●ゲイザー
「………うんうん、ちゃんとやってくれてるね」
暗い暗い部屋の中、煌々と明るいパソコンを前に、安楽椅子に深々と腰をかけたフードの女。目の前のモニターには、何人かの女性が写っている。
咥えていた棒を足元のゴミ箱に無造作に放り込み、パーカーのポケットから新たな飴を取り出して包装紙を剥く。
「中々順調かなぁ……しっかしまあ、彼女たちを選んで正解だったかな」
画面を見つめるその顔はとてもとても楽しそうに笑っていた。向こう側の生首を見て。
満足そうに頷くと大きく伸びを一つして、椅子をくるりと回して立ち上がる。その瞳に先ほどの笑みはない。
「…………さて、と。そろそろ嗅ぎつけるかな、彼ら。はぁ、めんどくさ。私は戦闘向きじゃないし……」
邪神の敵となる存在を思い浮かべながら、気怠げに息を吐く。
「だって、観測者だもん」
そう呟きながら、女は部屋を後にした。その後ろに『アイ』を連れて……。
●グリモアベース
グリモア猟兵のメルヴァ・ローズリオ(強き意志を喰らう弱き捕食者・f12398)が連れているのは蝙蝠。羽を羽ばたかせて周囲を飛び回っている。
「UDCアースにて、邪神復活の兆しがあるよ。まあ、あそこは邪神の事件がいっぱいだから……」
半ば呆れたように、力のない声で集まった猟兵たちに呼びかける。
「まだ邪神は復活していないみたいだから、その前に儀式を阻止して欲しいの。だけどね、その、儀式が行われる場所が詳しく分かっていなくて………」
でも、と付け足して、グリモアに、何処かの大型デパート内部の店舗が映し出される。広告の文字から察するに、日本のアクセサリーショップのようだ。
「このお店に首だけのマネキンが置いてあるでしょ?ウィッグとかの見本として。これがね……増えるらしいの」
頭部のアクセサリー等を飾るマネキンの首が近頃知らぬ間に増えるらしい。しかもその首、質感が完全に……本物。
「気味が悪いよね。で、このホラーな現象が儀式と関係していると踏んだの。だからみんなにはこれを調査してもらいたいな、なんて。いや、だってだって、儀式の準備が予知された時期とこの事件がぴったり重なるの!」
不気味な現象に猟兵たちの背筋が寒くなったように感じた。場所は客の多いデパート。いつ、どうやって増えているのか。
「ま、まあ、この調査をして、儀式と関係があったらきっとオブリビオンの尻尾を掴めると思うから、それの討伐となるんだけど大丈夫?」
つまり、生首増殖事件を調査して、問題のオブリビオンに近づこうというわけだ。
「そういうわけだから、頑張ってきて欲しいな。とりあえず、そのデパートに送るから、自由に情報収集してね。それじゃ、いってらっしゃい」
猟兵を送り出したメルヴァには、少しの陰りと不安。まるで、誰かに見透かされているような、そんな気がしたのだ。
ツムギとカナメ
こんにちは、ツムギとカナメです。今回の舞台はUDCアース。
第一章では、生首増殖事件の調査です。選択肢はあくまで例ですので、自由なスタイルで、どうぞ。
第二、三章では、オブリビオンとの戦闘となります。
調査→戦闘の流れです。それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
………貴方は常に見られている、ということを忘れぬように。
第1章 冒険
『増える生首』
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POW : 張り込みで生首が増える現場を押さえる
SPD : 監視カメラや罠を仕掛けて関係者を確保する
WIZ : 噂やネットの情報等から次に増えるタイミングを推測する
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カイ・オー
「昭和初期の猟奇もの、って感じでいいねぇ。……ま、邪神絡みってネタバレ食らってるのが残念だけど。」
まぁ、趣味は悪いが探偵の仕事としちゃ悪くない。腕を奮わせて貰おうかね。
WIZで行動。
ネットで【情報収集】してみる。SNS等を洗って目撃談や噂を拾い集める。写真等もあれば尚良いな。
それらを統合して、次はどの辺りで首が増えるか予想してみよう。【第六感】も活かす。
予想出来たらその近くを適当に歩き回って首を探そう。
犯人が近くにいるかも知れない。普通にショッピングをしている風を装う。
増えた首を見つけられたら触って観察してみよう。当時に、それとなく周囲を観察し、怪しい人物等がいないか探ってみよう。
この世界で、探偵業を生業としているカイ・オー(バーチャルキャラクターのブレイズキャリバー・f13806)が、事件捜索に乗り出した。
「昭和初期の猟奇もの、って感じでいいねぇ。……ま、邪神絡みってネタバレ食らってるのが残念だけど」
予知されたものは仕方がない。オブリビオンが関わっているとなると、通常の業務とは少々違ってくる。
しかし、謎を解くのは職業柄、悪くない仕事だ、とやる気は十分。
「とりあえず、情報収集するか」
アクセサリーショップがあるフロアのベンチに座ってスマートフォンを取り出すと、電源を入れてすぐさまSNS系のアプリ・ページを開く。
SNSは多くの一般人が情報を共有しているため、テレビや新聞の何よりもより早く情報がまわってくる。真偽や信憑性を判断・取捨選択をしなければならないのが欠点だが。
この辺りの噂話やニュース、何気ない一般人の呟きなど、隅から隅まで読み漁っていく。
「首、首……写真とかもあったらいいんだけどな」
画面をスクロールしていると、意外と早く例の事件が取り上げられていた。目撃者が書いたもののようだ。
「このデパートだけか………と思ったが、そうでもなさそうだ」
読み進めていくと、ここだけではなく、周辺の美術館や床屋などにも現れていることがわかった。ただ、全ての店舗に被害があるわけではない。
生首が現れた店の共通点を調べていく。営業時間、料金、土地面積etc………めぼしい点は見つからなかった。
「何かないものか……そうだ」
懐から取り出した折り畳み式の地図を広げ、店を結んでいくと……
「………なるほど、な」
現れたのは、書きかけのダビデの星。線を伸ばせば次は、この大きいスーパーマーケットか?
「よし、行くか」
カイは地図と携帯をしまうと、ベンチから腰を上げて示された場所へ向かった。
ここからそう遠くないスーパー。ごくごく普通の内装と商品。スーパー内に一軒、床屋が入っていた。
床屋のフロアをうろつきながら、人々の動きを観察する。自分も商品を吟味する客のように。
一度床屋の扉をくぐり、マネキンの数を確認しておいた。首は5個。
しばらくすると、スーツケースを転がしながら、一人の女性が床屋に入店。ここにスーツケースは怪しい。後に続きたいところだが、ここは外で待つ。動くまで待つべきだ。
女性は5分ほどで出てきた。相変わらずスーツケースを引きずったまま。入れ違いでカイは入店。
店員は客の散髪に集中している。その後ろで首が一つ増えていることも知らずに。
増殖した首を確認したカイは、首を触ってみる。シリコンではない、指が程よく沈む柔らかさ。その下には硬い何かが。完全に人間だ。目は死んでいるし、見た目はマネキンだが、確かに触り心地は人。
「次はここだろうか……」
なんとも言えない気持ち悪さを感じつつも、指を離した。
再び地図を取り出し、場所を予想、スーパーを出て次の現場に向かうカイを見つめる『目』が一つ……。
成功
🔵🔵🔴
波狼・拓哉
なんで首だけ増えてんだよ…普通に怖いわ。
さてどうしようか…張り込むのが一番楽かなぁ。どう増えてるのか分からんけど見張っていれば何かは見れるだろ。
見張り込む前に増えた生首に何かないか、どういう生首が増えてるのか、どの辺で増えたのかだけはお店の人とかに聞いて情報収集しておこう。
後は一応変装して地形を利用して目立たないようにして張り込もう。地面から生えてきたら正直対処方法が思いつかないけど、誰かが置いてるとかなら追跡者かな…
(アドリブ絡み歓迎)
例のアクセサリーショップに転移した波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は、並ぶマネキンの首を眺めながら、どうしようか考えていた。
首が増えるという、普通に考えたら結構怖い現象なわけだ、霊的なものだったり、何処かから生えてこられたら、どう対処すれば良いのか。
………まあ、自分の目で確かめるのが一番確実だろう、と張り込みすることに決めた。
張り込むにしても、事前調査は必要だ。まずはマネキンを調べてみる。
どこにでもあるようなマネキンの首だ。個性豊かなウィッグを被っているだけ。
突けば硬く、ひっくり返してみても何か仕掛けがあるわけでもなさそうだ。
マネキンが乗っている台やその下、壁、天井もあらかた調べたが、穴もボタンも無い。
あとは、店員に首について聞いてみることにした。すぐ近くで商品をチェックしている若い女性に声をかける。
「すみません、ちょっといいですか?」
「はい、何かお探しでしょうか?」
当たり前だが、店員は波狼を普通の客だと思っている。一瞬の間の後、波狼が首について聞いた時、女性の表情は一転。一気に警戒の色を見せた。
「増えた場所とか、数とか、時間とか教えて欲しいんです」
暫しの沈黙。この静けさが辛い。
中々話し出さないので、波狼は、自分がこういった現象を解き明かす探偵の家の生まれだと話した。すると、しぶしぶではあるが、店員は口を開く。
「………増えたのは、あのウィッグコーナーです。まだ明るいうちでしたが、いつのまにか増えていたのです。気味が悪いので、もう撤去してしまいましたが」
マネキンたちを指差しながら、洗いざらい話した店員。彼女としては、怪しい首を調査する怪しい人と対面するなんて何が起こるかわからないのだから、多少の警戒と畏怖を抱くのも無理はない。
「そうですか、ありがとうございます。では」
店員の痛い視線を背中に受けながら、一度店を後にする波狼。そのままお手洗いへ。
個室に入ると、着替えをしながら情報を整理する。
首はいつのまにか増える。誰かの目を盗んで。ますます謎が深まった気がする。
「……考えても仕方ない。張り込みだ」
個室から出て来た波狼は服を変えて眼鏡をかけ、ウィッグを被って変装。九割の人には気づかれないだろう。
アクセサリーショップに戻ってきた。今のところ変わった様子はない。
このまま時間が過ぎていくのももったいないので、ちょっとした罠をかけることに。
マネキン台の隅っこに、一個の箱を召喚、それだけ。
「……よろしくね」
小声で箱に呼びかけると、自分は店から離れて向かいの店に入り、客のふりをしながらちらちらとマネキンを確認する。
時計を見れば、もう張り込みをしてから5時間。客も少なくなって、デパートも閑散としてくる時間帯だ。
うとうとと下がってくる瞼を意識で押し上げて張り込みを続けていた、その時、二人の女性が話しながら店に足を踏み入れた。一人は大きめのエコバッグを持っている。膨らんでいるところを見るに、何か入っているようだ。
ようやくの進展に眠気が覚めた。少しだけ近づいて様子を伺う。
商品を見て回っていた女性たちは、ウィッグコーナーの前で立ち止まったかと思うと、あたりを気にするように見回し、確認が取れると何かを置いた。
ここからだと、もう一人の女性が壁になってよく見えないが、その瞬間は箱が捉えていた。首が置かれたのを。
そのまま女性はいそいそと店を後にした。その後ろを箱が追いかけていく。
「地面から生えてくるとかじゃなかったけど……人が置いてるっていうのも、これはこれで怖いなぁ」
女性が向かっている場所の特定は箱に任せて、マネキンを確認。確かに一つ増えている。
触ってみると、その質感は他のマネキンとは違い柔らかい。これが事件のブツか。
うむ、と唸る波狼。これが邪神復活に関係あるというのか、と不安と少しの恐怖が背筋を伝う。
この不可解な事件の解決に乗り出した、箱を操るこれまた不思議な探偵を見る『目』が一つ……。
成功
🔵🔵🔴
ナハト・ダァト
人の多い箇所での情報戦カ
…任せ給エ
この姿ガ、役に立つヨ
猫へ擬態
UCも使用し、噂を探る
情報収集、世界知識
信憑性のある発言をしたものに接触
より詳細な事柄を聞き出し捜査にかかる
情報を集めている段階では、猫のふりをして色々悩みや怖い体験を聞く体を装ってみる
アドリブ歓迎
デパート前、人の行き交うこの場所に、黒きタールが一人。ナハト・ダァト(聖泥・f01760)の纏うローブが人の動きに合わせてひらひらと揺れている。
人がいるだけ情報は豊富だが、多すぎるとただただ通行の邪魔である。ナハトも背が高く、体は大きい方なので、人混みを行くのは大変だろう。
しかし、彼はブラックタール。形状を自由自在に変えることも容易い。
とぷんと一気に体が沈んだかと思うと、そこには一匹の黒猫の姿が。これもナハトの擬態の技術。きっと液体を圧縮して小さくなっているのだろう。
小さくなれば隙間を抜けるのもお手の物。人の脚の間をするすると進みながら、その耳を澄ます。
音として聞こえるのは、雑踏であるが、彼が聞いているのは物理的な音ではない。生命が秘めたる希望。人に限らず、生きとし生けるもの全ての希望を聞き届ける耳。
こうして聞いていると、大小様々な欲や渇望が耳を通り抜けていく。その中から、首に関する情報をキャッチ。
……増える首をどうにかしてほしい。不気味でストレスになってしまう、と。
「………成ル程ネ」
ぽつりと呟いた猫は、迷いなく声の主の元へと歩いて行った。
声がしたのは美容院の裏口と繋がっている裏路地。休憩時間なのか、従業員と思われる三人が駄弁っている。
「……もう嫌になっちゃう。捨ててもすぐに増えるから気が滅入るわ」
一人の言葉に相槌を打つ二人の様子を、猫らしく塀の上に寝そべりながら観察。
「いつ増えてたの?」
「それが、不定期だから対策のしようがないの。怖くて怖くて」
目の下にクマができているのを見るに、恐怖からくる精神疲労が健康にまで影響を及ぼしているようだ。
「それとね、いつもその首、マネキンと反対方向を向いてて……」
「そうなんだー、まあ、寝れないようだったら相談に乗るから」
その後、二つ三つ小言を交わして、店の中に戻っていった。
ナハトは話を聞き終えて塀から降り、店内をちらりと確認。
マネキンの視線の先の反対方向を確認。情報は多いほうがいい。
猫は首が向いていたであろう方角へと歩き始める。街の中心へ続く道を行きながら、聞き耳は立てたまま。
首についての話し声はちょくちょく聞こえてくるものの、めぼしいものはない。
思惑を巡らせていると、ふと自分を呼ぶ声がする。
「あー猫ちゃん、可愛い」
手招きするのは若い女性。とりあえず寄ってみる。
「よーし良い子だねー……ねぇ聞いて?」
猫と対話を試みる人間、心労からくるものだろうか。
「この前さ、夜道を歩いてたの。で、女の人とすれ違って、それだけなの、それだけなのにね睨まれたの。酷いと思わない?でさ……」
長い長い女の話を要約すると、夜遅くにスーツケースを持った不審な女性とすれ違い睨まれた。なんなんだ、と眺めていると、その人の頭上に空飛ぶ眼球があるのを見て腰を抜かした。これを話しても誰も信じてくれない、ということらしい。
もはや幻想のような話で、とても信じられるような話ではない。当の本人も、疲れていたから幻覚を見た、と自己完結しているほど。
「……なーんて、ただのまやかしだよね。ごめんね、ちょっと話したかっただけなの。だって猫ちゃんなら嘘とも真とも言わないでしょ?じゃあね」
女はナハトを一撫でして去っていった。この猫が人の言葉を当たり前のように理解していることなど知る由もない。
人は時折、動物と話すことがある。伝わらないと分かっていながらも、一方的な対話をするのだ。
女の背中を見送ると、短く息を吐いて日当たりの良い場所にちょこんと座る。
ナハトとしても半信半疑だが、空飛ぶ目玉とはこれまた気味の悪い。邪神蔓延るこの世界ならばあり得ない話でもないという。
まだまだ謎は深いか、と空をふと見上げると、話中のそれは、そこに居た。血管浮く姿で、黒猫を見ていたようで、視線が絡まる。
急いで飛び去るその『目』を、ナハトは追いかけていった。行き先は、増殖した首が見据えていた方角。
この追いかけっこですら、見られているというのに。
大成功
🔵🔵🔵
八坂・操
【SPD】
増える生首! 不審なスーツケースの女性! 空飛ぶ目玉! うーん、いかにもB級ホラー映画って匂いがするね♪ 良いね、操ちゃんそういうの好きだよ☆
そんな訳で、生首を回収して調べてみよう♪ その為に清掃員に【変装】だ☆
何時までもそんな不気味な物置いてられない。かと言って触るのもちょっと……清掃員操ちゃんにお任せあれ☆
「お疲れ様です、清掃に来ました……またですか」
そろそろ警察に届けても良いかもしれませんねーと、悪戯にうんざりしてる雰囲気を出しつつ、生首を回収して回ろう♪
回収した生首を廃棄する前に、調べてみよう!
眼球運動はしているかな?
傷を付けて血は流れるかな?
……その中身は、何だろうね。
この奇怪な現象に、八坂・操(怪異・f04936)は心を躍らせていた。
生首、目玉……安いオカルトチックな事件は、彼女にとって些細な怪奇でしかない。だからこそ、楽しむ心が生まれるのだ。
転移すると、にこにこと笑みを顔に貼り付けたまま、例の店に視線を向ける。そこには、先ほど張り込みをしていた男が首を突いている。あれが問題の首だろうか。
操としては、実際に手にとって詳しく調べたいところだが、店先のマネキンを持ち去ろうものなら、かえって怪しまれてしまう。
なので、操は変装することにした。店内に馴染み、尚且つ不要な物を回収できる………そう、清掃員に。
人目のない物陰へ移動すると、持参した変装セットを漁り、ここの清掃員に近い服装を選んだ。
すっかり清掃員になりきった操。出来れば道具も欲しい、と思っていたところ、丁度清掃中の従業員がいたので、掃除カートをそっと拝借しておく。
がらがらとカート転がして再びアクセサリーショップへ。
なるべく清掃員の視界に入らないように移動したので、少し時間がかかり、さっきの男はもういなかった。その代わり、店員がウィッグコーナーをちらちらと見ながらそわそわしている。
「お疲れ様です、清掃に来ました……またですか」
帽子を深く被って一声かける。
「……あ、お疲れ様です。はい、またです」
店員はため息を一つ。操が清掃員だと思っているようだ。
「悪質な悪戯ですかね……そろそろ警察に届けてもいいかもしれません」
こちらもうんざりしている、と言うようにわざとらしく肩を落としてみせる。相槌を打つ店員が視線を操に向け、これを、と指を指した。
「ああ、はい。では、これはこちらで回収・廃棄しておきますね」
手袋をして首を掴み、カートに丁寧に入れる。去り際に会釈する店員にこちらも礼を返して、操はその場を後にした。
「……さてさて、調査の時間だね♪」
ゴミ廃棄スペースまでやってくると、生首をそこら辺のテーブルに置いて、まじまじと見つめる。
見た目はマネキンだ。手をかざしても目は瞬かないし、髪を引っ張ってみても表情一つ変えない。
「見た目は普通かな?じゃあ………」
ペンライトを取り出すと、首の瞳に照射して観察。瞳孔が反応している様子はない。光にも反応なし、か。
あと気になるところは、勿論中身だ。果たして何が詰まっているのだろうか。
当たり前のように身につけている短刀で、脳天の肌色を切り裂いた。
ぷつりと開いた穴からは、何も出てこない。押してみるも、赤色どころか緑色も青色も出てこない。
「血は無し……最後は」
ぎっしりと詰まっている中身に、短刀を一気に通して強引に頭蓋骨も砕いて真っ二つに。
割れた頭の中身は、ちゃんと入っていた。脳から筋肉、神経に至るまで、人間の中身がそこにはあった。
しかし、血は一滴も垂れない。ただそこに、当たり前のようにあるべき臓器がある。
そっと指先で中身を触ると、とても柔らかくデリケートだとわかる。まさに人の脳。
まるで、本物の頭部を血抜き・防腐処理して、模型にしたような、そんな感じだった。
しばらく切って突いて遊んでみたが、これ以上は何もわからない。
「うーん、これだけかぁ……」
少しつまらなそうに変装を脱ぎ、首を捨てて従業員専用フロアをそそくさと出ていく操の狂気とも取れる解剖劇もまた、奴には見られていた。
大成功
🔵🔵🔵
カイ・オー
さて、と。足で調べられる情報は一通り集めたかな。
これが儀式の類なら、首の見つかった位置と、首の視線が向いていた方向。それを街の地図の上に置いてみれば、何かの法則性や図形が出てくるんじゃないかな。
見当を付けた場所に向かう前に、もう一度最初に見つけた首を確認に行く。
UC【過去再現能力】発動。対象になる人体や物体の過去の来歴を探るサイコメトリーと、その状態にまで復元するサイコキネシスの複合能力。そのサイコメトリーだけを使ってみる。
こんな姿にされるまでの経過や、眼球が見ていた光景を感知してみよう。どこまで潜れるか……。
さて、いい加減監視されてるのも気恥ずかしいな。当たりをつけた場所へ向かってみようか。
「さて、と。足で調べられる情報は一通り集めたかな。あとは……」
六芒星を辿って首を調査したカイは、最初に首に触れたスーパー内のベンチに座って地図を広げた。
地図には首があった場所、首の向き、地面からの高さなど、ありったけの情報をが書き込まれている。
「うーんと、目線はやっぱり六芒星の中心を指してるな。高さは関係なさそうだが」
六芒星の中心はビル街辺りを指し示している。恐らく、ここに何かある。
だが、その前にカイにはやりたいことがあった。
先程の床屋をちらりと覗き込むと、首はまだそこにある。扉を開けてマネキンに近づくと、頭に掌を置いた。
手からカイの思考に、首という“物体”に宿る歴史が流れ込んで来る。
何もない暗闇……違う、盲目?
ここは……UDC組織か。複雑な機器が並んでいる。
信仰心、崇拝……崇めるものは邪神?人が、邪神を?これは、悦びの感情、身を滅ぼしても良いと、そこまでの深い信仰心……
——己の首を、捧げよ
首が落ちたところで、ぶつりと記憶も落ちた。
ユーベルコードによる疲労だけでなく、得体の知れない不気味さに精神も削がれたような気がする。
首をそっと一撫でして店を後にする。
「それじゃあ、向かおう。……いい加減監視されてるのも気恥ずかしいな」
歩き回っているうちに、自分が見られているという気配を背中に受けていたことに気づいていた。人間の感度は意外と鋭い。
誰がどこで何のために監視しているのか知らないが、見られてしまっていたならば仕方がない。
カイは短く息を吐くと、スーパーを出て指し示されたビルへと足を向けた。
成功
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第2章 集団戦
『邪神の女エージェント』
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POW : 素敵でしょう? 見て、私の子供たち
【身体に宿したUDCの幼生 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : ありがとうございます、わが主
対象のユーベルコードに対し【敬愛するUDCの息吹 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : これが私のご主人様の恩寵よ
【憤り 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【粘つく触手を持ったUDCの棲む壺】から、高命中力の【抵抗の意志を喰らう触手】を飛ばす。
👑11
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●エージェントの狂『愛』
示されたビルに猟兵たちが向かう。そこは一見、何の変哲も無い建物であった。
足を踏み入れると、受付に二人、人がいる。ちゃんと、人間だ。
「こんにちは、何か御用でしょうか?」
わざとらしい笑顔を顔に貼り付けて応対する受付嬢。だが、その溢れ出る敵意は隠しきれていない。
テーブルの下から覗く紫色の物体がゆらゆらと揺らめき、水音を立てている。
「………本当に、何か御用で?」
女の口元が弧を書いた、その時。廊下、お手洗い、階段、鉢植えの陰から、大量の女が姿を現した。
彼女らは元々人間だった。UDCに勤めていたエージェントだったのだ。だが、その心は今や邪神に魅入られ、繰られ、堕ちた存在。
その目は完全に、信仰という不定形なものに囚われ、相反する者を排除すると、そう言っていた。
ナハト・ダァト
形無き者ニ捕らわれたのカ…
残念だけド、憐れむことハしないヨ
過去は何であレ、未来の邪魔ダ
道を退いテ貰おうカ
私ハ忙しいんダ
使用無機物
ビルの壁
生み出す生物
「信仰心を喰らう獏」
形無き者ハ、夢と変わらなイ
いつだっテ、人の夢ハ儚いのだヨ
繁殖方法
信仰心を喰らった相手に噛みつき、繁殖を行う
早業、武器改造にてさらに繁殖、攻撃速度を上昇
どうかナ、信仰を食された気分ハ
なんて、君達の痛みなド
あまり理解してモ仕方のない事カ
その感情、思想、行動ハ過去の再現
未来の為ニ、ここで大人しく消え給エ
アドリブ歓迎
神というものは人の信仰心が作り出したモノ、と言ってしまえばそれまでだが、 そんなものでも人の心は救われるのだろう。
だが、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が彼女を憐れむことも悲しむことはしない。
彼女らに心が在れど、命を預ける存在が居れども、ナハトは排除するだろう。
また、彼女らはオブリビオンだ。過去もまた時間であり、流れるものである。だが、遥か未来へ干渉し、その進行を妨げるというならば……その歴史ですらも、殺す。
「全く……私ハ忙しいんダ」
わらわらと湧いてくる敵にうんざりしたように息を吐くと、ビルの壁が抉り取られ、ナハトの足元へ集まって行く。
音を立てて無機物が集結し、現れたのは一匹の漠。無骨ながらふくよかなボディはどこから見ても夢を喰らう獣。
「………喰らえヨ、彼等の“夢”ヲ」
獏の口が大きく開き、何かを食べ始めた。食べるのは目には見えない心。その異常なまでの信仰心は人の希望であり、望みであり、夢でもあるのだから。
獏の効果はすぐに現れる。一番近くにいた女が一人、がくりと床に膝をついた。
女の瞳に先ほどまでの光はない。確かにあったはずの、今は無き何に気づくこともできず、ただ虚無の中で無気力に襲われるだけ。
最早廃人と化した女に獏が歩み寄ると、その片腕に噛み付いた。精神だけではなく、肉体までも喰われていく。
そして、獏は増殖……生物的には繁殖と言うべきだろうか。ともかく、増えた。
二匹の獏は更なる夢を求めて再び大口を開ける。心を剥奪する胃袋に、エージェントたちは後退り、邪神への忠誠を保とうと必死だ。
「どうかナ、信仰を食された気分ハ。なんて、君たちの痛みなド、あまり理解してモ仕方のない事カ………」
無慈悲な信仰喰らいはまだ続く。間接的に神をも喰うような行い。
猟兵は今を生きる。過去を生み出すと同時に未来へと向かう者なれば、時には過去を切り捨てる。
彼女らの心も、行いも、全ては過去の再現だ、と。
ビルから生み出された無機物の獏。これを携帯電話の画面越しに見る女は、興味深そうに笑っていた。
大成功
🔵🔵🔵
波狼・拓哉
まあ、少なからずいるよねっと。それじゃ蹴散らしますか…いやーどうみても助からないでしょう、あれ。ちょっと恐怖感じるレベルですし。
さてこっちにも頼りになるUDCがいるんだよね。敬愛とか全くないけど。…戦友的な感情かな?まあ、その辺は置いといてそれじゃあ、化け咆えなミミック。信仰をも塗潰す狂気を教えてあげよう。さあ、あんたは狂いのその先でも同じように動けるかな?後爆発で物理的に吹っ飛ぶといいよ?
自分は衝撃波込めた弾で牽制したりロープで引っ掛けたりとサポートに回ろう。UDCの幼生や壺を狙い撃ったりして武器落としも狙っていこうかな?
(アドリブ絡み歓迎)
邪神絡みときたら、多かれ少なかれ眷属の類は居るとは思っていたが………大分ヤバそうな奴らだった、と波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は女達を見る。
生首事件といい、触手といい、恐怖を感じるものであるし、仮に無力化してももう助からなそうでもある。
とりあえず、倒す他ない。相手がUDCと言うならば、こちらにも。波狼には戦友的存在が居る。人ではないが。
女性を付けていたミミックもこのビルに居たらしく、波狼に気がついて足元に寄ってきた。
この箱こそが彼の相棒。箱とて、侮るなかれ。
「おーいたいた。じゃ、とりあえず………」
波狼が目で合図をすると、箱があっという間に巨大な龍の姿へと変化した。ほんのり青いオーラを纏い、眼光鋭く女を睨め付ける。
その迫力は凄まじいもので、見た目だけで相手を軽く萎縮させるほど。
じりじりと後退る女達に向けて口を開けた龍が鳴いた。
咆哮はあたりの空気をびりびりと振動させて敵へ襲いかかり……相手は爆発した。
声だけで、叫びを浴びた対象を爆発させて吹っ飛ばしたのだ。エージェントの体が硬い壁に叩きつけられる。
爆発の煙が晴れたそこには、発狂したり暴れ回ったり頭を抱えてうずくまったりする女の姿が。
咆哮に乗せられたのは爆破だけではない。相手を狂わせる力。正気を削がれた戦士は狂戦士になるか、自我微睡む人形となるか。
仲間が狂気に苦しむ中、一人の女がゆらりと立ち上がった。顔は下を向いていて表情は読み取れないが、彼女も狂っているだろう。
その女の背中から、勢いよく触手が飛び出し、猛スピードで龍に迫る。
「おっと、そう単純にはいかないって」
右手に握られた装置からロープが射出されると、天井の蛍光灯に絡まって触手の進行を妨げる。
ロープが千切られる前に、左手に握ったド派手なモデルガンを発砲。実弾ではないとはいえ、その威力は十分にある。
弾は触手ではなく宿主本体に直撃。女が床に倒れると触手も引っ込んでいった。
ミミックが叫び、波浪がサポートする。爆音と狂乱で騒々しい現場を見て、例の彼女はくつくつと笑いを堪えていた。
成功
🔵🔵🔴
八坂・操
【SPD】
ホラー映画の出来不出来は小道具にあり……あんな精巧な生首を町中にばら撒いたのは何でなのか、ちょっと聞きたくってさ♪
……自分の生首を捨てるのって、どんな気分なんだろうね?
ミイラ取りがミイラになる、生首がオブリビオンと化する過程で出た副産物なら、彼女達の人数も納得出来る。
ま、全部想像の産物だけどね♪ 映画じゃよくある話でしょ?
真正面から行こっか♪ 『フェイント』と『カウンター』を駆使して、攻撃を往なすよ☆
操ちゃんは囮、本命はメリーちゃんだ♪
「後ろの正面だーれ♪」
こんな事もあろうかと、予め【メリーさんの電話】で遊びに誘っておいたんだ♪
躱せないように、ちゃんと『敵を盾にする』事も忘れないよ☆
「もしもし?……うん、そうなの。よろしくね?」
ぷつりと切れた電話。短い会話の後、携帯をしまった八坂・操(怪異・f04936)の目は、女の首を見つめていた。
今は生きている、あの首も、もしかしたら街中にばら撒かれていたのかも知れない。
己の生首を切る気持ちは一体どのようなものなのだろうか。たとえ命を引き換えにしてでも、切り落としたいというのか。
それもそうだが、操が一番聞きたいのは、なぜ生首をばら撒いたのか。しかも、生物に近い、或いはそのものとも思えるような精巧なものを。
……と言っても、相手は対話を待ってくれそうにない。操にも敵の攻撃の手が迫る。
女の背中から触手が飛んでくる。それに対し、操は後退る事もなく、突っ込んでいった。
暴れ狂う触手を短刀で斬りつけて、本体へ迫る。
負けじと再び触手を飛ばす女。操が右に強く踏み込んだところに一撃を叩き込もうとするも、
「残念♪」
操はすぐさま体を捻ってひらりと躱し、右手の短刀で触手を斬り裂く。
女は悔しそうに歯を強く噛み締めて攻撃を激しくするも、短刀一つでカウンターを決める操に決定打を決められない。
「ねぇねぇ、なんで生首をばら撒いてるの?」
戦闘中であるにも関わらず、好奇心旺盛な子供のように質問を投げかける操。
「………あなたに教える筋合いはないわ」
「つまんないの。ま、言ってくれないとは思ってたけどね」
にこにこと未だ笑う操は、女の闘争心を掻き立てるのに十分だった。
触手を振るう女が、ふと気づいた。さっきまで自分から一度も目線を離さなかった操の視線が、自分の頭の横、肩の上を通り過ぎていることに。
何かがいる……そう思ったその時、操が担当を首に突きつけてにこりと笑い、こう言った。
「………後ろの正面だーれ♪」
無邪気な操の笑顔。背筋を伝う悪寒に振り向く暇も与えられず、その頸部は無慈悲にも引き裂かれた。
床に伏せた女の背後に立つのは、一人の少女。刃物には獲物を仕留めた証拠がべったりと付着していた。
「ありがとーメリーちゃん!まだまだ遊ぼう♪」
メリーちゃんと呼ばれた少女は、この世に伝わる怪異そのもの。まさにオカルト。
だが、操には友好的なようだ。お互いに笑いあって目配せすると、次の獲物へ飛んでいった。
目には目を、怪奇には怪奇を。メリーちゃんもといメリーさんは電話をかけずにダイレクトに敵の首を刈り取る少女と化していた。
これもまた、怪奇の姿なのかも知れない。
相変わらず、どこかで戦いを傍観している女は、携帯でオカルト話を検索して漁っていたとかいないとか。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
ソロ希望・WIZ
憤りの感情に反応して触手攻撃してくるのね。
オブリビオンを愛する私に、彼女達を憎む理由は無い
でも、元人間と聞いて
迫害された過去のトラウマから憎悪が……
きゃあっ!!(触手に襲われ)
「あぁ……んっ……❤
これが貴女達のご主人様……?
確かに、抗いがたい快楽……気持ちイイ……❤」
そうね、迷う必要は無かった。
元は人間でも、彼女達はオブリビオン。
私と同じ…… 世界に否定される、愛すべき友
触手を堪能した後『狂愛』で30体に分身し
相手に纏わりつき【生命力吸収】
貴女が私を愛してくれた 倍、愛してあげる❤
「信仰は、疲弊した心を楽園に導く為の箱舟。
盲目なほど幸福感を得られる点では、恋と信仰は似てるわね」
ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は過去の遺物、いや異物を愛している。
それがたとえ未来への障害となるものであったとしても、彼女は過去を愛して止まない。寧ろ、障害として未来から虐げられるからこそ、彼女は愛しているのだ。
その愛が故に、彼女はオブリビオンの御魂を欲す。友として、否定からの脱却として、彼女はオブリビオンと対峙する。
ぬらぬらと揺れる触手。あれが崇め奉られている邪神なのだろうか。
ドゥルールとして、彼女らを救いたいが………彼女らは人間なのだろう?
邪神寄りだったとしても、その肉体は人間なのだろう?信仰を妨げるものを否定する、人間なのだろう?
しかも、よくよく考えれば、彼女らは元エージェント。オブリビオンを否定してきた者たち。
やはり、人というのは勝手なものか。ドゥルールの心に過去の記憶とともに沸々と怒りが溜まっていく。
その憤りは邪神にとっては獲物のサイン。
ニヤリと笑った女の腕中には古めかしい壺。中から細長い触手が凄い速さで伸びてきた。
「きゃあっ!!」
怒りに浸っていたドゥルールは不意打ちの触手に容易く絡め取られてしまう。
「あぁ……んっ……❤これが貴女達のご主人様……?確かに、抗いがたい快楽……気持ちイイ……❤」
戦意を削る方法は色々あるが、この触手は肉体的にではなく精神的に働きかけるもののようで、思考が溶かされていく。
朦朧とする頭で、考えた。そうだ、最初から迷う必要なんてなかった。
彼らもまたオブリビオンであるのだから。過去から蘇ったのならば、その中に人間もいるだろう。
彼女らも、友だ。
暫くして、女が拘束を解いた。ドゥルールは膝をついて動かない。もう抵抗はしてこないだろうと、そう思っていた。
だが、目の前のダンピールは立ち上がったのだ。表情は屈するどころかどこか恍惚として嬉しそうである。
「貴女が私を愛してくれた 倍……愛してあげる❤」
女に宣言したドゥルール。まだ足りなかったか、と再び飛んできた触手は、見事にスカされた。
居ない?いや、下を見ればちゃんといる。ミニサイズに変身したドゥルールが。その数、30。
一斉に女に向かって駆けていく分身たち。大振りな触手をひょいと躱して女の四肢や首筋、胴にくっついた。
女は腕や脚を振ってミニドゥルールを振るい落とすも、次から次へと別の個体が飛びついてくるため、中々引き剥がすことができない。
「信仰は、疲弊した心を楽園に導く為の箱舟………」
恋と信仰は似てるわね、と付け加えた言葉はもう女には聞こえて居ないだろう。
生命力吸収で脱力した体では、小さな分身ですらも振り払うことは叶わず、遂に彼女はもぬけの殻となった。
ダンピールの餌食となった女。オブリビオンを愛する猟兵。狂愛が狂愛を喰らう光景を、フードの女は画面越しに楽しんでいた。
成功
🔵🔵🔴
カイ・オー
UC【電流操作能力】使用。
受付にいた女性は人間なのかな?増援を呼ばれない様、命に別状の無い程度に生体電流を弱めて気絶させる。ついでに建物のセキュリティや防犯カメラ等もカット。……意味ないかな。まぁ、癖って奴だ。
ここからが本番。敵の女達の生体電流をシャットダウン。脳や心臓も止まるから普通ならこれで終わるんだが。
女を痛め付けるのは趣味じゃない、としときたいから、出来れば動かないでいて欲しいんだけどな。
しぶとく動く様なら、自身から発生させた高圧電流を操って纏めて攻撃しよう。心情より仕事優先だ。容赦は当然しない。
月並みだけど、行き過ぎた信仰
ってのは怖いねぇ。
カイ・オー(バーチャルキャラクターのブレイズキャリバー・f13806)の中に流れる熱が、少しずつ電子の流れに変わっていく。
彼は電気を操ることができるのだ。だから、こういったこともできる。
カイの体から電流が放出された。別段電圧が強いわけでもなく、微弱な力場が展開された。
力場は建物のフロアをほぼ占めるほどに広がって行く。
まずは手始めに、とカイが受付嬢二人に意識を集中させると、二人はぱたりと糸が切れたように床に倒れた。まだ息がある。
人体の皮下に流れる僅かな電気である生体電流ですらも操ることができるのだ。
そして、カイの電気はもちろん電子機器を操ることもできる。
特になにも変化のないように見えるが、視認している防犯カメラの機能を落とした。意味があるかは分からない。ただ、探偵としての癖のようだ。
さて、ここまでは場作りに過ぎない。問題はこの大量の女たちである。
邪神に心身を売ったとはいえ、彼女らも人間であることに変わりはない。それと同時に、未来の敵であることも。
力場が少し濃くなる。女たちは力場には気づいておらず、受付の二人が倒れたことに違和感を抱いているだけ。
寧ろ好都合だ。カイが力場を介して、大量のエージェントの生体電流を一挙にシャットダウン。
訳がわからぬまま女たちは倒れていく。生命に関わる回路を封じられれば、生物は確実に死ぬ筈だ。
人は死んだ。だが、邪神はそう単純に行かないようだ。宿主の背中からゆらゆらと揺らめく触手が伸びている。
「……しぶといな。まあ、これで終わらせるんだけど」
刹那、宙を稲妻が駆ける。
一瞬の閃光のうちに、触手は焦げ付いてへたりと動かなくなった。
「行き過ぎた信仰ってのは怖いねぇ………」
ぽつりと零したカイ。目の前には信仰心の成れの果て。人の心はここまで強く、そして柔く脆いものでもあったと。
こつこつと、静かに足音がする。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『観測者『アイ』』
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POW : 観測:熱視線
【目玉の眷属】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【ビーム】で攻撃する。
SPD : 観測:未来視
【未来を観測し】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 観測:合理化
対象のユーベルコードに対し【相反するユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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●観測者
「あーもー、困るよ君たち」
エージェントたちが力尽きた後、非常階段の扉を押し上げてやってきたのは、パーカーの女。
「ま、来るのは知ってたんだけどね。視たし。うーん、この子達もダメだったなぁ……」
足元の死体を足先で小突いて壁際に転がすと、猟兵たちをまじまじと見つめる。
「こっちからはずっと視てたけど、実際に顔を合わせるのは初めてだね。私はアイ。ただの観測者」
危機感はないのだろうか、へらへらとした態度で飴を舐めてながら器用に話す。
「あれだよね?これは私にも危害が及ぶ流れだよね?はぁ、私は戦闘職じゃないってのに………戦えないってこともないけど」
右手を上げると背後から大量の眷属が現れた。生首事件調査の時からずっと付きまとってきた目玉だ。
「戦うのはこの子達。私にもまだまだやりたい事があるからね、ここで死ぬわけにゃいかないのさ」
受付カウンターに腰をかけると、からからと笑った。
彼女は『目』だ。時間の流れ関係なく、未来も過去も、全てを視る瞳だ。
全て、全て視られていたのである。一筋縄ではいかないだろう。まずは、目玉達を超えなければならないか………。
カイ・オー
『視る』能力か。単純な戦闘力より厄介な能力だな。
……何せ、俺も似たような能力を使うからな。自画自尊だが、情報の強さは良く知ってる。
その分、対処も出来るか……?まぁ、やってみよう。
UC【加速能力】。防御力重視。
思考速度と反応速度、移動速度を上げて目玉達と対峙。
敵の視線の向きを【見切り】ながらビームを回避。光線の射線から外れる様に位置取りを変え続ける。
高速で動き続ける事で攪乱。「目にも止まらない速さ」って奴だ。
【ダッシュ】して敵の死角から接近し【なぎ払い】【属性攻撃】。ファイアスタータで制御した炎を刀に纏わせ目玉を攻撃。
「まずは敵の目を殺せ」
情報を制しろって格言だが、この場合はそのままの意味だな。
『視る』という能力、カイ・オー(バーチャルキャラクターのブレイズキャリバー・f13806)はその利便性をよく知っている。
彼もまたサイキッカーとして、人の記憶やら過去やらを視るためである。
肉眼では捉えられない情報というのは戦いにおいての強みになり、非常に厄介だ。下手な馬鹿力よりタチが悪いかもしれない。
己の感覚を生かして戦えるだろうか………いや、戦うしかあるまい。
カイの体に速さが宿る。単に身体的なものではない。思考回路までもが加速している。
腰の鞘から刀を引き抜くと、目玉の群れの元へ駆けて行く。
「突っ込んで来るの?撃ってくれって言ってるようなものだよ」
カイに視線が集まった。眷属たちに光がビームを発射した瞬間、視線を浴びる感覚を頼りに目玉の射線から外れるように体を捻る。
発射ギリギリまで待ったの確実に避けるため。見え見えの回避など容易く見破られてしまうだろう。
射撃を躱すとまた動き出す。今度は止まらずにひたすらに走り続ける。
並の人間では捉えられない速度だが、相手は視ることに特化した目そのものである。
眷属たちが目を閉じたかと思うと、カイの到達地点を演算してそこに光線を放った。
一糸乱れぬ正確な射撃。確実に当たるかと思っていた。
「まさか、この速さでもついてくるとはね………」
ビームと接触しそうになったものの、ユーベルコードによる驚異の反応速度でギリギリ避けた。髪先が焦げ付く。
カイは仰け反ることもせず体勢を低くして、目玉たちの下へ潜り込む。今度は先読みする暇も与えない。
握る刀が炎を纏うと、自身の上を薙ぎ払った。上から燃える瞳の断片がいくつか落ちてくる。
「へぇ、うちの子に一撃加えるとは、中々やるじゃん」
感心したようにアイはカイを見る。
『まずは敵の目を殺せ』なんて言うが、今回は文字通り、目を殺した。
視るもの同士、捉えられるかどうかで競い合っているようにも見える。
観測者はどこか楽しそうであった。
大成功
🔵🔵🔵
波狼・拓哉
んー見られたというのはちょっとやり難いなぁ…さてどうしますかね。
…初見技使うより避けられないぐらいの密度で潰した方が早いかな。それじゃあ、引き続き化け咆えなミミック。狂気は効かなさそうだからあんまり考えないとして爆破して回ろうか。出来るならビームも避けてく方向で。
自分は衝撃波込めた弾でビーム放ちそうな眷属を狙撃して周る感じでサポートに。一撃で倒せるか分からんから目の方向を反らすようにしていくか。一斉射撃とかしてくるならミミックを全員の盾にしたりもするか。…別にミミック再召喚制限とかないし、消えたらまた召喚したらいいし。
(アドリブ絡み歓迎)
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は少々思案していた。
今までの行動が筒抜けだったことが何よりやり難い。無意識に自分の行動パターンが分析されていないか、とか考えてしまう。
考えた、考えた結果、波浪は無理に初見技を使うのをやめた。
たとえ観測が出来たとしても避けられないような密度の攻撃をした方がいいと判断した。
「ミミック、引き続きよろしく」
まだ龍の形を保っているミミックの口が大きく開く。咆哮の構えだ。
「おっと、それはさっき見たよ?それには………こうかな」
ミミックが吠えると同時にアイの口も開く。何やら歌を歌っているようだが、相手の声も聞こえない。
だが、重要なのはそこではない。
相手が爆破される気配が一向にないのだ。どれだけ吠え続けてもアイは余裕の表情で歌っている。
歌ったままアイがミミックを指差すと、眷属たちが一斉にビームを放った。
龍の体躯は大きく、格好の的である。ミミックは光線に貫かれて消滅してしまった。
「………ふぅ。残念、効かないよ。振動を吸収する歌。叫びが届かなければ爆破もされないでしょ?」
アイの歌声は空気の振動を吸収する空間を作る叫びには歌を、というわけだ。
「ミミックも居なくなったし、君はチェックメイト……って、はぁ?!」
余裕綽々だったアイが驚いた理由は、龍がそこにいたから。
「なんで、さっき撃ち抜いたはずじゃ……?」
「あー、うちのミミックに再召喚制限とか無いから」
消えたら召喚すれば良い。撃たれては召喚を繰り返す半永久的な盾になる。
「反則じゃんそんなの!死んだら生き返らないのが道理でしょ。コンティニューは無いんだよ!!」
骸の海から蘇るオブリビオンが何か言っているが、軽く聞き流しておこう。
偽正・龍滅咆哮は使えないが、ミミックでビームは防ぐことができそうだし、波浪自身も戦える。
ミミックは味方の壁となり、波浪は目玉を一個一個確実に撃ち落としていく。
決定打では無い、だが、アイの攻撃手段の一つ、アイビームを削ることができたのは大きな一歩だろう。
大成功
🔵🔵🔵
ナハト・ダァト
ほウ。全てを捉えるのカ、その『瞳』。
…だガ、それハ視覚である以上。明確な弱点ダ
無限光からノ光の放出デ目潰しを行うヨ
どうやって光ったか、分からないだろウ?
安易に視るモノではないヨ
未来モ、過去モ全てニ過程があル
君ハ、何を重視するのかナ
結果のみカ。それとモ、結果へ至る過程カ…どちらにせヨ
その結果が答えダ
視野を広げテ、やり直し給エ
視覚を潰すという弱点を実証後、受難の左手を発動
攻撃の意思、動作の目的、視線を感知する触手でUCを封じる
どれだケ、先を望もうト
君は既ニ結末を迎えた存在ダ
大人しク、罰を受けると良イ
アドリブ歓迎
瞳がある。それは即ち弱点でもある、とナハト・ダァト(聖泥・f01760)は言う。
視覚は生きとし生けるものにとって、殆どの場合は必要なものだろう。
だが、常に開いている五感の一つだからこそ、潰されれば命を落としかねないものだ。
ビル内が突如、眩い光に包まれた。
眩しさにアイは顔をしかめる。道理は分からないが、とにかく光がそこにある。
目を瞑ったものの瞼では防ぎきれぬ閃光に、視神経がイかれてしまったようだ。どこを見ても白、白、白。
「分からないモノを安易に視るモノではないヨ。その安直サ………視野を広げテ、やり直し給エ」
ローブの中から一本、触手が覗く。
「キミの弱点は、視る、その能力自体ダ」
「目が見えなくなって………私は肉眼で見るだけじゃないから!」
眷属に指示を出したアイ。しかし、目玉は沈黙したまま何をするまでもなく、ただそこにいる。
「目が潰れたのはキミだけじゃない、眷属もダ。視るコトに頼りすぎて、肝心な時に盲目なところ………それがいけないのサ」
的確な指摘に、悔しそうに下唇を噛んだアイの腕に触手が絡みついた。
「そんな事があるなんて、視えなかったのに
………!」
「視えないというコトは即チ未知。余白があるとも取れる」
視ることに執着した結果、視野狭窄に陥ってあるアイは、それすらに気づくことは出来なかったのだ。
「どれだケ、先を望もうト、君は既ニ結末を迎えた存在ダ。大人しク、罰を受けると良イ」
使えない眷属、見えない目、図星………アイは潰れた目で明後日の方向を睨みつけることしかできなかった。
大成功
🔵🔵🔵
八坂・操
【SPD】
「やっほー、多分ご存知の操ちゃんだよ♪」
困るって言われても、生首ばら撒いて今時獄門してる子には言われたくないな☆
ま、折角来てくれたんだし、ゆっくりしていきなよ♪ ……もう見るのは十分なんだろう?
先手必勝。ドスを『投擲』し、一足飛びに接近して『だまし討ち』だ。『串刺し』貫手で一息に終わらせる。
「う、そ」
……そこまでが『フェイント』。全ては至近距離で【細取】を叩き込むための布石に過ぎない。
生首の悪戯も、猟兵との戦闘も、全てはスクリーンの中の出来事で、何時でも自分は観客でいたい……その気持ちは良く分かる。
だが観客が舞台に上がれば、それはもう同じ登場人物だ。
「だからこうして手が届いてしまう」
「やっほー、多分ご存知の操ちゃんだよ♪」
目の潰れたアイの耳に、八坂・操(怪異・f04936)の明るい声が耳に入る。
あちらの都合では猟兵の登場は困るかもしれないが、こちらからしても生首をばら撒かれたりしたら困るのだ。
「ま、折角来てくれたんだし、ゆっくりしていきなよ♪……もう見るのは十分なんだろう?」
操の顔が一瞬真顔になったが、それすらもアイに見えているか怪しい。
「すぐに終わらせてあげるね♪」
敵には速攻あるのみ。握りしめたドスをアイめがけて投げつけた。
目が見えねども、アイはお得意の視る能力がある。
短刀投擲に合わせて接近してくる操を視た。視界がなくても戦えるも言いたげに、ひらりと回避をしてみせる。
「う、そ」
ポツリと呟いた操。彼女から解き放たれた御霊がアイに憑かんと飛び出した。
しかし、アイは回避行動をとる。彼女には、操がフェイントをかけてくることさえ視えているのだ。
「私を欺くことは出来ない………っあ、くっ、なんで………」
アイは霊障に苦しんでいる。何故か?簡単なこと。未来は視えても、今は見えていないのだから。
アイは、これまでの事件からも、猟兵たちとエージェントの戦いからも、一歩離れたところから画面越しに見ていた。
それは彼女にとっては画面内で起こっている出来事であり、直接干渉のない、いわば舞台と観客の関係だったのかもしれない。
だが、舞台に出てきた時点で、アイは観客ではなく役者になったのだ。誰が主役か悪役か、喜劇か悲劇かは言うまでもなく。
「だからこうして手が届いてしまう」
頭を抱えてしゃがみこむ女の背中に、一刀の刃が突き立てられた。
●その先に視るものは何か
「ぐっ、うぅ………私は、まだ終わらない。今度は失敗なんてしないんだから!」
背面からだらだらと鮮血を垂れ流しながら、アイは静かに骸の海へ帰っていった。
彼女は成長するだろうか………過去の産物にこれ以上の時間はないかもしれないが。
結局、彼女の深い意図と復活させようとしていた邪神については分からずじまいだったが、この気味の悪い事件に終止符が打たれたので良しとしよう。
相手を視るオブリビオン。その能力は素晴らしいものであった。だが、力に甘えればいつか制裁が下るというもの。
生首事件はいつしか人々の記憶に呑まれ、忘却の彼方へと行ってしまった。
猟兵は過去に何を見るか。そして、未来に何を見通すか。
各々の意思を抱きながら、彼らは再び歩み出す。未だ分からぬ結末を知るために。
大成功
🔵🔵🔵