●春の影法師
春を迎える、と書いて「ゲイシュン」と読む。サムライエンパイアのいち地方では新しい年、新しい季節の到来を盛大に祝うのだという。
そんななかで、「物の怪(オブリビオン)の群れ」による大災害が予知されたのだ、とプルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)は猟兵達に告げた。幸いにも――と言っていいのか分からないが、物の怪の活動はまだ本格化しておらず、時間の猶予は十分にある。逆に言えば、差し迫った危機ではないため、予知も断片的なものにとどまっている、ということ。
「情報を得るには現地の人々との信頼を築くのが早いかと思います。現地に逗留し、春を祝う祭りに参加したり、日常を過ごすことで人々と溶け込み、それから情報を聞き出しても遅くはないでしょう」
危険かどうかは、現地に着いてすぐの猟兵よりも現地人のほうが理解が深かろう。プルミエールの言葉には一定の説得力が伴っていた。
「信頼を築けば、怪しい場所や些細な変化を聞き出しやすくなります。もしかしたら、自分達で違和感に気付く場面もあるかもしれません。……そちらのほうは、不確定ですが」
言葉を尽くして態度を示し、信頼をもって情報を得る。少なくとも、ずかずかと他人の領域に踏み込んでここは危ないと騒ぎ立てるよりは建設的であろう。
「まずは、物の怪の件は脇において、思うさま楽しんでしまったほうがいいかと思います。たまの息抜きと思えば、悪くないでしょうから」
楽しむことは悪いことではない。心から人々と交わろうとする姿を見せれば、上辺だけ敬意を払うよりはよほど受け入れられるというものだ。
……すでに、調査というより祭りの気配に気もそぞろな猟兵がいたとしても、否定はしないが。
十文字 一知
初めまして、十文字 一知と申します。
まずは日常からこつこつと……え? 最終的には戦闘だって? そんなあ(本音:やったぜ)。
そんな感じで迎春の催しからスタートです。大丈夫大丈夫、春なんで。春を迎えるんで。そこはテイストというかニュアンスというか。はい。
お祭りを楽しむことに全力を出しても、手伝うなりで信頼を勝ち取っても。皆さんの魅力を引き出せるやり方で、どーんと。はい。
二章は潜入・探索、三章に集団戦が待っています。詳細は各章終了時にあらためて。
それでは皆様、お知恵と魅力を拝借いたします。
第1章 日常
『新年を祝い尽くせ!』
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POW : 餅つきに参加。杵で突くも、返す手伝いも、合わせる物の用意も良し。最後は美味しく、いただきます!
SPD : 外で体を動かす遊びに参加。羽突やコマ回し等で他の人との対戦や、のんびり一人で凧揚げに興じる等どうぞ。
WIZ : 屋内で過ごす遊びに参加。カルタや福笑い等で他の人と楽しむ、一人で書初め等に専念してみるなどいかが?
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●
人々は長き冬との闘いを終え、来るべき芽吹きの季節に各々で楽しみを探していた。猟兵達が訪れたとして、それを凶兆と捉える者などまず居るまい。
それどころか。天下自在符を持った彼らは崇敬の的であり、極端な見方をする者なら神使(しんし)と見紛うことも……ないではない。
治外法権的な振る舞いですら許されようが、そこはひとつ、彼らの手腕ひとつでどうにかなるだろう。……どうにか。
加藤・光廣
はーん?春のお祭り?
面白そーじゃん、ちょっと参加してやろーっと
お祭りならテキ屋の的当てなんかもあるだろーから、ちょっと遊んでみるか
あ?的にこれ当てたら賞金くれんの?
やってやろーじゃん、俺の腕見て腰抜かすんじゃねーぞ
自慢の投擲技術、見てろよ?
こちとら動く相手に命張ってんだ、動かねー的なんて余裕、余裕!
的をもっと遠くにしたほうがいーんじゃねーの?その代わりに俺は慣れた得物を使わせてもらうけどな
さって、と
ついでにちょっとした芸も見せてやろーか?(スローイングナイフをお手玉してから投擲)
どーだ、珍しーモン見られただろ?
こいつはオマケ!(最後の一本を的に刺さっているスローイングナイフの柄尻に向けて投擲)
●
「春のお祭り?」
面白そーじゃん、と加藤・光廣(人狼のグールドライバー・f06416)は手にしたナイフを弄びながら祭りの雰囲気に身を委ねていた。投擲の腕に一家言ある彼にとって、祭の興行で選ぶとすれば間違いなく的当て。とはいえ子供向けなのだろう、賞金こそ出ないが周囲の期待のまなざし、そして掲げられた菓子袋は彼のやる気を弥が上にも高めた。
「ついでにちょっとした芸も見せてやろーか?」
遠ざけられた的から視線を切らず、悪戯っぽく笑んだ光廣は、ナイフでジャグリングしつつ、うち一本を的へと投げつけた。次々と落ちてくるナイフを指で挟む彼の視線はもう的にはない。中心にあることは明白だからだ。
周囲の割れんばかりの喝采、そして驚きのあまり身動きがとれなくなっていた店主をよそに、彼は振りかぶってもう一度、ナイフを投げつける。
刺さったナイフの柄を狙ったそれは、固定的であれ達人の域を要する芸当。わずかに柄を掠り、上へと滑ったナイフはしかし、的の上半分に一直線の傷跡を残した。
さながら、彼が残した周囲への印象そのままに。
成功
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御剣・刀也
POW行動
餅つきか。ちょっと季節外れな気もするが、祭りでできるとは
杵で体力の続く限り付かせてもらおうか
元々力はあるので杵を折らないよう壊さないよう力加減に注意しながら突く
ある程度付いたら一息入れて突きたてのお餅を醤油に着けてパクリと食べる
「やっぱ出来立ては最高だな。料理と同じで、作ってすぐが一番うまい」
少し休憩したらまた餅をつく。無くなったら出来上がった餅を食べつつ、のんびり会場を見て回る
「うーん、これだけ見事に花が咲いてると茶よりも酒を飲みたくなってくるなぁ」
●
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は蒸したもち米の匂いに惹かれるように、広場へと歩を進めた。今まさに振り下ろされんとしていた杵の持ち主は、彼の来訪に相好を崩して杵を差し出してくる。無理強いしたわけでも、ましてやりたいと宣言したわけでもないのだが。苦笑まじりに杵を持ち上げた刀也は、いくぶん控えめに振り下ろす。力加減を考えながら振るう杵に、餅の返し手は丁寧に呼吸を合わせてくれる。ほどなくして搗き上がった餅に醤油をつけ、口に放り込めば広がるのは熱さと醤油の塩気、それらを押しのけるほどの米の甘味だ。
「やっぱ出来立ては最高だな。料理と同じで、作ってすぐが一番うまい」
作りたて、そして自ら手掛けたものが美味であること。望外の喜びを噛みしめる彼に気をよくしたのか、人々は次の蒸し米を臼に放り込み、刀也の肩をたたく。
いま一度杵を持ち上げると、刀也は先程よりもテンポよく餅を搗いていく。人々が彼に向ける眼差しは、蒸し米と変わらぬほどの熱を帯びていたのは言うまでもなく。花を愛でれば酒を欲す心向きもまた、当然と言えよう。
成功
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英・明夜
これから田んぼや畑の仕事が忙しくなるから、ちょっとの息抜きになるのかも。
明夜も、一緒に楽しみたい!
明夜は、小さい子達と一緒に遊ぼうかな。
カルタの読み上げ役は退屈だって子も多いだろうから、代わりに読んだり。
途中で飴でも買って、一等賞の子には2つ、参加賞で1つ、渡そうかな。
女の子の鞠付きや羽付きとかに交ぜて貰ったり。
それでね。小さい子が懐いてくれたら、その子の親や兄姉さんに、明夜が一緒に遊んでる(子守をする)から、
少し遊んでおいでよ、ってお話するね。
預けるのが不安なら、お遣いとか、するよ。
飴とか凧とか、縁起物とか。
明夜は、誰かの笑顔を見るのが好きだけど。
一緒に笑えたら、もっと嬉しいな。
●
英・明夜(啓明・f03393)は、周囲であがる歓声や祭りを楽しむ声を背に、カルタ遊びに興じる子供達の横で札を読み上げていた。
「明夜も一緒に遊んでいい?」
そう彼女が問えば、子供達が断る道理はどこにもなく。飴を用意したとなれば盛り上がりはさらに高まる。
明夜が外に出ると、そちらでは羽つきに興じる子供達の姿。かたわらに置かれた墨と筆の意味を知らぬ彼女ではあるまいが、さりとて遊びとくれば混じらぬわけにもいかない。
……結果として彼女の外見がやや酷いことになっても、子供達の興味を引くのであれば目的を達している。というか、それすらも彼女は楽しんでいるのだ。心から。
嘘偽りのない態度や笑い声は、必然、子供らの親、ひいては集落の人々の信用を勝ち取るに十分なものであったのは間違いない。
「まだまだ明夜は遊び足りないから、付き合ってもらえるかな?」
明夜のそんな問いかけに、子供達は一も二もなく是を唱え、安堵した親はさらに祭りを盛り上げるべく立ち回る。
彼女を始めとした猟兵の活躍は、確実な信頼を築き上げたのであった。
成功
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第2章 冒険
『怪異の館』
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POW : 怪奇は俺だ!お化けのフリをし、子供たちを驚かせ帰らせる
SPD : もっと良い場所があるぞ!子供たちを説得し帰らせる
WIZ : そこで何をしてる!子供たちを叱って帰らせる
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●影は闇に溶け
集落の人々の信頼を勝ち取った猟兵達は、それぞれ異口同音に話題にのぼった「館」がオブリビオンの巣窟になろうとしているのでは……そう推測を立てた。
大人たち曰く、「ずっと放置されており、荒れ放題になっている」。
子供達が曰く、「集落でも特に悪戯を好む子らが近付いては肝試しをしようとしている」。
遠からず起きる惨劇のきっかけは、目と鼻の先にある。まずは子供達をどうにかするのが先決だが、果たして子供達は簡単に応じるのだろうか?
御剣・刀也
SPD行動
やれやれ。こういう所を見ると冒険したくなるのは子供の特徴だな
俺もそうだったし。さて、美味く説得できるといいが
第六感を使いつつ子供たちが居そうな場所を探す
見つけたら声をかけてゆっくり近づき、自分が幽霊でないと足を挿して教える
「お前らこんなところに潜り込んで何してんだ?危ないだろう?親父さんもお袋さんも心配してるぞ?」
と話しながら
「お前らが朝起きたとき親父さんもお袋さんも居なかったら寂しいし、嫌だろう?お前らの親父さんもお袋さんも今そういう気持ちで心配してるんだ。こんな所より、家で親父さんお袋さんと遊ぶ方がよっぽどいいと思うぜ?」
加藤・光廣
お化けの出る館?
間違いねー、お化けの正体はオブリビオンだな
だが肝心の「館」の位置が分かんねーな
知らねー土地だしよ
いくら俺らが猟兵でも聞いたところで、ジャリどもが口割るとは思えねー
俺がそうだったし
ここは悪さしてそーなジャリを追跡してみるか
ひと目見りゃ分かんだろ
見失っても俺の鼻は誤魔化せねーぞ
「館」に着いたらジャリどもに背後からでけー声を掛ける
おい!こんな所で何してんだ?
ここ、お化けが出るんだってな?
お化けってーのはな、憑いてくるんだぜ?
夜にションベンしたくなって驚かされても知らねーぞ
しかも憑いた相手が死ぬまで続くんだってよ
分かったらとっとと帰ってカーチャンのおっぱいでも吸ってな
俺?俺は平気さ
●
「館ってのが怪しいのが間違いねーが、その位置が分かんねーな」
「館に向かう子供達を探して、向かう前に止めるべきか……?」
光廣は、大人達から館の話は聞いていたものの、肝心の場所については詳しく聞き出せなかったらしい。それは刀也も同様で、説得するにしても、そもそも相手を見つけなければ話にならない。
……とはいえ。方や光廣はそれなり以上に鼻が利き、刀也は勘働きが冴えている。そして2人は、ともに大人達の歓心を買っている。
そうでなくても、猟兵達に非協力的な大人なぞ居ようはずもなし。口々に場所を告げ、子供達の動向を伝えてくる人々に感謝の言葉を返しつつ、両者が辿り着いたのは問題の館へと続く一本道だ。
肝試しや秘め事を昼間から行う訳もなく、さりとて親に怪しまれる夜間を選ぶ道理もなく。黄昏時を選んでおっかなびっくり進む彼らに、背後から近づく。
「お前ら、こんなところで何してんだ? 危ないだろう?」
「ひッ!?」
刀也の落ち着いた声が不気味に聞こえたのか、子供達は飛び上がって後ずさる。続けて光廣が同様の問いかけを(やや荒っぽい口調で)質すと、さらに恐怖心も露わに震えあがった。刀也が足を指させば、幽霊じゃないことは分かっただろう。
「お化けが出るんだってな? お化けってーのはな、憑いてくるんだぜ? それも相手が死ぬまでだ」
「憑かれた後に死んでも、館に行ったまま帰らなくても、親父さんもお袋さんも心配するだろ。止めなかったのを後悔するかもしれない。お前らだってそうだろ? なら、家で遊んだほうがよっぽど楽しいし安心できるはずだ」
光廣が煽った恐怖に、刀也が逃げ道を示す。北風と太陽でもないが、子供達の感情を揺さぶるには事足りた。……悪戯半分で来た何人かは、その言葉を聞くなり慌てて立ち去っていく。それで逃げなかった子らがいるとすれば、自分に自信があるのか好奇心が勝っているのか、はたまた反抗心が込み上げてきたのか。
成功
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英・明夜
勇気とか意気地が必要な時も在るけれど。
危険を避ける慎重さだって、必要だよね。
素直には聞いてくれないみたいだから、ええっとねえ…こういうのはどうかな。
その、「館」に近付いてく子たちからは姿を隠して(一緒に遊んだ子が居るかもだからね)、わざとガサガサ音を立ててみようかな。
クスクス笑い声とかも。
同時に、「館」の方に、フォックスファイアを一つ、二つ…って、ゆっくり増やしてみるね。
それでも逃げ帰ってくれなかったら、ゆっくり、でもジワジワ、子供たちに近付かせてみる(ちゃんと、危なくないうちにに消すようにするよ!)。
声色を作って、「帰れ」とか「食べられてしまうぞ」とか言うのも良いかな。
…何だか胸が痛むけど。
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意地の悪い、もしくはうぬぼれ気味な子供達は、しかし近場の草むらが揺れる音に敏感に反応し、飛び上がった。
「ひ、ひぃっ!?」
――くす、くすくすくす。続けて響いた笑い声は女性にしては低く、どこか悪意を滲ませたそれだ。
茂みの中に何か居る。だが、正体を暴こうとすれば恐怖と目が合うこともあろう。迂闊に現実と対面できない彼らは、何者かに怯える羽目になる。
そして、さらに。茂みを越えてゆらりと姿を見せた狐火とくれば、多少心根に自信があったところで抗うのは難しい。
悲鳴を上げ、後ずさる子供達を誰が責められよう。少しずつ増えていくそれらの威嚇効果は十分すぎる。
「「帰れ……さもなくば、食べられてしまう……ぞ……」
近付く狐火とともに溢れた言葉に、子供達は思わず踵を返し、逃げていく。
(少しやりすぎちゃったかな……?)
明夜は、草むらの陰から逃げていく子供達を心配そうに見ていた。遊んでいた子供のひとりが混じっていたようだが、大過なくて何よりだ、とも思いつつ。
ちなみに。「食べてしまうぞ」ではなく「食べられてしまうぞ」な辺りが、彼女の優しさゆえの限界ではなかろうか。
成功
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フローリアン・ロイス
【茶屋】
子供達を引き寄せられるようなことが出来ると良いよね。
というわけで。
お祭りとか、別の世界の食べ物とかを、賑やかに楽しそうに、美味しそうに食べるね。
子供がやって来たら、「これをあげるから、今日は帰りな。ごめんね」と伝える。
家族に持って行く分の食べ物も。
ここに、僕に呪いを掛けたお化けが居るかどうか、確かめるだけ。
「お化けを侮ったらいけないよ」
「僕はね、夜になると、人じゃないものに変わる呪いを掛けられてるんだ」
明夜が合図したら、また合図するまで、血統覚醒。(赤目になり、牙が伸びる)
猟兵って、別の世界の住人にも違和感を持たれないって言うけども、
自分の姿が変わる嫌悪感は覚える…んじゃないかと。
英・明夜
【茶屋】
食べ物をちょっと炙って、良い匂いとか音を出すね。
香ばしい匂いがするもの…、お肉とか魚とか。
他の世界で見た鉄板焼きの屋台みたいなのが在ると良かったけど、
フォックスファイアで上手に焼けるかな?
顔を見せた子供が居たら、えへへ、禁断の味・ちょこれーとを一粒!
フローリアンが「呪いを掛けられてる」って言ったら、
「明夜は巫女なんだ。神様の力で呪いを抑えてるんだよ」
「封印の力を緩めると、フローの呪いが活発になっちゃう…」(合図)
子供達、怖がったり嫌がったりしてくれるかな?
「中にお化けが居なかったり、倒せたら、ちゃんと報告しに行くからね」
「明夜達が集落に戻らなかったら…もう、ここに近付いたら駄目だよ?」
子供達は辛抱強く、全員を追い返すのは簡単なことではない。
明夜も狐火と演技で脅してはみたものの、端の方で恐る恐る近付いていた子供だったことが幸いした格好だったのだ。
道理で諭して、脅しを用いて、それでも十分でないのなら……フローリアンの案に頼るのもひとつの手なのである。
「お、おい、アレ」
……そんなわけで。
子供達はフローリアンが手にする様々な料理、まあ概ねこの集落の祭りで供されたものの模倣なのだが、それらを指さし、興味深げに近付いてくる。祭りの料理というのは非日常の象徴だ。たとえ田舎のそれであっても。
「これをあげるから、今日は帰りな。ごめんね」
「これもあげるね。どうぞ」
フローリアンはまっさきに寄ってきた子供に、明夜はおずおずと近付いてきた少女に。それぞれ串焼きとチョコレートを差し出す。後者は特に物珍しい品だ。口にした少女の目の輝きようといったら、どうだ。
その様子に、散っていた子供達も自然とそちらに寄ってくる。
「僕に呪いをかけたお化けがいるかどうか、確かめに来たんだ。僕はね、夜になると、人じゃないものに変わる呪いを掛けられてるんだ」
「明夜は巫女なんだ。神様の力で呪いを抑えてるんだよ」
食べ物を恵まれ、喜びと同時に不安を覚えた子供達であったが、追い返すにしても理由がある、とフローリアンと明夜は諭す。
呪いは危険なもので、個人的なものなので巻き込むわけにはいかない……そんなふうに。
「封印の力を緩めると、フローの呪いが活発になっちゃう……」
明夜はその言葉と共に目配せを行う。フローリアンはそれに合わせ、瞳の色を変じ、牙を伸ばす……命を削る能力強化は、如何に猟兵が『自然な存在』でも恐怖を喚起するものに思えた。
「ひっ……!」
「封印の力ってそんなに簡単に緩んじゃうの?!」
恐怖に驚く子供の中には、ひときわ敏い子も混じっていたが……問題はそこじゃないと思われるが、気になったのだろう。
2人は首肯し、だからこそ屋敷を調べなければならないのだ――そう彼らに言い含めた。
子供達は恐れのあまり、三々五々に散っていく。これで全員だろうか?
あとは、屋敷の中を何とかする番だ。
大成功
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第3章 集団戦
『腐怪の蟲』
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POW : 腐敗の瘴気
【腐敗の瘴気 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 粘着糸
【尻尾から発射する粘着糸 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 腐敗の溶解液
【口から発射する腐敗の溶解液 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を腐らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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●
館……あるいは屋敷か。集落でもそこそこ大きい建物は、今や隠しようもない瘴気をその内側に抱え込んでいた。子供達が近づき過ぎれば、間違いなく大惨事だったことだろう。
内部へと踏み込んだ猟兵達の前に現れた虫は、その背から芽を生やし、それでいて思ったより機敏な動きで彼らへと襲いかかる。
犠牲者がいたならば。彼らに文字通り胞子の『苗床』にされていただろう。
恐怖を煽る怪生物は、一切の躊躇なく。
加藤・光廣
コイツら一匹残らず駆除すりゃいいんだろ?
楽なもんだね、なーんて言えりゃいいんだけどそうはいかねーか
それにしても、ジャリどもがここまで入り込んでなくて良かったぜ
ジャマくせーだけだ
まずは距離を取って派手に一九式ブッ放すぜ!
三点バーストで確実にトドメ刺して頭数減らさねーとな!
弾切れ起こしたら一九式は打ち捨てて、自慢のスローイングナイフ捌きでも披露してやる
その見た目じゃ拍手もできねーだろーがよ
スローイングナイフが尽きる頃には接敵してるか?
ダガーとマンゴーシュに持ち替えて、敵のド真ん中躍り込んでUC
他の奴らは怪我しねーように離れてた方がいーぜ?
適当に暴れ回ったら撤退だ、ムリはしない主義でね
後は任せた!
「楽なもんだ、なんて言えりゃいいんだけどな」
光廣は手近なところから溢れ出た蟲達に顔をしかめつつ、一九式突撃銃を構えて蟲に向かって銃弾を撃ち込んでいく。
単発で急所を狙うでなく、三点バーストで確実に息の根を止めていく徹底ぶりには慣れすらも垣間見える。
小気味よい音を響かせて蟲を蹴散らして突入した彼は、突撃銃を投げ捨ててスローイングナイフを連続して投げつける。
「拍手する手がねーから無理だろうが……よく出来たもんだろ?」
祭りでは成功しなかった継ぎ矢のような連撃も、調子がよいのか確実に通る。気を良くした彼は、周囲の惨状などお構いなしに更に先へと踏み込み……いきおい、高らかに咆哮を上げる。
蟲達に聴覚はない。だが、その咆哮を機に光廣の気配が変わったことには気付いたはずだ。
2本のナイフを抱えた彼は、目につく相手を無差別に切り裂いていく。真っ先に敵陣に突っ込んだことが幸いして、仲間を巻き込む必要もない。
手近な相手を一掃し、光廣は突撃銃を回収して後退する。仲間がより強力な攻撃をすればひとたまりも無い、とばかりに。……その顔には、会心の笑みが浮かんでいた。
大成功
🔵🔵🔵
ウィーリィ・チゥシャン
おいおい、こんなのが潜んでやがったのかよ。
子供達が近づいてたら危ないとこだったな。
んじゃ、片付けるとするか。
他の猟兵の攻撃で敵の足並みが乱れている間に押し入って敵の攻撃を鉄鍋の『盾受け』で防ぎながら大包丁の『二回攻撃』で当たるを幸いに蟲を切り払いエントリー。
そして敵群の真ん中で『飢龍炎牙』を放ち、周囲の蟲をまとめて焼き払う。
後は残敵を炎の『属性攻撃』で仕留めながら引き上げて態勢を整える。
これだけの数を相手にするんだから長期戦は覚悟しないとな。
ウィーリィはにわかに乱れつつある蟲達の連携に割って入り、大包丁を振り回す。柔らかい体に対し、その切れ味はあまりに危険だ。警戒した個体が溶解液を吐き出すと、周囲の個体もそれぞれ瘴気や粘着糸をばらまき、彼を捕えようとする。溶解液は最悪、当たらずとも自己強化を為すという厄介さだが……鉄鍋による最小限の接触で受け流し、糸を避け、相手が一度動く間に二度の斬撃を放つことで、次々と蟲を蹴散らしていく。
ダイナミックなエントリーからの、包丁に手を添える構え……さながらお辞儀めいたその動作は、意図せずして挑発行為となったらしい。
「おいおい、そんなに怒るなよ。ストレスは食材に悪いんだぜ? お前らなんて頼まれても調理しないけど!」
ウィーリィはそう冗談めかして口にしつつ、敢えて敵陣の中央に飛び込んだ。瘴気が喉に絡みついた気がするが、気にも留めず。
「喰らい尽くせ、炎の顎!」
咆哮一下、放たれた炎は螺旋を描いて蟲達を蹴散らしていく。いきおい、出口への道筋を作ったそれを追い、彼は屋外へと退避する。まだ戦える。だが、実力を見誤ってはならない。
仲間あってこその自分であると、彼はひと一倍理解しているゆえに。
大成功
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フローリアン・ロイス
【茶屋】
一匹でも見逃せば、増えてくんだろうしね。
目の前の虫を攻撃しつつ、暗がりに潜む虫を発見できるように振舞うね。
少しは暗視も出来るけど、やっぱり光で照らす方が見付け易いでしょ。
なので、光の魔力を使ったUCで攻撃を。
ざっくり纏めて攻撃しつつ、舞った光で隠れた虫を見付け次第、更にUCを重ねたり、
数が少なければルーンソードで斬る。
溶解液は見切って避けたいところ。
難しい時は、マントで振り払うように受けようかな。
溶解液でなく、虫の体当たりを避けられない・斬るのも間に合わない時も、
マントで払って態勢を整えたい。
明夜に比較的余裕が在るなら、合図してから彼女の方へ虫を追いやるね。頼んだよー、っと!
英・明夜
【茶屋】
それじゃ、フローを呪った相手をどうにかしないとだね(くすくす笑い)。
明夜は、フローがUCで攻撃しても倒し切れなかった虫を優先して狙うね。
距離が近ければ薙刀で、敵数に合わせて薙いだり突いたり。
薙刀が届かなかったり、もうちょっと周囲を照らしたいなって時は、フォックスファイアで燃やしちゃう。
薙刀を引き戻せないとか、フォックスファイアの詠唱が間に合わない咄嗟の時は、霊符を投げ付けて攻撃するよ(クイックドロウ)。
溶解液は、走ったり見切って(+第六感)避けるか、霊符をぶつけて凌ぐね。
明夜の周りに虫が少ない時、フローが困ってたら、こっちからも声を掛けるね。
逆に、こっちが大変な時は、お願い!
「《光》よ、我が内と剣より来たれ。瞳の虹を映し、世界にも虹を蒔け。蒔かれた虹は花弁となれ。我が敵を裂いて舞え」
フローリアンの握ったルーンソードが、彼の声をきっかけにして無数の花びらへと変わり、散っていく。虹の色を湛えたそれらは暗中に舞うと、次々に蟲を照らし、切り裂き、吹き散らす。羽根ほどに軽い外見をしながらも、魔術剣としての輪郭は些かも忘れていない、ということか。
花弁乱れ飛ぶ部屋からこぼれでた蟲は、しかし明夜の薙刀に串刺しにされ、振り抜かれて襖の染みと化す。倒した相手を一顧だにせず、彼女はフローリアンに視線を向けた。
「フローを呪った相手だもんね。どうにかしないと、だね?」
「そうだねえ、逃して増えられたらまた呪われるからね」
明夜の冗句に笑って応じると、フローリアンは手に舞い戻ったルーンソードを振るって蟲を蹴散らしていく。
その死角から新たな個体が現れたが……次の瞬間、それは灰になって消えていた。明夜の狐火が、談笑の合間に彼の周囲を囲んでいたのだ。飛び込んでくる溶解液を相殺するように、狐火がさらに一つ消えていく。
「明夜、余裕があるなら頼んだよー、っと!」
「はいはい、任されたよ!」
再び花弁を従えて前進するフローリアンの元から、蟲達が逃げ出そうと動く。だが、それは彼によって指向された逃走経路だ。その先には、狐火の補充を終えた明夜が待ち構えている。狐火によって炙られ、そうでなくとも嵐と見紛う薙刀捌きで蟲を蹴散らすその様は、それらに意思があれば明確に恐怖の対象たり得ただろう。
だが悲しいかな、蟲達はそんな感情を抱く機会もないままに掃討される運命なのである。
……果たして、さして時間を置かぬうちに蟲達は屋敷から掃討されるに至った。すでに突入していた面々が相当数減らしたのもあるが、それを補って余りある猛攻であったことも確かだ。
この屋敷の『呪い』が解けたことで、人々は祭りの喧騒から日常へと戻ることだろう。……不幸な『祭り(カルナバル)』はもう起きぬのだ。少なくとも、この集落では。
大成功
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