本懐に届くこと能わぬ哀れなロストナンバーなのだ。だがそれでも。
「護りに関しちゃ、アタシに敵う子はウチでもいないさ。
 この"諦観"を、アンタたちが崩せるってんなら……」
 にやりと、口元には巌の如き静かな、されど荒々しき笑み。時を閲したものの凄笑。
「まだまだ捨てたもんじゃないってことさね」
 オブリビオンとは過去の化身である。すでに亡びた旧きものどもである。
 それをして、奴らは畏れた。このちっぽけな、しかし迫力ある老婆を。神を。
「さあ」
 ぐうん、と戈が風を切る。
「かかっておいで、坊やたち」
 ――かくして、戦端は切り開かれた。
 
●大暴れの時間
 ……そして、送り出された者たち!
「ラグ、単独行動は控えろ。状況が状況だ」
「あ゛? ババアがやんだろどうせ、ああいうことは」
 アダムルスの言葉を、ラグは悪童めいた皮肉げな声音で跳ねっ返した。
「そうだね。なに、心配は要らないさ。戈子殿がやると言ったなら、必ずやる」
「心配なんざするかよ、あいつ昔中国だかどっかで似たようなことしたとか言ってやがったぜ」
 駆けながら、ラグは明後日の方を見て思案する。
「たしか髭面で酒飲みの――」
「って、前々! ああもう!」
 突如として立ちはだかった敵を、ペルが急降下して切り裂く。
 ストラスの爪。並大抵のオブリビオンがこの切れ味を防ぐことなど出来ない。
「っと、雑魚がまだ残ってやがったか!」
「やれやれ、相変わらず悪びれないねラグは」
 ビリウットの皮肉を無視しながら、ラグが再び先頭に出る。
「誰でもいい、俺を使え! 刻器転身――!」
 なんとも勝手な振る舞いだ。自分は使われて当然だという傲慢さ。
 ビリウットもペルも顔を見合わせてどうしたものかと思案する。
「いいだろう。ならば俺が執る、来い。ラグ」
 そこでアダムルスが動いた。伸ばした手に、変じたラグが収まる。
 ビリウットとペルは再び顔を見合わせて、肩を竦めた。
「いいのです?」
「御大将には御大将の考えがあるんだよ。――さ、我らは我らの道を行こうじゃないか!」
 女魔術師は、愛銃を――恐るべき魔銃を取り出し、殺意を装填する。
 そしてふと呟いた。
「ラグ、この機会に、御大将に教えを叩き込んでもらうといい」
「あぁ? うるせぇんだよ、俺様は俺様だぁ!」

 そしてラグは、まるで担い手を振り回すかのようにぐいぐいと先行する。
 アダムルスの膂力ならば抑えきれるだろう。彼はあえてこれを自由にさせる。
「面妖な!」
「器物ごときが無双を謳うか!」
「畢竟ただのなまくらなり! 我らに理解できぬ戦術なし!」
 次々に立ちはだかる忍どもの言葉を、悪童はげらげらと嘲笑う。
「ハッ! 真似してみやがれ! 一回しか使えねぇ変身で何するか知らねぇけどよぉ!」
 そしてやはり、アダムルスのことなど一切顧みない自分勝手な機動を描く。
 自在に変じ、敵を切り裂き、あるいは押し潰しては貫き、抉り、殺す。
 アダムルスは無言である。その視線はビリウットとペルにも注がれていた。
(お手並み拝見というわけだ)
(むむう、ペルも早く暴れたいですのに)
 不満げなふたりだが、ナンバーズの長たる男の意思には従う。
「囲め! 所詮は器物よ!」
「数で圧し倒すべし!」
「猪口才な変化に身の程を教えよ!」
「ンのやろぉ……!!」
 敵もさしたるもの。ラグの無双はやがて悪足掻きめいた大暴れとなった。
 徐々に変幻の底を見抜かれ、アウトレンジのギリギリで間合いを躱される。
 そしてどれほど無限に変化しようと殺しきれぬ間隙に反撃が入り込む。
 防げてはいる。だが防げばそれだけ敵の攻勢が圧を増すということだ。
「ぐっ!! クソが……!!」
 ついに、放たれた苦無がラグの器体を斬り裂いた。苦悶。
 一瞬にして沸騰した頭で、さらにがむしゃらな攻勢に出かける!

 ――が、それを、巌の如き膂力がぐんと制した。
「気は済んだか」
「んだとてめぇ!! 俺はまだ少しも」
「気は、済んだか」
「……ッ」
 有無を言わさぬ声音である。ラグはもはや口答えしない。
 このためだ。アダムルスはこの結果を予期してあえて任せていた。
 事実として、再び襲い来る苦無の雨を、彼はラグを使いこともなげに弾く。
 ラグをしてすら、扱われたことに違和感を催さないほどの自然な挙措。
「気は済んだな」
「………………チッ」
 アダムルスは頷いた。
「ならば逆襲を始めるぞ。指示に従え」
 もはや悪童めいた皮肉はない。その身は大木じみた棍棒へと変化する。
 すなわち"ユグドラシルの小枝"。無限めいて再生する無骨な鈍器だ。
 ――ぶうん!!
 まるで一陣、竜巻が現れたかのような暴風。
 哀れにも深追いした忍が、棍棒の一蹴であっけなく"消滅した"。
「御大将、カバーは任せて」
 狙いすましたようなビリウットの言葉に、アダムルスは無言で頷く。
「ぷぷぷ、ラグったらアダムルスに怒られてしょんぼりですね」
 ぐん! 棍棒が苛立たしげに暴れかけ、アダムルスに制される。
 ペルはくすくすという嘲笑を隠しもしない。いい気味なのはたしかだ。
「あとからくるだろう婆様から、お菓子でも貰って元気出すですよ」
「…………!!」
「ラグ、照準は任せるぞ」
 二度、三度。"小枝"が周囲を薙ぎ払い、敵を退かせた。
 アダムルスの言葉に、間髪入れずその身が一丁の拳銃へと変化する。
 まともに相手をしたところで時間を浪費するだけ。牽制の射撃で射線を開こうというわけだ。
 的確、そして迷いなき指揮。ラグは言葉なくそれに従っている。
 その銃、名を"喰らい尽くす者(アポリオン)"と呼ばう。
 心が震える限り、古びたオートマチック銃の弾丸が尽きることはない。
 そして、アダムルスの言葉通り、逆襲が始まった。

「はー! よーやくペルも我慢しなくて済むのですっ!」
 ばさり。これまで辛抱していた少女は堰を切ったように笑う。
「ペルも暴れちゃうですよ!! 阻めるつもりであるならやってみるとよいのです!」
 もはや彼女を咎めるものも、戒めるものも居はしない。
 ばさばさと大空を舞い、降り注ぐ呪符を切り裂きながら朗々と謳う。
「ペルを捕まえられるつもりなら、ですけどねっ!!」
「「「小癪な、たかが小娘一匹!」」」
「小娘? 何を言っているのです?」
 にたりと、死を告げる鳥は嗤った。
「教えてあげましょう――ここは、冥府に住まう魔鳥の踊り場だということを!」
 見よ。突如として最速の滑空に至ったペルの姿を。
 その姿が五、十、いや二十近い無数の残像を伴い、風を切り裂くのを!
 阻もうとした忍どもは、その絶技を模倣することすらなく切り裂かれていく!
 これがストラスの大爪の担い手。空を舞う恐るべきハーピィなのだ!
「こちらもそろそろ働こう。バロウズ、急いで食べてね……」
 刻器神撃、"形態変化(インフィニティ)"。
 無機物を喰らいて変生せし魔銃が、バキバキと音を立ててその姿を変える。
 長身のバレル。すなわち、羽根矢(フレシェット)弾を用いる散弾銃である。
 BLAM!! 対人用の研ぎ澄まされた殺意が、忍どもの肉と骨をミキサーする!
「堅い相手にはあまり効果がないのだけれど、君らには関係なさそうだ」
「「「女め、見くびるなよ!」」」
「それはこちらのセリフだ、今の時代そういうのは差別的だと思うけどね?」
 コッキング、そしてトリガ。BLAM!! 軽やかな言葉と軽やかな指先。
 放たれる弾丸もまた軽やかなれど、もたらされる結果は無残なものである。
 散弾を回避しようと展開したそれを、アポリオンの弾丸が貶める。
「そうそう、道を開けたまえ。御大将の前で頭が高いよ?」
 もはや趨勢はナンバーズにあった。誰もそれを阻めはしない。

 ――そして、そんな最中。炎火の行方をビリウットが思案していた頃。
「ラグ、覚えておけ」
「…………」
 躊躇なくトリガを引きながら、アダムルスは無言の器物に語りかける。
「貴様は手札が多い。だからこそ、よく考えて敵が厄介だと思うことをしろ」
「…………」
「それが、貴様の"価値"だ」
 悪童めいた物言いも、殊勝な言葉のひとつも返ってきはしない。
 そんなものをアダムルスは期待していない。ただそう言って戦闘に没入する。
 短針にして単針の思いは何処。ただ、その言葉が届いていたのはたしかである。
 ――そして、矢となりし五人の精鋭が城に届くもまた必定なり!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

柊・明日真
【杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)】と行動
【アドリブ歓迎】【ルール2希望】
まともにやりあってたらキリがねえな…
クロウ、連中は俺が引き受ける。先に行ってろ。
さくっと片付けてすぐに追いつくからよ。

俺はこれでも「魔法使い」の端くれでね。
たまにはらしいとこ見せとかねえとな!
刻印魔術は接近戦が華、本来の使い方とは違うが…こういうやり方もある。
しっかり見とけ雑兵ども!何千何万居ようが関係ねえ、一切合切焼き払ってやる!!

【紅炎の刻印】【属性攻撃、なぎ払い】で片っ端から焼き尽くす。
派手に火柱あげりゃ目くらましになるし、奴らも簡単には無視できないだろう。
なるべく目立つように暴れまわって敵を引きつけていくか。


杜鬼・クロウ
明日真◆f01361と
アドリブ歓迎
厨二カオス上等
2希望

女は安全な処へ逃がすぜ
俺は城へ
が簡単には行かせてくれねェらしいなァ(戦闘中の周囲見渡しニヤリ
俺もその混乱に乗じて派手に暴れてヤんよ!精々楽しませろや!(【煉獄の魂呼び】使用

禍鬼は棍棒で敵を蹴散らす
霆で援護
先制攻撃・2回攻撃で玄夜叉を振り回す
どの道具でも武器受け・カウンターで掃除

八の型、死の沈丁花(紫陽花に対抗して適当に
心は不滅の鋼
花開き薫りし時既に決着はついている

俺の往く道は誰にも阻まッ…ぐ、油断したか
明日真!?お前…
ンなトコで愚図ってンじゃねェぞ
俺達の桃色の誓い、忘れたとは言わせねェ
絶対追い付いて来いよ
後は託す(拳当て振り返らず城へ一直線



●熱血に騙されそうだがこの二人煩悩の塊である
 時間軸は、この血戦が開始された始まりの頃まで遡る。
 悪漢どもを薙ぎ払い、呆けたような町娘を送り届けたあとのことだ。
「ハッ、簡単には行かせてくれねェらしいなァ」
 黒外套をはためかせ、杜鬼・クロウは鮫のように凄まじき笑みを浮かべる。
 立ちはだかる敵は無数、さらに降り注ぐ呪いと苦無という死の雨。
 重畳である。相手にとって不足はなし!
「ああ、だがどうする。まともにやりあってたらキリがないぜ?」
 その隣に立つは、燃えるような赤髪と橙色の瞳の男――柊・明日真である。
 彼をしてこの到達行は困難と見えた。だがその言葉をクロウは不敵に受け止める。
「なァに、混乱してるからこそ派手に暴れてヤる甲斐があんのさ」
「ふ……そうこなくっちゃあな!」
 明日真もまた野卑に笑う。クロウと目線を交錯させ頷きあう。
 そしてクロウが一歩前へ。歩き出しながら剣指を口元に当て、唱えるは口訣。
「杜鬼・クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ――」
 それは贖罪の呪器。煉獄より魂を呼ばう禁忌の術法。
「混淆解放(リベルタ・オムニス)──血肉となりて我に応えろ!」
 ごう、ごおう――!! 周囲に燃え上がる煉獄の炎(インフェルノ)!
 はたしてその炎の裡より現れたるは、赤錆色の棍棒を持ちし禍鬼である!
「へえ、こりゃあなかなか」
 驚嘆した様子の明日真を仰ぎ見、クロウは顎でしゃくった。城のほうを。
「んじゃ行こうぜ。せいぜい楽しませろや、三流忍者どもォ!!」
 禍鬼が咆哮する。猛々しきますらお二人もまた、雄叫びを上げ疾駆する!

 そして忍者と呪符と苦無の雨の中を、凄絶なる戦士と鬼とが突き進む。
 立ちはだかる敵は赤錆びた棍棒が文字通りに薙ぎ払い、それでも足りぬ者をクロウと明日真の刃がそれぞれに叩き斬る。
 玄夜叉(アスラデウス)。刃渡り六尺余の、ルーン施されし黒魔剣。
 緋焔の剛剣。大ぶりな片刃に魔術を刻印された、しなやかなる剣。
 ともに業物である。それを振るいたる二人もまた歴戦の使い手だ。
「我らに唱えられぬ忍術なし! いざ!」
 クロウを取り囲んだ三人の忍者どもが、同時に巻物を展開する。
 そして印を結ぶ。高まる気圧、明らかに危険な包囲陣形の気配!
「御大層な名乗りありがとよ、けど遅すぎるぜッ!」
 すでにクロウの刃は奔っている。三方をほぼ同時に切り裂く瞬速の太刀。
「「「バカな……!?」」」
「ハ――」
 せせら笑ったクロウめがけ、死体の影から放たれた苦無を返す刀で弾く。
 剣風が逆巻き、禍鬼の援護も併せ、隠れ潜みたる四体目もまた刃に倒れた。
「八の型、死の沈丁花――我が心は不滅の鋼、ってヤツだ」
 技名は割とでっちあげなのだが、なるほどその業前はたしかなもの。
 三……否、四方をほぼ同時に斬り裂いた剣閃は、まさに開かれた花弁のよう。
「華開き香りしとき、すでに決着はついている」
 どさり。忍者どもがその言葉を聞き終えることはなく、滅び去った。
 一方の明日真はどうか? 彼もまた包囲されていた!
「「「死ね、闖入者め!」」」
 投げ放たれる無数の苦無、橙色の瞳がぎらりと輝く!
「おらぁっ!!」
 一見無骨な薙ぎ払い、しかしてそれは精妙なるコントロールのもとに。
 振るわれた刃のあとを大気が焼け焦げ、苦無を空中で溶解せしめた。
 伝搬する熱波は忍者どもを放射状に吹き飛ばし、そこに明日真は殴りかかる!
「あいにく洒落た技名なんかねえんでな!」
 ゆえに切り裂く。乱雑に急所を断ち切り引き裂くように切り伏せる。
 野卑な剣である。だが裡なる生命力に燃え上がるかのごとく、それは力強い!

 だが二人の奮闘を嘲笑うかのごとく、敵は無限めいて湧いて出てくる。
 常に降り注ぐ呪符への対処も骨である。魔力も体力も有限なのだから。
「死ねぃ!」
 飛びかかってきた忍者を、クロウは一瞬のカウンターで掃除する。
「俺の往く道は、だれにも阻まれや――!?」
 その時。一瞬の間隙に、冥土の土産とばかりに放たれた苦無。
 クロウの肩を穿いたそれに、彼は思わず呻いて片膝を突いた。
「おい、大丈夫か!?」
「ぐ、油断したか……へ、この程度なんてこたねェよ」
 不敵に笑うクロウ。だが明日真は、消耗を見て取る。
 このまま突き進めばジリ貧か。仮にたどり着けたとしてその先は……。
「……」
「おい、何してやがる」
 クロウは誰何した。明日真が、踵を返したからだ。
「クロウ、連中は俺が引き受ける。先に行ってろ」
「明日真!? ……お前!」
 男たちは視線を交わした。明日真はにやりと不敵に笑み返してみせる。
「さくっと片付けてすぐに追いつくからよ。心配すんな」
「……たしかに聞いたぜ。ンなとこで愚図ってンじゃねェぞ」
「俺はこれでも"魔法使い"の端くれでね。たまにはらしいとこ見せとかねえとな」
 苦無を引き抜き、クロウは立ち上がる。一刻の猶予も惜しいのだ。
 そして拳を突き出し、明日真を見据えてこう言った。
「俺達の"誓い"、忘れたとはいわせねェ。――絶対、追いついてこいよ」
「……ああ!」
 ごつん。男たちは拳をぶつけあい、互いの誓いを確認しあった。
 もはやそれ以上の言葉はない。あとを託す、そう言ってクロウは駆け出す。
 そして明日真は、追いすがる無数の敵を見据えた!
「刻印魔術は接近戦が華。本来の用法とは違うが――こういうやり方もある」
 ぱちぱちと刃が熱を孕む。忍者達が包囲陣形を組み上げる!
「しっかり見とけ雑兵ども! 何千何万いようが関係ねえ、一切合切焼き払ってやる!」
 朗々たる言葉! 殺到する敵、刃、呪符!
 ――刻印魔術、起動。魔力循環、増幅開始。刻印励起、火炎元素収束……。
「爆炎充填完了だ。さあ、派手に行くぜ――紅炎の刻印(プロミネンスクレスト)ッ!!」
 ごおう……ッ!! 吹き上がる火山噴火じみた火柱!
 それは飛び込んできた敵を空のものも構わず飲み込み燃え上がる!
 此方へ来いと惹きつけるかのごとく。猛々しく、宣戦布告のように!

「……ったく、無茶しやがる」
 その輝きを仰ぎ見て、クロウは吐き捨てた。
 もはや振り返ることはない。盟友(とも)の覚悟を胸に城を目指すのだ。
 そう、忘れてはならない――煩悩で結ばれた、桃色の誓いを!
 だいぶ、いやかなり下世話な話だが、それはそれとしてやる気は十分だ!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと
ルール2:ここ俺希望

炎霆で苦無を弾きながらチコルと駆ける
余りに多勢に無勢だ
だがこのまま走り続ければ掻い潜れそうか…ッ!?

紫陽衆が群れて立ち塞がる
後方からも忍が迫っている
ここで足を止める訳にはいかない

…私が隙を作る
チコルは奴等を踏み越えて、先へ急いでくれ
私の事ならば心配無用
生きて再び、相まみえよう

俺はチコルを信じる!
だからチコルも…俺を信じろ!

『属性攻撃』『範囲攻撃』『援護射撃』で
火球を流星の様に敵の群れへと放ち隙を作る
チコルを先に行かせた後は
【メギドフレイム】を降らせ炎の剣の壁を作り
先へ続く道を封鎖する

私を倒さねば、その炎の壁は消せはしないぞ
…チコルの元へは行かせはしない!


チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ歓迎!
ルール2:先に行く

オブリビオンが悪さをしてるって聞いて、助太刀に来たよ!
【シーブズ・ギャンビット】を使いつつユーリと駆け抜ける。

気付けば敵がいっぱい!
このままじゃ挟み撃ちだよ、どうしよう!?

ユーリ、何言ってるの!?
こんなとこに、ユーリを残してなんて行けないよっ!
(……でも、突破する方法も思いつかない……!)

……分かった。ユーリを信じる。
あとで会えなかったら、絶交だからね!?

ユーリの攻撃に合わせて【ダッシュ】と【ジャンプ】で敵を【踏みつけ】、先へと進む!
ユーリが作ったチャンスを無駄にはしない!!

ちらりと後方を見るけど、ユーリの姿は見えない。
……信じてるから!



●その絆の名は
 有象無象が逆巻く血風の戦場に、ごうごうと舞い散る火の粉。
 その発生源は、魔槍を我が四肢の如くに巧みに振るう一人の戦士である。
 戦士の名をユーリ・ヴォルフと云う。振るいし魔槍の名は、炎霆。
「はぁああっ!!」
 降り注ぐ呪符もろとも、忍者の投げ放った苦無を溶解させる。
 ドラゴニアンたる彼の裡に燃え盛る龍の焔は、この程度で怯みはしない。
 ……そう、一体一体の忍者の戦力は、けしてさしたるものではない。
 所詮は徒党を組んで初めて力を発揮する、模倣の忍どもである。
 一体一体は、さしたるものではない。だが数が、あまりにも圧倒的だ。
「やぁっ!」
 そんなユーリの脇をすり抜け、風のように駆けるもう一つの影。
 少女の名をチコル・フワッフルと云う。ユーリの助太刀のため馳せ参じた形だ。
 ダガーを振るい、目についた端から忍者を的確に葬り去っていく。
 奮闘している。だが……だがやはり、敵の数が圧倒的に過ぎるのだ!
「気づけば敵がいっぱい! このままじゃ挟み撃ちだよ、どうしよう!?」
 ついにこらえきれず、走りながらチコルが声をあげた。
 同じように並走し休むことなく腕を振るいながら、ユーリも唸る。
 進めば進むほど、敵の防衛網も圧を増し、攻撃も猛威を振るっている。
 いずれ城には辿り着けるだろう。だがその時、首魁と戦うだけの体力はあるのか?
「このまま走り続ければ、かいくぐれそうか……っ!?」
 ジリ貧だ。活力は無限ではないのだ。戦い続ければいずれ気力体力が尽きる。
「諦めて最期を受け入れるがいい、猟兵よ」
「お前たちは城には辿り着けぬ。我らがさせぬ」
「ここで朽ち果てるが貴様らの必定と知れ!」
 折り悪く、ユーリとチコルの眼前に現れる忍者ども!
 後方を振り返れば、チコルが懸念した通り挟み撃ちを臨まれつつある!
 止まってはならない。だが進もうとすれば忍者どもは全力でそれを食い止めるだろう。
 その間に背後から襲われ、そして包囲され押しつぶされる……。
 まさに前門の虎、後門の狼だ。どうする、どうすればいい!?

 ……はじめから、方法は頭に浮かんでいた。
 だがそれを口に出すことは憚られた。命が惜しいわけではない。
 きっと彼女なら、それを否定するのが目に見えていたからである。
 しかしもはや待ったなし。ユーリは前後を警戒しつつ、静かに言った。
「……チコル、私が隙を作る」
「えっ?」
 ユーリの言葉に、少女は不安げに彼を見やる。
「チコルはその間に、奴らを踏み越えて先へ急いでくれ」
 足止めになる。それはつまり、彼がこの場に残ることを意味していた。
「――ユーリ、何言ってるの!? こんなとこに、ユーリを残してなんて行けないよっ!!」
 そしてユーリが懸念した通り、チコルは色を失って叫んだ。
 けれどチコル自身にも、それが最善であることはわかっていたのだ。
 この状況を突破する方法は、彼女の中にも存在しないのだから。
 では自分が残るか? それこそ悪手である。チコルは耐久戦は不得手だ。
 技量に優れ防衛力に長けたユーリだからこそ、一日の長があるのだ。
「私のことならば心配無用」
 そんなチコルを安堵させるかのように、ユーリは粋な笑みを浮かべる。
 視線が交錯する。ユーリの笑顔は、いっそ安らかな微笑みですらあった。
「往きて再び、相見えよう」
「ユーリ……でも」
「私は―ーいや」
 敵を睨みつけ、ユーリは叫んだ。
「"俺"はチコルを信じる!」
「!!」
「だから……チコルも、俺を信じろ!!」
 少女をして、返す言葉を失うほどの威圧感、そして迫真の声音。
 紛れもなく心の底からの、信頼と覚悟の証左であった。

「……わかった」
 2秒の空白ののち、いまだ逡巡しながらも少女は頷いた。
「ユーリを信じる。あとで会えなかったら、絶交だからね!?」
「ははは。それは怖いな、必ず追いつかねばなるまい!」
 冗談めかして笑う。じわじわと狭まる包囲網……ユーリは眦を決した!
「はぁあああっ!!」
 裂帛の気合。燃え上がった焔は、巨大な火球となり四方へ飛び散る。
 攻撃ではなく威嚇と間隙を作ることを目的とした、牽制の範囲攻撃。
「さあ、往くんだチコル!」
「……うんっ」
 その時にはすでにチコルは駆け出していた。
 崩れた包囲網に接敵し、兎めいて跳躍してその頭上を踏みつける。
 そして飛び石めいて城へ。追いすがろうとする忍者ども!
 しかして、それを阻むは燃え上がる焔の剣の壁だ!
「「「これは!!」」」
「メギドフレイム。我が裡なる龍の焔を剣としたものだ――」
 凄絶な声音である。炎霆を構え、ユーリが周囲の敵を睨めつけた。
「私を倒さねば、その炎の壁は消せはしないぞ。
 ……お前たちはここで終わりだ。チコルのもとへは、行かせはしない!」
「「「おのれ、たかが猟兵ひとり! 圧殺してくれる!」」」
「やってみせろ! 私の命は安くはないぞっ!!」

 剣劇と怒声、そして炎逆巻く鬨の声に、チコルは一度だけ振り返った。
 もはや焔はドームめいて渦巻き、その先を見出すことは出来ない。
 ……そして前を見る。ここで足を止めてはなんのためのチャンスなのか。
「――信じてるからね、ユーリ!」
 その言葉は、祈りにも似ていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須藤・莉亜
【ワンダレイ】で参加。
「準備万端、いつでも行けるよー。」
ポケットから腐蝕竜さんの血入りの瓶を取り出し、それを一気飲みして竜血摂取のUCを発動。スピードと反応速度を上げて、白が見つけてくれた切り込みやすそうな場所に突っ込んで行く。
敵さんの集団を悪魔の見えざる手で【なぎ払い】、その隙に接近して先に進むのに邪魔になりそうな敵さんを大鎌でぶった斬りつつ、最短距離で城目指して進んで行く。水分補給に敵さんを【吸血】出来たら良いかな。

攻撃と呪殺符は強化された反応速度を駆使しつつ、【第六感】と【見切り】で回避。

「ここは任せたー。…また後でね。」


尾守・夜野
【ここ俺希望】【ワンダレイ】で行動
きりがねぇ!
見えてるのに…近寄れねぇ!
(波状攻撃に急停止や迂回急加速等の無茶をさせてしまいスピードの落ちてきたスレイに)

くそっ…ここまでか
(労るように一撫でし仲間をみやり最後に鞭で一つ叩き馬上から飛び降り)
俺に任せて先に行け!

…あいつを頼んだぞ
(ここより先は死地
戻れる保証は無いが故に)

この先一人たりとも通れる物と思うな!

【俺の世界】起動!
抵抗する意思を持てねぇ苦無、符等の飛び道具を広域排除

借用されても相手のが消えるだ
利点しかない

…動きを止める関係上、すぐに人の波に飲まれて消えるだろう

だが、仲間が気にしねぇように最後の気力で空にUCを打ち鼓舞して忍者の海に沈む


夜暮・白
【ここ俺希望】
【ワンダレイ】

わわ。すごい。忍者がいっぱいいる!

ここで足止めされてる場合じゃないよね。【バウンドボディ】で[ジャンプ]して符を避けつつ、高い位置から切り込める場所を探そう。あっちからお城の中に入れそうかな?
攻撃はダガーや飾り石の[オーラ防御]で受け流して、苦無は拾えたら貰っておこう。自前の綺羅針(スローイングダガー)は光の反射で目晦ましの効果も出るように投げるよ。【生まれながらの光】の聖なる光、呪いを使う人たちなら効きそうだよね。
押し通るのに手間取ってたら【夢現のまじない】で神霊を邪魔ものにまとわりつかせよう。あなた達の相手はこっちです!

ここは僕たちに任せて。先は頼んだからね!



●空を覆う輝きは
 呪殺城。なんとも剣呑な名前である。
 だがその名の由縁、なるほど奴らが嘯くだけのことはある!
「わわ、すごい。忍者がいっぱいいる!」
 占い師めいた派手な生地でその身を隠すブラックタール、夜暮・白の驚きはもっとも。
 いまや数百はおろか数千に上りかねぬほどの忍者どもが、猟兵たちを妨げていた。
 見えているだけではない。城の屋根にはおびただしい射手すらもいるのだ!
「キリがねぇ! 見えてるのに……城に近寄れねぇ!」
 魔馬スレイプニルを駆る尾守・夜野は、吐き捨てるように言った。
 かの神話に名高き伝説そのままの健脚を誇る愛馬をして、進むは難し。
 狙いすましたような波状攻撃を前に、まっすぐ進むことなどほぼ不可能だ。
 急停止。迂回。あるいは弾幕を避けるための急旋回、そして加速……。
 無茶が祟ったせいか、鎧を纏うスレイプニルは泡を吹き呼吸も荒い。
「こりゃ参ったねえ、どうしたもんかなー」
 須藤・莉亜の普段どおりのけだるげな声音も、やや焦りが見えた。
 この状況では、眷属である腐触龍を召喚しても逆効果である。
 なにせ一切の隙間なく降り注ぐ呪符の雨は、被弾面積が広ければ広いほどダメージが倍加する。
 龍の巨体は圧倒的だからこそ、呪符の雨を浴びてあっというまに倒れるだろう。
 少数精鋭による機動力が要だ。そのための準備はすでに終えてはいる。
 ……終えては、いる。だが無闇にジョーカーを切れば、そこで終わり。
 一瞬を見出し、一気に敵の包囲網を貫く。易くない難行である。

 そしていよいよ敵の猛攻は、城に近づくにつれて圧を増していた。
 スレイプニルの体力、そして仲間たちの状況。夜野は全てを俯瞰し歯噛みした。
「くそっ、ここまでか」
「夜野さん?」
 白の言葉に応える代わり、夜野は愛馬の背中を何故た。
 ねぎらいの感触に、スレイプニルは安堵しつつも口惜しげにいなないた。
 そして仲間たちを見やり、夜野はスレイプニルに鞭をくれてやったのだ。
 それだけではない、彼は突如として馬上から飛び降りた! 何故!?
「なるほどねー、そういうことかぁ」
 莉亜は夜野の意図を、その行動で汲んだ。そして夜野は叫ぶ。
「ここは俺に任せて、先に行け!!」
「夜野さん……残るつもりなの1?」
 白の困惑はもっとも。だが彼の視線は問うまでもない覚悟を示している。
 ひとたび地に降りて脚を止めたなら、そこはまさに死地である。
 猟兵をして、この混迷の戦場から無事に帰れるかは怪しいところだ。
 夜野の視線の先、スレイプニルは空を駆けて進んでいく。
「こりゃやるしかないねぇ。準備万端、いつでもいけるようにしておいてよかったよ」
 おもむろに、莉亜は小瓶を一つ取り出した。中には赤い液体が揺らめく。
 それは血である。ただの血ではない――彼の眷属たる腐触龍の血だ。
 莉亜は一瞬だけ眉根を顰め嫌そうな顔をしたが、背に腹は代えられない。
 瓶の蓋を開け、覚悟を決めてそれを一気に嚥下する。すさまじい苦味。
「クソまずい……あーけど、いけるよ。いける」
「……そうだね、ここで足止めされてる場合じゃないか」
 白も覚悟を決めた。呪符の雨の中をバウンドボディによって飛び抜ける!
「莉亜さん、攻撃するポイントは僕が見つけるよ!」
「了解ー。それじゃあ……行こうか!」
 かくして、凄まじい速度を得た莉亜は、白のナビゲートのもと敵陣へ切り込む。
 当然ながらそれを阻もうと、無数の敵が立ちはだかる。
 それだけではない。苦無、呪符、はたまた謎めいた忍具忍術が飛び交うのだ!
 まさに弾幕。夜野は眦を決し、瞠目して叫んだ!
「この先一人たりとも通れるものと思うな! 存在置換、再構成開始ッ!!」
 すると突如として、彼らの頭上に家ほどもあろうかという超巨大な魔法陣が出現。
 さながらバリアのごとく、降り注ぐ猛威の数々を吸収していく。
 向かう先は閉鎖された別空間である。飛び道具ならば抵抗する意思を持てるはずもなし!
「いっそ模倣してくれてもいいんだぜ、"俺の世界"だがな」
 夜野はニヤリと不敵に笑った。
 敵がこのユーベルコードを発動したとして、結局は飛来物が飲まれることになる。
 むしろ防御範囲が広がり、夜野にとっては好都合でしかない。
 足を止めた夜野を忍者どもが取り囲み、近接戦闘のために包囲を開始する。
 白と莉亜はそれを振り返る。あっという間に仲間の姿は見えなくなっていく……!
「気にするんじゃねぇ、こっちはこっちでうまくやる!」
 姿を消す寸前、夜野の発動した術式により、空を光条が斬り裂いた。
 彼らが属する、飛空戦艦による支援砲撃。明けの明星めいて呪いの空を灼く!

 そうして今度こそ見えなくなった夜野の覚悟は、白にも届いていた。
「莉亜さん」
「うん? ……もしかして、君も残るつもりなの?」
 こくり。ブラックタールの少年は言葉なく頷いた。
「ここで夜野さんだけに任せたら、なんだから僕がかっこ悪いしね!」
「その理屈だと僕も残らなきゃいけないんだけどなぁ」
 戦場を駆け抜けながら軽口を叩きあった二人。束の間の沈黙。
「ま、そういうことなら任せたよ。……またあとでね」
「うん! 三人揃って、またあとで!」
 そして白もまた足を止め、振り向きざまに自前の綺羅針を放つ。
 追いすがろうとしていた忍者どもは、空を灼く光条と併せてその反射に目を晦まされた!
「「「おのれ小癪な!」」」
「出ておいでファミリア! 僕を手伝って!」
 続けざまに放たれたのは、白の服の刺繍から生まれた神霊たちである。
 それらはなおも莉亜を追い詰めんとする忍者たちにまとわりついて足止めするのだ。
「あなたたちの相手はこっちです! ……莉亜さん、先は頼んだからね!」
「了解。……よいしょっと」
 大鎌を振り回し前衛を切り開いた莉亜は、そのまま不可視の豪腕で死線を切り開く。
 血が舞い、それがさらに莉亜に活力を与える。空を夜野の愛馬が駆けるのが見えた。
「あの子のこと、頼まれちゃったからなあ」
 色つきの風となった莉亜は跳躍し、スレイプニルの馬上にまたがる。
 大鎌を振るい、八本脚の魔馬とともに駆ける龍の人。まさに神話に謳われる威容だ!
「さあ、それじゃあ追いかけっこの続きといこうかー」
 目指す先は呪殺城。仲間たちの思いを背負い、莉亜は空を駆ける!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シオン・ミウル
ネロ(f02187)と

『ここ俺希望』

怪我せず突破しようってのはちょっと無理があるかな
なんてったって数が多いし

一番の目的はお城な訳だし
ネロが無事に辿り着いてくれればいっかな
途中までは背中合わせて行こう

風を繰って呪殺符を切り裂いていく
城への到着を第一に、俺は守りに徹するよ
うへぇ 空が見えづらいくらいだ 嫌んなるなぁ

さて、ここからは別行動
いってらっしゃいネロ
俺は後から追いつくからさ
途中で倒れたりするなよな

音を聞かせてやろう
お前らが聞く最後の音楽だよ
綺麗な音にはしてやんないけどね
業風、地獄に吹くような風、寄らば切るってね
俺は痛いのには慣れてるから
真似されようとなんともないよ

もう一曲いこうか


ネロ・バロック
シオン(f09324)と参加

ルール2採用(送り出されるのはネロ)

[方針]
最速で駆け抜けて城を目指す
羅刹旋風で邪魔な呪符と忍びを蹴散らしてよ

//
聞いてねェぞ…思ったより敵の守りが厚い
チッ!どっちかが足止めしなきゃならねェのかよ…
ならお前みたいなモヤシじゃない俺が…なに?俺に先に行けだって?
ガラにもねェこと抜かしてんじゃねーよ
でもお前がその気になったんならよ…ここは任せるぜ!

これだけの力を持った奴ならよ、尚更ほっといたら寝覚めがワリィよな
なぁ……そうだろシオン

だからよ、俺達でぶっとばしてやろうぜ
お前が開いてくれた道を一足先に行ってからよ
シオンも早く追いつけよ

「(アイツは必ず戻ってくる…!)」



●風の音、駆ける黒
 降り注ぐ呪符を恐れることなく、疾走する男がいた。
 ネロ・バロック。野卑な笑みすら浮かべて、立ちはだかる敵を薙ぎ払う。
「ハァッハッハッハッハァ!! 雑魚どもが邪魔くせェんだよォ!!」
 名無しの魔剣を小枝のように振り回す膂力は、まさに羅刹のもの。
 呪符も、立ちはだかる忍者も、彼の脚を阻めるわけはなかった。
 紛れもない快進撃。しかし、やや後ろから続くシオン・ミウルの表情は晴れない。
(……もう相当な数を薙ぎ払ってきたはずなのに)
 敵の数が一向に減らない。いや、むしろ城に近づくにつれ増えているのではないか?
 たしかにネロの足は止まらない。敵も一山いくらの雑魚オブリビオンである。
 自分たちはまったく無傷。……今はまだ。ではここから先はどうだ?
 城に近づくにつれ、波状攻撃の間隔と頻度、そして勢いは増し続けている。
 立ちはだかる敵の数、猛攻も同様。徐々にだが圧されつつある。
 辿り着くことはできるだろう。だがこのまっすぐな突破行は無傷無消費で駆け抜けられるものだろうか?
「……怪我せず突破しようってのは、ちょっと無理があるな」
 呟きは、その数分後に実証されることとなった。

「……クソっ! どうなってやがる!!」
 快進撃に見えた疾走も、今となってはすっかり鈍っていた。
 ネロが油断していた? そういうわけではない。彼はなんら仕損じてはいない。
 その力を振るうべき量、振るうべきところで振るい進み続けた。
 足を止めてはならないのだ。まっすぐに突き進んだのはむしろ正解ですらある。
「聞いてねェぞ……思ったより敵の守りが厚いじゃねェか」
「そうだね。これほどまでに無尽だとは思わなかったよ」
 敵の数は数百をゆうに越えている。ともすれば千にすら届こうか。
 城までの道のりはあと2、3割。ここでついに敵の防備がピークを迎えたのである。
「……ふたり揃って入城、ってわけにはいなさそうだね」
 シオンの言葉に、ネロは吐き捨てるように舌打ちした。
「どっちかが足止めしなきゃならねェのかよ……。
 ならお前みたいなモヤシじゃなく、俺が適任ってことだな」
 この戦況で足を止める。当然ながら決死行に等しい行為だ。
 とはいえネロは命を惜しんでいるわけではない。死ぬつもりも当然ない。
 それでも不承不承と云った様子で踵を返しかけた、その時。
「……おい、何やってやがる?」
 背中を合わせて進んでいたはずのシオンが、ひらひらとネロに手を振っているのだ。
 まるで先へ行けと促しているように。意図を掴みきれず、ネロは訝しんだ。
「わかるでしょ? ここからは別行動ってこと」
「お前」
「いってらっしゃい、ネロ」
「お前な……ガラにもねェこと抜かしてんじゃねーよ」
 不満げである。そんな悪友の顔を見て、シオンは思わず吹き出した。
「大丈夫だよ。俺はあとから追いつくからさ。途中で倒れたりするなよな」
 普段どおりの声音、普段どおりの表情。今度はネロが笑う番だ。
「あァそうかよ。お前がその気になったんなら、しょうがねェや」
 仕方がない。足を止めれば歴戦の猟兵とて命を落としかねない状況でそう言った。
 二人にとってはそれで十分である。そしてシオンが風を纏う。

 追いすがる忍者どもは、じりじりと包囲網を狭めつつあった。
 一斉攻撃で、この油断ならぬ二人の天敵を抹殺する。
 その腹づもりであった。そのための力と術が奴らにはあった。
 ――その時、忍者どもは音を聞いた。どこか涼しげで寒々しい旋律を。
「なんだ、これは」
「何かの術か?」
「いや、何の呪いもかかっては――」

「聴こえただろ? これが、お前らが聞く最期の音楽だよ」
 少年の声がした。直後、旋律はすさまじい風切り音となる!
 困惑した忍者どもは、己が何にさらされたかもわからぬうちに微塵になって亡びた。
 すなわち、それは風である。数え切れぬほどの無数の風の刃。
 降り注ぐ呪符も苦無も、忍術の何もかもを切り裂き吹き荒ぶ"業風(じごくのかぜ)"。
「ま、綺麗な音にはしてやらないけどね」
「「「貴様っ!!」」」
 声を揃えた忍者どもを前に、悠々を翼をはためかすオラトリオが笑う。
「地獄に吹くような風だよ? 寄るな寄るな、寄らば斬る! なあんてね」
 無差別攻撃は風の壁であり檻でもある。当然ながらオブリビオンには近づけない。
 ならばと、シオンを取り囲む彼奴らはそれを模倣する構えをとった。
 なるほど、あれほど自信満々に模倣を謳うのだ、きっとできるのだろう。
 その切れ味を識るシオンは、しかし臆することなく敵を睥睨した。
「悪いけど、俺は痛いのには"慣れてる"んだ。真似されようとなんともないよ」
 ごう、ごごう――徐々に、風があちこちで吹き荒ぶ。
 シオンは笑う。心弱き者ならば臆するほどの、柔らかいが凄まじい微笑みを。
「さあ――もう一曲いこうか」
 かくて、死の舞踏めいた風の交響曲が高らかに奏でられる。

 竜巻がぶつかりあうような轟音を背後に、ネロは走る。
 道は開かれた。それでも遮るものがあれば容赦なく魔剣で断ち切る。
「これだけの力を持った奴ならよ、なおさらほっといたら寝覚めがワリィよな。
 なぁ……そうだろシオン」
 嵐のような暴威を振るいながら、ネロは風の彼方に届けと悪友に呼びかける。
 届くことはないだろう。それでも彼はつぶやきをやめなかった。
「だからよ、俺たちでぶっとばしてやろうぜ」
 お前が開いてくれた道を、俺は一足先に行っている。
 だから早く追いつけ。さもなきゃ一人でとっちめちまうぞ。
(――アイツは、必ず戻ってくる……!)
 祈るような言葉は口に出すことなく、心の裡に留め。
 魔剣の使い手は、呪われた城めがけ矢のように駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

久賀・灯夜
【リンタロウ・ホネハミさん(f00854)】と参加

くそっ! 触ったら即死の符の雨なんて卑怯だろ!?
こんな所で止まってられねえし、死ぬのもまっぴらごめんだ!

迷うな、俺ならやれるって信じろ……!

ガジェットショータイムで呼び出すのは強力な送風機
符を吹き飛ばし敵を寄せ付けない暴風の道を創り出す!

よし、これで一気に城に突入して……ホネハミさん?
何やってるんだよホネハミさん! こんな所で俺なんかを助ける為に……!
ダメだ、無事に戻って一緒に飯食おうって約束したじゃないっすか!
……ちくしょう、先に行って待ってるから! ベテランなら絶対追い付いてくださいよ!

歯を食いしばりながら城へ全力疾走


アドリブ大歓迎です


リンタロウ・ホネハミ
【灯夜(f05271)と参加】

あー、これはダメっすね
こんなので消耗させられたら敵将を討ち漏らしちまうっす
こいつらはオレっちが足止めするんで、トーヤは先に行くっすよ

いいから行け、トーヤ!!
ケツの青い新兵がベテランの心配なんざ生意気なんすよ
せっかく大将首を譲ってやったんす、止まるんじゃねぇっすよ!

そう言ってゴリラの骨を食って【〇二〇番之剛力士】を発動!
地形を変える一撃でもって城への活路を開くっす
ついでに衝撃で苦無の狙いを逸らし、浮き上がった土塊や石で弾いてやれば一石二鳥っつーわけっすね!

さて、そんじゃ……戦場で傭兵を相手にするっつーことがどういうことか、教えてやるっすよ!

アドリブ・絡み大歓迎



●少年と傭兵くずれ
 足を止めたら死ぬ。それが直感として在る。
 サイキッカーだからなのか、猟兵としての本能なのか。
 はたまた、人間だからこその第六感なのか――理由はわからない。
 けど間違いない。あの符を浴びたら、即死かそれに近いことになる。
「くそっ! 触ったら即死の符の雨とか、こんなの卑怯だろ!?」
 久賀・灯夜は、思わず叫ばずにはいられなかった。
 歯を食いしばり、あらん限りの力を込めて平野を駆け抜ける。
 残念ながら敵はそれだけではない。四方八方から現れる無数の忍者ども。
 まるでカートゥーンだ。しかし非現実的な光景に浮かれている場合ではない。
 こんなところで止まってはいられない。死ぬのもまっぴらごめんなのだ。
「ほら、余計なこと考えてねぇでもっと早く走るっすよ!」
 そんな灯夜に並走し、背中を叩いてどやすのはリンタロウ・ホネハミ。
 後輩めいた少年をどやしながら、骨の魔剣は常に彼らの周囲を切り払っている。
 苦無、忍術、そして符。それらを的確に防御しながら少年を援護しているのだ。
「こ、これでもう限界ですよホネハミさん!」
「口答えできんなら余裕あるってことっすよ!」
 灯夜は、初めて会ったときからこの男に憧憬を抱いていた。
 羨望と云ってもいいかもしれない。たくましい在り方を目標としていた。
 彼の言葉を逐一メモし、猟兵としてどう在るべきかの教えを乞うた。
 そんな彼とこうして肩を並べられることは喜ばしい、だが!
 いくらなんでも鉄火場が過ぎる。このまま命を落とすしかないのか!?

(迷うな、臆するな! 俺ならやれるって信じろ……!)
 灯夜弱音を吐く脆弱な自分に活を入れ、歯を食いしばった。
 そしてユーベルコードを発動する。ガジェットショータイム。
 なんでもいい、この状況を突破しうるものが現れてくれれば!!
 ――はたして、召喚されたのはまさに天啓そのもの。
 巨大な送風機。蒸気を吹き出し、ファンが回転して呪符を吹き飛ばす!
「よし! うまくいった!!」
「…………」
「これで一気に城に突入できます。さあ急ぎましょうホネハミさん!」
「――いや」
 快哉をあげる少年と裏腹に、リンタロウの表情は真剣そのものだった。
 見据える先、吹き飛ばされた符の間隙を埋めるように集まる忍者ども。
 左を見る。右を見る。後方。……囲まれている!?
「こいつら一体どこから!?」
「……あー、これはダメっすね」
 カカカカカッ! 直後、ふたりのもとへ降り注ぐ無数の苦無!
 いかに送風機でも、風を切り裂く刃物を吹き飛ばすことなどは出来ない。
 リンタロウが少年を背後にかばい、ぐるりと魔剣を回してこれを受ける。
 しかし当然ながら全てを受けることは不可能。いくつかの刃が彼の体をかすめ、
 数本が肩や足を突き刺した。リンタロウは素早くそれを引き抜く。
「ホネハミさん!?」
「こんなので消耗させられたら敵将を打ち漏らしちまうっす!
 こいつらはオレっちが足止めするんで、トーヤは先に行くっすよ」
 そこで灯夜はいまさらながら理解した。彼は自分をかばいながら戦っているのだと。
 ……灯夜を責めることは出来まい。彼は彼なりに精一杯に戦っていた。
 ただそれでも目の届かぬところがあり、仲間としてリンタロウはそれをカバーした。
 結果的に彼は手傷を受けている。おそらく次の波状攻撃では、灯夜も。
「何言ってるんだよホネハミさん! こんなところでひとりで残るってのか!?」
「初めてじゃないっすよ、大丈夫大丈夫」
「俺なんかを助けるために、そんなのダメだろ!」
「なに、切り抜け方も知ってるからこその傭兵――」
「違う!! 一緒に無事に帰って飯食べようって、約束したじゃないですか!」
 じりじりと包囲しつつある忍者どもを尻目に、灯夜は必死に叫ぶ。
 そんな彼を、リンタロウはきっと睨みつけると怒声を浴びせた。
「いいから行け、トーヤ!!」
「――!!」
「ケツの青い新兵がベテランの心配なんざ、生意気なんすよ。
 せっかく大将首を譲ってやったんす、止まるんじゃねぇっすよ!!」
「ホネハ――」
 もはや少年を顧みることはない。リンタロウは地を蹴った。
 強靭なゴリラの骨をばきりと噛み砕き、嚥下。魔剣がカタカタと軋む。
「アンタら死んだぜ――こいつをまともに食らっちまうからなぁ!!」
 豪腕一撃!! すさまじい膂力が、地を叩き割り粉塵を巻き上げた!
 直後、第二波到来。降り注いだ苦無は尽くが土埃に弾かれて四散する!
「……ちくしょう」
 もはや灯夜が立ち入れる領域の話ではない。
 少年は歯噛みし、もう一度ちくしょうとつぶやいて、踵を返して駆け出した。
「先に行って待ってるから! ベテランなら絶対追いついてくださいよ!!」
 叫んで、向かう先は呪いの城。もはや振り返ることはない。
 足を止めれば死ぬ。この目くらましに乗じて進まねば終わりなのだ!

「ったく、ほんと生意気なんすよ。ガキのくせして」
 オレも言うほど大人じゃねえか、などとひとりごちながら、リンタロウが肩を鳴らす。
 土煙が晴れる。前後左右、そして空を囲む数十以上の忍者ども。
「さて、そんじゃ……戦場(ここ)で傭兵(おれ)を相手にするっつーことがどういうことか、教えてやるっすよ!!」
 雄叫びが轟く。満ち満ちる力を限界を越えて振り絞り、リンタロウは嵐のなかへ消えていく。
 進むべき道を示し、未来を託して。そのためならば、少しも恐ろしくはない!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四葩・イカヅチ
>同行者:菊のネェさん(f04250)
あは、こりゃア大層なお祭りだ
楽しそうで良いですねィ
アタシも混ぜてくださいよゥ…っと!

>特殊ルール2
せっかく会えたんでネェさんと一緒に遊びたかったですけどねィ
ちィっと的が多すぎらァ。
ここはひとつ、人様のお役に立たせて頂きましょ
ネェさん、駆けっこはお得意で?
こいつらァ加減ってやつが出来ませんから
めいっぱい走って離れてくださいよゥ


さァ、手前ェら。出番だぜェ
ほォら。あっちも、こっちも、上も下も構わねェ
手当たり次第呪い殺しちまえ
怨みつらみは手前ェらだって溜まってんだろ?

最近出してやって無かったからなァ
好きなだけ暴れてきな――

――…
……やっぱ、アタシも混ぜろよゥ!


挾間・野菊
言動アドリブ歓迎!

【四葩・イカヅチ・f03703と共に】


……いかづち?

……よく、わからない、けど

先、いく

……またね


狙いは遠く、注ぐは無数の呪符、向かうは数多の敵
やる事は、いつもの通り
躱し、斬り、駆ける
己の使える物の全て、装備・血肉を削ぎ落としてでも、
致命を避け、牙を喉首へと突き立てる

……そう、思っていたのに
野菊にとって、確かに見知った顔だ
だが、それだけだ
手を貸す理由も、貸される理由も、わからない
親切を装うモノは、魂胆を警戒し、避けるべきもののはずだ

そのはずなのに
なぜか。頷いてしまった

わからない
相手の想いも、自分の心の内も

駆け出したその脚は、まるで逃げるようで
なぜかはわからないが、幾分か軽かった



●託される、という意味
 薄汚い小柄な少女が、身を低くして混迷の戦場を駆けていた。
 こんなことは慣れている。屍体を漁り、武者や雑兵の目を盗んで泥濘を這い回ったこともある。
 降り注ぐものが、矢か符かの違いだ。立ちはだかるのが兵か忍か、それだけ。
 ならやりようはある。攻撃を躱し、立ちはだかる者を斬って駆ける。
 ひたすらに駆ける。装備や血肉など、生きるためには切り捨てるもの。
 命を落とすことだけを避けて、最後にはこの牙を喉首へ突き立てる。
 それだけだ。たとえ百の兵が立ちはだかろうがそれを百回やればいい。
 戦場で頼れるものなど居ない。見えるものは全て敵か、そうなる予定の者だ。
 兵であろうがなかろうが、同じ屍体漁りであろうが何も変わらない。
 いわんや化生をや、生きるためには何よりも確実に切り捨てるべき敵である。
 誰も頼れず、手を貸す理由も、貸される理由も、ない。……"わからない"。
 説法だの人助けだの、親切や慈悲を誘うものはすべて罠だ。やはり敵だ。
 腹の中は黒い。だから警戒し、可能な限り避けるはずのものである。
(……そう、思っていた、のに)
 違う。"そう"なのだ。それが事実だ、それがこれまでだったじゃないか。
 だのにどうして。なぜ。あの時自分は――。

 時間は、少女の当惑から少々巻き戻る。
「あは、こりゃア大層なお祭りだ。楽しそうで良いですねィ」
 聞き覚えのある声に、少女はうっそりを振り向いた。
 対する派手派手しい刺青入りの女は、にこっと笑って手を振った。
 直後、二人めがけて符が降ってくる。少女はこれを斬り裂いた。
「おっとォ! おっかないですねィ」
 対する女は、何かをした。その正体はつかめないが、とにかく無事である。
 少女――挾間・野菊は、剣技を盗む天禀の持ち主だが、それきりである。
 ゆえに女……四葩・イカヅチが使ったなにかしらの超常の術式は計り知れず、
 そもそも興味もないようだった。ただじっとりと、見知った顔を見つめている。
「……いかづち?」
「やァネェさん、アタシも混ぜてくださいよゥ……っと思ったんですがねィ」
 イカヅチは肩をすくめる。この任侠めいた女、実は人ならぬ器物の霊である。
 すなわちヤドリガミ。そのせいかずいぶんと気っ風のいい女である。
「せっかく会えたんで、ネェさんとも一緒に遊びてェとこなんですが――」
 ちらり。イカヅチがみやった先、忍者どもが戦線を築きつつある。
 呪符は止むことなく、どうやら足を止めずに進む必要があるらしかった。
「……ちィっと的が多すぎらァ」
「…………うん」
 言葉少なに頷いた野菊の方を、イカヅチは何が楽しいのか満面の笑みで見た。
「てなわけでここはひとつ、人様のお役に立たせていただこうかと」
「…………」
 野菊の無表情に、少なからぬ警戒の色が生まれた。
 それを知ってか知らずか、イカヅチはにししと笑いながら続ける。
「ネェさん、駆けっこはお得意で?」
「…………?」
 訝しげに小首をかしげる少女に、さらに一言。
「"こいつら"ァ、加減ってやつが出来ませんから。
 めいっぱい走って離れてくださらねェと、ネェさんが危ねェんですよ」
 うぞり。――その時、たしかにイカヅチの刺青が"蠢いた"。
 幾分かの驚きを秘めてそれを見る野菊に、イカヅチは"ほらね?"と首を傾げ、
「ネェさん、あそこのお城に行くんでしょゥ? 止まってる場合じゃねェんじゃないかと」
「…………」
 つまりは、イカヅチは自ら忍者どもを足止めし、道を切り開く。
 その間に野菊を進ませようと、そういうことを言っているのだ。
 それはわかる。野菊が頷けなかった――頷かなかったのは別の疑問ゆえだ。
 なぜ? どうしてそんなことを、現れしなに自分に言うのだ?
 たしかに自分とイカヅチは顔見知りだ。名前も知っている。
 だが"それだけ"だ。一体何が目的で、そんなことを?
「サ、ネェさん。急がねェと、連中が遊びに来ちまいやすよゥ」
 イカヅチは言った。顎でしゃくる先にはこちらへじりじり近づいてくる敵影。
 もはや待ったなしか。野菊はそちらを見、イカヅチを見、彼女の刺青を見、
「…………よく、わからない、けど」
「ええ、ええ」
「先、行く」
「そう、それでいいんでさァ」
 何が嬉しいのか、ヤドリガミはにこにこと笑っていた。
「…………」
 一歩。そんな得体の知れない笑みを見つめたまま、野菊は退いて。
 踵を返そうとした時、自然と口から言葉が漏れていた。
「いかづち」
「はィ?」
「…………またね」
 その言葉に、今度はイカヅチがきょとんとして。
 しかし破顔して、莞爾と笑って頷き、少女を送り出したのだ。

「さァ、手前ェら。出番だぜェ」
 孤影。敵の殺気を八方から浴び、イカヅチはひとりごちる。
 先の符を払ったのはこれだ。刺青に秘められし物の怪ども。
 うぞうぞと蠢くそれらは口々に呪い、恨みを呻く。
 足りぬ。まだ足りぬ。腹が減った。足りぬ。足りぬ。足りぬ。
「ああ、ああ。そうだろうさ、そォだろう。――だからよォ、居るぜ。
 ほォら。あっちも、こっちも、上も下も構わねェ」
 敵がいる。害意を向ける過去の化身共がこちらへやってくる。
「手当たり次第、呪い殺しちまえ」
 ――その言葉を皮切りに、刺青から波擣が溢れ出た。
 それはこの世ならぬ化生である。恨みつらみを溜めた鬼神どもが。
 どろどろと膿のごとく垂れ流されたそれらは、地を空を埋め尽くし敵へ襲いかかる。
 凄絶である。仮にここに味方がいればどうであっただろうか。
 無論、区別はつかぬ。だからこそ野菊を送り出したのだから。
「――しっかしねェ」
 蹂躙を見やりながら、イカヅチはふと思い返した。
 "またね"。とてもではないが、彼女から出るとは思わなかった言葉。
 くふ、と。その口元が綻んで、気づけば微笑んでいた。
「言われちまいましたからねェ。ああしかしこいつらァ、暴れるねェ。
 最近だしてやって無かったからなァ、ああ、ああこらまた――」
 ぞるぞるとあふれる、海の如き物の怪ども。
 忍者どもの悲鳴と怒声と阿鼻叫喚。うずり。イカヅチは震えた。
「――……」
 うずり、うずうず。口元がむずがゆそうに震える。
「……やっぱ、アタシも混ぜろよゥ!」
 喜び勇んでヤドリガミは飛び込んだ。物の怪と血と符と呪いが全てを覆い隠した。

「……はっ……はっ」
 可能な限り呼吸を少なくし、野生の勘で得た滑るような足取りで戦場を進む。
 わからない。どれほど考えても何もかもわからない。
 イカヅチはどうしてあんなことをいい出したんだろう。何を想ったのか。
 そして自分は、なんであんな素っ頓狂なことをいきなり言ったのだ。
 "またね"だなんて。会う必要なんてこれっぽっちもありはしないのに。
 もしかしたらあれは、イカヅチが何かを企んでいるかもしれないのに。
「はっ……はっ」
 駆ける。遠くから風に乗って響く阿鼻叫喚、そこから逃げるように。
 恐れからではない。――足は震えていないし、体力は満ちるばかりだ。
 こんなに軽やかに走れたのは、いつ以来だろう……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハル・ウロハラ
※ウェンディちゃんと!

呪いの雨も忍者のクナイも翼の風で【吹き飛ばす】!
進路クリア!ヨシ!
ウェンディちゃん一瞬隙があれば充分でしょ?
ハルに構わず、全速力!
出していいんだぜっ!

…さっすがハルの親友です。超速い
んじゃこっちは超暴れちゃいます!
降魔化身法で宿すは御先祖様「土鬼」
当ててないもん、防げない技は真似られないでしょ?
壁も床も崩し倒して
「やーやー我こそは…ハル・ウロハラ!」

ウェンディちゃんに目が行かないよう【おびき寄せ】て
掴んで千切って【生命力吸収】【吸血】
土鬼の力真似たとこでハル、こっからがしぶといですよ?

御行儀悪いから親友にはあんまり見せたくないけど
さあ、みーんなハルのオヤツになってよねっ!


ウェンディ・ロックビル
※ハルちゃん(f03051)と!
えっ、でもハルちゃ――ん!りょーかい!ガッテンしょーちです!
行ってくるねっ!

……大親友に、いいって言われちゃったからねえ。
久々に、出そっか。一直線に、全速力。
よーいドンで、お城につけばいいんでしょ?
なーんだ。――楽勝じゃん。
ハルちゃんが作ってくれた隙で姿勢を整えて、敵の射撃を号砲がわりにスタートを切るよー。

摩擦も、空気抵抗も、敵の妨害も。ぜーんぶの束縛を振りほどいて、最大最高のマックススピードでダッシュするよ。脇目はふらずに一直線。敵はくぐり抜けて、空だってとべる。

――だって僕は、ウェンディ・ロックビルだぜ?




 猟兵たちは、それぞれの方法でこの猛攻を突破していた。
 独力でかいくぐるもの。
 仲間を送り出すためその場に残るもの。
 過去の因縁にとらわれるもの。
 手段も経緯も方法も、そしてその結果も様々である。
 だがおそらく、彼女たちのような手段と結果を得た者らは誰もいないだろう。
 なぜなら二人は――"はじめから二人で辿り着くことを考えて居なかった"。

●元気で無敵な大親友たち
 ごぉう――!!
 羽ばたきに合わせて、竜巻じみた業風が吹き荒れた。
 呪符も、苦無も、当然ほかの忍術忍法、何もかもも。
 強靭な羽ばたきの風が、すべてすべて吹き飛ばしてしまった。
「進路クリア! ヨシ!」
「よし!!」
 翼をはためかすハル・ウロハラとウェンディ・ロックビルの仲良し二人組は、
 束の間生まれた間隙を見て声を揃えて叫んだ。楽しげですらある。
 そしてウェンディはそのまま、クラウチングスタートの姿勢を取る。
 いちいちあれこれ言葉を交わすことはない。ハルが残り、ウェンディが進む。
 そういう風に彼女らはさっき決めた。なのでそうする。それだけだ。

(――ウェンディちゃん、一瞬隙があれば十分でしょ?)
 つい数十秒前。出し抜けにハルはそう言った。
(行けるよね! 行ける時、行けるなら、行かねゔぁ!!)
(えっ、でもハルちゃ――)
 ウェンディとてバカではない。いやお味噌は足りないかもしれないが。
 能天気ではあるが。バカではない。断じてバカではない。
 ……なので、その時のウェンディは、ハルの言わんとしていることがすぐわかった。
 無二の親友なのだ。ツーカーというやつだ。
 だから思わず、ありきたりな言葉を口にしそうになったのだけれど。
(ハルに構わず、全速力!)
 それをわかっていたハルは、にぱっと笑ってサムズ・アップした。
(出していいんだ! ぜっ!!)
 だからウェンディが出しかけた言葉は、そのまま消え去って、
(――ん! りょーかい!! ガッテンしょーちです!!)
(いってらっしゃい!!)
(行ってくるねっ!!)
 そういうことになった。

 ……ついさきほどのやりとりを脳裏に思い起こしながら、ウェンディは笑う。
 とはいえ、あまりにも端的である。疑問を挟む余地もあったはずだ。
 いや、事実あった。それは正直なところそうだ、心配でもある。
 しかし、しかしだ。大親友が"いい"と言ってくれたのだ。
 頼む、でも、任せる、でもない。"いいんだぜ"と。であれば。
(久々に、出そっか。一直線に、全速力)
 ……ウェンディには(当たり前だが)両親がいる。彼女はどちらも大好きだ。
 家にあまり帰ってこない父と、頼りになる母親。そして大好きなお姉ちゃん。
 この曲者少女の親だけに、両親も大変に一癖も二癖もある者らだ。
 そんな父からパク――もとい、受け継い……いや、完全オリジナルの技がある。
 断じてパクってないし、受け継いだとかそういう話でもない。我流だ。
 そもそも技と呼ぶべきかも怪しい。ただユーベルコードであることは確かだ。 ユーベルコードとは奇跡である。であればウェンディのそれも、奇跡だ。
 彼女にとっては当たり前の、"限界速の一歩手前"で走るだけの行為だけれど。
(よーいドンで、お城に着けばいいんでしょ? ――楽勝じゃん)
 そこへ忍者どもがやってきた。印を切り、一斉に攻撃の波擣を放った。
 その瞬間、少女は何もかもから解き放たれて、誰にも止められない風になった。
「だって僕は、ウェンディ・ロックビルだぜぇーっ!!」
 高らかな快哉すらも、だれにも届かぬほどに速く。

 摩擦係数、空気抵抗、妨害、一切合切から解き放たれた極限の加速。
 当然ながらそれはすさまじい衝撃波を産み、敵も何もかもを吹き飛ばす。
「うひゃああ~~~!!」
 ハルは髪を抑えて楽しそうにそれに耐え、やがて風が収まった頃。
 見上げれば、そこに有象無象がたくさん集まっていた。
 たくさんである。数え切れないぐらい居るからそう表現する。
 別にハルが大量の数を数えられないわけではない。彼女はバカではない。
「さっすがハルの大親友です、超速い! んじゃこっちは! 超!! 暴れちゃいます!!」
 降魔化身法。降り来たるはハルの先祖――土鬼。
 つまりそれは抗いようのない暴力の化身である。防ぎようのない力である。
 ばさり。翼をはためかせ、態勢を整えた忍者をやおら掴んだ。
 それだけでヤツは千切れた。飛び散る血は自然とハルへと吸い込まれる。
「やーやー我こそは……ハル・ウロハラ!
 この力ー、真似たところでハルはこっからがしぶといですよー!!」
 空気が渦を巻いて凝縮するようである。それほどの圧を放射する。
 少女の双眸が炯々と輝く。口元には爛々たる笑み。浮かべる意はひとつ。
「お行儀悪いから、大親友にはあんまり見せたくないけど――」
 獣が牙を見せるときなどひとつきりだ。獲物を見つけたときだけだ。
「――さあ、みーんなハルの"オヤツ"になってよねっ!」
 そして、蚕食が始まった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神威・くるる
【特殊ルール1】
ひゃー、ニンジャやぁ
初めて見たわぁ……て
そ、その姿は!
今うちが一番飼いたい猫ちゃんダントツトップのマンチカンちゃん!!

ひゃあー、ひゃあー、どないしょ、どないしょ
抱っこして撫でたりしてもええやろか!?

【猫じゃらし】で遊ぶやろか
……おかしいなぁ、猫ちゃんは皆これ好きなはずなんやけど
この子は悶え苦しんではるみたい……?

あ、ごはんとかどない?
ちゅ●るとか食べる?
あや?他の猫ちゃんの様子がおかしいなぁ
【動物と話す】で話聞いてみよ

え?この猫ちゃんは仲間(猫)やない?
ふふ、まさかぁ
ヤキモチやろか
しゃーないなぁ
ごはん、皆で仲良ぉ食べるんやで?(ユベコ発動)



●猫がまっしぐらなのかこちらがまっしぐらなのか
「ひゃー、ニンジャやぁ。初めて見たわぁ……」
 本当か? 本当にか? みたいなことをのほほんと驚く少女。
 神威・くるるの言葉は、何もかもが嘘か真か定かならぬものである。
 ……本当に初めてなんだろうか? 忘れているとかではないのだろうか?
 ともあれこの鉄火場にありていまいち緊迫感のない様子でいたくるるだが、
 目の前に降り立った忍者が印を切り変貌するとさらに驚く。
「そ、その姿は!」
 我らに理解できぬ戦術なし。
 秘術を用いれば、ユーベルコードを防御せずともその身を変じさせられる。
 少なくとも、この地に現れた紫陽衆は、そんな絶技すら可能としている。
 忍者はにやりと笑った。さあ、因縁深き宿敵の姿に変じてくれよう!
「にゃ~ん」
 なんて?
「あ、あややややや……」
「にゃ~ん……にゃ~ん!? にゃ~ん!?」
 忍者自身が一番ビビった。猫! 猫ナンデ!?
「い、いまうちが一番飼いたい猫ちゃんダントツトップの、マンチカンちゃん!!」
 なんたることか。くるるは中身までかなり名状しがたかった!
 しかし少なくとも、本人の慌てっぷりはガチである。
 慌てるというか、尊いとかもうまぢむり……てきなやーつだが。
 呪符だのなんだのはどこへやら、恐る恐るマンチカンへ近づくくるる。
 この秘術、厄介なことに使用すると自我まで塗りつぶされることがある。
 というか今がまさにそうだ。だんだん猫の気持ちになるですよ……!!
「ひゃあー、ひゃあー、どないしょ、どないしょ」
「な~ん……」
「抱っこして撫でたりしてもええやろか!?」
「な~う」
 くるるはおずおずと猫じゃらしを取り出し、フリフリと目の前で振る。
 マンチカン(忍者)、うずうずと飛びつきたがるが我慢する!
 ここで飛びついたらホントに猫になってしまう! それだけは嫌だ!!
「……おかしいなぁ、猫ちゃんはみんなこれ好きなはずなんやけど」
 悶え苦しむさまに、こてんと首をかしげるくるる。 
 眼の前で変異見てましたよね、的なツッコミは無用である。
 猫様を前にした時、人間はIQが2か3ぐらいになってしまうのだ……!!
「な、な~う、なーご!!」
「あ、ごはんとかどない?」
「うにゃっ!?」
 おもむろに取り出したるは……おお、あのスティックシュガーめいた形状!
 猫がまっしぐらしてぺろぺろはみはみジャンキーになるとおなじみの、あれ!!
 わからない? わかってもらいたい。お猫さまの御前である!!
 そろそろと差し出してみるが、そこでくるるの黒猫たちがみーみー鳴いている。
「あや? なんや様子おかしいなぁ、どないしたん?」
「みー(特別意訳:いやそいつ忍者ですよ)」
「え? この猫ちゃんは仲間やない?」
「みー(特別意訳:だって目の前で変異したじゃん!)」
「実は忍者……ふふ、まさかぁ。ヤキモチやろか」
 にこにこ。ホントに会話できてるのかなこれ? 技能レベル1だもんね。
 ともあれしゃーないなぁ、とニコニコ顔になったくるる。
 まっしぐらなあれに心を奪われかけていたマンチカン(忍者)はギラリと目を輝かせた。
 ここだ。ここでなんとかするしかない。そして秘術を解除しよう。
 このままでは猫になってしまう。日向ぼっことか……したい……!!
「なーご……!?(そ、そのアイテムは!?)」
 くるるは……またたびを……与えようと言うのか!?
 またたび……おお、そのかぐわしさ、おお、おお……!
「ごはん、みんなで仲良ぉ食べるんやで?」
「「「にゃーん!!!」」」
 おなかをすかした黒猫が殺到した。マンチカンも飛び込んだ。
 もはやそこに忍者はいなかった。
「あや、やっぱりみんな仲良しやねぇ。うふふふ!」
 またたびは、すべてをダメにしてしまう。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミハエラ・ジェシンスカ
ルール1希望

高速移動が必要な場合は【念動加速】ないしは【念動力】を使用

生憎と私に親しい者はいない
となれば必然、因縁深い者とは敵の類いになるわけだ
皇帝陛下かあるいは上位機たる白騎士ディアブロか
いずれにせよ貴様ら如きに再現できる器ではあるまい

ああだが、その姿を取ってくれた事には感謝せねばなるまいな
貴様らは今一度、私に反逆の機会を与えてくれたというわけだ

【悪心回路】を起動
禍々しい笑みと暴力的な衝動に身を任せて蹂躙を開始する

貴様らが我が悪心(ちゅうせい)を理解する必要などない
不遜にもその姿を取った事、私に三度目の刃を向けさせた事
貴様らはただその僭上の沙汰を恥じて死ぬがいい



●闇の騎士
 色のついた黒き呪われた風が、戦場を駆け抜ける。
 符は即死の呪いを孕む。だが呪詛の塊を呪ってなんになろうか?
 ミハエラ・ジェシンスカは鋼であり、すなわち邪剣である。
 そうあれかしと製造され、そうあるように行動する呪われた剣である。
 ゆえに、戦場の混迷に、ミハエラがかかずらうことはなかった。

 しかし。目の前に現れた巨影には、さしものミハエラも足を止めた。
「――……なるほど、模倣の忍法か」
 おそらく、なにがしかの方法で己のデータを読んだのだろう。
 オブリビオンは骸の海より来たるが、通常世界を超えることはない。
 ゆえに奴らが、この世界から遠く離れた星の海を識ることはない。
 そこに君臨した、白亜のごとき機械の騎士を識るはずもない。
「白騎士ディアブロ。我が上位機」
 然り。聳えたる巨影は紛れもなくミハエラにとっての上位種。
 銀河帝国の双翼。未来を予測せし無敵無双の騎士。
 ――すでに亡びた、哀れなる過去の残影。その模倣種。
「貴様らごときに再現できる器ではあるまい。ああ、だが――」
 ミハエラはしかし、純粋な感謝を込めてそれと相対した。
 ここに邪剣あり。反逆を運命づけられた機械の騎士あり。
 ならば、再びの反逆は、愉悦と歓喜をもって受け入れるべし。

「悪心回路、凍結の一時解除を承認。――起動(イグニッション)」
 裡なる悪の華を咲かせる。途端、ミハエラを中心に黒が渦を巻いた。
 湧き上がる暴力的な衝動に身を任せ、禍々しき笑みを浮かべて突き進む。
 周囲には忍者どもがいた。ことごとくがねじれ切り裂かれて死んでいく。
「なんだあれは」
 死に際にある忍者が言った。
「何者なのだ」
 一瞬前に、忍者が言って死んだ。
 みな死んだ。切り裂かれ、断たれ、焼かれ、灼かれて死んだ。
 ここにあるは堕ちたフォースナイト。反逆を運命づけられた闇の騎士。
「貴様らが、我が悪心(ちゅうせい)を理解する必要などない!」
 朗々たる声。邪剣は敵を切り払い、不完全な未来予知を担う白騎士の模倣体と切り結ぶ。
 軽い。遅い。鈍い。易い。存在自体そのものが冒涜だ!!
「不遜にもその姿を取り、私に"三度目"の刃を向けさせたこと!
 貴様らは、ただその僭上の沙汰を恥じて死ぬがいい。狗のように、塵芥のように」
 すでに運命は決定づけられた。ならば刃がそれをくれるまで。
 かくて呪いよりも呪わしき闇が、何もかもを切り裂き薙ぎ払った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティオレンシア・シーディア
ルール1希望

因縁深い姿、ねぇ…
相手の記憶でも読んでるのかしらぁ?
あたしだったら…あの黒騎士とか、邪神とかだったりす――

呼吸が、思考が止まる。
金色の眼。全身を鎧う赫い朱い鱗。喉の奥に燃え盛る紅蓮の灼熱。
幻想の極致、幻獣の王。ドラゴン。それも――
忘れるものか。見紛うものか。
あれは、アイツは、あの子の――

…ふ。ふふ、ク、キヒ、は、はは…!
よりにもよってソイツとはね…!
確かにアタシに最も因縁深いって言えばソイツなんでしょうけど。
…選択を、間違えたわね。

〇ダッシュ・ジャンプ・スライディング駆使しつつ、●射殺を〇一斉発射。
狙いは逆鱗、ただ一点。
後のことは意識的にトばして、微塵の容赦なく絶殺にかかるわ。




 人には誰しも秘密というものがある。
 己の全てを曝け出して生きる者など、居はしない。そもそも不要だからだ。
 それはけして悪いことではない。何事も、隠し秘めたほうがいいことはある。
 意図しようとすまいと、誰もが何かを隠して生きている。
 そのほうがうまくいく。そのほうが通りがいい。

 そうせねば、生きられないものも居るゆえに。

●ある女の過去について
「――……」
 ティオレンシア・シーディアは、死線の只中で立ち尽くした。
 愚行である。本来の彼女なら決して犯さないミスだ。
 だがそうせざるを得なかった。いや、選んでそうしたわけではない。
 他の何も思考できないほどに、打ちのめされ虚脱していたのだ。
 ……目の前には、模倣忍者が変じた異形がひとつ。
 金色の瞳。縦長の瞳孔は蛇めいて――否、事実それは爬虫類である。
 いかなる鎧よりも硬く堅牢なる、赫奕たる朱い鱗は燃えるかのよう。
 ぎざぎざと山脈のような牙の奥で、心臓が拍動するたび紅蓮の吐息が漏れ出した。
 陽炎が揺らめく。いかにもそれは灼熱が形を得たような存在である。
 あらゆる世界、あらゆる神話において強大無比として知られるもの。
 世界によっては、事実その通りに君臨するもの。すなわち、龍。ドラゴン。
 ……その威容が彼女を打ちのめした? 否、これは"模倣されたもの"だ。
 つまりはティオレンシアの過去に起因するものであり、そして、そう。
「あれは」
 忘れるものか。
「アイツは」
 見紛うものか。
 かつて天涯孤独であった頃。己の力と技術と智謀のみで生きていた頃。
 世界のゴミ捨て場めいたくだらない街の片隅で、出会った相手がいた。
 人は誰かが死んだ時、声から忘れていくという。
 ふざけるな。あたしは覚えている。アタシはたしかに覚えている。
 あの子の声。言葉、まなざし、髪の色、装い、好み、なにもかも。
 過ごした時を。最期の姿を。それをもたらした暴威を。何もかもを。
 覚えている。だからわかった。"それ"がなんなのか。何をもたらしたモノなのか。

「――ふ」
 ぐるる。龍が唸る。それは訝しみの声であった。
「ふ、ふ」
 ティオレンシアは奇矯な女である。聞いた人のことごとくが二度と忘れぬ声の持ち主。
 けれどもそれは、ぞっとするほど低まり、瞳はたしかに見開かれていた。
「ク、クヒ、は、はは。は……はは……!」
 笑っていた。女はたしかに笑っていた。
「よりにもよって"ソイツ"とはね……」
 かちゃり。オブシディアンが静かに弾丸をリロードする。
「たしかに、アタシにもっとも因縁深いって言えばソイツなんでしょうけど」
 かちゃり。トリガに指をかける。
「――選択を、間違えたわね」

 ……一陣、風が吹いた。
 おそらくは女が吹かせた風だろう。他に可能性はない。
 "おそらく"。なぜ確定できないのか? ……誰にも、見えなかったからだ。
 気づけば女は姿を消していた。そして龍の懐にその身があった。
「アタシの前に、立ったんだもの」
 六連装リボルバー。龍を討つにはあまりにも頼りなき器物。
「逃げられるわけないでしょう? ――逃がすつもりもないけれど」
 だが殺(ト)る。確実に。この姿を模倣された以上それはもはや確定である。
 爪が振るわれる。尾がほとばしる。紅蓮が逆巻き翼がはためく。
 関係ない。あとのことなど識るか。こいつは、これは、こいつだけは!!
「――これが、とどめの一撃(クーデ・グラ)よ」
 射ち、殺す。そう書いてそれを為す。ティオレンシアにはそれができる。

 銃声が轟いた。悪夢めいた龍は、やがて遠吠えめいた断末魔を残して死んだ。
 亡骸のそばに女はなく、ただ焼け付く影のように怒りの残滓が燃えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
特殊1
アドリブ歓迎
変化した姿:過去に自分を攫ったヴァンパイア

ハッ!いくら呪いつったって媒介は紙だろ
紙なら燃える全部燃やしてその隙に突っ切ってやる

その姿をみて頭が真っ白になった
腹の底が煮えたぎるようだ
唸るような声を上げる
お前は…俺が、殺した筈だ
蘇ったのか
わからないままにしかし体は勝手に動いた
【望みを叶える呪い歌】を歌い
『全力』の魔力を拳に
剣を抜くことすら忘れ昔ヤツを殺した時のように殴り掛かる
自分の命を削って
ヤツが死ぬまで何度でも

…んだ、幻術か
つまんねぇ技に引っ掛かっちまったな
こんなとこでゆっくりしてらんねえ
さっさと先に進むとするか

アイツがマジで蘇える可能性もあるなんてのは
今は考えないでおこう



●より大きな鳥籠、より長い足枷
 魔力の焔を全力で放ち、星の光のように呪いの符を燃やす。
 いかな呪力が込められていようが、畢竟符とはすなわち紙である。
 当然防護の呪もかかっている。ならば、それを超える魔力で燃やせばいい。
 至極シンプルな、それゆえに実現は難しい打開策。
 セリオス・アリスにはそれができる。彼は猟兵だからだ。
「ハッ! いくら呪いっつったって、媒介は紙だ。全部燃やしてやらぁ!」
 鼻で笑い、ごうごうと空に火の海を生み出しながら駆け抜ける。
 時折放たれる苦無や忍術に骨を折ることはあれど、この程度の消耗なら――。

「……あ?」
 いける。そう思っていた。敵もそう感じていた。
 だから忍者は秘術を用いた。自我すらも塗り潰される禁断のそれを。
 ただ一度技を借り受ける程度ではなく、己の身も形も何もかも作り変える技。
 セリオスの過去の、因縁深きモノがそこに現れた。ゆえに彼は忘我した。
「――」
 言葉を失う。頭が真っ白になる。
 比喩だと思っていた。しかし本当なのだと、言い得て妙なのだと識った。
 何も考えられない。"それ"がなんであるかを認識した時。
 貴族めいた礼装。青白い肌。しかして不気味なほどに端正な顔立ち。
 笑う口元、艶やかな唇の合間から覗く――鋭い、牙。
「ぅ、うう」
 狗が唸るような声が漏れた。腹の底が煮えたぎるような錯覚。
 怒り? 苦しみ? 悲しみ? 恐れ? どれでもあるのだろう。
 一気に全てがフラッシュバックして、ミキサーにかけたように反芻される。
「ぅ――お、前は」
 かろうじて言葉をなした。
「お前は、俺が」
 殺したはずだ。
 この手でたしかに。たしかに殺したはずだ。
 この世界とは別の場所、闇に包まれし黄昏の国。
 己を鳥籠に閉じ込め、枷を嵌めて愛でていた悪辣なるモノ。
 吸血鬼。ヴァンパイア。ノスフェラトゥ。母の、多くの人々の仇であり、過去。
「蘇ったのか」
 有り得る話だ。オブリビオンとはそういうものだ。
 それはにたりと――忌まわしいぐらいに記憶通りに――笑って、言った。
『だとすればどうする。また私のために囀ってくれるのか? その声で」
「――!!!!」
 わからない。しかし、そのままに体は動いていた。
 反射と言っていい。なにかせねばならぬと全細胞が吼えていた。
「ァアアアアアアアああああッ!!」
『美しい歌声だ』
「応えろ! 力を貸せ!! 俺の望みのままにィッ!!」
 まじない歌に惹かれ、根源より魔力が来たる。命などくれてやる。
 こいつを、これを、再び滅ぼすためならば! ああ、心臓も抉り出してやろうとも!
 剣を抜くことすらなく、燃える風が拳を振り上げ飛び込んだ。
 ヤツはあのときと同じように、嘲笑を浮かべてそれを迎え撃った。
『いい歌声だ、美し』
「ァアアああぁあああああッ!!」
 そして叩きのめした。
 何度も。
 何度も何度も。
 何度も何度も何度も。

 ……ふと、我に返る。
「――なんだ、偽物かよ」
 もはや人のカタチすらなしていないそれの上で、セリオスは呻いた。
 血反吐を拭うことも億劫そうに立ち上がり、そびえ立つ城を見据える。
 くだらない話だ。だがいずれ、これも現実になるのかもしれない。
 なぜならオブリビオンとは――いや、よそう。詮無きことだ。
 ありえたとして防ぐことは出来ない。今考えるべきではない。
「……俺はもう、解き放たれたんだ」
 ただそう呟く。鳥籠の中の鸚鵡めいて。
 足枷は砕いたはずだった。けれども足取りは、あの時と同じように重く鈍かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

街風・杏花
【ここ俺希望】
アドリブ、絡み歓迎

うふ、うふ、うふふ!
とっても、とっても愉しいですね。
相手の技のみならず、どうやら因縁のある相手の技まで汲み取っている様子

それって、ええ、――強者揃いの猟兵の、更に心に残る技を繰り出してくれる、ということですよね?
うふ、うふふ! 素晴らしい!
ええ、ええ、ならば手当たり次第。ねえ、ねえ、良いでしょう? 譲って下さいましな!
こんなご馳走揃い、食べ残したまま進むなんて勿体無いこと、できるものですか!

鏡花翠月流……でしたっけ。
うふふ、何でもいいですね、流派なんて。
名前はどうあれ――強い技と相対すればするほど、寄り道をすればするほど。強く、楽しく、刀を振れるのですから!



●狂花
 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花――誰もが識る言葉だ。
 花のように美しい乙女を謳う、古く美しい言葉である。
 彼女のそれはまさにその通りだった。瀟洒な立ち振る舞いに怜悧な笑顔。
 金色の瞳をたなびかせて踊るように歩くさまはいかにも花のよう。
「うふ、うふ、うふふ」
 笑い声など、ほら、まるで蜜を吸う蝶のように軽やかではないか。
「とっても、とっても楽しいですね!」
 楽しげな笑顔はどうだ。文字通り花開くように明るく。
「うふ、うふ、うふふ――」
 ……ここが戦場でなければ、その赤い瞳の爛々たる輝きがなければ、
 たしかにそれは乙女の、淑やかで美しい花のような姿であったろう。
 しかし残念ながら街風・杏花は狂っている。戦の高揚に狂っている。
 本人もそれを識っている。わかった上で、むしろ望んで酔いしれている。
 だからどうしようもない。こんな状況で彼女が浸るのも無理からぬもの。
「ええ、ええ、手当たり次第。ねえ、ねえ、良いでしょう?」
 忍が立ちはだかる。斬る。
 忍術が襲い来る。伐る。
 符が呪いとともに――切る、剪る、斫る。
「こんなごちそう揃い、食べ残したまま進むなんて勿体無いこと、できるものですか!」
 そういえばそもそも、どうしてここへ来たのだっけ。
 なにやらでたらめな流派を名乗って、立ち回りなどしていた気がする。
 どうでもいいか。なんでもいい。だってここにはごちそうがたくさんある。
「あら、あら、ごきげんよう!」
 影を纏う見知った幼馴染がいた。正しくはそれに変じた敵がいた。
 楽しんだ。普段なら絶対に出来ないほどに、模倣された技に酔いしれた。
 けれど物足りないから斬った。それはあっさり死んでしまった。
「うふ、うふふ! 次はあなたですわね?」
 出会ったばかりの、大鎌を振るう正義の味方が居た。
 あいにく本物は斬ってはならない。だがこれは偽物なので遠慮はしない。
 五合十合打ち合って、堪能した末にこれも斬った。いい手応えがした。
「ああ、ああ、あなたまで」
 従者を名乗る瀟洒なナイフ使いがいた。短剣の切れ味を堪能して殺した。
「まあ、まあ!」
 ヤドリガミ。キマイラ。人間。多種多様な、見知った猟兵の模倣体。
 躊躇なく挑んだ。あるいは襲われた。付き合って、打ち合って、殺した。
「うふ、うふふ――」
 謳うように。踊るように殺して回った。ごちそうをたっぷり堪能した。

 ……そして。
「――噫、嗚呼」
 当然のようにお鉢が回ってきた。なぜなら奴らは杏花の過去を読み取るから。
 識った顔はおおよそ斬った。偽物なんだから咎められる筋合いはない。
「あなたすら、模倣してしまうのですね。されてしまうのですね!」
 誰より見知った、よく知った少女の姿。月のようにまあるい金色の瞳。
 美しい銀色の髪。奥底に秘められた、どうしようもなく鏡写しの狂気。
 いつかの茶会、歪みに歪んだ同心円がともに高らかに笑ったことがある。
 共に互いの不幸と破滅を思い描いて、恍惚として微笑んだことが。
「"お嬢様"――」
 従者として仕える相手。相対したことない、しかし誰よりも"有り得る"相手。
 だって彼女も自分も狂っている。歪んで壊れて何もかもずれている。
 そうなったらどれほど楽しいかと、何度夢想したことか。思い描いたことか。
 ……だから杏花は、"それ"の模倣を高らかに笑って喜んだ。
「お嬢様、お嬢様! うふ、うふふ! さあ、さあ、お見せくださいまし。
 きっとゾクゾクするほど愛らしい、あなたの綺麗で無様な悔し涙を!」
 血の杭が現れる。切り払う。
 無数の鮮血の槍が降ってくる。躱して砕く。
 釘。鎖。心を砕く従属の凝視。きっと本物はもっとずっとおぞましいのだろう。
「うふ、うふ、うふふ――!」
 斬る。払う。いなす。敢えて受ける。ただただ踊り狂う。
 やがて再びの波擣がその姿を覆い隠す。狂える花を現世から遠ざけるかのごとく。

 ただその笑い声は、どこまでも高らかに響いていた。
 あとにはおそらく、屍のみが遺るのだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

千桜・エリシャ
あなたは
宿の裏山を治めていた山神の大天狗
花の涯の前主
路頭に迷っていた私を拾ってくれた
そして初めて負けた男

飄々とした態度で綴る江戸言葉に得物の和傘
紅髪に月色の瞳
よく似ていますわ
ならば遠慮はいりませんわね
あなたから賜った扇で
今までの鬱憤をこれでもかとぶつけて差し上げますわ
己が与えた神通力で自滅なさい!
気を取られている隙に風に乗って首を切り落としてあげる

私にこれを与えたのも、きっと長く終わらない生の気紛れだったのでしょう
それでも私は嬉しかった
力を認めてもらえた気がして
なのに私に全て丸投げして消えるとかどういう神経してますの!

偽物を倒したところで憂さは晴れませんわ
まったく今頃どこで何をしているんだか



●天狗に魅入られたモノ
 ……千桜・エリシャは、おおよそは柔和で穏やかな女将として通る。
 もっとも彼女は意識して演技しているわけでないし、己の飢えを隠すことはない。
 少しでも親しくなった者ならば、彼女の"悪癖"はようく知っている。
 ただ、そんな彼女にも年相応の顔というものはあるもので。
 いま苛立ちを隠そうともしない様子は、いかにも十と七つの乙女めいていた。
「…………」
『どうしたィ。ひょんとした顔をしちまってさァ』
 和傘を肩に担ぎ、口からそろりそろりと転がり溢れるは江戸言葉。
 表情身振り手振りがいちいち飄々と、人をおちょくるように思えてならない。
『おれの姿がそんなに不思議かィ? 何が気に入らねえんだかサ』
「……よく、似ていますわ」
 嘆息。これが偽りのものであることは重々承知の上だ。
 模倣体だ。なぜならばあれは――エリシャに何もかもを放り投げたあの男は、
 たしかに紅色の髪も月色の瞳も、なにもかもよく似ているけれど。
 己を負かしたあの男は、初めのときと同じように風のように消えたのだから。
「ええ、ええ。ならば遠慮はいりませんわね」
 刀には手をかけず。代わりにばさりと広げるは、一枚の立派な扇。
 表には風神が、裏には雷神が描かれた、たいそうな代物である。
「今までの鬱憤を、ここでぶつけてさしあげますわ!!」
『アッハ! そら土台無理な話だ。――お前さん、おれにゃ勝てねえヨ』
 エリシャの額に青筋が立った。明らかに腹が立っている証拠である。
 直後、扇を扇げば、おお! まさに神通力ここにあり!
 大風雷雨が交互に逆巻き、ざんざんと符を弾いて吹き荒れる!
『おお、おお、こらァまた盛大だ! さァすがおれの扇だねェ!』
 かんらかんらと笑うさまはいかにもその通りで、なおさら癪に障る。
 風をさらに強める。エリシャは身を低くしてそれに乗った。
 ――いかに姿形を真似てそれらしくちゃきちゃきと振る舞おうが、
 結局それは模倣体。エリシャの過去から模された偽りのもの。
 まして彼女は、あの頃よりも技を磨いた。刀をより鋭く振るってきた。
「――首を落としてあげるのは、慈悲でしてよ」
 ごとり。
 桜花と胡蝶が舞い散って、へらへら笑う頸を嘲笑った。

「……はあ」
 ウソのように風が失せた只中で、エリシャは思わず頭を振る。
 らしくないことをした。あれの姿を模倣されたせいである。
 思えばこの扇を手に入れたときも、最初はなんとも心が踊った。
 ああ、そうとも、嬉しかった。力を認められたのだと舞い上がった。
 有頂天とはまさにこのことだ。だって彼はその直後にふらりと消えたのだから。
「勝手に命を救っておいて、何もかもを投げ出して、押し付けて。
 ……本当にもう。まったく今頃、どこで何をしているんだか」
 ぱちり。扇を閉じて、物言わぬ屍を顧みることなくそぞろ歩く。
 憂さが晴れるものか。ここまで高ぶらぬ頸もなかなかない。

 ……さて、そんな有り様を睥睨する、どこかのお山の奥の奥。
「アッハ! こら傑作! アイツめ、まァだ"人(しと)"を恨んでやがンのか」
 手でひさしを作ってあらぬ方を見ていた男が、かんらかんらと笑った。
「マ、元気なようでなによりだァな。ああ、面白ェ面白ェ――」
 桜も胡蝶も届かぬそこで、妙な男は何がおかしいのかただただ笑っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヌル・リリファ
◆ルール1希望
◆アドリブ、連携など歓迎です

アインスに、ツヴァイ?(以下、番号上げていく。)(外見がヌルそっくりな、ヌルの姉妹機の姿。)

いや、ちがう。わたしはマスターや、マスターの人形をまちがえるほどダメな人形じゃないよ。

でも、そのすがたで。無様な姿を晒されて、マスターの悪評につながったらこまるから。全力でいく。(そこには、姉妹機__ひいては自分の姿をした存在を倒すことへの躊躇いはない。むしろ、明確な殺意をもって対峙する)

その姿をとっても。わたしの姉妹機とおなじうごきができるとおもってるなら。それはマスターへの侮辱だよ。

じゃあ、いくよ?(UC起動。さっきとすることは同じだけど。殺意はより高く。)



●人形の矜持、人形の価値
 ……青い瞳、銀色の髪、ほとんど同じ背丈。
 まるで鏡をそこに置いたかのように、そっくりそのままの姿がひとつふたつ。
「アインス、それにツヴァイ……?」
 ヌル・リリファは、わずかに訝しむような声音で言った。
 その名の通り、これらはすべてヌル(0)から連なる人形たち。
 つまり彼女の"姉妹"。同じ姿をした、おなじ役目を持つ人形たち。
「――……いや」
 しかしヌルは、ふるふると頭を振った。違う、と。
「わたしはマスターや、マスターの人形をまちがえるほどダメな人形じゃないよ」
 いかに姿形が完璧であれど――否、だからこそか。
 此度この場所このときに、それがあるという違和感は覆し難い。
 ましてやヌルは冷静沈着な人形であり、だからこそ即座に理解した。
 これは所詮模倣。己の過去を映した、忍者の影絵に過ぎぬことを。

 しかし。
「でも」
 ヌルにしては珍しく――といっても彼女は、日常生活ではそこまで酷薄というわけでもないのだが――、抑揚らしきものをはっきりさせて言葉を紡ぐ。
「そのすがたで無様をさらされて、マスターの悪評につながったら、こまる」
 ヌルにとって、すべての物事の最上位にマスターがある。
 造物主。この世の何より優先すべきモノ。己のすべてはそのために。
 ならば姉妹たちも同じく。それを偽ることは主を偽るのと同じく。
「だから」
 こきり。細い白磁の指先が、剣呑な音を漏らした。
「――全力でいく」
 滲み出る感情の名を、殺意と云う。

 かくして姉妹を模倣するモノと、ヌルの戦いは始まった。
 ――だが、実のところ、それを戦いというのは少々憚られるだろう。
「ねえ、あなたたち」
 抑揚のない声音は常の如く。けれど此度は"人形だから"そうなのではない。
「その姿をとったからって、わたしの姉妹機とおなじうごきができるとおもってるなら」
 ヒトと同じだ。強すぎる感情は、時として色を失わせてしまうもの。
「それは、マスターへの侮辱だよ」
 彼女はたしかに憤っていた。存在理由を踏みにじられたことへの殺意があった。
 ゆえに降り注ぐ超常の光、光輝によって編まれた戈槍刃はもはや波擣のようで。
「このぐらいもさけられないなんて」
 容赦も躊躇も妥協もなく、完膚なきなまでにその姿を抉って貫き、
「――どこまでマスターを、莫迦にするの」
 あっけなく滅ぼされていくさまは、余計にヌルの存在意義を逆撫でした。
 姿を模倣したごときで、マスターが与えてくれた性能を模倣できるはずはない。
 だがその姿を模倣したのなら、木偶のように滅びるなどありえない。
 矛盾である。無茶にも程があるセリフだ。だがそれが人形というものだ。
「人形(わたし)は、あなたみたいに弱くない」
 姉妹機を侮辱されたから? 違う。マスターをバカにされたから。
 マスターを、マスターへの――いや。この気持ちはなぜ自分にも向いているのだろう?
「……わたしは」
 幼き心。覚えてもいない主のために全てを切り捨てるモノ。
 そんなことは当然で、なんの痛痒もないはずなのに。
「わたしは……」
 妙に、ざわざわと慣れない何かが胸の奥でくすぶっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
◆ルール2希望
◆ヴィクティム(f01172)/灯(f00069)と

悪いが用事があるのはこの先だ
道を開けてもらうぜ
ほら、行って来いよ、灯
後ろの事は気にすんな、前だけ見てていいぜ

アサルトライフルで灯の進路上の敵を薙ぎ払う
余計な手間は掛けてられない
相手の動きを確り視て
防御/回避されないタイミングでの狙撃を心掛ける

……なに、ヴィクティム
なんでって、後顧の憂いは断つべきだろ
こいつら殲滅しておかないとな
それに前も言ったろ
俺だって「主役」って柄じゃないんだよ

突破口を開けた後は
ヴィクティムへの攻撃は呪符・忍者問わず最優先で迎撃

――あと前も言わなかったっけ
「そういうの」、嫌いなんだよ
言ったろ、自分の身も守れって


皐月・灯
◆ルール2希望(送り出される側)
◆匡(f01612)ヴィクティム(f01172)と同行

……お前らが居るとは思わなかった。

このニンジャ連中……数はどうとでもなるが、ちょっと厄介だな。
……ん?

お前ら……何やってんだよ、余計な事してんじゃねーぞ!
オレは助けなんか頼んで……っ。

……こいつら、揃って借りを増やしやがって。
うっせー何にも言ってねーよ!
……おい。
……あ、あんな雑魚集団にヘタ打つんじゃねーぞ!

ったく……【全力魔法】を発動すんぞ!
2人の連携で開いた間隙へ突っ込む。
立ちふさがるヤツがいるなら、《猛ル一角》でブチ砕く!
荒れろ、オレのアザレア・プロトコル!
意地でも城に着かなきゃなんねーだろ、くそっ!


ヴィクティム・ウィンターミュート
◆ルール2希望
◆匡(f01612)/灯(f00069)と

よー灯、匡
ちょうどいい、即席スリーマンセルといこうぜ…と言いたいんだが

──灯、匡。先に行け
俺ぁここでいいわ
どう考えても、お前らが行ったほうが勝率が良い
まあ任せておけよ、こんなもん何度も経験してるっつーの
さっさと行きな!スロット&ランだぜ!チューマ!

アヴァロン、アクティベート
セットアップ『Alcatraz』
呪符もテメエらも、これ以上すすませ…

は?匡!?お前なんでいんの!?
…だあああっ!!こいつ!
地上任せる!行くぞ!

空からの呪符を防いで灯の道を空ける【時間稼ぎ】
ついでに匡の身を守る為【早業】で両者の守りをスイッチ
自分の守りは2人より優先度低め



●向きはバラバラ、言葉もバラバラ、けれど
「……お前らが居るとは思わなかった」
 呪殺城を臨む戦場で、皐月・灯はあっけらかんとした声で言った。
 悪党どもをねじ伏せる。いかにもわかりやすい仕事である。
 異色の視線を受けるふたりは、それぞれ違った理由で肩を竦めた。
「ま、仕事だからな」
 いつも通りの表情と声音で、鳴宮・匡は端的に答えた。
 猟兵としての責務に対する義憤だとか、そういったものは彼にはない。
 仕事であればそれを処理する。シンプルで冷たい論理である。
「よぉ、まあ神出鬼没なほうが端役らしいだろ?」
 対するヴィクティム・ウィンターミュートは、シニカルな笑みでそう言った。
 所詮己は黒子、主役を彩る引き立たせる端役に過ぎないとうそぶく。
 弱きを助け強きをくじく、そんな連中を魅せたくてここに来ただけだと。
「……まあ、なんでもいいけどよ」
 灯は大して気にしたふうもなく、ふたりから視線を城のほうへ。
 多くの猟兵たちが挑む鉄火場。降り注ぐ符の雨嵐。呪いの攻勢。
「とりあえず、行くか」
「ああ、スリーマンセルってやつだな」
 恐れたふうも気圧されたふうもなく、匡とヴィクティムは踏み出した。
 ――ほどなくして、三人の足並みはまったき疾走へと変わっていた。

「此処は通さぬ! 主命なり!」
「天敵よ、汝らもはや生きるに能わず!」
「我らの忍法とくと見るがいい!」
 朗々と名乗り、口上を吐き、紫陽衆は立ちはだかる。
 魔法の拳が打ち砕く。降り注ぐ苦無を精密無比な弾丸が射抜く。
 あるいは模倣を試みるモノあれば、電脳の魔術がそれを凍りつかせた。
 こうして戦場を駆け抜けたことは一度や二度ではない。
 互いの背中を守りあい、コンビネーションも堂に入ったもの。
 そんな三人だからこそ、ほどなくして理解していた。
「このニンジャ連中、数はどうとでもなるがちょっと厄介だな」
 灯の言葉に、リロードを終えた匡が"そうだな"と短く肯定した。
「――……」
 ヴィクティムは無言。皮肉げな笑みの裏で、必死に精査し考えていた。
 灯と匡ならば、消耗はあれどこのまま辿り着くことはできるだろう。
 しかしいま消耗するのはまずい。"自分のような重荷がついてはなおのこと"。
 ……事実どうかはさておき、少なくともヴィクティムはそう思っていた。
 自分は彼らに比肩しない。死に物狂いで食らいついているだけなのだと。
 であれば。このあとの戦いをより効率的に、確実に挑むには――。

「……よう灯、匡」
「なんだ?」
「……ん?」
「先に行け。俺ぁ"ここ"でいいわ」
 匡は嘆息した。灯は片眉を釣り上げ、2秒あとに意図を理解した。
「お前」
「どう考えても、お前らが行ったほうが勝率がいい。
 まあ任せておけよ、こんなもん何度も経験してるっつーの」
 灯と匡がああだこうだ言い出す前にまくし立てれば、折よく(灯にとっては悪く、だが)敵の猛攻が再び襲いかかってくる。
 BRATATATATA!! 匡のライフルがこれを薙ぎ払う。しかし間隙は少ない!
「悪いが用事があるのはこの先だ、道を開けてもらうぜ」
「「「貴様ら! 通れると思うなよ!」」」
「通るんだよ」
 BRATATATATA!! 忍者どもの悲鳴すらもマズルフラッシュが飲み込む。
 明らかに灯の進路を開くための牽制射撃である。少年は舌打ちした。
「お前ら、揃いも揃って何やってんだよ、余計なことしてんじゃねーぞ!」
 助けなんか頼んだ覚えはない。そんな減らず口は銃声に飲み込まれた。
「いいから行けよ、スロット&ランだぜ相棒(チューマ)! さっさと行きな!」
「そういうわけだ。後ろのことは気にすんな、前だけ見てていいぜ」
 それでいい。匡の言葉にヴィクティムは頷き、敵の足止めに注力する。
 そう、彼は敵に意識を向けていた。"匡の言葉の意味"に気づかずに。
「……こいつら、揃って借りを増やしやがって」
「「なんか言ったか?」」
「うっせー、何も言ってねーよ!!」
 かたや平易、かたや楽しげなからかうような声音で揃って口を開く。
 その息の合った様子にまた舌打ちしながら、駆け出そうとして灯は足を止めた。
「……おい」
「「なんだよ」」
「……あ」
 わずかな間。
「あんな雑魚集団に、ヘタ打つんじゃねーぞ!!」
 BRATATATATA!! 返事とばかりに銃声が虚空をつんざいた。
 無数の障壁が現実に構成され、一瞬の間に彼の進む先を切り開く。
「ったく!!」
 灯は駆け出した。"たったひとりで"振り向くことなく。

「――それでいい」
「そうだな」
「呪符もテメエらもこれ以上進ませねえぜ」
「ま、やるだけやるか」
 脳裏演算で無数のプログラムを起動し術式を張り上げていたヴィクティムは、
 そこでようやく何かがおかしいことに気づいた。
 訝しげに隣を見る。嫌という程見知ったやつが、相変わらずの平気の平左で立っている。
 BRATATATA。聞き慣れたライフルのマズルフラッシュが敵を威嚇する。
「は?」
「おい、防壁」
「ちょ、匡!? お前なんでいんの!?」
「いいから、防壁。早くしろよ」
 ヴィクティムはものすごく取り乱した顔で戦友と敵とを三度見したが、
 やがて慌ててプログラムを起動。空中に無数の防壁を展開して時間を稼ぐ。
「お前!!」
「なに、ヴィクティム」
「いや、お前! なん、なんでここにいんだよ! だから!!」
「なんでって」
 地上が手薄だ。アサルトライフルから精密な狙撃による掃討に切り替える。
「後顧の憂いは断つべきだろ。こいつら殲滅しておかないとな」
「お前な、そういうのは――」
「"端役の仕事だ、主役様がお株を奪うな"……か?」
 吐き出そうとしたセリフをそのまま返され、ヴィクティムは呻いた。
 嘆息しつつ、匡は珍しく苛立たしげな顔で少年を睨んだ。
「前も言ったろ。俺だって"主役"って柄じゃないんだよ」
「――……」
 完全に忘我である。プログラムが突破され消失した。
「ヴィク――」
「だああああっ!! こいつ!!」
 頭をガリガリと掻いて叫ぶ!
「地上任せる! 行くぞ!!」
「ああ」

 足止めのためにひたすら防衛網を敷きながら、ヴィクティムは別視界でドローンを操作する。
 灯を追尾させた隠密用のステルス機だ。彼が突発的な攻撃に遭わないための策。
 当然ながら脳に罹る負担は相応なのだが、彼はこういう無茶をする。
 そもそも、自分自身を護るという選択肢がヴィクティムにはあまりない。
 灯の行く手を切り開き、匡のカバーリングのための障害物を連続精製。
 コンマゼロゼロ秒の切り替え(スイッチ)は、ウィザード級のハッカーだからこその技か。
「っ」
 それでも限界はある。鼻の孔から一筋血が垂れ、親指でぬぐう。
 直後。視界の先に、苦無を構えた忍者が疾走するのが見えた。
 ――BRATATATATA!! 狙いすましたようなアサルトライフルの掃射。
 匡の平易な――けれど冷たくはない不思議な眼差しがヴィクティムをじとりと見る。
「……あとさ」
「なんだよ」
「前も言わなかったっけ」
「何をだよ」
 憮然とした様子の少年に、しかし匡は云う。
 なんとなく、下宿先の若者たちを諭すときを思い出した。
「"そういうの"、嫌いなんだよ」
「そういうのってなんだよ」
 いかにもらしい言葉だった。端的にいうとヴィクティムは拗ねていた。
 はあ、とわざとらしいため息。リロードをしつつ匡は云う。
「言ったろ。自分の身も守れって」
「…………」
「返事」
「アヴァロン、アクティベート。セットアップ――」
「お前な……」
 二人の声も姿も、やがて符と苦無と忍法の雨に隠れて消えた。

「くそっ」
 一方で、駆けながらも灯は毒づいた。
 なんだあいつらは。勝手な真似を。頼んだ覚えなんてない。
 いかにもらしいことやりやがって。これだからあいつらは嫌なんだ。
 先輩ぶってるのか? 年上の嫌味か? イライラする、気に入らない、腹が立つ!
「ここは通さぬ!」
「うるっせぇ!!」
 怒声で応える。バチバチと魔術回路が電光を放った!
 《猛ル一角》。アザレア・プロトコルはすでに励起全開状態である。
 なりふりかまっていられないのだ。八つ当たりめいて敵を吹き飛ばした!
「意地でも城に着かなきゃなんねーだろ、くそっ!!」
 人付き合いは億劫だ。いちいちおべんちゃらを使うのは鬱陶しい。
 ――こうやって、欲しくもない重みが絡みついてくるんだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
【特殊ルール1】
(ザザッ)
――因縁の相手か。
今回ならその姿も頷ける。
(――吸血鬼、残影卿。)

【SPD】
敵の攻撃はデコイでの攪乱と高速機動で回避。
(残像+フェイント+ダッシュ+早業)

あれから色々考えた。

何ができるか。
心の侭に戦う事が『僕』にできる精一杯だ。

自分が何者か。
兵士でも怪物でもなく
騎士にも未だ届かない。
今はみっともなく足掻く『人間』だ。

けど
唯の人間が何もできないなんて事はない。
逢った『人間』達。
ある色男、あるヴィジランテ、その他大勢。
彼らの様に僕も足掻いてみよう。

必死に”指を捌く”。
避けて躱して狙い澄ましての一射(スナイパー)。
唯の人間で
ゲーマーの
今の僕にできる
あの時と違う僕の答えだ。




 あるものは駆け抜け、
 あるものは残り、
 あるものは対峙して。
 死線のさなかに、それぞれの信念と過去とが交錯する戦場で。

 誰にも知られることなく、
 見られることなく、
 評価されることのない戦いがあった。

 けれどもそれは、決して避けてはならぬものだった。

●できること、できないこと、"やりたいこと"
 不思議と、そこには呪いの符も苦無も一切なかった。
 混迷そのものの戦場のなかで、ぽっかりと空白がたしかにあった。
 たとえるなら台風の目。拮抗しあう威力が生み出した誰にも知られぬ空白。
《――……》
 渺々と、砂嵐が吹いていた。ざりざりとノイズを放っていた。
 はたしてそれが収束し、豹めいた異形の鋼の姿が顕になる。
 ジャガーノート・ジャック。破壊するための、無慈悲なる鋼の兵士。
 どんな時でも揺るがぬ、冷静にして怜悧にして容赦なきモノ。
 そうあれかしと定義され、そうあるために稼働するもの。
《――因縁の相手、か》
 ざりざり。
《――今回なら、その姿もうなずける》
 砂嵐が去って、返す刀のように土混じりのからっ風が吹いた。
 ……鋼の豹が相対するのは、一体のヒトである。
 ばさばさと黒ずんだ外套がはためき、なお目を引くは身の丈ほどもある巨剣。
 うっそりとした青白い顔立ち、白い髪。太陽の光をまぶしげに見上げる。

《――お前は、"お前"なのか》
「どうやらそうらしい」
 ジャガノートの問いかけは謎めいている。しかして彼はそう答えた。
 ……本来、それはこの世界には在りえぬはずの存在である。
 骸の海より来たる過去の化身、すなわちオブリビオンは、過去の模倣。
 蘇る過去は通常、それぞれの世界に依存しているからだ。
 いまのところ、世界を越えて顕現するような存在はありえない。
「我を模倣したモノがいた。だが我は、不思議とここにある」
 青白い肌の剣士は、歌うような声音で言った。
「我が命題ゆえか。貴様にかけた呪いゆえか。異なこともあるものだ」
《――二度とは有り得ぬことだろう》
「そうとも。そして我が身も所詮は、消えかけた蝋燭の灯火だ」
 洞窟に伸びる昏い影法師。数度瞬きすれば消えてしまう空想の怪物めいて、
 おそらく数分もなく"それ"は消えるだろう。なんら痕跡を遺すことなく。
 有り得ぬ奇跡、たった一度の、けして嬉しくない呪わしいほどの不幸である。
 だが。
《――重畳だ。本機はそれを歓迎する》
「ほう」
 敵は嗤った。ゆらめく外套の様は、影を残して燃える黒い焔のよう。
「不思議なものだ。我は――おそらく我はこれからも化身し続けようが」
 この記憶を、この因果を持つ"それ"はもはや亡び、二度とは現れまい。
 それは"この過去"にあっていい因果ではないゆえに。代償はこの奇跡。
「よほど我は心残りとしたのか、あるいは」
 ――貴様にとって、"そう"なのか。
 鋼の豹はただこう返した。
《――あれから、色々考えた》
 それで十分だった。
 直後、ふたつの影は一瞬にしてかき消えた。

 ――がぎん!!
「ふ」
《――何ができるか》
 魔剣と鋼が打ち合う。せり出す砲口をかわす。追従する弾丸。
 それは当然のように人外じみた速度で砲弾を引き離し、
 ぐるりと円を描くように迂回した上で背後を取る。読んでいる。
《――心のままに戦うことが、"僕"にできる精一杯だ》
「ほう!」
 ――がぎぃんっ!!
 鋼と鋼が打ち合う。魔剣の重みを物ともしない猛打。
《――自分が何者か。それも考えた》
「兵士でも怪物でもないと、そう定義したか!」
 がぎん。ぎん、がぎぎぎぎっ!! どう、ドドウ――BRATATATA!!
 ざりざり、ざり――砂嵐、躊躇なくそれは飛び込み切り結ぶ。
 互いに残像を残して高速で打ち合い、躱し、反発して対峙する。
 まるでドッグファイト。全てが致命の一瞬に至るための布石である。
 ざりざり、ざり……やがて、ノイズは収まった。
『兵士でも怪物でもなく、騎士にもいまだ届かない。
 "今は"、みっともなく足掻く、ただの『人間』だ』
 彼がくれた言葉。気がついたら"そう"なってしまっていた男のつぶやき。
 友達を守りたかった。あの時、ジャガーノートはそのことでいっぱいだった。
 畜生どもの悪意から。かき消せない悲鳴から。何もかもから守りたくて。
 守りたくて、憎らしくて、鬱陶しくて、苛立たしくて――。
『……痛かったよ』
 それは何も言わない。
 届かないはずの痛みは、心の罅となって残った。彼を苛んだ。
 ヒーローらしさなんて要らない。機械のような、ゲームの中の兵士がよかった。
 どんなことにも心を揺らさず、淡々と任務を遂行する怪物でいたかった。
 そのために纏ったはずの鎧だった。けれどそれは為せなかった。
「貴様は見たはずだろう。人間の悪性を」
『ああ』
 忘れようはずもない。雨の中呪いを吐き出す畜生ども。
 思い出すだけで腸が煮えくり返る。頸をねじ切ってやりたいと思う。
『お前の云う弱い者の、弱さ、醜さ、愚かさ……たしかにそれは、ある。
 僕にだってそれは厭なものだ。消し去ってやりたい』
 けど。
『けど――人間は、それだけじゃない』
 ただの人間。特別な生まれも、秘伝の技術や魔力や、悲劇的な過去があるわけでもない。
 それこそ故郷の世界では、ありふれたありきたりな心の傷だ。
 ただの人間だ。彼が識る多くの特別な人々に比べれば、よほど。けれど。
『人間だから汚くなるわけじゃない。ただの人間がなにも出来ないことはない』
「…………」

 知っていたはずなのだ。
 これまでの旅路で、世界を越えて何度だって見てきた。
 守ってもきた。そうとも、そのために戦ってきたのだから。
 己の命を振り絞り、死に瀕してなお乗員(かぞく)を想ったひとがいた。
 どうしようもなく俗物で、だのに憎みきれない"色男"がいた。
 それを慕って集まって、また歩き出そうとする人々がいた。
 己の過去が立ちふさがって、信念のための悪を選んだ男がいた。
 あるいはそうだ、もっとたくさんの。それこそあの闇の世界ですら。
 苦しめられた人々が居た。戦う人々がいた。泣き叫ぶ人々がいた。
 ――破壊しか出来ないはずの己は、それを守り、触れ合い、見届けてきた。
『彼らが、人間であるにもかかわらず足掻いていたのなら。
 ……僕も、あがいてみよう。この場で、これからも、同じように』
「それが、貴様のできることか」
『違う』
 鋼の豹の奥、少年はそれを見据えた。
 この鎧、この力はすべて、約束のために。そのためだけに。
 ――でもだからって、全てを捨て去る必要はあるのだろうか?
 0か1で、ディジタルに切り捨てる必要は? 少なくとも今までは出来なかった。
 静かな船のなか、幼き姫にかしずいてみせたときのことを思う。
 ――騎士だなんて、自分には大それた呼び名だと思っていたけれど。
 あの時自分は、たしかに、
「……僕の、"やりたいこと"だ」
 それは笑った。嘲りでもなく、感服でもなく、ただ微笑んだのだ。
 不思議とそれは優しげだった。どことなく、哀しげでもあった。

 いいだろう、とそれは言った気がする。
 再び影を残して風となり、猛攻が鋼を襲った。
 ジャックは、否、彼は必死に"指を捌く"。
 ボタンを押せば事足りる。たしかにそうだ、でもそれだけじゃない。
 これはゲームじゃない。今此処にある現実。相対すべき現在。
 いつか約束を果たすなら、これが越えなければならない壁なのだ。
 越えてきた道程であり、これから超える未来であり。
 ――つまり、はじめから、彼はずっとやってきたはずのこと。
「さあ、どうした! 大言壮語は聞きたくないぞ!!」
『……っ』
 避けて、躱して、防いで、いなして、ひたすらに守り続ける。
 攻めない。猛攻はそのたびに深まる。誘うように。挑むように。
 己を律せ。機械だからではない、兵士だからではない。目的のために。
 目指すものを見据えろ。忘れるな。何を寄す処にするかを忘れるな!

 ――またいつか、勝負しよーぜ。

 ……BLAM!!
「――は」
 風が吹き抜けた。外套が翻り、土手っ腹の大穴を映し出した。
 狙いすました一射。爪でも雷鳴でもない、ありきたりなクイックドロウ。
 模倣でも粗悪品でもない、"彼"が、"彼"の意思で引いたトリガ。その結果。
「これが」
『――これが』
 ただの人間で、ゲーマーで、今の彼にできる、
『今の僕にできる……あの時と違う、僕の答えだ』
 ぼろぼろと、それの体が末端から亡びていく。
「まったく」
 消え際、ありえぬはずの残影は、しかし、
「――お前の血は、どれほど焦がれても味わえなさそうだ」
 満足気に、永遠に消えて滅んでいった。

 ……そして鋼もまた、砂嵐の中に消えていく。
 誰にも見届けられることなく、けれどもたしかな答えを胸に抱いて。
 これまでと同じように、これからも歩み続けるために。進んでいくのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

馮・志廉
低空を滑るように飛ぶ鷹の如く、軽功【ダッシュ】【ジャンプ】で疾駆しつつ、紫陽衆と戦う。
足を止めずに『馮家飛刀』を放つも、敵が模擬忍法により互角の鋭さで放つクナイに阻まれて届かない。

「ハオ!見事な技だ!」

刀を舞わせてクナイから身を守りつつ機を伺う。
飛刀を取り出して再び馮家飛刀、と見せかけ、その実は『馮家断魂斬魄刀』の手法で強靭な内力を込めた飛刀。
正面からぶつかるクナイを両断し、さらに紫陽衆を貫かんとする。

見事仕留めたならば、顧みもせずに走り抜ける。



●かくて鷹爪、陽を堕とさん
 戦場! 猟兵たちが一人また一人と城へと到達していく!
 いよいよ、無限じみた紫陽の忍にも、その限界が見えつつあった。
 そして見よ。低空を滑るように、猛禽めいて舞う軽やかなるその姿!
 人である。和とは異なる唐装にて、されど鋭き眼差しは刃の如く。
 さながら風に舞い上がる布のごとく、疾駆に重みは一切感じられない。
 軽気功。気息を調え、天地自然と一体化することでただならぬ疾さを齎す技巧。
「なんたる功だ!」
「此奴、只者ではない!」
「おのれ、名を名乗るがいい!」
 同じように並走する忍たちは、皆口惜しげである。
 認めざるを得ない。この男の武功、まさしく万夫不当であると!
 紫陽衆は模倣の忍軍である。ただならぬ技と知と意の持ち主である。
 だからこそわかるのだ。否が応でも認めざるを得ないのだ。
 強者であるがゆえに、強者を否定することが出来ない。口惜しかろう。
「発(はっ)!!」
 はたして、それを翻弄せし侠もまた同じように舌を巻いていた。
 馮家飛刀を投げ放ち、苦無と打ち合い符を切り裂きながらも意を八方へ。
 一時も足を止められぬ。一瞬たりとて気を抜けぬ状況である。
 防ぐためでなく刈るために放った刃も、まったき同じ鋭さの苦無に阻まれ届かぬ。
「好(ハオ)! 見事な技だ!」
「「「おのれ……!」」」
 互いに互いの力量を認めあい、だからこそ焦れるこの状況。
 敵である。決して相容れることなき天敵同士、過去と未来の破壊者同士。
 されど武を修めし者には、一種のシンパシーと呼ぶべきものも生まれる。
「さて、この四面楚歌、西楚覇王ならぬ我が身でいかにして打破するか――」
 思案。その間も足は止まることなく、刃は飛び交う。
 まるで空中を滑り、飛ぶような舞い。だが彼はたしかに人である。
 これなる凄絶の達人、名を馮・志廉と云う。河南馮氏の義侠厚き鏢師なり。
 すなわち真なる武侠! ゆえにここで退く理由は一切なし!
「「「いざ、その頸貰い受ける!!」」」
 忍者たちは終わりにかかった。一斉に仕掛けることとした。
 四方を取り囲み、まったく同時に刃を放ち忍具を手繰る。
 二段構えの攻勢である。馮家飛刀では初撃の苦無をかわすが精一杯!
 投げ放てばそこへ狙いざまの忍法が叩き込まれる! 如何にするか英雄好漢!
「――或(フゥオ)」
 したり。硬骨漢、ここに至りて会心の笑みを口元に浮かべん。
 全ては布石である。一流同士の立ち合いに"偶然"などというものはない。
 間隙、岐路、流転。潮流が変じる一瞬は、必然の積み重ねの果てに訪れる。
 此度もまた同じく。さながら大河がやがて低きに流れるかのように。
 あらゆる水の先、大いなる海があるかのごとく。当然の帰結がやってきた。
 度重なる拮抗はすべてこのため。痺れを切らし先の先を得んとする敵を誘い出す罠の罠。
 河南馮氏に数多の絶招あり。軽功を修めたる武侠にのみ可能な絶技あり。
 中国において、"たましい"とは二つの陰陽めいたものがあるとされる。
 すなわち魂(こん)。精神を支える裡なる気。
 すなわち魄(はく)。肉体を支える外なる気。
 魂魄いずれも損なわれてはならぬもの。陽なくして陰がなく、
 陰なくして陽なきように、それは相反しながらも同居しうる。
 ――であれば、それを斬ればよい。これなるは魂を断ちて魄を斬る刃。
 投げ放ちたる飛刀、鋼に込められしは絶招に等しき強靭な内力である!
「「「――これは!!」」」
 忍どもは理解した。その通りに苦無は破砕し、断ち割られ、堕ちていく。
 忍法すらも斬り裂いて、はたして刃は敵の魂魄を一刀に両断した。
「――馮家、断魂斬魄刀」
 口訣は手向けのごとく。もはや鏢師は振り返ることなく空を駆ける。
 向かう先は呪われた城。これにて、第二幕見事に閉幕なり!!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『嗤う厭魅師』

POW   :    人を呪わば穴二つ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【召喚した対象の影姿で再現し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD   :    呪殺符
レベル×5本の【即死】属性の【呪符】を放つ。
WIZ   :    蟲術
【猛毒】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●業務連絡
 断章および3章特殊ルールの発表、プレイング受付は4/29(日)8:30ごろの予定です。
 現時点でお送り頂いたプレイングは採用いたしかねますのでご了承ください。
●訂正:4/28(日)8:30ごろ
●第三幕:射鵰猟兵伝
 呪殺城の内部は異様な風景が広がっていた。
 オブリビオンの呪法により城内の空間はあべこべにねじ曲がり、
 天井が下に、通路は上に続くような部屋すら存在していたのである。
「――おやおや。紫陽衆も形無しですか」
 そして見よ、影から滲み出るように現れた『嗤う魘魅師』の姿!
「お初にお目にかかりまする。私のことは"魘魅師"とでもお呼びくだされば。
 あるいは――哀れにも斃れた高内様の末期の言を借りて、"口蜜腹剣"とでも」
 笑みの中に刀を隠す。なるほど言い得て妙な二つ名である。
 魘魅師、あるいは口蜜腹剣の表情は、その名の通り笑みのままだ。

「こうなれば私自ら、皆様をご歓待しなければなりませんね。
 この数はいささか手に余りますが、しかし、此処に居たのが私でよかった」
 にこにこと人を喰ったような笑みを崩さぬまま、厭魅師は嘯く。
「いや何、少々私自身にも呪(しゅ)を施しておりましてね?
 こうして皆様の前に現れたのは、あくまで私の『一部分』に過ぎませぬ」
 ……つまり、魘魅師という一体のオブリビオンは、
 この城全体に施された呪法により、その命と身体を無数に分割している。
 それぞれの"影"を倒さぬ限り、真の意味で奴を滅ぼすことは出来ない……!
「どうぞ城内を自由に彷徨われるとよろしい。あちこちに"私"はおりまする。
 皆様の手並みはようく"拝見いたしております"ゆえ、お楽しみいただけるかと」
 城下に悪漢どもを野放しにし、あれほどの忍者を抱えたのはこのためか。
 呪法の力により、奴はこれまでの猟兵たちの戦いぶりを監視していたのだ。
 つまり手の内は知られている。機転や工夫がなければ、奴を出し抜けまい。

「皆様の気力体力が尽きるが先か、この私が滅ぼされるのが先か、いやはや」
 にたり。怖気の立つような笑み。
「実に、楽しみでございますなあ?」
●3章まとめ
 城内各所で"口蜜腹剣"こと『嗤う魘魅師』の影と戦うことになります。
 影は本体と同じ力を持ち、すべて倒さねば魘魅師を滅ぼすことは出来ません。
(そのため皆様は城内各所に分かれて影と戦います)
 魘魅師はこれまでの戦いを観察しており、情報を得ています。
 そのため手を打たなければ、🔵🔵🔴でも一定の負傷を強いられるでしょう。
 いかにして相手を出し抜くか、ぜひお考えになってみてください。
(難易度:普通なので判定自体は緩めです。気楽にどうぞ!)
●特殊ルール(【①希望】などとお書きください)
『①:新たな力(単独/合同どちらでも)』
 戦闘中に新たな必殺技を閃いて敵を撃破する、そういうシチュのアレです。
 そのユーベルコードをどんな新技に昇華するかを考えてみてください。
(新しいユーベルコードの初披露などでもOKです!)
『②:連携技!(合同プレイングのみ)』
 仲間と息を合わせて合体攻撃を放つ、そういうシチュのアレです。
 互いのユーベルコードをどのように組み合わせるか考えてみてください。
『③:待たせたな!(条件あり)』
 こちらは以下のどちらかに該当する方のみ選択できます。
【2章で『特殊ルール2:ここは俺に任せて~』を選択した】
【2章でプレイングが採用されていない】
 選択された方は仲間のピンチにかっこよく登場できます。
 仲間の方は、どんな風にピンチになるか考えて頂いても問題ありません。
 性質上合同プレイングを強く推奨しますが、単独でもなんとかします。
●プレイング締切
【4/29(月)23:59前後】を締め切りといたします。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と【③】

くっ、攻撃が届かない!
槍もダガーも城下で使ったからか
明かしてない手の内……あの魔術なら
ううん、駄目
ヨハンの前では使わないって決めたもの
来てくれるって信じてるんだから

打開策を見出せないまま防戦もそろそろ限界
深手を負ったかな?血が止まらないや
もう、疲れちゃった
……
諦めて目を瞑ったけれど厭魅師の一撃は飛んでこない

待ってたよ、ヨハン……!
うん。とにかく今はこいつを!

風を纏って一気に距離を詰めたら
厭魅師の身体を串刺しに、穂先は壁に突いて
足止めくらいならまだやれる
後は彼を信じるだけ!

ヨハンのばか
あんな無茶して、どれだけ心配したと思ってるの?
ご、ごめん
……無事で良かった……!


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と【③】

遅くなってしまったようだ
死角から黒刃を飛ばし、
彼女と敵の間に割り入る

一先ず距離を取りたい
続く二手、三手の連撃で後退させる
あくまで退かせるのを目的に

はぁ……相変わらず無茶をしていたようで
諦めるなんてらしくないですよ
一瞥
……怪我も気になるところですが、
先ずはこいつの対処をしましょうか

冷静に行きたいところだが、
自身が怒っているのが分かる
常よりも制御が効かない、荒々しく闇が蠢く
せめて彼女が近付けるよう、道だけは切り開く

視るのはお前だけの特技ではないぞ
止まった身体を確と視、蠢く混沌で急所を穿つ

その言葉、そのまま返しますよ



●嵐と闇の歌
 二段突き。フェイントを織り交ぜての薙ぎ払い。体重を乗せた振り下ろし。
『いやはや見事なもの。まさに軽やかなること猛禽のごとし、ですかな?』
「く……っ!」
 嘲るような魘魅師の声音が、オルハ・オランシュの焦りと苦悩を深める。
 手を変え品を変え全力で打ってかかるが、まるで手応えがない。
 防がれているならいい。避けられているのでもいい。いずれ届くからだ。
 "届かない"……というのは、似ているようでどちらとも異なる。
 ウェイカトリアイナの猛攻はおろか、合間に放つダガーすら見切られている。
(どっちも城下で使ったせい? なら明かしてない手の内は、あれしか)
 思案を即座に振り払う。魔術(あれ)だけは、ダメだ。
『おや? なにやら迷いの気配が見えますね』
 周囲に無数の符を滞空させた魘魅師が、身構えるオルハを言葉で弄する。
「……だったら何。もっと攻めてくればいいじゃない」
『手はある、しかし拘りからそれを使うことを忌避している、そんなお顔だ。
 いえ、もう少し正しく云うならば――"何かを待っておられる"、でしょうか?』
「…………」
 ぎり、と柄を握る手に力が籠もった。

 そう、オルハはひとりきりで魘魅師の影と戦っている。無謀と言えた。
 手の内の露呈もあり、一度も有効打を入れられないまま今に至っている。
『どうしました? 手も足も止まっておられますねぇ?』
 心の揺らぎを見透かした魘魅師は、一気にオルハを攻め立てる。
 防戦一方を余儀なくされ、それすらも崩されつつあった。
「あぐ……っ!?」
 躱したはずの呪殺符が、オルハの上腕を深く裂いた。いや、符ではない。
 魘魅師が、これみよがしにダガーを見せびらかす。武器を利用された……!
『勝負ありですな。おそらくあと数分であなたは死に至るでしょう』
「……そう、みたいだね」
 強がりを吐く元気もない。血が流れるにつれてオルハの視界がぼやける。

 ヨハンが来てくれるはずだと、信じて孤軍奮闘を続けた。
 だがこのざまだ。……オルハは、もう疲れていた。全身の力が抜けていく。
(こんなところで終わっちゃうのかな、私)
 魘魅師が、処刑執行人めいた足取りで彼女に近づく。
 彼女もまた膝を突き、己の運命を受け入れるかのようにうなだれた。
『信じた末に裏切られる。口惜しいでしょうなあ。ですがご安心めされよ。
 この私は、あなた様の死に様をきちんと見届け語り継ぎましょうぞ……!』
 魘魅師の人を食ったような言葉も、まるで遠い。もはやどうでもよかった。
「……ヨハン……」
 ただ一言呟いて、諦めて目を瞑る。そして断首の一撃が――。

「――鳴け」
『ぬうっ!?』
 刹那の不意打ちは、オルハにも魘魅師にとってすら予想外のものだった。
 膨れ上がった黒き刃の一撃。敵はかろうじてこれを見切って躱す!
「え」
 聴こえた声にオルハは目を開けて、顔を上げて、呆然とした。
 見慣れた術式。二手三手と、的確に魘魅師を払いのける闇の力。少年の背中。

 振り向いた無藍想な男の子は、いつものように『はあ』とため息を漏らした。
「……相変わらず無茶をしていたようですね。諦めるなんて、らしくないですよ「!!」
 可愛くない台詞。3歳も年上のくせに、つっけんどんな丁寧語。
 ヨハン・グレイン。姿を消したはずの、しかし再来を信じていた想い人がそこに。
『……驚きましたね。あなたは自ら身を挺して死んだものかと』
「死んだ? あのぐらいでですか。それこそ買いかぶりですよ」
 魘魅師の言葉に、ヨハンはぎらりとレンズを光らせながら睨み返した。
「返さなければいけないものがあるのに、待たせるわけにもいかないでしょう」
 もちろん彼をここへたどり着かせたのは、そんな陳腐な理由だけではない。
 けれどもヨハンがそれを語ることはあるまい。ただ証明するだけだ。

 そして少年は、ちらりとオルハの様子を見て取った。
 浅くない負傷……手当を急がねばならない。だがまずは、なによりも。
「いけますか、オルハさん」
「…………」
 呆けていたオルハは、しかしその言葉で我に返った。
 一転して晴れやかな笑みを浮かべ、己を強いて立ち上がる!
「うん。待ってたよ、ヨハン! さあ、一緒にこいつを倒そうっ!!」
 笑えるくらいに力が溢れてきた。現金なものだと自分でも思う。
 あるいはそれは、瞳の奥から伝わった彼の怒りの熱がもたらしたものか。
 なんでもいい。高揚に応じるかのように、風がオルハを包み込む!

 かくて仕切り直しとなった戦いは、初めこそ互角に進んでいた。
 だがほどなくして、魘魅師は笑顔を驚愕と渋面に変えることとなる。
『莫迦な! たかが一人増えただけで、このような……っ!?』
「不思議でしょ? つまりそこまでってこと!」
 威力よりも速度を重視した連撃を叩き込むオルハ。そのたびに血が流れていく。
 茫洋としない意識を気力で繋ぎ止める。尽きかけの蝋燭の焔にも似ていた。
 当然のごとく、嵐のような呪符がオルハを襲う。だが横合いから闇がそれをのむ。
 まるで飢えた猛獣の如き、嵐めいた蠢き。ヨハンは内心で歯噛みした。
(――らしくないな)
 怒りが制御を緩ませているか。だがその勢いが敵を減じている。
 ならばあえて抑える理由もない。この敵を滅ぼせるならばそれでよし!

 見えた。猛攻の中の間隙、さながらそれは輝く道筋のように。
 オルハは躊躇せず、光条を追うように身を飛び込ませる。槍を突き出す。
『がはっ!!』
 穂先が魘魅師の腹部を串刺しにし、そのまま壁を穿いて縫い止めた。
 細い体で奴を押し留める。まだやれる。魘魅師は色を失って叫んだ!
『貴様……っ、自分もろとも私を滅ぼすつもりか!?』
 これほどの接近状態では、ヨハンの攻撃を避けられるわけがない。
 しかしてオルハの瞳は力強く輝く。そんな最期は御免だと。
「私はヨハンを信じてる。だったらそれに賭けるだけだよ」
 なんとしてでもこいつを足止めする。それが彼女の仕事だからだ!

 そして、魘魅師の視線が少年を捉えた。ヨハンは確かに敵を見ていた。
「"視る"のは、お前だけの特技ではないぞ」
 なぜだ? 魘魅師は高速思考する。どこで目論見が外れた?
 情報は集めた、配下で体力を削った。完璧な布陣だったはずだ。
 所詮自分が滅んだところで影一つ、大勢は揺るぎないはず、だのになぜ。
『やめろ』
 なぜ自分は畏れている。天敵どもの底力を!
『やめろ!!』
「その頼みは、聞けないな」

 ――沈め。

 縫い留められた体を視線が捉え、そして影が膨れ上がり急所を穿った。
 オルハを一筋も傷つけることなく。精妙な黒闇の制御がなしえたとどめだ。

「……ヨハンの、ばか」
 戦いが終わって手当を受けつつ、オルハはぽつりと言った。
「あんなむちゃして、どれだけ心配したと思ってるの」
「……その言葉、そのまま返ししますよ」
 そっけない少年の言葉に、オルハはしゅんとうつむく。
「ご、ごめん」
 けれど、無事でよかった。そう言おうと顔を上げて、きょとんとした。
「……これも、たしかに」
 差し出された簪を、少女はぽかんとしながら見て、そしてようやく微笑む。
 約束は、たしかに果たされたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
【特殊ルール1】
観察されていたとはね。
用意周到とゆーか…
まぁ、技の一つや二つを視られた所で問題はない。
手札は色々とあるってね。
ちょーっと派手にやってみるっぽい!
化身鎧装<黑鐵>を展開。
通路も変な感じだし、重力を操り空中を滑るように移動。
呪殺符を警戒して重力障壁を展開しながら厭魅師を探すです。
見つけたら防御も何も関係ない。
強引に吹き飛ばすっぽい!
生命力を注いで重力制御を開始。
出力を上げながら秘伝忍法<結>にて分身体を形成。
魔剣の代わりにすべての分身体を極超音速で射出する!
秘伝忍法<流>が崩し…絶・秘伝忍法<流星嵐>、なんてね。
速度・威力・範囲が圧倒的なら中途半端な対策は無意味っぽい!
…やり過ぎ?



●屠龍の技
 呪いの炎は生命力を薪に燃え上がる、恐るべき炎だ。
 しかし露木・鬼燈がそれを恐れることはない――己の命を焚べるときですら。
「見つけたっぽぉーい!」
 さかしまの通路を下から上へと駆け抜けるは、異形たる黑鐵の外骨格。
 鬼燈の身を守りその力を高める、呪炎と重力を味方につけた禍々しき呪装である。
『ほほう、これはこれは』
 立ちはだかる"影"は、張り付いたような笑みでこれを迎え撃つ。

 パパパパパパ! 障害物めいて瞬時に展開される無数の呪符の壁!
 鬼燈はこれを躊躇なく呪炎で焼き、さらに重力制御を開始する。
『なんと!』
「用意周到なのは認めるけど、そのぐらいで僕が怖気づくわけないっぽい!」
 化身忍者たるもの、技の一つや二つ見破られたところで痛くも痒くもない。
 いかなる状況、いかなる敵にも対応しうるよう、手札を用意してこその忍だ。
 さらに出力を高めた外骨格は、鬼燈を音を超えるほどの領域へ誘う。
 さりとて、魘魅師とてひとかどの化生である。呪符を足場に翔んで駆け、
 一瞥にて模倣した影の鎧を纏えば、鬼燈と超高速のドッグファイトを開始する!

 かたや生命力を焚べ、無限めいた城を駆け抜ける屠龍の流星。
 かたやそれを模倣し、影絵の鎧を装う魘魅の呪術師。
 ともに正道を外れた尋常ならざる者同士の戦いである。
『さてさて! その炎、いつまでも保ちますかな?』
 オブリビオンが寿命などを厭うことはない。
 ゆえにこのまま手をこまねけば、自然と鬼燈は"燃料切れ"を起こす。

 しかし鬼燈はにやりと笑った。
「そんなの待つ必要ないよ?」
『何――』
 そこで初めて、魘魅師の表情が変わった。驚愕、そして恐怖に。
 さらに出力を高めた鬼燈の周囲、現れたるは炎による無数の分身!
『類感魔術……ッ!?』
「へえ、さすが目ざといっぽい?」
 だが種が明かされたからなんだというのだ。
 速・数・そして威。極超音速に達した分身たちは全てを満たしうる!
『おのれ――』
 これぞ秘伝忍法"流"、そして"結"の合わせ技。否、歪なる流星はまさしく、
「"流"が崩し……絶・秘伝忍法"流星嵐"っ!」
 魘魅師は影を生もうとした。速度と数がそれを許さなかった。
 たとえどれほど策を練ろうが、単純明快な力の前には造作もないのだ!
『あなや――!!』
 叫びは衝撃に消え、そして呪いの炎が周辺もろとも全てを焼き尽くした。
 ガラガラと天井が砕け、床が頭上から崩れて落ちて覆っていく。
「……なんてね?」
 屠龍を目論む忍の底は、魘魅師如きに知れようはずもなかったのだ。
 いたずらっ子めいて笑む鬼燈には、呪術師のそれよりなお不敵なる微笑があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八海山・いのこ
引き続きチーム【GWP】で参加だよっ
【②と③希望】です!

・ピンチ時
ナナちゃん抜きだとやっぱり大変だよ~!!
どうしようお師匠様~!?
(一当たりしてボロボロになりながら泣き言を言うイメージ)

・合流後
ナナちゃんが合流したら、みんなで一斉に変身だね!
盗み見してたって、変身しちゃえば意味ないよね!
怪盗チームGWPの本当の姿を見せてあげよう!

・変身(真の姿)移行、名乗り口上
「私に解けない鍵は無い、猪八戒!」
「怪盗チームGWP、ここに参上だよ!」

・攻撃
皆で連携攻撃だねー!私は素早さを活かして切り込むね!
ばばばーって動いて翻弄してあげるんだから!
隙が出来たら二人ともどどーんとおっきいのお願いねー!


難駄芭院・ナナコ
チーム「GWP」で参加
特殊ルール2、3希望

・登場
腕組みで堂々と立ちポーズを披露、高いところから参上!
「待たせたなぁ!しっしょー!いのこぉ!」
ボロボロだけど勝気な笑みは健在!仲間が集えば百人力!
さぁアタイ達の力を教えてやろうぜ!

・真の姿へ変身!名乗り口上へ
「黄金煌めく宝をこの手に!悟空!」

最後の最後に〆の一言でキメ!
「バナナにしてさしあげますわ!」

・連携技!
黄金果実の一撃を連携に組み込みますわ!
いのこが隙を作ってくれた今ならいける!
「お師匠様!アレを使いますわよ!」
しっしょーの掛け声の後に息を合わせ同時に重い一撃を放つ!
「怪盗奥義!黄金灰燼拳!」

・戦闘後
「え?アレは勢い余って名乗っただけだぜ!」


西行・胡桃
ばなこ(f00572)
いのちゃん(f01962)と参加
特殊ルール3希望

ピンチ
焦る人が側にいると逆に落ち着くよね
まあ、落ち着いただけで何とかできる状況じゃないけど!
いのちゃんを庇うことを優先
「大丈夫、ばなこが来るまでの辛抱だ。守りに徹して耐えるよ」

あの子が来たらなんだかんだできっと隙も生まれる!……はず

合流・真の姿
「ピンチはここまで。本気も見ずに勝ったつもりなんて、気が早いな」
「万難辛苦乗り越えて、どんな宝も持ち帰る、玄奘三蔵」

いのちゃんが隙を作ってくれることを信じて
敵の動きだけに集中
「ああ、いくよ!」
ばなこの攻撃と同時、衝撃が浸透し切る前に重ねて当てる

戦闘後
「流派絢爛芭蕉、広まるかな?」
と笑顔



●豪華絢爛! 黄金怪盗ここにあり!
「やぁあああっ!」
 八海山・いのこはダガーを逆手に構え、果敢にも吶喊した。
 すでに西行・胡桃が魘魅師とインファイトを繰り広げている。隙がある。
 ……はずだった。だがいのこは懐へ踏み込めなかった。
「いのちゃんっ!!」
 とっさに胡桃が割って入らなければ、いのこは呪符に全身を飲まれていた。
 まるで鏃めいて尖ったそれらが、カカカカカ! と足元に突き刺さっていく。
『このような生業をしていると、少しばかり目ざとくなりまして。ええ』
「こいつっ!」
「わ、わ、わ、お師匠様っ!?」
 いのこを抱えた胡桃は注意深く飛び退り、呪符の追撃を回避。
 三度目の着地を終えた瞬間、目の前には魘魅師。この男、徒手空拳も得手か!
『少々失礼をば』
 ぞわりと奴自身の影が起き上がり、胡桃が仕掛けた攻撃を模倣して襲いかかる。
 胡桃はこれを丁寧にいなし、受け流し、さらに一歩飛び退いた。

 ……強い。
 胡桃といのことてひとかどの猟兵である。ましてやふたりは、コンビネーションに秀でた師弟であった。
 にも関わらず魘魅師は攻撃のことごとくを見切り、返礼でふたりを追い詰める。
 大技を仕掛ければ影絵で模倣され、機動力を活かそうとすれば呪符がこれを制圧する。
 では搦め手はどうか。いのこが牽制で放った七星七縛符は、うぞうぞと溢れる猛毒の虫に貪り食われて露と消えた。
『いつまでも仕掛けさせていては申し訳ございませんね。然らば――』
「いのこちゃんっ、来るよ!」
「う、うん!」
 影と符を布石とした神速の連撃である。これが一番に厄介なのだ。
 胡桃といのこが息を合わせれば、奴をある程度までは追い込めはする。
 だがそこまでだ。押し込みきれずに反撃を受け、退かざるを得ない。

 体力は有限である。やがてふたりは防戦に徹せざるを得なくなった。
 なにせやつは合わせて10の攻撃を5の力で凌ぎ、温存した5で反撃を撃つのだ。
 胡桃といのこはそれを5の防御で躱す。彼方10に対し、此方は合計で15の消費。
 数字にしてみればシンプルな足し算である。つまりはジリ貧だ。
「ナナちゃん抜きだとやっぱり大変だよ~!!」
 呪符を切り払いながら、いのこは喚き散らした。胡桃は冷静である。
 ……別に何か打開策があるわけではない。弟子が騒いでいるおかげだ。
 だからといって、落ち着いたところで何がどうにかなるわけではないのだが。
「大丈夫、ばなこが来るまでの辛抱だ。なんとしてでも耐えるよ」
「で、でもお師匠様、ナナちゃんが来たとしてどうするの!?」
「…………なんだかんだできっと隙も生まれる! ……はず」
 やっぱり無理だよぉ~などと弱音を吐きまくるいのこ。無理もない。
 魘魅師は疲労した様子もなく、淡々とふたりの余力を削り追い詰めていく。

 少なからぬ負傷が二人の全身を覆っていく。やがて辿り着くは城の中庭。
『ふむ。なかなかに耐えますが……残念ながらここまででしょうか』
「お、お師匠様……っ」
 いのこは、己をかばう胡桃の背中にどう声をかけようか迷った。
 そんな弟子を労るように、胡桃は振り向くと微笑んでみせる。
「大丈夫よ。心配ないわ」
 魘魅師はくすりと笑う。その言葉のなんとか弱くか細きことか。
 ではそろそろ、この意地の悪い追いかけっこに終わりをもたらしてやろう。
 逃げ場のない呪符の壁がふたりを覆い、殺到しようとした……その時!!

「おっとぉ、そこまでだぜぇ!!」
『何っ?』
 颯爽たる声、そしてヒュンヒュンと風を切り来たる気配!
 魘魅師はとっさに振り返り、呪符を前面に集めてこれを弾いた。
 防いだのは、ナイフとスプーンを連結したような奇妙な長柄武器……これは!
「デリシャスバナナブレイカーだ!」
「まったく……タイミングのいいこと」
 いのこは快哉を叫び、胡桃は呆れたように笑った。見上げるは屋根の上!
 中天に登る太陽を背に、堂々と腕組みして立つのは……おお、まさしく!

「待たせたなぁ! しっしょー! いのこぉ!」
 いかにも、難駄芭院・ナナコである。全身ボロボロだが意気軒昂!
 彼女は勇敢にも跳躍し、二人の間に割って入るかのごとく着地した。
『紫陽衆の攻め手を凌いだと? これは……!!』
「けっこうキいたぜぇ? けどな……アタイを待ってくれる仲間がいる!
 それなら、アタイはどんだけ苦しめられようが負けやしねぇのさ!」
 その言葉にいのこと胡桃も立ち上がり、三人は顔を見合わせて微笑みあった。
「ピンチはここまで。本気も見ずに勝ったつもりなんて、気が早いな」
『何……?』
 魘魅師は訝しんだ。まさか、まだ何か技を残していたとでも言うのか?
 だが奴は知るまい。猟兵が持つ力、三人娘の本領発揮を!
「よーしっ、怪盗チームGWPの本当の姿、見せてあげよう!」
「ああ! さぁ、アタイたちの力を教えてやるぜ!」
 そして三人の姿は、目も眩むほどの黄金の輝きに包まれたではないか!

『ううっ!? これは……!?』
 輝きのあまり、魘魅師は目を背けざるを得なかった。
 黄金めいた光のなか、現れたのは少女……否。その背丈と雰囲気は!
「私に解けない鍵は無い、猪八戒!」
 黒いチャイナドレスに身を包み、鼻から上を覆面で覆ったいのこが先鋒を切る。
「黄金煌めく宝をこの手に! 悟空!」
 淑女めいて成長したナナコもまた、ベネチアンマスクめいた覆面を纏う。
 鮮烈なる赤のドレスも華々しく、風になびかせるさまは斉天大聖そのものだ!
「万難辛苦乗り越えて、どんな宝も持ち帰る、玄奘三蔵」
 一方で右顔面を覆う鬼のマスクを着けた胡桃。装いには袈裟の意匠。
 構えるは白竜変じし妖しの槍。そして三人娘はそれぞれに見得を切る!
「怪盗チームGWP、ここに参上だよ!」
「バナナにしてさしあげますわ!」
「流派、絢爛芭……あれっ!?」
 肝心なところでズレた玄奘三蔵に、悟空も猪八戒も思わずずっこける。
「アレは勢い余って名乗ってただけですわ!」
「そうだよ! 私たちは怪盗チームGWPだってば!」
「ご、ごめん。せっかくだし広まるかなと思ってつい……」
 いまいち締らない三人。しかしそんな喜劇を笑って見過ごす魘魅師ではない。

『ふざけた連中ですね……始末してあげましょう』
 無数の呪符が今度こそ襲いかかる。されど三人の口元には不敵な笑み!
「おっと、そうはいかないよっ!」
 真の姿を開放したいま、いのこの速度は誰にも捉えきれない。
 かき消えたと思った次の瞬間には、呪符はばっさりと切り裂かれていた!
『莫迦な!』
「まだまだ、こんなものじゃないんだからっ!」
 風である。いかな呪術師とて風を捉えることなど出来ようか?
 否! 四方八方を駆け回るいのこの動きに翻弄されるばかりだ!

「お師匠様! アレを使いますわよ!」
「ああ、行くよ!」
 悟空、そして玄奘三蔵は互いに視線をかわし、頷いた。
 猪八戒が隙を生んでくれたいまこそが、千載一遇の好機なり!
「私に合わせて、悟空!」
「勿論ですわ!」
 はっと我に返った魘魅師はふたりを迎え撃とうとする。だが遅い!
 猪八戒が敵を翻弄し、生まれた間隙を悟空と玄奘三蔵が同時に穿つ。
 息を合わせたまったく同時の超威力攻撃。これぞ……!
「「怪盗奥義――黄金灰燼拳っ!!」」
『がはぁっ!?』
 入った! バナナパワーを乗せた岩をも砕く悟空の一撃!
 玄奘三蔵の拳がそれに合わさり、さらに炸裂した気が魘魅師を吹き飛ばす。
 四散する輝きはまさに黄金の如し。勝負あった――敵は微塵に砕け散る!!

「やったぁ! さっすがふたりとも、ナイスタイミングだね!」
「猪八戒も見事な陽動でしたわ。これこそ私たち三人の連携技ですわね!」
「……これ、流派絢爛芭蕉の奥義ってことになったりしないかな」
「「だから、あれはノリだってば(ですわ)っ!!」」
 三蔵の天然ボケに、ふたりのツッコミがこだました。
 やがて、三人の笑い声が空に高く響いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
じっと調べて待っていたと
几帳面なんだな

【①希望】
界離で因果の原理の端末召喚
形を与えず魔力を溜めて体内に機能のみ引き込んで行使し、自身の端末機能を強化して対処
魘魅師の攻撃すべて、因果を捻じ曲げ行使者自身を害する結果に帰結させる

お前の備えが万全であったか確かめると良い

打倒に足りねば破天で追撃
因果を操作し過程を飛ばして、全力の魔弾全てを直に叩き付ける
確認が漏れていたなら今済ませておけ


※アドリブ歓迎



●世界を手繰るもの
「じっと調べて待っていたと。几帳面なんだな」
 淡々とした声音で、アルトリウス・セレスタイトは言った。
 その体には一筋ほどの傷もなく、周囲もまた同様。
 では対峙しているであろう影はどうか? ……凄絶な有り様である。
『貴、様、は……』
 そこかしこを呪われ、穿たれ、もはや消滅寸前の有り様であった。
 アルトリウスがなにか攻撃をしたのか? それは否。
 彼はただ世界を捻じ曲げ、向けられた害意を本人に返したのみ。
 たとえどれほど備えようが、学ぼうが、"原理"は彼のみが手繰ることができる。
 たかがオブリビオン風情に、それをどうこうできるはずもなし。
 アルトリウスはただ端末を呼び出し、魔力を込め、機能を行使すればいい。
 勝ち気に微笑んでいた敵は、己の害意によって滅んでいくだけだ。
『それほどの力を保ちながら、なぜ……』
「なぜ?」
 向けられた問いに、青年の形をした虚無は首を傾げた。
 なぜこんな立場に甘んじている、とでも言いたいのだろうか。
「ならば逆に聞こう。お前は何故こんな事をした?」
『…………』
 オブリビオンは過去の化身、そうであるがゆえに過去で世界を塗りつぶす。
 ならばそれを打ち砕くのが猟兵。猟兵であるがゆえにアルトリウスはそうする。
「それが答えだ。納得できたならば、消えていくがいい」
『おのれ……化物め……!!』
 口惜しげな断末魔に、アルトリウスがかかずらうことはない。
 彼は踵を返した。その背後で、苦悶の断末魔を上げて影が散っていく。
 それは、理解者なき孤独な虚無の姿にも似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ歓迎!

【③希望】
あなたが忍者達の親玉!?
私達がやっつけてやる、覚悟しなさいっ!
……い、今は1人だけど、後で来るの!

ユーリが来るまでに、あいつを抑えておかないと。
上着を脱いで軽装になり、【ダッシュ】で近付いて【シーブズ・ギャンビット】で攻撃だ!
敵の呪符は【野生の勘】と【見切り】で回避したり、ダガーの【投擲】で破ってみる!

……くっ、呪符が邪魔で近付けない……っきゃあ!
焦りから体の一部に呪符が当たり、床に転がる。

ユーリは絶対に来る……。
どんなに絶望的でも、私は彼を信じてる!

……待ってたよ、ユーリ!
真の姿を解放し、狐の獣人へ。
鋭い【投擲】で敵にダガーの猛攻を浴びせる!


ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと
③待たせたな!

チコルの絶体絶命!の際に炎から具現化し立ち塞がる
満身創痍だが、溢れんばかりの闘気を漲らせ
「待たせたな。…チコルを傷つけた奴は貴様か?その罪、万死に値する!」

【ドラゴニアン・チェイン】をぶつけ繋ぎあう
敵のコピー攻撃は
左腕でオーラ防御と激痛耐性を活用し受ける
これでお互い逃げられなくなった訳だ。私はハナから逃げるつもりはないけどな。と不敵な笑み

真の姿を解放し炎の騎士に
全身を炎で包み、鎖を通じて火を渡らせながら思いっきり引っ張り引き寄せる

そして先制攻撃・属性攻撃で、炎に包んだ拳で思い切り殴りつける!これはチコルの分の痛み。そして…俺の怒りだ!頭を掴み更に属性攻撃炎



●二人の絆
 諸悪の根源というものは、得てして最強である。
 裏方を気取るような魘魅師もまたその例には漏れない。
「くっ、これが忍者たちの親玉の力……!?」
『どうしました、出会い頭の大言壮語についていっていないようですが』
 癪に障る笑みを浮かべたまま、魘魅師が無数の呪符を放つ。
 チコル・フワッフルはこれをかろうじて回避、反撃のダガーを繰り出す!
「疾い……!」
 チコルは機動力を武器とするキマイラだ。だがそれをしてこの速度は舌を巻く!
『呪ばかりでは立ち行かぬのが我らの業界でして、ええ』
 徒手空拳が霞む。チコルが防御姿勢を取り、受けきれたのは見事なものだ。

 やっつけてやると息巻いたのはいいが、状況は悪化する一方。
 生身でも高い戦闘力を持つ魘魅師相手に、チコルは有効打を打ち出せない。
『ところで、あなたのおっしゃるもうひとりとやらはいつ来るのでしょうかねえ?』
「……い、いまに駆けつけるんだから、待ってなさいっ!』
 空元気である。そんな確証など何一つありはしないのだ。
 魘魅師はそれをわかっていて嘲笑う。いたぶるかのように呪符を繰り出す。
 チコルはせめて時間を稼ごうとするが、その眼前に符の壁が立ちはだかった!
「きゃあっ!?」
 うかつである。焦りが判断を鈍らせたか。
 ばちり! と彼女自身の生命力が即死の呪いを跳ね除けたものの、スパークは彼女を壁に打ち付け、爆ぜた呪いが散弾じみて体を傷つけていた。

 魘魅師はふわりと浮かび上がるような足取りで、チコルに歩み寄る。
『諦めなさい。あなたのおっしゃる相方は、もう今は亡いでしょう。
 紫陽衆は精鋭です。あれほどの数を相手に生き残れるはずはありません』
「そんなことない!!」
 ボロボロの有様で、しかしチコルは力を振り絞り立ち上がる。
「ユーリは絶対に来る……どんなに絶望的でも、私は彼を信じてる!」
 それが二人の絆だ。彼は必ず辿り着くと口にしたのだから。
 ゆえに戦う。その時まで、立って戦う!
『……いじましいですね。いいでしょう、ならば死になさい』
 にこり。浮かべた微笑は死刑宣告じみていた。
 死角なき呪符がチコルを取り囲み、四方から同時に放たれる――!

 ――ごぉう!!

 チコルですら、自分は死んだと確信した。それほどまでの一撃だった。
 だが彼女の耳に届いたのは呪いの蝕みでも魘魅師の哄笑でもない。
 燃え盛る豪炎の音。そして魘魅師の『何故だ』という驚愕と困惑の声!
「……我が炎は、貴様の呪いなど決して通さない」
 目を開いたチコルは、そこに壁を見た。壁のごとき雄々しき背中を。
 満身創痍。されど炎を纏うそのさまは、まさしく……!
「ユーリっ!!」
「待たせたな」
 炎髪を揺らめかせるユーリ・ヴォルフは、肩越しに微笑んだ。
 そして苛烈なる視線が、うろたえる魘魅師へと注がれる。
「チコルを傷つけ、嘲弄した罪。万死に値するぞ……!!」
『これは、これは。あそこから生き延びたのは見事なものですが、しかし』
 魘魅師は敵の負傷を見て取る。立っているのもやっとだろう。
 減らず口など言わせておけばいいと笑う――それが慢心であるとも知らずに。

 魘魅師は焦ることなく、数で敵を圧殺しようとした。
 だがその時には、すでに目の前に龍の闘気が迸っている!
『何っ、疾い!?』
「遅いな!!」
 避けられない。魘魅師はとっさに符の盾でこれを受けた。
 ダメージはない。所詮死にかけの戦士の攻撃など、何するものぞ。
 魘魅師は常のように笑おうとし――そして気づいた。腕に絡まる鎖に。
『な』
「これでお互い逃げられなくなったわけだ」
 魘魅師の視線が鎖を伝ってユーリへ、そして奴は恐怖した。
 なんたる不敵な笑みか。頬を歪めるさまは、まさに暴竜の如し!

 裡なる生命の輝きが、ユーリの全身を炎に包み込んでいく。
 熱は鎖を赤く染め上げ、つながった先に魘魅師をすら苛んだ!
『ぐ、おおおっ!?』
 そして引きずられた! すさまじい膂力に踏みとどまることすら出来ぬ!
「これは――貴様に苛まれたチコルの痛み!!」
 ごしゃあ!! 巌の如き豪腕が、魘魅師の笑みを砕いた!
 高ぶる炎は頬を焦がし、頭を包み込んで責めさいなむ! さらに拳がむんずと頭を掴む! すさまじい熱が肌を肉を焼き焦がす!
「そしてこれが、俺の……怒りだッ!!」
『が、あぁああああっ!?』
 ばち、ばちばちばち……! 鎖から、掌から伝わる龍の炎!
 魘魅師は呪いの力を振り絞り、影絵を用いてユーリの炎を再現する!

 影の炎に燃やされながらも敵を離さぬユーリに、チコルは息を呑んだ。
 その背中の語るところを理解し、彼女は立ち上がると真の姿を解き放つ。
『貴、様……怖く、ないのか!? 私の影は、貴様を』
「ああ、焼き焦がすだろう。だが恐れなどこれっぽっちもないな」
 ぎらり。ユーリは大きく目を見開く。魘魅師はそこに映る己に恐怖した。
 そして、己の懐へ飛び込む、狐の獣人の姿を見て、全てを悟る!
『やめろ』
「俺ひとりならば勝てないだろう。だが!!」
 チコルがいる。絆を結んだ仲間がいる。
 たとえ己が炎に苛まれようと、その間に最期を下す少女が!
『やめろ!!』
「断る。そして、これこそが――」
「……あなたに苦しめられた、みんなのぶんっ!!」
 チコルの刃が、魘魅師の心の臓腑を貫く!
 すさまじい断末魔を上げ、呪われたモノの影はドロドロと溶け崩れる!
 チコルはけして刃を離さぬ。じわじわと伝わる影の触手は龍の焔が灼いていく。
 そして数秒――もはやそこに、影はどこにもありはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリシア・マクリントック
【①希望】
手の内が知られている……それでもできるだけあがいて見せましょう。
セイバークロスに切り替えて戦います。戦い方は変身前に近くなりますが……見られていたフェンリルアーマーのまま戦うよりはよいでしょう。

やはり新しい何かが必要ですか。私が求める力の形。それは……
思えば、猟兵として戦うようになってから私はずっとマリアに守られてきた。今度は私がマリアを、誰かを守りたい!
見えました……新たな可能性の扉よ、開け!

これが私の新たな可能性……スカディアーマーです!
攻撃を避けるのでは無く受け止める!そして剣の先端にエネルギーを集中させて……突く!
名付けて、必殺!ファントムピアース!



●守られるのではなく、守るために
 紫陽衆との立ち回りにおいて、アリシア・マクリントックが使用したのは『フェンリルアーマー』という名の強化外骨格である。
 そしていまアリシアが纏うのは、その基本形たるセイバークロス。
 速度と手数は劣るが、それでも敵の情報にはない力のはず。
「はぁあっ!」
 裂帛の気合とともに刺突を繰り出す。魘魅師の額を貫い――いや、影。
「後ろっ!?」
 気配を察知したアリシアの感知能は見事。だが敵の動きはなお迅速!
「ぐう……ッ!!」
『いまのに反応しますか。いやはや』
 踏み込んでの掌底を脇腹に見舞った魘魅師は、やれやれと肩をすくめる。
 笑顔から変わることのない表情からは、奴の言葉がはたしてどれほど真実なのかも怪しいものだ。

(呪術だけじゃない、身のこなしも一流……これが……!)
 痛みに喘ぐアリシアは、魘魅師の能力に感嘆と畏怖の感情を抱く。
 しかし自分は、奴に感銘を受けるためにここへ来たのではない!
『さて、ではとどめを――おっと』
「GRRRRRッ!!」
 踏み出しかけた魘魅師は、後ろから飛びかかってきた狼に対応を余儀なくされた。
 アリシアの相棒たるマリアである。呪符が狼を苛み、弾き飛ばす!
「マリアっ!!」
『飼い犬のご心配をしている場合ではないと思いますが?』
「……!!」
 背筋が総毛立つような予感。アリシアは反射的に剣を振るった。
 地雷めいて仕掛けられていた呪符が、あわや接触寸前で断たれる!
 だがこれも罠だ。魘魅師が間合いを詰めコンパクトな連続打撃を腹部に!
「か、は……っ」
 ざざざざ! と足元の天井に刃をつきたて、アリシアは衝撃を減じる。
 立ち合いのたびに力量を痛感させられ、ダメージはこちらに蓄積し続ける。
 このままでは早晩倒れることになるだろう。敵には傷一つないのだから。

 ……だがアリシアは、そんな苦痛などどうでもいいほどに悲しんでいた。
(マリア――)
 相棒たる狼が、自分を守るために食い下がってくれている。
 アリシア以上に傷ついているだろうに、その痛みを厭うこともなく。
『やれやれ、そろそろ鬱陶しいですね。どれ、この野良犬から処理しましょうか』
 業を煮やした魘魅師が、床を転がるマリアへと呪符を構えた。
 ……これでいいのか? 相棒に救われ、守られ、その最期を見過ごして!
 それで勝ってなんの意味がある? いや、このままではそれすら危ういのだ!
(私は……)
 走馬灯めいて、旅立ってからの日々がアリシアの脳裏に去来した。
 迷宮で、荒野で、宇宙で――いつでも相棒は彼女を守ってきたではないか。
 ならばいまこそ己を超える時。守られるのではなく、守るための刃を!

 ――東洋に、明鏡止水という教えがある。
 アリシアは極限の集中のなか、それを自然に悟ったように思えた。
 新たな可能性の扉を開くような開放感。その時、アリシアの姿が消えた!
『何っ!?』
 魘魅師は敵の接近を察知し、即座に呪符を放つ。その数百以上!
 防げば第二波が押し潰し、かわそうとすれば面制圧する。二段構えの策。
 だがアリシアは、"突き進みながらそれを受け止めた"のだ!
『な――』
「切り裂くのでもなく」
 壁めいて広がった符が、まるでブラックホールに飲まれるようにぎゅりんと歪み、集まっていく。
 それは剣の先端である。生み出された魔力が呪いごと符を飲み込んだのだ。
「受け止め、そして乗り越える。これが――私の、新たな可能性!」

 その姿はセイバークロスでも、フェンリルアーマーでもない。
 鎧を魔力がリレイし、アリシアから剣の先端へと収束。揺らめくさまは影のごとく!
『貴様!!』
 攻撃が届かぬならば、全身全霊を一点に込めればよい。
 防御で弾く必要も躱す必要もない、ただ受け止め返せばいいのだ。
「名付けて、必殺――」
 それはまるで幻影のごとく、とらえどころなき必殺の一撃。
 予後動作がないゆえに、軌跡を察知できぬ変幻自在の必殺技!
「――ファントムピアースッ!!」
 呪符は守りも兼ねていた。均一な呪いがかけられていた。
 だが収束した力は、それをただ一点のみ貫き刃を突き出した。
 符の全てを切り裂く必要はない。躱す必要も、跳ね返す必要もない。
 受け止め、ただ一点。一瞬のみ、致命の一撃を届かせればそれでよい――!

『が、あぁあああああ……っ!?』
 はたして、突き刺さった切っ先から魔力が爆ぜた。
 魘魅師は裡なる破滅に喘ぎ、慄き、断末魔と共に消滅していく!
「やった……!」
 アリシアは膝を突いた。だが己を強いてマリアのもとへ。
「マリア……ありがとう。私を守ってくれて」
 相棒への思いが、ひたむきな心が。新たな可能性を開いたのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイナ・ラウタヴィーラ
同行者:アイリ・ガングール(f05028)
【③希望】

アイリさんの行動を無駄にはしま、せん
ここに来るまでにいくらか負傷してる上に既にこちらの動きを知られているのは不利ですけど、ならばこちらも相応に動くだけ、です

呪殺符を使われると面倒、ですね。銃撃で牽制しつつ、肉薄して拳銃と刀で二回攻撃を試みましょい、か
んっ、これは、毒……? ちょっとまずいかも……
なるべく早く決着を……っと、この声、まさかアイリさん!?

アイリさんが居れば百人力、ですね
呪詛に合わせて鎧無視の援護射撃を叩き込んで一気に追い詰めましょう

アイリさんのくれたチャンス、無駄にしません。2人で狐火の餌食にしてあげ、ます……!


アイリ・ガングール
【③希望】
【同行者:アイナ・ラウタヴィーラ・f00892】
 なるほどの、敵を知り己をしれば百戦危うからずとも言うしのぅ。理には適っとるよって。
 じゃったらまだお主に見せてない部分を出すしか無かろう。
〈フォックスファイア〉をメインに使うぞ。そう、呪詛、ひては呪術じゃ。
 確かに体の強化に使っておたがの、こうして炎を操るのにも使える訳じゃ。そして呪詛に対する耐性も持っとる。呪符は効かんよ。
 そういう訳じゃから目くらましや防御は任せなアイナ。がっつりと、決めておやり。



●目には目を、呪いには呪いを
 BRATATATA! BRATATATATA!!
『おお、おお。城内は火気厳禁なのですがねえ』
「…………」
 魘魅師の軽口に、アイナ・ラウタヴィーラが敢えて付き合うことはない。
 彼女がここに辿り着くために、一人の妖狐が自ら身を挺したのだ。
 このチャンスを無駄にしてはならない。影は一体たりとて残してはならぬのだから。
 BRATATATA! BRATATATATA!!
 ただ心を冷えた鉄のように凍てつかせ、冷静にトリガを引く。
 呪殺符を弾雨で相殺し――見えた。間隙を縫うように一気に肉薄!

(この距離、なら……っ)
 狐刀一尾を逆手に、もう一方の手には愛用のリボルバー。
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! ファニングとともに心臓への一突き!
「な、」
 にこり、と魘魅師が微笑んだ。指先が刀の切っ先を抑えていた。
 直後、奴の影絵がぐにゃりと歪み、まるで銃を構えるかのごとく――危険だ!
「っ!!」
 アイナは即座に追撃を諦め、身を低く屈めて床を滑った。
 BRATATATATA! BRATATATA!!
 いまさっきアイナがやってみせたかのようなアサルトライフルの斉射!
 そして近づいての六連射と刀の不意打ち。これを影絵がそのまま真似る!
「この、っ」
 アイナはこれをかろうじて回避し、いなし、銃撃で打ち払った。
 だがその時、ふと四肢の力が抜けた。アイナの膝は意思に反して床を突く。

 ――毒。
 傭兵として一流であるがゆえに、アイナはその正体を即座に理解した。
 影絵による反撃は囮。猛毒を持つ虫が辺り一帯に放たれている……!!
『おや。いかがなさいました? ここは廊下でございますよ?』
 嘲るような言葉を無視し、アイナは立ち上がろうと力を込める。
 ぐらりと視界が揺れる。これはちょっと――否、かなりまずい。
 およそ知りうる限りの毒薬に体制を持つ傭兵とて、この猛毒は無視しきれぬ。
 むしろ意識を失わないで戦闘が可能なだけ、アイナの体力は驚異的だ。
『諦めて斃れてしまえばよいのに。なにがあなたをそうさせるのです?』
「……アイリさん、の」
 刀を支えにして立ち上がったアイナは、歯噛みするように言い返した。
「行動を、無駄には……しま、せん」
 負った傷は少なくない。毒はそこからじわじわと体を蝕んでいく。
 それでも。斃れてはならない理由がある。絶対に、何があろうと……!!

「――なるほどの。敵を知り己を知れば、百戦危うからずとも言うしのぅ」
 その時、ふと転がった少女の声に、魘魅師もアイナも我が耳を疑った。
「みどもの戦いぶりを分析し、最適な毒を調合して備えておく。
 そして影を用いて威力を返しじわじわと苛む。理には適ってるよって」
『貴様』
「あ――アイリさん!?」
 アイナすら驚愕した。そこに居たのはアイリ・ガングールである!
 彼女の周囲にはぽつぽつと狐火の炎がゆらめき、毒を退けていた。
 それどころか、炎はアイナの体に染み込み、その内側で燃え上がるではないか。
 いかなる力か、それで毒は嘘のように消えてしまった!!
「か、体、が」
「コココココ。いかに猛毒とて、つまりは呪(しゅ)であろ。
 ならばみどもに返せんはずはなし。これぞ、我が呪術じゃてね」
 いたずらっぽく微笑む女童に、アイナは口元を綻ばせた。
 伴とする兵はなく、その身には少なからぬ傷。だがアイリは笑っているのだ。
 そしてここに来た。ならば己が膝を突いている理由などないのだから!

『――私に、呪で相対すると?』
「然様よ。これまでは自己強化にしか使っておらんかったがの」
 揺らめく狐火はおよそ三十以上。その総てにアイナの呪力が込められている。
 然り。亡国の将軍、魔剣士、されどそれ以前に、アイリは妖狐なのだ!
 いわんや、女童めいた体を達人に追従させる呪いの腕前たるや!
『嘗めた真似をしてくださる!』
 放たれる呪符は、しかしことごとくが燃えて散った。
 魘魅師とて瞠目せざるを得ない。根本的な呪詛の桁が違う……!!
「効かんよ、そんな飯事(ままごと)は」
 鮫のような笑み。しかして少女に向けられるのはあどけなく。
「そういうわけじゃから、目くらましや防御は任せな、アイナ」
「アイリ、さん」
「――がっつりと、決めておやり?」
 もはやそこに言葉はない。艶やかな声音は百人力を越えて千人力だ。
 アイナは痺れかけた四肢に力を込め、弾丸をリロードする――そして両者同時に動いた!

 まず呪符が壁のごとく立ちはだかり、二人の視界を覆った。
 牽制である。即座にアイリの狐火がこれを焼き焦がす。
 魘魅師は背後。猛毒を滴らせた徒手空拳でこれを殺(と)りにかかる!
「させません……!!」
 アイナの刀が手刀を弾く。振り向かぬまま、アイリの呪詛が敵を襲う!
『ちぃ!』
 魘魅師は退いた。そしてその力を影絵で再現しようとした。
 ――アイナの戦力を、奴は見くびっていたと言わざるを得まい。
『……!?』
 すでに少女は懐に。髪越しに、双眸に妖しの焔が揺らめく。
「私たちの、狐火の餌食にしてあげ……ます!!」
 それは黄泉路へ誘う、人魂のごときおそろしの焔であった。
 はたして掌から伝わった焔は魘魅師を包み込む。奴は逃れようとする。
 させぬ。魂の縄が四肢を戒め、トーチめいて燃え上がらせる!
「――女を、あまり嘗めぬほうがええぞ? コココココ」
 焔越しに、艶然たる笑み。それすらも、苦悶の断末魔にかき消され、影も残さず敵は燃え消えた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】【特殊ルール①】
成程、今までの戦いから情報を得ていたと。
情報を制する者は戦いを制するというからね。
(普段の戦闘スタイルに戻しても良いが、それでは面白くない)
『求敗掌』かつて武林を数十年闊歩し、あまりの無敵ぶりに遂には自身の負けを求め、ついに叶わなかった男の掌法だ。君に対処できるかね?
(勿論、でっち上げだ!最後までからかうつもりだぞ)
求敗掌に構えなし、敵が動けば動いたことで生じる隙をついて攻撃。
とは言え動かなければ普通に攻撃して倒す。
「今日はとても愉しめた。その礼に妙技を見せてあげよう。残念ながら北斗派の技ではないのだがね」
まだまだ影はいるが十分に楽しめた。後は見物席に移動しようか。



●無粋
 影と相対して、もはや撃ち合ったのは五十に昇るか。
 互いに傷はなし。そして浮かべる表情もまた同じく――否。
『……あなたは、力を隠していますね?』
「ほう、わかるかね」
 魘魅師の言葉の裏には、隠しようもない苛立ちがあった。
 笑みで玩弄し、敵を嘲り、翻弄することこそ、この呪術師の得手。
 にも関わらずこの天敵は、己と同じような笑みを浮かべ戦い続けている。
 明らかに手を抜いている。それがわかるからこそ歯噛みしているのだ。

 これなる男の名を、シーザー・ゴールドマンと云う。
 常ならば赤黒い魔力を纏い、オーラの刃で敵を裂くスタイルである。
 だがいまは徒手空拳。こきりと指先が骨を鳴らした。
「情報を制する者は戦いを制すると云う。その割には辛酸を嘗めているようだが」
『……ご冗談を』
 くすりとシーザーは笑う。だがこれは敵を見下しているわけではない。
 奴は武侠のなんたるかを歪め、民草を苦しめ猟兵たちを玩弄した。
 そしていま、奴は超然と傲慢に振る舞い、己らを嘲笑おうとしている。
 ではその流儀に倣おうではないか。奴の振りまいた御免状の呪いを鑑み、最後までこの酔狂を通してやるとも。
 たとえそれで劣勢に立たされたとして、シーザーがそれをやめることはあるまい。
「"求敗掌"。かつて武林を半世紀に渡り闊歩し、あまりの無敵ぶりについには敗北を求め、それでも叶わなかった男の掌法を知っているかね?」
『…………』
 言うまでもなくでっち上げだ。魘魅師とてそんなことはわかる。
 その男の余裕が、愉悦に満ちた笑顔が! なおさら奴のプライドを責め苛む!!

 しかし、これこそがシーザーの策である。
 玩弄を好み嘲弄をせんとする輩をあえてからかってみせる。
 これが覿面に効いた。魘魅師はもはや怒りを隠さずに殺意をむき出しにする!
『ならば、そのままに死ぬがいい……!!』
 先の先を得た。魘魅師の影が奴自身の動きを模倣する。
 徒手空拳に置いても凄絶たる奴の拳は、なるほどシーザーの首を掻き切るだろう。
 ――届けば、の話だ。そして現実は残念ながら叶わなかった。
『かは』
「今日はとても愉しめた」
 臓物を破壊する必殺の掌底を打ち込んだまま、シーザーは耳元で囁く。
「これはその礼だ。"求敗掌"が絶招――『玄鉄』」
 オーラが爆ぜた。内的な爆発に、魘魅師は抗いようもない。
 屈辱と怒りを噴き上げながら、悪鬼たる敵は滅んでいく!
『貴様! 貴様ほどの男が、なぜ――』
「なぜ、か。それは簡単だよ"口蜜腹剣"くん」
 シーザーはぱんぱん、と埃を払うような仕草をする。
「君たちのやり方では、何もかもがつまらんからさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネロ・バロック
『①希望』
クソったれめ…観察されていたんじゃ羅刹旋風は流石に隙が大きすぎて当たらねェ!
でもよ、送り出してくれた奴がいるんだ
アイツのためにも…俺が頑張らなきゃいけねェよな

唯我独尊流を名乗ったからにはよ…必殺技も開発しなきゃいけねェよな
全身全霊の気魄を込めた一撃は――小細工なんてまとめてふっ飛ばす!
(多少のダメージは気にしねェ!)
そう思っていたらアイツが来てくれた
「シオンか、遅ェぞ!
この覗き見野郎をぶっ倒して一件落着と行こうぜ!」
胸の中では安堵しつつも、そんな事言うガラじゃねェ

シオンなら俺の動きに合わせて上手くやってくれるだろうよ
だからよ、俺はこの唯我独尊斬りをぶち決めるだけだぜ!


シオン・ミウル
ネロ(f02187)と
【③希望】

やあ、ちょうどいいとこで到着できちゃった?

風刃を繰り敵の攻撃を弾き飛ばす
思ってたよりも苦戦してたみたいだね
なんてからかってみるけど
内心ふぅ、と一息

ま、間に合ったから許してよ
春風でネロの傷を癒してやろう
結構やばい敵なんだなーってのは十分わかった

じゃ、ここからは2対1だ
逃げるなら今の内だよ?
もちろん逃がさないけど

ふふ、観察してたなんて趣味が悪いなあ
でも 見ていたのなら、こうやって避けるんじゃない
回避を見越して風の刃で追い詰める

付け焼刃の観察なんて三手先までは読めないだろ
ネロがどう動くかなんて言葉を交わさなくてもわかる
そこだよ、ネロ
とどめは任せた



●どこまででも行ける、なぜなら
 ネロ・バロックに、実のところ型らしい型はない。
 彼はその怒りや憎悪や破壊衝動のままに、己の力を振るってきた。
 野獣のような生き方である。羅刹とはまさにこのことであろう。
 であるがゆえに。手の内を見透かされたいま、打つ手はない。
『――と、あなたもわかっているはずでは?』
 魘魅師は、あちこちからしゅうしゅうと煙を上げるネロに言った。
 然り、ネロは満身創痍である。度重なる立ち合いが彼に傷を与えていた。

 しかして藍色の瞳の少年は、獣じみた笑みで敵を睨めあげる。
「クソッたれめ。わかったような面で見下しやがって」
 気に入らない。あの笑みをぶち砕いてやるまで倒れるつもりはない。
 たとえ隙が大きいゆえに見切られようとも、攻め手を緩めるつもりはない。
「――ここまでよぉ、送り出してくれた奴がいるんだ」
 もはや魔剣を支えに立つのもやっとの有様で、ネロは云う。
 友の背中を思う。あの微笑みの裏の覚悟と決意を想う。
「こんなとこが俺らの最期なんざ、カッコもつきやしねェ。
 だからアイツのためにも、俺が頑張らなきゃいけねェんだよ!!」
 意地である。意地が、ネロをいまこの場に立たせていた。
 魘魅師はそれを嘲笑う。それこそ、やつにとっては最高のジョークゆえに。

 小細工など、もとからネロにとっては不得手な試みだ。
 であれば正面から、己の保ち得る全能力を叩きつけて敵を潰す。
「テメエの酔狂に付き合わされた流派だがよ、名乗ったからにはらしい必殺技も必要だろ」
『かもしれませんねえ。ま、それまであなたが立ってればの話ですが』
「ハ。言ってろニタニタクソ野郎、いまぶちのめしてやらぁ……!!」
 全力の一撃は放てて二――いや、おそらくは一撃。
 敵もまた能力を隠している。反撃で己は斃れるだろう。それでも構わない。
 負傷を恐れて足を止めるなど、いよいよ俺様らしくないじゃあないか。
「なァ、そうだろシオン……! ここで止まるのは俺らしくねェ!!」
 ゆえに魔剣を振り上げ、ネロは相打ち覚悟の突撃を決めた!
 迎え撃つように呪符の壁が立ちはだかる。防ぎきれるはずはないのだ!

 ――だが、その時一陣の烈風が吹き抜けた。
 ネロにとってはそよ風のように、敵にとっては嵐のごとく。
 吹き抜けた風は刃となって符の壁を切り裂き、呪いもろとも微塵に散らす。
「――……」
「やあ」
 ふわりと。春風めいて現れた少年に、ネロは言葉を失った。
 らしくない顔で目を見開いて、しかしすぐにいつも通り野卑に笑う。
「ちょうどいいとこで到着できちゃった?」
「アホ抜かせ、遅すぎんだよテメエはよォ!!」

 魘魅師は、その闖入者を笑顔の裏で睨めつけて沈思黙考した。
 奴が――シオン・ミウルが、紫陽衆に飲まれたところはこの目で確認した。
 圧倒的数の差だったはずだ。万に一つも切り抜けられなかったはずだ。
 事実、シオンは平気な顔をしているもののあちこちに傷を負っている。
 だが、ふわりと吹く春風のような……否、事実"春風"が、傷を癒やす。
 シオンの傷を、ネロの傷を。無限めいた活力で癒やしていく。
(これが、猟兵。我らの天敵――生命の慮外にあるもの!)
 倒すべき敵を見定めた時、猟兵は決して斃れない。
 ましてや友が隣にいるならば? 万の敵が相手とて当然だ!

 そしてシオンは、からかいつつも内心で安堵の吐息を漏らしていた。
 ネロのことだ、きっと相打ちを覚悟で突撃を決め込むつもりだったのだろう。
 彼はそういう男で、だからこそシオンにとってはよき悪友なのだ。
 後ろを顧みぬ魔剣使いを、春風を纏うオラトリオが支えてやる。
 いかにも凸凹の、しかしそれゆえに噛み合った時の力たるや。
「まあ、間に合ったから許してよ」
「ケッ!」
 活力が湧いてくる。ネロはもはやあれこれと汚い言葉は吐かなかった。

 赤と藍の瞳が、強敵をしかと見据える。
「じゃ、ここからは二対一だ。逃げるなら、いまのうちだよ?」
 などと言いつつ、シオンに敵を逃がすつもりなど毛頭ない。
「この覗き見野郎をぶっ倒して、一件落着と行こうぜ!!」
 いつも通りの減らず口を叩くネロも、安堵を顔に出すことはない。
 そんなのは柄ではない。俺は――否、俺たちは。
「後ろは任せんぞ、シオン!」
「はいはい。存分にやりな、ネロ」
 作戦も何もなく、互いの好きなように暴れるだけだ!!

 シオンの登場により、戦況は一変した。趨勢は猟兵のもとへ。
 呪符を放とうと妨げようと、シオンの風の刃はそれを切り裂き敵を抑える。
『く……っ!?』
「見てたんなら、こうやって避けるんでしょ? ほらね」
 敵がこちらの動きに対処するなら、シオンはその対処を読んで動く。
 先を読まれるならば先の先を。それを呼ばれるならば先の先の先の先を読む。
 彼にはそれが出来る。風の刃がそれを可能とする。そして敵は追い詰めっれる。

 ――ネロがどうするか、シオンにはわかる。逆も然り。
 己の思うがまま、打算もクソもなくネロは攻める。駆ける。前に出る。
 打ち込む。防がれたならもう一撃。それをもいなされたならばさらに一撃!
 打ち込むたびに、攻めるたびに攻撃は重く速く。魔剣は胎動する!
『どこに、これほどの力が……っ』
「どこにだぁ?」
「いかにもな問いだなぁ」
 少年はともに笑った。それが魘魅師を恐怖させた。
「「俺たちに、敵はねえんだよっ!!」」
 捉えた! ネロは全ての魔力と気力を魔剣に込める!
「喰らいやがれ! こいつが――」
「とどめは任せたよ、ネロ?」
 友の言葉が最後の重みを齎す。敵などどれほどのものか。
 道理を無理で押し通す。これぞまさしく、天上天下に木霊す不条理の太刀!
「唯我独尊斬りだ、爆ぜやがれぇっ!!」
『う、おぉおおおお……っ!!』
 刃が袈裟懸けに敵を裂く。血が迸り……そして、敵は呪いの力で爆ぜ飛ぶ!
 勝利の高揚はない。これは当然の結果だ。
 悪友たちが力を合わせた時、倒せぬ敵などいないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リョーコ・アサギ
【①希望】
SPD判定

紫陽衆との戦いで「師匠」の過去を垣間見た「リョーコ」
両者の心が限りなくシンクロした今、真の【明鏡止水】が使用できるようになる
(今までは回避専念するだけで反撃まで出来なかった)

UC演出
全身が金色のフォースで覆われ
心象風景で凪いだ水面に波紋が広がる
閉じた目を見開くと一息に剣を振り下ろし
死角から攻撃しようとした魘魅師を切り伏せる


師:今のお主と拙者なら真の【明鏡止水】が出来るはずでござる

リ:わかった、やってみるよ師匠

師:やってみるではだめだ
やるか、さもなければやらないか
“トライ”なんて存在しないでござる

り:うん、やって見せる。フォースと共にあらんことを
師:フォースと共にあらんことを



●明鏡止水の彼方へ
 影との戦いは熾烈を極めた。
 リョーコ・アサギ。二にして一たる師匠と弟子。
 そんなふたりの連携をして、魘魅師の余裕は揺らがず敵の攻撃はまさに猛勢。
「……っ!」
 リョーコは歯噛みしながらも、繰り出される呪符の数々を丁寧に防ぐ。
 ひとつひとつが致命的な上に攻防自在。この閉所がやつにとっての地の利なのだ!
『さて、まだまだまいりますよ?』
(リョーコ! 焦って飛び込まぬように注意するでござるよ!)
 敵は猛攻の合間に、あえてわかりやすい間隙を用意している。
 それ自体が罠だ。踏み込めば致死的な不意打ちがリョーコを襲うのである。
 師の激がなければ、たやすくそれにひっかかりリョーコは最期を迎えていただろう。
「ウチは負けない、絶対にアンタを倒してみせるっ!」
 意気軒昂。されどそれだけでこの差は縮めきれぬか……!

(――こうなれば、あれを使うしかないでござるな)
 眼帯の形をした師の声は、思考の速度でリョーコに伝わる。
 "あれ"。それが何を意図しているのかも、いまのリョーコにはわかる。
(いまのお主と拙者なら、真の"明鏡止水"が出来るはずでござる)
 リョーコは攻防を続けながら息を呑んだ。それはいまだ未完成のユーベルコードだ。
 明鏡止水の教えを以て敵の害意を己の心に映し、これを避ける。
 本来はその先がある。今までは回避が精一杯だった――今まで、なら。
(わかった。やってみるよ師匠)
 健気な弟子の言葉を、しかし師は厳しく一蹴する。
("やってみる"ではダメだ)
「……っ!!」
 重い。符の合間に魘魅師の掌底がリョーコの腹部を打った。
 とっさのバックステップでインパクトは避けたが、衝撃が全身を反響する。
 なんたる苦痛! リョーコはしかし思考と意識の手綱をしかと握る!
(やるか、さもなければやらないか。"トライ"など存在しないのでござる)
 でなくば、このまま敵にやられるのみ。
 厳然たる事実。これまでなら臆して逃げ出していたかもしれない。

 ――しかし、リョーコは紫陽衆との戦いで、師の過去を垣間見た。
 理力の剣士との立ち合い。その一挙一動をしかと記憶している。
 ならば辿り着ける。いや辿り着かなければならないのだ。でなくば!
(――うん、やってみせる)
(それでいい)
 もはやここに至って、師弟の間に余計な言葉は不要だった。
「(……フォースと共にあらんことを)」
 呟いて、リョーコは……足を、停めた!?

『ハハハ! 自殺をご希望ですか!?』
 魘魅師は笑う。その構えに一切の策がないことはとうに見抜いている。
 しかして奴は呪符で四方を囲い、死角を潰した上で呪いを込めた。
 符が一枚でも触れれば最期、すべての呪いがリョーコたちを襲うだろう。
 それは抗いようもなく彼女たちを仕留めるだろう。策はないのだ!
『ならば――どうぞ、よき黄泉路の旅立ちを』
 そして呪いが襲いかかる。リョーコが……目を、開いた!
「――」
 まるで水のように、よどみなく四肢が動く。
 神速で剣を振るい呪詛を切り裂き、活路を開く。
 そんなものはないと立ちはだかる影を、呪いをさらに切り裂いて。
 もはやそれは竜巻だ。フォースを纏う人器一体の竜巻である!
『何っ!?』
 驚愕。それが致命的な隙となった。
「(これで――終わりだっ!!)」
 ひとりと一つの声は重なり、はたして竜巻は敵を切り裂いた。
 断末魔すらなく。その剣閃はまるで透き通った水のようによどみなく。
 ――奥義到達。照らされし鏡に、邪悪の影は存在しない!

大成功 🔵​🔵​🔵​

詩蒲・リクロウ
あー戦い辛い……。
これやっぱり読まれてますよねぇ。
(とりあえず、グラウンドクラッシャーを敵にかましまくり周囲の地形を拓ける)

どうしましょうか、なんのかんの手はありますけど、今自分独りなので撃破まで持っていくのは辛い気がしますし……。

う〜〜〜ん、仕方ないですね、最終手段です

prrrr
あ、もしもし僕です、……はい、はい、そうですそうです。
じゃあ宜しくお願いします。

これ、給料天引きだから使いたくないんですよホント。
(どこからともなく戦闘ヘリが援護しつつ、ロケランを届けてくれる)
あ、これ卑怯とは言わせませんよ。

UDCにも効く特殊ユーベルコードランチャー、僕の3ヶ月分の給料をどうぞ味わってくださいね!!



●呪いだろうがなんだろうがふっとばしちまえば関係ねえ
 詩蒲・リクロウは困っていた。
 手当たり次第にグラウンドクラッシャーをぶちまけまくり、
 上も下も左も右もあべこべの城の地形をさらに滅茶苦茶に混ぜ合わせながら、
 それでも目くらましをされることなく食い下がる魘魅師に確信する。
(あー、戦いづらい……これ、やっぱり読まれてますよねぇ)
 陰で動いていた己の戦いぶりすら、奴は遠見していたというのか。
 嗤う魘魅師、油断ならぬ敵だ。無論手は幾つか浮かぶが……。
(いまはジョンさんも他の方々もいないですし、ううん)
 思案しながらも呪符を丁寧に瓦礫で防ぎ、リクロウは高速思考する。

 影は一体たりとも撃ち漏らしてはならない。
 つまり撃破は必須。他の戦場も合流する余裕はなかろう。
『いかがしましたかね? そろそろ万策尽き果てたというところですか?』
「ははは、まさか。……う~~~~~ん、仕方ないですね、最終手段です!」
 ……中庭! 飛び出したリクロウは意を決して懐に手をやった。
 そして取り出したのは、通信端末! どこかへと通話をはじめたのだ!
「あ、もしもし僕です。……はい、はい、そうですそうです」
 じゃよろしくお願いします、といって丁寧に通話を終える。
 突然の奇矯な振る舞いに、魘魅師も攻撃の手を止めて訝しまざるを得ない。
『何を? 救援を呼んだところで』
「いやあ、来るのは救援じゃないんです。ああ、この世界の方じゃご存知ないかな――」
 ……その時、高らかなローター音が中庭を劈いた。

 頭上! キュバキュバと対空しているのは戦闘ヘリである!
 なにやらゴリラめいた特殊部隊隊員が、英語でリクロウの名前を呼び何かを投げた。
 ……ロケットランチャー! ロケットランチャーである!
『は?』
「あ、これ卑怯とは言わせませんよ」
 がしゃこん。砲口が魘魅師を捉える!
『な、』
「UDCにも効く特殊ユーベルコードランチャー、
 僕の3ヶ月分の給料をどうぞ味わってくださいね!!」
 KRIK――KRA-TOOOOOOOOOOOM!!
 呪符だ影絵だ、そんなものは所詮は呪術のたぐいである。
 UDCアースの出身であるリクロウは、その手のオカルトには慣れている。
 時としてその手の輩に一番効くのは……純粋な、破壊力!
「……はぁ、しばらくエアパスタですかねえ……」
 もうもうと立ち上る火炎を前に、シャーマンズゴーストは重くため息をついた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

龍之・彌冶久
【③/①希望】
さてさて、見た顔なり困っている者なりを助けにいくか。
ああ、待たせたな。年寄りの歩みだ、遅いのは許せよ?

俺の名前?なに、名乗るほどのものじゃない、只の"龍の脈"だ。

【POW】
呵々、面白い術師を使うな?
ただ剣を振って斬るだけ(【剣刃一閃】)では防がれる。
何よりほぉ、その影。俺か。

好し!
好いぞ。俺の剣技、一度真っ向から撃ち合って見たかった!

ならば本気で斬りに征く。
『陽脈』『天脈』より、眩き日陽の如き刃を。
今ばかりは少し多く紡ぎ賜ろう。
光が一同『十束』に集い、空の陽が薄れるほど。
何、少しの間だ、許せ。
この光刃、只の剣の一閃に非ず。
数多の脈より束ね賜しり【那由多】の一閃。
さあ、いざ尋常に。


テイク・ミハイヤー
数が多い上に全員が達人クラスか。こいつは骨が折れるぜ……。
いいや、こんな所で足を止めてちゃ本物のヒーローにはなれねぇ!やってやるよ!【①希望】

UC英雄再起。【初披露】即席爆弾も加速迎撃も見破られてる、となると奴を倒す為に俺の切れる札は1つだけ……いけるのか?いや、一か八かやるしか!
ピンチ・クラーs……なっ!?お前達は!
蟷螂極砕拳の弥次郎!宝玉院流槍術の銀栄!そして、無双直伝電心居合流の幻信!
傷はもういいのか?動いても大丈夫なのか?え?未熟者を鉄火場に放り出すよりマシ?
……へっ!言ってくれるぜ!なら行こうぜ、一緒にさ!



●正義、尽きることなく
 ヒーローとは、どんな相手だろうと足を止めることなく勇敢に挑むものだ。
 実際がどうであれ、テイク・ミハイヤーはそう思う。だからここにいる。
「やってやる、って気持ちだけは負けねえつもりだけどな……!」
『それで悪を滅ぼせるなら、私はとうに滅んでいるでしょうねえ』
 ボロボロのテイクを見下ろし、魘魅師や嫌味な笑みを浮かべた。
 いけ好かない面だ。だが殴り飛ばすには少々力量差が、大きすぎる。

 テイクが影との交戦に入って5分。力量差は圧倒的に、如実に現れた。
 テイクの攻撃は何一つ通ることなく、しかし敵の呪いは彼を蝕む。
 呪符をかろうじて防げば思った以上に鋭い打撃が脇腹に突き刺さり、
 苦し紛れに投げつけた爆弾は影で模倣されて投げ返される始末。
「即席爆弾も加速迎撃もダメ……か」
 ペッ、と血の混じった唾を吐き捨てつつ、テイクは立ち上がる。
『出し物はもう終わりですかな?』
「へ! とんでもない切り札があるぜ、とっておきのだ!」
 減らず口を叩きながらも、しかしテイクは冷や汗を抑えられない。
 これまで使ったことのない、実戦初投入のユーベルコードだ。
 どこまでやれるかはわからない。なにせ"これ"は『そういう力』なのだ。
 技術でも知恵でも、意思の力でもない。いわば他人任せの――否。

「けどよ、これこそまさにヒーローの見せ場だろ」
 絶体絶命のピンチを、予想だにしない力で切り抜ける。
 いかにも英雄めいている。いかにもカートゥーンらしい展開だ。
 ……テイクはヒーローではない。ヒーローに憧れる常人(ヴィジランテ)だ。
 だがワナビーであるからこそ、時としてその意思は純粋で揺るぎない。
『いじましいものですね。しかし世の中、分不相応というものがございます』
「……だろうな」
 厭な言葉だ。そんなものは糞食らえだ。道理なんぞふっとばしてしまえ。
「けどな、お前ら悪党の理屈なんざ、俺には関係ないぜ! ぶっ潰してやる!!」
 魘魅師は嘲笑った。もはやテイクに余力がないことを見抜いたからだ。
 それでもテイクは諦めない。悪が、不条理があるならば立ち上がる。
 立って、戦う。――その姿はヒーローらしからぬ、泥臭く無様なものだが。

 しかしだからこそ、時として響くものがある!
「「「待たせたな!!」」」
「なっ、お前たちは!?」
 ぞろぞろとテイクの背後にやってきたのは、誰であろうこの地の達人たち。
 ある者は悪漢に虐げられ、またある者は御免状に魅入られ悪事を働いていた。
 先触れの戦いでテイクに救われ、あるいは打ちのめされた者たちである。
「小僧ひとりに格好つけさせるわけにはいくまい」
 蟷螂極砕拳の弥次郎がにやりと笑う。
「真の侠たるところを見せねばな」
 豪槍を振るうは宝玉院流槍術の銀栄!
「……少しぐらいは、武のなんたるかを示さねば」
 無双直伝電心居合流の幻信はうっそりと言った。
「みんなもう傷はいいのか? ていうか、どうやってここに!?」
「応さ。それよ、お前も知らぬであろうな。恐ろしい達人がいたのだ」
「なんだって……?」
 ――その時、テイクは空気が張り詰めるのを感じた。

 はたして通路の曲がり角からふらりと現れたのは、優男である。
「あんたは一体!?」
 テイクの驚きに、どこか好々爺めいた笑みを浮かべる優男。
 飄々としていながら、しかし纏う威圧感たるやただならぬもの!
「呵々、ひとりで戦っておったのか。なかなか見上げた坊主だの」
 優男――龍之・彌冶久は、テイクの傷をひと目で見て取り目を細める。
 いかにも常人に違いなき達人たちを無事に送り届けたのは、他ならぬこの男。
 テイクにとっては初対面だが、それでも彼は本能的に理解した。
(この男……とんでもねえ使い手だ……!!)
 そういう鋭敏な感覚があらばこそ、彼は今日までやってこれたのだ。
 然り、彌冶久とは人としての名。ゆえに彼は問われればこう応える。
「あんた、名前は……」
「俺の名前?」
 きょとんとしたあと、翁は破顔した。
「名乗るほどのものじゃない。ただの、"龍の脈"だ」
 呵々大笑。しかして敵を睨む視線――まさに、龍のごとく。

 そしてこの状況をよく思わないのは、誰であろう魘魅師その人である。
『……あなたはたしかに、消えたのを見たはずですがね?』
「おう! あの忍どもか、いやあ大したものであったぞ」
 彌冶久は生死不明であった己のさまを一笑に付して力量を称える。
 傷一つなし。彼は紫陽衆の猛攻を乗り切り、あまつさえ達人たちをここまで連れてきたのだ。
「坊主。俺はお前のことは初めて会うが、これだけの連中に信を置かれるのだ。
 であれば、俺のような年寄りが力を振るうにゃ、十分であろうよ」
 テイクが用いたユーベルコード、その名を"英雄再起(ヒーローズ・カムバック)"。
 ヒーローに憧れ折れることなき少年の信念は、ここに龍脈を編みし神をもたらした。
 たとえ彼自身に力がなくとも。その運命の糸を紡いだのだ!

 ……そして魘魅師の影が揺らぎ、影絵の如き立ちはだかった。
「あ! なんだありゃ、まんまえっと……龍のおっさんじゃねえか!?」
「おっさんか。呵々、まあそれでよい。しかして――ふむ」
 彌冶久が顎を擦る。いかにも影絵は彌冶久自身を模したもの。
「好し!」
 翁は破顔した。
「好いぞ。俺の剣技、一度真っ向から撃ち合ってみたかった!」
「おいおい、本気かよ!?」
 テイクは驚いたが、しかし達人たちがその肩に手を置きうなずく。
 ゆらりと。影と龍とがともに同じ構えを取り、腰元へ手をやる。
 影の腰元には剣が。しかして翁は無刀――否。否である。
「なんだ? 光が……」
「ハ。いかにも、これぞ俺の剣よ。"陽脈"、そして"天脈"――」
 撚り集まるのは糸のごとき光条。テイクはそこに太陽の輝きを見た。
 ひと、ふた、み、よ――集まるは"十束"。輝くさまは中天の太陽より煌々と。
『……なんと』
 魘魅師をして驚愕した。それは光そのものの刀である。
「坊主」
「お、おう!?」
 あっけにとられていたテイクは、しかし翁のいたずらな笑みに驚いた。
「俺は行くぞ。本気で斬りに行く。お前はどうする?」
「――……へ! 決まってらぁ!」
 人ならざる超常の技をまえにして、しかして少年は莞爾と笑った。
 仲間がいる。倒すべき悪がいる。ならばヒーローはどうする?
「一緒に行くさ! みんなだってそうだろ!」
 達人たちはみな頷いた。呪符の壁が、生まれたる影絵の数々が立ちはだかる。だが!
『貴様ら――』
「なに、少しの間だ、許せ」
 超越者たる男の目が、邪悪をギラリと見据えた。
 その隣には人の子。なんの逸話も生まれも、選ばれた証も持たぬ、
 しかし生命の慮外たる少年。神たる翁はそれを好ましく思う。人らしきその輝きを。
「束ねて十、ともに並ぶははたしていかほどか――俺の、否」
 影どもも構える。だがその頼りなさときたら。まさに消えかけの蝋燭のよう。
「数多の脈より束ねし"那由多"の一閃。肩を並べりゃ無辺のごとく」
「果ての果てまで、ぶっ飛ばしてやらぁ!」
 ――いざ、尋常に。かくて生命(ひかり)と過去(かげ)とが打ち合い――!

 ……歳も種族も、流派も何もかも異なる者どもである。
 しかして放った一撃、これすべてまったく同時にしてただひとつの意のもと。
 悪を討つ。影絵、呪い、何するものぞ。魘魅師は断末魔を叫ぶ!
『これは――これが! まさか』
「然りよ。――これが、未来の輝きだ」
 神は笑った。少年は叫んだ。そして、邪悪はここに滅び去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルジャンテ・レラ
【①希望】

敵ながらお見事です。
先程の戦いにそのような意図があったとは、
全く気付けませんでした。
出し抜かれていたのですね。

念のため千里眼で射抜けぬか試してみましたが
やはり、通用しませんね。
普段の戦法を封じられただけでこうも苦戦するとは……。
しかし打つ手はあるはずです。
私はただの出来そこないの機械人形ではありません。
……猟兵なんです!

何故でしょう。
上手く言えそうにありませんが、
弓矢が呼応しているような、そんな感覚が……。
偶には理屈抜きで動いてみましょうか。

武器に力を籠めてからの事は、はっきりとは思い出せません。
何故、火薬の用意もないのに火矢を放てたのか。
あれが埒外の力というものなんでしょうか……。



●射抜くは銀の焔
 十秒。しかと敵を捉え、必殺の矢を放つ。
 ……矢が、逸れた。否だ。アルジャンテ・レラは冷静に事実を受け入れる。
(動いた瞬間が見えぬほどかすかに、避けられた)
 見切られている。呼吸の間隔、力の入れ方、狙い、何もかも。
『ご理解、いただけましたかな?』
 人を食ったような笑みを、しかしアルジャンテは無表情で受け入れた。
「敵ながらお見事です。これまでの戦いにそのような意図があったとは」
 可能性として予測したわけではない。だが仮に当てたとしてどれほどの意味があろう?
 あれほどの敵を前に、出し惜しみなどして押し通れる猟兵は数少ない。
 アルジャンテはどうか? 無論、後者である。だから全力を出した。
 その結果が今だというならば、彼を愚かと誹ることは出来ないだろう。

 しかし沈思黙考はそこまで。称賛に返されたのは感謝ではなく、
 アルジャンテをして苦戦を強いられるほどの呪いの雨あられであった。
 紫陽衆が数を頼みに模倣したものとは、質も何もかもが異なる。
「く……っ」
 無意識に歯噛みする。だがアルジャンテの感情回路は氷めいて冷えている。
 それが彼だ。ひび割れた心を持つ出来損ないの機械人形。ただの射手。
 ではどうなる。ここで力及ばず影に倒されて無様に地を這うか。
(――厭だ)
 彼は思った。それは自然と、無意識のうちに湧き出た言葉だった。
(厭だ)
 負けることは悔しくない。いや、悔悟などという感情はわからない。
 ……わからない、はずだ。だがこの湧き上がるものは、なんだ?
『我楽多は、我楽多らしい姿に』
「いいえ」
 嘲笑う声を、アルジャンテは自分でも驚くほど大きな声で一蹴した。
「私は、ただの出来損ないの機械人形などではありません」
『ほう? ではなんだと?』
 ――問いかけは哲学的に思えた。彼は合理的な答えを探そうとした。
 けれども即座に浮かんだ言葉を、彼は石を投げつけるかのように吐き出す。
「私は」
 驚くほどに力が溢れる。これは。
「……私だって、猟兵なんです!!」

 人生に、岐路というものは突然にやってくる。
 前触れもなく、突拍子もなくふと、風のように。
 アルジャンテはそれを皮膚感覚で理解した。言語化しえぬ感覚だった。
(弓矢が――呼応、している?)
 オカルティックな話だ。そんな機能はこの弓には、ない。はずだ。
 だがそうとしか言えない。それは理屈抜きの、正体不明の可能性だった。
 何かが、そう、己の知らぬ己が言っている。叫んでいる。それを掴めと。
「……たまには、理屈抜きで動いてみましょうか」
 脳裏に、それを自然に行う猟兵たちの姿がよぎった。
 アルジャンテも、その姿を追うようにして駆け出した。

 直後、彼の板場所に無数の呪符が突き刺さっていた。
『何!?』
 魘魅師にとってもそれは予想外である。アルジャンテは動かないはずだった。
 だが彼はいまや、突き動かされるように体を動かし、遮二無二食い下がる。
 弓弦を引く。奥歯を噛み締め、激情をそこへ流し込むようなイメージを描く!
 そして矢が応えた。鏃に、ぽつりと銀色の輝きが生まれた。
 それは焔である。アルジャンテに、焔を生み出す機能はない。
 だがその焔は、輝きは、まるで彼の名の通りに。その髪の色のように。
『なんだ、それは』
「――準備、完了です」
 なぜかわかった。これが、全てを穿ちうる力だと。
 それを妨げようと毒が吹き出し呪符が立ちはだかった。アルジャンテは手を離した。
 そして矢が燃え上がり――全てを貫き、焼き払った。

「……はっ、はあっ、はぁ……っ」
 アルジャンテは、長く海を彷徨っていたかのような息苦しさから開放され、えづいた。
 人形にそんな機能はない。だが全身を疲労感が包み込んでいた。
 そして、心地よい高揚があった。もはや目の前に影はない。
「これは」
 あったのは、すべてを灼いて焦がした銀の焔の残滓。
 それは、壁も天井も何もかもを焦がし、影を滅ぼしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神威・くるる
街では応援のみ
ニンジャとは猫と戯れて
はてさて、道化のオブリビオンはんはうちをどう見てはるんやろなぁ

にやりと嗤えば瞳は紅く
髪が伸び、大人の容貌である真の姿へ変貌して

影やろうが本体やろが関係あれへん
渇きを潤おさせてもらうさかい、さぁ、その首を差し出しておくれやす

今までののらりくらりとした戦い方とはうってかわって
伸びた爪から斬撃を繰り出す力技の戦い方
【フェイント】【挑発】【だまし討ち】
【第六感】まで使って、削って、躱して、抱きしめて
【傷口を抉】ってこぼれた生命力を吸収して

たまにはこんな愉しみ方も刺激的やろ?ふふ



●妖しの猫は影に鳴く
 こちらの手際は見透かしたと。すべて見抜いていると。
「あややぁ。そらえらい怖いわぁ」
 言葉とは裏腹に、神威・くるるの口元は緩く微笑んでいる。
「街では応援しかしてへんし、ニンジャとはただ戯れて――。
 はてさて、魘魅師はんはうちを"どう見て"くれはるんやろなぁ?」
『…………』
 ざわざわと。瞳の赤が強まるにつれ、髪がざわめいた。
 まるでそれは早送りのように伸びていき、少女ならぬ艶やかな乙女の姿へ。

 赤い舌が唇をなぞる。ちろり、と垣間見えるは吸血鬼めいた笑み。
 否、"めいた"ではない。くるるはダンピールであり、そして今は。
『あなたは――いや、お前は』
「ふふ」
 ゆらりと。足取りは頼りなく、夕闇時の影法師めいて。
「影でも本体でも、うちはどっちでもええんよ。関係あれへん」
 じとりと、潤んだ赤い瞳はただ、敵だけを見据えている。魘魅師を。
「渇きを――潤させてもらうさかい。さあ、その首、差し出しておくれやす?』
 たしかに少女は笑んでいた。その笑みが、魘魅師から嗤いを奪っていた。

 それからの戦いは、くるるの普段の様子を知る者からすれば異様である。
 爪を伸ばし、速く、そしてしなやかな斬撃を目がくらむほどに繰り出して。
 フェイント、挑発、時には騙し討ちすらも用いた容赦なき無慈悲な戦いぶり。
 はたしてどれが本命なのか。読みきれぬ、ゆえに影も拐かされるばかり。
 切っ先が服を抉り肌を切り裂き肉を削げば、その血は爪から肌へ。
 そのたびに双眸の赤は強まる。明らかに妖しのモノの戦いであった。
『お前は!』
「ふふ」
 驚愕を通り越し恐慌すらする魘魅師を、乙女は優しく抱きとめる。
 血がしたたる。舐め取ったそれは彼女の少なからぬ傷を癒やしていく。
『お前は――猟兵、なのか?』
「さあ? そうやと思うけど?」
 いまや、くるるはただのダンピールではない。
 血の如き赤き瞳。それは真なる吸血鬼に覚醒めいた証。
「たまにはこんな愉しみ方も、刺激的やろ?」
『やめ』
 言葉は悲鳴に変わった。牙が魘魅師の喉に食らいついていた。
 やがて断末魔すらも途絶える。吸血とは、そういうものであるがゆえに。

 ここにあるのは猫でも、人をかどわかすあどけない少女でもない。
 ただ一匹の、凄絶なる鬼であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒・烏鵠
最後まで【いろは】で行くかァ。@SPD ①
いやー確かに楽しみだな!色々試せそうだし……マ、さっきのも大分楽しかったが!
お礼にイイモン見せてやるよ。本邦初公開ってヤツだ。

オブリビオン暫定一名様と兄弟をオレの“ふるさと”にご招待!
コレ絶対当たるンだが無差別でさ、味方も巻き込むンだよネ!他猟兵サン方とバラけさしてくれて助かったワ!
あっちゃんはスマン!

解除はすッけど、しばらくは効果続くンで諦めてカルラ流槍術で戦って?オレも手伝うからサ!

厭魅師サンよゥ、例えユベコ使えなくとも条件一緒なら勝てると思ったァ?
狐に化かし合いで勝てるかよ!
アラーイイお顔ですコト。胡散臭い笑顔よりお似合いでしてよ!


アルバート・クィリスハール
まあ、ここまで【いろは】で来たしね。
僕も【SPD】で。

うーん、一番高ダメージで見栄えが良いやつは、さっきノリで使っちゃったからなあ。
とりあえず見てても対策が難しいこれで行こうか。
荒さんの分まで僕が呪符を防ごう。
無機物には即死も関係ない、透明のライオットシールド作って高速移動しながら防ぐよ。
あれすごく頑丈なんだよね。起爆札でもないない限り余裕だよ。

荒さんのコードが起動……ってオイ俺までコード使えねーぞ?!
さっさと解除――(規制音)!!

もうころす絶対ころすあの狐、でも今はオブリをころす。
槍と弓とで空中戦します!!ケガとか知るか!!

イル遅い! 無事だね良かった!
後で全部説明するよ、狐殴りがてらね!


イリーツァ・ウーツェ
【いろは】POW ①&③
場の全員がUC封印後、烏鵠がUCを解除した後に参戦

すまない、遅くなった。
それが敵だな? 了解した。
杖で戦う。いつも通り、これまで通りに。
だが、手の内は見られている。
すぐに杖を手放さざるを得ない状況になるだろう。

……得意げな所を申し訳ないが、
私の杖術は、まだ力の加減が下手なときに教わった物。
つまり、言いにくいのだが……
私は『武器を使わない方が強い』。(UC発動)

何故UCが使えるか、だと?
貴様は何を言っているんだ。
(場に居なかったので知らない)
そして何故、烏鵠はあんなにあくどく笑っているのだ。



●最後に笑うモノ
 手の内を見透かされ、挙句に敵は無数の"影"に分かれている。
 これまでの戦いでの消耗や傷をそのまま持ち越した、何もかも不利な戦い。
『……だのに、その表情ですか。解せませんね』
 己も嗤いながら、魘魅師は対峙する天敵どもの不敵な笑みを訝しんだ。
 無理もない。奴はこの三人――今はふたりだが――が、何者なのかを知らぬ。
 他の猟兵どもと同じ、ただユーベルコードが使えるだけの存在としか思っていない。
「見てたんなら知ってんじゃねェの? "チーム・いろは"だよ」
 わけても魘魅師の心をざわつかせるのは、そう、この男だ。
 荒・烏鵠。人を喰ったような笑みを隠しもしない伊達男。
 何か恐るべき威圧感があるわけでも、特別な力を感じるわけでもない。
 しかし、飄々としたその不敵さが、いやに魘魅師を警戒させていた。

「まぁ、ここまでそれで来たしね。いまさらどうこう言わないよ」
 傍らに立つアルバート・クィリスハールも妙な気配がある。
 具体的に何がどう、と問われると、言語化は難しい。
 その余裕や傷をろくに負っていない様相はもちろん手強そうではある。
 だが何か……もっと根本的な部分から、妙な違和感が拭えないのだ。
『…………』
 魘魅師は笑顔の仮面を被りながら、これらふたりの立ち振る舞いを吟味する。
 これまで得た情報。繰り出されるであろう技と術とを沈思黙考する。
 三人目はここには居ない。竜人の男が紫陽衆に飲まれたのは確認済みだ。
 揺らがぬ自信はなにゆえか。測れ。探れ、はらわたを見通してしまえ。
 魘魅師はそれを得手とする。ゆえに人をたぶらかしこの地を乱してきたのだ。

 珍しく(と言っても彼らはほかの影の戦いぶりを知らないのだが)機を伺う魘魅師に対し、烏鵠はかんらかんらと愉快げに笑った。
「なんだよ出し惜しみすンの? せっかく楽しみにしてきたのになァ!」
 仕掛けてこないのが残念そうに、大仰に頭を振ってみせる。
「荒さん、さっきのじゃ満足できなかったの?」
「ン? いやァさっきのもだいぶ楽しかったぜ! けどほら、アレだ。
 こっちの手の内知ってるってンならさァ、"色々試せそう"だからサ!」
 ――気に入らない。
 魘魅師が抱いた感情は、端的に言えばその一語に尽きる。
 此奴らの態度、それを裏打ちするのが何かはまだわからぬが、気に食わぬ。

 苛立ちをにこりとした笑みの裏に隠し、魘魅師は指をふわりと動かした。
『では待たせてもいけませんねぇ、こちらから参りましょう』
 ぞわり。一瞬にして展開される呪符、およそ数百以上。
 烏鵠はやはり、笑みを崩さない。アルバートは思案の様子。
「あっちゃん、なんかイイのある?」
「うーん、破壊力が高くて見栄えがいいのは、さっきノリで使っちゃったからなあ」
『――お覚悟を』
 ついと指を向けた。符の群れが、否、壁がそれに従い殺到する!

 烏鵠は動かない。退きもしなければ対処する様子もない。
 反対に、弾かれたように動いたのはアルバートである。まさに迅雷疾風。
 その掌に一瞬にして生まれたのは、おお、見よ! 近代的軽量盾!
『ほう』
 なるほど、無機物ならば呪詛も何も関係ないという魂胆か。
 たしかにその通り。この符は直接触れねば即死の呪いを与えられぬ。
 先の動き――そして今第一波を凌ぐ素早さから見ても対応は十分できる。
『いいでしょう、ならばもう少々参りましょうか!』
 されど符は無限である。一度に数百のそれらを瞬きひとつで生み出す。
「っと、荒さんの分までやるつもりだったけど、これは」
 徹底的に防戦に徹していたアルバートも、この勢いにはわずかに感嘆した。

『呪詛だけど思うてくださりませぬよう――!』
 ガギンッ!! 突如としてアルバートを強烈な衝撃が襲う。
 誰だ? ――魘魅師本人である。奴が凄まじい速度で間合いを詰めたのだ!
「ってそんなのあり? 呪術師のくせに!」
 徒手空拳も達人級ということか。免状をばらまくだけはある。
 アルバートは不満を漏らすが、特に焦った様子はない。魘魅師は……笑う。
『盾を掲げるならばそれを砕いて差し上げましょうとも!』
「ちょっと荒さん! いつまで僕にやらせるつもり!」
 烏鵠は言われてようやく目線をそちらへ。盾越しに魘魅師をも見透かす。
 ――魘魅師は、挙措から相手のはらわたをすら見透かし玩弄する。
 されどこの時奴は初めて知った。"見透かされる側の感覚"を。
「お礼にイイモン見せてやるよ。本邦初公開、ってヤツだ」
 魘魅師は直感した。"誰よりもこの男を殺さねばならない"と。
 即座に猛毒の術を練り上げ、鏃めいて烏鵠へ放とうと――。

 した、はずだった。
 砕けかけた盾を蹴り、牽制の呪符を放ち、そこへ猛毒の術を仕込む。
 狙いすました連撃、アルバートですら反応しきれぬと奴は見ていたのだ。
 ……だがくるりと着地した時、魘魅師は強烈な違和感に眉根を顰めた。
『これは』
 周囲を見る。城ではない、そこは忌々しいほどに清廉な森の中だった。
 木漏れ日は眩いほどに明るく、肺を抜ける大気は青々とした緑の匂い。
『これは、なんだ』
「え、なんだこれ?」
 意外にも、困惑と驚愕の声を漏らしたのはアルバートもである。
 彼がかろうじて維持していたライオットシールドがぼろぼろと崩れたのだ。
 砕けたのではない、まるで存在を許されないかのように崩れたのである。
 再構成しようとする。"出来ない"。……封じられている!?

 どこからか木々のざわめきが聞こえる。心地よい風が吹き抜けた。
『これは、なんだ!?』
 色を失う魘魅師に、底の知れぬ妖狐はニンマリ笑って大手を広げる。
「オブリビオン暫定一名様と兄弟を、オレの"ふるさと"にご招待! てトコだ」
 そう、ここはもはや呪殺城ではない。サムライエンパイアですらない。
 周囲に満ちる古代の自然は、誰であろう狐本人の記憶で塗り替えられたもの。
 "真呪・天空狐(あまつぎつね)ノ原風景"。その真価は、すなわち。
「ってオイ、これ俺までユーベルコード使えねーぞ!?」
 あらゆる超常の否定、そして封印にある。

 アルバートの非難の視線に、烏鵠はてへぺろ☆みたいなふざけた顔をした。
「コレ絶対当たるンだが無差別でさ、味方も巻き込むンだよネ!」
「はぁ!?」
「他の猟兵サンがたとバラけさしてくれて助かったワ! あっちゃんはスマン!」
 めちゃくちゃ軽いノリであった。あまりにも元も子もない。
 だがこの男、軽く言ってはいるがその実すさまじい術なのである。
 なにせこの領域――およそ1.5キロをゆうに射程に捉えているゆえに。
 次元がねじ曲がったこの城の、影との戦いだからこそ打てた一手。
『……私が』
「ソ。魘魅師サン――アンタが、お膳立てしてくれたンだわ」
 魘魅師はもはや笑っていなかった。狐だけがただ嗤っていた。
 からかうような双眸の奥、見透かしきれぬはらわたが蠢いていた。

「んなこといいからさっさと解除しろよ!!」
「ン? あー、するする。解除はすッけどさァ」
 ぱちん。まるで先の風景は幻のように消えて失せる。もとの城内へ。
 魘魅師はすぐさま符を繰り出そうとした……当然のごとく、現れない。
『…………』
「しばらくは効果続くンで、諦めてカルラ槍術で戦って?」
「…………」
「オレも手伝うからサ!」
「この……この(規制音)!! (検閲)!! (自主規制)!!!!」
 アルバートの、聞くに堪えない罵詈雑言が木霊した。魘魅師は無言。

 そして彼のそんな囀りを聞きつけ、ふらりと現れる巨躯ひとつ。
「すまない、遅くなった」
「イル遅い! 無事だね、よかった!」
『――……』
 イリーツァ・ウーツェ。その身には傷一つなく。
 鋭い瞳が無感情に魘魅師を一瞥し、仲間たちへ向けられる。
 怒りはない。警戒もない。ただ"確認した"だけというふうに。
「それが敵だな?」
「オウ」
「了解した」
 魔杖を現す。いつも通り、これまで通り、なんの変化もなく。
 ……魘魅師は、やはり無言である。無言で、殺意を放射した!

 かくして怒り猛ったアルバートとイリーツァを相手に、魘魅師は猛攻した。
 いや、食い下がったというべきだろう。頭上からはアルバートの攻勢。
 対峙するイリーツァのことごとくを見抜いてはいる、ゆえに対等ではある。
 だがもはや魘魅師に余裕はない。ただ無言のまま、獰猛な殺意を放つ。
 繰り出される杖撃を受け流し、只人ならぬ掌法でふたりを害する。
 黙考する。不確定な要素こそあったが、敵も超常を封じられているのだ。
 ならば、やれる。ふたりの攻防を魘魅師はたしかに見切っている。
 一合ごとにその手応えと確信を得て、再び奴の顔に笑みが戻った。
『ふ、ふふふ! やはり、あなたがたの手際は存分に――』
 そうだ。玩弄し、嘲弄し、辛酸を嘗めさせ絶望させよう。
 それこそが己の在り方。さあ、敵わぬ敵に心折れるがいい!

「……得意げなところを申し訳ないのだが」
 ずしん。魔杖で床を叩いたイリーツァは、全く申し訳無さそうな顔で、
 あろうことか……自慢のその得物を、躊躇なく手放した。
『……は?』
「私の杖術は、まだ力の加減が下手なときに教わったもの。つまり」
 これっぽっちも言いにくくなさそうな顔で、淡々と龍は云う。
「私は、"武器を使わないほうが強い"」
『――――』
 枷なのだ。
 魔杖は必要以上の破壊をもたらさぬための、イリーツァの重荷。
 手加減をあえて捨ててこそ、その身はより本来の力へと近づいていく。
『な――何故、だ』
 なぜ、超常を使える。……あまりにも、魘魅師らしからぬ問いである。
 当然だ。なぜならイリーツァはあの真呪に巻き込まれてはいない。だから使える。
 なんの衒いもない当たり前のこと。イリーツァははてなと首を傾げるばかり。

「――ク」
 魘魅師は、もはや愕然と、その喉を鳴らすような笑い声の主を見た。
 人を喰ったような、それこそ満面の、どうしようもない笑みがそこにある。
「魘魅師サンよゥ、たとえ術が使えなくとも条件一緒なら勝てると思ったァ?」
 ここまで含めてすべて。これまでの流れの全てが、なにもかも。
『貴様』
 何もかも掌の上。この驚きも、怒りも、困惑も、殺意も、何もかも!!
「狐に、化かし合いで、勝てるかよ」
 ……その笑みに、嘲笑に、魘魅師は心の底から怒り狂った。
 己の自尊、驕慢、愉悦、何もかもを、何もかもを何もかもを弄ばれた!!
「アラー、イイお顔ですコト」
「……なぜ、烏鵠はあんなにあくどく笑っているのだ」
「あとで全部説明するよ、狐殴りがてらね! もうあいつころす絶対ころす」
 外野のイリーツァとアルバートの、凸凹なやりとりもどこへやら。
 魘魅師はその笑みだけを見ている。己の何もかも、はらわたを見通す笑みを。
「胡散臭い笑顔より、お似合いでしてよォ?」
『キ、サ、マァアアアアア!!』

 奴が怒りに任せて襲いかかったことを、迂闊とは謗れまい。
 当然のように間隙が生まれ、イリーツァとアルバートに討たれたことも。
 仕方がないのだ。奴は気づくべきだった。だがそれも無理からぬもの。
「ケッケッケ!」
 烏鵠(きつね)は、けっして"尻尾"を見せないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アストリーゼ・レギンレイヴ
【①希望】

最後までふざけたことをするものね
良いわ、全て見つけ出して捻り潰せばいいのでしょう

――これを、お前に見せては居ないわね

《血統覚醒》に依り自らを強化

伴としてきた暗黒を纏わぬ姿
あたしという存在の根源
忌むべき、けれど棄て去るも叶わぬ
この身に流れる血の証
護る者でもない、志もない、ただの破壊の化身
目の前に在る者を、惨たらしく殺す為だけの力

「楽しみだ」と云ったかしら
ならば、遠慮は要らないわね
存分に味わって逝きなさい
防御など許さないわ、その上から叩き伏せる

あの男と同じ髪、同じ瞳、――同じ力
嗚呼、あの子が此処に居なくてよかった

*吸血鬼化した姿は眩い金の髪、血色の瞳
*片目の黄金のみがそのままに



●呪われた血、捨てられぬもの
 城の中を歩くその姿は、まるで形を得た闇のようであった。
 事実、アストリーゼ・レギンレイヴは闇を伴として戦う騎士である。
 ゆえに、影を使役する魘魅師と相対した時、それは昏い鏡像のようであった。
『……これはこれは。猟兵とは、てっきりもっと清廉なものかと思っていましたが』
「視ていたのでしょう。それらしいことを言わないで頂戴」
 アストリーゼは、己をからかうような嘲笑を無表情で切って捨てた。
 敵が影であろうがなんだろうが、手の内を明かされていようが関係ない。
 ただすべて見つけ出して捻り潰すのみ。なんなら己の手でやってもいい。
 出来るかどうかではない、"やる"のだ。彼女はそういう騎士であった。

『――それほどまでに、妹君のことがご心配なのですか?』
 魘魅師の囀りに、踏み込もうとしたアストリーゼがぴたりと動きを止めた。
 "視ていた"。すべて、なるほど手の内はおろかそのこころの在り様すら。
 孤軍奮闘するさま。その理由、いかにしてかそれを知り得たか。
「……信念(それ)は」
 闇が色濃さを増した。剣圧が周囲を覆い、みちみちと壁を軋ませる。
「お前が、触れてはいけないものよ」
 アストリーゼの静かなる激昂に、しかし魘魅師は微笑むのみ。
 愉しんでいるのだ、奴は。その怒りをすら。オブリビオンとはそういうもの。

 いいだろう。ならば存分に"愉しませて"やろうではないか。
 アストリーゼは覚悟した。ここに彼女はいない、見せるべきでない妹はいない。
 ならば。
「お前は、あたしたちの戦いを視てきたのでしょう。けれど」
 ――闇に包まれた左目が、血の如き赤に染まった。
「血統覚醒(これ)を、お前に見せてはいないわね」
 暗黒が薄れていく。それはアストリーゼ・レギンレイヴというモノの根源。
 すなわち、血。忌まわしかれど、棄て去るも叶わぬ生まれの証左。
 ダンピール。ヒトと鬼との間に生まれたものが、ヒトでなくなる御業。
「あたしは護るために剣を振るう。防ぐために前へ出る」
 けれどもこれを解き放ったならば、もはや。それは失われる。
 己が寄って立つための暗黒(とも)は消え、ただ暴威と殺意がある。
「護る者でもない、志もない、ただの――破壊の化身」
 剣圧が児戯に思えるほどの威圧感が魘魅師を襲った。
 奴は即座に打って出た。だが何もかもが遅すぎた。

 遅すぎた。のだ。
『がはっ!?』
 影絵を模倣し、威力をそのままに返そうとした。
 その瞬間にはアストリーゼはそこにおり、ただ拳を振るっていた。
 まるで破城槌。否、地滑り、雪崩、あるいは隕石のようなものか。
 天変地異――天災じみた破壊力。防御にクロスした両腕から嫌な音が響く。
「楽しみだ、と云ったかしら」
『あ、が』
「――ならば、遠慮は要らないわね」
 存分に、味わって逝きなさい。端正な唇はそう呟いた。
 血色の瞳、されど右目の黄金は変じることなく。それはヒトの証左めいて。
 なびく髪もまた稲穂のような黄金に変じ、満ち満ちる力たるや。
 防ごうとした。躱そうとした。鬼は何も許さずにただ力を振るった。
 振るって、振るって、叩きつけて――それは、戦いとも呼べなかった。

 何故それほどの力を秘めておきながら、奴はそう言った気がする。
 オブリビオンだった沁みを、血溜まりを見下ろし、アストリーゼは嘆息する。
 赤に映るのも赤。黄金の髪。"あの男"と同じ色。同じ力。
「嗚呼」
 胸を騒がす忌まわしい匂いのなか、鬼は呟いた。
「あの子が此処にいなくて、よかった」

大成功 🔵​🔵​🔵​

神酒坂・恭二郎
「どーも、"魘魅師"さん」
スーツ姿で刀の鍔を片手に挨拶。
青い光に包まれ、ネビュラ着流し姿に早着替え。

「“スペース剣豪”の神酒坂だ。一手ご指南願おうか」

遠間での差し合い重点の拳豪の業と違い、
恭二郎の剣は迷い無く相手の懐に飛び込む。
踏み込みは、鍔で相手の眉間をかち割る心構えが師の教えだ。

手順は明快。
呪殺の符の隙間を掻い潜り。
毒気が展開されるよりなお速く。
防御を許さぬ一太刀だ。

なまじ、先にこちらの手の内を見た事が相手の驕りとなる。
相手の知らぬ手札を出し、その一瞬の虚を狙う。

【覚悟、残像、先制攻撃、クイックドロウ、早業、捨て身の一撃】

「惜しいねぇ。それ程の業を驕りで腐らせたか」

【連携・アドリブ歓迎】



●その男の得物は剣
 星のような青い光がその体を包めば、一瞬にして姿は変わっていた。
 ネビュラ着流し。彼の、神酒坂・恭二郎――スペース剣豪の正装だ。
「どーも、"魘魅師"さん」
『なるほど。それがあなたの正しい姿ですか』
 魘魅師に驚きはない。いかに徒手空拳を貫いたとて戦いは戦いだ。
 ごく僅かな仕草からクセは読み取れる。恭二郎もそれはわかっている。
 わかったうえで隠し、わかったうえでいま晒した。剣客とはそういうものだ。
「"スペース剣豪"、神酒坂・恭二郎だ。一手、ご指南願おうか」
 じわりと、剣の圧が周囲を覆い、みちみちと壁や天井を軋ませた。

 そこでふと、魘魅師は呪符を展開しつつ云った。
『ひとつお聞かせいただきたい』
「なんだね?」
『あなたは初めから"拳"豪と名乗っていましたが、それはこれを予期してのことですか』
 すなわち、己の監視に気づいていたのかと。
 無粋な問いもあったものだ。だが恭二郎は涼し気な笑みのまま答えた。
「剣豪たるもの、剣筋は隠しておくのが常なもんでね。まあ、言うなれば癖さ」
『なるほど――』
 隠し剣、というものがある。すなわち魔剣、外道の剣技である。
 真剣勝負においては、一瞬の判断が致命的な間隙となる。
 ことに一対一の立ち合いとなれば、情報はすなわち逆鱗だ。
 秘剣を隠し、先の先あるいは後の先を得て敵の命脈を断つ。
 これこそが剣客の戦いであり、恭二郎はそれに倣っただけという。

 しかし実のところ、なにもそれだけではない。
 一歩、また一歩と悠然と間合いに近づきながら、恭二郎は云った。
「俺は何も、剣以外のものを下と見ているわけじゃあない」
『……?』
 きっとこの地には、平和であった頃もっと多くの達人がいたのだろう。
 免状さえなければ、あんなふうに墜ちることがなかった者もいたはずだ。
 だがそれは絶えた。この混乱を収めたとて、取り戻せないものがある。
「お前さんは、武を……強さという"未来"を、奪い取ったんだ」
 口元には伊達者の笑み。されどその声音にはたしかに、満ちるものがある。
 己は武侠ではない。武を頼みに江湖に覇を唱えるほどの器はない。
 ただ、届かぬ剣の道を、おっかなびっくりそぞろ歩くだけのもの。
 剣聖と呼ばれるにゃ俗すぎて、悪に墜ちるには頑固すぎる。
 彼はそういう男だ。だからまっすぐに突き進む。

 魘魅師は嘲笑う。俠気を、武道に己を捧げた者どもの信念を。
 なぜならば敵とは玩弄し貶めるものであり、力とはそのためにある。
 型や信念だなどとは糞食らえ、魘魅師が嘲笑うためのものである。
 驕っていた――否、見下していた、というべきであろう。
『いいでしょう、ならばあなたも多くの者同様、その武に果て』
 ――声は、出し抜けに途切れた。
 符を放とうとした。毒気を二段構えで冒そうとした。
 いかな達人とて掻い潜れぬ、鉄壁にして無双の罠を構築していた。
 それをかいくぐるのであれば、さぞ苦労したであろう絶技を影絵で模倣する。
 ――そのはず、だった。だから奴は笑っていた。

 笑ったまま、"ごとり"とその首が落ちた。
「惜しいねぇ」
 鞘走る音すらなく。銀河一文字、ここにすでに奔っていた。
 残心。血を払わずとも、凄絶なる一閃は塵ひとつすら刃に帯びてはいない。
「それほどの業を、術を――驕りで腐らせたか」
 頭を振り、スペース剣豪は敵だったものの脇を通り抜けた。
 ――剣刃一閃。剣豪にとってもっとも基本にして極意たる一撃。
 ただ速く、鋭く。魘魅師は己が伐られたことすら知らぬままに滅んだのだ。
「……我が剣、いまだ極意には遠き……てなもんかね」
 剣とは孤高の道である。武とは広大無辺な海へと漕ぎ出すようなものである。
 その刃は、踏みにじられし多くの達人の、無念に足る一手であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
荒天の空の下。
激戦の最中にギターの音が鳴り響く。

「中々に見事なお手並みだが、紅葉のあれをメタルの全てだと勘違いしてもらっては困るな」

響き渡る焦げ付くようなギター音。
俗に言うメタルの古典の一つジミヘンだ。
紅葉の演奏とは錬度も技巧も一枚も二枚も上である。

「待たせたね」

流水の動きで呪符を避け、鮮やかな背面演奏を披露して猟兵に挨拶。

「古典の授業をしよう」

ギターが炎に包まれ、振り回せば呪符と毒を焼き【属性攻撃、オーラ防御】

「舞台でギターを燃やす演出はジミヘンが最初なのだ」

無拍子で踏み込みで、本家ハイペリア重殺術を叩き込む。

「まぁ、これが尋常の立会いでなら別のやり方もしたのだがね」

【アドリブ、連携歓迎】


神元・眞白
【SPD】
……見られてた。…うん、ここまであんまり何もしてない。はず。
あ、飛威と符雨が動いてくれたから2人が武装代わりって事ぐらい?
なら今回は魅医に頑張ってもらおう。飛威と符雨はサポートに。

この機会にこのお城の探検も兼ねてうろうろ。
どこからでも来そうだし、視野を広げて当たってもらって。
フェイントを混ぜて、けん制射撃から本命の攻撃まで。
倒しても一部分っていう話だし、油断大敵。いっぱいいるかも?

必要なら私も一瞬だけ差し込もう。少しの時間なら魅医もいるし
動きを止めるぐらいに。真の力の使い過ぎはよくない。危ないし。
心の刃、持つ者が……違う、これは別の役の言葉。
やっぱりガイドブックは返してもらわないと。



●あのギターを歯で弾くのはあなた
 廊下をとてとて伝ってふーらふら。天井と床が逆になってもふーらふら。
 壁は床で天井は足元で、襖は上に通路は下に続いている。あべこべの城。
『あまりひとりで彷徨われないほうがよろしいですな』
「――ひとりじゃないよ」
 神元・眞白はまるで探検でもするかのように城の中を彷徨っていた。
 そこへ現れた影、放たれた呪符を二体のからくり人形――戦術器が防ぐ。
 手の内は見られていない。三体目の魅医についてはとっておきである。
 だがそもそも、眞白と影とでは圧倒的なまでに力量差があった。

 ゆえに遭遇から、眞白の探検は逃避行へと変わった。
 敵は城内の構造を完全に知り得、なんなら転移も出来るらしい。
 襖を開ければ突如として呪符が現れ、戸を閉じればそれが猛毒に変わる。
「ここまであんまり何もしてないはず、だけど」
 それをしても敵は変幻自在か。戦術器がなければどうなっていたか。
「どうしよう……これ、割とピンチ?」
 いまさらな自認である。割と、どころではなくかなりピンチだ。

 なにせここは敵の首魁のねぐら、そして相手は無数なのだ!
「まずいかも」
『滅んでしまえば関係はのうございますがなあ!』
 壁から滲み出るようにして影が現れた、符雨が迎撃する。符で弾かれる。
 猛毒がたちこめた気配に、眞白は素早くその場から踵を――否、これは。
『どこへ行こうというのですかな、まだもてなしも済んでいませんよ』
「…………」
 回り込まれていた。そしてここは、どうやら外縁か。
(こうなったら、真の姿になるしかないかな)
 眞白にとってそれは奥の手である。だがもはや退路はないと見えた。
 戦術器たちでどこまでやれる。己はどこまでやれる。思案する。

 ……と。そこに、突如として異様な音が響き渡った。
 何も異界めいたとか名状しがたいとか、そういう"異様"ではない。
 この場に似つかわしからぬギターの音は、すなわち異様であろう。
『……どなたですかな? あなたは』
 眞白も、魘魅師の視線につられてそちらへ。屋根上に屹立する紳士の姿。
 まるで焦げ付くようなギターの音だ。あの女性とは全く違う。
 練度、技巧、どれをとっても二枚は上手……いや、これそういう話だったか?
「あなたは」
「待たせたね」
 誰何しようとした眞白に、紳士はにこりと微笑んだ。
 なぜだか、それはあの女の――才堂・紅葉の縁者だとたしかにわかった。

 ともあれ紳士はひらりと軽やかに降り立つ。無駄に背面演奏などしながら。
『……なんだ、このふざけた男は』
「ふざけてなどいないよ。これはいわば、そう、古典の授業だ」
 オールディーズなサウンドは、奇妙な心地よさとざわめきをもたらす。
 ……これそういう話だっただろうか? 深く考えないほうがいい気がする。
「おじさま、あなたは一体」
「ジミヘンを知るかね」
 ジミ・ヘンドリクス。通称、ロックの神様。
 古典も古典、神格化されるレベルの伝説的ギタリスト――ただし、異世界の。
 サムライエンパイアの、しかもこんな状況でのたまう薀蓄ではない!
『邪魔をしないでいただきたい!』
「それはこちらの台詞だ」
 はたしてギターはごうごうと燃え上がり、来たる符と毒を燃やした。
「舞台でギターを燃やす演出は、ジミヘンが最初なのだ」
「知らなかった。またひとつ、賢くなった」
『何を言っている!?』
 魘魅師は困惑した。当然であろう。
 無駄に無拍子という絶技を披露しながら紳士は間合いに踏み込み、手刀一閃。
 恐るべきハイペリア重殺術は、一撃で敵を粉砕崩壊破滅せしめた。
 なぜならばこれこそ本家本元。彼は"戦場の亡霊"なのだ。
「……あなたは、いったい」
「なに。尋常の立ち合いを拒んだ、あれが悪いということにしておこう」
 再びの誰何をするりと受け流し、紳士は眞白たちに一礼する。
「……わかった」
「ほう。では私は一体何者かな?」
「――ジミ・ヘンドリクス」
 眞白は至極真面目な顔だった。紳士は破顔し、曖昧に頷いた。
 ツッコミ役のいない空間に風が吹きすさび、捨てられたガイドブックが舞っていった。
 ……これ、そういう話だっただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夷洞・みさき

手の内は知られているだろうけど、それは僕一人で車輪を使う時だよね。
さっきの紫陽衆もこの場が依代なら、
ここが消えない限り彼等の残滓も残るんだよね。

つまり、本来あり得ないもう一つの咎人殺しの大車輪がここにある。

だから、ここは僕と兄弟子二人で彼を禊潰そう。
他の五人にはちょっと悪い気もするけれど。

【WIZ】
本来六人を呼び出すUCを一人に絞りより強固に実像化。
かつて学び、一度も使う機会無く喪われたコンビネーションを披露する。
例えそれが一時の夢であろうとも。

力と技の回転は虚実生死全てを巻き込み轢き潰す渦になるだろう。

さぁ、ここに咎人が現れた。
僕等の業と、僕の少しの感謝を込めて君を骸の海に還そう。

ア絡大歓


アロンソ・ピノ
(特殊ルール①希望)
どこまでも覗き見してるとは良い趣味してやがるぜ。
んでまあ、ここに来てから使った技は既にしられていると…。
春夏秋冬流にピッタリだな。ああ、そうだ。
まだまだ型は残ってるし、とっておきも幾つもあるぞ。
ユーベルコードは夏鯨だ……これ一度使うと刀身壊すの大変だから使いたくねえべが…「まだ」見せてない筈だな?
加えて夏の型は力技だ、知られて居ようが関係ねえべ。怪力、範囲攻撃、
なぎ払いでぶん回す。
城の中がおかしな地形になって居ようが、城ごと壊して回れば良い。それに夏鯨はべらぼうに重い…つまり夏鯨に捕まって落下すれば、少なくとも地面は分かる訳だ。
――春夏秋冬流、参る。
(アドリブ等絡み等歓迎)


街風・杏花
アレンジ、絡み歓迎
③でもと思いつつお任せ

――うふ、うふ、うふふ!

ああ、ああ――愉しい。とっても、愉しい。
連戦に次ぐ連戦、思う存分、楽しみ抜いてしまいましたもの。きっと私、とうに限界ですね。

……けれど、ええ、ええ、だからといって、刀を鞘に納める理由がどこにありましょう。
ここに、あのご馳走にきっと劣らぬ親玉が。メインディッシュが、いるのですから。
それも、ええ、ええ――食べても、食べても、尽きぬのでしょう?
なんて、贅沢なのでしょう!

さぁさぁ、もう一度、もう一度だけ名乗ろうじゃありませんか。
鏡花翠月。月の下、瀾狂ひて花と散る。街風・杏花と申します。
愉しませて、下さいましね?



●来る
 サムライエンパイアに、春夏秋冬(ひととせ)流なる流派あり。
 これは剣の道にして剣に非ず、宝剣"瞬化襲刀"は文字通りの変幻自在。
 奇襲に主眼を置く『春の型』。
 強襲に主眼を置く『夏の型』。
 利便に重きを置く『秋の型』。
 防御に重きを置く『冬の型』。
 これら四つの型を、鞘走るたびにその姿を変える宝剣で実現させる。
 多少観察したところで、その秘奥はまさに複雑無限。巡りて来たる四季の如し。

「だからよぉ、知られていようが関係ねえべっ!!」
 ごぉうっ!! すさまじい質量が壁も天井も関係なしに薙ぎ払った!
 それはまさに海の王たる鯨のごとし。これなる業の銘を『夏鯨』と呼ばう。
「どうら、おかしな形してようが、こうして壊しちまえばよぉ!!」
 アロンソ・ピノは、剣に振り回されまいと両足にあらん限りの力を込め、
 遮二無二それを振り回して破壊をもたらす。超重量、かつ超質量。
 身の丈をゆうに超える鋼の塊。これぞまさに瞬にて化け襲う刀である。

 はたしてこれに手を焼いているのは魘魅師――いや、だが奴は笑っている。
『なるほどなるほど! これは実に奇妙奇天烈な』
「は、どうでぇ! 春夏秋冬流、恐れ――何」
 アロンソの勝ち誇った表情は、"落ちてくる"姿を見て去った。
 影絵である。その姿はアロンソと同一、であれば振るう剣もまた!
『私では手をこまねきますので、どうぞ影とお遊びくださいませ』
「なろぉっ!!」

 さりとてアロンソ、これを覚悟した上での大破壊である。
 降り来たるそれを真っ向から迎え撃ち――がいんっ!! 大音声!!
「んが……っ」
 すさまじい反発衝撃を奥歯が砕けるほどに噛み締めてこらえる。
 影はどうか。影に重みはない。であれば反発衝撃をいなす必要もない。
 ただ一度の打ち合いとて、"撃ち合った"という事実が次を招く。
 アロンソは踏ん張っている。影は生まれたばかり。つまり予備動作なし!
「この――!!」
 夏鯨の一撃は重い。彼自身がよく知っている、振り回しているからだ。
 防御は? 間に合うわけがない! アロンソは腹に力を込める――!!

 おお、しかし見よ。影は突如として投げ込まれた大車輪に轢き潰された。
 ぎしりぎしりと軋む禍々しき車輪が、影絵もろとも地形を粉々に砕いてしまう。
「うおっ!? なんだべこりゃあ!」
「――失礼。ひょっとして自分対決をお望みだったかな?」
 ゆらりと現れたのは、痩せた青白い肌の女であった。その身に怪魚の相。
 キマイラ。アロンソはそれを見て取り、彼女が猟兵だと理解した。
『ほう、咎人殺しと云う割に、人を活かすこともあるのですな?』
「皮肉めいているね。悪くない」
 女はうっそりとした笑みで嘲弄を受け流し、戻り来る車輪を受け止める。
 するとどうだ。その車輪がぎしぎしと軋み、"何か"がゆらりと立ち上った。
 靄。否である、それは霊体――ひとつ、ふたつ、みっつよっついつつむっつ。
 これなる咎人"潰し"の大車輪、裡に秘めるは女の六の同胞たち。
 なればその魂魄立ち上り、咎人の四肢をもぎ心臓を引きちぎり咎を禊ぐのだ。

 だが。
「君は面白いものを見せてくれた。まさか兄弟子と再び立ち会えるとは」
 六の霊魂は、しかして呪詛を撒き散らしながらより集まりひとつへと。
 紫陽衆は、これなる同胞のひとつを模倣しみさきと相対した。
 ではここにはその残滓がある。ならばそれを逆用することができる。
 はたして生まれたるは、茫洋たる霊魂に非ず――形を得たひとときの屍人。
「黄泉還り……!?」
「近い、けれど違う。これはひとときの夢のようなものさ」
 兄弟子であったモノと、大車輪を伴にした女はアロンソに云う。
「さぁ、ここに咎人"たち"が現れた。在り得ざるふたりの咎人が。
 僕らの業と、僕の少しの感謝を込めて――君を骸の海に還そう」
 かくて来たる。潮の匂いを纏いて、咎人殺しの夷洞・みさきが来る。
 一に対し、二。アロンソもまた体幹を整え、みさきの傍らに立つ。

「……おっかねえけど、正直助かった」
「こちらこそ。君のこの破壊ぶりはすさまじいものだ」
 アロンソの言葉に、みさきは丁寧な称賛を返して微笑んだ。
 だが不吉な気配は消えない。それはみさきのものではないらしい。
『……なんだ、この威圧感……』
「ああ、そうそう。言い忘れていたね。"来る"のは、もうひとりだ」
「――とんでもねえ、血の匂いだ……!」
 アロンソをして、立ち込めるプレッシャーと血臭に顔をしかめた。
 やがてその主がやってきた。それは花のように笑っていた。

「――うふ、うふ、うふふ!」
 二、否、三対一……それでも荷が勝つと見えた影との戦い。
 まごうことなき強敵である。であれば狂える少女は微笑みやってくる。
「連戦に次ぐ連戦、模倣に次ぐ模倣――ああ、ああ、楽しみ抜いてしまいました。
 思う存分斬って殺して、滅ぼして斬って……楽しい。とっても、とても楽しい」
 満身創痍である。そのすさまじきさまにアロンソは言葉を失った。
 だがなによりも彼を戦慄せしめたのは、何であろう、その朱い双眸。
 炯々と輝くさまはまるで月のよう。ヒトは、あれほどの飢えを見せられるのか。
 彼とて、頸の気配に飢えた剣士を知っている。あれは魔道の者だ。
 であればここにいる少女はどうか。似ている、しかし別種と言っていい。
 強敵を求め、死合を求め、それが感光して染まりきってしまったかのような。
「……けれど、ええ、ええ。だからといって、刀を鞘に納める必要がどこにありましょう」
 なぜならばここに親玉がいる。求めに求めた首魁がいる。
 だから彼女は此処に来た。そして、抜身の刀をぐおんを振るった。
「あれは」
「咎ヒトだよ。――だが、まだ禊ぐには至らない」
 謎めいてみさきは云う。魘魅師をしてすら、少女の凄絶な修羅の気配を訝しんだ。
「鏡花翠月――月の下/瀾(おおなみ)狂ひて/花と散る」
 さめざめとした、虚の如き詠み。うっとりと、少女の形をした殺意が微笑んだ。
「街風・杏花と申します。さあ、さあ――愉しませて、くださいましね?」
 ちらりと視線がアロンソとみさきを見た。そして敵へと向けられた。
 "品定めされた"と、アロンソは皮膚感覚で理解した。だがここは戦場だ。
 ゆえに、後回しにされた。……剣の魔に憑かれたモノの果てである。
(ありゃあ、春夏秋冬どこにもいねえ、どこにも居場所のねえモンだ)
 然り。杏花という格上殺しの女は、ただ強き者を求めてさすらうモノ。
 ならば立ち会うか。否、我らは猟兵。敵は過去の化身。今はその時ではない。
 ――おそらく彼女はそう考えた。アロンソは息を整え、心を定め、構えた。

『――たとえどれほど徒党を組もうが!!』
 爆ぜた。それは呪いの符の奔流である。
「搦め手とは感心しないな。毒を忍ばせるのもよくない」
 これをぎいこ、ぎいことかき分け切り裂く車輪がある。
 船頭めいて、悠々を大車輪をたぐるはみさきと、おぼろなる屍人。
 力と技。相反する車輪術の使い手は、数百を超える呪詛の群れを轢き潰す!
 虚・実・生・死、ならば呪詛も毒もどれほどのものか。
 飲み込んでしんぜよう。轢き潰し、延ばし、滅ぼしてくれようと。
「大飯食らいの鯨の前では、いじましい振る舞いだろうけどもね」
「――とんでもねぇ、けどこいつだって暴れもんだぜぇ!!」
 切り裂かれた呪詛のあわいを、夏のつむじめいてアロンソが走る。
 がぎがぎと床を喰らいながら、超重量の刃を両手で掴み、込めるは全力!
「おぉっりゃああ!! 夏の鯨は! 凶暴だぞぉ!!」
 影絵がたちはだかり――しかし、"喰らわれた"!!
 そうとしか形容の出来ぬ豪刃一閃! 模倣しようが本家本元ここにあり!
 そして夏の型と云うには、ずいぶんと涼し気な剣風が吹き荒れた。
 符の破片も呪詛も毒も影をも吹き飛ばし、敵の守りを切り開く。
 否、貪り喰らうというべきか。アロンソはさらに踏み込み、剣を振り下ろす!

 ――ずしんっ!!

「まあ、まあ、まあ! なんて不思議で愉快な太刀筋ですこと!」
「褒めてくれてんのか? ありがたいけど、よっ!!」
 三撃目。魘魅師は直撃を受けぬように慎重に飛び退った。
 そこで杏花の目が燃えるように輝く。水月めいてその姿がかき消えた!
『ち――!』
「ああ、ああ、ああ!!」
 疾い。一瞬にして後の先を得た踏み込み、繰り出される太刀筋は五!
 魘魅師は四を丁寧にいなした。だが五がばっさりと袈裟を切る!
『がはっ!!』
「まだですわ。まだ、まだまだまだまだ! こんなものではないでしょう!?」
 狂える月下美人を手折ろうと、影がぞわりと立ち上がった。
 繰り出される五の太刀筋。杏花はこれを受けきり六の刺突で影を殺す。
『狂人め――!』
「うふ、ふふふふ!」
 すさまじい勢いの徒手空拳。杏花はこれをあえて受けることで大上段を構える。
 肋骨が折れたか。痛みすらも心地よし。かくて雲耀の太刀――降りる!
『が!!』
「ああ――これだから、狂瀾怒涛(ジャイアントキリング)はやめられない」
 手応えに、狂える乙女はうっとりと呟いた。
 程なくして咎禊の大車輪が二条。逃れようとした魘魅師を轢き潰す。
 断末魔。響き渡る絶叫を、夏の鯨が大口を開けて飲み込んだ。
「――てめえの笑いは、ちいとも愉快じゃありゃしねえぜ」
 春夏秋冬流ここにあり。過去の化身が在るべき季節は四季になし。
 威力は影を切り裂き轢き潰し飲み込みて、ここにそれを滅した。
「……少しだけ、名残惜しいけどね」
 ちらちらと崩れていく同胞の体を見、みさきは呟く。
 それすらも、剣風とくすくすという笑い声に、溶けて漣のように消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馮・志廉
【①希望】
なるほど良く見ている。一通り見せた馮家槍法はおろか、刀法拳法までも読まれている。
馮家の武学はいずれも仏門から派生したものであり、通底する術理は同じもの。勘の良い相手ならば対応できるのも道理か。

まずは最も露出の少なかった拳法で攻め立てる。『偏花七星』『双劈双撞』といった馮家拳法正統の技の中に、本来は刀法である『進歩連環刀』等の技を手刀を使い混ぜる。
更に人差し指を立てて槍頭に見立てた『四夷賓服』で鋭く突く。

かわされた所で、突如技の風格が変わり、その五指が鋭い爪の如く腕を掴む。
馮家の武学にあらず。かつて朋友に学んだ他派の技。後にこの手で討った友に。
十三式の一つ『伏虎手』で投げ倒し、打つ。



●絶招、馳走仕る
 まず五合、四手を交わしてさらに六合。懸念は確信へ。
 ダメ押しの二手を凌がれ、一合で済ますはずが九合を強制された。
「――なるほど、よく見ている」
 がいんっ!! と金切り音を合図に、両雄が飛び離れる。
 かたや馮・志廉。硬骨漢の双眸、鋭きことまさに禽獣の如く。
『お褒めに預かり恐悦至極にございます』
 かたや魘魅の輩、破顔すれど纏う呪詛は濃密の一語。
 河南馮氏の技すなわち武学は、その源流を仏門に持つ。
 つまりそれ自体は尋常の沙汰の裡、学べば得られる定命の術理である。
 これまでに志廉が振るったのは槍法のみなれど、敵は刀・拳の理法にすら対応している。
 志廉が打ち込んだのは、これまでの合でざっと百以上。
 ――ほぼすべてを凌がれた。返す刀の呪詛と毒と影が彼を少なからず蝕んでいる。
(魔道とはこのことか。よい勘をしている)
 内心の感嘆を静かに両足に沈め、揺らぎかけた己を支える礎とした。

 つまりは手詰まりである。敵はこちらの攻撃に完全に対応している。
 そして打ち合えば打ち合うほど、この理解と分析は当然高まっていくのだ。
(いかにして穿つ。李広に曰く、因復更射之、終不能復入石矣――)
 "一念岩をも通す"とも形容される語彙は、古くは漢の歴史書に由来を持つ。
 見草中石、以爲虎而射之、中石沒鏃。
 つまり狩りの途中、草葉の陰に虎を見た将軍は、これを射殺した。
 されどよく見ればそれは石である。しかも鏃は深々と石に刺さっている。
 再びこれを試みようとしても、ついぞ矢は石を貫くことはなかったというわけだ。
 虎と思っていたから石を射抜けた。だが石と見ては矢は通らぬ。
(すなわち決死の一撃か。されどそれで御せる敵か否か)
 注意深く間合いを図りながら、鏢師は沈思黙考する。
 どこにある。駱駝がくぐるべき針の穴は――いや。そこでふと彼は思った。
 石に立つ矢。虎と見たから貫けた。石と思っては貫けぬ。
 今はどうだ。通らぬ戈。通らぬと思うから通らないのではないか。
 ならば我が身を矢と成すべし。そして虎を――然り。虎!
(我、意を得たり)
 点睛を欠く画竜が、玉の如き眼を得たかの如き晴れやかな気分であった。
 すべてが繋がった。好機は得るのではなく、作り出すものだ!
「邪ッ!」
『どれほど挑んでも無駄でございますよ――』
 嘲笑うならば笑えばいい。この男、その二つ名を"千里独行"と呼ばう!
 不可能と言われれば挑んでみせよう。そして悪を討つことこそ――間合いが触れ合った!

 豹変した志廉の気配に、魘魅師が多少の警戒を抱いたのも無理からぬもの。
 それほどまでに鏢師の攻め手は果敢であり、そして勇猛ですらあった。
 切り札あったか? 奇策を得たか? ……打ち合いの最中で懸念は露と消える。
 何のことはない、彼方が打ち来るのは拳法掌法の連打に他ならぬ。
 偏花七星。双劈双撞。河南馮氏の正統拳法たる、実直なまでの套路だ。
 魘魅師はあえてこれに付き合う。すると時折套路に変化が現れた。
 進歩連環刀。はたまた箭歩双捺剣、あるいは二龍刀珠……いずれも刀法である。
 手刀を刃に見立て、幻惑的なまでに注意深く繰り出される搦め手。
 いじましきかな。この程度で我を惑わせられると思うているなら片腹痛し。
 魘魅師の笑みが深まる。対手はきっと焦りを覚えているだろう。
 そろそろ――そら、来た。四夷賓服。槍に見立てるは己の剣指か。
『形意拳はあなたの流派ではありますまい!』
 嗤笑。見切っていた魘魅師はこれをかろやかに躱す。かわせるのだ。
 さてどう殺す。影絵で引き裂くか、呪詛と毒で責め苛むか。
 この男の目つきは気に入らぬ。われこそ武侠なりと語るかのようだ。
 その手の連中は魘魅師にとっていい獲物であり、そして唾棄すべきモノである。
 だから免状をばらまいた。だから市井を混沌に陥れた。
 ――よかろう。ならば徹底的にその正道をあざ笑い踏みにじるべし。呪だ。
 じわじわと苦しめ、そして四肢をしなびさせゆっくり――否、これは?
『これは!!』
 振り抜かれた槍は、いまや猛禽じみた爪へと変じていた。五指に漲る膂力!
 はたしてそれは濡れた布めいて魘魅師の腕を絡め取り、たちまちに崩す。
 擒拿(きんな)、すなわち梃子の原理を用いた絡め業、関節術!
『貴様』
「挫き」
 ごきり。肘が嫌な音を立て、魘魅師は苦悶に顔をしかめた。
「崩し!」
 内功が四肢を電撃めいて鞭打つ。魘魅師は立っていられず体幹を崩す。
「打ちッ!」
 軽く目まぐるしく、そして迅雷のごとき掌が数打。守りを崩す。
 なぜだ。たしかに避けたはず。否、そもそもこんなものは套路にはない!
 仏門に由来する正統武術は実直の拳。斯様な搦め手は――そう、ない。

 これは河南馮氏の業ではない。脈々と継がれし馮家の武学ではない。
 かつて志廉が、轡を並べた朋友より学んだ他派の技。友誼の証。
 一打を繰り出すごとに、套路をなぞるごとにその記憶が蘇る。
 囚われるなかれ。ただ武をなぞり、武を為せ。あのときのように。
(友よ――)
 されども感傷は捨てられぬか。男はほとほと義侠の輩であった。
 この手で討ちたる朋友。その生きた証が血潮を巡るならば致し方なし!
(お前の技、いまここに。悪党よ、絶招、馳走仕る!)
 挫き、崩し、打ち、そして砕く。擒拿手より始まりし崩しの散手。
 全ての秘奥は手のひらにあり。五指がこわばるさまはまさに鷹の爪。
 ならば繰り出す技の威と速は眩いほど。ゆえにこれなる式をこう呼ばう!
「金鷹散手、十三式――」
 ぐるり。魘魅師の天地が逆転した。今の彼奴はまるで地に伏せる虎!
「……"伏虎手"」
 勝負あった。練り上げた内力が、がら空きの胸部中央を打つ。
 激甚たる内爆。眼・鼻・口・耳より滂沱のごとき出血である!
『がはぁあっ!!』
「――貴様は"侠"の一字を弄んだ。これはその対価を知れ」
 残心。武侠の背後で、影は断末魔を上げて消え去り散っていく。
 訪れた静謐に、志廉は瞑目し、しばし動くことはなかった。
 それはまるで、友に捧げる黙祷のようであったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久賀・灯夜
(3)で【ホネハミさん(f00854)】と参加

魘魅師……
街の人達の為にも、俺をここまで送り出してくれた人の為にも、お前はここで倒す!

魘魅師の笑みに臆しそうになるも、自分の頬を叩いて気合いを入れる。
今回ばかりはビビってる場合じゃないんだ

剣のガジェットを構えて戦う
ガムシャラだけど無謀じゃない、生きて帰る為の太刀筋

うおおおお!
渾身の力で斬りつけ、手応えを感じれば思わずへたり込んで
一泡吹かせてやったっすよ……と呟く

しかしそれはとどめになっていなくて
油断した所に攻撃を受ける

……待たせすぎっすよ、ホネハミさん!
溢れそうになる涙を拭って笑顔で立ち上がる

今度こそちゃんと、肩を並べて戦うんだ!

※アドリブ歓迎です


リンタロウ・ホネハミ
【灯夜(f05271)と参加】
忍衆との戦いの後、カメレオンの骨を食って【〇八七番之隠伏者】を発動
城内に入ってみれば、そこにはトーヤの姿が!
トーヤへの致命の一撃を不可視のままに弾くっす!
いいヤツ一発入れたからって気を抜くんじゃないっすよ!
まだイケるっすね?んじゃ今度こそトドメっす!!

魘魅師、まさかあれだけでオレっちの底を見たと思ったっすか?
我が呪骨剣"Bones Circus"は206の曲技を宿す呪い
骨の1本2本見られた程度じゃ痛くも痒くもないんすよ!!

……とはいえ、アレだけの忍と魘魅師の相手をするのはキツイっすわガチで
トーヤ、なんで毎日クソ走るかこれでわかったっしょ?(足ガックガクブッルブル)



●戦うために必要なこと
 実際に対峙した時、久賀・灯夜はそれだけで心折れかけた。
 笑みだ。敵は……魘魅師の笑みは、およそ彼がこれまで見たことのないものだった。
(なんだよ)
 困惑。恐怖。疑問。ないまぜになったそれらが、精神に負担をかける。
「なんで――そんなに楽しそうに笑えるんだよ!!」
『そりゃあもちろん、"楽しい"からでございますよ?』
 灯夜はぎりりと奥歯を噛みしめる。奴の言いたいことなど考えるまでもない。
 ……魘魅師は笑っているのだ。市井の混乱、忍どもの大群に消えた猟兵たち、
 そしていまここで対峙する己の、この恐怖と困惑の何もかもを!
「ふざけんな」
 臆しかけた己の頬を張り、灯夜は絞り出すように呟いた。
「ふざけんな!! お前のせいでどれだけの人が苦しんだと思ってやがる!
 許してはならない。たしかに己はいまだ未熟、この敵にも届かないのだろう。
 けれども義憤がある。街の人々、仲間たち、そして――そして!
「俺をここまで送り出してくれた人のためにも、お前はここで倒す!!」
『やってみるがよろしい。――できるものなら』
 負けじと灯夜は吼え返した。そして戦いが始まった!

 ……しかし灯夜自身が誰よりも自覚していたように、力量差は圧倒的。
 召喚した剣型のガジェットを手に果敢に挑みかかるが、意気だけで覆しきれるものではない。
 灯夜が一斬りかかる間に敵は三手を返し、防戦に回れば五が襲いかかる。
 それでも灯夜が食い下がれているのは、彼の太刀筋にひとつの信念が込められているからだ。

 ――生還せねばならない。
 がむしゃらに打ち込んだところで、この敵は討ち取れるものではない。
 戦士とは勝って生きて帰って初めて一人前なのだと、あの人も言っていた。
 ゆえに捨て鉢になることなく、常に先の先を見据えた上で立ち回る。
 たとえ有効打が入れられずとも、どれほど絶対的な力量差があろうとも。
 だからこそ生きることを第一に考えねばならないと彼は知っている。
「く、そぉ……!」
 それでも歯がゆいものだ。魘魅師がことさらに悪辣なのは、わざとらしい隙を自分から用意することにあった。
 あきらかな罠である。打ち込めばおそらく致命的な反撃が待っている。
(見極めろ。それが意図されたものなのかどうなのか――)
 修練を思い起こし、疼く手先を意思でねじ伏せて打ち合い続ける。
 当然敵の攻撃は灯夜に傷をもたらすが、それでも斃れてはいない。
 まだ生きている。なら戦える! 灯夜はひたすらに攻防に食い下がる!

 魘魅師はどう思っているか。……当然、面白くはない。
 だがヤツを不快にさせるのは、なによりも灯夜のその前向きさにあった。
 気に食わぬ。この未来への希望に満ちた輝き、いかにも気に入らぬ。
 オブリビオンとは過去の化身。ゆえにその生命の輝きを鬱陶しく思う。
 決まっている。徹底的に心をへし折り絶望させるのだ……!

 ふとした瞬間から、攻防の趨勢は徐々に、しかし確実に揺らぎ始めた。
『こ、れは……!』
「……!!」
 いかなる由か、灯夜の攻撃が着実に敵に届き始めたのだ。
 剣を振るえば切っ先が魘魅師を抉り、しかし反撃は十分に防げる。
(――いける)
 灯夜は思索に思索を重ねた上で結論づけた。いまの勢いならばいける!
「……う、おおおおっ!!」
 残る力をあらん限りに振り絞り、裂帛の気合とともに渾身の袈裟懸けを叩き込む。
『がはぁっ!?』
 手応えあった! 邪悪な血が迸り、敵はたたらを踏む!
「っへへ、一泡……吹かせてやったっすよ!」
 いまのはまさに会心の一撃だった。出しうる限りの力を込めたのだから。
 灯夜はニヤリと笑いながら思わずへたりこみ……そして、唖然とした。
『――……ふ』
(こいつ……笑って)
 灯夜の捨て身の一撃を、迂闊と誹ることはできまい。
 彼は必死だった。全神経を尖らせ、常に敵の一挙一動を伺い、
 その中で立ち回りを続けてきた。どのみちここが限界点だったのだ。
 斃れゆくはずの魘魅師の嘲笑を目の当たりにした灯夜は、直後吹き飛ばされる。
「かはっ」
『……いやはや、わざわざ手傷を得たかいがあるというもの』
 魘魅師は姿勢を正し、嘲りの笑みを浮かべて悠然と灯夜を見下ろす。
 これだ。この希望が潰えた顔を見たかった。さあ収穫の時間といこう。
「…………」
『もはや話すこともままなりませんか。然らば――!』
 もはやこれまでか。そして、致命の一撃が少年へ振り下ろされ――。

 ……振り下ろされる、はずだった。
『何っ!?』
 魘魅師は瞠目。無理もない、"突然何もない場所に攻撃を弾かれた"のだから!
 だがそれは誤りだ。証明するかのように虚空に"何か"の姿が揺らめく!
『貴様は……!?』
「……ホネハミ、さん!!」
 然り。魔剣を逆手に構え、魘魅師の攻撃を防いだのはリンタロウ・ホネハミ。
 彼はカメレオンの骨の一欠片を噛み砕きながら、にやりと灯夜に笑いかける。
「いいヤツ一発入れたからって気を抜くんじゃないっすよ!」
「な……」
 言いたいことがたくさんあった。
 待たせすぎだ、とか、どうやって此処まで来たんだ、とか。
 無事だったのか、とか、戦えるのか、とか。溢れかえりそうなほどに。
「……!!」
「まだイケるっすね?」
 言葉とともに溢れた涙を拭い、灯夜は力強く頷く。
「んじゃ、今度こそトドメっす!」
「はい、ホネハミさんっ!!」
 少年は心の底から笑った。騎士もまた不敵に笑って敵を見た。
 魘魅師はどうか。いまや、奴の相貌に嫌味な笑顔はもはやなし!

『……あの中から往きて出てきたことは素晴らしいでしょう。しかし』
「"手の内はみんな明かされてる"とか、言うつもりかよ?」
 リンタロウは、驚く魘魅師を挑発的な笑みで見返した。
「まさか"あれだけ"で、オレっちの底を見たと思ったっすか?」
『な……』
 ぐるんと構えた魔剣がカタカタと呻く。その名を"Bones Circus"。
「我が呪骨剣は206の曲技を宿す呪い。骨の一本二本見られた程度じゃ――」
「ホネハミさんは、痛くも痒くもないってことだ!」
 なぜか嬉しそうに言葉を継いだ灯夜に、青年は苦笑して。
 再びその姿がかき消える。魘魅師がこれを逃すはずはない!
『姿を消したところで、手の打ちようはあるのですよ!』
 吹き上がるは毒の煙。吸えば肺が腐るであろう猛毒の渦だ!
「させるか!!」
 ごしゅう――!! 剣型ガジェットの蒸気エンジンを最大出力で吹かす!
 吹き出した熱蒸気と限界を越えた灯夜の斬撃が、毒の霧を切り裂いたではないか!
『何!?』
「今度こそ、ちゃんと! 肩を並べて、戦うんだぁっ!!」
 青年はがむしゃらに突っ込んだ。しかしそれは捨て鉢だからではない。
 肩を並べ、ともに戦う仲間がいる。信頼がゆえの全力突撃!
 これを防ごうとした。背後からすさまじい殺意を感じた。
 ――頸を断ち切るリンタロウの不意打ち。正面からの灯夜の斬撃。
 まったく同時の攻撃に為す術もなく、魘魅師の影は……滅び去ったのだ!

「……っはぁ~」
 戦いが終わると共に、リンタロウは大きく息を吐いてどさりと斃れた。
 灯夜も同じように、大の字に斃れる。二人は互いの顔を見やり、笑った。
「体力ないっすねえ男子学生」
「ホネハミさんだって、立ってるのもやっとだったんだろ?」
「ま、アレだけの忍を相手にしてここまで全力疾走すからね」
 毎日の走り込みの理由はここにある。足は震えて言うことを聞かない。
 けれどもそれは恐怖ゆえにではない。心地よい疲労と、勝利の高揚があった。
「……ホネハミさん」
「あン?」
「俺、もっともっと強くなりたい。なりたいっす。……なれるかな?」
 無垢な問いかけに、リンタロウは悪童めいて笑った。
「なれるさ。トーヤがその気になりゃ、いくらでもな!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

在連寺・十未
ふ。――ふふ、ははははは。面白いことをするなぁキミは。

なるほどな、なるほど。……キミの技に興味が湧いた。それ、呪法だったか。なかなかどうして『や』るじゃないか


僕の手の内が解っている。その上でまだキミの手札は解らない。なるほど。……で?

まさか僕があやとり遊びしかできないと思っているんじゃないだろうな。……この任務においてまだ銃は用いてないはずだね、まだ。けれどこいつもおまけだ。本命の札はとってある

ユーベルコード起動。僕の射撃技術全てと『これ』の繰り返しで。その呪法の検証をしてあげよう。その間はこれしか使えないけれど、それで十分。

さて、キミはどれくらいもつかな。楽しみだ



●亡霊の亡霊たる由縁
「――で?」
 影と相対した在連寺・十未の第一声は、意外なものだった。
『……で、とは?』
 魘魅師もその意を掴みそこね、オウム返しに問い返さざるを得ない。
「僕の手の内がキミにはわかっている。そして、キミの手札はわからない」
 十未はまるで謳うように、謎めいた調子で事実を再認した。
「そしてこの城、あれほどの忍を使役し領内全域を監視するほどの情報力……。
 なるほどな、なるほど。改めて考えてみればみるほど、キミの技に興味が湧くよ」
 呪法。サムライエンパイアは、主に建築においてこの技術が発達している。
 魘魅師のそれはより邪悪で強力なもので、呪符に代表されるように殺傷力が高い。
 影を編み、即死の呪符を生み出し、そして猛毒の虫を放つ。
「なかなかどうして、『や』るじゃないか」
『……お褒めいただき、恐悦至極』
 十未は、そんな慇懃無礼な魘魅師の振る舞いに、ぷっ、と吹き出した。
「ふ――ふふ、ははははは。キミはどこまでも面白いオブリビオンだなぁ」
『…………』
 徐々に、魘魅師の笑みが薄らいでいく――十未の、底知れない気配を訝しみ。

 状況は圧倒的に猟兵にとって不利である。ましてや十未は単独だ。
 ではなぜ彼女は笑う? その答えは、彼女自身から問いかけとして齎された。
「キミはまさか、僕が"あやとり遊び"しか出来ないと思っているんじゃないだろうな」
『……まだ、隠し玉があると?』
 それは魘魅師とて想定の上だ。しかしヤツとてひとかどの戦士である。
 たとえ武器や術の一つや二つを隠していようと、身のこなしをつぶさに見れば、
 それを用いた時どう戦うかの想像はつく。これだけでもアドバンテージは大きい。
 十未は鋼糸の他にもう一つ能くするものがある――すなわち、銃だ。

「いいだろう」
 謎めいた笑みを浮かべながら、十未は熱線銃を手に一歩踏み出した。
「まだこいつもおまけだけれど――僕の射撃技術すべてと、そして」
 ……"切り札"の力で。
「キミのその呪法の、検証をしてあげよう」
『検証、ですか』
「そうとも。さて、キミはどれくらい保つかな? 楽しみだ」
 ……短い静寂が訪れ、そして一瞬にして打ち破られた。
 魘魅師が仕掛けたのだ。符を目くらましにした高速の白兵戦である!
 ZAPZAPZAP!! 試作型熱戦兵器のエネルギー波が頬をかすめる!
『たいしたお手並みで!』
 だが避けられないほどではない。魘魅師はコンパクトな打撃を放つ。
 十未もまたこれを見切りいなしながら、もう一方の手にピストルを握る。
 BLAMBLAMBLAM!! 護身用拳銃による不意打ち! だがこれもかわされた!
「ほう」
『いつまで勝ち誇っていられますかな――!?』
 魘魅師が仕掛ける。十未が躱し、下がり、トリガを退く。
 まるで舞踏めいた立ち回り、それもやがてすぐに終わりを告げた。

 影絵である。
 交錯の合間に編み上げた呪いの影絵が、影の弾丸で十未の心臓を穿ったのだ。
 致命傷だ。魘魅師はにこりと嘲りの笑みを浮かべ、少女を見下ろす。
「――どこを見ているんだい?」
『!?』
 BLAMBLAMBLAM!! 背後から放たれる突然の弾丸!
『何』
「僕はここだよ」
 そこには十未がいた。足元を見る。瀕死のはずの十未が……いない?
「どうしたんだい?」
 ZAPZAPZAP!! 魘魅師は回避に失敗し、熱線で足を穿たれた!
『なんだ、まるで亡霊――』
「ああ、それは言い得て妙だ」
 影絵が再び影の弾丸を放つ。十未はまるで受け入れるかのようにあえて食らう。
 そして斃れた。――次の瞬間、"十未"が魘魅師の背後にいた。
「このユーベルコードの名は"APPARITION(アパレシオン)"。
 この世界とは別の言語で、亡霊という意味さ。洒落た名前だろう?」
 十未は圧倒的な強さを持つわけではない。いつかどこかで斃れる。
 だがそのたびに! まったく無傷の十未が現れ、攻撃を続けるのだ!
『なんだ、お前は』
「それならばキミが口にしたばかりじゃないか」
 声は背後から、魘魅師は振り返――BLAMN。弾丸が心臓を穿つ。
「"亡霊は、キミの隣を歩き、キミの真似をする"」
『……が、は』
 その名に偽りなし。これこそは十未にとってまさに本命の切り札。
 亡霊の亡霊たる由縁。記憶も何もかもを引き継いだ、新たな自分自身の召喚。
「――検証終了だ。思ったよりは保ったのではないかな」
 そして少女は姿を消す。まごうことなき、亡霊めいて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四葩・イカヅチ
>3
>同行:f04250
>アドリブ大歓迎

あいつらァ出番は終わり、次はアタシの番
物の怪は使わずこの身一つ、ギターだけを武器として

やァ、やァ、ネェさん!
へっへ…また会いに来ちまいました
今度こそ一緒に遊びましょ!

打つ度の痛みも
誰かと一緒に暴れられるのも
人様のお役に立てるのも
魂が踊るよう


>思いついた「イイコト」をそっと耳打ち
ヤドリガミの仮初の体で敵と野菊の間に入る
(ネェさん、ネェさん)
(アタシが目ェ引きますから――)

なァ
アンタさんずっと見てたンだって?
いいねェ。皆さんさぞかしお綺麗だったでしょ

ンじゃ今度もよォく見ときなよ
見逃したって二度目は無いぜェ?
なんたってアンタさん、ここでおしまいなんだからよ


挾間・野菊
【③待つ側:四葩・イカヅチ f03703】

アドリブ歓迎

……お喋り、うるさい

……腕、あげる


…………いかづち?

……おしゃべり、うるさい、よ

…………もう、二度としない、から
ぜったい


技を、動きを、なにより心を見られた
仕留めきれず、時間をかければより不利になる

だから決めた
首が残れば、首を落とせば、それでいい
いつも一人でそうしてきた

だけど、違ったから

楽しそうに戦うな、と
一人じゃない、と
ふしぎな、ふわふわした感じ

「イイコト」も、それなら斬れると従った
敵を、動きを抑えた妖の仮初の身ごと、切り裂いた時にも
迷いはなかった

……でも一つだけいいたい
想いは胸の奥、自分でもよくわからないけど
あれは「イイコト」じゃない
だめ



●たとえどれほど剣を盗んでも
 剣客同士の立ち合いに於いて忌避されるタブーとは何か。
 それはすなわち、"剣の極意を知られる"ことに他ならない。
 流派の秘奥とは文字通りに秘められたものであり、門外不出が常。
 繰り出すならば必ず敵を討つ。ゆえにこそ必殺と銘打たれるのだ。

 であれば、挾間・野菊が攻めあぐねているのも道理であろう。
 なぜならば彼女は、そうした剣技を見て聴いて盗む薄汚い盗人ゆえに。
 模倣に関する天才的な感性を持ちながら、しかしそれゆえにすべては他流。
 それを知られ、見切られていたならばどうなる? ……言うまでもない。
『いやはや! これまでも、見ているだけでたいへん驚いておりましたが』
 にたにたと、人を喰ったような笑みの魘魅師が嘯く。
 嘲りを駆使して野菊は打ってかかる――陣刀流・裏夏羽(うらかばね)。
 神速の踏み込みで間合いを詰め、横薙ぎに斬ってかかると見せて即座に反転。
 拍子を崩した上で再度踏み込み、遠心力を乗せた太刀ではらわたを裂く秘剣だ。
「――……」
 手応えがない。魘魅師は間合いの、わざとらしく一歩だけ外にいた。
 いちいち悔しがったり地団駄を踏む無様を、野菊は晒さない。だが、これは。
「…………めんどう」
『はは! これはしたり! 申し訳ございませぬ!』
 嫌味なほどの明るい声音で、ニコニコしながら魘魅師は慇懃無礼に詫びる。
 野菊は取り合わない。その点において彼女と奴の相性は悪くない。
 だが盗人の模倣と彼奴のそれは絶望的なほどだ。まさに、水と油である。

 時間をかければさらに不利になる。一撃で、最速で決めねばならぬ。
 ではどうする。――頸を殺(ト)る。守りを考えず捨て身の攻撃で。
 当然己も害されるだろう。だがこちらもまた、首が残っていればそれでよい。
 野菊はそう決めた。これまでやってきたようにやることにした。
 いつも一人でそうしてきたのだ。決めたならば即座に打ってかかる。
 姿がかき消えた。背後を――視線が絡み合う。見切られている。
『いやはや』
 わっ、と無数の呪符が湧いて出た。野菊は鞠めいて丸まり防ごうとする。
 無駄だ。呪詛は肌から染み込み骨肉を腐らせるだろう。もはやこれまでか!?

「アラよっとォ!」
 ごがぁん!! と強烈な衝撃が走った。魘魅師の体に、だ。
 振るわれたのはボロボロのギター。鈍器めいた振り回し方である。
 呪符越しの衝撃はダメージになり得ずとも、敵は追撃を恐れ飛び退った。
 符のことごとくを蝿でも落とすかのようにざんざんと振り払い、
 野菊と敵の間に割って入った彼女は、自らその身で符を受け止めた。
「…………いかづち」
「やァ、やァ、ネェさん!」
 にかっと。呪詛で体を灼かれながら、四葩・イカヅチは晴れやかに笑う。
 いっそ呆れるほどの呵々大笑。痛みすらも心地よいとばかりに。
『ほう――なるほど。あの物の怪どもを捨て石にしましたか』
 事の仔細を見ていた魘魅師は、イカヅチの〈生存〉理由を即座に看破した。
「オゥさ。あいつらァ出番は終わり、次はアタシの番ですからねィ」
 この身一つ、本体(ギター)だけを武器として。盾は体を使えばいい。
 そこでふと、イカヅチは睨めあげるような少女の視線に気づいた。

「へっへ、また会いに来ちまいましたよゥ」
「…………」
「今度こそ一緒に遊びましょ! ネ、いいでしょゥ? ネェさん」
「…………わかった」
 イカヅチはにかっと笑う。無論、敵は常に隙を伺っている。
 じりじりと野菊の傍らに立つようにして、豪放な女はひそひそと耳打ちした。
(ネェさん。アタシね、"イイコト"思いついたンですよゥ)
(…………なに)
(いやね、ネェさんアイツの首狙ってンでしょう? それなら――」
 "イイコト"を聞き、野菊はじろりと視線を向けた。
 だがイカヅチはやはり笑ってそれ以上構うことなく、無造作に一歩詰める。
「、いか――」
 ……止めようとした理由がわからなくて、野菊の言葉は途切れた。

「なァ、アンタさんずっと見てたンだって?」
『ええ、あなたの戦いぶりも何もかも』
「いいねェ。皆さん、さぞかしお綺麗だったでしょ」
 何が楽しいのか、ニコニコとしたままイカヅチはさらに一歩。
 符が生まれ、壁めいて立ちはだかる。……臆することなく、さらに一歩。
 呪詛が体を灼いている。野菊はぶすぶすと立ち上る煙を無言で見ている。
 背中を。構うことなくイカヅチは、さらに――また一歩。
「ンじゃ今度も、よォく見ときなよ」
『ほう』
「見逃したって二度目はないぜェ? なんたって――」

 ……"アンタさん、ここでおしまいなんだからよ。

 地を蹴った。直後、イカヅチがいた場所に符が数十突き刺さる!
 疾い。飄々とした女だてらと思えぬほどの韋駄天じみた踏み込み!
『!!』
「イイ感じに灼いてもらったからなァ――!」
 その本体(み)を灼かれれば焼かれるほど。傷つけば傷つくほど。
 身は軽やかに、業は鋭く。そして魂は狂ったように踊る。
 ああ、楽しい。打ち込む痛みも、手応えも、誰かと暴れられるのも何もかも。
 ――人様にお役に立てることこそ、化身(ヤドリガミ)の本懐だ!
「――……」
「ネェさん!」
 ギターで打ち込み、符で体を灼かれながらイカヅチは叫んだ。
「さァさネェさん、さァ!」
「――……。…………!」
 急かしに急かされ、直後、少女の姿もかき消えた。
 イカヅチがぐわしと四肢で魘魅師を掴み、身動きを止める。
 少しだけ手が揺らぐ。なぜだ。これが最適なのは間違いあるまい。
 豪腕無双で知られる、神州鉄心流が奥義。みしりと柄が軋んで呻いた。
 呼気を吸う。全身の筋肉を緊張させ、独特の形で体を"固定"する。
 そして独楽めいて一回転。膂力と体重が柄を通じて刃に乗り、
 並んだ罪人の首をまとめて削ぎ落とすほどの豪壮無比なる一太刀となる。
 ゆえにこれなる銘を"鋼喰(かねはみ)"。魘魅師が瞠目した。
『貴様、味方ご――
 と』

 ……どさり、どさり。

 斬られ転がる体ふたつ。深々と抉られているのは敵のほうである。
 ではもうひとりは? ……言わずもがな、それを抑えていたイカヅチだ。
「アッハッハ!」
 何が楽しいのか、だくだく血を流しながらイカヅチは笑う。
 野菊は残心すらなく、敵の消滅を確認した上でヤドリガミに歩みよった。
「ネェさん、さすがですよゥ!」
「…………お喋り、うるさい」
 ぐいとその体を持ち上げ、その場にあぐらをかかせて。
 傷の程度を見る。当座の手当とばかりに己の服の袖を裂いて巻き付けた。
 あの見事な入れ墨に、ばっさりと咲いた剣閃はほかならぬ野菊のものだ。
「どうです? 名案だったでしょ! アタシが体ァ張ったかいが」
「……腕、あげる」
「ン」
 血を拭う。見事な太刀筋だ。……ヤドリガミでなければ死んでいる。
 野菊はひとりで戦ってきた。だから傷の手当も慣れている。
「それにしたってあのヤロウ、見ましたかィ最後のあのツラ!」
「…………」
「ネェさんのカオに驚いて、傑作でしたねィ! ああ、まったく楽し」
「…………いかづち?」
「あい? なンですネェさん」
 じっと。少女は、イカヅチの眼を見上げた。にらみつけるように。
「……おしゃべり、うるさい、よ」
「そうです? イヤけどね、アタシは実際喜ンで」
「…………もう」
 巻き付けた布に触れ、野菊はなんとなく、額をそこに押し付けた。
「二度と、しない、から」
「……ネェさん?」
「ぜったい」
 それからはもう口を開かない。利いてやるつもりもなかった。

 ……実のところ、なんでこんな気持ちになっているのやら。
 そもそも"これ"がなんなのか、野菊にはなにもわからない。
 イイコト。たしかにそれは斬れると思った。迷いは……多分、なかった。
 ただ。背中を見て戦っている時、楽しそうなさまを見て、なんとなく。
 不思議と、ふわふわとした、妙な心地がして。
 ……斬ったあと、流れる血と傷を見て、それも綺麗に吹き飛んだ。
 あれは"イイコト"なんかじゃない。じゃなかった。いまわかった。
「……もう、ありゃアだめですかィ?」
 おずおずと問うような声。野菊は無言を貫こうとして――。
「……………………だめ」
 年よりもあどけなく、唇を尖らせてただそう言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
【①希望】

手の内を読まれているとは、厄介ですね。
ですが……、分かっていた上でも避けられない。
要はそんな攻撃を加えれば良いだけなのでしょう。

ノクティス!
行きますよ。

疾く打倒さなければ、長期戦は不利とみました。
回避は最低限で距離を詰めます。
線ではなく点で突き、穿つ。刺突。
槍はあくまで近付くため、懐に潜り込むための道具として。

【覚悟】を決めましょう。
何があろうと、退かぬ覚悟を。
そしてあなたには死を覚悟していただきます。

怯め、竦め、
その身に深く突き立てましょう、「燦星」を。



●星よりも気高く、夜よりも静かな
 敵は手の内を知り、搦め手を用いたとしても対応してくるだろう。
 そして立ち合いが長引けば長引くだけ、当然こちらに順応する。
(一瞬でも疾く、一撃でも少なく、確実に倒さなければ――)
 やられる。長期戦は相手にとって絶対の有利を与えるのだ。
 では無鉄砲に攻めればいいのかと言えば、それも否。
 搦め手を能くする魘魅師相手では、正攻法はすなわち自殺行為である。
 地の利、時の利、そして情報的なアドバンテージ。
 何もかもが敵にとって有利な、一方的不利を強いられる戦い。

 それがどうした。三咲・織愛は決然と突き進む。
「はあっ!」
 鋭い呼気を吐き出し、狙い絞った打突を確実に繰り出す。
 それ自体で敵を討とうとは思っていない。これはあくまで牽制だ。
 ……長柄、すなわち槍が剣に長じるとされるのは、ここにこそある。
 間合いを測り、維持し、そして縮める。どれもこなせる万能なる武器。
 ゆえにこそ戈は多くの世界、多くの時代、多くの人々に愛用された。
 こと織愛の槍捌きはまさに達人級、培った技術がいまの彼女を助けている。
『おおっと、これは手厳しい』
 わざとらしく飛び退った魘魅師が符を放つ。最小限の動きでこれを躱す。
 下がらない。動作は常に前に出るために続けねばならない。
 でなければ間合いを取られ、長柄でも届かぬ距離から一方的に仕留められるだろう。
「せいっ!」
 ゆえに織愛は退かぬ。動作のことごとくが前進に直結している。
 ……やがて、魘魅師の表情から、笑みが薄らいでいった。

『ずいぶんと勇敢なことだ』
 からかうような声音に返ってくるのは、臓腑を抉る鋭い刺突。
 かわす。それ自体はさしたるものではない、見切れている。
 だが常に織愛は前に進み、魘魅師は後退を強いられている。これは。
『……何か、秘策でもあるのですかな』
 織愛は視線で見返す。かき乱されることも食って掛かることもない。
 冷徹な刺突で常に敵を牽制し、前に出て、そしてまた突く・あるいは薙ぐ。
(この小娘……)
 魘魅師は内心で歯噛みした。なんだ、この決断的な戦いぶりは?
 あらゆる利はこちらにある。なにか切り札があるとでもいうのか?
 ……否だ。少なくとも技量において奴の底は知れている。では、なぜ?
『何があなたを』
 ひゅっ! 喉元を抉るような一撃をかろうじてかわす。頬に血の筋。
『何があなたを、そうさせるのですかな!』

 ――ふと、ひょうと、空気が冷えて張り詰めた。
「"覚悟"です」
 声音は平易に。見据える視線はひとときもブレることなく。
 魘魅師にとっては忌々しい、輝くような綺羅めく瞳である。歯噛みする。
「何があろうと、退かぬ覚悟を」
『なるほど素晴ら』
「――あなたには、死を覚悟していただきます」
 声音の玩弄が、通じぬ。どこまでも揺るぎなく決断的にこの小娘はやってくる。
 さりとて隙はない。猪突猛進とも、捨て身とも異なる、この、忌々しい!
『――』
 そこで唐突に魘魅師は理解した。己のこのわだかまりの理由、正体。
 忌々しい? 否である。怒り? 憎悪? 否、否、否、これは。
『貴様』
 これは。
『貴様は、なぜそこまで――』
 ……これは、恐怖と云うのだ。

 出し抜けに、龍の槍が放たれた。魘魅師は反射的にこれを避ける。
 そして毒を浴びせようとした時、己の迂闊を悟り、立ち竦んだ。
「お命頂戴します」
 端的。その声音は死神めいて直裁で、そして断定的である。
 だがヤツには得物がない。あの拳でも防御は――否。あれは。あの鈍い輝き!
 ……織愛が懐より取り出したるは、刃渡り六寸五分の短刀である。
 きらりと。輝きを浴びて、星の海を描いたような彫金が輝いた。
 それはまるで少女の決然たる双眸のように。燦星。切れ味は折り紙付き。

 避けようとした。叶わぬ。
 防ごうとした。叶わぬ。
 はたして打ち立てのそれは符の守りも貫き、毒をも切り裂き走った。
 流星のように。箒星のように。行き着く先は邪悪の心の臓腑。
『――かは』
「……あなたには、足りなかったようですね。"覚悟"が」
 ぐり、とねじられれば、邪悪は悲鳴を上げ、やがてそれは断末魔へ。
 あとには何も残らない――星明かりが煌くとき、闇は退くものなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
栞さん(f17024)と

①②③希望+真の姿
新UCお披露目

その他、共闘アドリブ
メガ盛でお任せ

忍者から奪った呪殺符を投げ、呪殺符に割込
此処に居る…電子映像のボク「だけ」じゃあ手の内は読み切れないよ

キミは呪殺城上空に浮かぶ、機動戦艦まで知ってはいないだろう?
それがボク…ティル・ナ・ノーグ
資金の5割を代償に、300秒限定で現実世界に顕現させたボク自身

ボクも呪殺符を手がかりにして、解析したよ
今ここで、新たな力を以てキミを止める
UC【封絶の三重錨】使用
ボクは止めるだけ。トドメを刺すのはボクじゃ無い
「骸の海へ沈んで眠れ」

呪殺城をスキャン、全ての猟兵へタクティカルナビゲート
誰かの明日のために戦うのがボクだから


片瀬・栞
リアちゃん(f04685)と
詰まるトコ、全部ブッ倒せって事でしょ
いいよ、城ごと黒焦げにしてあげる!

>行動
【POW】共闘アレンジ歓迎
ピンチです(断言)
走り詰めと前章のリアちゃんが心配で頭に血が登ってます
煽られるとカッとして突撃しピンチになります

(リアちゃんのアクションを受け)
あれ?なんだろ?あいつ動けてない?
と言うか、この声はリアちゃん?無事だったんだ!
ん、頭も冷えた。第二ラウンドよ!
一転して超近接戦。被弾を厭わず笑みすら浮かべて突撃
「ぎざぎざ」「とげとげ」を駆使。絡めて刻んで
UC【踊るタランテラ】で思いっきりキック!

あーうー。今回は助けられっぱなしだよー
凄い借りできちゃった。もっと頑張らないと



●"本業"の本領発揮
 BRATATATATA! BRATATATATA!!
『ははははは! いじましい弾遊びですなあ!』
「こいつ……っ!!」
 BRATATATATA! BRATATATATA!!
 片瀬・栞は嘲弄にぎりぎりと歯ぎしりしながら必死でトリガを引く。
 弾薬は十分。二丁一対のサブマシンガン"chatter dogs"による猛烈な射撃。
 弾速に秀でたそれのマズルフラッシュを以てさえ、届かぬ。捉えきれぬ!
『しからばどうぞ、ご自身でご堪能くださりませ』
「――!!」
 ちりちりとうなじに刺さった殺気に、栞は即座にサブマシンガンを手放した。
 飛び込む。頭に血が上ったから――それは少しあるが――ではない。
 コンマ数秒を置いて目の前に立ち上がったのは、もうひとりの栞。
 否、正しくは栞の形をした影絵――当然、その手には二丁軽機関銃!
「猿真似しないでよねっ!!」
 シャコン、BLAMッ!! 12ゲージショットガンが火を噴いた!
 "苦難の茨(miseries of Thorn)"と銘打たれただけはあり、すさまじい激音とともに影絵を一撃で粉砕破壊消滅せしめる。
 ……己の武装の威力など、誰よりも自分自身が知っている。
 模倣されれば終わりだ。ゆえに先の先を得て飛び込んだ形である。

『おや、お疲れですかな?』
「!!」
 背後。ひそやかな声に、条件反射的な回し蹴りを繰り出す。
 ふわりと魘魅師は飛び退いていた。そのニコニコ笑顔が癪に障ること!
「ニヤニヤニタニタ人のことからかって……ウザいんだけど!」
 応える言葉はなし。普段は自分からからかっておきながら、いざ反応するとこうだ。
 普段の栞ならば冷静でいられただろう。
 だが相棒が姿を消しここまで走り詰めで来たいま、その余裕はない。
「……城ごと丸焦げにしてやったっていいんだから」
『それは恐ろしい。――どうぞ、お試しになられては?』
 あからさまな挑発。栞は、ぶちりと何かが切れる音を頭の中で感じた。
 もういい。作戦などどうでもいい。こいつは、ここで、殺す!!

「んのぉっ!!」
 BLAMN!! ショットガンで呪符を撃ち落としさらにチャージ。
 端末から愛用の鎖鋸剣を取り出し、果敢な白兵戦を試みる――だが迂闊だ。
 にたりと魘魅師の笑みが色を変えた。期待通りという色があった。
 奴は呪法だけではない、身のこなし徒手空拳においても一流の達人!
『飛んで火に入る夏の虫――とはよく申したもので』
「かはっ!?」
 見えなかった。掌底が控えめに栞の腹部を打っている。
 致命傷にならなかったのは、栞の天性のカンがバックステップを選んだから。
 だが威力は大きい。壁に背中を打ち付け、呼吸出来ぬ苦しみと痛みに呻く。
『いやはや。ともあれそろそろ、仕上げに入りましょうか』
 勝負あったか。つかつかと魘魅師は歩み寄りながら呪符を生み出す。
 四肢が痺れて銃が握れない。栞は、己の迂闊と敵への怒りに頭が一杯だ。
 どうすればいい。活路はないのか? 呪いの符が――来た! 数百!!

 しかして、それが栞を苦しめることも、そもそも届きすらもしなかった。
『なんだと?』
 魘魅師すら驚愕した。符が……相殺された? 同じ呪符によって!
 敵は即座に栞を観察する。いや、ヤツ自身が模倣したわけではない。
 では誰が! ――応えるように、ブウン、と虚空に光が灯った。
「けほ、こほ……っ、て、リアちゃん!?」
 いかにも、栞の言葉通り。
 光はやがて人型サイズに変わり、ひとりの少女となって現界する。
 よく見ればその像は不定期にぶれており、どうやら電子映像だと見て取れた。
《やあ! ごめんね、ちょっと遅くなっちゃったよ!》
 リア・ファルはにこやかに栞に答え、そして魘魅師を見る。挑発的な笑み。
『……どうやって、私の呪符を』
《そりゃ当然、キミがあれだけこしらえた忍者から頂いたのさ》
 ならばと魘魅師はさらに呪符を編もうと――して、目の前の少女の違和感に片眉を釣り上げた。
《ふふっ。あいにくだね、ボクは所詮仮初の姿、いわば電子映像なのさ。
 ああ、この世界のキミに言っても伝わらないかな――まあ、とにかく》
 カメラがぐんぐんとズームアウトし、呪殺城の全景を映し出す。
 見よ! あべこべの城の上空に浮かぶ巨大な船影を!
『なんだ、あれは』
 遠見でそれを知った魘魅師は呻く。リアは勝ち誇るように腕組みした!
《機動戦艦ティル・ナ・ノーグ。それこそが、ボクの本体なのさ!》

 然り。
 ここに現れたるはまさに機動戦艦。城よりもなお巨大なる威容。
 およそ彼女の店の資金五割を代償に、たった300秒だけ現れる超破壊力である。
「ご、ごご、五割ぃ!?」
 さすがの桁違いな金額に、栞も唖然と驚くばかり。
 だがそんな彼女を、電子映像のリアは振り返ってウィンクする。
《それだけの価値があるからね、キミたちには》
「…………」
 さて。リアがこうして本体を表したのは、何も威圧のためなどではない。
 その規格外の演算能力を以て、魘魅師自身の能力を解析・分析するため。
《手の内を見れるのが、キミだけだと思ったかい?》
『おのれ――な、にぃ!?』
 奴はとっさに攻撃しようとした。そこへ、壁・天井・床のことごとくから、
 まるで海に降ろされた錨めいて、黒・黄金・蒼銀の錨鎖が飛来したのだ!
 アンカーは当然のように魘魅師を雁字搦めにする。符が……塵となって崩れた!
「なにこれ!?」
《ふふん! これこそ、ボクの―ーティル・ナ・ノーグの新たな機能(ちから)!》
 封絶の三重錨(シーリング・トライアンカー)。封絶の錨鎖。
『この程度の封印などォ……!!』
《ああ、悪あがきはよしたほうがいいよ。それ、神様でも逃れられないから》
『何……!?』
 黒の錨は魂を。
 黄金の錨は魔術と神性を。
 蒼銀の錨は、電子を以て存在すら凍結させる。
 これまでリアが取引し、ともに戦ってきた仲間たちのデータを借りて、
 本体の超演算能力をもって完成させた、まさに不壊の戒めなのだ!

《――てなわけで、据え膳みたいでアレだけど》
 くるり。振り返ったリアに、しかし栞はキラキラとした笑顔でうなずく。
「ううん、ありがとうリアちゃん! おかげで頭も冷えたよ!」
 敵が動けなかろうがなんだろうが関係ない。殺すと決めたら殺す。
 それが傭兵の本領。彼女が電子存在としてのそれを発揮したならば、次はこちら!
『ぬ、ぅううう……がっ!?』
 錨鎖を逃れようと足掻く魘魅師の体を、鎖鋸剣と棘鉄球がずたずたに切り裂いた。
 すさまじい絶叫。栞の怒りはこんなものでは晴れるはずなし!
「そのニヤついた顔――"足蹴"にしてやるっ!!」
 軽やかなステップは、まさに舞い踊るタランテラのよう。
 いかなる刃よりも鋭きハイキックがざくんっ!! と顎を、頭部を捉えた。
 断末魔が響き渡り、苦痛と絶望に呻いた敵は、哀れ斬首を迎えたのだ。
《――骸の海へ沈んで眠れ。キミにはそれが似合いだよ》
 リアは瞑目し、祈るように唱える。そしてすぐに目を開いた。
 仕事はまだ終わっていない。解析した情報は多くの助けになるはずだ。
《タクティカルナビゲートも本領のひとつ、ってね!》
 機動戦艦が消える間際、放たれたデータはまるで流星群のよう。
 呪いの城のあちこちで戦う猟兵たちにとって、大きな力となるだろう。

 ……そしてようやく静けさの訪れた広間で、栞はぺたんとへたりこんだ。
「おっと、大丈夫?」
 電子存在としての"像"が増したリアは、慌てて駆け寄る。
「それはこっちの台詞だよぉ、無事でよかったぁ……てか、はぁ~」
「どうしたの?」
「……今回助けられっぱなしだもん! あーうー!」
 凄い借りが出来てしまった。金額的な意味でも。
 リアはそんな栞に苦笑しつつ、いいよとばかりに頭を振る。
「言ったでしょ? キミたちは、ボクにとってそれだけ価値があるって」
「……もう。ずるいよリアちゃん」
 唇を尖らせて視線をそらしながら、若き傭兵は思う。
 もっと強くならなければ。いつの日か、あの先輩の背中に追いつけるように。
 ……その思いは、抱き続ければ必ず、彼女に応えてくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
【①希望】

(ザザッ)
――此処からはいつも通り、『本機』の仕事だ。
城内に突入、これよりミッションを開始する。

(ザザッ)
触れれば即死の札か、ゾッとしないな。その上どうにも敵は本機の動きの癖を把握してる。
いいだろう。

ダッシュ、フェイント、残像、早業。使える技能は全て使った上で――

SPDを選択。
【経験予知】。
例えば凪の海と呼ばれた傭兵。
例えば閃光の如き森番。
例えば対峙した強敵達。
これまで積み重ねた経験を参考にして

最小行動での回避、武器による灼き払い、早駆けでの回避――匡やロクならこうするか。
――これも一つの"模倣"だろうか。
お前も、敵ならそうするだろう。

回避したなら、スナイパー、二回攻撃で熱線を敵に。




 流星のようなデータを受け取り、活用した猟兵のひとりは……いや、一機は。
 誰にも知られぬ戦いを乗り越え、再び鋼として在ろうとする兵士だった。

●"経験値"
 BLAMBLAM! BRATATATATA――ZZZZZAAAAAPPPPP!!
 天井をローラーダッシュする巨影から、熱線と弾丸と雷が放たれる。
 魘魅師はこれを見抜いた上で、符を盾となし相殺した。
《――やはり、本機の動きの癖を把握しているか》
 ざん――ノイズが晴れ、豹めいた鋼の姿を現れた。ジャガーノート・ジャック。
 ヘルメットがガシャンと上向き、カメラアイが露わとなる。
『ふむ……あなた様、なにやら妙でございますな?』
《――なるほど。"そこまで"お見通しか》
 魘魅師の悪魔的なまでの観察眼は、ジャガーノートという存在の本質をわずかに見据えている。
 それが鎧であること。纏っているモノがいることをすら。
 これまでならば、萎縮するか見透かされることに激昂しただろう。
 こんな自分の姿を見るなと怪物めいて叫んでいたかもしれない。……だが。
《――いいだろう》
『……ほう』
 挑戦的な言葉に、魘魅師はわずかに眉根を顰める。
 "ひっかかる"と思っていた。だがこの程度で揺らぎはしないということか。

 そうだ。もはや、そう簡単に鋼の兵士を揺るがすことなど出来ない。
 彼は答えを得た。答えにたどり着くための、解の最初の式を得た。
 迷うことはあるまい。たかがオブリビオン一体、何するものぞ。
《――触れれば即死の符、そして猛毒の無差別攻撃。
 大技を用いれば、影絵を以て反撃する……ゾッとしないな》
 そんな風に"らしい"ジョークの一つも飛ばして、肩をすくめてみせた。
 『彼』を知る者なら、きっとその振る舞いに怪訝に思うかもしれない。
 だが"これ"も、ジャガーノート・ジャックもまた『彼』なのだ。
 別人でもない、無理やり演じているただのコピーでもない。
 彼が、彼の意思で、彼自身の心から生み出したもう一人の自分。
《――お前のような敵を滅ぼすことこそ、"本機"の仕事だ》
 思い描いた理想の鎧。強さも、弱さも、全て彼自身のものなのだから。
《――何も変わりはしない。いつも通り、ミッションを開始する》
 ゆえに兵士は、なんら恐れることなく、砂嵐を後に突き進んだ。

 魘魅師としては実に忌々しい、胸糞悪いといったところ。
 玩弄に揺らがぬ鋼などまさにその最たるもの。だからこそかき混ぜたい。
 はらわたを抉り出し、臓物をかき混ぜて苦痛と絶望に喘がせてやろう。
 なぜならば呪法こそ我が得手。消えぬ呪いを、疵としてもたらしてくれよう!
『大言壮語にならねばよいのですがな――!』
 呪符が放たれそして消える。再び現れたそれらはまるで地雷のように。
 不規則な間隔をおいて、空中や床に仕掛けられた死の罠の網。面影糸。
《――……"そうするだろうと思っていた"》
 ジャガーノートはセンサを最大鋭敏化、これらの呪詛の位置を把握する。
 皮膚感覚を信じ、未来予知じみた分析力でことごとくを回避してしまう。
『何』
 ZZZAAAPPP!! 放たれた熱線を回避、即座に模倣!
 影絵が立ち上がり、砂嵐を"纏って"ジャガーノートへ襲いかかる!
《――粗悪濫造は本機の沽券に関わる。"複製とはこうやるのだ"》
 ぞわり。吹き荒れた砂嵐の内側から、ジャガーノート自身の複製が出現。
 影絵が砲塔を展開するコンマ数秒、先んじてこれと接触相殺爆発する!
『なんだと』
 ではこれだ。逃れる先などなき毒の雨嵐を食らうがいい!
 吹き荒れる暴威を前に、ジャガーノートは――銃を、構えた。
《――いじましきかな、"見えている"》
 ZAP.ZAP。ZAP。本命は毒霧に紛れての白兵戦とすでに看破している。
 熱線は飛び石めいた敵の軌道を読み切り、うち二条が足を貫いていた。
『うぐっ!?』
 なんだこれは。この猟兵にこんなことができるはずがない!
 威力を頼みに襲いかかり、すべてを破壊するのではないのか!?

 ……たしかに、ジャガーノートとはそのために生み出された。
 だが揺らぐことなき水面が、凪の海が進むべき道筋を描き出し。
 どんな時でも皮肉る冬の静寂が、ふざけた模倣を叩いて砕き。
 己を穿いた黒き絶望の慧眼が、狙い穿つべき敵を教えてくれた。
 彼らならそうしただろう。ジャガーノートにはそれがわかる。
 模倣? たしかにそうとも。いかにもふざけた複製(コピー)だ。
 けれどもそれは、ジャガーノート自身の経験に裏打ちされた彼の力。
 たとえその根源が誰かのものでも、それを纏いて振るうは鋼自身。
《――お前は本機の手の内を知ったのかもしれない。だが》
 積み重ねた経験は、そう簡単に盗み取れるものじゃない。
 だってそうだろう? 経験値(EXP)ってのは、ゲームじゃそういうものだ。
 時間と、思い出と、経験と……知識は、プレイヤー自身のものとなる。
 "EXP"-ectation(エクスペクテイション)。築き上げてきたものは彼の裡に。
『莫迦な』
《――聴いたことのある捨て台詞だ。陳腐だな》
 ZZAAPP。トリガを引く指先に躊躇はない。だが重みはある。
 それを引く意味を噛み締めて、たしかに鋼は敵を穿いた。

 風が吹き抜ける――晴れるべき砂嵐は鋼のあとに。
 ノイズごときでは、もはや黒金の獣を捉えることなど出来ないのだ。
 その閃光の如きスピードは、大切な獣の友から受け継いだものだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
◆③②
◆匡(f01612)/灯(f00069)と

危機に陥った灯の元に上空から降下して駆け付け、攻撃をインターセプト
「オイオイ、俺の脚本に無いことをするのはご法度だぜ?
 ──待たせたな、灯」

ん?あぁ、アイツか
アイツなら(狙撃が飛んできて)あの通りさ
奇しくもあの時の再現みたいになったな?
まぁ、任せろよ
筋書きは俺たちの勝ちさ
俺の脚本は、揺るがないんだぜ?

飛ばして来いよ、呪符をな
テメェがどれだけ情報を集めたか知らねえが…
"俺の手札は無限にある"
食らえば即死?いいね、燃えてきた
【覚悟】はできた
【おびき寄せて】冷静に、そいつを受ける
死んだと思ったか?悪いな…これが俺なりの【カウンター】さ
受け取れ!匡!灯!


鳴宮・匡
②③
◆ヴィクティム(f01172)/灯(f00069)と

屋敷に近い、視界の取れる高所を探して待機
目立たぬよう迷彩し、息を潜めて待つ
あの時と同じ状況だな
今回はちゃんと居場所を伝えてあるけどさ

真の姿を解放、強化五感で観察に徹し
相手の癖や隙を晒すタイミングを予測
タイミングを見計らいアサルトライフルで狙撃
意識の外から撃たれれば、さすがに多少は響くだろ
不意を打って粗方撃ち込んだら一度位置を変える
さすがに相手も目と意識が慣れてくるだろうしな

ヴィクティムの支援が来る前に二つめのポイントに布陣
支援を受けてから灯の一撃にタイミングを合わせる形で再度の狙撃

……視られるのは嫌いなんだよ
ツケは払ってもらうぜ、命でな


皐月・灯
②③
◆匡(f01612)/ヴィクティム(f01172)と

オレの魔術は対象に接触する必要があるって、読まれてるな。
この糸目野郎、逃げに徹して毒を……。
くそ、視界が霞む……意識が……。
……負けるかよ。送り出されてこれじゃ、話にならねーだろ……っ。

!?
あ……ヴィク、ティム。
っ、お前……、遅せーんだよ。……あいつは?

……ふん。また人を利用しやがって。
……なら最後まで踊ってやるさ。付き合えよ。
一人一人の手の内は知ってても、同時に対処できるかどうか、試してやろうぜ。

【全力魔法】を発動、【ダッシュ】で距離を詰める。【捨て身の一撃】だ。
オレは死に体だぜ、狙ってこいよ。
先に逝くのはてめーだがな!
……幻想、開帳!




 ティル・ナ・ノーグからもたらされたデータは、流星めいて降り注ぐ。
 それを掴んだ猟兵たちは、ここにも居た。

●"勝利"の条件
 幻釈顕理(アザレア・プロトコル)にはひとつ大前提がある。
 それは術者の魔術回路をサーキットとする関係上、標的と接触しなければ魔術を作用させられない、という点だ。
 無論、無生物――たとえば地面だとか――を殴り飛ばし、飛礫めいて破片を飛ばす、などという搦め手も出来はする。
 しかしすべての動作が『接触』を前提としているからこそ、この顕理は『体術を以て魔術を行使する』という矛盾を解決できるのである。

(――読まれてるな)
 皐月・灯は舌打ちした。だがまあ、それは想定の範囲内だ。
 たとえ手の内が暴かれたとして、敵の予測より疾く鋭く動けばいいだけのこと。
 ……灯にとって最大の誤算は、魘魅師もまたただならぬ達人であったことだ。
 呪術師でありながら、その体捌きたるやそこらの武芸者では比較になるまい。
(呪力によるブーストと、遠近を兼ね備えた術式、ね)
 まるでそれは、他ならぬ灯自身の闘法と酷似してすらいた。

 だからこそわかる。忌々しいが、認めざるを得ない。
(オレひとりじゃ勝てねぇ)
 たとえ影とて、それは本体と同じ力、同じ術式を持つ分身体。
 つまりひとりでかかるには手に余る敵だ。しかしその数は不明。
 となれば、いちいち他の猟兵に支援を依頼する余裕など、当然ない。
『いかがなさいましたか、少々動きが鈍りがちのようですが?』
「うるせえ」
 嘲るような笑みに対して吐き捨て、灯は魔術回路の励起に集中した。
 ……だが、妙だ。一秒を数えるたびに、四肢の動きが鈍くなっている。
 体力切れ? 莫迦な。この程度でへばるようなやわな鍛え方はしていない。
 ではなんだ。呪符による攻撃は避けている。影絵の模倣も――いや。
「……毒、か!」
 にやり。深まった彼奴の笑みが、灯にとっての答えとなった。
 真綿で首を絞めるようにじわじわと、それとわかるように緩やかに。
 しかし、確実に。奴は大気中の猛毒の散布濃度をじりじりと高めていた……!

 視界が霞む。四肢に力が入らず、魔術回路の出力が低下していく。
『まだ意識を保っているとは。驚嘆に値しますなあ』
 うるせえ、と減らず口を叩こうとしたが、唇がわなないて吐息が漏れただけ。
 だがこれほどの長時間、熾烈な攻防を続けながらなお耐えているのは、
 魘魅師にしては珍しく正直な感嘆と賛辞を示したつもりらしい。
 ……嬉しくない話だ。つまりやつは勝った気でいるわけだ。
(負ける、かよ)
 気力を振り絞る。魔術回路が魔力をリレイし活力を吹き返そうとする。
 だが拠り所となる大気が、もはや眼でわかるほどに毒されていた。
 呼吸を取り込めば取り込むほどに灯の生命活動は弱まる。魔力も然り。
「……負けられねーんだ、よ……!」
 膝をつかないようにするのが精一杯だった。奥歯を噛み締めて耐える。
 ここで斃れたら。送り出された意味がないではないか。

(これじゃ、話にならねーだろ……っ)
 閉所(ここ)ではジリ貧だ。灯は己の無様をあえて耐え、敵に背を向ける。
 あべこべの通路を飛び、あるいは駆け、とにかく開けた場所を目指した。
 空気だ。毒素さえどうにかできれば反撃のしようがある。空気さえ!
『――と、お考えでしょうなあ』
 はたして、たどり着いたのは城内の中庭である。
 たしかに開けた場所に出た。だが敵もそれは予測済み。
 狙いすましたかのように、辺り一帯が可視化されるほどの毒で満たされていた。
「っ、ぐ」
 咄嗟に口元を抑える……なんの意味もないとわかっている。
 この毒は皮膚からも染み込む超常の毒。この緩やかな死すらも玩弄の裡か。
「ふざけ、やがって……っ」
『いい意気をしておられる。――私はそういう方を尊敬いたします』
 魘魅師の口元には嗜虐の笑み。灯のような若者をこそ絶望させるに値する。
 もはやこれまでか。揺らめく視界、陽炎の奥から来るように魘魅師が近づく。
 斬首か、心臓を引き抜くか。どのみち避けられまい。それでも灯は抗う!

 ――ここで起きた事象は、なにも狙いすましたものではない。
 灯がこの瞬間まで孤軍奮闘し続け、自らの判断で中庭へ移動したこと。
 その二つがなければ間に合わなかった。彼は、"待つ戦い"に勝利したのだ。

 そして何が起きたか? まずはじめに、魘魅師が斬首の手刀を繰り出した。
 しかし振り上げたその手が、ブロックノイズめいたなにかに覆われて固定された。
『これは』
 瞠目した魘魅師の周囲に現れるノイズ。電脳魔術! これは!?
「オイオイ、俺の脚本に無いことをするのはご法度だぜ?」
 声は頭上からした。魘魅師は追撃を警戒し、呪いでこれらの障害を溶かす。
 灯の介錯を諦めつつも、飛び退りながらの呪符の雨あられ。用意周到。
「だからよぉ、せっかくの場面を台無し(ホース)にしちまうってんだよッ!」
 2秒も必要ない。瞬き一つ――それすらも彼には不要か。
 一瞬で無数の白亜の壁が"彼"の前に生まれ、呪符のことごとくを妨げた。
 灯の茫洋とした視界に、大して背丈の変わらない少年の背中が映る。
 けれども今このときは、165cmの体は巨人のように頼もしく雄々しく見えた。
「あ……ヴィク、ティム?」
 名を呼ばれた少年は、渾身のアイロニカルな笑みで振り返る。
「――待たせたな、灯」
 少年の名を、ヴィクティム・ウィンターミュートと云う。

●いつかのリフレイン
 魘魅師は訝しんだ。あの小僧は、たしかに紫陽衆に呑まれたはず。
 生還したのか。……まあいい、それでも手の内は知れている。
 なにより、見よ。あの通り、小僧はたったひとりではないか。
「っ、お前……遅せーんだよ」
 灯の減らず口にも勢いがない。毒素のせいか、あるいは。
 いずれにしても彼もヴィクティムを見上げ……ふと、片眉を釣り上げた。
「……あいつは?」
「ん? ああ、アイツか」
 ヴィクティムはなんてことのないように言った。魘魅師はにたりと笑う。
『残念ですねぇ、ご友人を亡くしてしまわれるとは』
「アイツなら――」
 魘魅師はすでに百以上の呪符を束ねていた。意識の間隙に放たれる鏃!
 だがヴィクティムは振り返らない。代わりに……音もなく降り注ぐ弾雨!
『何っ!?』
 呪符が千切れていく。蛇めいてのたうつ銃の雨はそのまま魘魅師へ!
『く!』
 まるで回避する先を見透かしたかのような、精密で執拗な射撃であった。
 魘魅師はつかの間渋面を浮かべる。少なからぬ弾丸がその身を削り取る。
「――とまあ、あの通りさ」
 ヴィクティムはそのざまを親指で示しながら、ニヒルに笑った。

 ……呪殺城、数多ある屋根のひとつ! 巧妙に死角となった陰の中!
(ま、こんなとこか)
 じとりと、影の中に蒼が浮かんだ。それは澄み渡った海の水面めいて。
 いかにもそれは、もう一人の猟兵――すなわち、鳴宮・匡の双眸である。
 ただでさえ鋭敏な五感を持つ彼は、そのリミッターを外すことで、
 もはや未来予知を越え確定じみたほどの精密な演算と予測を可能とする。
 息を潜め、主にすら気付けぬほどに気配を消し、この一瞬を待っていた。
 無論、これで仕留めきるつもりはない。匡はすぐさま影から影へ渡る。
(リアのほうは――この様子なら、うまくやってるだろ)
 ヴィクティムと匡の転送、そして最適な狙撃スポットの策定。
 以て、敵の癖や予測行動データ……これらは、彼らのビジネスパートナー、
 やや先立って"影"との戦いを終えた、電脳少女からもたらされた結果だ。
 後輩のことが気がかりではあるが、彼女がいるならば大丈夫だろう。
 匡は端的にそう決めた。それは、無感情に切り捨てるのとはまた違う。

 この手の狙撃において、もっとも重要なのは狙撃ポイントの確保だ。
 一箇所に固執するなど下の下。あらゆる状況に対応できるよう、
 複数のポイントを指定し臨機応変に動いてこそのスナイパーと言える。
 当然ヴィクティムと灯は、匡の支援と監視なしに敵と渡り合うことになる。
 慢心か? 否。では、匡は戦友たちを無感情に数値として見ているのか。
 これも、否。……それはつまり、ありきたりな言葉で云うなら。
(あいつらなら、大丈夫だろ)
 信頼と呼ぶべき、"凪の海"らしからぬ情動だった。

 気配を隠した匡による狙撃。そしてヴィクティムと灯の共同戦線。
「奇しくも、あの時の再現みたいになったな?」
「……ふん」
 この世界で繰り広げた、ちょっとした戦いの折のことだ。
 あのときは互いに、示し合わせるでもなくなし崩しに戦った。
 今はどうか。……灯は、いちいちそれを口に出すことはない。
「また人を利用しやがって」
「悪くない演出だったろ、チューマ」
 皮肉めかして少年は笑い、敵にちらりと眼を向けた。
「まぁ任せろよ。筋書きは俺たちの勝ちさ、俺の脚本は揺るがないんだぜ?」
「……少しは悪びれろっつーの」
 大言壮語ここにあり。何もかもがヴィクティムの算段かと言えば、否。
 だが彼の想定通りだとするならば、是。つまりこれもまた、"信頼"である。
 彼らは信じた。灯が屈することなく、きっとここへ来るだろうと。
 灯もまた信じた。ふたりが、必ず生きて駆けつけるだろうと。
 この仕切り直し、大逆転の前触れは、まさに三人が勝ち得た当然の潮流!
「なら最後まで踊ってやるさ。付き合えよ」
「シャル・ウィ・ダンス? ってか。ハ、チルだな!」
 ふたりの少年の視線が、歯噛みする敵をねめつける。決然たる戦意!
「ひとりひとりの手の内は知ってても、同時に対処できるかどうか試してやろうぜ」
「いいね。そりゃ"経験済み"だからな、俺達(アサルト)はよ!」
 ハッカーは呵々大笑した。そこで、敵が動いた!

 魘魅師は希望を嫌う。未来を嫌う。ありきたりな光を嫌う。
 この小僧らはまさにそれだ。忌々しい。引き裂いてやらねば気が済まない。
 あの勝ち誇った若造を呪い殺してやろう。挑発に敢えて乗ってやろう。
『あなたの――貴様の手の内は、知れていますよ!』
「へえ。そりゃいい。あいにく自分でも数えるのが億劫なのさ」
 Arseneの手札は無限。いちいちカウントしてたらハングアップしてしまう。
「喰らえば即死? いいね、燃えてきた。さあ、かましてみろよそいつを。
 俺の筋書きをお前が書き換えられるかどうか、確かめてみなスクィッシー!」
『ほざけェッ!!』
 灯は駆け出す。ヴィクティムは避けない、だが声をかけることもない。
 あの時のリフレインならば、彼が何をするかはわかっているからだ。
 そしてヴィクティムは――そう、あの時のように、呪符を真っ向から受ける。
 "かもしれない"という不安はねじ伏せた。ビビる心を凍てつかせる。
 だからこその冬寂(ウィンターミュート)。タフに笑って睨めつけろ!

 殺(ト)った。
 呪符は完全に叩き込まれた。呪詛はあの若造を脅かしている。
 さあ、腐り落ちて死ね。五臓六腑を吐き出し七孔噴血するがいい!
 魘魅師は勝利の確信に笑い――そして、目を見開いたまま驚愕した。
「死んだと思ったか?」
 若造は生きていた。
「悪いな――これが、俺なりの反撃(カウンター)さ」
 端役は自ら悪党をやっつけたりはしない。お膳立てを整えるだけ。
 打ち込まれた呪詛はたしかに強い。"だからこそ"食らってやったのだ。
 サイバーアームが内側から輝き、電子のエネルギーを放出する!
「さあ主役ども、仕事の時間だぜ! 受け取れ匡、灯!!」
 リース・プログラム"デュランダル"。なげうつ輝きは神話の聖剣の如く。
 片方は疾駆する灯へ。もう一方は第二の狙撃ポイントに布陣した匡へ!
『貴様らッ!!』
 ぞわり。ドーム状に毒霧が溢れかえり中庭を脅かした。
 ヴィクティムは即座にガス無効化プログラムをランさせ飛び退る。
 灯はどうだ? 臆さず走る。魘魅師の血走った視線が彼を捉えた!
(そうだ。オレは死に体だぜ、狙ってこいよ)
 いい面をしていやがる。灯は不敵に笑う。魔術回路が意思を受けて励起する。
 MDナーヴ・サーキット、アクティブ。
 エレクトロ・ナビ・カリキュレータ起動、脳負荷セーフティライン。
 励起(リレイ)、疾走(リレイ)、注力(リレイ)。
 意思は胸に。魔力は拳に。観されるは幻釈の理法! 疾走は一角獣の如く!
『貴様から、死ねッ!!』
「先に逝くのはてめーだがな! 幻想、開帳――!!」

 同瞬間。蒼銀めいた双眸は、しかと敵を捉えていた。
 ハイパースローモーションカメラめいて、細切れになった時間が流れる。
 靜かだ。なんのノイズも、障害も、悩みも存在しない刹那の一瞬。
 心地よいとは思わない。忌まわしいとも、思わない。フラットな静謐。だが。
「――視られるのは嫌いなんだよ」
 湧き上がった思いは言葉にして吐き捨てた。指先は冷静に。
 企業秘密を見られたというのなら、せいぜい対価を払ってもらわねばなるまい。
 そして、取り立て人の弾丸は音もなく放たれた。

「《猛ル(ユニコーン――」
「ツケは払ってもらうぜ――」
 拳が振るわれる。精密なる死の運命が同時に飛来する。
 避けようとした。防ごうとした。どちらも叶わぬ。不可能だ。
 何故? ――それはたったひとつのシンプルな理屈。
「……一角(ドライブ)》ッ!!」
 炸裂。断末魔すらなく、光芒がつかの間空を灼く。

 硝煙がたなびくなか、狙撃手はひそやかに呟いた。
「これが、俺らの仕事(やくめ)なんでな」
 あいにく彼らは強すぎる。道程(マイルストーン)にもなりやしない。
 それはいかにも、希望を嘲笑う邪悪への最高の皮肉めいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヌル・リリファ
わたし、さっきのやつあたりたりてないんだ。
あなたは敵だし。遠慮なく殺すよ。

人形が、成長しないとおもったら大間違いだよ?
そんなのならわたしは最高傑作なんてよばれない。

わたしも、眼はいいから。(右眼を指差し)
今日はいろいろみれたからね。演算装置が【学習力】でまなんだぶんを、過去の【戦闘知識】とあわせて、あたらしい剣術として昇華する。
UCで攻撃力を強化。そのうごきを再現できる自分になって、ルーンソードできる。

……ただのけんなら、今日みたひとたちにまけるかもだけど。このけん、魔術刻印で色々できるようになってるんだ。(戦闘に役立ちそうな機能を適当に作って頂いて構いません)

わたしの“剣術”、みせてあげるよ



●人形の見たもの
 仏教に曰く、三千世界に"五眼"と云うものあり。
 肉身――つまり俗世の体に宿る肉眼(にくげん)を初めとして、
 それらは諸世界に住まう衆生の在り様によって名と意を異とする。
 天眼とはそのうち、色界に在りし天人――善き人々のそれだという。
 人形に与えられた蒼瞳には、そのような名前が付けられている。
 たしかに人形は無垢で無邪気だが、あいにくその身は血塗られていた。

 ……呪殺城!
 壁も天井もあべこべになった通路にふたつの影あり。
 ぱちりと、人形――ヌル・リリファの、無機質な瞳がまたたく。
 対する魘魅師の影は、やはり笑み。嘲笑、嗤笑、憫笑、どれでもありどれでもない。
「わたし、さっきのやつあたりたりてないんだ」
 見てたなら知っているよね、とヌル曰く。魘魅師はくく、と喉を鳴らした。
『ご自身の姉妹を模倣されたのがそんなに腹立たしいですか』
「……あなたは敵。だから、遠慮なく殺すよ」
 問いかけは切り捨てた。答える意味がない、ゆえに一蹴する。
 おそらくやつはこちらを見くびっているのだろう。
 人形ならば底は知れていると、たかを括っているのだろう。
 それ自体がヌルにとっては業腹である――怒りというものはよくわからないが。

 記憶なき人形は最高傑作を自認する。それに足る能力はたしかにあった。
 天眼が視て学んだものを、即座に新たな術理として昇華する。
 血の滲むような鍛錬に励む達人が聴いたら、匙を投げたくような話だが。
「わたしには、できる」
 ルーンソードを構える。指先で刀身を靜かになぞる。
 古めかしい魔法文字がほのかに輝き、まず焔の赤を内側に孕んだ。
「わたしは、最高傑作だから」
 次いで水の蒼。
「わたしには、その機能があるから」
 そして風の緑。
「――ただのけんなら、きょうみたひとたちにまけるかもだけど」
 三色は混じり合って解け合い、しかし別の元素として内側で渦巻く。
 構えはいかにも素人じみている。いかなる流派とも異なる隙だらけの……否。
『ほう』
 剣気と似ているが、しかし異なる"圧"がじわりと周囲を包んだ。
 それは膨れ上がった魔力のプレッシャー。がらんどうのような膨大な力。
 刻印された魔術は、ヌルの身体能力を高め剣速を増す。
 振るう剣風は半里先にすら届き、刻みつければその後は燃え上がろう。
「わたしの"剣術"、みせてあげるよ」
 絶対の自信がある。だからヌルは躊躇なく踏み込んだ。
 風、焔、そして水の魔力が後に続く。魘魅師はにこりと微笑む。

 ことここに至って、奴はヌルの神経を逆撫でした。
 つまりは影絵を編み上げ、彼女そっくりの姿を生み出したのだ。
『お行きなさい』
 いかにも影法師は人形めいて、鏡像のように構えてヌルに対峙する。
 踏み込む。袈裟懸け――応じるかの如き逆袈裟と交錯した。
 ごう。烈風が吹き荒れて銀色の髪を揺らす、踵を返してからの逆胴。
 打ち合う。手首のひねりを使って抉りこむような刺突――絡み合う切っ先。
 影と剣とが撃ち合い、防ぎ合い、拮抗――いや。魘魅師は眉根を顰めた。
「いったよね」
 打ち合うごとにヌルの太刀は鋭さを増し、より重く疾くなっていく。
「わたし、やつあたりがたりてないって」
 影は対応しきれない。やがて焔が影にちらつきそして燃え上がらせた。
 少女の姿が消える。魘魅師は即座に呪符を――いや、遅すぎた。
『がっ』
「あなたはわたしたちを模倣した。それが、マスターを侮辱してる」
 深々と突き刺さった剣から致命の魔力を流し込み、ガラス玉めいた瞳で見つめる。
 睨む、とは違う。あいにく敵意のたぐいは双眸に宿らない。
「マスターをばかにすることは、ゆるさない。敵は殺す。それが――」
『……人形(あなた)の役目、ですか。ふ、は、はは』
 最期を悟りながら、しかし魘魅師はことさらに嘲笑を浮かべた。
『それで? あなたの主どのはどんな御寵愛をくださるやら……』
「…………」
 問いかけの答えはない。答える必要が……ない。そうだ、不要だ。
 魔力を励起する。炎が笑みを飲み込み、そして滅ぼしていった。
 だが最後まで奴は笑っていた。何を? 何故? わかる。いや、わからない。

「…………わたしは、マスターのくれたものを証明するだけ」
 ひとり、少女(にんぎょう)は平易な声音で呟いた。
 問いかけに応える必要など、ない。そんな疑問は必要ない。
 ――なのにどうして。最後の声が、いつまでも消えてくれないのだろう。
 それはまるで、歯車に混じった小石のように、少女の胸に沈殿していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
【②希望】【ワンダレイ】で参加

悪魔の切売りのUCで右腕を悪魔化させ戦う。呪符は【見切り】と大鎌での【武器受け】、【なぎ払い】で防いでいく。自分を除く周囲の空間にかかる重力を10倍にして呪符が届かないようにもしてみようかな。
「というか、呪符多くない?近づけないんだけど…。」

仲間が来てくれれば突破出来そうなんだけどなぁ…。
「…っと、遅かったじゃん。道が混んでたの?」
よし、反撃開始かな?

敵さんにかかる重力を一気に100倍にして動きを封じてから、悪魔の見えざる手でボディをぶん殴り、大鎌で首をぶった斬ってやる。ついでに【吸血】も。

「ワンダレイアタックー的な感じでどーん。」


夜暮・白
【ワンダレイ】【③②希望】

この大鎌の傷は…… あ、見つけた!

[忍び足]で敵に近づいてまずは綺羅針を投げよう。お待たせしました! 今度は符にも―― って手の内がバレてる? なら杖を回して銃の構えに。[誘導弾]で夜野さんが取りこぼした符を掃滅します。
機動もワイヤーフックを駆使し、見切られそうなら【夢現のまじない】で呼んだ神霊にワイヤーを弾かせ複雑に動こう。

もう呪符も尽きますよね? よし。いい視界です! 味方が動きやすくなるよう話しかけて注意を引くよ。

莉亜さんの悪魔が殴ったところで神霊に服や杖を持たせて囮に。タールの体を活かした最速の【シーブズ・ギャンビット】で、どーんと傷にダガーを押し込みます。


尾守・夜野
【2,3】【ワンダレイ】

大量の呪符が降り注ぐ中ずたぼろで【床(天井)】からふってくると同時にUC起動。
須藤が一手動けるだけの時間を稼ぐ。

「わりぃな。道に迷ってた」


一度見られてるんだ。すぐに対策とられるだろう。
だから見せてない手を使う。取り込んだのを相手に返す。
さて出口(冥府)はあちらだ!

相手の邪魔になるように戻ってきたスレイに乗って上からばら蒔こう。

ばら蒔く奴の中に普段入れてる包丁だとかの調理器具、タンス、ベッドだとか諸々混ざるかもしれんが…それは後で拾い直す。
ついでに上手いこと重力の影響受けるようにNagelで鉛弾もプレゼントだ。ヒラヒラの服の裾を縫い止める。

ワンダレイアタックの足止め担当



●三位一体・ワンダレイアタック!
 呪符がほとばしる。それはまさしく波擣のごとき量と勢いだった。
 しかも一枚一枚に致命の呪いがかけられているのだ。
 無論、彼――須藤・莉亜ならば、しのげる呪詛ではあるが無傷ではない。
「ああもう、うざったいなあ」
 けだるげにしかし苛立たしげに言いながら、大鎌を振るう。
 大気もろともこれを切り裂き、軌道を見切って間合いを詰める。
 その右腕はヒトでも鬼でもない、禍々しい悪魔のそれに変じていた。
「飛び道具は反則じゃない?」
 めきり――骨が軋んだ瞬間、周囲の重力が一気に増した。
 床は自重に耐えきれずにひび割れて、呪符のことごとくが地に落ちる。
『ほう、これはこれは!』
 間隙が空いたか。驚嘆する魘魅師へ一気に接敵――否、莉亜は踏みとどまる。
 直後、彼の目の前に伏していた符が一斉に『起き上がった』のだ。
「浮遊機雷じゃないんだからさあ、器用なことするよね」
『まじないのひとつも出来てこその魘魅師でございますゆえ』
 ぴくり。人を喰ったような笑みと物言いに莉亜の片眉がわずかに震える。
 だが戦闘意欲は飲み込む。狂乱すればおそらく相手の思う壺だ。
(仲間が来てくれれば突破できそうなんだけどなあ……)
 ここに至るまでの礎となったふたりは今どこにいる。
 無事だと確信している。彼らはそうやわではないからだ。
 しかしそう簡単にたどり着いてくれるか? まるでカートゥーンじゃないか。
「ちょっとばかりジリ貧なんだけどな……っと」
 大鎌が切り払う。呪符が……呪符が! 無限めいて殺到する!
「これ、紙吹雪じゃないんだから……」
 軽口もやがて途絶え、口元はへの字に曲げられた。
 圧殺で来たか。ユーベルコードの生成物である以上、数は実質的に無限。
 重力で押し殺したとしても次が来る。魘魅師はにやにやと笑っている!
 わずか数メートル。これを詰めて一撃を決めてやればいい。
 それが出来ない。符が千を超えた――もはや万事休すか!?

 ごがぁんっ!!

 その時、突如としてふたりの間の床――いまでは天井だが――が、崩落した。
 何が起きた? 魘魅師はわずかに意識をそらされた。莉亜は平気な顔で受け入れた。
 それが岐路となる。現れたのは青白い肌のグールドライバー!
『貴様――ぐっ!?』
 普段なら気づけたはずだ。背後に忍び寄っていたその気配に。
 しかし突然の闖入が集中を妨げ、結果として奴はダガーの一撃を受けた。
 綺羅針とは言い得て妙。背中側の脇腹に刺さった刃がヤツを苛む!
 振り返る。即座に杖を翻し銃の構えをとったブラックタール……!!
『おの、』
 呪符を引き戻し放とうとした。はたしてそれはひとつも意思に従わなかった。
 何事かとそちらを見る。朱い双眸の青年が、魔法陣に符を"飲み込んでいた"。
「遅かったじゃん、道が混んでたの?」
「いや、わりぃな。道に迷ってたのさ」
 彼――尾守・夜野は、莉亜の軽口にそう答えて。
 魔法陣を消し、再び出現させる。己の眼前、魘魅師めがけて。
「さてこいつは看破済みだろ? だから返してやるよ――出口は、あちらだ!」
 吸い取られた呪符が、別世界から魔法陣を出口としてほとばしる!
 これを見切っていたブラックタール――夜暮・白はすでに回避態勢。
 ワイヤーで器用に遮蔽を取り、まさに波濤の如き呪符の群れを凌いでいる。
『貴様らぁああああっ!!』
 魘魅師は激昂した。呪詛の力はヤツ自身が誰よりも知っているのだ!
 当然、術式を停止して呪符を消さざるを得ない。その時白はふたりのもとへ!

 莉亜は、いちいち無事を確認したり喜んだりはしない。
 彼は信じていた。現実がそれを証明した。ただそれだけのこと。
「三人勢揃いですね!」
「いや――三人と一体、だな」
 天井の穴から駆けつけた魔馬を撫でながら、夜野は不敵に微笑んだ。
「なら、反撃開始かな?」
 莉亜が言った。白と夜野はうなずき、敵よりも先に行動する!
 呪符はない。だが奴は新たな呪詛――毒を振りまこうとしている。
「あいにくですけど、もうおしまいですよ?」
『ほざけ、貴様らごと……きっ!?』
 白の挑発に乗ったのが運の尽き。途端に倍増になった重力がやつを襲う。
 立っていられないほどの高圧下、すでに夜野はNagelを構えていた。
「そのままじっとしてろよ。せっかくの見せ場なんだ」
 BLAMBLAMBLAM!! 弾丸はまるで虫止めのピンめいて敵を釘付けに!
「名付けるなら――うーん、ワンダレイアタック的な感じで、どーん」
『がはぁっ!?』
 悪魔の見えざる手が、動けない魘魅師の腹部に強烈なブロー。
 たまらずくの字に折れたところへ、死神じみた鎌が振り下ろされる!
 魘魅師はとっさにこれを防ごうとし、気づいた。
 懐に潜り込む小さな影。きらりと煌く短剣を構えた少年の姿に。
「ほら――もう何も、護るものはないですよね?」
 それは死刑宣告じみていた。魘魅師は何かを吠えようとしたが、
 鎌と刃が同時にその呪われた存在を終わらせ、かくて滅ぼした。

「連携成功、いえーい」
 いつもの様子で嬉しいんだか嬉しくないんだかの様子でバンザイする莉亜。
 白は合体攻撃などというシチュエーションがたまらないのか、割とテンションが上がっている。
「かっこよかったんじゃないですか、僕たち!?」
「ま、悪くはねえかもな」
 夜野は相変わらず。主の高揚を代理するかのように、魔馬が高くいなないた。
 それは、紛れもなく勝利の雄叫びだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
【①希望】

…まったく、ヤなもの見せられたわぁ…

これだけ派手にドンパチ暴れまわったんだもの。
そりゃ手の内も割れるわよねぇ…
けど、ま。やりようはあるのよぉ?

〇破魔〇属性攻撃で呪符を撃ち落としながら、〇スナイパーで●鏖殺を撃ちまくるわぁ。
狙うのは…敷居・鴨井・欄間に柱、先に撃ちこんだ銃弾。
銃弾の通るラインを空間的に〇見切って、徹底的に〇地形の利用した跳弾で三次元飽和射撃を叩き込むわぁ。
多少は〇毒耐性あるけど、長期戦は論外。
超短期決戦仕様で一気に踏み潰すわよぉ。

…黒曜式射法、火筒の参・瑪瑙が崩し、天眼。…なぁんてね。
さっきまで外だったから、知らなかったでしょ?
あたし、実は屋内戦のほうが得意なのよぉ?



●魔弾の射手
 過去からは逃げられない、おまけに長生きすればするほど積み上がる。
 当然の如く、思い返したくもないものも沈殿していくことになる。
「だからねぇ……別に恨んだりはしてないのよぉ?」
 きりきりと緊張感が張り詰める広間にて、ティオレンシア・シーディアは言った。
 そうとも、何もオブリビオンをいちいち恨むつもりはない。
「けどねぇ、ヤなもの見せられたら――ね? わかるでしょお?」
『なるほど……お可哀そうに』
 かすかな苛立ちが見え隠れするティオレンシアの言葉に、魘魅師は笑う。
 奴は常にそうだ。対峙した相手を玩弄し、嘲笑するモノゆえに。
 それでいいとフィクサーは思う。――どうあれ殺すのだから。
「あんだけ派手にドンパチ暴れまわったんだもの――けど、ま」
 常と変わらぬような笑み。しかしてそれは殺意の顕現に他ならぬ。
「"やりよう"はあるのよぉ? こういう生き方してるとねぇ」
 そして、文字通りに火蓋は切って落とされた。

 まず先の先を得たのは魘魅師である。当然のように呪符が集まる。
 数は百以上。閉所に於いては回避移動が限定される分脅威的だ。
 だがティオレンシアは臆することなく、当たり前のようにリボルバーを構えた。
 ……BRATATATATATA!! アサルトライフルじみた矢継ぎ早の射撃音!
『む――』
「六発撃ったら終わりだなんて、そんなことアレが決めたのかしらぁ?」
 リボルバーである。わずか六連装の、つまりは回転式拳銃だ。
 だが、一瞬にして百近い連射が放たれ、呪符はすべて焼け落ちた。
 ファニング、そして神速のリロード。銃口は魘魅師を捉え――奴が消えた!
「甘いわねぇ」
 BLAM!! 敵がいないことをわかっていてティオレンシアは引き金を引く。
 カン――カカ、カカカカカンカン!
 奇妙な音だ。ピンボール台めいた音。これは一体!?
「言ったでしょお? やりようがある、って」
 先の呪符に対する布石すらも、この状況のための環境づくりである。
 ティオレンシアに魘魅師の姿は捉えられない。捉える必要が、ない。
 呪符を迎撃するためにばらまいた弾丸が、あちこちに突き刺さっている。
 これをこそ見切り、ただ一発だけ撃ち放った弾丸が跳ねて反射していく。
 "弾丸を楔とした跳弾"! 神業――いや、もはや悪魔的な射撃技術だ!
 バスッ! 背後を取ろうとしていた魘魅師の肩を弾丸が撃ち抜いた!
『がッ』
「まだ欲しいかしらぁ?」
 BRATATATATATA!! カカ――カカカカカカカカッ!!
 どこからだ。どこから来る? 上下左右背後どこから!?
 魘魅師は必死に見切ろうとした。影絵を編んで弾幕を作ろうとした。
 なにもかもが遅きに失した。ちょうど二秒後、奴は全方位から同時に蜂の巣にされて……滅んだ。

「――黒曜式射法、火筒の参・瑪瑙が崩し、天眼……なぁんてね」
 きざったらしいガンスピンをして、ふっと硝煙を吹き消す。
 あの人を食ったような笑みに対する皮肉、嫌がらせだ。女はにたりと笑った。
「手の内を読んでても、さっきまで外だったからわからなかったでしょ?
 ――あたし、実は屋内戦(こっち)のほうが得意なのよぉ?」
 ストリートでは、己に慢心して読み違えたヤツから死んでいく。
 此度も同じこと。熟練のフィクサーにしてガンマンは、いつも通りにこなしただけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラグ・ガーベッジ
【①結社A班】
「……」
髪の先を指先で弄り回し
叱られた後の子供のような顔つきで佇んでいる

「俺の手の内はお見通しか」

「そうかよ」

ブチブチと髪を引き千切り
「そういう訳知り顔で見透かすようなセリフが一番ムカつくんだよ俺ぁよぉおおおお!!!!」
積もった鬱憤を撒き散らすかのような咆哮と共に
髪や肌の表面が沸き立ち、次から次へ数えきれない程の武器が宙空へ生み出される

「手数が足りねぇだぁ?」

敵の呪符を床や壁に縫い付け防ぎ
「全部ぶち込んでやらぁ!どれか効くだろぉ?あ”ぁ”!?」
無数の武器をけしかける

攻撃範囲の都合上、視界外からの攻撃に無防備になるが

戈子が防ぐ

「……テメェが仕事するなんざ分かりきってんだよババア」


アダムルス・アダマンティン
【結社A】1希望
連中を配した理由が手の内探りか
馬鹿馬鹿しい。あの忍びたちに戦士としての我、我としての誇りはなかった。しかし、奴らは紛れもなく戦う者だった
それをそんな馬鹿げた理由であたら命を散らせるのは戦う者らの侮辱と知るが良い

ラグの解決は当座のものだ。克服すべき問題はまだ多い
ペル。必要に応じてラグの援護をしてやれ。周りをよく見られるのは、貴様だ

刻器解放。封印を解き、ソールの大槌をPM形態トールの創槌へと変化させる
俺の手の内はまだ知らせていなかったな
ならば今、ここで。とくと味わうが良い
刻器真撃――トールの創槌よ、理を啓け
貴様の呪符と創槌の雷撃、果たしてどちらが先に尽きるか根比べと行こうではないか


伴場・戈子
【結社A】【待たせたな!】
クソガキどもが敵の攻撃を食らいそうになってるところで、その攻撃をアンチノミーの矛で打ち払うようにして登場しようか。

やれやれ。勢いを持っていかれたら不利ってのを、ゴリ押しでねじ伏せる気かい?クソガキの浅知恵とはいえ、一理はあるかね。
どうだいアダム、これはアンタのいうところの「己の問題を克服」に入るのかねェ。

ほらペル、クソガキに負けてんじゃないよ、思いっきりやってやんな!

……っと、アタシが追いついた以上、アンタたちに攻撃を通しやしないさね。
奴さん、手札の種類と観察眼に自信があるんだって?面白いねえ、アタシもそうなのさ。
どっちが先に根を上げるか、根比べといこうじゃないか。


ペル・エンフィールド
【結社A】【1希望】
まったく…ラグは素質は高いのにどうして力技になるですか…
婆様もアダムルスもやる気みたいですしペルも巻き込まれない様にしないとですね

ん?ラグの援護ですか?了解なのです。ラグ、年下をお手伝いできる良いお姉さんに感謝するですよ

へぇ、ペルの技を見きったですか!それは凄いのですよ
それじゃ…もっと本気で行っても良いですね!
貴方が見たのはペルの力の一端、それで全てを分かったつもりなんてナンセンスなのです!
全力のペルの一撃を受けてみるですよ!



●影との戦い/Ⅰ、Ⅲ、Ⅶ、Ⅸ
 ――結社の面々のうち、三名が魘魅師の影と相対していた。
 場所は通路。まるで図ったかのように――事実罠か――前後を塞ぐ影ふたつ。
「……挟み撃ちか」
 アダムルス・アダマンティンは、驚いたふうもなく状況を俯瞰した。
 こちらは三。戦力を割くとしたら自らが一、ふたりをもう一方にやるべきか。
「ペルを閉じ込めたつもりになるとか気に食わないのですっ!」
 一方で、"Ⅸ"たるペル・エンフィールドはご立腹である。
 自由に空を舞い獲物を狩ることこそ、彼女にとっての誉れであり本懐。
 アダムルスの指示がなければ両者を同時に相手取って暴れるつもりだろう。
 ――いや、その心配はないか。アダムルスは、彼女を見てそう落着した。
「…………」
 ラグ・ガーベッジ。"Ⅶ"たる幼子はまるでふてくされた子供のように。
 無言で髪の毛をいじりながら、どちらを見るでもなく無言を貫いている。

「……俺の手の内はお見通し、か」
 そんなラグが、ふと、ぽつりと呟いた。それは独り言めいていた。
『いかにもその通り』
『そのための免状、そのための忍どもにございますれば」
「そうかよ」
 心ここにあらずといった様子のラグに対し、反応したのはアダムルスだ。
 巌のような眉根が顰められ、鋭い双眸がぎらりとそれぞれの影を睨む。
「馬鹿馬鹿しい。あの忍たちに、戦士としての"我"や誇りはなかった。
 しかし、奴らは紛れもなく『戦う者』だった」
 主命のために存在を賭ける。オブリビオンとて見上げたものだ。
 あるいはそれこそが忍者とやらの生き様か。どうあれ詮無きことである。
「そんな馬鹿げた理由であたら命を散らせるのは、戦う者への侮辱と知るがいい」
 ――アダムルスは無表情で無言、それでいて常に冷静沈着。
 ゆえに彼は無感情で無慈悲と思われがちだが、その実は逆だ。
 権能の大半を喪ってなお、戦いを選んだ――選ばれた者であるがゆえに、
 器であろうとヒトであろうと、その使命に応えるモノには敬意を払う。
 漆黒の双眸の奥で、熾火めいて地獄が燃え上がる。靜かな憤怒である。

 だがアダムルスは、深く呼吸しこれを沈め、己の礎とした。
「アダムルス、やる気なのです?」
「……敵は倒す。当然のことだ」
 ペルは肩をすくめた。靜かな迫力が彼女の憤懣を鎮めたか。
 否である。彼女と彼は感じていた。これまで無言を貫く彼女の怒りを。
 くるくると、唇を尖らせたまま髪をいじり続ける問題児のふつふつたる怒りを。
「手の内はお見通し。ね。へえ、そうか。そうかよ――」
 ……子供の癇癪というのは、まるで海の天気に似る。
 全く突発もないように見えて、その実積もり積もったものが爆発するのだ。
 今回もそうだった。ラグは突然、髪をがっちりと掴み引きちぎったのだ!
「そういう訳知り顔で! 見透かすようなセリフが!!」
 ぶちぶちぶち。髪がちぎれる痛みも意に介さず吠える。ぶちまける。
 ざわざわと全身が沸き立ち、数え切れないほどの武器が"生まれた"。
 これこそテセウスの箱の権能。だがそれはいわば煮え立つ溶岩のあぶくめいて、
 なんの統一性もない、アトランダムで野放図な精製である。
「――俺ぁ、一番ムカつくんだよぉおおおおおおお!!!!」
 咆哮。アダムルスもペルも、やれやれといった様子で頭を振る。
「手数が足りねぇだぁ? 上等だコラァ!!」
 武器が切っ先を向け、ふたつの影に同時に炸裂――まるで爆発めいて!
 雪崩込むような戦端、敵は呪符でこれを防ぎ行動を開始する。
「まったく、ラグは素質が高いのにどうして力技になるですか!」
「仕方あるまい。ラグの解決は当座のものだ、克服すべき問題はまだ多い」
 淡々とアダムルスは言い、ぐおんとソールの大鎚を担いだ。
「ペル、必要に応じてラグの援護をしてやれ」
「ん? ラグの援護ですか?」
「周りをよく視られるのは、貴様だ」
 アダムルスはお世辞を云うようなタチではない。これは正当な評価だ。
 なにより己の能力を自認するペルにとってはなおのことである。
 彼女は目に見えて気分を良くした。ばさりと翼をはためかせる!
「了解なのです! ラグ、年下をお手伝いできるいいお姉さんに感謝するですよ?」
「うるせえんだよッ!! せいぜい標本にならねえように飛び回りやがれ!!」
 罵詈雑言を吐きながらも、自然とラグの攻勢は一方の影へ向かう。
 これでいい。アダムルスはうなずき、不意打ちを画策していたもう一方を睨む。
 これでいい。――彼一人で、影は事足りるのだ。

●"Ⅰ"
 アダムルスは神である。だがその過去を語ることはない。
 多くの秘密を秘め、常に先頭に立ちナンバーズを率いる寡黙なる男。
 巌の如き男。されど彼は、特に苛烈に戦いを挑むことが時折ある。
「俺の手の内は、まだ知らせていなかったな」
 うっそりとした声とともに、恐るべき神代の大槌が脈打った。
『ほう、あれが全てではない――と?』
「当然だ」
 なぜならばアダムルスが選ばれたるは、これなる大槌に他ならぬ。
「貴様は戦う者を、武器を振るうものを侮辱した」
 傲岸たる神は、死刑宣告めいて重々しく端的に告げた。
「ゆえに見せてやろう。クロノスウェポンの先を。
 そして今、ここで。貴様が視たがったものを、たっぷりと味わうがいい」
『…………』
 言語化しがたき威圧感に、魘魅師は笑みを消して身構えた。
 呪符の備えがある。なんなら毒を吹きかけ、影を模してやってもいい。
 正面からわざわざ宣告するなどいかにも愚かな武芸者そのもの!
「刻器"真"撃――トールの創槌(そうつい)よ、理を啓け」
 ……影は知らぬ。これなるナンバーズたちが振るう武器の"先"を。
 クロノスウェポン。クロックウェポンが目指すべき完成形。
 神代の大槌には、しかしてみだりに振るうべからざる"もう一面"がある。
 ごご、ご――ごきん。大槌が。変貌していく。地獄の炎に包まれて!
『なんだ、それは』
「我々はこう呼ぶ――"夜の間(PM)"とな」
 ゆえにその銘は大槌に非ず。槌が示すは創造と破壊、神々の域の御業。
『なんだ、それは!』
 恐慌すらしていた。影は千に届くほどの呪符を、壁めいて放った。
 波濤である。アダムルスは無造作に踏み出し、槌を振るった。
 ばち、ばち、ばちり――爆ぜたそれはプラズマか? 是、しかし否。
 より根源的……すなわち物質の最小単位、原子と分子を操る力。
 神にのみ許された御業。何もかもを滅ぼし、生み出し、また壊す権能。
 符が。呪詛など蚊ほども果たすことなく、ボロボロと崩れていく。
 ……アダムルスは神である。その過去はけして語ることはない。
 だが彼は、戦う者の誇りを、武器を振るうことを侮辱した敵をけして許さぬ!
『う、おおおおお!!』
「貴様の呪符と、創槌の雷撃――はたしてどちらが先に尽きるか」
 根比べなどとは片腹痛い。雷に始まりも終わりもないのだから。
 呪詛も何もかもを最微塵(クォーク)に分解し、神は悠然と踏み出す。
 ばちばちと雷光が荒れ狂った。それは全てを滅ぼした。
 断末魔の、残響すらもこの世に存在を許さず。影を跡形もなく消し去った。

●"Ⅶ、Ⅸ"――
 一方でペルとラグはどうか。……案の定、というべきだろう。
 ラグ――テセウスの箱の力は、まさに"一器当千"。生み出されるは無数の刃。
 それはラグ自身であるがゆえに、切り離されたとて縦横無尽に動く。
「ありったけかませばよぉ、どれかは効くだろぉ? あ゛ぁ゛!?」
『それはまったくごもっとも、ですが――』
 呪符もまた無限。縫い留められ切り裂かれど次から次に呪詛は溢れる!
「ラグ! もう少し下がるですよ!」
「うるせぇえ!!」
 死角を丁寧に飛び回りペルが呪符を払うが、それでも限界はある。
 厄介なことに、魘魅師はわざと緩急をつけて間隙を見せラグを誘う。
 当然ペルの声が入るはずもない。前のめりは捨て鉢に、やがて猪突猛進へ!
「そのヘラヘラした面ぁ!! バラバラに切り裂いてやらぁぁあああ!!」
「ああもう、ラグ――」
 ラグが迂闊をした。ペルはそのサポートのために飛び込んだ。
 ……その時である。二人の背後に、呪符がふわりと現れた!
「何」
「ふぇ!?」
 まるで浮遊機雷めいた罠。波濤のなかにこれを伏せて仕込んでいたか。
 ラグの猛攻は影へのみ一方に向いている。つまり、避けようが……ない!!

 ――がが、ぎぃいんっ!!

 込められた呪詛のあまり、鏃めいた鋼に変じていた符を、
 まるで食いちぎるかのようにして一条の旋風が薙ぎ払った。
「勢いを持っていかれたら不利ってのを、ゴリ押しでねじ伏せる気かい?
 クソガキの浅知恵とはいえ、一理はあるがね」
 やれやれと云った様子で、符とふたりの間に割って入った老婆は云う。
 破滅と創造の残照に佇むアダムルスは、その姿を見返した。
「どうだいアダム、これはアンタのいうところの"己の問題の克服"に入るのかねェ」
「……少なくとも、教訓が増えたのは確かだな」
「ハッ! 違いないねェ!」
 これなるは短針のⅢ砕けたる戈――アンチノミーの矛なり。
 担い手の名は伴場・戈子。姿を消したはずのナンバーズのご意見番!
「婆様!」
「チッ」
 喜ぶペルと対称的に、ラグは舌打ちして睨み返した。
「……テメェが仕事するなんざわかりきってんだよ、ババア」
「ハ! 吠えるじゃないかねクソガキ。元気なようでなによりだねェ」
 三人の誰も、戈子が無事であることを訝しみはしなかった。
 魘魅師の他には。それがもはや、趨勢を示していると言ってもいい。
『どのようにして生き延びたのやら、いやはや!』
 ぞわり――猛毒の波が襲いかかる! これは千の武器でも凌ぎきれない!
 ゆえに戈子が前に出た。ずしん! と矛を床に突き刺し、立ちはだかるのだ。
 ただそれだけ。にも関わらず、可視化された毒は……すべて遮られた!?
『何!?』
「見ときなクソヤロウ。これが、大矛(アタシ)が"くにつくり"の名を冠されてる理由さ」
 にたり。凄絶なる笑みはまさに鮫のごとし。
 そして毒の霧は、まるで跳ね返されるかのように矛より吹き出していく!
『ううおおおっ!?』
「ほらペル、クソガキに負けてんじゃないよ、思いっきりやってやんな!」
「オイババア、俺は」
「口を動かすより手だよ。アンタは特にねェ」
「……チッ!!」
 ラグが再び武器たちを生み出し、一気に攻めにかかる。
「いいのですね? じゃあ、もっと本気で行くのです!」
 ストラスの大爪が燃え上がる! 閉所を舞い踊るさまは魔鳥の舞踏めく!
『なっ、疾い!?』
「あなたが見たのはペルの力の一端――それで全てをわかったつもりなんて、
 ナンセンスなのです!  全力のペルの一撃を! 受けてみるですよ!!」
 幻惑的軌道。呪符を壁めいて放ちこれを防ごうとする魘魅師。
 だが降り注ぐ無数の武器がこれを許さぬ。よしんば届いたところで、見よ!
「あいにくだが、アタシが追いついた以上この通りさね」
 立ちはだかる矛はまるで壁のように。
「手札の種類に自信があるんだろ? 面白いねえ、アタシもそうなのさ。
 ――"どっちが先に根を上げるか、根比べといこうじゃないか"ね」
 アダムルスはふとそれを見やり、ふんと鼻を鳴らした。
 神は人を試すもの。たとえ邪悪であろうと例外はない。なぜならば!
「テメエなんざ一山いくらの雑魚なんだよォ!」
「あなたでは、ペルの疾さには追いつけないのですよ!」
 若きナンバーズの力は、呪いなど切り裂き燃やし微塵に帰すほどなのだから!

 ……そして猛烈なる攻撃は、呪いもなにもかもをねじ伏せた。
 影は断末魔を残し、疵の一つも負わせることなく滅んだのだ。
「なァアダム」
「なんだ」
 サングラス越しに、老婆はニヤリと同胞を見やった。
「現役引退は遠そうだねェ?」
「……いや、それはどうかわからんぞ」
 神々は若き担い手に何を思うか。ただ、ふたりは少女たちを見守るのみ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリア・マリーゴールド
【結社B】【②:連携技!(ほのかと)】

よーやくさいごのワルワルさんデスネ!
結社のみんなとも会えてよかたデスっ!

oh!今度はほのかがマリィ使うマスか!
がってんスシ!……違うマス?
がってんしょーち、デス!
刻器転身!
……あ、やさしくつかて下さいマスね!強くつかんだらやー!デス!

あ、コージョー言うマス?むー、長いからチョと苦手マスヨ!上手く言えたら褒めてデスー!

『我が身を委ねしは“闘争”』
『咎を払うは炎!』
『「ⅡとⅩは必罰を示す刻の音!」』

ふふ、Oui!"信じる者は救われる"デス!マリィ、ほのか信じマス!

『断罪闘争』
『火刑マリアージュ!』

"――浄化の聖火を以て汝の咎が清められん事を。Amen."


灰炭・炎火
【結社B】【②:連携技!(マリア)】
一回攻撃して避けられて、これじゃ駄目だと気づいたあーし!
…………じゃやめーた! えい!(ニャメの重斧を敵に投げつけて)

マリアちゃーん! 力貸して! 一緒にアイツをやっつけよう!
だいじょーぶ、あーしの力は、壊したいものしか壊さへん!
信じてくれる? じゃあ――いくよ!

「我が手にするは“断罪”」
「罪を裁くは断首」

『「ⅡとⅩは必罰を示す刻の音!」』

「刻器“信”撃――――」
「『火刑マリアージュ!』」

ギロチンソードで十字にぶった切った相手を、消えない炎が焼き尽くす!



●影との戦い/"Ⅱ、Ⅹ"
 まず最初に魘魅師と遭遇したのは、灰炭・炎火のほうである。
 そしてご存知の通り、彼女は天禀の怪力と超重量こそが唯一の武器だ。
 そこに技巧や作戦は介在する余地がない――必要がないからである。
 とはいえ何事にも限度がある。たとえばそう、それを完全に見切られた時などは。

「おりゃあー!!」
 ゴッ、ガァアアアアアンッ!!
 あべこべの城を解体工事じみて破壊しながら、ニャメの重斧が振るわれた。
 天災じみた破滅である。尋常な者ならば立ち合いどころではない――が。
『お見事お見事。では――どうぞ、再演を』
「はー!?」
 炎火は目を剥いた。敵は無傷! それどころかそもそも範囲にいない!
 その上奴は即座に影を編み上げ、炎火を真似て解き放ったのだ!
 ぐおん――ゴバッ!! オリジナルには劣るが破壊の度合いは圧倒的!
「なにそれ! なんであーしの攻撃避けるん!?」
『食らったら死んでしまいますからねぇ』
 それとわかっていれば、畢竟ようは規格外の斧それだけである。
 ただ十分に距離を取り、こうして言葉で弄して惑わせればそれでよい。
 魘魅師にとって、ともすると炎火はもっとも御しやすい猟兵であった。

 ……の、だが。それは理解が足りなかったと言うべきだろう。
「そっかー。…………じゃやめーた! えい!!」
『は!?』
 ぐおん――隕石じみた悠然さで超質量が、投げ放たれた。
 ありえない! 己の唯一の獲物を匙を投げるように放り投げるなど!
 そう! 炎火はたしかに単純でお味噌が足りない。逆を言うと短気なのだ!
 いちいち手こずるのに固執せず、さっさと切り替えてしまう。
 はっきりいってバカなのだが、バカなりの利点というものがある。
 ごがぁああああん……!! 広間の崩落と引き換えに、魘魅師はそれを知った。

 が、奴とてこんなアホな最期を迎えるわけはない。
 炎火がぐるんと振り返ると、そこには折よくマリア・マリーゴールドの姿!
「Oh! ほのか、ひとりで戦てたデスか? マリィお手伝いするデス!」
「ナイスタイミングー! マリアちゃん、力貸して!」
「Oui! オヤスミゴヨーデス!」
 それを云うならお安い御用、なのだが、あいにく訂正役がいない。
 ここにはズレた天然とお味噌がアレなのしか居なかった。つまり地獄だ。
「一緒にアイツやっつけよう! ほらあいつ!」
「……? Oh! あれデスね! ワルワルさん発見デス!」
 めちゃくちゃに崩れた瓦礫のむこう、敵らしき影が立ち上がった。
 ……気、がする。斧になにか毒づいてこっちに来る、気が……する。多分!
「ア、でもほのかがマリィ使うマスか?」
「うん!」
「がってんスシ!!」
「あーし寿司大好き!!」
「マリィもデス! オスシ大好きデース!」
 ご覧のように地獄のようなボケ合戦が始まるのである。セレナリーゼはどこだ。
 さておきマリアは意気揚々と刻器転身……しようとして。
「……あ、やさしくつかてくださいマスね! 強くつかんだらやー! デス!」
 そんな言葉に、炎火はにぱーっと笑った。
「だいじょーぶ、あーしの力は、壊したいものしか壊さへん!」
「なら安心デス!」
「信じてくれる?」
「当たり前ダンシンオールナイト! デス!」
「あーし踊るのも好き!」
「マリィも大好きデース!」
 話が無限にそれていくが、それはそれとしてマリアは転身した。
 そして炎火は、白亜の断罪刃を掴む。燃え上がるギロチンソード!

『き、貴様、貴様らは……』
 さて、ここでようやくほうぼうの体の影が戻ってきた。
 そして瞠目する。妖精が振るう、燃え上がる白き刃の威容に!
『さあワルワルさんをちょっぷちょっぷ! デース!」
「あ、マリアちゃん、口上言わんとね!」
『コージョー言うマス? ……むー、長いからチョと苦手マスヨ!』
「だーじょぶだーじょぶ、うまく得たら褒めたげるやんね!」
『Oui! それじゃあ行くマスよ――』
 かくて朗々たる名乗り。それはまるで別人のように。

『我が身を委ねしは“闘争”』
「我が手にするは“断罪”」
 魘魅師は呪符を束ね上げ、二つの影絵を生み出す。マリアと炎火だ。
 だがなお燃え上がる炎は、そう! まぎれもなく破邪の大火!
『咎を払うは炎!』
「罪を裁くは断首――」
 ごぉう! ギロチンソードがエンジンめいて火の粉を散らす!
『「ⅡとⅩは必罰を示す刻の音!」』
 刮目せよ。これなるは武器と担い手の、正しき姿。
 本来、長針と短針は一対にして不可欠の存在。担い手なくして武器はなく、
 逆もまた然り。互いに示す刻限はことなれど、今このときは心を同じくする。
 つなぐは神にあらず、示す姿は真に非ず。なればこの業、銘をこう呼ばう――。
『死ねェ!!』
 怒りの魘魅師が影を、呪いを解き放つ。襲いかかる呪詛と害意!
「刻器"信"撃――」
 炎火が口訣を切る。炎の翼をはためかせ猛然と邪悪に挑む!
『断罪・闘争』
 ⅡとⅩ。合わせた力は信によって繋がれた。叫ぶがいい、その銘!

「『――火刑、マリアージュッ!!』」

 つまりはそれは、闘争をもって邪を払い罪を濯ぐ一撃である。
 振るわれた剣閃は十字。これらは影を、呪詛の網をまるごと叩き切った。
 剣風に煽られ、消えぬ炎が燃え上がる。影を……敵を、灼き尽くす!
『が、ぁあああああああっ!?』
 断末魔は高らかに。やがてそれも炎に呑まれて消えていく。
『――"浄化の聖火を以て汝の咎が清められん事を。Amen."』
「えーめん! めん!!」
 祈りは、いまいち片割れの格好がつかないが。
 ともあれ刻の力は、まさしく邪悪を滅ぼし尽くしたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セレナリーゼ・レギンレイヴ
【結社C】

どこ行くのかと思ったら
一人でなんて水臭いですよ、もう
術師一人ではありますが、護衛の手間はとらせません

これが“バロール”、瞳に魅入られたものを食らう魔物ですか
記憶を食らう弾丸の雨に、それを魔術で再現することによる波状攻撃

さて
今までずっと見ていたのでしょう?
私ね、考えたんです
武術の腕は無難な程度
詠唱には時間がかかる
この緊張は、慈悲は、不安は、いつか致命的な隙になる
だからそう、それを知る貴方は一人たりとも残しません

ビリウット様、
気にせず撃って構いませんので、どうか巻き込まれぬように

“書”よ
私の身を捧げます
情も慈悲も今は不要
願うは敵の討滅のみ
契約に則り、唯、敵を討ち給え


アドリブ、歓迎です


ビリウット・ヒューテンリヒ
【結社C】



…おや?セレナ、どうしてここに?
いやね、私の能力だと…仲間を邪魔しかねないのさ
だから別行動しようと思ったのだけど…まぁいいさ

さぁ、起きて
───"バロール"

PM形態、解放
暴食の夜をここに降ろそう
こいつはまだ見せてはいないだろう?
どう対処してくれるのか楽しみだね

バロール、形態変化「アナイアレイション」
大口径の弾丸を秒間80発吐き出し続けるガトリングガンさ
勿論、弾は無限だよ?

そして、追蹤魔術を起動
このバロールが、この世界で
吐き出した弾丸を全て『再現』し、銃撃を空間に投影する

大丈夫、セレナを巻き込むなんて下手はしないさ
さぁ、覚悟したまえ
バロールの弾丸は、君の記憶と身体を『食い破る』のだから




 あちらではすさまじき破壊と、燃え上がる断罪の炎の音。
 こちらでは雷撃の残響と、雄叫びをあげる少女たちの声。
「……おや? セレナ、どうしてここに?」
 そんな中で、ビリウット・ヒューテンリヒはひとりであった。
 しかしビリウットを見咎めてついてきたのが、セレナリーゼ・レギンレイヴ。
「どうして、ではないですよ。どこへ行くのかと思ったら……」
 どうやらセレナリーゼは、他ならぬ自分を探しに来たらしい。
 ビリウットは苦笑して肩をすくめた。
「いやね、私の能力だと仲間の邪魔をしかねないのさ」
「……だからってひとりでなんて、水臭いですよ、もう」
 たとえ術士ひとりであったとしても、護衛の手間はとらせない。
 自分の身は自分で守れるとセレナリーゼは豪語し、ビリウットはまた苦笑した。
「なんですか、もう!」
「いや、笑ったわけじゃないよ。気にしないでくれ」
 プンプンと怒るセレナリーゼを宥め、ビリウットはついと視線を彼方へ。
 ……通路の向こう。空気すら歪めそうな呪詛の気配にセレナリーゼも気づいた。
「ビリウット様」
「ああ、ちょうどいい。じゃあふたりで始めようか」
「ええ!」
 影が視界に入る。嬉しそうなセレナリーゼをよそに、ビリウットは思う。
 ――彼女の優しさは、少しばかり危なっかしいかもしれないと。

●影との戦い/"Ⅳ、Ⅵ"
 魘魅師は笑っていた――だがそれもすぐに消えて失せた。
「さぁ、起きて――"バロール"」
 あの女魔術師は、薄く笑みながらそう唱えた気がする。
 なにか、恐るべきものが、それに答えて起き上がった。
 夜の間。クロックウェポンの暴走形態、御しきれぬ破滅。
 それは魔銃バロウズの一面。より暴食たる、魔王の如き獲物逃さぬ瞳。
 壁が、床が、天井が、無機物のことごとくが喰らわれ、滅んだ。
 それらは秒間八十発の弾丸となり、雨のように影を襲った。
 弾切れなど無い。無限じみた猛攻。――だが、まだ先がある。
 そもそも魔銃バロウズは、記憶の再現を特性とする武器である。
 ではそれが夜を迎えた時どうなるか。何が起きるのか。
『やめろ!』
 魘魅師は吼えた。防ぎきれぬ弾丸がかすめ、疵を作るたび、
 オブリビオンという過去の化身の、その根源が"食いちぎられる"のだ。
「――これが、バロール」
「そうとも、言ったとおりだろう?」
 半ば呆けたように惨状を見守るセレナリーゼに、ビリウットは微笑んだ。
 秒間八十発。ただでさえ途方もない弾丸は、その手で"再現"される。
 これこそが追認魔術。魔銃と噛み合ったとき、そこに地獄が生まれる。
 地獄がここにある。終わることなき銃撃の雨、もはやそれは嵐。
 防ぐは難く躱すは至難、受ければそれは記憶を食い破る。己のものとする。
 魘魅師は己の全能力を注いで、この終わらない地獄に挑んだ。

「――さて」
 それを、ただ見ているわけがない。
 オラトリオはきっと邪悪を見据えて、淡々と言った。
「今までずっと見ていたのでしょう? ……私ね、考えたんです」
 平野での戦い。武術の腕前は、あくまで尋常の域を出ない程度。
 では担い手としてはどうか。書の力を引き出す口訣は献身を必須とする。
 ゆえに即座の戦いには向かぬ。ビリウットは何かを言おうとした。
「私のこの緊張は」
 セレナリーゼは妨げた。淡々と続けた。
「慈悲は、不安は。いつか致命的な隙になるでしょう。だから、そう――」

 ……それを知る者は、ひとりたりとて遺してはならない。

「……セレナ」
「ビリウット様、どうぞ気にせず撃ってくださいませ。いえむしろ」
 あなたこそ、どうか巻き込まれませんようにと。
 淑女は言って、祈りを捧げた。書が、ほのかに輝いた。
「私の身を捧げます。情も慈悲も今は不要」
 無限じみた猛攻に抗う、哀れなるものを断罪することは慈悲だろうか。
 否である。無慈悲といっていい。セレナリーゼはそれを由とする。
 むしろ懇願する。敵の討滅。慈悲も容赦もなき滅びただそれだけを。
「…………」
「契約に則り――ただ、敵を撃ちたまえ」
 ビリウットはもはや口を開くことはない。ただそれを見届けた。
 刻器神撃。ミトロンの書は力を与える。淑女の姿が変じていく。
「……天の御遣い、か」
 神々しき輝きを纏うそれは、ガラス玉のような眼で敵を見た。
 弾丸の嵐の先、いずれ食い破られるであろう哀れな敵を。
 哀れ? 笑止。不要である。敵は滅ぼす――そう、このようにして。
『やめろ』
 魘魅師は懇願した。御使いはそれを無視した。
 弾丸を縫うように光の剣が生まれて迸り、呪符を裂いて毒を払った。
 影は叫んだ。おそらくそれは、断末魔であるはずの末期だった。

 ……ぎちぎちと音を立て、魔銃が本来の昼の姿を取り戻す。
 光はここになく。激甚たる滅びのありさまだけがそこに残る。
「長針のⅥ、示すは"献身"ね。いやはや」
「……ビリウット様」
「ん?」
 何気なく問われ、魔術師は淑女を見た。オラトリオは俯き、
 しかしきっと眦を決し、ナンバーズたる女を見返した。
 ナンバーズであること。武器を担うということ。
 その重みと意味を示すのには、いかなる言葉も無益だった。
 ただ決意を示した双眸と、複雑な色を称える瞳が、しばし交錯した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミハエラ・ジェシンスカ

してやられた、というわけか
手妻の種を舞台袖から覗き見るなど随分と卑しい真似をする
その上、斯様に商売道具を盗用されてはな

こうなっては新しい出し物を切る他あるまい
フォースセイバー、全段直結。超過駆動(オーバードライブ)!
城全体に絡繰があるというのなら我が【対艦魔剣】を以って城ごと全て断ち切るまでだ!



我が【対艦魔剣】はその光量、威力のために己が隠密性を代償とする
取り回しは悪く隙も大きいがだからこそ注視せずにはいられまい
これ見よがしに必殺武器を演出し注意を惹きつけた隙にセイバードローンで【だまし討ち】を行う

こんなものは邪剣ですらないただの誤認(ミスディレクション)
手妻における初歩中の初歩だ、口蜜腹剣



●戦士としての矜持
 ミハエラ・ジェシンスカは、邪剣使いである。
 反逆を使命とされたその身は、それ自体が矛盾の存在だ。
 ゆえに彼女が振るう剣が正道であるはずはなく。
 その剣が、正義をなすことなど決してありえない。

 だがそれ以前に――ミハエラは、ひとりの剣士である。
 ゆえに、此度の魘魅師の謀は、彼女にとって大いに不服なものだ。
 がぎ、がぎぎぎ――ぎゃり、ぎぎんっ!!
 影絵とミハエラ、合わせて四振四対。
 幾合めかの打ち合いは、やはり拮抗で反発し中断された。
「……してやられた、というわけか」
 にたにたと人を喰ったような魘魅師を前に、認めるのは業腹だが。
「手妻の種を舞台袖から覗き見るなど、ずいぶんと卑しい真似をする。
 そのうえ、斯様に商売道具を盗用されてはな――」
『失礼ながら、これこの通り武には疎いものでございまして』
 うそぶく声すら嘲りの色がある。ミハエラは無言で切り捨てた。
 たしかにミハエラは邪険使いである。それは左道の剣だ。
 しかしひとかどの剣士、騎士として思うところがないわけではない。
「――いいだろう、ひとつ興に乗ってやろうではないか」
 ぎらりと、朱いカメラアイが鈍く輝いた。

 がちゃん! 堕ちたる四振りの光刃が向き合わさる。
「新しい出し物だ、とくと愉しむがいい――フォースセイバー、全段直結」
 がきん、がきん、がきん――! おお、見よ。
 それぞれ別々のフォースセイバーが、まるでひとつに。
「……超過駆動(オーバードライブ)」
 ブウン、と音を立て、禍々しき理力が流し込まれていく。
 光刃が、伸びる。……延びる、延びる! もはやそれは槍、否!
『これは』
「貴様のその企みの結果がこの城だというのならば」
 刃は延びる。なおも。どれほどまでに伸長するというのか!?
「我が"対艦魔剣"は、城ごとすべて断ち切るまでだ――!」

 かくて生み出された刃、その渡りは数値で言うなら約700メートル余!
 影絵が模倣しようとする――遅い。そもそもからして"近すぎる"!
『ぬうっ!』
 もはや間合いも遠間も何もあったものではない。振れば、そこが決死圏だ。
 刃がさながら神話の大蛇の尾めいて、横に、縦に薙ぎ払われる。
 隠密性も、俊敏さもなにもあったものではない。巨大が故の死角。
『たいしたものでございます、がこれはいささか不便ですなあ!』
 魘魅師は嘲笑った。懐に飛び込むなど造作もないからだ。
 必殺の魔剣何するものぞ。無造作に踏み込み、本体をたた打てばいい!

「――と、貴様は思うだろう?」
 ぞん、ぞぞん、と。
 まるで誘蛾灯に群がる虫めいて飛び込んだのは魘魅師のほうである。
 死角から現れたのは、念動力によって制御されしセイバードローン。
『が、な』
「こんなものは"邪剣ですらない"」
 致命傷を受けた敵を、反逆の剣士は傲然と見下ろす。
「ただの誤認(ミスディレクション)、手妻における初歩中の初歩だ」
 魔剣顕現はそのために。……そう、ミハエラは、邪剣使いなのだ。
「口ほどにもないな、"口蜜腹剣"よ」
 秘めたる刃の鋭さ疾さ、そして容赦のなさ。どれも、たかが呪術師に比肩するはずなし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎
真の姿:14歳の頃の姿+黒い翼
髪膝裏まで

やってみなけりゃわかんねぇだろ
ダッシュで距離を詰め蹴りからの剣でまずは2回攻撃しようと
流石に近接が主ってのはバレバレだってか
符を見切りバックステップで避け
真の姿を開放して空中へ逃げる
そのまま符を狙う…―とみせかけちょっと反らし
大回りに回るように蒼ノ星鳥を放ち

…あのクソみたいな幻影のおかげで
10年続けた特技を思い出したよ
誘って煽って飽きさせないように
【囀る籠の鳥】のように
敵の意識を自分に集中させて
回りこんだ蒼ノ星鳥を後ろからぶつける
隙ができればこっちのもんだ
符は君との約束で弾き
全力の炎の魔力を乗せた拳で殴りつける

で、俺の手並みをどう見てたって?



●歌声は誰がために
 まっすぐに疾走し距離を詰め、ミドルキックを放つ。
 かわされた。当然、続く本命の剣戟も見切られきっている。
「チ……ッ」
 セリオス・アリスは牽制の切り上げと刺突を繰り出し、素早くバックステップ。
 直後、彼の居た場所に符が虫めいて殺到した。怖気の立つ光景だ。
「さすがにこの程度はバレバレだってか!」
 ぞわぞわと呪いは這い寄る。セリオスは躊躇なく真の姿を開放!
 その姿が一回り以上――14歳のあどけない双眸に代わり、背からは黒い翼。
 覆い隠すほどの髪がはためき、力強く大気を打って空へと逃がす。
『ほお、これはこれは』
 つい、と魘魅師の視線が追従した。セリオスは符の到来を予感する。
 当然普通ならば、厄介な呪符を切り払うのが定石であろう。
 ゆえにセリオスは翼を打って滑空――すると見せかけ、胸を反らした。
 ぐいん、とやや鋭角的なカーブを描き、大回りに符を躱し背後を取らんと。
「焼き焦がせ、蒼焔の星ッ!」
 ざん――虚空を裂いた剣閃が鳥の形の闘気を生み出す。
 はたしてそれは悠々とはためいて戦場を回遊し、雪崩を打つ呪符を燃やしていく。

『まるで籠の中の鳥のようですなあ?』
「…………ああ、そうだな」
 嘲りの言葉に、セリオスは靜かに呟いた。秘めるは憤怒。
 いかにも彼の軌道は、限られた鳥籠を精一杯に舞う小鳥のようにいじましい。
 逃れようがないのだ。彼の剣技は見切られているがゆえに。
 呪符は早晩、星鳥を飲み込んでセリオスに到達するだろう。
 脳裏によぎる過去。一度蓋を開けられたらあとは吹き出すに任せるのみ。
 吸血鬼の嗤笑。血。失われていく命。昏い夜、明けぬ空――。
「……ひとつよ、クソみたいな業のおかげで思い出したことがある」
 あの頃。自由を得るまで、セリオスは必死で生き続けた。
 生きるためには何が必要だったか? ……呪わしき鬼の寵愛である。
 殺したいほど憎い相手を、憎悪しながら楽しませる矛盾。
 はらわたが煮えくり返る。その憤懣が、ご覧――斯様な美しい声を、生み出す。
「さあどうしたよ! 籠の鳥なんて言う割にゃこの通りだぜ!」
 ことさらにあざ笑い、挑発し、謳うように声音を奏でる。
 魘魅師にとっては無視せざる誘惑だ。そもそも嘲笑と玩弄はやつの得手ゆえに。
 弄ぶべき獲物に嘲笑われる。そもそも奴はそれを我慢できぬ!
「それとも殺せねえのか? 俺みたいなガキ一人をよ!」
『……いいでしょう、ならば望み通りにしてさしあげます!』
 さらなる呪符を百。生み出し、鏃めいて鋭く放つ。
 セリオスに守りはない。いかに剣を振るったところで裂くには多すぎる。
(――いや、待て)
 魘魅師は高速思考した。あれは――燃え上がる闘気は、何処に?
 セリオスが笑う。嘲りの笑み……まさか。魘魅師は振り返る!
『貴……ぐおっ!?』
 遅きに失した。そのときすでに星鳥は高くいななきそこにいた。
 闘気が魘魅師を直撃し、セリオスは眼を見開く。――好機! 挑発はこのために!
「おぉおおおおっ!!」
 裂帛の気合を放って滑空。すぐ背後で符が炸裂した。
 呪詛の残滓を速度で払い除け、剣を――いいや、拳を! 強く! 握りしめる!!
「どうした、俺の手並みを見てたんじゃねえのか……よッ!!」
 心地よい手応え。やはりムカつくやつには"これ"に限る。
 怒りをたたえた炎の魔力が拳を覆い、頬を伝って彼奴の全身に移る。
 吹き飛んだ先で、いけ好かない輩はトーチめいて燃え上がる。響く断末魔!
「――ハ。聞くに堪えねえ歌声だな」
 吐き捨てて踵を返す。最期を見届けてやる価値もない。
 その一撃は、己の過去に対する決然たる宣戦布告でもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館・美咲
【①希望】
既にお披露目した技であるなら対策はとれている、と……。
確かに、目にも留まらぬ速さで切り付けても当たる位置に居なければ意味がありませんよね。
わかりますわかります。論理的に考えて貴方の対策は正しい。とても正しいです!
であるならば、同じく論理的に結論を求めるとすれば、切りつけるその瞬間に貴方の位置がわかれば、貴方の移動する位置が把握できれば良いということになりますね!

というわけで、ここが初お披露目ですよ!
この眼鏡に隠された機能、その一つ目。スチームセンサーくんの出番です!
蒸気で満たされた領域であればその全てを詳らかにしちゃいます!
さあ、私の目から逃れられますか!?



●ジェット居合流に敵はなし!
 きらりーん。館・美咲のメガネが意味深に白く染まって輝いた。
「すでにお披露目した技であるなら、対策は取れている……と」
 たしかに、いかに神速の斬撃を放ったとて、当たらねば意味はない。
 であれば間合いに入らなければいい。あるいは、起こりを察知すればよい。
 回避すら必要ない、術理が単純ならば単純なほど効果がある。
「わかりますわかります。論理的に考えて、あなたの対策は正しい。とても正しいです!」
『……お褒めいただくのはまことに嬉しいです、が』
 魘魅師の影は、目の前の猟兵の意味深な言葉をやや訝しんだ。
『さて、そうおっしゃるからにはなにか手があるとでも?』
 美咲は、ふふんとメガネを掛け直しながら胸を張る。
「であるならば! 同じく論理的に結論を求めればこうなります――。
 すなわち、斬りつける瞬間にあなたの位置がわかればいいのだ……と!」
 これも道理である。ようは相手の移動先が把握できればそれでよい。
 口にするは易し。だが、刹那を争う立ち合いの中で実現するのは至難なり。
 ……それを美咲自身もわかっているはずだ、だが彼女は自慢げだ。
 それはつまり。"実現可能だ"という確信があるに他ならない。

『いいでしょう、ならばその技の冴え、試させていただきますとも!』
 かくして魘魅師の影は、無数の呪符を百以上生み出し滞空させた。
 ひとつひとつが致命的な上、この数はそれ自体が障害となりうる。
 つまり死角を遮る攻性の壁! ……だがなおも美咲は、不敵!
『…………その驕慢もろとも、死ぬがいい!』
 魘魅師は本性をむき出しに、符の波濤を放った。どうするのだ剣豪よ!
「――ふふ」
 美咲は微笑みながらメガネをかけ直す……いや、見よ! あれは!?
「蒸気量十分、温度基準設定。眼鏡の曇り、なし」
 よく見れば、眼鏡には……蒸気エンジンが取り付けられている!?
 つまりこれはガジェット! レンズに映し出される無数の視覚情報!
「システムオールグリーン! スチームセンサーくんは快調です!」
 ぶしゅう、と蒸気が吹き出す。それ自体がソナーの役目を果たす。
 見据えるべきは符ではない。これは所詮目くらましなのだ。
 熱源探知――居た。符の影に隠れ、3時方向に回る敵の影!

 ――そして、見えたのならそれで仕事は終わる。
 呪符の着弾コンマ五秒前、ごしゅうとサムライブレイドが蒸気を吹いた。
 剣閃はまさに神速。――遅れて、苦悶の絶叫と滂沱の血!
『ば、かなぁあああ!?』
「言ったでしょう? 見えれば、わかればそれでよいと」
 ジェット居合流は無双の流派。防ぐことなど出来はしない。
「残念でしたね! これも蒸気の力です!」
 快哉は高らかに。亡びたオブリビオンの呪いも、蒸気に溶けて消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

竜石堂・はつら
とうとうここまでやって来ましたねっ!
あっちにもこっちにも口蜜腹剣さんっ、全部倒してお城を取り戻しましょう!

はつらさんは折角ですので中のお庭に行きます
そしてはつらさん、口蜜腹剣さんのUCの弱点、発見してしまいました!
それは…受け身のUCにはこちらも受け身のUCです!
人を呪わなければ穴は一つも開きません!

そしてこうなってくれば後は地力の勝負ですっ
今までは動の動きでしたが、今回は静の動きで対応していきますっ

はつらさんブレイドを構えて、一呼吸、相手を良く見て、抜刀。
力はあれど、それに任せず、流れに合わせて振りぬいて
力の続く限り頑張って行こうと思いますっ!
ちょっと疲れてしまっても力が抜けて丁度いいですっ



●はつらさん、悪を断つ!
 とうとうここまでやってきた。いかにもな悪の根城!
 影は無数、あちこちから猟兵達の戦いぶりが、鬨の声が響いてくる。
 竜石堂・はつらは、一切恐れなく臆することなく胸を張って歩く。
 向かう先は中庭。すでに幾度かの戦闘が繰り広げられたあとのようだ。
 そしてここにも影がひとつ。魘魅師、あるいは口蜜腹剣が振り返り――。
「はつらさん、あなたのユーベルコードの弱点を発見してしまいました!!」
『…………………………は?』
 唐突に過ぎるはつらの物言いに、さしもの魘魅師も素になった。
 手の内を見抜いているのはこちらだと、たしかに言ったはずなのだが!

 しかしてはつらは、一切己を疑わぬ満面の笑みで腕を組む。
 まだ弱点を言ってないのに、どや? てな感じのムカつく表情である。
『……いいでしょう、ぜひお聞かせ願えますかな?』
「あなたの呪法は、いわば呪詛返しのひとつ――つまり!」
 くわわっ。ヤドリガミは大きく目を開く!
「人を呪わなければ、穴は一つも開きませんっ!!」

 間。

『…………………………は?』
 あまりにも素っ頓狂、かつ自信満々な物言いである。
 はつらのほうは、どや? って感じでふんすと鼻息荒く昂ぶっている。
 攻めてくる様子は、ない。……じわりと、数秒のあと魘魅師は眉根を顰めた。
 なるほどたしかに、彼奴が編み上げる影絵は害意を以て呪詛を返す。
 であればそもそも威を与えねばよい。返すための呪詛がない。
 無論、符や猛毒による攻撃もある。だがはつらのこの笑みは、つまり。
『……私の符は、相手にならないと』
「そうですっ!!」
 いっそ晴れ晴れしいほどの即答である。なんと主観的な客観的視点(?)か!
 では彼女はまさか、話し合いかなにかでオブリビオンを説き伏せると?
 ――否である。つまり、はつらはこう言いたいのだ。
「"口蜜腹剣さんの技は、はつらさんには敵いません!"」
 ……と!

 超重量の刀を構え、はつらは腰を落として抜刀姿勢に入る。
 それだけで、天真爛漫な様子と裏腹に周囲に緊張が張り詰めた。
 魘魅師にもはや笑みはなし。いかにしてこの天敵をねじ伏せるか。
 絶望させるか――それだけを思案する。いいだろう、いいだろう!
 大言壮語のツケは払ってもらおう。呪い、毒に冒して殺すべし!
「ふー……っ」
 一方のはつらは、リラックスした様子で呼吸を整えていた。
 害意が膨れ上がるのがわかる。わざわざそれに付き合いはしない。
 怨念に怨念を返せば、さらなる敵が立ちはだかる。武の極意の一つだ。
 はつらは自然にそれをなす。ただ泰然自若とそこにあるのみ――そして!
 毒の波が、呪詛の符の雨が! まったく同時にはつらに襲いかかる。
 避けることも、防ぐことも叶わぬ波濤である。
 どうするという? はつらは――はつらは! するりと前に出た!?
 けして激しくない、まるでよどみなき水のような流麗な一歩。
 緩やかに見える――その実すさまじく疾い――挙措、そして抜刀。
 はつらはすさまじい怪力を持つ。それゆえにこの剣を振るえる。
 だが彼女が本気で刀を振るう時、そこに一切の力は存在しない。
 ただ見えない流れに従い、その一瞬を立つかのごとく剣を抜くだけ。
「――よしっ!」
 短い快哉。直後、ごひょうっ!! と竜巻が吹き荒れた。
 剣風である! 符が、毒が、ただ一度の剣閃で晴れていく!?
『ばか……な?』
 魘魅師は我が身を見て、眼を疑った。袈裟懸けの剣閃が傷跡を生んでいる。
「ごめんなさい! はつらさん、まだまだ影を倒さないといけないので!」
 にぱっ。少女の姿の化身は微笑んで、"たかが影ひとつ"に詫びてみせた。
 敵ですら、ない。それはけして大言壮語ではなかったのだ。

 もはや構うことなくはつらは踵を返し歩き出す。背後で影が風に溶けていく。
 その剣風、剛にして柔。なるほど、嘲弄の輩に敵うはずもなし……か!

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
明日真◆f01361と
アドリブ厨二ズタボロ歓迎
②希望

七つ道具から布出し肩の傷を応急手当
【煉獄の魂呼び】解除
【杜の使い魔】召喚
明日真の処へ行かせる
自分が居る所は分かる筈(気配や匂い、観察眼で多分

先に城へ到着
手薄な処へ駆け上がり影と対峙
敵の攻撃は第六感・見切り・外套でカウンター(即死の呪符は絶対食らわねェ
攻撃が上手く通らず防戦一方(剣で武器受け
前髪全下ろし
地形の利用し障害物を上手く使い反撃の機会待つ

クソ…厄介だぜ
俺の攻撃が読まれ…ぐ(乱暴に血拭い呼吸乱れ
(視界が霞んで歪む…

…遅ェンだよ馬鹿(弱く拳当て
信じてたがなァ

混乱に乗じ敵にフェイント入れて戦力削る
属性攻撃・2回攻撃で最後はバシッと連携技決める


柊・明日真
【アドリブ歓迎】
【杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)と行動】
【特殊ルール2希望】
クロウの奴め、わざわざこいつを寄越してくれるとはな。
急ぎで頼むぜ八咫烏!

クロウが召喚した八咫烏に乗って城内に突入、群がる影を【なぎ払い】で蹴散らしてピンチを救いに行くぞ。

まだいけるか?クロウ。
手を貸すぜ、こっから反撃に出るぞ!

こっちの手の内を知ってようが、避けられなけりゃ意味はねえよなあ?
UC《烈震の刻印》を《多重起動》で強化、【怪力】を乗せて全力全開でぶっ放す!
叩き潰せればそれで良し、討ち漏らしはクロウに追撃してもらうとするか。

大暴れして奴らの目を回させてやるぜ!




 肩の裂傷をきつく締め上げ、杜鬼・クロウは痛みに呻いた。
 いや、そんな場合ではない。戦友はいまも戦っているはずだ。
「古来より太陽神に司りし者よ、禍鬼から依り代を護られたしその力を我に貸せ――」
 読経めいた祝詞に従い、太陽の輝きが凝り固まりて八咫の烏へと変じる。
 その体躯、およそ十尺超。翼長においてはさらに上か。
「……我が命運に代わり、友の命運を汝に託す。頼むぜ、八咫烏(レイヴン)」
 暁鴉(ぎょうあ)は高く啼き、盟約に従い力強く羽ばたいていった。
 おそらくあれが、友を連れてきてくれるはずだ。――無事で、あれば。
「無様晒すンじゃねェぞ、明日真……!」

●影との戦い
 ……呪殺城!
 無限めいて伸びた階段を駆け上りながら、影ふたつが交錯する。
 がきん、がきっ――ぎぎん! ひゅっ、パパパパパッ!
 それはいかにもクロウ、そして魘魅師の影の戦いである。
 かたや魔剣を振るい、かたや徒手空拳で呪符を放ち毒をもたらす。
 呪いの質のあまりに鋼めいたそれは、魔剣と打ち合ってなお切れず。
「ッチィ、おまけに体捌きも達人級たァな……!」
『呪法だけでは物足りませぬゆえなぁ!』
 せせら笑う声が、いちいちクロウの神経を逆撫でする。敵の策だ。
 こみ上げる憤懣を四肢に込め、クロウは呪符を切り裂き毒を薙ぐ。
 合間合間に繰り出される拳、足! 峰で受けるが衝撃は大きい!
「ぐっ!!」
『あいや、頂きましたな』
「そうはいくかっ!!」
 みぞおちを打つと見えた掌底を乱暴な前蹴りで弾き、そのまま跳躍。
 激闘のあまりに髪は乱れて降りきり、いちいち整える暇すらない。
「クソッ! 俺の攻撃は読まれてる上にこの力量……厄介だぜ」
 障害物に隠れ、呼気を整えながらガン! と床を叩いた。
 どうする。これまで数十合を撃ち合ったがまるで通じたためしがない。
 それどころか徐々に毒が、あるいは模倣された影絵の斬撃が彼を苛む。
 げほげほと咳き込めば、赤黒い動脈血を吐き出した。臓器へのダメージか。
「……まだだ」
 萎えかけた戦意に力を込め、魔剣を杖に立ち上がる。
 頬を伝う汗混じりの血を拭い、唾を吐き捨てて頬を張った。
『残念ですがそろそろ終わりのご様子で』
「いいや、まだだァ!」
 目の前に現れた魘魅師の嘲りに、クロウは吼え返す。
 まだ、アイツが来ていない。ならば斃れている場合ではない。
 だが視界は霞む。さかしまの城がさらに万華鏡めいて歪む。
 毒のせいか、手傷か、疲労か。あるいはその全てか。
(まだ……斃れて、られるかよ!!)
 立っているだけでも驚嘆すべきタフネスと気力と言えよう。
 だがもはや、クロウを助けるものはどこにも……いや、影よ! 聞くがいい!!

「オラオラオラオラぁ!!」
『!?』
「――ハッ!」
 いっそ痛快ですらあるほどの鬨の声、矢継ぎ早の崩落音。
 そして高らかな暁鴉の鳴き声。羽ばたき音――八咫烏! そしてその背には!
「ありがとよ八咫烏、恩に着るぜ!」
 高らかに鳴く怪鳥の首元を撫で、剛斧を担いだ男が軽やかに着地する。
 無傷ではない。だが双眸に燃える戦意の、なんと熱く力強きことか。
「――悪い。待たせたなクロウ。まだいけるか?」
 柊・明日真。友を助けるため、太陽の化身に乗りてここに参上!
「……遅ェンだよ、馬鹿」
 弱々しく、しかし皮肉げに笑って減らず口を叩きながら拳で胸を叩く。
 共にただならぬ疵を帯びていた。気力と意地だけがふたりを支えていた。
「ああ。だが、わざわざあいつを寄越してくれて助かったぜ」
「たりめェだ――信じてたからな」
 男ふたり、視線を交錯させニヤリと笑う。不敵なる笑みこそ信頼の証。
 ……ものすごくかっこいいのだが、そもそものきっかけがアレであることは付記しておきたい。
 ものすごく心苦しいのだが、そこはご承知の上でお読みいただきたい!
 このふたりはどちらも巨乳派なのだ! 嗚呼!! 知らぬが仏!!

 ……ともあれ、事情はさておいて状況はシリアスである。
 そしていま、クロウの全身には燃え上がるほどの活力が溢れていた。
「手を貸すぜ、こっから反撃に出るぞ!」
「抜かせ――テメェが俺についてくンだよ!」
 男ふたり、邪悪なる魘魅師を睨めつけ、まったく同時に駆け出す!
『一人増えたところでむべなるかな!』
 魘魅師、影を編み上げこれを放つ。模倣するさまは明日真の剛力!
「手の内把握済みってか! だが刻印魔術を甘く見るんじゃねえぞ!!」
 明日真がここまでのんびり背に揺られて翔んできたと? 否である。
 思い出すがいい。先の崩落音、あれは明日真自身の手によるもの!
 豪斧が唸る――刻印が輝く! それは通常の何倍にもまばゆく!
『何!』
「烈震の刻印(ディザスタークレスト)、重ねがけの大盤振る舞いだッ!!」
 ゴォンッ!! 天災じみた破滅が床を天井を叩き割った!
 刻印魔術の重ねがけ、"多重起動"による破壊力の増加がその証左!
「よォ明日真! ここはいっちょ連携技といこうや!」
「はっ――いいじゃねえか、乗ったぜそのアイデア!」
 戦斧を担いでまず明日真が仕掛ける――否、クロウが先んじた!
『見きったと言っている!』
「……そりゃ、俺ひとりの剣技、だろ?」
 あと一足。踏み込むと見えた足をずしん! とその場で足踏みさせ、クロウは笑う。
 ――フェイント! 拍子を外された、二段じかけの騙し討ちか!
「おぉらっ!!」
 明日真が仕掛ける。だがこれもまた布石、戦斧をおろしざまに手放す。
 迅雷じみた速度で抜き放つは緋焔の剛剣。戦士ふたりの瞳が燃え上がる!
「その一切を灼き斬るッ!」
「この合切を吹き飛ばすッ!」
 かたや燃え上がる焦熱の剣。
 かたや渦巻く竜巻じみた風の刃。
 刻印魔術と黒魔剣、力と技、炎と烈風が重なり合う、これぞ――!
「「日輪の双刻剣(サンライト・ツインクレスト)ォッ!!」」
『お、おぉおおおおおお……ッ!?』
 絶技ここに完成せり。燃え上がるさまはまさに太陽の光輝。
 影が逃れられるはずもない。輝きが、邪悪を灼き尽くす!

「……ハッ! やるじゃねェか!」
「お前もよく持ちこたえたぜ、まったく」
 ごつんと、男たちの握りこぶしがぶつかりあった。
 浮かべる笑みはともに莞爾と。その剣、たゆまなき正義を宿す刃なり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762
アドリブ等歓迎


前はあんなに殺すのが楽しかったの
殺して殺して殺せれば
それでよかったのに

今はリルを想うと心が沈む
こんな醜いあたし……みられたくないのに
リィはきっと嫌がって――

ばか
後でお説教されなきゃね
ありがと

リルを庇い
心地よい愛の歌に合わせる『愛華』
刀に破魔を宿らせ
リィの歌に合わせ踊るように
フェイントをきかせ見切り躱し攻撃していく
恐怖を与えて怯ませ隙を誘い
衝撃波放ち攻撃防ぎ
時にグラップルも織り交ぜて
薙ぎ斬り穿ち切り裂くわ

歌が守ってくれる
けれどリルの時間は奪わせない
怪力込めて周囲事巻き込んで叩き込む「壊華」
まとめて叩き潰す!

たまにはいい所
見させて
リルがいればあたし強くなれるわ


リル・ルリ
■櫻宵(f02768
アドリブ等歓迎


櫻宵、櫻宵!僕の櫻!
もうっまた僕をおいて……

怪我は?傷は?大丈夫なの?!
血濡れの彼に游ぎよる
ばか
櫻宵のばか

君は醜くないと言ってるだろ
あいつを、倒してからお説教してやるからな!
櫻は僕が守る

誓うよう歌う「愛の歌」
【歌唱】には精一杯の【鼓舞】をのせて歌う歌う君の為に
猪突猛進は危ないよ
【空中戦】で躱し
敵を見ながら音色を変えて君の剣舞を彩るから
悪いが僕の櫻を呪わせはしないから
歌う『星縛の歌』で呪いを。この命で浄化し打ち消してあげる
櫻宵の刀が届くよう
僕の歌と君の刀があれば負けたりなんてしない
守ってみせるから

だから全部壊してみせて

僕は
君を喪う事だけが怖い
はやく安心させてよ




 ――殺すのが、なによりも愉しかったはずだった。
 殺して、殺して、殺せればそれでよかった。……はず、なのに。
「櫻宵」
 どうしてだろうか。
「櫻宵!」
 この子のことを想うと、
「僕の櫻――もうっ、また、僕を置いて……」
 どうしようもないくらに、心が沈んで悲しくなってしまうのだ。

 誘名・櫻宵。血塗られた過去を背負う花霞の瞳の子、枝垂れ桜の木龍人。
 ああ。すがるように謳う彼の姿を見て、その瞳に映るおのれの"ざま"を見て。
 櫻宵は悲しんだ。顔を覆って、いやいやと首を横に振る。
「……櫻?」
「見ないで」
 きっと怒られると思った。けれども言葉は止まらない。
「あたしを、見ないで」
 こんな醜いざまを。どうか、どうか。その眼に映してはならない。
 あなたは綺麗な子。その歌声のように美しくあどけない子。
 それに比べて自分は、あたしは。なんと醜く無様で――。
「ばか」
 そんな櫻宵を、血塗れの愛子を、リル・ルリはきゅうと抱きしめた。
「リィ」
「櫻宵の、ばか」
 そんなことはどうでもいい。傷は? 怪我は? 苦しくはなあい?
 問いかけたいことはいくらでもあったのに、すべて翔んで消えてしまった。
「君は醜くない」
「でも」
「何度でも言うよ。君は、醜くなんか、ない」
 謳うような声音で人魚は云う。恋人の心を、その傷を慰撫するように。
「全部終わったら、お説教してやるからな!」
 ……悪童めいた意地っ張りな様子に、櫻宵はふっと微笑んだ。
 ああ、自分の悩みのなんと空虚で軽々しいことか。この子ときたら、本当に。
「ばかね」
「ばかは櫻のほうだ」
「……ふふっ」
 微笑んだ。互いのぬくもりが、血を乾かし拭ってくれるように想う。
「あとでお説教されなきゃね」
「そうさ」
「ありがと」
「……櫻は、僕が護るから」
 そしてふたりは戦場を離れ、すべての終結の地へと赴いた。
 だがあいにく、待っているのはそう簡単な大団円ではなかった。

●龍と人魚
 ――猛攻である。
 櫻宵が撃ち込む。届くようにリルが歌う。それが呪詛を押しのける。
 されど敵――影、魘魅師、あるいは口蜜腹剣――はなお上手であり、
 わけても厄介なことに、言葉通りその手の内を把握していた。
『ははは! はは、は、は、は!』
 高らかに笑い、嗤い、熾烈な破魔の刃をかいくぐり防いでみせる。
 浄化の歌が呪詛をはねのけるならば、嗚呼。来たるは猛毒の帳である。
 それはまるで夜のように、大気を汚し二人を包み害するのだ。
「こいつ」
 リルは歯噛みした。ひたむきな想いを嘲笑う敵を心底憎悪した。
 歌声すらもあざ笑い、魘魅師はまるで挑み誘うかのように言葉をばらまく。
『心地よい音色にございますなあ! 彩りにはぴったりかと!』
「こいつ!!」
「――リィを、惑わせないで」
 憤懣の気配に櫻宵が割って入り、猛然たる太刀筋で邪悪を押しやる。
 けれどもそれは一時しのぎ。忍び寄る闇を松明で照らして払うかのような。
 影が起き上がる。櫻宵を邪魔するかのように鏡像が剣を振るいて踊る。
「僕の櫻を呪わせたりなんてしない」
『善き哉――では蝕むといたしましょう』
「黙れ。黙って、僕の歌を聴いてろよ!!」
 毒素のほとんどは、"星縛の歌"が押しのけ払いのける。だが限度がある。
 徐々に。少しずつ、毒はふたりを蝕んでいた。真綿で首を締めるかのように。

 ――ではどうする。遮二無二突っ込んで相打ちにでも持ち込むか?
 ――ならばどうする。喉が裂けるほどに謳って、血で血を洗うか?
 櫻宵は、リルは、それぞれに自己犠牲を孕んだ悪あがきを思い描いた。
 そして互いを見た。それぞれの瞳に映る己の姿を見て、振り払った。
 悪い夢だ。それ自体が魘魅師の罠だ。奴は玩弄し、嘲弄し、迂闊を誘う。
 誘惑に惑わされてはならない。愛すべきひと、片割れは傍らに。ならば。
「歌って、リィ」
「舞って、櫻」
 恋する乙女のように、高らかに、密やかにささやきあった。
 それからは全てが一転した。何も生まれ変わったわけではない。
 封印された力が解き放たれたとか、そんな話では断じて無い。
『――何故だ』
 いかなる言葉も、ふたりを惑わし脅かすことはなく。
『何故、これほどまでに……ッ』
 剣閃は揺るぎなく滑らかに。止まることなく、徐々に疾く重く。
 歌声は高らかに。止むことなく、安らかに穏やかに、けれど激しく。
 互いの想いが剣/歌に乗せて吹きすさび、音叉のように共鳴する。
 噫。ここに舞う/歌うは、あいにくどちらも哀れな者らなれど。
 彼らがそれを嘆くことはない。運命を共にすると決めた相手がいる。
「あなたに、リルの時間は奪わせない」
「お前に、櫻のことは傷つけさせない」
 互いに互いを思いやり、それが力を生んで敵を追い詰める。
『何故――!!』
 驚愕は、振り下ろされた剣閃に遮られ、そして砕けて潰れた。
 華が散るかのごとく、叩きつけられた膂力は全てを打ち壊す。
 壊華(かいか)。残心はない――歌声がそれを担う。刃を、心を清める。

「……櫻。僕はね、君を喪うことだけが怖いんだ」
「ふふ。でもたまにはいいところ、見せられたでしょう? リィ」
 からかうような声音に、唇を尖らせながらも人魚は微笑む。
 戦いは終わった。安堵が戻ってきた。呪いはもはやどこにもない。
「――あなたがいれば、あたしはどこまでも強くなれるから」
 影を払ったことこそが、木竜の言葉の証左である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ


先程は悪趣味な催し物をありがとうございました
私、珍しく心を乱してしまいましたわ
――覚悟はよろしくて?

猛毒に対しては花時雨を開いてオーラ防御を

まるで乱れた心そのもののように
散華繚乱に二回攻撃で斬撃の雨を降らせましょう
あなたはきっと私が取り乱したままだと思うでしょう
それが私の狙い
こっそりと斬撃の一つ一つに生命力吸収を載せて
少しずつ命を削ってあげる
かすり傷だって、塵も積もれば山となる
気付いたときにはもう遅い
きっと、あなたは立っていることすらままならないでしょう
ゆっくりと、まるで死刑執行人のように近付いて

あなた方がやたらと何かをばら撒くから参考にさせていただきましたわ
さあ、大人しく首を差し出しなさい



●咲き誇る剣
 影を見つけた時、千桜・エリシャが浮かべたのは、つまり笑みだった。
 微笑――いや、媚笑か。蕩けるような艶やかな笑みであったという。
「ごきげんよう。さきほどは悪趣味な催し物をありがとうございました」
 すべて見ているというのなら、さぞ愉しかったことだろう。
 エリシャはその思いを全て言葉にすることはなく、莞爾と晴れやかに。
「私、珍しく心を乱してしまいましたわ」
『お楽しみ頂けたならばなによりでございます』
 ――ふふ、ふ。少女は、鈴が転がるように笑った。ああ、愉快だ。
 彼奴の嘲笑。慇懃無礼。何もかもが――ああ、鼻につく。
「お礼をいたしませんといけませんわね?」
 すらり。大太刀"墨染"が、春のそよ風めいて鞘走った。
「――覚悟は、よろしくて?」
 笑みは変わらず。されど込められるは凄絶なまでの殺意。
 壁がひび割れ床が、天井が軋んだ。胡蝶が舞う中、影と羅刹は姿を消した。

 両者の攻防は、傍から見ても明らかに一方的だった。
 手数に関してはエリシャが上。勢いについても同様、攻め続けている。
 降り注ぐ斬撃の雨は、百と五十を数えてなお余るほど。
 防ぎあるいは躱され地を削るたび、彼岸花めいた朱い華が咲き誇る。
 散華繚乱、束ねて二つ。易い言葉では片付けられない執拗な攻勢だ。
『おや、おや! いかがなされましたか、ご乱心めされたか!』
「――申し上げたでしょう? お礼を、いたしたいのですわ」
 エリシャは艶やかな笑みを浮かべたまま、無双じみて剣を振るう。
 明らかに混乱している。魘魅師でなくとも一目瞭然だ。
 そして奴はエリシャの手の内を知っているのであるからして、
 つまりそれだけの攻撃ですらひとつとして届いてはいなかった。
 返す刀の猛毒。これは花時雨と名付けられた和傘がくるりくるりと受け流す。
 打つ。撃つ。射つ。斬る・斬る・斬る・斬る・斬る!!
『は・は・は!』
 魘魅師は嘲笑った。それすらも耳に届かぬようにエリシャはただ打ち込んだ。
 ただただ無心に、届かぬ攻撃を――否。それをまともに打ち合う時点で、
 すでにエリシャの布石は功を奏しつつある。じわじわと雨垂れ石を穿つ如く。

『は、は――は?』
 やがて魘魅師もいよいよその意図に気づいた。違和を感じ訝しんだ。
「あら」
 女は微笑んだ。ぞっとするほど艶やかな笑みだった。
 "気づいたところでもう遅い"と、桜色の瞳が語っている。
 ……かすり傷と呼ぶのもおこがましい、些細な些細な手傷。の、はずだ。
 だが気付けば、影を構成する根源的な力が、存在格が。弱まりつつある。
『――まさか』
「いかがいたしましたの?」
 艶然としたまま、まるで嘲るようにエリシャは小首をかしげた。
 影は何かを叫ぼうとした。言葉を切り裂くように再び斬撃の雨が降る。
 防げる。他愛ない攻撃だ。乱れた剣など――いや、違う。これは。
 この赤の花は。少しずつ。緩やかに、確実に! 影の命を!
『これが狙いか!!』
「ああ、うるさい方――」
 逃れられない。防いだ時点ですでに術中。もはや蜘蛛糸の只中。
 削り取られた力は、気付けばもはや立つこともままならぬほどに。
『あ、ああ』
「……」
 うなだれたさまは、いかにも首を差し出す罪人めいて。
 ふわりと、歩み寄るさまは――それを狩る、斬首のお役目のよう。
「あなたがたがやたらと何かをばらまくから、参考にさせていただきましたわ」
 見下ろす相貌は、中天を背負うがゆえに逆光になりよく見通せぬ。
 ただ、それでもなお。冥き虚に浮かぶが如き双眸は、冷たく。鋭く。
「――あなたの首なんて、要りませんけれど」
 これは禊であり、けじめであり、振るうべき対価であり、断罪である。
 奴は何かを叫んだ。エリシャは微笑みすらせず剣を上げ、おろした。
 それで終わる。首が飛び、血がほとばしり、満開の朱い華を汚す。
「あら残念――てっきり、最期まで笑顔でいてくださると思っていたのに」
 ふわりと風が吹く。音もなく、剣客は桜の中へ消えていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズル・ゴッズフォート

いいえ、貴方が滅ぶのが先ですとも
……私の。いいえ、猟兵の根気を甘く見ないでいただきたい
如何な策を練ろうと。どれ程の戦力を用意しようと。無辜の民の助けを呼ぶ声がある限り、楯となり剣となるのが猟兵なのですから……!

さて、どれ程戦術を見られていようと、私の戦いは変わりませんとも
剣と大盾での「武器/盾受け」で防ぎ、剣を、盾を掲げ続け、必要とあらばこの身を【無敵城塞】と化して受ける。ただそれだけです

……と、言いたいところですが。此処は少々創意工夫を凝らすとしましょう
懇意にしている工房が日本刀の技術を取り入れて作り上げた、騎士刀(サーベル)です。コレが初の抜刀ですので……さて、見切れますか?




 かくのごとく、桜を纏う"女将"が斬首の刃をくれていた、同じ頃。
 その近傍にもうひとつ影が在った。本来ならそれが彼女を害していただろう。
 ……"だろう"。現実はそうはならず、邪悪は刃の嵐に削られ滅んだ。
 では、なぜそれが起きたか。それは――。

●立ちふさがる盾
『……困りましたな』
 魘魅師はハの字眉で、はてどうしたものかと首を傾げた。
 いままさに赤き華が繚乱する戦場へ、ただひとつ通じる路。塞がれている。
「この先へ往こうというのでしょう? 生憎ですがそれは叶いません」
 壁のごとくに彼岸蝶の大盾を掲げ、立ちはだかるはただひとりの女。
 名をシズル・ゴッズフォート。桜舞う羅刹に忠誠を誓った怜悧な女騎士。
 ただならぬ気配があった。あの立ち合いに水を差してはならぬとわかった。
 同時に、それを邪魔しようという無粋なモノを視た。ゆえに立ちはだかった。
「ここは決して通しません。そして、あなたが、滅ぶこととなる」
『……根拠のない物言いは大言壮語と申しますが?』
 嘲笑に、シズルはいいえと、決然と首を振った。
「私の、あの方の、そしてここに集いし猟兵の今期を甘く見ないで頂きたい。
 如何な策を練ろうと、どれほどの戦力を用意しようと。
 助けを呼ぶ声がある限り、盾となり剣となる。それが猟兵なのですから」
『なるほど、大きく出ましたな』
 まっすぐな言葉である。それが魘魅師の逆鱗に触れた。
 そういう実直な輩を嫌悪するからこそ、ヤツはこの地を選んだのだ。
 武侠、武芸者、くだらぬ。玩弄し、嘲笑し、貶めてこそ我が意は成れり!
「――だからこそ」
 それを理解していたからこそ。シズルは盾を置いた。立ちはだかった。
「ここは決して、通しません」
 金色の瞳に、揺るぎなき信念の輝きが煌く……!

 とはいえ彼女は騎士である。護るために盾を手にした信念の輩である。
 ゆえに手の内を読まれようとなんだろうと、流儀を変えるつもりはない。
 頑として砦のごとく、壁のごとく、ただ盾をもって立ちはだかるのみ。
「いざっ!!」
 朗々たる声とともに踏み込み、押しつぶすかのような太刀を振るう。
 魘魅師はこれを薄い笑みで受ける。返す刀で影が立ち上がる。
 鏡像! こちらも斬りかかるが――大盾はその程度で揺らぎはしない!
『千日手でございますなあ』
「さて、どうでしょうか?」
 もしもそうなったとすれば、明らかに利はあちらにある。
 影を編むだけではない、呪符も毒も盾をいずれは突き破ろう。
 それこそ彼女が――エリシャがしているように、シズルの命を削り取るだろう。
 ではどうする。シズルは実直なまでに、愚直なまでにただ撃ち込む。
 魘魅師は嘲笑う。それをねじ伏せ絶望させてこそ! 我が意は――!!
『……な、に?』
 それこそが慢心、迂闊というものである。
 読み切った退屈なまでの太刀筋。いかにもそれはシズルらしい。
 しかして、それでは埒が明かないことを彼女はわかりきっている。ゆえに。
「――いかがです? どうやら、見切れなかったようですが」
 手にしたるは打ち下ろしたばかりの騎士刀。はじめの血を啜る初々しき鋼。
 剣戟はこのために。頑とした盾の防備も、その一撃を隠すための帳である。
「たしかに私は守り救うために戦うもの。しかし――創意工夫も、大事ですからね」
 凛として、獣の相持つ騎士は微笑んだ。
 斬撃。残心を打ち、邪悪なる血を払う――背後、遠くで決着の気配。
「言ったでしょう。あなたが滅ぶのが先だと」
 有言実行とは、まさにこのことか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼリナ・ファルゼナ
【対策】真面目なプレイングを送る
【特殊①希望】
リゼリナに、過去の記憶はない。
この名もシュバルト丸に登録されていたものを借り受けただけであり、猟兵になる前の事などは誰も知らぬ。
不都合はない。為すべきことは本能的に理解している。オブリビオンは、敵だ。
敵を倒す。
倒す為に生きている。
故に、死なぬ。死なぬから猟兵となるのではない。猟兵だから死なぬのだ。
死なぬなら、敵は死ぬ。なにせ自分が生きているのだ。簡単だ。
それはつまるところ狂人の剣理であり、しかし距離を詰めることは叶った。

およそ一尺。

死なずの道理が示されれば、たちまち剣は意味を発する。
即ち是が、本人も預かり知らぬ【不滅之理】なる狂剣の術理であった。




 ――リゼリナ・ファルゼナに、過去の記憶はない。
 この姓も名もシュバルト丸――馬ではなく、その実知性を持つ宇宙バイクだ――に登録されていたものを借り受けただけ。
 猟兵になる前のことなど、誰も……リゼリナ自身も知らぬ。
 不都合はない。疑問に思ったこともない。なぜなら役目はわかっている。
 ――過去の化身。未来を塗り替え、世界を破滅へ導くモノ。
 オブリビオン。忘却の名を頂く絶対敵。然り、敵である。敵がいる。
 であれば、これを倒す。それこそが使命であり、役目であり、ならば。

 普段どれほどふざけていようが、邪悪を前にした時その真価は現れる。
 はっきり言って、出だしを目にした時点で打ちひしがれるぐらいには完璧だった。
 ハナからそうせよ、というのが出来ぬのが、リゼリナの愛嬌と言えよう。

●黒剣
『……なぜだ』
 魘魅師は、とっくのとうに笑みを忘れていた。道理である。
 致命の呪符を百は見舞った。猛毒で覆い隠し半刻は経ったはずだ。
 影絵を編み上げ、その剣筋を真似てあちこちを切り裂いた。
 重傷……否、明らかな致命傷。確実に死んでいるはずの手傷だ。
 にも関わらず。
『何故だ』
 この女は、なぜ。いまなお立ちはだかり、剣を構えている。
「……何故と、問いますか」
 飢えた狼の如きぎらぎらした眼差しが、血のあぶくのなかから睨めつけた。
 ぞっとするような、刃めいた恐るべき眼光。敵を見据える狩人の目。
「それは、あなたたちが居るからです。あなたたちが在るからです」
『なんだと』
「私は猟兵。敵はあなた――敵は過去。敵を倒すことこそ、騎士の使命」
 敵は倒さねばならぬ。そのためにこそリゼリナは生きている。
 ……では死なぬ。だから死なぬ。ゆえに死なぬ。敵を倒すまでは。
『それが猟兵なのか』
「さあ」
 ひょうきんなまでの声。それはいわば鳥が先か卵が先かだ。
 死なぬから猟兵になるのか。猟兵だから死なぬのか。
 いずれにしても、リゼリナの体力は異常であった。不気味とも言っていい。
「私は死にません。敵(あなた)を倒すまでは」
 滂沱の血を流しながら、一歩、また一歩と餓狼は近づく。
『来るな』
「いいえ。倒します」
『来るな!』
「いいえ。敵は、倒します。私は生きている、生きているなら――」
 滅ぼすまで。狂乱した魘魅師はありったけの呪詛をかき集めた。
 影がもはや兵隊じみて立ちはだかった。リゼリナは意に介さない。
 一歩。身を切り裂かれる。意に介さない。
 一歩。呪いが骨身を腐らせる。意に介さない。
 一歩――やがて間合いは、縮まった。およそ一尺の接近距離。
『来るな!!』
「いいえ」
 もはやそれは不死というレベルではない。
 "不滅"である。黒剣の銘、いかにもだからこその"シナナイ"か。
 道理と呼ばうにはあまりにも滅茶苦茶な、狂った常軌を逸する理。
「敵は、倒します。私が生きているのなら!!」
 かくて黒剣は正義をなす。あまりにも狂った正義を成す。
 ――不滅之理。リゼリナすら名を知らぬ、魔道の如きおぞましき術理。
 リゼリナ・ファルゼナに過去の記憶はない。疑問もない。悩みもない。

 では、彼女の生きがいは、どうなのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
良くは分からねえが、分身して弱くなってるって事と、お前を俺一人で殴り倒せる可能性があることは分かった。
難しい漢字並べて呪術師だと言い張れば、俺がバカだからって信じるとは大間違いだぞ。

『紫電の空手』で攻撃力を上げて攻撃し
うおおお、俺の空手を見ていたってことか。
じゃあ、そうだなこれを使うか
(背中の日本刀を抜き)
ウルトラサンダーボルト雷神丸!

拳だけが空手と思ったか、武器も使うのが空手だ!
……刀使わないけどね

と言うわけで握ったまま正拳!
柄尻で鉄槌!
お前の攻撃を刀で受け流し
距離を詰めれば決めるのはこれだー!!
「雷刃(ライトニング・エーッジ!!)」

「知ってるか、剣道三倍段、武器を持てば俺は三倍強くなる」



●雷刃、天をも貫くほどに
「良くは分からねえが!!」
 雷陣・通はバ――素直な少年である。ゆえに大声で叫んだ。
「あいつが分身して弱くなってるってことと!
 俺一人で殴り倒せる可能性があることは分かった!!」
 惜しい! 当たっているのは後者だけだ! 影の強さは本体据え置きである!
 だがまあプラシーボ効果というものもある。思い込みは大事だ。
「難しい漢字並べて呪術師だと言い張れば、俺が馬鹿だからって信じるとは大間違いだぞ!!」
『ええ。ええ。そうでございましょうねえ』
 魘魅師は嘲り2000%の笑みで相対したという。

 ……呪殺城、大広間!
「うおおおおおっ!!」
 紫電の空手(ライトニングファクター)! 全身を紫電が迸る!
 これは通の得手、生体電流の操作による身体能力の増強だ。
 スピード、威力のそれぞれが飛躍的に高まり、文字通り迅雷の如き攻めを可能とする。
 瞬き一つの間に床を焦がして飛び込み、放った拳打は一度に六!
 だが魘魅師はこれを丁寧にいなし、防ぎ、胸板を浅く突いた。……寸勁!
「ぐえっ!!」
『呪術師とて、多少は武を嗜むものでございまして』
 がつんっ! と背中を壁に叩きつけられ、通は血の混じった唾を吐き捨てる。
 見切られている。手応えとしてそれが、改めて実感できた。
「俺の空手を見ていたってことか」
『最初にそう云ったはずですが――ま、いいでしょう』
 どのみち殺すことに変わりない。魘魅師の殺意がじわりと圧を増す。
 ならば是非はない。通はおもむろに、背負った刀の柄に手をかけた!
『……む』
「こいつを――ウルトラサンダーボルト雷神丸を使うしかねーな!!」
 ネーミングセンスについてはさておこう。

 しかして、刀を握ったところで結局は体術の問題である。
 魘魅師はそれを見通すだけの力を持つ。得物が変わればいいという話ではない。
「拳だけが空手かと思ったか? 武器を使うのも空手だ!」
『いいでしょう。存分に参られませい』
「ライトニングに――いくぜぇっ!」
 通はあくまでまっすぐに踏み込む。魘魅師は嗤笑!
 立ち振舞は袈裟懸けと見た。躱した上で影を編み、切り裂く。
 そして毒で責め苛みじわじわと――思案は、石のような鉄拳で遮られた。
『ぐはっ!?』
「チェリャァアアッ!!」
 正拳。正拳である! 刀? 握ったままぶん殴っている!
 さらに斬り――斬らない! 柄尻でガツンとこめかみを打った!
『がっ!』
 なんたる奇想天外な戦法か。たしかに武器術も空手だ。
 だが刀で戦うとまでは言っていない! 単純だがそれゆえに痛烈!
『この、ガキが……!!』
 咄嗟に影絵を編み上げて、鏡像めいた影の通を生み出す。
 しかしそれは彼にとってもよく知った術理。刀で鋭くいなし、切り裂く!
『は……!?』
「いい言葉を教えてやるぜ――」
 ばちり。刃が紫電を纏った時、すでに斬撃は終わっていた。
「――剣道三倍段。武器を持てば、俺は三倍強くなる」
 雷刃(ライトニングエッジ)。最後の最後は結局斬撃で締める。
 そもそもからして、このバ……実直な少年に付き合ったのが運の尽き。
『なんて、ふざけたガキだ……!!』
「ふざけてんのはお前だ、悪党めっ!!」
 道理である。苦悶と後悔を遺し、哀れ影は散って消えた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウェンディ・ロックビル
【子龍と子鹿】
たどり着いたのはいーけど……これ、ちょっぴり大変かも。僕の一番の武器の脚はお見通し、ってことだよね。……逃げ回って時間稼ぎしかないかな?

……って、ハルちゃん!さんきゅ、ちょっとだけ、お願いしていーい?僕、お電話かけるから。
誰あてって……決まってるじゃん。世界一、頼りになる人。

「もしもし?おねーちゃん?……うん。そう。ちょっぴりだけピンチ。ね、おねーちゃんって今……。もう来てる、でしょ。んへへ、知ってるぅ」

数が4人に増えただけ……って、ふふ、バカだなー。
かぞくのきずなはさいきょーむてき、なんだぜっ?
……って、おねーちゃんもヨウお兄さんも!二人が無茶したらほんまつてんとーでしょっ!


美墨・ヨウ
【子龍と子鹿】
③待たせたな!
おうこっちかハルにウェンディ!こっちだな!!
マジでスマホ持たせといて正解だった。電波?特別仕様だ。
まぁGPSだのと後は兄としての勘で場所を探知。
壁?矛盾交叉でぶっこ抜く。
最短距離だ、行くぞキッテン!!

①連携技!
んだぁ妹達見つけたと思ったらそのしゃらくせぇ狐ヅラはァ!!
テメェの事なんざ知るかさっさとくたばれ!!
【魔鬣覚醒・怒髪天】!!
赤銅色の燃える髪、赫赫と灼ける槍と炎の鎧姿に変生。(攻撃力強化)
キッテンの【炎馴鹿の撲殺】の一撃に上乗せして怒りの一撃を叩き込む。
俺らの怒りで消炭になりなぁ!!

おうおう二人共ひっでぇな……
あ、俺も行くわキッテン。久々にキレちまったよ……


キッテン・ニコラウス
【子龍と子鹿】
③またせたな!
ピンチのウェンディのところまでまっすぐに、ええまっすぐに進むわ
塀という塀を、壁という壁を粉砕して、ひたすらにまっすぐに!
「今どこかって? 目の前よ」って壁をぶっ壊してたどり着くわ!
え、なんで電話前に場所が分かったかって? 姉だからよ!!!

②連携技!
ヨウの【魔鬣覚醒・怒髪天】の炎、私の【炎馴鹿の撲殺】の炎
戦っている間にそれらが混ざり合い、お互いの火力をさらに上げるわ
「私達の怒りの炎で消し炭になりなさい!!」

厭魅師を倒したらウェンディとハルに駆け寄るわ
二人とも大丈夫!? あぁもう、こんなにケガして……!
あ、ダメ、プッツン収まんない。あと2、3人ぶっ倒す!!

アドリブ大歓迎


ハル・ウロハラ
※子龍と子鹿

真の姿開放!
たっくさん食べたあとの「竈神御供」は一味違いますよ
ってわけでウェンディちゃん!
追いつい、

…おっけ。
ウェンディちゃん、やれること全部やろ。
時間は稼ぐ!

当ててないから防がれない!
それでも真似っ子されても、そもそも「食べて」ないでしょ
こっちは忍者の力取り込んでるし忍術の巻物も…
……
振り仮名ふっといてよ!!!(苦無投げまくる)

って
よーちゃん!
キッテンおねえさま!
なんでここにって細かいことはいいや
無敵の友情&家族パワーですゆえに!いえい!

最後の力を振り絞り
【吹き飛ばし】てからの【空中戦】!
右に大包丁、左に大鎚銀閣「肉砕き」
【怪力】で刻んで叩き落とす!
あとはこんがりお願いします!!



●その力の名は
 さて、影との戦いはいよいよ終局に向かっていた。
 のこるはひとつ。厄介なことに、これは特に"色濃い"影であった。
 つまり、端的に言えば強いのだ。より疾く、より鋭く――より、悪辣。

 これと遭遇したのは、ウェンディ・ロックビルであった。
 そしてさらに悪いことに、彼女はこの状況で特に被害を受けている猟兵のひとりだった。
 なぜか? ……ウェンディの武器は、その健脚にこそある。
 すべてを踏破し、追い抜き、あとにするほどの俊足こそが彼女の武器。
 "唯一"と言い換えてもいい。そう簡単に肩を並べられるものではない。
 ――では、それが読まれ、対処されてしまったとしたら?
 滅多に並ぶことのない天稟。唯一無二の自慢の才能。
「あ~、やっぱちょっぴりどころじゃなかったよこれぇ!!」
 城の端から端までを駆け抜けたウェンディは、息を整えながら重く嘆息した。
 ――届かぬ。蹴ろうが突っ込もうが、ふっとばそうがすべて見切られた。
 だから逃げてきた。時間稼ぎをするのが関の山だと判断したのだ。
 この手の野生動物じみた切り替えに関しては、まさに彼女の才能と言えよう。
 そしてこれが彼女を救った。……少なくとも今この瞬間までは、だが。
「……やば」
 気配を察知し、ウェンディは腰を落として疾走姿勢に――なりかけ、舌打ち。
 目の前の通路、悠然と近づいてくる影。腹の立つ嘲笑を貼り付けて!
「こいつ……」
『まるで韋駄天でございますなあ。いや見事、見事』
 ぱちぱちとわざとらしく拍手するのが、なおのこと癪に障る。
 ウェンディは短く呼吸して己を切り替えた。ペースに呑まれたら、終わりだ。
 攻撃はおろか逃げる経路まで見抜かれたか。あるいは呪法で転移したか。
「あーごめんね、僕そういうシリアスなヤツ担当じゃないんだ、じゃ!!」
 シュタッと別れを告げて、振り向きざまに全力疾走――そして転んだ。
「いったぁ!?」
 ごろごろと床を転がる。足を見る。……巻き付いている一枚の符。
「やば」
 仕掛けられた。罠か! ここに追い込まれたこと自体が策のうち!
 さながら毒蛇の牙が食い込んだかのように、呪詛が肌から染み込む気配。
 途端、これまで感じたことのない寒気が全身を駆け抜ける!
「――っ!!」
『ほう。すぐに気を失わないとはなかなか』
 嗤笑を無視し、符を払いのけるとウェンディは即座に駆け出す。
 ……重い。これが致命の呪いか。猟兵ならばすぐに死ぬことはないが……!

 ハル・ウロハラが到着したのは、まさにこの数十秒後のことであった。
 真の姿を開放し気合は十分。"おやつ"も腹一杯に食べたばかりだ。
 きっとウェンディはいつものように飄々として待っていることだろう。
 そして大親友ゆえに気配を感じられる、近づくにつれ違和感が募る。
「ウェンディちゃーん!! 一味違うハルが追いつい」
 ――斯様なまでに、この子が息をせき切らせることがあるのか。
 熱病に浮かされるように脂汗をかいた彼女の姿は、ハルをしてつかの間言葉を奪った。
「ハルちゃん! 来てくれたんだ、さんきゅ」
 声音はいつも通り。だが息は荒い。呪詛が心身を蝕んでいるか。
「ちょっとだけ、お願い、していーい?」
「……おっけ」
 仔細も聴いていないのに、ハルは即答でうなずいた。笑みはない。
 かと思えば彼女はいつものように笑い、親友を元気づけた。
「僕、お電話かけるから」
「ってお電話!? 誰にです!?」
「――決まってるじゃん」
 ウェンディのその不敵な笑みは、けっして強がりでもなんでもなかった。
「世界一、頼りになる人だよ」
 ……彼女がそんな風に呼ぶのは、決まってひとりだけである。
 言葉は不要。ハルは今度こそこくんと大きく元気強くうなずいた。
「やれること全部やろ」
「うん」
「時間はハルが稼ぐからね!!」
「うん!」
 不思議なものだ。――たったこれだけで、これほど力が湧いてくるとは!

『ほう、もうひとりお客人が』
 ハルは弾かれたように声の方に振り返った。ウェンディはすぐさま駆け出す。
 呪符が彼女を襲おうとした、ごおう――竜巻じみた爪がこれを切り裂く。
「ここは通さない! です!!」
『なるほど。起死回生の策がおありと見える』
 がるるるるる、とハルは猛犬じみて身をかがめて敵に唸った。
 どうやら彼奴も模倣を用いるようだが、ハルのちからはあくまで内的なもの。
 そもそも、敵の血肉を喰らわずして、十全たる力を発揮できるはずはない。
「まねっこはもう無駄だよ」
『ならばやりようというものもあります』
 ――眉間を殺意が打つ。ハルは再び爪を振るって符の嵐を切り裂いた。
 先手必勝! 間合いに飛び込み――ガリガリガリ! 急ブレーキ!
 床を引き裂いて制動をかけたハルは、鞠めいて素早く跳躍する。
 ……見切られている。白兵戦は敵の思う壺か。では攻めかかるか? 否――。
「こっちは忍者の力取り込んでるし、巻物だってあるんですよ!!」
 その手の内に禍々しい忍法書が現れ紐解く。むーんと目を走らせる。
「…………」
『…………』
「振り! 仮名!! 振っといてよ!!!!!」
 ダメ元の苦無。当然のごとくことごとく躱された。
 というかあれはPOWだったので、影絵が編まれて倍の数が来る始末だ。
「がぁーう!!」
『獣は躾けねばなりませぬが、さて』
「やってみろ!! ハルあいにくいい子じゃありませんので!!」

 遠吠えじみた鬨の声と、断続的な戦闘音が、遠雷めいて響いてくる。
 これだけ遠くに離れれば十分か。ウェンディはユーベルコードを起動した。
「……もしもし? おねーちゃん?」
『はい(ゴガッ)こちら(バゴン)お姉ちゃんよ!!(バギャッ!)』
 通話相手はウェンディの姉、キッテン・ニコラウスである。
 言うまでもなく、ユーベルコードのモノとて通信には限界がある。
 つまり、世界を超えてその電波をつなぐことは、絶対に出来ない。
 ではなぜ彼女は、キッテンは応じたか……というか断続的な破砕音はなんだ。
「あのねおねーちゃん、僕たちさ、ちょっぴりだけピンチで」
『ええ(バギャス!)大体わかってるわ(ゴギャ!)任せなさい!!(ボゴッ)』
 ……ウェンディの頬は緩みきっていた。持つべきものはやはり家族か。
「ねえおねーちゃん! いまどこ!?」
『いまどこかって?』
 わかりきった問いである。聞く方も答える方も笑っていた。
 ……いかにユーベルコードの産物でも、遠く離れた世界の壁は越えられない。
 ではキッテンはなぜ応じたか。破砕音の正体。あまりにも当然の答えだ。
 バガンッ!! と、ウェンディの目の前の壁が砕かれた。
 後ろには同じような穴が点々と。塀も、壁も、頼れる姉を妨げるにはいたらない。
「――眼の前、よ!」
「んへへへ、知ってた!」
 場所がなぜわかったか? そんなものは姉妹の絆というやつだ。
 ……では、時間稼ぎに徹したハルはどうなっているのか!?

「オルァアアッ!!」
 こっちもこっちで、なぜか真上から壁をぶちぬいて現れていた。
 瓦礫を跳ね除け、粉塵のなかからぎらりと龍の眼光が周囲を見やる。
 うずくまる妹。その傍らに佇む――否、悠然と見下ろす――男。
「死ね!!」
 判断を下すまでの所要時間、実にコンマゼロゼロゼロ秒。
 瞬時に突き出された豪槍が、不埒者を壁の奥の奥の奥へと吹き飛ばす!!
「よーちゃん!!」
「おう待たせたなハルゥ! だが俺だけじゃねえぞ!!」
 彼の名は美墨・ヨウ。他ならぬハルの実の兄。
 彼はキッテンとともに、最愛の妹のピンチを感知して駆けつけたのだ。
 場所がなぜわかったか? たゆまぬ愛(シスコンとも云う)の賜物だ。
 家族の絆に道理は凹むのである。もしくはご覧の壁のようにぶち砕かれる。
「おうウェンディ、キッテン! こっちだ!!」
 バギャス!! と、なぜか壁をぶち砕いて現れるキマイラ姉妹。
「キッテンおねえさま!」
「そっちも頑張ってたみたいね、ハル!」
 キッテンはハルを一瞥した。少なからぬ傷、呪詛、さらに毒。
 ごおう!! と、左目から凄まじい勢いで地獄の炎が吹き出した。
 怒りに呼応し裡なる業火が燃え上がる。ただしこの傷はだいぶ情けない理由で穿ったものだ。
 その由来はさておき、キッテンがブチギレたことこそが重要である!
「……あ、ダメ」
「「え」」
 ウェンディとハルは揃ってきょとんとした。キッテンは切れていた。
「プッツン収まんないわ。誰がやらかしたの、三十人ぐらいぶっ倒す!!」
「そんなにいませんが!?」
「おねーちゃん頼りがいがあるけど桁おかしいよ!!」
 それだけの怒りということだろう。……そして四人を打つ殺意の波!

『やれやれ、ああ、ああ。手厳しい手厳しい』
 もうもうと穿たれた穴から、ヨウに吹き飛ばされた影が戻ってきた。
 笑みは翳らず。傷は――残念ながら、負傷と呼ぶほどではない。
「テメェなんだそのしゃらくせぇ狐ヅラはァ!!」
『私は口蜜腹――』
「うるせえ知るかさっさとくたばれ!! この野郎!!」
 バチ、バチバチ……有無を言わさぬ怒りが、血を呼び覚ます。
 ざわざわと髪がざわめいて魔性がやどり、荒ぶる自然の猛威を呼ばう。
 かわいい妹と、その大親友の傷。それだけではない、彼女らを追い込んだこと。
 万死に値する。兄は、姉は、これ以上無いぐらいにキレていた!
『……ふうむ。なるほど、数が増えたと』
 しかし魘魅師は笑みを崩さない。所詮は猟兵である。
 徒党を組んだところでどれほどのものかと嘲っていた。
「……ふふ!」
『――なにか、おかしいので?』
 追い詰めていたはずの、けして無事ではないウェンディが、吹き出した。
 その事実が気に食わなかったのか、魘魅師の圧がじわりと重みを増す。
 だが少女はもはや焦ることはない。呪い? 毒? くだらない!
 驚くほどに体が軽く、四肢に漲る力ときたらどうだ!
「バカだなー! "かぞくのきずな"はさいきょーむてき、なんだぜっ?」
 肩を並べるべき親友と、大事な家族たちがいる。それだけで十分だ。
 ハルもまた、笑う。細かいことは放っておけばいい!
「そー! 無敵の友情あーんど家族パワーですゆえに! いえい!!」
 誰もが笑っていた(二名ほどブチギレているが)。

 ……代わりに、魘魅師の笑みが消える。なんと根拠不明で愚かな明朗さか。
 奴はそれを忌々しく思う。希望、未来、愛、勇気! くだらぬ、反吐が出る!
 人の善性をあざ笑い、呪い、貶め、砕く。絶望こそがかの者の愉悦。
『――では、それをまとめてねじ伏せてさしあげましょう』
 ゆえにやつは嘲笑を浮かべた。影が、呪詛が、毒がそれに従った。
 間違いなく最大最強、歴戦の猟兵とて無事では済むまい。
 いわんや、年若くいまだ踏みしめた鉄火場の数が足りぬ乙女たちでは。

 ――はっ! くだらぬ! 経験? 力量? 糞食らえだ!
「ごちゃごちゃうるせえんだよ……!!」
 いまや、ヨウの姿は赫々と燃え上がり、振るう槍は灼けるほどに熱く。
 マグマが形を得たかのような鎧を纏い、爆裂寸前の有り様!
「お前の名前も! 由来も! 何もかも知ったこっちゃないわね!!」
 ざわり。金色の髪をなびかせて、怒れる炎の乙女が奔った。
 何ほどのものか。速も威も恐るるに――否。魘魅師は瞠目する!
『な』
「わたしの妹傷つけといてお高く止まってんじゃないわよぉ!!」
 激突! まるで超加速した重戦車のごとき質量と加速である!
 燃え上がる地獄の炎が、キッテン自身の角を纏い衝角となった。
 ありえぬ。魘魅師は衝撃と苦痛に呻きながら高速思考する。
 こいつらは取るに足らぬ猟兵だ。その技も全て見切っている。
 なにか大層な術式を持つわけでも、伝説の秘剣を持つわけでもない!
 なのに、なぜ!? 呪符の壁を破られ、自分は一撃を受けた!?

 残念ながらその思索は中断される。怒髪天を衝くヨウが突っ込んだからだ!
 一撃にさらに破滅を上乗せしたかの如き、怒りの豪槍一閃! 渦巻く炎!
「俺らの!!」
「私たちの!」
「「怒りの炎で、消し炭になりなさい/やがれぇ!!」」
『が、ぁあああああっ!?』
 ごう、ごごう――地獄の炎と、怒髪天の業火が混ざり合い、燃え上がる。
 これこそ兄と姉の怒り。その威力に理由は? 然るべき逸話は?
 ――ない。そんなものは不要である。不条理と言わば言え!
「っておねーちゃんもヨウお兄さんも! ふたりがむちゃしたらほんまつてんとーでしょっ!?」
「あぁ!? いんだよ細けぇことは!」
「むしろ足りないぐらいよあと300人は燃やす!!」
「桁増えてるし! ――あーもう、ほんっと!」
 ウェンディは笑った。ハルと顔を見合わせて、さらにはにかんだ。
 なんて破天荒な人たちだろう。なんて愛すべき人々だろう!
 逆巻く炎のように力が湧いてくる。隣に親友がいる!
「ウェンディちゃん!」
「ハルちゃん!」
「「ロックビルりゅー、ちょーおうぎだーっ!!」
 ゆえに駆けた! ハルが握るは大包丁、そして大鎚銀閣「肉砕き」!
 呪詛、毒、影。なにするものぞ。速度が、威が、無限めいて絡み合い燃え上がる!
『な、ぜ――』
「――だから、言ったじゃん?」
「家族と友情のぱわー、です!!」
 技名も、型もなにもない。ただふたり突っ込んで、最後の力を叩きつけた。
 なんたる不条理か。なんということか。呪いの邪悪は断末魔を呻く。
 しかし残念ながら、彼奴にもたらされた滅びはもはや不可避である。
 ゆえに、城もろともその体は、最後の影は滅び去った。

 ……気がつけば、呪殺城は消えて失せていた。
 戦闘の余波も彼方に消えたか、猟兵たちは平野の只中。
 高内の屋敷は……残念だが、無事ではあるまい。
 ともあれ黒幕が退けられたなら僥倖。この地には未来がある。
「ウェンディちゃんいえーい!」
「ハルちゃん、いえーい!」
 親友たちは高らかにハイタッチして、ふらりとめまいを起こした。
「おっと!」
「大丈夫?」
 ヨウとキッテンが、それぞれに最愛の家族を受け止める。
 ……いかにも、此度の動乱これにて終幕。幕切れはありきたりなもの。
 いかな武も、呪も、残念ながらすべては道理である。
 それらを全て砕いてねじ伏せ、通ってしまうものがある。

「よーちゃんありがとー!!」
「さっすが、おねーちゃん!」
「おう、ハルもよく頑張ったなァ!」
「私はまだ燃やし足りないけどね!!」
 ……つまりは、誰かを思うまっすぐな気持ちに他ならない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月03日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト