旧ホールにまつわる怪談(と言う名の邪神召喚儀式)
●ある学校で広まっている噂
ねえねえ、知っている?
この学校の旧ホールにはね、幽霊が出るんだって。
嘘だと思うでしょ?
でもね、旧ホールの前を通った人は皆、声を聞いているんだって。
実際に入って幽霊を見た人もいるらしいよ。
らしい、って? ……見た人はそれっきり行方不明になっているらしいから。
なんか、今度新聞部が突撃取材を敢行するらしいけど。
本当に、大丈夫なのかなぁ……?
●グリモアベース
「……おそらく幽霊の噂自体が、邪神召喚の贄を呼び寄せるための撒き餌だな。」
グリモア猟兵の館野・敬輔は、集まった猟兵らをよそに独り言ちるが、彼らの視線に気づくと頭を軽く振って向き直った。
「ああ、集まってもらってすまない。UDCアースにある公立高校で邪神召喚儀式が行われようとしているから、それを阻止してほしいんだ。頼めないだろうか。」
頭を下げる敬輔に、猟兵らはそれぞれの表情で頷いた。
「肝心の儀式の場所なんだが……僕の予知ではわからなかった。」
敬輔いわく、どうやら潜入先の高校には「旧ホール」と呼ばれる部屋があるのだが、現在では別の用途で使用されているらしく、予知で場所を突き止めることはできなかったそうだ。
「だから、まずは高校に潜入して、旧ホールの場所を突き止めてほしい。数名ほどだが既に行方不明者も出ているようだから、早急に頼む。」
姿を消して1~2日程度とはいえ、実際に校内で行方不明者が出ているためか、現在高校内部では不審者に対する警戒が厳しくなっている。地元のUDC組織に頼めば潜入用の身分を用意してもらえるが、彼らの手を借りられるのはそこまで。潜入後は猟兵だけで解決する必要がある。見つからぬ自信があるなら自力で潜入しても良いだろう。
「旧ホールの場所を突き止めたら、中に突入して儀式を阻止、もし邪神が召喚されるようなら倒してほしい。ただ……」
言葉を濁す敬輔に猟兵が先を促すと、彼は頷いて口を開くが、その口調は重い。
「……どうやら、儀式場を守るオブリビオンは、侵入者と同じ姿を取れるようだ。つまり……」
自分自身と全く同じ姿と能力を持ち、全く同じ技を使用する敵との戦いになる、と敬輔は告げる。
「戦いにくいかもしれないが……放ってもおけない。頼めないだろうか。」
深々と頭を下げる敬輔に、猟兵らは頷くが、それぞれの心中はいかなるものか。
「そうだ。調査中、1つだけ気を付けてほしいことがある。」
何だろう、と首を傾げる猟兵らに、敬輔は戸惑いながら告げた。
「この儀式場に興味本位で入ろうとする高校生たちがいるらしい。シンブンブ……か?」
確かに新聞部員なら興味本位で儀式場を覗いてしまいそうだが、もしそのようなことが起こればどうなるか……少なくとも良き方向には向かうまい。
「彼らを見つけたら、出来るだけ穏便にお引き取り願ってくれ。犠牲者を増やさないためにも、頼む。」
猟兵らは三度うなずくと、敬輔が開いた転送ゲートをくぐった。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
至らない点もあるかと思われますが、よろしくお願い致します。
学校で広まりつつある怪談の真相は、邪神召喚儀式でした。
というわけで、猟兵の皆様に邪神討伐をお願い致します。
ただし、後味の悪い結果になる可能性もありますので、参加するか否かは慎重にご検討お願いします。
●本シナリオについて
第1章では高校に潜入して儀式場の場所を突き止めていただきます。
ただし潜入の成否は厳し目に判定。潜入用の身分をUDC組織に用意してもらう方は、プレイングで指定をお願い致します。(用意してもらわなくても潜入は可能です)
なお、オープニングで触れられている新聞部の足止めに失敗した場合、第2章が少々不利な状況から始まります。
第2章はドッペルゲンガー……自身の現身との戦いです。
第1章で得られた情報次第では、戦闘以外の行動が必要になるかもしれません。
詳細は第2章突入時に冒頭への追記で説明します。
第3章はボス戦です。
第2章の結果次第で戦闘難易度が変わります。
●プレイング受付について
今回も各章の冒頭に状況説明を入れた上で、北瀬のマスター紹介ページで受付開始日時を告知致しますので、指定日時以降に送信いただくよう、お願い申し上げます。
なお、本シナリオはゆっくり目の運営となりますこと、ご了承願います。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『旧校舎の怪談』
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POW : 力仕事なら任せろ。
SPD : 隠し扉や罠の存在を発見、解除します。
WIZ : 魔術的に隠蔽された秘密を探し出します。
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●まずは外から偵察を
公立高校の隣にある公園に転送された猟兵らは、敷地の外からざっと観察する。
校舎は2棟。
1棟は真新しい鉄筋コンクリート造り4階建て。
もう1棟は外壁が少し古びた鉄筋コンクリート造り2階建て。
いずれも授業で使用されているらしく、教師や生徒の声が時折漏れ聞こえる。
ぐるりと周囲を歩いてみたところ、入り口は正門1か所のみ。裏門もあったのだが、登下校時間帯以外は閉鎖されているようだ。校舎の出入り口にも監視カメラも設置されているが、おそらく不審者対策だろう。
外から校舎内の様子を伺おうにも、全ての部屋でカーテンが閉められており、中の様子を伺うことはできない。日差しを遮るために閉められていると思われるが、やはり高校内部に潜入して儀式場を探すしかないだろう。
接触したUDC組織から受け取ったこの公立高校のパンフレットを見ると、この学校の全校生徒の人数は700人程度。既に数名ほど行方不明者が出ていると言うが、この人数ではこれ以上出たら隠しきれなくなるだろう。そうでなくても邪神召喚儀式がいつ完遂されるかわからない以上、早急な解決が求められる。
一刻も早く事態を解決すべく、猟兵たちは高校内に潜入を試みた。
※マスターより補足
この章は、邪神召喚の儀式場が行われている「旧ホール」の場所を突き止めるのが目的です。
聞き込みと現地調査が主になると思われますので、フラグメントの内容にはこだわらず、自由に行動して下さい。
マスターコメントにも記した通り、今回は潜入の可否を厳しく判定致します。
UDC組織に潜入用の身分を用意してもらう場合は、プレイングで用意してもらう身分(例:生徒、用務員等)を指定してください。この場合「あらかじめ高校側に何らかの話が通っている」ものとしますが、一方でその身分通りの行動も求められるでしょう。
自力で潜入すればかなり自由に動けますが、学校職員に見つかった場合の対応を考えておくと良いかもしれません。
サンディ・ノックス
用意してもらう身分:高校二年生
年齢も一致してるし
転校生扱いだと助かる
授業は真剣に受け真面目そうな印象を与えておく
休み時間はクラスメイトが噂話していないか聞き耳を立てる
行方不明者もいるしホットな話題の筈
旧ホールを特定できそうな情報があれば推理、
転校生だし「そこってどこ?」と聞いても違和感はないかな
間違って近づいたら嫌だし教えてほしいと少し心配そうに聞く
授業中の行動はここで活かすためさ
新聞部と出会ったら取材の動機を聞いてみる
噂の真相を突き止める使命感なら相手の反応を見つつ新聞部員だけあるねと控えめに褒める
調子に乗りそうな兆候が見られたら即中断
行方不明者が出てるんだよね、心配だよ
友達も心配してたよ?
●転校生として情報収集を
2年F組に転校生として潜入したサンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)は、転入したその日から真剣に授業を受け、周囲に真面目そうな印象を与えることに専念する。後々情報収集に生かすためだ。
中性的な容貌と真面目な態度にクラスメイトから好感を持たれたか、転入翌日にはサンディの周りに生徒たちが集まって来るようになっていた。
昼休み、サンディは集まってきたクラスメイトと他愛ない話をしながらも、他のクラスメイトの噂話に聞き耳を立てる。やがて男子生徒らの噂話が耳に止まった。
「そういえばさ……お前、G組の山田、見た?」
「さあ。おとといあたりから見てねーな。欠席?」
「いや、居場所がわからねーらしい。あいつ、旧ホールの怪談に興味持っていたからさ。」
「あの幽霊が出るってやつ? マジ?」
どうやら、邪神召喚儀式の隠れ蓑としての幽霊話は、少しずつ広まりつつあるようだ。隣のクラスで行方不明者も出ているらしい。同じ話を耳にしていたらしく、サンディと同席していた女子生徒がポツリと漏らす。
「何だか……怖いよね。」
「その旧ホールって、どこ?」
言外に「間違って近づきたくない」とのニュアンスを含め、心配そうな声音で聞くサンディ。授業中に真面目な印象を与えていたこともあり、生徒たちはサンディの言を疑わず、教えてくれた。
「旧校舎の2階よ。めったに授業で使わないから行くこともないと思うけど……」
現在サンディ達のいる教室は新校舎……4階建ての校舎にある。
「サンディくんは近づいちゃダメだよ?」
「ありがとう。近づかないように気を付けるよ。」
サンディが丁寧にお礼を述べたところで、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴った。
放課後、サンディが新校舎内を歩いていると、左腕に新聞部の腕章をつけてメモ帳片手に歩くクラスメイトの男子生徒が目に止まる。呼び止めて話を聞いてみると、友人が行方不明になったから旧ホールに乗りこんで探すと教えてくれた。新聞部としての使命感だけではなく、友人の身を案じて行動を起こしたのはサンディも褒めたが、彼も行方不明になる可能性がある以上、止めねばなるまい。
「俺も心配だし、他の友達も君のことを心配してたよ。もう少し待ってみない?」
「……仕方ねぇ。」
男子生徒は渋々サンディの言を受け入れてくれたが、今後新聞部に限らず同じように考える者が出てくるかもしれない。急いで儀式を阻止せねばならない。
【現在の状況】
・旧ホールは旧校舎の2階にある
・旧ホールはめったに授業で使われることはない
・新聞部員を1人阻止成功
大成功
🔵🔵🔵
九重・灯
生徒として聞き込みします。
「わたし、怪談話を集めてるんですよ」
と切り出して、旧ホールについての情報収集を試みる。
――ハハ、オカルトが趣味だもんな!
もう一人の自分が何か言ってますけど、違います。
(趣味じゃなくて探索者としての務めですよ。まったく)
あと自由に動ける時間に一通り歩き回って、場所の候補を絞り込む。
旧校舎の二階。ホールと言うからにはある程度広くて、普段は人が立ち寄らないような場所。でも人をおびき寄せる以上、鍵は掛かっていないと思う。
物置部屋のような所でしょうか?
「今は先生方の目が厳しいようですから、旧ホールへの取材は少し様子を見たほうが良いですよ」
と新聞部員を見かけたら言ってみます。
●情報は足でも稼ぐもの?
2年A組の生徒として潜入した九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)も、休み時間を利用して同じく他の生徒に聞き込みを試みていた。もっとも、「わたし、怪談話を集めているんですよ。」と必ず切り出すからか、他の生徒の反応は若干引き気味ではあったが。
(『ハハ、オカルトが趣味だもんな!』)
(趣味じゃなくて探索者としての務めですよ。まったく……。)
時折、頭の中に響くもう一つの人格の声を黙殺しつつ、灯はいくつかの怪談話を聞き出す。その中には旧ホールの幽霊にまつわる怪談話も含まれていた。
いわく、旧ホールには幽霊が出る。
いわく、放課後になると幽霊の声が聞こえる。
ただし、午前中や昼間には一切幽霊の声は聞こえない。
昼休み、早めに昼食を済ませた灯は、喧噪の中旧校舎に向かう。ここ数日で一通り校舎内を歩き回っていたが、他の猟兵から「旧ホールは2階にある」との情報が得られた故、今日は2階に絞って歩き回ろう……として、1階で新聞部の腕章をつけた生徒を見かける。相手も灯の姿に気づき、話しかけて来た。
「あんた、2Aの怪談話が好きな奴だろ? 一緒に見にいかないか?」
「今は先生方の目が厳しいようですから、旧ホールへの取材は少し様子を見たほうが良いですよ。」
見回りっている様子の教師の姿を遠くに認め、灯がそれとなく新聞部員に注意を促すと、新聞部員はそそくさと退散。実際に見まわる教師の姿を確認した以上、彼に限れば数日間は来ないだろう。もっとも、動きづらいのは灯も同じなので、急いで2階に駆け上がる。
(ホールと言うからにはある程度広くて、普段は人が立ち寄らない場所。でも人をおびき寄せる以上、鍵はかかっていないと思う。)
灯は物置部屋のような所ではないかと推測していた。その推測に当てはまり、かつ旧校舎の2階にあるのは社会科教室。だが、いざ向かってみると鍵がかかっていた。授業時以外人が立ち寄らないせいか、普段は施錠されているようだ。
他に当てはまるような部屋がないだろうか、と探そうとしたところで、昼休み終了のチャイムがなる。授業に遅刻して見咎められるのもまずいため、灯は急いで教室に戻った。
【現在の状況】
・旧ホールの怪談話の概要が判明
・旧ホールは旧校舎の2階にあり、めったに授業で使われることはない
・旧ホールは社会科教室ではなかった
・新聞部員を1人阻止成功。現在2人阻止成功。
成功
🔵🔵🔴
波狼・拓哉
用意してもらう身分:照度検査機械を作ってる会社員
探偵として潜入は…唐突なら怪しいしやめとこう
んー照度検査はどの学校でもやるしそれに乗っかるか
機械に不調があったので新しい機材を届けるついでにこちらのミスなのでこちらの人員でパッと検査しますとか言いくるめてみよう
お目付け役つくならついでに校舎案内してもらいつつコミュ力使って不思議な現象の話でも聞き出しとこう
つかないなら場所確認も交えつつ道行く学生にでもきいておこうかな
新聞部にあったら照度検査するから立ち入らないでねと言いくるめておこう
場所が分かり次第他猟兵に連絡入れてからトイレ行く振りとかしてお目付け役振り切ってから変装を変えてから現場に向かおう
●そもそも旧ホールはどこにあるのか
一方、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は、UDC組織に明るさを測定する照度計の製造会社の社員としての身分を用意してもらい、潜入を試みていた。本業は探偵だが、探偵としての潜入は唐突過ぎて怪しいので控えたのだ。
拓哉は器具を携え、黒っぽい衣服を着て正面から高校に入る。高校に限らず、学校では教室の明るさを調べる照度検査を毎年行う義務があるため、それに乗っかれれば良いと思っていたが……。
「委託している業者と違いますね。どのようなご用件でしょう。」
身分を用意してもらっても、どの業者に照度検査を委託しているかまではUDC組織ではわからなかったようだ。故に事務員に怪しまれてしまうが、拓哉は冷静に言いくるめを試みた。
「こちらのミスで納入している照度計に不調があったので、こちらで再度検査させていただきたいと思いまして。」
「……わかりました。」
拓哉がなんとか潜入できると胸をなで下ろしたその時。
「では、こちらの帳簿に名前のご記入を願います。また、校内ではこちらの来客者用名札を下げていただき、検査には事務員が1人立ち会わせていただきます。」
事務員に来客者名簿と筆記用具を差し出され、拓哉は呻く。来客者を記録しておくのは昨今の情勢からやむを得ないとはいえ、これでは自分が来校した記録が残ってしまう。しかしここで拒否すればさらに怪しまれるのは明白だ。お目付け役を振り切ること自体は難しくないだろうが、来校記録が残ってしまう以上、下手な行動はできそうにない。拓哉は仕方なく、UDC組織が用意した社員証の名前を記入し、来客者用名札を受け取って身に着けた。
拓哉は新校舎の教室を適当に見繕い、実際に照度検査を行う。しかし放課後の限られた時間で行わなければいけない上、1部屋につき黒板表面を9か所と教室で9か所、計18か所行わなければいけないため、思いのほか時間を取ってしまう。これでは旧校舎の部屋まで手が回らない。
「そういえば、不思議な現象が起こっていると聞きましたが。」
「生徒が噂していますね……旧ホールの幽霊とか。」
拓哉がコミュ力を発揮して検査の合間に事務員に話しかけると、話題に上がるのはやはり幽霊話。しかしそれ以上に重要なのは「旧ホール」という単語が出たこと。
「旧ホールとは?」
「旧校舎2階の視聴覚室、と聞いていますが。かつて多目的ホールだったようです。」
現在では改装されて視聴覚室となっているが、その名残で今でも「旧ホール」と呼ばれているらしい。道理でグリモア猟兵の予知ではわからないはずだ。
拓哉は検査を終えると来客者用名札を返して校舎を後にする。
そして、旧ホールが視聴覚室であるとの情報を、他の猟兵たちに送った。
【現在の状況】
・旧ホールの怪談話の概要が判明
・旧ホールは旧校舎の2階にある「視聴覚室」
・新聞部員は現在2人阻止成功。
苦戦
🔵🔴🔴
フレミア・レイブラッド
UDC組織に協力して貰い、転入生として潜入。
【礼儀作法、誘惑、催眠術】で教師や生徒達を魅了し、人気の転入生という事で潜入し、周囲の人物から先ず行方不明者や旧ホールの幽霊の噂に関してそれとなく(噂で聞いたのだけど~といった感じ)情報収集。
休み時間中に新聞部の活動場所と部員の情報を確認しておき、放課後に新聞部が活動している場所へ赴き、【魅了の魔眼・快】と【催眠術】を併用して自身の虜にし、新聞部に行方不明の話や怪談の内容について知っている情報を教えて貰いつつ、魅了したまま「決して旧ホールには近づかない様に」と命令して抑えるわ
※アドリブ等歓迎
●情報の再確認は大事です?
3年A組の転入生として潜入したフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、生徒として潜入した他の猟兵と同様、休み時間にクラスメイトからの情報収集を試みていた。礼儀正しいフレミアにクラスメイト達はどこか惹かれるものを感じたか、あっという間にクラスの人気者になっていたが……実は教師も生徒もフレミアに魅了されていたりする。
「噂で聞いたのだけど、旧ホールに幽霊が出るそうね?」
噂話に興味を持った振りをしてそれとなくフレミアが質問すると、クラスメイト達は次々に教えてくれる。旧ホールの幽霊の噂自体はかなり前からあったのだが、「幽霊が出る」という程度の漠然とした噂話だったらしい。しかし、3~4日前から幽霊の声を聞いた生徒が出始め、その話に興味を持って向かった生徒が行方不明になったことで、あっという間に幽霊の存在が確かな情報として校内に広がったようだ。既に新聞部も情報をキャッチしているらしい。
「教えてくれてありがとう。」
「フレミアさんの力になれたなら、これくらいは。」
男子生徒たちはまだまだフレミアと話したいようだが、ちょうどチャイムが鳴ったため、諦めていた。
放課後。フレミアは新聞部の活動拠点となっている新校舎の空き教室に乗り込む。
「ちょっといいかしら?」
「え、3Aの転校生が何の用……?」
フレミアは入るなり【魅了の魔眼・快】を発動。催眠術も併用し、その場にいた新聞部員を全員虜にする。
「あなた達に色々教えてもらいたいの。いい?」
「は、はい……」
虜にした新聞部員から、フレミアは念入りに行方不明者の情報と怪談の内容を聞き出す。怪談の内容は他の猟兵からの情報や3-Aの教室で知った内容と同程度だったため、特に真新しい情報はなかったが、行方不明者は全部で5人いるようだ。フレミアがクラスと名前を聞きだすと、全て教えてくれた。
1-C 倉木くん
2-D 蔵杉くん
2-G 山田くん
3-D 向谷くん
3-E 町野さん
皆、2~3日前から家に帰っていないらしいが、全員が怪談好きと言うわけでもないらしい。また、新聞部員も行方不明者の顔写真までは手に入れられていないそうだ。
「今日、新聞部員は全員そろっているかしら?」
「そうです。」
「いい? 行方不明者が全員戻って来るまで、決して旧ホールに近づかない様に。」
「はい……わかりました。」
フレミアの命に、新聞部員たちは一様にうなずく。これで彼らが旧ホールに近づくことはないはずだ。
【現在の状況】
・旧ホールの怪談話の概要が判明
・旧ホールは旧校舎の2階にある「視聴覚室」
・行方不明者のクラスと名前が判明(顔はわからない)
・新聞部員全員阻止成功
成功
🔵🔵🔴
※マスターより
皆様のおかげで、必要と思われる情報は全て出揃いました。
他にも気になる事、調べたいことがございましたら、ぜひプレイングをお寄せくださいませ。
しかし一方で、見回りを行っている教師と接触しそうになった猟兵もいます。
今後も見回りの可能性があるため、可能なら対処をお願い致します。
黒木・摩那
用意してもらう身分:高校1年生
リアル年齢ですし。転校生で。
もう旧ホールについての情報は集まっているようですし、
新聞部も足止めできたようです。
あとは先生の動きですね。
ここは転校生ということを利用して、
先生に見回りついでに、一緒に校内案内してもらっていいですか?
とお願いします【言いくるめ】。
ぐるぐると校内を回って、先生も大変ですね、と相槌打ちながら
巡回のパターンや頻度、時間などを確認します。
旧ホールには近づくな、と釘を刺されたら、
ハイと元気よく返事しときます。
念のため、
監視カメラもあって厳重なんですね、あれって、いつも見てるんですか?と
話を振って、カメラの数や制御機器の場所も確認してきます。
●自分の目で確かめよう
転校生として1年F組に潜入した黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、帰りのホームルームが終わるとその足でクラス担任の元へ向かった。
「先生にお願いがあるのですが。」
「何でしょう? 黒木さん。」
「先生に、校内の案内をお願いしたいのですが。」
担任は渋い顔をするが、摩那が転校してきたばかりで早く知りたいのでと念押しすると、迷いながら了承した。
「今日、校内の見回り当番に当たっているから、そのついででよければ案内するわよ。」
「ありがとうございます。」
摩那は頭を下げた。これで教師の巡回パターンや頻度、時間が確認できそうだ。
摩那は担任と一緒に新校舎から旧校舎を一通り見て回る。途中、別ルートで巡回している教師とすれ違うが、担任に話を聞いてみると、2人1組で昼休みと放課後に一通り巡回しているらしい。ただし放課後の巡回は5時までに終わらせ、巡回終了後は旧校舎の入り口を施錠して生徒が入れないようにするそうだ。旧校舎と新校舎との行き来は1階からしか行えないため、入れないようにするならこれで十分。さらに旧校舎の入り口には監視カメラも取り付けてある。
「監視カメラもあって厳重なんですね。」
「安全対策としてつけているのよ。」
一時全国の学校に不審者が侵入し、生徒に危害を加える事件が多発したため、その対策としてつけられているとのこと。
「あれって、いつも見てるんですか?」
摩那が監視カメラを指差して質問すると、担任は事務室で見ている、と答える。
「先生も事務員さんも大変ですね。」
「大変だけど、生徒の安全を守るのも私達職員の仕事だから。」
その後も摩那は担任と一緒に一通り巡回しつつ、監視カメラの設置場所を確認する。カメラは1階の新校舎・旧校舎への出入り口、全部で8か所に設置されていた。旧校舎に入ろうとした時点で必然的に監視カメラに映ってしまうが、旧ホールの場所が判明している以上、突入時にはグリモア猟兵に直接旧ホール付近への転送ゲートを開いてもらえれば、監視カメラのことは気にしなくてもよさそうだ。
摩那と担任は巡回を終え、職員室まで戻る。
「先生、ありがとうございました。」
「くれぐれも旧ホールには近づかないように。」
「ハイ。それでは失礼します。」
摩那は一礼してその場を辞すと、見回りに当たっていたもう一人の教師も戻って来るのが目に入る。時計を見ると午後5時。情報通りなら旧校舎は施錠されているが、グリモア猟兵に転送してもらえれば何ら問題なく入れるだろう。摩那は潜入している他の猟兵に連絡し、今が旧ホールに突入する絶好の機会であることを伝えた。
大成功
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第2章 集団戦
『『都市伝説』ドッペルゲンガー』
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POW : 自己像幻視
【自身の外見】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【全身を、対象と同じ装備、能力、UC、外見】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : シェイプシフター
対象の攻撃を軽減する【対象と同じ外見】に変身しつつ、【対象と同じ装備、能力、UC】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 影患い
全身を【対象と同じ外見(装備、能力、UCも同じ)】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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●儀式を阻止せよ
グリモア猟兵が改めて開いた転送ゲートをくぐると、そこは視聴覚室……旧ホールの前の廊下だった。他の猟兵から連絡を受けていた通り、見回りの教師が来る気配もなく、他の生徒の気配もない。
「もし中に行方不明者がいたら、助けてここまで連れて来てほしい。僕がここで責任持って保護する。」
グリモア猟兵の力強い後押しに、猟兵たちは旧ホールの扉を開け、中に突入した。
猟兵らが見たのは、机と椅子が隅に片付けられて広々とした部屋に、数多くの黒い塊の不定形の魔物が複数体うろついている光景。それは猟兵らを一目見るなり、見る見るうちに姿を変え、猟兵らと全く同じ姿を取る。都市伝説『ドッペルゲンガー』がUDC怪物と化した存在だ。おそらく目にした猟兵と同じ技、同じ能力で攻撃してくるだろう。
室内を見回すと、部屋の四隅にぐったりと倒れている制服姿の人影が見える。行方不明になっている生徒だろうか? 儀式で生命力を吸い取られているのか、かなり衰弱しているようだ。
部屋の中央には仰向けに寝かされ、目を見開いて身体を小刻みに震えさせている人影が見えるが、ドッペルゲンガーが6体、しっかりと周囲を固めており、突破して救出するのは難しそうだ。
幸い、ドッペルゲンガーは儀式の完遂を優先させているため、旧ホールの外までは追いかけて来ないようだ。それなら生徒たちを救出する余地はありそうだが、中央で固まっている個体以外は猟兵を贄とすべくひとりひとりにしっかりと纏わりついてくる。戦いは避けられないかもしれない。
邪神召喚の儀式を阻止するため、猟兵たちはそれぞれ動き始めた。
※マスターより補足
この章では、己の現身たるドッペルゲンガーと戦いながら、行方不明になっていた生徒達の救出を目指していただきます。
突入にあたり、『いったんグリモアベースに戻り、改めて旧ホール前に転送してもらった』と言う扱いにしますので、1章終了時点の居場所は気にしなくて構いません。
ドッペルゲンガーは必ず1人1体相手取っていただくことになります。
描写が心情重視になるか戦闘重視になるかはプレイング次第です。
旧ホール内には、行方不明となっている生徒が5人全員囚われていますが、この章で救出可能なのは、部屋の四隅にいる「4人」です。
原則として猟兵1人につき1名のみ救出可能ですが、プレイング次第で2人同時救出も不可能ではありません。旧ホールの外に連れ出せば、後はグリモア猟兵が保護してくれます。
ただし、2章で救出できる4人のうち、2章終了までに救出されなかった生徒は死亡しますのでご注意ください。
救出した人数によって第3章の戦闘難易度が変わります。できるだけ多く救出できるよう、頑張ってください。
念のため申し上げておきますが、全員救出後に採用するプレイングに、救出に関わる内容が含まれていた場合、その箇所は無視して判定致します。これによって不利な結果になるようなことはございませんのでご安心ください。
それでは、最良の選択を。
サンディ・ノックス
いつか自分と戦う日が来ると思っていてこれはその予行練習
だから自分の姿の敵を見ても狼狽えはしないよ
俺の歪んだ笑みってこんな顔なんだなと自嘲的な笑いは出ちゃうけど
生徒を救出するのは敵を倒してから
救出作業しながらいなせる相手じゃない
仮に倒した後、別の敵が向かってきたとしても戦闘優先
胸鎧を基に全身甲冑姿へ変身
UC解放・宵を攻撃力重視して攻撃
攻撃がほぼ当たらないならUC絶望の福音を使われていることも考慮
思考まではコピーされていないだろうとだまし討ちを狙う
攻撃しても埒があかないと攻撃を中断、生徒のほうへダッシュし救出に切り替えたフリ
敵が攻勢に転じ絶望の福音の使用をやめたのを狙いUC解放・夜陰を全発叩き込む
●いつか来る『その日』に備えて
目の前に現れた全身甲冑姿の瓜二つの青年を見ても、サンディ・ノックスは狼狽えない。
(「いつか自分と戦う日が来ると思っている。だから、これはその予行練習。」)
だが、それでも。
「……俺の歪んだ笑みってこんな顔なんだな。」
狂気じみた笑みを浮かべる現身を見て、サンディは呟きつつも自嘲的な笑いが出てしまう。あぁ、戦いの狂気に侵されている時の自分は、こんなに歪んだ表情をしているのか……と。
サンディの方針は「敵を倒してから生徒を救出」。
自分の能力と戦い方を一番よく知るのは、自分。それ故に目の前の現身は救出作業をしながらいなせる相手ではない、と判断したからだ。
サンディは胸部のプレートアーマーを元に全身甲冑姿へと変身し、【解放・宵】を発動、攻撃力を重視し、できるだけ少ない回数で確実に撃破できるように急所を狙って攻撃するが、目の前の現身はそれを次々と回避し、剣先を掠めることすらかなわない。
(「これは……未来予測で躱されているかもしれない。」)
まるで剣先を予測しているかのように回避する動きを見て、【絶望の福音】をコピーされている可能性を考慮するサンディ。
(「けど、思考まではコピーされていないだろうね。」)
サンディはいったん攻撃を中断し、あえて現身に背を向けて生徒のほうにダッシュ。現身もそれを追いかけ、無防備に見える背中に黒剣を振りかぶろうとした途端、突如現れた180発を超える漆黒の水晶の嵐に呑み込まれた。
「あぁ、見えちゃったんだ? 気付かず“俺”に染まっていれば幸せだったのにねぇ。」
最初からだまし討ち狙いで現身に背を向けて救出に切り替えたように見せかけ、【絶望の福音】を解除した隙を狙って【解放・夜陰】を全弾叩き込み、現身を撃破したサンディの顔に浮かぶ笑みは……狂気そのものだった。
【現在の生徒救出数:0/4人】
成功
🔵🔵🔴
黒木・摩那
自分のコピーを目の前にするというのは良い気分ではないですね。
自分の気にしてるところが嫌でも目につきますから。
眼鏡とか胸とか。
まずは人質の救出最優先。
UC【トリニティ・エンハンス】で【火の魔力】を使い、
魔法剣の威力を高めます【属性攻撃】【破魔】。
防御は【火炎耐性】【呪詛耐性】の上着+【第六感】
【武器落とし】でけん制しつつ、人質に近づきます。
そして、【念動力】で人質をつかんで、
こちら側に引き寄せて確保。
確保したら、背中でかばいつつ、多少の怪我は無視しても、
じりじりと外へと移動します。
うかつに他の方の手助けもできないので、
どうしても個々の能力が試される厳しい戦いですね。
●己を目にしても、優先順位は明確に
(自分のコピーを目にするというのは良い気分ではないですね。)
目の前に現れた現身を見て、黒木・摩那は大きなため息。
(「自分の気にしてるところが嫌でも目につきますから。……眼鏡とか胸とか。」)
自身の胸にそっと目をやり、しかしやるべきことを思い出して顔を上げて現身を見据える。
摩那が選んだ方針は「生徒の救出を最優先」だ。
まずは【トリニティ・エンハンス】で炎・水・風の魔力で自己強化、炎の魔力を魔法剣『緋月絢爛』に注ぎ込み、炎を纏わせて威力を高めた。現身も同じように手にする魔法剣に炎を纏わせ、摩那に斬りかかるが、第六感で察知しつつ耐火処理を施してあるレザージャケットでわざと受けた。
再度現身が魔法剣を振るおうとするが、摩那は魔法剣でけん制しつつ足止めし、その間に入り口に最も近い生徒を念動力で少しずつ引き寄せ、確保する。だが生徒はぐったりしたまま動かないため、そのまま念動力で少しずつ部屋の入口に移動させた。その間にも現身は炎の魔法剣で容赦なく摩那に、そして生徒に斬りつけて来る。
(「うかつに他の方の手助けもできないので、どうしても個々の能力が試される厳しい戦いですね。」)
他の猟兵もそれぞれ己の現身と戦い、生徒の救助に向かっている。助けを求めるのは難しい。だから摩那は生徒を背中でかばって傷を受けつつ、時に現身の魔法剣を捌きつつじわじわと入口へ後退した。
視聴覚室の外まで出て、摩那はようやく一息つく。現身は視聴覚室の入口でしばらく摩那を待っていたが、やがて踵を返していった。
ぐったりとしたまま動かない生徒をグリモア猟兵の手に委ねるが、まだ中には生徒が残っている。儀式が完成したらおそらく中にいる生徒は命を落とす可能性が高い。早急に救助が必要だ。
【現在の生徒救出数:1/4人】
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
あまり広範囲系の力を使うと生徒達まで巻き込みそうだし…厄介ね。
【ブラッディフォール】で「凍てつけ血/咲き誇れ薔薇」の「銀氷の蒼薔薇」の剣とドレス姿へ変化。
【無影の氷針】と【絶対零度の氷界】で敵を鈍らせつつ自身に有利な場を構築。【念動力】で敵の動きを要所で妨害して隙を作り、【怪力、早業、串刺し】の【氷刃嵐華】で一気に追い込み、仕留めさせて貰うわ。
敵の攻撃は【見切り、残像、第六感】で回避。
ブラッディフォールはわたしが倒した敵に由来する力…能力や武装は真似できても、戦闘経験まで真似できるかしら?
戦闘後は手早く【怪力】で生徒を運びだし救出。その後は中央救出へ向かう猟兵がいれば援護するわ
※アドリブ等歓迎
波狼・拓哉
自分だけ失敗した感があるからなぁ…ここでは頑張りたい所。
そしてドッペルゲンガーね。…ミミック出されないなら楽勝だけどそんなわけにも行かないよね。本体貧弱なのコピーしてくれたら楽だけど。
それじゃ化け咆えなミミック。あ、出来るだけ小さめのサイズで周り巻き込まない感じで。生徒巻き込んだら笑えないしね?…さて見た目、能力はコピー出来てもこちらの精神性まで完璧にコピー出来るかな?一緒に狂気に堕ちようぜ?それじゃあ、敵の抑えはお願いするねミミック。狂わせ続けな。
自分は戦闘には参加せず生徒救出を第一に行動。ミミックが敵を抑えてるの確認してから早業で担いで逃げ足発揮してホールから出よう。
(アドリブ絡み歓迎)
●気負いせずに、役割をこなす
(「自分だけ失敗した感があるからなぁ…ここでは頑張りたい所。」)
波狼・拓哉は頭をかきながら箱型生命体ミミックを召喚。他の猟兵が順当に情報を手に入れた中、自分だけが上手くいかなかったのだから、ここでひと踏ん張りせねばとつい気負いしてしまう。
「あなたがこの学校の職員からここが旧ホールだと聞きだしてくれたのよね? だったら気負いすることはないわ。」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かります。」
だが、フレミア・レイブラッドに声をかけられ、拓哉は張りつめていた気を少しだけ緩めた。職員から情報を手に入れられたのも拓哉だけなのだ。
(「あまり広範囲系の力を使うと生徒達まで巻き込みそうだし……厄介ね。」)
視聴覚室がさほど広くないのを見て、フレミアは思案する。この広さだと広範囲に攻撃可能なユーベルコードは生徒まで巻き込みかねない。如何にして現身だけを狙うか。
(「ミミック出されないなら楽勝だけど……そんなわけにも行かないよね。」)
己の現身が同じようにミミックを召喚したのを見て、拓哉はひとつため息。本体が貧弱なのをコピーしてくれたら楽なのだが……。
お互い目配せし、フレミアが廊下側の隅にいる生徒の元へ、そして拓哉が教室の奥の隅にいる生徒の元へ走り出す。それぞれの姿に変化した現身もそれぞれを追った。
フレミアは生徒を守るように立ちはだかると【ブラッディ・フォール】を発動、かつて真っ赤な薔薇が咲き乱れる薔薇園で骸の海へと送ったオブリビオンを彷彿とさせる蒼の柄を持つ銀剣を携えた蒼のドレス姿へと変化する。現身も全く同じ姿に変化するが、フレミアは優雅な、かつ棘のある笑みを浮かべる。
「【ブラッディ・フォール】はわたしが倒した敵に由来する力。能力や武装は真似できても、戦闘経験まで真似できるかしら?」
フレミアは透明度の高い氷針で現身を鈍らせつつ、絶対零度の氷槍で生徒を巻き込まぬよう注意を払いながら現身の周囲を凍らせ、自身の戦闘力を高める場を構築する。現身も真似をして氷針を乱射するが、フレミアは念動力で針をあらぬ方向へと逸らし、逸らしきれなかった針は軌道を見切って回避するが、避けきれなかった何本かは浅く肌を掠め、皮膚の表面に薄い氷の膜を作った。現身は氷針をほぼ全弾受けているため、やはり蓄積した戦闘経験まではコピーできないようだ。
「さあ、終わりにしましょう?」
フレミアは剣から氷刃を放ち、さらに現身の動きを鈍らせると、あらぬ速さで突撃し、力任せに連続で斬りつけ、現身を追い込む。最後は剣で現身の胸を貫き、止めを刺した。
一方、拓哉はミミックに現身の抑えを託し、自身は生徒の救出を優先させる方針。まずは【偽正・龍滅咆哮】でミミックを龍に変化させる。
「それじゃ化け咆えなミミック。あ、出来るだけ小さめのサイズで周り巻き込まない感じで。」
生徒巻き込んだら笑えないしね? と拓哉は軽く口にするも、その顔は一切笑っていない。龍に変化したミミックは主の命に忠実に現身たちだけを狙って咆え、現身たちを小さな爆発に巻き込みつつ拓哉とミミック、現身たちを狂気で繋ぐ。
(「さて見た目、能力はコピー出来てもこちらの精神性まで完璧にコピー出来るかな?」)
「一緒に狂気に堕ちようぜ?」
ミミックの狂気の咆哮に呼応するように現身のミミックも同じ咆哮をあげるが、ミミックのそれに比べると狂気の度合いは物足りない。精神性までは完全にコピーできず、ただ真似をしているだけにも思える。それでも拓哉たちはより深い狂気に堕ちていく。
「それじゃあ、敵の抑えはお願いするねミミック。狂わせ続けな。」
ミミックが狂気の咆哮で現身たちを抑え続け、共に狂い続けている間に、拓哉は素早く倒れている女子生徒を抱え上げ、現身に悟られぬよう気配を消しつつその場から離れ、視聴覚室を出た。
拓哉が女子生徒をグリモア猟兵に託すころ、フレミアも大柄の男子生徒を軽々と抱えて視聴覚室から出てきた。
これで救出できた生徒は3人。だが、最も入り口から遠い隅にも1人倒れている。急がないといけない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
九重・灯
判定POW
「敵をぶん殴るのはオレの担当だ」
人格が入れ替わり、獰猛な笑みを浮かべる。
両手剣を抜いて打ち掛かる。だが、自分のコピー相手じゃラチが明かねぇな。
(『このUDCは明らかに時間稼ぎですよ』)
もう一人の自分の声が響く。
見てろ。猿真似だけじゃ勝てない事を教えてやる。
追い詰められるフリして壁際に誘い込む。
ここで相手の攻撃をギリギリで避ければ、武器が壁に刺さって隙が出来るんじゃないか? 『だまし討ち』だ。
大振りになりやすいのがオレの剣の欠点だ。
自分の剣を手放して、敵に肉薄して思いっきり殴り掛かる。
怯んだらフック付きワイヤーを首に絡めて締め倒してやるよ。
戦闘後、倒れている生徒の救出かその援護を行う。
●己の弱みを理解した上で
九重・灯が視聴覚室に踏み込むと、待ち受けていたかのようにドッペルゲンガーが灯と同じ姿を取る。それを目にすると、戦闘担当のもう一つの人格が表層に浮かび上がった。
「敵をぶん殴るのはオレの担当だ。」
人格が変わった灯は獰猛な笑みを浮かべて両手剣を抜き、【剣劇】で間合いを詰めて現身に斬りかかる。だが、現身も同じような笑みを浮かべて同じような両手剣を抜き、同じように間合いを詰めてくる。埒があかない。
(『このUDCは明らかに時間稼ぎですよ。』)
(「だろうな。」)
頭の中に響くもうひとりの自分の声に同意しつつ、灯は意図的に追い詰められるフリをして現身を壁際に誘い込む。ここで相手の攻撃をギリギリ避けられれば、両手剣が壁に刺さり、隙ができるのではないかと踏んだ。大振りになりやすい己の剣の欠点を理解しているが故のだまし討ち作戦。
(「見てろ。猿真似だけじゃ勝てない事を教えてやる。」)
獰猛な笑みを崩さず、灯はその時を待つ。
灯の狙い通り、現身は間合いギリギリで立ち止まり、そのまま灯に両手剣を振り下ろす。しかし、灯の目論見は外れ、両手剣はギリギリで壁に刺さる事なく振り下ろされ、灯の上半身を薙いだ。
「が……は……っ!!」
灯の見立て通り、確かに現身の剣は大振りだった。しかし偶然にも剣の間合いからほんの少しだけ遠い位置に立ち止まったことで、結果的にギリギリ『壁に刺さらない』位置から灯を斬りつけたのだ。
「こ、の……っ!!」
振り下ろし切った両手剣が再度振るわれる前に灯は自らの両手剣を手放し、現身に肉薄、思いっきり殴りかかる。怯んだところでフックつきワイヤーを首に絡め、力いっぱい絞め倒した。
かろうじて現身は撃破したものの、この傷では生徒の救出に向かう余裕はない。他の猟兵に対応を任せ、灯は視聴覚室から撤退するしかなかった。
【現在の生徒救出数:3/4人】
苦戦
🔵🔴🔴
サンディ・ノックス
いけない、つい自分との戦いに夢中になってしまった
最優先は救助だ…頑張ろう
真の姿発現(特徴は真の姿イラスト参照願います、利き手は右です)
UC青風装甲を使用
室内で最高速度は無理でも生徒になるべく早く近づきたい
飛行が無理なら【ダッシュ】する
敵も素早く動くだろうし、斬りつけや水晶で攻撃もしてくるだろうから
戦闘能力そのものを上げて持久戦に備える意味もある
生徒に接近するまでは敵の攻撃を【見切り】、回避
強行突破や回避で捌ききれない場合は
朔を脚に絡め転倒させ【時間稼ぎ】
生徒を確保したら抱え上げ庇いながら
入ってきたときと同じ方法で素早く外へ向かう
痛みは動きを鈍らせるから【オーラ防御】しながら【激痛耐性】で耐える
●己を取り戻し、目的を果たせ
(「いけない、つい自分との戦いに夢中になってしまった。」)
ようやく戦いの狂気から抜け出したサンディ・ノックスは、この依頼の本分を思い出し、反省。あくまでも最優先は生徒の救出だと思い直す。
行方不明になってこの部屋に囚われている生徒は、部屋の奥に1人残っている。ドッペルゲンガーに周囲を固められている部屋中央の生徒を除けば、他の生徒は他の猟兵の手で全員救出されたようだ。ならば、残っている生徒を救出するのは自分の役目。
サンディは真の姿を開放し、瞳が青から金に、背に竜の翼と尾を生やしてより龍に近い姿へと変化する。その上で【青風装甲】を発動し、全身を瑠璃色の旋風で覆って戦闘力を上げた上で、ダッシュで一気に部屋の隅で倒れ伏している生徒の元へ向かう。飛行して接近するにはこの視聴覚室はあまりにも狭すぎたのだ。たどり着くまでの間、先程漆黒の水晶で撃ち抜いた現身とは別の現身がサンディの姿を取り、漆黒の水晶でサンディを撃ち抜こうとするが、水晶の軌道を見切った上で生徒に被弾しないものはそのまま回避し、生徒に当たりそうな水晶はあえて己の身体で受けた。
(「彼を外に出すまで、少しでも時間を稼がないと。」)
現身とすれ違うタイミングで、サンディはぐっと頭を下げ、右手に持った朔のワイヤーを現身の足に投げつけて絡める。ワイヤーに足を絡められた現身はその場で転倒した。
ぐったりしたままの生徒を抱え上げると、サンディは再びダッシュで入り口に向かう。ワイヤーを黒剣で断ち切った現身が、今度は背中からサンディごと生徒を斬ろうとするが、サンディは瑠璃色の旋風を集中させて生徒への一撃だけでも防ぐ。それでもサンディ自身は背中を斬られるが、動きが鈍らぬようじっと耐えた。
視聴覚室入り口までの数秒はあまりにも長く感じられたが、再度斬られる前にサンディは視聴覚室の外へ出ることができた。
【現在の生徒救出数:4/4人】
●全員救出成功
猟兵たちの手で、部屋の四隅に倒れていた生徒は、4人全員救出された。
だが、部屋の中央には、まだ仰向けに寝かされている小柄な生徒がいる。
あの生徒も、助けなければいけないだろう。
猟兵たちは頷き合い、再び視聴覚室に突入した。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ジャガーノート』
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POW : Summon: Arms/死ぬくらいなら殺す
いま戦っている対象に有効な【追加オプションの兵器・武器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : Escape Hole/助けて
自身が戦闘で瀕死になると【迎撃用兵器を備えた戦線離脱用転送システム】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ : Enchant: Power/死にたくない
戦闘力のない【自身の感情に誘発される強化プログラム】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【感情に起因して発動する機能強化】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●邪神、召喚……しかし
誰かが部屋中央の生徒に手を伸ばそうとしたその時、残っていたドッペルゲンガーたちの身体が一斉に崩れ、黒い霧と化した。
黒い霧は生命あるもののように蠢き……部屋中央の生徒の身体に纏わりつく。
「う……うあああああああっ!!」
霧に纏わりつかれた生徒の身体が大きく痙攣し、見る見るうちに瞳から意志が失われていく。
「なっ!?」
「儀式が完成した?!」
猟兵らの目の前で、生徒が白いスーツに身を包まれ、異質な存在へと変化していく。もう、止めることはできない。
猟兵らの前に降臨したのは、UDCオブジェクト『ジャガーノート』。子供に寄生し、その精神性は残しつつ、猟兵に牙を剥く存在。
『……まだ、この身体に馴染まぬな。だが時間の問題か。』
立ち上がりつつ手足の感覚を確かめながら紡がれるのは、重圧すら感じる声。召喚自体は不完全で終わったのかもしれないが、それでも寄生された子供を助ける手段はないはず。このまま、憑代にされた生徒ごと撃破するしかないのか。
『くっ……』
猟兵らが逡巡したその時、ジャガーノートが頭を押さえ、呻く。
「だれ……か、たす……けて。」
口から洩れた声は……重圧を感じるそれではなく、変声期を経た少年の声。
『まだ……しぶとく残っているか。』
すぐに重圧を持った声に戻るが、これが意味することは……。
「……まだ、彼の意志が精神の奥深くに押しつぶされずに残っている!!」
室外から響くグリモア猟兵の声に、猟兵たちがはっとする。
「つまり!?」
「彼に生きる希望を、邪神に抗う意志を持たせられれば……助けられるかもしれない!」
突き付けられた、救出の可能性。
猟兵らの選択は、如何に。
●断章:馴染めなかった少年
「助けられるのか?」
意識を取り戻した大柄の生徒が、グリモア猟兵に問う。
「断言はできないが、可能性はある。」
「そうか……あのな。」
大柄の生徒はひとつ息をつく。
「真ん中で寝ているヤツ……たぶん1年の倉木だ。」
生徒曰く、倉木はクラスに中学からの知り合いがおらず、クラスの空気に馴染めず、昼休みや放課後に旧校舎を彷徨っていたらしい。おそらく彷徨っていた時にたまたま旧ホール……視聴覚室に足を踏み入れ、ドッペルゲンガーに捕らえられて邪神召喚の憑代とされたのだろう。
「倉木だってこんな終わり方はおそらく望まない。俺らが頼める義理じゃないが、助けてやってくれないか。」
「努力はしてみる。」
グリモア猟兵は伝え聞いた情報を他の猟兵に伝えた。あとは彼ら次第だ。
※マスターより補足
第2章で救出可能な生徒を半数以上救出できましたので、召喚儀式は「不完全」となりました。そのため、召喚されたUDC『ジャガーノート』は大幅に弱体化しております。
その上で、4人全員を救出したことで、邪神の召喚儀式で憑代とされてしまった生徒を救出する機会が巡ってきました。
救出のためには1度撃破する必要がございますが、生徒が邪神の存在を拒否し、生きる希望を持った場合、寄生したUDCオブジェクトのみ撃破して生徒を助けることができます。逆に生徒が生きる希望を持てなかったり邪神の存在を受け入れたりした場合は、撃破時に生徒も死亡します。
断章の部分はグリモア猟兵から伝えられたということで、知っているものとしてプレイングをかけていただいて構いません。
なお、救出の可否につきましては、【本シナリオのみの】措置である旨、あらかじめご了承願います。
また、念のため申し上げておきますが、3章成功条件は【ジャガーノートの撃破】です。生徒の生死は問いません。助けない、とするのも一つの選択です。
それでは、皆様の選択の結果をお待ちしております。
サンディ・ノックス
…もちろん助ける!
助けを求める声にそう答える
UC解放・宵を攻撃回数重視で発動
呼びかける間、相手の攻撃を潰すために使う
居場所が無くて
自分が居てもいい場所を探していたら巻き込まれた
そんな理不尽な終わりは聞いただけの俺でも辛いよ
なぜ貴方の事情を俺が知っていると思う?
教えてくれた人がいるんだ
貴方を助けてほしいって頼まれた
…一人で辛かったと思う、でも見ていた人はいるんだ
声をかけてくれていたらもっと良かったのにね?
言いたいことを伝えるためにも消えちゃいけない
帰るには俺の力じゃ足りなくて貴方の気持ちも必要なんだ
もちろんできる限りの手助けはする
抵抗を助けるため攻撃すべき状況と判断し次第
解放・宵で敵を切り裂くよ
波狼・拓哉
さあ、折角道筋見えてるんだ。行かないわけには行かないよね…!
取り敢えず龍は狂うし止めといて…化け撃ちなミミック。召喚された兵器類を使用される前に撃ち落としたり本体に撃ち込んだりしよう。
自分は攻撃避けて衝撃波込めた弾撃ち込みつつ倉木君に声を。
確かに知り合いのいない集団に属するのっては結構しんどいよね。けど友達でも出来れば一転するものだよ。ここは学校なんだ。接点なんていくらでもあるはず…一歩踏み出して話しかけてみればいいと思うよ。次の授業は何だっけとかね。
まあ色んな未来があるとは思うけど、その君を覆ってるモノは少なくとも良い未来は選ばない。君自身の言葉行動が大事なんだ。…さて今君はどうしたいかな?
フレミア・レイブラッド
他人の身体を使わないと何もできない寄生虫が調子に乗らない事ね…良いわ、見せてあげる。
余程の相手にしか使わない切り札…光栄に思いなさい
貴方も助けて欲しいんでしょう?咄嗟に出たあの言葉に偽りが無いのであれば、頑張りなさい!生きていれば必ず良い事があるとは言わない。でも、生きる事でしか未来は無いのよ
邪神に向かって不快気に言い放ち、真の姿に覚醒し【吸血姫の覚醒】を発動。
少年に声を掛け、他の猟兵も少年の希望を引き出したところで戦闘開始。
視聴覚室どころか旧校舎をも破壊する勢いで戦闘。
高速移動で翻弄、敵の攻撃を回避しつつ、莫大な魔力による魔力弾と魔力を纏わせた魔槍による破壊の連撃で殲滅するわ
※アドリブ等歓迎
黒木・摩那
まだ少年の意識があるならば、賭けてみましょう。
まずはオブリビオンに戦いへ意識を集中させるため、
攻撃し続けるのが大事です。
UC【偃月招雷】で魔法剣を帯電します【属性攻撃】。
【先制攻撃】【鎧無視攻撃】で相手のスーツの接続部を狙います。
接近したときに、今、助けるから頑張って、諦めないで、と
声掛けして、倉木君の意識に呼びかけます。
防御は【第六感】と【念動力】による空間曲げで対応します。
九重・灯
ああクソ。重傷だな、こりゃ。
(『……まだです。まだ終わっていません』)
もう一人の自分はまだやる気か。体、壊れちまうぞ?
「本気か? ハハ、お前もけっこうバカだよな」
UC【朱の王】。流した血を代償に炎を召喚。武器と四肢に纏う。
ブレイズキャリバーとしての能力で損傷した部分を強引に復元する。
「長くはもたねぇ。その分ハデに行くぞ」
ジャガーノートに赤熱する両手剣を『鎧砕き』を乗せて叩き付けながら呼びかける。
「倉木! お前の事、助けてくれって頼まれたんだ。ちゃんと見てくれているやつが居るんだよ!」
鎧を砕いて、こじ開けてやる。
「助かりたいんだろ? だったら、諦めずに叫び続けろ! 手を伸ばせ!」
●猟兵たちの決断
儀式を阻止するために努力した結果引き出した「誰も犠牲を出さない」選択肢。
それを知った猟兵たちの選択は『倉木を助ける』で一致していた。
「まだ少年の意識があるならば、賭けてみましょう。」
黒木・摩那は【偃月招雷】で魔法剣に雷のサイキックエナジーを宿しながらジャガーノートを見据える。
「折角道筋見えてるんだ。行かないわけにはいかないよね……!」
波狼・拓哉も、差し込んだ光明を信じ、諦める気はない。
「居場所が無くて、自分が居てもいい場所を探していたら巻き込まれた。そんな理不尽な終わりは聞いただけの俺でも辛いよ。」
もちろん助ける、と呟くサンディ・ノックス。
「ああクソ。重傷だな、こりゃ。」
一方、現身に上半身を薙ぎ払われた九重・灯の動きは鈍い。
(『……まだです。まだ終わっていません。』)
(「本気か? 身体、壊れちまうぞ?」)
(『本気ですよ。』)
「……ハハ、お前も結構バカだよな。」
もうひとりの自分に諭され、付き合うオレもバカだよなと自嘲気味の乾いた笑い声をあげながら、灯は立ち上がる。上半身の傷が激しい痛みを訴えるが、流した血を代償に【朱の王】で召喚した炎を両手剣と四肢に纏い、さらに上半身の傷を強引にふさいだ。
「長くはもたねぇ。その分ハデに行くぞ。」
灯の傷の重さを差し引いても、時間をかけ過ぎればそれだけジャガーノートが倉木の精神を押し潰してしまい、助けることはできなくなるだろう。短期決戦は必至。
「他人の身体を使わないと何もできない寄生虫が、調子に乗らない事ね。」
ジャガーノートに向かって冷酷に言い捨てるフレミア・レイブラッドの表情は不快そのもの。だが、倉木を助けたいという意志は他の猟兵と変わらない。
『愚かな……この身体は既に我のモノだ。邪神に刃を向ける愚かさを知れ、猟兵ども。』
ジャガーノートは猟兵らを一瞥し、召喚した特異な形の銃を構える。
●救うために、出来得ることを
ジャガーノートが銃を撃つ前に、摩那が動いた。
(「まずはオブリビオンに戦いへ意識を集中させるため、攻撃し続けるのが大事です。」)
摩那はUDCであっても関節部分の防護は薄いと踏み、白きスーツの接合部を狙って雷を纏った魔法剣を突き出す。それは確かな手ごたえを摩那に伝えた。
「今、助けるから頑張って、諦めないで。」
摩那は精神の奥底に沈む倉木に呼びかけつつ、立て続けにスーツの薄いところを狙って魔法剣で切りつける。
『無駄な努力を。弱き人間の心はすぐに消える。』
「人間の心は簡単に消える程弱くないです。」
ジャガーノートは接近戦用のナイフを召喚し、摩那に突き立てようとする。摩那も気配を察し、念動力で空間を捻じ曲げて逃れようとするが、使い方を理解しているのか突き立てられる速度の方が早い。
「さあて、化け撃ちなミミック。」
拓哉は龍形態を取っていたミミックを箱型生命体にいったん戻した後【偽正・械滅光線】で小型の宇宙戦艦に変化させ、ナイフを狙って光線を発射させる。光線はナイフを手にするジャガーノートの腕を貫き、怯ませた。すかさず摩那が念動力でナイフを叩き落とした。
摩那とミミックがジャガーノートの動きを止めている間に、サンディは【解放・宵】で手数を増やし、ジャガーノートに接近。ジャガーノートも立て続けに投擲ナイフを召喚するが、それらを片っ端から叩き落としつつ、深層の倉木に呼びかける。
「倉木さん、一人で辛かったと思う。でも見ていた人はいるんだ。」
『会ったばかりの己らが、小奴のことを知っているとでも?』
ジャガーノートは宿主の子供の精神性を受け継ぐ。故に今の疑問は倉木が感じていることなのかもしれない。サンディは一つ頷いて呼びかけを続ける。
「なぜ貴方の事情を俺が知っていると思う? 教えてくれた人がいるんだ。」
「確かに知り合いのいない集団に属するってのは結構しんどいよね。けど友達でも出来れば一転するものだよ。ここは学校なんだ。接点なんていくらでもあるはず。」
拓哉も衝撃波でジャガーノートに攻撃しながら倉木に語りかける。
「一歩踏み出して話しかけてみればいいと思うよ。次の授業は何だっけとかね。」
『小奴にその機会は未来永劫訪れん。』
「貴方も助けて欲しいんでしょう? 咄嗟に出たあの言葉に偽りが無いのであれば、頑張りなさい!」
真の姿を解放し、【吸血姫の覚醒】で爆発的な魔力を解放して戦闘能力や飛行能力を向上させたフレミアも、魔槍でジャガーノートを貫きながら呼びかける。ジャガーノートが槍に貫かれた衝撃で大きくよろめいた。
猟兵たちの言葉は、ジャガーノートにではなく、倉木に向けられている。一つ一つの言葉に真摯に気持ちを乗せ、あるいは大人の経験からアドバイスを行い、精神の奥底でわずかに抵抗していると思われる倉木に、真摯な声を届ける。
もっとも、ジャガーノートのバイザー越しに表情を伺うことはできない故、本当に届いているかどうかはわからない。それでも救助を願う意志を信じ、攻撃と声かけを同時に行い続けた。
「先輩たちが声をかけてくれていたらもっと良かったのにね? 言いたいことを伝えるためにも、ここで消えちゃいけない。」
手数を重視して黒剣で攻め続け、ジャガーノートに傷を増やし続けるサンディ。先輩たちも声をかける機会を逸していたのも事実だが、大事なのは「見ていた人がいる」ことをきちんと伝え、倉木に希望を持ってもらうこと。
「まあ色んな未来があるとは思うけど、その君を覆ってるモノは少なくとも良い未来は選ばない。君自身の言葉行動が大事なんだ。」
ミミックに命じて光線で狙い続けるとともに自身でも衝撃波を撃ち込み続ける拓哉。オブリビオンたる邪神は人々を幸福に導くことはせず、必ず破滅に導く。そのままでは悪しき未来しか待っていないと倉木に諭す。
しかしジャガーノートはそれすら潰すべく、銃を拓哉とサンディに向ける。
「帰るには俺の力じゃ足りなくて貴方の気持ちも必要なんだ。もちろんできる限りの手助けはする。」
「さて、今君はどうしたいかな?」
サンディと拓哉が示した道に対する返答は、銃では来なかった。
「……いき……たい。」
ジャガーノートの口から洩れるのは、重圧を伴う声ではなく、変声期の前の少年の声。
それは、倉木が初めて見せた抵抗だった。
●憑代たる少年の本心
今、僕の身体を乗っ取っているのは、人間がかないっこない存在。
この存在の前では、僕の存在なんてちっぽけで霞んでしまう。
クラスに馴染めず、昼休みや放課後はクラスにいるのも息苦しくて、いつも彷徨って。
ふと、視聴覚室の扉を開いたら……あっという間に僕と同じ顔をした存在に捕まって。
幽霊の噂を聞きつけて興味本位で覗きに来た先輩たちも捕らえられて、日々弱っていって。
先輩たちが弱るたびに、僕の……僕の身体を乗っ取っている邪神が強まって。
この幽霊騒ぎは、僕のせいだ。
でも、この部屋に来て先輩たちを助けてくれた人たちは、僕の助けの声を聞き逃さなかった。
だから……帰りたい。生きてみたい。邪神なんかに身体は渡さない。
――助けて、下さい。
●少年の救出
倉木が抵抗を見せた瞬間、ジャガーノートの動きが目に見えて鈍った。
『このままでは……我が!』
ジャガーノートは迎撃用兵器を備えた戦線離脱用転送システムを召喚し、逃走を図る。迎撃用のレーザーの発射口が猟兵たちに向けられる。
「逃がしません!」
「させねえよ!」
逃げられたら救えない。摩那がジャガーノートの膝を狙って魔法剣を突き出し、灯が赤熱の両手剣を右肩に叩き付けて動きを止めた。
「ミミック、アレを化け撃ちで止めな!」
さらに拓哉の命を受けた宇宙戦艦形態のミミックが立て続けに光線を迎撃用兵器と転送システムに撃ち込み、無力化。退路を失ったジャガーノートの足が止まる。
「余程の相手にしか使わない切り札……光栄に思いなさい。」
フレミアも高速飛行でジャガーノートを翻弄し、立て続けに魔力弾を撃ち込んで援護。視聴覚室はおろか旧校舎すら破壊しかねない勢いで畳みかけ、さらにジャガーノートの戦意を削ぐ。
「生きていれば必ず良い事があるとは言わない。でも、生きる事でしか未来は無いのよ。」
「倉木! お前の事、助けてくれって頼まれたんだ。ちゃんと見てくれているやつが居るんだよ!」
灯が叫びながら大上段に赤熱の両手剣を振りかぶり、そのまま防護を砕かんとする勢いで頭に振り下ろす。
「助かりたいんだろ? だったら、諦めずに叫び続けろ! 手を伸ばせ!」
両手剣は真正面から頭を捕らえ、赤熱……いや灼熱の炎とともにヘルメットに大きな亀裂を入れる。
『ぐ、ぐううううううう……っ!!』
強烈な衝撃にジャガーノートは唸るが、動かない。いや、動けない。ヘルメットに入れられた亀裂は、少しずつ全身に広がっている。さらに亀裂を広げるべく摩那が魔法剣でひたすら刺突を繰り返し、サンディも立て続けに黒剣を振るい、切り裂く。
『弱き人間が、ここまで我に抗うとは……っ!!』
ジャガーノートは最後の足掻きとばかりに再度投擲ナイフを召喚するも、ミミックの光線で悉く叩き落される。強化プログラムを召喚し、銃やナイフ、スーツを強化するも、これだけ斬り裂かれていては雀の涙程度の効果しかない。
「人間が弱いと侮ったあなたの、負けです。」
そして、摩那の雷を纏った魔法剣の一撃が、ジャガーノートの喉を貫いた。
倒れ伏したジャガーノートのスーツに入った亀裂は、既に全身に広がっている。
『猟兵たちよ、覚えておけ。いつかまた、骸の海から我は舞い戻る。』
その言葉を最後に、白きスーツは粉々に砕け散り、中から少年が姿を見せる。おそらく彼が倉木だろう。気絶はしているが、呼吸が安定しているところを見ると生きているようだ。
「……よかった、生きています。」
手早く倉木の様子を見た摩那の報告に、サンディたちはほっと胸をなで下ろす。
そして、誰からともなく「グリモア猟兵や先に救出した生徒らに報告しないと」という声があがり、灯たちは倉木を抱えて視聴覚室を後にした。
拓哉たちの諦めない意志が、犠牲者ゼロと言う最良の結果を引き出した。
こうして猟兵たちは、幽霊話を隠れ蓑にした邪神召喚儀式の企みを潰すことができた。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年05月03日
宿敵
『ジャガーノート』
を撃破!
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